IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイションの特許一覧

特表2024-515801冠静脈洞で使用するための拡張可能なアンカー機構を有するガイドワイヤ送達カテーテル
<>
  • 特表-冠静脈洞で使用するための拡張可能なアンカー機構を有するガイドワイヤ送達カテーテル 図1
  • 特表-冠静脈洞で使用するための拡張可能なアンカー機構を有するガイドワイヤ送達カテーテル 図2
  • 特表-冠静脈洞で使用するための拡張可能なアンカー機構を有するガイドワイヤ送達カテーテル 図3
  • 特表-冠静脈洞で使用するための拡張可能なアンカー機構を有するガイドワイヤ送達カテーテル 図4
  • 特表-冠静脈洞で使用するための拡張可能なアンカー機構を有するガイドワイヤ送達カテーテル 図5
  • 特表-冠静脈洞で使用するための拡張可能なアンカー機構を有するガイドワイヤ送達カテーテル 図6
  • 特表-冠静脈洞で使用するための拡張可能なアンカー機構を有するガイドワイヤ送達カテーテル 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】冠静脈洞で使用するための拡張可能なアンカー機構を有するガイドワイヤ送達カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/04 20060101AFI20240403BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61M25/04
A61M25/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565961
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 US2022026332
(87)【国際公開番号】W WO2022232133
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/180,602
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クーパー・ライアン・リッカーソン
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・チャールズ・クトー
(72)【発明者】
【氏名】ベサニー・ジョー・ホール
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・ジェームズ・レイド・ハダッド
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267AA09
4C267AA21
4C267AA28
4C267AA44
4C267AA45
4C267AA46
4C267CC19
4C267GG22
4C267GG24
(57)【要約】
血管壁を通して穴を穿刺することを容易にするために、カテーテルを定位置に固定するための機構(400)が開示されている。固定機構(400)は、起動された時に拡張して、血管の壁(例えば、冠静脈洞壁(30))に押し付ける拡張部材(402)を含む。固定機構(400)の起動は、拘束部(例えば、カバー(401))の取り外しによって、又はワイヤを押す、もしくは引くことによって起こる。拡張部材(402)は、自己拡張してもよく、又はメッシュ構造内のばねによって拡張してもよい。ワイヤを押すか、又は引くことによって起動される固定機構は、ワイヤ自体の移動の結果、又はワイヤ及びアンカー部材に取り付けられた構成要素の移動の結果、拡張する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冠静脈洞と左心房の間にシャントを移植するために使用されるガイドワイヤ送達カテーテルであって、前記カテーテルが、
ワイヤに連結された取り外し可能なカバーと、
前記取り外し可能なカバーの取り外しによって起動される拡張部材であって、前記ワイヤによって引かれて前記拡張部材を露出させ、前記拡張部材を前記カテーテルの外へ拡張させて、前記カテーテルの遠位端を冠静脈洞内の所定位置に固定するように構成されている、拡張部材と、を備える固定機構を含む、カテーテル。
【請求項2】
前記拡張部材がメッシュ構造を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記拡張部材が適応性のあるワイヤ材料を含む、請求項1~2のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項4】
前記拡張部材が自己拡張バブルを含む、請求項1~3のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項5】
前記拡張部材がばね式バブルを含む、請求項1~4のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項6】
前記ばねが、前記カバーによって圧縮状態に保持され、前記カバーの取り外しにより、前記ばねが伸長することが可能になり、それによって前記ばね式バブルが拡張してドーム形状を形成する、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記拡張部材が、前記拡張部材の上に前記取り外し可能なカバーを再前進させることによって後退するように構成されている、請求項1~6のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項8】
前記拡張部材の起動が、前記拡張部材を血管壁に押し付け、前記カテーテルに壁並置を提供して前記血管壁の穿刺を容易にする、請求項1~7のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項9】
前記ワイヤがハイポチューブを含む、請求項1~8のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項10】
前記拡張部材が、液体又はガスを使用した膨張によって起動されない、請求項1~9のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項11】
冠静脈洞と左心房の間にシャントを移植するために使用されるガイドワイヤ送達カテーテルであって、前記カテーテルが、
ワイヤを含む起動部材と、
