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特表2024-515791所望の品質を有するスラグを生産するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】所望の品質を有するスラグを生産するための方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 3/04 20060101AFI20240403BHJP
   C21B 13/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C21B3/04
C21B13/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565921
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 EP2022060867
(87)【国際公開番号】W WO2022229084
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】102021204258.9
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514309479
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】THYSSENKRUPP STEEL EUROPE AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインベルク,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ロッハー,ゲオルク
【テーマコード(参考)】
4K012
【Fターム(参考)】
4K012DA05
(57)【要約】
所望の品質を有するスラグ(42)を生産するための方法が開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銑鉄の生産において所望の特性のスラグ(42)を生成するための方法であって、
a)直接還元プラント(21a)内で酸化鉄を加熱し、その結果、還元剤の存在により酸化鉄の大部分が鉄に還元され、鉄含有中間体(39)が形成されるステップ、
b)前記鉄含有中間体(39)を反応器構成体(21b、54a)内で加熱して、銑鉄(44)および前記スラグ(42)を得るステップ、
c)分析ユニット(43)によって、前記鉄含有中間体(39)および/または前記鉄含有中間体(39)のさらなる加熱中に堆積する前記スラグ(42)を分析するステップ、
d1)前記スラグ(42)の組成を変更するために、前記分析に応じて、加熱中に前記鉄含有中間体(39)に添加される添加剤の性質を決定し、前記加熱中に前記添加剤を添加して前記所望の特性の前記スラグ(42)を得るステップ、および/または
d2)前記スラグ(42)が前記所望の特性を有する前記スラグ(42)を得るために熱処理を必要とすることを認識し、前記熱処理を開始するステップ
を有する、方法。
【請求項2】
前記直接還元プラント(21a)が、還元剤としての水素用の供給部を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応器構成体が、還元雰囲気を有する溶鉱炉(21b、54a)を備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記直接還元プラント(21a)が、前記酸化鉄を900℃~1100℃の温度まで加熱するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記分析中に、反応器ユニット(21b、54b)内の前記鉄含有中間体のおよび/または前記スラグ(42)の実際の組成を判定し、前記組成を前記スラグ(42)の所望の目標組成と比較し、かつ実際の組成と目標組成との間の差異に応じて前記添加剤の前記性質を調整するように構成された分析ユニット(43)が使用される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記添加剤の性質として、前記添加剤の量および前記添加剤の組成を決定するように構成された制御ユニット(45)が使用される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記スラグ(42)の実際の特性を変更するために、前記スラグ(42)の目標特性について、以下の特徴である、造粒スラグの所望の化学組成、前記造粒スラグの所望の物理的性質、前記造粒スラグの鉱物学的性質からの任意の選択を考慮に入れるように構成された制御ユニット(45)が使用される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶鉱炉(21b)が、原料(38)を前記溶鉱炉(21b)内に導入するための開口部を有し、前記原料の前記導入後に前記スラグ(42)を分析するように構成された分析ユニット(43)が使用される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記スラグ(42)が1~5.5の塩基度を有するように前記添加剤の量を選択するように構成された制御ユニット(45)が使用される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応器構成体(21b)が、前記鉄含有中間体(39)を受容し加熱して前記鉄(44)および前記スラグ(42)を得るように構成された第1の反応器(54a)を有し、前記反応器構成体(21b)が、前記第1の反応器(54a)から前記スラグ(42)を受け取るように構成された第2の反応器(54b)を有し、前記添加剤を前記第2の反応器(54b)内に導入し、かつ/または前記第2の反応器(54b)内で前記スラグ(42)の前記熱処理を開始して、前記所望の特性を有する前記スラグ(42)を得るように構成された制御ユニット(45)が使用される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の反応器(54b)が、前記スラグを霧化して霧状スラグを得るように構成されており、前記霧状スラグが、1~100μmの粒径を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の反応器(54b)が、鉱物質建築材料、より具体的には結合剤で構成されており、前記制御ユニット(45)が、前記添加剤の一部としてセメントを前記第2の反応器(54b)内に導入するように構成されており、前記第2の反応器(54b)が、前記霧状スラグと前記セメントとを互いに混合するように構成されており、前記霧状スラグが、36:64~95:5の比でセメントと混合されて、28d標準強度が少なくとも30N/mmである前記鉱物質建築材料が得られる、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラグを生成するための、および例えば、鉱物質建築材料として使用するために、スラグの特性を制御して調整するための方法に関する。スラグの特性は、スラグの物理組成および化学組成、ならびに鉱物学的性質も包含する。
