(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】多部位におけるリードレスでの心臓再同期
(51)【国際特許分類】
A61N 1/362 20060101AFI20240403BHJP
A61N 1/372 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61N1/362
A61N1/372
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566532
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 IB2022053831
(87)【国際公開番号】W WO2022229822
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523406303
【氏名又は名称】カルドエイド・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨラム・パルティ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・ベヤル
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053KK02
(57)【要約】
心臓組織の同期した刺激が、整流器に基づく2つ以上のAM受信機を被験者の心臓の中の異なる位置へと埋め込むことで実施できる。各々の受信機が、異なる周波数に合わせられ、対応する合わせられた周波数における信号が受信機に到着するときに心臓組織を刺激することができる出力信号を生成する。AM送信機は、信号を適切な周波数で被験者の身体へと送信することで、受信機のうちの任意の所与の1つを活性化させることができる。制御装置が、異なる時間に異なる周波数でACのパルスを送信するように送信機に命令することで送信機を制御し、それによって、それらのパルスが対応する合わせられた受信機によって受信されるとき、受信機の各々が、向上した心臓機能を促進するために、それぞれの時間において心臓のそれぞれの部分を刺激するそれぞれの出力信号を生成することになる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きている身体において心臓を刺激するための装置であって、
制御可能出力周波数を有するAM送信機であって、前記AM送信機は、第1の制御信号に応答して第1の周波数の出力信号を生成し、第2の制御信号に応答して第2の周波数の出力信号を生成するように構成され、前記第1の周波数は少なくとも50kHzであり、前記第2の周波数は少なくとも50kHzであり、前記第1の周波数は前記第2の周波数と異なる、AM送信機と、
前記心臓の中の第1の位置における埋め込みに向けて構成される第1のAM受信機であって、第1のアンテナ、少なくとも1つの第1の整流器、および、前記第1の周波数に合わせられる第1のフィルタを備え、(a)前記第1の周波数の出力信号が前記第1のアンテナに到達するとき、心臓組織を刺激することができる第1の復調出力信号を生成するように構成され、(b)前記第2の周波数の出力信号が前記第1のアンテナに到達するとき、心臓組織を刺激することができる出力信号を生成しないように構成される第1のAM受信機と、
前記心臓の中の第2の位置における埋め込みに向けて構成される第2のAM受信機であって、第2のアンテナ、少なくとも1つの第2の整流器、および、前記第2の周波数に合わせられる第2のフィルタを備え、(a)前記第2の周波数の出力信号が前記第2のアンテナに到達するとき、心臓組織を刺激することができる第2の復調出力信号を生成するように構成され、(b)前記第1の周波数の出力信号が前記第2のアンテナに到達するとき、前記心臓組織を刺激することができる出力信号を生成しないように構成される第2のAM受信機と、
前記第1の制御信号および前記第2の制御信号を生成するように構成され、前記第1の周波数の出力信号および前記第2の周波数の出力信号が前記第1のAM受信機および前記第2のAM受信機によってそれぞれ受信されるとき、前記第1のAM受信機および前記第2のAM受信機は、向上した心臓機能を促進するために、前記心臓のそれぞれの部分を刺激する前記第1の復調出力信号および前記第2の復調出力信号をそれぞれ生成することになるように、生成された前記第1の制御信号および前記第2の制御信号によって前記AM送信機に前記第1の周波数の出力信号および前記第2の周波数の出力信号を心臓周期の間の適切な時間に生成させるように、生成された前記第1の制御信号のタイミングおよび期間と、前記第2の制御信号のタイミングおよび期間とを制御するように構成される制御装置と
を備える装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1の制御信号の開始と前記第2の制御信号の開始との間に第1の遅れがあるように、生成された前記第1の制御信号の前記タイミングと前記第2の制御信号の前記タイミングとを制御するように構成され、前記第1の遅れは、所定の遅れ、前記身体の医療特性に基づく選択された遅れ、および、前記第1の復調出力信号および前記第2の復調出力信号の少なくとも一方への前記心臓組織の応答に応じて決定される遅れのうちの1つである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記AM送信機は、前記心臓の外部で前記身体に接続可能となるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1の整流器および前記少なくとも1つの第2の整流器の各々は、全波整流回路に配置される4つのダイオードを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1の整流器および前記少なくとも1つの第2の整流器の各々は、半波整流回路に配置されるダイオードを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の周波数は100kHzから1MHzの間であり、前記第2の周波数は100kHzから1MHzの間である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記心臓の中の第3の位置における埋め込みに向けて構成される第3のAM受信機であって、第3のアンテナ、少なくとも1つの第3の整流器、および第3のフィルタを備える第3のAM受信機をさらに備え、
前記AM送信機は、第3の制御信号に応答して第3の周波数の出力信号を生成するようにさらに構成され、前記第3の周波数は少なくとも50kHzであり、前記第3の周波数は、前記第1の周波数と異なり、前記第2の周波数とも異なり、
前記第3のフィルタは前記第3の周波数に合わせられ、前記第3のAM受信機は、(a)前記第3の周波数の出力信号が前記第3のアンテナに到達するとき、心臓組織を刺激することができる第3の復調出力信号を生成するように構成され、(b)前記第1の周波数の出力信号が前記第3のアンテナに到達するとき、または、前記第2の周波数の出力信号が前記第3のアンテナに到達するとき、心臓組織を刺激することができる出力信号を生成しないように構成され、
前記制御装置はさらに、前記第3の制御信号を生成するように構成され、前記第1の周波数の出力信号、前記第2の周波数の出力信号、および前記第3の周波数の出力信号が前記第1のAM受信機、前記第2のAM受信機、および前記第3のAM受信機によってそれぞれ受信されるとき、前記第1のAM受信機、前記第2のAM受信機、および前記第3のAM受信機は、向上した心臓機能を促進するために、前記心臓のそれぞれの部分を刺激する前記第1の復調出力信号、前記第2の復調出力信号、および前記第3の復調出力信号をそれぞれ生成することになるように、生成された前記第1の制御信号、前記第2の制御信号、および前記第3の制御信号によって前記AM送信機に前記第1の周波数の出力信号、前記第2の周波数の出力信号、および前記第3の周波数の出力信号を心臓周期の間の適切な時間に生成させるように、生成された前記第1の制御信号のタイミングおよび期間と、前記第2の制御信号のタイミングおよび期間と、前記第3の制御信号のタイミングおよび期間とを制御するように構成され、
