(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-10
(54)【発明の名称】鋳物用コークス製品ならびに関連するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C10B 53/08 20060101AFI20240403BHJP
C10L 5/36 20060101ALI20240403BHJP
C10B 57/04 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C10B53/08
C10L5/36
C10B57/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568008
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 US2022027722
(87)【国際公開番号】W WO2022235839
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513028038
【氏名又は名称】サンコーク テクノロジー アンド ディベロップメント リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン フランシス クアンチ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン パーキンス
【テーマコード(参考)】
4H012
4H015
【Fターム(参考)】
4H012KA00
4H012MA01
4H015AA10
4H015AB02
4H015CA03
4H015CB01
(57)【要約】
本明細書では、キュポラ炉で燃焼されるように構成されたコークス製品が開示される。本コークス製品は、少なくとも3.5インチの水力直径を有する鋳物用コークス製品、1.5~3.5インチの水力直径を有するエッグコークス製品、及び0.5~1.5インチの水力直径を有するブリーズコークス製品を含むことができる。個々の鋳物用コークス製品は、少なくとも4インチの長さ、少なくとも1.5インチの幅、及び少なくとも2.0の長さ:幅比を含む横長の形状を備えることができる。いくつかの実施形態においては、個々のコークス製品の長さは、6~12インチとすることができ、幅は、少なくとも2.5インチとすることができる。加えて、鋳物用コークス製品は、少なくとも40%のコークス反応性指数(CRI)を有し得る。コークス製品は、水平熱回収炉または水平非回収炉などの水平炉において石炭及びブリーズコークス製品の配合から製造され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キュポラ炉において燃焼されるように構成されたコークス製品であって、
少なくとも4インチの長さ及び少なくとも1.5インチの幅を含む横長の形状
を備え、
前記コークス製品の長さ:幅比は、少なくとも2.0である、
前記コークス製品。
【請求項2】
前記長さが6~12インチである、請求項1に記載のコークス製品。
【請求項3】
前記幅が少なくとも2.5インチである、請求項1に記載のコークス製品。
【請求項4】
前記長さが少なくとも10インチであり、かつ前記幅が少なくとも2.5インチである、請求項1に記載のコークス製品。
【請求項5】
前記コークス製品が、少なくとも3インチの水力直径を有し、前記コークス製品の前記水力直径は、前記コークス製品の実際の直径より大きい、請求項1記載のコークス製品。
【請求項6】
前記コークス製品が少なくとも40%のコークス反応性指数(CRI)を有する、請求項1に記載のコークス製品。
【請求項7】
前記コークス製品が、少なくとも40%のコークス反応性指数(CRI)及び少なくとも10%の反応後コークス強度(CSR)を有する、請求項1に記載のコークス製品。
【請求項8】
前記コークス製品が、25~45%のコークス反応性指数(CRI)及び少なくとも10%の反応後コークス強度(CSR)を有する、請求項1に記載のコークス製品。
【請求項9】
前記コークス製品が少なくとも90%の4インチ落下破砕強度を有する、請求項1に記載のコークス製品。
【請求項10】
前記コークス製品が少なくとも85%の2インチ落下破砕強度を有する、請求項1に記載のコークス製品。
【請求項11】
水平コークス炉により製造されたコークス製品の集団であって、
鋳物用コークス製品であって、
横長の形状と、
少なくとも3インチの長さと、
少なくとも1.5インチの幅と、
少なくとも2.5の長さ:幅比と、
少なくとも3.5インチの水力直径と、
を含む前記鋳物用コークス製品と、
1.5~3.5インチの水力直径を有するエッグコークス製品と、
0.5~1.5インチの水力直径を有するブリーズコークス製品と、
を含む、前記コークス製品の集団。
【請求項12】
前記鋳物用コークス製品が、前記コークス製品の集団の少なくとも60%を構成し、
前記エッグコークス製品及び前記ブリーズコークス製品が前記コークス製品の集団の少なくとも20%を構成する、
請求項11に記載のコークス製品の集団。
【請求項13】
前記鋳物用コークス製品が、5~12%の灰分含有量及び2%未満の揮発性物質含有量を含む、請求項11に記載のコークス製品の集団。
【請求項14】
前記鋳物用コークス製品が、少なくとも5%の水分含有量を含む、請求項11に記載のコークス製品の集団。
【請求項15】
前記コークス製品が、少なくとも40%のコークス反応性指数(CRI)及び少なくとも10%の反応後コークス強度(CSR)を有する、請求項11に記載のコークス製品の集団。
【請求項16】
前記コークス製品が少なくとも90%の4インチ落下破砕強度を有する、請求項11に記載のコークス製品の集団。
【請求項17】
キュポラ炉において燃焼されるように構成されたコークス製品を製造する方法であって、
石炭と、少なくとも0.5~1.5インチの水力直径を有するブリーズコークス製品とを含む配合炭を調製することであって、前記ブリーズコークス製品は前記配合炭の5~15%を構成する、前記調製することと、
前記配合炭を水平炉内で燃焼させて鋳物用コークス製品を製造することであって、前記鋳物用コークス製品は、少なくとも4インチの長さ、少なくとも1.5インチの幅、及び少なくとも2.0の長さ:幅比を含む横長の形状を備える、前記製造することと、
を含む、前記方法。
【請求項18】
前記配合炭が、15~40%の揮発性物質(VM)及び少なくとも200ダイヤル表示/分(ddpm)の流動性を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記鋳物用コークス製品が、
少なくとも1.5~3.5インチの水力直径を有するエッグコークス製品と、
少なくとも0.5~1.5インチの水力直径を有するブリーズコークス製品と、
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記鋳物用コークス製品が、前記コークス製品の集団の少なくとも60%を構成し、前記エッグコークス製品及び前記ブリーズコークス製品が一緒に、前記コークス製品の集団の少なくとも20%を構成する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鋳物用コークス製品、ならびに鋳物用コークス製品を製造するための関連するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークスは、固体炭素燃料であり、鋼の製造において鉄鉱石を溶融及び還元するために使用される炭素源である。鋳物用コークスは、ブラストコークスに比べて大きなサイズを有し、比較的低い不純物及び比較的高い炭素含有量、強度及び安定性を含む並外れた品質のものである。鋳物用コークスは、鋳物用キュポラにおいて鉄を溶融し、鋳鉄及びダクタイル鋳鉄製品を製造するために使用される。しかし、鋳物用コークスの製造コスト、輸送コスト及び環境コストを含む製造コストは高い。したがって、当技術分野においては、製造プロセスを改善し、それにより高品質の鋳物用コークスをより高い収率及び/またはより低いコストで得ることが必要とされている。本出願は、多くの独特かつ改善された特性を有する高品質の鋳物用コークスを提供することによってニーズを満たす。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】A~Eは、様々なコークス製品の形状及びサイズを示し、A及びBは、本技術の実施形態に従って10重量%のブリーズで製造された鋳物用コークスを示し、C及びDは、米国で従来の副産物プラント(参照のためにレターサイズ用紙(8.5インチx11インチ)に示されている)において製造された第1の市販の鋳物用コークスを示し、Eは、米国外でスタンプチャージ方式の副産物プラント(参照のためにレターサイズ用紙(8.5インチx11インチ)に示されている)において製造された第2の市販の鋳物用コークス2を示す。
【
図2】ブラストコークス及び関連文献(Diezら、International Journal of Coal Geology 50:389-412(2002))に対する、本技術の実施形態による鋳物用コークスの反応後コークス強度(Coke Strength after Reaction、CSR)及びコークス反応性指数(Coke Reactivity Index、CRI)を示す。
【
