(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】腫瘍標的化のためのキメラ抗原受容体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240404BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240404BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240404BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240404BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240404BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240404BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240404BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240404BHJP
A61K 35/17 20150101ALN20240404BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N15/63 Z
A61K39/00 H
A61K39/395 N
A61P35/00
C07K16/28
C12N15/13
A61K35/17
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540515
(86)(22)【出願日】2023-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 US2023065537
(87)【国際公開番号】W WO2023196982
(87)【国際公開日】2023-10-12
(32)【優先日】2022-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523111348
【氏名又は名称】フェイト セラピューティクス,インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】バーラム バラメール
(72)【発明者】
【氏名】トム トン リー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ホスキング
(72)【発明者】
【氏名】山本 晋
(72)【発明者】
【氏名】前田 達男
【テーマコード(参考)】
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA02
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085CC03
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZB02
4C087ZB09
4C087ZB26
4H045AA10
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
選択された腫瘍抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)が提供される。提供されるCAR候補の構造設計及び機能プロファイルも提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)であって、
(a)HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗原を認識する抗原結合ドメインを含む外部ドメインであって、前記抗原結合ドメインが、
(i)配列番号1(NYGMS)を含む重鎖相補性決定領域1(H-CDR1)、配列番号2(TINNNGGGTYYPDSVKG)を含む重鎖相補性決定領域2(H-CDR2)、及び配列番号3(PGLLWDA)を含む重鎖相補性決定領域3(H-CDR3)を含む、重鎖可変(VH)ドメインと、
(ii)配列番号4(KSSQSLLDSDGRTYLN)を含む軽鎖相補性決定領域1(L-CDR1)、配列番号5(LVSKLDS)を含む軽鎖相補性決定領域2(L-CDR2)、及び配列番号6(WQGTHFPQT)を含む軽鎖相補性決定領域3(L-CDR3)を含む、軽鎖可変(VL)ドメインと、を含む、外部ドメインと、
(b)膜貫通ドメインと、
(c)少なくとも1つのシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインと、を含み、
前記少なくとも1つのシグナル伝達ドメインが、がん細胞上に発現されるHER2抗原への前記CARの結合に特異的に応答し、それによって、がん抗原特異的応答を生成する、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記抗原結合ドメインが、
(a)配列番号7に対して少なくとも80%の配列同一性を有するVHドメインを含む、
(b)配列番号8に対して少なくとも80%の配列同一性を有するVLドメインを含む、
(c)VH-リンカー-VL若しくはVL-リンカー-VHを含む一本鎖可変断片(scFV)を含み、前記リンカーは、長さ及び配列が異なり、任意選択的に、前記リンカーが、配列番号9~12に対して少なくとも80%の配列同一性を有する、
(d)配列番号13若しくは配列番号14に対して少なくとも約99%、約98%、約96%、約95%、約90%、約85%、若しくは約80%の同一性であるアミノ酸配列によって表されるscFVを含み、配列番号13及び14の各々は、長さ及び配列が異なるリンカーを含む、並びに/又は
(e)ヒト化されている、請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
前記少なくとも1つのシグナル伝達ドメインが、
(a)2B4(ナチュラルキラー細胞受容体2B4)、4-1BB(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9)、CD16(IgG Fc領域受容体III-A)、CD2(T細胞表面抗原CD2)、CD28(T細胞特異的表面糖タンパク質CD28)、CD28H(膜貫通及び免疫グロブリンドメイン含有タンパク質2)、CD3ζ(T細胞表面糖タンパク質CD3ゼータ鎖)、DAP10(造血細胞シグナル伝達物質)、DAP12(TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質)、DNAM1(CD226抗原)、FcERIγ(高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットガンマ)、IL21R(インターロイキン-21受容体)、IL-2Rβ/IL-15RB(インターロイキン-2受容体サブユニットベータ)、IL-2Rγ(サイトカイン受容体共通サブユニットガンマ)、IL-7R(インターロイキン-7受容体サブユニットアルファ)、KIR2DS2(キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DS2)、NKG2D(NKG2-D II型内在性膜タンパク質)、NKp30(天然細胞傷害トリガー受容体3)、NKp44(天然細胞傷害トリガー受容体2)、NKp46(天然細胞傷害トリガー受容体1)、CS1(SLAMファミリーメンバー7)、及びCD8(T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖)のうちのいずれか1つ、
(b)それぞれ配列番号37~59によって表される、2B4、4-1BB、CD16、CD2、CD28、CD28H、CD3ζ、CD3ζ1 XX、DAP10、DAP12、DNAM1、FcERIγ、IL21R、IL2Rβ(IL15Rβ)、IL2Rγ、IL7R、KIR2DS2、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CS1、若しくはCD8の細胞質ドメイン若しくはその一部分に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、若しくは約99%の同一性を有するアミノ酸配列、並びに/又は
(c)2B4、CD28、CD3ζ、DAP10、NKG2D、CD3ζ1XX、DNAM1、CS1、若しくはそれらの組み合わせの細胞質ドメイン若しくはその一部分に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、若しくは約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項4】
前記内部ドメインが、2つの異なるシグナル伝達ドメインを含み、前記内部ドメインドメインが、2B4-CD3ζ/1XX、2B4-DNAM1、2B4-FcERIγ、2B4-DAP10、CD16-DNAM1、CD16-DAP10、CD16-DAP12、CD2-CD3ζ/1XX、CD2-DNAM1、CD2-FcERIγ、CD2-DAP10、CD28-DNAM1、CD28-FcERIγ、CD28-DAP10、CD28-DAP12、CD28-CD3ζ/1XX、CD28H-CD3ζ/1XX、DAP10-CD3ζ/1XX、DAP10-DAP12、DAP12-CD3ζ/1XX、DAP12-DAP10、DNAM1-CD3ζ/1XX、KIR2DS2-CD3ζ/1XX、KIR2DS2-DAP10、KIR2DS2-2B4、又はNKp46-2B4の形態のうちのいずれか1つにおいて、融合細胞質ドメイン又はその一部分を含む、請求項3に記載のCAR。
【請求項5】
前記膜貫通ドメインが、
(a)CD2、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD16、CD27、CD28、CD28H、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA4、PD1、LAG3、2B4、BTLA、DNAM1、DAP10、DAP12、FcERIγ、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、KIR2DS2、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、CS1、若しくはT細胞受容体ポリペプチド、
(b)2B4、CD2、CD16、CD28、CD28H、CD3ζ、DAP10、DAP12、DNAM1、FcERIγ、KIR2DS2、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CS1、若しくはCD8、又は
(c)2B4、CD28、CD28H、DAP10、DNAM1、KIR2DS2、及びNKG2Dの膜貫通領域又はその一部分に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項6】
前記膜貫通ドメイン及びその直結されたシグナル伝達ドメインが、同じタンパク質由来又は異なるタンパク質由来である、請求項1に記載のCAR。
【請求項7】
前記内部ドメインが、
(a)シグナルペプチド、及び/又は
(b)スペーサ/ヒンジ、のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項8】
前記スペーサ/ヒンジが、
(a)IgG4スペーサ、CD28スペーサ、CD8スペーサ、CH3スペーサ、CH2/CH3スペーサ、若しくはそれらの任意の組み合わせ、
(b)約10~約80アミノ酸の短いスペーサ、80超~約180アミノ酸の中程度のスペーサ、若しくは180アミノ酸を超える長いスペーサ、及び/又は
(c)配列番号81~85のいずれかに対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、若しくは約99%の同一性のアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のCAR。
【請求項9】
前記スペーサ/ヒンジが、中程度のスペーサを含み、前記スペーサが、配列番号84に対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載のCAR。
【請求項10】
前記CARが、配列番号88に対して少なくとも約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項11】
前記がん細胞が、乳がん細胞、卵巣がん細胞、子宮内膜がん細胞、肺がん細胞、食道がん細胞、唾液腺がん細胞、膀胱がん細胞、胃がん細胞、結腸直腸がん細胞、又は頭頸部がん細胞である、請求項1に記載のCAR。
【請求項12】
前記少なくとも1つのシグナル伝達ドメインが、非がん細胞上で発現されるHER2に応答しないか、又は低レベルの応答を有する、請求項1に記載のCAR。
【請求項13】
前記がん抗原特異的応答が、細胞溶解及びサイトカイン産生を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項14】
前記CARが、アミノからカルボキシの方向に前記VHドメイン、続いて前記VLドメインを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のCARをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項15に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2022年4月8日に出願された米国特許仮出願第63/329,287号の優先権を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表の参照による組み込み)
配列表タイトル184143-640601_SL.xmlは、2023年4月1日に作成され、サイズが87,714バイトであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
(発明の分野)
本開示は、既製の免疫細胞製品の分野に広く関する。より具体的には、本開示は、がん治療において使用するための固形腫瘍標的化キメラ抗原受容体を開発するための戦略に関する。
【背景技術】
【0004】
がん細胞は、蓄積された遺伝的及び後成的異常を通じて正常組織から出現し、正常細胞のタンパク質と量及び質が異なるタンパク質を産生することによって正常細胞からがん細胞自体を分化する。しかしながら、有効な標的化がん治療のための腫瘍抗原として利用され得る腫瘍特異的細胞表面発現膜タンパク質は、データが示しているように、これらの腫瘍細胞表面発現膜タンパク質が正常組織上でも発現され得る可能性が高いため、ほとんど同定されていない。したがって、固形腫瘍においてキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)を介してこれらの分子を標的化することは、正常組織に対する重度の毒性の固有のリスクを伴う。
【発明の概要】
【0005】
標的化がん治療を開発し、腫瘍標的化精度、オフターゲット毒性、及び固形腫瘍に対する腫瘍外効果などの問題に対処するために、腫瘍特異的かつ機能的に改善されたCARの必要性がある。
【0006】
