(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】治療抗体を発現する非ウイルスDNAベクター及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/63 20060101AFI20240403BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240403BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20240403BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240403BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240403BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240403BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240403BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240403BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20240403BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240403BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240403BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240403BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240403BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240403BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/13
C12N15/88 Z
C12P21/08
A61K9/51
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K48/00
A61P35/00
A61P37/02
A61K47/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023565904
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 US2022026560
(87)【国際公開番号】W WO2022232289
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520068043
【氏名又は名称】ジェネレーション バイオ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シルバー, ナサニエル
(72)【発明者】
【氏名】カー, ダグラス アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】サマヨア, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ジンダル, シッダルタ
(72)【発明者】
【氏名】ガニエ, ラファエル
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
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4C076AA65
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4C084AA13
4C084NA03
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4C084ZB07
4C084ZB26
4C084ZB32
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZB37
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD62
4C085EE01
(57)【要約】
本出願は、細胞、組織又は対象における抗体及びその抗原結合断片の発現に有用なceDNAベクターを含む方法及び組成物、並びに様々な疾患、障害及びがんの治療及び/又は予防の方法を記載する。本明細書に記載される技術は、共有結合性閉端を有するカプシド不含(例えば、非ウイルス)DNAベクター(本明細書において「閉端DNAベクター」又は「ceDNAベクター」と称される)に関し、ここで、ceDNAベクターは、抗体重鎖及び抗体軽鎖からなる群から選択される1つ以上のポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する逆位末端反復(ITR)間に少なくとも1つの核酸配列を含むceDNAベクターを含む、カプシド不含閉端DNA(ceDNA)ベクター組成物であって、前記少なくとも1つの核酸配列が、抗体又はその抗原結合断片の重鎖(HC)及び/又は軽鎖(LC)をコードする、ceDNAベクター組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの核酸配列が、前記抗体又は前記その抗原結合断片の前記HCをコードする、請求項1に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの核酸配列が、前記抗体又は前記その抗原結合断片の前記LCをコードする、請求項1又は2に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの核酸配列が、前記抗体又は前記その抗原結合断片の前記HC及びLCの両方をコードする、請求項1~3のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項5】
カプシド不含閉端DNA(ceDNA)ベクター組成物であって、
隣接する逆位末端反復(ITR)間に少なくとも1つの核酸配列を含む第1のceDNAベクターであって、前記少なくとも1つの核酸配列が、抗体又はその抗原結合断片の重鎖(HC)をコードする、第1のceDNAベクターと、
隣接する逆位末端反復(ITR)間に少なくとも1つの核酸配列を含む第2のceDNAベクターであって、前記少なくとも1つの核酸配列が、抗体又はその抗原結合断片の軽鎖(LC)をコードする、第2のceDNAベクターと、を含む、ceDNAベクター組成物。
【請求項6】
前記HC及び前記LCが、1:10又は10:1、好ましくは1:3~3:1、最も好ましくは1.5:1(HC:LC)のモル比で存在する、請求項5に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項7】
前記HC及び前記LCが、1:1~2.5:1(HC:LC)のモル比で存在する、請求項5又は6に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項8】
前記HC及び前記LCが、1.5:1~2.5:1(HC:LC)のモル比で存在する、請求項5~7のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項9】
前記HC及び前記LCが、約1.5:1(HC:LC)のモル比で存在する、請求項5~8のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項10】
前記HC及び前記LCが、約2.0:1(HC:LC)のモル比で存在する、請求項5~9のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項11】
前記HC及び前記LCが、約2.5:1(HC:LC)のモル比で存在する、請求項5~10のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項12】
前記第1のceDNA及び前記第2のceDNAが一緒になって、HC及びLCを含む少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ug/mLの抗体を発現する、請求項5~11のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの核酸が、前記隣接する逆位末端(ITR)間に第1のORF及び第2のORGを含む二重ORFを含み、前記第1のORFが抗体のHCをコードし、第2のORFが抗体のLCをコードし、前記第1のORF及び前記第2のORFが重複しない、請求項1~12のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項14】
前記二重ORFが双方向である、請求項1~13のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項15】
前記ceDNAベクターが、前記少なくとも1つの核酸配列に作動可能に連結されたプロモーター配列、エンハンサー配列を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のceDNAベクター、又は請求項5に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項16】
前記ceDNAベクターが、少なくとも1つのポリA配列を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項17】
前記ceDNAベクターが、5’UTR及び/又はイントロン配列を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物、又は請求項5に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項18】
前記ceDNAベクターが、3’UTR配列を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項19】
前記ceDNAベクターが、エンハンサー配列を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項20】
少なくとも一方のITRが、機能的末端分離部位及びRep結合部位を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項21】
前記ITRの一方又は両方が、パルボウイルス、ディペンドウイルス、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)から選択されるウイルスに由来する、請求項1~20のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項22】
前記隣接するITRが、互いに対して対称又は非対称である、請求項1~21のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項23】
前記隣接するITRが、対称又は実質的に対称である、請求項22に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項24】
前記隣接するITRが、非対称である、請求項22に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項25】
前記ITRの一方若しくは両方が野生型であるか、又は前記ITRの両方が野生型ITRである、請求項1~24のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項26】
前記隣接するITRが、異なるウイルス血清型に由来する、請求項1~25のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項27】
前記隣接するITRが、表2に示されるウイルス血清型のいずれかの対から選択される、請求項1~26のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項28】
前記ITRの一方又は両方が、表3の配列のうちの1つ以上から選択される配列を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項29】
前記ITRのうちの少なくとも一方が、前記ITRの全体的な三次元立体構造に影響を与える欠失、付加、又は置換によって、野生型AAV ITR配列から変更されている、請求項1~28のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項30】
前記ITRの一方又は両方が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、及びAAV12から選択されるAAV血清型に由来する、請求項1~29のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項31】
前記ITRの一方又は両方が、合成である、請求項1~30のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項32】
前記ITRの一方若しくは両方が野生型ITRでないか、又は前記ITRの両方が野生型ITRでない、請求項1~31のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項33】
前記ITRの一方又は両方が、A、A’、B、B’、C、C’、D、及びD’から選択されるITR領域のうちの少なくとも1つにおける欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されている、請求項1~32のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項34】
前記欠失、挿入、及び/又は置換が、前記A、A’、B、B’、C、又はC’領域によって通常形成されるステム-ループ構造の全部又は一部の欠失をもたらす、請求項33に記載のceDNA組成物。
【請求項35】
前記ITRの一方又は両方が、前記B及びB’領域によって通常形成されるステム-ループ構造の全部又は一部の欠失をもたらす、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されている、請求項1~34のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項36】
前記ITRの一方又は両方が、前記C及びC’領域によって通常形成されるステム-ループ構造の全部又は一部の欠失をもたらす、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されている、請求項1~35のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項37】
前記ITRの一方又は両方が、前記B及びB’領域によって通常形成されるステム-ループ構造の一部、並びに/又は前記C及びC’領域によって通常形成されるステム-ループ構造の一部の欠失をもたらす、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されている、請求項1~36のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項38】
前記ITRの一方又は両方が、通常、前記B及びB’領域によって形成される第1のステム-ループ構造と、前記C及びC’領域によって形成される第2のステム-ループ構造と、を含む領域に、単一のステム-ループ構造を含む、請求項1~37のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項39】
前記ITRの一方又は両方が、通常、前記B及びB’領域によって形成される第1のステム-ループ構造と、前記C及びC’領域によって形成される第2のステム-ループ構造と、を含む領域に、単一のステム及び2つのループを含む、請求項1~38のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項40】
前記ITRの一方又は両方が、通常、前記B及びB’領域によって形成される第1のステム-ループ構造と、前記C及びC’領域によって形成される第2のステム-ループ構造と、を含む領域に、単一のステム及び単一のループを含む、請求項1~39のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項41】
両方のITRが、前記ITRが互いに対して反転されている場合、全体的な三次元対称性をもたらす様式で変更されている、請求項1~40のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項42】
前記ベクター組成物が、脂質ナノ粒子(LNP)中に封入されている、請求項1~41のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物。
【請求項43】
表7から選択される核酸配列を含む、カプシド不含閉端DNA(ceDNA)ベクター。
【請求項44】
配列番号404、配列番号405、配列番号406、配列番号407、又は配列番号408と少なくとも85%同一である核酸配列を含む、カプシド不含閉端DNA(ceDNA)ベクター。
【請求項45】
配列番号404、配列番号405、配列番号406、配列番号407又は配列番号408からなる群から選択される核酸配列からなる、カプシド不含閉端DNA(ceDNA)ベクター。
【請求項46】
細胞において抗体又はその抗原結合断片を発現させる方法であって、前記細胞を、請求項1~42のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項47】
前記細胞が、インビトロ又はインビボである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記少なくとも1つの核酸配列が、前記細胞における発現のためにコドン最適化されている、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
細菌、ウイルス、寄生虫又は真菌感染症を有する対象を治療する方法であって、請求項1~42のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物又は請求項43~45に記載のceDNAベクターを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項50】
がんを有する対象を治療する方法であって、請求項1~42のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物又は請求項43~45に記載のceDNAベクターを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項51】
自己免疫疾患又は障害を有する対象を治療する方法であって、請求項1~42のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物又は請求項43~45に記載のceDNAベクターを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項52】
対象における細菌、ウイルス、寄生虫又は真菌感染症を予防する方法であって、請求項1~42のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物又は請求項43~45に記載のceDNAベクターを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項53】
対象におけるがんを予防する方法であって、請求項1~42のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物又は請求項43~45に記載のceDNAベクターを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項54】
対象における自己免疫疾患を予防する方法であって、請求項1~42のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物又は請求項43~45に記載のceDNAベクターを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項55】
前記ceDNAベクターによってコードされ、前記対象の肝臓において発現される抗体又はその抗原結合断片が、フコシルトランスフェラーゼを発現する哺乳動物細胞株から産生されるその対応物と比較して、FcγRIIIaに対してより高い結合親和性を有する、請求項49~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記ceDNAベクター又は前記ceDNAベクター組成物が、静脈内、皮下、腫瘍内又は筋肉内注射によって投与される、請求項49~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記対象に免疫調節剤を投与することを更に含む、請求項49~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
請求項1~42のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物又は請求項43~45に記載のceDNAベクターを含む、薬学的組成物。
【請求項59】
1つ以上の追加の治療剤を更に含む、請求項50に記載の薬学的組成物。
【請求項60】
請求項1~42のいずれか一項に記載のceDNAベクター組成物又は請求項43~45に記載のceDNAベクターと、脂質と、を含む、組成物。
【請求項61】
前記脂質が、脂質ナノ粒子(LNP)である、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
請求項1に記載のceDNAベクター、請求項58に記載の薬学的組成物、又は請求項60に記載の組成物と、使用説明書と、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年4月27日に出願された米国仮出願第63/180,382号に対する優先権を主張し、その全体の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、対象又は細胞において、抗体又はその抗原結合断片を発現させるための非ウイルス性ベクターを含む、抗体療法の分野に関する。本開示はまた、核酸を含む核酸構築物、プロモーター、ベクター、及び宿主細胞、並びに抗体又はその抗原結合断片をコードする導入遺伝子を標的細胞、組織、器官、又は生物に送達する方法に関する。例えば、本開示は、感染、疾患又は障害を有する対象の治療のために、非ウイルスceDNAベクターを使用して、抗体又はその抗原結合断片を、例えば発現する細胞から抗体又はその抗原結合断片を発現させる方法を提供する。抗体治療薬で治療され得る任意の感染、疾患又は障害が、本開示によって想定される。方法及び組成物はまた、それを必要とする対象において、例えば治療又は予防目的のために適用することができる。
【背景技術】
【0003】
抗体に基づく治療薬例えば、mAbは、免疫障害、がん及び感染症を治療するための最も成功した戦略の1つであることが示されている。長期間持続する治療効果のために十分に高い濃度の抗体を達成するために、抗体療法は、従来、反復投与によって、例えば複数回注射によって送達される。しかしながら、この投薬レジメンは、治療期間を通して一貫性のない抗体レベル、投与当たりの限られた効率、抗体の投与及び消費の高いコストをもたらす。
【0004】
組換えAAV(rAAV)は、おそらくヒトにおける遺伝子導入のための最もよく研究されたベクターであり、何百もの臨床試験が形質導入の安全性を実証している。アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus、AAV)は、Parvoviridae科に属し、より具体的にはDependoparvovirus属を構成する。AAVに由来するベクター(すなわち、rAVV又はAAVベクター)は、(i)筋細胞及びニューロンを含む多種多様な非分裂及び分裂細胞型に感染する(これらを形質導入する)ことができ、(ii)それらはウイルス構造遺伝子を欠き、それによって、ウイルス感染に対する宿主細胞応答(例えば、インターフェロン媒介応答)を減少させ、(iii)野生型ウイルスは、ヒトにおいて非病的であると考えられ、(iv)宿主細胞ゲノムに組み込むことができる野生型AAVとは対照的に、複製欠損AAVベクターは複製(rep)遺伝子を欠き、一般にエピソームとして存続し、したがって、挿入変異誘発又は遺伝毒性のリスクを制限し、及び(v)他のベクター系と比較して、AAVベクターは一般に免疫原が比較的弱いと考えられ、したがって、有意な免疫応答を誘発せず((ii)を参照されたい)、したがって、ベクターDNAの持続性及び潜在的に治療用導入遺伝子の長期発現を得る、という理由により、遺伝物質を送達するのに魅力的である。
【0005】
しかしながら、AAV粒子を遺伝子送達ベクターとして使用することには、いくつかの重大な欠陥が存在する。rAAVに関連する1つの重大な欠点は、約4.5kbの異種DNAの制限されたウイルスパッケージング能力であり(Dong et al.,1996、Athanasopoulos et al.,2004、Lai et al.,2010)、結果として、AAVベクターの使用は、150,000Da未満のタンパク質コード能力に制限されている。特に抗体送達に関連して、AAVのパッケージング制限は、天然抗体構造を形成する重鎖及び軽鎖の両方の効率的な送達のための重要な課題を表す。第2の欠点は、集団における野生型AAV感染の流行の結果として、rAAV遺伝子療法の候補が、患者からベクターを排除する中和抗体の存在についてスクリーニングされる必要があることである。第3の欠点は、初回治療から除外されなかった患者への再投与を防ぐカプシド免疫原性に関する。患者における免疫系は、「ブースター」ショットとして有効に作用するベクターに応答して、将来の治療を妨げる高力価抗AAV抗体を生成する免疫系を刺激し得る。既存の免疫は、形質導入の効率を厳しく制限し得る。いくつかの最近の報告は、高用量状況における免疫原性との関係を示している。一本鎖AAV DNAが異種遺伝子発現前に二本鎖DNAに変換されなければならないことを考えると、別の顕著な欠点は、AAV媒介性遺伝子発現の始まりが比較的遅いことである。
【0006】
追加的に、カプシドを有する従来のAAVビリオンは、AAVゲノム、rep遺伝子、及びcap遺伝子を含有するプラスミドを導入することによって産生される(Grimm et al.,1998)。しかしながら、そのようなカプシド化AAVウイルスベクターは、ある特定の細胞及び組織型を非効率的に形質導入し、カプシドはまた、免疫応答を誘導することもわかった。
【0007】
したがって、抗体治療薬の送達のためのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの使用は、(患者免疫応答に起因する)患者への単回投与、最小ウイルスパッケージング能力(約4.5kb)に起因するAAVベクター中の送達に好適な導入遺伝子遺伝物質の制限された範囲、及び遅いAAV媒介性遺伝子発現に起因して制限される。
【0008】
当技術分野では、改善された治療薬の開発のために、代替経路又は投与様式による抗体及び抗体ベースの治療薬の送達が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本明細書に記載される技術は、共有結合性閉端を有するカプシド不含(例えば、非ウイルス)DNAベクター(本明細書において「閉端DNAベクター」又は「ceDNAベクター」と称される)に関し、ここで、ceDNAベクターは、抗体重鎖及び抗体軽鎖からなる群から選択される1つ以上のポリペプチドをコードする核酸配列を含む。これらのceDNAベクターは、疾患及び障害(例えば、免疫障害、がん、感染症)の治療、モニタリング及び診断のための抗体又はその抗原結合断片を産生するために使用することができる。抗体重鎖及び抗体軽鎖からなる群から選択される1つ以上のポリペプチドをコードする1つ以上の核酸配列を発現する1つ以上のceDNAベクターの対象への適用は、対象において疾患又は障害を治療する、予防する、又はその重症度を低減する、送達において最小限に侵襲性である、反復可能であり、効果に応じて投与される、治療効果の迅速な発現を有する、及び/又は抗体又はその抗原結合断片の持続的発現をもたらすのに有用である。更に、ceDNAベクターを使用して、抗体又はその抗原結合断片をコードする導入遺伝子(例えば、核酸配列)を細胞又は組織に送達するために、適応免疫応答が回避され、所望の抗体特異性が、免疫化又は受動伝達を使用せずに産生される。すなわち、ceDNAベクターは、エンドサイトーシスを介して細胞に入り、次いでエンドソーム区画から脱出し、核に輸送される。転写的に活性なceDNAエピソームは、コードされた抗体の発現をもたらし、これは次いで細胞から循環中に分泌され得る。したがって、ceDNAベクターは、単回注射によって投与される抗体(例えば、本明細書に記載される治療用抗体、又はその中の抗原結合断片)の連続的、持続的及び長期送達を可能にし得る。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、抗体重鎖及び抗体軽鎖からなる群から選択される1つ以上のポリペプチドをコードする1つ以上の核酸配列を含むceDNAベクターは、リポソームナノ粒子製剤(LNP)中に存在する。
【0011】
本明細書に記載される抗体重鎖及び軽鎖からなる群から選択される1つ以上のポリペプチドをコードする1つ以上の核酸配列を含むceDNAベクターは、共有結合性閉端(直鎖状、連続的、及び非カプシド化構造)を有する相補的DNAの連続鎖から形成されるカプシド不含直鎖状二重鎖DNA分子であり、5’逆位末端反復(inverted terminal repeat、ITR)配列及び3’ITR配列を含み、5’ITR及び3’ITRは、互いに対して同じ対称の三次元構成(すなわち、対称若しくは実質的に対称)を有し得るか、又は代替的に5’ITR及び3’ITRは、互いに対して異なる三次元構成(すなわち、非対称ITR)を有し得る。加えて、ITRは、同じ又は異なる血清型に由来し得る。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、それらの構造が幾何学的空間で同じ形状であるか、又は三次元空間で同じA、C-C’及びB-B’ループを有するように、対称の三次元空間構成を有するITR配列を含み得る(すなわち、それらは同じであるか、又は互いに対して鏡像である)。いくつかの実施形態によれば、一方のITRは、1つのAAV血清型に由来し得、他方のITRは、異なるAAV血清型に由来し得る。
【0012】
したがって、本明細書に記載される技術のいくつかの態様は、抗体重鎖及び抗体軽鎖からなる群から選択される1つ以上のポリペプチドをコードする核酸配列に隣接するITR配列を含む、上記抗体又はその抗原結合断片の改善されたタンパク質発現及び/又は産生のためのceDNAベクターに関し、ここで、ITR配列が、(i)少なくとも1つのWT ITR及び少なくとも1つの改変AAV逆位末端反復(ITR)(例えば非対称改変ITR);(ii)mod-ITR対が互いに対して異なる三次元空間構成を有する、2つの修飾型ITR(例えば、非対称の修飾型ITR)、又は(iii)各WT-ITRが同じ三次元空間構成を有する、対称若しくは実質的に対称のWT-WT ITR対、又は(iv)各mod-ITRが同じ三次元空間構成を有する、対称若しくは実質的に対称の修飾型ITR対のうちのいずれかから選択される。本明細書に開示されるceDNAベクターは、真核細胞中で産生され得、したがって昆虫細胞中の原核DNA修飾及び細菌内毒素汚染を欠き得る。
【0013】
第1の態様によれば、本開示は、隣接する逆位末端(ITR)の間に少なくとも1つの核酸配列を含むceDNAベクターを含む、カプシド不含閉端DNA(capsid-free closed ended DNA、ceDNA)ベクター組成物であって、少なくとも1つの核酸配列が、抗体又はその抗原結合断片の重鎖(heavy chain、HC)及び/又は軽鎖(light chain、LC)をコードする、組成物を提供する。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの核酸配列は、抗体又はその抗原結合断片のHCをコードする。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの核酸配列は、抗体又はその抗原結合断片のLCをコードする。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの核酸配列は、抗体又はその抗原結合断片のHC及びLCの両方をコードする。
【0014】
別の態様によれば、本開示は、隣接する逆位末端反復(ITR)の間に少なくとも1つの核酸配列を含む第1のceDNAベクターであって、少なくとも1つの核酸配列が抗体又はその抗原結合断片の重鎖(HC)をコードする第1のceDNAベクターと、隣接する逆位末端反復(ITR)の間に少なくとも1つの核酸配列を含む第2のceDNAベクターであって、少なくとも1つの核酸配列が抗体又はその抗原結合断片の軽鎖(LC)をコードする第2のceDNAベクターとを含む、カプシド不含閉端末端DNA(ceDNA)ベクターの組み合わせを提供する。
【0015】
上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、HC及びLCは、1:10又は10:1、好ましくは1:3~3:1、最も好ましくは1.5:1(HC:LC)のモル比で存在する。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、HC及びLCは、1:1~2.5:1(HC:LC)のモル比で存在する。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、HC及びLCは、1.5:1~2.5:1(HC:LC)のモル比で存在する。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、HC及びLCは、約1.5:1(HC:LC)のモル比で存在する。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、HC及びLCは、約2.0:1(HC:LC)のモル比で存在する。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、HC及びLCは、約2.5:1(HC:LC)のモル比で存在する。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、第1のceDNA及び第2のceDNAはともに、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ug/mLの、HC及びLCを含む抗体を発現する。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、少なくとも1つの核酸は、隣接する逆位末端(ITR)の間に第1のORF及び第2のORGを含む二重ORFを含み、第1のORFは抗体のHCをコードし、第2のORFは抗体のLCをコードし、第1のORF及び第2のORFは重複しない。いくつかの実施形態によれば、二重ORFは双方向性である。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ceDNAベクターは、少なくとも1つの核酸配列に作動可能に連結されたプロモーター配列、エンハンサー配列を含む。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ceDNAベクターは、少なくとも1つのポリA配列を含む。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ceDNAベクターは、5’UTR及び/又はイントロン配列を含む。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ceDNAベクターは、3’UTR配列を含む。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ceDNAベクターは、エンハンサー配列を含む。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、少なくとも1つのITRは、機能的末端分離部位及びRep結合部位を含む。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ITRの一方又は両方が、パルボウイルス、ディペンドウイルス、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)から選択されるウイルスに由来する。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、隣接するITRは、互いに対して対称又は非対称である。いくつかの実施形態によれば、隣接するITRは、対称又は実質的に対称である。いくつかの実施形態によれば、隣接するITRは、非対称である。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ITRの一方又は両方が野生型であり、又はITRの両方が野生型ITRである。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、隣接するITRは、異なるウイルス血清型に由来する。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、隣接するITRは、表2に示されるウイルス血清型の任意の対から選択される。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ITRの一方又は両方が、表3の配列のうちの1つ以上から選択される配列を含む。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ITRの少なくとも一方が、野生型AAV ITR配列から、ITRの全体的な三次元立体構造に影響を与える欠失、付加、又は置換によって変更されている。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ITRの一方又は両方が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、及びAAV12から選択されるAAV血清型に由来する。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ITRの一方又は両方が合成である。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ITRの一方若しくは両方が野生型ITRでないか、又はITRの両方が野生型ITRでない。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ITRの一方若しくは両方は、A、A’、B、B’、C、C’、D、及びD’から選択されるITR領域のうちの少なくとも1つにおける欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾される。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、欠失、挿入、及び/又は置換は、通常はA、A’、B、B’C、又はC’領域によって形成されるステムループ構造の全部又は一部の欠失をもたらす。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ITRの一方又は両方は、B及びB’領域によって通常形成されるステムループ構造の全部又は一部の欠失をもたらす、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されている。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ITRの一方又は両方は、C及びC’領域によって通常形成されるステムループ構造の全部又は一部の欠失をもたらす、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されている。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ITRの一方又は両方は、B及びB’領域によって通常形成されるステムループ構造の一部、並びに/又はC及びC’領域によって通常形成されるステムループ構造の一部の欠失をもたらす、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されている。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ITRの一方又は両方は、通常、B及びB’領域によって形成される第1のステムループ構造と、C及びC’領域によって形成される第2のステムループ構造と、を含む領域に、単一のステムループ構造を含む。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ITRの一方又は両方は、通常、B及びB’領域によって形成される第1のステムループ構造と、C及びC’領域によって形成される第2のステムループ構造と、を含む領域に、単一のステム及び2つのループを含む。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ITRの一方又は両方は、通常、B及びB’領域によって形成される第1のステムループ構造と、C及びC’領域によって形成される第2のステムループ構造と、を含む領域に、単一のステム及び単一のループを含む。いくつかの実施形態では、両方のITRは、ITRが互いに対して反転している場合、全体的な三次元対称性をもたらす様式で変更されている。上記の態様の実施形態の実施形態によれば、ベクター組成物は、脂質ナノ粒子(lipid nanoparticle、LNP)中に封入されている。
【0016】
別の態様によれば、本開示は、表7から選択される核酸配列を含む、カプシド不含閉端DNA(ceDNA)ベクターを提供する。
【0017】
別の態様によれば、本開示は、配列番号404、配列番号405、配列番号406、配列番号407、又は配列番号408と少なくとも85%同一である核酸配列を含む、カプシド不含閉端DNA(ceDNA)ベクターを提供する。
【0018】
別の態様によれば、本開示は、配列番号404、配列番号405、配列番号406、配列番号407又は配列番号408からなる群から選択される核酸配列からなる、カプシド不含閉端DNA(ceDNA)ベクターを提供する。
【0019】
別の態様によれば、本開示は、細胞において抗体又はその抗原結合断片を発現させる方法を提供し、細胞を、本明細書の態様又は実施形態のいずれかのceDNAベクター又はceDNAベクター組成物と接触させることを含む。いくつかの実施形態によれば、細胞は、インビトロ又はインビボである。実施形態によれば、少なくとも1つの核酸配列は、細胞における発現のためにコドン最適化されている。
【0020】
別の態様によれば、本開示は、細菌、ウイルス、寄生虫又は真菌感染症を有する対象を治療する方法であって、本明細書の態様又は実施形態のいずれかのceDNAベクター又はceDNAベクター組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0021】
別の態様によれば、本開示は、がんを有する対象を治療する方法であって、本明細書の態様又は実施形態のいずれかのceDNAベクター又はceDNAベクター組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0022】
別の態様によれば、本開示は、自己免疫疾患又は障害を有する対象を治療する方法であって、本明細書の態様又は実施形態のいずれかのceDNAベクター又はceDNAベクター組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0023】
別の態様によれば、本開示は、対象における細菌、ウイルス、寄生虫又は真菌感染症を予防する方法であって、本明細書の態様又は実施形態のいずれかのceDNAベクター又はceDNAベクター組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0024】
別の態様によれば、本開示は、対象におけるがんを予防する方法をであって、本明細書の態様又は実施形態のいずれかのceDNAベクター又はceDNAベクター組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0025】
別の態様によれば、本開示は、対象における自己免疫疾患を治療する方法であって、本明細書の態様又は実施形態のいずれかのceDNAベクター又はceDNAベクター組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、対象は、1つ以上の追加の治療剤を投与される。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、ceDNAベクター又はceDNAベクター組成物は、静脈内、皮下、腫瘍内又は筋肉内注射によって投与される。上記の態様の実施形態及び実施形態によれば、方法は、対象に免疫調節剤を投与することを更に含む。
【0026】
別の態様によれば、本開示は、本明細書の態様又は実施形態のいずれかのceDNAベクター又はceDNAベクターを含む薬学的組成物を提供する。複数の実施形態によれば、薬学的組成物は、1つ以上の追加の治療剤を更に含む。
【0027】
別の態様によれば、本開示は、本明細書の態様又は実施形態のいずれかのceDNAベクター又はceDNAベクター組成物、及び脂質を含む、組成物を提供する。いくつかの実施形態によれば、脂質は、脂質ナノ粒子(LNP)である。
【0028】
別の態様によれば、本開示は、本明細書の態様若しくは実施形態のいずれかのceDNAベクター若しくはceDNAベクター組成物、又は薬学的組成物を含むキットを提供する。
【0029】
本開示のこれらの及び他の態様は、下記で更に詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
上記に簡単に要約され、以下により詳細に論じられる本開示の実施形態は、添付の図面に描かれた本開示の例示的な実施形態を参照することによって理解することができる。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示し、したがって、本開示は他の等しく有効な実施形態を認めることができるため、範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【
図1A】非対称ITRを含む、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片例えば、HC又はLCの発現のためのceDNAベクターの例示的な構造を示す。この実施形態では、例示的なceDNAベクターは、CAGプロモーター、WPRE、及びBGHpAを含有する発現カセットを含む。導入遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム(open reading frame、ORF)、(例えば、抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸配列)は、CAGプロモーターとWPREとの間のクローニング部位(R3/R4)に挿入され得る。発現カセットは、2つの逆位末端反復(ITR)(発現カセットの上流(5’端)の野生型AAV2 ITR及び下流(3’端)の修飾型ITR)に隣接しており、したがって、発現カセットに隣接する2つのITRは、互いに対して非対称である。
【
図1B】CAGプロモーター、WPRE、及びBGHpAを含有する発現カセットを有する非対称ITRを含む、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片(例えば、HC又はLC)の発現のためのceDNAベクターの例示的な構造を示す。導入遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)、例えば、抗体又は融合タンパク質をコードする核酸は、CAGプロモーターとWPREとの間のクローニング部位に挿入され得る。発現カセットは、2つの逆位末端反復(ITR)(発現カセットの上流(5’端)の修飾型ITR及び下流(3’端)の野生型ITR)に隣接している。
【
図1C】エンハンサー/プロモーター、導入遺伝子(例えば、抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸配列)、転写後エレメント(WPRE)、及びポリAシグナルを含有する発現カセットを有する、非対称ITRを含む本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの例示的な構造を示す。オープンリーディングフレーム(ORF)は、CAGプロモーターとWPREとの間のクローニング部位への導入遺伝子の挿入を可能にする。発現カセットは、互いに非対称である2つの逆位末端反復(ITR)、発現カセットの上流(5’端)の修飾型ITR及び下流(3’端)の修飾型ITRに隣接しており、5’ITR及び3’ITRの両方は、修飾型ITRであるが、異なる修飾を有する(すなわち、同じ修飾を有しない)。
【
図1D】CAGプロモーター、WPRE、及びBGHpAを含有する発現カセットを有する、本明細書で定義される対称の修飾型ITR又は実質的に対称の修飾型ITRを含む、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片(例えば、HC又はLC)の発現のためのceDNAベクターの例示的な構造を示す。導入遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)(例えば、抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸配列)は、CAGプロモーターとWPREとの間のクローニング部位に挿入される。発現カセットは、5’修飾型ITR及び3’修飾型ITRが対称又は実質的に対称である、2つの修飾型逆位末端反復(ITR)に隣接している。
【
図1E】エンハンサー/プロモーター、導入遺伝子、転写後エレメント(WPRE)、及びポリAシグナルを含有する発現カセットを有する、本明細書で定義される対称の修飾型ITR又は実質的に対称の修飾型ITRを含む、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片(例えば、HC又はLC)の発現のためのceDNAベクターの例示的な構造を示す。オープンリーディングフレーム(ORF)は、導入遺伝子(例えば、抗体又はその抗原結合部位をコードする核酸配列)の、CAGプロモーターとWPREとの間のクローニング部位への挿入を可能にする。発現カセットは、5’修飾型ITR及び3’修飾型ITRが対称又は実質的に対称である、2つの修飾型逆位末端反復(ITR)に隣接している。
【
図1F】CAGプロモーター、WPRE、及びBGHpAを含有する発現カセットを有する、本明細書で定義される対称のWT-ITR又は実質的に対称のWT-ITRを含む、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片(例えば、HC又はLC)の発現のためのceDNAベクターの例示的な構造を示す。導入遺伝子をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)(例えば、抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸は、CAGプロモーターとWPREとの間のクローニング部位に挿入される。発現カセットは、5’WT-ITR及び3’WT ITRが対称又は実質的に対称である、2つの野生型逆位末端反復(WT-ITR)に隣接している。
【
図1G】エンハンサー/プロモーター、導入遺伝子、転写後エレメント(WPRE)、及びポリAシグナルを含有する発現カセットを有する、本明細書で定義される対称の修飾型ITR又は実質的に対称の修飾型ITRを含む、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの例示的な構造を示す。オープンリーディングフレーム(ORF)は、CAGプロモーターとWPREとの間のクローニング部位への導入遺伝子の挿入を可能にする。発現カセットは、5’WT-ITR及び3’WT ITRが対称又は実質的に対称である、2つの野生型逆位末端反復(WT-ITR)に隣接している。
【
図2A】A-A’アーム、B-B’アーム、C-C’アーム、2つのRep結合部位(RBE及びRBE’)の特定とともに、AAV2の野生型左ITRのT形ステム-ループ構造を提供し、また、末端分離部位(terminal resolution site、trs)も示す。RBEは、Rep78又はRep68のいずれかと相互作用すると考えられる一連の4つの二重四量体を含有する。加えて、RBE’はまた、構築物中の野生型ITR又は変異型ITR上で組み立てられたRep複合体と相互作用すると考えられる。D及びD’領域は、転写因子結合部位及び他の保存構造を含有する。
【
図2B】A-A’アーム、B-B’アーム、C-C’アーム、2つのRep結合部位(RBE及びRBE’)の特定とともにAAV2の野生型左ITRのT形ステムループ構造を含む、野生型左ITRにおける提案されたRep触媒ニッキング及びライゲーション活性を示し、また、末端分離部位(trs)、並びにいくつかの転写因子結合部位を含むD及びD’領域並びに他の保存構造も示す。
【
図3A】野生型左AAV2 ITRのA-A’アーム並びにC-C’及びB-B’アームのRBE含有部分の一次構造(ポリヌクレオチド配列)(左)並びに二次構造(右)を提供する。
【
図3B】左ITRについての例示的な変異型ITR(修飾型ITRとも称される)配列を示す。例示的な変異型左ITR(ITR-1、左)のA-A’アーム、Cアーム、及びB-B’アームのRBE部分の一次構造(左)及び予測された二次構造(右)が示される。
【
図3C】野生型右AAV2 ITRのA-A’ループ、並びにB-B’及びC-C’アームのRBE含有部分の一次構造(左)並びに二次構造(右)を示す。
【
図3D】例示的な右修飾型ITRを示す。例示的な変異体右ITR(ITR-1、右)のA-A’アーム、並びにB-B’及びCアームのRBE含有部分の一次構造(左)及び予測された二次構造(右)が示される。左及び右のITR(例えば、AAV2 ITR又は他のウイルス血清型又は合成ITR)の任意の組み合わせを、本明細書で教示されるように使用することができる。
図3A~
図3Dのポリヌクレオチド配列の各々は、本明細書に記載されるceDNAを産生するために使用されるプラスミド又はバクミド/バキュロウイルスゲノムで使用される配列を指す。プラスミド又はバクミド/バキュロウイルスゲノムのceDNAベクター構成及び予測されたGibbs自由エネルギー値から推定される対応するceDNAの二次構造もまた、
図3A~
図3Dの各々に含まれる。
【
図4A】
図4Bの概略図に記載されるプロセスにおける、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの産生に有用である、バキュロウイルス感染昆虫細胞(baculovirus infected insect cells、BIIC)を作製するための上流プロセスを示す概略図である。
【
図4B】ceDNAの産生の例示的な方法の概略図である。
【
図4C】ceDNAベクターの産生を確認するための生化学的方法及びプロセスを示す。
【
図4D】
図4BのceDNA産生プロセス中に取得された細胞ペレットから回収されたDNA中のceDNAの存在を特定するためのプロセスを説明する概略図である。
図4Dは、左が未切断であるか、又は制限エンドヌクレアーゼで消化された後、未変性ゲル又は変性ゲルのいずれかで電気泳動に供される例示的なceDNAの概略的予想バンドを示す。左端の概略図は、未変性ゲルであり、その二重鎖及び未切断形態で、ceDNAが少なくとも単量体及び二量体状態で存在し、より速く移動する小さい単量体及び単量体のサイズの2倍である、より遅く移動する二量体として見えることを示唆する、多重バンドを示す。左から2番目の概略図は、ceDNAが制限エンドヌクレアーゼで切断された場合、元のバンドが消え、切断後に残存する予想断片サイズに対応する、より速く移動する(例えば、より小さな)バンドが出現することを示す。変性条件下、元の二重鎖DNAは一本鎖であり、相補鎖が共有結合されるため、未変性ゲル上で観察されるものより2倍大きい種として移動する。したがって、右から二番目の概略図において、消化されたceDNAは、未変性ゲル上で観察されるものと同様の結合分布を示すが、バンドは、未変性ゲル対応物のサイズの2倍の断片として移動する。右端の概略図は、変性条件下の未切断のceDNAが、一本鎖開環として移動し、したがって観察されたバンドは、環が開いていない未変性条件下で観察されるもののサイズの2倍であることを示す。この図において、「kb」を使用して、文脈に応じて、ヌクレオチド鎖の長さ(例えば、変性状態で観察される単鎖分子の場合)又は塩基対の数(例えば、未変性状態で観察される二本鎖分子の場合)に基づくヌクレオチド分子の相対サイズを示す。
図4Eは、非連続的な構造を有するDNAを示す。ceDNAは、ceDNAベクター上に単一認識部位を有する制限エンドヌクレアーゼによって切断され得、中性条件及び変性条件の両方において、異なるサイズ(1kb及び2kb)を有する2つのDNA断片を生成することができる。
図4Eはまた、直鎖状かつ連続的な構造を有するceDNAを示す。ceDNAベクターは、制限エンドヌクレアーゼによって切断され得、中性条件において1kb及び2kbとして移動する2つのDNA断片を生成することができるが、変性条件では、鎖は、接続されたままであり、2kb及び4kbとして移動する一本鎖を産生する。
【
図4E】
図4BのceDNA産生プロセス中に取得された細胞ペレットから回収されたDNA中のceDNAの存在を特定するためのプロセスを説明する概略図である。
図4Dは、左が未切断であるか、又は制限エンドヌクレアーゼで消化された後、未変性ゲル又は変性ゲルのいずれかで電気泳動に供される例示的なceDNAの概略的予想バンドを示す。左端の概略図は、未変性ゲルであり、その二重鎖及び未切断形態で、ceDNAが少なくとも単量体及び二量体状態で存在し、より速く移動する小さい単量体及び単量体のサイズの2倍である、より遅く移動する二量体として見えることを示唆する、多重バンドを示す。左から2番目の概略図は、ceDNAが制限エンドヌクレアーゼで切断された場合、元のバンドが消え、切断後に残存する予想断片サイズに対応する、より速く移動する(例えば、より小さな)バンドが出現することを示す。変性条件下、元の二重鎖DNAは一本鎖であり、相補鎖が共有結合されるため、未変性ゲル上で観察されるものより2倍大きい種として移動する。したがって、右から二番目の概略図において、消化されたceDNAは、未変性ゲル上で観察されるものと同様の結合分布を示すが、バンドは、未変性ゲル対応物のサイズの2倍の断片として移動する。右端の概略図は、変性条件下の未切断のceDNAが、一本鎖開環として移動し、したがって観察されたバンドは、環が開いていない未変性条件下で観察されるもののサイズの2倍であることを示す。この図において、「kb」を使用して、文脈に応じて、ヌクレオチド鎖の長さ(例えば、変性状態で観察される単鎖分子の場合)又は塩基対の数(例えば、未変性状態で観察される二本鎖分子の場合)に基づくヌクレオチド分子の相対サイズを示す。
図4Eは、非連続的な構造を有するDNAを示す。ceDNAは、ceDNAベクター上に単一認識部位を有する制限エンドヌクレアーゼによって切断され得、中性条件及び変性条件の両方において、異なるサイズ(1kb及び2kb)を有する2つのDNA断片を生成することができる。
図4Eはまた、直鎖状かつ連続的な構造を有するceDNAを示す。ceDNAベクターは、制限エンドヌクレアーゼによって切断され得、中性条件において1kb及び2kbとして移動する2つのDNA断片を生成することができるが、変性条件では、鎖は、接続されたままであり、2kb及び4kbとして移動する一本鎖を産生する。
【
図5】エンドヌクレアーゼで消化した(+)又は消化していない(-)ceDNAベクターの変性ゲル泳動例の例示的な写真である(ceDNA構築物1及び2についてはEcoRI、ceDNA構築物3及び4についてはBamH1、ceDNA構築物5及び6についてはSpeI、及びceDNA構築物7及び8についてはXhoI)構築物1~8は、国際出願第US18/49996号の実施例1に記載されている(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。アスタリスクで強調されたバンドのサイズを判定し、図の下に示した。
【
図6】実施例6において試験したceDNA構築物による抗体発現の検出を示すグラフである。抗スパイクヒトIgG(
***)を使用して抗体発現を検出し、これを、ceDNA構築物を注射してから35日後までのng/ml抗スパイクhIgGによって定量した。
図6に示されるように、LNP1中で共製剤化されたceDNA二重ベクターceDNA-1856(LCをコードする)及びceDNA-1859(HCをコードする)を用いた場合(ceDNA-1:LNP1)、SARS-CoV-2に対する約1ug/mLのモノクローナル抗体が14日目までに検出され、35日目までに約8ug/mLまでの抗体が検出された。ビヒクル(V):LNP製剤1(ceDNA-1 LNP1(1))中に共製剤化されたceDNA二重ベクター構築物1856/1859、LNP製剤2中のceDNA二重ベクター構築物1856/1859(ceDNA-1 LNP2(2))、及びLNP製剤1(ceDNA-2 LNP1(3))中に製剤化された単一ceDNA構築物2157(単一ceDNA中のHC及びLCの二重ORF(「双方向性単一ceDNAベクター」))を含む。