前記起動部材によって起動される拡張部材であって、前記拡張部材の近位側が前記起動部材の遠位端に連結されていて、前記拡張部材は、前記起動部材が遠位に前進するのに応答して前記カテーテルの外へ拡張するように構成され、前記拡張部材がそれによって、前記カテーテルの遠位端を冠静脈洞内の所定位置に固定する、拡張部材と、を備える固定機構を含む、カテーテル。
【請求項12】
前記拡張部材がメッシュ構造を含む、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記拡張部材が適応性のあるワイヤ材料を含む、請求項11~12のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項14】
前記拡張部材が、前記起動部材を近位に引くことによって後退するように構成されている、請求項11~13のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項15】
前記拡張部材の遠位部分が前記カテーテルに固定されている、請求項11~14のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項16】
前記拡張部材の起動が、前記拡張部材を血管壁に押し付け、前記カテーテルに壁並置を提供して前記血管壁の穿刺を容易にする、請求項11~15のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項17】
前記起動部材が遠位に前進する際に、前記起動部材の前記遠位部分が前記布カバー内で湾曲して、前記布カバーにドーム形状を形成させるように、前記拡張部材が、前記起動部材の遠位部分を抑える布カバーを備える、請求項11~16のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項18】
前記ワイヤがハイポチューブを含む、請求項11~17のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項19】
前記拡張部材が、液体又はガスを使用した膨張によって起動されない、請求項11~18のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項20】
冠静脈洞と左心房の間にシャントを移植するために使用されるガイドワイヤ送達カテーテルであって、前記カテーテルが、
移動可能な遠位構造に連結されたワイヤを含む起動部材と、
前記起動部材によって起動される拡張部材であって、固定された近位構造と、前記起動部材を引くことが、前記移動可能な遠位構造を前記固定された近位構造に向かって移動させ、前記壁を外向きに膨ませて、それによって、前記カテーテルの遠位端を冠静脈洞内の所定位置に固定するように、前記固定された近位構造及び前記移動可能な遠位構造に取り付けられた壁を形成するしなやかな材料を有する前記移動可能な遠位構造と、を含む、拡張部材と、を備える固定機構を含む、カテーテル。
【請求項21】
前記壁が適応性のあるワイヤ材料を含む、請求項20に記載のカテーテル。
【請求項22】
前記拡張部材が、前記起動部材を押すことによって後退するように構成されている、請求項20~21のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項23】
前記拡張部材の起動が、前記拡張部材を血管壁に押し付け、前記カテーテルに壁並置を提供して前記血管壁の穿刺を容易にする、請求項20~22のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項24】
前記起動部材が、ハイポチューブを通って延びるワイヤを含み、前記ハイポチューブが、前記固定された近位構造によって囲まれている、請求項20~23のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項25】
前記ワイヤがハイポチューブを含む、請求項20~24のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項26】
前記拡張部材が、液体又はガスを使用した膨張によって起動されない、請求項20~25のいずれかに記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年4月27日に出願された「SECURING A GUIDEWIRE DELIVERY CATHETER IN THE CORONARY SINUS USING MATERIAL OR ADVANCEMENT MECHANISMS」と題する、米国仮特許出願第63/180,602号に基づく優先権を主張するものであり、その完全な開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般に、冠静脈洞が関与する医療処置のための、カテーテルなどの送達装置の分野に関する。
【0003】
(関連技術の説明)
心不全は、ヒトに影響を及ぼす一般的かつ潜在的に致死的な状態であり、最大の治療にもかかわらず、最適以下の臨床転帰がしばしば症状、罹患率及び/又は死亡率をもたらす。特に、「拡張期心不全」とは、左心室収縮機能(駆出分画)が保持された状況で、かつ主要弁疾患の非存在下で起こる心不全の臨床症候群を指す。この状態は、順応性の低下及び弛緩の障害を伴う硬い左心室によって特徴付けられ、これは拡張終期圧力の増加につながる。
【0004】
拡張期心不全の症状は、少なくとも大部分において、左心房の圧力上昇によるものである。左心房圧上昇(LAP)は、心不全(HF)を含むいくつかの異常な心臓状態に存在する。拡張期心不全に加えて、左心室の収縮機能障害及び弁疾患を含む他のいくつかの医学的状態は、左心房における圧力上昇をもたらす可能性がある。保持された駆出分画を伴う心不全(HFpEF)と、低減された駆出分画を伴う心不全(HFrEF)の両方が、LAP上昇を呈することがある。
【0005】
左心房の圧力上昇を低減することが有益であり得る。これを行う一つの方法は、左心房から冠静脈洞へ血液をシャントすることである。左心房と冠静脈洞の間に開口部を作成することによって、血液は、より圧力の高い左心房からより圧力の低い冠静脈洞に流れる。左心房から冠静脈洞に血液をシャントする方法の例は、「Expandable cardiac Shunt」と題する米国特許第9,789,294号に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
