(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー及び海中杭
(51)【国際特許分類】
E21B 6/04 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
E21B6/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565945
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2022061429
(87)【国際公開番号】W WO2022229363
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IE
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516001856
【氏名又は名称】ミンコン インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MINCON INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】マルック ケスキニヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ パーセル
(72)【発明者】
【氏名】サイモン ダック
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA01
2D129AB16
2D129AB20
2D129BA09
2D129DA23
2D129DB01
(57)【要約】
本発明は、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーに関する。当該ハンマーは、細長シャフトと、貫通する中心穴を有するピストンを備える。前記ピストンは、前記シャフト上で往復運動するように摺動可能に取り付けられると共にパーカッションビットと衝突するように配置される。前記ピストン用の前方及び後方駆動チャンバは、前記ピストンと前記シャフトとの間に設けられ、かつ、前記前方チャンバは、前記ピストンの穴の内側に形成される環状肩部によって前記後方チャンバと分離される。当該ハンマーはまた、前記ピストンの往復運動を制御する制御バルブをも備える。前記制御バルブは、前記ピストンの前記中心穴内部に配置される。当該ハンマーは、前記ピストンが当該ハンマーの最も外側の部品である使い捨て水力式ハンマーであってよい。本発明はまた、海底に耐負荷部材を設置する方法及びシステム、並びに、海底上に海中のアンカーを設置し、海中の杭を設置し、及び海中のアンカーを設置する方法及びシステムにも関する。
【選択図】
図7a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーであって、
細長シャフトと、
貫通する中心穴を有して、前記シャフト上で往復運動するように摺動可能に取り付けられると共にパーカッションビットと衝突するように配置されるピストンと、
前記ピストンの前記中心穴内部に配置されて前記ピストンの往復運動を制御する制御バルブを備え、
前記ピストン用の前方駆動チャンバ及び後方駆動チャンバは、前記ピストンと前記シャフトとの間に設けられ、かつ、前記前方チャンバは、前記ピストンの穴の内側に形成される環状肩部によって前記後方チャンバと分離される、
油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーであって、前記シャフトは中心穴を備え、前記制御バルブは前記シャフト内に配置される、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーであって、前記ピストンは、モノリシック構造を有する、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーであって、前記ピストンは、前記パーカッションビットの後端で環状肩部と衝突するように配置される、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーであって、前記ピストンの後端に配置される少なくとも1つのアキュムレータを備える、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーであって、
当該ハンマーの作業流体は水で、
前記後方チャンバが圧力流体チャネルに接続され、
前記制御バルブは、前記ピストンが後退方向に移動する間には前記前方チャンバを前記後方チャンバと接続するように配置され、前記ピストンが前進方向に移動するときには前記シャフト及び前記パーカッションビットを介して前記前方チャンバをフラッシング流体チャネルに接続するように配置される、
油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーであって、前記ピストンが内部に格納されるような外側摩耗スリーブをさらに備え、前記パーカッションビットは、前記摩耗スリーブの前端に配置される、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項8】
請求項7に記載の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーであって、当該ハンマーは閉ループハンマーで、フラッシング流体チャネルは前記ピストンと前記摩耗スリーブとの間で前記パーカッションビットを貫通するように設けられる、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項9】
請求項7に記載の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーであって、当該ハンマーの作業流体は水で、前記ピストンと前記外側摩耗スリーブとの間に流路環が設けられ、フラッシング流体チャネルが、前記シャフトと前記パーカッションビットを貫通するように設けられる、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーであって、前記ピストンが当該ハンマーの最も外側の部品である、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項11】
請求項10に記載の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーであって、前記シャフトの前記中心穴から前記シャフトの外側表面まで延びる前記シャフト内であって前記ピストンの前端にフラッシングポートをさらに備える、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーであって、前記シャフトは、該シャフトの前端に結合部材を備え、前記結合部材は、前記パーカッションビットを当該ハンマーに結合し、かつ回転駆動を伝える、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項13】
請求項12に記載の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーであって、前記結合部材上に形成される係合手段をさらに備え、前記係合手段は、前記ビットの内部に形成される相補的係合手段と係合可能で、それにより前記シャフトからの回転駆動は、前記ビットへ伝えられる、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーであって、前記ビット上の相補的保持手段と係合することで当該ハンマー内に前記ビットを保持するように構成される前記結合部材上のビット保持手段をさらに備える、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項15】
請求項14に記載の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーであって、前記ビット保持手段は、前端に前記結合部材の外部に形成される第1ねじ山を備え、かつ、前記相補的係合手段は、前記ビットの内部に形成される第2ねじ山を備える、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項16】
海底に耐負荷部材を設置する方法であって、
作業流体を供給することによって動作する油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーを用いて前記海底に所望の深さの穴を掘削する段階と、
当該ハンマーが前記穴内に位置する間、当該ハンマーへの作業流体の供給を停止する段階と、
当該ハンマーにグラウトを供給して、当該ハンマーと当該ハンマーが設けられ、あるいは位置する前記穴を少なくとも部分的にグラウトで充填する段階と、
当該ハンマーと前記グラウトが前記海底に耐負荷部材を形成するように前記グラウトの硬化を可能にする段階、
を有する方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記穴を掘削する前に、掘削装置を当該ハンマーに接続する段階及び当該ハンマー及び掘削装置を前記海底まで下ろす段階と、
前記穴の掘削中、回転させると共に当該ハンマーへ力を供給するように前記掘削装置を操作する段階、
をさらに有する、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記穴がグラウトによって少なくとも部分的に充填された後、前記掘削装置を当該ハンマーから取り外す段階をさらに有する、方法。
