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特表2024-515803キメラ抗原受容体を発現するウイルス特異的免疫細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体を発現するウイルス特異的免疫細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20240403BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 39/245 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240403BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240403BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240403BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240403BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240403BHJP
   C12N 15/861 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
C12N5/10
C12N15/86 Z
A61K39/00 A
A61K39/245
A61K39/395 N
A61K35/17
A61P35/02
A61P37/02
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/861
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565968
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 US2022071950
(87)【国際公開番号】W WO2022232797
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/201,384
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーク、デビッド エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ルーニー、クリオナ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ラモス、カルロス エー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC12
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065BB19
4B065CA24
4B065CA44
4C085AA02
4C085AA13
4C085AA14
4C085BA80
4C085BB01
4C085BB11
4C085CC03
4C085DD24
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087MA66
4C087NA06
4C087NA14
4C087ZB02
4C087ZB07
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
【要約】
本開示の実施形態は、ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成又は拡大するための方法であって、ヒト血小板溶解物を含む細胞培養培地中で、(i)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチド;又は(ii)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)の存在下で、末梢血単核球(PBMC)を培養することによって、ウイルスに特異的な免疫細胞を刺激することを含む方法を包含する。特定の実施形態において、細胞培養培地は、特定の割合のヒト血小板溶解物を含み、及び/又はPBMCは、例えばCD45RA陽性細胞を枯渇させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト血小板溶解物を含む細胞培養培地中で、(i)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチド、又は(ii)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)の存在下で、末梢血単核球(PBMC)を培養することにより、ウイルスに特異的な免疫細胞を刺激することを含む、ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成又は拡大する方法。
【請求項2】
細胞培養培地は、1~20%v/vのヒト血小板溶解物を含み、任意に細胞培養培地が5%v/vのヒト血小板溶解物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PBMCはがCD45RA陽性細胞から枯渇している、請求項1又は請求項2に記載の方法であって、任意選択で、該方法が、CD45RA陽性細胞から枯渇したPBMCを得るために、CD45RA陽性細胞のPBMC集団を枯渇させる、先行する工程を含む、方法。
【請求項4】
ウイルスがエプスタインバーウイルス(EBV)であり、任意選択で、1つ以上のEBV抗原が、以下から構成される群から選択されるEBV抗原を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法:EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2A及びBNLF2B。
【請求項5】
細胞培養培地が5~15ng/mlのIL-7を含み、任意に細胞培養培地が約10ng/mlのIL-7を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
細胞培養培地が5~15ng/ml IL-15を含み、任意に細胞培養培地が約10ng/ml IL-15を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸をウイルスに特異的な免疫細胞に導入することをさらに含み、任意選択で、CARがCD30に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
CARをコードする核酸をウイルスに特異的な免疫細胞に導入することが、(a)CARをコードするウイルスベクター、及び(b)Vectofusin-1を含む組成物をウイルスに特異的な免疫細胞に接触させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項9】
ウイルスに特異的な免疫細胞、又はキメラ抗原受容体(CAR)もしくはCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞を、ヒト白血球抗原陰性リンパ芽球系細胞(HLA陰性LCL)の存在下で培養することをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、ウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比、又はCAR、もしくはCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比が、1:1~1:10の間であり、任意選択で、比が1:2~1:5の間であり、任意選択で、比が1:3である、方法。
【請求項11】
HLA陰性LCLの存在下での培養が、ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する外因性ペプチドの添加の非存在下で行われる、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ヒト白血球抗原陰性リンパ芽球系細胞(HLA陰性LCL)の存在下、ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する外因性ペプチドの添加の非存在下で、ウイルスに特異的な免疫細胞を培養することを含む、ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を作製又は拡大する方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、該方法が以下を含む、方法:
(i)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチド、又は(ii)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)の存在下で末梢血単核球(PBMC)を培養することにより、ウイルスに特異的な免疫細胞を刺激すること;及び
HLA陰性LCLの存在下で、ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する外来性ペプチドを添加しない状態で、ウイルスに特異的な免疫細胞を培養すること。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の方法であって、該方法が以下を含む方法:
(i)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチド、又は(ii)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)の存在下で末梢血単核球(PBMC)を培養することにより、ウイルスに特異的な免疫細胞を刺激すること;
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸をウイルスに特異的な免疫細胞に導入する工程であって、任意選択で、CARがCD30に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む、工程;及び
HLA陰性LCLの存在下で、キメラ抗原受容体(CAR)又はCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞を培養すること。
【請求項15】
ウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比、又はCAR、もしくはCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比が、1:1~1:10の間であり、任意選択で、比が1:2~1:5の間であり、任意選択で、比が1:3である、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ヒト血小板溶解物を含む細胞培養培地中でPBMCを培養することにより、ウイルスに特異的な免疫細胞を刺激することを含む、請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
細胞培養培地が1~20%v/vのヒト血小板溶解物を含み、任意に細胞培養培地が5%v/vのヒト血小板溶解物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
PBMCがCD45RA陽性細胞を枯渇させる、請求項12~18のいずれか1項に記載の方法であって、任意選択で、該方法が、CD45RA陽性細胞を枯渇させたPBMCを得るために、CD45RA陽性細胞のPBMC集団を枯渇させる、先行する工程を含む、方法。
【請求項19】
ウイルスがエプスタインバーウイルス(EBV)であり、任意選択で、1つ以上のEBV抗原が、以下から構成される群から選択されるEBV抗原を含む、請求項12~18のいずれか1項に記載の方法:EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2A及びBNLF2B。
【請求項20】
細胞培養培地が5~15ng/mlのIL-7を含み、任意に細胞培養培地が約10ng/mlのIL-7を含む、請求項12~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
細胞培養培地が5~15ng/ml IL-15を含み、任意に細胞培養培地が約10ng/ml IL-15を含む、請求項12~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
ウイルスに特異的な免疫細胞にCARをコードする核酸を導入することが、ウイルスに特異的な免疫細胞を、(a)CARをコードするウイルスベクター、及び(b)Vectofusin-1を含む組成物と接触させることを含む、請求項14~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
キメラ抗原受容体(CAR)又はCARをコードする核酸を含んでなるウイルスに特異的な免疫細胞を産生する方法であって、ウイルスに特異的な免疫細胞を、(a)CARをコードするウイルスベクター、及び(b)Vectofusin-1を含んでなる組成物と接触させることを含んでなる方法により、ウイルスに特異的な免疫細胞にCARをコードする核酸を導入することを含んでなる方法;
任意選択で、CARはCD30に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、該方法が以下を含む、方法:
末梢血単核球(PBMC)を、(i)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチド、又は(ii)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)の存在下で培養することにより、ウイルスに特異的な免疫細胞を刺激すること;及び
(a)CARをコードするウイルスベクター、及び(b)Vectofusin-1を含む組成物をウイルスに特異的な免疫細胞に接触させることを含む方法によって、CARをコードする核酸をウイルスに特異的な免疫細胞に導入すること。
【請求項25】
ヒト血小板溶解物を含む細胞培養培地中でPBMCを培養することにより、ウイルスに特異的な免疫細胞を刺激することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
細胞培養培地が1~20%v/vのヒト血小板溶解物を含み、任意に細胞培養培地が5%v/vのヒト血小板溶解物を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
PBMCがCD45RA陽性細胞を枯渇させる、請求項24~26のいずれか1項に記載の方法であって、任意選択で、該方法が、CD45RA陽性細胞を枯渇させたPBMCを得るために、CD45RA陽性細胞のPBMC集団を枯渇させる、先行する工程を含む、方法。
【請求項28】
ウイルスがエプスタインバーウイルス(EBV)であり、任意選択で、1つ以上のEBV抗原が、以下から構成される群から選択されるEBV抗原を含む、請求項24から27のいずれか1項に記載の方法:EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2A及びBNLF2B。
【請求項29】
細胞培養培地が5~15ng/mlのIL-7を含み、任意に細胞培養培地が約10ng/mlのIL-7を含む、請求項24~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
細胞培養培地が5~15ng/ml IL-15を含み、任意に細胞培養培地が約10ng/ml IL-15を含む、請求項24~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
ヒト白血球抗原陰性リンパ芽球系細胞(HLA陰性LCL)の存在下で、ウイルスに特異的な免疫細胞、又はキメラ抗原受容体(CAR)もしくはCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞を培養することをさらに含む、請求項23~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
ウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比、又はCAR、もしくはCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比が、1:1~1:10、任意選択で1:2~1:5、任意選択で1:3である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
HLA陰性LCLの存在下での培養が、ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する外因性ペプチドの添加の非存在下で行われる、請求項31又は請求項32に記載の方法。
【請求項34】
キメラ抗原受容体(CAR)又はCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞の集団を作製又は拡大する方法であって、以下を含む方法:
末梢血単核球(PBMC)を、ヒト血小板溶解物を含む細胞培養培地中で、(i)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチド、又は(ii)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)の存在下で培養することにより、ウイルスに特異的な免疫細胞を刺激すること;
a)CARをコードするウイルスベクター、及び(b)Vectofusin-1(任意選択で、ここでCARはCD30に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む)を含む組成物をウイルスに特異的な免疫細胞と接触させることを含む方法によって、CARをコードする核酸をウイルスに特異的な免疫細胞に導入すること;及び
HLA陰性LCLの存在下で、キメラ抗原受容体(CAR)、又はCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞を培養すること。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、細胞培養培地が1~20%v/vのヒト血小板溶解物を含み、任意に、細胞培養培地が5%v/vのヒト血小板溶解物を含む方法。
【請求項36】
PBMCがCD45RA陽性細胞を枯渇させる、請求項34又は請求項35に記載の方法であって、任意選択で、該方法が、CD45RA陽性細胞を枯渇させたPBMCを得るために、CD45RA陽性細胞のPBMC集団を枯渇させる、先行する工程を包含する、方法。
【請求項37】
ウイルスがエプスタイン・バー・ウイルス(EBV)であり、任意選択で、1つ以上のEBV抗原が、以下から構成される群から選択されるEBV抗原を含む、請求項34から36のいずれか1項に記載の方法:EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2A及びBNLF2B。
【請求項38】
細胞培養培地が5~15ng/mlのIL-7を含み、任意に細胞培養培地が約10ng/mlのIL-7を含む、請求項34~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
細胞培養培地が5~15ng/ml IL-15を含み、任意に、細胞培養培地が約10ng/ml IL-15を含む、請求項34~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
CAR、又はCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比が、1:1~1:10の間であり、任意選択で、比が1:2~1:5の間であり、任意選択で、比が1:3である、請求項34~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
HLA陰性LCLの存在下での培養が、ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する外因性ペプチドの添加の非存在下で行われる、請求項34~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
請求項1~41のいずれか1項に記載の方法によって得られた、又は得られる細胞又は細胞の集団。
【請求項43】
請求項42に記載の細胞又は細胞集団と、薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤又は希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項44】
医学的治療又は予防の方法において使用するための、請求項42に記載の細胞又は細胞の集団、又は請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
がんを治療又は予防する方法に使用するための、請求項42に記載の細胞又は細胞集団、あるいは請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項46】
がんを治療又は予防するための医薬の製造における、請求項42に記載の細胞又は細胞集団、又は請求項43に記載の医薬組成物の使用。
【請求項47】
がんを治療又は予防する方法であって、請求項42に記載の細胞もしくは細胞集団、又は請求項43に記載の医薬組成物の治療的もしくは予防的に有効な量を被験体に投与することを含む方法。
【請求項48】
がんが、CD30陽性がん、EBV関連がん、血液がん、骨髄性血液悪性腫瘍、造血器悪性腫瘍、リンパ芽球性血液悪性腫瘍、骨髄異形成症候群、白血病、T細胞白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞性非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、EBV関連リンパ腫、EBV陽性B細胞リンパ腫、EBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、X連鎖性リンパ増殖性障害に伴うEBV陽性リンパ腫、HIV感染/AIDSに伴うEBV陽性リンパ腫、口腔毛髪状白板症、バーキットリンパ腫、移植後リンパ増殖性疾患、中枢神経系リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ALK陽性未分化T細胞リンパ腫、ALK陰性未分化T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、NK-T細胞リンパ腫、節外NK-T細胞リンパ腫、胸腺腫、多発性骨髄腫、固形がん、上皮細胞がん、胃がん、胃がん、胃腺がん、消化管腺がん、肝臓がん、肝細胞がん、胆管がん、頭頸部がん、頭頸部扁平上皮がん、口腔がん、中咽頭がん、口腔がん、喉頭がん、上咽頭がん、食道がん、大腸がん、大腸がん、結腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肺腺がん、肺扁平上皮がん、膀胱がん、尿路上皮がん、皮膚がん、黒色腫、進行黒色腫、腎細胞がん、腎細胞がん、卵巣がん、卵巣がん、中皮腫、乳がん、脳腫瘍、神経膠芽腫、前立腺がん、膵臓がん、肥満細胞症、進行性全身性肥満細胞症、胚細胞腫瘍又は精巣胚性がんから構成される群から選択される、請求項45~47のいずれか1項に記載の使用、使用、又は方法のための細胞、細胞集団、又は医薬組成物。
【請求項49】
万能性免疫反応を特徴とする疾患又は病態を治療又は予防する方法に用いるための、請求項42に記載の細胞又は細胞集団、あるいは請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項50】
アレルギー反応性免疫応答を特徴とする疾患又は病態を治療又は予防するための医薬の製造における、請求項42に記載の細胞又は細胞集団、又は請求項43に記載の医薬組成物の使用。
【請求項51】
請求項42に記載の細胞もしくは細胞集団、又は請求項43に記載の医薬組成物の治療的もしくは予防的に有効な量を被験体に投与することを含む、同種反応性免疫応答を特徴とする疾患又は状態を治療又は予防する方法。
【請求項52】
請求項49~51のいずれか1項に記載の使用、使用、又は方法のための細胞、細胞集団、又は医薬組成物であって、アロレアクティブ免疫応答によって特徴付けられる疾患又は状態が、同種移植に関連する疾患又は状態である、細胞、細胞集団、又は医薬組成物。
【請求項53】
疾患又は病態が移植片対宿主病(GVHD)である、請求項49~52のいずれか1項に記載の使用、使用、又は方法のための細胞、細胞集団、又は医薬組成物。
【請求項54】
疾患又は病態が移植片拒絶反応である、請求項49~52のいずれか1項に記載の使用、使用、又は方法のための細胞、細胞集団、又は医薬組成物。
【請求項55】
移植片を採取する前に、治療的又は予防的に有効な量の細胞、細胞集団、又は医薬組成物を移植片のためのドナー被験体に投与することを含む、請求項49~54のいずれか1項に記載の使用、使用、又は方法のための細胞、細胞集団、又は医薬組成物。
【請求項56】
請求項49~55のいずれか1項に記載の使用、使用、又は方法のための細胞、細胞集団、又は医薬組成物であって、該方法が、治療上又は予防上有効な量の細胞、細胞集団、又は医薬組成物を、同種移植のためにレシピエント被験体に投与することを含む、細胞、細胞集団、又は医薬組成物。
【請求項57】
請求項49~56のいずれか1項に記載の使用、使用、又は方法のための細胞、細胞集団、又は医薬組成物であって、該方法が、治療上又は予防上有効な量のウイルス特異的免疫細胞又は組成物と同系移植を接触させることを含む、細胞、細胞集団、又は医薬組成物。
【請求項58】
同種移植により疾患又は状態を治療又は予防する方法に使用するための、請求項42に記載の細胞又は細胞集団、又は請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項59】
同種移植による疾患又は状態の治療又は予防のための医薬の製造における、請求項42に記載の細胞又は細胞集団、又は請求項43に記載の医薬組成物の使用。
【請求項60】
請求項42に記載の細胞もしくは細胞集団、又は請求項43に記載の医薬組成物の治療的もしくは予防的に有効な量を被験体に投与することを含む、同種移植による疾患又は病態の治療又は予防方法。
【請求項61】
請求項58~60のいずれか1項に記載の使用、使用、又は方法のための細胞、細胞集団、又は医薬組成物であって、該方法が、同種移植を採取する前に、同種移植のためのドナー被験体に、治療的又は予防的に有効な量の細胞、細胞集団、又は医薬組成物を投与することを含む、細胞、細胞集団、又は医薬組成物。
【請求項62】
請求項58~61のいずれか1項に記載の使用、使用、又は方法のための細胞、細胞集団、又は医薬組成物であって、該方法が、治療上又は予防上有効な量の細胞、細胞集団、又は医薬組成物を、レシピエント被験体に同種移植のために投与することを含む、細胞、細胞集団、又は医薬組成物。
【請求項63】
該方法が、治療的又は予防的に有効な量の該細胞、細胞集団、又は医薬組成物を同胞移植に接触させることを含む、請求項58~62のいずれか1項に記載の使用、使用、又は方法のための細胞、細胞集団、又は医薬組成物。
【請求項64】
同種移植が同種免疫細胞の養子移入を含む、請求項58~63のいずれか1項に記載の使用、使用、又は方法のための細胞、細胞集団、又は医薬組成物。
【請求項65】
疾患又は病態がT細胞機能不全障害、がん又は感染症である、請求項58~64のいずれか1項に記載の使用、使用、又は方法のための細胞、細胞集団、又は医薬組成物。
【請求項66】
アレルギー反応性免疫細胞を殺傷する方法であって、アレルギー反応性免疫細胞を、請求項42に記載の細胞もしくは細胞集団、又は請求項43に記載の医薬組成物と接触させることを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年4月27日に出願された米国仮出願第63/201,384号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、分子生物学及び細胞生物学に関するものであり、また医学的治療法及び予防法に関するものでもある。
【背景技術】
【0003】
血液悪性腫瘍における自己キメラ抗原受容体(CAR)T細胞の成功にもかかわらず、この根治的治療となりうる治療法の普及には障壁が存在する。製造の失敗、注入前に病勢が進行すること、法外な費用がかかることなどが、多くの患者にとって禁忌となっている。すぐに利用できるCAR T細胞の選択肢が緊急に必要である。
【0004】
健康なドナーに由来し、迅速に投与できる「既製品」のT細胞製剤は、養子細胞免疫療法へのアクセスを改善し、コストを削減する。しかし、「市販の」CAR T細胞療法の開発は、2つの大きな落とし穴によって妨げられてきた。すなわち、非血縁ドナー由来のポリクローナルに活性化されたCAR T細胞が移植片対宿主病(GVHD)を引き起こす可能性と、レシピエントの同種反応性(alloreactive)T細胞による同種CAR T細胞の拒絶反応である。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様において、本開示は、ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成又は拡大するための方法であって、ヒト血小板溶解物を含む細胞培養培地中で、(i)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチド;又は(ii)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)の存在下で、末梢血単核球(PBMC)を培養することによって、ウイルスに特異的な免疫細胞を刺激することを含む方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態において、細胞培養培地は1~20%v/vのヒト血小板溶解物を含み、任意に、細胞培養培地は5%v/vのヒト血小板溶解物を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、PBMCはCD45RA陽性細胞から枯渇しており、任意選択で、本方法は、CD45RA陽性細胞から枯渇したPBMCを得るために、CD45RA陽性細胞のPBMC集団を枯渇させるという先行工程を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、ウイルスは、エプスタインバーウイルス(EBV)であり、任意選択で、1つ以上のEBV抗原は、以下から構成される群より選択されるEBV抗原を含む:EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2A及びBNLF2B。
【0009】
いくつかの実施形態では、細胞培養培地は5~15ng/mlのIL-7を含み、任意に細胞培養培地は約10ng/mlのIL-7を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、細胞培養培地は5~15ng/mlのIL-15を含み、任意に細胞培養培地は約10ng/mlのIL-15を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、本方法は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸をウイルスに特異的な免疫細胞に導入することをさらに含み、任意選択で、CARは、CD30に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、ウイルスに特異的な免疫細胞にCARをコードする核酸を導入することは、ウイルスに特異的な免疫細胞を、(a)CARをコードするウイルスベクター、及び(b)Vectofusin-1を含む組成物と接触させることを含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、本方法は、ヒト白血球抗原陰性リンパ芽球系細胞(HLA陰性LCL)の存在下で、ウイルスに特異的な免疫細胞、又はキメラ抗原受容体(CAR)もしくはCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞を培養することをさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、ウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比、又はCAR、もしくはCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比は、1:1~1:10の間であり、任意選択で、比は1:2~1:5の間であり、任意選択で、比は1:3である。
【0015】
いくつかの実施形態では、HLA陰性LCLの存在下での培養は、ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する外因性ペプチドの添加がない状態で行われる。
【0016】
本開示はまた、ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成又は拡大する方法であって、ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する外因性ペプチドが添加されていない状態で、ヒト白血球抗原陰性リンパ芽球様細胞(HLA陰性LCL)の存在下でウイルスに特異的な免疫細胞を培養することを含む方法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態において、本方法は以下を含む:
(i)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチド;又は(ii)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)の存在下で末梢血単核球(PBMC)を培養することによって、ウイルスに特異的な免疫細胞を刺激すること;及び
HLA陰性LCLの存在下で、ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する外来性ペプチドを添加しない状態で、ウイルスに特異的な免疫細胞を培養すること。
【0018】
いくつかの実施形態において、本方法は以下を含む:
末梢血単核球(PBMC)を、(i)ウイルスの1つ又は複数の抗原の全部又は一部に対応する1つ又は複数のペプチド、又は(ii)ウイルスの1つ又は複数の抗原の全部又は一部に対応する1つ又は複数のペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)の存在下で培養することによって、ウイルスに特異的な免疫細胞を刺激すること;
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸をウイルスに特異的な免疫細胞に導入する工程であって、任意選択で、CARがCD30に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む、工程;及び
HLA陰性LCLの存在下で、キメラ抗原受容体(CAR)又はCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞を培養すること。
【0019】
いくつかの実施形態において、ウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比、又はCAR、もしくはCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比は、1:1~1:10の間であり、任意選択で、比は1:2~1:5の間であり、任意選択で、比は1:3である。
【0020】
いくつかの実施形態において、本方法は、ヒト血小板溶解物を含む細胞培養培地中でPBMCを培養することにより、ウイルスに特異的な免疫細胞を刺激することを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、細胞培養培地は1~20%v/vのヒト血小板溶解物を含み、任意に、細胞培養培地は5%v/vのヒト血小板溶解物を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、PBMCはCD45RA陽性細胞から枯渇しており、任意選択で、本方法は、CD45RA陽性細胞から枯渇したPBMCを得るために、CD45RA陽性細胞のPBMC集団を枯渇させるという先行工程を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、ウイルスは、エプスタインバーウイルス(EBV)であり、任意選択で、1つ以上のEBV抗原は、以下から構成される群より選択されるEBV抗原を含む:EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2A及びBNLF2B。
【0024】
いくつかの実施形態では、細胞培養培地は5~15ng/mlのIL-7を含み、任意に細胞培養培地は約10ng/mlのIL-7を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、細胞培養培地は5~15ng/mlのIL-15を含み、任意に細胞培養培地は約10ng/mlのIL-15を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、ウイルスに特異的な免疫細胞にCARをコードする核酸を導入することは、ウイルスに特異的な免疫細胞を、(a)CARをコードするウイルスベクター、及び(b)Vectofusin-1を含む組成物と接触させることを含む。
【0027】
本開示はまた、キメラ抗原受容体(CAR)、又はCARをコードする核酸を含む、ウイルスに特異的な免疫細胞を産生する方法であって、ウイルスに特異的な免疫細胞を、(a)CARをコードするウイルスベクター、及び(b)Vectofusin-1を含む組成物と接触させることを含む方法によって、ウイルスに特異的な免疫細胞にCARをコードする核酸を導入することを含む方法を提供する;
任意選択で、CARはCD30に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、本方法は以下を含む:
以下の存在下で末梢血単核球(PBMC)を培養することによって、ウイルスに特異的な免疫細胞を刺激する:(i)ウイルスの1つもしくは複数の抗原の全部もしくは一部に対応する1つもしくは複数のペプチド;又は(ii)ウイルスの1つもしくは複数の抗原の全部もしくは一部に対応する1つもしくは複数のペプチドを提示する抗原提示細胞(APC);及び
(a)CARをコードするウイルスベクター、及び(b)Vectofusin-1を含む組成物をウイルスに特異的な免疫細胞に接触させることを含む方法によって、CARをコードする核酸をウイルスに特異的な免疫細胞に導入すること。
【0029】
いくつかの実施形態において、本方法は、ヒト血小板溶解物を含む細胞培養培地中でPBMCを培養することにより、ウイルスに特異的な免疫細胞を刺激することを含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、細胞培養培地は、1~20%v/vのヒト血小板溶解物を含み、任意選択で、細胞培養培地は、5%v/vのヒト血小板溶解物を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、PBMCはCD45RA陽性細胞から枯渇しており、任意選択で、本方法は、CD45RA陽性細胞から枯渇したPBMCを得るために、CD45RA陽性細胞のPBMC集団を枯渇させるという先行工程を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、ウイルスは、エプスタインバーウイルス(EBV)であり、任意選択で、1つ以上のEBV抗原は、以下から構成される群より選択されるEBV抗原を含む:EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2A及びBNLF2B。
【0033】
いくつかの実施形態では、細胞培養培地は5~15ng/mlのIL-7を含み、任意に細胞培養培地は約10ng/mlのIL-7を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、細胞培養培地は5~15ng/mlのIL-15を含み、任意に細胞培養培地は約10ng/mlのIL-15を含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、本方法は、ヒト白血球抗原陰性リンパ芽球系細胞(HLA陰性LCL)の存在下で、ウイルスに特異的な免疫細胞、又はキメラ抗原受容体(CAR)もしくはCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞を培養することをさらに含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、ウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比、又はCAR、もしくはCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比は、1:1~1:10の間であり、任意選択で、比は1:2~1:5の間であり、任意選択で、比は1:3である。
【0037】
いくつかの実施形態では、HLA陰性LCLの存在下での培養は、ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する外因性ペプチドの添加がない状態で行われる。
【0038】
本開示はまた、キメラ抗原受容体(CAR)、又はCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞の集団を作製又は拡大する方法であって、以下を含む方法を提供する:
末梢血単核球(PBMC)を、ヒト血小板溶解物を含む細胞培養培地中で、(i)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチド、又は(ii)ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)の存在下で培養することにより、ウイルスに特異的な免疫細胞を刺激すること;
a)CARをコードするウイルスベクター、及び(b)Vectofusin-1(任意選択で、ここでCARはCD30に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む)を含む組成物をウイルスに特異的な免疫細胞と接触させることを含む方法によって、CARをコードする核酸をウイルスに特異的な免疫細胞に導入すること;及び
HLA陰性LCLの存在下で、キメラ抗原レセプター(CAR)又はCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞を培養すること。
【0039】
いくつかの実施形態において、細胞培養培地は1~20%v/vのヒト血小板溶解物を含み、任意に、細胞培養培地は5%v/vのヒト血小板溶解物を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、PBMCはCD45RA陽性細胞から枯渇しており、任意選択で、本方法は、CD45RA陽性細胞から枯渇したPBMCを得るために、CD45RA陽性細胞のPBMC集団を枯渇させるという先行工程を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、ウイルスは、エプスタインバーウイルス(EBV)であり、任意選択で、1つ以上のEBV抗原は、以下から構成される群より選択されるEBV抗原を含む:EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2A及びBNLF2B。
【0042】
いくつかの実施形態では、細胞培養培地は5~15ng/mlのIL-7を含み、任意に細胞培養培地は約10ng/mlのIL-7を含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、細胞培養培地は5~15ng/mlのIL-15を含み、任意に細胞培養培地は約10ng/mlのIL-15を含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、CAR、又はCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比は、1:1~1:10の間であり、任意選択で、比は1:2~1:5の間であり、任意選択で、比は1:3である。
【0045】
いくつかの実施形態では、HLA陰性LCLの存在下での培養は、ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する外因性ペプチドの添加がない状態で行われる。
【0046】
本開示はまた、本開示による方法によって得られる、又は得られる細胞又は細胞の集団を提供する。
【0047】
本開示はまた、本開示による細胞又は細胞集団と、薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤又は希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0048】
本開示はまた、医学的治療又は予防の方法において使用するための、本開示による細胞、細胞の集団、又は医薬組成物を提供する。
【0049】
本開示はまた、がんを治療又は予防する方法において使用するための、本開示による細胞、細胞の集団、又は医薬組成物を提供する。
【0050】
本開示はまた、がんを治療又は予防するための医薬の製造における、細胞、細胞の集団、又は本開示による医薬組成物の使用を提供する。
【0051】
本開示はまた、本開示による細胞、細胞集団、又は医薬組成物の治療的又は予防的に有効な量を被験体(対象、subject)に投与することを含む、がんを治療又は予防する方法を提供する。
【0052】
いくつかの実施形態において、がんは、CD30陽性がん、EBV関連がん、血液がん、骨髄性血液悪性腫瘍、造血器悪性腫瘍、リンパ芽球性血液悪性腫瘍、骨髄異形成症候群、白血病、T細胞白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞性非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、EBV関連リンパ腫、EBV陽性B細胞リンパ腫、EBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、X連鎖性リンパ増殖性障害に伴うEBV陽性リンパ腫、HIV感染/AIDSに伴うEBV陽性リンパ腫、口腔毛髪状白板症、バーキットリンパ腫、移植後リンパ増殖性疾患、中枢神経系リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ALK陽性未分化T細胞リンパ腫、ALK陰性未分化T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、NK-T細胞リンパ腫、節外NK-T細胞リンパ腫、胸腺腫、多発性骨髄腫、固形がん、上皮細胞がん、胃がん、胃がん、胃腺がん、消化管腺がん、肝臓がん、肝細胞がん、胆管がん、頭頸部がん、頭頸部扁平上皮がん、口腔がん、中咽頭がん、口腔がん、喉頭がん、上咽頭がん、食道がん、大腸がん、大腸がん、結腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肺腺がん、肺扁平上皮がん、膀胱がん、尿路上皮がん、皮膚がん、黒色腫、進行黒色腫、腎細胞がん、腎細胞がん、卵巣がん、卵巣がん、中皮腫、乳がん、脳腫瘍、神経膠芽腫、前立腺がん、膵臓がん、肥満細胞症、進行性全身性肥満細胞症、胚細胞腫瘍又は精巣胚性がんから構成される群から選択される。
【0053】
本開示はまた、同種反応性免疫応答を特徴とする疾患又は病態を治療又は予防する方法において使用するための、本開示による細胞、細胞集団、又は医薬組成物を提供する。
【0054】
本開示はまた、万能性免疫応答を特徴とする疾患又は状態を治療又は予防するための医薬の製造における、細胞、細胞の集団、又は本開示による医薬組成物の使用を提供する。
【0055】
本開示はまた、本開示による細胞、細胞集団、又は医薬組成物の治療的又は予防的に有効な量を被験体に投与することを含む、同種反応性免疫応答を特徴とする疾患又は状態を治療又は予防する方法を提供する。
【0056】
いくつかの実施形態において、同種移植に関連する疾患又は病態は、同種移植に関連する疾患又は病態である。
【0057】
いくつかの実施形態において、疾患又は状態は移植片対宿主病(GVHD)である。
【0058】
いくつかの実施形態では、疾患又は状態は移植片拒絶反応である。
【0059】
いくつかの実施形態において、本方法は、同胞移植を採取する前に、治療上又は予防上有効な量の細胞、細胞集団、又は医薬組成物を同胞移植のためのドナー被験体に投与することを含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、本方法は、治療上又は予防上有効な量の細胞、細胞集団、又は医薬組成物を、同種移植のためにレシピエント被験体に投与することを含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、本方法は、治療上又は予防上有効な量のウイルス特異的免疫細胞又は組成物を同胞移植に接触させることを含む。
【0062】
本開示はまた、同種移植による疾患又は病態の治療又は予防方法において使用するための、本開示による細胞、細胞集団、又は医薬組成物を提供する。
【0063】
本開示はまた、同種移植による疾患又は状態の治療又は予防のための医薬の製造における、本開示による細胞、細胞の集団、又は医薬組成物の使用を提供する。
【0064】
本開示はまた、本開示による細胞、細胞集団、又は医薬組成物の治療的又は予防的に有効な量を被験体に投与することを含む、同種移植による疾患又は状態の治療又は予防方法を提供する。
【0065】
いくつかの実施形態において、本方法は、同胞移植を採取する前に、治療上又は予防上有効な量の細胞、細胞集団、又は医薬組成物を同胞移植のためのドナー被験体に投与することを含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、本方法は、治療上又は予防上有効な量の細胞、細胞集団、又は医薬組成物を、同種移植のためにレシピエント被験体に投与することを含む。
【0067】
いくつか実施形態では、この方法は、治療上又は予防上有効な量の細胞、細胞集団、又は医薬組成物を同胞移植に接触させることを含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、同種移植は同種免疫細胞の養子移入を含んでいる。
【0069】
いくつかの実施形態では、疾患又は状態はT細胞機能障害、がん又は感染症である。
【0070】
本開示はまた、アレルギー反応性免疫細胞を死滅させる方法であって、アレルギー反応性免疫細胞を、本開示による細胞、細胞集団、又は医薬組成物と接触させることを含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0071】
(概要)
本発明者らは、GVHDを引き起こすことなく血液悪性腫瘍を除去し、同種拒絶反応を回避するためのCAR改変ウイルス特異的T細胞(CAR-VST)アプローチを開発した。
【0072】
本開示は、既製の細胞療法を含む同種組織を移植片拒絶反応から保護するため、あるいはGVHDを治療するために、同種反応性T細胞を除去する戦略を提供する。
【0073】
CD30は、同種反応性T細胞のマーカーとして同定されているため、本発明者らは、CD30に対するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する治療用T細胞(CD30.CAR)を工学的に作製することにより、CD30.CARを標的とした。CD30.CARを発現するVSTは、レシピエント被験体における同種異系免疫反応を低下させるために、同種異系療法を用いる方法に用いることができる。
【0074】
HLAが不一致のレシピエントに同種T細胞を投与することは、T細胞の一部がもともと同種反応性を有するため、GVHDなどの同種反応性免疫応答のリスクを伴う。本発明者らは、CD30.CARを発現させるためのプラットフォーム細胞としてウイルス特異的T細胞(VST)を用いた。VSTは同種レシピエントにおいてGVHDを引き起こすことがほとんどないことが示されており、これはTCRレパートリーが制限されているためと考えられる。特に、エプスタイン・バー・ウイルス特異的T細胞(EBVST)は、300人以上の同種レシピエントに投与されているが、GVHDのエビデンスはない。
【0075】
加えて、CD30.CAR発現VSTは、それ自体がレシピエントの同種反応性T細胞による拒絶反応から保護されているため、例えばCD30+がんの治療など、既製の治療薬として直接使用することができる。
【0076】
したがって、CD30.CAR VSTは、(i)同種宿主で誘発される同種反応性T細胞を排除し、(ii)GVHDを引き起こすことなく、CD30陽性がんを排除するのに必要な活性を十分な時間持続する。
【0077】
CD30.CAR発現VSTは、例えば、CD30以外の標的抗原に特異的なCARを発現するように操作することで、さらなる標的抗原を標的とするように操作することもできる。このような細胞は、標的抗原を発現する細胞を殺すことができ、CD30を発現する同種T細胞を排除することもできるため、関連する標的抗原を発現するがんなどの治療のための市販の治療薬として有用である。
【0078】
本開示は、CARを発現するウイルス特異的免疫細胞を産生するための改善された方法を提供し、合理化されたプロセスにより、強化された機能を有する細胞をもたらす。
【0079】
CAR発現ウイルス特異的免疫細胞の産生
本開示の態様及び実施形態は、CAR発現、ウイルス特異的免疫細胞を産生する方法に関し、そのような細胞の集団を生成、生産及び/又は拡大する方法を含む。
【0080】
ウイルス特異的免疫細胞の集団をin vitro/ex vivoで作製/増殖させる方法は、当業者によく知られている。典型的な培養条件(すなわち、細胞培養培地、添加剤、温度、ガス雰囲気)、細胞数、培養期間などは、例えば、Ngoら、J Immunother.(2014)37(4):193-203を参照することができ、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0081】
好都合なことに、本開示による細胞の培養は、5%COを含む加湿雰囲気中、37℃で維持され得る。細胞培養物の細胞は、当業者によって容易に決定され得るように、任意の適切な密度で樹立及び/又は維持され得る。例えば、培養物は、~0.5×10~5×10細胞/mlの培養物(例えば、~1×10細胞/ml)の初期密度で樹立され得る。
【0082】
培養は、培養量に適した任意の容器、例えば細胞培養プレートのウェル、細胞培養フラスコ、バイオリアクターなどで行うことができる。いくつかの実施形態において、細胞はバイオリアクター、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるSomerville and Dudley,Oncoimmunology(2012)1(8):1435-1437に記載されているバイオリアクターで培養される。いくつかの実施形態では、細胞はGRex細胞培養容器、例えばGRexフラスコ又はGRex 100バイオリアクター中で培養される。
【0083】
この方法は一般に、ウイルス抗原ペプチド:MHC複合体を提示する抗原提示細胞(APC)の存在下で、抗原特異的レセプターを有する細胞を含む免疫細胞集団(例えば、末梢血単核球などの異種免疫細胞集団)を、活性化と増殖を引き起こすように適切なコスト刺激とシグナル増幅を与える条件下で培養することを含む。APCは、ウイルス抗原/ペプチドをコードするウイルスに感染していてもよいし、ウイルス抗原/ペプチドを構成/発現していてもよい。刺激によりT細胞が活性化され、細胞分裂(増殖)が促進され、その結果、ウイルス抗原に特異的なT細胞集団が生成及び/又は拡大される。T細胞活性化の過程は当業者によく知られており、例えばImmunobiology,5th Edn.Janeway CA Jr,Travers P,Walport M,ら:Garland Science(2001)の第8章に詳細に記載されており、その全体が参照により組み込まれる。
【0084】
刺激後に得られる細胞集団は、刺激前の集団と比較して、ウイルスに特異的なT細胞が濃縮される(すなわち、ウイルス特異的T細胞は、刺激後の集団において増加した頻度で存在する)。このようにして、異なる特異性を有するT細胞の不均一な集団から、ウイルスに特異的なT細胞の集団が拡大/生成される。ウイルスに特異的なT細胞の集団は、刺激とそれに伴う細胞分裂によって、単一のT細胞から生成されることもある。ウイルスに特異的なT細胞の既存の集団は、ウイルスに特異的なT細胞の集団の細胞の刺激とその結果としての細胞分裂によって拡大することができる。
【0085】
本開示の態様及び実施形態は、特にEBV特異的免疫細胞に関する。したがって、いくつかの実施形態において、ウイルスはEBVであってもよく、ウイルス抗原(複数可)はEBV抗原(複数可)であってもよい。EBV特異的免疫細胞の集団を生成/拡大する方法は、例えば、WO2013/088114A1、Lapteva and Vera、Stem Cells Int.434392,Straathofら,Blood(2005)105(5):1898-1904,WO2017/202478A1,WO2018/052947A1及びWO2020/214479A1,これらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0086】
この方法は、EBV抗原ペプチド:MHC複合体に特異的なT細胞レセプター(TCR)を含むT細胞が、TCRが特異的であるEBV抗原ペプチド:MHC複合体を提示するAPCによって刺激されるステップを含む。APCは、EBV抗原/ペプチドをコードするウイルスに感染していてもよいし、EBV抗原/ペプチドを構成/発現していてもよく、EBV抗原ペプチドをMHC分子に結合して提示します。刺激によりT細胞が活性化され、細胞分裂(増殖)が促進され、その結果、EBV抗原に特異的なT細胞集団が生成及び/又は拡大される。
【0087】
本開示の方法は、典型的には、免疫細胞の集団を、ウイルス抗原に対応するペプチド(複数可)又はウイルス抗原に対応するペプチド(複数可)を提示するAPCと接触させることにより、ウイルス/ウイルス抗原に特異的な免疫細胞を刺激することを含む。このような方法ステップは、本明細書において「刺激」又は「刺激ステップ」と呼ばれることがある。このような方法ステップは、通常、in vitro/ex vivoでの細胞の培養維持を含み、「刺激培養」と呼ばれることがある。
【0088】
ある実施形態では、方法は1つ以上の追加刺激ステップを含む。すなわち、いくつかの実施形態において、方法は、刺激ステップによって得られた細胞を再刺激する1つ以上のさらなるステップを含む。このような更なる刺激ステップは、本明細書において「再刺激」又は「再刺激ステップ」と呼ばれることがある。このような方法ステップは、通常、細胞をin vitro/ex vivoで培養維持することを含み、「再刺激培養」と呼ばれることがある。
【0089】
PBMC(刺激用)又は本明細書に記載の刺激工程により得られた細胞集団(再刺激用)を、ウイルス抗原に対応するペプチド(複数可)と「接触させる」ことは、一般に、ペプチド(複数可)を含む細胞培養培地中でPBMC/細胞集団をin vitro/ex vivoで培養することを含むことが理解されよう。同様に、ウイルス抗原に対応するペプチドを提示するAPCとPBMC/細胞集団との「接触」は、一般に、APCとPBMC/細胞集団とを細胞培養培地中でin vitro/ex vivoで共培養することを含むことが理解されよう。
【0090】
いくつかの実施形態において、方法は、ウイルス抗原(例えば、EBV抗原(複数可))に対応するペプチド(複数可)とPBMCを接触させることを含む。そのような実施形態において、PBMCの集団内のAPC(例えば、樹状細胞、マクロファージ及びB細胞)は、PBMCの集団内のCD8+及び/又はCD4+T細胞のその後の活性化のために、MHCクラスI分子(交差提示)及び/又はMHCクラスII分子上に抗原を内在化(例えば、貪食、ピノサイトーシスによって)、処理及び提示する。
【0091】
参照抗原に「対応する」ペプチドは、参照抗原のアミノ酸配列を含むか、又はそのアミノ酸配列から構成される。例えば、EBVのEBNA1に「対応する」ペプチドは、EBNA1のアミノ酸配列内に見出される(すなわち、EBNA1のアミノ酸配列の部分配列である)アミノ酸配列を含むか、又はアミノ酸配列から構成される。本明細書において採用されるペプチドは、典型的には、5~30アミノ酸の長さ、例えば、5~25アミノ酸、10~20アミノ酸、又は12~18アミノ酸のうちの1つを有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20アミノ酸のいずれかの長さを有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、約15アミノ酸の長さを有する。本明細書で使用される「ペプチド」は、非同一ペプチドを含む集団を指す場合がある。
【0092】
いくつかの実施形態では、本方法は複数の抗原に対応するペプチドを用いる。そのような実施形態では、各抗原に対応する少なくとも1つのペプチドが存在する。例えば、方法がEBNA1及びLMP1に対応するペプチドを用いる場合、ペプチドは、EBNA1に対応する少なくとも1つのペプチド、及びLMP1に対応する少なくとも1つのペプチドを含む。
【0093】
ある実施形態では、本方法は参照抗原の全部又は一部に対応するペプチドを用いる。所定の抗原の全てに対応するペプチドは、抗原のアミノ酸配列の全長をカバーする。すなわち、ペプチドは一緒になって、所与の抗原のアミノ酸配列のすべてのアミノ酸を含む。所与の抗原の一部に対応するペプチドは、抗原のアミノ酸配列の一部をカバーする。ペプチドが抗原のアミノ酸配列の一部をカバーするいくつかの実施形態では、ペプチドは一緒になって、抗原のアミノ酸配列の例えば10%以上、例えば15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%のうちの1つ以上をカバーすることができる。
【0094】
ある実施形態では、この方法はオーバーラッピングペプチドを用いる。「重なり合う(Overlapping)」ペプチドは、アミノ酸、より典型的にはアミノ酸の配列を共通して有する。例示すると、第一のペプチドはEBNA1のアミノ酸配列の1位から15位に対応するアミノ酸配列からなり、第二のペプチドはEBNA1のアミノ酸配列の5位から20位に対応するアミノ酸配列から構成される。第1及び第2のペプチドは、EBNA1に対応する重複ペプチドであり、11アミノ酸だけ重複している。いくつかの実施形態では、重複ペプチドは、1~20、5~20、8~15又は10~12アミノ酸のうちの1つだけ重複する。いくつかの実施形態において、重複ペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15アミノ酸のうちの1つだけ重複する。いくつかの実施形態では、重なり合うペプチドは11アミノ酸だけ重なる。
【0095】
いくつかの実施形態において、本方法は、所定の参照抗原の全部又は一部に対応する、1~20アミノ酸だけ重なった5~30アミノ酸の長さを有するペプチドを用いる。
【0096】
いくつかの実施形態において、本方法は、所与の参照抗原の全てに対応する、11アミノ酸だけ重なる15アミノ酸の長さを有するペプチドを用いる。このようなペプチドの混合物は、本明細書では、所与の抗原について「ペプミックスペプチドプール」又は「ペプミックス」と呼ばれることがある。例えば、本明細書の実施例1で使用される「EBNA1ペプミックス」は、UniProt:P03211-1,v1.
