(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】小型部品の成形のための誘導加熱装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/08 20060101AFI20240404BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B29C33/08
B29C45/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544027
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2022051286
(87)【国際公開番号】W WO2022157275
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506304026
【氏名又は名称】ロックツール
(74)【代理人】
【識別番号】100074169
【氏名又は名称】広瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】ファージェンブルム ホセ
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AK11
4F202CA11
4F202CB01
4F202CN01
4F202CN20
4F202CN21
4F202CN30
(57)【要約】
本発明は、小型部品を成形するのに適したモールドであって、プラテン(取付板)(101、102)上に取り付けられるように適合されたケーシングを備え、該ケーシングは、ケーシングに一体化されるように構成されるインサート(350)を収容する(受容する)ように構成されたハウジングを備え、インサートは、部品の成形面(121、122)を備える金型(ダイ)用のハウジングを備え;金型(ダイ)を加熱するための装置は、加熱装置が、誘導加熱を受けやすい材料で作られたロッド(131、132)を備え、該ロッドはインサート(350)内に取り付けられ、一端が金型(ダイ)と接触しており、成形面(121、122)がロッドの中心にある構成からなり;導電性材料で作られロッドを取り囲むコイル(141、142)は、高周波電流発生器(151、152)に接続されており、コイルに電流が供給されることでロッド(131、132)内に誘導電流が発生し、誘導電流によりロッドが加熱され、ロッドは熱を金型(ダイ)に伝達する構成であり、ロッドの外径(235)は、成形面(121、122)の外周の径(225)と同一または大きくなる構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型部品を成形するのに適した構成であり、プラテン(取付板)(101、102)上に取り付けられるように適合されたケーシング(310)を備え、該ケーシングがインサート(350)を収容する(受容する)ように構成されたハウジングを備えたモールドにおいて;
インサート(350)は、ケーシング(310)に一体化されるように構成され、部品の成形面(121、122)を備える金型(ダイ)用のハウジングを備え、
金型(ダイ)を加熱するための装置は、
加熱装置が、誘導加熱を受けやすい材料で作られたロッド(131、132)を備え、該ロッドはインサート(350)内に取り付けられ、一端が金型(ダイ)と接触しており、成形面(121、122)がロッドの実質的に中心にある構成からなり、
導電性材料で作られロッドを取り囲むコイル(141、142)は、高周波電流発生器(151、152)に接続されており、コイルに電流が供給されることでロッド(131、132)内に誘導電流が発生し、誘導電流によりロッドが加熱され、ロッドは熱を金型(ダイ)に伝達する構成であり、
ロッドの外径(235)は、成形面(121、122)の外周の径(225)と同一または大きくなる構成である
ことを特徴とするモールド。
【請求項2】
前記ケーシング(310)は、インサート(350)および金型(ダイ)を冷却する熱伝達流体を循環させるための、少なくとも一の回路(171、172)を備えることを特徴とする請求項1に記載のモールド。
【請求項3】
前記ケーシング(310)と前記インサート(350)とは、別個の冷却回路を有することを特徴とする請求項2に記載のモールド。
【請求項4】
インサートの冷却回路は、熱伝達流体の循環に適合する導管(440)を備えることを特徴とする請求項1に記載のモールド。
【請求項5】
インサート内で熱伝達流体を循環させるための導管(440)は、バッフル(調整板、バッフル板)(445、445
1、445
2)を備えることを特徴とする請求項4に記載のモールド。
【請求項6】
ロッド(131、132)の内部に収容される熱電対(サーモカップル)(161、162)を備え、その熱接点はロッドの端部の近傍にあることを特徴とする請求項1に記載のモールド。