カテーテルベースの器具を使用して、外科医は左心房と冠静脈洞の間に穿刺穴を作成し、拡張可能なシャントを穿刺穴内に配置する。これを行うために、一つ以上のカテーテルを使用して、穿刺穴を作成し、拡張可能なシャントをガイドワイヤに沿って送達し、拡張可能なシャントを穿刺穴内に展開する。一旦拡張されると、シャントは、LAPが上昇したときに、血液が左心房から冠静脈洞に流れることを可能にする血流通路を画定する。
【発明の概要】
【0007】
本開示を要約する目的で、特定の態様、利点、及び新規の特徴が本明細書に説明されている。全てのそのような利点は、必ずしも任意の特定の実施形態に従って達成され得るわけではないことが理解されるべきである。したがって、開示された実施形態は、本明細書に教示又は示唆され得る他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書に教示されるような一つの利点又は利点の一群を達成又は最適化する様式で実施され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一部の実施は、冠静脈洞と左心房の間にシャントを移植するために使用されるガイドワイヤ送達カテーテルに関し、カテーテルは固定機構を含む。固定機構は、ワイヤ又はハイポチューブに連結された取り外し可能なカバーを含む。固定機構は、取り外し可能なカバーの取り外しによって起動される拡張部材を含み、取り外し可能なカバーは、ワイヤ又はハイポチューブによって引っ張られて拡張部材を露出させ、拡張部材をカテーテルの外へ拡張させて、カテーテルの遠位端を冠静脈洞内の所定位置に固定するように構成される。
【0009】
一部の実施形態において、拡張部材はメッシュ構造を備える。一部の実施形態において、拡張部材は、適応性のあるワイヤ材料を備える。一部の実施形態において、拡張部材は、自己拡張バブルを備える。
【0010】
一部の実施形態において、拡張部材は、ばね式バブルを備える。さらなる実施形態において、ばねは、カバーによって圧縮状態に保持され、カバーの取り外しにより、ばねが伸長することが可能になり、それによってばね式バブルが拡張してドーム形状を形成する。
【0011】
一部の実施形態において、拡張部材は、拡張部材の上に取り外し可能なカバーを再前進させることによって後退するように構成されている。一部の実施形態において、拡張部材の起動は、拡張部材を血管壁に押し付け、カテーテルに壁並置を提供して血管壁の穿刺を容易にする。
【0012】
本開示の一部の実施は、冠静脈洞と左心房の間にシャントを移植するために使用されるガイドワイヤ送達カテーテルに関し、カテーテルは固定機構を含む。固定機構は、ワイヤ又はハイポチューブを含む起動部材を含む。固定機構は、起動部材によって起動される拡張部材を含み、拡張部材の近位側は起動部材の遠位端に連結されていて、拡張部材は、起動部材が遠位に前進するのに応答してカテーテルの外へ拡張するように構成され、拡張部材はそれによって、カテーテルの遠位端を冠静脈洞内の所定位置に固定する。
【0013】
一部の実施形態において、拡張部材はメッシュ構造を備える。一部の実施形態において、拡張部材は、適応性のあるワイヤ材料を備える。一部の実施形態において、拡張部材は、起動部材を近位に引くことによって後退するように構成されている。一部の実施形態において、拡張部材の遠位部分は、カテーテルに固定されている。一部の実施形態において、拡張部材の起動は、拡張部材を血管壁に押し付け、カテーテルに壁並置を提供して血管壁の穿刺を容易にする。一部の実施形態において、起動部材が遠位に前進する際に、起動部材の遠位部分が布カバー内で湾曲して、布カバーにドーム形状を形成させるように、拡張部材は、起動部材の遠位部分を抑える布カバーを備える。
【0014】
本開示の一部の実施は、冠静脈洞と左心房の間にシャントを移植するために使用されるガイドワイヤ送達カテーテルに関し、カテーテルは固定機構を含む。固定機構は、移動可能な遠位構造に連結されたワイヤ又はハイポチューブを含む起動部材を含む。固定機構は、起動部材によって起動される拡張部材を含み、拡張部材は、固定された近位構造と、起動部材を引くことが、移動可能な遠位構造を固定された近位構造に向かって移動させ、壁を外向きに膨ませて、それによって、カテーテルの遠位端を冠静脈洞内の所定位置に固定するように、固定された近位構造及び移動可能な遠位構造に取り付けられて壁を形成するしなやかな材料を有する移動可能な遠位構造と、を含む。
【0015】
一部の実施形態において、壁は、適応性のあるワイヤ材料を備える。一部の実施形態において、拡張部材は、起動部材を遠位に押すことによって後退するように構成されている。一部の実施形態において、拡張部材の起動は、拡張部材を血管壁に押し付け、カテーテルに壁並置を提供して血管壁の穿刺を容易にする。一部の実施形態において、起動部材は、ハイポチューブを通って延びるワイヤを備え、ハイポチューブは、固定された近位構造によって囲まれている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
様々な実施形態が、例示目的で添付図面に示され、本発明の範囲を限定すると決して解釈されるべきではない。加えて、異なる開示された実施形態の様々な特徴が、本開示の一部である、追加の実施形態を形成するように組み合わせられ得る。図面全体を通して、参照番号は、参照要素間の対応を示すために再使用され得る。しかしながら、複数の図面に関連して類似した参照番号を使用することは、必ずしもそれに関連するそれぞれの実施形態間の類似性を暗示するものではないことが理解されるべきである。さらに、それぞれの図面の特徴は必ずしも縮尺通りに描かれるわけではなく、その例解されたサイズは、その発明の態様を例解する目的で提示されることが理解されるべきである。概して、例解された特徴の一部は、いくつかの実施形態又は構成で例解されるよりも相対的に小さい場合がある。
【0017】
図1図1は、シャントを展開するために、心臓内及び心臓周辺でガイドワイヤ及び/又はカテーテルを操作するためのいくつかのアクセス経路を示す。
図2図2は、拡張可能なシャントを展開するための一つのアプローチ方法を示しており、ガイドワイヤは、鎖骨下静脈又は頸静脈を通り、上大静脈を通って、冠静脈洞内に導入される。
図3図3A、3B、3C、及び3Dは、後面を下向きにして心臓の一部分を見下ろしたときの、冠静脈洞の壁を通して穿刺穴を作製する工程の概略図を示す。
