(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】AAVカプシドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/35 20060101AFI20240403BHJP
C07K 14/015 20060101ALI20240403BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240403BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240403BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240403BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240403BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C12N15/35
C07K14/015 ZNA
C12N15/864 100Z
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/11 Z
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565981
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 US2022026608
(87)【国際公開番号】W WO2022232327
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ムソリーノ,パトリシア エル.
(72)【発明者】
【氏名】マグワイア,ケイシー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ハドリー,エロイーズ
(72)【発明者】
【氏名】ハンロン,キリアン エス.
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045EA20
4H045EA21
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書において、脳血管系、主に内皮細胞および周皮細胞、ならびに平滑筋細胞の効率的なAAV形質導入を媒介するカプシドペプチド、組成物(AAVを含む)、ならびにそれを使用する方法が記載される。本発明の実施形態は、配列PRPPSTH(配列番号1);MAEPGAR(配列番号2);SQDPSTL(配列番号3);またはMLYADNT(配列番号4)からの少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つの連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むAAVカプシドタンパク質を包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列PRPPSTH(配列番号1);MAEPGAR(配列番号2);SQDPSTL(配列番号3);またはMLYADNT(配列番号4)からの少なくとも4つの連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むAAVカプシドタンパク質。
【請求項2】
配列PRPPSTH(配列番号1);MAEPGAR(配列番号2);SQDPSTL(配列番号3);またはMLYADNT(配列番号4)からの少なくとも5つの連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項3】
配列PRPPSTH(配列番号1);MAEPGAR(配列番号2);SQDPSTL(配列番号3);またはMLYADNT(配列番号4)からの少なくとも6つの連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項4】
AAVがAAV9である、請求項1~3に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項5】
AAV9 VP1を含む、請求項1~4に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項6】
ターゲッティング配列が、配列番号14のアミノ酸588および589に対応する位置に挿入される、請求項5に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項7】
請求項1~6に記載のAAVカプシドタンパク質をコードする核酸。
【請求項8】
請求項1~6に記載のカプシドタンパク質を含むAAV。
【請求項9】
導入遺伝子、好ましくは治療導入遺伝子をさらに含む、請求項8に記載のAAV。
【請求項10】
[D/P]PST(配列番号9)を含むターゲッティング配列。
【請求項11】
配列PRPPSTH(配列番号1);MAEPGAR(配列番号2);SQDPSTL(配列番号3);またはMLYADNT(配列番号4)からの少なくとも4つの連続するアミノ酸を含むターゲッティング配列。
【請求項12】
請求項10~11に記載のターゲッティング配列と異種配列とを含む融合タンパク質。
【請求項13】
請求項10~11に記載のターゲッティング配列を含むAAVカプシドタンパク質。
【請求項14】
AAV9 VP1を含む、請求項13に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項15】
前記ターゲッティング配列が、配列番号14のアミノ酸588および589に対応する位置に挿入される、請求項14に記載のAAVカプシドタンパク質。
【請求項16】
請求項10~16に記載のターゲッティング配列、融合タンパク質、またはAAVカプシドタンパク質をコードする核酸。
【請求項17】
請求項13~15に記載のカプシドタンパク質を含むAAV。
【請求項18】
導入遺伝子、好ましくは治療導入遺伝子をさらに含む、請求項17に記載のAAV。
【請求項19】
導入遺伝子を細胞に送達する方法であって、前記細胞を請求項1~9、17、または18に記載のAAVと接触させるステップを含む方法。
【請求項20】
前記細胞が、血管内皮細胞または平滑筋細胞である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞が、周皮細胞である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞が、生きた対象に存在する、請求項19~21に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、哺乳動物対象である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞が、脳、脊髄、後根神経節、心臓、肝臓、または平滑筋、およびそれらの組合せから選択される組織に存在する、請求項19~23に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、中枢神経系の血管系に影響を及ぼす疾患、場合により、IV型コラーゲンA1またはA2(COL4A1/A2);エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1);ATP結合カセットサブファミリーCメンバー6(ABCC6);3プライム修復エキソヌクレアーゼ1(TREX1);フォークヘッドボックスC1(FOXC1);ペアード様ホメオドメイン2(PITX2);SAMおよびHDドメイン含有デオキシヌクレオシド三リン酸トリホスホヒドロラーゼ1(SAMHD1);エンドグリン(ENG);SMADファミリーメンバー4(SMAD4);アクチビンAレセプター様タイプ1(ACVRL1);RAS p21タンパク質アクティベーター1(RASA1);ノッチレセプター3(NOTCH3);HtrAセリンペプチダーゼ1(HTRA1);ジンクフィンガーCCHCタイプ含有14(ZCCHC14)、またはアポリポタンパク質Eイプシロン4(APOE ε4)における変異に関連する疾患を患う、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が、神経変性疾患、場合により、パーキンソン病またはアルツハイマー病を患う、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が、対象の脳に存在し、前記AAVが、非経口送達によって投与される、請求項19~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記非経口送達が、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内送達によってなされる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞が、対象の脳に存在し、前記AAVが、静脈内送達によって投与される、請求項19~27のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
導入遺伝子をさらに含み、前記導入遺伝子が、ニュールツリン;脳由来神経栄養因子(BDNF);脳ドーパミン神経栄養因子(CDNF);中脳星状細胞由来神経因子(MANF);血管内皮増殖因子(VEGF);グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF);芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC);Tau抗体;アミロイド前駆体タンパク質(APP)抗体;IV型コラーゲンA1もしくはA2(COL4A1/A2);エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1);ATP結合カセットサブファミリーCメンバー6(ABCC6);3プライム修復エキソヌクレアーゼ1(TREX1);フォークヘッドボックスC1(FOXC1);ペアード様ホメオドメイン2(PITX2);SAMおよびHDドメイン含有デオキシヌクレオシド三リン酸トリホスホヒドロラーゼ1(SAMHD1);エンドグリン(ENG);SMADファミリーメンバー4(SMAD4);アクチビンAレセプター様タイプ1(ACVRL1);RAS p21タンパク質アクティベーター1(RASA1);ノッチレセプター3(NOTCH3);HtrAセリンペプチダーゼ1(HTRA1);ジンクフィンガーCCHCタイプ含有14(ZCCHC14)、またはアポリポタンパク質Eイプシロン4(APOE ε4)をコードする、請求項1~18のいずれかに記載のAAV。
【請求項31】