【
図7A】様々なceDNAベクターフォーマットの模式図を示す。
【
図7B】全て抗SARS-CoV-2スパイク(S)抗体をコードする、二重ORF構築物(ORF 1に連結された構成的プロモーター)、及びORF 2に連結された肝臓特異的プロモーター、単一ceDNAベクターのフーリン/2A切断設計;及びceDNA-1の二重ベクター設計(ceDNA 1856及び1859)を使用した抗体産生レベルを示すグラフである。二重ベクター設計は、最高発現構築物を生じた。
【
図7C】二重ベクターのLNP送達を示すグラフであるceDNA-1;「LNP製剤1中に共製剤化されたceDNA二重ベクター構築物1856/1859)は、ceDNAの単一ベクター(二重ORF ceDNA 2157、「ceDNA-2」)の発現と比較して、マウスにおいて8ug/mLの持続的治療関連抗スパイクhIgG濃度を達成した。
【
図8】流体力学的送達後に抗体HC及びLCを発現させるためのceDNA二重ベクター設計とceDNA二重ORF設計との間の抗体発現の用量依存的増加を比較する。
【
図9】様々なHC:LCモル比を有するceDNAベクター構築物を用いたインビトロスクリーニングの結果を示すグラフである。
【
図10】様々なHC:LCモル比中に固定されたHC又はLCを有するceDNAベクター構築物を使用したインビボ結果を示すグラフである。
【
図11A】細胞株由来(組換えLS)又はceDNA由来抗体1(血清精製ceDNA由来LS)、及び細胞株由来(組換えLS-GAALIE)又はceDNA由来(血清精製ceDNA由来LS-GAALIE)抗体2が、FcγRIIIa-V受容体に会合した後、これより解離したときの解離定数(K
D)の値を示すグラフである。
【
図11B】細胞株由来(組換えLS)又はceDNA由来(血清精製ceDNA由来LS)抗体1、及び細胞株由来(組換えLS-GAALIE)又はceDNA由来(血清精製ceDNA由来LS-GAALIE)抗体2が、FcγRIIIaF受容体に会合した後、これより解離したときの解離定数(K
D)の値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示の実施形態によれば、ceDNAベクターによって抗体又はその抗原結合断片を送達するための組成物が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片は、治療目的に有用である。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される抗体又はその抗原結合断片は、診断目的に有用である。
【0032】
I.定義
本明細書で別途定義されない限り、本出願に関連して使用される科学的及び技術的用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。本開示は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬などに限定されず、そのようなものとして変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、単に特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定することを意図されない。免疫学及び分子生物学における一般用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,19th Edition,Merck Sharp & Dohme Corp.により発行,2011(ISBN 978-0-911910-19-3)、Robert S.Porter et al.(編),Fields Virology,6th Edition,Lippincott Williams & Wilkins(Philadelphia,PA,USA)により発行(2013)、Knipe,D.M.and Howley,P.M.(編),The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine,published by Blackwell Science Ltd.,1999-2012(ISBN 9783527600908)、及びRobert A.Meyers(編),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,VCH Publishers,Inc.により発行,1995(ISBN 1-56081-569-8)、Immunology by Werner Luttmann,Elsevierにより発行,2006、Janeway’s Immunobiology,Kenneth Murphy,Allan Mowat,Casey Weaver(編),Taylor & Francis Limited,2014(ISBN 0815345305,9780815345305)、Lewin’s Genes XI,Jones & Bartlett Publishersにより発行,2014(ISBN-1449659055)、Michael Richard Green and Joseph Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,USA(2012)(ISBN 1936113414)、Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier Science Publishing,Inc.,New York,USA(2012)(ISBN 044460149X)、Laboratory Methods in Enzymology:DNA,Jon Lorsch(編)Elsevier,2013(ISBN 0124199542)、Current Protocols in Molecular Biology(CPMB),Frederick M.Ausubel(編),John Wiley and Sons,2014(ISBN047150338X,9780471503385)、Current Protocols in Protein Science(CPPS),John E.Coligan(編),John Wiley and Sons,Inc.,2005、及びCurrent Protocols in Immunology(CPI)(John E.Coligan,ADA M Kruisbeek,David H Margulies,Ethan M Shevach,Warren Strobe,(編)John Wiley and Sons,Inc.,2003(ISBN0471142735,9780471142737)に見出すことができ、これらの内容は全て、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、ジスルフィド結合により相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖、及び2つの軽(L)鎖から構成される免疫グロブリン分子を指すことが意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2、及びCH3の3つのドメインで構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略される)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLで構成される。VH及びVL領域は、相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)と呼ばれる超可変性の領域に更に細分化され得、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置されている。本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団を指す。すなわち、集団を構成する抗体分子が、少量で存在し得る可能な天然に存在する変異を除いてアミノ酸配列において同一である。組成物中の「複数の」このようなモノクローナル抗体及び断片とは、例えばマウス又はヒトなどの宿主生物の血液中に通常天然に存在するであろう濃度を超える、同一の(すなわち、少量で存在し得る可能な天然に存在する変異を除くアミノ酸配列における)抗体及び断片の濃度を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「CDR」という用語は、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域の各々には3つのCDRが存在し、可変領域の各々についてCDR1、CDR2、及びCDR3と表される。本明細書で使用される場合、「CDR」という用語は、抗原に結合することができる単一の可変領域で生じる3つのCDRのグループを指す。これらのCDRの正確な境界は、異なるシステムに応じて異なって定義される。Kabatにより記載されているシステム(Kabat et al.(1987;1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health、Bethesda,Md.)は、抗体の任意の可変領域に適用可能な明確な残基番号付けシステムを提供するだけでなく、3つのCDRを定義する正確な残基境界も提供する。これらのCDRは、Kabat CDRと称される場合がある。Chothia及び共同研究者(Chothia&Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917;及びChothia et al.(1989)Nature 342:877-883)は、Kabat CDR内の特定の下位部分が、アミノ酸配列のレベルで大きな多様性を有するにもかかわらず、ほぼ同一のペプチド骨格立体配座を採ることを見出した。これらの下位部分は、L1、L2及びL3、又はH1、H2及びH3、又は、L-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3又はH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3として表され、「L」及び「H」は、それぞれ軽鎖領域及び重鎖領域を表す。これらの領域はChothia CDRと称される場合があり、Kabat CDRと重複する境界を有する。Kabat CDRと重複するCDRを定義する他の境界は、Padlan(1995)FASEB J.9:133-139及びMacCallum(1996)J.Mol.Biol.262(5):732-45によって記載されている。更に他のCDR境界の定義は、本明細書のシステムの1つに厳密には従わない場合もあるが、それでもKabat CDRと重複する。しかし、特定の残基若しくは残基の群、又はCDR全体であっても抗原結合に大きな影響を及ぼさないという予測又は実験結果に照らして短縮又は延長される場合がある(例えば、Lu X et al.,MAbs.2019 Jan;11(1):45-57を参照されたい)。本明細書で使用される方法は、これらのシステムのいずれかに従って定義されたCDRを利用してもよいが、特定の実施形態は、Kabat又はChothiaで定義されたCDRを使用する。
【0035】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合断片」又は「抗原結合部分」(又は単に「抗体断片」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって遂行され得ることが示されている。結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fabc、Fv、一本鎖、及び一本鎖抗体を含む。抗体の「抗原結合断片」という用語に包含される結合断片の例としては、(i)Fab断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片、(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.(1989)Nature 341:544-546)、及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。更に、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を使用して、VL及びVH領域が対になって一価分子を形成する単一タンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって結合され得る(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426、及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879-5883を参照されたい)。そのような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることが意図される。ダイアボディ等の他の形態の一本鎖抗体もまた、包含される。ダイアボディは、VHドメイン及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現する二価の二重特異性抗体であるが、同じ鎖上で2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを用いており、それによってドメインを他の鎖の相補的ドメインと強制的に対合させて、2つの抗原結合部位を生じさせる(例えば、Holliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448、Poljak et al.(1994)Structure 2:1121-1123を参照されたい)。本開示の抗体部分は、米国特許第6,090,382号、同第6,258,562号、同第6,509,015号に更に詳細に記載されており、これらは各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
「CL」という用語は、「免疫グロブリン軽鎖定常領域」又は「軽鎖定常領域」すなわち、抗体軽鎖由来の定常領域を指す。用語「CH」は、「免疫グロブリン重鎖定常領域」又は「重鎖定常領域」を指し、これは、抗体アイソタイプに応じて、CH1、CH2、及びCH3(IgA、IgD、IgG)、又はCH1、CH2、CH3、及びCH4ドメイン(IgE、IgM)に更に分割可能である。抗体重鎖のFc領域は、本明細書において更に記載される。本開示の実施形態のいずれかにおいて、本開示の抗体又は抗原結合性断片は、CL、CH1、CH2、及びCH3のうちのいずれか1つ以上を含む。例えば、哺乳動物細胞株における産生は、抗体重鎖の1つ以上のC末端リジンを除去することができることが理解されるであろう(例えば、Liu et al.mAbs 6(5):1145-1154(2014)を参照されたい)。したがって、本開示の抗体又は抗原結合性断片は、重鎖、CH1~CH3、CH3、又はFcポリペプチドを含むことができ、C末端リジン残基が存在するか、又は存在しない。言い換えれば、重鎖、CH1-CH3、又はFcポリペプチドのC末端残基がリジンではない実施形態、及びリジンがC末端残基である実施形態が包含される。特定の実施形態では、組成物は、本開示の複数の抗体及び/又は抗原結合性断片を含み、抗体又は抗原結合性断片は、重鎖、CH1~CH3、又はFcポリペプチドのC末端にリジン残基を含まず、抗体又は抗原結合性断片は、重鎖、CH1~CH3、又はFcポリペプチドのC末端にリジン残基を含む。「キメラ抗体」は、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列のそれぞれのいくつかの部分が、特定の種に由来するか又は特定のクラスに属する抗体中の対応する配列に相同であるが、鎖の残りのセグメントが、別の種由来の対応する配列に相同である抗体を指す。
【0037】
「ヒト化抗体」は、実質的にヒト抗体鎖(アクセプター免疫グロブリン又は抗体と呼ばれる)由来の可変領域フレームワーク残基を含む少なくとも1つの鎖と、実質的に非ヒト抗体(例えば、マウス)由来の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)とを含む抗体を指す。加えて、ヒト化抗体は、典型的には、親和性及び/又は免疫原性を改善するために更なる改変を受ける。
【0038】
「多価抗体」という用語は、2つ以上の抗原認識部位を含む抗体を指す。例えば、「二価」抗体は2つの抗原認識部位を有し、一方、「四価」抗体は4つの抗原認識部位を有する。用語「単一特異性」、「二重特異性」、「三重特異性」、「四重特異性」等。「抗原認識部位特異性」は、多価抗体に存在する(抗原認識部位の数とは対照的な)異なる抗原認識部位特異性の数を指す。例えば、「単一特異性抗体」抗原の抗原認識部位は全て、同じエピトープに結合する。「二重特異性」又は「二重特異性」抗体は、第1のエピトープに結合する少なくとも1つの抗原認識部位と、第1のエピトープとは異なる第2のエピトープに結合する少なくとも1つの抗原認識部位とを有する。「多価単一特異性」抗体は、全てが同じエピトープに結合する複数の抗原認識部位を有する。「多価二重特異性」抗体は、複数の抗原認識部位を有し、そのいくつかは第1のエピトープに結合し、そのいくつかは第1のエピトープとは異なる第2のエピトープに結合する。
【0039】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことが意図される。ヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3において、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダム変異誘発又は部位特異的変異誘発により導入されるか又はインビボで体細胞変異により導入された変異)を含み得る。しかしながら、本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」という用語は、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図しない。
【0040】
「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、組換え手段によって調製、発現、作製又は単離される全てのヒト抗体(例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体)を含むことが意図される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「中和抗体」は、病原体が宿主において感染を開始及び/又は永続させる能力を中和すなわち、防止、阻害、低減、妨害、又は干渉することができる抗体である。この阻害は、生物学的活性(インビトロ又はインビボのいずれか)、細胞活性化、及び/又は受容体結合の1つ又は複数の指標を測定することによって評価することができる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「抗原」という用語は、宿主の免疫系を刺激して体液性及び/又は細胞性の抗原特異的応答を生じさせる1つ以上のエピトープ(直鎖状、立体構造又はその両方)を含有する分子を指すことを意味する。この用語は、用語「免疫原」と互換的に使用される。通常、B細胞エピトープは、少なくとも約5個のアミノ酸を含むが、3~4個程度の少量のアミノ酸であってもよい。T細胞エピトープ(例えば、CTLエピトープ)は、少なくとも約7~9アミノ酸を含み、そしてヘルパーT細胞エピトープは、少なくとも約12~20アミノ酸を含む。通常、エピトープは、約7~15アミノ酸(9、10、11、12、13、14又は15アミノ酸などを含む)を含む。この用語は、タンパク質が本明細書中で定義されるような免疫学的応答を誘発する能力を維持する限り、ネイティブ配列と比較して、改変(例えば、欠失、付加及び置換(一般的に、本質的に保存的))を含むポリペプチドを含む。これらの改変は、部位特異的変異誘発によるように意図的であってもよく、又は抗原を産生する宿主の変異によるように偶発的であってもよい。
【0043】
用語「エピトープ」は、抗原決定基とも称され得、結合剤、免疫グロブリン又はT細胞受容体によって特異的に結合され得る分子決定基(例えば、ポリペプチド決定基)である。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、又はスルホニルなどの分子の化学的に活性な表面基を含み、特定の実施形態では、特異的な三次元構造特性及び/又は特異的な電荷特性を有し得る。エピトープは、構造的又は機能的として定義され得る。機能的エピトープは、一般に構造的エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与する残基を有する。エピトープは、直鎖状であっても立体構造的であってもよく、すなわち、非直鎖状アミノ酸から構成されていてもよい。抗体又は抗体の抗原結合断片によって認識されるエピトープは、抗体又は断片のCDR(例えば、相補的部位)と相互作用する抗原の構造要素である。エピトープは、抗体のCDRと相互作用して特異性を生じさせるいくつかのアミノ酸残基からの寄与によって形成され得る。抗原断片は、2つ以上のエピトープを含み得る。特定の実施形態では、抗体は、タンパク質及び/又は高分子の複合混合物中のその標的抗原を認識する場合に、抗原に特異的に結合する。例えば、抗体が交差競合する(一方が他方の結合又は調節効果を妨げる)場合、抗体は「同じエピトープに結合する」と言われる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えばBIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala,Sweden及びPiscataway,N.J.)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによって、リアルタイム生体特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。更なる説明については、米国特許第6,258,562号の実施例1及びJonsson et al.(1993)Ann.Biol.Clin.51:19、Jonsson et al.(1991)Biotechniques 11:620-627、Johnsson et al.(1995)J.Mol.Recognit.8:125、及びJohnnson et al.(1991)Anal.Biochem.198:268を参照されたい。
【0045】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」は、抗体又は抗原結合断片の、試料中の任意の他の分子又は成分と有意に会合又は結合しない一方で、105M-1(この会合反応に関するオン速度[Kon]のオフ速度[Koff]に対する比に等しい)以上の親和性又はKa(すなわち、1/Mを単位とする特定の結合相互作用の平衡会合定数)を有する抗原に対する、会合又は結合を指す。あるいは、親和性は、Mの単位を有する特定の結合相互作用の平衡解離定数(Kd)として定義され得る(例えば、10-5M~10-13M)。
【0046】
抗体は、「高親和性」抗体又は「低親和性」抗体として分類することができる。「高親和性」抗体は、少なくとも107M-1、少なくとも108M-1、少なくとも109M-1、少なくとも1010M-1、少なくとも1011M-1、少なくとも1012M-1又は少なくとも1013M-1のKaを有する抗体を指す。「低親和性」抗体は、107M-1まで、106M-1まで、105M-1までのKaを有する抗体を指す。あるいは、親和性は、Mの単位を有する特定の結合相互作用の平衡解離定数(Kd)として定義され得る(例えば、10-5M~10-13M)。
【0047】
「Koff」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についてのオフ速度定数を指すことが意図される。
【0048】
「Kd」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を指すことが意図される。
【0049】
「IC50」という用語は、本明細書で使用される場合、目的の生物学的エンドポイントを阻害するのに必要な阻害剤の濃度を指すことが意図される。
【0050】
本明細書で使用される場合、「異種核酸配列」及び「導入遺伝子」という用語は、交換可能に使用され、本明細書で開示されるceDNAベクターに組み込まれ、それによって送達及び発現され得る、関心対象の(カプシドポリペプチドをコードする核酸以外の)核酸を指す。いくつかの実施形態によれば、「異種核酸」という用語は、接触する細胞又は対象に存在しない、それにより発現されない、又はそれに由来しない核酸(又は導入遺伝子)を指すことを意図する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「発現カセット」及び「転写カセット」という用語は、交換可能に使用され、導入遺伝子の転写を指示するのに十分な1つ以上のプロモーター又は他の調節配列に作動可能に連結された導入遺伝子を含むが、カプシドコード配列、他のベクター配列、又は逆位末端反復領域を含まない核酸の直鎖状ストレッチを指す。発現カセットは、追加的に、1つ以上のシス作用性配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、又はリプレッサー)、1つ以上のイントロン、及び1つ以上の転写後調節エレメントを含んでもよい。
【0052】
本明細書で交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。したがって、この用語には、一本鎖、二本鎖、又は多重鎖のDNA若しくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、又はプリン及びピリミジン塩基若しくは他の天然、化学的修飾若しくは生化学的修飾、非天然、若しくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれる。「オリゴヌクレオチド」は、一般に、一本鎖又は二本鎖DNAの約5~約100ヌクレオチドのポリヌクレオチドを指す。しかしながら、この開示の目的のために、オリゴヌクレオチドの長さに上限はない。オリゴヌクレオチドは、「オリゴマー」又は「オリゴ」としても知られており、遺伝子から単離するか、又は当該技術分野で既知である方法によって化学的に合成することができる。「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、記載されている実施形態に適用可能であるように、一本鎖(センス又はアンチセンスなど)及び二本鎖ポリヌクレオチドを含むと理解されるべきである。
【0053】
DNAは、例えば、アンチセンス分子、プラスミドDNA、DNA-DNA二重鎖、事前に凝縮されたDNA、PCR産物、ベクター(P1、PAC、BAC、YAC、人工染色体)、発現カセット、キメラ配列、染色体DNA、又はこれらのグループの誘導体及び組み合わせの形態であり得る。DNAは、ミニサークル、プラスミド、バクミド、ミニ遺伝子、ミニストリングDNA(直鎖状の共有結合性閉鎖DNAベクター)、閉端直鎖状の二重鎖DNA(CELiD又はceDNA)、doggybone(dbDNA(商標))DNA、ダンベル形DNA、最小限度に免疫学的に定義された遺伝子発現(MIDGE)ベクター、ウイルス性ベクター又は非ウイルス性ベクターの形態にあり得る。RNAは、低分子干渉RNA(siRNA)、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、mRNA、rRNA、tRNA、ウイルスRNA(vRNA)、及びそれらの組み合わせの形態であり得る。核酸としては、既知のヌクレオチド類似体又は修飾型骨格残基若しくは連結を含有する核酸が挙げられ、これらは、合成、天然に存在する、及び天然に存在しないものであり、参照核酸と同様の結合特性を有する。そのような類似体及び/又は修飾残基の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(モルホリノ)、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2’-O-メチルリボヌクレオチド、ロックド核酸(LNA(商標))、及びペプチド核酸(PNA)が挙げられる。別途限定されない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有する天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含する。別途明記しない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的修飾型バリアント(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、及び相補的配列、同様に、明示的に示された配列を暗黙的に包含する。
【0054】
「ヌクレオチド」は、糖デオキシリボース(DNA)又はリボース(RNA)、塩基、及びリン酸基を含有する。ヌクレオチドは、リン酸基を介してともに連結している。
【0055】
「塩基」には、プリン及びピリミジンが含まれ、それらには、天然化合物のアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、及び天然類似体、並びにプリン及びピリミジンの合成誘導体が更に含まれ、それらには、アミン、アルコール、チオール、カルボキシレート、及びアルキルハライドなどであるがこれらに限定されない新しい反応基を配置する修飾が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で使用される場合、「核酸構築物」という用語は、天然に存在する遺伝子から単離されるか、又はそうでなければ天然に存在しなであろう様式で核酸のセグメントを含有するように修飾されるか、又は合成である、一本鎖又は二本鎖の核酸分子を指す。核酸構築物という用語は、核酸構築物が本開示のコード配列の発現に必要な制御配列を含有する場合、「発現カセット」という用語と同義である。「発現カセット」は、プロモーターに作動可能に連結されたDNAコード配列を含む。
【0057】
「ハイブリダイズ可能」又は「相補的」若しくは「実質的に相補的」とは、核酸(例えば、RNA)が、非共有結合的に結合する、すなわち、ワトソン・クリック塩基対及び/又はG/U塩基対を形成する、温度及び溶液イオン強度の適切なインビトロ及び/又はインビボ条件下で配列特異的、逆平行様式で別の核酸に「アニール」又は「ハイブリダイズ」する(すなわち、核酸は、相補的核酸に特異的に結合する)のを可能にするヌクレオチドの配列を含むことを意味する。当該技術分野で既知であるように、標準的なワトソン・クリック塩基対合には、チミジン(T)とのアデニン(A)対合、ウラシル(U)とのアデニン(A)対合、及びシトシン(C)とのグアニン(G)対合が含まれる。加えて、2つのRNA分子(例えば、dsRNA)間のハイブリダイゼーションのために、グアニン(G)塩基がウラシル(U)と対合することも、当該技術分野で既知である。例えば、G/U塩基対合は、mRNA中のコドンとのtRNAアンチコドン塩基対合の状況で、遺伝コードの縮重(すなわち、冗長性)を部分的に担っている。この開示の文脈において、対象のDNA標的化RNA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二重鎖)のグアニン(G)は、ウラシル(U)に相補的であるとみなされ、逆もまた同様である。したがって、対象のDNA標的化RNA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二重鎖)の所与のヌクレオチド位置でG/U塩基対を作製できる場合、その位置は、非相補的であるとみなされないが、代わりに相補的であるとみなされる。
【0058】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、コード及び非コードアミノ酸、化学的又は生化学的に修飾又は誘導体化されたアミノ酸、及び修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指す。
【0059】
特定の抗体又はその抗原結合断片を「コードする」DNA配列は、特定のRNA及び/又はタンパク質に転写されるDNA核酸配列である。DNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されるRNA(mRNA)をコードし得るか、又はDNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されないRNA(例えば、tRNA、rRNA、又はDNA標的化RNA、「非コード」RNA又は「ncRNA」とも呼ばれる)をコードし得る。
【0060】
本明細書で使用される場合、「末端反復」又は「TR」という用語は、少なくとも1つの最小限必要な複製起源、及びパリンドロームヘアピン構造を含む領域を含む、任意のウイルス末端反復又は合成配列を含む。Rep結合配列(「Rep-binding sequence、RBS」)(RBE(Rep結合エレメント)とも称される)及び末端分離部位(「TRS」)は、一緒に「最小限必要な複製起源」を構成し、したがって、TRは、少なくとも1つのRBS及び少なくとも1つのTRSを含む。ポリヌクレオチド配列の所与のストレッチ内で互いの逆相補体であるTRは、典型的に、各々「逆位末端反復」又は「ITR」と称される。ウイルスの文脈において、ITRは、複製、ウイルスパッケージング、組み込み、及びプロウイルスレスキューを媒介する。予想外に見出されたように、全長にわたって逆相補体でないTRは、依然としてITRの従来の機能を遂行することができ、したがって、ITRという用語は、本明細書において、ceDNAベクターの複製を媒介することができるceDNAゲノム又はceDNAベクター中のTRを指すように使用される。複合ceDNAベクター構成中、3つ以上のITR又は非対称ITR対が存在し得ることは、当業者によって理解されるであろう。ITRは、AAV ITR若しくは非AAV ITRであり得るか、又はAAV ITR若しくは非AAV ITRに由来し得る。例えば、ITRは、Parvoviruses及びDependoviruses(例えば、イヌパルボウイルス、ウシパルボウイルス、マウスパルボウイルス、ブタパルボウイルス、ヒトパルボウイルスB-19)を包含するParvoviridae科に由来し得るか、又はSV40複製の起源として役立つSV40ヘアピンは、切断、置換、欠失、挿入、及び/若しくは付加によって更に修飾され得る、ITRとして使用され得る。Parvoviridae科ウイルスは、2つの亜科:脊椎動物に感染するParvovirinae及び無脊椎動物に感染するDensovirinaeからなる。ディペンドパルボウイルスは、ヒト、霊長類、ウシ、イヌ、ウマ、及びヒツジ種を含むが、これらに限定されない脊椎動物宿主における複製が可能である、アデノ随伴ウイルス(AAV)のウイルスファミリーを含む。本明細書では便宜上、ceDNAベクター中の発現カセットに対して5’(その上流)に位置するITRは、「5’ITR」又は「左ITR」と称され、ceDNAベクター中の発現カセットに対して3’(その下流)に位置するITRは、「3’ITR」又は「右ITR」と称される。
【0061】
「野生型ITR」又は「WT-ITR」は、例えば、Rep結合活性及びRepニッキング能力を保持する、AAV又は他のディペンドウイルスにおける天然に存在するITR配列の配列を指す。任意のAAV血清型からのWT-ITRの核酸配列は、遺伝コード又はドリフトの縮退に起因して天然に存在する正準配列とわずかに異なる場合があり、したがって本明細書における使用のために包含されるWT-ITR配列は、産生プロセス中に発生する天然に存在する変化(例えば、複製エラー)の結果としてWT-ITR配列を含む。
【0062】
本明細書で使用される場合、「実質的に対称なWT-ITR」又は「実質的に対称なWT-ITR対」という用語は、両方がそれらの全長にわたって逆相補配列を有する野生型ITRである単一のceDNAゲノム又はceDNAベクター内のWT-ITRの対を指す。例えば、変化が配列の特性及び全体的な三次元構造に影響を及ぼさない限り、天然に存在する正準配列から逸脱する1つ以上のヌクレオチドを有する場合でも、ITRが野生型の配列であるとみなすことができる。いくつかの態様によれば、逸脱するヌクレオチドは、保存的配列変化を表す。非限定的な一例として、配列は、正準配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性(例えば、デフォルト設定でBLASTを使用して測定される)を有し、またそれらの三次元構造が幾何学的空間で同じ形状になるように、他のWT-ITRに対して対称な三次元空間構成を有する。実質的に対称なWT-ITRは、三次元空間で同じA、C-C’、及びB-B’ループを有する。実質的に対称なWT-ITRは、適切なRepタンパク質と対合する操作可能なRep結合部位(RBE又はRBE’)及び末端分解部位(trs)を有することを決定することによって、WTとして機能的に確認することができる。任意選択的に、許容条件下での導入遺伝子発現を含む他の機能を試験することができる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「修飾型ITR」又は「mod-ITR」又は「変異型ITR」の語句は、本明細書で交換可能に使用され、同じ血清型からのWT-ITRと比較して、少なくとも1つ以上のヌクレオチドに変異を有するITRを指す。変異は、同じ血清型のWT-ITRの三次元空間構成と比較して、ITRのA、C、C’、B、B’領域のうちの一部又は複数の変化をもたらし得、三次元空間構成(すなわち、幾何学的空間におけるその三次元構造)の変化をもたらし得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「非対称ITR対」とも称される「非対称ITR」という用語は、全長にわたって逆相補体ではない単一のceDNAゲノム又はceDNAベクター内のITRの対を指す。非限定的な一例として、非対称ITR対は、それらの三次元構造が、幾何学的空間において異なる形状であるように、それらの同族ITRに対して対称の三次元空間構成を有しない。言い換えると、非対称のITR対は、全体的な幾何学的構造が異なり、すなわち、三次元空間でのそれらのA、C-C’、及びB-B’ループの構成が異なる(例えば、同族ITRと比較して、1つのITRは、短いC-C’アーム及び/又は短いB-B’アームを有し得る)。2つのITR間の配列の相違は、1つ以上のヌクレオチド付加、欠失、切断、又は点変異に起因し得る。いくつかの実施形態によれば、非対称ITR対の一方のITRは、野生型AAV ITR配列であり得、他方のITRは、本明細書で定義される修飾型ITR(例えば、非野生型又は合成ITR配列)であり得る。別の実施形態では、非対称ITR対のどちらのITRも野生型AAV配列ではなく、2つのITRは、幾何学的空間において異なる形状(すなわち、異なる全体的な幾何学的構造)を有する修飾型ITRである。いくつかの実施形態では、非対称ITR対の一方のmod-ITRは、短いC-C’アームを有することができ、他方のITRは、それらが同族の非対称mod-ITRと比較して、異なる三次元空間構成を有するように異なる修飾(例えば、単一アーム、又は短いB-B’アームなど)を有し得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、「対称ITR」という用語は、野生型ディペンドウイルスITR配列に対して変異又は修飾され、それらの全長にわたって逆相補である単一のceDNAゲノム又はceDNAベクター内の一対のITRを指す。どちらのITRも野生型ITR AAV2配列ではなく(すなわち、それらは修飾型ITRであり、変異型ITRとも称される)、ヌクレオチドの付加、欠失、置換、切断、又は点変異により、野生型ITRとは配列が異なり得る。本明細書では便宜上、ceDNAベクター中の発現カセットに対して5’(その上流)に位置するITRは、「5’ITR」又は「左ITR」と称され、ceDNAベクター中の発現カセットに対して3’(その下流)に位置するITRは、「3’ITR」又は「右ITR」と称される。
【0066】
本明細書で使用される場合、「実質的に対称の修飾型ITR」又は「実質的に対称のmod-ITR対」という用語は、両方がそれらの全長にわたって逆相補配列を有する単一のceDNAゲノム又はceDNAベクター内の修飾型ITRの対を指す。例えば、修飾型ITRは、変化が特性及び全体的な形状に影響を及ぼさない限り、逆相補配列から逸脱するいくつかのヌクレオチド配列がある場合でも、実質的に対称とみなすことができる。非限定的な一例として、配列は、正準配列に対して少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性(デフォルト設定でBLASTを使用して測定される)を有し、またそれらの三次元構造が幾何学的空間で同じ形状になるように、それらの同族の修飾型ITRに対して対称な三次元空間構成を有する。言い換えると、実質的に対称な修飾型ITR対は、三次元空間に構成された同じA、C-C’、及びB-B’ループを有する。いくつかの実施形態によれば、mod-ITR対からのITRは、異なる逆相補ヌクレオチドを有し得るが、依然として同じ対称な三次元空間構成を有し得る。すなわち、両方のITRは、同じ全体的な三次元形状をもたらす変異を有する。例えば、mod-ITR対の1つのITR(例えば、5’ITR)は、1つの血清型に由来し得、他方のITR(例えば、3’ITR)は、異なる血清型に由来し得るが、両方が同じ対応する変異を有し得(例えば、5’ITRがC領域に欠失を有する場合、異なる血清型の同族の修飾型3’ITRは、C’領域の対応する位置に欠失を有する)、それにより修飾型ITR対が同じ対称な三次元空間構成を有する。そのような実施形態では、修飾型ITR対の各ITRは、AAV2及びAAV6の組み合わせなどの異なる血清型(例えば、AAV1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12)に由来し得、一部のITRの修飾は、異なる血清型の同族のITRの対応する位置に反映される。一実施形態では、実質的に対称な修飾型ITR対は、ITR間のヌクレオチド配列の相違が特性又は全体的な形状に影響を及ぼさず、それらが三次元空間で実質的に同じ形状を有する限り、一対の修飾型ITR(modified ITR、mod-ITR)を指す。非限定的な例として、mod-ITRは、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)又はデフォルト設定のBLASTNなどの当該技術分野において周知の標準的な手段によって決定される、正準mod-ITRに対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有し、またそれらの三次元構造が幾何学的空間で同じ形状になるように、対称な三次元空間構成を有する。実質的に対称なmod-ITR対は、三次元空間で同じA、C-C’及びB-B’ループを有する。例えば、実質的に対称なmod-ITR対の修飾型ITRがC-C’アームの欠失を有する場合、同族のmod-ITRは、C-C’ループの対応する欠失を有し、またその同族のmod-ITRの幾何学的空間に同じ形状の残りのA及びB-B’ループの同様の三次元構造を有する。
【0067】
本明細書で使用される場合、「内部リボソーム侵入部位」(Internal ribosomal entry site、IRES)は、mRNA配列の中央で翻訳の開始を可能にするヌクレオチド配列(>500ヌクレオチド)を指すことを意味する(Kirn,JITet al.,2011.PLoS One 6(4):el 8556、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。IRES配列の使用は、IRESの前後の遺伝子の同時発現を確実にするが、IRESに続く配列は、IRES配列に先行する配列よりも低いレベルで転写及び翻訳され得る。
【0068】
本明細書で使用される場合、「2Aペプチド」は、ウイルス(例えば、口蹄疫ウイルス(F2A)、ブタテッショウウイルス-1(P2A)、オセアアシグナウイルス(T2A)、又はウマ鼻炎Aウイルス(E2A))に由来する小さな自己切断ペプチドを指すことを意味する。2Aという名称は、特に、2AペプチドのO末端におけるグリシル-プロリル結合でリボソームスキップをもたらすピコルナウイルスポリタンパク質の領域を指す(Kim,J.IT.et al.2011.PLoS One 6(4)、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。このスキップは、2Aペプチドとそのすぐ下流のペプチドとの間の切断を生じる。
【0069】
「隣接する」という用語は、別の核酸配列に関する1つの核酸配列の相対位置を指す。一般に、配列ABCにおいて、BはA及びCに隣接している。配列A×B×Cについても同様である。したがって、隣接する配列は、隣接される配列の前又は後に続くが、隣接される配列と連続している、又はすぐ隣である必要はない。いくつかの実施形態によれば、隣接するという用語は、直鎖状二重鎖ceDNAベクターの各末端における末端反復を指す。
【0070】
本明細書で使用される場合、「ceDNAゲノム」という用語は、少なくとも1つの逆位末端反復領域を更に組み込む発現カセットを指す。ceDNAゲノムは、1つ以上のスペーサー領域を更に含み得る。いくつかの実施形態によれば、ceDNAゲノムは、DNAの分子間二重鎖ポリヌクレオチドとして、プラスミド又はウイルスゲノムに組み込まれる。
【0071】
本明細書で使用される場合、「ceDNAスペーサー領域」という用語は、ceDNAベクター又はceDNAゲノム中の機能的エレメントを分離する介在配列を指す。いくつかの実施形態によれば、ceDNAスペーサー領域は、最適機能性のため所望の距離で2つの機能的エレメントを保持する。いくつかの実施形態によれば、ceDNAスペーサー領域は、例えば、プラスミド又はバキュロウイルス内のceDNAゲノムの遺伝的安定性を提供するか又は増大させる。いくつかの実施形態によれば、ceDNAスペーサー領域は、クローニング部位などに便利な位置を提供することによって、ceDNAゲノムの迅速な遺伝子操作を促進する。例えば、ある特定の態様では、いくつかの制限エンドヌクレアーゼ部位を含有するオリゴヌクレオチド「ポリリンカー」、又は既知のタンパク質(例えば、転写因子)結合部位を有しないように設計された非オープンリーディングフレーム配列をceDNAゲノム中に位置付けて、シス作用性因子を分離することができ、例えば、末端分離部位と、上流転写調節エレメントとの間に6mer、12mer、18mer、24mer、48mer、86mer、176merなどを挿入する。同様に、スペーサーを、ポリアデニル化シグナル配列と3’末端分離部位との間に組み込むことができる。
【0072】
本明細書で使用される場合、「Rep結合部位」、「Rep結合エレメント」、「RBE」、及び「RBS」は、交換可能に使用され、Repタンパク質(例えば、AAV Rep 78又はAAV Rep 68)の結合部位を指し、Repタンパク質による結合時に、Repタンパク質が、RBSを組み込む配列上でその部位特異的エンドヌクレアーゼ活性を実施することを可能にする。RBS配列及びその逆相補体は、一緒に単一RBSを形成する。RBS配列は、当該技術分野において周知であり、例えば、AAV2において同定されたRBS配列である5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’を含む。任意の既知のRBS配列は、他の既知のAAV RBS配列及び他の天然に既知の又は合成RBS配列を含む、本開示の実施形態において使用され得る。理論に束縛されるものではないが、Repタンパク質のヌクレアーゼドメインは、二重鎖核酸配列GCTCに結合し、したがって2つの既知のAAV Repタンパク質は、二重鎖オリゴヌクレオチド、5’-(GCGC)(GCTC)(GCTC)(GCTC)-3’に直接結合し、安定してアセンブリする。加えて、可溶性凝集配座異性体(すなわち、不定数の相互関連Repタンパク質)は解離し、Rep結合部位を含有するオリゴヌクレオチドに結合する。各Repタンパク質は、各鎖上の窒素塩基及びホスホジエステル骨格の両方と相互作用する。窒素塩基との相互作用は、配列特異性を提供するが、ホスホジエステル骨格との相互作用は、非配列特異性又は低配列特異性であり、タンパク質-DNA複合体を安定させる。
【0073】
本明細書で使用される場合、「末端分離部位」及び「TRS」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、Repが、細胞DNAポリメラーゼ、例えばDNA polデルタ又はDNA polイプシロンを介してDNA伸長の基質として役立つ3’OHを生成する5’チミジンとのチロシン-ホスホジエステル結合を形成する領域を指す。代替的に、Rep-チミジン複合体は、配位ライゲーション反応に関与し得る。いくつかの実施形態によれば、TRSは、最小限で非塩基対チミジンを包含する。いくつかの実施形態によれば、TRSのニッキング効率は、RBSからの同じ分子内のその距離によって少なくとも部分的に制御され得る。受容体基質が相補的ITRである場合、得られる産物は、分子間二重鎖である。TRS配列は、当該技術分野において既知であり、例えば、AAV2において同定されたヘキサヌクレオチド配列である5’-GGTTGA-3’を含む。任意の既知のTRS配列は、他の既知のAAV TRS配列及び他の天然に既知の又はAGTT、GGTTGG、AGTTGG、AGTTGAなどの合成TRS配列、並びにRRTTRRなどの他のモチーフを含む、本開示の実施形態において使用され得る。
【0074】
本明細書で使用される場合、「ceDNA」という用語は、合成又はその他の非ウイルス遺伝子導入のためのカプシド不含閉端直鎖状二本鎖(ds)二重鎖DNAを指す。ceDNAの詳細な説明は、2017年3月3日に出願された国際出願第US2017/020828号に記載されており、その全容は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。細胞ベースの方法を使用して様々な逆位末端反復(ITR)配列及び構成を含むceDNAの産生のためのある特定の方法は、2018年9月7日に出願された国際出願第US18/49996号及び2018年12月6日に出願された同第US2018/064242号の実施例1に記載されており、その各々は、その全体の参照により本明細書に組み込まれる。様々なITR配列及び構成を含む合成ceDNAベクターの生成のためのある特定の方法は、例えば、2019年1月18日に出願された国際出願第US2019/14122号に記載されており、その全容は参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用される場合、「ceDNAベクター」及び「ceDNA」という用語は、交換可能に使用され、少なくとも1つの末端パリンドロームを含む閉端DNAベクターを指す。いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、2つの共有結合性閉端を含む。
【0075】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-プラスミド」という用語は、分子間二重鎖としてceDNAゲノムを含むプラスミドを指す。
【0076】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-バクミド」という用語は、E.coliにおいてプラスミドとして伝播することができる分子間二重鎖としてceDNAゲノムを含み、それによりバキュロウイルスのシャトルベクターとして作動し得る、感染性バキュロウイルスゲノムを指す。
【0077】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-バキュロウイルス」という用語は、バキュロウイルスゲノム内の分子間二重鎖としてceDNAゲノムを含むバキュロウイルスを指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-バキュロウイルス感染昆虫細胞」及び「ceDNA-BIIC」という用語は、交換可能に使用され、ceDNA-バキュロウイルスに感染した無脊椎動物宿主細胞(限定されないが、昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)を含む)を指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「閉端DNAベクター」という用語は、少なくとも1つの共有結合性閉端を有し、ベクターの少なくとも一部が分子内二重鎖構造を有する、カプシド不含DNAベクターを指す。
【0080】
本明細書で定義されるように、「レポーター」は、検出可能な読み出しを提供するために使用することができるタンパク質を指す。レポーターは、一般に、蛍光、色、又は発光などの測定可能なシグナルを産生する。レポータータンパク質コード配列は、細胞又は生物中の存在が容易に観察されるタンパク質をコードする。例えば、蛍光タンパク質は、特定波長の光で励起された場合に細胞を蛍光させ、ルシフェラーゼは、細胞に光を生じる反応を触媒させ、β-ガラクトシダーゼなどの酵素は、基質を着色産物に変換する。実験又は診断目的のために有用な例示的なレポーターポリペプチドとしては、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase、AP)、チミジンキナーゼ(thymidine kinase、TK)、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein、GFP)、及び他の蛍光タンパク質、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(chloramphenicol acetyltransferase、CAT)、ルシフェラーゼ、並びに当該技術分野において周知の他のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書で使用される場合、「エフェクタータンパク質」という用語は、例えば、レポーターポリペプチドとして、あるいはより適切には、細胞を殺傷するポリペプチド、例えば毒素、又は選択された薬剤若しくはその欠失で細胞を殺傷しやすくする薬剤として、検出可能な読み出しを提供するポリペプチドを指す。エフェクタータンパク質は、宿主細胞のDNA及び/又はRNAを直接標的又は損傷する任意のタンパク質又はペプチドを含む。例えば、エフェクタータンパク質としては、宿主細胞DNA配列を標的化する制限エンドヌクレアーゼ(ゲノム因子であるか染色体外因子であるかにかかわらず)、細胞生存に必要なポリペプチドを標的化するプロテアーゼ、DNAギラーゼ阻害剤、及びリボヌクレアーゼ型毒素が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成生物的回路によって制御されるエフェクタータンパク質の発現は、別の合成生物的回路における因子として関与し得、それによって生物的回路系の応答性の範囲及び複雑性を拡張する。
【0082】
転写調節因子は、導入遺伝子(例えば、本明細書に記載される抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸)の転写を活性化又は抑制する転写アクチベーター及びリプレッサーを指す。プロモーターは、特定の遺伝子の転写を開始する核酸の領域である。転写アクチベーターは、典型的に、転写プロモーターの近くに結合し、RNAポリメラーゼを動員して転写を直接開始する。リプレッサーは、転写プロモーターに結合し、RNAポリメラーゼによる転写開始を立体的に妨害する。他の転写調節因子は、それらが結合する場所、並びに細胞条件及び環境条件に応じて、アクチベーター又はリプレッサーのいずれかとして役立ち得る。転写調節因子クラスの非限定例としては、ホメオドメインタンパク質、亜鉛フィンガータンパク質、翼状らせん(フォークヘッド)タンパク質、及びロイシン-ジッパータンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本明細書で使用される場合、「リプレッサータンパク質」又は「誘導因子タンパク質」は、調節配列エレメントに結合するタンパク質であり、調節配列エレメントに作動可能に連結した配列の転写をそれぞれ抑制又は活性化する。本明細書に記載される好ましいリプレッサー及び誘導因子タンパク質は、少なくとも1つの入力剤又は環境入力の存在又は不在に敏感である。本明細書に記載される好ましいタンパク質は、例えば、分離可能なDNA結合及び入力剤結合、又は応答性エレメント若しくはドメインを含む形態のモジュールである。
【0084】
本明細書で使用される場合、「担体」には、任意かつ全ての溶媒、分散媒質、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁液、コロイドなどが含まれる。薬学的に活性な物質に対するそのような媒質及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。補充的活性成分を組成物に組み込むこともできる。「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与された場合に、毒性反応、アレルギー性反応、又は同様の不都合な反応を生じない分子実体及び組成物を指す。
【0085】
本明細書で使用される場合、「入力剤応答性ドメイン」は、条件又は入力剤に結合するか、又はそうでなければ連結DNA結合融合ドメインをその条件若しくは入力の存在に対して応答性にするように、条件又は入力剤に応答する転写因子のドメインである。いくつかの実施形態によれば、条件又は入力の存在は、入力剤応答性ドメイン又はそれが融合するタンパク質の立体構造変化をもたらし、それが転写因子の転写調節活性を修飾する。
【0086】
「インビボ」という用語は、多細胞動物などの生物中又は生物内で起こるアッセイ又はプロセスを指す。本明細書に記載される態様のうちのいくつかによれば、方法又は使用は、細菌等の単細胞生物が使用されるときに「インビボで」起こると言われ得る。「エクスビボ」という用語は、多細胞動物又は植物、例えば、とりわけ外植片、培養細胞(一次細胞及び細胞株を含む)、形質転換細胞株、及び抽出組織又は細胞(血液細胞を含む)の体外に無傷膜を有する生細胞を使用して実施される方法及び使用を指す。「インビトロ」という用語は、細胞抽出物などの無傷膜を有する細胞の存在を必要としないアッセイ及び方法を指し、非細胞系、例えば細胞抽出物などの細胞又は細胞系を含まない媒質にプログラム可能な合成生物的回路を導入することを指し得る。
【0087】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、タンパク質又はRNAをコードする異種標的遺伝子であり得る、核酸配列の転写を駆動することによって、別の核酸配列の発現を調節する任意の核酸配列を指す。プロモーターは、構成的、誘導性、抑制性、組織特異性、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。プロモーターは、核酸配列の残りの転写の開始及び速度が制御される、核酸配列の制御領域である。プロモーターはまた、RNAポリメラーゼ及び他の転写因子等の調節タンパク質及び分子が結合し得る、遺伝子エレメントを含有し得る。本明細書に記載される態様のいくつかの実施形態では、プロモーターは、プロモーター自体の発現を調節する転写因子の発現を駆動することができる。プロモーター配列内では、転写開始部位、同様に、RNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメインが見出されるであろう。真核生物プロモーターは、必ずしもそうではないが、多くの場合、「TATA」ボックス及び「CAT」ボックスを含有する。誘導性プロモーターを含む様々なプロモーターを使用して、本明細書に開示されるceDNAベクター中の導入遺伝子の発現を駆動することができる。プロモーター配列は、その3’末端で転写開始部位によって結合され、バックグラウンドより上で検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基又はエレメントを含むように上流(5’配向)に伸びる。いくつかの実施形態によれば、本開示のプロモーターは、肝臓特異的プロモーターである。
【0088】
本明細書で使用される場合、「エンハンサー」という用語は、1つ以上のタンパク質(例えば、活性因子タンパク質又は転写因子)に結合して、核酸配列の転写活性化を増加させるシス作用性調節配列(例えば、10~1,500塩基対)を指す。エンハンサーは、それらが調節する遺伝子開始部位の上流又は遺伝子開始部位の下流で最大1,000,000塩基対に位置付けられ得る。エンハンサーは、非関連遺伝子のイントロン領域内又はエキソン領域内に位置付けられ得る。
【0089】
プロモーターは、それが調節する核酸配列の発現を駆動する、又は転写を駆動すると言うことができる。「操作可能に連結された」、「作動可能に位置付けられた」、「作動可能に連結された」、「制御下」、及び「転写制御下」という語句は、プロモーターが、核酸配列に関して正しい機能的位置及び/又は配向にあり、その配列の転写開始及び/又は発現を制御するように調節することを示す。本明細書で使用される場合、「逆位プロモーター」は、核酸配列が逆配向にあるプロモーターを指し、それによりコード鎖であったものは、今は非コード鎖であり、逆も同様である。逆位プロモーター配列を様々な実施形態で使用して、スイッチの状態を調節することができる。加えて、様々な実施形態では、プロモーターをエンハンサーと併せて使用することができる。
