(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】メープルシロップ尿症(MSUD)におけるBCAA修飾のための遺伝子治療
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20240403BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20240403BHJP
C12N 9/04 20060101ALI20240403BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240403BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240403BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240403BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240403BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240403BHJP
C12N 15/35 20060101ALI20240403BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240403BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240403BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240403BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240403BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240403BHJP
C07K 14/015 20060101ALN20240403BHJP
A61K 38/44 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
A61K35/76
C12N15/53 ZNA
C12N9/04 Z
C12N7/01
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/15
C12N1/19
C12N15/35
A61P3/00
A61P43/00 111
A61K48/00
A61K47/42
A61K9/51
C07K14/015
A61K38/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566495
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 US2022026382
(87)【国際公開番号】W WO2022232169
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507088266
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ マサチューセッツ
【住所又は居所原語表記】One Beacon Street,31st Floor,Boston,Massachusetts 02108
(71)【出願人】
【識別番号】523405926
【氏名又は名称】ザ クリニック フォー スペシャル チルドレン,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】THE CLINIC FOR SPECIAL CHILDREN,INC.
【住所又は居所原語表記】535 Bunker Hill Road,Strasburg,PA 17579,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,グァンピン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ダン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジアミン
(72)【発明者】
【氏名】ストラス,ケヴィン,エー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
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4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA28
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4C076CC21
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4C084BA44
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4C087MA66
4C087NA05
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4C087NA14
4C087ZC19
4C087ZC21
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
いくつかの側面では、本開示は、対象において、分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-αサブユニットである、機能性BCKDHAタンパク質、および/または、分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-βサブユニットである、機能性BCKDHBの発現を促進するための、組成物ならびに方法を提供する。いくつかの態様では、本開示は、メープルシロップ尿症(MSUD)を有する対象を処置する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-αサブユニットである、機能性BCKDHAタンパク質;および/または
(b)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-βサブユニットである、機能性BCKDHBタンパク質;
の発現を、対象において促進するための方法であって、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含むrAAVを対象に投与することを含み、
対象は、メープルシロップ尿症(MSUD)に関連する機能喪失変異を有する少なくとも1つの内因性BCKDHAおよび/またはBCKDHB対立遺伝子を含み、
対象におけるロイシン、イソロイシンおよび/またはバリンの血清BCAA濃度は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである、前記方法。
【請求項2】
(a)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-αサブユニットである、機能性BCKDHAタンパク質;および/または
(b)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-βサブユニットである、機能性BCKDHBタンパク質;
の発現を、対象において促進するための方法であって、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含むrAAVを対象に投与することを含み、
対象は、メープルシロップ尿症(MSUD)に関連する機能喪失変異を有する少なくとも1つの内因性BCKDHAおよび/またはBCKDHB対立遺伝子を含み、
対象におけるイソロイシンに対するロイシンおよび/またはロイシンに対するバリンの血清濃度比は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである、前記方法。
【請求項3】
導入遺伝子を、それを必要とする対象に送達する方法であって、
導入遺伝子は、BCKDHAおよび/またはBCKDHBを含み、
対象の肝臓および/または骨格筋において導入遺伝子を発現するように操作された核酸を含むrAAVを対象に投与することによって、導入遺伝子の発現が、対象におけるBCAA比血清レベルを正常化させる、前記方法。
【請求項4】
正常化された血清レベルが、
(a)イソロイシンに対するロイシンがモルに対し約1.4~1.7モル(mol/mol);および/または
(b)ロイシンに対するバリンが約1.3~1.6mol/mol
の範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
導入遺伝子を、それを必要とする対象に送達する方法であって、
導入遺伝子は、BCKDHAおよび/またはBCKDHBをコードし、
対象の肝臓および/または骨格筋において導入遺伝子を発現するように操作された核酸を含むrAAVを対象に投与することによって、導入遺伝子の発現が、対象のロイシン、イソロイシン、および/またはバリン血清レベルを正常化させる、前記方法。
【請求項6】
正常化された血清レベルが、
(a)ロイシンが約80~200マイクロモル/リットル(μmol/L);
(b)イソロイシンが約40~160μmol/L;および/または
(c)バリンが約140~300μmol/L
の範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
カプシドタンパク質をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
導入遺伝子が発現される場合、発現が投与後少なくとも8週間持続する、請求項3~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
投与が全身注射によるものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
全身注射が静脈内注射である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
カプシドがAAV9カプシドである、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
核酸が、コドン最適化ヒトBCKDHA遺伝子(opti-BCKDHA)、opti-BCKDHB、コドン最適化ウシ(cattle)BCKDHA遺伝子(opti-cBCKDHA)、opti-cBCKDHB、またはそれらの組合せを発現するように操作されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
核酸が、配列番号1~8、11および12のいずれか1つに示される通りの配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
核酸が、1つ以上の逆位末端反復(ITR)を含み、各ITRがAAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITRおよびAAV6 ITRからなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのITRが、デルタITR(ΔITR)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アロイソロイシンの血清濃度が、減少している、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
対象がヒトである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
メープルシロップ尿症(MSUD)を有する対象を処置する方法であって、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含むrAAVを対象に投与することを含み、
対象におけるロイシン、イソロイシンおよび/またはバリンの血清BCAA濃度は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである、前記方法。
【請求項19】
メープルシロップ尿症(MSUD)を有する対象を処置する方法であって、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含むrAAVを対象に投与することを含み、
対象におけるイソロイシンに対するロイシンおよび/またはロイシンに対するバリンの血清濃度比は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである、前記方法。
【請求項20】
カプシドタンパク質をさらに含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
対象がヒトである、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
配列番号11または12によって示される通りの配列を含む、単離された核酸。
【請求項23】
請求項22に記載の単離された核酸を含む、医薬組成物。
【請求項24】
請求項22に記載の単離された核酸構築物を含む、宿主細胞。
【請求項25】
細胞が、真核細胞、細菌細胞または昆虫細胞である、請求項24に記載の宿主細胞。
【請求項26】
AAVカプシドタンパク質をコードする単離された核酸をさらに含む、請求項25に記載の宿主細胞。
【請求項27】
カプシドタンパク質が、AAV9カプシドタンパク質である、請求項26に記載の宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる、「GENE THERAPY FOR BCAA MODULATION IN MAPLE SYRUP URINE DISEASE(MSUD)」と題する、2021年4月26日に出願された米国仮出願第63/179,676号の35U.S.C.119(e)の下での利益を主張する。
【0002】
EFS-WEBを介しテキストファイルとして提出された配列表への言及
本出願は、EFS-webを介しASCIIフォーマットで提出された配列表を含有し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2022年4月25日に作成されたASCIIファイルの名前はU012070161WO00-SEQ-SXTであり、サイズは79,118バイトである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
メープルシロップ尿症(MSUD)は、分岐鎖アミノ酸(BCAA;ロイシン、イソロイシン、およびバリン)およびそれらのケト酸誘導体の分解に影響を及ぼす希少遺伝性疾病である。これは、分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体(BCKDHA、BCKDHB、およびDBT)のサブユニットをコードする3つの遺伝子のうちの1つにおける二対立遺伝子(biallelic)変異によって引き起こされる。重度の(すなわち、古典型(classical))MSUDは、処置しなければ致死的である。食事性BCAA制限は、処置の中心であるが、実施が困難であって、不完全な有効性を有し、偶発的かつ生命を脅かす脳症発作に対して保護することができない。肝臓移植は、食事療法の有効な代替法であるが、手術および長期免疫抑制のリスクを必然的に伴う。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
いくつかの側面では、本開示は、(a)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-αサブユニットである、機能性(functional)BCKDHAタンパク質;および/または(b)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-βサブユニットである、機能性BCKDHBタンパク質;の発現を、対象において促進するための方法であって、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含むrAAVを対象に投与することを含み、対象は、メープルシロップ尿症(MSUD)に関連する機能喪失変異を有する少なくとも1つの内因性BCKDHAおよび/またはBCKDHB対立遺伝子(allele)を含み、対象におけるロイシン、イソロイシンおよび/またはバリンの血清BCAA濃度は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである、前記方法に関する。
【0005】
いくつかの側面では、本開示は、(a)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-αサブユニットである、機能性BCKDHAタンパク質;および/または(b)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-βサブユニットである、機能性BCKDHBタンパク質;の発現を、対象において促進するための方法であって、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含むrAAVを対象に投与することを含み、対象は、メープルシロップ尿症(MSUD)に関連する機能喪失変異を有する少なくとも1つの内因性BCKDHAおよび/またはBCKDHB対立遺伝子を含み、対象におけるイソロイシンに対するロイシンおよび/またはロイシンに対するバリンの血清濃度比は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである、前記方法に関する。
【0006】
いくつかの側面では、本開示は、導入遺伝子を、それを必要とする対象に送達する方法であって、導入遺伝子は、BCKDHAおよび/またはBCKDHBを含み、対象の肝臓および/または骨格筋において導入遺伝子を発現するように操作された核酸を含むrAAVを対象に投与することによって、導入遺伝子の発現が、対象におけるBCAA比血清レベルを正常化させる、前記方法に関する。いくつかの態様では、正常化された血清レベルが、(a)イソロイシンに対するロイシンが、モルに対し(to mol)約1.4~1.7モル(mol/mol);および/または(b)ロイシンに対するバリンが、約1.3~1.6mol/molの範囲である。
【0007】
いくつかの側面では、導入遺伝子を、それを必要とする対象に送達する方法であって、導入遺伝子は、BCKDHAおよび/またはBCKDHBをコードし、対象の肝臓および/または骨格筋において導入遺伝子を発現するように操作された核酸を含むrAAVを対象に投与することによって、導入遺伝子の発現が、対象のロイシン、イソロイシン、および/またはバリン血清レベルを正常化させる、前記方法に関する。いくつかの態様では、正常化された血清レベルは、(a)ロイシンが約80~200マイクロモル/リットル(μmol/L);(b)イソロイシンが約40~160μmol/L;および/または(c)バリンが140~300μmol/Lの範囲である。
【0008】
いくつかの態様では、本開示の方法のrAAVは、カプシドタンパク質をさらに含む。
【0009】
いくつかの態様では、導入遺伝子が発現され、発現は投与後少なくとも8週間持続する。
【0010】
いくつかの態様では、投与は全身注射によるものである。いくつかの態様では、全身注射は静脈内注射である。
【0011】
いくつかの態様では、カプシドはAAV9カプシドである。
【0012】
いくつかの態様では、核酸が、コドン最適化(codon-optimized)ヒトBCKDHA遺伝子(opti-BCKDHA)、opti-BCKDHB、コドン最適化ウシ(cattle)BCKDHA遺伝子(opti-cBCKDHA)、opti-cBCKDHB、またはそれらの組合せを発現するように操作されている。
【0013】
いくつかの態様では、核酸は、配列番号1~8、11および12のいずれか1つに示される配列を含む。
【0014】
いくつかの態様では、核酸は1つ以上の逆位末端反復(ITR)を含み、各ITRはAAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITRおよびAAV6 ITRからなる群より選択される。いくつかの態様では、ITRは、デルタITR(ΔITR)である。
【0015】
いくつかの態様では、アロイソロイシンの血清濃度が(例として、導入遺伝子または導入遺伝子をコードするrAAVの投与前の対象の血清濃度に対して)減少している。
【0016】
いくつかの側面では、本開示は、メープルシロップ尿症(MSUD)を有する対象を処置する方法であって、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含むrAAVを対象に投与することを含み、対象におけるロイシン、イソロイシンおよび/またはバリンの血清BCAA濃度は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである、前記方法に関する。
【0017】
いくつかの側面では、本開示は、メープルシロップ尿症(MSUD)を有する対象を処置する方法であって、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含むrAAVを対象に投与することを含み、対象におけるイソロイシンに対するロイシンおよび/またはロイシンに対するバリンの血清濃度比は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである、前記方法に関する。
【0018】
いくつかの態様では、本開示の方法のrAAVは、カプシドタンパク質をさらに含む。
【0019】
いくつかの態様では、本開示は、本開示のrAAVを含む、医薬組成物に関する。いくつかの態様では、本開示は、配列番号11または12によって示される配列を含む、単離された核酸に関する。いくつかの態様では、本開示は、本開示の単離された核酸構築物を含む、宿主細胞に関する。いくつかの態様では、宿主細胞は、真核細胞、細菌細胞または昆虫細胞である。
【0020】
いくつかの態様では、宿主細胞は、AAVカプシドタンパク質をコードする単離された核酸をさらに含む。いくつかの態様では、カプシドタンパク質はAAV9カプシドタンパク質である。
【0021】
いくつかの態様では、対象はヒトである。
【0022】
これらおよび他の側面および態様は、本明細書においてより詳細に説明される。本開示のいくつかの例示的な態様の説明は、例示のみを目的として提供されており、限定することを意味するものではない。追加の組成物および方法も本開示に含まれる。
【0023】
