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特表2024-515910遅延最適化に基づく仮想ネットワークのマッピングアルゴリズム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】遅延最適化に基づく仮想ネットワークのマッピングアルゴリズム
(51)【国際特許分類】
   H04L 41/0895 20220101AFI20240404BHJP
【FI】
H04L41/0895
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023507645
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 CN2022106693
(87)【国際公開番号】W WO2023184793
(87)【国際公開日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】202210322530.2
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518371489
【氏名又は名称】南京郵電大学
【氏名又は名称原語表記】NANJING UNIVERSITY OF POSTS AND TELECOMMUNICATIONS
【住所又は居所原語表記】No.66 Xin Mofan Road, Gulou Nanjing, Jiangsu 210003 China
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳元 八大
(72)【発明者】
【氏名】陸 音
(72)【発明者】
【氏名】楊 超
(72)【発明者】
【氏名】孫 君
(72)【発明者】
【氏名】▲ギ▼ 晋
(72)【発明者】
【氏名】郭 永安
(57)【要約】
本発明は、仮想ネットワークマッピングのモデルを確立するステップ1と、仮想ノード及び物理ノードに対して重要度ソートを行うステップ2と、仮想ネットワークのノードマッピングを行うステップ3と、仮想リンクのマッピングを行うステップ4とを含む、遅延最適化に基づく仮想ネットワークのマッピングアルゴリズムを開示する。ネットワークトポロジーにおけるノードの重要性を反映するために、ノード位置の制約を考慮して、本発明に係るアルゴリズムは、ノードソートアルゴリズムにおいてリンク遅延及びノード処理遅延をノードソート値に追加し、時間窓内で仮想ネットワーク要求をバッチ処理する方法を用いており、従来のアルゴリズムと比較して、ネットワークの平均伝播遅延を最適化し、かつローカルトポロジーでのノードの重要性を強調する。シミュレーション結果によると、本発明に係るアルゴリズムは、従来の仮想ネットワークのマッピングアルゴリズムよりもQoSの面で優れている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想ネットワークマッピングのモデルを確立するステップ1と、
ノードのリソース度、ローカルトポロジーの重要性、ノード隣接リンクの伝播遅延及びノード処理遅延に基づいて、仮想ノード及び物理ノードに対して重要度ソートを行うステップ2と、
仮想ネットワークのノードマッピングを行うステップ3と、
仮想リンクのマッピングを行うステップ4とを含むことを特徴とする、遅延最適化に基づく仮想ネットワークのマッピングアルゴリズム。
【請求項2】
ステップ1における仮想ネットワークマッピングのモデルでは、物理ネットワークは、重み付き無向グラフGP=(NP,EP)で表され、NP及びEPは、それぞれ物理ノードの集合及び物理リンクの集合であり、物理ノードnPの属性は、CPUリソース要求cpu(nP)、ノード遅延delay(nP)及び物理ノードの重要度importance(np)を有し、物理リンクePの属性は、リンク帯域幅bw(eP)、リンク遅延delay(eP)を有し、
仮想ネットワーク要求は、重み付き無向グラフGV=(NV,EV)で表され、NV及びEVは、それぞれ仮想ノードの集合及び仮想リンクの集合であり、仮想ノードnvのリソース要求は、cpu(nV)であり、遅延属性は、delay(nv)であり、仮想リンクevの帯域幅の制約は、bw(eV)であり、遅延の制約は、delay(ev)であり、仮想ノードの重要度は、importance(nV)であることを特徴とする、請求項1に記載の遅延最適化に基づく仮想ネットワークのマッピングアルゴリズム。