一態様では、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)であって、(a)HER2(human epidermal growth factor receptor 2、ヒト上皮成長因子受容体2)抗原を認識する抗原結合ドメインを含む外部ドメインであって、抗原結合ドメインが、(i)配列番号1(NYGMS)を含む重鎖相補性決定領域1(heavy chain complementary determining region1、H-CDR1)、配列番号2(TINNNGGGTYYPDSVKG)を含む重鎖相補性決定領域2(heavy chain complementary determining region2、H-CDR2)、及び配列番号3(PGLLWDA)を含む重鎖相補性決定領域3(heavy chain complementary determining region3、H-CDR3)を含む、重鎖可変(heavy chain variable、VH)ドメインと、(ii)配列番号4(KSSQSLLDSDGRTYLN)を含む軽鎖相補性決定領域1(light chain complementary determining region1、L-CDR1)、配列番号5(LVSKLDS)を含む軽鎖相補性決定領域2(light chain complementary determining region2、L-CDR2)、及び配列番号6(WQGTHFPQT)を含む軽鎖相補性決定領域3(light chain complementary determining region3、L-CDR3)を含む、軽鎖可変(light chain variable、VL)ドメインと、を含む、外部ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)少なくとも1つのシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインと、を含み、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインが、がん細胞上に発現されるHER2抗原へのCARの結合に特異的に応答し、それによって、がん抗原特異的応答を生成する、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0007】
CARのいくつかの実施形態では、抗原結合ドメインが、(a)配列番号7(EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSNYGMSWVRQTPDRRLELVATINNNGGGTYYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAMYYCTSPGLLWDAWGAGTTVTVSS)に対して少なくとも80%の配列同一性を有するVHドメインを含む、(b)配列番号8(DVVMTQTPLTLSVSIGQPASISCKSSQSLLDSDGRTYLNWLLQRPGQSPKRLIYLVSKLDSGAPDRFTGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCWQGTHFPQTFGGGTKLEIK)に対して少なくとも80%の配列同一性を有するVLドメインを含む、(c)VH-リンカー-VL若しくはVL-リンカー-VHを含む一本鎖可変断片(single chain variable fragment、scFV)を含み、リンカーは、長さ及び配列が異なり、任意選択的に、リンカーが、配列番号9(GSTSGGGSGGGSGGGGSS)、配列番号10(GSTSGSGKPGSGEGSTKG)、配列番号11(SSGGGGSGGGGSGGGGS)、若しくは配列番号12(GGGGSGGGGSGGGGS)に対して少なくとも80%の配列同一性を有する、(d)配列番号13(EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSNYGMSWVRQTPDRRLELVATINNNGGGTYYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAMYYCTSPGLLWDAWGAGTTVTVSSGSTSGGGSGGGSGGGGSSDVVMTQTPLTLSVSIGQPASISCKSSQSLLDSDGRTYLNWLLQRPGQSPKRLIYLVSKLDSGAPDRFTGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCWQGTHFPQTFGGGTKLEIK)若しくは配列番号14(DVVMTQTPLTLSVSIGQPASISCKSSQSLLDSDGRTYLNWLLQRPGQSPKRLIYLVSKLDSGAPDRFTGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCWQGTHFPQTFGGGTKLEIKGSTSGGGSGGGSGGGGSSEVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSNYGMSWVRQTPDRRLELVATINNNGGGTYYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAMYYCTSPGLLWDAWGAGTTVTVSS)に対して少なくとも約99%、約98%、約96%、約95%、約90%、約85%、若しくは約80%の同一性であるアミノ酸配列によって表されるscFVを含み、配列番号13及び14の各々は、長さ及び配列が異なるリンカーを含む、並びに/又は(e)ヒト化されている。
【0008】
CARのいくつかの実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインが、(a)2B4(ナチュラルキラー細胞受容体2B4)、4-1BB(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9)、CD16(IgG Fc領域受容体III-A)、CD2(T細胞表面抗原CD2)、CD28(T細胞特異的表面糖タンパク質CD28)、CD28H(膜貫通及び免疫グロブリンドメイン含有タンパク質2)、CD3ζ(T細胞表面糖タンパク質CD3ゼータ鎖)、DAP10(造血細胞シグナル伝達物質)、DAP12(TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質)、DNAM1(CD226抗原)、FcERIγ(高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットガンマ)、IL21R(インターロイキン-21受容体)、IL-2Rβ/IL-15RB(インターロイキン-2受容体サブユニットベータ)、IL-2Rγ(サイトカイン受容体共通サブユニットガンマ)、IL-7R(インターロイキン-7受容体サブユニットアルファ)、KIR2DS2(キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DS2)、NKG2D(NKG2-D II型内在性膜タンパク質)、NKp30(天然細胞傷害トリガー受容体3)、NKp44(天然細胞傷害トリガー受容体2)、NKp46(天然細胞傷害トリガー受容体1)、CS1(SLAMファミリーメンバー7)、及びCD8(T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖)のうちのいずれか1つ、(b)それぞれ配列番号37~59によって表される、2B4、4-1BB、CD16、CD2、CD28、CD28H、CD3ζ、CD3ζ1XX、DAP10、DAP12、DNAM1、FcERIγ、IL21R、IL2Rβ(IL15Rβ)、IL2Rγ、IL7R、KIR2DS2、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CS1、若しくはCD8の細胞質ドメイン若しくはその一部分に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、若しくは約99%の同一性を有するアミノ酸配列、並びに/又は(c)2B4、CD28、CD3ζ、DAP10、NKG2D、CD3ζ1XX、DNAM1、CS1、若しくはそれらの組み合わせの細胞質ドメイン若しくはその一部分に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、若しくは約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。CARの様々な実施形態では、内部ドメインが、2つの異なるシグナル伝達ドメインを含み、内部ドメインドメインが、2B4-CD3ζ/1XX、2B4-DNAM1、2B4-FcERIγ、2B4-DAP10、CD16-DNAM1、CD16-DAP10、CD16-DAP12、CD2-CD3ζ/1XX、CD2-DNAM1、CD2-FcERIγ、CD2-DAP10、CD28-DNAM1、CD28-FcERIγ、CD28-DAP10、CD28-DAP12、CD28-CD3ζ/1XX、CD28H-CD3ζ/1XX、DAP10-CD3ζ/1XX、DAP10-DAP12、DAP12-CD3ζ/1XX、DAP12-DAP10、DNAM1-CD3ζ/1XX、KIR2DS2-CD3ζ/1XX、KIR2DS2-DAP10、KIR2DS2-2B4、又はNKp46-2B4の形態のうちのいずれか1つにおいて、融合細胞質ドメイン又はその一部分を含む。
【0009】
CARの様々な実施形態では、膜貫通ドメインが、(a)CD2、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD16、CD27、CD28、CD28H、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA4、PD1、LAG3、2B4、BTLA、DNAM1、DAP10、DAP12、FcERIγ、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、KIR2DS2、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、CS1、若しくはT細胞受容体ポリペプチド、(b)2B4、CD2、CD16、CD28、CD28H、CD3ζ、DAP10、DAP12、DNAM1、FcERIγ、KIR2DS2、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CS1、若しくはCD8、又は(c)2B4、CD28、CD28H、DAP10、DNAM1、KIR2DS2、及びNKG2Dの膜貫通領域又はその一部分に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。CARのいくつかの実施形態では、膜貫通ドメイン及びその直結されたシグナル伝達ドメインが、同じタンパク質由来又は異なるタンパク質由来である。
【0010】
CARの様々な実施形態では、外部ドメインが、(a)シグナルペプチド、及び/又は(b)スペーサ/ヒンジ、のうちの1つ以上を含む。CARのいくつかの実施形態では、スペーサ/ヒンジが、(a)IgG4スペーサ、CD28スペーサ、CD8スペーサ、CH3スペーサ、CH2/CH3スペーサ、若しくはそれらの任意の組み合わせ、(b)約10~約80アミノ酸の短いスペーサ、80超~約180アミノ酸の中程度のスペーサ、若しくは180アミノ酸を超える長いスペーサ、及び/又は(c)配列番号81~85のいずれかに対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、若しくは約99%の同一性のアミノ酸配列を含む。CARのいくつかの実施形態では、スペーサ/ヒンジが、中程度のスペーサを含み、スペーサが、配列番号84に対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性のアミノ酸配列を含む。
【0011】
CARの様々な実施形態では、CARが、配列番号88に対して少なくとも約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性のアミノ酸配列を含む。CARの様々な実施形態では、がん細胞が、乳がん細胞、卵巣がん細胞、子宮内膜がん細胞、肺がん細胞、食道がん細胞、唾液腺がん細胞、膀胱がん細胞、胃がん細胞、結腸直腸がん細胞、又は頭頸部がん細胞である。CARの様々な実施形態では、少なくとも1つのシグナル伝達ドメインが、非がん細胞上で発現されるHER2に応答しないか、又は低レベルの応答を有する。CARの様々な実施形態では、がん抗原特異的応答が、細胞溶解及びサイトカイン産生を含む。
【0012】
別の態様では、本発明は、本明細書に説明されるCARをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。更に別の態様では、本発明は、本明細書に説明されるポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0013】
本明細書で提供される組成物及び方法の様々な目的及び利点は、例示及び例として本発明の特定の実施形態が示される添付の図面と併せて以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】HER2発現腫瘍細胞及びHER2を発現する非腫瘍原性正常細胞に対する、短いスペーサを有する4D5ベース、CasMab214ベース、又はCasMab250ベースのCARの細胞溶解効力及び特異性を示す。
【
図1B】HER2発現腫瘍細胞及びHER2を発現する非腫瘍原性正常細胞に対する、短いスペーサを有する4D5ベース、CasMab214ベース、又はCasMab250ベースのCARの細胞溶解効力及び特異性を示す。
【
図2A】HER2
High腫瘍細胞及びHER2
+正常/非腫瘍原性細胞に応答した、短いスペーサを有する4D5ベース、CasMab214ベース、又はCasMab250ベースのCARで形質導入されたドナーT細胞における炎症性サイトカインIFNγの産生を示す。
【
図2B】HER2
High腫瘍細胞及びHER2
+正常/非腫瘍原性細胞に応答した、短いスペーサを有する4D5ベース、CasMab214ベース、又はCasMab250ベースのCARで形質導入されたドナーT細胞における炎症性サイトカインIFNγの産生を示す。
【
図3A】HER2発現腫瘍細胞及びHER2を発現する非腫瘍原性正常細胞に対する、長いスペーサを有する4D5ベース、CasMab214ベース、又はCasMab250ベースのCARの細胞溶解効力及び特異性を示す。
【
図3B】HER2発現腫瘍細胞及びHER2を発現する非腫瘍原性正常細胞に対する、長いスペーサを有する4D5ベース、CasMab214ベース、又はCasMab250ベースのCARの細胞溶解効力及び特異性を示す。
【
図4A】HER2
High腫瘍細胞及びHER2
+正常/非腫瘍原性細胞に応答した、長いスペーサを有する4D5ベース、CasMab214ベース、又はCasMab250ベースのCARで形質導入されたドナーT細胞における炎症性サイトカインIFNγの産生を示す。
【
図4B】HER2
High腫瘍細胞及びHER2
+正常/非腫瘍原性細胞に応答した、長いスペーサを有する4D5ベース、CasMab214ベース、又はCasMab250ベースのCARで形質導入されたドナーT細胞における炎症性サイトカインIFNγの産生を示す。