【請求項19】
海底に耐負荷部材を設置するシステムであって、
油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーと、
前記海底に所望の深さの穴を掘削するため当該ハンマーが接続可能である作業流体供給部と、
当該ハンマーと前記穴がグラウトによって充填可能となるように前記穴内に設けられ、あるいは位置する間に当該ハンマーが接続可能なグラウト供給部、
を備えるシステム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、前記作業流体供給部と前記グラウト供給部が、前記海底より高い海面に供され、
当該システムは、アンビリカルをさらに備え、
当該ハンマーが前記アンビリカルを介して前記作業流体供給部及び前記グラウト供給部に接続可能である、
システム。
【請求項21】
請求項19又は20に記載のシステムであって、前記作業流体が水である、システム。
【請求項22】
請求項19~21のいずれか一項に記載のシステムであって、
前記作業流体供給部を当該ハンマーへ供するように構成される作業流体ポンプと、
前記グラウト供給部を当該ハンマーへ供するように構成されるグラウトポンプ、
を備えるシステム。
【請求項23】
請求項19~22のいずれか一項に記載のシステムであって、
前記穴の掘削中、回転させると共に当該ハンマーに力を供給するように構成される掘削装置をさらに備え、
前記掘削装置は、前記穴の掘削前に、当該ハンマーに接続されると共に、当該ハンマーによって前記海底にまで下ろされる、
システム。
【請求項24】
請求項19~23のいずれか一項に記載のシステムであって、当該ハンマーは請求項1~15のいずれかに記載のハンマーである、システム。
【請求項25】
請求項24に記載のシステムであって、
当該ハンマーは請求項1~15のいずれかに記載のハンマーで、
前記パーカッションビットは、前記ピストンよりも大きな直径を有し、その結果、前記の掘削された穴の直径は、前記ピストンの直径よりも大きくなり、かつ、前記ピストンと前記の掘削された穴の壁との間に環状キャビティが存在する、
システム。
【請求項26】
海底の穴に設けられ、あるいは位置する油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーと、
当該ハンマー内部でかつ当該ハンマーと前記穴の壁との間に配置される硬化済グラウトを備え、それにより当該ハンマーは前記グラウトによって前記海底の物質に結合される、
海中杭。
【請求項27】
海底に海中杭を設置する方法であって、
1つ以上の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー、及び、前記1つ以上のハンマーの各々を回転させると共に前記1つ以上のハンマーの各々力を供給するように構成される掘削装置をアンカーフレームに接続する段階と、
前記アンカーフレームを前記海底まで下ろす段階と、
当該ハンマー又は該ハンマーの各々が前記海底内に所望の深さの穴を掘削するように作業流体を当該ハンマー又は該ハンマーの各々に供給する段階と、
当該ハンマー又は該ハンマーの各々が各対応する穴内に位置する間、当該ハンマー又は該ハンマーの各々への作業流体の供給を中止する段階と、当該ハンマー又は該ハンマーの各々へグラウトを供給することで、当該ハンマー及び該ハンマーが位置する前記穴をグラウトによって少なくとも部分的に充填する段階と、
当該ハンマー又は該ハンマーの各々が前記グラウトによって前記海底の物質に結合されるように前記グラウトの硬化を可能にする段階と、
前記掘削装置を前記アンカーフレームから切り離す段階、
を有する方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記掘削装置は、当該ハンマー又は該ハンマーの各々にさらなる回転を与えると共に力を供給する、方法。
【請求項29】
請求項27又は28に記載の方法であって、各ハンマードリルは、前記海底中の各対応する穴を同時に掘削する、方法。
【請求項30】
請求項27~29のいずれか一項に記載の方法であって、停留線を前記アンカーフレームに結合する段階をさらに有する、方法。
【請求項31】
海底に海中アンカーを設置するシステムであって、
アンカーフレームと、
前記アンカーフレームに接続可能な1つ以上のダウン・ザ・ホール油圧式ハンマー、及び、回転させると共に前記1つ以上のハンマーの各々に力を供給するように構成される掘削装置と、
前記海底に所望の深さの穴を掘削するため当該ハンマーが接続可能である作業流体供給部と、
当該ハンマーと前記穴がグラウトによって少なくとも部分的に充填可能となるように前記穴内に位置する間に当該ハンマーが接続可能なグラウト供給部、
を備えるシステム。
【請求項32】
請求項31に記載のシステムであって、前記掘削装置は、当該1つ以上のハンマーの各々用の独立した供給及び回転システムを備える、システム。
【請求項33】
請求項31又は32に記載のシステムであって、前記作業流体供給部と前記グラウト供給部が、前記海底より高い海面に供され、
当該システムは、アンビリカルをさらに備え、
当該ハンマーが前記アンビリカルを介して前記作業流体供給部及び前記グラウト供給部に接続可能である、
システム。
【請求項34】
請求項30~32のいずれか一項に記載の方法であって、当該ハンマー又は該ハンマーの各々は請求項1~15のいずれかに記載のハンマーである、システム。
【請求項35】
請求項34に記載のシステムであって、
当該ハンマー又は該ハンマーの各々は請求項1~15のいずれかに記載のハンマーで、
当該ハンマー又は該ハンマーの前記パーカッションビットは、前記ピストンよりも大きな直径を有し、その結果、前記の掘削された穴の直径は、前記ピストンの直径よりも大きくなり、かつ、前記ピストン又は該ピストンの各々と前記の掘削された穴の壁との間に環状キャビティが存在する、
システム。
【請求項36】
海底上に設けられるアンカーフレームと、
前記海底の各対応する穴に設けられると共に前記アンカーフレームに接続される1つ以上の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーと、
当該ハンマー又は該ハンマーの各々の内部であって当該ハンマーと各対応する穴の壁との間に配置される硬化済みグラウトを備え、
当該ハンマー又は該ハンマーの各々は前記グラウトによって結合される、
海中アンカー。
【請求項37】
添付図面の
図1~
図8のいずれかを参照して記載され、かつ/あるいは
図1~
図8のいずれかに実質的に表された油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー。
【請求項38】
添付図面の
図9~
図12のいずれかを参照して記載され、かつ/あるいは
図9~
図12のいずれかに実質的に表された耐負荷部材を設置するシステム。
【請求項39】
添付図面の
図12のいずれかを参照して記載され、かつ/あるいは
図12のいずれかに実質的に表された海中杭。
【請求項40】
添付図面の
図13~
図17のいずれかを参照して記載され、かつ/あるいは
図13~
図17のいずれかに実質的に表された海中アンカーを設置するシステム。
【請求項41】
添付図面の
図16又は
図17を参照して記載され、かつ/あるいは
図16又は
図17に実質的に表された海中アンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体作動する油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーに関し、より詳細には、使い捨てすなわち1回使用油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーに関する。本発明はまた、海中杭、並びに、海底に耐負荷部材及び海中アンカーを設置する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧式で動力が与えられるダウン・ザ・ホールハンマーは概して3つの主要部材-当該ハンマーの前端に位置するドリルビット又は装置へパーカッションエネルギーを与える衝撃ピストンと、前記衝撃ピストンの面に圧力を印加することで前記ピストンの往復運動を引き起こす周期力を発生させるように当該ハンマー内での油圧流体流を制御するシャトル又は制御バルブと、前記ピストンの往復によって発生する変化する瞬間流の要件に適応するように逆圧が加えられた油圧流体を取り込み、蓄積器、かつ供給する1つ以上のアキュムレータ-を備える。
【0003】
従来技術に係る油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー100が
図1に示されている。そのような従来型のハンマーでは、ピストン101は一般的には中実で、外側シリンダ内部で往復運動して、ハンマーの前端でビット109を衝突させる。ピストン駆動チャンバ102,103は、ピストンと外側シリンダ104との間に配置され、制御バルブ105とアキュムレータ106は、ピストンの後端107に設けられている。作業流体が、圧力ラインPを介してハンマーへ供給され、戻りラインTを介して戻される。フラッシング流体108の分離流が、穴からの切削片を流し出すように供される。制御バルブの位置のため、制御バルブと駆動チャンバとの間の距離d