図4図4A、4B、及び4Cは、自己拡張バブル及びカバーを含む第一の例示的な固定機構を示す。
図5図5A、5B、及び5Cは、ばね式バブル及びカバーを含む第二の例示的な固定機構を示す。
図6図6A、6B、及び6Cは、メッシュ構造と、メッシュ構造を拡張するために押すことができるワイヤとを含む、第三の例示的な固定機構を示す。
図7図7A、7B、及び7Cは、近位の固定された構造に対する遠位の移動可能な構造の近位移動のためにワイヤが引っ張られた時に拡張するしなやかな壁を含む第四の例示的な固定機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に提供される見出しは、単に便宜上のものであり、請求された発明の範囲又は意味に必ずしも影響するものではない。
【0019】
要旨
拡張期心不全の症状は、左心房の圧力上昇、又は左心房圧(LAP)の上昇から生じる。他の心臓状態も、LAPの上昇を示し得る。左心房の圧力を減少させるために、左心房と冠静脈洞の間に経路を作成することができる。これにより、血液が、より圧力の高い左心房からより圧力の低い冠静脈洞に流れることが可能になる。経路は、左心房と冠静脈洞の間に穴を穿刺することによって作成することができる。穴が作られると、シャントを穴に配置して、穴を開けたままにすることができる。
【0020】
例えば、カテーテルベースの器具を使用して、穴を作成し、穿刺穴内にシャントを送達及び展開することができる。カテーテルは、ガイドワイヤ送達カテーテル(GDC)と称されることがあり、冠静脈洞を通して左心房に穿刺し、ガイドワイヤを左心房に配置するために使用することができる。組織を通して穿刺するために、カテーテルは、冠静脈洞-左心房壁に対して針を直接とらえるための壁並置を有する。以前のGDCは、穿刺穴を作成するときカテーテルを固定するために、「アンカーバルーン」(生理食塩水膨張バルーン)を使用していた。アンカーバルーン溶液は、破裂又は位置から外れる可能性があり、これは患者に害を与える可能性がある。
【0021】
それゆえに、GDCを所定位置に固定して、GDCが冠静脈洞から左心房まで壁を穿刺することを可能にするための材料及び機構が、本明細書に記載されている。これらの材料及び機構は、アンカーバルーンの代替として機能する。
【0022】
「カテーテル」という用語は、その広範かつ通常の意味に従って本明細書で使用され、例えば、送達カテーテル及び/又はカニューレを含む、心房又は冠静脈洞内の位置決めなどのために、器具を滑動可能に受容するように構成された内側管腔を備える、任意の管、シース、操縦可能なシース、操縦可能なカテーテル、及び/又は任意の他のタイプの細長い管状送達デバイスを含み得る。「ハイポチューブ」という用語は、その広くかつ通常の意味に従って本明細書で使用され、カテーテル、ステントなどの医療器具で典型的に使用される、典型的にはステンレス鋼又はニチノールで作製された小さい直径のチューブを含み得る。本明細書で使用される場合、ワイヤは、ハイポチューブを含み得る、細長い適応性のある構造を示す一般的な用語として使用され得る。
【0023】
場合によっては、固定機構は、形状記憶合金(例えば、ニチノール)から構成されてもよく、及び/又は予め定義された形状及び/又は構造を有してもよい。固定機構は、カテーテル内及び/又はカテーテルの周りに収まるように成形及び/又は圧縮されるように構成され得る。一部の場合、固定機構は、送達構成でカテーテルに沿って少なくとも部分的に延在し、展開構成で壁並置を提供するために形状を変化させる細長い形状を有し得る。
【0024】
本明細書に記載の一部の実施形態は、ガイドワイヤ送達カテーテル又は他の類似の送達装置を固定して、血管壁を穿刺するために壁並置を提供する方法及び/又はシステムを提供する。一部の実施形態は、冠静脈洞内にカテーテルを固定して、冠静脈洞と左心房の間の壁を穿刺することを対象とし得るが、本明細書に記載の装置は、身体の他の領域に適用可能であり得る。例えば、本明細書に記載の一部の装置は、有利には、カテーテルを冠静脈洞以外の血管に固定するように構成され得る。
【0025】
以下は、ガイドワイヤ送達カテーテルを冠静脈洞の標的位置に送達するための方法の一般的な説明を含む。図1は、シャントを展開するために、心臓内及び心臓周辺でガイドワイヤ及び/又はカテーテルを操作するためのいくつかのアクセス経路を示す。例えば、上から鎖骨下静脈又は頸静脈のいずれかを介して上大静脈(SVC)、右心房(RA)の中に、かつそこから冠静脈洞(CS)の中にアクセスすることができる。代替的に、アクセス経路は、大腿静脈で始まり、下大静脈(IVC)を通って、心臓の中に入り得る。他のアクセス経路もまた、使用され得、かつ各々は、典型的には、ガイドワイヤ及びカテーテルが血管系に挿入される経皮的切開を利用し、通常は封止されたイントロデューサを通して、そこから、医師がデバイスの遠位端を身体外から制御する。
【0026】
図2は、拡張可能なシャントを展開するための一つのアプローチ方法を示しており、ガイドワイヤ10は、鎖骨下静脈又は頸静脈を通り、上大静脈(SVC)を通って、冠静脈洞内に導入される。ガイドワイヤが経路を提供すると、イントロデューサシース(図示せず)は、典型的には拡張器の使用によって、ガイドワイヤに沿って、患者の血管系内に経路指定され得る。図2は、SVCから心臓の冠静脈洞に延在する展開カテーテル12を示しており、展開カテーテル12は、止血弁を提供して失血を防止するイントロデューサシースを通過している。
【0027】
一部の実施形態において、展開カテーテル12は、約30cmの長さであり得、ガイドワイヤ10は、使用を容易にするためにやや長くてもよい。特定の実施形態において、展開カテーテル12は、左心房の壁に開口部を形成及び準備するように機能し得、別個の配置又は送達カテーテルが拡張可能なシャントの送達に使用されてもよい。様々な実施形態において、展開カテーテルは、穿刺準備のために使用されてもよく、完全な機能性を有するシャント配置カテーテルとしても機能してもよい。本出願では、「展開カテーテル」及び「送達カテーテル」という用語は、これらの機能のうちの一方又は両方を提供するカテーテル、又はイントロデューサを表すために使用され得る。
【0028】
冠静脈洞は左心房の周りで大部分は連続しているため、ステントには様々な考えられる許容可能な配置がある。ステントの配置のために選択された部位は、CTスキャン又はX線写真撮影などの、蛍光透視又は血管内冠血管系エコー(IVUS)などの、非侵襲的診断手段によって予め決定された、特定の患者の組織が薄いか又は低密度である領域内とされ得る。
