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特表2024-515836単独の予測可能な有限モデルにおいて複数の人間工学的リスク要因を組み合わせること
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】単独の予測可能な有限モデルにおいて複数の人間工学的リスク要因を組み合わせること
(51)【国際特許分類】
   G16H 30/20 20180101AFI20240403BHJP
【FI】
G16H30/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566562
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 US2022022473
(87)【国際公開番号】W WO2022231749
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/180,353
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハマー, リーサ チャーリー
(72)【発明者】
【氏名】タカタニ, カレン シー.
(72)【発明者】
【氏名】マリク, ケヴィン エフ.
(72)【発明者】
【氏名】バトラー, ジェフリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】クルジ, ロバート
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA26
(57)【要約】
軟組織をモデル化する方法は、第1の対象の解剖学的幾何学形状を示す1又は複数の画像を受信することを含む。解剖学的幾何学形状には軟組織が含まれる。本方法はまた、第1の対象に取り付けられた1又は複数のセンサを使用して、第1の対象の解剖学的幾何学形状の複数のパラメータを測定することを含む。本方法はまた、第1の対象、第2の対象、又はその両方の軟組織について第1の材料特性のセットを受信することを含む。本方法はまた、第1の対象がタスクを行っている間に、軟組織を特徴付ける第2の材料特性のセットを特定することを含む。本方法はまた、1若しくは複数の画像、パラメータ、第1の材料特性のセット、及び第2の材料特性のセットに少なくとも部分的に基づき、軟組織に対する歪み、軟組織に対する応力、又はその両方を決定することを含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟組織(530、532)をモデル化するための方法(600)であって、
第1の対象(502)の解剖学的幾何学形状を含む1又は複数の画像(500)を受信することであって、前記解剖学的幾何学形状が軟組織(530、532)を含む、受信すること、
前記第1の対象(502)に取り付けられた1又は複数のセンサ(520A、520B、520C)を使用して、前記第1の対象(502)の前記解剖学的幾何学形状の複数のパラメータを測定すること、
前記第1の対象(502)、第2の対象、又はその両方の軟組織について第1の材料特性のセットを受信すること、
前記第1の対象(502)がタスクを行っている間に、前記軟組織を特徴付ける第2の材料特性のセットを特定することであって、前記第2の材料特性のセットが前記第1の材料特性のセットとは異なる、特定すること、並びに
1又は複数の画像(500)、前記複数のパラメータ、前記第1の材料特性のセット、及び前記第2の材料特性のセットに少なくとも部分的に基づき、前記軟組織に対する歪み、前記軟組織に対する応力、又はその両方を決定すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記画像(500)は、磁気共鳴画像、コンピュータ断層撮影画像、超音波画像、又はこれらの組み合わせを含み、前記第1の対象(502)は、生きている哺乳動物を含む、請求項1に記載の方法(600)。
【請求項3】
前記複数のパラメータは、前記第1の対象(502)が前記タスクを行っている間に測定される、請求項1又は2に記載の方法(600)。
【請求項4】
前記複数のパラメータが、力強い運動、姿勢、繰り返し、継続時間、振動、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法(600)。
【請求項5】
前記複数のパラメータは、前記タスクを行っている間に力強い運動、姿勢、反復、継続時間、振動、又はこれらの組み合わせにさらされた前記第1の対象(502)に応じた前記軟組織の挙動を記述する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法(600)。
【請求項6】
前記第1の材料特性のセットが、面内弾性率、面外弾性率、及びポアソン比を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法(600)。
【請求項7】
前記第2の材料特性のセットが、前記軟組織の等方性特性、前記軟組織の異方性特性、前記軟組織の非線形挙動、及び前記軟組織の推定損傷状態を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法(600)。
【請求項8】
前記歪み、前記応力、又はその両方に少なくとも部分的に基づき、前記軟組織を記述するモデル(710、720、730、740、910、920、1100)を生成することをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法(600)。
【請求項9】
前記モデル(710、720、730、740、910、920、1100)は、前記軟組織の3Dモデルを含み、前記モデル(710、720、730、740、910、920)は、前記タスク中に前記軟組織にかかる負荷の方向及び前記歪みの方向、前記応力又はその両方を特定する、請求項8に記載の方法(600)。
【請求項10】
前記モデル(1100)は、軟組織が損傷する前に、前記タスク中に前記第1の対象(502)により行われるサイクル数を予測するS-N疲労曲線を含む、請求項8に記載の方法(600)。
【請求項11】
軟組織(530、532)をモデル化するための方法(600)であって、
対象(502)の解剖学的幾何学形状を含む1又は複数の画像(500)を受信することであって、当該画像(500)は、磁気共鳴画像、コンピュータ断層撮影画像、超音波画像、又はこれらの組み合わせを含み、前記解剖学的幾何学形状は軟組織(530、532)を含み、前記対象(502)は、生きている哺乳動物を含む、受信すること、
前記対象(502)の前記解剖学的幾何学形状の複数のパラメータを測定することであって、前記複数のパラメータは、前記対象(502)に取り付けられた1又は複数のセンサ(520A、520B、520C)を使用して測定され、前記複数のパラメータは、前記対象(502)がタスクを行っている間に測定され、前記複数のパラメータは、力強い運動、姿勢、繰り返し、継続時間、及び振動を含む、測定すること、
前記対象(502)の前記軟組織(530、532)について第1の材料特性のセットを受信することであって、前記第1の材料特性のセットが、面内弾性率、面外弾性率、ポアソン比、又はこれらの組み合わせを含む、受信すること、
前記タスク中に前記軟組織(530、532)を特徴付ける第2の材料特性のセットを特定することであって、前記第2の材料特性のセットは、前記第1の材料特性のセットとは異なり、前記第2の材料特性のセットは、前記軟組織(530、532)の等方性特性、前記軟組織(530、532)の異方性特性、前記軟組織(530、532)の非線形挙動、前記軟組織(530、532)の推定損傷状態、又はこれらの組み合わせを含む、特定すること、
前記1又は複数の画像(500)、前記複数のパラメータ、前記第1の材料特性のセット、及び前記第2の材料特性のセットに少なくとも部分的に基づき、有限要素モデルを実行すること、
前記有限要素モデルの実行に少なくとも部分的に基づき、前記軟組織(530、532)に対する歪み、前記軟組織(530、532)に対する応力、又はその両方を決定すること、並びに
決定された前記歪み、決定された前記応力、又はその両方に少なくとも部分的に基づき、前記軟組織(530、532)を記述するモデル(710、720、730、740、910、920、1100)を生成すること
を含む、方法。
【請求項12】
前記第1の材料特性のセットが、せん断波エラストグラフィー、超音波、又はその両方を使用して測定される、請求項11に記載の方法(600)。
【請求項13】
前記第2の材料特性のセットが、外部イメージング技術、材料サンプル組成技術、又はその両方を使用して測定される、請求項11又は12に記載の方法(600)。
【請求項14】
前記モデル(710、720、730、740、910、920、1100)が、
健康なときには前記軟組織(530、532)を記述する第1のS-N疲労曲線(1110)、及び
前記タスクに応じて、前記軟組織(530、532)の状態を記述する第2のS-N疲労曲線(1120)
を含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法(600)。
【請求項15】
前記対象(502)を前記軟組織(530、532)の損傷から防ぐために、前記対象(502)により行われる前記タスクに制限をもたらす推奨を提供することであって、前記推奨が、前記軟組織(530、532)に対する応力、前記軟組織(530、532)に対する歪み、又はその両方に少なくとも部分的に基づく、提供することをさらに含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法(600)。
【請求項16】
哺乳類の軟組織(530、532)の挙動を特徴付けるシステムであって、該システムは、
人間である対象(502)に取り付けられるように構成された複数のセンサ(520A、520B、520C)であって、前記複数のセンサ(520A、520B、520C)は、人間である前記対象(502)が反復タスクを行っている間に、複数のパラメータを測定するように構成され、前記複数のパラメータが、力強い運動、姿勢、繰り返し、継続時間、振動を含む、複数のセンサ(520A、520B、520C)と、
動作を行うように構成されたコンピューティングシステム(1200)と
を備え、
前記動作が、
人間である前記対象(502)の解剖学的幾何学形状を含む1又は複数の画像(500)を受信することであって、当該画像(500)が、磁気共鳴画像、コンピュータ断層撮影画像、及び超音波画像を含み、前記解剖学的幾何学形状が、軟組織(530、532)を含む、受信すること、
前記複数のセンサ(520A、520B、520C)から前記複数のパラメータを受信すること、
人間である前記対象(502)の前記軟組織(530、532)について第1の材料特性のセットを受信することであって、前記第1の材料特性のセットが、面内線形弾性率、面外線形弾性率、及びポアソン比を含む、受信すること、
反復タスク中に前記軟組織(530、532)を特徴付ける第2の材料特性のセットを特定することであって、前記第2の材料特性のセットが、前記第1の材料特性のセットとは異なり、前記第2の材料特性のセットが、前記軟組織(530、532)の等方性特性、前記軟組織(530、532)の異方性特性、前記軟組織(530、532)の非線形挙動、及び前記軟組織の状態(530、532)の推定損傷を含む、特定すること、
前記1又は複数の画像(500)、前記複数のパラメータ、前記第1の材料特性のセット、及び前記第2の材料特性のセットに少なくとも部分的に基づき、有限要素モデルを実行すること、
前記有限要素モデルの実行に少なくとも部分的に基づき、前記軟組織(530、532)の歪みモード、応力モード、振動モード、及び破損モードを予測すること、並びに
前記歪みモード、前記応力モード、前記振動モード、前記破損モード、又はこれらの組み合わせに少なくとも部分的に基づき、前記軟組織(530、532)を記述するモデル(710、720、730、740、910、920、1100)を生成すること
を含む、システム。
【請求項17】
前記第1の材料特性のセットが、せん断波エラストグラフィー、超音波、又はその両方を使用して測定される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記第2の材料特性のセットが、動的機械解析を使用して測定される、請求項16又は17に記載のシステム。
【請求項19】
前記モデル(710、720、730、740、910、920、1100)が、
前記反復タスクを行う前の前記軟組織(530、532)を記述する第1のS-N疲労曲線(1110)、及び
前記反復タスクを行うことに応じて前記軟組織(530、532)を記述する第2のS-N疲労曲線(1120)
を含む、請求項16から18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
人間である前記対象(502)を前記軟組織(530、532)の損傷から防ぐために、人間である前記対象(502)により行われる反復タスクに制限をもたらす推奨を提供することであって、前記推奨が、前記歪みモード、前記応力モード、前記振動モード、前記破損モードに少なくとも部分的に基づく、提供することをさらに含む、請求項16から19のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001]本願については、2021年4月27日に出願された米国仮特許出願第63/180,353号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
[0002]本明細書に記載される主題は一般に、材料科学の分野、及び人間工学へのその応用に関する。より具体的には、本明細書に開示される主題は、軟組織材料の反復応力損傷、及びそのような損傷を受けるリスクを最小限にするためのガイドラインに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]過度の使用による損傷、特に棘上筋腱を含む肩の損傷は、人間工学に基づいた最も重大な損傷の1つである。したがって、損傷の原因となるタスク又はタスクの繰り返しに対処するために、例えば腱に対して、応力の原因となる、又は応力をもたらし得る職場又はその他の活動の力学を理解する必要がある。その理解のため、医療機器、外科技術、医学、工学、材料科学、及び人間工学を含むいくつかの研究分野から情報が引き出された。さらに、これらの研究分野は現在、材料的な反復疲労損傷のモデル及びガイドラインを容易に作成可能(又はこれらが開発されている)という形では、交差していない。これについては、一連の研究及びその焦点によって示されている。例えば、医学、治療、及び薬理学の研究は、創傷が発生した後の個人に特化して(又は焦点が当てられて)おり、それは例えば、外科的処置、理学療法、及び回復を早めるための治療である。創傷の検出は、患者が創傷を自己報告した後に焦点を当てており、創傷の前にリスクをスクリーニングするものではない。職場又はその他の職業活動やレクリエーション活動による軟部組織創傷を軽減又は改善するためのガイドラインを作成するために使用可能なモデルが、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
[0004]本開示は、腱損傷モデルを生成するシステム、及びこれに関連する方法を対象とする。通常、これらのシステム及び関連する方法は、腱材料の反復性創傷を軽減又は最小限にするためのガイドラインの作成を伴う。
【0005】
[0005]様々な例によれば、プロセスを実行する際の軟組織への反復応力創傷の可能性を低減する方法が開示される。本方法は、
軟組織に、及びプロセスに関連する少なくとも1つの反復応力データセットを取得すること;
第1の損傷区分を特徴付ける少なくとも第1の情報、及び第2の損傷区分を特徴付ける第2の情報にアクセスすること、ここで第1の情報は、軟組織が第1の損傷区分から移行するための所与の応力での繰り返し回数を定量化するものであり、第2の情報は、軟組織が第2の損傷区分から移行するための所与の応力における反復回数を定量化するものである;
少なくとも第1の情報、第2の情報、及び反復応力データセットに基づいて、軟組織の損傷に十分な条件を予測すること;
少なくとも当該予測に基づいて、軟組織材料の反復性応力損傷のリスクを軽減するための少なくとも1つのガイドラインを決定すること;並びに
当該プロセスにおいて少なくとも1つのガイドラインを実装すること
を含む。
【0006】