前記第1のAM受信機は、前記第3の周波数の出力信号が前記第1のアンテナに到着するとき、心臓組織を刺激することができる出力信号を生成しないように構成され、前記第2のAM受信機は、前記第3の周波数の出力信号が前記第2のアンテナに到着するとき、心臓組織を刺激することができる出力信号を生成しないように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第2の制御信号の開始と前記第3の制御信号の開始との間に第2の遅れがあるように、生成された前記第1の制御信号の前記タイミングと前記第2の制御信号の前記タイミングと前記第3の制御信号の前記タイミングとを制御するように構成され、前記第1の遅れおよび前記第2の遅れの各々は、所定の遅れ、前記身体の医療特性に基づく選択された遅れ、および、前記第1の復調出力信号、前記第2の復調出力信号、および前記第3の復調出力信号の少なくとも1つへの前記心臓組織の応答に応じて決定される遅れのうちの1つである、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第3の周波数は100kHzから1MHzの間である、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
生きている身体において心臓を刺激するための方法であって、
第1の周波数でのAM信号を特定の第1の時間において送信し、第2の周波数でのAM信号を特定の第2の時間において送信するステップであって、前記第1の周波数は少なくとも50kHzであり、前記第2の周波数は少なくとも50kHzであり、前記第1の周波数は前記第2の周波数と異なる、ステップと、
前記第1の周波数での前記AM信号を前記心臓の中の第1の位置で受信し、前記第1の周波数での受信に応答して、心臓組織を刺激することができる対応する第1の復調出力信号を生成するステップであって、前記第2の周波数での前記AM信号が前記第1の位置に到着するとき、心臓組織を刺激することができる出力信号が生成されない、ステップと、
前記第2の周波数での前記AM信号を前記心臓の中の第2の位置で受信し、前記第2の周波数での受信に応答して、心臓組織を刺激することができる対応する第2の復調出力信号を生成するステップであって、前記第1の周波数での前記AM信号が前記第2の位置に到着するとき、心臓組織を刺激することができる出力信号が生成されない、ステップと、
前記第1の周波数での前記AM信号および前記第2の周波数での前記AM信号が前記第1の位置および前記第2の位置でそれぞれ受信されるとき、生成された前記第1の復調出力信号および前記第2の復調出力信号が、向上した心臓機能を促進するために、前記心臓のそれぞれの一部を刺激するように、前記第1の周波数での前記AM信号の生成、タイミング、および期間と、前記第2の周波数での前記AM信号の生成、タイミング、および期間とを、心臓周期の間の適切な時間において制御するステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記第1の周波数での前記第1のAM信号の開始と前記第2の周波数での前記第2のAM信号の開始との間に第1の遅れがあるように、前記第1の周波数での前記AM信号の前記タイミングと前記第2の周波数での前記AM信号の前記タイミングとを制御するステップであって、前記第1の遅れは、所定の遅れ、前記身体の医療特性に基づく選択された遅れ、および、前記第1の復調出力信号および前記第2の復調出力信号の少なくとも一方への前記心臓組織の応答に応じて決定される遅れのうちの1つである、ステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記AM信号の前記送信は、前記心臓の外部における前記身体の位置から前記身体を通じて行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の周波数は100kHzから1MHzの間であり、前記第2の周波数は100kHzから1MHzの間である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
第3の周波数での前記AM信号を特定の第3の時間において送信するステップであって、前記第3の周波数は少なくとも50kHzであり、前記第3の周波数は、前記第1の周波数と異なり、前記第2の周波数とも異なる、ステップと、
前記第3の周波数での前記AM信号を前記心臓の中の第3の位置で受信し、前記第3の周波数での受信に応答して、心臓組織を刺激することができる第3の復調出力信号を生成するステップであって、前記第1の周波数での前記AM信号または前記第2の周波数での前記AM信号のいずれかが前記第3の位置に到着するとき、心臓組織を刺激することができる出力信号が生成されない、ステップと
をさらに含み、
前記制御するステップは、前記第1の周波数での前記AM信号、前記第2の周波数での前記AM信号、および前記第3の周波数での前記AM信号が前記第1の位置、前記第2の位置、および前記第3の位置でそれぞれ受信されるとき、生成された前記第1の復調出力信号、前記第2の復調出力信号、および前記第3の復調出力信号が、向上した心臓機能を促進するために、前記心臓のそれぞれの一部を刺激するように、前記第3の周波数での前記AM信号の生成を制御し、前記第1の周波数での前記AM信号のタイミングおよび期間と、前記第2の周波数での前記AM信号のタイミングおよび期間と、前記第3の周波数での前記AM信号のタイミングおよび期間とを、心臓周期の間の適切な時間において制御するステップを含み、
前記第3の周波数での前記AM信号が前記第1の位置または前記第2の位置のいずれかにおいて受信されるとき、心臓組織を刺激することができる出力信号が生成されない、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記制御するステップは、前記第2の周波数での前記AM信号の開始と前記第3の周波数での前記AM信号の開始との間に第2の遅れがあるように、前記第1の周波数での前記AM信号のタイミングと、前記第2の周波数での前記AM信号のタイミングと、前記第3の周波数での前記AM信号の前記タイミングとを制御し、前記第1の遅れおよび前記第2の遅れの各々は、所定の遅れ、前記身体の医療特性に基づく選択された遅れ、および、前記第1の復調出力信号、前記第2の復調出力信号、および前記第3の復調出力信号の少なくとも1つへの前記心臓組織の応答に応じて決定される遅れのうちの1つである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第3の周波数は100kHzから1MHzの間である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
生きている身体において指定された動物組織を刺激するための装置であって、
制御可能出力周波数を有するAM送信機であって、前記AM送信機は、第1の制御信号に応答して第1の周波数の出力信号を生成し、第2の制御信号に応答して第2の周波数の出力信号を生成するように構成され、前記第1の周波数は少なくとも50kHzであり、前記第2の周波数は少なくとも50kHzであり、前記第1の周波数は前記第2の周波数と異なる、AM送信機と、
前記組織の中の第1の位置における埋め込みに向けて構成される第1のAM受信機であって、第1のアンテナ、少なくとも1つの第1の整流器、および、前記第1の周波数に合わせられる第1のフィルタを備え、(a)前記第1の周波数の出力信号が前記第1のアンテナに到達するとき、前記組織を刺激することができる第1の復調出力信号を生成するように構成され、(b)前記第2の周波数の出力信号が前記第1のアンテナに到達するとき、前記組織を刺激することができる出力信号を生成しないように構成される第1のAM受信機と、
前記組織の中の第2の位置における埋め込みに向けて構成される第2のAM受信機であって、第2のアンテナ、少なくとも1つの第2の整流器、および、前記第2の周波数に合わせられる第2のフィルタを備え、(a)前記第2の周波数の出力信号が前記第2のアンテナに到達するとき、前記組織を刺激することができる第2の復調出力信号を生成するように構成され、(b)前記第1の周波数の出力信号が前記第2のアンテナに到達するとき、前記組織を刺激することができる出力信号を生成しないように構成される第2のAM受信機と、
前記第1の制御信号および前記第2の制御信号を生成するように構成され、前記第1の周波数の出力信号および前記第2の周波数の出力信号が前記第1のAM受信機および前記第2のAM受信機によってそれぞれ受信されるとき、前記第1のAM受信機および前記第2のAM受信機は、前記組織を刺激する前記第1の復調出力信号および前記第2の復調出力信号をそれぞれ生成することになるように、生成された前記第1の制御信号および前記第2の制御信号によって前記AM送信機に前記第1の周波数の出力信号および前記第2の周波数の出力信号を前記組織の活動の間の適切な時間に生成させるように、生成された前記第1の制御信号のタイミングおよび期間と、前記第2の制御信号のタイミングおよび期間とを制御するように構成される制御装置と