【0097】
本開示の様々な側面に従ったいくつかの実施形態では、所与のウイルス抗原に「対応するペプチド」は、抗原に対するペプミックスであり得る。
【0098】
特定の実施形態において、方法は、1つ以上のEBV抗原に対応するペプチドを用いる。特定の実施形態において、本方法は、1つ以上のEBV抗原に対応するペプチドを用いる。いくつかの実施形態において、1つ以上のEBV抗原は、以下から選択される:EBV潜伏抗原、例えばIII型潜伏抗原(例えば、EBNA1、EBNA-LP、LMP1、LMP2A、LMP2B、BARF1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3BもしくはEBNA3C)、II型潜伏抗原(例えば、EBNA1、EBNA-LP、LMP1、LMP2A、LMP2BもしくはBARF1)、又はI型潜伏抗原(例えば、EBNA1もしくはBARF1)から選択される。EBNA1又はBARF1)、EBV溶解抗原、例えば即時型早期溶解抗原(例えばBZLF1、BRLF1又はBMRF1)、早期溶解抗原(例えば、BMLF1、BMRF1、BXLF1、BALF1、BALF2、BARF1、BGLF5、BHRF1、BNLF2A、BNLF2B、BHLF1、BLLF2、BKRF4、BMRF2、FU又はEBNA1-FUK)、及び後期溶原性抗原(例えば、BALF4、BILF1、BILF2、BNFR1、BVRF2、BALF3、BALF5、BDLF3又はgp350)。
【0099】
本開示の種々の局面に従ういくつかの実施形態において、1つ以上のEBV抗原は、BZLF1から選択されるEBV溶解抗原であるか、又はこれらを含む、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BXLF1、BALF1、BALF2、BGLF5、BHRF1、BNLF2A、BNLF2B、BHLF1、BLLF2、BKRF4、BMRF2、BALF4、BILF1、BILF2、BNFR1、BVRF2、BALF3、BALF5及びBDLF3から選択されるEBV溶解性抗原であるか、又はそれらを含む。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のEBV抗原は、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BALF2、BNLF2A、BNLF2B、BMRF2及びBDLF3から選択されるEBV溶解性抗原であるか、又はこれらを含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数のEBV抗原は、EBNA1、EBNA-LP、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B、EBNA3C、BARF1、LMP1、LMP2A及びLMP2Bから選択されるEBV潜伏抗原であるか、又はこれらを含む。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のEBV抗原は、EBNA1、LMP1、LMP2A及びLMP2Bから選択されるEBV潜伏抗原であるか、又はこれらを含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、1つ以上のEBV抗原は、EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2A及びBNLF2Bから選択される。
【0102】
いくつかの実施形態において、方法は、EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2A及びBNLF2Bに対応するペプチドを用いる。いくつかの実施形態において、本方法は、EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2A及びBNLF2Bのためのペプミックスを用いる。
【0103】
いくつかの実施形態において、方法は、PBMC(例えば、CD45RA陽性細胞を枯渇させたPBMC)を、EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2A及びBNLF2Bに対応するペプチド(複数可)と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、方法は、PBMC(例えば、CD45RA陽性細胞を枯渇させたPBMC)を、EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2A及びBNLF2Bのためのペプチドと接触させることを含む。
【0104】
いくつかの実施形態において、方法において採用されるPBMCは、CD45RA陽性細胞が枯渇している。すなわち、いくつかの実施形態において、PBMCは、「CD45RA陽性細胞枯渇PBMC」であるか、又は「CD45RA陰性PBMC」である。CD45RA陽性細胞の枯渇は、生成/拡大された細胞集団中のNK細胞及び/又は制御性T細胞の数を減少させることを意図している。
【0105】
いくつかの実施形態において、方法は、例えば本開示による刺激ステップの前に、CD45RA陽性細胞のPBMCを枯渇させるステップを含む。いくつかの実施形態において、方法は、例えば再刺激ステップの前に、本開示による刺激ステップによって得られた細胞のCD45RA陽性細胞を枯渇させるステップを含む。CD45RA陽性細胞の枯渇は、任意の適切な方法、例えば、Miltenyi(登録商標)Biotecカラム及び磁性抗CD45RA抗体コートビーズを使用する磁気活性化細胞ソーティング(MACS)などによって達成することができる。
【0106】
いくつかの実施形態において、本方法において採用されるAPCを誘導するために使用される細胞の集団は、CD45RA陽性細胞が枯渇している。すなわち、いくつかの実施形態において、APCを誘導するために使用される細胞の集団は、「CD45RA陽性細胞が枯渇した」集団又は「CD45RA陰性」集団である。例えば、APCがAPCとして採用される実施形態において、ATCは、CD45RA陽性細胞欠失PBMCの集団から誘導されてもよいし、CD45RA陰性PBMCの集団から誘導されてもよい。
【0107】
いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に記載の刺激ステップによって得られた細胞の集団を、ウイルス抗原に対応するペプチド(複数可)と接触させることを含む。そのような実施形態において、細胞集団内のAPC(例えば、樹状細胞、マクロファージ及びB細胞)は、細胞集団内のCD8+及び/又はCD4+T細胞のその後の再刺激のために、MHCクラスI分子(交差提示)及び/又はMHCクラスII分子上に抗原を内在化(例えば、貪食、ピノサイトーシスによって)、処理及び提示する。
【0108】
いくつかの実施形態において、本方法は、PBMCを、ウイルス抗原に対応するペプチドを提示するAPCと接触させることを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、本明細書に記載の刺激ステップによって得られた細胞集団を、ウイルス抗原に対応するペプチドを提示するAPCと接触させることを含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、方法は、PBMCをEBV-LCLと接触させることを含む。EBV-LCLでPBMCを刺激することによるEBV特異的免疫細胞の産生は、例えば、Straathofら、Blood(2005)105(5).1898-1904に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
EBV-LCLは、例えば、Hui-Yuenら、J Vis Exp(2011)57:3321、及びHussain及びMulherkar、Int J Mol Cell Med(2012)1(2)に記載されているように、PBMCをEBVで感染させ、長期培養後に不死化したEBV感染細胞を回収することによって調製することができる:75-87(いずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。EBV特異的T細胞は、健康なドナーの血液サンプルから単離したPBMCを、ガンマ線照射した自己EBV-LCLと共培養することによって調製することができる。
【0111】
刺激及び再刺激におけるT細胞及びAPCの共培養は、細胞培養培地中で行われる。細胞培養培地は、本開示によるT細胞及びAPCをin vitro/ex vivoで培養維持できる任意の細胞培養培地であり得る。リンパ球の培養に使用するのに適した培養培地は当業者に周知であり、例えば、RPMI-1640培地、AIM-V培地、Iscoves培地などが挙げられる。
【0112】
いくつかの実施形態において、細胞培養培地は、RPMI-1640培地(例えばAdvanced RPMI-1640培地)及び/又はクリック培地(Eagle’s Ham’s amino acids(EHAA)培地としても知られる)を含んでもよい。これらの培地の組成は当業者に周知である。RPMI-1640培地の処方は、例えば、Mooreら、JAMA(1967)199:519-524に記載されており、クリック(Click’s)培地の処方は、Clickら、Cell Immunol(1972)3:264-276に記載されている。RPMI-1640培地は、例えばThermoFisher Scientificから入手でき、クリック培地は、例えばSigma-Aldrich(カタログ番号C5572)から入手できる。Advanced RPMI-1640培地は、例えばThermoFisher Scientific(カタログ番号12633012)から入手できる。
【0113】
いくつかの実施形態において、方法は、RPMI-1640培地及びクリック培地を含む細胞培養培地中で、ウイルス抗原(例えば、EBV抗原(複数可))に対応するペプチド(複数可)と接触させたPBMCを、又はウイルス抗原(複数可)に対応するペプチド(複数可)を提示するAPCの存在下で培養することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、ウイルス抗原に対応するペプチド(単数又は複数)と接触させた、又はウイルス抗原に対応するペプチド(単数又は複数)を提示するAPCの存在下で、本明細書に記載の刺激ステップによって得られた細胞の集団を、RPMI-1640培地及びクリック培地を含む細胞培養培地中で培養することを含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、細胞培養培地は、(体積比)25~65%のRPMI-1640培地、及び25~65%のクリック培地を含む。いくつかの実施形態において、細胞培養培地は、30~60%のRPMI-1640培地、及び30~60%のクリック培地を含む。いくつかの実施形態において、細胞培養培地は、35~55%のRPMI-1640培地、及び35~55%のクリック培地を含む。いくつかの実施形態において、細胞培養培地は、40~50%のRPMI-1640培地、及び40~50%のクリック培地を含む。いくつかの実施形態において、細胞培養培地は、45%RPMI-1640培地、及び45%クリック培地を含む。特定の実施形態では、細胞培養培地は47.5%のRPMI-1640培地と47.5%のクリック培地を含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、細胞培養培地は1つ以上の細胞培養培地添加物を含んでもよい。細胞培養培地添加剤は当業者に周知であり、抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン)、L-グルタミン、サイトカイン/成長因子、血清(例えば、ヒト血清、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清アルブミン(BSA))などの成長因子に富む添加剤などが含まれる。
【0116】
in vitro/ex vivo培養によって免疫細胞の集団を産生、生成、及び/又は拡大する方法は、典型的には、成長因子を含む細胞培養培地の存在下で細胞を培養することを含む。成長因子は多くの場合、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒトAB血清など、成長因子に富む添加物の形で細胞培養液に供給される。
【0117】
本実施例において、本発明者らは、ヒト血小板溶解液(HPL)を含む細胞培養培地中で細胞を培養する方法によって産生されたCAR発現ウイルス特異的免疫細胞が、従来の成長因子に富む添加剤FBSを用いる代わりに同等の方法によって産生されたCAR発現ウイルス特異的免疫細胞と比較して、非ウイルス抗原に対するバックグラウンド反応性が再び低くなることを予期せず見出した。例えば実施例5.2を参照。
【0118】
ヒト血小板溶解液とその製造については、例えばSchallmoser and Strunk J Vis Exp.(2009)(32):1523及びSchallmoserら、Trends Biotechnol.(2020)38(1):13-23に記載されており、これらはいずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0119】
いくつかの実施形態において、細胞培養培地(すなわち、本開示に従った刺激工程及び/又は再刺激工程の)は、ヒト血小板溶解物を含む。
【0120】
いくつかの実施形態において、細胞培養培地は、(体積で)1~20%(例えば5%)のヒト血小板溶解物、例えば2.5~20%、2.5~15%、2.5~10%、又は~5%のヒト血小板溶解物のうちの1つを含む。
【0121】
本開示の種々の局面に従ういくつかの実施形態において、HPLは、Sexton Biotechnologiesから入手され得る。いくつかの実施形態において、HPLは、nLiven PR(Cat#PL-PR-100、PL-PR-500)、Stemulate(Cat#PL-SP-100、PL-SP-500、PL-NH-100、PL-NH-500)及びT-Liven PR(Cat#TL-PR-150C)から選択され得る。いくつかの実施形態において、HPLは、Schallmoser and Strunk J Vis Exp.(2009)(32)に開示される方法に従って製造され得る:1523又はSchallmoserら、Trends Biotechnol.(2020)38(1):13-23.
【0122】
細胞培養培地がHPLを含む好ましい実施形態では、細胞培養培地はHPL以外の成長因子に富む添加物を加えない。すなわち、細胞培養培地は好ましくはFBS、BSAなどを欠いている。
【0123】
いくつかの実施形態において、細胞培養培地は、0.5~5%のGlutaMax、例えば1%のGlutaMaxを含む。いくつかの実施形態において、細胞培養培地は、0.5~5%のPen/Strep、例えば1%のPen/Strepを含む。
【0124】
特定の実施形態において、細胞培養培地はL-グルタミンを含む。特定の実施形態において、細胞培養培地は、0.5~10mMのL-グルタミン、例えば1~5mMのL-グルタミン、例えば2mMのL-グルタミンを含む。
【0125】
本開示によるAPCは、プロフェッショナルAPCであってもよい。プロフェッショナルAPCは、T細胞に抗原を提示するために特化された細胞であり、細胞表面でMHC-ペプチド複合体を処理して提示することに効率的であり、高レベルのコスティミュレイトリー分子を発現する。専門的APCには樹状細胞(DC)、マクロファージ、B細胞などがある。非専門的APCは、MHC-ペプチド複合体をT細胞、特にMHCクラスI-ペプチド複合体をCD8+T細胞に提示することができる他の細胞である。
【0126】
いくつかの実施形態において、APCは、APCによって内在化された(例えば、エンドサイトーシス/ファゴサイトーシスによって取り込まれた)抗原のMHCクラスI上での交差提示が可能なAPCである。CD8+T細胞への内在化抗原のMHCクラスI上での交差提示は、例えば、Alloattiら、Immunological Reviews(2016)、272(1)に記載されている:97-108に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。交差提示が可能なAPCとしては、例えば樹状細胞(DC)、マクロファージ、B細胞及び洞様内皮細胞が挙げられる。
【0127】
本明細書で説明するように、いくつかの実施形態において、ウイルス抗原に特異的な免疫細胞を刺激するためのAPCは、ウイルス抗原に特異的な免疫細胞を構成する細胞集団(例えば、PBMC)内に構成され、そこからウイルス抗原に特異的な細胞集団を拡大する。このような実施形態において、APCは、例えば樹状細胞、マクロファージ、B細胞、又はウイルス抗原に特異的な免疫細胞に抗原を提示することができる細胞集団内の他の細胞型であってもよい。
【0128】
いくつかの実施形態において、本方法は、ウイルス抗原(単数又は複数)/ペプチド(単数又は複数)を発現/含有するように改変されたAPCを用いる。いくつかの実施形態において、APCは、ペプチドと接触され、内在化された結果として、ウイルス抗原に対応するペプチドを提示することができる。いくつかの実施形態において、APCは、ペプチド(単数又は複数)と「パルス化」されている可能性があり、これは一般に、APCがペプチド(単数又は複数)を内在化するのに十分な期間、ペプチド(単数又は複数)の存在下でAPCをin vitroで培養することを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、APCは、細胞内で抗原をコードする核酸が発現した結果として、ウイルス抗原に対応するペプチドを提示することができる。APCは、ウイルスに感染した結果(例えば、EBV感染B細胞、例えばLCLの場合)、ウイルス抗原をコードする核酸を含んでいてもよい。APCは、例えばトランスフェクション、導入、エレクトロポレーションなどを介して、抗原をコードする核酸が細胞内に導入された結果として、ウイルス抗原をコードする核酸を含んでいてもよい。ウイルス抗原をコードする核酸は、プラスミド/ベクターで提供することができる。
【0130】
いくつかの実施形態において、APCは、活性化T細胞(ATC)、樹状細胞、B細胞(例えば、LCL、HLA陰性LCLを含む)、及びNealら、J Immunol Res Ther(2017)2(1):68~79及びTurtle and Riddell Cancer J.(2010)16(4):374~381に記載されているような人工抗原提示細胞(aAPC)から選択される。
【0131】
いくつかの実施形態では、APCは、ウイルス抗原に特異的な免疫細胞を含む免疫細胞集団の生成/増殖のために共培養される細胞集団に関して自己由来である。すなわち、いくつかの実施形態において、APCは、共培養される細胞集団が得られた被験体と同じ被験体由来である(又は、被験体から得られた細胞由来である)。
【0132】
APCとしてのポリクローナル活性化T細胞(ATC)の使用及びATCの調製方法は、例えば、Ngoら、J Immunother.(2014)37(4):193-203に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。手短に言えば、ATCは、IL-2の存在下、アゴニスト抗CD3抗体及びアゴニスト抗CD28抗体でPBMCを刺激することによって、in vitroでT細胞を非特異的に活性化することによって生成することができる。
【0133】
樹状細胞は、当技術分野で周知の方法、例えば、Ngoら、J Immunother.(2014)37(4):193-203.樹状細胞は、PBMCからのCD14選択によって得られ得る単球から調製され得る。単球は、例えばIL-4及びGM-CSFを含む未熟樹状細胞への分化を引き起こす細胞培養培地中で培養することができる。未熟樹状細胞は、IL-6、IL-1β、TNFα、PGE2、GM-CSF及びIL-4の存在下で培養することにより成熟させることができる。
【0134】
LCLは、例えば、Hui-Yuenら,J Vis Exp(2011)57:3321、及びHussain and Mulherkar,Int J Mol Cell Med(2012)1(2):75-87は、いずれも参照によりその全体が本明細書に援用される。簡単に説明すると、LCLは、シクロスポリンAの存在下で、EBVを産生する細胞、例えばB95-8細胞の濃縮細胞培養上清とPBMCをインキュベートすることによって産生することができる。
【0135】
人工抗原提示細胞(aAPC)には、コスティミュレイトリー分子CD80、CD86、CD83、4-1BBLを発現するように操作されたK562cs細胞などが含まれる(Suhoskiら,Mol Ther.(2007)15(5):981-8).
【0136】
いくつかの実施形態において、刺激ステップは、PBMCをウイルス抗原に対応するペプチドと接触させることを含む。いくつかの実施形態において、再刺激ステップは、ウイルス抗原に特異的な免疫細胞を、ウイルス抗原に対応するペプチドを提示するAPCと接触させることを含む。いくつかの実施形態において、再刺激ステップは、ウイルス抗原(単数又は複数)に特異的な免疫細胞を、ウイルス抗原(単数又は複数)に対応するペプチド(単数又は複数)を提示するATCと接触させることを含む。
【0137】
本開示の種々の態様及び実施形態に従って、ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を産生、生成及び/又は拡大するための方法は、MHCクラスI及び/又はMHCクラスIIの遺伝子発現及び/又はタンパク質発現を欠くリンパ芽球系細胞株(LCL)の細胞を用いる刺激及び/又は再刺激を含む。そのような細胞は、本明細書において、「ヒト白血球抗原(HLA)陰性リンパ芽球様細胞」、「HLA陰性LCL」、「ユニバーサルLCL」又は「ULCL」と呼ばれることがあり、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるUS2018/0250379A1に記載されている。
【0138】
LCLとその調製については本明細書で述べた。HLA陰性LCLは、MHCクラスIポリペプチド及びMHCクラスIIポリペプチドの表面発現を欠くことがある。MHCクラスIポリペプチド」とは、MHCクラスI分子の構成ポリペプチド(すなわち、MHCクラスIα鎖ポリペプチドとB2Mポリペプチドとのポリペプチド複合体)を指す。MHCクラスIIポリペプチド」とは、MHCクラスII分子の構成ポリペプチド(すなわち、MHCクラスIIα鎖ポリペプチドとMHCクラスIIβ鎖ポリペプチドとのポリペプチド複合体)を指す。表面発現とは、細胞表面(すなわち、細胞膜内又は細胞膜)で検出可能な関連ポリペプチド/ポリペプチド複合体の発現をいう。表面発現は、例えば、ポリペプチド/ポリペプチド複合体が細胞表面で発現しているときに細胞外にあるポリペプチド/ポリペプチド複合体の領域に特異的な抗原結合分子を用いて、インタクトな細胞上で分析することができる。
【0139】
いくつかの実施形態において、HLA陰性LCLは、例えば遺伝子及び/又はタンパク質の発現を検出するための適切な方法によって決定されるように、MHCクラスI及びMHCクラスIIの遺伝子/タンパク質の発現を実質的に示さない。いくつかの実施形態では、HLA陰性LCLは、MHCクラスI及びMHCクラスIIの表面発現を実質的に示さないが、例えば、MHCクラスIに結合可能な抗体及びMHCクラスIIに結合可能な抗体を用いたフローサイトメトリーによる分析によって決定される。このようなアッセイでは、関連抗体によるHLA陰性LCLの染色レベルは、同じアイソタイプ(isotype)の適切な陰性対照抗体による細胞の染色レベルより有意に大きくない場合がある。
【0140】
HLA陰性LCLは、MHCクラスI分子及びMHCクラスI分子(例えば、B2Mポリペプチド、MHCクラスIα鎖ポリペプチド(例えば、HLA-A、HLA-B又はHLA-C)、MHCクラスIIα鎖ポリペプチド(例えば、HLA-DPA1、HLA-DQA1、HLA-DQA2又はHLA-DRA)及び/又はMHCクラスIIβ鎖ポリペプチド(例えば、HLA-DPB1、HLA-DQB1、HLA-DQB2、HLA-DRB1、HLA-DRB3、HLA-DRB4又はHLA-DRB5))の1つ以上のポリペプチドの遺伝子発現及び/又はタンパク質発現を低減/防止するための改変(例えば、核酸に対する、例えば、1つ以上のヌクレオチドの挿入、置換又は欠失による)によって得られたものであってもよい。いくつかの実施形態において、HLA陰性LCLは、非修飾LCLによる遺伝子及び/又はタンパク質発現と比較して、MHCクラスIポリペプチド(例えば、B2M)の遺伝子及び/又はタンパク質発現を低減/防止する修飾、ならびに1つ以上のMHCクラスIIポリペプチド(例えば、HLA-DR、HLA-DQ、及びHLA-DP)の遺伝子及び/又はタンパク質発現を低減/防止する修飾を含む。いくつかの実施形態において、HLA陰性LCLは、B2M、HLA-DRA、HLA-DQA1、HLA-DQA2、及びHLA-DPの遺伝子発現及び/又はタンパク質発現を減少/防止する改変を含む。いくつかの実施形態において、HLA陰性LCLは、B2M、HLA-DRA、HLA-DQA1、HLA-DQA2、及びHLA-DPをコードする遺伝子を、例えば配列特異的ヌクレアーゼ(SSN)を用いて標的化ノックアウトすることによって得られ得る。SSNを用いた遺伝子編集については、Eid and Mahfouz,Exp Mol Med.2016 October;48(10):e265に総説されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、MHCクラスIポリペプチド(例えば、B2M)の遺伝子及び/又はタンパク質発現を低減/防止するための改変、及び/又は1つ以上のMHCクラスIIポリペプチド(例えば、HLA-DR、HLA-DQ、及びHLA-DP)の遺伝子及び/又はタンパク質発現を低減/防止するための改変は、関連するポリペプチド(複数可)をコードする核酸を標的とするcrRNAを含むCRISPR/Cas-9システムを使用して達成される。いくつかの実施形態において、HLA陰性LCLは、B2M、HLA-DRA、HLA-DQA1、HLA-DQA2、及びHLA-DPをコードする遺伝子を順次ノックアウトすることによって得られる。
【0141】
いくつかの実施形態では、HLA陰性LCLはさらに、EBV複製/感染に必要な1つ以上のポリペプチドをコードする核酸に対する修飾を含んでなる。EBV複製/感染を減少/予防するための修飾を含むLCLは、本明細書においてEBV複製欠損であると記載され得る。従って、いくつかの実施形態において、HLA陰性LCLはEBV複製欠損である。いくつかの実施形態において、HLA陰性LCLは、BFLF1、BFLF2、BFRF1、BFRF2及びBFRF3のうちの1つ以上をコードする核酸に対する改変(例えば、1つ以上のヌクレオチドの挿入、置換又は欠失による)を含む。いくつかの実施形態において、HLA陰性LCLは、BFLF1をコードする核酸及び/又はBFRF1をコードする核酸に対する改変を含む。いくつかの実施形態において、HLA陰性LCLは、ウイルス複製を抑制する薬剤(例えば、アシクロビル)の存在下で培養することを含む方法によって得られる。いくつかの実施形態において、EBV複製欠損HLA陰性LCLは、先行技術に記載されるLCLとのPBMCの共培養後のPBMCの集団内からのB細胞の増殖レベルと比較して、PBMCとの共培養後のPBMCの集団内からのB細胞の増殖をより少なく刺激する。いくつかの実施形態において、EBV複製欠損HLA陰性LCLは、PBMCとの共培養においてB細胞の伸長を促進する能力を欠く。EBV複製に必要な1つ又は複数のポリペプチドの遺伝子発現及び/又はタンパク質発現を低減/防止するように改変されたHLA陰性LCLは、EBV複製に必要な1つ又は複数のポリペプチドの遺伝子発現及び/又はタンパク質発現を低減/防止するように改変されていないLCLと比較して、改善された安全性プロファイルを有し得る。
【0142】
いくつかの実施形態において、HLA陰性LCLは、本開示の方法に従う刺激及び/又は再刺激において採用される。
【0143】
ある実施形態では、HLA陰性LCLは培養で増殖させる細胞に抗原刺激を与える細胞として採用される。
【0144】
本発明者らは、HLA陰性LCLを用いてCD30.CAR EBVSTに対する抗原刺激とコスト刺激の両方を行う、合理的な再刺激ステップを有する方法を開発した。
【0145】
HLA陰性LCLはEBV抗原を発現するため、EBV特異的T細胞にEBV抗原刺激を与えるのに有用である。HLA陰性LCLはCD30も発現しているので、CD30特異的CAR(例えばCD30.CAR EBVST)を発現する免疫細胞に抗原刺激を与えるのに有用である。HLA陰性LCLは、他のコスティミュレイトリー分子(costimulatory molecules)も発現しており、これを介してin vitro/ex vivo培養で増殖させる細胞にコスティミュレーション(costimulation)を与えることができる。
【0146】
本開示の態様及び実施形態において、方法は、HLA陰性LCLの存在下で、免疫細胞(例えば、ウイルスに特異的な免疫細胞、又はキメラ抗原受容体(CAR)もしくはCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞)を培養することを含む。いくつかの実施形態において、HLA陰性LCLは、抗原刺激(例えば、EBV及び/又はCD30刺激)を提供する細胞として採用される。いくつかの実施形態において、HLA陰性LCLは、コスト刺激を提供する細胞として採用される。いくつかの実施形態では、HLA陰性LCLは抗原刺激及びコスティミュレーションを提供する細胞として採用される。
【0147】
いくつかの実施形態において、HLA陰性LCLは、刺激/再刺激におけるそれらの使用の前に、それらの増殖を防止するために照射(例えば、セシウム源を用いて)又は物質(例えば、マイトマイシンC)で処理される。本発明の方法によるLCLの照射は、典型的には50~200グレイ(gray)、例えば約100グレイである。
【0148】
特定の実施形態において、本開示の方法は、HLA陰性LCLの存在下でウイルスに特異的な免疫細胞(例えば、EBV特異的免疫細胞、例えば、EBVST)を培養することを含む。特定の実施形態において、本開示の方法は、HLA陰性LCLの存在下でウイルスに特異的な免疫細胞を培養することを含む再刺激工程を含む。いくつかの実施形態において、HLA陰性LCL(例えば、照射されたHLA陰性LCL)は、ウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比が1:1~1:10の間、例えば、1:1.5、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、1:5、1:5.5、1:6、1:6.5、1:7、1:7.5又は1:8のうちの1つである。いくつかの実施形態において、HLA陰性LCL(例えば、照射されたHLA陰性LCL)は、ウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLとの比が1:2~1:5の間、例えば、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5又は1:5のいずれかで、ウイルスに特異的な免疫細胞との共培養において採用され得る。いくつかの実施形態では、ウイルスに特異的な免疫細胞とHLA陰性LCLの比率は~1:3である。
【0149】
特定の実施形態において、本開示の方法は、HLA陰性LCLの存在下で、本明細書に記載のCARを含む/発現する(又はそのようなCARをコードする核酸を含む/発現する)ウイルスに特異的な免疫細胞(例えば、EBV特異的免疫細胞、例えばEBVST)を培養することを含む。特定の実施形態において、本開示の方法は、HLA陰性LCLの存在下で、本明細書に記載のCARを含む/発現する(又はそのようなCARをコードする核酸を含む/発現する)ウイルスに特異的な免疫細胞を培養することを含む、再刺激工程を含む。いくつかの実施形態では、HLA陰性LCL(例えば、照射されたHLA陰性LCL)は、本明細書に記載のCARを構成/発現するウイルスに特異的な免疫細胞(又はそのようなCARをコードする核酸を構成/発現するウイルスに特異的な免疫細胞)とHLA陰性LCLとの共培養において、本明細書に記載のCARを構成/発現するウイルスに特異的な免疫細胞(又はそのようなCARをコードする核酸を構成/発現するウイルスに特異的な免疫細胞)とHLA陰性LCLとの比が1:1~1:10の間、例えば、1:1.5、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、1:5、1:5.5、1:6、1:6.5、1:7、1:7.5又は1:8のいずれかである。いくつかの実施形態において、HLA陰性LCL(例えば、照射されたHLA陰性LCL)は、本明細書に記載のCARを構成/発現するウイルスに特異的な免疫細胞(又はそのようなCARをコードする核酸を構成/発現するウイルスに特異的な免疫細胞)とHLA陰性LCLとの共培養において、本明細書に記載のCARを構成/発現するウイルスに特異的な免疫細胞(又はそのようなCARをコードする核酸を構成/発現するウイルスに特異的な免疫細胞)とHLA陰性LCLとの比が1:2~1:5の間、例えば、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5又は1:5のいずれかである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARを構成/発現する(又はそのようなCARをコードする核酸を構成/発現する)ウイルスに特異的な免疫細胞のHLA陰性LCLに対する比は~1:3である。
【0150】
いくつかの実施形態では、HLA陰性LCLを用いる本開示による刺激又は再刺激工程は、ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する添加外来性ペプチドも用いない。ここで、「添加された外来性」ペプチドとは、培養物中の細胞によって産生された/細胞から発現されたペプチドではなく、培養物に意図的に添加されたペプチド(例えば、組換えタンパク質技術を用いて産生された)であってもよい。
【0151】
いくつかの実施形態において、ウイルスに特異的な免疫細胞及びHLA陰性LCL(例えば、照射されたHLA陰性LCL)を含んでなる本開示による刺激培養又は再刺激培養は、ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する外因性ペプチドが添加されていない状態で行われる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のCARを含む/発現する(又はそのようなCARをコードする核酸を含む/発現する)ウイルスに特異的な免疫細胞及びHLA陰性LCL(例えば、照射されたHLA陰性LCL)を含む本開示による刺激培養又は再刺激培養は、ウイルスの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する外因性ペプチドの添加の非存在下で実施される。
【0152】
いくつかの実施形態において、本方法は、刺激及び/又は再刺激におけるコスティミュレーションを増強するための薬剤をさらに用いる。このような薬剤としては、例えばLCL又はK562cs細胞などのコスティミュレイトリー分子(例えばCD80、CD86、CD83及び/又は4-1BBL)を発現する細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、コスティミュレイトリー分子を発現する細胞はHLA陰性LCLである。
【0153】
コスティミュレーションを増強するための薬剤の他の例としては、例えば、T細胞によって発現されるコスティミュレイトリーレセプター(例えば、4-1BB、CD28、OX40、ICOSなど)に特異的なアゴニスト抗体、及びT細胞によって発現されるコスティミュレイトリーレセプター(例えば、CD80、CD86、CD83、4-1BBL、OX40L、ICOSLなど)を活性化することができるコスティミュレイトリー分子などが挙げられる。このような薬剤は、例えばビーズに固定化して提供することができる。
【0154】
いくつかの実施形態において、再刺激ステップは、HLA陰性LCLの存在下で、ウイルス抗原に特異的な免疫細胞を、ウイルス抗原に対応するペプチドを提示するATCと接触させることを含む。
【0155】
免疫細胞の集団とウイルス抗原に対応するペプチド、又はウイルス抗原に対応するペプチドを提示するAPCとの接触は、T細胞の活性化及び増殖を促進するために、1つ以上のサイトカインの存在下で実施することができる。いくつかの実施形態において、刺激は、IL-7、IL-15、IL-6、IL-12、IL-4、IL-2及び/又はIL-21のうちの1つ以上の存在下で行われる。サイトカインは培養に外因的に添加され、培養中の細胞によって産生されるサイトカインに追加されることが理解されよう。いくつかの実施形態において、添加されるサイトカインは組換え産生サイトカインである。
【0156】
従って、いくつかの実施形態において、方法は、ウイルス抗原(単数又は複数)に対応するペプチド(単数又は複数)と接触させたPBMCを、又はウイルス抗原(単数又は複数)に対応するペプチド(単数又は複数)を提示するAPCの存在下で、IL-7、IL-15、IL-6、IL-12、IL-4、IL-2及び/又はIL-21のうちの1つ又は複数の存在下で培養することを含む。
【0157】
いくつかの実施形態において、培養は、IL-7、IL-15、IL-6、IL-12、IL-4、IL-2及び/又はIL-21の存在下で行われる。いくつかの実施形態において、培養は、IL-7、IL-15、IL-6及び/又はIL-12の存在下にある。いくつかの実施形態において、培養はIL-7及び/又はIL-15の存在下にある。
【0158】
いくつかの実施形態では、培養物中のIL-7の最終濃度は、1~100ng/ml、例えば、1~100ng/mlである。2~50ng/ml、5~20ng/ml、又は7.5~15ng/mlのいずれか。いくつかの実施形態では、培養物中のIL-7の最終濃度は約10ng/mlである。
【0159】
いくつかの実施形態では、培養物中のIL-15の最終濃度は、1~100ng/ml、例えば、1~100ng/mlである。2~50ng/ml、5~20ng/ml、又は7.5~15ng/mlのいずれか。いくつかの実施形態では、培養物中のIL-15の最終濃度は約10ng/mlである。いくつかの実施形態では、培養物中のIL-15の最終濃度は、10~1000ng/ml、例えば、10~1000ng/mlである。20~500ng/ml、50~200ng/ml、又は75~150ng/mlのいずれか。いくつかの実施形態では、培養物中のIL-15の最終濃度は約100ng/mlである。
【0160】
いくつかの実施形態では、培養物中のIL-6の最終濃度は、10~1000ng/ml、例えば、10~1000ng/mlである。20~500ng/ml、50~200ng/ml、又は75~150ng/mlのいずれか。いくつかの実施形態では、培養物中のIL-6の最終濃度は約100ng/mlである。
【0161】
いくつかの実施形態では、培養物中のIL-12の最終濃度は、1~100ng/ml、例えば、1~100ng/mlである。2~50ng/ml、5~20ng/ml、又は7.5~15ng/mlのいずれか。いくつかの実施形態では、培養物中のIL-12の最終濃度は10ng/mlである。
【0162】
いくつかの実施形態では、IL-7の最終濃度は1~100ng/ml(例えば、2~50ng/ml、5~20ng/ml又は7.5~15ng/mlのうちの1つ、例えば10ng/ml)であり、そして、IL-15の最終濃度は1~100ng/ml(例えば、2~50ng/ml、5~20ng/ml又は7.5~15ng/mlの1つ、例えば約10ng/ml)である。
【0163】
いくつかの実施形態では、IL-7の最終濃度は1~100ng/ml(例えば、2~50ng/ml、5~20ng/ml又は7.5~15ng/mlのうちの1つ、例えば10ng/ml)であり、そして、IL-15の最終濃度は10~1000ng/ml(例えば、20~500ng/ml、50~200ng/ml又は75~150ng/mlの1つ、例えば約100ng/ml)である。
【0164】
いくつかの実施形態では、IL-7の最終濃度は1~100ng/ml(例えば、2~50ng/ml、5~20ng/ml又は7.5~15ng/mlのうちの1つ、例えば10ng/ml)であり、IL-6の最終濃度は10~1000ng/ml(例えば、20~500ng/ml、50~200ng/ml又は75~150ng/mlの1つ、例えば約100ng/ml)であり、IL-12は1~100ng/ml(例えば、2~50ng/ml、5~20ng/ml又は7.5~15ng/mlの1つ、例えば10ng/ml)であり、そして、IL-15の最終濃度は、1~100ng/ml(例えば、2~50ng/ml、5~20ng/ml又は7.5~15ng/mlのうちの1つ、例えば、10ng/ml)である。
【0165】
いくつかの実施形態では、刺激培養物中のIL-7の最終濃度は1~100ng/ml(例えば、2~50ng/ml、5~20ng/ml、又は7.5~15ng/mlのいずれか、例えば、10ng/ml)であり、刺激培養物中のIL-15の最終濃度は10~1000ng/ml(例えば、20~500ng/ml、50~200ng/ml、又は75~150ng/mlのいずれか、例えば、約100ng/ml)である。