[0006]上記例の様々な任意選択的機能には、以下のものが含まれる。第1の損傷区分の損傷区分及び第2の損傷区分にはそれぞれ、次のいずれかが含まれ得る:無損傷区分(No Damage Regime)、半破断損傷区分(Sub-Rupture Damage Regime)、又は断裂伝播区分(Tear Propagation Regime)。本方法は、第3の損傷区分を特徴付ける第3の情報にアクセスすることを含むことができ、ここで第3の情報は、軟組織が第3の損傷区分から移行するための所与の応力における反復回数を定量化するものであり、ここで第1の損傷区分は無損傷区分を含み、第2の損傷区分は半破断損傷区分を含み、第3の損傷区分は断裂伝播区分を含むものである。反復応力データセットは、軟組織の断面積にわたる力と、プロセスの少なくとも1つのタスクについての繰り返し数又は継続時間のうち少なくとも1つとを含み得る。軟組織及びプロセスに関連する少なくとも1つの反復応力データセットを取得することは、軟組織内の少なくとも1つの応力分布を推定することを含み得る。少なくとも1つのガイドラインは、以下の少なくとも1つに関する制限を含み得る:軟組織の姿勢、軟組織の所与の動きの繰り返し回数、軟組織に加えられる力、軟組織の所与の姿勢を維持する継続時間、軟組織の所与の動きの繰り返しの継続時間、又は軟組織に加えられる所与の力の継続時間。第1の損傷区分を特徴付ける少なくとも第1の情報、及び第2の損傷区分を特徴付ける第2の情報にアクセスすることは、以下のうち少なくとも1つを取得することを含み得る:超音波データ、コンピュータ軸断層撮影(CAT)スキャンデータ、磁気共鳴画像法(MRI)スキャンデータ、破壊試験データ、死体材料データ、動物材料データ、ポリマー代替材料データ、分子動力学モデリング(MDM)データ、又は出版データ。軟組織には、小円筋腱、棘下筋腱、棘上筋腱、肩甲下筋腱、三角筋腱、上腕二頭筋腱、上腕三頭筋腱、腕橈骨筋腱、回外筋腱、橈側手根屈筋腱、尺側手根屈筋腱、橈側手根伸筋腱、短橈側手根伸筋腱、腸腰筋腱、内閉鎖筋腱、長内転筋腱、短内転筋腱、大内転筋腱、大殿筋腱、中殿筋腱、大腿四頭筋腱、膝蓋腱、ハムストリングス腱、縫工筋腱、腓腹筋腱、アキレス腱、ヒラメ筋腱、前脛骨筋腱、長腓骨筋腱、長指屈筋腱、骨間筋腱、深指屈筋腱、小指外転筋腱、母指対立筋腱、長母指屈筋腱(flexor pollicis longus tendon)、伸筋腱、母指外転筋腱(abductor pollicis tendon)、長拇趾屈筋腱(flexor hallucis longus tendon)、短指屈筋腱、虫様筋腱、拇趾外転筋腱(abductor hallucis tendon)、長指屈筋腱、小指外転筋腱、眼筋腱、眼瞼挙筋腱、咬筋腱、側頭筋腱、僧帽筋腱、胸鎖乳突筋腱、頭半棘筋腱、頭板状筋腱、顎舌骨筋腱、甲状舌骨筋腱、胸骨舌骨筋腱、腹直筋腱、外腹斜筋腱、腹横筋腱、広背筋腱、又は脊柱起立筋腱が含まれ得る。本方法は、対象の1又は複数の人口統計学的変数を少なくとも1つのガイドラインに適用することにより、対象の少なくとも1つのガイドラインを個別化することを含み得る。本方法は、対象の軟組織の1又は複数の使用データセットを取得すること、及び使用データセットを少なくとも1つのガイドラインと比較することにより、対象の軟組織への損傷を推定することを含み得る。
【0007】
[0007]様々な例によれば、プロセスを実行する際の軟組織への反復応力損傷を軽減するためのコンピュータシステムが開示される。当該システムは、動作を実行するための命令を実行する少なくとも1つの電子プロセッサを含み、当該動作は、
軟組織に、及びプロセスに関連する少なくとも1つの反復応力データセットを取得すること;
第1の損傷区分を特徴付ける少なくとも第1の情報、及び第2の損傷区分を特徴付ける第2の情報にアクセスすること、ここで第1の情報は、軟組織が第1の損傷区分から移行するための所与の応力での繰り返し回数を定量化するものであり、第2の情報は、軟組織が第2の損傷区分から移行するための所与の応力における反復回数を定量化するものである;
少なくとも第1の情報、第2の情報、及び反復応力データセットに基づいて、軟組織の損傷に十分な条件を予測すること、並びに;
少なくとも当該予測に基づいて、軟組織材料の反復性応力損傷のリスクを軽減するための少なくとも1つのガイドラインを決定すること、これにより当該プロセスにおいて少なくとも1つのガイドラインが実装されること
を含む。
【0008】
[0008]上記例の様々な任意選択的機能には、以下のものが含まれる。第1の損傷区分の損傷区分及び第2の損傷区分にはそれぞれ、次のいずれかが含まれ得る:無損傷区分、半破断損傷区分、又は断裂伝播区分。上記動作はさらに、第3の損傷区分を特徴付ける第3の情報にアクセスすることを含むことができ、ここで第3の情報は、軟組織が第3の損傷区分から移行するための所与の応力における反復回数を定量化するものであり、ここで第1の損傷区分は無損傷区分を含み、第2の損傷区分は半破断損傷区分を含み、第3の損傷区分は断裂伝播区分を含むものである。反復応力データセットは、軟組織の断面積にわたる力と、プロセスの少なくとも1つのタスクについての繰り返し数又は継続時間のうち少なくとも1つとを含み得る。軟組織及びプロセスに関連する少なくとも1つの反復応力データセットを取得することは、軟組織内の少なくとも1つの応力分布を推定することを含み得る。少なくとも1つのガイドラインは、以下の少なくとも1つに関する制限を含み得る:軟組織の姿勢、軟組織の所与の動きの繰り返し回数、軟組織に加えられる力、軟組織の所与の姿勢を維持する継続時間、軟組織の所与の動きの繰り返しの継続時間、又は軟組織に加えられる所与の力の継続時間。第1の損傷区分を特徴付ける少なくとも第1の情報、及び第2の損傷区分を特徴付ける第2の情報にアクセスすることは、以下のうち少なくとも1つを取得することを含み得る:超音波データ、コンピュータ軸断層撮影(CAT)スキャンデータ、磁気共鳴画像法(MRI)スキャンデータ、破壊試験データ、死体材料データ、動物材料データ、ポリマー代替材料データ、分子動力学モデリング(MDM)データ、又は出版データ。軟組織には、小円筋腱、棘下筋腱、棘上筋腱、肩甲下筋腱、三角筋腱、上腕二頭筋腱、上腕三頭筋腱、腕橈骨筋腱、回外筋腱、橈側手根屈筋腱、尺側手根屈筋腱、橈側手根伸筋腱、短橈側手根伸筋腱、腸腰筋腱、内閉鎖筋腱、長内転筋腱、短内転筋腱、大内転筋腱、大殿筋腱、中殿筋腱、大腿四頭筋腱、膝蓋腱、ハムストリングス腱、縫工筋腱、腓腹筋腱、アキレス腱、ヒラメ筋腱、前脛骨筋腱、長腓骨筋腱、長指屈筋腱、骨間筋腱、深指屈筋腱、小指外転筋腱、母指対立筋腱、長母指屈筋腱、伸筋腱、母指外転筋腱、長拇趾屈筋腱、短指屈筋腱、虫様筋腱、拇趾外転筋腱、長指屈筋腱、小指外転筋腱、眼筋腱、眼瞼挙筋腱、咬筋腱、側頭筋腱、僧帽筋腱、胸鎖乳突筋腱、頭半棘筋腱、頭板状筋腱、顎舌骨筋腱、甲状舌骨筋腱、胸骨舌骨筋腱、腹直筋腱、外腹斜筋腱、腹横筋腱、広背筋腱、又は脊柱起立筋腱が含まれ得る。軟組織は腱に限られない。軟組織には、靭帯、椎間板、筋肉、皮膚なども含まれ得るし、上記のものに代えて、靭帯、椎間板、筋肉、皮膚などが含まれ得る。例えば、腰部損傷の例を使用すると、椎間板及び腱はいずれも軟組織でできている(例えば、II型コラーゲン対I/III型コラーゲン)。よって、モデル入力を更新し、異なる解剖学的構造をインポートして、椎間板などの他の種類の軟組織に動作を拡張することができる。骨の特性を肩領域の規定に組み込むこともできる。その結果、身体の他の場所の破砕について調べられるようになる。一次負荷方向の線維を含む筋肉組織の分析は、腱と同様の方法論に従い得る。当該動作はさらに、対象の1又は複数の人口統計学的変数を少なくとも1つのガイドラインに適用することによって、対象の少なくとも1つのガイドラインを個別化することを含み得る。当該動作はさらに、対象の軟組織の1又は複数の使用データセットを取得すること、及び;使用データセットを少なくとも1つのガイドラインと比較することによって、対象の軟組織への損傷を推定すること、を含み得る。
【0009】
[0009]1つの態様では、本開示により、腱損傷モデル(例えば、腱損傷蓄積モデルなど)を生成する方法が提供される。本方法は、1又は複数のS-N曲線データセットから、少なくとも1つの腱の1又は複数の物理的区分について1又は複数のS-N曲線を生成することを含み、ここで、所与のS-N曲線は、腱に加えられる応力の大きさと、腱の破損までの繰り返し回数とのプロットを含む。本方法は、腱を記述する1又は複数の反復応力データセットを生成すること、及びS-N曲線又は当該S-N曲線から導出されたデータを組み合わせることも含むことができ、ここでは、1又は複数の条件下での腱の損傷を予測するための反復応力データセット(例えば、所与の一組の条件下での腱損傷の物理的又は具体的な表現又は情報)を使用することにより、腱損傷モデルが生成される。しかしながら、コラーゲンベースの腱などの生体材料に損傷が蓄積される物理的メカニズムは、S-Nタイプの挙動モデルに基づく従来の結晶構造材料の物理的メカニズムとは大きく異なることに留意すべきである。後者の一般的なモデルは、(通常は)金属粒子又は結晶内の滑動障害物での転位の蓄積による損傷の蓄積である。サイクルを重ねると、構造材料の微細構造の不連続部に転位が発生し、徐々に障害物にぶつかり積み重なっていき、巨視的な応力が材料の降伏強度を充分に下回っていたとしても、継続的な周期的な負荷が加わると、最終的には積み重なった場所に小さなひびが生じる。これはその後、材料欠陥として挙動することになり、最終的には亀裂に成長する。従来技術のアプローチでは、軟組織内の疲労をモデル化しようと試みられてきたが、そのような試みでは、軟組織をあたかも金属の疲労特性があるかのように扱うため、不正確な結果をもたらしてしまう。しかしながら、金属の疲労及び亀裂のメカニズムには、S-Nタイプの挙動が観察されるものの、同様の周期的負荷を受けるコラーゲンベースの腱とは本来、類似性がない。これは、腱には局所的な塑性変形に適応する転位がないからである。その代わり、腱はコラーゲン線維の局所的な伸張及びねじれにより周期的な負荷に対応するが、これは微小損傷(micro-damage)の一形態であると考えられる。このような損傷は、コラーゲンの再構成により身体によって修復されるが、時間に依存し、体内の治癒プロセスの影響を受ける。よって、腱構造における損傷蓄積の効果的なモデルには、以下のものが組み込まれる:a)検出可能な欠陥(又は断裂)に先立ち、微小損傷蓄積の提示;b)競合する速度で微小損傷を打ち消す治癒プロセスの提示;c)腱に検出可能な肉眼的欠損を生じさせる微小損傷の連鎖及び拡大の提示。通常、コラーゲン構造の断裂又はひびとして提示され、痛みと同時に発生し得る;d)臨界閾値応力強度Kcを超えて継続的な周期負荷が継続的に加えられた場合、時間経過に伴う当該断裂又はひびの拡張及び成長の提示(da/dn)、及び;e)供与負荷を担う腱の壊滅的な分離又は事実上の破損を引き起こす総負荷サイクルの提示。この後者のe)は、S-N疲労タイプのデータの通常のモードである。上記各プロセスについてのモデル構成要素により、損傷蓄積の4つの区分が特定されることになる:1)無損傷;2)微細損傷(半破断損傷)蓄積;3)成長する断裂又はひび、細胞の損傷、又はその他の生物学的損傷の形態での損傷蓄積、及び;4)腱構造の壊滅的な損傷又は分離の状態。これらのモデル構成要素は数学的に提示することができ、集合モデルに統合することができる。このような集合モデルは、進行する微小損傷及び断裂の存在及び程度を特定可能な検査又は問い合わせ方法によっても、検証される。
【0010】
[0010]別の態様では本開示により、腱材料の反復応力及び/又は腱損傷の蓄積を回避するためのガイドラインを生成する方法が提供される。本方法は、1又は複数のS-N曲線データセットから、少なくとも1つの腱の1又は複数の物理的区分について1又は複数のS-N曲線を生成することを含み、ここで、所与のS-N曲線は、腱に加えられる応力の大きさと、腱の損傷区分遷移に達するまでの繰り返し回数とのプロットを含む。本方法は、腱を記述する1又は複数の反復応力データセットを生成すること、及びS-N曲線又は当該S-N曲線から導出されたデータを組み合わせることも含むことができ、ここでは、反復応力データセットを使用して、1又は複数の条件下での腱の損傷を予測し、腱損傷モデルが作成される。さらに、本方法は、腱損傷モデルから腱の腱材料反復応力に関する少なくとも1つのガイドラインを生成することも含むことができ、ここで当該ガイドラインは、腱の姿勢、腱の所与の動きの繰り返し回数、腱に加えられる力、腱の所与の姿勢の継続時間、腱の所与の動きの繰り返しの継続時間、腱に加えられる所与の力の継続時間、及びこれらの組み合わせを含み、これによって腱損傷モデルが生成され、これが少なくとも1つのガイドラインを取得するために使用される。
【0011】
[0011]本開示の方法は、様々な態様を含む。いくつかの態様では例えば、本方法が、物理的区分の複数のS-N曲線を組み合わせて、少なくとも1つの組み合わされたS-N曲線を作成することを含む。特定の態様では、本方法が、S-N曲線又は当該S-N曲線から導出されたデータを反復応力データセットと組み合わせて、1又は複数の条件下での腱の損傷を予測するときに、少なくとも1つの累積損傷モデルを適用することを含む。いくつかの態様では、本方法が、例えば、超音波データ、コンピュータ軸断層撮影(CAT)スキャンデータ、磁気共鳴画像法(MRI)スキャンデータ、破壊検査データ、死体材料、動物材料、ポリマー代替材料、分子動力学モデリング(MDM)データ、出版データ、及びこれらの組み合わせ等の医療診断技術を含む1又は複数のデータソースを用いて、S-N曲線データセットを取得することを含む。
【0012】
[0012]特定の態様では、腱が棘上筋腱を含む。いくつかの態様では腱が、小円筋腱、棘下筋腱、棘上筋腱、肩甲下筋腱、三角筋腱、上腕二頭筋腱、上腕三頭筋腱、腕橈骨筋腱、回外筋腱、橈側手根屈筋腱、尺側手根屈筋腱、橈側手根伸筋腱、短橈側手根伸筋腱、腸腰筋腱、内閉鎖筋腱、長内転筋腱、短内転筋腱、大内転筋腱、大殿筋腱、中殿筋腱、大腿四頭筋腱、膝蓋腱、ハムストリングス腱、縫工筋腱、腓腹筋腱、アキレス腱、ヒラメ筋腱、前脛骨筋腱、長腓骨筋腱、長指屈筋腱、骨間筋腱、深指屈筋腱、小指外転筋腱、母指対立筋腱、長母指屈筋腱、伸筋腱、母指外転筋腱、長拇趾屈筋腱、短指屈筋腱、虫様筋腱、拇趾外転筋腱、長指屈筋腱、小指外転筋腱、眼筋腱、眼瞼挙筋腱、咬筋腱、側頭筋腱、僧帽筋腱、胸鎖乳突筋腱、頭半棘筋腱、頭板状筋腱、顎舌骨筋腱、甲状舌骨筋腱、胸骨舌骨筋腱、腹直筋腱、外腹斜筋腱、腹横筋腱、広背筋腱、又は脊柱起立筋腱、及びこれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、腱が哺乳動物の腱を含む。これらの態様のうち特定のものでは、哺乳動物の腱が人間の腱を含む。他の態様では、腱が非哺乳動物の腱を含む。
【0013】
[0013]特定の態様では、本方法が、S-N曲線又は当該S-N曲線から導出されたデータ、及び反復応力データセットを治癒データと組み合わせて、1又は複数の条件下での腱に対する損傷を予測することを含む。いくつかの態様では、本開示により、対象の腱損傷を予測する方法が提供され、当該方法は、対象の少なくとも1つの腱について1又は複数の使用データセットを取得すること、及び使用データセットを、本方法によって生成される腱材料の反復応力に関するガイドラインと比較することを含むものであり、これにより、対象の腱損傷が予測される。特定の態様では、物理的区分が、無損傷区分、半破断損傷区分、亀裂開始区分、破砕区分又は破砕曲線、及びこれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、1又は複数のステップが、少なくとも部分的にコンピュータで実装される。
【0014】
[0014]いくつかの態様では、本方法が、腱損傷モデルから腱に対する腱材料の反復応力に関する少なくとも1つのガイドラインを生成することを含み、ここで当該ガイドラインは、腱の姿勢及び/又は位置、腱の所与の動きの繰り返し回数、腱に加えられる力、腱の所与の姿勢を維持する継続時間、腱の所与の動作の繰り返し継続時間、腱の所与の動き、腱に加えられる所与の力の継続時間、及びこれらの組み合わせを含む。これらの態様のいくつかでは、腱材料の反復応力に関するガイドラインが、1又は複数の使用条件セットの下での腱の1又は複数の推奨使用/休止サイクルを含む。これらの態様の特定のものでは、本方法が、腱材料の反復応力に関するガイドラインを検証することを含む。これらの態様のいくつかでは、本方法が、対象の1又は複数の人口統計学的変数をガイドラインに適用することによって、所与の対象に対するガイドラインを個別化することを含む。これらの態様の特定のものでは、本方法が、ガイドラインを生成するときにタスク情報を使用することを含む。これらの態様のうち特定のものでは、タスク情報が、工具重量及び/又は力ベクトルを含む。
【0015】
[0015]特定の態様では、本方法が、反復応力データセットを生成するために腱において少なくとも1つの応力分布を推定することを含む。これらの態様のいくつかでは、本方法が、腱の少なくとも1つの寸法を使用して腱における応力分布を推定することを含む。これらの態様のうちいくつかでは、寸法が、腱の少なくとも1つの断面積を含む。これらの態様のうちいくつかでは、本方法が、腱に加えられる少なくとも1つの力対腱の破損までの繰り返し回数のプロットを含む少なくとも1つのサイクル曲線を使用して、腱における応力分布を推定することを含む。これらの態様のうち特定のものでは、当該力が、腱の1又は複数の姿勢で決定される。これらの態様のいくつかでは、本方法が、推定技術及び/又はモデリング技術、例えば有限要素モデリング(FEM)及び/又は筋電図検査(EMG)を使用して、当該力を決定することを含む。これらの態様のいくつかでは、本方法が、腱の姿勢に加えられる力を決定するときにタスク情報を使用することを含む。いくつかの態様では、タスク情報が、工具重量及び/又は力ベクトルを含む。
