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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】量子データ処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/40 20220101AFI20240403BHJP
【FI】
G06N10/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565962
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 US2022026340
(87)【国際公開番号】W WO2022232140
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/180,445
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャロッド・ライアン・マクレーン
(57)【要約】
量子データ処理のための方法、システム、および装置。一態様では、方法は、量子状態のコピーごとに、i)量子センサーの進化した量子状態を取得するために、初期化された量子センサーによってターゲットシステムをプローブするステップと、ii)量子センサーの進化した量子状態を量子バッファの量子状態に変換するステップと、iii)量子バッファの量子状態を量子誤り訂正コードに論理符号化するステップと、iv)量子バッファの論理符号化された量子状態を量子メモリに移動させるステップとを含む、量子状態の複数のコピーを量子メモリに記憶するステップと、量子メモリ内の量子状態の複数のコピーを量子コンピュータにロードするステップと、精製された量子状態を取得するために、量子コンピュータによって、量子状態の複数のコピーを処理するステップと、ターゲットシステムの特性を決定するために、精製された量子状態を測定するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ実装方法であって、
量子状態のコピーごとに、i)量子センサーの進化した量子状態を取得するために、初期化された前記量子センサーによってターゲットシステムをプローブするステップと、ii)前記量子センサーの前記進化した量子状態を量子バッファの量子状態に変換するステップと、iii)前記量子バッファの前記量子状態を量子誤り訂正コードに論理符号化するステップと、iv)前記量子バッファの前記論理符号化された量子状態を量子メモリに移動させるステップとを含む、前記量子状態の複数のコピーを前記量子メモリに記憶するステップと、
前記量子メモリ内の前記量子状態の前記複数のコピーを量子コンピュータにロードするステップと、
精製された量子状態を取得するために、前記量子コンピュータによって、前記量子状態の前記複数のコピーを処理するステップと、
前記ターゲットシステムの特性を決定するために、前記精製された量子状態を測定するステップと
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記量子センサーが、量子コヒーレンスを維持するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記量子センサーの前記進化した量子状態が、前記プローブする時の前記ターゲットシステムの特性を符号化する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記量子センサーの前記進化した量子状態が、複数の量子ビットの状態、またはボソニックモードもしくはフォトニックモードの状態を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記量子センサーの前記進化した量子状態を取得するために、前記ターゲットシステムをプローブするステップが、有限の信号対雑音比で実行される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記量子センサーが、前記量子センサーの前記進化した量子状態に対して完全または部分的な量子誤り訂正を実施するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記量子センサーが第1の計算媒体を含み、前記量子バッファが第2の計算媒体を含み、前記第2の計算媒体が前記第1の計算媒体とは異なる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記量子バッファの前記量子状態を量子誤り訂正コードに論理符号化するステップが、前記量子バッファの前記量子状態にユニタリー符号化量子回路を適用するステップ、または状態注入技法を実行するステップを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記量子誤り訂正コードが、前記精製された量子状態を取得するために前記量子コンピュータによって実行される動作、または前記量子状態の前記複数のコピーを記憶するために必要な予想持続時間の少なくとも一方に依存するコード距離を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記量子誤り訂正コードが前記量子バッファである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
精製された量子状態を取得するために、前記量子状態の前記複数のコピーを処理するステップが、前記量子状態の前記複数のコピーを精製するために線形蒸留技法を実行するステップを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記線形蒸留技法が、量子状態蒸留、仮想状態蒸留、または量子主成分分析アルゴリズムを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ターゲットシステムの特性を決定するために、前記精製された量子状態を測定するステップが、前記ターゲットシステムの前記特性を学習するために、測定結果を量子機械学習システムに提供するステップを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ターゲットシステムが一時的ターゲットシステムを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
量子センサー、量子バッファ、量子メモリ、および量子コンピューティングデバイスを含む量子データ処理システムであって、前記量子データ処理システムが、
量子状態のコピーごとに、i)前記量子センサーの進化した量子状態を取得するために、前記量子センサーによってターゲットシステムをプローブすることと、ii)前記量子センサーの前記進化した量子状態を前記量子バッファの量子状態に変換することと、iii)前記量子バッファの前記量子状態を量子誤り訂正コードに論理符号化することと、iv)前記量子バッファの前記論理符号化された量子状態を前記量子メモリに移動させることとを含む、前記量子状態の複数のコピーを前記量子メモリに記憶することと、
前記量子メモリ内の前記量子状態の前記複数のコピーを前記量子コンピュータにロードすることと、
精製された量子状態を取得するために、前記量子コンピュータによって、前記量子状態の前記複数のコピーを処理することと、
前記ターゲットシステムの特性を決定するために、前記量子コンピュータによって、前記精製された量子状態を測定することと
を含む動作を実行するように構成されている、量子データ処理システム。
【請求項16】
前記量子センサーが、量子コヒーレンスを維持するように構成されている、請求項15に記載の量子データ処理システム。
【請求項17】
前記量子センサーの前記進化した量子状態が、前記プローブする時の前記ターゲットシステムの特性を符号化する、請求項15または16に記載の量子データ処理システム。
【請求項18】
前記量子センサーの前記進化した量子状態が、複数の量子ビットの状態、またはボソニックモードもしくはフォトニックモードの状態を含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の量子データ処理システム。
【請求項19】
前記量子センサーが、有限の信号対雑音比で前記量子センサーの前記量子状態を進化させるために前記ターゲットシステムをプローブするように構成されている、請求項15から18のいずれか一項に記載の量子データ処理システム。
【請求項20】
前記量子センサーが、前記量子センサーの前記進化した量子状態に対して完全または部分的な量子誤り訂正を実施するように構成されている、請求項15から19のいずれか一項に記載の量子データ処理システム。
【請求項21】
前記量子センサーが第1の計算媒体を含み、前記量子バッファが第2の計算媒体を含み、前記第2の計算媒体が前記第1の計算媒体とは異なる、請求項15から20のいずれか一項に記載の量子データ処理システム。
【請求項22】
前記量子データ処理システムが、前記量子バッファの前記量子状態を、前記量子バッファの前記量子状態へのユニタリー符号化量子回路の適用、または状態注入技法の実行により、量子誤り訂正コードに論理符号化するように構成されている、請求項15から21のいずれか一項に記載の量子データ処理システム。
【請求項23】
前記量子誤り訂正コードが、前記精製された量子状態を取得するために前記量子コンピュータによって実行される動作、または前記量子状態の前記複数のコピーを記憶するために必要な予想持続時間の少なくとも一方に依存するコード距離を含む、請求項15から22のいずれか一項に記載の量子データ処理システム。
【請求項24】
前記量子誤り訂正コードが前記量子バッファである、請求項15から23のいずれか一項に記載の量子データ処理システム。
【請求項25】
前記量子コンピューティングデバイスが、前記量子状態の前記複数のコピーを精製するために線形蒸留技法を実行することによって、精製された量子状態を取得するために、前記量子状態の前記複数のコピーを処理するように構成されている、請求項15から24のいずれか一項に記載の量子データ処理システム。
【請求項26】
前記線形蒸留技法が、量子状態蒸留、仮想状態蒸留、または量子主成分分析アルゴリズムを含む、請求項25に記載の量子データ処理システム。
【請求項27】
前記量子コンピューティングデバイスが、前記ターゲットシステムの前記特性を学習するために、前記精製された量子状態を測定することによって取得された測定結果を、量子機械学習システムに提供するように構成されている、請求項15から26のいずれか一項に記載の量子データ処理システム。
【請求項28】
前記ターゲットシステムが一時的ターゲットシステムを含む、請求項15から27のいずれか一項に記載の量子データ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、量子センシングおよび量子コンピューティングに関する。
【背景技術】
【0002】