前記導入遺伝子が、ニュールツリン;脳由来神経栄養因子(BDNF);脳ドーパミン神経栄養因子(CDNF);中脳星状細胞由来神経因子(MANF);血管内皮増殖因子(VEGF);グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF);芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC);Tau抗体;アミロイド前駆体タンパク質(APP)抗体;IV型コラーゲンA1もしくはA2(COL4A1/A2);エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1);ATP結合カセットサブファミリーCメンバー6(ABCC6);3プライム修復エキソヌクレアーゼ1(TREX1);フォークヘッドボックスC1(FOXC1);ペアード様ホメオドメイン2(PITX2);SAMおよびHDドメイン含有デオキシヌクレオシド三リン酸トリホスホヒドロラーゼ1(SAMHD1);エンドグリン(ENG);SMADファミリーメンバー4(SMAD4);アクチビンAレセプター様タイプ1(ACVRL1);RAS p21タンパク質アクティベーター1(RASA1);ノッチレセプター3(NOTCH3);HtrAセリンペプチダーゼ1(HTRA1);ジンクフィンガーCCHCタイプ含有14(ZCCHC14)、またはアポリポタンパク質Eイプシロン4(APOE ε4)をコードする、請求項19~29のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2021年4月27日に出願された米国仮特許出願第63/180,320号の利益を主張するものである。先述の文献の内容全体は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府による支援を受けた研究または開発
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって認められた認可番号DC017117の下において政府支援を受けて行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本明細書において、脳血管系、主に内皮細胞および周皮細胞、ならびに平滑筋細胞の効率的なAAV形質導入を媒介するカプシドペプチド、組成物(AAVを含む)、ならびにそれを使用する方法が記載される。
【背景技術】
【0004】
神経変性および脳血管疾患は、基本的な微小血管機能障害を共有しており、脳の内皮、平滑筋細胞、および周皮細胞への選択的導入遺伝子送達は、遺伝子を標的にした治療介入を可能にし得る。脳血管系は、中枢神経系全体におけるその高い密度により、ニューロンおよびグリア細胞への分泌された治療タンパク質の供給源としても機能することができる。
【発明の概要】
【0005】
静脈内(iv)送達の後に脳に輸送されるカプシドを単離するために、ヘプタマーペプチドライブラリを表すアデノ随伴ウイルス血清型9(AAV9)カプシド足場による2回のインビボ選別を実施した。主にニューロンおよび星状細胞を形質導入する親カプシドAAV9とは対照的に、脳血管系、主に内皮細胞および周皮細胞、ならびに平滑筋細胞の効率的な形質導入を媒介するいくつかのカプシドが識別された。
【0006】
配列PRPPSTH(配列番号1);MAEPGAR(配列番号2);SQDPSTL(配列番号3);またはMLYADNT(配列番号4)からの少なくとも4つの連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むAAVカプシドタンパク質が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、配列PRPPSTH(配列番号1);MAEPGAR(配列番号2);SQDPSTL(配列番号3);またはMLYADNT(配列番号4)からの少なくとも5つの連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、配列PRPPSTH(配列番号1);MAEPGAR(配列番号2);SQDPSTL(配列番号3);またはMLYADNT(配列番号4)からの少なくとも6つの連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、AAVはAAV9である。
【0009】
いくつかの実施形態において、AAVカプシドタンパク質は、AAV9 VP1を含む。いくつかの実施形態において、ターゲッティング配列は、配列番号14のアミノ酸588および589に対応する位置に挿入される。
【0010】
本明細書に記載のAAVカプシドタンパク質をコードする核酸も、本明細書において提供される。
【0011】
さらに、本明細書に記載のカプシドタンパク質を含むAAVが提供される。いくつかの実施形態において、AAVは、導入遺伝子、好ましくは治療導入遺伝子をさらに含む。
【0012】
さらに、[D/P]PST(配列番号9)を含むターゲッティング配列が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態において、ターゲッティング配列は、配列PRPPSTH(配列番号1);MAEPGAR(配列番号2);SQDPSTL(配列番号3);またはMLYADNT(配列番号4)からの少なくとも4つの連続するアミノ酸を含む。本明細書に記載のターゲッティング配列と、異種配列とを含む融合タンパク質が、さらに提供される。ターゲッティング配列を含むAAVカプシドタンパク質も提供され、例えば、この場合、カプシドタンパク質は、AAV9 VP1を含む。いくつかの実施形態において、ターゲッティング配列は、配列番号14のアミノ酸588および589に対応する位置に挿入される。ターゲッティング配列、融合タンパク質、またはAAVカプシドタンパク質をコードする核酸、ならびにカプシドタンパク質を含むAAVも提供される。いくつかの実施形態において、AAVは、導入遺伝子、好ましくは治療導入遺伝子をさらに含む。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、ニュールツリン;脳由来神経栄養因子(BDNF);脳ドーパミン神経栄養因子(CDNF);中脳星状細胞由来神経因子(MANF);血管内皮増殖因子(VEGF);グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF);芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC);Tau抗体;アミロイド前駆体タンパク質(APP)抗体;IV型コラーゲンA1またはA2(COL4A1/A2);エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1);ATP結合カセットサブファミリーCメンバー6(ABCC6);3プライム修復エキソヌクレアーゼ1(TREX1);フォークヘッドボックスC1(FOXC1);ペアード様ホメオドメイン2(PITX2);SAMおよびHDドメイン含有デオキシヌクレオシド三リン酸トリホスホヒドロラーゼ1(SAMHD1);エンドグリン(ENG);SMADファミリーメンバー4(SMAD4);アクチビンAレセプター様タイプ1(ACVRL1);RAS p21タンパク質アクティベーター1(RASA1);ノッチレセプター3(NOTCH3);HtrAセリンペプチダーゼ1(HTRA1);ジンクフィンガーCCHCタイプ含有14(ZCCHC14)、またはアポリポタンパク質Eイプシロン4(APOE ε4)をコードする。他の例示的導入遺伝子としては、本明細書に記載されたものが挙げられる。
【0013】
配列、例えば導入遺伝子を細胞に送達する方法も、本明細書において提供され、方法は、細胞を、本明細書に記載のAAVと接触させるステップを含む。細胞への配列の送達において使用するための本明細書に記載のAAVも、提供される。いくつかの実施形態において、細胞は、血管内皮細胞または平滑筋細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は、周皮細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は、生きた対象、例えば、哺乳動物対象に存在する。
【0014】
いくつかの実施形態において、細胞は、脳、脊髄、後根神経節、心臓、肝臓、または平滑筋、およびそれらの組合せから選択される組織に存在する。
【0015】
いくつかの実施形態において、対象は、中枢神経系の血管系に影響を及ぼす疾患、場合により、IV型コラーゲンA1もしくはA2(COL4A1/A2);エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1);ATP結合カセットサブファミリーCメンバー6(ABCC6);3プライム修復エキソヌクレアーゼ1(TREX1);フォークヘッドボックスC1(FOXC1);ペアード様ホメオドメイン2(PITX2);SAMおよびHDドメイン含有デオキシヌクレオシド三リン酸トリホスホヒドロラーゼ1(SAMHD1);エンドグリン(ENG);SMADファミリーメンバー4(SMAD4);アクチビンAレセプター様タイプ1(ACVRL1);RAS p21タンパク質アクティベーター1(RASA1);ノッチレセプター3(NOTCH3);HtrAセリンペプチダーゼ1(HTRA1);ジンクフィンガーCCHCタイプ含有14(ZCCHC14)、またはアポリポタンパク質Eイプシロン4(APOE ε4)における変異に関連する疾患を患う。
【0016】
いくつかの実施形態において、対象は、神経変性疾患、例えば、パーキンソン病またはアルツハイマー病を患う。
【0017】
いくつかの実施形態において、細胞は、対象の脳に存在し、AAVは、非経口送達によって投与される。いくつかの実施形態において、非経口送達は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内送達によってなされる。
【0018】
いくつかの実施形態において、細胞は、対象の脳に存在し、AAVは、静脈内送達によって投与される。
【0019】
いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、ニュールツリン;脳由来神経栄養因子(BDNF);脳ドーパミン神経栄養因子(CDNF);中脳星状細胞由来神経因子(MANF);血管内皮増殖因子(VEGF);グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF);芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC);Tau抗体;アミロイド前駆体タンパク質(APP)抗体;IV型コラーゲンA1もしくはA2(COL4A1/A2);エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1);ATP結合カセットサブファミリーCメンバー6(ABCC6);3プライム修復エキソヌクレアーゼ1(TREX1);フォークヘッドボックスC1(FOXC1);ペアード様ホメオドメイン2(PITX2);SAMおよびHDドメイン含有デオキシヌクレオシド三リン酸トリホスホヒドロラーゼ1(SAMHD1);エンドグリン(ENG);SMADファミリーメンバー4(SMAD4);アクチビンAレセプター様タイプ1(ACVRL1);RAS p21タンパク質アクティベーター1(RASA1);ノッチレセプター3(NOTCH3);HtrAセリンペプチダーゼ1(HTRA1);ジンクフィンガーCCHCタイプ含有14(ZCCHC14)、またはアポリポタンパク質Eイプシロン4(APOE ε4)をコードする。他の例示的導入遺伝子としては、本明細書に記載されたものが挙げられる。
【0020】
特に明記されない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。方法および材料は、本発明における使用のために本明細書において記載され;当技術分野において既知の他の好適な方法および材料も使用することができる。材料、方法、および実施例は、例証に過ぎず、限定を意図するものではない。本明細書において言及された全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベース入力項目、および他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。本明細書と相反する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。
【0021】
本発明の他の特徴および利点は、以下に述べる詳細な記載および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1-1】AAV-PR-CBA-Creが遺伝子導入Ai9マウスにおける血管系指向性形質導入(vasculature-tropic transduction)を媒介する図である(CAG-floxed-STOP-tdTomato)。マウスにAAV-PR-CBA-Creを注射により全身投与し、3週間後に犠牲にした。(A)AAV-PRによる血管系形質導入を示すtdTomato免疫蛍光の全半球画像。(B)形質導入された血管系およびDAPIを表す皮質領域の画像。(C~D)形質導入された血管系を示す(b)からの囲み領域の高倍率画像。
【
図1-2】AAV-PR-CBA-Creが遺伝子導入Ai9マウスにおける血管系指向性形質導入(vasculature-tropic transduction)を媒介する図である(CAG-floxed-STOP-tdTomato)。マウスにAAV-PR-CBA-Creを注射により全身投与し、3週間後に犠牲にした。(E)AAV-MA-CBA-Creを注射により投与されたマウスからの画像(4倍)。
【
図1-3】AAV-PR-CBA-Creが遺伝子導入Ai9マウスにおける血管系指向性形質導入(vasculature-tropic transduction)を媒介する図である(CAG-floxed-STOP-tdTomato)。マウスにAAV-PR-CBA-Creを注射により全身投与し、3週間後に犠牲にした。(F)AAV-MA-CBA-Creを注射により投与されたマウスからの画像(10倍)。
【
図1-4】AAV-PR-CBA-Creが遺伝子導入Ai9マウスにおける血管系指向性形質導入(vasculature-tropic transduction)を媒介する図である(CAG-floxed-STOP-tdTomato)。マウスにAAV-PR-CBA-Creを注射により全身投与し、3週間後に犠牲にした。(G)AAV-SQ-CBA-Creを注射により投与されたマウスからの画像(10倍)。
【
図1-5】AAV-PR-CBA-Creが遺伝子導入Ai9マウスにおける血管系指向性形質導入(vasculature-tropic transduction)を媒介する図である(CAG-floxed-STOP-tdTomato)。マウスにAAV-PR-CBA-Creを注射により全身投与し、3週間後に犠牲にした。(H)AAV-ML-CBA-Creを注射により投与されたマウスからの画像(4倍)。
【
図2-1】AAV-PR-CBA-GFP媒介血管形質導入が時間経過において減少する図である。成体の雄のC57BL/6マウスに3×10
10vg/マウスの自己相補性AAV-PR-CBA-GFPを注射により静脈内投与し、GFP分析のために5日目および28日目に殺した。A.形質導入の血管を示す体性感覚皮質、線状体、および視床下部の20μmの冠状切片の代表的20倍画像。分析領域は画像の右への脳図面の正方形の画像で表される。
【
図2-2】AAV-PR-CBA-GFP媒介血管形質導入が時間経過において減少する図である。成体の雄のC57BL/6マウスに3×10
10vg/マウスの自己相補性AAV-PR-CBA-GFPを注射により静脈内投与し、GFP分析のために5日目および28日目に殺した。B.5日目および28日目の3つの分析領域におけるGFP蛍光強度の定量化(それぞれ、皮質、
***はp=0.0004を表し;線状体、
*はp=0.0135を表し;視床下部、
*はp=0.0006を表す)。
【
図3】脳全体におけるAAVゲノムが時間経過においてあまり減少しないことを示す図である。成体の雄のC57BL/6マウスに2.2×10
10vg/マウスの自己相補性AAV-PR-CBA-GFPを注射により静脈内投与し、Taqman qPCR分析によるAAVゲノム定量化のために、5日目(n=3)および28日目(n=3)に殺した。
【
図4】AAV-PRが全身注射の後に高効率において脳の内皮に形質導入する図である。注射の5日後および28日後での、毛細管、小動脈、および動脈における脳のPCAM1(CD31:赤)内皮マーカーが共局在化する形質導入された脳内皮細胞(GFP)を示す、AAV-PR-sc-CBA-GFPを注射により投与したマウスの20μmの脳の冠状切片における体性感覚皮質におけるGFPシグナルの代表的な画像。高い倍率(40倍の囲み画像)において、GFPとCD31との間の部分的な共局在化が示される(矢印)。
【
図5】AAV-PRが全身注射の後に高効率において脳の周皮細胞に形質導入する図である。注射の5日後および28日後での、PDGFR-β(赤)陽性によって識別される周皮細胞が著しい共局在化を示す形質導入された脳の血管(GFP)を示す、AAV-PR-sc-CBA-GFPを注射により投与したマウスの20μmの脳の冠状切片における体性感覚皮質におけるGFPシグナルの代表的な画像。高い倍率(40倍)において、GFPとPDGFR-βとの間の部分的な共局在化が示される(矢印)。
【
図6】全身注射後にAAV-PRによって形質導入された点在するグリア細胞および神経細胞。血管周囲のグリア前駆細胞(黄色の矢印)と単一の錐体ニューロン(赤色の矢印)を示す形質導入された脳の内皮(GFP)ならびにGFAP、MBP、およびNEUNに対して陰性の非常にわずかな星状細胞形状の細胞を示す、AAV-PR-sc-CBA-GFPを注射により投与したマウスの20μmの脳の冠状切片における体性感覚皮質におけるGFPシグナルの代表的な画像。
【
図7】全身注射後の肝臓におけるAAV-PRの形質導入。クッパー細胞、星細胞、または血管細胞ではない形質導入された肝細胞(GFP)(内皮CD31+細胞またはVSMC SMAおよびSM22+細胞)を示す、AAV-PR-sc-CBA-GFPを注射により投与したマウスの20μmの肝切片におけるGFPシグナルの代表的な画像。
【
図8-1】実験設計の例示的概略図。A.ライブラリコンストラクトの二成分系。カプシド上において発現される異なるペプチドインサートで構成されたiTransduceライブラリ(異なる色で表される)が、tdTomatoレポーター遺伝子の上流におけるloxPの隣接するSTOPカセットがGt(ROSA)26Sor遺伝子座に挿入された、Ai9遺伝子導入マウスに注射により静脈内(i.v.)投与される。目的の細胞に入ることができるが、細胞に機能的に形質導入しない(Cre発現はない)AAVカプシドは、tdTomato発現を有効にしない。機能的形質導入(Creを発現する)を媒介することができるカプシドはtdTomato発現を有効にするであろう。
【
図8-2】実験設計の例示的概略図。(B)目的の器官(例えば、脳)から細胞が単離され、形質導入された細胞が、tdTomato発現と場合により細胞マーカーのために選別される。
【
図8-3】実験設計の例示的概略図。C.AAV-CBA-Creを投与されたAi9マウス(左側)またはscAAV-CBA-GFPを投与されたC57BL.6マウス(右側)からの例示的画像。Hanlon et al., Mol Ther Methods Clin Dev. 2019 Dec 13; 15: 320-332を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
アルツハイマー病およびパーキンソン病を含む、多くの一般的な神経変性疾患は、脳血管系を伴う。さらに、IV型コラーゲンA1もしくはA2(COL4A1/A2);エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1);ATP結合カセットサブファミリーCメンバー6(ABCC6);3プライム修復エキソヌクレアーゼ1(TREX1);フォークヘッドボックスC1(FOXC1);ペアード様ホメオドメイン2(PITX2);SAMおよびHDドメイン含有デオキシヌクレオシド三リン酸トリホスホヒドロラーゼ1(SAMHD1);エンドグリン(ENG);SMADファミリーメンバー4(SMAD4);アクチビンAレセプター様タイプ1(ACVRL1);RAS p21タンパク質アクティベーター1(RASA1);ノッチレセプター3(NOTCH3);HtrAセリンペプチダーゼ1(HTRA1);ジンクフィンガーCCHCタイプ含有14(ZCCHC14)、またはアポリポタンパク質Eイプシロン4(APOE ε4)における変異に関連するものを含む、血管系に影響を及ぼすいくつかのまれな遺伝病が存在する。
【0024】
AAVベクターを使用する遺伝子療法は、血管系に影響を及ぼす疾患を治療する可能性を有する。脊髄筋萎縮の治療のためにFDAによって承認された、CNS遺伝子療法におけるゴールドスタンダードであるAAV9は、主に、いくつかの制限された血管系形質導入のみによってニューロンおよび星状細胞に形質導入する。したがって、血管系を標的にする療法に対する改良が必要とされている。
【0025】