を備える装置。
【請求項18】
前記制御装置は、前記第1の制御信号の開始と前記第2の制御信号の開始との間に第1の遅れがあるように、生成された前記第1の制御信号の前記タイミングと前記第2の制御信号の前記タイミングとを制御するように構成され、前記第1の遅れは、所定の遅れ、前記組織の医療特性に基づく選択された遅れ、および、前記第1の復調出力信号および前記第2の復調出力信号の少なくとも一方への前記組織の応答に応じて決定される遅れのうちの1つである、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記AM送信機は、前記組織の外部で前記身体に接続可能となるように構成される、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記第1の周波数は100kHzから1MHzの間であり、前記第2の周波数は100kHzから1MHzの間である、請求項17に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月27日に出願された米国仮特許出願第63/180,336号の利益を主張し、この特許出願は、その全体が本明細書で参照により組み込まれている。
【0002】
本発明は、概して、通常の心臓活動を促進するためにリードレスでの刺激を用いて、生きている身体における組織、詳細には、生きている身体における心臓組織の多部位における刺激のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心不全は、西欧諸国における罹患率および死亡数の主な原因のうちの1つである。米国における約620万人の大人が心不全を患っており、2018年には、すべての米国での死者の13%以上が心不全に起因していた。
【0004】
多くの場合で、心収縮の非同期性が心室機能不全および心不全の原因になる。左心室(LV)内の位置などにおける心臓の特定の部分は、心臓組織内の他の位置に対して不正確なタイミングで収縮するとき、一回拍出量および心拍出量に確実に寄与することができない。心臓再同期療法(CRT)は、心室の遅れた部分を同期させるための多部位におけるペーシングの概念を導入した。CRTは、電気的な(および、結果として機械的な)協調を向上させ、それによってポンプ効率を向上させることで、心臓機能を向上させる。CRTは、従来から、心内膜リードを使用する右心室(RV)のペーシングと、冠状静脈洞において心外膜のリードを使用するLVのペーシングとによって遂行されている。このようなペーシングは、心室間および心室内の同期性を再生するために提供される。この処置は、LVの収縮性、一回拍出量、および駆出率を向上させる。しかしながら、CRTは、均一に効果があるわけではなく、注意深い患者の選択、リードの位置決め、およびデバイスのプログラミングが、CRTの便益を最大化するために必要である。
【0005】
CRTの効率を増加させるための処置として、今日では冠状静脈洞リードを通じて行われるなど、2つ以上のLV部位からのペーシングが再同期および転帰を向上させ得ることが、提案されている。2つの心外膜冠静脈でのリードの使用が、1つだけのこのようなリードの使用と比較して、急性血液動態学的反応、EF、LV収縮終期容量、および心不全の症状を改善することが、小規模な無作為の試験で示されている。
【0006】
血管系を通り抜けるペーシングリードが、今日では標準的である。このようなリードは信頼でき、効果的であるが、リードが各々の心臓周期による繰り返しの機械的な動きを受け、その構成材料を機械的な応力および破壊に曝すため、合併症がよく起こる。この種類のリードは、血液プールへの細菌の侵入のための導路として供する可能性があるため、他の危険性を提供してしまう。さらに、リードは、本質的に血栓形成性であり、除去を技術的に難しくさせる線維形成反応を誘発する。リードの血栓形成は、静脈系のシャントの設定において、発作の危険性ももたらす。最後に、三尖弁と交差するとき、リードは小葉の動きを侵害し、相当の三尖弁逆流を引き起こす可能性があり、心臓再同期への応答を損ない、心不全を悪化させる。
【0007】
リードレス心内膜LVペーシングは、より生理学的であり、LVペーシング部位の選択により大きな機会を与え、より低い不整脈の危険性でより大きなCRT応答をもたらし、横隔神経刺激を排除して、僧帽弁逆流およびリードに関連する血栓の危険性を軽減することができる点において、期待できる。しかしながら、技術がその発展における初期にあり、多くの不明点がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、生きている身体において心臓を刺激するための第1の装置に向けられている。第1の装置は、制御可能出力周波数を有するAM送信機を備える。AM送信機は、第1の制御信号に応答して第1の周波数の出力信号を生成し、第2の制御信号に応答して第2の周波数の出力信号を生成するように構成される。第1の周波数は少なくとも50kHzであり、第2の周波数は少なくとも50kHzであり、第1の周波数は第2の周波数と異なる。第1の装置は、心臓の中の第1の位置における埋め込みに向けて構成される第1のAM受信機も備える。第1のAM受信機は、第1のアンテナと、少なくとも1つの第1の整流器と、第1の周波数に合わせられる第1のフィルタとを備える。第1のAM受信機は、(a)第1の周波数の出力信号が第1のアンテナに到達するとき、心臓組織を刺激することができる第1の復調出力信号を生成するように構成され、(b)第2の周波数の出力信号が第1のアンテナに到達するとき、心臓組織を刺激することができる出力信号を生成しないように構成される。第1の装置は、心臓の中の第2の位置における埋め込みに向けて構成される第2のAM受信機も備える。第2のAM受信機は、第2のアンテナと、少なくとも1つの第2の整流器と、第2の周波数に合わせられる第2のフィルタとを備える。第2のAM受信機は、(a)第2の周波数の出力信号が第2のアンテナに到達するとき、心臓組織を刺激することができる第2の復調出力信号を生成するように構成され、(b)第1の周波数の出力信号が第2のアンテナに到達するとき、心臓組織を刺激することができる出力信号を生成しないように構成される。第1の装置は、第1の制御信号および第2の制御信号を生成するように構成され、第1の周波数の出力信号および第2の周波数の出力信号が第1のAM受信機および第2のAM受信機によってそれぞれ受信されるとき、第1のAM受信機および第2のAM受信機は、向上した心臓機能を促進するために、心臓のそれぞれの部分を刺激する第1の復調出力信号および第2の復調出力信号をそれぞれ生成することになるように、生成された第1の制御信号および第2の制御信号によってAM送信機に第1の周波数の出力信号および第2の周波数の出力信号を心臓周期の間の適切な時間に生成させるように、生成された第1の制御信号のタイミングおよび期間と、第2の制御信号のタイミングおよび期間とを制御するように構成される制御装置も備える。
【0009】
第1の装置のいくつかの実施形態では、制御装置は、第1の制御信号の開始と第2の制御信号の開始との間に第1の遅れがあるように、生成された第1の制御信号のタイミングと第2の制御信号のタイミングとを制御するように構成される。第1の遅れは、所定の遅れ、身体の医療特性に基づく選択された遅れ、および、第1の復調出力信号および第2の復調出力信号の少なくとも一方への心臓組織の応答に応じて決定される遅れのうちの1つである。
【0010】
第1の装置のいくつかの実施形態では、AM送信機は、心臓の外部で身体に接続可能となるように構成される。第1の装置のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の整流器および少なくとも1つの第2の整流器の各々は、全波整流回路に配置される4つのダイオードを備える。第1の装置のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の整流器および少なくとも1つの第2の整流器の各々は、半波整流回路に配置されるダイオードを備える。第1の装置のいくつかの実施形態では、第1の周波数は100kHzから1MHzの間であり、第2の周波数は100kHzから1MHzの間である。