【背景技術】
【0002】
自然界では、鉄は酸化鉄の形態でのみ存在する。銑鉄は、例えば高炉内で生産される。これらは向流原理で動作するシャフト炉であり、装入物、すなわち塊鉱、ペレット、または焼結物が還元剤としてのコークスおよび石灰石ならびに場合によってはさらなる添加剤とともに上部側で供給され、高温ガスの流れが底部側からこの装入物を通過する。このようにして、供給材料は過渡時間中に着実に加熱される。コークスの準化学量論的燃焼は、装入物内に含有された酸化鉄を鉄に還元する還元性ガス一酸化炭素(CO)の形成をもたらし、COは、プロセス中に二酸化炭素(CO2)に酸化され得る。高炉の底部に行き渡る温度のために、鉄は液体状態で存在する。
【0003】
製錬炉の下部では、定期的な間隔で銑鉄およびスラグが出湯される。ガラス状固化をもたらす可能性がある製錬炉スラグの急速冷却を用いて、スラグ砂を生産することができる。砂の性質は、セメントのミリングによってプラスの影響を受け得る。さらに、セメントクリンカの代わりにスラグ砂を用いることにより、セメントのCOフットプリントも改善することができる。
【0004】
ここでのスラグの組成は、鉄鉱石中の脈石、石灰石の割合、ならびに供給材料中の二次成分および添加剤によって実質的に決定付けられる。
【0005】
しかしながら、存在する問題は、供給材料が変更される場合、スラグの組成、したがってスラグ砂の組成も原則として出湯ごとに異なり得ることである。この場合、石灰石の割合ならびに二次成分および添加剤には影響を及ぼすが、酸化鉄中の脈石の量および天然組成には影響を及ぼさないことが依然として起こり得る。これは、スラグが出湯されたときにのみスラグの正確な最終組成が不明であることを意味する。材料が何時間も製錬炉内に留まることを考えると、供給材料が存在するとしても、供給材料によるスラグの組成への短期間の適合の可能性は限られている。さらに、高炉におけるスラグ砂の生成は、製錬手順中に、融点が低く、したがってより迅速に出湯することができる共融混合物の形成を条件とする。
【0006】
次いで、欧州特許第1354969号明細書および欧州特許第632791号明細書は、出湯後のスラグを添加剤と混合して、スラグ砂用のスラグの組成を最適化するための方法を示している。しかしながら、この方法の欠点は、添加剤の添加によりスラグがより迅速に冷却され得るため、添加剤がスラグと最適に結合することがもはや不可能になることである。スラグに混合される添加剤の量が多いほど、スラグの冷却がより迅速になる。1つの領域内に添加剤が蓄積し、別の領域内に添加剤が不足することにより、スラグの組成に偏りが生じる可能性がある。
【0007】
独国特許出願公開第19708034号明細書は、溶銑鉄または溶鋼前駆体を生産するための方法を開示している。欧州特許第1198599号明細書は、製錬残渣の導入によるスラグ調節のための方法を開示している。欧州特許第1627084号明細書は、スラグを有益に利用するための方法を開示している。独国特許出願公開第10340880号明細書は、スラグを霧化するための方法および装置を開示している。独国特許出願公開第102020205493号明細書は、製錬アセンブリにおいて制御されたスラグ相を確立するための方法を開示している。
【0008】
さらに、直接還元プラントおよび電気アーク炉/溶鉱炉もまた原理的に知られている。しかしながら、スラグ特性の最適化された調整を目的としたスラグおよび/または中間体の分析は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1354969号明細書
【特許文献2】欧州特許第632791号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第19708034号明細書
【特許文献4】欧州特許第1198599号明細書
【特許文献5】欧州特許第1627084号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第10340880号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第102020205493号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、スラグを生成するための、および製錬炉内で生じるスラグの特性を調整するための方法の改善された概念を創出することである。
【0011】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。さらなる有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0012】
本発明によれば、銑鉄の生産において所望の特性のスラグを生成するための方法であって、a)第1の反応器内で酸化鉄を加熱し、その結果、還元剤の存在により酸化鉄の大部分が鉄に還元され、鉄含有中間体が形成されるステップを有する方法が開示される。これは、直接還元プラントを使用して行われる。直接還元プラントの最終生産物として、この場合鉄含有中間体が存在し、海綿鉄と呼ばれることもある。
【0013】
b)その後、鉄含有中間体が第2の反応器内で加熱されて、銑鉄およびスラグが得られる。加熱は、好ましくは還元雰囲気の溶鉱炉内で行われる。したがって、セメント産業に使用することができる、10%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは4%未満の鉄の割合を有するスラグを得ることが可能である。より高い鉄の割合を有するスラグは、品質上の理由からセメント産業に対して使用することができない。