【請求項3】
ステップ2では、仮想ノードnVの重要度は、以下の式により計算され、
【数1】
ここで、Res(nV)、Closeness(nV)及びVertexDelay(nV)は、それぞれ仮想ノードnVのリソース集中度、ノード親密度及びノード伝播遅延期待値であり、
物理ノードnPの重要度は、以下の式により計算され、
【数2】
ここで、Res(nP)、Closeness(nP)、LocDis(nP)及びVertexDelay(nP)は、それぞれ物理ノードnPのリソース集中度、ノード親密度、ローカルネットワークトポロジー重要性及びノード伝播遅延期待値であることを特徴とする、請求項1に記載の遅延最適化に基づく仮想ネットワークのマッピングアルゴリズム。
【請求項4】
ステップ3の具体的な操作は、以下のステップ3.1~3.4のとおりであり、
ステップ3.1では、仮想ネットワーク要求内の仮想ノードを大きい順でVirtualNodeListに記録し、
ステップ3.2では、VirtualNodeListにおける仮想ノードnVに対して、最下層の物理ノードの集合をトラバースし、物理的距離の制約条件を満たす候補ノードを選択し、集合Candidates(nV)に記憶し、
ステップ3.3では、Candidates(nV)集合が空であるか否かを判断し、空であれば、今回のマッピングが失敗し、今回のマッピングを拒否し、かつマッピング失敗の結果を返し、空でなければ、Candidates(nV)集合におけるノードの重要度が最も高いノードを選択し、仮想ノードnVを当該候補ノードにマッピングし、マッピング関係リストMappingNodeList及び最下層の物理リソースを更新し、VirtualNodeListから仮想ノードnVを削除し、
ステップ3.4では、VirtualNodeListが空になるまで、ステップ3.2及びステップ3.3を繰り返すことを特徴とする、請求項1に記載の遅延最適化に基づく仮想ネットワークのマッピングアルゴリズム。
【請求項5】
ステップ4における仮想リンクのマッピングは、K-Shortestパスアルゴリズムを用いて、最短パスを選択し、かつ帯域幅の制約を満たし、具体的な操作は、以下のステップ4.1~4.5のとおりであり、
ステップ4.1では、仮想ネットワーク要求内の仮想リンクを大きい順でVirtualLinkListに記録し、
ステップ4.2では、VirtualLinkListにおけるeV仮想リンクに対して、K-ShortestパスアルゴリズムによりK個の候補物理パスを見つけ出し、集合Paths(eV)と表記し、
ステップ4.3では、Paths(eV)におけるパスに対して仮想リンクの帯域幅要件を判断し、仮想リンクの帯域幅要件を満たすことができなければ、Paths(eV)から当該パスを削除し、
ステップ4.4では、Paths(eV)が空であるか否かを判断し、空であれば、マッピングが失敗し、結果を返し、空でなければ、現在の仮想ネットワークの仮想リンクeVをパスの優先度が最も高い物理リンクにマッピングし、マッピング関係を集合MappingLinkListに記録し、VirtualLinkListから仮想リンクeVを削除し、かつ最下層の物理リソースを更新し、
ステップ4.5では、VirtualLinkListが空になるまで、ステップ4.2~ステップ4.4を繰り返すことを特徴とする、請求項1に記載の遅延最適化に基づく仮想ネットワークのマッピングアルゴリズム。
【請求項6】
ステップ4の具体的な操作は、更に、以下のステップ4.4のとおりであり、ステップ4.4におけるパスの優先度は、以下の式により計算され、
【数3】
ここで、bw(p)は、物理パスpのリンク帯域幅であり、γは、重み係数であり、本発明では、γは1であり、hops(p)は、物理パスpの遅延であり、Paths(eV)は、仮想リンクeVがマッピングされた後の候補の最下層の物理パスの集合であり、pは、集合Paths(eV)内の1つのパスであることを特徴とする、請求項5に記載の遅延最適化に基づく仮想ネットワークのマッピングアルゴリズム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク仮想化技術及びソフトウェア定義ネットワーク(SDN、Software Defined Network)技術に関し、具体的には、遅延最適化に基づく仮想ネットワークのマッピングアルゴリズムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のインターネットの発展過程で直面する硬直化問題に対して、学術界は、ネットワーク仮想化技術に基づくネットワークスライシングの解決手段を提供する。ネットワーク仮想化は、ネットワークの従来の物理リソースを抽象化し、柔軟に割り当て管理可能な仮想ネットワーク構成要素にカプセル化する。ネットワークサービスプロバイダは、必要に応じて、様々な仮想ネットワークをカスタマイズすることができ、これらの仮想ネットワークは、互いに干渉せずに最下層のネットワークに独立して存在することができる。