量子センサーは、磁場または電場、時間、周波数、回転、温度、または圧力を含む物理量またはパラメータを測定するために、外乱に対する量子システムの感度を使用する量子デバイスである。量子デバイスは、量子化されたエネルギーレベルによって特徴付けられ、超伝導またはスピン量子ビット、中性原子、またはトラップされたイオンの電子状態、磁気状態、または振動状態を含むことができる。従来の量子センシングプロトコルでは、量子センサーは初期化され、対象となる信号と相互作用する。次いで、量子センサーの量子状態が変換され、および/または読み出される。対象となる物理量を再構成するために、一連のそのような読み出しから取得された読み出しデータに、位相推定またはパラメータ推定技法が適用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書は、量子データ処理システムについて説明する。
【0004】
一般に、本明細書に記載の主題の1つの革新的な態様は、量子状態のコピーごとに、i)量子センサーの進化した量子状態を取得するために、初期化された量子センサーによってターゲットシステムをプローブするステップと、ii)量子センサーの進化した量子状態を量子バッファの量子状態に変換するステップと、iii)量子バッファの量子状態を量子誤り訂正コードに論理符号化するステップと、iv)量子バッファの論理符号化された量子状態を量子メモリに移動させるステップとを含む、量子状態の複数のコピーを量子メモリに記憶するステップと、量子メモリ内の量子状態の複数のコピーを量子コンピュータにロードするステップと、精製された量子状態を取得するために、量子コンピュータによって、量子状態の複数のコピーを処理するステップと、ターゲットシステムの特性を決定するために、精製された量子状態を測定するステップとを含む方法で実施することができる。
【0005】
これらの態様の他の実装形態は、各々方法のアクションを実行するように構成された、1つまたは複数のコンピュータ記憶デバイスに記録された対応するコンピュータシステム、装置、およびコンピュータプログラムを含む。1つまたは複数の古典コンピュータおよび/または量子コンピュータのシステムは、動作中にシステムにアクションを実行させる、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの組合せをシステムにインストールすることによって、特定の動作またはアクションを実行するように構成することができる。1つまたは複数のコンピュータプログラムは、データ処理装置によって実行されると、装置にアクションを実行させる命令を含めることにより、特定の動作またはアクションを実行するように構成することができる。
【0006】
上記および他の実装形態は各々、以下の特徴のうちの1つまたは複数を、単独でまたは組み合わせて、随意に含むことができる。いくつかの実装形態では、量子センサーは、量子コヒーレンスを維持するように構成されている。
【0007】
いくつかの実装形態では、量子センサーの進化した量子状態は、プローブする時のターゲットシステムの特性を符号化する。
【0008】
いくつかの実装形態では、量子センサーの進化した量子状態は、複数の量子ビットの状態、またはボソニックモードもしくはフォトニックモードの状態を含む。
【0009】
いくつかの実装形態では、量子センサーの進化した量子状態を取得するために、ターゲットシステムをプローブすることは、有限の信号対雑音比で実行される。
【0010】
いくつかの実装形態では、量子センサーは、量子センサーの進化した量子状態に対して完全または部分的な量子誤り訂正を実施するように構成されている。
【0011】
いくつかの実装形態では、量子センサーは第1の計算媒体を含み、量子バッファは第2の計算媒体を含み、第2の計算媒体は第1の計算媒体とは異なる。
【0012】
いくつかの実装形態では、量子バッファの量子状態を量子誤り訂正コードに論理符号化することは、量子バッファの量子状態にユニタリー符号化量子回路を適用すること、または状態注入技法を実行することを含む。
【0013】
いくつかの実装形態では、量子誤り訂正コードは、精製された量子状態を取得するために量子コンピュータによって実行される動作、または量子状態の複数のコピーを記憶するために必要な予想持続時間の少なくとも一方に依存するコード距離を含む。
【0014】
いくつかの実装形態では、量子誤り訂正コードは量子バッファである。
【0015】
いくつかの実装形態では、精製された量子状態を取得するために、量子状態の複数のコピーを処理することは、量子状態の複数のコピーを精製するために線形蒸留技法を実行することを含む。
【0016】
いくつかの実装形態では、線形蒸留技法は、量子状態蒸留、仮想状態蒸留、または量子主成分分析アルゴリズムを含む。
【0017】
いくつかの実装形態では、ターゲットシステムの特性を決定するために、精製された量子状態を測定することは、ターゲットシステムの特性を学習するために、測定結果を量子機械学習システムに提供することを含む。
【0018】
いくつかの実装形態では、ターゲットシステムは、一時的ターゲットシステムを含む。
【0019】
本明細書で説明される主題は、以下の利点のうちの1つまたは複数を実現するように、特定の方法で実施することができる。
【0020】
従来の量子データ処理では、量子センサーは古典システムとインターフェースする。これによって、測定の早期使用が強制され、量子情報が破壊される。したがって、その後のデータの精製/抽出または処理ステップは、コピー数に応じて指数関数的にコストがかかる。
【0021】
これらのコストを低減するために、現在説明されている量子データ処理システムは、量子デバイスとインターフェースする量子センサーを含む。量子デバイスは、複数回のデータ収集の繰り返しを介して量子変換および量子ストレージ技法を実装し、古典コンピュータにのみ結合されている量子センサーの能力を超える。特に、現在説明されている量子データ処理システムは、量子センサーのサイズに基づいて測定を行わなければならない回数において指数関数的な優位性を達成する。この指数関数的な優位性は、量子メモリと量子プロセッサの両方にノイズが多いときでも実現することができる。したがって、現在説明されている技法は、極めて近い将来の量子コンピューティングデバイス、たとえば、ノイズの多い中間スケール量子(NISQ)デバイスを使用する実装に特に適している。
【0022】
加えて、従来の量子データ処理システムと比較して、現在説明されている量子データ処理システムは、感度を向上させ、量子センサーからの信号をノイズ除去する能力を向上させることができる。
【0023】
加えて、従来の量子データ処理システムとは異なり、現在説明されている量子データ処理システムは、限られたデータ収集時間しか利用できない可能性がある一時的なセンシングの用途において、量子データを収集し、処理することができる。
【0024】
加えて、現在説明されている量子データ処理システムはモジュール式であり、特定の用途のニーズに合わせて、必要に応じて異なる構成要素を変更またはアップグレードすることができる。
【0025】
加えて、現在説明されている量子データ処理システムは、様々な用途において使用することができ、たとえば、化学物質の識別の向上、量子材料の特性の向上、およびMRIなどの医用画像の用途を含むイメージング用途のより正確なセンシングを実現することができる。
【0026】
本明細書の主題の1つまたは複数の実装形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。主題の他の特徴、態様、および利点は、説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】量子データを収集し、処理するための従来のプロセスと、量子データを収集し、処理するための現在説明されている量子強化プロセスとを比較する図である。
図2】例示的な量子データ処理システムのブロック図である。
図3】例示的な量子コンピューティングデバイスの図である。
図4】量子データを処理するための例示的なプロセスを示すフローチャートである。
図5】量子状態の複数のコピーを量子メモリに記憶するための例示的なプロセスのフローチャートである。
図6】量子状態の複数のコピーを量子メモリに記憶するための例示的なプロセスのフローチャートである。
図7】物理状態を学習するために現在説明されている技法を使用して達成された量子優位性を示す図である。
図8】物理的ダイナミクスを学習するために現在説明されている技法を使用して達成された量子優位性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
様々な図面における同様の参照番号および名称は、同様の要素を示す。
【0029】
概要
本明細書では、量子データについて古典的な処理よりも指数関数的に高速化する、量子データを収集し、処理するための量子データ処理方法およびシステムについて説明する。データ収集ステップは、一定回数または連続的に実行される。データ収集ステップ中、量子センサーは、ターゲットシステムをプローブし、ターゲットシステムからデータを収集する。データは、論理符号化に互換性のある量子バッファに転送され、量子誤り訂正コードに符号化される。次いで、符号化されたデータは、量子メモリにシャトルされる。量子メモリに十分な数のデータのコピーが収集されると、量子メモリは量子コンピュータにロードされる。量子コンピュータは、データを精製するか、またはさらに洗練するように、量子データ処理を実行する。次いで、精製されたデータは、ターゲットシステムに関する情報を測定し、抽出するために使用することができ、さらなる分析のために古典コンピュータまたは実験者に供給することができる。
【0030】
図1は、量子データを収集し、処理するための従来のプロセス102と、量子データを収集し、処理するための現在説明されている量子強化プロセス104とを比較する図100である。従来のプロセス102では、量子センサーは、古典アルゴリズムを実行する古典マシンとインターフェースする。古典マシンは、古典情報を記憶し、処理することができる。量子強化プロセス104では、量子センサーは、量子アルゴリズムを実行する量子マシンとインターフェースする。量子マシンは、量子情報を記憶し、処理することができる。
【0031】
段階(a)では、実験が行われる。各実験は、図2を参照して以下に詳述するように、量子センサーを使用してターゲット物理システムをプローブすることを含む。ターゲット物理システムは、分子、ウイルス、DNA、惑星、またはブラックホールなど、対象となる現実世界のシステムとすることができる。
【0032】
いくつかの実装形態では、各実験は、物理的量子状態ρを生成する。これらの実装形態では、データ処理の目的は、段階(b)に示すように、ρの何らかの特性を学習することである。従来のプロセス102では、古典測定データを取得するために、ρの複数のコピーが別々に測定される。古典測定データは、古典メモリに記憶される。古典コンピュータは、ρの特性の予測を出力するように、古典測定データを処理する。量子強化プロセス104では、量子状態ρは、量子マシンのメモリに記憶された量子情報をコヒーレントに変更することができる。ρのコピーは、量子データとして量子メモリに記憶される。量子メモリは、一般に重ね合わせた状態にある可能性のある量子状態を記憶するメモリであり、対照的に、古典メモリは、状態を2値状態としてのみ記憶する。量子マシンは量子データを処理し、量子メモリ上で測定を行い、ρの特性の予測を出力する。一部のタスクでは、ρのターゲット特性を学習するのに必要な実験回数は、従来のプロセス102を使用した場合、nが指数関数的であるが、量子強化プロセス104を使用した場合、nが多項式的のみであることが示され得る。適切に定義されたタスクでは、ρの2つのコピーを量子メモリに記憶し、エンタングリング測定を実行するという単純なプロトコルを使用して、指数関数的な量子優位性を達成することができる。
