(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】燃焼システムの制御方法、燃焼システムおよびディーゼルエンジン
(51)【国際特許分類】
F02D 41/38 20060101AFI20240403BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240403BHJP
F02D 23/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F02D41/38
F02D45/00 362
F02D45/00 368S
F02D23/02 H
F02D23/02 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566498
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 CN2022073116
(87)【国際公開番号】W WO2022262276
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】202110669915.1
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521272506
【氏名又は名称】▲い▼柴動力股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WEICHAI POWER CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】197 A,East Fushou Street High-Tech Development Zone Weifang,Shandong 261061,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】譚 旭光
(72)【発明者】
【氏名】周 鵬
(72)【発明者】
【氏名】▲トン▼ 徳輝
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼ 斌
(72)【発明者】
【氏名】谷 允成
(72)【発明者】
【氏名】劉 曉▲シン▼
【テーマコード(参考)】
3G092
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3G092AA02
3G092AB03
3G092BB06
3G092BB08
3G092DE03
3G301HA02
3G301JA01
3G301JA02
3G301LB11
3G301MA18
3G301MA27
3G301MA28
3G301PC01
3G301PE03
3G384AA03
3G384BA15
3G384BA19
3G384DA01
3G384DA02
3G384FA29
3G384FA58
(57)【要約】
燃焼システムの制御方法、燃焼システムおよびディーゼルエンジンであって、燃焼システムの制御方法は、2回の主燃料噴射により、2回の噴射された油ジェットのシリンダ内での巻き込み作用の空間強度が重畳することができ、シリンダ内の流れ場に対する油ジェットの2回の組織を実現し、シリンダ内の乱流を強化し、シリンダ内のオイルとガスとの混合スピードを向上させ、燃焼中後期の燃焼速度およびシリンダ内の空気利用率を効果的にアップし、それに、第1主燃料噴射の継続時間長および第1噴射圧力を特定することで、シリンダ圧力が少なくともシリンダ圧上限閾値に達することが可能であるのを保証し、第2主燃料噴射の際に、シリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間に、各時点におけるシリンダ圧変化曲線の曲線傾きの変化率がいずれも設定傾き変化率範囲内にあり、それに、クランクシャフトの回転角度が第1プリセット角度以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンと、インジェクタと、シリンダとを含み、前記ピストンは前記シリンダ内に往復上下運動可能である燃焼システムの制御方法であって、前記インジェクタは前記ピストンの運動周期毎に少なくとも第1主燃料噴射および第2主燃料噴射を順次実行し、前記インジェクタは前記第1主燃料噴射から前記第2主燃料噴射までの過程において油噴射を継続し、前記インジェクタが前記第1主燃料噴射を実行する過程において油噴射スピードが最高の時に対応する噴射圧力は第1噴射圧力であり、前記インジェクタが前記第2主燃料噴射を実行する過程において油噴射スピードが最高の時に対応する噴射圧力は第2噴射圧力であり、
前記燃焼システムの制御方法は、
前記第1主燃料噴射の継続時間長および第1噴射圧力を特定することで、前記第1主燃料噴射の過程における少なくとも一部の時点のシリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値に達することが可能であるステップと、
前記第2主燃料噴射の継続時間長および前記第2噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整することで、前記第2主燃料噴射の過程において、前記シリンダ圧力が前記シリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間に、各時点におけるシリンダ圧変化曲線の曲線傾きの変化率がいずれも設定傾き変化率範囲内にあり、それに、前記シリンダ圧力が前記シリンダ圧上限閾値から前記設定シリンダ圧まで低下する期間に対応するクランクシャフトの回転角度が第1プリセット角度以上であるステップと、を含む、
ことを特徴とする燃焼システムの制御方法。
【請求項2】
前記第1主燃料噴射の継続時間長および第1噴射圧力を特定することで、前記第1主燃料噴射の過程における少なくとも一部の時点のシリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値に達することが可能である前記ステップは、