【0003】
仮想ネットワークを最下層の物理ネットワークにマッピングするプロセスを研究する場合、仮想ネットワーク及び最下層の物理ネットワークをそれぞれ重み付き無向グラフでモデリングすることができ、物理ネットワークは、物理ノード及び物理リンクで構成され、関連する物理リソースは、CPU、ノード記憶、ノード容量、リンク帯域幅などを有し、仮想ネットワーク要求のリソース属性要件は、CPU、ノード記憶、ノード容量、リンク帯域幅などを含み、それ以外に、リンク遅延要件、ノード位置要件、物理的距離要件などがある。現在の仮想ネットワークのマッピングアルゴリズムは、仮想ノードのマッピングプロセス及び仮想リンクのマッピングプロセスという2つのサブプロセスで構成される。全ての仮想ノード及び仮想リンクが最下層のノードにマッピングされた後、仮想ネットワークのマッピングが完了する。仮想ネットワークのマッピングアルゴリズムの最適化目標は、主に、以下の2つがある。1.仮想ネットワークのマッピングコストを最小化し、かつ仮想ネットワークのマッピング収益を最大化する。2.仮想ネットワークユーザのネットワーク性能指標QoS(Quality of Service)及びQoE(Quality of Experience)を満たす。
【0004】
現在、ネットワークアプリケーションの多様化に伴い、様々なアプリケーションのQoSに対する要件が徐々に高まっており、様々な低遅延のアプリケーションシナリオで、QoSにおける仮想ネットワークの平均伝播遅延の要件がより厳しくなっている。従来の仮想ネットワークのマッピングアルゴリズムは、主に、ノードソート、トポロジー簡略化などの方法により、ネットワークのマッピングコストを最小化するか又は仮想ネットワークのマッピング収益を最大化することを実現するが、ユーザQoSへの最適化を無視する。また、従来の2フェーズ協調型仮想ネットワークのマッピングアルゴリズムは、ノードのネットワーク全体におけるリソースの集中度を反映するために、主に、ノードCPUリソース及びリンク帯域幅を考慮するが、他の要因の影響を無視する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、遅延敏感型アプリケーションシナリオに対して、ノードソートアルゴリズムにおいてリンク遅延及びノード処理遅延をノードソート値に追加し、時間窓内で仮想ネットワーク要求をバッチ処理する仮想ネットワークのマッピングアルゴリズムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決手段により実現される。
【0007】
本発明に係る遅延最適化に基づく仮想ネットワークのマッピングアルゴリズムは、
仮想ネットワークマッピングのモデルを確立するステップ1と、
ノードのリソース度、ローカルトポロジーの重要性、ノード隣接リンクの伝播遅延及びノード処理遅延に基づいて、仮想ノード及び物理ノードに対して重要度ソートを行うステップ2と、
仮想ネットワークのノードマッピングを行うステップ3と、
仮想リンクのマッピングを行うステップ4とを含む。
【0008】
本発明の更なる改善は、以下のとおりである。ステップ1における仮想ネットワークマッピングのモデルでは、物理ネットワークは、重み付き無向グラフGP=(NP,EP)で表され、NP及びEPは、それぞれ物理ノードの集合及び物理リンクの集合であり、物理ノードnPの属性は、CPUリソース要求cpu(nP)、ノード遅延delay(nP)及び物理ノードの重要度importance(np)を有し、物理リンクePの属性は、リンク帯域幅bw(eP)、リンク遅延delay(eP)を有し、
仮想ネットワーク要求は、重み付き無向グラフGV=(NV,EV)で表され、NV及びEVは、それぞれ仮想ノードの集合及び仮想リンクの集合であり、仮想ノードnvのリソース要求は、cpu(nV)であり、遅延属性は、delay(nv)であり、仮想リンクevの帯域幅の制約は、bw(eV)であり、遅延の制約は、delay(ev)であり、仮想ノードの重要度は、importance(nV)である。