【0029】
図3A~3Dは、後面を下向きにして心臓の一部分を見下ろしたときの、冠静脈洞の壁を通して穿刺穴を作製する工程の概略図を示す。最初に、図3Aは、ガイドワイヤ20が、右心房から、その小孔又は開口部を通って冠静脈洞の中に前進するのを示す。次いで、穿刺カテーテル22は、図3Bに示すように、ガイドワイヤ20の上に前進する。穿刺カテーテル22は、イントロデューサシース(図示せず)の近位端を通して体内に導入される。恒例により、イントロデューサシースは、特定の血管経路(例えば、頸静脈又は鎖骨下静脈)へのアクセスを提供し、その中に止血弁を有し得る。イントロデューサシースを固定位置に保持しながら、外科医は穿刺カテーテル22をインプラント部位に操作する。
【0030】
一部の実施形態において、穿刺カテーテル22の遠位端は、作りつけられたわずかな曲率を有し、半径方向内側及び半径方向外側を有して、冠静脈洞の曲率に適合する。固定機構24は、カテーテル22の近位範囲よりも薄いか、又はカテーテル22の近位範囲から先細りしてより狭くてもよい遠位セグメント25に隣接したカテーテル22の半径方向外側に沿って露出される。カテーテル22上の放射線不透過性マーカー26は、外科医が冠静脈洞内の固定機構24の所望の配置のために正確な前進距離を決定するのを助けるために使用され得る。望ましくは、放射線不透過性マーカー26は、固定機構24の近位端及び遠位端の側面に位置するC字形状バンドである。
【0031】
図3Cは、固定機構24の外向きの展開を示し、これは、本明細書に開示され、図4A~7Cを参照して説明される固定機構のいずれかによって置き換えられる一般的な構造とみなされる。固定機構24の展開は、カテーテルの半径方向内側曲線を冠静脈洞の管腔壁に押し付けて、壁並置を提供する。ここでも、固定機構24は、穿刺カテーテル22の遠位セグメント25に隣接して位置する。一部の実施形態において、固定機構24は、カテーテル22の半径方向内側壁に形成された針ポート28の反対側に延在する。結果として、針ポート28は、管腔壁に当接し、冠静脈洞と左心房の間の組織壁30に向かって面する。放射線不透過性マーカー26を可視化することによってガイドされ、外科医は、針ポート28が冠状動脈口の中の約2~4cm以内に位置するように、カテーテル22を前進させることが好ましい。これにより、その後の穿刺は、僧帽弁の後尖の「P2」部分のほぼ上に配置される(図3Bに示すように、弁の流入側から見た時、後尖はCCW方向にP1-P2-P3弁尖を有する)。固定機構24は、針ポート28からカテーテル22を横切って直径方向に中心合わせされてもよく、又は示されるように、てこの作用を改善するために針ポート28から近位方向にオフセットされてもよく、又は針ポート28から遠位方向にオフセットされてもよい。
【0032】
穿刺カテーテル22の遠位端の湾曲は、冠静脈洞内の解剖学的構造と整列して、それに「沿って適合」し、針ポート28を内側に配向する一方、固定機構24は、カテーテル22を冠静脈洞に対して定位置に保持する。その後、図3Dに示すように、鋭利な先端を有する穿刺針34を有する穿刺シース32は、カテーテル22の長手方向からある角度で針ポート28を出て、壁30を通って左心房の中に穿刺するように、カテーテル22に沿って前進する。穿刺シース32は、解剖学的構造の曲率と「整列」して、針34が左心房に向かって内向きに配向されることを確実にする端部に、固有の湾曲を有する。固定機構24は、システムに剛性を提供し、針ポート28を壁30に対して保持する(例えば、固定機構は壁並置を提供する)。穿刺針34は、直線の切り口を形成する平坦化された構成を有し、穿刺シース32の内腔を通過する細長いワイヤ又は柔軟なロッド(図示せず)の遠位端に取り付けられることが好ましい。
【0033】
固定機構
カテーテルから延在する針を用いて血管の壁を穿刺することを容易にするために、カテーテルを血管内に固定するための機構が、本明細書に記載される。本明細書に記載の固定機構は、図3A~3Dに関して本明細書に記載されるカテーテル22などのカテーテルにおいて実施され得る。加えて、本明細書に記載の固定機構は、図3A~3Dに関して本明細書に記載される一般的な固定機構24の機能性を提供する。言い換えれば、以下に記載される固定機構は、図3A~3Dに関して記載される固定機構24の代わりに使用することができる。
【0034】
開示された固定機構は、ガイドワイヤ送達カテーテルを定位置に固定して、冠静脈洞と左心房の間の壁を穿刺することを可能にするために使用される固定機構24の変形である。特に、実施形態は、バルーン破裂のリスクがなく、より良好なカテーテル固定の可能性があるため、生理食塩水充填アンカーバルーンに対する改善を意味する。バルーンの実施については、針が展開される前にバルーンが破裂した場合、針は間違った空間に展開され、患者に重度の損傷を引き起こす可能性がある。さらに、破裂したバルーンは、患者に塞栓症をもたらす可能性がある。開示された実施形態は、生理食塩水膨張バルーン、又は液体もしくはガスを使用した膨張を必要とする他の要素を用いないため、このリスクを排除する。さらに、開示された実施形態は、バルーンをしぼませる必要性を排除し、それによってより合理化された処置を提供する。
【0035】
開示された固定機構は、起動された時に拡張して、冠静脈洞の壁に押し付ける、バブル、メッシュ、フラップ、又は類似の特徴を含み得る。この力は、ガイドワイヤ送達カテーテルの遠位端を固定させて、針が冠静脈洞の壁を穿刺することを可能にする。開示された固定機構の起動は、拘束部(例えば、カバー)の取り外しによって、又はワイヤを押す、もしくは引くことによって起こり得る。開示された固定機構材料は、伸縮性で適応性のあるワイヤ材料及び/又は形状記憶材料もしくは自己拡張材料から作製されたメッシュとすることができる。例示的な材料は、ニチノールなどのニッケルチタン合金とすることができるが、他の材料も使用され得る。拘束部の除去によって起動される固定機構は、自己拡張してもよく、又はメッシュ構造内のばねによって拡張してもよい。ワイヤを押すか、又は引くことによって起動される固定機構は、ワイヤ自体の移動の結果、又はワイヤ及びアンカー部材に取り付けられた構成要素の移動の結果、拡張する。
【0036】