前記第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力が常にシリンダ圧上限閾値に達しないと、前記第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力が少なくとも一部の時点で前記シリンダ圧上限閾値に達し、かつ前記シリンダ圧力が初めて前記シリンダ圧上限閾値に達する時に対応するクランク角度が第1角度を超えなく、かつ前記シリンダ圧力が第1シリンダ圧力から前記シリンダ圧上限閾値まで上昇する期間にクランクシャフトの回転角度が第2プリセット角度以上であるまで、前記第1主燃料噴射の開始時間、終了時間、および現在第1噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整するステップであって、前記シリンダ圧力が前記第1シリンダ圧力に等しくなる時に対応するシリンダ容積は、前記シリンダ圧力が初めて前記シリンダ圧上限閾値に達することに対応するシリンダ容積と同じであるステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃焼システムの制御方法。
【請求項3】
ピストンの運動周期毎に、インジェクタが第1主燃料噴射を開始する時間を第1時間t
1とし、第1主燃料噴射と第2主燃料噴射との間でインジェクタが噴射する燃油のスピードが最も低い時間を第2時間t
2とし、第1噴射圧力をP
1とし、
前記第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力が常にシリンダ圧上限閾値に達しないと、前記第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力が少なくとも一部の時点で前記シリンダ圧上限閾値に達し、かつ前記シリンダ圧力が初めて前記シリンダ圧上限閾値に達する時に対応するクランク角度が第1角度を超えなく、かつ前記シリンダ圧力が前記第1シリンダ圧力から前記シリンダ圧上限閾値まで上昇する期間にクランクシャフトの回転角度が第2プリセット角度以上であるまで、前記第1主燃料噴射の開始時間、終了時間、および現在第1噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整する前記ステップは、
第1主燃料噴射の過程において、シリンダ内のシリンダ圧力Pをリアルタイムに収集し、クランクシャフトの角度をリアルタイムに収集するとともに、シリンダ圧力Pとシリンダ圧上限閾値P
maxとを比較し、かつクランクシャフトの角度が第1角度を超えているか否かを判断するステップと、
シリンダ圧力Pがシリンダ圧上限閾値P
maxよりも小さく、かつクランクシャフトの角度が第1角度の後に位置すると、第1噴射圧力P
1の数値を大きくし、および/または、第2時間t
2と第1時間t
1との差を全体として小さくするステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の燃焼システムの制御方法。
【請求項4】
第1噴射圧力P
1の数値を大きくし、および/または、第2時間t
2と第1時間t
1との差を全体として小さくするステップは、
第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力の最大値P
xを取得するステップと、
n=(P
max-P
x)/P
maxを算出するステップと、
n≦5%であると、第1噴射圧力P
1の数値のみを第1設定値大きくするステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の燃焼システムの制御方法。
【請求項5】
n>5%であると、第1噴射圧力P
1の数値を第1設定値大きくし、かつ第1時間t
1および/または第2時間t
2を調整することで第2時間t
2と第1時間t
1との差が全体として第2設定値小さくする、
ことを特徴とする請求項4に記載の燃焼システムの制御方法。
【請求項6】
シリンダ圧力Pがシリンダ圧上限閾値P
max以上であり、かつクランクシャフトの角度が第1角度の前に位置すると、
シリンダ圧力Pがシリンダ圧上限閾値P
maxに等しくなる時のシリンダ内のリアルタイムなシリンダ容積Vを取得し、
シリンダ容積とクランク角度との関係mapに応じて、シリンダ容積がリアルタイムなシリンダ容積Vに等しくなる時に対応するシリンダ上り時のクランク角度φ
aおよびシリンダ下り時のクランク角度φ
bを取得し、
φ
1=φ
b-φ
aを算出し、
φ
1と第2プリセット角度φ
nの大きさを判断し、
φ
1<φ
nであると、第1噴射圧力P
1の数値を第3設定値大きくし、および/または第1時間t
1および/または第2時間t
2を調整することで第2時間t
2と第1時間t
1との差が全体として第4設定値小さくする、
ことを特徴とする請求項3に記載の燃焼システムの制御方法。
【請求項7】
第2噴射圧力をP
2とし、前記第2主燃料噴射の継続時間長および前記第2噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整することで、前記第2主燃料噴射の過程において、前記シリンダ圧力が前記シリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間に、各時点におけるシリンダ圧変化曲線の曲線傾きの変化率がいずれも設定傾き変化率範囲内にあり、それに、前記シリンダ圧力が前記シリンダ圧上限閾値から前記設定シリンダ圧まで低下する期間に対応するクランクシャフトの回転角度が第1プリセット角度以上である前記ステップは、
φ
1≧φ
nの場合、
シリンダ圧力PがP
nに等しくなる時のクランク角度φ
cをmapに応じて取得するステップであって、φ
c>φ
bであり、P
nは設定シリンダ圧であってP
max>P
nであるステップと、
クランク角度φ
bからクランク角度φ
cまでのセクションのシリンダ圧力とクランク角度との間の関係曲線yを取得するステップと、
k
1=dy/dφ、k
2=dk
1/dφを算出するステップであって、φの値はφ
b~φ
cであるステップと、
k
2の絶対値の最大値k
maxを取得するステップと、
k
max、プリセットパラメータk
aの大きさを比較するステップと、
k
max<k
aであると、第2噴射圧力P
2の数値を第5設定値大きくするステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の燃焼システムの制御方法。
【請求項8】
インジェクタが第2主燃料噴射を終了する時間を第3時間t
3とし、k
max≧k
aであると、燃焼システムの制御方法はさらに、
φ
2=φ
c-φ
bを算出するステップと、
φ
2と第1プリセット角度φ
mの大きさを判断するステップと、
φ
2<φ
mであると、第3時間t