【0014】
c)ステップb)の前またはステップb)と並行して行われ得るさらなるステップでは、鉄含有中間体および/または鉄含有中間体のさらなる加熱中に堆積されたスラグが分析される。鉄含有中間体は、直接還元プラントの終了時、直接還元プラントと溶鉱炉との間(すなわち、両方の場合において、溶鉱炉内での加熱の前)、または溶鉱炉(すなわち、加熱中)における分析のために採取される。追加的または代替的に、最終温度まで加熱されたスラグのサンプルがまた、溶鉱炉から採取されてもよい。
【0015】
d1)分析に応じて、スラグの組成を変更するために、鉄含有中間体に添加される添加剤の性質が決定される。換言すれば、鉄含有中間体のおよび/またはスラグのサンプルが採取される。鉄含有中間体では、酸化鉄は既に非常に還元された状態で存在しているため、後のスラグの特性をもはやそこから非常に適切に決定することができる。分析は、スラグの実際の状態を反映する。
【0016】
中間体は、例えば、パイライト、ドロマイト、イルメナイト、もしくはボーキサイト、または酸化化合物の塩基性形態、または記載された物質の任意の所望の組合せを含み得る。これらの物質はアジュバントとも呼ばれ、スラグの性質に影響を及ぼす。したがって、スラグが外部物質に対する良好な受容能力を有し、適切な速度(好ましくは1.05Pa*s~1.15Pa*s(パスカル秒))を有し、固化の結果としてスラグが適切な粒径分率に分解しかつガラス質相の十分な形成がある温度を有し、かつセメント生産のための良好な結合能力を有することが有利である。スラグの良好な受容能力は、添加剤の効果的な受容、したがってスラグの高い均質性を保証する。粘度は、スラグが出湯穴を通って流れることを可能にする。温度/組成およびまた結合能力は、最終生産物、例えばスラグ砂、ポルトランドセメントなどの品質に関連する。
【0017】
このようにして決定された添加剤が、例えばスラグの加熱中に溶鉱炉などの第2の反応器内に導入されて、所望の特性のスラグが得られる。所望の特性は、目標特性とも呼ばれる。
【0018】
d2)追加的または代替的に、制御ユニットは、例えば、分析から、スラグが所望の特性を有するスラグを得るために熱処理を必要とすることを認識し得、熱処理を開始し得る。
【0019】
液体金属およびスラグは、溶鉱炉内の出湯穴を通して出湯され得る。スラグが出湯穴から出た後、スラグは、好ましくは水で急冷され、霧化され、したがって造粒される。目的は、90%を超えるガラス状固化を得ることである。その後、顆粒はさらなる使用の準備が整えられる。確認として、かつ誤った仮定を修正できるようにするために、最終的な顆粒を分析して、それらが所望の性質を有するかどうかを確認してもよい。
【0020】
例えば、d1)で行われる分析によって、スラグの熱処理、特にスラグの所望の性質を得るための規定の冷却速度が導出され得る。
【0021】
従来の高炉から鉄含有中間体を取り出すことも、従来の高炉内で鉄含有中間体に添加剤を添加することも不可能である。従来の高炉における唯一の可能性は、開始時に材料を導入し、最後にスラグおよび銑鉄を取り出すことである。スラグが正しい組成を有さないことが判明した場合、組成は、開始時に添加された添加剤が最後に達したときにのみ変更することができる。これには、半日から1日かかる場合がある。したがって、提案された方法を高炉に転置することはできない。
【0022】
所望の特性を有する銑鉄およびスラグを生成するための製錬炉が開示される。製錬炉は、酸化鉄を加熱し、その結果、還元剤の存在により酸化鉄の大部分が鉄に還元され、鉄含有中間体が形成されるように構成された直接還元プラントを備える。酸化鉄は、例えば、900℃~1100℃の温度まで加熱される。CO排出量を削減するために、例えば、必要な電力を供給するための再生エネルギー(風、水、太陽)を使用した水の電気分解から回収され得る還元剤、好ましくは水素は、直接還元プラント内に導入される前に、直接還元プラントの動作に必要な反応温度まで加熱され得る。鉄含有中間体は海綿鉄とも呼ばれる。
【0023】
直接還元プラントの下流には反応器構成体が存在する。反応器構成体は鉄含有中間体を受容し、それを加熱して銑鉄およびスラグを得る。
【0024】
反応器構成体は、1つの反応器または複数の反応器を備え得る。鉄含有中間体を加熱するための反応器または複数の反応器のうちの1つの反応器は、電気アーク炉または溶鉱炉または誘導炉であり得る。電気アーク炉は、酸化雰囲気中の物質を、典型的には不連続的に加熱する電気炉である。不連続的とは、ある量の物質が加熱され、加熱後の物質が、新たな量の物質が加熱される前に取り出されることを意味する。溶鉱炉は、還元雰囲気中の物質を、典型的には連続的に加熱する電気炉である。連続的とは、溶鉱炉内の物質の一部が定期的に出湯され、同時に溶鉱炉には新しい物質が供給されることを意味する。したがって、定期的に、鉄含有中間体が溶鉱炉内に導入され、同様に定期的に、銑鉄およびスラグの一部が出湯される。例えば、溶鉱炉では残留溶融物が残され得、これは今度は、さらなる物質の製錬のための出発点として見られ得る。溶鉱炉は、溶融還元炉、低シャフト炉、またはサブマージドアーク炉(SAF)とも呼ばれる。特に、オープンスラグバス炉(OSBF)などの用語も慣習的である。
【0025】
鉄含有中間体が溶鉱炉内で加熱されるとき、加熱が行われる最高温度は、スラグがスラグ砂を生産するために使用される場合、例えば1500℃~1600℃である。これは、スラグが出湯される温度である。他の鉱物質建築材料の生産の場合、この場合にはスラグの共融混合物はもはや得られないため、最大スラグ温度もより高くなり得る。鉄が出湯される温度は幾分、より低く、例えば、1400℃~1500℃である。したがって、特に、銑鉄の出湯温度は、例えば、スラグの出湯温度よりも80℃~120℃低い。溶融物の加熱、ならびに例えば炭素および/または水素などの還元剤の存在は、鉄をさらに還元させ、したがってスラグ中の鉄の割合を低下させる。溶鉱炉内の雰囲気、より具体的には還元雰囲気は、例えば、一般的な化学的/物理的条件により、溶融物中に十分な量で溶解した炭素と中間体の酸化成分との反応によって得られ、例えば、還元性ガスが得られる。溶融物中に十分な量の炭素が存在しない場合、この還元雰囲気は、還元ガスおよび/または還元ガス形成物質を供給することによって生成され得る。