開示された固定機構は、本明細書に記載されるガイドワイヤ送達カテーテルなどのカテーテルと共に使用するように構成されている。また、起動部材と、起動部材によって起動される拡張部材とを含む固定機構(又はアンカー部材)を有するガイドワイヤ送達カテーテルが本明細書に開示される。固定機構は、針ポート又は類似の特徴の反対側にあるカテーテルの側面に位置して、血管壁を通して穿刺する時に壁並置を提供することができる。
【0037】
第一の例示的な固定機構は、自己拡張バブルがカテーテルの側面から外に拡張することを可能にするために取り外されるカバーを含む。第二の例示的な固定機構は、ばね式バブルがカテーテルの側面から外に拡張することを可能にするために取り外されるカバーを含む。第三の例示的な固定機構は、押されて束ねられ、メッシュ構造がカテーテルの側面から外に拡張するワイヤを含む。第四の例示的な固定機構は、固定された近位構造と、移動可能な遠位構造と、近位構造及び遠位構造に取り付けられたストリップとを含む拡張部材を有し、ワイヤを引くことは、遠位構造を近位構造に向かって移動させ、ストリップを外向きに膨らませる。開示された固定機構の拡張部材は、膨張手段として液体又はガスを使用することなく起動されるように構成されている。すなわち、開示された固定機構は、液体又はガスを使用した膨張によって起動されない。
【0038】
図4A~4Cは、第一の例示的な固定機構400を図示する。第一の例示的な固定機構400は、図4Aに示すように、カバー401又は他の類似の拘束部によって拘束される自己拡張バブル402を含む。固定機構400は、カテーテル22の一部として定位置、例えば、針34が冠静脈洞30の壁を穿刺する場所に誘導され得る。バブル402は、カバー401などの拘束構造を使用して送達中に拘束される。図4Bに示すように、定位置に来ると、カバー401は取り外され得る。図4Cに示すように、カバー401の取り外しにより、自己拡張バブル構造402がカテーテル22から外に拡張することが可能になり、それによってガイドワイヤ送達カテーテル22の遠位端を壁30に対して定位置に固定する。拡張又は展開状態では、バブル402は、針34が反対側の冠静脈洞壁30を穿刺するために、冠静脈洞壁30に対して壁並置を提供する。
【0039】
一部の実施形態において、バブル402はカテーテル22内にあり得る。一部の実施形態において、カバー401は、カテーテル22の外壁の一部であり得る。こうした実施形態では、固定機構400は、送達中、カテーテル22内に収容される。特定の実施形態において、バブル402及びカバー401は、カテーテル22の外表面に取り付けられる。様々な実施形態において、カバー401はカテーテル22の外部にあり、バブル402はカテーテル22内に少なくとも部分的に収容される。
【0040】
自己拡張バブル402は、伸縮性で適応性のあるワイヤ材料などの束ねられた材料で作製され得る。材料は、例えばニチノールとすることができる。自己拡張バブル402は、それを膨張させるために使用される流体(例えば、生理食塩水)を含有するバルーンとは対照的に、流体がそれを通って流れることを可能にするメッシュ材料とすることができる。有益なことに、これにより、穿刺処置中に流体が容器を通って流れることが可能になる。
【0041】
自己拡張バブル402は、拡張された時に、自己拡張バブル402がドーム形状を生成するように、形状設定され得る。一部の実施形態において、自己拡張バブル402は、カバー401が取り外されると急速に拡張するように構成されている。自己拡張バブル402は、自己拡張バブル402をカテーテル22の中に引き込む、プルワイヤ又はハイポチューブを使用して、カテーテル22の中に引き戻され得る。自己拡張バブルは、後退すると、カバー401を再び前進させて、自己拡張バブル402を覆うことができる。カバー401は、有利なことに、自己膨拡張バブル402を抑制領域内に維持し、カバー取り外し前に自己拡張バブル402が展開するのを妨げ、挿入中の損傷のリスクを低減する。
【0042】
図5A~5Cは、第二の例示的な固定機構500を図示する。第二の例示的な固定機構500は、図5Aに示すように、拘束部501が取り外された時に拡張するばね式バブル502を含み、拡張はバブル502内に包含されるばね503によって引き起こされる。固定機構500は、カテーテル22の一部として定位置、例えば、針34が冠静脈洞30の壁を穿刺する場所に誘導され得る。図5Bに示すように、定位置に来ると、拘束部501は取り外され得る。図5Cに示すように、拘束部501の除去により、バブル502内の圧縮されたばね503が伸長して、カテーテル22から外にメッシュバブル502を拡張することが可能になり、それによって、ガイドワイヤ送達カテーテル22の遠位端を壁30に対して定位置に固定する。拡張又は展開状態では、バブル502は、針34が反対側の冠静脈洞壁30を穿刺するために、冠静脈洞壁30に対して壁並置を提供する。バブル502は、伸縮性で適応性のあるワイヤ材料などのメッシュ材料であり得る。有益なことに、これにより、穿刺処置中に流体が容器を通って流れることが可能になる。
【0043】
一部の実施形態において、バブル502はカテーテル22内にあり得る。一部の実施形態において、拘束部501は、カテーテル22の外壁の一部であり得る。こうした実施形態では、固定機構500は、送達中、カテーテル22内に収容される。特定の実施形態において、バブル502及び拘束部501は、カテーテル22の外表面に取り付けられる。様々な実施形態において、拘束部501はカテーテル22の外部にあり、バブル502はカテーテル22内に少なくとも部分的に収容される。
【0044】
ばね式バブル502は、送達中、最初はカバーされており、拘束部501は、ばね503を圧縮状態に保つように構成されている。したがって、拘束部501は、ばね503を圧縮状態に維持するのに十分に弾性である。拘束部501は、カテーテル22が望ましい場所で定位置にある時に、拘束部501を引き出すために、プルワイヤ又はハイポチューブ又は他の類似の機構に連結され得る。拘束部501が取り外されると、ばね503が拡張し、それによってメッシュ又はバブル502が拡張する。バブル502は、ばね503によって拡張された時、円筒状形状ではなく、ドーム状形状を形成し、ばね503により密接に適合する。したがって、バブル502の材料は、標的ドーム様形状を形成するために十分に剛直である一方で、拘束部501によって圧縮されるために十分に適応性がある。
【0045】