【0033】
他の実装形態では、各実験は物理プロセスεの下での量子状態の進化である。これらの実装形態では、データ処理の目的は、段階(c)に示すように、物理プロセスεの何らかの特性を学習することである。従来のプロセス102では、古典マシンは、古典ビット列を使用してεへの入力状態を指定し、古典測定データを取得する。量子強化プロセス104では、進化εは量子マシンのメモリをコヒーレントに変更し、εへの入力状態は量子マシンの量子メモリとエンタングルされ、出力状態は量子マシンによってコヒーレントに取り出される。これらの実装形態では、量子強化プロセス104は、同様の指数関数的な優位性を達成する。
【0034】
例示的な動作環境
図2は、現在説明されている量子強化データ処理技法を実行するための例示的な量子データ処理システム200のブロック図である。例示的な量子データ処理システム200は、本明細書に記載のシステム、構成要素、および技法を実装することができる、1つまたは複数の場所にある1つまたは複数の古典コンピュータおよび量子コンピューティングデバイス上で古典的および量子コンピュータプログラムとして実装されるシステムの一例である。
【0035】
例示的な量子データ処理システム200は、1つまたは複数の量子センサー、たとえば量子センサー204、量子バッファ208、量子メモリ214、量子コンピュータ216、および古典または量子コンピュータ218を含む。量子センサーは、それぞれのターゲットシステム、たとえばターゲットシステム202をプローブし、ターゲットシステムからデータ206を収集するように構成された量子デバイスである。ターゲットシステム202は、対象となるシステム、たとえば、物理量またはパラメータが推定されるシステムであり、システム200によって実行される量子データ処理タスクに基づいて変化し得る。ターゲットシステム202および物理量またはパラメータは、量子であっても古典的であってもよい。たとえば、量子センサー204によって収集されたデータは、古典プロセスによって生成される可能性がある。このような場合、本明細書に記載の技法を実装することによって、ソースデータが古典的であるにもかかわらず、そのような古典プロセスの特性を指数関数的に高速に決定することができる。例示的なターゲットシステムについて、図4を参照しながら以下により詳細に説明する。
【0036】
ターゲットシステム202をプローブするために、量子センサー204がターゲットシステム202と相互作用し、量子センサー204に含まれる量子システムの量子状態(以下、量子センサー204の量子状態と呼ぶ)が所定のセンシング時間の間進化する。進化中に、量子センサー204の状態は、対象となる物理量またはパラメータに依存するようになり、ターゲットシステム202の状態を反映する。このようにして、量子センサー204はターゲットシステム202からデータ206を収集し、データ206は量子センサー204の進化した量子状態である。いくつかの実装形態では、データ206は、有限の信号対雑音比で収集され得る。いくつかの実装形態では、量子センサー204は、そのセンシング能力またはデータ保持能力を向上させるために、完全または部分的な量子誤り訂正を実装することができる。いくつかの実装形態では、量子センサー204は量子コヒーレンスを維持することができる。
【0037】
量子データ処理システム200に含まれる量子センサー204のタイプは、ターゲットシステム202および対象となる物理量またはパラメータに依存する。たとえば、磁気測定、電気測定、温度測定、および化学センシングの用途では、量子センサー204は、(孤立しているか、またはネットワーク内に分散された)ダイヤモンド中の窒素空孔を含む固体量子センサーであり得る。他の例示的な量子センサーには、気体中の超偏極スピン、溶液中の化学特殊物質の核スピン、またはフォトニック状態の感知もしくはエキゾチック粒子の検出に使用されるキャビティモードなどがある。
【0038】
具体的な例として、いくつかの実装形態では、ターゲットシステム202は未知の代謝物とすることができ、物理量/プロパティは未知の代謝物の構造であり得る。この例では、未知の代謝物の構造は、スピン磁化、電子もしくは振動励起、または電荷輸送に関連するシグネチャを通して決定することができ、量子センサーは、スピン輸送に適合する過分極ガス、空間分解能に十分なダイヤモンドの窒素空孔、または振動測定のためのナノメカニカルセンサーを含み得る。
【0039】
別の例として、いくつかの実装形態では、ターゲットシステムは、たとえば洞窟、コンテナ、または建物内部のイメージングなど、未知のシステムの内部の密度プロファイルが決定される何らかのシステムとすることができる。この例では、決定される物理量には、物質の量、分布、およびタイプ、ならびに密度または剛性などの材料特性が含まれ得、量子センサーは、重力効果に敏感な量子センサー、たとえば、量子効果を使用して原子の異なる空間位置間の重力を感知する高度な原子干渉計または原子泉などを含み得る。量子データ処理システムは、これらのセンサーの感度および能力を向上させることができる。
【0040】
いくつかの実装形態では、システムは、ターゲットシステム202を並行してプローブする複数の量子センサーを含むことができる。複数の量子センサーを使用してターゲットシステム202を並行してプローブすることによって、特に、同じターゲットシステムの複数のコピー、たとえば、分子の多くのコピーに対してセンシングを実行する場合、状態がメモリに保持される時間を短縮し、サンプリングレートを向上させることができる。代替的に、または追加として、複数の量子センサーは、異なるタイプの量子センサーを含むことができる。たとえば、異なるタイプのセンサーから補完的なデータを並行して収集することによって、量子データ処理システムの能力を向上させることができ、たとえば、システムは、より正確で洞察に満ちた情報を抽出することが可能になり、したがって、物理的特性およびパラメータの改善された推定値を計算することが可能になり、量子データ処理システムの構造およびワークフローによって可能になる。
【0041】
従来の量子データ処理システム、すなわち、本明細書に記載の量子データ処理システムとは異なるシステムでは、量子センサー204の量子状態が所定のセンシング時間の間進化し、ターゲットシステムからデータ206を収集した後、量子センサー204の進化した量子状態が測定されることになる。ターゲットシステム202は、利用可能な測定時間の合計の間、量子センサー204によって繰り返しプローブされ、対象となる物理量またはパラメータの推定値は、蓄積された測定データから古典計算を介して推測される。したがって、量子情報はプロセスにおいて早期に破壊され、その後のデータの精製/抽出またはデータ処理は、プローブの数に応じて指数関数的なコストがかかる。
【0042】
これらのコストを回避するために、量子データ処理システム200は、量子センサー204によって収集されたデータ206を量子バッファ208に転送する。量子バッファ208は、量子情報を論理符号化するように構成された量子コンピューティングデバイスである。たとえば、量子バッファ208は、超伝導量子ビットを含む超伝導コンピュータ、イオントラップ量子コンピュータ、またはクラスタ状態のフォトニック量子ビットを含む量子コンピュータとすることができる。
【0043】
量子センサー204および量子バッファ208は、異なる量子媒体を含む異なる量子デバイスであり得るので、デバイスは異なるエネルギースケールで動作し得る。たとえば、いくつかの実装形態では、量子センサー204は、ボソン空洞モードの状態としてデータを提供することができ、一方、量子バッファ208は超伝導量子ビットを含むことができる。したがって、データ206を転送するために、量子データ処理システム200は、量子センサー204によって収集されたデータ206に対して量子変換を実行し、データ206を適切な形式の変換データ210に変換するように構成される。
【0044】
量子データ処理システム200によって実行される特定の変換は、量子データ処理システム200に含まれる量子センサー204および量子バッファ208のタイプに依存し、変化し得る。たとえば、量子データ処理システム200は、量子センサー204の光学光子状態から量子バッファ208の超伝導量子状態にデータを変換するために、マイクロ波から光への変換を実行することができる。別の例として、量子データ処理システム200は、イオントラップ量子バッファについては光-イオン変換を、超伝導量子バッファについてはキャビティモード-超伝導量子ビット変換を、またはクラスタ状態のフォトニック量子ビットを含む量子バッファについてはキャビティモード-フォトニック量子ビット変換を実行することができる。いくつかの実装形態では、変換は限定された忠実度で実行され得る。
【0045】
いくつかの実装形態では、量子データ処理システム200は、量子バッファ208内の変換データ210を量子誤り訂正コードに論理符号化し、論理符号化データ212が生成される。変換データ210を論理符号化することは、プローブされたデータの複数のコピーの記憶、およびプローブされたデータに対するその後の計算に適応する。いくつかの実装形態では、量子データ処理システム200は、ユニタリー符号化回路または状態注入技法を適用することによって、変換データ210を論理符号化することができる。これらの実装形態では、論理符号化は、ユニタリー符号化回路または状態注入技法を適用するために実行される計算操作によって制限される忠実度を有することができる。
【0046】
量子メモリ214は、量子バッファ208から取得された論理符号化データ212を記憶するように構成されている。いくつかの実装形態では、たとえば、計算リソースが限られている場合など、量子誤り訂正コードは、量子バッファそのものとなる可能性がある。量子データ処理システム200によって実装可能な例示的な論理符号化および量子記憶システムには、表面コードへのユニタリー符号化、表面コードへの状態注入、量子LDPCコードへの直接の符号化もしくは注入、表面コードへの注入に続くLDPCもしくはより高いレートのコードへの注入、または論理センサーから論理コード状態への直接転送がある。量子メモリは、たとえば、キャビティベースの量子メモリまたは媒体ベースの量子メモリ(たとえば、原子、イオン、または分子ベースのメモリなど)などの光量子メモリであり得る。量子メモリの多くの例を代替的に使用してもよいことを諒解されよう。
【0047】
いくつかの実装形態では、量子データ処理システムによって使用されるコードの距離は、たとえば後述する量子コンピュータ216によってデータに対して実行される後続の計算、および/または量子メモリ214に十分な数の状態コピーを記憶するのに必要な予想待ち時間によって決定され得る。たとえば、コード距離は、必要な計算時間に加えて、所与のプロトコルで量子状態のコピーを受信するまでの待ち時間によって決定することができ、たとえば、量子状態のコピーが10個必要で、計算に一定の時間がかかると予想される場合、デバイスの物理エラー率とコードのしきい値を使用して、そのタイムスケールおよび操作で情報がコンピュータ内で減衰しないことを安全に保証するために、これらの要素から必要なコード距離を計算することができる。いくつかの実装形態では、コード距離dは、d~log(予想待ち時間+計算時間)としてスケールすることができる。
【0048】