【0026】
製錬炉は、鉄含有中間体および/またはスラグを分析するように構成された分析ユニットをさらに備える。特に、分析は、出湯中、または出湯前にサンプリングすることによって、または現場で行われ得る。分析は、好ましくはオンラインで行われ得る。スラグは、例えばカルシウム、ケイ素、アルミニウム、および鉄の濃度比の分析によって、スラグ砂またはポルトランドセメントの生産用などの鉱物質建築材料の生産のために判定され得る。しかしながら、さらに、提示された製錬炉および対応する生産方法によって、任意の所望の鉱物質建築材料の生産が可能である。鉱物質建築材料は、それらの組成およびそれらの性質がスラグ砂とは異なり得る。例えば、排他的ではないが、鉱物質建築材料は、その化学的および/または物理的および/または鉱物学的性質が従来のスラグ砂とは異なり得る。分析ユニットは、特に生産物の迅速な影響を与えるために実験結果を利用するために、製錬炉の近傍に配置された実験室であってもよい。
【0027】
さらに、製錬炉は、分析結果に応じて、スラグの組成(実際の組成)を変更し、所望の組成(目標組成)を有するスラグを得るように添加された添加剤の性質を決定するように構成された制御ユニットを有する。追加的または代替的に、制御ユニットはまた、スラグが所望の特性を有するスラグを得るために熱処理を必要とするかどうかを認識し得る。
【0028】
添加剤は、特に異なる物質の混合物を指すと理解される。使用される物質は、パイライト、ドロマイト、イルメナイト、およびボーキサイトを含み得る。次いで、例えば、物質の選択は、添加剤の性質とみなされる。さらに、添加剤の総量中の選択された物質の割合は、添加剤の性質とみなされ得る。加えて、添加剤の総量または選択された物質の量もまた、添加剤の性質とみなされ得る。量は、例えば、物質の質量または体積を指す。しかしながら、典型的には、添加剤の性質は、物質の選択だけでなく、それらのそれぞれの割合、すなわち添加剤の組成および添加剤の量も包含する。
【0029】
熱処理は、スラグの実際の状態のまたはそうでなければスラグの所望の特性の分析から生じ得る。熱処理は、例えば、スラグを加熱またはそうでなければ冷却するための反応器構成体の規定の温度曲線の操作である。例えば、スラグ砂を生成するためには、少なくとも90%のガラス状固化を得るためにスラグを非常に迅速に冷却する必要がある。しかしながら、異なる鉱物質建築材料は、温度プロファイルに関して異なる要件を有し得る。
【0030】
換言すれば、制御または調節、および添加剤の添加のさらなる可能性は、分析ユニットを使用して得られた測定結果に基づいて、標的指向様式で熱を反応器構成体内に導入するか、またはそうでなければ熱を除去することである。この熱の供給または除去は、経時的に変化し得、すなわち、例えば、特定の時点において熱の供給および他の時点において熱の除去を必要とするスラグおよび/または溶融物の温度プロファイルを追求し、さらに他の時点では熱的にはプロセスをそのままにするという目標を有し得る。
【0031】
そのような手順によって、例えば、目標指向的にスラグおよび/または溶融物の性質に影響を与えるために、スラグおよび/または溶融物の目標温度を設定することが可能である。個々の目標温度のこの確立に加えて、スラグおよび溶融物の性質は、個々の温度によってだけでなく、特定の材料相を得るためまたは回避するための温度プロファイルの横断によっても影響を受け得ることが知られている。スラグの分野では、これはセメントクリンカの生産中のロータリキルン炉内の溶融相の冷却を含む場合があり、これは、ケイ酸三カルシウムがケイ酸二カルシウムおよび遊離石灰に分解せず、アルミン酸三カルシウムが微粒子状に結晶化するが、同時に溶融相がガラス状固化を起こすほど迅速ではないような速度で動作する必要がある。
【0032】
スラグの所望の特性は、スラグの造粒後に形成された鉱物質建築材料が所望の化学組成および/または所望の物理的性質および/または鉱物学的性質を有することによる特性である。スラグ砂の場合、造粒は、例えば、出湯後のスラグの急速冷却(急冷)および霧化を包含する。異なる鉱物質建築材料の場合、顆粒を得るために異なる熱処理が行われ得る。したがって、特に鉱物相形成、溶出挙動などの観点におけるスラグの所望の特性は、例えばスラグ砂もしくはポルトランドセメントまたは任意の他の鉱物質建築材料を形成するなどのために選択され得る。
【0033】
したがって、開示された製錬炉は、製鋼におけるCO排出量が多いために、還元剤としてのコークスを水素に置き換えようとする現在の努力が、直接還元プロセスへの切替えの結果として、スラグ砂の生産、例えばドイツだけでも年間約600万メートルトンに達するような生産が失われることとなることを意味するという懸念に対する応答である。したがって、説明した製錬炉、より具体的には第1の反応器は、直接還元プロセスのために既に設計されており、(天然)ガス、または有利には還元剤として水素を用いて動作し得る。説明した製錬炉はまた、製錬炉が従来のスラグ砂以外の鉱物建材を生産することも可能にする。
【0034】
この考えは、直接還元プラント、および例えば溶鉱炉を有する反応器構成体を使用することである。第1の反応器では、酸化鉄は直接還元法によって還元される。次いで、鉄は、例えば海綿鉄の形態の固体形態の鉄含有中間体として直接還元プラントの末端に存在し得る。反応器構成体では、例えば、鉄含有中間体などの溶鉱炉は、次いで、液体鉄が出湯される設定温度まで加熱される。
【0035】
プロセス全体の、2つ以上の個々のステップによる2つの方法セグメント(本質的に、上部に材料の多孔質床を有し、下部に液相を有する溶融領域を有するシャフト炉)への分離は、同様に、製錬炉内の雰囲気の設計の自由度を増加させる。従来のプロセスでは、精密なつながりのために、この雰囲気を実際に独立的に選択することはできないか、またはわずかな範囲でしか選択できないが、本明細書で開示されたプロセスでは、雰囲気を自由に選択する可能性が存在する。それに応じて、原則として、特にスラグからの生産物の目標指向生産のための最適条件を保証するために、任意の所望のガス組成が選択され得るが、特にそれらの化学的、物理的、および鉱物学的性質に関して排他的ではない。
【0036】