3の数値を第6設定値大きくするステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の燃焼システムの制御方法。
【請求項9】
φ
2≧φ
mであると、第3時間t
3の数値をそのまま保持する、
ことを特徴とする請求項8に記載の燃焼システムの制御方法。
【請求項10】
燃焼システムであって、請求項1~9のいずれか1項に記載の燃焼システムの制御方法を実施するために用いられ、燃焼システムはピストンと、インジェクタと、シリンダと、コントローラとを含み、前記コントローラは、前記インジェクタが前記ピストンの運動周期毎に少なくとも第1主燃料噴射および第2主燃料噴射を順次実行し、それに、前記インジェクタが前記第1主燃料噴射から前記第2主燃料噴射までの過程において油噴射を継続するように制御するために用いられ、
前記コントローラは、前記第1主燃料噴射の継続時間長および第1噴射圧力を特定することで、前記第1主燃料噴射の過程における少なくとも一部の時点のシリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値に達することが可能であるために用いられ、
前記コントローラは、前記第2主燃料噴射の継続時間長および前記第2噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整することで、前記第2主燃料噴射の過程において、前記シリンダ圧力が前記シリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間に、各時点におけるシリンダ圧変化曲線の曲線傾きの変化率がいずれも設定傾き変化率範囲内にあり、それに、前記シリンダ圧力が前記シリンダ圧上限閾値から前記設定シリンダ圧まで低下する期間に対応するクランクシャフトの回転角度が第1プリセット角度以上であるために用いられる、
ことを特徴とする燃焼システム。
【請求項11】
請求項10に記載の燃焼システムを含む、
ことを特徴とするディーゼルエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディーゼルエンジンという技術的分野に関し、特に燃焼システムの制御方法および燃焼システムならびにディーゼルエンジンに関する。
【0002】
本出願は2021年06月17日にて中国特許庁に提出され、出願番号が202110669915.1であり、発明名称が「燃焼システムの制御方法、燃焼システムおよびディーゼルエンジン」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容が援用されることで本出願に結合される。
【背景技術】
【0003】
従来のディーゼルエンジンの燃焼組織方式は主に、拡散燃焼を主要な方式とし、燃焼速度は、オイルとガスとの混合速度に大きく制限される。なお、現段階の高圧コモンレールディーゼルエンジンはいずれも1回の主燃料噴射を採用し、単回の高圧噴射の巻き込み作用は主に霧化領域で発生され、油ジェットの中段で巻き込み作用が弱くなり、オイルとガスとの混合効果が悪く、それに、ディーゼルエンジンの回転数が高いため、4ストロークディーゼルエンジンに対して、オイルとガスとの混合の組織のための時間が非常に短く、単回の噴射において発生した噴流および液滴は、壊れて霧化させた後、適時に燃焼室内で拡散して空気と均一な混合気を形成するのが難しく、これにより、燃焼過程の急速な進行を制限し、ディーゼルエンジンの電力出力をさらに制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、燃油噴射後の空気との混合の均一性をアップするように、燃焼システムの制御方法および燃焼システムならびにディーゼルエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一方、本発明は、ピストンと、インジェクタと、シリンダとを含み、前記ピストンは前記シリンダ内に往復上下運動可能である燃焼システムの制御方法であって、前記インジェクタは前記ピストンの運動周期毎に少なくとも第1主燃料噴射および第2主燃料噴射を順次実行し、それに、前記インジェクタは前記第1主燃料噴射から前記第2主燃料噴射までの過程において油噴射を継続し、前記インジェクタが前記第1主燃料噴射を実行する過程において油噴射スピードが最高の時に対応する噴射圧力は第1噴射圧力であり、前記インジェクタが前記第2主燃料噴射を実行する過程において油噴射スピードが最高の時に対応する噴射圧力は第2噴射圧力であり、
前記燃焼システムの制御方法は、
前記第1主燃料噴射の継続時間長および第1噴射圧力を特定することで、前記第1主燃料噴射の過程における少なくとも一部の時点のシリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値に達することが可能であるステップと、
前記第2主燃料噴射の継続時間長および前記第2噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整することで、前記第2主燃料噴射の過程において、前記シリンダ圧力が前記シリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間に、各時点におけるシリンダ圧変化曲線の曲線傾きの変化率がいずれも設定傾き変化率範囲内にあり、それに、前記シリンダ圧力が前記シリンダ圧上限閾値から前記設定シリンダ圧まで低下する期間に対応するクランクシャフトの回転角度が第1プリセット角度以上であるステップと、を含む、燃焼システムの制御方法を提供する。
【0006】
燃焼システムの制御方法の好ましい技術案として、前記第1主燃料噴射の継続時間長および第1噴射圧力を特定することで、前記第1主燃料噴射の過程における少なくとも一部の時点のシリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値に達することが可能である前記ステップは、
前記第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力が常にシリンダ圧上限閾値に達しないと、前記第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力が少なくとも一部の時点で前記シリンダ圧上限閾値に達し、かつ前記シリンダ圧力が初めて前記シリンダ圧上限閾値に達する時に対応するクランク角度が第1角度を超えなく、かつ前記シリンダ圧力が第1シリンダ圧力から前記シリンダ圧上限閾値まで上昇する期間にクランクシャフトの回転角度が第2プリセット角度以上であるまで、前記第1主燃料噴射の開始時間、終了時間、および現在第1噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整するステップであって、前記シリンダ圧力が前記第1シリンダ圧力に等しくなる時に対応するシリンダ容積は、前記シリンダ圧力が初めて前記シリンダ圧上限閾値に達することに対応するシリンダ容積と同じであるステップを含む。