【
図5A】HER2発現腫瘍細胞及びHER2を発現する非腫瘍原性正常細胞に対する、短い又は中程度のスペーサを有する4D5ベース又はCasMab250ベースのCARの細胞溶解効力及び腫瘍特異性を示す。
【
図5B】HER2発現腫瘍細胞及びHER2を発現する非腫瘍原性正常細胞に対する、短い又は中程度のスペーサを有する4D5ベース又はCasMab250ベースのCARの細胞溶解効力及び腫瘍特異性を示す。
【
図6】追加のHER2
Low/+正常細胞株に対する中程度のスペーサを有するCasMab250(H/L)ベースのCARの腫瘍特異性を示す。
【
図7】HER2-CAR形質導入Jurkat細胞が、NFκBレポーターマーカー発現によって示されるHER2
High腫瘍細胞及びHER2
+正常/非腫瘍原性細胞に応答して活性化されたことを示す。HER2-CARは、4D5ベース又はCasMab250(H/L)ベースのいずれかである。
【
図8】CasMab250に基づくCARの最適化された細胞外ドメインとともに、複数の細胞内シグナル伝達ドメイン構成の評価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本明細書で特に定義されない限り、本出願に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。更に、文脈で特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0016】
本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬などに限定されず、したがって変化し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためのみのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0017】
本明細書で使用されるとき、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、本明細書において、冠詞の文法的な対象の、1又は1を超えるもの(すなわち、少なくとも1)を指すために本明細書において使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は1つを超える要素を意味する。
【0018】
代替(例えば、「又は」)の使用は、代替の一方、両方、又はそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0019】
「及び/又は」という用語は、代替の一方又は両方のいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「約」又は「およそ」という用語は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さと比較して、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%もの量で変動する、量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを指す。一実施形態では、「約」又は「およそ」という用語は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さの、およそ、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、又は±1%の、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さの範囲を指す。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「実質的に」又は「本質的に」という用語は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さと比較して、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%以上である量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを指す。一実施形態では、「実質的に同じ」又は「本質的に同じ」という用語は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さとほぼ同一である、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さの範囲を指す。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「実質的に含まない」及び「本質的に含まない」という用語は互換可能に使用され、細胞集団又は培養培地などの組成物を記載するために使用されるとき、例えば、特定の物質又はその供給源の、95%を含まない、96%を含まない、97%を含まない、98%を含まない、99%を含まないなど、又は従来の手段で測定して検出できないなどのように、特定の物質又はその供給源を含まない組成物を指す。組成物中の特定の成分又は物質を「含まない」又は「本質的に含まない」という用語はまた、そのような成分又は物質が(1)任意の濃度で組成物に含まれない、又は(2)機能的に不活性な低い濃度で組成物に含まれることも意味する。同様の意味が、「存在しない」という用語に適用され得、組成物の特定の物質又はその供給源が存在しないことを指す。
【0023】
本明細書全体を通して、文脈がそうでないことを必要としない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含むこと(comprising)」は、述べられたステップ、若しくは要素、又はステップ若しくは要素の群を含むことを意味するが、任意の他のステップ、若しくは要素、又はステップ若しくは要素の群を排除することを意味しないことが理解されるであろう。特定の実施形態では、「含む(include)」、「有する」、「含む(contain)」、及び「含む(comprise)」という用語は、同義的に使用される。
【0024】
「~からなる(consisting of)」とは、「~からなる」という語句に続く全てのものを含み、かつそれに限定されることを意味する。したがって、「~からなる」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であり、かつ他の要素が存在し得ないことを示す。
【0025】
「~から本質的になる(consisting essentially of)」とは、語句の後に列挙された任意の要素を含むことを意味し、列挙された要素の開示で指定された活性又は動作を妨害しないか、又はそれらに寄与しない他の要素に限定される。したがって、「~から本質的になる」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であることを示すが、他の要素は必要に応じたものではなく、列挙された要素の活性又は動作に影響するか否かに応じて存在し得るか、又は存在し得ないことを示す。
【0026】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある特定の実施形態」、「追加の実施形態」、若しくは「更なる実施形態」又はそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して記載された特定の特質、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所での前述の語句の出現は、必ずしも全てが同一の実施形態を参照しているとは限らない。更に、特定の特質、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な様式で組み合わせることができる。
【0027】
「エクスビボ」という用語は、概して、好ましくは自然条件の変化を最小限に抑えて、生体外の人工環境内の生体組織内又は生体組織上で行われる実験又は測定など、生体外で行われる活動を指す。特定の実施形態では、「エクスビボ」手順は、生体から採取され、通常無菌条件下で、典型的には数時間又は約24時間まで、しかしながら状況に応じて最大48時間若しくは72時間以上を含む、実験装置で培養される生細胞又は組織を含む。ある特定の実施形態では、そのような組織又は細胞は、収集及び凍結され得、エクスビボ処理のために後に解凍され得る。生細胞又は組織を使用して数日より長く続く組織培養実験又は手順は、典型的には「インビトロ」であると考えられるが、ある特定の実施形態では、この用語はエクスビボと互換可能に使用され得る。
【0028】
「インビボ」という用語は、概して、生体内部で起こる活動を指す。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「コードすること」という用語は、ヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNA、及びmRNA)の定義された配列又はアミノ酸の定義された配列及びそれらから生じる生物学的特性を有する生物学的プロセスにおける他のポリマー及び巨大分子の合成のためのテンプレートとして機能する、遺伝子、cDNA、又はmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。したがって、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞又は他の生物学的システムでタンパク質を産生する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に記載されているコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写のテンプレートとして使用される非コード鎖の両方を、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコードしていると称され得る。
【0030】
「構築物」は、インビトロ又はインビボのいずれかで宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む高分子又は分子の複合体を指す。本明細書で使用されるとき、「ベクター」は、外来遺伝物質の標的細胞への送達又は移入を誘導することができ、標的細胞で複製及び/又は発現することができる任意の核酸構築物を指す。本明細書で使用されるとき、「ベクター」という用語は、送達される構築物を含む。ベクターは、線状又は環状分子であり得る。ベクターは、組み込まれてもよく、又は組み込まれなくてもよい。ベクターの主なタイプには、プラスミド、エピソームベクター、ウイルスベクター、コスミド、及び人工染色体が含まれるが、これらに限定されない。ウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「外因性」という用語は、参照分子が宿主細胞に導入されるか、又は宿主細胞に対して非天然であることを意味することを意図している。分子は、例えば、コード核酸を宿主の遺伝物質に導入することにより、例えば、宿主の染色体に組み込むことにより、又は非染色体の遺伝物質、例えば、プラスミドとして導入することができる。したがって、コード核酸の発現に関して使用される用語は、コード核酸を発現可能な形態で細胞に導入することを指す。「内因性」という用語は、宿主細胞に存在する参照分子又は活性を指す。同様に、この用語は、コード核酸の発現に関して使用されるとき、細胞内に含まれ、外因的に導入されていないコード核酸の発現を指す。
【0032】
「組み込み」とは、構築物の1つ以上のヌクレオチドが細胞ゲノムに安定して挿入される、すなわち、細胞の染色体DNA内の核酸配列に共有結合されることを意味する。「標的化組み込み」とは、構築物のヌクレオチドが、予め選択された部位又は「組み込み部位」で細胞の染色体又はミトコンドリアDNAに挿入されることを意味する。本明細書で使用されるとき、「組み込み」という用語は、組み込み部位での内因性配列又はヌクレオチドの欠失を伴うか又は伴わない、構築物の1つ以上の外因性配列又はヌクレオチドの挿入を含むプロセスを更に指す。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「目的の遺伝子」又は「目的のポリヌクレオチド配列」は、適切な調節配列の制御下に置かれると、RNAに転写され、場合によってはインビボでポリペプチドに翻訳されるDNA配列である。目的の遺伝子又はポリヌクレオチドは、原核生物配列、真核生物のmRNAからのcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)のDNAからのゲノムDNA配列、及び合成DNA配列を含み得るが、これらに限定されない。例えば、目的の遺伝子は、miRNA、shRNA、天然ポリペプチド(すなわち、天然に見出されるポリペプチド)又はその断片、バリアントポリペプチド(すなわち、天然ポリペプチドとの100%未満の配列同一性を有する天然ポリペプチドの突然変異体)又はその断片、操作されたポリペプチド又はペプチド断片、治療用ペプチド又はポリペプチド、造影用マーカー、選択マーカーなどをコードし得る。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド、又はそれらの類似体のいずれかである、任意の長さのポリマー形態のヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドの配列は、4つのヌクレオチド塩基:アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)から構成され、ポリヌクレオチドがRNAである場合、チミンはウラシル(U)である。ポリヌクレオチドには、遺伝子又は遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、EST、又はSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャRNA(messenger RNA、mRNA)、トランスファRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐鎖ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ及びプライマーが含まれ得る。ポリヌクレオチドはまた、二本鎖分子及び一本鎖分子の両方を指す。
【0035】
本明細書で使用する場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は互換可能に使用され、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基を有する分子を指す。ポリペプチドは少なくとも2つのアミノ酸を含まなければならず、ポリペプチドのアミノ酸の最大数に制限はない。本明細書で使用されるとき、これらの用語は、例えば、当該技術分野では概してペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとも称される短い鎖と、概して当該技術分野でポリペプチド又はタンパク質と称される長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、改変ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドは、天然ポリペプチド、組換えポリペプチド、合成ポリペプチド、又はそれらの組み合わせを含む。
