(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】幹細胞に対して脂質ナノ粒子治療薬を標的化するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/14 20060101AFI20240403BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240403BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240403BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K31/7088
A61K9/72
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566955
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 US2022026933
(87)【国際公開番号】W WO2022232514
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100225598
【氏名又は名称】桐島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ハミデ パーヒズ
(72)【発明者】
【氏名】ドリュー ウェイスマン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA93
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB15
4C076BB16
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4C076FF68
4C084AA17
4C084MA13
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4C086AA01
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4C086MA59
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA13
(57)【要約】
本発明は、幹細胞標的化ドメインを含む送達ビヒクルを使用して、幹細胞への作用物質の有効な送達のための組成物及び方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要としている対象への治療薬の標的化送達のための、治療薬及び送達ビヒクルを含む組成物であって、ここで、該送達ビヒクルが、標的幹細胞に結合するのに特異的な標的化部分を含む、前記組成物。
【請求項2】
前記標的幹細胞が、体性幹細胞、造血幹細胞、及び間充織幹細胞から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
造血幹細胞に結合するための標的化部分が、CD34、CD117、CD133、CD105、ABCG2、骨形成タンパク質受容体(BMPR)、CD44、Sca-1、Thy-1、CD133、アルカリフォスファターゼ、及びα-フェトプロテインから成る群から選択される少なくとも1つに結合するのに特異的である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
間充織幹細胞に結合するための標的化部分が、CD70、CD105、CD73、Stro-1、SSEA-4、CD271、CD146、GD2、SSEA-3、SUSD2、Stro-4、MSCA-1、CD56、CD200、PODXL、CD13、CD29、CD44、及びCD10から成る群から選択される少なくとも1つに結合するのに特異的である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記治療薬が、少なくとも1つの単離されたヌクレオシド修飾RNA分子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの単離されたヌクレオシド修飾RNAが、シュードウリジン及び1-メチル-シュードウリジンから成る群から選択される少なくとも1つを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの単離されたヌクレオシド修飾RNAが、精製されたヌクレオシド修飾RNAである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記送達ビヒクルが、脂質ナノ粒子(LNP)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのヌクレオシド修飾RNAが、LNP内にカプセル化される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
それを必要としている対象の疾患又は障害を治療する方法であって、該対象に請求項1に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項11】
前記標的幹細胞が、体性幹細胞、造血幹細胞、及び間充織幹細胞から成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
造血幹細胞に結合するための標的化部分が、CD34、CD117、CD133、CD105、ABCG2、骨形成タンパク質受容体(BMPR)、CD44、Sca-1、Thy-1、CD133、アルカリフォスファターゼ、及びα-フェトプロテインから成る群から選択される少なくとも1つに結合するのに特異的である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
間充織幹細胞に結合するための標的化部分が、CD70、CD105、CD73、Stro-1、SSEA-4、CD271、CD146、GD2、SSEA-3、SUSD2、Stro-4、MSCA-1、CD56、CD200、PODXL、CD13、CD29、CD44、及びCD10から成る群から選択される少なくとも1つに結合するのに特異的である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、皮内、皮下、吸入、鼻腔内及び筋肉内から成る群から選択される送達経路によって投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
標的幹細胞へと作用物質を送達する方法であって、対象に請求項1に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項16】
前記標的幹細胞が、体性幹細胞、造血幹細胞、及び間充織幹細胞から成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
造血幹細胞に結合するための標的化部分が、CD34、CD117、CD133、CD105、ABCG2、骨形成タンパク質受容体(BMPR)、CD44、Sca-1、Thy-1、CD133、アルカリフォスファターゼ、及びα-フェトプロテインから成る群から選択される少なくとも1つに結合するのに特異的である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
間充織幹細胞に結合するための標的化部分が、CD70、CD105、CD73、Stro-1、SSEA-4、CD271、CD146、GD2、SSEA-3、SUSD2、Stro-4、MSCA-1、CD56、CD200、PODXL、CD13、CD29、CD44、及びCD10から成る群から選択される少なくとも1つに結合するのに特異的である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、皮内、皮下、吸入、鼻腔内及び筋肉内から成る群から選択される送達経路によって投与される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月30日に出願された米国仮特許出願第63/182,639号に対する優先権を主張するものであり、そしてそれを全体として参照により本明細書に援用する。
【0002】
連邦政府による支援を受けた研究開発に関する声明
本願発明は、国立衛生研究所より与えられたAI045008の下で政府の支援を受けてなされた。政府には、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
RNAベースの作用物質は、DNAベースの遺伝子治療アプローチと異なった潜在的治療オプションとして新たに台頭している。例えば、(宿主ゲノム内に組み込まれることなく、核の送達も必要としない)mRNAは、細胞において必要な配列の一過性の翻訳を提供する(Weismann & Kariko Mol. Ther. 2015, 23, 1416-1417)。RNAベースの治療法が未だにその初期段階にあるが、その一方で、現在、mRNAベースの癌治療やワクチンについては登録済みの30超の臨床試験が存在する(Pardi, et al. J. Control. Release 2015, 217, 345-351)。すべての薬物、特に生物学的療法のように、mRNAの送達は、肝臓以外のほとんどの臓器のための主要な課題である(Shuvaev, et al., J. Control. Release 2015, 219, 576-595)。脂質ナノ粒子(LNP)を包含する薬物送達システム(DDS)は、RNAを詰め込んで、作用部位に向かう途中で内容物を保護するために用いられる(Kauffman, et al., J. Control. Release 2016, 240, 227-234)。しかしながら、特定の細胞型に対する標的化送達は、このクラスの作用物質の生物医学的転換と有用性に関して厄介な障壁が残っていた。
【0004】
よって、改良された標的化治療薬が、当該技術分野において必要とされている。本発明はこの必要性に取り組む。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態において、本発明は、それを必要としている対象への治療薬の標的化送達のための組成物に関し、該組成物は、治療薬及び送達ビヒクルを含み、ここで、該送達ビヒクルは、標的幹細胞に結合するのに特異的な標的化部分を含む。一実施形態において、標的幹細胞は、体性幹細胞である。一実施形態において、標的幹細胞は、造血幹細胞又は間充織幹細胞である。
【0006】
一実施形態において、造血幹細胞に結合するための標的化部分は、CD34、CD117、CD133、CD105、ABCG2、骨形成タンパク質受容体(BMPR)、CD44、Sca-1、Thy-1、CD133、アルカリフォスファターゼ、又はα-フェトプロテインのうちの少なくとも1つに結合するのに特異的である。一実施形態において、間充織幹細胞に結合するための標的化部分は、CD70、CD105、CD73、Stro-1、SSEA-4、CD271、CD146、GD2、SSEA-3、SUSD2、Stro-4、MSCA-1、CD56、CD200、PODXL、CD13、CD29、CD44、又はCD10のうちの少なくとも1つに結合するのに特異的である。
【0007】
一実施形態において、治療薬は、少なくとも1つの単離されたヌクレオシド修飾RNA分子を含む。一実施形態において、少なくとも1つの単離されたヌクレオシド修飾RNAは、少なくとも1つのシュードウリジン又は1-メチル-シュードウリジンを含む。一実施形態において、少なくとも1つの単離されたヌクレオシド修飾RNAは、精製されたヌクレオシド修飾RNAである。
【0008】
一実施形態において、送達ビヒクルは、脂質ナノ粒子(LNP)を含む。一実施形態において、少なくとも1つのヌクレオシド修飾RNAは、LNP内にカプセル化される。一実施形態において、本発明は、それを必要としている対象の疾患又は障害を治療する方法に関し、該方法は、それを必要としている対象に、治療薬の標的化送達のための組成物を投与することを含み、該組成物は、治療薬及び送達ビヒクルを含み、ここで、該送達ビヒクルは、対象に、標的幹細胞に結合するのに特異的な標的化部分を含む。一実施形態において、送達ビヒクルは、脂質ナノ粒子(LNP)を含む。
【0009】
一実施形態において、標的幹細胞は、体性幹細胞である。一実施形態において、標的幹細胞は、造血幹細胞又は間充織幹細胞である。一実施形態において、造血幹細胞に結合するための標的化部分は、CD34、CD117、CD133、CD105、ABCG2、骨形成タンパク質受容体(BMPR)、CD44、Sca-1、Thy-1、CD133、アルカリフォスファターゼ、又はα-フェトプロテインのうちの少なくとも1つに結合するのに特異的である。一実施形態において、間充織幹細胞に結合するための標的化部分は、CD70、CD105、CD73、Stro-1、SSEA-4、CD271、CD146、GD2、SSEA-3、SUSD2、Stro-4、MSCA-1、CD56、CD200、PODXL、CD13、CD29、CD44、又はCD10のうちの少なくとも1つに結合するのに特異的である。
【0010】
一実施形態において、組成物は、皮内、皮下、吸入、鼻腔内又は筋肉内投与によって投与される。一実施形態において、本発明は、標的幹細胞に対して作用物質を送達する方法に関し、該方法は、それを必要としている対象に、治療薬の標的化送達のための組成物を投与することを含み、該組成物は、治療薬及び送達ビヒクルを含み、ここで、該送達ビヒクルは、対象に、標的幹細胞に結合するのに特異的な標的化部分を含む。
【0011】
一実施形態において、標的幹細胞は、体性幹細胞である。一実施形態において、標的幹細胞は、造血幹細胞又は間充織幹細胞である。一実施形態において、造血幹細胞に結合するための標的化部分は、CD34、CD117、CD133、CD105、ABCG2、骨形成タンパク質受容体(BMPR)、CD44、Sca-1、Thy-1、CD133、アルカリフォスファターゼ、又はα-フェトプロテインのうちの少なくとも1つに結合するのに特異的である。
【0012】
一実施形態において、間充織幹細胞に結合するための標的化部分は、CD70、CD105、CD73、Stro-1、SSEA-4、CD271、CD146、GD2、SSEA-3、SUSD2、Stro-4、MSCA-1、CD56、CD200、PODXL、CD13、CD29、CD44、又はCD10のうちの少なくとも1つに結合するのに特異的である。一実施形態において、組成物は、皮内、皮下、吸入、鼻腔内又は筋肉内投与によって投与される。
【0013】
本発明の実施形態の詳細は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解されるであろう。本発明は、図面に示される実施形態の正確な配置及び手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1A及び
図1Bは、インビトロにおけるCD117標的化全骨髄及び系統陰性の濃縮調製を実証するデータを示す。
図1Aは、抗CD117-LNPで処理した全BMから得られた細胞溶解物中で検出されたルシフェラーゼ活性のレベルを示す。
図1Bは、抗CD117-LNPで処理したLin
-細胞で検出されたルシフェラーゼ活性のレベルを示す。
【
図2】
図2は、インビボにおけるCD117標的化全骨髄及び系統陰性の濃縮調製を実証するデータを示す。LNP-Cre mRNAをIVに注射し、そして、ZsGreenシグナルを、造血幹細胞幹細胞と始原細胞(LSK、Lin
-Sca-1
+c-kit
+)においてフローサイトメトリーを用いて追跡した。
【
図3】
図3は、インビトロにおけるCD34標的化全ヒト骨髄を実証するデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は、送達ビヒクルを含む、治療薬の効果的な送達のための組成物に関し、ここで、該送達ビヒクルは、幹細胞への治療薬の送達のための少なくとも1つの標的化ドメイン又は部分を含む。一実施形態において、標的化ドメインは、幹細胞マーカーに特異的に結合する。
【0016】
一実施形態において、送達ビヒクルは、幹細胞の膜表面受容体に結合するのに特異的な標的化ドメインに結合させた、少なくとも1つの脂質を含む脂質ナノ粒子である。一実施形態において、幹細胞は、造血幹細胞である。一実施形態において、造血幹細胞の膜表面受容体は、CD34、CD117、CD90、CD133、CD105、ABCG2、骨形成タンパク質受容体(BMPR)、CD44、Sca-1、Thy-1、CD133、アルカリフォスファターゼ、又はα-フェトプロテインである。一実施形態において、幹細胞は、間充織幹細胞である。一実施形態において、間充織幹細胞の膜表面受容体は、CD70、CD90、CD105、CD73、Stro-1、SSEA-4、CD271、CD146、GD2、SSEA-3、SUSD2、Stro-4、MSCA-1、CD56、CD200、PODXL、CD13、CD29、CD44、又はCD10である。本発明はまた、治療薬の幹細胞標的化送達のために本明細書に記載した組成物を使用する方法、並びに対象の疾患又は障害を治療する方法にも関する。
【0017】
定義
別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本書で使用されているように、以下の各用語は、このセクションにおいて関連する意味を有する。
【0018】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、文法上の冠詞の対象物の1つ又は複数(つまり、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」とは、1つの要素又は複数の要素を意味する。
【0019】
本明細書で使用される「約」とは、量、期間などの測定可能な値を指す場合、その範囲内で開示された方法を実行するのに適しているため、記載値から±20%、±10%、±5%、±1%、又は±0.1の変動を包含することを意味する。
【0020】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、抗原又はエピトープと特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然源又は組み換え源に由来する完全な免疫グロブリンであってもよく、完全な免疫グロブリンの免疫反応性部分であってもよい。抗体は通常、免疫グロブリン分子の四量体である。本発明の抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、Fab及びF(ab)2、ならびに単鎖抗体及びヒト化抗体を含む様々な形態で存在してもよい(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY; Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York; Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。
【0021】
「抗体断片」という用語は、完全な抗体の一部を指し、完全な抗体の抗原特異性決定可変領域を指す。抗体断片の例には、Fab、Fab´、F(ab´)2、及びFv断片、線状抗体、scFv抗体、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用する「抗体重鎖」とは、天然に存在する立体構造の全抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちの大きい方を指す。
【0023】
本明細書で使用する「抗体軽鎖」とは、天然に存在する立体構造の全抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。κ及びλ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0024】
本明細書で使用される「合成抗体」という用語は、組み換えDNA技術、例えば、バクテリオファージによって発現された抗体など、を使用して生成される抗体を意味する。また、この用語は、抗体をコードするDNA分子の合成によって生成され、そのDNA分子が抗体を特定する抗体タンパク質又はアミノ酸配列を発現する抗体であって、ここで、DNA又はアミノ酸配列が当技術分野で利用可能かつ周知の合成DNA又はアミノ酸配列技術を使用して得られるものを意味すると解釈されるべきである。さらに、この用語は、抗体をコードするRNA分子の合成によって生成された抗体を意味すると解釈されるべきである。RNA分子は、抗体タンパク質、又は抗体を特定するアミノ酸配列を発現し、ここでRNAは、(合成又はクローン化)DNAの転写、又は当技術分野で利用可能でよく知られている他の技術によって取得される。
【0025】
「疾患」とは、動物がホメオスタシスを維持できないという動物の健康状態であり、その疾患が改善されない場合、その動物の健康は悪化し続けるものを指す。対照的に、動物の「障害」とは、動物がホメオスタシスを維持できる健康状態であるが、その動物の健康状態は障害がない場合よりも良好ではないものを指す。障害を放置しても、必ずしも動物の健康状態がさらに低下するわけではない。
【0026】
本明細書で使用される「有効量」は、治療的又は予防的利益を提供する量を意味する。
【0027】
「生理学的に効果的な投薬量」という用語は、(単数若しくは複数の)作用物質の活性に関連する受容対象において計測可能な生物学的又は生理学的効果を生じさせる作用物質の量を指す。生理学的に効果的な投薬量は、化合物、その作用物質の投与を受ける対象の年齢、体重など、及び計測する生物学的又は生理学的影響によって異なる。
【0028】
「コードする」とは、遺伝子、cDNA、mRNAなどのポリヌクレオチドにおける、規定されたヌクレオチドの配列(つまり、rRNA、tRNA及びmRNA)又は規定されたアミノ酸の配列のいずれかをもって生物学的プロセス及びそれから生じる生物学的特性におけるポリマー及び高分子の合成のための鋳型として機能するヌクレオチドの特定の配列に固有の特性を指す。したがって、ある遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞又は他の生物学的システムでタンパク質を生成する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常配列リストに記載されているコーディング鎖、及び遺伝子又はcDNAの転写の鋳型として使用される非コーディング鎖のいずれも、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又はその他の産物をコードすると言える。
【0029】
「発現ベクター」とは、発現されるべきヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む組み換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現に十分なシス作用エレメント、及び発現のための他のエレメントを含む発現ベクターは、宿主細胞により又はin vitro発現系において供給できる。発現ベクターには、組み換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えば、裸又はリポソームに含まれる)、RNA、及びウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)など、当技術分野で知られているものすべてのものが含まれる。
【0030】
「相同」とは、2つのポリペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性又は配列同一性を指す。比較対象の2つの配列の両方における位置に同じ塩基又はアミノ酸モノマーサブユニットがある場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置にアデニンがある場合、これら分子はその位置において相同である。2つの配列間の相同性の割合は、2つの配列が一致又は相同する位置の数を、比較対象の全体の位置の数で除算し、100を掛けた値である。例えば、2つの配列の10個のうち6個の位置が一致又は騒動する場合、2つの配列は60%相同である。例として、DNA配列ATTGCCとTATGGCは50%の相同性を有する。一般的に、2つの配列を並べて最大の相同性が得られるように比較を行う。
【0031】
「単離」とは、自然状態から変更又は取り出さされることを意味する。例えば、生きている動物に自然に存在する核酸又はペプチドは「単離」されていないが、その自然状態の共存する物質から部分的又は完全に分離された同じ核酸又はペプチドは「単離」されている。単離核酸又はタンパク質は、実質的に精製された形態で存在するか、又は、例えば、宿主細胞などの非自然環境に存在しうる。
【0032】
本発明の文脈において、一般的に存在するヌクレオシド(N-グリコシド結合を介してリボース又はデオキシリボース糖に結合した核酸塩基)には以下の略語が使用される:「A」はアデノシンを指し、「C」はシチジンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、「U」はウリジンを指す。
【0033】
特に指定しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、同じアミノ酸配列をコードする互いの変性バージョンすべてのヌクレオチド配列が含まれる。また、タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列という用語には、そのタンパク質をコードするヌクレオチド配列がいくつかのバージョンでイントロンを含むことができる程度にイントロンが含まれてもよい。
【0034】
本明細書で使用される「調節する」という用語は、対象における応答のレベルが、治療又は化合物の非存在下での対象の応答のレベルと比較して、及び/又は他の点では同一であるが未治療の対象の応答レベルと比較して、検出可能に増加又は減少させることを意味する。この用語は、本来のシグナル又は応答を乱す及び/又は影響を与えることにより、対象、好ましくはヒト、において有益な治療的応答をもたらすことを包含する。
【0035】
別段で指定しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、同じアミノ酸配列をコードする互いの変性バージョンすべてのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列には、イントロンが含まれてもよい。さらに、ヌクレオチド配列には、細胞内の翻訳機構によって翻訳可能な修飾ヌクレオシドが含まれてもよい。例えば、ウリジンの一部又はすべてがシュードウリジン、1-メチルシュードウリジン、又は他の修飾ヌクレオシドで置換されたmRNAが挙げられる。
【0036】
「作動可能に連結された」という用語は、調節配列と異種核酸配列との間が機能的に連結すること指し、これにより後者の発現がもたらされる。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係にあるとき、第1の核酸配列は作動可能に第2の核酸配列と連結されている。例えば、プロモーターがコーディング配列の転写又は発現に影響を与える場合、そのプロモーターはコーディング配列に作動可能に連結されている。一般的に、作動可能性に連結されたDNA又はRNA配列は隣接しており、必要に応じて同じリーディングフレーム内で2つのタンパク質コーディング領域を結合する。
【0037】
「患者」、「対象」、「個体」などの用語は、本明細書で互換可能に使用され、本明細書に記載の方法に適した任意の動物、又はin vitro又はin situのその細胞を指す。ある種の非限定的な実施形態において、患者、対象又は個体はヒトである。
【0038】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチド鎖として定義される。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書で使用される核酸及びポリヌクレオチドは互換可能である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、モノマー「ヌクレオチド」に加水分解できるという一般的な知識を有している。モノマーヌクレオチドは加水分解されてヌクレオシドになりうる。本明細書で使用されるポリヌクレオチドには、組み換え手段、すなわち、通常のクローニング技術及びPCR(商標)などや合成手段を使用した組み換えライブラリ又は細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングを含むがこれらに限定されない、当技術分野で利用可能な任意の手段によって得られるすべての核酸配列が含まれるがこれらに限定されない。