上記の概要は、本明細書において開示される技術の態様、利点、特徴、および使用のいくつかを非限定的に説明することを意味する。本明細書において開示される技術の他の態様、利点、特徴、および使用は、詳細な説明、図面、例、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A-1C】
図1A~1Cは、BCKDHAを発現するAAV構築物およびHEK293T細胞におけるそれらの発現を示す。
図1A:ヒトおよびウシ(bovine)BCKDHAタンパク質のアミノ酸配列アラインメント。矢印は、それぞれウシモデルおよびメノナイト(Mennonite)患者における変異を示す。下線は、BCKDHAタンパク質のシグナルペプチドを強調している。
図1B:同じコドン最適化ヒトBCKDHA相補的DNA(cDNA)を一本鎖および自己相補的形態でそれぞれ発現する2つの構築物を示す概略図である。
図1C:HEK293T細胞における内因性およびAAVにより生じたBCKDHAタンパク質を示すウエスタンブロット。
【0025】
【
図2A-2B】
図2A~2Bは、BCKDHAおよびBCKDHBを発現するAAV構築物を示す。
図2A:同じコドン最適化ヒトBCKDHB cDNAを一本鎖および自己相補的形態でそれぞれ発現する2つの構築物を示す概略図。
図2B:BCKDHA-BCKDHB cDNAを一本鎖形態で同時に発現する2つの構築物を示す概略図。上のパネルは、2つの遺伝子カセットを連結するためにT2A配列を使用している。下のパネルは、2つの遺伝子の発現を駆動するために1つの共通エンハンサを共有する双方向性プロモータを使用している。
【0026】
【
図3A-3B】
図3A~3Bは、HEK293T細胞におけるAAV構築物の発現および活性試験を示す。
図3A:野生型(WT)およびBCKDHAノックアウト(KO)HEK293T細胞における、内因性のおよびAAV構築物により発現された、BCKDHAおよびBCKDHBタンパク質を示すウエスタンブロット。BCKDHBと共発現されたまたは単独の、BCKDHAベクターが示されている。BCKDHBは、共発現された場合、BCKDHAを安定化させることができた。
図3B:BCKDHAおよび/またはBCKDHBタンパク質を発現する異なるAAV構築物でトランスフェクトしたWTおよびBCKDHA KO HEK293T細胞のBCKDC酵素活性。BCKDHAおよびBCKDHBがBCKDHA KO HEK293T細胞で共発現された場合、BCKDC酵素活性をより効率的に回復させることができた。
【0027】
【
図4A-4F】
図4A~4Fは、BCKDHAを発現するAAV構築物のin vivo安全性試験を示す。
図4A:WTマウスにおけるAAVベクター送達のin vivo安全性および効率試験のスキーム。
図4B:BCKDHAを発現するAAVベクターの注射用量。
図4C:異なる用量の注射を用いた雄性マウスの体重曲線。
図4D:異なる用量の注射を用いた雌性マウスの体重曲線。
図4E:異なる用量の注射を用いたマウスのALT試験。
図4F:異なる用量の注射を用いたマウスのAST試験。
【0028】
【
図5A-5C】
図5A~5Cは、単一遺伝子ベクターの安全性試験を示す。
図5Aは、WTマウスの新生仔期における単一遺伝子ベクター注射の安全性を調べるワークフローを示す。
図5Bは、注射後4週の処置マウスのALTおよびASTを示す。
図5Cは、ベクター処置後のマウスの体重変化を示す。WPI:注射後週(Week-post-injection)。ssA-L:一本鎖BCKDHAベクター-低用量。scA-L:自己相補的BCKDHAベクター-低用量。scA-H:自己相補的BCKDHAベクター-高用量。
【0029】
【
図6A-6F】
図6A~6Fは、バイナリー(binary)ベクターの安全性試験を示す。
図6Aは、WTマウスの新生仔期におけるバイナリーベクター注射の安全性を調べるワークフローを示す。
図6Bは、T2Aバイナリーベクター処置マウスのALTおよび体重変化を示す。
図6Cは、双方向性バイナリーベクター処置マウスのALTおよび体重変化を示す。
図6Dは、WTマウスの若齢成体(young adult)期におけるバイナリーベクター注射の安全性を調べるワークフローを示す。
図6Eは、T2Aバイナリーベクター処置マウスのALTおよび体重変化を示す。
図6Fは、双方向性バイナリーベクター処置マウスのALTおよび体重変化を示す。WPI:注射後週。
【0030】
【
図7A-7C】
図7A~7Cは、バイナリーベクターで処置したWTマウスにおける血清BCAA濃度および比を示す。
図7Aは、T2Aバイナリーベクターで処置したWTマウスにおける血清BCAA濃度を示す。
図7Bは、双方向性バイナリーベクターで処置したWTマウスにおける血清BCAA濃度を示す。
図7Cは、T2Aまたは双方向性バイナリーベクターで処置したWTマウスにおける血清Leu/IsoおよびVal/Leu比を示す。BCAA:分岐鎖アミノ酸。
【0031】
【
図8A-8B】
図8A~8Bは、ウシ(cattle)BCKDHAおよびBCKDHBを発現するAAV構築物を示す。
図8Aは、ウシBCKDHA-BCKDHB cDNAを一本鎖形態で同時に発現する2つの構築物を示す概略図を示す。上の構築物は、2つの遺伝子カセットを連結するためにT2A配列を用いている(配列番号12)。下の構築物は、2つの遺伝子の発現を駆動するために1つの共通エンハンサを共有する双方向性プロモータを使用している(配列番号11)。
図8Bは、異なる種からの細胞株における、内因性のおよびAAV構築物により発現されたBCKDHAおよびBCKDHBタンパク質を示すウエスタンブロットを示す。hA:ヒトBCKDHA。hB:ヒトBCKDHB。cA:ウシBCKDHA。cB:ウシBCKDHB。
【0032】
【
図9A-9B】
図9A~9Bは、ウシ(cattle)BCKDHAおよびBCKDHBのrAAV構築物の2つの態様を示す概略図を示す。
図9A:pAAV-Bi-cBCKDHA-cBCKDHB(例として、配列番号11)。
図9B:pAAV-cBCKDHB-2A-cBCKDHA(例として、配列番号12)。
【0033】
【
図10A-10C】
図10A~10Cは、Bckdha KOマウスモデルの特徴解析(characterization)を示す。
図10Aは、同腹仔対照と比較したBckdha KOマウスモデルの生存曲線を示す。
図10Bは、示された年齢での、体重の定量化および体サイズの代表的な写真を示す。
図10Cは、P2仔マウスの血清中でのロイシン、イソロイシン、バリンおよび疾患マーカーであるアロイソロイシンのレベルを示す。
【0034】
【
図11A-11D】
図11A~11Dは、P0のBckdha KOマウスにおけるrAAV9ベクターによる全身処置後の治療的利益を示す。
図11Aは、Bckdha KOマウスにおけるrAAV9ベクターによる新生仔処置のワークフローおよび用量レジメンを示す。
図11Bは、PBSまたは異なる用量のrAAV9ベクターで処置したBckdha KOマウスの生存曲線を示す。
図11Cは、PBSを注射したWT対照マウスおよび異なる用量のrAAV9ベクターで処置したBckdha KOマウスの体重成長を示す。
図11Dは、PBSを注射したWT対照マウスまたは異なる用量のrAAV9ベクターで処置したBckdha KOマウスの血清中でのロイシン、イソロイシン、バリンおよび疾患マーカーであるアロイソロイシンのレベルを示す。scA:rAAV9sc-hBCKDHA。A-Bip-B:rAAV9-hBCKDHA-Bip-hBCKDHB。Bip:双方向性プロモータ。
【0035】
【
図12A-12D】
図12A~12Dは、処置されたBckdha KOマウスにおける高タンパク質食餌負荷を示す。
図12Aは、高タンパク質食餌負荷アッセイのワークフローを示す。負荷1日前(-1)に、タンパク質20%を含有する通常食餌を与えられた16週齢マウスから血清を採取した。タンパク質40%を含有する高タンパク質食餌に切り替えた後、同じマウスから血清を負荷1日後(+1)および7日後(+7)に採取した。
図12B~12Dは、WT対照マウスおよび異なる用量のrAAV9ベクターで処置したBckdha KOマウスにおける、高タンパク質食餌負荷前後の行動評価(
図12B)、ケージハング時間によって計測した運動機能(
図12C)、および分岐鎖アミノ酸の血清生化学(
図12D)を示す。scA:rAAV9sc-hBCKDHA。A-Bip-B:rAAV9-hBCKDHA-Bip-hBCKDHB。Bip:双方向性プロモータ。
【0036】
【
図13A-13C】
図13A~13Cは、処置されたBckdha KOマウスにおけるT2強調MRI分析を示す。
図13Aおよび13Bは、WT対照マウスおよびrAAV9ベクター(低用量:2.7×10
13GC/kg)で処置したBckdha KOマウスの、高タンパク質食餌負荷の前(
図13A)および後(
図13B)における代表的なT2強調MRI画像を示す。各列は、1つの代表的なマウスからの一連の冠状面画像を示す。2匹のマウスがscA処置KO/KO群で示されているが、これは浮腫および正常な脳がこの群で見られたためである。
図13Cは、異なる処置群においてT2強調MRIによって測定された脳浮腫の概要表を示す。scA:rAAV9sc-hBCKDHA。A-Bip-B:rAAV9-hBCKDHA-Bip-hBCKDHB。Bip:双方向性プロモータ。
【0037】
【
図14A-14C】
図14A~14Cは、デュアル遺伝子(dual-gene)ベクターがBckdhb KOマウスの生存および成長をレスキューする(rescue)ことを示す。
図14Aは、Bckdhb KOマウスにおけるrAAV9ベクターによる新生仔処置のワークフローおよび用量レジメンを示す。
図14Bは、PBSまたは異なる用量のrAAV9 A-Bip-Bベクターで処置したBckdhb KOマウスの生存曲線を示す。
図14Cは、WT対照マウスおよび中用量(8.7×10
13GC/kg)のrAAV9 A-Bip-Bベクターで処置したBckdhb KOマウスの体重成長を示す。scA:rAAV9sc-hBCKDHA。A-Bip-B:rAAV9-hBCKDHA-Bip-hBCKDHB。Bip:双方向性プロモータ。
【0038】
【
図15A-15C】
図15A~15Cは、仔ウシの四頭筋におけるAAVベクターゲノムおよび転写物の定量化を示す。未処置対照仔ウシおよび5.0×10
13GC/kgのrAAV9デュアル遺伝子ベクターで処置したBckdha欠損仔ウシの、示された年齢での筋生検におけるベクターゲノムコピー数(
図15A)、opt-cBCKDHA mRNAコピー数(
図15B)、および内因性ウシ(bovine)BCKDHA mRNAコピー数(
図15C)が示されている。ウシ(bovine)TATA結合タンパク質(Tbp)mRNAが正規化のための内因性標準として使用された。各ドットは技術的反復を表す。cBCKDHA:ウシ(cattle)BCKDHA
【0039】
【
図16A-16F】
図16A~16Fは、rAAV9デュアル遺伝子ベクターをBckdha欠損仔ウシに全身送達した後の有効性分析を示す。P2で5.0×10
13GC/kg用量のrAAV9デュアル遺伝子ベクターで処置したBckdha欠損仔ウシにおける、生存期間(
図16A)、体重成長(
図16B)、血漿ロイシン濃度(
図16C)、血漿分岐鎖アミノ酸濃度(
図16D)および血漿アロイソロイシン濃度(
図16E)、ならびに分岐鎖アミノ酸の血漿モル比(
図16F)。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
本開示では、rAAVを使用することにより、BCKDHAおよび/またはBCKDABを修飾(例として、上方制御、下方制御)することができ、および/または機能性タンパク質の発現を促進することができることが示されている。例えば、限定するものではないが、これは、少なくとも1つの内因性BCKDHAおよび/またはBCKDHB対立遺伝子に機能喪失変異を有する対象において目的となり得るが、ここで、対象におけるロイシン、イソロイシンおよび/またはバリンの血清BCAA濃度は異常であり、および/または、対象におけるイソロイシンに対するロイシンおよび/またはロイシンに対するバリンの血清濃度比は異常である。したがって、対象において、BCAA血清レベル、ならびに/または、イソロイシンに対するロイシンおよび/もしくはロイシンに対するバリンを修飾する方法が本明細書において提供される。
【0041】
したがって、本明細書においては、とりわけ、(a)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-αサブユニットである、機能性BCKDHAタンパク質;および/または(b)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-βサブユニットである、機能性BCKDHBタンパク質;の発現を、対象において促進するための方法であって、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含有して含むrAAVを対象に投与することを含み、対象は、メープルシロップ尿症(MSUD)に関連する機能喪失変異を有する少なくとも1つの内因性BCKDHAおよび/またはBCKDHB対立遺伝子を含み、対象におけるロイシン、イソロイシンおよび/またはバリンの血清BCAA濃度は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである、前記方法が提供される。
【0042】
いくつかの側面では、本開示は、(a) 分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-αサブユニットである、機能性BCKDHAタンパク質;および/または(b)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-βサブユニットである、機能性BCKDHBタンパク質;の発現を、対象において促進するための方法であって、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含有して含むrAAVを対象に投与することを含み、対象は、メープルシロップ尿症(MSUD)に関連する機能喪失変異を有する少なくとも1つの内因性BCKDHAおよび/またはBCKDHB対立遺伝子を含み、対象におけるイソロイシンに対するロイシンおよび/またはロイシンに対するバリンの血清濃度比は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである、前記方法に関する。
【0043】
いくつかの側面では、本開示は、導入遺伝子を、それを必要とする対象に送達する方法であって、導入遺伝子がBCKDHAおよび/またはBCKDHBを含み、対象の肝臓および/または骨格筋において導入遺伝子を発現するように操作された核酸を含有して含むrAAVを対象に投与することによって、導入遺伝子の発現が、対象におけるBCAA比血清レベルを正常化させる、前記方法に関する。
【0044】
いくつかの側面では、本開示は、BCKDHA二対立遺伝子変異によって引き起こされるメープルシロップ尿症(MSUD)のためのAAV媒介性(AAV-mediated)遺伝子置換療法に関する。いくつかの態様では、コドン最適化ヒトBCKDHA遺伝子(opti-BCKDHA)を発現するAAVベクターが提供されるが、その検証されたタンパク質発現は様々な細胞株で示されている(例として、例1)。いくつかの態様では、opti-BCKDHAカセットは、AAV9カプシドを含むrAAVの一部である。いくつかの態様では、rAAVは、全身注射によって送達され、高レベルのBCKDHA発現を示す組織である、肝臓および骨格筋を効率的に標的とする。いくつかの態様では、これらの既存の処置と比較して、BCKDHA遺伝子置換療法は、本明細書において開示される通りであり、MSUDを処置するためのより安全でより効率的な選択肢である。
【0045】
いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子はT-A塩基転換(transversion)を含み、tyr394をasnにする(TYR394ASN)。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、スプライス部位変異、ミスセンス変異、トランケーション(truncation)変異またはナンセンス変異を含む。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、同じ機能喪失変異を有する(ホモ接合状態)。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、異なる機能喪失変異を有する(複合ヘテロ接合状態)。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、8-bp欠失(887_894del)を含む。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、エクソン7に895G-A転移(transition)を含み、gly245のargへの(G245R)置換をもたらす。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、1253T-G塩基転換を含み、phe364のcysへの(F364C)置換をもたらす。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、CのTへの転移を含み、arg220のtrpへの(R220W)置換をもたらす。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、GのAへの転移を含み、gly204のserへの(G204S)置換をもたらす。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、CのGへの塩基転換を含み、thr265のargへの(T265R)置換をもたらす。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、BCKDHA遺伝子におけるCのGへの塩基転換を含み、cys219のtrpへの(C219W)置換をもたらす。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、1-bp欠失(117delC)を含み、わずか61残基のトランケート型(truncated)タンパク質をコードするフレームシフトをもたらす。
【0046】
いくつかの側面では、本開示は、BCKDHB二対立遺伝子変異によって引き起こされるMSUDのためのAAV媒介性遺伝子置換療法に関する。いくつかの態様では、コドン最適化ヒトBCKDHB遺伝子(opti-BCKDHB)を発現するAAVベクターが提供されるが、その検証されたタンパク質発現は、様々な細胞株で示されている(例として、例2)。いくつかの態様では、opti-BCKDHBカセットは、AAV9カプシドを含むrAAVにパッケージングされる。いくつかの態様では、rAAVは、全身注射によって送達され、高レベルのBCKDHB発現を示す組織である、肝臓および骨格筋を効率的に標的とする。いくつかの態様では、これらの既存の処置と比較して、BCKDHB遺伝子置換療法は、本明細書において開示される通りであり、MSUDを処置するためのより安全でより効率的な選択肢である。
【0047】
いくつかの態様では、内因性BCKDHB対立遺伝子は、スプライス部位変異、ミスセンス変異、トランケーション変異またはナンセンス変異を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子は、エクソン1中に11塩基対の欠失を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子は、エクソン5のグアニン(G)のシトシン(C)への変化を含み、残基183においてアルギニンのプロリンへの置換(R183P)をもたらす。いくつかの態様では、少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子は、Cのチミン(T)への転移を含み、残基156においてヒスチジンのチロシンへの置換(H156Y)をもたらす。いくつかの態様では、少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子は、TのGへの塩基転換を含み、残基69においてバリンのグリシンへの置換(V69G)をもたらす。いくつかの態様では、少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子は、エクソン10の欠失をもたらすイントロン9における4塩基対欠失、および、フレームシフトをもたらすエクソン10における8塩基対挿入を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子は、エクソン10における8塩基対挿入を含む。
【0048】
いくつかの側面では、本開示は、BCKDHAおよび/またはBCKDHB二対立遺伝子変異によって引き起こされるMSUDのためのAAV媒介性遺伝子置換療法に関する。いくつかの態様では、コドン最適化ヒトBCKDHA遺伝子(opti-BCKDHA)および/またはコドン最適化ヒトBCKDHB遺伝子(opti-BCKDHB)を発現するAAVベクターが提供されるが、その検証されたタンパク質発現は、様々な細胞株で示されている(例として、例2)。いくつかの態様では、opti-BCKDHAおよびopti-BCKDHBカセットは、AAV9カプシドを含むrAAVにパッケージングされる。いくつかの態様では、rAAVは、全身注射によって送達され、高レベルのBCKDHAおよび/またはBCKDHB発現を示す組織である、肝臓および骨格筋を効率的に標的とする。いくつかの態様では、これらの既存の処置と比較して、BCKDHAおよびBCKDHB遺伝子置換療法は、本明細書において開示される通り、MSUDを処置するためのより安全で効率的な選択肢である。
【0049】
単離された核酸
いくつかの側面では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された少なくとも1つの導入遺伝子を含む核酸であって、導入遺伝子がBCKDHA(分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼE1、αポリペプチド;遺伝子ID:593)をコードする、前記核酸を提供する。
【0050】
BCKDHA遺伝子は、イソロイシン、ロイシン、およびバリンに由来する分岐鎖α-ケト酸の酸化的脱炭酸を触媒するミトコンドリア内酵素複合体である、分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体(BCKD;EC 1.2.4.4)のE1-αサブユニットをコードする。この反応は、分岐鎖アミノ酸の異化における第2の主要な工程である。BCKD複合体は、3つの触媒成分:ヘテロ四量体(α2-β2)分岐鎖α-ケト酸脱炭酸酵素(E1)、ホモ24量体ジヒドロリポイルトランスアシラーゼ(E2;248610)およびホモ二量体ジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ(E3;238331)からなる。E1は、チアミンピロリン酸(TPP)依存性酵素である。この反応は不可逆的であり、BCAA酸化における最初の関与工程を構成する。BCKDHB遺伝子(248611)は、E1のベータサブユニットをコードする。複合体はまた、キナーゼおよびホスホリラーゼである、2つの調節(regulatory)酵素を含有する。