【0090】
プロモーターは、所与の遺伝子又は配列のコードセグメント及び/又はエキソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって取得され得る、遺伝子又は配列と天然に関連するものであり得る。このようなプロモーターは、「内因性」と呼ばれ得る。同様に、いくつかの実施形態によれば、エンハンサーは、その配列の下流又は上流のいずれかに位置する、核酸配列と天然に関連するものであり得る。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、コード核酸セグメントは、「組換えプロモーター」又は「異種プロモーター」の制御下で位置付けられ、これらの両方は、その自然環境において作動可能に連結されたコードされた核酸配列と通常は関連しないプロモーターを指す。組換え又は異種エンハンサーは、その自然環境において所与の核酸配列と通常は関連しないエンハンサーを指す。そのようなプロモーター又はエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーター又はエンハンサー、任意の他の原核、ウイルス、又は真核細胞から単離されたプロモーター又はエンハンサー、及び「天然に存在」しない合成プロモーター又はエンハンサーを含み得、すなわち、異なる転写調節領域の異なるエレメント、及び/又は当該技術分野において既知である遺伝子操作の方法を通じて発現を変更する変異を含み得る。プロモーター及びエンハンサーの核酸配列を合成的に産生することに加えて、プロモーター配列は、本明細書に開示される合成生物的回路及びモジュールに関して、PCRを含む組換えクローニング及び/又は核酸増幅技術を使用して産生され得る(例えば、米国特許第4,683,202号、米国特許第5,928,906号を参照されたく、各々は参照により本明細書に組み込まれる)。更に、ミトコンドリア、クロロプラスト等の非核性細胞小器官内の配列の転写及び/又は発現を配向する制御配列が同様に用いられ得ることが企図される。
【0092】
本明細書に記載される場合、「誘導性プロモーター」は、誘導因子若しくは誘導剤の存在下、それによって影響される場合、又はそれによって接触される場合に、転写活性を開始又は強化することによって特徴付けられるものである。本明細書に定義される場合、「誘導因子」又は「誘導剤」は、内因性であり得るか、又は誘導性プロモーターからの転写活性を誘導することにおいて活性であるような方式で投与される、通常は外因性の化合物又はタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、誘導因子又は誘導剤、すなわち、化学物質、化合物、又はタンパク質は、それ自体が核酸配列の転写又は発現の結果であり得(すなわち、誘導因子は、別の構成成分又はモジュールによって発現される誘導因子タンパク質であり得る)、それ自体が制御下にあり得、若しくは誘導性プロモーターであり得る。いくつかの実施形態では、誘導性プロモーターは、リプレッサー等のある特定の薬剤の不在下で誘導される。誘導性プロモーターの例としては、テトラサイクリン、メタロチオニン、エクジソン、哺乳動物ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、及びマウス乳腺腫瘍ウイルスの長い末端反復(MMTV-LTR))、並びに他のステロイド応答性プロモーター、ラパマイシン応答性プロモーター等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
本明細書で交換可能に使用される「DNA調節配列」、「制御エレメント」、及び「調節エレメント」という用語は、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、タンパク質分解シグナルなどの転写及び翻訳制御配列を指し、これらは非コード配列(例えば、DNA標的化RNA)又はコード配列(例えば、部位特異的修飾ポリペプチド若しくはCas9/Csn1ポリペプチド)の転写を提供及び/若しくは調節し、かつ/又はコードされたポリペプチドの翻訳を調節する。
【0094】
本明細書で使用される場合、「オープンリーディングフレーム(ORF)」という用語は、ペプチド又はタンパク質に翻訳され得るいくつかのヌクレオチドトリプレットの配列を指すことを意図する。オープンリーディングフレームは、好ましくは開始コドン、すなわちアミノ酸メチオニン(amino acid methionine、ATG)を通常コードする3つの後続ヌクレオチドの組み合わせをその5’末端に含み、また通常3ヌクレオチドの倍数の長さを示す後続領域を含む。ORFは、好ましくは終止コドン(例えば、TAA、TAG、TGA)によって終結する。典型的には、これはオープンリーディングフレームの唯一の終止コドンである。したがって、本発明の文脈におけるオープンリーディングフレームは、好ましくは、開始コドン(例えばATG)で始まり、好ましくは停止コドン(例えばTAA、TGA、又はTAG)で終わる、3で割ることができるいくつかのヌクレオチドからなるヌクレオチド配列である。オープンリーディングフレームは、単離されてもよく、又はより長い核酸配列、例えば本明細書に記載されるceDNAベクターに組み込まれてもよい。
【0095】
「作動可能に連結された」とは、そのように記載された構成成分が、それらが意図された方法で機能することを許可する関係にある並列を指す。例えば、プロモーターがその転写又は発現に影響を与える場合、プロモーターは、コード配列に操作可能に連結されている。「発現カセット」は、ceDNAベクターにおける導入遺伝子の転写を指示するのに十分なプロモーター又は他の調節配列に作動可能に連結されているDNA配列を含む。好適なプロモーターには、例えば、組織特異的プロモーターが含まれる。プロモーターは、AAV起源でもあり得る。
【0096】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、本開示によるceDNAベクターでの予防的治療を含む治療が提供される、ヒト又は動物を指す。本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒト及び他の動物を含む。典型的には、対象は、ヒトである。例えば、対象は、成人、10代の若者、小児(2歳~14歳)、乳児(出生~2歳)、又は新生児(2ヶ月まで)であり得る。特定の態様において、対象は、最大4ヶ月齢、又は最大6ヶ月齢である。いくつかの態様によれば、成人は、約65歳以上、又は約60歳以上の高齢者である。いくつかの態様によれば、対象は、妊婦又は妊娠しようとしている女性である。他の態様において、対象はヒトではなく、例えば、非ヒト霊長類、例えば、ヒヒ、チンパンジー、ゴリラ、又はマカクである。特定の態様において、対象は、イヌ又はネコなどのペットであってもよい。
【0097】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本開示の核酸構築物又はceDNA発現ベクターによる形質転換、トランスフェクション、形質導入などを受けやすい任意の細胞型を含む。非限定的な例として、宿主細胞は、単離された初代細胞、多能性幹細胞、CD34+細胞)、人工多能性幹細胞、又はいくつかの不死化細胞株(例えば、HepG2細胞)のいずれかであり得る。代替的に、宿主細胞は、組織、器官、又は生物におけるインサイチュ又はインビボの細胞であり得る。
【0098】
「外因性」という用語は、その天然源以外の細胞に存在する物質を指す。本明細書で使用される「外因性」という用語は、通常見られず、核酸又はポリペプチドをそのような細胞又は生物に導入することが望まれる、人間の手が関与するプロセスによって細胞又は生物等の生物系に導入された核酸(例えば、ポリペプチドをコードする核酸)又はポリペプチドを指し得る。代替的に、「外因性」とは、それが比較的少量で見られ、細胞又は生物における核酸又はポリペプチドの量を増加させること、例えば、異所性発現又はレベルをもたらすことが望まれる、人間の手が関与するプロセスによって細胞又は生物等の生物系に導入された核酸又はポリペプチドを指し得る。これとは対照的に、「内因性」という用語は、生物系又は細胞に対して天然である物質を指す。
【0099】
「配列同一性」という用語は、2つのヌクレオチド配列間の関連性を指す。本開示の目的のために、2つのデオキシリボヌクレオチド配列間の配列同一性の程度は、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,上記)、好ましくはバージョン3.0.0以降において実装されるように、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,上記)を使用して決定される。使用される任意のパラメータは、ギャップオープンペナルティ10、ギャップ拡張ペナルティ0.5、及びEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。「最長同一性」とラベル付けされたNeedleの出力(-nobriefオプションを使用して取得される)は、同一性パーセントとして使用され、次のように計算される、(同一のデオキシリボヌクレオチド×100)/アラインメントの長さ-アラインメントにおけるギャップの総数)。アラインメントの長さは、好ましくは少なくとも10ヌクレオチド、好ましくは少なくとも25ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも50ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも100ヌクレオチドである。
【0100】
本明細書で使用される場合、「相同性」又は「相同」という用語は、必要に応じて配列を整列させ、ギャップを導入して最大の配列同一性パーセントを達成した後、標的染色体上の対応する配列のヌクレオチド残基と同一であるヌクレオチド残基のパーセンテージとして定義される。ヌクレオチド配列相同性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ClustalW2、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当該技術分野の範囲内である様々な方式で達成され得る。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。いくつかの実施形態では、例えば相同性アームの核酸配列(例えば、DNA配列)は、配列が、宿主細胞の対応する未変性又は未編集の核酸配列(例えば、ゲノム配列)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%以上同一である場合、「相同」とみなされる。
【0101】
本明細書で使用される場合、「異種」という用語は、それぞれ天然の核酸又はタンパク質には見られないヌクレオチド又はポリペプチド配列を意味する。異種核酸配列は、天然に存在する核酸配列(又はそのバリアント)に(例えば、遺伝子操作によって)連結されて、キメラポリペプチドをコードするキメラヌクレオチド配列を生成し得る。異種核酸配列は、バリアントポリペプチドに(例えば、遺伝子操作によって)連結されて、融合バリアントポリペプチドをコードする核酸配列を生成し得る。あるいは、「異種」という用語は、細胞又は対象に天然には存在しない核酸配列を指す場合がある。
【0102】
「ベクター」又は「発現ベクター」は、細胞において結合されたセグメントの複製をもたらすために別のDNAセグメント、すなわち「挿入物」が結合され得る、プラスミド、バクミド、ファージ、ウイルス、ビリオン、又はコスミドなどのレプリコンである。ベクターは、宿主細胞への送達のために、又は異なる宿主細胞間の移動のために設計された核酸構築物であり得る。本明細書で使用される場合、ベクターは、起源及び/又は最終形態でウイルス性又は非ウイルス性であり得るが、本開示の目的のために、「ベクター」は、その用語が本明細書で使用される場合、一般にceDNAベクターを指す。「ベクター」という用語は、適切な制御エレメントと関連する場合に複製することができ、遺伝子配列を細胞に移すことができる任意の遺伝子エレメントを包含する。いくつかの実施形態によれば、ベクターは、発現ベクター又は組換えベクターであり得る。
【0103】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」という用語は、ベクター上の転写調節配列に連結された配列からのRNA又はポリペプチドの発現を指示するベクターを指す。発現される配列は、多くの場合、しかし必ずしもそうではないが、細胞にとって異種である。発現ベクターは、追加のエレメントを含むことができ、例えば、発現ベクターは、2つの複製系を有することができるため、それを2つの生物、例えば発現の場合はヒト細胞、並びにクローニング及び増幅の場合は原核生物宿主で維持することができる。「発現」という用語は、RNA及びタンパク質、また必要に応じて、例えば、転写、転写プロセシング、翻訳及びタンパク質の折りたたみ、修飾及びプロセシングを含むがこれらに限定されない分泌タンパク質の産生に関与する細胞プロセスを指す。「発現産物」には、遺伝子から転写されたRNA、及び遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られたポリペプチドが含まれる。「遺伝子」という用語は、適切な調節配列に作動可能に連結された場合に、インビトロ又はインビボでRNAに転写される核酸配列(DNA)を意味する。遺伝子には、コード領域の前後の領域、例えば、5’未翻訳(5’UTR)又は「リーダー」配列及び3’UTR又は「トレーラー」配列、同様に、個々のコードセグメント(エキソン)間の介在配列(イントロン)が含まれる場合及び含まれない場合がある。
【0104】
「組換えベクター」とは、異種核酸配列を含むベクター、又はインビボで発現することができる「導入遺伝子」を意味する。本明細書に記載されるベクターは、いくつかの実施形態によれば、他の好適な組成物及び療法と組み合わせることができることを理解されたい。いくつかの実施形態によれば、ベクターはエピソームである。好適なエピソームベクターの使用は、対象における目的のヌクレオチドを高コピー数の染色体外DNAに維持し、それによって染色体組み込みの潜在的な影響を排除する手段を提供する。
【0105】
本明細書で使用される場合、「投与」、「投与する」という用語及びそれらの変形は、組成物又は薬剤(例えば、本明細書に記載されるceDNA)を対象に導入することを指し、1つ以上の組成物又は薬剤の同時及び連続導入を含む。「投与」は、例えば、治療、薬物動態、診断、研究、プラセボ、及び実験方法を指し得る。「投与」は、インビトロ及びエクスビボ治療も包含する。組成物又は薬剤の対象への導入は、経口、肺、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下)、直腸、リンパ管内、腫瘍内、又は局所を含む任意の好適な経路による。投与には、自己管理及び他者による投与が含まれる。投与は、任意の好適な経路によって実行され得る。好適な投与経路は、組成物又は薬剤がその意図された機能を遂行することを可能にする。例えば、好適な経路が静脈内である場合、組成物は、組成物又は薬剤を対象の静脈に導入することによって投与される。
【0106】
本明細書で使用される場合、「感染」という用語は、宿主への病原体の最初の侵入、及び病原体が宿主の細胞又は組織の中又は上に確立された状態を指す。このような状態は、必ずしも疾患を構成又は導くわけではない。
【0107】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」という用語は、これらの反応の結果が対象にとって有益であるか有害であるかにかかわらず、外来抗原又は自己抗原のいずれかに対する対象の免疫系の任意の機能的発現を指すことを意味する。
【0108】
本明細書で使用される場合、用語「生物学的試料」とは、対象から単離された生物学的起源の任意の型の物質(例えば、DNA、RNA、脂質、炭水化物、及びタンパク質を含む)を指す。用語「生物学的試料」は、対象から単離された組織、細胞及び生物学的流体を含む。生物学的試料は、例えば限定されるものではないが、血液全体、血漿、血清、精液、唾液、涙、尿、糞便物質、汗、頬側、皮膚、脳脊髄液、骨髄、胆汁、毛髪、筋生検、臓器組織又は当業者に公知の生物学的起源の他の物質を含む。生物学的試料は、診断若しくは研究のために対象から得ることができ、又は対照として、若しくは基礎研究のために健康な対象から得ることができる。
【0109】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、異常細胞が制御されずに分裂し、他の組織に侵入することができる疾患を指す。100を超える異なるタイプのがんが存在する。ほとんどのがんは、それらが始まる器官又は細胞のタイプに対して命名され、例えば、結腸で始まるがんは結腸がんと呼ばれ、皮膚のメラノサイトで始まるがんは、黒色腫と呼ばれる。がんのタイプは、より広いカテゴリーに分類することができる。がんの主なカテゴリーには、がん種(皮膚において、又は内臓を裏打ち若しくは被覆する組織において始まるがん、及びそのサブタイプを意味し、腺がん、基底細胞がん、扁平上皮細胞がん、及び移行上皮がんを含む)、肉腫(骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、又は他の結合組織若しくは支持組織において始まるがんを意味する)、白血病(造血組織(例えば、骨髄)で始まり、多数の異常な血液細胞が産生されて血液に入る原因となるがんを意味する)、リンパ腫及び骨髄腫(免疫系の細胞で始まるがんを意味する)、並びに中枢神経系(central nervous system、CNS)がん(脳及び脊髄の組織で始まるがんを意味する)が含まれる。「骨髄異形成症候群」という用語は、骨髄が十分な健康な血液細胞(白血球、赤血球、及び血小板)を作らず、血液及び/又は骨髄中に異常な細胞が存在するタイプのがんを指す。骨髄異形成症候群は、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)になり得る。特定の実施形態では、がんは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、肛門がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、腸がん、脳腫瘍、乳がん、原発不明がん、骨への転移がん、脳への転移がん、肝臓への転移がん、肺への転移がん、がん腫、子宮頸がん、絨毛がん、慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia、CML)、結腸がん、大腸がん、子宮内膜がん、眼がん、胆嚢がん、胃がん、妊娠性絨毛腫瘍(gestational trophoblastic tumour、GTT)、ヘアリー細胞白血病、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、腎臓がん、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫皮膚がん、中皮腫、男性がん、奇胎妊娠、口腔及び中咽頭がん、骨髄腫、鼻腔・副鼻腔がん、上咽頭がん、非ホジキンリンパ腫(non hodgkin lymphoma、NHL)、食道がん、卵巣がん、膵臓がん、陰茎がん、前立腺がん、希少がん、直腸がん、唾液腺がん、二次がん、皮膚がん(非黒色腫)、軟部組織肉腫、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、原発不明がん、子宮がん、膣がん、外陰がんを含むがこれらに限定されないがんから選択される。
【0110】
本明細書で使用される場合、「用量」という用語は、一度に対象に摂取又は投与される物質(例えば、本明細書に記載されるceDNA)の量を指す。
【0111】
本明細書で使用される場合、「投薬」という用語は、治療目的(例えば、治療)を達成するための物質(例えば、本明細書に記載されるceDNA)の投与を指す。
【0112】
「第2の薬剤と組み合わせた第1の薬剤」という句における「組み合わせ」という用語は、例えば、同じ薬学的に許容される担体に溶解又は混合されていてもよい第1の薬剤及び第2の薬剤の同時投与、又は第1の薬剤の投与に続いて第2の薬剤の投与、又は第2の薬剤の投与に続いて第1の薬剤の投与を含む。したがって、本開示は、併用治療処置の方法及び併用薬学的組成物を含む。
【0113】
「併用治療的処置」という句における「併用」という用語は、第2の薬剤の存在下で薬剤を投与することを含む。併用治療処置方法は、第1、第2、第3、又は追加の薬剤が同時投与される方法を含む。併用治療処置方法はまた、第1又は追加の薬剤が第2又は追加の薬剤の存在下で投与される方法を含み、ここで、第2又は追加の薬剤は、例えば、以前に投与されていてもよい。併用治療処置方法は、異なる行為者によって段階的に実行され得る。例えば、ある行為者が対象に第1の薬剤を投与してもよく、第2の行為者が対象に第2の薬剤を投与してもよく、第1の薬剤(及び追加の薬剤)が第2の薬剤(及び追加の薬剤)の存在下で投与後である限り、投与ステップは同時に、又はほぼ同時に、又は離れた時間に実行されてもよい。行為者及び対象は、同じ実体(例えば、ヒト)であってもよい。
【0114】
本明細書で使用される「併用療法」という用語は、2つ以上の治療物質(例えば、本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片、及び別の薬物)の投与を指す。他の薬物は、本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片の投与と同時に、その前に、又はその後に投与され得る。
【0115】
本明細書で使用される場合、「核酸治療」、「治療用核酸」及び「TNA」という語句は、交換可能に使用され、疾患又は障害を治療するための治療剤の活性成分として核酸を使用する治療の任意のモダリティを指す。本明細書で使用される場合、これらの語句は、RNAベースの治療薬及びDNAベースの治療薬を指す。RNAベースの治療剤の非限定的な例としては、mRNA、アンチセンスRNA及びオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、干渉RNA(RNAi)、ダイサー基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)が挙げられる。DNAベースの治療薬の非限定的な例は、ミニサークルDNA、ミニ遺伝子、ウイルス性DNA(例えば、レンチウイルス又はAAVゲノム)若しくは非ウイルス性合成DNAベクター、閉端直鎖状の二重鎖DNA(ceDNA/CELiD)、プラスミド、バクミド、doggybone(商標)DNAベクター、最小限度に免疫学的に定義された遺伝子発現(MIDGE)ベクター、非ウイルス性ミニストリングDNAベクター(直鎖状の共有結合性閉鎖DNAベクター)、又はダンベル形DNAミニマルベクター(「ダンベルDNA」)を含む。いくつかの実施形態によれば、治療用核酸は、ceDNAである。
【0116】
本明細書で使用される場合、「治療効果」という用語は、治療の結果を指し、その結果は、望ましくかつ有益であると判断される。治療効果としては、直接的又は間接的に、疾患症状の阻止、低減、又は排除を挙げることができる。治療効果としてはまた、直接的又は間接的に、疾患症状の進行の阻止、低減、又は排除を挙げることができる。
【0117】
本明細書に記載される任意の治療剤について、治療有効量は、予備的なインビトロ研究及び/又は動物モデルから最初に決定することができる。治療有効用量はまた、ヒトのデータから決定することができる。適用される用量は、投与される化合物の相対的な生物学的利用能及び効力に基づいて調整することができる。上記の方法及び他の周知の方法に基づいて最大の効力を達成するように用量を調整することは、当業者の能力の範囲内である。参照により本明細書に組み込まれる、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th Edition,McGraw-Hill(New York)(2001)の第1章に見出され得る治療有効性を決定するための一般原則を以下に要約する。
【0118】
薬物動態学的原理は、許容できない副作用を最小限に抑えながら、望ましい程度の治療効果を得るために投与計画を変更するための基礎を提供する。薬物の血漿濃度を測定でき、治療濃度域に関連している状況では、投与量の変更に関する追加のガイダンスを入手することができる。
【0119】
本明細書で使用される場合、「ウイルス感染」は、対象の身体におけるウイルスの侵入及び増殖を指すことを意味する。
【0120】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、及び/又は「治療」という用語は、状態の進行を抑制する、実質的に阻害する、遅らせる、若しくは逆転させる、状態の臨床症状を実質的に改善する、又は状態の臨床症状の出現を実質的に防ぐ、有益な若しくは望ましい臨床結果を得ることを含む。治療することは、以下:(a)障害の重症度を低減すること、(b)治療される障害に特徴的な症状の発症を制限すること、(c)治療される障害に特徴的な症状の悪化を制限すること、(d)以前に障害を有していた患者において障害の再発を制限すること、及び(e)以前に障害に対して無症候性であった患者において症状の再発を制限すること、のうちの1つ以上を達成することを更に指す。
【0121】
薬理学的及び/又は生理学的効果等の有益な又は所望の臨床結果は、疾患、障害又は状態の素因を有する可能性があるが、疾患の症状をまだ経験していないか、若しくは呈していない対象において疾患、障害又は状態が発生するのを防ぐこと(予防的治療)、疾患、障害又は状態の症状の緩和、疾患、障害又は状態の程度の減少、疾患、障害又は状態の安定化(すなわち、悪化させない)、疾患、障害又は状態の蔓延を防ぐこと、疾患、障害又は状態の進行を遅らせる又は遅くすること、疾患、障害又は状態の改善又は軽減、及びそれらの組み合わせ、同様に治療を受けていない場合に予想される生存と比較して生存を延長することを含むが、これらに限定されない。
【0122】
「治療を必要とする」者には、既に疾患若しくは障害、感染症、又はがんを有するヒトなどの哺乳動物が含まれる。
【0123】
本明細書で使用される場合、「増加する」、「増強する」、「上昇させる」という用語(及び同様の用語)は、一般に、天然、予測若しくは平均に対して、又は対照条件に対して、直接的又は間接的に、濃度、レベル、機能、活性、又は挙動を増加させる作用を指す。
【0124】
本明細書で使用される場合、「抑制する」、「減少する」、「妨害する」、「阻害する」及び/又は「低減する」という用語(並びに同様の用語)は、一般に、天然、予想若しくは平均に対して、又は対照条件に対して、直接的又は間接的に、濃度、レベル、機能、活性、又は挙動を低減する行為を指す。
【0125】
本明細書で使用される場合、「対照」は、参照標準を指すことを意図する。いくつかの実施形態では、対照は、健康な患者から得られた陰性対照試料である。他の実施形態では、対照は、疾患、傷害、感染症又はがんと診断された患者から得られた陽性対照試料である。更に他の実施形態では、対照は、歴史的な対照又は標準参照値若しくは値の範囲(以前に試験された対照試料、又はベースライン若しくは正常値を表す試料の群など)である。試験試料と対照との差は、増加であってもよく、又は逆に減少であってもよい。差は、質的差又は量的差、例えば統計的に有意な差であってもよい。いくつかの例によれば、差は、対照と比較して、少なくとも約5%、例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約250%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、又は500%超の増加又は減少である。
【0126】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」又は「含む(comprises)」という用語は、方法又は組成物に必須であるが、必須であるか否かにかかわらず、不特定エレメントの包含に対して開かれている、その組成物、方法、及びそれぞれの構成成分に関して使用される。
【0127】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、所与の実施形態に必要なエレメントを指す。この用語は、その実施形態の基本的かつ新規又は機能的な特徴に物質的に影響を及ぼさないエレメントの存在を許容する。「含む」の使用は、限定ではなく包含を示す。
【0128】
「からなる」という用語は、実施形態の説明において列挙されてない任意のエレメントを除いて、本明細書に記載される組成物、方法、及びそれらのそれぞれの構成成分を指す。
【0129】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明らかに示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「方法」に対する言及は、本明細書に記載される、及び/又は本開示などを読むことにより当業者に明らかとなるであろうタイプの1つ以上の方法、及び/又はステップを含む。同様に、「又は」という語は、文脈が別途明らかに示されない限り、「及び」を含むことが意図される。本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料を、本開示の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料は、下記で説明される。省略形「例えば(e.g.)」は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では非限定例を示すように使用される。したがって、略語「例えば(e.g.)」は、「例えば(for example)」と同義である。
【0130】
作動例又は別途示される場合を除いて、本明細書で使用される成分又は反応条件の量を表す全ての数は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されたい。「約」という用語は、パーセンテージに関連して使用される場合、±1%を意味し得る。本開示は、以下の実施例によって更に詳細に説明されるが、本開示の範囲は、それに限定されるべきではない。
【0131】
本明細書に開示される本開示の代替エレメント又は実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各郡のメンバーは、個別に、又は群の他のメンバー又は本明細書で見られる他のエレメントとの任意の組み合わせで参照及び主張することができる。群の1つ以上のメンバーは、利便性及び/又は特許性の理由から、群に含まれるか、又は群から削除することができる。そのような任意の包含又は削除が発生した場合、本明細書では、明細書が修正されたグループを含むとみなされ、したがって添付の特許請求の範囲で使用されている全てのマーカッシュグループの記述を満たす。
【0132】
本明細書では、本開示の様々な態様の説明内で他の用語が定義されている。
【0133】
本開示の実施形態の説明は、網羅的であること、又は本開示を開示された正確な形態に限定することを意図したものではない。本開示の特定の実施形態及び実施例が、例示の目的で本明細書で説明されているが、当業者が認識するように、本開示の範囲内で様々な同等の修正が可能である。例えば、方法のステップ又は機能は、所与の順序で提示されるが、代替的な実施形態は、異なる順序で機能を実施してもよく、又は機能は実質的に同時に実施されてもよい。本明細書で提供される開示の教示は、必要に応じて他の手順又は方法に適用することができる。本明細書に記載される様々な実施形態は、更なる実施形態を提供するために組み合わせることができる。本開示の態様は、必要に応じて、上記の参照文献及び出願の組成物、機能、及び概念を用いて本開示の更なる実施形態を提供するように修正することができる。更に、生物学的機能の同等性の考慮により、種類又は量の生物学的又は化学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造にいくつかの変更を加えることができる。詳細な説明に照らして、これらの変更及び他の変更を本開示に加えることができる。そのような修正は全て、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【0134】
前述の実施形態のいずれかの特定のエレメントは、他の実施形態のエレメントと組み合わせるか、又は置き換えることができる。更に、本開示のある特定の実施形態に関連する利点が、これらの実施形態の文脈で説明されたが、他の実施形態もそのような利点を示し得、全ての実施形態が本開示の範囲内にあるために必ずしもそのような利点を示す必要はない。
【0135】
本明細書に記載される技術は、以下の実施例によって更に説明されており、決してこれらを更に限定するものと解釈されるべきではない。本開示は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬などに限定されず、そのようなものとして変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、単に特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定することを意図されない。
【0136】
II.ceDNAベクターからの抗体又はその抗原結合断片の発現
本明細書に記載される技術は、一般に、1つ以上の非ウイルス性DNAベクター、例えば、本明細書に記載されるceDNAベクターからの細胞における抗体又はその抗原結合断片の発現及び/又は産生を対象とする。特に、抗体又はその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、一対のITR(例えば、本明細書に記載される対称又は非対称)、及びITR対の間に、プロモーター又は調節配列に操作可能に連結された、本明細書に記載される抗体重鎖(HC)及び/又は抗体軽鎖(LC)、若しくはその部分をコードする核酸を含む。従来のAAVベクター、更にはレンチウイルスベクターを超える、抗体若しくはその抗原結合断片の発現に対するceDNAベクターの明確な利点は、所望のHC若しくはLC又はHC及びLCの双方をコードする核酸配列にサイズの制約がないことである。HC及びLCが同じceDNA又は異なる培養ceDNAsから発現され得ることは、本開示の特徴である。
【0137】
理解されるように、本明細書に記載されるceDNAベクター技術は、任意のレベルの複雑さに適合させることができるか、又は抗体(例えば、HC、LC、リンカー)の異なる成分の発現が独立した様式で制御され得るモジュール方式で使用することができる。例えば、本明細書中で設計されるceDNAベクター技術は、単一のceDNAベクターを使用して、抗体、その抗原結合断片のHC及びLCの両方又はその一部を発現するか、あるいは複数のceDNAベクターを使用することができ、ここで各ベクターは、同じ又は異なるプロモーターによって各々独立して制御されるHC若しくはLC又はその一部又は別の成分を発現することが企図される。以下の実施形態は、本明細書で具体的に企図され、必要に応じて当業者が適応させることができる。
【0138】
いくつかの実施形態によれば、単一のceDNAベクターを使用して、単一のプロモーターの制御下で抗体又はその抗原結合断片のLCを発現させることができる。いくつかの実施形態によれば、単一のceDNAベクターを使用して、単一のプロモーターの制御下で抗体又はその抗原結合断片のHCを発現させることができる。
【0139】
いくつかの実施形態によれば、単一のceDNAベクターを使用して、単一のプロモーター(例えば、強力なプロモーター)の制御下で、抗体又はその抗原結合断片のLC及びHCの双方を発現させることができ、任意選択的にIRES配列を使用して、各成分の適切な表現を保証する。
【0140】
また本明細書において、別の実施形態では、少なくとも2つの挿入物(例えば、HC又はLCを発現する)を含む単一のceDNAベクターが企図され、各挿入物の発現はそれ自体のプロモーターの制御下にある。プロモーターは、同じプロモーターの複数のコピー、複数の異なるプロモーター、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0141】
抗体の成分例えば、HC又はLCを異なる発現レベルで発現させ、したがって、発現される個々の成分の化学量論を制御して、以下により詳細に記載されるように、細胞における効率的な組み合わせを確実にすることが望ましいことが多いことは、本開示の知見である。
【0142】
いくつかの態様によれば、本開示は、抗体又はその抗原結合断片をコードする1つ以上の核酸配列を含む1つ以上のceDNAベクターを提供する。本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片の標的すなわち、抗原は、例えば細菌、ウイルス、真菌及び寄生虫感染因子を含む様々な病原体から選択され得る。適切な標的は、がん又はがん関連抗原などを更に含み得る。更に他の標的は、関節リウマチ(rheumatoid arthritis、RA)又は多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)などの自己免疫状態を含み得る。
【0143】
特定の実施形態では、本開示の抗体又は抗原結合性断片は、その標的抗原に特異的に結合する。
【0144】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」は、抗体又は抗原結合断片の、試料中の任意の他の分子又は成分と有意に会合又は結合しない一方で、105M-1(この会合反応に関するオン速度[Kon]のオフ速度[Koff]に対する比に等しい)以上の親和性又はKa(すなわち、1/Mを単位とする特定の結合相互作用の平衡会合定数)を有する抗原に対する、会合又は結合を指す。あるいは、親和性は、Mの単位を有する特定の結合相互作用の平衡解離定数(Kd)として定義され得る(例えば、10-5M~10-13M)。
【0145】
いくつかの実施形態によれば、「特異的に結合する」という用語は、例えば、25℃又は37℃でのリアルタイム無標識バイオレイヤー干渉アッセイ例えば、Octet(登録商標)HTXバイオセンサー、又は表面プラズモン共鳴例えば、BIACORE(商標)、又は溶液親和性ELISAによって測定した場合に、Kdとして表される、抗原に対する結合親和性が少なくとも約10-8Mである抗原結合タンパク質を指す。
【0146】
抗体は、「高親和性」抗体又は「低親和性」抗体として分類することができる。「高親和性」抗体とは、少なくとも107M-1、少なくとも108M-1、少なくとも109M-1、少なくとも1010M-1、少なくとも1011M-1、少なくとも1012M-1又は少なくとも1013M-1のKaを有する抗体を指す。「低親和性」抗体とは、107M-1まで、106M-1まで、105M-1までのKaを有する抗体を指す。あるいは、親和性は、例えば、25℃又は37℃でのリアルタイム無標識バイオレイヤー干渉アッセイ、例えば、Octet(登録商標)HTXバイオセンサーによって、又は表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)によって、又は溶液親和性ELISAによって測定されるような、M単位(例えば、10-5M~10-13M)との特定の結合相互作用の平衡解離定数(Kd)として定義され得る。
【0147】
特定の実施形態では、本開示の抗体は、病原体による感染を中和することができる。本明細書で使用される場合、「中和抗体」は、病原体が宿主において感染を開始及び/又は永続させる能力を中和すなわち、防止、阻害、低減、妨害、又は干渉することができるものである。用語「中和抗体」及び「中和する抗体(単数又は複数)」は、本明細書において互換的に使用される。本開示の実施形態のいずれかにおいて、抗体又は抗原結合断片は、感染のインビトロモデル及び/又は感染のインビボ動物モデル及び/又はヒトにおいて感染を予防及び/又は中和することができる。
【0148】
従来のAAVベクター、更にはレンチウイルスベクターよりもceDNAベクターの明確な利点は、抗体又はその抗原結合断片をコードする1つ以上の核酸配列にサイズの制約がないことである。更に、必要な化学量論に応じて、HC及びLC(又はHCVR若しくはLCVR)のモル比を変化させることができ、最適な発現のために同じ又は異なるプロモーターを使用することができる。
【0149】
いくつかの実施形態によれば、所望の抗体又はその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、第1のceDNAベクター中に抗体又はその抗原結合断片のHCをコードする核酸配列と、第2のceDNAベクター中に抗体又はその抗原結合断片のLCをコードする核酸配列とを含む。いくつかの実施形態によれば、LCをコードする核酸配列は、第1のプロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態によれば、HCをコードする核酸配列は、第2のプロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態によれば、第1及び第2のプロモーターは同じである。いくつかの実施形態によれば、第1及び第2のプロモーターは異なる。
【0150】
いくつかの実施形態によれば、抗体又はその抗原結合断片のHCをコードする核酸配列を含む第1のceDNAベクターと、抗体又はその抗原結合断片のLCをコードする核酸配列を含む第2のceDNAベクターとは、(HC:LC)のモル比が1:10~1:10で混合され、共製剤化される。いくつかの実施形態によれば、抗体又はその抗原結合断片のHCをコードする核酸配列を含む第1のceDNAベクターと、抗体又はその抗原結合断片のLCをコードする核酸配列を含む第2のceDNAベクターとは、(HC:LC)のモル比が3:1~1:1で混合され、共製剤化される。いくつかの実施形態によれば、抗体又はその抗原結合断片のHCをコードする核酸配列を含む第1のceDNAベクターと、抗体又はその抗原結合断片のLCをコードする核酸配列を含む第2のceDNAベクターとは、(HC:LC)モル比が3:1で混合され、共製剤化される。いくつかの実施形態によれば、抗体又はその抗原結合断片のHCをコードする核酸配列を含む第1のceDNAベクターと、抗体又はその抗原結合断片のLCをコードする核酸配列を含む第2のceDNAベクターとは、(HC:LC)モル比が2:1で混合され、共製剤化される。いくつかの実施形態によれば、抗体又はその抗原結合断片のHCをコードする核酸配列を含む第1のceDNAベクターと、抗体又はその抗原結合断片のLCをコードする核酸配列を含む第2のceDNAベクターとは、(HC:LC)モル比が1.5:1で混合され、共製剤化される。いくつかの実施形態によれば、抗体又はその抗原結合断片のHCをコードする核酸配列を含む第1のceDNAベクターと、抗体又はその抗原結合断片のLCをコードする核酸配列を含む第2のceDNAベクターとは、(HC:LC)モル比が3:1~2:1で混合され、共製剤化される。いくつかの実施形態によれば、抗体又はその抗原結合断片のHCをコードする核酸配列を含む第1のceDNAベクターと、抗体又はその抗原結合断片のLCをコードする核酸配列を含む第2のceDNAベクターとは、1:10、5:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:5又は1:10から選択される(HC:LC)モル比で混合され、共製剤化される。
【0151】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される抗体又はその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、抗体又はその抗原結合断片のHCをコードする核酸配列と、抗体又はその抗原結合断片のLCをコードする核酸配列とを含む。いくつかの実施形態によれば、抗体又はその抗原結合断片のHCをコードする核酸配列は、第1のオープンリーディングフレーム(ORF)を含み、抗体又はその抗原結合断片のLCをコードする核酸配列は、第2のORFを含み、第1のORF及び第2のORFは、バイシストロニックプロモーターの制御下にある。
【0152】
例えば、本明細書で開示される抗体(例えば、HC、LC、HV、LV)の既知の及び/又は公的に利用可能なタンパク質配列を取り、cDNA配列を逆操作して、そのようなタンパク質をコードすることは、十分に当業者の能力の範囲内である。次いで、意図される宿主細胞と一致するようにcDNAをコドン最適化し、本明細書に記載されるようにceDNAベクターに挿入することができる。
【0153】
III.抗体及び融合タンパク質の産生に使用するための一般的なceDNAベクター
本開示の実施形態は、抗体又はその抗原結合断片を発現することができる、閉端線形二本鎖(ceDNA)ベクターを含む方法及び組成物に基づく。本明細書に記載されるように、本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片の標的(すなわち、抗原)は、例えば細菌、ウイルス、真菌及び寄生虫感染因子を含む様々な病原体から選択され得る。適切な標的は、がん又はがん関連抗原などを更に含み得る。更に他の標的は、関節リウマチ(RA)又は多発性硬化症(MS)などの自己免疫状態を含み得る。
【0154】
いくつかの実施形態によれば、導入遺伝子は、抗体又はその抗原結合部分のHC及びLCをコードする核酸配列である。いくつかの実施形態によれば、導入遺伝子は、抗体又はその抗原結合部分のHCをコードする核酸配列である。いくつかの実施形態によれば、導入遺伝子は、抗体又はその抗原結合部分のLCをコードする核酸配列である。ceDNAベクターは、好ましくは、発現カセット等の分子の少なくとも一部分にわたって二重鎖、例えば、自己相補的である(例えば、ceDNAは、二本鎖環状分子ではない)。ceDNAベクターは、共有結合性閉端を有し、したがって、例えば、1時間以上37℃でエキソヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼI又はエキソヌクレアーゼIII)に対して耐性である。
【0155】
一般に、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、5’から3’方向に、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、目的の核酸配列(例えば、本明細書に記載される発現カセット)、及び第2のAAV ITRを含む。ITR配列は、(i)少なくとも1つのWT ITR及び少なくとも1つの修飾型AAV逆位末端反復(mod-ITR)(例えば、非対称の修飾型ITR)、(ii)mod-ITR対が互いに対して異なる三次元空間構成を有する、2つの修飾型ITR(例えば、非対称の修飾型ITR)、又は(iii)各WT-ITRが同じ三次元空間構成を有する、対称若しくは実質的に対称のWT-WT ITR対、又は(iv)各mod-ITRが同じ三次元空間構成を有する、対称若しくは実質的に対称の修飾型ITR対のうちのいずれかから選択される。
【0156】
抗体又はその抗原結合断片の産生のためのceDNAベクターを含む方法及び組成物が本明細書に包含され、限定されないが、リポソームナノ粒子送達系などの送達系を更に含み得る。使用のために包含される非限定的な例示的リポソームナノ粒子系が、本明細書に開示されている。いくつかの態様によれば、本開示は、ceDNA及びイオン化脂質を含む脂質ナノ粒子を提供する。例えば、プロセスにより得られたceDNAを用いて作製及び負荷される脂質ナノ粒子製剤は、2018年9月7日に提出された国際出願第US2018/050042号に開示されており、本明細書に組み込まれる。
【0157】
本明細書に開示されるようなceDNAベクターは、ウイルスカプシド内の限定空間によって課されるパッケージング制約を有しない。ceDNAベクターは、封入されたAAVゲノムとは対照的な原核細胞的に産生されたプラスミドDNAベクターに対する可変の真核細胞的に産生された代替物を表す。これは、制御エレメント、例えば、本明細書に開示される調節スイッチ、大きな導入遺伝子、複数の導入遺伝子などの挿入を許可する。
【0158】
図1A~
図1Eは、抗体及びその抗原結合断片の発現のための非限定的な例示的ceDNAベクターの概略図、又は対応するceDNAプラスミドの配列を示す。抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターはカプシドを含まず、第1のITR、導入遺伝子を含む発現カセット、及び第2のITRをこの順序でコードするプラスミドから得ることができる。発現カセットは、導入遺伝子の発現を可能にする及び/又は制御する1つ以上の調節配列を含み得、例えば、発現カセットは、エンハンサー/プロモーター、ORFレポーター(導入遺伝子)、転写後調節エレメント(例えば、WPRE)、並びにポリアデニル化及び終結シグナル(例えば、BGHポリA)のうちの1つ以上をこの順番で含み得る。
【0159】
発現カセットはまた、内部リボソームエントリー部位(IRES)及び/又は2Aエレメントを含み得る。シス調節エレメントとしては、プロモーター、リボスイッチ、インスレーター、mir調節エレメント、転写後調節エレメント、組織及び細胞型特異的プロモーター、並びにエンハンサーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態によれば、ITRは、導入遺伝子のプロモーターとして作用し得る。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、導入遺伝子の発現を調節するための追加の成分、例えば、抗体及びその抗原結合断片の発現を制御及び調節するための調節スイッチを含み、所望であれば、ceDNAベクターを含む細胞の制御された細胞死を可能にするキルスイッチである調節スイッチを含み得る。
【0160】
発現カセットは、4000ヌクレオチド超、5000ヌクレオチド、10,000ヌクレオチド、若しくは20,000ヌクレオチド、若しくは30,000ヌクレオチド、若しくは40,000ヌクレオチド、又は50,000ヌクレオチド、又は約4000~10,000ヌクレオチド、若しくは10,000~50,000ヌクレオチドの任意の範囲、又は50,000ヌクレオチド超を含み得る。いくつかの実施形態によれば、発現カセットは、500~50,000ヌクレオチド長の範囲の導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態によれば、発現カセットは、500~75,000ヌクレオチド長の範囲の導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態によれば、発現カセットは、500~10,000ヌクレオチド長の範囲である導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態によれば、発現カセットは、1000~10,000ヌクレオチド長の範囲である導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態によれば、発現カセットは、500~5,000ヌクレオチド長の範囲である導入遺伝子を含み得る。ceDNAベクターは、カプシド化AAVベクターのサイズ制限を有さず、したがって、大サイズの発現カセットの送達が効率的な導入遺伝子の発現をもたらすようにすることができる。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、原核生物特異的メチル化を欠いている。
【0161】
発現カセット、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの発現構築物で提供される配列は、標的宿主細胞に対してコドン最適化され得る。本明細書で使用される場合、「最適化されたコドン」又は「コドン最適化」という用語は、目的の脊椎動物、例えばマウス又はヒトの細胞中の発現強化のために、少なくとも1つ、2つ以上、又は相当数の未変性配列(例えば、原核細胞配列)のコドンを、その脊椎動物の遺伝子中でより頻繁に又は最も頻繁に使用されるコドンと置き換えることによって、核酸配列を修飾するプロセスを指す。様々な種は、特定のアミノ酸のある特定のコドンに対して特定の偏向を呈する。典型的に、コドン最適化は、元の翻訳されたタンパク質のアミノ酸配列を変更しない。最適化されたコドンは、例えば、AptagenのGENE FORGE(登録商標)コドン最適化及びカスタム遺伝子合成プラットフォーム(Aptagen,Inc.,2190 Fox Mill Rd.Suite 300,Herndon,Va.20171)又は別の公開データベースを使用して決定することができる。いくつかの実施形態によれば、核酸はヒト発現のために最適化される。
【0162】
本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためにceDNAベクターによって発現される導入遺伝子は、抗体及びその抗原結合断片をコードする。プラスミドベース発現ベクターとは異なるceDNAベクターの多くの構造特徴が存在する。ceDNAベクターは、以下の特徴:元の(すなわち、挿入されていない)細菌DNAの欠失、原核細胞複製起源の欠失、自蔵である(すなわち、Rep結合及び末端分離部位(Rep binding site、RBS及びTRS)を含む2つのITR以外のいかなる配列も、ITR間の外因性配列も必要としない)、ヘアピンを形成するITR配列の存在、並びに細菌型DNAメチル化、又は実際に哺乳動物宿主によって異常であるとみなされる任意の他のメチル化の非存在のうちの1つ以上を有し得る。一般に、本ベクターは、いかなる原核細胞DNAも含有しないことが好ましいが、いくつかの原核細胞DNAが、外因性配列として、非限定的な例としてプロモーター又はエンハンサー領域に挿入されてもよいことが企図される。ceDNAベクターをプラスミド発現ベクターと区別する別の重要な特徴は、ceDNAベクターが、閉端を有する一本鎖直鎖状DNAであるが、プラスミドは、常に二本鎖DNAである。
【0163】
本明細書に提供される方法によって産生される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、好ましくは、制限酵素消化アッセイによって決定される場合、非連続的な構造ではなく直鎖状で連続的な構造を有する(
図4D)。直鎖状で連続的な構造は、細胞エンドヌクレアーゼによる攻撃に対してより安定であると同時に、組換えられて変異誘発を引き起こす可能性が低いと考えられる。したがって、直鎖状で連続的な構造のceDNAベクターは、好ましい実施形態である。連続的な直鎖状の一本鎖分子内二重鎖ceDNAベクターは、AAVカプシドタンパク質をコードする配列なしに、終端に共有結合している可能性がある。これらのceDNAベクターは、細菌起源の環状二重鎖核酸分子であるプラスミド(本明細書に記載されるceDNAプラスミドを含む)とは構造的に異なる。プラスミドの相補鎖は、変性に続いて分離されて2つの核酸分子を産生することができるが、反対に、ceDNAベクターは、相補鎖を有するが、単一DNA分子であり、したがって変性された場合でも単一分子のままである。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載されるceDNAベクターは、プラスミドとは異なり、原核細胞タイプのDNA塩基メチル化なしに産生され得る。したがって、ceDNAベクター及びceDNA-プラスミドは、構造(具体的には、直鎖状対環状)及びこれらの異なる対象物(下記を参照されたい)を産生及び精製するために使用される方法の両方に関して、またceDNA-プラスミドの場合は原核細胞タイプ及びceDNAベクターの場合は真核細胞タイプのものである、それらのDNAメチル化に関して異なる。
【0164】
本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためにceDNAベクターを使用することには、プラスミドベースの発現ベクターよりもいくつかの利点があり、そのような利点としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:1)プラスミドは、細菌DNA配列を含有し、原核細胞特異的メチル化(例えば、6-メチルアデノシン及び5-メチルシトシンのメチル化)を受けるが、カプシド不含AAVベクター配列は、真核生物起源であり、原核細胞特異的メチル化を受けない、結果として、カプシドを含まないAAVベクターは、プラスミドと比較して炎症応答及び免疫応答を誘導する可能性が低い、2)プラスミドは産生プロセス中に耐性遺伝子の存在を必要とするが、ceDNAベクターは必要としない、3)環状プラスミドは、細胞への導入時に核に送達されず、細胞ヌクレアーゼによる分解を回避するために過負荷を必要とするが、ceDNAベクターは、ウイルスシスエレメント(すなわち、ITR)を含有し、これは、ヌクレアーゼに対して耐性を付与し、核に標的化及び送達するように設計され得る。ITR機能に不可欠な最小規定エレメントは、Rep結合部位(RBS;AAV2の場合、5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’‘(配列番号__))及び末端分離部位(TRS;5’-AGTTGG-3’(AAV2の場合)+ヘアピン形成を可能にする可変パリンドローム配列;及び4)である。ceDNAベクターは、Toll様ファミリーの受容体のメンバーに結合し、T細胞媒介性免疫応答を誘発すると報告されている原核生物由来プラスミドにおいてしばしば見られるCpGジヌクレオチドの過剰提示を有しない。対照的に、本明細書に開示されるカプシド不含AAVベクターでの形質導入は、様々な送達試薬を使用し、従来のAAVビリオンで形質導入することが困難である細胞及び組織型を効率的に標的化し得る。
【0165】
A.逆位末端反復(ITR)
本明細書に開示されているように、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、2つの逆位末端反復(ITR)配列の間に位置付けられた導入遺伝子又は核酸配列を含有し、これらの用語が本明細書に定義されるように、ITR配列は、非対称ITR対又は対称若しくは実質的に対称のITR対であり得る。本明細書に開示されるceDNAベクターは、(i)少なくとも1つのWT ITR及び少なくとも1つの修飾型AAV逆位末端反復(mod-ITR)(例えば、非対称の修飾型ITR)、(ii)mod-ITR対が互いに対して異なる三次元空間構成を有する、2つの修飾型ITR(例えば、非対称の修飾型ITR)、又は(iii)各WT-ITRが同じ三次元空間構成を有する、対称若しくは実質的に対称のWT-WT ITR対、又は(iv)各mod-ITRが同じ三次元空間構成を有する、対称若しくは実質的に対称の修飾型ITR対のうちのいずれかから選択されるITR配列を含み得、本開示の方法は、限定されないが、リポソームナノ粒子送達系などの送達系を更に含み得る。
【0166】
いくつかの実施形態によれば、ITR配列は、2つの亜科:脊椎動物に感染するParvovirinae、及び昆虫に感染するDensovirinaeを含む、Parvoviridae科のウイルスに由来し得る。Parvovirinae(パルボウイルスと称される)は、Dependovirus属を含み、そのメンバーは、ほとんどの条件下で、増殖性感染のためにアデノウイルス又はヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルスとの共感染を必要とする。ディペンドウイルス族は、通常はヒト(例えば、血清型2、3A、3B、5、及び6)又は霊長類(例えば、血清型1及び4)に感染するアデノ随伴ウイルス(AAV)、並びに他の温血動物に感染する関連ウイルス(例えば、ウシ、イヌ、ウマ、及びヒツジアデノ随伴ウイルス)を含む。パルボウイルス及びParvoviridae科の他のメンバーは、Kenneth I.Berns,「Parvoviridae:The Viruses and Their Replication」,Chapter 69 in FIELDS VIROLOGY(3d Ed.1996)に一般に記載されている。
【0167】
ITRは、明細書において例証されており、本明細書における例は、AAV2 WT-ITRであるが、当業者であれば、上述のように、任意の既知のパルボウイルス、例えば、ディペンドウイルス、例えばAAV(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAV-DJ、及びAAV-DJ8ゲノムからのITRを使用できることを認識する。例えば、NCBI:NC002077、NC001401、NC001729、NC001829、NC006152、NC006260、NC006261)、キメラITR、又は任意の合成AAV由来のITR。いくつかの実施形態によれば、AAVは、温血動物、例えば、鳥類(AAAV)、ウシ(BAAV)、イヌ、ウマ、及びヒツジアデノ随伴ウイルスに感染し得る。いくつかの実施形態によれば、ITRは、B19パルボウイルス(GenBank受託番号NC000883)、マウス由来微小ウイルス(Minute Virus from Mouse、MVM)(GenBank受託番号NC001510)、ガチョウパルボウイルス(GenBank受託番号NC_001701)、ヘビパルボウイルス1(GenBank受託番号NC006148)由来である。いくつかの実施形態によれば、本明細書で論じられるように、5’WT-ITRは、1つの血清型に由来し、3’WT-ITRは、異なる血清型に由来し得る。
【0168】
当業者であれば、ITR配列が、二本鎖ホリデージャンクションの一般構造を有し、典型的には、T形又はY形ヘアピン構造であり(例えば、
図2A及び