【0039】
場合によっては、本発明のポリヌクレオチド又は核酸は「ヌクレオシド修飾核酸」であり、これは、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを含む核酸を指す。「修飾ヌクレオシド」とは、修飾されたヌクレオシドを指す。例えば、RNAでは100種類を超えるころなるヌクレオシド修飾が確認されている(Rozenski, et al., 1999, The RNA Modification Database: 1999 update. Nucl Acids Res 27: 196-197)。
【0040】
いくつかの実施形態において、「シュードウリジン」は、別の実施形態において、m1acp3Ψ(1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジン)を指す。別の一実施形態において、この用語はm1Ψ(1-メチルシュードウリジン)を指す。別の一実施形態において、この用語はΨm(2´-O-メチルシュードウリジンを指す。別の一実施形態において、この用語はm5D(5-メチルジヒドロウリジン)を指す。別の一実施形態において、この用語はm3Ψ(3-メチルシュードウリジン)を指す。別の一実施形態において、この用語はそれ以上修飾されていないシュードウリジン部分を指す。別の一実施形態において、この用語は、上記のシュードウリジンのいずれかのモノホスフェート、ジホスフェート、又はトリホスフェートを指す。別の一実施形態において、この用語は、当技術分野で知られている他のシュードウリジンを指す。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0041】
本明細書で使用される「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は互換可能に使用され、ペプチド結合により共有結合したアミノ酸残基からなる化合物を指す。タンパク質又はペプチドには、少なくとも2つのアミノ酸が含まれている必要があり、タンパク質又はペプチドの配列を構成できるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって互いに結合された2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質が含まれる。本明細書で使用するこの用語は、当技術分野で一般にペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとも称される短鎖、及び当技術分野で一般にタンパク質と称される長鎖の両方を指し、多くのタイプが存在する。「ポリペプチド」には、例えば、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質などが含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0042】
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特定の転写を開始するために必要な細胞の合成機構又は導入された合成機構によって認識されるDNA配列として定義される。例えば、バクテリオファージRNAポリメラーゼにより認識され、インビトロ転写によりmRNAを生成するために使用されるプロモーターが挙げられる。
【0043】
親和性リガンド、特に、抗体に関して本明細書で使用される「特異的に結合する」という用語は、試料における特定の抗原を認識するが、他の分子を実質的に認識又は結合しない抗体を意味する。例えば、ある1つの種の抗原に特異的に結合する抗体は、他の1又は複数種の抗原にも結合する場合がある。しかし、このような異種間反応性それ自体が抗体の特異性の分類を変えることはない。別の例では、ある抗原に特異的に結合する抗体は、その抗原の異なる対立遺伝子型にも結合し得る。ただし、このような交差反応性それ自体が、抗体の特異性の分類を変えることはない。いくつかの例では、「特異的結合」又は「特異的な結合」という用語は、抗体、タンパク質、又はペプチドと第2の化学種との相互作用について、その相互作用が化学種の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在によるものであることを意味するよう、使用されることがある。例えば、抗体は一般的にタンパク質ではなく特定のタンパク質構造を認識して結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識された「A」と抗体を含む反応においてエピトープA(又は遊離の標識されていないA)を含む分子の存在により、抗体に結合する標識Aの量が減少する。
【0044】
本明細書で使用される「治療的(therapeutic)」という用語は、治療(treatment)及び/又は予防を意味する。治療的効果は、疾患又は障害の少なくとも1つの兆候又は症状の抑制、縮小、寛解、又は根絶によって得られる。
【0045】
「治療的有効量」という用語は、研究者、獣医、医師その他の臨床医が求めている組織、システム、又は対象の生物学的又は医学的反応を引き起こす対象化合物の量を指す。「治療的有効量」という用語には、投与されたときに、治療される障害又は疾患の1つ又は複数の徴候又は症状の発症を予防するか、ある程度緩和するのに十分な化合物の量が含まれる。治療的有効量は、化合物、治療対象の疾患及びその重症度、年齢、体重などによって異なる。
【0046】
本明細書で使用される用語で疾患を「治療する」とは、対象が経験する疾患又は障害の少なくとも1つの兆候又は症状の頻度又は重症度を軽減することを意味する。
【0047】
本明細書で使用される「トランスフェクトされた」又は「形質転換された」又は「形質導入された」という用語は、外因性の核酸が宿主細胞に移入又は導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」又は「形質転換された」又は「形質導入された」細胞は、外因性の核酸がトランスフェクト、形質転換、又は形質導入された細胞である。細胞には、初代の対象細胞とその子孫が含まれる。
【0048】
本明細書で使用される「転写制御下」又は「作動可能に連結された」という用語は、プロモーターがポリヌクレオチドに対してRNAポリメラーゼによる転写の開始及びポリヌクレオチドの発現を制御するのに正しい位置及び方向にあることを意味する。
【0049】
「ベクター」は、単離核酸を含み、その単離核酸を細胞の内部に送達するために使用できる物質の複合体である。線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物に結合するポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含むが、これらに限定されない多数のベクターが当技術分野で知られている。したがって、「ベクター」という用語には、自律的に複製するプラスミド又はウイルスが含まれる。また、この用語は、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどのような、細胞への核酸の移動を促進する非プラスミド及び非ウイルス化合物も含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが含まれる、これらに限定されない。
【0050】
「アルキル」は、1~24個の炭素原子(C1-C24アルキル)、1~12個の炭素原子(C1-C12アルキル)、1~8個の炭素原子(C1-C8アルキル)又は1~6個の炭素原子(C1-C6アルキル)を有する、飽和又は不飽和(すなわち、1つ又は複数の二重結合及び/又は三重結合を含む)の、かつ当該分子の残部に単結合により結合する、炭素原子及び水素原子のみからなる直鎖状又は分枝状炭化水素鎖ラジカル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、エテニル、プロパ-1-エニル、ブタ-1-エニル、ペンタ-1-エニル、ペンタ-1,4-ジエニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどを指す。別段の明示がない限り、アルキル基は任意選択で置換されている。
【0051】
「アルキレン」又は「アルキレン鎖」は、飽和又は不飽和(すなわち、1つ又は複数の二重結合(アルケニレン)及び/又は三重結合(アルキニレン)を含む)であり、例えば、1~24個の炭素原子(C1-C24アルキレン)、1~15個の炭素原子(C1-C15アルキレン)、1~12個の炭素原子(C1-C12アルキレン)、1~8個の炭素原子(C1-C8アルキレン)、1~6個の炭素原子(C1-C6アルキレン)、2~4個の炭素原子(C2-C4アルキレン)、1~2個の炭素原子(C1-C2アルキレン)を有する、炭素原子及び水素原子のみからなる、当該分子の残部をラジカル基に結合する直鎖状又は分枝状の2価の炭化水素鎖、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレン、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレン、プロピニレン、n-ブチニレンなどを指す。上記アルキレン鎖は、単結合又は二重結合を介して当該分子の残部と結合し、単結合又は二重結合を介してラジカル基と結合する。当該分子の上記残部及び上記ラジカル基への当該アルキレン鎖の結合点は、当該連鎖内の1の炭素又は任意の2の炭素を介することがきる。本明細書において特段の明示がない限り、アルキレン鎖は任意選択で置換されていてもよい。
【0052】
「シクロアルキル」又は「炭素環式環」は、炭素原子及び水素原子のみからなる安定な非芳香族単環式又は多環式炭化水素ラジカルを指し、該「シクロアルキル」又は「炭素環式環」は、3~15個の炭素原子を有する、好ましくは3~10個の炭素原子を有する縮合環系又は架橋環系を含んでいてもよく、かつ飽和又は不飽和であり、単結合によって当該分子の残部に結合している。単環式ラジカルとしては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。多環式ラジカルとしては、例えば、アダマンチル、ノルボルニル、デカリニル、7,7-ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタニルなどが挙げられる。別段の明示がない限り、シクロアルキル基は任意選択で置換されている。
【0053】
「シクロアルキレン」は2価のシクロアルキル基である。本明細書において別段の明記がない限り、シクロアルキレン基は任意選択で置換されていてもよい。
【0054】
「ヘテロシクリル」又は「ヘテロ環式環」は、2~12個の炭素原子及び窒素、酸素及び硫黄からなる群より選択される1~6個のヘテロ原子からなる安定な3~18員非芳香環ラジカルを指す。本明細書において別段の明記がない限り、上記ヘテロシクリルラジカルは、単環式環系、二環式環系、三環式環系又は四環式環系であってもよく、これらは縮合環系又は架橋環系を含んでいてもよく、当該ヘテロシクリルラジカル中の窒素原子、炭素原子又は硫黄原子は、任意選択で酸化されていてもよく、窒素原子は任意選択で四級化されていてもよく、上記ヘテロシクリルラジカルは部分的又は完全に飽和していてもよい。斯かるヘテロシクリルラジカルの例としては、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1-オキソ-チオモルホリニル、及び1,1-ジオキソ-チオモルホリニルが挙げられるが、これらに限定はされない。別段の明示がない限り、ヘテロシクリル基は任意選択で置換されていてもよい。
【0055】
本明細書で使用される「置換された」は、少なくとも1つの水素原子が、F、Cl、Br、及びIなどのハロゲン原子;オキソ基(=O);ヒドロキシル基(-OH);アルコキシ基(-ORa、但しRaはC1-C12アルキル又はシクロアルキル)、カルボキシル基(-OC(=O)Ra又は-C(=O)ORa、但しRaはH、C1-C12アルキル又はシクロアルキル);アミン基(-NRaRb、但しRa及びRbはそれぞれ独立にH、C1-C12アルキル又はシクロアルキル);C1-C12アルキル基;及びシクロアルキル基などの非水素原子への結合によって置換されている上記基(例えば、アルキル、シクロアルキル又はヘテロシクリル)のいずれかを意味する。いくつかの実施形態において、上記置換基はC1-C12アルキル基である。他の実施形態において、上記置換基はシクロアルキル基である。他の実施形態において、上記置換基はフルオロなどのハロ基である。他の実施形態において、上記置換基はオキソ基である。他の実施形態において、上記置換基はヒドロキシル基である。他の実施形態において、上記置換基はアルコキシ基である。他の実施形態において、上記置換基はカルボキシル基である。他の実施形態において、上記置換基はアミン基である。
【0056】
「任意選択の」又は「任意選択で」(例えば、任意選択で置換された)は、その後に記載される状況の事象が生じても生じなくてもよいこと、及び上記記載は、上記事象又は状況が生じる場合及びそれらが生じない場合を包含することを意味する。例えば、「任意選択で置換されたアルキル」は、当該アルキルラジカルが置換されていてもされていなくてもよいこと、及び上記記載は、置換されたアルキルラジカル及び置換基をもたないアルキルラジカルの両方を包含することを意味する。
【0057】
範囲:本開示を通して、本発明の様々な態様を範囲形式で提示する場合がある。範囲形式の記載は単に利便性及び簡潔さのためのものであることを理解するべきであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきものではない。したがって、範囲の記載は、その範囲内の全ての可能な部分範囲及び個々の数値を具体的に開示しているものとみなすべきである。例えば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびに当該範囲内の個々の数字、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6を具体的に開示しているものとみなすべきである。このことは当該範囲の幅の如何を問わず適用される。
【0058】
説明
本発明は、幹細胞への、治療薬を含む送達ビヒクルの標的化送達のための組成物及び方法に一部関する。一態様において、本発明は、幹細胞標的化ドメインに結合された送達ビヒクルを含む組成物に関する。
様々な実施形態において、本発明の送達ビヒクルは、着目の標的幹細胞の細胞表面分子に結合する標的化ドメインを含む。特定の実施形態において、標的化ドメインは、着目の標的幹細胞の細胞表面分子に結合し、その結果、組成物を該標的細胞に向ける。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明の標的化送達ビヒクルは、幹細胞の表面分子に結合する標的化部分を含む。一実施形態において、標的幹細胞は、体性幹細胞である。一実施形態において、標的幹細胞は、造血幹細胞又は間充織幹細胞である。
いくつかの実施形態において、造血幹細胞の表面分子は、CD34、CD117、CD90、CD133、CD105、ABCG2、骨形成タンパク質受容体(BMPR)、CD44、Sca-1、Thy-1、CD133、アルカリフォスファターゼ、又はα-フェトプロテインである。いくつかの実施形態において、間充織幹細胞の表面分子は、CD70、CD90、CD105、CD73、Stro-1、SSEA-4、CD271、CD146、GD2、SSEA-3、SUSD2、Stro-4、MSCA-1、CD56、CD200、PODXL、CD13、CD29、CD44、又はCD10である。
【0060】
本発明はまた、それを必要としている対象の疾患又は障害を治療する方法に一部関し、該方法は、幹細胞標的化ドメインに結合させた送達ビヒクルを包含する組成物の投与を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、本発明は、それを必要としている対象の疾患又は障害を治療するための方法と提供し、該方法は、幹細胞標的化ドメインに結合された送達ビヒクルを包含する組成物の投与を含む。一実施形態において、疾患又は障害は、遺伝的疾患又は障害である。遺伝的疾患及び障害としては、これだけに限定されるものではないが、軟骨発育不全、α-1抗トリプシン欠乏、抗リン脂質抗体症候群、注意欠陥多動性障害、自閉症、常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎、乳癌、チャルコー-マリー-ツース病、結腸癌、猫鳴き症候群、クローン病、嚢胞性繊維症、ドウェイン症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー症、第V因子ライデン血栓形成傾向、家族性高コレステロール血症、家族性地中海熱、脆弱X症候群、ゴーシェ病、血色素症、血友病、全前脳症、ハンチントン病、先天代謝異常、クラインフェルター症候群、マルファン症候群、メチルマロン酸血症(methylmalonic academia)、筋緊張性ジストロフィー、神経線維腫症、ヌーナン症候群、骨形成不全症、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、ポーランド奇形、ポルフィリン症、早老症、前立腺癌、網膜色素変性症、重症複合免疫不全症、鎌状赤血球貧血、皮膚癌、背髄性筋萎縮症、テイ-サックス病、サラセミア、トリメチルアミン尿症、ターナー症候群、軟口蓋心臓顔貌症候群及びウィルソン病が挙げられる。
【0062】
一実施形態において、疾患又は障害は、非悪性血液疾患、幹細胞喪失疾患若しくは障害、幹細胞増殖疾患若しくは障害、又は幹細胞改変が有益であろういずれかの疾患若しくは障害である。
【0063】
送達ビヒクル
いくつかの実施形態において、送達ビヒクルは、例えば、マクロ分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズなどのコロイド分散系、並びに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系が挙げられる。送達ビヒクルとしてインビトロ及びインビボで使用するための例示的なコロイドシステムは、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0064】
脂質製剤の使用は、少なくとも1つの作用物質を宿主細胞に(インビトロ、エクスビボ又はインビボで)導入するために検討される。別の態様において、少なくとも1つの作用物質は脂質と結合してもよい。脂質に結合した少なくとも1つの作用物質は、リポソームの水性内部にカプセル化されても、リポソームの脂質二重層内に散在しても、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方に結合したリンク分子を介してリポソームに結合しても、リポソーム内に閉じ込めても、リポソームと複合体を形成しても、脂質を含む溶液に分散しても、脂質と混合しても、脂質と組み合わせても、脂質の懸濁液として含めても、ミセル内に含む又はミセルと複合体を形成しても、あるいはその他の方法で脂質と結合してもよい。脂質、脂質/核酸又は脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液内の特定の構造に限定されない。例えば、ミセルのような二重層構造で存在しても、「崩壊した」構造で存在してもよい。また、単純に溶液内に散在し、サイズ又は形状が均一ではない凝集体を形成してもよい。脂質は、天然脂質でも合成脂質でもよい脂肪質の物質である。例えば、脂質として、細胞質に自然に存在する脂肪滴、並びに、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、アルデヒドなどの長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体を含む化合物のクラスが挙げられる。
【0065】
使用に適した脂質は、業者から入手できる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma, St. Louis, MOから入手でき;リン酸ジセチル(「DCP」)は、K & K Laboratories(Plainview, NY)から入手でき;コレステロール(「Choi」)はCalbiochem-Behringから入手でき;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及びその他の脂質はAvanti Polar Lipids, Inc.(Birmingham, AL)から入手できる。クロロホルム又はクロロホルム/メタノールに含まれる脂質のストック溶液は、約-20℃で保存できる。クロロホルムは、メタノールよりも蒸発しやすいため、唯一の溶媒として使用される。「リポソーム」は、閉じた脂質二重層又は凝集体の生成によって形成される様々な単膜及び多重膜脂質のビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜と内部水性媒体を備えた小胞構造を有するものとして特徴付けられる。多重膜リポソームは、水性媒体によって隔てられる複数の脂質層を有する。リン脂質が過剰な水溶液内で懸濁されると、リポソームは自然に形成される。脂質成分は、まず自己再編を行い、その後閉じた構造を形成し、脂質二重層間に水と溶質を閉じ込める(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5: 505-10)。しかし、溶液中の構造が通常の小胞構造と異なる組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造を想定しても、又は単に脂質分子の不均一な集合体として存在してもよい。また、リポフェクタミン-作用物質複合体も考えられる。
【0066】
一実施形態において、少なくとも1つの作用物質の送達は、本明細書に記載の例示的な送達方法を含めた任意の好適な送達方法を含む。特定の実施形態において、少なくとも1つの作用物質の対象への送達は、接触ステップの前に、少なくとも1つの作用物質をトランスフェクション試薬と混合することを含む。別の一実施形態において、本発明の方法は、少なくとも1つの作用物質をトランスフェクション試薬とともに投与することをさらに含む。別の一実施形態において、トランスフェクション試薬はカチオン性脂質試薬である。
【0067】
別の一実施形態において、トランスフェクション試薬は、脂質ベースのトランスフェクション試薬である。別の一実施形態において、トランスフェクション試薬は、タンパク質ベースのトランスフェクション試薬である。別の一実施形態において、トランスフェクション試薬は、ポリエチレンイミンベースのトランスフェクション試薬である。別の一実施形態において、トランスフェクション試薬は、リン酸カルシウムである。別の一実施形態において、トランスフェクション試薬は、Lipofectin(登録商標)、Lipofectamine(登録商標)、又はTransIT(登録商標)である。別の一実施形態において、トランスフェクション試薬は、当該分野で公知の任意の他のトランスフェクション試薬である。
【0068】
別の一実施形態において、トランスフェクション試薬は、リポソームを形成する。リポソームは、別の実施形態において、細胞内安定性を高め、取り込み効率を高め、生物活性を改善する。別の一実施形態において、リポソームは、細胞膜を構成する脂質と同様の方法で配置された脂質で構成される中空の球状小胞である。いくつかの実施形態において、リポソームは、水溶性化合物を捕捉するための内部水性空間を含む。別の一実施形態において、リポソームは、活性な形態で少なくとも1つの作用物質を細胞に送達できる。
【0069】
一実施形態において、組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)と少なくとも1つの作用物質を含む。
【0070】
「脂質ナノ粒子」という用語は、1若しくは複数の脂質を包含するナノメートル(例えば、1~1,000nm)程度の少なくとも1つの寸法を有する粒子を指す。様々な実施形態において、粒子は、式(I)、(II)又は(III)の脂質を含む。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、本明細書に記載の少なくとも1つの作用物質を含む製剤に含まれるいくつかの実施形態において、このような脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質(例えば、式(I)、(II)又は(III)の脂質)並びに中性脂質、荷電脂質、ステロイド、及びポリマー結合脂質(例えば、化合物Ivaのような構造(IV)のペグ化脂質などのペグ化脂質)から選択される1つ又は複数の賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの作用物質は、脂質ナノ粒子の脂質部分又は脂質ナノ粒子の脂質部分の一部又は全部によって包まれた水性空間内にカプセル化されており、それにより酵素分解あるいは宿主生物又は細胞のメカニズムにより誘発される、例えば、有害な免疫応答といったその他の望ましくない影響から保護される。
【0071】
様々な実施形態において、脂質ナノ粒子は、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、又は約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、又は150nmの平均直径を有しそして実質的に無毒である。一実施形態において、脂質ナノ粒子は、約83nmの平均直径を有する。一実施形態において、脂質ナノ粒子は、約102nmの平均直径を有する。一実施形態において、脂質ナノ粒子は、約103nmの平均直径を有する。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子は、実質的に無毒である。特定の実施形態において、少なくとも1つの作用物質は、脂質ナノ粒子に存在する場合、水溶液中で細胞内又は細胞間酵素によって分解に耐性がある。
【0072】
LNPは、少なくとも1つの作用物質が付着した粒子を形成することが可能な、又はその中に少なくとも1つの作用物質がカプセル化された任意の脂質を含んでもよい。「脂質」という用語は、脂肪酸の誘導体(例えば、エステル)である有機化合物のグループを指し、一般に水に不溶性であるが多くの有機溶媒に可溶性であることを特徴とする。脂質は通常、少なくとも以下のような3つのクラス:(1)脂肪、油、ワックスを含む「単純脂質」;(2)リン脂質及び糖脂質を含む「複合脂質」;並びに(3)ステロイドなどの「誘導体脂質」に分けられる。一実施形態において、LNPは1つ又は複数のカチオン性脂質と1つ又は複数の安定化脂質を含む。安定化脂質として、中性脂質とペグ化脂質が挙げられる。
【0073】
一実施形態において、LNPはカチオン性脂質を含む。本明細書で使用する「カチオン性脂質」という用語は、pHが当該脂質のイオン化可能基のpKより低くなるとカチオン性又はカチオン性になる(プロトン化する)脂質を指すが、より高いpH値では徐々により中性に近くなる。pK未満のpH値では、脂質は負に帯電した核酸と結合できる。特定の実施形態において、カチオン性脂質は、pH低下時に正電荷を帯びる両性イオン脂質を含む。
【0074】
特定の実施形態において、カチオン性脂質は、生理学的pHなどの選択的なpHにおいて全体として正電荷を帯びる多くの脂質種の任意のものを含む。このような脂質として、限定されないものの、以下のものが挙げられる:N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレオイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、及びN-(1,2-ジミリスチルオキシプロップ-3-yl)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)。さらに、本発明で使用できるカチオン性脂質の多くの市販製剤が入手可能である。例えば、以下のものが挙げられる:LIPOFECTIN(登録商標)(DOTMA及び1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む市販のカチオン性リポソーム、GIBCO/BRL, Grand Island, N.Y.);LIPOFECTAMINE(登録商標)(N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-(2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)及び(DOPE)を含む市販のカチオン性リポソーム, GIBCO/BRL);及びTRANSFECTAM(登録商標)(ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)をエタノール中に含む市販のカチオン性脂質、Promega Corp., Madison, Wis.)。次の脂質はカチオン性であり、生理的pH未満で正電荷を有する:DODAP、DODMA、DMDMA、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)。