図3】A~Cは、10インチ×10インチの均一なサイズのコークス製品を有するA、4インチ×10インチの均一なサイズのコークス製品を有するB、及びランダムなサイズを有するコークス製品を有するCを含む、特定の直径のキュポラに配置された様々なサイズのコークス片のパッキング試験のシミュレーションを示す。
【
図4】キュポラのパッキング試験におけるシミュレーションの確率論的な性質からの反復実行によるばらつきを示す。
【
図5】コークス製品の水力半径の例示的な計算を示す。
【
図6】本技術の実施形態による、3インチ+コークスの石炭収率(上部の曲線、1956年の刊行物からのデータ)及びブリーズ充填を増加させた4インチ+コークスの石炭収率改善(下部の曲線)を示している。
【
図7】本技術の実施形態による、灰分含有量及びコークスサイズの相関関係を示す。
【
図8】本技術の実施形態による、5%~12%の様々なブリーズ充填での鋳物用コークスの2インチ及び4インチ落下破砕強度を示し、2インチ落下破砕強度は、約93%~約96%の範囲であり、4インチ落下破砕強度は、約77%~約85%の範囲である。
【
図9A】本技術の実施形態による、5重量%~12重量%のブリーズ充填の関数としての異なるサイズグループのコークス収率モデリングを示す。
【
図9B】本技術の実施形態による、約8.0~13重量%のブリーズ充填のデータ点を有する、全コークスグループの収率モデリングを示す。
【
図9C】本技術の実施形態による、約8.0~13重量%のブリーズ充填のデータ点を有する、鋳物用コークスグループの収率モデリングを示す。
【
図9D】本技術の実施形態による、約8.0~13重量%のブリーズ充填のデータ点を有する、アンダーサイズコークスグループの収率モデリングを示す。
【
図9E】本技術の実施形態による、約8.0~13重量%のブリーズ充填のデータ点を有する、ブリーズグループの収率モデリングを示す。
【
図10】本技術の実施形態による、5重量%~12重量%のブリーズの関数としての全コークスのチャージでのドライ収率の2次適合を示す。
【
図11】Aは、本技術の実施形態による、4インチ+鋳物用コークスのウェット収率を示し、Bはそのドライ収率を示す。
【
図12】本技術の実施形態に係るブリーズリサイクル入力の関数としての収率モデルを示す。リサイクル最適化の間、中間サイズのセクションは、2つのグループ、すなわち、ロッドミル及びリサイクルされ得る一部または全体を有するスクリーンカット(3.5インチ×1.5インチ)と、リサイクルされるスクリーンカット(1.5インチ×0.5インチ)とに分割される。スクリーンカットの一部または全体(<0.5インチ)をリサイクルすることができる。
【
図13】本技術の実施形態による、ブリーズリサイクルが最適化されたHD+コークスを製造するプロセスの例示的なフローチャートを示す。
【
図14】本技術の実施形態による、高炉についての温度傾向を示している。
【
図15】本技術の実施形態による、鋳造炉についての温度傾向を示している。
【
図16】本技術の実施形態による、鋳造炉の単一煙道に対する温度の傾向及び調整を示している。
【
図17A】本技術の実施形態による、8.5%のブリーズを有する配合炭の例示的なビトリナイト反射率を示す。
【
図17B】本技術の実施形態による、8.5%のブリーズを有する配合炭の例示的なランダム反射率を示す。
【
図18】本技術の実施形態による、8.5%のブリーズを含む配合炭に基づく例示的な予測されたコークス強度を示す。
【
図19】本技術の実施形態による、8.5%のブリーズを含む配合炭中の反応性成分及び不活性材料の例示的なマセラル分布を示す。
【
図20A】8.5%のブリーズを含む配合炭の反射率プロファイルを示す。
【
図20B】8.5%のブリーズを含む配合炭及び5%のブリーズを含む配合炭の反射率プロファイルの比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本明細書では、固有の特性を有する鋳物用コークス製品(本明細書では「HD+(商標)」と称される)を含む高品質コークス製品が開示される。コークス化プロセスでは、様々なサイズのコークス製品が様々な割合で製造される。従来、コークス製品は、サイズに基づき分類され、4インチ+のサイズの鋳物用コークス、2~4インチのサイズのエッグ(工業用コークス)、1~2インチまたは1~1.5インチのサイズのストーブ、0.5~1インチのサイズのナット、及び<0.5インチのサイズのブリーズがある。本開示の態様によれば、本明細書に開示されるHD+(商標)コークス製品は、水平炉(例えば、熱回収炉、非回収炉またはトンプソン炉)で一定パーセンテージの不活性物及び/またはブリーズを含む所定の配合炭を使用して製造される。本技術のHD+(商標)コークス製品は、異なる特性に基づいて分類することができる。1つの例においては、HD+(商標)コークス製品は、3.5インチ+の水力直径を有する鋳物用コークス、1.5~3.5インチの水力直径を有するエッグコークス、0.5~1.5インチの水力直径を有するブリーズ、及び<0.5インチのサイズを有するファインズを含む。すべてのHD+(商標)ブリーズを、<3/8インチに粉砕し、コークス化プロセスのために配合炭にリサイクルさせることができるが、ファインズは、(例えば、潜在的な燃焼損失及び高い灰分含有量のために)熱回収に問題があることがある。したがって、ファインズの一部または全部は、コークス化プロセスに応じてリサイクルされる。追加のブリーズ充填が必要な場合にのみ、エッグはリサイクルされるが、ほとんどの場合、エッグは販売され、テンサイ及びミネラルウールまたはロックウール製造に使用され得る。
【0005】
特定の実施形態においては、本明細書に開示されるのは、市販の鋳物用コークスと区別できる形状を有し、その形状は、実質的に円形であり、かつ少なくとも4インチの直径を有するHD+(商標)コークスである。従来の円形の黒色の鋳物用コークスとは異なり、本明細書に開示される鋳物用コークスは、
図1に示すように、横長の「フィンガ型」を有する。特定の実施形態では、HD+(商標)鋳物用コークスは、長さ対幅の高いアスペクト比を有する。例えば、HD+(商標)鋳物用コークスは、2インチ~18インチ、3インチ~15インチ、4インチ~12インチ、または4インチ~10インチの長さ、及び1.5インチ~5インチ、3インチ~5インチ、または2インチ~4インチの幅を有する。いくつかの実施形態では、HD+(商標)鋳物用コークスは、少なくとも2インチ、少なくとも3インチ、少なくとも4インチ、少なくとも5インチ、少なくとも6インチ、少なくとも7インチ、少なくとも8インチ、少なくとも9インチ、少なくとも10インチ、少なくとも11インチ、少なくとも12インチ、少なくとも13インチ、少なくとも14インチ、少なくとも15インチ、少なくとも17インチ、または少なくとも18インチの長さをむ。いくつかの実施形態では、HD+(商標)鋳物用コークスは、少なくとも1.5インチ、少なくとも2インチ、少なくとも3インチ、少なくとも4インチ、または少なくとも5インチの幅を有する。特定の実施形態では、HD+(商標)鋳物用コークスは、少なくとも1.1、少なくとも1.5、少なくとも2.0、少なくとも2.5、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0、少なくとも4.5、少なくとも5.0、少なくとも5.5、少なくとも6.0、少なくとも6.5、少なくとも7.0、少なくとも7.5、少なくとも8.0、少なくとも8.5、少なくとも9.0、少なくとも9.5、または少なくとも10.0の長さ:幅比を有する。特定の実施形態では、HD+(商標)鋳物用コークスの少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%は、上記開示の長さ、幅及び長さ:幅比の範囲内に含まれる。
【0006】
特定の実施形態では、HD+(商標)鋳物用コークスは、その実際のまたは有効な直径より大きい水力直径(Dh)を有する。比較すると、従来の丸形の鋳物用コークスは、実際の直径と等しいまたはほぼ同じDhを有する。Dhは、以下のように定義される水力半径(Rh)の関数である:
【0007】
【0008】
εbは、以下のように計算されるコークス床の粒子間多孔性である:
【0009】
【0010】
ここで、ρbはコークスのかさ密度であり、ρaはコークスの見掛け密度である。
【0011】
調和平均粒径であり、不均一なコークスと同じ体積対表面比を有する均一なコークスのサイズを表すDpは、以下のように計算することができる:
【0012】
【0013】
ここでfiは、直径Diを有するコークスチャージの重量分率である。均一なサイズのコークスの場合、Dp=Diである。
【0014】
特定の実施形態においては、鋳物用コークスは、少なくとも2インチ、少なくとも2.5インチ、少なくとも3インチ、少なくとも3.5インチ、少なくとも4.0インチ、少なくとも4.5インチ、少なくとも5インチ、少なくとも5.5インチ、または少なくとも6.0インチの水力直径を有する。一例として、3.5インチの水力直径は、4.0インチの実際の直径とほぼ等しいものであり得る。特定の実施形態では、エッグは1.5インチ~3.5インチまたは1.5インチ~2インチの水力直径を有する。
【0015】
コークス反応性指数(CRI)は、ブードゥアール反応後のコークスの重量損失のパーセンテージを表し、CO
2+C
(コークス)=2時間の加熱されたキルン中の2CO、である。反応後コークス強度(CSR)は、CRIキルン反応後に残っているコークスの転倒強度試験に基づく。