【請求項7】
成形面(121、122)の外側を区画固定する周囲(225)の外径は5mm未満、好ましくは2mm未満からなることを特徴とする請求項1に記載のモールド。
【請求項8】
前記コイル(141、142)は銅で作られ、ロッドの第2パーツ(232)を取り囲む環状パーツ(241)と、高周波交流電源に接続するためのステム(242)とを備え、ステムおよび環状パーツの断面(245)は10mm
2以下からなることを特徴とする請求項7に記載のモールド。
【請求項9】
金型(ダイ)は、誘導加熱を受けやすい鋼で作られ、成形面(121、122)を有する成形部(221)と、高熱拡散性の材料で作られた技術部(222)とを備えることを特徴とする請求項1に記載のモールド。
【請求項10】
金型(ダイ)の成形部の成形面(121、122)は、ニッケルからなることを特徴とする請求項9に記載のモールド。
【請求項11】
カメラの小型レンズを大量生産するためのプラスチック射出プレスに使用されることを特徴とする請求項10に記載のモールド。
【請求項12】
前記レンズの厚みは、0.1mmから0.3mmの間の厚さからなることを特徴とする請求項11に記載のモールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形方法の分野に属し、より具体的には小型部品の成形に関する。
【0002】
非限定的な例として、本発明は、スマートフォンのカメラ用のレンズの成形に用いられる。
【0003】
本発明は、急速加熱および冷却のための装置を備えたもので、この種の部品の大量生産に適した工具に関する。
【背景技術】
【0004】
有機ガラスと呼ばれるガラスまたはプラスチック部品の大規模成形では、鋳造温度が比較的高く、モールドの加熱および冷却時間が製造サイクル時間に大きな影響を与える。
【0005】
実際、モールドは、キャビティへの均一な充填を確実にするため、成形材料(molded material)の十分な流動性を確保する温度まで加熱し、その後、このように製造された部品に損傷を与えることなく取り外すことができるように、使用された材料の十分な固化温度まで冷却する必要がある。成形材料に応じて、これらの温度は、例えば、材料の溶融温度および凝固温度に関連して、および/または前記材料のガラス転移温度または素材の結晶化(結晶化温度/速度)に対応して決定される。
【0006】
一般に、モールドは製造された部品に比べて大きく、その質量は成形部品の質量に比べて数桁大きくなる。
【0007】
したがって、急速加熱および急速冷却の概念は、本質的にモールドの質量に適用される。
【0008】
流体循環による冷却と組み合わせた誘導加熱技術は、例えば、米国特許第7,679,036号、または米国特許第10,232,530号に開示されており、成形材料と接触するモールドの表面に、これらの表面での均一な加熱温度を確保しながら、加熱を集中させることを可能にする。
【0009】
したがって、加熱および冷却される材料の体積を制限し、誘導加熱によって可能となる高い加熱出力を利用することにより、これらの従来技術は、加熱冷却サイクル時間を短縮することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7679036号
【特許文献2】米国特許第10232530号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、製造された部品のサイズが小さい場合、例えば、直径が10mm未満、より一般的には2mm未満のレンズである場合、また、前記部品が、それに加えて薄い場合、例えば0.1mmから0.3mmの厚さである場合、そして、前記部品が、光学と互換性のある(に対応する)ように、高精度で製造されなければならない場合、複数の押し模様(impressions)を備えるモールドを考慮した場合にも、従来技術では対応することができない。
【0012】
さらに、これらの従来技術を実装したとしても、熱サイクル下における体積および質量は、製造される部品の量に関して重要な要素となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、従来技術の欠点を解決することを目的とし、この目的のために、小型部品を成形するのに適した構成であり、プラテン(取付板)上に取り付けられるように適合されたケーシングを備え、ケーシングがインサートを収容する(受容する)ように構成されたハウジングを備えたモールドであって;インサートは、ケーシングに一体化されるように構成され、部品の成形面(molding surface)を備える金型(ダイ)用のハウジングを備えており、
金型(ダイ)を加熱するための装置は、誘導加熱可能な材料で作られたロッドを備え、ロッドはインサート内に取り付けられ、一端が金型(ダイ)と接触しており、成形面がロッドの実質的中心にある構成からなり、