【0036】
本明細書及び本出願全体で使用されるように、2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアライメントのために導入する必要のあるギャップの数と各ギャップの長さを考慮して、配列によって共有される同一位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一位置の数/位置の総数×100)である。配列の比較と2つの配列間の同一性パーセントの決定は、当該技術分野で認識されている数学的アルゴリズムを使用して実行され得る。
【0037】
本明細書で使用されるとき、「サブユニット」という用語は、本明細書で使用されるとき、タンパク質複合体の各別個のポリペプチド鎖を指し、各別個のポリペプチド鎖は、それ自体で安定な折り畳み構造を形成することができる。多くのタンパク質分子は、2つ以上のサブユニットから構成され、ここで、アミノ酸配列は、各サブユニットについて同一であるか、又は類似しているか、又は完全に異なるかのいずれかであり得る。例えば、CD3複合体は、CD3α、CD3ε、CD3δ、CD3γ、及びCD3ζサブユニットから構成され、これらは、CD3ε/CD3γ、CD3ε/CD3δ、及びCD3ζ/CD3ζ二量体を形成する。単一のサブユニット内で、ポリペプチド鎖の連続した部分は、「ドメイン」と呼ばれるコンパクトで局所的な半独立単位に折り畳まれることが多い。多くのタンパク質ドメインは、ドメインの共通機能に寄与する、サブドメインとも呼ばれる独立した「構造サブユニット」を更に含み得る。したがって、本明細書で使用されるとき、「サブドメイン」という用語は、より大きなドメインの内側のタンパク質ドメイン、例えば、細胞表面受容体の外部ドメイン内の結合ドメイン、又は細胞表面受容体の内部ドメインの刺激ドメイン若しくはシグナル伝達ドメインを指す。
【0038】
「作動可能に連結された(operably-linked)」又は「作動可能に連結された(operatively linked)」は、「作動可能に接続された(operably connected)」又は「作動可能に接続された(operatively connected)」と交換可能であり、一方の機能が他方によって影響を受けるような、単一の核酸断片上の核酸配列(又は複数のドメインを有するポリペプチド中のアミノ酸)の会合を指す。例えば、プロモータは、そのコード配列又は機能的RNAの発現に影響を与えることができる場合、コード配列又は機能的RNAと作動可能に連結している(すなわち、コード配列又は機能的RNAがプロモータの転写制御下にある)。コード配列は、センス又はアンチセンス方向で調節配列に作動可能に連結することができる。更なる例として、受容体結合ドメインは、リガンドへの受容体の結合が当該結合に応答するシグナルを変換するように、細胞内シグナル伝達ドメインに作動可能に接続され得る。
【0039】
「融合タンパク質」又は「キメラタンパク質」は、本明細書で使用されるとき、別々のタンパク質をコードする配列をコードする2つ以上の部分的又は完全なポリヌクレオチドを接合するための遺伝子操作を介して作製されるタンパク質であり、これらの接合されたポリヌクレオチドの発現は、元のタンパク質又はその断片の各々に由来する機能的特性を有する単一のペプチド又は複数のポリペプチドを生じる。融合タンパク質における異なる供給源の2つの隣接するポリペプチド間に、リンカー(又はスペーサ)ペプチドを付加することができる。
【0040】
本明細書で使用されるとき、「シグナル伝達分子」という用語は、細胞シグナル伝達を改変、関与、阻害、活性化、低減、又は増大させる任意の分子を指す。「シグナル伝達」とは、細胞内で最終的に生化学的事象を引き起こす経路に沿ったタンパク質複合体の動員による化学改変の形態での分子シグナルの伝達を指す。シグナル伝達経路は当該技術分野で周知であり、Gタンパク質共役受容体シグナル伝達、チロシンキナーゼ受容体シグナル伝達、インテグリンシグナル伝達、トールゲートシグナル伝達、リガンド依存性イオンチャネルシグナル伝達、ERK/MAPKシグナル伝達経路、Wntシグナル伝達経路、cAMP依存経路、及びIP3/DAGシグナル伝達経路が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書で使用されるとき、「特異的」又は「特異性」という用語は、非特異的又は非選択的な結合とは対照的に、標的分子に選択的に結合する分子、例えば受容体又はエンゲージャの能力を指すために使用され得る。
【0042】
「リガンド」という用語は、標的分子と複合体を形成して、標的上の部位に結合することによってシグナルを生成する物質を指す。リガンドは、標的に特異的に結合することができる天然又は人工物質であってもよい。リガンドは、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体複合体、コンジュゲート、核酸、脂質、多糖、単糖、小分子、ナノ粒子、イオン、神経伝達物質、又は標的に特異的に結合することができる任意の他の分子実体の形態であってもよい。リガンドが結合する標的は、タンパク質、核酸、抗原、受容体、タンパク質複合体、又は細胞であり得る。標的に結合してその機能を変化させ、シグナル伝達応答を誘発するリガンドは、「アゴニスト(agonistic)」又は「アゴニスト(agonist)」と呼ばれる。標的に結合し、シグナル伝達応答を遮断又は低減するリガンドは、「アンタゴニスト性」又は「アンタゴニスト」である。
【0043】
「抗体」という用語は、目的の特定の標的に特異的に結合する少なくとも1つの結合部位を含有する抗体及び抗体断片を包含し、標的は、抗原、又は特定の抗体と相互作用することができる受容体であり得る。「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子又はその抗原結合部分若しくは受容体結合部分を含むが、これらに限定されない。抗体が結合する抗原若しくは受容体の特定の断片若しくは部分、又は概して標的は、エピトープ又は抗原決定基として知られている。抗体という用語はまた、天然抗体及びそのバリアント、天然抗体及びそのバリアントの断片、ペプチボディ及びそのバリアント、並びに一本鎖抗体及びその断片を含む、抗体又はその特定の断片若しくは部分の構造及び/又は機能を模倣する抗体模倣体を含むが、これらに限定されない。抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダIgG、単一可変新抗原受容体(variable new antigen receptor、VNAR)、サメ重鎖抗体(Ig-NAR)、キメラ抗体、組換え抗体、単一ドメイン抗体(single-domain antibody、dAb)、抗イディオタイプ抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体若しくは多量体抗体、又はこれらの抗体断片であってもよい。抗体断片の非限定的な例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、Fv、Fabc、pFc、Fd、一本鎖抗原結合断片(single chain fragment variable、scFv)、タンデムscFv(scFv)2、一本鎖Fab(single chain Fab、scFab)、ジスルフィド安定化Fv(disulfide stabilized Fv、dsFv)、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、単一ドメイン抗原結合断片(single-domain antigen binding fragment、sdAb)、ラクダ重鎖IgG及びNanobody(登録商標)断片、組換え重鎖のみ抗体(heavy-chain-only antibody、VHH)、及び抗体全体の結合特異性を維持する他の抗体断片が含まれる。
【0044】
腫瘍特異的キメラ抗原受容体(CAR)
CARは、抗原認識領域を含む外部ドメイン、膜貫通ドメイン、及び内部ドメインを一般に含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、外部ドメインは、シグナルペプチド若しくはリーダー配列及び/又はスペーサを更に含むことができる。いくつかの実施形態では、内部ドメインは、CARを発現するエフェクター細胞を活性化するシグナル伝達ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、内部ドメインは、1つ以上のシグナル伝達ドメインを含み、シグナル伝達ドメインは、T細胞及び/又はNK細胞の活性化又は機能に特異的なシグナル伝達タンパク質の細胞質ドメインに由来する。いくつかの実施形態では、抗原認識ドメインは、抗原に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗原認識ドメインは、疾患又は病原体と関連する抗原に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、疾患関連抗原は腫瘍抗原であり、腫瘍は液体腫瘍又は固形腫瘍であってもよい。
【0045】
ある特定の実施形態では、抗原認識領域/ドメインは、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダIg、単一可変新規抗原受容体(VNAR)、サメ重鎖のみ抗体(Ig-NAR)、キメラ抗体、組換え抗体、又はそれらの抗体断片を含む。抗体断片の非限定的な例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、Fv、一本鎖抗原結合断片(scFv)、(scFv)2、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、単一ドメイン抗原結合断片(sdAb、ナノボディ)、組換え重鎖のみ抗体(VHH)、及び抗体全体の結合特異性を維持する他の抗体断片が含まれる。
【0046】
本発明の様々な態様は、腫瘍関連抗原に結合する抗原認識領域を含むCARを提供する。様々な実施形態では、CARは、腫瘍細胞表面HER2抗原に特異的である。いくつかの実施形態では、HER2-CARの外部ドメインの抗原認識ドメインが、配列番号1(NYGMS)を含む重鎖相補性決定領域1(H-CDR1)、配列番号2(TINNNGGGTYYPDSVKG)を含む重鎖相補性決定領域2(H-CDR2)、及び配列番号3(PGLLWDA)を含む重鎖相補性決定領域3(H-CDR3)を含む、重鎖可変(VH)ドメインと、配列番号4(KSSQSLLDSDGRTYLN)を含む軽鎖相補性決定領域1(L-CDR1)、配列番号5(LVSKLDS)を含む軽鎖相補性決定領域2(L-CDR2)、及び配列番号6(WQGTHFPQT)を含む軽鎖相補性決定領域3(L-CDR3)を含む、軽鎖可変(VL)ドメインと、を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、CARは、アミノからカルボキシの方向に重鎖CDR、続いて軽鎖CDR(H/L)を含む。いくつかの実施形態では、CARは、アミノからカルボキシの方向に重鎖可変ドメイン、続いて軽鎖可変ドメインを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインが、配列番号7によって表される例示的な配列と比較したときに、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、100%、又はその間の任意のパーセンテージの配列同一性を有するVHドメインを含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは、配列番号7に対して少なくとも約90%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは、配列番号7に対して少なくとも約95%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VHドメインは、配列番号7のアミノ酸配列を含む。いくつかの他の実施形態では、CARの抗原結合ドメインが、配列番号8によって表される例示的な配列と比較したときに、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、100%、又はその間の任意のパーセンテージの配列同一性を有するVLドメインを含む。いくつかの実施形態では、VLドメインは、配列番号8に対して少なくとも約90%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLドメインは、配列番号8に対して少なくとも約95%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VLドメインは、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
配列番号7
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSNYGMSWVRQTPDRRLELVATINNNGGGTYYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAMYYCTSPGLLWDAWGAGTTVTVSS
配列番号8
DVVMTQTPLTLSVSIGQPASISCKSSQSLLDSDGRTYLNWLLQRPGQSPKRLIYLVSKLDSGAPDRFTGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCWQGTHFPQTFGGGTKLEIK
【0049】
いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、VH-リンカー-VL又はVL-リンカー-VHを含む、N末端からC末端への配向を有する一本鎖可変断片(scFV)を含み、リンカーは、長さ及び配列が異なる。いくつかの実施形態では、リンカーが、配列番号9~12によって表される例示的な配列と比較したときに、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、100%、又はその間の任意のパーセンテージの配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号9~12のいずれかに対して少なくとも約90%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号9~12のいずれかに対して少なくとも約95%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号9~12のいずれかのアミノ酸配列を含む。
配列番号9
GSTSGGGSGGGSGGGGSS
配列番号10
GSTSGSGKPGSGEGSTKG
配列番号11
SSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号12
GGGGSGGGGSGGGGS
【0050】
いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインは、配列番号13又は配列番号14によって表される例示的な配列と比較したときに、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、100%、又はその間の任意のパーセンテージの配列同一性を有する一本鎖可変断片(scFV)を含み、配列番号13及び14の各々は、長さ及び/又は配列が異なり得るリンカーを含む。いくつかの実施形態では、scFVは、配列番号13又は14に対して少なくとも90%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、scFVは、配列番号13又は14に対して少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、scFVは、配列番号13のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、scFVは、配列番号14のアミノ酸配列を含む。
配列番号13
EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSNYGMSWVRQTPDRRLELVATINNNGGGTYYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAMYYCTSPGLLWDAWGAGTTVTVSSGSTSGGGSGGGSGGGGSSDVVMTQTPLTLSVSIGQPASISCKSSQSLLDSDGRTYLNWLLQRPGQSPKRLIYLVSKLDSGAPDRFTGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCWQGTHFPQTFGGGTKLEIK
配列番号14
DVVMTQTPLTLSVSIGQPASISCKSSQSLLDSDGRTYLNWLLQRPGQSPKRLIYLVSKLDSGAPDRFTGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCWQGTHFPQTFGGGTKLEIKGSTSGGGSGGGSGGGGSSEVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFSNYGMSWVRQTPDRRLELVATINNNGGGTYYPDSVKGRFTISRDNAKNTLYLQMSSLKSEDTAMYYCTSPGLLWDAWGAGTTVTVSS
【0051】
様々な実施形態では、本明細書に説明されるCARは、少なくとも外部ドメイン、膜貫通ドメイン、及び内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARの内部ドメインは、抗原結合時に活性化される少なくとも1つのシグナル伝達ドメインを含む。CAR内部ドメインのいくつかの実施形態では、最適化された機能性のために、1つ以上の共刺激ドメイン(多くの場合「追加のシグナル伝達ドメイン」と称される)が更に含まれる。CAR設計に好適な例示的なシグナル伝達タンパク質としては、限定されるものではないが、2B4、4-1BB(本出願全体を通して例示的な融合構築物におけるCD137又は「41BB」)、CD16、CD2、CD28、CD28H、CD3ζ/1XX(すなわち、CD3ζ又はCD3ζ1XX)、DAP10、DAP12、DNAM1、FcERIγ、IL21R、IL-2Rβ(IL-15Rβ)、IL-2Rγ、IL-7R、KIR2DS2、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CS1、及びCD8が挙げられる。タンパク質の膜貫通配列及び細胞質配列を含む例示的なシグナル伝達タンパク質の説明は、以下に提供され、表1Aに更に提供される。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
提供されるCARのいくつかの実施形態では、CARの内部ドメインが、それぞれ、配列番号37~59によって表される、2B4、4-1BB、CD16、CD2、CD28、CD28H、CD3ζ、CD3ζ1XX、DAP10、DAP12、DNAM1、FcERIγ IL21R、IL-2Rβ(IL-15Rβ)、IL-2Rγ、IL-7R、KIR2DS2、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CS1、又はCD8の細胞質ドメイン又はその一部分に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する少なくとも第1のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1のシグナル伝達ドメインは、配列番号37~59のいずれかに対して少なくとも90%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のシグナル伝達ドメインは、配列番号37~59のいずれかに対して少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のシグナル伝達ドメインは、配列番号37~59のいずれかのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCARのシグナル伝達ドメインは、2B4、4-1BB、CD16、CD2、CD28、CD28H、CD3ζ、CD3ζ1XX、DAP10、DAP12、DNAM1、FcERIγ IL21R、IL-2Rβ(IL-15Rβ)、IL-2Rγ、IL-7R、KIR2DS2、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CS1、又はCD8の細胞質ドメインの一部分のみを含む。いくつかの実施形態では、CARシグナル伝達ドメインのために選択される細胞質ドメインの一部分は、ITAM(免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ)、YxxMモチーフ、TxYxxV/Iモチーフ、FcRγ、ヘミ-ITAM、及び/又はITT様モチーフに対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0057】
提供されるCARのいくつかの実施形態では、第1のシグナル伝達ドメインを含むCARの内部ドメインが、それぞれ、配列番号37~59によって表される、2B4、4-1BB、CD16、CD2、CD28、CD28H、CD3ζ、CD3ζ1XX、DAP10、DAP12、DNAM1、FcERIγ IL21R、IL-2Rβ(IL-15Rβ)、IL-2Rγ、IL-7R、KIR2DS2、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CS1、又はCD8の細胞質ドメイン又はその一部分に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第2のシグナル伝達ドメインを更に含み、第2のシグナル伝達ドメインが、第1のシグナル伝達ドメインとは異なる。いくつかの実施形態では、第2のシグナル伝達ドメインは、配列番号37~59のいずれかに対して少なくとも90%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のシグナル伝達ドメインは、配列番号37~59のいずれかに対して少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のシグナル伝達ドメインは、配列番号37~59のいずれかのアミノ酸配列を含む。
【0058】
提供されるCARのいくつかの実施形態では、第1及び第2のシグナル伝達ドメインを含むCARの内部ドメインが、それぞれ、配列番号37~59によって表される、2B4、4-1BB、CD16、CD2、CD28、CD28H、CD3ζ、CD3ζ1XX、DAP10、DAP12、DNAM1、FcERIγ IL21R、IL-2Rβ(IL-15Rβ)、IL-2Rγ、IL-7R、KIR2DS2、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CS1、又はCD8の細胞質ドメイン又はその一部分に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む第3のシグナル伝達ドメインを更に含み、第3のシグナル伝達ドメインが、第1及び第2のシグナル伝達ドメインとは異なる。いくつかの実施形態では、第3のシグナル伝達ドメインは、配列番号37~59のいずれかに対して少なくとも90%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第3のシグナル伝達ドメインは、配列番号37~59のいずれかに対して少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第3のシグナル伝達ドメインは、配列番号37~59のいずれかのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CAR内部ドメインのシグナル伝達ドメインを設計するのに好適なシグナル伝達タンパク質は、CD27、OX40、ICOS、PD-1、LAG-3、BTLA、又はCTLA-4を更に含む。
【0059】
1つのシグナル伝達ドメインのみから構成される内部ドメインを有するCARのいくつかの例示的な実施形態では、内部ドメインは、限定されるものではないが、DNAM1、CD28H、KIR2DS2、DAP12、又はDAP10を含む、タンパク質の細胞質ドメイン又はその一部分に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0060】
2つの異なるシグナル伝達ドメインから構成される内部ドメインを有するCARのいくつかの例示的な実施形態では、内部ドメインが、限定されるものではないが、2B4-CD3ζ/1XX(すなわち、2B4-CD3ζ又は2B4-CD3ζ1XX、以下同様)、2B4-DNAM1、2B4-FcERIγ、2B4-DAP10、CD16-DNAM1、CD16-DAP10、CD16-DAP12、CD2-CD3ζ/1XX、CD2-DNAM1、CD2-FcERIγ、CD2-DAP10、CD28-DNAM1、CD28-FcERIγ、CD28-DAP10、CD28-DAP12、CD28-CD3ζ/1XX、CD28H-CD3ζ/1XX、DAP10-CD3ζ/1XX、DAP10-DAP12、DAP12-CD3ζ/1XX、DAP12-DAP10、DNAM1-CD3ζ/1XX、KIR2DS2-CD3ζ/1XX、KIR2DS2-DAP10、KIR2DS2-2B4、又はNKp46-2B4を含む形態で、融合細胞質ドメイン又はその一部分を含む。
【0061】
3つの異なるシグナル伝達ドメインから構成される内部ドメインを有するCARのいくつかの例示的な実施形態では、内部ドメインは、限定されるものではないが、2B4-DAP10-CD3ζ/1XX、2B4-IL21R-DAP10、2B4-IL2RB-DAP10、2B4-IL2RB-CD3ζ/1XX、2B4-41BB-DAP10、CD16-2B4-DAP10、又はKIR2DS2-2B4-CD3ζ/1XXを含む形態で融合細胞質ドメイン又はその一部分を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、CARの膜貫通ドメインが、CD2、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD16、CD27、CD28、CD28H、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA4、PD1、LAG3、2B4、BTLA、DNAM1、DAP10、DAP12、FcERIγ、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、KIR2DS2、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、CS1、又はT細胞受容体ポリペプチドの膜貫通領域の完全長又は一部分に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの他の実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、(a)それぞれ、配列番号15、17~25、30~36によって表される、2B4、CD16、CD2、CD28、CD28H、CD3ζ、DAP10、DAP12、DNAM1、FcERIγ、KIR2DS2、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CS1、又はCD8、又は(b)2B4、CD28、CD28H、DAP10、DNAM1、KIR2DS2、及びNKG2Dの膜貫通領域の完全長又は一部分に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号15、17~25、30~36のいずれかに対して少なくとも約90%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号15、17~25、30~36のいずれかに対して少なくとも約95%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号15、17~25、30~36のいずれかのアミノ酸配列を含む。CARのいくつかの実施形態では、膜貫通ドメイン及びその直結されたシグナル伝達ドメインが、同じタンパク質由来である。CARのいくつかの他の実施形態では、膜貫通ドメイン及び直結されるシグナル伝達ドメインは、異なるタンパク質由来である。
【0063】
