(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】燃料組成物
(51)【国際特許分類】
C10L 1/16 20060101AFI20240403BHJP
C10L 1/222 20060101ALI20240403BHJP
C10L 1/185 20060101ALI20240403BHJP
C10L 1/23 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C10L1/16
C10L1/222
C10L1/185
C10L1/23
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565580
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2022060542
(87)【国際公開番号】W WO2022228990
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】ベラ,トゥーシャー・カンティ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,キンバリー・アン
(72)【発明者】
【氏名】アラディ,アレン・アンベレ
【テーマコード(参考)】
4H013
【Fターム(参考)】
4H013CB02
4H013CD06
(57)【要約】
燃料組成物は、(a)内燃機関での使用に適したベース燃料と、(b)式(I)を有するテトラアルキルエタン化合物(式中、Arはアリール基を表し、各Xは独立して、水素原子、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐C
1~C
12アルキル基、(CH
2)
nOH、又は(CH
2)
nNH
2から選択され、nは1~9の範囲であり、ただし、各CX
3基中のX基の少なくとも1つは水素原子である)と、を含む。本発明の燃料組成物は、出力及び加速の改善、並びに火炎速度の上昇及び燃焼持続時間を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料組成物であって、
(a)内燃機関での使用に適したベース燃料と、
(b)式(I)を有するテトラアルキルエタン化合物
【化1】
(式中、Arはアリール基を表し、各Xは独立して、水素原子、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐C
1~C
12アルキル基、(CH
2)
nOH、又は(CH
2)
nNH
2から選択され、nは1~9の範囲であり、ただし、各CX
3基中のX基の少なくとも1つは水素原子である)と、を含む、燃料組成物。
【請求項2】
(c)式(II)を有するニトロキシドラジカル
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、アルキル基又はヘテロ原子置換アルキル基から個々に選択され、R
5及びR
6は、炭素に共有結合することができる水素以外の任意の原子又は基である)を更に含む、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項3】
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、メチル基、エチル基、又はプロピル基から個々に選択され、R
5及びR
6は、4個の炭素原子又は5個の炭素原子の環の一部を形成する、請求項1又は2に記載の燃料組成物。
【請求項4】
前記ニトロキシドラジカルは、式(III)を有し、
【化3】
式中、R
5、R
6、及びR
7は、-CR’R’-から個々に選択され、各R’は、水素、ヒドロキシド基、アルキル基、又はアルコキシ基から個々に選択される、請求項2又は3に記載の燃料組成物。
【請求項5】
前記ニトロキシドラジカルは、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルを含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の燃料組成物。
【請求項6】
前記テトラアルキルエタン化合物のArは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、チエニル、又はアントラシルから選択される置換又は非置換芳香族基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料組成物。
【請求項7】
Arは、非置換フェニル基である、請求項1~6のいずれか一項に記載の燃料組成物。
【請求項8】
各Xは独立して、水素原子、非置換、直鎖又は分岐C
1~C
6アルキル基から選択され、ただし、各CX
3基中のX基の少なくとも1つは水素原子である、請求項1~7のいずれか一項に記載の燃料組成物。
【請求項9】
前記テトラアルキルエタン化合物は、1,1’(1,1,2,2-テトラメチル-1,1-エタンジイル)ビス-ベンゼンである、請求項1~8のいずれか一項に記載の燃料組成物。
【請求項10】
前記ニトロキシドラジカルは、前記燃料組成物の30ppm重量%~2重量%のレベルで燃料組成物中に存在する、請求項2~9のいずれか一項に記載の燃料組成物。
【請求項11】
前記テトラアルキルエタン化合物は、前記燃料組成物の30ppm~10重量%のレベルで燃料組成物中に存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の燃料組成物。
【請求項12】
前記ベース燃料は、ガソリンベース燃料である、請求項1~11のいずれか一項に記載の燃料組成物。
【請求項13】
前記ベース燃料は、前記総ベース燃料を基準として10体積%未満の芳香族を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の燃料組成物。
【請求項14】
前記ベース燃料が、前記総ベース燃料に基づいて、2体積%未満の9個以上の炭素原子を有する芳香族を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の燃料組成物。
【請求項15】
内燃機関の出力を改善する方法であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の燃料組成物を前記内燃機関に供給することを含む、方法。
【請求項16】
内燃機関の加速を改善する方法であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の燃料組成物を前記内燃機関に供給することを含む、方法。
【請求項17】
内燃機関における燃料組成物の燃焼持続時間を短縮する方法であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の液体燃料組成物を前記内燃機関に供給することを含む、方法。
【請求項18】
内燃機関における燃料組成物の火炎速度を上昇させる方法であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の液体燃料組成物を前記内燃機関に供給することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料組成物に関し、特に、改善された出力及び/又は加速特性を有する液体燃料組成物に関する。
本発明はまた、本明細書において以下に記載される液体燃料組成物を内燃機関に供給することによって、内燃機関の出力及び/又は加速特性を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
層流燃焼速度(「火炎速度」とも呼ばれる)は、任意の燃料/空気混合物の基本的な燃焼特性である。SAE2012-01-1742に教示されているように、より速い燃焼速度を有するガソリン燃料ブレンドを配合することは、機関及び車両性能を向上させるための有効な戦略となり得る。より速く燃焼する燃料は、より効率的なエネルギー伝達、したがってより速い加速及びより良好な性能をもたらす、より最適な燃焼位相調整をもたらすことができる。
【0003】
スパーク点火内燃機関(SI-ICE)における動力行程中のスパークタイミングの最適化を可能にするのに十分なだけ点火遅延時間(IDT)を増加させることは、最適効率を較正する最良の機会を提供する。更に、点火遅延時間の増加が、スパークの前に起こる化学ラジカル反応の抑制によって引き起こされ、これらの同じ反応がスパークの後に起こるサイクルの温度/圧力軌道を更に上方にシフトするように燃料が修正される場合、燃焼の改善は、より短い燃焼持続時間をもたらす火炎速度の上昇によって達成することができる。火炎速度及び燃焼持続時間をまとめて制御する能力により、SI-ICEを較正して、用語「正味熱効率」(BTE)で表される、燃費と出力及び加速との間の最良のバランスを達成することが可能になる。
【発明の概要】
【0004】
驚くべきことに、液体燃料組成物中に特定の添加剤成分又は添加剤成分の組み合わせの使用は、火炎速度の上昇、燃焼持続時間の短縮、燃焼速度の上昇、出力の改善、加速性能の改善、及び燃費の改善に関して利点を提供できることが分かった。驚くべきことに、本発明は、点火遅延時間(IDT)に影響を与えることなくこれを達成する。
【0005】
本発明によれば、
(a)内燃機関での使用に適したベース燃料と、
(b)式(I)を有するテトラアルキルエタン化合物、
【0006】
【化1】
(式中、Arはアリール基を表し、各Xは独立して、水素原子、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐C
1~C
6アルキル基、OH、(CH
2)
nOH、(CH
2)
nNH
2から選択され、nは1~9の範囲であり、ただし、各CX
3基中のX基の少なくとも1つは水素原子である)と、を含む、燃料組成物が提供される。
【0007】
驚くべきことに、本発明の燃料組成物は、火炎速度の上昇、燃焼持続時間の短縮、燃焼速度の上昇、出力及び加速性能の改善もたらすことが見出された。驚くべきことに、本発明は、点火遅延時間(IDT)に影響を与えることなくこれを達成する。
【0008】
本発明の別の態様によれば、内燃機関の出力を改善する方法であって、本明細書において以下に記載される液体燃料組成物を内燃機関に供給することを含む方法が提供される。
【0009】