導電性材料で作られロッドを取り囲むコイルは、高周波電流発生器に接続されており、コイルに電流が供給されることでロッド内に誘導電流が発生し、誘導電流によりロッドが加熱され、ロッドは熱を金型(ダイ)に伝達するものであり、ロッドの外径(235)は成形面の外周の径(225)と同一または大きくなる構成である。
【0014】
すなわち、本発明のモールドは、少ない電力のみの使用で成形面を急速に高温にするため、ロッドとコイルとを組み合わせることにより、成形面を集中的に加熱することが可能となる。
【0015】
本発明は、個別にまたは技術的に有効な組み合わせに従って考慮される以下に開示する実施例および変形例に従って、実施することが可能である。
【0016】
有利なことには、ケーシングは、インサートおよび金型(ダイ)を冷却するための熱伝達流体(heat transfer fluid)を循環させるための回路を備える構成である。
【0017】
その結果、強制冷却が可能性になり、サイクル時間が短縮される。
【0018】
特定の実施例によれば、インサートは、ケーシングの流体循環回路に接続された、熱伝達流体を循環させるための回路を備える。
【0019】
金型(ダイ)のより速い冷却とサイクル時間の短縮に加えて、この回路ではまた、それを必要とする用途のために、誘導加熱と流体循環冷却を同時に使用することによる温度調節も可能にしている。
【0020】
特定の実施例によれば、ケーシングとインサートは別個の冷却回路を有する。 この実施例によれば、異なる熱伝達流体をケーシング内およびインサート内で循環させることができ、前記流体は、成形作業中にそれぞれ到達する温度に適応させることができる。
【0021】
一実施例によれば、インサートの冷却回路はバッフル(baffle、調整板、バッフル板)を備える。このようなバッフルは、導管内の冷却流体の乱流および壁を用いた対流(伝導)交換を助長促進する。
【0022】
有利なことには、モールドはロッドの内部に収容される熱電対(サーモカップル)を備え、熱接点はロッドの端部の近傍にある。
【0023】
熱電対によって得られる情報により、製造サイクルを最適化するために加熱と冷却の両方を制御することが可能になる。
【0024】
好ましい実施例によれば、成形面の外側を画定する周囲の外径は5mm未満、好ましくは2mm未満である。
【0025】
有利な実施例によれば、誘導(電流)を生じるコイルは銅で作られ、ロッドの第2パーツ(a second part of the rod)を取り囲む環状パーツ(an annular part)と、高周波交流電源に接続するためのステム(stems)とを備え、ステムおよび環状パーツの断面(sections)は10mm2以下である。したがって、コイルの断面の縮小により、交流電流の影響下におけるその電気抵抗および加熱が制限されることとなり、コイルに強制冷却装置を実装する必要がない。
【0026】
好ましい実施例によれば、金型(ダイ)は、誘導加熱を受けやすい鋼で作られた成形面を有する成形部(molding portion)と、高熱拡散性の材料で作られた技術部(technical portion)とを備える。 この実施例は、急速加熱と急速冷却の両方を助長促進する。
【0027】
有利なことには、金型(ダイ)の成形部の成形面はニッケルからなる。この実施態様は、特に、光学部品の成形に適している。
【0028】
したがって、このモールドは、有利なことには、カメラの小型レンズを大量生産するためのプラスチック射出プレス(plastic injection press)に使用される。
【0029】
このモールドの使用は、特に、0.1mmから0.3mmの間の厚さからなるレンズの製造に適している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明は、好ましい実施例に従って実装されるものであり、以下の
図1~
図5を参照されるものであるが、これらに何ら限定されるものではない:
【0031】
【
図1】本発明に係るモールドを実装した射出成形アセンブリの概略正面図である;
【0032】
【
図2】本発明に係るモールドに実装されたロッドおよび金型(ダイ)の例示的な実施態様の分解斜視図を示す;
【0033】
【
図3】本発明のモールドの一部の例示的な実施態様の部分断面を示す部分正面図である。
【0034】
【
図4】インサート内で熱伝達(交換)流体の循環冷却を行うためのバッフル(調整板、バッフル板)を備えたダクトの、
図3に規定されるA-A部分断面による例示的な実施態様を示す。
【0035】
【
図5】バッフル(調整板、バッフル板)の例示的な実施態様の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1に示される例示的な実施態様によれば、本発明のモールドを実装する装置はプラスチック射出プレスを備え、モールドの2つの対向するパーツ(111、112)は、プラテン(取付板)(101、102)(platens)上に組み立てられる。