本出願の表1Bは、膜貫通ドメイン(transmembrane domain、TM)及び内部ドメインを含むCAR構築物の非限定的な例を提供する(TM-(内部ドメイン)として標識される)。一般に、例示されたCAR構築物は、各々、膜貫通ドメインと、1つ以上のシグナル伝達タンパク質の細胞質領域に由来する1つ以上のシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインと、を含む。概して、膜貫通ドメインは、生体膜(例えば、細胞又は細胞小胞の膜)のリン脂質二重層などの膜において熱力学的に安定である三次元タンパク質構造である。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のCARの膜貫通ドメインは、単一のアルファヘリックス、いくつかの膜貫通アルファヘリックスの安定な複合体、膜貫通ベータバレル、グラミシジンAのベータヘリックス、又はそれらの任意の組み合わせを含む。様々な実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、膜内にある「膜貫通タンパク質」又は「膜タンパク質」の全て又は一部分を含む。本明細書で使用されるとき、「膜貫通タンパク質」又は「膜タンパク質」は、膜に及び/又は膜内に位置するタンパク質である。本発明の実施形態のCARに含まれる膜貫通ドメインを提供するのに好適である膜貫通タンパク質の例としては、限定されるものではないが、受容体、リガンド、免疫グロブリン、グリコホリン、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、CARに含まれる膜貫通ドメインは、2B4、4-1BB、BTLA、CD2、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD16、CD27、CD28、CD28H、CD40、CD84、CD166、CS1、CTLA-4、DNAM1、DAP10、DAP12、FcERIγ、ICOS、ICAM-1、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、KIR2DS2、LAG3、PD1、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、OX40、T細胞受容体ポリペプチド(例えば、TCRα及び/又はTCRβ)、ニコチン性アセチルコリン受容体、GABA受容体、又はそれらの任意の組み合わせの膜貫通ドメインの全部又は一部分を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、CAR内部ドメインに含まれる1つ以上のシグナル伝達ドメインは、TMが由来する同じ又は異なるタンパク質に由来する。表1Bに示されるように、CARの膜貫通ドメインを表す部分に下線が引かれ、内部ドメインに含まれるドメインは、括弧「()」内に表示され、TM及びシグナル伝達ドメインの各々は、ドメイン配列が由来するシグナル伝達タンパク質の名称によって指定される。実施形態では、各TM又はシグナル伝達ドメインのアミノ酸配列は、指定されたシグナル伝達タンパク質の対応する膜貫通又は細胞質領域の完全長又は一部分に対して約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性であり得る。本明細書で提供される膜貫通ドメイン及び内部ドメインを含む例示的なCAR構築物としては、限定されるものではないが、NKG2D-(2B4-IL2RB-CD3ζ)、CD8-(41BB-CD3ζ1XX)、CD28-(CD28-2B4-CD3ζ)、CD28-(CD28-CD3ζ1XX)、CD28H-(CD28H-CD3ζ)、DNAM1-(DNAM1-CD3ζ)、DAP10-(DAP10-CD3ζ)、KIR2DS2-(KIR2DS2-CD3ζ)、KIR2DS2-(KIR2DS2-DAP10)、KIR2DS2-(KIR2DS2-2B4)、CD16-(CD16-2B4-DAP10)、CD16-(CD16-DNAM1)、NKp46-(NKp46-2B4)、NKp46-(NKp46-2B4-CD3ζ)、NKp46-(NKp46-CD2-DAP10)、CD2-(CD2-CD3ζ)、2B4-(2B4-CD3ζ)、2B4-(2B4-FcERIγ)、及びCS1-(CS1-CD3ζ)が挙げられる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメイン及び内部ドメインを含む上記の例示的なCAR構築物の各々が、表1Bの配列番号60~78の各々によって表される配列に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は100%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号60~78のいずれかに対して少なくとも約90%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号60~78のいずれかに対して少なくとも約95%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号60~78のいずれかのアミノ酸配列を含む。表1Bに提供される各構築物についての例示的な配列は、配列の左側の例示の対応する領域のフォーマットに一致するようにフォーマットされたテキスト(すなわち、下線付き、通常、又は太字テキスト)を有する。表1Bの例示的な構築物のほとんどについて、TMは、第1の配列領域であるが、構築物は、TMの前に細胞外ドメインを含み得(例えば、表1Bの構築物7参照)、TMと同じ又は異なるタンパク質に由来し得る。いくつかの実施形態では、CAR内部ドメインに含まれる2つ以上のシグナル伝達ドメインは、スペーサ又はリンカーなどの1つ以上の追加の配列によって分離され得る。
【0065】
【0066】
【0067】
いくつかの実施形態では、外部ドメインは、シグナルペプチド若しくはリーダー配列及び/又はスペーサ/ヒンジを更に含むことができる。いくつかの実施形態では、CARの抗原認識領域と膜貫通ドメインとの間にスペーサ/ヒンジが存在するが、いくつかの他の実施形態では、そのようなスペーサ/ヒンジは必要とされない。例示的なN末端シグナルペプチドとしては、MALPVTALLLPLALLLHA(配列番号79、CD8asp)若しくはMDFQVQIFSFLLISASVIMSR(配列番号80、IgKsp)、又は当該技術分野で公知の任意のシグナルペプチド配列若しくはその機能的バリアントが挙げられる。CARに含まれ得る例示的なスペーサは、当該技術分野において一般的に既知であり、IgG4スペーサ、CD28スペーサ、CD8スペーサ、又は2つ以上のスペーサの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。スペーサの長さもまた、約15アミノ酸(a.a.)~約300アミノ酸以上まで変化し得る。本出願では、説明を容易にするために、約80アミノ酸未満、例えば、10~80アミノ酸のスペーサは、短いと考えられ、約80~180アミノ酸のスペーサは、中程度と考えられ、180アミノ酸を超えるスペーサは、長いと考えられる。非限定的な例示的スペーサペプチドとしては、配列番号81~85のいずれかに対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性のアミノ酸配列によって表されるものが挙げられる。いくつかの実施形態では、スペーサペプチドは、配列番号81~85のいずれかに対して少なくとも約90%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、スペーサペプチドは、配列番号81~85のいずれかに対して少なくとも約95%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、スペーサペプチドは、配列番号81~85のいずれかのアミノ酸配列を含む。
配列番号81
IEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP
(39アミノ酸)
配列番号82
ESKYGPPCPPCPGGGSSGGGSGGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFL
(88アミノ酸)
配列番号83
ESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFQSTYRVVSVLT
(89アミノ酸)
配列番号84
ESKYGPPCPPCPGGGSSGGGSGGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
(129アミノ酸)
配列番号85
ESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFQSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
(229アミノ酸)
【0068】
一実施形態では、本明細書で提供されるCARは、CD28由来の共刺激ドメインと、配列番号63に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性を有するアミノ酸配列によって表されるCD3ζの天然又は改変ITAM1を含むシグナル伝達ドメインと、を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、配列番号63に対して少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、配列番号63に対して少なくとも約95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、配列番号63のアミノ酸配列を含む。更なる実施形態では、CD28由来の共刺激ドメイン及びCD3ζの天然又は改変ITAM1を含むCARはまた、CD28由来のヒンジドメイン(又は「スペーサ」)及び膜貫通ドメインを含み、scFvは、ヒンジを介して膜貫通ドメインに接続され得、CARは、配列番号86に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号86に対して少なくとも80%のアミノ酸配列を含み、スペーサは、長さ及び配列が異なり得る。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号86に対して少なくとも90%のアミノ酸配列を含み、スペーサは、長さ及び配列が異なり得る。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号86に対して少なくとも95%のアミノ酸配列を含み、スペーサは、長さ及び配列が異なり得る。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号86のアミノ酸配列を含む。
【0069】
【0070】
別の実施形態では、本明細書で提供されるCARは、NKG2D由来の膜貫通ドメインと、2B4由来の共刺激ドメインと、配列番号87に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性のアミノ酸配列によって表される天然又は改変CD3ζを含むシグナル伝達ドメインと、を含む。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号87に対して少なくとも約90%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号87に対して少なくとも約95%の同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号87のアミノ酸配列を含む。NKG2D由来の膜貫通ドメイン、2B4由来の共刺激ドメイン、及び天然又は改変CD3ζを含むシグナル伝達ドメインを含むCARは、ヒンジを更に含み得る。
【0071】
【0072】
一実施態様では、本明細書に提供されるCARは、配列番号88に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性のアミノ酸配列を含み、外部ドメイン中のリンカー及び外部ドメインと膜貫通ドメインとの間のスペーサは、長さ及び配列が異なり得る。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号88に対して少なくとも約90%の同一性のアミノ酸配列を含み、外部ドメイン中のリンカー、及び外部ドメインと膜貫通ドメインとの間のスペーサは、長さ及び配列が異なり得る。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号88に対して少なくとも約95%の同一性のアミノ酸配列を含み、外部ドメイン中のリンカー、及び外部ドメインと膜貫通ドメインとの間のスペーサは、長さ及び配列が異なり得る。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号88のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCARは、固形腫瘍の細胞に特異的なHER2抗原を認識する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCARは、乳がん、卵巣がん、子宮内膜がん、肺がん、食道がん、唾液腺がん、膀胱がん、胃がん、結腸直腸がん、又は頭頸部がんを含む、腫瘍のHER2抗原を認識する。更にいくつかの他の実施形態では、本明細書で提供されるCARは、腫瘍のHER2抗原を認識し、かつ非がん細胞又は正常細胞上で発現されるHER2に応答しないか、又は低レベルの応答を有する。
【0073】
【0074】
非限定的なCAR戦略としては、一対の細胞内ドメインの二量体化によるヘテロ二量体条件的活性化CAR(例えば、米国特許第9,587,020号を参照されたい)、スプリットCAR、CARを生成するための抗原結合、ヒンジ、及び内部ドメインの相同組換え(例えば、米国特許出願公開第2017/0183407号を参照されたい)、それぞれ抗原結合ドメイン及びシグナル伝達ドメインに接続された2つの膜貫通ドメイン間の非共有結合を可能にする多重鎖CAR(例えば、米国特許出願公開第2014/0134142号を参照されたい)、二重特異性抗原結合ドメインを有するCAR(例えば、米国特許第9,447,194号を参照)、又は同じ若しくは異なる抗原若しくはエピトープを認識する一対の抗原結合ドメインを有するCAR(例えば、米国特許第8,409,577号を参照)、又はタンデムCAR(例えば、Hegde et al.,J Clin Invest.2016;126(8):3036-3052);誘導性CAR(例えば、米国特許出願公開第2016/0046700号、同第2016/0058857号、及び同第2017/0166877号を参照されたい)、スイッチ可能なCAR(例えば、米国特許出願公開第2014/0219975号を参照されたい)、並びに当該技術分野で既知の任意の他の設計が更に含まれる。
【0075】
いくつかの実施形態では、開示されるCARをコードするポリヌクレオチドは、外因性プロモータに作動可能に連結されている。プロモータは誘導性又は構成的であり得、時間特異的、組織特異的又は細胞型特異的であり得る。本明細書に開示される方法に好適な構成的プロモータには、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)、伸長因子1α(elongation factor 1α、EF1α)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(phosphoglycerate kinase、PGK)、ハイブリッドCMVエンハンサ/ニワトリβ-アクチン(enhancer/chicken β-actin、CAG)、及びユビキチンC(ubiquitin C、UBC)プロモータが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、外因性プロモータはCAGである。CAR構築物は、発現のために、プラスミドベクター(例えば、pAl-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo)又はウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、又はセンダイウイルスベクター)を使用して、初代T細胞などの細胞に導入され得る。細胞への標的化挿入を導入することができる利用可能なエンドヌクレアーゼには、ジンクフィンガヌクレアーゼ(zinc-finger nucleases、ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(transcription activator-like effector nucleases、TALEN)、RNA誘導CRISPR(Clustered Regular Interspaced Short Palindromic Repeats、クラスタ化等間隔短鎖回分リピート)システムが含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