【0007】
燃焼システムの制御方法の好ましい技術案として、ピストンの運動周期毎に、インジェクタが第1主燃料噴射を開始する時間を第1時間t1とし、第1主燃料噴射と第2主燃料噴射との間でインジェクタが噴射する燃油のスピードが最も低い時間を第2時間t2とし、第1噴射圧力をP1とし、
前記第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力が常にシリンダ圧上限閾値に達しないと、前記第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力が少なくとも一部の時点で前記シリンダ圧上限閾値に達し、かつ前記シリンダ圧力が初めて前記シリンダ圧上限閾値に達する時に対応するクランク角度が第1角度を超えなく、かつ前記シリンダ圧力が前記第1シリンダ圧力から前記シリンダ圧上限閾値まで上昇する期間にクランクシャフトの回転角度が第2プリセット角度以上であるまで、前記第1主燃料噴射の開始時間、終了時間、および現在第1噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整する前記ステップは、
第1主燃料噴射の過程において、シリンダ内のシリンダ圧力Pをリアルタイムに収集し、クランクシャフトの角度をリアルタイムに収集するとともに、シリンダ圧力Pとシリンダ圧上限閾値Pmaxとを比較し、かつクランクシャフトの角度が第1角度を超えているか否かを判断するステップと、
シリンダ圧力Pがシリンダ圧上限閾値Pmaxよりも小さく、かつクランクシャフトの角度が第1角度の後に位置すると、第1噴射圧力P1の数値を大きくし、および/または、第2時間t2と第1時間t1との差を全体として小さくするステップと、を含む。
【0008】
燃焼システムの制御方法の好ましい技術案として、第1噴射圧力P1の数値を大きくし、および/または、第2時間t2と第1時間t1との差を全体として小さくするステップは、
第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力の最大値Pxを取得するステップと、
n=(Pmax-Px)/Pmaxを算出するステップと、
n≦5%であると、第1噴射圧力P1の数値のみを第1設定値大きくするステップと、を含む。
【0009】
燃焼システムの制御方法の好ましい技術案として、n>5%であると、第1噴射圧力P1の数値を第1設定値大きくし、かつ第1時間t1および/または第2時間t2を調整することで第2時間t2と第1時間t1との差が全体として第2設定値小さくする。
【0010】
燃焼システムの制御方法の好ましい技術案として、シリンダ圧力Pがシリンダ圧上限閾値Pmax以上であり、かつクランクシャフトの角度が第1角度の前に位置すると、
シリンダ圧力Pがシリンダ圧上限閾値Pmaxに等しくなる時のシリンダ内のリアルタイムなシリンダ容積Vを取得し、
シリンダ容積とクランク角度との関係mapに応じて、シリンダ容積がリアルタイムなシリンダ容積Vに等しくなる時に対応するシリンダ上り時のクランク角度φaおよびシリンダ下り時のクランク角度φbを取得し、
φ1=φb-φaを算出し、
φ1、第2プリセット角度φnの大きさを判断し、
φ1<φnであると、第1噴射圧力P1の数値を第3設定値大きくし、および/または第1時間t1および/または第2時間t2を調整することで第2時間t2と第1時間t1との差が全体として第4設定値小さくする。
【0011】
燃焼システムの制御方法の好ましい技術案として、第2噴射圧力をP2とし、前記第2主燃料噴射の継続時間長および前記第2噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整することで、前記第2主燃料噴射の過程において、前記シリンダ圧力が前記シリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間に、各時点におけるシリンダ圧変化曲線の曲線傾きの変化率がいずれも設定傾き変化率範囲内にあり、それに、前記シリンダ圧力が前記シリンダ圧上限閾値から前記設定シリンダ圧まで低下する期間に対応するクランクシャフトの回転角度が第1プリセット角度以上である前記ステップは、
φ1≧φnの場合、
シリンダ圧力PがPnに等しくなる時のクランク角度φcをmapに応じて取得するステップであって、φc>φbであり、Pnは設定シリンダ圧であってPmax>Pnであるステップと、
クランク角度φbからクランク角度φcまでのセクションのシリンダ圧力とクランク角度との間の関係曲線yを取得するステップと、
k1=dy/dφ、k2=dk1/dφを算出するステップであって、φの値はφc~φdであるステップと、
k2の絶対値の最大値kmaxを取得するステップと、
kmax、プリセットパラメータkaの大きさを比較するステップと、
kmax<kaであると、第2噴射圧力P2の数値を第5設定値大きくするステップと、を含む。
【0012】
燃焼システムの制御方法の好ましい技術案として、インジェクタが第2主燃料噴射を終了する時間を第3時間t3とし、kmax≧kaであると、燃焼システムの制御方法はさらに、
φ2=φc-φbを算出するステップと、
φ2、第1プリセット角度φmの大きさを判断するステップと、
φ2<φmであると、第3時間t3の数値を第6設定値大きくするステップと、を含む。
【0013】
燃焼システムの制御方法の好ましい技術案として、φ2≧φmであると、第3時間t3の数値をそのまま保持する。
【0014】
他方、本発明は、燃焼システムであって、任意の上記方案に記載の燃焼システムの制御方法を実施するために用いられ、燃焼システムはピストンと、インジェクタと、シリンダと、コントローラとを含み、前記コントローラは、前記インジェクタが前記ピストンの運動周期毎に少なくとも第1主燃料噴射および第2主燃料噴射を順次実行し、それに、前記インジェクタが前記第1主燃料噴射から前記第2主燃料噴射までの過程において油噴射を継続するように制御するために用いられ、