【0011】
第1の装置のいくつかの実施形態は、心臓の中の第3の位置における埋め込みに向けて構成される第3のAM受信機も備える。第3のAM受信機は、第3のアンテナと、少なくとも1つの第3の整流器と、第3のフィルタとを備える。AM送信機は、第3の制御信号に応答して、第3の周波数の出力信号を生成するようにさらに構成される。第3の周波数は少なくとも50kHzであり、第3の周波数は、第1の周波数と異なり、第2の周波数とも異なる。第3のフィルタは第3の周波数に合わせられる。第3のAM受信機は、(a)第3の周波数の出力信号が第3のアンテナに到達するとき、心臓組織を刺激することができる第3の復調出力信号を生成するように構成され、(b)第1の周波数の出力信号が第3のアンテナに到達するとき、または、第2の周波数の出力信号が第3のアンテナに到達するとき、心臓組織を刺激することができる出力信号を生成しないように構成される。制御装置はさらに、第3の制御信号を生成するように構成され、第1の周波数の出力信号、第2の周波数の出力信号、および第3の周波数の出力信号が第1のAM受信機、第2のAM受信機、および第3のAM受信機によってそれぞれ受信されるとき、第1のAM受信機、第2のAM受信機、および第3のAM受信機は、向上した心臓機能を促進するために、心臓のそれぞれの部分を刺激する第1の復調出力信号、第2の復調出力信号、および第3の復調出力信号をそれぞれ生成することになるように、生成された第1の制御信号、第2の制御信号、および第3の制御信号によってAM送信機に第1の周波数の出力信号、第2の周波数の出力信号、および第3の周波数の出力信号を心臓周期の間の適切な時間に生成させるように、生成された第1の制御信号のタイミングおよび期間と、第2の制御信号のタイミングおよび期間と、第3の制御信号のタイミングおよび期間とを制御するように構成される。第1のAM受信機は、第3の周波数の出力信号が第1のアンテナに到着するとき、心臓組織を刺激することができる出力信号を生成しないように構成され、第2のAM受信機は、第3の周波数の出力信号が第2のアンテナに到着するとき、心臓組織を刺激することができる出力信号を生成しないように構成される。任意選択で、これらの実施形態において、制御装置は、第2の制御信号の開始と第3の制御信号の開始との間に第2の遅れがあるように、生成された第1の制御信号のタイミングと第2の制御信号のタイミングと第3の制御信号のタイミングとを制御するように構成され、第1の遅れおよび第2の遅れの各々は、所定の遅れ、身体の医療特性に基づく選択された遅れ、および、第1の復調出力信号、第2の復調出力信号、および第3の復調出力信号の少なくとも1つへの心臓組織の応答に応じて決定される遅れのうちの1つである。任意選択で、第3の周波数は100kHzと1MHzとの間である。
【0012】
本発明の他の態様は、生きている身体において心臓を刺激するための第1の方法に向けられている。第1の方法は、第1の周波数でのAM信号を特定の第1の時間において送信し、第2の周波数でのAM信号を特定の第2の時間において送信するステップを含む。第1の周波数は少なくとも50kHzであり、第2の周波数は少なくとも50kHzであり、第1の周波数は第2の周波数と異なる。第1の方法は、第1の周波数でのAM信号を心臓の中の第1の位置で受信し、第1の周波数での受信に応答して、心臓組織を刺激することができる対応する第1の復調出力信号を生成するステップも含む。第2の周波数でのAM信号が第1の位置に到着するとき、心臓組織を刺激することができる出力信号が生成されない。第1の方法は、第2の周波数でのAM信号を心臓の中の第2の位置で受信し、第2の周波数での受信に応答して、心臓組織を刺激することができる対応する第2の復調出力信号を生成するステップも含む。第1の周波数でのAM信号が第2の位置に到着するとき、心臓組織を刺激することができる出力信号が生成されない。また、第1の方法は、第1の周波数でのAM信号および第2の周波数でのAM信号が第1の位置および第2の位置でそれぞれ受信されるとき、生成された第1の復調出力信号および第2の復調出力信号が、向上した心臓機能を促進するために、心臓のそれぞれの一部を刺激するように、第1の周波数でのAM信号の生成、タイミング、および期間と、第2の周波数でのAM信号の生成、タイミング、および期間とを、心臓周期の間の適切な時間において制御するステップも含む。
【0013】
第1の方法のいくつかの例は、第1の周波数での第1のAM信号の開始と第2の周波数での第2のAM信号の開始との間に第1の遅れがあるように、第1の周波数でのAM信号のタイミングと第2の周波数でのAM信号のタイミングとを制御するステップをさらに含む。第1の遅れは、所定の遅れ、身体の医療特性に基づく選択された遅れ、および、第1の復調出力信号および第2の復調出力信号の少なくとも一方への心臓組織の応答に応じて決定される遅れのうちの1つである。
【0014】
第1の方法のいくつかの例では、AM信号の送信は、心臓の外部における身体の位置から身体を通じて行われる。第1の方法のいくつかの例では、第1の周波数は100kHzから1MHzの間であり、第2の周波数は100kHzから1MHzの間である。
【0015】
第1の方法のいくつかの例は、第3の周波数でのAM信号を特定の第3の時間において送信するステップをさらに含む。第3の周波数は少なくとも50kHzであり、第3の周波数は、第1の周波数と異なり、第2の周波数とも異なる。これらの例は、第3の周波数でのAM信号を心臓の中の第3の位置で受信し、第3の周波数での受信に応答して、心臓組織を刺激することができる第3の復調出力信号を生成するステップも含む。第1の周波数でのAM信号または第2の周波数でのAM信号のいずれかが第3の位置に到着するとき、心臓組織を刺激することができる出力信号が生成されない。これらの例では、制御するステップは、第1の周波数でのAM信号、第2の周波数でのAM信号、および第3の周波数でのAM信号が第1の位置、第2の位置、および第3の位置でそれぞれ受信されるとき、生成された第1の復調出力信号、第2の復調出力信号、および第3の復調出力信号が、向上した心臓機能を促進するために、心臓のそれぞれの一部を刺激するように、第3の周波数でのAM信号の生成を制御し、第1の周波数でのAM信号のタイミングおよび期間と、第2の周波数でのAM信号のタイミングおよび期間と、第3の周波数でのAM信号のタイミングおよび期間とを、心臓周期の間の適切な時間において制御するステップを含む。第3の周波数でのAM信号が第1の位置または第2の位置のいずれかにおいて受信されるとき、心臓組織を刺激することができる出力信号が生成されない。任意選択で、これらの例において、制御するステップは、第2の周波数でのAM信号の開始と第3の周波数でのAM信号の開始との間に第2の遅れがあるように、第1の周波数でのAM信号のタイミングと、第2の周波数でのAM信号のタイミングと、第3の周波数でのAM信号のタイミングとを制御する。第1の遅れおよび第2の遅れの各々は、所定の遅れ、身体の医療特性に基づく選択された遅れ、および、第1の復調出力信号、第2の復調出力信号、および第3の復調出力信号の少なくとも1つへの心臓組織の応答に応じて決定される遅れのうちの1つである。任意選択で、これらの例において、第3の周波数は100kHzと1MHzとの間である。
【0016】
本発明の他の態様は、生きている身体において指定された動物組織を刺激するための第2の装置に向けられている。第2の装置は、制御可能出力周波数を有するAM送信機を備える。AM送信機は、第1の制御信号に応答して第1の周波数の出力信号を生成し、第2の制御信号に応答して第2の周波数の出力信号を生成するように構成される。第1の周波数は少なくとも50kHzであり、第2の周波数は少なくとも50kHzであり、第1の周波数は第2の周波数と異なる。第2の装置は、組織の中の第1の位置における埋め込みに向けて構成される第1のAM受信機も備える。第1のAM受信機は、第1のアンテナと、少なくとも1つの第1の整流器と、第1の周波数に合わせられる第1のフィルタとを備える。第1のAM受信機は、(a)第1の周波数の出力信号が第1のアンテナに到達するとき、組織を刺激することができる第1の復調出力信号を生成するように構成され、(b)第2の周波数の出力信号が第1のアンテナに到達するとき、組織を刺激することができる出力信号を生成しないように構成される。第2の装置は、組織の中の第2の位置における埋め込みに向けて構成される第2のAM受信機も備える。第2のAM受信機は、第2のアンテナと、少なくとも1つの第2の整流器と、第2の周波数に合わせられる第2のフィルタとを備える。第2のAM受信機は、(a)第2の周波数の出力信号が第2のアンテナに到達するとき、組織を刺激することができる第2の復調出力信号を生成するように構成され、(b)第1の周波数の出力信号が第2のアンテナに到達するとき、組織を刺激することができる出力信号を生成しないように構成される。第2の装置は、第1の制御信号および第2の制御信号を生成するように構成され、第1の周波数の出力信号および第2の周波数の出力信号が第1のAM受信機および第2のAM受信機によってそれぞれ受信されるとき、第1のAM受信機および第2のAM受信機は、組織を刺激する第1の復調出力信号および第2の復調出力信号をそれぞれ生成することになるように、生成された第1の制御信号および第2の制御信号によってAM送信機に第1の周波数の出力信号および第2の周波数の出力信号を組織の活動の間の適切な時間に生成させるように、生成された第1の制御信号のタイミングおよび期間と、第2の制御信号のタイミングおよび期間とを制御するように構成される制御装置も備える。