valveは相対的に長くなる。アキュムレータ106は一般的にはバルブの上流に位置するので、アキュムレータと駆動チャンバとの間の距離d
accuはさらに長くなる。ピストンとバルブとアキュムレータとの間の長いフローチャネルは、ハンマー部材に対して有害となる恐れがある圧力波を発生される恐れがある。フローチャネルが長いことで、圧力損失をも生じる。ピストンとアキュムレータとの間に距離があることで、ピストンとアキュムレータとの間でのやり取りの遅延が相当なものとなるので、アキュムレータは効率的に動作しない。
【0004】
典型的な水力駆動油圧式ハンマーでは、設定は
図1で示して上で概説したハンマーと類似する。しかし
図2に示された水力駆動ハンマー200では、戻りラインTが存在しない。その代わりに駆動流体がフラッシング流208に用いられている。さらにピストン201は水中に完全に浸漬されており、ピストンの断面積のわずか一部しかピストンを駆動させるのに用いられない。残りの断面積は大気圧で水中に曝露されているので、何もしない状態である。このことは、ピストンの非駆動領域がハンマーの動作中に多量の水を変位させる必要があることを意味する。これは、ピストンの前端211と後端207が互いに流体連通するようにピストンを貫通する中心穴210を有することによって実現される。穴は、ハンマーに悪影響を及ぼす重大な圧力損失を回避するように十分大きくなければならない。圧力損失はまた、ピストンの非駆動領域を最小化することによっても減らすことができる。中心穴のサイズの増大及びピストンの非駆動領域の減少によって、ピストンの断面積は非常に小さくなる。これは、有効な掘削にとっては軽すぎる傾向にある。これは、十分な重量を供するためにピストンの長さを増大させることによって解決される。しかしこのことで、長いことでピストンの後部に対するバルブの位置によって悪化するという問題が起こり、ハンマーは実用的ではなくなってしまう。既存の水ハンマーもまた、設計が複雑であることで、製造に費用がかかってしまう。
【0005】
既存の装置に係る不利益の一部を解決する油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーを供することが望ましい。
【0006】
海中杭は、沖合の構造物-たとえば風力タービン-を海底につなぐのに用いられる構造物を固定するのに用いられ得る。海底の上部層は通常、土壌又は沈泥で構成され、弱いかあるいは不安定である恐れがある。杭は、これら上部層を貫通してより密な土壌及び岩からなる下部のより安定した層へ延在し、それにより固定された構造物から海底のこれらの下部層へ負荷を移す耐負荷部材である。
【0007】
現在の陸上杭工事は、ハンマーを用いて穴を掘る段階を有する。上記段階では、穴が掘削されることでケーシングはハンマーによって穴へ引き込まれる。穴が目標深さに到達すると、ハンマーは穴から取り除かれ、それによりケーシングがその場に残される。鉄筋がケーシングの中心に落とされ、その後穴はグラウトで満たされる。ケーシングは、鉄筋を周囲の土地の物質に結合するグラウトが硬化される前に撤去され得る。
【0008】
しかし海中杭工事には多数の困難がある。このことは、そのような土地工事方法が適していないことを意味する。海中アンカーを海底に固定する一の通常の方法は、大きな海中油圧式ハンマーによって海底に入り込められる打ち込み杭を使用することである。あるいはその代わりに、中空の杭が海底まで沈められて、杭の底部と海底との間が密閉される吸引杭工法が用いられ得る。続いて水が、杭の中空中心からくみ出されることで、杭をさらに海底へ入り込まれる吸引効果が発生する。
【0009】
上述の海中杭は、海中アンカーを海底に固定するのに用いられ得る。係る海中アンカーは、1つ以上の杭を用いることによって海底に固定されるフレーム又はテンプレートを備えることができる。風力タービン又は他の沖合構造物は、海中アンカーにつながれるか、あるいは固定され得る。
【0010】
係る海中杭頭アンカーの設置方法が特許文献1に開示されている。その方法は、海底にフレームを設ける段階と、前記フレーム上に海底ドリルを配置する段階と、前記ドリルを用いて杭頭アンカーを海底に入り込ませる段階を有する。続いてグラウトが、杭頭アンカー周辺に送り込まれることで、杭は地面に結合される。このプロセスは、フレームを海底に固定するために複数回繰り返され得る。フレームへの停泊接続は、沖合構造物をアンカーへつなぐのに用いられ得る。
【0011】
これらの方向には多数の不利益が存在する。打ち込み杭も吸引杭も、相対的に設置するのが相対的にゆっくりである。打ち込み杭については、海中ハンマーは、大きく、複雑で、高価であると共に、大きな支持容器を必要とする。吸引法は、海底が和らなくて砂状である場合にしか適さず、岩石又は障害物が存在する場合には使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0233079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
既存方法に係る不利益を克服する、たとえば構造物-風力タービン-を停泊するために海底で杭又は耐負荷部材を設置する方法及びシステムを供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のある態様によると、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーが供される。当該油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーは、
細長シャフトと、
貫通する中心穴を有して、前記シャフト上で往復運動するように摺動可能に取り付けられると共にパーカッションビットと衝突するように配置されるピストンと、
前記ピストンの前記中心穴内部に配置されて前記ピストンの往復運動を制御する制御バルブを備え、前記ピストン用の前方及び後方駆動チャンバは、前記ピストンと前記シャフトとの間に設けられ、かつ、前記前方チャンバは、前記ピストンの穴の内側に形成される環状肩部によって前記後方チャンバと分離される。
【0015】
「前方」という用語は本願では、前記パーカッションビットを向く当該ハンマーの端部-すなわち当該ハンマーの掘削端-を示すのに用いられる。「後方」という用語は本願では、前記パーカッションビットから遠ざかる当該ハンマーの端部-すなわち掘削中最も外側である当該ハンマーの端部-を示すのに用いられる。
【0016】
この構成には複数の利点が存在する。前記バルブが前記ピストンの内部に配置されるので、前記バルブと前記駆動チャンバとの間で前記流体が進行する距離が最小限に抑制されることで、有害な圧力波が除去される。圧力損失もまた非常に小さい。前記駆動チャンバが、前記ピストンと外側スリーブとの間ではなく前記ピストン内部にあるため、密封径は、従来型ハンマーよりも減少する。このため、作業流体の粘性が低い水力駆動ハンマーにとって特に重要な漏れが減少する。当該ハンマーはまた、設計が単純なために製造コストが抑えられる。
【0017】
好適には前記制御バルブは前記シャフト内に配置される。
【0018】
好適実施形態では、前記ピストンは、モノリシック又は単一構造を有する。すなわち前記ピストンは、単一部材として形成される。前記前方チャンバと前記後方チャンバを分離する前記ピストン上の環状肩部が、前記ピストンの穴の内部に設けられるので、前記ピストンを製造して前記ピストンを当該ハンマーへ組み込んで単一部品とすることが可能である。
【0019】
理想的には、前記ピストンは、前記パーカッションビット又はドリルビットの後端に環状肩部と衝突するように配置される。前記環状肩部は、前記ドリルビットのスカート上に供されてよい。この装置の利点は、掘削するのに最大の衝撃エネルギーが必要となる地点にて衝撃力が前記ドリルビットのゲージへ直接伝わることである。
【0020】
ある特定の実施形態では、当該ハンマーは、前記ピストンの後端に配置される少なくとも1つのアキュムレータを備えることができる。前記バルブが前記ピストン内部に配置されるので、前記アキュムレータ(複数可)は、従来の装置よりも前記ピストンに近い位置に設けられることで、daccuが減少し、その結果効率が改善される。
【0021】
当該ハンマーのある実施形態では、前記作業流体は水である。この実施形態では、前記後方チャンバは圧力流体チャネルに接続され、前記制御バルブは、前記ピストンが後退方向に移動する間には前記前方チャンバを前記後方チャンバと接続するように配置され、前記ピストンが前進方向に移動するときには前記シャフト及び前記パーカッションビットを介して前記前方チャンバをフラッシング流体チャネルに接続するように配置され得る。前記後方チャンバが前記ピストンのサイクルを介して圧力流体チャネルに接続されるので、前記後方チャンバ内での圧力は一定で、前記前方チャンバでの圧力は変化する。
【0022】
一部の実施形態では、当該ハンマーは、前記ピストンが内部に格納されるような外側摩耗スリーブをさらに備えることができる。従来のハンマーでは、前記外側摩耗スリーブは、掘削中前記ピストンを摩耗から保護する。前記パーカッションビットは、前記摩耗スリーブの前端に配置され得る。本願のある実施形態では、当該ハンマーは閉ループハンマーで、フラッシング流体チャネルは前記ピストンと前記摩耗スリーブとの間で前記パーカッションビットを貫通するように設けられ得る。このことは、前記ピストンの外側表面全部がフラッシング流体に曝露されることで、前記ピストンは非常に効率的に冷却されることを意味する。
【0023】