【0166】
いくつかの実施形態では、刺激培養物中のIL-7の最終濃度は1~100ng/ml(例えば、2~50ng/ml、5~20ng/ml、又は7.5~15ng/mlのいずれか、例えば、10ng/ml)であり、刺激培養物中のIL-6の最終濃度は10~1000ng/ml(例えば、20~500ng/ml、50~200ng/ml、又は75~150ng/mlのいずれか、例えば、約100ng/ml)であり、刺激培養物中のIL12の最終濃度は1~100ng/ml(例えば、2~50ng/ml、5~20ng/ml、又は7.5~15ng/mlのいずれか、例えば、10ng/ml)であり、そして、刺激培養物中のIL-15の最終濃度は1~100ng/ml(例えば、2~50ng/ml、5~20ng/ml、又は7.5~15ng/mlのいずれか、例えば、10ng/ml)である。
【0167】
いくつかの実施形態では、再刺激培養物中のIL-7の最終濃度は1~100ng/ml(例えば、2~50ng/ml、5~20ng/ml、又は7.5~15ng/mlのいずれか、例えば、10ng/ml)であり、再刺激培養物中のIL-15の最終濃度は10~1000ng/ml(例えば、20~500ng/ml、50~200ng/ml、又は75~150ng/mlのいずれか、例えば、約100ng/ml)である。
【0168】
本開示による刺激及び再刺激は、典型的には、APCがT細胞を刺激し、T細胞が細胞分裂を起こすのに十分な期間、T細胞とAPCを共培養することを含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、本方法は、ウイルス抗原に対応するペプチドと接触させたPBMCを、又はウイルス抗原に対応するペプチドを提示するAPCの存在下で、少なくとも1時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、4日間、5日間、6日間、又は少なくとも7日間培養することを含む。いくつかの実施形態では、培養は24時間~20日間の期間であり、例えば、48時間~14日、3日~12日、4日~11日、6日~10日、又は、7日~9日のいずれかである。
【0170】
いくつかの実施形態では、方法は、ウイルス抗原に対応するペプチドと接触させられた、本明細書に記載の刺激ステップによって得られた細胞集団を、又はウイルス抗原に対応するペプチドを提示するAPCの存在下で、少なくとも1時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、4日間、5日間、6日間、又は少なくとも7日間培養することを含む。いくつかの実施形態では、培養は、24時間から20日間、例えば、48時間~14日、3日~12日、4日~11日、6日~10日、又は7日~9日のいずれかである。
【0171】
刺激及び再刺激は、培養中の細胞を、それらが培養されていた培地から分離するか、又は培養物を希釈すること(例えば、細胞培養培地の添加により)によって終了することができる。いくつかの実施形態では、方法は、刺激又は再刺激培養の終わりに細胞を収集する工程を含む。いくつかの実施形態では、方法は、再刺激工程のための刺激又は再刺激培養の終わりに細胞を収集する工程を含む。
【0172】
所定の刺激又は再刺激ステップの培養期間の終わりに、細胞を収集し、細胞培養上清から分離することができる。細胞は遠心分離によって収集することができ、細胞培養上清を細胞ペレットから分離することができる。次いで、例えば再刺激のために、細胞ペレットを細胞培養培地、例えば培地に再懸濁してもよい。いくつかの実施形態では、細胞は収集後に洗浄工程を受けてもよい。洗浄工程は、細胞ペレットをリン酸緩衝食塩水(PBS)などの等張緩衝液に再懸濁し、遠心分離により細胞を収集し、上清を廃棄することを含んでもよい。
【0173】
ウイルス抗原に特異的な免疫細胞の集団を作製及び/又は拡大する方法は、通常、1回以上の刺激工程を含む。実施され得る刺激工程の数に上限はない。いくつかの実施形態において、方法は、2、3、4又は5以上の刺激工程を含む。いくつかの実施形態において、方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15の刺激ステップのうちの1つを含む。方法における刺激ステップは互いに異なっていてもよい。
【0174】
いくつかの実施形態において、方法は、細胞におけるIL-7媒介シグナル伝達を増加させるために、ウイルス抗原(複数可)に特異的な免疫細胞を改変することをさらに含む。IL-7媒介シグナル伝達は、腫瘍特異的T細胞の生存及び抗腫瘍活性を増加させることが示されている-例えば、Shumら、Cancer Discov.(2017)7(11):1238-1247、及びWO2018/038945A1を参照されたい。
【0175】
いくつかの実施形態において、方法は、WO2018/038945A1(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される実施形態による核酸を、ウイルス抗原(複数可)に特異的なPBMC又は免疫細胞に導入することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、ウイルス抗原(単数又は複数)に特異的なPBMC又は免疫細胞に核酸を導入することを含み、核酸は、細胞内でSTAT5媒介シグナルを増加させるためのポリペプチドをコードする。
【0176】
いくつかの実施形態において、核酸は、(i)ポリペプチドのホモ二量化を促進するドメイン、及び(ii)IL-7Rαの細胞内ドメインを含むポリペプチドをコードする。
【0177】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドのホモ二量化を促進するドメインは、ポリペプチドのモノマー間のジスルフィド結合の形成を提供するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。いくつかの実施形態において、ポリペプチドのホモ二量化を促進するドメインは、WO2018/038945A1のSEQ ID NO:1~24のうちの1つ(例えば、WO2018/038945A1の段落[0074]~[0076]を参照)に従うアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0178】
IL-7Rαの細胞内ドメインは、UniProt:P16871-1、v1の265位から459位(positions 265 to 459 of UniProt:P16871-1,v1)に対応するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される.
【0179】
核酸は、トランスダクション、トランスフェクション、エレクトロポレーションなど、当技術分野で周知の方法によって細胞に導入することができる。いくつかの実施形態では、核酸は、核酸を含むウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター)を用いた導入により細胞に導入される。
【0180】
いくつかの実施形態において、本方法は、EBV抗原に特異的なPBMC又は免疫細胞を、(i)ポリペプチドのホモ二量化を促進するドメイン、及び(ii)IL-7Rαの細胞内ドメインを含むポリペプチドをコードする核酸を含むウイルスベクターでトランスフェクトすることを含む。
【0181】
本明細書に記載される方法の態様及び実施形態は、本開示によるCARを発現/構成するように、本明細書に記載される免疫細胞(例えば、本明細書に記載されるウイルス特異的免疫細胞)を改変することを含む。
【0182】
本明細書に記載の方法の態様及び実施形態は、本開示によるCARをコードする核酸を発現/含有するように、本明細書に記載の免疫細胞(例えば、本明細書に記載のウイルス特異的免疫細胞)を改変することを含む。
【0183】
このような方法は通常、CARをコードする核酸を免疫細胞に導入することを含む。
【0184】
免疫細胞(例えば、ウイルス特異的免疫細胞)は、当業者に周知の方法に従って、本明細書に記載のCAR又はCARをコードする核酸を含む/発現するように改変することができる。この方法は、一般に、移入された核酸(the transferred nucleic acid)の永続的(安定的)又は一過性の発現のための核酸移入を含む。
【0185】
本開示に従って細胞を改変するために、任意の適切な遺伝子工学プラットフォームを使用することができる。細胞を改変するための適切な方法には、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMausら、Annu Rev Immunol(2014)32:189-225に記載されるような、ガンマレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、DNAトランスフェクション、トランスポゾンベースの遺伝子導入及びRNAトランスフェクションなどの遺伝子工学プラットフォームの使用が含まれる。いくつかの実施形態において、CAR又はCARをコードする核酸を含むように細胞を改変することは、CARをコードする核酸を含むウイルスベクターで細胞を形質導入することを含む。
【0186】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、本明細書に記載のCARをコードするレトロウイルスを用いる。
【0187】
方法はまた、例えば、Wang and Riviere Mol Ther Oncolytics.(2016)3:16015に記載されているものも含まれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0188】
方法は、一般に、そのような核酸(単数又は複数)を含むベクター/複数のベクターをコードする核酸/複数の核酸を細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態において、方法は細胞による核酸(単数又は複数)又はベクター(単数又は複数)の発現に適した条件下で細胞を培養することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法はインビトロで実施される。核酸(単数又は複数)/ベクター(単数又は複数)を細胞に導入するための好適な方法には、導入、トランスフェクション及びエレクトロポレーション(electroporation)が含まれる。
【0189】
いくつかの実施形態において、核酸(単数又は複数)/ベクター(単数又は複数)を細胞に導入することは、トランスダクション、例えばレトロウイルストランスダクションを含む。したがって、いくつかの実施形態において、核酸(単数又は複数)は、ウイルスベクター(単数又は複数)に含まれるか、又はベクター(単数又は複数)は、ウイルスベクター(単数又は複数)である。ウイルスベクターによる免疫細胞の形質導入は、例えば、Simmons and Alberola-Ila,Methods Mol Biol.(2016)1323:99-108に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0190】
いくつかの実施形態において、方法は、CARをコードする核酸を導入することが所望される細胞を、核酸を含むウイルスベクターを含む細胞培養培地の存在下で遠心分離すること(当技術分野において「スピンフェクション(spinfection)」と呼ばれる)を含む。
【0191】
いくつかの実施形態において、方法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるKohら、Molecular Therapy-Nucleic Acids(2013)2、e114に記載されるように、エレクトロポレーションにより本開示による核酸又はベクターを導入することを含む。
【0192】
本開示に従ってCARをコードする核酸を細胞に導入するための方法(例えば、CAR又はCARをコードする核酸を含むウイルスに特異的な免疫細胞を産生/生成する文脈において)は、細胞への核酸の導入を促進するための薬剤を用いることができる。
【0193】
いくつかの実施形態において、CARをコードする核酸は、CARをコードする核酸を含むウイルスによる形質導入によって細胞に導入される。いくつかの実施形態において、CARをコードするウイルス(例えば、レトロウイルス)による形質導入を含む本開示の方法は、形質導入の効率を高めるための薬剤を用いる。
【0194】
ウイルスベクターによる細胞の形質導入効率を高めるための薬剤は当該技術分野で知られており、例えば、ビリオンと細胞表面に発現するシアル酸残基との間の電荷反発を中和することにより形質導入を改善するカチオン性ポリマーである臭化ヘキサジメトリン(ポリブレン)が挙げられる。トランスダクションを向上させるために一般的に使用される他の薬剤としては、SureENTRY(Qiagen)、ViraDuctin(Cell Biolabs)、LentiBOOST(Sirion Biotech)、Retronectin(Takara)、Vectofusin-1(Miltenyi Biotec Cat No.170-076-165)などがある。
【0195】
好ましい実施形態において、本開示の方法は、CARをコードする核酸を細胞に導入する方法においてベクトフシン-1を使用する。ベクトフシン-1及びウイルスのトランスダクションを増強するためのその使用は、例えば、Fenardら、Mol Ther Nucleic Acids(2013)2(5):e90に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ベクトフシン-1は、SEQ ID NO:54に示されるアミノ酸配列を有する、短い両親媒性のヒスタジンに富むカチオン性ペプチドである。ベクトフシン-1は、ウイルスと細胞膜の間の接着と融合を促進することにより、ウイルスの侵入を促進すると考えられている。ベクトフシン-1の変異体は当技術分野で知られており、例えば、Lointierら、Biochimica et Biophysica Acta:Biomembranes(2020)1862(8):183212(これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)-例えばその表1を参照されたい-に記載されている。
【0196】
本明細書で使用される場合、ベクトフシン-1の「変異体」は、SEQ ID NO:54に対して70%以上(例えば、75%、80%、90%、95%以上)のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成され得る。Vectofusin-1の変異体は、トランスダクションの適切なアッセイにおいて、ウイルスベクターによる細胞のトランスダクションを増加させる能力(すなわち、ペプチドを欠く対照条件と比較して)によって特徴付けられ得る。
【0197】
本発明者らは、導入においてベクトフシン-1を使用することにより、導入プロトコルから時間のかかる手間のかかる遠心分離ステップ(例えば、実施例2を参照のこと)を省くことができることを有利に見出した。Vectofusin-1を用いる形質導入はまた、遠心分離ステップを用いる形質導入によって達成されるのと同じレベルの形質導入を達成するために、より少ないレトロウイルスの使用を必要とすることが見出された。ベクトフシン-1はまた、遠心分離される組織培養プレートのウェルへの移植を必要とするのではなく、組織培養フラスコ中で高効率で細胞を形質導入する能力を提供し、それによって細胞の取り扱い量を減少させ、形質導入プロセスを著しく単純化する。
【0198】
いくつかの実施形態において、本開示に従って細胞内にCARをコードする核酸を導入することは、ベクトフシン-1又はその変異体を用いる。いくつかの実施形態において、方法は、ベクトフシン-1又はその変異体を、本開示に従ってCARをコードするウイルスベクター(例えば、レトロウイルス)と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、方法は、ベクトフシン-1又はその変異体を、本開示によるCARをコードするウイルスベクターと混合すること、及びベクトフシン-1/変異体:ウイルスベクター複合体が形成されるのに十分な時間、混合物をインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態において、方法は、形質導入されるべき細胞(例えば、免疫細胞、例えば、ウイルスに特異的な免疫細胞)を、(a)本開示によるCARをコードするウイルスベクター、及び(b)ベクトフシン-1又はその変異体を含む組成物と接触させることを含む。いくつかの実施形態において、方法は、形質導入される細胞(例えば免疫細胞、例えばウイルスに特異的な免疫細胞)をVectofusin-1/変異体:ウイルスベクター複合体と接触させ、ウイルスベクターが細胞に入るのに十分な時間、混合物をインキュベートすることを含む。
【0199】
いくつかの実施形態において、方法はさらに、例えば他の細胞(例えば、ウイルスに特異的でない細胞、及び/又は、CARを発現しない細胞)から、CAR発現免疫細胞及び/又はウイルス特異的免疫細胞を精製/分離することを含む。不均一な細胞集団から免疫細胞を精製/分離する方法は当該技術分野において周知であり、例えば、免疫細胞のマーカーの発現に基づいて細胞集団を選別するためのFACS-又はMACS-ベースの方法を採用することができる。いくつかの実施形態において、この方法は、特定のタイプの細胞、例えばウイルス特異的T細胞(例えばウイルス特異的CD8+T細胞、ウイルス特異的CTL)、又はCAR発現ウイルス特異的T細胞(例えばCAR発現ウイルス特異的CD8+T細胞、CAR発現ウイルス特異的CTL)を精製/分離するためのものである。
【0200】
本開示はまた、本明細書に記載される方法によって得られるか又は得られる細胞、及び/又は、その集団を提供する。
【0201】
本開示に従って免疫細胞の集団を産生、生成及び/又は拡大する特定の例示的方法
本開示は、以下のように、免疫細胞の集団を産生、生成及び/又は拡大する方法を提供する:
【0202】
(A)(i)HPLを含む細胞培養培地中で、EBVの1つ以上の抗原の全部又は一部に対応する1つ以上のペプチドの存在下でPBMCを培養すること;
(ii)ステップ(i)で得られた細胞を、Vectofusin-1を用いる方法により、CD30特異的CARをコードするウイルスベクターで形質導入すること;
(iii)ステップ(ii)で得られた細胞を、HPLを含む細胞培養培地中で、HLA陰性LCLの存在下で培養すること。
【0203】
(A)のいくつかの実施形態において、PBMCは、CD45RA陽性細胞を枯渇させたPBMCである。
【0204】
(A)のいくつかの実施形態において、HPLを含む細胞培養培地は、1~20%v/vのHPLを含む。(A)のいくつかの実施形態において、HPLを含む細胞培養培地は、~5%v/vのHPLを含む。
【0205】
(A)のいくつかの実施形態において、1つ以上のEBV抗原は、以下から構成される群より選択されるEBV抗原を含む:EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2A及びBNLF2B。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(i)は、EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2A及びBNLF2Bのためのペプミックスの存在下でPBMCを培養することを含む。
【0206】
(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(ii)は、ステップ(i)で得られた細胞を、(a)CD30特異的CARをコードするウイルスベクター、及び(b)Vectofusin-1を含む組成物と接触させることを含む。
【0207】
(A)のいくつかの実施形態において、CD30特異的CARは、以下を含む:(i)CD30に特異的に結合する抗原結合ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、及び(iii)シグナル伝達ドメインであって、シグナル伝達ドメインが、(a)CD28の細胞内ドメイン由来のアミノ酸配列、及び(b)免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含むアミノ酸配列。A)のいくつかの実施形態において、CD30特異的CARは、SEQ ID NO:35又は36に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0208】
(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(iii)は、ステップ(ii)で得られた細胞を、HLA陰性LCLに対するステップ(ii)細胞の比が1:1~1:10の間で、HLA陰性LCLとともに培養することを含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(iii)は、HLA陰性LCLに対するステップ(ii)細胞の比が1:2~1:5の間(例えば、~1:3)で、ステップ(ii)で得られた細胞をHLA陰性LCLとともに培養することを含む。
【0209】
(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(i)の細胞培養培地は、5~15ng/mlのIL-7を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(i)の細胞培養培地は、~10ng/ml IL-7を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(i)の細胞培養培地は、5~15ng/ml IL-15を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(i)の細胞培養培地は、~10ng/ml IL-15を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(i)の細胞培養培地は、5~15ng/mlのIL-7及び5~15ng/mlのIL-15を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(i)の細胞培養培地は、~10ng/ml IL-7及び~10ng/ml IL-15を含む。
【0210】
(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(ii)の細胞培養培地は、5~15ng/mlのIL-7を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(ii)の細胞培養培地は、~10ng/ml IL-7を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(ii)の細胞培養培地は、5~15ng/ml IL-15を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(ii)の細胞培養培地は、~10ng/ml IL-15を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(ii)の細胞培養培地は、5~15ng/mlのIL-7及び5~15ng/mlのIL-15を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(ii)の細胞培養培地は、~10ng/ml IL-7及び~10ng/ml IL-15を含む。
【0211】
(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(iii)の細胞培養培地は、5~15ng/mlのIL-7を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(iii)の細胞培養培地は、~10ng/ml IL-7を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(iii)の細胞培養培地は、5~15ng/ml IL-15を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(iii)の細胞培養培地は、~10ng/ml IL-15を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(iii)の細胞培養培地は、5~15ng/mlのIL-7及び5~15ng/mlのIL-15を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(iii)の細胞培養培地は、~10ng/ml IL-7及び~10ng/ml IL-15を含む。
【0212】
(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(i)の細胞培養培地は、33~55%の高度RPMI及び33~55%のクリック培地を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(i)の細胞培養培地は、47.5%のAdvanced RPMI及び47.5%のクリック培地を含む。
【0213】
(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(ii)の細胞培養培地は、33~55%の高度RPMI及び33~55%のクリック培地を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(ii)の細胞培養培地は、47.5%のAdvanced RPMI及び47.5%のクリック培地を含む。
【0214】
(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(iii)の細胞培養培地は、33~55%のAdvanced RPMI及び33~55%のクリック培地を含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(iii)の細胞培養培地は、47.5%のAdvanced RPMI及び47.5%のクリック培地を含む。
【0215】
(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(i)の細胞培養培地は、1~5mMのL-グルタミンを含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(i)の細胞培養培地は、~2mMのL-グルタミンを含む。
【0216】
(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(ii)の細胞培養培地は、1~5mMのL-グルタミンを含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(ii)の細胞培養培地は、~2mMのL-グルタミンを含む。
【0217】
(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(iii)の細胞培養培地は、1~5mMのL-グルタミンを含む。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(iii)の細胞培養培地は、~2mMのL-グルタミンを含む。
【0218】
(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(i)の培養は3~10日間実施される。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(i)の培養は4~8日間行われる。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(i)の培養は、~5から6日間実施される。
【0219】
(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(ii)の培養は、1~5日間実施される。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(ii)の培養は、2~4日間実施される。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(ii)の培養は、~3から4日間実施される。
【0220】
(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(iii)の培養は6~14日間実施される。A)のいくつかの実施形態において、ステップ(iii)の培養は、7~12日間実施される。(A)のいくつかの実施形態において、ステップ(iii)の培養は、~8から10日間実施される。
【0221】
ウイルス特異的免疫細胞
本開示は、ウイルス特異的免疫細胞、特にエプスタイン・バーウイルス(EBV)特異的免疫細胞に関する。本明細書において細胞が単数形(すなわち「a/the細胞」)で言及される場合、そのような細胞の複数/集団もまた企図されることが理解されよう。
【0222】
本明細書で用いる「ウイルス特異的免疫細胞」とは、ウイルスに特異的な免疫細胞を指す。ウイルス特異的免疫細胞は、ウイルスの抗原のペプチド(例えば、MHC分子によって提示された場合)を認識することができるレセプター(好ましくは、T細胞レセプター)を発現/含む。ウイルス特異的免疫細胞は、そのような抗原レセプターをコードする内在性核酸の発現の結果として、又はそのようなレセプターを発現するように操作された結果として、そのようなレセプターを発現/含むことができる。好ましくは、ウイルス特異的免疫細胞は、ウイルスの抗原ペプチドに特異的なTCRを発現/含む。
【0223】
免疫細胞は、例えば好中球、好酸球、好塩基球、樹状細胞、リンパ球、単球などの造血系由来の細胞である。リンパ球は、例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、自然リンパ球(ILC)、又はそれらの前駆体であってもよい。免疫細胞は、例えばCD3ポリペプチド(例えばCD3γ CD3ε CD3ζ又はCD3δ)、TCRポリペプチド(TCRα又はTCRβ)、CD27、CD28、CD4又はCD8を発現していてもよい。いくつかの実施形態において、免疫細胞はT細胞、例えばCD3+T細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞は、CD3+、CD4+T細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞は、CD3+、CD8+T細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞はTヘルパー細胞(TH細胞)である。いくつかの実施形態において、T細胞は、細胞傷害性T細胞(例えば、細胞傷害性Tリンパ球(CTL))である。
【0224】
ウイルス特異的T細胞は、T細胞が特異的であるウイルス抗原に応答して、又はウイルス/抗原を含む/発現する細胞に応答して、T細胞の特定の機能的特性を示すことがある。いくつかの実施形態において、その特性は、エフェクターT細胞、例えば細胞傷害性T細胞に関連する機能的特性である。
【0225】
いくつかの実施形態において、ウイルス特異的T細胞は、以下の特性の1つ以上を示すことができる:ウイルス/T細胞が特異的であるウイルス抗原を含む/発現している細胞に対する細胞傷害性;T細胞が特異的であるウイルス/ウイルス抗原での刺激に応答して、あるいはT細胞が特異的であるウイルス/ウイルス抗原を含む/発現している細胞への曝露に応答しての、増殖、IFNγ発現、CD107a発現、IL-2発現、TNFα発現、パーフォリン発現、グランザイム発現、グラニュライシン発現、及び/又はFASリガンド(FASL)発現。
【0226】
ウイルス特異的T細胞は、適切なMHC分子によって提示されたときに、T細胞が特異的であるウイルス抗原のペプチドを認識できるTCRを発現する/含む。ウイルス特異的T細胞は、CD4+T細胞及び/又はCD8+T細胞である可能性がある。
【0227】
ウイルス特異的免疫細胞が特異的に反応するウイルスは、どのようなウイルスでもよい。例えば、ウイルスはdsDNAウイルス(アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルスなど)、ssRNAウイルス(パルボウイルスなど)、dsRNAウイルス(レオウイルスなど)、(+)ssRNAウイルス(ピコルナウイルス、トガウイルスなど)、(-)ssRNAウイルス(オルソミクソウイルス、ラブドウイルスなど)、ssRNA-RTウイルス(レトロウイルスなど)、又はdsDNA-RTウイルス(ヘパドナウイルスなど)である。特に、本開示は、アデノウイルス科、ヘルペスウイルス科のウイルス、パピローマウイルス科、ポリオーマウイルス科、ポックスウイルス科、ヘパドナウイルス科、パルボウイルス科、アストロウイルス科、カリシウイルス科、ピコルナウイルス科、コロナウイルス科、フラビウイルス科、トガウイルス科、ヘペウイルス科、レトロウイルス科、オルソミクソウイルス科、アレナウイルス科、ブニヤウイルス科、フィロウイルス科、パラミクソウイルス科、ラブドウイルス科、レオウイルス科を企図する。いくつかの実施形態において、ウイルスは、エプスタイン・バーウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペス1型ウイルス、単純ヘルペス2型ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型、ヒトパピローマウイルス、BKウイルス、JCウイルス、天然痘、B型肝炎ウイルス、パルボウイルスB19、ヒトアストロウイルス、ノーウォークウイルス、コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス、重症急性呼吸器症候群ウイルス、C型肝炎ウイルス、黄熱ウイルス、デングウイルス、西ナイルウイルス、結核ウイルス、風疹ウイルス、E型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、ラッサウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、ハンタンウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、ピコルナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、狂犬病ウイルス、D型肝炎ウイルス、ロタウイルス、オービウイルス、コルチウイルス、及びバンナウイルスから選択される。
【0228】
いくつかの実施形態において、ウイルスは、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、アデノウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、リンパ球性絨毛膜炎ウイルス(LCMV)、又は単純ヘルペスウイルス(HSV)から選択される。
【0229】
いくつかの実施形態において、ウイルス特異的免疫細胞は、例えば、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、アデノウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、麻疹ウイルス、肝炎ウイルスから選択されるウイルスのペプチド/ポリペプチドに特異的であり得る。例えば、エプスタインバーウイルス(EBV)、アデノウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、リンパ球性絨毛膜炎ウイルス(LCMV)、又は単純ヘルペスウイルス(HSV)から選択される。
【0230】
ウイルスの抗原に特異的なT細胞は、本明細書ではウイルス特異的T細胞(VST)と呼ぶことがある。特定のウイルスの抗原に特異的なT細胞は、関連するウイルスに特異的であると表現されることがある。例えば、EBVの抗原に特異的なT細胞は、EBV特異的T細胞、又は「EBVST」と呼ばれることがある。
【0231】
したがって、いくつかの実施形態において、ウイルス特異的免疫細胞は、エプスタイン・バーウイルス特異的T細胞(EBVST)、アデノウイルス特異的T細胞(AdVST)、サイトメガロビウス特異的T細胞(CMVST)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPVST)、インフルエンザウイルス特異的T細胞、麻疹ウイルス特異的T細胞、B型肝炎ウイルス特異的T細胞(HBVST)、C型肝炎ウイルス特異的T細胞(HCVST)、ヒト免疫不全ウイルス特異的T細胞(HCVST)、麻疹ウイルス特異的T細胞、B型肝炎ウイルス特異的T細胞(HBVST)、C型肝炎ウイルス特異的T細胞(HCVST)、ヒト免疫不全ウイルス特異的T細胞(HIVST)、リンパ球性絨毛膜炎ウイルス特異的T細胞(LCMVST)、又は単純ヘルペスウイルス特異的T細胞(HSVST)である。
【0232】
いくつかの好ましい実施形態において、ウイルス特異的免疫細胞は、EBV抗原のペプチド/ポリペプチドに特異的である。好ましい実施形態において、ウイルス特異的免疫細胞は、エプスタイン・バーウイルス特異的T細胞(EBVST)である。
【0233】
EBVウイルス学は、例えばStanfield and Luftiq,F1000Res.(2017)6:386及びOdumadeら,Clin Microbiol Rev(2011)24(1):193-209に記載されており、これらはいずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0234】
EBVは、ウイルスタンパク質BMFR2とβ1インテグリンとの結合、ウイルスタンパク質gH/gLとインテグリンavβ6及びavβ8との結合を介して上皮細胞に感染する。EBVは、ウイルス糖タンパク質gp350とCD21及び/又はCD35との相互作用、次いでウイルスgp42とMHCクラスIIとの相互作用を介してB細胞に感染する。これらの相互作用は、ウイルスエンベロープと細胞膜の融合を引き起こし、ウイルスが細胞内に侵入することを可能にする。細胞内に入ると、ウイルスキャプシドは溶解し、ウイルスゲノムは核に輸送される。
【0235】
EBVには潜伏と溶解の2つの複製様式がある。潜伏複製はビリオンの産生を伴わず、B細胞や上皮細胞で起こる。EBVのゲノム円形DNAはエピソームとして細胞核に存在し、宿主細胞のDNAポリメラーゼによってコピーされる。潜伏期には、EBVの遺伝子の一部のみが、潜伏プログラムとして知られる3つの異なるパターンのいずれかで発現し、ウイルスタンパク質とRNAの異なるセットを産生する。潜伏期のサイクルは、例えばAmon and Farrell,Reviews in Medical Virology(2004)15(3):149-56に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0236】
潜伏期プログラムI~IIIのそれぞれにおいて、EBNA1タンパク質とノンコーディングRNA EBERが発現する。潜伏期プログラムII及びIIIでは、さらにEBNALP、LMP1、LMP2A及びLMP2Bタンパク質が発現し、潜伏期プログラムIIIでは、さらにEBNA2、EBNA3A、EBNA3B及びEBNA3Cが発現する。
【0237】
EBNA1は多機能であり、遺伝子制御、染色体外複製、ウイルスプロモーターの正負制御((positive and negative regulation)によるEBVエピソームゲノムの維持に関与している(Duellmanら.(2009);90(Pt 9):2251-2259)。EBNA2は潜伏ウイルス転写の制御に関与し、EBV感染細胞の不死化に寄与している(Kempkes and Ling,Curr Top Microbiol Immunol.(2015)391:35-59)。EBNA-LPは、ネイティブB細胞の形質転換に必要であり、ウイルス複製のために転写因子をリクルートする(Szymulaら、PLoS Pathog.(2018);14(2):e1006890).EBNA3A、3B、3CはRBPJと相互作用して遺伝子発現に影響を与え、感染細胞の生存と増殖に寄与する(Wangら、J Virol.(2016)90(6):2906-2919)。LMP1はB細胞の活性化に関与する遺伝子の発現を制御している(Changら、J.Biomed.Sci.(2003)10(5):490-504)。LMP2AとLMP2Bは、活性化されたB細胞レセプターを模倣することにより、正常なB細胞のシグナル伝達を阻害する(Portis and Longnecker,Oncogene(2004)23(53):8619-8628)。EBERは宿主細胞のタンパク質とリボ核タンパク質複合体を形成し、細胞の形質転換に関与することが提唱されている。
【0238】
B細胞の潜伏期は、潜伏期プログラムIからIIIのいずれかに従って進行し、通常はIIIからII、Iへと進行する。静止状態のナイーブB細胞に感染すると、EBVは潜伏期プログラムIIIに入る。潜伏期III遺伝子の発現によりB細胞は活性化され、増殖芽球となる。その後EBVは通常、一部の遺伝子の発現を制限することにより潜伏期IIに移行し、芽球からメモリーB細胞への分化を引き起こす。さらに遺伝子の発現が制限されると、EBVは潜伏期Iに入る。EBNA1の発現により、メモリーB細胞が分裂する際にEBVが複製できるようになる。上皮細胞では、潜伏期IIのみが起こる。
【0239】