図2に示すように、CSRとCRIは逆相関を有する。
【0016】
キュポラ内での動作において、金属及びコークスが熱を受けてキュポラを通って下向きに進行する際に、コークスの燃焼熱によって金属は溶融され、粘度が上昇し、最終的に炭素が高いまたはより高い液状の金属を形成する。キュポラの上部では、熱によってキュポラが乾燥し、水分は減少するが、コークスを燃焼させないことが好ましい。コークスがキュポラの上部で(すなわち、過度に早く)燃焼または加熱されると、下部または反応ゾーン(本明細書で言及される)でより深いキュポラとは対照的に、比較的多量の一酸化炭素及び/または水素が生成され、これは、キュポラの下部で金属に移動し得る炭素の損失及び/または炭素の減少に相当する。言い換えれば、コークスをキュポラ中で過度に早く燃焼するか、またはキュポラの反応ゾーン以外の領域で燃焼させると、コークスからの炭素を二酸化炭素と反応させて、ブードゥアール反応を介して一酸化炭素を形成し得る。これは、一般的に、より多くのコークス及びキュポラの反応領域でのより多くの酸素または風を使用する必要性を含む、効率損失及び鋼の製造のより高いコストをもたらす。さらに、キュポラの上部でのそのような望ましくない反応は、より多くの発煙及び低い金属タップ温度をもたらし、これにより、キュポラの動作能力が制限され、効率損失にも相当する可能性がある。そのような望ましくない反応は、そのサイズ、形状、密度、気孔率、組成及び/または化学的性質を含むコークスの特性のために起こり得る。これを考慮して、コークスのCRIは、コークスが、キュポラの上部でブードゥアール反応に抵抗するのに十分に不活性であり、かつキュポラの適切な反応ゾーン内で加熱/燃焼するのに十分に反応性であることを保証するのに特定の範囲にあるべきである。
【0017】
特定の実施形態では、本明細書に開示されているHD+(商標)鋳物用コークスは、10%~25%、5%~20%、または10%~15%のCSRを有し得る。特定の実施形態においては、HD+(商標)コークスは、15%~65%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも45%のCRIを有する。幾つかの実施形態では、CSIを、好ましくは(例えばCSRに関わらず)増加させて、キュポラ内でのコークスの望ましい溶融プロファイルを可能にする。コークス化プロセス中のブリーズ充填のパーセンテージはコークスのCSRに影響を及ぼし、その際、ブリーズ充填がより高いと、ある一定の最小閾値(例えば、CSRが10~15%)に達するまでCSRが低下する。特定の実施形態では、エッグは、上で開示した鋳物用コークスと同じまたはほぼ同じCSRを有する。特定の実施形態では、エッグは、上で開示した鋳物用コークスと同じまたはほぼ同じCRIを有する。
【0018】
特定の実施形態では、鋳物用コークスは、両方とも4インチ+の開始材料を使用して、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、もしくは少なくとも90%の4インチ落下破砕強度、及び/または、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の2インチ落下破砕強度を有する。特定の実施形態では、鋳物用コークスは、1つ以上のカスタマイズされた基準、例えば、5%~12%、10%未満、9.5%未満、9%未満、8.5%未満、8%未満、7.5%未満、もしくは7%未満の灰分含有量、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、もしくは0.5%未満の硫黄含有量、2%未満、1%未満、もしくは0.1%~1%の揮発性物質(VM)含有量、15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、もしくは1%~10%の水分含有量、または少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の固定炭素含有量、を有する。
【0019】
特定の実施形態では、独自のプロセスにより製造された全コークスは、以下のサイズ分布を有する:鋳物用コークスは、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%であり、エッグとブリーズを含む中間コークスは5%~35%、10%~30%、または15%~20%であり、ファインズは10%未満、8%未満または5%未満である。好ましくは、鋳物用コークスの部分は、製造される全コークスのうちで可能な限り高い割合である。
【0020】
その独特のサイズ及び形状のため、本明細書に開示されているHD+(商標)コークスは、以下の実施例で示される望ましいパッキング密度を達成するという利点を有する。
【0021】
実施例1:パッキング試験
この実施例では、単純化された2Dランダムパッキングモデルによるキュポラパッキングシミュレーションを示す。均一にサイズ決めされたコークスと比較して、広いサイズ分布を有するコークスは、炉内に充填されたとき、より高いかさ密度、より大きな表面積、及びより低い床気孔率を有すると予想される。
【0022】
図3Aは、10インチ×10インチの均一なサイズを有するコークスの2Dシミュレートされたパッキング試験を示す。円は、半径60インチのキュポラの断面を表す。各正方形は、辺上の立方体10インチである鋳物用コークス片を表している。コークス片は、ランダムな位置及びランダムな回転で連続的に添加されように試みられた。新たなコークス片が以前のいずれの個片とも重ならない場合は、そのコークス片を配置し、そうでない場合は廃棄した。重なりはコークス端部の交差により決定された。この特定のシミュレーションでは、10,000個の個片が試みられ、61個しか収まることができなかった。
【0023】
このモデルの大前提に含まれるのは、(1)次の層の個片がこの層上に置かれる、(2)円の外側に延びるコークス片の部分が軽微な誤差として無視される、(3)この断面がキュポラの他のあらゆる断面に実質的に等しい、(4)コークス充填の相対密度が正方形の面積の合計と全円の面積との比に比例する、(5)厳密ではないが、相対表面積はコークス片の周囲長の合計にほぼ比例する、というものである。
【0024】
取付け具10インチx10インチ(
図3Aに示されている)と取付け具4インチx10インチ(
図3Bに示されている)とを並べた比較では、コークス片の被覆面積の比及び周囲長の合計とを比較する。10インチ×10インチの個片に対して58個の個片を配置し、11,309平方インチ:(10×10×58)/11,309=51%のキュポラ面積の51%のカバー率と2,320インチ:2×(10+10)×58=2,320の周囲長の合計を得た。4インチ×10インチの個片に対して138個の個片を配置し、11,309平方インチ:(4×10×138)/11,309=49%のキュポラ面積の49%のカバー率と、3,864インチ:2×(4+10)×138=3,864の周囲長の合計を得た。
【0025】
シミュレーションにおける次の改良は、(1)ユーザが定義した最大値と最小値との間でコークス片の長さ及び幅を変化させることであった。各個片は、正方形の小さい端部(すなわち、LxWxW)を有するものと仮定され、かつ(2)個片のより小さな「コーナー」が許容された空間に収まることができるように、個片を傾斜させることを許容する。全範囲の傾斜が許容されたときには、シミュレーションは、小さな端部に個片を立てることにした。したがって、最大傾斜は、恣意的に30度に制限された。
【0026】
この仮定に基づき、様々なサイズのコークス片を、
図3Cに示されるように60インチのキュポラ半径に合わせた。これらのコークス片は、4インチ~10インチの長さ及び3インチ~5インチの幅を有し、取付けに関して10,000回の試みが行われた。様々なサイズの個片に対して209個の個片を配置したところ、11,309平方インチ:5,365/11,309=47%のキュポラ領域の47%のカバー率と、4,383インチの周囲長の合計とが得られた。したがって、パッキング試験は、コークス充填の相対密度が大きく変化しなかったのに対し、相対表面積は、
図3A~
図3Cのパッキングシミュレーションと比較して大幅に増大したことを実証している。結果を以下の表1に要約する。
【0027】
【0028】
図4は、シミュレーションの確率論的な性質からの反復実行によるばらつきを示す。
【0029】
実施例2:水力半径の計算
Excelモデルを使用して、上記で開示された式を使用して、測定されたサイズ分布、推定される底部スクリーンカット及びかさ密度に基づいて鋳物用コークスの水力半径を計算した。
【0030】
我々のコークスの横長の形状は、希薄なパッキング密度を形成する潜在性を有し、これは次に、有効水力半径を増大する。これにより、CO2とコークスとが反応してコークス表面に発生するCOを形成する際の潜熱損失が低減されるため、鋳造のキュポラ性能が向上する。より高い間隙容積とコークス表面積との比がこの因子には役立つ。
【0031】
小さなコークスを切り出すことによって水力半径を改善することもできるが、収率は損なわれる。横長のコークス形状は、顕著なキュポラ性能利点であることを証明し得る。
【0032】
スクリーニングされたコークス及び未スクリーニングコークスのかさ密度を測定し、計算に使用することができる。計算結果を
図5に示す。