分析に関する限り、多様な可能性があり、それらは反応器構成体(の一部)として溶鉱炉に基づいて例示的に説明されている。加熱中、例えば、さらなる鉄含有中間体は反応器構成体、より具体的には溶鉱炉に添加されない。その場合、鉄含有中間体の分析によって将来のスラグの特性が確認され得る。このことから、例えば、スラグの所望の特性を得るために、添加剤がどのような物理的組成を有するべきか、およびどの量の添加剤を反応器構成体に添加すべきかを確認することが可能である。しかしながら、鉄のおよび/またはスラグの一部のみの周期的な出湯を実行することも可能であるが、ここでも周期的に、新しい鉄含有中間体が添加され、したがってスラグのまたは鉄の一部は常に反応器構成体内、より具体的には溶鉱炉内に留まる。溶鉱炉内のスラグが既に所望の特性を有していると仮定して、鉄含有中間体の分析に基づいて添加剤が決定され得る。換言すれば、新たに到着したスラグ部分の特性のみを調整する必要がある。しかしながら、さらに、検証のために、溶鉱炉内のスラグの特性を決定し、所望の特性から逸脱した場合に、添加剤の添加によってそれらを適合させることも可能である。
【0037】
換言すれば、分析において、分析ユニットは、鉄含有中間体および/またはスラグの実際の特性を判定し、それらをスラグの所望の目標特性と比較し、実際の組成と目標組成との差異に応じて添加剤の性質または熱処理を調整することができる。
【0038】
反応器構成体では、添加剤は鉄含有中間体とともに加熱され、したがってスラグと完全に混合または結合され得る。その結果、所望の特性を有する均一なスラグが得られる。
【0039】
例示的な実施形態では、反応器構成体は第1の反応器、好ましくは溶鉱炉と、第2の反応器と、を備える。第1の反応器は、鉄含有中間体を受容し、それを加熱して、鉄およびスラグを得る。第2の反応器は、液体スラグを受容し、それを制御ユニットを介してさらなる処理に供して、スラグの所望の特性を得る。制御ユニットによるさらなる処理は、既に包括的に説明されており、その性質に関して調整された添加剤の添加を含む。追加的または代替的に、さらなる処理はスラグの熱処理を含む。この場合、鉄が出湯された後にのみスラグが所望の特性に調整されるため、銑鉄生産のプロセスを変更する必要はない。
【0040】
さらなる例示的な実施形態では、反応器構成体、好ましくは第1の反応器または溶鉱炉は、原料、特に炉ダストを反応器ユニットに導入するための開口部を有する。このようにして、直接還元プラント内で膨潤し捕捉された炉ダストが導入され得るか、またはそうでなければ任意の他の原料、特に空中を浮遊し得る原料が導入され得る。これらの原料は、鉄の生産において必ずしも得られる必要はなく、代わりに、例えば粘土生産などの他の産業からの原料(空中に浮遊する能力を有する)もまた添加されてもよい。特に、原料は、反応器構成体内に導入される前に、処理、例えば乾燥および/または造粒されてもよい。スラグの特性は結果として変化し、原料が添加された後に分析ユニットによって分析される。炉ダストを添加する利点は、炉ダストには、鉄の生産において現在失われている結合鉄の無視できない割合(一桁台前半のパーセンテージ範囲内)が含有されていることである。炉ダストを反応器ユニット内に導入することにより、炉ダストが含有する鉄も同様に溶融され、したがって失われない。
【0041】
炉ダストの代わりに、一般に、任意の所望の原料が反応器構成体内に導入されてもよい。原料が小さすぎる場合、原料は、反応器構成体内への導入をより容易にするために造粒されてもよい。原料の造粒またはペレット化は、原料が空中を浮遊する能力を有する場合に有利である。材料は、その粒径が5mm未満、好ましくは3mm未満、または1.5mm未満である場合、空中を浮遊する能力を有するとみなされる。しかし、空中を浮遊する能力を有する原料はキャリアガスによってのみ反応器構成体内に導入することもできるが、キャリアガスは典型的には反応器構成体においては望ましくない。
【0042】
換言すれば、方法のさらなる利点は、新しいプロセスにおける微粒子原材料(原料)の使用でもある。現在、慣習的なプロセスでは、微粒子原材料は流動媒体中のガス流によって運ばれるため、溶融物には入らない。したがって、このダストは生産時に失われる。本明細書で提示されたプロセスでは、プロセスの上部を横断することを回避して、ダストを製錬炉に直接導入し、任意選択で他の物質と混合し、かつ/または例えば、排他的ではないが、熱、粉砕、または凝集によって、既に一般に前処理されることが目下可能である。そのようなダストの選択に対する唯一の制限は、基本的に、それらが溶融物および/またはスラグの品質を使用不可能になる点まで低下させないことである。したがって、例えば、物流上の理由から、鉄および製鋼プロセスの直近の環境からのダスト、ならびにまた鉱物質建築材料の生産からのダストを実際に使用することが可能である。
【0043】
例示的な実施形態は、制御ユニットが、スラグが1~5.5、好ましくは1.13~2の塩基度を有するように添加剤の量を選択するように構成されていることを示している。これは、鉱物質建築材料の生成に有利である。
【0044】
さらなる例示的な実施形態では、第2の反応器が、スラグを霧化して霧状スラグを得るように構成されており、霧状スラグは、1~100μm、好ましくは1~40μmの粒径を有する。霧化は、例えばスラグ砂の生産のために必要なガラス質固化を得るために、スラグの急速冷却を可能にする。霧化は、熱処理の一部として第2の反応器内で行われ得る。
【0045】
さらなる例示的な実施形態は、第2の反応器が鉱物質建築材料、例えば結合剤を生成することを示している。例えば、制御ユニットが、添加剤として、または添加剤の一部として、セメントを第2の反応器内に導入することが可能であり、第2の反応器は、霧状スラグとセメントとを互いに混合するように構成されており、霧状スラグは、36:64~95:5、好ましくは60:40~80:20の比でセメントと混合されて、28d標準強度が少なくとも30N/mmである鉱物質建築材料が得られる。
【0046】
本発明の好ましい例示的な実施形態は、添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1a】製錬炉の例示的な実施形態(図1b)と対比された従来の高炉(図1a)を概略断面図で示す。
図1b】従来の高炉(図1a)と対比された製錬炉の例示的な実施形態(図1b)を概略断面図で示す。
図2図1bの製錬炉の例示的な実施形態を示す。
図3図2の例示的な実施形態と組み合わせることもできる、図1bの製錬炉のさらなる例示的な実施形態を示す。