他の実施形態では、当該ハンマーの作業流体は水で、前記ピストンの前端と後端とを流体連通させるため、前記ピストンと前記外側摩耗スリーブとの間に流路環(a flow annulus)が設けられる。フラッシング流体チャネルが、前記シャフトと前記パーカッションビットを貫通するように設けられる。当該ハンマーの前記駆動チャンバが前記ピストンの穴の内部に設けられるので、前記ピストンの前端と後端との間での流路は、従来の水中ハンマーのように前記ピストンの穴を介してではなく前記ピストンの外側と接する流路環によって供され得る。係る流れ環は、前記ピストンと摩耗スリーブとの間の半径方向の隙間が小さくても本質的に大きな流路面積を有する。このことは、前記ピストンの断面積が従来の水中ハンマーと比較して増大し得ることで、短いピストンで十分なピストン重量を実現可能であることを意味する。前記ピストン内部に前記バブルを設けることで、当該ハンマーの長さはさらに減少する。
【0024】
本発明のある態様によると、前記ピストンは当該ハンマーの最も外側の部材である。つまり当該ハンマーは、前記ピストンを格納する外側摩耗スリーブを有していない。当該ハンマーから従来の外側摩耗スリーブをなくすことによって、当該ハンマーの費用は減少し、それにより当該ハンマーは一回使用ハンマー、犠牲ハンマー、又は使い捨てハンマーとして用いることが可能となる。前記ピストンが当該ハンマーの最も外側の部材あるため、前記ピストンは、切削片からの摩耗に曝される。しかし当該ハンマーは使い捨て可能なので、前記ピストンは、1つの穴を掘削するのに十分な長さしか持ちこたえる必要はない。たとえば当該ハンマーは、前記穴が掘削されたときに前記穴内に残されてよい。
【0025】
フラッシングポートが、前記中心穴から外側表面まで延びる前記シャフト内の前記ピストンの前端に供され得る。これにより、前記フラッシング水の一部が、前記ピストンの衝突面と前記ビットの衝突面との間を流れ出ることで、前記衝突面への損傷を防ぐように切削物を前記衝突面から洗い流すことが可能となる。
【0026】
本発明によるハンマーの様々な実施形態では、前記シャフトは、該シャフトの前端に結合部材を備えることができる。前記結合部材は、前記パーカッションビットを当該ハンマーに結合し、かつ回転駆動を伝える。
【0027】
係合手段が前記結合部材上に形成され得る。前記係合手段は、前記ビットの内部に形成される相補的係合手段と係合可能である。それにより前記シャフトからの回転駆動は、前記ビットへ伝えられ得る。ある実施形態では、前記結合部材は中心穴を有するように形成され、前記フラッシングポートは、前記結合部材内に設けられ、前記結合部材の中心穴から、前記ピストンの前端である前記結合部材の外側表面にまで延びる。前記係合手段は、前記結合部材の外部に形成される軸方向に延びる複数のスプラインを備え、かつ、前記相補的係合手段は、前記ビットの内部に形成される軸方向に延びる複数の対応スプラインを備えることができる。他の実施形態では、前記係合手段は、六角形又は正方形の断面を有する前記結合部材の一部を備え、前記相補的係合手段は、対応する形状の内壁を有するように形成される前記ビットの内側部分を備えることができる。
【0028】
当該ハンマーは、前記ビット上の相補的保持手段と係合することで当該ハンマー内に前記ビットを保持するように構成される前記結合部材上のビット保持手段をさらに備えることができる。前記ビット保持手段は、前端に前記結合部材の外部に形成される第1ねじ山を備え、かつ、前記相補的係合手段は、前記ビットの内部に形成される第2ねじ山を備えることができる。当該ハンマーのビットは、前記第1ねじ山が前記第2ねじ山の前方に位置するように前記結合手段の前記ビットにねじ山を形成することによって組み合わせられ得る。この装置は、当該ハンマー内に前記ビットを保持し、かつ、前記ビットの長手方向の運動を制限することを可能にする。
【0029】
他の実施形態では、前記ビット保持手段は、一部が環状である複数の扇形を含むビット保持リングを備え、かつ、前記相補的係合手段は、前記ビットの内部に形成される肩部を備える。この実施形態では、前記結合部材はチャックを備えることができる。
【0030】
本発明のある態様によると、海底での耐負荷部材-たとえば海中杭-を設置する方法が供される。当該方法は、
作業流体を供給することによって動作する油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーを用いて前記海底に所望の深さの穴を掘削する段階と、
当該ハンマーが前記穴内に設けられ、あるいは位置する間、当該ハンマーへの作業流体の供給を停止する段階と、
当該ハンマーにグラウトを供給して、当該ハンマーと当該ハンマーが設けられ、あるいは位置する前記穴を少なくとも部分的にグラウトで充填する段階と、
当該ハンマーと前記グラウトが前記海底に耐負荷部材を形成するように前記グラウトの硬化を可能にする段階、を有する。
【0031】
当該ハンマー及び/又は前記穴を充填する段階は、当該ハンマーが、前記穴が形成される前記海底物質に結合されるように当該ハンマー及び/又は前記穴をグラウトで部分的に充填する段階を含む。ある特定の実施形態では、当該ハンマー及び/又は前記穴は、グラウトで完全に充填されてよい。グラウトは、該グラウトが前記海底の表面と実質的に同じ高さになるまで当該ハンマーに供給されてよい。
【0032】
当該方法は、海中杭の既存設置方法を上回る多数の利点を有する。特に本願で開示される方法は、より迅速な設置を可能にする。さらにダウン・ザ・ホールハンマーを用いることで、様々な種類の海底にも-たとえほとんど砂も土壌もなく、岩又は巨礫が存在する土地でも-前記杭を設置することが可能となる。しかし当該ハンマー自体が前記耐負荷部材を構成するので、一回のみの使用であり、そのため前記海底に杭を打ち込むのに用いられる典型的なハンマーよりも安価であることが求められる。
【0033】
当該ハンマーは、上述の実施形態のいずれによるハンマーであってよい。当該方法を実行するのに用いられるハンマーは、前記作業流体が水である使い捨て、1回使用、又は犠牲ハンマー-たとえば上述のハンマー-であってよい。一の実施形態では、前記使い捨て又は犠牲ハンマーは、外側摩耗スリーブを備えていない。むしろ前記ピストンが、当該ハンマーの最も外側の部材である。
【0034】
ある実施形態では、掘削装置が当該ハンマーに接続されると共に、当該ハンマー及び掘削装置は、前記穴を掘削する前に前記海底まで下ろされる。前記掘削装置は、前記穴の掘削中、回転させると共に当該ハンマーへ力を供給するように操作され得る。前記穴がグラウトによって充填された後、前記掘削装置は、当該ハンマーから取り外されて、前記海の表面に運ばれる。一部の実施形態では、掘削パイプが、前記掘削装置と当該ハンマーとの間に設けられると共に、前記掘削パイプには、当該ハンマーによって前記の掘削された穴へグラウトが詰められる。それにより当該ハンマーと、掘削パイプと、グラウトは一体となって耐負荷部材又は海中杭を構成する。
【0035】
本発明の他の態様によると、海底に耐負荷部材を設置するシステムが供される。当該システムは、
油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーと、
前記海底に所望の深さの穴を掘削するため当該ハンマーが接続可能である作業流体供給部と、
当該ハンマーと前記穴がグラウトによって充填可能となるように前記穴内に設けられ、あるいは位置する間に当該ハンマーが接続可能なグラウト供給部を備える。
【0036】
当該システムは、前記穴の掘削中、回転させると共に当該ハンマーに力を供給するように構成される掘削装置を備えることができる。前記掘削装置は、前記穴の掘削前に、当該ハンマーに接続されると共に、当該ハンマーによって前記海底にまで下ろされる。
【0037】
当該システムは、前記掘削装置と当該ハンマーとの間で接続される少なくとも1つの掘削棒又はパイプをさらに備えることができる。前記掘削パイプは犠牲パイプであると共に、当該ハンマーによって前記穴にグラウトが詰められてよい。それにより当該ハンマーと、掘削パイプと、グラウトは一体となって耐負荷部材又は海中杭を構成する。
【0038】
前記作業流体供給部と前記グラウト供給部が、前記海底より高い海面に供されると共に、当該システムは、アンビリカルをさらに備えることができる。当該ハンマーは、前記アンビリカルを介して前記作業流体供給部及び前記グラウト供給部に接続可能である。ある実施形態では、作業流体ポンプは、前記作業流体供給部を当該ハンマーへ供するように構成され、かつ、グラウトポンプは、前記グラウト供給部を当該ハンマーへ供するように構成される。前記ポンプは、前記海面又はその付近に設けられた容器又は装置上に供され得る。前記アンビリカルは、当該ハンマー及び/又は前記掘削装置を表面用装置-たとえば前記作業流体ポンプ及び前記グラウトポンプ-に接続するように構成される1つ以上のケーブル又はホースを含むことができる。前記アンビリカルは、前記作業流体供給部及び前記グラウト供給部に選択的に接続可能な単一のチャネルを備えることができる。あるいはその代わりに前記アンビリカルは、作業流体を当該ハンマーへ供給するように前記作業流体供給部に接続可能な第1チャネル、及び、グラウトを当該ハンマーへ供給するように前記グラウト供給部に接続可能な第2チャネルを備えることができる。
【0039】
当該ハンマーは、グラウトが当該ハンマー及び前記穴へ供給される際に通過する中心穴を有することができる。前記掘削パイプはまた、前記作業流体及びグラウトが当該ハンマーに供給される際に通過する中心穴をも有することができる。当該ハンマーの作業流体は水であってよい。当該ハンマーのピストンは、当該ハンマーの最も外側の部材であってよい。当該ハンマーは、上述の実施形態のいずれかであってよい。好適には当該ハンマーは、上述の使い捨て又は犠牲水中ハンマーであってよい。