【0033】
配合炭の調製
本開示の態様によれば、高品質のコークス、特に過剰サイズの鋳物用コークスを得ることは、所定のパーセンテージの不活性物またはブリーズを有する石炭の最適化された配合を使用することを含む。配合炭の調製には、ブリーズ調製、石炭の選択、配合レシピ最適化、配合調製が含まれる。
【0034】
ブリーズの調製
図に示すように、ブリーズ充填の増加に伴って、3インチ+コークス及び4インチ+コークスの両方の収率が改善された。粉砕されたブリーズは、サイズが<3/8インチのコークスブリーズであり、より大きなコークスを、例えば、ロッドミル、ボールミル、またはその他の粉砕構成部材において粉砕することによって得ることができる。本開示の例示的な一実施形態では、灰分含有量が低いコークスをミルで粉砕して、配合炭に混合するための粉砕ブリーズを生成し、最終的な総収率の最適化を改善する。コークスブリーズのサイズウィンドウは、灰分含有量が最適化され、粉砕に使用される中間サイズのコークス(例えばエッグ)の収率損失が最小限になるように調整され得る。全体的な収率の影響を最も少なくして、最も多くの灰を除去するために、埃をブリーズからスクリーニングして取り出す。
【0035】
選択されたコークスは、例えばロッドミルにより様々な手段で所望のサイズ範囲に粉砕され、ブリーズとして配合炭にリサイクルされる。
【0036】
このコークス供給物は、サイズについてスクリーニングされる。大きすぎるコークスは、粉砕のためのコストまたは手順が効率的ではない。また、コークス供給物は、サイズ、灰分含有量及び硬さなどの様々な属性に基づいて特徴付けられ、かつ最適化される。特定の実施形態では、粉砕は、異なるサイズの供給原料のためにシフトして作動し、次いで、再結合することができる。特定の実施形態では、粉砕機は、それぞれの供給物に対して最適化することができる。
【0037】
従来、コークスは、サイズに基づき分類され、4インチ+のサイズの鋳物用コークス、2~4インチのサイズのエッグ(工業用コークス)、1~2インチまたは1~1.5インチのサイズのストーブ、3/8~1インチのサイズのナット、及び<0.5インチのサイズのブリーズがある。本明細書に開示されている鋳物用コークス及びエッグコークスは、それぞれ3.5インチ+及び1.5~3.5インチのサイズを有する。サイズが1.5インチまたは2.0インチ未満のHD+(商標)コークスを粉砕し、配合炭にリサイクルさせる。このグループでは、0.5~2.0インチのサイズのブリーズはリサイクルできる一方で、1/2インチ未満のサイズのファインズは、潜在的な熱損失及び高い灰分含有量により、熱回収に問題がある場合がある。エッグは、追加のブリーズ充填が必要な場合にのみリサイクルされる。
【0038】
したがって、各製造サイクル後に、サイズ0.5インチ(ファインズ)未満のスクリーンカット、サイズ0.5~2.0インチ(ブリーズ)のスクリーンカット、サイズ1.5~3.5インチ(エッグ)のスクリーンカット、サイズ>3.5インチ(鋳物用コークス)のスクリーンカットといったサイズのコークス製品がスクリーニングされる。リサイクルプロセスをフローチャートで示す(
図13)。ファインズは低コストであるが、高い灰分含有量及び高い発塵への寄与があるためにすべてのファインズがリサイクルされるわけではない。
図7は、コークスサイズとの予測された灰分含有量の相関を示す。好ましくは、ブリーズは、高いパーセンテージの低灰分のブリーズを含み、高灰分のブリーズは、すべてのブリーズがリサイクルされるように、0.5%未満である。エッグの一部は、十分なブリーズ充填を達成するために粉砕及びリサイクルされ、鋳物用コークスは粉砕されない。
【0039】
本明細書に開示されたプロセスでの最適化及びリサイクルがあるので、すべてのエッグコークスが粉砕及びリサイクルされて、十分なブリーズ充填が形成されるわけではない。残りのエッグコークスは、例えば、テンサイ及びロックウール製造において販売及び使用することができる。あるいは、副生成物である低灰分のブリーズを購入して、配合炭のための十分なブリーズ充填を形成することができ、これにより、ほとんどのエッグまたはすべてのエッグを、生成物として販売することができる。特定の実施形態では、コークスブリーズは、20メッシュ及び+60メッシュで65%まで粉砕される。
【0040】
石炭の選択及び配合のレシピ最適化
配合用の原料炭は、多くの要因、例えば、揮発性物質(VM)、ビトリナイト分布、不活性(ブリーズ充填のパーセンテージと相関する)、配合の流動性、灰分/硫黄分、及び石炭のコストに基づいて選択されるが、これらに限定されない。所定のパーセンテージで選択された1つ以上のタイプの石炭をブリーズと混合して配合炭を形成し、これは、高品質のコークス製品の所望の収率を達成するように最適化されている。配合炭について様々な試験及び分析を行うことにより、高収率及び高品質のコークス製品が保証される。
【0041】
近接/硫黄分析は、基本的に化学全体であり、従来の知識は、可能な限り低い灰収率及び硫黄含有量を示す配合炭を選択することである。灰分は、製品のコークス灰中に濃縮される処分可能な不活性残留物であるが、炭化には限定的な利点を提供する。総硫黄はCSRの低下を招くが、一部は溶銑に集中し、生成物は脆くなる。鋳造の事業者は、製造された高温の金属に方法を見つけることができるので、灰と硫黄を深刻に見ている。最終的な分析では、総炭素は、炭化の作業基礎である。水素は、ペトログラフィにおけるマセラルのエクシノイド群の主要成分であり、これらは、植物樹脂及び樹液に由来する。それらは、揮発性ガスの発生により大きく寄与し、レオロジー的変形にほとんど寄与しない。過剰な酸素は、石炭が空気及び/または水に風化曝露されたことの徴候となり、流動性及び膨張が劣ることにつながる可能性がある。
【0042】
レオロジー試験パラメータには、ギーゼラー塑性(流動性)、アルヌ膨張及びるつぼ膨張指数試験手順が含まれる。るつぼ膨張指数は、最良の定量法ではないものの、コークス製造に適した石炭の大まかなスクリーニングを提供する。ギーゼラー試験及びアルヌ試験は、コークス製造用の石炭を選択するのに重要であり、均一高強度コークスの製造に役立つ。
【0043】
石油分析は、微視的な化石化プラント成分を同定する定量法である。異なる植物組織の比率バランスは、炭化プロセスに大きく寄与し、ビトリナイトで表される木質材料は、製品コークスにおいてコークスのマイクロテクスチャ及びセル構造を生成する主要な要因である。
【0044】
したがって、強力なコークスの製造は多元的であり、個々の石炭品質特性は、互いに同時に作用し、かつ互いに対抗している。
【0045】
本開示の態様によれば、低温炉操業を促進するために、低揮発性物質(VM)の配合炭が選択される。一般に、VMが低いほど、総コークス収率が高くなり、より鋳物用コークス収率が高くなり、より大きなコークスが得られる。特定の実施形態では、配合炭のVMは、15%~40%、20%~33%、または20%~24%である。特定の実施形態では、配合炭のVMは、25%未満、24%未満、23%未満、22%未満、21%未満、20%未満、19%未満、または18%未満である。特定の実施形態では、水分含有量はVMのバランスを取るためにより低く調整され、6%~15%、9%~12%、または10%~12%の範囲内とすることができる。いくつかの実施形態では、水分は、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、または少なくとも11%である。
【0046】
本開示のさらなる態様によれば、配合炭は、膨張炭であることができ、コークス化炉は、「スロット」型炉または副生成炉におけるような壁圧により制限されない水平炉である。動作時に、コークス化プロセスの塑性段階の間に、揮発分の放出が容易に逃げることができないために石炭塊の膨張が生じ得る。膨張は、「スロット」型炉の耐火壁に圧力を与え得る。石炭の膨張リスクを評価する際に重要なパラメータは、ランク、不活性物含有量、及びかさ密度である。一般に、ランクが増大すると、不活性物含有量が減少するかまたはかさ密度が増大し、発生する有害な壁圧の危険性が大きくなる。膨張段階の後、コークスは収縮及び縮小する。過剰な収縮は、亀裂の形成によるコークス強度の低下を伴う。しかしながら、副産物のコークス設備では、コークスを炉から容易に押し出すべき場合に、コークス塊のある程度の収縮が必要とされる。
【0047】
配合炭は、ビトリナイト、リプチナイト及び反応性セミフシナイトを含む反応性成分と、コークス(ブリーズを含む)、不活性セミフシナイト、フシナイト、マクリナイト及び鉱物を含む不活性物質とを含む。反応性成分は「膠着剤」を提供するのに対し、不活性材料はコークス強度をもたらすフィラーである。反応成分と不活性材料との間の比率は、強い均一なコークスを製造するために最適化される。特定の実施形態では、ブリーズを含む配合炭中の全不活性物は、20%~40%または35%~40%であり、その際、ブリーズは、約15%~20%を占める。特定の実施形態では、全不活性:全反応性の比は、20:80、21:79、22:78、23:77、24:76、25:75、26:74、27:73、28:72、29:71、30:70、31:69、32:68、33:67、34:66、35:65、36:64、37:63、38:62、39:61、または40:60である。
【0048】