本発明の更に別の態様によれば、内燃機関の加速を改善する方法であって、本明細書において以下に記載される液体燃料組成物を内燃機関に供給することを含む方法が提供される。
【0010】
本発明の更に別の態様によれば、内燃機関における液体燃料組成物の火炎速度を上昇させる方法であって、本明細書において以下に記載される液体燃料組成物を内燃機関に供給することを含む方法が提供される。
【0011】
本発明の更に別の態様によれば、内燃機関における液体燃料組成物の燃焼持続時間を短縮する方法であって、以下に記載される液体燃料組成物を内燃機関に供給することを含む方法が提供される。
【0012】
本発明の更に別の態様によれば、内燃機関における液体燃料組成物の燃焼速度を上昇させる方法であって、以下に記載される液体燃料組成物を内燃機関に供給することを含む方法が提供される。
【0013】
本発明の更に別の態様によれば、出力を改善するための、本明細書に記載の液体燃料組成物の使用が提供される。
【0014】
本発明の更に別の態様によれば、加速を改善するための、本明細書に記載の液体燃料組成物の使用が提供される。
【0015】
本発明の更に別の態様によれば、火炎速度を上昇させるための液体燃料組成物の使用が提供される。
【0016】
本発明の更に別の態様によれば、燃焼持続時間を短縮するための液体燃料組成物の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】下記表4に示される結果のグラフ表示である。
【
図2】下記表5に示される結果のグラフ表示である。
【
図3】実施例3及び以下の実施例で使用されるベース燃料について、点火タイミングの範囲にわたって燃焼が10%から90%まで進行するのに必要とされる時間(機関クランク角度)の比較を示すグラフである。
【
図4】実施例1~5に関して表6に記載された実験データのグラフ表示である。
【
図5】実施例1~5に関して表7に記載された実験データのグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の理解を助けるために、いくつかの用語を本明細書で定義する。
【0019】
本明細書で使用される「出力」という用語は、シャーシ動力計試験において全開スロットル条件で固定速度を維持するのに必要な抵抗動力の量を指す。
【0020】
本発明によれば、内燃機関の出力を改善する方法であって、以下に記載する液体燃料組成物を、潤滑剤を含有する内燃機関に供給することを含む方法が提供される。本発明のこの態様の文脈において、「改善」という用語は、任意の程度の改善を包含する。改善は、例えば、本発明に従ってテトラアルキルエタン化合物及び好ましくはニトロキシドラジカルを添加する前の類似の燃料配合物の出力の0.05%以上、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、更により好ましくは0.5%以上、特に1%以上、更に特に2%以上、更に特に5%以上であってもよい。出力の改善は、本発明に従ってテトラアルキルエタン化合物、好ましくはニトロキシドラジカルを添加する前の類似の燃料配合物の出力の10%程度であってもよい。
【0021】
本発明によれば、燃料組成物によって提供される出力は、任意の既知の方法で判定され得る。
【0022】
本明細書で使用される「加速」という用語は、機関が所与のギアにおける2つの固定速度状態の間で速度を増加させるのに必要な時間量を指す。
【0023】
本発明によれば、内燃機関の加速を改善する方法であって、以下に記載される液体燃料組成物を、潤滑剤を含有する内燃機関に供給することを含む方法が提供される。本発明のこの態様の文脈において、「改善」という用語は、任意の程度の改善を包含する。改善は、本発明に従ってテトラアルキルエタン化合物及び好ましくはニトロキシドラジカルを添加する前の類似の燃料配合物によってもたらされる加速の、例えば0.05%以上、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、更により好ましくは0.5%以上、特に1%以上、より特に2%以上、更により特に5%以上であり得る。加速の改善は、本発明に従ってテトラアルキルエタン化合物、好ましくはニトロキシドラジカルを添加する前の類似の燃料配合物によって提供される加速の10%程度であってもよい。
【0024】
本発明によれば、燃料組成物によって提供される出力及び加速は、任意の既知の方法で、例えば、SAE Paper 2005-01-0239及びSAE Paper 2005-01-0244に記載されているような標準試験方法を用いて判定することができる。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「火炎速度」又は「層流火炎速度」(LFS)は、層流燃焼速度を指す。LFSは、混合動力を複雑にすることのない火炎伝播速度の基本的な尺度である。しかしながら、機関では、混合動力がある役割を果たすので、測定された火炎速度は、「燃焼速度」及び「燃焼持続時間」と呼ばれる。「燃焼速度」及び「燃焼持続時間」という用語も、本明細書では「火炎速度」と互換的に使用される。
層流燃焼速度(LBV)は、化学成分の基本的特性である。層流燃焼速度は、未燃焼ガスが火炎前面に伝播し、反応して生成物を形成する速度(層流条件下で火炎前面に垂直)として定義される。
【0026】
本発明によれば、内燃機関の火炎速度を上昇させる方法であって、本明細書で以下に記載される液体燃料組成物を内燃機関に供給することを含む方法が提供される。本発明のこの態様の文脈において、「上昇」という用語は、任意の程度の上昇を包含する。上昇は、例えば、本発明に従って特許請求の範囲に記載の添加剤を添加する前の類似の燃料配合物の火炎速度の0.05%以上、好ましくは0.1%以上、より好ましくは1%以上、特に5%以上であってもよい。火炎速度の上昇は、本発明に従って特許請求の範囲に記載の添加剤を添加する前の類似の燃料配合物の火炎速度の最大10%であってもよい。
【0027】
しかしながら、出力、加速、及び火炎速度における任意の測定可能な改善は、他のどの要因が重要であると考えられるか、例えば、可用性、コスト、安全性などに応じて、価値のある利点を提供し得ることを理解されたい。
【0028】
本発明によれば、燃料組成物の火炎速度は、任意の既知の方法で判定することができ、例えば、LFSの測定は、以下の3つの方法のいずれか1つを用いて行うことができる。
1.停滞火炎法(最大5~7気圧)
2.球状膨張法、定圧又は定体積(最大60~80気圧)
3.熱流束法(最大5気圧程度)。
【0029】
これらの方法の3つ全ては、レビュー刊行物:Egolfopoulos,F.N.、Hansen,N.、Ju,Y.、Kohse-Hoinghaus,K.Law,C.K.Qi,F.「Advances and challenges in laminar flame experiments and implications for combustion chemistry」,Progress in Energy and Combustion Science 43(2014年)36-67,
https://doi.org/10.1016/j.pecs.2014.04.004.に記載されている。
【0030】
一定容積の燃焼室(球形爆弾)における火炎速度を測定するための以下の方法は、Gillespie,L.L.,M.;Sheppard,C.G.;Wooley,R,Aspects of laminar and turbulent burning velocity relevant to spark ignition engines,Journal of the Society of Automotive Engineers、2000年(2000-01-0192)を参照されたい。
【0031】
火炎速度を測定するための以下の方法は、正味圧法を使用する。Mittal,M.,Zhu,G.and Schock H.,「Fast mass-fraction-burned calculation using the net pressure method for real-time applications」, Proc.Instn Mech Engrs,Part D:J.Automobile Engineering 223(3)(2009):389-394。
【0032】
本明細書で使用される「燃焼持続時間」という用語は、燃焼が10%から90%(以下の実施例ではAl 10-90と呼ばれる)まで進行するのに必要な時間(機関クランク角度)を意味する。以下の実施例において、用語Al 50-90も、燃焼持続時間に関連して使用され、燃焼が50%から90%に進行するのに必要な時間(機関クランク角度)を意味する。
【0033】
本発明によれば、燃料組成物の燃焼持続時間は、任意の公知の方法で、例えば、以下の実施例の節に開示される試験方法を使用して判定され得る。
【0034】
しかしながら、出力、加速、燃焼持続時間、及び火炎速度における任意の測定可能な改善は、他のどの要因が重要であると考えられるか、例えば、可用性、コスト、安全性などに応じて、価値のある利点を提供し得ることを理解されたい。
【0035】
本発明の液体燃料組成物は、内燃機関での使用に適したベース燃料、テトラアルキルエタン化合物、及びニトロキシドラジカルを含む。典型的には、内燃機関での使用に適したベース燃料はガソリン又はディーゼル燃料であり、したがって、本発明の液体燃料組成物は典型的にはガソリン組成物又はディーゼル燃料組成物である。
【0036】
本明細書で使用されるテトラアルキルエタン化合物は、式(I)を有する化合物であり、
【0037】
【化2】
式中、Arはアリール基を表し、各Xは独立して、水素原子、置換又は非置換、直鎖又は分岐C
1~C
12飽和又は不飽和アルキル基、(CH
2)
nOH、(CH
2)
nNH
2から選択され、式中、nは1~9の範囲、好ましくは1~6の範囲、より好ましくは1~4の範囲、更により好ましくは1~3の範囲であり、ただし、各CX
3基中のX基の少なくとも1つは水素原子である。
【0038】
好ましくは、各CX3基中のX基の少なくとも2つは水素原子である。
【0039】
特に好ましい実施形態では、各CX3基中の3つのX基は水素原子である。
【0040】