【0040】
ある実施形態では、前記パーカッションビットは、前記ピストンよりも大きな直径を有する。その結果、前記の掘削された穴の直径は、前記ピストンの直径よりも大きくなり、かつ、前記ピストンと前記の掘削された穴の壁との間に環状キャビティが存在する。
【0041】
ある実施形態では、前記パーカッションビットの直径は、300mm以下であってよい。得られた耐負荷部材は、マイクロパイルとも指称され得る。前記マイクロパイルは、小さく、軽く、安価で、設置が容易で、かつ、ノイズ及び振動が少ないため、大きな杭よりも好適であり得る。
【0042】
本発明のある態様によると、海中杭が供される。当該海中杭は、
前記海底の穴に設けられ、あるいは位置する油圧式ダウン・ザ・ホールと、
当該ハンマー内部でかつ当該ハンマーと前記穴の壁との間に配置される硬化済グラウトを備える。前記硬化済グラウトが当該ハンマー内部でかつ当該ハンマーと前記穴の壁との間に配置されることで、当該ハンマーは前記グラウトによって前記海底の物質に結合される。
【0043】
当該ハンマーは、上述の任意の実施形態によるハンマーであってよい。たとえば前記海中杭のハンマーは、前記作業流体が水である使い捨て、1回使用、又は犠牲ハンマーであってよい。一の実施形態では、前記使い捨て又は犠牲ハンマーは、外側摩耗スリーブを含まない。むしろ前記ピストンは、当該ハンマーの最も外側の部材であってよい。
【0044】
前記海中杭は、当該ハンマーに接続されると共に前記海底の前記穴内に設けられる少なくとも1つの掘削棒又はパイプをさらに備えることができる。前記硬化済みグラウトはさらに、前記掘削棒又はパイプ内でかつ前記掘削棒又はパイプと前記穴の壁との間に配置される。それにより前記掘削棒又はパイプはまた、前記グラウトによって前記海底の物質に結合される。
【0045】
ある実施形態では、前記海中杭は、直径が300mm以下の海中マイクロパイルであってよい。
【0046】
前記海中杭は、油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー及び任意で掘削パイプが埋め込まれるグラウト柱を備えることができる。
【0047】
本発明のある態様によると、海底上に海中アンカーを設置する方法が供される。当該方法は、
1つ以上のダウン・ザ・ホール油圧式ハンマー、及び、前記1つ以上のハンマーの各々を回転させると共に前記1つ以上のハンマーの各々に力を供給するように構成される掘削装置をアンカーフレームに接続する段階と、
前記アンカーフレームを前記海底まで下ろす段階と、
当該ハンマー又は該ハンマーの各々が前記海底内に所望の深さの穴を掘削するように作業流体を当該ハンマー又は該ハンマーの各々に供給する段階と、
当該ハンマー又は該ハンマーの各々が各対応する穴内に位置する間、当該ハンマー又は該ハンマーの各々への作業流体の供給を中止する段階と、当該ハンマー又は該ハンマーの各々へグラウトを供給することで、当該ハンマー及び該ハンマーが位置する前記穴をグラウトによって少なくとも部分的に充填する段階と、
当該ハンマー又は該ハンマーの各々が前記グラウトによって前記海底の物質に結合されるように前記グラウトの硬化を可能にする段階と、
前記掘削装置を前記アンカーフレームから切り離す段階を有する。
【0048】
当該ハンマー又は該ハンマーの各々は、上述の実施形態のいずれかによるハンマーであってよい。たとえば当該方法を実行するのに用いられるハンマー又は該ハンマーの各々は、前記作業流体が水である使い捨て、1回使用、又は犠牲ハンマーであってよい。一の実施形態では、前記使い捨て又は犠牲ハンマー又は該ハンマーの各々は外側摩耗スリーブを含まない。むしろ前記ピストンは、当該ハンマーの最も外側の部材であってよい。
【0049】
当該方法は、海中アンカーの既存設置方法を上回る多数の利点を有する。特に前記アンカーを前記海底に固定する前記杭は、前記穴にグラウトが詰められる使い捨て又は犠牲ダウン・ザ・ホールハンマーを用いて形成されるので、掘削を実行するのに別個の油圧式ハンマーを必要としない。これらの一回使用ハンマーは、前記海底に杭を打ち込むのに用いられる典型的なハンマーよりも安価となり得る。
【0050】
好適には前記掘削装置は、当該ハンマー又は該ハンマーの各々にさらなる回転を与えると共に力を供給する。これにより、前記海底中の各穴を同時に掘削することが可能となる。
【0051】
停留線が、前記アンカーフレームに結合されることで、沖合構造物-たとえば風力タービン-を前記海底に停留し得る。
【0052】
本発明のある態様によると、海底上に海中アンカーを設置するシステムが供される。当該システムは、
アンカーフレームと、
前記アンカーフレームに接続可能な1つ以上のダウン・ザ・ホール油圧式ハンマー、及び、回転させると共に前記1つ以上のハンマーの各々に力を供給するように構成される掘削装置と、
前記海底に所望の深さの穴を掘削するため当該ハンマーが接続可能である作業流体供給部と、
当該ハンマーと前記穴がグラウトによって少なくとも部分的に充填可能となるように対応する前記穴内に位置する間に当該ハンマーが接続可能なグラウト供給部を備える。
【0053】
好適には前記掘削装置は、当該1つ以上のハンマーの各々用の独立した供給及び回転システムを備える。
【0054】
前記作業流体供給部と前記グラウト供給部が、前記海底より高い海面に供されると共に、当該システムは、アンビリカルをさらに備えることができる。当該ハンマー又は該ハンマーの各々は、前記アンビリカルを介して前記作業流体供給部及び前記グラウト供給部に接続可能である。
【0055】
当該ハンマー又は該ハンマーの各々は、上述の実施形態のいずれかによるハンマーであってよい。当該ハンマー又は該ハンマーの各々の作業流体は水であってよい。当該ハンマー又は該ハンマーの各々は、上述の使い捨て又は犠牲ハンマーであってよい。当該ハンマー又は該ハンマーの各々のピストンは、当該ハンマーの最も外側の部材であってよい。当該ハンマー又は該ハンマーの各々の前記パーカッションビットは、前記ピストンよりも大きな直径を有することができる。そのため当該ハンマー又は該ハンマーの各々の直径は、各対応するピストンの直径よりも大きいので、当該ハンマー又は該ハンマーの各々と各対応する掘削された穴の壁との間に環状キャビティが存在する。
【0056】
前記アンカーフレームは、当該1つ以上のハンマーへ接続するための接続手段を備えることができる。ある実施形態では、前記接続手段は、当該ハンマー又は該ハンマーの各々への接続用の1つ以上のコネクタを含むことができる。各コネクタは取付スリーブ又はボスを有することができる。
【0057】
当該システムは、前記掘削装置と当該ハンマー若しくは該ハンマーの各々との間で接続される少なくとも1つの掘削棒又はパイプをさらに備えることができる。前記掘削パイプもまた犠牲パイプであってよく、前記穴又は該穴の各々は対応ハンマーによってグラウトが詰められてよく、それにより各ハンマーと、掘削パイプ、及びグラウトは一体となって、前記アンカーフレームを前記海底に停留するように前記アンカーフレームに接続される耐負荷部材又は海中杭を構成し得る。
【0058】
本発明のある態様によると、海中杭が供される。当該海中杭は、
前記海底上に設けられるアンカーフレームと、
前記海底の各対応する穴に設けられると共に前記アンカーフレームに接続される1つ以上の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーと、
当該ハンマー又は該ハンマーの各々の内部であって当該ハンマーと各対応する穴の壁との間に配置される硬化済みグラウトを備える。当該ハンマー又は該ハンマーの各々は前記グラウトによって結合される。
【0059】
当該ハンマー又は該ハンマーの各々は、上述の実施形態のいずれかによるハンマーであってよい。前記海中アンカーの当該ハンマー又は該ハンマーの各々は、前記作業流体が水である使い捨て、1回使用、又は犠牲ハンマーであってよい。一の実施形態では、前記使い捨て又は犠牲ハンマー又は該ハンマーの各々は外側摩耗スリーブを含まない。むしろ前記ピストンは、当該ハンマーの最も外側の部材であってよい。
【0060】
前記海中杭は、当該ハンマー又は該ハンマーの各々に接続されると共に前記海底の前記穴内に設けられる少なくとも1つの掘削棒又はパイプをさらに備えることができる。前記硬化済みグラウトはさらに、前記掘削棒又はパイプ内でかつ前記掘削棒又はパイプと前記穴の壁との間に配置される。それにより前記掘削棒又はパイプはまた、前記グラウトによって前記海底の物質に結合される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】従来の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーの概略図である。
【
図2】従来のダウン・ザ・ホール水力式ハンマーの概略図である。
【
図3】本発明の実施形態による油圧式ダウン・ザ・ホールハンマーの概略図である;
【
図4】本発明の実施形態による水力式ハンマーの概略図である;
【
図5】本発明の実施形態による使い捨て水力式ハンマーの概略図である;
【
図6a】本発明によるハンマーの結合部材及びビットの斜視図である;
【
図6b】
図6aの結合部材およびビットの断面図である。この図において、結合部材は、ハンマーのピストン及びシャフトに組み立てられる。
