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特表2024-515826眼疾患の処置のための薬学的組成物および硝子体内薬物送達システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】眼疾患の処置のための薬学的組成物および硝子体内薬物送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/00 20060101AFI20240403BHJP
   A61K 31/422 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 31/4025 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20240403BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240403BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61K9/00
A61K31/422
A61K31/506
A61K31/4025
A61K31/36
A61K47/34
A61P27/06
A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566511
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 US2022027048
(87)【国際公開番号】W WO2022232588
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/182,559
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/287,737
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522170076
【氏名又は名称】パフューズ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リン, チェン-ウェン
(72)【発明者】
【氏名】グレンデニング, アンジェラ ドーン
(72)【発明者】
【氏名】ギュルカン, セヴギ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA51
4C076AA94
4C076AA95
4C076BB24
4C076BB32
4C076EE24A
4C076GG11
4C086AA01
4C086AA10
4C086BA13
4C086BC07
4C086BC42
4C086BC62
4C086BC67
4C086BC69
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086GA15
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA58
4C086MA67
4C086NA10
4C086NA12
4C086NA13
4C086ZA33
(57)【要約】
本開示は、化合物(例えば、エドネンタン)またはその薬学的に受容可能な塩を含む生分解性ポリマーを含む生分解性眼用インプラントに関する。また、上記生分解性眼用インプラントを用いる眼疾患の処置の方法および上記生分解性眼用インプラントの調製法が開示される。消耗性の眼疾患の例としては、緑内障、糖尿病網膜症(DR)、網膜静脈閉塞症(RVO)、および未熟児網膜症(ROP)が挙げられる。これらの眼疾患は、眼への長期間の損傷を種々に引き起こし得、最終的には、失明を引き起こし得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性眼用インプラントであって、前記生分解性眼用インプラントは、
生分解性ポリマーであって、その中に組み込まれた化合物を含む生分解性ポリマー
を含み;ここで前記化合物は、エドネンタン、テゾセンタン、A-182086、クラゾセンタン、S1255、ACT-132577、エンラセンタン、およびスパルセンタン、またはこれらの薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、
生分解性眼用インプラント。
【請求項2】
生分解性眼用インプラントであって、前記生分解性眼用インプラントは、
生分解性ポリマーであって、その中に組み込まれた化合物を含む生分解性ポリマー
を含み;ここで前記化合物は、式Iの化合物:
【化8】
またはその薬学的に受容可能な塩である、生分解性眼用インプラント。
【請求項3】
前記生分解性ポリマー中の前記化合物の濃度は、約20% w/w~約60% w/wである、請求項1または2に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項4】
前記生分解性ポリマー中の前記化合物の濃度は、約40% w/w~約50% w/wである、請求項1または2に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項5】
前記生分解性ポリマー中の前記化合物の濃度は、約45% w/wである、請求項1または2に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項6】
前記化合物は、約100μg~約500μgの量において前記生分解性ポリマーに存在する、請求項1または2に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項7】
前記化合物は、約200μg~約400μgの量において前記生分解性ポリマーに存在する、請求項1または2に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項8】
前記化合物は、約150μg~約250μgの量において前記生分解性ポリマーに存在する、請求項1または2に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項9】
前記生分解性ポリマーの濃度は、約40% w/w~約80% w/wである、請求項1~8のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項10】
前記生分解性ポリマーの濃度は、約60% w/wである、請求項1~9のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項11】
前記生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項12】
各PLGAは、RG502、RG502H、RG503、RG503H、RG504、RG504H、RG505、RG653H、RG752H、RG752S、RG753H、RG753S、RG755、RG756、RG757S、RG750S、RG858、およびRG858Sからなる群より独立して選択される、請求項11に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項13】
各PLGAは、RG503、RG502およびRG753Sからなる群より独立して選択される、請求項11に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項14】
前記生分解性ポリマーは、少なくとも2種のPLGAを、約50%~約75%:約25%~約50%の比で含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項15】
前記生分解性ポリマーは、少なくとも2種のPLGAを、約50%:約50%の比で含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項16】
前記生分解性ポリマーは、少なくとも3種のPLGAを、約5%~約60%:約5%~約70%:約10~約60%の比で含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項17】
前記生分解性ポリマーは、少なくとも3種のPLGAを、約5%~約25%:約35%~約70%:約10~約60%の比で含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項18】
前記生分解性ポリマーは、少なくとも3種のPLGAを、約50%:約10%:約40%の比で含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項19】
前記生分解性ポリマーは、少なくとも4種のPLGAを、約20%:約30%:約30%:約20%の比で含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項20】
前記生分解性ポリマーは、少なくとも4種のPLGAを、約10%:約50%:約30%:約10%の比で含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項21】
前記生分解性ポリマーは、RG503、RG502およびRG753Sを、約50%:約10%:約40%の比で含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項22】
前記生分解性ポリマーは、約3ヶ月~約12ヶ月で実質的に生分解する、請求項1~21のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項23】
前記生分解性ポリマーは、約6ヶ月~約12ヶ月で実質的に生分解する、請求項1~21のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項24】
前記生分解性ポリマーは、約12ヶ月~約18ヶ月で実質的に生分解する、請求項1~21のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項25】
前記生分解性眼用インプラントは、緑内障、糖尿病網膜症(DR)、網膜静脈閉塞症(RVO)、および未熟児網膜症(ROP)からなる群より選択される疾患を処置するために使用される、請求項1~24のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項26】
前記生分解性眼用インプラントは、最初に、少なくとも95%の前記生分解性ポリマーおよび前記化合物のマトリクスを含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項27】
40%未満の前記化合物が、約1ヶ月間でリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に置かれる場合に前記生分解性眼用インプラントから放出される、請求項1~26のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項28】
前記インプラントは、前記インプラントの移植後に、被験体において約3ヶ月~約12ヶ月にわたって維持される、請求項1~27のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項29】
前記インプラントは、約300μm~約400μmの直径および約4mm~約5mmの長さを有する、請求項1~28のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項30】
前記インプラントは、硝子体内投与として投与される、請求項1~29のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項31】
前記インプラントは、眼の背部に投与される、請求項1~30のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項32】
前記エドネンタンまたは前記式Iの化合物は、2θに関して、5.6±0.2°、11.4±0.2°、17.7±0.2°、19.3±0.2°、21.1±0.2°、および21.9±0.2°にあるピークから選択される少なくとも3つの特徴付けピークを含むX線粉末回折パターンを有する無水結晶形態(形態4)である、請求項1~31のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラント。
【請求項33】
眼疾患を処置する方法であって、前記方法は、被験体の視覚組織と請求項1または2に記載の生分解性眼用インプラントとを接触させる工程を包含し、ここで前記眼疾患は、緑内障、糖尿病網膜症(DR)、網膜静脈閉塞症(RVO)、および未熟児網膜症(ROP)からなる群より選択され、前記化合物は、前記眼疾患を処置するために治療上有効な量で存在する、方法。
【請求項34】
前記眼疾患は、緑内障である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記眼疾患は、糖尿病網膜症(DR)である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記眼疾患は、網膜静脈閉塞症(RVO)である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記眼疾患は、未熟児網膜症(ROP)である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記インプラントは、14日後に、少なくとも10%のエドネンタンを放出する、請求項33~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記インプラントは、28日後に、少なくとも25%のエドネンタンを放出する、請求項33~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記インプラントは、56日後に、少なくとも40%のエドネンタンを放出する、請求項33~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記インプラントは、84日後に、少なくとも90%のエドネンタンを放出する、請求項33~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
請求項1~41のいずれか1項に記載の生分解性眼用インプラントを製造する方法であって、前記方法は、化合物を含む生分解性ポリマーを、ソルベントキャスティング、射出成形、または押し出し成形に供する工程を包含し、ここで前記化合物は、式Iの化合物:
【化9】
またはその薬学的に受容可能な塩である、方法。
【請求項43】
前記生分解性ポリマーは、PLGAである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
生分解性眼用インプラントであって、前記生分解性眼用インプラントは、
生分解性ポリマーであって、その中に組み込まれた化合物を含む生分解性ポリマー
を含み;ここで前記化合物は、式Iの化合物:
【化10】
またはその薬学的に受容可能な塩であり、ここで前記生分解性ポリマー中の前記化合物の濃度は、約45% w/wであり;前記生分解性ポリマーは、RG503、RG502およびRG753Sを、約50%:約10%:約40%の比で含む、生分解性眼用インプラント。
【請求項45】
生分解性眼用インプラントであって、前記生分解性眼用インプラントは、
生分解性ポリマーであって、その中に組み込まれた化合物を含む生分解性ポリマー
を含み;ここで前記化合物は、式Iの化合物:
【化11】
またはその薬学的に受容可能な塩であり、ここで前記生分解性ポリマー中の前記化合物の濃度は、約45% w/wであり;前記生分解性ポリマーは、RG503、RG502およびRG753Sを、約20%:約20%:約60%の比で含む、生分解性眼用インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年4月30日に出願された米国仮特許出願第63/182,559号および2021年12月9日に出願された同第63/287,737号(これらの各々の全内容は、全ての目的のために本明細書に参考として援用される)の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
消耗性の眼疾患の例としては、緑内障、糖尿病網膜症(DR)、網膜静脈閉塞症(RVO)、および未熟児網膜症(ROP)が挙げられる。これらの眼疾患は、眼への長期間の損傷を種々に引き起こし得、最終的には、失明を引き起こし得る。新生児、若年者、全ての年齢の成人、および高齢者が罹患するが、ほんの一握りの処置しか存在しない。これらの処置は、眼疾患の部分セットに関するに過ぎず、失明するのを遅らせるが、防止はしない。米国単独での年間の経済的負担は、一千億ドル超である。