好ましくは、テトラアルキルエタン化合物のArは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、チエニル、又はアントラシルなどの置換又は非置換芳香族基である。より好ましくは、Arは、非置換フェニル基である。これは、式(I)の好ましい化合物の製造のために、市販されているクメンから出発することが可能であることを意味する。クメンから出発して、ジクメンは、米国特許第4,072,811号に記載されているように、いくつかの既知の方法によって調製することができる。
【0041】
好ましくは、各X基は独立して、水素原子及び非置換、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和C1~C6、より好ましくはC1~C3アルキル基から選択されるが、ただし、各CX3基中のX基の少なくとも1つは水素原子である。
【0042】
より好ましくは、各X基は独立して、水素原子及び非置換、直鎖又は分岐、飽和C1~C6、好ましくはC1~C3アルキル基から選択されるが、ただし、各CX3基中のX基の少なくとも1つは水素原子である。
【0043】
一実施形態では、各X基は独立して、水素原子、及び非置換直鎖飽和C1~C6、好ましくはC1~C3アルキル基、特にメチル、エチル、及びプロピルから選択される。
【0044】
式(I)の好適なテトラアルキルエタン化合物の例としては、以下が挙げられる。
【0045】
【0046】
【0047】
本明細書の一実施形態では、テトラアルキルエタン化合物は1,1’(1,1,2,2-テトラメチル-1,1-エタンジイル)ビス-ベンゼン(ジクメン)である。ジクメンは、Aldrich及び様々な他の化学薬品供給業者から市販されている。
【0048】
テトラアルキルエタン化合物は、好ましくは、燃料組成物の30ppm~10重量%、好ましくは100ppm~5重量%、より好ましくは100ppm~1重量%、更により好ましくは100ppm~5000ppm、特に500ppm~2000ppm%のレベルで燃料組成物中に存在する。
【0049】
上記のテトラアルキルエタン化合物に加えて、本発明の燃料組成物中にニトロキシドラジカルを含むことも好ましい。テトラアルキルエタン化合物とニトロキシドラジカルとの組み合わせを使用することによって、出力、加速、火炎速度、燃焼持続時間特性の改善が得られることが見出された。
【0050】
本明細書で使用される場合、「ニトロキシドラジカル」という用語は、安定なニトロキシドフリーラジカルを指す。ニトロキシドラジカルは、複素環構造又は直鎖構造のいずれかを有し得る。
本明細書で使用するのに好適なニトロキシドラジカルは、式(II)を有する。
【0051】
【化5】
式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、アルキル基又はヘテロ原子置換アルキル基から個々に選択され、R
5及びR
6は、炭素に共有結合することができる水素以外の任意の原子又は基である。
【0052】
R1、R2、R3、及びR4は、同じであっても異なっていてもよく、いくつかの実施形態では、1個の炭素原子~15個の炭素原子を含む。好ましくは、R1、R2、R3、及びR4は、メチル基、エチル基、又はプロピル基から個々に選択される。
【0053】
R5及びR6は、炭素に共有結合することができる水素以外の任意の原子又は基であってよいが、いくつかの基は、ニトロキシド構造の安定化能力を低下させる可能性があり、望ましくない。いくつかの実施形態では、R5及びR6は、ハロゲン、シアノ、Rがアルキル又はアリールである-COOR、-CONH2、-S-C6H5、-S-COCH3、-OCOC2H5、カルボニル、二重結合がニトロキシド部分と共役していないアルケニル、又は1~15個の炭素原子のアルキルから個々に選択される。R5及びR6はまた、R5及びR6が一緒になって、4個の炭素原子又は5個の炭素原子及び最大2個のヘテロ原子、例えば、O、N、又はSの環を形成し得る。上記の構造を有し、R5及びR6が環の一部を形成する適切な化合物の例は、ピロリジン-1-オキシ、ピペリジニル-1-オキシ、モルホリン、及びピペラジンである。上記のR5及びR6が環の一部を形成する特定の例は、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-piperindino-1-オキシ及びピロリン-1-オキシルである。いくつかの実施形態では、適切なR5及びR6基は、メチル基、エチル基、及びプロピル基から個々に選択される。
【0054】
好適なニトロキシドラジカルの別の例としては、以下の式(III):の6員環の構造を有するニトロキシドラジカルが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0055】
【化6】
式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、アルキル基又はヘテロ原子置換アルキルから個々に選択され、R
5及びR
6は、-CR’R’-から個々に選択され、各R’は、水素、ヒドロキシド基、アルキル基、又はアルコキシ基から個々に選択される。アルキル(又はヘテロ原子置換)基R
1、R
2、R
3、及びR
4は、同じであっても異なっていてもよく、いくつかの実施形態では、1個の炭素原子~15個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、メチル基、エチル基、又はプロピル基から個々に選択される。いくつかの実施形態では、各R’は同じであっても異なっていてもよく、いくつかの実施形態では、1個の炭素原子~15個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、各R’は、メチル基、エチル基、又はプロピル基から個々に選択される。
【0056】
式(III)の好適な水酸化物の例としては、以下の式(IV)の2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジノ-1-オキシ、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、又は2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシと呼ばれることもある、一般にTEMPOと呼ばれる2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルが挙げられる。
【0057】
【0058】
TEMPOは、Aldrich及び他の化学物質供給業者から市販されている。
【0059】
好適なニトロキシドラジカルの別の例としては、以下の式(V):の6員環の構造を有するニトロキシドラジカルが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0060】
【化8】
式中、式(V)のR
1、R
2、R
3、及びR
4は、アルキル基又はヘテロ原子置換アルキルから個々に選択され、式(V)のR
5、R
6、R
7は、-CR’R’-から個々に選択され、各R’は、水素、ヒドロキシド基、アルキル基、又はアルコキシ基から個々に選択される。式(V)のアルキル(又はヘテロ原子置換)基R
1、R
2、R
3、及びR
4は、同じであっても異なっていてもよく、いくつかの実施形態では、式(V)のR
1、R
2、R
3、及びR
4は、メチル基、エチル基、又はプロピル基から個々に選択される。いくつかの実施形態では、各R’は同じであっても異なっていてもよく、いくつかの実施形態では、1個の炭素原子~15個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、各R’は、メチル基、エチル基、又はプロピル基から個々に選択される。
【0061】
ニトロキシドラジカルは、好ましくは、燃料組成物の30ppm~2重量%、好ましくは100ppm~1重量%、より好ましくは100ppm~5000ppm、更により好ましくは500ppm~2000ppmのレベルで燃料組成物中に存在する。
【0062】
テトラアルキルエタン化合物及び、存在する場合、ニトロキシドラジカルは、任意の他の添加剤、例えば添加剤性能パッケージ(複数可)と一緒にブレンドされて、添加剤ブレンドを生成してもよい。次いで、添加剤ブレンドをベース燃料に添加して、液体燃料組成物を製造する。
【0063】
添加剤ブレンド中の性能パッケージ(複数可)の量は、添加剤ブレンドを基準として、好ましくは0.1~99.8重量%の範囲、より好ましくは5~50重量%の範囲である。
【0064】
好ましくは、本発明の液体燃料組成物中に存在する性能パッケージの量は、液体燃料組成物の全重量を基準として、15ppmw(重量百万分率)~10重量%の範囲である。より好ましくは、本発明の液体燃料組成物中に存在する性能パッケージの量は、更に、以下に列挙するパラメータ(i)~(xv)の1つ以上と一致する。
(i)少なくとも100ppmw、
(ii)少なくとも200ppmw、
(iii)少なくとも300ppmw、
(iv)少なくとも400ppmw、
(v)少なくとも500ppmw、
(vi)少なくとも600ppmw、
(vii)少なくとも700ppmw、
(viii)少なくとも800ppmw、
(ix)少なくとも900ppmw、
(x)少なくとも1000ppmw、
(xi)少なくとも2500ppmw、
(xii)最大5000ppmw、
(xiii)最大10000ppmw、
(xiv)最大2重量%、
(xv)最大5重量%。
【0065】
本発明の液体燃料組成物において、使用されるベース燃料がガソリンである場合、ガソリンは、自動車機関並びに例えば、オフロード及び航空機関などの他のタイプの機関を含む、当技術分野で公知のスパーク点火(ガソリン)タイプの内燃機関での使用に適した任意のガソリンであってよい。本発明の液体燃料組成物においてベース燃料として使用されるガソリンは、便宜上、「ベースガソリン」と呼ぶこともできる。
【0066】
ガソリンは、典型的には、25~230℃の範囲で沸騰する炭化水素の混合物を含み(EN-ISO3405)、最適範囲及び蒸留曲線は、典型的には、気候及び季節に応じて変化する。ガソリン中の炭化水素は、当技術分野で公知の任意の手段によって誘導することができ、好都合には、炭化水素は、直留ガソリン、合成的に製造された芳香族炭化水素混合物、熱分解若しくは触媒分解された炭化水素、水素化分解された石油留分、触媒改質された炭化水素又はこれらの混合物から任意の公知の方法で誘導することができる。