一次感染では、EBVは口腔咽頭上皮細胞で複製し、Bリンパ球で潜伏期III、II、I感染を確立する。Bリンパ球へのEBV潜伏感染は、ウイルスの持続、その後の上皮細胞での複製、唾液中への感染性ウイルスの放出に必要である。Bリンパ球のEBV潜伏期III及びII感染、口腔上皮細胞の潜伏期II感染、NK細胞又はT細胞の潜伏期II感染は、均一なEBVゲノムの存在と遺伝子発現によって特徴づけられる悪性腫瘍を引き起こす可能性がある。
【0240】
B細胞に潜伏しているEBVは再活性化され、溶菌性複製に移行する。溶解サイクルは感染性ビリオンの産生をもたらし、B細胞と上皮細胞で起こりうる:Biology,Therapy and Immunoprophylaxis;Cambridge University Press(2007)の第25章にKenneyにより概説されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0241】
溶菌複製にはEBVゲノムが直鎖状であることが必要である。潜伏EBVゲノムはエピソーム型であるため、溶菌再活性化のためには線状化されていなければならない。B細胞では通常、潜伏期からの再活性化後にのみ溶菌複製が起こる。
【0242】
BZFL1やBRLF1などの即時型溶菌遺伝子産物は、トランスアクチベーター(transactivators)として働き、自身の発現を促進し、後期の溶菌周期遺伝子の発現を促進する。
【0243】
初期の溶原性遺伝子産物は、ウイルス複製(例えば、EBV DNAポリメラーゼ触媒成分BALF5;DNAポリメラーゼ処理因子BMRF1、DNA結合タンパク質BALF2、ヘリカーゼBBLF4、プライマーゼBSLF1、及びプライマーゼ関連タンパク質BBLF2/3)及びデオキシヌクレオチド代謝(例えば、チミジンキナーゼBXLF1、dUTPase BORF2)に関与している。他の初期溶原性遺伝子産物は、転写因子(例えばBMRF1、BRRF1)、RNAの安定性とプロセシングにおける役割(例えばBMLF1)、又は免疫回避(例えばアポトーシスを阻害するBHRF1)に関与している。
【0244】
後期溶原性遺伝子産物は、伝統的にウイルス複製の開始後に発現するものとして分類されている。後期溶原性遺伝子産物は一般に、ヌクレオカプシドタンパク質などのビリオンの構造成分や、EBVとの結合や融合を仲介する糖タンパク質(gp350/220、gp85、gp42、gp25など)をコードしている。BCLF1はIL-10のウイルスホモログをコードし、BALF1は抗アポトーシスタンパク質Bcl2と相同性を持つタンパク質をコードする。
【0245】
本明細書で使用する「EBV特異的免疫細胞」とは、エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus、EBV)に特異的な免疫細胞を指す。EBV特異的免疫細胞は、EBVの抗原のペプチド(例えば、MHC分子によって提示された場合)を認識することができる受容体(好ましくは、T細胞受容体)を発現/含む。好ましくは、EBV特異的免疫細胞は、MHCクラスIによって提示されるEBV抗原のペプチドに特異的なTCRを発現/含む。
【0246】
いくつかの実施形態において、EBV特異的免疫細胞は、T細胞、例えばCD3+T細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞は、CD3+、CD4+T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞はCD3+、CD8+ T細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞はTヘルパー細胞(TH細胞)である)。いくつかの実施形態において、T細胞は、細胞傷害性T細胞(例えば、細胞傷害性Tリンパ球(CTL))である。
【0247】
EBV特異的T細胞は、T細胞が特異的であるEBV抗原に応答して、又はEBVを含む/発現する細胞(例えば、EBVに感染した細胞)若しくは関連するEBV抗原に応答して、T細胞の特定の機能的特性を示すことができる。いくつかの実施形態において、特性は、エフェクターT細胞、例えば細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に関連する機能的特性である。
【0248】
いくつかの実施形態において、EBV特異的T細胞は、以下の特性の1つ以上を示し得る:EBVを含む/発現する細胞/T細胞が特異的であるEBV抗原に対する細胞傷害性;T細胞が特異的であるEBV/EBV抗原での刺激に応答して、又はT細胞が特異的であるEBV/EBV抗原を含む/発現している細胞への曝露に応答しての、増殖、IFNγ発現、CD107a発現、IL-2発現、TNFα発現、パーフォリン発現、グランザイム発現、グラニュライシン発現、及び/又は、FASリガンド(FASL)発現。
【0249】
EBV特異的T細胞は、好ましくは、適切なMHC分子によって提示されたときに、T細胞が特異的であるEBV抗原のペプチドを認識することができるTCRを発現/含む。EBV特異的T細胞は、CD4+ T細胞及び/又は、CD8+ T細胞であってもよい。
【0250】
EBVに特異的な免疫細胞は、任意のEBV抗原、例えば本明細書に記載のEBV抗原に特異的であってよい。EBVに特異的な免疫細胞の集団、又はEBVに特異的な複数の免疫細胞を含む組成物は、1つ以上のEBV抗原に特異的な免疫細胞を含むことができる。
【0251】
いくつかの実施形態では、EBV抗原は、EBV潜伏抗原、例えば、III型潜伏抗原(例えば、EBNA1、EBNA-LP、LMP1、LMP2A、LMP2B、BARF1、EBNA2、EBNA3A、EBNA3B又はEBNA3C)、II型潜伏抗原(例えばEBNA1、EBNA-LP、LMP1、LMP2A、LMP2B又はBARF1)、又はI型潜伏抗原(例えばEBNA1又はBARF1)である。いくつかの実施形態では、EBV抗原は、EBV溶解抗原、例えば即時型早期溶解抗原(例えば、BZLF1、BRLF1又はBMRF1)、早期溶解抗原(例えば、BMLF1、BMRF1、BXLF1、BALF1、BALF2、BARF1、BGLF5、BHRF1、BNLF2A、BNLF2B、BHLF1、BLLF2、BKRF4、BMRF2、FU又はEBNA1-FUK)、又は後期溶原性抗原(例えば、BALF4、BILF1、BILF2、BNFR1、BVRF2、BALF3、BALF5、BDLF3又はgp350)である。
【0252】
キメラ抗原受容体
本開示は、キメラ抗原受容体(CARs)を含む/発現するウイルス特異的免疫細胞に関する。
【0253】
キメラ抗原受容体(CARs)は、抗原結合機能とT細胞活性化機能の両方を提供する組換え受容体分子である。CARの構造と工学については、例えば、Dottiら、Immunol Rev(2014)257(1)に概説されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0254】
CARは、膜貫通ドメインとシグナル伝達ドメインが結合した抗原結合ドメインを含む。任意のヒンジドメイン又はスペーサードメインは、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインの間に分離を提供し、柔軟なリンカー(Flexible linker)として機能する。細胞で発現される場合、抗原結合ドメインは細胞外に存在し、シグナル伝達ドメインは細胞内に存在する。
【0255】
抗原結合ドメインは、CARが特異的とする標的抗原への結合を媒介する。CARの抗原結合ドメインは、CARが標的とする抗原に特異的な抗体の抗原結合領域に基づいている場合がある。例えば、CARの抗原結合ドメインは、標的抗原に特異的に結合する抗体の相補性決定領域(CDRs)のアミノ酸配列を含むことができる。CARの抗原結合ドメインは、標的抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を含むか又はそれらから構成されていてもよい。抗原結合ドメインは、抗体の軽鎖及び重鎖可変領域アミノ酸配列を含む単鎖可変フラグメント(scFv)として提供することができる。CARの抗原結合ドメインは、リガンド:受容体結合のような、他のタンパク質:タンパク質相互作用に基づいて抗原を標的とすることができる;例えば、IL-13に基づく抗原結合ドメインを用いて、IL-13Rα2を標的とするCARが開発されている(例えば、Kahlonら 2004 Cancer Res 64(24):9160-9166)。
【0256】
膜貫通ドメインは、CARの抗原結合ドメインとシグナル伝達ドメインの間に設けられている。膜貫通ドメインは、CARを発現する細胞の細胞膜にCARを固定するためのものであり、抗原結合ドメインは細胞外に、シグナル伝達ドメインは細胞内に存在する。CARの膜貫通ドメインは、細胞膜結合タンパク質(CD28、CD8など)の膜貫通領域配列に由来することがある。
【0257】
本明細書を通して、参照ポリペプチド/ドメイン/アミノ酸配列に「由来する」ポリペプチド、ドメイン及びアミノ酸配列は、参照ポリペプチド/ドメイン/アミノ酸配列のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有する。参照ポリペプチド/ドメイン/アミノ酸配列に「由来する」ポリペプチド、ドメイン及びアミノ酸配列は、好ましくは、参照ポリペプチド/ドメイン/アミノ酸配列の機能的及び/又は構造的特性を保持する。
【0258】
例示すると、CD28の細胞内ドメイン由来のアミノ酸配列は、例えばSEQ ID NO:26に示されるように、CD28の細胞内ドメインに対して60%、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。さらに、CD28の細胞内ドメイン由来のアミノ酸配列は、好ましくは、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列の機能的特性、すなわちCD28媒介シグナル伝達を活性化する能力を保持する。
【0259】
所定のポリペプチド又はそのドメインのアミノ酸配列は、当業者に公知のデータベースから検索するか、又は検索した核酸配列から決定することができる。このようなデータベースには、GenBank、EMBL、UniProtが含まれる。
【0260】
シグナル伝達ドメインは、免疫細胞機能の活性化に必要なアミノ酸配列を含む。CARシグナル伝達ドメインは、CD3-ζの細胞内ドメインのアミノ酸配列を含むことができ、このドメインは、CAR発現細胞のリン酸化及び活性化のための免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を提供する。FcγRIのITAM含有領域を含むドメインなど、他のITAM含有タンパク質の配列を含むシグナル伝達ドメインもCARに採用されている(Haynesら、2001 J Immunol 166(1):182-187)。CD3-ζの細胞内ドメイン由来のシグナル伝達ドメインを含むCARは、しばしば第一世代CARと呼ばれる。
【0261】
CARのシグナル伝達ドメインは通常、免疫細胞の活性化及びエフェクター機能の増強に必要なコスト刺激シグナルを提供するためのコスト刺激タンパク質(CD28、4-1BBなど)のシグナル伝達ドメインも含む。追加のコスティミュレイトリー配列を含むシグナル伝達ドメインを有するCARは、しばしば第二世代CARと呼ばれる。場合によっては、異なる細胞内シグナル伝達経路のコスト刺激に対応するようにCARが設計されることもある。例えば、CD28のコスティミュレーションはホスファチジルイノシトール3キナーゼ(P13K)経路を優先的に活性化するのに対し、4-1BBのコスティミュレーションはTNF受容体関連因子(TRAF)アダプタータンパク質を介したシグナル伝達を引き起こす。したがって、CARのシグナル伝達ドメインには、1つ以上のコスティミュレイトリー分子のシグナル伝達ドメイン由来のコスティミュレイトリー配列が含まれることがある。複数のコスティミュレータリー配列を含むシグナル伝達ドメインから構成されるCARは、しばしば第三世代CARと呼ばれる。
【0262】
任意のヒンジ領域又はスペーサー領域は、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間の分離を提供し、柔軟なリンカーとして機能する。このような領域は、結合部位が異なる方向に配向することを可能にする柔軟なドメイン(flexible domains)であるか、又はそれを含む可能性があり、例えばIgGのCH1-CH2ヒンジ領域に由来する可能性がある。
【0263】
特定の標的抗原に特異的なCARを発現するように工学的に制御することで、免疫細胞(典型的にはT細胞だが、NK細胞など他の免疫細胞も同様)は標的抗原を発現する細胞を殺すように誘導することができる。CARを発現するT細胞(CAR-T細胞)と特異的な標的抗原との結合は、細胞内シグナル伝達を引き起こし、その結果T細胞を活性化する。活性化されたCAR-T細胞は分裂を促され、標的抗原を発現する細胞を死滅させる因子を産生する。
【0264】
抗原結合ドメイン
「抗原結合ドメイン」とは、標的抗原に結合可能なドメインを指す。標的抗原は、例えば、ペプチド/ポリペプチド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖鎖、糖脂質、脂質、又はそれらの断片であり得る。本開示による抗原結合ドメインは、標的抗原、又は別の標的抗原結合分子(例えば、標的抗原結合ペプチド又は核酸アプタマー、リガンド又は他の分子)に対して指向される抗体/抗体フラグメント(例えば、Fv、scFv、Fab、一本鎖Fab(scFab)、単一ドメイン抗体(例えば、VhH)等)に由来し得る。
【0265】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、標的抗原に特異的に結合可能な抗体の抗体重鎖可変領域(VH)及び抗体軽鎖可変領域(VL)を含む。標的抗原に結合可能なドメインは、抗原結合ペプチド/ポリペプチド、例.ペプチドアプタマー、チオレドキシン、モノボディ、アンチカリン、クニッツドメイン、アビマー、ノッティン、フィノマー、アトリマー、DARPin、アフィボディ、ナノボディ(すなわち、単一ドメイン抗体(sdAb))、アフィリン、アルマジロリピートタンパク質(ArmRP)、OBody又はフィブロネクチン-例えば、Reverdattoら、Curr Top Med Chem.2015;15(12):1082-1101に総説されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる(例えば、Boersmaら、J Biol Chem(2011)286:41273-85及びEmanuelら、Mabs(2011)3:38-48も参照されたい)。
【0266】
本開示の抗原結合ドメインは一般に、標的抗原に特異的に結合できる抗体のVHとVLを含む。抗体は一般に、6つの相補性決定領域CDRを含む;重鎖可変領域(VH)に3つ:HC-CDR1、HC-CDR2及びHC-CDR3、及び軽鎖可変領域(VL)に3つ:LC-CDR1、LC-CDR2、LC-CDR3である。これら6つのCDRは、抗体のパラトープ(標的抗原と結合する部分)を規定する。VH領域とVL領域は、各CDRの両側にあるフレームワーク領域(FR)を含み、CDRの足場となる。N末端からC末端まで、VHは以下の構造を含む:N末端-[HC-FR1]-[HC-CDR1]-[HC-FR2]-[HC-CDR2]-[HC-FR3]-[HC-CDR3]-[HC-FR4]-C末端;及びVLは以下の構造を含む:N term-[LC-FR1]-[LC-CDR1]-[LC-FR2]-[LC-CDR2]-[LC-FR3]-[LC-CDR3]-[LC-FR4]-C term。
【0267】
VH及びVL配列は、抗原結合ドメインがCARの他のドメインに連結され得ることを条件として、任意の適切な様式で提供され得る。本開示の抗原結合ドメインに関連して企図される形式には、Carter,Nat.Rev.Immunol(2006),6:343-357に記載されているもの、例えば、scFv、dsFV、(scFv)ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab、ミニボディ、及びF(ab)形式が挙げられる。
【0268】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、標的抗原に結合可能な抗体/抗体フラグメントのCDRを含む。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、標的抗原に結合可能な抗体/抗体フラグメントのVH領域及びVL領域を含む。抗体のVHとVLから含む部分は、本明細書では可変フラグメント(Fv)とも呼ばれることがある。VHとVLは同じポリペプチド鎖上に存在し、リンカー配列を介して結合している場合があり、このような部位は単鎖可変フラグメント(scFv)と呼ばれる。scFvの調製に適したリンカー配列は当業者に知られており、セリン残基及びグリシン残基を含むことができる。
【0269】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、標的抗原に結合可能なFvを含むか、又はFvから構成される。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、標的抗原に結合可能なscFvを含むか、又はそれらから構成される。
【0270】
抗原結合ドメイン(ひいてはCAR)が特異的である標的抗原は、任意の標的抗原であり得る。いくつかの実施形態において、標的抗原は、その発現/活性、又はその発現/活性の上昇が、疾患又は障害(例えば、がん、感染症又は自己免疫疾患)と正に(陽性に、positively)関連する抗原である。標的抗原は、好ましくは、標的抗原を発現する細胞の細胞表面で発現される。CARは、CARが特異的抗原結合ドメインを含む標的抗原を発現する細胞/組織に対して、CARを発現する細胞のエフェクター活性を誘導することが理解されよう。
【0271】
いくつかの実施形態では、標的抗原はがん細胞抗原である可能性がある。がん細胞抗原は、がん細胞によって発現される、又は過剰発現される抗原である。がん細胞抗原は、ペプチド/ポリペプチド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖鎖、糖脂質、脂質、又はそれらの断片であってもよい。がん細胞抗原の発現は、がんと関連している可能性がある。がん細胞抗原は、がん細胞によって異常に発現されている場合(例えば、がん細胞抗原は異常な局在を伴って発現されている場合)、又は、がん細胞によって異常な構造を伴って発現されている場合がある。がん細胞抗原は、免疫応答を誘発することができる。いくつかの実施形態では、抗原はがん細胞の細胞表面に発現される(すなわち、がん細胞抗原はがん細胞表面抗原である)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗原結合分子によって結合される抗原の部分は、がん細胞の外表面に表示される(すなわち、細胞外である)。がん細胞抗原はがん関連抗原であってもよい。及び/又は、いくつかの実施形態において、がん細胞抗原は、その発現ががんの発症、進行又は症状の重篤度に関連する抗原である。がん関連抗原は、がんの原因や病態に関連することもあれば、がんの結果として異常に発現することもある。いくつかの実施形態において、がん細胞抗原は、がんの細胞によって、例えば、同等の非がん細胞(例えば、同じ組織/細胞型に由来する非がん細胞)による発現レベルと比較して、発現が(例えば、RNA及び/又はタンパク質レベルで)上昇する抗原である。いくつかの実施形態では、がん関連抗原はがん細胞によって優先的に発現され、同等の非がん細胞(例えば、同じ組織/細胞型に由来する非がん細胞)では発現されないことがある。いくつかの実施形態において、がん関連抗原は、変異したがん遺伝子又は変異したがん抑制遺伝子の産物である可能性がある。及び/又は、いくつかの実施形態において、がん関連抗原は、過剰発現された細胞タンパク質、がん原性ウイルスによって産生されたがん抗原、オンコフェタール抗原、又は細胞表面の糖脂質若しくは糖タンパク質の産物であってもよい。
【0272】
がん細胞抗原については、Zarour HM,DeLeo A,Finn OJ,ら:Kufe DW、Pollock RE、Weichselbaum RR、他編、Holland-Frei Cancer Medicine、第6版。ハミルトン(ON):BC Decker;2003、がん細胞抗原にはオンコフェタール抗原が含まれる:CEA、未熟ラミニン受容体、TAG-72;HPV E6やE7などのオンコウイルス抗原;過剰発現タンパク質:BING-4、カルシウム活性化クロライドチャネル2、サイクリンB1、9D7、Ep-CAM、EphA3、HER2/neu、テロメラーゼ、メソセリン、SAP-1、サバイビン;がん精巣抗原:BAGE、CAGE、GAGE、MAGE、SAGE、XAGE、CT9、CT10、NY-ESO-1、PRAME、SSX-2;系統制限抗原:MART1、Gp100、チロシナーゼ、TRP-1/2、MC1R、前立腺特異抗原;変異抗原:β-カテニン、BRCA1/2、CDK4、CML66、フィブロネクチン、MART-2、p53、Ras、TGF-βRII;翻訳後変化抗原:MUC1、イディオタイプ抗原:Ig、TCR、に記載されている。その他のがん細胞抗原としては、熱ショックタンパク質70(HSP70)、熱ショックタンパク質90(HSP90)、グルコース制御タンパク質78(GRP78)、ビメンチン、ヌクレオリン、フェトアシナール膵タンパク質(FAPP)、アルカリホスファターゼ胎盤様2(ALPPL-2)、シグレック-5、ストレス誘導性リンタンパク質1(STIP1)、タンパク質チロシンキナーゼ7(PTK7)、シクロフィリンBなどがある。
【0273】
いくつかの実施形態において、がん細胞抗原は、Zhao and Cao,Front Immunol.(2019);10:2250に記載されるがん細胞抗原であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、がん細胞抗原は、CD30、CD19、CD20、CD22、ROR1R、CD4、CD7、CD38、BCMA、メソセリン、EGFR、GPC3、MUC1、HER2、GD2、CEA、EpCAM、LeY及びPSCAから選択される。
【0274】
いくつかの実施形態では、がん細胞抗原は、血液学的悪性腫瘍の細胞によって発現される抗原である。いくつかの実施形態において、がん細胞抗原は、CD30、CD19、CD20、CD22、ROR1R、CD4、CD7、CD38及びBCMAから選択される。
【0275】
いくつかの実施形態では、がん細胞抗原は固形腫瘍の細胞によって発現される抗原である。いくつかの実施形態において、がん細胞抗原は、メソセリン、EGFR、GPC3、MUC1、HER2、GD2、CEA、EpCAM、LeY及びPSCAから選択される。
【0276】
いくつかの実施形態では、がん細胞抗原はCD19である。CD19はB細胞のマーカーであり、例えばB細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)の治療に有用な標的である-例えばWangら、Exp Hematol Oncol.(2012)1:36。
【0277】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメイン(ひいてはCAR)は多特異的である。多重特異性」とは、抗原結合ドメインが1つ以上の標的に特異的に結合することを意味する。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは二重特異性抗原結合ドメインである。いくつかの実施形態において、抗原結合分子は、少なくとも2つの異なる抗原結合部分(すなわち、少なくとも2つの抗原結合部分、例えば、非同一のVH及びVLを含む)を含む。多特異的抗原結合ドメインの個々の抗原結合部位は、例えばリンカー配列を介して連結されていてもよい。
【0278】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは少なくとも2つの、非同一の標的抗原に結合するので、少なくとも二重特異的である。用語「二重特異性」は、抗原結合ドメインが少なくとも2つの異なる抗原決定基と特異的に結合できることを意味する。いくつかの実施形態では、多特異的抗原結合ドメイン/CARの標的抗原の少なくとも1つはCD30である。
【0279】
標的抗原の各々は、独立して、本明細書に記載されるような標的抗原であってもよい。いくつかの実施形態では、各標的抗原は独立して、本明細書に記載されるようながん細胞抗原である。
【0280】
本開示による抗原結合ドメイン(例えば、多特異的抗原結合ドメイン)は、抗原結合ドメインが特異的である標的(複数可)に結合可能な抗原結合部分を含むことが理解されよう。例えば、CD30及びCD30以外の抗原に結合可能な抗原結合ドメインは、(i)CD30に結合可能な抗原結合部分、及び(ii)CD30以外の標的抗原に結合可能な抗原結合部分を含むことができる。
【0281】
本開示の態様及び実施形態において、標的抗原はCD30である。従って、本開示のいくつかの態様及び実施形態において、抗原結合ドメインはCD30結合ドメインである。
【0282】
CD30(TNFRSF8としても知られる)はUniProtで同定されたタンパク質である:P28908。CD30は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのシングルパス、I型膜貫通糖タンパク質である。CD30の構造と機能は、例えばvan der Weydenら,Blood Cancer Journal(2017)7:e603やMuta and Podack Immunol.Res.(2013)57(1-3):151-8に記載されており、これらはいずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0283】
ヒトTNFRSF8遺伝子によりコードされるmRNAの選択的スプライシングにより、3つのアイソフォームが生じる:アイソフォーム1(「長い」アイソフォーム;UniProt:P28908-1、v1;SEQ ID NO:1)、SEQ ID NO:1の1位から463位に対応するアミノ酸配列が欠損しているアイソフォーム2(「細胞質」、「短い」又は「C30V」アイソフォーム、UniProt:P28908-2;SEQ ID NO:2)、及び、SEQ ID NO:1の1位から111位及び446位に対応するアミノ酸配列が欠損しているアイソフォーム3(UniProt:P28908-3;SEQ ID NO:3)。SEQ ID NO:1のN末端18アミノ酸はシグナルペプチド(SEQ ID NO:4)を形成し、続いて367アミノ酸の細胞外ドメイン(SEQ ID NO:1の19位から385位、SEQ ID NO.5に示される)、21アミノ酸の細胞外ドメイン(SEQ ID NO.5に示される)が続く:5)、21アミノ酸膜貫通ドメイン(SEQ ID NO:1の386位から406位、SEQ ID NO:6に示す)、及び189アミノ酸細胞質ドメイン(SEQ ID NO:1の407位から595位、SEQ ID NO:7に示す)が続く。
【0284】
本明細書において「CD30」とは、あらゆる種由来のCD30を指し、あらゆる種由来のCD30アイソフォーム、フラグメント、バリアント又はホモログを含む。本明細書で使用される場合、参照タンパク質の「フラグメント」、「バリアント」又は「ホモログ」は、参照タンパク質(例えば参照アイソフォーム)のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有するものとして任意に特徴付けられ得る。いくつかの実施形態において、参照タンパク質のフラグメント、変異体、アイソフォーム及びホモログは、参照タンパク質によって実行される機能を実行する能力によって特徴付けられ得る。
【0285】
いくつかの実施形態において、CD30は、哺乳動物(例えば、霊長類(アカゲザル、カニクイザル、又はヒト)及び/又はげっ歯類(例えば、ラット又はマウス)CD30)由来である。好ましい実施形態において、CD30はヒトCD30である。アイソフォーム、フラグメント、バリアント又はホモログは、任意選択で、所与の種、例えばヒト由来の未成熟又は成熟CD30アイソフォームのアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有するものとして特徴付けられ得る。CD30の断片は、10、20、30、40、50、100、200、300、400、500又は590アミノ酸のいずれかの最小長を有することができ、10、20、30、40、50、100、200、300、400、500又は595アミノ酸のいずれかの最大長を有することができる。
【0286】
いくつかの実施形態において、CD30は、SEQ ID NO:1、2又は3に対して少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0287】
いくつかの実施形態において、CD30は、SEQ ID NO:5に対して少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0288】
いくつかの実施形態において、CD30のフラグメントは、SEQ ID NO:5又は19に対して少なくとも70%、好ましくは80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0289】
本開示のCARのCD30結合ドメインは、好ましくは、CD30又はそのフラグメントへの特異的結合を示す。本開示のCARのCD30結合ドメインは、好ましくは、CD30の細胞外ドメインへの特異的結合を示す。CD30結合ドメインは、抗CD30抗体又は他のCD30結合剤、例えばCD30結合ペプチド又はCD30結合低分子に由来し得る。
【0290】
CD30結合ドメインは、抗CD30抗体の抗原結合部位に由来することがある。
【0291】
抗CD30抗体には、HRS3及びHRS4(例えば、Hombachら、Scand J Immunol(1998)48(5):497-501)、Schlapschyら,Protein Engineering、Design and Selection(2004)17(12)に記載のHRS3誘導体:847-860、BerH2(MBL International Cat# K0145-3、RRID:AB_590975)、SGN-30(cAC10としても知られ、例えばForero-Torresら、Br J Haematol(2009)146:171-9に記載)、MDX-060(例えばAnsellら、J Clin Oncol(2007)25:2764-9に記載;5F11、iratumumabとしても知られる、)及びMDX-1401(例えば、Cardarelliら、Clin Cancer Res.(2009)15(10):3376-83に記載)、ならびにWO2020/068764A1、WO2003/059282A2、WO2006/089232A2、WO2007/084672A2、WO2007/044616A2、WO2005/001038A2、US2007/166309A1、US2007/258987A1、WO2004/010957A2及びUS2005/009769A1に記載されている抗CD30抗体が含まれる。
【0292】
いくつかの実施形態において、本開示によるCD30結合ドメインは、抗CD30抗体のCDRを含む。いくつかの実施形態において、本開示によるCD30結合ドメインは、抗CD30抗体のVH領域及びVL領域を含む。いくつかの実施形態において、本開示によるCD30結合ドメインは、抗CD30抗体のVH及びVL領域を含むscFvを含む。
【0293】
抗体のCDRやFRの定義には、Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991),Chothiaら,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)、及びVBASE2は、Retterら、Nucl.Acids Res.(2005)33(suppl 1)に記載されている:D671-D674に記載されている。本明細書に記載の抗体のVH領域及びVL領域のCDR及びFRは、VBASE2に従って定義される。
【0294】
いくつかの実施形態において、本開示の抗原結合ドメインは以下を含む:
以下のCDRを組み込んだVH:
SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を有するHC-CDR3、
又は、HC-CDR1、HC-CDR2又はHC-CDR3の1つ以上のアミノ酸の1つ又は2つ又は3つが別のアミノ酸で置換されたその変異体、
及び
以下のCDRを組み込んだVL:
SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を有するLC-CDR3、
又は、LC-CDR1、LC-CDR2、又はLC-CDR3の1つ以上のアミノ酸の1つ又は2つ又は3つが別のアミノ酸で置換されたその変異体。
【0295】
いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは以下を含む:
SEQ ID NO:14のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成されるVH、
及び
SEQ ID NO:15のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成されるVL。
【0296】
いくつかの実施形態において、CD30結合ドメインは、本明細書に記載されるようなVH配列及びVL配列を含む単鎖可変フラグメント(scFv)を含むか、又はそれらからなり得る。VH配列とVL配列は共有結合していてもよい。いくつかの実施形態では、VH配列及びVL配列は、柔軟なリンカー配列、例えば本明細書に記載されるような柔軟なリンカー配列によって連結される。柔軟なリンカー配列は、VH配列及びVL配列の末端に結合され得、それによってVH配列及びVL配列が連結される。いくつかの実施形態では、VH及びVLは、SEQ ID NO:16又は17のアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成されるリンカー配列を介して結合される。
【0297】
いくつかの実施形態において、CD30結合ドメインは、SEQ ID NO:18のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0298】
いくつかの実施形態において、CD30結合ドメインは、CD30、例えばCD30の細胞外ドメインに結合することができる。いくつかの実施形態において、CD30結合ドメインは、抗体HRS3によって結合されるCD30のエピトープ、例えば、SEQ ID NO:19に示される、SEQ ID NO:1に従って番号付けされたヒトCD30のアミノ酸位置185~335の領域内に結合することが可能である(Schlapschyら、Protein Engineering,Design and Selection(2004)17(12):847-860、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0299】
いくつかの実施形態において、標的抗原はCD19である。従って、本開示のいくつかの態様及び実施形態において、抗原結合ドメインはCD19結合ドメインである。
【0300】
CD19は、UniProt P15391-1、v6によって同定されるタンパク質である。本明細書において「CD19」とは、あらゆる種由来のCD19を指し、あらゆる種由来のCD19アイソフォーム(例えば、P15391-2)、フラグメント、変異体(変異体を含む)又はホモログを含む。
【0301】
CD19結合ドメインは、抗CD19抗体の抗原結合部分に由来していてもよい。抗CD19抗体には、例えばZolaら、Immunology and Cell Biology(1991)69:411-422に記載されているFMC63が含まれる。
【0302】
いくつかの実施形態において、本開示によるCD19結合ドメインは、抗CD19抗体のCDRを含む。いくつかの実施形態において、本開示によるCD19結合ドメインは、抗CD19抗体のVH領域及びVL領域を含む。いくつかの実施形態において、本開示によるCD19結合ドメインは、抗CD19抗体のVH領域及びVL領域を含むscFvを含む。
【0303】
いくつかの実施形態において、本開示の抗原結合ドメインは以下を含む:
以下のCDRを組み込んだVH:
SEQ ID NO:37のアミノ酸配列を有するHC-CDR1
SEQ ID NO:38のアミノ酸配列を有するHC-CDR2
SEQ ID NO:39のアミノ酸配列を有するHC-CDR3、
又は、HC-CDR1、HC-CDR2又はHC-CDR3の1つ以上のアミノ酸の1つ又は2つ又は3つが別のアミノ酸で置換されたその変異体、
及び
以下のCDRを組み込んだVL:
SEQ ID NO:40のアミノ酸配列を有するLC-CDR1
SEQ ID NO:41のアミノ酸配列を有するLC-CDR2
SEQ ID NO:42のアミノ酸配列を有するLC-CDR3、
又は、LC-CDR1、LC-CDR2又はLC-CDR3の1つ以上のアミノ酸の1つ又は2つ又は3つが別のアミノ酸で置換されたその変異体。
【0304】
いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは以下を含む:
SEQ ID NO:43のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)を有するアミノ酸配列かを含むか、又はそれらから構成されるVH、
及び
SEQ ID NO:44のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成されるVL。
【0305】
いくつかの実施形態において、CD19結合ドメインは、本明細書に記載されるようなVH配列及びVL配列を含む単鎖可変フラグメント(scFv)を含むか、又はそれらから構成され得る。VH配列とVL配列は共有結合していてもよい。いくつかの実施形態では、VH配列及びVL配列は、柔軟なリンカー配列、例えば本明細書に記載されるような柔軟なリンカー配列によって連結される。柔軟なリンカー配列は、VH配列及びVL配列の末端に結合され得、それによってVH配列及びVL配列が連結される。いくつかの実施形態では、VH及びVLは、SEQ ID NO:16又は45のアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成されるリンカー配列を介して結合される。
【0306】
いくつかの実施形態において、CD19結合ドメインは、SEQ ID NO:46のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれから構成される。
【0307】
いくつかの実施形態において、CD19結合ドメインは、CD19、例えばCD19の細胞外ドメインに結合することができる。いくつかの実施形態において、CD19結合ドメインは、抗体FMC63によって結合されるCD19のエピトープに結合することができる。
【0308】
膜貫通ドメイン
本開示のCARは、膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインとは、生物学的膜、例えば細胞膜において熱力学的に安定なアミノ酸配列によって形成される任意の三次元構造を指す。本開示に関連して、膜貫通ドメインは、CARを発現する細胞の細胞膜にまたがるアミノ酸配列であり得る。
【0309】
膜貫通ドメインは、疎水性α-ヘリックス又はβ-バレルを形成するアミノ酸配列を含むか、又はそれから構成されることができる。本開示のCARの膜貫通ドメインのアミノ酸配列は、膜貫通ドメインを含むタンパク質の膜貫通ドメインのアミノ酸配列であってもよいし、膜貫通ドメインのアミノ酸配列に由来してもよい。膜貫通ドメインは、GenBank、UniProt、Swiss-Prot、TrEMBL、Protein Information Resource、Protein Data Bank、Ensembl、及びInterPro等のデータベースに記録されており、及び/又は、例えばTMHMM(Kroghら、2001 J Mol Biol 305:567-580)等のアミノ酸配列解析ツールを用いて同定/予測することができる。
【0310】
いくつかの実施形態において、本開示のCARの膜貫通ドメインのアミノ酸配列は、細胞表面で発現するタンパク質の膜貫通ドメインのアミノ酸配列であってもよく、又はそれに由来してもよい。いくつかの実施形態では、細胞表面で発現されるタンパク質は、受容体又はリガンド、例えば免疫受容体又はリガンドである。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインのアミノ酸配列は、ICOS、ICOSL、CD86、CTLA-4、CD28、CD80、MHCクラスIα、MHCクラスIIα、MHCクラスIIβ、CD3ε、CD3δ、CD3γ、CD3-ζ、TCRα TCRβ、CD4、CD8α、CD8β、CD40、CD40L、PD-1、PD-L1、PD-L2、4-1BB、4-1BBL、OX40、OX40L、GITR、GITRL、TIM-3、ガレクチン9、LAG3、CD27、CD70、LIGHT、HVEM、TIM-4、TIM-1、ICAM1、LFA-1、LFA-3、CD2、BTLA、CD160、LILRB4、LILRB2、VTCN1、CD2、CD48、2B4、SLAM、CD30、CD30L、DR3、TL1A、CD226、CD155、CD112、及び、CD276のうちの1つの膜貫通ドメインのアミノ酸配列であってもよく、又はそれらに由来してもよい。いくつかの実施形態において、膜貫通体は、CD28、CD3-ζ、CD8α、CD8β又はCD4の膜貫通ドメインのアミノ酸配列であるか、又はそれに由来する。いくつかの実施形態において、膜貫通体は、CD28の膜貫通ドメインのアミノ酸配列であるか、又はそれに由来する。
