(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】プリンヌクレオシド、それらの中間体、およびそれらの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 473/24 20060101AFI20240403BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20240403BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240403BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240403BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240403BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240403BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240403BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240403BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240403BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240403BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240403BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240403BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240403BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240403BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240403BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240403BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20240403BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240403BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20240403BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240403BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240403BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20240403BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240403BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240403BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C07D473/24 CSP
A61K31/52
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/18
A61P25/00
A61P25/04
A61P11/00
A61P9/00
A61P37/06
A61P37/08
A61P27/02
A61P27/06
A61P27/04
A61P3/10
A61P21/02
A61P27/16
A61P25/08
A61P25/06
A61P1/04
A61K45/00
A61P9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565902
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 US2022071971
(87)【国際公開番号】W WO2022232810
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518370345
【氏名又は名称】アストロサイト ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】508285606
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
【氏名又は名称原語表記】The United States of America,as represented by the Secretary,Department of Health and Human Services
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラビ, ラマ スレシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブソン, ケネス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ポー, ラッセル バーチ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA01
4C084ZA02
4C084ZA05
4C084ZA06
4C084ZA08
4C084ZA12
4C084ZA14
4C084ZA15
4C084ZA16
4C084ZA18
4C084ZA33
4C084ZA34
4C084ZA36
4C084ZA42
4C084ZA45
4C084ZA68
4C084ZA69
4C084ZB08
4C084ZB13
4C084ZB15
4C084ZC35
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA14
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA68
4C086ZA69
4C086ZB08
4C086ZB13
4C086ZB15
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、ある特定の傷害、障害および状態、例えば脳傷害、例えば脳卒中または外傷性脳傷害の処置のための、プリンヌクレオシドアナログ化合物およびその使用方法を提供する。本発明はさらに、そのような化合物を合成する方法、およびそのような化合物の合成において有用な中間体を提供する。ここで、本発明の化合物およびその組成物は、脳、中枢神経系(CNS)、または心血管系のある特定の傷害、疾患、または障害、例えば脳傷害、脳卒中、神経変性状態、心虚血、または嗜癖もしくは嗜癖性障害を処置する、予防する 改善する、またはそれからの回復を促進するのに有用であることが見出された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化41】
または薬学的に許容されるその塩を調製する方法であって、式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されているか、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
前記方法は、
(a)式Cの化合物
【化42】
を提供するステップであって、式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されているか、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2Aは、好適なアミノ保護基もしくはR
2であるか、またはR
2AおよびPG
1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2Aと一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成する、ステップと、
(b)前記式Cの化合物を、式Bの化合物
【化43】
であって、式中、PG
2、PG
3、およびPG
4のそれぞれは、独立に、好適なヒドロキシル保護基である、式Bの化合物とカップリングして、式Aの化合物
【化44】
であって、式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されているか、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2Aは、好適なアミノ保護基もしくはR
2であるか、またはR
2AおよびPG
1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2Aと一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
PG
2、PG
3、およびPG
4のそれぞれは、独立に、好適なヒドロキシル保護基である、
式Aの化合物を形成するステップと、
(c)前記式Aの化合物を脱保護して、前記式Iの化合物を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
PG
2およびPG
3が、それらが結合する酸素原子と一緒になって、環式ケタールを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PG
2およびPG
3が、それらが結合する酸素原子と一緒になって、アセトニドを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
PG
4が、それが結合する酸素原子と一緒になって、シリルエーテルまたはアリールアルキルエーテルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
PG
4が、トリチルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)の前記脱保護が、前記式Aの化合物を好適な酸で処理することによって達成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(d)式Iの化合物の塩を好適な塩基で処理して、式Iの遊離塩基化合物を形成するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)における前記カップリングが、好適なホスフィンおよび好適なアゾジカルボキシレート試薬の存在下で達成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式Cの化合物
【化45】
を調製する方法であって、式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2Aは、好適なアミノ保護基もしくはR
2であるか、またはR
2AおよびPG
1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル-、または-SHであり、
Xは、SまたはOであり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2Aと一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
前記方法は、
(a)式Eの化合物
【化46】
を提供するステップであって、式中、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
LG
1は、好適な脱離基である、ステップと、
(b)前記式Eの化合物をカップリングして、式Dの化合物
【化47】
を形成するステップであって、式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SまたはOであり、
nは、0、1、2、または3である、ステップと、
(c)前記式Dの化合物を保護して、前記式Cの化合物を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項10】
R
1が、C
1~8アルキル、-(C
1~2アルキレン)-フェニル、-(C
1~2アルキレン)-(C
3~5シクロアルキル)、またはC
3~8シクロアルキルであり、そのそれぞれが、R
3でn回置換されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
R
1が、C
1~8アルキルである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
R
2が、水素である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
Xが、Sである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
nが、0である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
R
2Aが、それが結合している-N(PG
1)-部分と一緒になって、酸に不安定なカルバメートである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
R
2Aが、BOCである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
R
2Aが、水素である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
PG
1が、それが結合している-N(R
2A)-部分と一緒になって、酸に不安定なカルバメートである、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
PG
1が、BOCである、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
式I-Aの化合物
【化48】
または薬学的に許容されるその塩であって、式中、
R
1は、(i)R
3で1、2、もしくは3回置換されているC
1~2アルキルであるか、または(ii)C
3~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-フェニル、-(C
1~4アルキレン)-(C
3~8シクロアルキル)、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、C
3~8シクロアルキル、フェニル、もしくは窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、
各R
3は、独立に、ハロゲン、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SまたはOであり、
nは、0、1、2、または3である、
化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項21】
R
1が、(i)R
3で1、2、もしくは3回置換されているC
1~2アルキルであるか、または(ii)C
3~8アルキル、-(C
1~2アルキレン)-フェニル、-(C
1~2アルキレン)-(C
3~5シクロアルキル)、もしくはC
3~8シクロアルキルであり、そのそれぞれが、R
3でn回置換されている、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
R
2が、水素である、請求項20または21に記載の化合物。
【請求項23】
各R
3が、独立に、ハロゲンである、請求項20~22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
nが、0である、請求項20~22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
Xが、Sである、請求項20~24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
表1のI-3~I-21から選択される化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項27】
式Aの化合物
【化49】
であって、式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されているか、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2Aは、好適なアミノ保護基もしくはR
2であるか、またはR
2AおよびPG
1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2Aと一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
PG
2、PG
3、およびPG
4のそれぞれは、独立に、好適なヒドロキシル保護基である、化合物。
【請求項28】
R
1が、C
1~8アルキルであるか、またはR
1が、ハロゲンであり、Xが、共有結合である、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
R
2Aが、水素である、請求項27または28に記載の化合物。
【請求項30】
R
2Aが、BOCである、請求項27または28に記載の化合物。
【請求項31】
Xが、Sである、請求項27~30のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
PG
1が、BOCである、請求項27~31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項33】
PG
2およびPG
3が、それらが結合する酸素原子と一緒になって、アセトニドを形成する、請求項27~32のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項34】
PG
4が、トリチルである、請求項27~33のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項35】
請求項20~34のいずれか一項に記載の化合物、および薬学的に許容される担体、佐剤、またはビヒクルを含む医薬組成物。
【請求項36】
外傷性脳傷害(TBI)、脳振盪、脳卒中、部分的なもしくは完全な脊髄離断、栄養失調、中毒性神経障害、脳髄膜症、遺伝的障害によって引き起こされる神経変性、加齢性神経変性、血管疾患、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性外傷性脳症(CTE)、心血管疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、移植片拒絶、移植片対宿主病、高眼圧症、緑内障、臭気過敏、嗅覚障害、2型糖尿病および/もしくは疼痛管理、呼吸器疾患、CNS機能の欠陥、学習障害、認知障害、耳の障害、メニエール病、内リンパ水腫、進行性難聴、浮動性めまい、回転性めまい、耳鳴、放射線がん治療と関連する付帯的脳損傷、片頭痛処置、高齢者の睡眠障害、てんかん、統合失調症、回復中のアルコール依存者が経験する症状、外科手術中の末梢神経系のニューロンもしくは神経への損傷、胃腸の状態、CNSによって媒介される疼痛、片頭痛、放射線がん治療と関連する付帯的脳損傷、うつ病、気分もしくは行動変化、認知症、迷走性挙動、自殺傾向、振戦、ハンチントン舞踏病、運動協調の喪失、聴覚消失、発語障害、ドライアイ、仮面様顔貌、注意欠陥、記憶喪失、認知的困難、回転性めまい、構音障害、嚥下障害、眼の異常、または見当識障害、または嗜癖から選択される傷害、疾患、または状態を処置する方法であって、
それを必要とする患者に、有効量の請求項20~26のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法。
【請求項37】
前記傷害、疾患、または状態が、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、または急性疼痛から選択されるCNSによって媒介される疼痛である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記化合物または薬学的に許容されるその塩が、前記患者に、組織プラスミノーゲン活性化因子、抗凝血剤、スタチン、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、ベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、または利尿薬と共に併用投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記傷害、疾患、または状態が、外傷性脳傷害(TBI)、脳卒中、神経変性状態、または心疾患もしくは心血管疾患から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記傷害、疾患、または状態が、脳振盪、爆風傷害、戦闘関連傷害、または頭部への軽度、中等度もしくは重度の衝撃から選択されるTBIである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記傷害、疾患、または状態が、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、くも膜下出血、脳血管痙攣、または一過性虚血性発作(TIA)から選択される脳卒中である、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記患者における神経保護または神経修復が、未処置患者と比較して増大する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記傷害、疾患、または状態が、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性外傷性脳症(CTE)、またはウイルス、アルコール中毒、腫瘍、毒素もしくは反復性脳傷害によって引き起こされた神経変性状態から選択される神経変性疾患である、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記傷害、疾患、または状態が、心虚血、心筋梗塞、心筋症、冠動脈疾患、不整脈、心筋炎、心膜炎、狭心症、高血圧性心疾患、心内膜炎、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、またはアテローム性動脈硬化症から選択される心疾患または心血管疾患である、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
TBIまたは脳卒中に罹患している、それを必要とする患者における神経保護または神経修復を増大させる方法であって、前記患者に、有効量の請求項20~26のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法。
【請求項46】
前記化合物または薬学的に許容されるその塩が、経口、静脈内、または非経口投与される、請求項36~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
(i)放射線によって引き起こされた脳損傷または放射線がん治療もしくは片頭痛処置と関連する付帯的脳損傷、
(ii)片頭痛、
(iii)脳傷害と関連する状態または神経変性状態、あるいは
(iv)自己免疫疾患もしくは状態、緑内障、耳の障害、進行性難聴、耳鳴、てんかん、疼痛管理、CNSによって媒介される疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、または急性疼痛
から選択される傷害、疾患、障害、または状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の請求項20~26のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法。
【請求項48】
前記化合物が、前記患者における神経保護または神経修復を、未処置患者と比較して増大させる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記脳傷害と関連する状態または神経変性状態が、てんかん、片頭痛、放射線がん治療と関連する付帯的脳損傷、うつ病、気分もしくは行動変化、認知症、迷走性挙動、自殺傾向、振戦、ハンチントン舞踏病、運動協調の喪失、聴覚消失、発語障害、ドライアイ、仮面様顔貌、注意欠陥、記憶喪失、認知的困難もしくは認知障害、CNS機能の欠陥、学習障害、回転性めまい、構音障害、嚥下障害、眼の異常、または見当識障害から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
心虚血または心筋梗塞に罹患している、それを必要とする患者における心臓保護または損傷した心臓組織の再生を増大させる方法であって、前記患者に、有効量の請求項20~26のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法。
【請求項51】
嗜癖、嗜癖性行動、行動嗜癖、脳内報酬系障害、または強迫性障害を処置する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の請求項20~26のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法。
【請求項52】
前記傷害、疾患、または状態が、片頭痛である、請求項36に記載の方法。
【請求項53】
前記傷害、疾患、または状態が、中枢性疼痛症候群、末梢神経障害、角膜神経障害性疼痛、脳卒中後疼痛、および多発性硬化症によって引き起こされた疼痛から選択される疼痛である、請求項36に記載の方法。
【請求項54】
式I-Bの化合物
【化50】
または薬学的に許容されるその塩であって、式中、
R
1は、ハロゲンであり、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、
Xは、共有結合である、
化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項55】
R
1が、FまたはClである、請求項54に記載の化合物。
【請求項56】
R
2が、C
1~4アルキルまたはC
3~5シクロアルキルである、請求項54または55に記載の化合物。
【請求項57】
請求項1に記載の方法に従って調製される、請求項54~56のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項58】
請求項54~57のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩、および担体、佐剤、またはビヒクルを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年4月28日出願の米国仮出願第63/180,872号の利益を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、脳、中枢神経系(CNS)、または心血管系のある特定の状態、例えば脳傷害、神経変性状態、および心虚血を処置する、改善する、またはそれからの回復を促進するための化合物、それらの調製のための方法、それらの調製のための中間体化合物、およびそのような化合物の使用方法に関する。
【0003】
政府支援の陳述
本発明は、米国国立衛生研究所のNIDDKのIntramural Research Programから助成金番号ZIADK31116およびZIADK31117の下で政府支援を受けて成された。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
脳傷害は、苦痛を伴う一般的な医学的状態であり、世界的に病的状態および死亡の主要な原因のうちの1つである。ニューロンは修復能に限界があるので、脳は特に傷害を受けやすい。個体の出生時に、脳は既に人生で有する本質的にすべてのニューロンを有している。ニューロンは、体内の他の細胞とは異なり、出生直後に再生が停止する。これらの細胞は、傷害を受けたかまたは死滅したとしても置き換えられず、多くの場合、ヒトの認知能力および感覚運動能力を無能力にし、ほとんど不可逆的な悪化をもたらす。神経細胞の死滅および損傷をもたらす状態は、虚血性エピソード(例えば脳卒中)および外傷から変性障害(例えば、アルツハイマー病)にまで及ぶ。
【0005】
中枢神経系(CNS)への傷害は、世界中の死亡および能力障害の実質的な原因である。例えば、CDCによれば、年間およそ170万人が外傷性脳傷害(TBI)を被っており、医療費および生産性損失の観点で、1年当たり600億ドルを超えるコストが米国経済にかかっている(Finkelstein, E; Corso, P; Miller, T, The Incidence and Economic Burden of Injuries in the United States, Oxford University Press: New York, 2006)。加えて、脳卒中は、米国で3番目の主要死因であり、年間の推定発生数が795,000症例で、能力障害の主要原因となっており、1年当たり340億ドルを超えるコストが米国経済にかかっている(NINDS, 2014; stroke.nih.govおよびMozaffarian D, Benjamin EJ, Go AS, et al. ''Heart disease and stroke statistics-2015 update: a report from the American Heart Association,'' Circulation. 2015 ;e29-322)。
【0006】
急性の状況では、24時間以内に患者を処置し、それによって損傷の程度を制限することができる機会がある。虚血性または出血性脳卒中の直後、脳内の傷害部位は、典型的に、不可逆的に損傷を受けた組織のコアを含有しており、次に、ペナンブラと呼ばれる、生存可能ではあるが危険な状態にある組織の領域も含有している。この期間中に、脳細胞への酸素およびグルコースの供給が不十分な場合、ペナンブラへのさらなる二次傷害が生じる。酸素およびグルコースの欠乏により、細胞ミトコンドリアによるエネルギー生成が減少する。このエネルギー枯渇の即時的な効果は、イオンポンプの不全であり、これは、細胞外カリウム(K+)イオンの上昇によって脳組織内に再発性の伝播性脱分極の波をもたらす。同時に、ナトリウム(Na+)イオンが細胞に流入し、続いて塩化物(Cl-)イオンが流入すると、浸透圧の上昇に起因して細胞腫脹が起こり、近傍のニューロンおよびそれらの突起に圧力が加えられ、最終的には溶解(細胞破裂)および炎症反応に至る。一般に、イオンホメオスタシスのこの破壊は、興奮毒性、細胞腫脹、および細胞死をもたらし、それが隣接組織に損傷を及ぼし、二次的機序によって病変を拡大する。ストレスを受けた脳細胞を保護するために、最初の24時間の間に有効な処置が必要である。脳卒中における脳損傷の拡大は、他の形態の脳傷害、例えば外傷および脳振盪において観察されるものに類似している。
【0007】
急性処置以外では、有効な星状膠細胞機能が、脳傷害後24~96時間で、神経変性、例えばアルツハイマー病を有している患者において、または最も一般的には高齢個体において、数カ月~数年にわたって広範な神経修復に非常に重要な役割を果たす。脳細胞が再生できないことにより、任意の機能喪失を回復させる試みにおいて、残りの無傷の脳組織を再編成することが必要となる。神経を再編成するこの潜在的可能性は、より高齢の個体において低くなる。
【0008】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、心臓保護効果を媒介することが示唆されている。したがって、これらの受容体のモジュレーションを介する類似の作用機序によって、心臓および心血管の状態を処置する潜在的可能性がある。
脳傷害、CNS傷害、心疾患および心血管疾患、ならびに関連状態のためのより有効な処置、ならびに神経変性状態、例えばアルツハイマー病を有している患者の神経修復の促進に対する、満たされていない差し迫った切実な医学的必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Finkelstein, E; Corso, P; Miller, T, The Incidence and Economic Burden of Injuries in the United States, Oxford University Press: New York, 2006
【非特許文献2】Mozaffarian D, Benjamin EJ, Go AS, et al. ''Heart disease and stroke statistics-2015 update: a report from the American Heart Association,'' Circulation. 2015 ;e29-322
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
ここで、本発明の化合物およびその組成物は、脳、中枢神経系(CNS)、または心血管系のある特定の傷害、疾患、または障害、例えば脳傷害、脳卒中、神経変性状態、心虚血、または嗜癖もしくは嗜癖性障害を処置する、予防する 改善する、またはそれからの回復を促進するのに有用であることが見出された。そのような化合物は、式I
【化1】
または薬学的に許容されるその塩によって表され、ここで、各変数は、本明細書で定義される通りである。
【0011】
一部の実施形態では、本発明は、式Iの化合物
【化2】
または薬学的に許容されるその塩を調製する方法を提供し、ここで、各変数は、本明細書で定義される通りである。
【0012】
別の態様では、本発明は、式Iの化合物を調製するのに有用な中間体を提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明の化合物、および薬学的に許容されるその組成物は、本明細書に記載されるものを含む様々な疾患、障害または状態を処置するのに有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
発明のある特定の態様の概要
ここで、本発明の化合物およびその組成物は、脳、中枢神経系(CNS)、または心血管系のある特定の傷害、疾患、または障害、例えば脳傷害、脳卒中、神経変性状態、心虚血、または嗜癖もしくは嗜癖性障害を処置する、予防する、改善する、またはそれからの回復を促進するのに有用であることが見出された。そのような化合物は、式I
【化3】
または薬学的に許容されるその塩によって表される[式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3である]。
【0016】
そのそれぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,789,131号および第10,765,693号は、治療に有益なある特定の化合物を記載している。そのような化合物は、化合物I-1
【化4】
または薬学的に許容されるその塩を含む。
【0017】
化合物I-1は、米国特許第9,789,131号においてMRS4322と指定されており、化合物I-1の合成は、米国特許第9,789,131号の実施例9に詳述されている。化合物I-1は、米国特許第10,765,693号において化合物Aと指定されており、その合成およびその固体形態の調製は、その実施例Aおよびその後の実施例に詳述されている。
【0018】
化合物I-1およびさらなる化合物、例えば本明細書で記載される式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩を合成する改善された方法を提供することが望ましいはずである。したがって、本発明は、そのような化合物およびそれらの薬学的に許容される塩を合成する方法を提供する。
【0019】
一部の実施形態では、本発明は、式Iの化合物および関連化合物を調製する改善された方法を提供し、そのような方法は、化合物を、より高い収率、より少ないステップ、より穏やかな条件、および/またはより高い普遍性(所望の化合物の構造的変動がより高い)で生成する。一部の実施形態では、本発明は、本明細書でさらに記載される通り、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を調製する方法を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、式Iの化合物を調製するのに有用な中間体を提供する。そのような中間体には、以下に詳述されるものが含まれる。
【0021】
別の態様では、本発明は、本明細書で記載される合成方法に従って調製されることを特徴とする式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩を提供する。別の態様では、本発明は、本明細書で記載される合成方法に従って調製されることを特徴とする式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を提供する。
【0022】
本発明の化合物、ならびに薬学的に許容されるその塩および医薬組成物は、本明細書に記載されるものを含む様々な傷害、疾患、および障害を処置する、予防する、改善する、またはそれからの回復を促進するのに有用である。
【0023】
化合物および定義
本発明の化合物は、本明細書で一般に記載される化合物を含み、本明細書で開示されるクラス、サブクラス、および種によってさらに説明される。本明細書で使用される場合、別段指定されない限り、以下の定義が適用されるものとする。本発明の目的では、化学元素は、Elements, CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 75th Edの周期表に従って特定される。加えて、有機化学の一般原則は、"Organic Chemistry", Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 1999および"March's Advanced Organic Chemistry", 5th Ed., Ed.: Smith, M.B. and March, J., John Wiley & Sons, New York: 2001に記載されており、そのそれぞれの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、本明細書で使用される場合、完全に飽和しているか、または1つもしくは複数の不飽和単位を含有している、直鎖(すなわち、非分岐)または分岐の置換または非置換の炭化水素鎖、あるいは完全に飽和しているか、または1つもしくは複数の不飽和単位を含有しているが、芳香族ではなく(本明細書では「炭素環」または「脂環式」とも呼ばれる)、分子の残りに対して単一の結合点を有している、単環式炭化水素または二環式炭化水素を意味する。別段特定されない限り、脂肪族基は、1~6個の脂肪族炭素原子を含有する。一部の実施形態では、脂肪族基は、1~5個の脂肪族炭素原子を含有する。他の実施形態では、脂肪族基は、1~4個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態では、脂肪族基は、1~3個の脂肪族炭素原子を含有する、およびさらなる他の実施形態では、脂肪族基は、1~2個の脂肪族炭素原子を含有する。一部の実施形態では、「脂環式」(または「炭素環」)は、完全に飽和しているか、または1つもしくは複数の不飽和単位を含有しているが、芳香族ではなく、分子の残りに対して単一の結合点を有している、単環式C3~C6炭化水素を指す。好適な脂肪族基には、直鎖または分岐の置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル基およびそのハイブリッド、例えば(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルが含まれるが、それらに限定されない。
【0025】
本明細書で使用される場合、「二環式環」または「二環式環系」という用語は、飽和しているか、または1つもしくは複数の不飽和単位を有しており、環系の2つの環の間に1つまたは複数の原子を共有している、任意の二環式環系、すなわち炭素環式または複素環式を指す。したがって、その用語は、任意の許容できる環縮合、例えばオルト縮合またはスピロ環式を含む。本明細書で使用される場合、「ヘテロ二環式」という用語は、1つまたは複数のヘテロ原子が、二環(bicycle)のうちの一方または両方の環に存在していることを必要とする、「二環式」のサブセットである。そのようなヘテロ原子は、環の結合点に存在することができ、必要に応じて置換されており、窒素(N-オキシドを含む)、酸素、硫黄(酸化形態、例えばスルホンおよびスルホネートを含む)、リン(酸化形態、例えばホスフェートを含む)、ホウ素等から選択され得る。一部の実施形態では、二環式基は、7~12環員、および窒素、酸素または硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する。本明細書で使用される場合、「架橋二環式」という用語は、少なくとも1つの架橋を有する、飽和または部分的に不飽和の任意の二環式環系、すなわち炭素環式または複素環式を指す。IUPACによって定義されている通り、「架橋」は、2つの橋頭を接続する複数の原子の非分岐鎖、または1つの原子、または原子価結合であり、ここで「橋頭」は、3つまたはそれよりも多くの骨格原子(水素を除く)に結合している、その環系の任意の骨格原子である。一部の実施形態では、架橋二環式基は、7~12環員、および窒素、酸素または硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有する。そのような架橋二環式基は、当技術分野で周知であり、それには、各基が任意の置換可能な炭素原子または窒素原子において分子の残りに結合している下記の基が含まれる。別段特定されない限り、架橋二環式基は、脂肪族基について記載されている通り、1つまたは複数の置換基で必要に応じて置換される。加えてまたは代替として、架橋二環式基の任意の置換可能な窒素は、必要に応じて置換される。例示的な二環式環として、
【化5】
が挙げられる。例示的な架橋二環式として、
【化6】
が挙げられる。
【0026】
「低級アルキル」という用語は、C1~4直鎖または分岐アルキル基を指す。例示的な低級アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、およびtert-ブチルである。
【0027】
「低級ハロアルキル」という用語は、1つまたは複数のハロゲン原子で置換されているC1~4直鎖または分岐アルキル基を指す。
【0028】
「ヘテロ原子」という用語は、酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素のうち1つまたは複数(窒素、硫黄、リンもしくはケイ素の任意の酸化形態;任意の塩基性窒素の四級化形態;または複素環式環の置換可能な窒素、例えばN(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルにおけるような)、NH(ピロリジニルにおけるような)もしくはNR+(N置換ピロリジニルにおけるような)を含む)を意味する。
【0029】
「不飽和」という用語は、本明細書で使用される場合、ある部分が1つまたは複数の不飽和単位を有していることを意味する。
【0030】
「アルキレン」という用語は、二価のアルキル基を指す。「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基、すなわち-(CH2)n-であり、式中nは、正の整数、好ましくは1~6、1~4、1~3、1~2、または2~3である。「置換されている」アルキレン鎖は、1つまたは複数のメチレン水素原子が置換基で置き換えられているポリメチレン基である。好適な置換基には、置換脂肪族基について以下に記載されるものが含まれる。
【0031】
「アルケニレン」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有している二価のアルケニル基を指す。別段特定されない限り、二重結合は、シスまたはトランスであり得る。一部の実施形態では、アルケニレン基は、単一の炭素-炭素二重結合を有している。一部の実施形態では、二重結合は、シスである。一部の実施形態では、二重結合は、トランスである。置換アルケニレン鎖は、1つまたは複数の水素原子が置換基で置き換えられている、少なくとも1つの二重結合を含有しているポリメチレン基である。好適な置換基には、置換脂肪族基について以下に記載されるものが含まれる。
【0032】
「アルキニレン」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有している二価のアルキニル基を指す。炭素-炭素三重結合は、アルキニレン基の内部または末端位置に、すなわち鎖または炭素原子のいずれかの端部またはその内部の2個の炭素原子の間に位置することができる。置換アルキニレン鎖は、1つまたは複数の水素原子が置換基で置き換えられている、少なくとも1つの三重結合を含有しているポリメチレン基である。好適な置換基には、置換脂肪族基について以下に記載されるものが含まれる。一部の実施形態では、三重結合は、末端位置にあり、アルキニルの水素は、置換基によって必要に応じて置き換えられている。
【0033】
「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0034】
単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」もしくは「アリールオキシアルキル」における場合のように、より大きい部分の一部として使用される「アリール」という用語は、合計5~14環員を有する単環式または二環式環系であって、この系における少なくとも1つの環が芳香族であり、この系における各環が、3~7環員を含有している、単環式または二環式環系を指す。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と交換可能に使用され得る。本発明のある特定の実施形態では、「アリール」は、1つまたは複数の置換基を担持し得る芳香族環系を指し、それには、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシル等が含まれるが、それらに限定されない。また、「アリール」という用語の範囲には、本明細書で使用される場合、芳香族環が1つまたは複数の非芳香族環に縮合している基、例えばインダニル、フタルイミジル、ナフチミジル(naphthimidyl)、フェナントリジニル、またはテトラヒドロナフチル等が含まれる。
【0035】
単独で使用される「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ-(heteroar-)」という用語、または、より大きい部分の一部として使用される「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ-(heteroar-)」という用語、例えば「ヘテロアラルキル」もしくは「ヘテロアラルコキシ」は、5~10個の環原子、好ましくは5、6、または9個の環原子を有しており、環式配列に共有されている6、10、または14個のπ電子を有しており、炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を有している基を指す。「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素、または硫黄を指し、窒素または硫黄の任意の酸化形態、および塩基性窒素の任意の四級化形態を含む。ヘテロアリール基には、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、およびプテリジニルが含まれるが、それらに限定されない。「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ-」という用語はまた、本明細書で使用される場合、芳香族複素環が、1つまたは複数のアリール、脂環式、またはヘテロシクリル環に縮合しており、その結合ラジカルまたは結合点が芳香族複素環上にある基を含む。非限定的な例として、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、およびピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環式または二環式であり得る。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」、または「複素芳香族」という用語と交換可能に使用することができ、それら用語はいずれも、必要に応じて置換される環を含んでいる。「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールによって置換されているアルキル基を指し、ここでアルキルおよびヘテロアリール部分は、独立に、必要に応じて置換される。
【0036】
本明細書で使用される場合、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環式ラジカル」および「複素環式環」という用語は、交換可能に使用され、飽和しているかまたは部分的に不飽和であり、炭素原子に加えて1つまたは複数の、好ましくは1~4個の上記に定義されるヘテロ原子を有している、安定な5~7員の単環式または7~10員の二環式複素環式部分を指す。複素環の環原子に言及して使用される場合、「窒素」という用語は、置換された窒素を含む。例として、酸素、硫黄または窒素から選択される0~3個のヘテロ原子を有している飽和または部分的に不飽和の環において、窒素は、N(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルにおけるような)、NH(ピロリジニルにおけるような)、または+NR(N置換ピロリジニルにおけるような)であり得る。
【0037】
複素環式環は、安定な構造をもたらす任意のへテロ原子または炭素原子におけるそのペンダント基と結合することができ、その環原子のいずれも、必要に応じて置換され得る。そのような飽和または部分的に不飽和の複素環式ラジカルの例として、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニル、およびキヌクリジニルが挙げられるが、それらに限定されない。「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環式基」、「複素環式部分」および「複素環式ラジカル」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、それには、ヘテロシクリル環が、1つまたは複数のアリール、ヘテロアリール、または脂環式環に縮合している基、例えばインドリニル、3H-インドリル、クロマニル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロキノリニルも含まれる。ヘテロシクリル基は、単環式または二環式であり得る。「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、ヘテロシクリルによって置換されているアルキル基を指し、ここでアルキルおよびヘテロシクリル部分は、独立に、必要に応じて置換される。
【0038】
本明細書で使用される場合、「部分的に不飽和の」という用語は、少なくとも1つの二重結合または三重結合を含んでいる環部分を指す。「部分的に不飽和の」という用語は、複数の不飽和部位を有している環を包含することを意図されるが、本明細書で定義されるアリールまたはヘテロアリール部分を含むことは意図されない。
【0039】
本明細書に記載されている通り、本発明の化合物は、「必要に応じて置換される」部分を含有し得る。一般に、「必要に応じて」という用語が先行しているか否かに関わらず、「置換されている」という用語は、指定部分の1つまたは複数の水素が、好適な置換基で置き換えられていることを意味する。別段指定されない限り、「必要に応じて置換される」基は、その基の置換可能な各位置において好適な置換基を有していてよく、任意の所与の構造における2つ以上の位置が、特定の基から選択される2つ以上の置換基で置換され得る場合、置換基は、すべての位置において同じであっても異なっていてもよい。本発明によって想定される置換基の組合せは、好ましくは、安定なまたは化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。「安定な」という用語は、本明細書で使用される場合、それらの生成、検出、ならびにある特定の実施形態ではそれらの回収、精製、および本明細書で開示される目的の1つまたは複数のための使用を可能にする条件に供した場合、実質的に変化しない化合物を指す。
【0040】
置換可能な炭素上の各必要に応じた置換基は、ハロゲン、-(CH2)0~4R°;-(CH2)0~4OR°;-O(CH2)0~4R°;-O-(CH2)0~4C(O)OR°;-(CH2)0~4CH(OR°)2;-(CH2)0~4SR°;-(CH2)0~4Ph(R°で置換され得る);-(CH2)0~4O(CH2)0~1Ph(R°で置換され得る);-CH=CHPh(R°で置換され得る);-(CH2)0~4O(CH2)0~1-ピリジル(R°で置換され得る);-NO2;-CN;-N3;-(CH2)0~4N(R°)2;-(CH2)0~4N(R°)C(O)R°;-N(R°)C(S)R°;-(CH2)0~4N(R°)C(O)NR°2;-N(R°)C(S)NR°2;-(CH2)0~4N(R°)C(O)OR°;-N(R°)N(R°)C(O)R°;-N(R°)N(R°)C(O)NR°2;-N(R°)N(R°)C(O)OR°;-(CH2)0~4C(O)R°;-C(S)R°;-(CH2)0~4C(O)OR°;-(CH2)0~4C(O)SR°;-(CH2)0~4C(O)OSiR°3;-(CH2)0~4OC(O)R°;-OC(O)(CH2)0~4SR-、SC(S)SR°;-(CH2)0~4SC(O)R°;-(CH2)0~4C(O)NR°2;-C(S)NR°2;-C(S)SR°;-SC(S)SR°、-(CH2)0~4OC(O)NR°2;-C(O)N(OR°)R°;-C(O)C(O)R°;-C(O)CH2C(O)R°;-C(NOR°)R°;-(CH2)0~4SSR°;-(CH2)0~4S(O)2R°;-(CH2)0~4S(O)2OR°;-(CH2)0~4OS(O)2R°;-S(O)2NR°2;-(CH2)0~4S(O)R°;-N(R°)S(O)2NR°2;-N(R°)S(O)2R°;-N(OR°)R°;-C(NH)NR°2;-P(O)2R°;-P(O)R°2;-OP(O)R°2;-OP(O)(OR°)2;SiR°3;-(C1~4直鎖もしくは分岐アルキレン)O-N(R°)2;または-(C1~4直鎖または分岐アルキレン)C(O)O-N(R°)2から独立に選択される一価の置換基である。
【0041】
各R°は、独立に、水素、C1~6脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph、-CH2-(5~6員のヘテロアリール環)、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有している5~6員の飽和の、部分的に不飽和のもしくはアリール環であり、あるいは上記の定義にも関わらず、R°の2つの独立な出現は、それらの介在する原子と一緒になって、窒素、酸素または硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有している3~12員の飽和の、部分的に不飽和のまたはアリール単環式または二環式環(=Oおよび=Sから選択される、R°の飽和炭素原子上の二価の置換基によって置換され得る)を形成するか、あるいは各R°は、ハロゲン、-(CH2)0~2R●、-(ハロR●)、-(CH2)0~2OH、-(CH2)0~2OR●、-(CH2)0~2CH(OR●)2;-O(ハロR●)、-CN、-N3、-(CH2)0~2C(O)R●、-(CH2)0~2C(O)OH、-(CH2)0~2C(O)OR●、-(CH2)0~2SR●、-(CH2)0~2SH、-(CH2)0~2NH2、-(CH2)0~2NHR●、-(CH2)0~2NR●
2、-NO2、-SiR●
3、-OSiR●
3、-C(O)SR●、-(C1~4直鎖もしくは分岐アルキレン)C(O)OR●、または-SSR●から独立に選択される一価の置換基で必要に応じて置換される。
【0042】
各R●は、独立に、C1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有している5~6員の飽和の、部分的に不飽和のもしくはアリール環から選択され、ここで各R●は、非置換であるか、またはハロが先行している場合には1つもしくは複数のハロゲンでのみ置換されており、または飽和炭素上の必要に応じた置換基は、=O、=S、=NNR*
2、=NNHC(O)R*、=NNHC(O)OR*、=NNHS(O)2R*、=NR*、=NOR*、-O(C(R*
2))2~3O-、もしくは-S(C(R*
2))2~3S-から独立に選択される二価の置換基であり、または「必要に応じて置換される」基の隣接している置換可能な炭素に結合している二価の置換基は、-O(CR*
2)2~3O-であり、ここでR*のそれぞれ独立な出現は、水素、C1~6脂肪族、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有している非置換の5~6員の飽和の、部分的に不飽和のもしくはアリール環から選択される。
【0043】
R*がC1~6脂肪族である場合、R*は、ハロゲン、-R●、-(ハロR●)、-OH、-OR●、-O(ハロR●)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR●、-NH2、-NHR●、-NR●
2、または-NO2で必要に応じて置換されており、ここで各R●は、独立に、C1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有している5~6員の飽和の、部分的に不飽和のもしくはアリール環から選択され、各R●は、非置換であるか、またはハロが先行している場合には1つもしくは複数のハロゲンでのみ置換されている。
【0044】
置換可能な窒素上の必要に応じた置換基は、独立に、-R†、-NR†
2、-C(O)R†、-C(O)OR†、-C(O)C(O)R†、-C(O)CH2C(O)R†、-S(O)2R†、-S(O)2NR†
2、-C(S)NR†
2、-C(NH)NR†