【0067】
ガソリンの特定の蒸留曲線、炭化水素組成、リサーチオクタン価(RON)及びモーターオクタン価(MON)は重要ではない。
【0068】
好都合には、ガソリンのリサーチオクタン価(RON)は、少なくとも80、例えば80~110の範囲であってよく、好ましくはガソリンのRONは少なくとも90、例えば90~110の範囲であり、より好ましくはガソリンのRONは少なくとも91、例えば91~105の範囲であり、更により好ましくはガソリンのRONは少なくとも92、例えば92~103の範囲であり、更により好ましくはガソリンのRONは少なくとも93、例えば93~102の範囲であり、最も好ましくはガソリンのRONは少なくとも94、例えば94~100の範囲である(EN25164)。ガソリンのモーターオクタン価(MON)は、好都合には少なくとも70、例えば70~110の範囲であってよく、好ましくはガソリンのMONは少なくとも75、例えば75~105の範囲であり、より好ましくはガソリンのMONは少なくとも80、例えば80~100の範囲であり、最も好ましくはガソリンのMONは少なくとも82、例えば82~95の範囲である(EN25163)。
【0069】
典型的には、ガソリンは、以下の群の1つ以上:飽和炭化水素、オレフィン系炭化水素、芳香族炭化水素、及び酸素化炭化水素から選択される成分を含む。好都合には、ガソリンは、飽和炭化水素、オレフィン系炭化水素、芳香族炭化水素、及び任意選択で酸素化炭化水素の混合物を含み得る。
【0070】
典型的には、ガソリンのオレフィン系炭化水素含有量は、ガソリンを基準として0~40体積%の範囲である(ASTM D1319)。好ましくは、ガソリンのオレフィン系炭化水素含有量は、ガソリンを基準として0~30体積%の範囲であり、より好ましくは、ガソリンのオレフィン系炭化水素含有量は、ガソリンを基準として0~20体積%の範囲である。
【0071】
典型的には、ガソリンの芳香族炭化水素含有量は、ガソリンを基準として0~70体積%の範囲であり(ASTM D1319)、例えば、ガソリンの芳香族炭化水素含有量は、ガソリンを基準として10~60体積%の範囲であり;好ましくは、ガソリンの芳香族炭化水素含有量は、ガソリンを基準として0~50体積%の範囲であり、例えば、ガソリンの芳香族炭化水素含有量は、ガソリンを基準として10~50体積%の範囲である。
本明細書の一実施形態では、ガソリンベース燃料は、総ベース燃料を基準として10体積%未満の芳香族を含む。本明細書の別の実施形態では、ガソリンベース燃料は、総ベース燃料を基準として、2体積%未満の9個以上の炭素原子を有する芳香族を含む。
【0072】
ガソリン中のベンゼン含有量は、ガソリンを基準として最大10体積%、より好ましくは最大5体積%、特に最大1体積%である。
【0073】
ガソリンは、好ましくは、低い又は超低い硫黄含有量、例えば、多くとも1000ppmw(重量百万分率)、好ましくは500ppmw以下、より好ましくは100以下、更により好ましくは50以下、最も好ましくは10ppmw以下を有する。
【0074】
ガソリンはまた、好ましくは、多くとも0.005g/lなどの低い総鉛含有量を有し、最も好ましくは、鉛を含まない、つまり、鉛化合物が添加されていない(すなわち、無鉛)。
【0075】
ガソリンが酸素化炭化水素を含む場合、非酸素化炭化水素の少なくとも一部は、酸素化炭化水素と置換される(マッチブレンド)か、又は完全に配合されたガソリンに単に添加される(スプラッシュブレンド)。ガソリンの酸素化物含有量は、ガソリンを基準として最大85重量%(EN 1601)(例えば、エタノール自体)であってもよい。例えば、ガソリンの酸素化物含量は、最大35重量%、好ましくは最大25重量%、より好ましくは最大10重量%以下であってよい。好都合には、酸素化物濃度は、0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、及び1.2重量%のいずれか1つから選択される最小濃度、並びに12、8、7.2、5、4.5、4.0、3.5、3.0、及び2.7重量%のいずれか1つから選択される最大濃度を有する。
【0076】
ガソリンに組み込まれ得る好適な酸素化炭化水素の例としては、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸並びにそれらの誘導体、及び酸素含有複素環式化合物、並びにそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ガソリンに組み込むことができる酸素化炭化水素は、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、tert-ブタノール、イソ-ブタノール、及び2-ブタノールなど)、エーテル(好ましくは、1分子当たり5個以上の炭素原子を含有するエーテル、例えば、メチルtert-ブチルエーテル、及びエチルtert-ブチルエーテル)及びエステル(好ましくは、1分子当たり5個以上の炭素原子を含有するエステル)から選択される。特に好ましい酸素化炭化水素は、エタノールである。
【0077】
酸素化炭化水素がガソリン中に存在する場合、ガソリン中の酸素化炭化水素の量は、広い範囲にわたって変化し得る。例えば、多い割合の酸素化炭化水素を含むガソリン、例えばエタノール自体及びE85、並びに少ない割合の酸素化炭化水素を含むガソリン、例えばE10及びE5が、ブラジル及び米国などの国で現在市販されている。
従って、ガソリンは100体積%までの酸素化炭化水素を含有し得る。ブラジルで使用されるようなE100燃料も本明細書に含まれる。好ましくは、ガソリン中に存在する酸素化炭化水素の量は、ガソリンの所望の最終配合物に応じて、以下の量のうちの1つ:最大85体積%、最大70体積%、最大65体積%最大30体積%まで;最大20体積%まで;最大15体積%、及び最大10体積%から選択される。好都合には、ガソリンは、少なくとも0.5、1.0又は2.0体積%の酸素化炭化水素を含有し得る。
【0078】
好適なガソリンの例としては、0~20体積%のオレフィン系炭化水素含有量(ASTM D1319)、0~5重量%の酸素含有量(EN1601)、0~50体積%の芳香族炭化水素含有量(ASTM D1319)、及び最大1体積%のベンゼン含有量を有するガソリンが挙げられる。
【0079】
バイオマス又はCO2のいずれかからの低炭素ガソリン燃料などの原油以外の供給源から誘導することができるガソリンブレンド成分、並びにそれらの互いのブレンド又はそれらと化石由来ガソリン流及び成分とのブレンドも、本明細書での使用に適している。
このような燃料の好適な例としては、以下のものが挙げられる。
1)バイオマス由来:
a.バイオマスの水素化脱酸素からの直留バイオナフサ、及び
b.合成ワックスの分解及び/又は異性化生成物(FTプロセスによる合成ガス(CO/H2)へ、合成ワックスへのバイオマスガス化)、次いで、水素化分解/水素化異性化されて、ガソリン蒸留範囲の留分を含む生成物のスレートを生じる。
2)CO2由来:
a.FTプロセスによる合成ワックスへの改変された水/ガスシフト反応によるCO2+H2合成ガス(CO/H2)、次いで、水素化分解/水素化異性化されて、ガソリン蒸留範囲の留分を含む生成物のスレートを生じる。
3)メタノール由来:
a.合成ガス(CO/H2)へ、メタノールへ、MTGガソリンへのバイオマスガス化(MTGは「メタノールからガソリン」プロセスである)。燃料の炭素強度を更に低下させるために、全てのプロセスで使用されるH2は、風力及び太陽光などの再生可能な電気を使用する水の電気分解から得られる再生可能(環境保全)H2であろう。
【0080】
本明細書で使用するのに特に適しているのは、生物学的供給源に由来し得るガソリンブレンド成分である。このようなガソリンブレンド成分の例は、国際公開第2009/077606号、国際公開第2010/028206号、国際公開第2010/000761号、欧州特許出願第09160983.4号、同第09176879.6号、同第09180904.6号、及び米国特許出願第61/312307号に見出すことができる。
【0081】
本発明にとって必須ではないが、本発明のベースガソリン又はガソリン組成物は、上記の必須テトラアルキルエタン化合物及び必須ニトロキシドラジカルに加えて、1種以上の任意の燃料添加剤を都合よく含むことができる。本発明のベースガソリン又はガソリン組成物中に含まれ得る任意選択の燃料添加剤の濃度及び性質は、重要ではない。本発明のベースガソリン又はガソリン組成物中に含まれ得る好適なタイプの燃料添加剤の非限定的な例としては、酸化防止剤、腐食防止剤、洗浄剤、曇り除去剤、アンチノック添加剤、金属不活性化剤、弁座後退防止剤化合物(valve-seat recession protectant compounds)、染料、溶媒、分散媒、希釈剤、及びマーカーが挙げられる。好適なそのような添加剤の例が、米国特許第5,855,629号に一般的に記載されている。
【0082】
好都合には、燃料添加剤を1種以上の溶媒とブレンドして添加剤濃縮物を形成することができ、次いで、添加剤濃縮物を本発明のベースガソリン又はガソリン組成物と混和することができる。
【0083】
本発明のベースガソリン又はガソリン組成物中に存在するいずれかの任意選択の添加剤の(活性物質)濃度は、好ましくは、最大1重量%、より好ましくは、5~2000ppmwの範囲、有利には、300~1500ppmwの範囲、例えば、300~1000ppmwである。
【0084】
上記のように、ガソリン組成物はまた、合成又は鉱物キャリアオイル及び/又は溶媒を含有し得る。
【0085】
好適な鉱物キャリアオイルの例は、例えば、SN 500~2000クラスの粘度を有するブライトストック又は基油などの原油処理において得られる留分、並びに芳香族炭化水素、パラフィン系炭化水素、及びアルコキシアルカノールである。鉱油の精製において得られ、「水素化分解油」(高圧下で接触水素化され、異性化され、更に脱パラフィンされた天然鉱油から得ることができる、約360~500℃の沸点範囲を有する真空蒸留留分)として知られている留分も、鉱物キャリアオイルとして有用である。
【0086】
好適な合成キャリアオイルの例は、ポリオレフィン(ポリ-α-オレフィン又はポリ(内部オレフィン))、(ポリ)エステル、(ポリ)アルコキシレート、ポリエーテル、脂肪族ポリエーテルアミン、アルキルフェノール出発ポリエーテル、アルキルフェノール出発ポリエーテルアミン、及び長鎖アルカノールのカルボン酸エステルである。