前記コントローラは、前記第1主燃料噴射の継続時間長および第1噴射圧力を特定することで、前記第1主燃料噴射の過程における少なくとも一部の時点のシリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値に達することが可能であるために用いられ、
前記コントローラは、前記第2主燃料噴射の継続時間長および前記第2噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整することで、前記第2主燃料噴射の過程において、前記シリンダ圧力が前記シリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間に、各時点におけるシリンダ圧変化曲線の曲線傾きの変化率がいずれも設定傾き変化率範囲内にあり、それに、前記シリンダ圧力が前記シリンダ圧上限閾値から前記設定シリンダ圧まで低下する期間に対応するクランクシャフトの回転角度が第1プリセット角度以上であるために用いられる、燃焼システムを提供する。
【0015】
さらに一方、本発明は、上記方案における燃焼システムを含むディーゼルエンジンを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0017】
本発明は燃焼システムの制御方法、燃焼システムおよびディーゼルエンジンを提供し、該燃焼システムの制御方法は、2回の主燃料噴射により、2回の主燃料噴射された高速油ジェットのシリンダ内での巻き込み作用の空間強度が重畳することができ、シリンダ内の流れ場に対する油ジェットの2回の組織を実現し、シリンダ内の乱流を強化し、シリンダ内のオイルとガスとの混合スピードを向上させ、燃焼中後期の燃焼速度およびシリンダ内の空気利用率を効果的にアップし、それに、第1主燃料噴射の継続時間長および第1噴射圧力を特定することで、シリンダ圧力を保証することにより、第1主燃料噴射の過程における少なくとも一部の時点のシリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値に達することが可能であり、前記第2主燃料噴射の継続時間長および前記第2噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整することで、前記第2主燃料噴射の過程において、前記シリンダ圧力が前記シリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間に、前記期間の各時点におけるシリンダ圧変化曲線の曲線傾きの変化率がいずれも設定傾き変化率範囲内にあり、それに、前記シリンダ圧力が前記シリンダ圧上限閾値から前記設定シリンダ圧まで低下する期間に対応するクランクシャフトの回転角度が第1プリセット角度以上であり、空間巻き込み重畳効果が最適に達するのを保証し、ディーゼルエンジンの電力出力が最適であるのを保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例2におけるインジェクタの油噴射規則模式図である。
【
図2】本発明の実施例2における、瞬時熱発生率とクランク角度との関係図である。
【
図3】本発明の実施例2における巻き込み作用燃焼スピードおよびシリンダ圧のインディケーター線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の技術案は、添付の図面を結合して以下に明瞭かつ完全に記載されるが、記載された実施例は全ての実施例ではなく本発明の実施例の一部である。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をすることがない前提で得られるすべての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0020】
ここで、本発明の記載において、用語「中心」、「上」、「下」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「内」、「外」などが指示する方位又は位置関係は図面に基づいて示された方位又は位置関係であり、単に本発明の記載及び記載の簡略化の便宜上のものであり、言及された装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成及び操作されなければならないことを示したり暗示したりすることを意図するものではなく、従って、本発明を制限するものと理解されるべきではない。さらに、用語「第1」および「第2」は、目的の記載だけで使用されており、相対的な重要性を意味または示唆するものと理解されるべきではない。用語「第1位置」および「第2位置」は2つの異なる位置であり、それに、第1特徴が第2特徴の「上」、「上方」および「頂部」であることは、第1特徴が第2特徴の直上および斜め上にあることを含み、または、単に第2特徴よりも第1特徴の水平高さが高いことを示す。第1特徴が第2特徴の「下」、「下方」および「底部」であることは、第1特徴が第2特徴の直下および斜め下にあることを含み、または、単に第2特徴よりも第1特徴の水平高さが低いことを示す。
【0021】
ここで、本発明の記載において、特に明確に規定または限定しない限り、用語「取付」、「連結」、「接続」は、広義的に解釈するべきであり、例えば、固定的接続であってもよいし、着脱可能な接続、または一体的な接続であってもよく、機械的接続であってもよいし、電気的接続であってもよく、直接的連結であってもよいし、中間媒体を介した間接的連結であってもよく、2つの素子の内部の連通であってもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて本発明における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0022】
以下に、本発明の実施例を詳細に記載する。前記実施例の一例が図面に示されるが、同一または類似する符号は、常に、相同又は類似の素子、又は、相同又は類似の機能を有する素子を表す。以下に、図面を参照しながら記載される実施例は例示的なものであり、本発明を解釈するためにのみ用いられ、本発明を限定するものと理解されてはならない。
【0023】
<実施例1>