【0003】
眼疾患を処置するための選択肢は、治療有効性を欠いていることに大きく起因して、なおも非常に限られている。眼疾患の処置または改善における副作用を最小限にしながら、薬物治療有効性を増強することに努力が捧げられてきた。1つのこのような努力は、より良好な透過性、処置可能性、および標的部位での制御放出を提供する新規な生分解性眼用インプラントの開発を含む。
【0004】
エドネンタンは、高度に選択的でありかつ非常に強力なエンドセリンAレセプターアンタゴニストである。エドネンタンは、最初の臨床候補であるBMS-193884(これは、うっ血性心不全(CHF)の処置のために開発されていた)の中止後に、第二世代アナログとして開発された。エドネンタンは、2002年4月までフェーズI治験中であったが、その開発は中止された。
【0005】
緑内障、DR、RVO、およびROPの発生率をより効果的に低減する、これらを処置するまたは他の点で改善する必要性が未だにある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、例示的製剤(各々、エドネンタンを組み込むポリマーマトリクスを含む)の円板パンチ(disk punch)におけるエドネンタンの薬物放出プロフィールを示す。エドネンタンの70%までが、高速液体クラマトグラフィー(HPLC)によって決定されるように、100日間以内に大部分の製剤から放出された。インビトロ放出結果は、放出されるエドネンタンの量がポリ乳酸(PLA) 対 ポリグリコール酸(PGA)の比の増大および上記ポリマーの分子量の増大に伴って減少することを示す。製剤1(50/50 RG503/RG503H)は、製剤2(65/35 PLA/PGA)と比較して、PLG 対 PGAのより低い比に起因して、より迅速な放出を有する。製剤4(50/50 502/502H)は、製剤1(50/50 503/503H)と比較して、上記ポリマーのより低い分子量に起因して、より迅速な放出を有する。結果はまた、RG753Sが、試験される製剤の中で最も遅い放出プロフィールを有し、RG753Sと他のより迅速に放出する製剤との混合物が、より早い時点で十分な薬物放出を維持しながら、長期間の、持続性の薬物放出を提供することを示した。
【0007】
図2図2は、例示的製剤(各々、エドネンタンを組み込むポリマーマトリクスを含む)の円板パンチにおけるエドネンタンの溶離速度プロフィールを示す。インビトロ放出結果は、各ポリマーマトリクスに関して、10~35日間でピークエドネンタン放出、続いて、溶離速度の減少とともに、HPLCによって決定されるように、いくらかのマトリクスに関しては、持続性の定常状態の放出が存在することを示す。
【0008】
図3図3は、例示的製剤(各々、エドネンタンを組み込むポリマーマトリクスを含む)のインプラントにおけるエドネンタンの薬物放出プロフィールを示す。インビトロ放出結果は、ポリマーマトリクスとエドネンタンとの組み合わせが、HPLCによって決定されるように、活性物質の徐放を提供することを示す。
【0009】
図4図4は、例示的製剤(各々、エドネンタンを組み込むポリマーマトリクスを含む)のインプラントにおけるエドネンタンの溶離速度プロフィールを示す。インビトロ放出結果は、上記ポリマーマトリクスが、エドネンタンの初期放出を制御し、HPLCによって決定されるように、ピーク放出が17日目から92日目の範囲に及ぶことを示す。インビトロ放出結果は、放出されるエドネンタンの量がポリ乳酸(PLA) 対 ポリグリコール酸(PGA)の比の増大および上記ポリマーの分子量の増大に伴って減少することを示す。RG753Sと他のより迅速に放出する製剤との混合物は、より早い時点で十分な薬物放出を維持しながら、長期間の、持続性の薬物放出を提供する。
【0010】
図5図5は、2インプラント群および3インプラント群のDutch-beltedウサギにおける8週間単一用量硝子体内眼毒性試験の間のエドネンタン血漿レベルの時間経過を示す。
【0011】
図6図6は、射出成形製品およびラム押し出し成形製品の2個のインプラントを投与したDutch-beltedウサギにおける12週間単一用量硝子体内眼薬物動態試験の間のエドネンタン網膜レベルの時間経過を示す。
【0012】
図7図7は、射出成形製品およびラム押し出し成形製品の2個のインプラントを投与したDutch-beltedウサギにおける12週間単一用量硝子体内眼薬物動態試験の間のエドネンタンRPE/脈絡膜レベルの時間経過を示す。
【0013】
図8図8は、形態1~4のXRPDパターンの例示的重ね合わせを示す。
【0014】
図9図9は、形態1の例示的XRPDパターンを示す。
【0015】
図10図10は、形態2の例示的XRPDパターンを示す。
【0016】
図11図11は、形態3の例示的XRPDパターンを示す。
【0017】
図12図12は、形態4の例示的XRPDパターンを示す。
【0018】
図13図13は、形態1の例示的DSC曲線を示す。
【0019】
図14図14は、形態2の例示的DSC曲線を示す。
【0020】
図15図15は、は、形態3の例示的DSC曲線を示す。
【0021】
図16図16は、は、形態4の例示的DSC曲線を示す。
【0022】
図17図17は、図12に示される結晶形態4のXRPD特徴的ピークを示す。
【0023】
図18図18は、射出成形製品の2個のインプラントを投与した色素沈着したウサギにおいて12週間単一用量硝子体内眼薬物動態試験の間のエドネンタン網膜レベルの時間経過を示す。
【0024】
図19図19は、射出成形製品の2個のインプラントを投与した色素沈着したウサギにおいて12週間単一用量硝子体内眼薬物動態試験の間のエドネンタンRPE/脈絡膜レベルの時間経過を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
要旨
本開示は、緑内障、糖尿病網膜症(DR)、網膜静脈閉塞症(RVO)、および未熟児網膜症(ROP)から選択される眼疾患を処置するための生分解性眼用インプラントおよびその使用を提供する。いくつかの実施形態において、上記生分解性眼用インプラントは、エドネンタン、テゾセンタン、A-182086、クラゾセンタン、S1255、ACT-132577、エンラセンタン、およびスパルセンタン、またはそれらの薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される化合物を含む生分解性ポリマーを含む。好ましくは、実施形態において、上記生分解性眼用インプラントは、式Iの化合物:
【化1】
またはその薬学的に受容可能な塩を含む生分解性ポリマーを含む。
【0026】
本開示はまた、眼疾患を処置する方法であって、上記方法は、被験体の視覚組織と本明細書で記載される生分解性眼用インプラントとを接触させる工程を包含し、ここで上記眼疾患は、緑内障、糖尿病網膜症(DR)、網膜静脈閉塞症(RVO)、および未熟児網膜症(ROP)からなる群より選択され、上記化合物は、上記眼疾患を処置するために治療上有効な量で存在する方法を提供する。
【0027】
また、眼送達デバイスを製造する方法がまた、本明細書で提供される。上記方法は、生分解性ポリマーであって、その中に組み込まれた化合物を含む生分解性ポリマーを射出成形に供する工程であって、ここで上記化合物は、式Iの化合物:
【化2】
またはその薬学的に受容可能な塩である工程を包含する。
【0028】
本開示の1またはこれより多くの実施形態の詳細は、以下の説明に示される。本開示の他の特徴、目的および利点は、以下の図面、説明および特許請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
本開示は、生分解性ポリマーであって、その中に組み込まれた化合物を含む生分解性ポリマーを含むある特定の生分解性眼用インプラント(ここで上記化合物は、好ましくは、エドネンタンである)は、緑内障、糖尿病網膜症(DR)、網膜静脈閉塞症(RVO)、および未熟児網膜症(ROP)が挙げられるが、これらに限定されない眼疾患の防止、処置、または他の点での改善に適しているという発見から生じる。本開示は、以下でさらに記載される。
【0030】
化合物
本明細書で記載される生分解性眼用インプラントおよびその使用方法は、本明細書で記載される化合物(例えば、エドネンタン、テゾセンタン、A-182086、クラゾセンタン、S1255、ACT-132577、エンラセンタン、およびスパルセンタン、またはこれらの薬学的に受容可能な塩)を含む生分解性ポリマーを含む。本明細書で企図される化合物がエンドセリンレセプターアンタゴニストであることは、認識され得る。
【0031】
ある特定の実施形態において、上記化合物は、式Iの化合物:
【化3】
またはその薬学的に受容可能な塩である。式Iの化合物は、エドネンタンとしても公知である。エドネンタンは、化学名 N-[[2’-[[(4,5-ジメチル-3-イソオキサゾリル)アミノ]スルホニル]-4-(2-オキサゾリル)[1,1’-ビフェニル]-2-イル]メチル]-N,3,3-トリメチルブタンアミド(分子量 536.6g/mol)を有する。エドネンタンを調製する方法は、当業者に周知である。適切な方法は、例えば、米国特許第6,043,265号に開示される。
【0032】
いくつかの実施形態において、上記化合物は、A-182086(これは、構造:
【化4】
を有する)またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0033】
A-182086は、化学名 (2R,3R,4S)-4-(2H-1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-(3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-1-[2-(N-プロピルペンタン-1-スルホンアミド)エチル]ピロリジン-3-カルボン酸(分子量 578.7g/mol)を有する。A-182086を調製する方法は、当業者に周知である。適切な方法は、例えば、米国特許第6,162,927号に開示される。
【0034】
種々の実施形態において、上記生分解性眼用インプラント中の上記生分解性ポリマー中に存在する化合物(例えば、式Iの化合物、A-182086)の濃度は、約5% w/w~約95%w/w(例えば、約10%w/w~約95%w/w、約15%w/w~約95%w/w、約20%w/w~約95%w/w、約25%w/w~約95%w/w、約30%w/w~約95%w/w、約35%w/w~約95%w/w、約40%w/w~約95%w/w、約45%w/w~約95%w/w、約50%w/w~約95%w/w、約55%w/w~約95%w/w、約60%w/w~約95%w/w、約65%w/w~約95%w/w、約70%w/w~約95%w/w、約75%w/w~約95%w/w、約80%w/w~約95%w/w、約85%w/w、約95%w/w、約90%w/w~約95%w/w、約5%w/w~約10%w/w、約5%w/w~約15%w/w、約5%w/w~約20%w/w、約5%w/w~約25%w/w、約5%w/w~約30%w/w、約5%w/w~約35%w/w、約5%w/w~約40%w/w、約5%w/w~約45%w/w、約5%w/w~約50%w/w、約5%w/w~約55%w/w、約5%w/w~約60%w/w、約5%w/w~約65%w/w、約5%w/w~約70%w/w、約5%w/w~約75%w/w、約5%w/w~約80%w/w、約5%w/w~約85%w/wおよび約5%w/w~約90%w/w)である。ある特定の実施形態において、上記生分解性眼用インプラント中の、上記生分解性ポリマー中に存在する化合物の濃度は、約20% w/w~約60% w/w(例えば、約20%w/w~約55%w/w、約20%w/w~約50%w/w、約20%w/w~約45%w/w、約20%w/w~約40%w/w、約20%w/w~約35%w/w、約20%w/w~約30%w/w、約20%w/w~約25%w/w、約25%w/w~約60%w/w、約30%w/w~約60%w/w、約35%w/w~約60%w/w、約40%w/w~約60%w/w、約45%w/w~約60%w/w、約50%w/w~約60%w/w、約55%w/w~約60%w/w)である。ある特定の実施形態において、上記生分解性眼用インプラント中の、上記生分解性ポリマー中に存在する化合物の濃度は、約25% w/w~約45% w/wである。ある特定の実施形態において、上記生分解性眼用インプラント中の、上記生分解性ポリマー中に存在する化合物の濃度は、約40% w/w~約50% w/w(例えば、約40% w/w~約45% w/w、約45% w/w~約50% w/w)である。種々の実施形態において、上記化合物の濃度は、約5% w/w、約10% w/w、約15% w/w、約20% w/w、約25% w/w、約30% w/w、約35% w/w、約40% w/w、約45% w/w、または約50% w/wである。種々の実施形態において、上記化合物の濃度は、約30% w/wである。種々の実施形態において、上記化合物の濃度は、約40% w/wである。種々の実施形態において、上記化合物の濃度は、約45% w/wである。種々の実施形態において、上記化合物の濃度は、約50% w/wである。
【0035】
実施形態において、上記生分解性眼用インプラント中の、上記生分解性ポリマー中に存在する化合物(例えば、式Iの化合物、A-182086)の量は、約1μg~約500μg(例えば、約10μg~約500μg、約20μg~約500μg、約30μg~約500μg、約40μg~約500μg、約50μg~約500μg、約60μg~約500μg、約70μg~約500μg、約80μg~約500μg、約90μg~約500μg、約100μg~約500μg、約100μg~約500μg、約125μg~約500μg、約150μg~約500μg、約175μg~約500μg、約200μg~約500μg、約225μg~約500μg、約250μg~約500μg、約275μg~約500μg、約300μg~約500μg、約325μg~約500μg、約350μg~約500μg、約375μg~約500μg、約400μg~約500μg、約425μg~約500μg、約450μg~約500μgおよび約475μg~約500μg)である。種々の実施形態において、上記生分解性眼用インプラント中の、上記生分解性ポリマー中に存在する化合物(例えば、式Iの化合物、A-182086)の量は、約70μg~約230μg(例えば、約70μg、約75μg、約80μg、約85μg、約90μg、約95μg、約100μg、約105μg、約110μg、約115μg、約120μg、約125μg、約130μg、約135μg、約140μg、約145μg、約150μg、約155μg、約160μg、約165μg、約170μg、約175μg、約180μg、約185μg、約190μg、約195μg、約200μg、約205μg、約210μg、約215μg、約220μg、約225μg、および約230μg)である。種々の実施形態において、上記生分解性眼用インプラント中の、上記生分解性ポリマー中に存在する化合物(例えば、式Iの化合物、A-182086)の量は、約165μg~約220μg(例えば、約165μg、約170μg、約175μg、約180μg、約185μg、約190μg、約195μg、約200μg、約205μg、約210μg、約215μg、および約220μg)である。種々の実施形態において、上記生分解性眼用インプラント中の、上記生分解性ポリマー中に存在する化合物(例えば、式Iの化合物、A-182086)の量は、約150μg~約250μg、約300μg~約550μg、または約300μg~約600μgである。種々の実施形態において、上記生分解性眼用インプラント中の、上記生分解性ポリマー中に存在する化合物(例えば、式Iの化合物、A-182086)の量は、約330μg~約500μg(例えば、約330μg、約335μg、約340μg、約345μg、約350μg、約355μg、約360μg、約365μg、約370μg、約375μg、約380μg、約385μg、約390μg、約395μg、約400μg、約405μg、約410μg、約415μg、約420μg、約425μg、約430μg、約435μg、約440μg、約445μg、約450μg、約455μg、約460μg、約465μg、約470μg、約475μg、約480μg、約485μg、約490μg、約495μg、および約500μg)である。
【0036】
生分解性ポリマー
本明細書で記載されるインプラントにおける使用のための適切なポリマー物質または組成物は、眼の機能または生理機能との実質的な干渉を引き起こさないように、眼と適合性、すなわち、生体適合性である物質を含む。このようなポリマー物質は、生分解性、生物侵食性(bioerodible)または生分解性かつ生物侵食性の両方であり得る。
