(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】無線電力装置をテストするためのテスト装置および関連する方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20240403BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566606
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2022060230
(87)【国際公開番号】W WO2022228933
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319004364
【氏名又は名称】エレクトディス アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100202740
【氏名又は名称】増山 樹
(72)【発明者】
【氏名】ラウレンス スバーンズ
(72)【発明者】
【氏名】マックス アンデション
(72)【発明者】
【氏名】アリアンナ アマヤ
(57)【要約】
少なくとも1つの無線電力コイル(24,14)を有している無線電力装置(10,20)の異物検出をテストするための異物エミュレーション装置(100)が提供される。異物エミュレーション装置(100)は、エミュレートされた物体(60)と、エミュレートされた物体(60)における誘導電流を測定するための少なくとも1つの電流センサ(72)を備えているセンサユニット(70)を備えている。測定された電流は、無線電力装置(10,20)により引き起こされた、エミュレートされた物体(60)における温度上昇を示している。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの無線電力コイル(24,14)を有している無線電力装置(10,20)の異物検出をテストするための異物エミュレーション装置(100)であって、
エミュレートされた物体(60)と、
前記エミュレートされた物体(60)における誘導電流を測定するための少なくとも1つの電流センサ(72)を備えているセンサユニット(70)を備え、
前記測定された電流は、前記無線電力装置(10,20)により引き起こされた、前記エミュレートされた物体(60)における温度上昇を示していることを特徴とする、異物エミュレーション装置(100)。
【請求項2】
前記測定される誘導電流は、渦電流であることを特徴とする、請求項1に記載の異物エミュレーション装置(100)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電流センサ(72)は、前記電流の平均2乗の平方根(RMS)値および/または前記電流の振幅を測定することを特徴とする、請求項1または2に記載の異物エミュレーション装置(100)。
【請求項4】
前記測定された誘導電流は、所定の時間における、前記エミュレートされた物体(60)の温度を予測し、および/または、前記無線電力装置(10,20)と、前記エミュレートされた物体(60)の、ワーストケース電流を引き起こす相対位置を決定するために使用されることを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の異物エミュレーション装置(100)。
【請求項5】
前記センサユニット(70)は、前記少なくとも1つのエミュレートされた物体(60)の温度を測定するように構成されている少なくとも1つの温度センサ(74)を更に備えていることを特徴とする、請求項1から4の何れか1項に記載の異物エミュレーション装置(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの電流センサ(74)は、前記エミュレートされた物体(60)の周りに巻かれた少なくとも1本のルーピングワイヤを備えていることを特徴とする、請求項1から5の何れか1項に記載の異物エミュレーション装置(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの電流センサ(74)は、ホール効果センサであることを特徴とする、請求項1から6の何れか1項に記載の異物エミュレーション装置(100)。
【請求項8】
前記異物エミュレーション装置(100)は、処理手段(80)と動作可能に通信状態にあり、
前記センサユニット(70)は、センサデータを前記処理手段(80)に送信するように構成されていることを特徴とする、請求項1から7の何れか1項に記載の異物エミュレーション装置(100)。
【請求項9】
前記センサデータは、無線通信を使用して前記処理手段(80)に送信されることを特徴とする、請求項8に記載の異物エミュレーション装置(100)。
【請求項10】
前記処理手段(80)は、前記異物エミュレーション装置(100)と通信状態にあるホスト装置において配置されていることを特徴とする、請求項8または9に記載の異物エミュレーション装置(100)。
【請求項11】
前記無線電力装置(10,20)は、無線充電器(20)の形状の無線電力送信機装置(20)であることを特徴とする、請求項1から10の何れか1項に記載の異物エミュレーション装置。
【請求項12】
前記無線電力装置(10,20)は、無線電力受信機装置(10)であることを特徴とする、請求項1から11の何れかに記載の異物エミュレーション装置。
【請求項13】
少なくとも1つの無線電力コイル(24,14)を有している無線電力装置(10,20)の異物検出をテストするためのシステムであって、
請求項1から12の何れか1項に記載の異物エミュレーション装置(100)と、
処理手段(80)を伴って配置されているホスト装置を備えていることを特徴とする、システム。
【請求項14】
少なくとも1つの無線電力コイル(24,14)を有している無線電力装置(10,20)の異物検出をテストするための方法であって、
エミュレートされた物体(60)を備えている異物エミュレーション装置(100)と、少なくとも1つの電流センサ(72)を備えているセンサユニット(70)を提供すること(810)と、
前記エミュレートされた物体(60)における誘導電流を測定すること(820)を備え、
前記測定された電流は、前記無線電力装置(10,20)により引き起こされた、前記エミュレートされた物体(60)における温度上昇を示していることを特徴とする、方法。
【請求項15】
所定の時間における、前記エミュレートされた物体(60)の温度を予測し、
および/または、前記無線電力装置(10,20)と、前記エミュレートされた物体(60)の、ワーストケース電流を引き起こす相対位置を決定することにより、前記電流のデータを評価すること(860)を更に備えていることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
コンピュータ読み取り可能格納媒体であって、ロードされて、処理手段(80)により実行されると、請求項14に記載の前記方法が実行されるようにさせる命令で符号化されていることを特徴とする、コンピュータ読み取り可能格納媒体。