2、または-N(R†)S(O)2R†であり、ここで各R†は、独立に、水素、C1~6脂肪族、非置換-OPh、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有している非置換の5~6員の飽和、部分的に不飽和のもしくはアリール環であり、あるいはR†の2つの独立な出現は、それらの介在する原子(複数可)と一緒になって、窒素、酸素または硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有している非置換の3~12員の飽和、部分的に不飽和のまたはアリール単環式または二環式環を形成し、ここでR†がC1~6脂肪族である場合、R†は、ハロゲン、-R●、-(ハロR●)、-OH、-OR●、-O(ハロR●)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR●、-NH2、-NHR●、-NR●
2、または-NO2で必要に応じて置換されており、各R●は、独立に、C1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph、または窒素、酸素もしくは硫黄から独立に選択される0~4個のヘテロ原子を有している5~6員の飽和の、部分的に不飽和のもしくはアリール環から選択され、各R●は、非置換であるか、またはハロが先行している場合には1つもしくは複数のハロゲンでのみ置換されている。
【0045】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答等なしにヒトおよび下等動物の組織と接触させて使用するのに適しており、合理的な損益比に見合う塩を指す。薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知である。例えば、S. M. Bergeらは、参照により本明細書に組み込まれるJ. Pharmaceutical Sciences, 1977, 66, 1-19において、薬学的に許容される塩を詳述している。本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、好適な無機酸および有機酸ならびに無機塩基および有機塩基から誘導された塩が含まれる。薬学的に許容される非毒性の酸付加塩の例は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸、または有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸を用いて、あるいは当技術分野において使用される他の方法、例えばイオン交換を使用することによって形成されたアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩(hydroiodide)、2-ヒドロキシル-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が含まれる。
【0046】
適切な塩基から誘導される塩には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN+(C1~4アルキル)4塩が含まれる。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等が含まれる。さらなる薬学的に許容される塩には、適切な場合、対イオン、例えばハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、低級アルキルスルホン酸イオンおよびアリールスルホン酸イオンを使用して形成された、非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミンカチオンが含まれる。
【0047】
別段提示されない限り、本明細書で図示される構造は、その構造のすべての異性体(例えば、鏡像異性、ジアステレオマーおよび幾何学的(または立体配座的))形態、例えば、各不斉中心についてのRおよびS立体配置、ZおよびE二重結合異性体、ならびにZおよびE立体配座異性体を含むことも意味する。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学的異性体、ならびに鏡像異性、ジアステレオマーおよび幾何学的(または立体配座的)混合物は、本発明の範囲内にある。別段提示されない限り、本発明の化合物のすべての互変異性形態は、本発明の範囲内にある。加えて、別段提示されない限り、本明細書で図示される構造は、1つまたは複数の同位体が濃縮された原子が存在する点だけが異なる化合物を含むことも意味する。例えば、水素が重水素もしくは三重水素で置き換えられているもの、または炭素が13C-もしくは14C-濃縮炭素で置き換えられているものを含む、本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内にある。そのような化合物は、例えば、分析ツール、生物学的アッセイにおけるプローブ、または本発明による治療剤として有用である。
【0048】
例示的な実施形態の説明
一態様では、本発明は、式Iの化合物
【化7】
または薬学的に許容されるその塩[式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3である]
を提供する。
【0049】
上記の式Iにおける変数の定義は、複数の化学基を包含する。本出願は、例えば、(i)変数の定義が、上記の化学基から選択される単一化学基である実施形態、(ii)変数の定義が、上記のものから選択される化学基の2つまたはそれより多くの集まりである実施形態、および(iii)化合物が、(i)または(ii)によって定義される変数の組合せによって定義される実施形態を企図する。
【0050】
ある特定の実施形態では、化合物は、式Iの化合物である。
【0051】
上記で概して定義されている通り、R1は、C1~8アルキル、-(C1~4アルキレン)-Ar、-(C1~4アルキレン)-Cy、C2~8アルケニル、-(C2~4アルケニレン)-Ar、-(C2~4アルケニレン)-Cy、C2~8アルキニル、-(C2~4アルキニレン)-Ar、-(C2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R3でn回置換されているか、またはR1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンである。
【0052】
一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC1~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されている-(C1~4アルキレン)-Arである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されている-(C1~4アルキレン)-Cyである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC2~8アルケニルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されている-(C2~4アルケニレン)-Arである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されている-(C2~4アルケニレン)-Cyである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC2~8アルキニルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されている-(C2~4アルキニレン)-Arである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されている-(C2~4アルキニレン)-Cyである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているフェニルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているCyである。一部の実施形態では、R1は、窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、前記環は、R3でn回置換されている。一部の実施形態では、Xは、共有結合であり、R1は、ハロゲンである。
【0053】
一部の実施形態では、R1は、C1~8アルキル、-(C1~4アルキレン)-フェニル、-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、C3~8シクロアルキル、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。
【0054】
一部の実施形態では、R1は、C1~8アルキル、-(C1~4アルキレン)-フェニル、-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)、C2~8アルケニル、またはC2~8アルキニルであり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。一部の実施形態では、R1は、C1~8アルキル、-(C1~2アルキレン)-フェニル、または-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)であり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。一部の実施形態では、R1は、C1~8アルキル、-(C1~2アルキレン)-フェニル、または-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)である。一部の実施形態では、R1は、-(C1~2アルキレン)-フェニルまたは-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)である。
【0055】
一部の実施形態では、R1は、C1~8アルキル、-(C1~2アルキレン)-フェニル、-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)、またはC3~8シクロアルキルであり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。
【0056】
一部の実施形態では、R1は、C3~8シクロアルキル、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。
【0057】
一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC1~6アルキルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC3~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC3~6アルキルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC3~4アルキルである。一部の実施形態では、R1は、(i)R3で1、2、もしくは3回置換されているC1~2アルキルであるか、または(ii)R3でn回置換されているC3~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、R3で1、2、または3回置換されているC1~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されている-(C1~4アルキレン)-フェニルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されている-(C1~2アルキレン)-フェニルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されている-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)である。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されている-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)である。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC3~8シクロアルキルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC3~6シクロアルキルである。
【0058】
一部の実施形態では、R1は、C1~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、C1~6アルキルである。一部の実施形態では、R1は、C1~4アルキルである。一部の実施形態では、R1は、メチルまたはエチルである。一部の実施形態では、R1は、メチルである。一部の実施形態では、R1は、エチルである。一部の実施形態では、R1は、C3~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、C3~6アルキルである。一部の実施形態では、R1は、C3~4アルキルである。一部の実施形態では、R1は、-(C1~4アルキレン)-フェニルである。一部の実施形態では、R1は、-(C1~2アルキレン)-フェニルである。一部の実施形態では、R1は、-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)である。一部の実施形態では、R1は、-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)である。一部の実施形態では、R1は、C2~8アルケニルである。一部の実施形態では、R1は、C2~8アルキニルである。一部の実施形態では、R1は、C3~8シクロアルキルである。一部の実施形態では、R1は、C3~6シクロアルキルである。一部の実施形態では、R1は、フェニルである。一部の実施形態では、R1は、窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環である。
【0059】
一部の実施形態では、R1は、(i)R3で1、2、もしくは3回置換されているC1~2アルキルであるか、または(ii)C3~8アルキル、-(C1~4アルキレン)-フェニル、-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、C3~8シクロアルキル、フェニル、もしくは窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。一部の実施形態では、R1は、(i)R3で1、2、もしくは3回置換されているC1~8アルキルであるか、または(ii)-(C1~4アルキレン)-フェニル、-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、C3~8シクロアルキル、フェニル、もしくは窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。一部の実施形態では、R1は、(i)R3で1、2、もしくは3回置換されているC1~2アルキルであるか、または(ii)C3~8アルキル、-(C1~2アルキレン)-フェニル、-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)、もしくはC3~8シクロアルキルであり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。一部の実施形態では、R1は、C3~8アルキル、-(C1~4アルキレン)-フェニル、-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、C3~8シクロアルキル、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。一部の実施形態では、R1は、-(C1~4アルキレン)-フェニル、-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、C3~8シクロアルキル、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。
【0060】
一部の実施形態では、Xは、共有結合であり、R1は、FまたはClから選択されるハロゲンである。一部の実施形態では、R1は、Fである。一部の実施形態では、R1は、Clである。
【0061】
一部の実施形態では、R1は、以下の表1に図示されているものから選択される。
【0062】
上記で概して定義されている通り、Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環である。
【0063】
一部の実施形態では、Arは、フェニルである。一部の実施形態では、Arは、窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環である。
【0064】
一部の実施形態では、Arは、以下の表1に図示されているものから選択される。
【0065】
上記で概して定義されている通り、Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環である。
【0066】
一部の実施形態では、Cyは、3~8員の飽和または部分的に不飽和の単環式炭素環式環である。一部の実施形態では、Cyは、3~8員の飽和単環式炭素環式環である。一部の実施形態では、Cyは、3~6員の飽和単環式炭素環式環である。一部の実施形態では、Cyは、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環である。一部の実施形態では、Cyは、窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1または2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和または部分的に不飽和の単環式複素環式環である。
【0067】
一部の実施形態では、Cyは、以下の表1に図示されているものから選択される。
【0068】
上記で概して定義されている通り、R2は、水素、C1~4アルキル、またはC3~5シクロアルキルであり、前記C1~4アルキルおよびC3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換される。
【0069】
一部の実施形態では、R2は、C1~4アルキルまたはC3~5シクロアルキルであり、そのそれぞれは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換される。一部の実施形態では、R2は、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されるC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R2は、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で置換されているC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R2は、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されるC3~5シクロアルキルである。一部の実施形態では、R2は、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で置換されているC3~5シクロアルキルである。
【0070】
一部の実施形態では、R2は、水素、C1~4アルキル、またはC3~5シクロアルキルである。一部の実施形態では、R2は、水素またはC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R2は、C1~4アルキルまたはC3~5シクロアルキルである。一部の実施形態では、R2は、水素である。一部の実施形態では、R2は、C1~4アルキルである。一部の実施形態では、R2は、メチルまたはエチルである。一部の実施形態では、R2は、メチルである。一部の実施形態では、R2は、C3~5シクロアルキルである。一部の実施形態では、R2は、シクロプロピルである。
【0071】
一部の実施形態では、R2は、以下の表1に図示されているものから選択される。
【0072】
上記で概して定義されている通り、各R3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C1~4アルキル)、-OH、-S-(C1~4アルキル)、または-SHである。
【0073】
一部の実施形態では、各R3は、独立に、ハロゲン、-O-(C1~4アルキル)、-OH、-S-(C1~4アルキル)、または-SHである。一部の実施形態では、各R3は、重水素である。一部の実施形態では、各R3は、独立に、ハロゲンである。一部の実施形態では、各R3は、独立に、フルオロまたはクロロである。一部の実施形態では、R3は、フルオロである。一部の実施形態では、各R3は、-CNである。一部の実施形態では、各R3は、独立に、-O-(C1~4アルキル)または-OHである。一部の実施形態では、各R3は、独立に、-O-(C1~4アルキル)である。一部の実施形態では、R3は、-OHである。一部の実施形態では、各R3は、独立に、-S-(C1~4アルキル)または-SHである。一部の実施形態では、各R3は、独立に、-S-(C1~4アルキル)である。一部の実施形態では、R3は、-SHである。
【0074】
一部の実施形態では、R3は、以下の表1に図示されているものから選択される。
【0075】
上記で概して定義されている通り、Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R1がハロゲンである場合、共有結合である。一部の実施形態では、Xは、Sである。一部の実施形態では、Xは、Oである。一部の実施形態では、Xは、共有結合であり、R1は、ハロゲンである。一部の実施形態では、R1は、以下の表1に図示されているものから選択される。
【0076】
上記で概して定義されている通り、nは、0、1、2、または3である。一部の実施形態では、nは、0である。一部の実施形態では、nは、1である。一部の実施形態では、nは、2である。一部の実施形態では、nは、3である。一部の実施形態では、nは、0または1である。一部の実施形態では、nは、1または2である。一部の実施形態では、nは、2または3である。一部の実施形態では、nは、0、1、または2である。一部の実施形態では、nは、1、2、または3である。一部の実施形態では、nは、以下の表1に図示されているものから選択される。
【0077】
一部の実施形態では、式Iの化合物は、米国特許第9,789,131号に記載されているものから選択される化合物以外の化合物である。一部の実施形態では、式Iの化合物は、以下から選択される化合物以外の化合物である。
【化8】
【0078】
上記の説明は、式Iの化合物に関する複数の実施形態を記載している。本特許出願は、特に、実施形態のすべての組合せを企図する。
【0079】
一態様では、本発明は、式I-Aの化合物
【化9】
または薬学的に許容されるその塩[式中、
R
1は、(i)R
3で1、2、もしくは3回置換されているC
1~2アルキルであるか、または(ii)C
3~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-フェニル、-(C
1~4アルキレン)-(C
3~8シクロアルキル)、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、C
3~8シクロアルキル、フェニル、もしくは窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、
各R
3は、独立に、ハロゲン、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SまたはOであり、
nは、0、1、2、または3である]
を提供する。
【0080】
一態様では、本発明は、式I-Bの化合物
【化10】
または薬学的に許容されるその塩[式中、
R
1は、ハロゲンであり、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、
Xは、共有結合である]
を提供する。
【0081】
上記の式I-AおよびI-Bにおける変数の定義は、複数の化学基を包含する。本出願は、例えば、(i)変数の定義が、上記の化学基から選択される単一化学基である実施形態、(ii)変数の定義が、上記のものから選択される化学基の2つまたはそれより多くの集まりである実施形態、および(iii)化合物が、(i)または(ii)によって定義される変数の組合せによって定義される実施形態を企図する。
【0082】
ある特定の実施形態では、化合物は、式I-Aの化合物である。ある特定の実施形態では、化合物は、式I-Bの化合物である。
【0083】
上記で概して定義されている通り、R1は、(i)R3で1、2、もしくは3回置換されているC1~2アルキルであるか、または(ii)C3~8アルキル、-(C1~4アルキレン)-フェニル、-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、C3~8シクロアルキル、フェニル、もしくは窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。
【0084】
一部の実施形態では、R1は、(i)R3で1、2、もしくは3回置換されているC1~2アルキルであるか、または(ii)C3~8アルキル、-(C1~2アルキレン)-フェニル、-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)、もしくはC3~8シクロアルキルであり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。
【0085】
一部の実施形態では、R1は、R3で1、2、または3回置換されているC1~2アルキルである。一部の実施形態では、R1は、C3~8アルキル、-(C1~4アルキレン)-フェニル、-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、C3~8シクロアルキル、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。
【0086】
一部の実施形態では、R1は、-(C1~4アルキレン)-フェニル、-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)、C2~8アルケニル、またはC2~8アルキニルであり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。一部の実施形態では、R1は、-(C1~2アルキレン)-フェニルまたは-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)であり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。一部の実施形態では、R1は、-(C1~2アルキレン)-フェニルまたは-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)である。
【0087】
一部の実施形態では、R1は、C3~8シクロアルキル、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。
【0088】
一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC3~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC3~6アルキルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC3~4アルキルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されている-(C1~4アルキレン)-フェニルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されている-(C1~2アルキレン)-フェニルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されている-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)である。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されている-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)である。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC2~8アルケニルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC2~8アルキニルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC3~8シクロアルキルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC3~6シクロアルキルである。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているフェニルである。一部の実施形態では、R1は、窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、前記環は、R3でn回置換されている。
【0089】
一部の実施形態では、R1は、C3~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、C3~6アルキルである。一部の実施形態では、R1は、C3~4アルキルである。一部の実施形態では、R1は、-(C1~4アルキレン)-フェニルである。一部の実施形態では、R1は、-(C1~2アルキレン)-フェニルである。一部の実施形態では、R1は、-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)である。一部の実施形態では、R1は、-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)である。一部の実施形態では、R1は、C2~8アルケニルである。一部の実施形態では、R1は、C2~8アルキニルである。一部の実施形態では、R1は、C3~8シクロアルキルである。一部の実施形態では、R1は、C3~6シクロアルキルである。一部の実施形態では、R1は、フェニルである。一部の実施形態では、R1は、窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環である。
【0090】
一部の実施形態では、R1は、(i)R3で1、2、もしくは3回置換されているC1~8アルキルであるか、または(ii)-(C1~4アルキレン)-フェニル、-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、C3~8シクロアルキル、フェニル、もしくは窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。一部の実施形態では、R1は、C3~8アルキル、-(C1~4アルキレン)-フェニル、-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、C3~8シクロアルキル、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。一部の実施形態では、R1は、-(C1~4アルキレン)-フェニル、-(C1~4アルキレン)-(C3~8シクロアルキル)、C2~8アルケニル、C2~8アルキニル、C3~8シクロアルキル、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。
【0091】
一部の実施形態では、R1は、以下の表1の化合物I-3~I-21に図示されているものから選択される。
【0092】
上記で概して定義されている通り、R2は、水素、C1~4アルキル、またはC3~5シクロアルキルである。
【0093】
一部の実施形態では、R2は、水素またはC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R2は、C1~4アルキルまたはC3~5シクロアルキルである。一部の実施形態では、R2は、水素である。一部の実施形態では、R2は、C1~4アルキルである。一部の実施形態では、R2は、メチルまたはエチルである。一部の実施形態では、R2は、メチルである。一部の実施形態では、R2は、C3~5シクロアルキルである。一部の実施形態では、R2は、シクロプロピルである。
【0094】
一部の実施形態では、R2は、以下の表1に図示されているものから選択される。
【0095】
上記で概して定義されている通り、各R3は、独立に、ハロゲン、-O-(C1~4アルキル)、-OH、-S-(C1~4アルキル)、または-SHである。
【0096】
一部の実施形態では、各R3は、独立に、ハロゲンである。一部の実施形態では、各R3は、独立に、フルオロまたはクロロである。一部の実施形態では、R3は、フルオロである。一部の実施形態では、各R3は、独立に、-O-(C1~4アルキル)または-OHである。一部の実施形態では、各R3は、独立に、-O-(C1~4アルキル)である。一部の実施形態では、R3は、-OHである。一部の実施形態では、各R3は、独立に、-S-(C1~4アルキル)または-SHである。一部の実施形態では、各R3は、独立に、-S-(C1~4アルキル)である。一部の実施形態では、R3は、-SHである。
【0097】
一部の実施形態では、R3は、以下の表1に図示されているものから選択される。
【0098】
上記で概して定義されている通り、Xは、SまたはOである。一部の実施形態では、Xは、Sである。一部の実施形態では、Xは、Oである。一部の実施形態では、R1は、以下の表1に図示されているものから選択される。
【0099】
上記で概して定義されている通り、nは、0、1、2、または3である。一部の実施形態では、nは、0である。一部の実施形態では、nは、1である。一部の実施形態では、nは、2である。一部の実施形態では、nは、3である。一部の実施形態では、nは、0または1である。一部の実施形態では、nは、1または2である。一部の実施形態では、nは、2または3である。一部の実施形態では、nは、0、1、または2である。一部の実施形態では、nは、1、2、または3である。一部の実施形態では、nは、以下の表1に図示されているものから選択される。
【0100】
上記の説明は、式I-Aの化合物に関する複数の実施形態を記載している。本特許出願は、特に、実施形態のすべての組合せを企図する。
【0101】
一部の実施形態では、本発明は、表1の化合物のうちの1つから選択される化合物、または薬学的に許容されるその塩を提供する。一部の実施形態では、本発明は、表1のI-3~I-21から選択される化合物、または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0102】
式I-Bについて上記で概して定義されている通り、R1は、ハロゲンである。一部の実施形態では、R1は、Fである。一部の実施形態では、R1は、Clである。一部の実施形態では、R1は、Brである。一部の実施形態では、R1は、Iである。
【0103】
式I-Bについて上記で概して定義されている通り、R2は、水素、C1~4アルキル、またはC3~5シクロアルキルである。
【0104】
一部の実施形態では、R2は、水素またはC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R2は、C1~4アルキルまたはC3~5シクロアルキルである。一部の実施形態では、R2は、水素である。一部の実施形態では、R2は、C1~4アルキルである。一部の実施形態では、R2は、メチルまたはエチルである。一部の実施形態では、R2は、メチルである。一部の実施形態では、R2は、C3~5シクロアルキルである。一部の実施形態では、R2は、シクロプロピルである。
【0105】
一部の実施形態では、式I-Bの化合物は、
【化11】
または薬学的に許容されるその塩である。
【0106】
一部の実施形態では、式I-Bの化合物は、
【化12】
または薬学的に許容されるその塩以外である。
【0107】
別の態様では、本発明は、表1の化合物のうちの1つから選択される化合物、または薬学的に許容されるその塩を提供する。別の態様では、本発明は、式I、I-AもしくはI-Bの化合物、例えば表1に図示されている化合物のモノホスフェート、ジホスフェートまたはトリホスフェート、または薬学的に許容されるその塩、あるいはそのプロドラッグを提供する。一部の実施形態では、モノホスフェート、ジホスフェートまたはトリホスフェートのプロドラッグは、対応する一、二、または三リン酸エステル、例えばそのアルキルエステルまたはフェニルエステルである。ホスフェートの例示的なプロドラッグは、米国特許第9,724,360号に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0108】
例示的な合成方法
上記で記載される通り、本発明は、式I、I-A、またはI-Bの化合物および薬学的に許容されるその塩を合成する方法を提供する。一部の実施形態では、本化合物は、概して下記のスキームIに従って調製される。
スキームI
【化13】
【0109】
上記スキームIでは、X、R1、R2、R2A、PG1、PG2、PG3、およびPG4のそれぞれは、単独でも組合せでも、本明細書の実施形態で定義され、記載されている通りである。
【0110】
当技術分野で周知の有機化学および合成の一般原則は、例えば、"Organic Chemistry", Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 1999、"March's Advanced Organic Chemistry", 5th Ed., Ed.: Smith, M.B. and March, J., John Wiley & Sons, New York: 2001、および"Comprehensive Organic Synthesis", 2nd Ed., Ed.: Knochel, P. and Molander, G.A., Elsevier, Amsterdam: 2014に記載されており、それぞれの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
一態様では、本発明は、上記スキームIに図示されているステップに従って、式CのNが保護されたアデニン2-チオエーテルおよび2-エーテル核酸塩基を調製するための方法を提供する。ステップS-1において、式R1-X-Hのチオールまたはアルコールを、式Eのアデニン核酸塩基とカップリングする。一部の実施形態では、カップリングは、好適な塩基の存在下で実施される。代替として、式R1-X-M(ここで、Mは、金属原子、例えばナトリウムまたはカリウムである)の対応するチオールまたはアルコール金属塩を、式Eのアデニン核酸塩基とカップリングする。
【0112】
式EのLG1基は、好適な脱離基である。好適な脱離基は、例えば、上記で記載される参考文献に記載されている通り、当技術分野で周知である。そのような脱離基には、ハロゲン、アルコキシ、スルホニルオキシ(sulphonyloxy)、必要に応じて置換されるアルキルスルホニルオキシ(alkylsulphonyloxy)、必要に応じて置換されるアルケニルスルホニルオキシ、必要に応じて置換されるアリールスルホニルオキシ、およびジアゾニウム部分が含まれるが、それらに限定されない。好適な脱離基の例として、クロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、メタンスルホニル(メシル)、トシル、トリフレート、ニトロ-フェニルスルホニル(ノシル)、およびブロモ-フェニルスルホニル(ブロシル)が挙げられる。ある特定の実施形態では、LG1は、クロロ、フルオロ、またはトリフレートである。ある特定の実施形態では、LG1は、クロロである。一部の実施形態では、上記式IまたはI-Bにおいて-X-R1がハロゲンである場合、ステップS-1は省略される(LG1は、ハロゲン、例えば、クロロであり、いかなる化学変換も受ける必要がない)。
【0113】
ステップS-2において、アデニン2-ハロ、2-チオエーテル、または2-エーテル核酸塩基Dを保護して、式CのNが保護されたアデニン2-ハロ、2-チオエーテルまたは2-エーテル核酸塩基を得る。
【0114】
式CおよびAのPG1基は、好適なアミノ保護基である。好適なアミノ保護基は、当技術分野で周知であり、それには、Protecting Groups in Organic Synthesis, T. W. Greene and P. G. M. Wuts, 3rd edition, John Wiley & Sons, 1999に詳述されているものが含まれ、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。結合している-N(R2A)-部分と一緒になった好適なアミノ保護基には、アラルキルアミン、カルバメート、アリルアミン、アミド等が含まれるが、それらに限定されない。式CおよびAのPG1基の例として、t-ブチルオキシカルボニル(BOC)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキソカルボニル(CBZ)、アリル、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル等が挙げられる。一部の実施形態では、PG1は、酸に不安定なアミノ保護基である。一部の実施形態では、PG1は、それが結合している-N(R2A)-部分と一緒になって、酸に不安定なカルバメートである。一部の実施形態では、PG1は、BOCである。
【0115】
当業者は、核酸塩基DのR2が水素である場合、核酸塩基CのR2Aは、反応条件(例えば、保護基試薬に対する核酸塩基Dの化学量論量)に応じて、水素(核酸塩基Dへの単一保護基の付加から)または好適なアミノ保護基(核酸塩基Dへの第2の保護基の付加から)であり得ることを認識されよう。したがって、一部の実施形態では、R2Aは、水素である。他の実施形態では、R2Aは、好適なアミノ保護基である。一部の実施形態では、R2Aは、酸に不安定なアミノ保護基である。一部の実施形態では、R2Aは、それが結合している-N(PG1)-部分と一緒になって、酸に不安定なカルバメートである。一部の実施形態では、R2Aは、BOCである。一部の実施形態では、PG1およびR2Aは、それぞれBOCである。他の実施形態では、R2AおよびPG1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基、例えばフタルイミドまたはテトラメチルスクシンイミドを形成する。一部の実施形態では、R2AおよびPG1は、それらが結合する窒素と一緒になって、フタルイミドを形成する。
【0116】
ステップS-3において、式CのNが保護されたアデニン2-ハロ、2-チオエーテルまたは2-エーテル核酸塩基は、保護された(N)-メタノカルバ糖アナログBとのカップリングを受けて、(N)-メタノカルバヌクレオシドアナログAをもたらす。一部の実施形態では、カップリングは、光延タイプの条件下で実施される。
【0117】
式BおよびAのPG2、PG3、およびPG4基のそれぞれは、独立に、好適なヒドロキシル保護基である。好適なヒドロキシル保護基は、当技術分野で周知であり、それには、Protecting Groups in Organic Synthesis, T. W. Greene and P. G. M. Wuts, 3rd edition, John Wiley & Sons, 1999に詳述されているものが含まれ、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、結合している酸素原子と一緒になったPG2、PG3、およびPG4のそれぞれは、独立に、エステル、エーテル、シリルエーテル、アルキルエーテル、アリールアルキルエーテル、およびアルコキシアルキルエーテルから選択される。そのようなエステルの例として、ギ酸エステル、酢酸エステル、炭酸エステル、およびスルホン酸エステルが挙げられる。特定の例として、ギ酸エステル、ベンゾイルギ酸エステル、クロロ酢酸エステル、トリフルオロ酢酸エステル、メトキシ酢酸エステル、トリフェニルメトキシ酢酸エステル、p-クロロフェノキシ酢酸エステル、3-フェニルプロピオン酸エステル、4-オキソペンタン酸エステル、4,4-(エチレンジチオ)ペンタン酸エステル、ピバル酸エステル(トリメチルアセチル)、クロトン酸エステル、4-メトキシ-クロトン酸エステル、安息香酸エステル、p-ベンジル安息香酸エステル、2,4,6-トリメチル安息香酸エステル、または炭酸エステル、例えばメチル、9-フルオレニルメチル、エチル、2,2,2-トリクロロエチル、2-(トリメチルシリル)エチル、2-(フェニルスルホニル)エチル、ビニル、アリル、およびp-ニトロベンジルが挙げられる。そのようなシリルエーテルの例として、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリル、および他のトリアルキルシリルエーテルが挙げられる。アルキルエーテルには、メチル、t-ブチル、アリル、およびアリルオキシカルボニルエーテルまたは誘導体が含まれる。アルコキシアルキルエーテルには、アセタール、例えばメトキシメチル、メチルチオメチル、(2-メトキシエトキシ)メチル、ベンジルオキシメチル、ベータ-(トリメチルシリル)エトキシメチル、およびテトラヒドロピラニルエーテルが含まれる。アリールアルキルエーテルの例として、ベンジル、p-メトキシベンジル(MPM)、3,4-ジメトキシベンジル、o-ニトロベンジル、p-ニトロベンジル、p-ハロベンジル、2,6-ジクロロベンジル、p-シアノベンジル、トリチル、2-および4-ピコリルが挙げられる。
【0118】
一部の実施形態では、PG2、PG3、およびPG4のそれぞれは、独立に、酸に不安定なヒドロキシル保護基である。
【0119】
一部の実施形態では、PG4は、それが結合する酸素原子と一緒になって、シリルエーテルまたはアリールアルキルエーテルである。一部の実施形態では、PG4は、それが結合している酸素原子と一緒になって、酸に不安定なシリルエーテルまたは酸に不安定なアリールアルキルエーテルである。一部の実施形態では、PG4は、トリチルまたは置換トリチルである。一部の実施形態では、PG4は、トリチル、モノメトキシトリチル、またはジメトキシトリチルである。一部の実施形態では、PG4は、トリチルである。一部の実施形態では、PG4は、それが結合している酸素原子と一緒になって、シリルエーテルである。一部の実施形態では、PG4は、それが結合している酸素原子と一緒になって、酸に不安定なシリルエーテルである。一部の実施形態では、PG4は、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、またはトリイソプロピルシリルである。一部の実施形態では、PG4は、t-ブチルジメチルシリルである。
【0120】
一部の実施形態では、PG2およびPG3は、それらが結合する酸素原子と一緒になって、ジオール保護基、例えば環式アセタールまたはケタールを形成する。そのような基には、メチレン、エチリデン、ベンジリデン、イソプロピリデン、シクロヘキシリデン、およびシクロペンチリデン、シリレン誘導体、例えばジ-t-ブチルシリレンおよび1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサニリデン誘導体、環式カーボネート、および環式ボロネートが含まれる。一部の実施形態では、PG2およびPG3は、それらが結合する酸素原子と一緒になって、環式ケタールを形成する。一部の実施形態では、PG2およびPG3は、それらが結合する酸素原子と一緒になって、アセトニド、シクロヘキシリデン、またはシクロペンチリデンを形成する。一部の実施形態では、PG2およびPG3は、それらが結合する酸素原子と一緒になって、アセトニドを形成する。
【0121】
ステップS-4において、(N)-メタノカルバヌクレオシドアナログAを脱保護して、式I、I-A、またはI-Bの化合物を得る。当業者は、PG1、PG2、PG3、およびPG4のそれぞれを脱保護するために必要な条件が、同じであっても異なっていてもよいことを認識されよう。条件の2つ以上の組が、PG1、PG2、PG3、およびPG4の4つすべてを除去するために必要である場合、脱保護ステップは、中間体の単離を用いて、またはそれなしに行うことができ、ここでPG1、PG2、PG3、およびPG4の1つまたは複数(しかしすべてではない)が脱保護された。
【0122】
ある特定の実施形態では、PG1、PG2、PG3、およびPG4の4つすべてが、酸加水分解によって除去される。化合物Aの酸脱保護の際に、式I、I-A、またはI-Bの塩が形成されることを理解されよう。例えば、化合物Aの酸脱保護が、塩酸を用いて実施される場合には、式I、I-A、またはI-Bの化合物は、塩酸塩として形成され得る。同様に、化合物Aの酸脱保護が、トリフルオロ酢酸を用いて実施される場合には、式I、I-A、またはI-Bの化合物は、トリフルオロ酢酸塩として形成され得る。当業者は、酸に不安定な保護基を除去するために、多種多様な酸が有用であり、したがって式I、I-A、またはI-Bの化合物の多種多様な塩形態が企図されることを認識されるはずである。
【0123】
さらに、式I、I-A、またはI-Bの化合物の様々な塩形態を、多種多様な好適な塩基のいずれかで処理することによって、式I、I-A、またはI-Bの遊離塩基が得られ得ることを理解されよう。好適な塩基には、金属炭酸塩、金属アルコキシド、金属水酸化物、および塩基性樹脂が含まれる。例えば、一部の実施形態では、塩基は、炭酸ナトリウムである。一部の実施形態では、塩基は、水酸化ナトリウムである。一部の実施形態では、塩基は、Amberlite樹脂である。
【0124】
一態様によれば、本発明は、式Iの化合物
【化14】
または薬学的に許容されるその塩[式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SまたはOであり、
nは、0、1、2、または3である]
を調製する方法であって、
(a)式Aの化合物
【化15】
[式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2Aは、好適なアミノ保護基もしくはR
2であるか、またはR
2AおよびPG
1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2Aと一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
PG
2、PG
3、およびPG
4のそれぞれは、独立に、好適なヒドロキシル保護基である]
を提供するステップと、
(b)前記式Aの化合物を脱保護して、前記式Iの化合物を形成するステップと
を含む、方法を提供する。
【0125】
一部の実施形態では、R1、R2、R3、Ar、Cy、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式Iの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、式Iの化合物は、式I-Aの化合物であり、ここでR2、R3、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式I-Aの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、式Iの化合物は、式I-Bの化合物であり、ここでR1、R2、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式I-Bの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。
【0126】
例えば、一部の実施形態では、R1は、C1~8アルキル、-(C1~2アルキレン)-フェニル、-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)、またはC3~8シクロアルキルであり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC1~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、C1~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、メチルまたはエチルである。一部の実施形態では、R1は、メチルである。一部の実施形態では、R1は、エチルである。一部の実施形態では、R1は、ハロゲンであり、Xは、共有結合である。
【0127】
一部の実施形態では、R2は、水素、C1~4アルキル、またはC3~5シクロアルキルである。一部の実施形態では、R2は、水素である。
【0128】
一部の実施形態では、Xは、Sである。一部の実施形態では、Xは、Oである。一部の実施形態では、Xは、共有結合であり、R1は、ハロゲン、例えばFまたはClである。
【0129】
一部の実施形態では、nは、0である。
【0130】
一部の実施形態では、式Iの化合物は、
【化16】
または薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、式Iの化合物は、
【化17】
である。一部の実施形態では、式Iの化合物は、
【化18】
または薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、式Iの化合物は、
【化19】
である。
【0131】
上記で概して定義されている通り、R2Aは、好適なアミノ保護基もしくはR2であるか、またはR2AおよびPG1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成する。
【0132】
一部の実施形態では、R2Aは、好適なアミノ保護基またはR2である。一部の実施形態では、R2Aは、酸に不安定なアミノ保護基、水素、C1~4アルキル、またはC3~5シクロアルキルである。一部の実施形態では、R2Aは、BOCまたは水素である。
【0133】
一部の実施形態では、R2Aは、好適なアミノ保護基である。一部の実施形態では、R2Aは、酸に不安定なアミノ保護基である。一部の実施形態では、R2Aは、それが結合している-N(PG1)-部分と一緒になって、酸に不安定なカルバメートである。一部の実施形態では、R2Aは、BOCである。
【0134】
一部の実施形態では、R2Aは、R2である。一部の実施形態では、R2Aは、水素、C1~4アルキル、またはC3~5シクロアルキルである。一部の実施形態では、R2Aは、水素である。一部の実施形態では、R2Aは、C1~4アルキルである。一部の実施形態では、R2Aは、C3~5シクロアルキルである。
【0135】
一部の実施形態では、R2AおよびPG1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成する。一部の実施形態では、R2AおよびPG1は、それらが結合する窒素と一緒になって、フタルイミドを形成する。一部の実施形態では、R2AおよびPG1は、それらが結合する窒素と一緒になって、テトラメチルスクシンイミドを形成する。一部の実施形態では、PG1およびR2Aは、それぞれBOCである。
【0136】
上記で概して定義されている通り、PG1は、好適なアミノ保護基であるか、またはR2Aと一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成する。結合している-N(R2A)-部分と一緒になった好適なアミノ保護基には、アラルキルアミン、カルバメート、アリルアミン、アミド等が含まれるが、それらに限定されない。PG1基の例として、t-ブチルオキシカルボニル(BOC)、エチルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニル、トリクロロエチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、ベンジルオキソカルボニル(CBZ)、アリル、ベンジル(Bn)、フルオレニルメチルカルボニル(Fmoc)、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、フェニルアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル等が挙げられる。一部の実施形態では、PG1は、酸に不安定なアミノ保護基である。一部の実施形態では、PG1は、それが結合している-N(R2A)-部分と一緒になって、カルバメートである。一部の実施形態では、PG1は、それが結合している-N(R2A)-部分と一緒になって、酸に不安定なカルバメートである。一部の実施形態では、PG1は、BOCである。
【0137】
上記で概して定義されている通り、PG2、PG3、およびPG4のそれぞれは、独立に、好適なヒドロキシル保護基である。好適なヒドロキシル保護基は、当技術分野で周知であり、それには、Protecting Groups in Organic Synthesis, T. W. Greene and P. G. M. Wuts, 3rd edition, John Wiley & Sons, 1999に詳述されているものが含まれ、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、結合している酸素原子と一緒になったPG2、PG3、およびPG4のそれぞれは、独立に、エステル、エーテル、シリルエーテル、アルキルエーテル、アリールアルキルエーテル、およびアルコキシアルキルエーテルから選択される。そのようなエステルの例として、ギ酸エステル、酢酸エステル、炭酸エステル、およびスルホン酸エステルが挙げられる。特定の例として、ギ酸エステル、ベンゾイルギ酸エステル、クロロ酢酸エステル、トリフルオロ酢酸エステル、メトキシ酢酸エステル、トリフェニルメトキシ酢酸エステル、p-クロロフェノキシ酢酸エステル、3-フェニルプロピオン酸エステル、4-オキソペンタン酸エステル、4,4-(エチレンジチオ)ペンタン酸エステル、ピバル酸エステル(トリメチルアセチル)、クロトン酸エステル、4-メトキシ-クロトン酸エステル、安息香酸エステル、p-ベンジル安息香酸エステル、2,4,6-トリメチル安息香酸エステル、または炭酸エステル、例えばメチル、9-フルオレニルメチル、エチル、2,2,2-トリクロロエチル、2-(トリメチルシリル)エチル、2-(フェニルスルホニル)エチル、ビニル、アリル、およびp-ニトロベンジルが挙げられる。そのようなシリルエーテルの例として、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリル、および他のトリアルキルシリルエーテルが挙げられる。アルキルエーテルには、メチル、t-ブチル、アリル、およびアリルオキシカルボニルエーテルまたは誘導体が含まれる。アルコキシアルキルエーテルには、アセタール、例えばメトキシメチル、メチルチオメチル、(2-メトキシエトキシ)メチル、ベンジルオキシメチル、ベータ-(トリメチルシリル)エトキシメチル、およびテトラヒドロピラニルエーテルが含まれる。アリールアルキルエーテルの例として、ベンジル、p-メトキシベンジル(MPM)、3,4-ジメトキシベンジル、o-ニトロベンジル、p-ニトロベンジル、p-ハロベンジル、2,6-ジクロロベンジル、p-シアノベンジル、トリチル、2-および4-ピコリルが挙げられる。