【0016】
[0016]他の態様では、本開示により、少なくとも1つの電子プロセッサによって実行されると、少なくとも、1又は複数のS-N曲線データセットから、少なくとも1つの腱の1又は複数の物理的区域についての1又は複数のS-N曲線を生成することであって、所与のS-N曲線が、腱に加えられる応力の大きさと腱の破損までの繰り返し回数とのプロットを含む、1又は複数のS-N曲線を生成することと、S-N曲線又は当該S-N曲線から導出されたデータを1又は複数の反復応力データセットと組み合わせて、腱の損傷モデルを生成することと、を実行する非一時的なコンピュータ実行可能な指示を含むコンピュータ可読媒体を備えるコントローラ、又は当該コンピュータ可読媒体にアクセス可能なコントローラを含む、システムが提供される。
【0017】
[0017]別の態様では、本開示により、少なくとも1つの電子プロセッサによって実行されると、少なくとも、1又は複数のS-N曲線データセットから、少なくとも1つの腱の1又は複数の物理的区域についての1又は複数のS-N曲線を生成することであって、所与のS-N曲線が、腱に加えられる応力の大きさと腱の破損までの繰り返し回数とのプロットを含む、1又は複数のS-N曲線を生成することと、S-N曲線又は当該S-N曲線から導出されたデータを1又は複数の反復応力データセットと組み合わせて、腱の損傷モデルを生成することと、を実行する非一時的なコンピュータ実行可能な指示を含むコンピュータ可読媒体が提供される。
【0018】
[0018]いくつかの態様では、本明細書に開示されるシステム又はコンピュータ可読媒体の命令がさらに、物理的区分について複数のS-N曲線を組み合わせて、少なくとも1つの組み合わされたS-N曲線を生成することを実行する。特定の態様において、本明細書に開示されるシステム又はコンピュータ可読媒体の命令がさらに、少なくとも:S-N曲線又は当該S-N曲線から導出されたデータを反復応力データセットと組み合わせて、1又は複数の条件下での腱の損傷を予測するときに、少なくとも1つの累積損傷モデルを適用すること、をさらに実行する。いくつかの態様では、本明細書に開示されるシステム又はコンピュータ可読媒体の命令がさらに少なくとも、医療診断技術(例えば超音波データ、コンピュータ軸断層撮影(CAT)スキャンデータ、磁気共鳴画像法(MRI)スキャンデータ、破壊試験データ、死体材料データ、動物材料データ、ポリマー代替材料データ、分子動力学モデリング(MDM)データ、又は出版データ、及びこれらの組み合わせ)を含む1又は複数のデータソースを使用して、S-N曲線データセットを取得することを実行する。いくつかの態様では、本明細書に開示されるシステム又はコンピュータ可読媒体の命令が、さらに少なくとも、S-N曲線又は当該S-N曲線から導出されたデータ、及び反復応力データセットを治癒データと組み合わせて、1又は複数の条件下での腱の損傷を予測することを実行する。特定の態様では、本明細書に開示されるシステム又はコンピュータ可読媒体の命令が、さらに少なくとも、対象の少なくとも1つの腱について1又は複数の使用データセットを取得することと、当該使用データセットを腱材料の反復応力に関するガイドラインと比較して、対象の腱損傷を予測することと、をさらに実行する。
【0019】
[0019]いくつかの態様では、本明細書に開示されるシステム又はコンピュータ可読媒体の命令が、さらに少なくとも、腱損傷モデルから腱の腱材料反復応力に関する少なくとも1つのガイドラインを生成することを実行し、ここで当該ガイドラインは、腱の姿勢、腱の所与の動きの繰り返し回数、腱に加えられる力、腱の所与の姿勢を維持する継続時間、腱の所与の動きの繰り返しの継続時間、腱に加えられる所与の力の継続時間、及びこれらの組み合わせを含むものである。特定の態様では、本明細書に開示されるシステム又はコンピュータ可読媒体の命令が、さらに少なくとも、腱材料の反復応力に関するガイドラインを検証することを実行する。これらの態様のいくつかでは、本明細書に開示されるシステム又はコンピュータ可読媒体の命令が、さらに少なくとも、対象の1又は複数の人口統計学的変数をガイドラインに適用することによって、所与の対象のガイドラインを個別化することを実行する。これらの態様のいくつかでは、本明細書に開示されるシステム又はコンピュータ可読媒体の命令がさらに少なくとも、ガイドラインを生成するときにタスク情報を使用することを実行する。これらの態様のいくつかでは、本明細書に開示されるシステム又はコンピュータ可読媒体の命令が、さらに少なくとも、腱における少なくとも1つの応力分布を推定して反復応力データセットを生成することを実行する。これらの態様のうちいくつかでは、本明細書に開示されるシステム又はコンピュータ可読媒体の命令が、さらに少なくとも、腱の少なくとも1つの寸法を使用して腱における応力分布を推定することを実行する。これらの態様のいくつかでは、本明細書に開示されるシステム又はコンピュータ可読媒体の命令が、さらに少なくとも、腱に加えられる少なくとも1つの力対腱の破損までの繰り返し回数のプロットを含む少なくとも1つのサイクル曲線を使用して、腱内の応力分布を推定することを実行する。
【0020】
[0020]様々な例によれば、軟組織をモデル化する方法が開示される。本方法は、第1の対象の解剖学的幾何学形状を示す1又は複数の画像を受信することを含む。解剖学的幾何学形状は、軟組織を含む。本方法はまた、第1の対象に取り付けられた1又は複数のセンサを使用して、第1の対象の解剖学的幾何学形状の複数のパラメータを測定することを含む。本方法はまた、第1の対象、第2の対象又はこれら両方の軟組織について、第1の材料特性のセットを受信することを含む。本方法はまた、第1の対象がタスクを実行している間に、軟組織を特徴付ける第2の材料特性セットを特定することを含む。第2の材料特性のセットは、第1の材料特性のセットとは異なる。本方法はまた、1又は複数の画像、パラメータ、第1の材料特性のセット、第2の材料特性のセット、又はこれらの組み合わせに少なくとも部分的に基づいて、軟組織の歪み、軟組織の応力、又はこれら両方を決定することを含む。
【0021】
[0021]別の実施形態では、本方法が、対象の解剖学的幾何学形状を示す1又は複数の画像を受信することを含む。当該画像は、磁気共鳴画像、コンピュータ断層撮影画像、超音波画像、又はこれらの組み合わせであり得るか、又はこれらの組み合わせを含み得る。解剖学的幾何学形状は、軟組織を含む。対象は生きている哺乳類である。本方法はまた、対象の解剖学的幾何学形状の複数のパラメータを測定することを含む。当該パラメータは、対象に取り付けられた1又は複数のセンサを使用して測定される。当該パラメータは、対象がタスクを実行している間に測定される。当該パラメータは、力強い運動、姿勢、繰り返し、継続時間、振動、又はこれらの組み合わせを含む。本方法はまた、対象の軟組織について第1の材料特性のセットを受信することを含む。第1の材料特性のセットは、面内弾性率、面外弾性率、ポアソン比、又はこれらの組み合わせを含む。本方法はまた、タスク中に軟組織を特徴付ける第2の材料特性のセットを特定することを含む。第2の材料特性のセットは、第1の材料特性のセットとは異なる。第2の材料特性のセットは、軟組織の等方性特性、軟組織の異方性特性、軟組織の非線形挙動、軟組織の推定損傷状態、又はこれらの組み合わせを含む。本方法はまた、1又は複数の画像、パラメータ、第1の材料特性のセット、第2の材料特性のセット、又はこれらの組み合わせに少なくとも部分的に基づいて、有限要素モデルを実行することを含む。本方法はまた、有限要素モデルの実行に少なくとも部分的に基づいて、軟組織上の歪み、軟組織の応力、又はこれら両方を決定することを含む。本方法はまた、決定された歪み、決定された応力、又はこれら両方に少なくとも部分的に基づいて、軟組織を記述するモデルを生成することを含む。
【0022】
[0022]哺乳動物における軟組織の挙動を特徴付けるための方法も開示される。当該システムは、対象に取り付けられるように構成された複数のセンサを含む。当該センサは、人間である対象が反復タスクを実行している間に、複数のパラメータを測定するように構成されている。当該複数のパラメータは、力強い運動、姿勢、繰り返し、継続時間、振動、又はこれらの組み合わせを含む。当該システムはまた、動作を行うように構成されたコンピューティングシステムを含む。当該動作は、人間である対象の解剖学的幾何学形状を示す1又は複数の画像を受信することを含む。当該複数の画像は、磁気共鳴画像、コンピュータ断層撮影画像、超音波画像、又はこれらの組み合わせであり得るか、又はこれらを含み得る。解剖学的幾何学形状は、軟組織を含む。当該動作はまた、センサからパラメータを受信すること含む。当該動作はまた、対象の軟組織について第1の材料特性のセットを受信することを含む。第1の材料特性のセットは、面内線形弾性率、面外線形弾性率、ポアソン比、又はこれらの組み合わせを含む。当該動作は、反復作業中に軟組織を特徴付ける第2の材料特性のセットを特定することを含む。第2の材料特性のセットは、第1の材料特性のセットとは異なる。第2の材料特性のセットは、軟組織の等方性特性、軟組織の異方性特性、軟組織の非線形挙動、軟組織の推定損傷状態、又はこれらの組み合わせを含む。当該動作はまた、1又は複数の画像、パラメータ、第1の材料特性のセット、第2の材料特性のセット、又はこれらの組み合わせに少なくとも部分的に基づき、有限要素モデルを実行することを含む。当該動作はまた、有限要素モデルの実行に少なくとも部分的に基づいて、軟組織の歪みモード、応力モード、振動モード、及び/又は破損モードを予測することを含む。当該動作はまた、歪みモード、応力モード、振動モード、破損モード、又はこれらの組み合わせに少なくとも部分的に基づき、軟組織を記述するモデルを生成することを含む。
【0023】
[0023]上記及び/又は他の態様並びに利点は、添付図面と併せて、以下の実施例の詳細な説明からより明らかとなり、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本明細書に開示されるいくつかの態様による例示的な方法ステップを概略的に示すフローチャートである。
図2】本明細書に開示されるいくつかの態様による例示的な方法ステップを示す概略図である。
図3】本明細書に開示されるいくつかの態様による例示的な方法ステップを示す概略図である。
図4】様々な例による、腱に対する反復応力創傷のリスクを軽減するための少なくとも1つのガイドラインを提供する方法を示すフローチャートである。
図5】本明細書に開示されるいくつかの態様による、1つ又は複数のセンサが取り付けられた本体の透視図(例えば画像)である。
図6】本明細書に開示されるいくつかの態様による体組織(例えば軟組織)をモデル化する方法を示すフローチャートである。
図7】本明細書に開示される、治癒した損傷ゾーンのない軟組織セグメント、2mm×5mmの治癒した損傷ゾーンを有する軟組織セグメント、4mm×5mmの治癒した損傷ゾーンを有する軟組織セグメント、及び6mm×5mmの治癒した損傷ゾーンを有する軟組織セグメントのそれぞれについてのモデルである。
図8】本明細書に開示されるいくつかの態様による、軟組織セグメントに対する歪みモデルである。
図9】本明細書に開示されるいくつかの態様による、3mmのスロット状断裂を有する軟組織セグメントのモデル、及び2mmのV字型の断裂を有する軟組織セグメントのモデルである。
図10】本明細書に開示されるいくつかの態様による、軟組織セグメントに対する歪みモデルである。
図11】本明細書に開示されるいくつかの態様による、対象の解剖学的形状(例えば軟組織)の1又は複数のS-N疲労曲線を含むグラフである。
図12】本明細書に開示されるいくつかの態様による、本明細書に開示される方法の少なくとも一部を実行するためのコンピューティングシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[0036]以下で例示的な態様について、添付の図面を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本開示の例は多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の例に限られるとみなされるべきではない。これらの例はむしろ、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、当業者にその範囲が充分に伝わるようにするものである。図面では、厳密な構造的正確性、詳細、及び/又は縮尺を維持するのではなく、理解を容易にするために、一部の詳細が簡略化及び/又は描写されている場合がある。
【0026】
[0037]ある要素が、別の構成要素の「上に(on)」、別の構成要素に「関連付けられている」、「接続されている」、「電気的に接続されている」、又は「結合されている」と言及された場合、当該要素は、他方の構成要素上に直接存在するか、他方の構成要素に関連付けられるか、他の構成要素に接続されるか、他の構成要素に電気的に接続されるか、他の構成要素に結合されるか、又は介在する構成要素が存在し得ると理解される。これとは対照的に、ある構成要素が、別の構成要素の「上に直接」、別の構成要素に「直接関連付けられている」、「直接接続されている」、「電気的に直接接続されている」、又は「直接結合されている」と言及された場合、介在する構成要素は存在しない。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語には、関連する列挙された項目の1又は複数のあらゆる組み合わせが含まれる。
【0027】
[0038]第1、第2などの用語は、本明細書では様々な要素、構成要素、及び/又は方向を説明するために使用され得るが、これらの要素、構成要素、及び/又は方向は、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、1つの要素、構成要素、及び/又は方向を別の要素、構成要素、及び/又は方向から区別するためにのみ、使用される。例えば、第1の要素、第1の構成要素、又は第1の方向を、第2の要素、第2の構成要素、又は第2の方向と呼ぶこともできる(これらは例示に過ぎない)。
【0028】
[0039]本明細書では、説明を容易にするために、「下の方(beneath)」、「下(below)」、「下方(lower)」、「上方(above)」、「上の方(upper)」などの空間的に相対的な用語を使用して、図示されているように、ある構成要素及び/若しくは特徴と、別の構成要素及び/若しくは特徴との、又は他の構成要素及び/もしくは特徴とのとの関係を説明することがある。空間的に相対的な用語は、図示された向きに加えて、使用中又は動作中のデバイスの異なる向きを包含することを意図していることが、理解されよう。
【0029】
[0040]本明細書で使用されるように、所与の「コンポーネント」及び対応する「コンポーネント・コネクタ(component connector)」は、互いに結合、動作可能に接続、又はその他の方法で関連付けられるように構造化又はその他のやり方で動作可能な、少なくとも2つのコンポーネントを指す。特定の態様では、1つのコンポーネントが複数のコンポーネント・コネクタに接合され、動作可能に接続され、若しくは関連付けられるように構造化されているか、又は動作可能である。いくつかの態様では、1つのコンポーネント・コネクタが、複数のコンポーネントに接合されるか、動作可能に接続されるか、又はその他のやり方で関連付けられるように構造化されるか、その他のやり方で動作可能である。
【0030】
[0041]本明細書で使用されるように、「対象」とは動物を指し、例えば哺乳類(例えば人間)若しくは鳥類(例えば鳥)種など、又は非哺乳類(例えば魚、軟体動物、爬虫類、両生類など)を指す。より具体的には、対象は哺乳動物、例えば脊椎動物、例えばマウス、霊長類、サル又は人間であり得る。動物には、家畜(例えば生産牛、乳牛、家禽、馬、豚など)、スポーツ動物、及び伴侶動物(例えばペット又は支援動物)が含まれる。対象は、健康な個体、疾患若しくは疾患の素因を有するか、又はこれを有すると疑われる個体、又は治療を必要とする個体、又は治療が必要であると疑われる個体であり得る。
【0031】
[0042]本明細書で使用される用語は、特定の例を説明することのみを目的としているに過ぎず、例を限定することを意図したものではない。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上特に明示されていない限り、複数形も含むものとする。さらに、「含む(comprise)」、「備える(comprising)」、「含む(include)」、及び/又は「含む(including)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するが、1又は複数の他の機能、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はこれらの群の存在又は追加を排除するものではないことが理解されるであろう。
【0032】