【請求項17】
コンピュータプログラム製品であって、ロードされて、処理手段(80)により実行されると、請求項14に記載の前記方法が実行されるようにさせるコード命令を備えていることを特徴とする、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全体的に無線電力伝送の分野に関し、より具体的には、無線電力装置とテスト装置との間の無線電力伝送のテストに関する。更により具体的には、本発明は、少なくとも1つの無線電力伝送コイルを有している無線電力装置のテストにおける使用のためのテスト装置に関し、テスト装置は、無線電力送信機装置および/または無線電力受信機装置が、異物に対してどのように反応するかをテストするように構成されている。本発明はまた、少なくとも1つの無線電力送信機コイルを有している無線電力送信機装置からの無線電力伝送の性能をテストする方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送は、例えば、モバイル端末、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、カメラ、オーディオプレーヤ、再充電式歯ブラシ、無線ヘッドセット、および種々の他の消費者製品や電気器具などのようなモバイル装置の、例えば、無線バッテリ充電のために、ますます普及することが予期されている。
【0003】
ワイヤレスパワーコンソーシアムは、Qi(チー)として知られている無線電力伝送標準規格を開発した。他の知られている無線電力伝送アプローチには、アライアンスフォーワイヤレスパワー(Alliance for Wireless Power)とパワーマターズアライアンスが含まれる。
【0004】
ワイヤレスパワーコンソーシアムによるQiとして知られている無線電力伝送標準規格は、制限されることはないが、この文書を通して、本発明に適用可能な、現時点で好適な無線電力伝送方法と称される。しかし発明はまた、上述したものに制限されることはないが、それらを含む他の無線電力伝送標準規格またはアプローチにも一般的に適用できる。Qiに準拠する装置の動作は、平面コイル間の磁気誘導に依存している。2種類の装置、つまり、無線電力を提供する装置(基地局または無線電力送信機装置と称される)と、無線電力を消費する装置(モバイル装置と称される)の2種類の装置が関係している。電力伝送は基地局からモバイル装置に対して行われる。この目的のために基地局は、一次コイルを備えているサブシステム(電力送信機)を含み、一方、モバイル装置は、二次コイルを備えているサブシステム(電力受信機)を含んでいる。動作においては、一次コイルと二次コイルは、コアレス共振変圧器の半分ずつをそれぞれ構成している。典型的には、基地局は平坦な表面を有し、その上にユーザは1台以上のモバイル装置を置いて無線バッテリ充電を享受でき、または、基地局上に置かれたモバイル装置に対する動作電力供給を享受できる。
【0005】
動作の間は、多数の異なる要因が無線充電の品質に影響を与える。例えば、無線電力送信機装置により生成された磁場に晒された電力受信機の金属部分において磁気誘導により熱が生成される可能性がある。モバイル装置および/または基地局が過剰な熱に晒されると、幾つかの望ましくない結果が起こり得、例えば、モバイル装置における重要な構成要素を損傷したり、性能が低下したりすることがあり得る。更に、充電効率、そしてそのため、必要な充電時間は、基地局上の電力受信機の向きに依存して変化し得る。
【0006】
無線充電の品質に影響を与える他の要因は、モバイル装置と基地局との間に異物が置かれるときである。異物はこの状況においては、無線電力送信機装置または無線電力受信機装置の何れの一部でもなく、無線電力伝送に対する予期せぬ損失を引き起こし得る何らかの物体として見なされる。異物により吸収されたエネルギーは、異物における(意図せぬ)加熱という結果になる可能性がある。これは、温度が人間の安全性閾値を超えるときに、深刻な安全性の問題という結果になり得る。それに加えて、過剰な温度は異物の近傍における何れかの装置に修復できない損傷を引き起こし得る。
【0007】
ワイヤレスパワーコンソーシアムに準拠するためには、基地局(無線電力送信機)または電力送信機は、上記の望ましくない加熱効果を引き起こす可能性があるように異物が位置しているときは無線電力伝送を中止し、および/または、伝送をまったく開始しない異物検出機能を有する必要がある。異なる種類の異物検出方法が存在し、例えば、Qファクタ法および損失バランス法がある。Qファクタ法は電力伝送フェーズの前に使用され、一方、損失バランス法は電力伝送段階の間使用される。
【0008】
そのため、基地局におけるそのような異物検出機能を、正確且つ費用効果の高い方法でテストおよび評価する必要性がある。既存のテストケースの実行は、テスト機器が電力送信機製品などのようなテスト中の装置を電力伝送フェーズに入るように誘発している間に、異物が加熱し、テスト中の装置が自発的に提供する電力をできるだけ多く受信することを目的とするまでに最大10分待つことを要求する。このプロセスは、テスト中の装置の早期のシャットダウン(異物加熱に対する保護のため)に繋がる可能性があり、その場合、テストエンジニアまたは機器オペレータは、異物を冷却させた後に、わずかに異なる設定でテストを再開しなくてはならない。異物が通常の温度まで冷却するためには非常に長い時間が掛かる可能性がある。そのため、先行技術プロセスは冗長で時間がかかり、その結果、高価なプロセスということになってしまう。
【0009】
上記のことから、異物検出機能をテストする分野において改良の余地があることが理解される。
【発明の概要】
【0010】
無線電力伝送の技術分野における改良を提供することが発明の目的である。
【0011】
第1態様においては、少なくとも1つの無線電力コイルを有している無線電力装置の異物検出をテストするための異物エミュレーション装置が提供される。異物エミュレーション装置は、エミュレートされた物体、およびエミュレートされた物体における誘導電流を測定するための少なくとも1つの電流センサを備えているセンサユニットを備え、測定された電流は、無線電力装置により引き起こされた、エミュレートされた物体における温度上昇を示している。
【0012】
測定される誘導電流は渦電流であってよい。
【0013】
1つの実施形態においては、少なくとも1つの電流センサは、電流の平均2乗の平方根(RMS)値および/または電流の振幅を測定する。
【0014】
測定された誘導電流は、所定の時間におけるエミュレートされた物体の温度を予測し、および/または、無線電力装置とエミュレートされた物体との間の、ワーストケース電流を引き起こす相対位置を決定するために使用できる。ワーストケース電流とは最も大きな電流であってよい。
【0015】
1つの実施形態においては、異物エミュレーション装置は処理手段と動作可能に通信状態にあり、センサユニットは、センサデータを処理手段に送信するように構成されている。センサデータは、無線通信を使用して処理手段に送信できる。