【0138】
一部の実施形態では、PG2、PG3、およびPG4のそれぞれは、独立に、酸に不安定なヒドロキシル保護基である。
【0139】
一部の実施形態では、PG2およびPG3は、それらが結合する酸素原子と一緒になって、ジオール保護基、例えば環式アセタールまたはケタールを形成する。そのような基には、メチレン、エチリデン、ベンジリデン、イソプロピリデン、シクロヘキシリデン、およびシクロペンチリデン、シリレン誘導体、例えばジ-t-ブチルシリレンおよび1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサニリデン誘導体、環式カーボネート、および環式ボロネートが含まれる。一部の実施形態では、PG2およびPG3は、それらが結合する酸素原子と一緒になって、環式ケタールを形成する。一部の実施形態では、PG2およびPG3は、それらが結合する酸素原子と一緒になって、アセトニド、シクロヘキシリデン、またはシクロペンチリデンを形成する。一部の実施形態では、PG2およびPG3は、それらが結合する酸素原子と一緒になって、アセトニドを形成する。
【0140】
一部の実施形態では、PG4は、それが結合する酸素原子と一緒になって、シリルエーテルまたはアリールアルキルエーテルである。一部の実施形態では、PG4は、それが結合している酸素原子と一緒になって、酸に不安定なシリルエーテルまたは酸に不安定なアリールアルキルエーテルである。一部の実施形態では、PG4は、トリチルまたは置換トリチルである。一部の実施形態では、PG4は、トリチル、モノメトキシトリチル、またはジメトキシトリチルである。一部の実施形態では、PG4は、トリチルである。一部の実施形態では、PG4は、それが結合している酸素原子と一緒になって、シリルエーテルである。一部の実施形態では、PG4は、それが結合している酸素原子と一緒になって、酸に不安定なシリルエーテルである。一部の実施形態では、PG4は、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、またはトリイソプロピルシリルである。一部の実施形態では、PG4は、t-ブチルジメチルシリルである。
【0141】
当業者は、PG1、PG2、PG3、およびPG4のそれぞれを脱保護するために必要な条件が、同じであっても異なっていてもよいことを認識されよう。条件の2つ以上の組が、PG1、PG2、PG3、およびPG4の4つすべてを除去するために必要である場合、脱保護ステップは、中間体の単離を用いて、またはそれなしに行うことができ、ここでPG1、PG2、PG3、およびPG4の1つまたは複数(しかしすべてではない)が脱保護された。
【0142】
一部の実施形態では、ステップ(b)における脱保護は、前記式Aの化合物を好適な酸で処理することによって達成される。そのような好適な酸は、当技術分野で周知であり、それには、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸もしくは過塩素酸、または有機酸、例えば酢酸、ハロ酢酸、安息香酸、アルキルスルホン酸もしくはアリールスルホン酸が含まれる。一部の実施形態では、ステップ(b)における脱保護は、前記式Aの化合物を塩酸で処理することによって達成される。一部の実施形態では、ステップ(b)における脱保護は、前記式Aの化合物をトリフルオロ酢酸で処理することによって達成される。
【0143】
式Aの化合物の酸脱保護の際に、式Iの化合物の塩が形成されることを理解されよう。例えば、化合物Aの酸脱保護が、塩酸を用いて実施される場合には、式Iの化合物は、塩酸塩として形成され得る。同様に、化合物Aの酸脱保護が、トリフルオロ酢酸を用いて実施される場合には、式Iの化合物は、トリフルオロ酢酸塩として形成され得る。当業者は、酸に不安定な保護基を除去するために、多種多様な酸が有用であり、したがって式Iの化合物の多種多様な塩形態が企図されることを認識されるはずである。
【0144】
一部の実施形態では、ステップ(b)における好適な酸を用いる脱保護は、好適な溶媒中で実施される。脱保護ステップ(b)中に使用するのに好適な溶媒の例として、極性溶媒、例えばアルキルアルコール、例えばC1~C4アルコール(例えば、エタノール、メタノール、2-プロパノール)、水、エーテル(例えば、ジオキサンまたはテトラヒドロフラン)、およびそれらの組合せが挙げられる。ある特定の実施形態では、好適な溶媒は、C1~C4アルコール(例えば、メタノール、エタノール、または2-プロパノール)、水、またはそれらの組合せである。ある特定の実施形態では、好適な溶媒は、メタノール、水、またはそれらの組合せである。
【0145】
一部の実施形態では、方法は、(c)式Iの化合物の塩を好適な塩基で処理して、式Iの遊離塩基化合物を形成するステップをさらに含む。好適な塩基には、金属炭酸塩、金属アルコキシド、金属水酸化物、および塩基性樹脂が含まれる。例えば、一部の実施形態では、塩基は、炭酸ナトリウムである。一部の実施形態では、塩基は、水酸化ナトリウムである。一部の実施形態では、塩基は、Amberlite樹脂である。一部の実施形態では、塩基は、Amberlite樹脂-93である。
【0146】
一部の実施形態では、ステップ(c)は、好適な溶媒中で実施される。ステップ(c)における遊離塩基形成中に使用するのに好適な溶媒の例として、極性溶媒、例えばアルキルアルコール、例えばC1~C4アルコール(例えば、エタノール、メタノール、2-プロパノール)、水、エーテル(例えば、ジオキサンまたはテトラヒドロフラン)、およびそれらの組合せが挙げられる。ある特定の実施形態では、好適な溶媒は、C1~C4アルコール(例えば、メタノール、エタノール、または2-プロパノール)、水、またはそれらの組合せである。ある特定の実施形態では、好適な溶媒は、メタノール、水、またはそれらの組合せである。
【0147】
別の態様では、本発明は、式Aの化合物
【化20】
[式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2Aは、好適なアミノ保護基もしくはR
2であるか、またはR
2AおよびPG
1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2Aと一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
PG
2、PG
3、およびPG
4のそれぞれは、独立に、好適なヒドロキシル保護基である]
を調製する方法であって、
(a)式Cの化合物
【化21】
[式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2Aは、好適なアミノ保護基もしくはR
2であるか、またはR
2AおよびPG
1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2Aと一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成する]
を提供するステップと、
(b)前記式Cの化合物を、式Bの化合物
【化22】
[式中、PG
2、PG
3、およびPG
4のそれぞれは、独立に、好適なヒドロキシル保護基である]
とカップリングして、前記式Aの化合物を形成するステップと
を含む、方法を提供する。
【0148】
一部の実施形態では、R1、R2、R3、Ar、Cy、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式Iの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、R2、R3、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式I-Aの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、R1、R2、R3、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式I-Bの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、R1、R2、R2A、R3、PG1、PG2、PG3、PG4、Ar、Cy、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式Iの化合物を調製する方法の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。
【0149】
式Bの化合物は、例えば、Choi, Y.; Moon, H. R.; Yoshimura, Y.; Marquez, V. E. "Recent advances in the synthesis of conformationally locked nucleosides and their success in probing the critical question of conformational preferences by their biological targets." Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids 2003, Vol. 22, pp. 547-557、Michel BY, Strazewski P "Total syntheses of a conformationally locked north-type methanocarba puromycin analogue and a dinucleotide derivative." Chem. Eur. J. 2009, Vol. 15, pp. 6244-6257、およびTosh, D.K.; Padia, J.; Salvemini, D.; Jacobson, K.A. "Efficient, large-scale synthesis and preclinical studies of MRS5698, a highly selective A3 adenosine receptor agonist that protects against chronic neuropathic pain." Purinergic Signalling 2015, Vol. 11, pp. 371-387に記載されている通り、当技術分野で周知の戦略および手順に従って調製することができ、それぞれの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0150】
一部の実施形態では、ステップ(b)におけるカップリングは、光延タイプの条件下で達成される。光延条件の様々な修正は、当技術分野で周知であり、例えば、"March's Advanced Organic Chemistry", 5th Ed., Ed.: Smith, M.B. and March, J., John Wiley & Sons, New York: 2001、Downey, A. M. et al. "Direct One-Pot Synthesis of Nucleosides from Unprotected or 5-O-Monoprotected D-Ribose," Org. Lett. (2015) Vol. 17, pp. 4604-4607およびそれらにおける参考文献に記載されており、それぞれの内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0151】
一部の実施形態では、ステップ(b)におけるカップリングは、好適なホスフィンおよび好適なアゾジカルボキシレート試薬の存在下で達成される。そのような好適なホスフィンは、当技術分野で周知であり、それには、アリールおよびアルキルホスフィンが含まれる。一部の実施形態では、好適なホスフィンは、トリフェニルホスフィンまたはトリブチルホスフィンである。一部の実施形態では、好適なホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。好適なアゾジカルボキシレート試薬は、当技術分野で周知であり、それには、非置換ジアルキルアゾジカルボキシレート(例えば、ジエチル、ジ-イソプロピル、またはジ-t-ブチルアゾジカルボキシレート)または置換ジアルキルアゾジカルボキシレート(例えば、ジ-2-メトキシエチルまたはジ-p-ニトロベンジルアゾジカルボキシレート)が含まれる。一部の実施形態では、好適なアゾジカルボキシレートは、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)またはジ-イソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)である。一部の実施形態では、好適なアゾジカルボキシレートは、ジ-イソプロピルアゾジカルボキシレートである。
【0152】
一部の実施形態では、ステップ(b)は、好適な溶媒中で実施される。好適な溶媒の例として、極性非プロトン性溶媒、例えばエーテル(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、またはメチルt-ブチルエーテル)、アミド溶媒(例えば、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド)、およびニトリル(例えば、アセトニトリル)が挙げられる。一部の実施形態では、好適な溶媒は、エーテルである。一部の実施形態では、好適な溶媒は、テトラヒドロフランである。
【0153】
一部の実施形態では、ステップ(b)は、好適な塩基の存在下で実施される。好適な塩基の例として、有機塩基(例えば、DBU)、金属水素化物(例えば、水素化ナトリウム)、および金属炭酸塩(例えば、炭酸セシウムまたは炭酸ナトリウム)が挙げられる。
【0154】
一部の実施形態では、式Fの化合物
【化23】
[式中、R
1、R
3、PG
1、PG
2、PG
3、PG
4、Ar、Cy、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式Iの化合物を調製する方法の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである]を実質的に含まない式Aの化合物が提供される。一部の実施形態では、0.05モル当量未満の式Fの化合物を含有する式Aの化合物が提供される。一部の実施形態では、0.01モル当量未満の式Fの化合物を含有する式Aの化合物が提供される。一部の実施形態では、0.005モル当量未満の式Fの化合物を含有する式Aの化合物が提供される。一部の実施形態では、0.001モル当量未満の式Fの化合物を含有する式Aの化合物が提供される。式Fの化合物は、任意の適切な分析技術、例えば、クロマトグラフィー(例えば、高速液体クロマトグラフィー、HPLC)を、適切な検出方法(例えば、紫外吸収または質量分析)または核磁気共鳴分光法と共に使用して、式Aの化合物の試料において検出され得る。
【0155】
別の態様では、本発明は、式Cの化合物
【化24】
[式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2Aは、好適なアミノ保護基もしくはR
2であるか、またはR
2AおよびPG
1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2Aと一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成する]
を調製する方法であって、
(a)式Dの化合物
【化25】
[式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3である]
を提供するステップと、
(b)前記式Dの化合物を保護して、前記式Cの化合物を形成するステップと
を含む、方法を提供する。
【0156】
一部の実施形態では、R1、R2、R3、Ar、Cy、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式Iの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、R2、R3、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式I-Aの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、R1、R2、R3、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式I-Bの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、R1、R2、R2A、R3、PG1、Ar、Cy、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式Iの化合物を調製する方法の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。
【0157】
一部の実施形態では、ステップ(b)における保護は、前記式Dの化合物を、好適なジカーボネートで処理することによって達成される。好適なジカーボネートは、当技術分野で周知であり、PG1が、それが結合している-N(R2A)-部分と一緒になってカルバメートである、式Cの化合物をもたらす。一部の実施形態では、好適なジカーボネートは、PG1が、それが結合している-N(R2A)-部分と一緒になって酸に不安定なカルバメートである、式Cの化合物をもたらす。一部の実施形態では、好適なジカーボネートは、BOC2Oである。
【0158】
一部の実施形態では、式Dの化合物に対して、2.0モル当量超の好適なジカーボネートが使用される。一部の実施形態では、式Dの化合物に対して、3.0モル当量超の好適なジカーボネートが使用される。一部の実施形態では、式Dの化合物に対して、4.0モル当量超の好適なジカーボネートが使用される。一部の実施形態では、式Dの化合物に対して、約4.0モル当量の好適なジカーボネートが使用される。
【0159】
一部の実施形態では、ステップ(b)は、好適な塩基の存在下で実施される。好適な塩基の例は、当技術分野で周知であり、ピリジン、置換ピリジン、およびアルキルアミン(例えば、トリエチルアミンまたはジ-イソプロピルエチルアミン)が挙げられる。一部の実施形態では、好適な塩基は、ピリジンまたは置換ピリジンである。一部の実施形態では、好適な塩基は、N,N-ジメチルアミノピリジンである。一部の実施形態では、式Dの化合物に対して、1.0モル当量未満の好適な塩基が使用される。一部の実施形態では、式Dの化合物に対して、0.1~0.3モル当量の好適な塩基が使用される。一部の実施形態では、式Dの化合物に対して、約0.2モル当量の好適な塩基が使用される。一部の実施形態では、式Dの化合物に対して、1.0モル当量またはそれを超える好適な塩基が使用される。一部の実施形態では、式Dの化合物に対して、約2.0モル当量の好適な塩基が使用され、必要に応じて好適な塩基は、N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)である。
【0160】
一部の実施形態では、ステップ(b)は、好適な溶媒中で実施される。好適な溶媒の例は、当技術分野で周知であり、極性非プロトン性溶媒が挙げられる。一部の実施形態では、好適な溶媒は、エーテル、例えばテトラヒドロフランまたはメチルt-ブチルエーテルである。一部の実施形態では、好適な溶媒は、テトラヒドロフランである。
【0161】
一部の実施形態では、前記式Dの化合物を好適なジカーボネートで処理することにより得られる生成物は、単離され、次に、好適な塩基および好適な溶媒でさらに処理されて、前記式Cの化合物を形成する。
【0162】
一部の実施形態では、好適な塩基は、塩基性水溶液である。一部の実施形態では、好適な塩基は、水酸化物、炭酸塩、または炭酸水素塩の水溶液である。一部の実施形態では、好適な塩基は、NaOH水溶液である。一部の実施形態では、好適な塩基は、KOH水溶液である。一部の実施形態では、好適な塩基は、NH4OH水溶液である。一部の実施形態では、好適な塩基は、NaHCO3水溶液である。一部の実施形態では、好適な塩基は、KHCO3水溶液である。一部の実施形態では、好適な塩基は、Na2CO3水溶液である。一部の実施形態では、好適な塩基は、K2CO3水溶液である。
【0163】
一部の実施形態では、好適な溶媒には、極性溶媒、例えばアルキルアルコール、例えばC1~C4アルコール(例えば、エタノール、メタノール、2-プロパノール)、水、エーテル(例えば、ジオキサンまたはテトラヒドロフラン)、およびそれらの組合せが含まれる。一部の実施形態では、好適な溶媒は、C1~C4アルコール(例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール)、水、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、好適な溶媒は、メタノール、水、またはそれらの組合せである。一部の実施形態では、好適な溶媒は、メタノールである。一部の実施形態では、好適な溶媒は、テトラヒドロフランである。
【0164】
一部の実施形態では、ステップ(b)における保護は、前記式Dの化合物を、好適な二価の窒素保護基を形成する好適な試薬で処理することによって達成される。好適な二価の窒素保護基を形成する好適な試薬は、当技術分野で周知であり、R2AおよびPG1が一緒になって好適な二価の窒素保護基を形成している式Cの化合物をもたらす。一部の実施形態では、好適な試薬は、二酸無水物である。一部の実施形態では、好適な試薬は、無水フタル酸である。一部の実施形態では、好適な試薬は、フタロイルクロリドである。一部の実施形態では、好適な試薬は、無水テトラメチルコハク酸である。
【0165】
別の態様では、本発明は、式Dの化合物
【化26】
[式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SまたはOであり、
nは、0、1、2、または3である]
を調製する方法であって、
(a)式Eの化合物
【化27】
[式中、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
LG
1は、好適な脱離基である]
を提供するステップと、
(b)前記式Eの化合物をカップリングして、前記式Dの化合物を形成するステップと
を含む、方法を提供する。
【0166】
一部の実施形態では、R1、R2、R3、Ar、Cy、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式Iの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、R2、R3、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式I-Aの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、R1、R2、R3、Ar、Cy、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式Iの化合物を調製する方法の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。
【0167】
上記で概して定義されている通り、LG1は、好適な脱離基である。好適な脱離基は、例えば、"Organic Chemistry", Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 1999、"March's Advanced Organic Chemistry", 5th Ed., Ed.: Smith, M.B. and March, J., John Wiley & Sons, New York: 2001、および"Comprehensive Organic Synthesis", 2nd Ed., Ed.: Knochel, P. and Molander, G.A., Elsevier, Amsterdam: 2014に記載されている通り、当技術分野で周知である。そのような脱離基には、ハロゲン、アルコキシ、スルホニルオキシ、必要に応じて置換されるアルキルスルホニルオキシ、必要に応じて置換されるアルケニルスルホニルオキシ、必要に応じて置換されるアリールスルホニルオキシ、およびジアゾニウム部分が含まれるが、それらに限定されない。好適な脱離基の例として、クロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、メタンスルホニル(メシル)、トシル、トリフレート、ニトロ-フェニルスルホニル(ノシル)、およびブロモ-フェニルスルホニル(ブロシル)が挙げられる。ある特定の実施形態では、LG1は、クロロ、フルオロ、またはトリフレートである。ある特定の実施形態では、LG1は、クロロである。
【0168】
一部の実施形態では、ステップ(b)におけるカップリングは、前記式Eの化合物を、式R1-X-Hのチオールまたはアルコールで処理することによって達成される。一部の実施形態では、カップリングは、好適な塩基の存在下で実施される。好適な塩基には、金属炭酸塩、金属アルコキシド、金属水酸化物、金属水素化物、および有機塩基が含まれる。例えば、一部の実施形態では、塩基は、炭酸セシウムである。一部の実施形態では、塩基は、炭酸ナトリウムである。一部の実施形態では、塩基は、水酸化ナトリウムである。一部の実施形態では、塩基は、水素化ナトリウムである。
【0169】
一部の実施形態では、ステップ(b)におけるカップリングは、前記式Eの化合物を、式R1-X-M(Mは金属原子である)のチオールまたはアルコール金属塩で処理することによって達成される。一部の実施形態では、Mは、ナトリウムである。一部の実施形態では、Mは、カリウムである。
【0170】
一部の実施形態では、ステップ(b)は、好適な溶媒中で実施される。好適な溶媒の例として、極性溶媒、例えばアミド溶媒(例えば、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、またはメチルt-ブチルエーテル)、およびアルコール、例えばC1~C4アルコール(例えば、エタノール、メタノール、2-プロパノール)が挙げられる。一部の実施形態では、好適な溶媒は、アミド溶媒である。一部の実施形態では、好適な溶媒は、ジメチルホルムアミドである。
【0171】
例示的な合成中間体
上記で記載される通り、本発明は、式Iの化合物および薬学的に許容されるその塩を調製するのに有用な中間体を提供する。一態様では、本発明は、式Aの化合物
【化28】
[式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2Aは、好適なアミノ保護基もしくはR
2であるか、またはR
2AおよびPG
1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2Aと一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
PG
2、PG
3、およびPG
4のそれぞれは、独立に、好適なヒドロキシル保護基である]
を提供する。
【0172】
一部の実施形態では、R1、R2、R3、Ar、Cy、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式Iの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、R2、R3、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式I-Aの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、R1、R2、R3、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式I-Bの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、R1、R2、R2A、R3、PG1、PG2、PG3、PG4、Ar、Cy、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式Iの化合物を調製する方法の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。
【0173】
例えば、一部の実施形態では、R1は、C1~8アルキル、-(C1~2アルキレン)-フェニル、-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)、またはC3~8シクロアルキルであり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC1~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、C1~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、メチルまたはエチルである。一部の実施形態では、R1は、メチルである。一部の実施形態では、R1は、エチルである。一部の実施形態では、R1は、ハロゲンであり、Xは、共有結合である。
【0174】
一部の実施形態では、R2は、水素、C1~4アルキル、またはC3~5シクロアルキルである。一部の実施形態では、R2は、水素である。
【0175】
一部の実施形態では、Xは、Sである。一部の実施形態では、Xは、Oである。一部の実施形態では、Xは、共有結合であり、R1は、ハロゲン、例えばFまたはClである。
【0176】
一部の実施形態では、nは、0である。
【0177】
一部の実施形態では、R2Aは、それが結合している-N(PG1)-部分と一緒になって、酸に不安定なカルバメートである。一部の実施形態では、R2Aは、BOCである。一部の実施形態では、R2Aは、R2である。一部の実施形態では、R2Aは、水素である。
【0178】
一部の実施形態では、PG1は、それが結合している-N(R2A)-部分と一緒になって、酸に不安定なカルバメートである。一部の実施形態では、PG1は、BOCである。一部の実施形態では、PG1およびR2Aは、それぞれBOCである。
【0179】
一部の実施形態では、PG2およびPG3は、それらが結合する酸素原子と一緒になって、環式ケタールを形成する。一部の実施形態では、PG2およびPG3は、それらが結合する酸素原子と一緒になって、アセトニドを形成する。
【0180】
一部の実施形態では、PG4は、それが結合する酸素原子と一緒になって、シリルエーテルまたはアリールアルキルエーテルである。一部の実施形態では、PG4は、トリチルまたは置換トリチルである。一部の実施形態では、PG4は、トリチルである。
【0181】
別の態様では、本発明は、式Cの化合物
【化29】
[式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2Aは、好適なアミノ保護基もしくはR
2であるか、またはR
2AおよびPG
1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2Aと一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成する]
を提供する。
【0182】
一部の実施形態では、R1、R2、R3、Ar、Cy、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式Iの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、R2、R3、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式I-Aの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、R1、R2、R2A、R3、PG1、Ar、Cy、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式Iの化合物を調製する方法の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。
【0183】
例えば、一部の実施形態では、R1は、C1~8アルキル、-(C1~2アルキレン)-フェニル、-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)、またはC3~8シクロアルキルであり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC1~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、C1~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、C3~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、メチルまたはエチルである。一部の実施形態では、R1は、メチルである。一部の実施形態では、R1は、エチルである。
【0184】
一部の実施形態では、R2は、水素、C1~4アルキル、またはC3~5シクロアルキルである。一部の実施形態では、R2は、水素である。
【0185】
一部の実施形態では、Xは、Sである。一部の実施形態では、Xは、Oである。
【0186】
一部の実施形態では、nは、0である。
【0187】
一部の実施形態では、R2Aは、それが結合している-N(PG1)-部分と一緒になって、酸に不安定なカルバメートである。一部の実施形態では、R2Aは、BOCである。一部の実施形態では、R2Aは、R2である。一部の実施形態では、R2Aは、水素である。
【0188】
一部の実施形態では、PG1は、それが結合している-N(R2A)-部分と一緒になって、酸に不安定なカルバメートである。一部の実施形態では、PG1は、BOCである。一部の実施形態では、PG1およびR2Aは、それぞれBOCである。
【0189】
別の態様では、本発明は、式Dの化合物
【化30】
[式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SまたはOであり、
nは、0、1、2、または3である]
を提供する。
【0190】
一部の実施形態では、R1、R2、R3、Ar、Cy、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式Iの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、R2、R3、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式I-Aの化合物の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。一部の実施形態では、R1、R2、R3、Ar、Cy、X、およびnのそれぞれは、単独でも組合せでも、上記の式Iの化合物を調製する方法の説明において定義され、本明細書の実施形態で記載されている通りである。
【0191】
例えば、一部の実施形態では、R1は、C1~8アルキル、-(C1~2アルキレン)-フェニル、-(C1~2アルキレン)-(C3~5シクロアルキル)、またはC3~8シクロアルキルであり、そのそれぞれは、R3でn回置換されている。一部の実施形態では、R1は、R3でn回置換されているC1~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、C1~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、C3~8アルキルである。一部の実施形態では、R1は、メチルまたはエチルである。一部の実施形態では、R1は、メチルである。一部の実施形態では、R1は、エチルである。
【0192】
一部の実施形態では、R2は、水素、C1~4アルキル、またはC3~5シクロアルキルである。一部の実施形態では、R2は、水素である。
【0193】
一部の実施形態では、Xは、Sである。一部の実施形態では、Xは、Oである。
【0194】
一部の実施形態では、nは、0である。
【0195】
例示的な処置方法
一部の実施形態では、本発明は、患者におけるcAMP蓄積を阻害または予防する方法であって、前記患者に、本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0196】
一部の実施形態では、本発明は、外傷性脳傷害(TBI)、脳振盪、脳卒中、部分的なもしくは完全な脊髄離断、栄養失調、中毒性神経障害、脳髄膜症(meningoencephalopathy)、遺伝的障害によって引き起こされる神経変性、加齢性神経変性、血管疾患、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性外傷性脳症(CTE)、心血管疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、移植片拒絶、移植片対宿主病、高眼圧症、緑内障、臭気過敏(odor sensitivity)、嗅覚障害、2型糖尿病および/もしくは疼痛管理、呼吸器疾患、CNS機能の欠陥、学習障害、認知障害、耳の障害、メニエール病、内リンパ水腫、進行性難聴、浮動性めまい(dizziness)、回転性めまい(vertigo)、耳鳴、放射線がん治療と関連する付帯的脳損傷、片頭痛処置、高齢者の睡眠障害、てんかん、統合失調症、回復中のアルコール依存者が経験する症状、外科手術中の末梢神経系のニューロンもしくは神経への損傷、胃腸の状態、CNSによって媒介される疼痛、片頭痛、放射線がん治療と関連する付帯的脳損傷、うつ病、気分もしくは行動変化、認知症、迷走性挙動(erratic behavior)、自殺傾向、振戦、ハンチントン舞踏病、運動協調の喪失、聴覚消失、発語障害、ドライアイ、仮面様顔貌(hypomimia)、注意欠陥、記憶喪失、認知的困難、回転性めまい、構音障害、嚥下障害、眼の異常、または見当識障害、または嗜癖から選択される傷害、疾患、または状態を処置する方法であって、患者に、本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、外傷性脳傷害(TBI)、脳卒中、神経変性状態、または心疾患もしくは心血管疾患から選択される傷害、疾患、または状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0197】
一部の実施形態では、化合物は、A3アデノシン受容体(A3R)のアゴニストとして作用する。一部の実施形態では、化合物は、部分アゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、バイアス型アゴニスト(biased agonist)である。一部の実施形態では、化合物は、A3アデノシン受容体およびA1アデノシン受容体(A1R)におけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1アデノシン受容体(A1R)のアゴニストとして作用する。一部の実施形態では、化合物は、部分アゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、バイアス型アゴニストである。
【0198】
一部の実施形態では、本発明は、外傷性脳傷害(TBI)、脳卒中、神経変性状態、または心疾患もしくは心血管疾患から選択される傷害、疾患、または状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0199】
一部の実施形態では、本発明は、外傷性脳傷害(TBI)または脳卒中から選択される脳または中枢神経系(CNS)傷害または状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0200】
一部の実施形態では、本発明は、外傷性脳傷害(TBI)、放射線による損傷、脳卒中、片頭痛、心疾患もしくは心血管疾患、または神経変性障害を処置または改善する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0201】
一部の実施形態では、本発明は、外傷性脳傷害(TBI)、放射線による損傷、脳卒中、片頭痛、心疾患もしくは心血管疾患、または神経変性障害を処置または改善する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0202】
一部の実施形態では、本発明は、外傷性脳傷害(TBI)、脳卒中、神経変性状態、または心疾患もしくは心血管疾患から選択される傷害、疾患、または状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0203】
一部の実施形態では、傷害、疾患、または状態は、TBIである。
【0204】
一部の実施形態では、TBIは、脳振盪、爆風傷害、戦闘関連傷害、または頭部への軽度、中等度もしくは重度の衝撃(blow)から選択される。
【0205】
一部の実施形態では、傷害、疾患、または状態は、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、くも膜下出血、脳血管痙攣、または一過性虚血性発作(TIA)から選択される脳卒中である。
【0206】
一部の実施形態では、患者における神経保護または神経修復は、未処置患者と比較して増大する。
【0207】
一部の実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性外傷性脳症(CTE)、またはウイルス、アルコール中毒、腫瘍、毒素もしくは反復性脳傷害によって引き起こされた神経変性状態から選択される。
【0208】
一部の実施形態では、神経変性疾患は、パーキンソン病である。
【0209】
一部の実施形態では、傷害、疾患、または状態は、アルツハイマー病、片頭痛、脳手術、またはがん化学療法と関連する神経学的副作用である。
【0210】
一部の実施形態では、TBI、脳卒中、心虚血、または心筋梗塞後の回復期間は、未処置患者と比較して短縮される。
【0211】
一部の実施形態では、心疾患または心血管疾患は、心虚血、心筋梗塞、心筋症、冠動脈疾患、不整脈、心筋炎、心膜炎、狭心症、高血圧性心疾患、心内膜炎、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、またはアテローム性動脈硬化症から選択される。
【0212】
一部の実施形態では、心疾患または心血管疾患は、心虚血または心筋梗塞である。
【0213】
一部の実施形態では、化合物または組成物は、脳卒中、心虚血、または心筋梗塞を処置するために、傷害が発生した後からそれが解消されるまでの期間中、長期的に投与される。
【0214】
一部の実施形態では、本発明は、TBIまたは脳卒中に罹患している、それを必要とする患者における神経保護または神経修復を増大させる方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0215】
一部の実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩は、経口、静脈内、または非経口投与される。
【0216】
一部の実施形態では、化合物または組成物は、TBIまたは脳卒中後、24時間以内に投与される。
【0217】
一部の実施形態では、化合物または組成物は、TBIまたは脳卒中後、8時間以内に投与される。
【0218】
一部の実施形態では、化合物または組成物は、TBIまたは脳卒中後、少なくとも最初の8~48時間以内に投与される。
【0219】
一部の実施形態では、本発明は、心疾患または心血管疾患を処置する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0220】
一部の実施形態では、患者は、心虚血または心筋梗塞に罹患している。
【0221】
一部の実施形態では、化合物または組成物は、患者における心臓保護または損傷した心臓組織の再生を増大させる。
【0222】
一部の実施形態では、化合物または組成物は、患者における心虚血または心筋梗塞後の回復期間を、未処置患者と比較して短縮する。
【0223】
一部の実施形態では、本発明は、
(i)放射線によって引き起こされた脳損傷または放射線がん治療もしくは片頭痛処置と関連する付帯的脳損傷、
(ii)片頭痛、
(iii)脳傷害と関連する状態または神経変性状態、あるいは
(iv)自己免疫疾患もしくは状態、緑内障、耳の障害、進行性難聴、耳鳴、てんかん、または疼痛(例えば、CNSによって媒介される疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、または急性疼痛)
から選択される傷害、疾患、障害、または状態を処置する方法であって、
それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0224】
一部の実施形態では、化合物または組成物は、患者における神経保護または神経修復を、未処置患者と比較して増大させる。
【0225】
一部の実施形態では、脳傷害と関連する状態または神経変性状態は、てんかん、片頭痛、放射線がん治療と関連する付帯的脳損傷、うつ病、気分もしくは行動変化、認知症、迷走性挙動、自殺傾向、振戦、ハンチントン舞踏病、運動協調の喪失、聴覚消失、発語障害、ドライアイ、仮面様顔貌、注意欠陥、記憶喪失、認知的困難もしくは認知障害、CNS機能の欠陥、学習障害、回転性めまい、構音障害、嚥下障害、眼の異常、または見当識障害から選択される。
【0226】
一部の実施形態では、本発明は、心虚血または心筋梗塞に罹患している、それを必要とする患者における心臓保護または損傷した心臓組織の再生を増大させる方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0227】
驚くべきことに、ある特定のプリンヌクレオシド一、二、および三リン酸、例えば本明細書で開示されるヌクレオシドのホスフェートは、in vivoで脱リン酸化され、主にヌクレオシドとして存在し、すなわち、in vivoでは実質的にリン酸化されないことが見出された。理論によって拘束されることを望まないが、細胞膜の表面と血液および血漿中の循環との両方に存在する、ヌクレオチドの脱リン酸化に関与する酵素であるエクトヌクレオチダーゼによって、このような脱リン酸化が行われると考えられる(Ziganshin et al. Pflugers Arch. (1995) 429:412-418を参照されたい)。どのヌクレオチドアナログがエクトヌクレオチダーゼの基質であり、したがってin vivoで脱リン酸化されると予想されるかを予測することは極めて困難であることが多い。一部の実施形態では、脱リン酸化された化合物は、治療有効性に関与する。したがって、一部の実施形態では、対応するリン酸化されたモノホスフェート、ジホスフェートまたはトリホスフェートあるいはリン酸エステル、例えばそのアルキルまたはフェニルエステルは、治療効果に関与する薬剤のプロドラッグまたは前駆体である。
【0228】
一部の実施形態では、本発明の化合物は、血液脳関門(BBB)を通過することができる。「血液脳関門」または「BBB」という用語は、本明細書で使用される場合、厳密な意味でのBBBおよび血液脊髄関門(blood-spinal barrier)を指す。脳血管の内皮、基底膜および神経膠細胞からなる血液脳関門は、脳内への物質の浸透を制限するように作用する。一部の実施形態では、全薬物の脳/血漿比は、患者への投与(例えば、経口または静脈内投与)後、少なくともおよそ0.01である。一部の実施形態では、全薬物の脳/血漿比は、少なくともおよそ0.03である。一部の実施形態では、全薬物の脳/血漿比は、少なくともおよそ0.06である。一部の実施形態では、全薬物の脳/血漿比は、少なくともおよそ0.1である。一部の実施形態では、全薬物の脳/血漿比は、少なくともおよそ0.2である。
【0229】
プロトタイプのアデノシンA3アゴニスト、例えばCl-IB-MECAおよびMRS5698は、溶解度の低い親油性化合物であり、cLogP値が典型的に>2である。この親油性は、これらの化合物の高血漿タンパク質結合、高い脳結合に寄与し、脳内のA3受容体と相互作用するのに利用可能な薬物の遊離画分を少なくする主要要因である。一部の実施形態では、例えば神経学的および神経変性状態において、本発明の化合物の物理化学的特性は実質的に異なり、これらの化合物および関連化合物は、親水性化合物であり、cLogP<0であり、高い溶解度、低い血漿および脳結合、ならびにA3受容体と相互作用するのに利用可能な高い非結合薬物濃度をもたらす。
【0230】
したがって、一部の実施形態では、化合物は、約0.8未満、約0.7未満、約0.6未満、約0.5未満、約0.4未満、約0.3未満、約0.2未満、約0.1未満、約0.05未満、約0.01未満、または約0.005未満のcLogPを有している。一部の実施形態では、化合物は、約0未満、例えば約-0.1未満、約-0.2未満、約-0.3未満、約-0.4未満、約-0.5未満、約-0.6未満、約-0.7未満、約-0.8未満、または約-0.9未満、またはそれ未満のcLogPを有している。一部の実施形態では、化合物は、約0.5~0.9の血漿中の非結合画分を有している。一部の実施形態では、化合物は、約0.6~0.85、0.7~0.8、または約0.75の血漿中の非結合画分を有している。一部の実施形態では、化合物は、少なくとも約0.02、または少なくとも約0.03、少なくとも約0.04、少なくとも約0.05、少なくとも約0.06、少なくとも約0.07、少なくとも約0.08、少なくとも約0.09、少なくとも約0.1、少なくとも約0.12、少なくとも約0.15、または少なくとも約0.17、またはそれよりも高い脳内の非結合画分を有している。一部の実施形態では、化合物は、約0.6~0.85、0.7~0.8もしくは約0.75の血漿中の非結合画分、および/または少なくとも0.08の脳内の非結合画分を有している。
【0231】
化合物および薬学的に許容されるその組成物の使用
本明細書で使用される場合、「処置」、「処置する」および「処置すること」という用語は、本明細書に記載されている通り、疾患もしくは障害、またはその1つもしくは複数の症状を逆転させる、軽減する、その発生を遅延させる、または進行を阻害することを指す。一部の実施形態では、処置は、1つまたは複数の症状が発症した後に投与される。他の実施形態では、処置は、症状がない状態で投与される。例えば、処置は、症状発生の前に、感受性のある個体に投与される(例えば、症状の病歴に照らして、および/または遺伝的もしくは他の感受性因子に照らして)。処置はまた、症状が解消した後に、例えばそれらの再発を予防する、遅延させるまたはその重症度を低下するために継続される。
脳、CNS、心血管、および他の傷害および状態
【0232】
一部の実施形態では、本発明は、急性脳外傷と関連する脳損傷、ならびにより長期的な脳およびCNS疾患、ならびに心臓および心血管疾患および状態を予防および/または処置するための新しい手法を提供する。一態様では、本発明は、今やニューロンの非常に重要な天然のケアテイカー細胞(caretaker cell)として理解されている星状膠細胞、および脳のエネルギーの著しい部分を供給する星状膠細胞ミトコンドリアによって媒介される神経保護および神経修復効果を利用することによって、そのような傷害、疾患、および状態を処置する方法を提供する。別の態様では、本発明は、A3R受容体によって媒介される心臓保護的および再生効果によって、そのような傷害、疾患、および状態を処置する方法を提供する。神経保護および神経修復効果に関して、理論によって拘束されることを望まないが、A3Rおよび/またはP2Y1受容体によって媒介される星状膠細胞のエネルギー代謝の選択的増強が、星状膠細胞のケアテイカー機能、例えばそれらの神経保護および神経修復機能を促進し、次に、急性傷害および長期ストレスの両方に対するニューロンおよび他の細胞の耐性を増強すると考えられる。ある場合には、A3Rおよび/またはP2Y1および/またはA1R受容体によって媒介される1つまたは複数の経路を、バイアスをかけて、すなわち選択的または優先的に達成することが有利になり得、ここで1つまたは複数の望ましくない経路は、活性化されないか、またはより低い度合いに活性化される。星状膠細胞に加えてまたはその代替として、グリア、ミクログリア、ニューロン、内皮細胞、ならびに他の脳細胞および/またはCNS細胞型の神経保護または神経修復機能が活性化され得る。したがって、一態様では、本発明は、例えば星状膠細胞、グリア、ミクログリア、ニューロン、内皮細胞、または脳および/もしくはCNSの他の細胞によって媒介される神経保護および/または神経修復効果を増大させることによって、脳または中枢神経系(CNS)のある特定の状態、例えば脳傷害を処置する、改善する、またはそれからの回復を促進するための化合物およびその使用方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、化合物およびその使用方法を提供する。
【0233】
星状膠細胞は、ニューロンの支援および保護において非常に重要な役割を果たし、脳損傷、例えば虚血性傷害を引き起こす脳傷害の転帰に決定的に影響を及ぼす。星状膠細胞ミトコンドリア自体がこれらの脳機能において果たす中心的役割は、あまり理解されていない。例えば、星状膠細胞ミトコンドリアの阻害によって、腫脹が増大され、壊死性細胞死がもたらされる。ニューロンは、星状膠細胞ミトコンドリア機能が働かない場合にのみ、再発性伝播性脱分極によって永久的に傷害を受け、星状膠細胞ミトコンドリアは、伝播性脱分極を惹起する細胞外K+の病態生理学的上昇を低減するために必要である。星状膠細胞上のプリン作動性受容体の活性化は、ミトコンドリアのクエン酸回路機能を増強し、呼吸およびATP生成を増大させるミトコンドリアのCa2+の増加をもたらす。したがって、一態様では、本発明は、星状膠細胞プリン作動性受容体の活性化が脳細胞生存シグナル伝達経路を増強し、酸化ストレス中の星状膠細胞およびニューロンの両方の生存能を可能にするという発見に関する。さらに、活性化された星状膠細胞は、酸化ストレスに対する星状膠細胞およびニューロンの両方の耐性を補助する非常に重要な抗酸化物質である還元型グルタチオンを産生し、供給する。したがって、一態様では、本発明は、星状膠細胞プリン作動性受容体をモジュレートして、酸化ストレス、例えば脳傷害、虚血再灌流または神経変性状態によって引き起こされた酸化ストレス後の患者の脳内の1つまたは複数の細胞型の生存および生存能を促進する方法であって、それを必要とする患者に、本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0234】
一部の実施形態では、星状膠細胞の活性化は、開示される化合物を、1つまたは複数のプリン作動性受容体、例えばアデノシン受容体(AR)、例えば星状膠細胞と関連するかまたは星状膠細胞によって発現される受容体と接触させ、こうして1つまたは複数の受容体の活性をモジュレートすることにより達成される。一部の実施形態では、化合物は、星状膠細胞上のアデノシン受容体、例えばA1、A2A、A2BおよびA3に対する効果により星状膠細胞を活性化して、1つまたは複数の開示される疾患または状態を処置する。一部の実施形態では、開示される化合物は、それを必要とする患者への投与後、1つまたは複数の星状膠細胞機能に影響を及ぼす。一部の実施形態では、星状膠細胞機能は、グルタミン酸の取込み、反応性グリオーシス、腫脹、または代謝ストレスおよびその帰結を改善するように作用する神経栄養因子および神経毒性因子の放出から選択される。一部の実施形態では、化合物は、ARアゴニストである。一部の実施形態では、プリン作動性受容体は、A3アデノシン受容体(A3R)である。一部の実施形態では、化合物は、A3Rアゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体(A3R)、例えばヒトA3受容体(hA3R)における部分アゴニストまたはバイアス型アゴニストまたはバイアス型部分アゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A1アデノシン受容体(A1R)のアゴニストとして作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1および/またはA3受容体におけるバイアス型アゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。
【0235】
P2Y受容体は、Gタンパク質共役受容体であり、これらの受容体の異なるサブタイプは、シナプス連絡、細胞分化、イオンフラックス、血管拡張、血液脳関門透過性、血小板凝集およびニューロモジュレーション等のプロセスにおいて重要な役割を有している。プリン作動性P2Y受容体ファミリーの特徴付けられたメンバーには、アデニンヌクレオチドに結合する、哺乳動物P2Y1、P2Y11、P2Y12およびP2Y13受容体;ウラシルヌクレオチドに結合する、P2Y4、P2Y6およびP2Y14受容体;ならびに混合型選択性を有する、P2Y2およびげっ歯類P2Y4受容体が含まれる。一部の実施形態では、星状膠細胞の活性化は、開示される化合物を、1つまたは複数のプリン作動性受容体、例えばP2Y受容体、例えば星状膠細胞と関連するかまたは星状膠細胞によって発現される受容体と接触させ、こうして1つまたは複数の受容体の活性をモジュレートすることにより達成される。一部の実施形態では、化合物は、星状膠細胞と関連するか、または星状膠細胞によって発現されるP2Y受容体、例えばP2Y1、P2Y11、P2Y12およびP2Y13受容体に対する効果により星状膠細胞を活性化して、1つまたは複数の開示される疾患または状態を処置する。一部の実施形態では、P2Y受容体は、P2Y1受容体である。一部の実施形態では、P2Y1受容体は、細胞内ミトコンドリア膜上に位置している。一部の実施形態では、化合物は、P2Yアゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、例えばヒトP2Y1受容体におけるP2Y1アゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体、例えばヒトP2Y1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体におけるバイアス型アンタゴニストである。
【0236】