【0017】
第2の装置のいくつかの実施形態では、制御装置は、第1の制御信号の開始と第2の制御信号の開始との間に第1の遅れがあるように、生成された第1の制御信号のタイミングと第2の制御信号のタイミングとを制御するように構成される。第1の遅れは、所定の遅れ、組織の医療特性に基づく選択された遅れ、および、第1の復調出力信号および第2の復調出力信号の少なくとも一方への組織の応答に応じて決定される遅れのうちの1つである。
【0018】
第2の装置のいくつかの実施形態では、AM送信機は、組織の外部で身体に接続可能となるように構成される。第2の装置のいくつかの実施形態では、第1の周波数は100kHzから1MHzの間であり、第2の周波数は100kHzから1MHzの間である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】本発明の好ましい実施形態で使用されるパルス期間/パルス間隔の図である。
【
図1B】本発明の好ましい実施形態で使用される正弦波輪郭の図である。
【
図2】人の身体に位置決めされているときの、本発明の好ましい実施形態で使用されるAM送信機および電極の図である。
【
図3】人の胴におけるシミュレーションされた電場分布の図である。
【
図4A】好ましい実施形態における使用に適した受信機の図である。
【
図4B】好ましい実施形態における使用に適した受信機の図である。
【
図4C】好ましい実施形態における使用に適した受信機の図である。
【
図5A】本発明の好ましい実施形態により刺激され得る複数の心臓の点(位置)の例の図である。
【
図5B】この例における対応する心臓の刺激の時間の図である。
【
図6】通常の心臓および鬱血性心不全を患った心臓についての左心室乳頭筋等尺性収縮の図である。
【
図7A】半波整流回路および結果的に得られた整流信号の回路図である。
【
図7B】全波整流回路および結果的に得られた整流信号の回路図である。
【
図7C】整流および電圧増幅を提供する電圧増倍器の回路図である。
【
図8】本発明の好ましい実施形態による心臓活性化時間の図である。
【
図10】本発明の他の実施形態のブロック図である。
【
図11】
図10の実施形態における複数の整流器に基づく受信機のそれぞれの活性化時間を示すタイミング図である。
【
図12】心臓刺激を提供した閾AC電流強度を測定したネズミにおける実験の結果を描写している。
【
図13】本発明の他の実施形態による整流器に基づく受信機の人の脳における多部位での位置決めの図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
様々な実施形態が、添付の図面を参照して以下で詳細に記載されており、同様の符号は同様の要素を表している。
【0021】
本明細書に記載されている実施形態は、刺激のための標的における整流器に基づく受信機の埋め込みと一緒に、外部電極を用いて、つまり、刺激される標的組織の外部で、少なくとも50kHzの交流電場を生きている身体に適用することに依存している。高周波で交流の正弦曲線での電場自体は、組織細胞およびその膜が比較的低い周波数の電気応答を有し、それによって、効果的な電位差がゼロへと低減されるように交流電位を統合してしまうため、刺激する出力を有していない。しかしながら、整流器に基づく受信機(例えば、単一のダイオードに基づく受信機)が組織に埋め込まれるとき、ACは、整流器の接触の2つの点において「半整流」される。したがって、高周波で交互の電位パルスが、生きている身体の例えば表面、皮下組織などに位置決めされる遠隔電極によって、身体容積に適用されるとき、整流された電気パルス、つまり、一方向の電気パルスが、電場に位置付けられた細胞および組織に作用することができる。ACパルス期間が0.1~10msecの範囲にあり、電位差が0.1~100ボルトのものであるとき、興奮性細胞が刺激される。
【0022】
整流器に基づく受信機が、刺激および活性化を有したい様々な身体の位置に埋め込まれ、高周波ACパルスが、例えば身体表面から、整流器に基づく埋め込まれた受信機に遠隔から適用されるとき、整流器の負極の近傍における組織が刺激される。このような組織は、例えば、末梢神経、ニューロン、骨格筋、心筋、(血管、括約筋などの)平滑筋であり得る。対応して、整流器の正極は抑制をもたらすことができる。刺激と抑制との間の区別は、異なる電極接触領域および/または極性を有することで達成され得る。これは、接触領域がより大きくなると、電流密度が小さくなり、結果として刺激/抑制の有効性画より小さくなる。
【0023】
本発明の実施形態は、生体内の多くの種類の組織で使用できるが、主要な例として、以下の記載は、心臓の多部位における刺激、および/または、心臓組織の抑制に焦点を合わせ、二次的な例として、脳の中の位置に焦点を合わせている。しかし、注目すべきことに、身体の中の他の位置が、標的組織の最適な機能を促進するために刺激/抑制されてもよい。
【0024】
第1の好ましい実施形態では、本明細書において「多部位におけるリードレスでの心臓刺激(MLCS)」と名前の付けられた装置が、以下の区分で、すなわち、交流正弦波パルス電位生成装置、ASPPG1と、電場発生電極(FGE: Field Generating Electrode)2と、整流器に基づく埋め込まれた受信機3と、整流器に基づく複数の埋め込まれた受信機3と、整流器に基づく受信機3の補助回路40と、制御装置7で、以下において検討されることになる。
【0025】
1.ACパルス生成装置ASPPG
ASPPG1(
図2)は、一種のAM送信機であり、明確には、交流正弦波電位パルスを出力する配線または電池で電力供給される正弦波発振器である。
図1Aに示されているように、ASPPG1によって生成されるパルスのパルス期間11は、典型的には0.1~10msecの範囲にあり、パルスの電位差の振幅は、典型的には0.1~100ボルトのものである。パルス間隔10は典型的には0.02~5秒間である。ASPPG1の出力は、患者の皮膚、皮下組織、心臓組織、または他の組織と接触させられる電場発生電極(FGE)2の対、または、より多くの電場発生電極(FGE)2を介して送達される。パルスパラメータは制御装置7(
図8、
図9、
図11)を用いて設定される。これらのパラメータは、心臓機能または患者の必要性などに応じて、あらかじめ設定され得る、または調整され得る。制御装置7は後で詳細に検討される。
【0026】
興奮性組織の望ましくない刺激を回避するために、ASPPG1によって発生させられるACパルスの周波数は50kHzを上回るべきである。使用される特定の周波数は、50kHzを上回る周波数におけるACパルスが、整流されたパルスの有効性に影響を与えないため、重要ではない。しかしながら、他の検討が含まれてもよい。これらの検討は、例えば、電気インピーダンスの周波数依存性、周波数による電場分布における変化などのため、使用される場合、電極絶縁体における電圧損失を含む。いくつかの実施形態では、周波数は0.1~1.0MHzであり、いくつかの実施形態では、周波数は100~300kHzである。しかし、他の実施形態はこれらの範囲外で動作することができる。また、パルスの開始または消失の潜在的な刺激する効果を回避するために、交流正弦波の振幅の漸進的な増加および低下15(例えば、ACの各々のパルスの始まりにおいて振幅を上昇させること、および、ACの各々のパルスの終わりにおいて振幅を下降させること)が、
図1Bに示されているように用いられてもよい。
【0027】