実施例
次の実施例は、例示のために提供されるものであり、限定のためのものではない。
【0077】
実施例1-CAR候補の設計及び機能的プロファイリング
HER2に特異的なHER2がん特異的モノクローナル抗体(cancer-specific monoclonal antibody、CasMab)のCDRを含有する様々なキメラ抗体受容体(CAR)構築物を設計し、形質導入し、CARの特性評価及び機能の決定に好適な、初代T細胞を含む、細胞モデルで発現させた。CAR設計における変数としては、限定されるものではないが、可変領域配向、リンカー配列及び/若しくは長さ、スペーサ配列及び/若しくは長さ、内部ドメインシグナル伝達及び共刺激ドメインとの適合性が挙げられ、これらは全て、限定されるものではないが、発現レベル、特異性及び有効性を含むCAR機能性プロファイルに直接的又は間接的に影響し、これらは、CAR設計を通して適切に定義及び調整される必要がある。
【0078】
外部ドメイン内に異なる長さのスペーサを組み込む候補CARの群(例えば、約10~約80アミノ酸の短いスペーサ、80超~約180アミノ酸の中程度のスペーサ、若しくは180アミノ酸を超える長いスペーサ)、並びに/又は異なる配向のVH及びVLを構築し、がん抗原特異的応答分析のために発現させた。同じがん特異的抗原を標的化する別個のCAR構築物の細胞溶解活性を比較することによって、以下のアッセイを実施して、どの構築物、より具体的には、どの外部ドメインの構成(すなわち、スペーサ長さ)及び内部ドメイン構成要素が、がん細胞上に発現されるHER2抗原へのCARの結合に特異的なシグナル伝達ドメイン応答を付与するかを決定した。
【0079】
短いスペーサ(例えば、80アミノ酸未満であるCD28)及びCD28-CD3ζ1XX細胞内シグナル伝達ドメインを有する既知のHER2抗体、ハーセプチン由来のHER2結合ドメインを有する4D5-CARを、新規CasMab抗体に基づく候補HER2-CARとの比較のための対照として使用した。CasMab214のVHドメイン(配列番号89--QVTLKESGPGILQPSQTLSLTCSFSGFSLSTSGMGVSWIRQPSGKGLEWLAHIFWDDDKRYNPSLKSRLTISKDTSRNKVFLKITSVDTADTATYYCARRVVATDWYFDVWGAGTTVTVSS)及びVLドメイン(配列番号90--DIVLTQSPASLAVSLGQRATISCRASESVEYYGTTLMQWYQQKPGQPPKLLIYAASKVESGVPARFSGSGSGTDFSLNIHPVEEDDVAMYFCQQSRKVPLTFGAGTKLEL)に基づいて、同じ短いスペーサ及び細胞内シグナル伝達ドメインを有するCasMab214-CAR(図では214-CAR又は214として省略される)を設計及び構築したが、一方、同じ構成のCasMab250-CAR(図では250-CAR又は250として省略される)を、本出願に開示されるCasMab250抗体のCDR及びVH/VLに基づいて設計した。
【0080】
xCELLigence(商標)リアルタイム細胞分析を介して、上記CARの細胞溶解抗力及び特異性を評価した。10
4個のHER2発現標的細胞(SKOV3、SKBR3、MCF10a、又はMet5a)をプレーティングした24時間後に、CAR発現エフェクター細胞を、1:1のエフェクター:標的(E:T)比で、高いHER2発現レベル(HER2
High)を有する腫瘍細胞SKOV3及びSKBR3に対して(
図1A)、又は5:1のE:T比で、正常/非腫瘍原性HER2発現細胞MCF10a又はMet5a(HER2
+)に対して(
図1B)、追加した。標的細胞におけるHER2発現のレベルを、免疫組織化学(IHC)染色によって決定した。IHCスコアが高いほど、HER2細胞表面抗原の発現が高くなる。3+のIHCスコアは、HER2
Highとして標識され、2+のIHCスコアは、HER2
+として標識され、中程度のHER2発現体を表すが、一方、1+のIHCスコアは、HER2
Lowとして標識され、これは、低HER2発現体を表す。細胞指数を監視し、エフェクター添加に対して正規化し、細胞溶解パーセントをRTCA Software Pro(商標)で計算した。
【0081】
図1Aに示されるように、4D5ベース、CasMab214ベース、及びCasMab250ベースのCAR発現エフェクター細胞は、全て、HER2
High卵巣腫瘍(SKOV3)及び乳房腫瘍(SKBR3)細胞株細胞を認識及び排除し、CAR発現エフェクター細胞を添加してから48時間以内に約100%の細胞溶解パーセントに到達した。評価された全ての初代ドナーにわたって、CasMab214ベース及びCasMab250ベースのCARによる抗腫瘍効力は、ドナー適合4D5ベースのCARと少なくとも同程度に迅速であるか、又はほとんどの場合、ドナー適合4D5ベースのCARよりも最大12時間、腫瘍株の標的化及び排除に先行し、CasMab214-及びCasMab250-CARの堅牢な抗腫瘍潜在性を強調した。
【0082】
非腫瘍原性/正常HER2+細胞株MCF10a(乳腺)及びMet5a(中皮)に関して、4D5-CAR発現ドナーT細胞は、堅牢な細胞溶解効力を実証し、正常胸部細胞株細胞(MCF10a)の100%及び正常中皮細胞株細胞(Met5a)の約30~50%を無作為かつ迅速に排除し、HER2抗体、ハーセプチンに基づく4D5-CARのがん細胞標的化特異性の欠如を示した。したがって、4D5ベースのHER2-CARは、標的化抗原の共有発現を有する正常組織への直接攻撃から結果的に生じる、「オンターゲット腫瘍外」問題を提示した。一方、CasMab214ベース及びCasMab250ベースのCARは、5:1のE:T比であっても、正常乳腺MCF10a株に対して細胞溶解効力を表示しなかったが、HER2発現腫瘍細胞株細胞に対する効力を有する。CasMab214ベース及びCasMab250ベースのCARによる正常中皮Met5a細胞では限られたレベルのドナー依存性認識が観察されたが、それらの細胞溶解効力は、4D5ベースのCARの効力と比較して、非腫瘍原性正常細胞に反応するときに有意に低減された。また、抗腫瘍効力は、がん細胞特異的CasMab HER2抗体に基づく214-CARと250-CARとの間でほぼ同様であったが、CasMab250-CARは、正常中皮Met5a細胞株の最も低い認識を実証したことにも留意されたい。全体として、これらのデータは、CasMab由来CARが、広く知られ使用されているHER2抗体、ハーセプチンに基づく4D5-CARと比較して、正常/非腫瘍原性細胞株に対するHER2の限定された認識を有する、堅牢な抗腫瘍HER2標的化効力を有することを実証する。
【0083】
次いで、短いスペーサを有する4D5ベース、CasMab214ベース、又はCasMab250ベースのCARで形質導入されたドナーT細胞における、HER2
High腫瘍細胞(SKOV3及びSKBR3、
図2A)、及びHER2
+正常/非腫瘍原性細胞(MCF10a、Met5a、及びケラチノサイトHaCat細胞株、
図2B)に応答したサイトカイン産生を評価した。5×10
4個の標的細胞(SKOV3、SKBR3、MCF10A、HaCat、又はMet5a)をプレーティングした約24時間後、CAR形質導入細胞を1:1のE:T比で添加した。約48時間の共培養後、IFNγ産生評価のために上清を収集した。評価した全てのドナーについて、腫瘍又は非腫瘍原性HER2発現細胞のいずれかを標的化する4D5-CARを発現する細胞によるIFNγの相対産生は、CasMab214又はCasMab250ベースのCARの産生よりも実質的に大きかった(
図2A及び
図2B)。最も注目すべきことに、4D5-CAR形質導入細胞はまた、正常細胞共培養に応答して、約300pg/ml~約4500pg/mlのIFNγを産生し、正常細胞上に発現されたHER2に対する有意な反応性を実証した。一方、CasMab214及びCasMab250ベースのCAR-T細胞は、全てのドナー及び評価された正常細胞株にわたって実質的により少ないIFNγを産生し、はるかに少ない「オンターゲット腫瘍外」効果を示した。特に、CasMab250ベースのCARを発現するCAR-T細胞は、正常なHER2発現細胞に曝露されたときに、検出可能なIFNγを産生せず(約5pg/mlの検出下限より少ない)、これは、CasMab250ベースのCARの高度に特異的な腫瘍抗原選択性を更に強調する。
【0084】
長いスペーサを有する4D5、CasMab214、又はCasMab250ベースのCAR(例えば、180アミノ酸超を有するIgG4ヒンジ及びCH2/3ドメイン)を構築し、上記と同じ方法を使用して、細胞溶解効力及び腫瘍細胞特異性について評価した。HER2
High卵巣(SKOV3)及び乳腺(SKBR3)腫瘍細胞株に対するとき、短いスペーサを有するCARと比較して、長いスペーサを有するHER2-CARで同様の観察がなされた。
図3Aに示されるように、全ての評価された長いスペーサCARは、72~96時間の間に最大効力に到達し、CasMab214及びCasMab250ベースのCARは、開始及び最大化の両方において4D5-CARよりも速く細胞溶解効力を伝達した。
【0085】
非腫瘍原性/正常HER2
+細胞株MCF10a(乳腺)及びMet5a(中皮)に対するとき、長いスペーサを有する4D5-CARは、堅牢な細胞溶解効力を実証し、正常乳腺MCF10aの最大100%及び正常中皮Met5a細胞株の最大75%を除去した。長いスペーサを有する214-CAR及び250-CARについては、4D5と比較して効力及び選択性の差がドナー間で観察されたが、スペーサを長いスペーサに延長することは、HER2発現正常/非腫瘍細胞に対する実質的なレベルの反応性を回復させ、これは、
図1Bと比較した
図3Bを参照されたい。しかしながら、正常細胞に対する反応性が増加しても、CasMab250ベースのCARは、依然として、試験されたドナーにわたって最小量の細胞溶解効力を伝達することに留意されたい。更に、4D5、CasMab214、及びCasMab250ベースのCARが、Met5aに対する選択性に差をもたらさなかったという事実は、(i)スペーサ長さが、正常HER2
+細胞よりもむしろ腫瘍のCasMab-CAR選択性に重要であること、及び(ii)CasMab250ベースのCAR-T細胞が、スペーサ構成にわたって最小量の正常細胞反応性を実証することを実証する。
【0086】
HER2発現腫瘍(
図4A)及び正常/非腫瘍原性細胞株(
図4B)に応答して、長いスペーサCARによってもたらされる炎症性サイトカインIFNγ産生についてのアッセイは、CasMab214及びCasMab250が、腫瘍抗原のために特別に設計された同じスクリーニング方法を使用して得られた腫瘍HER2抗原に特異的な検証された抗体であったことを考慮して、HER2-CAR候補のスペーサ長さの差次的効果、より具体的には、抗体のレベルではなく、CARのレベルで反映された非腫瘍細胞に対する差次的標的化特異性に関して上記の概念を更に確認した。
【0087】
全体として、これらのデータは、(i)CasMab250ベースのCARが、同様に構成された4D5及びCasMab214ベースのCARよりも腫瘍選択的利点を有すること、及び(ii)スペーサ長さがCasMab HER2抗体ベースのCARの機能的特性にとって重要であり、より短いスペーサが、長いスペーサよりも実質的により高い腫瘍選択性を結果的にもたらすことを実証する。
【0088】
実施例2-中程度のスペーサを有するCasMab250-CARの効力及び特異性
CasMab250ベースのCARは、同様に構成された4D5及びCasMab214ベースのCARよりも腫瘍選択的利点を有するため、この実験は、任意の異なる機能的特性について、短い(80アミノ酸未満)又は中程度のスペーサ(80~180アミノ酸)を有する250-CARの比較に焦点を当てる。
【0089】
短い又は中程度のスペーサを有する4D5又はCasMab250ベースのCARを、本明細書に説明される同じ方法を使用して、細胞溶解効力及び腫瘍特異性について評価した。先の実施例のように、104個の標的細胞(SKOV3、SKBR3、BT474クローン5、OE19、MCF10a、又はMet5a)をプレーティングし、接着することを可能にした。約24時間後、CAR発現初代T細胞を1:1のE:T比で添加した。
【0090】
上記の観察と一致して、
図5Aに示されるように、短いスペーサ(パネルi.)又は中程度のスペーサ(パネルii.)を有する4D5及びCasMab250ベースのCARは、HER2
HighSKOV3、SKBR3、BT474クローン5(乳腺)、及びOE19(食道)腫瘍細胞株細胞の標的化された死滅を誘導し、48~96時間以内に最大細胞溶解効力に到達した。更に、CasMab250-CARは、一般に、それらの同等に構成された4D5ベースのCARよりも速い標的化された死滅を誘導する。加えて、中程度のスペーサを有するCasMab250-CARは、全ての評価されたHER2
High腫瘍細胞株にわたって、短いスペーサを有するものよりも優れていた(
図5A)。
【0091】
図5Bに示されるように、短いスペーサ又は中程度のスペーサのいずれかを有する4D5ベースのCARは、非腫瘍/正常HER2発現細胞に対して高い細胞傷害性を無作為に誘導した。一方、短いスペーサ構成又は中程度のスペーサ構成のいずれかを有するCasMab250ベースのCARは、これらの正常HER2発現細胞に対する反応性を誘導しなかったか、又は最小限の反応性しか誘導せず、HER2発現腫瘍細胞に対する高度に選択的な効力を実証した。
【0092】
別の実験では、中程度のスペーサ及びH/L可変領域配向を有するCasMab250-CARの腫瘍特異的効力を、追加のHER2
Low/+正常細胞株(HUVEC、Beas2b、Thle2、SV-Huc-1、及びHTR-8/SVneo)を用いて更に評価した。同様に構築された4D5-CARを対照として含めた。標的細胞(対照として、HER2腫瘍細胞株、SKOV3を含む)をプレーティングした。約24時間後、CAR形質導入初代T細胞を1:1のE:T比で添加した。
図6に示されるように、CasMab250-CAR(H/L、中程度のスペーサ)は、評価された正常HER2発現細胞株細胞にわたって、少しの検出可能な細胞傷害性を誘導したか、検出可能な細胞傷害性(最大細胞溶解効力の約5~40%)を誘導しなかった。これらのデータは、CasMab250ベースのCARが、非腫瘍HER2ではなく、腫瘍発現HER2に対して高度に選択的であり(したがって、最小の「オンターゲット腫瘍外」問題を提示する)、この選択性が、複数の供給源からの多様な数のHER2発現正常/非腫瘍原性細胞株に及ぶことを実証する。
【0093】
実施例3-CAR細胞内シグナル伝達ドメイン及びCasMab250-CAR細胞活性化
CAR細胞活性化を示すために、NFκBレポーターJurkat細胞を形質導入して、上記のように、中程度のスペーサ(IgG4ヒンジ及びCH3ドメイン)、並びにCD28-CD3ζ1XX細胞内シグナル伝達ドメインを有する、4D5又はCasMab250(H/L)ベースのCARのいずれかを発現させた。4D5又はCasMab250(H/L)-CARのいずれかを安定的に発現するJurkatを、一晩、HER2High腫瘍(SKOV3、SKBR3)又はHER2+正常/非腫瘍原性(MCF10a)細胞株と共培養した。GFP(NFκBの読み出し、したがってCAR活性化)及びCD69(一般的な活性化マーカー)の発現を、フローサイトメトリを介して評価した。PMA/イオノマイシン及び並行して刺激されていないJurkat細胞株は、それぞれ、陽性及び陰性対照として役立った。