図3Aを参照されたい)、各WT-ITRが、より大きなパリンドロームアーム(A-A’)に埋め込まれた2つのパリンドロームアーム又はループ(B-B’及びC-C’)、並びに一本鎖D配列によって形成される(これらのパリンドローム配列の順序は、ITRのフリップ又はフロップ配向を定義する)ことを知っている。例えば、Grimm et al.,J.Virology,2006;80(1);426-439、Yan et al.,J.Virology,2005;364-379、Duan et al.,Virology 1999;261;8-14に記載される、異なるAAV血清型(AAV1~AAV6)由来のITRの構造解析及び配列比較を参照されたい。当業者は、本明細書に提供される例示的なAAV2 ITR配列に基づいて、ceDNAベクター又はceDNA-プラスミドで使用するための任意のAAV血清型からWT-ITR配列を容易に決定することができる。例えば、異なるAAV血清型(AAV1~AAV6、並びにトリAAV(AAAV)及びウシAAV(BAAV))由来のITRの配列比較を参照されたく、Grimm et al.,J.Virology,2006;80(1);426-439、他の血清型由来の左ITRに対するAAV2の左ITRの%同一性:AAV-1(84%)、AAV-3(86%)、AAV-4(79%)、AAV-5(58%)、AAV-6(左ITR)(100%)、及びAAV-6(右ITR)(82%)を示す。
【0169】
(i)対称ITR対
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体又はその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、5’から3’方向に、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、目的の核酸配列(例えば、本明細書に記載される発現カセット)、及び第2のAAV ITRを含み、第1のITR(5’ITR)及び第2のITR(3’ITR)は、互いに対して対称又は実質的に対称であり、すなわち、ceDNAベクターは、対称の三次元空間構成を有するITR配列を含み得、それによりそれらの構造は、幾何学的空間で同じ形状であるか、又は三次元空間で同じA、C-C’、B-B’ループを有する。そのような実施形態では、対称のITR対、又は実質的に対称のITR対は、野生型ITRではない修飾型ITR(例えば、mod-ITR)であり得る。mod-ITR対は、野生型ITRからの1つ以上の修飾を有し、互いに逆相補(逆位)である同じ配列を有し得る。代替的な実施形態では、修飾型ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、修飾型ITR対は、異なる配列を有し得るが、対応する又は同じ対称の三次元形状を有し得る。
【0170】
(a)野生型ITR
いくつかの実施形態によれば、対称のITR、又は実質的に対称のITRは、本明細書に記載されるように野生型(WT-ITR)である。すなわち、両方のITRが野生型配列を有するが、必ずしも同じAAV血清型のWT-ITRである必要はない。すなわち、いくつかの実施形態によれば、一方のWT-ITRは、1つのAAV血清型に由来し得、他方のWT-ITRは、異なるAAV血清型に由来し得る。そのような実施形態では、WT-ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、それらは、対称的な三次元空間構成を維持しながら、1つ以上の保存的ヌクレオチド修飾を有することができる。
【0171】
したがって、本明細書で開示されるように、ceDNAベクターは、2つの隣接する野生型逆位末端反復(WT-ITR)配列の間に位置付けられた導入遺伝子又は核酸配列を含有し、互いに逆相補(逆位)であるか、又は代替的に互いに実質的に対称である。すなわち、WT-ITR対は、対称の三次元空間構成を有する。いくつかの実施形態によれば、野生型ITR配列(例えば、AAV WT-ITR)は、機能的Rep結合部位(RBS;例えば、AAV2の場合、5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’、配列番号__)及び機能的末端分離部位(TRS;例えば、5’-AGTT-3’)を含む。
【0172】
ある態様によれば、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、2つのWT逆位末端反復配列(WT inverted terminal repeat sequence、WT-ITR)(例えば、AAV WT-ITR)の間に作動可能に位置付けられた核酸をコードするベクターポリヌクレオチドから取得可能である。すなわち、両方のITRが野生型配列を有するが、必ずしも同じAAV血清型のWT-ITRである必要はない。すなわち、いくつかの実施形態によれば、一方のWT-ITRは、1つのAAV血清型に由来し得、他方のWT-ITRは、異なるAAV血清型に由来し得る。そのような実施形態では、WT-ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、それらは、対称の三次元空間構成を維持しながら、1つ以上の保存的ヌクレオチド修飾を有することができる。いくつかの実施形態によれば、5’WT-ITRは、1つのAAV血清型に由来し、3’WT-ITRは、同じ又は異なるAAV血清型に由来する。いくつかの実施形態によれば、5’WT-ITR及び3’WT-ITRは、互いの鏡像であり、すなわち、それらは対称である。いくつかの実施形態によれば、5’WT-ITR及び3’WT-ITRは、同じAAV血清型に由来する。
【0173】
WT ITRは周知である。ある実施形態によれば、2つのITRは、同じAAV2血清型に由来する。ある特定の実施形態では、他の血清型からのWTを使用することができる。相同であるいくつかの血清型、例えば、AAV2、AAV4、AAV6、AAV8がある。いくつかの実施形態によれば、密接に相同なITR(例えば、類似のループ構造を有するITR)を使用することができる。別の実施形態では、より多様なAAV WT ITR、例えばAAV2及びAAV5を使用することができ、更に別の実施形態では、実質的にWTであるITRを使用することができる、すなわち、それはWTの基本ループ構造を有するが、特性を変更しないか又は影響しないいくつかの保存的ヌクレオチド変化を有する。同じウイルス血清型に由来するWT-ITRを使用する場合、1つ以上の調節配列を更に使用することができる。特定の実施形態によれば、調節配列は、ceDNAの活性、例えば、コードされた抗体及びその抗原結合断片の発現の調整を可能にする調節スイッチである。
【0174】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される技術の一態様は、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターに関し、ceDNAベクターは、2つの野生型逆位末端反復配列(WT-ITR)の間に作動可能に位置付けられた、例えば、HC及び/又はLCをコードする少なくとも1つの核酸配列を含み、WT-ITRは、同じ血清型、異なる血清型に由来し得るか、又は互いに対して実質的に対称であり得る(すなわち、それらの構造が幾何学的空間で同じ形状であるように対称の三次元空間構成を有するか、又は三次元空間で同じA、C-C’、及びB-B’ループを有する)。いくつかの実施形態によれば、対称WT-ITRは、機能的末端分離部位及びRep結合部位を含む。いくつかの実施形態によれば、核酸配列は、導入遺伝子をコードし、ベクターは、ウイルスカプシドにはない。
【0175】
いくつかの実施形態によれば、WT-ITRは同じであるが、互いの逆相補体である。例えば、5’ITRの配列AACGは、対応する部位の3’ITRのCGTT(すなわち、逆相補体)であり得る。一部の実施例によれば、5’WT-ITRセンス鎖は、ATCGATCGの配列を含み、対応する3’WT-ITRセンス鎖は、CGATCGAT(すなわち、ATCGATCGの逆相補体)を含む。いくつかの実施形態によれば、WT-ITR ceDNAは、末端分離部位及び複製タンパク質結合部位(replication protein binding site、RPS)(複製タンパク質結合部位(replicative protein binding site)とも称される)、例えば、Rep結合部位を更に含む。
【0176】
WT-ITRを含む、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターで使用するための例示的なWT-ITR配列は、WT-ITRの対(5’WT-ITR及び3’WT-ITR)を示す本明細書の表2に示されている。
【0177】
例示的な実施例として、本開示は、調節スイッチの有無にかかわらず、導入遺伝子(例えば、核酸配列)に作動可能に連結されたプロモーターを含む、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターを提供し、ceDNAはカプシドタンパク質を欠き、(a)WT-ITRをコードするceDNA-プラスミド(例えば、
図1F~
図1Gを参照されたい)から産生され、各WT-ITRは、そのヘアピン二次構成で同じ数の分子内二重化塩基対を有し(好ましくはこれらの参照配列と比較して、この構成のいかなるAAA又はTTT末端ループの欠失も除外する)、及び(b)実施例1の未変性ゲル及び変性条件下でのアガロースゲル電気泳動によるceDNAの特定のためのアッセイを使用してceDNAとして特定される。
【0178】
いくつかの実施形態によれば、隣接するWT-ITRは、互いに実質的に対称である。この実施形態では、WT-ITRが同一の逆相補体ではないように、5’WT-ITRは、AAVの1つの血清型に由来し、3’WT-ITRは、AAVの異なる血清型に由来し得る。例えば、5’WT-ITRは、AAV2に由来し得、3’WT-ITRは、異なる血清型(例えば、AAV1、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12)に由来し得る。いくつかの実施形態では、WT-ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、ヘビパルボウイルス(例えば、ロイヤルパイソンパルボウイルス)、ウシパルボウイルス、ヤギパルボウイルス、トリパルボウイルス、イヌパルボウイルス、ウマパルボウイルス、エビパルボウイルス、ブタパルボウイルス、又は昆虫AAVのうちのいずれかから選択される2つの異なるパルボウイルスから選択され得る。いくつかの実施形態によれば、WT ITRのそのような組み合わせは、AAV2及びAAV6からのWT-ITRの組み合わせである。いくつかの実施形態によれば、実質的に対称のWT-ITRは、一方が他方のITRに対して反転されたときに、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%...97%...98%...99%...99.5%、及びその間の全てのポイントであり、同じ対称の三次元空間構成を有する。いくつかの実施形態によれば、WT-ITR対は、それらが対称の三次元空間構成を有する(例えば、A、C-C’.B-B’、及びDアームの同じ三次元構成を有する)ため、実質的に対称である。特定の実施形態によれば、実質的に対称のWT-ITR対は、他方に対して反転され、互いに対して、少なくとも95%同一、少なくとも96%...97%...98%...99%...99.5%、及びその間の全てのポイントであり、一方のWT-ITRは、5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’(配列番号60)のRep結合部位(RBS)及び末端分離部位(trs)を保持する。いくつかの実施形態では、実質的に対称のWT-ITR対は、互いに対して反転され、少なくとも95%同一、少なくとも96%...97%...98%...99%...99.5%、及びその間の全てのポイントであり、一方のWT-ITRは、ヘアピン二次構造形成を可能にする可変パリンドローム配列に加えて、5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’(配列番号__)のRep結合部位(RBS)及び末端分離部位(trs)を保持する。相同性は、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)、デフォルト設定のBLASTNなど、当該技術分野で周知の標準的な手段によって決定することができる。
【0179】
いくつかの実施形態では、ITRの構造エレメントは、ITRと大きなRepタンパク質(例えば、Rep78又はRep68)との機能的相互作用に関与する任意の構造エレメントであり得る。ある特定の実施形態では、構造エレメントは、ITRと大きなRepタンパク質との相互作用に対する選択性を提供する。すなわち、少なくとも部分的に、どのRepタンパク質がITRと機能的に相互作用するかを判定する。他の実施形態では、構造エレメントは、Repタンパク質がITRに結合されたとき、大きなRepタンパク質と物理的に相互作用する。各構造エレメントは、例えば、ITRの二次構造、ITRの核酸配列、2つ以上のエレメント間の空間、又は上記のうちのいずれかの組み合わせであり得る。一実施形態では、構造エレメントは、A及びA’アーム、B及びB’アーム、C及びC’アーム、Dアーム、Rep結合部位(RBE)及びRBE’(すなわち、相補的RBE配列)、並びに末端分離部位(trs)からなる群から選択される。
【0180】
単なる例として、表2は、WT-ITRの例示的な組み合わせを示す。
【0181】
表2:同じ血清型若しくは異なる血清型、又は異なるパルボウイルスからのWT-ITRの例示的な組み合わせ。示されている順序は、ITR位置を示すものではなく、例えば、「AAV1、AAV2」は、ceDNAが5’位置にWT-AAV1 ITR及び3’位置にWT-AAV2 ITR、又はその逆、5’位置にWT-AAV2 ITR及び3’位置にWT-AAV1 ITRを含み得ることを明示する。略称:AAV血清型1(AAV1)、AAV血清型2(AAV2)、AAV血清型3(AAV3)、AAV血清型4(AAV4)、AAV血清型5(AAV5)、AAV血清型6(AAV6)、AAV血清型7(AAV7)、AAV血清型8(AAV8)、AAV血清型9(AAV9)、AAV血清型10(AAV10)、AAV血清型11(AAV11)、又はAAV血清型12(AAV12)、AAVrh8、AAVrh10、AAV-DJ、及びAAV-DJ8ゲノム(例えば、NCBI:NC002077、NC001401、NC001729、NC001829、NC006152、NC006260、NC 006261)、温血動物由来のITR(トリAAV(AAAV)、ウシAAV(BAAV)、イヌ、ウマ、及びヒツジAAV)、B19パルボウイルス由来のITR(GenBank受託番号NC000883)、マウス由来微小ウイルス(MVM)(GenBank受託番号NC001510)、ガチョウ:ガチョウパルボウイルス(GenBank受託番号NC001701)、ヘビ:ヘビパルボウイルス1(GenBank受託番号NC006148)。
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
単なる例として、表3は、いくつかの異なるAAV血清型からの例示的なWT-ITRの配列を示す。
【0186】
【0187】
いくつかの実施形態によれば、WT-ITR配列の核酸配列は、(例えば、1、2、3、4若しくは5個以上のヌクレオチド又はその中の任意の範囲を修飾することにより)修飾され得、それにより修飾は、相補的ヌクレオチドの置換、例えば、Cの場合はG、及びその逆、Aの場合はT、及びその逆である。
【0188】
本開示の特定の実施形態では、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、配列番号1、2、5~14のうちのいずれかから選択される核酸配列からなるWT-ITRを有さない。本開示の代替実施形態では、ceDNAベクターが、配列番号1、2、5~14のうちのいずれかから選択される核酸配列を含むWT-ITRを有する場合、隣接するITRもWTであり、ceDNAベクターは、例えば、本明細書及び国際出願第US18/49996号に開示されているように、調節スイッチを含む(例えば、国際出願第US18/49996号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の表11を参照されたい)。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、本明細書に開示されるような調節スイッチ、及び配列番号1、2、5~14からなる群のうちのいずれかから選択される核酸配列を有する選択されたWT-ITRを含む。
【0189】
本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、作動可能なRBE、trs、及びRBE’部分を保持するWT-ITR構造を含み得る。例示の目的で野生型ITRを使用する
図2A及び
図2Bは、ceDNAベクターの野生型ITR構造部分内のtrs部位の作動のための1つの可能な機序を示す。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、Rep結合部位(RBS;AAV2の場合5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’(配列番号__))及び末端分離部位(TRS;5’-AGTT)を含む、1つ以上の機能的WT-ITRポリヌクレオチド配列を含有する。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのWT-ITRは、機能的である。抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターが互いに実質的に対称である2つのWT-ITRを含む代替的な実施形態では、少なくとも1つのWT-ITRが機能的であり、少なくとも1つのWT-ITRが非機能的である。
【0190】
B.非対称ITR対又は対称ITR対を含むceDNAベクターの一般的な修飾型ITR(mod-ITR)
本明細書で論じられるように、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、対称ITR対又は非対称ITR対を含み得る。どちらの場合も、一方又は両方のITRは修飾型ITRであり得、その違いは、第1の場合(すなわち、対称mod-ITR)では、mod-ITRは、同じ三次元空間構成を有する(すなわち、同じA-A’、C-C’、及びB-B’アーム構成を有する)が、第2の場合(すなわち、非対称mod-ITR)では、mod-ITRは、異なる三次元空間構成を有する(すなわち、A-A’、C-C’、及びB-B’アームの異なる構成を有する)ことである。
【0191】
いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、野生型ITR配列(例えば、AAV ITR)と比較して、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されるITRである。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクター中のITRのうちの少なくとも一方は、機能的Rep結合部位(RBS;例えば、AAV2の場合、5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’)及び機能的末端分離部位(TRS;例えば、5’-AGTT-3’)を含むいくつかの実施形態によれば、ITRのうちの少なくとも一方は、非機能的ITRである。いくつかの実施形態によれば、異なる又は修飾型ITRは各々、異なる血清型からの野生型ITRではない。
【0192】
ITRの特定の変更及び変異が本明細書において詳細に説明されているが、ITRの文脈では、「変更型」又は「変異型」又は「修飾型」とは、ヌクレオチドが野生型、参照、又は元のITR配列に対して挿入、欠失、及び/又は置換されたことを示す。変更型又は変異型ITRは、操作されたITRであり得る。本明細書で使用される場合、「操作された」とは、人間の手によって操作された態様を指す。例えば、ポリペプチドは、ポリペプチドの少なくとも1つの態様、例えば、その配列が、人間の手によって操作され、それが天然に存在するときの態様とは異なるとき、「操作された」とみなされる。
【0193】
いくつかの実施形態によれば、mod-ITRは、合成であり得る。いくつかの実施形態によれば、合成ITRは、2つ以上のAAV血清型からのITR配列に基づいている。別の実施形態では、合成ITRは、AAVベース配列を含まない。更に別の実施形態では、合成ITRは、上記のITR構造を保存するが、わずかなAAV源配列を有するか、又は全く有しない。いくつかの態様によれば、合成ITRは、野生型Rep又は特定血清型のRepと選好的に相互作用し得るか、又はいくつかの場合によれば、野生型Repによって認識されず、変異型Repによってのみ認識される。
【0194】
当業者であれば、既知の手段によって他の血清型における対応する配列を判定することができる。例えば、A、A’、B、B’、C、C’、又はD領域中に変化が存在するかどうかを判定し、別の血清型における対応する領域を判定する。BLAST(登録商標)(Basic Local Alignment Search Tool)又は他の相同性アラインメントプログラムをデフォルト状態で使用して、対応する配列を判定することができる。本開示は、異なるAAV血清型の組み合わせからmod-ITRを含む集団及び複数のceDNAベクターを更に提供する。すなわち、1つのmod-ITRは、1つのAAV血清型に由来し得、他のmod-ITRは、異なる血清型に由来し得る。理論に束縛されるものではないが、一部の実施形態によれば、1つのITRは、AAV2 ITR配列に由来し得るか、又はそれに基づき得、ceDNAベクターの他のITRは、AAV血清型1(AAV1)、AAV血清型4(AAV4)、AAV血清型5(AAV5)、AAV血清型6(AAV6)、AAV血清型7(AAV7)、AAV血清型8(AAV8)、AAV血清型9(AAV9)、AAV血清型10(AAV10)、AAV血清型11(AAV11)、又はAAV血清型12(AAV12)の任意の1つ以上のITR配列に由来し得るか、又はそれに基づき得る。
【0195】
任意のパルボウイルスITRを、ITRとして、又は塩基ITRとして修飾に使用することができる。好ましくは、パルボウイルスは、ディペンドウイルスである。より好ましくは、AAVである。選択される血清型は、その血清型の組織向性に基づき得る。AAV2は、広い組織向性を有し、AAV1は、ニューロン及び骨格筋を選好的に標的化し、AAV5は、ニューロン、網膜色素上皮、及び光受容体を標的化する。AAV6は、骨格筋及び肺を選好的に標的化する。AAV8は、肝臓、骨格筋、心臓、及び膵臓組織を選好的に標的化する。AAV9は、肝臓、骨格、及び肺組織を選好的に標的化する。いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、AAV2 ITRに基づいている。
【0196】
より具体的には、構造エレメントが特定の大きなRepタンパク質と機能的に相互作用する能力は、構造エレメントを修飾することによって変更され得る。例えば、構造エレメントの核酸配列は、ITRの野生型配列と比較して修飾され得る。いくつかの実施形態によれば、ITRの構造エレメント(例えば、Aアーム、A’アーム、Bアーム、B’アーム、Cアーム、C’アーム、Dアーム、RBE、RBE’、及びtrs)を除去し、異なるパルボウイルスからの野生型構造エレメントと置き換えることができる。例えば、置換構造は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、ヘビパルボウイルス(例えば、ロイヤルパイソンパルボウイルス)、ウシパルボウイルス、ヤギパルボウイルス、トリパルボウイルス、イヌパルボウイルス、ウマパルボウイルス、エビパルボウイルス、ブタパルボウイルス、又は昆虫AAVからのものであり得る。例えば、ITRは、AAV2 ITRであり得、A若しくはA’アーム又はRBEは、AAV5からの構造エレメントと置き換えることができる。別の実施例では、ITRは、AAV5 ITRであり得、C又はC’アーム、RBE、及びtrsは、AAV2からの構造エレメントと置き換えることができる。別の実施例では、AAV ITRは、AAV5 ITRであり得、B及びB’アームは、AAV2 ITR B及びB’アームで置き換えられる。
【0197】
単なる例として、表4は、修飾型ITRの領域中の少なくとも1つのヌクレオチドの例示的な修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を示し、Xは、対応する野生型ITRに対する、そのセクションにおける少なくとも1つの核酸の修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を示す。いくつかの実施形態では、C及び/又はC’及び/又はB及び/又はB’の領域のうちのいずれかにおける少なくとも1つのヌクレオチドの任意の修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)は、少なくとも1つの末端ループに3つの連続Tヌクレオチド(すなわち、TTT)を保持する。例えば、修飾が、単一アームITR(例えば、単一C-C’アーム、若しくは単一B-B’アーム)、又は修飾型C-B’アーム若しくはC’-Bアーム、又は少なくとも1つの切断されたアーム(例えば、切断されたC-C’アーム及び/若しくは切断されたB-B’アーム)を有する2つのアームITRのうちのいずれかをもたらす場合、少なくとも単一アーム、又は2つのアームITRのアーム(1つのアームは切断され得る)のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの末端ループに3つの連続Tヌクレオチド(すなわち、TTT)を保持する。いくつかの実施形態によれば、切断されたC-C’アーム及び/又は切断されたB-B’アームは、末端ループに3つの連続Tヌクレオチド(すなわち、TTT)を有する。
【0198】
表4:ITRの異なるB-B’及びC-C’領域又はアームに対する少なくとも1つのヌクレオチドの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)の例示的な組み合わせ(Xは、ヌクレオチド修飾、例えば、領域中の少なくとも1つのヌクレオチドの付加、欠失、又は置換を示す)。
【0199】
【0200】
いくつかの実施形態では、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターで使用するためのmod-ITRは、本明細書に開示される非対称ITR対又は対称mod-ITR対を含み、表4に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またA’とCとの間、CとC’との間、C’とBとの間、BとB’との間、及びB’とAとの間から選択される領域のうちのいずれか1つ以上における少なくとも1つのヌクレオチドの修飾を含み得る。いくつかの実施形態によれば、C若しくはC’又はB若しくはB’領域中の少なくとも1つのヌクレオチドの任意の修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)は、依然としてステム-ループの末端ループを保存する。いくつかの実施形態によれば、CとC’との間及び/又はBとB’との間の少なくとも1つのヌクレオチドの任意の修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)は、少なくとも1つの末端ループに3つの連続Tヌクレオチド(すなわち、TTT)を保持する。代替的な実施形態では、CとC’との間及び/又はBとB’との間の少なくとも1つのヌクレオチドの任意の修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)は、少なくとも1つの末端ループに3つの連続Aヌクレオチド(すなわち、AAA)を保持する。いくつかの実施形態によれば、本明細書における使用のための修飾型ITRは、表4に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またA’、A、及び/又はDから選択される領域のうちのいずれか1つ以上における少なくとも1つのヌクレオチドの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を含み得る。例えば、本明細書における使用のための修飾型ITRは、表4に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またA領域における少なくとも1つの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)も含み得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書における使用のための修飾型ITRは、表4に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またA’領域における少なくとも1つのヌクレオチドの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を含み得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書における使用のための修飾型ITRは、表4に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またA及び/又はA’領域における少なくとも1つのヌクレオチドの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を含み得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書における使用のための修飾型ITRは、表4に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またD領域における少なくとも1つのヌクレオチドの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を含み得る。
【0201】
いくつかの実施形態によれば、構造エレメントのヌクレオチド配列を修飾して(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20以上のヌクレオチド、又はその中の任意の範囲を修飾することによって)、修飾型構造エレメントを産生することができる。いくつかの実施形態によれば、ITRに対する特定の修飾が本明細書に例示されているか(例えば、配列番号3、4、15~47、101~116、若しくは165~187)、又は2018年12月6日に出願された国際出願第US2018/064242号の
図7A~
図7Bに示されている(例えば、国際出願第US2018/064242号の配列番号97~98、101~103、105~108、111~112、117~134、545~54)。いくつかの実施形態によれば、ITRは、(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20以上のヌクレオチド、又はその中の任意の範囲を修飾することによって)修飾され得る。他の実施形態では、ITRは、配列番号3、4、15~47、101~116、若しくは165~187の修飾型ITRのうちの1つ、又は配列番号3、4、15~47、101~116、若しくは165~187、又は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際出願第US18/49996号の表2~9(すなわち、配列番号110~112、115~190、200~468)に示されている、A-A’アーム及びC-C’及びB-B’アームのRBE含有セクションと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又はそれ以上の配列同一性を有し得る。
【0202】
いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、例えば、特定アームの全部、例えば、A-A’アームの全部若しくは一部、又はB-B’アームの全部若しくは一部、又はC-C’アームの全部若しくは一部の除去又は欠失、又は代替的にステム(例えば、単一アーム)をキャップする最終ループが依然として存在する限り、ループのステムを形成する1、2、3、4、5、6、7、8、9、又はそれ以上の塩基対の除去(例えば、2018年12月6日に出願された国際出願第US2018/064242号の
図7AのITR-21を参照されたい)を含み得る。いくつかの実施形態によれは、修飾型ITRは、B-B’アームからの1、2、3、4、5、6、7、8、9、又はそれ以上の塩基対の除去を含み得る。いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、C-C’アームからの1、2、3、4、5、6、7、8、9、又はそれ以上の塩基対の除去を含み得る(例えば、2018年12月6日に出願された国際出願第US2018/064242号の
図3BのITR-1又は
図7AのITR-45を参照されたい)。いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、C-C’アームからの1、2、3、4、5、6、7、8、9、又はそれ以上の塩基対の除去、及びB-B’アームからの1、2、3、4、5、6、7、8、9、又はそれ以上の塩基対の除去を含み得る。塩基対の除去の任意の組み合わせが想起され、例えば、C-C’アームにおける6つの塩基対、及びB-B’アームにおける2つの塩基対が除去され得る。例示的な実施例として、
図3Bは、修飾型ITRが、少なくとも1つのアーム(例えば、C-C’)が切断される2つのアームを含むように、C部分及びC’部分の各々から欠失された少なくとも7つの塩基対、C領域とC’領域との間のループ中のヌクレオチドの置換、並びにB領域及びB’領域の各々からの少なくとも1つの塩基対の欠失を有する例示的な修飾型ITRを示す。いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRはまた、B領域及びB’領域の各々からの少なくとも1つの塩基対の欠失を含み、それによりB-B’アームもWT ITRに対して切断される。
【0203】
いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、全長野生型ITR配列に対して1~50(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50)ヌクレオチド欠失を有し得る。いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、全長WT ITR配列に対して1~30ヌクレオチド欠失を有し得る。いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、全長野生型ITR配列に対して2~20ヌクレオチド欠失を有する。
【0204】
いくつかの実施形態によれば、修飾型ITRは、DNA複製(例えば、Repタンパク質によるRBEへの結合、若しくは末端分離部位でのニッキング)に干渉しないように、A又はA’領域のRBE含有部分にいかなるヌクレオチド欠失も含まない。いくつかの実施形態によれば、本明細書における使用のために包含される修飾型ITRは、本明細書に記載されるB、B’、C、及び/又はC領域に1つ以上の欠失を有する。
【0205】
いくつかの実施形態によれば、対称ITR対又は非対称ITR対を含む抗体及び抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、本明細書に開示される調節スイッチ、及び配列番号3、4、15~47、101~116、又は165~187からなる群のうちのいずれかから選択されるヌクレオチド配列を有する選択された少なくとも1つの修飾型ITRを含む。
【0206】
別の実施形態では、構造エレメントの構造は、修飾され得る。例えば、構造エレメントは、ステムの高さ及び/又はループ内のヌクレオチドの数の変化。例えば、ステムの高さは、約2、3、4、5、6、7、8、若しくは9ヌクレオチド以上、又はその中の任意の範囲であり得る。いくつかの実施形態によれば、ステムの高さは、約5ヌクレオチド~約9ヌクレオチドであり得、Repと機能的に相互作用する。別の実施形態では、ステム高さは、約7ヌクレオチドであり得、Repと機能的に相互作用する。別の実施例では、ステムの高さは、約3、4、5、6、7、8、9、若しくは10ヌクレオチド以上、又はその中の任意の範囲を有し得る。
【0207】
別の実施形態では、RBE又は伸長RBE内のGAGY結合部位又はGAGY関連結合部位の数は、増加又は減少され得る。一部の実施例によれば、RBE又は伸長RBEは、1、2、3、4、5、若しくは6以上のGAGY結合部位、又はその中の任意の範囲を含み得る。各GAGY結合部位は、独立して、配列がRepタンパク質に結合するのに十分である限り、正確なGAGY配列又はGAGYと同様の配列であり得る。
【0208】
別の実施形態では、2つのエレメント(限定されないが、RBE及びヘアピンなど)の間の空間を変更して(例えば、増加又は減少)、大きなRepタンパク質との機能的相互作用を変更することができる。例えば、空間は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、若しくは21ヌクレオチド以上、又はその中の任意の範囲であり得る。
【0209】
本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、本明細書に開示される野生型AAV2 ITR構造に関して修飾されるITR構造を含み得るが、依然として作動可能なRBE、trs、及びRBE’部分を保持する。
図2A及び
図2Bは、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの野生型ITR構造部分内のtrs部位の操作のための1つの可能な機序を示す。いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、Rep結合部位(RBS;AAV2の場合、5’-GCGCGCTCGCTCGCTC-3’)及び末端分離部位(TRS;5’-AGTT)を含む、1つ以上の機能的ITRポリヌクレオチド配列を含有する。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのITR(野生型又は修飾型ITR)は、機能的である。抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターが、互いに異なるか、又は非対称である2つの修飾型ITRを含む代替的な実施形態では、少なくとも1つの修飾型ITRは、機能的であり、少なくとも1つの修飾型ITRは、非機能的である。
【0210】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの修飾型ITR(例えば、左又は右ITR)は、ループアーム、切断型アーム、又はスペーサー内に修飾を有する。ループアーム、切断型アーム、又はスペーサー内に修飾を有するITRの例示的な配列は、国際出願第US18/49996号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の表2(すなわち、配列番号135~190、200~233)、表3(例えば、配列番号234~263)、表4(例えば、配列番号264~293)、表5(例えば、本明細書の配列番号294~318)、表6(例えば、配列番号319~468)、及び表7~9(例えば、配列番号101~110、111~112、115~134)、又は表10A若しくは10B(例えば、配列番号9、100、469~483、484~499)に列挙されている。
【0211】
いくつかの実施形態によれば、非対称ITR対又は対称mod-ITR対を含む、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターにおける使用のための修飾型ITRは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際出願第US18/49996号の表2、3、4、5、6、7、8、9、及び10A~10Bに示されるもののうちのいずれか、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0212】
上記のクラスの各々に非対称ITR対又は対称mod-ITR対を含む抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターで使用するための追加の例示的な修飾型ITRを表5A及び5Bに示す。表5Aの右修飾型ITRの予測二次構造は、2018年12月6日に出願された国際出願第US2018/064242号の
図7Aに示されており、表5Bの左修飾型ITRの予測二次構造は、2018年12月6日に出願された国際出願第US2018/064242号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の
図7Bに示されている。
【0213】
表5A及び表5Bは、例示的な右及び左修飾型ITRの配列番号を列挙する。
【0214】
表5A:例示的な修飾型右ITR。これらの例示的な修飾型右ITRは、RBEであるGCGCGCTCGCTCGCTC-3’(スペーサーであるACTGAGGC)、スペーサー相補体GCCTCAGT、及びRBE’(すなわち、RBEの相補体)であるGAGCGAGCGAGCGCGCを含み得る。
【0215】
【0216】
表5B:例示的な修飾型左ITR。これらの例示的な修飾型左ITRは、RBEであるGCGCGCTCGCTCGCTC-3’、スペーサーであるACTGAGGC、スペーサー相補体GCCTCAGT、及びRBE相補体(RBE’)であるGAGCGAGCGAGCGCGCを含み得る。
【0217】
【0218】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、5’から3’方向に、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、目的のヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載される発現カセット)、及び第2のAAV ITRを含み、第1のITR(5’ITR)及び第2のITR(3’ITR)は、互いに非対称である、すなわち、それらは互いに異なる三次元空間構成を有する。例示的な実施形態として、第1のITRは、野生型ITRであり得、第2のITRは、変異型又は修飾型ITRであり得るか、又はその逆であり、第1のITRは、変異型又は修飾型ITRであり得、第2のITRは、野生型ITRであり得る。いくつかの実施形態によれば、第1のITR及び第2のITRは、両方ともmod-ITRであるが、異なる配列を有するか、又は異なる修飾を有し、したがって同じ修飾型ITRではなく、異なる三次元空間構成を有する。言い換えると、非対称ITRを有するceDNAベクターは、WT-ITRに対する一部のITRによる任意の変化が他のITRに反映されないITRを含むか、代替的には、非対称ITRが修飾された非対称ITR対を有する場合、互いに対して異なる配列及び異なる三次元形状を有し得る。抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクター中の、ceDNA-プラスミドを生成するために使用するための例示的な非対称ITRは、表5A及び
図5Bに示されている。
【0219】
代替的な実施形態では、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、2つの対称的なmod-ITRを含む。すなわち、両方のITRは、同じ配列を有するが、互いの逆相補体(逆位)である。いくつかの実施形態によれば、対称mod-ITR対は、同じAAV血清型からの野生型ITR配列と比較して、欠失、挿入、又は置換の少なくとも1つ又は任意の組み合わせを含む。対称ITRの付加、欠失、又は置換は同じであるが、互いの逆相補体である。例えば、5’ITRのC領域への3ヌクレオチドの挿入は、3’ITRのC’領域の対応するセクションへの3つの逆相補ヌクレオチドの挿入に反映される。単に説明の目的でのみ、付加が5’ITRのAACGである場合、付加は、対応する部位における3’ITRのCGTTである。例えば、5’ITRセンス鎖がATCGATCGであり、GとAとの間にAACGの付加を伴う場合、配列ATCGAACGATCGがもたらされる。対応する3’ITRセンス鎖は、CGATCGAT(ATCGATCGの逆相補体)であり、TとCとの間にCGTT(すなわち、AACGの逆相補体)の付加を伴い、配列CGATCGTTCGAT(ATCGAACGATCGの逆相補体)をもたらす。
【0220】
代替的な実施形態では、修飾型ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、修飾型ITR対は、異なる配列を有し得るが、対応する又は同じ対称の三次元形状を有し得る。例えば、1つの修飾型ITRは、1つの血清型に由来し得、他の修飾型ITRは、異なる血清型に由来し得るが、それらは同じ領域において同じ変異(例えば、ヌクレオチド挿入、欠失、又は置換)を有する。言い換えると、単なる説明の目的で、5’mod-ITRは、AAV2に由来し得、C領域に欠失を有し、3’mod-ITRは、AAV5に由来し得、C’領域に対応する欠失を有する。5’mod-ITR及び3’mod-ITRが同じ又は対称な三次元空間構成を有することを条件として、それらは本明細書における修飾型ITR対としての使用に包含される。
【0221】
いくつかの実施形態によれば、実質的に対称のmod-ITR対は、三次元空間で同じA、C-C’及びB-B’ループを有する。例えば、実質的に対称のmod-ITR対の修飾型ITRがC-C’アームの欠失を有する場合、同族のmod-ITRは、C-C’ループの対応する欠失を有し、またその同族のmod-ITRの幾何学的空間に同じ形状の残りのA及びB-B’ループの同様の三次元構造を有する。単なる例として、実質的に対称のITRは、それらの構造が幾何学的空間において同じ形状であるように、対称空間構成を有し得る。これは、例えば、G-C対が、例えばC-G対に、若しくはその逆に修飾されたとき、又はA-T対がT-A対に、若しくはその逆に修飾されたときに起こり得る。したがって、上記の例示的な例であるATCGAACGATCGとしての修飾型5’ITR、及びCGATCGTTCGATとしての修飾型3’ITR(すなわち、ATCGAACGATCGの逆相補体)を使用して、これらの修飾型ITRは、例えば、5’ITRがATCGAACCATCGの配列を有する場合、依然として対称であろう(ここで、付加におけるGが、Cに修飾され、実質的に対称な3’ITRが、CGATCGTTCGATの配列を有し、aに加えてTの対応する修飾がない)。いくつかの実施形態によれば、そのような修飾型ITR対は、修飾型ITR対が対称な立体化学を有するので、実質的に対称である。
【0222】
表6は、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターで使用するための、例示的な対称の修飾型ITR対(すなわち、左修飾型ITR及び対称右修飾型ITR)を示す。配列の太字(赤)部分は、
図31A~
図46Bにも示される、部分的なITR配列(すなわち、A-A’、C-C’、及びB-B’ループの配列)を特定する。これらの例示的な修飾型ITRは、RBEであるGCGCGCTCGCTCGCTC-3’、スペーサーであるACTGAGGC、スペーサー相補体及びRBE’(すなわち、RBEの相補体)であるGAGCGAGCGAGCGCGCを含み得る。
【0223】
表6:抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターにおける例示的な対称の修飾型ITR対
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
いくつかの実施形態によれば、非対称ITR対を含む抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、本明細書の表5A~5Bのいずれか1つ以上に示されるITR配列若しくはITR部分配列、あるいは2018年12月6日に出願された国際出願第US2018/064242号(その全体が本明細書に組み込まれる)の
図7A~
図7Bに示されているか、又は2018年9月7日に出願された国際出願第US18/49996号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の表2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10A~10Bに開示されている配列における修飾のうちのいずれかに対応する修飾を有するITRを含み得る。
【0228】
B.例示的なceDNAベクター
上記のように、本開示は、組換えceDNA発現ベクター、及び上記の非対称ITR対、対称ITR対、又は実質的に対称のITR対のうちのいずれか1つを含む、抗体及びその抗原結合断片をコードするceDNAベクターに関する。特定の実施形態では、本開示は、隣接するITR配列及び導入遺伝子を有する抗体及びその抗原結合断片の発現のための組換えceDNAベクターに関し、ITR配列は、本明細書で定義されるように、互いに対して非対称、対称、又は実質的に対称であり、ceDNAは、隣接するITRの間に位置する目的の核酸配列(例えば、導入遺伝子の核酸を含む発現カセット)を更に含み、当該核酸分子は、ウイルスカプシドタンパク質コード配列を欠いている。
【0229】
抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNA発現ベクターは、少なくとも1つのITRが変更されている場合、本明細書に記載される核酸配列を含む組換えDNA手順に都合よく供することができる任意のceDNAベクターであってもよい。本開示の抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、ceDNAベクターが導入される宿主細胞と適合性がある。ある特定の実施形態では、ceDNAベクターは、直鎖状であってもよい。ある特定の実施形態では、ceDNAベクターは、染色体外実体として存在し得る。ある特定の実施形態では、本開示のceDNAベクターは、宿主細胞のゲノムへのドナー配列の組み込みを可能にするエレメントを含有し得る。本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」、「核酸配列」及び「異種核酸配列」は同義であり、本明細書に記載されるように、抗体及びその抗原結合断片をコードする。
【0230】
ここで
図1A~
図1Gを参照すると、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターを作製するのに有用な2つの非限定的プラスミドの機能的構成成分の概略図が示されている。
図1A、
図1B、
図1D、及び
図1Fは、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの構築物又は対応するceDNAプラスミドの配列を示す。ceDNAベクターは、カプシドを含まず、第1のITR、発現可能な導入遺伝子カセット、及び第2のITRをこの順序でコードするプラスミドから取得することができ、第1及び第2のITR配列は、本明細書で定義されるように、互いに対して非対称、対称、又は実質的に対称である。抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、カプシドを含まず、第1のITR、発現可能な導入遺伝子(タンパク質又は核酸)、及び第2のITRをこの順序でコードするプラスミドから取得することができ、第1及び第2のITR配列は、本明細書で定義されるように、互いに対して非対称、対称、又は実質的に対称である。いくつかの実施形態によれば、発現可能な導入遺伝子カセットは、必要に応じて、エンハンサー/プロモーター、1つ以上の相同性アーム、ドナー配列、転写後調節エレメント(例えば、WPRE、例えば、配列番号67))、並びにポリアデニル化及び終結シグナル(例えば、BGHポリA、例えば、配列番号68)を含む。
【0231】
図5は、実施例に記載される方法を使用して、複数のプラスミド構築物からceDNAの産生を確認するゲルである。ceDNAは、上記の
図4Aに関して、及び実施例で論じられるように、ゲル中の特徴的なバンドパターンによって確認される。
【0232】
(i).調節エレメント
本明細書で定義される非対称ITR対又は対称ITR対を含む、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、シス調節エレメントの特定の組み合わせを更に含み得る。シス調節エレメントとしては、プロモーター、リボスイッチ、インスレーター、mir調節エレメント、転写後調節エレメント、組織及び細胞型特異的プロモーター、並びにエンハンサーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0233】
いくつかの実施形態によれば、様々なシス調節エレメントの配列は、2021年3月24日に出願された国際出願第US2021/023891号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているもののいずれかから選択することができる。
【0234】
実施形態では、第2の核酸配列は、調節配列、及びヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、遺伝子調節配列は、ヌクレアーゼをコードする核酸配列に作動可能に連結されている。ある特定の実施形態では、調節配列は、宿主細胞におけるヌクレアーゼの発現を制御するのに適している。ある特定の実施形態では、調節配列は、本開示のヌクレアーゼをコードする核酸配列などのプロモーター配列に作動可能に連結された遺伝子の転写を指示することができる、好適なプロモーター配列を含む。ある特定の実施形態では、第2の核酸配列は、ヌクレアーゼをコードする核酸配列の5’末端に連結されたイントロン配列を含む。ある特定の実施形態では、エンハンサー配列がプロモーターの上流に提供されて、プロモーターの効力を増大させる。ある特定の実施形態では、調節配列は、エンハンサー及びプロモーターを含み、第2の核酸配列は、ヌクレアーゼをコードする核酸配列の上流のイントロン配列を含み、イントロンは、1つ以上のヌクレアーゼ切断部位を含み、プロモーターは、ヌクレアーゼをコードする核酸配列に作動可能に連結されている。
【0235】
好適なプロモーターは、ウイルスに由来し得るため、ウイルスプロモーターと称され得るか、又はそれらは、原核生物又は真核生物を含む任意の生物に由来し得る。好適なプロモーターを使用して、任意のRNAポリメラーゼ(例えば、pol I、pol II、pol III)によって発現を駆動することができる。例示的なプロモーターとしては、SV40初期プロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルスの長い末端反復配列(long terminal repeat、LTR)プロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(adenovirus major late promoter、Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus、HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)プロモーター、例えば、CMV即時型初期プロモーター領域(CMV immediate early promoter region、CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(rous sarcoma virus、RSV)プロモーター、ヒトU6小核プロモーター(U6、例えば、配列番号80)(Miyagishi et al.,Nature Biotechnology 20,497-500(2002))、増強されたU6プロモーター(例えば、Xia et al.,Nucleic Acids Res.2003 Sep.1;31(17))、ヒトH1プロモーター(H1)(例えば、配列番号81又は配列番号155)、CAGプロモーター、ヒトα1-アンチトリプシン(HAAT)プロモーター(例えば、配列番号82)などが挙げられる。ある特定の実施形態では、これらのプロモーターは、それらの下流イントロン含有端で変更され、1つ以上のヌクレアーゼ切断部位を含む。ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼ切断部位を含有するDNAは、プロモーターDNAに対して外来である。
【0236】
いくつかの実施形態によれば、プロモーターは、ヒトユビキチンC(human ubiquitin C、hUbC)、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、又はヒトメタロチオネインなどのヒト遺伝子からのプロモーターであってもよい。
【0237】
いくつかの実施形態によれば、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。更なる実施形態によれば、組織特異的プロモーターは肝臓特異的プロモーターである。いくつかの実施形態によれば、抗体又はその抗原結合性断片は、肝臓に標的化され、かつ/又は肝臓特異的プロモーターによって肝臓において産生される。
【0238】
当技術分野で公知の任意の肝臓特異的プロモーターが、本開示における使用のために企図される。いくつかの実施形態によれば、肝臓特異的プロモーターは、天然又は合成のヒトα1-アンチトリプシン(HAAT)から選択されるが、これらに限定されない。一実施形態によれば、肝臓への送達は、肝細胞の表面上に存在する低密度リポタンパク質(low density lipoprotein、LDL)受容体を介して、肝細胞へのceDNAベクターを含む組成物の内因性ApoE特異的標的を使用して達成され得る。
【0239】
本開示に従って使用するための適切なプロモーターの非限定的な例としては、以下のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない:CAGプロモーター、EF1aプロモーター、IE2プロモーター及びラットEF1-αプロモーター、mEF1プロモーター、又は1E1プロモーター断片が挙げられる。
【0240】
いくつかの実施形態によれば、プロモーターは、2021年3月24日に出願された国際出願第US2021/023891号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される任意のプロモーター配列から選択することができる。
【0241】
(ii).ポリアデニル化配列:
ポリアデニル化配列をコードする配列は、ceDNAベクターから発現されたmRNAを安定化するため、及び核輸送及び翻訳を助けるために、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクター中に含まれ得る。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、ポリアデニル化配列を含まない。他の実施形態では、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、又はそれ以上のアデニンジヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態によれば、ポリアデニル化配列は、約43ヌクレオチド、約40~50ヌクレオチド、約40~55ヌクレオチド、約45~50ヌクレオチド、約35~50ヌクレオチド、又はその間の任意の範囲を含む。
【0242】
発現カセットは、当技術分野で既知の任意のポリアデニル化配列又はその変形を含むことができる。いくつかの発現カセットはまた、SV40後期ポリAシグナル上流エンハンサー(upstream enhancer、USE)配列を含み得る。いくつかの実施形態によれば、USE配列は、SV40pA又は異種ポリAシグナルと組み合わせて使用され得る。ポリA配列は、抗体及びその抗原結合断片をコードする導入遺伝子の3’に位置する。
【0243】
いくつかの実施形態によれば、ポリアデニル化配列は、2021年3月24日に出願された国際出願第US2021/023891号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される任意のポリアデニル化配列から選択することができる。
【0244】
発現カセットはまた、導入遺伝子の発現を増加させるために、転写後エレメントを含み得る。いくつかの実施形態によれば、ウッドチャック肝炎ウイルス(Woodchuck Hepatitis Virus、WHP)転写後調節エレメント(posttranscriptional regulatory element、WPRE)を使用して、導入遺伝子の発現を増加させる。他の転写後処理エレメント、例えば、単純ヘルペスウイルス又はB型肝炎ウイルス(HBV)のチミジンキナーゼ遺伝子からの転写後エレメントを使用することができる。
【0245】
いくつかの実施形態によれば、転写後調節エレメントは、2021年3月24日に出願された国際出願第US2021/023891号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている任意の転写後調節エレメント配列から選択することができる。
【0246】
いくつかの実施形態によれば、抗体又はその抗原結合断片をコードする1つ又は複数の核酸配列は、タンパク質がゴルジ装置及び小胞体に向けられ、それがERを通過して細胞から出る際にシャペロン分子によって正しい立体構造に折りたたまれるように、分泌配列もコードすることができる。例示的な分泌配列には、VH-02及びVK-A26及びIgKシグナル配列、並びにタグ付きタンパク質が細胞質から分泌されるのを可能にするGluc分泌シグナル、タグ付きタンパク質をゴルジ体に向けるTMD-ST分泌配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0247】