図2に示されているように、ASPPG1は、標的の心臓組織の外部で身体に連結可能であり得る。例えば、ASPPG1は、身体の表面に、または適切なケーシングで位置決めされるといった、標的の心臓組織の外部で患者によって着用でき、通常のペースメーカの配置と同様の手法で胸壁において皮下にといった、身体に埋め込むことができる。代替で、小形化される場合、ASPPG1を心臓に埋め込むことができるが、左心室といった標的の心臓組織からなおも遠隔であり得る。
【0028】
2.電場発生電極(FGE)
図2に示されているように、この実施形態では、2つの電場発生電極(FGE)2が、適切なリードによって接続されるASPPG1によってエネルギー供給される。電極2は、ASPPG1によって駆動されるとき、標的の領域において効果的な交流電場を生成するように設計される。FGE2は、患者の身体において、以下に列記された条件を満たす電場を生成するように、被験者の身体の表面または内部に位置決めされる。追加の電極および交流電極の配置が、個々の状況に依存して追加されてもよい。
【0029】
組織と接触する電極2の各々の部品は、好ましくは生体適合性材料(例えば、金属、グラフェン、または他の導電体)から作られる。その部品は、機械的な支持の裏当てを有することができ、好ましくは、所与の厚さおよびパルスの正弦波周波数について、電極同士の間に位置決めされる組織のインピーダンスに対して低い電気インピーダンスを有することになる十分に大きな誘電率を有する誘電体によって絶縁される。このような電極、およびその背後の論理的根拠は、例えば、Paltiの米国特許第6,868,289号に記載されており、この特許は、その全体が本明細書で参照により組み込まれている。
【0030】
FGE電極2が、電力線のものなど、DCおよび低周波数電位/電流を通過させることができないことは、留意されるべきである。電極絶縁は、流れる電流が細胞イオン内容物などに影響を与えることから防止する。
【0031】
胸におけるFGE電極2によって生成される交流電場の分布は、異なるように作用した組成(組織)の形状および電気的性質に依存し、それらの相対的な電気伝導度に主に依存する。典型的には、心臓のペーシングのパルスの振幅は、0.5msecのパルス期間(電流振幅10μA)を伴う1ボルトの範囲にあり、組織と接触する2つの整流電極(後に検討されている)の間の電場発生電位差は1~2ボルトの範囲にあるべきである。整流器の長さ、延いてはその2つの電極の間の距離が1~3cmであることを仮定して、FGE電極2によって発生させられるAC電場は1~2V/cmの範囲にあるべきである。
【0032】
胸の前および後に位置決めされる4個のFGE電極2によって生成されるときの、人の胴における200kHzの電場分布のシミュレーションが、
図3に描写されている。著しく、心室の壁における電場強度は、先に説明されているように、効果的な心臓のペーシングパルスを生成するのに十分である心臓の多くの部分において、1~3V/cmである。
【0033】
3.整流器に基づく埋め込まれた受信機
FGE電極2によって生成された交流正弦波電位パルスは、組織細胞およびそれらの膜が比較的ゆっくりとした電気応答を有するため、興奮性組織を刺激することができない。そのため、細胞/膜は、効果的な電位差がゼロに低減させられるように、交流の電位を統合する。対照的に、整流電極が組織における2つの点と接触するとき、2つの接触点における交流電場が整流させられる。これらの条件の下で、整流された、つまり一方向の電気パルスが、電場における興奮性細胞を潜在的に刺激することができる。ACパルス期間11が0.1~10msecの範囲にあり、電極同士の間の電位差が0.1~1ボルトであるとき、興奮性細胞の刺激が起こり得る。数多くの小形の整流器に基づく受信機3が、例えば
図4に描写されているように、心臓の筋肉に埋め込まれ得る。
【0034】
整流器に基づく複数の受信機3の埋め込みは、多くの臨床処置において現在行われているように、例えば、静脈系を通じて右心房および他の心臓の室へと挿入されるカテーテルを用いてなど、いくつかの処置を用いて行うことができる。埋め込みは、LV壁の心内膜において、または、例えば心外膜への冠状静脈洞を通じてなどであり得る。挿入の代替のモードは、皮下注射針を使用して胸壁を通じた挿入によるものである。インプラントが小形化されるため、針直径は小さくすることができる。必要とされる整流器に基づく受信機3は、記載されている補助回路40を伴いながらでさえ、その大きさが1ミリメートルよりかなり小さくできる静的な要素である。したがって、複数の部位における複数の挿入が容易に達成できる。
【0035】
生体適合性材料および血液適合性材料によって絶縁される整流器に基づく埋め込まれた受信機3は、少なくとも2つの電気接点、すなわち電極を有していなければならない。
図4A~
図4Cは3つの代替の手法を描写している。これらの図の各々において、接点のうちの一方が、好ましくは心筋に挿入および係留される一方で、他方は、(
図4Aに描写されているように)筋肉の他の点と接触することができる、または、(
図4Bに描写されているように)血液と接触することができる。係留は、筋肉接点としても供する(
図4Bに描写されているような)金属螺旋などによって現在実施されているように、行うことができる。従来のタインが(
図4Cに描写されているように)使用されてもよい。電極電気接点材料は、例えば、ステンレス鋼、プラチナ、金、グラフェンなどであり得る。整流器を電極と接続するリードは、挿入の後に
図4Aに描写されているものと同様の形へと曲がるように、選択された形状記憶を伴うニチノールから作ることができる。
【0036】
刺激が比較的高い交流電流であるため、電極は、FGE電極2について記載されているように、薄い大きな誘電率の絶縁体で被覆できる。
【0037】
整流器に基づく各々の受信機3は、入ってくるAC信号を受信するためにアンテナを備えることは、留意されるべきである。いくつかの実施形態において、このアンテナは、整流器(例えば、ダイオード)の一方の端子に接続される別個の構成要素であり得る。整流器(例えば、ダイオード)に、十分に長いリードが供給されている他の実施形態では、整流器のリードは、入ってくるAC信号を受信するアンテナとして供することができる。
【0038】
整流器に基づく各々の受信機3は、(例えば、
図7Cとの関連で以下に記載されているように)電気回路に配置され、(例えば、
図7Dとの関連で以下に記載されているように)周波数選択性フィルタと組み合わされた少なくとも1つの整流器を好ましくは備える。
【0039】
3a.整流器に基づく複数の埋め込まれた受信機
よく知られて実証されているように、筋細胞の興奮を引き起こす刺激は、通常はSA(洞房)結節に由来し、心房において非特定の経路で広がり、AV(房室)結節に到達し、そこから、中隔に沿う房室束(Hisの束)の分岐に沿って、尖部へと伝搬し、延いては心臓の基部まで伝播する。興奮および収縮の通常の広がりは、心室から肺動脈および大動脈への非常に効果的な血液の駆出を誘導する。再同期のために設計されたペースメーカ(心臓再同期療法-CRT)は、CHF患者において心拍出量(CO)を向上させる試みにおいて、選択された遅れで作動させられる3つの心臓刺激点を通常は用いる。このような患者は、通常は心エコー法によって決定されるように、COを最適化するようにパルス遅れを調整するために、「再同期治療」のために周期的に呼び出される。
【0040】
図5Aは、それぞれの心臓の場所における整流器に基づく埋め込まれた受信機3の例を描写しており、
図5Bは、様々な心臓の場所における通常の活性化において、対応する測定された遅れの例を描写している。14個の図示された点(矢印の端A~L)またはそれらの一部が、SA結節ペースメーカの((自然または誘導)の活性化の時間に対する)それぞれの相対的な時間遅れにおいて活性化させられる少なくとも2つの整流器に基づく受信機3を埋め込むことで、刺激のために使用され得る。いくつかの被験者において、各々の心臓周期におけるそれぞれの時間において活性化される相対的に少ない数の刺激点(例えば、2つまたは3つ)が、向上した心臓機能を提供するために十分であり得る。しかし、他の被験者において、より多くの数の刺激点が、心臓の動作を十分に再同期させるために必要であり得る。
【0041】
活性化遅れは、以下のように達成および制御される。
【0042】
整流器に基づく埋め込まれた各々の受信機3は、少なくとも1つの整流器30と、