【0311】
いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:20又は48のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0312】
いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:21のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0313】
いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:22のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0314】
シグナル伝達ドメイン
本開示のキメラ抗原受容体は、シグナル伝達ドメインを含む。シグナル伝達ドメインは、CARを発現する細胞において細胞内シグナル伝達を開始するための配列を提供する。
【0315】
ITAM含有配列
シグナル伝達ドメインはITAM含有配列を含む。ITAM含有配列は、1つ以上の免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む。ITAMはアミノ酸配列YXXL/I(SEQ ID NO:23)を含み、ここで、「X」は任意のアミノ酸を示す。ITAM含有タンパク質では、SEQ ID NO:23による配列はしばしば6~8個のアミノ酸で区切られている;YXXL/I(X)6-8YXXL/I(SEQ ID NO:24)。チロシンキナーゼによってITAMのチロシン残基にリン酸基が付加されると、細胞内でシグナル伝達カスケードが開始される。
【0316】
いくつかの実施形態において、シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:23又はSEQ ID NO:24に従うアミノ酸配列の1つ以上のコピーを含む。いくつかの実施形態において、シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:23によるアミノ酸配列の少なくとも1、2、3、4、5又は6コピーを含む。いくつかの実施形態において、シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:24に従うアミノ酸配列の少なくとも1、2、又は3コピーを含む。
【0317】
いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、ITAM含有アミノ酸配列を有するタンパク質のITAM含有配列のアミノ酸配列であるか、又は、ITAM含有配列に由来するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、シグナル伝達ドメインは、CD3-ζ、FcγRI、CD3ε、CD3δ、CD3γ、CD79α、CD79β、FcγRIIA、FcγRIIC、FcγRIIIA、FcγRIV又はDAP12のうちの1つの細胞内ドメインのアミノ酸配列を含むか、又はそれらに由来するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、シグナル伝達ドメインは、CD3-ζの細胞内ドメインであるか、又はCD3-ζの細胞内ドメインに由来するアミノ酸配列を含む。
【0318】
いくつかの実施形態において、シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:25のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0319】
コスティミュレイトリー配列(Costimulatory sequence)
シグナル伝達ドメインは、さらに1つ以上のコスティミュレーション配列を含むことができる。コスティミュレイトリー配列は、本開示のCARを発現する細胞のコスティミュレーションを提供するアミノ酸配列である。コスティミュレーションは、標的抗原との結合時にCAR発現細胞の増殖及び生存を促進し、またCAR発現細胞によるサイトカイン産生、分化、細胞傷害性機能及び記憶形成を促進し得る。T細胞コスティミュレーションの分子メカニズムは、Chen and Flies,(2013)Nat Rev Immunol 13(4):227-242に概説されている。
【0320】
コスティミュレイトリー配列は、コスティミュレイトリータンパク質(Costimulatory proteins)のアミノ酸配列であってもよいし、コスティミュレイトリータンパク質のアミノ酸配列に由来してもよい。いくつかの実施形態において、コスティミュレイトリー配列は、コスティミュレイトリータンパク質の細胞内ドメインのアミノ酸配列であるか、又はそれに由来するアミノ酸配列である。
【0321】
CARが標的抗原に結合すると、コスティミュレーション配列はCARを発現している細胞に対して、コスティミュレーション配列が由来するコスティミュレイトリータンパク質がコグネートリガンド(cognate ligand)に結合した際に提供するようなコスティミュレーションを提供する。例として、CD28に由来するコスティミュレーション配列を含むシグナル伝達ドメインを含むCARの場合、標的抗原への結合は、CD80及び/又はCD86とCD28との結合によって引き起こされるようなシグナル伝達を、CARを発現する細胞に引き起こす。このように、コスティミュレイトリー配列は、コスティミュレイトリー配列が由来するコスティミュレイトリータンパク質のコスティミュレーションシグナルを伝達することができる。
【0322】
いくつかの実施形態において、コスティミュレイトリータンパク質は、B7-CD28スーパーファミリーのメンバー(例えば、CD28、ICOS)、又はTNF受容体スーパーファミリーのメンバー(例えば、4-1BB、OX40、CD27、DR3、GITR、CD30、HVEM)であってもよい。いくつかの実施形態において、コスティミュレイトリー配列は、CD28、4-1BB、ICOS、CD27、OX40、HVEM、CD2、SLAM、TIM-1、CD30、GITR、DR3、CD226及びLIGHTのうちの1つの細胞内ドメインであるか、又はそれらに由来する。いくつかの実施形態において、コスティミュレイトリー配列は、CD28の細胞内ドメインであるか、又はCD28の細胞内ドメインに由来する。
【0323】
いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、1つ以上の重複しないコスティミュレイトリー配列を含む。いくつかの実施形態において、シグナル伝達ドメインは、1、2、3、4、5又は6個のコスティミュレイトリー配列を含む。複数のコスティミュレイトリー配列は、タンデムに提供されてもよい。
【0324】
所与のアミノ酸配列が、所与のコスティミュレイトリータンパク質を介するシグナル伝達を開始することができるかどうかは、例えば、コスティミュレイトリータンパク質を介するシグナル伝達の相関関係(例えば、コスティミュレイトリータンパク質を介するシグナル伝達の結果として発現/活性がアップレギュレート又はダウンレギュレートされる因子の発現/活性)を分析することによって調べることができる。
【0325】
コスティミュレイトリータンパク質は、いくつかの伝達経路を通じて、細胞の増殖、エフェクター機能、生存を促進する遺伝子の発現をアップレギュレートする。例えば、CD28とICOSは、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)とAKTを介してシグナルを伝達し、NF-κB、mTOR、NFAT、AP1/2を介して細胞増殖、エフェクター機能、生存を促進する遺伝子の発現をアップレギュレートする。CD28はまた、CDC42/RAC1を介してAP1/2を活性化し、RASを介してERK1/2を活性化し、ICOSはC-MAFを活性化する。4-1BB、OX40、CD27はTNF受容体関連因子(TRAF)をリクルートし、MAPK経路やPI3Kを介してシグナルを送る。
【0326】
いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、CD28であるか、又はCD28に由来するコスティミュレイトリー配列を含む。
【0327】
いくつかの実施形態において、シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成されるコスティミュレイトリー配列を含む。
【0328】
Koflerら Mol.Ther.(2011)19:760-767は、CARライゲーション時のIL-2産生誘導を減少させ、制御性T細胞が介在するCAR-T細胞活性の抑制を最小限に抑えるために、lckキナーゼ結合部位が変異した変異型CD28細胞内ドメインを記載している。変異型CD28細胞内ドメインのアミノ酸配列をSEQ ID NO:27に示す。
【0329】
いくつかの実施形態において、シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:27のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成されるコスティミュレイトリー配列を含む。
【0330】
いくつかの実施形態において、シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:28のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0331】
いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、4-1BBであるか、又は4-1BBに由来するコスティミュレイトリー配列を含む。
【0332】
いくつかの実施形態において、シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:49のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成されるコスティミュレイトリー配列を含む。
【0333】
いくつかの実施形態において、シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:50のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0334】
ヒンジ領域
CARは、ヒンジ領域をさらに含むことができる。ヒンジ領域は、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に設けられてもよい。ヒンジ領域はスペーサー領域と呼ばれることもある。ヒンジ領域は、CARの抗原結合ドメインと膜貫通ドメインの柔軟な連結を提供するアミノ酸配列である。
【0335】
ヒンジ領域の有無や長さは、CARの機能に影響を与えることが示されている(例えば、Dottiら、Immunol Rev(2014)257(1)supraに総説あり)。
【0336】
いくつかの実施形態において、CARは、ヒトIgG1のCH1-CH2ヒンジ領域、CD8α由来のヒンジ領域、例えば、WO2012/031744A1に記載されているようなヒンジ領域、又はCD28由来のヒンジ領域、例えばWO2011/041093A1に記載されているようなヒンジ領域であるアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成されるヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態において、CARは、ヒトIgG1のCH1-CH2ヒンジ領域由来のヒンジ領域を含む。
【0337】
いくつかの実施形態において、ヒンジ領域は、SEQ ID NO:29又は30のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0338】
いくつかの実施形態において、CARは、ヒトIgG4のCH1-CH2ヒンジ領域に由来するヒンジ領域を含む。
【0339】
いくつかの実施形態において、ヒンジ領域は、SEQ ID NO:47のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0340】
いくつかの実施形態では、CARは、ヒトIgG1のCH2-CH3領域(すなわち、Fc領域)であるか、又はそれに由来するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成されるヒンジ領域を含む。
【0341】
いくつかの実施形態において、ヒンジ領域は、SEQ ID NO:31のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0342】
Hombachら,Gene Therapy(2010)17:1206-1213には、単球やNK細胞などのFcγR発現細胞の活性化を低下させるための変異型CH2-CH3領域が記載されている。変異型CH2-CH3領域のアミノ酸配列をSEQ ID NO:32に示す。
【0343】
いくつかの実施形態において、ヒンジ領域は、SEQ ID NO:32のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0344】
いくつかの実施形態において、ヒンジ領域は、ヒトIgG1のCH1-CH2ヒンジ領域であるか又はそれに由来するアミノ酸配列、及びヒトIgG1のCH2-CH3領域(すなわちFc領域)であるか又はそれに由来するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0345】
いくつかの実施形態において、ヒンジ領域は、SEQ ID NO:33のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0346】
その他の配列
シグナルペプチド
CARはさらにシグナルペプチド(リーダー配列又はシグナル配列としても知られる)を含んでいてもよい。シグナルペプチドは通常、5~30個の疎水性アミノ酸の配列からなり、1個のαヘリックスを形成する。分泌タンパク質や細胞表面で発現するタンパク質は、シグナルペプチドを含んでいることが多い。シグナルペプチドは多くのタンパク質で知られており、GenBank、UniProt、Ensemblなどのデータベースに記録されている、あるいはSignalP(Petersenら,2011 Nature Methods 8:785-786)やSignal-BLAST(Frank and Sippl,2008 Bioinformatics 24:2172-2176)などのアミノ酸配列解析ツールを用いて同定/予測することができる。
【0347】
シグナルペプチドはCARのN末端に存在してもよく、新しく合成されたCARに存在してもよい。シグナルペプチドは、CARの細胞表面への効率的な輸送を提供する。シグナルペプチドは切断により除去されるため、細胞表面で発現する成熟CARには含まれない。
【0348】
いくつかの実施形態において、シグナルペプチドは、SEQ ID NO:34のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はこれらから構成される。いくつかの実施形態において、シグナルペプチドは、SEQ ID NO:51のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0349】
リンカー配列及びさらなる機能的配列
いくつかの実施形態において、CARは、異なるドメイン(すなわち、抗原結合ドメイン、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、シグナル伝達ドメイン)間に1つ以上のリンカー配列を含む。いくつかの実施形態において、CARは、ドメインの部分配列間(例えば、抗原結合ドメインのVHとVLの間)に1つ以上のリンカー配列を含む。
【0350】
リンカー配列は当業者に公知であり、例えば、Chenら、Adv Drug Deliv Rev(2013)65(10).1357-1369に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、柔軟なリンカー配列であってもよい。柔軟なリンカー配列は、リンカー配列によって連結されるアミノ酸配列の相対的な移動を可能にする。柔軟なリンカーは当業者に知られており、Chenら、Adv Drug Deliv Rev(2013)65(10).1357-1369。柔軟なリンカー配列は、多くの場合、高い割合のグリシン及び/又はセリン残基を含む。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、少なくとも1つのグリシン残基及び/又は少なくとも1つのセリン残基を含む。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、グリシン残基及びセリン残基を含む。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、1~2、1~3、1~4、1~5、1~10、1~20、1~30、1~40又は1~50アミノ酸の長さを有する。
【0351】
いくつかの実施形態において、リンカー配列は、SEQ ID NO:16又は45に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、SEQ ID NO:16又は45に示されるアミノ酸配列の1、2、3、4又は5個のタンデムコピーを含むか、又はそれらから構成される。
【0352】
CARは、さらにアミノ酸又はアミノ酸配列を含んでいてもよい。例えば、抗原結合分子及びポリペプチドは、発現、フォールディング、輸送、プロセシング、精製、又は検出を容易にするためのアミノ酸配列を含んでいてもよい。例えば、CARは、His、(例えば6XHis)、Myc、GST、MBP、FLAG、HA、E、又はビオチンタグをコードする配列を、任意でN末端又はC末端に含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、CARは、検出可能な部分、例えば、蛍光、発光、免疫検出、放射、化学、核酸又は酵素標識を含む。
【0353】
特に例示的なCAR
本開示のいくつかの実施形態において、CARは、以下を含むか、又は以下から構成される:
SEQ ID NO:18のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される抗原結合ドメイン;
SEQ ID NO:33のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成されるヒンジ領域;
SEQ ID NO:20のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される膜貫通ドメイン;及び
SEQ ID NO:28のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成されるシグナル伝達ドメイン。
【0354】
本開示のいくつかの実施形態において、CARは、SEQ ID NO:35又は36のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0355】
いくつかの実施形態において、CARは、Hombachら、Cancer Res.(1998)58(6):1116-9、Hombachら、Gene Therapy(2000)7:1067-1075、Hombachら、J Immunother.(1999)22(6):473-80,Hombachら、Cancer Res.(2001)61:1976-1982、Hombachら、J Immunol(2001)167:6123-6131、Savoldoら、Blood(2007)110(7):2620-30、Koehlerら、Cancer Res.(2007)67(5):2265-2273、Di Stasiら、Blood(2009)113(25):6392-402、Hombachら、Gene Therapy(2010)17:1206-1213、Chmielewskiら、Gene Therapy(2011)18:62-72、Koflerら、Mol.Ther.(2011)19(4):760-767,Gilham,Abken and Pule.Trends in Mol.Med.(2012)18(7):377-384、Chmielewskiら、Gene Therapy(2013)20:177-186、Hombachら、Mol.Ther.(2016)24(8):1423-1434,Ramosら、J.Clin.Invest.(2017)127(9):3462-3471、WO2015/028444A1又はWO2016/008973A1の実施形態から選択され、これらはすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0356】
本開示のいくつかの実施形態において、CARは、以下を含むか、又は以下から構成される:
SEQ ID NO:46のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される抗原結合ドメイン;
SEQ ID NO:47のアミノ酸配列に対して、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成されるヒンジ領域;
SEQ ID NO:48のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される膜貫通ドメイン;及び
SEQ ID NO:50のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成されるシグナル伝達ドメイン。
【0357】
本開示のいくつかの実施形態において、CARは、SEQ ID NO:52又は53のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから構成される。
【0358】
CAR発現ウイルス特異的免疫細胞
本開示は、キメラ抗原受容体(CARs)を含む/発現するウイルス特異的免疫細胞に関する。
【0359】
CAR発現ウイルス特異的免疫細胞は、本開示によるCARを発現するか、又はそれを含んでもよい。CAR発現ウイルス特異的免疫細胞は、本開示によるCARをコードする核酸を含むか、又は発現し得る。CAR発現細胞は、それが発現するCARを構成することが理解されよう。また、CARをコードする核酸を発現する細胞は、その核酸によってコードされるCARも発現し、それを構成することも理解されよう。
【0360】
本開示によるCAR/CARをコードする核酸を含むウイルス特異的免疫細胞は、細胞の機能的特性を参照することによって特徴付けることができる。
【0361】
いくつかの実施形態において、本開示によるCAR/CARをコードする核酸を含むウイルス特異的免疫細胞は、以下の特性の1つ以上を示す:
(a)CARが特異的である標的抗原を発現する細胞、ウイルス特異的免疫細胞が特異的であるウイルスに感染した細胞に応答して、ウイルス特異的免疫細胞が特異的であるウイルスに感染した細胞に応答して、及び/又はウイルス特異的免疫細胞が特異的であるウイルスの抗原のペプチドを提示する細胞に応答して、1つ以上の細胞傷害性/エフェクター因子(例えば、IFNγ、グランザイム、パーフォリン、グラニュライシン、CD107a、TNFα、FASL)の発現、増殖/集団拡大、及び/又は増殖因子(例えば、IL-2)を発現する;
(b)CARが特異的である標的抗原を発現する細胞、ウイルス特異的免疫細胞が特異的であるウイルスに感染した細胞、及び/又はウイルス特異的免疫細胞が特異的であるウイルスの抗原のペプチドを提示する細胞に対する細胞傷害性;
(c)CARが特異的である標的抗原を発現していない細胞、ウイルス特異的免疫細胞が特異的であるウイルスに感染していない細胞、及び/又はウイルス特異的免疫細胞が特異的であるウイルスの抗原のペプチドを提示しない細胞に対する細胞傷害性がない(すなわち、ベースラインを超える);
(d)CARが特異的である標的抗原を発現する細胞を含むがん、ウイルス特異的免疫細胞が特異的であるウイルスに感染した細胞を含むがん、及び/又はウイルス特異的免疫細胞が特異的であるウイルスの抗原のペプチドを提示する細胞を含むがんに対する抗がん活性(例えば、がん細胞に対する細胞傷害性、腫瘍増殖抑制、転移の減少など);並びに
(e)同種反応性免疫細胞、例えば、CARが特異的である標的抗原を発現する同種反応性免疫細胞に対する細胞傷害性。
【0362】
細胞増殖/個体数の増加は、細胞分裂や一定期間の細胞数を分析することによって調べることができる。細胞分裂は、例えば、Fulcher and Wong,Immunol Cell Biol(1999)77(6):559-564に記載されている。増殖細胞はまた、例えばBuckら、Biotechniques.2008 Jun;44(7):927-9、及びSali及びMitchison,PNAS USA 2008 Feb 19;105(7):2415-2420に記載されており、いずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0363】
本明細書で使用される「発現」は、遺伝子発現又はタンパク質発現であり得る。遺伝子発現は、DNAからRNAへの転写を包含し、当業者に公知の種々の手段、例えば定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)によるmRNAのレベルの測定、又はレポーターベースの方法によって測定することができる。同様に、タンパク質発現は、当業者に周知の様々な方法、例えば、抗体ベースの方法、例えば、ウェスタンブロット法、免疫組織化学法、免疫細胞化学法、フローサイトメトリー法、ELISA法、ELISPOT法、又はレポーターベースの方法によって測定することができる。
【0364】
細胞毒性及び殺細胞性は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるZaritskayaら、Expert Rev Vaccines(2011)、9(6):601-616に総説されている方法のいずれかを用いて調べることができる。細胞毒性/殺細胞のインビトロアッセイの例としては、51Cr放出アッセイ、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイ、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)放出アッセイ、及びカルセイン-アセトキシメチル(カルセイン-AM)放出アッセイなどの放出アッセイが挙げられる。これらのアッセイは、溶解した細胞から放出される因子の検出に基づいて殺細胞を測定する。所定の細胞型による殺細胞は、例えば、被験細胞を所定の細胞型と共培養し、適当な期間後に生存/死滅した被験細胞の数/割合を測定することにより分析することができる。
【0365】
細胞は、適切なin vitroアッセイやin vivoのがんモデルで分析することで、抗がん活性を評価することができる。
【0366】
いくつかの実施形態において、本開示のCD30特異的CAR発現EBV特異的免疫細胞は、以下の特性の1つ以上を示す:
(a)CD30を発現する細胞に応答して、EBVに感染した細胞に応答して、及び/又はEBV抗原のペプチドを提示する細胞に応答して、1つ以上の細胞傷害性/エフェクター因子(例えば、IFNγ、グランザイム、パーフォリン、グラニュライシン、CD107a、TNFα、FASL)を発現する;
(b)CD30を発現する細胞、EBVに感染した細胞、及び/又はEBV抗原のペプチドを提示する細胞に対する細胞傷害性;
(c)CD30を発現していない細胞、EBVに感染していない細胞、及び/又はEBV抗原のペプチドを提示していない細胞に対する細胞傷害性なし(すなわち、ベースライン以上);
(d)CD30を発現する細胞からなるがん、EBVに感染した細胞からなるがん、及び/又はEBV抗原のペプチドを提示する細胞からなるがんに対する抗がん活性(例えば、がん細胞に対する細胞傷害性、腫瘍増殖抑制、転移の減少など);並びに
(e)同種反応性免疫細胞、例えばCD30を発現する同種反応性免疫細胞に対する細胞傷害性。
【0367】
本開示の様々な側面に従ったいくつかの実施形態では、ウイルス特異的免疫細胞は、1つ以上(例えば、2、3、4など)のCARを構成/発現し得る。
【0368】
いくつかの実施形態では、ウイルス特異的免疫細胞は、1つ以上の非同一CARを構成/発現することができる。つ以上の非同一CARを含む/発現するウイルス特異的免疫細胞は、非同一標的抗原に特異的なCARを含む/発現することができる。例えば、本明細書の実施例4は、CD30特異的CAR及びCD19特異的CARを含む/発現するウイルス特異的免疫細胞を記載する。非同一標的抗原の各々は、独立して、本明細書に記載の標的抗原であってもよい。いくつかの実施形態では、各非同一標的抗原は、独立して、本明細書に記載されるようながん細胞抗原である。
【0369】
いくつかの実施形態において、非同一標的抗原の1つはCD30である。いくつかの実施形態において、1つ以上の非同一CARを含む/発現するウイルス特異的免疫細胞は、CD30特異的CAR、及びCD30以外の標的抗原に特異的なCARを含む。
【0370】
組成物
本開示はさらに、本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞の1つ以上(例えば、集団)を含む組成物を提供する。
【0371】
本明細書に記載される細胞は、臨床使用のための医薬組成物又は医薬品として製剤化することができ、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤又はアジュバントを含むことができる。組成物は、局所、非経口、全身、腔内、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内、眼内、結膜内、腫瘍内、皮下、皮内、髄腔内、経口、経皮の投与経路に製剤化することができ、これには注射や点滴が含まれる。
【0372】
適切な製剤は、無菌培地又は等張培地中に細胞を含有している。医薬品や医薬組成物は、ゲルを含む流体の形態で製剤化することができる。流体製剤は、ヒト又は動物の体内の選択された部位への注射又は注入(例えば、カテーテルを介して)による投与用に製剤化することができる。
【0373】
いくつかの実施形態において、組成物は、例えば血管又は腫瘍への注射又は注入のために処方される。
【0374】
本開示はまた、薬学的に有用な組成物の製造方法を提供し、このような製造方法は、以下から選択される1つ以上の工程を含み得る:本明細書に記載される細胞を製造する工程;本明細書に記載される細胞を単離する工程;及び/又は本明細書に記載される細胞を薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤もしくは希釈剤と混合する工程。
【0375】
例えば、本開示のさらなる態様は、疾患/状態(例えばがん)の治療に使用するための医薬組成物又は医薬組成物を製剤化又は製造する方法に関し、この方法は、本明細書に記載の細胞を薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤又は希釈剤と混合することによって医薬組成物又は医薬を製剤化することを含む。
【0376】
MHCの変異とマッチング
MHCクラスI分子は、α(アルファ)鎖とβ(ベータ)2-ミクログロブリン(B2M)の非共有結合ヘテロダイマーである。α鎖にはα1、α2、α3と呼ばれる3つのドメインがある。α1ドメインとα2ドメインは、MHCクラスI分子が提示するペプチドが結合する溝を形成し、ペプチド:MHC複合体を形成する。ヒトでは、MHCクラスIのα鎖はヒト白血球抗原(HLA)遺伝子によってコードされている。HLA遺伝子座には3つの主要遺伝子座(HLA-A、HLA-B、HLA-C)と3つのマイナー遺伝子座(HLA-E、HLA-F、HLA-G)がある。
【0377】
MHCクラスIα鎖は多型であり、異なるα鎖は異なるペプチドを結合し提示することができる。MHCクラスIαポリペプチドをコードする遺伝子は非常に多様であり、その結果、異なる被験者の細胞はしばしば異なるMHCクラスI分子を発現する。
【0378】
この変異性は、臓器移植や個人間の養子細胞移植に影響を与える。移植や養子移入された細胞のレシピエントの免疫系は、非自己のMHC分子を異物として認識し、移植や養子移入された細胞に対する免疫反応を引き起こし、移植片拒絶反応につながる可能性がある。あるいは、移植される細胞/組織/臓器の集団の中に、レシピエントのMHC分子を異物として認識する免疫細胞が含まれている可能性があり、これがレシピエント組織に対する免疫反応を引き起こし、移植片対宿主病(GVHD)を引き起こす可能性がある。
【0379】
同種反応性T細胞は、非自己MHC分子(すなわち同種MHC)を認識し、それに対する免疫応答を開始する能力を有するTCRを含んでいる。同種反応性(alloreactive)T細胞は、非自己MHC分子を発現する細胞に応答して、以下の特性の1つ以上を示すことがある:細胞増殖、増殖因子(例えばIL-2)の発現、細胞傷害性/エフェクター因子(例えばIFNγ、グランザイム、パーフォリン、グラニュライシン、CD107a、TNFα、FASL)の発現、及び/又は細胞傷害活性。
【0380】
本明細書で用いる「同種反応性」及び「同種反応性免疫応答」とは、エフェクター免疫細胞と遺伝的に非同一である細胞/組織/器官に対して向けられる免疫応答を指す。エフェクター免疫細胞は、非自己のMHC/HLA分子(すなわち、エフェクター免疫細胞がコードするMHC/HLA分子と非同一のMHC/HLA分子)を発現する細胞-又は細胞を構成する組織/器官-に対して、同種反応性又は同種反応性免疫応答を示すことがある。
【0381】
本明細書でいう「MHC不一致」及び「HLA不一致」被験者とは、非同一のMHC/HLA分子をコードするMHC/HLA遺伝子を有する被験者をいう。いくつかの実施形態において、MHC不一致又はHLA不一致被検体は、非同一のMHCクラスIα分子及び/又はMHCクラスII分子をコードするMHC/HLA遺伝子を有する。本明細書でいう「MHC一致」及び「HLA一致」被検体は、同一のMHC/HLA分子をコードするMHC/HLA遺伝子を有する被検体である。いくつかの実施形態では、MHC一致又はHLA一致被検体は、同一のMHCクラスIα分子及び/又はMHCクラスII分子をコードするMHC/HLA遺伝子を有する。
【0382】
本明細書において、細胞/組織/臓器が参照被検体/治療に関して同種であると言及される場合、細胞/組織/臓器は、参照被検体以外の被検体の細胞/組織/臓器から得られた/由来する。いくつかの実施形態において、同種材料は、参照被検体のMHC/HLA遺伝子によってコードされるMHC/HLA分子(例えば、MHCクラスIα分子及び/又はMHCクラスII分子)と非同一であるMHC/HLA分子(例えば、MHCクラスIα分子及び/又はMHCクラスII分子)をコードするMHC/HLA遺伝子を含む。
【0383】
本明細書において、細胞/組織/臓器が治療に関して同種異系であると称される場合、細胞/組織/臓器は、治療される被検体以外の被検体の細胞/組織/臓器から得られた/由来する。いくつかの実施形態において、同種材料は、治療される被検体のMHC/HLA遺伝子によってコードされるMHC/HLA分子(例えば、MHCクラスIα及び/又はMHCクラスII分子)と非同一であるMHC/HLA分子(例えば、MHCクラスIα及び/又はMHCクラスII分子)をコードするMHC/HLA遺伝子を含む。
【0384】
本明細書において、細胞/組織/臓器が参照被検体に関して自己由来であると称される場合、細胞/組織/臓器は参照被検体の細胞/組織/臓器から得られた/由来する。本明細書において、細胞/組織/器官が参照被検体に関して同種であると称される場合、細胞/組織/器官は参照被検体と遺伝的に同一であるか、又は遺伝的に同一の被検体から得られた/由来する。本明細書において、被験体の治療(例えば、被験体への自家細胞の投与による治療)の文脈で細胞/組織/器官が自家由来であると言われる場合、その細胞/組織/器官は、治療される被験体の細胞/組織/器官から得られた/由来する。本明細書において、被験体の治療という文脈で細胞/組織/臓器が同種であると称される場合、その細胞/組織/臓器は、治療される被験体と遺伝的に同一であるか、遺伝的に同一の被験体に由来/得られたものである。自己及び同種細胞/組織/臓器は、参照被検体のMHC/HLA遺伝子によってコードされるMHC/HLA分子(例えば、MHCクラスIα及び/又はMHCクラスII分子)と同一であるMHC/HLA分子(例えば、MHCクラスIα及び/又はMHCクラスII分子)をコードするMHC/HLA遺伝子を含む。
【0385】
本明細書中で細胞/組織/臓器が、参照被検体に関して同種であると言及される場合、細胞/組織/臓器は参照被検体と遺伝的に非同一であるか、遺伝的に非同一な被検体から誘導/得られたものである。本明細書において、細胞/組織/臓器が被験体の治療の文脈で同種同 系であると言及される場合、その細胞/組織/臓器は、治療される被験体と遺伝的に非同一であるか、遺伝的に非同一な被験体に由来/得られたものである。同種細胞/組織/臓器は、参照被検体のMHC/HLA遺伝子によってコードされるMHC/HLA分子(例えば、MHCクラスIα及び/又はMHCクラスII分子)と非同一であるMHC/HLA分子(例えば、MHCクラスIα及び/又はMHCクラスII分子)をコードするMHC/HLA遺伝子を含んでいてもよい。
【0386】
いくつかの実施形態では、本開示の方法に従って被験体に投与される、本明細書に記載のCARを発現/含有するウイルス(又はそのようなCARをコードする核酸を発現/含有するウイルス)に特異的な免疫細胞は、治療される被験体のHLA/MHCプロファイルに基づいて選択される。
【0387】
いくつかの実施形態では、被験体に投与される細胞は、被験体に関してHLA/MHCが一致することに基づいて選択される。いくつかの実施形態において、被験体に投与される細胞は、被験体に関してHLA/MHCがほぼ又は完全に一致することに基づいて選択される。
【0388】
本明細書で使用する場合、HLA/MHC対立遺伝子は、同じアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする場合に「一致する」と判定される。すなわち、「一致」は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列における同義的な相違及び/又は非コード領域における相違の存在の可能性に関係なく、タンパク質レベルで決定される。
【0389】
参照被検体に関して「HLAが一致」している細胞は、以下の通りである:(i)HLA-A、-B、-C、-DRB1が8/8一致する;又は(ii)HLA-A、-B、-C、-DRB1及び-DQB1にまたがる10/10一致する、又は(iii)HLA-A、-B、-C、-DRB1、-DQB1及び-DPB1にまたがる12/12一致する。参照被検体に関して「ほぼ又は完全にHLAが一致する」細胞は、以下のものである:(i)HLA-A、-B、-C及び-DRB1が4/8以上(すなわち、4/8、5/8、6/8、7/8又は8/8)一致する;又は(ii)HLA-A、-B、-C、-DRB1及び-DQB1にまたがる5/10以上(すなわち、5/10、6/10、7/10、8/10、9/10又は10/10)の一致する;又は、(iii)HLA-A、-B、-C、-DRB1、-DQB1及び-DPB1にまたがる6/12以上(すなわち、6/12、7/12、8/12、9/12、10/12、11/12又は12/12)一致する。
【0390】
特に、免疫細胞が特異的であるウイルスの感染に起因する、又は感染に関連する疾患/状態の治療のために、本明細書に記載のCARを発現/含む(又はそのようなCARをコードする核酸を発現/含有する)ウイルスに特異的な免疫細胞を投与する場合には、(同種由来であるかにかかわらず)HLAがほぼ一致する、又は完全に一致する細胞を被験体に投与することが有利になりうる。このような場合、宿主の細胞による投与細胞へのウイルス抗原の提示は、(本来のTCRを介して)インビボでの細胞の活性化、増殖、生存を増加させ、その結果、治療効果を向上させることが期待される。
【0391】
CAR発現ウイルス特異的免疫細胞を使用する方法
本明細書に記載のCAR発現、ウイルス特異的免疫細胞(例えば、本明細書に記載のCD30特異的CAR発現EBV特異的T細胞(CD30.CAR EBVST))は、治療的及び/又は予防的方法における使用を見出す。
【0392】
本開示によるCARを発現するウイルス特異的免疫細胞を被験体に投与することを含む、被験体における疾患/状態を治療/予防する方法が提供される。
【0393】
また、医学的治療/予防方法における使用のための、本開示によるCARを発現するウイルス特異的免疫細胞も提供される。また、疾患/状態を治療/予防する方法における使用のための、本開示によるCARを発現するウイルス特異的免疫細胞も提供される。また、疾患/状態を治療/予防するための方法において使用するための医薬の製造における、本開示によるCARを発現するウイルス特異的免疫細胞の使用も提供される。