【0051】
BCKDHA遺伝子は、NM_000709.4またはNM_001164783.1のヌクレオチド配列を有するmRNAをコードし得る。BCKDHA遺伝子は、アミノ酸配列NP_000700.1またはNP_001158255.1を有するタンパク質をコードし得る。いくつかの態様では、opti-BCKDHA導入遺伝子は、配列番号1による配列を含む。いくつかの態様では、opti-BCKDHA導入遺伝子は、配列番号1と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む。用語「同一性パーセント」、「配列同一性」、「%の同一性」、「配列同一性%」および「%同一である」は、本明細書において交換可能に使用され得る通り、2つの配列(例として、核酸またはアミノ酸)間の類似性の定量的測定をいう。ヒトと他の種との間のゲノムDNA配列、イントロンおよびエクソン配列、ならびにアミノ酸配列の同一性パーセントは、種の種類によって異なり、各カテゴリーの全ての種のうち、ヒトと最も高い同一性パーセントを有するのはチンパンジーである。同一性パーセントは、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77,1993のように改変された、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68,1990のアルゴリズムを使用して決定され得る。そのようなアルゴリズムは、Altschul,et al.J.Mol.Biol.215:403-10,1990のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLASTタンパク質検索は、目的のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長(word length)=3で行われ得る。2つの配列間にギャップが存在する場合、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402,1997に記載されているように、Gapped BLASTを利用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例として、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータが使用され得る。同一性パーセントまたはその範囲(例として、少なくとも、より多く等)が記載されている場合、別段特定されない限り、端点(endopoint)は包括的(inclusive)であるものとし、範囲(例として、少なくとも70%の同一性)は、引用された範囲内の全ての範囲(例として、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性)およびその全ての増分(increment)(例として、10分の1パーセント(すなわち、0.1%)、100分の1パーセント(すなわち、0.01%)等)を包含するものとする。いくつかの態様では、核酸は、BCKDHAをコードする少なくとも1つの導入遺伝子を含み、ここでBCKDHAはヒトBCKDHAである。いくつかの態様では、核酸は、BCKDHAをコードする少なくとも1つの導入遺伝子を含み、ここでBCKDHAはウシ(cattle)(例として、ウシ(bovine))BCKDHAである。
【0052】
いくつかの側面では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された少なくとも1つの導入遺伝子を含む核酸であって、導入遺伝子がBCKDHB(分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼE1、βポリペプチド;遺伝子ID:594)をコードする、前記核酸を提供する。
【0053】
BCKDHB遺伝子は、分岐鎖α-ケト酸BCAAのE1-βサブユニットをコードする。BCKDHB遺伝子は、E1のベータサブユニットをコードする。
【0054】
BCKDHB遺伝子は、NM_000056.4、NM_001318975.1、またはNM_183050.4のヌクレオチド配列を有するmRNAをコードし得る。BCKDHB遺伝子は、アミノ酸配列NP_000047.1、NP_898871.1、またはNP_001305904.1を有するタンパク質をコードし得る。いくつかの態様では、opti-BCKDHB導入遺伝子は、配列番号4による配列を含む。いくつかの態様では、opti-BCKDHB導入遺伝子は、配列番号4と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む。いくつかの態様では、核酸は、BCKDHBをコードする少なくとも1つの導入遺伝子を含み、ここでBCKDHBはヒトBCKDHBである。いくつかの態様では、核酸は、BCKDHBをコードする少なくとも1つの導入遺伝子を含み、BCKDHBはウシ(cattle)(例として、ウシ(bovine))BCKDHBである。
【0055】
タンパク質をコードする導入遺伝子は、一般に、プロモータに作動可能に連結されている。本明細書において使用される通り、「作動可能に連結された」配列は、目的の遺伝子(例として、導入遺伝子)に隣接する発現制御配列、および目的の遺伝子(例として、導入遺伝子)を制御するためにトランスまたはある距離で作用する発現制御配列の両方を包含する。いくつかの態様では、プロモータは、構成的プロモータ、例えば、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモータ、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)長末端反復(LTR)プロモータ(任意に、RSVエンハンサを有する)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ(任意に、CMVエンハンサを有する)[例として、Boshart et al.,Cell,41:521-530(1985)を参照されたい]、サル空胞化ウイルス40(SV40)プロモータ、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモータ、β-アクチンプロモータ、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモータ、およびEF1αプロモータ[Invitrogen]である。いくつかの態様では、プロモータは、強化型(enhanced)ニワトリβ-アクチンプロモータである。いくつかの態様では、プロモータは、U6プロモータである。
【0056】
いくつかの態様では、プロモータは誘導性プロモータである。誘導性プロモータは、遺伝子発現の調節を可能にし、外因的に供給される化合物、温度などの環境因子、または特定の生理学的状態、例として、急性期、細胞の特定の分化状態、の存在によって、あるいは、複製細胞のみにおいて、調節され得る。誘導性プロモータおよび誘導系(system)は、限定するものではないが、Invitrogen、ClontechおよびAriadを包含する様々な商業的供給源から入手可能である。多くの他の系が記載されており、当業者によって容易に選択され得る。外因的に供給されるプロモータによって調節される誘導性プロモータの例は、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモータ、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモータ、T7ポリメラーゼプロモータ系(国際公開第98/10088号);エクジソン昆虫プロモータ(No et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:3346-3351(1996))、テトラサイクリン抑制系(Gossen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5547-5551(1992))、テトラサイクリン誘導系(Gossen et al.,Science,268:1766-1769(1995)、Harvey et al.,Curr.Opin.Chem.Biol.,2:512-518(1998)も参照されたい)、RU486誘導系(Wang et al.,Nat.Biotech.,15:239-243(1997)およびWang et al.,Gene Ther.,4:432-441(1997))およびラパマイシン誘導系(Magari et al.,J.Clin.Invest.,100:2865-2872(1997))を包含する。この文脈において有用であり得る、さらに他の種類の誘導性プロモータは、特定の生理学的状態、例として、温度、急性期、細胞の特定の分化状態によって、または複製細胞のみにおいて調節されるものである。
【0057】
別の態様では、導入遺伝子(例として、BCKDHA、BCKDHB)の天然(native)プロモータが使用されるであろう。導入遺伝子の発現が天然の発現を模倣すべきであることが望ましい場合、天然のプロモータが好ましいことがある。天然プロモータは、導入遺伝子の発現が時間的もしくは発生的に、または組織特異的に、または特異的な転写刺激に応答して調節されなければならない場合に使用され得る。さらなる態様では、エンハンサエレメント、ポリアデニル化部位またはコザックコンセンサス配列などの、他の天然の発現制御エレメントもまた、天然の発現を模倣するために使用され得る。
【0058】
いくつかの態様では、プロモータは、ニューロン組織における導入遺伝子発現を駆動する。いくつかの態様では、本開示は、導入遺伝子に作動可能に連結された組織特異的プロモータを作動可能に含む核酸を提供する。本明細書において使用される通り、「組織特異的プロモータ」は、他の細胞型と比較して特定の細胞型における遺伝子発現を優先的に調節する(例として、駆動または上方制御する)プロモータをいう。細胞型特異的プロモータは、肝臓細胞(例として、肝細胞)、心臓細胞、筋肉細胞等などの任意の細胞型に特異的であり得る。
【0059】
組織特異的プロモータの更なる例は、肝臓特異的チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモータ、インスリンプロモータ、クレアチンキナーゼ(MCK)プロモータ、α-ミオシン重鎖(a-MHC)プロモータ、または心筋トロポニンT(cTnT)プロモータを包含するが、これらに限定されない。他の例示的なプロモータは、とりわけ、当業者に明らかである、ベータアクチンプロモータ、B型肝炎ウイルスコアプロモータ、Sandig et al.,Gene Ther.,3:1002-9(1996);アルファ-フェトタンパク質(AFP)プロモータ、Arbuthnot et al.,Hum.Gene Ther.,7:1503-14(1996))、骨オステオカルシンプロモータ(Stein et al.,Mol.Biol.Rep.,24:185-96(1997));骨シアロタンパク質プロモータ(Chen et al.,J.Bone Miner.Res.,11:654-64(1996))、CD2プロモータ(Hansal et al.,J.Immunol.,161:1063-8(1998)、および免疫グロブリン重鎖プロモータを包含する。
【0060】
いくつかの側面において、本開示は、キメライントロンを介してプロモータに作動可能に連結された導入遺伝子(例として、BCKDHA、BCKDHB)を含む、単離された核酸に関する。いくつかの態様では、キメライントロンは、ニワトリβ-アクチン遺伝子からの核酸配列、例えばニワトリβ-アクチン遺伝子のイントロン1からの非コードイントロン配列を含む。いくつかの態様では、ニワトリβ-アクチン遺伝子のイントロン配列は、約50~約150ヌクレオチド長(例として、50~150ヌクレオチドの任意の長さ(包括的))の範囲である。いくつかの態様では、ニワトリベータ-アクチン遺伝子のイントロン配列は、約100~120(例として、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、または120)ヌクレオチド長の範囲である。いくつかの態様では、キメライントロンは、1つ以上の非翻訳配列(例として、プロモータ配列とキメライントロン配列との間に位置する非翻訳配列および/またはキメライントロンと導入遺伝子配列の第1コドンとの間に位置する非翻訳配列)に隣接している。いくつかの態様では、1つ以上の非翻訳配列のそれぞれは、ウサギβグロブリン遺伝子(例として、ウサギβ-グロブリンのエクソン1、エクソン2等からの非翻訳配列)からの非コード配列である。
【0061】
組換えAAV
本開示の単離された核酸は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであり得る。いくつかの態様では、本開示によって記載される単離された核酸は、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)またはそのバリアントを含む領域(例として、第1の領域)と、BCKDHAまたはBCKDHABをコードする第1の導入遺伝子を含む第2の領域とを含む。いくつかの態様では、第2の領域は、BCKDHAをコードする第1の導入遺伝子を含む。いくつかの態様では、第2の領域は、BCKDHBをコードする第1の導入遺伝子を含む。いくつかの態様では、単離された核酸は、第1の導入遺伝子と異なっていても異なっていなくてもよい、第2の導入遺伝子を含む第3の領域をさらに含む。いくつかの態様では、第2の領域は、BCKDHAをコードする第1の導入遺伝子を含み、第3の領域は、第2の目的の遺伝子(例として、導入遺伝子)をコードする第2の導入遺伝子を含む。いくつかの態様では、第2の領域は、BCKDHBをコードする第1の導入遺伝子を含み、第3の領域は、第2の目的の遺伝子(例として、導入遺伝子)をコードする第2の導入遺伝子を含む。いくつかの態様では、第2の領域および第3の領域はそれぞれ、BCKDHAをコードする導入遺伝子を含む。いくつかの態様では、第2の領域および第3の領域はそれぞれ、BCKDHBをコードする導入遺伝子を含む。いくつかの態様では、第2の領域は、BCKDHAをコードする第1の導入遺伝子を含み、第3の領域は、BCKDHBをコードする第2の導入遺伝子を含む。いくつかの態様では、第2の領域は、BCKDHBをコードする第1の導入遺伝子を含み、第3の領域は、BCKDHAをコードする第2の導入遺伝子を含む。単離された核酸(例として、rAAVベクター)は、カプシドタンパク質にパッケージングされ、対象に投与され、および/または選択された標的細胞に送達されてもよい。導入遺伝子はまた、本開示の他の箇所に記載される通り、例えばタンパク質および/または発現制御配列(例として、ポリAテール)をコードする領域を含み得る。
【0062】
本開示は、単一のシス作用性(cis-acting)WT ITRを含むベクターを提供する。いくつかの態様では、ITRは5'ITRである。いくつかの態様では、ITRは3'ITRである。一般に、ITR配列は約145bp長である。好ましくは、ITR(複数可)をコードする配列の実質的に全体が分子中で使用されるが、これらの配列のある程度の軽微な改変は許容される。いくつかの態様では、ITRは、その末端分割部位(TR)で変異していてもよく、これは、TRが変異しているベクター末端での複製を阻害し、自己相補的AAVの形成をもたらす。本開示で使用されるそのような分子の別の例は、導入遺伝子を含有する「シス作用性」プラスミドであり、選択された導入遺伝子配列および関連する調節エレメントは、5'AAV ITR配列および3'ヘアピン形成RNA配列に隣接している。アデノ随伴ウイルスITR配列は、現在同定されている哺乳動物AAV型を包含する、任意の既知のAAVから得られてもよい。いくつかの態様では、ITR配列は、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAV9、AAV10、および/またはAAVrh10 ITR配列である。
【0063】
いくつかの態様では、rAAVベクター(例として、pJW1-pAAV.pCB-CBA-opt-hBCKDHA-1)は、配列番号2による核酸配列、またはその一部を含む。いくつかの態様では、rAAVベクターは、配列番号2と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む。
【0064】
いくつかの態様では、rAAVベクターは、配列番号3による核酸配列またはその一部を含む自己相補的ベクター(例として、pJW2-pAAVsc.CB6-opt-hBCKDHA-1)である。いくつかの態様では、rAAVベクターは、配列番号3と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む。
【0065】
いくつかの態様では、rAAVベクター(例として、pJW152-pAAV.pCB-CBA-opt-hBCKDHB)は、配列番号5による核酸配列、またはその一部を含む。いくつかの態様では、rAAVベクターは、配列番号5と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む。
【0066】
いくつかの態様では、rAAVベクターは、配列番号6による核酸配列またはその一部を含む自己相補的ベクター(例として、pJW153-pAAVsc.CB6-opt-hBCKDHB)である。いくつかの態様では、rAAVベクターは、配列番号6と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む。
【0067】
いくつかの態様では、rAAVベクター(例として、pJW154-pAAV-pCB-opt-BCKDHB-T2A-opt-BCKDHA-1)は、配列番号7による核酸配列、またはその一部を含む。いくつかの態様では、rAAVベクターは、配列番号7と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む。
【0068】
いくつかの態様では、rAAVベクターは、配列番号8による核酸配列またはその一部を含む自己相補的ベクター(例として、pJW162-SURE\Cell-pAAV-SV40-opti-BCKDHA-BiCB6-opti-BCKDHB-RBG)である。いくつかの態様では、rAAVベクターは、配列番号8と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む。
【0069】
いくつかの態様では、rAAVベクター(例として、pAAV-Bi-cBCKDHA-cBCKDHB)は、配列番号11による核酸配列、またはその一部を含む。いくつかの態様では、rAAVベクターは、配列番号11と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む。
【0070】
いくつかの態様では、rAAVベクター(例として、pAAV-cBCKDHB-2A-cBCKDHA)は、配列番号12による核酸配列、またはその一部を含む。いくつかの態様では、rAAVベクターは、配列番号12と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む。
【0071】
本開示の単離された核酸および/またはrAAVは、標的組織(例として、肝臓または骨格筋)に対する単離された核酸および/またはrAAVの標的化を増強するように改変および/または選択されてもよい。改変および/または選択の非限定的な方法は、AAVカプシド血清型(例として、AAV9)、組織特異的プロモータ、および/または標的化ペプチドを包含する。いくつかの態様では、本開示の単離された核酸およびrAAVは、肝臓または骨格筋組織に対する標的化が増強されたAAVカプシド血清型を含む(例として、AAV9)。いくつかの態様では、本開示の単離された核酸およびrAAVは、組織特異的プロモータを含む。いくつかの態様では、本開示の単離された核酸およびrAAVは、肝臓または骨格筋組織および組織特異的プロモータに対する標的化が増強されたAAVカプシド血清型を含む。
【0072】
いくつかの側面では、本開示は、単離されたAAVを提供する。AAVに関して本明細書において使用されている通り、「単離された」という用語は、人工的に得られたまたは産生されたAAVをいう。単離されたAAVは、組換え法を使用して産生され得る。そのようなAAVは、本明細書において「組換えAAV」または「rAAV」と称される。組換えAAVは、好ましくは、rAAVの導入遺伝子が1つ以上の所定の組織に特異的に送達されるように、組織特異的標的化能力を有する。AAVカプシドは、これらの組織特異的標的化能力を決定するのに重要なエレメントである。したがって、標的化される組織に適したカプシドを有するrAAVが選択され得る。いくつかの態様では、rAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAV9、AAV10もしくはAAVrh10カプシドタンパク質、またはそれらに対して実質的な相同性を有するタンパク質を含む。いくつかの態様では、rAAVはAAV9カプシドタンパク質を含む。
【0073】
いくつかの態様では、本開示のrAAVはシュードタイプrAAVである。シュードタイピングは、外来ウイルスエンベロープタンパク質と組み合わせてウイルスまたはウイルスベクターを産生するプロセスである。その結果が、シュードタイプウイルス粒子である。この方法では、外来ウイルスエンベロープタンパク質を使用して、宿主指向性またはウイルス粒子の安定性の増加/減少を変化させることができる。いくつかの側面では、シュードタイプrAAVは、2つ以上の異なるAAVからの核酸を含み、1つのAAVからの核酸はカプシドタンパク質をコードし、少なくとも1つの他のAAVの核酸は他のウイルスタンパク質および/またはウイルスゲノムをコードする。いくつかの態様では、シュードタイプrAAVは、1つのAAV血清型の逆位末端反復(ITR)および異なるAAV血清型のカプシドタンパク質を含むAAVをいう。例えば、Yのタンパク質でカプシド化された血清型XのITRを含有するシュードタイプAAVベクターは、AAVX/Y(例として、AAV2/1は、AAV2のITRおよびAAV1のカプシドを有する)として指定される。いくつかの態様では、シュードタイプrAAVは、1つのAAV血清型からのカプシドタンパク質の組織特異的標的化能力を、別のAAV血清型からのウイルスDNAと組み合わせ、それによって標的組織への導入遺伝子の標的化送達を可能にするのに有用であり得る。