別の態様では、本発明は、それを必要とする患者における脳の傷害、疾患、または状態、例えばTBIまたは進行性神経変性障害から生じる脳傷害を処置または改善する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、対象は、TBI、脳振盪、脳卒中、部分的なもしくは完全な脊髄離断、または栄養失調に罹患している。他の実施形態では、対象は、中毒性神経障害、脳髄膜症、遺伝的障害によって引き起こされる神経変性、加齢性神経変性、もしくは血管疾患、または参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,691,775号に開示されている別の疾患に罹患している。一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする患者における脳の傷害、疾患、または状態、例えばTBIまたは進行性神経変性障害から生じる脳傷害を処置または改善する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA3Rアゴニストである、方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、それを必要とする患者における脳の傷害、疾患、または状態、例えばTBIまたは進行性神経変性障害から生じる脳傷害を処置または改善する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がP2Y1アゴニストである、方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、それを必要とする患者における脳の傷害、疾患、または状態、例えばTBIまたは進行性神経変性障害から生じる脳傷害を処置または改善する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA1アゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、表1に図示されている化合物のうちの1つ、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
【0237】
別の態様では、本発明は、疾患または状態に罹患している患者における神経保護、神経修復、または神経再生を促進または増大させる方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、患者は、神経変性疾患または状態に罹患している。一部の実施形態では、患者は、TBIに罹患している。
【0238】
別の態様では、本発明は、それを必要とする患者における星状膠細胞媒介性の神経保護または神経修復を促進する方法であって、患者に、有効量の開示される化合物を投与するステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする患者における星状膠細胞媒介性の神経保護または神経修復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA3Rアゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする患者における星状膠細胞媒介性の神経保護または神経修復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA1Rアゴニストである、方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、それを必要とする患者における星状膠細胞媒介性の神経保護または神経修復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がP2Y1アゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1アデノシン受容体(A1R)のアゴニストとして作用する。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、表1に記載されている化合物のうちの1つもしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物である。
【0239】
別の態様では、本発明は、それを必要とする患者におけるニューロン、グリア細胞、内皮細胞または他の脳細胞、例えば虚血性ペナンブラの脳細胞の生存を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする患者におけるニューロン、グリア細胞、または他の脳細胞、例えば虚血性ペナンブラの脳細胞の生存を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA3Rアゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする患者におけるニューロン、グリア細胞、または他の脳細胞、例えば虚血性ペナンブラの脳細胞の生存を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA1Rアゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする患者におけるニューロン、グリア細胞、内皮細胞または他の脳細胞、例えば虚血性ペナンブラの脳細胞の生存を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がP2Y1アゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1アデノシン受容体(A1R)のアゴニストとして作用する。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、表1に記載されている化合物のうちの1つもしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物である。
【0240】
さらなる実施形態では、患者は、脳傷害、例えば以下のものを有するか、または受けるリスクがある。したがって、以下で論じる状態を処置する方法も提供される。
【0241】
外傷性脳傷害
外傷性脳傷害(TBI)は、苦痛を伴う一般的な医学的状態であり、2020年までに、世界的な病的状態および死亡の第3の主要原因になると予測されている。TBIに対して承認されている処置はなく、ほとんどのTBI患者は、薬理学的処置を受けずに退院する(Witt 2006)。反復性TBI、例えば脳振盪は、数十年間にわたって様々な症状および能力障害をもたらす、加齢に伴う神経変性の引き金を引くことがある(McKee 2013)。TBIは、スポーツ関連傷害、自動車事故、墜落、爆発衝撃、身体的暴行等により起こることがある。傷害は、精神状態の短時間の変化、認知的困難、または意識喪失を伴う「軽度の」脳振盪から、傷害後の長期間の意識不明および/または健忘を伴う「重度の」脳振盪にわたり、複雑性および重症度が広範囲に及ぶ。米国では、年間約170万人がTBIをもたらす傷害を受け、医学的介入を求めており(USCSFおよびCDC)、CDCは、スポーツおよび他のレクリエーション目的で、病院または救急科を受診していない脳振盪インシデントが年間でさらに160万~380万件発生していると推定している(CDC、Langlois 2006)。アスリートのおよそ5~10%が、各スポーツシーズンに脳振盪を起こすことになる(Sports Concussion Institute 2012)。フットボールは、男性の脳振盪リスクが最も高いスポーツであるが(脳振盪の可能性は75%)、サッカーは女性で脳振盪リスクが最も高いスポーツである(脳振盪の可能性は50%)。TBIは、小児および若年成人における死亡および障害の主要原因であり(CDC)、その大部分は、一般に軍事関連の傷害を受けていた。2003年以降に配備された米国軍人のおよそ20%は、少なくとも1つのTBIを持続的に有していた(Chronic Effects of Neurotrauma Consortium (CENC)、Warden 2006、Scholten 2012、Taylor 2012、Gavett 2011、Guskiewicz 2005、Omalu 2005)。TBI関連の間接的および直接的医療費の合計は、年間770億ドルと推定される(UCSFおよびCDC)。少なくとも500万人の米国人が、TBIの結果として、活動を行うのに継続的な毎日の支援を必要としている(CDCおよびThurman 1999)。
【0242】
本発明による星状膠細胞の活性化は、そのような状態のための新しい処置選択肢となる。したがって、本明細書において一態様では、TBIを処置するか、またはTBIからの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、TBIは、脳への外傷(例えば、脳振盪、爆風傷害、戦闘関連傷害)、または脊髄への外傷(例えば、部分的なもしくは完全な脊髄離断)から選択される。一部の実施形態では、TBIは、頭部への軽度、中等度もしくは重度の衝撃から生じるか、開放性もしくは閉鎖性頭部創傷を含むか、または頭部への穿通性もしくは非穿通性衝撃から生じる。一部の実施形態では、本発明は、TBIを処置するか、またはTBIからの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA3Rアゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、TBIを処置するか、またはTBIからの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA1Rアゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、TBIを処置するか、またはTBIからの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がP2Y1アゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1アデノシン受容体(A1R)のアゴニストとして作用する。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、表1に記載されている化合物のうちの1つ、またはそれを含む薬学的に許容される組成物である。
【0243】
脳卒中
脳卒中は、酸素と栄養素を脳に輸送する血管が、虚血性閉塞に起因して、または脳内血管の出血性破裂により破壊され、脳の破壊された領域内のニューロン、グリア、および内皮細胞の死滅が引き起こされた場合に生じる。脳卒中の転帰は、損傷の位置と幅に応じて変わり、その損傷の影響は、損傷を受けた脳領域によって調節される身体機能において観察される。脳卒中は、片側または両側の麻痺、発語および言語障害、記憶喪失、行動変化、ならびにさらには死亡を引き起こすことがある。脳卒中は、米国において4番目の主要な死因であり、成人の能力障害の主要原因である。毎年、約800,000人が、新たなまたは再発性の脳卒中を経験している。毎日、2000人を超える米国人が脳卒中を起こし、これらのインシデントのうち400人を超える人が死亡している。脳卒中は、2010年、米国において死者19人のうち約1人を占めていた。20歳以上の推定680万人の米国人が、脳卒中を起こしていた(AHA and Go 2014)。2010年の時点で、脳卒中の年間の直接的および間接的コストは、365億ドルと推定された。脳卒中から数分以内に、血流の欠乏により、脳組織のコアが永久的な損傷を受ける。この損傷されたコアと正常な脳組織との間には、ペナンブラ組織として公知の組織領域があり、この組織領域は、血流の減少およびエネルギー代謝の一部の破壊による段階的に変わるストレス下にある。脳卒中インシデント後の最初の24~48時間にわたって、ペナンブラにおける神経細胞およびグリア細胞へのストレスは、一部の回復またはさらなる細胞死のいずれかにより解消される。
【0244】
一態様では、本発明は、脳卒中患者における神経保護治療の方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、そのような治療は、可能な限り多くのペナンブラを救い、および/またはさらなる急性組織損傷を制限し、および/またはニューロンの回復を促進する。別の態様では、脳卒中を処置するか、または脳卒中からの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。別の態様では、脳卒中に罹患している患者の神経保護、神経再生、または神経修復を促進または増大させる方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。別の態様では、脳卒中を処置するか、または脳卒中からの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA3Rアゴニストである、方法が提供される。別の態様では、脳卒中を処置するか、または脳卒中からの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA1Rアゴニストである、方法が提供される。一部の実施形態では、本発明は、脳卒中を処置するか、または脳卒中からの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がP2Y1アゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1アデノシン受容体(A1R)のアゴニストとして作用する。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、表1に記載されている化合物のうちの1つもしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物である。
【0245】
一部の実施形態では、脳卒中は、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、くも膜下出血、脳血管痙攣、または一過性虚血性発作(TIA)から選択される。一部の実施形態では、脳卒中は、虚血性である。一部の実施形態では、脳卒中は、出血性である。一部の実施形態では、化合物は、脳卒中の48時間以内に投与される。一部の実施形態では、化合物は、脳卒中の24時間以内に投与される。一部の実施形態では、化合物は、脳卒中の16時間以内に投与される。一部の実施形態では、化合物は、脳卒中の8時間、4時間、2時間、または1時間以内に投与される。一部の実施形態では、化合物は、脳卒中後、少なくとも最初の1~72時間にわたり投与される。一部の実施形態では、化合物は、脳卒中後、少なくとも最初の8~52時間にわたり投与される。一部の実施形態では、化合物は、脳卒中後、少なくとも最初の8~48時間にわたり投与される。一部の実施形態では、化合物は、脳卒中後、少なくとも最初の24~48時間にわたり投与される。一部の実施形態では、化合物は、脳卒中が生じた場合、脳卒中を処置するために長期的に投与される。一部の実施形態では、化合物は、一過性虚血性発作(TIA)を処置するために長期的に投与される。
【0246】
一部の実施形態では、化合物は、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、くも膜下出血、脳血管痙攣、一過性虚血性発作(TIA)を処置するために、または脳卒中のリスクが増大している患者、例えば、過去に脳卒中を発症し、さらなる脳卒中のリスクがある患者、例えば40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、または80歳を超える患者を処置するために、長期的に投与される。
【0247】
一部の実施形態では、化合物は、脳卒中によって引き起こされた虚血再灌流傷害を処置する。
【0248】
神経変性疾患
神経変性疾患は、脳および脊髄内のニューロンの進行性変性および/または死滅から生じる、不治であり、進行性の、最終的に衰弱させる症候群である。神経変性は、運動障害(運動失調)および/または認知機能障害(認知症)をもたらし、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および慢性外傷性脳症(CTE)等の様々な疾患を含む。多くの神経変性疾患は、主に起源が遺伝的であるが、他の原因には、ウイルス、アルコール中毒、腫瘍または毒素が含まれることがあり、また現在明らかになっている通り、反復性脳傷害も含まれることがある。
【0249】
ニューロンは、前述の要因に起因して経時的に細胞損傷を蓄積し、これは、長期の細胞ストレスと関連する多くの神経変性疾患、例えばアルツハイマー病およびパーキンソン病が高齢個体において発生する理由であると一般に考えられている。認知症は、神経変性疾患の主な転帰であり、ADが症例のおよそ60~70%を占めている(Kandale 2013)。上記で論じた通り、神経保護および神経修復機序を活性化すると、1つまたは複数の神経変性疾患の進行を改善することができる。したがって、一態様では、本発明は、神経変性疾患を処置するか、または神経変性疾患からの回復を促進する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0250】
一態様では、本発明は、神経変性疾患に罹患している患者における神経保護または神経修復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、神経変性疾患に罹患している患者における神経保護または神経修復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA3Rアゴニストである、方法が提供される。一部の実施形態では、神経変性疾患に罹患している患者における神経保護または神経修復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA1Rアゴニストである、方法が提供される。他の実施形態では、神経変性疾患に罹患している患者における神経保護または神経修復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がP2Y1アゴニストである、方法が提供される。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1アデノシン受容体(A1R)のアゴニストとして作用する。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、表1に記載されている化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物である。
【0251】
アルツハイマー病(AD)
推定520万人のあらゆる年齢の米国人が、2014年にはADに罹患していた。65歳およびそれより高齢の人口の11%がADを有している(Alzheimer’s Association)。2050年までに、ADを有している65歳およびそれより高齢の人の数は、ほぼ3倍の予測値1380万人になると予測されている。米国では、AD患者にケアを提供するコストは、年間約2140億ドルである。このコストの70%は、メディケアおよびメディケイドによって負担されている。現在の傾向では、これらのコストは、2050年までに年間1.2兆ドルに増大すると予測され得る。
【0252】
本発明による星状膠細胞の活性化、ならびに神経保護および神経修復の促進は、ADのための新しい処置選択肢となる。したがって、本明細書では、一態様において、ADに罹患している患者のADを処置するか、または神経保護もしくは神経修復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、本発明は、ADに罹患している患者のADを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA3Rアゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、ADに罹患している患者のADを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA1Rアゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、ADに罹患している患者のADを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がP2Y1アゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1アデノシン受容体(A1R)のアゴニストとして作用する。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、表1に記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物である。
【0253】
パーキンソン病(PD)
PDを有する100万人もの米国人が生活しており、毎年およそ60,000人の米国人が新たに診断されているが、これには検出されていない数千の症例は含まれていない(Parkinson’s Disease Foundation)。医学的処置、社会保障費用および損失利益を含む、PDの直接的および間接的費用を合わせた総コストは、米国では、年間ほぼ250億ドルになると推定される(Parkinson’s Disease FoundationおよびHuse 2005)。
【0254】
本発明による神経保護および神経修復の活性化は、PDのための新しい処置選択肢となる。したがって、本明細書において一態様では、PDに罹患している患者におけるPDを処置するか、または神経保護もしくは神経修復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、本発明は、PDに罹患している患者のPDを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA3Rアゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、PDに罹患している患者のPDを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA1Rアゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、PDに罹患している患者のPDを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がP2Y1アゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1アデノシン受容体(A1R)のアゴニストとして作用する。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、表1に記載されている化合物のうちの1つもしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物である。
【0255】
多発性硬化症(MS)
米国では400,000人を超える人が、MSを有している。若年成人において、MSは、中枢神経系の最も蔓延している疾患である(Multiple Sclerosis Foundation)。星状膠細胞には、MSによって引き起こされる神経細胞ミエリンコーティングの破壊を、MS患者の損傷を受けたCNSにおける神経修復効果および治癒の促進によって逆転させる潜在的可能性がある。
【0256】
したがって、本発明によるCNSの神経保護および神経修復の活性化は、MSのための新しい処置選択肢となる。したがって、本明細書において一態様では、MSに罹患している患者におけるMSを処置するか、または神経保護もしくは神経修復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、本発明は、MSに罹患している患者におけるMSを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA3Rアゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、MSに罹患している患者におけるMSを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA1Rアゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、MSに罹患している患者におけるMSを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がP2Y1アゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1アデノシン受容体(A1R)のアゴニストとして作用する。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、表1に記載されている化合物のうちの1つもしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物である。
【0257】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)/ルー・ゲーリック病
米国では、毎年およそ5,600人の人がALSと診断されており、同時に30,000人もの米国人がその疾患を有している可能性がある(ALS Association)。星状膠細胞の活性化は、ALS患者におけるニューロンおよびそれらの接続の回復および修復の刺激を提供することができる。
【0258】
したがって、本明細書において一態様では、ALSに罹患している患者におけるALSを処置するか、または神経保護もしくは神経修復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。また他の実施形態では、ALS患者におけるニューロンおよびそれらの接続の回復および修復を刺激する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、本発明は、ALSに罹患している患者におけるALSを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA3Rアゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、ALSに罹患している患者におけるALSを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA1Rアゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、ALSに罹患している患者におけるALSを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がP2Y1アゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1アデノシン受容体(A1R)のアゴニストとして作用する。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、表1に記載されている化合物のうちの1つもしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物である。
【0259】
慢性外傷性脳症(CTE)
CTE(タウオパチーの一形態)は、頭部に1回または複数回の(多くの場合、複数回、または時間の経過と共に繰り返される)重度の衝撃を受けた個体に見出される進行性の神経変性疾患である。CTEは、アメリカンフットボール、サッカー、ホッケー、プロレスリング、スタントパフォーマンス、雄牛乗りおよびロデオパフォーマンス、モトクロス、ならびに脳外傷および/または度重なる脳振盪を経験している他の接触型スポーツのプロのスポーツ選手において最も頻繁に診断される。CTE罹患者のサブセットは、ALSに似た運動ニューロン疾患症状によって特徴付けられる慢性外傷性脳筋症(CTEM)を有している。進行性筋力低下ならびに運動異常および歩行異常は、CTEMの初期徴候であると考えられている。CTEの第1段階の症状には、進行性の注意欠陥、見当識障害、浮動性めまい、および頭痛が含まれる。第2段階の症状は、記憶喪失、社会的不安定(social instability)、迷走性挙動、および判断力低下を含む。第3および第4段階では、患者は、進行性認知症、動作緩慢、振戦、仮面様顔貌、回転性めまい、発語障害、聴覚消失、および自殺傾向を患っており、構音障害、嚥下障害、および眼の異常、例えば眼瞼下垂がさらに含まれ得る。
【0260】
したがって、本明細書において一態様では、CTEに罹患している患者におけるCTEを処置もしくは予防するか、または神経保護もしくは神経修復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。また他の実施形態では、CTE患者におけるニューロンおよびそれらの接続の回復および修復を刺激する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、化合物は、CTEの第1段階、第2段階、第3段階、または第4段階の1つまたは複数の症状を処置する。一部の実施形態では、本発明は、CTEに罹患している患者のCTEを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA3Rアゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、CTEに罹患している患者のCTEを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がA1Rアゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、CTEに罹患している患者のCTEを処置するか、または神経保護もしくは神経回復を促進する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含み、ここで化合物がP2Y1アゴニストである、方法を提供する。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1アデノシン受容体(A1R)のアゴニストとして作用する。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、表1に記載されている化合物のうちの1つもしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物である。
【0261】
顕微鏡的スケールでは、その病理には、神経細胞死、タウ沈着、TAR DNA結合タンパク質43(TDP43)ベータアミロイド沈着、白質変化、および他の異常が含まれる。タウ沈着には、高密度神経原線維変化(NFT)、神経突起、ならびに星状膠細胞および他のグリア細胞から構成されるグリアタングル(glial tangle)の存在の増加が含まれる。したがって、一部の実施形態では、方法は、神経細胞死、タウ沈着、TAR DNA結合タンパク質43(TDP43)ベータアミロイド沈着、白質変化、およびCTEと関連する他の異常を処置する、クリアランスを増強する、または予防する。
【0262】
一部の実施形態では、本発明は、神経変性疾患、例えば本明細書に記載される疾患のうちの1つを処置するための、本明細書で開示される化合物、例えば、A3Rのバイアス型アゴニスト、部分アゴニストもしくはバイアス型部分アゴニスト、またはA3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニスト、またはP2Y1のバイアス型アゴニスト、部分アゴニストもしくはバイアス型部分アゴニストの長期投与を提供する。一部の実施形態では、本発明は、神経変性疾患、例えば本明細書に記載される疾患のうちの1つを処置するための、本明細書で開示される化合物、例えば、A1Rのバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストの長期投与を提供する。
【0263】
心血管疾患
開示される化合物はまた、様々な心血管疾患および状態の処置において有用である。一部の実施形態では、本発明は、心疾患(心臓疾患)または心血管疾患、例えば、心虚血、心筋梗塞、心筋症、冠状動脈疾患、不整脈、心筋炎、心膜炎、狭心症、高血圧性心疾患、心内膜炎、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、またはアテローム性動脈硬化症を処置する方法であって、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与することを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、開示される化合物は、例えば、A3R受容体におけるバイアス型アゴニズム、部分アゴニズム、もしくはバイアス型部分アゴニズム、またはA3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムを介して、ATP感受性カリウムチャネルをモジュレートする。一部の実施形態では、開示される化合物は、A1R受容体におけるバイアス型アゴニズム、部分アゴニズム、またはバイアス型部分アゴニズムを介して、ATP感受性カリウムチャネルをモジュレートする。
【0264】
一部の実施形態では、心疾患または心血管疾患は、心虚血または心筋梗塞である。
【0265】
一部の実施形態では、本発明は、心(心臓)または心血管疾患または状態に罹患している患者における心臓保護、心臓修復、または心臓再生を促進または増大させる方法であって、患者に、有効量の開示される化合物、例えば表1に記載されている化合物のうちの1つもしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0266】
一部の実施形態では、患者が罹患している心疾患(心臓疾患)または心血管疾患は、心虚血、心筋梗塞、心筋症、冠状動脈疾患、不整脈、心筋炎、心膜炎、狭心症、高血圧性心疾患、心内膜炎、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、またはアテローム性動脈硬化症である。
【0267】
一部の実施形態では、化合物は、A3アデノシン受容体(A3R)のアゴニストとして作用する。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1アデノシン受容体(A1R)のデュアルアゴニストとして作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1Rのアゴニストとして作用する。
【0268】
他の疾患
例えば星状膠細胞ミトコンドリア活性を増大させることによって、神経保護等の有益な効果をモジュレートする化合物も、他の様々な疾患を処置する潜在可能性を有している。例えば、本発明で開示される神経保護における星状膠細胞の役割に起因して、例えば、A3R、A1R、および/またはP2Y1受容体のモジュレーションを介する星状膠細胞の活性化は、以下に論じられる様々な疾患および状態を処置するのに有用である。
【0269】
したがって、一部の実施形態では、本発明は、疾患または状態に罹患している患者における神経変性を処置する方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0270】
一部の実施形態では、本発明は、疾患または状態に罹患している患者における神経保護、神経修復、または神経再生を促進または増大させる方法であって、患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0271】
一部の実施形態では、疾患または状態は、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、ならびに/または移植片拒絶および移植片対宿主疾患から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2007/20018を参照されたい)。他の実施形態では、疾患または状態は、高眼圧症および/または緑内障から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2011/77435を参照されたい)。他の実施形態では、疾患または状態は、臭気過敏および/または嗅覚障害から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれるEP1624753を参照されたい)。他の実施形態では、疾患または状態は、2型糖尿病である(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0256086号を参照されたい)。
【0272】
他の実施形態では、疾患または状態は、呼吸器疾患および/または心血管(CV)疾患から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、FASEB J. (2013) 27:1118.4(会合の抄録)を参照されたい)。他の実施形態では、疾患または状態は、CNS機能の欠陥、学習障害および/または認知障害から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Neuropsychopharmacology. 2015 Jan;40(2):305-14. doi: 10.1038/npp.2014.173. Epub 2014 Jul 15. "Impaired cognition after stimulation of a P2Y1 receptor in the rat medial prefrontal cortex," Koch, H. et al. PMID: 25027332を参照されたい)。他の実施形態では、疾患または状態は、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、プリオン病、および/または筋萎縮性側索硬化症から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,691,775号を参照されたい)。他の実施形態では、疾患または状態は、耳の障害、メニエール病、内リンパ水腫、進行性難聴、浮動性めまい、回転性めまい、耳鳴、放射線がん治療および/または片頭痛処置と関連する付帯的脳損傷から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照によりそのそれぞれが本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0306225号、UY31779、および米国特許第8,399,018号を参照されたい)。他の実施形態では、疾患または状態は、病理学的睡眠撹乱、うつ病、高齢者の睡眠障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、てんかん、統合失調症、および/または回復中のアルコール依存者が経験する症状から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0241990号を参照されたい)。他の実施形態では、疾患または状態は、外科手術中の末梢神経系のニューロンまたは神経への損傷から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,685,372号を参照されたい)。他の実施形態では、疾患または状態は、がん、例えば前立腺がんである(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれるBiochem Pharmacol. 2011 August 15; 82(4): 418-425. doi:10.1016/j.bcp.2011.05.013. "Activation of the P2Y1 Receptor Induces Apoptosis and Inhibits Proliferation of Prostate Cancer Cells," Qiang Wei et al.を参照されたい)。他の実施形態では、疾患または状態は、1つまたは複数の胃腸の状態、例えば便秘および/または下痢から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれるActa Physiol (Oxf). 2014 Dec;212(4):293-305. doi: 10.1111/apha.12408. "Differential functional role of purinergic and nitrergic inhibitory cotransmitters in human colonic relaxation," Mane N1, Gil V, Martinez-Cutillas M, Clave P, Gallego D, Jimenez M.、およびNeurogastroenterol. Motil. 2014 Jan;26(1):115-23. doi: 10.1111/nmo.12240. Epub 2013 Oct 8. "Calcium responses in subserosal interstitial cells of the guinea-pig proximal colon," Tamada H., Hashitani H. PMID: 24329947を参照されたい)。
【0273】
他の実施形態では、疾患または状態は、脳のがん、例えば神経膠芽腫から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれるPurinergic Signal. 2015 Sep;11(3):331-46. doi: 10.1007/s11302-015-9454-7. Epub 2015 May 15. "Potentiation of temozolomide antitumor effect by purine receptor ligands able to restrain the in vitro growth of human glioblastoma stem cells." D’Alimonte, I. et al. PMID: 25976165を参照されたい)。他の実施形態では、疾患または状態は、胃腸障害、例えば下痢から選択される(これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれるActa Physiol (Oxf). 2014 Dec;212(4):293-305. doi: 10.1111/apha.12408. "Differential functional role of purinergic and nitrergic inhibitory cotransmitters in human colonic relaxation," Mane N., Gil V, Martinez-Cutillas M, Clave P, Gallego D, Jimenez M.を参照されたい)。他の実施形態では、疾患または状態は、認知障害である(この状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれるNeuropsychopharmacology. 2015 Jan;40(2):305-14. doi: 10.1038/npp.2014.173. Epub 2014 Jul 15. "Impaired cognition after stimulation of P2Y1 receptors in the rat medial prefrontal cortex," Koch H, Bespalov A, Drescher K, Franke H, Kruegel U. PMID: 25027332を参照されたい)。
【0274】
一部の実施形態では、本発明は、脳傷害または神経変性状態と関連する疾患または状態、例えばてんかん、片頭痛、放射線がん治療と関連する付帯的脳損傷、うつ病、気分もしくは行動変化、認知症、迷走性挙動、自殺傾向、振戦、ハンチントン舞踏病、運動協調の喪失、難聴、発語障害、ドライアイ、仮面様顔貌、注意欠陥、記憶喪失、認知的困難、回転性めまい、構音障害、嚥下障害、眼の異常、または見当識障害を処置する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の開示される化合物を投与するステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、化合物は、A3Rアゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A1Rアゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1アゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、表1に記載されている化合物のうちの1つもしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物である。
【0275】
さらなる実施形態では、本発明は、それを必要とする患者におけるアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、およびプリオン病からなる群から選択される神経変性疾患を処置する方法であって、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、化合物は、A3Rアゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A1Rアゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1アゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストもしくはアンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、表1に記載されている化合物のうちの1つもしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物である。
【0276】
一部の実施形態では、認知または神経機能の改善は、改訂版ウェクスラー記憶スケールの遅延言語再生タスク(delayed verbal recall task)において約1%~20%の間のスコア増加として測定される。例えば、認知機能の改善は、約1%~10%の間、または約1%~5%の間のスコアの増加として測定され得る。
【0277】
一部の実施形態では、本発明は、外傷性脳傷害(TBI)または脳卒中から選択される脳または中枢神経系(CNS)傷害または状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0278】
一部の実施形態では、脳または中枢神経系(CNS)傷害または状態は、TBIである。一部の実施形態では、TBIは、脳振盪、爆風傷害、戦闘関連傷害、または頭部への軽度、中等度もしくは重度の衝撃から選択される。
【0279】
一部の実施形態では、本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物は、TBIまたは脳卒中の24時間以内に投与される。
【0280】
一部の実施形態では、本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物は、TBIまたは脳卒中の8時間以内に投与される。
【0281】
一部の実施形態では、本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物は、TBIまたは脳卒中後の少なくとも最初の8~48時間の間に投与される。
【0282】
一部の実施形態では、脳または中枢神経系(CNS)傷害または状態は、脳卒中である。
【0283】
一部の実施形態では、本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物は、脳卒中を処置するために、脳卒中が発症した後からそれが解消されるまでの期間中、長期的に投与される。
【0284】
一部の実施形態では、患者における神経保護または神経修復は、未処置患者と比較して増大する。
【0285】
一部の実施形態では、化合物は、ヒトA3アデノシン受容体(A3R)におけるバイアス型部分アゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、ヒトA1アデノシン受容体(A1R)におけるバイアス型部分アゴニストである。
【0286】
一部の実施形態では、A3Rは、A3R受容体の神経保護機能に向けてバイアスされた方式で部分的にアゴナイズされる。
【0287】
一部の実施形態では、本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物は、経口、静脈内、または非経口投与される。
【0288】
一態様では、本発明は、TBIまたは脳卒中に罹患している患者における神経保護または神経修復を増大させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0289】
一部の実施形態では、神経保護または神経修復は、TBIまたは脳卒中後の回復期間を、未処置患者と比較して短縮する。
【0290】
一部の実施形態では、化合物は、ヒトA3アデノシン受容体(A3R)におけるバイアス型部分アゴニストであり、A3Rは、A3R受容体の神経保護機能に向けてバイアスされた方式で部分的にアゴナイズされる。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、ヒトA1アデノシン受容体(A1R)におけるバイアス型部分アゴニストであり、A1Rは、A1R受容体の神経保護機能に向けてバイアスされた方式で部分的にアゴナイズされる。一部の実施形態では、化合物は、A1Rにおけるアゴニストとして作用する。
【0291】
一部の実施形態では、本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物は、経口、静脈内、または非経口投与される。
【0292】
一態様では、本発明は、外傷性脳傷害(TBI)、脳卒中、神経変性状態、または心疾患もしくは心血管疾患から選択される傷害、疾患、または状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0293】
一部の実施形態では、傷害、疾患、または状態は、TBIである。一部の実施形態では、TBIは、脳振盪、爆風傷害、戦闘関連傷害、または頭部への軽度、中等度もしくは重度の衝撃から選択される。
【0294】
一部の実施形態では、傷害、疾患、または状態は、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、くも膜下出血、脳血管痙攣、または一過性虚血性発作(TIA)から選択される脳卒中である。
【0295】
一部の実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性外傷性脳症(CTE)、またはウイルス、アルコール中毒、腫瘍、毒素もしくは反復性脳傷害によって引き起こされた神経変性状態から選択される。
【0296】
一部の実施形態では、傷害、疾患、または状態は、パーキンソン病である。
【0297】
一部の実施形態では、傷害、疾患、または状態は、アルツハイマー病、片頭痛、脳手術、またはがん化学療法と関連する神経学的副作用である。
【0298】
一部の実施形態では、心疾患または心血管疾患は、心虚血、心筋梗塞、心筋症、冠動脈疾患、不整脈、心筋炎、心膜炎、狭心症、高血圧性心疾患、心内膜炎、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、またはアテローム性動脈硬化症から選択される。
【0299】
一部の実施形態では、心疾患または心血管疾患は、心虚血または心筋梗塞である。
【0300】
一部の実施形態では、本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物は、脳卒中、心虚血、または心筋梗塞を処置するために、傷害が発生した後からそれが解消されるまでの期間中、長期的に投与される。
【0301】
一部の実施形態では、患者における神経保護または神経修復は、未処置患者と比較して増大する。
【0302】
一部の実施形態では、A3Rは、他のA3R媒介性経路をほとんどもしくは全く活性化することなく細胞内カルシウム動員を優先的に活性化することにより、またはGq11媒介性細胞内カルシウム動員、cAMP生成のGi媒介性モジュレーションもしくはERK1/2およびAktのGi媒介性リン酸化を優先的に活性化することにより、A3R受容体の神経保護機能に向けてバイアスされた方式でアゴナイズされる。
【0303】
一部の実施形態では、A3Rは、他のA3R媒介性経路をほとんどもしくは全く活性化することなく細胞内カルシウム動員を優先的に活性化することにより、またはGq11媒介性細胞内カルシウム動員、cAMP生成のGi媒介性モジュレーションもしくはERK1/2およびAktのGi媒介性リン酸化を優先的に活性化することにより、A3R受容体の心臓保護機能に向けてバイアスされた方式で部分的にアゴナイズされる。
【0304】
一部の実施形態では、方法は、がん化学療法または脳外科手術と関連するか、またはそれから生じる神経学的副作用に罹患している患者における神経保護または神経修復を増大させる。
【0305】
一部の実施形態では、本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物は、経口投与される。
【0306】
一態様では、本発明は、TBIまたは脳卒中に罹患している患者における神経保護または神経修復を増大させ、それによってTBIまたは脳卒中を処置する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0307】
一態様では、本発明は、心虚血または心筋梗塞に罹患している患者における損傷した心臓組織の心臓保護または再生を増大させ、それによって心虚血または心筋梗塞を処置する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0308】
一部の実施形態では、TBI、脳卒中、心虚血、または心筋梗塞後の回復期間は、未処置患者と比較して短縮される。
【0309】
一部の実施形態では、A3Rは、A3R受容体の神経保護機能に向けてバイアスされた方式で部分的にアゴナイズされる。
【0310】
一部の実施形態では、A3Rは、A3R受容体の心臓保護機能に向けてバイアスされた方式で部分的にアゴナイズされる。
【0311】
一部の実施形態では、本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物は、経口投与される。
【0312】
一部の実施形態では、化合物は、完全A3Rアゴニストと比較して改善された心臓保護機能を有する、A3Rのバイアス型アゴニストである。
【0313】
一部の実施形態では、化合物は、以下のA3R媒介性経路:Gq11媒介性細胞内カルシウム動員の活性化、cAMP生成のGi媒介性モジュレーション、ERK1/2およびAktのGi媒介性リン酸化、またはベータ-アレスチン活性化のモジュレーションの1つまたは複数を優先的に活性化することにより、完全A3Rアゴニストと比較して改善された心臓保護機能を有する、A3Rのバイアス型アゴニストである。
【0314】
一部の実施形態では、化合物は、その他のA3R媒介性経路をほとんどまたは全く活性化することなく細胞内カルシウム動員を優先的に活性化することにより、完全A3Rアゴニストと比較して改善された心臓保護機能を有する、A3Rのバイアス型アゴニストである。
【0315】
一部の実施形態では、化合物は、完全A3Rアゴニストと比較して改善された心臓保護機能を有する、A3Rの部分アゴニストである。
【0316】
嗜癖性障害
開示される化合物はまた、嗜癖、嗜癖性行動(addictive behavior)、行動嗜癖(behavioral addiction)、強迫性障害および行動、ならびに関連状態を処置するのに有用である。
【0317】
そのような嗜癖、行動、および障害の処置におけるある特定の化合物の使用は、WO/2019/157317に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0318】
コカイン自己投与マウスは、脳のVTA(腹側被蓋野)において著しく高いグルタミン酸レベルを示す。VTA、特にVTAドーパミンニューロンは、報酬系、動機づけ、認知、および薬物嗜癖においていくつかの機能を果たしており、いくつかの精神障害の病巣になり得る。グルタミン酸レベルの上昇は、少なくとも部分的に、星状膠細胞へのグルタミン酸の取込みの喪失に起因すると思われる。理論によって拘束されることを望まないが、グルタミン酸の利用可能性の減少が、星状膠細胞機能に対して悪影響を及ぼし、この機能の喪失が、ニューロン活性および薬物探索行動に影響を及ぼすと考えられる。ここで、本明細書で開示される化合物は、例えば、そのような星状膠細胞機能の喪失を逆転させることによって、嗜癖個体における再発を処置または予防することが見出された。そのような星状膠細胞機能の喪失は、部分的に、星状膠細胞におけるグルタミン酸トランスポーター(GLT-1)の発現の低下に起因し得る。星状膠細胞はグルタミン酸を代謝してATPを生成するので、これは、グルタミン酸の取込みを損ない、星状膠細胞の酸化的代謝および下流のATP依存性プロセスを弱め、それによってVTAニューロン活性のための最適な環境を維持するそれらの能力を弱める可能性が高い。
【0319】
したがって、一態様では、本発明は、嗜癖、嗜癖性行動、行動嗜癖、脳内報酬系障害、強迫性障害、または関連状態を予防する、改善する、処置する、またはそれからの回復を促進する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0320】
一部の実施形態では、嗜癖は、嗜癖性物質に対するものである。一部の実施形態では、嗜癖性物質は、処方薬または娯楽的薬物である。
【0321】
一部の実施形態では、嗜癖性物質は、アルコール、ニコチン、刺激物質、カンナビノイドアゴニスト、またはオピオイドアゴニストから選択される。一部の実施形態では、嗜癖性物質は、ヘロイン、コカイン、アルコール、吸入剤、オピオイド、ニコチン、アンフェタミン、またはそれらの合成アナログ、塩、組成物もしくは組合せから選択される。
【0322】
一部の実施形態では、アンフェタミンは、ブプロピオン、カチノン、MDMA、またはメタンフェタミンから選択される。
【0323】
一部の実施形態では、処方薬または娯楽的薬物は、カンナビノイドアゴニストまたはオピオイドアゴニストから選択される。
【0324】
一部の実施形態では、嗜癖は、アルコールまたはニコチン嗜癖である。
【0325】
一部の実施形態では、対象は、多剤乱用者である。
【0326】