図7Dに描写されているものなど、周波数選択フィルタ40(例えば、バンドパスフィルタ)とを備える。フィルタ40の各々のバンドパスは異なる。交流正弦波パルス電位生成装置ASPPG1の出力を制御する制御装置7は、ASPPG1が、異なる周波数の交流波から各々が成り、選択された遅れで各々が与えられるパルスを電場発生電極(FGE)2に出力するように、ASPPG1を活性化させる。整流器に基づくそれぞれの受信機3の複数のフィルタ帯域幅を合致させる複数の周波数を含む複合波形を使用することもできる。任意選択で、特定の活性化周波数に合わせられた共鳴回路が、刺激する電流または電圧を局所的に増加させるために、刺激する電極に加えられ得る。
【0043】
これらの遅れは、利用可能な情報に基づいて、または、知られている再同期処置を用いることで、各々の患者について、あらかじめプログラムされ得る、または選択され得る。
【0044】
収縮速度(
図6)を含め、心不全におけるいくつかの過程は通常より遅いため、(例えば、収縮の時間を早めるために)それに応じて遅れが修正され得る。
【0045】
整流器に基づく受信機3において使用された整流器30(例えば、ダイオード)は、数オームの順方向抵抗を有利に有するべきであり、つまり、接点同士の間の組織のインピーダンスに対して低い。
【0046】
最適な遅れの選択は、心臓機能センサのオンライン測定の基づいて行われてもよい。この場合、遅れは、最適な機能のための基準のセットを提供する遅れの最適なセットを選択する適切なアルゴリズムによって変更されてもよい。
【0047】
3b.整流器に基づく受信機の補助回路
組織刺激は、選択された受動回路または能動回路と関連付けられ得るいくつかの整流器30(例えば、ダイオード)の種類によって達成され得る。例えば、いくつかの実施形態において、整流器に基づく受信機3の最も単純なものは、「半波整流」(
図7A)を誘導する2本のリード線を伴う単純な整流器30を使用する。他の実施形態では、整流器に基づく受信機3は、4個の整流器30を含み、より大きな刺激電流を提供する全波整流(
図7B)を提供するダイオードブリッジを備え得る。他の実施形態は、整流と電圧増幅との両方を提供する、
図7Cに描写されているようなものなどの電圧増倍回路である。
【0048】
整流器に基づく受信機と関連付けられ得る重要な種類の回路は、
図7Dの概略において例として描写されているものなど、様々な種類のバンドパスフィルタ40である。バンドパスフィルタ40または同様の要素の使用は、選択された遅れでの活性化を含め、整流器に基づく刺激する複数の受信機を別々に活性化することを可能にすることができる。この種類の活性化は、心室および心房における心筋の異なる区域を最適な流れで活性化させることで、心臓のポンプ機能の最適化を可能にすることができる。
【0049】
4.制御装置
制御装置7の主なタスクは、心筋の収縮と、生成された心臓機能、明確には、心拍出量(CO)とを最適化することであり、関連するときには、冠潅流を最適化することである。効果的な心臓のポンプ作用は、選択された場所における、最も効果的なポンプ作用を作り出すタイミングでの心筋の刺激によって、達成される。
図8は、このような場所、および、通常実施される刺激がそれらの場所に到達する時間の例を示している。タイミングは、最初の刺激時間に対する遅れとして与えられる。整流器に基づく異なる受信機3の特定の刺激時間は、任意の所与の整流器に基づく受信機3の中で、特定のバンドパスフィルタ40を用いて達成される。制御装置7は、異なる周波数から成る比較的短いパルス(例えば、0.5msec)を、選択された遅れにおいて、電場発生電極2へと出力させる。整流器に基づく各々の受信機3のバンドパスフィルタは、パルスのうちのどれが整流器に基づく特定の受信機3を意図された遅れで活性化させるかを決定する。
【0050】
心臓機能の最適化は、心臓機能のセンサ(21)から受信される情報に基づいて、整流器に基づく受信機の様々な場所において、例えば、所定の刺激プロトコル、刺激時間の手動での調節、または、最適な遅れの決定に基づき得る。このようなセンサは、例えば、胸壁に位置決めされ、大動脈血流速度を測定するドップラ超音波システムであり得る。
図8に描写されている例では、遅れは、典型的な通常の人についてである。これらの遅れは、(例えば、
図6に描写されているように)CHF(鬱血性心不全)または他の心臓の機能不全を患う患者について、異なることがある。
【0051】
図9は、本発明の他の実施形態を示している。ASPPG1は、出力信号を第1および第2のFGE2に供給するために、制御装置7からの信号を制御するように応答する。ASPPG1は、心臓または少なくとも標的の心臓組織の外部で、つまり、心臓または少なくとも標的の心臓組織から遠隔で、身体に接続可能である。ASPPG1は、制御装置7から受信される異なる制御信号に応答して変化する制御可能出力周波数を有する。ASPPG1がACのパルスをFGE2に適用するとき、ACのパルスに合致する周波数で電場が作り出される。整流器に基づく複数の受信機3が、標的組織(例えば、左心室における心臓組織)の中のそれぞれの異なる位置に埋め込まれる。それらの受信機3のうちの1つだけが
図9に描写されていることに留意されたく、他の受信機3(描写されていない)は、異なる周波数に合わせられていることを除いて、描写されている受信機3と同様である。整流器に基づく受信機3の各々は、フィルタ40と組み合わされる1つまたは複数の整流器30を使用して構築することができる。複数の受信機3の各々におけるフィルタ40は、任意の所与の周波数について、受信機3のうちの1つだけが出力パルスを生成するように、異なる周波数に設定される。
【0052】
他のより複雑なフィルタが使用されてもよい。電池を使用するのではなく、外部の電場からエネルギーを獲得することで、能動フィルタなどがここで利用され得ることも留意されたい。これは、利用可能な電流が無視できるため、無線空気伝播とは対照的である。ハンドシェーキングが安全性(ハッキング防止および電磁波妨害)の理由のために追加的に用いられてもよい。しかしながら、この場合、より複雑な回路が必要とされる。これらは、結合が導電性媒体を通じて達成されるため、この実施形態では必要ではない、アンテナまたはコイルのないRFIDシステムの形態を取る可能性がある。安全性は、ECG46などの表面の電極またはセンサによって増大させることができ、その電極またはセンサを用いることで、制御装置7はこのような懸念を排除することができる。また、ECGは、多くのペースメーカが行うように、システムを自然の心臓の活動と同期させるために使用できる、または、例えば整流器に基づくそれぞれの受信機の活性化の相対的なタイミングおよび/または期間を変更するときにおける使用などのために、整流器に基づく受信機が電気効果を刺激する結果を監視するために使用できる。
【0053】
図10は、本発明の他の実施形態のブロック図である。
図10に示されているように、AM送信機1は、出力信号を第1および第2の電極2に供給するために、制御装置7からの信号を制御するように応答する。AM送信機1は、心臓または少なくとも標的の心臓組織の外部で、つまり、心臓または少なくとも標的の心臓組織から遠隔で、身体に接続可能である。AM送信機1は、先に記載されている実施形態におけるASPPG1と同様または同一とでき、第1および第2の電極2は、先に記載されている実施形態におけるFGE電極2と同様または同一とできる。AM送信機1は、制御装置7から受信される異なる制御信号に応答する制御可能出力周波数を有する。したがって、AM送信機1は、制御装置7からの第1の制御信号に応答して、100kHzなどの第1の周波数において第1の周波数信号を出力することができ、対応するように、AM送信機1は、制御装置7からの第2の制御信号に応答して、200kHzなどの第2の周波数において第2の周波数信号を出力することができる。
図10において破線によって指示されているように、電極2は、ここでは左心室(LV)である標的心臓組織の体積にわたって、第1または第2の周波数で電場を作り出す。LVの中に埋め込まれるのは、整流器に基づく第1および第2のAM受信機3a~3bであり、それらはそれぞれAM RCVR #1(3a)およびAM RCVR #2(3b)と符号が付けられている。第1のAM受信機3aは、LVの中の第1の位置に埋め込まれており、第2のAM受信機3bは、LVの中の第2の位置に埋め込まれている。第1および第2の位置において適切なタイミングおよび期間で適用される連続的な刺激は、通常の心臓活動を促進するように意図されている。整流器に基づくAM受信機3a、3bの構造は、
図4~
図7との関連で先に記載されているようにされ得る。