【0074】
所望のカプシドタンパク質を有するrAAVを得るための方法は、当技術分野で周知である。(例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2003/0138772号明細書を参照されたい)。典型的には、方法は、AAVカプシドタンパク質またはその断片;機能性rep遺伝子;AAV逆位末端反復(ITR)および導入遺伝子から構成されるrAAVベクター;ならびにrAAVベクターのAAVカプシドタンパク質へのパッケージングを可能にするのに十分なヘルパー機能をコードする核酸配列を含有する宿主細胞を培養することを伴う。典型的には、カプシドタンパク質は、AAVのキャップ遺伝子によってコードされる構造タンパク質である。いくつかの態様では、AAVは、3つのカプシドタンパク質である、ビリオンタンパク質1~3(VP1、VP2およびVP3と名付けられている)を含み、それらは全て、選択的(alternative)スプライシングを介して単一のcap遺伝子から転写される。いくつかの態様では、VP1、VP2およびVP3の分子量はそれぞれ、約87kDa、約72kDaおよび約62kDaである。いくつかの態様では、翻訳時に、カプシドタンパク質は、ウイルスゲノムの周りに球状の60量体タンパク質殻を形成する。いくつかの態様では、カプシドタンパク質は、ウイルスゲノムを保護し、ゲノムを送達し、および/または宿主細胞と相互作用する。いくつかの側面では、カプシドタンパク質は、ウイルスゲノムを組織特異的に宿主に送達する。
【0075】
いくつかの態様では、AAVカプシドタンパク質は、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAVrh8 AAV9、AAV10およびAAVrh10からなる群から選択されるAAV血清型のものである。いくつかの態様では、AAVカプシドタンパク質は、AAVrh8またはAAVrh10血清型のものである。いくつかの態様では、AAVカプシドタンパク質は、AAVrh8血清型のものである。
【0076】
いくつかの態様では、rAAVベクターをAAVカプシドにパッケージングするために宿主細胞内で培養される成分は、宿主細胞にトランスで提供されてもよい。代替的に、必要な成分(例として、rAAVベクター、rep配列、cap配列、および/またはヘルパー機能)のいずれか1つ以上は、当業者に既知の方法を使用して、必要な成分の1つ以上を含有するように操作された安定(stable)宿主細胞によって提供されることもある。最も適切には、そのような安定宿主細胞は、誘導性プロモータの制御下で必要な成分を含有するであろう。しかしながら、必要な成分は、構成的プロモータの制御下にあってもよい。適切な誘導性プロモータおよび構成的プロモータの例は、導入遺伝子と共に使用するのに適切な調節エレメントの考察において、本明細書に提供される。さらに別の代替では、選択された安定宿主細胞は、構成的プロモータの制御下にある選択された成分および1つ以上の誘導性プロモータの制御下にある他の選択された成分を含有してもよい。例えば、293細胞(構成的プロモータの制御下でE1ヘルパー機能を含有する)に由来するが、誘導性プロモータの制御下でrepおよび/またはcapタンパク質を含有する、安定宿主細胞が作製され得る。さらに他の安定宿主細胞は、当業者によって作製され得る。
【0077】
いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号1~8または11~12からなる群から選択されるコード配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号1~8または11~12と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号1からなる群から選択されるコード配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号1と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号2からなる群から選択されるコード配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号2と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号3からなる群から選択されるコード配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号3と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号4からなる群から選択されるコード配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号4と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号5からなる群から選択されるコード配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号5と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号6からなる群から選択されるコード配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号6と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号7からなる群から選択されるコード配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号7と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号8からなる群から選択されるコード配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号8と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。
【0078】
いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号11からなる群から選択されるコード配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号11と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。
【0079】
いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号12からなる群から選択されるコード配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様では、本開示は、プロモータに作動可能に連結された配列番号12と少なくとも80%の同一性(例として、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性またはそれを超える)を有する配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。
【0080】
いくつかの態様では、本開示は、上記の宿主細胞を含む組成物に関する。いくつかの態様では、上記の宿主細胞を含む組成物は、凍結保存剤をさらに含む。
【0081】
本開示のrAAVを産生するのに有用なrAAVベクター、rep配列、cap配列、およびヘルパー機能は、任意の適した遺伝子エレメント(ベクター)を使用してパッケージング宿主細胞に送達されてもよい。選択された遺伝子エレメントは、本明細書において記載されるものを包含する任意の適切な方法によって送達され得る。本開示の任意の態様を構築するために使用される方法は、核酸操作の当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学、および合成技術を包含する。例として、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい。同様に、rAAVビリオン(すなわち、感染性ウイルス粒子)を作製する方法は周知であり、適切な方法の選択は本開示を限定するものではない。例として、K.Fisher et al.,J.Virol.,70:520-532(1993)および米国特許第5,478,745号を参照されたい。
【0082】
いくつかの態様では、rAAVは、トリプルトランスフェクション法(米国特許第6,001,650号に詳細に記載されている)を使用して産生され得る。典型的には、rAAVは、AAV粒子にパッケージングされる(導入遺伝子を含む)rAAVベクター、AAVヘルパー機能ベクター、およびアクセサリー機能ベクターを宿主細胞にトランスフェクトすることによって産生される。AAVヘルパー機能ベクターは、増殖性AAVの複製およびカプシド形成のためにトランスで機能する「AAVヘルパー機能」配列(すなわち、repおよびcap)をコードする。好ましくは、AAVヘルパー機能ベクターは、任意の検出可能なWT AAVビリオン(すなわち、機能性repおよびcap遺伝子を含有するAAVビリオン)を生成することなく効率的なAAVベクター産生をサポートする。本開示との使用に適切なベクターの非限定的な例は、米国特許第6,001,650号に記載されているpHLP19および米国特許第6,156,303号に記載されているpRep6cap6ベクターを包含し、両方の全体が参照により本明細書に組み込まれる。アクセサリー機能ベクターは、AAVが複製に依存する非AAV由来のウイルス機能および/または細胞機能(すなわち、「アクセサリー機能」)のためのヌクレオチド配列をコードする。アクセサリー機能は、限定するものではないが、AAV遺伝子転写の活性化、段階特異的AAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、cap発現産物の合成、およびAAVカプシドアセンブリに関与する部分を包含する、AAV複製に必要な機能を包含する。ウイルスに基づくアクセサリー機能は、アデノウイルス、(単純ヘルペスウイルス1型以外の)ヘルペスウイルス、およびワクシニアウイルスなどの既知のヘルパーウイルスのいずれかに由来し得る。
【0083】
いくつかの側面では、本開示は、トランスフェクトされた宿主細胞を提供する。「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来DNAの取り込みをいうために使用され、外因性DNAが細胞膜を通って導入された場合、細胞は「トランスフェクト」されている。多数のトランスフェクション技術が当技術分野において一般的に知られている。例として、Graham et al.(1973)Virology,52:456、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York、Davis et al.(1986)Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier、およびChu et al.(1981)Gene 13:197を参照されたい。そのような技術は、ヌクレオチド組み込みベクターおよび他の核酸分子などの1つ以上の外因性核酸を適切な宿主細胞に導入するために使用され得る。
「宿主細胞」は、目的の物質を保有する、または保有が可能である任意の細胞をいう。多くの場合、宿主細胞は哺乳動物細胞である。宿主細胞は、AAVヘルパー構築物、AAVミニ遺伝子プラスミド、アクセサリー機能ベクター、またはrAAVの産生に関連する他の導入DNAのレシピエントとして使用され得る。この用語は、トランスフェクトされた元の細胞の子孫を包含する。したがって、本明細書において使用される通り、「宿主細胞」は、外因性DNA配列をトランスフェクトされた細胞をいう場合もある。単一の親細胞の子孫は、天然、偶発的、または意図的な変異のために、元の親と、形態またはゲノムもしくは全DNA相補体とは、必ずしも完全に同一でない場合があることが理解される。いくつかの態様では、宿主細胞は、真核細胞、細菌細胞または昆虫細胞である。
【0084】
本明細書において使用される場合、「細胞株」という用語は、in vitroで連続的または長期にわたる増殖および分裂が可能である細胞の集団をいう。多くの場合、細胞株は、単一の前駆細胞に由来するクローン集団である。このようなクローン集団の保存または導入の間に、核型に自然発生的なまたは誘導される変化が起こり得ることは、当技術分野においてさらに知られている。したがって、言及される細胞株に由来する細胞は、先祖細胞または培養物と正確に同一ではない場合もあり、言及される細胞株はそのようなバリアントを包含する。
【0085】
本明細書において使用される通り、「組換え細胞」という用語は、生物学的に活性なポリペプチドの転写、またはRNAなどの生物学的に活性な核酸の産生をもたらすDNAセグメントなどの、外因性DNAセグメントが導入された細胞をいう。
【0086】
本明細書において使用される通り、「ベクター」という用語は、適切な制御エレメントと会合した場合に複製が可能であり、細胞間で遺伝子配列を導入することができる、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス、ビリオン等などの、任意の遺伝子エレメントを包含する。したがって、この用語は、クローニングおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを包含する。いくつかの態様では、有用なベクターは、転写される核酸セグメントがプロモータの転写制御下に位置するベクターであることが企図される。「プロモータ」は、遺伝子の特異的転写を開始するのに必要な細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識されるDNA配列をいう。「作動可能に配置された」、「制御下にある」または「転写制御下にある」という語句は、RNAポリメラーゼの開始および遺伝子の発現を制御するために、プロモータが核酸に対して正しい位置および向きにあることを意味する。「発現ベクターまたは発現構築物」という用語は、配列をコードする核酸の一部または全部が転写されることが可能な核酸を含有する、任意の型の遺伝子構築物を意味する。いくつかの態様では、発現は、例えば、転写された遺伝子から生物学的に活性なポリペプチド産物または阻害性RNA(例として、shRNA、miRNA、miRNA阻害剤)を生成するための核酸の転写を包含する。
【0087】
本開示のrAAVを産生するために組換えベクターを所望のAAVカプシドにパッケージングするための前述の方法は、限定することを意味するものではなく、他の適切な方法が当業者には明らかであろう。
【0088】
組換えAAVベクター
本開示の単離された核酸は、rAAVベクターであり得る。本開示の組換えAAVベクターは、典型的には、最小限でも、導入遺伝子およびその調節配列、ならびに5'および3'AAV ITRから構成される。カプシドタンパク質にパッケージングされ、選択された標的細胞に送達されるのはこのrAAVベクターである。いくつかの態様では、導入遺伝子は、目的のポリペプチド、タンパク質、機能性RNA分子または他の遺伝子産物をコードする、ベクター配列とは異種の核酸配列である。核酸コード配列は、標的組織の細胞における導入遺伝子の転写、翻訳および/または発現を可能にする様式で調節成分に作動可能に連結される。
【0089】
本開示の側面は、rAAVの調節配列の改変が、治療上有効であるが以前に使用されたrAAVに関連するベクター媒介性毒性を引き起こさない、導入遺伝子発現レベルを提供するという発見に関する。したがって、いくつかの態様では、本開示は、改変された遺伝子調節エレメントを含むrAAVに関する。いくつかの態様では、改変された遺伝子調節エレメントはハイブリッドプロモータである。
【0090】
本明細書において使用される通り、「ハイブリッドプロモータ」という用語は、RNA転写物(例として、導入遺伝子によってコードされる転写物)の転写を駆動することができる調節構築物であって、人工的に配置された2つ以上の調節エレメントを含む、前記調節構築物をいう。典型的には、ハイブリッドプロモータは、最小プロモータである少なくとも1つのエレメントと、エンハンサ配列、または1つ以上の転写調節エレメントを含むイントロン配列、エクソン配列、もしくは非翻訳領域(UTR)配列を有する少なくとも1つのエレメントとを含む。ハイブリッドプロモータが、エクソン配列、イントロン配列またはUTR配列を含む態様では、そのような配列は、転写物の転写を修飾する(例として、増強する)調節エレメントも含有しながら、RNA転写物の上流部分をコードしていてもよい。いくつかの態様では、ハイブリッドプロモータの2つ以上のエレメントは、互いに異種源からのものである。いくつかの態様では、ハイブリッドプロモータの2つ以上のエレメントは、導入遺伝子に対して異種源からのものである。いくつかの態様では、ハイブリッドプロモータの2つ以上のエレメントは、異なる遺伝子座からのものである。いくつかの態様では、ハイブリッドプロモータの2つ以上のエレメントは、同じ遺伝子座からのものであるが、遺伝子座では見られない様式で配置される。いくつかの態様では、ハイブリッドプロモータは、1つ以上の核酸配列に融合された1つのプロモータからの第1の核酸配列を含み、これは、異なる源のプロモータまたはエンハンサエレメントを含む。いくつかの態様では、ハイブリッドプロモータは、ニワトリβ-アクチンプロモータからの第1の配列およびCMVエンハンサの第2の配列を含む。いくつかの態様では、ハイブリッドプロモータは、ニワトリβ-アクチンプロモータからの第1の配列およびニワトリβ-アクチン遺伝子のイントロンからの第2の配列を含む。いくつかの態様では、ハイブリッドプロモータは、CMVエンハンサ配列に融合したニワトリβ-アクチンプロモータからの第1の配列およびニワトリβ-アクチン遺伝子のイントロンからの配列を含む。
【0091】
いくつかの側面では、rAAVはエンハンサエレメントを含む。本明細書において使用される通り、「エンハンサエレメント」という用語は、アクチベーター(activator)タンパク質によって結合された場合に、1つ以上の遺伝子の転写を活性化または増加させる核酸配列をいう。エンハンサ配列は、それらが調節する遺伝子に対して上流(すなわち、5')または下流(すなわち、3')に存在し得る。エンハンサ配列の例は、サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサ配列およびSV40エンハンサ配列を包含する。いくつかの態様では、rAAVは、CMVエンハンサエレメントまたはその一部を含む。本明細書において使用される通り、「その一部」という用語は、それが由来するヌクレオチドまたはアミノ酸配列全体の所望の機能的特徴を保持するヌクレオチドまたはアミノ酸配列の断片をいう。例えば、「CMVエンハンサ配列またはその一部」は、導入遺伝子の転写を増加させることができるWT CMVエンハンサ由来のヌクレオチド配列をいう。
【0092】
いくつかの側面では、rAAVは転写後応答エレメントを含む。本明細書において使用される通り、「転写後応答エレメント」という用語は、転写された場合、遺伝子の発現を増強する三次構造をとる核酸配列をいう。転写後調節エレメントの例は、限定されるものではないが、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、マウスRNA輸送エレメント(RTE)、サルレトロウイルス1型(SRV-1)の構成的輸送エレメント(CTE)、メイソン-ファイザーサルウイルス(MPMV)からのCTE、およびヒト熱ショックタンパク質70の5'非翻訳領域(Hsp70 5'UTR)を包含する。いくつかの態様では、rAAVベクターはウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含む。
【0093】
いくつかの側面では、本開示は、ハイブリッドまたはキメライントロンを含むrAAVベクターを提供する。本明細書において使用される場合、「キメライントロン」という用語は、2つ以上の異なる供給源からの配列を有するイントロンをいう。いくつかの態様では、キメライントロンは、第1の供給源(例として、生物または種)からのスプライスドナー部位および第2の供給源(例として、生物または種)からのスプライスアクセプター部位をコードする核酸を含む。いくつかの態様では、キメライントロンは、1つまたは複数の転写調節エレメントおよび/またはエンハンサ配列を含む。いくつかの態様では、キメライントロンは、ハイブリッドプロモータのエクソンと導入遺伝子との間に配置される。いくつかの態様では、本開示は、導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモータを含むrAAVを提供し、導入遺伝子はBCKDHAタンパク質をコードし、rAAVはキメライントロンをさらに含む。いくつかの態様では、本開示は、導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモータを含むrAAVを提供し、導入遺伝子はBCKDHBタンパク質をコードし、rAAVはキメライントロンをさらに含む。いくつかの態様では、本開示は、第1の導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモータを含むrAAVを提供し、導入遺伝子はBCKDHAタンパク質をコードし、第2の導入遺伝子がBCKDHBタンパク質をコードし、rAAVがキメライントロンをさらに含む。
【0094】
ある特定の態様では、本開示は、人工転写エレメントを含むrAAVベクターに関する。本明細書で使用される通り、「人工転写エレメント」という用語は、いくつかの態様において、RNAポリメラーゼによるDNAの制御された転写を可能にしてRNA転写物を産生する合成配列をいう。本開示の転写活性エレメントは、一般に500bp未満、好ましくは200bp未満、より好ましくは100bp未満、最も好ましくは50bp未満である。いくつかの態様では、人工転写エレメントは、転写活性エレメントからの2つ以上の核酸配列を含む。転写活性エレメントは、一般に当技術分野で認識されており、例えば、プロモータ、エンハンサ配列、TATAボックス、G/Cボックス、CCAATボックス、特異性タンパク質1(Sp1)結合部位、Inr領域、CRE(cAMP調節エレメント)、活性化転写因子1(ATF1)結合部位、ATF1-CRE結合部位、APBβボックス、APBαボックス、CArGボックス、CCACボックスおよび米国特許第6,346,415号に開示されているものを包含する。前述の転写活性エレメントの組合せもまた企図される。
【0095】