【
図6c】
図6bの組立体の断面図である。図中、ビットが結合部材に結合されている。
【
図7a】本発明の実施形態による使い捨て水力式ハンマーの断面図である。
【
図9】海中杭を設置するためのシステムにおいて使用するのに適した、掘削装置及び掘削パイプに接続された使い捨て水力式ハンマーを含む組立体の断面図である。
【
図10】海底の穴の掘削中に、
図9の組立体を含む海中杭を設置するシステムの断面図である。
【
図11】海底に穴を掘削した後の、
図10のシステムの断面図である。
【
図12】
図9のハンマー及び掘削パイプを備える海中杭の断面図である。
【
図13】本発明のある態様による海底に海中アンカーを設置するシステムで使用するための組立体の斜視図である。
【
図14】ハンマーの展開後の、
図13の組立体の斜視図である。
【
図16】海底に設置された海中アンカーの斜視図である。
【
図18a】本発明の実施形態による使い捨て水力式ハンマーの断面図である。
【
図20a】本発明によるハンマーの結合部材、チャックおよびビットの斜視図である。
【
図20b】
図20aの結合部材、チャック、及びビットの断面図である。この図において、チャックは、ハンマーの結合部材に組み立てられる。
【
図20c】
図20bの組立体の断面図である。図中、ビットがチャックに結合されている。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明の実施形態による油圧式ダウン・ザ・ホールハンマ300が、
図3に図示されている。このハンマーは、中心穴314が形成された細長いシャフト312を備える。ピストン301もまた、該ピストンを貫通する中心穴310を有する。シャフトは、ピストン穴内に受容される。その際、ピストンがシャフト312上で往復運動するように摺動可能に取り付けられ、パーカッションビット309の後端316において環状肩部315に衝突するように配置される。ピストン301は外側摩耗スリーブ317内に収容され、パーカッションビット309は摩耗スリーブの前端318に配置される。
【0063】
ピストン用前方駆動チャンバ302および後方駆動チャンバ303は、ピストン301とシャフト312との間に配置されている。ピストン穴310の内側に形成されたピストン上の環状肩部313が、前方チャンバ302を後方チャンバ303から分離している。肩部313の後方へのピストン301の内径は、肩の前方へのピストンの内径よりも大きく、後方チャンバが前方チャンバよりも大きな駆動面積を有するようになっている。ハンマーはまた、ピストンの往復運動を制御するために、シャフトの中央穴314内に配置された制御バルブ305を備える。他の実施形態において、バルブ305は、ピストンとシャフトとの間の、ピストンの中央穴310内に配置され得る。
【0064】
ハンマー300は、作動流体が、圧力ラインPを介してハンマーに供給され、戻りラインTを介して戻される閉ループハンマーである。フラッシング流体流路308は、フラッシング流体がビット面319で流路から出るように、ピストン301と摩耗スリーブ317の間、及びパーカッションビット309を貫通して設けられている。
【0065】
ハンマー300は、ピストンの後端307に配置された圧力および戻り流体アキュムレータ306をさらに備える。アキュムレータは、ピストンの後方駆動チャンバ303から距離daccuを隔てて配置される。
【0066】
本発明の別の実施形態による油圧式ダウン・ザ・ホールハンマ400が
図4に示されている。
図3の実施形態と同様に、ハンマーは、中央穴414が形成された細長いシャフト412からなる。ピストン401もまた、該ピストンを貫通する中心穴410を有する。シャフトは、ピストン穴内に受容される。その際、ピストンがシャフト412上で往復運動するように摺動可能に取り付けられ、パーカッションビット409の後端416において環状肩部415に衝突するように配置される。ピストン401は外側摩耗スリーブ417内に収容され、パーカッションビット409は摩耗スリーブの前方端418に配置される。
【0067】
ピストン用前方駆動チャンバ402および後方駆動チャンバ403は、ピストン401とシャフト412との間に配置されている。ピストン穴410の内側に形成されたピストン上の環状肩部413が、前方チャンバ402を後方チャンバ403から分離する。肩部413の後方へのピストン401の内径は、肩の前方へのピストンの内径よりも大きく、後方チャンバが前方チャンバよりも大きな駆動面積を有するようになっている。ハンマーはまた、ピストンの往復運動を制御するために、シャフトの中央穴414内に配置された制御バルブ405を備える。
【0068】
図4に示されるハンマー400は、水のような作動流体が圧力ラインPを介してハンマーに供給される開ループハンマーである。しかし、
図3のハンマーとは異なり、ハンマー400は、戻りラインを有さない。その代わりに、駆動流体は、シャフトの中央穴414およびパーカッションビット409を通ってビット面419で出るためのフラッシング流408のために使用される。先行技術のハンマーとは異なり、ピストンの外面は封止面ではないので、ピストンの前端と後端との間の流体連通を可能にする流れ環状部420が、
図2に示される従来の水力式ハンマーのようにピストン穴を介してではなく、ピストンと摩耗スリーブとの間に設けられる。これにより、このような従来の水力式ハンマーと比較して、ピストンの断面積を大きくすることができ、それにより、短いピストンで十分なピストン重量を達成することができる。 また、バルブ405をピストン内に配置することにより、距離d
accuを短くすることができ、さらにハンマーの長さを短くすることができる。
【0069】
本発明の実施形態による、低コストの使い捨てまたは一回使用の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマ500が、
図5に示される。
図4の実施形態と同様に、ハンマーは、中央穴514が形成された細長シャフト512を備える。ピストン501もまた、該ピストンを貫通する中心穴510を有する。シャフトは、ピストン穴内に受容される。その際、ピストンがシャフト512上で往復運動するように摺動可能に取り付けられ、パーカッションビット509の後端516において環状肩部515に衝突するように配置される。ピストン用の前方駆動チャンバ502および後方駆動チャンバ503は、ピストン501とシャフト512との間に配置される。ピストン穴510の内部に形成されたピストン上の環状肩部513は、前方チャンバ502を後方チャンバ503から分離する。この実施形態において、肩部513の後方へのピストン501の内径は、肩部の前方へのピストンの内径よりも小さく、前方チャンバが後方チャンバよりも大きな駆動面積を有するようになっている。ハンマーはまた、ピストンの往復運動を制御するために、シャフトの中央穴514内に配置された制御バルブ505を備える。
【0070】
図4のハンマーのように、
図5に示されるハンマー500は、水のような作動流体が圧力ラインPを介してハンマーに供給される開ループハンマーである。しかし、
図4のハンマーとは異なり、ハンマー500は、ピストン501がハンマーの最も外側の部材であるように、外側スリーブを含まない。これは、ハンマーのコストを低減するので、単一の穴のみを掘削するために使用される使い捨てハンマーまたは犠牲ハンマーとして使用され得る。
【0071】
この実施形態において、後方チャンバ503は、該後方チャンバ内に一定の圧力が存在するように圧力流体チャネルPに接続される。制御バルブ505は、ピストンが後退方向に移動している間、前方チャンバ502を後方チャンバ503に接続し、ピストンが前進方向に移動しているとき、前方チャンバ502をシャフトおよびパーカッションビットの中央穴を通るフラッシング流体チャネル508に接続するように配置され、前方チャンバ502内で圧力が交互に変化するようにする。
【0072】
ハンマー500は、外側摩耗スリーブまたはシリンダーを含まないので、ピストン自体は、掘削切断屑からの摩耗を受ける。しかしながら、ハンマーは使い捨てであるので、ピストンは、1つの穴を掘削するのに十分な長さだけ持続すればよい。さらに、半径方向フラッシングポート521は、シャフトの中央穴514からシャフトの外面まで延び、排出流体の一部がピストン501の前方端522とビットの衝突面515との間から出ることを可能にする。 これにより、掘削屑がビットおよびピストンの衝突面から遠ざかり、衝突面の早期損傷が防止される。
【0073】
図6a、6bおよび6cは、本発明によるハンマーにパーカッションビットを結合するための結合装置を示す。
図6a、6bおよび6cに示されるハンマー600は、
図5に示される使い捨てハンマー500といくつかの点で類似しているが、示される結合装置はまた、
図3および4に示されるハンマー300、400、ならびに本発明による他のハンマーに適用され得る。
【0074】
ハンマー600のシャフト612は、その前端623において結合部材622を備える。
図6bおよび
図6cに示されるように、結合部材の外径は、シャフトの本体638の外径よりも大きく、そのため、前方チャンバは、結合部材およびピストンによって封止される。結合部材の一部分624は正方形断面で形成され、ビット609の対応する内部部分625は正方形形状の内壁で形成され、ビットがシャフトの結合部材に組み立てられたとき、結合部材の一部分624がビットの一部分625内に受容され、回転駆動がシャフトからビットに伝達されるようにする。他の実施形態では、結合部材の一部分624は、六角形または八角形の断面で形成されてもよく、ビットの内部部分は、対応する形状であってもよい。 さらなる実施形態では、軸方向に延びるスプラインが、回転駆動の伝達のために、ビットの内部に設けられた対応するスプラインと係合可能に、結合部材の外部に設けられてもよい。