[0043]特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての用語(専門用語及び科学用語を含む)は、当該例の分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書で定義されているような用語、例えば一般的に使用される辞書で定義されている用語は、関連技術の文脈における意味と同じ意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書で明示的に規定されている場合を除き、理想化された意味又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことも、理解されるであろう。
【0033】
[0044]従来の人間工学の実践が創傷の予防を目的としている一方で、マクロレベルでの予防は疫学的手法でのみ、又はこれまで行われてきた。推定される作業曝露に基づいて、不快感又は痛みに基づき、人が創傷を自己報告する時期の推定が作成され、そのしきい値を下回るガイドラインが作成され、ほとんどの創傷は、一般化された体の領域(個々の構成要素ではなく、肩、膝、背中の全体)によって規定される。1990年代以降の工学出版物では、構造疲労原理と一致して、生体外の腱材料は、繰り返し応力の後に強度が低下することが実証された。これらの研究では、モデルの作成、又は創傷の予防若しくは予測におけるこの情報の有用性について、報告されていない。ここでは、腱と非生物学的構造との間の重要な構造及び特性の違いが調査されておらず、また、腱の代わりにさらなる試験の代用物(入手が困難であり、生体組織から除去されると変化及び劣化が起こりやすい)として使用可能な人工材料を特定(又は開発)する必要も調査されていない。学際的な研究を結びつけ、ギャップを埋め、いくつかの分野で進化するテクノロジーを活用する新しいアプローチが必要とされている。コンピュータ技術の大幅な進歩により、材料モデルの作成がより魅力的なものになっている。計算材料モデルにより、既存の材料又は潜在的な新材料の疲労挙動をシミュレートすることができる。超音波検査により、生きている対象における生物学的材料の材料音響特性を推定でき、これらを弾性率などの特定の機械的特性と相関させることができる。モーション・トラッキング技術を用いると、作業中の人を観察し、デジタル・ボディ内で人の動きをシミュレートできる。これらの技術は、軟組織損傷を軽減又は改善するためのガイドラインを生成可能なモデルを開発する機会を示す。当該モデルはまた、個人の特性を考慮して個別化されたモデルを作成することもできる。作業モデルは、逆に使用することもでき、人工腱又は代替腱を構築するための設計要件、及びそれらの腱が動作の全期間でどのように機能するかを知らせるために、使用できる。
【0034】
[0045]本開示は、特定の態様において、材料科学原理に基づいて、例えば力(例えば、異なる姿勢で)、応力分布、応力データ、及び材料(例えば腱)性能パラメータ(例えば健康状態、治癒、損傷の蓄積、損傷)に基づいて、腱の使用を決定及び予測するための方法、システム、コンピュータ可読媒体並びに関連モデルに関する。本開示により、材料科学原理と腱との間の有用な相関関係が特定される。いくつかの用途では予測モデルが、タスクに関連する人間工学的問題に対処するときに使用され、損傷の可能性を予防又はさもなくば軽減するためのガイドラインが通知及び確立される。本開示の大部分では、1つの特定の例とし肩の損傷及び棘上筋腱に焦点を当てているものの、本明細書に開示される方法及び関連する態様は、実質的にあらゆる軟組織(例えば関心の対象となる椎間板(脊椎)、靱帯、腱及び腱系)に、また生体模倣用途(例えば人工腱の設計)にも、適用することができる。本開示を任意の軟組織にどのように適用できるかの例については、下記図4との関連で説明する。
【0035】
[0046]さらなる導入として、職場で作業を行うために肩を使うことは、極限の作業環境では困難である。肩の損傷は、職場の外でも発生することがよくあり、それは例えば自宅にいるとき、及びスポーツ又はその他の職業活動に参加しているときである。現在のガイドラインでは、職場での肩を使った作業活動に対する明確で許容可能な限度が定められておらず、姿勢、力、及び反復の相互作用も、姿勢、力、反復、継続時間、及び振動の相互作用も考慮されていない。肩の動きを単純になくすことができない現場の人は、ある程度の未知のリスクに直面することになる。よって、力、反復、姿勢、作業/休憩サイクルの相互作用を含む上肢作業の複雑な性質に対処する、肩関節の需要に対する堅牢な閾値制限ガイドラインが必要とされている。このようなガイドラインは、エンジニア及び人間工学者にとって非常に役立つが、特に医師、理学療法士、スポーツ医学従事者、スポーツコーチにとっても役立ち得る。
【0036】
[0047]肩損傷が過酷な職場(例えば、重工業、溶接、漁業、食肉加工、重機械加工、自動車修理、及び塗装)で一般的かつ頻繁に発生することについては、多くの文献がある。米国労働統計局の2013年のデータによると、肩への累積外傷損傷は、職場での筋骨格系損傷全体の15%を占め、これを上回るのは、腰部及び背中全体の損傷だけである。しかしながら、肩の損傷はより重度になる傾向があり、より多くの時間のロスをもたらす。
【0037】
[0048]肩の機構により、手(手作業又は工具を多用する組み立てに最も役立つ人体の部分である)の配置、機能、及び制御が可能になる。手、ひいては腕及び肩は、溶接、塗装、穴あけ、切断、魚の内臓処理、又は材料の取り扱いのために動く。工具、手、及び肩のシステムはよく、頭上又は手の届きにくい場所に配置される。肩の複合構造は、腕の重さ、作業を行うために保持されている工具、及び加えられる力を支えなければならない。工具を使用する手作業のほとんどには、作業期間の過程で何度も繰り返されるタスクが含まれる。
【0038】
[0049]肩のニュートラルな姿勢は、上腕をまっすぐにして体の横に垂らした状態である。肩がニュートラルな位置から外れるたびに、腱には張力がかかり、腱内に応力が生じる。肩がニュートラルな位置から離れるたびに力が加わり、その繰り返しが発生し、腱には疲労損傷が蓄積される。
【0039】
[0050]肩の痛み又は腱板損傷と職場の要因を関連づけた研究では、頭上作業(肘を肩より上に置くことと定義)、加えられた力、反復動作、及び身体的負荷が、重要な要因であると特定されている。しかしながら、これらの研究の質は様々であり、証拠は一貫して有意な用量・応答関係を示したものではなかったものの、それ以来、2つの研究で、90°を超える上腕の上昇と、MRI又はインピンジメント手術で検出された腱損傷の特定の転帰とが関連付けられている。腱板腱損傷の転帰における職場要因の証拠に特に焦点を当てたレビューにより、研究が不足していることが判明した。
【0040】
[0051]特定の転帰を伴う研究であっても、これらの研究論文における曝露評価はあまりにもひどいものであり、転帰の分類はまだ、「用量及び反応」又は「曝露及びリスク」の間に強力な定量的関連性を確立するに充分なほど、具体的ではない。その結果、現在公表されている肩に要求される損傷リスクに関するガイドラインは、職業人間工学損傷予防プログラムで使用するには、不充分である。これらのガイドラインは単純に、頭上又は肩を伸ばす姿勢を減らす又は排除することを推奨しており、負傷率に大きな影響をもたらすためにどの程度の軽減が必要かは、特定されていない。
【0041】
[0052]一部の業界では、反復的でぎこちない、又は負担のかかる肩の使用を排除することは不可能だが、これは改善され得る。利用可能なリスク閾値がなければ、損傷を防ぐためにこれらのリスク要因をどの程度軽減すべきかという疑問が残る。この種の作業では、多くの繰り返し動作(塗装)、及び/又は力(穴あけ)、及び/又は負荷(溶接)を伴うことがあるため、問題はさらに複雑になる。有用なガイドラインには、リスク要因の相互作用及び作業/休憩サイクルも含める必要がある。
【0042】
[0053]疫学データだけでは因果関係を確立できないことを考慮すれば、代替的なアプローチが必要である。本明細書に開示されるモデル及び関連する態様は、従来の疫学研究が埋めることができなかった多くのギャップを埋めるものであり、代わりに蓄積損傷の疲労モデルを使用して、特定の態様における損傷を予測及び予防する。
【0043】
[0054]「疲労(fatigue)」という用語は、本開示全体を通じて、筋肉の収縮力が低下するために活動を遂行できなくなる生理的疲労ではなく、機械的な意味、つまり繰り返しの力による構造的劣化という意味で使用される。「合力」という用語は、工具の重量、体節の姿勢、及び作業者が工具に加える力によって生じる腱の張力を示すために使用される。より一般的には、「合力」とは、作業中に軟組織に作用する力の組み合わせを指し、これには、姿勢(例えば肩の位置)、振動、工具の重量、手にかかる力のベクトル、及び腕の重量などが含まれる。引張力は肩に関係するが、他の軟組織(例えば椎間板)は、圧縮力を受け得る。他の種類の軟組織は、圧縮力及び引張力の両方を受け得る。
【0044】
[0055]人が身体活動に従事しているとき、軟組織に対する反復応力の影響により、微小外傷(microtrauma)又は半破断(subruptures)と呼ばれる小さな亀裂が生じる。充分な回復期間があれば、身体はより強くなるように自ら修復するため、半破断自体は身体に害を及ぼさない。これが運動の根本的な利点である。回復期間が不充分だと腱が損傷し、最終的には創傷が発生する。腱の使用(又は使いすぎ)に対する充分な回復期間は、これまで未確定若しくは不明であるか、又は定義されていなかった。
【0045】
[0056]姿勢、力、継続時間、振動、及び繰り返しの相互作用を考慮した、肩を使った作業活動の明確で許容可能な制限及び休息サイクルを提供する、確固たるガイドラインが必要である。
【0046】
[0057]本明細書に開示される棘上筋腱の疲労及び修復期間のモデルは、特に頭上作業、反復及び力を伴う重工業、並びにスポーツにとって有利である。腱は材料のように挙動し、所与の応力レベル及びサイクルで予測可能な疲労破壊を示すが、自己修復することもできる。
【0047】
[0058]本明細書に示すアプローチにより、例えば、材料科学及び医学の原理に基づいて、そのようなモデルが提案される。このモデルを使用すると、肩の過度の使用による創傷を予測及び軽減又は改善するために、暴露制限の設定、及び使用可能な作業/休憩サイクルの作成が可能となり、肩の創傷を緩和及び軽減するための現在のアプローチに大きな変化がもたらされる。
【0048】
[0059]特定の態様では、本明細書に開示されるモデルが、腱の挙動のすべての態様を含んでいるわけではない。職業性肩創傷の罹患率は、現在行われている研究の限られた量を上回っており、航空宇宙技術者、疲労の専門家、整形外科医、産業人間工学者などの多様なグループ間の共同研究の機会が多く存在しており、労働者の健康に潜在的に計り知れない利益をもたらし得る。
【0049】
[0060]本明細書で開示されるモデルは、例えば、腱の材料特性を改善するために、妥当な腱の緊張又は応力の閾値を超える作業習慣の再設計、コラーゲンの損傷率及び修復率に基づいた作業・休憩のサイクルの作成、モデルが保守的ではない個人の特定、及び筋力トレーニングの実施に使用できる。
【0050】
[0061]開示された技術は、腱に限定されないことに留意されたい。本明細書に記載されるように、ある例は、例示として提示されるに過ぎず、肩の腱に関する限定ではない。しかしながら、例はこれに限定されない。他のタイプの軟組織、例えば椎間板(脊椎)及び靱帯は、本明細書に開示される例を使用した分析及び創傷の改善に適している。
【0051】
[0062]本開示により、軟組織損傷モデルを生成する、及び軟組織材料の反復応力に関するガイドラインを生成する、様々な方法が提供される。上述のように、説明の一部は腱に焦点を当てている場合がある。しかしながら、これは軟組織の単なる一例に過ぎないこと、また本明細書に開示される方法は、他の種類の軟組織(例えば、椎間板(脊椎)、靱帯など)にも同様に適用可能であることが、理解されるであろう。これらの方法の特定の態様を、図1~3に概略的に示す。図示したように、方法100は、1又は複数のS-N曲線データセットから、軟組織(例えば腱)の1又は複数の物理的区分について1又は複数のS-N曲線を生成することを含む(ステップ102、204)。所与のS-N曲線は通常、腱に加えられる応力の大きさと、腱が破損するまでの繰り返し回数とのプロットを含む。上記の各プロセスのモデル構成要素により、損傷蓄積について4つの区分が特定されることになる:1)損傷無し、2)微小損傷(半破断)の蓄積、3)断裂又は亀裂の成長、細胞基質の損傷、又はその他の生物学的損傷の形での、損傷蓄積、及び4)腱構造の壊滅的な破損又は分離の状態。方法100はまた、腱を記述する1又は複数の反復応力データセットを生成することを含む(ステップ104、216)。方法100はまた、S-N曲線(222)、又は当該S-N曲線から導出されたデータを反復応力データセット(216)と組み合わせて、1又は複数の条件下での腱の損傷を予測して、腱損傷モデルを生成することを含む(ステップ106、216)(例えば、所与の一組の条件下での腱損傷についての物理的若しくは具体的な表現又は情報)。方法100はまた、S-N曲線(222)、又は当該S-N曲線から導出されたデータを組み合わせることであって、当該反復応力データセット(216)を用いて、1又は複数の条件下で腱の損傷を予測し、腱損傷モデルを生成する(ステップ106、216)(例えば、所与の一組の条件下での腱損傷の物理的若しくは具体的な表現又は情報)を含む。特定の態様において、方法100は、典型的には、腱損傷モデルから腱の腱材料反復応力に関する少なくとも1つのガイドラインを生成することも含む(ステップ108、224)。本明細書で使用するように「ガイドライン」という用語は、力(例えば、振動、工具の重量、手にかかる力のベクトル、腕の重量など)、姿勢、位置、頻度、継続時間及び/又は回復の観点で、証拠に基づく許容可能な最大限界をいい、その目的は、製造又はその他のプロセスなど人間の活動中の腱損傷による創傷のリスクから、人間の組織材料を保護することである。いくつかの態様では、ガイドラインが、腱の姿勢、腱の所与の動きの繰り返し回数、腱に加えられる力、腱の所与の姿勢を維持する継続時間、腱の所与の動きの繰り返しの継続時間、腱の所与の動き、腱に加えられる所与の力の継続時間及びこれらの組み合わせを含む。また示されるように、本方法は、特定の態様において、所与の筋肉(302)の作用及び所与の腱(304)の損傷を評価することも含む。
【0052】
[0063]本開示の方法は、様々な態様を含む。いくつかの態様において、例えば、本方法は、物理的区分の複数のS-N曲線を組み合わせて、組み合わされたS-N曲線を生成することを含む(222)。特定の態様において、本方法は、S-N曲線(204)又は当該S-N曲線から導出されたデータを反復応力データセット(216)と組み合わせるときに、累積損傷モデルを適用して、1又は複数の条件下での腱の損傷を予測することを含む。いくつかの態様において、本方法は、医療診断技術を含む1又は複数のデータソースを使用して、S-N曲線データセットを取得することを含み、当該医療診断技術は例えば、超音波データ、コンピュータ軸断層撮影(CAT)スキャンデータ、磁気共鳴画像法(MRI)スキャンデータ、破壊試験データ、死体材料、動物材料、ポリマー代替材料、分子動力学モデリング(MDM)データ、出版データ、及びこれらの組み合わせである(202、204、206)。
【0053】
[0064]実質的にあらゆる腱をが、本明細書に開示される方法の一部として評価され得る。任意に使用されるいくつかの例示的な腱には、小円筋腱、棘下筋腱、棘上筋腱、肩甲下筋腱、三角筋腱、上腕二頭筋腱、上腕三頭筋腱、腕橈骨筋腱、回外筋腱、橈側手根屈筋腱、尺側手根屈筋腱、橈側手根伸筋腱、短橈側手根伸筋腱、腸腰筋腱、内閉鎖筋腱、長内転筋腱、短内転筋腱、大内転筋腱、大殿筋腱、中殿筋腱、大腿四頭筋腱、膝蓋腱、ハムストリングス腱、縫工筋腱、腓腹筋腱、アキレス腱、ヒラメ筋腱、前脛骨筋腱、長腓骨筋腱、長指屈筋腱、骨間筋腱、深指屈筋腱、小指外転筋腱、母指対立筋腱、長母指屈筋腱、伸筋腱、母指外転筋腱、長拇趾屈筋腱、短指屈筋腱、虫様筋腱、拇趾外転筋腱、長指屈筋腱、小指外転筋腱、眼筋腱、眼瞼挙筋腱、咬筋腱、側頭筋腱、僧帽筋腱、胸鎖乳突筋腱、頭半棘筋腱、頭板状筋腱、顎舌骨筋腱、甲状舌骨筋腱、胸骨舌骨筋腱、腹直筋腱、外腹斜筋腱、腹横筋腱、広背筋腱、又は脊柱起立筋腱、及びこれらの組み合わせが含まれる。いくつかの態様では、腱が哺乳動物の腱を含む。これらの態様の特定のものでは、哺乳動物の腱が人間の腱を含む。
【0054】
[0065]特定の態様では、本方法が、S-N曲線又は当該S-N曲線から導出されたデータ及び反復応力データセットを、治癒データと組み合わせて、1又は複数の条件下での腱の損傷を予測することを含む(212)。いくつかの態様では、本開示により、対象の少なくとも1つの腱について1又は複数の使用データセットを取得することと、使用データセットを、本方法によって生成される腱材料の反復応力のガイドラインと比較することとを含む、対象の腱損傷を予測(例えば、予期)する方法が提供され、これにより対象の腱損傷が予測される。特定の態様では、物理的区分が、無損傷区分、半破断損傷区分、亀裂開始区分、破砕区分又は破砕曲線、及びこれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、1又は複数のステップが、少なくとも部分的にコンピュータで実装される。システム及び関連するコンピュータ可読媒体については、本明細書でさらに説明する。