【0075】
一実施形態において、カチオン性脂質はアミノ脂質である。本発明において有用な好適なアミノ脂質として、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2012/016184に記載されているものが挙げられる。代表的なアミノ脂質として、限定されないものの、以下のものが挙げられる:1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、及び2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)。
【0076】
【0077】
{式中、
R1及びR2は同じ又は異なっておりそして独立して、場合により置換されたC10-C24アルキル、場合により置換されたC10-C24アルケニル、場合により置換されたC10-C24アルキニル、又は場合により置換されたC10-C24アシルであり;
R3及びR4は同じ又は異なっておりそして独立して、場合により置換されたC1-C6アルキル、場合により置換されたC2-C6アルケニル、又は場合により置換されたC2-C6アルキニルであるか、又はR3及びR4は、接合して4~6個の炭素原子及び窒素及び酸素から選択される1又は2ヘテロ原子を有し、場合により置換された複素環を形成してもよく;
R5は、不存在又は存在し、存在する場合水素又はC1-C6アルキルであり;
m、n、及びpは同じ又は異なっておりそして独立して、0又は1であり、ただしm、n、及びpが同時に0ではない;
qは、0、1、2、3、又は4であり;かつ、
Y及びZは同じ又は異なっておりそして独立して、O、S、又はNHである}を有するものが挙げられる。
【0078】
一実施形態において、R1及びR2は各々リノレイルであり、アミノ脂質はジリノレイルアミノ脂質である。一実施形態において、アミノ脂質はジリノレイルアミノ脂質である。
【0079】
代表的な有用なジリノレイルアミノ脂質は、以下の式:
【化2】
{式中、nは0、1、2、3、又は4である}を有する。
【0080】
一実施形態において、カチオン性脂質はDLin-K-DMAである。一実施形態において、カチオン性脂質はDLin-KC2-DMAである(上述のDLin-K-DMAの式中、nは2である)。
【0081】
一実施形態において、LNPのカチオン性脂質部分は、式(I)の構造:
【化3】
【0082】
{式中、
L1及びL2は、各々独立して、-O(C=O)-、-(C=O)O-又は炭素-炭素二重結合であり;
R1a及びR1bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC1-C12アルキルのいずれかである、又は(b)R1aはH又はC1-C12アルキルであり、そして、R1bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を結合する;
R2a及びR2bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC1-C12アルキルのいずれかである、又は(b)R2aは又はC1-C12アルキルであり、そして、R2bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を結合する;
R3a及びR3bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC1-C12アルキルのいずれかである、又は(b)R3aは又はC1-C12アルキルであり、そして、R3bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を結合する;
R4a及びR4bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC1-C12アルキルのいずれかである、又は(b)R4aは又はC1-C12アルキルであり、そして、R4bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を結合する;
R5及びR6は、各々独立して、メチル又はシクロアルキルであり;
R7は各出現毎に、独立してH又はC1-C12アルキルであり;
R8及びR9は、各々独立して、C1-C12アルキルであるか、又はR8及びR9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、1個の窒素原子を含む5、6又は7員複素環を形成し;
a及びdは、各々独立して、0~24の整数であり;
b及びcは、各々独立して、1~24の整数であり;かつ、
eは1又は2である}又はその医薬的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ若しくは立体異性体を有する。
【0083】
式(I)の特定の実施形態において、R1a、R2a、R3a又はR4aの少なくとも1つはC1-C12アルキルであるか、又はL1又はL2の少なくとも1つは-O(C=O)-又は-(C=O)O-である。別の実施形態において、R1a及びR1bは、aが6であるときイソプロピルではなく、aが8であるときn-ブチルである。
【0084】
式(I)の更なる実施形態において、R1a、R2a、R3a又はR4a の少なくとも1つはC1-C12アルキルであるか、又はL1又はL2の少なくとも1つは-O(C=O)-又は-(C=O)O-であり;かつ、R1a及びR1bは、aが6であるときイソプロピルではなく、aが8であるときn-ブチルである。
【0085】
式(I)の別の実施形態において、R8及びR9は、各々独立して、非置換C1-C12アルキルであるか;又はR8及びR9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、1個の窒素原子を含む5、6又は7員複素環を形成する。
【0086】
式(I)の特定の実施形態において、L1又はL2のいずれか一方は、-O(C=O)-又は炭素-炭素二重結合であってもよい。L1及びL2は、各々-O(C=O)-であってもよく、又は各々炭素-炭素二重結合であってもよい。
【0087】
式(I)のいくつかの実施形態において、L1又はL2の一方が-O(C=O)-である。別の実施形態において、L1及びL2のいずれも-O(C=O)-である。
【0088】
式(I)のいくつかの実施形態において、L1又はL2の一方は-(C=O)O-である。別の実施形態において、L1及びL2のいずれも-(C=O)O-である。
【0089】
式(I)の別のいくつかの実施形態において、L1又はL2の一方が炭素-炭素二重結合である。別の実施形態において、L1及びL2のいずれも炭素-炭素二重結合である。
【0090】
式(I)のさらに別の実施形態において、L1又はL2の一方は-O(C=O)-であり、L1又はL2の他方は-(C=O)O-である。更なる実施形態において、L1又はL2の一方は-O(C=O)-であり、L1又はL2の他方は炭素-炭素二重結合である。より更なる実施形態において、L1又はL2の一方は-(C=O)O-であり、L1又はL2の他方は炭素-炭素二重結合である。
【0091】
本明細書全体で使用される「炭素-炭素」二重結合は、以下の構造:
【化4】
{式中、R
a及びR
bは、各々に関し、独立して、H又は置換基である。例えば、いくつかの実施形態においてR
a及びR
bは、各々に関し、独立して、H、C
1-C
12アルキル又はシクロアルキル、例えばH又はC
1-C
12アルキルである}のいずれかを指すと理解される。
【0092】
別の実施形態において、式(I)の脂質化合物は、以下の構造(Ia):
【化5】
を有する。
【0093】
別の実施形態において、式(I)の脂質化合物は、以下の構造(Ib):
【化6】
を有する。
【0094】
更なる別の実施形態において、式(I)の脂質化合物は、以下の構造(Ic):
【化7】
を有する。
【0095】
式(I)の脂質化合物の特定の実施形態において、a、b、c及びdは、各々独立して、2~12の整数又は4~12の整数である。別の実施形態において、a、b、c及びdは、各々独立して、8~12又は5~9の整数である。いくつかの実施形態において、aは0である。いくつかの実施形態において、aは1である。別の実施形態において、aは2である。更なる実施形態において、aは3である。更なる別の実施形態において、aは4である。いくつかの実施形態において、aは5である。別の実施形態において、aは6である。更なる実施形態において、aは7である。更なる別の実施形態において、aは8である。いくつかの実施形態において、aは9である。別の実施形態において、aは10である。更なる実施形態において、aは11である。更なる別の実施形態において、aは12である。いくつかの実施形態において、aは13である。別の実施形態において、aは14である。更なる実施形態において、aは15である。更なる別の実施形態において、aは16である。
【0096】
式(I)の別のいくつかの実施形態において、bは1である。別の実施形態において、bは2である。更なる実施形態において、bは3である。更なる別の実施形態において、bは4である。いくつかの実施形態において、bは5である。別の実施形態において、bは6である。更なる実施形態において、bは7である。更なる別の実施形態において、bは8である。いくつかの実施形態において、bは9である。別の実施形態において、bは10である。更なる実施形態において、bは11である。更なる別の実施形態において、bは12である。いくつかの実施形態において、bは13である。別の実施形態において、bは14である。更なる実施形態において、bは15である。更なる別の実施形態において、bは16である。
【0097】
式(I)の更なるいくつかの実施形態において、cは1である。別の実施形態において、cは2である。更なる実施形態において、cは3である。更なる別の実施形態において、cは4である。いくつかの実施形態において、cは5である。別の実施形態において、cは6である。更なる実施形態において、cは7である。更なる別の実施形態において、cは8である。いくつかの実施形態において、cは9である。別の実施形態において、cは10である。更なる実施形態において、cは11である。更なる別の実施形態において、cは12である。いくつかの実施形態において、cは13である。別の実施形態において、cは14である。更なる実施形態において、cは15である。更なる別の実施形態において、cは16である。
【0098】
式(I)の別のいくつかの特定の実施形態において、dは0である。いくつかの実施形態において、dは1である。別の実施形態において、dは2である。更なる実施形態において、dは3である。更なる別の実施形態において、dは4である。いくつかの実施形態において、dは5である。別の実施形態において、dは6である。更なる実施形態において、dは7である。更なる別の実施形態において、dは8である。いくつかの実施形態において、dは9である。別の実施形態において、dは10である。更なる実施形態において、dは11である。更なる別の実施形態において、dは12である。いくつかの実施形態において、dは13である。別の実施形態において、dは14である。更なる実施形態において、dは15である。更なる別の実施形態において、dは16である。
【0099】
式(I)の別のいくつかの様々な実施形態において、aとdは同一である。いくつかの他の実施形態において、b及びcは同一である。いくつかの他の特定の実施形態においてa及びdは同一であり、かつb及びcは同一である。
【0100】
式(I)においてaとbの合計及びcとdの合計は、所望の特性を有する式(I)の脂質を得るために変化させることができる因子である。一実施形態において、aとbは、合計が14~24の範囲の整数であるように選択される。別の実施形態において、cとdは、合計が14~24の範囲の整数であるように選択される。さらに別の実施形態において、aとbの合計と、cとdの合計は同一である。例えば、いくつかの実施形態においてaとbの合計と、cとdの合計は、いずれも14~24の範囲の同じ整数である。さらなる実施形態において、a、b、c、及びdは、aとbの合計、及びcとdの合計が12以上になるように選択される。式(I)のいくつかの実施形態において、eは1である。いくつかの他の実施形態において、eは2である。
【0101】
式(I)のR1a、R2a、R3a及びR4aの置換基は、特に限定されない。ある特定の実施形態において、R1a、R2a、R3a及びR4aは、各出現においてHである。ある特定の他の実施形態において、少なくとも1つのR1a、R2a、R3a及びR4aはC1-C12アルキルである。ある特定の他の実施形態において、少なくとも1つのR1a、R2a、R3a及びR4aはC1-C8アルキルである。ある特定の他の実施形態において、少なくとも1つのR1a、R2a、R3a及びR4aはC1-C6アルキルである。前述の実施形態のいくつかでは、C1-C8アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル又はn-オクチルである。
【0102】
式(I)のある特定の実施形態において、R1a、R1b、R4a及びR4bは、各出現においてC1-C12アルキルである。式(I)の更なる実施形態において、R1b、R2b、R3b及びR4bの少なくとも1つはHであるか、あるいはR1b、R2b、R3b及びR4bは、各出現においてHである。式(I)のある特定の実施形態において、R1bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。前述の他の実施形態において、R4bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。
【0103】
式(I)のR5及びR6にある置換基は、上記実施形態において、特に限定されない。ある特定の実施形態において、R5又はR6の一方又は両方はメチルである。ある特定の他の実施形態において、R5又はR6の一方又は両方はシクロアルキル例えばシクロヘキシルである。これらの実施形態において、シクロアルキルは、置換されていてもされていなくてもよい。ある特定の他の実施形態において、シクロアルキルは、C1-C12アルキル、例えばtert-ブチルで置換されている。
【0104】
R7における置換基は式(I)の前述の実施形態において特に限定されない。ある特定の実施形態において、少なくとも1つのR7はHである。ある特定の他の実施形態において、R7は、各出現においてHである。ある特定の他の実施形態において、R7はC1-C12アルキルである。式(I)の前述の実施形態のある特定の他のものは、R8又はR9の一方はメチルである。別の実施形態において、R8及びR9の両方がメチルである。式(I)のいくつかの異なる実施形態において、R8及びR9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、5、6又は7員複素環を形成する。前述のいくつかの実施形態において、R8及びR9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、5員複素環、例えばピロリジニル環を形成する。
【0105】
様々な異なる実施形態において、例示的な式(I)の脂質としては、以下のものが挙げられる。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
いくつかの実施形態において、LNPは、式(I)の脂質、少なくとも1つの作用物質、及び中性脂質、ステロイド、ペグ化脂質から選択される1つ又は複数の賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、式(I)の脂質は化合物I-5である。いくつかの実施形態において、式(I)の脂質は化合物I-6である。
【0114】
いくつかの他の実施形態において、LNPのカチオン性脂質成分は、式(II)の構造:
【化9】
【0115】
{式中、
L1及びL2は、各々独立して、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)x-、-S-S-、-C(=O)S-、-SC(=O)-、-NRaC(=O)-、-C(=O)NRa-、-NRaC(=O)NRa、-OC(=O)NRa-、-NRaC(=O)O-、又は直接結合であり;
G1はC1-C2アルキレン、-(C=O)-、-O(C=O)-、-SC(=O)-、-NRaC(=O)-又は直接結合であり;
G2は-C(=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)S-、-C(=O)NRa又は直接結合であり;
G3はC1-C6アルキレンであり;
Raは又はC1-C12アルキルであり;
R1a及びR1bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC1-C12アルキルである;又は(b)R1aは又はC1-C12アルキルであり、そして、R1bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する;
R2a及びR2bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC1-C12アルキルである;又は(b)R2aは又はC1-C12アルキルであり、そして、R2bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する;
R3a及びR3bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC1-C12アルキルである;又は(b)R3aは又はC1-C12アルキルであり、そして、R3bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する;
R4a及びR4bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC1-C12アルキルである;又は(b)R4aは又はC1-C12アルキルであり、そして、R4bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する;
R5及びR6は、各々独立して、H又はメチルであり;
R7はC4-C20アルキルであり;
R8及びR9は、各々独立して、C1-C12アルキルであるが、又はR8及びR9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、5、6又は7員複素環を形成し;
a、b、c及びdは、各々独立して、1~24の整数であり;かつ、
xは0、1又は2である}又はその医薬的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ若しくは立体異性体を有する。
【0116】
式(II)のいくつかの実施形態において、L1及びL2は、各々独立して、-O(C=O)-、-(C=O)O-又は直接結合である。別の実施形態において、G1及びG2は、各々独立して、-(C=O)-又は直接結合である。いくつかの異なる実施形態において、L1及びL2は、各々独立して、-O(C=O)-、-(C=O)O-又は直接結合であり;かつ、G1及びG2は、各々独立して、-(C=O)-又は直接結合である。
【0117】
式(II)のいくつかの異なる実施形態において、L1及びL2は、各々独立して、-C(=O)-、-O-、-S(O)x-、-S-S-、-C(=O)S-、-SC(=O)-、-NRa-、-NRaC(=O)-、-C(=O)NRa-、-NRaC(=O)NRa、-OC(=O)NRa-、-NRaC(=O)O-、-NRaS(O)xNRa-、-NRaS(O)x-又は-S(O)xNRa-である。
【0118】
式(II)の前述の実施形態の別の例では、脂質化合物は、以下の構造(IIA)又は(IIB):
【化10】
のいずれかを有する。
【0119】
式(II)のいくつかの実施形態において、脂質化合物は構造(IIA)を有する。別の実施形態において、脂質化合物は構造(IIB)を有する。
【0120】
式(II)の前述の実施形態のいずれかでは、L1又はL2の一方は-O(C=O)-である。例えば、いくつかの実施形態において、L1及びL2の各々は-O(C=O)-である。
式(II)のいくつかの異なる実施形態において、L1又はL2の一方は-(C=O)O-である。例えば、いくつかの実施形態において、L1及びL2の各々は-(C=O)O-である。
式(II)の別の実施形態において、L1又はL2の一方は直接結合である。本明細書で使用する場合、「直接結合」は、基(例えば、L1又はL2)が不在であることを意味する。例えば、いくつかの実施形態において、L1及びL2の各々は直接結合である。
【0121】
式(II)の更に別の実施形態において、R1aとR1bの少なくとも1つの出現では、R1aはH又はC1-C12アルキルであり、そしてR1bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。式(II)のまた更に別の実施形態において、R4aとR4bの少なくとも1つの出現では、R4aはH又はC1-C12アルキルであり、そしてR4bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。式(II)の更なる実施形態において、R2aとR2bの少なくとも1つの出現では、R2aはH又はC1-C12アルキルであり、そしてR2bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。式(II)の更に別の実施形態において、R3aとR3bの少なくとも1つの出現では、R3aはH又はC1-C12アルキルであり、そしてR3bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。
【0122】
式(II)の別の様々な実施形態において、脂質化合物は、以下の構造(IIC)又は(IID):
【化11】
{式中、e、f、g及びhは、各々独立して、1~12の整数である}のいずれかを有する。
【0123】
式(II)のいくつかの実施形態において、脂質化合物は構造(IIC)を有する。別の実施形態において、脂質化合物は構造(IID)を有する。
【0124】
構造(IIC)又は(IID)の様々な実施形態において、e、f、g及びhは、各々独立して、4~10の整数である。
【0125】
式(II)のある特定の実施形態において、a、b、c及びdは、各々独立して、2~12の整数又は4~12の整数である。別の実施形態において、a、b、c及びdは、各々独立して、8~12又は5~9の整数である。いくつかの特定の実施形態において、aは0である。いくつかの実施形態において、aは1である。別の実施形態において、aは2である。更なる実施形態において、aは3である。更なる別の実施形態において、aは4である。いくつかの実施形態において、aは5である。別の実施形態において、aは6である。更なる実施形態において、aは7である。更なる別の実施形態において、aは8である。いくつかの実施形態において、aは9である。別の実施形態において、aは10である。更なる実施形態において、aは11である。更なる別の実施形態において、aは12である。いくつかの実施形態において、aは13である。別の実施形態において、aは14である。更なる実施形態において、aは15である。更なる別の実施形態において、aは16である。
【0126】
式(II)のいくつかの実施形態において、bは1である。別の実施形態において、bは2である。更なる実施形態において、bは3である。更なる別の実施形態において、bは4である。いくつかの実施形態において、bは5である。別の実施形態において、bは6である。更なる実施形態において、bは7である。更なる別の実施形態において、bは8である。いくつかの実施形態において、bは9である。別の実施形態において、bは10である。更なる実施形態において、bは11である。更なる別の実施形態において、bは12である。いくつかの実施形態において、bは13である。別の実施形態において、bは14である。更なる実施形態において、bは15である。更なる別の実施形態において、bは16である。
【0127】
式(II)のいくつかの実施形態において、cは1である。別の実施形態において、cは2である。更なる実施形態において、cは3である。更なる別の実施形態において、cは4である。いくつかの実施形態において、cは5である。別の実施形態において、cは6である。更なる実施形態において、cは7である。更なる別の実施形態において、cは8である。いくつかの実施形態において、cは9である。別の実施形態において、cは10である。更なる実施形態において、cは11である。更なる別の実施形態において、cは12である。いくつかの実施形態において、cは13である。別の実施形態において、cは14である。更なる実施形態において、cは15である。更なる別の実施形態において、cは16である。
【0128】
式(II)のいくつかの特定の実施形態において、dは0である。いくつかの実施形態において、dは1である。別の実施形態において、dは2である。更なる実施形態において、dは3である。更なる別の実施形態において、dは4である。いくつかの実施形態において、dは5である。別の実施形態において、dは6である。更なる実施形態において、dは7である。更なる別の実施形態において、dは8である。いくつかの実施形態において、dは9である。別の実施形態において、dは10である。更なる実施形態において、dは11である。更なる別の実施形態において、dは12である。いくつかの実施形態において、dは13である。別の実施形態において、dは14である。更なる実施形態において、dは15である。更なる別の実施形態において、dは16である。
【0129】
式(II)のいくつかの実施形態において、eは1である。別の実施形態において、eは2である。更なる実施形態において、eは3である。更なる別の実施形態において、eは4である。いくつかの実施形態において、eは5である。別の実施形態において、eは6である。更なる実施形態において、eは7である。更なる別の実施形態において、eは8である。いくつかの実施形態において、eは9である。別の実施形態において、eは10である。更なる実施形態において、eは11である。更なる別の実施形態において、eは12である。
【0130】
式(II)のいくつかの実施形態において、fは1である。別の実施形態において、fは2である。更なる実施形態において、fは3である。更なる別の実施形態において、fは4である。いくつかの実施形態において、fは5である。別の実施形態において、fは6である。更なる実施形態において、fは7である。更なる別の実施形態において、fは8である。いくつかの実施形態において、fは9である。別の実施形態において、fは10である。更なる実施形態において、fは11である。更なる別の実施形態において、fは12である。
【0131】
式(II)のいくつかの実施形態において、gは1である。別の実施形態において、gは2である。更なる実施形態において、gは3である。更なる別の実施形態において、gは4である。いくつかの実施形態において、gは5である。別の実施形態において、gは6である。更なる実施形態において、gは7である。更なる別の実施形態において、gは8である。いくつかの実施形態において、gは9である。別の実施形態において、gは10である。更なる実施形態において、gは11である。更なる別の実施形態において、gは12である。
【0132】
式(II)のいくつかの実施形態において、hは1である。別の実施形態において、eは2である。更なる実施形態において、hは3である。更なる別の実施形態において、hは4である。いくつかの実施形態において、eは5である。別の実施形態において、hは6である。更なる実施形態において、hは7である。更なる別の実施形態において、hは8である。いくつかの実施形態において、hは9である。別の実施形態において、hは10である。更なる実施形態において、hは11である。更なる別の実施形態において、hは12である。
【0133】
式(II)の他のいくつかの様々な実施形態において、a及びdは同一である。いくつかの他の実施形態において、b及びcは同一である。いくつかの他の特定の実施形態において、a及びdは同一であり、かつb及びcは同一である。
【0134】
式(II)においてaとbの合計及びcとdの合計は、所望の特性を有するの脂質を得るために変化させることができる因子である。一実施形態において、aとbは、合計が14~24の範囲の整数であるように選択される。別の実施形態において、cとdは、合計が14~24の範囲の整数であるように選択される。さらに別の実施形態において、aとbの合計と、cとdの合計は同一である。例えば、いくつかの実施形態においてaとbの合計と、cとdの合計は、いずれも14~24の範囲の同じ整数である。さらなる実施形態において、a、b、c、及びdは、aとbの合計、及びcとdの合計が12以上になるように選択される。