【0009】
本発明の更なる改善は、以下のとおりである。ステップ2では、仮想ノードnVの重要度は、以下の式により計算され、
【数1】
ここで、Res(nV)、Closeness(nV)及びVertexDelay(nV)は、それぞれ仮想ノードnVのリソース集中度、ノード親密度及びノード伝播遅延期待値であり、
物理ノードnPの重要度は、以下の式により計算され、
【数2】
ここで、Res(nP)、Closeness(nP)、LocDis(nP)及びVertexDelay(nP)は、それぞれ物理ノードnPのリソース集中度、ノード親密度、ローカルネットワークトポロジー重要性及びノード伝播遅延期待値である。
【0010】
本発明の更なる改善は、以下のとおりである。ステップ3の具体的な操作は、以下のステップ3.1~3.4のとおりであり、
ステップ3.1では、仮想ネットワーク要求内の仮想ノードをその重要度に応じて大きい順でVirtualNodeListに記録し、
ステップ3.2では、VirtualNodeListにおける仮想ノードnVに対して、最下層の物理ノードの集合をトラバースし、物理的距離の制約条件を満たす候補ノードを選択し、集合Candidates(nV)に記憶し、
ステップ3.3では、Candidates(nV)集合が空であるか否かを判断し、空きであれば、マッピングが失敗し、結果を返し、空でなければ、Candidates(nV)集合におけるノードの重要度が最も高いノードを選択し、仮想ノードnVを当該候補ノードにマッピングし、マッピング関係リストMappingNodeList及び最下層の物理リソースを更新し、VirtualNodeListから仮想ノードnVを削除し、
ステップ3.4では、VirtualNodeListが空になるまで、ステップ3.2及びステップ3.3を繰り返す。
【0011】
本発明の更なる改善は、以下のとおりである。ステップ4における仮想リンクのマッピングは、K-Shortestパスアルゴリズムを用いて、最短パスを選択し、かつ帯域幅の制約を満たし、具体的な操作は、以下のステップ4.1~4.5のとおりであり、
ステップ4.1では、仮想ネットワーク要求内の仮想リンクを大きい順でVirtualLinkListに記録し、
ステップ4.2では、VirtualLinkListにおけるeV仮想リンクに対して、K-ShortestパスアルゴリズムによりK個の候補物理パスを見つけ出し、集合Paths(eV)と表記し、
ステップ4.3では、Paths(eV)におけるパスに対して仮想リンクの帯域幅要件を判断し、仮想リンクの帯域幅要件を満たすことができなければ、Paths(eV)から当該パスを削除し、
ステップ4.4では、Paths(eV)が空であるか否かを判断し、空であれば、マッピングが失敗し、結果を返し、空でなければ、現在の仮想リンクeVをパスの優先度が最も高い物理リンクにマッピングし、マッピング関係を集合MappingLinkListに記録し、VirtualLinkListから仮想リンクeVを削除し、かつ最下層の物理リソースを更新し、
ステップ4.5では、VirtualLinkListが空になるまで、ステップ4.2~ステップ4.4を繰り返す。
【0012】
本発明の更なる改善は、以下のとおりである。ステップ4.4におけるパスの優先度は、以下の式により計算され、
【数3】
ここで、bw(p)は、物理パスpのリンク帯域幅であり、γは、重み係数であり、本発明では、γは、1であり、hops(p)は、物理パスpの遅延であり、Paths(eV)は、仮想リンクeVがマッピングされた後の最下層の物理パスの集合であり、pは、集合Paths(eV)内の1つのパスである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
【0014】
1.本発明は、仮想ネットワークのマッピングアルゴリズムにおけるノードマッピングサブフェーズにおいて、ノード重要度にノードのローカルトポロジー値及びリソース集中度を追加し、最下層のネットワークにおける物理ノードの局所的及び全体的な重要性を総合的に考慮して、仮想ネットワークノードがマッピングする物理ノードリソースをより集中させることにより、そのマッピング成功率を向上させる。
【0015】
2.本発明は、ノード重要度においてノード隣接リンクの遅延状況を反映し、仮想ネットワークノードを低遅延の物理ノードに優先的にマッピングすることができ、仮想リンクのマッピングフェーズに遅延の制約を追加することにより、QoSにおけるネットワークの平均遅延を改善する。シミュレーション結果によると、当該アルゴリズムは、従来のアルゴリズムよりもQoSの面で優れており、マッピング成功率がより高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】仮想ネットワークマッピングの例を示す。