【0094】
図7に示されるように、PMA/イオノマイシン(PMA/I)治療は、ほぼ100%のGFP
+/CD69
+同時発現細胞を結果的にもたらした。同様に、CAR特異的活性化は、4D5又はCasMab250(H/L)ベースのCARを発現する、刺激されていないJurkatレポーター株において検出されなかった(<約1%GFP
+/CD69
+)。4D5及びCasMab250(H/L)-CAR発現Jurkat細胞の両方は、SKOV3又はSKBR3腫瘍株との共培養後に特異的活性化を実証した(GFP
+/CD69
+は、SKOV3について約48~52%、SKBR3について約32~38%であった)。重要なことに、CasMab250(H/L)-CAR発現JurkatとHER2
+正常/非腫瘍原性MCF10a細胞との共培養は、最小限の細胞活性化を誘導し(約5%のGFP
+/CD69
+)、4D5-CAR発現JurkatとMCF10a細胞との共培養は、堅牢な細胞活性化を結果的にもたらし(約37%のGFP
+/CD69
+)、これは、HER2
HighSKBR3腫瘍細胞株下で観察された細胞活性化と同様であった。これらのデータは、中程度のスペーサを有するCasMab250(H/L)から構築されたCARが、腫瘍発現HER2に対して高度に選択的かつ有効であることを更に実証する。
【0095】
別の実験では、複数の細胞内シグナル伝達ドメイン構成(CD3ζ1XX又はCD3ζXX3との組み合わせにおいて、野生型CD28又はCD28 YMFM変異体由来)を、CasMab250(H/L)ScFvの最適化された細胞外CARドメイン及びスペーサとともに評価した。CD3ζXX3は、ITAM1に2つの置換を有する、CD3ζの別の変異体形態である(配列は開示されていない)。10
4標的細胞(SKOV3)をプレーティングし、接着することを可能にした。約24時間後、CAR発現ドナーT細胞を1:1のE:T比で添加した。細胞指数を監視し、エフェクター添加に対して正規化し、細胞溶解パーセントをRTCA Software Pro(商標)で計算した。
図8に示されるように、異なる細胞内シグナル伝達ドメイン構成を有する全てのCARは、迅速かつ強力な腫瘍殺傷を呈したが、CD28-CD3ζ1XX細胞内シグナル伝達ドメインを有するCasMab250-CARは、約90%の最大細胞溶解で他の全ての対応物よりも優れており、細胞傷害性の伝達においてより良好な持続性/持続時間を有した。これらのデータは、使用される細胞内シグナル伝達ドメインにかかわらず、中程度のスペーサを有するCasMab250(H/L)から構築されたCARが、腫瘍発現HER2に対して高度に選択的かつ有効であることを実証する。
【0096】
当業者は、本明細書に記載の方法、組成物、及び製品が例示的な実施形態の代表であり、本発明の範囲に対する限定として意図されていないことを容易に理解するであろう。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本明細書に開示された本開示に対して様々な置換及び修正を行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。
【0097】
本明細書で言及される全ての特許及び刊行物は、本開示が関係する当業者の技術水準を示している。全ての特許及び刊行物は、個々の刊行物が参照により組み込まれるものとして具体的かつ個別に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
本明細書に例示的に記載された本開示は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つ又は複数の要素、限定又は複数の限定がなくても実施することができる。したがって、例えば、本明細書の各例において、「含む」、「から本質的になる」、及び「からなる」という用語はいずれも、他の2つの用語のいずれかに置き換えることができる。用いられている用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語及び表現の使用において、示され説明された特徴又はその部分のいずれかの均等物を除外する意図はなく、特許請求される本開示の範囲内で様々な修正が可能であると認識される。したがって、本開示は、好ましい実施形態及び任意選択の特質によって具体的に開示されているが、本明細書で開示される概念の修正及び変形は、当業者によって想到されてもよく、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあるとみなされることが理解されるべきである。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)であって、
(a)HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗原を認識する抗原結合ドメインを含む外部ドメインであって、前記抗原結合ドメインが、
(i)配列番号1(NYGMS)を含む重鎖相補性決定領域1(H-CDR1)、配列番号2(TINNNGGGTYYPDSVKG)を含む重鎖相補性決定領域2(H-CDR2)、及び配列番号3(PGLLWDA)を含む重鎖相補性決定領域3(H-CDR3)を含む、重鎖可変(VH)ドメインと、
(ii)配列番号4(KSSQSLLDSDGRTYLN)を含む軽鎖相補性決定領域1(L-CDR1)、配列番号5(LVSKLDS)を含む軽鎖相補性決定領域2(L-CDR2)、及び配列番号6(WQGTHFPQT)を含む軽鎖相補性決定領域3(L-CDR3)を含む、軽鎖可変(VL)ドメインと、を含む、外部ドメインと、
(b)膜貫通ドメインと、
(c)少なくとも1つのシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインと、を含み、
前記少なくとも1つのシグナル伝達ドメインが、がん細胞上に発現されるHER2抗原への前記CARの結合に特異的に応答し、それによって、がん抗原特異的応答を生成する、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記抗原結合ドメインが、
(a)配列番号7に対して少なくとも80%の配列同一性を有するVHドメインを含む、
(b)配列番号8に対して少なくとも80%の配列同一性を有するVLドメインを含む、
(c)VH-リンカー-VL若しくはVL-リンカー-VHを含む一本鎖可変断片(scFV)を含み、前記リンカーは、長さ及び配列が異なり、任意選択的に、前記リンカーが、配列番号9~12に対して少なくとも80%の配列同一性を有する、
(d)配列番号13若しくは配列番号14に対して少なくとも約99%、約98%、約96%、約95%、約90%、約85%、若しくは約80%の同一性であるアミノ酸配列によって表されるscFVを含み、配列番号13及び14の各々は、長さ及び配列が異なるリンカーを含む、並びに/又は
(e)ヒト化されている、請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
前記少なくとも1つのシグナル伝達ドメインが、
(a)2B4(ナチュラルキラー細胞受容体2B4)、4-1BB(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9)、CD16(IgG Fc領域受容体III-A)、CD2(T細胞表面抗原CD2)、CD28(T細胞特異的表面糖タンパク質CD28)、CD28H(膜貫通及び免疫グロブリンドメイン含有タンパク質2)、CD3ζ(T細胞表面糖タンパク質CD3ゼータ鎖)、DAP10(造血細胞シグナル伝達物質)、DAP12(TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質)、DNAM1(CD226抗原)、FcERIγ(高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットガンマ)、IL21R(インターロイキン-21受容体)、IL-2Rβ/IL-15RB(インターロイキン-2受容体サブユニットベータ)、IL-2Rγ(サイトカイン受容体共通サブユニットガンマ)、IL-7R(インターロイキン-7受容体サブユニットアルファ)、KIR2DS2(キラー細胞免疫グロブリン様受容体2DS2)、NKG2D(NKG2-D II型内在性膜タンパク質)、NKp30(天然細胞傷害トリガー受容体3)、NKp44(天然細胞傷害トリガー受容体2)、NKp46(天然細胞傷害トリガー受容体1)、CS1(SLAMファミリーメンバー7)、及びCD8(T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖)のうちのいずれか1つ、
(b)それぞれ配列番号37~59によって表される、2B4、4-1BB、CD16、CD2、CD28、CD28H、CD3ζ、CD3ζ1 XX、DAP10、DAP12、DNAM1、FcERIγ、IL21R、IL2Rβ(IL15Rβ)、IL2Rγ、IL7R、KIR2DS2、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CS1、若しくはCD8の細胞質ドメイン若しくはその一部分に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、若しくは約99%の同一性を有するアミノ酸配列、並びに/又は
(c)2B4、CD28、CD3ζ、DAP10、NKG2D、CD3ζ1XX、DNAM1、CS1、若しくはそれらの組み合わせの細胞質ドメイン若しくはその一部分に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、若しくは約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項4】
前記内部ドメインが、2つの異なるシグナル伝達ドメインを含み、前記内部ドメインドメインが、2B4-CD3ζ/1XX、2B4-DNAM1、2B4-FcERIγ、2B4-DAP10、CD16-DNAM1、CD16-DAP10、CD16-DAP12、CD2-CD3ζ/1XX、CD2-DNAM1、CD2-FcERIγ、CD2-DAP10、CD28-DNAM1、CD28-FcERIγ、CD28-DAP10、CD28-DAP12、CD28-CD3ζ/1XX、CD28H-CD3ζ/1XX、DAP10-CD3ζ/1XX、DAP10-DAP12、DAP12-CD3ζ/1XX、DAP12-DAP10、DNAM1-CD3ζ/1XX、KIR2DS2-CD3ζ/1XX、KIR2DS2-DAP10、KIR2DS2-2B4、又はNKp46-2B4の形態のうちのいずれか1つにおいて、融合細胞質ドメイン又はその一部分を含む、請求項3に記載のCAR。
【請求項5】
前記膜貫通ドメインが、
(a)CD2、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD16、CD27、CD28、CD28H、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA4、PD1、LAG3、2B4、BTLA、DNAM1、DAP10、DAP12、FcERIγ、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、KIR2DS2、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、CS1、若しくはT細胞受容体ポリペプチド、
(b)2B4、CD2、CD16、CD28、CD28H、CD3ζ、DAP10、DAP12、DNAM1、FcERIγ、KIR2DS2、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、CS1、若しくはCD8、又は
(c)2B4、CD28、CD28H、DAP10、DNAM1、KIR2DS2、及びNKG2Dの膜貫通領域又はその一部分に対して少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項6】
前記膜貫通ドメイン及びその直結されたシグナル伝達ドメインが、同じタンパク質由来又は異なるタンパク質由来である、請求項1に記載のCAR。
【請求項7】
前記内部ドメインが、
(a)シグナルペプチド、及び/又は
(b)スペーサ/ヒンジ、のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項8】
前記スペーサ/ヒンジが、
(a)IgG4スペーサ、CD28スペーサ、CD8スペーサ、CH3スペーサ、CH2/CH3スペーサ、若しくはそれらの任意の組み合わせ、
(b)約10~約80アミノ酸の短いスペーサ、80超~約180アミノ酸の中程度のスペーサ、若しくは180アミノ酸を超える長いスペーサ、及び/又は
(c)配列番号81~85のいずれかに対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、若しくは約99%の同一性のアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のCAR。
【請求項9】
前記スペーサ/ヒンジが、中程度のスペーサを含み、前記スペーサが、配列番号84に対して少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載のCAR。
【請求項10】
前記CARが、配列番号88に対して少なくとも約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の同一性のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項11】
前記がん細胞が、乳がん細胞、卵巣がん細胞、子宮内膜がん細胞、肺がん細胞、食道がん細胞、唾液腺がん細胞、膀胱がん細胞、胃がん細胞、結腸直腸がん細胞、又は頭頸部がん細胞である、請求項1に記載のCAR。
【請求項12】
前記少なくとも1つのシグナル伝達ドメインが、非がん細胞上で発現されるHER2に応答しないか、又は低レベルの応答を有する、請求項1に記載のCAR。
【請求項13】
前記がん抗原特異的応答が、細胞溶解及びサイトカイン産生を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項14】
前記CARが、アミノからカルボキシの方向に前記VHドメイン、続いて前記VLドメインを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項15】
請求項1~
13のいずれか一項に記載のCARをコードする核酸配列を含む
と共に、任意により、前記CARが、アミノからカルボキシの方向に前記VHドメイン、続いて前記VLドメインを含む、ポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項15に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【国際調査報告】