図6A~6Cは、第三の例示的な固定機構600を図示する。第三の例示的な固定機構600は、図6Aに示すように、ワイヤ602に取り付けられた近位端を有するメッシュ構造601を含む。固定機構600は、カテーテル22の一部として定位置、すなわち、針34が冠静脈洞の壁30を穿刺する場所に誘導され得る。定位置に来ると、図6Bに示すように、ワイヤ602が押されて、メッシュ構造601を拡張することができる。同様に、メッシュ構造601は、図6Bに示すように、ワイヤ602を引くことによって後退し得る。図6Cに示すように、ワイヤ602を押すことによって、メッシュ構造601が束ねられ、カテーテル22から外に拡張し、それによってガイドワイヤ送達カテーテル22の遠位端を冠静脈洞の壁30に対して定位置に固定する。これにより、針34が冠静脈洞の壁30を穿刺するための壁並置が提供される。メッシュ構造601は、伸縮性で適応性のあるワイヤ材料などのメッシュ材料であり得る。有益なことに、これにより、穿刺処置中に流体が容器を通って流れることが可能になる。メッシュ構造601の遠位部分は、カテーテル22に取り付けられ得る。これは、ワイヤ602が前進する(例えば、遠位に押される)際に、メッシュ構造601を束ねることを容易にするために行うことができる。一部の実施形態において、メッシュ構造601は、送達中にカテーテル22内に部分的又は完全に収容される。特定の実施形態において、メッシュ構造601は、カテーテル22の外壁の一部を形成する。
【0046】
一部の実施形態において、メッシュ構造601は、前進し、ドーム形状を形成するワイヤを覆う布を含む。こうした実施形態において、布はワイヤによって拡張され、これは次に、布内に抑制され、それによってワイヤの形状に影響を与える。布カバーとワイヤの間のこの相互作用により、ドーム形状が形成され、これが冠静脈洞壁30に押し付けられて針34に対して並置を提供する。
【0047】
ワイヤ602は、メッシュ構造601の近位端からカテーテル22の近位端まで延在し得る。一部の実施形態において、ワイヤ602は、ワイヤ601の周りのリングを使用してメッシュ構造601に取り付けられ得る。こうした実施形態において、リングは摺動能力を有する。一部の実施形態において、ワイヤ601は、カテーテル22のガイドワイヤとは無関係に前進及び後退し得るハイポチューブである。したがって、カテーテル22が定位置にある時、ハイポチューブを押してメッシュ構造601を拡張し、壁30の穿刺を容易にすることができ、壁30を穿刺した後、ハイポチューブを引っ張ってメッシュ構造601を後退させることができる。
【0048】
図7A~7Cは、第四の例示的な固定機構700を図示する。第四の例示的な固定機構700は、図7Aに示すように、固定された近位構造701(例えば、円筒)に取り付けられた近位端を有し、移動可能な遠位構造702(例えば、円筒)に取り付けられた遠位端を有するフラップ、ストリップ、又は壁(連続的又は不連続)703と、固定された近位構造701を通過し、移動可能な遠位構造702に取り付けられたワイヤ704とを含む。固定機構700は、カテーテル22の一部として定位置、すなわち、針34が冠静脈洞の壁30を穿刺する場所に誘導され得る。定位置に来ると、ワイヤ704を引くことができる。ワイヤ704を引くことにより、図7Bに示すように、遠位構造702が固定された近位構造701に向かって近位に移動する。この相対的動きは、図7Cに示すように、フラップ又は壁703をカテーテル22から離れるように外向きに膨らませ、それによってガイドワイヤ送達カテーテル22の遠位端を冠静脈洞の壁30に対して定位置に固定する。フラップ又は壁703は、伸縮性で適応性のあるワイヤ材料などの任意の適切な材料とすることができる。一部の実施形態において、ワイヤ704は、ハイポチューブを通って延び、ワイヤ704及びハイポチューブは、近位構造701及び壁703によって囲まれている。
【0049】
固定機構400、500、600、及び700の各々は、蛍光透視を使用して可視化される際に、固定機構の位置を示すために放射線不透過性であるマーカーバンドを含み得る。こうした実施形態において、マーカーバンドは、針を延長させて壁30を穿刺する前に、針が望ましい位置に位置することを確実にするために、針34の反対側とすることができる。
【0050】
追加の実施形態
実施形態に応じて、本明細書に記載されるプロセス又はアルゴリズムのいずれかの特定の作用、事象、又は機能は、異なる順序で実施され得、追加され得、併合され得、又は完全に除外され得る。したがって、特定の実施形態では、全ての記載された作用又は事象が、プロセスの実践に必要なわけではない。
【0051】
とりわけ、「できる(can)」、「~であろう(could)」、「~かもしれない(might)」、「~であり得る(may)」、「例えば(e.g.,)」などの本明細書で使用する条件付きの文言は、特に別段の記載がない限り、又は使用する文脈内で別様に理解されない限り、その通常の意味で意図され、かつ特定の特徴、要素、及び/又はステップを、特定の実施形態が含むが、他の実施形態は含まないことを伝えることが一般的に意図される。したがって、このような条件付きの文言は、特徴、要素、及び/又はステップが、一つ以上の実施形態に任意の方法で必要とされること、あるいは一つ以上の実施形態が、これらの特徴、要素、及び/又はステップが含まれるか、もしくは任意の特定の実施形態で実行されるかを判断するための論理を、著者の入力又は促しの有無にかかわらず、必然的に含むことを暗示することは、一般的に意図されるものではない。「備える/含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」などの用語は、同義であり、それらの通常の意味で使用され、包括的に、非限定的な様式で使用され、追加の要素、特徴、作用、動作などを排除しない。また、「又は(or)」という用語は、その包括的な意味で使用され(かつその排他的な意味ではない)、そのため、例えば、要素のリストを接続するように使用される場合、「又は(or)」という用語は、リスト内の要素のうちの一つ、一部、又は全てを意味する。「X、Y、及びZのうちの少なくとも一つ」などの接続的な文言は、特に別段の記載がない限り、項目、用語、要素などが、X、Y、又はZのいずれかであり得ることを一般的に伝えるために使用されるように文脈を用いて理解される。したがって、このような接続的な文言は、特定の実施形態が、Xのうちの少なくとも一つ、Yのうちの少なくとも一つ、及びZのうちの少なくとも一つが各々存在することを必要とすることを暗示することが、一般的に意図されるものではない。