図4】セメント産業用のスラグの主成分の三角図の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の例示的な実施形態を詳細に以下でさらに説明する前に、図面を使用して、様々な図にわたる同一の、機能的に同様の、または同等の要素、物体、および/もしくは構造には同じ参照符号が付されており、したがって、異なる例示的な実施形態に示されたこれらの要素の説明は、互いに置き換えられ、かつ/または互いに適用され得ることに留意されたい。
【0049】
図1は、従来の高炉20a(図1a)を、直接還元プラント21aと、ここでは溶鉱炉として表された反応器構成体21bと、を備える製錬炉20b(図1b)と対比している。両方のプラントは各々、材料供給部22a、22bを有し、製錬される酸化鉄を含む構成材が材料供給部22a、22bを通って高炉に入る。高炉の場合、コークスはこの経路を介して添加され得る。製錬プロセスは、異なるゾーンに分割されている。予熱ゾーン24a、24bの後には、酸化鉄から鉄への還元の大部分が行われる還元ゾーン26a、26bが続く。炭化ゾーン28a、28bでは、鉄の一部が炭素で富化されることとなる。これまでに説明したゾーンは、製錬炉の直接還元プラント21a内に配置されている。高炉内の炭化ゾーンの下、および製錬炉内の溶鉱炉には、鉄が液化し、さらに液体スラグから分離するのに十分高い温度の製錬ゾーンも存在する。液体鉄および液体スラグは、出湯穴32a、32b、32b’を通じて取り出され得る。
【0050】
高炉20aは、高温ブラスト用の供給部34をさらに有し、一方、直接還元プラント21aは、例えば還元ガス、水素、または一酸化炭素用の供給部36a、36bを有する。溶鉱炉21bは主開口部38を備え、鉄含有中間体39が直接還元プラントから主開口部38を通過して溶鉱炉21bに入る。溶鉱炉21bは開口部40をさらに備え、添加剤が開口部40を通じて溶鉱炉内に導入される。添加剤が異なる物質を含有する場合、物質ごとに1つの開口部が設けられ得る。あるいは、物質は添加剤を得るために事前に混合され得、その後、混合された添加剤の形態で開口部を通して溶鉱炉に入れられ得る。さらに、溶鉱炉の底部には、スラグ42および鉄44のプールが存在する。しかしながら、開口部は有利には、溶鉱炉21bが空気の不在下で加熱を実行するように設計される。これは、直接還元プラントが確実に溶鉱炉に接続され得、その結果、鉄含有中間体が空気と接触することなく溶鉱炉に入ることを意味する。
【0051】
溶鉱炉は直接還元プラントとは別のアセンブリであるため、高炉とは対照的に、スラグの取出し前に直接溶鉱炉でスラグのおよび/または鉄含有中間体39のサンプルを取り出すことが目下可能である。あるいは、サンプルは、直接還元プラント自体から採取されてもよい。サンプルは、分析ユニット43においてその特性について分析され得る。分析結果に基づいて、制御ユニット45が添加剤の品質を確認する。信号線51aを介して、制御ユニットは添加剤を生産し、それを反応器構成体、より具体的には溶鉱炉内に導入することができる。追加的または代替的に、制御ユニット45はまた、さらなる信号線51aを介して溶鉱炉の温度を設定してもよい。これにより、例えば所定の温度曲線を操作して溶融物の熱処理を実行することが可能になる。
【0052】
製錬炉20bは、酸化雰囲気下で動作する電気アーク炉と組み合わせられた直接還元プラントとは対照的に、例えば、高炉に取り付けられた製鉄所のさらなる処理操作もまた、製錬炉に用いられ得るという利点を有する。したがって、鉄を転炉内で鋼に精錬することができる。溶鋼は取鍋炉内で脱硫され、その品質が調整され、次いで連続鋳造プラントによって成形され得る。
【0053】
図2は、図1bの製錬炉20bの例示的な実施形態における図を示している。例示的な実施形態は、溶鉱炉内への原料用の供給部52をさらに備える。供給部52は、直接還元炉21aからの戻し導管52aとして構成され得、原料を直接還元炉から溶鉱炉内に送るためのものである。原料が直接溶鉱炉内に導入されるのに適さない場合、事前に後処理を施すことも可能である。還元ガスの吹込み導入は、特に炉ダストを巻き上げる効果を有する。このダストは捕捉され得、かつ任意選択で前処理され(例えば、ペレットを形成するためにプレスされるか、または濾過される)、溶鉱炉内に送られ得る。追加的または代替的に、供給部は、原料用外部供給部52bを備える。そこでは、例えば、製鉄現場で収集された炉ダスト、またはそうでなければ他の産業からの原料を溶鉱炉内に導入することができる。
【0054】
図3は、図1bの製錬炉20bの代替の例示的な実施形態を示している。ここでは、反応器構成体21bは二段階構成を有する。ここでは溶鉱炉である図1bおよび図2に既に示されている第1の反応器54aが、第2の反応器54bによって補完されている。この場合、第2の反応器54bは第1の反応器から液体スラグを受け取り、これは第2の反応器54b内でさらに処理され得る。これにより、液体鉄を考慮に入れる必要がないため、より大きな自由度でスラグのさらなる処理を実行することが可能になる。
【0055】
さらに、図2の原料用の供給部を図3の反応器構成体の分割と組み合わせることも可能である。
【0056】
図4は、セメント産業用のスラグの主要な画分の濃度の概略のみを提供する概略三角図を示している。三角形の下側には、CaO(酸化カルシウム)およびMgO(酸化マグネシウム)の画分がプロットされている。左側には、SiO(酸化ケイ素)の画分がプロットされている。右側には、Al(酸化アルミニウム)およびFe(酸化鉄)の画分がプロットされている。酸化鉄に含有された脈石46は、広いスペクトルの物質の割合を有し得る。例えば、例示的に、CaO+MgOの割合は約10%~約30%の間で変動し得るが、SiOの割合は約30%~約70%の間で変動し、AlおよびFeの割合もまた、約5%~約55%の間で変動する。したがって、目的は、脈石の実際の組成を分析し、規定のスラグを得るためにどの物質を脈石に添加しなければならないかを分析することである。例示的に、スラグ砂48およびポルトランドセメント50の組成が示されている。換言すれば、異なる濃度の複数の物質を含み得る添加剤を混合することによって、基本的に脈石に基づいて均質なスラグが生成され、このスラグは、例えばスラグ砂またはポルトランドセメントの物理的組成を有する。しかしながら、ここでは、粘度または固化時の十分なガラス相の形成など、スラグの他の物理的性質も保持されることを留意しなければならない。