【0135】
式(II)のR1a、R2a、R3a及びR4aにおける置換基は、特に限定されない。いくつかの実施形態において、R1a、R2a、R3a及びR4aの少なくとも1つはHである。特定の実施形態において、R1a、R2a、R3a及びR4aは、各出現においてHである。特定の他の実施形態において、R1a、R2a、R3a及びR4aの少なくとも1つはC1-C12アルキルである。特定の他の実施形態において、R1a、R2a、R3a及びR4aの少なくとも1つはC1-C8アルキルである。特定の他の実施形態において、R1a、R2a、R3a及びR4aの少なくとも1つはC1-C6アルキルである。前述の実施形態のいくつかでは、C1-C8アルキルはメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル又はn-オクチルである。
【0136】
式(II)の特定の実施形態において、R1a、R1b、R4a及びR4bは、各出現においてC1-C12アルキルである。
【0137】
式(II)の更なる実施形態において、R1b、R2b、R3b及びR4bの少なくとも1つはHであるか、又はR1b、R2b、R3b及びR4bは、各出現においてHである。
【0138】
式(II)の特定の実施形態において、R1bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。前述の他の実施形態において、R4bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。
【0139】
式(II)のR5及びR6における置換基は、上記実施形態において、特に限定されない。特定の実施形態において、R5又はR6の一方はメチルである。他の実施形態において、R5又はR6の各々はメチルである。
【0140】
式(II)のR7における置換基は、上記実施形態において、特に限定されない。特定の実施形態において、R7はC6-C16アルキルである。いくつかの他の実施形態において、R7はC6-C9アルキルである。これらの実施形態のいくつかでは、R7は-(C=O)ORb、-O(C=O)Rb、-C(=O)Rb、-ORb、-S(O)xRb、-S-SRb、-C(=O)SRb、-SC(=O)Rb、-NRaRb、-NRaC(=O)Rb、-C(=O)NRaRb、-NRaC(=O)NRaRb、-OC(=O)NRaRb、-NRaC(=O)ORb、-NRaS(O)xNRaRb、-NRaS(O)xRb又は-S(O)xNRaRbで置換され、式中、RaはH又はC1-C12アルキルであり;RbはC1-C15アルキルであり;かつ、xは0、1又は2である。例えば、いくつかの実施形態においてR7は-(C=O)ORb又は-O(C=O)Rbで置換される。
【0141】
式(II)の前述の様々な実施形態において、R
bは分岐C
1-C
15アルキルである。例えば、いくつかの実施形態においてR
bは、以下の構造:
【化12】
のいずれかを有する。
【0142】
式(II)の前述の実施形態の他の特定のものは、R8又はR9の一方がメチルである。別の実施形態において、R8及びR9の両方がメチルである。
【0143】
式(II)のいくつかの異なる実施形態において、R8及びR9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、5、6又は7員複素環を形成する。前述のいくつかの実施形態において、R8及びR9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、5員複素環、例えばピロリジニル環を形成する。前述のいくつかの他の実施形態において、R8及びR9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、6員複素環、例えばピペラジニル環を形成する。
【0144】
式(II)の前述の脂質のさらに他の実施形態において、G3はC2-C4アルキレン、例えばC3アルキレンである。
【0145】
様々な異なる実施形態において、脂質化合物は、以下の構造のうちのいずれかを有する:
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
いくつかの実施形態において、LNPは、式(II)の脂質、少なくとも1つの作用物質、及び中性脂質、ステロイド、及びペグ化脂質から選択される1つ又は複数の賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、式(II)の脂質は化合物II-9である。いくつかの実施形態において、式(II)の脂質は化合物II-10である。いくつかの実施形態において、式(II)の脂質は化合物II-11である。いくつかの実施形態において、式(II)の脂質は化合物II-12である。いくつかの実施形態において、式(II)の脂質は化合物II-32である。
【0153】
いくつかの他の実施形態において、LNPのカチオン性脂質成分は式(III)の構造:
【化14】
【0154】
{式中、
L1又はL2の一方は、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)x-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRaC(=O)-、-C(=O)NRa-、NRaC(=O)NRa-、-OC(=O)NRa-又は-NRaC(=O)O-であり、L1又はL2の他方は-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)x-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NRaC(=O)-、-C(=O)NRa-、NRaC(=O)NRa-、-OC(=O)NRa-又は-NRaC(=O)O-又は直接結合であり;
G1及びG2は、各々独立して、非置換C1-C12アルキレン又はC1-C12アルケニレンであり;
G3は、C1-C24アルキレン、C1-C24アルケニレン、C3-C8シクロアルキレン、C3-C8シクロアルケニレンであり;
Raは、H又はC1-C12アルキルであり;
R1及びR2は、各々独立して、C6-C24アルキル又はC6-C24アルケニルであり;
R3は、H、OR5、CN、-C(=O)OR4、-OC(=O)R4又は-NR5C(=O)R4であり;
R4は、C1-C12アルキルであり;
R5は、H又はC1-C6アルキルであり;かつ、
xは0、1又は2である}又はその医薬的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ若しくは立体異性体を有する。
【0155】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、脂質は、以下の構造(IIIA)又は(IIIB):
【化15】
【0156】
{式中、
Aは、3~8員環のシクロアルキル又はシクロアルキレン環であり;
R6は、各出現毎に、独立してH、OH又はC1-C24アルキルであり;
nは1~15の範囲の整数である}のうちの一つを有する。
【0157】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、脂質は構造(IIIA)を有し、他の実施形態において、脂質は構造(IIIB)を有する。
【0158】
式(III)の他の実施形態において、脂質は、以下の構造(IIIC)又は(IIID):
【化16】
{式中、y及びzは、各々独立して、1~12の範囲の整数である}のうちの一つを有する。
【0159】
式(III)の前述の実施形態のいずれかでは、L1又はL2の一方は-O(C=O)-である。例えば、いくつかの実施形態において、L1及びL2の各々は-O(C=O)-である。前述のいずれかのいくつかの異なる実施形態において、L1及びL2は、各々独立して、-(C=O)O-又は-O(C=O)-である。例えば、いくつかの実施形態において、L1及びL2の各々は-(C=O)O-である。
【0160】
式(III)のいくつかの異なる実施形態において、脂質は、以下の構造(IIIE)又は(IIIF):
【化17】
のうちの一つを有する。
【0161】
式(III)のいくつかの異なる実施形態において、脂質は、以下の構造(IIIG)、(IIIH)、(IIII)、又は(IIIJ):
【化18】
のうちの一つを有する。
【0162】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、nは、2~12、例えば2~8又は2~4の範囲の整数である。例えば、いくつかの実施形態において、nは3、4、5又は6である。いくつかの実施形態において、nは3である。いくつかの実施形態において、nは4である。いくつかの実施形態において、nは5である。いくつかの実施形態において、nは6である。
【0163】
式(III)のいくつかの他の前述の実施形態において、y及びzは、各々独立して、2~10の範囲の整数である。例えば、いくつかの実施形態において、y及びzは、各々独立して、4~9又は4~6の範囲の整数である。
【0164】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、R6はHである。前述の他の実施形態において、R6はC1-C24アルキルである。別の実施形態において、R6はOHである。
【0165】
式(III)のいくつかの実施形態において、G3は非置換である。別の実施形態において、G3は置換されている。様々な異なる実施形態において、G3は直鎖C1-C24アルキレン又は直鎖C1-C24アルケニレンである。
【0166】
式(III)のいくつかの他の前述の実施形態において、R
1又はR
2の一方、又はいすれもがC
6-C
24アルケニルである。例えば、いくつかの実施形態において、R
1及びR
2は、それぞれ、独立して以下の構造:
【化19】
【0167】
{式中、
R7a及びR7bは、各々に関し、独立して、H又はC1-C12アルキルであり;かつ、
aは2~12の整数であり、
ここで、R7a、R7b及びaは、各々R1及びR2が各々独立して6~20個の炭素原子を含むように選択される。例えば、いくつかの実施形態においてaは5~9又は8~12の範囲の整数である}を有する。
【0168】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、R7aは少なくとも1つの出現ではHである。例えば、いくつかの実施形態において、R7aは各出現においてHである。前述の他の異なる実施形態において、R7bは少なくとも1つの出現ではC1-C8アルキルである。例えば、いくつかの実施形態において、C1-C8アルキルはメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル又はn-オクチルである。
【0169】
式(III)の別の実施形態において、R
1又はR
2、あるいはその両方が、以下の構造:
【化20】
のいずれかを有する。
【0170】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、R3はOH、CN、-C(=O)OR4、-OC(=O)R4又は-NHC(=O)R4である。いくつかの実施形態において、R4はメチル又はエチルである。
【0171】
様々な異なる実施形態において、式(III)のカチオン性脂質は、以下の表3に示す構造のいずれかを有する:
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
いくつかの実施形態において、LNPは、式(III)の脂質、少なくとも1つの作用物質、並びに任意の、中性脂質、ステロイド及びペグ化脂質から選択される1つ又は複数の賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、式(III)の脂質は化合物III-3である。いくつかの実施形態において、式(III)の脂質は化合物III-7である。
【0179】
特定の実施形態において、カチオン性脂質は、約30~約95モルパーセントの量でLNPに存在する。一実施形態において、カチオン性脂質は、約30~約70モルパーセントの量でLNPに存在する。一実施形態において、カチオン性脂質は、約40~約60モルパーセントの量でLNPに存在する。一実施形態において、カチオン性脂質は、約50モルパーセントの量でLNPに存在する。一実施形態において、LNPは、カチオン性脂質のみで構成される。
【0180】
いくつかの実施形態において、LNPは、粒子の形成中にその形成を安定させる1つ又は複数の追加の脂質を含む。
【0181】
好適な安定化脂質として、中性脂質とアニオン性脂質が挙げられる。
【0182】
「中性脂質」という用語は、生理学的pHで非荷電又は中性の両性イオンの形で存在する多くの脂質種の任意のものを指す。代表的な中性脂質として、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、及びセレブロシドが挙げられる。
【0183】
例示的な中性脂質として以下のものが挙げられる:例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-trans PE、1-ステアリオイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、及び1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(transDOPE)。一実施形態において、中性脂質は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である。
【0184】
いくつかの実施形態において、LNPは、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPE、及びSMから選択される中性脂質を含む。様々な実施形態において、カチオン性脂質(例えば、式(I)の脂質)と中性脂質のモル比は、約2:1~約8:1の範囲である。
【0185】
様々な実施形態において、LNPはさらに、ステロイド又はステロイド類似体を含む。「ステロイド」は、次の炭素骨格を含む化合物である。
【化22】
【0186】
特定の実施形態において、ステロイド又はステロイド類似体はコレステロールである。これらの実施形態いくつかでは、カチオン性脂質(例えば、式(I)の脂質)とコレステロールのモル比は、約2:1~約1:1の範囲である。
【0187】
「アニオン性脂質」という用語は、生理学的pHで負に帯電した脂質を指す。このような脂質として、以下の:ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、及び他のアニオン性修飾基が結合した中性脂質が挙げられる。
【0188】
特定の実施形態において、LNPは糖脂質(例えば、モノシアロガングリオシドGM1)を含む。特定の実施形態において、LNPは、コレステロールなどのステロールを含む。
【0189】
いくつかの実施形態において、LNPは脂質が結合したポリマーを含む。「脂質結合ポリマー」という用語は、脂質部分とポリマー部分の両方を含む分子を指す。脂質が結合したポリマーの一例は、ペグ化脂質である。「ペグ化脂質」という用語は、脂質部分とポリエチレングリコール部分の両方を含む分子を指す。ペグ化脂質は当技術分野で知られており、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)などが挙げられる。
【0190】
特定の実施形態において、LNPは、ポリエチレングリコール-脂質(ペグ化脂質)である追加の安定化脂質を含む。好適なポリエチレングリコール-脂質として、以下のものが挙げられる:PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド(例えば、PEG-CerC14又はPEG-CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール。代表的なポリエチレングリコール-脂質として、PEG-c-DOMG、PEG-c-DMA、及びPEG-s-DMGが挙げられる。一実施形態において、ポリエチレングリコール-脂質はN-[(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバミル]-1,2-ジミリスタチルプロピル-3-アミン(PEG-c-DMA)である。一実施形態において、ポリエチレングリコール-脂質はPEG-c-DOMG)である。別の実施形態において、LNPは、以下が挙げられる:ペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、例えば、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEGスクシネートジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、例えば、4-O-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG)、ペグ化セラミド(PEG-cer)、又はPEGジアルコキシプロピルカルバメート、例えば、ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル)カルバメート又は2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル-N-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバメート。様々な実施形態において、カチオン性脂質とペグ化脂質のモル比は、約100:1~約25:1の範囲である。
【0191】
いくつかの実施形態において、LNPは、次の構造(IV):
【化23】
【0192】
{式中、
R10及びR11は、各々独立して、10~30個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖であり、式中、該アルキル鎖は、場合により1つ又は複数のエステル結合が介在する;かつ
zの平均値は30~60である}を有するペグ化脂質、又はその医薬的に許容される塩、互変異性体若しくは立体異性体を含む。
【0193】
ペグ化脂質(IV)の前述の実施形態のいくつかでは、zが42であるときR10及びR11はいずれもn-オクタデシルではない。いくつかの他の実施形態において、R10及びR11は、各々独立して、10~18個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖である。いくつかの実施形態において、R10及びR11は、各々独立して、12~16個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖である。いくつかの実施形態において、R10及びR11は、各々独立して、12個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖である。いくつかの実施形態において、R10及びR11は、各々独立して、14個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖である。別の実施形態において、R10及びR11は、各々独立して、16個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖である。更なる実施形態において、R10及びR11は、各々独立して、18個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖である。更なる別の実施形態において、R10は12個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖であり、かつR11は14個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖である。
【0194】
様々な実施形態において、zは、(II)のPEG部分の平均分子量が約400~約6000g/molになるように選択される範囲にある。いくつかの実施形態において、zの平均は約45である。
【0195】
別の実施形態において、ペグ化脂質は、以下の構造:
【化24】
{式中、nはペグ化脂質の平均分子量が約2500g/molになるように選択される整数である}のいずれかを有する。
【0196】
特定の実施形態において、追加の脂質は、約1~約10モルパーセントの量でLNPに存在する。一実施形態において、追加の脂質は、約1~約5モルパーセントの量でLNPに存在する。一実施形態において、追加の脂質は、約1モルパーセント又は約1.5モルパーセントの量でLNPに存在する。
【0197】
いくつかの実施形態において、LNPは、式(I)の脂質、ヌクレオシド修飾RNA、中性脂質、ステロイド及びペグ化脂質を含む。いくつかの実施形態において、式(I)の脂質は化合物I-6である。異なる実施形態において、中性脂質はDSPCである。別の実施形態において、ステロイドはコレステロールである。更に異なる実施形態において、ペグ化脂質は化合物IVaである。
【0198】
特定の実施形態において、LNPは、該LNPを幹細胞又は幹細胞集団に標的化する1つ又は複数の標的部分を含む。例えば、一実施形態において、標的化ドメインは、LNPを幹細胞表面にある受容体に誘導するリガンドである。
【0199】
例示的なLNP及びそれらの製造は、当技術分野で説明されており、例えばこれらはそれぞれ参照により全体が組み込まれている以下の文献:米国特許出願公開番号第US20120276209号, Semple et al., 2010, Nat Biotechnol., 28(2):172-176; Akinc et al., 2010, Mol Ther., 18(7): 1357-1364; Basha et al., 2011, Mol Ther, 19(12): 2186-2200; Leung et al., 2012, J Phys Chem C Nanomater Interfaces, 116(34): 18440-18450; Lee et al., 2012, Int J Cancer., 131(5): E781-90; Belliveau et al., 2012, Mol Ther nucleic Acids, 1: e37; Jayaraman et al., 2012, Angew Chem Int Ed Engl., 51(34): 8529-8533; Mui et al., 2013, Mol Ther Nucleic Acids. 2, e139; Maier et al., 2013, Mol Ther., 21(8): 1570-1578;及びTam et al., 2013, Nanomedicine, 9(5): 665-74、に記載されている。
【0200】
次の反応スキームは、式(I)、(II)又は(III)の脂質を製造する方法を説明する。
【0201】
【0202】
式(I)の脂質(例えば、化合物A-5)の実施形態は、一般的な反応スキーム1(「方法A」)に従って調製でき、式中Rは飽和又は不飽和C1-C24アルキル又は飽和又は不飽和シクロアルキルであり、mは0又は1であり、かつnは1~24の整数である。一般的な反応スキーム1に関し、構造A-1の化合物は、市場の供給元から購入でき、あるいは当業者によく知られている方法に従って調製することもできる。A-1、A-2、及びDMAPの混合物をDCCで処理して、ブロミドA-3を生成する。ブロミドA-3、塩基(例えば、N、N-ジイソプロピルエチルアミン)及びN、N-ジメチルジアミンA-4の混合物を十分な温度と時間で加熱し、任意の必要な後処理及び/又は精製ステップの後A-5を生成する。
【0203】
【0204】
式(I)の化合物の別の実施形態(例えば、化合物B-5)は、一般的な反応スキーム2(「方法B」)に従って調製でき、式中Rは飽和又は不飽和C1-C24アルキル又は飽和又は不飽和シクロアルキルであり、mは0又は1であり、かつnは1~24の整数である。一般的な反応スキーム2に示すように、構造B-1の化合物は、市場の供給元から購入でき、あるいは当業者によく知られている方法に従って調製することもできる。B-1(1当量)の溶液を酸塩化物B-2(1当量)と塩基(例えば、トリエチルアミン)で処理する。粗生成物を酸化剤(例えば、クロロクロム酸ピリジニウム)で処理し、中間生成物B-3を回収する。次に、粗B-3、酸(例えば、酢酸)、及びN、N-ジメチルアミノアミンB-4の溶液を還元剤(例えば、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド)で処理し、任意の必要な後処理及び/又は精製の後B-5を得る。
【0205】
出発物質A-1及びB-1は飽和メチレン炭素のみを含むものとして上に示されているが、炭素-炭素二重結合を含む出発物質も炭素-炭素二重結合を含む化合物の調製に使用できることに留意すべきである。
【0206】
【0207】
式(I)の脂質の異なる実施形態(例えば、化合物C-7又はC9)は、一般的な反応スキーム3(「方法C」)に従って調製でき、式中Rは飽和又は不飽和C1-C24アルキル又は飽和又は不飽和シクロアルキルであり、mは0又は1であり、かつnは1~24の整数である。一般的な反応スキーム3に関し、構造C-1の化合物は、市場の供給元から購入でき、あるいは当業者によく知られている方法に従って調製することもできる。
【0208】
【0209】
式(II)の化合物の実施形態(例えば、化合物D-5及びD-7)は、一般的な反応スキーム4(「方法D」)に従って調製でき、式中R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、R5、R6、R8、R9、L1、L2、G1、G2、G3、a、b、c及びdは本明細書で定義されているとおりであり、R7’はR7又はC3-C19アルキルを表す。一般的な反応スキーム1に関し、構造D-1及びD-2の化合物は、市場の供給元から購入でき、あるいは当業者によく知られている方法に従って調製することもできる。D-1とD-2の溶液を還元剤(例えば、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド)で処理し、必要な後処理の後D-3を得る。D-3と塩基(例えば、トリメチルアミン、DMAP)の溶液を塩化アシルD-4(又はカルボン酸とDCC)で処理し、任意の必要な後処理及び/又は精製の後、D-5を得る。D-5はLiAlH4 D-6で還元し、任意の必要な後処理及び/又は精製の後、D-7とすることができる。
【0210】
【0211】
式(II)の脂質の実施形態(例えば、化合物E-5)は、一般的な反応スキーム5(「方法E」)に従って調製でき、式中R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R4a、R4b、R5、R6、R7、R8、R9、L1、L2、G3、a、b、c及びdは本明細書に記載の通りである。一般的な反応スキーム2に関し、構造E-1及びE-2の化合物は、市場の供給元から購入でき、あるいは当業者によく知られている方法に従って調製することもできる。E-1(過剰)、E-2及び塩基(例えば、炭酸カリウム)の混合物を加熱して、必要な後処理の後、E-3を得る。E-3と塩基(例えば、トリメチルアミン、DMAP)の溶液を塩化アシルE-4(又はカルボン酸とDCC)で処理し、任意の必要な後処理及び/又は精製の後、E-5を得る。
【0212】
【0213】
一般的な反応スキーム6は、式(III)の脂質の調製のための例示的な方法(方法F)を提供する。一般的な反応スキーム6におけるG1、G3、R1及びR3は式(III)について本明細書に記載した通りであり、G1´は、G1の1炭素の短いホモログを指す。構造F-1の化合物は、購入されるか又は当該技術分野で既知の方法に従って調製される。適切な縮合条件下(例、DCC)でF-1とジオールF-2を反応させると、エステル/アルコールF-3が生成され、これをアルデヒドF-4に酸化(例、PCC)できる。還元的アミノ化条件下でF-4とアミンF-5を反応させると、式(III)の脂質が得られる。
【0214】
式(III)の脂質の調製のための様々な代替戦略が当業者に利用可能であることに留意すべきである。例えば、L1及びL2がエステル以外の式(III)の他の脂質が、適切な出発原料を使用して、類似の方法に従って調製できる。さらに、一般的な反応スキーム6は、G1とG2が同一である式(III)の脂質の調製を示すが、しかしながら、これは本発明の必須の態様においてなく、G1とG2が異なる化合物を生成するために上記反応スキームの変更が可能である。
【0215】