一部の実施形態では、処方薬または娯楽的薬物は、コカイン、ヘロイン、ブプロピオン、カチノン、MDMA、もしくはメタンフェタミンモルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルホン、フェンタニル、またはそれらの組合せから選択される。
【0327】
一部の実施形態では、開示される化合物は、星状膠細胞、例えば星状膠細胞ミトコンドリアによって媒介されるエネルギー代謝を増大させる。一部の実施形態では、化合物は、乱用の潜在的可能性がある物質によって引き起こされた星状膠細胞へのグルタミン酸の取込みの喪失を逆転させる。一部の実施形態では、化合物は、嗜癖によって引き起こされた脳内報酬系の再構築を少なくとも部分的に逆転させる。一部の実施形態では、そのような効果は、脳またはCNSのアデノシンA3受容体、例えばVTAの星状膠細胞A3R、またはミクログリアA3Rによって媒介される。
【0328】
別の態様では、本発明は、嗜癖、嗜癖性行動、行動嗜癖 脳内報酬系障害、強迫性障害、または関連状態を、星状膠細胞、グリア、ミクログリア、ニューロン、内皮細胞、または脳および/もしくはCNSの他の細胞によって媒介されるエネルギー代謝を増大させることによって予防する、改善する、処置する、またはそれからの回復を促進する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0329】
一部の実施形態では、方法は、対象における嗜癖または嗜癖性行動の再発を処置または予防する。一部の実施形態では、対象は、1種または複数の嗜癖性物質、例えば嗜癖性薬物(乱用の潜在的可能性がある薬物)に嗜癖になっている。以下に記載される通り、そのような薬物には、処方薬物および娯楽的薬物、例えばヘロイン、コカイン、ニコチン、またはオピオイドアゴニストが含まれる。
【0330】
別の態様では、本発明は、1種または複数の嗜癖性物質または薬物への嗜癖によって引き起こされた離脱を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与することを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、化合物は、離脱状態にある嗜癖個体の離脱症状を低減する。一部の実施形態では、化合物は、離脱状態にある嗜癖個体の離脱を処置する。一部の実施形態では、方法は、離脱を処置するための別の薬物を併用投与することと、必要に応じてカウンセリング、例えば心理療法を行うこととをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、認知行動療法をさらに含む。一部の実施形態では、方法は、デジタル療法をさらに含む。デジタル療法には、例えば、reSETまたはreSET-O(Pear Therapeutics)が含まれる。
【0331】
一部の実施形態では、本発明は、強迫性障害または強迫性行動の再発を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0332】
一部の実施形態では、強迫性障害は、強迫性障害(obsessive-compulsive disorder)(OCD)、トゥーレット症候群、抜毛癖、食欲不振、過食症、不安障害、精神病、または外傷後ストレス障害である。
【0333】
別の態様によれば、本発明は、1つまたは複数の行動嗜癖および嗜癖性行動または障害を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、本明細書で記載される化合物もしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物を投与することを含む、方法を提供する。行動嗜癖および嗜癖性障害は、ある特定の活動中に脳内化学物質(例えばセロトニン、アドレナリン、エピネフリン等)が放出されることにより感じる中毒から生じる。そのような障害は当技術分野で公知であり、それには、数例を挙げるとギャンブル、性嗜癖、ポルノ嗜癖、摂食障害、買い物嗜癖、激怒/憤怒、仕事中毒、運動嗜癖、リスクテイキング嗜癖(例えば窃盗癖および放火癖)、完全主義、インターネットまたはゲーム嗜癖、ならびに電子デバイスの強迫的使用、例えばメール送受信およびソーシャルメディアのチェックが含まれる。
【0334】
一部の実施形態では、星状膠細胞の活性化は、開示される化合物を、1つまたは複数のプリン作動性受容体、例えばアデノシン受容体(AR)、例えば星状膠細胞またはミクログリアと関連するか、またはそれらによって発現される受容体と接触させ、こうして1つまたは複数の受容体の活性をモジュレートすることにより達成される。一部の実施形態では、化合物は、星状膠細胞上のアデノシン受容体、例えばA1、A2A、A2BおよびA3に対する効果により星状膠細胞を活性化して、1つまたは複数の開示される疾患または状態を処置する。一部の実施形態では、開示される化合物は、それを必要とする対象に投与された後、1つまたは複数の機能、例えば、星状膠細胞のエネルギー代謝またはニューロン機能に対して影響を有するグルタミン酸取込みに影響を及ぼし、したがって1つまたは複数の疾患または状態を処置する。一部の実施形態では、化合物は、ARアゴニストである。一部の実施形態では、プリン作動性受容体は、アデノシンA3受容体(A3R)である。一部の実施形態では、化合物は、A3Rアゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体(A3R)、例えばヒトA3受容体(hA3R)における部分アゴニストまたはバイアス型アゴニストまたはバイアス型部分アゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3受容体におけるバイアス型アンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、A3RおよびA1Rにおけるデュアルアゴニズムによって作用する。一部の実施形態では、化合物は、A1Rアゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、表1に記載されている化合物のうちの1つもしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物である。
【0335】
P2Y受容体は、Gタンパク質共役受容体であり、これらの受容体の様々なサブタイプは、シナプス連絡、細胞分化、イオンフラックス、血管拡張、血液脳関門透過性、血小板凝集、およびニューロモジュレーション等のプロセスにおいて重要な役割を有している。プリン作動性P2Y受容体ファミリーの特徴付けられたメンバーには、アデニンヌクレオチドに結合する哺乳動物P2Y1、P2Y11、P2Y12およびP2Y13受容体;ウラシルヌクレオチドに結合するP2Y4、P2Y6およびP2Y14受容体;ならびに混合型選択性を有するP2Y2およびげっ歯動物P2Y4受容体が含まれる。一部の実施形態では、星状膠細胞の活性化は、開示される化合物を、1つまたは複数のプリン作動性受容体、例えばP2Y受容体、例えば星状膠細胞と関連するかまたは星状膠細胞によって発現される受容体と接触させ、こうして1つまたは複数の受容体の活性をモジュレートすることにより達成される。一部の実施形態では、化合物は、星状膠細胞と関連するかまたは星状膠細胞によって発現されるP2Y受容体、例えばP2Y1、P2Y11、P2Y12およびP2Y13受容体に対する効果により星状膠細胞を活性化して、1つまたは複数の開示される疾患または状態を処置する。一部の実施形態では、P2Y受容体は、P2Y1受容体である。一部の実施形態では、P2Y1受容体は、細胞内ミトコンドリア膜上に位置している。一部の実施形態では、化合物は、P2Yアゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、例えばヒトP2Y1受容体におけるP2Y1アゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体、例えばヒトP2Y1受容体におけるバイアス型アゴニスト、部分アゴニスト、またはバイアス型部分アゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、P2Y1受容体におけるバイアス型アンタゴニストである。一部の実施形態では、化合物は、表1に記載されている化合物のうちの1つもしくは薬学的に許容されるその塩、またはそれを含む組成物である。
【0336】
本明細書で使用される場合、「嗜癖」という用語は、別段特定されない限り、物質に対する身体的依存または精神的依存を含む。嗜癖は、物質が中止された場合、離脱症状、または精神的もしくは身体的苦痛を伴い得る。嗜癖には、薬物嗜好、薬物依存、習慣形成、神経学的および/もしくはシナプス変化、脳内報酬系障害の発症、行動変化、または対象における嗜癖の他の徴候もしくは症状が含まれる。
【0337】
本明細書で使用される場合、「嗜癖性薬物」または「乱用の潜在的可能性がある薬物」という用語は、疾患の処置のために規制機関によって承認されているか否かに関わらず、嗜癖または強迫行動の臨床的、行動上または神経学的な症状発現をもたらすことが公知の薬物および他の物質、例えばニコチンが含まれる。一部の実施形態では、嗜癖性薬物には、ニコチン、カンナビノイドアゴニスト、刺激物質、またはオピオイドアゴニストが含まれる。「嗜癖性物質」は、嗜癖性薬物、および他の乱用物質、例えばアルコールを指す。したがって、嗜癖性物質の例として、ヘロイン、コカイン、アルコール、オピエート、ニコチン、吸入剤、アンフェタミン、およびそれらの合成アナログが挙げられる。
【0338】
疼痛状態および障害
開示される化合物はまた、疼痛、疼痛性障害、および関連状態を処置するのに有用である。したがって、一態様では、本発明は、疼痛状態または障害を処置する、予防する、それからの回復を促進する、または改善する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本明細書で記載される化合物、または薬学的に許容されるその塩または医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。一部の実施形態では、化合物は、表1に記載されている化合物のうちの1つである。
【0339】
一部の実施形態では、疼痛状態または障害は、疼痛管理である。この状態および関連状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0256086号を参照されたい。
【0340】
他の実施形態では、疼痛状態または障害は、CNSによって媒介される疼痛、例えば神経障害性疼痛、炎症性疼痛、または急性疼痛から選択される。これらの状態の処置におけるある特定のヌクレオシドおよびヌクレオチド化合物の使用については、例えば、参照により本明細書に組み込まれるBr J Pharmacol. 2010 Mar;159(5):1106-17. doi: 10.1111/j.1476-5381.2009.00596.x. Epub 2010 Feb 5. "A comparative analysis of the activity of ligands acting at P2X and P2Y receptor subtypes in models of neuropathic, acute and inflammatory pain." Ando RD1, Mehesz B, Gyires K, Illes P, Sperlagh B. PMID: 20136836を参照されたい。
【0341】
一部の実施形態では、疼痛状態または障害は、片頭痛である。
【0342】
一部の実施形態では、疼痛状態または障害は、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、または急性疼痛である。例えば、Tosh, D.K.; Padia, J.; Salvemini, D.; Jacobson, K.A. Efficient, large-scale synthesis and preclinical studies of MRS5698, a highly selective A3 adenosine receptor agonist that protects against chronic neuropathic pain. Purinergic Signalling 2015, 11, 371-387を参照されたい。
【0343】
一部の実施形態では、疼痛状態または障害は、中枢性疼痛症候群、末梢神経障害、角膜神経障害性疼痛、脳卒中後疼痛、または多発性硬化症によって引き起こされた疼痛である。
【0344】
薬学的に許容される組成物
別の実施形態によれば、本発明は、開示される化合物、および薬学的に許容される担体、佐剤またはビヒクルを含む組成物を提供する。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、そのような組成物を必要とする患者に投与するために製剤化される。一部の実施形態では、本発明の組成物は、患者に経口投与するために製剤化される。
【0345】
「生体試料」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物から得られた生検材料またはその抽出物;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙もしくは他の体液、またはそれらの抽出物を含むが、それらに限定されない。
【0346】
「患者」という用語は、本明細書で使用される場合、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0347】
「薬学的に許容される担体、佐剤、またはビヒクル」という用語は、共に製剤化される化合物の薬理活性を破壊しない、非毒性の担体、佐剤、またはビヒクルを指す。本発明の組成物において使用され得る薬学的に許容される担体、佐剤またはビヒクルには、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が含まれるが、それらに限定されない。
【0348】
「薬学的に許容される誘導体」は、レシピエントに投与されると、本発明の化合物、またはその阻害的に活性な代謝産物もしくは残留物を直接的または間接的に提供することができる、本発明の化合物の任意の非毒性の塩、エステル、エステルの塩または他の誘導体を意味する。
【0349】
本発明の方法による化合物および組成物は、上記で提供した障害を処置するまたはその重症度を軽減するのに有効な任意の量および任意の投与経路を使用して投与される。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、および全身状態、感染の重症度、特定の薬剤、その投与様式等に応じて、対象ごとに変わることになる。本発明の化合物は、好ましくは、投与を容易にし、投与量を均一にするための単位剤形に製剤化される。「単位剤形」という表現は、本明細書で使用される場合、処置されることになる患者に適した物理的に別個の薬剤単位を指す。しかし、本発明の化合物および組成物の毎日の総使用量は、担当医によって健全な医学的判断の範囲内で決定されることを理解されよう。任意の特定の患者または生物の特定の有効用量レベルは、処置される障害および障害の重症度;用いられる特定の化合物の活性;用いられる特定の組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康状態、性別および食事;投与の時間、投与経路、および用いられる特定の化合物の排出速度;処置持続期間;用いられる特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、ならびに医療分野で周知の同様の要因を含む様々な要因に応じて変わる。
【0350】
本発明の薬学的に許容される組成物は、ヒトおよび他の動物に、処置される感染の重症度に応じて、経口的、直腸に、非経口、嚢内、腟内、腹腔内、局所的に(散剤、軟膏、または液滴として)、頬側に、経口または鼻スプレー等として、投与することができる。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、所望の治療効果を得るために、1日当たり対象の体重1kgにつき約0.01mg~約50mg、好ましくは約0.01mg~約25mgの投与量レベルで、1日1回または複数回で経口または非経口投与される。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、所望の治療効果を得るために、1日当たり対象の体重1kgにつき約0.01mg~約50mg、または約0.01mg~約25mg、または約0.05mg~約10mg、または約0.05mg~約5mg、または約0.1mg~約2.5mgの投与量レベルで、1日1回または複数回で経口または非経口投与される。
【0351】
経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容されるエマルション剤、リポソーム剤、マイクロエマルション剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれるが、それらに限定されない。液体剤形は、活性化合物に加えて、当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物等を含有し得る。経口組成物はまた、不活性希釈剤に加えて、佐剤、例えば湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、矯味矯臭剤、ならびに芳香剤を含むことができる。
【0352】
注射可能な調製物、例えば、注射可能な滅菌水性または油性懸濁剤は、公知の技術に従って、好適な分散化剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して製剤化され得る。また注射可能な滅菌調製物は、例えば1,3-ブタンジオールの溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の注射可能な滅菌液剤、懸濁剤またはエマルション剤であり得る。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンゲル液、U.S.P.および等張塩化ナトリウム溶液が含まれる。加えて、滅菌固定油が、従来、溶媒または懸濁化媒体として用いられている。この目的では、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油を用いることができる。加えて、脂肪酸、例えばオレイン酸が注射剤の調製に使用される。
【0353】
注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターを介する濾過によって、または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌注射可能媒体に溶解もしくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。
【0354】
本発明の化合物の効果を長引かせるために、多くの場合、皮下または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅延させることが望ましい。これは、水への溶解度が低い結晶性または非晶質材料の液体懸濁物を使用することによって達成され得る。次に、化合物の吸収速度はその溶解速度に応じて決まり、これは次に、結晶のサイズおよび結晶形態に応じて決まり得る。代替として、非経口投与される化合物形態の遅延吸収は、化合物を油性ビヒクルに溶解または懸濁させることによって達成される。注射可能なデポー形態は、生分解性ポリマー、例えばポリラクチド-ポリグリコリドにおける化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。ポリマーに対する化合物の比および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例として、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物)、ならびにシクロデキストリンおよび修飾シクロデキストリン(例えばSBE-bCD)が挙げられる。注射可能なデポー製剤も、身体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルションに化合物を捕捉することによって調製される。
【0355】
直腸または膣投与のための組成物は、好ましくは坐剤であり、坐剤は、本発明の化合物を、周囲温度では固体であるが体温では液体になり、したがって直腸または膣腔内で溶融し、活性化合物を放出する好適な非刺激性賦形剤または担体、例えばカカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤ワックスと混合することによって調製することができる。
【0356】
経口投与のための固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が含まれる。そのような固体剤形において、活性化合物は、少なくとも1種の不活性な薬学的に許容される賦形剤もしくは担体、例えばクエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、ならびに/またはa)充填剤もしくは増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシア等、c)保湿剤、例えばグリセロール、d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケート、および炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤、例えばパラフィン、f)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート、h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土、ならびにi)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ならびにそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は、緩衝化剤を含むこともできる。
【0357】
類似のタイプの固体組成物も、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用し、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として用いることができる。錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固体剤形は、コーティングおよびシェル、例えば腸溶性コーティングおよび医薬製剤分野で周知の他のコーティングを用いて調製することができる。それらは、必要に応じて乳白剤を含有することができ、それらが活性成分(複数可)を腸管のある特定の部分だけでまたはそこで優先的に、必要に応じて遅延様式で放出する組成のものであってよい。使用することができる包埋組成物の例として、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。類似のタイプの固体組成物も、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコール等の賦形剤を使用し、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として用いることができる。
【0358】
活性化合物は、上記で記載される通り、1種または複数の賦形剤を含むマイクロカプセル化形態であってもよい。錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固形剤形は、コーティングおよびシェル、例えば腸溶性コーティング、放出制御コーティング、および医薬製剤分野で周知の他のコーティングを用いて調製することができる。そのような固体剤形において、活性化合物は、少なくとも1種の不活性希釈剤、例えばスクロース、ラクトースまたはデンプンと混合され得る。そのような剤形はまた、通常の慣行通り、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば、打錠滑沢剤および他の打錠助剤、例えばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースを含むこともできる。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は、緩衝化剤も含み得る。それらは、必要に応じて乳白剤を含有することができ、それらが活性成分(複数可)を腸管のある特定の部分だけでまたはそこで優先的に、必要に応じて遅延様式で放出する組成のものであってよい。使用することができる包埋組成物の例として、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0359】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための剤形には、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、液剤、スプレー剤、吸入剤またはパッチ剤が含まれる。活性構成成分は、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体、および必要とされ得る場合には任意の必要な防腐剤または緩衝液と混合される。眼科用製剤、点耳薬、および点眼薬も、本発明の範囲内にあることが企図される。加えて、本発明は、経皮パッチの使用を企図しており、これは身体への化合物の制御送達を提供するというさらなる利点を有する。そのような剤形は、化合物を適切な媒体に溶解または分配することによって作製することができる。また吸収促進剤を使用して、皮膚を横切る化合物のフラックスを増大させることができる。この速度は、速度制御膜を提供することによって、または化合物をポリマーマトリックスもしくはゲルに分散させることによって制御することができる。
【0360】
本発明の化合物はまた、局所的に、例えば眼に、例えば点眼薬または眼科用軟膏として直接投与することもできる。点眼薬は、典型的に、有効量の本発明の少なくとも1つの化合物、および眼に安全に適用することができる担体を含む。例えば、点眼薬は、等張溶液の形態であり、その溶液のpHは、眼への刺激がないように調整される。多くの場合、上皮バリアにより、眼への分子の浸透が妨げられる。したがって、現在最も使用されている眼科薬には、ある形態の浸透促進剤が補充されている。これらの浸透促進剤は、最上部の上皮細胞の密着結合を緩めることによって作用する(Burstein, 1985, Trans Ophthalmol Soc U K 104(Pt 4): 402-9; Ashton et al., 1991, J Pharmacol Exp Ther 259(2): 719-24; Green et al., 1971, Am J Ophthalmol 72(5): 897-905)。最も一般に使用されている浸透促進剤は、塩化ベンザルコニウムであり(Tang et al., 1994, J Pharm Sci 83(1): 85-90; Burstein et al, 1980, Invest Ophthalmol Vis Sci 19(3): 308-13)、これは微生物汚染に対する防腐剤としても作用する。これは、典型的に、0.01~0.05%の最終濃度まで添加される。
【0361】
他の治療剤との組合せ
処置されることになる特定の状態または疾患に応じて、その状態を処置するために通常投与される追加の治療剤も、本発明の組成物中に存在することができる。本明細書で使用される場合、特定の疾患または状態を処置するために通常投与される追加の治療剤は、「処置される疾患または状態に適している」として公知である。
【0362】
ある特定の実施形態では、提供される化合物またはその組成物は、他の治療剤、例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子、抗凝血剤(blood thinner)、スタチン、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、ベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬または利尿薬と組み合わせて、それを必要とする患者に投与される。
【0363】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用される組織プラスミノーゲン活性化因子には、アルテプラーゼ、デスモテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、または上記のいずれかの組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0364】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用される抗凝血剤には、ワルファリン、ヘパリン、アピキサバン(apixabam)、クロピドグレル、アスピリン、リバーロキサバン、ダビガトラン、または上記のいずれかの組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0365】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるスタチンには、アトルバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチンおよびピタバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、または上記のいずれかの組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0366】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるACE阻害剤には、カプトプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、トランドラプリル ベナゼプリル、または上記のいずれかの組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0367】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるアンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)には、アジルサルタン、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、フィマサルタン、または上記のいずれかの組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0368】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるベータ遮断薬には、アテノロール、ビソプロロール、ベタキソロール、カルテオロール、カルベジロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、ネビボロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、チモロール、または上記のいずれかの組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0369】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるカルシウムチャネル遮断薬には、ジヒドロピリジン、アムロジピン、シルニジピン、クレビジピン、フェロジピン、イスラジピン、レルカニジピン、レバムロジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ジルチアゼム、ベラパミル、または上記のいずれかの組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0370】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用される利尿薬には、ループ利尿薬、チアジド利尿薬、チアジド様利尿薬およびカリウム保持性利尿薬、または上記のいずれかの組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0371】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるループ利尿薬には、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、トルセミド、または上記のいずれかの組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0372】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるチアジド利尿薬には、エピチジド、ヒドロクロロチアジドおよびクロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、メチクロチアジド、ポリチアジド、または上記のいずれかの組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0373】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるチアジド様利尿薬には、インダパミド、クロルタリドン、メトラゾン、または上記のいずれかの組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0374】
ある特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物と組み合わせて使用されるカリウム保持性利尿薬には、アミロライド、トリアムテレン、スピロノラクトン、エプレレノン、または上記のいずれかの組合せが含まれるが、それらに限定されない。
【0375】
ある特定の実施形態では、提供される化合物またはその組成物は、機械式の血栓除去デバイスと組み合わせて、それを必要とする患者に投与される。ある特定の実施形態では、機械式の血栓除去デバイスは、脳卒中の血栓除去デバイスまたは脳動脈瘤用のコイル塞栓デバイスである。ある特定の実施形態では、そのようなデバイスには、コイルレトリーバー、吸引デバイス、またはステントレトリーバーが含まれるが、それらに限定されない。
【0376】
ある特定の実施形態では、2種またはそれより多い治療剤の組合せが、本発明の化合物または組成物と一緒に投与され得る。ある特定の実施形態では、3種またはそれより多い治療剤の組合せが、本発明の化合物または組成物と一緒に投与され得る。
【0377】
それらの追加の薬剤は、複数の投薬量レジメンの一部として、本発明の化合物を含有する組成物とは別々に投与され得る。代替として、それらの薬剤は、本発明の化合物と一緒に単一組成物に混合された、単一剤形の一部であってもよい。複数の投薬量レジメンの一部として投与される場合、2種の活性剤は、同時に、逐次的に、または互いに一定期間内に、通常は互いに5時間以内に出され得る。
【0378】
本明細書で使用される場合、「組合せ」、「組み合わされた」という用語、および関連用語は、本発明による治療剤の同時または逐次投与を指す。例えば、本発明の化合物は、別の治療剤と共に、別個の単位剤形で同時もしくは逐次的に、または単一の単位剤形で一緒に投与され得る。したがって、本発明は、本発明の化合物、追加の治療剤、および薬学的に許容される担体、佐剤、またはビヒクルを含む単一の単位剤形を提供する。
【0379】
単一剤形を生成するために担体材料と組み合わされ得る、提供される化合物および追加の治療剤の両方の量(上記で記載されている追加の治療剤を含む組成物における)は、処置される宿主および特定の投与様式に応じて変わる。好ましくは、本発明の組成物は、1日当たり体重1kgにつき0.01~100mgの間の投与量の本発明の化合物を投与することができるように製剤化されるべきである。
【0380】
追加の治療剤を含むそれらの組成物では、その追加の治療剤および本発明の化合物は、相乗的に作用し得る。したがって、そのような組成物中の追加の治療剤の量は、その治療剤をだけを利用する単剤療法において必要とされる量よりも少ない。そのような組成物では、1日当たり体重1kgにつき約0.001~100mgの間の投与量の追加の治療剤を投与することができるか、または1日当たり体重1kgにつき約0.001mg~約500μg、もしくは約0.005mg~約250μg、もしくは約0.01mg~約100μgの追加の治療剤を投与することができる。
【0381】
本発明の組成物中に存在する追加の治療剤の量は、その治療剤を唯一の活性剤として含む組成物において通常投与されるはずの量を超えない。好ましくは、本開示の組成物中の追加の治療剤の量は、唯一の治療活性剤としてその薬剤を含む組成物において通常存在する量の約50%~100%の範囲になる。
【0382】
一実施形態では、本発明は、本発明の化合物および1種または複数の追加の治療剤を含む組成物を提供する。治療剤は、本発明の化合物と一緒に投与され得るか、または本発明の化合物の投与前もしくは投与後に投与され得る。好適な治療剤は、以下でさらに詳述される。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、治療剤の最大5分、10分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、または18時間前までに投与され得る。他の実施形態では、本発明の化合物は、治療剤の最大5分、10分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、または18時間後までに投与され得る。
【0383】
一部の実施形態では、本発明は、本発明の少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体を含む医薬を提供する。
【0384】
本発明の態様のそれぞれのすべての特色は、他のすべての態様に準用される。
【0385】
本明細書に記載の本発明がより完全に理解され得るように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は、単に例示目的であり、いかなる方式でも本発明を制限すると解釈されるべきでないことを理解されたい。
【実施例】
【0386】
以下の実施例に示される通り、ある特定の例示的な実施形態では、化合物は、以下の一般手順に従って調製される。一般法は、本発明のある特定の化合物の合成を示しているが、以下の一般法、および当業者に公知の他の方法は、本明細書に記載されている通りのすべての化合物、ならびにこれらの化合物のそれぞれのサブクラスおよび種に適用できることを理解されよう。
【0387】
(実施例1)
2-チオエーテル置換(N)-メタノカルバ-ヌクレオシドの収束的合成
新規合成経路の利点
過去には、(N)-メタノカルバ-ヌクレオシドアナログを調製するために、冗長で非効率的な直線的経路が使用されていた。このクラスの化合物は、プリン受容体リガンドとして調査されており、その強固な二環式糖は、予め確立された、受容体に好ましいコンフォメーションに起因して変化した結合を提供し得る。この強固なリボースの代替を導入するために、核酸塩基を用いる保護された[3.1.0]ビシクロヘキサンリボースアナログの光延反応に続いて、典型的に、複数の官能基修飾ステップが行われる。光延および代替のグリコシル化方法には、収率ならびに位置選択性および立体選択性が予測不可能であるという欠点がある。本発明者らは、本明細書で、2置換(N)-メタノカルバ-アデノシンのための効率的な拡張可能な収束的合成を開示する。本発明者らは、驚くべきことに、アデニン部分が、二環式前駆体(3)をカップリングする前に2-チオエーテルおよび他の基で予め官能化された場合、高収率の所望の光延生成物を得ることができることを見出した。この新しい手法は、公知のグリコシル化方法を上回る改善された収率で(N)-メタノカルバ-アデノシンを提供し、それによって、直線的合成と比較して全収率が効果的に増大され、それ自体が9つの逐次的なステップの生成物である非常に重要な中間体3が温存された。この新しい経路の利点には、様々な2-ハロ、2-チオエーテル、および2-アルキルオキシ置換基を用いてヌクレオシドアナログを生成するその普遍性;その収束的経路に起因するその効率(例えば、全化学転換、またはステップの数の低減);ならびにその改善された全収率が含まれる。例えば、本発明者らは最初に、公知の直線的合成を使用して、137gのスケールでARアゴニスト8a(MRS4322、化合物I-1)を調製したが、D-リボース(7.0kg)から出発して13ステップの後、最後の4ステップ(スキーム1)についてのわずか28.1%の収率を含み、全収率はわずか1.0%であった。それとは際立って対照的に、本明細書で記載される新規な収束的合成経路は、スキーム2Bを使用して520gの8aを提供し、化合物3からの全収率は60%であった。実験室スケールでは、83%のさらにより良好な全収率が達成された。収束的経路の傑出した利点は、それ自体が調製されるためにD-リボースから9ステップを必要とする貴重な中間体3を節約するということである。本発明者らは、その合成には、収束的経路では100gの8aにつき230gの3が必要であったのと比較して、直線的経路によって100gの8aにつき540gの3が必要であったと計算する。したがって、収束的経路における非常に重要な前駆体3のモル比は、直線的合成と比較して57%低減した。さらなる利点は、光延グリコシル化反応の収率が、化合物22aまたは25a(次に、スキーム2に示されている通り8aを調製するために使用された)について、公知の直線的経路の42%から2倍超(95%)に増大したことである。
【0388】
導入
ヌクレオシド誘導体は、がん、感染性疾患および他の状態において、その治療能力で広く使用されている(参考文献1および2)。ヌクレオシドおよびヌクレオチドの作用の特異性を増大させる1つの手段は、標的バイオポリマー、例えば酵素または受容体タンパク質における要件に相補的な、予め形成されたコンフォメーションに、リボース環を束縛することである。例えば、天然リボースのテトラヒドロフリル基の代わりにノース型(North)(N)-メタノカルバ([3.1.0]ビシクロヘキサン)環系を導入することにより、生物学的標的における結合のエネルギー障壁が低下し、例えば、A
3アデノシン受容体(AR)におけるヌクレオシドまたはP2Y
1受容体(P2Y
1R)におけるヌクレオチドの親和性および選択性が増大する(参考文献3~6)。第二級アミン、エーテル、チオエーテルまたはアルキンを用いるアデニンのC2位における置換は、プリン作動性受容体における生物学的研究において特に興味深い。例えば、天然リボースシリーズにおけるアデノシン2-チオエーテルは、増強されたAR親和性を示し、アデニン2-メチルチオ基は、様々なP2YRリガンドにおいて好都合な置換である(参考文献7および8)。2-メチルチオアデノシン5’-二リン酸の(N)-メタノカルバアナログである選択的P2Y
1RアゴニストMRS2365 1(K
i 0.4nM)を含む強力なP2YRアゴニストとして作用する2-メチルチオヌクレオチド誘導体にも注目される。同様に、ARリガンドの中でも、強力なA
3ARアゴニストMRS3611 2(K
i 1.5nM)は、2-メチルチオ置換を有している(N)-メタノカルバアナログである(参考文献5)。
【化31】
【0389】
(N)-メタノカルバヌクレオシドは、様々なGタンパク質共役受容体(GPCR)および酵素的標的のリガンドとして広範な適用を有しているが(参考文献10および25)、従来の合成経路は、多くの直線的ステップを伴い、最終的な全収率は、容易に入手可能な出発材料、例えばD-リボースから、典型的に<1%である(参考文献9~13)。したがって、医薬開発に適応可能となり得る、より効率的な合成手法を特定することが目的となる。本発明者らは、2-メチルチオ-(N)-メタノカルバ-アデノシン(脳保護有効性を有するA3ARアゴニストであるMRS4322、参考文献14および24)および関連化合物を調製するのに有用な新しい収束的合成経路を発見した。新しい経路は、全収率を増大させ、貴重な[3.1.0]ビシクロヘキサン中間体を最適に使用する。その経路は、様々なC2位置換を有する(N)-メタノカルバ-アデノシン誘導体の合成のために、一般に適用することができ、拡張可能である。
【0390】
結果および考察
直線的経路
典型的に、直線的経路(スキーム1)は、2-アルキルチオ基、例えば2-メチルチオ誘導体8aを含有するものを含む、適切に官能化された(N)-メタノカルバ-アデノシン誘導体を調製するために使用される(参考文献10~12)。最終的な2-アルキルチオアデニンヌクレオシドおよび関連するヌクレオチドは、プリン受容体を活性化するために設計される(参考文献5および6)。その合成は、ここで偽リボース部分(pseudoribose moiety)の前駆体である5’-トリチル中間体3として示される、保護された非常に重要な二環式中間体を特色とする。最も一般には、3に類似の中間体の5’-ヒドロキシ基のtert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)エーテル保護が使用されてきた(参考文献12)。しかし、本発明者らは、この前駆体およびその後のヌクレオシド中間体が、プロセス化学における大規模生成には取扱いが困難な粘着質物質であることを見出した。本発明者らは、ChoiらおよびMichel and Strazewski(参考文献11および13)の経路に従って、対応する二環式中間体の5’-トリチル保護基を使用し、それによって、容易に結晶化可能な中間体を提供し、D-リボースから9ステップで3をもたらした。スキーム1に示される通り、ヌクレオシド誘導体5は、中間体3から光延反応によって比較的低収率で得られた(42%)。本発明者らは、最初に、5’-トリチル保護を用いるこの直線的経路を使用して、137gのスケールでARアゴニスト8a(MRS4322、化合物I-1)を調製したが、D-リボース(7.0kg)から出発して13ステップの後、最後の4ステップ(スキーム1)についての28.1%の収率を含み、全収率は1.0%であった。
【0391】
さらに、アルコールを用いる2,6-ジクロロプリン4の光延反応は、望ましくないN
7-位置異性体をもたらし得る(参考文献15)。光延反応により様々なアルコールを使用する、良好な収率での6-クロロ-2-NH-Bocアデニン誘導体のN
9-アルキル化にも言及しているいくつかの報告がある(参考文献18および19)。したがって、本発明者らは、非常に重要な前駆体3から2-アルキルチオアデニン核酸塩基を有する所望のヌクレオシドN
9-位置異性体へ成功裏に変換できた、新しい方法を探索した。
【化32】
スキーム1:2置換(N)-メタノカルバアデノシン誘導体の調製のための直線的経路
【0392】
代替経路のためのアデニン事前官能化
代替合成手法として、リボ(2’-OH)または2’-デオキシ(N)-メタノカルバシリーズのいずれかにおいて二環式中間体(例えば、3)を反応性(6-クロロまたは2,6-ジクロロ)プリン核酸塩基前駆体(例えば、4;参考文献5、6、および9)にカップリングするのではなく、本発明者らは、プリンを、その後の光延ステップにおいて高収率を促進することを本発明者らが発見した方式で事前官能化した。光延反応により遊離6-NH2を含有する様々なアデニン誘導体をカップリングするための初期の試みが失敗したので、環外の第一級アミンの選択的保護は必須であった(参考文献9)。このことが、ベタイン中間体とのホスファザン複合体の形成に起因するものであるか(参考文献20および21)、または6-NH2-プリンの低い溶解度に起因するものであるかは不明のままである。
【0393】
アデニン2-チオエーテル誘導体に至る合成経路を改善することを目標として、本発明者らは、まず、文献による報告に基づいて2ステップでN
6,N
6-ジ-Boc-2-クロロ-アデニン11を調製した(参考文献13、スキームS1)。得られたジ-Boc保護アデニン誘導体を、アルコール(3)を用いる光延反応において使用し、Michelら(参考文献13)によって報告された同一条件下での類似の種類のアナログの定量的合成とは対照的に、
1H-NMRによってわずか約10%のカップリング生成物12が観察されたことが見出された。これらの条件を最適化するための研究が進行中である。低収率にも関わらず、11を3とカップリングさせることによる収束的経路の使用は、光延反応後の直線的ステップの数を最小限に抑え、したがって高価な中間体3の量を低減するという利点をもたらす。
【化33】
スキームS1
【0394】
本発明者らは、次に、2-Cl-アデニン9のアミンを、無水テトラメチルコハク酸(M
4SA、参考文献16)を使用して保護することを試みたが、所望のテトラメチルスクシノイル保護生成物14は反応混合物から純粋形態では単離することができず、しかしながら実質的な生成物ピークが質量分析によって観察された(スキームS3)。14の単離に続いて、光延反応における3とのカップリングを行ったことにより、11または15と比べて、改善されたカップリング収率を提供したと考えられる。N-フタロイル誘導体15を得るための保護は成功したが、収率は低かった(<10%)。
【化34】
スキームS3
【0395】
収束的経路
効率的で拡張可能な合成の必要性により、本発明者らは、その後の光延反応のための前駆体として2置換アデニン誘導体(例えば、2-アルキルチオ-アデニン誘導体16)の保護形態を使用して、対応する(N)-メタノカルバヌクレオシド誘導体8を得ることを想定した、収束的経路を調査した。この文脈では、本発明者らは、まず、高温で2-Cl-アデニン9をナトリウムメチルチオレートで処理することによって、2-メチルチオアデニン16aを高収率で合成した(スキーム2A)。
【0396】
本発明者らはまた、16aのアミノ保護のためのフタロイル基が、β-N
9-ヌクレオシド誘導体のための良好な位置選択性を有しているので、その基を考慮したが(参考文献16)、N
6置換フタルイミド生成物17の収率は低かった(スキームS4)。
【化35】
スキームS4.フタロイル保護核酸塩基17による最終的なヌクレオシド8aの低い全収率の合成
【0397】
2-メチルチオアデニン16aを、AcOH中の無水フタル酸で、140℃で一晩処理して、2-MeS-N6-フタロイル-アデニン17を低収率(16%)で得、それを光延条件下でアルコール(3)にカップリングさせて、所望の付加物であるβ-N9-ヌクレオシド誘導体(18)を高収率(85%)で得た。しかし、17の収率を改善しようとする試みは失敗した。本発明者らは、フタロイルクロリド、無水フタル酸と触媒量のp-トルエンスルホン酸(0.1当量)、ならびにN-アルキル-およびN-アリールイミド誘導体の合成のための条件(ZnBr2およびビス(トリメチルシリル)アセトアミド(BSA))を使用した(参考文献17)。
【0398】
結果的に、本発明者らは、光延反応におけるアルコール3とのN
6-Boc保護2-MeS-アデニン20aの反応性を調査した(スキーム2B)。2-チオエーテル16aを、まず過剰のBoc-無水物でBoc保護して、N-tert-ブトキシカルボニルアデニン中間体、19a(N
6,N
6,N
9-トリ-tert-ブトキシカルボニルアデニン)および21a(N
6,N
6-ジ-tert-ブトキシカルボニルアデニン)の混合物を得た。反応中に形成された対応するトリ-Boc誘導体19aを、穏やかな塩基性条件下で、その大部分をN
6-モノ-Boc誘導体20aに切断した。ジ-Boc中間体21aは、固体として室温で長期間保存しても、TLCによって示される通りモノ-Boc 20aに徐々に分解されたので、モノ-Boc 20aよりも安定性が低いことが見出された。
(A)アデニン事前官能化
【化36】
(B)化学反応経路の発見
【化37】
(C)プロセス開発経路
【化38】
スキーム2.2-チオエーテル置換(N)-メタノカルバアデノシン誘導体(8a~g)およびヌクレオチドの調製のための収束的経路を使用する一般反応スキーム(27および28、スキームS5)。化合物番号の後の「a」との記載は、R=Meを指す。他の置換基は、表2に示されている。反応条件:[a](i)NaSMe水溶液(3.0当量)、140℃、オートクレーブ、16時間、(ii)pH=7~8にするための6N HCl;[b](i)NaSMe(2.5当量)、DMF、110℃、16時間、(ii)6N HCl、60℃、2時間、(iii)NH
4OH水溶液(23%);[c]RSH(5当量)、CsCO
3(3.0~3.5当量)、DMF、140℃、1日;[d]NaOMe(20当量)、MeOH、150℃、4日;[e](i)Boc
2O(4.0当量)、DMAP(0.2当量)、THF、(ii)10%NaOH水溶液、MeOH、5~6時間;[f](i)Boc
2O(4.0当量)、DMAP(0.2当量)、THF、(ii)NH
4OH水溶液(23%)、THF、6時間;[g](i)Boc
2O(4.0当量)、DMAP(0.2当量)、THF、(ii)飽和NaHCO
3、MeOH-H
2O(1:1)、60℃、5~16時間;[h]20または21(1.1~1.2当量)、アルコール3(1.0当量) PPh
3(1.5~2.0当量)、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)(1.5~2.0当量)、THF、1~2時間;[i](i)4N HCl水溶液または4N HCl(g)/MeOH、35℃、16時間、(ii)Na
2CO
3、MeOH/H
2O;[j]H
2O中の1N HCl、50℃、18時間、(ii)Amberlite樹脂-93、MeOH、16時間;[k]MeOH中の4N HCl水溶液、35℃、16時間、(ii)Amberlite樹脂-93、MeOH、16時間;[l]MeOHまたはi-PrOH中のTFA水溶液、50℃、17時間、(ii)Amberlite樹脂-93、MeOH、16時間;[m]無水アセトン、2,2-ジメトキシプロパン、パラ-トルエンスルホン酸(p-TSA)、室温、18時間;[n]無水アセトン-TFA(1:2)、室温、3時間または無水ZnBr
2、DCM、10~20分。
【0399】
モノ-Boc 20aまたはジ-Boc 21a核酸塩基(スキーム2Bおよび2C)のいずれかと5’-O-トリチル二環式中間体3を用いる光延反応は、表2に示される通り高収率で進行して、それぞれN9-位置異性体22aまたは25aのみが得られた。22aまたは25aの酸脱保護後にヌクレオシド8aが得られ、3つの保護基を除去するためのこのステップは、高収率で同時に進行した。単離されたモノ-Boc中間体20aは、少量の保護されていない16aを不純物として含有しており、これは8aに至るその後のステップの純度にとって問題になった。モノ-Boc中間体20aにおける少量のジ-Boc化合物21aの存在は、その光延生成物(25a)が同じ生成物8aをもたらすために後で脱保護されるので、光延反応中は有害ではなかった。しかし、本発明者らは、モノ-Boc経路(スキーム2B)によりビス付加物23を介してビス-アルキル化不純物(24)が生成され、これを所望の生成物から分離できなかったので、拡張可能なプロセス開発のためにジ-Boc手法(スキーム2C)を好んだ。生成物(8a)および24は、同じ極性特徴を有しているので[(24、分析HPLC:保持時間6.89、466(m/z)。8a(化合物I-1)の保持時間6.64、324(m/z)]、包括的脱保護の後の結晶化では24のパージは成功しなかった。
【0400】
その後の5’-リン酸化のために、化合物8aを2’,3’-イソプロピリデン基で再保護して、26aを提供することができ、次に26aをリン酸化して(その後脱保護される)、高い効力のP2Y
1Rアゴニスト、例えば27および28を得た(スキームS5)(参考文献6)。本発明者らが公開している27の合成のための方法は、ホスフィチレーション(phosphitylation)反応におけるオキシダントとして過酸化ベンゾイルを使用したが(参考文献6)、本発明者らは、H
2O
2の使用が、あまり望ましくないチオエーテル酸化をもたらすことを見出した。代替として、22aのトリチル基およびBoc保護を、ZnBr
2を使用して同時に除去すると、26aが直接得られた(参考文献27)。
【化39】
スキームS5.既に特徴付けられたP2Y
1Rアゴニスト27および28を得るための、(N)-メタノカルバヌクレオシド8aの5’-リン酸化(参考文献6を参照されたい)。試薬および条件。(i)無水アセトン、2,2-ジメトキシプロパン、p-TSA、rt、18時間、(ii)無水アセトン、p-TSA、rt、18時間、2ステップにわたって29については58%、30については61%、(iii)無水アセトン-TFA(1:1)、rt、3時間、32%、(iv)無水アセトン-TFA(1:2)、rt、3時間、56%、(v)無水CH
2Cl
2、無水ZnBr
2、10~20分、41%、(vi)(a)THF、テトラゾール、ジ-tert-ブチル-N,N-ジエチル-ホスホルアミダイト、rt、18時間、(b)30%H
2O
2水溶液、rt、3時間、81%。
【表2】
注釈記号は、スキーム2について示された反応条件に対応する。
【0401】
本明細書で記載される新規な収束的合成経路は、スキーム2Bを使用して、化合物3から全収率60%で520gの8aをもたらした。実験室スケールでは、83%のさらにより良好な全収率が達成された。収束的経路の傑出した利点は、それ自体調製するのにD-リボースから9ステップを必要とする貴重な中間体3を節約するということである。本発明者らは、その合成には、収束的経路では100gの8aにつき230gの3が必要であったのと比較して、直線的経路によって100gの8aにつき540gの3が必要であったと計算する。したがって、収束的経路における非常に重要な前駆体3のモル比は、直線的合成と比較して57%低減した。
【0402】
他の2-チオエーテル置換基に至るこの手法の普遍性を試験するために、2-Cl-アデニン(9)を、様々なアルキルチオール、アラルキルチオール、およびそれらの対応するナトリウム塩で処理して、一般式16b~16fの2-チオエーテルを提供した(参考文献22)(スキーム2)。次に、2-チオエーテルを、2-メチルチオアデニンを用いたのと同様にモノ-Boc保護し(20b~20f)、アルコール(3)を用いる光延反応に付して、所望の生成物22b~22fを優れた収率で生成した(表2)。トリ-Boc中間体(19a)の選択的脱保護のために、本発明者らは、スケールアッププロセスのためのいくつかの条件をスクリーニングし、本発明者らは、MeOH中の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液からなる塩基性条件により、20aが良好な収率で得られることを見出した。収率は、他の例のこの組合せ(20f、20gおよび21d)に伴って変化した。例えば、MeOH中のNaOH水溶液では、20fの収率は28%であった。満足な収率をもたらした重炭酸ナトリウムまたはアンモニア水溶液を使用する条件だけが、表2に示されている。8dの場合、対応するモノ-Boc付加物22dからの純粋な生成物の単離は、HPLCによっても困難であった。しかし、本発明者らは、ジ-Boc中間体25dを介して純粋な8dを得ることができた(スキーム2C)。