【0057】
開示された製錬炉および対応する方法の利点は、特に低い溶融温度を特徴とする組成に対するスラグ組成の既存の制限が排除されることである。原理上、固定された時間プロファイルおよび時間プロファイルの両方において、製錬炉の自由度、特に、限定されないが、スラグの化学的、物理的、および鉱物学的特性を制限することなく、製錬炉を動作させることが目下可能である。したがって、図4の矢印は、脈石46から開始して、スラグの任意の所望の組成が得られ得ることを示している。
【0058】
特定の態様は、装置に関連して説明されている。それにもかかわらず、これらの態様はまた、対応する方法の説明を構成し、したがって、装置のブロックまたは構成要素はまた、対応する方法ステップまたは方法ステップの特徴であると理解されることを理解されたい。これと同様に、1つの方法ステップに関連して、または1つの方法ステップとして説明された態様はまた、対応する装置の対応するブロックまたは詳細または特徴の説明を構成する。
【0059】
上記の例示的な実施形態は、本発明の原理の単なる例示を表す。本明細書に記載の詳細および構成の修正および変形は、当業者には明らかであろうことが理解されよう。したがって、本発明は、例示的な実施形態の記載および説明に基づいて本明細書に提示された特定の詳細によってではなく、後続の特許請求の範囲の保護の範囲のみによって制限されるべきであることが意図されている。
【符号の説明】
【0060】
20a 高炉
20b 製錬炉
21a 直接還元プラント
21b 反応器構成体
22 材料供給部
24 予熱ゾーン
26 還元ゾーン
28 炭化ゾーン
32 出湯穴
34 ブラスト用の供給部
36 反応ガス用の供給部
38 反応器構成体の主開口部
39 鉄含有中間体
40 添加剤を添加するための開口部
42 スラグ
43 分析ユニット
44 鉄
45 制御ユニット
46 脈石
48 スラグ砂
50 ポルトランドセメント
51 制御ユニットの信号線
52 原料用の供給部
54a 第1の反応器
54b 第2の反応器
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-12-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銑鉄の生産において所望の特性のスラグ(42)を生成するための方法であって、
a)直接還元プラント(21a)内で酸化鉄を加熱し、その結果、還元剤の存在により酸化鉄の大部分が鉄に還元され、鉄含有中間体(39)が形成されるステップ、
b)前記鉄含有中間体(39)を反応器構成体(21b、54a)内で加熱して、銑鉄(44)および前記スラグ(42)を得るステップ、
c)分析ユニット(43)によって、前記鉄含有中間体(39)および/または前記鉄含有中間体(39)のさらなる加熱中に堆積する前記スラグ(42)を分析するステップ、
d1)前記スラグ(42)の組成を変更するために、前記分析に応じて、加熱中に前記鉄含有中間体(39)に添加される添加剤の性質を決定し、前記加熱中に前記添加剤を添加して前記所望の特性の前記スラグ(42)を得るステップ、および/または
d2)前記スラグ(42)が前記所望の特性を有する前記スラグ(42)を得るために熱処理を必要とすることを認識し、前記熱処理を開始するステップ
を有する、方法。
【請求項2】
前記直接還元プラント(21a)が、還元剤としての水素用の供給部を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応器構成体が、還元雰囲気を有する溶鉱炉(21b、54a)を備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記直接還元プラント(21a)が、前記酸化鉄を900℃~1100℃の温度まで加熱するように構成されている、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記分析中に、反応器ユニット(21b、54b)内の前記鉄含有中間体のおよび/または前記スラグ(42)の実際の組成を判定し、前記組成を前記スラグ(42)の所望の目標組成と比較し、かつ実際の組成と目標組成との間の差異に応じて前記添加剤の前記性質を調整するように構成された分析ユニット(43)が使用される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記添加剤の性質として、前記添加剤の量および前記添加剤の組成を決定するように構成された制御ユニット(45)が使用される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記スラグ(42)の実際の特性を変更するために、前記スラグ(42)の目標特性について、以下の特徴である、造粒スラグの所望の化学組成、前記造粒スラグの所望の物理的性質、前記造粒スラグの鉱物学的性質からの任意の選択を考慮に入れるように構成された制御ユニット(45)が使用される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記溶鉱炉(21b)が、原料(38)を前記溶鉱炉(21b)内に導入するための開口部を有し、前記原料の前記導入後に前記スラグ(42)を分析するように構成された分析ユニット(43)が使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記スラグ(42)が1~5.5の塩基度を有するように前記添加剤の量を選択するように構成された制御ユニット(45)が使用される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記反応器構成体(21b)が、前記鉄含有中間体(39)を受容し加熱して前記鉄(44)および前記スラグ(42)を得るように構成された第1の反応器(54a)を有し、前記反応器構成体(21b)が、前記第1の反応器(54a)から前記スラグ(42)を受け取るように構成された第2の反応器(54b)を有し、前記添加剤を前記第2の反応器(54b)内に導入し、かつ/または前記第2の反応器(54b)内で前記スラグ(42)の前記熱処理を開始して、前記所望の特性を有する前記スラグ(42)を得るように構成された制御ユニット(45)が使用される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記第2の反応器(54b)が、前記スラグを霧化して霧状スラグを得るように構成されており、前記霧状スラグが、1~100μmの粒径を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の反応器(54b)が、鉱物質建築材料、より具体的には結合剤で構成されており、前記制御ユニット(45)が、前記添加剤の一部としてセメントを前記第2の反応器(54b)内に導入するように構成されており、前記第2の反応器(54b)が、前記霧状スラグと前記セメントとを互いに混合するように構成されており、前記霧状スラグが、36:64~95:5の比でセメントと混合されて、28d標準強度が少なくとも30N/mmである前記鉱物質建築材料が得られる、請求項11に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