量子メモリ214は、量子バッファ208から取得された論理符号化データ212を記憶するように構成されている。たとえば、図3を参照して以下により詳細に説明するように、量子データ処理システム200は、量子センサー204の進化した量子状態の複数のコピーを収集するために、ターゲットシステム202を繰り返しプローブすることができる(本明細書において、進化した量子状態のコピーは、量子センサー104がリセットおよび/または初期化され、量子センサーの進化した量子状態を取得するために所定のセンシング時間の間ターゲットシステム102と相互作用した後に取得される量子状態を意味すると理解される)。各コピーは、量子メモリ214に記憶される前に変換され、論理符号化され得る。
【0049】
量子センサー204の進化した量子状態の所定数のコピーが量子メモリ214に記憶されると、記憶されたデータ220を量子コンピュータ216にロードして処理することができる。所定数のコピーは、量子コンピュータ216によってデータに対して実行される操作に依存し、変化し得る。
【0050】
量子コンピュータ216は、量子メモリ214から受信されたデータを、たとえば量子アルゴリズムの適用によって処理するように構成されている。いくつかの実装形態では、量子コンピュータ216は、量子メモリ214から受信されたデータを精製することができる。たとえば、量子コンピュータは、たとえば量子状態蒸留、仮想状態蒸留、または量子主成分分析法(qPCA)などの線形蒸留技法を使用して、データに対して量子データ抽出を実行することができる。データ抽出ステップは、この抽出を実行するために記録する必要があるコピーの数において、従来の方法よりも指数関数的な優位性を達成する。量子メモリ214から受信されたデータを処理するための例示的な量子コンピュータ314について、図3を参照して後述する。
【0051】
量子データ処理システム200は、抽出された量子データに対して測定を行い、測定データ222を取得し、関連情報を抽出することができる。測定データ222を、さらなる解析のために、たとえば、対象となる物理量またはパラメータを推定するために、古典または量子コンピュータ216に提供することができる。いくつかの実装形態では、抽出された情報は、データに関する特性を学習するために、古典または量子コンピュータ218に含まれる量子機械学習システムへの入力として提供することができる。図2では、古典または量子コンピュータ216は、量子コンピュータ216とは別のデバイスとして示されているが、いくつかの実装形態では、システム200は、量子コンピュータ216、および古典または量子コンピュータ218を参照して上述した動作を実行するように構成された1つのコンピューティングデバイスを含むことができる。
【0052】
いくつかの実装形態では、量子データ処理システム100は、通信または量子インターネット設定に含まれるか、またはそれに適用することができる。たとえば、量子データ処理システム200は、量子インターネット、量子ネットワーク、または量子ネットワークに沿った量子リピータから受信されたデータに対して動作することができる。これらの実装形態では、量子通信プロトコルも含めることができる。このような設定において、量子データ処理システム200を使用して、元のメッセージのコード距離を超えた追加の効果でエラーから回復することができる。
【0053】
図3は、本明細書に記載の古典演算および量子演算の一部または全部、たとえば量子コンピュータ216、および古典または量子コンピュータ218を参照して上述した演算を実行するための例示的な古典/量子コンピュータ300を示す。例示的な古典/量子コンピュータ300は、例示的な量子コンピューティングデバイス302を含む。量子コンピューティングデバイス302は、様々な形態の量子コンピューティングデバイスを表すことを意図している。本明細書に示された構成要素、それらの接続および関係、ならびにそれらの機能は、例示的なものにすぎず、本明細書に記載され、および/または特許請求される本発明の実装形態を限定するものではない。
【0054】
例示的な量子コンピューティングデバイス302は、量子ビットアセンブリ352と、制御および測定システム304とを含む。量子ビットアセンブリは、アルゴリズム演算または量子計算を実行するために使用される複数の量子ビット、たとえば量子ビット306を含む。図3に示す量子ビットは矩形アレイに配置されているが、これは概略的な描写であり、限定を意図するものではない。量子ビットアセンブリ352はまた、結合された量子ビット間の相互作用を可能にする調整可能な結合要素、たとえばカプラ308を含む。図3の概略図では、各量子ビットは、それぞれの結合要素によって、4つの隣接する量子ビットの各々に調整可能に結合されている。しかしながら、これは量子ビットおよびカプラの例示的な配置であり、隣接していない量子ビット間の結合を可能にする非矩形の配置、および2つを超える量子ビット間の調整可能な結合を含む配置を含む他の配置も可能である。
【0055】
各量子ビットは、0および1の論理値を表すレベルを有する物理的な2レベル量子システムまたはデバイスとすることができる。複数の量子ビットの具体的な物理的実現、およびそれらが互いにどのように相互作用するかは、例示的なコンピュータ300に含まれる量子コンピューティングデバイス302のタイプ、または量子コンピューティングデバイスが実行している量子計算のタイプを含む、様々な要因に依存する。たとえば、原子量子コンピュータでは、量子ビットは原子、分子、または固体量子システム、たとえば超微細原子状態を介して実現され得る。別の例として、超伝導量子コンピュータでは、量子ビットは超伝導量子ビットまたは半伝導量子ビット、たとえば超伝導トランスモン状態を介して実現することができる。別の例として、NMR量子コンピュータでは、量子ビットは核スピン状態を介して実現され得る。
【0056】
いくつかの実装形態では、たとえば、量子メモリから量子ビットをロードし、量子ビットに一連のユニタリー演算子を適用することによって、量子計算を進めることができる。ユニタリー演算子を量子ビットに適用することは、たとえば、量子主成分アルゴリズムなどの量子アルゴリズムを実装するために、量子ビットに対応する量子論理ゲートのシーケンスを適用することを含むことができる。例示的な量子論理ゲートは、単一量子ビットゲート、たとえば、Pauli-X、Pauli-Y、Pauli-Z(X、Y、Zとも呼ばれる)、アダマールゲート、Sゲート、回転、2量子ビットゲート、たとえば、制御されたX、制御されたY、制御されたZ(CX、CY、CZとも呼ばれる)、制御されたNOTゲート(CNOTとも呼ばれる)、制御されたスワップゲート(CSWAPとも呼ばれる)、および3つ以上の量子ビットを伴うゲート、たとえばトッフォリゲートを含む。量子論理ゲートは、制御および測定システム304によって生成された制御信号310を量子ビットおよびカプラに印加することによって実装することができる。
【0057】
たとえば、いくつかの実装形態では、量子ビットアセンブリ352の量子ビットは周波数調整可能であり得る。これらの例では、各量子ビットは、量子ビットに結合された1つまたは複数の駆動線を介した電圧パルスの印加によって調整可能な、関連する動作周波数を有することができる。例示的な動作周波数には、量子ビットのアイドリング周波数、量子ビットの相互作用周波数、および量子ビットの読み出し周波数がある。異なる周波数は、量子ビットが実行できる異なる動作に対応する。たとえば、動作周波数を対応するアイドリング周波数に設定することによって、量子ビットを他の量子ビットと強く相互作用しない状態、および単一量子ビットゲートを実行するために使用され得る状態にすることができる。別の例として、固定カップリング付きカプラを介して量子ビットが相互作用する場合、それぞれの動作周波数を、共通の相互作用周波数から離調した何らかのゲート依存周波数に設定することで、量子ビットを互いに相互作用するように構成することができる。他の場合、たとえば、量子ビットが調整可能なカプラを介して相互作用するとき、量子ビットは、量子ビット間の相互作用を可能にするように、それぞれのカプラのパラメータを設定し、次いで、量子ビットのそれぞれの動作周波数を、共通の相互作用周波数から離調した何らかのゲート依存周波数に設定することによって、互いに相互作用するように構成することができる。そのような相互作用は、マルチ量子ビットゲートを実行するために行われ得る。
【0058】
使用される制御信号310のタイプは、量子ビットの物理的実現に依存する。たとえば、制御信号には、NMRまたは超伝導量子コンピュータシステムではRFパルスまたはマイクロ波パルス、あるいは原子量子コンピュータシステムでは光パルスが含まれ得る。
【0059】
量子計算は、それぞれの制御信号310を使用して、たとえばXやZなどの量子観測可能量を使用して、量子ビットの状態を測定することによって完了することができる。測定によって、測定結果を表す読み出し信号312が測定および制御システム304に送り返される。読み出し信号312は、量子コンピューティングデバイスおよび/または量子ビットの物理的スキームに応じて、RF信号、マイクロ波信号、または光信号を含み得る。便宜上、図3に示す制御信号310および読み出し信号312は、量子ビットアセンブリの選択された要素(すなわち、最上行および最下行)のみをアドレス指定するように示されているが、動作中、制御信号310および読み出し信号312は、量子ビットアセンブリ352内の各要素をアドレス指定することができる。
【0060】
制御および測定システム304は、上述のように量子ビットアセンブリ352に対する様々な操作、ならびに、他の古典サブルーチンまたは計算を実行するために使用することができる古典コンピュータシステムの一例である。制御および測定システム304は、1つまたは複数のデータバスによって接続された、1つまたは複数の古典プロセッサ、たとえば古典プロセッサ314、1つまたは複数のメモリ、たとえばメモリ316、および1つまたは複数のI/Oユニット、たとえばI/Oユニット318を含む。制御および測定システム304は、たとえば選択された一連の量子ゲート動作を実行するために、制御信号310のシーケンスを量子ビットアセンブリに送り、たとえば測定動作の実行の一部として、読み出し信号312のシーケンスを量子ビットアセンブリから受信するようにプログラムすることができる。
【0061】
プロセッサ314は、制御および測定システム304内で実行するための命令を処理するように構成されている。いくつかの実装形態では、プロセッサ314は、シングルスレッドプロセッサである。別の実装形態では、プロセッサ314は、マルチスレッドプロセッサである。プロセッサ314は、メモリ316に記憶された命令を処理することができる。
【0062】
メモリ316は、制御および測定システム304内に情報を記憶する。いくつかの実装形態では、メモリ316は、コンピュータ可読媒体、揮発性メモリユニット、および/または不揮発性メモリユニットを含む。いくつかの場合には、メモリ316は、たとえば、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、複数のコンピューティングデバイス(たとえば、クラウド記憶デバイス)によってネットワーク上で共有される記憶デバイス、および/または何らかの他の大容量ストレージデバイスなど、システム304の大容量ストレージを提供することができる記憶デバイスを含むことができる。
【0063】