【0055】
[0066]いくつかの態様では、本方法が、腱損傷モデル(214)から、腱の腱材料の反復応力に関する少なくとも1つのガイドライン(224)を生成することを含み、当該ガイドラインは、腱の姿勢、腱の所与の動きの繰り返し回数、腱に加えられる力、腱の所与の姿勢の継続時間、腱の所与の動きの繰り返しの継続時間、腱に加えられる所与の力の継続時間、及びこれらの組み合わせを含む。これらの態様のいくつかでは、腱材料の反復応力に関するガイドラインが、1又は複数の使用条件セットの下での腱の1又は複数の推奨使用/休止サイクルを含む。本方法は典型的には、腱材料の反復応力に関するガイドラインの検証を含む。これらの態様のいくつかでは、本方法が、対象の1又は複数の人口統計学的変数をガイドラインに適用することによって、所与の対象のガイドラインを個別化することを含む(226)。これらの態様のいくつかでは、本方法が、ガイドラインを生成するときにタスク情報を使用することを含む(228)。これらの態様のうちいくつかでは、タスク情報が、工具重量及び/又は力ベクトルを含む。
【0056】
[0067]特定の態様では、本方法が、反復応力データセットを生成するために腱内の少なくとも1つの応力分布を推定することを含む(218)。これらの態様のうちいくつかでは、本方法が、腱の少なくとも1つの寸法を使用して腱内の応力分布を推定することを含む(220)。これらの態様のうちいくつかでは、当該寸法が、腱の少なくとも1つの断面積を含む。これらの態様のうちいくつかでは、本方法が、腱に加えられる少なくとも1つの力と腱の破損までの繰り返し回数とのプロットを含む少なくとも1つのサイクル曲線を使用して、腱内の応力分布を推定することを含む(210)。これらの態様のうちいくつかでは、力が、腱(208)の1又は複数の姿勢で決定される。これらの態様のうちいくつかでは、本方法が、有限要素モデリング(FEM)及び/又は筋電図検査(EMG)などの推定技術及び/又はモデリング技術を使用して力を決定することを含む。これらの態様のうちいくつかでは、本方法が、腱の姿勢に加えられる力を決定するときにタスク情報を使用することを含む。いくつかの態様では、タスク情報が、工具重量及び/又は力ベクトルを含む。
【0057】
[0068]いくつかの態様では、S-N曲線を組み合わせるプロセスが、複数の曲線を中心とした累積ダメージモデリング及び治癒を伴う。説明のために、1つの例は、次のような反復応力データセット(このセットは、例えば、対象が1つの作業中に生じる可能性のある曝露に相当し得る)を含み得る:
【0058】
[0069]タスクAの力:150N、繰り返し:50
【0059】
[0070]タスクBの力:100N、繰り返し:500
【0060】
[0071]タスクCの力:50N、繰り返し:5000
【0061】
[0072]繰り返し数は、特定の態様でのタスクの観察又はサンプリングから導出される。応力数値は、タスク実行中の対象の手/腕/四肢の位置に、一部の態様で対象が担う負荷を加えたデジタルモデルによって導出される。出力は、力(N)になる。応力は、力を腱の断面積(例えば、SST幾何学形状モデル)で割ったものであり、この例では50mmである。これにより、タスクAの応力=3MPa、タスクBの応力=2MPa、及びタスクCの応力=1MPaとなる。この説明では、損傷が発生しないS-N曲線と、4MPaで1000サイクルで無損傷区分が終了(及び半破断が開始)するという情報も得られる(これは曲線上の1点である)。
【0062】
[0073]これらの数値をすべて組み合わせて、検討中の腱への損傷の量を確かめる。一部の態様では、マイナー則(Miner’s Rule)がこのプロセスの一部として使用される。マイナー則では、1を超えると、比較するために選択したS-N曲線を超えたことを意味する。この場合、無損傷区分が選択されているため、1を超えるということは、無損傷区分が適用されなくなり、代わりに他の区分のいずれかが適用されることを意味する。
【0063】
[0074]これらのタスクを無損傷区分の制限と組み合わせると、
(3MPa×50+2MPA×500+1MPa×5000)/(4MPa×1000)=1.53
となる。これは、1を超える(>1)ため、無損傷区分を超えていることを意味する。また、所与のガイドラインで、いかなる損傷も望まないと指定されている場合は、そのガイドラインを超えている。よって、1を超える(>1)の場合は、次の区分(例えば、半破断)を計算する必要があることになり、その次の区分も、以下同様に計算する必要があるかもしれない。いくつかの態様では、複数のタスクが間に休憩期間を挟んで組み合わされる場合(例えば、曝露の割合の減少、曲線上のより低い点への移動など)、治癒データも適用される。
【0064】
[0075]この説明において先に示した計算では、1回の反復に対する点解(1つの数及び1つの答えのみ)が得られる。モデルの忠実度を高めるために、この反復を何度も実行することができ、例えばSST幾何学形状、腱にかかる力のデジタルモデル、及び繰り返しにおける任意の何らかの変数(variation)の分布から、サンプリングを行う。例えばこれは、モンテカルロ・シミュレーションと同様に、わずかに異なる確率入力を使用して複数回実行されるモデルであり得る。これにより、周囲にいくつかの境界又は帯域を含むリスクの出力が提供される(95%信頼区間など)。任意選択的に、人口統計学などの他の変数もモデルに追加される。
【0065】
[0076]図4は、様々な例によるプロセスを実行するときに軟組織に対する反復性応力創傷を軽減する(例えば、改善する)方法400を示すフローチャートである。方法400は、そのような軟組織の材料科学的特性を利用して、方法400を参照して現在説明されているように実施された場合に、プロセスを実行する人々が創傷を受ける可能性を低減するガイドラインを決定する。方法400は、例えば図5を参照して以下に図示及び説明するように、システム1200を使用して部分的に実装することができる。方法400はさらに、産業衛生の分野で改善をもたらすコンピュータ外の動作を含む。このような動作には、例えば、軟組織及びプロセスに関連する反復応力データセット(例えば、軟組織の面積当たりの力及び反復回数の説明)を取得することと、プロセス中に個人が受ける反復的な応力創傷について、創傷の可能性を低減するためのガイドラインを実装することとが、含まれる。方法400は、軟組織の一例として腱に焦点を当てている。しかしながら上述したように、方法400は、他のタイプの軟組織(例えば、椎間板(脊椎)、靱帯など)に対する反復応力創傷を軽減する(例えば、改善する)ために、又はその代わりに使用することもできる。
【0066】
[0077]方法400は、製造プロセスの一部を実行する労働者の反復応力創傷損傷を改善するために使用できる。しかしながら、これは単なる一例であり、以下に説明するように、方法400は職場の外でも使用することができる。各作業者は、組み立てラインなどの製造プロセスの一部を形成する1又は複数のタスクを有し得る。各作業者のタスクは、方法400によって作成された1又は複数のガイドラインによって修正され得る。あるいは、方法400は、例えばトレーニングプログラムを実行する運動選手の反復応力創傷を改善するために使用することができる。運動者は、トレーニングプログラムの一部を構成する1又は複数のエクササイズを有し得る。エクササイズは、方法400によって作成された1又は複数のガイドラインによって修正され得る。本方法400は一般に、製造プロセス又は運動プロセスに限られず、人による反復運動を含むあらゆるタイプのプロセスにおいて反復応力創傷を改善するために実施され得る。
【0067】
[0078]方法400は、様々な軟組織のいずれかに対する創傷を改善するために使用され得る。いくつかの例によれば、方法400は、腱又は腱複合体の創傷を改善するために使用され得る。このような腱及び腱複合体の例は、図1~3との関連で先に提示されている。あるいは、方法400は、結合組織又は筋骨格系軟組織の創傷を改善するために使用され得る。一般に、実施例を実施可能な軟組織の非限定的な例には、腱、腱複合体、椎間板(脊椎)、及び靱帯が含まれる。
【0068】
[0079]例えば、腰部創傷の例を使用すると、椎間板及び腱はいずれも、軟組織でできている(例えば、II型コラーゲン及びI/III型コラーゲン)。よって、モデル入力を方法400で更新することができ、かつ/又は異なる解剖学的構造を方法400にインポートして、方法400を椎間板などの他の種類の軟組織に拡張することができる。骨の特性を肩領域の定義に組み込むこともできる。その結果、身体の他の場所の破砕を研究することができる。一次負荷方向の線維を有する筋肉組織の分析は、腱と同様の方法論に従うことができる。
【0069】
[0080]402において、方法400は、軟組織(例えば、腱、靱帯、椎間(脊椎)円板など)及び当該プロセスに関連する少なくとも1つの反復応力データセットを取得することを含む。反復応力データセットは、コンピューターファイルの形式、例えばタブ区切り値又はコンマ区切り値(CSV)形式であり得る。非限定的な例として、反復応力データセットは、コンピュータにより永続的な電子記憶装置から読み取られることによって、又はデータがファイル形式に入力されてコンピュータに格納されることによって、取得され得る。
【0070】
[0081]いくつかの例によれば、各反復応力データセットは、プロセス全体の一部を形成する1つのタスクを完了する過程で対象が受け得る曝露を表すことができる。当該曝露は、繰り返しの回数と、繰り返しごとに軟組織に加わる力の形であり得る。力は例えば、ニュートン(N)で表され得る。あるいは、各反復応力データセットは、反復回数及び反復ごとの軟組織にかかる応力の形式であり得る。応力は、結果として生じる応力であってよく、当該応力には、姿勢(例えば肩の位置)、振動、工具の重量、手にかかる力のベクトル、腕の重さなどによる応力が含まれる。応力は例えば、メガパスカル(MPa)で表され得る。
【0071】
[0082]各反復応力データセットは、例えばナラティブな形式で、反復ごとの動作の説明をさらに含むことができる。複数の反復応力データセットは、複数の種類の動きを説明できる。方法400は、反復応力データセットを、コンピュータ可読形式で(例えば、ユーザ入力によって)取得することによって、並びに例えばブロック402、404、406、及び408の少なくとも一部の動作を実行するコンピュータプログラムに当該反復応力データセットを提供することによって、取得することができる。
【0072】
[0083]404において、方法400は、少なくとも2つの損傷区分を特徴付ける情報にアクセスすることを含む。当該情報は、コンピューターファイルの形式、例えばタブ区切り値又はカンマ区切り値(CSV)形式の値のペアであり得る。当該情報には、非限定的な例として、コンピュータにより永続的電子記憶装置から読み取られることによって、又は情報が受信されてコンピュータに格納されることによって、アクセスすることができる。
【0073】
[0084]様々な例によれば、方法400は、第1の損傷区分を特徴付ける第1の情報、及び第2の損傷区分を特徴付ける第2の情報に、アクセスすることができる。様々な例によれば、方法400はさらに、第3の損傷区分を特徴付ける第3の情報にアクセスすることができる。各情報は、軟組織がそれぞれの損傷区分から移行するための、所与の応力における反復回数を定量化できる。例えば、第1の情報は、軟組織が第1の損傷状態から移行するための、所与の応力ごとの繰り返し回数を定量化できる。第2の情報は、軟組織が第2の損傷区分から移行するまでの所定の応力ごとの繰り返し回数を定量化できる。例えば、第3の損傷区分が含まれる場合、第3の情報は、軟組織が第3の損傷区分から移行するための、所与の応力ごとの繰り返し回数を定量化できる。
【0074】
[0085]各情報は、軟組織がそれぞれの損傷区分から移行するまでの、所与の応力での繰り返し回数を定量化する曲線の形式であってよく、例えばストレスが独立変数として、繰り返しが従属変数として使用される。例えば、各情報は、様々な例に従って、本明細書に記載されるように、S-N曲線の形態であり得る。コンピュータに保存される場合、このような情報は順序付けされたペアのセット(S,R)の形式であってよく、ここでSは応力を表し、Rはそれぞれの区分から移行するための繰り返しの回数を表す。
【0075】
[0086]様々な例によれば、第1の損傷区分は、無損傷区分であり、第2の損傷区分は、半破断区分であり、例えば、含まれる場合には、第3の損傷区分が、断裂伝播区分であり得る(現在明示的に説明されているものに限られず、様々な例に従って2つ以上の損傷区分の任意の組み合わせが使用可能なことに留意されたい。)。無損傷区分は、治癒するのと実質的に同じ速度で軟組織に微小損傷(例えば半破断)が発生する状況を表すことができる。無損傷区分からの移行は、各軟組織の治癒速度よりも速い速度での半破断の蓄積を表し得る。半破断区分は、微小損傷(半破断損傷)が蓄積しているが、巨視的な断裂はまだ形成されていない状況を表し得る。半破断領域からの移行は、巨視的な断裂が形成されたことを示し得る。断裂伝播区分は、断裂が形成され、軟組織を通じて伝播している状況を表し得る。断裂伝播区分からの移行は、軟組織が完全に破断したことを示し得る。
【0076】
[0087]無損傷区分及び半破断区分のいずれか又は双方が組み込まれた例では、対象が損傷の発生を認識する前に、対象の軟組織への損傷を予測できることに留意されたい。例えば、これらの区分内の軟組織は損傷を受ける可能性があるが、対象に痛み又は快感を引き起こすことはない。
【0077】
[0088]406において、方法400は、少なくとも損傷区分を特徴付ける情報及び反復応力データセットに基づいて、軟組織への損傷に充分な条件を予測することを含む。損傷は次のいずれかであり得る:軟組織の治癒速度よりも速い速度で微小損傷を蓄積する軟組織(例えば、第1の区分からの移行)、巨視的な断裂を経ている軟組織(例えば、第2の区分からの移行)、又は完全に破断した軟組織(例えば、第3の区分からの移行)。
【0078】
[0089]予測/予期では、軟組織の材料科学特性を利用して、そのような条件を決定することができる。いくつかの例によれば、予測は次のように行われ得る。最初に、応力に関してまだ行っていなければ、反復応力データセット内の力データが応力の単位に変換され得る。例えば、反復応力データセットは、反復ごとに軟組織にかかる力として表され得る。このような力を軟組織の断面積で割ることにより、反復応力データセットが、反復ごと(及び/又は反復ごと)の応力の単位に変換される。本システムは、その目的のために軟組織の断面積データを保存することができる。軟組織断面積データは、様々な軟組織タイプの平均断面積、人口統計学上の組み合わせ(例えば、性別、年齢、ジェンダー)ごとの特定の断面積、又はそのようなデータの組み合わせを含み得る。第二に、反復応力データセットが、損傷区分を特徴付ける情報と比較される。例えば、応力レベルSでのR回の繰り返しを表す反復応力データセットの場合、当該応力レベルSは、軟組織の現在の損傷状況を表す情報の独立変数と考えることができ、損傷区分からの移行についての繰り返し回数に関する対応する従属変数R’が特定され得る。第三に、特定された従属変数の繰り返し数R’が、繰り返し応力データセットで規定された繰り返し数Rと比較される。前者が後者より大きければ、軟組織は現在の損傷状態にとどまると予測され、このためさらなる損傷は予測されない。しかしながら、前者が後者以下であれば、軟組織は各損傷区分から移行すると予測される。この場合、軟組織が損傷を受けることが予想される。よって、軟組織は損傷を受けると予測されるのは、応力レベルSの反復ストレスデータセットに規定されている繰り返し回数Rが、現在の損傷区分から移行するための現在の損傷区分を特徴付ける情報ごとのSに対応する繰り返し回数R’を満たす場合、又はこれを超える場合である。
【0079】
[0090]このプロセスは、複数の反復応力データセットを含めるように拡張され得る。例えば、さまざまな繰り返しデータセットから繰り返しと応力レベルとの積を合計することができる。この合計は、現在の損傷状況を特徴付ける情報からの応力レベルと繰り返し回数の積と比較され得る。当該合計が大きければ、軟組織が損傷を受けていると予測される。そうでない場合、軟組織は現在の損傷状態にとどまると予測される。図1~3との関連で先の例で説明したように、この比較のためには、マイナー則が使用され得ることに留意されたい。
【0080】
[0091]408において方法400は、少なくとも予測に基づいて、軟組織材料の反復応力損傷のリスクを低減させるための少なくとも1つのガイドラインを決定することを含む。当該ガイドラインは一般的に、1又は複数の反復応力データセットにおける動作に対応する反復の回数及び/又は応力の量を低減させる。このようなパラメータは、ブロック406を参照して先に説明した計算により損傷が予測されなくなるまで、低減することができる。このように低減されたパラメータは、ガイドラインの全部又は一部を形成し得る。