【0403】
加えて、本発明者らの方法論の普遍性を評価するために、本発明者らは、2-メトキシアデニン(16g)を調製し、それを同じ反応シーケンスに付し、2-チオエーテルと類似の結果を得た(スキーム2)。アルコール3との2-MeO-アデニン(16g)の光延反応は、中等度の収率(67%)で上手く進行した。本発明者らが、N6-モノ-Boc-アデニン誘導体20を使用して改善された収率を達成したことに注目すべきである。理論によって拘束されることを望まないが、活性化/電子供与基、例えばS-アルキルおよびO-アルキルが、プリン窒素原子の求核性の特徴を増大させて、収率を増強した可能性が高いと考えられる。したがって、2-アルキルチオの代わりに多様な2-アルキルオキシアデニン前駆体を使用することが、この合成手法に適していると予想される。2-ハロ,6-アミノ置換アデニンも、2-ハロ置換ヌクレオシド最終生成物を調製するための高価な中間体3が少なくて済むので、上記で記載されている収束的合成から利益を得るはずである。
【0404】
結論
本発明者らは、所望のヌクレオシドアナログに至る最も有効な経路が、N6保護およびその後の偽リボース((N)-メタノカルバ)部分との光延カップリングの前に、アデニン前駆体上に2-チオエーテルまたは2-エーテル基を導入することであると結論付ける。したがって、本発明者らは、効率的な収束的合成経路を促進し、アデノシンおよびP2Y受容体における(N)-メタノカルバ誘導体の新規なSARの探索に適用できる、ジ-Boc保護2-メチルチオアデニン中間体21aを特定した。2置換(N)-メタノカルバ-アデノシンのこの収束的合成は、既に報告されている直線的合成と比較して、最も長い直線的シーケンスの全収率を効果的に増大させた。特に、収束的反応スキームに必要な貴重な中間体アルコール3の量が、直線的経路と比較して低下した(8aについて57%)。収束的経路を最適化するために、本発明者らは、様々なアデニンアミン保護基を比較し、N6-ジ-Boc保護が最も多用途であり、最も容易に精製された中間体を提供することを見出した。まとめると、本発明者らは、(N)-メタノカルバ-ヌクレオシド誘導体の合成のための、前臨床開発に適した容易な収束的経路を開発した。これらの二環式ヌクレオシド誘導体は、予め確立された受容体に好ましいコンフォメーションを有しているプリン受容体リガンドとして働き、様々な疾患モデルにおいて有効性を示す。
【0405】
化学合成
2-クロロアデニン(9)を、Ark Pharm(Arlington Heights、IL、USA)から購入した。他のすべての試薬は、Sigma-Aldrich(St.Louis、MO)から得た。1H-NMRスペクトルは、Bruker 400MHz分光計を用いてCDCl3(7.26ppm)、CD3OD(HOD=4.87ppm)または(CD3)2SO(1H=2.50ppmおよび13C=39.52ppm)において得た。化学シフトを、ppm低磁場として表し、結合定数(J)をHzで得る。TLC分析を、Aldrich製のシリカゲルF254(0.2mm)でプレコートしたガラスシート上で行った。最終的なヌクレオシド誘導体の純度を、Agilent Eclipse 5μm XDB-C18分析カラム(50mm×4.6mm;Agilent Technologies Inc.、Palo Alto、CA)を備えたHewlett-Packard 1100 HPLCを使用してチェックした。移動相:線形勾配溶媒系、20分で10mM TEAA(酢酸トリエチルアンモニウム):CH3CN 95:5~0:100;流量は1.0mL/分であった。ピークを、ダイオードアレイ検出器を用いて230、254、および280nmにおけるUV吸収によって検出した。生物活性について試験したすべての誘導体が、HPLCシステムで95%を超える純度を示した。低分解能質量分析を、JEOL SX102分光計で、グリセロールマトリックスからの脱着後の6kV Xe原子を用いて、またはAgilent LC/MS 1100 MSDでWaters Atlantis C18カラム(Milford、MA、USA)を用いて実施した。高分解能質量分光学的(HRMS)測定を、示されない限り、ポリアラニンを用いる外部較正を使用して、プロテオミクス最適化Q-TOF-2(Micromass-Waters)で実施した。質量精度を観察した。
【0406】
2-チオールアデニン誘導体(16a~16f)の合成のための一般手順
【0407】
手順A:撹拌棒を備えた75ml円筒形密封管に、2-クロロアデニン(1.0当量)、ナトリウムチオメトキシド(6.0当量)および無水DMF(20ml、約0.1M)を添加した。反応混合物を110℃で12~16時間撹拌した。反応を質量分析によってモニタリングし、出発材料が消失するまで継続した。溶媒を、回転蒸発によって減圧下で除去して固体を得、その固体を6N HCl(15ml)に溶解させ、60℃で2時間撹拌した。溶液を0℃に冷却し、8~9のpHに達するまでアンモニア水溶液(23%)でゆっくり中和した。白色の固体がゆっくり出現し、それを濾過し、空気下で乾燥させて、化合物16aを得た。データは文献による報告と適合した(参考文献26)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.76 (s, 1H), 7.97 (s, 1H), 7.18 (s, 2H), 2.44 (s, 3H).収率:67%;5.30gの2-クロロアデニン(9)から3.80gの16a。ステップ1について大規模での収率は、条件(a)を使用すると、520gの8aが得られ、94%であった;500gの2-クロロアデニン(9)から500gの16a。
【0408】
手順B(参考文献22を参照されたい):撹拌棒を備えた10mlの密封管に、2-クロロアデニン(1.0当量)、炭酸セシウム(3.0~3.5当量)および無水DMF(約0.4M)を添加した。この溶液に、アルキル/アリールアルキルチオール(5.0~10.0当量)を添加し、反応混合物を150℃で1日撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、水で希釈して、生成物を白色沈殿物として得、それを濾別し、空気下で乾燥させた。生成物を、任意のさらなる精製なしに次のステップのために直接使用した。
【0409】
化合物16b~16gは、この方法をわずかに修正することによって調製した。
【0410】
2-(エチルチオ)-9H-プリン-6-アミン、16b:化合物16bを、DMF中、2-クロロアデニン(510mg、3.0mmol)(9)および10.0当量のエタンチオールから調製した。収率:99%;580mg。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.75 (s, 1H), 7.94 (s, 1H), 7.17 (s, 2H), 3.04 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 1.30 (t, J = 7.3 Hz, 3H). 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 164.38, 155.28, 152.65, 139.47, 115.54, 25.08, 15.43.HRMS(ESI)m/z:C7H10N5
32Sの[M+H]+計算値:196.0657;実測値196.0655。
【0411】
2-(ヘキシルチオ)-9H-プリン-6-アミン、16c:化合物16cを、DMF中、2-クロロアデニン(0.34g、2.0mmol)(9)および5.0当量のn-ヘキサンチオールから調製した。収率:40%;200mg。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.65 (s, 1H), 7.96 (s, 1H), 7.15 (s, 2H), 3.05 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 1.63 (p, J = 7.3 Hz, 2H), 1.39 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.33-1.13 (m, 4H), 0.92-0.76 (m, 3H). 13C NMR (100 MHz, DMSO) δ 163.18, 154.87, 151.86, 138.22, 115.25, 30.85, 29.93, 29.07, 27.99, 22.00, 13.85.HRMS(ESI)m/z:C11H17N5Sの[M+H]+計算値:182.0930;実測値182.0936。
【0412】
2-(シクロヘキシルチオ)-9H-プリン-6-アミン、16d:化合物16dを、DMF(約0.4M)中、2-クロロアデニン(0.34g、2.0mmol)(9)および6.0当量のn-ヘキサンチオールから調製した。収率:60%;298mg。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.95 (s, 1H), 7.13 (s, 2H), 3.70 (h, J = 4.4, 3.9 Hz, 1H), 2.05 (dd, J = 9.9, 4.7 Hz, 2H), 1.70 (dt, J = 10.0, 4.7 Hz, 2H), 1.58 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 1.39 (q, J = 8.3, 6.4 Hz, 4H), 1.29-1.18 (m, 1H). 13C NMR (100 MHz, DMSO) δ 162.94, 154.92, 151.96, 138.30, 115.33, 42.13, 32.84, 25.60, 25.29.HRMS(ESI)m/z:C11H16N5
32Sの[M+H]+計算値:実測値250.1128。
【0413】
2-(ベンジルチオ)-9H-プリン-6-アミン、16e:化合物16eを、DMF(約0.4M)中、2-クロロアデニン(510mg、3.0mmol)(9)および5.0当量のベンジルメルカプタンから調製した。収率:80%;620mg。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.76 (s, 1H), 7.98 (s, 1H), 7.49-7.37 (m, 2H), 7.36-7.12 (m, 5H), 4.35 (s, 2H). 13C NMR (100 MHz, DMSO) δ 162.69, 155.39, 150.91, 138.67, 137.91, 128.90, 128.27, 126.77, 116.37, 34.16.HRMS(ESI)m/z:C12H12N5
32Sの[M+H]+計算値:258.0813;実測値258.0804。
【0414】
2-(フェネチルチオ)-9H-プリン-6-アミン、16f:化合物16fを、2-クロロアデニン(510mg、3.0mmol)(9)および5.0当量の2-フェニルエタンチオールから調製した。収率:87%;710mg。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.98 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 4.4 Hz, 4H), 7.21 (dt, J = 8.0, 4.0 Hz, 3H), 3.29 (dd, J = 9.2, 6.3 Hz, 2H), 2.96 (dd, J = 9.1, 6.4 Hz, 2H). 13C NMR (100 MHz, DMSO) δ 162.79, 155.00, 152.10, 140.72, 138.50, 128.61, 128.30, 126.15, 115.45, 35.40, 31.50.HRMS(ESI)m/z:C13H14N5
32Sの[M+H]+計算値:272.0970;実測値272.0968。
【0415】
2-メトキシ-9H-プリン-6-アミン、16g:化合物16gを、公開されている報告に従って調製した(参考文献23)。収率:75%(710mg)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.57 (s, 1H), 7.90 (s, 1H), 7.10 (s, 2H), 3.78 (s, 3H).HRMS(ESI)m/z:C6H8N5Oの[M+H]+計算値:166.0729;実測値166.0728。
【0416】
モノ-Boc-2-MeS-アデニン誘導体の合成のための一般手順
【0417】
tert-ブチル(2-(メチルチオ)-9H-プリン-6-イル)カルバメート、20a:THF(約0.1~0.2M)中、2-アルキルチオアデニン誘導体16a(1.0g、5.52mmol、1.0当量)の撹拌した溶液に、Boc2O(4.82g、22.1mmol、4.0当量)およびDMAP(135mg、20mol%、0.2当量)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。TLCは、生成物の混合物[(ジ-Boc-2-MeS-アデニン(21a)およびトリ-Boc-2-MeS-アデニン(19)]を示した。溶媒(THF)を減圧下で回転蒸発によって除去し、水(50ml)を添加した。粗製物を酢酸エチル(EtOAc、2×120mL)で抽出し、有機層をブライン(20ml)で洗浄した。有機層(EtOAc)を分離し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗製生成物(20a+21a)を得、それをさらなる精製なしに次のステップのために直接使用した。得られた粗製物をMeOH(30ml)に溶解させ、飽和NaHCO3水溶液(20ml)を添加した。反応混合物を60℃で5時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、pHが7~7.5に達するまで4N HClまたは飽和リン酸二水素ナトリウムで中和した。注記:反応混合物にいくらかの出発材料(20a+21a)が残っていたが、後処理を行った。MeOHを回転蒸発によって除去し、その水溶液をEtOAc(3×100ml)で抽出し、ブライン(20ml)で洗浄し、分離し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗製生成物を得た。生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、均質なモノ-Boc-2-MeS-アデニン(20a)を得た。溶離液:ヘキサン中30~50%EtOAc。収率:45%、約0.70g。1H-NMR (400 MHz, chloroform-d) δ 11.31 (s, 1H), 8.19 (s, 1H), 7.75 (s, 1H), 2.62 (s, 3H), 1.54 (s, 9H). 13C NMR (100 MHz, DMSO) δ 162.79, 155.00, 152.10, 140.72, 138.50, 128.61, 128.30, 126.15, 115.45, 35.40, 31.50.C22H24N5O7のESMS計算値:(M+H)470.2、実測値470.2。
【0418】
ステップ3について大規模での収率は、条件(e)を使用すると、520gの8aが得られ、60%であった;526gの19から190gの20a。
【0419】
化合物20b~20gについては、0.560~1.17mmolの16b~16gを使用した。他のすべての量は、8aの調製について記載した通りであった。
【0420】
tert-ブチル(2-(エチルチオ)-9H-プリン-6-イル)カルバメート、20b:化合物20bを、化合物16b(1.0mmol)から、条件[e](i)、および(ii)MeOH(1:1、約0.2M)中10%NaOH水溶液を使用して、室温で5時間にわたって調製した。収率:58%;170mg。1H NMR (400 MHz, chloroform-d) δ 8.30 (s, 1H), 8.27 (s, 1H), 3.15 (q, J = 7.4 Hz, 2H), 1.46 (s, 9H), 1.32 (t, J = 7.3 Hz, 4H). 13C NMR (100 MHz, Chloroform-d) δ 164.55, 162.42, 152.63, 144.34, 143.74, 109.95, 83.24, 28.03, 25.26, 14.56.HRMS(ESI)m/z:C12H18N5O2
32Sの[M+H]+計算値:296.1185;実測値296.1181。
【0421】
tert-ブチル(2-(ヘキシルチオ)-9H-プリン-6-イル)カルバメート、20c:化合物20cを、化合物16c(0.621mmol)から調製した。収率:60%;130mg。1H NMR (400 MHz, chloroform-d) δ 8.22 (s, 1H), 8.03 (s, 1H), 3.20 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.70 (q, J = 7.4 Hz, 2H), 1.50 (s, 9H), 1.41 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 1.31-1.19 (m, 4H), 0.84 (t, J = 8.0 Hz, 3H). 13C NMR (100 MHz, chloroform-d) δ 164.96, 163.26, 152.81, 143.70, 143.56, 109.35, 83.66, 31.51, 31.12, 29.25, 28.69, 28.13, 22.62, 14.09.C16H25N5O2SのESMS計算値:(M+H)352.2;実測値352.2。
【0422】
tert-ブチル(tert-ブトキシカルボニル)(2-(シクロヘキシルチオ)-9H-プリン-6-イル)カルバメート、21d:化合物21dを、16d(0.401mmol)から、条件[f](i)、および(ii)MeOH(1:1、約0.2M)中NH4OH水溶液(23%)を使用して、60℃で6時間にわたって調製した。収率:94%;170mg。1H NMR (400 MHz, chloroform-d) δ 11.33 (s, 1H), 8.37 (s, 1H), 3.95-3.75 (m, 1H), 2.13-2.08 (m, 2H), 1.75-1.70 (m, 2H), 1.59-1.50 (m, 1H), 1.50-1.34 (m, 22H), 1.28-1.21 (m, 1H). 13C NMR (100 MHz, chloroform-d) δ 164.79, 157.62, 150.07, 147.32, 143.27, 119.86, 84.42, 43.74, 32.90, 27.73, 25.92, 25.70.C21H32N5O4SのESMS計算値:(M+H)450.2;実測値450.3。
【0423】
tert-ブチル(2-(ベンジルチオ)-9H-プリン-6-イル)カルバメート、20e:化合物20eを、16e(1.166mmol)から調製した。収率:79%;423mg。1H NMR (400 MHz, chloroform-d) δ 8.35 (s, 1H), 8.11 (s, 1H), 7.48-7.27 (m, 5H), 4.66 (s, 2H), 1.68 (d, J = 1.3 Hz, 9H). 13C NMR (100 MHz, chloroform-d) δ 164.44, 161.95, 152.63, 144.20, 143.49, 137.71, 129.30, 128.57, 127.24, 109.67, 84.00, 35.65, 28.17.HRMS(ESI)m/z:C17H20N5O2Sの[M+H]+計算値:358.1338;実測値357.1340。
【0424】
tert-ブチル(2-(フェネチルチオ)-9H-プリン-6-イル)カルバメート、20f:化合物20fを、16f(0.560mmol)から調製した。収率:28%;58mg。条件[g]を使用すると、20fの収率:36%;170mgであった。1H NMR (400 MHz, chloroform-d) δ 8.23 (s, 1H), 7.34-7.25 (m, 4H), 7.21 (tt, J = 5.2, 3.4 Hz, 1H), 3.53-3.44 (m, 2H), 3.13-3.04 (m, 2H), 1.56 (s, 9H). 13C NMR (100 MHz, chloroform-d) δ 164.44, 162.67, 152.71, 144.03, 143.57, 140.72, 128.89, 128.53, 126.42, 109.67, 83.91, 35.86, 32.55, 28.19.HRMS(ESI)m/z:C18H22N5O2
32Sの[M+H]+計算値:372.1494;実測値372.1490。
【0425】
tert-ブチル(2-メトキシ-9H-プリン-6-イル)カルバメート、20g:化合物20gを、16g(1.211mmol)から調製した。収率:41%;132mg。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.89 (s, 1H), 10.57 (s, 1H), 8.24 (s, 1H), 3.87 (s, 3H), 1.51 (s, 9H). 13C NMR (100 MHz, DMSO) δ 163.94, 161.94, 160.95, 152.76, 145.66, 108.73, 81.33, 54.25, 27.91.HRMS(ESI)m/z:C11H15N5O2H+の[M+H]+計算値:266.1253;実測値266.1252。
【0426】
5’-O-トリチル二環式中間体3との20a~20c、20e~20g、および21dの光延反応;22a~22c、22e~22g、および25dのための典型的な手順:25mlの丸底フラスコに、モノ-Boc-2-MeS-アデニン(20a)(300mg、1.07mmol、1.5当量)、アルコール3(315mg、0.711mmol、1.0当量)、およびトリフェニルホスフィン(PPh3)[373mg、1.42mmol、2.0当量]を添加した。内容物を、乾燥トルエン(3×5ml)と共に同時蒸発させ、残留物を真空下で3時間乾燥させた。混合物を乾燥THF(10ml)に溶解させ、DIAD(280μl、1.42mmol、2.0当量)を、窒素雰囲気下、シリンジを介して室温で滴下添加した。反応混合物を室温で1~2時間撹拌し、TLCによってモニタリングした。溶媒(THF)を、回転蒸発によって減圧下で除去し、粗製生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、生成物(22a)をジ-(イソプロピルオキシカルボニル)ヒドラジン副生成物(DIAD-H2)[UV不活性;1H-NMRによりイソプロポキシ基のC-Hプロトン(七重線)積分に基づいて約13%]と共に得、それを、p-アニスアルデヒド染色剤でTLCを展開した後、黄色のスポットとして観察することができた。溶離液:ヘキサン中15~30%EtOAc。TLC:Rf約0.3(ヘキサン中30%EtOAc)。1H-NMRによる補正収率:94%、約470mg。純度:1H-NMRにより約87%。
【0427】
ステップ4について大規模での収量は、520gの8aであった。1.8kgの粗製生成物が、20a(769g、2.73mol、1.10当量)および化合物3(1.10kg、2.49mol、1.00当量)から泡状の固体として得られた。1H NMR (400 MHz, chloroform-d) δ 8.14 (s, 1H), 7.81-7.70 (m, 1H) 7.78 (s, 1H), 7.43-7.37 (m, 6H), 7.33-7.13 (m, 9H), 5.38-5.29 (m, 1H), 5.07 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 4.63 (dd, J = 7.2, 1.6 Hz, 1H), 3.76 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 3.04 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 2.56 (s, 3H), 1.55 (s, 9H), 1.53 (s, 3H), 1.25 (s, 4H), 1.16 (t, J = 5.0 Hz, 1H), 0.94-0.85 (m, 1H). 13C NMR (100 MHz, chloroform-d) δ 166.67, 151.72, 149.75, 149.28, 143.84, 139.86, 128.76, 128.06, 127.29, 119.27, 112.49, 88.85, 87.01, 82.17, 81.81, 64.82, 59.02, 37.39, 30.71, 28.33, 27.91, 26.09, 24.47, 22.08, 21.97, 14.86, 13.19.ESMS(ESI)m/z:C40H44N5O5Sの[M+H]+計算値:706.3;実測値706.3。
【0428】
化合物22a~22c、22e~22g、および25d
【0429】
tert-ブチル(9-((3aR,3bR,4aS,5R,5aS)-2,2-ジメチル-3b-((トリチルオキシ)メチル)ヘキサヒドロシクロプロパ[3,4]シクロペンタ[1,2-d][1,3]ジオキソール-5-イル)-2-(エチルチオ)-9H-プリン-6-イル)カルバメート、22b:化合物22bを、20b(0.190mmol)から調製した。補正収率:84%;119mg。1H NMR (400 MHz, chloroform-d) δ 8.12 (s, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.38 (m, 6H), 7.23 (m, 9H), 5.29 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 5.04 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 4.60 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 3.73 (dd, J = 10.2, 3.5 Hz, 1H), 3.14 (ddd, J = 14.0, 8.8, 5.2 Hz, 2H), 3.03 (dd, J = 10.2, 3.4 Hz, 1H), 1.53 (s, 9H), 1.50 (s, 3H), 1.36 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 1.23 (m, 4H), 1.14 (m, 1H), 0.91-0.86 (m, 1H).生成物は、ヒドラジン不純物(約9%)が混入していた。13C NMR (100 MHz, chloroform-d) δ 166.27, 151.69, 149.68, 149.28, 143.81, 139.66, 128.71, 128.00, 127.24, 119.12, 112.42, 88.78, 86.98, 82.08, 81.75, 64.82, 59.00, 37.32, 30.54, 28.27, 26.04, 25.76, 24.40, 14.52, 13.15.HRMS(ESI)m/z:C41H46N5O5
32Sの[M+H]+計算値:720.3220;実測値720.3212。
【0430】
tert-ブチル(9-((3aR,3bR,4aS,5R,5aS)-2,2-ジメチル-3b-((トリチルオキシ)メチル)ヘキサヒドロシクロプロパ[3,4]シクロペンタ[1,2-d][1,3]ジオキソール-5-イル)-2-(ヘキシルチオ)-9H-プリン-6-イル)カルバメート、22c:化合物22cを、20c(0.237mmol)から調製した。補正収率:77%;142mg。1H NMR (400 MHz, chloroform-d) δ 8.16 (s, 1H), 7.88 (s, 1H), 7.44-7.42 (m, 6H), 7.35-7.21 (m, 9H), 5.35-5.33 (m, 1H), 5.08 (s, 1H), 4.63 (dd, J = 7.1, 1.5 Hz, 1H), 3.79 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 3.25-3.12 (m, 2H), 3.06 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 1.56 (s, 9H), 1.54 (s, 4H), 1.48-1.45 (m, 2H), 1.33 (q, J = 3.7 Hz, 4H), 1.28 (s, 2H), 1.26 (s, 3H), 1.18 (t, J = 5.0 Hz, 1H), 0.92-0.89 (m, 4H).生成物は、ヒドラジン不純物(約26%)が混入していた。13C NMR (100 MHz, chloroform-d) δ 166.35, 151.68, 149.66, 149.26, 143.76, 139.62, 128.66, 127.96, 127.18, 119.23, 112.35, 88.74, 86.93, 81.92, 81.65, 64.78, 58.83, 37.26, 31.50, 31.44, 30.50, 29.36, 28.66, 28.22, 25.98, 24.36, 22.64, 21.98, 14.11, 13.08.C45H53N5O5SのESMS計算値:775.4;実測値775.4。
【0431】
tert-ブチル(2-(シクロヘキシルチオ)-9-((3aR,3bR,4aS,5R,5aS)-2,2-ジメチル-3b-((トリチルオキシ)メチル)ヘキサヒドロシクロプロパ[3,4]シクロペンタ[1,2-d][1,3]ジオキソール-5-イル)-9H-プリン-6-イル)カルバメート、22d:化合物25dを、21d(0.293mmol)から調製した。補正収率:83%;212mg。1H NMR (400 MHz, chloroform-d) δ 8.24 (s, 1H), 7.44-7.32 (m, 5H), 7.28-7.10 (m, 10H), 5.29 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 5.04 (s, 1H), 4.60 (dd, J = 7.1, 1.5 Hz, 1H), 3.78 (dd, J = 10.1, 7.0 Hz, 2H), 3.04 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 2.10-2.07 (m, 2H), 1.77-1.67 (m, 2H), 1.61 (m, 1H), 1.51 (s, 4H), 1.45 (s, 22H), 1.26-1.17 (m, 4H), 1.17-1.11 (m, 1H), 0.90-0.86 (m, 1H).生成物は、ヒドラジン不純物(約10%)が混入していた。13C NMR (100 MHz, chloroform-d) δ 165.35, 153.49, 150.56, 150.01, 143.77, 141.85, 128.65, 127.94, 127.15, 125.73, 112.32, 88.66, 86.97, 83.64, 81.73, 64.66, 59.11, 43.88, 37.34, 32.94, 32.88, 30.26, 27.86, 25.97, 24.33, 21.74, 14.14, 12.96, 10.93.C50H60N5O7SのESMS計算値:874.4;実測値874.5。
【0432】
tert-ブチル(2-(ベンジルチオ)-9-((3aR,3bR,4aS,5R,5aS)-2,2-ジメチル-3b-((トリチルオキシ)メチル)ヘキサヒドロシクロプロパ[3,4]シクロペンタ[1,2-d][1,3]ジオキソール-5-イル)-9H-プリン-6-イル)カルバメート、22e:化合物22eを、20e(0.280mmol)から調製した。補正収率:95%;172mg。1H NMR (400 MHz, chloroform-d) δ 8.18 (s, 1H), 7.85 (s, 1H), 7.50-7.45 (m, 2H), 7.43-7.36 (m, 6H), 7.33-7.19 (m, 13H), 5.31 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 5.10 (s, 1H), 4.60 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 4.45 (s, 2H), 3.80 (d, J = 10.2 Hz, 1H), 3.04 (d, J = 10.1 Hz, 1H), 1.57 (s, 9H), 1.54 (s, 3H), 1.29-1.25 (m, 4H), 1.18 (t, J = 5.1 Hz, 1H), 0.94-0.87 (m, 1H).生成物は、ヒドラジン不純物(約10%)が混入していた。13C NMR (100 MHz, chloroform-d) δ 165.56, 151.61, 149.66, 149.28, 143.79, 139.76, 138.22, 129.36, 128.68, 128.32, 127.97, 127.91, 127.20, 126.95, 119.35, 112.39, 88.82, 86.95, 82.08, 81.73, 64.82, 59.04, 37.33, 35.85, 30.49, 28.23, 26.02, 24.41, 21.99, 13.11.HRMS(ESI)m/z:C46H48N5O5
32Sの[M+H]+計算値:782.3376;実測値782.3384。
【0433】
tert-ブチル(9-((3aR,3bR,4aS,5R,5aS)-2,2-ジメチル-3b-((トリチルオキシ)メチル)ヘキサヒドロシクロプロパ[3,4]シクロペンタ[1,2-d][1,3]ジオキソール-5-イル)-2-(フェネチルチオ)-9H-プリン-6-イル)カルバメート、22f:化合物22fを、20f(0.431mmol)から調製した。補正収率:78%;160mg。1H NMR (400 MHz, chloroform-d) δ 8.19 (d, J = 1.4 Hz, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.43-7.41 (m, 5H), 7.38-7.36 (m, 2H), 7.31-7.21 (m, 13H), 5.33 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 5.14 (s, 1H), 4.61-4.59 (m, 1H), 3.83 (d, J = 10.1 Hz, 1H), 3.40 (qt, J = 13.6, 6.6 Hz, 2H), 3.07 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 3.00 (d, J = 10.1 Hz, 1H), 1.57 (s, 9H), 1.54 (s, 3H), 1.33 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 1.23 (s, 3H), 1.19 (t, J = 5.1 Hz, 1H), 0.89 (dd, J = 9.4, 5.7 Hz, 1H).生成物は、ヒドラジン不純物(約38%)が混入していた。13C NMR (100 MHz, chloroform-d) δ 165.90, 151.67, 149.57, 149.38, 143.77, 140.94, 139.54, 128.91, 128.67, 128.37, 127.97, 127.20, 126.24, 112.38, 88.82, 86.98, 81.94, 81.55, 64.85, 58.75, 37.32, 36.37, 32.92, 30.42, 28.22, 26.01, 24.37, 13.14.HRMS(ESI)m/z:C47H50N5O5
32Sの[M+H]+計算値:796.3533;実測値796.3527。
【0434】
tert-ブチル(9-((3aR,3bR,4aS,5R,5aS)-2,2-ジメチル-3b-((トリチルオキシ)メチル)ヘキサヒドロシクロプロパ[3,4]シクロペンタ[1,2-d][1,3]ジオキソール-5-イル)-2-メトキシ-9H-プリン-6-イル)カルバメート、22g:化合物22gを、20g(0.431mmol)から調製した。補正収率:67%;135mg、1H-NMRにより純度80%。1H NMR (400 MHz, chloroform-d) δ 8.08 (s, 1H), 7.87 (s, 1H), 7.44-7.35 (m, 5H), 7.31-7.17 (m, 10H), 5.33 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 5.02 (s, 1H), 4.66 (dd, J = 7.3, 1.5 Hz, 1H), 3.91 (s, 3H), 3.74 (d, J = 9.9 Hz, 1H), 3.07 (d, J = 9.9 Hz, 1H), 1.55 (s, 9H), 1.53 (s, 3H), 1.27 (s, 1H), 1.25 (s, 3H), 1.16 (t, J = 5.0 Hz, 1H), 0.96-0.90 (m, 1H).生成物は、ヒドラジン不純物(約12%)が混入していた。13C NMR (100 MHz, chloroform-d) δ 162.29, 152.35, 150.88, 149.50, 143.80, 139.51, 128.69, 127.97, 127.23, 117.82, 112.40, 88.80, 86.91, 82.05, 81.91, 64.75, 59.16, 55.06, 37.34, 30.54, 28.23, 26.05, 24.40, 13.15.HRMS(ESI)m/z:C40H44N5O6の[M+H]+計算値:690.3292;実測値690.3297。
【0435】
化合物8a~8f
【0436】
条件(j):1.0N HCl(5.0ml)を、化合物(22a)(70mg、0.1mmol)を含有している密封管に添加した。溶液を50℃で18時間撹拌した。溶媒を除去し、粗製物をトルエン(2×5ml)と共に同時蒸発させた。残留物をMeOH(5.0ml)に溶解させ、MeOH(3×3ml)で予め洗浄した1mlのAmberlite樹脂-93(1.2mmol)で処理した。反応混合物を16時間撹拌した。MeOH溶液を濾過し、濃縮し、粗製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、8aを得た。溶離液:MeOH中5%~10%NH4OH水溶液(23%)、次にDCM中5~15%MeOH。収率:32mg、88%。
【0437】
ステップ5について大規模での収量は、条件(i)を使用すると520gの8aであった。6回の個々の実施(それぞれ315gの22a、446mmol、1.00当量を用いた)を行って、合わせて520gの8aを白色の固体として、2ステップで1.61mol、収率59.7%で得た。
【0438】
(1R,2R,3S,4R,5S)-4-(6-アミノ-2-(メチルチオ)-9H-プリン-9-イル)-1-(ヒドロキシメチル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2,3-ジオール、8a。1H NMR (400 MHz, methanol-d4) δ 8.44 (s, 1H), 4.77 (dd, J = 6.7, 1.6 Hz, 1H), 4.26 (d, J = 11.7 Hz, 1H), 3.93-3.85 (m, 1H), 3.35 (d, J = 9.5 Hz, 2H), 2.59 (s, 3H), 1.61 (dd, J = 8.6, 3.8 Hz, 1H), 1.54 (dd, J = 5.2, 3.9 Hz, 1H), 0.76 (ddd, J = 8.7, 5.3, 1.7 Hz, 1H). 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6).HRMS(ESI)m/z:C8H11N3O2H+の[M+H]+計算値:182.0930;実測値182.0936。
【0439】
化合物8b~8fを、様々な酸性条件を使用して調製した。
【0440】
(1R,2R,3S,4R,5S)-4-(6-アミノ-2-(エチルチオ)-9H-プリン-9-イル)-1-(ヒドロキシメチル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2,3-ジオール、8b:化合物8bを、22b(30mg、0.042mmol)から、条件[k]を使用して調製した。収率:46%;6.0mg。1H NMR (600 MHz, methanol-d4) δ 8.39 (s, 1H), 4.83 (s, 1H), 4.74 (dd, J = 6.8, 1.7 Hz, 1H), 4.24 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 3.87 (dt, J = 6.7, 1.4 Hz, 1H), 3.31 (d, J = 11.7 Hz, 1H), 3.24-3.10 (m, 2H), 1.60 (ddd, J = 8.8, 3.9, 1.5 Hz, 1H), 1.53 (dd, J = 5.2, 4.0 Hz, 1H), 1.38 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 0.74 (ddd, J = 8.7, 5.2, 1.7 Hz, 1H). 13C NMR (151 MHz, methanol-d4) δ 166.68, 156.78, 151.34, 139.72, 117.57, 77.75, 72.20, 64.43, 62.94, 37.82, 26.22, 24.54, 15.28, 12.30.HRMS(ESI)m/z:C14H20N5O3
32Sの[M+H]+計算値:338.1287;実測値338.1293。
【0441】
(1R,2R,3S,4R,5S)-4-(6-アミノ-2-(ヘキシルチオ)-9H-プリン-9-イル)-1-(ヒドロキシメチル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2,3-ジオール、8c:化合物8cを、22c(28mg、0.431mmol)から、条件[k]を使用して調製した。収率:56%;8.0mg。1H NMR (400 MHz, methanol-d4) δ 8.39 (s, 1H), 4.85 (s, 1H), 4.76 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 4.25 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 3.89 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 3.36-3.28 (m, 1H), 3.25 (dt, J = 14.1, 7.3 Hz, 1H), 3.13 (dt, J = 13.6, 7.3 Hz, 1H), 1.75 (p, J = 7.2 Hz, 2H), 1.61 (dd, J = 9.0, 3.9 Hz, 1H), 1.54 (t, J = 4.7 Hz, 1H), 1.53-1.41 (m, 2H), 1.36 (h, J = 4.0 Hz, 4H), 0.97-0.89 (m, 3H), 0.79-0.71 (m, 1H).化合物をHPLCによって精製したが、酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液(緩衝液のNCH2プロトンに基づいて約17%)が混入していた。分取HPLC方法:Phenomenex Luna 5μm C18(2)100A、LCカラム(250×21.2mm)。線形勾配溶媒系:40分でACN:10mM TEAA 40:80~80:20。Rt約43.32分。13C NMR (100 MHz, メタノール-d4) δ 157.36, 147.25, 141.87, 130.23, 108.12, 68.35, 62.77, 54.98, 53.48, 28.39, 23.15, 22.49, 21.29, 20.20, 15.15, 14.19, 4.90, 2.83.HRMS(ESI)m/z:C18H26N5O3
32Sの[M+H]+計算値:394.1913;実測値394.1920。
【0442】
(1R,2R,3S,4R,5S)-4-(6-アミノ-2-(シクロヘキシルチオ)-9H-プリン-9-イル)-1-(ヒドロキシメチル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2,3-ジオール、8d:化合物8dを、25d(96mg、0.1098mmol)から条件[i]を使用して調製した。収率:70%;30.0mg。1H NMR (400 MHz, methanol-d4) δ 8.39 (s, 1H), 4.81 (s, 1H), 4.75 (dd, J = 6.7, 1.6 Hz, 1H), 4.25 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 3.89 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 3.36-3.27 (m, 1H), 2.16-2.10 (m, 2H), 1.81-1.78 (m, 2H), 1.68-1.58 (m, 2H), 1.54-1.47 (m, 5H), 1.36-1.27 (m, 2H), 0.75 (ddd, J = 8.8, 5.1, 1.7 Hz, 1H). 13C NMR (100 MHz, methanol-d4) δ 166.58, 156.78, 151.31, 139.72, 117.58, 77.79, 72.24, 64.47, 63.05, 44.73, 37.86, 34.50, 34.22, 27.16, 27.11, 26.97, 24.55, 12.32.C18H26N5O3SのESMS計算値:392.2;実測値392.2。
【0443】
(1R,2R,3S,4R,5S)-4-(6-アミノ-2-(ベンジルチオ)-9H-プリン-9-イル)-1-(ヒドロキシメチル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2,3-ジオール、8e:化合物8eを、22e(89mg、0.1184mmol)から、条件[k]を使用して調製した。収率:63%;30.0mg。1H NMR (600 MHz, methanol-d4) δ 8.40 (s, 1H), 7.47-7.39 (m, 2H), 7.26 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 7.19-7.14 (m, 1H), 4.74 (dd, J = 6.6, 1.7 Hz, 1H), 4.49-4.34 (m, 2H), 4.23 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 3.88 (dt, J = 6.5, 1.4 Hz, 1H), 3.29 (d, J = 11.7 Hz, 1H), 1.59 (ddd, J = 8.8, 3.9, 1.5 Hz, 1H), 1.54 (dd, J = 5.2, 3.9 Hz, 1H), 0.74 (ddd, J = 8.7, 5.2, 1.7 Hz, 1H). 13C NMR (151 MHz, methanol-d4) δ 166.14, 156.73, 151.27, 139.90, 139.75, 130.19, 129.35, 127.95, 117.67, 77.76, 72.18, 64.40, 62.89, 37.80, 36.33, 24.56, 12.33.HRMS(ESI)m/z:C8H11N3O2H+の[M+H]+計算値:182.0930;実測値182.0936。
【0444】
(1R,2R,3S,4R,5S)-4-(6-アミノ-2-(フェネチルチオ)-9H-プリン-9-イル)-1-(ヒドロキシメチル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2,3-ジオール、8f:化合物8fを、22f(92mg、0.116mmol)から、条件[k]を使用して調製した。収率:75%;36.0mg。1H NMR (500 MHz, methanol-d4) δ 8.38 (s, 1H), 7.30-7.28 (m, 2H), 7.25-7.22 (m, 2H), 7.15-7.12 (m, 1H), 4.73 (dd, J = 6.6, 1.6 Hz, 1H), 4.23 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 3.86 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 3.39 (ddd, J = 13.3, 8.7, 7.0 Hz, 1H), 3.33-3.22 (m, 2H), 3.00 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.58 (ddd, J = 8.7, 3.9, 1.4 Hz, 1H), 1.54-1.52 (m, 1H), 0.72 (ddd, J = 8.6, 5.1, 1.7 Hz, 1H). 13C NMR (126 MHz, methanol-d4) δ 166.41, 156.74, 151.30, 142.11, 139.62, 129.85, 129.39, 127.22, 77.74, 72.18, 64.38, 62.81, 37.81, 37.38, 33.60, 24.64, 12.30.HRMS(ESI)m/z:C20H24N5O3
32Sの[M+H]+計算値:414.1600;実測値414.1607。
【0445】
(1R,2R,3S,4R,5S)-4-(6-アミノ-2-メトキシ-9H-プリン-9-イル)-1-(ヒドロキシメチル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2,3-ジオール、8g:化合物8gを、22g(25mg、0.0362mmol)から、条件[l]を使用して調製した。収率:45%;5.0mg。1H NMR (400 MHz, chloroform-d) δ 8.32 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 4.82-4.71 (m, 2H), 4.25 (dd, J = 11.8, 5.6 Hz, 1H), 3.96 (dd, J = 4.9, 2.7 Hz, 3H), 3.89 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 3.30 (dd, J = 11.5, 5.5 Hz, 1H), 1.60 (p, J = 4.4 Hz, 1H), 1.51 (p, J = 4.7, 4.0 Hz, 1H), 0.80-0.68 (m, 1H). 13C NMR (100 MHz, methanol-d4) δ 163.78, 158.14, 152.21, 139.68, 116.31, 77.82, 72.24, 64.48, 63.28, 55.18, 37.93, 24.57, 12.22.HRMS(ESI)m/z:C13H18N5O4の[M+H]+計算値:308.1359;実測値308.1353。
【0446】
ヌクレオチド誘導体27および28の合成
【0447】
26aの合成を、様々な条件下で実現した。(N)-メタノカルバ-2-SMe-アデノシンを、p-TSAの存在下、アセトン中の2,2-ジメトキシプロパンで反応させた場合、化合物26aおよび29の混合物が得られた。ジメトキシプロパンなしの反応では、5’-メトキシプロパン基が除去されて26aが得られたが、22aに対する同じ条件により、Boc基ではなくトリチルを脱保護して30を得、(1:1)アセトン-TFAの強酸性条件下では26aが得られた。同様に、22aに類似の(analogues)プロトコールを直接使用すると、56%の比較的中程度の収率で26aが得られた。代替として、化合物22aを無水ZnBr2と反応させると、トリチルおよびBoc保護基の両方が除去されて、26aが収率41%で得られた(参考文献27)。しかし、より長い反応時間(この場合、約2時間)により、2’,3’-O-イソプロピリデンも同様に除去されて、8aが収率22%で得られた。その反応はジクロロメタン中で実施されたので、大部分の生成物が亜鉛塩として分離され、TLC/HPLC分析により反応の進行が誤った方向に導かれ、反応が実際は10~20分後(反応混合物の含水量に応じて)に完了したように見えることに留意すべきである。
【0448】
(N)-メタノカルバ-2-SMe-アデノシンヌクレオチドを、以前に報告された通りに合成した(参考文献6)。この方法の欠点は、5’-ジ-tert-ブチルリン酸エステル31の調製における酸化剤としてm-CPBAを使用することであり、それによって、2-メチルスルホキシド副生成物が等量で、または時として多量に得られた。オキシ塩化リンを使用する26aの直接的なリン酸化による方法を改善するための努力は、成功しなかった。しかし、5’-ホスホルアミダイト中間体を酸化するために過酸化水素を用いると、亜リン酸の酸化が制限され、必要な化合物が唯一の生成物として得られた[注記:次の脱保護反応を精製なしに行った場合(後処理のみ)、スルホキシド生成物が観察され、このことは、酸の存在下でチオ-アルカンに向かう任意の残留過酸化水素の反応性が増大したことを暗示している]。TFA水溶液(参考文献6)またはDOWEX-H+(参考文献28)を使用するt-ブチルおよびイソプロピリデン基の脱保護に続いて、ホスフェート/ピロホスフェートとのカップリングにより、所望の生成物27および28が得られた(参考文献27)。
【0449】
(N)-メタノカルバ-2’,3’-O-イソプロピリデン-2-チオメチル-アデノシン(26a)(参考文献6を参照されたい)
【0450】
方法1:無水アセトンおよび2,2-ジメトキシプロパン(1.0mL)の混合物(1:1)中、化合物8a(20mg、0.062mmol)の懸濁物に、p-トルエンスルホン酸(p-TSA水和物、12mg、0.062mmol)を添加し、室温で18時間撹拌した。揮発性材料を、減圧下で回転蒸発によって除去した。残留物を、NaHCO3水溶液とCH2Cl2中5%i-PrOHとに分配した。有機層を分離し、無水Na2SO4で乾燥させた。真空下での回転蒸発により、化合物26aおよび29の混合物が得られた(TLC溶離液、CH2Cl2中5%MeOH;化合物26a;Rf=0.25、C16H21N5O3SについてのESI-MS[M+H]+計算値、364.1438;実測値、364.2;化合物29、Rf=0.60、C20H29N5O4SについてのESI-MS[M+H]+計算値、436.2013;実測値、436.2)。化合物2および3の混合物を、無水アセトン(2.0mL)に溶解させ、これにp-TSA水和物(12mg、0.062mmol)を添加し、一晩(18時間)撹拌した。前述の通り後処理した後、続いてシリカゲルクロマトグラフィーによって精製することにより、26aを白色の泡状物として得た(13mg、58%)。
【0451】
方法2:化合物30(80mg、0.173mmol)を含有しているフラスコに、無水アセトン-トリフルオロ酢酸(2mL)の1:1混合物を添加し、室温で3時間撹拌した。揮発性材料を高真空下で蒸発させ、残留物をトルエンと共に同時蒸発させ、続いてメタノール中7Nアンモニアで中和した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製により、26aを白色の固体として得た(20mg、32%)。
【0452】
方法3(参考文献27):無水ジクロロメタン(0.6mL)中、化合物22a(20mg、0.028mmol)の溶液に、無水ZnBr2(64mg、0.28mmol)を添加し、2時間激しく撹拌した(反応は、実際、10~20分で完了した)。水を添加し、生成物を酢酸エチル中に数回抽出し、有機相を分離し、乾燥させ、蒸発させた。残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、生成物8a(2.0mg、22%)および26a(4.2mg、41%)を得た。
【0453】
(N)-メタノカルバ-2’,3’-O-イソプロピリデン-N6Boc-2-チオメチル-アデノシン(30):化合物22a(200mg、0.283mmol)を無水アセトン(3.0mL)に溶解させ、p-TSA水和物(108mg、0.566mmol)を添加した。反応物を室温で18時間撹拌した。揮発性材料を、減圧下で回転蒸発によって除去した。残留物を、NaHCO3水溶液とCH2Cl2中5%i-PrOHとに分配した。有機層を分離し、無水Na2SO4で乾燥させた。真空下で回転蒸発させ、続いてシリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製することにより、所望の化合物を白色の泡状物として得た(80mg、61%、TLC溶離液、CH2Cl2中5%MeOH;Rf=0.35)。1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 7.87 (q, J = 3.2, 2.5 Hz, 1H), 7.72 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 5.55 (dd, J = 7.4, 4.6 Hz, 1H), 5.29 (q, J = 3.0, 2.2 Hz, 1H), 4.80 (d, J = 4.7 Hz, 1H), 4.69 (d, J = 6.5 Hz, 1H), 4.24 (dd, J = 12.2, 6.7 Hz, 1H), 3.45 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 3.37 (ddd, J = 11.3, 5.0, 2.5 Hz, 1H), 2.69 (q, J = 3.1, 2.4 Hz, 3H), 1.69 (q, J = 4.7 Hz, 1H), 1.55 (dd, J = 6.1, 3.5 Hz, 12H), 1.25 (s, 3H), 1.17 (t, J = 5.2 Hz, 1H), 0.97 (dd, J = 9.4, 5.0 Hz, 1H).