ビトリナイトの種類の選択は、コークス製品の収率及び品質にも影響を与える。特定の実施形態では、ビトリナイトは、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18及びV19のうちの1つ以上を含む。特定の実施形態では、ビトリナイトはV15、V16及びV17を含み、これらの組み合わせは配合のペトログラフィの少なくとも30%を占める。特定の実施形態では、ビトリナイトは、V18の4%未満または2%未満を含む。
【0049】
一般に、配合炭において灰分及び硫黄分を少なくすることが望ましい。しかしながら、灰分及び硫黄分が非常に少ない石炭は、より高価であり、製造コストを増加させる可能性がある。さらに、配合炭の灰分含有量は、コークス製品においてのみならず、先に論じたブリーズリサイクルをも考慮して最適化されるべきである。特定の実施形態では、配合炭における灰分含有量は、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6.5%未満、6%未満、5.5%未満、または5%未満である。特定の実施形態では、配合炭中の灰分含有量は、約8%~9%、約6%~7%、または約5%~6%である。特定の実施形態では、配合炭における硫黄含有量は、1.5%未満、1.0%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、または0.5%未満である。特定の実施形態では、配合炭の灰分含有量及び/または硫黄含有量は、最終的なコークス製品に関する顧客の要求に基づいて調節することができる。
【0050】
配合炭の水分含有量は、様々な段階で調整することができ、例えば、チャージ前の配合炭またはチャージでの配合炭において水分を調整することができる。特定の実施形態では、水分含有量を測定することができ、炉に向かう途中で、または水分含有量を目標の8%~15%の水または10%~13%の水に増加させるためにチャージしている間に、余分な水を配合炭に添加することができる。水は、ピーク温度を遅らせるために、揮発性物質(VM)の放出を遅らせるために、及び/またはコークスラインを動かすために添加され得る。炉が冷却される場合、炉で必要な水分含有量が少なくなる。特定の実施形態では、配合炭の水分含有量は、4%~20%、5%~15%、10%~15%、または10%~13%である。
【0051】
配合炭は、コークス化プロセス中に液相及び固相の移行を経る。低温では、配合炭は固体である。炉温度の増加に伴って、配合炭は軟化し、粘稠、次いで流動性となり、次いで再固化する。配合炭は、粒子間結合を促進するためにある程度の流動性を有していなければならない。ギーゼラー塑性試験は、配合炭の流動性を判定するために行われる。石炭試料を、撹拌ロッドを埋め込んだ小さなレトルト(直径2cm、高さ3cm)にパッキングする。撹拌ロッドには、一定のトルクがかけられている。アセンブリは、温度制御/加熱粘度計であり得る。化学反応が起こり、粘度が変化している。アセンブリは高温炉浴に沈められ、加熱される。まず、パッキングされた石炭は、ロッドの回転を防止する。加熱されると石炭は最終的にロッドが回転し始めるのに十分に溶融する。これは初期の軟化温度である。石炭がさらに溶融すると、ロッドはより速く回転し、この動きはダイヤル表示/分(ddpm)で測定及び記録される。完全な円には100個のダイヤル表示がある。ddpmがピーク(最高流動温度)に達する温度がある。その温度を超えると石炭はコークスへと変化し始め、撹拌ロッドを減速させる。最終的に、ロッドは最終固化温度で停止する。流動性は、ddpm単位のロッドの最高回転速度である。流動性は、多くの場合、対数スケールで報告される:流動性1000ddpmは、log(F)=3に対応する。石炭の配合のlog(F)は、成分のlog(F)の加重平均となる。古い機器は上限が30,000ddpmであるため、多くの高流動性石炭は30,000ddpmを有する。最新の機器は、100,000DDPM(1000rpm)まで到達できる。石炭の塑性範囲は、最終固化温度と初期軟化温度との間の差である。高い流動性及び高い塑性範囲は、石炭が不活性粒子の周りを流れて強いコークスを生成することを可能にする、コークス化プロセスにおいて石炭が非常に流動性になることを意味する。
【0052】
特定の実施形態では、配合炭は、少なくとも200ddpm、100ddpm~2000ddpm、または200ddpm~1200ddpmの流動性を有する。流動性を高めることが望ましく、配合炭においてタール、コールタール、及びその他の重油などの様々な添加剤が流動性を高めることができる。一方、スタンプチャージは、流動性の底端を約20ddpmまで下げることができる。特定の実施形態では、配合炭の流動性は、log(F)=2~3、log(F)=2~4、またはlog(F)≧3の範囲にある。
【0053】
特定の実施形態では、配合炭は、鋳造の特性予測に基づいて最適化される。例えば、ブリーズのパーセンテージは、配合炭において最適化することができる。ブリーズ充填は、落下破砕強度、安定性、粉塵発生及び収率に影響を及ぼす。
【0054】
典型的には、開始材料として4インチ+コークスを使用して落下破砕強度試験が行われ、4インチ及び2インチの両方について落下破砕強度が評価される。
図8は、5%~12%のブリーズ充填の関数としての4インチ及び2インチの落下破砕強度を示している。幾つかの実施の形態では、落下破砕強度は、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%のブリーズ充填でピークを有するかまたはピークに近づけることができる。
【0055】
一般に、より高いブリーズ充填は、図に示すように、総コークス及びHD+鋳物用コークスの両方において、より高い収率をもたらす。
【0056】
燃焼及び炉設計
鋳物製造手順の燃焼工程は、熱回収炉で行われる。他の炉も、配合炭及び他のパラメータ、例えば非回収炉及び生成物炉を適合させることによって使用することができる。最適化することができるパラメータの非限定的な例には、サイクル時間、温度制御、単一煙道の変更、上部空気、及び炉タイプが含まれる。
【0057】
サイクル時間の最適化
特定の実施形態では、燃焼ステップは、24時間サイクル、48時間サイクル、72時間サイクル、またはより長いサイクルを有する。
【0058】
熱回収炉
本明細書に開示のプロセスにおける燃焼実行は、ブラスト実行と比較して様々な態様で修正されて、高品質の鋳物用コークスを製造する。特定の実施形態では、鋳物用コークスを製造するためのクラウン温度及び単一煙道温度は、開始時に抑制される。これは、ブラストのプロセスとは異なり、このプロセスでは、単一煙道(SF)を(超過すべきない(NTE)温度を超えることなく)最初に可能な限り高温にし、コークス化サイクル全体にわたってSF中の熱を維持することを試みる。チャージの前または間に放出されるVMの速度及び/または量を遅くすることによって、または燃焼実行によりクラウン及びSFにおける燃焼を遅くすることによって、クラウン温度及び単一煙道温度を抑制することができる。VM含有量を変更することは、チャージ後のクラウン及びSFピーク温度に大きな影響を与える。
【0059】
VM含分が高いほど、ピーク温度及びNTE温度が高くなり得る。VM及びその効果に対抗することを助けるために、石炭が炉に入る際に石炭に水が添加される。水分もチャージ後のピークに大きな影響を与える。水分含有量が比較的多いと、温度上昇の速度を低下させることができ、水が蒸発するときの温度の制御に役立ち得る。典型的には、石炭は、高炉のために約5%の水分まで乾燥されるが、鋳造炉では、石炭は、予め乾燥されず、チャージの密度を高めるためにチャージ前に水が添加されてもよい。この点に関して、より低い温度で鋳物用コークスのための浸漬時間を最小限にすることが一般的に望ましい。これは、一般的に、より長い浸漬時間を有することが望ましいブラストコークスの製造方法とは対照的である。
【0060】
ブラストと鋳物用の別の違いは、チャージ後の設定である。通常、高炉では、ドア孔及び単一煙道は、それぞれの特定の炉の温度に基づいて開放または閉鎖される。鋳造の際の目標は、クラウン温度をサイクル全体を通じて低く保つことであり、そのため、すべてのドア孔が各チャージに対して閉鎖される。SFが熱くなり過ぎるのを防ぐために、鋳造では、SFは部分的にのみ、通常は約1/2に開いている。クラウン及びSFにおける酸素のこの制約は、共通のトンネルにおいて燃焼を引き起こすことがあり、共通のトンネルでは、取込み口の周りの漏れによって酸素が導入される。SFを最初の日にできるだけ高温にすることが目標となる高炉では、トンネル内の燃焼は厳密に回避される。
【0061】
特定の実施形態では、より低いSF温度がサイクル全体にわたって維持される。高炉では、目標は、炉の状態及びチャージ重量に応じて、サイクルの開始時にSFを高温、通常は約2300°F~2600°Fにして、可能な限り長く維持することを試みることである。SF温度は、このサイクルを通して徐々に約1900°F~2100°Fまで低下する。これは、チャージ直後にSFダンパを部分的または完全に開放し、次いでサイクルの前半にわたってゆっくりと閉鎖することによって管理される。通常、SFダンパは、チャージ後の最初の24時間以内は完全に閉じられている。SFダンパを閉じると、次のチャージまで再び開かない。サイクルの途中で、隣接する炉がチャージされ、これは、SF温度の増加につながるが、SFダンパは閉鎖されたままである。代表的な傾向が図面に示されている。鋳造炉において目標は、サイクル全体にわたってSF温度を約1600~2300°Fの範囲、より好ましくは約1850°Fに維持することである。ドア孔はサイクルを通して閉鎖されたままであるので、SF温度を制御するためにSFダンパが使用される。例えば、隣接する炉が72時間のサイクルでそのサイクルに約24時間及び48時間チャージされるとき、SF温度が過度に高くなるのを防ぐのに役立てるためにSFダンパは、一般的に再び開放される。