【0081】
[0092]当該ガイドラインでは一般的に、さまざまな方法のいずれかで軟組織にかかる力を減らすことにより、軟組織にかかる応力を低減させることができる。軟組織にかかる力は、軟組織に加わる合力であってよく、当該力は、姿勢(又は位置)、重量(例えば、腕の及び/又は工具などの物体の保持)、加えられた力のベクトル(例えば、手で押す)、振動(例えば工具などの振動する物体を保持することによる)などの結果であり得る。いくつかの例によれば、当該力は、上記パラメータのいずれかに制限を設けることによって低減される。
【0082】
[0093]軟組織にかかる力は、代替的に又はさらに、対象の身体又はその一部の位置及び/又は姿勢に制限を設けて低減することができ、こうして軟組織の位置及び/又は姿勢に影響を与えることができる。様々な例によれば、当該ガイドラインは、軟組織の位置及び/又は軟組織の姿勢のうち少なくとも1つに関する制限を含み得る。
【0083】
[0094]ここで、「位置」とは、対象の身体又はその一部の定量的な特徴付けを指す。例えば、位置は、測定機器を使用して、長さ、角度、x-y-z座標などの単位により規定され得る。例えば、腱の位置は座標(0cm、5cm、1cm)で規定することができ、ここで原点(0cm、0cm、0cm)は、腱が上腕骨に付着する場所であり、当該座標は、以下の平面における位置に対応する:x=矢状面、y=横面、z=冠状面。対象(又は対象の身体の一部)の位置は、様々な例に従って、運動追跡システム(motion tracking system)を対象に取り付けることにより決定され得る。
【0084】
[0095]「姿勢」とは、対象の身体又はその一部の定性的な特徴を指すことがある。姿勢は、特定されたランドマークの相対位置の観点で規定され得る。例えば、「頭上作業(overhead work)」と呼ばれる特定の姿勢は、対象の肘が対象の肩の上にある状況として定規定され得る。姿勢は一般的に、定性的な方法で身体の位置を規定することができ、これによって姿勢の観察が可能となり、別の観察又は位置と比較され得る。対象(又は対象の身体の一部)の位置は、さまざまな例に従って、人間工学者又は工業技術者による観察研究によって決定され得る。
【0085】
[0096]代替的に、又はさらに、動き、位置又は姿勢の一時的な継続時間に制限を設けて、軟組織にかかる力が軽減され得る。つまり、当該ガイドラインでは、次のいずれか、又は組み合わせについて制限を設けることができる:軟組織の所定の姿勢を維持する継続時間、軟組織の所定の位置を維持する継続時間、軟組織の所定の動きを繰り返す継続時間、及び/又は軟組織に加えられる所定の力の継続時間。
【0086】
[0097]いくつかの例によれば、ガイドラインが、強制的な休憩期間を含み得る。このような例では、微細な損傷又は巨視的な損傷に対抗する治癒プロセスの表現を利用できる。休憩期間は、蓄積された損傷を打ち消すために、そのような治癒プロセスに十分な時間を表し得る。
【0087】
[0098]当該ガイドラインは、さまざまな形式で出力することができる。いくつかの例によれば、当該ガイドラインは、事前に生成されたナラティブ・テンプレートを使用して、ナラティブな形式で出力される。例えば、計算により、繰り返しの数を1000から725に減らすべきであることが示された場合、ガイドラインはこれらの数値を、以下のように部分的に読み取るテンプレートに追加(populate)することができる:「動作Xの繰り返し回数をYからZに減らすべきである。」ここで、Xは動作の説明に置き換えられ、Yは1000に置き換えられ、Zは725に置き換えられる。フォーマットされたガイドラインは、コンピュータのモニターに表示することにより、電子メールにより、又は個人若しくはプロセスに情報を提供するその他の技術により、出力され得る。
【0088】
[0099]410において方法400は、プロセスにおいてガイドラインを実装することを含む。そうするために、方法400は、組立ラインの作業者にガイドラインを提供すること(ここでは例えば、プロセスが製造プロセスである)を含み得る。これに応じて作業者は、自分のタスクを変更することができる。プロセスが運動者のトレーニングプロセスの例では、ガイドラインがトレーナーに提供されてよく、これに応じてトレーナーは、運動者のトレーニング計画を変更する。当該ガイドラインはさらに、生産システム、製品、作業タスク、トレーニング計画などの設計にも使用され得る。
【0089】
[0100]本明細書に開示されるシステム及び方法は、材料特性を使用して、異なる負荷条件にさらされる、生きている哺乳動物の軟組織(例えば、腱、椎間板など)の挙動を特徴付けるモデルを生成することができる。軟組織は、損傷の可能性を軽減するために、過剰使用状況における軟組織への損傷を特徴付けるために、多数の異なる負荷条件に応じてモデル化され得る。
【0090】
[0101]当該モデルは、軟組織の材料疲労を決定又は予測する(例えば、単一の)有限要素モデル(FEM)であり得るか、又はこれを含み得る。哺乳類の代わりに、又は哺乳類に加えて、当該モデルは、爬虫類、両生類などの他の種にも適用され得る。一例では軟組織が、肩の棘上筋腱(SST)であり得るか、又は肩の棘上筋腱(SST)を含み得る。軟組織の代わりに、又は軟組織に加えて、当該モデルは、結合組織、筋骨格組織、椎間板などにも適用され得る。
【0091】
[0102]以下で詳しく説明するように、当該モデルはさまざまな負荷条件にさらされる入力データを受け取ることができる。一例では入力データが、1又は複数(例えば5つ)の確立された人間工学的リスク要因(力強い運動、姿勢、反復、継続時間、及び振動)であり得るか、又はこれらを含み得る。当該モデルは、これらのリスク要因への同時曝露間の相関関係を実証し得る。本明細書では、人間工学的リスク要因への同時曝露の相関関係が実証されており、これにより、リスク要因の相互作用は、明確な倍率で損傷を引き起こし得る複合的な影響をもたらすことが証明される。
【0092】
[0103]入力データには、軟組織の(線形及び/又は非線形)弾性率、軟組織の歪み、軟組織の断面積、健康な軟組織の割合、損傷/損傷している軟組織の割合、又はこれらの組み合わせもまた、又はその代わりに含まれ得る。入力データには、3D解剖学的形状(例えば肩について)、1又は複数の関節を通る組織と骨の間の負荷伝達経路、外部(例えばタスク関連)境界条件(例えば、肩の位置又は姿勢)、内部(例えば解剖学関連)境界条件、又はこれらの組み合わせもまた、又はその代わりに含まれ得る。データには、実証研究に基づく過度に一般化されたタスク・ガイダンスとは異なり、パラメータ化され組み合わせられた相互作用のシステム全体を含めることもまた、又はその代わりに含まれ得る。対照的に、従来の人間工学的アプローチは、結果として生じる創傷に焦点を当てた経験的なデータセットに依拠しており、構成要素レベルでの材料の挙動に基づき損傷の開始をモデル化するのではない。
【0093】
[0104]モデルは、1又は複数の疲労S-N曲線を出力することができる。当該モデルは、組織損傷の1又は複数(例えば4つ)の区分:損傷無し、半破断、部分損傷、完全な損傷の評価もまた、又はその代わりに、出力することができる。当該モデルは、作業手順及び工具に対するさまざまな変更(例えば、可動範囲の減少、異なる重量及び振動周波数の電動工具、人間工学に基づいた補助装置の導入などの評価)の比較もまた、又はその代わりに、出力することができ、これにより、最適化されたタスク設計ガイダンス、及び/又は特定のタスクについての推奨作業間隔につながり得る。
【0094】
[0105]一実施形態では、非線形挙動を組み込むこと、並びに軟組織の複雑な負荷及び振動/疲労サイクルを導入することによって、モデルの忠実度を高めることができる。当該モデルにより、有限要素モデリングが健全な組織と部分的に損傷した組織を評価するための実行可能なアプローチであることを検証でき、使いすぎた時の軟組織(例えば腱材料)の疲労破壊特性が説明される。
【0095】
[0106]手から体を通って軟組織(例えば腱)に至るまでの振動の影響を特徴付けることができる(例えば、振動工具を保持している間)。システムにわたる粘弾性挙動を捕捉することにより軟組織材料の挙動を特徴付け、手/腕/手足(及びその他の部分)への振動の影響を特徴付けることにより、軟組織の形状全体で加速する材料疲労と加速する創傷をはっきりさせることができる。
【0096】
[0107]図5は、本明細書に開示されるいくつかの態様による、1又は複数のセンサ(例えば、3つを図示:520A~520C)が取り付けられた対象502の身体の画像である。対象502は、カラー510、肩512、及び腕514を含む。対象502はまた、靱帯530及び腱(例えば、SST)532を含む。
【0097】
[0108]センサ520A~520Cは、対象502に取り付けられてよく、1又は複数のパラメータを測定するように構成され得る。図示したように、第1のセンサ520Aはカラー510に取り付けることができ、第2のセンサ520Bは肩512に取り付けることができ、第3のセンサ520Cは腕514に取り付けることができる。別の実施形態では、センサ520A~520C(又は別のセンサ)のうち1又は複数を、モニタリングすべき対象の靱帯530及び/又は腱532の上/外側で対象502に(例えば直接)取り付けることができる。センサ520A~520Cは、対象502の異なる位置(例えば、足、脚、腰、腹部、背中、首、頭など)にもまた、又はその代わりに、取り付けることができる。さらに、3つのセンサ520A~520Cが示されているものの、より多くの又はより少ないセンサが使用され得る。測定されるパラメータは、上記の入力データ(例えば、力強い運動、姿勢、反復、継続時間、振動など)のいずれかであってよく、又はこれらのいずれかを含み得る。
【0098】
[0109]図6は、本明細書に開示されるいくつかの態様による、軟組織をモデル化するための方法600を示すフローチャートである。方法600は、軟組織をモニタリングして、(例えば、職場などの)タスクを行う人への創傷の可能性を低減させることができる。方法600は、コンピューティングシステム1200を使用して部分的に実装することができる(図12を参照して以下に示して説明する)。方法600はさらに、産業衛生の分野で改善をもたらすコンピュータ外の動作を含む。このような動作は例えば、軟組織及びプロセスに関連する反復応力データセット(例えば、軟組織の面積あたりの力の説明や反復回数など)を取得すること、及びプロセス中に個人が反復的にストレス損傷を受ける可能性を減らすためのガイドラインを実装することを含む。
【0099】
[0110]方法600の例示的な順序を以下に提供する。しかしながら、方法600の1又は複数のステップは、異なる順序で実行することも、同時に実行することも、繰り返すことも、又は省略することもできる。
【0100】
[0111]方法600は、602のように、対象の解剖学的幾何学形状を含む又は示す画像、動画若しくはその両方を受信することを含み得る。ある実施態様では、解剖学的形状が、分析される特定の対象(例えば、特定の人)のものであり得る。別の実施形態では、解剖学的幾何学形状が、他の同様の対象のものであり得る(例えば、分析される特定の人物ではない)。画像及び/又は動画は、磁気共鳴画像(MRI)、超音波画像、コンピュータ断層撮影画像(CTスキャン)、3Dスキャン、又はこれらの組み合わせであってよく、又はこれらを含み得る。解剖学的幾何学形状は、分析される2D及び/若しくは3D解剖学的構造を記述する形状及び/若しくは空間的つながりであるか、又はこれらを含み得る。本明細書で使用されるように、「形状」は、所与の作業位置(例えば、腕を頭上に伸ばすか、横向きに休むか)に対する解剖学的構造(例えば、軟組織、骨など)及び/又は軟組織の変化(例えば、長さ、面積など)を指し得る。本明細書で使用するように、「空間的つながり」とは、体の残りの部分に対する手足及び関節の位置、並びにタスクの特定の運動力学を指す。例えば、体から離れる方向に伸ばす必要があるタスク中に、より大きなモーメントが関節にかかることがあり、又は軸外の動作によりせん断力が誘発され得る。解剖学的構造は、哺乳類の解剖学的構造(例えば、人間の解剖学的構造)であり得る。しかしながら上述のように、他の種類の解剖学的構造も本明細書では考慮される。解剖学的形状は、解剖学的構造の動作経路及び/又は解剖学的構造にかかる力を定義するためのもととなる基礎を作成するのに役立ち、これは職場でのタスクをシミュレートするために使用できる。
【0101】
[0112]方法600はまた、604のように、対象の解剖学的幾何学形状の1又は複数のパラメータを測定することを含み得る。1又は複数のパラメータは、画像、動画、又はその両方を使用して測定されてよく、又は測定されなくてもよい。1又は複数のパラメータは、対象がタスク(例えば、職場のタスク)を実行している間に測定され得る。一実施形態では、パラメータが、上述の入力データのいずれか(例えば、人間工学的リスク要因:力強い運動、姿勢、反復、継続時間、振動、又はこれらの組み合わせ)であり得るか、又はこれらのいずれかを含み得る。別の実施形態では、対象が、人間工学的リスク要因のうちの1又は複数にさらされるか、又はこれらを経験することがあり、当該パラメータは、人間工学的リスク要因に応じた軟組織の反応(例えば、緊張、応力など)であり得るか、又はこれらを含み得る。この後者の実施形態は、生きている試験対象から取得するのが難しいことがある粘弾性材料特性を取得するために、材料の詳細な特性評価(例えば、死体又は代理DMA解析)に使用することができる。
【0102】
[0113]パラメータは、対象502上のセンサ520A~520Cのうち1又は複数によって(例えば、対象502がタスクを実行している間に)測定され得る。例えば、ユーザ(例えば作業者)は、製造プロセス(例えば組み立てライン)の一部を形成する1又は複数のタスクを有し得る。当該パラメータは、動作経路、及び解剖学的構造にかかる予想される力を規定するために使用することができ、これは職場のタスクを特徴付けるために、使用され得る。動作経路及び力を解剖学的形状に適用して、材料入力と直ちに統合可能な物理モデルが作成される。
【0103】
[0114]方法600はまた、606のように、解剖学的幾何学形状(602から)及び1又は複数のパラメータ(604から)をFEM(例えば、計算フレームワーク)にロード又はインポートすることを含み得る。インポートされた解剖学的形状(602から)は、MRI画像、超音波スキャン、及び他の画像化技術を含み得る。インポートされた解剖学的形状(602から)はまた、超音波を使用した、生きている対象からの直接測定を含み得る。一例として、対象が直立して腕を前に完全に伸ばし、頭上のターゲットを押している間に、加えられた力を測定しながら、試験対象の肩を超音波によりスキャンすることができる。腱の超音波スキャン画像は、その後、CAD形状にデジタル化されてよく、FEM数値エンジンにインポートされ得る。加えられる力も変化するので、対象の肩に対する異なるターゲット位置に対して同じプロセスを繰り返すことができる。複数の測定値を組み込むことにより、FEMは、位置及び加えられた力の所与の変化に対する腱の応力と歪みを予測する。
【0104】
[0115]方法600はまた、608のように、対象の解剖学的幾何学形状の第1の材料特性のセットを受信することを含み得る。これは、より具体的には、対象の軟組織の第1の材料特性のセットを受信することを含み得る。一実施形態では、第1の材料特性のセットは、外部画像化技術、例えばせん断波エラストグラフィー、超音波、又はその両方を使用して、分析される特定の対象(例えば、特定の人)において測定され得る。別の実施形態では、第1の材料特性のセットが、上述の技術を使用して、他の同様の対象(例えば、分析される特定の人物ではない)において測定され得る。さらに別の実施形態では、第1の材料特性のセットが、実証研究又は公表された調査から受信、又は導出され得る。第1の材料特性のセットは、面内弾性率、面外弾性率、ポアソン比などであり得るか、又はこれらを含み得る。弾性率は、線形、非線形、又はその両方であり得る。
【0105】
[0116]方法600はまた、610のように、対象の解剖学的幾何学形状を特徴付ける第2の材料特性のセットを識別することを含み得る。第2の材料特性のセットは、タスク中の対象の軟組織の材料特性を特徴付けることができる。一例では、第2の材料特性のセットは、軟組織の等方性及び/又は異方性の構造的特性、軟組織の非線形挙動、軟組織の推定損傷状態、又はこれらの組み合わせを特徴付けることができる。別の例では、軟組織材料の弾性率が、より高い負荷、腱の伸長、加えられた振動、又はこれらの組み合わせの下で硬化し得る。これに応じて、軟組織の異方性挙動が発生することがあり、これは、複雑な動作経路及びさまざまな動作範囲の負荷に対して1又は複数のベクトルにおける弾性率定義を使用できる。腱線維の急性損傷と治癒も、局所的な軟組織材料の特性を変化させ得る。1又は複数の材料特性が利用できない場合、外部イメージング技術又は材料サンプル組成技術、例えば動的機械分析(DMA)を使用して、人間の対象又は代理動物から、当該材料特性が測定され得る。例えば、第2の材料特性のセットは、外部イメージング技術又は材料サンプル組成技術、例えば動的機械分析(DMA)を使用して、測定され得る。