【0037】
一方のプラテン(取付板)(101)は、他方のプラテン(取付板)(102)に向かって、および、離れるように移動可能である。したがって、モールドの2つのパーツ(111、112)が結合し、プレスの開閉手段によって相互に保持されると、それらが、液体またはペースト状の成形材料が注入される複数の密閉キャビティ(sealed cavities)となる。
【0038】
材料は、密閉キャビティの成形面にコンフォーム(一致適合)し、その後、モールドが冷却されて材料は固化する。
【0039】
次に、モールドは、プレスのプラテン(取付板)を互いに離すことによって開かれ、このようにして製造された部品が取り出される。
【0040】
したがって、この例示的な実施態様によれば、モールドの第1パーツ(111)は、隆起した成形面(121)からなる金型(ダイ)を備え、モールドの対向するパーツ(112)は、窪んだ成形面(122)からなる金型(ダイ)を備える。
【0041】
モールドが閉じられ、2つのパーツ(111、112)が相互に保持されると、成形キャビティ(molding cavities)は、これら2つのパーツの成形面(121、122)によって区画固定される。
【0042】
これらの成形面(121、122)を備える金型(ダイ)は、モールドの各パーツに保持されるロッド(131、132)と接触して設置される。
【0043】
ロッドは、誘導加熱を受けやすい材料、例えば、マルテンサイト工具鋼(a martensitic tooling steel)のような、強磁性合金で作られている。
【0044】
一実施例によれば、成形面はニッケルで作られ、光学品質の研磨により研磨される。ニッケルは、任意のメッキまたはコーティング技術によって成形面に付着(堆積)される。
【0045】
各ロッドは、銅などの導電性材料で作られたコイル(141、142)により、機械的な接触がないように、囲まれている。
【0046】
コイルは高周波電流発生器(151、152)に接続されており、その高周波は通常10KHzと200KHzの間からなる。
【0047】
ロッドが透磁率の高い材料で作られている場合、コイルに高周波電流が供給されると、ロッド内に誘導された電流がロッドを加熱する。ロッドはその熱を伝導によって金型(ダイ)に伝える。
【0048】
図1に示す断面図によれば、各モールドパーツ(101、102)は、2本のロッドの端に位置する2つの金型(ダイ)を備えた構造であり、ロッド、金型(ダイ)、およびコイルの各セットは、同じモールドパーツ(101、102)において同一であるが、この特定の構成に限定されるものではない。
【0049】
代替実施例によれば、金型(ダイ)は、ロッドの端部を機械加工することによりロッドと一体化されるか、または、金型(ダイ)は、機械的組付、溶接またはろう付けによりロッドの端に組み立てられるか、あるいは、金型(ダイ)は、積層造形によって直接ロッドの先端に形成される。
【0050】
この実施例によれば、熱電対(サーモカップル)(161、162)が各ロッドに取り付けられ、成形面に近いロッドの端部の温度を測定することが可能になる。
【0051】
各モールドパーツは、熱伝達流体を循環させるための導管(171、172)を備える。
【0052】
一実施例によれば、前記熱伝達流体は水であり、導管は、冷却するためにモールドの導管(171、172)内で熱伝達流体を循環させるポンピング・冷却ユニット(175)に接続される。
【0053】
他の例示的な実施態様によれば、成形温度、モールドおよび成形部品の質量に応じて、熱伝達流体はオイルまたはガスとなり、前記流体の循環は閉回路または開回路で行われる。
【0054】
本発明のシステムは、有利には、特にプレスの開閉、高周波発生器、コイルの電力供給、および熱伝達流体の循環を、特にロッドにセットされた熱電対から得られる測定値に応じて制御する制御ベイ(control bay)(190)を備える。
【0055】
したがって、システムは、噴射および温度サイクルを再現可能に提供するように制御される。
【0056】
図2に示されるように、例示的な実施態様によれば、ロッド(131、132)は、本質的に3つの機能部分を備える。
【0057】
例示的な実施態様によれば、第1の部分(231)は、その中心合わせとモールドへの設置を可能にする。
【0058】
有利なことには、前記モールドはインサートを備え、前記インサートはケーシング内に取り付けられる。この実施例によれば、その後、ロッド(131、132)がインサート内に取り付けられ、第1の部分(231)により、インサート内にロッドを配置することができる。
【0059】