【0394】
本方法は一般に、本開示によるCARを発現するウイルス特異的免疫細胞の集団を被験体に投与することを含むことが理解されよう。いくつかの実施形態において、本開示によるCARを発現するウイルス特異的免疫細胞は、そのような細胞を含む医薬組成物の形態で投与され得る。
【0395】
特に、養子細胞移植(ACT)による疾患/病態の治療/予防方法において、本開示によるCARを発現するウイルス特異的免疫細胞を使用することが企図されている。
【0396】
本開示によるCARを発現するウイルス特異的免疫細胞は、同種移植による疾患/病態の治療方法において特に有用である。
【0397】
本明細書において「同種移植」とは、レシピエント被験体と遺伝的に非同一である細胞、組織又は臓器をレシピエント被験体に移植することをいう。細胞、組織、又は臓器は、レシピエント対象者と遺伝的に非同一であるドナー対象者の細胞、組織、又は臓器に由来するものであってもよいし、ドナー対象者の細胞、組織、又は臓器に由来するものであってもよい。同種移植は、自己移植とは異なり、レシピエントと遺伝的に同一のドナーの細胞、組織又は臓器の移植を指す。
【0398】
同種免疫細胞の養子移入は同種移植の一形態であることが理解されよう。いくつかの実施形態において、CAR発現ウイルス特異的免疫細胞は、同種移植による疾患/病態の治療/予防方法における治療/予防剤として使用される。
【0399】
本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物の投与は、好ましくは「治療上有効な量」又は「予防上有効な量」であり、これは被験体に治療的又は予防的利益を示すのに十分な量である。実際の投与量、及び投与の速度及び時間経過は、疾患/状態の性質及び重篤度、ならびに投与される特定の物品に依存する。治療の処方、例えば投与量などの決定は、一般開業医や他の医師の責任の範囲内であり、通常、治療される疾患/障害、個々の被験者の状態、投与部位、投与方法、及び開業医に知られている他の要因を考慮する。上記の技術やプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,20th Edition,2000,pub.Lippincott,Williams&Wilkinsに記載されている。
【0400】
複数回投与してもよい。複数回の投与は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくはそれ以上の時間、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、もしくは31日、又は1、2、3、4、5、もしくは6ヶ月である。例として、投与は7日、14日、21日、又は28日(プラスマイナス3日、2日、又は1日)に1回行うことができる。
【0401】
いくつかの実施形態において、治療は、他の治療的又は予防的介入、例えば化学療法、免疫療法、放射線療法、手術、ワクチン接種及び/又はホルモン療法をさらに含んでもよい。このような他の治療的又は予防的介入は、本開示によって包含される療法の前、最中、及び/又は後に行われてもよく、他の治療的又は予防的介入の送達は、本開示の療法とは異なる投与経路を介して行われてもよい。
【0402】
投与は、単独で又は他の治療と組み合わせて、治療される状態に依存して同時又は逐次的に行うことができる。本明細書に記載のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物は、別の治療介入と同時又は逐次的に投与することができる。
【0403】
同時投与とは、2つ以上の治療的介入を一緒に、例えば両方の活性薬剤を含む医薬組成物として(すなわち配合製剤として)、あるいは互いに直後に、任意で同じ投与経路、例えば同じ動脈、静脈又は他の血管に投与することをいう。
【0404】
逐次投与とは、1つの治療介入を投与した後、所定の時間間隔をおいて1つ以上のさらなる治療介入を別々に投与することをいう。いくつかの実施形態ではそうであるが、治療が同じ経路で投与されることは必須ではない。時間間隔は任意である。
【0405】
養子細胞移植(Adoptive cell transfer)は一般に、細胞(例えば免疫細胞)を被検体から採取するプロセスを指し、典型的には血液サンプルを採取し、そこから細胞を単離する。その後、細胞は一般的に改変及び/又は拡大され、同一の対象者(自己/同種細胞の養子移入の場合)又は異なる対象者(同種細胞の養子移入の場合)に投与される。この処置は、典型的には、特定の所望の特性を有する細胞の集団を被験者に提供すること、あるいはそのような特性を有する細胞の頻度をその被験者に増加させることを目的とする。養子移入は、被験体に細胞又は細胞集団を導入すること、及び/又は被験体における細胞又は細胞集団の頻度を増加させることを目的として実施されうる。
【0406】
免疫細胞の養子移入については、例えばKalos and June(2013),Immunity 39(1):49-60、及びDavisら(2015)、Cancer J.21(6):486-491に記載されており、これらはいずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。当業者は、例えば、参照によりその全体が組み込まれるDaiら、(2016)J Nat Cancer Inst 108(7):djv439を参照することにより、本開示による細胞の養子移入のための適切な試薬及び手順を決定することができる。
【0407】
本開示は、本開示によるCARを含む/発現するウイルス特異的免疫細胞、又は本開示によるCARをコードする核酸を含む/発現するウイルス特異的免疫細胞を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0408】
いくつかの実施形態において、方法は、ウイルスに特異的な免疫細胞を生成すること、又はウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成/拡大することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、本開示によるCARを構成/発現するように、ウイルスに特異的な免疫細胞を改変することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、本開示によるCARをコードする核酸を含む/発現するように、ウイルスに特異的な免疫細胞を改変することを含む。
【0409】
いくつかの実施形態において、方法は、本開示によるCARを発現/構成するように改変された(又はそのようなCARをコードする核酸を発現/構成するように改変された)ウイルスに特異的な免疫細胞を被験体に投与することを含む。
【0410】
いくつかの実施形態において、方法は以下を含む:
(a)ウイルスに特異的な免疫細胞を、本開示に従ったCARを発現するかもしくはそれを含むように、又は本開示に従ったCARをコードする核酸を発現するかもしくはそれを含むように改変すること、及び、
(b)本開示に従ってCARを発現するように改変された、又はCARを含むように改変されたウイルスに特異的な免疫細胞、又は本開示に従ってCARをコードする核酸を発現するように改変された、又はCARを含むように改変されたウイルスに特異的な免疫細胞を、被験体に投与すること。
【0411】
いくつかの実施形態において、方法は以下を含む:
(a)ウイルスに特異的な免疫細胞を単離又は取得すること、
(b)ウイルスに特異的な免疫細胞を、本開示に従ったCARを発現もしくは構成するように、又は本開示に従ったCARをコードする核酸を発現もしくは構成するように改変すること、及び、
(c)本開示に従ってCARを発現もしくは構成するように改変された、又は本開示に従ってCARをコードする核酸を発現もしくは構成するように改変された、ウイルスに特異的な免疫細胞を被験体に投与すること。
【0412】
いくつかの実施形態において、方法は以下を含む:
(a)被検体から免疫細胞(例えばPBMC)を単離すること
(b)ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成/拡大すること
(c)ウイルスに特異的な免疫細胞を、本開示によるCARを発現もしくは含んでなるように、又は本開示によるCARをコードする核酸を発現もしくは含んでなるように改変すること、及び
(d)本開示に従ってCARを発現もしくは構成するように改変された、又は本開示に従ってCARをコードする核酸を発現もしくは構成するように改変された、ウイルスに特異的な免疫細胞を被験体に投与すること。
【0413】
いくつかの実施形態において、本方法は、本開示に従ってCD30特異的CARを発現するか、又はそれを含むように改変されたEBV特異的免疫細胞、又は本開示に従ってCD30特異的CARをコードする核酸を発現するか、又はそれを含むように改変されたEBV特異的免疫細胞を被験体に投与することを含む。
【0414】
いくつかの実施形態において、方法は以下を含む:
(a)本開示に従ったCD30特異的CARを発現するかもしくはそれを含むように、又は本開示に従ったCD30特異的CARをコードする核酸を発現するかもしくはそれを含むように、EBV特異的免疫細胞を改変すること、ならびに
(b)本開示に従ってCD30特異的CARを発現するかもしくはそれからなるように改変された、又は本開示に従ってCD30特異的CARをコードする核酸を発現するかもしくはそれからなるように改変された、EBV特異的免疫細胞を被験体に投与すること。
【0415】
いくつかの実施形態において、方法は以下を含む:
(a)被験体から免疫細胞(例えば、PBMC)を単離すること、
(b)EBV特異的免疫細胞の集団を生成/拡大すること、
(c)EBV特異的免疫細胞を、本開示によるCD30特異的CARを発現するかもしくはそれを含むように、又は本開示によるCD30特異的CARをコードする核酸を発現するかもしくはそれを含むように改変すること、ならびに
(d)本開示に従ってCD30特異的CARを発現するかもしくはそれからなるように改変された、又は本開示に従ってCD30特異的CARをコードする核酸を発現するかもしくはそれからなるように改変された、EBV特異的免疫細胞を、被験体に投与すること。
【0416】
いくつかの実施形態では、免疫細胞(例えばPBMC)が単離された被検体は、細胞が投与された被検体と同じ被検体である(すなわち、養子移入は自家/同種細胞の場合がある)。いくつかの実施形態では、免疫細胞(例えばPBMC)が単離される被検体は、細胞が投与される被検体とは異なる被検体である(すなわち、養子移入は同種細胞であってもよい)。
【0417】
いくつかの実施形態において、方法は以下の1つ以上を含む:
被験体から血液サンプルを得ること、
被験体から得られた血液試料から免疫細胞(例えばPBMC)を単離すること;
ウイルスに特異的な免疫細胞の集団を生成/拡大すること(例えば、ウイルスの抗原/ペプチドを含む/発現する細胞(APCなど)の存在下でPBMCを培養すること、又はウイルスに感染した細胞(APCなど)の存在下でPBMCを培養すること);
in vitro又はex vivo細胞培養において、ウイルスに特異的な免疫細胞を培養すること;
本開示によるCARを発現もしくは構成するように、又は本開示によるCARをコードする核酸を発現もしくは構成するように、ウイルスに特異的な免疫細胞を改変すること(例えば、そのようなCARをコードするウイルスベクター、又はそのような核酸を構成するウイルスベクターによる形質導入によって);
in vitro又はex vivo細胞培養において、本開示によるCARを発現/コードするウイルス、又は本開示によるCARをコードする核酸を発現/コードするウイルスに特異的な免疫細胞を培養すること、
本開示によるCARを発現する/含むウイルス、又は本開示によるCARをコードする核酸を発現する/含むウイルスに特異的な免疫細胞を収集/単離すること;
本開示に従ったCARを発現/構成するウイルスに特異的な免疫細胞、又は本開示に従ったCARをコードする核酸を、医薬組成物に製剤化すること、例えば、細胞を薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、又は担体と混合することによって製剤化すること、
本開示によるCARを発現する/含むウイルスに特異的な免疫細胞、又は本開示によるCARをコードする核酸を発現する/含むウイルスに特異的な免疫細胞、又はそのような細胞を含む医薬組成物を、被験体に投与すること。
【0418】
いくつかの実施形態において、方法は、CARの発現を誘導/増強するため、及び/又はCARを含む/発現するウイルス特異的免疫細胞の増殖もしくは生存を誘導/増強するために、細胞又は被験体を処理することをさらに含み得る。
【0419】
治療的及び/又は予防的方法は、疾患/状態の発症/進行を抑制する、疾患/状態の症状を緩和する、又は疾患/状態の病態を軽減するために有効であり得る。方法は、疾患/状態の進行を予防するために、例えば、疾患/状態の悪化を予防するために、又は疾患/状態の発症速度を遅らせるために有効であり得る。いくつかの実施形態において、方法は、疾患/状態の改善、例えば、疾患/状態の症状の重篤度の軽減、又は疾患/状態の重篤度/活性の他の相関物の軽減をもたらし得る。いくつかの実施形態において、本方法は、疾患/状態の後期段階(例えば、慢性期又は転移)への進展を防止し得る。
【0420】
本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞の治療的及び予防的有用性は、CARの標的抗原を発現/過剰発現する細胞の数/活性、及び/又はウイルスに感染した細胞の数/活性の減少から治療的又は予防的利益を得る任意の疾患/状態の治療/予防に及ぶことが理解されよう。
【0421】
いくつかの実施形態において、本開示に従って治療/予防される疾患/状態は、免疫細胞が特異的であるウイルスが病理学的に関与する疾患/状態である。すなわち、いくつかの実施形態において、疾患/状態は、ウイルスへの感染によって引き起こされるか又は悪化する疾患/状態、ウイルスへの感染が危険因子である疾患/状態、及び/又はウイルスへの感染が疾患/状態の発症、発症、進行、及び/又は重症度と正の(陽性の、positively)関連性を有する疾患/状態である。
【0422】
いくつかの実施形態では、CARの標的抗原が病理学的に関与する、本開示に従って治療/予防される疾患/状態である。すなわち、いくつかの実施形態において、疾患/状態は、標的抗原の発現/過剰発現によって引き起こされるか又は悪化する疾患/状態、標的抗原の発現/過剰発現が危険因子である疾患/状態、及び/又は標的抗原の発現/過剰発現が疾患/状態の発症、発症、進行、及び/又は重症度と正の(陽性の、positively)関連性を有する疾患/状態である。
【0423】
疾患/状態は、CD30又はCD30を発現/過剰発現している細胞が病理学的に関与している疾患/状態、例えば、CD30を発現/過剰発現している細胞が疾患/状態の発症、発症もしくは進行、及び/又は疾患/状態の1つもしくは複数の症状の重篤度に正の(陽性の、positively)関連している疾患/状態、又はCD30の発現/過剰発現が疾患/状態の発症、発症もしくは進行の危険因子である疾患/状態であってもよい。
【0424】
本開示に従って処置/予防される疾患/状態は、EBV感染を特徴とする疾患/状態であってもよい。例えば、疾患/状態は、EBV又はEBVに感染した細胞が病理学的に関与する疾患/状態であってもよく、例えば、EBV感染が疾患/状態の発症、発症又は進行、及び/又は疾患/状態の1つもしくは複数の症状の重篤度に正の(陽性の、positively)関連する疾患/状態、又はEBV感染が疾患/状態の発症、発症又は進行の危険因子である疾患/状態であってもよい。
【0425】
治療は、ウイルス量を減少させること、ウイルス陽性細胞(例えば、EBV陽性細胞)の数/割合を減少させること、CARの標的抗原を発現/過剰発現する細胞(例えば、CD30発現細胞)の数/割合を減少させること、ウイルス陽性細胞(例えば、EBV陽性細胞)の活性を減少させること、CARの標的抗原を発現/過剰発現する細胞(例えば、CD30発現細胞)の数/割合を減少させること、ウイルス陽性細胞(例えば、EBV陽性細胞)の活性を減少させること、CARの標的抗原を発現/過剰発現する細胞(例えば、CD30発現細胞)の活性を減少させること、疾患/状態の症状の発症/進行を遅延/予防すること、疾患/状態の症状の重症度を軽減すること、ウイルス陽性細胞(例えばEBV陽性細胞)の生存/増殖を軽減すること、CARの標的抗原を発現/過剰発現する細胞(例えばCD30発現細胞)の生存/増殖を軽減すること、又は被験体の生存を増加させることのうちの1つ以上を目的とすることができる。
【0426】
いくつかの実施形態では、被検体は、ウイルス(例えばEBV)、ウイルス(例えばEBV)に感染した細胞、又はCARの標的抗原(例えばCD30)を発現/過剰発現する細胞(例えば、末梢において、又は疾患/状態(例えば、疾患/状態の症状が現れる臓器/組織)に罹患している器官/組織において)、又はウイルス陽性がん細胞(例えばEBV陽性がん細胞)の検出、又はCARの標的抗原(例えばCD30)を発現/過剰発現するがん細胞の検出に基づいて、本明細書に記載の治療のために選択され得る。疾患/状態は、任意の組織又は器官又は器官系に影響を及ぼす可能性がある。いくつかの実施形態では、疾患/状態は複数の組織/臓器/器官系に影響を及ぼす可能性がある。
【0427】
いくつかの実施形態において、被験体は、被験体がEBVに感染しているか、又はEBVに感染した細胞を含んでいるという決定に基づいて、本開示に従った治療/予防のために選択され得る。いくつかの実施形態において、被検体は、被検体がCD30を発現/過剰発現する細胞、例えばCD30を発現/過剰発現するがん細胞を含むという決定に基づいて、本開示に従った治療/予防のために選択され得る。
【0428】
いくつかの実施形態において、被検体は、本明細書に記載のCARを発現する/含む(又はそのようなCARをコードする核酸を発現する/含む)ウイルスに特異的な免疫細胞を投与する前に、リンパ削除化学療法を投与される。
【0429】
すなわち、いくつかの実施形態において、本開示に従った疾患/状態を治療/予防する方法は、(i)被験体にリンパ節削除化学療法を投与することと、(ii)その後、本開示に従ったCARを発現する/含むウイルス、又は本開示に従ったCARをコードする核酸を発現する/含むウイルスに特異的な免疫細胞を投与することとを含む。
【0430】
本明細書において、「リンパ球枯渇性化学療法」とは、治療が投与される被験体内のリンパ球(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、又は自然リンパ球(ILC)、又はそれらの前駆体)の枯渇をもたらす化学療法剤による治療をいう。リンパ球枯渇性化学療法剤」とは、リンパ球の枯渇をもたらす化学療法剤を指す。
【0431】
リンパ節削除化学療法及び養子細胞移植による治療方法におけるその使用については、例えば、Klebanoffら、Trends Immunol.(2005)26(2):111-7及びMuranskiら、Nat Clin Pract Oncol.(2006)(12):668-81に記載されており、これらはいずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。リンパ球除去化学療法の目的は、レシピエント被験体の内因性リンパ球集団を枯渇させることである。
【0432】
免疫細胞の養子移入による疾患治療の文脈では、養子移入された細胞を受け取るためにレシピエント被験体のコンディションを整えるために、養子移入細胞移植の前にリンパ節削除化学療法が一般的に投与される。リンパ節削除化学療法は、例えば免疫抑制性サイトカインを発現する細胞を除去することによって寛容な環境を作り出し、養子移入リンパ球の増殖と活性に必要な「リンパ球空間」を作り出すことによって、養子移入細胞の持続と活性を促進すると考えられている。
【0433】
リンパ節削除化学療法で一般的に使用される化学療法剤には、フルダラビン、シクロホスファミド、ベダムスチン、ペントスタチンなどがある。
【0434】
本開示の態様及び実施形態は、特に、フルダラビン及び/又はシクロホスファミドの投与を含むリンパ削除化学療法に関する。特定の実施形態において、本開示によるリンパ節削除化学療法は、フルダラビン及びシクロホスファミドの投与を含む。
【0435】
フルダラビンはプリンアナログで、リボヌクレオチド還元酵素とDNAポリメラーゼを阻害することによりDNA合成を阻害する。白血病(特に慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病)及びリンパ腫(特に非ホジキンリンパ腫)の治療のための化学療法剤としてしばしば使用される。フルダラビンは静脈内又は経口投与することができる。
【0436】
シクロホスファミドはアルキル化剤であり、DNA塩基間の不可逆的な鎖内及び鎖間架橋を引き起こす。シクロホスファミドは、リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫を含むがんの化学療法剤としてしばしば使用される。シクロホスファミドは静脈内又は経口投与される。
【0437】
本開示に従ったリンパ節削除化学療法のコースは、1つ以上の化学療法剤の複数回の投与を含み得る。リンパ節削除化学療法のコースは、フルダラビン及びシクロホスファミドを、本明細書中に記載される用量で、本明細書中に記載される日数投与することからなり得る。例示すると、リンパ節削除化学療法のコースは、フルダラビンを1日当たり30mg/mの用量で3日間連続して投与し、シクロホスファミドを1日当たり500mg/mの用量で3日間連続して投与することからなり得る。
【0438】
リンパ節削除化学療法のコースに従って化学療法剤の最終用量を投与した日を、リンパ節削除化学療法のコースの完了日とみなすことができる。
【0439】
いくつかの実施形態において、フルダラビンは、1日当たり5~100mg/mの用量、例えば、1日当たり15~90mg/m、1日当たり15~80mg/m、1日当たり15~70mg/m、1日当たり15~60mg/m、1日当たり15~50mg/m、1日当たり10~40mg/m、1日当たり5~60mg/m、1日当たり10~60mg/m、1日当たり15~60mg/m、1日当たり20~60mg/m、又は1日当たり25~60mg/mのいずれかで投与される。いくつかの実施形態では、フルダラビンは、1日当たり20~40mg/m、例えば1日当たり25~35mg/m、例えば1日当たり約30mg/mの用量で投与される。
【0440】
いくつかの実施形態において、フルダラビンは、1日以上14日未満連続して、前項による用量で投与される。いくつかの実施形態において、フルダラビンは、2~14日、例えば2~13日、2~12日、2~11日、2~10日、2~9日、2~8日、2~7日、2~6日、2~5日又は2~4日のいずれかの連続日数、前項による用量で投与される。いくつかの実施形態では、フルダラビンは、2~6日間連続、例えば2~4日間連続、例えば3日間連続、前項による用量で投与される。
【0441】
いくつかの実施形態では、フルダラビンを1日あたり15~60mg/mの用量で、2~6日間連続して、例えば1日あたり30mg/mの用量で、3日間連続して投与する。
【0442】
いくつかの実施形態において、シクロホスファミドは、1日当たり50~1000mg/m、例えば、1日当たり100~900mg/m、1日当たり150~850mg/m、1日当たり200~800mg/m、1日当たり250~750mg/m、1日当たり300~700mg/m、1日当たり350~650mg/m、1日当たり400~600mg/m、又は1日当たり450~550mg/mのいずれかの用量で投与される。いくつかの実施形態において、シクロホスファミドは、1日当たり400~600mg/m、例えば1日当たり450~550mg/m、例えば1日当たり約500mg/mの用量で投与される。
【0443】
いくつかの実施形態において、シクロホスファミドは、1日以上14日未満連続して、前項による用量で投与される。いくつかの実施形態において、シクロホスファミドは、2~14日、例えば、2~13日、2~12日、2~11日、2~10日、2~9日、2~8日、2~7日、2~6日、2~5日又は2~4日のいずれかの連続日数、前項による用量で投与される。いくつかの実施形態において、シクロホスファミドは、2~6日間連続、例えば2~4日間連続、例えば3日間連続、前項による用量で投与される。
【0444】
いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、1日あたり400~600mg/mの用量で、2~6日間連続して投与され、例えば、1日あたり500mg/mの用量で、3日間連続して投与される。
【0445】
クロホスファミドは同時又は逐次投与することができる。同時投与とは、例えば、両剤を含む医薬組成物として(すなわち、併用製剤において)一緒に投与すること、又は互いに直後に投与することであり、任意に、同じ投与経路、例えば、同じ動脈、静脈又は他の血管に投与することである。逐次投与とは、一方の薬剤を投与した後、所定の時間間隔をおいて他方の薬剤を別々に投与することをいう。いくつかの実施形態ではそうであるが、薬剤が同じ経路で投与されることは必須ではない。
【0446】
本開示に従うリンパ節削除化学療法のコースのいくつかの実施形態において、フルダラビン及びシクロホスファミドは、同じ日又は日に投与される。例示として、1日当たり30mg/mの用量のフルダラビンを3日間連続して投与し、1日当たり500mg/mの用量のシクロホスファミドを3日間連続して投与することからなるリンパ節削除化学療法のコースの例において、フルダラビン及びシクロホスファミドは、同じ3日間連続して投与され得る。このような例では、フルダラビン及びシクロホスファミドが被験体に投与された連続する3日間の最終日に、リンパ削除化学療法のコースが完了したということができる。
【0447】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARを発現/含有する(又はそのようなCARをコードする核酸を発現/含有する)ウイルスに特異的な免疫細胞を、リンパ節削除化学療法のコースの終了後、特定の期間内に被験体に投与する。
【0448】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARを発現/コードするウイルスに特異的な免疫細胞(又はそのようなCARをコードする核酸を発現/コードするウイルスに特異的な免疫細胞)は、本明細書に記載のリンパ節削除化学療法のコースの完了から1~28日以内、例えば、1~21日、1~14日、1~7日、2~7日、2~5日、又は3~5日のうちの1日以内に被験体に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARを発現する/含む(又はそのようなCARをコードする核酸を発現する/含む)ウイルスに特異的な免疫細胞は、本明細書に記載のリンパ節削除化学療法のコースの完了から2~14日以内(例えば、3~5日以内)に被験体に投与される。
【0449】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARを発現/含有する(又はそのようなCARをコードする核酸を発現/含有する)ウイルスに特異的な免疫細胞を、1×10細胞/m2~1×10細胞/m、例えば2×10細胞/m2~1×10細胞/m、2.5×10細胞/m~8×10細胞/m、3×10細胞/m~6×10細胞/m、又は4×10細胞/m~4×10細胞/mのいずれかの用量で投与する。
【0450】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARを発現/含有する(又はそのようなCARをコードする核酸を発現/含有する)ウイルスに特異的な免疫細胞が、4×10細胞/m、1×10細胞/m又は4×10細胞/mの用量で投与される。
【0451】
本明細書に記載のCARを発現/含有する(又はそのようなCARをコードする核酸を発現/含有する)ウイルスに特異的な免疫細胞の投与は、静脈内注入により行うことができる。投与は、1~50mlの容量で、1~10分間にわたって行うことができる。
【0452】
いくつかの実施形態において、本開示に従って治療/予防される疾患はがんである。
【0453】
がんとは、望ましくない細胞の増殖(又は望ましくない細胞の増殖によって発現する疾患)、新生物又は腫瘍を指す。がんは良性でも悪性でもよく、原発性でも二次性(転移性)でもよい。 新生物又は腫瘍は、細胞の異常な増殖又は成長であり、どのような組織にも存在する。がんは、例えば、副腎、副腎髄質、肛門、虫垂、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、盲腸、中枢神経系(脳を含む、又は脳を除く)小脳、子宮頸部、結腸、十二指腸、子宮内膜、上皮細胞(例えば、腎上皮)、胆嚢、食道、グリア細胞、心臓、回腸、空腸、腎臓、涙腺、喉頭、肝臓、肺、リンパ、リンパ節、リンパ芽球、上顎、縦隔、腸間膜、子宮筋層、鼻咽頭、卵管、口腔、卵巣、膵臓、耳下腺、末梢神経系、腹膜、胸膜、前立腺、唾液腺、S状結腸、皮膚、小腸、軟部組織、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、舌、扁桃、気管、子宮、外陰部、及び/又は白血球に由来する組織/細胞であってもよい。
【0454】
腫瘍には神経系腫瘍と非神経系腫瘍がある。神経系腫瘍は、中枢神経系又は末梢神経系のいずれに発生してもよく、例えば、神経膠腫、髄芽腫、髄膜腫、神経線維腫、上衣腫、シュワンノーマ、神経線維肉腫、星細胞腫、乏突起膠腫などが挙げられる。非神経系のがん/腫瘍は、他の非神経系組織に由来するものであってもよく、その例としては、黒色腫、中皮腫、リンパ腫、骨髄腫、白血病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、肝がん、表皮がん、前立腺がん、乳がん、肺がん、結腸がん、卵巣がん、膵がん、胸腺がん、NSCLC、血液がん、肉腫などがある
【0455】
いくつかの実施形態において、がんは、以下からなる群より選択される:固形がん、血液がん、胃がん(例えば、胃がん、胃腺がん、胃腸腺がん)、肝臓がん(肝細胞がん、胆管がん)、頭頸部がん(例えば、頭頸部扁平上皮がん)、口腔がん(例:口腔咽頭がん(例:口腔咽頭がん)、口腔がん、喉頭がん、上咽頭がん、食道がん)、大腸がん(例:大腸がん)、結腸がん、大腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、肺がん(例:NSCLC、小細胞肺がん、肺腺がん、肺扁平上皮がん)、膀胱がん、尿路上皮がん、皮膚がん(例:黒色腫、進行黒色腫)、腎細胞がん(例:腎細胞がん)、卵巣がん(例:卵巣がん)、中皮腫、乳がん、脳腫瘍(膠芽腫など)、前立腺がん、膵がん、骨髄性血液悪性腫瘍、リンパ芽球性血液悪性腫瘍、骨髄異形成症候群(MDS)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、胸腺腫又は多発性骨髄腫(MM)。
【0456】
いくつかの実施形態において、がんは、免疫細胞が特異的であるウイルスが病理学的に関与するがんである。すなわち、いくつかの実施形態において、がんは、ウイルスへの感染によって引き起こされるか又は悪化するがん、ウイルスへの感染が危険因子であるがん、及び/又はウイルスへの感染ががんの発症、発症、進行、重症度もしくは転移と正の(陽性の、positively)関連性を有するがんである。
【0457】
EBV感染は、例えばJhaら、Front Microbiol.(2016)7:1602に概説されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0458】
いくつかの実施形態において、治療/予防されるがんは、EBV関連がんである。いくつかの実施形態において、がんは、EBVの感染によって引き起こされるか又は悪化するがん、EBVの感染が危険因子であるがん、及び/又はEBVの感染ががんの発症、発症、進行、重症度もしくは転移と正の(陽性の、positively)関連性を有するがんである。がんはEBV感染によって特徴付けられ、例えばがんはEBVに感染した細胞から構成される。このようながんはEBV陽性がんと呼ばれることがある。
【0459】
本開示に従って治療/予防され得るEBV関連がんには、バーキットリンパ腫、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、中枢神経系リンパ腫(CNSリンパ腫)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及び免疫不全に関連するEBV関連リンパ腫(X連鎖性リンパ増殖性障害に関連するEBV陽性リンパ腫、HIV感染/AIDSに関連するEBV陽性リンパ腫、及び口腔毛髪状白板症など)、ならびに上咽頭がん(NPC)及び胃がん(GC)などの上皮細胞関連がんなどのB細胞関連がんが含まれる。
【0460】
いくつかの実施形態において、がんは、リンパ腫(例えば、EBV陽性リンパ腫)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC;例えば、EBV陽性HNSCC)、上咽頭がん(NPC;例えば、EBV陽性NPC)、及び胃がん(GC;例えば、EBV陽性GC)から選択される。
【0461】
いくつかの実施形態では、がんは、CARの標的抗原が病理学的に関与するがんである。すなわち、いくつかの実施形態において、がんは、標的抗原の発現によって引き起こされる、又は増悪するがん、標的抗原の発現が危険因子であるがん、及び/又は標的抗原の発現ががんの発症、発症、進行、重症度又は転移と正の(陽性の、positively)関連性を有するがんである。がんは、標的抗原の発現によって特徴づけられる可能性があり、例えば、がんは標的抗原を発現する細胞から構成される可能性がある。このようながんは、標的抗原陽性と呼ばれることがある。
【0462】
標的抗原に対して「陽性(positive)」であるがんは、標的抗原を(例えば細胞表面で)発現している細胞からなるがんである可能性がある。標的抗原に対して「陽性」であるがんは、標的抗原を過剰発現している可能性がある。標的抗原の過剰発現は、同等の非がん細胞/非腫瘍組織による発現レベルよりも高い標的抗原の遺伝子又はタンパク質の発現レベルを検出することによって決定することができる。
【0463】
いくつかの実施形態では、標的抗原は本明細書に記載されるようながん細胞抗原である。いくつかの実施形態において、標的抗原はCD30である。
【0464】
いくつかの実施形態において、がんは、CD30が病理学的に関与するがんである。すなわち、いくつかの実施形態において、がんは、CD30の発現が原因又は増悪するがん、CD30の発現が危険因子であるがん、及び/又はCD30の発現ががんの発症、発症、進行、重篤度もしくは転移と正の(陽性の、positively)関連性を有するがんである。がんは、CD30の発現によって特徴付けられる可能性があり、例えば、がんはCD30を発現する細胞から構成される可能性がある。このようながんはCD30陽性がんと呼ばれる。
【0465】
CD30陽性がんは、CD30を発現する細胞(例えば、細胞表面でCD30タンパク質を発現する細胞)からなるがんであり得る。CD30陽性がんは、CD30を過剰発現している可能性がある。CD30の過剰発現は、同等の非がん細胞/非腫瘍組織による発現レベルよりも大きいCD30の遺伝子又はタンパク質発現レベルの検出によって決定することができる。
【0466】
CD30陽性がんは、例えばvan der Weydenら,Blood Cancer Journal(2017)7:e603及びMuta及びPodack,Immunol Res(2013),57(1-3):151-8に記載されており、これらはいずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。CD30は、活性化T及びBリンパ球の小さなサブセット、ならびに古典的ホジキンリンパ腫及び未分化大細胞リンパ腫を含む様々なリンパ系新生物で発現する。また、特定不能の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL-NOS)、成人T細胞白血病/リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、結節外NK-T細胞リンパ腫、様々なB細胞非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、特にEBV陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含む)、及び進行性全身性肥満細胞症でもCD30の多様な発現が示されている。CD30の発現は、生殖細胞腫瘍や精巣胚性がんなど、一部の非造血性悪性腫瘍でも観察されている。
【0467】
膜貫通型糖タンパク質CD30は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーである(Faliniら,Blood(1995)85(1):1-14)。TNF/TNFレセプター(TNF-R)スーパーファミリーのメンバーは複数のレベルで免疫反応を調整し、CD30は正常なリンパ球の機能や増殖を制御する役割を担っている。CD30はもともと、HL由来の細胞株L428でマウスを免疫することによって作製されたモノクローナル抗体Ki-1によって認識される抗原として報告された(Muta and Podack,Immunol Res(2013)57:151-158)。CD30抗原の発現は、ホジキン病におけるALCLとリード-スタンバーグ細胞の同定に用いられてきた(Faliniら、Blood(1995)85(1):1-14)。リンパ腫の悪性細胞に広く発現していることから、CD30は抗体ベースの免疫療法と細胞療法の両方を開発するための潜在的な標的である。重要なことは、CD30は生理的条件下では通常正常組織には発現しないため、安静時の成熟B細胞や前駆B細胞、T細胞には存在しないことである(Younes and Ansell,Semin Hematol(2016)53:186-189)。CD30を標的とする抗体薬物複合体であるブレンツキシマブ・ベドチンは、当初CD30陽性HLの治療薬として承認された(アドセトリス(登録商標)米国添付文書2018年版)。ブレンツキシマブ・ベドチンの臨床試験のデータは、CD30陽性リンパ腫の治療標的としてのCD30を支持しているが、その使用に伴う毒性が懸念されている。
【0468】
ホジキンリンパ腫(HL)は、リンパ節及びリンパ系を侵すまれな悪性腫瘍である。HLの罹患率は二峰性で、ほとんどの患者が15~30歳で診断され、その後55歳以上の成人にもう一つのピークがある。2019年には、米国で8,110人(女性3,540人、男性4570人)が新たに発症し、1,000人(女性410人、男性590人)が死亡すると推定されている(American Cancer Society 2019)。米国国立がん研究所のSEERデータベースの2012~2016年の症例に基づくと、米国の小児HL患者のHL罹患率は以下の通りである: 1~4歳:0.1、5~9歳:0.3、10~14歳:1.3、15~19歳:10万人当たり3.3人(SEER Cancer Statistics Review,1975-2016)。世界保健機関(WHO)の分類では、HLは古典的ホジキンリンパ腫(cHL)と結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(NLPHL)の2種類に大別される。欧米諸国では、cHLが全HLの95%を占め、NLPHLは5%である(National Comprehensive Cancer Network Guidelines 2019)。
【0469】
進行したcHL患者に対する一次化学療法は、70%から75%の治癒率と関連している(Karantanosら、Blood Lymphat Cancer(2017)7:37-52)。一次治療後に再発した患者には、サルベージ化学療法後に自家幹細胞移植(ASCT)を行うのが一般的である。残念ながら、cHL患者の最大50%がASCT後に疾患再発を経験する。ASCT後に再発した患者の全生存期間中央値は約2年である(Alinari Blood(2016)127:287-295)。積極的な併用化学療法にもかかわらず、患者の10%~40%は救済化学療法に奏効せず、奏効しない患者に対するASCTを支持する無作為化臨床試験データはない。救済化学療法に反応しない患者、ASCT後に再発した患者、又はこのアプローチの候補でない患者にとって、予後は引き続き深刻であり、新たな治療アプローチが緊急に必要とされている(Keudell British Journal of Haematology(2019)184:105-112)。
【0470】
小児集団(小児、青年、若年成人)の大部分は現在利用可能な治療法で治癒するが、ごく一部の患者は難治性又は再発性疾患を有し、改善された有効性の利益とともに許容可能な安全性プロファイルを有する新規治療法を必要とする可能性がある(Flerlageら、Blood(2018)132:376-384;Kelly、Blood(2015)126:2452-2458;McClain and Kamdar、UpToDate 2019内;Moskowitz、ASCO Educational Book(2019)477-486)。小児期に高用量化学療法を受けたHL患者は、心臓、肺、性腺、内分泌毒性や二次悪性新生物など、治療に関連した長期後遺症を一般的に経験する(Castellinoら、Blood(2011)117(6):1806-1816).