いくつかの実施形態によれば、分泌配列は、2021年3月24日に出願された国際出願第US2021/023891号(その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示される任意の分泌配列から選択することができる。
【0248】
(iii)核局在化配列
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、1つ以上の核局在化配列(nuclear localization sequence、NLS)、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のNLSを含む。いくつかの実施形態によれば、1つ以上のNLSは、アミノ末端又はその近く、カルボキシ末端又はその近く、又はこれらの組み合わせ(例えば、アミノ末端における1つ以上のNLS及び/又はカルボキシ末端における1つ以上のNLS)に位置する。複数のNLSが存在する場合、各々を他のNLSから独立して選択することができ、それにより、単一のNLSが複数のコピーに、及び/又は一部又は複数のコピーに従って存在する1つ以上の他のNLSと組み合わせて存在する。
【0249】
いくつかの実施形態によれば、NLSは、2021年3月24日に出願された国際出願第US2021/023891号に開示されている任意のNLSから選択することができ、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0250】
C.例示的なceDNA抗CoV-2 Sベクター
いくつかの実施形態によれば、抗体又はその抗原結合断片を含む少なくとも1つの核酸配列を含む例示的なカプシド不含閉端DNA(ceDNA)ベクターとして、ceDNA構築物は、表7に示される構築物から選択される。
【0251】
【0252】
いくつかの実施形態によれば、例示的なceDNAベクターは、以下に示すように、配列番号404を含むceDNA-1856である。
CCTGCAGGCA GCTGCGCGCT CGCTCGCTCA CTGAGGCCGC CCGGGCAAAG CCCGGGCGTCGGGCGACCTT TGGTCGCCCG GCCTCAGTGA GCGAGCGAGC GCGCAGAGAG GGAGTGGCCA ACTCCATCAC TAGGGGTTCC TTGTAGTTAA TGATTAACCC GCCATGCTAC TTATCGCGGC CGCGGGGGAG GCTGCTGGTG AATATTAACC AAGGTCACCC CAGTTATCGG AGGAGCAAAC AGGGGCTAAG TCCACCGGGG GAGGCTGCTG GTGAATATTA ACCAAGGTCA CCCCAGTTAT CGGAGGAGCA AACAGGGGCT AAGTCCACCG GGGGAGGCTG CTGGTGAATA TTAACCAAGG TCACCCCAGT TATCGGAGGA GCAAACAGGG GCTAAGTCCA CGGTACCCAC TGGGAGGATG TTGAGTAAGA TGGAAAACTA CTGATGACCC TTGCAGAGAC AGAGTATTAG GACATGTTTG AACAGGGGCC GGGCGATCAG CAGGTAGCTC TAGAGGATCC CCGTCTGTCT GCACATTTCG TAGAGCGAGT GTTCCGATAC TCTAATCTCC CTAGGCAAGG TTCATATTTG TGTAGGTTAC TTATTCTCCT TTTGTTGACT AAGTCAATAA TCAGAATCAG CAGGTTTGGA GTCAGCTTGG CAGGGATCAG CAGCCTGGGT TGGAAGGAGG GGGTATAAAA GCCCCTTCAC CAGGAGAAGC CGTCACACAG ATCCACAAGC TCCTGAAGAG GTAAGGGTTT AAGGGATGGT TGGTTGGTGG GGTATTAATG TTTAATTACC TGGAGCACCT GCCTGAAATC ACTTTTTTTC AGGTTGGGTT TAAACCGCAG CCACCATGGA CATGAGAGTG CCCGCCCAGC TGCTGGGCCT GCTGCTGCTG TGGCTGTCCG GAGCCAGATG CGAAATCGTG CTGACCCAGA GCCCTGGCAC CCTGAGCCTGTCACCCGGCG AACGGGCTAC CCTGTCTTGT AGAGCCTCTC AGACCGTGTC CAGCACCAGCCTGGCCTGGT ACCAGCAGAA ACCTGGACAG GCTCCTAGAC TGCTGATCTA CGGAGCTTCTAGTAGAGCCA CCGGCATCCC CGATAGATTC AGCGGCAGCG GCAGCGGCAC TGATTTCACCCTGACAATTA GCCGGCTGGA ACCTGAGGAC TTTGCCGTGT ATTACTGCCA GCAACACGACACCAGCCTGA CATTCGGCGG CGGAACCAAA GTTGAGATCA AGCGGACCGT GGCCGCTCCATCTGTGTTCA TCTTTCCACC TAGCGACGAG CAGCTGAAGT CCGGCACAGC CTCTGTGGTGTGCCTGCTCA ACAACTTCTA CCCTCGCGAG GCCAAGGTGC AGTGGAAGGT GGACAACGCCCTGCAAAGCG GCAACAGCCA GGAGAGCGTC ACAGAACAGG ACAGCAAGGA CTCTACATACAGCCTGAGCA GCACACTGAC CCTCAGCAAG GCCGATTACG AGAAGCACAAGGTTTACGCCTGCGAGGTGA CCCACCAGGG CCTGTCCAGC CCTGTGACAAAGAGCTTCAA TAGAGGCGAATGTTGATAGT TAATTAAGAG CATCTTACCGCCATTTATTCCCATATTTGT TCTGTTTTTCTTGATTTGGG TATACATTTA AATGTTAATA AAACAAAATGGTGGGGCAAT CATTTACATTTTTAGGGATA TGTAATTACTAGTTCAGGTG TATTGCCACA AGACAAACAT GTTAAGAAACTTTCCCGTTA TTTACGCTCTGTTCCTGTTA ATCAACCTCT GGATTACAAA ATTTGTGAAAGATTGACTGA TATTCTTAACTATGTTGCTC CTTTTACGCT GTGTGGATAT GCTGCTTTATAGCCTCTGTA TCTAGCTATTGCTTCCCGTA CGGCTTTCGT TTTCTCCTCC TTGTATAAATCCTGGTTGCT GTCTCTTTTAGAGGAGTTGT GGCCCGTTGT CCGTCAACGT GGCGTGGTGTGCTCTGTGTT TGCTGACGCAACCCCCACTG GCTGGGGCAT TGCCACCACC TGTCAACTCCTTTCTGGGACTTTCGCTTTC CCCCTCCCGA TCGCCACGGC AGAACTCATC GCCGCCTGCCTTGCCCGCTG CTGGACAGGG GCTAGGTTGC TGGGCACTGA TAATTCCGTG GTGTTGTCTGTGCCTTCTAG TTGCCAGCCA TCTGTTGTTT GCCCCTCCCC CGTGCCTTCC TTGACCCTGGAAGGTGCCAC TCCCACTGTC CTTTCCTAAT AAAATGAGGA AATTGCATCG CATTGTCTGAGTAGGTGTCA TTCTATTCTG GGGGGTGGGG TGGGGCAGGA CAGCAAGGGG GAGGATTGGGAAGACAATAG CAGGCATGCT GGGGATGCGG TGGGCTCTAT GGCTCTAGAG CATGGCTACGTAGATAAGTA GCATGGCGGG TTAATCATTA ACTACACCTG CAGGAGGAAC CCCTAGTGATGGAGTTGGCC ACTCCCTCTC TGCGCGCTCG CTCGCTCACT GAGGCCGGGC GACCAAAGGTCGCCCGACGC CCGGGCGGCC TCAGTGAGCG AGCGAGCGCG CAGCTGCCTG CAGG
【0253】
いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、配列番号404と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。
【0254】
いくつかの実施形態によれば、例示的なceDNAベクターは、以下に示すように、配列番号405を含むceDNA-1859である。
CCTGCAGGCA GCTGCGCGCT CGCTCGCTCA CTGAGGCCGC CCGGGCAAAG CCCGGGCGTC GGGCGACCTT TGGTCGCCCG GCCTCAGTGA GCGAGCGAGC GCGCAGAGAG GGAGTGGCCA ACTCCATCAC TAGGGGTTCC TTGTAGTTAA TGATTAACCC GCCATGCTAC TTATCGCGGC CGCGGGGGAG GCTGCTGGTG AATATTAACC AAGGTCACCC CAGTTATCGG AGGAGCAAAC AGGGGCTAAG TCCACCGGGG GAGGCTGCTG GTGAATATTA ACCAAGGTCA CCCCAGTTAT CGGAGGAGCA AACAGGGGCT AAGTCCACCG GGGGAGGCTG CTGGTGAATA TTAACCAAGG TCACCCCAGT TATCGGAGGA GCAAACAGGG GCTAAGTCCA CGGTACCCAC TGGGAGGATG TTGAGTAAGA TGGAAAACTA CTGATGACCC TTGCAGAGAC AGAGTATTAG GACATGTTTG AACAGGGGCC GGGCGATCAG CAGGTAGCTC TAGAGGATCC CCGTCTGTCT GCACATTTCG TAGAGCGAGT GTTCCGATAC TCTAATCTCC CTAGGCAAGG TTCATATTTG TGTAGGTTAC TTATTCTCCT TTTGTTGACT AAGTCAATAA TCAGAATCAG CAGGTTTGGA GTCAGCTTGG CAGGGATCAG CAGCCTGGGT TGGAAGGAGG GGGTATAAAA GCCCCTTCAC CAGGAGAAGC CGTCACACAG ATCCACAAGC TCCTGAAGAG GTAAGGGTTT AAGGGATGGT TGGTTGGTGG GGTATTAATG TTTAATTACC TGGAGCACCT GCCTGAAATC ACTTTTTTTC AGGTTGGGTT TAAACCGCAG CCACCATGGA ATTCGGCCTG TCCTGGGTCT TTCTGGTGGC CATCCTGAAG GGCGTGCAGT GCCAGGTCCA GCTGGTTCAG AGCGGCGCCG AGGTTAAGAA ACCTGGCGCC AGCGTGAAAG TGTCCTGCAA GGCCAGCGGC TACCCCTTCA CCAGCTACGG CATCTCTTGG GTGCGGCAGG CCCCTGGACA AGGACTGGAG TGGATGGGAT GGATCAGCAC TTACCAGGGC AATACCAACT ACGCCCAGAA ATTCCAGGGC AGAGTGACAA TGACCACCGA CACCAGCACAACCACAGGCT ACATGGAACT GCGGAGACTG AGAAGCGATG ATACAGCCGT GTACTACTGCGCCAGAGATT ATACAAGAGG TGCTTGGTTC GGCGAGAGCC TGATCGGCGG ATTCGACAAC TGGGGACAAG GCACCCTGGT GACCGTGTCA TCCGCCTCTA CCAAGGGCCC TAGCGTGTTTCCACTGGCCC CTAGCTCTAA AAGCACAAGC GGCGGCACCG CCGCTCTGGG ATGTCTGGTGAAGGACTACT TCCCAGAGCC CGTGACCGTG AGCTGGAACA GCGGCGCTCT CACATCTGGGGTGCATACCT TTCCCGCCGT GCTGCAGTCT TCTGGACTGT ACAGCCTGAG CAGCGTGGTGACCGTGCCCT CCAGCAGCCT GGGCACACAG ACCTACATCT GCAACGTGAA CCACAAGCCA TCTAATACCA AGGTGGATAA GAAGGTGGAA CCTAAGAGCT GTGACAAGAC ACACACATGC CCCCCCTGCC CTGCTCCTGA GCTGCTGGCC GGCCCCTCCG TGTTTCTCTT CCCTCCTAAA CCCAAGGACA CACTGATGAT TAGCCGGACC CCAGAGGTGA CCTGTGTGGT GGTTGACGTG AGTCACGAAG ATCCTGAAGT GAAGTTCAAC TGGTACGTGG ACGGCGTGGA GGTGCATAAC GCCAAAACCA AGCCTCGGGA AGAGCAGTAC AACAGCACCT ATAGAGTGGT GAGCGTGCTT ACAGTGCTGC ATCAGGACTG GCTGAACGGC AAGGAATACA AGTGCAAGGT GTCCAACAAA GCCCTGCCTC TGCCTGAAGA AAAGACCATC AGCAAGGCCA AGGGCCAACC AAGAGAGCCT CAAGTGTACA CCCTGCCCCC CAGCAGAGAT GAGCTGACCA AGAATCAGGT GTCCCTGACC TGCCTGGTCA AAGGCTTCTA CCCTAGCGAC ATCGCCGTCG AGTGGGAGAG CAATGGCCAG CCTGAGAACA ACTACAAGAC CACCCCTCCT GTGCTGGACA GCGACGGCAG CTTCTTCCTG TATAGCAAGC TGACCGTGGA CAAGTCCAGG TGGCAGCAGG GCAATGTGTT CAGCTGTAGC GTGCTGCACG AGGCCCTGCA CAGCCACTAC ACACAGAAGT CTCTGAGCCT GTCTCCTGGC AAGTGATAGT TAATTAAGAG CATCTTACCG CCATTTATTC CCATATTTGT TCTGTTTTTC TTGATTTGGG TATACATTTA AATGTTAATA AAACAAAATG GTGGGGCAAT CATTTACATT TTTAGGGATA TGTAATTACT AGTTCAGGTG TATTGCCACA AGACAAACAT GTTAAGAAAC TTTCCCGTTA TTTACGCTCT GTTCCTGTTA ATCAACCTCT GGATTACAAA ATTTGTGAAAGATTGACTGA TATTCTTAAC TATGTTGCTC CTTTTACGCT GTGTGGATAT GCTGCTTTAT AGCCTCTGTA TCTAGCTATT GCTTCCCGTA CGGCTTTCGT TTTCTCCTCC TTGTATAAAT CCTGGTTGCT GTCTCTTTTA GAGGAGTTGT GGCCCGTTGT CCGTCAACGT GGCGTGGTGT GCTCTGTGTT TGCTGACGCA ACCCCCACTG GCTGGGGCAT TGCCACCACC TGTCAACTCC TTTCTGGGAC TTTCGCTTTC CCCCTCCCGA TCGCCACGGC AGAACTCATC GCCGCCTGCC TTGCCCGCTG CTGGACAGGG GCTAGGTTGC TGGGCACTGA TAATTCCGTG GTGTTGTCTG TGCCTTCTAG TTGCCAGCCA TCTGTTGTTT GCCCCTCCCC CGTGCCTTCC TTGACCCTGG AAGGTGCCAC TCCCACTGTC CTTTCCTAAT AAAATGAGGA AATTGCATCG CATTGTCTGA GTAGGTGTCA TTCTATTCTG GGGGGTGGGG TGGGGCAGGA CAGCAAGGGG GAGGATTGGG AAGACAATAG CAGGCATGCT GGGGATGCGG TGGGCTCTAT GGCTCTAGAG ATGGCTACG TAGATAAGTA GCATGGCGGG TTAATCATTA ACTACACCTG CAGGAGGAAC CCCTAGTGAT GGAGTTGGCC ACTCCCTCTC TGCGCGCTCG CTCGCTCACT GAGGCCGGGC GACCAAAGGT CGCCCGACGC CCGGGCGGCC TCAGTGAGCG AGCGAGCGCG CAGCTGCCTG CAGG
【0255】
いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、配列番号405と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。
【0256】
いくつかの実施形態によれば、例示的なceDNAベクターは、以下に示すように、配列番号406を含むceDNA-1966である。
CCTGCAGGCA GCTGCGCGCT CGCTCGCTCA CTGAGGCCGC CCGGGCAAAG CCCGGGCGTCGGGCGACCTT TGGTCGCCCG GCCTCAGTGA GCGAGCGAGC GCGCAGAGAG GGAGTGGCCAACTCCATCAC TAGGGGTTCC TTGTAGTTAA TGATTAACCC GCCATGCTAC TTATCGCGGCCGCGGGGGAG GCTGCTGGTG AATATTAACC AAGGTCACCC CAGTTATCGG AGGAGCAAACAGGGGCTAAG TCCACCGGGG GAGGCTGCTG GTGAATATTA ACCAAGGTCA CCCCAGTTATCGGAGGAGCA AACAGGGGCT AAGTCCACCG GGGGAGGCTG CTGGTGAATA TTAACCAAGGTCACCCCAGT TATCGGAGGA GCAAACAGGG GCTAAGTCCA CGGTACCCAC TGGGAGGATG TTGAGTAAGA TGGAAAACTA CTGATGACCC TTGCAGAGAC AGAGTATTAG GACATGTTTG
AACAGGGGCC GGGCGATCAG CAGGTAGCTC TAGAGGATCC CCGTCTGTCT GCACATTTCGTAGAGCGAGT GTTCCGATAC TCTAATCTCC CTAGGCAAGG TTCATATTTG TGTAGGTTACTTATTCTCCT TTTGTTGACT AAGTCAATAA TCAGAATCAG CAGGTTTGGA GTCAGCTTGGCAGGGATCAG CAGCCTGGGT TGGAAGGAGG GGGTATAAAA GCCCCTTCAC CAGGAGAAGCCGTCACACAG ATCCACAAGC TCCTGAAGAG GTAAGGGTTT AAGGGATGGT TGGTTGGTGGGGTATTAATG TTTAATTACC TGGAGCACCT GCCTGAAATC ACTTTTTTTC AGGTTGGGTT
TAAACCGCAG CCACCATGGA ATTCGGCCTG AGCTGGGTGT TCCTGGTGGC TATCCTGAAGGGCGTGCAGT GCCAGGTGCA GCTGGTTCAG AGCGGCGCTG AGGTTAAGAA ACCTGGCGCTAGCGTGAAAG TGAGCTGCAA GGCTAGCGGC TACCCTTTCA CAAGCTACGG CATCTCTTGGGTGCGGCAGG CTCCTGGACA AGGACTGGAG TGGATGGGAT GGATCAGCAC TTACCAGGGC AATACAAACT ACGCTCAGAA ATTCCAGGGC AGAGTGACAA TGACAACAGA CACAAGCACA
ACAACAGGCT ACATGGAACT GCGGAGACTG AGAAGCGACG ACACAGCTGT GTACTACTGCGCTAGAGACT ATACAAGAGG CGCTTGGTTC GGCGAGAGCC TGATCGGCGG ATTCGACAACTGGGGACAAG GCACACTGGT GACAGTGTCA AGCGCTTCTA CAAAGGGCCC TAGCGTGTTCCCACTGGCTC CTAGCTCTAA AAGCACAAGC GGCGGCACAG CTGCTCTGGG ATGCCTGGTG AAGGACTACT TCCCAGAGCC TGTGACAGTG AGCTGGAACA GCGGCGCTCT GACATCTGGG
GTGCACACAT TCCCTGCTGT GCTGCAGTCT TCTGGACTGT ACAGCCTGAG CAGCGTGGTGACAGTGCCTA GCAGCAGCCT GGGCACACAG ACATACATCT GCAACGTGAA CCACAAGCCATCTAATACAA AGGTGGACAA GAAGGTGGAA CCTAAGAGCT GCGACAAGAC ACACACATGCCCTCCTTGCC CTGCTCCTGA GCTGCTGGCT GGCCCTAGCG TGTTCCTGTT CCCTCCTAAA CCTAAGGACA CACTGATGAT TAGCCGGACA CCAGAGGTGA CCTGCGTGGT GGTTGACGTG
AGCCACGAAG ACCCTGAAGT GAAGTTCAAC TGGTACGTGG ACGGCGTGGA GGTGCACAACGCTAAAACAA AGCCTCGGGA AGAGCAGTAC AACAGCACAT ATAGAGTGGT GAGCGTGCTT ACAGTGCTGC ACCAGGACTG GCTGAACGGC AAGGAATACA AGTGCAAGGT GAGCAACAAAGCTCTGCCTC TGCCTGAAGA AAAGACAATC AGCAAGGCTA AGGGCCAACC AAGAGAGCCTCAAGTGTACA CACTGCCTCC TAGCAGAGAC GAGCTGACAA AGAATCAGGT GAGCCTGACA
TGCCTGGTGA AAGGCTTCTA CCCTAGCGAC ATCGCTGTGG AGTGGGAGAG CAATGGCCAG CCTGAGAACA ACTACAAGAC AACACCTCCT GTGCTGGACA GCGACGGCAG CTTCTTCCTGTATAGCAAGC TGACAGTGGA CAAGAGCAGG TGGCAGCAGG GCAATGTGTT CAGCTGCAGCGTGCTGCACG AGGCTCTGCA CAGCCACTAC ACACAGAAGT CTCTGAGCCT GTCTCCTGGCAAGTGATAGT TAATTAAGAG CATCTTACCG CCATTTATTC CCATATTTGT TCTGTTTTTC
TTGATTTGGG TATACATTTA AATGTTAATA AAACAAAATG GTGGGGCAAT CATTTACATTTTTAGGGATA TGTAATTACT AGTTCAGGTG TATTGCCACA GACAAACAT GTTAAGAAACTTTCCCGTTA TTTACGCTCT GTTCCTGTTA ATCAACCTCT GGATTACAAA ATTTGTGAAAGATTGACTGA TATTCTTAAC TATGTTGCTC CTTTTACGCT GTGTGGATAT GCTGCTTTATAGCCTCTGTA TCTAGCTATT GCTTCCCGTA CGGCTTTCGT TTTCTCCTCC TTGTATAAATCCTGGTTGCT GTCTCTTTTA GAGGAGTTGT GGCCCGTTGT CCGTCAACGT GGCGTGGTGTGCTCTGTGTT TGCTGACGCA ACCCCCACTG GCTGGGGCAT GCCACCACC TGTCAACTCCTTTCTGGGAC TTTCGCTTTC CCCCTCCCGA TCGCCACGGC AGAACTCATC GCCGCCTGCCTTGCCCGCTG CTGGACAGGG GCTAGGTTGC TGGGCACTGA AATTCCGTG GTGTTGTCTGTGCCTTCTAG TTGCCAGCCA TCTGTTGTTT GCCCCTCCCC CGTGCCTTCC TTGACCCTGGAAGGTGCCAC TCCCACTGTC CTTTCCTAAT AAAATGAGGA ATTGCATCG CATTGTCTGAGTAGGTGTCA TTCTATTCTG GGGGTGGGG TGGGGCAGGA AGCAAGGGG GAGGATTGGGAAGACAATAG CAGGCATGCT GGGGATGCGG TGGGCTCTAT GGCTCTAGAG ATGGCTACGTAGATAAGTA CATGGCGGG TTAATCATTA ACTACACCTG CAGGAGGAAC CCTAGTGATGGAGTTGGCC ACTCCCTCTC TGCGCGCTCG CTCGCTCACT GAGGCCGGGC GACCAAAGGTCGCCCGACGC GGGCGGCC TCAGTGAGCG AGCGAGCGCG CAGCTGCCTG CAGG
【0257】
いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、配列番号406と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。
【0258】
いくつかの実施形態によれば、例示的なceDNAベクターは、以下に示すように、配列番号407を含むceDNA-1967である。
CCTGCAGGCA GCTGCGCGCT CGCTCGCTCA CTGAGGCCGC CCGGGCAAAG CCCGGGCGTCGGGCGACCTT TGGTCGCCCG GCCTCAGTGA GCGAGCGAGC GCGCAGAGAG GGAGTGGCCAACTCCATCAC TAGGGGTTCC TTGTAGTTAA TGATTAACCC GCCATGCTAC TTATCGCGGC CGCGGGGGAG GCTGCTGGTG AATATTAACC AAGGTCACCC CAGTTATCGG AGGAGCAAACAGGGGCTAAG TCCACCGGGG GAGGCTGCTG GTGAATATTA ACCAAGGTCA CCCCAGTTAT
CGGAGGAGCA AACAGGGGCT AAGTCCACCG GGGGAGGCTG CTGGTGAATA TTAACCAAGGTCACCCCAGT TATCGGAGGA GCAAACAGGG GCTAAGTCCA CGGTACCCAC TGGGAGGATGTTGAGTAAGA TGGAAAACTA CTGATGACCC TTGCAGAGAC AGAGTATTAG GACATGTTTGAACAGGGGCC GGGCGATCAG CAGGTAGCTC TAGAGGATCC CCGTCTGTCT GCACATTTCGTAGAGCGAGT GTTCCGATAC TCTAATCTCC CTAGGCAAGG TTCATATTTG TGTAGGTTAC
TTATTCTCCT TTTGTTGACT AAGTCAATAA TCAGAATCAG CAGGTTTGGA GTCAGCTTGG CAGGGATCAG CAGCCTGGGT TGGAAGGAGG GGGTATAAAA GCCCCTTCAC CAGGAGAAGCCGTCACACAG ATCCACAAGC TCCTGAAGAG GTAAGGGTTT AAGGGATGGT TGGTTGGTGGGGTATTAATG TTTAATTACC TGGAGCACCT GCCTGAAATC ACTTTTTTTC AGGTTGGGTTTAAACCGCAG CCACCATGGA CATGAGAGTG CCTGCTCAGC TGCTGGGCCT GCTGCTGCTG
TGGCTGAGCG GAGCTAGATG CGAAATCGTG CTGACCCAGA GCCCTGGCAC CCTGAGCCTGTCACCTGGCG AACGGGCTAC CCTGTCTTGC AGAGCTTCTC AGACCGTGAG CAGCACCAGCCTGGCTTGGT ACCAGCAGAA ACCTGGACAG GCTCCTAGAC TGCTGATCTA CGGAGCTTCTAGCAGAGCTA CCGGCATCCC TGACAGATTC AGCGGCAGCG GCAGCGGCAC TGACTTCACC CTGACAATTA GCCGGCTGGA ACCTGAGGAC TTCGCTGTGT ATTACTGCCA GCAACACGAC
ACCAGCCTGA CATTCGGCGG CGGAACCAAA GTTGAGATCA AGCGGACCGT GGCTGCTCCATCTGTGTTCA TCTTCCCACC TAGCGACGAG CAGCTGAAGA GCGGCACAGC TTCTGTGGTG TGCCTGCTGA ACAACTTCTA CCCTCGGGAG GCTAAGGTGC AGTGGAAGGT GGACAACGCTCTGCAAAGCG GCAACAGCCA GGAGAGCGTG ACAGAACAGG ACAGCAAGGA CTCTACATACAGCCTGAGCA GCACACTGAC CCTGAGCAAG GCTGACTACG AGAAGCACAA GGTTTACGCT
TGCGAGGTGA CCCACCAGGG CCTGAGCAGC CCTGTGACAA AGAGCTTCAA TAGAGGCGAATGCTGATAGT TAATTAAGAG CATCTTACCG CCATTTATTC CCATATTTGT TCTGTTTTTC TTGATTTGGG TATACATTTA AATGTTAATA AAACAAAATG GTGGGGCAAT CATTTACATTTTTAGGGATA TGTAATTACT AGTTCAGGTG TATTGCCACA AGACAAACAT GTTAAGAAACTTTCCCGTTA TTTACGCTCT GTTCCTGTTA ATCAACCTCT GGATTACAAA ATTTGTGAAA GATTGACTGA TATTCTTAAC TATGTTGCTC CTTTTACGCT GTGTGGATAT GCTGCTTTAT AGCCTCTGTA TCTAGCTATT GCTTCCCGTA CGGCTTTCGT TTTCTCCTCC TTGTATAAATCCTGGTTGCT GTCTCTTTTA GAGGAGTTGT GGCCCGTTGT CCGTCAACGT GGCGTGGTGT GCTCTGTGTT TGCTGACGCA ACCCCCACTG GCTGGGGCAT TGCCACCACC TGTCAACTCC
TTTCTGGGAC TTTCGCTTTC CCCCTCCCGA TCGCCACGGC AGAACTCATC GCCGCCTGCCTTGCCCGCTG CTGGACAGGG GCTAGGTTGC TGGGCACTGA TAATTCCGTG GTGTTGTCTGTGCCTTCTAG TTGCCAGCCA TCTGTTGTTT GCCCCTCCCC CGTGCCTTCC TTGACCCTGGAAGGTGCCAC TCCCACTGTC CTTTCCTAAT AAAATGAGGA AATTGCATCG CATTGTCTGAGTAGGTGTCA TTCTATTCTG GGGGGTGGGG TGGGGCAGGA CAGCAAGGGG GAGGATTGGGAAGACAATAG CAGGCATGCT GGGGATGCGG TGGGCTCTAT GGCTCTAGAG CATGGCTACG
TAGATAAGTA GCATGGCGGG TTAATCATTA ACTACACCTG CAGGAGGAAC CCCTAGTGATGGAGTTGGCC ACTCCCTCTC TGCGCGCTCG CTCGCTCACT GAGGCCGGGC GACCAAAGGT CGCCCGACGC CCGGGCGGCC TCAGTGAGCG AGCGAGCGCG CAGCTGCCTG CAGG
【0259】
いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、配列番号407と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。
【0260】
いくつかの実施形態によれば、例示的なceDNAベクターは、以下に示すように、配列番号408を含むceDNA-2157である。
CCTGCAGGCA GCTGCGCGCT CGCTCGCTCA CTGAGGCCGC CCGGGCAAAG CCCGGGCGTCGGGCGACCTT TGGTCGCCCG GCCTCAGTGA GCGAGCGAGC GCGCAGAGAG GGAGTGGCCAACTCCATCAC TAGGGGTTCC TTGTAGTTAA TGATTAACCC GCCATGCTAC TTATCTACGT AGCCATGCAT ATGTACCACA TTTGTAGAGG TTTTACTTGC TTTAAAAAAC CTCCCACATCTCCCCCTGAA CCTGAAACAT AAAATGAATG CAATTGTTGT TGTTAACTTG TTTATTGCAG CTTATAATGG TTACAAATAA AGCAATAGCA TCACAAATTT CACAAATAAA GCATTTTTTT
CACTGCATTC TAGTTGTGGT TTGTCCAAAC TCATCAATGT ATCTTATCAT GTCTGTAAAATACAGCATAG CAAAACTTTA ACCTCCAAAT CAAGCCTCTA CTTGAATCCT TTTCTGAGGGATGAATAAGG CATAGGCATC AGGGGCTGTT GCCAATGTGC ATTAGCTGTT TGCAGCCTCACCTTCTTTCA TGGAGTTTAA GATATAGTGT ATTTTCCCAA GGTTTGAACT AGCTCTTCATTTCTTTATGT TTTAAATGCA CTGACCTCCC ACATTCCCTT TTTAGTAAAA TATTCAGAAATAATTTAAAT ACATCATTGC AATGAAAATA AATGTTTTTT ATTAGGCAGA ATCCAGATGCTCAAGGCCCT TCATAATATC CCCCAGTTTA GTAGTTGGAC TTAGGGAACA AAGGAACCTT
TAATAGAAAT TGGACAGCAA GAAAGCGAGC TTAATTAACT ATCAACATTC GCCTCTATTGAAGCTCTTTG TCACAGGGCT GGACAGGCCC TGGTGGGTCA CCTCGCAGGC GTAAACCTTGTGCTTCTCGT AATCGGCCTT GCTGAGGGTC AGTGTGCTGC TCAGGCTGTA TGTAGAGTCCTTGCTGTCCT GTTCTGTGAC GCTCTCCTGG CTGTTGCCGC TTTGCAGGGC GTTGTCCACCTTCCACTGCA CCTTGGCCTC GCGAGGGTAG AAGTTGTTGA GCAGGCACAC CACAGAGGCTGTGCCGGACT TCAGCTGCTC GTCGCTAGGT GGAAAGATGA ACACAGATGG AGCGGCCACG
GTCCGCTTGA TCTCAACTTT GGTTCCGCCG CCGAATGTCA GGCTGGTGTC GTGTTGCTGGCAGTAATACA CGGCAAAGTC CTCAGGTTCC AGCCGGCTAA TTGTCAGGGT GAAATCAGTGCCGCTGCCGC TGCCGCTGAA TCTATCGGGG ATGCCGGTGG CTCTACTAGA AGCTCCGTAGATCAGCAGTC TAGGAGCCTG TCCAGGTTTC TGCTGGTACC AGGCCAGGCT GGTGCTGGACACGGTCTGAG AGGCTCTACA AGACAGGGTA GCCCGTTCGC CGGGTGACAG GCTCAGGGTG
CCAGGGCTCT GGGTCAGCAC GATTTCGCAT CTGGCTCCGG ACAGCCACAG CAGCAGCAGGCCCAGCAGCT GGGCGGGCAC TCTCATGTCC ATGGTGGCTG CGGTTTAAAC TCAGTTCCAAAGGTTGGAAT CTAAAAGAGA GAAACAATTA GAATCAGTAG TTTAACACAT TATACACTTAAAAATTTTAT ATTTACCTTA GAGTAATTAT TCACTGTCCC AGGTCAGTGG TGGTGCCTGAAGCTGAGGAG ACAGGGCCCT GTCCTCGTCC GTATTTAAGC AGTGGATCCA GAGGGGCAACGGGGGAGGCT GCTGGTGAAT ATTAACCAAG GTCACCCCAG TTATCGGAGG AGCAAACAGG
GGCTAAGTCC ACTGGCTGGG ATCTGAGTCG CCCGCCTACG CTGCCCGGAC GCTTTGCCTGGGCAGTGTAC AGCTTCCACT GCACTTACCG AAAGGAGTCA TTGTACCTGG CTCAGAAACCACAGCGTCCT GTGTCCAAGG TGGAGGGGGT GGCGTGAGTC AGACAGTCTC TGGGAGAGTACCACTTAGCT GGCCCTCTGC TCTCACTGCA GAATCCTTAG TGGCTGTTCC ACTGGTAGCAAGATCCAGTA CCTCTAGACC AGCCTGACCA ACATGGTGAA ACCCCGTCCC TGTCAAAAAT
AGAAAAAATT AGCCGGGTGT GGTGGCACAG GCCTGTAATC CCAGTTACTT GGGAGGCTGAGGCTGACCAA CATGGAGAAA CCCGTCTCTA CTAAAAATAG AAAATTAGCC AGGTGTGGTGGCACATGCTT GTAATCCCAG CTACTTGGGA GGCTGAGGCA GGGGAAGGTT GTGGTGAGATGAGATTGTGT CACTGCACTC CAGCCTGGGC GACAGAGCAA ACCTCCATCT CAAAAAACAA AACAAAACAA AACAAAAAAA CCAAATGTTT ATTTGCCACA AAAACCCTAT CAGATGGGCG
TCTTTATCAT TTCCATTGTA CAGATGGGGA AACAGGCTTC GGGGTCGGGG CATAGCCACT TACTGACGAC TCCCCACCCA GCAAGTGGTT TTGAACCCGG ACCCTCTCAC ACTACCTAAACCACGCCAGG ACAACCTCTG CTCCTCTCCA CCGAAATTCC AAGGGGTCGA GTGGATGTTGGAGGTGGCAT GGGCCCAGAG AGGTCTCTGA CCTCTGCCCC AGCTCCAAGG TCAGCAGGCA GGGAGGGCTG TGTGTTTGCT GTTTGCTGCT TGCAATGTTT GCCCATTTTA GGGACATGAG
TAGGCTGAAG TTTGTTCAGT GTGGACTTCA GAGGCAGCAC ACAAACAGCT GCTGGAGGATGGGAACTGAG GGGTTGGAAG GGGGCAGGGT GAGCCCAGAA ACTCCTGTGT GCCTCTGAGCCTACATTCTT AACTACCCTC CGCCCTACTC CTGTCCCTCC CCCATTTCCT GTTTGCAGTACCCAAGGCAA ATATTAGTCT AAGTAGGACA GAGGGACAAA GAGCAGGAAC ACGGGGAGGCACAAGTTCTC GCATCGATTG TACCAAAGTA CAAGCGTTAA TGATTAACTG TACCAAAGTACAAGCGTTAA TGATTAACTG TACCAAAGTA CAAGCGTTAA TGATTAACGG GGGAGGCTGC
TGGTGAATAT TAACCAAGGT CACCCCAGTT ATCGGAGGAG CAAACAGGGG CTAAGTCCACCGGGGGAGGC TGCTGGTGAA TATTAACCAA GGTCACCCCA GTTATCGGAG GAGCAAACAGGGGCTAAGTC CACCGGGGGA GGCTGCTGGT GAATATTAAC CAAGGTCACC CCAGTTATCGGAGGAGCAAA CAGGGGCTAA GTCCACGGTA CCCACTGGGA GGATGTTGAG TAAGATGGAAAACTACTGAT GACCCTTGCA GAGACAGAGT ATTAGGACAT GTTTGAACAG GGGCCGGGCG
ATCAGCAGGT AGCTCTAGAG GATCCCCGTC TGTCTGCACA TTTCGTAGAG CGAGTGTTCCGATACTCTAA TCTCCCTAGG CAAGGTTCAT ATTTGTGTAG GTTACTTATT CTCCTTTTGTTGACTAAGTC AATAATCAGA ATCAGCAGGT TTGGAGTCAG CTTGGCAGGG ATCAGCAGCCTGGGTTGGAA GGAGGGGGTA TAAAAGCCCC TTCACCAGGA GAAGCCGTCA CACAGATCCACAAGCTCCTG AAGAGGTAAG GGTTTAAGGG ATGGTTGGTT GGTGGGGTAT TAATGTTTAATTACCTGGAG CACCTGCCTG AAATCACTTT TTTTCAGGTT GGACCAGGTC GCAGCCACCA
TGGAATTCGG CCTGTCCTGG GTCTTTCTGG TGGCCATCCT GAAGGGCGTG CAGTGCCAGGTCCAGCTGGT TCAGAGCGGC GCCGAGGTTA AGAAACCTGG CGCCAGCGTG AAAGTGTCCTGCAAGGCCAG CGGCTACCCC TTCACCAGCT ACGGCATCTC TTGGGTGCGG CAGGCCCCTG GACAAGGACT GGAGTGGATG GGATGGATCA GCACTTACCA GGGCAATACC AACTACGCCCAGAAATTCCA GGGCAGAGTG ACAATGACCA CCGACACCAG CACAACCACA GGCTACATGG
AACTGCGGAG ACTGAGAAGC GATGATACAG CCGTGTACTA CTGCGCCAGA GATTATACAAGAGGTGCTTG GTTCGGCGAG AGCCTGATCG GCGGATTCGA CAACTGGGGA CAAGGCACCCTGGTGACCGT GTCATCCGCC TCTACCAAGG GCCCTAGCGT GTTTCCACTG GCCCCTAGCTCTAAAAGCAC AAGCGGCGGC ACCGCCGCTC TGGGATGTCT GGTGAAGGAC TACTTCCCAGAGCCCGTGAC CGTGAGCTGG AACAGCGGCG CTCTCACATC TGGGGTGCAT ACCTTTCCCG
CCGTGCTGCA GTCTTCTGGA CTGTACAGCC TGAGCAGCGT GGTGACCGTG CCCTCCAGCAGCCTGGGCAC ACAGACCTAC ATCTGCAACG TGAACCACAA GCCATCTAAT ACCAAGGTGGATAAGAAGGT GGAACCTAAG AGCTGTGACA AGACACACAC ATGCCCCCCC TGCCCTGCTCCTGAGCTGCT GGCCGGCCCC TCCGTGTTTC TCTTCCCTCC TAAACCCAAG GACACACTGATGATTAGCCG GACCCCAGAG GTGACCTGTG TGGTGGTTGA CGTGAGTCAC GAAGATCCTG
AAGTGAAGTT CAACTGGTAC GTGGACGGCG TGGAGGTGCA TAACGCCAAA ACCAAGCCTCGGGAAGAGCA GTACAACAGC ACCTATAGAG TGGTGAGCGT GCTTACAGTG CTGCATCAGG ACTGGCTGAA CGGCAAGGAA TACAAGTGCA AGGTGTCCAA CAAAGCCCTG CCTCTGCCTGAAGAAAAGAC CATCAGCAAG GCCAAGGGCC AACCAAGAGA GCCTCAAGTG TACACCCTGC CCCCCAGCAG AGATGAGCTG ACCAAGAATC AGGTGTCCCT GACCTGCCTG GTCAAAGGCT
TCTACCCTAG CGACATCGCC GTCGAGTGGG AGAGCAATGG CCAGCCTGAG AACAACTACAAGACCACCCC TCCTGTGCTG GACAGCGACG GCAGCTTCTT CCTGTATAGC AAGCTGACCGTGGACAAGTC CAGGTGGCAG CAGGGCAATG TGTTCAGCTG TAGCGTGCTG CACGAGGCCCTGCACAGCCA CTACACACAG AAGTCTCTGA GCCTGTCTCC TGGCAAGTGA TAGCTTAAGGAGCATCTTAC CGCCATTTAT TCCCATATTT GTTCTGTTTT TCTTGATTTG GGTATACATT
TAAATGTTAA TAAAACAAAA TGGTGGGGCA ATCATTTACA TTTTTAGGGA TATGTAATTACTAGTTCAGG TGTATTGCCA CAAGACAAAC ATGTTAAGAA ACTTTCCCGT TATTTACGCTCTGTTCCTGT TAATCAACCT CTGGATTACA AAATTTGTGA AAGATTGACT GATATTCTTA ACTATGTTGC TCCTTTTACG CTGTGTGGAT ATGCTGCTTT ATAGCCTCTG TATCTAGCTATTGCTTCCCG TACGGCTTTC GTTTTCTCCT CCTTGTATAA ATCCTGGTTG CTGTCTCTTT TAGAGGAGTT GTGGCCCGTT GTCCGTCAAC GTGGCGTGGT GTGCTCTGTG TTTGCTGACGCAACCCCCAC TGGCTGGGGC ATTGCCACCA CCTGTCAACT CCTTTCTGGG ACTTTCGCTT TCCCCCTCCC GATCGCCACG GCAGAACTCA TCGCCGCCTG CCTTGCCCGC TGCTGGACAGGGGCTAGGTT GCTGGGCACT GATAATTCCG TGGTGTTGTC TGTGCCTTCT AGTTGCCAGC
CATCTGTTGT TTGCCCCTCC CCCGTGCCTT CCTTGACCCT GGAAGGTGCC ACTCCCACTG TCCTTTCCTA ATAAAATGAG GAAATTGCAT CGCATTGTCT GAGTAGGTGT CATTCTATTC TGGGGGGTGG GGTGGGGCAG GACAGCAAGG GGGAGGATTG GGAAGACAAT AGCAGGCATG CTGGGGATGC GGTGGGCTCT ATGGCTCTAG AGCATGGCTA CGTAGATAAG TAGCATGGCG GGTTAATCAT TAACTACACC TGCAGGAGGA ACCCCTAGTG ATGGAGTTGG CCACTCCCTC
TCTGCGCGCT CGCTCGCTCA CTGAGGCCGG GCGACCAAAG GTCGCCCGAC GCCCGGGCGG CCTCAGTGAG CGAGCGAGCG CGCAGCTGCC TGCAGG
【0261】
いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、配列番号408と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である。
【0262】
いくつかの実施形態によれば、配列番号404は以下の成分を含み、数字は核酸残基を示す:
856...921=免疫グロブリンカッパ可変1D-33シグナルペプチド
856..1566=LC1(軽鎖1)_コドン最適化
922..1242=S309_VL(可変軽鎖)
1243..1563=hIgKappa定常領域[P01834]
1243..1563=S309定常領域(ヒトカッパ)。
【0263】
いくつかの実施形態によれば、配列番号405は以下の成分を含み、数字は核酸残基を示す:
856..912=ヒトIGHV3-43重鎖シグナルペプチド
856..2286=HC1重鎖1(HC1)_コドン最適化
913..1293=S309_VH(可変重鎖)
1294..2283=GAALIE及びLS変異を有するS309定常領域(hIgG1)。
【0264】
いくつかの実施形態によれば、配列番号406は以下の成分を含み、数字は核酸残基を示す:
856..912=ヒトIGHV3-43重鎖シグナルペプチド[P0DP04]
856.2286=HC1_コドン最適化
913..1293=S309_VH
1294..2283 S309 GAALIE及びLS変異を有する定常領域(hIgG1)。
【0265】
いくつかの実施形態によれば、配列番号407は以下の成分を含み、数字は核酸残基を示す:
856..921=免疫グロブリンカッパ可変1D-33シグナルペプチド
856..1566=LC1_コドン最適化
922..1242=S309_VL
1243..1563=hIgKappa定常領域[P01834]
1243..1563=S309定常領域(ヒトカッパ)。
【0266】
いくつかの実施形態によれば、配列番号408は以下の成分を含み、数字は核酸残基を示す:
1..141=左-ITR_v1
142..193=スペーサー_左-ITR_536
相補体(194.415)=SV40_ポリA
416..810=HBB_3pUTR
相補体(416.810)=HBBv2_3pUTR
811..818=PacI_部位
相補体(822..1532)=翻訳1532-822
相補体(822..1532)=LC1_コドン最適化
相補体(825..1145)=hIgKappa定常領域[P01834]
相補体(825..1145)=S309定常領域(ヒトカッパ)
相補体(1146..1466)=S309_VL(可変軽鎖)
相補体(1467..1532)=免疫グロブリンカッパ可変1D-33シグナルペプチド[P01593.2]
相補体(1533..1539)=Mod_Minimum_Consensus_Kozak
相補体(1533..1542)=Mod_Minimum_Consensus_Kozak_v2
1543..1550=PmeI_部位
相補体(1551.2822)=CpGmin_hAAT_プロモーター_セット
スペーサー相補体(2823..2832)=10mer_2A
相補体(2823..3048)3xHNF1-4_ProEnh_10mer
エンハンサー相補体(2833..2952)=ProEnh
相補体(2959..2975)=HNF4部位
相補体(2976..2988)=HNF1部位
相補体(2989..3005)=HNF4部位
相補体(3006..3018)=HNF1部位
相補体(3019..3035)=HNF4部位
相補体(3036..3048)=HNF1部位
3049..3120=セルピンエンハンサー
3122..3193=セルピンエンハンサー
3195..3266=セルピンエンハンサー
3427..3610=マウスTTR 5pUTR(NM_013697.5)
3579...3610=EPD実験的に決定された5’UTR
3590...3610=EPD実験的に決定された5’UTR
3611..3701=MVMイントロン
3703...3709=SexAI_site。
【0267】
3710..3719=Mod_Minimum_Consensus_Kozak_v2
3713..3719=Mod_Minimum_Consensus_Kozak
3720..3776=ヒトIGHV3-43重鎖シグナルペプチド[P0DP04]
3720..5150=HC1_コドン最適化
3777..4157=S309_VH
4158..5147=GAALIE及びLS変異を有するS309定常領域(hIgG1)
5154..5159=AflII_部位
5160..5740=WPRE_3pUTR
5741..5965=bGH
5966..6026=スペーサー_右-ITR_v1
6027..6156=右-ITR_v1
【0268】
V.ceDNAベクターの産生の方法
A.一般的な産生
本明細書で定義されるような非対称ITR対又は対称ITR対を含む、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの特定の産生方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2018年9月7日に出願された国際出願第US18/49996号のセクションIVに記載されている。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、本明細書に記載されるように、昆虫細胞を使用して産生され得る。代替的な実施形態では、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2019年1月18日に出願された国際出願第US19/14122号に開示されるように、合成的に、またいくつかの実施形態では無細胞法で産生することができる。
【0269】
本明細書に記載されるように、一実施形態では、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、例えば、a)ポリヌクレオチド発現構築物テンプレート(例えば、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、及び/又はceDNA-バキュロウイルス)を内包する宿主細胞(例えば、昆虫細胞)の集団をインキュベートするステップであって、Repタンパク質の存在下では、宿主細胞内のceDNAベクターの産生を誘導するために効果的な条件下、かつそのために十分な時間にわたってウイルスカプシドコード配列を欠いており、宿主細胞が、ウイルスカプシドコード配列を含まない、インキュベートするステップと、b)ceDNAベクターを宿主細胞から回収し、単離するステップと、を含むプロセスによって取得され得る。Repタンパク質の存在は、修飾型ITRを有するベクターポリヌクレオチドの複製を誘導して、宿主細胞中でceDNAベクターを産生する。但し、ウイルス粒子(例えば、AAVビリオン)は発現されない。したがって、AAV又は他のウイルスベースベクターにおいて天然に課されるもの等のサイズ制限はない。
【0270】
宿主細胞から単離されたceDNAベクターの存在は、宿主細胞から単離されたDNAをceDNAベクター上に単一認識部位を有する制限酵素で消化し、消化されたDNA材料を非変性ゲル上で分析して、直鎖状かつ非連続的なDNAと比較して特徴的な直鎖状かつ連続的なDNAのバンドの存在を確認することによって確認され得る。
【0271】
更に別の態様では、本開示は、例えば、Lee,L.et al.(2013)Plos One 8(8):e69879に記載されるように、非ウイルス性DNAベクターの産生において、DNAベクターポリヌクレオチド発現テンプレート(ceDNAテンプレート)をそれら自体のゲノムに安定して組み込んでいる宿主細胞株の使用を提供する。好ましくは、Repは、約3のMOIで宿主細胞に付加される。宿主細胞株が哺乳動物細胞株、例えば、HEK293細胞である場合、細胞株は、安定して組み込まれたポリヌクレオチドベクターテンプレートを有し得、ヘルペスウイルス等の第2のベクターを使用して、Repタンパク質を細胞に導入することができ、Rep及びヘルパーウイルスの存在下でのceDNAの切除及び増幅を可能にする。
【0272】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターを作製するために使用される宿主細胞は、昆虫細胞であり、バキュロウイルスは、Repタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、例えば
図4A~
図4C及び実施例1に記載される、ceDNAの非ウイルス性DNAベクターポリヌクレオチド発現構築物テンプレートとを両方送達するために使用される。いくつかの実施形態によれば、宿主細胞は、Repタンパク質を発現するために操作される。
【0273】
次いで、ceDNAベクターは、宿主細胞から採取され、単離される。本明細書に記載されるceDNAベクターを細胞から採取及び収集するための時間は、ceDNAベクターの高収率産生を達成するために選択され、最適化され得る。例えば、回収時間は、細胞生存率、細胞形態、細胞増殖などを考慮して選択され得る。一実施形態では、細胞は増殖し、ceDNAベクターを産生するためのバキュロウイルス感染から十分な時間が経過した後、但し細胞のほとんどがバキュロウイルスの毒性のために死滅し始める前に採取される。DNA-ベクターは、Qiagen Endo-Freeプラスミドキット等のプラスミド精製キットを使用して単離され得る。プラスミド単離のために開発された他の方法もまた、DNA-ベクターに対して適合され得る。一般に、任意の核酸精製方法が採用され得る。
【0274】
DNAベクターは、DNAの精製のための当業者に既知の任意の手段によって精製され得る。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、DNA分子として精製される。別の実施形態では、ceDNAベクターは、エキソソーム又は微粒子として精製される。
【0275】
抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの存在は、細胞から単離されたベクターDNAをDNAベクター上に単一認識部位を有する制限酵素で消化すること、並びにゲル電気泳動を使用し、消化されたDNA材料及び未消化のDNA材料の両方を分析して、直鎖状かつ非連続的なDNAと比較して特徴的な直鎖状かつ連続的なDNAのバンドの存在を確認することによって確認され得る。
図4C及び
図4Dは、本明細書におけるプロセスによって産生された閉端ceDNAベクターの存在を特定するための一実施形態を示す。
【0276】
いくつかの実施形態によれば、ceDNAは無細胞環境で合成的に産生される。
【0277】
B.ceDNAプラスミド
ceDNA-プラスミドは、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの後期産生に使用されるプラスミドである。いくつかの実施形態によれば、ceDNA-プラスミドは、転写方向の作動可能に連結された構成成分として、少なくとも(1)修飾型5’ITR配列、(2)シス調節エレメントを含有する発現カセット、例えば、プロモーター、誘導性プロモーター、調節スイッチ、エンハンサーなど、及び(3)修飾型3’ITR配列(3’ITR配列は、5’ITR配列に対して対称である)を提供する既知の技法を使用して構築され得る。いくつかの実施形態では、ITRによって隣接された発現カセットは、外因性配列を導入するためのクローニング部位を含む。発現カセットは、AAVゲノムのrep及びcapコード領域を置き換える。
【0278】
一態様では、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、本明細書では、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、導入遺伝子を含む発現カセット、及び変異型又は修飾型AAV ITRをこの順序でコードする「ceDNA-プラスミド」と称されるプラスミドから取得され、当該ceDNA-プラスミドは、AAVカプシドタンパク質コード配列を欠いている。代替的な実施形態では、ceDNA-プラスミドは、第1の(又は5’)修飾型又は変異型AAV ITR、導入遺伝子を含む発現カセット、及び第2の(又は3’)修飾型AAV ITRをこの順序でコードし、当該ceDNA-プラスミドは、AAVカプシドタンパク質コード配列を欠いており、5’及び3’ITRは、互いに対して対称である。代替的な実施形態では、ceDNA-プラスミドは、第1の(又は5’)修飾型又は変異型AAV ITR、導入遺伝子を含む発現カセット、及び第2の(又は3’)変異型又は修飾型AAV ITRをこの順序でコードし、当該ceDNA-プラスミドは、AAVカプシドタンパク質コード配列を欠いており、5’及び3’修飾型ITRは、同じ修飾を有する(すなわち、それらは互いに対して逆相補又は対称である)。
【0279】
更なる実施形態では、ceDNA-プラスミド系は、ウイルスカプシドタンパク質コード配列を欠いている(すなわち、AAVカプシド遺伝子だけでなく、他のウイルスのカプシド遺伝子も欠いている)。加えて、特定の実施形態では、ceDNA-プラスミドはまた、AAV Repタンパク質コード配列を欠いている。したがって、好ましい実施形態では、ceDNA-プラスミドは、機能的AAV cap及びAAV rep遺伝子(AAV2の場合GG-3’)に加えて、ヘアピン形成を可能にする可変パリンドローム配列を欠いている。
【0280】
本開示のceDNA-プラスミドは、当該技術分野において周知の任意のAAV血清型のゲノムの天然核酸配列を使用して生成され得る。一実施形態では、ceDNA-プラスミド骨格は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAV-DJ、及びAAV-DJ8ゲノムに由来する。例えば、NCBI:NC002077、NC001401、NC001729、NC001829、NC006152、NC006260、NC006261、Springerによって維持されているURLで入手可能なKotin and Smith,The Springer Index of Viruses(wwwウェブアドレス:oesys.springer.de/viruses/database/mkchapter.asp?virID=42.04)(注記-URL又はデータベースに対する参照は、本出願の有効な出願日現在のURL又はデータベースの内容を指す)。特定の実施形態では、ceDNA-プラスミド骨格は、AAV2ゲノムに由来する。別の特定の実施形態では、ceDNA-プラスミド骨格は、これらのAAVゲノムのうちの1つに由来する5’及び3’ITRに含まれるように遺伝子操作された合成骨格である。
【0281】