図2】3種類のアルゴリズムのマッピング成功率の比較図である。
図3】3種類のアルゴリズムの長期収益の比較図である。
図4】3種類のアルゴリズムの長期収益オーバーヘッド比の比較図である。
図5】3種類のアルゴリズムの仮想ネットワーク平均伝播遅延の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明する。明らかに、説明される実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労力を行わない前提で得られる全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0018】
本発明に係る遅延最適化に基づく仮想ネットワークのマッピングアルゴリズムは、ノードのマッピングフェーズ及びリンクのマッピングフェーズという2つのフェーズに分けられる。ノードのマッピングフェーズでは、ノードのリソース度、ローカルトポロジートの重要性、ノード隣接リンクの伝播遅延及びノード処理遅延を総合的に考慮し、新たなノード重要度ソート方法を提供することにより、仮想ノードがマッピングする物理ノードリソースをより集中させることができ、マッピング成功率がより高い。リンクのマッピングフェーズでは、リンク伝播遅延を目的関数とし、リンク伝播遅延及びリンク帯域幅に基づいて制約を構築し、従来のdijkstraパスアルゴリズムを改善してリンクをマッピングする。シミュレーション検証により、本発明に係るアルゴリズムは、マッピングの成功率及び長期収益を両立させ、仮想ネットワークのQoSを改善する。具体的なステップは、以下のステップ1~4のとおりである。
【0019】
ステップ1では、仮想ネットワークマッピングのモデルを確立する。
【0020】
ステップ2では、仮想ノード及び物理ノードに対して重要度ソートを行う。
【0021】
ステップ3では、仮想ネットワークのノードマッピングを行う。
【0022】
ステップ4では、仮想リンクのマッピングを行う。
【0023】
ステップ1で確立された仮想ネットワークのマッピングモデルは、以下のとおりである。
【0024】
物理ネットワークは、重み付き無向グラフGP=(NP,EP)で表され、NP及びEPは、それぞれ物理ノードの集合及び物理リンクの集合である。物理ノードnPの属性は、CPUリソース要求cpu(nP)、ノード遅延delay(nP)及び物理ノードの重要度importance(np)を有する。物理リンクePの属性は、リンク帯域幅bw(eP)、リンク遅延delay(eP)を有する。仮想ネットワーク要求は、重み付き無向グラフGV=(NV,EV)で表され、NV及びEVは、それぞれ仮想ノードの集合及び仮想リンクの集合である。仮想ノードnvのリソース要求は、cpu(nV)であり、遅延属性は、delay(nv)である。仮想リンクevの帯域幅要件は、bw(eV)であり、遅延の要件は、delay(ev)であり、仮想ノードの重要度は、importance(nV)である。
【0025】
図1に示すように、仮想ネットワーク要求は、仮想ノード及び仮想リンクで構成される。その仮想ネットワークノードa、b、cと各ノードのCPUリソース要求は、それぞれ10、5、7であり、それらの間のリンク帯域幅要求は15、12、17である。CPUリソースの制約及び帯域幅の制約を満たす場合、当該要求は、最下層の物理ネットワークのA、B、Cノードにマッピングすることができる。仮想ネットワークマッピング問題は、本質的には、仮想ネットワーク要求を最下層の物理ネットワークにどのように効果的にマッピングするかを研究することである。
【0026】
仮想ネットワークマッピングは、本質的には、NP-hard問題であるため、正確な最適解を見つけることは、大量の時間及びリソースがかかる。現在、当該問題の主な解決方法は、発見的アルゴリズムであり、すなわち、限られた時間内に、1つの実行可能解を見つけることである。
【0027】
本発明は、新規な発見的アルゴリズムを提供し、仮想ノード及び物理ノードのソートの重要度は、それぞれ以下の式により計算される。
【数4】
式(1)及び式(2)では、任意の1つの物理ノード又は仮想ノードnに対して、当該ノードのリソース集中度を反映するパラメータは、以下のとおりである。