ここで、AAV9ペプチドディスプレイライブラリを使用するマウスにおけるインビボ選別プロセスにより、新規のカプシドターゲッティングペプチドが識別された。これらのペプチドは、アミノ酸588および589の間のAAV9に挿入された場合、静脈内全身送達の後に、CNS血管系に対するトロピズムを示した。表1にペプチドが一覧される。
【0026】
【0027】
ターゲッティング配列
本方法は、例えば、AAV、例えば、AAV1、AAV2、AAV5、AAV8、もしくはAAV9のカプシドに挿入された場合、または、化学的に、もしくは融合タンパク質としての発現を介して、生物製剤、例えば、抗体もしくは他の巨大生物分子にコンジュゲートされた場合、CNS血管系のターゲッティングを増強する、多くの潜在的ターゲッティングペプチドを識別した。
【0028】
いくつかの実施形態において、ターゲッティングペプチドは、少なくとも5つのアミノ酸の配列を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、配列PRPPSTH(配列番号1);MAEPGAR(配列番号2);SQDPSTL(配列番号3);またはMLYADNT(配列番号4)の少なくとも4つ、例えば、5つ、6つ、または7つの連続するアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、少なくとも[D/P]PST(配列番号9)を含む。
【0029】
例えば、L-HTSPPRP(配列番号10);L-RAGPEAM(配列番号11);L-LTSPDQS(配列番号12);L-TNDAYLM(配列番号13);D-HTSPPRP(配列番号10);D-RAGPEAM(配列番号11);D-LTSPDQS(配列番号12);またはD-TNDAYLM(配列番号13)など、L-およびD-アミノ酸を含むターゲッティングペプチドも使用することができる。
【0030】
例えば、HTSPPRP(配列番号10);RAGPEAM(配列番号11);LTSPDQS(配列番号12);またはTNDAYLM(配列番号13)など、逆転した配列を含むターゲッティングペプチドも使用することができる。
【0031】
本明細書において開示されるターゲッティングペプチドは、ペプチドミメティックを作製するために当技術分野において既知の方法に従って改変することができる。例えば、Qvit et al., Drug Discov Today. 2017 Feb; 22(2): 454-462;Farhadi and Hashemian, Drug Des Devel Ther. 2018; 12: 1239-1254;Avan et al., Chem. Soc. Rev., 2014,43, 3575-3594;Pathak, et al., Indo American Journal of Pharmaceutical Research, 2015. 8; Kazmierski, W.M., ed., Peptidomimetics Protocols, Human Press (Totowa NJ 1998);Goodman et al., eds., Houben-Weyl Methods of Organic Chemistry: Synthesis of Peptides and Peptidomimetics, Thiele Verlag (New York 2003);およびMayo et al., J. Biol. Chem., 278:45746 (2003)を参照されたい。いくつかの場合において、本明細書において開示されるペプチドおよび断片のこれらの改変されたペプチドミメティックバージョンは、非ペプチドミメティックなペプチドと比べて、高められたインビボでの安定性を示す。
【0032】
ペプチドミメティックを作製する方法は、ペプチド配列のアミノ酸の1つまたは複数、例えば、全てをD-アミノ酸エナンチオマーで置換するステップを含む。そのような配列は、本明細書において「レトロ」配列と呼ばれる。別の方法では、アミノ酸残基のN末端からC末端への順番は逆転され、それにより、元のペプチドのN末端からC末端へのアミノ酸残基の順番は、改変されたペプチドミメティックにおけるC末端からN末端へのアミノ酸残基の順番になる。そのような配列は、「インベルソ」配列と呼ぶことができる。
【0033】
ペプチドミメティックは、レトロおよびインベルソバージョンの両方であり得、すなわち、本発明において開示されるペプチドの「レトロ-インベルソ」バージョンであり得る。新規のペプチドミメティックは、ペプチドミメティックにおけるN末端からC末端へのアミノ酸残基の順番が、元のペプチドにおけるC末端からN末端へのアミノ酸残基の順番に対応するように配置されたD-アミノ酸で構成され得る。
【0034】
ペプチドミメティックを作製する他の方法は、ペプチドにおける1つまたは複数のアミノ酸残基を、化学的に異なるが認識された当該アミノ酸の機能的類似物、すなわち、人工アミノ酸類似物で置換するステップを含む。人工アミノ酸類似物としては、β-アミノ酸、β-置換β-アミノ酸(「β3-アミノ酸」)、アミノ酸のリン類似物、例えば、∀-アミノホスホン酸および∀-アミノホスフィン酸など、ならびに非ペプチド結合を有するアミノ酸が挙げられる。人工アミノ酸は、ペプチドミメティック、例えば、ペプトイドオリゴマー(例えば、ペプトイドアミドまたはエステル類似物)、β-ペプチド、環状ペプチド、オリゴウレアもしくはオリゴカーバメートペプチド、または複素環分子を作製するために使用することができる。例示的レトロ-インベルソターゲッティングペプチドミメティックとしては、HTSPPRP(配列番号19);RAGPEAM(配列番号20);LTSPDQS(配列番号21);またはTNDAYLM(配列番号22)が挙げられ、この場合、配列は、全てのD-アミノ酸を含む。これらの配列は、例えば、アミノ末端のビオチン化およびカルボキシ末端のアミド化によって、改変することができる。
【0035】
AAV
本方法および組成物において使用するためのウイルスベクターとしては、本明細書に記載のターゲッティングペプチドと場合により標的組織における発現のための導入遺伝子とを含む、組換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、アルファウイルス、およびレンチウイルスが挙げられる。
【0036】
本方法における核酸の送達のために有用な好ましいウイルスベクターシステムは、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。AAVは、25nmのカプシドを有する小さい非エンベロープウイルスである。当該野生型ウイルスに関連することが知られているかまたは関連することが証明されている疾患は全く存在しない。AAVは、一本鎖DNA(ssDNA)ゲノムを有する。AAVは、長期のエピソーム導入遺伝子の発現を示すことがわかっており、AAVは、脳、特にニューロンにおける優れた導入遺伝子の発現を示した。AAVにおける外因性DNAのためのスペースは、概して、粒子の内側に物理的に収まることができる核酸の量に制限される。例えば、タイプ1~5のAAVは、最大6kbのDNAをパッケージすることができ、いくつかの報告では、AAV5は、最大8.9kbのDNAをパッケージすることがわかっている。Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 5:3251-3260 (1985)に記載されるようなAAVベクターを使用することによって、DNAを細胞に導入することができる。様々な核酸が、AAVベクターを使用して異なる細胞タイプに導入された(例えば、Hermonat et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6466-6470 (1984);Tratschin et al., Mol. Cell. Biol. 4:2072-2081 (1985);Wondisford et al., Mol. Endocrinol. 2:32-39 (1988);Tratschin et al., J. Virol. 51:611-619 (1984);およびFlotte et al., J. Biol. Chem. 268:3781-3790 (1993)を参照されたい)。多数の代替のAAVバリアントが存在し(100を超えるクローンが作られた)、AAVバリアントは、望ましい特性に基づいて識別された。いくつかの実施形態において、AAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AV6.2、AAV7、AAV8、rh.8、AAV9、rh.10、rh.39、rh.43、またはCSp3であり;CNS用途の場合、いくつかの実施形態において、AAVは、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、またはAAV9である。好適なAAVベクターは、多量のDNAを収容するように設計され得る。一例として、AAV9は、脳血液関門を越えるためいくらか効率的であることが明らかとなった。本方法を使用することにより、AAVカプシドは、本明細書に記載のターゲッティング配列をカプシドタンパク質、例えば、アミノ酸588と589との間のAAV9カプシドタンパク質VP1に挿入することによって、血管透過を増加させるように遺伝子操作することができる。
【0037】
例示的野生型AAV9カプシドタンパク質VP1(Q6JC40-1)配列は、以下の通りである。
【0038】
【0039】
したがって、本明細書に記載のターゲッティングペプチド配列のうちの1つまたは複数を含むAAV、例えば、本明細書に記載のターゲッティング配列を含むカプシドタンパク質、例えば、ターゲッティングペプチド配列が、例えばアミノ酸588と589の間の配列に挿入された、配列番号1を含むカプシドタンパク質を含むAAVが、本明細書において提供される。
【0040】
AAV-PRターゲッティング配列(太字の小文字で示される)を含むAAV9 VP1の例示的アミノ酸配列は、以下の通りである。
【0041】
【0042】
AAV-MAターゲッティング配列(太字の小文字で示される)を含むAAV9 VP1の例示的アミノ酸配列は、以下の通りである。
【0043】
【0044】
AAV-SQターゲッティング配列(太字の小文字で示される)を含むAAV9 VP1の例示的アミノ酸配列は、以下の通りである。
【0045】
【0046】
AAV-MLターゲッティング配列(太字の小文字で示される)を含むAAV9 VP1の例示的アミノ酸配列は、以下の通りである。
【0047】
【0048】
これらのVPIバリアントをコードする例示的配列は、以下に提供される。
【0049】
いくつかの実施形態において、AAVは、導入遺伝子配列(すなわち、異種配列)、例えば、本明細書に記載のような、もしくは当技術分野において既知であるような、治療薬をコードする導入遺伝子など、またはレポータータンパク質、例えば、蛍光タンパク質など、検出可能な産物をもたらす反応を触媒する酵素、または細胞表面抗原も含む。導入遺伝子は、好ましくは、標的組織における導入遺伝子の発現を促進/駆動/調節する配列に連結される。