入力/出力デバイス318は、制御および測定システム304の入力/出力動作を提供する。入力/出力デバイス318は、D/A変換器、A/D変換器、RF/マイクロ波/光信号発生器、送信機、受信機を含むことができ、それによって、量子コンピュータの物理的スキームに応じて、制御信号310を量子ビットアセンブリに送り、量子ビットアセンブリから読み出し信号312を受信する。いくつかの実装形態では、入力/出力デバイス318はまた、1つまたは複数のネットワークインターフェースデバイス、たとえばEthernetカード、シリアル通信デバイス、たとえばRS-232ポート、および/またはワイヤレスインターフェースデバイス、たとえば802.11カードも含むことができる。いくつかの実装形態では、入力/出力デバイス318は、入力データを受信し、出力データを他の外部デバイス、たとえば、キーボード、プリンタ、およびディスプレイデバイスに送るように構成されたドライバデバイスを含むことができる。
【0064】
図3には例示的な制御および測定システム304が示されているが、本明細書に記載の主題および機能的動作の実装は、他のタイプのデジタル電子回路、または本明細書に開示された構造およびそれらの構造的均等物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェア、またはそれらの1つもしくは複数の組合せに実装することができる。
【0065】
例示的なシステム300は、例示的な古典プロセッサ350も含む。古典プロセッサ350は、いくつかの実装形態、たとえば、本明細書に記載の古典的な機械学習方法に従って、本明細書に記載の古典計算演算を実行するために使用することができる。
【0066】
量子データを処理するための例示的なプロセス
図4は、量子データを処理するための例示的なプロセス400のフロー図である。便宜上、プロセス400は、量子データ処理システムによって実行されるものとして説明する。たとえば、本明細書に従って適切にプログラムされた図2の量子データ処理システム200は、プロセス400を実行することができる。
【0067】
システムは、量子状態の複数のコピーを量子メモリに記憶する(ステップ402)。量子状態は、以下でさらに詳細に説明するように、対応するターゲットシステムまたはターゲットプロセスの特性を符号化することができる。いくつかの実装形態では、量子状態のコピーは、図5を参照して後述するように、量子センサー、たとえば物理的世界とコヒーレントに相互作用するセンサーを使用して生成することができる。他の実装形態では、量子状態のコピーは、アナログ量子シミュレータまたはゲートベースの量子コンピュータによって生成することができる。他の実装形態では、量子状態のコピーは、ターゲットプロセス、たとえば進化演算子の下で初期量子状態を進化させることによって生成することができる。
【0068】
システムは、量子メモリ内の量子状態の複数のコピーを量子コンピュータにロードする(ステップ404)。いくつかの実装形態では、システムは、精製された量子状態を取得するために、量子コンピュータを使用して、量子状態の複数のコピーを処理する(ステップ406)。精製された量子状態は、量子状態の複数のコピーを表す量子状態である。量子状態の複数のコピーを処理し、精製された量子状態を取得するために、システムは、量子状態の複数のコピーを精製するための線形蒸留技法、たとえば、量子状態蒸留、仮想状態蒸留、または量子主成分分析アルゴリズムを実行することができる。
【0069】
システムは、量子コンピュータを使用して精製された量子状態を測定する。測定された精製された量子状態は、古典または量子計算によって、ターゲットシステムの特性またはターゲットプロセスの特性を決定するために使用される(ステップ408)。たとえば、いくつかの実装形態では、システムは、ターゲットシステムまたはターゲットプロセスの特性を学習するために、測定結果を量子機械学習システムに提供することができる。
【0070】
図5は、量子状態の複数のコピーを量子メモリに記憶するための第1の例示的なプロセス500のフロー図である。例示的なプロセス500は、たとえば、例示的なプロセス400が物理状態またはシステムの特性を学習するために使用されるときなどに、上述の例示的なプロセス400のステップ402を実行するために使用することができる。便宜上、プロセス500は、量子データ処理システムによって実行されるものとして説明する。たとえば、本明細書に従って適切にプログラムされた図2の量子データ処理システム200は、プロセス500を実行することができる。
【0071】
量子状態の1つのコピーを量子メモリに記憶するために、システムは、量子センサーの進化した量子状態を取得するために、(初期量子状態で初期化された)量子センサーを使用して、ターゲットシステムをプローブする(ステップ502)。量子センサーの進化した量子状態は、プローブする時のターゲットシステムの特性を符号化し、図2を参照して上述したように、複数の量子ビットの状態、またはボソニックモードもしくはフォトニックモードの状態とすることができる。いくつかの実装形態では、システムは、有限の信号対雑音比でターゲットシステムをプローブすることができる。
【0072】
次いで、システムは、量子センサーの進化した量子状態で符号化された情報を量子バッファの量子状態に転送する。いくつかの実装形態では、量子センサーおよび量子バッファは、異なる計算媒体を含むことができる。たとえば、量子センサーは第1の計算媒体を含むことができ、量子バッファは第2の計算媒体を含むことができ、第2の計算媒体は第1の計算媒体とは異なる。したがって、量子センサーの進化した量子状態に符号化された情報を量子バッファの状態に転送するために、システムは、量子センサーの進化した量子状態を量子バッファの量子状態に変換する(ステップ504)。
【0073】
次いで、システムは、量子バッファの量子状態を量子誤り訂正コードに論理符号化する(ステップ506)。たとえば、システムは、量子バッファの量子状態にユニタリー符号化量子回路を適用したり、状態注入技法を実行したりすることができる。いくつかの実装形態では、量子誤り訂正コードの距離は、ステップ306を参照して後述するように、抽出された量子状態を取得するために量子コンピュータによって実行される動作、または量子状態の複数のコピーを量子メモリに記憶するために必要な予想持続時間のうちの少なくとも一方に依存することができる。
【0074】
いくつかの実装形態では、システムは、量子バッファの論理符号化された量子状態を量子メモリに移動させる(ステップ508)。システムは、量子バッファの符号化が量子メモリの符号化と異なる場合、量子バッファの論理符号化された量子状態を量子メモリに移動させることができる。たとえば、量子状態のコピーが大量に必要で、量子ビットがまばらであり、量子メモリのより高いコードレート、およびバッファでの迅速な符号化が有益である可能性がある。他の実装形態では、量子バッファおよび量子メモリを同じデバイスとすることができ、したがって、論理符号化された量子状態を量子メモリに移動させる必要はない。
【0075】
ステップ502~508は、量子メモリに量子状態の所定数のコピーが記憶されるまで、または、たとえば、ターゲットシステムが一時的なシステムであり、ターゲットシステムをプローブできる時間間隔が限られている場合など、所定の持続時間が経過するまで繰り返される。例示的な一時的システムは、短時間で分解する化学物質を含む。たとえば、いくつかの化学システムでは、色素をイメージングまたは検査するときなど、光退色(光との相互作用を介して色素を破壊すること)が100ミリ秒未満の短いタイムスケールで起こる可能性があり、色素を作るプロセスが不明である場合、測定の機会が限られる。別の例示的な一時的システムには、たとえば1秒に1回など、頻繁には起こらない、たとえば宇宙線の検出など、まれなセンシングイベントが含まれる。
【0076】
図6は、量子状態の複数のコピーを量子メモリに記憶するための第2の例示的なプロセス600のフロー図である。例示的なプロセス600は、たとえば、例示的なプロセス400が物理的ダイナミクス/プロセスの特性を学習するために使用されるときなど、上述の例示的なプロセス400のステップ402を実行するために使用することができる。便宜上、プロセス600は、量子データ処理システムによって実行されるものとして説明する。たとえば、本明細書に従って適切にプログラムされた図2の量子データ処理システム200は、プロセス600を実行することができる。
【0077】
量子メモリに量子状態の1つのコピーを記憶するために、システムは、n個のシステム量子ビットが量子メモリに含まれるn個のメモリ量子ビットとエンタングルする初期量子状態を準備する(ステップ602)。システムは、学習すべき物理的ダイナミクス/プロセスに対応する進化演算子の下で、システム量子ビットを進化させる(ステップ604)。システムは、システム量子ビットとメモリ量子ビットを交換する(たとえば、複数のスワップゲートを含む量子回路を適用し、各スワップゲートは、ゲートが動作する2つの量子ビットの状態を交換するように構成される)(ステップ606)。次いで、システムは、進化演算子の下でシステム量子ビットを再び進化させる(ステップ608)。
【0078】
プロセス602~608によって、進化演算子は、n個のメモリ量子ビットの量子状態が進化演算子の下で進化した量子状態に対応するように、n個のメモリ量子ビットの状態をコヒーレントに変化させる。ステップ602~608は、量子状態の所定数のコピーが量子メモリに記憶されるまで繰り返される。
【0079】
図1図6を参照して上述したシステムおよびプロセスは、以下でさらに詳細に説明するように、異なる学習タスクおよび量子強化実験に適用することができる。
【0080】
例示的な学習タスクおよび関連する量子強化実験:量子状態の学習
現在説明されている技法を使用して実行できる1つの例示的な学習タスクは、n量子ビット状態ρによって記述される物理システムの特性を学習することである。この例では、各実験(たとえば、図1および図2を参照して上述したようなセンサー相互作用または他の状態準備方法)は、ρの1つのコピーを生成する。従来の設定では、ρの各コピーを測定して、古典データを取得する。現在説明されている量子強化設定では、量子コンピュータは、ρの各コピーを量子メモリに記憶し、ρの複数のコピーに対して共同で動作する。どちらのシナリオでも、古典データのみが残るように、手順の学習段階の終了時にすべての量子データが測定される必要がある。学習が完了した後、学習者は、ある集合{O1,O2,...}から引き出された観測可能量(すなわち物理量)の期待値の正確な予測を提供することが求められ、ここで、集合内の観測可能量の数は、nに関して指数関数的に大きくなる。集合内の観測可能量は互換性がない可能性があり、たとえば、各観測可能量が集合内の他の多くの観測可能量と一致しない可能性がある。
【0081】
この例に適用したとき、現在説明されている技法によって達成される量子優位性は、以下のように要約できる。n量子ビットの状態にわたる分布および観測可能量の集合が存在し、従来のシナリオでは、その集合から選択された1つの観測可能量の絶対値を予測するために少なくとも2n程度の実験が必要とされ、一方、現在説明されている量子強化シナリオでは、一定の実験回数で十分である。
【0082】
指数関数的な量子優位性は、状態ρがエンタングルされてない場合でも起こり得る。たとえば、いくつかの実験では、ρ∝(I+αP)であり、Pはn量子ビットのパウリ演算子であり、α∈(-1,1)である。この状態は、各々が固有値αを持つPの固有状態である積状態の確率的アンサンブルとして実現することができる。状態がこのような形であることは既知であるが、P、αが不明の場合でも、従来の実験と量子増強実験との間には指数関数的な分離は存続する。さらに、量子優位性は、ρのコピーのペアに対して単純なエンタングル測定を行うことによって達成することができる。n量子ビット間の相関が古典的なときであっても、量子優位性が適用されることは、量子強化戦略が幅広いクラスのセンシングの用途において有益であることを示している。