【数5】
ここで、α及びβは、ノードリソース度におけるCPUリソースと帯域幅の重みを調整するための重み係数であり、本発明では、α及びβは、共に、1である。cpu(n)は、ノードnのCPUリソースであり、bw(e)は、リンクeの帯域幅リソースであり、Link(n)は、ノードnと隣接するリンクの集合である。Res(n)は、ノードnのCPUリソースと、その隣接リンクの利用可能なリンク帯域幅との和により決定され、ネットワーク全体におけるノードnのリソース集中度を反映することができる。
【0028】
任意の1つの物理ノード又は仮想ノードに対して、当該ノードをniと表記し、ノード親密度は、グローバルトポロジーの角度から1つのノードポロジー上の重要性を反映する。
【数6】
ここで、niとnjは、任意の2つの仮想ノード又は2つの物理ノードを表し、niが仮想ノードである場合、Φ(ni)は、仮想ネットワークにマッピングされていない仮想ノードであり、niが物理ノードである場合、Φ(ni)は、条件制約を満たす物理ネットワーク内の候補ノードである。hops(ni,nj)は、2つのノードの間のホップ数距離であり、ノード親密度が高いほど、当該ネットワークにおける当該ノードの中心度が高くなる。
【0029】
任意の物理ノード又は仮想ノードnに対して、当該ノード周辺のリンクの遅延を測定するパラメータは、ノード伝播遅延期待値であり、その式は、以下のとおりである。
【数7】
ここで、delay(ei,j)は、仮想リンクei,jの遅延であり、processDelay(ni)は、ノードniの処理遅延であり、Degree(ni)は、ノードniのノード次数であり、niの隣接リンクの数を表す。式(5)の分子は、リンク伝播遅延とノード処理遅延との和からなり、マッピング完了後のネットワークが当該ノードを通過するときの遅延期待値を表す。
【0030】
本発明では、各物理リンクの伝播遅延及び単一の物理ノードの処理遅延は、いずれも1時間単位であり、物理パスの遅延は、当該パスに含まれた物理リンクの数により決定される。ノード中のniが物理ノードである場合、そのノード伝播遅延期待値のパラメータは、以下のとおりである。
【数8】
仮想ネットワークノードのマッピングプロセスにおいて、物理ノードの選択優先度は、物理的距離に関連する。条件制約を満たす候補ノードのうち、マッピングが成功した物理ノードに近い候補ノードを優先的に選択すべきである。
【数9】
ここで、ノードnは、任意の物理ノードであり、LocDis(n)は、現在のネットワークにおけるノードnのローカルネットワークトポロジー重要性であり、Nmappedは、物理ネットワークにおける、仮想ノードマッピングによって占有されている物理ノードであり、Dis(n,nj)は、ノードnとnjとの間の物理的距離である。マッピング後に仮想ノードが物理ノードに近づくほど、マッピングに必要なリソースが少なくなり、マッピングの成功率が高くなる。
【0031】
仮想ネットワークのノードマッピングのサブプロセスは、以下のステップ3.1~3.4のとおりである。
【0032】
ステップ3.1では、式(1)により計算された仮想ネットワーク要求内の仮想ノードの重要度を大きい順でVirtualNodeListに記録する。
【0033】
ステップ3.2では、VirtualNodeListにおける仮想ノードnVに対して、最下層の物理ノードの集合をトラバースし、物理的距離の制約条件を満たす候補ノードを選択し、集合Candidates(nV)に記憶する。
【0034】
ステップ3.3では、Candidates(nV)集合が空であるか否かを判断し、空きであれば、マッピングが失敗し、結果を返し、空でなければ、Candidates(nV)集合における、式(2)により計算されたノードの重要度importance(nP)が最も高いノードを選択し、仮想ノードnVを当該候補ノードにマッピングし、マッピング関係リストMappingNodeList及び最下層の物理リソースを更新し、VirtualNodeListから仮想ノードnVを削除する。
【0035】
ステップ3.4では、VirtualNodeListが空になるまで、ステップ3.2及びステップ3.3を繰り返す。
【0036】
仮想ネットワークの全てのノードを成功裏にマッピングした後、仮想リンクを最下層の物理ネットワークにマッピングする。仮想リンクのマッピングは、K-Shortestパスアルゴリズムを用いて、最短パスを選択し、かつ帯域幅の制約を満たす。
【0037】
仮想リンクマッピングのプロセスは、以下のステップ4.1~4.5のとおりである。