【0075】
結合部材622は、ビットをハンマーに長手方向に結合するために、ビット609上の相補的ビット保持手段と係合可能なビット保持手段をさらに備える。
図6a、
図6bおよび
図6cに示される実施形態において、ビット保持手段は、その前端627において結合部材622の外部に形成された第1のねじ山626を備える。相補的係合手段は、ビットの内部に形成された第2のねじ山628を備える。
【0076】
ビットは、第1のねじ山が第2のねじ山の前方にあるように、第2のねじ山628ビットを第1のねじ山626に通すことによってハンマーに結合される。これは、ビットの長手方向の動きを制限することを可能にしながら、ビットを長手方向に結合部材に結合し、ビットをハンマーに保持し得る。次に、ビットを回転させて、ビットの一部分625を結合部材の四角形状の部分624に並べ、結合部材の部分624がビットの部分625内に受け入れられて回転結合に係合するようにする。結合部材622は、ねじ込み接続によってシャフトの本体638に結合される。
【0077】
本発明によるハンマー700における使用に適した制御バルブ705が、
図7aおよび
図7bに図示されている。このバルブは、
図5に示されるような、本発明による使い捨てハンマーに特に適している。バルブ705は、上部または後部の入口ポート728および上部または後部の出口ポート729を備える。バルブは、底部または前方入口ポート730および底部または前方出口ポート731をさらに備える。また、
図7aには、バルブチャンバ732、パイロットチャンバ733、パイロットポート734、前部制御端735、後部制御端736、および制御バルブキャップ737が示されている。
【0078】
図7aおよび
図7bのバルブを含む使い捨てハンマーのハンマーサイクルの例が、
図8a~
図8dに図示されている。
図8aにおいて、ピストン801は、上方または後方方向(図面に示されるように左方向)に移動している。 後方チャンバ803は、ハンマーサイクルを介して圧力流体に接続される。前方チャンバ802は、矢印で示すように、バルブチャンバ832および後方チャンバ803を介して高圧流体に接続される。ピストン801の内径が大きくなっているため、前方チャンバは後方チャンバよりも大きな圧力領域を有し、ピストンは後方方向に移動する。バルブパイロットチャンバ833は、パイロットチャンバを後方チャンバ803に接続した前方制御端835を介して加圧される。パイロットチャンバはバルブチャンバよりも大きな圧力領域を有する。前方チャンバー802とシャフト穴814の間のフロー接続は閉じており、前方チャンバーとバルブチャンバー832の間のフロー接続は開いている。バルブチャンバは後方出口ポート829を介して後方チャンバ803に連続的に連通している。
【0079】
図8bでは、ピストン801は、パイロットチャンバ833から後方制御端836を介して周囲圧力への流路接続が開放された時点に達する。パイロットチャンバ内の圧力は低下し、正味の油圧力が生じてバルブ805が切り替わる。
【0080】
図8cでは、バルブ805が切り替わる。バルブが前方の入口ポート830を閉じ、前方の出口ポート831を開いたので、矢印で示すように、排出水がシャフト穴814に流入する。油圧力はピストン801の向きを逆転させ、ピストン801をドリルビット809に向かうように駆動する。排出水の大部分は、矢印で示すように、シャフト穴とビットを通ってビット面819から出て、ビット面から切削屑を洗い流す。排出水の小部分は、矢印で示すように、ビット衝突面815の近くに位置する半径方向の穴またはポート821を通って流出し、ビットとピストンの衝突面から切削屑を洗い流す。
【0081】
図8dにおいて、ピストン801はビット809に向かって(図面に示すように右に向かって)移動している。衝突の直前、ピストン801は前部制御端835を介してパイロットチャンバ833を後部チャンバ803に連通させる。これにより、ピストンがドリルビットに衝突した直後にバルブが切り替わる。
図8aに示すように、サイクルが再び始まる。
【0082】
本発明の別の実施形態による油圧式ダウン・ザ・ホールハンマー1800が、
図18aおよび
図18bに示されている。示されたハンマーは、低コストの使い捨てハンマーまたは一回使用ハンマーである。しかし、この実施形態の種々の態様はまた、複数回使用のハンマーに適用され得る。上記の実施形態と同様に、ハンマーは、中央穴1814を有する細長いシャフト1812を備える。ピストン1801もまた、該ピストンを貫通する中心穴1810を有する。シャフトは、ピストン穴内に受容される。その際、ピストンがシャフト1812上で往復運動するようにスライド可能に取り付けられ、パーカッションビット1809の後端1816において環状肩1815に衝突するように配置される。ピストン用の前方駆動チャンバ1802および後方駆動チャンバ1803は、ピストン1801とシャフト1812との間に配置される。ピストン穴1810の内部に形成されたピストン上の環状肩部1813は、前方チャンバ1802を後方チャンバ1803から分離する。この実施形態において、肩部1813の後方へのピストン1801の内径は、肩部の前方へのピストンの内径よりも小さく、前方チャンバが後方チャンバよりも大きな駆動面積を有するようになっている。ハンマーはまた、ピストンの往復運動を制御するために、シャフトの中央穴1814内に配置された制御バルブ1805を備える。
【0083】
制御バルブ1805は、
図18bにより詳細に図示されている。バルブ1805は、上部または後部の入口ポート1828と、上部または後部の出口ポート1829とを備える。バルブはさらに、底部または前方入口ポート1830および底部または前方出口ポート1831からなる。また、
図18Bには、バルブアンダーカット1832、パイロットチャンバ1833、パイロットポート1834、バルブ肩部1839およびバルブ高圧チャンバ1840が示されている。
【0084】
図18aおよび
図18bのバルブを含む使い捨てハンマーのハンマーサイクルの例が、
図19a~
図19dに示されている。
図19aにおいて、ピストン1901は、上方または後方方向(図面に示されるように左方向)に移動している。後方チャンバ1903は、ハンマーサイクルを通して圧力流体に接続される。前方チャンバ1902は、矢印で示すように、後方出口ポート1929、パイロットチャンバ1933、バルブアンダーカット1932および前方入口ポート1930を介して高圧流体に接続される。 前方チャンバは、ピストン1901の内径が大きくなっているため、後方チャンバよりも圧力領域が大きくなっており、ピストンは後方方向に移動する。バルブパイロットチャンバ1933は、パイロットポート1934および/または後方出口ポート1929を介して加圧されます。パイロットチャンバ1933は、バルブ高圧チャンバ1940よりも大きな圧力領域を有し、高圧流体に連続的に接続される。前方チャンバ1902とシャフト穴1914との間の流路接続は閉じられている。
【0085】
図19bでは、ピストン1901が後方チャンバ1903から後方出口ポート1929を切り離す地点に達している。前方チャンバー1902は後方チャンバーから圧力流体を受け取らず、ピストンはその慣性により上方に動き続ける。前方チャンバとパイロットチャンバ1933の圧力は急激に低下し、正味の油圧力が生じてバルブ1905が切り替わる。
【0086】
図19cでは、バルブ1905が切り替わった。バルブ1905は後方チャンバ1903と前方チャンバ1902の間の流路接続を閉じ、前方出口ポート1931を開いて、矢印で示すように、排出水がシャフト穴1914に流入するようにした。油圧力はピストン1901の方向を逆転させ、ピストンをドリルビット1909に向かって駆動する。排出水は、矢印で示すように、シャフト穴とビットを通ってビット面1919から出て、ビット面から切削屑を洗い流す。図示されていないが、半径方向フラッシングポートもまた、シャフトの中央穴からシャフトの外面まで延びることができ、上述のように、排出流体の一部がピストンの前端とビットの衝突面との間から出ることを可能にする。
【0087】
図19dにおいて、ピストン1901はビット1909に向かって(図面に示すように右に向かって)移動している。衝突の直前、ピストン1901はパイロットポート1934を介してパイロットチャンバ1933を後チャンバ1903に連通させる。これにより、ピストンがドリルビットに衝突した直後にバルブが切り替わる。
図19aに示すように、サイクルが再び始まる。
【0088】
図20a、20bおよび20cは、本発明によるハンマーにパーカッションビットを結合するための結合装置を示す。
図20a、20bおよび20cに示されるハンマー2000は、
図18aおよび18bに示される使い捨てハンマー1800といくつかの点で類似するが、図示される結合装置はまた、本発明による他のハンマーに適用され得る。
【0089】
ハンマー2000のシャフト2012は、その前端2023に結合組立体2050を備える。結合組立体は、封止フランジ2022と、チャック2041の形態の結合部材とを備える。
図20bおよび