いくつかの態様では、人工転写エレメントはプロモータ配列を含む。いくつかの態様では、人工転写エレメントはエンハンサ配列を含む。いくつかの態様では、人工転写エレメントはATF1-CRE結合部位を含む。いくつかの態様では、人工転写エレメントはSP1結合部位を含む。いくつかの態様では、人工転写エレメントはCボックスを含む。いくつかの態様では、人工転写エレメントはTATAボックスを含む。いくつかの態様では、人工転写エレメントは、ATF1-CRE結合部位、SP1結合部位およびTATAボックスを含む。
【0096】
発現制御配列は、適した転写開始配列、終結配列、プロモータ配列およびエンハンサ配列;スプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増強する配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;ならびに、必要に応じて、コードされた産物の分泌を増強する配列を包含する。天然、構成的、誘導性および/または組織特異的であるプロモータを包含する、多数の発現制御配列が、当技術分野で既知であり、利用され得る。
【0097】
本明細書において使用される通り、核酸配列(例として、コード配列)および調節配列が、核酸配列の発現または転写を調節配列の影響または制御下に置くような方法で共有結合されている場合、「作動可能に」連結されていると言われる。核酸配列が、機能性タンパク質に翻訳されることが望まれる場合、5'調節配列中のプロモータの誘導がコード配列の転写をもたらし、かつ、2つのDNA配列間の連結の性質が、(1)フレームシフト変異の導入をもたらさない、(2)プロモータ領域がコード配列の転写を指示する能力を妨害しない、または(3)対応するRNA転写物がタンパク質に翻訳される能力を妨害しない場合、2つのDNA配列は作動可能に連結されていると言われる。したがって、プロモータ領域が、得られた転写物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳される可能性があるようにそのDNA配列の転写を達成することができる場合には、プロモータ領域は核酸配列に作動可能に連結されているであろう。同様に、2つ以上のコード領域は、それらが共通のプロモータからのそれらの転写がフレーム内で翻訳された2つ以上のタンパク質の発現をもたらすように連結されている場合、作動可能に連結されている。いくつかの態様では、作動可能に連結されたコード配列は、融合タンパク質を生じる。いくつかの態様では、作動可能に連結されたコード配列は、機能性RNA(例として、shRNA、miRNA、miRNA阻害剤)を生じる。
【0098】
タンパク質をコードする核酸の場合、ポリアデニル化配列は、一般に、導入遺伝子配列の後および3'AAV ITR配列の前に挿入される。本開示において有用なrAAV構築物はまた、望ましくはプロモータ/エンハンサ配列と導入遺伝子との間に位置する、イントロンを含有し得る。1つの可能なイントロン配列は、SV-40に由来し、SV-40 Tイントロン配列と呼ばれる。
【0099】
使用され得る別のベクターエレメントは、内部リボソーム進入部位(IRES)である。IRES配列は、単一の遺伝子転写物から2つ以上のポリペプチドを産生するために使用される。IRES配列は、2つ以上のポリペプチド鎖を含有するタンパク質を産生するために使用されるであろう。これらおよび他の一般的なベクターエレメントの選択は慣用のものであり、多くのそのような配列が入手可能である[例として、Sambrook et al.、およびそこに引用されている参考文献、例えば、3.18 3.26および16.17 16.27頁、ならびにAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York,1989を参照されたい。]。いくつかの態様では、口蹄疫ウイルス2A配列は、ポリタンパク質に包含され、これは、ポリタンパク質の切断を媒介することが示されている小ペプチド(およそ18アミノ酸長)である(Ryan,M D et al., EMBO,1994;4:928-933;Mattion,N M et al., J Virology,November 1996;p.8124-8127;Furler,S et al., Gene Therapy,2001;8:864-873;および Halpin,C et al., The Plant Journal,1999;4:453-459)。2A配列の切断活性は、プラスミドおよび遺伝子治療ベクター(AAVおよびレトロウイルス)を包含する、人工系において、以前に実証されている(Ryan,M D et al., EMBO,1994;4:928-933;Mattion,N M et al., J Virology, November 1996;p.8124-8127;Furler,S et al., Gene Therapy,2001;8:864-873;および Halpin,C et al., The Plant Journal,1999;4:453-459;de Felipe,P et al., Gene Therapy,1999;6:198-208;de Felipe,P et al., Human Gene Therapy,2000;11:1921-1931.;および Klump,H et al., Gene Therapy,2001;8:811-817)。
【0100】
宿主細胞における遺伝子発現に必要な調節配列の正確な性質は、種、組織または細胞型間で異なり得るが、一般に、必要に応じて、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列、エンハンサエレメント等などの、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5'非転写配列および5'非翻訳配列を包含するものとする。特に、そのような5'非転写調節配列は、作動可能につながれた遺伝子の転写制御のためのプロモータ配列を包含するプロモータ領域を包含するであろう。調節配列はまた、所望に応じてエンハンサ配列または上流アクチベーター配列を包含し得る。本開示のベクターは、任意に、5'リーダーまたはシグナル配列を包含し得る。
【0101】
構成的プロモータの例は、限定することなく、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモータ(任意にRSVエンハンサを有する)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ(任意にCMVエンハンサを有する)[例として、Boshart et al.,Cell,41:521-530(1985)を参照されたい]、SV40プロモータ、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモータ、β-アクチンプロモータ、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモータおよびEF1αプロモータ[Invitrogen]を包含する。
【0102】
誘導性プロモータは、遺伝子発現の調節を可能にし、外因的に供給される化合物、温度などの環境因子、または特定の生理学的状態、例として、急性期、細胞の特定の分化状態の存在によって、あるいは、複製細胞のみにおいて、調節され得る。誘導性プロモータおよび誘導系は、限定するものではないが、Invitrogen、ClontechおよびAriadを包含する様々な商業的供給源から利用可能である。多くの他のシステムが記載されており、当業者によって容易に選択され得る。外因的に供給されるプロモータによって調節される誘導性プロモータの例は、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモータ、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモータ、T7ポリメラーゼプロモータ系(国際公開第98/10088号);エクジソン昆虫プロモータ(No et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:3346-3351(1996))、テトラサイクリン抑制系(Gossen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5547-5551(1992))、テトラサイクリン誘導系(Gossen et al.,Science,268:1766-1769(1995)、Harvey et al.,Curr.Opin.Chem.Biol.,2:512-518(1998)も参照されたい)、RU486誘導系(Wang et al.,Nat.Biotech.,15:239-243(1997)およびWang et al.,Gene Ther.,4:432-441(1997))およびラパマイシン誘導系(Magari et al.,J.Clin.Invest.,100:2865-2872(1997))を包含する。この文脈において有用であり得る、さらに他の種類の誘導性プロモータは、特定の生理学的状態、例として、温度、急性期、細胞の特定の分化状態によって、または複製細胞のみにおいて、調節されるものである。
【0103】
ベクターのAAV配列は、典型的にはシス作用性5'および3'逆位末端反復配列を含む(例として、B.J.Carter,in ”Handbook of Parvoviruses”,ed.,P.Tijsser,CRC Press,pp.155 168(1990)を参照されたい)。ITR配列は約145bp長である。好ましくは、ITRをコードする配列の実質的に全体が分子中で使用されるが、これらの配列のある程度の軽微な改変は許容される。これらのITR配列を改変する能力は、当技術分野の範囲内である。(例として、Sambrook et al.,Molecular Cloning.A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989);and K.Fisher et al.,J Virol.,70:520 532(1996)等のテキストを参照されたい)。本開示で使用されるそのような分子の例は、導入遺伝子を含有する「シス作用性」プラスミドであり、選択された導入遺伝子配列および関連する調節エレメントは、5'および3'AAV ITR配列に隣接している。AAV ITR配列は、現在同定されている哺乳動物AAV型を包含する、任意の既知のAAVから得られてもよい。
【0104】
いくつかの態様では、本開示のrAAVはシュードタイプrAAVである。例えば、Yのタンパク質でカプシド化された血清型XのITRを含有するシュードタイプAAVベクターは、AAVX/Y(例として、AAV2/1は、AAV2のITRおよびAAV1のカプシドを有する)として指定される。いくつかの態様では、シュードタイプrAAVは、1つのAAV血清型からのカプシドタンパク質の組織特異的標的化能力を、別のAAV血清型からのウイルスDNAと組み合わせ、それによって標的組織への導入遺伝子の標的化送達を可能にするのに有用であり得る。
【0105】
rAAVベクターについて上記で同定された主要なエレメントに加えて、ベクターはまた、プラスミドベクターでトランスフェクトされた、または本開示によって産生されるウイルスに感染した細胞における転写、翻訳および/または発現を可能にする様式で導入遺伝子に作動可能に連結された必要な慣用の制御エレメントを包含する。
【0106】
組換えAAVベクター:導入遺伝子コード配列
rAAVベクターの導入遺伝子配列の構成は、得られるベクターが使用される用途に依存するであろう。例えば、1つの種類の導入遺伝子配列は、発現の際に検出可能なシグナルを産生するレポーター配列を包含する。別の例では、導入遺伝子は、治療用タンパク質をコードする。別の例では、導入遺伝子は、研究目的のために、例として、導入遺伝子を保有する体細胞トランスジェニック動物モデルを作製するため、例として、導入遺伝子産物の機能を研究するために、使用されることが意図されるタンパク質をコードする。別の例において、導入遺伝子は、疾患の動物モデルを作製するために使用されることが意図されるタンパク質をコードする。
【0107】
いくつかの態様では、本開示は、BCKDHAをコードする導入遺伝子を含むrAAVを提供する。いくつかの態様では、本開示は、BCKDHBをコードする導入遺伝子を含むrAAVを提供する。いくつかの態様では、本開示は、2つ以上の導入遺伝子を含むrAAVを提供する。いくつかの態様では、rAAVは、BCKDHAおよびBCKDHBをコードする導入遺伝子を含む。本明細書において記載されるrAAVを使用して導入遺伝子を対象に送達することによってMSUDを処置する方法もまた、本明細書において企図される。いくつかの態様では、本開示は、BCKDHBをコードする導入遺伝子を含むrAAVを提供する。本明細書において記載されるrAAVを使用して導入遺伝子を対象に送達することによってMSUDを処置する方法も本明細書において企図される。本明細書において記載されるrAAVを使用して導入遺伝子を対象に送達することによってMSUDを治療する方法も本明細書において企図される。いくつかの態様では、本開示は、MSUDを処置する方法であって、rAAVを対象に投与することを含む前記方法に関する。いくつかの態様では、rAAVはハイブリッドプロモータを含む。いくつかの態様では、rAAVはキメライントロンを含む。いくつかの態様では、rAAVは人工転写エレメントを含む。いくつかの態様では、人工転写エレメントは、ATF1-CRE結合部位、SP1結合部位およびTATAボックスを含む。いくつかの態様では、プロモータ、キメライントロンまたは人工転写エレメントは、導入遺伝子に作動可能に連結されている。いくつかの態様では、導入遺伝子はBCKDHAをコードする。いくつかの態様では、導入遺伝子はBCKDHBをコードする。いくつかの態様では、導入遺伝子は、BCKDHAおよびBCKDHBをコードする。
【0108】
組換えAAV投与方法
rAAVは、当技術分野において既知の任意の適した方法による組成物で対象に送達され得る。rAAVは、好ましくは、生理学的に適合し得る担体中に(すなわち、組成物中に)懸濁されて、対象(すなわち、宿主動物(例として、ヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ(cow)、ヤギ、ブタ、モルモット、ハムスター、ニワトリ、シチメンチョウ、または非ヒト霊長類動物(例として、マカク)))に投与されてもよい。いくつかの態様では、宿主動物はヒトを包含しない。
【0109】
哺乳動物対象へのrAAVの送達は、例えば、筋肉内注射によるものまたは哺乳動物対象の血流中への投与によるものであり得る。血流への投与は、静脈、動脈、または任意の他の血管導管への注射によるものであり得る。いくつかの態様では、rAAVは、外科技術において周知の技術である分離式肢灌流(isolated limb perfusion)によって血流中に投与され、この方法は、当業者がrAAVビリオンの投与前に全身循環から肢を単離することを本質的に可能にする。米国特許第6,177,403号に記載されている分離式肢灌流技術の変形はまた、筋細胞または組織への形質導入を潜在的に増強するために、分離された肢の血管系にビリオンを投与するために当業者によって使用され得る。
【0110】
本開示の側面は、少なくとも1つの改変された遺伝子調節配列またはエレメントを含むrAAVを含む組成物に関する。いくつかの態様では、組成物は、薬学的に許容し得る担体をさらに含む。
【0111】
本開示の組成物は、rAAVを、単独で、または1つ以上の他のウイルス(例として、1つ以上の異なる導入遺伝子を有しコードする第2のrAAV)と組み合わせて、含み得る。いくつかの態様では、組成物は、それぞれが1つ以上の異なる導入遺伝子を有する、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれを超える異なるrAAVを含む。
【0112】
いくつかの側面では、本開示は、BCKDHAをコードする核酸を含むrAAVを含む組成物(例として、医薬組成物)に関する。いくつかの側面では、本開示は、BCKDHBをコードする核酸を含むrAAVを含む組成物(例として、医薬組成物)に関する。いくつかの側面では、本開示は、BCKDHAおよびBCKDHBをコードする核酸を含むrAAVを含む組成物(例として、医薬組成物)に関する。
【0113】
適切な担体は、rAAVが向けられる適応を考慮して当業者によって容易に選択され得る。例えば、1つの適切な担体は、生理食塩水を包含し、これは様々な緩衝液(例として、リン酸緩衝生理食塩水)と共に製剤化され得る。他の例示的な担体は、滅菌生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、落花生油、ゴマ油および水を包含する。担体の選択は、本開示を限定するものではない。
【0114】
任意に、本開示の組成物は、rAAVおよび担体に加えて、防腐剤または化学安定剤などの他の慣用の医薬成分を含有し得る。適切な例示的な防腐剤は、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノールおよびパラクロロフェノールを包含する。適切な化学安定剤は、ゼラチンおよびアルブミンを包含する。
【0115】
組換えAAVは、所望の組織の細胞をトランスフェクトし、過度の有害作用なしに十分なレベルの遺伝子導入および発現を提供するのに十分な量で投与される。慣用のおよび薬学的に許容し得る投与経路は、選択された臓器への直接送達(例として、肝臓、骨格筋への注射)、経口、吸入(鼻腔内および気管内送達を包含する)、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腫瘍内、および他の非経口投与経路を包含するが、これらに限定されない。所望に応じて、投与経路は組み合わされてもよい。
【0116】
特定の「治療効果」を達成するために必要なrAAVビリオンの用量、例として、体重1キログラム当たりのゲノムコピー(GC/kg)での用量の単位は、限定されるものではないが、rAAVビリオンの投与経路、治療効果を達成するために必要な遺伝子またはRNA発現のレベル、処置されている特定の疾患または疾病、および遺伝子またはRNA産物の安定性を包含する、いくつかの因子に基づいて変動するであろう。当業者は、上述の因子、ならびに当技術分野で周知の他の因子に基づいて、特定の疾患または疾病を有する患者を処置するためのrAAVビリオンの用量範囲を容易に決定し得る。
【0117】
本明細書において互換的に使用され得る通り、用語「有効量」、「治療有効量」および「薬学的有効量」は、所望の応答を誘発するのに十分な生物学的に活性な薬剤(例として、本開示の単離された核酸、rAAV、組成物)の量をいう。有効量は、主に、種、年齢、体重、対象の健康状態、および標的とする組織などの因子に依存するであろうことから、動物および組織間で変動し得る。例えば、rAAVの有効量は、一般に、約106~1016ゲノムコピー(例として、1x106~1x1016(包括的))を含有する溶液約1ml~約100mlの範囲である。場合によっては、約1011~1012のrAAVゲノムコピーの投与量が適している。いくつかの態様では、約1011~1013のrAAVゲノムコピーの投与量が適している。いくつかの態様では、約1011~1014のrAAVゲノムコピーの投与量が適している。いくつかの態様では、約1011~1015のrAAVゲノムコピーの投与量が適している。いくつかの態様では、4.68×107の投与量が適している。いくつかの態様では、4.68×108のゲノムコピーの投与量が適している。いくつかの態様では、4.68×109のゲノムコピーの投与量が適している。いくつかの態様では、1.17x1010のゲノムコピーの投与量が適している。いくつかの態様では、2.34x1010のゲノムコピーの投与量が適している。いくつかの態様では、3.20x1011のゲノムコピーの投与量が適している。いくつかの態様では、1.2x1013のゲノムコピーの投与量が適している。いくつかの態様では、約1×1014のベクターゲノム(vg)コピーの投与量が適している。
【0118】
いくつかの側面では、本開示は、AAVを対象に投与するための1つの潜在的な副作用が、炎症を包含するAAVに対する対象の免疫応答である、という認識に関する。いくつかの態様では、対象は、本明細書において記載される通り、1つ以上のrAAVの投与前に、免疫抑制される。
【0119】
本明細書において使用される通り、「免疫抑制された」または「免疫抑制」は、対象における免疫応答の活性化または有効性の減少をいう。免疫抑制は、リツキシマブ、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、シロリムス、免疫グロブリン注射、プレドニゾン、メトトレキサート、およびそれらの任意の組合せを包含するがこれに限定されない、1つ以上の(例として、2、3、4、5、またはそれを超えるなどの、複数の)薬剤を使用して、対象に誘導され得る。
【0120】
いくつかの態様では、本開示によって記載される方法は、対象にrAAV(例として、本開示によって記載される通りのrAAVまたは医薬組成物)が投与される前に、対象において免疫抑制を誘導する(例として、1つ以上の免疫抑制剤を投与する)ステップをさらに含む。いくつかの態様では、対象は、対象へのrAAVの投与の約30日前~約0日前(例として、rAAVの投与までの30日間の任意の時(包括的))に免疫抑制される(例として、対象において免疫抑制が誘導される)。いくつかの態様では、対象は、少なくとも7日間、免疫抑制(例として、リツキシマブ、シロリムス、および/またはプレドニゾン)により前処置される。
【0121】
いくつかの態様では、対象の免疫抑制は、rAAVまたは医薬組成物の投与の間および/または投与後、維持される。いくつかの態様では、対象は、rAAVまたは薬学的組成物の投与後1日~1年間、免疫抑制される(例として、1つ以上の免疫抑制剤が投与される)。
【0122】
いくつかの態様では、rAAV組成物は、特に高いrAAV濃度が存在する場合(例として、約1013GC/ml以上)、組成物中のAAV粒子の凝集を低下させるように製剤化される。rAAVの凝集を低下させる方法は当技術分野で周知であり、例えば、界面活性剤の添加、pH調整、塩濃度調整等を包含する。例として、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、Wright et al.,Molecular Therapy(2005)12,171-178を参照されたい。
【0123】
薬学的に許容し得る賦形剤および担体溶液の製剤化は、様々な処置レジメンにおいて本明細書に記載される特定の組成物を使用するための適切な投薬および治療レジメンの開発のように、当業者に周知である。
【0124】