【0106】
[0117]方法600はまた、612のように、受信した材料特性(606から)及び特徴付けられた材料特性(608から)をFEM(例えば、計算フレームワーク)にロード又はインポートすることを含み得る。FEMは、単純及び/又は複雑な材料特性に基づき得る。複雑な材料特性は、非線形性、周波数依存性、粘弾性、直交異方性、又はこれらの組み合わせを含み得るが、これらに限られない。FEMが軟部組織(肩腱など)の応力/歪み状態及びそのパフォーマンスをコンピュータで予測できるようにするため、腱材料はまず、公開文献の材料特性(606から)を使用して/これに基づいて、直交異方性材料として(612のように)数値的に表すことができる。精度を向上させるために、腱材料特性の単純な力/変位特性評価(608から)の使用が、モデルに統合され得る。別の実施形態では、腱材料特性(610から)のより複雑な粘弾性特性をモデルに統合することによって、精度が向上され得る。特徴付けは、腱に対して直接実行され得るか、又は602に記載されている方法を通じて間接的に実行され得る。直接的な特徴付けは、異なる人口統計学からの死体の腱、又は腱材料の合成/代替バージョンに、少なくとも部分的に基づき得る。間接的な特徴付けは、腱又は腱の一部(例えば表面のみ)の力/変位又は応力/歪みを間接的に測定するために、医学的に発表され承認された参考文献(602から)を利用することによって実行され得る。
【0107】
[0118]FEMを実行する又は行う前に(以下に説明するように)、解剖学的幾何学形状(602から)をまずメッシュ化することができ、幾何学的形状(602から)及び材料方向(608から612まで)が考慮され得る。FEMはまた、適用された負荷が幾何学形状に作用できるように規定された境界条件を有し得る(602から)。FEMにおいて適用される負荷は、方法600で表される対象の物理的に観察された周期運動を再現するために、周期経路に従うように規定することができる。
【0108】
[0119]方法600はまた、614のように、FEMを実行する又は行うことを含み得る。これは、FEM(例えば、統合された物理モデル及び材料モデル)の計算処理を含むことができ、これによってその後、関心のある出力及び傾向が分析され得る。FEMは、解剖学的幾何学形状(602から)、1又は複数のパラメータ(604から)、受信した材料特性(606から)、特徴付けられた材料特性(608から)、又はこれらの組み合わせを用いて/これらに基づき、実行され/行われ得る。
【0109】
[0120]方法600はまた、616のように、対象の解剖学的幾何学形状(例えば、軟組織)の1又は複数のモードを決定することを含み得る。当該モードは、FEMの実行に少なくとも部分的に基づき、決定され得る。よって当該モードは、解剖学的幾何学形状(602から)、1又は複数のパラメータ(604から)、受信した材料特性(606から)、特徴付けられた材料特性(608から)、又はこれらの組み合わせに少なくとも部分的に基づき、決定され得る。当該モードは、対象の解剖学的形状(例えば軟組織)に対する応力を指す応力モードであり得るか、又はこれを含むことができる。当該モードはまた、対象の解剖学的形状(例えば軟組織)に対する歪みを指す歪みモードであり得るか、又はこれを含み得る。当該モードは、解剖学的構造への局所的な負荷を誇張し得る固有振動数を指す振動モードであり得るか、又はこれを含み得る。例えば、振動モードは、タスクの実行中に対象が保持する電動工具又は同様の装置から加えられる振動を指すことがあり、これは、振動する骨又は腱の周囲の他の解剖学的構造に対する腱の緊張又は摩擦として、軟組織(肩腱など)に伝わり得る。当該モードは、進行性の組織損傷を指す破損モードであり得るか、又はこれを含み得る。例えば、破損モードは、軟組織(例えば腱)の疲労、摩擦による腱表面の磨耗、腱の部分的なたるみ、及び/又は腱に隣接する神経の挟み込みを指し得る。
【0110】
[0121]一実施形態では、当該モードが予測され得る(例えば、予想を提供する)。言い換えれば、このモードは、タスクが実行され続けた場合の将来の軟組織の応力、歪み、振動、破損などを予測することができる。例えば、これらのモードは、タスクが継続した場合に、軟組織の応力、歪み、振動、破損などがいつ所定のレベルに達するかを予測することができる。
【0111】
[0122]方法600はまた、618のように、対象の解剖学的幾何学形状(例えば軟組織)の1又は複数のモデルを生成することを含み得る。当該モデルは、FEMの実行に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。よって当該モデルは、解剖学的幾何学形状(602から)、1又は複数のパラメータ(604から)、受信した材料特性(606から)、特徴付けられた材料特性(608から)、又はこれらの組み合わせに基づき、決定され得る。当該モデルの例は、図7~11に示されている。
【0112】
[0123]図7は、本明細書に開示されるいくつかの態様による、治癒損傷ゾーン712のない軟組織セグメント710、2mm×5mmの治癒損傷ゾーン722を有する軟組織セグメント720、4mm×5mmの治癒損傷ゾーン732を有する軟組織セグメント730、6mm×5mmの治癒損傷ゾーン742を有する軟組織セグメント740のモデルを示す。
【0113】
[0124]軟組織セグメント710は、試料の長さに沿って∈11方向を有する一方向積層(単一積層体)表現(例えば、8つの積み重ね)であってよく、軟組織セグメント720、730、740は、損傷ゾーン722、治癒ゾーン722、732、742のみにおいて準等方性(又は準対称)積層表現であり得る。準対称積層表現は、(45,90-45,0)s積層スタックをモデル化することにより、数値的に表現され、この数値は、ゾーン722、732、742の積層体が試料平面において等方性であることを意味する。材料の単積層プライの特性値は、次の通りである:∈11=140MPa、∈22=1MPa、及び∈33=1MPa、vs=0.497*(非圧縮性)、G12=70MPa(近似値)、G13=70MPa(近似値)、G23=70MPa(近似値)。工学的な弾性定数の材料特性∈11、∈22、∈33、及びvsは、医学雑誌の出版物から取得でき、G12、G13、G23は、∈11の値の半分に近似できる。予測を実行するには、9つの単純な工学弾性定数材料特性すべてが、FEM入力として必要となる。効果的な弾性特性を計算するために、従来の積層プレート理論が使用され得る。
【0114】
[0125]図8は、本明細書に開示されるいくつかの態様による、軟組織セグメント710、720、730、740に対する歪みのモデルを示す。負荷は、長さ(例えば2.5mm)に沿った5%の歪み変位に相当する。機械的な最大主歪みは、矢印で示すように負荷方向と平行である。腱組織は、複合材料として扱うことができる。
【0115】
[0126]図9は、本明細書に開示されるいくつかの態様による、3mmのスロット状断裂912を有する軟組織セグメント910、及び2mmのV字状断裂922を有する軟組織セグメント920のモデルを示す。
【0116】
[0127]図10は、本明細書に開示されるいくつかの態様による、軟組織セグメント910、920に対する歪みのモデルを示す。負荷は、長さ(例えば2.5mm)に沿った5%の歪み変位に相当する。機械的最大主歪みは、矢印で示すように負荷方向に対して垂直である。垂直方向の材料特性に起因して機械的歪みが大きくなることがあり、これにより断裂が発生し得る。肩関節が不安定になると、回旋腱板の腱(肩関節を安定させるものではなく、動かすように設計されている)にかかる力がさらに大きくなり得る。これにより、腱が変性して弱くなることがあり、これにより腱が断裂しやすくなる。回旋腱板断裂は肩関節の不安定性の症状であり、真の診断が欠落していることがその根底にある。
【0117】
[0128]図11は、本明細書に開示されるいくつかの態様による、対象の解剖学的幾何学形状(例えば軟組織)についての1又は複数のS-N疲労曲線1110、1120を含むグラフ1100である。グラフ1100は、破損までのサイクル数(N)の対数スケールに対して周期的応力(S)の大きさをプロットしている。換言すれば、グラフ1100は、所与の反復負荷パターンについて破損するまでの予測サイクル数を示すことができる。一例では、S-N疲労曲線1110は、所与のタスクについての健康な腱を表すことができ、S-N疲労曲線1120は、所与のタスクについて損傷した腱を表すことができる。別の例では、S-N疲労曲線1110は、所与のタスク中の無振動を表すことができ、S-N疲労曲線1120は、所与のタスク中に加えられた振動を表すことができる。複数の入力をさまざまな度合いで組み込むと、より複雑な曲線が生成され、これは比較のために重ね合わせることができる。当該曲線は、異なるタスク姿勢(例えば、25%頭上延長、50%頭上延長、75%頭上延長、100%頭上延長、座位、立位など)についてもまた、又はその代わりに生成することができる。
【0118】
[0129]S-N疲労曲線の代わりに、又はS-N疲労曲線に加えて、FEMは組織損傷の1又は複数(例えば4つ)の区分:損傷無し、半破断、部分損傷、完全な損傷の評価を出力することができる。FEMはまた、又はその代わりに、作業手順や工具に対するさまざまな変更の比較を出力することができ(例えば、動作範囲の減少、重量や振動周波数の異なる電動工具、人間工学に基づいた補助装置の導入の評価など)、これにより、特定のタスクについて、最適化されたタスク設計ガイダンス及び/又は推奨作業間隔につながり得る。
【0119】
[0130]方法600は、620のように、推奨を提供することを含み得る。当該推奨は、FEM(614から)、1又は複数のモード(616から)、モデル(618から)、又はその両方の実行に少なくとも部分的に基づき得る。例えば、当該推奨は、軟組織に対する応力、軟組織に対する歪み、又はその両方に少なくとも部分的に基づき得る。当該推奨は、対象の解剖学的形状に合わせて特別に調整され得る。一実施形態では、当該推奨が、特定の対象(例えば、パラメータが604で測定された者)に合わせて特別に調整することができる。別の実施形態では、当該推奨が、タスクを実行可能な異なる(例えば、すべての)対象に合わせて具体的にも、又はその代わりに調整することができる。当該推奨により、対象が軟部組織を損傷するのを防ぐために、実行されているタスクに制限を設けることができる。例えば、当該推奨により、タスク中に持ち上げられる重量の量、タスクが実行される回数(例えば、繰り返し)、タスクを実行する時間、又はこれらの組み合わせが制限され得る。
【0120】
[0131]結果として、当該推奨事項は、製造プロセスの一部を実行する作業者の反復性ストレス損傷の改善に役立ち得る。あるいは、方法600は、トレーニングプログラムを実行する運動者の反復性ストレス損傷を改善するために使用され得る。エクササイズは、方法600によって生成された推奨により変更され得る。一般に、方法600は、製造プロセス又は運動プロセスに限られず、人による反復運動を含むあらゆるタイプのプロセスにおいて反復性ストレス損傷を改善するために実施され得る。
【0121】
[0132]方法600は、様々な軟組織のいずれかに対する損傷を改善するために使用され得る。いくつかの例によれば、方法600は、腱又は腱複合体の損傷を改善するために使用され得る。このような腱及び腱複合体の例は、図1~3との関連で先に提示されている。あるいは、方法600は、結合組織又は筋骨格系軟組織の損傷を改善するために使用され得る。一般に、実施例を行うことができる軟組織の非限定的な例には、腱、腱複合体、椎間板(脊椎)、及び靱帯が含まれる。
【0122】
[0133]方法600は、622のように、FEMの出力を実証研究と比較することも含み得る。例えば、これには、モード(616から)及び/又はモデル(618から)を実証研究における反復応力データと比較することが含まれ得る。これは、FEMの出力精度を検証するのに役立ち得る。次に、方法600は、ステップ614に戻り、ここではFEMが、再度(反復的に)実行され又は行われ得る。一実施形態では、FEMの追加の反復が異なる(例えば、より正確な)出力を生み出すように、(622からの)比較に少なくとも部分的に基づいて、FEMが修正(例えば、改良)され得る。
【0123】
[0134]本開示は、さまざまなシステム及びコンピュータプログラム製品又は機械可読媒体も提供する。いくつかの態様では、例えば、本明細書に記載される方法が任意選択的に、システム、分散コンピューティングハードウェア及びアプリケーション(例えば、クラウドコンピューティングサービス)、電気通信ネットワーク、通信インターフェース、コンピュータプログラム製品、機械可読媒体、電子記憶媒体、ソフトウェア(例えば、機械実行可能コード又は論理命令)などを使用して、少なくとも部分的に実行又は促進される。説明のために、図12により、本願で開示される方法の少なくとも態様を実施する際の使用に適した例示的なシステムの概略図を提供する。図示したように、システム1200は、少なくとも1つのコントローラ又はコンピュータ、例えばサーバ1205(例えば検索エンジンサーバ)を含み、これは、プロセッサ1204及びメモリ、記憶装置又はメモリ1206、及び1若しくは複数の他の通信装置1214(例えば、クライアント側のコンピュータ端末、電話、タブレット、ラップトップ、その他のモバイル機器など)を含み、当該他の通信装置は、サーバ1205から遠隔に位置し、電気通信ネットワーク1212、例えばインターネット又は他のインターネットワークを介して、サーバ1205と通信している。通信デバイス1214は、通常、ネットワーク1212を介して、例えばサーバ1205コンピュータと通信する電子ディスプレイ(例えば、インターネット対応コンピュータなど)を含み、ここで当該電子ディスプレイは、本明細書に記載の方法を実施した際の結果を表示するためのユーザーインターフェース(例えば、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)、ウェブベースのユーザーインターフェースなど)を備える。特定の態様では、通信ネットワークが、例えばハードドライブ、サムドライブ、又は他のデータ記憶機構を使用した、ある場所から別の場所へのデータの物理的な転送も包含する。システム1200は、例えば、1又は複数の他の通信装置、例えば、通信装置1214(例えば、デスクトップ又はパーソナルコンピュータとして概略的に示される)による実行可能ファイルを容易にするために、コンピュータ又は機械可読媒体、例えばサーバ1205によって読み取り可能な1又は複数の様々なタイプのメモリ(例えばサーバ1205のメモリ1206)に格納されたプログラム製品1208も含む。いくつかの態様では、システム1200が、任意選択で、少なくとも1つのデータベースサーバ、例えば、直接又はサーバ1205を介して検索可能なデータ(例えば、対照試料又は比較器結果データ、インデックス化されたカスタマイズされた治療法など)が格納されているオンラインウェブサイトに関連付けられたサーバ1210も含む。システム1200は、任意選択的に、サーバ1205から遠隔に配置された1又は複数の他のサーバも含み、これらはそれぞれ、任意選択的に、他の各サーバに対してリモートに配置されるか、又はローカルに配置される1若しくは複数のデータベースサーバ1210に関連付けられる。他のサーバは、地理的に離れたユーザに有益なサービスをもたらすことができ、地理的に分散された動作を強化できすることができる。
【0124】
[0135]当業者に理解されるように、サーバ1205のメモリ1206は任意選択的に、揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリ(これには例えば特に、RAM、ROM、磁気ディスク又は光ディスクが含まれる)を含む。また、単一のサーバとして示されているものの、サーバ1205について図示された構成は例示に過ぎず、さまざまな他の方法論又はアーキテクチャに従って構成された他のタイプのサーバ又はコンピュータも使用可能なことも、当業者であれば理解できる。図12に概略的に示されるサーバ1205は、サーバ、サーバ・クラスタ、又はサーバ・ファームを表し、個々の物理サーバに限られない。サーバ・サイトは、サーバ・ホスティング・プロバイダーにより管理されるサーバ・ファーム又はサーバ・クラスタとして展開され得る。サーバの数とそのアーキテクチャ及び構成は、システム1200の使用、需要、及び容量要件に基づいて増やすことができる。これらの態様における通信装置1214(例えばコンピュータ)は、例えばラップトップ、デスクトップ、タブレット、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、サーバ、又は他のタイプのコンピュータであり得ることも、当業者により理解される。当業者に知られているように、ネットワーク1212は、通信ネットワークを介して1又は複数の他のコンピュータと通信する複数のコンピュータ/サーバのインターネット、イントラネット、電気通信ネットワーク、エクストラネット、又はワールドワイドウェブ、及び/又はローカルネットワーク若しくは他のエリアネットワークの一部を含み得る。さらに、当業者に理解されるように、例示的なプログラム製品又はプログラム製品1208は、任意選択的に、マイクロコード、プログラム、クラウド・コンピューティング・フォーマット、ルーチン、及び/又は記号言語の形式であり、これらは、ハードウェアの機能を制御し、その動作を指示する1又は複数の順序付けされた動作のセットを提供するものである。例示的な態様によれば、プログラム製品1208も、その全体が揮発性メモリに常駐する必要はなく、必要に応じて、さまざまな方法論に従って選択的にロードすることができ、これについては当業者に知られており、また理解される。