本明細書に記載のプロセスにおいて、中間体化合物の官能基は、好適な保護基によって保護される必要があるかもしれないことが、当業者によって理解されるであろう。斯かる官能基には、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、及びカルボン酸が挙げられる。好適な保護基には、以下のもの:トリアルキルシリル又はジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル又はトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジルなど、が挙げられる。アミノ、アミジノ及びグアニジノに好適な保護基には、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが挙げられる。メルカプトに好適な保護基には、-C(O)-R”(式中、R”はアルキル、アリール又はアリールアルキルである)、p-メトキシベンジル、トリチルなどが挙げられる。カルボン酸に好適な保護基には、アルキル、アリール又はアリールアルキルエステルが挙げられる。保護基は、当業者に知られており、本明細書に記載されている標準的な技術に従って追加又は除去することができる。保護基の使用については、Green, T.W. and P.G.M. Wutz, Protective Groups in Organic Synthesis (1999), 3rd Ed., Wileyに詳述されている。当業者が理解するように、保護基は、Wang樹脂、Rink樹脂又は2-クロロトリチルクロリド樹脂のようなポリマー樹脂であってもよい。
【0216】
作用物質
一実施形態において、送達ビヒクルは、少なくとも1つの作用物質を含む。いくつかの実施形態において、作用物質は、治療薬、イメージング剤、診断用薬、造影剤、標識薬剤、検出剤又は消毒薬である。作用物質としてはまた、例えば、香料、甘味料、着香料及び香料増強剤、pH調整剤、発泡剤、皮膚軟化剤、膨張剤、可溶性有機塩、透過処理剤、抗酸化剤、着色料又は染色剤など、活性な有効成分であると典型的に見なされていない生物学的活性を有する物質も挙げられる。
【0217】
一実施形態において、送達ビヒクルは、少なくとも1つの治療薬を含む。本発明は、いずれか特定の治療薬に限定されることなく、むしろ送達ビヒクルに含まれ得る任意の好適な治療薬も包含する。例示的な治療薬としては、これだけに限定されるものではないが、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗酸化剤、血栓溶解剤、化学療法薬、抗炎症薬、免疫原性の剤、防腐剤、麻酔薬、鎮痛剤、医薬剤、小分子、ペプチド、核酸など、が挙げられる。
【0218】
いくつかの実施形態において、本発明のLNP又はナノ粒子組成物はさらに核酸を含む。様々な実施形態において、核酸は、mRNA、自己複製RNA、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、DNA、DNA-RNAハイブリッド、遺伝子編集成分(例えば、ガイドRNA、tracr RNA、sgRNA、mRNAをコードするRNA-誘導ヌクレアーゼ、遺伝子又は塩基編集タンパク質、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Talen、Cas9などのCRISPRヌクレアーゼ、挿入されるか又は修復の鋳型としての役割を果たすDNA分子)など、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、mRNAは、遺伝子編集又は塩基編集タンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、核酸はガイドRNAである。より一層更なる実施形態において、mRNAは、生物学的反応修飾物質、ケモカイン、サイトカイン、γ鎖受容体サイトカイン、例えば、IL-2、IL-7、IL-15、及びIL-21など、又は免疫チェックポイント作動薬若しくは拮抗薬をコードする。いくつかの実施形態において、LNP又はtLNPは、遺伝子又は塩基編集タンパク質をコードするmRNA及び1若しくは複数のガイドRNAの両方を含む。CRISPRヌクレアーゼは、変更された活性を有してもよく、例えば、それが二本鎖切断をする代わりにニッカーゼであるように、又はそれがガイドRNAによって特定される配列を結合するが、酵素活性を持たないように、ヌクレアーゼを修飾する。塩基編集タンパク質は、デアミナーゼドメインと配列特異的DNA結合ドメイン(不活性なCRISPRヌクレアーゼなど)を含む融合タンパク質であることが多い。代替の実施形態において、LNP又はナノ粒子は、RNA誘導ヌクレアーゼ及びガイドRNAをコードするmRNAを含むよりむしろ、リボヌクレオタンパク質、すなわち、RNA誘導ヌクレアーゼに結合されたガイドRNAを含む複合体を含む。他の実施形態において、ナノ粒子は、RNAと逆転写酵素を含む。更に他の実施形態において、LNP又はナノ粒子は、ウイルス粒子、ウイルス様粒子、又はヌクレオカプシドを含む。
【0219】
イメージング剤
一実施形態において、送達ビヒクルはイメージング剤を含む。イメージング剤は、細胞又は組織に晒された後に送達ビヒクルが可視化されることを可能にする物質である。視覚化とは、肉眼のための画像化、並びに、通常、目では視ることができず、器具又は検出情報を用いて検出する必要があり、かつ、光子、音波若しくはその他のエネルギー量子の検出を必要とする画像化を含めた画像化を包含する。例としては、染色、生体染色色素、蛍光マーカー、放射性マーカー、酵素、又はマーカー若しくは酵素をコードするプラスミド構築物が挙げられる。送達ビヒクルで使用され得る画像化及び標的化のための多くの材料及び方法は、Handbook of Targeted delivery of Imaging Agents, Torchilin, ed. (1995) CRC Press, Boca Raton, Flaで提供される。
【0220】
分子画像化に基づく視覚化は、典型的に組織、細胞、又は分子レベルでの生物学的プロセス又は生物学的分子を検出することを伴う。分子画像化は、遺伝子治療に関する特定の標的、細胞ベースの治療法を評価するため、及び診断又は研究手段としての病的状態を視覚化するために使用できる。細胞内で送達されることができるイメージング剤は特に有用であるが、なぜなら、斯かる作用物質は細胞内活性又は状態を評価するのに使用できるからである。イメージング剤は、有効になるようにそれらの標的に到達しなければならない;これにより、いくつかの実施形態において、細胞による効果的な取り込みが望ましい。急速な取り込みはまた、RESを避けるためにも望ましい、Allport and Weissleder, Experimental Hematology 1237-1246 (2001)の総説を参照のこと。
【0221】
更に、イメージング剤は、好ましくは、直接であるか、又は特定の標的に関連するシグナルを増強する効率的な増幅技術によるかに関わらず、それらが少量で検出され得るように、高いシグナル対ノイズ比を提供しなければならない。増幅ストラテジーは、Allport and Weissleder, Experimental Hematology 1237-1246 (2001)で概説されており、例えば、アビジン-ビオチン結合システム、変換されたリガンドである、標的によって結合された後に物理的挙動を変更するプローブの捕捉、及び緩和率の活用を含む。画像化技術の例としては、核磁気共鳴撮像法、放射性核種撮像法、コンピュータ断層撮像法、超音波、及び光学撮像法が挙げられる。
【0222】
本明細書に示されている送達ビヒクルは、例えばイメージング剤を送達ビヒクルに組み込むことにより、様々なイメージング技術又は戦略において有利に使用することができる。多くのイメージング技術と戦略が知られている。例えばAllport and Weissleder, Experimental Hematology 1237-1246 (2001)の中のレビューを参照のこと;このような戦略を送達ビヒクルとともに使用するのに適したようにすることができる。適切なイメージング剤に含まれるのは、例えば蛍光分子、標識された抗体、標識されたアビジン:ビオチン結合剤、コロイド状金属(例えば金、銀)、レポーター酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ)、超常磁性トランスフェリン、第2のレポーター系(例えばチロシナーゼ)、及び常磁性キレートである。
【0223】
いくつかの実施形態において、イメージング剤は磁気共鳴イメージング造影剤である。磁気共鳴イメージング剤の非限定的な例に含まれるのは、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N”N’”-四酢酸(DOTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデキサン-N,N’,N”,N’”-テトラエチルリン(DOTEP)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N”-三酢酸(DOTA)、及びこれらの誘導体である(米国特許第5,188,816号、同第5,219,553号、同第5,358,704号を参照のこと)。いくつかの実施形態において、イメージング剤はX線造影剤である。本分野ですでに知られているX線造影剤に含まれるのは、多数のハロゲン化誘導体、特に5-アミノ-イソフタル酸のヨード化誘導体である。
【0224】
小分子治療薬
様々な実施形態において、作用物質は治療薬である。様々な実施形態において、治療薬は小分子である。治療薬が小分子であるとき、その小分子は、当業者に知られている標準的な方法を利用して取得することができる。斯かる方法には化学的有機合成又は生物学的手段が含まれる。生物学的手段には、本分野で周知の方法を用いる生物供給源からの精製、組み換え合成、及びインビトロ翻訳系が含まれる。一実施形態において、小分子治療薬には、有機分子、無機分子、生体分子、合成分子などが含まれる。
【0225】
多彩な疾患と状態の治療に有用である可能性がある分子的に多様な化合物のコンビナトリアルライブラリと、それらライブラリを作製する方法は、本分野でよく知られている。この方法では当業者に周知の多彩な技術を利用することができる。技術に含まれるのは、固相合成、溶液法、複数の単一化合物の並列合成、化学的混合物の合成、堅固なコア構造、可撓性線状配列、デコンボリューション戦略、タグ付け技術、及びリード発見のためのバイアスのない分子ランドスケープの生成とリード開発のためのバイアス有り構造の対比である。本発明のいくつかの実施形態において、治療薬はコンビナトリアル技術を利用して合成及び/又は同定される。
【0226】
小ライブラリ合成のための一般的な1つの方法では、1個の活性化されたコア分子が多数の建築ブロックとともに凝縮される結果として共有結合したコア建設ブロックの集合のコンビナトリアルライブラリが得られる。コアの形と堅固さが、形状空間における建設ブロックの向きを決める。ライブラリは、コア、連結、又は建築ブロックを変えることによってバイアスをかけ、特徴づけられた生物構造を標的とすること(「フォーカスされたライブラリ」)、又は可撓性コアを用いて構造的バイアスがより少ないものを合成することができる。本発明のいくつかの実施形態において、治療薬は小さなライブラリの合成を通じて合成される。
【0227】
本明細書に記載されている小分子と小分子化合物は、塩として存在することが、たとえ塩が示されていない場合でも可能であるため、本発明は、当業者によく理解されているように、本明細書に示されている治療薬のあらゆる塩と溶媒和物のほか、治療薬の非塩形態と非溶媒和物形態を包含すると理解される。いくつかの実施形態において、本発明の治療薬の塩は医薬として許容可能な塩である。
【0228】
本明細書に記載されているいずれかの治療薬に関する互変異性体形態が存在する可能性がある場合には、互変異性体形態の1つ又はいくつかのみ明示的に示されているとしても、それぞれの互変異性体形態がすべて本発明に含まれることが想定されている。例えば2-ヒドロキシピリジル部分が示されているとき、対応する2-ピリドン互変異性体も想定される。
【0229】
本発明には任意の、又はすべての立体化学形態も含まれ、その中には記載されている治療薬の任意の鏡像異性体形態又はジアステレオマー形態が含まれる。本明細書での構造又は名称への言及は、示されている治療薬のあらゆる可能な立体異性体を包含することを意図している。治療薬のあらゆる形態(治療薬の結晶形態又は非結晶形態など)も本発明に包含される。本発明の治療薬を含む組成物も想定され、その中には、実質的に純粋な治療薬(その特別な立体化学形態が含まれる)の組成物、又はラセミ混合物又は非ラセミ混合物におけるように本発明の治療薬の任意の比率での混合物(その中には2つ以上の立体化学形態が含まれる)を含む組成物が含まれる。
【0230】
本発明には、本明細書に記載されている任意の治療薬の任意の、又はすべての活性な類似体又は誘導体(プロドラッグなど)も含まれる。一実施形態において、治療薬はプロドラッグである。一実施形態において、本明細書に記載されている小分子は誘導体化の候補である。そのためある場合には、本明細書に記載されている小分子の類似体であって変化した効力、選択性、及び溶解性を有するものが本明細書に含まれ、それが薬の発見と開発のための有用なリードを提供する。そのためある場合には、最適化の間、薬送達、代謝、新規性、及び安全性の問題を考慮して新たな類似体が提供される。
【0231】
いくつかの場合には、本明細書に記載されている小分子治療薬は、コンビナトリアル化学と医薬品化学の分野で周知の既知の治療薬の誘導体又は類似体である。それら類似体又は誘導体は、様々な位置で官能基を付加及び/又は置換することによって調製することができる。そのため本明細書に記載されている小分子は、よく知られている化学合成手続きを用いて誘導体/類似体に変換することができる。例えば水素原子又は置換基のすべてを選択的に修飾して新たな類似体を生成させることができる。また、前記連結原子又は基を修飾して炭素骨格又はヘテロ原子を有するより長いリンカー又はより短いリンカーにすることができる。また、環基を変化させ、環の中に異なる原子の数を有するようにすること、及び/又はヘテロ原子が含まれるようにすることができる。さらに、芳香族を環基に変換することと、その逆が可能である。例えば環は、5~7個の原子であることと、炭素環又は複素環であることが可能である。
【0232】
本明細書では、「類似体(analog)」、「類似体(analogue)」、又は「誘導体」という用語は、親化合物又は親分子から1つ以上の化学反応によって作製される化合物又は分子を意味する。そのため類似体は、本明細書に記載されている小分子治療薬の構造と似た構造を有する構造であること、又は本明細書に記載されている小分子治療薬の足場に基づくことが可能だが、それとはある構成要素又は構造的構成に関して異なるため代謝的に似た作用又は逆の作用を有する可能性がある。本発明による任意の小分子阻害剤の類似体又は誘導体を用いて疾患又は障害を治療することができる。
【0233】
一実施形態において、本明細書に記載されている小分子治療薬は、水素基を互いに独立に他の置換基に変えることによって独立に誘導体化すること、又は前記小分子治療薬から類似体を調製することができる。すなわち、各分子上の各原子は独立に、同じ分子上の他の原子に対して修飾することができる。誘導体/類似体を生成させるための伝統的な任意の修飾を利用することができる。例えば前記原子と置換基は独立に、水素、アルキル、脂肪族、鎖ヘテロ原子を有する直鎖脂肪族、分岐した脂肪族、置換された脂肪族、環式脂肪族、1個以上のヘテロ原子を有する複素環式脂肪族、芳香族、ヘテロ芳香族、ポリ芳香族、ポリアミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、これらの組み合わせ、ハロゲン、ハロ置換された脂肪族などからなることができる。それに加え、化合物上の任意の環基を誘導体化して環のサイズを大きく、及び/又は小さくすることのほか、骨格原子を炭素原子又はヘテロ原子に変えることができる。
【0234】
核酸治療薬
他の関連する態様において、治療薬は単離された核酸である。特定の実施形態において、単離された核酸分子は、1つのDNA分子又はRNA分子である。特定の実施形態において、単離された核酸分子は、cDNA、mRNA、siRNA、shRNA又はmiRNA分子である。いくつかの実施形態において、治療薬は、siRNA、miRNA、shRNA、又はアンチセンス分子であり、そしてそれは、生理学的プロセスの悪化にかかわるタンパク質をコードするものを含めた標的化核酸を阻害する。
【0235】
一実施形態において、核酸は、該核酸が核酸の発現を指令することができるように、プロモーター/調節配列を含む。従って、本発明は、例えば、Sambrookら(2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)、及びAusubel ら(1997, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York)中に記載されているような、並びに本明細書中のいずれかの箇所に記載されているような、細胞中での外来核酸の同時発現を伴う外来核酸の細胞への導入のための発現ベクター及び方法を包含する。
【0236】
本発明の一態様において、標的化された遺伝子又はタンパク質は、標的化された遺伝子又はタンパク質を不活性化及び/又は隔離することによって阻害され得る。そのため、標的化された遺伝子又はタンパク質の活性の阻害は、トランスドミナント・ネガティブ変異体をコードする核酸分子を使用することで達成できる。
【0237】
一実施形態において、siRNAを用いて標的となるタンパク質のレベルを低下させる。RNA干渉(RNAi)は、様々な生物と細胞のタイプに二本鎖RNA(dsRNA)を導入することによって相補的mRNAの分解が起こる現象である。細胞の中では、Dicerとして知られるリボヌクレアーゼによって長いdsRNAが切断されて短い21~25個のヌクレオチドからなる小さな干渉RNA、すなわちsiRNAになる。siRNAはその後タンパク質構成成分と組み合わさったRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)になり、プロセスの途中でほどける。活性化されたRISCはその後siRNAアンチセンス鎖とmRNAの間の塩基対形成相互作用によって相補的転写産物に結合する。結合したmRNAは切断され、mRNAが配列特異的に分解される結果として遺伝子サイレンシングが起こる。例えば米国特許第6,506,559号;Fire et al., 1998, Nature 391(19):306-311; Timmons et al., 1998, Nature 395:854; Montgomery et al., 1998, TIG 14 (7):255-258; David R. Engelke, Ed., RNA Interference (RNAi) Nuts & Bolts of RNAi Technology, DNA Press, Eagleville, PA (2003); and Gregory J. Hannon, Ed., RNAi A Guide to Gene Silencing, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (2003). Soutschek et al. (2004, Nature 432:173-178)を参照のこと。Soutschek et al. (2004, Nature 432:173-178)には、siRNAに対してなされて静脈内全身送達を助ける化学的修飾が記載されている。siRNAの最適化には、全G/C含量、末端におけるC/T含量、Tm、及び3’オーバーハングのヌクレオチド含量を考慮することが含まれる。例えばSchwartz et al., 2003, Cell, 115:199-208及びKhvorova et al., 2003, Cell 115:209-216を参照のこと。したがって本発明は、RNAi技術を利用してPTPN22のレベルを低下させる方法も含む。
【0238】
1つの側面では、本発明に、siRNA又はアンチセンスポリヌクレオチドを含むウイルスベクターが含まれる。siRNA又はアンチセンスポリヌクレオチドは標的ポリペプチドの発現を阻害できることが好ましい。例えばSambrook et al. (2012)及びAusubel et al. (1997)と本明細書の別の箇所に記載されているように、ウイルスベクターへの望むポリヌクレオチドの組み込みと、ウイルスベクターの選択は本分野で周知である。
【0239】
ある実施形態において、本明細書に記載されている発現ベクターは、短いヘアピンRNA(shRNA)治療薬をコードする。shRNA分子は本分野で周知であり、標的のmRNAに向けられ、そのことによって標的の発現を低下させる。ある実施形態において、コードされたshRNAが細胞によって発現された後、処理されてsiRNAになる。例えばある場合には、細胞は、shRNAを切断してsiRNAを形成する天然酵素(例えばdicer)を有する。
【0240】
siRNA、shRNA、又はアンチセンスポリヌクレオチドの発現を評価するため、細胞の中に導入される発現ベクターは、発現している細胞を、本発明の送達ビヒクルを用いてトランスフェクトするか感染させようとする細胞の集団から同定するのを容易にする選択マーカー遺伝子又はレポーター遺伝子のいずれか、又はその両方も含有することができる。他の実施形態において、選択マーカーは別のDNAに載せることができ、送達ビヒクルの中に含めることもできる。選択マーカーとレポーター遺伝子の両方を適切な調節配列に隣接させて宿主細胞の中での発現を可能にすることができる。有用な選択マーカーは本分野で知られており、その中には例えば抗生剤耐性遺伝子(ネオマイシン耐性など)が含まれる。
【0241】
したがって1つの側面では、送達ビヒクルは、送達されるヌクレオチド配列又はコンストラクトを含むウイルスベクターを含有することができる。ウイルスベクターの選択は、それが導入されることになる宿主細胞に依存するであろう。特別な一実施形態において、本発明のベクターは発現ベクターである。適切な宿主細胞に多彩な原核宿主細胞と真核宿主細胞が含まれる。特別な実施形態において、発現ベクターは、ウイルスベクター、細菌ベクター、及び哺乳類細胞ベクターからなる群から選択される。原核生物ベクター及び/又は真核細胞ベクターに基づく系を本発明で利用してポリヌクレオチド、又はそのコグネイトポリペプチドを生成させることができる。多くのそのような系が市販されていて広く入手することができる。
【0242】
例示として、核酸配列が導入されるウイルスベクターとしてプラスミドが可能である。プラスミドは、宿主細胞のゲノムの中に導入されたとき、その細胞に組み込まれる、又は組み込まれない。本発明のヌクレオチド配列又は本発明の遺伝子コンストラクトを挿入することのできるウイルスベクターの非限定的な説明例に含まれるのは、真核細胞の中で発現させるためのtet-on誘導性ウイルスベクターである。
【0243】
ベクターは当業者に知られている従来法によって得ることができる(Sambrook et al., 2012)。特別な一実施形態において、ウイルスベクターは、動物細胞を形質転換するのに有用なウイルスベクターである。
【0244】
一実施形態において、組み換え発現ベクターは、ペプチド又はペプチド模倣体をコードする核酸分子も含有することができる。
【0245】
プロモーターとして、遺伝子又はポリヌクレオチド配列に元々付随しているものが可能であり、それはコード区画及び/又はエキソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって得られる。このようなプロモーターは「内在性」と呼ぶことができる。同様に、エンハンサとして、ポリヌクレオチド配列に元々付随しているものが可能であり、それは、その配列の下流又は上流のいずれかに位置する。あるいはコードしているポリヌクレオチド区画を、自然環境ではポリヌクレオチド配列に元々付随していないプロモーターである組み換えプロモーター又は異種プロモーターの制御下に置くことによってある利点が得られるであろう。組み換えエンハンサ又は異種エンハンサは、自然環境ではポリヌクレオチド配列に元々付随していないエンハンサも意味する。斯かるプロモーター又はエンハンサには、他の遺伝子のプロモーター又はエンハンサと、他の任意の原核細胞、ウイルス、又は真核細胞から単離されたプロモーター又はエンハンサと、「天然」でないプロモーター又はエンハンサ、すなわち異なる転写調節領域の異なるエレメント、及び/又は発現を変化させる変異を含有するプロモーター又はエンハンサを含めることができる。プロモーターとエンハンサの核酸配列を合成によって生成させることに加え、本明細書に開示されている組成物に関連して配列を組み換えクローニング及び/又は核酸増幅技術(PCR(商標)が含まれる)を用いて生成させることができる(米国特許第4,683,202号、米国特許第5,928,906号)。さらに、非核オルガネラ(ミトコンドリア、葉緑体など)の中で配列の転写及び/又は発現を指示する制御配列も使用できることを考慮する。
【0246】
当然、発現のために選択した細胞のタイプ、オルガネラ、及び生物におけるDNA区画の発現を効率的に指示するプロモーター及び/又はエンハンサを使用することが重要になる。分子生物学の当業者は一般に、タンパク質を発現させるためプロモーター、エンハンサ、及び細胞のタイプの組み合わせをどのように使用するかを知っている。例えばSambrook et al. (2012)を参照のこと。使用されるプロモーターとして、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーター、及び/又は導入されたDNA区画の高レベルの発現を適切な条件下で指示するのに有用な(組み換えタンパク質及び/又はペプチドの大規模生産に有利であるなどの)プロモーターが可能である。プロモーターとして、異種又は内在性のプロモーターが可能である。
【0247】
組み換え発現ベクターは、宿主細胞の選択を容易にする選択マーカー遺伝子も含有することができる。適切な選択マーカー遺伝子は、ある種の薬、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、又は免疫グロブリン、又はこれらの部分(免疫グロブリン(好ましくはIgG)のFc部分など)に対する耐性を与えるタンパク質(G418やハイグロマイシンなど)をコードする遺伝子である。選択マーカーは、興味ある核酸とは別のウイルスベクターに導入することができる。
【0248】
当業者は、siRNAポリヌクレオチドの生成後、そのsiRNAポリヌクレオチドが、治療用化合物としてのそのsiRNAを改善するため修飾することのできるある特徴を有していることを理解しているであろう。したがってsiRNAポリヌクレオチドは、ホスホロチオエート又は他の結合(ホスホン酸メチル、スルホン、硫酸塩、ケチル、ホスホロジチオエート、ホスホロアミデート、リン酸エステルなど)が含まれるように修飾することにより、分解に抵抗するようにさらに設計することができる(例えばAgrawal et al., 1987, Tetrahedron Lett. 28:3539-3542; Stec et al., 1985 Tetrahedron Lett. 26:2191-2194; Moody et al., 1989 Nucleic Acids Res. 12:4769-4782; Eckstein, 1989 Trends Biol. Sci. 14:97-100; Stein, In: Oligodeoxynucleotides. Antisense Inhibitors of Gene Expression, Cohen, ed., Macmillan Press, London, pp. 97-117 (1989)を参照のこと)。
【0249】
どのポリヌクレオチドも、インビボでの安定性が増大するようにさらに修飾することができる。可能な修飾の非限定的な例に含まれるのは、5’末端及び/又は3’末端にフランキング配列を付加すること;骨格内でホスホジエステル結合よりもホスホロチオエート又は2’O-メチルを使用すること;及び/又は非標準塩基(イノシン、キューオシン、及びワイブトシンなど)のほか、アデニン、シチジン、グアニン、チミン、及びウリジンのアセチル形態、メチル形態、チオ形態、及びそれ以外の修飾された形態を含めることである。
【0250】
本発明の一実施形態において、プラスミドウイルスベクターによって発現されるアンチセンス核酸配列を、標的タンパク質の発現を阻害する治療薬として使用する。アンチセンス発現ウイルスベクターを用いて哺乳類細胞又は哺乳類そのものにトランスフェクトし、そのことによって標的タンパク質の内在性発現を低下させる。
【0251】