【0050】
治療法としての使用のための例示的導入遺伝子としては、ニュールツリン;脳由来神経栄養因子(BDNF);脳ドーパミン神経栄養因子(CDNF);中脳星状細胞由来神経因子(MANF);血管内皮増殖因子(VEGF);グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF);芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC);Tau抗体;アミロイド前駆体タンパク質(APP)抗体;IV型コラーゲンA1もしくはA2(COL4A1/A2);エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1);ATP結合カセットサブファミリーCメンバー6(ABCC6);3プライム修復エキソヌクレアーゼ1(TREX1);フォークヘッドボックスC1(FOXC1);ペアード様ホメオドメイン2(PITX2);SAMおよびHDドメイン含有デオキシヌクレオシド三リン酸トリホスホヒドロラーゼ1(SAMHD1);エンドグリン(ENG);SMADファミリーメンバー4(SMAD4);アクチビンAレセプター様タイプ1(ACVRL1);RAS p21タンパク質アクティベーター1(RASA1);ノッチレセプター3(NOTCH3);HtrAセリンペプチダーゼ1(HTRA1);ジンクフィンガーCCHCタイプ含有14(ZCCHC14)、またはアポリポタンパク質Eイプシロン4(APOE ε4)をコードする導入遺伝子が挙げられる。他の例示的導入遺伝子としては、例えば、神経細胞アポトーシス抑制タンパク質(NAIP)、神経成長因子(NGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)、GTPシクロヒドロラーゼ(GTPCH)、アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)、アスパルトアシラーゼ(ASPA)、血液因子、例えば、β-グロビン、ヘモグロビン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、および血液凝固因子など;コロニー刺激因子(CSF);インターロイキン、例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9など;成長因子、例えば、ケラチノサイト成長因子(KGF)、幹細胞因子(SCF)、線維芽細胞成長因子(FGF、例えば、塩基性FGFおよび酸性FGFなど)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、骨形成タンパク質(BMP)、上皮成長因子(EGF)、成長分化因子-9(GDF-9)、ヘパトーマ由来成長因子(HDGF)、ミオスタチン(GDF-8)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン、血小板由来成長因子(PDGF)、トロンボポイエチン(TPO)、形質転換成長因子α(TGF-α)、形質転換成長因子β(TGF-β)など;可溶性受容体、例えば、可溶性TNF-α受容体、可溶性VEGF受容体、可溶性インターロイキン受容体(例えば、可溶性IL-1受容体および可溶性タイプII IL-1受容体)、可溶性γ/δT細胞受容体、可溶性受容体のリガンド結合断片など;酵素、例えば、α-グルコシダーゼ、イミグルセラーゼ、β-グルコセレブロシダーゼなど;酵素活性化剤、例えば、組織プラスミノーゲンアクティベーターなど;ケモカイン、例えば、IP-10、インターフェロンγ誘導モノカイン(Mig)、Groa/IL-8、RANTES、MIP-1α、MIP-1β、MCP-1、PF-4など;血管形成剤、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF、例えば、VEGF121、VEGF165、VEGF-C、VEGF-2)、形質転換増殖因子β、塩基性線維芽細胞増殖因子、グリオーマ誘導増殖因子、アンギオゲニン、アンギオゲニン-2など;血管新生阻害剤、例えば、可溶性VEGF受容体など;タンパク質ワクチン;神経活性ペプチド、例えば、神経成長因子(NGF)、ブラジキニン、コレシストキニン、ガスチン(gastin)、セクレチン、オキシトシン、生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン、β-エンドルフィン、エンケファリン、サブスタンスP、ソマトスタチン、プロラクチン、ガラニン、成長ホルモン放出ホルモン、ボンベシン、ダイノルフィン、ワルファリン、ニューロテンシン、モチリン、チロトロピン、ニューロペプチドY、黄体形成ホルモン、カルシトニン、インスリン、グルカゴン、バソプレシン、アンジオテンシンII、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、血管作動性腸管ペプチド、睡眠ペプチドなど;血栓溶解剤;心房性利尿ペプチド;レラキシン;グリア細胞線維性酸性タンパク質;濾胞刺激ホルモン(FSH);ヒトα-1アンチトリプシン;白血病阻止因子(LIF);形質転換成長因子(TGF);組織因子、黄体形成ホルモン;マクロファージ活性化因子;腫瘍壊死因子(TNF);好中球走化因子(NCF);神経成長因子;組織性メタロプロテアーゼ阻害因子;血管作動性腸ペプチド;アンギオゲニン;アンジオトロピン(angiotropin);フィブリン;ヒルジン;IL-1レセプターアンタゴニスト;などの発現をコードするものが挙げられる。目的のタンパク質のいくつかの他の例としては、毛様体神経栄養因子(CNTF);ニューロトロフィン3および4/5(NT-3および4/5);グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF);芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC);血友病関連凝固タンパク質、例えば、VIII因子、IX因子、X因子;ジストロフィンまたはミニジストロフィン;リソゾーム酸性リパーゼ;フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH);糖原貯蔵障害関連酵素、例えば、グルコース-6-ホスファターゼ、酸性マルターゼ、グリコーゲン脱分枝酵素、筋グリコーゲンホスフォリラーゼ、肝グリコーゲンホスフォリラーゼ、筋ホスフォフルクトキナーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ(例えば、PHKA2)、グルコーストランスポーター(例えば、GLUT2)、アルドラーゼA、β-エノラーゼ、およびグリコーゲンシンターゼなど;リソゾーム酵素(例えば、β-N-アセチルヘキソサミニダーゼA);ならびにそれらの任意のバリアントが挙げられる。
【0051】
導入遺伝子は、抗体、例えば、免疫チェックポイント抑制抗体を、例えば、PD-L1、PD-1、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質-4;CD152);LAG-3(リンパ球活性化遺伝子3;CD223);TIM-3(T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3;HAVCR2);TIGIT(IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫レセプター);B7-H3(CD276);VSIR(V-セット免疫調節レセプター通称Vista、B7H5、C10orf54);BTLA30(B-およびT-リンパ球アテネーター、CD272);GARP(糖タンパク質A反復;優性);PVRIG(PVR関連免疫グロブリンドメイン含有);またはVTCN1(V-セットドメイン含有T細胞活性化インヒビター1、通称B7-H4)へとコードすることもできる。
【0052】
他の導入遺伝子としては、標的遺伝子の発現を変更/減少する低分子抑制核酸(small or inhibitory nucleic acid)、例えば、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスオリゴ、サプレッサーtRNA(Wang et al., Nature volume 604, pages343-348 (2022))もしくは遺伝子発現を変更する長鎖ノンコーディングRNA(例えば、国際公開第2012087983号パンプレットおよび米国特許出願公開第20140142160号明細書を参照されたい)、またはCRISPR Cas9/cas12aおよびガイドRNAを挙げることができる。ゲノム編集試薬(例えば、CRISPR Casヌクレアーゼ、塩基エディター、またはプライムエディター、および場合により、関連するガイドRNA)も、送達することができる。例えば、様々なCRISPRシステムは、最適な標的配列を切断するように操作することができる。例えば、Ledford, Nature. 2021 Sep 10. doi:10.1038/d41586-021-02461-2.印刷前の電子出版;Ramirez-Phillips, AAPS J. 2021 Jun 2;23(4):80;Liu et al., Mol Cell. 2022 Jan 20;82(2):333-347を参照されたい。いくつかの場合において、CRISPR酵素をコードするコンストラクトおよび特定の領域を標的にするgRNAが、導入遺伝子の一部としてAAVベクターへ組み込まれる。
【0053】