【0087】
好適なポリオレフィンの例は、特に、ポリブテン又はポリイソブテン(水素化又は非水素化)をベースとするオレフィンポリマーである。
【0088】
好適なポリエーテル又はポリエーテルアミンの例は、好ましくは、C2~C60-アルカノール、C6~C30-アルカンジオール、モノ-又はジ-C2~C30-アルキルアミン、C1~C30-アルキルシクロヘキサノール、又はC1~C30-アルキルフェノールと、ヒドロキシル基又はアミノ基当たり1~30モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとを反応させることによって、及びポリエーテルアミンの場合には、アンモニア、モノアミン、又はポリアミンによるその後の還元的アミノ化によって得られ得るポリオキシ-C2~C4-アルキレン部分を含む化合物である。そのような生成物は、特に、欧州特許第310 875(A)号、欧州特許第356 725(A)号、欧州特許第700 985(A)号、及び米国特許第4,877,416(A)号に記載されている。例えば、使用されるポリエーテルアミンは、ポリ-C2~C6-アルキレンオキシドアミン又はその官能性誘導体であり得る。その典型的な例は、トリデカノールブトキシレート又はイソトリデカノールブトキシレート、イソノニルフェノールブトキシレート、並びにポリイソブテノールブトキシレート及びポリイソブテノールプロポキシレート、並びにアンモニアとの対応する反応生成物である。
【0089】
長鎖アルカノールのカルボン酸エステルの例は、特に、独国特許第38 38 918(A)号に記載されているように、特に、モノ-、ジ-又はトリカルボン酸と長鎖アルカノール又はポリオールとのエステルである。使用されるモノ-、ジ-又はトリカルボン酸は、脂肪族酸又は芳香族酸であり得、好適なエステルアルコール又はポリオールは、特に、例えば6~24個の炭素原子を有する長鎖の代表例である。エステルの典型的な代表例は、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール、及びイソトリデカノールのアジペート、フタレート、イソフタレート、テレフタレート、及びトリメリテート、例えば、ジ-(n-又はイソトリデシル)フタレートである。
【0090】
更なる好適なキャリアオイル系が、例えば、独国特許第38 26 608(A)号、独国特許第41 42 241(A)号、独国特許第43 09 074(A)号、欧州特許第0 452 328(A)号、及び欧州特許第0 548 617(A)号に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
特に好適な合成キャリアオイルの例は、例えば、プロピレンオキシド単位、n-ブチレンオキシド単位、及びイソブチレンオキシド単位、又はそれらの混合物から選択される、約5~35個、例えば約5~30個のC3~C6-アルキレンオキシド単位を有するアルコール出発ポリエーテルである。好適な出発アルコールの非限定的な例は、長鎖アルキルで置換された長鎖アルカノール又はフェノールであり、ここで、長鎖アルキル基は、特に、直鎖又は分岐C6~C18-アルキル基である。好ましい例としては、トリデカノール及びノニルフェノールが挙げられる。
【0092】
更なる好適な合成キャリアオイルは、独国特許出願第10 102 913.6(A)号に記載されているようなアルコキシル化アルキルフェノールである。
【0093】
鉱物キャリアオイル、合成キャリアオイル、並びに鉱物及び合成キャリアオイルの混合物もまた、使用され得る。
【0094】
燃料中に使用するのに適した任意の溶媒及び任意選択的に共溶媒が使用されてもよい。燃料中に使用するのに適した溶媒の例としては、ケロシン、重質芳香族溶媒(「ソルベントナフサヘビー」、「Solvesso 150」)、トルエン、キシレン、パラフィン、石油、ホワイトスピリッツ、シェル企業から「SHELLSOL」の商品名で販売されているものなどの非極性炭化水素溶媒が挙げられる。好適な共溶媒の例としては、極性溶媒、例えば、エステル、及び、特に、アルコール(例えば、t-ブタノール、i-ブタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、2-プロピルヘプタノール、デカノール、イソトリデカノール、ブチルグリコール、及びアルコール混合物、例えば、シェル企業によって商標「LINEVOL」で販売されているもの、特に、C7~9一級アルコールの混合物であるLINEVOL 79アルコール、又は市販されているC12~14アルコール混合物)が挙げられる。
【0095】
液体燃料中での使用に適した曇り除去剤/解乳化剤は、当該技術分野において周知である。非限定的な例としては、グリコールオキシアルキレートポリオールブレンド(例えば、商品名TOLAD(商標)9312で販売されているもの)、アルコキシル化フェノールホルムアルデヒドポリマー、フェノール/ホルムアルデヒド又はC1~18エポキシド及びジエポキシドによるオキシアルキル化によって変性されたC1~18アルキルフェノール/-ホルムアルデヒド樹脂オキシアルキレート(例えば、商品名TOLAD(商標)9308で販売されているもの)、及びジエポキシド、二酸、ジエステル、ジオール、ジアクリレート、ジメタクリレート、又はジイソシアネートで架橋されたC1~4エポキシドコポリマー、並びにそれらのブレンドが挙げられる。グリコールオキシアルキレートポリオールブレンドは、C1~4エポキシドでオキシアルキル化されたポリオールであり得る。C1~18エポキシド及びジエポキシドによるオキシアルキル化によって変性されたC1~18アルキルフェノールフェノール/-ホルムアルデヒド樹脂オキシアルキレートは、例えば、クレゾール、t-ブチルフェノール、ドデシルフェノール若しくはジノニルフェノール、又はフェノールの混合物(例えば、t-ブチルフェノールとノニルフェノールとの混合物)に基づき得る。曇り除去剤は、曇り除去剤を含まないガソリンが水と接触した場合に生じる可能性のある曇りを抑制するのに十分な量で使用されるべきであり、この量は、本明細書では「曇り抑制量」と呼ばれる。
一般に、この量は、ガソリンの重量を基準として、約0.1~約20ppmw(例えば、約0.1~約10ppm)、より好ましくは1~15ppmw、更により好ましくは1~10ppmw、有利には1~5ppmwである。
【0096】
ガソリン中で使用するための更なる慣用の添加剤は、例えば、有機カルボン酸のアンモニウム塩であって、当該塩がフィルムを形成する傾向のある、アンモニウム塩、又は非鉄金属腐食保護のための複素環式芳香族のアンモニウム塩に基づく腐食防止剤、例えば、フェニルジアミンなどのアミン、例えば、p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニルジアミン、ジシクロヘキシルアミン、若しくはそれらの誘導体、又は2,4-ジ-tert-ブチルフェノール若しくは3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニルプロピオン酸などのフェノールの誘導体に基づく酸化防止剤若しくは安定剤、帯電防止剤;フェロセンなどのメタロセン、メチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル、潤滑添加剤、例えば、特定の脂肪酸、アルケニルコハク酸エステル、ビス(ヒドロキシアルキル)脂肪アミン、ヒドロキシアセトアミド、又はひまし油、及び染料(マーカー)である。適切な場合、例えば、国際公開第03/076554号に記載されているように、アミンを添加してもよい。任意選択で、ポリマー有機酸のナトリウム塩又はカリウム塩などの抗弁座後退添加剤(anti-valve seat recession additives)を使用してもよい。
【0097】
本明細書のガソリン組成物は、清浄添加剤も含み得る。好適な洗剤添加剤としては、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/50287号に開示されているものが挙げられる。
【0098】
本明細書のガソリン組成物に使用するのに好ましい清浄添加剤は、典型的には、85~20000の数平均分子量(Mn)を有する少なくとも1つの疎水性炭化水素基と、
(A1)最大6個の窒素原子を有し、そのうちの少なくとも1個の窒素原子が塩基性を有するモノ又はポリアミノ基、
(A6)ヒドロキシル基、少なくとも1個の窒素原子が塩基性特性を有するモノ若しくはポリアミノ基、又はカルバメート基により終端するポリオキシ-C2-~C4-アルキレン基、
(A8)無水コハク酸から誘導され、ヒドロキシル基及び/又はアミノ基及び/又はアミド基及び/又はイミド基を有する部分、及び/又は
(A9)置換フェノールと、アルデヒド及びモノ又はポリアミンとのマンニッヒ反応によって得られる部分から選択される少なくとも1つの極性部分と、を有する。
【0099】
ベース流体中での適切な溶解性を確実にする、上記清浄添加剤中の疎水性炭化水素基は、85~20 000、特に113~10 000、特に300~5000の数平均分子量(Mn)を有する。
特に極性部分(A1)、(A8)、及び(A9)に関連する典型的な疎水性炭化水素基としては、ポリアルケン(ポリオレフィン)、例えば、各々が300~5000、好ましくは500~2500、より好ましくは700~2300、特に700~1000のMnを有するポリプロペニル、ポリブテニル、及びポリイソブテニル基が挙げられる。
【0100】
清浄添加剤の上記の基の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる。
モノ又はポリアミノ基(A1)を含む添加剤は、好ましくは、300~5000のMnを有するポリプロペン又は従来の(すなわち、主に内部二重結合を有する)ポリブテン若しくはポリイソブテンに基づくポリアルケンモノアミン若しくはポリアルケンポリアミンである。主に内部二重結合(通常β及びγ位)を有するポリブテン又はポリイソブテンが、添加剤の調整において出発物質として使用される場合、可能な調整経路は、塩素化及びその後のアミノ化によるか、又は空気若しくはオゾンでの二重結合の酸化によるカルボニル化合物若しくはカルボキシル化合物の形成及びその後の還元(水素化)条件下でのアミノ化によるものである。アミン化のためにここで使用されるアミンは、例えば、アンモニア、モノアミン、又はポリアミン、例えば、ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、又はテトラエチレンペンタミンであり得る。ポリプロペンをベースとする対応する添加剤は、特に、国際公開第94/24231(A)号に記載されている。