ceDNA-プラスミドは、ceDNAベクター産生細胞株の確立における使用のための選択可能又は選択マーカーを任意選択的に含み得る。一実施形態では、選択マーカーは、3’ITR配列の下流(すなわち、3’)に挿入され得る。別の実施形態では、選択マーカーは、5’ITR配列の上流(すなわち、5’)に挿入され得る。適切な選択マーカーは、例えば、薬物耐性を付与するものを含む。選択マーカーは、例えば、ブラスチシジンS耐性遺伝子、カナマイシン、ゲネチシンなどであり得る。好ましい実施形態では、薬物選択マーカーは、ブラスチシジンS耐性遺伝子である。
【0282】
抗体及びその抗原結合断片の発現のための例示的なceDNA(例えば、rAAV0)ベクターは、rAAVプラスミドから産生される。rAAVベクターの産生のための方法は、(a)宿主細胞に上記のようなrAAVプラスミドを提供することであって、宿主細胞及びプラスミドの両方が、カプシドタンパク質コード遺伝子を欠いている、提供することと、(b)ceDNAゲノムの産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養することと、(c)細胞を採取し、当該細胞から産生されたAAVゲノムを単離することと、を含み得る。
【0283】
C.ceDNAプラスミドからceDNAベクターを作製する例示的な方法
抗体及びその抗原結合断片の発現のためのカプシドのないceDNAベクターを作製するための方法、特にインビボ実験に十分なベクターを提供するために十分に高い収率を有する方法もまた、本明細書に提供される。
【0284】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの産生方法は、(1)発現カセット及び2つの対称ITR配列を含む核酸構築物を宿主細胞(例えば、Sf9細胞)中に導入するステップと、(2)任意選択的に、例えば、プラスミド上に存在する選択マーカーを使用することによってクローン細胞株を確立するステップと、(3)Repコード遺伝子を(当該遺伝子を担持するバキュロウイルスでのトランスフェクション又は感染のいずれかによって)当該昆虫細胞中に導入するステップと、(4)細胞を回収し、ceDNAベクターを精製するステップと、を含む。ceDNAベクターの産生のために上記の発現カセット及び2つのITR配列を含む核酸構築物は、ceDNA-プラスミド、又は下記のようにceDNAプラスミドで生成されたバクミド若しくはバキュロウイルスの形態であり得る。核酸構築物は、トランスフェクション、ウイルス形質導入、安定した組み込み、又は当該技術分野において既知の他の方法によって宿主細胞中に導入され得る。
【0285】
D.細胞株
抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの産生において使用される宿主細胞株は、Spodoptera frugiperda(Sf9、Sf21など)若しくはTrichoplusia ni細胞に由来する昆虫細胞株、又は他の無脊椎動物、脊椎動物、若しくは哺乳動物細胞を含む他の真核細胞株を含み得る。当業者に既知の他の細胞株、例えば、HEK293、Huh-7、HeLa、HepG2、HeplA、911、CHO、COS、MeWo、NIH3T3、A549、HT1 180、単球、並びに成熟及び未成熟樹状細胞を使用することもできる。宿主細胞株は、高収率のceDNAベクター産生のために、ceDNA-プラスミドの安定した発現のためにトランスフェクトされ得る。
【0286】
ceDNA-プラスミドは、当該技術分野において既知の試薬(例えば、リポソーム、リン酸カルシウム)又は物理的手段(例えば、エレクトロポレーション)を使用し、一時的なトランスフェクションによってSf9細胞中に導入され得る。代替的に、ceDNA-プラスミドをそれらのゲノム中に安定して組み込んでいる安定したSf9細胞株が確立され得る。そのような安定した細胞株は、選択マーカーを上記のceDNA-プラスミド中に組み込むことによって確立され得る。細胞株をトランスフェクションするために使用されるceDNA-プラスミドが、抗生物質などの選択マーカーを含む場合、ceDNA-プラスミドでトランスフェクションされ、ceDNA-プラスミドDNAをそれらのゲノム中に組み込んでいる細胞は、細胞増殖培地への抗生物質の添加によって選択され得る。次いで、細胞の耐性クローンは、単一細胞希釈又はコロニー移動技法によって単離され、伝播され得る。
【0287】
E.ceDNAベクターを単離し、精製する
ceDNAベクターを入手し、単離するためのプロセスの例は、
図4A~
図4E及び下記の特定の実施例に記載される。本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNA-ベクターは、AAV Repタンパク質を発現するプロデューサー細胞から取得され、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、又はceDNA-バキュロウイルスで更に形質転換され得る。ceDNAベクターの産生に有用なプラスミドには、抗体及びその抗原結合断片をコードするプラスミド、又は1つ以上のREPタンパク質をコードするプラスミドが含まれる。
【0288】
いくつかの態様によれば、ポリヌクレオチドは、プラスミド(Rep-プラスミド)、バクミド(Rep-バクミド)、又はバキュロウイルス(Rep-バキュロウイルス)中のプロデューサー細胞に送達されたAAV Repタンパク質(Rep78若しくは68)をコードする。Rep-プラスミド、Rep-バクミド、及びRep-バキュロウイルスは、上記の方法によって生成され得る。
【0289】
抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターを産生する方法は、本明細書に記載される。本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターを生成するために使用される発現構築物は、プラスミド(例えば、ceDNA-プラスミド)、バクミド(例えば、ceDNA-バクミド)、及び/又はバキュロウイルス(例えば、ceDNA-バキュロウイルス)であり得る。単なる例として、ceDNAベクターは、ceDNA-バキュロウイルス及びRep-バキュロウイルスに共感染した細胞から生成され得る。Rep-バキュロウイルスから産生されたRepタンパク質は、ceDNA-バキュロウイルスを複製して、ceDNAベクターを生成し得る。代替的に、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、Rep-プラスミド、Rep-バクミド、又はRep-バキュロウイルス中で送達されるAAV Repタンパク質(Rep78/52)をコードする配列を含む構築物で安定してトランスフェクトされた細胞から生成され得る。ceDNA-バキュロウイルスは、細胞に一時的にトランスフェクトされ、Repタンパク質によって複製され、ceDNAベクターを産生し得る。
【0290】
バクミド(例えば、ceDNA-バクミド)は、Sf9、Sf21、Tni(Trichoplusia ni)細胞、High Five細胞などの許容昆虫細胞中にトランスフェクトされ得、対称ITR及び発現カセットを含む配列を含む組換えバキュロウイルスである、ceDNA-バキュロウイルスを生成し得る。ceDNA-バキュロウイルスを昆虫細胞中に再度感染させて、次世代の組換えバキュロウイルスを取得することができる。任意選択的に、このステップを一回又は複数回繰り返して、より多い量の組換えバキュロウイルスを産生することができる。
【0291】
本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターを細胞から回収及び採取するための時間は、ceDNAベクターの高収率産生を達成するために選択され、最適化され得る。例えば、回収時間は、細胞生存率、細胞形態、細胞増殖などを考慮して選択され得る。通常、細胞は、ceDNAベクター(例えば、ceDNAベクター)を産生するためのバキュロウイルス感染から十分な時間が経過した後、但し細胞の大半がウイルスの毒性のために死滅し始める前に採取され得る。ceDNAベクターは、Qiagen ENDO-FREE PLASMID(登録商標)キットなどのプラスミド精製キットを使用して、Sf9細胞から単離され得る。プラスミド単離のために開発された他の方法もまた、ceDNAベクターに対して適合され得る。一般に、任意の当該技術分野において既知の核酸精製方法、並びに市販のDNA抽出キットが採用され得る。
【0292】
代替的に、細胞ペレットをアルカリ溶解プロセスに供し、得られた溶解物を遠心分離し、クロマトグラフィー分離を実施することによって、精製が実装され得る。1つの非限定例として、このプロセスは、核酸を保持するイオン交換カラム(例えば、SARTOBIND Q(登録商標))上に上清を装填し、次いで溶出し(例えば、1.2M NaCl溶液で)、ゲル濾過カラム(例えば、6高速流GE)上で更なるクロマトグラフィー精製を実施することによって実施され得る。次いで、カプシド不含AAVベクターは、例えば、沈殿によって回収される。
【0293】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターはまた、エキソソーム又は微粒子の形態で精製され得る。多くの細胞型が、膜微小胞の脱落を介して、可溶性タンパク質だけでなく、複合タンパク質/核酸カーゴも放出することは、当該技術分野において既知である(Cocucci et al,2009、欧州特許第10306226.1号)。そのような小胞は、微小胞(微粒子とも称される)及びエキソソーム(ナノ小胞とも称される)を含み、それらの両方が、タンパク質及びRNAをカーゴとして含む。微小胞は、形質膜の直接出芽から生成され、エキソソームは、多小胞エンドソームと形質膜との融合時に細胞外環境に放出される。したがって、ceDNAベクターを含有する微小胞及び/又はエキソソームは、ceDNAプラスミド、又はceDNAプラスミドで生成されたバクミド若しくはバキュロウイルスで形質導入された細胞から単離され得る。
【0294】
微小胞は、培養培地を濾過又は20,000×gでの超遠心分離に供することによって単離することができ、エキソソームは、100,000×gで単離することができる。超遠心分離の最適な持続時間は、実験的に決定することができ、小胞が単離される特定の細胞型に依存する。好ましくは、培養培地は、最初に低速遠心分離(例えば、2000×gで5~20分間)によって一掃され、例えば、AMICON(登録商標)スピンカラム(Millipore、Watford,UK)を使用し、スピン濃度に供される。微小胞及びエキソソームは、微小胞及びエキソソーム上に存在する特定の表面抗原を認識する特定の抗体を使用することによって、FACS又はMACSを介して更に精製され得る。他の微小胞及びエキソソーム精製方法としては、免疫沈殿、親和性クロマトグラフィー、濾過、及び特定の抗体又はアプタマーでコーティングされた磁気ビーズが挙げられるが、これらに限定されない。精製時に、小胞を、例えば、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。ceDNA含有小胞を送達するために微小胞又はエキソソームを使用する1つの利点は、これらの小胞が、それぞれの細胞型上の特定の受容体によって認識されるそれらの膜タンパク質上に含めることによって、様々な細胞型に標的化され得ることである。(欧州特許第10306226号も参照されたい)
【0295】
本明細書における本開示の別の態様は、ceDNA構築物をそれら自体のゲノム中に安定して組み込んでいる宿主細胞株からceDNAベクターを精製する方法に関する。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、DNA分子として精製される。別の実施形態では、ceDNAベクターは、エキソソーム又は微粒子として精製される。
【0296】
国際出願第US18/49996号の
図5は、実施例に記載される方法を使用して、複数のceDNA-プラスミド構築物からceDNAの産生を確認するゲルを示す。ceDNAは、実施例の
図4Dに関して考察されるように、ゲル中の特徴的なバンドパターンによって確認される。
【0297】
VI.薬学的組成物
別の態様では、薬学的組成物が提供される。薬学的組成物は、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクター、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む。
【0298】
本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、対象の細胞、組織、又は器官へのインビボ送達のために対象に投与するのに好適な薬学的組成物に組み込まれ得る。典型的に、薬学的組成物は、本明細書に開示されるceDNAベクター及び薬学的に許容される担体を含む。
【0299】
本明細書に開示される薬学的製剤は、直接投与され得る液体例えば、水性溶液、及び投与前に希釈剤を添加することによって溶液に再構成され得る凍結乾燥粉末を含む。特定の実施形態において、本明細書に開示されるceDNAベクターを、少なくとも1つの追加の治療剤とともに又はそれなしで含む製剤は、適切な賦形剤を使用して凍結乾燥物として製剤化することができる。凍結乾燥は、市販の凍結乾燥器(例えば、VirTis Lab Scale Lyophilizer)上で一般的な凍結乾燥サイクルを使用して行うことができる。
【0300】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、治療的投与(例えば、非経口投与)の所望の経路に好適な薬学的組成物に組み込まれ得る。高圧静脈内又は動脈内注入を介した受動組織形質導入、同様に、核内微量注射若しくは細胞質内注射などの細胞内注射もまた、企図される。治療目的のための薬学的組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、又は高ceDNAベクター濃度に好適な他の秩序構造として製剤化され得る。無菌注射液は、必要に応じて、上記に列挙した成分の1つ又は組み合わせとともに、適切なバッファーに必要量のceDNAベクター化合物を組み込んだ後、ceDNAベクターを含む濾過滅菌によって調製することができ、核酸中の導入遺伝子をレシピエントの細胞に送達するように製剤化して、その中の導入遺伝子又はドナー配列の治療的発現をもたらし得る。この組成物はまた、薬学的に許容される担体を含み得る。
【0301】
抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターを含む薬学的に活性な組成物は、細胞、例えば、対象の細胞に様々な目的のための導入遺伝子を送達するように製剤化することができる。
【0302】
治療目的のための薬学的組成物は、典型的に、無菌であり、製造及び貯蔵の条件下で安定していなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、又は高ceDNAベクター濃度に好適な他の秩序構造として製剤化され得る。無菌の注射可能な溶液は、適切な緩衝液中の必要量のceDNAベクター化合物を、必要に応じて、上記で列挙した成分のうちの1つ又は組み合わせと組み込み、濾過滅菌によって調製され得る。
【0303】
特定の実施形態において、非経口投与のための製剤は、凍結乾燥形態又は溶液中で保存することができる。本発明の化合物は、一般に、非経口製剤は、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルに入れられる。
【0304】
特定の実施形態では、医薬製剤が製剤化されると、溶液、懸濁液、ゲル、エマルジョン、固体として、又は脱水若しくは凍結乾燥粉末として、滅菌バイアル中に保存することができる。特定の実施形態では、そのような製剤は、すぐに使用できる形態、又は投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥された)のいずれかで保存することができる。
【0305】
本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、局所、全身、羊膜内、くも膜下腔内、頭蓋内、動脈内、静脈内、リンパ内、腹腔内、皮下、気管、組織内(例えば、筋肉内、心臓内、肝内、腎臓内、脳内)、くも膜下腔内、膀胱内、結膜(例えば、眼窩外、眼窩内、眼窩後、網膜内、網膜下、脈絡膜、脈絡膜下、間質内、腔内、硝子体内)、及び蝸牛内、並びに粘膜(例えば、経口、直腸、経鼻)投与に好適な薬学的組成物に組み込むことができる。高圧静脈内又は動脈内注入を介した受動組織形質導入、同様に、核内微量注射若しくは細胞質内注射等の細胞内注射もまた、企図される。
【0306】
いくつかの態様によれば、本明細書で提供される方法は、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のための1つ以上のceDNAベクターを宿主細胞に送達することを含む。本明細書ではまた、そのような方法によって産生される細胞、及びそのような細胞を含むか又はそのような細胞から産生される生物(動物、植物、又は真菌など)も提供される。核酸の送達方法としては、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン、又は脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、及び薬剤によって増強されたDNAの取り込みが挙げられ得る。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号、及び同第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(商標)及びLipofectin(商標))。送達は、細胞(例えば、インビトロ若しくはエクスビボ投与)又は標的組織(例えば、インビボ投与)に対するものであり得る。
【0307】
核酸を細胞に送達するための様々な技法及び方法が、当該技術分野において既知である。例えば、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAなどの核酸は、脂質ナノ粒子(LNP)、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、リポプレックス、又はコアシェルナノ粒子中に製剤化され得る。典型的に、LNPは、核酸(例えば、ceDNA)分子、1つ以上のイオン化又はカチオン性脂質(若しくはそれらの塩)、1つ以上の非イオン性又は中性脂質(例えば、リン脂質)、凝集を防ぐ分子(例えば、PEG若しくはPEG-脂質コンジュゲート)、及び任意選択的にステロール(例えば、コレステロール)で構成される。
【0308】
抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAなどの核酸を細胞に送達するための別の方法は、細胞によって内在化されるリガンドと核酸を複合することによるものである。例えば、リガンドは、細胞表面上の受容体に結合し、エンドサイトーシスを介して内在化され得る。リガンドは、核酸中のヌクレオチドに共有結合的に連結され得る。核酸を細胞中に送達するための例示的なコンジュゲートは、例えば、国際公開第2015/006740号、同第2014/025805号、同第2012/037254号、同第2009/082606号、同第2009/073809号、同第2009/018332号、同第2006/112872号、同第2004/090108号、同第2004/091515号、及び同第2017/177326号に記載される。
【0309】
抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAなどの核酸はまた、トランスフェクションによって細胞に送達され得る。有用なトランスフェクション方法としては、脂質媒介性トランスフェクション、カチオン性ポリマー媒介性トランスフェクション、又はリン酸カルシウム沈殿が挙げられるが、これらに限定されない。トランスフェクション試薬は、当該技術分野において周知であり、TurboFectトランスフェクション試薬(Thermo Fisher Scientific)、Pro-Ject試薬(Thermo Fisher Scientific)、TRANSPASS(商標)Pタンパク質トランスフェクション試薬(New England Biolabs)、CHARIOT(商標)タンパク質送達試薬(Active Motif)、PROTEOJUICE(商標)タンパク質トランスフェクション試薬(EMD Millipore)、293フェクチン、LIPOFECTAMINE(商標)2000、LIPOFECTAMINE(商標)3000(Thermo Fisher Scientific)、LIPOFECTAMINE(商標)(Thermo Fisher Scientific)、LIPOFECTIN(商標)(Thermo Fisher Scientific)、DMRIE-C、CELLFECTIN(商標)(Thermo Fisher Scientific)、OLIGOFECTAMINE(商標)(Thermo Fisher Scientific)、LIPOFECTACE(商標)、FUGENE(商標)(Roche,Basel,Switzerland)、FUGENE(商標)HD(Roche)、TRANSFECTAM(商標)(Transfectam,Promega,Madison,Wis.)、TFX-10(商標)(Promega)、TFX-20(商標)(Promega)、TFX-50(商標)(Promega)、TRANSFECTIN(商標)(BioRad,Hercules,Calif.)、SILENTFECT(商標)(Bio-Rad)、Effectene(商標)(Qiagen,Valencia,Calif.)、DC-chol(Avanti Polar Lipids)、GENEPORTER(商標)(Gene Therapy Systems,San Diego,Calif.)、DHARMAFECT 1(商標)(Dharmacon,Lafayette,Colo.)、DHARMAFECT 2(商標)(Dharmacon)、DHARMAFECT 3(商標)(Dharmacon)、DHARMAFECT 4(商標)(Dharmacon)、ESCORT(商標)III(Sigma,St.Louis,Mo.)、及びESCORT(商標)IV(Sigma Chemical Co.)が含まれるが、これらに限定されない。ceDNAなどの核酸もまた、当業者に既知のマイクロフルイディクス方法を介して細胞に送達され得る。
【0310】
本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターはまた、インビボでの細胞の形質導入のために生物に直接投与され得る。投与は、分子を血液又は組織細胞と最終的に接触させるために通常使用される経路のうちのいずれかによるものであり、注射、注入、局所用途、及びエレクトロポレーションが挙げられるが、これらに限定されない。そのような核酸を投与する好適な方法は、当業者によって利用可能かつ周知であり、特定の組成物を投与するために2つ以上の経路が使用され得るが、特定の経路は、多くの場合、別の経路よりもより即時的であり、より効果的な反応を提供し得る。
【0311】
本開示による抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、対象中の細胞又は標的器官への送達のためにリポソームに付加され得る。リポソームは、少なくとも1つの脂質二層を有する小胞である。リポソームは、典型的に、製剤開発の文脈において薬物/治療薬送達のための担体として使用される。それらは、細胞膜と融合し、その脂質構造を再配置することによって作用して、薬物又は活性製剤成分(API)を送達する。そのような送達のためのリポソーム組成物は、リン脂質、特にホスファチジルコリンを有する化合物で構成されるが、これらの組成物はまた、他の脂質を含んでもよい。化合物を含有するポリエチレングリコール(PEG)官能基を含むが、これに限定されない例示的なリポソーム及びリポソーム製剤は、2018年9月7日に出願された国際出願第US2018/050042号及び2018年12月6日に出願された国際出願第US2018/064242号に開示され、例えば、「薬学的製剤」と題されるセクションを参照されたい。
【0312】
当該技術分野において既知の様々な送達方法又はそれらの修正を使用して、ceDNAベクターをインビトロ又はインビボで送達することができる。例えば、いくつかの実施形態では、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、機械的、電気的、超音波、流体力学的、又はレーザーベースエネルギーによって細胞膜に一時的な貫通を作製することによって送達され、それにより標的化された細胞へのDNA進入が促進される。例えば、ceDNAベクターは、サイズ制限されたチャネルを通して細胞を圧搾することによるか、又は当該技術分野において既知の他の手段によって細胞膜を一時的に崩壊させることにより送達され得る。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターのみが、裸のDNAとして、肺、肝臓、腎臓、胆嚢、前立腺、副腎、心臓、腸、胃、皮膚、胸腺、心筋、又は骨格筋から選択される任意の1つ以上の組織のうちのいずれか1つに直接注射される。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、遺伝子銃によって送達される。カプシド不含AAVベクターでコーティングされた金又はタングステン球状粒子(1~3μm直径)は、加圧ガスによって高速に加速され、標的組織細胞中に貫通することができる。
【0313】
本明細書では、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクター及び薬学的に許容される担体を含む組成物が具体的に企図されている。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、脂質送達系、例えば、本明細書に記載されるリポソームで製剤化される。いくつかの実施形態によれば、そのような組成物は、熟練した開業医によって望まれる任意の経路によって投与される。組成物は、経口、非経口、舌下、経皮、直腸、経粘膜、局所、吸入を介した、口腔内投与を介した、胸膜内、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鼻腔内、髄腔内、及び関節内、又はそれらの組み合わせを含む異なる経路によって対象に投与され得る。獣医学的使用のために、組成物は、通常の獣医学的慣習に従って好適に許容される製剤として投与され得る。獣医師は、特定の動物に最も適切な投与計画及び投与経路を容易に決定することができる。組成物は、従来のシリンジ、無針注射デバイス、「マイクロプロジェクタイルボンバードメントガン」、又はエレクトロポレーション(「EP」)、「流体力学的方法」、又は超音波などの他の物理的方法によって投与することができる。
【0314】
場合によっては、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、内臓及び肢全体の骨格筋への、任意の水溶性化合物及び粒子の直接細胞内送達のための単純かつ非常に効率的な方法である流体力学的注射によって送達される。
【0315】
いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、膜中にナノスコピック孔を作製することにより、超音波によって送達され、内臓又は腫瘍の細胞へのDNA粒子の細胞内送達を促進するため、プラスミドDNAのサイズ及び濃度は、この系の効率性において大きな役割を果たす。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、磁場を使用することによってマグネトフェクションにより送達され、核酸を含有する粒子を標的細胞中に濃縮する。
【0316】
いくつかの実施形態によれば、化学送達系は、例えば、カチオン性リポソーム/ミセル又はカチオン性ポリマーに属するポリカチオン性ナノマー粒子による負電荷核酸の圧縮を含むナノマー複合体を使用することによって使用され得る。送達方法に使用されるカチオン性脂質としては、一価カチオン性脂質、多価カチオン性脂質、グアニジン含有化合物、コレステロール誘導体化合物、カチオン性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンイミン)、ポリ-L-リジン、プロタミン、他のカチオン性ポリマー)、及び脂質-ポリマーハイブリッドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0317】
A.エキソソーム:
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、エキソソームにパッケージ化されることによって送達される。エキソソームは、多胞体と形質膜との融合に続いて、細胞外環境中に放出されるエンドサイトーシス起源の小膜小胞である。それらの表面は、ドナー細胞の細胞膜からの脂質二層からなり、それらは、エキソソームを産生した細胞からのサイトゾルを含有し、表面上の親細胞からの膜タンパク質を呈する。エキソソームは、上皮細胞、B及びTリンパ球、マスト細胞(mast cell、MC)、同様に、樹状細胞(dendritic cell、DC)を含む様々な細胞型によって産生される。いくつかの実施形態によれば、10nm~1μm、20nm~500nm、30nm~250nm、50nm~100nmの直径を有するエキソソームが、使用のために想定される。エキソソームは、それらのドナー細胞を使用するか、又は特定の核酸をそれらに導入するかのいずれかによって、標的細胞への送達のために単離され得る。当該技術分野において既知の様々なアプローチを使用して、本開示のカプシド不含AAVベクターを含有するエキソソームを産生することができる。
【0318】
B.微粒子/ナノ粒子
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、脂質ナノ粒子によって送達される。一般に、脂質ナノ粒子は、例えば、Tam et al.(2013).Advances in Lipid Nanoparticles for siRNA delivery.Pharmaceuticals 5(3):498-507によって開示されるように、イオン化アミノ脂質(例えば、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート、DLin-MC3-DMA、ホスファチジルコリン(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DSPC)、コレステロール、及びコート脂質(ポリエチレングリコール-ジミリストールグリセロール、PEG-DMG)を含む。
【0319】
いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子は、約10~約1000nmの平均直径を有する。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子は、300nm未満の直径を有する。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子は、約10~約300nmの直径を有する。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子は、200nm未満の直径を有する。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子は、約25~約200nmの直径を有する。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子調製物(例えば、複数の脂質ナノ粒子を含む組成物)は、サイズ分布を有し、平均サイズ(例えば、直径)は、約70nm~約200nmであり、より典型的に、平均サイズは、約100nm以下である。
【0320】
当該技術分野において既知の様々な脂質ナノ粒子を使用して、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターを送達することができる。例えば、脂質ナノ粒子を使用する様々な送達方法は、米国特許第9,404,127号、同第9,006,417号、及び同第9,518,272号に記載されている。
【0321】
C.コンジュゲート
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、コンジュゲートされる(例えば、細胞取り込みを増加させる薬剤に共有結合される)。「細胞取り込みを増加させる薬剤」は、脂質膜を通した核酸の輸送を促進する分子である。例えば、核酸は、親油性化合物(例えば、コレステロール、トコフェロールなど)、細胞貫通ペプチド(cell penetrating peptide、CPP)(例えば、ペネトラチン、TAT、Syn1Bなど)、及びポリアミン(例えば、スペルミン)にコンジュゲートし得る。細胞取り込みを増加させる薬剤の更なる例は、例えば、Winkler(2013).Oligonucleotide conjugates for therapeutic applications.Ther.Deliv.4(7);791-809に開示されている。
【0322】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、ポリマー(例えば、ポリマー分子)又は葉酸塩分子(例えば、葉酸分子)にコンジュゲートされる。一般に、ポリマーに複合された核酸の送達は、例えば、国際公開第2000/34343号及び同第2008/022309号に記載されるように、当該技術分野において既知である。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、例えば、米国特許第8,987,377号によって記載されるように、ポリ(アミド)ポリマーにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態によれば、本開示によって記載される核酸は、米国特許第8,507,455号に記載されるように、葉酸分子にコンジュゲートされる。
【0323】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、例えば、米国特許第8,450,467号に記載されるように、炭水化物にコンジュゲートされる。
【0324】
D.ナノカプセル
代替的に、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターのナノカプセル製剤が使用され得る。ナノカプセルは、一般に、安定かつ再生可能な方式で物質を捕捉することができる。細胞内ポリマー過負荷に起因する副作用を避けるために、そのような微細粒子(およそ0.1μmのサイズ)は、ポリマーを使用して、インビボで分解され得るように設計されるべきである。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子が、使用のために企図される。
【0325】
E.リポソーム
本開示による抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、対象中の細胞又は標的器官への送達のためにリポソームに付加され得る。リポソームは、少なくとも1つの脂質二層を有する小胞である。リポソームは、典型的に、製剤開発の文脈において薬物/治療薬送達のための担体として使用される。それらは、細胞膜と融合し、その脂質構造を再配置することによって作用して、薬物又は活性製剤成分(API)を送達する。そのような送達のためのリポソーム組成物は、リン脂質、特にホスファチジルコリンを有する化合物で構成されるが、これらの組成物はまた、他の脂質を含んでもよい。
【0326】
リポソームの形成及び使用は、一般に、当業者に既知である。向上された血清安定性及び循環半減期を有するリポソームが開発されている(米国特許第5,741,516号)。更に、潜在的な薬物担体としてのリポソーム及びリポソーム様調製物の様々な方法が記載されている(米国特許第5,567,434号、同第5,552,157号、同第5,565,213号、同第5,738,868号、及び同第5,795,587号)。
【0327】
F.例示的なリポソーム及び脂質ナノ粒子(LNP)組成物
本開示による抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、細胞、例えば、導入遺伝子の発現を必要とする細胞への送達のためにリポソームに付加され得る。リポソームは、少なくとも1つの脂質二層を有する小胞である。リポソームは、典型的に、製剤開発の文脈において薬物/治療薬送達のための担体として使用される。それらは、細胞膜と融合し、その脂質構造を再配置することによって作用して、薬物又は活性製剤成分(API)を送達する。そのような送達のためのリポソーム組成物は、リン脂質、特にホスファチジルコリンを有する化合物で構成されるが、これらの組成物はまた、他の脂質を含んでもよい。
【0328】
ceDNAベクターを含む脂質ナノ粒子(Lipid nanoparticle、LNP)は、2018年9月7日に提出された国際出願第US2018/050042号及び2018年12月6日に出願された国際出願第US2018/064242号に開示されており、それらの全体が本明細書に組み込まれ、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターについての方法及び組成物での使用が想定されている。
【0329】
いくつかの態様によれば、本開示は、免疫原性/抗原性を低減し、化合物に対する親水性及び疎水性を提供し、投与頻度を低減することができる、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)官能基を有する1つ以上の化合物(いわゆる「PEG化化合物」)を含む、リポソーム製剤を提供する。又は、リポソーム製剤は、単にポリエチレングリコール(PEG)ポリマーを追加の構成成分として含む。そのような態様では、PEG又はPEG官能基の分子量は、62Da~約5,000Daであり得る。
【0330】
いくつかの態様によれば、本開示は、延長放出又は制御放出プロファイルを有するAPIを、数時間~数週間の期間にわたって送達するであろうリポソーム製剤を提供する。いくつかの関連態様では、リポソーム製剤は、脂質二層によって結合される水性チャンバを含み得る。他の関連態様では、リポソーム製剤は、数時間~数週間の期間にわたってAPIを放出する、高温で物理的移行を経る構成成分を有するAPIを封入する。
【0331】
いくつかの態様によれば、リポソーム製剤は、スフィンゴミエリン及び本明細書に開示される1つ以上の脂質を含む。いくつかの態様によれば、リポソーム製剤は、オプティソーム(optisome)を含む。
【0332】
いくつかの態様では、本開示は、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩、(ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン)、MPEG(メトキシポリエチレングリコールコンジュゲート脂質、HSPC(水素化ダイズホスファチジルコリン)、PEG(ポリエチレングリコール)、DSPE(ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン)、DSPC(ジステアロイルホスファチジルコリン)、DOPC(ジオレオイルホスファチジルコリン)、DPPG(ジパルミトイルホスファチジルグリセロール)、EPC(卵ホスファチジルコリン)、DOPS(ジオレオイルホスファチジルセリン)、POPC(パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン)、SM(スフィンゴミエリン)、MPEG(メトキシポリエチレングリコール)、DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン)、DMPG(ジミリストイルホスファチジルグリセロール)、DSPG(ジステアロイルホスファチジルグリセロール)、DEPC(ジエルコイルホスファチジルコリン)、DOPE(ジオレオイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン)、硫酸コレステロール(CS)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、DOPC(ジオレオイル-sn-グリセロ-ホスファチジルコリン)、又はそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の脂質を含むリポソーム製剤を提供する。
【0333】
いくつかの態様によれば、本開示は、リン脂質、コレステロール、及びPEG化脂質を56:38:5のモル比で含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、リポソーム製剤の全体脂質含有量は、2~16mg/mLである。いくつかの態様によれば、本開示は、ホスファチジルコリン官能基を含有する脂質、エタノールアミン官能基を含有する脂質、及びPEG化脂質を含有するリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、本開示は、ホスファチジルコリン官能基を含有する脂質、エタノールアミン官能基を含有する脂質、及びPEG化脂質を、それぞれ3:0.015:2のモル比で含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、本開示は、ホスファチジルコリン官能基、コレステロール、及びPEG化脂質を含有する脂質を含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、本開示は、ホスファチジルコリン官能基及びコレステロールを含有する脂質を含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、PEG化脂質は、PEG-2000-DSPEである。いくつかの態様によれば、本開示は、DPPG、ダイズPC、MPEG-DSPE脂質コンジュゲート、及びコレステロールを含むリポソーム製剤を提供する。
【0334】
いくつかの態様によれば、本開示は、ホスファチジルコリン官能基を含有する1つ以上の脂質、及びエタノールアミン官能基を含有する1つ以上の脂質を含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、本開示は、1つ以上のホスファチジルコリン官能基を含有する脂質、エタノールアミン官能基を含有する脂質、及びステロール、例えば、コレステロールを含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、リポソーム製剤は、DOPC/DEPC、及びDOPEを含む。
【0335】
いくつかの態様によれば、本開示は、1つ以上の薬学的賦形剤、例えば、スクロース及び/又はグリシンを更に含むリポソーム製剤を提供する。
【0336】
いくつかの態様によれば、本開示は、本開示は、単一ラメラ構造又は多ラメラ構造のいずれかであるリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、本開示は、多胞体粒子及び/又は発泡ベース粒子を含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様では、本開示は、一般的なナノ粒子に対する相対サイズでより大きく、約150~250nmのサイズであるリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様によれば、リポソーム製剤は、凍結乾燥粉末である。
【0337】
いくつかの態様によれば、本開示は、リポソームの外側に単離されたceDNAを有する混合物に弱塩基を添加することにより、本明細書に開示又は記載されるceDNAベクターで作製及び充填されたリポソーム製剤を提供する。この付加は、リポソームの外側のpHをおよそ7.3まで増加させ、APIをリポソーム中に送る。いくつかの態様によれば、本開示は、リポソームの内側で酸性であるpHを有するリポソーム製剤を提供する。そのような場合、リポソームの内側は、pH4~6.9、より好ましくはpH6.5であり得る。他の態様では、本開示は、リポソーム内薬物安定化技術を使用することにより作製されたリポソーム製剤を提供する。そのような場合、ポリマー又は非ポリマー高電荷アニオン及びリポソーム内捕捉剤、例えば、ポリリン酸塩又はオクタ硫酸スクロースが利用される。
【0338】
いくつかの態様によれば、本開示は、ceDNA及びイオン化脂質を含む脂質ナノ粒子を提供する。例えば、プロセスにより得られたceDNAを用いて作製及び負荷される脂質ナノ粒子製剤は、2018年9月7日に提出された国際出願第US2018/050042号に開示されており、本明細書に組み込まれる。これは、イオン化脂質をプロトン化し、粒子のceDNA/脂質会合及び核形成に好ましいエネルギー論を提供する、低pHでのエタノール脂質と水性ceDNAとの高エネルギー混合によって達成され得る。粒子は、水性希釈及び有機溶媒の除去によって更に安定化され得る。粒子は、所望のレベルに濃縮され得る。
【0339】
一般に、脂質ナノ粒子は、約10:1~60:1の全脂質対ceDNA(質量又は重量)比で調製される。いくつかの実施形態によれば、脂質対ceDNA比(質量/質量比、w/w比)は、約1:1~約60:1、約1:1~約55:1、約1:1~約50:1、約1:1~約45:1、約1:1~約40:1、約1:1~約35:1、約1:1~約30:1、約1:1~約25:1、約10:1~約14:1、約3:1~約15:1、約4:1~約10:1、約5:1~約9:1、約6:1~約9:1、約30:1~約60:1の範囲内であり得る。いくつかの実施形態によれば、脂質粒子(例えば、脂質ナノ粒子)は、約60:1の全脂質比に対するceDNA(質量又は重量)で調製される。いくつかの実施形態によれば、脂質粒子は、約10:1~30:1の全脂質対ceDNA(質量又は重量)比で調製される。いくつかの実施形態によれば、脂質対ceDNA比(質量/質量比、w/w比)は、約1:1~約25:1、約10:1~約14:1、約3:1~約15:1、約4:1~約10:1、約5:1~約9:1、又は約6:1~約9:1の範囲内であり得る。脂質及びceDNAの量を調整して、所望のN/P比、例えば3、4、5、6、7、8、9、10以上のN/P比を提供し得る。一般に、脂質粒子製剤の全体脂質含有量は、約5mg/ml~約30mg/mLの範囲であり得る。
【0340】
イオン化脂質は、典型的に、核酸カーゴ、例えばceDNAを低pHで凝縮させるため、及び膜会合及び膜融合性を駆動するために用いられる。一般に、イオン化脂質は、正に電荷される、又は例えばpH6.5以下の酸性条件下でプロトン化される少なくとも1つのアミノ基を含む脂質である。イオン化脂質はまた、本明細書ではカチオン性脂質と称される。
【0341】
例示的なイオン化脂質は、国際PCT特許公開2015/095340号、同第2015/199952号、同第2018/011633号、同第2017/049245号、同第2015/061467号、同第2012/040184号、同第2012/000104号、同第2015/074085号、同第2016/081029号、同第2017/004143号、同第2017/075531号、同第2017/117528号、同第2011/022460号、同第2013/148541号、同第2013/116126号、同第2011/153120号、同第2012/044638号、同第2012/054365号、同第2011/090965号、同第2013/016058号、同第2012/162210号、同第2008/042973号、同第2010/129709号、同第2010/144740号、同第2012/099755号、同第2013/049328号、同第2013/086322号、同第2013/086373号、同第2011/071860号、同第2009/132131号、同第2010/048536号、同第2010/088537号、同第2010/054401号、同第2010/054406号、同第2010/054405号、同第2010/054384号、同第2012/016184号、同第2009/086558号、同第2010/042877号、同第2011/000106号、同第2011/000107号、同第2005/120152号、同第2011/141705号、同第2013/126803号、同第2006/007712号、同第2011/038160号、同第2005/121348号、同第2011/066651号、同第2009/127060号、同第2011/141704号、同第2006/069782号、同第2012/031043号、同第2013/006825号、同第2013/033563号、同第2013/089151号、同第2017/099823号、同第2015/095346号、及び同第2013/086354号、並びに米国特許公開第2016/0311759号、同第2015/0376115号、同第2016/0151284号、同第2017/0210697号、同第2015/0140070号、同第2013/0178541号、同第2013/0303587号、同第2015/0141678号、同第2015/0239926号、同第2016/0376224号、同第2017/0119904号、同第2012/0149894号、同第2015/0057373号、同第2013/0090372号、同第2013/0274523号、同第2013/0274504号、同第2013/0274504号、同第2009/0023673号、同第2012/0128760号、同第2010/0324120号、同第2014/0200257号、同第2015/0203446号、同第2018/0005363号、同第2014/0308304号、同第2013/0338210号、同第2012/0101148号、同第2012/0027796号、同第2012/0058144号、同第2013/0323269号、同第2011/0117125号、同第2011/0256175号、同第2012/0202871号、同第2011/0076335号、同第2006/0083780号、同第2013/0123338号、同第2015/0064242号、同第2006/0051405号、同第2013/0065939号、同第2006/0008910号、同第2003/0022649号、同第2010/0130588号、同第2013/0116307号、同第2010/0062967号、同第2013/0202684号、同第2014/0141070号、同第2014/0255472号、同第2014/0039032号、同第2018/0028664号、同第2016/0317458号、及び同第2013/0195920号に記載されており、これら全ての内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0342】
いくつかの実施形態によれば、イオン化脂質は、以下の構造を有するMC3(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタン酸(DLin-MC3-DMA又はMC3)である:
【0343】
【0344】
脂質DLin-MC3-DMAは、Jayaraman et al.,Angew.Chem.Int.Ed Engl.(2012),51(34):8529-8533(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0345】
いくつかの実施形態によれば、イオン化脂質は、国際公開第2015/074085号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される、脂質ATX-002である。
【0346】
いくつかの実施形態によれば、イオン化脂質は、国際公開第2012/040184号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミン(化合物32)である。
【0347】
いくつかの実施形態によれば、イオン化脂質は、国際公開第2015/199952号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される、化合物6又は化合物22である。
【0348】
限定なく、イオン化脂質は、脂質ナノ粒子に存在する全脂質の20~90%(mol)を含み得る。例えば、イオン化脂質モル含有量は、脂質ナノ粒子に存在する全脂質の20~70%(mol)、30~60%(mol)、又は40~50%(mol)であり得る。いくつかの実施形態によれば、イオン化脂質は、脂質ナノ粒子に存在する全脂質の約50mol%~約90mol%を含む。
【0349】
いくつかの態様では、脂質ナノ粒子は、非カチオン性脂質を更に含み得る。非イオン性脂質としては、両親媒性脂質、中性脂質、及びアニオン性脂質が挙げられる。したがって、非カチオン性脂質は、中性の非電荷、双性イオン性、又はアニオン性脂質であり得る。非カチオン性脂質は、典型的に、膜融合性を増強するために用いられる。
【0350】
本明細書に開示される方法及び組成物での使用が想定される例示的な非カチオン性脂質は、2018年9月7日に出願された国際出願第US2018/050042号、及び2018年12月6日に出願された同第第US2018/064242号に記載されている。例示的な非カチオン性脂質は、国際出願公開第2017/099823号及び米国特許公開第2018/0028664号に記載されており、これら両方の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0351】
非カチオン性脂質は、脂質ナノ粒子中に存在する全脂質の0~30%(mol)を構成し得る。例えば、非カチオン性脂質含有量は、脂質ナノ粒子に存在する全脂質の5~20%(mol)又は10~15%(mol)である。様々な実施形態では、イオン化脂質対中性脂質のモル比は、約2:1~約8:1の範囲である。
【0352】
いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子は、リン脂質を全く含まない。いくつかの態様によれば、脂質ナノ粒子は、膜統合性を提供するために、ステロールなどの構成成分を更に含み得る。
【0353】
脂質ナノ粒子中で使用され得る1つの例示的なステロールは、コレステロール及びその誘導体である。例示的なコレステロール誘導体は、国際出願第2009/127060号及び米国特許公開第2010/0130588号に記載されており、これら両方の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0354】
ステロールなどの膜統合性を提供する構成成分は、脂質ナノ粒子に存在する全脂質の0~50%(mol)を構成し得る。いくつかの実施形態によれば、そのような構成成分は、脂質ナノ粒子の全脂質含有量の20~50%(mol)、30~40%(mol)である。
【0355】
いくつかの態様によれば、脂質ナノ粒子は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)又はコンジュゲートした脂質分子を更に含み得る。一般に、これらを使用して、脂質ナノ粒子の凝集を阻害し、かつ/又は立体安定化を提供する。例示的な複合脂質としては、PEG-脂質コンジュゲート、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート、ポリアミド-脂質コンジュゲート(ATTA-脂質コンジュゲートなど)、カチオン性-ポリマー脂質(CPL)コンジュゲート、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態によれば、複合脂質分子は、PEG-脂質コンジュゲート、例えば、(メトキシポリエチレングリコール)-複合脂質である。例示的なPEG-脂質コンジュゲートとしては、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)(l-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)など)、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEGコハク酸ジアシルグリセロール(PEGS-DAG)(4-O-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(w-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG))、PEGジアルコキシプロピルカルバム、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。追加の例示的なPEG-脂質コンジュゲートは、例えば、米国特許第5,885,613号、同第6,287,591号、米国特許出願公開第2003/0077829号、同第2003/0077829号、同第2005/0175682号、同第2008/0020058号、同第2011/0117125号、同第2010/0130588号、同第2016/0376224号、及び同第2017/0119904号に記載されており、それら全ての内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0356】
いくつかの実施形態では、PEG-脂質は、米国特許出願公開第2018/0028664号に定義されている化合物であり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、PEG-脂質は、米国特許出願公開第2015/0376115号又は同第2016/0376224号に開示されており、これら両方の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0357】
PEG-DAAコンジュゲートは、例えば、PEG-ジラウリルオキシプロピル、PEG-ジミリスチルオキシプロピル、PEG-ジパルミチルオキシプロピル、又はPEG-ジステアリルオキシプロピルであり得る。PEG-脂質は、PEG-DMG、PEG-ジラウリルグリセロール、PEG-ジパルミトイルグリセロール、PEG-ジステリルグリセロール、PEG-ジラウリルグリカミド、PEG-ジミリスチルグリカミド、PEG-ジパルミトイルグリカミド、PEG-ジステリルグリカミド、PEG-コレステロール(1-[8’-(コレスト-5-エン-3[ベータ]-オキシ)カルボキシアミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)、PEG-DMB(3,4-ジテトラデコキシルベンジル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)エーテル)、及び1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]のうちの1つ以上であり得る。いくつかの実施例では、PEG-脂質は、PEG-DMG、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]からなる群から選択され得る。
【0358】
PEG以外の分子と複合した脂質は、PEG-脂質の代わりに使用することもできる。例えば、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート、ポリアミド-脂質コンジュゲート(ATTA-脂質コンジュゲート等)、及びカチオン性-ポリマー脂質(CPL)コンジュゲートを、PEG-脂質の代わりに、又はそれに加えて使用することができる。例示的な複合脂質、すなわち、PEG-脂質、(POZ)-脂質コンジュゲート、ATTA-脂質コンジュゲート、及びカチオン性ポリマー-脂質は、国際公開第1996/010392号、同第1998/051278号、同第2002/087541号、同第2005/026372号、同第2008/147438号、同第2009/086558号、同第2012/000104号、同第2017/117528号、同第2017/099823号、同第2015/199952号、同第2017/004143号、同第2015/095346号、同第2012/000104号、同第2012/000104号、及び同第2010/006282号、米国特許出願公開第2003/0077829号、同第2005/0175682号、同第2008/0020058号、同第2011/0117125号、同第2013/0303587号、同第2018/0028664号、同第2015/0376115号、同第2016/0376224号、同第2016/0317458号、同第2013/0303587号、同第2013/0303587号、及び同第2011/0123453号、並びに米国特許第5,885,613号、同第6,287,591号、同第6,320,017号、及び同第6,586,559号に記載されており、これら全ての内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0359】
いくつかの実施形態によれば、1つ以上の追加の化合物は、治療剤であり得る。治療剤は、治療目的に好適な任意のクラスから選択され得る。言い換えれば、治療剤は、治療目的に好適な任意のクラスから選択され得る。言い換えれば、治療剤は、所望の治療目的及び生物作用に従って選択され得る。
【0360】
いくつかの実施形態によれば、追加の化合物は、本明細書に記載される別の抗体又はその抗原結合断片である。
【0361】
いくつかの実施形態によれば、追加の薬剤は、抗ウイルス薬又はワクチンである。いくつかの実施形態によれば、追加の薬剤は、抗炎症剤、抗マラリア剤、及びCoV-Sに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片からなる群から選択される。更なる実施形態において、抗マラリア剤はクロロキン又はヒドロキシクロロキンである。いくつかの実施形態によれば、抗炎症剤は、抗体、例えば、サリルマブ、トシリズマブ、又はギムシルマブ(gimsilumab)である。
【0362】
いくつかの実施形態では、追加の化合物は、免疫刺激剤である。本明細書では、産生された脂質ナノ粒子に封入されている昆虫細胞、又は本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のための合成的に産生されたceDNAベクター、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む薬学的組成物もまた提供される。