【0016】
処理手段は、異物エミュレーション装置と通信状態にあるホスト装置において配置できる。
【0017】
1つの実施形態においては、無線電力装置は、無線充電器の形状の無線電力送信機装置である。代替の実施形態においては、無線電力装置は、無線電力受信機装置である。
【0018】
第2態様においては、少なくとも1つの無線電力コイルを有している無線電力装置の異物検出をテストするためのシステムが提供される。システムは第1態様に係わる異物エミュレーション装置、および処理手段と共に配置されているホスト装置を備えている。
【0019】
第3態様においては、少なくとも1つの無線電力コイルを有している無線電力装置の異物検出をテストするための方法が提供される。方法は、エミュレートされた物体を備えている異物エミュレーション装置、および少なくとも1つの電流センサを備えているセンサユニットを提供することと、エミュレートされた物体における誘導電流を測定することを備えている。測定された電流は、無線電力装置により引き起こされる、エミュレートされた物体における温度上昇を示している。
【0020】
方法は更に、所定の時間におけるエミュレートされた物体の温度を予測することにより電流データを評価することと、および/または、無線電力装置とエミュレートされた物体との間の、ワーストケース電流を引き起こす相対位置を決定することを備えることができる。
【0021】
第4態様においては、コンピュータ読み取り可能格納媒体が提供される。コンピュータ読み取り可能格納媒体は命令で符号化されており、命令はロードされて処理手段により実行されると、第3態様に係わる方法が実行されるようにさせる。
【0022】
第5態様においては、コンピュータプログラム製品が提供される。コンピュータプログラム製品は、ロードされて処理手段により実行されると、第3態様に係わる方法が実行されるようにさせるコード命令を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
発明の実施形態の目的、特徴、および利点は、付随する図面を参照して、下記の詳細な記述から明白になるであろう。
【
図1】モバイル装置への無線電力伝送のための無線電力送信機装置の模式ブロック図である。
【
図2a】1つの実施形態に係わる、無線電力送信機装置のテストにおける使用のための異物エミュレーション装置の模式ブロック図である。
【
図2b】1つの実施形態に係わる、および無線電力受信機装置のテストにおける使用のための異物エミュレーション装置の模式ブロック図である。
【
図3a】1つの実施形態に係わる異物エミュレーション装置の模式図である。
【
図3b】1つの実施形態に係わる異物エミュレーション装置の模式図である。
【
図4】1つの実施形態に係わる異物エミュレーション装置の模式図である。
【
図5】1つの実施形態に係わる異物エミュレーション装置の模式図である。
【
図6】1つの実施形態に係わる異物エミュレーション装置の模式図である。
【
図7】1つの実施形態に係わる異物エミュレーション装置の模式図である。
【
図8a】2つの実施形態に係わる異物エミュレーション装置の模式図である。
【
図8b】2つの実施形態に係わる異物エミュレーション装置の模式図である。
【
図9】異物エミュレーション装置を使用して無線電力装置をテストする方法の模式ブロック図である。
【
図10】1つの実施形態に係わる、無線電力送信機装置のテストにおける使用のための異物エミュレーション装置の模式ブロック図である。
【
図11】1つの実施形態に係わる、無線電力送信機装置のテストにおける使用のための異物エミュレーション装置の模式ブロック図である。
【
図12】1つの実施形態に係わる、無線電力受信機装置のテストにおける使用のための異物エミュレーション装置の模式ブロック図である。
【
図13】1つの実施形態に係わる、無線電力受信機装置のテストにおける使用のための異物エミュレーション装置の模式ブロック図である。
【
図14】1つの実施形態に係わる、プローブ装置を備えている異物エミュレーション装置の模式ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の実施形態がここで付随する図面を参照して記述される。しかし、発明は多数の異なる形状で具現化でき、ここにおいて記述されている実施形態に制限されると解釈されるべきではなく、むしろこれらの実施形態は、本開示が完全および完璧であるように、そして、発明の範囲をこの技術における技量を有する者に完全に伝えるように提供されている。付随する図面において例示されている特別な実施形態の詳細な記述において使用されている用語は、発明を制限する用語であることは意図されていない。図面において、類似の番号は類似の要素を指している。
【0025】
図1は、無線電力受信機装置10への無線電力伝送のための無線電力送信機装置20を例示している。無線電力受信機装置10はモバイル装置であってよい。モバイル装置10は、例えば、モバイル端末(例えば、スマートフォン)10a、タブレットコンピュータ10b(例えば、サーフパッド)、ラップトップコンピュータ10c、スマートウォッチ10d、カメラ、オーディオプレーヤ、再充電式歯ブラシ、無線ヘッドセット、または他の種類の消費者製品または電気器具であってよい。
【0026】
無線電力伝送は、ワイヤレスパワーコンソーシアムによるQi標準規格に準拠するものとして記述されるので、無線電力送信機装置20は、Qi用語においては基地局である。しかし既に言及したように、発明は一般的に、背景技術のセクションで言及したものに制限されないが、それらを含む、他の無線電力伝送標準規格またはアプローチにも適用可能である。
【0027】
無線電力送信機装置20は、少なくとも1つの無線電力送信機コイル24を有している無線電力送信機22を備えている。送信機装置20は複数の送信機コイルを有することができる。送信機コイルは、間隔を空けた配置、および/または、部分的に重なっている方法で配置できる。
【0028】
無線電力受信機装置10は、無線電力受信機コイル14を有している無線電力受信機12を備えている。動作においては、無線電力送信機装置20は、無線電力送信機コイル24と無線電力受信機コイル14を介する磁気誘導18により、無線電力受信機装置10に電力を無線で伝送する。
【0029】
無線電力受信機コイル14により受信された電力は、無線電力受信機装置10における負荷16を駆動する。典型的には負荷16は、リチウムイオンバッテリなどのような再充電式バッテリであってよく、そのため、無線電力送信機装置20は、無線電力受信機装置10に対する無線電力充電器のように動作する。他のシナリオにおいては、負荷16はモバイル装置における電子回路であってよく、無線電力送信機装置20は、無線電力受信機装置10に対する無線電力供給源のように動作する。
【0030】