【0101】
モノアミノ基(A1)を含む更に好ましい添加剤は、特に国際公開第97/03946(A)号に記載されているような、5~100の平均重合度を有するポリイソブテンの、窒素酸化物又は窒素酸化物と酸素との混合物との反応生成物の水素化生成物である。
【0102】
モノアミノ基(A1)を含む更に好ましい添加剤は、特に独国特許第196 20 262(A)号に記載されているように、ポリイソブテンエポキシドから、アミンとの反応及びその後のアミノアルコールの脱水及び還元によって得られる化合物である。
【0103】
ポリオキシ-C2~C4-アルキレン部分(A6)を含む添加剤は、好ましくは、C2-~C60-アルカノール、C6-~C30-アルカンジオール、モノ-若しくはジ-C2~C30-アルキルアミン、C1~C30-アルキルシクロヘキサノール、又はC1~C30-アルキルフェノールと、ヒドロキシル基又はアミノ基当たり1~30モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとの反応によって、及びポリエーテルアミンの場合には、アンモニア、モノアミン、又はポリアミンによるその後の還元的アミノ化によって得られるポリエーテル又はポリエーテルアミンである。そのような生成物は、特に、欧州特許第310875(A)号、欧州特許第356725(A)号、欧州特許第700985(A)号、及び米国特許第4 877 416(A)号に記載されている。ポリエーテルの場合、そのような生成物は、キャリアオイル特性も有する。これらの典型的な例は、トリデカノールブトキシレート、イソトリデカノールブトキシレート、イソノニルフェノールブトキシレート、及びポリイソブテノールブトキシレート、及びポリイソブテノールプロポキシレート、並びに対応するアンモニアとの反応生成物である。
【0104】
無水コハク酸から誘導され、ヒドロキシル基及び/又はアミノ基及び/又はアミド基及び/又はイミド基を有する部分を含む添加剤(A8)は、好ましくは、300~5000のMnを有する従来のポリイソブテン又は高反応性ポリイソブテンと無水マレイン酸とを熱的経路によって、又は塩素化ポリイソブテンを介して反応させることによって得られるポリイソブテニルコハク酸無水物の対応する誘導体である。特に興味深いのは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、又はテトラエチレンペンタミンなどの脂肪族ポリアミンを有する誘導体である。そのような添加剤が、特に、米国特許第4 849 572(A)号に記載されている。
【0105】
置換フェノールとアルデヒド及びモノ又はポリアミンとのマンニッヒ反応によって得られる部分を含む添加剤(A9)は、好ましくは、ポリイソブテン置換フェノールとホルムアルデヒド及びモノ又はポリアミン、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、又はジメチルアミノプロピルアミンとの反応生成物である。ポリイソブテニル置換フェノールは、300~5000のMnを有する従来のポリイソブテン又は高反応性ポリイソブテンに由来し得る。そのような「ポリイソブテン-マンニッヒ塩基」が、特に、欧州特許第831 141(A)号に記載されている。
【0106】
好ましくは、本発明のガソリン組成物に使用される清浄添加剤は、少なくとも1種の窒素含有清浄剤、より好ましくは、300~5000の範囲の数平均分子量を有する疎水性炭化水素基を含有する少なくとも1種の窒素含有清浄剤を含有する。好ましくは、窒素含有清浄剤は、ポリアルケンモノアミン、ポリエーテルアミン、ポリアルケンマンニッヒアミン、及びポリアルケンスクシンイミドを含む群から選択される。好都合には、窒素含有清浄剤は、ポリアルケンモノアミンであり得る。
【0107】
上記において、成分の量(濃度、体積%、ppmw、重量%)は、活性物質のものであり、すなわち、揮発性溶媒/希釈剤材料を除く。
【0108】
本発明の液体燃料組成物において、使用されるベース燃料がディーゼル燃料である場合、本発明においてベース燃料として使用されるディーゼル燃料は、自動車圧縮点火機関、並びに例えばオフロード、船舶、鉄道及び定置機関などの他のタイプの機関において使用するためのディーゼル燃料を含む。本発明の液体燃料組成物においてベース燃料として使用されるディーゼル燃料は、便宜上、「ディーゼルベース燃料」と呼ぶこともできる。
【0109】
ディーゼルベース燃料は、それ自体、2つ以上の異なるディーゼル燃料成分の混合物を含んでもよく、及び/又は以下に記載されるように添加剤が加えられてもよい。
【0110】
このようなディーゼル燃料は、典型的には液体炭化水素中間留出ガス油(複数可)、例えば石油由来ガス油を含み得る1つ以上のベース燃料を含有する。このような燃料は、典型的には、グレード及び用途に応じて、150~400℃の通常のディーゼル範囲内の沸点を有する。それらは、典型的には、15℃で750~1000kg/m3、好ましくは780~860kg/m3の密度(例えば、ASTM D4502又はIP365)、及び35~120、より好ましくは40~85のセタン価(ASTM D613)を有する。それらは、典型的には、150~230℃の範囲の初期沸点及び290~400℃の範囲の最終沸点を有する。それらの40℃での動粘度(ASTM D445)は、好適には1.2~4.5mm2/sであり得る。
【0111】
石油由来軽油の例は、スウェーデンクラス1ベース燃料であり、これは、スウェーデン国国家規格ECIによって定義されるように、15℃で800~820kg/m3の密度(SS-EN ISO 3675、SS-EN ISO 12185)、320℃以下のT95(SS-EN ISO3405)、及び40℃で1.4~4.0mm2/sの動粘度(SS-EN ISO3104)を有する。
【0112】
バイオマス又はCO2のいずれかからの低炭素ディーゼル燃料などの原油以外の供給源から誘導することができるディーゼルブレンド成分、並びにそれらの互いのブレンド又は化石由来ディーゼル流及び成分とのブレンドも、本明細書での使用に好適である。
このような燃料の好適な例としては、以下のものが挙げられる。
1)バイオマス由来:
a.バイオマスの水素化脱酸素からの直留バイオディーゼル、
b.合成ワックスの分解及び/又は異性化生成物(FTプロセスによる合成ガス(CO/H2)へ、合成ワックスへのバイオマスガス化)、次いで、水素化分解/水素化異性化されて、ディーゼル蒸留範囲の留分を含む生成物のスレートを生じる。
2)CO2由来:
a.FTプロセスによる合成ワックスへの改変された水/ガスシフト反応によるCO2+H2合成ガス(CO/H2)、次いで、水素化分解/水素化異性化されて、ディーゼル蒸留範囲の留分を含む生成物のスレートを生じる。
3)メタノール由来:
a.合成ガス(CO/H2)へ、メタノールへ、MTDへのバイオマスガス化(MTDは「メタノールからディーゼル」プロセスである)。燃料の炭素強度を更に低下させるために、全てのプロセスで使用されるH2は、風力及び太陽光などの再生可能な電気を使用する水の電気分解から得られる再生可能(環境保全)H2であろう。
【0113】
フィッシャー・トロプシュ燃料は、例えば、天然ガス、天然ガス液、石油又はシェール油、石油又はシェール油処理残留物、石炭又はバイオマスから誘導され得る。
【0114】
ディーゼル燃料に使用されるフィッシャー・トロプシュ誘導燃料の量は、ディーゼル燃料全体の0体積%~100体積%、好ましくは5体積%~100体積%、より好ましくは5体積%~75体積%であってもよい。このようなディーゼル燃料は、10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、更により好ましくは30体積%以上のフィッシャー・トロプシュ誘導燃料を含有することが望ましい場合がある。このようなディーゼル燃料は、30~75体積%、特に30~70体積%のフィッシャー・トロプシュ誘導燃料を含有することが特に好ましい。ディーゼル燃料の残部は、1種以上の他のディーゼル燃料成分から構成される。
【0115】
このようなフィッシャー・トロプシュ誘導燃料成分は、(任意選択で水素化分解された)フィッシャー・トロプシュ合成生成物から単離することができる中間留分燃料範囲の任意の留分である。典型的な留分は、ナフサ、灯油、又は軽油の範囲で沸騰する。
好ましくは、灯油又は軽油範囲で沸騰するフィッシャー・トロプシュ生成物が使用されるが、これは、これらの生成物が、例えば家庭環境での取り扱いがより容易であるためである。このような生成物は、好適には、160~400℃、好ましくは約370℃で沸騰する90重量%を超える留分を含む。フィッシャー・トロプシュ由来の灯油及びガス油の例は、欧州特許第0583836(A)号、国際公開第97/14768(A)号、国際公開第97/14769(A)号、国際公開第00/11116(A)号、国際公開第00/11117(A)号、国際公開第01/83406(A)号、国際公開第01/83648(A)号、国際公開第01/83647(A)号、国際公開第01/83641(A)号、国際公開第00/20535(A)号、国際公開第00/20534(A)号、欧州特許第1101813(A)号、米国特許第5766274(A)号、米国特許第5378348(A)号、米国特許第5888376(A)号、及び米国特許第6204426(A)号に記載されている。
【0116】
フィッシャー・トロプシュ生成物は、好適には80重量%超、より好適には95重量%超のイソ及びノルマルパラフィンと、1重量%未満の芳香族とを含有し、残部はナフテン系化合物である。硫黄及び窒素の含有量は非常に低く、通常はこのような化合物の検出限界未満である。この理由のために、フィッシャー・トロプシュ生成物を含有するディーゼル燃料組成物の硫黄含有量は、非常に低くてもよい。
【0117】
ディーゼル燃料組成物は、好ましくは5000ppmw以下、より好ましくは500ppmw以下、又は350ppmw以下、又は150ppmw以下、又は100ppmw以下、又は70ppmw以下、又は50ppmw以下、又は30ppmw以下、又は20ppmw以下、又は最も好ましくは10ppmw以下の硫黄を含有する。