【0037】
用語「生分解する(biodegrade)」または「生分解性(biodegradable)」とは、本明細書で使用される場合、上記インプラントを構成するポリマーが生物学的環境(例えば、被験体の身体内)で受ける、生物学的に補助される分解プロセスに概して言及する。生分解は、その範囲内で、吸収、溶解、分解(breaking down)、分解(degradation)、同化、またはさもなければ身体(生物学的環境)からの上記インプラントの除去のプロセスを包含することが理解される。
【0038】
用語「ポリマー」とは、本明細書で使用される場合、ホモポリマー(ただ1タイプの反復ユニットを有するポリマー)およびコポリマー(1より多くのタイプの反復ユニットを有するポリマー)の両方を包含する。
【0039】
用語「生分解性ポリマー」とは、本明細書で使用される場合、インビボで、生理学的条件下で分解するポリマーに言及する。治療剤の放出は、生分解性ポリマーの分解と同時に、または分解に引き続いて経時的に起こる。
【0040】
好ましい実施形態において、上記生分解性ポリマーは、PLGA(ポリ(乳酸-co-グリコール酸))である。PLGAポリマーは、骨格加水分解(バルク侵食)を介して分解することが公知であり、最終分解生成物は、乳酸およびグリコール酸であり、これらは、非毒性であり、天然の代謝性化合物と考えられる。乳酸およびグリコール酸は、クレブス回路を介して、二酸化炭素および水への変換によって安全に排除される。
【0041】
PLGAは、グリコール酸および乳酸の環状ダイマーのランダム開環共重合を介して合成される。グリコール酸または乳酸の連続モノマーユニットは、エステル連結によって一緒に連結される。ラクチド 対 グリコリドの比は変化し得、生成物の生分解特徴を変化させる。上記比を変化させることによって、上記ポリマー分解時間を調整することが可能である。重要なことには、薬物放出特徴は、生分解の速度、分子量、および薬物放出システムの結晶性の程度によって影響を及ぼされる。上記生分解性ポリマーマトリクスを変更し、カスタマイズすることによって、薬物送達プロフイールが変化させられ得る。
【0042】
PLGAは、周囲の組織中の水の存在下で、上記ポリマーマトリクス全体にわたるそのエステル連結の酵素によらない加水分解によって主に切断される。PLGAポリマーは、生体適合性である。なぜならそれらは、元のモノマー、乳酸および/またはグリコール酸を生成するために、身体の中で加水分解を受けるからである。乳酸およびグリコール酸は、非毒性であり、クレブス回路を介して、二酸化炭素および水への変換によって安全に排除される。PLGAポリマーの生体適合性は、動物およびヒトの眼でない組織および眼の組織の両方においてさらに試験されている。この所見は、上記ポリマーが十分に寛容されることを示す。
【0043】
本開示の実施形態において利用され得るPLGAポリマーの例としては、Evonik IndustriesのRESOMER(登録商標)製品ライン(RG502、RG502H、RG503、RG503H、RG504、RG504H、RG505、RG653H、RG750S、RG752H、RG752S、RG753H、RG753S、RG755S、RG756S、RG757S、およびRG858Sとして特定されるが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0044】
このようなPLGAポリマーは、25℃のCHCl中、0.1% w/vにおいてUbbelhode size 0cガラスキャピラリー粘度計で測定した場合に、およそ0.14からおよそ1.7dL/gの範囲に及ぶ固有粘度を有する酸およびエステルの両方が末端にあるポリマーを含む。本開示の種々の実施形態において使用される例示的ポリマーとしては、D,L-ラクチド 対 グリコリドのモル比がおよそ50:50からおよそ85:15までのバリエーション(50:50、65:35、75:25、および85:15が挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。
【0045】
本開示の実施形態において利用され得るPLGAポリマーの他の例としては、Lakeshore Biomaterialsによって生成されるもの(DLG 1A、DLG 3A、またはDLG 4Aとして特定されるが、これらに限定されない)を含む。このようなDLGポリマーは、25℃のCHCl中、0.1% w/vにおいてUbbelhode size 0cガラスキャピラリー粘度計で測定した場合に、およそ0.0.5からおよそ1.0dL/gまでの範囲に及ぶ固有粘度を有する酸(A)およびエステル(E)の両方が末端にあるポリマーを含む。本開示の種々の実施形態において使用される例示的ポリマーとしては、D,L-ラクチド 対 グリコリドのモル比がおよそ1:99からおよそ99:1までのバリエーション(50:50、65:35、75:25、および85:15が挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。
【0046】
製品名において「RG」または「DLG」によって特定されるRESOMERS(登録商標)(例えば、RG752S)は、一般構造(V):
【化5】
を有するポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)またはPLGAである。
【0047】
種々のD,L-ラクチド-グリコリド比を有する種々の分子量のDLGの合成は可能である。1つの実施形態において、およそ0.05からおよそ0.15dL/gの固有粘度を有するDLG(例えば、1A)が、使用され得る。別の実施形態において、およそ0.15からおよそ0.25dL/gの固有粘度を有するDLG(例えば、2A)が、使用され得る。[0168]ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)またはPLGAコポリマーは、ラクチド 対 グリコリドの種々の比(例えば、ラクチド:グリコリド比 75:25)において合成され得る。これらのコポリマーは、製品名において末尾の「S」によって特定されるように、エステルが末端にあるPLGAコポリマーであり得るか、または製品名において末尾の「H」によって特定されるように、酸が末端にあるPLGAコポリマーであり得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、本開示の生分解性眼用インプラントは、少なくとも1個のPLGAを含み、ここで各PLGAは、RG502、RG502S、RG502H、RG503、RG503H、RG504、RG504H、RG505、RG506、RG653H、RG752H、RG752S、RG753H、RG753S、RG755、RG755S、RG756、RG756S、RG757S、RG750S、RG858、およびRG858Sからなる群より独立して選択される。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を含み、ここで上記PLGAは、RG502、RG503H、RG503、RG752S、RG753S、RG755S、RG756S、およびRG858Sからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を含み、ここで上記PLGAは、RG502、RG503、RG752S、RG753S、RG755S、RG756S、およびRG858Sからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、本開示の生分解性眼用インプラントは、1種のPLGAを含む。いくつかの実施形態において、上記PLGAは、約65:35のPLAおよびPLGの比を有する。
【0049】
いくつかの実施形態において、本開示の生分解性眼用インプラントは、少なくとも2種のPLGAを含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも3種のPLGA(例えば、3~6種のPLGA、3種のPLGA、4種のPLGA、5種のPLGA)を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、本開示の生分解性眼用インプラントは、少なくとも2種のPLGAを含み、ここで各PLGAは、RG502、RG502H、RG503、RG503H、RG504、RG504H、RG505、RG653H、RG750S、RG752H、RG752S、RG753H、RG753S、RG755S、RG756S、RG757S、およびRG858Sからなる群より独立して選択される。いくつかの実施形態において、本開示の生分解性眼用インプラントは、少なくとも2種のPLGAを、約99%:約1%(例えば、約98%:約2%、約97%:約3%、約96%:約4%、約95%:約5%、約94%:約6%、約95%:約5%、約94%:約6%、約93%:約7%、約92%:約8%、約91%:約9%、約90%:約10%、約90%:約10%、約89%:約11%、約88%:約12%、約87%:約13%、約87%:約13%、約86%:約14%、約85%:約15%、約84%:約16%、約83%:約17%、約82%:約18%、約81%:約19%、約80%:約20%、約79%:約21%、約78%:約22%、約77%:約23%、約76%:約24%、約75%:約25%、約74%:約26%、約73%:約27%、約72%:約28%、約71%:約29%、約70%:約30%、約69%:約31%、約68%:約32%、約67%:約33%、約66%:約34%、約65%:約35%、約64%:約36%、約63%:約37%、約62%:約38%、約61%:約39%、約60%:約40%、約59%:約41%、約58%:約42%、約57%:約43%、約56%:約44%、約55%:約45%、約54%:約46%、約53%:約47%、約52%:約48%、約51%:約49%、約50%:約50%、約49%:約51%、約48%:約52%、約47%:約53%、約46%:約54%、約45%:約55%、約44%:約56%、約43%:約57%、約42%:約58%、約41%:約59%、約40%:約60%、約39%:約61%、約38%:約62%、約37%:約63%、約36%:約64%、約35%:約65%、約34%:約66%、約33%:約67%、約32%:約68%、約31%:約69%、約30%:約70%、約29%:約71%、約28%:約72%、約27%:約73%、約26%:約74%、約25%:約75%、約24%:約76%、約23%:約77%、約22%:約78%、約21%:約79%、約20%:約80%、約19%:約81%、約18%:約82%、約17%:約83%、約16%:約84%、約15%:約85%、約14%:約86%、約13%:約87%、約12%:約88%、約11%:約89%、約10%、約90%、約9%:約91%、約8%:約92%、約7%:約93%、約6%:約94%、約5%:約95%、約4%:約96%、約3%:約97%、約2%:約98%、および約1%:約99%)の比において含む。いくつかの実施形態において、本開示の生分解性眼用インプラントは、少なくとも2種のPLGAを、約50%~約75%:約25%~約50%(例えば、約50%~約70%:約30%~約50%、約50%~約65%:約35%~約50%、約50%~約60%:約40%~約50%、および約55%:約45%)の比において含む。ある特定の実施形態において、本開示の生分解性眼用インプラントは、少なくとも2種のPLGAを、約50%:約50%の比で含む。実施形態において、上記2種のPLGAは、RG503およびRG503Hである。実施形態において、上記2種のPLGAは、RG502およびRG502Hである。実施形態において、上記2種のPLGAは、RG504およびRG504Hである。
【0051】
いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも3種の種々の生分解性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも3種のPLGAを含み、ここで各PLGAは、RG502、RG502H、RG503、RG503H、RG504、RG504H、RG505、RG653H、RG750S、RG752H、RG752S、RG753H、RG753S、RG755S、RG756S、RG757S、およびRG858Sからなる群より独立して選択される。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも3種のPLGAを、約1%~約95%(例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、および約95%):約1%~約95%(例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、および約95%):約1%~約95%(例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、および約95%)の比で含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも3種のPLGAを、約40%:約40%:約20%の比で含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも3種のPLGAを、約50%:約10%:約40%の比で含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも3種のPLGAを、約10%:約50%:約40%の比で含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも3種のPLGAを、約40%:約40%:約20%の比で含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも3種のPLGAを、約10%:約50%:約40%の比で含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも3種のPLGAを、約20%:約60%:約20%の比で含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも3種のPLGAを、約20%:約50%:約30%の比で含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも3種のPLGAを、約15%:約50%:約35%の比で含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも3種のPLGAを、約15%:約45%:約40%の比で含む。実施形態において、各PLGAは、RG503、RG503HおよびRG753Sからなる群より独立して選択される。実施形態において、各PLGAは、RG502、RG503、およびRG753Sからなる群より独立して選択される。実施形態において、各PLGAは、RG502、RG503、およびRG752Sからなる群より独立して選択される。ある特定の実施形態において、各PLGAは、RG502、RG503、およびRG755Sからなる群より独立して選択される。ある特定の実施形態において、各PLGAは、RG502、RG503、およびRG756Sからなる群より独立して選択される。
【0053】
いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも4種の種々の生分解性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも4種のPLGAを含み、ここで各PLGAは、RG502、RG502H、RG503、RG503H、RG504、RG504H、RG505、RG653H、RG750S、RG752H、RG752S、RG753H、RG753S、RG755S、RG756S、RG757S、およびRG858Sからなる群より独立して選択される。特定の実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも4種のPLGAを含み、ここで各PLGAは、RG502、RG503、RG753S、RG755S、RG756SおよびRG858Sからなる群より独立して選択される。特定の実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも4種のPLGAを含み、ここで各PLGAは、RG502、RG503、RG753SおよびRG858Sからなる群より独立して選択される。
【0054】
いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも4種のPLGAを、約1%~約95%(例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、および約95%):約1%~約95%(例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、および約95%):約1%~約95%(例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、および約95%):約1%~約95%(例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、および約95%)の比で含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも4種のPLGAを、約10%~約30%(例えば、約10%、約15%、約20%、約25%、および約30%):約20%~約40%(例えば、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%):約20%~約40%(例えば、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%):約10%~約30%(例えば、約10%、約15%、約20%、約25%、および約30%)の比で含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも4種のPLGAを、約1%~約20%(例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%):約40%~約60%(例えば、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%):約20%~約40%(例えば、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%):約1%~約20%(例えば、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%)の比で含む。
【0055】
ある特定の実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも4種のPLGAを、約20%:約30%:約30%:約20%の比で含む。ある特定の実施形態において、上記生分解性ポリマーは、少なくとも4種のPLGAを、約10%:約50%:約30%:約10%の比で含む。上記生分解性ポリマー中の4種のPLGAの各々は、RG502、RG503、RG753S、RG755S、RG756S、およびRG858Sからなる群より独立して選択され得る。いくつかの実施形態において、各PLGAは、独立して、RG502、RG503、RG753S、またはRG858Sである。
【0056】
いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマーは、RG503、RG502およびRG753Sを、約40~約60%:約5~約20%:約30~約50%の比で含む。ある特定の実施形態において、上記生分解性ポリマーは、RG503、RG502およびRG753Sを、約50%:約10%:約40%の比で含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約1ヶ月~約24ヶ月(例えば、約2ヶ月~約24ヶ月、約5ヶ月~約24ヶ月、約7ヶ月~約10ヶ月、約10ヶ月~約24ヶ月、約12ヶ月~約24ヶ月、約15ヶ月~約24ヶ月、約17ヶ月~約24ヶ月、約20ヶ月~約24ヶ月、および約22ヶ月~約24ヶ月)で実質的に生分解する。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約3ヶ月~約12ヶ月(例えば、約4ヶ月~約12ヶ月、約5ヶ月~約12ヶ月、約5ヶ月~約12ヶ月、約6ヶ月~約12ヶ月、約7ヶ月~約12ヶ月、約8ヶ月~約12ヶ月、約9ヶ月~約12ヶ月、約10ヶ月~約12ヶ月および約11ヶ月~約12ヶ月)で実質的に生分解する。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約12ヶ月~約18ヶ月(例えば、約13ヶ月~約18ヶ月、約14ヶ月~約18ヶ月、約15ヶ月~約18ヶ月、約16ヶ月~約18ヶ月および約17ヶ月~約18ヶ月)で実質的に生分解する。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月または約12ヶ月で実質的に生分解する。
【0058】
生分解性眼用インプラント
本明細書で記載される生分解性眼用インプラントは、生分解性ポリマーであって、その中に組み込まれた化合物を含む生分解性ポリマーを含む。好ましい実施形態において、上記化合物は、式Iの化合物である。本開示の生分解性眼用インプラントは、眼疾患を処置し得、被験体の視覚組織と上記生分解性眼用インプラントとを接触させることを含み、ここで上記眼疾患は、緑内障、糖尿病網膜症(DR)、網膜静脈閉塞症(RVO)、および未熟児網膜症(ROP)からなる群より選択され、上記化合物は、上記眼疾患を処置するために治療上有効な量で存在する。
【0059】
種々の実施形態において、上記インプラントは、約300μm~約400μm(例えば、約300μm、約325μm、約350μm、約375μm、および約400μm)の直径および約4mm~約5mm(例えば、約4.1mm、約4.2mm、約4.3mm、約4.4mm、約4.5mm、約4.6mm、約4.7mm、約4.8mm、約4.9mm、および約5mm)の長さを有する。ある特定の実施形態において、上記インプラントは、約300μmの直径および約4mmの長さを有する。ある特定の実施形態において、上記インプラントは、約340μmの直径および約4mmの長さを有する。
【0060】
種々の実施形態において、上記インプラントは、約250μg~約450μg(例えば、約250μg、約270μg、約290μg、約310μg、約330μg、約350μg、約370μg、約390μg、約410μg、約430μg、および約450μg)の総重量を有する。種々の実施形態において、上記インプラントは、約300μg~約450μgの総重量を有する。種々の実施形態において、上記インプラントは、約350μg~約450μgの総重量を有する。いくつかの実施形態において、上記インプラントは、約380μgの総重量を有する。
【0061】
いくつかの実施形態において、上記生分解性眼用インプラントは、最初に、少なくとも約95%~約99%(例えば、約95%、約96%、約97%、約98%、および約99%)の上記生分解性ポリマーおよび上記化合物のマトリクスを含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性眼用インプラントは、最初に、少なくとも95%の上記生分解性ポリマーおよび上記化合物のマトリクスを含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性眼用インプラントは、最初に、少なくとも約80%~約95%(例えば、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、および約95%)の上記生分解性ポリマーおよび上記化合物のマトリクスを含む。
【0062】
ある特定の実施形態において、上記生分解性眼用インプラントは、約 を含む。
【0063】
硝子体内インプラントまたは粒子懸濁物(例えば、本開示の生分解性眼用インプラント)からの治療剤(例えば、式Iの化合物)放出の速度は、上記インプラントの表面積、治療剤含有量、および上記治療剤の水溶解度、ならびにポリマー分解の速度が挙げられるが、これらに限定されないいくつかの要因に依存し得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、40%未満(例えば、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、および約5%)の上記化合物が、約1ヶ月でリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に置かれる場合に上記生分解性眼用インプラントから放出される。いくつかの実施形態において、90%未満(例えば、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、および約5%)の上記化合物が、約1ヶ月~約12ヶ月(約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、約12ヶ月)でリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に置かれる場合に上記生分解性眼用インプラントから放出される。
【0065】
種々の実施形態において、上記インプラントは、硝子体内投与として投与される。硝子体内投与とは、眼の硝子体液への薬物投与をいう。いくつかの実施形態において、上記インプラントは、眼の背部に局所的に投与される。いくつかの実施形態において、上記インプラントは、針およびアプリケーターを使用して、硝子体内空間へと注射される。いくつかの実施形態において、上記生分解性眼用インプラントは、約1μg~約1mgの範囲(例えば、約1μg、約10μg、約25μg、約50μg、約75μg、約100μg、約125μg、約150μg、約175μg、約200μg、約225μg、約250μg、約275μg、約300μg、約325μg、約350μg、約375μg、約400μg、約425μg、約450μg、約475μg、約500μg、約525μg、約550μg、約575μg、約600μg、約625μg、約650μg、約675μg、約700μg、約725μg、約750μg、約775μg、約800μg、約825μg、約850μg、約875μg、約900μg、約925μg、約950μg、および約975μg)の用量の上記化合物(例えば、式Iの化合物)を含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性眼用インプラントは、約10μg~約100μgの範囲の用量の上記化合物(例えば、式Iの化合物)を含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性眼用インプラントは、約500μg~約4mgの範囲(例えば、約1mg、約1.5mg、約2mg、約2.5mg、約3mg、および約3.5mg)の用量の上記化合物(例えば、式Iの化合物)を含む。いくつかの実施形態において、上記用量は、約150μg~約250μgである。ある特定の実施形態において、上記用量は、約165μg~約220μg(例えば、約165μg、約170μg、約175μg、約180μg、約185μg、約190μg、約195μg、約200μg、約205μg、約210μg、約215μg、および約220μg)である。いくつかの実施形態において、上記用量は、約300μg~約500μgである。いくつかの実施形態において、上記用量は、約300μg~約550μgである。いくつかの実施形態において、上記用量は、約300μg~約600μgである。ある特定の実施形態において、上記用量は、約330μg~約500μg(例えば、約330μg、約335μg、約340μg、約345μg、約350μg、約355μg、約360μg、約365μg、約370μg、約375μg、約380μg、約385μg、約390μg、約395μg、約400μg、約405μg、約410μg、約415μg、約420μg、約425μg、約430μg、約435μg、約440μg、約445μg、約450μg、約455μg、約460μg、約465μg、約470μg、約475μg、約480μg、約485μg、約490μg、約495μg、および約500μg)である。いくつかの実施形態において、上記用量は、約200μg~約400μg(例えば、約200μg、約210μg、約220μg、約230μg、約240μg、約250μg、約260μg、約270μg、約280μg、約290μg、約300μg、約310μg、約320μg、約330μg、約340μg、約350μg、約360μg、約370μg、約380μg、約390μg、約400μg)である。いくつかの実施形態において、上記用量は、約175μgである。
【0066】
いくつかの実施形態において、上記生分解性眼用インプラントは、無菌生分解性眼用インプラントである。本明細書で使用される場合、「無菌」とは、医薬品規制当局(例えば、英国ではMCAまたは米国ではFDA)によって施行される無菌性の要件を満たす組成物に言及する。試験は、概要(例えば、英国薬局方および米国薬局方)の現行バージョンの中に含まれる。いくつかの実施形態において、上記生分解性眼用インプラントは、実質的に純粋な生分解性眼用インプラントである。いくつかの実施形態において、上記生分解性眼用インプラントは、医療グレードの生分解性眼用インプラントである。いくつかの実施形態において、上記生分解性眼用インプラントは、3~12ヶ月ごとに硝子体内空間に投与される。
【0067】
いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーであって、その中に組み込まれた化合物を含む生分解性ポリマーを含む生分解性眼用インプラントが本明細書で提供され:ここで上記化合物は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、ここで上記生分解性ポリマー中の上記化合物の濃度は、約45% w/wであり;上記生分解性ポリマーは、RG503、RG502およびRG753Sを、約50%:約10%:約40%の比で含む。
【0068】
ある特定の実施形態において、生分解性ポリマーであって、その中に組み込まれた化合物を含む生分解性ポリマーを含む生分解性眼用インプラントが本明細書で提供され:ここで上記上記化合物は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり、ここで上記生分解性ポリマー中の上記化合物の濃度は、約45% w/wであり;上記生分解性ポリマーは、RG503、RG502およびRG753Sを、約20%:約20%:約60%の比で含む。
【0069】
作製方法
本明細書で記載される生分解性眼用インプラントを作製する方法は、化合物を含む生分解性ポリマーを、ソルベントキャスティング(solvent casting)、射出成形、または押し出し成形に供する工程であって、ここで上記化合物は、式Iの化合物:
【化6】
またはその薬学的に受容可能な塩である工程を包含する。
【0070】
インプラント製作の前に、上記ポリマーマトリクスおよび治療剤のブレンドが溶解され得、上記インプラントの本体を通じて均質に分散される治療剤を生じるために、溶媒と混合され得る。調製されたブレンドは各々、種々の比の複数の、例えば、3種の異なるPLGAポリマーを含み得る。本発明の薬学的組成物を生成するために使用される上記PLGAポリマーとしては、RESOMER(登録商標) RG502、RG503、RG752S、RG753S、および65/35 PLA/PLG(これらは全て市販されている)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0071】
以下は、本発明の組成物を調製するために使用される例示的手順である: 例えば、上記ポリマーを、特定の比で、有機溶媒(例えば、塩化メチレン)中に溶解する。次いで、上記治療剤(例えば、エドネンタン)を、上記ポリマー溶液に添加し、溶解する。次いで、上記塩化メチレンを、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディッシュの中で室温においてエバポレートする。上記塩化メチレンをエバポレートした後、均質な物質の薄いフィルムが残る。一実施形態において、上記薄いフィルムは、200μm~300μmの厚みの範囲に及ぶ。
【0072】
次いで、その残っている均質なフィルムを、低温ミル(cryogenic mill)を使用して粉末へと粉砕する。そのフィルムの小部分を、2~3個の適切なサイズにされた粉砕ボールを入れたステンレス鋼低温ミル容器へと添加し、2~3分間、5Hzにおいて、液体窒素を使用して予め冷却する。次いで、上記物質を、20Hz~25Hzにおいて1分間粉砕し、5Hzにおいて1分間休止する。この粉砕/休止サイクルを、2~5回反復する。その得られた物質は、均質な物質の粗い粉末から微細粉末である。
【0073】
本発明のインプラントは、一実施形態において、上記の均質な物質を使用して調製され得る。一実施形態において、上記インプラントは、射出成形によって形成される。射出成形は、例えば、適切な射出成形機(例えば、改造されたHaake MiniJet(ThermoFisher Scientific))によって行われ得る。以下は、本発明のインプラントを調製するために使用される例示的手順である。
【0074】