【0363】
いくつかの態様によれば、本開示は、1つ以上の薬学的賦形剤を更に含む脂質ナノ粒子製剤を提供する。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子製剤は、スクロース、トリス、トレハロース、及び/又はグリシンを更に含む。
【0364】
ceDNAベクターは、粒子の脂質部分と複合され得るか、又は脂質ナノ粒子の脂質位置に封入され得る。いくつかの実施形態によれば、ceDNAは、脂質ナノ粒子の脂質位置に完全に封入され得、それによって例えば水溶液中のヌクレアーゼによる分解からそれを保護する。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子中のceDNAは、37℃で少なくとも約20、30、45、又は60分間のヌクレアーゼへの脂質ナノ粒子の曝露後に実質的に分解されない。いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子中のceDNAは、37℃で少なくとも約30、45、若しくは60分、又は少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、若しくは36時間の血清中の粒子のインキュベーション後に実質的に分解されない。
【0365】
特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、対象、例えばヒトなどの哺乳動物に対して実質的に非毒性である。いくつかの態様によれば、脂質ナノ粒子製剤は、凍結乾燥粉末である。
【0366】
いくつかの実施形態によれば、脂質ナノ粒子は、少なくとも1つの脂質二層を有する固体コア粒子である。他の実施形態では、脂質ナノ粒子は、非二層構造、すなわち非ラメラ(すなわち、非二層)形態を有する。限定なく、非二層の形態には、例えば、三次元の管、ロッド、立方対称などが含まれ得る。例えば、脂質ナノ粒子の形態(ラメラ対非ラメラ)は、US2010/0130588(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるCryo-TEM分析を使用して容易に評価され、特徴付けられ得る。
【0367】
いくつかの更なる実施形態によれば、非ラメラ形態を有する脂質ナノ粒子は、高電子密度である。いくつかの態様によれば、本開示は、単一ラメラ構造又は多ラメラ構造のいずれかである脂質ナノ粒子を提供する。いくつかの態様によれば、本開示は、多胞体粒子及び/又は発泡ベース粒子を含む脂質ナノ粒子製剤を提供する。
【0368】
脂質構成成分の組成物及び濃度を制御することによって、脂質コンジュゲートが脂質粒子外で交換する速度、順に脂質ナノ粒子が膜融合性になる速度を制御することができる。加えて、例えば、pH、温度、又はイオン強度を含む他の変数を使用して、脂質ナノ粒子が膜融合性になる速度を変化及び/又は制御することができる。脂質ナノ粒子が膜融合性になる速度を制御するために使用され得る他の方法は、本開示に基づいて当業者に明らかとなるであろう。脂質コンジュゲートの組成物及び濃度を制御することによって、脂質粒径を制御することができることも明らかとなるであろう。
【0369】
製剤化されたカチオン性脂質のpKaは、核酸の送達のためのLNPの有効性と相関させることができる(Jayaraman et al.,Angewandte Chemie,International Edition(2012),51(34),8529-8533、Semple et al.,Nature Biotechnology 28,172-176(20l0)を参照されたい(これらはいずれも、参照によりその全体が組み込まれる)。pKaの好ましい範囲は、約5~約7である。カチオン性脂質のpKaは、2-(p-トルイジノ)-6-ナフタレンスルホン酸(TNS)の蛍光に基づくアッセイを使用し、脂質ナノ粒子中で決定され得る。
【0370】
VII.治療方法
本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターはまた、目的の核酸配列を標的細胞(例えば、宿主細胞)に送達するための方法において使用され得る。この方法は、特に抗体又は抗原結合断片を、その送達を必要とする対象の細胞に送達し、疾患又は障害を治療するための方法であり得る。
【0371】
本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片の標的すなわち、抗原は、例えば細菌、ウイルス、真菌及び寄生虫感染因子を含む様々な病原体から選択され得る。適切な標的は、がん又はがん関連抗原などを更に含み得る。更に他の標的には、関節リウマチ(RA)又は多発性硬化症(MS)などの自己免疫状態が含まれ得る。
【0372】
加えて、本開示は、抗体又はその抗原結合断片の送達を必要とする対象の細胞にこれを送達する方法であって、当該抗体及びその抗原結合断片をコードする本開示のceDNAベクターの複数回投与を含む、方法を提供する。本開示のceDNAベクターは、カプシド化ウイルスベクターに対して典型的に観察されるような免疫応答を誘導しないため、そのような複数回投与戦略は、ceDNAベースの系においてより大きな成功を収めるであろう。ceDNAベクターは、所望の組織の細胞をトランスフェクトし、過度の副作用なしに、抗体及びその抗原結合断片の十分なレベルの遺伝子導入及び発現をもたらすのに十分な量で投与される。
【0373】
本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の産生のためのceDNAベクターの送達は、発現された抗体及びその抗原結合断片の送達に限定されない。例えば、従来の方法で産生される(例えば、細胞ベースの産生方法(例えば、昆虫細胞産生方法)を使用して)又は合成的に産生された本明細書に記載されるceDNAベクターは、遺伝子療法の一部を提供するために提供される他の送達系とともに使用され得る。本開示に従ってceDNAベクターと組み合わせることができる系の1つの非限定的な例は、抗体又はその抗原結合断片を発現するceDNAベクターの効果的な遺伝子発現のために1つ以上の補因子又は免疫抑制因子を別々に送達する系を含む。
【0374】
本明細書に記載される免疫グロブリン構築物の標的は、例えば、細菌、ウイルス、真菌及び寄生虫感染因子を含む様々な病原体から選択され得る。適切な標的は、がん又はがん関連抗原などを更に含み得る。更に他の標的には、関節リウマチ(RA)又は多発性硬化症(MS)などの自己免疫状態が含まれ得る。
【0375】
ウイルス標的の例としては、オルトミクソウイルスファミリー由来のインフルエンザウイルスが挙げられ、例えば、インフルエンザA、インフルエンザB、及びインフルエンザCが挙げられる。A型ウイルスは、最も有毒なヒト病原体である。パンデミックに関連付けられているインフルエンザAの血清型としては、1918年にスペイン風邪、及び2009年に豚インフルエンザを引き起こしたH1N1、1957年にアジアインフルエンザを引き起こしたH2N2、1968年に香港インフルエンザを引き起こしたH3N2、2004年に鳥インフルエンザを引き起こしたH5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3、並びにH10N7が挙げられる。
【0376】
A型インフルエンザに対する広域中和抗体が記載されている。本明細書で使用される場合、「広域中和抗体」は、複数のサブタイプ由来の複数の株を中和することができる中和抗体を指す。例えば、CR6261[The Scripps Institute/Crucell]は、1918年の「スペイン風邪」(SC1918/H1)を含む広範囲のインフルエンザウイルス、及び2004年にベトナムでニワトリからヒトに急増したトリインフルエンザのH5N1クラスのウイルス(Viet04/H5)に結合するモノクローナル抗体として記載されている。CR6261は、インフルエンザウイルスの表面上の優勢なタンパク質であるヘマグルチニンの膜近位ステムにおける高度に保存されたヘリックス領域を認識する。この抗体は、参照により本明細書に組み入れられる国際公開第2010/130636号に記載されている。別の中和抗体、F10[XOMA Ltd]は、H1N1及びH5N1に対して有用であると記載されている。[Sui et al,Nature Structural and Molecular Biology(Sui et al.2009,16(3):265-73)]インフルエンザに対する他の抗体、例えば、Fab28及びFab49を選択してもよい。例えば、参照により組み込まれる国際公開第2010/140114号及び同第2009/115972号を参照されたい。更に他の抗体、例えば、国際公開第2010/010466、米国特許公開第2011/076265号、及び国際公開第2008/156763号に記載されている抗体を容易に選択することができる。
【0377】
他の標的病原性ウイルスとしては、アレナウイルス(ファニン、マチュポ、及びラッサを含む)、フィロウイルス(マールブルグ及びエボラを含む)、ハンタウイルス、ピコルナウイルス(ライノウイルス、エコーウイルスを含む)、コロナウイルス、パラミクソウイルス、モルビリウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、トガウイルス、コクサッキーウイルス、パルボウイルスB19、パラインフルエンザ、アデノウイルス、レオウイルス、痘瘡(大痘瘡(天然痘))及びポックスウイルスファミリーのワクシニア(牛痘)、並びに水痘帯状疱疹(仮性狂犬病)が挙げられる。
【0378】
ウイルス性出血熱は、アレナウイルスファミリー(ラッサ熱)(このファミリーはリンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)にも関連する)、フィロウイルス(エボラウイルス)、及びハンタウイルス(puremala)のメンバーによって引き起こされる。ピコルナウイルス(ライノウイルスのサブファミリー)のメンバーは、ヒトにおける感冒に関連している。コロナウイルスファミリーには、伝染性気管支炎ウイルス(家禽)、ブタ伝染性胃腸管系ウイルス(ブタ)、ブタ赤血球凝集素脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸内コロナウイルス(ネコ)、イヌコロナウイルス(イヌ)などの多数の非ヒトウイルスが含まれる。ヒト呼吸器コロナウイルスは、感冒、非A、B又はC型肝炎、及び突発性急性呼吸器症候群(sudden acute respiratory syndrome、SARS)すると推定されている。パラミクソウイルスファミリーには、パラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス3型、ウシパラインフルエンザウイルス3型、ルブラウイルス(ムンプスウイルス)、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス4型、ニューカッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫、麻疹ウイルス及びイヌジステンパーを含む麻疹ウイルス、並びに呼吸器合胞体ウイルス(RSV)を含むニューモウイルスが含まれる。パルボウイルスファミリーには、ネコパルボウイルス(ネコ腸炎)、ネコ汎白血球減少症ウイルス、イヌパルボウイルス、及びブタパルボウイルスが含まれる。アデノウイルスファミリーには、呼吸器疾患を引き起こすウイルス(EX、AD7、ARD、O.B.)が含まれる。
【0379】
細菌性病原体に対する中和抗体構築物もまた、本開示における使用のために選択され得る。一実施形態では、中和抗体構築物は、細菌自体に対するものである。別の実施形態では、中和抗体構築物は、細菌によって産生される毒素に対するものである。風媒性細菌性病原体の例としては、例えば、Neisseria meningitidis(髄膜炎)、Klebsiella pneumonia(肺炎)、Pseudomonas aeruginosa(肺炎)、Pseudomonas pseudomallei(肺炎)、Pseudomonas mallei(肺炎)、Acinetobacter(肺炎)、Moraxella catarrhalis、Moraxella lacunata、Alkaligenes、Cardiobacterium、Haemophilus influenzae(インフルエンザ)、Haemophilus parainfluenzae、Bordetella pertussis(百日咳)、Francisella tularensis(肺炎/発熱)、Legionella pneumonia(レジオネラ症)、Chlamydia psittaci(肺炎)、Chlamydia pneumoniae(肺炎)、Mycobacterium tuberculosis(結核(TB))、Mycobacterium kansasii(結核(TB))、Mycobacterium avium(肺炎)、Nocardia asteroides(肺炎)、Bacillus anthracis(炭疽)、Staphylococcus aureus(肺炎)、Streptococcus pyogenes(猩紅熱)、Streptococcus pneumoniae(肺炎)、Corynebacteria diphtheria(ジフテリア)、Mycoplasma pneumoniae(肺炎)が挙げられる。
【0380】
炭疽の原因物質は、Bacillus anthracisによって産生される毒素である。トキソイドを形成する3つのペプチドの1つである保護剤(protective agent、PA)に対する中和抗体が記載されている。他の2つのポリペプチドは、致死因子(lethal factor、LF)及び浮腫因子(edema factor、EF)からなる。抗PA中和抗体は、炭疽菌に対する受動免疫において有効であると記載されている。例えば、U.S.Pat.No.7,442,373;R.Sawada-Hirai et al,J Immune Based Ther Vaccines.2004;2:5.(on-line 2004 May 12)を参照されたい。更に他の抗炭疽毒素中和抗体が記載されており、かつ/又は生成され得る。同様に、他の細菌及び/又は細菌毒素に対する中和抗体を使用して、本明細書に記載されるAAV送達抗病原体構築物を生成してもよい。
【0381】
他の感染症は、例えばAspergillus種、Absidia corymbifera、Rhixpusストロニファー、ムコールplumbeaus、Cryptococcus neoformans、Histoplasm capsulatum、ブラストミセスdermatitidis、コクシジオイデスimmitis、Penicillium種、Micropolyspora faeni、Thermoactinomyces vulgaris、Alternaria alternate、Cladosporium種、Helminthosporium、及びStachybotrys種を含む空中浮遊真菌によって引き起こされ得る。
【0382】
更に、受動免疫は、真菌感染(例えば、水虫)、白癬、又はウイルス、細菌、寄生生物、真菌、及び直接接触によって伝染し得る他の病原体を予防するために使用され得る。更に、家庭のペット、ウシ及び他の家畜、並びに他の動物に影響を及ぼす様々な状態。例えば、イヌにおいて、イヌ副鼻腔アスペルギルス症による上気道の感染は、重大な疾患を引き起こす。ネコでは、鼻に由来する上気道疾患又はネコ呼吸器系疾患複合体は、治療せずに放置すると罹患及び死亡を引き起こす。ウシは、ウシの急性伝染性ウイルス疾患である感染性ウシ鼻気管炎(一般にIBR又はレッドノーズと呼ばれる)による感染を受けやすい。更に、ウシは、軽度から重度の呼吸器疾患を引き起こし、他の疾患に対する耐性を損なう可能性があるウシ呼吸器合胞体ウイルス(Bovine Respiratory Syncytial Virus、BRSV)にかかりやすい。更に他の病原体及び疾患は、当業者に明らかである。例えば、抗呼吸器合胞体ウイルス(RSV)中和抗体の生成を記載している米国特許第5,811,524号を参照されたい。そこに記載された技術は、他の病原体に適用可能である。このような抗体は、インタクトで使用され得るか、又はその配列(足場)が改変されて、人工又は組換え中和抗体構築物を生成し得る。このような方法は記載されている[例えば、国際公開第2010/13036号、国際公開第2009/115972号、国際公開第2010/140114号を参照されたい]。
【0383】
本明細書に記載される抗新生物免疫グロブリンは、HER2などのヒト上皮成長因子受容体(human epidermal growth factor receptor、HER)を標的化し得る。例えば、トラスツズマブは、細胞ベースのアッセイにおいて高い親和性(Kd=5nM)でヒト上皮成長因子受容体タンパク質の細胞外ドメインに選択的に結合する組換えIgG1カッパ、ヒト化モノクローナル抗体である。市販の製品は、CHO細胞培養物中で産生される。例えば、www.drugbank.ca/drugs/DB00072を参照されたい。トラスツズマブ軽鎖1及び2並びに重鎖1及び2のアミノ酸配列、並びにトラスツズマブのX線構造の研究から得られた配列は、このデータベース上に受託番号DB00072で提供されており、この配列は参照により本明細書に組み込まれる。212-Pb-TCMC-トラスツズマブ[Areva Med、Bethesda,Md.]も参照されたい。目的の別の抗体としては、例えばペルツズマブ、ヒト上皮成長因子受容体2タンパク質(HER2)の細胞外二量体化ドメイン(サブドメインII)を標的化する組換えヒト化モノクローナル抗体が挙げられる。それは、それぞれ448及び214残基を有する2つの重鎖及び2つの軽鎖からなる。FDAは、2012年6月8日に承認した。その重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、例えば、このデータベース上のwww.drugbank.ca/drugs/DB06366(同義語は、2C4、MOAB 2C4、モノクローナル抗体2C4、及びrhuMAb-2C4を含む)において受託番号DB06366で提供されている。HER2に加えて、他のHER標的が選択され得る。
【0384】
例えば、MM-121/SAR256212は、HER3受容体を標的化する完全ヒトモノクローナル抗体であり[Merrimack’s Network Biology]、非小細胞肺がん(non-small cell lung cancer、NSCLC)、乳がん及び卵巣がんの治療に有用であることが報告されている。SAR256212は、HER3(ErbB3)受容体を標的化する研究用の完全ヒトモノクローナル抗体である[Sanofi Oncology]。別の抗Her3/EGFR抗体は、頭頸部がんにおいて有用であると記載されているRG7597[Genentech]である。別の抗体、マルゲツキシマブ(又はMGAH22)、HERを標的化する次世代のFc最適化モノクローナル抗体(mAb)[MacroGenics]も利用することができる。
【0385】
あるいは、他のヒト上皮細胞表面マーカー及び/又は他の腫瘍受容体又は抗原が標的化され得る。他の細胞表面マーカー標的の例としては、例えば、5T4、CA-125、CEA例えば、ラベツズマブによって標的化される、CD3、CD19、CD20(例えば、リツキシマブによって標的化される)、CD22(例えば、エプラツズマブ又はベルツズマブによって標的化される)、CD30、CD33、CD40、CD44、CD51(またインテグリンαvβ3)、CD133(例えば、神経膠芽腫細胞)、CTLA-4(例えば、神経芽細胞腫の治療に使用されるイピリムマブ)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体2(CXCR2)(脳内の異なる領域で発現される;例えば、抗CXCR 2(細胞外)抗体#ACR-012(Alomene Labs))、
EpCAM、線維芽細胞活性化タンパク質(fibroblast activation protein、FAP)[例えば、国際公開第2012020006(A2)号、脳腫瘍]、葉酸受容体アルファ(例えば、小児上衣脳腫瘍、頭頸部がんを参照されたい)、線維芽細胞増殖因子受容体1(fibroblast growth factor receptor 1、FGFR1)(抗FGFR1抗体を用いたがんの治療の考察については、et al.、国際公開第2012125124(A1)号を参照されたい)、FGFR2(例えば、国際公開第2013076186(A)号及び国際公開第2011143318(A2)号に記載されている抗体)、FGFR3(例えば、米国特許第8,187,601号及び国際公開第2010111367(A1)号に記載されている抗体)、FGFR4(例えば、国際公開第2012138975(A1)号に記載されている抗FGFR4抗体を参照されたい)、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor、HGF)(例えば、国際公開第20110119991(A3)号の抗体を参照されたい)、インテグリンα5β1、gangioloside GD2(例えば(例えば、国際公開第2011160119(A2)号に記載されている抗体)、ガングリオシドGD3、膜貫通糖タンパク質NMB(glycoprotein NMB、GPNMB)(特に、神経膠腫に関連する)、及び抗体グレムバツムマブ(CR011)、ムチン、MUC1、ホスファチジルセリン(例えば、バビツキシマブによって標的化される、Peregrine Pharmaceuticals,Inc]、前立腺がん細胞、PD-L1(例えば、ニボルマブ(BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538)、完全ヒトgG4、例えば、転移性黒色腫]、血小板由来増殖因子受容体アルファ(platelet-derived growth factor receptor,alpha、PDGFRα)又はCD140、腫瘍関連糖タンパク質72(tumor associated glycoprotein 72、TAG-72)、テネイシンC、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor、TNF)受容体(TRAIL-R2)、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)-A(例えば、ベバシズマブによって標的化される)及びVEGFR2(例えば、ラムシルマブによって標的化される)が挙げられる。
【0386】
他の抗体及びそれらの標的としては、例えば、APN301(hu14.19-IL2)、モノクローナル抗体[小児における悪性黒色腫及び神経芽細胞腫、Apeiron Biolgic、Vienna,Austria]が挙げられる。例えば、転移性脳腫瘍を含む固形腫瘍の治療に有用であると記載されているモノクローナル抗体8H9も参照されたい。モノクローナル抗体8H9は、B7H3抗原に対する特異性を有するマウスIgG1抗体である[United Therapeutics Corporation]。このマウス抗体はヒト化することができる。B7-H3及び/又はB7-H4抗原を標的化とする更に他の免疫グロブリン構築物を本明細書で使用され得る。別の抗体は、S58(抗GD2、神経芽細胞腫)である。Cotara(商標)[Perregrince Pharmaceuticals]は、再発性神経膠芽腫の治療について記載されているモノクローナル抗体である。他の抗体には、例えば、アバスチン、フィクラツズマブ、medi-575、及びオララツマブが含まれ得る。更に他の免疫グロブリン構築物又はモノクローナル抗体が、本明細書における使用のために選択され得る。例えば、Medicines in Development Biologics,2013 Report,pp.1-87,PhRMA’s Communications & Public Affairs Department.(202)835-3460(参照により本明細書に組み込まれる)という刊行物を参照されたい。
【0387】
例えば、免疫原は、様々なウイルスファミリーから選択され得る。免疫応答が望まれるウイルスファミリーの例としては、感冒の症例の約50%の原因であるライノウイルス属を含むピコルナウイルスファミリー、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、及びA型肝炎ウイルスなどのヒトエンテロウイルスを含むエンテロウイルス属、並びに主に非ヒト動物における口蹄疫の原因であるアプトウイルス属が挙げられる。ピコルナウイルスファミリーのウイルス内で、標的抗原には、VP1、VP2、VP3、VP4、及びVPGが含まれる。別のウイルスファミリーには、流行性胃腸炎の重要な原因物質であるノーウォーク群のウイルスを包含するカルシウイルスファミリーが含まれる。ヒト及び非ヒト動物において免疫応答を誘導するために抗原を標的化する際の使用に望ましいなお別のウイルスファミリーは、トガウイルスファミリーであり、これは、アルファウイルス属(シンドビスウイルス、ロスリバーウイルス、及びベネズエラ、東部及び西部ウマ脳炎を含む)、及びルビウイルス(風疹ウイルスを含む)を含む。フラビウイルスファミリーには、デング熱、黄熱病、日本脳炎、セントルイス脳炎及びダニ媒介性脳炎ウイルスが含まれる。他の標的抗原は、伝染性気管支炎ウイルス(家禽)、ブタ伝染性胃腸ウイルス(ブタ)、ブタ赤血球凝集脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸コロナウイルス(ネコ)、イヌコロナウイルス(イヌ)、及びヒト呼吸器コロナウイルスなどの多数の非ヒトウイルスを含むC型肝炎又はコロナウイルスファミリーから生成され得、これらは感冒及び/又は非A、B若しくはC型肝炎を引き起こし得る。コロナウイルスファミリー内では、標的抗原は、E1(M又はマトリックスタンパク質とも呼ばれる)、E2(S又はスパイクタンパク質とも呼ばれる)、E3(HE又はヘマグルチン-エルテロースとも呼ばれる)糖タンパク質(全てのコロナウイルスに存在するわけではない)、又はN(ヌクレオカプシド)を含む。更に他の抗原は、ベシクロウイルス属(例えば、水疱性口内炎ウイルス)及び一般的なリッサウイルス属(例えば、狂犬病)を含むラブドウイルスファミリーに対して標的化され得る。
【0388】
ラブドウイルスファミリー内で、適切な抗原は、Gタンパク質又はNタンパク質に由来し得る。マールブルグ及びエボラウイルスなどの出血熱ウイルスを含むフィロウイルスファミリーは、抗原の適切な供給源であり得る。パラミクソウイルスファミリーには、パラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス3型、ウシパラインフルエンザウイルス3型、ルブラウイルス(ムンプスウイルス)、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス4型、ニューカッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫、麻疹ウイルス及びイヌジステンパーを含む麻疹ウイルス、並びに呼吸器合胞体ウイルスを含むニューモウイルスが含まれる。インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルスファミリーに分類され、抗原(例えば、HAタンパク質、N1タンパク質)の適切な供給源である。ブニアウイルスファミリーには、ブニアウイルス属(カリフォルニア脳炎、La Crosse)、フレボウイルス属(リフトバレー熱)、ハンタウイルス属(ピュアマラ(puremala)はヘマハギン(hemahagin)熱ウイルスである)、ナイロウイルス属(ナイロビヒツジ病)及び様々な未帰属ブニヤウイルス属が含まれる。アレナウイルスファミリーは、LCM及びラッサ熱ウイルスに対する抗原の供給源を提供する。レオウイルスファミリーには、レオウイルス属、ロタウイルス属(子供に急性胃腸炎を引き起こす)、オルビウイルス属、及びコルティウイルス属(コロラドだに熱、レボンボ(ヒト)、ウマ脳症、ブルータング)が含まれる。
【0389】
レトロウイルスファミリーには、ネコ白血病ウイルス、HTLVI及びHTLVII、レンチウイルス(ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus、HIV)、サル免疫不全ウイルス(simian immunodeficiency virus、SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(feline immunodeficiency virus、FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス、及びスプマウイルスウイルスを含む)などのヒト及び獣医学的疾患を包含するオンコウイルス亜科が含まれる。レンチウイルスの中で、多くの適切な抗原が記載されており、標的として容易に選択することができる。適切なHIV及びSIV抗原の例としては、gag、pol、Vif、Vpx、VPR、Env、Tat、Nef、及びRevタンパク質、並びにそれらの様々な断片が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Envタンパク質の適切な断片は、gp120、gp160、gp41などのそのサブユニットのいずれか、又は例えば、少なくとも約8アミノ酸長のそれらのより小さい断片を含み得る。同様に、tatタンパク質の断片を選択してもよい。[米国特許第5,891,994号及び同第6,193,981号を参照されたい]。また、D.H.Barouch et al,J.Virol.,75(5):2462-2467(March 2001)、及びR.R.Amara,et al,Science,292:69-74(6 Apr.2001)に記載されているHIV及びSIVタンパク質も参照されたい)。別の例において、HIV及び/又はSIV免疫原性タンパク質又はペプチドは、融合タンパク質又は他の免疫原性分子を形成するために使用され得る。例えば、2001年8月2日に公開された国際公開第01/54719号及び1999年4月8日に公開された国際公開第99/16884号に記載されるHIV-1 Tat及び/又はNef融合タンパク質及び免疫レジメンを参照されたい。本発明は、本明細書に記載されるHIV及び/又はSIV免疫原性タンパク質又はペプチドに限定されない。更に、これらのタンパク質に対する様々な改変が記載されているか、又は当業者によって容易になされ得る。例えば、米国特許第5,972,596号に記載されている修飾gagタンパク質を参照されたい。
【0390】
パポーバウイルスファミリーには、ポリオーマウイルス亜科(BKU及びJCUウイルス)及びパピローマウイルス亜科(がん又はパピローマの悪性進行に関連する)が含まれる。アデノウイルスファミリーには、呼吸器疾患及び/又は腸炎を引き起こすウイルス(EX、AD7、ARD、O.B.)が含まれる。パルボウイルスファミリーには、ネコパルボウイルス(ネコ腸炎)、ネコ汎白血球減少症ウイルス、イヌパルボウイルス、及びブタパルボウイルスが含まれる。ヘルペスウイルスファミリーには、単純ウイルス(HSVI、HSVII)、バリセロウイルス属(仮性狂犬病、水痘帯状疱疹)の属を包含するアルファヘルペスウイルス亜科、並びにサイトメガロウイルス(HCMV、ムロメガロウイルス)の属を包含するベータヘルペスウイルス亜科、並びにリンフォクリプトウイルス、EBV(バーキットリンパ腫)、感染性鼻気管炎、マレック病ウイルス及びラジノウイルスの属を包含するガンマヘルペスウイルス亜科が含まれる。ポックスウイルスファミリーには、オルトポックスウイルス属(痘瘡(天然痘)及びワクシニア(牛痘))、パラポックスウイルス属、アビポックスウイルス属、カプリポックスウイルス属、レポリポックスウイルス属、スイポックスウイルス属を包含するコルドポックスウイルス亜科、並びにエントモポックスウイルス亜科が含まれる。ヘパドナウイルスファミリーには、B型肝炎ウイルスが含まれる。抗原の適切な供給源であり得る1つの未分類ウイルスは、デルタ型肝炎ウイルスである。更に他のウイルス源には、トリ伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス及びブタ呼吸器及び生殖器症候群ウイルスが含まれ得る。アルファウイルスファミリーには、ウマ動脈炎ウイルス及び様々な脳炎ウイルスが含まれる。
【0391】
抗体の他の病原性標的には、例えばヒト及び非ヒト脊椎動物に感染する細菌、真菌、寄生微生物又は多細胞寄生生物、あるいはがん細胞又は腫瘍細胞由来のものが含まれ得る。細菌性病原体の例としては、pneumococci、staphylococci、及びstreptococciを含む、病原性グラム陽性球菌が挙げられる。病原性グラム陰性球菌としては、meningococcus、gonococcusが挙げられる。病原性腸内グラム陰性桿菌としては、enterobacteriaceae;pseudomonas、acinetobacteria及びeikenella;melioidosis;salmonella;shigella;haemophilus;moraxella;H.ducreyi(軟下疳を引き起こす);brucella;Franisella tularensis(野兎病を引き起こす);yersinia(pasteurella);streptobacillus moniliformis及びspirillumが挙げられる。グラム陽性桿菌としては、Listeria monocytogenes、Erysipelothrix rhusiopathiae、Corynebacterium diphtheria(ジフテリア)、cholera、B.anthracis(炭素病)、ドノヴァン症(鼠径部肉芽腫)、及びバルトネラ症が挙げられる。病原性嫌気性細菌によって引き起こされる疾患としては、破傷風、ボツリヌス中毒症、他のクロストリジウム、結核、ハンセン病、及び他のマイコバクテリアが挙げられる。病原性スピロヘータ疾患としては、梅毒;トレポネーマ症:イチゴ腫、ピンタ、及び地方病性梅毒;並びにレプトスピラ症が挙げられる。高等病原体細菌及び病原性真菌によって引き起こされる他の感染症としては、放線菌症;ノカルディア症;クリプトコッカス症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ症及びコクシジオイデス症;カンジダ症、アスペルギルス症、及びムコール菌症;スポロトリクム症;パラコクシジオイデス症、ペトリエリジウム症、トルロプシス症、菌腫及び黒色真菌症;並びに白癬が挙げられる。リケッチア性感染症としては、発疹チフス、ロッキー山紅斑熱、Q熱、及びリケッチア痘が挙げられる。マイコプラズマ及びクラミジア感染の例としては、マイコプラズマ肺炎、鼡径リンパ肉芽腫症、オウム病、及び周産期クラミジア感染症が挙げられる。病原性真核生物は、病原性原生動物及び蠕虫を包含し、それによって生じる感染症としては、アメーバ症、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、トキソプラズマ症、Pneumocystis carinii、Trichans、Toxoplasma gondii、バベシア症、ジアルジア症、旋毛虫症、フィラリア症、住血吸虫症、線虫、吸虫又は吸虫類;及び条虫(サナダムシ)感染症が挙げられる。
【0392】
これらの生物及び/又はそれによって産生される毒素の多くは、Centers for Disease Control[(CDC),Department of Health and Human Services,USA]によって、生物学的攻撃における使用の可能性を有する薬剤として同定されている。例えば、これらの生物剤のいくつかとしては、Bacillus anthracis(炭疽)、Clostridium botulinum及びそのトキシン(ボツリヌス中毒症)、Yersinia pestis(ペスト)、variola major(天然痘)、Francisella tularensis(野兎病)、及びウイルス性出血熱[フィロウイルス(例えば、エボラ、マールブルグ]、及びアレナウイルス[例えば、ラッサ、マチュポ]](これらは全て現在カテゴリーA剤に分類されている)、Coxiella burnetti(Q熱)、Brucella属の種(ブルセラ症)、Burkholderia mallei(鼻疽)、Burkholderia pseudomallei(類鼻疽)、Ricinus communis及びそのトキシン(リシントキシン)、Clostridium perfringen及びそのトキシン(エプシロントキシン)、Staphylococcus属の種及びそのトキシン(エンテロトキシンB)、Chlamydia psittaci(オウム病)、水の安全性の脅威物(例えば、Vibrio cholerae、Crytosporidium parvum)、発疹チフス(Richettsia powazekii)、及びウイルス性脳炎(アルファウイルス、例えば、ベネズエラウマ脳炎、東部ウマ脳炎、西部ウマ脳炎)、(これらは全て現在カテゴリーB剤に分類されている)、並びにNipanウイルス及びハンタウイルス(これらは現在カテゴリーC剤として分類される)が挙げられる。更に、そのように分類されるか、又は異なるように分類される他の生物は、将来このような目的のために同定及び/又は使用され得る。本明細書中に記載されるウイルスベクター及び他の構築物は、これらの生物、ウイルス、それらの毒素又は他の副産物由来の抗原を標的化するために有用であり、これらの生物剤による感染又は他の有害反応を予防及び/又は処置することが容易に理解される。
【0393】
ウイルス感染を治療又は予防するための、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの有効用量又は治療有効用量は、そのような徴候及び/若しくは症状の退行若しくは排除を誘導することによるか、又はそのような徴候及び/若しくは症状の進行を阻害することによるかにかかわらず、治療される対象における感染の1つ以上の徴候及び/又は症状を緩和するのに十分である、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの量を指す。投与量は、投与される対象の年齢及びサイズ、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変化し得る。本開示の実施形態では、例えば、成人ヒト対象におけるウイルス感染症を治療又は予防するための本開示の抗体又はその抗原結合断片の有効用量又は治療有効用量は、約0.01~約200mg/kg例えば、最大約150mg/kgである。本開示の一実施形態では、投与量は、最大約10.8又は11グラム(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11グラム)である。疾患又は感染の重症度に応じて、治療の頻度及び期間を調整することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、初回用量で投与され、続いて1回又は複数回の二次用量で投与され得る。ある特定の実施形態では、初回用量の後に、初回用量とほぼ同じ又はそれ未満であり得る量の抗体又はその抗原結合断片の第2の又は複数の後続用量の投与が続いてもよく、後続用量は少なくとも1日~3日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、又は少なくとも14週間隔てられる。
【0394】
ceDNAベクターを投与される対象は、ウイルス感染、例えば、インフルエンザ感染症を有し得るか、又は感染を発症する素因があり得る。感染を発症する素因がある対象、又は感染(例えば、コロナウイルス又はインフルエンザウイルス)に罹患するリスクが高くあり得る対象としては、自己免疫性疾患のために免疫系が損なわれた対象、免疫抑制療法を受けている対象(例えば、臓器移植後に)、ヒト免疫不全症症候群(human immunodeficiency syndrome、HIV)若しくは後天性免疫不全症候群(acquired immune deficiency syndrome、AIDS)に罹患している対象、白血球を枯渇若しくは破壊する貧血症の形態を有する対象、放射若しくは化学治療を受けている対象、又は炎症障害に罹患している対象が挙げられる。更に、非常に若い対象(例えば、5歳以下)又は高齢の対象(例えば、65歳以上)は、リスクが高い。更に、対象は、疾患の発生に近接していること、例えば、対象が人口密度の高い都市に住んでいること、又はウイルスの感染が確認された若しくは疑われる対象に近接していること、又は雇用、例えば病院労働者、製薬研究者、感染地域への旅行者、若しくは頻繁なチラシの選択により、ウイルス感染に罹患するリスクがあり得る。
【0395】
本開示はまた、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターを、疾患又は障害、例えばウイルス感染のリスクがある対象に、そのような感染を予防するために予防的に投与することを包含する。「予防する」又は「予防すること」は、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターを対象に投与して、対象の体内の疾患又は感染(例えば、ウイルス感染)の発現を阻害することを意味し、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、有効な又は治療上有効な量又は投与量で対象に投与された場合に有効である。
【0396】
いくつかの実施形態によれば、対象におけるウイルス感染の徴候又は症状は、例えば、ウイルス力価アッセイ(例えば、発育鶏卵におけるコロナウイルス増殖又はコロナウイルススパイクタンパク質アッセイ)によって決定される、対象の体内におけるウイルスの生存又は増殖である。ウイルス感染の他の徴候及び症状は、本明細書中で考察される。
【0397】
上記のように、いくつかの実施形態によれば、対象は非ヒト動物であってもよく、本明細書で考察される抗体及び抗原結合断片は、非ヒト動物(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジなど)における疾患を治療及び/又は予防するために獣医学的状況において使用されてもよい。
【0398】
開示は、ウイルス感染(例えば、コロナウイルス感染)を治療若しくは予防し、又はウイルス感染の少なくとも1つの徴候若しくは症状の退行を誘発し、又はその進行を除去若しくは阻害する方法であって、ウイルス感染は、例えば、発熱若しくは熱感/寒気を感じること、咳、咽喉炎、鼻水又は鼻づまり、くしゃみ、筋肉又は身体の痛み、頭痛、疲労(疲労感)、嘔吐、下痢、呼吸器感染、胸内苦悶、息切れ、気管支炎、及び/又は肺炎(本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片の発現のための治療有効量のceDNAベクターを被験体に投与することにより、それを必要とする対象(例えば、ヒト)における、ウイルス感染に続発する徴候又は症状)の退行を誘導し、又はその進行を排除若しくは阻害する方法を提供する。
【0399】
A.エクスビボ治療
いくつかの実施形態によれば、細胞を対象から除去し、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターをその中に導入した後、細胞を対象に戻す。エクスビボの治療のために対象から細胞を取り出し、続いて対象に戻す方法は、当該技術分野で既知である(例えば、米国特許第5,399,346号を参照されたい、その開示は、その全体が本明細書に組み込まれる)。代替的に、ceDNAベクターは、別の対象からの細胞中に、培養細胞中に、又は任意の他の好適な源からの細胞中に導入され、これらの細胞は、それを必要とする対象に投与される。
【0400】
本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターで形質導入された細胞は、好ましくは、薬学的担体と組み合わせて「治療有効量」で対象に投与される。当業者であれば、いくらかの利益が対象にもたらされる限り、治療効果が完全又は治癒的である必要はないことを理解するであろう。
【0401】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、細胞内インビトロ、エクスビボ又はインビボで産生される、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片をコードすることができる。例えば、本明細書で考察される治療方法における本明細書に記載されるceDNAベクターの使用とは対照的に、いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原発現断片の発現のためのceDNAベクターを培養した細胞に導入し、発現した抗体及びその抗原結合断片を、例えば、抗体及び融合タンパク質の産生のために細胞から単離することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体の発現のためのceDNAベクターを含む培養細胞は、抗体又は融合タンパク質の商業的産生に使用することができ、例えば、抗体又は融合タンパク質の小規模又は大規模バイオ製造の細胞源として役立つ。代替的な実施形態では、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、小規模な産生を含む抗体又は融合タンパク質のインビボ産生、並びに商業的な大規模な抗体及びその抗原結合断片の産生のために、宿主非ヒト対象の細胞に導入される。
【0402】
本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、獣医学及び医学の両方の用途で使用することができる。上記のエクスビボ遺伝子送達方法に好適な対象としては、鳥類(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、七面鳥、及びキジ)及び哺乳動物(例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、及びウサギ類)が挙げられ、哺乳動物が好ましい。ヒト対象が最も好ましい。ヒト対象は、新生児、幼児、年少者、及び成人を含む。
【0403】
B.用量範囲
本明細書では、本明細書に記載される抗体及びその抗原結合断片をコードするceDNAベクターを含む有効量の組成物を対象に投与することを含む治療方法が提供される。
【0404】
インビボ及び/又はインビトロアッセイを任意選択的に用いて、使用のための最適投与量範囲を特定するのを助けることができる。製剤に用いられる正確な用量はまた、投与経路及び病態の重症度に依存し、当業者の判断及び各対象の状況に従って決定されるべきである。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から導かれた用量反応曲線から推定され得る。
【0405】
本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターは、所望の組織の細胞をトランスフェクトし、過度の副作用なしに十分なレベルの遺伝子導入及び発現をもたらすのに十分な量で投与される。従来の薬学的に許容される投与経路としては、「投与」セクションで上述されたもの、例えば選択された器官への直接送達(例えば、肝臓への門脈内送達)、経口、吸入(鼻腔内及び気管内送達を含む)、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、及び他の非経口投与経路が挙げられるが、これらに限定されない。投与経路は、所望の場合、組み合わせることができる。
【0406】
特定の「治療効果」を達成するために必要な、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの量の用量は、核酸投与の経路、治療効果を達成するために必要な遺伝子又はRNA発現のレベル、治療される特定の疾患又は障害、及び遺伝子、RNA産物、又は得られる発現タンパク質の安定性を含むが、これらに限定されないいくつかの因子に基づいて変化するであろう。当業者は、前述の因子並びに当該技術分野において周知の他の因子に基づいて、特定疾患又は障害を有する患者を治療するためのceDNAベクター用量範囲を容易に判定することができる。
【0407】
最適な治療応答を提供するように、投与量レジームを調整することができる。例えば、オリゴヌクレオチドは、繰り返し投与することができ、例えば、数回用量が毎日投与され得るか、又は治療状況の急迫によって示されるように、用量を比例的に低減することができる。当業者は、オリゴヌクレオチドが細胞に投与されるか、又は対象に投与されるかにかかわらず、対象オリゴヌクレオチドの投与の適切な用量及びスケジュールを容易に判定することができるであろう。
【0408】
臨床使用のための「治療有効量」は、臨床治験を通じて判定され得る比較的広い範囲内に含まれ、特定の用途に依存する(例えば、神経細胞は、極少量を必要とするが、全身注射は、多量を必要とする)であろう。例えば、ヒト対象の骨格筋又は心筋への直接インビボ注射の場合、治療有効量は、およそ約1μg~100gのceDNAベクターとなるであろう。ceDNAベクターを送達するためにエキソソーム又は微粒子が使用される場合、治療有効量は、経験的に判定され得るが、1μg~約100gのベクターを送達することが予想される。更に、治療有効量とは、疾患の症状のいくつか又はそれ以上の症状の低減をもたらすが、著しいオフターゲット又は著しい有害副作用には至らない、対象に影響を与えるのに十分な量の導入遺伝子を発現するceDNAベクターの量である。いくつかの実施形態によれば、「治療有効量」は、所与の疾患症状の低減の統計的に有意な測定可能な変化をもたらすのに十分である、発現した抗体、及びその抗原結合断片の量である。そのような有効量は、所与のceDNAベクター組成物についての臨床試験及び動物実験で評価することができる。
【0409】
インビトロトランスフェクションの場合、細胞(1×106細胞)に送達される本明細書に開示される、抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの有効量は、およそ0.1~100μgのceDNAベクター、好ましくは1~20μg、より好ましくは1~15μg又は8~10μgとなる。より大きなceDNAベクターは、より多い用量を必要とするであろう。エキソソーム又は微粒子が使用される場合、有効なインビトロ用量は、経験的に判定され得るが、一般に同量のceDNAベクターを送達することが意図される。
【0410】
いくつかの実施形態によれば、対象の細胞に送達される抗体又はその抗原結合断片の量は、1~10μg、例えば、1~9μg、1~8μg、1~7μg、1~6μg、1~5μg、2~9μg、2~8μg、2~7μg、2~6μg、2~5μg、3~9μg、3~8μg、3~7μg、3~6μg、3~5μg、4~9μg、4~8μg、4~7μg、4~6μg、4~5μg、5~10μg、5~9μg、5~8μg、5~7μg、5~6μg、6~10μg、6~9μg、6~8μg、6~7μg、7~10μg、7~9μg、7~8μg、8~10μg、8~9μg、9~10μg又は10μg以上である。
【0411】
治療は、単一用量又は複数回用量の投与を必要とし得る。いくつかの実施形態によれば、2回用量以上を対象に投与され得る。実際、ceDNAベクターは、ウイルス性カプシドの不在に起因して、抗カプシド宿主免疫応答を誘起しないため、複数回用量が、必要に応じて投与され得る。そのようなものとして、当業者は、適切な用量数を判定することができる。投与される用量数は、例えば、およそ1~100、好ましくは2~20用量であり得る。
【0412】
任意の特定の理論に束縛されたくはないが、本開示によって記載されるceDNAベクターの投与によって誘起される典型的な抗ウイルス免疫応答の欠失(すなわち、カプシド構成成分の不在)は、複数の場合に抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターを宿主に投与することが可能になる。いくつかの実施形態によれば、核酸が対象に送達される場合の数は、2~10回の範囲内(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回)である。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターは、10回以上対象に送達される。
【0413】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの用量は、1暦日(例えば、24時間)当たり1回だけ対象に投与される。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターの用量は、2、3、4、5、6、又は7暦日当たり1回だけ対象に投与される。いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの用量は、歴週(例えば、7歴日)当たり1回だけ対象に投与される。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターの用量は、2週間に1回(例えば、2暦週期間に1回)だけ対象に投与される。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターの用量は、1暦月当たり1回(例えば、30歴日に1回)だけ対象に投与される。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターの用量は、6暦月当たり1回だけ対象に投与される。いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターの用量は、歴年(例えば、365日又は閏年では366日)当たり1回だけ対象に投与される。
【0414】
いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターの用量は、0日目に投与される。0日目の初回治療に続いて、ceDNAベクターを用いた初回治療の約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、又は約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、又は約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年、約10年、約11年、約12年、約13年、約14年、約15年、約16年、約17年、約18年、約19年、約20年、約21年、約22年、約23年、約24年、約25年、約26年、約27年、約28年、約29年、約30年、約31年、約32年、約33年、約34年、約35年、約36年、約37年、約38年、約39年、約40年、約41年、約42年、約43年、約44年、約45年、約46年、約47年、約48年、約49年又は約50年後に、2回目の投薬(再投与)を実施することができる。
【0415】
いくつかの実施形態によれば、治療用核酸の再投薬は、治療用核酸の発現の増加をもたらす。いくつかの実施形態によれば、初回投薬後の治療用核酸の発現と比較して、再投薬後の治療用核酸の発現の増加は、核酸の再投薬後、約0.5倍~約10倍、約1倍~約5倍、約1倍~約2倍、又は約0.5倍、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍高い。
【0416】
特定の実施形態では、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターの2回以上の投与(例えば、2、3、4回又はそれ以上の投与)を用いて、様々な間隔の期間にわたって(例えば、毎日、毎週、毎月、毎年など)、所望のレベルの抗体発現を達成することができる。
【0417】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示されるceDNAベクターによってコードされる抗体及びその抗原結合断片は、それが対象において少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月/1年、少なくとも2年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも15年、少なくとも20年、少なくとも30年、少なくとも40年、少なくとも50年以上にわたって発現されるように、調節スイッチ、誘導性又は抑制性プロモーターによって調節され得る。いくつかの実施形態によれば、発現は、本明細書に記載されるceDNAベクターを所定の又は所望の間隔で繰り返し投与することによって達成することができる。
【0418】
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態によれば、抗体及びその抗原結合断片を発現するceDNAベクターは、追加の化合物と併用して投与することができる。
【0419】
C.単位剤形
いくつかの実施形態によれば、本明細書に開示される抗体及びその抗原結合断片の発現のためのceDNAベクターを含む薬学的組成物は、単位剤形で都合よく提示され得る。単位剤形は、典型的に、薬学的組成物の1つ以上の投与経路に適合されるであろう。いくつかの実施形態によれば、単位剤形は、静脈内、筋肉内、又は皮下投与のために適合される。いくつかの実施形態によれば、単位剤形は、吸入による投与のために適合される。いくつかの実施形態によれば、単位剤形は、吸入器による投与のために適合される。いくつかの実施形態によれば、単位剤形は、噴霧器による投与のために適合される。いくつかの実施形態によれば、単位剤形は、エアロゾル化器による投与のために適合される。いくつかの実施形態によれば、単位剤形は、経口投与のため、頬側投与のため、又は舌下投与のために適合される。
【0420】
D.ceDNAベクターを使用した良好な遺伝子発現の試験
当該技術分野で周知のアッセイを使用して、ceDNAベクターによる抗体又はその抗原結合断片の遺伝子送達の効率を試験することができ、インビトロ及びインビボの両方のモデルで実施され得る。ceDNAによる抗体又はその抗原結合断片の発現のレベルは、抗体又はその抗原結合断片のmRNA及びタンパク質レベルを測定することによって(例えば、逆転写PCR、ウェスタンブロット分析、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA))当業者により評価され得る。一実施形態によれば、ceDNAは、例えば、蛍光顕微鏡法又は発光プレートリーダーによりレポータータンパク質の発現を調べることによって、抗体又はその抗原結合断片の発現を評価するために使用できるレポータータンパク質を含む。インビボ適用の場合、タンパク質機能アッセイを使用して、所与の抗体又はその抗原結合断片の機能を試験して、遺伝子発現が良好に起こったかどうかを判断することができる。当業者は、インビトロ又はインビボでceDNAベクターによって発現された抗体又はその抗原結合断片の機能性を測定するための最良の試験を決定することができるであろう。
【0421】
本明細書では、細胞又は対象におけるceDNAベクターからの抗体又はその抗原結合断片の遺伝子発現の効果は、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも2年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも20年にわたって継続し得るか、又は永続的であり得ることが企図される。
【0422】
本出願全体を通して引用される;参考文献、発行された特許、公開された特許出願、及び同時係属中の特許出願を含む全ての特許及び他の刊行物は、例えば、本明細書に記載される技術に関連して使用され得る、そのような刊行物に記載される方法論を説明及び開示する目的で、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの出版物は、本出願の出願日より前のそれらの開示のためにのみ提供されている。この点に関するいかなるものも、発明者が先行する開示のおかげで、又はいかなる他の理由のためにもそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。日付に関する全ての記述又はこれらの文書の内容に関する表現は、出願人が入手できる情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確さに関するいかなる承認も構成するものではない。
【実施例】
【0423】
以下の実施例は、限定ではない例証によって提供される。本明細書に記載される野生型又は修飾型ITRのうちのいずれかからceDNAベクターを構築できること、及び以下の例示的な方法を使用して、そのようなceDNAベクターの活性を構築し、評価できることを当業者は理解するであろう。これらの方法は、ある特定のceDNAベクターを用いて例示されているが、それらは、説明に沿って任意のceDNAベクターに適用可能である。
【0424】
実施例1:昆虫細胞ベースの方法を使用してceDNAベクターを構築する
ポリヌクレオチド構築物テンプレートを使用したceDNAベクターの産生は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、国際出願第US18/49996号の実施例1に記載される。例えば、本開示のceDNAベクターを生成するために使用されるポリヌクレオチド構築物テンプレートは、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、及び/又はceDNA-バキュロウイルスであり得る。理論に限定されるものではないが、許容宿主細胞中、例えば、Repの存在下、2つの対称ITR(ITRのうちの少なくとも一方が、野生型ITR配列に対して修飾されている)及び発現構築物を有するポリヌクレオチド構築物テンプレートは、ceDNAベクターを産生するように複製する。ceDNAベクター産生は、Repタンパク質を介して、第1の、テンプレート骨格(例えば、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、ceDNA-バキュロウイルスゲノムなど)からのテンプレートの切除(「レスキュー」)、及び第2の、切除したceDNAベクターのRep媒介型複製の2つのステップを経る。
【0425】
ceDNAベクターを産生するための例示的な方法は、本明細書に記載されるceDNA-プラスミドに由来する。