この実施形態によれば、第1の部分(231)と連続し、これと一体となって、実質的に円筒状の第2の部分(232)が、主に電磁誘導を受ける領域を形成する。
【0060】
この目的のために、ロッドの第2の部分(232)は、誘導加熱を受けやすい材料、好ましくは強磁性鋼などの透磁率の高い材料で作られる。
【0061】
別の実施例によれば、コイルの誘導磁場(induced magnetic field)にさらされるロッドの部分は、誘導加熱の影響を受けやすいコーティングからなる。非限定的な例として、ロッドは、銅または銅合金、またはより一般的には高い熱伝導率を有する材料で作られ、コイルによって生成される磁場にさらされる領域では、例えばニッケルなどのコーティングが施される。コーティングの厚さは、誘導電流の磁場侵入長(the penetration depth)に応じて選択される。
【0062】
誘導(電流)は、ロッドの第2の部分(232)を取り囲む環状パーツ(241)と、コイルを高周波交流電源に接続するためのステム(242)と、を備えるコイル(141、142)によって生成される。
【0063】
非限定的な例として、高周波電流源は、35KHzから70KHzまでの周波数からなる交流を生成する25KW発電機である。このタイプの発電機は、最大、本発明に係る装置4台に電力供給することが可能である。
【0064】
ステム(242)は環状パーツ(241)と電気的に接触しており、この実施例によれば、環状パーツと一体であり、このセットは銅などの導電性材料で作られている。
【0065】
有利なことには、コイルの断面(245)は、発電機によって生成された高周波交流がロッドを通って流れるときのロッドの加熱を制限するため、10mm2未満に形成されている。
【0066】
有利な実施例によれば、コイルは、磁場を通過させるとともに、ロッドの第2の部分のコイル(141)において発生する温度に耐性のある電気絶縁材料で作られた絶縁リング(243)によって、ロッドから絶縁されている。
【0067】
ここでの温度は450℃に達する可能性があるが、絶縁リング、ロッド、およびコイルがそのような温度にさらされるのは、1秒をはるかに下回る非常に短い時間だけである。
【0068】
非限定的な例として、絶縁リング(243)はセラミックで作られ、あるいは該リングは、強化されたか否かにかかわらず、非常に短時間においてそのような温度に耐えることができるプラスチック材料で作られている。
【0069】
絶縁リング(243)は、ロッドに対するコイルの中心合わせおよび保持を確実にする。
【0070】
ロッドの第3の部分(233)は、金型(ダイ)、より具体的には金型(ダイ)の成形部(221)と接触している。
【0071】
例示的な実施態様によれば、金型(ダイ)は、製造部品の成形面を備える成形部(221)を備え、成形部は、ロッドの第2の部分(232)と一体であり、技術部(222)は、成形部(221)の中心に組み立てられ配置されるように形成されている。
【0072】
代替実施例によれば、成形部(221)は、機械的組付、溶接またはろう付けによってロッドに接続される。
【0073】
金型(ダイ)の成形面は、ロッドの第2の部分(232)の直径(235)よりも小さい直径からなる円(225)内に適合装着する。
【0074】
この構成により、低減された電力にも拘わらず、ロッドの第2の部分(232)で局所的に誘導加熱が生じ、成形面(221)を迅速かつ均一に加熱することが可能となる。
【0075】
この装置は、成形面の外側設置面積(footprint diameter)の直径(225)が5mm未満、好ましくは2mm未満であり、同程度の大きさの窪みまたは突出高を有する小型部品を製造するのに特に適している。そのため、本発明のモールドは、特に、携帯電話カメラ、ウェブカメラ、超小型監視カメラ、または超小型光学照準装置に見られるような小型光学レンズの成形に適するが、これに限定されるものではない。
【0076】
金型(ダイ)の技術部(222)は、特にキャビティの分割面の具体(製品)化を可能にし、シール機能、材料を前記キャビティ内に導入する機能を提供し、モールドの冷却手段への熱の拡散による成形部(221)の冷却を促進する。
【0077】
例示的な実施態様によれば、成形部(221)は、誘導加熱を受けやすい工具鋼で作られている。有利なことには、金型(ダイ)の成形部の成形面はニッケル製であり、研磨されている。
【0078】
したがって、コイル(141、142)に高周波交流が供給されると、金型(ダイ)に対してある程度の加熱効果が生じる。しかしながら、コイルの構成は、その環状部分(環状パーツ)(241)がロッドの第2の部分(232)を取り囲むものなので、加熱効果の大部分がロッドの前記第2の部分に集中することを意味し、この熱が次に、短距離にわたる伝導により金型(ダイ)に伝達される。
【0079】
この例示的な実施態様によれば、ロッドは、その中に熱電対を導入するために、有利にも、その長さの全体に渡って、または一部の長さが延びた、一または複数のハウジング(260)を備えることになる。