図20cに示すように、封止フランジの外径は、シャフトの本体2038の外径よりも大きく、前方チャンバが封止フランジとピストン2001とによって密閉されるようになっている。封止フランジ2022は、その前方端部に内ねじ山2043からなる接続手段が形成されている。チャックの後方部分には、外ねじ山2044を備える相補的接続手段が設けられている。チャックの外部に設けられた軸方向に延びるスプライン2045の形態の係合手段は、ビット2009の内部に設けられた対応するスプライン2046の形態の相補的係合手段と係合可能であり、これによりシャフトからの回転駆動がビットに伝達され得る。他の実施形態において、チャックは、上述のように、四角形、六角形または八角形の断面で形成されてもよく、ビットの内部部分は、対応する形状であってもよい。
【0090】
ハンマー2000は、ビットをハンマーに長手方向に結合するために、ビット2009上の相補的な保持手段と係合可能なチャック上のビット保持手段をさらに備える。
図20a、20bおよび20cに示される実施形態において、ビット保持手段は、複数の部分環状セクタを含むビット保持リング2042を備え、相補的ビット保持手段は、その後端でビットの内部に形成された肩部2049備える。
【0091】
ビットは、チャック上のねじ山2044を封止フランジ2022上のねじ山2043にねじ込むことによってハンマーに結合される。封止フランジはまた、ねじ接続によってシャフト2012の本体2038に接続される。封止フランジの前方端2047とチャック上の環状肩部2048との間には、ビット保持リング2042のセクターをその間に挿入するのに十分な空間が残されている。ドリルビットは、チャック上のスプライン2045がドリルビット上の相補的なスプライン2046と係合するように、チャック上に押し込まれる。その後、ドリルビット2009を回転させることにより、チャックと封止フランジとの間のねじ山付き接続部が締め付けられる。接続が締め付けられると、チャック上の環状肩2048が封止フランジの前端2047に向かって押され、それによって
図20cに示すように、ビット保持リング2042のセクターが外側に押し出される。ドリルビットは、肩部2049とビット保持リング2042との間の係合によってハンマー内に保持される。
【0092】
海底杭のような耐負荷部材を海底に設置するためのシステムにおいて使用するための組立体950が、
図9に図示される。この組立体は、使い捨てまたは犠牲の油圧式ダウン・ザ・ホールハンマ900からなる。ハンマー900は、
図7aおよび
図7bに示されるハンマー700と類似の水力式ハンマーであり、ビット909に衝突するように配置されたピストン901を備える。ピストン901は、ハンマーの最も外側の部材であり、パーカッションビット909は、ピストンの直径Dよりも大きい直径Dを有する。組立体は、掘削装置958とハンマーとの間に連結された掘削パイプ951をさらに備え、掘削パイプは、該パイプを貫通する中央穴955を有する。
【0093】
掘削装置958は、穴の掘削中にハンマーに回転および送り力を与えるように構成される。掘削装置は、掘削パイプ951およびハンマー900に連結され、掘削前にハンマーとともに海底954に下ろされる。
【0094】
図10に示されるように、システムはまた、アンビリカル952を含み、ここで、ハンマーは、掘削パイプを介して、アンビリカルを介して、加圧水の供給およびグラウトの供給に接続可能である。水の供給およびグラウトの供給は、海面レベル953に供給される。船舶959上の水ポンプとグラウトポンプが、それぞれ水とグラウトの供給を行う。
【0095】
使用時には、掘削装置は掘削パイプ951を介してハンマーに連結され、組立体は海底954に下ろされる。ハンマー900は、アンビリカル952を介して水を供給することによって作動され、
図10および11に示されるように、海底に穴956を掘削する。 回転および送り力は、掘削装置によって提供される。ハンマーの操作は、
図8を参照して上述した通りである。
図11に示すように、穴が所望の深さに達したとき、回転および送り力は停止され、ハンマーへの水の供給は、例えば、水ポンプからアンビリカルを切り離すことによって停止される。
図11に示されるように、掘削穴956の直径は、ピストンと掘削穴の壁との間に環状キャビティ957が存在するように、ピストン901の直径よりも大きい。
【0096】
次いで、グラウト960は、例えば、アンビリカルをグラウトポンプに接続することによって、アンビリカルを介してハンマーに供給される。グラウトは、掘削パイプおよびハンマー900の中央穴955を通って、ビット909を通って穴956に流入する。グラウトは、
図12に示すように、穴が少なくとも部分的に充填されるまで穴内に圧送される。掘削装置はハンマーから切り離され、地表に戻される。グラウトが硬化すると、
図12に示すように、ハンマー、掘削パイプおよびグラウトが海底杭を形成するように、ハンマー、掘削パイプおよび掘削パイプが海底の物質に接着される。
【0097】
海底に海底アンカーを設置するシステムに使用するための組立体1300を
図13から
図15に示す。この組立体は、アンカーフレームまたはテンプレート1301を備える。図示された実施形態では、アンカーフレームは一般に三角形状であり、その構造的完全性を高めるために複数のリブ1308が設けられている。他の実施形態では、アンカーは長方形、または他の適切な形状であってもよい。停留接続部1310もアンカーフレームに設けられ、風力タービンなどの海洋構造物を停留するために、停留線をそれに接続できるようにする。
【0098】
組立体は、掘削装置1302と、3つの犠牲的なダウン・ザ・ホール油圧ハンマー1303と、対応する掘削棒またはパイプ1304とをさらに備え、これらの各ハンマは、フレーム1301の外端に設けられた、取り付けスリーブまたはボスの形態のコネクタ1307を介してアンカーフレーム1301に接続される。各ハンマー1303は、
図7aおよび
図7bに示されるハンマー700に類似する水力式ハンマーである。掘削装置1302は、3つの同一の送り力および回転システム1305を備え、それにより、掘削装置は、ハンマー1303の各々に回転および送り力を提供するように構成される。他の実施形態において、システムは、より多くのまたはより少ないハンマーを備えることが可能で、掘削装置は、対応する数の送り力および回転システムを備えることができる。
図13に示されるように、掘削装置1302は、ハンマーおよび掘削パイプの対の各々が、海底1306に対して鋭角に配置されるように構成される。
【0099】
各ハンマー1303および対応する掘削パイプ1304は、
図15に示されるように、海底1306に所望の深さの穴1311を掘削するための作動流体供給部に接続可能である。図示の実施形態では、アンカーにかかる曲げ力またはせん断力を最小にするために、穴は垂直に対して斜めに掘削される。しかしながら、他の実施形態では、穴は、海底に垂直に下向きに、または海底に対して20度から90度の間の角度で掘削されてもよい。作動流体は、
図10に示すように、海面レベルのリグまたは船舶から供給することができる。 掘削装置1302は、3つの独立する供給力および回転システム1305を備えるので、穴1311は同時に掘削されてもよい。あるいは、穴は順番に掘削されてもよい。ハンマー1303が操作されると、各ハンマー1303および掘削パイプ1304は、対応するコネクタ1307を通過する。
図14および
図15に示されるように、穴が掘削されると、各掘削パイプ1304の上部は、アンカーを掘削パイプに接続するために、対応するコネクタ1307内に保持される。一旦穴が掘削されると、各ハンマーは、ハンマーおよび穴がグラウトで少なくとも部分的に充填されることを可能にするために、それぞれの穴に位置する間、グラウト供給部に接続される。グラウトは、
図10に示されるように、アンビリカルを介して供給され得る。
【0100】
穴1311がグラウトで充填されると、掘削装置1302は、ハンマー1303から切り離され、
図16および
図17に示されるように、海底アンカーを海底に残したまま、海面に戻される。グラウトが硬化すると、アンカーフレーム1301を含む海底アンカーは、コネクタ1307を介してアンカーフレームに接続されたハンマー1303および対応する掘削パイプ1304によって海底に固定される。ハンマーと掘削パイプの対によって形成される海底杭にアンカーフレームを固定するために、ナットまたは他の締結具が、掘削パイプの各々の上端1309に接続されてもよい。ハンマーと掘削パイプの対の各々は海底のそれぞれの穴の所定の位置にグラウトによって固定され、その結果、各ハンマーと掘削パイプが海底の物質1306に接着されることで、アンカーは所定の位置に固定される。
【0101】
本発明に関して本明細書で使用される場合、「備える(含む)」および「有する」という語は、記載された特徴、整数、ステップまたは成分の存在を特定するために使用されるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、成分またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。
【0102】
明確にするために、別々の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴も、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴も、別個に、または任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。
【国際調査報告】