【0471】
いくつかの実施形態において、CD30陽性がんは、以下から選択され得る:固形がん、血液がん、造血器悪性腫瘍、ホジキンリンパ腫(HL)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、ALK陽性未分化T細胞リンパ腫、ALK陰性未分化T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫(例えば、PTCL-NOS)、T細胞白血病、T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、NK-T細胞リンパ腫(節外NK-T細胞リンパ腫など)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫-NOSなど)、原発性縦隔B細胞リンパ腫、EBV陽性B細胞リンパ腫、EBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、進行性全身性肥満細胞症、胚細胞腫瘍、精巣胚性がん。
【0472】
いくつかの実施形態において、がんは、CD30陽性がん、EBV関連がん、血液がん、骨髄性血液悪性腫瘍、造血器悪性腫瘍、リンパ芽球性血液悪性腫瘍、骨髄異形成症候群、白血病、T細胞白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、EBV関連リンパ腫、EBV陽性B細胞リンパ腫、EBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、X連鎖性リンパ増殖性障害に伴うEBV陽性リンパ腫、HIV感染/AIDSに伴うEBV陽性リンパ腫、口腔毛髪状白板症、バーキットリンパ腫、移植後リンパ増殖性疾患、中枢神経系リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ALK陽性未分化T細胞リンパ腫、ALK陰性未分化T細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、NK-T細胞リンパ腫、結節外NK-T細胞リンパ腫、胸腺腫、多発性骨髄腫、固形がん、上皮細胞がん、胃がん、胃がん、胃腺がん、消化管腺がん、肝がん、肝細胞がん、胆管がん、頭頸部がん、頭頸部扁平上皮がん、口腔がん、中咽頭がん、口腔がん、喉頭がん、上咽頭がん、食道がん、大腸がん、結腸がん、結腸がん、子宮頸がん、前立腺がん、肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肺腺がん、肺扁平上皮がん、膀胱がん、尿路上皮がん、皮膚がん、黒色腫、進行黒色腫、腎細胞がん、腎細胞がん、卵巣がん、卵巣がん、中皮腫、乳がん、脳腫瘍、神経膠芽腫、前立腺がん、膵臓がん、肥満細胞症、進行性全身性肥満細胞症、胚細胞腫瘍又は精巣胚性がんから選択される。
【0473】
いくつかの実施形態では、がんは再発がんであり得る。本明細書で使用される場合、「再発した」がんとは、治療(例えば、がんに対する第一選択療法)に反応したが、その後、例えば寛解期間の後に再出現/進行したがんを指す。例えば、再発がんとは、治療(例えば、がんに対する一次治療)によって増殖/進行が抑制され、その後に増殖/進行したがんのことである。
【0474】
いくつかの実施形態では、がんは難治性がんであってもよい。本明細書で使用される場合、「難治性」がんとは、治療(例えば、がんに対する第一選択療法)に反応しなかったがんを指す。例えば、難治性がんは、治療(例えば、がんに対する第一選択療法)によって増殖/進行が阻害されなかったがんであり得る。いくつかの実施形態において、難治性がんは、がんの治療を受けている被験体が治療に対して部分奏効又は完全奏効を示さなかったがんであってもよい。
【0475】
がんが未分化大細胞リンパ腫である実施形態において、がんは、化学療法、ブレンツキシマブ・ベドチン、又はクリゾチニブによる治療に関して再発又は難治性であってもよい。がんが末梢性T細胞リンパ腫である実施形態において、がんは、化学療法又はブレンツキシマブ・ベドチンによる治療に関して再発又は難治性であってもよい。がんが節外性NK-T細胞リンパ腫である実施形態において、がんは、化学療法(アスパラギナーゼを伴うか伴わない)又はブレンツキシマブ・ベドチンによる治療に関して再発性又は難治性であってもよい。がんがびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である実施形態において、がんは、化学療法(リツキシマブを伴うか伴わない)又はCD19 CAR-T療法による治療に関して再発性又は難治性であってもよい。がんが原発性縦隔B細胞リンパ腫である実施形態において、がんは、化学療法、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1阻害剤)又はCD19 CAR-T療法による治療に関して再発又は難治性である可能性がある。
【0476】
本開示の方法に従うがんの治療は、以下の治療効果のうちの1つ以上を達成する:被験体中のがん細胞の数を減少させる、被験体中のがん性腫瘍/病変のサイズを減少させる、被験体中のがん細胞の増殖を阻害する(例えば、防止又は遅らせる)、被験体中のがん性腫瘍/病変の増殖を阻害する(例えば、防止又は遅らせる)、がんの発生/進行(例えば、より後の段階、又は転移)を阻害する(例えば、防止又は遅らせる)、被験体におけるがんの症状の重篤度を軽減し、被験体の生存期間(例えば、無増悪生存期間又は全生存期間)を延長させる、被験体におけるがん細胞の数又は活性の相関を軽減し、及び/又は被験体におけるがんの負担を軽減する。
【0477】
被験体は、Revised Criteria for Response Assessmentに従って評価することができる:治療に対する応答を決定するために、Lugano分類(例えば、Chesonら、J Clin Oncol(2014)32:3059~3068に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる)が使用される。くつかの実施形態では、本開示の方法に従って被験体を治療することにより、完全奏効、部分奏効、又は病勢安定のうちの1つが達成される。
【0478】
いくつかの実施形態において、がんの治療は、化学療法及び/又は放射線療法をさらに含む。
【0479】
化学療法と放射線療法はそれぞれ、薬物又は電離放射線(X線やγ線を用いた放射線療法など)によるがんの治療を指す。薬物は、化学的実体、例えば低分子医薬品、抗生物質、DNAインターカレーター、タンパク質阻害剤(例えばキナーゼ阻害剤)、又は生物学的薬剤、例えば抗体、抗体フラグメント、アプタマー、核酸(例えばDNA、RNA)、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質であってもよい。薬剤は、医薬組成物又は医薬品として製剤化することができる。製剤は、1つ又は複数の薬物(例えば、1つ又は複数の活性剤)を、1つ又は複数の薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体とともに含んでもよい。
【0480】
化学療法では、複数の薬剤を投与することがある。薬物は単独で投与されることもあれば、他の治療法と併用されることもあり、同時に投与されることもあれば、順次投与されることもある。
【0481】
化学療法は、1つ以上の投与経路、例えば非経口、静脈注射、経口、皮下、皮内又は腫瘍内により投与することができる。
【0482】
化学療法は治療レジームに従って投与することができる。治療レジメは、医師又は開業医によって作成され、治療を必要とする患者に合わせて調整されうる、化学療法投与のあらかじめ決められたタイムテーブル、計画、スキーム又はスケジュールであってもよい。治療レジメは、患者に投与する化学療法の種類、各薬剤又は放射線の投与量、投与間隔、各治療の長さ、休薬期間がある場合はその回数と性質などの1つ以上を示す。共同療法の場合は、各薬剤の投与方法を示す単一の治療レジメを提供することができる。
【0483】
化学療法薬は、Abemaciclib、Abirateroneアセテート、Abitrexate(Methotrexate)、Abraxane(パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ABVD、ABVE、ABVE-PC、AC、Acalabrutinib、AC-T、Adcetris(Brentuximab Vedotin)、ADE、Ado-Trastuzumab Emtansine、Adriamycin(Doxorubicin塩酸塩)、Afatinib Dimaleate、Afinitor(Everolimus)、Akynzeo(Netupitant and Palonosetron塩酸塩)、Aldara(Imiquimod)、Aldesleukin、Alecensa(Alectinib)、Alectinib、Alemtuzumab、Alimta(Pemetrexed Disodium)、Aliqopa(Copanlisib塩酸塩)、Alkeran for Injection(Melphalan塩酸塩)、Alkeran Tablets(Melphalan)、Aloxi(Palonosetron塩酸塩)、Alunbrig(Brigatinib)、Ambochlorin(Chlorambucil)、Amboclorin(Chlorambucil)、Amifostine、Aminolevulinic Acid、Anastrozole、Aprepitant、Aredia(Pamidronate Disodium)、Arimidex(Anastrozole)、Aromasin(Exemestane)、Arranon(Nelarabine)、Arsenic Trioxide、Arzerra(Ofatumumab)、Asparaginase Erwinia chrysanthemi、Atezolizumab、Avastin(Bevacizumab)、Avelumab、Axicabtagene Ciloleucel、Axitinib、Azacitidine、Bavencio(Avelumab)、BEACOPP、Becenum(Carmustine)、Beleodaq(Belinostat)、Belinostat、Bendamustine塩酸塩、BEP、Besponsa(Inotuzumab Ozogamicin)、Bevacizumab、Bexarotene、Bexxar(Tositumomab and Iodine I 131 Tositumomab)、Bicalutamide、BiCNU(Carmustine)、Bleomycin、Blinatumomab、Blincyto(Blinatumomab)、Bortezomib、Bosulif(Bosutinib)、Bosutinib、Brentuximab Vedotin、Brigatinib、BuMel、Busulfan、Busulfex(Busulfan)、Cabazitaxel、Cabometyx(Cabozantinib-S-リンゴ酸塩)、Cabozantinib-S-Malate、CAF、Calquence(Acalabrutinib)、Campath(Alemtuzumab)、Camptosar(Irinotecan塩酸塩)、Capecitabine、CAPOX、Carac(Fluorouracil--Topical)、Carboplatin、CARBOPLATIN-TAXOL、Carfilzomib、Carmubris(Carmustine)、Carmustine、Carmustine Implant、Casodex(Bicalutamide)、CEM、Ceritinib、Cerubidine(Daunorubicin塩酸塩)、Cervarix(組み換え HPV Bivalent Vaccine)、Cetuximab、CEV、Chlorambucil、CHLORAMBUCIL-PREDNISONE、CHOP、Cisplatin、Cladribine、Clafen(Cyclophosphamide)、Clofarabine、Clofarex(Clofarabine)、Clolar(Clofarabine)、CMF、Cobimetinib、Cometriq(Cabozantinib-S-Malate)、Copanlisib塩酸塩、COPDAC、COPP、COPP-ABV、Cosmegen(Dactinomycin)、Cotellic(Cobimetinib)、Crizotinib、CVP、Cyclophosphamide、Cyfos(Ifosfamide)、Cyramza(Ramucirumab)、Cytarabine、Cytarabineリポソーム、Cytosar-U(Cytarabine)、Cytoxan(シクロホスファミド)、Dabrafenib、Dacarbazine、Dacogen(Decitabine)、Dactinomycin、Daratumumab、Darzalex(Daratumumab)、Dasatinib、Daunorubicin塩酸塩、Daunorubicin塩酸塩及びCytarabineリポソーム、Decitabine、Defibrotide Sodium、Defitelio(Defibrotide Sodium)、Degarelix、Denileukin Diftitox、Denosumab、DepoCyt(Cytarabineリポソーム)、Dexamethasone、Dexrazoxane塩酸塩、Dinutuximab、Docetaxel、Doxil(Doxorubicin塩酸塩リポソーム)、Doxorubicin塩酸塩、Doxorubicin塩酸塩リポソーム、Dox-SL(Doxorubicin塩酸塩リポソーム)、DTIC-Dome(Dacarbazine)、Durvalumab、Efudex(Fluorouracil--Topical)、Elitek(Rasburicase)、Ellence(Epirubicin塩酸塩)、Elotuzumab、Eloxatin(Oxaliplatin)、Eltrombopag Olamine、Emend(Aprepitant)、Empliciti(Elotuzumab)、Enasidenibメシレート、Enzalutamide、Epirubicin塩酸塩、EPOCH、Erbitux(Cetuximab)、Eribulinメシレート、Erivedge(Vismodegib)、Erlotinib塩酸塩、Erwinaze(Asparaginase Erwinia chrysanthemi)、Ethyol(Amifostine)、Etopophos(Etoposideリン酸塩)、Etoposide、Etoposideリン酸塩、Evacet(Doxorubicin塩酸塩リポソーム)、Everolimus、Evista(Raloxifene塩酸塩)、Evomela(Melphalan塩酸塩)、Exemestane、5-FU(Fluorouracil Injection)、5-FU(Fluorouracil--Topical)、Fareston(Toremifene)、Farydak(Panobinostat)、Faslodex(Fulvestrant)、FEC、Femara(Letrozole)、Filgrastim、Fludara(Fludarabineリン酸塩)、Fludarabineリン酸塩、Fluoroplex(Fluorouracil--Topical)、Fluorouracil Injection、Fluorouracil--Topical、Flutamide、Folex(Methotrexate)、Folex PFS(Methotrexate)、FOLFIRI、FOLFIRI-BEVACIZUMAB、FOLFIRI-CETUXIMAB、FOLFIRINOX、FOLFOX、Folotyn(Pralatrexate)、FU-LV、Fulvestrant、Gardasil(組み換え HPV Quadrivalent Vaccine)、Gardasil 9(組み換え HPV Nonavalent Vaccine)、Gazyva(Obinutuzumab)、Gefitinib、Gemcitabine塩酸塩、GEMCITABINE-CISPLATIN、GEMCITABINE-OXALIPLATIN、Gemtuzumab Ozogamicin、Gemzar(Gemcitabine塩酸塩)、Gilotrif(Afatinib Dimaleate)、Gleevec(Imatinibメシレート)、Gliadel(Carmustine Implant)、Gliadel wafer(Carmustine Implant)、Glucarpidase、Goserelinアセテート、Halaven(Eribulinメシレート)、Hemangeol(Propranolol塩酸塩)、Herceptin(Trastuzumab)、HPV Bivalent Vaccine、組み換え、HPV Nonavalent Vaccine、組み換え、HPV Quadrivalent Vaccine、組み換え、Hycamtin(Topotecan塩酸塩)、Hydrea(Hydroxyurea)、Hydroxyurea、Hyper-CVAD、Ibrance(Palbociclib)、Ibritumomab Tiuxetan、Ibrutinib、ICE、Iclusig(Ponatinib塩酸塩)、Idamycin(Idarubicin塩酸塩)、Idarubicin塩酸塩、Idelalisib、Idhifa(Enasidenibメシレート)、Ifex(Ifosfamide)、Ifosfamide、Ifosfamidum(Ifosfamide)、IL-2(Aldesleukin)、Imatinibメシレート、Imbruvica(Ibrutinib)、Imfinzi(Durvalumab)、Imiquimod、Imlygic(Talimogene Laherparepvec)、Inlyta(Axitinib)、Inotuzumab Ozogamicin、Interferon Alfa-2b、組み換え、Interleukin-2(Aldesleukin)、Intron A(組み換え Interferon Alfa-2b)、Iodine I 131 Tositumomab及びTositumomab、Ipilimumab、Iressa(Gefitinib)、Irinotecan塩酸塩、Irinotecan塩酸塩リポソーム、Istodax(Romidepsin)、Ixabepilone、Ixazomib Citrate、Ixempra(Ixabepilone)、Jakafi(Ruxolitinibリン酸塩)、JEB、Jevtana(Cabazitaxel)、Kadcyla(Ado-Trastuzumab Emtansine)、Keoxifene(Raloxifene塩酸塩)、Kepivance(Palifermin)、Keytruda(Pembrolizumab)、Kisqali(Ribociclib)、Kymriah(Tisagenlecleucel)、Kyprolis(Carfilzomib)、Lanreotideアセテート、Lapatinib Ditosylate、Lartruvo(Olaratumab)、Lenalidomide、Lenvatinibメシレート、Lenvima(Lenvatinibメシレート)、Letrozole、Leucovorin Calcium、Leukeran(Chlorambucil)、Leuprolideアセテート、Leustatin(Cladribine)、Levulan(Aminolevulinic Acid)、Linfolizin(Chlorambucil





)、LipoDox(Doxorubicin塩酸塩リポソーム)、Lomustine、Lonsurf(Trifluridine及びTipiracil塩酸塩)、Lupron(Leuprolideアセテート)、Lupron Depot(Leuprolideアセテート)、Lupron Depot-Ped(Leuprolideアセテート)、Lynparza(Olaparib)、Marqibo(Vincristine硫酸塩リポソーム)、Matulane(Procarbazine塩酸塩)、Mechlorethamine塩酸塩、Megestrolアセテート、Mekinist(Trametinib)、Melphalan、Melphalan塩酸塩、Mercaptopurine、Mesna、Mesnex(Mesna)、Methazolastone(Temozolomide)、Methotrexate、Methotrexate LPF(Methotrexate)、Methylnaltrexone Bromide、Mexate(Methotrexate)、Mexate-AQ(Methotrexate)、Midostaurin、Mitomycin C、Mitoxantrone塩酸塩、Mitozytrex(Mitomycin C)、MOPP、Mozobil(Plerixafor)、Mustargen(Mechlorethamine塩酸塩)、Mutamycin(Mitomycin C)、Myleran(Busulfan)、Mylosar(Azacitidine)、Mylotarg(Gemtuzumab Ozogamicin)、Nanoparticle Paclitaxel(パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤)、Navelbine(Vinorelbine Tartrate)、Necitumumab、Nelarabine、Neosar(Cyclophosphamide)、Neratinib Maleate、Nerlynx(Neratinib Maleate)、Netupitant及びPalonosetron塩酸塩、Neulasta(Pegfilgrastim)、Neupogen(Filgrastim)、Nexavar(Sorafenibトシレート)、Nilandron(Nilutamide)、Nilotinib、Nilutamide、Ninlaro(Ixazomib Citrate)、Niraparibトシレート1水和物、Nivolumab、Nolvadex(Tamoxifen Citrate)、Nplate(Romiplostim)、Obinutuzumab、Odomzo(Sonidegib)、OEPA、Ofatumumab、OFF、Olaparib、Olaratumab、Omacetaxine Mepesuccinate、Oncaspar(Pegaspargase)、Ondansetron塩酸塩、Onivyde(Irinotecan塩酸塩リポソーム)、Ontak(Denileukin Diftitox)、Opdivo(Nivolumab)、OPPA、Osimertinib、Oxaliplatin、Paclitaxel、パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤、PAD、Palbociclib、Palifermin、Palonosetron塩酸塩、Palonosetron塩酸塩及びNetupitant、Pamidronate Disodium、Panitumumab、Panobinostat、Paraplat(Carboplatin)、Paraplatin(Carboplatin)、Pazopanib塩酸塩、PCV、PEB、Pegaspargase、Pegfilgrastim、Peginterferon Alfa-2b、PEG-Intron(Peginterferon Alfa-2b)、Pembrolizumab、Pemetrexed Disodium、Perjeta(Pertuzumab)、Pertuzumab、Platinol(Cisplatin)、Platinol-AQ(Cisplatin)、Plerixafor、Pomalidomide、Pomalyst(Pomalidomide)、Ponatinib塩酸塩、Portrazza(Necitumumab)、Pralatrexate、Prednisone、Procarbazine塩酸塩、Proleukin(Aldesleukin)、Prolia(Denosumab)、Promacta(Eltrombopag Olamine)、Propranolol塩酸塩、Provenge(Sipuleucel-T)、Purinethol(Mercaptopurine)、Purixan(Mercaptopurine)、Radium 223 Dichloride、Raloxifene塩酸塩、Ramucirumab、Rasburicase、R-CHOP、R-CVP、組み換えヒトパピローマウイルス(HPV)Bivalent Vaccine、組み換えヒトパピローマウイルス(HPV)Nonavalent Vaccine、組み換えヒトパピローマウイルス(HPV)Quadrivalent Vaccine、組み換え Interferon Alfa-2b、Regorafenib、Relistor(Methylnaltrexone Bromide)、R-EPOCH、Revlimid(Lenalidomide)、Rheumatrex(Methotrexate)、Ribociclib、R-ICE、Rituxan(リツキシマブ)、Rituxan Hycela(リツキシマブ及びHyaluronidase Human)、リツキシマブ、リツキシマブ及びHyaluronidase Human、Rolapitant塩酸塩、Romidepsin、Romiplostim、Rubidomycin(Daunorubicin塩酸塩)、Rubraca(Rucaparib Camsylate)、Rucaparib Camsylate、Ruxolitinibリン酸塩、Rydapt(Midostaurin)、Sclerosol Intrapleural Aerosol(Talc)、Siltuximab、Sipuleucel-T、Somatuline Depot(Lanreotideアセテート)、Sonidegib、Sorafenibトシレート、Sprycel(Dasatinib)、STANFORD V、Sterile Talc Powder(Talc)、Steritalc(Talc)、Stivarga(Regorafenib)、Sunitinibリンゴ酸塩、Sutent(Sunitinibリンゴ酸塩)、Sylatron(Peginterferon Alfa-2b)、Sylvant(Siltuximab)、Synribo(Omacetaxine Mepesuccinate)、Tabloid(Thioguanine)、TAC、Tafinlar(Dabrafenib)、Tagrisso(Osimertinib)、Talc、Talimogene Laherparepvec、Tamoxifen Citrate、Tarabine PFS(Cytarabine)、Tarceva(Erlotinib塩酸塩)、Targretin(Bexarotene)、Tasigna(Nilotinib)、Taxol(Paclitaxel)、Taxotere(Docetaxel)、Tecentriq(Atezolizumab)、Temodar(Temozolomide)、Temozolomide、Temsirolimus、Thalidomide、Thalomid(Thalidomide)、Thioguanine、Thiotepa、Tisagenlecleucel、Tolak(フルオロウラシル--Topical)、Topotecan塩酸塩、Toremifene、Torisel(Temsirolimus)、Tositumomab及びIodine I 131 Tositumomab、Totect(Dexrazoxane塩酸塩)、TPF、Trabectedin、Trametinib、Trastuzumab、Treanda(Bendamustine塩酸塩)、Trifluridine及びTipiracil塩酸塩、Trisenox(Arsenic Trioxide)、Tykerb(Lapatinib Ditosylate)、Unituxin(Dinutuximab)、Uridine Triアセテート、VAC、Valrubicin、Valstar(Valrubicin)、Vandetanib、VAMP、Varubi(Rolapitant塩酸塩)、Vectibix(Panitumumab)、VeIP、Velban(Vinblastine硫酸塩)、Velcade(Bortezomib)、Velsar(Vinblastine硫酸塩)、Vemurafenib、Venclexta(Venetoclax)、Venetoclax、Verzenio(Abemaciclib)、Viadur(Leuprolideアセテート)、Vidaza(Azacitidine)、Vinblastine硫酸塩、Vincasar PFS(Vincristine硫酸塩)、Vincristine硫酸塩、Vincristine硫酸塩リポソーム、Vinorelbine Tartrate、VIP、Vismodegib、Vistogard(Uridine Triアセテート)、Voraxaze(Glucarpidase)、Vorinostat、Votrient(Pazopanib塩酸塩)、Vyxeos(Daunorubicin塩酸塩及びCytarabineリポソーム)、Wellcovorin(Leucovorin Calcium)、Xalkori(Crizotinib)、Xeloda(Capecitabine)、XELIRI、XELOX、Xgeva(Denosumab)、Xofigo(Radium 223 Dichloride)、Xtandi(Enzalutamide)、Yervoy(Ipilimumab)、Yescarta(Axicabtagene Ciloleucel)、Yondelis(Trabectedin)、Zaltrap(Ziv-Aflibercept)、Zarxio(Filgrastim)、Zejula(Niraparibトシレート1水和物)、Zelboraf(Vemurafenib)、Zevalin(Ibritumomab Tiuxetan)、Zinecard(Dexrazoxane塩酸塩)、Ziv-Aflibercept、Zofran(Ondansetron塩酸塩)、Zoladex(Goserelinアセテート)、Zoledronic Acid、Zolinza(Vorinostat)、Zometa(Zoledronic Acid)、Zydelig(Idelalisib)、Zykadia(Ceritinib)、及び、Zytiga(Abirateroneアセテート)から選択することができる。
【0484】
EBV感染は、多発性硬化症や全身性エリテマトーデス(SLE;Ascherio and Munger Curr Top Microbiol Immunol.(2015);390(Pt 1):365-85など参照)、EBV抗原EBNA2は最近、SLE、多発性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患、1型糖尿病、若年性特発性関節炎、セリアック病発症の危険因子として関与する遺伝子領域と関連することが示されている(Harleyら、Nat Genet.(2018)50(5):699-707).
【0485】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示に従って治療/予防される疾患/状態は、自己免疫疾患、SLE、多発性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患、1型糖尿病、若年性特発性関節炎及びセリアック病から選択される。
【0486】
本開示の態様及び実施形態は、1つ以上の非同一の標的抗原に特異的な1つ以上のCARを含むCAR発現ウイルス特異的免疫細胞に関する。いくつかの実施形態において、CD30に特異的なCARを含んでなるウイルス特異的免疫細胞は、CD30以外の抗原に特異的なCARを含んでなる。例えば、本明細書の実施例4は、CD30特異的CAR及びCD19特異的CARを含んでなるウイルス特異的免疫細胞を記載する。
【0487】
いくつかの実施形態において、本発明に従って治療/予防されるがんは、1つ以上の非同一標的抗原を発現する細胞を含むがんである。いくつかの実施形態において、がんは、非同一標的抗原の各々の両方を発現するがんである。
【0488】
同種免疫応答の治療/予防に関する応用
本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物は、例えば、被験体における疾患/状態を治療/予防するための同種移植を含む方法において使用することができる。
【0489】
本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物は、万能性免疫応答(特にT細胞媒介性の万能性免疫応答)及びその有害な結果を軽減/予防する方法に有用である。
【0490】
万能性T細胞はCD30を発現する。Chanら,J Immunol(2002)169(4):1784-91は、CD30発現T細胞はCD30アロ免疫応答に重要な役割を持つ活性化T細胞のサブセット(CD25とCD45ROも発現)であると同定している。CD30発現とCD30発現T細胞の増殖は、アロ抗原に応答して増加する。Chenら,Blood(2012)120(3):691-6は、CD8+T細胞サブセット上のCD30発現をGVHDの潜在的バイオマーカーとして同定し、CD30をGVHDの治療標的として提案している。
【0491】
さらに、ウイルス特異的T細胞は、ポリクローナル活性化T細胞(ATC)よりも制限されたTCRレパートリーを持つため、同種移植の被験者に投与してもGVHDを起こしにくい。このことは、同種EBV特異的T細胞(EBVST)の研究におけるGVHDの発生率の低さにも反映されている。
【0492】
本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物は、同種移植を含む方法において、また同種移植の処理/生産において特に有用である。
【0493】
特に、CAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物は、同種材料の投与からなる治療的及び予防的方法において使用するための「既製品」材料の生産及び投与における使用が企図されている。
【0494】
上記で説明したように、本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞は、養子細胞移入による疾患/病態の治療/予防に有用である。本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞は、養子移入後のレシピエントのT細胞媒介性の同種反応性免疫応答の影響を受けにくく、従って、移入後のレシピエントにおける増殖/生存が増強され、優れた治療/予防効果を示す。
【0495】
本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物は、本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞以外の同種細胞の同種移植を含む方法においても有用である。特に、本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物は、同種移植体(細胞、組織及び臓器の集団)及び被験体の同種反応性免疫細胞(例えば同種反応性T細胞)の枯渇に有用である。
【0496】
このような方法において、CAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物は、ドナー及び/又はレシピエント被験体のコンディショニング、及び/又は同種移植後の同種反応性免疫応答を低減/予防するための同種移植の治療に有用である。
【0497】
同種移植される細胞、組織、臓器には、免疫細胞(養子細胞移植など)、心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、腸、顔、角膜、皮膚、造血幹細胞(骨髄)、血液、手、脚、陰茎、骨、子宮、胸腺、ランゲルハンス島、心臓弁、卵巣などが含まれる。同種移植される細胞、組織、臓器の集団は「同種移植」と呼ばれることがある。
【0498】
同種移植によって治療/予防される疾患/状態は、同種移植から治療的又は予防的利益を得ることができる任意の疾患/状態であることができる。いくつかの実施形態において、同種移植によって治療/予防される疾患/状態は、例えば、T細胞機能障害、がん、感染性疾患又は自己免疫疾患である。
【0499】
T細胞機能障害とは、正常なT細胞の機能が損なわれ、病原性抗原(例えば、微生物、細菌、ウイルスなどの外因性病原体による感染によって生じるもの、あるいは、ある種のがんなどの疾患状態において宿主によって生じるもの(例えば、腫瘍関連抗原の形で))に対する免疫応答のダウンレギュレーションを引き起こす疾患/状態をいう。T細胞機能障害は、T細胞疲弊症又はT細胞アレルギーからなる可能性がある。T細胞疲弊は、CD8+ T細胞が増殖しないか、又は抗原刺激に応答して細胞傷害性やサイトカイン(例えばIFNγ)分泌などのT細胞エフェクター機能を発揮しない状態からなる。疲弊したT細胞はまた、PD-1、CTLA-4、LAG-3、TIM-3などのT細胞疲弊の1つ以上のマーカーの持続的発現によっても特徴付けられる。T細胞機能障害は、感染症、あるいは感染症に対する有効な免疫応答の不能として現れる。感染症は、慢性感染、持続感染、潜伏感染、緩徐感染であり、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、寄生虫感染の結果である。そのため、細菌感染、ウイルス感染、真菌感染に罹患している患者に治療が行われることがある。細菌感染の例としては、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が挙げられる。ウイルス感染症の例としては、HIV、B型肝炎又はC型肝炎の感染が挙げられる。T細胞の機能障害は、腫瘍免疫逃避などのがんと関連している可能性がある。多くのヒト腫瘍は、T細胞によって認識され、免疫応答を誘導することができる腫瘍関連抗原を発現している。
【0500】
感染症は、例えば細菌、ウイルス、真菌、寄生虫感染である。いくつかの実施形態では、慢性/持続性感染症、例えば、そのような感染症がT細胞機能不全又はT細胞疲弊と関連している場合、その治療が特に望ましい場合がある。T細胞疲弊は、多くの慢性感染症(ウイルス性、細菌性、寄生虫性を含む)やがんにおいて生じるT細胞機能不全の状態であることがよく知られている(Wherry Nature Immunology Vol.12,No.6,p492-499,June 2011)。治療され得る細菌感染の例としては、バチルス属、百日咳菌、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、ビブリオ・クロエラ、ブドウ球菌属、レンサ球菌属、エシェリヒア属、クレブシエラ属、プロテウス属、エルシニア属、エルウィナ属、サルモネラ属、リステリア属、ヘロバクター・ピロリ、マイコバクター(mobacter)が挙げられる、 レンサ球菌属、エシェリヒア属、クレブシエラ属、プロテウス属、エルシニア属、エルビナ属、サルモネラ属、リステリア属、ヘリコバクター・ピロリ、マイコバクテリア(結核菌など)、緑膿菌があげられる。例えば、細菌感染は敗血症や結核である。治療され得るウイルス感染の例としては、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、リンパ球性絨毛膜炎ウイルス(LCMV)、単純ヘルペスウイルス及びヒト乳頭腫ウイルス(HPV)による感染が挙げられる。治療可能な真菌感染症の例としては、Alternaria sp、Aspergillus sp、Candida sp、Histoplasma spによる感染が挙げられる。真菌感染症は、真菌敗血症又はヒストプラズマ症であってもよい。治療され得る寄生虫感染の例としては、Plasmodium種(例えば、Plasmodium falciparum、Plasmodium yoeli、Plasmodium ovale、Plasmodium vivax、又はPlasmodium chabaudi chabaudi)による感染が挙げられる。寄生虫感染は、マラリア、リーシュマニア症、トキソプラズマ症などの疾患であってもよい。
【0501】
いくつかの実施形態では、疾患/状態は自己免疫疾患である。そのような実施形態において、治療は、自己免疫エフェクター細胞の数を減少させることを目的とし得る。いくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、1型糖尿病、セリアック病、バセドウ病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、及び全身性エリテマトーデスから選択される。
【0502】
本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物はまた、万能性免疫応答、及び万能性免疫応答を特徴とする疾患/病態の治療/予防にも有用である。
【0503】
同種移植に関連する同種反応性免疫応答によって引き起こされる、あるいは悪化する疾患や病態も、同種反応性免疫応答によって特徴づけられる疾患や病態に含まれる。このような疾患/状態には、移植片対宿主病(GVHD)及び移植片拒絶が含まれ、Perky and Maillard Annu Rev Pathol.(2018)13:219-245に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0504】
移植片対宿主病(GVHD)は、大量のドナー免疫細胞の同種移植後に起こる可能性があり、同種レシピエント細胞/組織/器官に対するドナー由来の免疫細胞の反応性を伴う。移植片拒絶反応とは、移植後にレシピエントの免疫系が移植細胞/組織/器官を破壊することを指す。移植片拒絶反応が同種移植の場合、同種移植片拒絶反応と呼ばれることもある。
【0505】
本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物は、同種移植において、移植片対宿主病(GVHD)を引き起こす可能性のある同種反応性(alloreactive)T細胞を枯渇させるために使用することができる。
【0506】
本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物は、同種移植のためのドナーの同種反応性T細胞を枯渇させるために(例えば、同種移植を採取/回収する前に)使用することができ、そうでなければ、同種移植時にレシピエントにおいてGVHDを引き起こす可能性がある。
【0507】
本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物は、そうでなければ移植片拒絶反応を引き起こす/促進する可能性のある、同種移植のレシピエントの同種反応性T細胞を枯渇させるために使用することができる。
【0508】
本開示は、移植片移植後の移植片対宿主病(GVHD)を治療/予防する方法であって、本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物を、移植片移植のためのドナー被験体に投与することを含む方法を提供する。本開示はまた、同種移植後の移植片対宿主病(GVHD)を治療/予防する方法であって、本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物を同種移植に接触させることを含む方法を提供する。このような方法の目的は、移植片中の同種異系免疫細胞が、移植片のレシピエントの細胞、組織及び/又は臓器に対して同種異系免疫応答を行う能力を低減/除去することである。
【0509】
本開示は、同種移植後の移植片拒絶反応を治療/予防する方法であって、本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物を、同種移植のためのレシピエント被験体に投与することを含む方法を提供する。このような方法の目的は、レシピエント被験体が同種移植に対して同種反応性免疫応答を行う能力を低下させる/除去することである。CAR発現ウイルス特異的免疫細胞は、そうでなければドナーの細胞、組織及び/又は臓器に対して同種反応性免疫応答を起こすであろうレシピエントの免疫細胞を排除するのに有用である。
【0510】
本開示は、同種移植物(例えば、移植される細胞、組織又は臓器の集団)を、本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物と接触させることを含む、同種移植物の同種反応性免疫細胞(例えば、同種反応性T細胞)を枯渇させることを含む方法を提供する。本方法は、本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物を、同種移植のためのドナー被験体に投与することを含み得る。このような方法の目的は、同種移植片中の同種反応性免疫細胞が、同種移植のためのレシピエントの細胞、組織及び/又は臓器に対して同種反応性免疫応答を行う能力を低減/除去することである。
【0511】
いくつかの実施形態において、方法は以下の1つ以上を含む:
被験体から細胞、組織又は臓器の集団を取得/収集すること、
細胞、組織又は臓器の集団を、本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物と接触させること
本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞の存在下で、細胞、組織又は臓器の集団をin vitro又はex vivoで培養すること
同種反応性免疫細胞が枯渇した細胞、組織又は臓器の集団を採取/収集すること;及び
同種反応性(alloreactive)免疫細胞が枯渇した細胞、組織又は臓器の集団を被験体に移植する/投与すること。
【0512】
本開示はまた、CAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は本開示の組成物を被験体に投与することを含む、被験体の同種異系免疫細胞(例えば同種異系T細胞)を枯渇させることを含む方法を提供する。被験体は、同種移植のためのドナー被験体であってもよく、同種移植のための意図されたレシピエント被験体であってもよい。
【0513】
いくつかの実施形態において、方法は、以下の1つ以上を含む:
被験体における同種反応性免疫細胞を枯渇させるために、本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物を被験体に投与すること
本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物が投与された被験体から、細胞、組織又は臓器の集団を取得/収集すること;及び
同種反応性免疫細胞が枯渇した細胞、組織又は臓器の集団を被験体に移植/投与すること。
【0514】
いくつかの実施形態において、方法は、以下の1つ以上を含む:
被験体中の同種反応性免疫細胞を枯渇させるために、本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物を被験体に投与すること;及び
本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物が以前に投与された被験体に、細胞、組織又は臓器の集団を移植/投与すること。
【0515】
同種異系免疫細胞の枯渇は、同種移植体又は被験体における同種異系免疫細胞の量を、例えば2倍、10倍、100倍、1000倍、10000倍又はそれ以上に減少させる。
【0516】
本方法は、in vitroもしくはex vivo、又は被験体においてin vivoで実施することができる。in vitro又はex vivoで実施される方法ステップは、in vitro又はex vivoでの細胞培養を含んでよい。
【0517】
方法はさらに、本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物を産生するための方法工程を含み得る。
【0518】
いくつかの実施形態において、本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物のレシピエント被験体への投与は、同種移植と同種移植のために同時に(すなわち、同時に、又は例えば1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、12時間、24時間、36時間もしくは48時間以内に)行われる。
【0519】
いくつかの実施形態では、同種移植のためのレシピエント被験体への本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物の投与と同種移植とは、順次行われる。CAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物の投与と同種移植との間の時間間隔は、数時間、数日、数週間、数ヶ月、又は数年を含む任意の時間間隔であり得る。CAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物は、同種移植の前又は後にレシピエント被験体に投与することができる。CAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物は、好ましくは、同種移植の前にレシピエント被験体に投与される。