さらなる例示的な実施形態は、第2の反応器が鉱物質建築材料、例えば結合剤を生成することを示している。例えば、制御ユニットが、添加剤として、または添加剤の一部として、セメントを第2の反応器内に導入することが可能であり、第2の反応器は、霧状スラグとセメントとを互いに混合するように構成されており、霧状スラグは、36:64~95:5、好ましくは60:40~80:20の比でセメントと混合されて、28d標準強度が少なくとも30N/mmである鉱物質建築材料が得られる。
本発明は、一態様において以下を提供する。
[項目1]
銑鉄の生産において所望の特性のスラグ(42)を生成するための方法であって、
a)直接還元プラント(21a)内で酸化鉄を加熱し、その結果、還元剤の存在により酸化鉄の大部分が鉄に還元され、鉄含有中間体(39)が形成されるステップ、
b)前記鉄含有中間体(39)を反応器構成体(21b、54a)内で加熱して、銑鉄(44)および前記スラグ(42)を得るステップ、
c)分析ユニット(43)によって、前記鉄含有中間体(39)および/または前記鉄含有中間体(39)のさらなる加熱中に堆積する前記スラグ(42)を分析するステップ、
d1)前記スラグ(42)の組成を変更するために、前記分析に応じて、加熱中に前記鉄含有中間体(39)に添加される添加剤の性質を決定し、前記加熱中に前記添加剤を添加して前記所望の特性の前記スラグ(42)を得るステップ、および/または
d2)前記スラグ(42)が前記所望の特性を有する前記スラグ(42)を得るために熱処理を必要とすることを認識し、前記熱処理を開始するステップ
を有する、方法。
[項目2]
前記直接還元プラント(21a)が、還元剤としての水素用の供給部を備える、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記反応器構成体が、還元雰囲気を有する溶鉱炉(21b、54a)を備える、項目1または2に記載の方法。
[項目4]
前記直接還元プラント(21a)が、前記酸化鉄を900℃~1100℃の温度まで加熱するように構成されている、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
[項目5]
前記分析中に、反応器ユニット(21b、54b)内の前記鉄含有中間体のおよび/または前記スラグ(42)の実際の組成を判定し、前記組成を前記スラグ(42)の所望の目標組成と比較し、かつ実際の組成と目標組成との間の差異に応じて前記添加剤の前記性質を調整するように構成された分析ユニット(43)が使用される、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
[項目6]
前記添加剤の性質として、前記添加剤の量および前記添加剤の組成を決定するように構成された制御ユニット(45)が使用される、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
[項目7]
前記スラグ(42)の実際の特性を変更するために、前記スラグ(42)の目標特性について、以下の特徴である、造粒スラグの所望の化学組成、前記造粒スラグの所望の物理的性質、前記造粒スラグの鉱物学的性質からの任意の選択を考慮に入れるように構成された制御ユニット(45)が使用される、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
[項目8]
前記溶鉱炉(21b)が、原料(38)を前記溶鉱炉(21b)内に導入するための開口部を有し、前記原料の前記導入後に前記スラグ(42)を分析するように構成された分析ユニット(43)が使用される、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
[項目9]
前記スラグ(42)が1~5.5の塩基度を有するように前記添加剤の量を選択するように構成された制御ユニット(45)が使用される、項目1から8のいずれか一項に記載の方法。
[項目10]
前記反応器構成体(21b)が、前記鉄含有中間体(39)を受容し加熱して前記鉄(44)および前記スラグ(42)を得るように構成された第1の反応器(54a)を有し、前記反応器構成体(21b)が、前記第1の反応器(54a)から前記スラグ(42)を受け取るように構成された第2の反応器(54b)を有し、前記添加剤を前記第2の反応器(54b)内に導入し、かつ/または前記第2の反応器(54b)内で前記スラグ(42)の前記熱処理を開始して、前記所望の特性を有する前記スラグ(42)を得るように構成された制御ユニット(45)が使用される、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
[項目11]
前記第2の反応器(54b)が、前記スラグを霧化して霧状スラグを得るように構成されており、前記霧状スラグが、1~100μmの粒径を有する、項目10に記載の方法。
[項目12]
前記第2の反応器(54b)が、鉱物質建築材料、より具体的には結合剤で構成されており、前記制御ユニット(45)が、前記添加剤の一部としてセメントを前記第2の反応器(54b)内に導入するように構成されており、前記第2の反応器(54b)が、前記霧状スラグと前記セメントとを互いに混合するように構成されており、前記霧状スラグが、36:64~95:5の比でセメントと混合されて、28d標準強度が少なくとも30N/mm である前記鉱物質建築材料が得られる、項目11に記載の方法。
【国際調査報告】