背景技術のセクションで記述したように、モバイル装置と基地局との間に置かれた異物は、無線充電の品質に影響する。これは、異物の意図しない加熱を引き起こすと共に、無線電力伝送に対する予期せぬ損失を引き起こし得る。異物は、無線電力伝送に予期せぬ損失を引き起こす任意の物体と見なすべきである。異物は例えば、コイン、ペーパクリップ、金属薄片、薬剤包装材、チューインガムの金属薄片と紙の包装材、タバコの箱とファストフード包装材、および類似の、小さく、および/または、薄いものなどのような小さな金属物体であり得る。物体は更に、REIDカード、タグ、またはインプラント(体内に挿入される医学用装置)などのような小さな電子機器であり得る。
【0031】
そのため、無線電力送信機装置20は好ましくは、異物検出機能を備える。異物検出機能は、異物により引き起こされた妨害がある場合は、電力出力を自動的に中止または抑制する安全機構である。異物検出が行われない場合、または異物検出が異常作動する場合は、小さな金属物体が送信機とモバイル装置との間に置かれると、その金属物体はわずか数秒で100度を超えるまで加熱されて重大な結果を引き起こし得る。更に、電力受信機装置10もまた、異物検出機能を有することで恩恵を受け得る。以下においては、無線電力装置という用語は、無線電力送信機装置20と無線電力受信機装置10の両者を含むものとして見なすべきである。
【0032】
本発明の発明者は、発明的および洞察に満ちた推論の後に、先行技術のシステムにおいて使用された、異物は、テスト中の装置の一次コイルの中心に可能な限り近いときに、およびテスト中の装置が、テスト機器に最大電力を提供しているときの両者において、最も加熱されるということを仮定するアプローチには問題があることを認識した。
【0033】
異物の加熱は、異物により吸収されるエネルギーに基づいている。異物により吸収されるエネルギーは、異物を流れる渦電流(フーコーの電流とも呼ばれる)の総計により決定される。異物における渦電流は、磁場の強さと異物の電気抵抗に依存する。磁場の強さは、無線電力製品内部の一次コイル電流により決定され、電気抵抗は使用される材質により決定される。
【0034】
そのため、本発明の発明者は、(a)テスト機器における最大電力散逸は、テスト中の装置における最大コイル電流を引き起こし、(b)この最大電力散逸は、異物における最大電力散逸を引き起こすということには何の保証もないことを認識した。
【0035】
状況(a)の例をここで検討する。無線電力伝送の間の受信機側の電圧(Vs)は、次式Vs=j・ω・M・Ipで記述でき、ここにおいてjは、値は虚数(複素数)であることを意味する演算子であり、ωは角振動数であり、Mは、一次コイルと二次コイルとの間の相互インダクタンスであり、Ipは、一次コイル電流である。この式から、テスト機器における高電圧と低電流の動作点は、低電圧および高電流動作点よりもより高い一次コイル電流という結果になり得ることが分かる。
【0036】
状況(b)の例は、無線電力送信機製品と無線電力受信機製品がどのように結合されるかに類似して、異物もまた、送信器(または一次)コイルに結合されている抵抗と直列のインダクタとしてモデル化できるという事実を考慮することにより達成される。
【0037】
そのため、本発明者は、電磁場における異物の異なる位置は、異なる電力損失および/または異なる温度上昇という結果になり得ることを認識した。異なる位置に加えて、無線電力装置における電力コイルに関しての異物の寸法も、結合因子に影響する。
【0038】
無線電力送信機装置20または無線電力受信機装置10などのような無線電力装置が、異物に対してどのように反応するかをテストするために、異物エミュレーション装置100が提供され、その実施形態は、
図2~8において例示されている。そのため、異物エミュレーション装置100は、無線電力送信機装置および/または無線電力受信機装置の異物検出方法を、上記の発明的推論を考慮した改良された方法でテストするように構成されているテスト装置である。
【0039】
図2a~bは、無線電力装置(テスト中の装置)をテストするための異物エミュレーション装置100の実施形態を示している模式ブロック図である。
図2aにおいては、異物エミュレーション装置100は無線電力送信機装置20をテストするために配置され、
図2bにおいては、異物エミュレーション装置100は無線電力受信機装置10をテストするために配置されている。
【0040】
図2aにおいては、異物エミュレーション装置100は、無線電力送信機22と、少なくとも1つの無線電力送信機コイル24を有している無線電力送信機装置20をテストするために配置されている。無線電力送信機装置20は、
図1における無線電力送信機装置20と同じであってよい。
【0041】
異物エミュレーション装置100は、異物として作用するように構成されているエミュレートされた物体60を備えている。エミュレートされた物体60は、コイン、ペーパクリップ、金属薄片、薬剤包装材などのような異物をエミュレートするために、サイズ、形、材質などのような特定の特性を備えて配置できる。エミュレートされた物体はまた、RFIDタグ、RFIDカード、またはより小さなインプラントなどのような小さな電子装置をエミュレートすることもできる。エミュレートされた物体60は、
図3~8を参照して更に検討される。
【0042】
異物エミュレーション装置100は更に、センサユニット70を備えている。センサユニット70は、少なくとも1つのセンサ72を備えている。少なくとも1つのセンサ72は電流センサ72である。電流センサは好ましくは、
図3a~bを参照して更に詳細に記述されるように、異物60において誘導される渦電流を測定するために配置される。
【0043】
幾つかの実施形態においては、センサユニット70は更に、温度センサ74を備えている。温度センサはまた、熱センサとも称することができる。
図2aにおいて示されている例としても実施形態においては、センサユニット70は、少なくとも1つの電流センサ72と、少なくとも1つの温度センサ74を備えている。温度センサ74は、エミュレートされた物体60の温度を測定するように構成されている。そのため温度センサ74は好ましくは、エミュレートされた物体60の中、上、またはその近くに配置される。1つの実施形態においては、温度センサ74は、エミュレートされた物体60に統合される。ある代替の実施形態においては、温度センサ74は、エミュレートされた物体60と近接して配置され、例えば、物体60の下方、上方、またはその周囲に配置される。温度センサ74の表示温度はインタフェース50に転送でき、インタフェース50は温度情報を処理手段80に通信で送る。
【0044】
温度センサ74は任意の種類の温度センサであってよく、例えば、熱電対、抵抗温度検出器、サーミスタ、赤外線センサ、半導体および/または温度計であってよい。1つの実施形態においては、温度センサは、マルチセンサ高精度デジタル温度測定システムである。温度センサ74が、高精度および高解像度で摂氏または華氏で結果をデジタルで出力するように構成されていると好適である。例えば、温度センサ74が0.1℃の精度および0.001℃の解像度で温度結果を出力できると好適である。
【0045】