本実施例は燃焼制御システムを提供し、燃焼制御システムはピストンと、インジェクタと、シリンダとを含み、ピストンはシリンダ内に往復上下運動可能であり、インジェクタはピストンに設けられる燃焼室内に燃油を噴射するために用いられる。該燃焼制御システムはさらに、コントローラを含み、コントローラは、インジェクタがピストンの運動周期毎に少なくとも第1主燃料噴射および第2主燃料噴射を順次実行し、それに、インジェクタが第1主燃料噴射から第2主燃料噴射までの過程において油噴射を継続するように制御するために用いられ、それに、インジェクタが第1主燃料噴射を行う時に、およびインジェクタが第2主燃料噴射を行う時に噴射された燃油のスピードがいずれも設定値以上であり、インジェクタが第1主燃料噴射と第2主燃料噴射との間で噴射した燃油のスピードが設定値よりも小さい。コントローラは、インジェクタに給油する給油管路に設けられる制御弁に接続可能であることで、制御弁に対して電流の大きさを制御する制御によりインジェクタの油噴射圧力を制御し、さらにインジェクタから噴出される燃油の効率を調節する。
【0024】
コントローラは、第1主燃料噴射の継続時間長および第1噴射圧力を特定することで、第1主燃料噴射の過程における少なくとも一部の時点のシリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値に達することが可能であるために用いられる。それに、コントローラは、第2主燃料噴射の継続時間長および第2噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整することで、第2主燃料噴射の過程において、シリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間に、各時点におけるシリンダ圧変化曲線の曲線傾きの変化率がいずれも設定傾き変化率範囲内にあり、それに、シリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間に対応するクランクシャフトの回転角度が第1プリセット角度以上であるために用いられる。コントローラの具体的な実現過程について、以下に詳しく説明する。
【0025】
本実施例では、インジェクタがピストンの運動周期中に主燃料噴射を2回行いかつ2回の主燃料噴射の過程において補助噴射を継続するように制御することで、2回の主燃料噴射された高速油ジェットのシリンダ内での巻き込み作用の空間強度が重畳することができ、シリンダ内の流れ場に対する油ジェットの2回の組織を実現し、シリンダ内の乱流を強化し、シリンダ内のオイルとガスとの混合スピードを向上させ、燃焼中後期の燃焼速度およびシリンダ内の空気利用率を効果的にアップする。それに、第1主燃料噴射の継続時間長および第1噴射圧力を特定することで、シリンダ圧力が少なくともシリンダ圧上限閾値に達することが可能であるのを保証し、第2主燃料噴射の際に、シリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間に、各時点におけるシリンダ圧変化曲線の曲線傾きの変化率がいずれも設定傾き変化率範囲内にあり、それに、クランクシャフトの回転角度が第1プリセット角度以上であり、空間巻き込み重畳効果が最適であるのを保証し、ディーゼルエンジンの電力出力が最適であるのを保証することができる。
【0026】
<実施例2>
本実施例はディーゼルエンジンを提供し、ディーゼルエンジンは、実施例1における燃焼システムを含む。それに、ディーゼルエンジンは、実施例1における燃焼システムの有益な効果を有する。
【0027】
<実施例3>
本実施例は、実施例1における燃焼システムにより実施されることが可能な燃焼システムの制御方法を提供する。燃焼システムの制御方法は、S100~S200を含む。
【0028】
S100:第1主燃料噴射の継続時間長および第1噴射圧力を特定することで、第1主燃料噴射の過程における少なくとも一部の時点のシリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値に達することが可能である。
【0029】
S200:第2主燃料噴射の継続時間長および第2噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整することで、第2主燃料噴射の過程において、シリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間に、各時点におけるシリンダ圧変化曲線の曲線傾きの変化率がいずれも設定傾き変化率範囲内にあり、それに、シリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間に対応するクランクシャフトの回転角度が第1プリセット角度以上である。
【0030】
該燃焼システムの制御方法は、インジェクタがピストンの運動周期中に主燃料噴射を2回行いかつ2回の主燃料噴射の過程において補助噴射を継続するように制御することで、2回の主燃料噴射された高速油ジェットのシリンダ内での巻き込み作用の空間強度が重畳することができ、シリンダ内の流れ場に対する油ジェットの2回の組織を実現し、シリンダ内の乱流を強化し、シリンダ内のオイルとガスとの混合スピードを向上させ、燃焼中後期の燃焼速度およびシリンダ内の空気利用率を効果的にアップし、同時に、さらに空間巻き込み重畳効果が最適に達するのを保証し、ディーゼルエンジンの電力出力が最適であるのを保証することができる。
【0031】
また、S100において、第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力が常にシリンダ圧上限閾値に達しないと、第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力が少なくとも一部の時点でシリンダ圧上限閾値に達し、かつシリンダ圧力が初めてシリンダ圧上限閾値に達する時に対応するクランク角度が第1角度を超えなく、かつシリンダ圧力が第1シリンダ圧力からシリンダ圧上限閾値まで上昇する期間にクランクシャフトの回転角度が第2プリセット角度以上であるまで、第1主燃料噴射の開始時間、終了時間、および現在第1噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整し、シリンダ圧力が第1シリンダ圧力に等しくなる時に対応するシリンダ容積は、シリンダ圧力が初めてシリンダ圧上限閾値に達することに対応するシリンダ容積と同じである。このように、第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力への閉ループ調節を実現でき、最終的に第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値に達する。