【0080】
これらの熱電対は、有利なことには、成形部(221)に最も近い温度を測定する。
【0081】
例示的な実施態様によれば、技術部(222)は、成形部と同じ工具鋼で作られるが、他の変形態様によれば、成形材料の加工温度に耐える銅合金など、誘導加熱の影響を受けにくいが高い熱拡散率を有する鋼または別の材料で作られている。
【0082】
材料の熱拡散率は、比率λ/ρcによって定義され、ここでは、λは材料の熱伝導率、ρは材料の密度、cは比熱容量を示す。本発明の場合、高い熱拡散率は、50.10-6m2/sより大きく、好ましくは100.10-6m2/sより大きいと考えられる。
【0083】
この最後の実施例では、成形される材料の射出後における金型(ダイ)のより迅速な冷却が可能にしている。
【0084】
図3に示される例示的な実施態様によれば、本発明の金型は、一または複数のインサート(350)を受け入れ可能なケーシング(310)を備え、各インサートは、適切な接続手段(340)によって高周波交流発電機に接続可能な自身の金型(ダイ)および加熱装置を担持する(保持可能にしている)。
【0085】
したがって、インサートは、成形部(221)および技術部からなる金型(ダイ)と、ロッドと、コイルと高周波発生器への接続手段と熱伝達流体の循環用の導管からなる冷却手段とを備える加熱手段と、を保持する。
【0086】
したがって、本発明のモールドはモジュール式であり、成形部は、ケーシングやインサートを再加工することなく、ロッドのみを変更するだけで交換可能である。
【0087】
有利なことには、ケーシング(310)は、ケーシング、インサート、および金型(ダイ)を冷却するための熱伝達流体を循環させるための回路を備える。
【0088】
したがって、一実施例によれば、一または複数の第1の回路は、ケーシング内の熱伝達流体をインサートの周囲で循環させるため、入口(371)と出口(372)との間の循環を可能にする。
【0089】
一または複数の他の回路は、ケーシング(310)およびロッドに可能な限り近いインサート(350)を通過する熱伝達流体の循環のための入口(375)および出口(376)を備える。この例示的な実施態様によれば、インサート(350)は、熱伝達流体を循環させるための内部回路を備え、この内部回路は、インサートがケーシング内に設置される際にケーシングの回路に接続される。このために、インサートは、この接続を固定するために適合されたシール手段(図示せず)を備える。
【0090】
他の実施例によれば、インサートは、ケーシングのそれとは異なる熱伝達流体を随時使用する独自の冷却回路を備える。
【0091】
したがって、ケーシングは、例えば水の循環によって冷却され、インサートおよび場合によってロッドも、ガス、例えば空気、アルゴン、窒素、二酸化炭素またはヘリウムの循環によって冷却されるが、これらの例に限定されるものではない。
【0092】
したがって、
図4に示される例示的な実施態様によれば、インサート(350)および場合によってロッドも、ガスの冷却を確実にするため、加圧下におけるガスの循環のための導管(450)を備え、これらの導管は、有利にも、対流交換を促進するためにバッフル(調整板、バッフル板)(445)またはタービュレータ(撹拌機)を備える。
【0093】
図5は、直線(445
1)またはねじれ(445
2)からなるバッフル(調整板、バッフル板)の例示的な実施態様を示しており、前記バッフルは鋼、青銅、またはポリマー材料で作られるが、これらの例に限定されるものではない。
【0094】
これらのバッフル(調整板、バッフル板)の有利な効果は、ガス循環の場合に限定されず、対流交換を促進することが可能となり、それ故に、水や油などの液体からなる熱伝達流体の場合でも、冷却することができる。
【0095】
ロッドおよび流体循環回路の局所的な誘導加熱は、大量生産に適した急速な加熱および冷却サイクルを可能にする。
【0096】
携帯電話カメラのレンズの典型的な成形サイクルに関する非限定的な例としては、成形面の260℃の温度までの加熱は、先行する部品を取り外した後の金型(ダイ)の温度に相当する130℃の温度から開始され、5KW未満の誘導電力で5秒未満、より一般的には2秒未満で実行される。この温度から190℃未満の部品取り外し温度までの冷却は、直径5mmの導管を使用し、冷却回路ごとに毎分2.5リットルの水流量を使用して10秒で得られ、2回の取り外しの間のサイクルを1分未満で完了することができる。
【0097】
上記の説明および例示的な実施態様は、本発明が意図された目的を達成することを示しており、特に、本発明のモールドは、少ない電力で押し模様およびその中に含まれる部品の急速加熱および冷却を可能にし、特に、光学レンズのような薄く小さな寸法の部品の製造に適している。
【国際調査報告】