好ましくは、異物エミュレーション装置100は更に、異物エミュレーション装置100により取得されたデータを送信するためのインタフェース50を備えている。インタフェース50は、単純な配線、USBなどのようなシリアルインタフェース、ブルートゥース(登録商標)またはWiFiなどのような無線インタフェースを含む任意の適切なタイプであってよい。好適な実施形態においては、インタフェースはブルートゥースであり、更に好ましくは、ブルートゥース低エネルギー(BTE)である。インタフェース50は、異物エミュレーション装置100から、異物エミュレーション装置100と動作可能に通信状態にある処理手段80にデータを送信するように構成されている。
【0046】
処理手段80は、マイクロコントローラ、中央演算装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、または、適切なソフトウェアおよび/またはファームウェアを伴うフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および/または、特定用途向け集積回路(ASIC)などのような専用ハードウェアなどのようなプログラマブル装置を備えることができる。処理手段80は、ディスクまたはメモリなどのようなコンピュータ読み取り可能格納媒体に接続でき、またはそれを備えている。メモリは、ROM、RAM、SRAM、DRAM、FLASH(登録商標)、DDR、SDRAM、またはある他のメモリ技術などのようなコンピュータ読み取り可能メモリに対する任意の普通に知られている技術を使用して実現できる。処理手段80は、異物エミュレーション装置100の一部であってよく、分離したユニットであってよく、ホスト装置(
図10において示されているような)の一部であってよく、または、より大きなテスト装置(
図11において示されているような)の一部であってよい。
【0047】
前述したように、
図2bは、無線電力受信機装置10をテストするために配置されている異物エミュレーション装置100を例示している。ここで、異物エミュレーション装置100は、無線電力受信機12と、少なくとも1つの無線電力受信機コイル14を有している無線電力受信機装置10をテストするために配置されている。無線電力受信機装置10は、
図1における無線電力受信機装置10と同じであってよい。
【0048】
図3a~bは、テストされる無線電力装置10、20なしで示されている異物エミュレーション装置100の1つの実施形態の模式図である。
図3aは、等角図における異物エミュレーション装置100を例示し、
図3bは、上面図における異物エミュレーション装置100を例示している。
【0049】
図3a~bは、テスト中の装置により生成された磁場Bと、エミュレートされた異物60において誘導された渦電流EDを示している。テスト中の装置10、20およびエミュレートされた異物60が互いに対して動くと、異物60における所与の点を通る磁場Bは変動する。磁場Bにおける変動は、エミュレートされた異物60における円形電場を引き起こす。この電場は、物体60における電流ED、つまり渦電流EDの反時計回り方向の流れを誘導する。そのため、渦電流EDは、ファラデーの誘導の法則によれば、導体における変化する磁場Bにより導体内に誘導された電流のループである(この状況においては、異物は導体として作用する)。渦電流EDは、磁場Bに直交する閉ループおよび面において流れる。電流の大きさは、磁場Bの強度、ループの面積、および磁束の変化率に比例する。
【0050】
上述したように、異物エミュレーション装置100は、少なくとも1つの電流センサ72を備えている。電流センサ72は、エミュレートされた異物60における渦電流を少なくとも測定するように構成されている。電流センサ72は好ましくは、電流の平均2乗の平方根(RMS)値および/または電流の振幅を測定するように構成されている。この分野における技量を有する者には知られているように、交流電流に対するRMS値は、抵抗負荷において同じ平均電力散逸を引き起こす直流の値に等しい。
【0051】
1つの実施形態においては、
図3a~bおよび
図6~7において示されているように、電流センサ72は、エミュレートされた異物60の周りで巻かれている少なくとも1つのセンサループを備えている。センサループは少なくとも1つのループにおいて、エミュレートされた異物60の周りで巻かれているルーピングワイヤまたはコイルであってよい。
【0052】
1つの実施形態においては、
図4において示されているように、少なくとも1つの電流センサ74はホール効果センサである。ホール効果センサは異物60の近くに配置でき、または、異物が電流伝導ワイヤを構成するときは、異物の一部として配置できる。
【0053】
本発明は、有用であるために、物体においてすべての渦電流を測定することは要求しない。そのため、電流センサ72は、熱を生成するすべての小さなマイクロ電流を検出できる必要はない。システムにおける渦電流は、異物における温度上昇の主要な要因であるので、その大部分を測定できれば十分である。
【0054】
図3~8においては、異物エミュレーション装置100の異なる実施形態が示されている。
図3~4においては、エミュレートされた物体60は中空円または楕円の形状であり、
図5においては、エミュレートされた物体60は、切り取り部分を有する中空円または楕円の形状であり、
図6においては、エミュレートされた物体60は、円形で、その中心に小さな円を有しているディスクの形状であり、
図7においては、エミュレートされた物体60は、正方形または長方形などのような四辺形である。しかし、エミュレートされた物体60は、実際の異物をシミュレートするために適切な任意の形状、厚さ、または形を取ることができる。
図8a~bは、形および/またはサイズを変更するために操作できるエミュレートされた物体を例示している。このようにして、異物は自身を、異なる結合因子または誘導電流に合わせることができる。
【0055】
図5において例示されている実施形態においては、エミュレートされた物体60は、円内に開口を生じさせる切り取り部分を有している円の形状である。そのため、エミュレートされた物体60は、互いから距離をおいて配置されている2つの端部61、62を有する円形と見なすことができる。2つの端部61、62を電流センサ72に結合することにより閉ループが作成される。従って、渦電流は電流センサ72を通過しなければならなくなる。この実現形態は、依然として実際の渦電流を感知しながら、電流センサ72を電磁場から離れて移動させることを可能にする。
【0056】
図6において例示されている実施形態においては、エミュレートされた物体60は、物体の真ん中に、切り取り部分または穴を有しているディスクの形状である。中心における小さな穴は、電流センサループをエミュレートされた物体60の周りに巻くために使用できる。小さな穴または開口は、エミュレートされた物体における渦電流分布と干渉せず、また、エミュレートされた物体60の熱特性に重大な影響を与えることもない。
【0057】