C21H29N5O5SについてのESI-MS[M+H]+計算値、464.1962;実測値、464.2。
【0454】
(N)-メタノカルバ-2’,3’-O-イソプロピリデン-2-チオメチル-アデノシン-5’-リン酸ジ-tert-ブチルエステル(31):化合物26a(12mg、0.033mmol)およびテトラゾール(7.0mg、0.10mmol)の真空乾燥させた混合物を、無水THF(0.75mL)にアルゴン雰囲気下で溶解させ、これにジ-tert-ブチル-N,N-ジエチル-ホスホルアミダイト(14μL、0.05mmol)を添加した。反応混合物を室温で18時間撹拌した。30%H2O2水溶液(3.0μL、0.033mmol)を添加し、室温で3時間撹拌した。揮発性材料を高真空下で蒸発させ、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、31を白色の泡状物として得た(15mg、81%、TLC溶離液、CH2Cl2中5%MeOH;Rf=0.40)。スペクトルデータは報告されている通りである(参考文献6)。
【0455】
[注記:次の脱保護反応を精製なしに行った場合(後処理のみ)、スルホキシド生成物が観察され、このことは、任意の残留過酸化水素が、酸の存在下でチオ-アルカンに向かう過酸化水素の反応性を増大させることを暗示している]。
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【0456】
(実施例2)
マウスへの腹腔内投与後の化合物の薬物動態
参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,789,131号の実施例1および2は、マウス光血栓症(photothrombosis)および外傷性脳傷害モデルにおいて使用される用量である特定の化合物をマウスに腹腔内投与した後の、その化合物の血漿および脳内濃度を決定するためのアッセイを記載している。本明細書で記載される化合物は、そのようなアッセイまたは類似のその変形を使用して評価され得る。
【0457】
(実施例3)
マウスにおける試験化合物の血漿および脳結合
参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,789,131号の実施例3は、ある特定の化合物、例えばI-1の血漿および脳遊離画分を決定するためのアッセイを記載している。本明細書で記載される化合物は、そのようなアッセイまたは類似のその変形を使用して評価され得る。
【0458】
(実施例4)
マウスおよびヒト血液および血漿における試験化合物のin vitro安定性および代謝
参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,789,131号の実施例4は、マウスおよびヒト血液および血漿におけるある特定の化合物、例えばI-1のin vitro安定性および代謝的運命を決定するためのアッセイを記載している。本明細書で記載される化合物は、そのようなアッセイまたは類似のその変形を使用して評価され得る。
【0459】
(実施例5)
マウスにおけるTBI後の試験化合物の神経保護有効性
参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,789,131号の実施例5は、外傷性脳傷害(TBI)を受けたマウスにおける神経保護を誘発するある特定の化合物、例えばI-1の有効性を決定するためのアッセイを記載している。本明細書で記載される化合物は、そのようなアッセイまたは類似のその変形を使用して評価され得る。アッセイ手順は、以下で再現される。
【0460】
目的
この研究は、外傷性脳傷害(TBI)を受けたマウスにおける試験化合物の神経保護有効性を決定し、試験化合物およびアデノシンA3受容体の完全アゴニストであるCl-IB-MECAで処置した、外傷性脳傷害のないマウスを比較するために設計される。
【0461】
方法
化学物質:試験化合物を、上記で記載されている通りに調製する。Cl-IB-MECAは、Tocris Biosciences(Bristol、UK)およびいくつかの他の販売会社から商業的に入手可能である。他のすべての化学物質は、商業的販売会社、例えばSigma-Aldrich(St.Louis、MO)から得ることができる。
【0462】
動物および外傷性脳傷害(TBI):TBIを、Talley-Watts et al. 2012 (J. Neurotrauma 30, 55-66)に記載されている通り、制御された閉鎖頭蓋傷害モデルを用いて実行する。本明細書で記載されている方法に従って、空気圧式衝撃デバイスを使用して、頭蓋および硬膜は無傷のまま中等度のTBIを生じさせる。これを達成するために、C57BL/6マウスに100%酸素中イソフルラン(3%導入、1%維持)で麻酔する。温度制御により加熱した手術台を使用して、37℃の体温を維持する。無菌外科手術技術を使用して、頭皮に小さい正中切開を行う。5mmのステンレス鋼ディスクを頭蓋上に置き、右頭頂骨上の体性感覚皮質上のブレグマとラムダとの間に、強力瞬間接着剤を使用して固定する。次に、マウスを、空気圧式衝撃先端部の直下の台に置く。較正済みの衝撃を、2mmの深度において4.5m/秒で送達し、それによってマウスに中等度の傷害を生じさせる。頭皮切開部を、4-0ナイロン編み縫合糸を使用して閉鎖し、その切開部に抗生物質軟膏を塗布する。マウスを熱集中治療室(Thermo-Intensive Care Unit)(Braintree ScientificモデルFV-1;37℃;27%O2)に入れ、完全に覚醒し、自由に動き回るまでモニタリングする。傷害またはシャム(傷害を受けていない)の30分後に、マウスを、ビヒクル(生理食塩水)、試験化合物、または対照(Cl-IB-MECA)のいずれかで処置する。試験化合物およびCl-IB-MECAの例示的な用量は、それぞれ0.16mg/kgおよび0.24mg/kgであり、それぞれおよそ0.5μmol/kgの等モル用量に等価である。
【0463】
GFAPについてのウェスタンブロット解析:選択された生存期間で、マウスをイソフルラン下で麻酔し、屠殺する。脳を取り出し、衝撃を受けた脳半球と衝撃を受けていない脳半球に解剖するために、氷上に置く。単離した組織を、氷上で冷やしたホモジナイゼーション緩衝液(0.32Mスクロース、1mM EDTA、1M Tris-HCL、pH=7.8)中で、Wheatonガラス製ダウンス(20行程)を使用して迅速にホモジナイズする。ホモジネートを2mL管に移し、1000gにおいて4℃で10分間遠心分離し、上清を収集し、分析する。タンパク質濃度を、BCAアッセイによって1:50希釈を使用して決定する。タンパク質100μgを、各試料についてアリコートとして取り出し、β-メルカプトエタノールを含有しているLaemmli緩衝液を添加し、試料を95℃のヒートブロックに3分間入れる。試料を12%ゲル上にロードし、80Vで20分間泳動させ、続いて130Vで40分間泳動させる。試料を、100Vで1時間にわたってニトロセルロース膜に転写する。膜を、TBS-T中5%ミルクで30分間ブロックする。GFAP(1:1000-Imgenex IMG-5083-A)を添加し、4℃で一晩置く。膜をTBS-Tで3回、10分間洗浄する。GFAPのための二次抗体(コンジュゲートしたロバ抗ラビットHRP(ImmunoJackson Laboratories;711-035-152;1:20000)を、室温で1時間適用する。膜をTBS-Tで15分間洗浄し(3回)、Western Lightning Plus-ECLキット(PerkinElmer,Inc.)を製造者の指示に従って使用して展開する。
【0464】
結果
有効な化合物(I-1は、このモデルにおいて有効であることが公知である)は、TBI後のマウス脳におけるGFAP発現を低減すると予想され得る。グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)発現を、TBI後の反応性グリオーシスのためのバイオマーカーとして使用する(Talley-Watts et al. 2012; Sofroniew, 2005)。ウェスタンブロット解析を、傷害後7日目に屠殺した、シャム、TBIまたはTBI試験化合物で処置したマウスにおけるGFAP発現について実施する。まず、ウェスタンブロット解析により、TBIが、傷害後7日目に脳の同側(中央に衝撃が与えられた側)および対側の両方においてGFAP発現の著しい増加を誘発することが確認される。GFAP発現は、試験化合物、例えばI-1(初期外傷の30分以内に注射される)で処置されたマウスのブロットでは著しく低い。ローディング対照については、ベータ-アクチンウェスタンブロットを使用する。典型的に、データを、3回の別個の実験から平均化し、GFAP/アクチン比の相対的変化(Image Jソフトウェアを使用して測定されたバンド強度)を示す。
【0465】
有効な化合物(I-1は、このモデルにおいて有効であることが公知である)は、TBI後のマウス血漿におけるGFAPレベルを低減すると予想され得る。血漿中のGFAPレベルも、外傷後の血液脳関門(BBB)の崩壊に起因するTBIのためのバイオマーカーとして使用した。結果的に、本発明者らは、7日目にTBIマウスから血漿試料も収集する。GFAPレベルは、7日目にウェスタンブロット解析によって容易に検出される。
【0466】
化合物I-1は、マウスにおけるA3受容体の低親和性(4900nM)アゴニストである。それとは逆に、Cl-IB-MECAは、マウスにおける高親和性(0.18nM)アゴニストであり、これらの2種の化合物の親和性の差は、およそ25,000倍である。しかし、光血栓性脳卒中およびTBIのマウスモデルにおいて、I-1は、著しい有効性を示しているが、その有効性はA3アンタゴニストMRS1523によって遮断され、一方、Cl-IB-MECAは、不活性であるか(脳卒中)または活性が弱い。この驚くべき結果について潜在的に可能な説明の1つは、I-1およびCl-IB-MECAについて本発明者らが作製したADME/PKデータに基づくものである。Cl-IB-MECAは、親油性化合物(cLogPおよそ2.5)であり、血漿タンパク質に高度に結合し(遊離画分0.002)、脳組織に非特異的に高度に結合する(遊離画分0.002)。I-1は、高度に親水性の化合物(cLogP<0)であり、血漿(0.74)および脳(0.13)における非結合画分が非常に大きい。膜を横切る分布および受容体との相互作用には、非結合薬物だけが利用可能である。したがって、I-1の受容体親和性はより低いにも関わらず、これらのマウスモデルにおけるA3受容体と相互作用するのに利用可能なI-1の画分は、Cl-IB-MECAよりも少なくとも1000倍多い。化合物の物理化学的特性およびADME/PK特徴のこれらの顕著な差は、これらのマウスモデルにおけるCl-IB-MECA(および別の親油性かつ高度結合性/高親和性の完全A3RアゴニストであるMRS5698)と比較して、本明細書で記載されるI-1および他の化合物の自明でない有効性に寄与し得る。代替の説明は、化合物、例えばI-1および表1に示されている他の化合物が、デュアルA3およびA1アゴニストまたは選択的A1アゴニストとして作用するというものである。
【0467】
バイアス型アゴニズム。アデノシンA3受容体は、Gタンパク質共役型の多面的な受容体であり、すなわちこの受容体のアゴニズムは、複数のGタンパク質およびベータ-アレスチンを介して複数の下流経路を潜在的に活性化する。現在、A3受容体アゴニズムによって活性化される経路が特定されており、それは、Gq11媒介性細胞内カルシウム動員、cAMP生成のGi媒介性モジュレーション、ならびにERK1/2およびAktのGi媒介性リン酸化に限定されないこともある。本発明者らの発見の一態様は、星状膠細胞におけるミトコンドリアATP生成を促進する、細胞内カルシウムのA3媒介性動員におけるものである。
【0468】
受容体薬理において新たに出現した概念が、バイアス型アゴニズムである。この概念は、多面的な受容体について実際に様々なクラスのアゴニストが存在しており、そのうち一部のアゴニストがすべての下流経路を活性化することができ、一方、他のアゴニストは下流経路のサブセットの活性化においてバイアスを示すことを提示している。創薬および受容体薬理において、バイアス型アゴニズムは、オフターゲット効果を抑えながら、すなわち副作用を抑えながら、経路活性化の特異性を増大させる可能性を導入する。A3受容体についてのバイアス型アゴニズムの証拠がある。しかし、プロトタイプの高親和性アゴニスト、例えばCl-IB-MECAおよびMRS5698は、前述の下流経路のバイアスされた活性化を示さない完全アゴニストである。したがって、いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、本明細書で記載されるある特定の化合物は、細胞内カルシウム動員を優先的に活性化するが、その他のA3媒介性またはA1媒介性経路をほとんど/全く活性化しないバイアス型アゴニストであると考えられる。
(実施例6)
マウスにおける脳卒中後のMRS4322の神経保護有効性
参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,789,131号の実施例6および7は、脳卒中を受けたマウスの神経保護の誘発における、ある特定の化合物、例えばI-1の有効性を決定するためのアッセイを記載している。本明細書で記載される化合物は、そのようなアッセイまたは類似のその変形を使用して評価され得る。アッセイ手順は、以下で再現される。
【0469】
目的
この研究は、脳卒中を受けたマウスにおける試験化合物の神経保護有効性を、A
3受容体アンタゴニストMRS1523を伴ってまたは伴わずに、完全A3RアゴニストMRS5698およびCl-IB-MECAと比較して決定するために設計される。MRS1523は、以下の構造を有する。
【化40】
【0470】
方法
化学物質:試験化合物を、上記で記載されている通りに調製する。Cl-IB-MECA、MRS5698およびMRS2365は、Tocris Bioscience(Bristol、UK)およびいくつかの他の販売会社から商業的に入手可能である。他のすべての化学物は、Sigma-Aldrich(St.Louis、MO)から得ることができる。
【0471】
光血栓症誘発性脳卒中:光血栓症を、Zheng et al 2010 (PloS One 5 (12): e14401)に記載されている通り実行する。手短には、ローズベンガルは、脈管構造に注射され、励起されると、内皮壁に損傷を与え、局所的血栓症(血餅)を誘発する一重項酸素を発生する蛍光色素である。この技術を使用して、マウスに、人工脳脊髄液(aCSF)中滅菌ローズベンガル(RB、Sigma、U.S.A.)0.1mLの尾静脈注射を与える。RB濃度は20mg/mLである。皮質領域をイメージング領域の中心に置き、0.8-NAの40倍水浸対物レンズ(Nikon、東京)を使用して緑色レーザー(543nm、5mW)を照射する。血餅の形成を、標的化された血管または下流毛細血管がしっかりと閉塞されるまでリアルタイムでモニタリングする。その後、安定な血餅を、高度蛍光領域で終わる非蛍光血管セグメンテーションによって特定する。対照実験において、レーザー照射またはローズベンガル自体は、いずれも血餅の形成をもたらさなかった。0.5μmol/kgなどの用量における処置を、腹腔内注射(i.p.)により導入する。A3受容体アンタゴニストMRS1523を用いる実験については、研究の経過を通して受容体アンタゴニズムを確保するために、マウスに0時間目および2時間目の時点で腹腔内注射(2mg/kg)を投与する。
【0472】
動物および光血栓症誘発性脳卒中:脳卒中を、Zheng et al 2010 (PloS One 5 (12): e14401)に記載されている通り実行する。この研究では、雌性C57Bl/6マウス(4~6カ月齢)を使用する。この論文の方法から、マウスに、ノーズコーンを介して100%酸素を伴う3%イソフルランで麻酔し、その後1%イソフルランで維持する。麻酔深度をモニタリングし、バイタルサイン、つねり刺激からの逃避反応(pinch withdrawal)および瞬目に従って調節する。体温を、フィードバック制御加熱パッド(Gaymar T/Pump)によって37℃で維持する。酸素飽和、呼吸数、および心拍を含むバイタルサインを、MouseOx系(STARR Life Sciences)を使用することによって連続的にモニタリングする。各マウスの頭部の毛を刈り込み、頭皮に小さい切開を行って頭蓋を曝露する。特注のステンレス鋼プレートを、VetBond組織接着剤(3M、St Paul、MN)を用いて頭蓋に接着する。菲薄化した頭蓋骨のイメージングウィンドウを、実験に応じて右の一次体性感覚皮質(ブレグマの約1.5mm後方および正中線から2mm側方)上に作製する。手短には、頭蓋の広い領域を、まず電気ドリルで菲薄化し、次に、外科手術用メスでさらに菲薄化する。菲薄化した頭蓋の最終的な厚さは、およそ50μmである。頭蓋のイメージングウィンドウが作製された後、マウスを顕微鏡の台に移し、光血栓症またはイメージング実験のために使用する。反復イメージング実験のために、プレートを頭蓋から注意深く剥がし、頭皮を縫合する(Ethicon 6-0絹縫合糸)。各実験後、マウスを、次の時点までまたは屠殺するまでケージに戻しておく。すべての手順は、サン・アントニオにあるテキサス大学医療科学センターの動物実験委員会(IACUC)によって承認されている。脳卒中またはシャム(傷害を受けていない)の30分後に、マウスを、ビヒクル(生理食塩水)または試験化合物のいずれかで処置する。
【0473】
光血栓性梗塞後の評価。脳梗塞のサイズを、Zheng et al 2010 (PloS One 5 (12): e14401)に記載されている通り、2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)染色を使用して評価する。手短には、脳スライスにおけるRB誘発性病変を、TTCで染色する。TTCは、ミトコンドリア酵素であるスクシニルデヒドロゲナーゼによって還元されると健康な脳組織を赤色に染色する、無色の色素である(Bederson JB et al., 1986)。次に、壊死組織に染色が存在しないことを使用して、脳梗塞領域を画定する。マウスを頸椎脱臼によって屠殺し、それらの脳を取り出し、次に氷冷HBSSに3分間入れる。その後、脳を脳型(KOPF)に移し、1mmの切片にスライスし、37℃の2%TTC(5分)に浸す。切片を、10%緩衝ホルムアルデヒド溶液中、4℃で一晩固定する。スライスを、病変サイズの分析のために平台型スキャナー(HP scanjet 8300)上で、1200dpiで画像化する。
【0474】
結果
マウスにおいて、多血管性の光血栓性脳卒中を、上記で記載されている通りRBと共に尾静脈への注射を使用して誘発する。血餅が形成されてから30分以内に、マウスに、ビヒクル(生理食塩水対照)または試験化合物のいずれかを腹腔内注射する。初期脳卒中から24時間後に、脳梗塞のサイズを、上記で記載されている通り、TTC染色で評価する。
【0475】
A3受容体アンタゴニストMRS1523は、脳卒中後、試験化合物の神経保護を阻害すると予想される。多血管性の光血栓性脳卒中を、上記で記載されている通りマウスにおいて誘発する。しかしこの実験では、受容体アンタゴニズムを確保するために、マウスを0時間目および2時間目の時点で、A3受容体アンタゴニストであるMRS1523の腹腔内(intraperatoneal)注射(2mg/kg)で処置する。次に、血餅が形成されてから30分以内に、マウスに、ビヒクル、試験化合物、MRS5698またはCl-IBMECAのいずれかを、上記で記載されている濃度で注射する。24時間後に、脳梗塞のサイズをTTC染色で評価する。
【0476】
(実施例7)
アデノシン受容体、例えばA3アデノシン受容体(A3R)における化合物の親和性、アゴニズム、およびバイアス型アゴニズムを決定するための実験プロトコール
以下のアッセイを使用して、開示される化合物が、A1、A2A、またはA3受容体においてアゴニズム、部分アゴニズム、またはバイアス型アゴニズム(機能的選択性またはアゴニスト輸送としても公知)を示すかどうかを決定することができる。Paoletta, S.; Tosh, D. K.; Finley, A.; Gizewski, E.; Moss, S. M.; Gao, Z. G.; Auchampach, J. A.; Salvemini, D.; Jacobson, K. A., "Rational design of sulfonated A3 adenosine receptor-selective nucleosides as pharmacological tools to study chronic neuropathic pain," J. Med. Chem. 2013, 56, 5949-5963を参照されたい。
【0477】
ヒトアデノシン受容体(A1、A2AおよびA3を含む)の結合研究
【0478】
[3H]R-N6-フェニルイソプロピルアデノシン([3H]R-PIA、63Ci/mmol)、[3H](2-[p-(2-カルボキシエチル)フェニル-エチルアミノ]-5’-N-エチルカルボキサミド(ethylcarboxamido)-アデノシン)([3H]CGS21680、40.5Ci/mmol)および[125I]N6-(4-アミノ-3-ヨードベンジル)アデノシン-5’-N-メチルウロンアミド([125I]I-AB-MECA、2200Ci/mmol)を、Perkin-Elmer LifeおよびAnalytical Science(Boston、MA)から購入した。試験化合物をDMSO中5mMストック溶液として調製し、凍結保存した。薬理学的標準物質であるCl-IB-MECA(A3ARアゴニスト)、アデノシン-5’-N-エチルカルボキサミド(NECA、非選択的ARアゴニスト)および2-クロロ-N6-シクロペンチルアデノシン(CCPA、A1ARアゴニスト)を、Tocris R&D Systems(Minneapolis、MN)から購入した。
【0479】
細胞培養および膜調製-組換え型hA1およびhA3ARを安定に発現するCHO細胞、ならびにhA2AARを安定に発現するHEK293細胞を、10%ウシ胎仔血清、100単位/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、および2μmol/mLグルタミンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)およびF12(1:1)中で培養した。加えて、800μg/mLジェネティシンをA2A培地に添加し、500μg/mLハイグロマイシンをA1およびA3培地に添加した。細胞を収集した後にホモジナイズし、PBSに懸濁させた。次に、細胞を240gで5分間遠心分離し、ペレットを、10mM MgCl2を含有している50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5)に再懸濁させた。懸濁物をホモジナイズし、次に4℃で30分間、14,330gで超遠心分離した。得られたペレットを、Tris緩衝液に再懸濁させ、アデノシンデアミナーゼ(3単位/mL)と共に37℃で30分間インキュベートした。懸濁物を電気ホモジナイザーで10秒間ホモジナイズし、1mLバイアルにピペット注入し、次に、結合実験まで-80℃で保存した。タンパク質濃度を、Pierce Biotechnology,Inc.(Rockford、IL)製のBCAタンパク質アッセイキットを使用して測定した。
【0480】
結合アッセイ:結合アッセイにおいて、各管に、10mM MgCl2を含有しているTris-HCl緩衝液(50mM、pH7.5)中、漸増濃度の試験リガンド50μL、適切なアゴニスト放射性リガンド50μL、および最後に膜懸濁物100μLを添加した。A1AR(タンパク質22μg/管)について、使用した放射性リガンドは、[3H]R-PIA(最終濃度3.5nM)であった。A2AAR(20μg/管)について、使用した放射性リガンドは、[3H]CGS21680(10nM)であった。A3AR(21μg/管)について、使用した放射性リガンドは、[125I]I-AB-MECA(0.34nM)であった。緩衝液で希釈した最終濃度10μMのNECAを使用して、非特異的結合を決定した。混合物を、振とう水浴中、25℃で60分間インキュベートした。結合反応を、減圧下でM-24細胞ハーベスター(Brandel、Gaithersburg、MD)を使用して、Brandel GF/Bフィルターを介して濾過することによって停止させた。フィルターを、氷冷した50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5)3mLで3回洗浄した。A1およびA2AAR結合のためのフィルターを、Hydrofluorシンチレーション緩衝液5mLを含有しているシンチレーションバイアルに入れ、Perkin Elmer液体シンチレーション分析器(Tri-Carb 2810TR)を使用してカウントした。A3AR結合のためのフィルターを、Packard Cobra II γ-カウンターを使用してカウントした。Ki値を、すべてのアッセイについてGraphPad Prismを使用して決定した。
【0481】
結合アッセイ、マウスA3受容体
【0482】
類似の競合結合アッセイを、mARを発現するHEK293細胞膜を使用し、A1またはA3ARをラベルするために[125I]I-AB-MECAを使用し、A2AARをラベルするために[3H]CGS21680を使用して実施することができる。IC50値を、公知の方法を使用してKi値に変換した。非特異的結合を、100μM NECAの存在下で決定した。
【0483】
機能的アッセイ
【0484】
cAMP蓄積アッセイ:組換え型hA3ARを発現するCHO細胞における細胞内cAMPレベルを、ELISAアッセイを使用して測定した。まず、細胞をトリプシン処理によって収集した。遠心分離し、培地に再懸濁させた後、細胞を、96ウェルのプレート中培地0.1mLに播種した。24時間後、培地を除去し、50mM HEPES、pH7.4を含有しているDMEM0.2mLで3回洗浄した。次に、細胞を、ロリプラム(10μM)およびアデノシンデアミナーゼ(3単位/mL)の存在下で、アゴニスト(hA3ARについては10μM NECA)または試験化合物で処理した。30分後、フォルスコリン(10μM)を培地に添加し、インキュベーションをさらに15分間継続した。上清を除去することによって反応を停止させ、氷冷した0.1M HCl100μLを添加すると細胞が溶解した。細胞溶解物を再懸濁させ、-20℃で保存した。cAMP生成の決定のために、HCl溶液50μLを、Amersham cAMP酵素イムノアッセイにおいて、キットと共に提供された使用説明書に従って使用した。結果を、450nmでのSpectroMax M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して解釈した。
【0485】
類似のcAMPアッセイを、mA1ARまたはmA3ARを発現するHEK293細胞で実施した。HEK293細胞を、細胞培養プレートから剥がし、25mM HEPES(pH7.4)、1単位/mlアデノシンデアミナーゼ、4-(3-ブトキシ-4-メトキシフェニル)メチル-2-イミダゾリドン(Tocris、Ro 20,1724、20μM)および300nM 8-[4-[4-(4-クロロフェニル(chlorophenzyl))ピペラジド-1-スルホニル)フェニル]]-1-プロピルキサンチン(Tocris、PSB603、300nM)を含有している無血清DMEMに再懸濁させて、HEK293細胞に内因的に発現したA2BARを阻害し、次にポリプロピレン管に移した(2×105細胞/管)。細胞を、フォルスコリン(10μM)およびARリガンドと共に、振とうしながら37℃で15分間、同時にインキュベートし、その後、1N HCl500μLを添加することによってアッセイを停止させた。溶解物を4000×gで10分間遠心分離した。cAMP濃度を、既に説明されている通り、競合結合アッセイを使用して上清において決定した(Nordstedt C, Fredholm BB, "A modification of a protein-binding method for rapid quantification of cAMP in cell-culture supernatants and body fluid," Anal. Biochem. 1990; 189:231-234. [PubMed: 2177960])。EC50およびEmax値を、データをE=Emin+(Emax-Emin)/(1+10x-logEC50)にフィットさせることによって計算した。
【0486】
選択化合物のA
3R結合。本明細書で記載される方法を使用して、A
3受容体における選択化合物の親和性を測定した。結果を以下に示す。
【表3】
【0487】
A3Rにおけるバイアス型アゴニズムの決定。
【0488】
材料。Fluo-4、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、およびペニシリン-ストレプトマイシンは、Invitrogen(Carlsbad、CA)から購入することができる。アデノシンデアミナーゼ(ADA)およびハイグロマイシン-Bは、Roche(Basel、Switzerand)から購入することができる。ウシ胎仔血清(FBS)は、ThermoTrace(Melbourne、Australia)から購入することができる。AlphaScreen SureFire細胞外シグナル調節キナーゼ1および2(ERK1/2)、Akt1/2/3、ならびにcAMPキットは、PerkinElmer(Boston、MA)から得ることができる。試験化合物は、本明細書に記載されている通り調製することができる。他のすべての試薬は、商業的販売会社、例えばSigma-Aldrich(St.Louis、MO)から購入することができる。
【0489】
細胞培養。ヒトA3Rの配列を、既に説明されている方法(Stewart et al., 2009)を使用して、GatewayエントリーベクターであるpDONR201にクローニングし、次にGatewayデスティネーションベクターであるpEF5/FRT/V5-destに移すことができる。A3-FlpIn-CHO細胞を、既に説明されている方法(May et al., 2007)を使用して作製し、5%CO2を含有する加湿インキュベーターにおいて、10%FBSおよび選択抗生物質であるハイグロマイシン-B(500μg/ml)を補充したDMEM中、37℃で維持することができる。細胞生存、ERK1/2リン酸化、Akt1/2/3リン酸化、およびカルシウム動員アッセイのために、細胞を、96ウェルの培養プレートに4×104細胞/ウェルの密度で蒔くことができる。6時間後、細胞を無血清DMEMで洗浄し、無血清DMEM中、5%CO2中37℃で12~18時間維持した後、アッセイを行う。cAMPアッセイのために、細胞を、96ウェルの培養プレートに2×104細胞/ウェルの密度で蒔き、5%CO2中37℃で一晩インキュベートした後、アッセイを行うことができる。
【0490】
細胞生存アッセイ。培地を除去し、A3Rリガンドの非存在下および存在下で、ADA(1U/ml)およびペニシリン-ストレプトマイシン(0.05U/ml)を含有しているHEPES-緩衝生理食塩水溶液(10mM 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、146mM NaCl、10mM D-グルコース、5mM KCl、1mM MgSO4、1.3mM CaCl2、および1.5mM NaHCO3、pH7.45)で置き換える。次に、プレートを、加湿インキュベーターにおいて37℃で24時間維持した後、5mg/mlヨウ化プロピジウムを細胞に添加する。次に、プレートを、EnVisionプレートリーダー(PerkinElmer)で、それぞれ励起および発光を320nmおよび615nmに設定して読み取ることができる。データを、それぞれHEPES緩衝液中でt=0時間およびMilli-Q水中でt=24時間において決定される100%細胞生存および0%細胞生存に対して正規化する。
【0491】
ERK1/2およびAkt1/2/3リン酸化アッセイ。リガンドごとのERK1/2およびAkt1/2/3リン酸化の濃度応答曲線を、1U/ml ADAを含有している無血清DMEM中で実行することができる(37℃で5分間の曝露)。アゴニストによる刺激は、培地を除去し、SureFire溶解緩衝液100mlを各ウェルに添加することによって停止させることができる。次に、プレートを5分間かき混ぜる。pERK1/2の検出では、384ウェルのProxiPlate中、総体積11mlの溶解物:活性化緩衝液:反応緩衝液:AlphaScreenアクセプタービーズ:AlphaScreenドナービーズの80:20:120:1:1v/v/v/v/v希釈を伴い得る。プレートを、暗所において37℃で1時間インキュベートし、続いてEnVisionプレートリーダー(PerkinElmer)によって、それぞれ励起および発光を630nmおよび520~620nmに設定して蛍光を測定することができる。Akt1/2/3リン酸化の検出では、384ウェルのProxiplate中、総体積9lの溶解物:活性化緩衝液:反応緩衝液:AlphaScreenアクセプタービーズの40:9.8:39.2:1v/v/v/v希釈を用いることができる。プレートを、暗所において室温で2時間インキュベートすることができ、その後、希釈緩衝液:AlphaScreenドナービーズの19:1v/v希釈物を、総体積11μlで添加することができる。プレートを室温でさらに2時間インキュベートし、続いてEnVisionプレートリーダー(PerkinElmer)によって、それぞれ励起および発光を630nmおよび520~620nmに設定して蛍光を測定することができる。アゴニスト濃度応答曲線を、10%FBSによって媒介されるリン酸化(5分間の刺激)に対して正規化する。
【0492】
カルシウム動員アッセイ。培地を96ウェルのプレートから除去し、1U/mlのADA、2.5mM プロベネシド、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)、および1M Fluo4を含有しているHEPES緩衝生理食塩水溶液で置き換えることができる。プレートを、加湿インキュベーターにおいて、暗所において37℃で1時間インキュベートすることができる。FlexStationプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)により、アゴニストの非存在下および存在下でHEPES緩衝生理食塩水溶液の添加を実施し、1.52秒ごとに75秒間、蛍光を測定することができる(励起、485nm;発光、520nm)。ピーク蛍光とベースライン蛍光との間の差を、細胞内Ca2+動員のマーカーとして測定することができる。A3Rアゴニスト濃度応答曲線を、100μM ATPによって媒介された応答に対して正規化して、細胞数およびローディング効率の差を説明することができる。
【0493】
cAMP蓄積阻害アッセイ。培地を、刺激緩衝液(140mM NaCl、5mM KCl、0.8M MgSO4、0.2mM Na2HPO4、0.44mM KH2PO4、1.3mM CaCl2、5.6mM D-グルコース、5mM HEPES、0.1%BSA、1U/ml ADA、および10μMロリプラム、pH7.45)で置き換え、37℃で1時間インキュベートすることができる。cAMP蓄積の阻害は、A3-FlpIn-CHO細胞をA3Rアゴニストと10分間プレインキュベーションした後、3μMフォルスコリンを添加してさらに30分間置くことによって評価することができる。反応は、緩衝液を迅速に除去し、氷冷した100%エタノール50μlを添加することによって停止させることができる。エタノールを蒸発させた後、検出緩衝液(0.1%BSA、0.3%Tween(登録商標)-20、5mM HEPES、pH7.45)50μlを添加する。プレートを10分間かき混ぜた後、溶解物10μlを384ウェルのOptiplateに移す。検出には、AlphaScreenアクセプタービーズ:刺激緩衝液の1:49v/v希釈物5μlの添加を用いることができる。この後、AlphaScreenドナービーズ:検出緩衝液:3.3U/μlビオチン化cAMPの1:146:3v/v/v希釈物15μlにより、総体積30μlを形成する。添加前に、ドナービーズ/ビオチン化cAMP混合物を、30分間平衡化させることができる。プレートを、暗所において室温で一晩インキュベートし、続いてEnVisionプレートリーダー(PerkinElmer)によって、それぞれ励起および発光を630nmおよび520~620nmに設定して蛍光を測定することができる。アゴニスト濃度応答曲線を、3μMフォルスコリン(0%)または緩衝液(100%)単独によって媒介された応答に対して正規化することができる。
【0494】
分子モデリング。ヒトA3Rの相同性モデルを使用して、この研究において調査されたすべての化合物について、ドッキングシミュレーションを実施することができる。特に、アゴニストが結合したhA2AAR結晶構造(PDB ID:3QAK)に全体的に基づくモデル、ハイブリッドA2AAR-β2アドレナリン受容体テンプレートに基づくモデル、およびハイブリッドA2AAR-オプシンテンプレート(β2アドレナリン受容体X線構造PDB ID:3SN6;オプシン結晶X線結晶構造PDB ID:3DQB)に基づくモデルの、既に報告されている3つのモデルを使用することができる(Tosh et al., 2012a)。ハイブリッドテンプレートに基づくモデルは、A2AARに基づくモデルと比較して、外側へのTM2の移動を示す。Schroedinger一式(Schroedinger Release 2013-3, Schroedinger, LLC, New York, NY, 2013)において実装されるBuilderおよびLigPrepツールを使用して、A3Rリガンドの構造を構築し、ドッキングのために調製することができる。A3Rモデルにおけるリガンドの分子ドッキングは、Schroedinger一式のGlideパッケージ部分を用いることによって実施することができる。特に、アデノシン受容体の結合ポケットのいくつかの非常に重要な残基、すなわち、Phe(EL2)、Asn(6.55)、Trp(6.48)およびHis(7.43)の質量中心上に、Glide Gridの中心を置くことができる。Glide Gridは、14Å×14Å×14Åの内側ボックス(リガンド直径の中点ボックス)および内側ボックスから各方向に25Å広がる外側ボックス(その中にすべてのリガンド原子が含有されなければならないボックス)を使用して構築することができる。リガンドのドッキングは、XP(超精密)手順を使用して、強固な結合部位において実施することができる。リガンドごとの最上位スコアのドッキングコンフォメーションを、目視による検査およびタンパク質-リガンド相互作用の分析に供して、実験データと合致する提案された結合コンフォメーションを選択することができる。
【0495】
データ分析。統計分析および曲線フィッティングは、Prism6(GraphPad Software、San Diego、CA)を使用して実施することができる。シグナル伝達バイアスを定量するために、既に説明されている通り、アゴニズムのBlack-Leff動作モデルの誘導を使用して、非線形回帰によってアゴニスト濃度応答曲線を分析することができる(Kenakin et al., 2012; Wootten et al., 2013; van der Westhuizen et al., 2014)。変換係数(transduction coefficient)、すなわちτ/KA[対数Log(τ/KA)として表される]を使用して、バイアス型アゴニズムを定量することができる。アゴニスト応答に対する細胞依存性の効果を説明するために、参照アゴニストであるIB-MECAについて得られた値に対して変換比を正規化して、ALog(τ/KA)を作製することができる。異なるシグナル伝達経路におけるアゴニストごとのバイアスを決定するために、ALog(τ/KA)を、参照経路であるpERK1/2に対して正規化して、AALog(τ/KA)を作製する。バイアスは、10AALog(τ/KA)として定義することができ、ここでバイアスが欠如していると、1から統計的に異なることはなく、または対数として表される場合には0から統計的に異なることはない値が得られる。すべての結果は、平均6S.E.Mとして表すことができる。統計分析は、F検定または一元分散分析を、統計的有意性がP、0.05として決定されるTukeyまたはDunnettの事後検定と共に含むことができる。
【0496】
(実施例8)
ブタ新生仔への静脈内投与後のMRS4322の薬物動態および結合
目的
この研究は、ブタ新生仔への静脈内投与後の試験化合物の血漿、脳およびCSF濃度を決定するために設計される。
【0497】
方法
化学物質。試験化合物を、上記で記載されている通りに調製する。
【0498】
動物。体重およそ7.5Kgの4週齢の雌性ブタ新生仔を、この研究のために使用することができる。研究中、動物に脳のマイクロ透析プローブを装備して、薬物濃度を決定するための脳細胞外流体試料を得る。
【0499】
薬物投与:試験化合物をDMSOに可溶化し、次に生理食塩水で希釈して、投与溶液を調製する。10mL体積の投与溶液を、各ブタ新生仔(n=3)への静脈内ボーラス投与によって投与する。
【0500】
組織サンプリング:血液試料を、用量から0.25時間後、0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後および6時間後に得る。脳細胞外流体試料を、埋め込まれたマイクロ透析プローブから用量から1時間後、4時間後および6時間後に得る。各時点において全血(1mL)を得、血漿を調製するために、ヘパリンを含有しているバキュテナー管に入れ、すぐに遠心分離し、血漿を-80℃で保存する。脳細胞外流体および脳脊髄液試料を-80℃で保存する。安楽死の際に(用量から6時間後)、脳脊髄液試料を得、凍結させ、一方、皮質および海馬からの脳試料を断頭によって得、氷冷リン酸緩衝生理食塩水ですすぎ、秤量する。次に、脳試料を液体窒素中ですぐに急速凍結させ、-80℃で保存する。
【0501】
生物分析
試験化合物の血漿、脳、脳細胞外流体および脳脊髄液濃度を、LC-MS/MSによって、トルブタミドを内部標準物質として利用して決定する。組織マトリックスごとに標準曲線を作製し、LLOQ/ULOQ濃度を決定する。
【0502】
試験化合物の脳内濃度の生物分析のために、脳試料を、氷冷リン酸緩衝生理食塩水中、4倍希釈でホモジナイズする。得られた希釈脳ホモジネートのアリコートをアセトニトリルで処理し、LC-MS/MSによって分析する。
【0503】
(実施例9)
ブタ新生仔における試験化合物の血漿および脳結合
目的
この研究は、ブタ新生仔における試験化合物の血漿および脳遊離画分を決定するために設計される。
【0504】
方法
化学物質。試験化合物を、上記で記載されている通りに調製することができる。分析グレードのスルファメトキサゾールおよびワルファリンは、商業的供給業者、例えばSeventh Wave Laboratories(Maryland Heights、MO.)から得ることができる。他のすべての化学物質は、商業的販売会社、例えばSigma-Aldrich(St.Louis、MO.)から得ることができる。
【0505】
動物および組織調製。雌性ブタ新生仔から血漿および脳試料を得、使用するまで-80℃で保存する。
【0506】
血漿限外濾過液のブランク試料を、凍結した血漿を解凍し、次に、加湿5%CO2チャンバ内で、37℃で60分間、予め加温することによって調製する。800ulアリコートを、Centrifree遠心フィルター(Ultracel再生セルロース(NMWL30,000amu)Lot R5JA31736)に移し、2900RPMにおいて37℃で10分間遠心分離し、血漿水の濾液を収集し、標準物質、ブランクおよびQC標準物質の調製において使用する。
【0507】
脳を秤量し、Omni組織ホモジナイザーを使用して、1:9リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4と共にホモジナイズする。4匹のマウスからの脳をホモジナイズし、プールし、混合して、1つの試料を形成する。
【0508】
血漿結合決定。試験化合物、スルファメタキサゾールおよびワルファリンをDMSOに可溶化し、次に1:1アセトニトリル:水で希釈して、100uM透析ストック溶液を調製する。スルファメタキサゾールおよびワルファリンを、公知の血漿結合値を有する研究標準物質として利用する。血漿試料を、37℃に維持した加湿5%CO2インキュベーターにおいて60分間、予め加温する。予め加温した血漿の3mlアリコートに、化合物ごとに100uMストック溶液を使用して、それぞれ試験化合物、スルファメタキサゾールまたはワルファリンをスパイク添加し、最終試験濃度を1uMにする。スパイク添加した血漿試料を、加湿5%CO2チャンバ内で、37℃で最小60分間、回転ミキサー上でインキュベートする。60分後、各試料の3つの800ulアリコートを、Centrifree遠心フィルターに添加する。フィルターを、2900rpmにおいて37℃で10分間遠心分離する。残留血漿の3つの100ulアリコートを、生物分析のために限外濾過液と共に収集する。
【0509】
脳結合決定:試験化合物、スルファメトキサゾールおよびワルファリンをDMSOに可溶化し、1:1アセトニトリル:水で希釈して、100uM透析ストック溶液を調製する。プールしておいたホモジナイズした脳を、37℃に維持した加湿5%CO2インキュベーターにおいて60分間、予め加温する。脳ホモジネートの3mlアリコートに、化合物ごとに100uMストック溶液を使用して、それぞれ試験化合物、スルファメタキサゾールまたはワルファリンをスパイク添加し、最終スパイク添加濃度1uMをもたらす。スパイク添加しプールしておいた脳ホモジネートを、加湿5%CO2インキュベーター内で、37℃で60分間、Nutatorミキサー上に置く。60分後、各試料の3つの800ulアリコートを、Centrifree遠心フィルターに添加する。フィルターを、2900rpmにおいて37℃で10分間遠心分離する。残留脳ホモジネートおよび限外濾過液のアリコートを、生物分析のために収集する。
【0510】
生物分析
スパイク添加した血漿、脳ホモジネートおよび関連する限外濾過液中の試験化合物の血漿および脳内濃度を、LC-MS/MSによって、トルブタミドを内部標準物質として利用して決定する。スルファメタキサゾールおよびワルファリンの関連濃度も、LC-MS/MSによって標準条件を使用して決定する。
【0511】
(実施例10)
試験化合物の薬理学的特徴付け
試験化合物を、細胞膜調製物を使用して、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において組換えにより発現されたヒトおよびマウスA3アデノシン受容体における競合結合研究で調査する。[3H]NECAを、A3アゴニスト放射性リガンドとして用いる。CHO細胞はアデノシン受容体を天然では発現しないので、非選択的アゴニストであるNECAを使用することができる。試験化合物による放射性リガンドの濃度依存的な置換えを決定する。
【0512】
加えて、cAMP実験を、それぞれヒトA3またはマウスA3アデノシン受容体を組換えにより発現するCHO細胞で実施する。非選択的アゴニストであるNECAを対照として使用する。
【0513】