【0032】
図1に示すように、ピストンの運動周期毎に、インジェクタが第1主燃料噴射を開始する時間を第1時間t
1とし、第1主燃料噴射と第2主燃料噴射との間でインジェクタが噴射する燃油のスピードが最も低い時間を第2時間t
2とし、インジェクタが第1主燃料噴射を行う過程において噴射する燃油のスピードが最高の時に対応する噴射圧力を第1噴射圧力P
1とする。
【0033】
具体的には、「第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力が常にシリンダ圧上限閾値に達しないと、第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力が少なくとも一部の時点でシリンダ圧上限閾値に達し、かつシリンダ圧力が初めてシリンダ圧上限閾値に達する時に対応するクランク角度が第1角度を超えなく、かつシリンダ圧力が第1シリンダ圧力からシリンダ圧上限閾値まで上昇する期間にクランクシャフトの回転角度が第2プリセット角度以上であるまで、第1主燃料噴射の開始時間、終了時間、および現在第1噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整する」方法は、以下のとおりである。
【0034】
S10:第1主燃料噴射の過程において、シリンダ内のシリンダ圧力Pをリアルタイムに収集し、クランクシャフトの角度をリアルタイムに収集する。
【0035】
S20:シリンダ圧力Pとシリンダ圧上限閾値Pmaxとを比較し、かつクランクシャフトの角度が第1角度を超えているか否かを判断する。
【0036】
シリンダ圧力Pがシリンダ圧上限閾値Pmaxよりも小さく、かつクランクシャフトの角度が第1角度の後に位置すると、S30を実行する。
【0037】
S30:第1噴射圧力P1の数値を大きくし、および/または、第2時間t2と第1時間t1との差を全体として小さくし、S10を繰り返して行う。
【0038】
ステップS10~ステップS30により、限られた数のピストン運動周期の後、クランクシャフトの角度がまだ第1角度に達しない時に、シリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値P
max以上であることが可能であるのを保証し、さらに燃焼中後期の燃焼速度およびシリンダ内の空気利用率をアップすることができる。
図2に示すように、本実施例では、第1角度をAI50とすることにより、該燃焼システムの制御方法は、AI50~AI90の時間を効果的に短縮してAI50~AI90の間の期間に燃焼スピードをP
maxに安定するように制御することができる。P
maxの具体的な数値について、実際の要求に応じて設けられることが可能である。
【0039】
また、第1噴射圧力P1の数値を大きくし、および/または、第2時間t2と第1時間t1との差を全体として小さくする方法は以下のようにしてもよい。
【0040】
第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力の最大値Pxを取得する。
【0041】
n=(Pmax-Px)/Pmaxを算出する。
【0042】
n≦5%であると、第1噴射圧力P1の数値のみを第1設定値大きくする。
【0043】
理解するように、ピストンの運動周期中のすべての収集されたシリンダ圧力の数値から、第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力の最大値Pxを取得でき、かつPmax>Pxである。第1噴射圧力P1の数値を第1設定値大きくすることを例として、その意味は、現在のピストンの往復上下運動の周期中の第1噴射圧力P1に第1設定値を加算して新たな第1噴射圧力P1とし、かつ次のピストン運動周期に適用することである。
【0044】
n>5%であると、第1噴射圧力P1の数値を第1設定値大きくし、かつ同時に第1時間t1および/または第2時間t2を調整することで第2時間t2と第1時間t1との差が全体として第2設定値小さくする。
【0045】
第1噴射圧力P1の大きさが無限に増加することができないため、n≦5%の場合、この時に、Pmaxと第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力の最大値Pxとの差は小さく、直接に第1噴射圧力P1を調節することで油ジェットの噴射スピードを改善し、さらにオイルとガスとの混合程度およびシリンダ内流れ場を改善し、シリンダ内のシリンダ圧力P、およびシリンダ圧力PがPmaxに達する時のクランクシャフト角度を調節することができ、n>5%の場合、Pmaxと第1主燃料噴射の過程におけるシリンダ圧力の最大値Pxとの差は大きく、第1噴射圧力P1を調節すると同時に、第2時間t2と第1時間t1との差を調節する必要があり、同様に油ジェットの噴射スピードの改善、シリンダ内のシリンダ圧力P、およびシリンダ圧力PがPmaxに達する時のクランクシャフト角度を調節する作用を実現できる。第1設定値および第2設定値の大きさについて、必要に応じて設定されることができ、第2時間t2と第1時間t1との差を調節する場合、必要に応じて第2時間t2または第1時間t1のみを単独に調節することもできる。
【0046】
本実施例では、経験により第1主燃料噴射の継続時間長および第1噴射圧力を調整する方案が例示的に与えられ、他の実施例では、モデルによりそれを調整することもできる。
【0047】
また、S20において、シリンダ圧力Pがシリンダ圧上限閾値Pmax以上であり、かつクランクシャフトの角度が第1角度の前に位置すると、S20の後に位置する以下のステップを含んでもよい。
【0048】
S40:シリンダ圧力Pがシリンダ圧上限閾値Pmaxに等しくなる時のシリンダ内のリアルタイムなシリンダ容積Vを取得する。
【0049】
具体的には、シリンダ内のリアルタイムな容積を取得することは従来技術であり、例えば、燃焼分析装置によりディーゼルエンジンの毎回のサイクルのシリンダ圧曲線を収集し、さらにシリンダ内のリアルタイムな容積を取得することができる。取得されたリアルタイムなシリンダ容積Vは、第1主燃料噴射の過程において、シリンダ圧力が初めてPmaxに達する時のシリンダ容積Vである。
【0050】
S50:シリンダ容積とクランク角度との関係mapに応じて、シリンダ容積がリアルタイムなシリンダ容積Vに等しくなる時に対応するシリンダ上り時のクランク角度φaおよびシリンダ下り時のクランク角度φbを取得する。