【0118】
本明細書で使用するための他のディーゼル燃料成分としては、生物学的材料に由来するいわゆる「バイオ燃料」が挙げられる。例としては、脂肪酸アルキルエステル(FAAE)が挙げられる。このような成分の例は、国際公開第2008/135602号に見出すことができる。完全に水素化されたFAAEも利用可能であり、「再生可能ディーゼル」と呼ばれる。バイオ燃料は、動物油又は植物油から得ることができる。
【0119】
米国特許出願公開第2013/0008081(A1)号に開示されているような、固体バイオマス及びバイオオイルからの再生可能なディーゼル燃料を本明細書で使用することができる。
【0120】
ディーゼルベース燃料は、それ自体添加されていても(添加剤含有)、添加されていなくても(添加剤不含)よい。例えば製油所で添加される場合、ディーゼルベース燃料は、例えば帯電防止剤、パイプライン抵抗低減剤、流動性向上剤(例えばエチレン/酢酸ビニルコポリマー又はアクリレート/無水マレイン酸コポリマー)、潤滑性添加剤、酸化防止剤、及びワックス沈降防止剤から選択される少量の1種以上の添加剤を含有する。
【0121】
清浄剤含有ディーゼル燃料添加剤は、既知であり、市販されている。このような添加剤は、機関堆積物の蓄積を低減、除去、又は遅延させることを意図したレベルでディーゼル燃料に添加することができる。
【0122】
本目的のためのディーゼル燃料添加剤での使用に適した清浄剤の例としては、ポリオレフィン置換スクシンイミド又はポリアミンのスクシンアミド、例えば、ポリイソブチレンスクシンイミド又はポリイソブチレンアミンスクシンアミド、脂肪族アミン、マンニッヒ塩基又はアミン、及びポリオレフィン(例えば、ポリイソブチレン)無水マレイン酸が挙げられる。スクシンイミド分散剤添加剤は、例えば、英国特許第960493(A)号、欧州特許第0147240(A)号、欧州特許第0482253(A)号、欧州特許第0613938(A)号、欧州特許第0557516(A)号、及び国際公開第98/42808(A)号に記載されている。特に好ましいのは、ポリイソブチレンスクシンイミドなどのポリオレフィン置換スクシンイミドである。
【0123】
ディーゼル燃料添加剤混合物は、清浄剤に加えて他の成分を含有してもよい。例としては、潤滑性向上剤、例えば、アルコキシル化フェノールホルムアルデヒドポリマーといった脱ヘーズ剤、消泡剤(例えば、ポリエーテル変性ポリシロキサン)、点火改良剤(セタン向上剤)(例えば、硝酸2-エチルヘキシル(EHN)、硝酸シクロヘキシル、ジ-tert-ブチルペルオキシド、及び米国特許第4208190(A)号の第2欄第27行~第3欄第21行に開示されているもの)、防錆剤(例えば、テトラプロペニルコハク酸のプロパン1-2-ジオール半エステル、又はコハク酸誘導体の多価アルコールエステルであって、コハク酸誘導体が、そのアルファ-炭素原子の少なくとも1つに、20~500個の炭素原子を含有する非置換又は置換脂肪族炭化水素基を有するもの、例えば、ポリイソブチレン置換コハク酸のペンタエリスリトールジエステル)、腐食防止剤、付香剤、耐摩耗添加剤、酸化防止剤(例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールなどのフェノール類、又はN,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン)、金属不活性化剤、助燃剤、静電気消散添加剤、低温流動性向上剤、及びワックス沈降防止剤が挙げられる。
【0124】
ディーゼル燃料添加剤混合物は、特にディーゼル燃料組成物が低い(例えば、500ppmw以下)硫黄含有量を有する場合、潤滑性向上剤を含有し得る。添加剤含有ディーゼル燃料組成物において、潤滑性向上剤は、1000ppmw未満、好ましくは50~1000ppmw、より好ましくは70~1000ppmwの濃度で存在するのが好都合である。好適な市販の潤滑性向上剤としては、エステル系及び酸系添加剤が挙げられる。他の潤滑性向上剤は、特許文献に、特に低硫黄含量ディーゼル燃料におけるそれらの使用に関連して、例えば以下に記載されている。
-Danping Wei及びH.A.Spikes,「The Lubricity of Diesel Fuels」,Wear,III(1986年)217-235、
-国際公開第95/33805(A)号-低硫黄燃料の潤滑性を高めるための低温流動性向上剤、
-米国特許第5490864(A)号-低硫黄ディーゼル燃料用の耐摩耗潤滑性添加剤としてのある種のジチオリン酸ジエステル-ジアルコール、
-国際公開第98/01516(A)号-特に低硫黄ディーゼル燃料において耐摩耗性潤滑効果を付与するための、芳香核に結合した少なくとも1つのカルボキシル基を有するある種のアルキル芳香族化合物。
【0125】
ディーゼル燃料組成物は、消泡剤を含有することが好ましく、防錆剤及び/又は腐食防止剤及び/又は潤滑添加剤と組み合わせて含有することがより好ましい場合がある。
【0126】
特に明記しない限り、燃料組成物中のこのような各添加剤の(活性物質)濃度は、好ましくは最大10000ppmw、より好ましくは0.1~1000ppmw、有利には0.1~300ppmw、例えば、0.1~150ppmwの範囲である。
【0127】
ディーゼル燃料組成物中の任意の曇り除去剤の(活性物質)濃度は、好ましくは0.1~20ppmw、より好ましくは1~15ppmw、更により好ましくは1~10ppmw、特に1~5ppmwの範囲である。存在する任意の点火改良剤の(活性物質)濃度は、好ましくは2600ppmw以下、より好ましくは2000ppmw以下、更により好ましくは300~1500ppmwである。ディーゼル燃料組成物中の任意の清浄剤の(活性物質)濃度は、好ましくは5~1500ppmw、より好ましくは10~750ppmw、最も好ましくは20~500ppmwの範囲である。
【0128】
ディーゼル燃料組成物の場合、例えば、燃料添加剤混合物は、典型的には、清浄剤を、場合により上記のような他の成分と共に、及びディーゼル燃料適合性希釈剤を含有し、これは鉱油、Shell companiesにより商標「SHELLSOL」で販売されているものなどの溶媒、エステルなどの極性溶媒、特にアルコール、例えばヘキサノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、イソトリデカノール、及びShell companiesにより商標「LINEVOL」で販売されているものなどのアルコール混合物、特にC7~9第一級アルコールの混合物であるLINEVOL 79アルコール、又は市販されているC12~14アルコール混合物であってもよい。
【0129】
ディーゼル燃料組成物中の添加剤の総含有量は、好適には0~10000ppmw、好ましくは5000ppmw未満であってよい。
【0130】
上記において、成分の量(濃度、体積%、ppmw、重量%)は、活性物質のものであり、すなわち、揮発性溶媒/希釈剤材料を除く。
【0131】
本発明の液体燃料組成物は、必須テトラアルキルエタン化合物及びニトロキシドラジカルを、内燃機関での使用に適したガソリンベース燃料と混合することによって製造することができる。必須燃料添加剤が混合されるベース燃料はガソリンであるため、製造される液体燃料組成物はガソリン組成物である。
【0132】
驚くべきことに、液体燃料組成物における本明細書に記載のテトラアルキルエタン化合物と、好ましくはニトロキシドラジカルとの組み合わせの使用は、液体ベース燃料によって供給される内燃機関と比較して、テトラアルキルエタン化合物及び好ましくはニトロキシドラジカルを含有する液体燃料組成物によって供給される内燃機関の出力の改善、加速の改善、燃焼持続時間の短縮、火炎速度の上昇、及び燃費の改善に関して利点を提供することが見出された。
【0133】
本発明は、以下の実施例から更に理解されるであろう。特に明記しない限り、実施例に開示される全ての量及び濃度は、完全に配合された燃料組成物の重量に基づく。
【0134】
実施例
これらの実験の目標は、ガソリン単気筒機関(GSCE)を使用して、燃焼増強特性の可能性を有する添加剤のセットをスクリーニングすることであった。燃焼促進は、基本的に以下の2つのモード:過早点火遅延(オクタン価上昇、高圧縮比でノックを低減するために重要)又は火炎速度向上剤(燃焼持続時間を短縮して出力を向上させる)で示すことができる。
【0135】
いくつかの完全に配合された燃料組成物を以下に提供する(実施例1~5)。
【0136】
全ての燃料組成物は、同じベース燃料を使用する。ベース燃料は、性能添加剤を含有しない北米メイングレード仕様ASTM D4814に適合するE10燃料(10%エタノール含有)である。
【0137】
TEMPO及び/又はジクメンを、以下の表1に示される処理率でベース燃料に添加した。表1はまた、各燃料配合物についてのRON及びMON値を示す。
【0138】
【0139】
試験条件
これらの実験に使用した機関は、ガソリン単気筒機関であった。この機関は、AVLによって製造され、EA888 2.0L Audi TFSI/VW TSI(Euro 6)に基づいた。単気筒ベンチ機関の詳細を以下の表2に示す。
【0140】
【0141】
機関試験条件を以下の表3に詳述する。
【0142】
【0143】
以下の試験プロトコルは、ベース燃料及び1日当たり1つの試験燃料(実施例1~5のうちの1つ)を用いて行った。
●機関を暖機し、ベース燃料にラインアウトする
●ベースラインスパーク掃引の実行:1300ML、HL、3000ML(ML=中負荷HL=高負荷)
●試験燃料に切り替えて30リットル流す
●試験:3つの異なる条件でのスパーク掃引(1300rpm、IMEP:11.5バール及び8バール、並びに3300rpm、IMEP:12.4バール)。
●終了。
【0144】
各試験燃料ブレンドを、2つの無作為化ループの各々において1回ずつ、2回スクリーニングした。
【0145】
P
max、燃焼持続時間、及び排気温度の測定を行い、結果を以下の表4、5、6、及び7に示す。表4は、1300HL、IGN=1(IGN=点火時間)における試験ブレンドとそのベース燃料対照との間のP
maxの平均%差を示す。
図1は、実施例1~5について表4に記載された実験データのグラフ表示である(実施例番号はx軸上にあり、Pmaxの平均%差はy軸上にある)。表5は、1300HL、IGN=1における試験ブレンドとそのベース燃料対照との間の燃焼持続時間の平均%差を示す。