典型的には、これらの製剤は、少なくとも約0.1%以上の活性化合物を含有してもよいが、もちろん、活性成分の割合は変化してもよく、便宜上、製剤全体の重量または体積の約1または2%~約70%または80%以上である場合もある。当然のことながら、各治療的に有用な組成物中の活性化合物の量は、化合物の任意の所与の単位用量で適切な投与量が得られるように調製され得る。可溶性、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、産物の保存可能期間(shelf life)などの因子、ならびに他の薬理学的留意事項は、かかる医薬製剤を調製する当業者によって企図されるであろう。そのため様々な投与量および処置レジメンが所望され得る。
【0125】
特定の状況では、本明細書において開示される適切に製剤化された医薬組成物中のrAAVベースの治療用構築物は、皮下、膵臓内、鼻腔内、非経口、静脈内、筋肉内、髄腔内、または経口、腹腔内、または吸入のいずれかで送達することが望ましいであろう。いくつかの態様では、米国特許第5,543,158号明細書;同第5,641,515号明細書および同第5,399,363号明細書(それぞれ、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる)に記載の通りの投与モダリティを、rAAVを送達するために使用してもよい。いくつかの態様では、好ましい投与モードは門脈注射によるものである。
【0126】
注射使用に適した医薬形態は、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を包含する。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物中、ならびに油中で調製され得る。保存および使用の通常の条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために防腐剤を含有する。多くの場合、形態は、滅菌されており(sterile)、容易にシリンジが使用可能である程度に流動性である。これは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例として、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物、および/または植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被膜の使用によって、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを包含することが好ましいであろう。注射用組成物の長期にわたる吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン、の組成物における使用によってもたらされ得る。
【0127】
注射用水溶液の投与のために、例えば、溶液は、必要に応じて適切に緩衝化されてもよく、液体希釈剤は、まず十分な生理食塩水またはグルコースで等張性にする。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に適切である。これに関連して、使用され得る滅菌水性媒体は当業者に既知であろう。例えば、1回の投与量は1mlの等張性NaCl溶液に溶解して、1000mlの皮下点滴液に添加するか、または提案された点滴部位に注射されてもよい(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 15th Edition,1035-1038および1570-1580頁を参照されたい)。投与量のいくらかの変動は、宿主の状態に応じて必然的に生じるであろう。投与の責任者は、いずれにせよ、個々の宿主に適した用量を決定するであろう。
【0128】
滅菌注射用溶液は、必要な量の活性rAAVを、必要に応じて、本明細書において列挙される様々な他の成分と共に適した溶媒中に組み込み、続いて濾過滅菌することによって、調製される。一般に、分散液は、様々な滅菌された活性成分を、基礎分散媒および上に列挙されたものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって、調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分に加えて任意の追加の所望の成分の粉末を、先に滅菌濾過されたその溶液から生じる、真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0129】
本明細書において開示されるrAAV組成物はまた、中性形態または塩形態で製剤化されてもよい。薬学的に許容し得る塩は、(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)酸付加塩を包含し、これは、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等の有機酸で形成される。遊離カルボキシル基で形成された塩はまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、および、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基に由来し得る。製剤化の際、溶液は、投与製剤と適合する様式で、治療上有効であるような量で投与されるであろう。製剤は、注射用溶液、薬物放出カプセル等などの様々な投与形態で容易に投与される。
【0130】
本明細書において使用される通り、「担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイド等を包含する。医薬活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。補助活性成分もまた、組成物に組み込まれ得る。「薬学的に許容し得る」という語句は、宿主に投与した場合にアレルギー反応または類似の有害な反応(untoward reaction)を生じさせない分子実体および組成物をいう。
【0131】
リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、小胞等などの送達ビヒクルが、本開示の組成物を適切な宿主細胞に導入するために使用され得る。特に、rAAVベクターにより送達される導入遺伝子は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、またはナノ粒子等のいずれかに封入されて、送達のために製剤化され得る。
【0132】
そのような製剤は、本明細書において開示される核酸またはrAAV構築物の薬学的に許容し得る製剤の導入に好ましい場合がある。リポソームの形成および使用は、一般に当業者に既知である。最近、改善された血清安定性および循環半減時間を有するリポソームが開発された(米国特許第5,741,516号)。さらに、潜在的な薬物担体としてのリポソームおよびリポソーム様調製物の様々な方法が記載されている(米国特許第5,567,434号;同第5,552,157号;同第5,565,213号;同第5,738,868号および同第5,795,587号)。
【0133】
リポソームは、他の手順によるトランスフェクションに対して通常抵抗性である多数の細胞型で使用され成功してきた。さらに、リポソームは、ウイルスに基づく送達系に典型的であるDNAの長さの制約がない。リポソームは、遺伝子、薬物、放射線治療剤、ウイルス、転写因子およびアロステリックエフェクターを様々な培養細胞株および動物に導入するために効果的に使用されてきた。さらに、リポソーム媒介性薬物送達の有効性を調べるいくつかの成功した臨床試験が完了している。
【0134】
リポソームは、水性媒体中に分散されているリン脂質から形成され、自然発生的に多層同心二重層小胞(多層小胞(MLV)とも称される)を形成する。MLVは、一般に、25nm~4μmの直径を有する。MLVの超音波処理は、コアに水溶液を含有する、200~500オングストロームの範囲の直径を有する小型単層小胞(SUV)の形成をもたらす。
【0135】
代替的に、rAAVのナノカプセル製剤が使用されてもよい。ナノカプセルは、一般に、安定かつ再現性のある方法で物質を捕捉することができる。細胞内ポリマー過負荷による副作用を回避するために、そのような超微粒子(約0.1μmのサイズ)は、in vivoで分解され得るポリマーを使用して設計されるべきである。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリラートナノ粒子が使用のために企図される。
【0136】
上記の送達方法に加えて、rAAV組成物を宿主に送達する代替方法として以下の技術も企図される。ソノフォレーシス(例として、超音波)は、循環系へのおよび循環系を通る薬物透過の速度および有効性を増強するための装置として使用され、米国特許第5,656,016号に記載されている。企図される他の薬物送達代替物は、骨内注射(米国特許第5,779,708号)、マイクロチップデバイス(米国特許第5,797,898号)、眼科用製剤(Bourlais et al.,1998)、経皮マトリックス(米国特許第5,770,219および同第5,783,208号)およびフィードバック制御送達(米国特許第5,697,899号)である。
【0137】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書において記載される通りのrAAVまたは医薬組成物を投与された対象への1つ以上の追加の治療剤の投与に関する。
【0138】
キットおよび関連組成物
本明細書において記載される薬剤(例として、核酸、rAAV、ベクター等)は、いくつかの態様では、治療、診断または研究用途での使用を容易にするために、医薬キットまたは診断キットまたは研究キットに組み立てられてもよい。キットは、本開示の成分および使用説明書を収容する1つ以上の容器を包含し得る。具体的には、そのようなキットは、本明細書において記載される1つ以上の薬剤を、意図される用途およびこれらの薬剤の適切な使用を記載する説明書と併せて、包含し得る。特定の態様では、キット中の薬剤は、特定の用途および薬剤の投与方法に適切な医薬製剤および投与量であり得る。研究目的のキットは、様々な実験を行うために適した濃度または量の成分を含有し得る。
【0139】
いくつかの態様では、本開示は、rAAVを産生するためのキットであって、配列番号1~8または11~12のいずれか1つの配列を有する単離された核酸を収容する容器を含む前記キットに関する。いくつかの態様では、キットは、rAAVを産生するための説明書をさらに含む。いくつかの態様では、キットは、rAAVベクターを収容する少なくとも1つの容器をさらに含み、rAAVベクターは導入遺伝子を含む。
【0140】
いくつかの態様では、本開示は、上記の通りのrAAVを収容する容器を含むキットに関する。いくつかの態様では、キットは、薬学的に許容し得る担体を収容する容器をさらに含む。例えば、キットは、rAAVを収容する1つの容器と、rAAVを対象に注射するのに適切な緩衝液を収容する第2の容器とを含み得る。いくつかの態様では、容器はシリンジである。
【0141】
キットは、研究者による本明細書において記載される方法の使用を容易にするように設計されてもよく、多くの形態をとり得る。キットの各組成物は、適用可能な場合、液体形態(例として、溶液)で、または固体形態(例として、乾燥粉末)で提供されてもよい。特定の場合には、組成物のいくつかは、例えば、キットに提供されてもされなくてもよい、適切な溶媒または他の種(例えば、水または細胞培養培地)の添加によって、(例として、活性な形態に)構成可能、またはそうでなければ加工可能であってもよい。本明細書において使用される通り、「説明書」は、説明および/または促進の構成要素を定義し得るものであって、典型的には、本開示のパッケージング上にまたはこれに関連して書面の説明書を伴い得る。説明書はまた、説明書がキットに関連付けられるべきであることを使用者が明確に認識するように任意の方法で提供される、任意の口頭でのまたは電子的説明書、例えば、視聴覚(例として、ビデオテープ、DVD等)、インターネット、および/またはウェブベースの通信等を包含し得る。書面の説明書は、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態であってもよく、この説明書はまた、動物投与のための製造、使用または販売の機関による承認を反映することもできる。
【0142】
キットは、本明細書において記載される成分の任意の1つ以上を、1つ以上の容器に含有してもよい。一例として、一態様では、キットは、キットの1つ以上の成分を混合するため、および/または試料を単離および混合して対象に適用するための説明書を包含し得る。キットは、本明細書において記載される薬剤を収容する容器を包含し得る。薬剤は、液体、ゲルまたは固体(粉末)の形態であってもよい。薬剤は、滅菌して調製され、シリンジにパッケージングされ、および冷蔵されて輸送されてもよい。代替的に、これは、バイアルまたは保管のための他の容器に収納されてもよい。第2の容器は、滅菌して調製された他の薬剤を有していてもよい。代替的に、キットは、予め混合され、シリンジ、バイアル、管、または他の容器中で輸送される、活性薬剤を包含し得る。キットは、特に特定の体細胞動物モデルを産生するためのキットの場合に、シリンジ、局所適用装置、または静脈内(iv)針管およびバッグなどの動物に薬剤を投与するのに必要な成分の1つ以上または全部を有していてもよい。
【0143】
いくつかの場合、方法は、非常に低い存在量でプロウイルスAAVゲノムを潜在的に有する組織から単離された全細胞DNAで細胞をトランスフェクトすること、ならびに、トランスフェクトされた細胞においてAAV repおよびcap遺伝子の転写を惹起させるおよび/または高めるためにヘルパーウイルス機能(例として、アデノウイルス)を補充することを伴う。いくつかの場合、トランスフェクトされた細胞からのRNAは、cDNAのRT-PCR増幅および新規AAVの検出のための鋳型を提供する。プロウイルスAAVゲノムを潜在的に保有する組織から単離された全細胞DNAが、細胞にトランスフェクトされる場合、AAV遺伝子転写を促進する因子を細胞に補充することがしばしば望ましい。例えば、細胞は、アデノウイルスまたはヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルスにも感染していてもよい。特定の態様では、ヘルパー機能は、アデノウイルスによって提供される。アデノウイルスは、WTアデノウイルスであってもよく、ヒトまたは非ヒト起源、好ましくは非ヒト霊長類動物(NHP)起源のものであってもよい。同様に、非ヒト動物(例として、チンパンジー、マウス)に感染することが知られているアデノウイルスもまた、本開示の方法において使用され得る(例として、米国特許第6,083,716号を参照されたい)。WTアデノウイルスに加えて、必要なヘルパー機能を持つ組換えウイルスまたは非ウイルスベクター(例として、プラスミド、エピソーム等)が利用され得る。そのような組換えウイルスは当技術分野で既知であり、公開された技術によって調製され得る。例として、ハイブリッドAd/AAVウイルスを記載する、米国特許第5,871,982号および米国特許第6,251,677号を参照されたい。種々のアデノウイルス株は、the American Type Culture Collection,Manassas,Va.から入手可能であり、または種々の商業的および施設的供給源から要請によって入手可能である。さらに、多くのこのような株の配列は、例として、PubMedおよびGenBankを包含する種々のデータベースから入手可能である。
【0144】
細胞はまた、AAVにヘルパー機能を提供するベクター(例として、ヘルパーベクター)をトランスフェクトされてもよい。ヘルパー機能を提供するベクターは、例として、E1a、E1b、E2a、E4ORF6を包含する、アデノウイルス機能を提供してもよい。これらの機能を提供するアデノウイルス遺伝子の配列は、血清型2、3、4、7、12および40などの任意の既知のアデノウイルス血清型から得られてもよく、当技術分野で既知の現在同定されているヒト型のいずれかをさらに包含する。したがって、いくつかの態様では、方法は、AAV複製、AAV遺伝子転写、および/またはAAVパッケージングに必要な1つ以上の遺伝子を発現するベクターを細胞にトランスフェクトすることを伴う。
【0145】
場合によっては、rAAVベクターを構築およびパッケージングするために、新規の単離されたカプシド遺伝子を使用することができ、当技術分野で周知の方法を使用して、遺伝子によってコードされる新規なカプシドタンパク質に関連する機能的特徴を決定することができる。例えば、レポーター遺伝子(例として、B-ガラクトシダーゼ、GFP、ルシフェラーゼ等)を含むrAAVベクターを構築およびパッケージングするために、新規の単離されたカプシド遺伝子を使用することができる。次いで、rAAVベクターを動物(例として、マウス)に送達することができ、新規の単離されたカプシド遺伝子の組織標的化特性を、動物の様々な組織(例として、心臓、肝臓、腎臓)におけるレポーター遺伝子の発現を調べることによって決定することができる。新規の単離されたカプシド遺伝子を特徴解析するための他の方法は本明細書において開示されており、さらに他のものは当技術分野で周知である。
【0146】
キットは、パウチ、1以上の管、容器、箱、または袋内に緩く梱包された付属物とともに、ブリスターパウチ(blister pouch)、収縮包装パウチ、真空シール可能なパウチ、シール可能な熱成形トレイ、または類似のパウチもしくはトレイ形態などの、様々な形態を有し得る。キットは、付属物が加えられた後に滅菌されてもよく、これによって容器中の個々の付属物が別様に開封されることを可能にする。キットは、放射線滅菌、加熱滅菌、または当該技術分野において既知の他の滅菌方法などの、任意の適した滅菌技術を使用して滅菌することができる。キットはまた、特定の用途に応じて、他の成分、例えば、容器、細胞培地、塩、緩衝液、試薬、シリンジ、針、消毒剤を適用または除去するためのガーゼなどの布地、使い捨て手袋、投与前の薬剤のための支持体等を包含し得る。
【0147】
キット内に包含される説明書は、細胞中の潜在性AAVを検出するための方法を伴ってもよい。加えて、本開示のキットは、説明書、陰性および/または陽性対照、試料用の容器、希釈剤および緩衝液、試料調製チューブ、ならびに配列比較のための印刷されたまたは電子的参照AAV配列表を包含し得る。
【0148】
メープルシロップ尿症(MSUD)を処置する方法
本開示の側面は、MSUDを処置するための方法を提供する。E1-αサブユニット遺伝子における変異によって引き起こされるMSUDは、MSUD「IA型」と称され、E1-βサブユニット遺伝子における変異によって引き起こされるMSUDは、「IB型」と称され、および、E2サブユニット遺伝子の欠損によって引き起こされるものは、「タイプII」と称される。いくつかの態様では、MSUDの臨床的特徴は、精神および身体の遅滞、摂食問題、ならびに尿に対するメープルシロップ臭である。いくつかの態様では、分岐鎖アミノ酸のケト酸が尿中に存在するが、これは酸化的脱炭酸の遮断に起因する。
【0149】
したがって、いくつかの態様では、本開示は、MSUDを処置することにおいて有用な単離された核酸、rAAV、組成物および方法を提供する。本明細書おいて互換的に使用され得る通り、用語「処置」、「処置する」および「処置すること」は、本明細書において記載される通りの、適応症、疾患、疾病、またはその1つ以上の症状(例として、MSUD)を、逆転させる、緩和する、その発症を遅延させる、またはその進行を阻害することを目的とした臨床的介入をいう。いくつかの態様では、処置は、1つ以上の症状が発症した後、および/または疾患が診断された後、施されてもよい。他の態様では、処置は、症状がない状態で(例として、症状の発症を予防もしくは遅延させるために、または疾患の発症もしくは進行を阻害するために)施されてもよい。例えば、処置は、症状の発症に先立ち(例として、症状歴に照らして、および/または遺伝因子もしくは他の感受性因子に照らして)、感受性の個体(例として、対象)に施されてもよい。処置はまた、症状が消散した後も、例えば、それらの再発を予防または遅延するため、続けられ得る。
【0150】
いくつかの側面では、本開示は、分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-αサブユニットである、機能性BCKDHAタンパク質の発現を、対象において促進するための方法であって、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAを発現するように操作された核酸を含有するカプシドを含むrAAVを対象に投与することを含み、対象は、メープルシロップ尿症(MSUD)に関連する機能喪失変異を有する少なくとも1つの内因性BCKDHA対立遺伝子を含む、前記方法に関する。いくつかの態様では、単離された核酸、rAAV、組成物および方法は、MSUDの処置のためのものである。いくつかの態様では、対象のMSUDは、メープルシロップ尿症(MSUD)に関連する機能喪失変異を有する少なくとも1つの内因性BCKDHA対立遺伝子の結果であり得る。
【0151】
いくつかの態様では、少なくとも1つの内因性BCKDHA対立遺伝子はT-A塩基転換を含み、tyr394をasnにする(TYR394ASN)。いくつかの態様では、少なくとも1つの内因性BCKDHA対立遺伝子は、スプライス部位変異、ミスセンス変異、トランケーション変異またはナンセンス変異を含む。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、8塩基対欠失(887_894del)を含む。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、エクソン7に895G-A転移(transition)を含み、gly245のargへの(G245R)置換をもたらす。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、1253T-G塩基転換を含み、phe364のcysへの(F364C)置換をもたらす。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、CのTへの転移を含み、arg220のtrpへの(R220W)置換をもたらす。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、GのAへの転移を含み、gly204のserへの(G204S)置換をもたらす。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、CのGへの塩基転換を含み、thr265のargへの(T265R)置換をもたらす。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、BCKDHA遺伝子におけるCのGへの塩基転換を含み、cys219のtrpへの(C219W)置換をもたらす。いくつかの態様では、内因性BCKDHA対立遺伝子は、1塩基対欠失(117delC)を含み、わずか61残基のトランケート型タンパク質をコードするフレームシフトをもたらす。
【0152】