図16に温度傾向とSF調節を示す。最初の12時間は、典型的な高炉と同様であるが、SFダンパが閉鎖された後にSFダンパを再開放することは高炉では生じないため、残りの時間は高炉とは大幅に異なる。
【0062】
特定の実施形態では、流れを部分的または完全に方向変換するかまたは断ち切るように、単一煙道壁を変更することができる。特定の実施形態では、空気を床の中心に向かって、かつ端壁から離れるように移動させるために、管を単一煙道に挿入することができる。例えば、セラミック管(複数可)を単一煙道ダンパに挿入することができ、先端部スティックを約5~10フィートに、例えば途中から中程まで、配置することができ、後端部スティックを煙道のホールから数インチ外に配置することができ、縁部付近を気密にして長い煙道を適用する必要がない。炉は、炉チャンバまたは分割された煙道の長さの下及び長さに沿って延びる長い単一煙道を有することができる。分割された煙道は、レイアウトのために床の中央でより遅い速度を有することができる。より大きなコークスは、最後(最も長いコークス化時間)にコークス化する炉の中央で得られる。
【0063】
特定の実施形態では、クラウン温度は、サイクル全体を通じて抑制される。鋳造炉の目標は、クラウン温度を、SF温度よりもおよそ150°F高く維持することである。一般的に、クラウン温度は、より低く始まり、その後、サイクルを通じて徐々に上昇し、サイクルの最後の日にピークを迎える。この傾向は高炉に関して同様であるが、高炉に関してはクラウン温度が著しく高い。
図14及び
図15それぞれにおけるブラスト及び鋳造の代表的な傾向を参照されたい。高炉クラウン温度は、通常、チャージ中に約1900°F~2000°Fまで低下し、サイクル全体にわたってゆっくりと上昇し、サイクルの最後の日には約2400°F~2600°Fでピークに達する(高炉ではほぼ常に48時間サイクル)。高炉では、クラウン温度を制御する1つのツールは、ドア孔の使用であり、ドア孔は、クラウン温度を高める目的で、隣接する炉がチャージされたときに時折開かれる。鋳造炉では、ドア孔は、クラウン温度を低下させる努力として、全サイクルにわたって閉鎖された状態に維持される。ドア孔は、鋳造炉におけるクラウン温度を低下させるのに十分ではないので、取込み口は極めて異なって使用される。取込み口は、最初は完全に開放され、次いでサイクルの約1時間の中間点まで徹底的に閉鎖される。次に、第1の調整から約2時間後にさらに2インチ閉じ、その後、約12時間後にさらに2インチ閉じる。取込み口のこの積極的な閉鎖は、取込み口を高炉で使用することとは異なり、この場合、取込み口は、通常、サイクルの前半にわたってほとんど開いたままであり、次いで、徐々に減じられる。
図14及び
図15は、高炉及び鋳造炉のそれぞれについての取込み口位置決めにおける差を示している。
【0064】
特定の実施形態では、本明細書に開示された燃焼実行は、シム取込み口を含む。この取込み口に伴う問題の1つは、時間の経過とともに、取込み口が完全に閉じられたときに存在するはずの2インチの隙間が4~6インチの隙間に食い込んでしまい、これにより、炉の通風を減らす努力が大幅に妨げられてしまう可能性があることである。シムは、2インチのギャップまたは1インチのギャップにさえ戻るように、いくつかの鋳造炉に追加可能である。
【0065】
特定の実施形態では、制御弁を備えた、または制御弁を備えていない外部ガス共用ジャンプオーバを追加することができる。制御弁の位置は、SF及びドア孔の位置の決定と同様に、炉ごとに決定することができる。制御弁の使用及び位置は、ガスをより多く必要とする炉に基づいて調節され得る。例えば、1つの炉が高温になりすぎている場合、弁は、より多くのガスを隣接する炉へ送れるようにさらに開放させることができる。しかしながら、隣接する炉も熱すぎる場合、弁を閉鎖することができ、炉は、温度を制御するためにリッチクラウン及びSFにより作動する(鋳造用のみ)。1つの炉が急速に冷却されすぎて、隣接する炉がより高温である場合、より多くのガスを流すことができるように弁をより開放させることができる。現在、ジャンプオーバまたは他の同様の手段(例えばガス共用ポート)を有する炉では、炉のチャージは隣接するミッドサイクル炉にガスのブーストを提供し、これは必要な場合もあるし、または必要ない場合もある。
【0066】
さらに、制御弁を有することは、通常動作、プッシュ遅延、チャージ不足、チャージ過剰、他の隣接する炉への著しい亀裂を有する炉、著しい空気漏れのある炉、炉修理などの様々な異なるシナリオにおいて、ガス流に対するより良好な制御をバーナに与えることができる。プッシュ遅延において、炉1が遅れた場合、弁を開放して、炉2からのさらなる熱を許容するが、次に弁はチャージ後に閉じられて、熱が最も多く必要となる炉1の熱を節約するのを助ける。チャージ不足では、弁は、CSに向かうジャンプオーバの場合に炉内のガスを維持するのを助けるために閉じるかまたは部分的に閉じることができ、あるいは、ジャンプオーバがプッシュ側に近い場合に隣接炉内に追加のガスを可能にするために開くことができる。これは、SF、ドア孔及び取込み口を調節することに加えて、SF温度のバランスをとるのに役立つことができる。チャージ過剰の場合、弁はチャージ不足とは反対とすることができる。例えば、炉2と炉3との間に大きな亀裂が存在し、炉2がチャージされると、炉1と炉2との間の弁、及び炉3と炉4との間の弁を閉鎖して、これらの炉における熱の保存を助けることができる。しかしながら、これは、亀裂を通るガス流を増大させ、亀裂をより速く浸食させる望ましくない影響がある可能性がある。したがってこのことは、実際に必要とされるとき、例えば長いプッシュ遅延と組み合わせられたときにのみ用いられる短期的な解決手段とすることができる。著しい空気漏れのある炉では、チャージ後に弁を閉じて熱の蓄積を助け、隣接する炉がチャージされてサイクル中にブーストを与えるのを助けるときに弁を開くことができる。これは、隣接する炉も大きな空気漏れがなく、中間サイクルのブーストが不要であることを仮定する。炉修理の場合、弁は、隣接する炉と空の炉との間で閉鎖され、これは、安全性を高めることを助けることができる。
【0067】
特定の実施形態では、48時間サイクルの場合、2つの炉ごとに、現在のジャンプオーバがあるそれらの間に弁またはポートを有することができ、この構成がサイクルを通して十分な制御を提供する。しかしながら、72時間サイクルの場合、すべての炉に制御弁を備えたジャンパを設けることが望ましい。これは、すべての炉を接続し、したがって、バーナがガスを制御することを可能にするために制御弁が必要である。これは、チャージされているものに応じて、炉をその隣のいずれかの炉から引き出すことを可能にする。これは、プッシュサイクルが、6つ目の炉(MTOと同様)ごとに2回、または3つ目の炉ごとに1回プッシュすることに変化し、その結果、チャージされた炉に隣接する1つの炉が2日目にチャージされ、他の隣接する炉が3日目にチャージされることを仮定している。これは、ガスが冷えすぎているときに炉に入るか、またはガスが熱すぎるときに炉から出るかのいずれかにより、3日目の炉温度を制御するのに役立つ。しかしながら、この構成は、隣接する炉を1つのみ有する最終炉では機能しない。バーナは2つ以上の炉とガスを共有できるので、弁の使用の複雑さはこのシナリオにおいて著しく増大することがある。これは、炉のバンクを通ってガスが移動する可能性も開く。チャージ後に、かなりの量のガスが放出され得るが、放出を遅らせるために水を使用してもよい。
【0068】
特定の実施形態では、様々なタイプの弁、例えば、バタフライ弁、及び自動化のために使用されてもよいスライド弁が使用されてもよい。特定の実施形態では、弁を調節しながらバーナが炉内を見ることができるように、より正確な制御を可能にするために、制御ポイント(複数可)を、機械的または空圧的に、プッシュ側におけるバックステーの間に配置することができる。
【0069】
収率
収率は、ブリーズ充填パーセンテージの、ブリーズ粉砕石炭化学(VM、反応物/不活性物、ビトリナイト分布、レオロジー)、動作パラメータ(チャージトン、密度、サイクル時間、スクリーニング、浸漬時間)の上記の間の相互作用項の関数として示されている。
【0070】
以上のことから、本明細書では説明のために本技術の具体的な実施形態が記載されているが、本技術の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を加えることができることが理解されよう。さらに、特定の実施形態に照らして記載された新たな技術の特定の態様は、他の実施形態では組み合わせられてもよいし、あるいは排除されてもよい。さらに、本技術の特定の実施形態と関連付けられた利点は、それらの実施形態に照らして記載されたが、他の実施形態もまた、そのような利点を呈し得、すべての実施形態が、その技術の範囲内に入るように必ずしもそのような利点を呈することを要するとは限らない。したがって、本開示及び関連付けられた技術は、本明細書に明示的に示されないまたは記載されない他の実施形態を包含することができる。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲によるものを除き、限定されない。