【0038】
ステップ4.1では、仮想ネットワーク要求内の仮想リンクを大きい順でVirtualLinkListに記録する。
【0039】
ステップ4.2では、VirtualLinkListにおけるeV仮想リンクに対して、K-ShortestパスアルゴリズムによりK個の候補物理パスを見つけ出し、集合Paths(eV)と表記する。実際の仮想ネットワークマッピングでは、Kの値は、最下層の物理ネットワークの規模の影響を受ける。以下のシミュレーションでは、最下層の物理ネットワークは、100個の物理ノード及び500個の物理リンクで構成され、Kは、一般的には、5である。
【0040】
ステップ4.3では、Paths(eV)におけるパスに対して仮想リンクの帯域幅要件を判断し、仮想リンクの帯域幅要件を満たすことができなければ、Paths(eV)から当該パスを削除する。
【0041】
ステップ4.4では、Paths(eV)が空であるか否かを判断し、空であれば、マッピングが失敗し、結果を返し、空でなければ、現在の仮想リンクeVをパスの優先度が最も高い物理リンクにマッピングし、マッピング関係を集合MappingLinkListに記録し、VirtualLinkListから仮想リンクeVを削除し、かつ最下層の物理リソースを更新する。
【0042】
ステップ4.5では、VirtualLinkListが空になるまで、ステップ4.2~ステップ4.4を繰り返す。
【0043】
集合Paths(eV)内の任意のパスpに対して、リンク帯域幅とリンク遅延を総合的に考慮してパラメータパスの優先度としてまとめることにより、優先的にマッピングするパスを決定し、計算式は、以下のとおりである。
【数10】
ここで、bw(p)は、パスpの帯域幅リソースであり、γは、重み係数であり、本発明では、γは、1であり、hops(p)は、パスpのホップ数距離であり、Paths(eV)は、仮想リンク路eVがマッピングされた後の候補の最下層の物理パスの集合であり、pは、集合Paths(eV)内の1つのパスである。最下層の物理パスpのホップ数距離は、当該パスの遅延を表す。
【0044】
シミュレーションパラメータの設定は、以下のとおりである。
【0045】
100個の物理ノード及び500個の物理リンクを1000×1000の範囲内にランダムに分布する。物理ノードのCPUリソース及び物理リンクの帯域幅リソースは、いずれも[50,100]に従って均一に分布し、物理ノードの処理遅延及び物理リンクの伝播遅延は、いずれも1時間単位であり、仮想リンクの伝播遅延は、整数であり、[1,5]に従って均一に分布する。仮想ネットワーク要求は、ポアソン分布に従っており、到着時間は、100時間単位であり、期待数は、5である。生存時間は、指数分布に従っており、期待値は、1000時間単位である。仮想ネットワークノードの数は、[2,10]に従って均一に分布し、仮想ネットワークノードのCPUリソース要求及び仮想ネットワークリンクの帯域幅要求は、いずれも[0,50]に従って均一に分布し、仮想ノードの距離制約は、500である。
【0046】
10000時間単位でシミュレーション実行し、シミュレーションのランダム要因を除去するために、10回の実行の平均値を取る。
【0047】
仮想ネットワークのマッピング指標は、以下のとおりである。
【0048】
マッピング成功率は、仮想ネットワーク要求が成功裏にマッピングされる確率を反映することができ、式(9)に示すとおりである。
【数11】
ここで、NUMsucは、成功裏にマッピングされた仮想ネットワーク要求であり、NUMは、時間T内に到着した仮想ネットワーク要求であり、δは、限りなくゼロに近い定数である。
【0049】
仮想ネットワークGV=(NV,EV)の場合、tタイムスロットのマッピング収益R(GV,t)及びマッピングオーバーヘッドC(GV,t)は、以下のとおりである。
【数12】
式(10)及び式(11)では、λ及びωは、ノードリソース及びリンク帯域幅の重みの重み係数であり、本発明では両方とも1である。cpu(nV)は、仮想ノードnVのCPUリソース要件であり、bw(eV)は、仮想リンクeVの帯域幅リソース要件であり、hops(p)は、パスpのホップ数であり、pは、集合Paths(eV)内の1つの物理パスであり、Paths(eV)は、仮想リンクeVによってマッピングされた最下層の物理パスの集合である。
【0050】
長期収益オーバーヘッド比は、以下の式のように表すことができる。
【数13】