【0083】
図7は、物理状態を学習するために現在説明されている技法を使用して達成された量子優位性を示す図700である。特に、この図は、物理状態に関するパウリ観測可能量の期待値の大きさを推定するタスクに対応する結果を示している。この例では、物理状態は、ρ=2-n(I+αP)のエンタングルなしのn量子ビット状態であり、式中、α=±0.95、Pはパウリ演算子であり、両方のαは不明である。すべての測定が完了し、学習が終了した後、2つの異なるパウリ演算子Q1とQ2がアナウンスされ、その一方はPであり、他方はPと等しくない。マシンは、|tr(Q1ρ)|と|tr(Q2ρ)|のどちらが大きいかを決定するように構成される。
【0084】
図700の部分(a)は、量子強化実験のN回の繰り返しが実行され、対応するデータが教師あり機械学習モデル、たとえばゲート型リカレントニューラルネットワーク(GRU)に供給され、予測を行うことを示している。ρのコピーを1つずつ測定する従来のシナリオでは、最もよく知られた戦略は、合理的な成功確率でタスクを達成するために指数関数的な数のコピーを必要とするランダム化クリフォード測定を使用することである。現在説明されている量子強化シナリオでは、ρのコピーを一度に2つ、量子メモリに預け、2つのコピーにわたるベル測定を行って、状態のスナップショットを抽出することができる。
【0085】
教師ありMLモデルは、2つのn量子ビットパウリ演算子のうち、どちらが未知の状態ρにおける期待値の大きさが大きいかを決定するためにトレーニングされる。この例では、トレーニング損失としてクロスエントロピーが使用されている。いくつかの実装形態では、ニューラルネットワークは、小さいシステムサイズ(n<8)のノイズのないシミュレーションデータを使用してトレーニングすることができる。次いで、大きいシステムサイズ(8≦n≦20)の実験データが提供されるとき、ニューラルネットワークは、予測に使用することができる。正しく予測する確率が予測精度として使用される。ランダムな推測は、0.5の予測精度をもたらす。図600の部分(b)に示すグラフは、ニューラルネットワークがトレーニングされたときのMLモデルの性能を示す。
【0086】
図700の部分(c)に示すグラフは、(システムサイズnに応じて)70%以上の予測精度を達成するために必要な実験回数における量子優位性を示している。ここで、(Q)は量子強化実験に基づく教師ありMLモデルの実行結果、(C)は最もよく知られた従来戦略を実行した結果に対応する。点線は、任意の従来の戦略(C、LB)について証明された下限である。ノイズの多い量子プロセッサ上で実行しても、現在説明されている量子強化実験は、理論的に達成可能な従来の結果(C、LB)を大幅に上回っていることがわかる。
【0087】
例示的な学習タスクおよび関連する量子強化実験:量子主成分分析
現在説明されている技法を実装するとき、量子優位性を達成することができる別の例示的な学習タスクは、量子主成分分析(PCA)である。このタスクでは、各実験でρの1つのコピーを生成し、ρの(第1の)主成分、すなわち最大の固有値を持つρの固有状態|ψ>の特性を予測することを目標とする。たとえば、状態|ψ>におけるいくつかの観測可能量の期待値を予測する必要があり得る。このタスクは、将来の量子センシングの用途において貴重なものになり得る。不完全な量子センサーが検出された量子状態を量子メモリに変換すると、状態はノイズによって破壊される可能性がある。しかし、主成分の特性はノイズに対して比較的ロバストであり、したがって破壊されていない状態について非常に有益であると期待するのは妥当である。
【0088】
この例に適用したとき、現在説明されている技法によって達成される量子優位性は、以下のように要約できる。従来のシナリオでは、未知のn量子ビットの量子状態の主成分の固定された性質を学習するために、少なくとも2n/2程度の実験が必要であるが、量子強化シナリオでは、一定数の実験で十分である。
【0089】
例示的な学習タスクおよび関連する量子強化実験:量子ダイナミクスの学習
現在説明されている技法を使用して実行できる別の例示的な学習タスクは、物理状態ではなく物理プロセスの特性を学習することである。これらの例では、各実験は物理プロセスεを実行する。物理プロセスεは、量子強化設定では量子マシンを介して、従来の設定では古典マシンを介してインターフェースされる(図1を参照して上述したように)。
【0090】
これらの例では、量子マシンは、任意の多項式時間量子プロセスεの近似モデルを、多項式数の実験のみから学習することができる。入力状態に関する分布が与えられた場合、近似モデルは、εからの出力状態を平均して正確に予測することができる。対照的に、従来の設定で同じタスクを達成するために、指数関数的な数の実験が必要となる。すなわち、この例に適用したとき、現在説明されている技法によって達成される量子優位性は、以下のように要約できる。n量子ビットに作用する多項式時間物理プロセスε、およびn量子ビット入力状態にわたる確率分布について検討する。従来のシナリオでは、出力状態を平均して正確に予測するεの近似モデルを学習するために、少なくとも2n程度の実験が必要であるが、量子強化シナリオでは、多項式数の実験で十分である。
【0091】
図8は、物理プロセスを学習するために現在説明されている技法を使用して達成された量子優位性を示す図800である。特に、図は、教師なしMLを使用して、未知の進化演算子の対称クラスを認識することを学習するタスクに対応する結果を示している(ここで、未知の進化演算子は、すべてのユニタリー変換のクラス、または時間反転対称ユニタリー変換(すなわち、実直交変換)のクラスのいずれかから描画される)。
【0092】
従来のシナリオでは、未知の進化演算子を初期状態
【0093】
【数1】
【0094】
に繰り返し適用し、出力状態の各量子ビットがYベースで測定される。T対称進化では、出力状態は純粋な実数振幅を有し、したがって、たとえばPauli-Y演算子のような純粋に架空の観測可能量の期待値は常にゼロである。対照的に、一般的なユニタリー進化後のYの期待値は一般に非ゼロであるが、指数関数的に小さい可能性があり、したがって、ゼロと区別するのは難しい。量子強化シナリオでは、n個の追加のメモリ量子ビットが使用される。n個のシステム量子ビットがn個のメモリ量子ビットとエンタングルされた初期状態が準備される。システム量子ビットは未知の進化演算子下で進化する。システム量子ビットとメモリ量子ビットはスワップされ、システム量子ビットは再度進化する。次いでn回のベル測定が行われ、各々が1つのシステム量子ビットおよび1つのメモリ量子ビットに作用する。
【0095】
図800の部分(a)に示すように、物理プロセスεkごとに、複数回の、たとえば500回の量子増強実験の繰り返し(各々εkに2回アクセスする)を実行することができる。データは、異なる物理的ダイナミクスε12,...を記述するための一次元表現を学習するために、教師なしMLモデルに供給される。あるいは、教師なしMLは、物理プロセスεkごとに、最もよく知られた従来の実験(各々εkに1回アクセスする)の1000回の繰り返しから取得されたデータに適用することもできる。
【0096】
各進化演算子は、図800の部分(d)に示すように、1次元または2次元のn量子ビットの量子回路である。両方の対称性クラスから多くの異なる進化演算子をサンプリングした後(かつ、サンプリングされた各進化からデータを複数回取得した後)、進化演算子の1次元表現を見つけるために、教師なしMLモデルが使用される。教師なしMLモデルによって学習された表現は、図800の部分(b)および(c)に示されている。
【0097】
図の部分(b)は、1Dダイナミクスのために教師なしMLによって学習された表現を示す。各ポイントは、異なる物理プロセスεkに対応する。下部の縦線は、各εkの正確な1D表現を示す。プロセスの半分は時間反転対称性を満たしているが(菱形)、残りの半分は満たしていない(丸印)。図の部分(c)は、2Dダイナミクスのために教師なしMLによって学習された同様の表現を示す。図800の部分(b)および(c)は、量子強化データを使用して、MLモデルが2つの対称クラス間の明確な分離を発見する(量子強化のケースでは、一般的な対称クラスの結果はグラフの左側に表示されるのに対し、T対称クラスの結果は右側にのみ表示される)。従来の実験からのデータを使用するとき、クラスへの識別可能な分離はない(一般クラスおよびT対称クラスの結果が混在し、目に見える分離はない)。量子強化実験からの信号は十分に強く、ラベル付けされたいかなるトレーニングデータにアクセスしなくても、2つのクラスは簡単に認識される。図の部分(d)は、1D(上)および2D(下)のダイナミクスを実装するための接続性ジオメトリの2つの例示的なクラスを示している。
【0098】
本明細書に記載の主題および動作の実装形態は、デジタル電子回路、アナログ電子回路、適切な量子回路、またはより一般的には、量子計算システム、有形に具現化されたソフトウェアまたはファームウェア、本明細書に開示される構造およびそれらの構造的均等物を含むコンピュータハードウェア、またはそれらの1つもしくは複数の組合せで実装することができる。「量子計算システム」という用語は、限定はしないが、量子コンピュータ、量子情報処理システム、量子暗号システム、または量子シミュレータを含み得る。
【0099】
本明細書に記載の主題の実装形態は、1つまたは複数のコンピュータプログラム、すなわち、データ処理装置によって実行される、またはデータ処理装置の動作を制御するための有形の非一時的記憶媒体上に符号化されたコンピュータプログラム命令の1つまたは複数のモジュールとして実装することができる。コンピュータ記憶媒体は、機械可読記憶デバイス、機械可読記憶基板、ランダムまたはシリアルアクセスメモリデバイス、1つもしくは複数の量子ビット、またはそれらの1つもしくは複数の組合せとすることができる。代替的に、または追加として、プログラム命令は、データ処理装置によって実行するための適切な受信機装置への送信のためにデジタルおよび/または量子ビット情報を符号化するために生成された、たとえば、機械生成電気、光学、または電磁信号などの、デジタルおよび/または量子情報を符号化することができる人工的に生成された伝搬信号上で符号化することができる。
【0100】
量子情報および量子データという用語は、量子システムによって搬送され、保持され、または量子システムに記憶される情報またはデータを指し、最小の非自明なシステムは、量子ビット、すなわち、量子情報の単位を定義するシステムである。「量子ビット」という用語は、対応する文脈において2レベルシステムとして適切に近似され得るすべての量子システムを包含することが理解される。そのような量子システムは、たとえば、2つ以上のレベルを有するマルチレベルシステムを含み得る。例として、そのようなシステムは、原子、電子、光子、イオン、または超伝導量子ビットを含むことができる。多くの実装形態では、計算基底状態は、グランドおよび第1の励起状態で識別されるが、計算状態がより高いレベルの励起状態で識別される他の設定も可能であることが理解される。
【0101】