【0071】
結論
当業者には、本開示の基礎となる原理から逸脱することなく、上述した実施形態の詳細に対して変更を行ってもよいことが明らかであろう。場合によっては、本技術の実施形態の説明を不必要に曖昧にすることを避けるために、周知の構造及び機能は、詳細に図示または説明されていない。本明細書では、方法のステップが特定の順序で提示され得るが、代替の実施形態では、ステップは異なる順序で実行し得る。同様に、特定の実施形態の文脈において開示された本技術の特定の態様は、他の実施形態において組み合わせることができるか、または排除することができる。さらに、本開示の技術の特定の実施形態に関連する利点が、それらの実施形態の文脈において開示され得るが、他の実施形態もそのような利点を呈することができ、すべての実施形態が必ずしも本技術の範囲内に入るように、そのような利点または本明細書に開示される他の利点を呈する必要はない。したがって、本開示及び関連付けられた技術は、本明細書に明示的に示されないまたは記載されない他の実施形態を包含することができ、本発明は添付の特許請求の範囲による場合を除いて限定されない。
【0072】
本開示を通して、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別途指示しない限り、複数形の言及を含む。加えて、用語「備える、含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」は、任意のより多数の同じ特徴及び/または追加の種類の特徴が排除されないように、少なくとも列挙された特徴(複数可)を含むことを意味するものとして解釈されるべきである。
【0073】
「一実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」、「いくつかの実施形態(some embodiments)」または類似の定式化に対する本明細書の言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、動作、または特性が本技術の少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。したがって、本明細書におけるこのような語句または定式化の出現は、必ずしも同じ実施形態をすべて指しているわけではない。さらに、様々な特定の特徴、構造、動作、または特質が、1つ以上の実施形態において任意の好適な様式で組み合わせられてもよい。
【0074】
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される重量パーセント、濃度、組成、及び他の数値を表すすべての数字は、すべての場合に「おおよそ」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、相反して示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、本技術によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限において、また特許請求の範囲と同等である原理の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも、通常の丸め技術を適用することによって、報告される有効桁数を考慮して解釈されるべきである。加えて、本明細書に開示の範囲はすべて、それらに包含される任意のあらゆる部分範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、「1~10」の範囲は、記載される最小値1と記載される最大値10との間の(及びこれらを含む)あらゆるすべての部分範囲、即ち、1以上の最小値及び10以下、例えば5.5~10の最大値を有する、あらゆるすべての部分範囲を含むように意図される。
【0075】
上述の開示は、任意の請求項がその請求項に明示的に述べられるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の態様は、任意の単一の前述の開示された実施形態のすべての特徴よりも少ない組み合わせにある。このように、この発明を実施するための形態に続く特許請求の範囲は、この発明を実施するための形態に明示的組み込まれ、それぞれの請求項は、別個の実施形態として独立している。本開示には、独立請求項の、それらの従属請求項とのすべての置換が含まれる。
【0076】
本技術は、例えば、便宜上番号付きの条項(1、2、3、など)として以下に説明される、様々な態様に従って説明される。これらは例として提供されており、本技術を限定するものではない。従属条項のいずれも任意の組み合わせで組み合わせ得て、それぞれ独立条項に入れられ得ることに留意されたい。
1.横長の形状のコークスであって、前記コークスの長さ:幅比が、少なくとも1.1、少なくとも1.5、少なくとも2.0、少なくとも2.5、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0、少なくとも4.5、少なくとも5.0、少なくとも5.5、少なくとも6.0、少なくとも6.5、少なくとも7.0、少なくとも7.5、少なくとも8.0、少なくとも8.5、少なくとも9.0、少なくとも9.5、または少なくとも10.0である、前記コークス。
【0077】
2.長さが、2インチ~18インチ、3インチ~15インチ、4インチ~12インチ、または4インチ~10インチであり、幅が、1.5インチ~5インチ、3インチ~5インチ、または2インチ~4インチである、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0078】
3.長さが、少なくとも2インチ、少なくとも3インチ、少なくとも4インチ、少なくとも5インチ、少なくとも6インチ、少なくとも7インチ、少なくとも8インチ、少なくとも9インチ、少なくとも10インチ、少なくとも11インチ、少なくとも12インチ、少なくとも13インチ、少なくとも14インチ、少なくとも15インチ、少なくとも16インチ、少なくとも17インチ、または少なくとも18インチである、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0079】
4.幅が、少なくとも1.5インチ、少なくとも2インチ、少なくとも3インチ、少なくとも4インチ、または少なくとも5インチである、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0080】
5.水平炉により製造されたコークス製品の集団であって、前記集団の少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%は横長の形状を有し、前記コークスの長さ:幅比は、少なくとも1.1、少なくとも1.5、少なくとも2.0、少なくとも2.5、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0、少なくとも4.5、少なくとも5.0、少なくとも5.5、少なくとも6.0、少なくとも6.5、少なくとも7.0、少なくとも7.5、少なくとも8.0、少なくとも8.5、少なくとも9.0、少なくとも9.5、または少なくとも10.0である、前記コークス製品の集団。
【0081】
6.水平炉により製造されたコークス製品の集団であって、前記集団の少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%は横長の形状を有し、長さが2インチ~18インチ、3~15インチ、4~12インチ、または4インチ~10インチであり、幅が1.5インチ~5インチ、3インチ~5インチ、または2インチ~4インチである、前記コークス製品の集団。
【0082】
7.コークスの実際の直径よりも大きい水力直径(Dh)を有する前記コークスであって、前記コークスは20%~45%のコークス反応性指数(CRI)及び5%~60%の反応後コークス強度(CSR)を有する、前記コークス。
【0083】
8.前記Dhが、少なくとも2インチ、少なくとも2.5インチ、少なくとも3インチ、または少なくとも3.5インチである、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0084】
9.前記CRIが40%未満、または31%~37%である、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0085】
10.前記CSRが5%~50%、または15%~40%である、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0086】
11.前記CRIが31%~37%であり、前記CSRが15%~50%である、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0087】
12.前記コークスが、少なくとも4インチのサイズを有するコークスを開始材料として使用するときに、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の4インチ落下破砕強度を有する、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0088】