ここで、分子は、仮想ネットワーク要求GVの長期マッピング収益であり、分母は、仮想ネットワーク要求GVの長期マッピングオーバヘッドである。
【0051】
1つの仮想ネットワーク要求のマッピング収益は、要求自体により決定され、用いられた仮想ネットワークのマッピングアルゴリズムと無関係であるため、長期収益オーバーヘッド比により、仮想ネットワークのマッピングアルゴリズムの性能をよりよく見分けることができ、収益オーバーヘッド比が1に近いほど、今回のマッピングが占有している最下層の物理リソースが少なくなり、当該アルゴリズムの性能が高い。
【0052】
1つの仮想ネットワーク要求GV=(NV,EV)に対して、仮想ネットワークの平均伝播遅延AveDelay(GV)は、以下のとおりである。
【数14】
ここで、processDelay(nV)は、仮想ノードnVの遅延であり、delay(p)は、仮想リンクeVに対応するパスpの遅延であり、NUM(NV)及びNUM(EV)は、仮想ネットワークGVにおける仮想ノード及び仮想リンクの数である。
【0053】
シミュレーション結果は、以下のとおりである。
【0054】
本発明に係るアルゴリズムをNC-VNEアルゴリズム及びCLアルゴリズムとシミュレーション比較する。NC-VNEアルゴリズムは、ノードが確実に感知する仮想ネットワークのマッピングアルゴリズムであり、当該アルゴリズムは、ノードソートのプロセスにおいてノードのローカルトポロジー重要性、ノードのリソース度及びノードの親密度を総合的に考慮する。CLアルゴリズムは、ノードソートにおいてノードトポロジーの重要性のみを考慮する。シミュレーションするとき、アルゴリズムに遅延の制約を追加し、その比較結果は、図2図5に示すとおりである。
【0055】
図2は、3種類のアルゴリズムの仮想ネットワーク要求のマッピング成功率を比較する。本発明に係るアルゴリズムは、ノードリソース度、トポロジー重要性、ノード親密度及び隣接リンク遅延を総合的に考慮するため、そのマッピング成功率が最も高く、7000時間単位の後に安定する傾向があり、マッピング成功率が70%に安定し、NC-VNEアルゴリズムよりも約33%向上する。CLアルゴリズムは、ノードリソース度などのパラメータを考慮しないため、そのマッピング成功率は、約43%である。
【0056】
図3は、3種類のアルゴリズムの長期平均オーバーヘッドの比較であり、3種類のアルゴリズムの長期平均オーバーヘッドは、いずれも5000時間単位の後に安定する傾向がある。本発明に係るアルゴリズムの長期平均収益は、NC-VNEアルゴリズムの長期平均収益に近く、CLアルゴリズムの長期平均収益が最も低い。本発明に係るアルゴリズムは、CLアルゴリズムと比較して、その長期平均収益が約32%向上する。
【0057】
図4は、3種類のアルゴリズムの長期平均収益オーバーヘッド比であり、3種類のアルゴリズムの長期平均収益オーバーヘッド比は、5000時間単位の後に安定する傾向がある。本発明に係るアルゴリズムの長期平均収益オーバーヘッド比が最も高く、次にNC-VNEアルゴリズムであり、最後にCLアルゴリズムである。
【0058】
図5は、3種類のアルゴリズムのネットワークの平均伝播遅延である。時間が経つにつれて、3種類のアルゴリズムのネットワーク平均伝播遅延が継続的に延長し、かつ約5000時間単位の後に安定する傾向がある。本発明に係るアルゴリズムは、ノードソート及びリンクマッピングにおいてリンク遅延及びノード処理遅延を考慮するため、ノードを低遅延の物理ノードに優先的にマッピングし、その結果は、他の2種類のアルゴリズムよりも優れている。仮想ネットワークの平均伝播遅延は、NC-VNEアルゴリズム及びCLアルゴリズムと比較して、それぞれ1~1.5時間単位減少する。
【0059】
以上は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を任意の形式で限定するものではない。本発明は、好ましい実施例により上記のように説明したが、本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の技術的解決手段から逸脱しない範囲内で、上記開示された技術内容を用いて、同等に変化した等価実施例に変更又は修飾することができるが、本発明の技術的解決手段の内容から逸脱せず、本実用的発明の技術的実質に基づいて以上の実施例に対して行われた任意の簡単な修正、同等変化及び修飾は、いずれも本発明の技術的解決手段の範囲内に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】