図7において例示されている実施形態においては、エミュレートされた物体60は四角形である。この例においては、形は正方形であるが、長方形、菱形、平行四辺形などの形状であってもよいということは理解されるべきである。異物60は、渦電流が流れる領域よりも相当に大きいこともあり得るということに留意すべきである。渦電流は常に低抵抗の経路を選択し、それにより、磁場が生成される領域の周囲に集中する傾向がある。そのため、測定の感度を最大にするために、無線電力コイルに関して、異物60のサイズと形を調整することが可能である。追加的に、または代替的に、無線電力コイルを、エミュレートされる異物60のサイズと合わせることができる。
【0058】
図8a~bは、エミュレートされた物体60のサイズおよび/または形を容易に変えることができる、エミュレートされた物体60の実施形態を例示している。エミュレートされた物体60の形/サイズは、外力Fを使用して適合できる。外力は、例えば、エミュレートされた物体60を手で一緒に押すこと、または、手でエミュレートされた物体60の部分を引っ張ることであってよい。
図8aにおいては、エミュレートされた物体のサイズは、物体の2つの端部61、62を互いに異なる方向に引っ張ることによる力Fを加えることにより変形される。このようにして、サイズは減少する。
図8bにおいては、エミュレートされた物体の形は、エミュレートされた物体60の一方の側または両方の側に力Fを加えることにより変形される。
【0059】
誘導電流を測定している間に、エミュレートされた物体60のサイズ/形を変えられることができると好適である。エミュレートされた物体60のサイズ/形を変えると、新しい渦電流を測定することが可能となる。そのため、エミュレートされた物体60の異なる形を利用することにより、エミュレートされた物体60において誘導された、より多くの、およびおそらくすべての渦電流を測定することが可能である。渦電流の総量は、エミュレートされた物体60の異なるサイズにおいて誘導された渦電流の合計と見なすことができる。
【0060】
図9は、無線電力装置10、20が、エミュレートされた異物60に対してどのように反応するかをテストするための例としての方法を示している。第1ステップ810において、テストされる無線電力装置10、20が提供される。無線電力装置10は、無線電力送信機装置20または無線電力受信機装置10であってよい。
【0061】
ここにおいて記述されてきたように、異物エミュレーション装置100もまた提供される(820)。無線電力装置10、20は、異物エミュレーション装置100と関連する表面上に置かれる。無線電力装置10、20は、異物エミュレーション装置100のエミュレートされた異物60の上方または下方の何れかに置かれる(830)。
【0062】
方法は、電力転送を監視すること(835)、およびエミュレートされた物体60における誘導電流を測定すること(840)を更に備えている。1つの実施形態においては、測定された電流は、テストされている無線電力装置10、20により引き起こされた、エミュレートされた物体60における温度上昇を示している。この方法は、電流と、異物の温度上昇(つまり、測定および/または較正できる何か)との間の関係が知られているという事実を利用する。
【0063】
電流データは処理手段80に送信される。処理手段80はセンサユニット70の内部に配置でき、またはセンサユニット70の外部に配置できる。処理手段80は更に、異物エミュレーション装置100の外部に配置できる。処理手段80がセンサユニット70の外部にある場合は、電流データの送信は、例えば、インタフェース50を使用して実行できる。
【0064】
処理手段80は電流データを評価する(860)ように構成されている。評価は、電流の平均2乗の平方根値および/または電流の振幅に基づくことができる。
【0065】
測定された誘導電流は、所定の時間におけるエミュレートされた物体60の温度を予測するために使用できる。電流データは、異物の最終温度(つまり、異物が安定したときの、例えば10分後の温度)を推定するために使用される。この測定は、先行技術のソリューションでは実行されていたような、異物における温度が安定し、実際の温度を測定するために10分間待つ必要をなくす。
【0066】
追加的に、または代替的に、誘導電流は、無線電力装置10、20と異物60との、ワーストケース電流を引き起こす相対的位置を決定するために使用できる。ワーストケース電流とは最も大きな電流であってよい。ワーストケース電流は、異物が配置され得るワーストケース位置を表す。そのため、異物における最高温度を引き起こす可能性のある位置を、所定の時間その位置が維持された場合に決定することができる。
【0067】
追加的に、または代替的に、誘導電流は、無線電力装置が損失を無視するために十分に誘導電流が小さい位置を決定するために使用できる。これは、異物が検出されないままなので、検出すべき重要な位置である。そのため、温度が安全な限界を超えないことを検証することはよい方法である。この位置は、異物検出感度を十分に良好な状態にすることができるので、製品開発の観点からは「ベストケースシナリオ」と見なすことができる。
【0068】
ステップ835から860のプロセスは、無線電力装置10、20をエミュレートされた異物60に対して移動させることにより、および/または、エミュレートされた異物60を無線電力装置10、20に対して移動させることにより繰り返される。無線電力装置10、20が異物60に対して移動されると、電流データはプロセッサ80により再び評価される。無線電力装置10、20を異物60に関して移動させることにより、異物60のワーストケース位置を決定できる。前述したように、電流データを測定することは、物体が検出されない位置を探す反復プロセスを経ることなくワーストケース位置を見つけることができ、先行技術の方法において実行されていたように、それがどのような温度上昇という結果になるかを知ることができるという恩典を有している。
【0069】
1つの実施形態においては、異物エミュレーション装置100は、エミュレートされた物体60の温度を随意的に測定または監視する(850)。そして温度データは処理手段80に送信され、そこにおいて評価される(860)。温度上昇は、エミュレートされた物体60に吸収された何れかの電磁エネルギーを示している。温度測定値は、今から記述されるように、幾つかの目的のために使用できる。温度測定値は、ワーストケース位置および/またはワーストケース電流が見つかると、温度を検証するために使用できる。そのため、最終温度を決定および/または検証するために使用できる。
【0070】
更に、温度測定は、温度の開始位置を提供するために使用できる。誘導電流の測定は、温度上昇または温度降下に関する情報を提供するが、絶対値における温度を開示しない。
【0071】
追加的に、または代替的に、温度測定値は、例えば電気抵抗のような任意のパラメータの温度依存性を説明するために使用できる。
【0072】
そのため、温度測定は、開始温度を決定するプロセスにおいて最初に実行でき、および/または、最終温度(つまり、最高温度)を評価するプロセスの最後に実行でき、および/または、プロセスを通して実行できる。
【0073】
1つの実施形態においては、処理手段80は、電流データと温度データの両者を評価するように構成されている。電流データまたは電流測定値、および温度データが処理手段80のメモリに格納されると好適である。