ウイルスは、導入遺伝子の発現を促進する1つまたは複数の配列、例えば、1つまたは複数のプロモーター配列;エンハンサー配列、例えば、5’非翻訳領域(UTR)もしくは3’UTR;ポリアデニル化部位;および/またはインシュレーター配列も含むことができる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、血管内皮細胞特異的プロモーター、例えば、VE-カドヘリンプロモーター、Fms様チロシンキナーゼ-1(FLT-1)、細胞間接着分子-2(ICAM-2)、フォンヴィレブランド因子(vWF)プロモーター、TIE2プロモーター、または合成EC特異的プロモーターである(例えば、Dai et al., J Virol. 2004 Jun; 78(12): 6209-6221を参照されたい)。いくつかの実施形態において、プロモーターは、汎細胞タイププロモーター(pan-cell type promoter)、例えば、ほとんどの細胞タイプにおいて発現を駆動する「ユビキタス」プロモーター、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合により、CMVエンハンサーを伴う)、チキンβアクチンプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合により、RSVエンハンサーを伴う)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、EF1アルファプロモーター、ユビキチンC(UBC)、B-グルクロニダーゼ(GUSB)、およびCMV即/初期遺伝子エンハンサー/CBAプロモーター、またはステロイドプロモーターもしくはメタロチオネインプロモーターである。ウッドチャック肝炎ウイルス転写後反応エレメント(WPRE)も使用することができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、AAVは、標的組織、例えばCNSへの送達を増加させるかまたはオフ組織ターゲッティングを減少させる1つまたは複数の追加の変異、例えば、CNS、心臓、筋肉送達が意図される場合の肝臓送達(例えば、Pulicherla et al. (2011) Mol Ther 19:1070-1078に記載される);あるいは例えば、Chen et al. (2008) Nat Med 15:1215-1218もしくはXu et al., (2005) Virology 341:203-214または米国特許第9102949号明細書;米国特許第9585971号明細書;および米国特許出願公開第20170166926号明細書に記載されるような他のターゲッティングペプチドの追加を減少させる変異も有する。sfn.org/~/media/SfN/Documents/Short%20Courses/2011%20Short%20Course%20I/2011_SC1_Gray.ashxにおいて利用可能なGray and Samulski (2011) "Vector design and considerations for CNS applications," in Gene Vector Design and Application to Treat Nervous System Disorders ed. Glorioso J., editor. (Washington, DC: Society for Neuroscience) 1-9も参照されたい。
【0055】
タグ/融合物としてのターゲッティングペプチド
本明細書に記載のターゲッティングペプチドは、例えば、分子へのコンジュゲーションによって、または、例えば、抗体もしくは他の巨大生物分子などとの融合タンパク質の一部としての発現によって、CNS血管系における内皮細胞への他の(異種)分子のターゲッティングを増加させるためにも使用することができる。これらは、治療薬またはレポーターに加えて、ゲノム編集タンパク質または複合体(例えば、本明細書に記載のペプチド(例えば、N末端、C末端における、または内部的な)およびガイドRNAに融合した、TALE、ZFN、塩基エディター、および遺伝子編集タンパク質を含むCRISPR RNP、例えば、Cas9またはCas12aなど)を含むことができる。融合物/複合体は、Ku70由来のあらゆる他の配列を含まず、例えば、異種非Ku70配列を含み、天然には存在しない。
【0056】
使用方法
本明細書に記載の方法および組成物は、任意の組成物、例えば、目的の導入遺伝子または配列を、組織、例えば、中枢神経系(脳)、例えば、内皮細胞および周皮細胞などの血管系、ならびに血管系の平滑筋細胞に送達するために使用することができる。いくつかの実施形態において、方法は、特定の脳領域、例えば、皮質、小脳、海馬、黒質、扁桃体への送達を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、方法および組成物、例えば、AAVは、核酸配列を、疾患、例えばCNSの疾患を患う対象に送達するために使用され;例えば、米国特許第9102949号明細書;米国特許第9585971号明細書;および米国特許出願公開第20170166926号明細書を参照されたい。いくつかの実施形態において、対象は、パーキンソン病を患い、ベクターは、ニュールツリン;脳由来神経栄養因子(BDNF);脳ドーパミン神経栄養因子(CDNF);中脳星状細胞由来神経因子(MANF);血管内皮増殖因子(VEGF);グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、または芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)を送達するために使用される(例えば、Axelsen and Woldbye, J Parkinsons Dis. 2018; 8(2): 195-215;Qin et al., Med Sci Monit. 2022 Mar 16;28:e935026;Elabi et al., Sci Rep. 2021 Jan 13;11(1):1120;Yu et al., Front Neurosci. 2020 Apr 29;14:334を参照されたい)。いくつかの実施形態において、対象は、アルツハイマー病を患い、ベクターは、Tau抗体またはアミロイド前駆体タンパク質(APP)抗体を送達するために使用される(例えば、Yang et al, Nature. 2022 Mar;603(7903):885-892;Bohannon et al., Cells. 2021 Apr 14;10(4):890;Kimbrough et al., Brain. 2015 Dec;138(Pt 12):3716-33;Sagare et al., Nat Commun. 2013;4:2932;Fisher et al., Brain Pathol. 2022 Mar 14;e13061;Zhang et al., Natl Sci Rev. 2019 Nov;6(6):1223-1238;Agyare et al., Mol Pharm. 2013 May 6;10(5):1557-65を参照されたい)。いくつかの実施形態において、対象は、血管系に影響を及ぼす遺伝病、例えば、IV型コラーゲンA1もしくはA2(COL4A1/A2)(COL4A1/A2)(Vahedi and Alamowitch, Curr Opin Neurol. 2011 Feb;24(1):63-8;Mao et al. Dis Model Mech. 2017 Apr 1;10(4):475-485);エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1(ENPP1)(Ferreira et al., Genet Med. 2021 Feb;23(2):396-407;Maulding et al., Bone. 2021 Jan;142:115656);ATP結合カセットサブファミリーCメンバー6(ABCC6)(Shimada et al., Int J Mol Sci. 2021 Apr 27;22(9):4555)、3プライム修復エキソヌクレアーゼ1(TREX1)(Hoogeveen et al., AJNR Am J Neuroradiol. 2021 Sep;42(9):1604-1609;Rice et al., J Clin Immunol. 2015 Apr;35(3):235-43);フォークヘッドボックスC1(FOXC1)(Prasitsak et al., Dev Dyn. 2015 May;244(5):703-11;French et al., J Clin Invest. 2014 Nov;124(11):4877-81);ペアード様ホメオドメイン2(PITX2)(French et al., J Clin Invest. 2014 Nov;124(11):4877-81);SAMおよびHDドメイン含有デオキシヌクレオシド三リン酸トリホスホヒドロラーゼ1(SAMHD1)(Li et al., Biomed Res Int. 2015;2015:739586);エンドグリン(ENG)(Lozano Sanchez et al., J Pers Med. 2022 Mar 25;12(4):528);SMADファミリーメンバー4(SMAD4)(Nie et al., Immun Inflamm Dis. 2021 Dec;9(4):1306-1320);アクチビンAレセプター様タイプ1(ACVRL1)(Walsh et al., J Med Case Rep. 2022 Mar 1;16(1):99);RAS p21タンパク質アクティベーター1(RASA1)(Chen et al., JCI Insight. 2022 Feb 22;7(4):e156928);またはノッチレセプター3(NOTCH3)(Joutel et al., J Clin Invest. 2000 Mar;105(5):597-605;Opherk et al., Hum Mol Genet. 2009 Aug 1;18(15):2761-7);HtrAセリンペプチダーゼ1(HTRA1)(Shiga et al., Hum Mol Genet. 2011 May 1;20(9):1800-10);ジンクフィンガーCCHCタイプ含有14(ZCCHC14)(Traylor et al., Ann Neurol. 2017 Mar;81(3):383-394)、アポリポタンパク質Eイプシロン4(APOE ε4)(Khera et al., Circulation. 2019 Mar 26;139(13):1593-1602)などにおける変異に関連するものを患う。本明細書に記載のベクターは、標的にされた細胞のゲノムにおける変異を修正する野生型導入遺伝子または遺伝子編集試薬(例えば、CRISPR Casヌクレアーゼ、塩基エディター、またはプライムエディター、および関連するガイドRNA)を送達するために使用することができる。
【0058】
治療薬は、核酸として、例えば、ウイルスベクターによって送達することができ、この場合、核酸は、治療タンパク質もしくは他の核酸、例えば、アンチセンスオリゴ、siRNA、shRNAなどをコードし、または、治療薬は、本明細書に記載のようなターゲッティングペプチドとの融合タンパク質/複合体として送達することができる。
【0059】
医薬組成物および投与方法
本明細書に記載の方法は、有効成分としてターゲッティングペプチドを含む医薬組成物の使用を含む。
【0060】
医薬組成物は、典型的には、薬学的に許容される担体を含む。本明細書において使用される場合、語句「薬学的に許容される担体」は、医薬投与に適合性の、塩水、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含する。
【0061】