【0054】
この連続的な刺激を達成するために、整流器に基づくAM受信機3a~3bの各々は、適用された電場の異なる周波数に応答するように構成される。これは、適切な周波数に合わせられたバンドパスフィルタなどのフィルタを使用して、各々のAM受信機の中で達成され得る。これらのフィルタの構造は、
図7Dとの関連で先に記載されているようにされてもよい。
【0055】
図10の例において、第1のAM受信機3aは、100kHzの第1の周波数に合わせることができ、そのため、AM送信機1が100kHzの第1の周波数の出力信号を生成するときだけLVを刺激することができる第1の復調出力信号を受信および生成することになる。対応するように、第2のAM受信機3bは、200kHzの第2の周波数に合わせることができ、そのため、AM送信機1が200kHzの第2の周波数の出力信号を生成するときだけLVを刺激することができる第2の復調出力信号を受信および生成することになる。第1のAM受信機3aは、200kHzがそのアンテナに到着するとき、LVを刺激することができる出力信号を生成せず、第2のAM受信機3bは、100kHzがそのアンテナに到着するとき、LVを刺激することができる出力信号を生成しない。
【0056】
図11は、
図10の実施形態の例示の動作において先に検討されているように、100kHzの信号(第1の周波数の出力信号)および200kHzの信号(第2の周波数の出力信号)のタイミングおよび期間に応じて、第1および第2のAM受信機3a~3bのそれぞれの活性化時間を示しているタイミング図である。
【0057】
2つだけの受信機3a~3bが
図10においてはっきりと示されているが、それぞれの異なる周波数に合わせられた1つまたは複数の追加のAM受信機が、刺激の所望の連続を提供するために、心臓におけるそれぞれの異なる場所に埋め込まれてもよいことを留意されたい。例えば、1つの追加の受信機3が埋め込まれる場合、全部で3個の受信機があることになり、2つの追加の受信機3が埋め込まれる場合、全部で4個の受信機があることになるなどである。各々のこのような追加のAM受信機3は、先に検討されているAM受信機3a~3bと同じ手法で動作することができ、制御装置7は、それぞれの周波数出力信号の生成を制御するために、適切な制御信号をAM送信機1に適用することができる。
【0058】
追加の受信機が埋め込まれるとき、制御装置7は、異なる周波数の出力信号がすべての受信機に到着するとき、各々の受信機が、向上した心臓機能を促進するために、心臓周期の中のそれぞれの時間において心臓のそれぞれの部分を刺激するそれぞれの復調された出力信号を生成するように、心臓周期の間の適切な時間に、AM送信機に多くの異なる周波数の出力信号を生成させる制御信号を生成する。例えば、5個の受信機3が
図8に描写された5個のそれぞれの位置に埋め込まれる場合、制御装置7によって発せられる出力のタイミングは、すべての埋め込まれた受信機の出力が、
図8に描写された心臓周期の中のそれぞれの時間において活性化されるように、同期させられ得る。
【0059】
いくつかの好ましい実施形態において、先に記載されている整流器に基づくAM受信機3は、ダイオード、コンデンサ、およびインダクタなどの受動的な構成要素から完全に作ることができる。これらの実施形態は、これらの構成要素に電力供給するために電源を被験者の身体に埋め込む必要がないため、特に有利である。代わりに、被験者の身体の外側に位置決めされ、外部の供給源から電力供給されるハードウェアによって、電場が被験者の身体に与えられる。また、ダイオードは、被験者の身体の中に関連するペーシングパルスを生成するために、課された電場を整流する。
【0060】
ネズミの心臓における半波整流信号の効果を調査するために、実験が実施された。これらの実験は、0.5~10msの間のパルス期間を伴う100kHz~1MHzの間の周波数で正弦曲線のACのパルスを(接地に対して)生成するAC信号生成装置を使用した。AC信号生成装置の出力は整流器の陽極に接続され、AC信号生成装置の接地端子は、ネズミの毛を剃った皮膚に位置決めされた接地電極に接続された。整流器の作用のため、整流器の陰極を出た信号は、半波整流ACのパルスであった。整流器の陰極からの信号は、1mmの先端直径を有する電極を介して、ネズミの右心室の外面に適用された。このように生成されたパルスは、AC信号生成装置の出力から整流器を通じて心臓の筋肉へと流れ、心臓の筋肉から様々な組織を通じて接地電極へと流れた。
【0061】
図12は、4つの異なる周波数(100kHz、250kHz、500kHz、および1MHz)を用いて、0.5ms、1ms、5ms、および10msのパルス期間について、これらのネズミの実験において心臓刺激を提供した閾電流強度を描写している。観察された閾電流強度は、msの範囲での単極または双極のパルスが使用される人の心臓ペーシングにおいて使用された閾電流強度と同様である。
【0062】
上記の検討は心臓の多部位における再同期に焦点を合わせているが、先に記載されている実施形態は、有益である場合、他の効果の効果的な協調された刺激のために有利に使用することができる。より明確には、人および動物は、例えば、脳、脊椎(脊髄)索状物、四肢、および胴の筋肉系など、数多くの他の複雑な興奮性システムを有する。これらのシステムは多くの要素から成り、それら要素の機能は同時または連続的な興奮を必要とする。いくつかの場合において、適切な時間での抑制も必要とされる。実施形態は、これらのシステムの多部位における再同期のために有利に使用されてもよい。
【0063】
図13は、多部位における時間での興奮および/または抑制が、例えば、震え、発作を止めること、神経病理学を成長させること、または、所望の生理学的もしくは行動の応答を開始することに関して有益な結果を生み出すことができる場合の脳の状況での例を描写している。
【0064】
任意の所与の整流器に基づく受信機における整流器の陰極において生成される電流は、通常は興奮を引き起こす一方で、陽極は抑制を誘導することができる。整流器が上記のうちのいずれか1つを行うために用いられるとき、適切な電極が、影響される部位に位置決めされる一方で、他方の電極が「中性部位」と好ましくは接触を行う。このような中性部位は、概して、影響されるときに望ましくない応答のない心臓、脳などにおける領域、または、例えば、心内腔(
図3参照)の内部の血液、脳と髄膜か頭蓋骨との間の空間、脳溝、もしくは、脳室(
図13参照)などにおいて、興奮性組織の外側に位置付けられる心臓、脳などにおける領域である。
【0065】
本明細書で使用されている用語は、具体的な実施形態を記載する目的のためであり、限定になるように意図されていない。第1、第2、第3などの用語が、様々な要素、構成要素、周波数、位置などを記載するために本明細書において使用されているが、これらの要素、構成要素、周波数、位置などが、これらの用語によって限定されるべきではないことは、理解されるものである。これらの用語は、1つの要素、構成要素、周波数、位置などを他の要素、構成要素、周波数、位置などから区別するために使用されているだけである。したがって、本明細書で検討されている第1の要素、構成要素、周波数、位置などは、本出願の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、周波数、位置などと名付けることができる。さらに、例えば、受信機などの第1、第2、および/または第3の特徴または同様の要素といった、数を列挙するとき、特許請求の範囲は、列挙された数のこのような特徴だけを含むとして解釈されるものではなく、このような特徴または同様の要素のうちの追加の1つも含むことができる。
【0066】
本発明が特定の実施形態を参照して開示されているが、記載されている実施形態への数多くの改良、代替、および変更が、添付の特許請求の範囲に定められているような本発明の領域および範囲から逸脱することなく可能である。したがって、本発明が記載されている実施形態に限定されないが、本発明が添付の特許請求の範囲の文言およびその均等物によって定められるすべての範囲を有することが、意図されている。
【符号の説明】
【0067】
1 交流正弦波パルス電位生成装置、ASPPG、AM送信機
2 電場発生電極、FGE
3 整流器に基づく受信機
3a 第1のAM受信機
3b 第2のAM受信機
7 制御装置
10 パルス間隔
11 パルス期間
15 振幅の漸進的な増加および低下
21 心臓機能のセンサ
30 整流器
40 補助回路、周波数選択フィルタ、バンドパスフィルタ
46 ECG
【国際調査報告】