上記均質な粉末を装填し、適切なサイズ(例えば、300μm×12mm)のチャネルからなる型へと射出する。上記粉末を、上記型へと至るバレルに装填し、上記型を真空下に置く。上記型の温度を、15℃~75℃に保持する。上記粉末を装填したバレルの周りのシリンダーを、145℃~220℃で10~15分間保持して、上記粉末ブレンドを融解する。220バール~330バールの射出圧力を使用して、2~10分間保持して射出を行う。射出後圧力を、50バールにおいて2~10分間保持する。次いで、上記型を15~23℃へと冷却し、その後、上記型を射出成形機から外す。次いで、成形されたファイバーを上記型から外し、次いで、目標重量および長さを有するインプラントへと切断する。いくつかの実施形態において、上記インプラントは、長さ4mmであり、約165μg~約220μgの活性成分(例えば、エドネンタン)を含む。
【0075】
本発明のインプラントは、一実施形態において、上記の均質な物質を使用して調製され得る。一実施形態において、上記インプラントは、押し出し成形、例えば、ホットメルト押し出し成形によって形成される。ホットメルト押し出し成形は、ThermoFisher Pharma mini HME Micro Compounder、ThermoFisher FP-Pharma-11-Twin-230x100、ThermoFisher Pharma 11 Twin-Screw Extruder、ThermoFisher FP-Pharma-16-230x100、ThermoFisher Pharma 16 Twin-Screw Extruder、またはBarrell Engineering Micro Syringe Type Extruderを使用して行われ得る。
【0076】
結晶形態
別の局面において、本明細書で記載される生分解性眼用インプラントおよびその使用方法は、式Iの化合物の固体形態を含む生分解性ポリマーを含む。
【0077】
ある特定の実施形態において、式Iの化合物:
【化7】
の固体形態は、2θに関して、5.6±0.2°、11.4±0.2°、17.7±0.2°、19.3±0.2°、21.1±0.2°、および21.9±0.2°にあるピークから選択される少なくとも3つの特徴付けピークを含むX線粉末回折パターンを有する無水結晶形態(形態4)である。
【0078】
上記固体形態のいくつかの実施形態において、上記無水結晶形態4は、回折角(2θ)に関して表される以下のX線粉末回折パターン:5.6±0.2°、11.4±0.2°、17.7±0.2°、19.3±0.2°、および21.9±0.2°を有する。上記固体形態のいくつかの実施形態において、上記無水結晶形態4は、回折角(2θ)に関して表される以下のX線粉末回折パターン:11.4±0.2°、17.7±0.2°、および19.3±0.2°を有する。上記固体形態のいくつかの実施形態において、上記無水結晶形態4は、DSC分析によって約163℃のTを示す。上記固体形態のいくつかの実施形態において、上記無水結晶形態4は、回折角(2θ)に関して表される以下のX線粉末回折パターン:5.6±0.2°、11.4±0.2°、17.7±0.2°、19.3±0.2°、および21.9±0.2°を有する。上記固体形態のいくつかの実施形態において、上記無水結晶形態4は、回折角(2θ)に関して表される以下のX線粉末回折パターン:11.4±0.2°、17.7±0.2°、および19.3±0.2°を有する。上記固体形態のいくつかの実施形態において、上記無水結晶形態4は、DSC分析によって約163℃のTを示す。
【0079】
いくつかの実施形態において、上記化合物は、上記組成物中に存在する化合物の総重量に基づいて結晶形態4において90重量%またはこれより多い。いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、上記組成物中に存在する化合物の総重量に基づいて結晶形態4において95重量%またはこれより多い。いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、上記組成物中に存在する化合物の総重量に基づいて結晶形態4において96重量%またはこれより多い。いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、上記組成物中に存在する化合物の総重量に基づいて結晶形態4において97重量%またはこれより多い。いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、上記組成物中に存在する化合物の総重量に基づいて結晶形態4において98重量%またはこれより多い。いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、上記組成物中に存在する化合物の総重量に基づいて結晶形態4において99重量%またはこれより多い。
【0080】
ある特定の実施形態において、式Iの化合物は、無水結晶形態(形態1)であり、ここで上記無水結晶形態1は、2θに関して、6.3±0.2°、7.5±0.2°、11.7±0.2°、15.1±0.2°、および17.3±0.2°にあるピークから選択される少なくとも3つの特徴付けピークを含むX線粉末回折パターンを有する;上記化合物は、上記組成物中に存在する化合物の総重量に基づいて結晶形態1において90重量%またはこれより多い。
【0081】
ある特定の実施形態において、式Iの化合物は、一水和物結晶形態(形態2)であり、ここで上記一水和物結晶形態2は、2θに関して、9.6±0.2°、10.4±0.2°、19.6±0.2°、19.7±0.2°、22.0±0.2°、22.9±0.2°、および23.7±0.2°にあるピークから選択される少なくとも3つの特徴付けピークを含むX線粉末回折パターンを有する;上記化合物は、上記組成物中に存在する化合物の総重量に基づいて結晶形態2において90重量%またはこれより多い。
【0082】
ある特定の実施形態において、式Iの化合物は、無水結晶(形態3)であり、ここで上記無水結晶形態3は、2θに関して、7.8±0.2°、9.0±0.2°、11.6±0.2°、15.8±0.2°、および19.1±0.2°にあるピークから選択される少なくとも3つの特徴付けピークを含むX線粉末回折パターンを有する;上記化合物は、上記組成物中に存在する化合物の総重量に基づいて結晶形態3において90重量%またはこれより多い。
【0083】
本明細書で使用される場合、「非晶質」という用語は、その分子の位置において長距離秩序度を有しない固体物質に言及する。非晶質固体は、概して、分子がランダム様式で配置され、その結果、十分に規定された配置(例えば、分子パッキング)も長距離秩序度もない過冷却された液体である。非晶質固体は、概して等方性である、すなわち、全ての方向において類似の特性を示し、明確な融点を有しない。例えば、非晶質物質は、そのX線粉末回折(XRPD)パターンにおいて鋭い特徴的な結晶ピークを有しない(すなわち、XRPDによって決定される結晶ではない)固体物質である。代わりに、1つのまたはいくつかの広いピーク(例えば、ハロー)が、そのXRPDパターンにおいて現れる。
【0084】
結晶性エドネンタンの水和物形態が企図される(例えば、エドネンタン・(HO)(ここでmは、約0~約4(両端を含む)の間の分数または整数である))。例えば、結晶性エドネンタンの無水物形態または一水和物形態が、本明細書で企図される。一実施形態において、エドネンタンの開示される結晶形態は、約1~10重量%(例えば、3~9重量%または5~8重量%)の水レベルを有し得る。
【0085】
眼疾患
本開示の方法は、緑内障、糖尿病網膜症(DR)、網膜静脈閉塞症(RVO)、および未熟児網膜症(ROP)(これらは、以下に記載される)から選択される眼疾患の処置および改善における上記のエドネンタンを含む生分解性眼用インプラントの使用を含む。
【0086】
緑内障
本明細書で記載されるエドネンタンを含む組成物を使用する緑内障の処置において、「治療上有効な量」は、標準ケア(眼内圧(IOP)の低下)によって達成され得るものを超える網膜血流(RBF)の改善を評価することによって決定され得る。緑内障適応症に関しては、健常ウサギ眼モデルにおける血流の改善は、ヒトにおける薬力学的応答(PD)の予測として使用され得る。ウサギは、ウサギおよびヒトの眼の解剖学的および機能的類似性に起因して、ヒトの眼疾患を標的とする化合物に関する眼のPK/PD関係性を評価するために一般に使用される。以前に、ウサギの眼へのET-1の硝子体内投与は、顕著な血管収縮および視神経損傷を誘導することが示されている(Sasaoka M.ら, Exp Eye Res 2006; Sugiyama T.ら, Arch Ophthalmol 2009)。このモデルにおける有効性は、ヒト緑内障患者の血漿および眼房水において観察されるレベルに等しい濃度において硝子体内ET-1投与によって誘導される灌流障害の逆転の基準にされる(Li S.ら, Journal of Ophthalmology 2016)。
【0087】
関連する動物の緑内障モデルの他の例は、急激に上昇するIOPのMorrisonのラットモデルおよびレーザー誘導性非ヒト霊長類(NHP)緑内障モデルである。Morrisonのラットモデルにおける緑内障は、強膜上静脈を介する高張性塩類溶液投与によるIOPの持続する上昇によって誘導される。レーザー誘導性NHP緑内障モデルでは、IOPの持続性の上昇後に、視神経乳頭血流が低減されることが示されている(Wang L.ら, Invest Ophthalmol Vis Sci 2012)。さらに、視神経乳頭血流の低減は、視神経における長期の構造変化と相関することが示されている(Cull G.ら, Invest Ophthalmol Vis Sci 2013)。
【0088】
上記の緑内障モデルにおける有効性は、IOPの低減、ベースラインからの視神経乳頭または網膜血流における改善、構造的な神経変性的変化(例えば、光干渉断層撮影(OCT)またはフラットマウント(flat mount)での網膜神経節細胞数によって測定される場合の網膜神経線維層の厚み)、ならびに機能的変化(エドネンタンでの処置後の網膜電図記録法(ERG)またはコントラスト感度)の進行の防止または緩徐化として定義される。
【0089】
網膜血流に対するエドネンタンを含む組成物の効果は、ボアズイユの法則において血管半径(r)によって評価され得ると考えられる。エンドセリンアンタゴニストによる(r)の増大は、IOP低減を経る灌流圧の増大によって達成され得るものよりも、血流のより顕著な増大を誘導する:
血流=(灌流圧×πr)/(8ηl)
ここで
l: 血管長
r: 血管半径
η: 血液粘度
灌流圧: 平均動脈圧-IOP
さらに、エドネンタンを含む組成物は、網膜/視神経乳頭組織灌流における改善とは無関係の機序を通じて、IOPを低減し得る、および/またはRGC死滅を防止し得る。よって、ある特定の特異的エドネンタンを使用することによって、上記パラメーターのうちの1つ(r)またはこれより多くのもの(IOP)が、RBFを改善するために変更され、それによって、緑内障を処置するにあたって治療上の有効性を達成することができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、上記緑内障患者は、彼らが診断されると直ぐに処置を開始される。いくつかの実施形態において、式Iの化合物(エドネンタン)を含む生分解性眼用インプラントは、眼の背部に(例えば、硝子体内生分解性眼用インプラントを使用して)、3~12ヶ月ごと(例えば、4~12ヶ月ごと、5~12ヶ月ごと、6~12ヶ月ごと、7~12ヶ月ごと、8~12ヶ月ごと、9~12ヶ月ごと、10~12ヶ月ごと、11~12ヶ月ごと、3~4ヶ月ごと、3~5ヶ月ごと、3~6ヶ月ごと、3~7ヶ月ごと、3~8ヶ月ごと、3~9ヶ月ごと、3~10ヶ月ごと、または3~11ヶ月ごと)の頻度で局所的に投与される。
【0091】
いくつかの実施形態において、必要性のある被験体において緑内障を処置するための上記生分解性眼用インプラントは、約1ヶ月~約24ヶ月(例えば、約2ヶ月~約24ヶ月、約5ヶ月~24ヶ月、約7ヶ月~約10ヶ月、約10ヶ月~約24ヶ月、約12ヶ月~約24ヶ月、約15ヶ月~約24ヶ月、約17ヶ月~約24ヶ月、約20ヶ月~約24ヶ月、および約22ヶ月~約24ヶ月)で実質的に生分解する生分解性ポリマー(例えば、PLGA)を含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約3ヶ月~約12ヶ月(例えば、約4ヶ月~約12ヶ月、5ヶ月~約12ヶ月、約5ヶ月~約12ヶ月、約6ヶ月~約12ヶ月、約7ヶ月~約12ヶ月、約8ヶ月~約12ヶ月、約9ヶ月~約12ヶ月、約10ヶ月~約12ヶ月、および約11ヶ月~約12ヶ月)で実質的に生分解する。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約12ヶ月~約18ヶ月(例えば、約13ヶ月~約18ヶ月、約14ヶ月~約18ヶ月、約15ヶ月~約18ヶ月、約16ヶ月~約18ヶ月、約17ヶ月~約18ヶ月)で実質的に生分解する。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、または12ヶ月で実質的に生分解する。
【0092】
糖尿病網膜症(DR)
糖尿病は、微小血管障害性(網膜症、ニューロパチー、および糖尿病性腎症)および大血管障害性(心血管疾患)として分類される重篤な後期合併症を引き起こし得る。糖尿病網膜症は、網膜の小血管およびニューロンへの損傷の結果である。糖尿病網膜症をもたらす最も早期の変化としては、網膜血流の低減と関連する網膜動脈の狭小化;網膜内層(inner retina)のニューロンの機能障害、続いて、網膜外層(outer retina)の機能の変化(視覚機能における微妙な変化と関連する)による後の段階;血液網膜関門(これは、血中の多くの物質(毒素および免疫細胞が挙げられる)から網膜を保護する)の機能障害(網膜神経網(retinal neuropile)への血液構成要素の漏出をもたらす)が挙げられる。後に、網膜血管の基底膜が厚くなり、毛細管が変性し、細胞、特に、周皮細胞および血管平滑筋細胞を失う。これは、血流の喪失および進行性の虚血、および毛細管壁から突出しているバルーン様の構造として出現する微視的な動脈瘤(これは、炎症性の細胞を動員する)をもたらし;網膜のニューロンおよびグリア細胞の機能障害および変性の進行をもたらす。
【0093】
DRにおいて観察される虚血およびオキシダント傷害は、血流を損ない、本発明者らが発見した組織虚血は、エドネンタンを含む組成物によって逆転され得る。DR適応症に関しては、網膜灌流における改善は、種々の増殖性の変化、新生血管形成および/または黄斑浮腫合併症を遅らせるという得られる利益に伴って、低酸素症を低減し、血管内皮増殖因子(VEGF)アップレギュレーションを抑制することが予想される。
【0094】
DRにおいて観察される虚血性網膜症変化に関する代理モデルとして、未熟児網膜症(ROP)の前臨床マウスモデルが使用され得る。マウスにおける酸素誘導性網膜症は、ROP、およびDRを含む他の血管病理において網膜の新生血管形成に関する病因および治療介入を試験するために適した、再現性がありかつ定量可能な増殖性網膜新生血管形成モデルである。上記モデルは、以前に記載されるように(Smith LEHら, Invest Ophthalmol Vis Sci 1994)、1週齢のC57BL/6Jマウスを75% 酸素に5日間、次いで、室内気に曝すことによって誘導される。ROPのこの前臨床モデルの有効性を、網膜低酸素症および新生血管形成を試験することによって評価し得る。DRにおける現行の標準ケアは、抗VEGF治療を含むが、これは、疾患の進行した血管の合併症に対処するに過ぎない。
【0095】
いくつかの実施形態において、DRを有する患者は、上記疾患の非増殖段階の間にこの処置を開始される。いくつかの実施形態において、式Iの化合物(エドネンタン)を含む生分解性眼用インプラントは、眼の背部に(例えば、硝子体内生分解性眼用インプラントを使用して)、3~12ヶ月ごと(例えば、4~12ヶ月ごと、5~12ヶ月ごと、6~12ヶ月ごと、7~12ヶ月ごと、8~12ヶ月ごと、9~12ヶ月ごと、10~12ヶ月ごと、11~12ヶ月ごと、3~4ヶ月ごと、3~5ヶ月ごと、3~6ヶ月ごと、3~7ヶ月ごと、3~8ヶ月ごと、3~9ヶ月ごと、3~10ヶ月ごと、または3~11ヶ月ごと)の頻度で局所的に投与される。
【0096】