いくつかの態様では、対象は、同じ機能喪失変異を有する2つの内因性BCKDHA対立遺伝子を有する(ホモ接合状態)。いくつかの態様では、対象は、異なる機能喪失変異を有する、2つの内因性BCKDHA対立遺伝子を有する(複合ヘテロ接合状態)。
【0153】
分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-βサブユニットである、機能性BCKDHBタンパク質の発現を、対象において促進するための方法であって、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHBを発現するように操作された核酸を含有するカプシドを含むrAAVを対象に投与することを含み、対象は、メープルシロップ尿症(MSUD)に関連する機能喪失変異を有する少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子を含む、前記方法。いくつかの態様では、対象のMSUDは、メープルシロップ尿症(MSUD)に関連する機能喪失変異を有する少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子を有する少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子の結果であり得る。
【0154】
いくつかの態様では、少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子は、エクソン1中に11塩基対の欠失を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子は、エクソン5のグアニン(G)のシトシン(C)への変化を含み、残基183においてアルギニンのプロリンへの置換(R183P)をもたらす。いくつかの態様では、少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子は、Cのチミン(T)への転移を含み、残基156においてヒスチジンのチロシンへの置換(H156Y)をもたらす。いくつかの態様では、少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子は、TのGへの塩基転換を含み、残基69においてバリンのグリシンへの置換(V69G)をもたらす。いくつかの態様では、少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子は、エクソン10の欠失をもたらすイントロン9における4塩基対欠失、および、フレームシフトをもたらすエクソン10における8塩基対挿入を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子は、エクソン10における8塩基対挿入を含む。いくつかの態様では、少なくとも1つの内因性BCKDHB対立遺伝子は、スプライス部位変異、ミスセンス変異、トランケーション変異またはナンセンス変異を含む。いくつかの態様では、対象は、同じ機能喪失変異を有する2つの内因性BCKDHB対立遺伝子を有する(ホモ接合状態)。いくつかの態様では、対象は、異なる機能喪失変異を有する、2つの内因性BCKDHA対立遺伝子を有する(複合ヘテロ接合状態)。
【0155】
対象においてMSUDを処置するための方法は、BCKDHAをコードする導入遺伝子を含む、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物を投与することを含み得る。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、対象における機能性BCKDKAの発現を増加させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、(例として、rAAV投与前の対象に対して)対象において、BCKDKAの機能性発現を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれを超えて増加させる。タンパク質発現を評価するための多くの方法が当業者に既知であり、当業者によってそれらの適切性が直ちに認識されるであろう。例えば、タンパク質発現を評価するために有用であることもある方法は、限定することなく、ウエスタンブロット、HPLC LC/MS、抗体検出、ELISA、タンパク質免疫沈降、免疫電気泳動、および/またはタンパク質免疫染色である。タンパク質発現は、対照に対して評価され得る。いくつかの態様では、対照は、機能喪失対立遺伝子を有さないまたはMSUDを有さない健康な対象における値と関連することが知られている確立された値である。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、分岐鎖アミノ酸(BCAA;ロイシン、イソロイシン、およびバリン)およびそれらのケト酸誘導体の分解を増加させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、(例として、rAAV投与前の対象に対して)対象において、分岐鎖アミノ酸(BCAA;ロイシン、イソロイシン、およびバリン)およびそれらのケト酸誘導体の分解を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれを超えて増加させる。
【0156】
対象においてMSUDを処置するための方法は、BCKDHBをコードする導入遺伝子を含む、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物を投与することを含み得る。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、対象における機能性BCKDKBの発現を増加させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、(例として、rAAV投与前の対象に対し)対象において、BCKDKBの機能性発現を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれを超えて増加させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、分岐鎖アミノ酸(BCAA;ロイシン、イソロイシン、およびバリン)およびそれらのケト酸誘導体の分解を、(例として、rAAV投与前の対象に対して)増加させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、(例として、rAAV投与前の対象に対して)対象において、分岐鎖アミノ酸(BCAA;ロイシン、イソロイシン、およびバリン)およびそれらのケト酸誘導体の分解を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれを超えて増加させる。試料中のアミノ酸を評価するための多くの方法が当業者に既知であり、当業者によってそれらの適切性が直ちに認識されるであろう。例えば、アミノ酸を評価するために有用であり得る方法は、限定することなく、イオン交換クロマトグラフィー、分光光度検出、液体クロマトグラフィー分離、および/または質量分析である。アミノ酸レベルは、対照に対して評価され得る。いくつかの態様では、対照は、機能喪失対立遺伝子を有さないまたはMSUDを有さない健康な対象における値と関連することが知られている確立された値である。
【0157】
いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、アラニンに対するロイシンの比を低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、(例として、rAAV投与前の対象に対して)対象において、アラニンに対するロイシンの比を、少なくとも1%、10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれを超えて低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、アラニンに対するロイシンの比を0.6以下に低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、アラニンに対するロイシンの比を0.5以下に低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、アラニンに対するロイシンの比を0.4以下に低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、アラニンに対するロイシンの比を0.3以下に低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、尿分岐鎖α-ケト酸(BCKA):2-オキソイソカプロン酸、2-オキソ-3-メチル吉草酸、2-オキソイソ吉草酸、2-ヒドロキシイソ吉草酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、および/または2-ヒドロキシ-3-メチル吉草酸を低下させる。試料中のアミノ酸を評価するための多くの方法が当業者に既知であり、当業者によってそれらの適切性が直ちに認識されるであろう。例えば、アミノ酸を評価するために有用であり得る方法は、限定することなく、イオン交換クロマトグラフィー、分光光度検出、液体クロマトグラフィー分離、および/または質量分析である。アミノ酸レベルは、対照に対して評価され得る。いくつかの態様では、対照は、機能喪失対立遺伝子を有さないまたはMSUDを有さない健康な対象における値と関連することが知られている確立された値である。
【0158】
いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、イソロイシンに対するロイシンの比を低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、(例として、rAAV投与前の対象に対して)対象において、イソロイシンに対するロイシンの比を、少なくとも1%、10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれを超えて低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、イソロイシンに対するロイシンの比を0.6以下に低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、イソロイシンに対するロイシンの比を0.5以下に低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、イソロイシンに対するロイシンの比を0.4以下に低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、イソロイシンに対するロイシンの比を0.3以下に低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、尿分岐鎖α-ケト酸(BCKA):2-オキソイソカプロン酸、2-オキソ-3-メチル吉草酸、2-オキソイソ吉草酸、2-ヒドロキシイソ吉草酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、および/または2-ヒドロキシ-3-メチル吉草酸を低下させる。
【0159】
いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、ロイシンに対するバリンの比を低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、(例として、rAAV投与前の対象に対して)対象において、ロイシンに対するバリンの比を、少なくとも1%、10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれを超えて低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、ロイシンに対するバリンの比を0.6以下に低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、ロイシンに対するバリンの比を0.5以下に低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、ロイシンに対するバリンの比を0.4以下に低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、ロイシンに対するバリンの比を0.3以下に低下させる。いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、尿分岐鎖α-ケト酸(BCKA):2-オキソイソカプロン酸、2-オキソ-3-メチル吉草酸、2-オキソイソ吉草酸、2-ヒドロキシイソ吉草酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、および/または2-ヒドロキシ-3-メチル吉草酸を低下させる。試料中のアミノ酸を評価するための多くの方法が当業者に既知であり、当業者によってそれらの適切性が直ちに認識されるであろう。例えば、アミノ酸を評価するために有用であり得る方法は、限定することなく、イオン交換クロマトグラフィー、分光光度検出、液体クロマトグラフィー分離、および/または質量分析である。アミノ酸レベルは、対照に対して評価され得る。いくつかの態様では、対照は、機能喪失対立遺伝子を有さないまたはMSUDを有さない健康な対象における値と関連することが知られている確立された値である。
【0160】
いくつかの態様では、方法(例として、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物の投与)は、(例として、rAAV投与前の対象と比較して)対象において、アロイソロイシンの血清濃度を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれを超えて減少させる。
【0161】
いくつかの態様では、本開示の方法のいずれかの効果は、所与の時間の期間、対象において持続する。本明細書において使用される通り、「持続する」という用語は、当業者にとって、測定の質を意味することが一般に知られており、方法の意図された効果が対象において観察可能または測定可能であることを意味する。例えば、限定することなく、一般に、導入遺伝子の発現がある時間の期間にわたって観察され得ること、および/または、(例として、対象の医学的評価および/または評価を通じて、主観的に、客観的に、またはそれらの組合せで)投与の寛解効果が見られ得るもしくは測定され得ることを意味することが理解される。例えば、限定することなく、いくつかの態様では、導入遺伝子(例として、BCKDHA、BCKDHB、またはそれらの組合せ)の発現は、少なくとも、1日(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90日、またはそれを超える日)の間、1週(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52週、またはそれを超える週)の間、1か月(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月、またはそれを超える月)の間、および/または1年(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年、またはそれを超える年;あるいはその任意の組み合わせおよび/または部分)の間、起こる(例として、持続する、正常範囲内に留まる等)可能性がある。理解されおよび正当に評価される通り、用語および定義は、多数の方法で提示され得るものであり、用語 持続するを明示的に使用しない場合もあり、上記の範囲は、発現の持続時間または計測の経過時間の期間が、特定の範囲内に留まる期間(例として、血清レベルが、特定の範囲または所与の範囲のままである)をいう場合もある。
【0162】
いくつかの側面では、本開示の方法は、(a)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-αサブユニットである、機能性BCKDHAタンパク質;および/または(b)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-βサブユニットである、機能性BCKDHBタンパク質;の発現を、対象において促進することに関し、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含有するカプシドを含むrAAVを対象に投与することを含み、ここで、対象は、メープルシロップ尿症(MSUD)に関連する機能喪失変異を有する少なくとも1つの内因性BCKDHAおよび/またはBCKDHB対立遺伝子を含み、対象におけるロイシン、イソロイシンおよび/またはバリンの血清BCAA濃度は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである。
【0163】
いくつかの側面では、本開示の方法は、本開示の方法は、(a)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-αサブユニットである、機能性BCKDHAタンパク質;および/または(b)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-βサブユニットである、機能性BCKDHBタンパク質;の発現を、対象において促進することに関し、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含有するカプシドを含むrAAVを対象に投与することを含み、ここで、対象は、メープルシロップ尿症(MSUD)に関連する機能喪失変異を有する少なくとも1つの内因性BCKDHAおよび/またはBCKDHB対立遺伝子を含み、対象におけるイソロイシンに対するロイシンおよび/またはロイシンに対するバリンの血清濃度比は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである。
【0164】
いくつかの側面では、本開示の方法は、導入遺伝子を、それを必要とする対象に送達することに関し、ここで、導入遺伝子は、BCKDHAおよび/またはBCKDHBを含み、対象の肝臓および/または骨格筋において導入遺伝子を発現するように操作された核酸を含有するカプシドを含むrAAVを対象に投与することによって、導入遺伝子の発現が、対象におけるBCAA比血清レベルを正常化させる。
【0165】
いくつかの側面では、本開示の方法は、導入遺伝子を、それを必要とする対象に送達することに関し、ここで、導入遺伝子は、BCKDHAおよび/またはBCKDHBを含み、対象の肝臓および/または骨格筋において導入遺伝子を発現するように操作された核酸を含有するカプシドを含むrAAVを対象に投与することによって、導入遺伝子の発現が、対象のロイシン、イソロイシン、および/またはバリン血清レベルを正常化させる。
【0166】
いくつかの態様では、本開示の方法は、血清レベルを正常化させるために使用される。いくつかの態様では、血清レベルは、血清中のBCAAの2つの測定値の間にある場合、正常化されている。いくつかの態様では、測定されるBCAAは、ロイシン、イソロイシン、バリン、またはそれらの組合せである。いくつかの態様では、測定されるBCAAはロイシンである。いくつかの態様では、測定されるBCAAはイソロイシンである。いくつかの態様では、測定されるBCAAはバリンである。いくつかの態様では、血清レベルは、(a)ロイシンが50~230マイクロモル/リットル(μmol/L);(b)イソロイシンが10~190μmol/L;および/または(c)バリンが110~330μmol/Lの間にある場合、正常化されている。いくつかの態様では、血清レベルは、(a)ロイシンが80~200マイクロモル/リットル(μmol/L);(b)イソロイシンが40~160μmol/L;および/または(c)バリンが140~300μmol/Lの間にある場合、正常化されている。いくつかの態様では、対象は、ヒトである。いくつかの態様では、対象は、マウスである。いくつかの態様では、対象はウシ(bovine)である。
【0167】
いくつかの態様では、本開示の方法は、血清レベルのBCAAの比を正常化させるために使用される。いくつかの態様では、BCAA比は、イソロイシンに対するロイシンおよび/またはロイシンに対するバリンである。いくつかの態様では、血清レベルは、(a)イソロイシンに対するロイシンがモルに対して1.2~1.9モル(mol/mol);および/または(b) ロイシンに対するバリンが1.1~1.8mol/molの間にある場合、正常化されている。いくつかの態様では、血清レベルは、(a)イソロイシンに対するロイシンがモルに対して1.4~1.7(mol/mol);および/または(b)ロイシンに対するバリンが1.3~1.6mol/molの間にある場合、正常化されている。
【0168】
いくつかの態様では、正常化の測定単位(measure)は、1日(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90日、またはそれを超える日)を超える間、1週(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52週、またはそれを超える週)を超える間、1月(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12月、またはそれを超える月)を超える間、および/または1年(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年、またはそれを超える年;あるいはその任意の組合せおよび/または部分)を超える間、測定され得る。
【0169】
対象は、ヒト、マウス、ラット、ブタ、イヌ、ネコ、ウシ(cattle)、または非ヒト霊長類動物であり得る。いくつかの態様では、対象はヒトである。投与することは、細胞または対象を、本開示の単離された核酸、rAAVまたは組成物と接触させることを意味する。投与の非限定的な例は、静脈内注射、動脈内注射、頭蓋内注射、髄腔内注射、脳内注射、点滴、または吸入を包含する。
【0170】
例示的な配列
この表は、本明細書によって開示される通りのいくつかの例示的な配列を示すが、限定するものではない。本明細書は、ASCII形式のテキストファイルとして本明細書と同時に提出された配列表を包含する。配列表およびその中に含有される全ての情報は、本明細書に明示的に組み込まれ、出願された通りの本明細書の一部を構成する。
【0171】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【表1-18】
【表1-19】
【表1-20】
【表1-21】
【表1-22】
【表1-23】
【表1-24】
【表1-25】
【表1-26】