医薬組成物は、典型的には、その意図される投与経路に適合性であるように製剤化される。投与経路の例としては、非経口的、例えば、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内注射または注入が挙げられる。したがって、送達は、全身性または局所的であり得る。
【0062】
好適な医薬組成物を製剤化する方法は、当技術分野において既知であり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed., 2005;シリーズDrugs and the Pharmaceutical Sciences: a Series of Textbooks and Monographs (Dekker, NY)の書籍を参照されたい。例えば、非経口投与のために使用される溶液または懸濁液は、以下の成分:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒など;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど;酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなど;キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸など;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩など、ならびに張度の調節のための薬剤、例えば、塩化ナトリウム、またはデキストロースなどを含むことができる。pHは、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムなどによって調節することができる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブル注射筒、または多人数用バイアルに封入することができる。
【0063】
注射可能な使用にとって好適な医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を含み得る。静脈内投与の場合、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、パーシッパニー、ニュージャージー)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は、滅菌されていなければならず、容易なシリンジ使用性が存在する程度に流動性であるべきである。それらは、製造および貯蔵の条件下において安定であるべきであり、微生物、例えば、細菌および真菌などの混入活動に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合は必要な粒子サイズを維持することによって、および、界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトールなど、塩化ナトリウムを含むことは好ましいであろう。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどを組成物に含ませることによって生じさせることができる。
【0064】
滅菌注射液は、必要な量の活性化合物を、上記に列挙された成分の1つまたは組合せを伴う適切な溶媒に組み入れ、必要に応じて、その後に濾過滅菌を行うことによって、調製することができる。概して、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒と上記に列挙されたものから必要な他の成分とを含む滅菌ビヒクルに組み入れることによって調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、それらは、前に滅菌濾過したその溶液から、活性成分と任意の追加の所望の成分とによる粉末をもたらす。
【0065】
一実施形態において、治療化合物は、例えば、インプラントおよびマイクロカプセル化デリバリーシステムを含めた制御放出製剤など、身体からの迅速な排除から治療化合物を保護する担体を用いて調製される。例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤は、標準的技術を使用して調製することができ、または例えば、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することができる。リポソーム懸濁液(細胞性抗原に対するモノクローナル抗体を有する選択された細胞にターゲッティングされるリポソームを含む)も、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号明細書に記載されるような、当業者に既知の方法により調製することができる。
【0066】
医薬組成物は、投与のための取扱説明書と共に、キット、容器、パック、またはディスペンサーに含ませることができる。
【実施例】
【0067】
本発明はさらに、下記の実施例において記載され、それらは、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0068】
材料および方法
下記の材料および方法を、以下の実施例において使用した。
【0069】
動物:全ての動物実験は、実験動物飼育管理に関するマサチューセッツ総合病院分科委員会(Massachusetts General Hospital Subcommittee on Research Animal Care)によって承認され、国立衛生研究所の実験動物の管理と使用に関する指針(National Institutes of Health Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)よって示されたガイドラインに準拠した。発明者らは、成熟年齢(8~10週齢)のAi9(B6.Cg-Gt(ROSA)26Sortm9(CAG-tdTomato)Hze/J、株#007909)およびC57BL/6J(株#000664)マウスを使用し、それらは全て、The Jackson Laboratory、バー・ハーバー、メイン州から入手した。
【0070】
AAV-PRカプシドの構築。目的の導入遺伝子(例えば、GFPまたはCre)をコードするベクターの作製のためにAAV-PRペプチド(PRPPSTH)を表すAAV9カプシドをコードするrep/capプラスミドを作製するために、発明者らは、AAV9 rep/capプラスミド(pAR9)を、ペプチド配列挿入のためにVP3アミノ酸の588部位の横に位置する断片を除去するBsiWIおよびBaeIによって消化させた。次に、発明者らは、Integrated DNA Technologies(IDT、コーラルビル、アイオワ州)から997bpのdsDNA断片を取り寄せ、それは、BsiWI/BaeI切断AAV9を伴う重複するギブソン相同アームならびにVP3のアミノ酸588の後のフレームにおける目的のペプチドをコードする21-merヌクレオチド配列を含む。最後に、発明者らは、AAV9 rep/capプラスミドへのペプチドコード化挿入をライゲートするために、Gibson Assembly(登録商標)Master Mix(NEB、イプスウィッチ、マサチューセッツ)を使用してギブソン・アセンブリを実施した。次に、発明者らは、2μlのギブソン・アセンブリによってNEB 5-アルファコンピテント大腸菌(E. coli)(NEB)を形質転換させ、形質転換させた細胞をLB-Amp寒天プレートに播種した。正しい配列が挿入されたことを確認するために、選択されたコロニーから単離したDNAを、ペプチドコード領域に隣接するプライマーを使用する、MGH Center for Computational and Integrative Biology DNA Coreでのサンガーシーケンシングのために送った。
【0071】
AAVベクターの製造、精製、および力価測定。AAV-PRベクターによる導入遺伝子発現研究のために、発明者らは、下記のコンストラクトを使用した:(1)Miguel Sena-Esteves(UMass Medical Center)からの贈り物であるAAV発現プラスミドであるpAAV-CBA-NLS-Cres。このプラスミドは、ハイブリッドCMV-IEエンハンサー/チキンβアクチン(CBA)プロモーター、SV40核局在化シグナル(NLS)、CreリコンビナーゼcDNA、および牛成長ホルモン(BGH)ポリAシグナル配列からなる、CBA発現カセットに隣接するAAV逆方向末端リピート(ITR)を含む。(2)pAAV-sc-CBA-GFP。このコンストラクトは、ハイブリッドCMV即初期/チキンβアクチン(CBA)プロモーター下での緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現を駆動し、これは、親切にも、Dr.Miguel Sena-Esteves(UMass Medical Center)によって提供された。AAV-sc-CBA-GFPは、自己相補性(sc)ゲノムである。
【0072】
前に記載したようにAAV作製を実施した6。簡潔に記載すると、293T細胞を、(1)AAV-PR rep/capプラスミド、(2)アデノウイルスヘルパープラスミドpAdΔF6、および(3)ITR隣接AAV導入遺伝子発現プラスミドによる3種類でトランスフェクトした(リン酸カルシウム法)。トランスフェクションの68~72時間後に細胞溶解物を収穫し、イオジキサノール密度勾配の超遠心分離によって精製した。イオジキサノールを除去し、Zeba脱塩カラム、7kDa分子量カットオフ(MWCO;Thermo)を使用して、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)へと緩衝液を交換した。2mlのAmicon Ultra 100kDa MWCO限外濾過装置を使用してベクターを濃縮した。VG/mlでのベクター力価を、BGHポリA配列に対するプローブおよびプライマーを使用して、ABI Fast 7500リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)においてTaqman qPCRによって測定し、AAVプラスミドによって作製した標準曲線から補間した。ベクターを頓用アリコートへとピペッティングし、使用まで-80℃で貯蔵した。
【0073】
マウスにおけるベクターの注射。Ai9マウスにおけるAAV-PR媒介Cre組換えおよびtdTomato発現を伴う実験において、発明者らは、成体(雄および雌の両方)のAi9マウスにAAV-PR-CBA-Creベクターを側部尾静脈からの注射により全身投与した。注射の3~5週間後、動物を殺して、脳および他の器官を凍結切片法のために処理し、免疫蛍光染色して、撮像した。
【0074】