【0074】
1つの実施形態においては、電流データおよび/または温度データが所定の閾値を超えている場合、処理手段80は、閾値モードを起動するように構成されている。閾値モードは、アラーム信号を生成および/または送信することを備えることができる。このアラーム信号は、インタフェース50を使用して無線電力装置10、20に送信でき、無線電力装置10、20に無線充電を停止し、および/または、光、音等の形状のアラームを送信するように指示する。
【0075】
エミュレートされた物体60の電流測定値および/または温度についての格納されている情報は、ディスプレイによりユーザに示すことができる。ディスプレイは、報告手段43、53(
図10~11において示されているような)の一部、処理手段80の一部、または、外部装置の一部であってよい。
【0076】
ディスプレイは、例えば、テキストボックス、または表、または図の形状で情報を示すことができる。情報は例えば、エミュレートされた物体60の測定された、または予測された温度に関する電流測定値の情報、無線電力装置10、20の動作パラメータの情報、および/または、使用されているエミュレートされた物体60の情報を備えることができる。ディスプレイは、ユーザが示されているグラフィカルインタフェースを変えることを可能にする相互作用ディスプレイであってよい。
【0077】
異物エミュレーション装置100は単独で使用でき、または、テスト装置および/または無線プローブ装置と組み合わせて使用できる。しかし、この技術における技量を有する者には理解されるべきであるように、エミュレーション装置100は電磁インタフェース18に晒さなければならない。
図10と11は、異物エミュレーション装置100と共に無線電力送信機装置20をテストするためのテスト受信機装置30、50を備えているシステムの2つの実施形態を示している模式ブロック図である。
図12と13は、異物エミュレーション装置100と共に無線電力受信機装置10をテストするためのテスト送信機装置30’、50’を備えているシステムの2つの実施形態を示している模式ブロック図である。
図14は、異物エミュレーション装置100を伴う無線プローブ装置110の模式ブロック図である。
【0078】
まず
図10と11を参照すると、両者の実施形態は、少なくとも1つの無線電力受信機コイル34を伴っている無線電力受信機32を有しているテスト装置30、50を備えている。更に、テスト装置30、50は、処理手段42、52(例えば、コントローラ)およびそれに関連するメモリ44、54と、テスト装置50自身に配置されている処理手段52を有すること(
図11におけるように)、または、処理手段42を有しているホスト装置40と通信状態にあること(
図10におけるように)の何れかにより動作可能に通信状態にある。
【0079】
テストセッション中の動作においては、無線電力送信機装置20は、テストセッションの動作時間の間の、無線電力送信機コイル24と無線電力受信機コイル34を介する磁気誘導18によりテスト装置30、50への電力の無線伝送を開始する。
【0080】
テスト装置30、50における無線電力受信機コイル34により受信された過剰電力に対処するために適切な負荷36を設けることができる。例えば、適切な大きさの抵抗器を使用できる。
【0081】
テスト装置30、50の異なる実施形態をここで、より詳細に記述する。
【0082】
図10は、ホスト装置40の制御下にある無線電力送信機装置20(テスト中の装置)をテストするためのテスト装置30を示している模式ブロック図である。ホスト装置40は、テスト装置30により取得されたデータを受信するためのインタフェース41を有している。インタフェース33と41は、単純配線、USBなどのようなシリアルインタフェース、ブルートゥースまたはWiFiなどのような無線インタフェースを含む任意の適切なタイプであってよい。テスト装置30は、例えば、ホスト装置40へのインタフェース33の一部であってよいケーブルを有することができる。
【0083】
ホスト装置40はまた、テスト装置30から受信したデータを処理するための処理手段42も有している。処理手段42は、
図2~8を参照して記述したものと同じであってよい。処理手段42は、ディスクまたはメモリ44などのようなコンピュータ読み取り可能格納媒体に接続され、またはそれを備えている。メモリ44は、テストセッションに関するデータを格納するように構成できる。
【0084】
更にホスト装置40は、処理手段42により取得されたデータ処理結果を通信で送るための、または提示するための報告手段43を有している。これは、ホスト装置40のローカルユーザインタフェース(例えば、ディスプレイ)上の図による情報の提示、可視および/または可聴アラームの生成、または、45において見られるように、外部装置に情報を通信で送ることを含むことができる。そのような外部装置は、例えば、コンピュータまたはモバイルフォンであってよい。
【0085】
図11は、他の実施形態に係わるテスト装置50を示している模式ブロック図である。テスト装置50は、テスト装置50から受信したデータを処理するための処理手段52を備えている。処理手段52は、
図2~8を参照して記述したものと同じであってよい。処理手段52は、ディスクまたはメモリ54などのようなコンピュータ読み取り可能格納媒体に接続され、またはそれを備えている。メモリ54は、テストセッションに関するデータを格納するように構成できる。更にテスト装置50は、処理手段52により取得されたデータ処理結果を通信で送るための、または提示するための報告手段53を有することができる。これは、ホスト装置50のローカルユーザインタフェース(例えば、ディスプレイ)上の図による情報の提示、可視および/または可聴アラームの生成、または、55において見られるように、外部装置に情報を通信で送ることを含むことができる。そのような外部装置は、例えば、コンピュータまたはモバイルフォンであってよい。報告手段53に追加して、またはその代替として、テスト装置50は更に、無線電力送信機装置20からデータを受信するための通信インタフェース51を有することができる。通信インタフェース51は、単純配線、USBなどのようなシリアルインタフェース、ブルートゥースまたはWiFiなどのような無線インタフェースなどを含む任意の適切なタイプであってよい。
【0086】
テスト装置30、50は任意の適切な形を有することができる。1つの実施形態においては、テスト装置30、50は、テスト装置30、50がモバイル装置をエミュレートする状況において無線電力送信機装置20のテストを可能にするように配置されている。そのような状況においては、テスト装置30、50は形において、例えば、基本的には、丸みのある縁と隅のある薄い箱の形を有しているスマートフォンに類似してよい。
【0087】
1つの実施形態においては、テスト装置は、テストモードを有している消費者装置などのようなエンドユーザ装置であってよい。そのため、テスト装置は、例えば、モバイル端末(例えば、スマートフォン)、タブレットコンピュータ(例えば、サーフパッド)、ラップトップコンピュータ、または、テストモードを有して構成されている他の種類のコンピュータ製品または電気器具などのようなモバイル装置であってよい。