図2は、実施例1~5について表5に示された実験データのグラフ表示である(実施例番号はx軸上にあり、燃焼持続時間の平均%差はy軸上にある)。
図3は、実施例3及びベース燃料について、点火タイミングの範囲にわたって燃焼が10%から90%まで進行するのに必要な時間(機関クランク角度)の比較を示す。AT10~90%値(質量分率燃焼)が低いほど、より速く燃焼する燃料(条件1300rpm、8.4IMEP)を意味する。表6は、試験ブレンドとそのベース燃料対照(1300HL、IGN=1)との間の排気温度及び排気温度の%差を示す。
図4は、実施例1~5について表6に示された実験データのグラフ表示である(実施例番号はx軸上にあり、排気温度の平均%差はy軸上にある)。表7は、1300HL、IGN=1における試験ブレンドとそのベース燃料対照との間の燃焼持続時間(AI50-90)の平均%差を示す。
図5は、実施例1~5について表5に示された実験データのグラフ表示である(実施例番号はx軸上にあり、燃焼持続時間の平均%差はy軸上にある)。
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
表7及び
図5から分かるように、燃焼の後半に要する平均時間(AI50-90)が短縮された。
【0151】
考察
本発明のガソリン燃料組成物におけるジクメン及びジクメン/TEMPOの組み合わせの使用は、機関試験において燃焼持続時間の減少及びPmaxの増加を提供することが示された。本発明の燃料組成物では排気温度の低下も観察され、これは燃費の改善を意味する。
【0152】
これらの結果の大きさは、特に、使用された非常に低レベルのジクメン/TEMPO添加剤濃度を考慮すると、とりわけ驚くべきことである。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料組成物であって、
(a)内燃機関での使用に適したベース燃料と、
(b)式(I)を有するテトラアルキルエタン化合物
【化1】
(式中、Arはアリール基を表し、各Xは独立して、水素原子、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐C
1~C
12アルキル基、(CH
2)
nOH、又は(CH
2)
nNH
2から選択され、nは1~9の範囲であり、ただし、各CX
3基中のX基の少なくとも1つは水素原子である)と、を含む、燃料組成物。
【請求項2】
(c)式(II)を有するニトロキシドラジカル
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、アルキル基又はヘテロ原子置換アルキル基から個々に選択され、R
5及びR
6は、炭素に共有結合することができる水素以外の任意の原子又は基である)を更に含む、請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項3】
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、メチル基、エチル基、又はプロピル基から個々に選択され、R
5及びR
6は、4個の炭素原子又は5個の炭素原子の環の一部を形成する、請求項1又は2に記載の燃料組成物。
【請求項4】
前記ニトロキシドラジカルは、式(III)を有し、
【化3】
式中、R
5、R
6、及びR
7は、-CR’R’-から個々に選択され、各R’は、水素、ヒドロキシド基、アルキル基、又はアルコキシ基から個々に選択される、請求項2又は3に記載の燃料組成物。
【請求項5】
ニトロキシドラジカルは、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルを含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の燃料組成物。
【請求項6】
Arは、非置換フェニル基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料組成物。
【請求項7】
各Xは独立して、水素原子、非置換、直鎖又は分岐C
1~C
6アルキル基から選択され、ただし、各CX
3基中のX基の少なくとも1つは水素原子である、請求項1~6のいずれか一項に記載の燃料組成物。
【請求項8】
前記テトラアルキルエタン化合物は、1,1’(1,1,2,2-テトラメチル-1,1-エタンジイル)ビス-ベンゼンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の燃料組成物。
【請求項9】
内燃機関の出力を改善する方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の燃料組成物を前記内燃機関に供給することを含む、方法。
【請求項10】
内燃機関の加速を改善する方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の燃料組成物を前記内燃機関に供給することを含む、方法。
【請求項11】
内燃機関における燃料組成物の燃焼持続時間を短縮する方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の液体燃料組成物を前記内燃機関に供給することを含む、方法。
【請求項12】
内燃機関における燃料組成物の火炎速度を上昇させる方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の液体燃料組成物を前記内燃機関に供給することを含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0152
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0152】
これらの結果の大きさは、特に、使用された非常に低レベルのジクメン/TEMPO添加剤濃度を考慮すると、とりわけ驚くべきことである。
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[項目1] 燃料組成物であって、
(a)内燃機関での使用に適したベース燃料と、
(b)式(I)を有するテトラアルキルエタン化合物
【化9-1】
(式中、Arはアリール基を表し、各Xは独立して、水素原子、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐C
1
~C
12
アルキル基、(CH
2
)
n
OH、又は(CH
2
)
n
NH
2
から選択され、nは1~9の範囲であり、ただし、各CX
3
基中のX基の少なくとも1つは水素原子である)と、を含む、燃料組成物。
[項目2] (c)式(II)を有するニトロキシドラジカル
【化9-2】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、及びR
4
は、アルキル基又はヘテロ原子置換アルキル基から個々に選択され、R
5
及びR
6
は、炭素に共有結合することができる水素以外の任意の原子又は基である)を更に含む、項目1に記載の燃料組成物。
[項目3] R
1
、R
2
、R
3
、及びR
4
は、メチル基、エチル基、又はプロピル基から個々に選択され、R
5
及びR
6
は、4個の炭素原子又は5個の炭素原子の環の一部を形成する、項目1又は2に記載の燃料組成物。
[項目4] 前記ニトロキシドラジカルは、式(III)を有し、
【化9-3】
式中、R
5
、R
6
、及びR
7
は、-CR’R’-から個々に選択され、各R’は、水素、ヒドロキシド基、アルキル基、又はアルコキシ基から個々に選択される、項目2又は3に記載の燃料組成物。
[項目5] 前記ニトロキシドラジカルは、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシフリーラジカルを含む、項目2~4のいずれか一項に記載の燃料組成物。
[項目6] 前記テトラアルキルエタン化合物のArは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、チエニル、又はアントラシルから選択される置換又は非置換芳香族基である、項目1~5のいずれか一項に記載の燃料組成物。
[項目7] Arは、非置換フェニル基である、項目1~6のいずれか一項に記載の燃料組成物。
[項目8] 各Xは独立して、水素原子、非置換、直鎖又は分岐C
1
~C
6
アルキル基から選択され、ただし、各CX
3
基中のX基の少なくとも1つは水素原子である、項目1~7のいずれか一項に記載の燃料組成物。
[項目9] 前記テトラアルキルエタン化合物は、1,1’(1,1,2,2-テトラメチル-1,1-エタンジイル)ビス-ベンゼンである、項目1~8のいずれか一項に記載の燃料組成物。
[項目10] 前記ニトロキシドラジカルは、前記燃料組成物の30ppm重量%~2重量%のレベルで燃料組成物中に存在する、項目2~9のいずれか一項に記載の燃料組成物。
[項目11] 前記テトラアルキルエタン化合物は、前記燃料組成物の30ppm~10重量%のレベルで燃料組成物中に存在する、項目1~10のいずれか一項に記載の燃料組成物。
[項目12] 前記ベース燃料は、ガソリンベース燃料である、項目1~11のいずれか一項に記載の燃料組成物。
[項目13] 前記ベース燃料は、前記総ベース燃料を基準として10体積%未満の芳香族を含む、項目1~12のいずれか一項に記載の燃料組成物。
[項目14] 前記ベース燃料が、前記総ベース燃料に基づいて、2体積%未満の9個以上の炭素原子を有する芳香族を含む、項目1~13のいずれか一項に記載の燃料組成物。
[項目15] 内燃機関の出力を改善する方法であって、項目1~14のいずれか一項に記載の燃料組成物を前記内燃機関に供給することを含む、方法。
[項目16] 内燃機関の加速を改善する方法であって、項目1~14のいずれか一項に記載の燃料組成物を前記内燃機関に供給することを含む、方法。
[項目17] 内燃機関における燃料組成物の燃焼持続時間を短縮する方法であって、項目1~14のいずれか一項に記載の液体燃料組成物を前記内燃機関に供給することを含む、方法。
[項目18] 内燃機関における燃料組成物の火炎速度を上昇させる方法であって、項目1~14のいずれか一項に記載の液体燃料組成物を前記内燃機関に供給することを含む、方法。
【国際調査報告】