遺伝子の発現を阻害するためのアンチセンス分子とその利用は本分野で周知である(例えばCohen, 1989, In: Oligodeoxyribonucleotides, Antisense Inhibitors of Gene Expression, CRC Pressを参照のこと)。アンチセンス核酸は、特定のmRNA分子の少なくとも一部に対して相補的な(この用語は本明細書の別の箇所で定義されている)DNA分子又はRNA分子である(Weintraub, 1990, Scientific American 262:40)。細胞の中でアンチセンス核酸は対応するmRNAにハイブリダイズして二本鎖分子を形成し、そのことによって遺伝子の翻訳を阻害する。
【0252】
遺伝子の翻訳を阻害するためアンチセンス法を利用することは本分野で知られており、例えばMarcus-Sakura(1988, Anal. Biochem. 172:289)に記載されている。このようなアンチセンス分子は、Inoue、1993年、米国特許第5,190,931号に教示されているように、このアンチセンス分子をコードするDNAを用いた遺伝子発現を通じて細胞に提供することができる。
【0253】
あるいは本発明のアンチセンス分子は合成によって作製することができ、その後細胞に提供される。約10個と約30個の間、より好ましくは約15個のヌクレオチドからなるアンチセンスオリゴマーが、合成して標的細胞に導入するのが容易であるため好ましい。本発明で考慮する合成アンチセンス分子には、修飾されていないオリゴヌクレオチドと比べて改善された生物活性を有する本分野で知られているオリゴヌクレオチド誘導体が含まれる(米国特許第5,023,243号を参照のこと)。
【0254】
本発明の一実施形態において、リボザイムは、標的タンパク質の発現を阻害する治療薬として使用される。標的分子の発現を阻害するのに有用なリボザイムは、標的配列を例えば標的分子をコードするmRNA配列と相補的な基本的リボザイム構造の中に組み込む設計にすることができる。標的分子を標的とするリボザイムは、市販の試薬(Applied Biosystems, Inc., Foster City, CA)を用いて合成すること、又はそれをコードするDNAから遺伝子発現させることができる。
【0255】
一実施形態において、前記治療薬は、CRISPR-Cas系の1つ以上の構成要素を含むことができ、その中のガイドRNA(gRNA)は標的分子をコードする遺伝子を標的とし、CRISPR関連(Cas)ペプチドは複合体を形成して標的となる遺伝子内に変異を誘導する。一実施形態において、前記治療薬は、gRNA、又はgRNAをコードする核酸分子を含む。一実施形態において、前記治療薬は、Casペプチド、又はCasペプチドをコードする核酸分子を含む。
【0256】
一実施形態において、前記作用物質は、miRNA、又はmiRNAの模倣体を含む。一実施形態において、前記作用物質は、miRNA又はmiRNAの模倣体をコードする核酸分子を含む。
【0257】
miRNAは、細胞内で、翻訳の阻害によって、又は標的となるmRNAの分解を通じて特定の遺伝子の転写後サイレンシングを引き起こすことのできる小さな非コードRNA分子である。miRNAは、完全に相補的であること、又は標的核酸と相補的でない領域を有することができる(その帰結として相補的でない領域が「突起」する)。miRNAは、miRNAが標的核酸と完全に相補的ではないときなどには翻訳を抑制することによって、又はmiRNAが対応する標的に完全な相補性で結合するときには、そのときのみ起こると考えられている標的RNAの分解を引き起こすことによって、遺伝子の発現を阻害することができる。本開示はmiRNAの二本鎖前駆体も含むことができる。miRNA又はプリ-miRNA(pri-miRNA)として長さが18~100個のヌクレオチド、又は長さが18~80個のヌクレオチドが可能である。成熟miRNAは、長さが19~30個のヌクレオチド、又は21~25個のヌクレオチド、特に21、22、23、24、又は25個のヌクレオチドを有することができる。miRNA前駆体は典型的には長さが約70~100個のヌクレオチドであり、ヘアピン構造を有する。miRNAは、長いプレ-miRNAを特異的に処理して機能的miRNAにする酵素DicerとDroshaによってインビボでプレ-miRNAから生成する。本開示に登場するヘアピン又は成熟マイクロRNA、又はプリ-マイクロRNA剤は、インビボで細胞に基づく系によって、又はインビトロで化学合成によって合成することができる。
【0258】
様々な実施形態において、前記作用物質は、疾患関連miRNAのヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドを含む。ある実施形態において、オリゴヌクレオチドは、疾患関連miRNAのヌクレオチド配列をプレ-マイクロRNA形態、成熟形態、又はヘアピン形態で含む。他の実施形態において、1つ以上の疾患関連miRNA、任意のプレ-miRNA、任意の断片、又はこれらの任意の組み合わせの配列を含むオリゴヌクレオチドの組み合わせが考えられる。
【0259】
miRNAは、望む特徴を与える修飾を含むように合成することができる。例えば修飾は、例えばエンドサイトーシスに依存した機構又は独立な機構により、安定性、標的核酸とのハイブリダイゼーションの熱力学、特定の組織又はタイプの細胞への指向性、又は細胞透過性を改善することができる。
【0260】
修飾は、配列特異性を増大させ、その帰結として標的外ターゲティングを減らすこともできる。合成と化学的修飾の方法は、下により詳細に記載されている。望む場合には、miRNA分子を修飾してそのmiRNAを分解に対して安定にすること、半減期を長くすること、又はそれ以外に有効性を向上させることができる。望ましい修飾が記載されているのは、例えば米国特許公開第20070213292号、同第20060287260号、同第20060035254号、同第20060008822号、及び同第2005028824号の中であり、そのそれぞれを全体として参照により本明細書に援用する。ヌクレアーゼ耐性及び/又は標的への結合親和性を増大させるため、本開示に登場する一本鎖オリゴヌクレオチド剤は、2’-O-メチル結合、2’-フッ素結合、2’-O-メトキシエチル結合、2’-O-アミノプロピル結合、2’-アミノ結合、及び/又はホスホロチオエート結合を含むことができる。ロックされた核酸(LNA)、エチレン核酸(ENA)(例えば2’-4’-エチレン架橋核酸)、及びある種のヌクレオチド修飾を含めることによっても標的に対する結合親和性を増大させることができる。オリゴヌクレオチド骨格にピラノース糖を含めることによってエンドヌクレアーゼによる切断を減らすこともできる。オリゴヌクレオチドは、3’カチオン性基を含めることによって、又は3’末端の位置のヌクレオシドを3-3’結合で逆転させることによってさらに修飾することができる。別の1つの代替例では、3’末端をアミノアルキル基でブロックすることができる。他の3’複合体はエキソヌクレアーゼによる3’-5’の切断を阻害することができる。理論に囚われることなく、3’は、エキソヌクレアーゼがオリゴヌクレオチドの3’末端に結合するのを立体的に阻止することによってエキソヌクレアーゼによる切断を阻害する可能性がある。小さなアルキル鎖、アリール基、又は複素環複合体又は修飾された糖(D-リボース、デオキシリボース、グルコースなど)でさえ、3’-5’-エキソヌクレアーゼを阻止することができる。
【0261】
一実施形態において、miRNAは、いくつか又はすべてのヌクレオチド間結合がヌクレアーゼ耐性のため修飾されてホスホロチオエートになったオリゴデオキシヌクレオチドギャップを含有する2’修飾オリゴヌクレオチドを含む。ホスホン酸メチル修飾の存在が、そのオリゴヌクレオチドの対応する標的RNAに対する親和性を増大させ、IC5Qを低下させる。この修飾は、前記修飾オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性も増大させる。本開示の方法と試薬は、抑制性核酸分子の安定性又は有効性を増強するために開発される可能性のある任意の技術と組み合わせて使用できることがわかる。
【0262】
miRNA分子は、修飾された骨格又は非天然のヌクレオシド間結合を含有するヌクレオチドオリゴマーを含む。修飾された骨格を有するオリゴマーには、骨格の中にリン原子を保持するオリゴマーと、骨格の中にリン原子を持たないオリゴマーが含まれる。本開示の目的のため、ヌクレオシド間骨格の中にリン原子を持たない修飾オリゴヌクレオチドもヌクレオチドオリゴマーであると見なされる。修飾されたオリゴヌクレオチド骨格を有するヌクレオチドオリゴマーに含まれるのは、例えばホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキル-ホスホトリエステル、ホスホン酸メチルと他のホスホン酸アルキル(ホスホン酸3’-アルキレンとホスホン酸キラルが含まれる)、ホスフィネート、ホスホロアミデート、チオノホスホロアミデート、ホスホン酸チオノアルキル、チオノアルキルホスホトリエステル、及びボラノリン酸塩である。様々な塩、混合された塩、及び遊離酸形態も含まれる。
【0263】
本明細書に記載されているmiRNAは成熟形態又はヘアピン形態である可能性があり、裸のオリゴヌクレオチドとして提供することができる。いくつかの場合には、細胞へのmiRNA又は他のヌクレオチドオリゴマーの送達を助ける製剤を用いることが望ましい可能性がある(例えば米国特許第5,656,611号、同第5,753,613号、同第5,785,992号、同第6,120,798号、同第6,221,959号、同第6,346,613号、及び同第6,353,055号を参照のこと;そのそれぞれを参照により本明細書に援用する)。
【0264】
いくつかの例では、miRNA組成物は、少なくとも一部が結晶、一様に結晶、及び/又は無水(例えば80、50、30、20、又は10%よりも少ない水)である。別の一例では、miRNA組成物は水相(例えば水を含む溶液)である。この水相又は結晶の組成物を送達ビヒクル(例えばリポソーム(特に水相のため)、又は粒子(例えば結晶組成物にとって適切である可能性のある微粒子))に組み込むことができる。一般にmiRNA組成物は、想定する投与法に適合するように製剤化される。miRNA組成物は、別の作用物質(例えば別の治療剤、又はオリゴヌクレオチド剤を安定化させる作用物質(例えばそのオリゴヌクレオチド剤と複合体になるタンパク質)と組み合わせて製剤にすることができる。さらに別の作用物質に含まれるのは、キレータ(例えばEDTA(例えばMgなどの2価カチオンを除去するため)、塩、及びRNAse阻害剤(例えば特異性が広いRNAse阻害剤)である。一実施形態において、miRNA組成物は別のmiRNAである例えば第2のmiRNA組成物(例えば第1のものとは異なるマイクロRNA)を含む。さらに別の調製物は、少なくとも3、5、10、20、50、又は100種、又はそれよりも多い種類の異なるオリゴヌクレオチド種を含むことができる。
【0265】
ある実施形態において、組成物は、miRNAの活性を模倣するオリゴヌクレオチド組成物を含む。ある実施形態において、組成物は、miRNAの核酸塩基配列と一致する核酸塩基を有するオリゴヌクレオチドを含むため、miRNAの活性を模倣するように設計されている。ある実施形態において、miRNA活性を模倣するオリゴヌクレオチド組成物は、成熟miRNAヘアピンを模倣する二本鎖RNA分子、又は処理されたmiRNAデュプレックスを含む。
【0266】
一実施形態において、オリゴヌクレオチドは、内在性miRNA又はmiRNA前駆体の核酸塩基配列との一致部を共有する。本発明の組成物に含めるため選択されるオリゴヌクレオチドは、多くある長さの1つにすることができる。斯かるオリゴヌクレオチドとして、長さが7~100個の連結されたヌクレオシドが可能である。例えばmiRNAと一致する核酸塩基を共有するオリゴヌクレオチドとして、長さが7~30個の連結されたヌクレオシドが可能である。miRNA前駆体と一致部を共有するオリゴヌクレオチドとして、長さが100個までの連結されたヌクレオシドが可能である。ある実施形態において、オリゴヌクレオチドは7~30個の連結されたヌクレオシドを含む。ある実施形態において、オリゴヌクレオチドは、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、28、29、又は30個の連結されたヌクレオチドを含む。ある実施形態において、オリゴヌクレオチドは、19~23個の連結されたヌクレオシドを含む。ある実施形態において、オリゴヌクレオチドは、長さが40から50、60、70、80、90、又は100個までの連結されたヌクレオシドである。
【0267】
ある実施形態において、オリゴヌクレオチドは、miRNA又はその前駆体と一致するある部分を有する配列を有する。成熟miRNAの核酸塩基配列とそれに対応する本明細書に記載のステム-ループ配列は、miRNA配列と注釈に関するオンライン検索可能なデータベースであるmiRBaseに見いだされる配列である。miRBase配列データベースへの入力事項は、miRNA転写産物の予測されるヘアピン部分(ステム-ループ)と、成熟miRNA配列の位置と配列に関する情報である。データベースの中のmiRNAステム-ループ配列は厳密な前駆体miRNA(プレ-miRNA)ではなく、いくつかの場合には、プレ-miRNAと、想定される一次転写産物からの何らかのフランキング配列を含む可能性がある。本明細書に記載のmiRNA核酸塩基配列はmiRNAのあらゆるバージョンを包含し、その中にはmiRBase配列データベースのリリース10.0に記載されている配列と、miRBase配列データベースの以前のあらゆるリリースに記載されている配列が含まれる。配列データベースの1つのリリースの結果としてあるmiRNAの名称が変わる可能性がある。配列データベースの1つのリリースの結果として1つの成熟miRNA配列にバリエーションが生じる可能性がある。本発明の組成物には、本明細書に記載されているmiRNAの任意の核酸塩基配列バージョンとのある一致部を有するオリゴヌクレオチドを含むオリゴマー化合物が包含される。
【0268】
ある実施形態において、オリゴヌクレオチドは、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個の核酸塩基の領域でmiRNAと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%一致する核酸塩基配列を有する。したがってある実施形態において、オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、miRNAと一致しない核酸塩基を1個以上有する可能性がある。
【0269】
ある実施形態において、組成物は、miRNA、前駆体、模倣体、又はこれらの断片をコードする核酸分子を含む。例えば組成物は、そのmiRNA、前駆体、模倣体、又はこれらの断片を望む哺乳類細胞又は組織の中で発現させるのに適したウイルスベクター、プラスミド、コスミド、又は他の発現ベクターを含むことができる。
【0270】
インビトロにおいて転写されるRNA
一実施形態において、本発明の治療薬は、インビトロで転写される(IVT)RNAを含む。一実施形態において、本発明の治療薬は、治療用タンパク質をコードするインビトロで転写される(IVT)RNAを含む。一実施形態において、本発明の治療薬は、複数の治療用タンパク質をコードするIVT RNAを含む。
【0271】
一実施形態において、IVT RNAは、一過性トランスフェクションの形態で細胞に導入することができる。RNAは、合成によって作製されたプラスミドDNA鋳型を用いたインビトロでの転写によって生成する。任意の供給源からの興味あるDNAを、適切なプライマーとRNAポリメラーゼを用いたPCRにより、インビトロでのmRNA合成のための鋳型に直接変換することができる。DNA供給源として、例えばゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列、又は適切な他の任意のDNA供給源が可能である。一実施形態において、インビトロでの転写のための望ましい鋳型は、本明細書の別の箇所に記載されている治療用タンパク質である。
【0272】
一実施形態において、PCRで使用するDNAはオープンリーディングフレームを含有する。そのDNAは、ある生物のゲノムからの天然DNA配列に由来するものが可能である。一実施形態において、そのDNAは、ある遺伝子の一部の興味ある完全長遺伝子である。その遺伝子は、5’及び/又は3’の非翻訳領域(UTR)のいくらか又はすべてを含んでいる可能性がある。その遺伝子はエキソンとイントロンを含んでいる可能性がある。一実施形態において、PCRで使用するDNAはヒト遺伝子である。別の一実施形態において、PCRで使用するDNAは、5’UTRと3’UTRを含むヒト遺伝子である。別の一実施形態において、PCRで使用するDNAは、病原性生物又は片利共生生物(細菌、ウイルス、寄生虫、及び真菌が含まれる)からの遺伝子である。別の一実施形態において、PCRで使用するDNAは、病原性生物又は片利共生生物(細菌、ウイルス、寄生虫、及び真菌が含まれる)に由来し、5’UTRと3’UTRを含む。あるいはDNAとして、自然界の生物の中では通常発現しない人工DNA配列が可能である。1つの代表的な人工DNA配列は、遺伝子のうちで、互いに連結されて融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを形成する部分を含有する配列である。DNAの互いに連結される部分は、単一の生物、又は2つ以上の生物に由来することができる。
【0273】
PCRのためのDNA供給源として使用できる遺伝子には、生物の中で適応免疫応答を誘導又は増強するポリペプチドをコードする遺伝子が含まれる。好ましい遺伝子は、短期の治療に有用な遺伝子であるか、用量又は発現する遺伝子に関する安全性の懸念がある遺伝子である。
【0274】
様々な実施形態において、プラスミドは、トランスフェクションに使用されるRNAのインビトロでの転写のための鋳型を生成させるのに使用される。
【0275】
安定性及び/又は翻訳効率を向上させる能力を有する化学構造も使用できる。RNAは5’UTRと3’UTRを有することが好ましい。一実施形態において、5’UTRは長さが0~3000個のヌクレオチドである。コード領域に付加する5’UTRと3’UTRの配列長は様々な方法によって変えることができる。方法の非限定的な例に含まれるのは、UTRの異なる領域にアニールするPCR用プライマーを設計することである。当業者は、このアプローチを利用して、転写されたRNAをトランスフェクトした後に最適な翻訳効率を実現するのに必要な5’UTRと3’UTRの長さを変えることができる。
【0276】
5’UTR及び3’UTRとして、興味ある遺伝子のための天然の内在性の5’UTRと3’UTRが可能である。あるいは興味ある遺伝子に内在していないUTR配列を、UTR配列を順プライマーと逆プライマーに組み込むことによって、又は鋳型の他の任意の改変によって付加することができる。興味ある遺伝子に内在していないUTR配列の使用はRNAの安定性及び/又は翻訳効率を変化させるのに有用である可能性がある。例えば3’UTR配列の中のAUリッチなエレメントはRNAの安定性を低下させることができることが知られている。したがって3’UTRは、転写されたRNAの安定性を本分野でよく知られているUTRの特性に基づいて増加させるように選択又は設計することができる。
【0277】
一実施形態において、5’UTRは、内在性遺伝子のコザック配列を含有することができる。あるいは興味ある遺伝子に内在していない5’UTRを上記のようにPCRによって付加するときには、5’UTR配列を付加することによってコンセンサスコザック配列を再設計することができる。コザック配列はいくつかのRNA転写産物の翻訳効率を向上させることができるが、効率的な翻訳を可能にするのに全RNAにとって必要であるようには見えない。多くのRNAにとってコザック配列が必要であることが本分野で知られている。他の実施形態において、5’UTRは、RNAゲノムが細胞の中で安定であるRNAウイルスに由来することが可能である。他の実施形態において、様々なヌクレオチド類似体を3’UTR又は5’UTRの中で用いてエキソヌクレアーゼによるRNAの分解を阻止する。
【0278】
遺伝子クローニングを必要とせずにDNA鋳型からRNAを合成できるようにするため、転写のプロモーターは、転写される配列の上流でDNA鋳型に付着させねばならない。RNAポリメラーゼのためのプロモーターとして機能する配列を順プライマーの5’末端に付加するとき、RNAポリメラーゼプロモータは、PCR産物の中に、転写されるオープンリーディングフレームの上流で組み込まれる。好ましい一実施形態において、プロモーターは、本明細書の別の箇所に記載されているようにT7 RNAポリメラーゼプロモータである。他の有用なプロモーターの非限定的な例に含まれるのは、T3とSP6 RNAポリメラーゼプロモータである。T7、T3、及びSP6プロモーターのためのコンセンサスヌクレオチド配列は本分野で知られている。
【0279】
好ましい一実施形態において、RNAは、細胞内でのリボソームへの結合、翻訳の開始、及びmRNAの安定性を決定する5’末端のキャップと3’ポリ(A)テールの両方を有する。環状DNA鋳型(例えばプラスミドDNA)上で、RNAポリメラーゼは、真核細胞での発現に適さない長い鎖状生成物を生成させる。3’UTRの末端で線状にされたプラスミドDNAが転写される結果として通常のサイズのRNAになるため、真核細胞へのトランスフェクションにおいて転写後にポリアデニル化されるときに有効である。
【0280】
線状DNA鋳型上でファージT7 RNAポリメラーゼは転写産物の3’末端を鋳型の最後の塩基を超えて伸長させることができる(Schenborn and Mierendorf, Nuc Acids Res., 13:6223-36 (1985); Nacheva and Berzal-Herranz, Eur. J. Biochem., 270:1485-65 (2003))。
【0281】
ポリA/TストレッチをDNA鋳型に組み込む従来法は分子クローニングである。しかしプラスミドDNAに組み込まれたポリA/T配列はプラスミドの不安定性を引き起こす可能性がある。それは、プラスミド増殖のための組み換え不能細菌細胞の使用を通じて改善することができる。
【0282】
RNAのポリ(A)テールは、インビトロでの転写の後にポリ(A)ポリメラーゼ(大腸菌ポリAポリメラーゼ(E-PAP)又は酵母ポリAポリメラーゼなど)を用いてさらに伸長させることができる。一実施形態において、ポリ(A)テールの長さを100個のヌクレオチドから300個と400個の間のヌクレオチドまで増加させると、RNAの翻訳効率が約2倍に増大する。それに加え、3’末端への異なる化学基の付着はRNAの安定性を増大させることができる。このような付着は、修飾された/人工のヌクレオチド、アプタマー、及び他の化合物を含有することができる。例えばポリ(A)ポリメラーゼを用いてATP類似体をポリ(A)テールの中に導入することができる。ATP類似体はRNAの安定性をさらに増大させることができる。
【0283】
5’キャップもRNA分子に安定性を提供する。好ましい一実施形態において、本方法によって生成したRNAは、5’キャップ1構造を含む。このようなキャップ1構造は、ワクシニアキャッピング酵素と2’-O-メチルトランスフェラーゼ酵素を用いて生成させることができる(CellScript、マディソン、ウィスコンシン州)。あるいは5’キャップは、本分野で知られていて本明細書に記載されている技術を利用して提供される(Cougot, et al., Trends in Biochem. Sci., 29:436-444 (2001); Stepinski, et al., RNA, 7:1468-95 (2001); Elango, et al., Biochim. Biophys. Res. Commun., 330:958-966 (2005))。
【0284】
ヌクレオシド修飾RNA
一実施形態において、本発明の組成物は、ヌクレオシド修飾核酸を含む。一実施形態において、本発明の組成物は、治療用タンパク質をコードするヌクレオシド修飾RNAを含む。
【0285】
例えば、一実施形態において、該組成物は、ヌクレオシド修飾RNAを含む。一実施形態において、該組成物は、ヌクレオシド修飾mRNAを含む。ヌクレオシド修飾mRNAは、例えば、安定性が増大する、自然免疫原性が低いか又は存在しない、及び翻訳が増強される等を含む、修飾されていないmRNAよりも優れた具体的な利点を有する。本発明において有用なヌクレオシド修飾mRNAは、米国特許第8,278,036号に更に記載されており、これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0286】
特定の実施形態において、ヌクレオシド修飾mRNAは、任意の病態生理学的経路を活性化せず、非常に効率的にかつ送達のほぼ直後に翻訳され、そして、数日間継続するインビボにおける連続タンパク質生成のためのテンプレートとして機能する(Kariko et al., 2008, Mol Ther 16:1833-1840; Kariko et al., 2012, Mol Ther 20:948-953)。生理学的効果を発揮するのに必要なmRNAの量は少ないので、ヒトの処置に適用可能である。
【0287】
特定の例では、コードmRNAを送達することによるタンパク質の発現は、タンパク質、プラスミドDNA、又はウイルスベクターを使用する方法よりも優れた多くの効果を有する。mRNAのトランスフェクション中、所望のタンパク質のコード配列が細胞に送達される唯一の物質であり、したがって、プラスミド骨格、ウイルス遺伝子、及びウイルスタンパク質に関連する副作用が全て回避される。より重要なことに、DNA及びウイルスベースのベクターとは異なり、mRNAは、ゲノムに組み込まれるリスクを有さず、そして、mRNA送達直後にタンパク質生成が開始される。例えば、コードmRNAのインビボ注入の15~30分間以内に高濃度の循環タンパク質が測定されている。特定の実施形態において、タンパク質ではなくmRNAを使用することは多くの利点も有する。循環中のタンパク質の半減期は短いことが多く、したがって、タンパク質処置は頻回投与を必要とするが、mRNAは、数日間にわたって連続タンパク質生成のためのテンプレートを提供する。タンパク質の精製は問題があり、そして、タンパク質は、凝集体及び有害作用を引き起こす他の不純物を含有する場合がある(Kromminga and Schellekens, 2005, Ann NY Acad Sci 1050:257-265)。
【0288】
特定の実施形態において、前記ヌクレオシド修飾RNAは、天然に存在する修飾ヌクレオシドであるシュードウリジンを含む。特定の実施形態において、シュードウリジンを含めると、mRNAがより安定、非免疫原性、そして、高度に翻訳可能になる(Kariko et al., 2008, Mol Ther 16:1833-1840; Anderson et al., 2010, Nucleic Acids Res 38:5884-5892; Anderson et al., 2011, Nucleic Acids Research 39:9329-9338; Kariko et al., 2011, Nucleic Acids Research 39:e142; Kariko et al., 2012, Mol Ther 20:948-953; Kariko et al., 2005, Immunity 23:165-175)。
【0289】
RNA中にシュードウリジンを含む修飾ヌクレオシドが存在すると、その自然免疫原性が抑制されることが立証されている(Kariko et al., 2005, Immunity 23:165-175)。更に、シュードウリジンを含有する、タンパク質をコードしており、インビトロで転写されるRNAは、修飾ヌクレオシドを含有しないか又は他の修飾ヌクレオシドを含有するRNAよりも効率的に翻訳され得る(Kariko et al., 2008, Mol Ther 16:1833-1840)。その後、シュードウリジンの存在が、RNAの安定性を改善し(Anderson et al., 2011, Nucleic Acids Research 39:9329-9338)、そして、PKRの活性化及び翻訳の阻害の両方を軽減する(Anderson et al., 2010, Nucleic Acids Res 38:5884-5892)ことが示されている。調製用HPLC精製手順は、優れた翻訳能を有し、そして、自然免疫原性を有しないシュードウリジン含有RNAを得るために重要であることを確立した(Kariko et al., 2011, Nucleic Acids Research 39:e142)。エリスロポエチンをコードしているHPLCで精製されたシュードウリジン含有RNAをマウス及びアカゲザルに投与した結果、血清EPO濃度が著しく増加し(Kariko et al., 2012, Mol Ther 20:948-953)、したがって、シュードウリジン含有mRNAがインビボタンパク質療法に好適であることが確認された。