【表1-27】
【0172】
例
例1:BCKDHA遺伝子治療の分析
MSUDは、分岐鎖アミノ酸(BCAA;ロイシン、イソロイシン、およびバリン)およびそれらのケト酸誘導体の分解に影響を及ぼす希少遺伝性疾病である。これは、分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体(BCKDHA、BCKDHB、およびDBT)のサブユニットをコードする3つの遺伝子のうちの1つにおける二対立遺伝子(biallelic)変異によって引き起こされる。重度の(古典型)MSUDは、処置しなければ致死的である。食事性BCAA制限は、処置の中心であるが、実施が困難であって、不完全な有効性を有し、偶発的かつ生命を脅かす脳症発作に対して保護することができない。肝臓移植は、食事療法の有効な代替法であるが、手術および長期免疫抑制のリスクを必然的に伴う。
【0173】
MSUDは、世界中で出生185,000人におよそ1人が罹患し、ほとんどの米国の州および先進国でスクリーニングされている。出生罹患頻度(birth incidence)は、4.5%の集団特異的キャリア頻度で隔離している一般的なBCKDHA創始者バリアント(c.1312 T>A;p.Tyr438Asn)により、北米の旧秩序メノナイトの中でははるかに高い(500人に約1人)。BCKDHAおよびBCKDHB変異(例として、BCKDHA c.1312T>Aについてホモ接合性の患者)は、MSUDの最もよく見られる原因であり、これらの症例の大部分は重度の古典型である。これらの型の患者は、極めて低い(<2%)BCKDC酵素活性を有し、生後数日以内に生化学的に不安定になる。天然に存在するBCKDHA機能喪失変異(c.248C>T)は、1986年初期にオーストラリア短角牛およびヘレフォード牛(cattle)で同定され、2015年に中央インディアナ州の群れの中で再発見された。BCKDHA c.248C>Tについてホモ接合性のウシ新生仔は、ヒト疾患と類似した表現型を有する。ヒトおよびウシ(bovine)配列のアラインメントが行われ、評価された(
図1A)。
【0174】
コドン最適化ヒトBCKDHA遺伝子を発現する組換えAAVベクターを確立した(opti-BCKDHA;配列番号1)。完全AAVおよび自己相補的ベクターを開発した(
図1B)。タンパク質発現を様々な細胞株で点検した(
図1C)。opti-BCKDHAカセットは、全身注射を介して、内因性BCKDHAがWT動物および正常ヒトでは高度に発現されている肝臓および骨格筋を効率的に標的化する、AAV9にパッケージングした。組換えAAV9-opti-BCKDHAが全身注射によって野生型新生仔マウスに送達された。漸増用量を使用し、遺伝子送達の安全性および有効性を決定した。
【0175】
例2:BCKDHAまたはBCKDHB変異によって引き起こされるメープルシロップ尿症(MSUD)の遺伝子治療
目的は、BCKDHAまたはBCKDHB二対立遺伝子変異によって引き起こされるMSUDのためのAAV媒介性遺伝子置換療法を開発することであった。BCKD複合体のE1-αおよびE1-βサブユニットをそれぞれコードする、コドン最適化ヒトBCKDHA遺伝子(opti-BCKDHA;配列番号1)またはBCKDHB遺伝子(opti-BCKDHB;配列番号4)を発現するAAVベクターを最初に設計した。機能性BCKDC E1成分のヘテロ四量体構造(「α2β2」としても当技術分野で知られているアルファ2-ベータ2)、およびBCKDHAまたはBCKDHBの単独発現はBCKDC酵素活性を効率的に回復させない可能性があることを考慮して、BCKDHAおよびBCKDHBを同時に発現するデュアルベクター(dual-vector)を設計した(
図1Bおよび
図2)。これらのベクターのタンパク質発現は、HEK293T細胞株において検証した(
図3A)。BCKDC酵素活性アッセイに基づいて、これらのベクターが機能性であることが見出された(
図3B)。BCKDHAおよびBCKDHBを共発現させた場合、活性の回復がより効率的である。opti-BCKDHA、opti-BCKDHB、およびdual-opti-BCKDHA/BCKDHBカセットを、全身注射を介して、野生型動物および正常ヒトにおいて最も高いBCKD活性を示す組織である肝臓および骨格筋を効率的に標的化する、AAV9にパッケージングした。
【0176】
opti-BCKDHAまたはopti-BCKDHBを発現する組換えAAV9ベクターは、全身注射によって野生型新生仔マウスに送達し、漸増用量を使用して、遺伝子送達の安全性および効率を決定した(
図4)。
【0177】
本明細書においては、BCKDHAまたはBCKDHB二対立遺伝子変異によって引き起こされるMSUD(MSUD)を処置するための戦略が提供される。食事性BCAA制限は、処置の中心であるが、実施が困難であって、不完全な有効性を有し、偶発的かつ生命を脅かす脳症発作に対して保護することができない。肝臓移植は、食事療法の有効な代替法であるが、手術および長期免疫抑制のリスクを必然的に伴う。いくつかの態様では、既存の処置と比較して、BCKDHAおよび/またはBCKDHB遺伝子置換療法は、MSUDを処置するためのより安全で効率的な選択肢である。BCKDCの機能性E1のヘテロ四量体構造を考慮すると、BCKDHAおよびBCKDHBを同時に発現するデュアルベクターは、BCKDHAまたはBCKDHB変異を有する患者にとってより良くより効率的な選択肢であり得る。
【0178】
BCKDHAおよびBCKDHBを発現するデュアルベクターのin vivo効果を試験するために、Bckdha KO(ノックアウト)マウスモデルを使用し、rAAV9ベクターの治療有効性を試験した。KOマウスは、早期死亡、体重低下、ならびに血清中の分岐鎖アミノ酸およびアロイソロイシンの上昇を示した(
図10)。P0でのBckdha KOマウスへのベクターの静脈内(IV)注射は、用量依存的に致死性をレスキューした(
図11Aおよび11B)。
図11Cは、生存マウスが成長し、野生型同腹仔と類似の挙動を示し、無制限食餌(タンパク質20%)で4週後に正常またはほぼ正常な血漿BCAAを有したことを示す(
図11D)。処置されたマウスはまた、16週齢で7日間の高タンパク質食餌(タンパク質40%)負荷に耐えることもできた(
図12)。本出願の発明者らは、驚くべきことに、レスキューされたBckdha KOマウスは、非制限食餌で20週齢において、または7日間の高タンパク質食餌負荷後22週齢において、脳浮腫を示さないことを見出した(
図13)。同じAAV9デュアル遺伝子ベクターはまた、操作されたBckdhb KOマウスにおいて早期致死および成長をレスキューした(
図14)。
【0179】
rAAV9デュアル遺伝子ベクターを5.0×10
13GC/kg用量で静脈内注射した後、新生仔のBckdha欠損仔ウシを、示された時点で筋生検から形質導入効率について分析した(
図15A~15C)。処置された仔ウシは、早期致死からレスキューされ、正常な成長範囲内で成長した(
図16Aおよび16B)。本出願の発明者らは、血漿中の分岐鎖アミノ酸およびアロイソロイシン濃度の上昇が、処置後に有意に低下することを見出した(
図16C~16E)。加えて、分岐鎖アミノ酸の不均衡なモル比が回復された(
図16F)。マウスモデルおよびウシモデルにおけるin vivo分析は、生存期間の延長、正常な成長、および血液中の分岐鎖アミノ酸の低下に収束し、rAAV9デュアル遺伝子ベクターの強力な治療有効性を示している。
【0180】
例3:組換えAAV9は、新生仔および成体マウスにおける安全かつ効果的な送達機構を示す
opti-BCKDHAまたは/およびopti-BCKDHBを発現する組換えAAV9ベクターは、全身注射によって野生型新生仔マウスまたは成体マウスに送達した。漸増用量を使用して、遺伝子送達の安全性および効率が決定された(
図5A~6F)。明らかなALTまたは体重変化は、対照と比較してベクター処置マウスでは観察されなかった(
図5A~6F)。ベクター処置マウスにおける血清分岐鎖アミノ酸濃度および比もまた、正常範囲内であった(
図7A~7C)。これらのデータは、opti-BCKDHAまたは/およびopti-BCKDHBを発現するrAAV9ベクターの全体的な安全性を示す。ウシ(cattle)BCKDHAおよびBCKDHBを発現するT2Aおよび双方向性バイナリーベクターもまた、ヒトベクターの同じ設計戦略を使用して、BCKDHA c.248C>Tホモ接合仔ウシを処置するために設計した。(
図8A)。ヒトおよびウシ(cattle)ベクターの両方の発現が異なる細胞株において検証され、これは、異なる種におけるバイナリーベクターの広範な機能性を示している(
図8B)。
【0181】
他の態様
態様1 (a)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-αサブユニットである、機能性BCKDHAタンパク質;および/または(b)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-βサブユニットである、機能性BCKDHBタンパク質;の発現を、対象において促進するための方法であって、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含有して含むrAAVを対象に投与することを含み、対象は、メープルシロップ尿症(MSUD)に関連する機能喪失変異を有する少なくとも1つの内因性BCKDHAおよび/またはBCKDHB対立遺伝子を含み、対象におけるロイシン、イソロイシンおよび/またはバリンの血清BCAA濃度は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである、前記方法。
【0182】
態様2 (a)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-αサブユニットである、機能性BCKDHAタンパク質;および/または(b)分岐鎖α-ケト酸(BCAA)デヒドロゲナーゼ複合体のE1-βサブユニットである、機能性BCKDHBタンパク質;の発現を、対象において促進するための方法であって、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含有して含むrAAVを対象に投与することを含み、対象は、メープルシロップ尿症(MSUD)に関連する機能喪失変異を有する少なくとも1つの内因性BCKDHAおよび/またはBCKDHB対立遺伝子を含み、対象におけるイソロイシンに対するロイシンおよび/またはロイシンに対するバリンの血清濃度比は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである、前記方法。
【0183】
態様3 導入遺伝子を、それを必要とする対象に送達する方法であって、導入遺伝子は、BCKDHAおよび/またはBCKDHBを含み、対象の肝臓および/または骨格筋において導入遺伝子を発現するように操作された核酸を含有して含むrAAVを対象に投与することによって、導入遺伝子の発現が、対象におけるBCAA比血清レベルを正常化させる、前記方法。
【0184】
態様4 正常化された血清レベルが、(a)イソロイシンに対するロイシンがモルに対し約1.4~1.7モル(mol/mol);および/または(b)ロイシンに対するバリンが約1.3~1.6mol/molの範囲である、請求項3に記載の方法。
【0185】
態様5 導入遺伝子を、それを必要とする対象に送達する方法であって、導入遺伝子は、BCKDHAおよび/またはBCKDHBをコードし、対象の肝臓および/または骨格筋において導入遺伝子を発現するように操作された核酸を含むrAAVを対象に投与することによって、導入遺伝子の発現が、対象のロイシン、イソロイシン、および/またはバリン血清レベルを正常化させる、前記方法。
【0186】
態様6 正常化された血清レベルが、(a)ロイシンが約80~200マイクロモル/リットル(μmol/L);(b)イソロイシンが約40~160μmol/L;および/または(c)バリンが約140~300μmol/Lの範囲である、請求項5に記載の方法。
【0187】
態様7 カプシドタンパク質をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0188】
態様8 導入遺伝子が発現される場合、発現が投与後少なくとも8週間持続する、請求項3~7のいずれか一項に記載の方法。
【0189】
態様9 投与が全身注射によるものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0190】
態様10 カプシドがAAV9カプシドである、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【0191】
態様11 核酸が、コドン最適化ヒトBCKDHA遺伝子(opti-BCKDHA)、opti-BCKDHB、コドン最適化ウシ(cattle)BCKDHA遺伝子(opti-cBCKDHA)、opti-cBCKDHB、またはそれらの組合せを発現するように操作されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0192】
態様12 核酸が、配列番号1~8または11~12のいずれか1つに示される通りの配列を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0193】
態様13 核酸が、1つ以上の逆位末端反復(ITR)を含み、各ITRがAAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITRおよびAAV6 ITRからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0194】
態様14 少なくとも1つのITRが、デルタITR(ΔITR)である、請求項13に記載の方法。
【0195】
態様15 メープルシロップ尿症(MSUD)を有する対象を処置する方法であって、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含有して含むrAAVを対象に投与することを含み、対象におけるロイシン、イソロイシンおよび/またはバリンの血清BCAA濃度は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである、前記方法。
【0196】
態様16 メープルシロップ尿症(MSUD)を有する対象を処置する方法であって、方法は、対象の肝臓および/または骨格筋においてBCKDHAおよび/またはBCKDHBを発現するように操作された核酸を含有して含むrAAVを対象に投与することを含み、対象におけるイソロイシンに対するロイシンおよび/またはロイシンに対するバリンの血清濃度比は、投与後少なくとも3週間、正常範囲のままである、前記方法。
【0197】
態様17 カプシドタンパク質をさらに含む、請求項15または請求項16に記載の方法。
【0198】
態様18 請求項16に記載のrAAVを含む、医薬組成物。
【0199】
態様19 配列番号11~12によって示される通りの配列を含む、単離された核酸。
【0200】
態様20 請求項19に記載の単離された核酸構築物を含む、宿主細胞。
【0201】
態様21 細胞が、真核細胞、細菌細胞または昆虫細胞である、請求項20に記載の宿主細胞。
【0202】
態様22 AAVカプシドタンパク質をコードする単離された核酸をさらに含む、請求項21に記載の宿主細胞。
【0203】
態様23 カプシドタンパク質が、AAV9カプシドタンパク質である、請求項22に記載の宿主細胞。
【0204】
本明細書において明示的に記載された態様に加えて、本開示において開示された特徴の全ては、任意の組合せ(例として、並べ替え、組合せ)で組み合わされてもよいが理解されるべきである。本開示において開示された各要素は、同じ、同等、または類似の目的を果たす代替的な特徴によって置き換えられてもよい。したがって、特に別段明記されない限り、開示された各特徴は、等価または類似の特徴の一般的な一連の例にすぎない。
【0205】
上記の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確かめることができ、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明を様々な用途および条件に適応させるために本発明の様々な変更および改変を行うことができる。したがって、他の態様もまた、特許請求の範囲内である。
【0206】
均等物および範囲
本開示は、本明細書において明示的に記載された特定の態様のいずれかまたは全てに限定されることはなく、したがって、当然ながら変化し得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないこともまた、理解されるべきである。
【0207】
別段定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において記載されたものと類似または同等の任意の方法および材料もまた、本開示の実行または試験に使用され得るが、ここでは好ましい方法および材料が記載されている。
【0208】
本明細書で引用される全ての刊行物および特許は、刊行物が引用される関連する方法および/または材料を開示および記載するために引用される。そのような刊行物および特許は全て、あたかも各個々の刊行物または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。そのような参照による組み込みは、引用された刊行物および特許に記載された方法および/または材料に明示的に限定され、引用された刊行物および特許からの辞書的な定義には及ばない(すなわち、本開示において明示的に繰り返されていない、引用された刊行物および特許における辞書的な定義は、そのように扱われるべきではなく、添付の特許請求の範囲に現れる任意の用語を定義するものとして読まれるべきではない。)。組み込まれた参考文献のいずれかと本開示との間に矛盾がある場合、本開示が優先するものとする。加えて、先行技術に該当する本開示の任意の特定の態様は、特許請求の範囲のいずれか1つ以上から明示的に除外され得る。かかる態様は当業者に既知であるとみなされるため、それらは、除外が本明細書においてはっきりと記載されていない場合であっても、除外され得る。本開示のいずれか特定の態様は、先行技術の存在に関するか否かにかかわらず、いずれかの請求項から、いずれかの理由で除外され得る。
【0209】
任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示のためのものであり、本開示が先行開示によってそのような刊行物に先行する権利がないことの承認として解釈されるべきではない。さらに、提供された公開日は、独立して確認する必要がある場合もある、実際の公開日とは異なり得る。
【0210】
本開示を読めば当業者には明らかになるように、本明細書において記載および説明された個々の態様の各々は、本開示の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの態様のいずれかの特徴から容易に分離されまたは組み合わせられ得る、個別の構成要素および特徴を有する。記載された任意の方法は、記載された事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で実施され得る。
【0211】
反対に指示されないかまたは別段文脈から明白でない限り、請求項において、「a」、「an」、および「the」等の冠詞は1つまたは1つよりも多いことを意味し得る。本明細書において使用される限り、性別における代名詞(例として、男性、女性、中性、その他等)は、別段文脈が明らかにそうでないことを指示または要求しない限り、暗示された性別にかかわらず、性別中立として解釈されるものとする(すなわち、全ての性別を等しくいうと解釈される)。本明細書において使用される限り、別段文脈が明らかにそうでないことを指示または要求しない限り、単数形で使用される単語は複数形を包含し、複数形で使用される単語は、単数形を包含する。反対に指示されないかまたは別段文脈から明白でない限り、ある群の1つ以上のメンバーの間に「または」を包含する請求項または記載は、その群の1つ、1つより多い、または全てのメンバーが、所与の産物もしくはプロセスに存在するか、それに採用されるか、または別段それに関係する場合に、満たされると考えられる。本開示は、その群の正確に1つのメンバーが、所定の産物もしくはプロセスに存在するか、それに採用されるか、または別段それに関係する態様を包含する。本開示は、その群の1つより多いかまたは全てのメンバーが、所定の産物もしくはプロセスに存在するか、それに採用されるか、または別段それに関係する態様を包含する。
【0212】
さらには、本開示は、列挙された請求項の1以上からの1以上の限定、要素、節、および記述用語(descriptive term)が、別の請求項へ導入される、全てのバリエーション、組合せ、および並べ替えを包括する。例えば、別の請求項に従属するいずれかの請求項は、同じ基本請求項に従属するいずれかの他の請求項に見出される1つ以上の限定を包含するように改変され得る。要素が、(例として、マーカッシュ群形式で)列挙されたものとして提示されている場合、要素の各下位群もまた開示されており、いずれの要素も群から除去され得る。一般に、本開示、または本開示の側面が、特定の要素および/または特徴を含むとして言及される場合、本開示のある態様または本開示のある側面は、かかる要素および/または特徴からなるか、またはそれらから本質的になると理解されるべきである。簡潔さを目的として、それらの態様は、本明細書おいて、in haec verbaで具体的に記載されていない。用語「含むこと(comprising)」および「含有すること(containing)」が、オープンであることが意図されており、追加の要素または工程の包含を許容することもまた留意される。範囲が与えられる場合、別段特定されない限り、端点はそのような範囲に包含される。さらには、別段の指示がないか、またはそれとは別に、文脈および当業者の理解から明らかでない場合に限り、範囲として表現された値は、いずれか具体的な値、または本開示の異なる態様では述べられた範囲内の下位範囲(sub-range)を、文脈が明確に別段の指図をしない限り範囲の下限の単位の10倍まで、想定することができる。
【0213】
当業者は、本明細書において記載される具体的な態様の多くの均等物を、認識するか、またはせいぜい日常的な実験を使用して確かめることができるであろう。本明細書において記載される本態様の範囲は、上の記載に限定されることは意図されておらず、むしろ添付の特許請求の範囲に記載されている通りである。当業者は、以下の特許請求の範囲に定義される通り、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、この説明に対する様々な変更および改変が行われ得ることを理解するであろう。
【配列表】
【国際調査報告】