【0520】
いくつかの実施形態では、同種移植のためのドナー被験体への本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物の投与と、被験体からの同種移植の採取(すなわち、細胞、組織及び/又は臓器の採取)は、同時に(すなわち、同時に、又は例えば1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、12時間、24時間、36時間もしくは48時間以内に)行われる。いくつかの実施形態では、同種移植のためのドナー被験体への本開示によるCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物の投与と、被験体からの同種移植の採取(すなわち、細胞、組織及び/又は臓器の採取)は、順次行われる。CAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物の投与と同種移植の採取との間の時間間隔は、数時間、数日、数週間、数ヶ月、又は数年を含む任意の時間間隔であってよい。CAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物は、同胞移植の採取前又は採取後にドナー被験体に投与することができる。CAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物は、好ましくは、移植片の採取前にドナー被験体に投与される。
【0521】
いくつかの実施形態において、本方法は、同種反応性免疫応答、移植片拒絶及び/又はGVHDを処置/予防するための追加介入を含む。
【0522】
いくつかの実施形態において、アロレアクチオン、移植片拒絶反応及び/又はGVHDを治療/予防する方法は、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン)、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス)、抗増殖剤(例えば、アザチオプリネム、ミコフェノール酸)、及び/又はmTOR阻害剤(例えば、シロリムス、エベロリムス)による治療などの免疫抑制療法及び/又はリンパ除去療法の投与を含む。
【0523】
いくつかの実施形態において、異反応性及び/又は移植片拒絶反応を治療/予防する方法は、抗体療法、例えば、モノクローナル抗IL-2Rα受容体抗体(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ)、抗T細胞抗体(例えば、抗胸腺細胞グロブリン、抗リンパ球グロブリン)及び/又は抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)による治療を含む。
【0524】
いくつかの実施形態において、アロレアクチン及び/又は移植片拒絶反応を治療/予防する方法は、輸血及び/又は骨髄移植を含む。
【0525】
方法が本明細書に開示される場合、本開示は、そのような方法において使用するための本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物も提供する。また、そのような方法において使用するための製品(例えば、医薬品)の製造における、本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物の使用も提供する。
【0526】
いくつかの実施形態において、本開示の種々の態様の方法は、免疫抑制剤(単数又は複数)を用いる方法と比較して、非反応性免疫細胞の枯渇が少なく、及び/又は生存が増加する。例えば、本方法は、同種移植のためのレシピエント被験体において、又は同種移植において、非反応性免疫細胞コンパートメントを保存/維持するために有用である。
【0527】
同種移植を含む本開示の方法のいくつかの実施形態において、本方法は、免疫抑制剤による治療を含む方法と比較して、同種移植についてレシピエント被験体における非反応性免疫細胞の数/割合の増加と関連する。同種免疫細胞の養子移入を含む本開示の方法のいくつかの実施形態において、本方法は、免疫抑制剤による治療を含む方法と比較して、同種免疫細胞についてレシピエント被験体における非反応性免疫細胞の数/割合の増加と関連する。
【0528】
同種移植を含む本開示の方法のいくつかの実施形態において、本方法は、免疫抑制剤による治療を含む方法と比較して、同種移植における非反応性免疫細胞の数/割合の増加と関連する。
【0529】
本開示はまた、以下の方法における使用のための、本開示のCAR発現ウイルス特異的免疫細胞又は組成物を提供する:
CARが特異的である標的抗原を発現する細胞(例えば、CD30を発現する細胞)を殺傷すること、
ウイルス特異的免疫細胞が特異的であるウイルスの抗原に感染した細胞、又は抗原のペプチドを提示する細胞(例えば、EBVに感染した細胞、又はEBV抗原のペプチドを提示する細胞)を殺傷すること;及び/又は
同種反応性免疫細胞(CD30を発現するT細胞など)を殺すこと。
【0530】
本開示はまた、そのような方法におけるそのようなCAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物の使用、ならびにそのような目的のためにCAR発現ウイルス特異的免疫細胞及び組成物を使用する方法を提供する。
【0531】
被験者(Subject)
本開示の側面に従った被験体(対象)は、いかなる動物又はヒトであってもよい。被験体は好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。被験体は非ヒト哺乳動物であってもよいが、より好ましくはヒトである。被験体は雄であっても雌であってもよい。被験体は患者であってもよい。被験体は、治療を必要とする本明細書に記載の疾患/状態と診断されている場合があり、そのような疾患/状態であることが疑われる場合があり、又はそのような疾患/状態を発症/罹患する危険性がある場合がある。
【0532】
本開示による実施形態において、被験体は、好ましくはヒト被験体である。いくつかの実施形態において、本開示の治療的又は予防的方法に従って処置される被験体は、本明細書に記載される疾患/状態を有する、又は発症する危険性のある被験体である。本発明による実施形態において、被験体は、そのような疾患/状態の特定のマーカーに関する特徴付けに基づいて、方法に従って治療するために選択され得る。
【0533】
被験体は、本開示に従った介入に関して同種異系の被験体であってもよい。本開示に従って治療/予防される被験体は、CAR発現ウイルス特異的免疫細胞が由来する被験体に対して遺伝的に非同一であってもよい。本開示に従って治療/予防される被験体は、CAR発現ウイルス特異的免疫細胞が由来する被験体に関してHLA不一致であってもよい。本開示に従って治療/予防される被験体は、CAR発現ウイルス特異的免疫細胞が由来する被験体に関してHLA一致であってもよい。
【0534】
本開示に従って細胞が投与される被験体は、細胞が由来する供給源に関して同種/非自己であってもよい。細胞が投与される被験体は、投与される細胞の産生のために細胞が得られた被験体とは異なる被験体であってもよい。細胞が投与される被験体は、投与される細胞の産生のために細胞が得られる/得られた被験体とは遺伝的に非同一であってもよい。
【0535】
細胞が投与される被験体は、投与される細胞の産生のために細胞が得られた被験体のMHC/HLA遺伝子がコードするMHC/HLA分子と非同一のMHC/HLA分子をコードするMHC/HLA遺伝子を含んでいてもよい。細胞が投与される被験体は、投与される細胞の産生のために細胞が得られる/得られた被験体のMHC/HLA遺伝子によってコードされるMHC/HLA分子と同一であるMHC/HLA分子をコードするMHC/HLA遺伝子を含んでいてもよい。
【0536】
いくつかの実施形態では、細胞が投与される被験体は、投与される細胞の産生のために細胞が得られた/得られた被験体に関してHLAが一致する。いくつかの実施形態において、細胞が投与される被験体は、投与される細胞の産生のために細胞が得られた/得られた被験体に関して、ほぼ又は完全にHLAが一致する。
【0537】
いくつかの実施形態において、被験体は、HLA-A、-B、-C、及び-DRB1にわたって≧4/8(すなわち、4/8、5/8、6/8、7/8、又は8/8)一致する。いくつかの実施形態において、被験体は、HLA-A、-B、-C、-DRB1、及び-DQB1にわたって≧5/10(すなわち、5/10、6/10、7/10、8/10、9/10又は10/10)一致する。いくつかの実施形態において、被験体は、HLA-A、-B、-C、-DRB1、-DQB1及び-DPB1にわたって6/12以上(すなわち、6/12、7/12 8/12、9/12、10/12、11/12又は12/12)一致する。いくつかの実施形態では、被験体は、HLA-A、-B、-C、及び-DRB1にわたって8/8一致する。いくつかの実施形態において、被験体は、HLA-A、-B、-C、-DRB1及び-DQB1にわたって10/10一致する。いくつかの実施形態において、被験体は、HLA-A、-B、-C、-DRB1、-DQB1及び-DPB1にわたって12/12一致する。
【0538】
配列の同一性
1つ以上のアミノ酸配列又は核酸配列間の同一性パーセントを決定する目的のための一対及び多重配列アラインメントは、例えば、ClustalOmega(Soding,J.2005,Bioinformatics 21,951-960)、T-coffee(Notredameら.Biol.(2000)302,205-217)、Kalign (Lassmann and Sonnhammer 2005,BMC Bioinformatics,6(298))、MAFFT(Katoh and Standley 2013,Molecular Biology and Evolution,30(4)772-780)などのソフトウェアを使用した。このようなソフトウェアを使用する場合は、ギャップ・ペナルティやエクステンション・ペナルティなどのデフォルト・パラメータを使用することが望ましい。
【0539】
【表1】
【0540】
本発明は、そのような組み合わせが明らかに許されないか、明示的に回避される場合を除き、記載された態様と好ましい特徴の組み合わせを含む。
【0541】
本明細書で使用されているセクションの見出しは、整理の目的のみのものであり、記載されている主題を限定するものとして解釈されるものではない。
【0542】
次に、本発明の態様及び実施形態を、添付の図を参照して例示的に説明する。さらなる態様及び実施形態は、当業者には明らかであろう。本文中で言及した全ての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0543】
本明細書全体を通じて、後に続く特許請求の範囲を含め、文脈上別段の定めがない限り、用語「comprise」、及び「comprises」や「comprising」などの変形は、記載された整数もしくはステップ又は整数もしくはステップの群を含むことを意味するが、他の整数もしくはステップ又は整数もしくはステップの群を排除することを意味しないと理解される。
【0544】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、複数の参照語を含むことに留意しなければならない。本明細書において、範囲は、ある特定の値の「約」から、及び/又は別の特定の値の「約」までとして表現される場合がある。このような範囲が表現される場合、別の実施形態では、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までが含まれる。同様に、値が近似値として表現される場合、先行詞「約」の使用により、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。
【0545】
核酸配列が本明細書に開示されている場合、その逆相補体も明示的に企図されている。
【0546】
本明細書に記載の方法は、in vitro又はin vivoで実施することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法はインビトロで実施される。用語「in vitro」は、培養中の細胞を用いる実験を包含することを意図しており、一方、用語「in vivo」は、無傷の多細胞生物を用いる実験を包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0547】
次に、本発明の原理を示す実施形態及び実験について、添付の図を参照して説明する。
【0548】
図1】HLA-A2とCD3の発現を示す散布図:HLA-A2陽性被験者に由来する非導入EBVST(左上パネル)又はHLA-A2陽性被験者に由来するCD30-CAR構築物導入EBVST(右上パネル);又は、HLA-A2陰性被験体由来の同種反応性T細胞及びHLA-A2陽性被験体由来の非導入EBVST(左下パネル)、又はHLA-A2陽性被験体由来のCD30-CAR構築物導入EBVST(右下パネル)の7日間共培養後。
【0549】
図2A-2B】7日後の(図2A)EBVST(すなわちCD3+、HLA-A2陽性)細胞と(図2B)同種反応性T細胞(すなわちCD3+、HLA-A2陰性)細胞の細胞数を示す棒グラフ。
【0550】
図3】HLA-A2陽性PBMCと非導入(NT;左上パネル)、CD30-CAR構築物導入(CD30.CAR;右上パネル)、CD19-CAR構築物導入(CD19.CAR;左下パネル)、又はCD30-CAR及びCD19-CAR構築物導入(CD30+CD19.CAR;右下パネル)のHLA-A2陰性被験者由来のEBVSTからなる共培養で7日後に得られた細胞。
【0551】
図4】代表的な4人のドナーから採取した血液サンプルから調製したCD30.CAR EBVSTの増殖を示すグラフ。グラフは培養で増殖した細胞の累積倍率を示す。
【0552】
図5A-5B】CD30.CAR EBVST(エフェクター)と51Cr標識標的細胞(ターゲット)を指示した比率で共培養した後の、(図5A)CD30陰性BJABバーキットリンパ腫細胞及び(図5B)CD30陽性HDLM2ホジキンリンパ腫細胞に対するCD30.CAR EBVSTの細胞傷害性を、51Cr放出アッセイにより決定したグラフ。
【0553】
図6A-6B】代表的な4人のドナーから採取した血液検体から調製したCD30.CAR EBVSTのEBV抗原に対する反応性を、ELISpot分析によって示したグラフ。細胞をEBV潜伏抗原のペプチド(Latent)、EBV溶解抗原のペプチド(Lytic)で刺激するか、抗原で刺激せず(Negative)、5×10細胞あたりのスポット形成単位数を測定した。(図6A)は、CD30.CARをコードするレトロウイルスで形質転換されていないEBVSTの反応性を示す。(図6B)は、CD30.CARをコードするレトロウイルスで形質転換されたCD30.CAR EBVSTの反応性を示す。
【0554】
図7】患者1のCD30.CAR EBVST注入前と注入6週間後のPETスキャン結果を示す代表的な画像。
【0555】
図8】患者2のCD30.CAR EBVST注入前と注入6週間後のPETとCT検査の結果を示す代表的な画像。
【0556】
図9】D30.CARのEBVSTを注入する前(pre)、及び注入後の指定された期間に得られた血液サンプル内の、qRT-PCRによって決定された末梢血細胞内のベクターコピー数を示す表。
【0557】
図10】ELISpot分析によって決定された、リンパ除去前(pre-LD)、及びCD30.CAR EBVSTの注入後の指示された期間における、患者#1の末梢血内の異なる抗原に対する細胞の特異性の分析結果を示す棒グラフ。指示された時点の血液サンプルから単離されたPBMCを、EBV潜伏抗原のペプチド(Latent)、EBV溶解抗原のペプチド(Lytic)、他のウイルスの抗原のペプチド(Other Viruses)、腫瘍関連抗原(TAA)抗原のペプチドで刺激するか、抗原を刺激しない(No pepmix)ようにし、3×10細胞あたりのスポット形成単位数を決定した。
【0558】
図11A-11B】ELISpot分析によって決定された、異なる抗原に対する異なる方法によって調製されたCD30.CAR EBVSTの分析結果を示す棒グラフ。CD30.CAREBVST(CD30.CAR)、又はCD30.CARをコードするレトロウイルスで形質転換されていない同等の細胞(非形質転換)を、(図11A)FBS、又は(図11B)HPLの存在下で培養することからなる方法で調製し、示されたEBV抗原(EBNA1、LMP1、LMP2)のペプチド混合物で刺激し、又はウイルスペプチドで刺激せず(Negative)、5×10細胞あたりのスポット形成単位数を決定した。
【実施例
【0559】
実施例
以下の実施例において、本発明者らはCD30.CARを発現するEBVSTの作製と、そのがん細胞に対するエフェクター活性及び同種再注入に対する抵抗性について説明する。
【0560】
実施例1:CAR構築物(constructs)をコードするレトロウイルスの作製
【0561】
【表2】
【0562】
CD30.CAR構築物をコードするレトロウイルスは、CARをコードするcDNAをpSFG-TGFbDNRIIレトロウイルスバックボーン(ATUM,Newark,CA)にクローニングすることにより調製した。
【0563】
CD30.CAR配列を有するプラスミドpSFG_CD30CARを、ポリエチレンイミン(PEI)を用いてHEK 293 Vec-RD114細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞の細胞培養上清を用い、HEK 293Vec-Galv細胞(BioVec Pharma,Quebec,Canada)を6ウェルプレートの5×10cells/wellの密度でトランスフェクトした。
【0564】
293Vec-Galv_CD30-CAR細胞をトリプシン処理し、2×10cells/mlの濃度で15mlチューブに再懸濁した。一連の希釈を2回行い、最終細胞懸濁液1.65mlを希釈し、220mlのDMEM+10%FCSと混合した。この懸濁液200μlを96ウェルプレートのウェルに移し、1プレートあたり30個の細胞を得た。その後、最も成績の良いクローンを選び、レトロウイルス含有上清の生成に用いた。その後、レトロウイルス含有上清を回収し、濾過し、使用まで-80℃で保存した。
【0565】
CD19.CAR構成物(コンストラクト)をコードするレトロウイルスは、CD19.CARをコードするDNAをpSFGレトロウイルスバックボーンにクローニングすることにより作製した。CD19.CAR配列を有するプラスミド、85bCD19Cを、ポリエチレンイミン(PEI)を用いてHEK 293 Vec-RD114細胞にトランスフェクトするために使用した。その後、レトロウイルスを含む上清を回収し、濾過し、使用するまで-80℃で保存した。
【0566】
実施例2:CAR発現EBV特異的T細胞の作製
末梢血単核球(PBMC)を、標準的なFicoll-Paque密度勾配遠心法に従って、健康なドナー又はリンパ腫患者から得た血液サンプルから単離した。
【0567】
ATCの作製
抗CD3抗体(クローンOKT3)及び抗CD28アゴニスト抗体を、1mg/ml抗体の1:1000希釈液を0.5ml添加することにより組織培養プレートのウェルにコートし、37℃で2~4時間、又は4℃で一晩インキュベートした。細胞培養培地(44.5%Advanced RPMI培地、44.5% クリック培地、10%FBS及び1%GlutaMaxを含む)中、抗CD3/CD28アゴニスト抗体をコートしたプレート上で培養することにより、1×10PBMC(ウェルあたり2mlの培地中)を刺激した。細胞は5%CO雰囲気下、37℃に保たれた。翌日、細胞培養液1mlを、20ng/ml IL-7と20ng/ml IL-15を含む新鮮な細胞培養液に交換した。培養中のATCを維持するために、2-4日ごとに、細胞培養培地とサイトカインを必要に応じて補充するか、又はATCを回収し、サイトカインを含む新鮮な細胞培養培地に再プレートした。ATCを回収し、7-10日目にEBVSTで再刺激する実験に用いた。
【0568】
ユニバーサルLCL
HLAクラスI及びHLAクラスIIの表面発現を欠くLCL(すなわちHLA陰性LCL)は、B細胞のEBV形質転換によって調製されたリンパ芽球系細胞株の細胞において、HLAクラスI及びHLAクラスII分子をコードする遺伝子の標的化ノックアウトによって得られた。HLA陰性細胞はさらに、EBV複製に必要な遺伝子をノックアウトするように改変された。このようにして得られた細胞を、本明細書ではユニバーサルLCL(uLCL)と呼ぶ。
【0569】
EBV特異的T細胞(EBVST)の増幅と導入
健康なドナーのPBMCを、CD45RA MACSマイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を用いた磁気細胞分離によりCD45RA発現細胞を除去した。2×10個のCD45RAを除去したPBMCをEBNA1 pepmix(JPT Cat.No.PM-EBV-EBNA1)、LMP1 pepmix(JPT Cat.No.PM-EBV-LMP1)及びLMP2 pepmix(JPT Cat.No.PM-EBV-LMP2)(該当抗原の全アミノ酸配列にまたがる、11アミノ酸重複の15merアミノ酸ペプチドライブラリー)を、44.5-47%Advanced RPMI、44.5-47%クリック培地、10%FBS又は5%成長因子リッチ添加剤及び1%GlutaMaxを含む細胞培養培地中で、IL-7(10ng/ml)及びIL-15(10ng/ml)を補充した。EBVSTは5%CO雰囲気下、37℃で維持した。
【0570】
4-6日後、EBVSTを実施例1に記載のCARコード化レトロウイルスで以下のように形質導入した。
【0571】
レトロウイルス含有上清(1ウェル当たり0.5-1ml)を、RetroNectin(Takara)でプレコートした非組織培養処理24ウェルプレートに加えた。プレートを2000×gで60-90分間遠心した後、レトロウイルス上清を除去し、細胞を1ウェル当たり0.25-0.5×10細胞で再プレートした。
【0572】
培養8-10日後、uLCL存在下、照射しペプチドパルスした自己活性化T細胞(ATC)と共培養することにより、細胞を再刺激した。簡単に述べると、2×10個のATCをCTL培地中、37℃で30分間ペプチド(1×10個のATCあたり10ngのペプチド混合物)とインキュベートし、その後30Gyの放射線を照射して回収した。次に、ペプチドパルスしたATCを、IL-7(10ng/ml)及びIL-15(100ng/ml)を含むCTL培地中で、レスポンダー細胞:ペプチドパルスしたATC:照射したuLCLの比率が1:1:5となるように、培養細胞及びuLCL(100Gyで照射)と混合した。具体的には、1×10個のレスポンダー細胞、1×10個のペプチドパルス化ATC及び0.5×10個の照射uLCLを、24ウェル組織培養プレートのウェル中、2mLのCTL培地中で培養した。
【0573】
培養中のEBVSTを維持するため、2~4日ごとに細胞培養液とサイトカインを必要に応じて補充し、及び/又は、EBVSTを回収し、サイトカインを含む新鮮な細胞培養液に再プレートした。EBVSTを回収し、15~20日目に混合リンパ球反応(MLR)アッセイに使用した。
【0574】
実施例3:CD30特異的CARによる同種移植VSTの拒絶反応除去能の評価
本発明者らは、CD30.CAR発現がVSTの拒絶反応抵抗能に及ぼす影響をin vitroで検討した。
【0575】
プライミングされた同種反応性T細胞(アロレアクティブT細胞)の作製
EBVSTの作製に用いたのと同じ健康なドナーの1-2×10個のPBMC(1ウェル当たり)を30グレイで照射し、IL-7(10ng/ml)及びIL-15(10ng/ml)を添加した44.5%Advanced RPMI、44.5%クリック培地、10%血清、及び1%GlutaMaxを含む細胞培養培地中で、不一致のドナーの1×10個のPBMC(1ウェル当たり)と共培養した(HLA-A2の発現が異なる)。プライミング ミスマッチしたドナーのPBMCから拡大した同種反応性T細胞を、6-10日目に抗CD3/CD28アゴニスト抗体をコートしたプレートに0.5×10細胞(2mlの細胞培養培地中)をプレーティングすることにより再刺激した。培養中の同種反応性T細胞を維持するために、2~4日ごとに、細胞培養培地とサイトカインを必要に応じて補充するか、同種反応性T細胞を回収し、サイトカインを含む新鮮な細胞培養培地に再プレートした。アロエ活性T細胞を回収し、13~17日目にEBVSTを用いた混合リンパ球反応(MLR)アッセイに用いた。
【0576】
HLA-A2 陰性の被験者から採取した0.2×10個のPBMCを、混合リンパ球反応(MLR)アッセイで、以下のものと共培養した:
(i)HLA-A2陽性被験者のPBMCから作製された0.2×10個のEBVSTであって、同種反応性T細胞のプライミングに使用されたもの、又は、
(ii)CD30特異的CARをコードする構築物で追加形質導入された、同種反応性T細胞のプライミングに使用されたHLA-A2陽性被験者のPBMCから生成された0.2×10個のEBVST。
【0577】
ヒトIL-7(10ng/ml)及びIL-15(10ng/ml)をMLRアッセイに添加した。
【0578】
7日後にフローサイトメトリー分析を行い、絶対細胞数を計数ビーズを用いて決定した。異なる被験者に由来するT細胞は、HLA-A2の発現に基づいて、共培養後に得られた集団で同定することができた。イベントの取得にはGallios Flow Cytometer(Beckman Coulter社製)を用い、データ解析とグラフ表示にはKaluza Analysis Software(Beckman Coulter社製)を用いた。
【0579】
図1に示すように、HLA-A2陽性被験者に由来する非導入型(NT)EBVSTの数は、HLA-A2陰性被験者に由来する同種反応性T細胞と7日間共培養した場合(左下パネル)、同種反応性T細胞非存在下で培養した場合(左上パネル)に比べて大幅に減少した。一方、CD30.CAR EBVSTの数は、同種反応性T細胞と7日間共培養した場合(右下パネル)、同種反応性T細胞非下で培養した場合(右上パネル)と比較して増加した。
【0580】
図2にフローサイトメトリーデータの定量化を示す。非形質転換EBVST(NT)は同種反応性T細胞の存在下でほとんど排除されたが、CD30.CAR発現EBVSTは同種反応性T細胞による排除に抵抗性であった(図2A)。さらに、同種反応性T細胞集団(CD3+、HLA-A2陰性)の定量化により、CD30.CAR EBVSTは、非形質転換EBVST条件と比較して同種反応性T細胞数を減少させることが明らかになった(図2B)。
【0581】
こうして、CD30.CARを発現するEBVSTは、同種反応性T細胞の数を減少させる能力を有し、同種拒絶反応から保護されることが示された。
【0582】
実施例4:CD19特異的CAR及びCD30特異的CARを発現するEBV特異的T細胞の特性評価
本発明者らは、CD19.CARとCD30.CARの両方を発現するように操作したウイルス特異的T細胞を作製し、特徴づけ、混合リンパ球反応において同種反応性T細胞を排除できるかどうかを調べた。
【0583】
簡単に説明すると、CD19及びCD56発現細胞を除去したHLA-A2陽性被験者の1×10 PBMCの集団を、混合リンパ球反応(MLR)アッセイで以下のものと共培養した:
(i)HLA-A2陰性被験者のPBMCから作製した0.1×10個のEBVST、又は
(ii)(a)CD30.CAR、(b)CD19.CAR、又は(c)CD30.CAR及びCD19.CARの両方(CD30+CD19.CAR)をコードする構築物で追加形質導入された、HLA-A2陰性被験体のPBMCから生成された0.1×10個のEBVST。
【0584】
ヒトIL-2を20 IU/mlでMLRアッセイに添加した。
【0585】
図3に示すように、CD30.CAR EBVST(右上パネル)及びCD30+CD19.CAR EBVST(右下パネル)はいずれも、非形質転換(NT)EBVST(左上パネル)及びCD19.CAR EBVST(左下パネル)と比較して、7日目までにHLA-A2+アロレアクティブT細胞(活性化マーカーCD71によって区別される)の割合を大幅に減少させた(したがって、これによる拒絶反応を回避した)。
【0586】
このように、本発明者らは、標的抗原(本実施例ではCD19)に特異的なCARとCD30特異的CARの両方を導入したEBVSTを用いて、所定の標的抗原に特異的な「市販の」CAR T細胞を作製する新規アプローチを提供する。このような二重CAR-EBVSTがin vitroで同種反応性T細胞を排除できることから、in vivoの同種移植レシピエントにおいて拒絶反応を回避し、長期に持続できる可能性が示唆される。
【0587】
実施例5:CD30.CAR EBVSTの改良生産
5.1 CD30.CAR EBVSTの製造
CD30.CAR EBVSTをGMP施設で製造した。約250~400mLの血液を、インフォームド・コンセントを得た後、ヘルシンキ宣言で確立されたガイドラインに従って、健康な、血液バンクで承認されたドナーから採取した。
【0588】
末梢血単核球(PBMC)を密度勾配遠心法により血液から分離した。PBMCは、磁気ビーズに結合させた臨床グレードの抗CD45RA抗体を用い、Miltenyi depletion columns(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)を用いて磁気細胞分離することにより、CD45RA発現細胞を除去した。
【0589】
2×10個のCD45RA欠失PBMC(1ウェルあたり2mlの培地中)を、44.5-47% Advanced RPMI、44.5-47% クリック培地、5% Human Platelet Lysate (HPL;Sexton Biotechnologies)及び1%GlutaMaxを含み、IL-7(10ng/ml)及びIL-15(10ng/ml)を補充し、11個のアミノ酸が重なり、EBV抗原の全タンパク質配列にまたがる15merのアミノ酸から含む重複ペプチドライブラリー(pepmixes)で刺激して活性化した。EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2a及びBNLF2bに対応するペプチドミックスは、JPT Technologies(Berlin,Germany)から入手し、刺激には、刺激する細胞1×10個当たり、各抗原について5ngのペプチドミックスを使用した。刺激培養は、5%CO雰囲気下、37℃で維持した。
【0590】
4-6日後、EBVSTを実施例1に記載したCARをコードするレトロウイルスで形質導入した。簡単に述べると、レトロウイルス含有上清(1ウェル当たり0.5-1ml)を、RetroNectin(Takara)でプレコートした非組織培養処理24ウェルプレートに添加した。プレートを2000×gで60-90分間遠心した後、レトロウイルス上清を除去し、細胞を1ウェル当たり0.25-0.5×106細胞で再プレートした。
【0591】
培養8日目から10日目の間に、前項に記載した形質導入により産生されたCD30.CAR EBVSTをG-Rex血管に移し、uLCLの存在下で、照射しペプチドパルスした自己活性化T細胞(ATC)と共培養することにより再刺激した。簡単に述べると、2×10個のATCをペプチド(1×10個のATCあたり10ngのペプチド混合物)と共に37℃で30分間インキュベートし、その後30Gyの放射線を照射して回収した。その後、ペプチドパルスしたATCを、IL-7(10ng/ml)とIL-15(10ng/ml)を含むCTL培地中で、レスポンダー細胞:ペプチドパルスしたATC:照射したuLCLの比率が1:1:5となるように、培養細胞及びuLCL(100Gyで照射)と混合した。
【0592】
7~12日後、CD30.CAR EBVSTを採取し、機能アッセイに用いた。
【0593】
5.2 異なる方法で産生されたCD30.CAR EBVSTの比較
IFN-γ ELISpot分析を実施し、(i)実施例2に記載の方法で産生したCD30.CAR EBVST、及び(ii)実施例5.1に記載の方法で産生したCD30.CAR EBVSTについて、EBV抗原による刺激に対する応答を比較した。
【0594】
IFN-γ産生は、EBV抗原EBNA1、LMP1及びLMP2に対するペプミックス(JPT Technologies,Berlin,Germanyから入手)での刺激に応答して測定した。簡単に説明すると、CD30.CAR EBVSTを96ウェルMultiScreenプレート(MilliporeSigma)のウェルに5×10cells/wellで二重にプレーティングした。ウェルあたり合計0.1μgのペプチドを用いて刺激を行った。5%CO中、37℃で16~20時間インキュベートした後、プレートをIFN-γ+スポットについて現像し、定量化のためにZellNet Consulting社(ニュージャージー州フォートリー)に送った。抗原特異的応答の頻度は、5×10細胞あたりのスポット形成単位(SFU)で表される。
【0595】
図11は、FBS存在下での培養を含む実施例2の方法によって産生されたCD30.CAR EBVSTが、EBV抗原による刺激の非存在下でIFNγの高いバックグラウンド発現を示すことを示している。対照的に、FBSの代わりにHPL存在下での培養を含む実施例5.1の方法により産生されたCD30.CAR EBVSTは、EBV抗原による刺激の非存在下で、IFNγのバックグラウンド発現がはるかに低い。
【0596】
したがって、ヒト血小板溶解液(HPL)存在下での培養を含む方法によるCD30.CAR EBVSTの産生は、CD30.CAR EBVSTの集団におけるEBV特異的細胞の割合を増加させる。
【0597】
増殖因子の供給源としてヒト血小板溶解液(HPL)を含む細胞培養液でCD30.CAR EBVSTの集団を作製/拡大すると、EBV特異性が向上し、ウシ胎児血清を含む細胞培養液で作製した場合と比較して、バックグラウンドのIFNγ分泌が劇的に減少することが観察された。CARと内因性TCRの両方の機能を維持するHPL含有細胞培養液の能力は、CAR発現VSTの最適性能にとって重要である。
【0598】
実施例6:CD30.CAR EBVSTを用いたがんの治療
6.1 健康なドナー被験者から製造されたCD30.CAR EBVSTの製造と特性評価
CD30.CAR EBVSTをGMP施設で製造した。インフォームド・コンセントを得た後、ヘルシンキ宣言で定められたガイドラインに従って、血液バンクから承認された健康なドナー7人から約250~400mLの血液を採取した。
【0599】
末梢血単核球(PBMC)を密度勾配遠心法により血液から分離した。PBMCは、磁気ビーズに結合させた臨床グレードの抗CD45RA抗体を用い、Miltenyi depletion columns(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)を用いて磁気細胞分離することにより、CD45RA発現細胞を除去した。
【0600】
CD45RA陽性細胞を除去した1.5~2.5×10個のPBMCを、47.5% Advanced RPMI、47.5% クリック(EHAA)培地(Irvine Scientific)、2mM L-グルタミン(Thermo Fisher Scientific)、5% Human Platelet Lysate(HPL;Sexton Biotechnologies)を含む30ml培養液に播種し、G-Rex10容器中でIL-7(10ng/ml)とIL-15(10ng/ml)を添加し、EBV抗原の全タンパク質配列にまたがる、11アミノ酸重複する15merのアミノ酸から含む重複ペプチドライブラリー(pepmixes)で刺激して活性化した。EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1、BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2a及びBNLF2bに対応するペプチドミックスは、JPT Technologies(Berlin,Germany)から入手し、刺激には、刺激する細胞1×10個当たり、各抗原について5ngのペプチドミックスを使用した(すなわち、2×10個の細胞を使用して刺激を行った場合)。すなわち、CD45RA陽性細胞を除去した2×10個のPBMCを用いた刺激には、各ペプミックスを100ng使用した)。刺激培養は5%CO雰囲気下、37℃で維持した。
【0601】
4~6日後、前項の刺激培養により産生されたEBVSTを、実施例1に記載のCARをコードするレトロウイルスで以下のように形質導入した。2mlのレトロウイルス含有上清を150μgのVectofusin-1と2mlの容量で混合し、最終容量を4mlとし、室温で5~30分間インキュベートした。レトロウイルス:Vectofusin-1混合物を、T75容器中、8.5mlの培地(前項に記載)中、7-10×10個の細胞に添加した。培養は5%CO雰囲気下、37℃で維持した。
【0602】
培養8日目から10日目の間に、前項に記載した形質導入により産生されたCD30.CAR EBVSTs 1~2×10個をG-Rex100血管に移し、照射した(100グレイで)uLCL(実施例2に記載)との共培養により、CD30.CAR EBVSTs対照射したuLCLの比が1:2~1:5(典型的には約1:3)の範囲で再刺激した。ULCLは、EBV抗原及びCD30、ならびに他のコスティミュレイトリー分子を発現しているため、CD30.CAR EBVSTに抗原刺激及びコスティミュレーションを与え、EBV特異性を失うことなくCD30.CAR EBVSTの強固な増殖を誘導します。
【0603】
再刺激培養は、200mlの培養液(実施例6.1の段落3に記載)で行い、必要に応じて培養液を追加した。7~12日後、CD30.CAR EBVSTを採取し、その後の注入のために凍結保存した。
【0604】
代表的な4人の健常人から調製したCD30.CAR EBVSTを、in vitroでの増殖能力、in vitroでのCD30発現がん細胞株及びCD30陰性がん細胞株に対する細胞傷害性、ならびに異なるEBV抗原に対する特異性を評価した。
【0605】
CD30.CAR EBVST増殖の解析
CD30.CAR EBVSTの増殖は、培養中の様々な時点(0日目、6日目、10日目、17日目、18日目、19日目)において、血球計数器を用いて細胞数をカウントすることにより決定し、累積倍数拡大を算出した。
【0606】
図4は、4つの異なる健常ドナー被験者から産生されたCD30.CAR EBVSTがin vitro培養で良好に拡大し、~17~20日以内にCD30.CAR EBVSTの治療用量を達成するのに十分であったことを示しています。 膨張した細胞は、77%から99%の細胞でCD30.CARを発現した(データは示さず)。
【0607】
CD30.CAR EBVSTの細胞毒性の解析
CD30.CAR EBVSTの細胞傷害特異性は、クロム51(51Cr)放出アッセイを用いて測定した。簡単に述べると、標的細胞であるCD30陰性BJABバーキットリンパ腫細胞又はCD30陽性HDLM2ホジキンリンパ腫細胞を51Crとともに1時間インキュベートした。非導入EBVST又はCD30.CAR導入EBVSTをエフェクターとして用い、96ウェルプレートのウェル内でエフェクター対ターゲットの比率を40:1、20:1、10:1、5:1、2.5:1としてターゲットとインキュベートした。4-6時間培養後、共培養上清を回収し、51Cr放出をガンマカウンターで検出した。特異的溶解のパーセンテージは、以下の式を用いて3連の平均値から求めた:[実験的放出-自然放出)/(最大放出-自然放出)]×100。
【0608】
図5は、CD30.CAR EBVSTがCD30陰性のバーキットリンパ腫BJAB細胞株に対しては実質的に細胞毒性を示さなかったが、CD30陽性のホジキンリンパ腫HDLM2細胞株に対しては高い細胞毒性を示したことを示している。
【0609】
CD30.CAR EBVSTのEBV抗原に対する反応性の解析
IFN-γ ELISpot分析を行い、4つの異なる健常ドナー被験者から調製したCD30.CAR EBVSTのEBV抗原刺激に対する反応を評価した。
【0610】
IFN-γ産生は、EBV潜伏期抗原(EBNA1、LMP1、LMP2、BARF1)及びEBV溶解期抗原(BZLF1、BRLF1、BMLF1、BMRF1、BMRF2、BALF2、BNLF2a、BNLF2b)のペプミックス(JPT Technologies,Berlin,Germanyより入手)での刺激に応答して測定した。簡単に説明すると、CD30.CAR EBVSTを96ウェルMultiScreenプレート(MilliporeSigma)のウェルに5×10cells/ウェルで二重にプレーティングした。ウェルあたり合計0.1μgのペプチドを用いて刺激を行った。5%CO中、37℃で16~20時間インキュベートした後、プレートをIFN-γ+スポットについて現像し、定量化のためにZellNet Consulting社(ニュージャージー州フォートリー)に送った。抗原特異的反応の頻度は、5×10細胞あたりのスポット形成単位(SFU)で表される。
【0611】
図6は、4つの異なる健常人ドナーから産生されたCD30.CAR EBVSTが、EBV抗原に対する特異性を保持していることを示している。
【0612】
4つのCD30.CAR EBVSTs株はすべて、潜在性及び溶解性EBV抗原による刺激に応答して、105細胞あたり100以上のIFN_263スポット形成単位(SFU)を産生し、CD30陽性ホジキンリンパ腫細胞株HDLM2に対して20%以上の特異的細胞溶解をエフェクター対標的比20:1で示すという機能放出基準をクリアした。
【0613】
6.2 CD30+リンパ腫に対する同種養子細胞療法としてのCD30.CAR EBVSTの投与
本試験では、CD30+の難治性又は再発のホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ALK陽性未分化T細胞リンパ腫、ALK陰性未分化T細胞リンパ腫、その他の末梢性T細胞リンパ腫を有する12~75歳の患者を治療の被験体とした。
【0614】
患者はリンパ球減少を誘発するため、シクロホスファミド(Cy:500mg/m/日)とフルダラビン(Flu:30mg/m/日)を1日3回投与され、CD30.CAR EBVST細胞注入の少なくとも48時間前までに完了したが、注入の2週間前までとした。
【0615】
試験開始0日目に、患者は計画された単回投与量の同種CD30.CAR EBVSTを、1~50mlの容量で約1~10分かけて点滴静注した。患者に投与されたCD30.CAR EBVSTは、HLAクラスI及びクラスIIが最もよく一致しました。
【0616】
本研究では、合計5人の患者に同種CD30.CAR EBVST細胞が投与された。3人の患者は、4×10個のCD30.CAR EBVST細胞の投与量レベル1(DL1)を受けた。2名の患者には1×10個のCD30.CAR EBVST細胞を投与した。
【0617】
モニタリングは、注射が医師によって行われたことを除いて、血液製剤の投与に関する施設の基準に従って行われた。注入後少なくとも3時間は患者をモニターした。患者は臨床状態及び検査データの変化を含む有害事象について評価された。特に、いくつかのCAR-T細胞免疫療法で観察されているサイトカイン放出症候群(CRS)と神経毒性の相関について評価した。
【0618】
血液サンプルは以下の時点で患者から採取された:試験前、注入後3-4時間、1、2、3、4、6週間、0日目の細胞注入後3ヵ月。サンプルはCD30.CAR EBVSTの持続性と有効性を評価するために分析された。
【0619】
いずれの患者にも用量制限毒性は認められず、グレードを問わずサイトカイン放出症候群(CRS)や移植片対宿主病(GVHD)も観察されなかった。
【0620】
同種CD30.CAR EBVSTを投与された患者における臨床効果
診断画像は、測定可能な病変と治療に対する反応を記録するために(PETスキャン、CTスキャン、MRI及び核画像診断により)、注入前及び注入0日目から6~8週間後に実施された。
【0621】
患者#1には左前頸窩に11.9mCiのFDGを静脈注射した(注射時の血糖値は99mg/dL)。PET画像とCT画像は、大腿骨正中部から大腿骨近位部にかけて撮影され、その後、軸位面、冠状面、矢状面の多平面再構成と3次元再構成により画像が融合された。
【0622】
患者#2には7.29mCiのFDGが静脈注射された(注射時の血糖値は99mg/dL)。約60分後、PET-CTスキャナーを用いて頭蓋底部から大腿近位部までの画像をCT減弱補正法を用いて取得した。CTスライスは低線量法で取得し、マルチプレーナ再フォーマット画像を得た。
【0623】
図7及び図8は、CD30.CAR EBVSTによる治療を受けた2人の患者における臨床反応を示しています。患者#1の画像は複数の病変領域の消失を示し、患者#2の画像は病変の著明な縮小を示しており、これらの患者における同種CD30.CAR EBVSTによる治療の有効性を示している。
【0624】
投与後のCD30.CARベクターコピー数の解析
CD30.CARをコードするレトロウイルスの統合ゲノムをリアルタイムqPCRで定量した。複数の時点(リンパ節除去前、3時間後、1週目、2週目、3週目、4週目、6週目、3ヶ月目)で患者から採取した末梢血サンプルからPBMCを単離した。QIAamp DNA Blood Mini Kit(Qiagen社製)を用いてPBMCからDNAを抽出した後、レトロウイルスベクター内の特定の配列に相補的なプライマーとプローブ(Applied Biosystems社製)を用いてDNAを増幅した。導入遺伝子をコードするプラスミドの連続希釈液を用いて標準曲線を作成した。増幅はABI7900HF Real-Time PCR System(Applied Biosystems)を用い、製造元の指示に従って行った。
【0625】
図9は、患者#1と患者#2のCD30.CAR導入遺伝子のベクターコピー数を示しており、これらの患者ではCD30.CAR EBVSTがin vivoで拡大せず、末梢血ですぐに検出されなくなることを示唆している。
【0626】
同種CD30.CAR EBVST投与患者におけるエピトープ拡散の解析
エピトープの広がりを評価するために、患者#1から免疫細胞をいくつかの時点で採取し、腫瘍関連抗原で刺激して同種CD30.CAR EBVSTの注入前後の反応性を測定した。
【0627】
いくつかの時点(リンパ球減少前、3時間後、1週目、2週目、3週目、4週目、6週目、及び3ヶ月目)で患者から採取した末梢血サンプルからPBMCを単離し、実施例6に記載したように本質的に実施したELISpotアッセイで使用した。ただし、PBMCをウェル当たり3×10でプレーティングし、EBV潜伏抗原及び溶解抗原の評価に加え、PBMCを刺激するためにさらに2つの抗原群を使用した;(1)「その他のウイルス」(アデノウイルスのタンパク質HexonとPenton、及びCMVのタンパク質PP65)からの抗原のペプミックスのプール、及び(2)腫瘍関連抗原(TAA)MAGE-A4、NY-ESO、PRAME、SSX2、及びSurvivinに対応するペプミックスのプール。
【0628】
図10は、患者#1がどの時点でも腫瘍関連抗原に対する応答を示さなかったことを示しており、患者#1ではエピトープの拡散がなかったことを示唆している。この結果は、同種異系CD30.CAR EBVSTによる治療が、これらの他の腫瘍抗原に対して患者の免疫系を感作させなかったことを示唆している。
【0629】
6.3 結論
本発明者らは、健康なドナー被験者から産生されたCD30.CAR EBVSTは、CD30+がん患者に対する既製の治療法として使用することに従い、EBV特異性とCD30陽性腫瘍細胞を排除する能力を保持したまま、十分な数まで増殖させ、そのTCRとCD30.CARの両方の機能を保持できることを示した。
【0630】
CD30.CAR EBVSTは安全であり、同種レシピエントにおいてin vivoでCD30陽性リンパ腫に対する治療効果を示すことが判明した。末梢血中のCAR発現細胞の持続性は限定的であり、他の腫瘍関連抗原へのエピトープ拡散の証拠がないにもかかわらず、臨床反応が観察された。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
【配列表】
2024515803000001.app
【国際調査報告】