【0290】
本発明は、シュードウリジン又は修飾ヌクレオシドを含むRNA、オリゴリボヌクレオチド、及びポリリボヌクレオチドの分子を包含する。特定の実施形態において、該組成物は、単離された核酸を含み、該核酸は、シュードウリジン又は修飾ヌクレオシドを含む。特定の実施形態において、該組成物は、単離された核酸を含むベクターを含み、該核酸は、シュードウリジン又は修飾ヌクレオシドを含む。
【0291】
一実施形態において、本発明のヌクレオシド修飾RNAは、本明細書の他の箇所に記載されるIVT RNAである。例えば、特定の実施形態において、該ヌクレオシド修飾RNAは、T7ファージRNAポリメラーゼによって合成される。別の実施形態において、該ヌクレオシド修飾mRNAは、SP6ファージRNAポリメラーゼによって合成される。別の実施形態において、該ヌクレオシド修飾RNAは、T3ファージRNAポリメラーゼによって合成される。
【0292】
一実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、m1acp3Ψ(1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)シュードウリジンである。別の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、m1Ψ(1-メチルシュードウリジン)である。別の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、Ψm(2’-O-メチルシュードウリジン)である。別の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、m5D(5-メチルジヒドロウリジン)である。別の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、m3Ψ(3-メチルシュードウリジン)である。別の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、それ以上修飾されていないシュードウリジン部分である。別の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、上記シュードウリジンのいずれかの一リン酸塩、二リン酸塩、又は三リン酸塩である。別の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、当技術分野において公知の任意の他のシュードウリジン様ヌクレオシドである。
【0293】
別の実施形態において、本発明のヌクレオシド修飾RNAにおいて修飾されているヌクレオシドは、ウリジン(U)である。別の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、シチジン(C)である。別の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、アデノシン(A)である。別の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、グアノシン(G)である。
【0294】
別の実施形態において、本発明の修飾ヌクレオシドは、m5C(5-メチルシチジン)である。別の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、m5U(5-メチルウリジン)である。別の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、m6A(N6-メチルアデノシン)である。別の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、s2U(2-チオウリジン)である。別の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、Ψ(シュードウリジン)である。別の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、Um(2’-O-メチルウリジン)である。
【0295】
他の実施形態において、該修飾ヌクレオシドは、m1A(1-メチルアデノシン);m2A(2-メチルアデノシン);Am(2’-O-メチルアデノシン);ms2m6A(2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン);i6A(N6-イソペンテニルアデノシン);ms2i6A(2-メチルチオ-N6イソペンテニルアデノシン);io6A(N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン);ms2io6A(2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン);g6A(N6-グリシニルカルバモイルアデノシン);t6A(N6-トレオニルカルバモイルアデノシン);ms2t6A(2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン);m6t6A(N6-メチル-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン);hn6A(N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン);ms2hn6A(2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン);Ar(p)(2’-O-リボシルアデノシン(リン酸塩));I(イノシン);m1I(1-メチルイノシン);m1Im(1,2’-O-ジメチルイノシン);m3C(3-メチルシチジン);Cm(2’-O-メチルシチジン);s2C(2-チオシチジン);ac4C(N4-アセチルシチジン);f5C(5-ホルミルシチジン);m5Cm(5,2’-O-ジメチルシチジン);ac4Cm(N4-アセチル-2’-O-メチルシチジン);k2C(リシジン);m1G(1-メチルグアノシン);m2G(N2-メチルグアノシン);m7G(7-メチルグアノシン);Gm(2’-O-メチルグアノシン);m2
2G(N2,N2-ジメチルグアノシン);m2Gm(N2,2’-O-ジメチルグアノシン);m2
2Gm(N2,N2,2’-O-トリメチルグアノシン);Gr(p)(2’-O-リボシルグアノシン(リン酸塩));yW(ワイブトシン);o2yW(ペルオキシワイブトシン);OHyW(ヒドロキシワイブトシン);OHyW*(不十分に修飾されたヒドロキシワイブトシン);imG(ワイオシン);mimG(メチルワイオシン);Q(キューオシン);oQ(エポキシキューオシン);galQ(ガラクトシル-キューオシン);manQ(マンノシル-キューオシン);preQ0(7-シアノ-7-デアザグアノシン);preQ1(7-アミノメチル-7-デアザグアノシン);G+(アルカエオシン);D(ジヒドロウリジン);m5Um(5,2’-O-ジメチルウリジン);s4U(4-チオウリジン);m5s2U(5-メチル-2-チオウリジン);s2Um(2-チオ-2’-O-メチルウリジン);acp3U(3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン);ho5U(5-ヒドロキシウリジン);mo5U(5-メトキシウリジン);cmo5U(ウリジン5-オキシ酢酸);mcmo5U(ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル);chm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン));mchm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジンメチルエステル);mcm5U(5-メトキシカルボニルメチルウリジン);mcm5Um(5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン);mcm5s2U(5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン);nm5s2U(5-アミノメチル-2-チオウリジン);mnm5U(5-メチルアミノメチルウリジン);mnm5s2U(5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン);mnm5se2U(5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン);ncm5U(5-カルバモイルメチルウリジン);ncm5Um(5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン);cmnm5U(5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン);cmnm5Um(5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチルウリジン);cmnm5s2U(5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン);m6
2A(N6,N6-ジメチルアデノシン);Im(2’-O-メチルイノシン);m4C(N4-メチルシチジン);m4Cm(N4,2’-O-ジメチルシチジン);hm5C(5-ヒドロキシメチルシチジン);m3U(3-メチルウリジン);cm5U(5-カルボキシメチルウリジン);m6Am(N6,2’-O-ジメチルアデノシン);m6
2Am(N6,N6,O-2’-トリメチルアデノシン);m2,7G(N2,7-ジメチルグアノシン);m2,2,7G(N2,N2,7-トリメチルグアノシン);m3Um(3,2’-O-ジメチルウリジン);m5D(5-メチルジヒドロウリジン);f5Cm(5-ホルミル-2’-O-メチルシチジン);m1Gm(1,2’-O-ジメチルグアノシン);m1Am(1,2’-O-ジメチルアデノシン);τm5U(5-タウリノメチルウリジン);τm5s2U(5-タウリノメチル-2-チオウリジン));imG-14(4-デメチルワイオシン);imG2(イソワイオシン);又はac6A(N6-アセチルアデノシン)である。
【0296】
別の実施形態において、本発明のヌクレオシド修飾RNAは、上記修飾のうちの2つ以上の組み合わせを含む。別の実施形態において、該ヌクレオシド修飾RNAは、上記修飾のうちの3つ以上の組み合わせを含む。別の実施形態において、該ヌクレオシド修飾RNAは、上記修飾のうちの3つ超の組み合わせを含む。
【0297】
別の実施形態において、本発明のヌクレオシド修飾における残基の0.1%~100%が、(例えば、シュードウリジン又は別の修飾ヌクレオシド塩基の存在によって)修飾されている。別の実施形態において、残基の0.1%が修飾されている。別の実施形態において、修飾残基の割合は0.2%である。別の実施形態において、該割合は0.3%である。別の実施形態において、該割合は0.4%である。別の実施形態において、該割合は0.5%である。別の実施形態において、該割合は0.6%である。別の実施形態において、該割合は0.8%である。別の実施形態において、該割合は1%である。別の実施形態において、該割合は1.5%である。別の実施形態において、該割合は2%である。別の実施形態において、該割合は2.5%である。別の実施形態において、該割合は3%である。別の実施形態において、該割合は4%である。別の実施形態において、該割合は5%である。別の実施形態において、該割合は6%である。別の実施形態において、該割合は8%である。別の実施形態において、該割合は10%である。別の実施形態において、該割合は12%である。別の実施形態において、該割合は14%である。別の実施形態において、該割合は16%である。別の実施形態において、該割合は18%である。別の実施形態において、該割合は20%である。別の実施形態において、該割合は25%である。別の実施形態において、該割合は30%である。別の実施形態において、該割合は35%である。別の実施形態において、該割合は40%である。別の実施形態において、該割合は45%である。別の実施形態において、該割合は50%である。別の実施形態において、該割合は60%である。別の実施形態において、該割合は70%である。別の実施形態において、該割合は80%である。別の実施形態において、該割合は90%である。別の実施形態において、該割合は100%である。
【0298】
別の実施形態において、該割合は5%未満である。別の実施形態において、該割合は3%未満である。別の実施形態において、該割合は1%未満である。別の実施形態において、該割合は2%未満である。別の実施形態において、該割合は4%未満である。別の実施形態において、該割合は6%未満である。別の実施形態において、該割合は8%未満である。別の実施形態において、該割合は10%未満である。別の実施形態において、該割合は12%未満である。別の実施形態において、該割合は15%未満である。別の実施形態において、該割合は20%未満である。別の実施形態において、該割合は30%未満である。別の実施形態において、該割合は40%未満である。別の実施形態において、該割合は50%未満である。別の実施形態において、該割合は60%未満である。別の実施形態において、該割合は70%未満である。
【0299】
別の実施形態において、所定のヌクレオシドの残基(すなわち、ウリジン、シチジン、グアノシン、又はアデノシン)の0.1%が修飾されている。別の実施形態において、修飾された所定のヌクレオチドの割合は0.2%である。別の実施形態において、該割合は0.3%である。別の実施形態において、該割合は0.4%である。別の実施形態において、該割合は0.5%である。別の実施形態において、該割合は0.6%である。別の実施形態において、該割合は0.8%である。別の実施形態において、該割合は1%である。別の実施形態において、該割合は1.5%である。別の実施形態において、該割合は2%である。別の実施形態において、該割合は2.5%である。別の実施形態において、該割合は3%である。別の実施形態において、該割合は4%である。別の実施形態において、該割合は5%である。別の実施形態において、該割合は6%である。別の実施形態において、該割合は8%である。別の実施形態において、該割合は10%である。別の実施形態において、該割合は12%である。別の実施形態において、該割合は14%である。別の実施形態において、該割合は16%である。別の実施形態において、該割合は18%である。別の実施形態において、該割合は20%である。別の実施形態において、該割合は25%である。別の実施形態において、該割合は30%である。別の実施形態において、該割合は35%である。別の実施形態において、該割合は40%である。別の実施形態において、該割合は45%である。別の実施形態において、該割合は50%である。別の実施形態において、該割合は60%である。別の実施形態において、該割合は70%である。別の実施形態において、該割合は80%である。別の実施形態において、該割合は90%である。別の実施形態において、該割合は100%である。
【0300】
別の実施形態において、修飾された所定のヌクレオチドの割合は8%未満である。別の実施形態において、該割合は10%未満である。別の実施形態において、該割合は5%未満である。別の実施形態において、該割合は3%未満である。別の実施形態において、該割合は1%未満である。別の実施形態において、該割合は2%未満である。別の実施形態において、該割合は4%未満である。別の実施形態において、該割合は6%未満である。別の実施形態において、該割合は12%未満である。別の実施形態において、該割合は15%未満である。別の実施形態において、該割合は20%未満である。別の実施形態において、該割合は30%未満である。別の実施形態において、該割合は40%未満である。別の実施形態において、該割合は50%未満である。別の実施形態において、該割合は60%未満である。別の実施形態において、該割合は70%未満である。
【0301】
別の実施形態において、本発明のヌクレオシド修飾RNAは、同じ配列を有する未修飾RNA分子より効率的に細胞内に翻訳される。別の実施形態において、該ヌクレオシド修飾RNAは、標的細胞によって翻訳される能力が増強されている。別の実施形態において、翻訳は、その未修飾対応物に対して2倍の割合で増強される。別の実施形態において、翻訳は3倍の割合で増強される。別の実施形態において、翻訳は5倍の割合で増強される。別の実施形態において、翻訳は7倍の割合で増強される。別の実施形態において、翻訳は10倍の割合で増強される。別の実施形態において、翻訳は15倍の割合で増強される。別の実施形態において、翻訳は20倍の割合で増強される。別の実施形態において、翻訳は50倍の割合で増強される。別の実施形態において、翻訳は100倍の割合で増強される。別の実施形態において、翻訳は200倍の割合で増強される。別の実施形態において、翻訳は500倍の割合で増強される。別の実施形態において、翻訳は1000倍の割合で増強される。別の実施形態において、翻訳は2000倍の割合で増強される。別の実施形態において、因子は10~1000倍である。別の実施形態において、因子は10~100倍である。別の実施形態において、因子は10~200倍である。別の実施形態において、因子は10~300倍である。別の実施形態において、因子は10~500倍である。別の実施形態において、因子は20~1000倍である。別の実施形態において、因子は30~1000倍である。別の実施形態において、因子は50~1000倍である。別の実施形態において、因子は100~1000倍である。別の実施形態において、因子は200~1000倍である。別の実施形態において、翻訳は、その他の顕著な量又は量の範囲で増強される。
【0302】
ポリペプチド治療薬
他の関連する側面では、前記治療薬は、標的を変化させる単離されたペプチドを含む。例えば一実施形態において、本発明のペプチドは標的に結合することによってその標的を直接阻害又は活性化し、そのことによって標的の通常の機能的活性を変化させる。一実施形態において、本発明のペプチドは、内在性タンパク質と競合することによって標的を変化させる。一実施形態において、本発明のペプチドは、トランスドミナント・ネガティブ変異体として作用することによって標的の活性を変化させる。
【0303】
ポリペプチド治療薬のバリアントとして、(i)中に含まれるアミノ酸残基の1個以上が、保存された、又は保存されていないアミノ酸残基(好ましくは保存されたアミノ酸残基)で置換されているもの(そのように置換されたアミノ酸残基は遺伝暗号によってコードされていてもいなくてもよい)、(ii)1個以上の修飾されたアミノ酸残基(例えば置換基の付着によって修飾された残基)が中に存在しているもの、(iii)そのポリペプチドが、本発明のポリペプチドの選択的スプライスバリアントであるもの、(iv)そのポリペプチドの断片、及び/又は(v)そのポリペプチドが、別のポリペプチド(リーダー配列、又は分泌配列、又は精製(例えばHisタグ)又は検出(例えばSv5エピトープタグ)に使用される配列)と融合しているものが可能である。断片は、元の配列のタンパク質分解(多部位タンパク質分解を含む)による切断を通じて生成したポリペプチドを含む。バリアントは、翻訳後修飾されるか化学的に修飾されてもよい。このようなバリアントは、本明細書の教示から当業者の範囲であると見なされる。
【0304】
抗体治療薬
本発明はまた、標的に対して特異的な抗体又は抗体断片を含む送達ビヒクルも企図する。すなわち、抗体は、標的を発現する細胞に対して送達ビヒクルを誘導するために標的に結合し得る。いくつかの実施形態において、抗体は、標的を阻害して有益な効果を提供することができる。
【0305】
本明細書に使用される場合、「抗体」という用語は、抗体が結合する抗原との特異性を決定する超可変領域;いわゆる相補性決定領域(CDR)、を有する免疫グロブリンドメインを含むタンパク質を指す。よって、抗体という用語は、完全な抗体又は抗体全体、並びに抗体断片及び抗体全体のうちの抗原結合部分を含む構築物を指す。標準的な天然抗体が一組の重鎖及び軽鎖を有する一方で、ラクダ科の動物(ラクダ、アルパカ、ラマなど)は、標準的な構造の両方を有する抗体と重鎖だけを含む抗体を産生する。ラクダ科の動物の重鎖だけの抗体の可変領域は、VHH、又は断片として産生されたときには、ナノボディ、と呼ばれる延長CDR3を伴った独特な構造を有する。抗体の抗原結合断片及び構築物としては、F(ab)2、F(ab)、ミニボディ、Fv、単鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、及びVHが挙げられる。斯かる要素は、二重特異性T細胞エンゲージャー(engagers)などの二重及び多重特異性試薬を作り出すために組み合わせられてもよい。「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術から生じたが、現在、それがどのように起因又は産生されたかにかかわらず、あらゆる単一分子種の抗体を指すために使用されている。抗体は、免疫化、未感作若しくは免疫ライブラリからの(例えばファージディスプレイによる)選択、単離された抗体コード配列の改変、又は任意のそれらの組み合わせによって得ることができる。
【0306】
抗体可変領域は、特定の種の生殖細胞系から生じるものであり得るか、又はそれらは、結合親和力又は低い免疫原性などの特徴を最適化するためにさらに変更される可能性のある複数の種のセグメントを含んでいる、キメラであることもできる。ヒトを処置するために、抗体がヒト配列を有していることが望ましい。所望の特異性のヒト抗体が利用できないが、非ヒト種からの斯かる抗体が利用できる場合、その非ヒト抗体は、例えば(コードDNAを遺伝子操作することによって、非ヒト抗体由来のCDRが適合可能なヒト抗体のフレームワーク内のそれぞれの位置に配置される)CDRグラフティングによってヒト化される。類似の考慮事項と手順が、他の種を処置するための抗体に、変更すべきところは変更して適用され得る。
【0307】
抗体として、完全なモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体と、免疫学的に活性な断片(例えばScFv、Fab又は(Fab)2断片)、抗体重鎖、抗体軽鎖、ヒト化抗体、遺伝子操作された一本鎖FV分子(Ladner et al、米国特許第4,946,778号)、又はキメラ抗体(例えばマウス抗体の結合特異性を含むが、残部はヒト起源である抗体)が可能である。抗体は、モノクローナル抗体とポリクローナル抗体、断片、及びキメラを含め、当業者に知られている方法を利用して調製することができる。
【0308】
抗体は、興味ある免疫化抗原を含有する完全なポリペプチド又は断片を用いて調製することができる。動物の免疫化に使用されるポリペプチド又はオリゴペプチドは、RNAの翻訳から得ること、又は化学的に合成することができ、望むのであればビヒクルタンパク質にコンジュゲートさせることができる。ペプチドに化学的にカップルさせることのできる適切な基剤に含まれるのは、ウシ血清アルブミンとサイログロブリン、キーホールカサガイヘモシアニンである。その後、カップルしたポリペプチドを用いて動物(例えばマウス、ラット、又はウサギ)を免疫化することができる。
【0309】
様々な実施形態において、本発明のLNPは、抗体の抗原結合ドメインを含む結合部分、抗原、受容体のリガンド結合ドメイン、又は受容体リガンドを含む。いくつかの実施形態において、抗体の抗原結合ドメインを含む結合部分は、完全抗体、F(ab)2、Fab、ミニボディ、単鎖Fv(scFv)、ダイアボディ、VHドメイン、又はナノボディ、例えばVHH若しくは単一ドメイン抗体など、を含む。いくつかの実施形態において、完全抗体は、例えば、抗体依存性細胞障害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、及び/又は補体依存性細胞障害作用(CDC)などの二次機能を軽減又は排除するために修飾定常領域を有する。いくつかの実施形態において、例えば、二重特異性又は多特異性結合剤などの、2以上の特異性を有する結合部分が使用される。いくつかの実施形態において、受容体リガンドはペプチドである。
【0310】
組み合わせ
一実施形態において、本発明の組成物は、本明細書に記載されている治療薬の組み合わせを含む。ある実施形態において、本明細書に記載されている治療薬の組み合わせを含む組成物は相加効果を有し、組み合わせの全体効果は、それぞれの個別の治療薬の効果の和にほぼ等しい。他の実施形態において、本明細書に記載されている治療薬の組み合わせを含む組成物は相乗効果を有し、組み合わせの全体効果は、それぞれの個別の治療薬の効果の和よりも大きい。
【0311】
治療薬の組み合わせを含む組成物は、個々の治療薬を適切な任意の比で含む。例えば一実施形態において、組成物は、1:1の比の2つの個別の治療薬を含む。しかし組み合わせがどれか特定の比に限定されることはない。むしろ有効であることが示されている任意の比が包含される。
【0312】
結合
本発明の様々な実施形態において、送達ビヒクルは、幹細胞標的化ドメインに結合される。結合の代表的な方法の非限定的な例としては、共有結合、静電相互作用、及び疎水性(「ファンデルワールス力」)相互作用が挙げられる。一実施形態において、結合は可逆的な結合であるため、送達ビヒクルは、ある条件又は化学的治療薬に曝露されると標的化ドメインから解離することができる。別の一実施形態において、結合は不可逆的な結合であるため、通常の条件下では送達ビヒクルは標的化ドメインを分離しない。
【0313】
いくつかの実施形態において、結合は、活性化されたポリマーが結合した脂質と標的化ドメインの間の共有結合を含む。「活性化されたポリマーが結合した脂質」という用語は、脂質部分とポリマー部分を含み、第1のカップリング基を有するポリマーが結合した脂質が機能化されることを通じてポリマー部分が活性化されている分子を意味する。一実施形態において、活性化されたポリマーが結合した脂質は、第2のカップリング基と反応することのできる第1のカップリング基を含む。一実施形態において、活性化されたポリマーが結合した脂質は活性化されたpeg化脂質である。一実施形態において、第1のカップリング基はpeg化脂質の脂質部分に結合する。別の一実施形態において、第1のカップリング基はpeg化脂質のポリエチレングリコール部分に結合する。一実施形態において、第2の官能基は標的化ドメインに共有結合される。
【0314】
第1のカップリング基及び第2のカップリング基として、例えば穏やかな反応条件又は生理学的条件のもとで互いに共有結合を形成する当業者に知られている任意の官能基が可能である。いくつかの実施形態において、第1のカップリング基又は第2のカップリング基の選択は、マレイミド、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、カルボジイミド、ヒドラジド、ペンタフルオロフェニル(PFP)エステル、ホスフィン、ヒドロキシメチルホスフィン、ソラレン、イミドエステル、ピリジルジスルフィド、イソシアン酸塩、ビニルスルホン、アルファ-ハロアセチル、アリールアジド、アシルアジド、アルキルアジド、ジアジリン、ベンゾフェノン、エポキシド、炭酸塩、無水物、塩化スルホニル、シクロオクチン、アルデヒド、及びスルフヒドリル基からなる群からなされる。いくつかの実施形態において、第1のカップリング基又は第2のカップリング基の選択は、遊離アミン(-NH2)、遊離スルフヒドリル基(-SH)、遊離水酸化物基(-OH)、カルボン酸塩、ヒドラジド、及びアルコキシアミンからなる群からなされる。いくつかの実施形態において、第1のカップリング基は、スルフヒドリル基と反応する官能基である(マレイミド、ピリジルジスルフィド、又はハロアセチルなど)。一実施形態において、第1のカップリング基はマレイミドである。
【0315】
一実施形態において、第2のカップリング基はスルフヒドリル基である。スルフヒドリル基は、当業者に知られている任意の方法を利用して標的化ドメインの表面に取り付けることができる。一実施形態において、スルフヒドリル基は遊離システイン残基の表面に存在する。一実施形態において、スルフヒドリル基は標的化ドメイン上のジスルフィドの還元によって(例えば2-メルカプトエチルアミンとの反応を通じて)露わになる。一実施形態において、スルフヒドリル基は、化学反応(遊離アミンと2-イミノチラン又はS-アセチルチオ酢酸N-スクシンイミジル(SATA)の間の反応など)によって取り付けることができる。
【0316】