いくつかの実施形態において、必要性のある被験体においてDRを処置するための上記生分解性眼用インプラントは、約1ヶ月~約24ヶ月(例えば、約2ヶ月~約24ヶ月、約5ヶ月~24ヶ月、約7ヶ月~約10ヶ月、約10ヶ月~約24ヶ月、約12ヶ月~約24ヶ月、約15ヶ月~約24ヶ月、約17ヶ月~約24ヶ月、約20ヶ月~約24ヶ月、および約22ヶ月~約24ヶ月)で実質的に生分解する生分解性ポリマー(例えば、PLGA)を含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約3ヶ月~約12ヶ月(例えば、約4ヶ月~約12ヶ月、5ヶ月~約12ヶ月、約5ヶ月~約12ヶ月、約6ヶ月~約12ヶ月、約7ヶ月~約12ヶ月、約8ヶ月~約12ヶ月、約9ヶ月~約12ヶ月、約10ヶ月~約12ヶ月、および約11ヶ月~約12ヶ月)で実質的に生分解する。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約12ヶ月~約18ヶ月(例えば、約13ヶ月~約18ヶ月、約14ヶ月~約18ヶ月、約15ヶ月~約18ヶ月、約16ヶ月~約18ヶ月、約17ヶ月~約18ヶ月)で実質的に生分解する。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月または12ヶ月で実質的に生分解する。
【0097】
網膜静脈閉塞症(RVO)
網膜静脈閉塞症(RVO)(網膜の血管障害)は、黄斑浮腫を引き起こす増殖因子を阻害する抗VEGF薬物および浮腫をもたらす炎症性構成要素と戦うコルチコステロイドの硝子体内注射で現在処置されている。全身性の免疫抑制の不要な効果および/またはステロイドの局所的有害作用を回避しながら、組織灌流を改善し、炎症を低減することによって、RVOを処置するために、エドネンタンを含む組成物を使用することは非常に望ましい。
【0098】
RVOは、現在、硝子体内ステロイドおよび抗VEGF薬剤で処置される。本発明者らは、既存の血管の灌流を改善することが黄斑浮腫の程度およびVEGFアップレギュレーション、ならびにRVOとして現れる下流の不適応変化(maladaptive change)を低減すると仮説を立てている。有効性を試験するために、虚血性網膜症の前臨床マウスモデルが使用され得る。マウスにおける酸素誘導性網膜症は、RVOを含む多くの虚血性網膜症において網膜新生血管形成に関する病因および治療介入を試験するために適した、再現性がありかつ定量可能な増殖性網膜新生血管形成モデルである。上記モデルは、以前に記載されるように(Smith LEHら, Invest Ophthalmol Vis Sci 1994)、1週齢のC57BL/6Jマウスを75% 酸素に5日間、次いで、室内気に曝すことによって誘導される。虚血性網膜症のこの前臨床モデルの有効性を、網膜低酸素症および新生血管形成を試験することによって評価し得る。本明細書で記載されるエドネンタンを含む組成物の「治療上有効な量」は、組織灌流を改善し、局所的ステロイドの不要な効果を回避しながらET-1によって媒介される炎症を低減することによって、現行の標準ケアに対して付加的なものであり得る。RVOの処置のいくつかの実施形態において、上記式Iの化合物(エドネンタン)を含む生分解性眼用インプラントは、硝子体内生分解性眼用インプラントを使用して眼の背部に局所的に投与される。投与の頻度は、患者の疾患の経過および治療への応答に基づいて変動する。
【0099】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物(エドネンタン)を含む生分解性眼用インプラントは、3~12ヶ月ごと(例えば、4~12ヶ月ごと、5~12ヶ月ごと、6~12ヶ月ごと、7~12ヶ月ごと、8~12ヶ月ごと、9~12ヶ月ごと、10~12ヶ月ごと、11~12ヶ月ごと、3~4ヶ月ごと、3~5ヶ月ごと、3~6ヶ月ごと、3~7ヶ月ごと、3~8ヶ月ごと、3~9ヶ月ごと、3~10ヶ月ごと、または3~11ヶ月ごと)の頻度で、眼の背部に(例えば、硝子体内生分解性眼用インプラントを使用して)局所的に投与される。
【0100】
いくつかの実施形態において、必要性のある被験体においてRVOを処置するための上記生分解性眼用インプラントは、約1ヶ月~約24ヶ月(例えば、約2ヶ月~約24ヶ月、約5ヶ月~24ヶ月、約7ヶ月~約10ヶ月、約10ヶ月~約24ヶ月、約12ヶ月~約24ヶ月、約15ヶ月~約24ヶ月、約17ヶ月~約24ヶ月、約20ヶ月~約24ヶ月、および約22ヶ月~約24ヶ月)で実質的に生分解する生分解性ポリマー(例えば、PLGA)を含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約3ヶ月~約12ヶ月(例えば、約4ヶ月~約12ヶ月、5ヶ月~約12ヶ月、約5ヶ月~約12ヶ月、約6ヶ月~約12ヶ月、約7ヶ月~約12ヶ月、約8ヶ月~約12ヶ月、約9ヶ月~約12ヶ月、約10ヶ月~約12ヶ月、および約11ヶ月~約12ヶ月)で実質的に生分解する。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約12ヶ月~約18ヶ月(例えば、約13ヶ月~約18ヶ月、約14ヶ月~約18ヶ月、約15ヶ月~約18ヶ月、約16ヶ月~約18ヶ月、約17ヶ月~約18ヶ月)で実質的に生分解する。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月または12ヶ月で実質的に生分解する。
【0101】
未熟児網膜症(ROP)
未熟児網膜症(ROP)は、早産児に影響を及ぼす網膜血管増殖性疾患である。ROPは、全世界で失明および視覚障害の主要な防止可能な原因であり続けている。周産期ケアの改善、中等度早産児(moderately preterm infant)の生存の改善、および酸素送達およびモニタリングに関する資源の制限に伴って、発展途上国では、より成熟した早産児が、重篤なROPを発生している。
【0102】
ROPの病態生理は、2段階によって特徴づけられる。段階IのROPは、血管内皮増殖因子(VEGF)およびインスリン様増殖因子-1(IGF-1)の顕著な減少に続発する出生直後に始まる血管消滅(vaso-obliteration)に起因する。段階IIは、およそ33週の月経後年齢(postmenstrual age)(PMA)で開始する。この段階の間に、VEGFレベルは、特に、網膜代謝および酸素需要が増大し、異常な血管増殖に至るとともに、網膜低酸素症が存在する場合に、増大する。ROPの進行した段階に関しては、無血管網膜のレーザーアブレーション、ROP早期処置(ETROP)プロトコール、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)の硝子体内注射および硝子体切除術は、中心視を保護し、網膜剥離を防止するために使用される。長期の合併症(例えば、屈折異常(refractory error)、ROPの再発および網膜剥離のリスク)は、思春期および以降も眼科医による継続的な経過観察を要する。
【0103】
ROPは、早産に続発する網膜血管の過少発育に起因する重篤な虚血によって誘導される。従って、本開示の一局面として、本発明者らは、エドネンタンを含む組成物で既存の血管の灌流を改善することが、虚血の程度およびVEGFアップレギュレーション、ならびにROPとして現れる下流の不適応変化を低減すると考える。有効性を試験するために、ROPの前臨床マウスモデルが使用され得る。マウスにおける酸素誘導性網膜症は、ROPにおける網膜新生血管形成に関する病因および治療介入を試験するために適した、再現性がありかつ定量可能な増殖性網膜新生血管形成モデルである。上記モデルは、以前に記載されるように(Smith LEHら, Invest Ophthalmol Vis Sci 1994)、1週齢のC57BL/6Jマウスを75% 酸素に5日間、次いで、室内気に曝すことによって誘導される。ROPのこの前臨床モデルの有効性を、網膜低酸素症および新生血管形成を試験することによって評価し得る。本明細書で記載されるエドネンタンを含む組成物の「治療上有効な量」は、組織灌流を改善し、VEGFによって誘導される病的な新生血管形成を低減することによって、現行の標準ケアに対して付加的なものである。いくつかの実施形態において、上記薬物療法は、患者の疾患の経過および治療への応答に基づいて、必要な場合に、硝子体内生分解性眼用インプラントを使用して、眼の背部に、4~6週間ごとの頻度で局所的に投与される。例えば、上記硝子体内生分解性眼用インプラントは、患者の疾患の経過および治療への応答に基づいて、必要な場合に、硝子体内注射を使用して、眼の背部に、5週間ごとの頻度で局所的に投与される。
【0104】
いくつかの実施形態において、ROPを有する患者は、上記疾患の非増殖段階の間にこの処置を開始される。いくつかの実施形態において、式Iの化合物(エドネンタン)を含む生分解性眼用インプラントは、眼の背部に(例えば、硝子体内生分解性眼用インプラントを使用して)、3~12ヶ月ごと(例えば、4~12ヶ月ごと、5~12ヶ月ごと、6~12ヶ月ごと、7~12ヶ月ごと、8~12ヶ月ごと、9~12ヶ月ごと、10~12ヶ月ごと、11~12ヶ月ごと、3~4ヶ月ごと、3~5ヶ月ごと、3~6ヶ月ごと、3~7ヶ月ごと、3~8ヶ月ごと、3~9ヶ月ごと、3~10ヶ月ごと、または3~11ヶ月ごと)の頻度で局所的に投与される。
【0105】
いくつかの実施形態において、必要性のある被験体においてROPを処置するための上記生分解性眼用インプラントは、約1ヶ月~約24ヶ月(例えば、約2ヶ月~約24ヶ月、約5ヶ月~24ヶ月、約7ヶ月~約10ヶ月、約10ヶ月~約24ヶ月、約12ヶ月~約24ヶ月、約15ヶ月~約24ヶ月、約17ヶ月~約24ヶ月、約20ヶ月~約24ヶ月、および約22ヶ月~約24ヶ月)で実質的に生分解する生分解性ポリマー(例えば、PLGA)を含む。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約3ヶ月~約12ヶ月(例えば、約4ヶ月~約12ヶ月、5ヶ月~約12ヶ月、約5ヶ月~約12ヶ月、約6ヶ月~約12ヶ月、約7ヶ月~約12ヶ月、約8ヶ月~約12ヶ月、約9ヶ月~約12ヶ月、約10ヶ月~約12ヶ月、および約11ヶ月~約12ヶ月)で実質的に生分解する。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約12ヶ月~約18ヶ月(例えば、約13ヶ月~約18ヶ月、約14ヶ月~約18ヶ月、約15ヶ月~約18ヶ月、約16ヶ月~約18ヶ月、約17ヶ月~約18ヶ月)で実質的に生分解する。いくつかの実施形態において、上記生分解性ポリマー(例えば、PLGA)は、約3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月または12ヶ月で実質的に生分解する。
【0106】
種々の実施形態において、本明細書で記載される眼疾患を処置するための上記生分解性眼用インプラントは、14日後に少なくとも10%のエドネンタンを放出する。いくつかの実施形態において、上記インプラントは、14日後に約16%のエドネンタンを放出する。種々の実施形態において、本明細書で記載される眼疾患を処置するための上記生分解性眼用インプラントは、28日後に少なくとも25%のエドネンタンを放出する。いくつかの実施形態において、上記インプラントは、28日後に約30%のエドネンタンを放出する。種々の実施形態において、本明細書で記載される眼疾患を処置するための上記生分解性眼用インプラントは、56日後に少なくとも40%のエドネンタンを放出する。いくつかの実施形態において、上記インプラントは、56日後に約48%のエドネンタンを放出する。種々の実施形態において、本明細書で記載される眼疾患を処置するための上記生分解性眼用インプラントは、84日後に少なくとも90%のエドネンタンを放出する。いくつかの実施形態において、上記インプラントは、84日後に約100%のエドネンタンを放出する。
【0107】
薬学的組成物
本明細書で記載されるいくつかの実施形態は、エドネンタン(本明細書で記載される)、またはその薬学的に受容可能な塩の治療上有効な量、および薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、添加剤またはこれらの組み合わせを含み得る薬学的組成物に関する。
【0108】
用語「薬学的組成物」とは、本明細書で開示される一方または両方の化合物と、他の化学的構成要素(例えば、希釈剤またはキャリア)との混合物に言及する。上記薬学的組成物は、生物への上記化合物の投与を容易にする。薬学的組成物は一般に、特定の意図した投与経路に合わせて作られる。
【0109】
いくつかの薬学的組成物は、薬学的に受容可能な塩を調製することを含む。薬学的に受容可能な塩は、本開示の化合物に存在する酸性基または塩基性基の塩を含む。薬学的に受容可能な酸付加塩としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩(acid phosphate)、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩(glucaronate)、サッカリン酸塩(saccharate)、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))。本開示のある特定の化合物は、種々のアミノ酸と薬学的に受容可能な塩を形成し得る。適切な塩基塩としては、アルミニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、およびジエタノールアミン塩が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に受容可能な塩に対する総説に関しては、Bergeら, 66 J. PHARM. SCI., 1-19 (1977)を参照のこと。
【0110】
用語「薬学的に受容可能な」は、その意図した使用にとって安全かつ有効であるキャリア、希釈剤、添加剤、塩または組成物を定義し、所望の生物学的および薬理学的活性を有する。
【0111】
本明細書で使用される場合、「キャリア(carrier)」とは、細胞または組織への化合物の組み込みを促進する化合物をいう。例えば、限定なしに、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、被験体の細胞または組織への多くの有機化合物の取り込みを促進する一般に利用されるキャリアである。
【0112】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」とは、薬理学的活性を欠くが、薬学的に必要であるかまたは所望され得る、薬学的組成物中の成分をいう。例えば、希釈剤は、製造および/または投与のためには質量が小さすぎる強力な薬物のかさを増大させるために使用され得る。それはまた、注射、摂取または吸入によって投与されるべき薬物の溶解のための液体でもあり得る。当該分野の希釈剤の一般的形態は、緩衝化水性溶液(例えば、ヒト血液の組成を模倣するリン酸緩衝化食塩水が挙げられるが、これらに限定されない)である。
【0113】
本明細書で使用される場合、「添加剤(excipient)」とは、限定なしに、かさ、コンシステンシー、安定性、結合能力、潤滑、崩壊能力、溶解の遅れなどを組成物に提供するために薬学的組成物に添加される不活性物質をいう。「希釈剤」は、添加剤の1タイプである。
【0114】
定義
本明細書で使用される場合、「約」は、当業者によって理解され、これが使用される文脈に応じてある程度変動する。これが使用される文脈が与えられる場合、当業者に明らかでない上記用語の使用が存在するのであれば、「約」は、その特定の用語の±10%までを意味する。
【0115】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果をもたらすために十分な化合物の量をいう。有効量は、1回またはこれより多くの投与、適用または投与量において投与され得、特定の製剤または投与経路に限定されないことが意図される。本明細書で使用される場合、「処置する」という用語は、上記状態、疾患、障害などの改善を生じる任意の効果、例えば、上記状態、疾患、障害などを減少させる、低減する、調節する、改善するまたは排除する、またはその症状を改善することを含む。
【0116】
「個体」、「患者」または「被験体(subject)」は、交換可能に使用され、任意の動物(哺乳動物、好ましくは、マウス、ラット、他の齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類、および最も好ましくはヒトが挙げられる)を含む。本開示の化合物は、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与され得るが、他の哺乳動物(例えば、獣医学的処置の必要性のある動物、例えば、飼い慣らされた動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど))にも投与され得る。「調節」は、アンタゴニズム(例えば、阻害)、アゴニズム、部分的アンタゴニズムおよび/または部分的アゴニズムを含む。
【0117】