【0125】
[0137]さらに、当業者に理解されるように、「コンピュータ可読媒体」又は「機械可読媒体」という用語は、実行のためにプロセッサに命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。説明のために、「コンピュータ可読媒体」又は「機械可読媒体」という用語は、例えばコンピュータによる読み取りのために、本開示のさまざまな態様の機能又はプロセスが実装される、頒布媒体、クラウド・コンピューティング・フォーマット、中間記憶媒体、コンピュータの実行メモリ、及びプログラム製品1208を格納できる他の媒体又は装置を包含する。「コンピュータ可読媒体」又は「機械可読媒体」は、多くの形態をとることができ、これには不揮発性媒体、揮発性媒体、及び伝送媒体が含まれるが、これらに限られない。不揮発性メディアには例えば、光ディスク又は磁気ディスクが含まれる。揮発性メディアには、動的メモリ、例えば所与のシステムのメインメモリが含まれる。伝送媒体には、バスを構成するワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線及び光ファイバーが含まれる。伝送媒体は、音響波及び光波の形もとることができ、例えば特に、電波及び赤外線データ通信中に生成されるものであり得る。コンピュータ可読媒体の例示的な形式には、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、フラッシュドライブ、又はその他の磁気媒体、CD-ROM、その他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、穴のパターンを有するその他の物理媒体、RAM、PROM、及びEPROM、FLASH-EPROM、その他のメモリチップ若しくはメモリカートリッジ、搬送波、又はコンピュータにより読み取り可能なその他の媒体が含まれる。
【0126】
[0138]プログラム製品1208は任意選択的に、コンピュータ可読媒体からハードディスク又は同様の中間記憶媒体にコピーされる。プログラム製品1208又はその一部が実行されるとき、これは任意選択的に、頒布媒体、中間記憶媒体などから1又は複数のコンピュータの実行メモリにロードされ、様々な態様の機能又は方法に従って動作するようにコンピュータを構成する。このような動作はすべて、例えばコンピュータシステムの当業者にはよく知られている。
【0127】
[0139]さらに説明すると、特定の態様では、本願は、1又は複数のプロセッサ、及びプロセッサと通信する1又は複数のメモリコンポーネントを含むシステムを提供する。メモリコンポーネントは、実行されるとプロセッサに動作を実行させる1又は複数の命令を含み得る。当該動作には、対象の解剖学的形状を含む1又は複数の画像を受信することが含まれ得る。当該動作には、対象に取り付けられた1又は複数のセンサを使用して、対象の解剖学的幾何学形状の複数のパラメータを測定又は受信することも含まれ得る。当該動作には、対象の軟組織について第1の材料特性のセットを受信することも含まれ得る。当該動作には、対象がタスクを実行している間に軟組織を特徴付ける第2の材料特性のセットを識別することも含まれ得る。当該動作はまた、1又は複数の画像、パラメータ、大1の材料特性のセット、及び第2の材料特性のセットに少なくとも部分的に基づいて、軟組織に対する歪み、軟組織に対する応力、又はその両方を決定することを含み得る。
【0128】
[0140]システム1200は、通常、本明細書に記載の方法の様々な態様を実行するように構成された追加のシステムコンポーネントも含む。これらの態様のいくつかでは、これらの追加のシステムコンポーネントのうち1又は複数が、サーバ1205から遠隔に配置され、電子通信ネットワーク1212を介してサーバ1205と通信する。一方、他の態様では、これらの追加のシステムコンポーネントのうち1又は複数がローカルに配置され、サーバ1205と通信するか(すなわち、電気通信ネットワーク1212がない場合)、又は例えば通信装置1214(例えばコンピュータ)と直接、通信する。
【0129】
[0141]条項の列挙
【0130】
[0142]条項1.軟組織(530、532)をモデル化するための方法(600)は、第1の対象(502)の解剖学的幾何学形状を含む1又は複数の画像(500)を受信することであって、解剖学的幾何学形状が軟組織(530、532)を含む、受信することを含み得る。当該方法はまた、第1の対象(502)に取り付けられた1又は複数のセンサ(520A、520B、520C)を使用して、第1の対象(502)の解剖学的幾何学形状の複数のパラメータを測定することを含み得る。当該方法はまた、第1の対象(502)、第2の対象、又はその両方の軟組織について第1の材料特性のセットを受信することを含み得る。当該方法はまた、第1の対象(502)がタスクを行っている間に、軟組織を特徴付ける第2の材料特性のセットを特定することであって、第2の材料特性のセットが第1の材料特性のセットとは異なる、特定することを含み得る。当該方法はまた、1又は複数の画像(500)、複数のパラメータ、第1の材料特性のセット、及び第2の材料特性のセットに少なくとも部分的に基づき、軟組織に対する歪み、軟組織に対する応力、又はその両方を決定することを含み得る。
【0131】
[0143]条項2.画像(500)は、磁気共鳴画像、コンピュータ断層撮影画像、超音波画像、又はこれらの組み合わせを含み、第1の対象(502)は、生きている哺乳動物を含む、条項1に記載の方法(600)。
【0132】
[0144]条項3.複数のパラメータは、第1の対象(502)がタスクを行っている間に測定される、条項1又は2に記載の方法(600)。
【0133】
[0145]条項4.複数のパラメータが、力強い運動、姿勢、繰り返し、継続時間、振動、又はこれらの組み合わせを含む、条項1から3のいずれか一項に記載の方法(600)。
【0134】
[0146]条項5.複数のパラメータは、タスクを行っている間に力強い運動、姿勢、反復、継続時間、振動、又はこれらの組み合わせにさらされた第1の対象(502)に応じた軟組織の挙動を記述する、条項1から4のいずれか一項に記載の方法(600)。
【0135】
[0147]条項6.第1の材料特性のセットが、面内弾性率、面外弾性率、及びポアソン比を含む、条項1から5のいずれか一項に記載の方法(600)。
【0136】
[0148]条項7.第2の材料特性のセットが、軟組織の等方性特性、軟組織の異方性特性、軟組織の非線形挙動、及び軟組織の推定損傷状態を含む、条項1から6のいずれか一項に記載の方法(600)。
【0137】
[0149]条項8.歪み、応力、又はその両方に少なくとも部分的に基づき、軟組織を記述するモデル(710、720、730、740、910、920、1100)を生成することをさらに含む、条項1から7のいずれか一項に記載の方法(600)。
【0138】
[0150]条項9.モデル(710、720、730、740、910、920、1100)は、軟組織の3Dモデルを含み、モデル(710、720、730、740、910、920)は、タスク中に軟組織にかかる負荷の方向及び歪みの方向、応力又はその両方を特定する、条項8に記載の方法(600)。
【0139】
[0151]条項10.モデル(1100)は、軟組織が損傷する前に、タスク中に第1の対象(502)により行われるサイクル数を予測するS-N疲労曲線を含む、条項8に記載の方法(600)。
【0140】
[0152]条項11.軟組織(530、532)をモデル化するための方法(600)では、対象(502)の解剖学的幾何学形状を含む1又は複数の画像(500)を受信することであって、当該画像(500)は、磁気共鳴画像、コンピュータ断層撮影画像、超音波画像、又はこれらの組み合わせを含み、解剖学的幾何学形状は軟組織(530、532)を含み、対象(502)は、生きている哺乳動物を含む、受信することを含み得る。当該方法はまた、対象(502)の解剖学的幾何学形状の複数のパラメータを測定することであって、複数のパラメータは、対象(502)に取り付けられた1又は複数のセンサ(520A、520B、520C)を使用して測定され、複数のパラメータは、対象(502)がタスクを行っている間に測定され、複数のパラメータは、力強い運動、姿勢、繰り返し、継続時間、及び振動を含む、測定すること、を含み得る。当該方法はまた、対象(502)の軟組織(530、532)について第1の材料特性のセットを受信することであって、第1の材料特性のセットが、面内弾性率、面外弾性率、ポアソン比、又はこれらの組み合わせを含む、受信することを含み得る。当該方法はまた、タスク中に軟組織(530、532)を特徴付ける第2の材料特性のセットを特定することであって、第2の材料特性のセットは、第1の材料特性のセットとは異なり、第2の材料特性のセットは、軟組織(530、532)の等方性特性、軟組織(530、532)の異方性特性、軟組織(530、532)の非線形挙動、軟組織(530、532)の推定損傷状態、又はこれらの組み合わせを含む、特定すること、を含み得る。当該方法はまた、1又は複数の画像(500)、複数のパラメータ、第1の材料特性のセット、及び第2の材料特性のセットに少なくとも部分的に基づき、有限要素モデルを実行することを含み得る。当該方法はまた、有限要素モデルの実行に少なくとも部分的に基づき、軟組織(530、532)に対する歪み、軟組織(530、532)に対する応力、又はその両方を決定することを含み得る。当該方法はまた、決定された歪み、決定された応力、又はその両方に少なくとも部分的に基づき、軟組織(530、532)を記述するモデル(710、720、730、740、910、920、1100)を生成することを含み得る。
【0141】
[0153]条項12.第1の材料特性のセットが、せん断波エラストグラフィー、超音波、又はその両方を使用して測定される、条項11に記載の方法(600)。
【0142】
[0154]条項13.第2の材料特性のセットが、外部イメージング技術、材料サンプル組成技術、又はその両方を使用して測定される、条項11又は12に記載の方法(600)。
【0143】
[0155]条項14.モデル(710、720、730、740、910、920、1100)が、健康なときには軟組織(530、532)を記述する第1のS-N疲労曲線(1110)、及びタスクに応じて、軟組織(530、532)の状態を記述する第2のS-N疲労曲線(1120)を含む、条項11から13のいずれか一項に記載の方法(600)。
【0144】
[0156]条項15.対象(502)を軟組織(530、532)の損傷から防ぐために、対象(502)により行われるタスクに制限をもたらす推奨を提供することであって、推奨が、軟組織(530、532)に対する応力、軟組織(530、532)に対する歪み、又はその両方に少なくとも部分的に基づく、提供することをさらに含む、条項11から14のいずれか一項に記載の方法(600)。
【0145】
[0157]条項16.哺乳類の軟組織(530、532)の挙動を特徴付けるシステムは、人間である対象(502)に取り付けられるように構成された複数のセンサ(520A、520B、520C)であって、複数のセンサ(520A、520B、520C)は、人間である対象(502)が反復タスクを行っている間に、複数のパラメータを測定するように構成され、複数のパラメータが、力強い運動、姿勢、繰り返し、継続時間、振動を含む、複数のセンサ(520A、520B、520C)を備え得る。当該システムはまた、動作を行うように構成されたコンピューティングシステム(1200)を備え得る。当該動作はまた、人間である対象(502)の解剖学的幾何学形状を含む1又は複数の画像(500)を受信することであって、当該画像(500)が、磁気共鳴画像、コンピュータ断層撮影画像、及び超音波画像を含み、解剖学的幾何学形状が、軟組織(530、532)を含む、受信することを含み得る。当該動作はまた、複数のセンサ(520A、520B、520C)から複数のパラメータを受信することを含み得る。当該動作はまた、人間である対象(502)の軟組織(530、532)について第1の材料特性のセットを受信することであって、第1の材料特性のセットが、面内線形弾性率、面外線形弾性率、及びポアソン比を含む、受信することを含み得る。当該動作はまた、反復タスク中に軟組織(530、532)を特徴付ける第2の材料特性のセットを特定することであって、第2の材料特性のセットが、第1の材料特性のセットとは異なり、第2の材料特性のセットが、軟組織(530、532)の等方性特性、軟組織(530、532)の異方性特性、軟組織(530、532)の非線形挙動、及び軟組織の状態(530、532)の推定損傷を含む、特定することを含み得る。当該動作はまた、1又は複数の画像(500)、複数のパラメータ、第1の材料特性のセット、及び第2の材料特性のセットに少なくとも部分的に基づき、有限要素モデルを実行することを含み得る。当該動作はまた、有限要素モデルの実行に少なくとも部分的に基づき、軟組織(530、532)の歪みモード、応力モード、振動モード、及び破損モードを予測することを含み得る。当該動作はまた、歪みモード、応力モード、振動モード、破損モード、又はこれらの組み合わせに少なくとも部分的に基づき、軟組織(530、532)を記述するモデル(710、720、730、740、910、920、1100)を生成することを含み得る。
【0146】
[0158]条項17.第1の材料特性のセットが、せん断波エラストグラフィー、超音波、又はその両方を使用して測定される、条項16に記載のシステム。
【0147】
[0159]条項18.第2の材料特性のセットが、動的機械解析を使用して測定される、条項16又は17に記載のシステム。
【0148】
[0160]条項19.モデル(710、720、730、740、910、920、1100)が、反復タスクを行う前の軟組織(530、532)を記述する第1のS-N疲労曲線(1110)、及び反復タスクを行うことに応じて軟組織(530、532)を記述する第2のS-N疲労曲線(1120)を含む、条項16から18のいずれか一項に記載のシステム。
【0149】
[0161]条項20.人間である対象(502)を軟組織(530、532)の損傷から防ぐために、人間である対象(502)により行われる反復タスクに制限をもたらす推奨を提供することであって、推奨が、歪みモード、応力モード、振動モード、破損モードに少なくとも部分的に基づく、提供することをさらに含む、条項16から19のいずれか一項に記載のシステム。
【0150】
本明細書に記載されているすべての文書は、本文と矛盾しない限りにおいて、優先権文書及び/又は試験手順を含め、参照により本明細書に組み込まれる。前述の一般的な説明及び特定の態様から明らかなように、態様の形態を図示及び説明してきたが、本開示の思想及び範囲から逸脱することなく様々な修正を加えることができる。よって、本開示がこれにより限定されることを意図するものではない。同様に、「含む(comprising)」という用語は「有する(including)」という用語と同義であるものとする。同様に、構成、要素、又は要素群の前に「含む(comprising)」という移行句が付く場合は常に、構成、要素又は複数の要素の言及に先立って、「実質的に~からなる」、「~からなる」、「~からなる群から選択された」、又は「I」という移行句を用いて、同じ構成又は要素群を考慮すること、またその逆であることも理解される。例えば、「含む(comprising)」、「実質的に~からなる(consisting essentially of)」、「~からなる(consisting of)」という用語には、その用語の後に列挙される要素の組み合わせの結果も含まれる。
【0151】
[0163]上記開示により、明確性及び理解を目的として、図解及び例によりある程度詳細に説明してきたが、当業者が本開示を読めば、本開示の真の範囲から逸脱することなく形態及び詳細の様々な変更を行うことができ、添付した特許請求の範囲内で実施できることは、明らかであろう。例えば、すべての方法、システム、及び/若しくはその構成要素、又は他の態様は、様々な組み合わせで使用され得る。本明細書で言及されるすべての特許、特許出願、ウェブサイト、他の出版物又は文書などは、あたかも個々の項目が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じように、あらゆる目的のためにその全体が、参照により組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】