従来の導入遺伝子発現ベクターとしてAAV-PRを使用する実験において、雄のC57BL/6JマウスにAAV-PR-sc-CBA-GFPを側部尾静脈からの注射により全身投与した。マウスを、2つの時点、すなわち、注射後の5日目および28日目に殺した。脳を凍結切片法のために処理し、次いで、免疫蛍光染色して、撮像した。
【0075】
免疫蛍光染色および顕微鏡法。切片を室温で20分間乾燥させ、次いで、PFAを用いて15分間インキュベートした。次いで、各スライドを、それぞれ5分間、PBSによって3回すすいだ。この後、氷冷メタノールによる10分間のインキュベーションを行い、次いで、さらなるPBSですすいだ。切片を、PBS中における5%ヤギ血清および5%BSAにおいて、45分間かけてブロックした。次いで、一次抗体混合物を用いて4℃で一晩インキュベートした。一次抗体を、宿主種に基づいて、抗GFP(G10362;1:500)およびCD31(BD550274;1:50)または抗GFP(ab1218;1:500)およびPDGFr-B(LS C117692;1:500)のどちらかにおいて、共染色として使用した。翌日、スライドをもう一度、PBSですすぎ、次いで、AlexaFlor488(A32723またはA32731;1:500)およびAlexaflor555(A-21428またはA-21434;1:500)を用いて90分間インキュベートした。スライドを、DAPI(P36931)を用いたProLong Antifade Mountantによって処理した。MGHにおいてProgram in Membrane Biology(PMB)のMicroscopy Coreに配置されたZeiss LSM 800 Airyscan共焦点顕微鏡を使用して画像を撮影した。全てのスライドにおいて標準露光にて、10倍、20倍、40倍、および63倍で広視野蛍光画像を撮影した。画像をImageJソフトウェア(NIH)を使用して解析した。異なる切片間およびマウス試料間での画像位置における一貫性を確保するために、Allen Brain Atlasを参照した。全ての画像処理および定量化は、NIH ImageJソフトウェアを使用して行った。
【0076】
[実施例1]
AAV-PRの選別および識別
発明者らは、注射による全身投与の後に、脳に形質導入することができるAAVカプシドを単離するために、AAVペプチドディスプレイライブラリによるインビボ選別を実施した。方法は、概して、
図8A~Cにおいて記載され;発明者らは、Cre感応性蛍光レポーターを発現するマウス(Ai9マウス)における導入遺伝子発現を、配列をコードするレスキューされたペプチドと結び付けるために、7-merペプチドディスプレイライブラリをCreリコンビナーゼカセットと組み合わせる、以前に記載した発明者らのiTransduceライブラリ
7,8(AAV-CBA-Cre-p41-Cap)を使用した。発明者らは、最初、脳における骨髄由来細胞に形質導入することができるカプシドを単離することを目標に設定した。発明者らは、カプシドライブラリによる2回の選別を実施した。初回の選別では、ライブラリの1.27×10
11のベクターゲノム(vg)を、1匹の成体の雄および1匹の雌のAi9マウスに注射した。注射の3週間後、脳組織からDNAを抽出し、CAP領域を増幅し、その後、それをAAVプラスミド骨格へと再クローニングし、2回目の選別のために再パッケージした(「脳富化カプシドライブラリ(brain-enriched capsid library)」)。2回目では、発明者らは、形質導入コンピテントカプシドを単離するために、Creカセットを使用した。2匹の雌のAi9マウスおよび1匹の雄のマウスに、尾静脈において、それぞれ1.91×10
10または7.64×10
11vgのレスキューされ再パッケージされたライブラリを注射した。3週間後、マウスを殺して、脳細胞を分離し、抗CD11b/磁性ビーズ(Magnetic Activated Cell Sorting、MACS、Miltenyi)を使用して細胞を単離した。次に、細胞を、tdTomato
+およびtdTomato
-フラクションへと流動選別した。初回の際に記載したように、各細胞ペレットからDNAを単離し、ペプチドインサートコード領域のPCR増幅をNGSに提出した。NGSのデータから、発明者らは、tdTomato
+フラクションにおける高い読取り頻度を有するカプシド候補を選別した。Pico Pure(商標)DNA Extraction Kit(Thermo Fisher Scientific)を使用して、各細胞ペレットからDNAを単離し、発明者らは、次世代シーケンシング(NGS)によってペプチドプロファイルを特定するために、当該インサートを含むcap領域をPCR増幅した。NGSの結果から、4つのカプシドクローン、PRPPSTH(配列番号1);MAEPGAR(配列番号2);SQDPSTL(配列番号3);またはMLYADNT(配列番号4)を、評価のために選択した。
【0077】
[実施例2]
AAV9カプシドを表す操作されたペプチドAAV-PRは静脈内送達の後に脳における血管系選択的形質導入表現型を媒介する
次に、発明者らは、全身静脈内送達の後の成体マウスの脳の形質導入に対して、これらの新規のカプシドを試験した。発明者らは、一本鎖AAV-CBA-Creゲノムをそれぞれの候補カプシドにパッケージし、これらのベクター(1×10
12vg/マウス)を、全ての細胞にCre感応性CAG-floxed-STOP-tdTomatoレポーターを有する成体Ai9マウスの尾静脈に注射した。AAVベクターによって首尾良く形質導入されてCre発現した全ての細胞は、その結果として、tdTomato発現を生じるはずである。注射の3週間後にマウスを犠牲にし、脳を薄くスライスして、免疫蛍光染色によってtdTomatoを検出した。AAV-PRと命名されたペプチドPRPPSTHを表す1つのカプシドに対して、発明者らは、脳全体でのtdTomato発現の異なる血管系免疫染色を観察した(
図1A~D)。このプロファイルは、ほとんどの星状細胞およびニューロンの形質導入を媒介する、成体Ai9マウスにおける親のAAV9-CBA-Creのトロピズムに対して、著しく対照的であった
1。他のペプチド(MAEPGAR(配列番号2);SQDPSTL(配列番号3);またはMLYADNT(配列番号4))の場合、ディスプレイングカプシドは、血管系内の細胞ならびに神経形態を有する細胞に形質導入した(
図1E~H)。
【0078】
[実施例3]
GFPをコードするIV注射されたAAV-PRによる脳血管系形質導入細胞の時間依存性減少
発明者らは、このカプシドの「完全発現」プロファイルを評価するために、Cre/lox系におけるAAV-PRを評価する実験を開始した。最近実証されたように、従来の蛍光レポーターは、AAVによる形質導入事象(例えば、一過性発現)を過少評価し
2、Cre/Lox系の使用は、これらの形質導入事象の全てを捕捉することを可能にし、それは、異なる遺伝子送達用途、例えば、ゲノム編集などにとって有用であり得る。AAV-PR媒介性Cre発現は、マウスゲノムの永久的な遺伝子改変を可能にし、それは、結果として、安定したtdTomatoの発現を生じる。長期間の発現のために染色体外AAVゲノムの安定性を頼りにする、さらに従来的な「遺伝子追加」送達フォーマットにおけるAAV-PRカプシドの形質導入プロファイルを試験するために、発明者らは、自己相補性(sc)AAV-CBA-GFPゲノムをAAV-PRカプシドにパッケージした。発明者らは、成体の雄のマウスに3.5×10
10vg/マウス(およそ1.4×10
12vg/kg)を注射し、注射後の5日目(n=2)および28日目(n=3)にマウスを犠牲した。脳を薄くスライスし、GFP発現に対して免疫染色した。5日目に収穫した脳により、AAV-PR-CBA-Cre/Ai9マウス実験と同様に、形質導入が主に血管系においてであることが明らかとなった。この形質導入パターンは、いくつかの脳領域において観察された(
図2A)。興味深いことに、血管系形質導入表現型は、28日目において維持されたが、その一方で、発現レベルはかなり減少した(
図2A)。3つの脳領域におけるGFPレベルの定量化により、5日目と28日目時点の間における約60%の著しい減少が明らかとなった(
図2B)。
【0079】
脳、心臓、および肝臓におけるベクターゲノムの安定性を評価するために、発明者らは、成体の雄のC57BL/6マウスへの注射による全身投与後の5日目および28日目に、全組織からベクターおよび宿主ゲノムDNAを単離した。脳では、5日目と28日目の間において、ベクターゲノムは少なく30%減少したが(
図3)、これは、統計的に有意ではなかった。同じ時間間隔において、肝臓では、50%減少し、心臓では、20%増加したが(
図3)、両方とも、統計的有意には達しなかった。肝臓におけるゲノムは、脳より肝臓において100倍超高く、このことは、AAV-PRカプシドが肝臓では脱標的化されないことを示唆している。これらのデータは、この時間間隔では、AAV-PRによって送達されたAAVゲノムは大幅には減少しないことを示唆しており、それは、内皮細胞におけるハイブリッドCBAプロモーターの一時的な活性を示し得る。
【0080】
[実施例4]
AAV-PR-CBA-GFPによって形質導入された脳および周辺細胞タイプのキャラクタリゼーション
AAV-PR-CBA-GFPによって媒介される導入遺伝子発現の血管系表現型を確認するために、ベクターを注射されたマウスの脳切片を、様々な細胞マーカーで免疫染色した。最初に、発明者らは、ベクター注射後の5日目および28日目に、内皮マーカーCD31によるGFP発現の共局在化を評価した。両方の時点において、発明者らは、予想されるようなCD31/GFP共局在化を容易に検出した(
図4)。次に、発明者らは、AAV-PRが周皮細胞に形質導入することができるか否かを評価した。興味深いことに、5日目において、発明者らは、周皮細胞の最大で50%がAAV-PRによって形質導入されたことを検出した(PDGFR-β染色によって検出した)(
図5)。海馬における体性感覚皮質およびニューロンでのGFP陽性星状細胞の非常にまばらな検出が検出された(
図6)。全身投与されたAAVベクターは、しばしば、肝臓を容易に形質導入するため、発明者らは、28日目におけるGFP発現に対して、この器官を評価した。AAV-PRは、肝細胞をロバストに形質導入した(形態学的に評価した)(
図7)。
【0081】
参考文献
【0082】
【0083】
他の実施形態
本発明は、その詳細な記載と併せて記載してきたが、先述の記載は、例示することを意図するものであり、添付の特許請求の範囲によって定義される、本発明の範囲を制限することを意図しないことは理解されるべきである。他の態様、利点、および修正は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【配列表】
【国際調査報告】