「薬学的に受容可能な塩」という用語は、本明細書で使用される場合、上記組成物中で使用される化合物に存在し得る酸性のまたは塩基性の基の塩をいう。性質が塩基性である本発明の組成物に含まれる化合物は、種々の無機酸および有機酸と、広く種々の塩を形成し得る。このような塩基性化合物の薬学的に受容可能な酸付加塩を調製するために使用され得る酸は、非毒性の酸付加塩(すなわち、薬学的に受容可能なアニオンを含む塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩(glucaronate)、サッカリン酸塩(saccharate)、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)が挙げられる)を形成するものである。性質が酸性である本発明の組成物に含まれる化合物は、種々の薬理学的に受容可能なカチオンとの塩基塩を形成し得る。このような塩の例としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、特に、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩、および鉄塩が挙げられる。塩基性部分または酸性部分を含む本発明の組成物に含まれる化合物はまた、種々のアミノ酸と薬学的に受容可能な塩を形成し得る。本開示の化合物は、酸性および塩基性両方の基;例えば、1個のアミノ基および1個のカルボン酸基を含み得る。このような場合に、上記化合物は、酸付加塩、双性イオン、または塩基塩として存在し得る。
【0118】
「治療上有効な量」は、所望の状態または障害を処置するために、単独でまたは組み合わせて投与される場合に有効である本開示の化合物の量を含む。「治療上有効な量」は、所望の状態または障害を処置するために有効である特許請求される化合物の組み合わせの量を含む。化合物の組み合わせは、相加的組み合わせであり得、好ましくは、相乗的組み合わせであり得る。相乗効果は、例えば、Chou and Talalay, Adv. Enzyme Regul. 1984, 22:27-55によって記載されるように、組み合わせて投与される場合の上記化合物の効果が、単一薬剤として単独で投与される場合の上記化合物の相加的効果より大きい場合に起こる。一般に、相乗効果は、上記化合物の最適未満の濃度において最も明らかに示される。相乗効果は、個々の構成要素と比較して、上記組み合わせの有害な副作用および/または毒性の低い発生率、増大した有効性、またはいくつかの他の有益な効果に関し得る。
【0119】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、行為、特徴、特性、状態、構造、または結果の完全なまたはほぼ完全な範囲または程度に言及する。例えば、「実質的に」生分解されるポリマーは、物体が完全に生分解されるかまたはほぼ完全に生分解されるかのいずれかであることを意味する。
【実施例
【0120】
実施例
本明細書で記載される開示がより十分に理解され得るように、以下の実施例が示される。本出願に記載される合成実施例および生物学的実施例は、本明細書で記載される化合物、薬学的組成物、および方法を例証するために提供され、それらの範囲を限定するとは決して解釈されるべきではない。
【0121】
略語: w/w:重量/重量; HPLC:高速液体クラマトグラフィー; PBS:リン酸緩衝化生理食塩水; rpm:回転/分; DB:Dutch-belted; DME:糖尿病黄斑浮腫; DR:糖尿病網膜症; ERG:網膜電図; GLP:優良試験所基準; IOP:眼内圧; IVT:硝子体内; LC-MS:液体クロマトグラフ質量分析計; MS:質量分析計; NPDR:非増殖性糖尿病網膜症; OCT:光干渉断層撮影; PDR:増殖性糖尿病網膜症; PLGA:ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド); RPE:網膜色素上皮; TK:チミジンキナーゼ; UPLC:超高速液体クロマトグラフィー。
【0122】
実施例1.例示的製剤パンチ円板の調製および試験
エドネンタンを組み込むポリマーマトリクスの小さな円板を、溶離速度評価のために調製した。表1に示されるように、特定の重量比(例えば、50% RG503および50% RG503H(50/50 RG503/RG503H)のポリマーを、塩化メチレン中に溶解した。次いで、エドネンタン(上記ポリマーおよびエドネンタンの総重量に対して30% w/wにある)を、上記ポリマー溶液に添加し、溶解した。次いで、上記塩化メチレン溶液を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディッシュの中で室温において72~120時間、エバポレートした。上記塩化メチレンを除去した後、ポリマーおよびエドネンタンの均質な混合物の薄いフィルムが残った。各フィルムから直径2mmの円板を切り出し、900μgから1500μgまでの重量の円板を生じる(1枚の円板あたり270μgから450μgまでの薬物負荷を生じる)ように、生検パンチを使用することによって円板を調製した。
【0123】
インビトロ薬物放出試験のために、各製剤あたり3枚のフィルム円板をフィルムから切り出し、37℃および50rpmに設定した振盪インキュベーターの中で、3mLのPBS(pH7.4)中でインキュベートした。薬物放出を、指定した時点でサンプル採取し、時間の関数として放出されたエドネンタン含有量を、図1に示されるように、HPLCアッセイによって分析した。時間の関数としての円板からのエドネンタンの相当する溶離速度を、図2に提供する。薬物放出サンプルを、40℃のAgilent Polaris Amide-C18カラム、ならびにトリフルオロ酢酸で改変した水およびアセトニトリルからなる移動相を使用する逆相クロマトグラフィーによって分析した。275nmでの検出を用いて外部標準を使用して定量を行った。放出媒体を、各サンプル採取時点の間に新鮮な媒体で完全に置き換えた。
【表1】
【0124】
実施例2.例示的インプラントの調製および試験
実施例1における均質なフィルムを生成する手順を使用して、種々のポリマーおよび薬物比を含むさらなる製剤を、表2に示す。上記製剤は、実施例1に記載されるように、室温において72~120時間エバポレートするか、または25℃および20mbarの真空下で24時間乾燥させるかのいずれかであった。次いで、上記フィルムを、低温ミル(cryogenic mill)を使用して粉末へと粉砕した。そのフィルムの小部分を、2~3個の適切なサイズにされた粉砕ボールを入れたステンレス鋼低温ミル容器へと添加し、2~3分間、5Hzにおいて、液体窒素を使用して予め冷却した。次いで、上記物質を、20Hz~25Hzにおいて1分間粉砕し、5Hzにおいて1分間休止した。この粉砕/休止サイクルを、2~5回反復した。その得られた物質は、均質な物質の粗い粉末から微細粉末であった。
【0125】
インプラントを、改造されたHaake MiniJet(ThermoFisher Scientific)での射出成形によって形成した。上記均質な粉末を装填し、適切なサイズ(例えば、300μm×12mmまたは325μm×12mm)のチャネルからなる型へと射出した。上記粉末を、上記型へと至るバレルに装填し、上記型を真空下に置いた。上記型の温度を、15℃~25℃に保持した。上記粉末を装填したバレルの周りのシリンダーを、145℃~165℃で12~15分間保持して、上記粉末ブレンドを融解した。230バール~320バールの射出圧力を使用して、2~5分間保持して射出を行った。射出後圧力を、50バールにおいて2~5分間保持した。次いで、上記型を15~23℃へと冷却し、その後、上記型を射出成形機から外した。次いで、成形されたファイバーを上記型から外し、次いで、それらを、インプラント1個あたり165μg~220μgのエドネンタンを含む4mmのインプラントへと切断した。
【0126】
選択された製剤のインプラントをまた、改造されたBarrell Micro Extruder(Barrell Engineering)を使用してラム押し出し成形によって形成した。上記均質な粉末を3mmのバレルへと装填し、68℃~80℃の温度を維持する0.30μm ダイを経て5μL/分~6μl/分の流量で押し出した。次いで、押し出したフィラメントを、インプラント1個あたり165μg~220μgのエドネンタンを含む4mmのインプラントへと切断した。得られたインプラントは、射出成形で生成したものと類似の性能特徴を有する。
【0127】
インビトロ薬物放出試験のために、各製剤あたり3個のインプラントを、線維ツリー(fiber trees)から無作為に切り出し、37℃および50rpmに設定した振盪インキュベーターの中で、3mLのPBS(pH7.4)中でインキュベートした。上記インプラントの薬物放出プロフィールを、指定した時点でサンプル採取し、放出されたエドネンタン含有量を、図3に示されるように、HPLCアッセイによって分析した。時間の関数としての上記インプラントからのエドネンタンの相当する溶離速度を、図4に提供する。放出媒体を、各サンプル採取時点の間に新鮮な媒体で完全に置き換えた。
【表2】
【0128】
実施例3.薬物動態試験: ウサギにおけるエドネンタン硝子体内インプラントの12週間眼および全身薬物動態
DBウサギの非GLP 12週間眼および全身薬物動態試験において、1個のエドネンタン硝子体内インプラント(全インプラント重量 384μg/インプラント; 173μg エドネンタン/インプラント)を、DBウサギにおいて1回の両側IVT注射(1時点あたり2匹の動物および4個の眼)として投与した。上記インプラントは、50% RG503、10% RG502、および40% RG752Sを含むResomer(登録商標)のブレンド中、45% エドネンタンを含んだ。ウサギを、2週目、4週目、8週目、および12週目に安楽死させ、眼房水、水晶体、硝子体液、網膜、RPE/脈絡膜および血漿中の薬物濃度を決定した。
【0129】
眼組織および血漿のサンプルを、LC-MS/MS分析によって、薬物含有量に関して分析した。Zorbax Eclipse Plus C18 Rapid Resolutionカラム、ならびに0.1% ギ酸で改変した水およびアセトニトリルの移動相を使用する逆相分離を利用した。Agilent 6430トリプル四重極質量分析計に連結したAgilent 1290 UPLCを、分析のために使用した(定量のために537.21→439.4Daの質量遷移(mass transition)が捕捉される)。1~200ng/mLのエドネンタンの濃度範囲とともに、10.6ng/mLの固定濃度における重水素化エドネンタン内部標準を使用した。眼組織を、タンパク質沈殿および液-液抽出による分析のために調製した。
【0130】
このPLGAインプラント中の45% エドネンタンのIVT徐放送達は、試験の継続期間にわたってエドネンタンの持続可能な治療標的組織レベルの達成を明らかに示した(表3)。結果は、インプラントが、2週間、4週間、8週間、および12週間においてそれぞれ16%、30%、48%、および100% エドネンタンの累積合計を放出することを示した。
【表3】
【0131】
実施例4.分布試験
エドネンタンのインビトロメラニン結合を、合成メラニンでのインビトロアッセイにおいて評価した。200μM エドネンタンの濃度を、メラニン(1mg/mL)ありまたはなしの2つの別個の作業溶液へと添加した。200μM クロロキンの濃度を、陽性コントロールとして使用した。このアッセイでは、エドネンタンは、メラニンへの低い(6.1% 結合)結合を示した。コントロールに関しては、メラニンに結合したクロロキンのパーセンテージ(99.5%)は、文献値(Rimpela 2016)に匹敵した(2mg/mL メラニン溶液中、pH7.4において92~99.6%が結合)。
【0132】
実施例5.毒性試験:ウサギにおける2ヶ月単一用量硝子体内眼毒性試験
DBウサギ (5匹の雄性/群)における非GLP 2ヶ月単一用量IVT眼用量範囲毒性試験において、2個または3個のエドネンタン硝子体内インプラント(180μg エドネンタン/インプラント; 360μgおよび540μg/眼 合計)または2個のプラシーボインプラントを、56日間の評価期間で投与した:合計インプラント質量は、365μg(およそ300μmの直径および4mmの長さ)であり、上記インプラントは、50% RG503および50% RG503Hを含むResomer(登録商標)のブレンド中に、45% エドネンタンを含んだ。
【0133】
評価したパラメーターは、眼科検査、眼の観察(改訂Hackett and McDonald)、眼圧測定、インプラントの網膜画像化、光干渉断層撮影(OCT)、ERG、および毒物動態を含んだ。動物を、56日目に安楽死させ、一方の眼を薬物動態のために収集し、他方の眼を潜在的組織病理学のために収集した。
【0134】
眼科的所見は、27日目に2個または3個のエドネンタン硝子体内インプラント(それぞれ、360μgまたは540μg/眼)を投与した10個の眼のうちの1個において一過性の眼の変化(結膜発赤、房水フレア、硝子体細胞)を含んだ。これらの変化は、56日目の試験の終了までに完全に消散した。IOP、ERG、またはOCTにおける変化は観察されなかった。
【0135】
眼組織および血漿のサンプルを、LC-MS/MSによって、薬物含有量に関して分析した。Zorbax Eclipse Plus C18 Rapid Resolutionカラム、ならびに0.1% ギ酸で改変した水およびアセトニトリルの移動相を使用する逆相分離を利用した。Agilent 6430トリプル四重極質量分析計に連結したAgilent 1290 UPLCを、分析のために使用した(定量のために537.21→439.4Daの質量遷移が捕捉される)。0.9~200ng/mLのエドネンタンの濃度範囲とともに、10.6ng/mLの固定濃度における重水素化エドネンタン内部標準を使用した。眼組織を、タンパク質沈殿および液-液抽出による分析のために調製した。
【0136】
結果は、エドネンタンレベルが、56日目に水晶体において最高であることを示した(表4)。上記インプラントは、2個および3個のエドネンタン硝子体内インプラントに関して、それぞれ、3.4ng/mLおよび5.4ng/mLの検出可能な血漿レベルで、56日目にほぼ完全な放出を有した。経時的な血漿レベルを図5に示す。
【表4】
【0137】
組織学検査のために収集した眼を、処理した(n=2 動物/群)。わずかな硝子体細胞および偶発的な網膜ひだ(これらは、おそらく切片化の人工産物である)以外は、組織学的異常は、上記群の眼のいずれにおいても注記されなかった。組織学に関するこれらの眼の検査に基づいて、プラシーボインプラントおよび360μgまたは540μgのエドネンタンを含むインプラントは、十分に許容されているようであった。
【0138】
実施例6.毒性試験:ウサギにおける3ヶ月間単一用量硝子体内眼毒性試験
DBウサギにおける1ヶ月間回復を伴うGLP 3ヶ月間単一用量IVT眼毒性試験において、エドネンタン硝子体内インプラント(合計インプラント質量 440μg; 340μmの直径および4mmの長さを伴う200μg エドネンタン)の製剤を評価する。上記インプラントは、50% RG503, 10% RG502、および40% RG753Sを含むResomer(登録商標)のブレンド中で45% エドネンタンを含む。
【0139】
群1は、左眼に3個のプラシーボインプラント(0μg/眼)を、および右眼に偽注射をして右眼に2個のプラシーボインプラント(0μg/眼)を与える。群2は、左眼に2個のエドネンタン硝子体内インプラント(400μg/眼)を与え、右眼は、処置しない。群3は、右眼に偽注射をして左眼に3個のエドネンタン硝子体内インプラント(600μg/眼)を与える。試験デザインを、以下の表5に示す。
【表5】
【0140】
12週間主要期評価(4匹のウサギ/性別/群)を、ウサギにおける眼の薬物動態試験に基づく12週間での標的(RPE/脈絡膜)および非標的(水晶体)組織に存在するエドネンタンの検出可能な薬物濃度の観察に基づいて選択した。1ヶ月回復期を、4ヶ月の時点で予想される低いまたは存在しない組織濃度に基づいて選択する。
【0141】
3個のエドネンタン硝子体内インプラントの高用量は、2個のエドネンタン硝子体内インプラントの計画される最高臨床用量と比較して、インプラント数に関して1.5倍の眼の安全域(safety margin)を表す。3個のエドネンタン硝子体内インプラント(600μg/眼)の高用量はまた、ウサギにおいて1.4mL(Struble 2014)およびヒトにおいて4.6mL(Caruso 2020, Azhdam 2020)という硝子体容積の種の差異に基づいて、2個のエドネンタンインプラント(400μg/眼)の計画される最高臨床用量と比較して、5倍の眼用量の安全域を表す。この試験に関する評価のパラメーターおよび頻度は、表6に列挙される。