「データ処理装置」という用語は、デジタルおよび/または量子データ処理ハードウェアを指し、例として、プログラマブルデジタルプロセッサ、プログラマブル量子プロセッサ、デジタルコンピュータ、量子コンピュータ、複数のデジタルおよび量子プロセッサまたはコンピュータ、ならびにそれらの組合せを含む、デジタルおよび/または量子データを処理するためのあらゆる種類の装置、デバイス、およびマシンを包含する。また、装置は、専用論理回路、たとえば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、ASIC(特定用途向け集積回路)、または量子シミュレータ、すなわち、特定の量子システムに関する情報をシミュレートまたは生成するように設計された量子データ処理装置とすることもでき、またはそれをさらに含むこともできる。特に、量子シミュレータは、汎用量子計算を実行する能力を持たない専用量子コンピュータである。装置は、任意選択で、ハードウェアに加えて、デジタルおよび/または量子コンピュータプログラムの実行環境を作成するコード、たとえば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、またはそれらの1つまたは複数の組合せを構成するコードを含むことができる。
【0102】
プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、モジュール、ソフトウェアモジュール、スクリプト、またはコードとも呼ばれる、または記述されることもあるデジタルコンピュータプログラムは、コンパイルもしくはインタープリタ型言語、宣言型言語もしくは手続き型言語を含む、任意の形式のプログラミング言語で記述することができ、それは、スタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくはデジタルコンピューティング環境での使用に適した他のユニットとしてなど、あらゆる形式で展開できる。プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、モジュール、ソフトウェアモジュール、スクリプト、またはコードとも呼ばれるまたは記述されることもある量子コンピュータプログラムは、コンパイルもしくはインタープリタ型言語、宣言型言語もしくは手続き型言語を含む、任意の形式のプログラミング言語で記述することができ、適切な量子プログラミング言語に変換することができ、あるいは、たとえばQCLまたはQuipperなどの量子プログラミング言語で記述することもできる。
【0103】
コンピュータプログラムは、必ずしも必要はないが、ファイルシステム内のファイルに対応し得る。プログラムは、当該のプログラム専用の単一のファイル、または、たとえば、1つまたは複数のモジュール、サブプログラム、もしくはコードの一部を記憶するファイルなど、複数のコーディネートされたファイルに、たとえば、マークアップ言語文書に記憶された1つまたは複数のスクリプトなど、他のプログラムまたはデータを保持するファイルの一部に記憶することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、または1つのサイトに位置するか、もしくは複数のサイトに分散され、デジタルおよび/または量子データ通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように配備することができる。量子データ通信ネットワークとは、量子システム、たとえば量子ビットなどを使用して、量子データを送信し得るネットワークであると理解されている。一般に、デジタルデータ通信ネットワークは量子データを送信することはできないが、量子データ通信ネットワークは量子データとデジタルデータの両方を送信することができる。
【0104】
本明細書で記述されたプロセスおよび論理フローは、必要に応じて1つまたは複数のプロセッサを使用して動作し、入力データ上で動作し、出力を生成することによって機能を実行するために、1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する1つまたは複数のプログラム可能コンピュータによって実行することができる。プロセスおよび論理フローは、たとえばFPGAまたはASICなどの専用論理回路として、もしくは量子シミュレータとして、または専用論理回路もしくは量子シミュレータと1つまたは複数のプログラムされたデジタルおよび/もしくは量子コンピュータとの組合せによっても実行することができる。
【0105】
1つまたは複数のコンピュータのシステムが特定の動作またはアクションを実行する「ように構成される」とは、システムが、動作中、システムに動作またはアクションを実行させるソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの組合せをインストールしていることを意味する。1つまたは複数のコンピュータプログラムが特定の動作またはアクションを実行するように構成されるとは、1つまたは複数のプログラムが、データ処理装置によって実行されると、装置に動作またはアクションを実行させる命令を含むことを意味する。たとえば、量子コンピュータは、量子コンピューティング装置によって実行されると、装置に演算またはアクションを実行させる命令をデジタルコンピュータから受信し得る。
【0106】
コンピュータプログラムの実行に適したコンピュータは、汎用もしくは専用プロセッサ、または任意の他の種類の中央処理装置に基づき得る。一般に、中央処理装置は、読取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、または量子データ、たとえば光子、またはそれらの組合せを送信するのに適した量子システムから命令およびデータを受信する。
【0107】
コンピュータの要素は、命令を実行または実施するための中央処理装置、ならびに命令およびデジタル、アナログ、および/または量子データを記憶するための1つまたは複数のメモリデバイスを含む。中央処理装置およびメモリは、専用論理回路または量子シミュレータによって補うまたはそこに組み込むことができる。一般に、コンピュータは、たとえば磁気、光磁気ディスク、光ディスク、または量子情報を記憶するのに適した量子システムなど、データを記憶するための1つまたは複数の大容量記憶デバイスも含み、あるいは、1つまたは複数の大容量記憶デバイスからデータを受信する、それにデータを転送する、またはその両方のために動作可能に結合される。しかしながら、コンピュータはそのようなデバイスを有する必要はない。
【0108】
量子回路素子(量子計算回路素子とも呼ばれる)は、量子処理動作を実行するための回路素子を含む。すなわち、量子回路素子は、重ね合わせおよび絡み合いなどの量子力学的現象を利用して、データに対する演算を非決定論的な方法で実行するように構成される。量子ビットなどいくつかの量子回路素子は、2つ以上の状態の情報を同時に表し、操作するように構成することができる。超伝導量子回路素子の例には、とりわけ、量子LC発振器、量子ビット(たとえば、磁束量子ビット、位相量子ビット、または電荷量子ビット)、および超伝導量子干渉デバイス(SQUID)(たとえば、RF-SQUIDまたはDC-SQUID)などの回路素子がある。
【0109】
対照的に、古典回路素子は、一般に、決定論的な方法でデータを処理する。古典回路素子は、データがアナログまたはデジタル形式で表される、データに対する基本的な算術演算、論理演算、および/または入出力演算を実行することによって、コンピュータプログラムの命令を集合的に実行するように構成することができる。いくつかの実装形態では、古典回路素子を使用して、電気接続または電磁接続を介して量子回路素子にデータを送信し、かつ/または量子回路素子からデータを受信することができる。古典回路素子の例には、CMOS回路に基づく回路素子、高速単一磁束量子(RSFQ)デバイス、レシプロカル量子論理(RQL)デバイス、およびERSFQデバイスがあり、これらは、バイアス抵抗器を使用しないRSFQのエネルギー効率のよいバージョンである。
【0110】
場合によっては、量子回路素子および/または古典回路素子の一部または全部を、たとえば超伝導量子回路素子および/または古典回路素子を使用して実装することもできる。超伝導回路素子の製造は、超伝導体、誘電体、および/または金属などの1つまたは複数の材料の堆積を伴い得る。選択された材料に応じて、これらの材料は、他の堆積プロセスの中でも、化学蒸着、物理蒸着(たとえば、蒸着またはスパッタリング)、またはエピタキシャル技法などの堆積プロセスを使用して堆積することができる。本明細書に記載の回路素子を製造するプロセスは、製造中にデバイスから1つまたは複数の材料を除去することを伴い得る。除去される材料に応じて、除去プロセスは、たとえば、ウェットエッチング技法、ドライエッチング技法、またはリフトオフプロセスを含むことができる。本明細書に記載の回路素子を形成する材料は、既知のリソグラフィ技術(たとえば、フォトリソグラフィまたは電子ビームリソグラフィ)を使用してパターン形成することができる。
【0111】
超伝導量子回路素子および/または本明細書に記載の回路素子などの超伝導古典回路素子を使用する量子計算システムの動作中、超伝導回路素子は、超伝導材料が超伝導特性を示すことを可能にする温度までクライオスタット内で冷却される。超伝導体(あるいは超伝導)材料は、超伝導臨界温度以下で超伝導特性を示す材料として理解することができる。超伝導材料の例としては、アルミニウム(超伝導臨界温度1.2ケルビン)、およびニオブ(超伝導臨界温度9.3ケルビン)などがある。したがって、超伝導トレースおよび超伝導接地面などの超伝導構造は、超伝導臨界温度以下で超伝導特性を示す材料から形成される。
【0112】
特定の実装形態では、量子回路素子(たとえば、量子ビットおよび量子ビットカプラ)の制御信号は、量子回路素子に電気的および/または電磁気的に結合された古典回路素子を使用して提供され得る。制御信号は、デジタルおよび/またはアナログ形式で提供され得る。
【0113】
コンピュータプログラム命令およびデータを記憶するのに適したコンピュータ可読媒体は、一例として、たとえば、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス、たとえば内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROMおよびDVD-ROMディスク、ならびにトラップされた原子や電子などの量子システムを含むすべての形態の不揮発性デジタルおよび/もしくは量子メモリ、媒体、およびメモリデバイスを含む。量子メモリは、高い忠実度および効率で長時間量子データを記憶することができるデバイスであり、たとえば、光が伝送のために使用され、物質が重ね合わせまたは量子コヒーレンスなどの量子データの量子特徴を記憶および保存するための光-物質界面であると理解される。
【0114】
本明細書に記載の様々なシステムの制御、またはその一部は、1つまたは複数の非一時的な機械可読記憶媒体に記憶され、1つまたは複数の処理デバイス上で実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品で実施することができる。本明細書に記載のシステムまたはその一部は各々、1つまたは複数の処理デバイスと、本明細書に記載の動作を実行するための実行可能命令を記憶するメモリとを含み得る装置、方法、またはシステムとして実装され得る。
【0115】