13.前記コークスが、少なくとも4インチのサイズを有するコークスを前記開始材料として使用するときに、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の2インチ落下破砕強度を有する、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0089】
14.前記コークスが、5%~12%、10%未満、9.5%未満、9%未満、8.5%未満、8%未満、7.5%未満、もしくは7%未満の灰分含有量、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、もしくは0.5%未満の硫黄含有量、2%未満、1%未満、もしくは0.4%~1%の揮発性物質(VM)含有量、15%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、もしくは1%~10%の水分含有量、または少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の固定炭素含有量、を有する、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0090】
15.前記コークスが、グレーまたは薄いグレーの色を有する、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0091】
16.前記コークスが、水平炉内で製造される、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0092】
17.前記コークスが、1つ以上のタイプの石炭及びコークスブリーズを含む配合炭から製造されており、前記ブリーズは前記配合炭の5重量%~15重量%である、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0093】
18.前記配合炭が、15%~40%、23%~33%、または20%~24%の揮発性物質(VM)を有する、条項17に記載のコークス。
【0094】
19.前記配合炭が、ビトリナイト、リプチナイト及び反応性セミフシナイトを含む反応性成分と、コークス(ブリーズを含む)、不活性セミフシナイト、フシナイト、マクリナイト及び鉱物を含む不活性材料とを含み、前記不活性材料は、20%~40%または30%~35%である、条項17または18のいずれか1項に記載のコークス。
【0095】
20.前記ビトリナイトが、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18及びV19のうちの1つ以上を含む、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0096】
21.前記ビトリナイトがV15、V16及びV17を含み、それらの組み合わせが、前記配合のペトログラフィの少なくとも30%を占める、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0097】
22.前記配合炭が、少なくとも200ddpm、100ddpm~2000ddpm、または200ddpm~1200ddpmの流動性を有する、本明細書の条項のいずれか1項に記載のコークス。
【0098】
23.コークスを製造する方法であって、
1つ以上のタイプの石炭及びコークスブリーズを含む配合炭を調製することであって、前記コークスブリーズは前記配合炭の5重量%~15重量%である、前記調製することと、
前記配合炭を水平炉内で燃焼させて高品質の鋳物用コークスを得ることと、
を含む、前記方法。
【0099】
24.前記配合炭が、15%~40%、23%~33%、または20%~24%の揮発性物質(VM)を有する、本明細書の方法条項のいずれか1項に記載の方法。
【0100】
25.前記配合炭が、ビトリナイト、リプチナイト及び反応性セミフシナイトを含む反応性成分と、コークス(ブリーズを含む)、不活性セミフシナイト、フシナイト、マクリナイト及び鉱物を含む不活性材料とを含み、前記不活性材料は、20%~40%または30%~35%である、本明細書の方法条項のいずれか1項に記載の方法。
【0101】
26.前記ビトリナイトが、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15、V16、V17、V18及びV19のうちの1つ以上を含む、条項25に記載の方法。
【0102】
27.前記ビトリナイトがV15、V16及びV17を含み、それらの組み合わせが、前記配合の前記ペトログラフィの少なくとも30%を占める、条項25に記載の方法。
【0103】
28.前記配合炭が、少なくとも200ddpm、100ddpm~2000ddpm、または200ddpm~1200ddpmの流動性を有する、本明細書の方法条項のいずれか1項に記載の方法。
【0104】
29.前記水平炉が、熱回収炉、非回収炉、及びトンプソン炉を含む、本明細書の方法条項のいずれか1項に記載の方法。
【0105】
30.キュポラ炉において燃焼されるように構成されたコークス製品であって、
少なくとも4インチの長さ及び少なくとも1.5インチの幅を含む横長の形状
を備え、
前記コークス製品の長さ:幅比は、少なくとも2.0である、
前記コークス製品。
【0106】
31.前記長さが6~12インチである、請求項30に記載のコークス製品。
【0107】
32.前記幅が少なくとも2.5インチである、請求項30に記載のコークス製品。
【0108】
33.前記長さが少なくとも10インチであり、かつ前記幅が少なくとも2.5インチである、請求項30に記載のコークス製品。
【0109】
34.前記コークス製品が少なくとも3インチの直径を有する、請求項30に記載のコークス製品。
【0110】
35.前記コークス製品が少なくとも40%のコークス反応性指数(CRI)を有する、請求項30に記載のコークス製品。
【0111】
36.前記コークス製品が、少なくとも40%のコークス反応性指数(CRI)及び少なくとも10%の反応後コークス強度(CSR)を有する、請求項30に記載のコークス製品。
【0112】
37.前記コークス製品が、25~45%のコークス反応性指数(CRI)及び少なくとも10%の反応後コークス強度(CSR)を有する、請求項30に記載のコークス製品。
【0113】
38.前記コークス製品が少なくとも90%の4インチ落下破砕強度を有する、請求項30に記載のコークス製品。
【0114】
39.前記コークス製品が少なくとも85%の2インチ落下破砕強度を有する、請求項30に記載のコークス製品。
【0115】
40.水平コークス炉により製造されたコークス製品の集団であって、
鋳物用コークス製品であって、
横長の形状と、
少なくとも3インチの長さと、
少なくとも1.5インチの幅と、
少なくとも2.5の長さ:幅比と、
少なくとも3.5インチの直径と、
を含む、前記鋳物用コークス製品と、
1.5~3.5インチの直径を有するエッグコークス製品と、
0.5~1.5インチの直径を有するブリーズコークス製品と、
を含む、前記コークス製品の集団。
【0116】
41.前記鋳物用コークス製品が、前記コークス製品の集団の少なくとも60%を構成し、
前記エッグコークス製品及び前記ブリーズコークス製品が前記コークス製品の集団の少なくとも20%を構成する、
請求項40に記載のコークス製品の集団。
【0117】
42.前記鋳物用コークス製品が、5~12%の灰分含有量及び2%未満の揮発性物質含有量を含む、請求項40に記載のコークス製品の集団。
【0118】
43.前記鋳物用コークス製品が、少なくとも5%の水分含有量を含む、請求項40に記載のコークス製品の集団。
【0119】
44.前記コークス製品が、少なくとも40%のコークス反応性指数(CRI)及び少なくとも10%の反応後コークス強度(CSR)を有する、請求項40に記載のコークス製品の集団。
【0120】
45.前記コークス製品が少なくとも90%の4インチ落下破砕強度を有する、請求項40に記載のコークス製品の集団。
【0121】
46.キュポラ炉において燃焼されるように構成されたコークス製品を製造する方法であって、
石炭と、少なくとも0.5~1.5インチの直径を有するブリーズコークス製品とを含む配合炭を調製することであって、前記ブリーズコークス製品は前記配合炭の5~15%を構成する、前記調製することと、
前記配合炭を水平炉内で燃焼させて鋳物用コークス製品を製造することであって、前記鋳物用コークス製品は、少なくとも4インチの長さ、少なくとも1.5インチの幅、及び少なくとも2.0の長さ:幅比を含む横長の形状を備える、前記製造することと、
を含む、前記方法。
【0122】
47.前記配合炭が、15~40%の揮発性物質(VM)及び少なくとも200ダイヤル表示/分(ddpm)の流動性を有する、請求項46に記載の方法。
【0123】
48.前記鋳物用コークス製品が、
少なくとも1.5~3.5インチの直径を有するエッグコークス製品と、
少なくとも0.5~1.5インチの直径を有するブリーズコークス製品と、
をさらに含む、請求項46に記載の方法。
【0124】
49.前記鋳物用コークス製品が、前記コークス製品の集団の少なくとも60%を構成し、前記エッグコークス製品及び前記ブリーズコークス製品が一緒に、前記コークス製品の集団の少なくとも20%を構成する、請求項46に記載の方法。
【国際調査報告】