【表6】
【0142】
眼の組織病理は、眼組織の完全な範囲の評価を含む。各眼の少なくとも3個の矢状切片を、1またはいくつかの切片における錐体密集網膜(cone dense retina)(視覚線条(visual streak))の完全評価を含め、調製する。眼の切片化および評価に関する生存中毒性(in-life toxicity)の考慮が含まれる。試験病理学者は、錐体密集視覚線条が適切に評価されたことを確認する。
【0143】
実施例7.毒性試験: サルにおける6ヶ月単一用量硝子体内眼毒性試験
カニクイザルにおけるGLP 6ヶ月単一用量IVT眼毒性試験のエドネンタン硝子体内インプラント製剤および用量選択は、ウサギにおけるGLP 3ヶ月IVT眼毒性試験に関して上記で記載されるものに類似である。3個のエドネンタンインプラントの高用量は、2個のエドネンタンインプラントの計画される最高臨床用量と比較して、インプラント数の1.5倍の眼の安全域を表す。3個のエドネンタンインプラント(600μg/眼)の高用量はまた、サル(2.0mL)とヒト(4.6mL)との間の硝子体容積の種の差異(Caruso 2020, Azhdam 2020)に基づいて、2個のエドネンタンインプラント(400μg/眼)の計画される最高臨床用量と比較して、3.5倍の眼用量の安全域を表す。試験の詳細を、表7に示す。この試験の評価のパラメーターおよび頻度を、表8に列挙する。
【表7】
【表8】
【0144】
眼の組織病理学は、眼組織の全範囲の評価を含む。1個または数個の切片において錐体密集網膜(黄斑)の完全な評価を含め、各眼の少なくとも3個の水平(横断)切片を調製する。眼の切片化および評価に関する生存中毒性の考慮が含まれる。試験病理学者は、錐体密集黄斑が適切に評価されたことを確認する。
【0145】
実施例8.毒性試験:ラットにおけるGLP 1ヶ月経口毒性試験
エドネンタンの全身毒性を評価するために、ラットにおけるGLP 1ヶ月経口毒性試験を行う。Sprague-Dawleyラットにおけるこの1ヶ月経口毒性試験は、1ヶ月間の主要期および2週間の回復期からなる。この試験において選択される最高用量は、5mg/kg/日であり、1.5および0.5mg/kg/日のより低い用量は、用量-応答関係性を評価するために選択される。この試験に関する5mg/kg/日の高用量選択は、BMS-193884文献データとBMS-207940文献データとの間の比較、ならびに高用量選択に関するICH M3(R2)ガイドラインに基づいて、以前に試験した0.83mg/kg ヒト用量(高用量選択に関する概算)と一致する。試験デザインを、以下の表9に列挙する。評価のパラメーターおよび頻度を、以下の表10に列挙する。中枢神経系機能の安全性薬理学評価は、0.4時間の経口Tmaxに基づく(Murugesan 2003)。
【表9】
【表10】
【0146】
実施例9.遺伝子毒性試験
インビトロ遺伝子毒性群(ヒトチミジンキナーゼヘテロ接合(TK6)細胞におけるAmesアッセイおよびインビトロ小核アッセイ)およびラットにおけるインビボ経口小核試験を行う。
【0147】
実施例10.エドネンタン硝子体内インプラントの安全性、耐容性、薬力学および薬物動態の試験
糖尿病網膜症を有する患者および緑内障を有する患者におけるエドネンタン硝子体内インプラントの安全性、耐容性、薬力学および薬物動態の試験を、表11に記載する。
【表11-1】
【表11-2】
【0148】
実施例11.薬物動態試験:ウサギにおけるエドネンタン硝子体内インプラントの12週間の眼および全身薬物動態
DBウサギにおける非GLP 12週間の眼および全身薬物動態試験において、射出成形(IM)またはラム押し出し成形(RE)製造プロセスのいずれかからの2個のエドネンタン硝子体内インプラント(合計インプラント重量 IM 423μg/インプラント; 380μg エドネンタン/2 インプラント、RE 461μg/インプラント、415μg エドネンタン/2 インプラント)を、DBウサギにおいて1回の両側IVT注射(1時点あたり2匹の動物および4個の眼)として投与した。上記インプラントは、50% RG503、10% RG502、および40% RG753Sを含むResomer(登録商標)のブレンド中、45% エドネンタンを含んだ。ウサギを、4週目、8週目、10週目、11週目および12週目に安楽死させ、眼房水、水晶体、硝子体液、網膜、RPE/脈絡膜および血漿中の薬物濃度を決定した。
【0149】
眼の組織および血漿を、タンパク質沈殿および液-液抽出、続いて、逆相LC-MS/MS分析に基づく分析法を使用して、エドネンタン含有量に関して分析した。Agilent 6430 トリプル四重極質量分析計に連結したAgilent 1290 UPLCを分析のために使用した。エドネンタンの定量範囲は、1~250ng/mLであった。組織および血漿サンプルを均質化し、およそ10ng/mLにおいて重水素化エドネンタンを添加したアセトニトリル中0.1% ギ酸で抽出した。その抽出物を、逆相液体クロマトグラフィー分離と、エドネンタンに関しては定量的トランジション m/z 537.2~439.1および重水素化エドネンタンに関してはm/z 540.2~442.1に従うポジティブイオンモードでタンデム質量分析検出とを使用して分析した。
【0150】
このPLGAインプラント中の45% エドネンタンのIVT徐放送達は、試験の継続期間にわたってエドネンタンの持続可能な治療標的組織レベルの達成を明らかに示した(図6図7)。インプラントから放出されたエドネンタンの累積合計は、8週間で100%であった(表12)。
【表12】
【0151】
実施例15.エドネンタンの結晶形態
結晶形態1を調製する例示的方法
非晶質エドネンタン(840mg)を、12mLのIPAに溶解した。その得られた溶液を濾過し、そのフィルターをさらに2.5mLのIPAで洗浄した。その濾過物を乾燥するまで濃縮し、11.8mLのIPA中に溶解し、60℃へと撹拌しながら加熱した。次いで、18mLの温水を、激しく撹拌しながら60℃において滴下添加し、その溶液を60℃において1時間撹拌した。その溶液を、25℃へとゆっくりと冷却し、濾過し、25℃において真空下で乾燥させて、660mgの結晶形態1を得た(XRPDおよびDSCは、それぞれ、図9および図13にある)。
【0152】
結晶形態2の例示的調製法
非晶質エドネンタン(250mg)を、3.5mLのIPA中に溶解した。その得られた溶液を濾過し、そのフィルターを、さらに0.25mLのIPAで洗浄した。次いで、その溶液を60℃へと加熱し、その際に、7.5mLの温水を、激しく撹拌しながら60℃において滴下添加し、次いで、60℃において1時間撹拌した。25℃へとゆっくりと冷却した後、その混合物を濾過して、結晶形態2を得た(XRPDおよびDSCは、それぞれ、図3および図7にある)。あるいは、結晶形態2の好ましい調製法は、以下のとおりである。非晶質エドネンタン(1g)を、25℃において15時間、20mLの水中でスラリーにした。次いで、その溶液を濾過して、結晶形態2を得た(XRPDおよびDSCは、それぞれ、図10および図14にある)。
【0153】
結晶形態3の例示的調製法
非晶質エドネンタン(250mg)を、0.5mLの酢酸エチルに溶解した。その得られた溶液を濾過し、60℃へと加熱し、1.5mLのヘキサンを60℃において激しく撹拌しながら滴下添加した。その得られたわずかに濁った溶液に、0.1mLの酢酸エチルを添加したところ、透明な溶液を生じた。次いで、これを、60℃において1時間撹拌した。その溶液を25℃へとゆっくりと冷却し、その得られた沈殿を濾過して、結晶形態3を得た(XRPDおよびDSCは、それぞれ、図11および図15にある)。
【0154】
結晶形態4の例示的調製法
非晶質エドネンタン(100mg)を、0.2mLのテトラヒドロフラン(THF)を含む2mLの水に添加した。その得られた混合物を、50℃において24時間撹拌し、冷却し、濾過して形態4を得たところ、これは、XRPD(図16)およびDSC(図20)によって、形態1、2および3とは異なることが確認された。
【0155】
代替の方法では、107mgの非晶質エドネンタンを、1mLの水に添加し、続いて、1mLの水中の当量のKOHを添加した。その得られた溶液を、60℃へと20分間加熱し、温めて濾過し、1mLの0.2N HClで酸性化した。その得られた混合物を、5時間にわたって60℃で撹拌し、冷却し、濾過して、形態4を得た。これを、XRPDによって確認した。
【0156】
代替の方法では、150mgのエドネンタン(形態3)を、イソプロパノールおよび水(それぞれ、1mLおよび2mL)の混合物に添加した。その得られたスラリーを、15℃で48時間にわたって撹拌し、次いで、濾過した。そのサンプルは、XRPD分析によって形態4であることが確認された。これは、これらの条件下では、形態4が形態3より熱力学的に安定であることを明らかに示す。
【0157】
代替の方法では、200mgのエドネンタン(形態1)を、イソプロパノールおよび水(それぞれ、1.3mLおよび2.6mL)の混合物に添加した。その得られた溶液を、80℃へと加熱し、24時間にわたって撹拌し、次いで、冷却し、濾過した。そのようにして得たサンプルは、XRPD分析によって形態4であることが確認された。これは、これらの条件下では、形態4が形態1より熱力学的に安定であることを明らかに示す。
【0158】
代替の方法では、100mgのエドネンタン(非晶質)を、10mLの水中で撹拌し、100℃へと40時間にわたって加熱した。その得られた溶液を周囲温度へと冷却し、濾過して、形態4を得た。代替の方法では、非晶質(粗製)エドネンタンを、60℃において8容積のイソプロパノールに溶解する。その得られた溶液を、57℃へと冷却し、次いで、結晶形態4の小さな結晶を添加する。2時間後、その溶液を5℃へと冷却し、15時間保持し、濾過して、結晶形態4を得る。
【0159】
結晶形態のXRPDパターン
結晶形態1~4のXRPDパターンを、図8~12に示す。本明細書で記載される結晶形態のXRPDパターンを、Polycrystalline X線回折装置(Bruker, D8 ADVANCE)を使用して記録した。CuKa放射を、40kvの電圧および40mAの電流において、1.0mmの透過スリットおよび0.4°の斜張りスリット(cable-stayed slit)で操作した。サンプルを、サンプルホルダー溝の中心に置き、サンプルホルダーの表面をサンプルホルダーの表面と同じ高さにした。lynxeye検出器を使用して0.02°のステップサイズおよび8°/分の速度での連続スキャンで、データを集めた。
【0160】
以下の表13~16は、それぞれ、結晶形態1-4に関するある特定のXRPD特徴的ピークを列挙する。
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【0161】
結晶形態の物理化学的特性
結晶形態の例示的物理化学的特性が、本明細書で提供される、本明細書で記載される融点は、以下の手順を使用して測定され得る:
【0162】
i.融点プロトコール
各結晶形態の最大融点ピーク(T)を、DSCを使用して決定した。本明細書で記載される結晶形態のDSCを、TA機器DSC Q2000を使用して測定した。サンプル(1.3010mg)をアルミニウム坩堝に入れて秤量し、30℃から300℃へと10℃/分の加熱速度で加熱した。結晶融解ピークスタート(crystalline melting peak start)、ピークオンセット(peak onset)、ピーク最大、およびピークエンド(peak end)の温度を収集した。
【0163】
本明細書で記載される溶解度は、以下の手順を使用して測定され得る:
ii. 溶解度分析プロトコール
1. 2.0mg以上のサンプルを、whatmanミニユニプレップバイアル(GE Healthcare)の下側のチャンバに秤量した。450μLの緩衝液を、各チャンバに添加した。
2. ミニユニプレップバイアルのフィルターピストンを配置し、液の高さの位置へと押し込んで、インキュベーション中の緩衝液および化合物とフィルターとの接触を可能にする。
3. 上記サンプルを2分間ボルテックスにかけ、続いて、室温において(約25±2℃)24時間、500rpmで振盪しながらインキュベートする。
4. ミニユニプレップを押し込んで、HPLCシステムへの注入用の濾液を調製する。全てのバイアルを、濾過前に目に見える溶解しなかった物質、および濾過後の漏出に関して検査する。
5. 上清を緩衝液で100倍希釈して、HPLCで分析する希釈液を作製する。
【0164】
結晶形態1~4の例示的な物理化学的特性が、以下の表17に提供される。その物理化学的特性は、上記の方法を使用して得られ得る。
【表17】
【0165】
均等物および範囲
特許請求の範囲において、「a(1つの、ある)」、「an(1つの、ある)」および「the(上記、この、その)」のような冠詞は、逆に示されなければ、または文脈から別段明らかでなければ、1または1より多い、を意味し得る。群の1またはこれより多くのメンバーの間に「または(or)」を含む特許請求の範囲または詳細な説明は、上記群のうちの1つ、1より多くのもの、または全てが、逆に示されなければ、または文脈から別段明らかでなければ、所定の生成物またはプロセスに存在するか、その中で使用されるか、または別の点で関連する場合に満たされると考えられる。本開示は、上記群の正確に1つのメンバーが所定の生成物またはプロセスに存在するか、その中で使用されるか、または別の点で関連する実施形態を含む。本開示は、上記群のメンバーのうちの1より多くのもの、または全てが所定の生成物またはプロセスに存在するか、その中で使用されるか、または別の点で関連する実施形態を含む。
【0166】
さらに、本開示は、列挙された請求項のうちの1またはこれより多くのものからの1またはこれより多くの限定、要素、文節、および記述用語が、別の請求項に組み込まれる全てのバリエーション、組み合わせ、および並べ替え(permutation)を包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基本請求項に従属する任意の他の請求項の中で見出される1またはこれより多くの限定を含むように改変され得る。要素がリストとして、例えば、マーカッシュグループ形式において示される場合、その要素の各サブグループも開示され、任意の要素は、そのグループから除去され得る。一般に、本開示または本開示の局面が特定の要素および/または特徴を含むとして言及される場合、本開示のある特定の実施形態または本開示の局面は、このような要素および/または特徴からなるかまたはから本質的になることは、理解されるべきである。単純さの目的のために、それらの実施形態は、本明細書においてこのとおりの言葉で具体的に示されていない。「含む、包含する(comprising)」および「含む、含有する(containing)」という用語は、制限がないことが意図され、さらなる要素または工程の包含を許容することが注記される。範囲が示される場合、端点は包含される。さらに、別段示されなければ、または文脈および当業者の理解から別段明らかでなければ、範囲として表される値は、文脈が別段明らかに特定しなければ本開示の異なる実施形態において述べられる範囲内の任意の具体的値または部分範囲を、上記範囲の下限の単位の1/10まで想定し得る。
【0167】
本出願は、種々の発行された特許、公開特許出願、雑誌論文、および他の刊行物に言及し、これらは全て、本明細書に参考として援用される。その援用される文献のうちのいずれかと本明細書との間に矛盾が存在する場合、本明細書が優先するものとする。さらに、先行技術内に入る本開示の任意の特定の実施形態は、請求項のうちのいずれか1つまたはこれより多くのものから明確に排除され得る。このような実施形態は当業者に公知であるとみなされることから、それらは、その排除が本明細書中に明確に示されていないとしても、排除され得る。本開示の任意の特定の実施形態は、任意の請求項から、何らかの理由で、先行技術の存在に関連しようがしまいが、排除され得る。
【0168】
当業者は、本明細書で記載される具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または慣用的な実験のみを使用して確認する。本明細書で記載される本発明の実施形態の範囲は、上記の詳細な説明に限定されるとは意図されるのではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に示されるとおりである。当業者は、この説明に対する種々の変更および改変が、以下の特許請求の範囲の中で規定される本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく行われ得ることを理解する。
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【国際調査報告】