【0052】
実施形態の上記の記載では、本開示を合理化し、様々な発明の態様のうちの一つ以上の理解を支援する目的で、様々な特徴が、単一の実施形態、図、又はその記載において、一緒にグループ化されることがあることは、理解されるべきである。しかしながら、この開示の方法は、任意の特許請求の範囲が、その特許請求の範囲に明示的に列挙されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。さらに、本明細書の特定の実施形態に例示及び/又は記載される任意の構成要素、特徴、又はステップは、他の任意の実施形態に適用される、又はそれらとともに使用され得る。さらに、各実施形態に必ずしも必要又は不可欠となる、構成要素、特徴、ステップ、又は構成要素、特徴、又はステップの一群は存在しない。したがって、以下に開示及び請求される本明細書の発明の範囲は、上記に記載された特定の実施形態によって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきであることが意図される。
【0053】
特定の順序的な用語(例えば、「第一」又は「第二」)は、参照の容易さのために提供され得、必ずしも物理的特徴又は順序を暗示するものではないことを理解されたい。したがって、本明細書で使用される場合、構造、構成要素、動作などの要素を修正するために使用される順序的な用語(例えば、「第一」、「第二」、「第三」など)は、いかなる他の要素に対する要素の優先順位又は順序を必ずしも示すものではなく、むしろ、要素を、同様又は同一の名称(順序的な用語の使用以外)を有する別の要素から概略的に区別し得る。加えて、本明細書で使用される場合、不定冠詞(「a」及び「an」)は、「一つ」ではなく「一つ以上」を示し得る。さらに、条件又は事象に「基づいて」実施される動作はまた、明示的に列挙されていない一つ以上の他の条件又は事象に基づいて実施され得る。
【0054】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、例示的な実施形態が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書に定義される用語などの用語は、関連技術の文脈においてその意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書に明示的に定義されない限り、理想化又は過度に形式的な意味で解釈されないことが理解される。
【0055】
特定の好ましい実施形態及び実施例が以下に開示されているが、発明の主題は、具体的に開示された実施形態を越えて、他の代替的な実施形態及び/又は用途、並びにその修正例及び均等物に及ぶ。したがって、本明細書から生じ得る特許請求の範囲は、以下に記載される特定の実施形態のいずれによっても限定されない。例えば、本明細書に開示される任意の方法又はプロセスでは、方法又はプロセスの作用又は動作は、任意の好適な順序で実施され得、必ずしも任意の特定の開示される順序に限定されない。様々な動作は、特定の実施形態を理解するのに有用であり得る様式で、複数の別個の動作として順次説明され得るが、記載の順序は、これらの動作が順序依存性であることを暗示するものとして解釈されるべきではない。加えて、本明細書に記載される構造、システム、及び/又は装置は、一体化された構成要素として、又は別個の構成要素として具現化され得る。様々な実施形態を比較する目的で、これらの実施形態の特定の態様及び利点が記載される。このような全ての態様又は利点は、任意の特定の実施形態によって必ずしも達成されるとは限らない。したがって、例えば、様々な実施形態は、本明細書に同様に教示又は示唆され得る他の態様又は利点を必ずしも達成することなく、本明細書に教示されるような一つの利点又は利点の一群を達成又は最適化する様式で実施され得る。
【0056】
「外側」、「内側」、「上部」、「下部」、「下」、「上」、「垂直」、「水平」という空間的に相対的な用語、及び類似の用語は、図面に例解されるように、1つの要素又は構成要素と別の要素又は構成要素との間の関係を説明するために、説明を容易にするために本明細書で使用され得る。空間的に相対的な用語は、図面に描写される配向に加えて、使用中又は動作中の装置の異なる配向を包含することを意図していることを理解されたい。例えば、図面に示される装置が裏返される場合、別の装置の「下」又は「真下」に位置付けられる装置は、別の装置の「上」に配置され得る。したがって、「以下」という例解的な用語は、下位置及び上位置の両方を含み得る。装置はまた、他の方向に配向され得、したがって、空間的に相対的な用語は、配向に応じて異なる解釈をすることができる。
【0057】
別途明示的な記載がない限り、「より少ない」、「より多い」、「より大きい」などの比較及び/又は量的用語は、平等の概念を包含することを意図している。例えば、「より少ない」は、厳密な数学的な意味での「より少ない」だけでなく、「~以下」も意味し得る。
【0058】
本明細書に記載の送達システムは、ヒト心臓の様々な領域にカテーテル先端及び/又はカテーテルを位置付けるために使用され得る。例えば、カテーテル先端及び/又はカテーテルは、右心房から冠静脈洞へと通過するように構成され得る。しかしながら、説明は、第一の体室又は管腔から第二の体室又は管腔へのカテーテル先端及び/又はカテーテルの位置決めを指すか、又は概して適用することができ、ここで、カテーテル先端及び/又はカテーテルは、第一の体室又は管腔から第二の体室又は管腔内に位置付けられたときに屈曲され得る。体室又は管腔は、多数の流体チャネル、血管、及び/又は器官チャンバ(例えば、心腔)のうちのいずれか1つを指すことができる。さらに、本明細書の「カテーテル」、「管」、「シース」、「搬送可能なシース」、及び/又は「搬送可能なカテーテル」への参照は、例えば、送達カテーテル及び/又はカニューレを含む、心房又は冠静脈洞内の位置決めなど、器具を滑動可能に受容するように構成された内側管腔を含む、任意のタイプの細長い管状送達デバイスに概して参照又は適用することができる。他のタイプの医療用インプラントデバイス及び/又は処置を、例えば、アブレーション処置、薬物送達及び/又は冠静脈洞リードの配置を含む、本明細書に記載の送達システムを使用して、冠静脈洞に送達することができることが理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】