【0088】
テスト装置30、50は、無線電力送信機装置20の表面に置くために適合されている底面を有する筐体を備えている。更に筐体は、底面とは反対側に上面を備えている。筐体の少なくとも幾つかの部分は、プラスチック、または、無線電力送信機装置20の無線電力送信機コイル24と、テスト装置30、50の無線電力受信機コイル34との間の誘導結合(電磁結合)を容認するために適切な他の材料で製造されている。
【0089】
図12と13は、異物エミュレーション装置100と共に無線電力受信機装置10をテストするためのテスト装置30’、50’を備えているシステムの2つの実施形態を示している模式ブロック図であり、両者の実施形態は、少なくとも1つの無線電力送信機コイル35を伴っている無線電力送信機31を有しているテスト装置30’、50’を備えている。
図10と11の実施形態と類似して、テスト装置30’、50’は、処理手段42、52(例えば、コントローラ)およびそれに関連するメモリ44、54と、テスト装置50自身に配置されている処理手段52を有すること(
図13におけるように)、または、処理手段42を有しているホスト装置40と通信状態にあること(
図12におけるように)の何れかによりを動作可能に通信状態にある。
【0090】
テストセッション中の動作においては、テスト装置30’、50’は、テストセッションの動作時間の間の、無線電力送信機コイル35と無線電力受信機コイル14を介する磁気誘導18により無線電力受信機装置10への電力の無線伝送を開始する。
【0091】
テスト装置30’、50’は任意の適切な形を有することができる。1つの実施形態においては、テスト装置30’、50’は、テスト装置30’、50’が無線充電器をエミュレートする状況において無線電力受信機装置10のテストを可能にするように配置されている。そのような状況においては、テスト装置30’、50’は、無線充電器に対応する形に類似してよい。
【0092】
1つの実施形態においては、テスト装置は、テストモードを有している消費者装置などのようなエンドユーザ装置であってよい。そのため、テスト装置は、無線充電器、または、無線送信機コイルを有し、テストモードを有して構成されている他の種類の消費者製品または電気器具であってよい。
【0093】
図2~13を参照して記述された、新規且つ発明的な異物エミュレーション装置100は、プローブ装置110を使用して使用でき、検証でき、保証でき、微調整でき、および/または較正できる。
図14は、異物エミュレーション装置100と共に無線電力装置10、20をテストするための無線プローブ装置110を備えているシステムを例示している。異物エミュレーション装置100は、2つの実際の消費者製品を調査またはテストするために、プローブ装置110と共に使用できるということには特に留意されたい。そのため、1つのシナリオにおいては、プローブ装置110は、異物エミュレーション装置100、1つの無線電力送信機装置20、および1つの無線電力受信機装置10と共に使用される。
【0094】
プローブ装置110は、無線電力送信機装置20および/または無線電力受信機装置10の形状における無線電力機器のテストのために配置される。プローブ装置は、少なくとも1つのピックアップコイルを備えている。ピックアップコイルは、無線電力送信機装置20の筐体の表面と、無線電力受信機装置10の筐体の表面との間に置かれるように適合されている。これは、ピックアップコイルが、無線電力伝送プロトコルに従って、無線電力送信機装置20と無線電力受信機装置10の間で交換される電磁信号を捕捉することにより電気信号を生成することを可能にする。
【0095】
プローブ装置110は、ピックアップコイルにより生成された電気信号を提供するための解析装置を備えており、または、解析装置に動作可能に接続されている。解析装置は、処理手段80の一部であってよく、または処理手段80であってよい。そのため、プローブ装置110はまた、ピックアップコイルにより生成された電気信号を処理手段80に提供するためのインタフェースも備えている。
【0096】
プローブ装置110は更に、温度センサなどのような他のセンサを備えることができ、これらのセンサからのセンサデータはまた、インタフェースを通して処理ユニットにより受信され得る。
【0097】
プローブ装置110は、好ましくはシステムにおいて使用され、システムは好ましくは、無線電力送信機装置20と無線電力受信機装置10との間で交換される電磁信号の操作を引き起こすための手段を備えている。電磁信号の操作を引き起こすための手段は、例えば、制御可能な負荷を、プローブ装置110のピックアップコイルに課すために結合されている抵抗要素を備えることができる。そのような抵抗要素は処理手段80に備えることができ、または外部要素であってよく、または、プローブ装置110自身に備えることができる。代替的に、電磁信号の操作を引き起こすための手段は、無線電力送信機装置20と無線電力受信機装置10との間で交換される電磁信号の振幅変調を引き起こすためのAMモジュレータを備えることができ、AMモジュレータは処理手段により制御可能である。制御可能な負荷(例えば、抵抗要素により課せられる)を設けることにより、システムは、例えば、抵抗要素により、無線電力送信機装置20と無線電力受信機装置10との間で予期される無線電力よりも少ない無線電力の伝送を引き起こすように、無線電力送信機装置20により送信された無線電力の制御可能な捕捉のために構成できる。
【0098】
上記のように、解析装置110は、テスト中の装置が意図された通りに動作しているかどうかを検出するときに非常に有用であり、その点に関しての出力を提供する。出力は、内部または外部の格納手段、装置のユーザ、またはホスト装置に提供することができる。簡単に言えば、プローブ装置110は、解析器が、無線電力伝送は無線電力フェーズにおいて動作しているかどうかを決定することができるように解析装置に信号を提供する。その場合は、解析装置110は、電力送信機装置20または電力受信機装置10の1つが第1データパケットを送信するかどうかを検出するように構成される。解析装置110は、第1パケットを送信する装置10、20によりデータ通信構成変更が実行されたことを検出するように構成される。解析装置110は随意的に、誘導無線電力伝送インタフェースを監視し、信号条件が満たされたかどうかを検出するように構成できる。解析装置110は更に、例えば、信号条件が満たされずにデータ通信構成変更が実行されたかどうかを検出するように構成できる。ここにおいて記述されているプロセスの何れの検出された逸脱または違反は、解析装置110が逸脱または違反を示す出力を生成するという結果になり得る。
【0099】
発明は、その実施形態を参照して上記に詳細に記述されてきた。しかし、この技術における技量を有する者には容易に理解されるように、他の実施形態も、付随する請求項の範囲により定義されるようなように本発明の範囲内で同様に可能である。
【国際調査報告】