【0051】
理解するように、ピストンが上ること、下ることに伴って、シリンダ内の容積が先に小さくした後に大きくし、これにより、同じリアルタイムな容積に対応し、ピストン上り時のクランク角度の位置およびピストン下り時のクランク角度の位置が対応する。
図3に示すように、本実施例では、シリンダ上り時のクランク角度φ
aに対応する第1シリンダ圧力Pの大きさはP
0に等しくなり、シリンダが下る時に、クランク角度がφ
bである際に、シリンダ圧力Pはシリンダ圧上限閾値P
maxに等しくなる。シリンダ容積とクランク角度との関係mapについて、初期の大量な実験により得られるとともに、コントローラに予め記憶されることができる。
【0052】
S60:φ1=φb-φaを算出する。
【0053】
S70:φ1、第2プリセット角度φnの大きさを判断する。
【0054】
φ1<φnであると、S80を実行する。
【0055】
S80:第1噴射圧力P1の数値を第3設定値大きくし、および/または第1時間t1および/または第2時間t2を調整することで第2時間t2と第1時間t1との差が全体として第4設定値小さくするとともに、ステップS10を繰り返す。
【0056】
ステップS40~S80により、シリンダ圧力が前記第1シリンダ圧力から前記シリンダ圧上限閾値まで上昇する期間のクランクシャフトの回転角度への閉ループ調整を実現でき、有限回数のピストン運動周期の後、φ1の数値がφn以上であるのを保証し、さらにデュアルメイン噴射の巻き込み重畳作用の経済性が最適であるのを保証できる。φnの具体的な数値の大きさ、第3設定値、および第4設定値について、必要に応じて設けられることができる。
【0057】
また、第2噴射圧力をP2とし、φ1≧φnの場合、S200における「第2主燃料噴射の継続時間長および第2噴射圧力のうちの少なくとも1つを反復調整することで、第2主燃料噴射の過程において、シリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間に、各時点におけるシリンダ圧変化曲線の曲線傾きの変化率がいずれも設定傾き変化率範囲内にあり、それに、シリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間に対応するクランクシャフトの回転角度が第1プリセット角度以上である」ことは具体的に、S80の後に位置する以下のステップを含んでも良い。
【0058】
S90:シリンダ圧力PがPnに等しくなる時のクランク角度φcをmapに応じて取得し、φc>φbであり、Pnは設定シリンダ圧であってPmax>Pnである。
【0059】
理解するように、φc>φbであるため、対応するクランク角度がφb~φcの間であるシリンダ圧力Pは少なくともPn以上であり、シリンダ圧力がピーク変動内にあると認識されることができる。Pnの値について、必要に応じて設けられることができる。
【0060】
S100:クランク角度φbからクランク角度φcまでのセクションのシリンダ圧力とクランク角度との間の関係曲線yを取得する。具体的には、シリンダ圧力とクランク角度との間の関係曲線yにおいて、独立変数はクランク角度であり、従属変数はシリンダ圧力である。
【0061】
S110:k1=dy/dφ、k2=dk1/dφを算出し、φの値はφb~φcである。
【0062】
k1は曲線yの傾きであり、k2は曲線傾きの変化率である。
【0063】
S120:k2の絶対値の最大値kmaxを取得する。
【0064】
k2の絶対値の最大値とは、φの値範囲であるφb~φc内に、k2の最小の負の値および最大の正の値のうち絶対値が最大となる数値を意味する。
【0065】
S130:kmax、プリセットパラメータkaの大きさを比較する。
【0066】
kmax<kaであると、S140を実行する。
【0067】
S140:第2噴射圧力P2の数値を第5設定値大きくするとともに、ステップS10を繰り返す。
【0068】
kaの具体的な数値の大きさおよび第5設定値について、必要に応じて設けられることができる。本実施例では、kaの数値は0.05であり、対応する設定傾き変化率範囲は-0.05~0.05である。k2の最小数値がka以上である場合、kaの数値は、0.05以上である。理解するように、第2噴射圧力P2を大きくすることで、噴射レール圧力を増加させ、シリンダ圧力を一定の値の近くに維持することができる。ステップS90~S140により、シリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間のシリンダ圧変化曲線の各時点の曲線傾きの変化率への閉ループ調節を実現し、有限回数のピストン運動周期の過程の後、k2の最小数値がka以上であるのを保証でき、さらにデュアルメイン噴射の巻き込み重畳作用の経済性が最適であるのを保証できる。
【0069】
また、インジェクタが第2主燃料噴射を終了する時間を第3時間t3とし、kmax≧kaであると、さらに、ステップS130の後に位置する以下のステップを含んでも良い。
【0070】
S150:φ2=φc-φbを算出する。
S160:φ2、第1プリセット角度φmの大きさを判断する。
φ2<φmであると、S170を実行し、φ2≧φmであると、S180を実行する。
S170:第3時間t3の数値を第6設定値大きくする。
S180:第3時間t3の数値をそのまま保持する。
【0071】
第6設定値の大きさ、第2プリセット角度φmの大きさについて、必要に応じて設定されることができ、ステップS150~S180により、シリンダ圧力がシリンダ圧上限閾値から設定シリンダ圧まで低下する期間の対応するクランクシャフトの回転角度への閉ループ調節を実現し、有限回数のピストン往復運動の過程の後、φ2の数値がφm以上であるのを保証でき、さらにφ1+φ2の和が十分に大きいことを保証できることにより、デュアルメイン噴射の巻き込み重畳作用の経済性が最適になる。
【0072】
明らかに、本発明の上記実施例は、本発明の実施形態への限定ではなく、本発明を明瞭に説明するために行われた例示に過ぎない。当業者にとって、上記説明を基礎としてさらに他の異なる形態の変化や変更を行うことができる。ここでは、全ての実施形態を一つずつ列挙する必要がないし、不可能である。本発明の要旨と原則にのっとる様々の修正、等同交替、および改良などが本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【国際調査報告】