Alnouri M.W. et al., "Selectivity is species-dependent: Characterization of standard agonists and antagonists at human, rat, and mouse adenosine receptors," Purinergic Signal. 2015, 11, 389-407を参照されたい。本発明および公開されている研究において、同じ細胞系を使用する。
【0514】
本発明者らは、本発明のいくつかの実施形態を説明してきたが、本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態を提供するために、本発明者らの基本的な例は変更され得ることが明らかである。したがって、本発明の範囲は、例として示された特定の実施形態によってではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されるべきであることを理解されよう。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化41】
または薬学的に許容されるその塩を調製する方法であって、式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されているか、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
前記方法は、
(a)式Cの化合物
【化42】
を提供するステップであって、式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されているか、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2Aは、好適なアミノ保護基もしくはR
2であるか、またはR
2AおよびPG
1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2Aと一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成する、ステップと、
(b)前記式Cの化合物を、式Bの化合物
【化43】
であって、式中、PG
2、PG
3、およびPG
4のそれぞれは、独立に、好適なヒドロキシル保護基である、式Bの化合物とカップリングして、式Aの化合物
【化44】
であって、式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されているか、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2Aは、好適なアミノ保護基もしくはR
2であるか、またはR
2AおよびPG
1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2Aと一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
PG
2、PG
3、およびPG
4のそれぞれは、独立に、好適なヒドロキシル保護基である、
式Aの化合物を形成するステップと、
(c)前記式Aの化合物を脱保護して、前記式Iの化合物を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
PG
2およびPG
3が、それらが結合する酸素原子と一緒になって、環式ケタールを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PG
2およびPG
3が、それらが結合する酸素原子と一緒になって、アセトニドを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
PG
4が、それが結合する酸素原子と一緒になって、シリルエーテルまたはアリールアルキルエーテルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
PG
4が、トリチルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)の前記脱保護が、前記式Aの化合物を好適な酸で処理することによって達成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(d)式Iの化合物の塩を好適な塩基で処理して、式Iの遊離塩基化合物を形成するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)における前記カップリングが、好適なホスフィンおよび好適なアゾジカルボキシレート試薬の存在下で達成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式Cの化合物
【化45】
を調製する方法であって、式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2Aは、好適なアミノ保護基もしくはR
2であるか、またはR
2AおよびPG
1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル-、または-SHであり、
Xは、SまたはOであり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2Aと一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
前記方法は、
(a)式Eの化合物
【化46】
を提供するステップであって、式中、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
LG
1は、好適な脱離基である、ステップと、
(b)前記式Eの化合物をカップリングして、式Dの化合物
【化47】
を形成するステップであって、式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SまたはOであり、
nは、0、1、2、または3である、ステップと、
(c)前記式Dの化合物を保護して、前記式Cの化合物を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項10】
R
1が、C
1~8アルキル、-(C
1~2アルキレン)-フェニル、-(C
1~2アルキレン)-(C
3~5シクロアルキル)、またはC
3~8シクロアルキルであり、そのそれぞれが、R
3でn回置換されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
R
1が、C
1~8アルキルである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
R
2が、水素である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
Xが、Sである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
nが、0である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
R
2Aが、それが結合している-N(PG
1)-部分と一緒になって、酸に不安定なカルバメートである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
R
2Aが、BOCである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
R
2Aが、水素である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
PG
1が、それが結合している-N(R
2A)-部分と一緒になって、酸に不安定なカルバメートである、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
PG
1が、BOCである、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
式I-Aの化合物
【化48】
または薬学的に許容されるその塩であって、式中、
R
1は、(i)R
3で1、2、もしくは3回置換されているC
1~2アルキルであるか、または(ii)C
3~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-フェニル、-(C
1~4アルキレン)-(C
3~8シクロアルキル)、C
2~8アルケニル、C
2~8アルキニル、C
3~8シクロアルキル、フェニル、もしくは窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されており、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、
各R
3は、独立に、ハロゲン、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SまたはOであり、
nは、0、1、2、または3である、
化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項21】
R
1が、(i)R
3で1、2、もしくは3回置換されているC
1~2アルキルであるか、または(ii)C
3~8アルキル、-(C
1~2アルキレン)-フェニル、-(C
1~2アルキレン)-(C
3~5シクロアルキル)、もしくはC
3~8シクロアルキルであり、そのそれぞれが、R
3でn回置換されている、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
R
2が、水素である、請求項20または21に記載の化合物。
【請求項23】
各R
3が、独立に、ハロゲンである、請求項20~22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
nが、0である、請求項20~22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
Xが、Sである、請求項20~24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
表1のI-3~I-21から選択される化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項27】
式Aの化合物
【化49】
であって、式中、
R
1は、C
1~8アルキル、-(C
1~4アルキレン)-Ar、-(C
1~4アルキレン)-Cy、C
2~8アルケニル、-(C
2~4アルケニレン)-Ar、-(C
2~4アルケニレン)-Cy、C
2~8アルキニル、-(C
2~4アルキニレン)-Ar、-(C
2~4アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3でn回置換されているか、またはR
1は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2Aは、好適なアミノ保護基もしくはR
2であるか、またはR
2AおよびPG
1は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、前記C
1~4アルキルおよびC
3~5シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4アルキル)、-OH、-S-(C
1~4アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2Aと一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
PG
2、PG
3、およびPG
4のそれぞれは、独立に、好適なヒドロキシル保護基である、化合物。
【請求項28】
R
1が、C
1~8アルキルであるか、またはR
1が、ハロゲンであり、Xが、共有結合である、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
R
2Aが、水素である、請求項27または28に記載の化合物。
【請求項30】
R
2Aが、BOCである、請求項27または28に記載の化合物。
【請求項31】
Xが、Sである、請求項27~30のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
PG
1が、BOCである、請求項27~31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項33】
PG
2およびPG
3が、それらが結合する酸素原子と一緒になって、アセトニドを形成する、請求項27~32のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項34】
PG
4が、トリチルである、請求項27~33のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項35】
請求項20~34のいずれか一項に記載の化合物、および薬学的に許容される担体、佐剤、またはビヒクルを含む医薬組成物。
【請求項36】
傷害、疾患、または状態の処置を必要とする患者における、前記傷害、疾患、または状態を処置するための、請求項20~26のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、組成物であって、前記傷害、疾患、または状態が外傷性脳傷害(TBI)、脳振盪、脳卒中、部分的なもしくは完全な脊髄離断、栄養失調、中毒性神経障害、脳髄膜症、遺伝的障害によって引き起こされる神経変性、加齢性神経変性、血管疾患、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性外傷性脳症(CTE)、心血管疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、移植片拒絶、移植片対宿主病、高眼圧症、緑内障、臭気過敏、嗅覚障害、2型糖尿病および/もしくは疼痛管理、呼吸器疾患、CNS機能の欠陥、学習障害、認知障害、耳の障害、メニエール病、内リンパ水腫、進行性難聴、浮動性めまい、回転性めまい、耳鳴、放射線がん治療と関連する付帯的脳損傷、片頭痛処置、高齢者の睡眠障害、てんかん、統合失調症、回復中のアルコール依存者が経験する症状、外科手術中の末梢神経系のニューロンもしくは神経への損傷、胃腸の状態、CNSによって媒介される疼痛、片頭痛、放射線がん治療と関連する付帯的脳損傷、うつ病、気分もしくは行動変化、認知症、迷走性挙動、自殺傾向、振戦、ハンチントン舞踏病、運動協調の喪失、聴覚消失、発語障害、ドライアイ、仮面様顔貌、注意欠陥、記憶喪失、認知的困難、回転性めまい、構音障害、嚥下障害、眼の異常、または見当識障害、または嗜癖から選択される
、組成物。
【請求項37】
前記傷害、疾患、または状態が、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、または急性疼痛から選択されるCNSによって媒介される疼痛である、請求項36に記載の
組成物。
【請求項38】
前記
組成物が、前記患者に、組織プラスミノーゲン活性化因子、抗凝血剤、スタチン、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、ベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、または利尿薬と共に併用投与される
ことを特徴とする、請求項36に記載の
組成物。
【請求項39】
前記傷害、疾患、または状態が、外傷性脳傷害(TBI)、脳卒中、神経変性状態、または心疾患もしくは心血管疾患から選択される、請求項36に記載の
組成物。
【請求項40】
前記傷害、疾患、または状態が、脳振盪、爆風傷害、戦闘関連傷害、または頭部への軽度、中等度もしくは重度の衝撃から選択されるTBIである、請求項39に記載の
組成物。
【請求項41】
前記傷害、疾患、または状態が、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、くも膜下出血、脳血管痙攣、または一過性虚血性発作(TIA)から選択される脳卒中である、請求項36に記載の
組成物。
【請求項42】
前記患者における神経保護または神経修復が、未処置患者と比較して増大する、請求項41に記載の
組成物。
【請求項43】
前記傷害、疾患、または状態が、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性外傷性脳症(CTE)、またはウイルス、アルコール中毒、腫瘍、毒素もしくは反復性脳傷害によって引き起こされた神経変性状態から選択される神経変性疾患である、請求項36に記載の
組成物。
【請求項44】
前記傷害、疾患、または状態が、心虚血、心筋梗塞、心筋症、冠動脈疾患、不整脈、心筋炎、心膜炎、狭心症、高血圧性心疾患、心内膜炎、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、またはアテローム性動脈硬化症から選択される心疾患または心血管疾患である、請求項36に記載の
組成物。
【請求項45】
TBIまたは脳卒中に罹患している、それを必要とする患者における神経保護または神経修復を増大させる
ための、請求項20~26のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩
を含む、
組成物。
【請求項46】
前記
組成物が、経口、静脈内、または非経口投与される
ことを特徴とする、請求項36~45のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項47】
傷害、疾患、障害、または状態の処置を必要とする患者における、前記傷害、疾患、障害、または状態を処置する請求項20~26のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を含む、組成物であって、前記傷害、疾患、障害、または状態が、
(i)放射線によって引き起こされた脳損傷または放射線がん治療もしくは片頭痛処置と関連する付帯的脳損傷、
(ii)片頭痛、
(iii)脳傷害と関連する状態または神経変性状態、あるいは
(iv)自己免疫疾患もしくは状態、緑内障、耳の障害、進行性難聴、耳鳴、てんかん、疼痛管理、CNSによって媒介される疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、または急性疼痛
から選択される
、組成物。
【請求項48】
前記化合物が、前記患者における神経保護または神経修復を、未処置患者と比較して増大させる、請求項47に記載の
組成物。
【請求項49】
前記脳傷害と関連する状態または神経変性状態が、てんかん、片頭痛、放射線がん治療と関連する付帯的脳損傷、うつ病、気分もしくは行動変化、認知症、迷走性挙動、自殺傾向、振戦、ハンチントン舞踏病、運動協調の喪失、聴覚消失、発語障害、ドライアイ、仮面様顔貌、注意欠陥、記憶喪失、認知的困難もしくは認知障害、CNS機能の欠陥、学習障害、回転性めまい、構音障害、嚥下障害、眼の異常、または見当識障害から選択される、請求項47に記載の
組成物。
【請求項50】
心虚血または心筋梗塞に罹患している、それを必要とする患者における心臓保護または損傷した心臓組織の再生を増大させる
ための、請求項20~26のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩
を含む、
組成物。
【請求項51】
嗜癖、嗜癖性行動、行動嗜癖、脳内報酬系障害、または強迫性障害の処置を必要とする患者における、前記嗜癖、嗜癖性行動、行動嗜癖、脳内報酬系障害、または強迫性障害を処置する
ための、請求項20~26のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩
を含む、
組成物。
【請求項52】
前記傷害、疾患、または状態が、片頭痛である、請求項36に記載の
組成物。
【請求項53】
前記傷害、疾患、または状態が、中枢性疼痛症候群、末梢神経障害、角膜神経障害性疼痛、脳卒中後疼痛、および多発性硬化症によって引き起こされた疼痛から選択される疼痛である、請求項36に記載の
組成物。
【請求項54】
式I-Bの化合物
【化50】
または薬学的に許容されるその塩であって、式中、
R
1は、ハロゲンであり、
R
2は、水素、C
1~4アルキル、またはC
3~5シクロアルキルであり、
Xは、共有結合である、
化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項55】
R
1が、FまたはClである、請求項54に記載の化合物。
【請求項56】
R
2が、C
1~4アルキルまたはC
3~5シクロアルキルである、請求項54または55に記載の化合物。
【請求項57】
請求項1に記載の方法に従って調製される、請求項54~56のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項58】
請求項54~57のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩、および担体、佐剤、またはビヒクルを含む医薬組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0514
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0514】
本発明者らは、本発明のいくつかの実施形態を説明してきたが、本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態を提供するために、本発明者らの基本的な例は変更され得ることが明らかである。したがって、本発明の範囲は、例として示された特定の実施形態によってではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されるべきであることを理解されよう。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
式Iの化合物
【化41】
または薬学的に許容されるその塩を調製する方法であって、式中、
R
1
は、C
1~8
アルキル、-(C
1~4
アルキレン)-Ar、-(C
1~4
アルキレン)-Cy、C
2~8
アルケニル、-(C
2~4
アルケニレン)-Ar、-(C
2~4
アルケニレン)-Cy、C
2~8
アルキニル、-(C
2~4
アルキニレン)-Ar、-(C
2~4
アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3
でn回置換されているか、またはR
1
は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2
は、水素、C
1~4
アルキル、またはC
3~5
シクロアルキルであり、前記C
1~4
アルキルおよびC
3~5
シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3
は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4
アルキル)、-OH、-S-(C
1~4
アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1
がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
前記方法は、
(a)式Cの化合物
【化42】
を提供するステップであって、式中、
R
1
は、C
1~8
アルキル、-(C
1~4
アルキレン)-Ar、-(C
1~4
アルキレン)-Cy、C
2~8
アルケニル、-(C
2~4
アルケニレン)-Ar、-(C
2~4
アルケニレン)-Cy、C
2~8
アルキニル、-(C
2~4
アルキニレン)-Ar、-(C
2~4
アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3
でn回置換されているか、またはR
1
は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2A
は、好適なアミノ保護基もしくはR
2
であるか、またはR
2A
およびPG
1
は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2
は、水素、C
1~4
アルキル、またはC
3~5
シクロアルキルであり、前記C
1~4
アルキルおよびC
3~5
シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3
は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4
アルキル)、-OH、-S-(C
1~4
アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1
がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1
は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2A
と一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成する、ステップと、
(b)前記式Cの化合物を、式Bの化合物
【化43】
であって、式中、PG
2
、PG
3
、およびPG
4
のそれぞれは、独立に、好適なヒドロキシル保護基である、式Bの化合物とカップリングして、式Aの化合物
【化44】
であって、式中、
R
1
は、C
1~8
アルキル、-(C
1~4
アルキレン)-Ar、-(C
1~4
アルキレン)-Cy、C
2~8
アルケニル、-(C
2~4
アルケニレン)-Ar、-(C
2~4
アルケニレン)-Cy、C
2~8
アルキニル、-(C
2~4
アルキニレン)-Ar、-(C
2~4
アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3
でn回置換されているか、またはR
1
は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2A
は、好適なアミノ保護基もしくはR
2
であるか、またはR
2A
およびPG
1
は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2
は、水素、C
1~4
アルキル、またはC
3~5
シクロアルキルであり、前記C
1~4
アルキルおよびC
3~5
シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3
は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4
アルキル)、-OH、-S-(C
1~4
アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1
がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1
は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2A
と一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
PG
2
、PG
3
、およびPG
4
のそれぞれは、独立に、好適なヒドロキシル保護基である、
式Aの化合物を形成するステップと、
(c)前記式Aの化合物を脱保護して、前記式Iの化合物を形成するステップと
を含む、方法。
(項目2)
PG
2
およびPG
3
が、それらが結合する酸素原子と一緒になって、環式ケタールを形成する、項目1に記載の方法。
(項目3)
PG
2
およびPG
3
が、それらが結合する酸素原子と一緒になって、アセトニドを形成する、項目1に記載の方法。
(項目4)
PG
4
が、それが結合する酸素原子と一緒になって、シリルエーテルまたはアリールアルキルエーテルである、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
PG
4
が、トリチルである、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
ステップ(c)の前記脱保護が、前記式Aの化合物を好適な酸で処理することによって達成される、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
(d)式Iの化合物の塩を好適な塩基で処理して、式Iの遊離塩基化合物を形成するステップをさらに含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
ステップ(b)における前記カップリングが、好適なホスフィンおよび好適なアゾジカルボキシレート試薬の存在下で達成される、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
式Cの化合物
【化45】
を調製する方法であって、式中、
R
1
は、C
1~8
アルキル、-(C
1~4
アルキレン)-Ar、-(C
1~4
アルキレン)-Cy、C
2~8
アルケニル、-(C
2~4
アルケニレン)-Ar、-(C
2~4
アルケニレン)-Cy、C
2~8
アルキニル、-(C
2~4
アルキニレン)-Ar、-(C
2~4
アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3
でn回置換されており、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2A
は、好適なアミノ保護基もしくはR
2
であるか、またはR
2A
およびPG
1
は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2
は、水素、C
1~4
アルキル、またはC
3~5
シクロアルキルであり、前記C
1~4
アルキルおよびC
3~5
シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3
は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4
アルキル)、-OH、-S-(C
1~4
アルキル-、または-SHであり、
Xは、SまたはOであり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1
は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2A
と一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
前記方法は、
(a)式Eの化合物
【化46】
を提供するステップであって、式中、
R
2
は、水素、C
1~4
アルキル、またはC
3~5
シクロアルキルであり、前記C
1~4
アルキルおよびC
3~5
シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
LG
1
は、好適な脱離基である、ステップと、
(b)前記式Eの化合物をカップリングして、式Dの化合物
【化47】
を形成するステップであって、式中、
R
1
は、C
1~8
アルキル、-(C
1~4
アルキレン)-Ar、-(C
1~4
アルキレン)-Cy、C
2~8
アルケニル、-(C
2~4
アルケニレン)-Ar、-(C
2~4
アルケニレン)-Cy、C
2~8
アルキニル、-(C
2~4
アルキニレン)-Ar、-(C
2~4
アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3
でn回置換されており、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2
は、水素、C
1~4
アルキル、またはC
3~5
シクロアルキルであり、前記C
1~4
アルキルおよびC
3~5
シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3
は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4
アルキル)、-OH、-S-(C
1~4
アルキル)、または-SHであり、
Xは、SまたはOであり、
nは、0、1、2、または3である、ステップと、
(c)前記式Dの化合物を保護して、前記式Cの化合物を形成するステップと
を含む、方法。
(項目10)
R
1
が、C
1~8
アルキル、-(C
1~2
アルキレン)-フェニル、-(C
1~2
アルキレン)-(C
3~5
シクロアルキル)、またはC
3~8
シクロアルキルであり、そのそれぞれが、R
3
でn回置換されている、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
R
1
が、C
1~8
アルキルである、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
R
2
が、水素である、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
Xが、Sである、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
nが、0である、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
R
2A
が、それが結合している-N(PG
1
)-部分と一緒になって、酸に不安定なカルバメートである、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
R
2A
が、BOCである、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
R
2A
が、水素である、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
PG
1
が、それが結合している-N(R
2A
)-部分と一緒になって、酸に不安定なカルバメートである、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
PG
1
が、BOCである、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
式I-Aの化合物
【化48】
または薬学的に許容されるその塩であって、式中、
R
1
は、(i)R
3
で1、2、もしくは3回置換されているC
1~2
アルキルであるか、または(ii)C
3~8
アルキル、-(C
1~4
アルキレン)-フェニル、-(C
1~4
アルキレン)-(C
3~8
シクロアルキル)、C
2~8
アルケニル、C
2~8
アルキニル、C
3~8
シクロアルキル、フェニル、もしくは窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3
でn回置換されており、
R
2
は、水素、C
1~4
アルキル、またはC
3~5
シクロアルキルであり、
各R
3
は、独立に、ハロゲン、-O-(C
1~4
アルキル)、-OH、-S-(C
1~4
アルキル)、または-SHであり、
Xは、SまたはOであり、
nは、0、1、2、または3である、
化合物または薬学的に許容されるその塩。
(項目21)
R
1
が、(i)R
3
で1、2、もしくは3回置換されているC
1~2
アルキルであるか、または(ii)C
3~8
アルキル、-(C
1~2
アルキレン)-フェニル、-(C
1~2
アルキレン)-(C
3~5
シクロアルキル)、もしくはC
3~8
シクロアルキルであり、そのそれぞれが、R
3
でn回置換されている、項目20に記載の化合物。
(項目22)
R
2
が、水素である、項目20または21に記載の化合物。
(項目23)
各R
3
が、独立に、ハロゲンである、項目20~22のいずれか一項に記載の化合物。
(項目24)
nが、0である、項目20~22のいずれか一項に記載の化合物。
(項目25)
Xが、Sである、項目20~24のいずれか一項に記載の化合物。
(項目26)
表1のI-3~I-21から選択される化合物、または薬学的に許容されるその塩。
(項目27)
式Aの化合物
【化49】
であって、式中、
R
1
は、C
1~8
アルキル、-(C
1~4
アルキレン)-Ar、-(C
1~4
アルキレン)-Cy、C
2~8
アルケニル、-(C
2~4
アルケニレン)-Ar、-(C
2~4
アルケニレン)-Cy、C
2~8
アルキニル、-(C
2~4
アルキニレン)-Ar、-(C
2~4
アルキニレン)-Cy、フェニル、Cy、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、そのそれぞれは、R
3
でn回置換されているか、またはR
1
は、Xが共有結合である場合、ハロゲンであり、
Arは、フェニル、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を有している5~6員の単環式芳香族複素環であり、
Cyは、3~8員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式炭素環式環、7~12員の飽和もしくは部分的に不飽和の二環式炭素環式環、または窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1もしくは2個のヘテロ原子を有している3~6員の飽和もしくは部分的に不飽和の単環式複素環式環であり、
R
2A
は、好適なアミノ保護基もしくはR
2
であるか、またはR
2A
およびPG
1
は、一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
R
2
は、水素、C
1~4
アルキル、またはC
3~5
シクロアルキルであり、前記C
1~4
アルキルおよびC
3~5
シクロアルキルは、1、2、または3個の重水素またはハロゲン原子で必要に応じて置換されており、
各R
3
は、独立に、重水素、ハロゲン、-CN、-O-(C
1~4
アルキル)、-OH、-S-(C
1~4
アルキル)、または-SHであり、
Xは、SもしくはOであるか、またはXは、R
1
がハロゲンである場合、共有結合であり、
nは、0、1、2、または3であり、
PG
1
は、好適なアミノ保護基であるか、またはR
2A
と一緒になって、好適な二価の窒素保護基を形成し、
PG
2
、PG
3
、およびPG
4
のそれぞれは、独立に、好適なヒドロキシル保護基である、化合物。
(項目28)
R
1
が、C
1~8
アルキルであるか、またはR
1
が、ハロゲンであり、Xが、共有結合である、項目27に記載の化合物。
(項目29)
R
2A
が、水素である、項目27または28に記載の化合物。
(項目30)
R
2A
が、BOCである、項目27または28に記載の化合物。
(項目31)
Xが、Sである、項目27~30のいずれか一項に記載の化合物。
(項目32)
PG
1
が、BOCである、項目27~31のいずれか一項に記載の化合物。
(項目33)
PG
2
およびPG
3
が、それらが結合する酸素原子と一緒になって、アセトニドを形成する、項目27~32のいずれか一項に記載の化合物。
(項目34)
PG
4
が、トリチルである、項目27~33のいずれか一項に記載の化合物。
(項目35)
項目20~34のいずれか一項に記載の化合物、および薬学的に許容される担体、佐剤、またはビヒクルを含む医薬組成物。
(項目36)
外傷性脳傷害(TBI)、脳振盪、脳卒中、部分的なもしくは完全な脊髄離断、栄養失調、中毒性神経障害、脳髄膜症、遺伝的障害によって引き起こされる神経変性、加齢性神経変性、血管疾患、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性外傷性脳症(CTE)、心血管疾患、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、移植片拒絶、移植片対宿主病、高眼圧症、緑内障、臭気過敏、嗅覚障害、2型糖尿病および/もしくは疼痛管理、呼吸器疾患、CNS機能の欠陥、学習障害、認知障害、耳の障害、メニエール病、内リンパ水腫、進行性難聴、浮動性めまい、回転性めまい、耳鳴、放射線がん治療と関連する付帯的脳損傷、片頭痛処置、高齢者の睡眠障害、てんかん、統合失調症、回復中のアルコール依存者が経験する症状、外科手術中の末梢神経系のニューロンもしくは神経への損傷、胃腸の状態、CNSによって媒介される疼痛、片頭痛、放射線がん治療と関連する付帯的脳損傷、うつ病、気分もしくは行動変化、認知症、迷走性挙動、自殺傾向、振戦、ハンチントン舞踏病、運動協調の喪失、聴覚消失、発語障害、ドライアイ、仮面様顔貌、注意欠陥、記憶喪失、認知的困難、回転性めまい、構音障害、嚥下障害、眼の異常、または見当識障害、または嗜癖から選択される傷害、疾患、または状態を処置する方法であって、
それを必要とする患者に、有効量の項目20~26のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法。
(項目37)
前記傷害、疾患、または状態が、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、または急性疼痛から選択されるCNSによって媒介される疼痛である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記化合物または薬学的に許容されるその塩が、前記患者に、組織プラスミノーゲン活性化因子、抗凝血剤、スタチン、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、ベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、または利尿薬と共に併用投与される、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記傷害、疾患、または状態が、外傷性脳傷害(TBI)、脳卒中、神経変性状態、または心疾患もしくは心血管疾患から選択される、項目36に記載の方法。
(項目40)
前記傷害、疾患、または状態が、脳振盪、爆風傷害、戦闘関連傷害、または頭部への軽度、中等度もしくは重度の衝撃から選択されるTBIである、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記傷害、疾患、または状態が、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、くも膜下出血、脳血管痙攣、または一過性虚血性発作(TIA)から選択される脳卒中である、項目36に記載の方法。
(項目42)
前記患者における神経保護または神経修復が、未処置患者と比較して増大する、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記傷害、疾患、または状態が、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、慢性外傷性脳症(CTE)、またはウイルス、アルコール中毒、腫瘍、毒素もしくは反復性脳傷害によって引き起こされた神経変性状態から選択される神経変性疾患である、項目36に記載の方法。
(項目44)
前記傷害、疾患、または状態が、心虚血、心筋梗塞、心筋症、冠動脈疾患、不整脈、心筋炎、心膜炎、狭心症、高血圧性心疾患、心内膜炎、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、またはアテローム性動脈硬化症から選択される心疾患または心血管疾患である、項目36に記載の方法。
(項目45)
TBIまたは脳卒中に罹患している、それを必要とする患者における神経保護または神経修復を増大させる方法であって、前記患者に、有効量の項目20~26のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法。
(項目46)
前記化合物または薬学的に許容されるその塩が、経口、静脈内、または非経口投与される、項目36~45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
(i)放射線によって引き起こされた脳損傷または放射線がん治療もしくは片頭痛処置と関連する付帯的脳損傷、
(ii)片頭痛、
(iii)脳傷害と関連する状態または神経変性状態、あるいは
(iv)自己免疫疾患もしくは状態、緑内障、耳の障害、進行性難聴、耳鳴、てんかん、疼痛管理、CNSによって媒介される疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、または急性疼痛
から選択される傷害、疾患、障害、または状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の項目20~26のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法。
(項目48)
前記化合物が、前記患者における神経保護または神経修復を、未処置患者と比較して増大させる、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記脳傷害と関連する状態または神経変性状態が、てんかん、片頭痛、放射線がん治療と関連する付帯的脳損傷、うつ病、気分もしくは行動変化、認知症、迷走性挙動、自殺傾向、振戦、ハンチントン舞踏病、運動協調の喪失、聴覚消失、発語障害、ドライアイ、仮面様顔貌、注意欠陥、記憶喪失、認知的困難もしくは認知障害、CNS機能の欠陥、学習障害、回転性めまい、構音障害、嚥下障害、眼の異常、または見当識障害から選択される、項目47に記載の方法。
(項目50)
心虚血または心筋梗塞に罹患している、それを必要とする患者における心臓保護または損傷した心臓組織の再生を増大させる方法であって、前記患者に、有効量の項目20~26のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法。
(項目51)
嗜癖、嗜癖性行動、行動嗜癖、脳内報酬系障害、または強迫性障害を処置する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の項目20~26のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法。
(項目52)
前記傷害、疾患、または状態が、片頭痛である、項目36に記載の方法。
(項目53)
前記傷害、疾患、または状態が、中枢性疼痛症候群、末梢神経障害、角膜神経障害性疼痛、脳卒中後疼痛、および多発性硬化症によって引き起こされた疼痛から選択される疼痛である、項目36に記載の方法。
(項目54)
式I-Bの化合物
【化50】
または薬学的に許容されるその塩であって、式中、
R
1
は、ハロゲンであり、
R
2
は、水素、C
1~4
アルキル、またはC
3~5
シクロアルキルであり、
Xは、共有結合である、
化合物または薬学的に許容されるその塩。
(項目55)
R
1
が、FまたはClである、項目54に記載の化合物。
(項目56)
R
2
が、C
1~4
アルキルまたはC
3~5
シクロアルキルである、項目54または55に記載の化合物。
(項目57)
項目1に記載の方法に従って調製される、項目54~56のいずれか一項に記載の化合物。
(項目58)
項目54~57のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩、および担体、佐剤、またはビヒクルを含む医薬組成物。
【国際調査報告】