いくつかの実施形態において、ポリマーが結合した脂質と標的化ドメインは「クリック」化学で使用される基を用いて機能化される。生体直交「クリック」化学は、1,3-双極子を有する官能基(アジド、ニトリルオキシド、ニトロン、イソシアニドなど)と、アルケン又はアルキン親双極子を有するリンクの間の反応を含む。代表的な親双極子に含まれるのは、当業者に知られている任意の歪んだシクロアルケンとシクロアルキンであり、その非限定的な例に含まれるのは、シクロオクチン、ジベンゾシクロオクチン、一フッ素化シクロオクチン、二フッ素化シクロオクチン、及びビアリールアザシクロオクチノンである。
【0317】
標的化ドメイン
一実施形態において、組成物は、部位に送達ビヒクルを誘導する標的化ドメインを含む。一実施形態において、部位とは、送達ビヒクル中に含まれた作用物質を必要とする部位である。標的化ドメインは、治療薬を特に必要とする部位に粒子を標的化する、核酸、ペプチド、抗体、小分子、有機分子、無機分子、グリカン、糖、ホルモンなどを含んでもよい。特定の実施形態において、粒子は多価標的化を含み、ここで、該粒子は本明細書に記載した複数の標的化機構を含む。特定の実施形態において、送達ビヒクルの標的化ドメインは、送達ビヒクル中に含まれる作用物質を必要とする部位に関連する標的に特異的に結合する。例えば、標的化ドメインは、特定の病状に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして機能するリガンドを識別するために選択され得る。斯かる標的は、タンパク質、タンパク質断片、抗原、又は標的化部位に関連する他の生体分子である。いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、標的に特異的に結合する親和性リガンドである。特定の実施形態において、標的(例えば抗原)は、作用物質による処置を必要とする部位に関連する。いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、送達ビヒクルを含む組成物と共重合化されてもよい。いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、例えば、標的化ドメインと、送達ビヒクルを含む組成物との化学反応によるなどして、送達ビヒクルを含む組成物に共有結合されてもよい。いくつかの実施形態において、標的化ドメインは、送達ビヒクル中の添加剤である。本発明の標的化ドメインとしては、これだけに限定されるものではないが、抗体、抗体断片、タンパク質、ペプチド、及び核酸が挙げられる。
【0318】
ペプチド
一実施形態において、本発明の標的化ドメインはペプチドを含む。ある実施形態において、ペプチド標的化ドメインは興味ある標的に特異的に結合する。
【0319】
本発明のペプチドは化学的方法を利用して作製することができる。例えばペプチドは、固相技術によって合成し(Roberge J Y et al (1995) Science 269: 202-204)、樹脂から切断し、分取高性能液体クロマトグラフィによって精製することができる。自動合成は、例えばABI 431 Aペプチド合成装置(Perkin Elmer)を製造者によって提供された指示に従って用いて実現することができる。
【0320】
あるいはペプチドは、組み換え手段によって、又はより長いポリペプチドからの切断によって作製することができる。ペプチドの組成は、アミノ酸分析又はシークエンシングによって確認することができる。
【0321】
本発明によるペプチドのバリアントとして、(i)アミノ酸残基の1つ以上が保存された、又は保存されていないアミノ酸残基(好ましくは保存されたアミノ酸残基)で置換されたもの(このように置換されたアミノ酸残基は遺伝暗号によってコードされていてもいなくてもよい)、(ii)1つ以上の修飾されたアミノ酸残基(例えば置換基の付着によって修飾された残基)が存在しているもの、(iii)ペプチドが本発明のペプチドのスプライスバリアントであるもの、(iv)ペプチドの断片、及び/又は(v)ペプチドが別のペプチド(リーダー配列又は分泌配列、又は精製(例えばHisタグ)又は検出(例えばSv5エピトープタグ)に使用される配列など)と融合しているものが可能である。断片は、元の配列のタンパク質分解(多部位タンパク質分解を含む)による切断を通じて生成したペプチドを含む。バリアントは、翻訳後に、又は化学的に修飾することができる。このようなバリアントは、本明細書の教示から当業者の範囲内であると見なされる。
【0322】
本分野で知られているように、2つのペプチドの間の「類似性」は、1つのペプチドのアミノ酸配列とその保存されたアミノ酸置換を第2のペプチドの配列と比較することによって求まる。バリアントは、元の配列とは異なる、好ましくは元の配列と興味ある区画ごとに残基の40%未満が異なる、より好ましくは元の配列と興味ある区画ごとに残基の25%未満が異なる、より好ましくは興味ある区画ごとに残基の10%未満が異なる、最も好ましくは元のタンパク質配列と興味ある区画ごとにほんの数個の残基が異なると同時に、元の配列の機能を保持するため元の配列と十分に相同なペプチド配列を含むと定義される。本発明には、元のアミノ酸配列と少なくとも60%、65%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、90%、又は95%類似又は一致するアミノ酸配列が含まれる。2つのペプチドの間の一致の程度は、当業者に広く知られているコンピュータアルゴリズムと方法を利用して判断される。2つのアミノ酸配列の間の一致はBLASTPアルゴリズム[BLAST Manual, Altschul, S., et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894, Altschul, S., et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990)]を利用して判断することが好ましい。
【0323】
本発明のペプチドは翻訳後に修飾することができる。例えば本発明の範囲に入る翻訳後修飾には、シグナルペプチド切断、グリコシル化、アセチル化、イソプレニル化、タンパク質分解、ミリスチル化、タンパク質折り畳み、及びタンパク質分解処理などが含まれる。いくつかの修飾又はプロセシングイベントは、追加の生物機械の導入を必要とする。例えばプロセシングイベント(シグナルペプチド切断とコアグリコシル化など)は、イヌミクロゾーム膜又はアフリカツメガエルの卵の抽出物(米国特許第6,103,489号)を標準的な翻訳反応物に添加することによって調べられる。
【0324】
本発明のペプチドは、翻訳後修飾によって、又は翻訳中に非天然アミノ酸を導入することによって形成された非天然アミノ酸を含むことができる。
【0325】
核酸
一実施形態において、本発明の標的化ドメインは、単離された核酸(例えばDNAオリゴヌクレオチドとRNAオリゴヌクレオチドが含まれる)を含む。ある実施形態において、核酸標的化ドメインは興味ある標的に特異的に結合する。例えば一実施形態において、核酸は、興味ある標的に特異的に結合するヌクレオチド配列を含む。
【0326】
核酸標的化ドメインのヌクレオチド配列は代わりに元のヌクレオチド配列に対する配列バリエーション(例えば1つ以上のヌクレオチドの置換、挿入、及び/又は欠失)を含むことができるが、得られた核酸が元と同じ機能であり、興味ある標的に特異的に結合することが条件である。
【0327】
本明細書で用いる意味では、あるヌクレオチド配列が、本明細書に記載のヌクレオチド配列のいずれかと「実質的に相同である」のは、そのヌクレオチド配列が、本明細書のヌクレオチド配列と少なくとも60%、有利には少なくとも70%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%の程度の一致であるときである。可能な修飾の他の例に含まれるのは、配列の中への1個以上のヌクレオチドの挿入、配列のいずれかの末端への1個以上のヌクレオチドの付加、又は配列のいずれかの末端又は内部における1個以上のヌクレオチドの欠失である。2つのポリヌクレオチドの間の一致の程度は、当業者に広く知られているコンピュータアルゴリズムと方法を利用して求められる。2つのアミノ酸配列の間の一致の程度はBLASTNアルゴリズム[BLAST Manual, Altschul, S., et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894, Altschul, S., et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990)]を利用して判断することが好ましい。
【0328】
抗体
一実施形態において、本発明の標的化ドメインは抗体又は抗体断片を含む。ある実施形態において、抗体標的化ドメインは興味ある標的に特異的に結合する。斯かる抗体に含まれるのは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fabとその一本鎖Fv(scFv)断片、二重特異性抗体、ヘテロ複合体、ヒト抗体、及びヒト化抗体である。
【0329】
抗体として、完全なモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体と、免疫学的に活性な断片(例えばFab又は(Fab)2断片)、抗体重鎖、抗体軽鎖、ヒト化抗体、遺伝子操作された一本鎖Fv分子(Ladner et al、米国特許第4,946,778号)、又はキメラ抗体(例えばマウス抗体の結合特異性を含有するが残部がヒト起源である抗体)が可能である。抗体は、モノクローナルとポリクローナル抗体、断片、及びキメラを含め、当業者に知られている方法を利用して調製することができる。
【0330】
このような抗体は多彩な方法で生成させることができる。方法に含まれるのは、ハイブリドーマ培養、細菌又は哺乳類細胞培養物の中での組み換え発現、及びトランスジェニック動物の中での組み換え発現である。製造方法の選択はいくつかの因子に依存する。因子に含まれるのは、望む抗体構造、抗体上の炭化水素部分の重要性、培養と精製の容易さ、及びコストである。多くの異なる抗体構造(完全長抗体、抗体断片(Fab及びFv断片など)のほか、異なる種からの構成要素を含むキメラ抗体が含まれる)を標準的な発現技術を利用して生成させることができる。エフェクタ機能がなく限定された薬物動態活性を有する小さなサイズの抗体断片(Fab及びFv断片など)は細菌発現系の中で生成させることができる。一本鎖Fv断片は低い免疫原性を示す。
【0331】
治療方法
いくつかの実施形態において、本発明は、対象の疾患又は障害の治療のための治療薬の幹細胞標的化送達のための方法を提供する。
【0332】
本発明はまた、それを必要としている対象に少なくとも1つの作用物質を送達する方法も提供する。特定の実施形態において、その方法は、対象の疾患又は障害を治療又は予防するために使用される。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して治療できる疾患及び障害としては、これだけに限定されるものではないが、軟骨発育不全、α-1抗トリプシン欠乏、抗リン脂質抗体症候群、注意欠陥多動性障害、自閉症、常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎、乳癌、チャルコー-マリー-ツース病、結腸癌、猫鳴き症候群、クローン病、嚢胞性繊維症、ドウェイン症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー症、第V因子ライデン血栓形成傾向、家族性高コレステロール血症、家族性地中海熱、脆弱X症候群、ゴーシェ病、血色素症、血友病、全前脳症、ハンチントン病、先天代謝異常、クラインフェルター症候群、マルファン症候群、メチルマロン酸血症(methylmalonic academia)、筋緊張性ジストロフィー、神経線維腫症、ヌーナン症候群、骨形成不全症、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、ポーランド奇形、ポルフィリン症、早老症、前立腺癌、網膜色素変性症、重症複合免疫不全症、鎌状赤血球貧血、皮膚癌、背髄性筋萎縮症、テイ-サックス病、サラセミア、トリメチルアミン尿症、ターナー症候群、軟口蓋心臓顔貌症候群及びウィルソン病が挙げられる。
【0333】
一実施形態において、疾患又は障害は、非悪性血液疾患、幹細胞喪失疾患若しくは障害、幹細胞増殖疾患若しくは障害、又は幹細胞改変が有益であろういずれかの疾患若しくは障害である。
【0334】
当業者は、本明細書で詳述した方法を含む本開示で武装したとき、本発明がすでに確立している疾患又は障害の治療に限定されないことを認識するであろう。特に、疾患又は障害は、対象にとって害が現われる点まで達している必要はない;実際、治療を適用する前に疾患又は障害を対象において検出する必要はない。すなわち本発明が利益を提供する前に疾患又は障害の有意な徴候又は症状が生じる必要はない。したがって本発明には、本明細書の別の箇所でこれまでに論じた組成物を疾患又は障害の発症前に対象に投与し、そのことによってその疾患又は障害を予防することができるという意味で、疾患又は障害を予防する方法が含まれる。
【0335】
当業者は、本開示で武装したとき、疾患又は障害の予防には、疾患又は障害の進展又は進行に対する予防措置として組成物を対象に投与することが包含されることを認識するであろう。
【0336】
本発明は、少なくとも1つの幹細胞標的化ドメインに結合された少なくとも1つの治療薬を含む送達ビヒクルの送達を包含する。本発明の方法を実施するため;当業者は、本明細書に提示されている開示に基づき、適切な組成物を製剤にして対象に投与する方法を理解していると考えられる。本発明がどれか特定の投与方法又は治療計画に限定されることはない。
【0337】
当業者は、本発明の組成物を単独で、又は任意の組み合わせで投与できることがわかるであろう。さらに、本発明の組成物は、時間の意味で単独で、又は任意の組み合わせで投与すること、すなわち互いに同時に、前、及び/又は後に投与することができる。当業者は、本明細書に提示されている開示に基づき、本発明の組成物を使用して疾患又は障害を予防又は治療できることと、組成物は、単独で、又は別の組成物との任意の組み合わせで使用し、治療結果に影響を与えうることを認識しているであろう。様々な実施形態において、本明細書に記載されている本発明の任意の組成物を単独で、又は疾患又は障害に関連する他の分子の他のモジュレータと組み合わせて投与することができる。
【0338】
一実施形態において、本発明には、本明細書に記載されている組成物の組み合わせを投与することを含む方法が含まれる。ある実施形態において、前記方法は相加効果を有し、組成物の組み合わせを投与する全体効果は、それぞれの個別の阻害剤を投与する効果の和にほぼ等しい。他の実施形態において、前記方法は相乗効果を有し、組成物の組み合わせを投与する全体効果は、それぞれの個別の組成物を投与する効果の和よりも大きい。
【0339】
前記方法は、適切な任意の比にした組成物の組み合わせを投与することを含む。例えば一実施形態において、前記方法は、2つの個別の組成物を1:1の比で投与することを含む。しかし前記方法がどれか特定の比に限定されることはない。むしろ有効であることが示された任意の比が包含される。
いくつかの実施形態において、本発明は、血管腔を裏打ちしている内皮細胞に少なくとも1つの作用物質を送達するための治療用組成物を調製する方法を包含する。
【0340】
医薬組成物
本明細書に記載の医薬組成物の製剤は、薬理学の分野で既知又は今後開発される任意の方法により調製することができる。一般に、斯かる調製方法は、有効成分を担体又は1つ又は複数のその他の副成分と結合させ、その後、必要に応じて、又は所望の場合、製品を所望の単一又は複数の用量単位に成形又は包装するステップを含む。
【0341】
本明細書で提供される医薬組成物の説明は、主にヒトへの倫理的投与に適した医薬組成物についてのものであるが、斯かる組成物は一般にあらゆる種の動物への投与も適していることを当業者は理解するであろう。ヒトへの投与に適した医薬組成物を様々な動物への投与に適した組成物とするための変更は十分に理解されており、通常の熟練した獣医薬理学者は、必要に応じ通常の実験を伴い、斯かる変更事項を設計し、実行することができる。本発明の医薬組成物の投与が企図される対象として、ヒト及び他の霊長類、非ヒト霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、羊、猫、犬などの商業的な哺乳動物を含めた各種哺乳動物が含まれるが、これらに限定されない。
【0342】
本発明の方法に有用な医薬組成物は、眼内、経口、経腸、経膣、非経口、局所、肺、鼻腔内、頬内、静脈内、脳室内、皮内、筋肉内、又は別の投与経路に好適な製剤として調製、包装、又は販売できる。他の考えられる製剤には、投影ナノ粒子、リポソーム製剤、有効成分を含む再封された赤血球、及び免疫原ベースの製剤が挙げられる。
【0343】
本発明の医薬組成物は、1つの単一単位用量として、又は複数の単一単位用量として、バルクで調製、包装、又は販売できる。本明細書で使用される場合、「単位用量」は所定量の有効成分を含む医薬組成物の個別の量である。有効成分の量は、一般的に、対象に投与される有効成分の投与量に等しいか、あるいは、例えば、斯かる投与量の2分の1又は3分の1などといった利便性の高い分割量である。
【0344】
本発明の医薬組成物中の有効成分、医薬的に許容される担体、及び任意の追加成分の相対量は、治療する対象の属性、サイズ、及び状態、さらには組成物の投与経路より異なる。例として、組成物は、0.1%~100%(w/w)の有効成分を含んでもよい。
有効成分に加えて、本発明の医薬組成物は、1つ又は複数の追加の医薬活性剤をさらに含んでもよい。
本発明の医薬組成物の制御放出又は持続放出製剤は、従来の技術を使用して作製することができる。
【0345】
本明細書で使用される医薬組成物の「非経口投与」には、対象の組織の物理的破壊及び組織の破壊による医薬組成物の投与を特徴とする任意の投与経路が含まれる。したがって、非経口投与には、組成物の注射、外科的切開による組成物の適用、組織貫通非外科的創傷による組成物の適用などによる、医薬組成物の投与が含まれるが、これらに限定されない。特に、非経口投与は、これだけに限定されるものではないが、眼内、硝子体内、皮下、腹腔内、筋肉内、皮内、胸骨内注射、腫瘍内、静脈内、脳室内、及び腎臓透析注入技術が含まれることが意図される。
【0346】
非経口投与に好適な医薬組成物の製剤は、有効成分を滅菌水又は滅菌等張食塩水などの医薬的に許容される担体と組み合わせて含む。斯かる製剤は、ボーラス投与又は連続投与に適した形態で調製、包装、販売されてもよい。注射用製剤は、アンプルなどの単位剤形又は防腐剤の入った複数回投与用容器などに調製、包装、販売してもよい。非経口投与用の製剤には、懸濁液、溶液、油性又は水性ビヒクル中エマルジョン、ペースト、及び移植可能な持続的放出又は生分解性製剤が挙げられるが、これらに限定されない。斯かる製剤は、懸濁剤、安定剤、又は分散剤が挙げられるがこれらに限定されない1つ又は複数の追加成分をさらに含んでもよい。非経口投与用製剤の一実施形態において、有効成分は、再構成組成物を非経口投与する前に、好適なビヒクル(例えば、滅菌パイロジェンフリー水)で再構成するための乾燥(すなわち、粉末又は顆粒)形態で提供される。
【0347】
医薬組成物は、無菌の注射可能な水性又は油性懸濁液又は溶液の形態で調製、包装、販売してもよい。この懸濁液又は溶液は、既知の技術に従って製剤化することができ、有効成分に加えて、本明細書に記載の分散剤、湿潤剤、又は懸濁剤などの追加成分を含んでもよい。このような滅菌注射製剤は、例えば、水又は1,3ブタンジオールなどの非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒を使用して調製できる。その他の許容される希釈剤及び溶媒には、リンガー液、等張性塩化ナトリウム溶液、及び合成モノ又はジグリセリドなどの固定油が挙げられるが、これらに限定されない。有用な他の非経口投与可能な製剤には、有効成分を微結晶の形態で、リポソーム製剤内に、又は生分解性ポリマー系の成分として、含むものが挙げられる。持続放出又は埋め込み用組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、難溶性塩などの医薬的に許容されるポリマー性又は疎水性材料を含んでもよい。
【0348】
本発明の医薬組成物は、口腔を介した肺投与に好適な製剤として調製、包装、販売してもよい。斯かる製剤は、約0.5~約7ナノメートルの範囲の直径を有し、好ましくは、約1~約6ナノメートルの範囲の直径を有し、有効成分を含む乾燥粒子を含んでもよい。斯かる組成物は、噴射剤の流れを粉末を分散させるように向けることができる乾燥粉末リザーバーを含むデバイス、又は自己推進溶媒/粉末分配容器を使用するデバイス、例えば、有効成分が密閉容器内の低沸点噴射剤に溶解又は懸濁されているデバイスなどを使用する投与用に乾燥粉末の形態が便利である。好ましくは、斯かる粉末は、粒子の重量で少なくとも98%の直径が0.5ナノメートルより大きく、かつ粒子の数で少なくとも95%の直径が7ナノメートル未満である粒子を含む。より好ましくは、粒子の重量で少なくとも95%の直径が1ナノメートルより大きく、かつ粒子の数で少なくとも90%の直径が6ナノメートル未満である。乾燥粉末組成物は、好ましくは、砂糖などの固体微粉末希釈剤を含み、単位用量形態で利便性高く提供される。
【0349】
低沸点噴射剤には、一般に、大気圧で沸点が65°F未満の液体噴射剤が挙げられる。一般に、推進剤は組成物の50~99.9%(w/w)を構成し、有効成分は組成物の0.1~20%(w/w)を構成しうる。噴射剤は、液体非イオン性又は固体陰イオン界面活性剤又は固体希釈剤(好ましくは、有効成分を含む粒子と同じオーダーの粒子サイズを有する)などの追加成分をさらに含んでもよい。
【0350】
非経口投与に好適な医薬組成物の製剤は、有効成分を滅菌水又は滅菌等張食塩水などの医薬的に許容される担体と組み合わせて含む。斯かる製剤は、ボーラス投与又は連続投与に適した形態で調製、包装、販売されてもよい。注射用製剤は、アンプルなどの単位剤形又は防腐剤の入った複数回投与用容器などに調製、包装、販売してもよい。非経口投与用の製剤には、懸濁液、溶液、油性又は水性ビヒクル中エマルジョン、ペースト、及び移植可能な持続的放出又は生分解性製剤が挙げられるが、これらに限定されない。斯かる製剤は、懸濁剤、安定剤、又は分散剤が挙げられるがこれらに限定されない1つ又は複数の追加成分をさらに含んでもよい。非経口投与用製剤の一実施形態において、有効成分は、再構成組成物を非経口投与する前に、好適なビヒクル(例えば、滅菌パイロジェンフリー水)で再構成するための乾燥(すなわち、粉末又は顆粒)形態で提供される。
【0351】
医薬組成物は、無菌の注射可能な水性又は油性懸濁液又は溶液の形態で調製、包装、販売してもよい。この懸濁液又は溶液は、既知の技術に従って製剤化することができ、有効成分に加えて、本明細書に記載の分散剤、湿潤剤、又は懸濁剤などの追加成分を含んでもよい。このような滅菌注射製剤は、例えば、水又は1,3ブタンジオールなどの非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒を使用して調製できる。その他の許容される希釈剤及び溶媒には、リンガー液、等張性塩化ナトリウム溶液、及び合成モノ又はジグリセリドなどの固定油が挙げられるが、これらに限定されない。有用な他の非経口投与可能な製剤には、有効成分を微結晶の形態で、リポソーム製剤内に、又は生分解性ポリマー系の成分として、含むものが挙げられる。持続放出又は埋め込み用組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、難溶性塩などの医薬的に許容されるポリマー性又は疎水性材料を含んでもよい。
【0352】
本明細書で使用される「追加成分」には、これらに限定されないものの、以下の1つ又は複数が挙げられる:賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒及び崩壊剤;結合剤;潤滑剤;甘味料;香料;着色剤;防腐剤;ゼラチンなどの生理学的に分解可能な組成物;水性ビヒクル及び溶媒;油性ビヒクル及び溶剤;懸濁剤;分散又は湿潤剤;乳化剤、粘滑薬;バッファー;塩;増粘剤;フィラー;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定剤;及び医薬的に許容されるポリマー性又は疎水性材料。本発明の医薬組成物に含まれ得る他の「追加成分」は、当技術分野で知られており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences (1985, Genaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA)に記載されている(上記文献を参照により本明細書に援用する)。
【実施例1】
【0353】
本発明は、以下の実験例を参照することによりさらに詳細に説明される。これらの例は、説明のみを目的として提供されており、特に指定がない限り、限定することを意図したものではない。したがって、本発明は、決して以下の実施例に限定されると解釈されるべきではなく、本明細書で提供される教示の結果として明らかになるありとあらゆるバリエーションを包含すると解釈されるべきである。
【0354】
さらに説明することなく、当業者は、前述の説明及び以下の例示的な実施例を使用して、本発明を作成及び利用し、請求項の方法を実施できると考えられる。したがって、以下の実施例は、本開示を何らかの形で限定するものとして解釈されるべきではない。
【0355】
実施例1:LNP-mRNAの幹細胞標的化
図1~3に提供されるデータは、CD117(
図1及び
図2)又はCD34(
図3)幹細胞マーカーに対するLNP-mRNAの標的化を実証している。
【0356】
図1は、インビトロにおけるCD117標的化全骨髄及び系統陰性の濃縮調製を示す。3×10
5の全体又は系統陰性(Lin
-)BL/6 WT BM細胞を、0.5、1.5又は3μgのmRNAにて非結合LNP(未修飾LNP)、抗CD117-LNP、及びアイソタイプIgG結合LNP(対照IgG-LNP)カプセル化ルシフェラーゼヌクレオシド修飾mRNAと共に18時間インキュベートした。抗CD117-LNPは造血幹細胞及び始原細胞に特異的であると思われ、一方で、対照IgG-LNP及び未修飾LNPは対照としての役割を果たす。抗CD117-LNPで処理された全BM由来の、細胞溶解物において検出されたルシフェラーゼ活性のレベルは、対応物で得られたものより有意に高かった(
図1A)。ルシフェラーゼ活性はまた、Lin-選択細胞対BMにおけるCD117+細胞の割合の増大と一致した、抗CD117-LNPを用いたLin-細胞(
図1B)でより高かった。
【0357】
図2は、インビボにおけるCD117標的化全骨髄及び系統陰性の濃縮調製を示す。
抗CD117-LNPカプセル化Creリコンビナーゼヌクレオシド修飾mRNAを、レポーターマウスモデルにおけるHSCのLNP-mRNA介在性遺伝子編集を評価するのに使用した。このモデル、Ai6は、Gt(ROSA)26Sor遺伝子座内に挿入されたCAGプロモーター駆動緑色蛍光レポーター遺伝子(ZsGreen1)の転写を防止するloxP側方配置STOPカセットを有するように設計されたCreレポーター対立遺伝子を用いて遺伝子操作される。(マウス毎に1及び3μgのmRNA)にて抗CD117-LNP-Cre mRNAをAi6マウスにi.v.注射し、そして、ZsGreenシグナルを、フローサイトメトリーを使用して24時間後にLSK細胞集団において追跡した。BM中の系統Sca1+ckit+(LSK)のサブセットは、マウス毎に1及び3μgのmRNAの両方の試験用量にて~80%のZsGreen割合(%)を示した。
【0358】
図3は、インビトロにおけるCD34標的化全骨髄を示す。1×10
5個の全ヒトBM細胞を、0.5、1.5又は3μgのmRNAにて非結合LNP(未修飾LNP)、抗CD34-LNP、及びアイソタイプIgG結合LNP(対照IgG-LNP)カプセル化ルシフェラーゼヌクレオシド修飾mRNAと共に18時間インキュベートした。抗CD34-LNPは造血幹細胞に特異的であると思われ、一方で、対照IgG-LNP及び未修飾LNPは対照としての役割を果たす。抗CD34-LNPで処理された全BM由来の、細胞溶解物において検出されたルシフェラーゼ活性のレベルは、対応物で得られたものより高かった。
【0359】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。本発明を特定の実施形態を参照して開示したが、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく本発明の他の実施形態及び変形が他の当業者により可能であることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、そのようなすべての実施形態及び同等の変形を含むと解釈されることを意図している。
【国際調査報告】