本明細書は、多くの具体的な実装の詳細を含むが、これらは、特許請求の範囲に対する限定ではなく、むしろ特定の実装に固有であり得る特徴の説明として解釈されるものとする。別個の実装形態の文脈において本明細書で説明されるいくつかの特徴は、単一の実装形態において組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実装形態の文脈で記載されている様々な特徴は、複数の実装形態で別々にまたは任意の適切な部分組合せで実装することもできる。さらに、特徴は、いくつかの組合せで作用するものとして上述され、当初はそのように請求され得るが、いくつかの場合、請求された組合せからの1つまたは複数の特徴を、組合せから削除することができ、請求された組合せは、部分組合せ、または部分組合せの変形を対象とし得る。
【0116】
同様に、動作が特定の順序で図面に示されているが、これは、そのような動作が、示された特定の順序、または逐次的な順序で実行されること、あるいは望ましい結果を達成するために、図示されたすべての動作が実行されることを必要とするものとして理解されないものとする。いくつかの状況では、マルチタスキングおよび並列処理が有利であり得る。さらに、上述した実装形態における様々なシステムモジュールおよび構成要素の分離は、すべての実装形態においてそのような分離を必要とするものと理解されないものとし、記述されたプログラム構成要素およびシステムを、一般に、単一のソフトウェア製品に一緒に組み入れることができ、または複数のソフトウェア製品にパッケージ化することができることを理解されたい。
【0117】
主題の特定の実装形態が記載されている。他の実装形態は、以下の特許請求の範囲内にある。たとえば、特許請求の範囲に列挙されたアクションは、異なる順序で実行され、依然として望ましい結果を達成することができる。一例として、添付の図面に示されるプロセスは、望ましい結果を達成するために、示された特定の順序または逐次的な順序を必ずしも必要としない。いくつかの場合には、マルチタスキングおよび並列処理が有利であり得る。
【符号の説明】
【0118】
100 図
102 従来のプロセス
104 量子強化プロセス
200 量子データ処理システム
202 ターゲットシステム
204 量子センサー
206 データ
208 量子バッファ
210 変換データ
212 論理符号化データ
214 量子メモリ
216 量子コンピュータ
218 古典または量子コンピュータ
220 記憶されたデータ
222 測定データ
300 古典/量子コンピュータ
302 量子コンピューティングデバイス
304 制御および測定システム
306 量子ビット
308 カプラ
310 制御信号
312 読み出し信号
314 量子コンピュータ
314 古典プロセッサ
316 メモリ
318 I/Oユニット
350 古典プロセッサ
352 量子ビットアセンブリ
400 プロセス
500 プロセス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-12-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ実装方法であって、
量子状態のコピーごとに、i)量子センサーの進化した量子状態を取得するために、初期化された前記量子センサーによってターゲットシステムをプローブするステップと、ii)前記量子センサーの前記進化した量子状態を量子バッファの量子状態に変換するステップと、iii)前記量子バッファの前記量子状態を量子誤り訂正コードに論理符号化するステップと、iv)前記量子バッファの前記論理符号化された量子状態を量子メモリに移動させるステップとを含む、前記量子状態の複数のコピーを前記量子メモリに記憶するステップと、
前記量子メモリ内の前記量子状態の前記複数のコピーを量子コンピュータにロードするステップと、
精製された量子状態を取得するために、前記量子コンピュータによって、前記量子状態の前記複数のコピーを処理するステップと、
前記ターゲットシステムの特性を決定するために、前記精製された量子状態を測定するステップと
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記量子センサーが、量子コヒーレンスを維持するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記量子センサーの前記進化した量子状態が、前記プローブする時の前記ターゲットシステムの特性を符号化する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記量子センサーの前記進化した量子状態が、複数の量子ビットの状態、またはボソニックモードもしくはフォトニックモードの状態を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記量子センサーの前記進化した量子状態を取得するために、前記ターゲットシステムをプローブするステップが、有限の信号対雑音比で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記量子センサーが、前記量子センサーの前記進化した量子状態に対して完全または部分的な量子誤り訂正を実施するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記量子センサーが第1の計算媒体を含み、前記量子バッファが第2の計算媒体を含み、前記第2の計算媒体が前記第1の計算媒体とは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記量子バッファの前記量子状態を量子誤り訂正コードに論理符号化するステップが、前記量子バッファの前記量子状態にユニタリー符号化量子回路を適用するステップ、または状態注入技法を実行するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記量子誤り訂正コードが、前記精製された量子状態を取得するために前記量子コンピュータによって実行される動作、または前記量子状態の前記複数のコピーを記憶するために必要な予想持続時間の少なくとも一方に依存するコード距離を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記量子誤り訂正コードが前記量子バッファである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
精製された量子状態を取得するために、前記量子状態の前記複数のコピーを処理するステップが、前記量子状態の前記複数のコピーを精製するために線形蒸留技法を実行するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記線形蒸留技法が、量子状態蒸留、仮想状態蒸留、または量子主成分分析アルゴリズムを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ターゲットシステムの特性を決定するために、前記精製された量子状態を測定するステップが、前記ターゲットシステムの前記特性を学習するために、測定結果を量子機械学習システムに提供するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ターゲットシステムが一時的ターゲットシステムを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
量子センサー、量子バッファ、量子メモリ、および量子コンピューティングデバイスを含む量子データ処理システムであって、前記量子データ処理システムが、
量子状態のコピーごとに、i)前記量子センサーの進化した量子状態を取得するために、前記量子センサーによってターゲットシステムをプローブすることと、ii)前記量子センサーの前記進化した量子状態を前記量子バッファの量子状態に変換することと、iii)前記量子バッファの前記量子状態を量子誤り訂正コードに論理符号化することと、iv)前記量子バッファの前記論理符号化された量子状態を前記量子メモリに移動させることとを含む、前記量子状態の複数のコピーを前記量子メモリに記憶することと、
前記量子メモリ内の前記量子状態の前記複数のコピーを量子コンピュータにロードすることと、
精製された量子状態を取得するために、前記量子コンピュータによって、前記量子状態の前記複数のコピーを処理することと、
前記ターゲットシステムの特性を決定するために、前記量子コンピュータによって、前記精製された量子状態を測定することと
を含む動作を実行するように構成されている、量子データ処理システム。
【請求項16】
前記量子センサーが、量子コヒーレンスを維持するように構成されている、請求項15に記載の量子データ処理システム。
【請求項17】
前記量子センサーの前記進化した量子状態が、前記プローブする時の前記ターゲットシステムの特性を符号化する、請求項15に記載の量子データ処理システム。
【請求項18】
前記量子センサーの前記進化した量子状態が、複数の量子ビットの状態、またはボソニックモードもしくはフォトニックモードの状態を含む、請求項15に記載の量子データ処理システム。
【請求項19】
前記量子センサーが、有限の信号対雑音比で前記量子センサーの前記量子状態を進化させるために前記ターゲットシステムをプローブするように構成されている、請求項15に記載の量子データ処理システム。
【請求項20】
前記量子センサーが、前記量子センサーの前記進化した量子状態に対して完全または部分的な量子誤り訂正を実施するように構成されている、請求項15に記載の量子データ処理システム。
【請求項21】
前記量子センサーが第1の計算媒体を含み、前記量子バッファが第2の計算媒体を含み、前記第2の計算媒体が前記第1の計算媒体とは異なる、請求項15に記載の量子データ処理システム。
【請求項22】
前記量子データ処理システムが、前記量子バッファの前記量子状態を、前記量子バッファの前記量子状態へのユニタリー符号化量子回路の適用、または状態注入技法の実行により、量子誤り訂正コードに論理符号化するように構成されている、請求項15に記載の量子データ処理システム。
【請求項23】
前記量子誤り訂正コードが、前記精製された量子状態を取得するために前記量子コンピュータによって実行される動作、または前記量子状態の前記複数のコピーを記憶するために必要な予想持続時間の少なくとも一方に依存するコード距離を含む、請求項15に記載の量子データ処理システム。
【請求項24】
前記量子誤り訂正コードが前記量子バッファである、請求項15に記載の量子データ処理システム。
【請求項25】
前記量子コンピューティングデバイスが、前記量子状態の前記複数のコピーを精製するために線形蒸留技法を実行することによって、精製された量子状態を取得するために、前記量子状態の前記複数のコピーを処理するように構成されている、請求項15に記載の量子データ処理システム。
【請求項26】
前記線形蒸留技法が、量子状態蒸留、仮想状態蒸留、または量子主成分分析アルゴリズムを含む、請求項25に記載の量子データ処理システム。
【請求項27】
前記量子コンピューティングデバイスが、前記ターゲットシステムの前記特性を学習するために、前記精製された量子状態を測定することによって取得された測定結果を、量子機械学習システムに提供するように構成されている、請求項15に記載の量子データ処理システム。
【請求項28】
前記ターゲットシステムが一時的ターゲットシステムを含む、請求項15から27のいずれか一項に記載の量子データ処理システム。
【国際調査報告】