図1A及び
図1Bを参照すると、ceDNA-プラスミドの各々のポリヌクレオチド構築物テンプレートは、左修飾型ITR及び右修飾型ITRの両方を含み、ITR配列間に以下を有する:(i)エンハンサー/プロモーター、(ii)導入遺伝子のクローニング部位、(iii)転写後応答エレメント(例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(woodchuck hepatitis virus posttranscriptional regulatory element、WPRE))、及び(iv)ポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモン遺伝子(bovine growth hormone gene、BGHpA)由来)。固有の制限エンドヌクレアーゼ認識部位(R1~R6)(
図1A及び
図1Bに示される)もまた、各構成成分の間に導入され、構築物中の特定部位への新たな遺伝子構成成分の導入を促進した。R3(PmeI)GTTTAAAC(配列番号123)及びR4(PacI)TTAATTAA(配列番号124)酵素部位は、導入遺伝子のオープンリーディングフレームを導入するために、クローニング部位の中で操作される。これらの配列を、ThermoFisher Scientificから取得したpFastBac HT Bプラスミドにクローニングした。
【0426】
ceDNA-バクミドの産生:
DH10Bacコンピテント細胞(MAX EFFICIENCY(登録商標)DH10Bac(商標)コンピテント細胞、Thermo Fisher)を、製造元の指示によるプロトコルに従って、試験プラスミド又は制御プラスミドのいずれかで形質転換した。DH10Bac細胞中のプラスミドとバキュロウイルスシャトルベクターとの間の組換えを誘導して、組換えceDNA-バクミドを生成した。バクミド及びトランスポサーゼプラスミドの形質転換体及び維持のために選択する抗生物質とともに、X-gal及びIPTGを含有する細菌寒天平板上のE.coli中の青白スクリーニングに基づいて(Φ80dlacZΔM15マーカーは、バクミドベクターからのβ-ガラクトシダーゼ遺伝子のα-相補性を提供する)正の選択をスクリーニングすることによって、組換えバクミドを選択した。β-ガラクトシダーゼ指標遺伝子を妨害する転位によって引き起こされる白色コロニーを採取し、10mlの培地中で培養した。
【0427】
組換えceDNA-バクミドを、E.coliから単離し、FugeneHDを使用してSf9又はSf21昆虫細胞中にトランスフェクションして、感染性バキュロウイルスを産生した。付着したSf9又はSf21昆虫細胞を、25℃のT25フラスコ中の50mlの培地中で培養した。4日後、培養培地(P0ウイルスを含有する)を細胞から取り除き、0.45μmフィルターで濾過し、感染性バキュロウイルス粒子を細胞又は細胞残屑から分離した。
【0428】
任意選択的に、第1世代のバキュロウイルス(P0)を、ナイーブSf9又はSf21昆虫細胞を感染させることによって50~500mlの培地中で増幅させた。オービタルシェーカー培養器内の懸濁液培養物中の細胞を、130rpm、25℃で維持し、細胞が(14~15nmのナイーブ直径から)18~19nmの直径及び約4.0E+6細胞/mLの密度に到達するまで、細胞直径及び生存率をモニタリングした。感染3日後~8日後に、培地中のP1バキュロウイルス粒子を、遠心分離後に採取し、細胞及び残屑を除去した後、0.45μmフィルターで濾過した。
【0429】
試験構築物を含むceDNA-バキュロウイルスを収集し、バキュロウイルスの感染活性又は力価を決定した。具体的には、2.5E+6細胞/mLの4×20mL Sf9細胞培養物を、次の希釈1/1000、1/10,000、1/50,000、1/100,000のP1バキュロウイルスで処理し、25~27℃でインキュベートした。感染性は、細胞直径増加の速度及び細胞周期停止、並びに細胞生存率の変化によって4~5日間にわたって毎日判定した。
【0430】
国際出願第US18/49996号(これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の
図8Aに開示されるような「Rep-プラスミド」を、Rep78(配列番号131若しくは133)又はRep68(配列番号130)及びRep52(配列番号132)又はRep40(配列番号129)の両方を含むpFASTBAC(商標)二重発現ベクター(ThermoFisher)において産生した。Rep-プラスミドを、製造元によって提供されるプロトコルに従って、DH10Bacコンピテント細胞(MAX EFFICIENCY(登録商標)DH10Bac(商標)コンピテント細胞(Thermo Fisher)中に形質転換した。DH10Bac細胞中のRep-プラスミドとバキュロウイルスシャトルベクターとの間の組換えを誘導して、組換えバクミド(「Rep-バクミド」)を生成した。X-gal及びIPTGを含有する細菌寒天平板上のE.coli中の青白スクリーニング(Φ80dlacZΔM15マーカーは、バクミドベクターからのβ-ガラクトシダーゼ遺伝子のα-相補性を提供する)を含む正の選択によって、組換えバクミドを選択した。単離された白色コロニーを採取し、10mlの選択培地(LBブロス中のカナマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン)中に播種した。組換えバクミド(Rep-バクミド)をE.coliから単離し、Rep-バクミドをSf9又はSf21昆虫細胞中にトランスフェクションして、感染性バキュロウイルスを産生した。
【0431】
Sf9又はSf21昆虫細胞を、50mlの培地中で4日間培養し、感染性組換えバキュロウイルス(「Rep-バキュロウイルス」)を、培養物から単離した。任意選択的に、第1世代のRep-バキュロウイルス(P0)を、ナイーブSf9又はSf21昆虫細胞を感染させることによって増幅させ、50~500mlの培地中で培養した。感染3日後~8日後に、培地中のP1バキュロウイルス粒子を、遠心分離によって細胞を分離するか、又は濾過若しくは別の分画プロセスのいずれかによって収集した。Rep-バキュロウイルスを収集し、バキュロウイルスの感染活性を決定した。具体的には、2.5×106細胞/mLの4×20mL Sf9細胞培養物を、次の希釈1/1000、1/10,000、1/50,000、1/100,000のP1バキュロウイルスで処理し、インキュベーションした。感染性は、細胞直径増加の速度及び細胞周期停止、並びに細胞生存率の変化によって4~5日間にわたって毎日決定した。
【0432】
ceDNAベクター生成及び特徴付け
図4Bを参照して、次いで、(1)ceDNA-バクミドを含有する試料又はceDNA-バキュロウイルス、及び(2)上記のRep-バキュロウイルスのいずれかを含有するSf9昆虫細胞培養培地を、Sf9細胞(2.5E+6細胞/mL、20mL)の新鮮な培養物に、それぞれ1:1000及び1:10,000の比で添加した。次いで、細胞を25℃、130rpmで培養した。同時感染の4~5日後に、細胞の直径及び生存率が検出される。生存率が約70~80%で細胞直径が18~20nmに到達した場合、細胞培養物を遠心分離し、培地を取り除き、細胞ペレットを回収した。最初に、細胞ペレットを、適量の水性培地(水又は緩衝液のいずれか)に再懸濁する。ceDNAベクターを単離し、Qiagen MIDI PLUS(商標)精製プロトコル(Qiagen、カラム当たり0.2mgの処理された細胞ペレット質量)を使用して、細胞から精製した。
【0433】
Sf9昆虫細胞から産生及び精製されるceDNAベクターの収率は、最初に、260nmでのUV吸光度に基づいて判定された。
【0434】
ceDNAベクターは、
図4Dに例示されるような未変性条件又は変性条件下で、アガロースゲル電気泳動によって同定することによって評価することができ、(a)制限エンドヌクレアーゼ切断及びゲル電気泳動分析後の、未変性ゲルに対して変性ゲル上で2倍のサイズで移行する特徴的なバンドの存在、並びに(b)未切断材料の変性ゲル上の単量体及び二量体(2x)バンドの存在は、ceDNAベクターの存在に特有である。
【0435】
単離されたceDNAベクターの構造を、共感染Sf9細胞から得られたDNA(本明細書に記載されるように)を、制限エンドヌクレアーゼで消化することによって、a)ceDNAベクター内の単一切断部位のみの存在、及びb)0.8%変性アガロースゲル(>800bp)上で分画したときに明らかに見えるほど十分に大きい、得られる断片について更に分析した。
図4D及び
図4Eに示されるように、非連続的な構造を有する直鎖状DNAベクター及び直鎖状で連続的な構造を有するceDNAベクターは、それらの反応産物のサイズによって区別することができ、例えば、非連続的な構造を有するDNAベクターは、1kb及び2kb断片を産生することが期待されるが、連続的な構造を有する非カプシド化ベクターは、2kb及び4kb断片を産生することが期待される。
【0436】
したがって、定義によって必要とされるように、単離されたceDNAベクターが共有結合性閉端であることを定性的に実証するために、試料を、特定のDNAベクター配列の文脈において、単一制限部位を有すると同定された制限エンドヌクレアーゼで消化させ、好ましくは、等しくないサイズ(例えば、1000bp及び2000bp)の2つの切断産物をもたらす。変性ゲル(2つの相補的DNA鎖を分離する)上の消化及び電気泳動に続いて、直鎖状の非共有結合的閉鎖状DNAは、2つのDNA鎖が連結され、展開されて2倍の長さである場合(但し、一本鎖である)、1000bp及び2000bpのサイズで溶解するが、共有結合的閉鎖状DNA(すなわち、ceDNAベクター)は、2倍サイズ(2000bp及び4000bp)で溶解するであろう。更に、DNAベクターの単量体、二量体、及びn量体形態の消化は、多量体DNAベクターの末端間連結に起因して、同じサイズの断片として全て溶解する(
図4Dを参照されたい)。
【0437】
本明細書で使用される場合、「未変性ゲル及び変性条件下でのアガロースゲル電気泳動によるDNAベクターの特定のためのアッセイ」という語句は、制限エンドヌクレアーゼ消化に続いて、消化産物の電気泳動的評価を実施することによって、ceDNAの閉端性を評価するためのアッセイを指す。1つのそのような例示的アッセイを以下に示すが、当業者であれば、この実施例に関する当該技術分野において既知の多くの変形が可能であることを理解するであろう。およそ1/3倍及び2/3倍のDNAベクター長の産物を生成するであろう目的のceDNAベクターに対する単一切断酵素であるように、制限エンドヌクレアーゼが選択される。これは、未変性ゲル及び変性ゲルの両方でバンドを溶解する。変性前に、試料から緩衝液を取り除くことが重要である。Qiagen PCRクリーンアップキット又は脱塩「スピンカラム」、例えば、GE HEALTHCARE ILUSTRA(商標)MICROSPIN(商標)G-25カラムは、エンドヌクレアーゼ消化のための当該技術分野において既知のいくつかのオプションである。アッセイは、例えば、i)DNAを適切な制限エンドヌクレアーゼで消化すること、2)例えば、Qiagen PCRクリーンアップキットに適用し、蒸留水で溶出すること、iii)10倍変性溶液(10倍=0.5M NaOH、10mM EDTA)を添加し、10倍色素を添加し、緩衝せず、10倍変性溶液を、1mM EDTA及び200mM NaOHで以前にインキュベーションされた0.8~1.0%ゲル上で4倍に添加することによって調製されたDNAラダーと一緒に分析して、NaOH濃度が、ゲル及びゲルボックス中で均一であり、1倍変性溶液(50mM NaOH、1mM EDTA)の存在下でゲルを流動させることを保証することを含む。当業者であれば、サイズ及び所望のタイミングの結果に基づいて、電気泳動を実行するために使用する電圧を理解するであろう。電気泳動後に、ゲルを排出し、1倍TBE又はTAE中で中和し、蒸留水又は1倍SYBR Goldを含む1倍TBE/TAEに移す。次いで、例えば、Thermo Fisher SYBR(登録商標)Gold Nucleic Acid Gel Stain(核酸ゲル染料)(DMSO中10,000倍濃縮物)及び落射蛍光灯(青色)又はUV(312nm)を用いてバンドを可視化することができる。
【0438】
生成されたceDNAベクターの純度は、任意の当該技術分野において既知の方法を使用して評価され得る。1つの例示的な非限定的方法として、試料の全体UV吸光度に対するceDNA-プラスミドの寄与は、ceDNAベクターの蛍光強度を標準と比較することによって推定され得る。例えば、UV吸光度に基づいて、4μgのceDNAベクターをゲル上に充填し、ceDNAベクター蛍光強度が、1μgであることが知られている2kbバンドに相当する場合、1μgのceDNAベクターが存在し、ceDNAベクターは、全UV吸光材料の25%である。次いで、ゲル上のバンド強度を、バンドが表す計算されたインプットに対してプロットする。例えば、全ceDNAベクターが8kbであり、切除された比較バンドが2kbである場合、バンド強度は、全インプットの25%としてプロットされ、この場合、1.0μgのインプットに対して0.25μgとなる。ceDNAベクタープラスミドタイトレーションを使用して、標準曲線をプロットする場合、回帰直線等式を使用して、ceDNAベクターバンドの量を計算し、次いで、これを使用して、ceDNAベクターにより表される全インプットのパーセント、又は純度パーセントを決定することができる。
【0439】
比較目的のため、実施例1は、昆虫細胞ベースの方法及びポリヌクレオチド構築物テンプレートを使用するceDNAベクターの産生を記載し、また参照により全体が本明細書に組み込まれるPCT/US18/49996の実施例1にも記載される。例えば、実施例1に従って本開示のceDNAベクターを生成するために使用されるポリヌクレオチド構築物テンプレートは、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、及び/又はceDNA-バキュロウイルスであり得る。論に限定されるものではないが、許容宿主細胞中、例えば、Repの存在下、2つの対称ITR(ITRのうちの少なくとも一方が、野生型ITR配列に対して修飾されている)及び発現構築物を有するポリヌクレオチド構築物テンプレートは、ceDNAベクターを産生するように複製する。ceDNAベクター産生は、Repタンパク質を介して、第1の、テンプレート骨格(例えば、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、ceDNA-バキュロウイルスゲノムなど)からのテンプレートの切除(「レスキュー」)、及び第2の、切除したceDNAベクターのRep媒介型複製の2つのステップを経る。
【0440】
昆虫細胞を使用する方法でceDNAベクターを産生するための例示的な方法は、本明細書に記載されるceDNA-プラスミドに由来する。
図1A及び
図1Bを参照すると、ceDNA-プラスミドの各々のポリヌクレオチド構築物テンプレートは、左修飾型ITR及び右修飾型ITRの両方を含み、ITR配列間に以下を有する:(i)エンハンサー/プロモーター、(ii)導入遺伝子のクローニング部位、(iii)転写後応答エレメント(例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、及び(iv)ポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモン遺伝子(BGHpA)由来)。固有の制限エンドヌクレアーゼ認識部位(R1~R6)(
図1A及び
図1Bに示される)もまた、各構成成分の間に導入され、構築物中の特定部位への新たな遺伝子構成成分の導入を促進した。R3(PmeI)GTTTAAAC(配列番号123)及びR4(PacI)TTAATTAA(配列番号124)酵素部位は、導入遺伝子のオープンリーディングフレームを導入するために、クローニング部位の中で操作される。これらの配列を、ThermoFisher Scientificから取得したpFastBac HT Bプラスミドにクローニングした。
【0441】
ceDNA-バクミドの産生:
DH10Bacコンピテント細胞(MAX EFFICIENCY(登録商標)DH10Bac(商標)コンピテント細胞、Thermo Fisher)を、製造元の指示によるプロトコルに従って、試験プラスミド又は制御プラスミドのいずれかで形質転換した。DH10Bac細胞中のプラスミドとバキュロウイルスシャトルベクターとの間の組換えを誘導して、組換えceDNA-バクミドを生成した。バクミド及びトランスポサーゼプラスミドの形質転換体及び維持のために選択する抗生物質とともに、X-gal及びIPTGを含有する細菌寒天平板上のE.coli中の青白スクリーニングに基づいて(Φ80dlacZΔM15マーカーは、バクミドベクターからのβ-ガラクトシダーゼ遺伝子のα-相補性を提供する)正の選択をスクリーニングすることによって、組換えバクミドを選択した。β-ガラクトシダーゼ指標遺伝子を妨害する転位によって引き起こされる白色コロニーを採取し、10mlの培地中で培養した。
【0442】
組換えceDNA-バクミドを、E.coliから単離し、FugeneHDを使用してSf9又はSf21昆虫細胞中にトランスフェクションして、感染性バキュロウイルスを産生した。付着したSf9又はSf21昆虫細胞を、25℃のT25フラスコ中の50mlの培地中で培養した。4日後、培養培地(P0ウイルスを含有する)を細胞から取り除き、0.45μmフィルターで濾過し、感染性バキュロウイルス粒子を細胞又は細胞残屑から分離した。
【0443】
任意選択的に、第1世代のバキュロウイルス(P0)を、ナイーブSf9又はSf21昆虫細胞を感染させることによって50~500mlの培地中で増幅させた。オービタルシェーカー培養器内の懸濁液培養物中の細胞を、130rpm、25℃で維持し、細胞が(14~15nmのナイーブ直径から)18~19nmの直径及び約4.0E+6細胞/mLの密度に到達するまで、細胞直径及び生存率をモニタリングした。感染3日後~8日後に、培地中のP1バキュロウイルス粒子を、遠心分離後に採取し、細胞及び残屑を除去した後、0.45μmフィルターで濾過した。
【0444】
試験構築物を含むceDNA-バキュロウイルスを収集し、バキュロウイルスの感染活性又は力価を決定した。具体的には、2.5E+6細胞/mLの4×20mL Sf9細胞培養物を、次の希釈1/1000、1/10,000、1/50,000、1/100,000のP1バキュロウイルスで処理し、25~27℃でインキュベートした。感染性は、細胞直径増加の速度及び細胞周期停止、並びに細胞生存率の変化によって4~5日間にわたって毎日決定した。
【0445】
「Rep-プラスミド」は、Rep78(配列番号131若しくは133)又はRep68(配列番号130)及びRep52(配列番号132)又はRep40(配列番号129)の両方を含むpFASTBAC(商標)二重発現ベクター(ThermoFisher)において産生された。Rep-プラスミドを、製造元によって提供されるプロトコルに従って、DH10Bacコンピテント細胞(MAX EFFICIENCY(登録商標)DH10Bac(商標)コンピテント細胞(Thermo Fisher)中に形質転換した。DH10Bac細胞中のRep-プラスミドとバキュロウイルスシャトルベクターとの間の組換えを誘導して、組換えバクミド(「Rep-バクミド」)を生成した。X-gal及びIPTGを含有する細菌寒天平板上のE.coli中の青白スクリーニング(Φ80dlacZΔM15マーカーは、バクミドベクターからのβ-ガラクトシダーゼ遺伝子のα-相補性を提供する)を含む正の選択によって、組換えバクミドを選択した。単離された白色コロニーを採取し、10mlの選択培地(LBブロス中のカナマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン)中に播種した。組換えバクミド(Rep-バクミド)をE.coliから単離し、Rep-バクミドをSf9又はSf21昆虫細胞中にトランスフェクションして、感染性バキュロウイルスを産生した。
【0446】
Sf9又はSf21昆虫細胞を、50mlの培地中で4日間培養し、感染性組換えバキュロウイルス(「Rep-バキュロウイルス」)を、培養物から単離した。任意選択的に、第1世代のRep-バキュロウイルス(P0)を、ナイーブSf9又はSf21昆虫細胞を感染させることによって増幅させ、50~500mlの培地中で培養した。感染3日後~8日後に、培地中のP1バキュロウイルス粒子を、遠心分離によって細胞を分離するか、又は濾過若しくは別の分画プロセスのいずれかによって収集した。Rep-バキュロウイルスを収集し、バキュロウイルスの感染活性を決定した。具体的には、2.5×106細胞/mLの4×20mL Sf9細胞培養物を、次の希釈1/1000、1/10,000、1/50,000、1/100,000のP1バキュロウイルスで処理し、インキュベーションした。感染性は、細胞直径増加の速度及び細胞周期停止、並びに細胞生存率の変化によって4~5日間にわたって毎日決定した。
【0447】
ceDNAベクター生成及び特徴付け
次いで、(1)ceDNA-バクミド又はceDNA-バキュロウイルスを含有する試料、及び(2)上記のRep-バキュロウイルスのいずれかを含有するSf9昆虫細胞培養培地を、Sf9細胞(2.5E+6細胞/ml、20ml)の新鮮な培養物に、それぞれ1:1000及び1:10,000の比で添加した。次いで、細胞を25℃、130rpmで培養した。同時感染の4~5日後に、細胞の直径及び生存率が検出される。生存率が約70~80%で細胞直径が18~20nmに到達した場合、細胞培養物を遠心分離し、培地を取り除き、細胞ペレットを回収した。最初に、細胞ペレットを、適量の水性培地(水又は緩衝液のいずれか)に再懸濁する。ceDNAベクターを単離し、Qiagen MIDI PLUS(商標)精製プロトコル(Qiagen、カラム当たり0.2mgの処理された細胞ペレット質量)を使用して、細胞から精製した。
【0448】
Sf9昆虫細胞から産生及び精製されるceDNAベクターの収率は、最初に、260nmでのUV吸光度に基づいて判定された。精製されたceDNAベクターは、実施例5に記載される電気泳動方法論を使用して、適切な閉端構成について評価され得る。
【0449】
実施例2:二本鎖DNA分子からの切除による合成ceDNA産生
ceDNAベクターの合成産生は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、2019年1月18日に出願された国際出願第US19/14122号の実施例2~6に記載される。二本鎖DNA分子の切除を伴う合成方法を使用してceDNAベクターを産生する1つの例示的な方法。簡潔には、ceDNAベクターは、二本鎖DNA構築物を使用して生成され得る。例えば、国際出願第US19/14122号の
図7A~
図8Eを参照されたい。いくつかの実施形態によれば、二本鎖DNA構築物はceDNAプラスミドであり、例えば、2018年12月6日に出願された国際出願第US2018/064242号の
図6を参照されたい)。
【0450】
いくつかの実施形態によれば、ceDNAベクターを作製するための構築物は、本明細書に記載される調節スイッチを含む。
【0451】
例示の目的のため、実施例2は、この方法を使用して生成された例示的な閉端DNAベクターとして、ceDNAベクターを産生することを説明する。しかしながら、この実施例では、ITR及び発現カセット(例えば、核酸配列)を含む二本鎖ポリヌクレオチドの切除に続いて、本明細書に記載される遊離3’及び5’末端のライゲーションによって閉端DNAベクターを生成するインビトロ合成産生方法を例証するためにceDNAベクターが例示されているが、当業者は、上で例証されるように、ドギーボーンDNA、ダンベルDNAなどを含むが、これらに限定されない任意の所望の閉端DNAベクターが生成されるように、二本鎖DNAポリヌクレオチド分子を修飾できることを認識する。実施例2に記載される合成産生方法により産生され得る抗体又は融合タンパク質の産生のための例示的なceDNAベクターは、「III ceDNAベクター全般」と題されたセクションで論じられている。ceDNAベクターによって発現される例示的な抗体及び融合タンパク質は、「IIC ceDNAベクターによって発現される例示的な抗体及び融合タンパク質」と題されたセクションに記載される。
【0452】
本方法は、(i)二本鎖DNA構築物から発現カセットをコードする配列を切除することと、(ii)ITRのうちの1つ以上でヘアピン構造を形成することと、(iii)ライゲーションによって、例えば、T4 DNAリガーゼによって遊離5’及び3’末端を結合することと、を伴う。
【0453】
二本鎖DNA構築物は、5’から3’への順に、第1の制限エンドヌクレアーゼ部位、上流ITR、発現カセットと、下流ITR、及び第2の制限エンドヌクレアーゼ部位を含む。次いで、二本鎖DNA構築物を1つ以上の制限エンドヌクレアーゼと接触させて、制限エンドヌクレアーゼ部位の両方で二本鎖切断を生成する。1つのエンドヌクレアーゼが両方の部位を標的化することも、制限部位がceDNAベクターテンプレート内に存在しない限り、各部位を異なるエンドヌクレアーゼによって標的化することもできる。これにより、制限エンドヌクレアーゼ部位の間の配列が、残りの二本鎖DNA構築物から切除される(国際出願第US19/14122号の
図9を参照されたい)。ライゲーションすると、閉端DNAベクターが形成される。
【0454】
この方法で使用されるITRの一方又は両方は、野生型ITRであり得る。修飾型ITRが使用されてもよく、ここで修飾は、B及びB’アーム並びに/又はC及びC’アームを形成する配列における野生型ITRからの1つ以上のヌクレオチドの欠失、挿入、又は置換を含み得(例えば、国際出願第US19/14122号の
図6~
図8及び
図10、
図11Bを参照されたい)、2つ以上のヘアピンループ(例えば、PCT/US19/14122号の
図6~
図8、
図11Bを参照されたい)又は単一のヘアピンループ(例えば、PCT/US19/14122号の
図10A~
図10B、
図11Bを参照されたい)を有し得る。ヘアピンループ修飾型ITRは、既存のオリゴの遺伝子修飾によって、又は新規の生物学的合成及び/若しくは化学的合成によって生成され得る。
【0455】
非限定的な例では、ITR-6左及び右(配列番号111及び112)は、AAV2の野生型ITRからのB-B’及びC-C’アームに40ヌクレオチドの欠失を含む。修飾型ITRに残っているヌクレオチドは、単一のヘアピン構造を形成すると予測される。構造を展開するGibbs自由エネルギーは、約-54.4kcal/molである。機能的Rep結合部位又はTrs部位の任意の欠失を含む、ITRへの他の修飾を行うこともできる。
【0456】
実施例3:オリゴヌクレオチドの構築によるceDNAの産生
様々なオリゴヌクレオチドの構築を伴う合成方法を使用してceDNAベクターを産生する別の例示的な方法は、国際出願第US19/14122号の実施例3に提供されており、ceDNAベクターは、5’オリゴヌクレオチド及び3’ITRオリゴヌクレオチドを合成し、ITRオリゴヌクレオチドを、発現カセットを含む二本鎖ポリヌクレオチドにライゲーションすることによって産生される。国際出願PTC/US19/14122号の
図11Bは、5’ITRオリゴヌクレオチド及び3’ITRオリゴヌクレオチドを、発現カセットを含む二本鎖ポリヌクレオチドにライゲーションする例示的な方法を示す。
【0457】
本明細書に開示されるように、ITRオリゴヌクレオチドは、WT-ITR(例えば、
図3A、
図3Cを参照されたい)、又は修飾型ITR(例えば、
図3B及び
図3Dを参照されたい)を含み得る。(例えば、国際出願第US19/14122号(その全体が本明細書に組み込まれる)の
図6A、
図6B、
図7A、及び
図7Bも参照されたい)。例示的なITRオリゴヌクレオチドには、限定されないが、配列番号134~145が含まれる(例えば、国際出願第US19/14122号の表7を参照されたい)。修飾型ITRは、B及びB’アーム並びに/又はC及びC’アームを形成する配列における野生型ITRからの1つ以上のヌクレオチドの欠失、挿入、又は置換を含み得る。無細胞合成で使用される、本明細書に記載されるWT-ITR又はmod-ITRを含むITRオリゴヌクレオチドは、遺伝子修飾又は生物学的及び/若しくは化学的合成によって生成することができる。本明細書で論じられるように、実施例2及び3のITRオリゴヌクレオチドは、本明細書で論じられるように、対称又は非対称構成のWT-ITR又は修飾型ITR(mod-ITR)を含み得る。
【0458】
実施例4:一本鎖DNA分子によるceDNA産生
合成方法を使用してceDNAベクターを産生する別の例示的な方法は、国際出願第US19/14122号の実施例4において提供され、センス発現カセット配列に隣接しアンチセンス発現カセットに隣接する2つのアンチセンスITRに共有結合的に結合される2つのセンスITRを含む一本鎖の直鎖状DNAを使用し、次いで、この一本鎖の直鎖状DNAの末端をライゲーションして、閉端一本鎖分子を形成する。非限定的な一例は、一本鎖DNA分子を合成及び/又は産生し、分子の一部をアニーリングして、二次構造の1つ以上の塩基対合領域を有する単一の直鎖状DNA分子を形成し、次いで遊離5’及び3’末端を互いにライゲーションして、閉鎖状一本鎖分子を形成する。
【0459】
ceDNAベクターの産生のための例示的な一本鎖DNA分子は、5’から3’に、
センス第1のITR、
センス発現カセット配列、
センス第2のITR、
アンチセンス第2のITR、
アンチセンス発現カセット配列、及び
アンチセンス第1のITRを含む。
【0460】
実施例4の例示的な方法で使用するための一本鎖DNA分子は、本明細書に記載される任意のDNA合成方法論、例えば、インビトロDNA合成によって形成され得るか、又はヌクレアーゼでDNA構築物(例えば、プラスミド)を切断し、得られたdsDNA断片を融解して、ssDNA断片を提供することによって提供され得る。
【0461】
アニーリングは、センス配列及びアンチセンス配列の対の計算された融解温度を下回って温度を下げることによって達成され得る。融解温度は、特定のヌクレオチド塩基含有量、及び使用している溶液の特性、例えば、塩濃度に依存する。任意の所与の配列及び溶液の組み合わせの融解温度は、当業者によって容易に計算される。
【0462】
アニーリングされた分子の遊離5’及び3’末端は、互いにライゲーションされるか、又はヘアピン分子にライゲーションされてceDNAベクターを形成することができる。好適な例示的ライゲーション方法論及びヘアピン分子は、実施例2及び3に記載される。
【0463】
実施例5:ceDNAの精製及び/又は産生の確認
例えば、実施例1に記載される昆虫細胞ベースの産生方法、又は実施例2~4に記載される合成産生方法を含む、本明細書に記載される方法によって産生されたDNAベクター産物のいずれも、例えば、熟練者に一般に知られている方法を使用して、不純物、未使用の構成成分、又は副産物を除去するために精製することができ、かつ/又は分析して、産生されたDNAベクター(この例では、ceDNAベクター)が所望の分子であることを確認することができる。DNAベクター、例えばceDNAの精製のための例示的な方法は、Qiagen Midi Plus精製プロトコル(Qiagen)を使用すること及び/又はゲル精製によるものである。
【0464】
以下は、ceDNAベクターの同一性を確認するための例示的な方法である。
【0465】
ceDNAベクターは、
図4Dに例示されるような未変性条件又は変性条件下で、アガロースゲル電気泳動によって同定することによって評価することができ、(a)制限エンドヌクレアーゼ切断及びゲル電気泳動分析後の、未変性ゲルに対して変性ゲル上で2倍のサイズで移行する特徴的なバンドの存在、並びに(b)未切断材料の変性ゲル上の単量体及び二量体(2x)バンドの存在は、ceDNAベクターの存在に特有である。
【0466】
単離されたceDNAベクターの構造を、精製されたDNAを、選択された制限エンドヌクレアーゼで消化することによって、a)ceDNAベクター内の単一切断部位のみの存在、及びb)0.8%変性アガロースゲル(>800bp)上で分画した場合に明らかに見えるほど十分に大きな、得られる断片について更に分析した。
図4C及び
図4Dに示されるように、非連続的な構造を有する直鎖状DNAベクター及び直鎖状かつ連続的な構造を有するceDNAベクターは、それらの反応産物のサイズによって区別することができ、例えば、非連続的な構造を有するDNAベクターは、1kb及び2kb断片を産生することが期待されるが、連続的な構造を有するceDNAベクターは、2kb及び4kb断片を産生することが期待される。
【0467】
したがって、定義によって必要とされるように、単離されたceDNAベクターが共有結合性閉端であることを定性的に実証するために、試料を、特定のDNAベクター配列の文脈において、単一制限部位を有すると同定された制限エンドヌクレアーゼで消化させ、好ましくは、等しくないサイズ(例えば、1000bp及び2000bp)の2つの切断産物をもたらす。変性ゲル(2つの相補的DNA鎖を分離する)上の消化及び電気泳動に続いて、直鎖状の非共有結合的閉鎖状DNAは、2つのDNA鎖が連結され、展開されて2倍の長さである場合(但し、一本鎖である)、1000bp及び2000bpのサイズで溶解するが、共有結合的閉鎖状DNA(すなわち、ceDNAベクター)は、2倍サイズ(2000bp及び4000bp)で溶解するであろう。更に、DNAベクターの単量体、二量体、及びn量体形態の消化は、多量体DNAベクターの末端間連結に起因して、同じサイズの断片として全て溶解する(
図4Eを参照されたい)。
【0468】
本明細書で使用される場合、「未変性ゲル及び変性条件下でのアガロースゲル電気泳動によるDNAベクターの特定のためのアッセイ」という語句は、制限エンドヌクレアーゼ消化に続いて、消化産物の電気泳動的評価を実施することによって、ceDNAの閉端性を評価するためのアッセイを指す。1つのそのような例示的アッセイを以下に示すが、当業者であれば、この実施例に関する当該技術分野において既知の多くの変形が可能であることを理解するであろう。およそ1/3倍及び2/3倍のDNAベクター長の産物を生成するであろう目的のceDNAベクターに対する単一切断酵素であるように、制限エンドヌクレアーゼが選択される。これは、未変性ゲル及び変性ゲルの両方でバンドを溶解する。変性前に、試料から緩衝液を取り除くことが重要である。Qiagen PCRクリーンアップキット又は脱塩「スピンカラム」、例えば、GE HEALTHCARE ILUSTRA(商標)MICROSPIN(商標)G-25カラムは、エンドヌクレアーゼ消化のための当該技術分野において既知のいくつかのオプションである。アッセイは、例えば、i)DNAを適切な制限エンドヌクレアーゼで消化すること、2)例えば、Qiagen PCRクリーンアップキットに適用し、蒸留水で溶出すること、iii)10倍変性溶液(10倍=0.5M NaOH、10mM EDTA)を添加し、10倍色素を添加し、緩衝せず、10倍変性溶液を、1mM EDTA及び200mM NaOHで以前にインキュベーションされた0.8~1.0%ゲル上で4倍に添加することによって調製されたDNAラダーと一緒に分析して、NaOH濃度が、ゲル及びゲルボックス中で均一であり、1倍変性溶液(50mM NaOH、1mM EDTA)の存在下でゲルを流動させることを保証することを含む。当業者であれば、サイズ及び所望のタイミングの結果に基づいて、電気泳動を実行するために使用する電圧を理解するであろう。電気泳動後に、ゲルを排出し、1倍TBE又はTAE中で中和し、蒸留水又は1倍SYBR Goldを含む1倍TBE/TAEに移す。次いで、例えば、Thermo Fisher、SYBR(登録商標)Gold Nucleic Acid Gel Stain(核酸ゲル染料)(DMSO中10,000倍濃縮物)及び落射蛍光灯(青色)又はUV(312nm)を用いてバンドを可視化することができる。前述のゲルベースの方法は、ceDNAベクターをゲルバンドから単離し、それを復元できるようにすることによって、精製目的に適合させることができる。
【0469】
生成されたceDNAベクターの純度は、任意の当該技術分野において既知の方法を使用して評価され得る。1つの例示的な非限定的方法として、試料の全体UV吸光度に対するceDNA-プラスミドの寄与は、ceDNAベクターの蛍光強度を標準と比較することによって推定され得る。例えば、UV吸光度に基づいて、4μgのceDNAベクターをゲル上に充填し、ceDNAベクター蛍光強度が、1μgであることが知られている2kbバンドに相当する場合、1μgのceDNAベクターが存在し、ceDNAベクターは、全UV吸光材料の25%である。次いで、ゲル上のバンド強度を、バンドが表す計算されたインプットに対してプロットする。例えば、全ceDNAベクターが8kbであり、切除された比較バンドが2kbである場合、バンド強度は、全インプットの25%としてプロットされ、この場合、1.0μgのインプットに対して0.25μgとなる。ceDNAベクタープラスミドタイトレーションを使用して、標準曲線をプロットする場合、回帰直線等式を使用して、ceDNAベクターバンドの量を計算し、次いで、これを使用して、ceDNAベクターにより表される全インプットのパーセント、又は純度パーセントを決定することができる。
【0470】
実施例6:雄Rag2マウスにおける静脈内送達を介してCovid Ab構築物をスクリーニングするための研究。
ceDNAベクターは、上記の実施例1に記載される方法に従って産生した。
【0471】
本研究の目的は、LNP及び免疫抑制剤TKIとしてのルクソリチニブ(ヤヌス関連キナーゼ(Janus Associated Kinase、JAK)阻害剤)を介して送達された製剤化ceDNAの静脈内送達後のタンパク質発現を決定すること、並びに抗体HC単独、抗体LC単独、又は抗体HC及びLCを一緒に発現する様々なceDNA構築物におけるタンパク質発現を比較することであった。抗SARS-CoV-2 Abの重鎖(HC)をコードする核酸を含むceDNA及び抗SARS-CoV-2 Abの軽鎖(LC)をコードする核酸を含むceDNAを、免疫抑制剤TKI(例えば、ルキソリチニブ)と組み合わせてマウス(n=5)に投与した。研究設計及び詳細は、以下に示すように行われた。
【0472】
研究設計
表8は、研究のキナーゼ阻害剤投与成分の設計を示す。表8に示すように、雄Rag2マウスの4つの群(n=5)に、ルキソリチニブ(300mg/kg)を10mL/kgの用量体積で経口投与(PO)したか、又は投与しなかった。投与された動物については、投与は0日目、投与30分前及び投与5時間後に行った。
【0473】
【表8】
No.=番号、PO=経口投与、ROA=投与経路、min=分、hr=時間。投与及び阻害剤調製のためのビヒクルは、0.5%メチルセルロースである。
【0474】
表9は、研究の試験物質投与成分の設計を示している。表9に示すように、Rag2マウスの4つの群(n=5)に、ビヒクル(群1)又は試験化合物(群2~4)を2mg/kgの用量レベル及び5mL/kgの用量体積で0日目に静脈内投与した。35日目は研究の最終時点であった。群1はビヒクル対照であった。群2では、ceDNA-1856(LCをコードする)及びceDNA-1859(HCをコードする)構築物中のLCに対するHCのモル比は3:2(HC:LC)であり、二重ceDNAベクターをLNP1中で製剤化した。群3における単一ベクターceDNA-2157 ceDNA構築物は、LNP1中に製剤化された二重ORF、二方向性構築物であった。群4では、ceDNA1856(LC)及びceDNA1859(HC)構築物中のLCに対するHCのモル比は3:2(HC:LC)であり、二重ceDNAベクターを、LNP1とは異なるLNP2中で製剤化した。研究で使用したceDNA構築物及び/又はORFの配列を上記表7に示す。
【0475】
【表9】
No.=番号、IV=静脈内、ROA=投与経路
【0476】
試験系
試験系は以下の通りであった。
種:ハツカネズミ(Mus Musculus)
株:Rag2(B6.129S6-Rag2<tm1Fwa>)
雄の数:25プラス2スペア
齢:到着時5週齢
供給源:Taconic
【0477】
ハウジング:群を、接触床敷を備えた透明なポリカーボネートケージに、動物をグループ化して収容した。
【0478】
食物及び水:動物に、Mouse Diet 5058、及び2.5~3.0の目標pHに1N HClで酸性化された濾過水道水が、自由に提供された。
【0479】
試験材料
化合物のクラス:組換えDNAベクター:ceDNA
用量製剤:試験物品は、アリコート投与できるように供給された。試験物品濃度を受領時に記録した。
【0480】
ストックを室温まで温め、使用直前に必要に応じて、提供されたPBSですぐに希釈した。投与がすぐに実施されない場合、調製された材料を約4℃で保存した。
【0481】
阻害剤は、アリコートを投与できるように毎日供給された。経口胃管投与溶液を0.5%メチルセルロース中で製剤化した。製剤は、投与前に混合(ピペッティング)及び/又は超音波処理して、経口胃管栄養懸濁液の粒子を分散させた。
【0482】
用量投与:阻害剤を、10mL/kgで、PO投与(強制経口投与)によって、上記の表8に従って0日目に投薬した。阻害剤は、0日目のceDNA投与の30分(±5分)前及び5時間(±10分)後に投与した。
【0483】
0日目に、側尾静脈への静脈内投与により試験材料の用量を投与した。用量は、5mL/kgの用量体積で投与した。用量は、0.01mL単位で四捨五入される。
【0484】
残留材料:全ての残留オープンストックを冷蔵庫に入れ、研究の生存期間部分の完了後に廃棄した。調製された投与材料は、投与の完了時に廃棄した。
【0485】
インライフ観察及び測定
ケージ側観察(動物の健康チェック):ケージ側動物健康チェックは、少なくとも1日1回行われ、一般的な健康、死亡率、及び瀕死状態がチェックされた。
【0486】
臨床観察:臨床観察は、0日目(投与の60~120分後及び勤務日の終わり(3~6時間後))及び1日目(0日目の試験材料投与の22~26時間後)に実施した。例外毎に追加の観察を行った。
【0487】
体重:全ての動物の体重を、0日目、1日目、2日目、3日目、7日目、14日目、21日目、29日目、及び35日目に記録した。必要に応じて、追加の体重を記録した。重量は、0.1g単位で四捨五入した。
【0488】
血液採取
群1~5の全ての動物は、以下に示される表10に従って、3日目、7日目、14日目、21日目及び29日目に中間採血を行った。
【0489】
【0490】
採取後、動物は、0.5~1.0mLの乳酸リンゲル液を皮下投与された。
【0491】
血清のための全血を、尾静脈ニック、伏在静脈、又は眼窩洞穿刺(吸入イソフルラン下)によって収集した。全血は、凝固活性剤チューブを備えた血清分離器に収集され、25μLの2つの血清アリコートに処理された。
【0492】
全ての試料を、ドライアイス上で、輸送されるまで、表示上-70℃で保存した。
【0493】
麻酔の回復:麻酔下の間、回復中、及び移動するまで、動物を継続的にモニタリングした。
【0494】
終末手順及び採取
【0495】
【表11】
MOV=取得可能な最大容量
a全血を血清分離チューブに収集し、凝固活性剤を添加した
【0496】
終末血液:血清のための全血は、凝固活性剤チューブを備えた血清分離器内に採取され、施設のSOPに従って、2つのアリコートの50μLの血清と1つのアリコートの残留物に処理された。全ての試料を、ドライアイス上で、輸送されるまで、表示上-70℃で保存した。
【0497】
結果
抗スパイクヒトIgG(
***)を使用して、本明細書に記載されるように抗体発現を検出し、これを、ceDNA構築物の注射後3日目、7日目、14日目、21日目、29日目及び35日目に検出されたng/ml抗スパイクhIgGによって定量した。
図6に示すように、ceDNA-1856(LCをコードする)及びceDNA-1859(HCをコードする)ベクターを有する1.5:1(HC:LC)のモル比を有する二重ceDNA構築物を使用した場合、約1μg/mlの抗スパイクhIgGが14日目までに検出され、抗体レベルは35日目まで連続的に上昇し、約8μg/mlに達した。
【0498】
実施例7:ceDNAベクター最適化
上記のようなLNP1中にceDNA-1856(LCをコードする)及びceDNA-1859(HCをコードする)共製剤を含む二重ceDNAベクター構築物を、以下の実験で使用した。
【0499】
本研究の目的は、HC及びLC:バイシストロン性カセット(ceDNAを含有するIRES又はフーリン2 A切断部位)、二重ORFカセット(双方向性)、及び二重ベクターを発現させるための様々なベクター設計を使用して抗体発現を決定することであった。設計の概略図を
図7Aに示す。
図7Bは、流体力学的送達後に測定されたベクター設計間の抗体の発現(抗Spike huIgG ug/mLの検出による)を比較する実験の結果を示す。
図7Bに示されるように、肝臓特異的、二重ORF及び二重ベクター設計を1:1のHC:LCのモル比で使用することにより、高い抗体発現をもたらした。データはまた、ベクターが流体力学的に送達される場合、HC-LC含有抗体の最適な発現のために、二重ベクターアプローチが単一ベクター設計よりも優れていることを示している(
図7B)。更なる実験では、LNP製剤(「LNP1」)中のceDNA二重ベクターフォーマットにおけるHC及びLCの送達(ceDNA-1;二重ベクター-LNP1又はLNP2)(
図6に示されるような)又は二重ORF(ceDNA-2;二重ORF-LNP1)は、35日間の研究期間にわたって、これらのceDNAフォーマットとLNP製剤との間の抗体の発現を決定することによって(一例として抗Spike huIgG ug/mLの検出によって)を比較した。
図7Cは、ceDNA-1856(LCをコードする)及びceDNA-1859(HCをコードする)の両方を封入したLNP(「二重ベクター」フォーマット)送達、並びに35日目までの抗Spike huIgGの得られたロバストな発現の結果を示す。
図7Cに示されるように、二重ベクターのLNP送達は、35日目に約8ug/mLの抗Spike hIgG濃度を達成した。したがって、2つのceDNA構築物(ceDNA1856(LC)及びceDNA1859(HC)、
図7C、「ceDNA-1」)を封入するLNPを有する二重ベクター設計の発現は、肝細胞iインビボに送達することができ、単一二重ORF ceDNAフォーマット(
図7C、「ceDNA-2」)と比較して、mAb発現を最適化するための更なる自由度を可能にする。
【0500】
図8は、7日目に流体力学的送達後に抗体HC及びLCを発現するための、1.5:1(HC:LC)のモル比でのceDNA二重ベクター設計(「ceDNA-1」)とceDNA二重ORF設計(「ceDNA-2」)との間の抗体発現の用量依存的増加を比較する。
図8に示されるように、1856(LC)及び1859(HC)二重ベクターのceDNAフォーマット(1.5:1;HC:LC)及び二重ORF設計は双方とも、発現の用量依存的増加を示し、最適な二重ベクター設計は、二重ORF設計と比較して5~10倍高い活性をもたらしたことを示した。
【0501】
一般に、抗Spike hIgG濃度の血清レベルを、ELISAによって決定した。要するに、精製したSARS-CoV-2スパイクタンパク質(LakePharma(登録商標)、カタログ番号46328)を96ウェルアッセイプレート(Greiner Bio-One(登録商標)、カタログ番号655085)上に、DPBS(ThermoFisher(登録商標))中、2μg/mLでコーティングし、プレートを4℃で一晩インキュベートした。次いで、300μLのSuperBlock(PBS)Blocking Buffer(ThermoFisher(登録商標)、カタログ番号37515)を用いて、室温で2時間、非特異的結合をブロックした。これらをウェル当たり300μLの1×PBST(ThermoFisher(登録商標))で3回洗浄した。試料及び参照標準希釈物を、General Serum Diluent(Immuno Chemistry Technologies(登録商標)、カタログ番号649)中で調製し、100μLのこれらの希釈物を二連で各ウェルに添加した。プレートを500rpmで穏やかに振盪しながら室温で60分間インキュベートした。プレートをPBSTで3回洗浄し、吸収紙上で軽くたたいて過剰な液体を除去した。ヤギ抗ヒトIgG(H+L)HRP酵素結合二次抗体(Invitrogen(登録商標)、カタログ番号31410)をGeneral Serum Diluentで1:5000に希釈し、100μLを各ウェルに添加した。プレートを室温で60分間、500rpmで振盪しながらインキュベートし、次いでPBSTで3回洗浄した。最後に、100μLの基質溶液(KPLSUREBLUE(商標)TMB Microwell Substrate、SeraCare(登録商標)、カタログ番号5120-0077)を各ウェルに添加し、プレートを室温で15分間インキュベートした。100μLの停止溶液(SeraCare(登録商標)、カタログ番号5150-0020)を各ウェルに添加し、吸光度を450nmで測定した。結果を標準曲線から内挿した。
【0502】
インビトロトランスフェクション例
ceDNA-1856(LCをコードする)及びceDNA-1859(HCをコードする)を含む二重形式のceDNAベクター構築物を、HC及びLCの様々なモル比で試験して、抗体発現のためのHC:LCの最適モル比が存在するかどうかを決定した。このアッセイは、重鎖及び軽鎖をコードする合計10ngのceDNAでトランスフェクトされたHepG2細胞を使用した。上清を72時間後に回収し、抗スパイクhIgGの濃度をELISAによって測定した。
【0503】
ヒト肝がんHepG2細胞(ATCC、カタログ番号HB-8065)を、10%熱不活性化ウシ胎児血清(ThermoFisher(登録商標)、カタログ番号16140071)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(ThermoFisher(登録商標)、カタログ番号15140163)で補充した、DMEM培地(ThermoFisher(登録商標)、カタログ番号10569010)中で培養した。細胞を、95%空気及び5%CO
2を含有する飽和湿度雰囲気中、37℃で維持した。細胞(3×10
4細胞/ウェル)を96ウェルプレート(Corning(登録商標)、カタログ番号354650)に播種し、10%FBSで補充した、100μL/ウェルのDMEM培地中で24時間培養し、トランスフェクション前に約70~80%コンフルエンスに達した。24時間後、HepG2細胞を、各ウェルについて総量100ngのDNAで一過性にトランスフェクトした。ここで、ceDNA量は10ngであり、残りは、製造業者のプロトコルに従い、Lipofectamine3000試薬(ThermoFisher(登録商標)、カタログ番号L3000015)を使用したキャリアDNA(Promega(登録商標)、カタログ番号E4882)であった。簡単に説明すると、トランスフェクションのために、別々のチューブにおいて、必要量のLipofectamine 3000試薬、異なる重鎖対軽鎖モル比のDNAをそれぞれ、Opti-MEM Reduced-Serum Medium(ThermoFisher(登録商標)、カタログ番号31985-062)中で希釈し、次いでP3000試薬を希釈したDNAに添加した。P3000試薬で希釈したDNAを、希釈したLipofectamine3000試薬に添加し、室温で15分間インキュベートした。次いで、得られた複合体10μLを、新たに補充した完全培地中の細胞に添加し、トランスフェクションプレートを37℃及び5%CO
2でインキュベートした。トランスフェクション後72時間後に、トランスフェクション上清中の抗体価を測定した。
図9は、HC:LCのモル比のインビトロスクリーニングを示し、ceDNAによる肝臓IgG発現は、より高いHC:LCモル比である1.5:1~2:1の範囲で増強された。
図9に示されるように、3:2のHC対LCモル比(1.5:1)が、二重ベクターceDNA構築物対に最適であった。
【0504】
流体力学的インビボ実施例
次に、様々なモル比のHC及びLCを有するceDNAベクター構築物を使用して、インビボスクリーニングを行った。1つの群は、HCをコードするceDNAの固定用量を含む製剤を使用し、LCをコードするceDNAの用量を変化させた。簡単に説明すると、ceDNAを、C57Bl/6マウス(6週齢、Jackson Laboratories)に、流体力学的静脈内(IV)注射によって送達した。ceDNAをPBSに希釈し、5秒にわたって外側尾静脈に固定体積(90~100mL/g)で急速に注射した。ceDNAsをコードする重鎖(ceDNA 1859)及び軽鎖(ceDNA 1856)を予め混合し、特定のモル比で送達した。動物に、固定用量の重鎖又は軽鎖のいずれか、及び漸増用量の同族鎖を投与した。投与後3日目に、試験のために血清試料を収集した。
【0505】
図10に示されるように、LC又はHCのいずれかをコードするceDNAの固定用量で、HCの用量の増加は発現を改善したが、LC用量の増加は限定された効果しか有さなかった。この結果は、インビトロ結果と一致しており、HC:LC>1~2が好ましいことを示唆している。
【0506】
まとめると、本明細書に報告される結果は、構築物設計への重要な洞察、並びにceDNAベクター設計を更に最適化する機会、並びに抗体治療剤又は診断薬を対象に送達するためのHC:LCモル比を提供する。結果は、LNPにおける二重ベクターによる機能的発現が、mAb発現を最適化するための更なる自由度を可能にすることを示した。更に、結果は、共通の発現カセットがHC及びLCの両方に使用され得、そして単一の二重ORF又はF/2Aベクターを用いて発現を最適化する必要性を潜在的に除去することを示した。
【0507】
実施例8:細胞株から産生された組換え抗SARS-Cov2 S抗体対ceDNA二重ベクター(HC/LC)で処置されたマウスから産生及び精製された抗SARS-Cov2 S抗体の比較インビトロエフェクター機能研究。
この研究の目的は、プラスミド由来及びceDNA由来の抗SARS-CoV2抗体の結合親和性を比較することであった。CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞を、Stettler et al.(Science,2016,353(6301):823-826)に記載される方法を使用して、抗SARS-CoV2 HC及びLCを発現するプラスミドで一過的に同時トランスフェクトして、プラスミド由来モノクローナル抗体を生成した。ceDNA由来の抗SARS-CoV2抗体は、本明細書に記載される抗SARS-CoV2 HC又はLCをコードする裸のceDNAをC57/Bl6マウスの尾静脈へ流体力学的IV注射することによって生成した。この方法によるDNAの送達は、主に肝臓における効率的な外来DNAのインビボトランスフェクションをもたらした。(例えば、Kim & Ahituv,Methods Mol Biol.2013;1015:279-289を参照されたい)。このようにして、マウスの肝臓から抗体を産生させ、次いで血清から採取及び精製して、ceDNA産生抗体を得た。
【0508】
抗体1及び抗体2は、2003 SARS-CoV生存者から同定された親抗体に由来する改変抗体である。抗体1及び抗体2の両方の可変領域は、延長された半減期を有するように開発されており、抗体1は単一の「LS」変異で操作され、抗体2は二重の「LS」及び「GAALIE」修飾で操作されている。具体的には、両方の抗体は、新生児Fc受容体に結合することによって延長された半減期を付与する、本明細書で定義されるFc「LS」変異を有する。Fcに対する本明細書で定義される追加の「GAALIE」修飾を除いて、抗体2は抗体1と同一である。「GAALIE」修飾はインビトロで、とりわけFcγRIIIa受容体への結合を増強し、ウイルス呼吸器感染インビボに関連して防御性CD8+T細胞を誘発することが示されている。
【0509】
以下の抗体:トランスフェクトされたCHO細胞からインビトロで組換え産生された、単一の「LS」変異体である抗体1(細胞株由来)、流体力学的IV注射を介してceDNA(本明細書に記載されるHC及びLC)で処置されたマウスにおいて産生され、注射の3日後に処置されたマウスの血清から精製された、単一「LS」変異体であるceDNA抗体1;CHO細胞からインビトロで組換え産生された、二重「LS」及び「GAALIE」修飾を有する抗体2;流体IV注射を介して本明細書に記載されるceDNA HC/LC二重ベクターで処置されたマウスにおいて産生され、流体力学的注射の3日後に処置されたマウスの血清から精製された、二重「LS」及び「GAALIE」修飾を有するceDNA抗体2を試験した。解離定数(KD)を測定するために、OCTET(登録商標)FAB2Gバイオセンサーのベースラインを、まず、(PBS中0.02%BSA、0.004%Tween(登録商標)-20)を含有する2×緩衝液中で60秒間較正した。次いで、抗体試料を30nMで300秒間ロードした。バイオセンサーを、上記と同じタイプの緩衝液中で再びベースラインにした。次いで、様々な濃度(約3nM~約300nM、この範囲内の4~7種の異なる濃度を適用)のFcγRIIIa受容体(「V」と命名された多形体又は「F」と命名された多形体のいずれか)を試験抗体と480秒間会合させ、次いで480秒間解離させ、解離定数(KD)値をバイオセンサーによって測定し、ソフトウェアOCTET(登録商標)Analysis Studioを使用して計算した。
【0510】
解離定数(K
D)値を表12に示し、FcγRIIIa-Vについては
図11A及びFcγRIIIa-Fについては
図11Bにも示す。表12はまた、測定及び計算されたK
D値の全てが>0.95の統計的回帰値(R
2)を有したことを示し、それによって、測定されたデータの全てが回帰モデルに非常によく適合することを示す。
【0511】
【0512】
より低いK
D値は、より高い結合親和性を示す。表12並びに
図11A及び
図11Bに見られるように、抗体がceDNAを流体力学的に注射されたマウスから産生された場合、組換え産生された抗体(「細胞株」)と比較して、受容体(FcγRIIIa-V及びFcγRIIIa-F)に対する抗体の結合親和性が劇的に増加した。予想通り、抗体2は、細胞株由来であろうとceDNA由来であろうと、FcγRIIIa-VであろうとFcγRIIIa-Fであろうと、それぞれの抗体1対応物よりも高い結合親和性を示した。しかしながら、ceDNA由来抗体(本明細書に記載されるceDNA HC/LC二重ベクター)のインビボ肝臓発現は、従来の哺乳動物細胞株から組換え産生されたモノクローナル抗体のものと比較して、はるかに優れた結合効力を達成した。理論に束縛されるものではないが、これは、L-フコース糖をGDP-フコースドナー基質からアクセプター基質に転移させる酵素であるフコシルトランスフェラーゼが存在しないと予想される肝臓から産生されるceDNA由来抗体のアフコシル化レベルの上昇による可能性がある。これは、次に、抗体がアフコシル化される場合、抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cellular cytotoxicity、ADCC)も増加するので、エフェクター機能のレベルの増加をもたらし得る。
【0513】
総合すると、これらの結果は、ceDNA由来抗体を生成するための肝臓へのceDNAの送達が、FcγRIIIaに対する増強された親和性を有する抗体の産生をもたらし、治療用抗体産生インビボのための新規かつ改善されたプラットフォームを表すことを実証する。
【0514】
実施例9:細胞株由来及びceDNA由来の抗VEGF抗体の比較インビトロエフェクター機能研究
この研究の目的は、細胞株由来及びceDNA由来の抗VEGF抗体の結合親和性を比較することである。VEGFモノクローナル抗体ベバシズマブ及びラニビズマブが使用される。
【0515】
CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞を、Stettler et al.(Science,2016,353(6301):823-826)に記載される方法を使用して、ベバシズマブ(Fab重鎖:受託番号7V5N_F、Fab軽鎖:受託番号7V5N_E)又はラニビズマブ(重鎖AB断片:受託番号QWX93388.1、軽鎖Ab断片:受託番号QWX93389.1)を発現するプラスミドで一過的に同時トランスフェクトして、細胞株由来モノクローナル抗体を生成した。ceDNA由来のベバシズマブ及びラニビズマブは、ベバシズマブ及びラニビズマブをコードする裸のceDNAを、本明細書に記載される単一ベクター系又は二重ベクター系のいずれかで、C57/Bl6マウスの尾静脈に流体力学的IV注射することによって生成される。この方法によるceDNAの送達は、主に肝臓におけるceDNAの効率的なインビボトランスフェクションをもたらす(例えば、Kim & Ahituv,Methods Mol Biol.2013;1015:279-289を参照されたい)。したがって、マウスの肝臓から産生され、次いで血清から採取及び精製された得られた抗VEGF抗体は、CHO細胞から産生されたそれらの対応物と比較して、FcγRIIIaに対するより高い結合親和性及び高められたレベルの抗体依存性細胞傷害(ADCC)を示す。
【0516】
これはまた、FcγRIIIaに対してより高い結合親和性を有する抗体による治療を必要とするヒト対象の肝臓から、FcγRIIIaに対して増加したレベルの結合親和性を有する抗体を産生するために、強力な治療剤としてceDNAを効果的に実施することができることを示唆する。
【0517】
参考文献
特許及び特許出願を含むがこれらに限定されない、本明細書及び本明細書の実施例で引用される全ての刊行物及び参考文献は、あたかも個々の刊行物又は参考文献が、完全に記載されるように参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されるかのように、それらの全体が参照により組み込まれる。この出願が優先権を主張する任意の特許出願もまた、刊行物及び参考文献について上述した方法で、参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】