(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】マイクロ流体チップ
(51)【国際特許分類】
B01J 13/06 20060101AFI20240404BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B01J13/06
B01J19/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561153
(86)(22)【出願日】2022-04-02
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 NL2022050186
(87)【国際公開番号】W WO2022211637
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523377025
【氏名又は名称】エマルテック ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン スティフアウト,ペトルス キャスパー マルティナス
(72)【発明者】
【氏名】ダークス,トム
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ヴァイデン,フェルディ ライモン
【テーマコード(参考)】
4G005
4G075
【Fターム(参考)】
4G005AA01
4G005BA05
4G005BB19
4G005BB25
4G005CA01
4G005EA03
4G075AA13
4G075AA27
4G075AA39
4G075AA65
4G075BA10
4G075BB10
4G075CA24
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB50
4G075FA01
4G075FA12
4G075FB01
4G075FB06
(57)【要約】
【課題】 均一性の高い液滴を得ること等である。
【解決手段】 本発明は、液滴形成のための少なくとも2つのユニットを備えたマイクロ流体チップであって、各ユニットが、第1の相を供給するための第1の供給チャネルと、第2の相を供給するための第2の供給チャネルと、生成物相を排出するための排出チャネルとを備え、第1及び第2の供給チャネルが排出チャネルとの接合部に集束するマイクロ流体チップに関する。供給チャネルの油圧抵抗は排出チャネルよりも高いため、接合部での流れが良くなり、均一性の高い液滴が得られる。好適な実施形態では、液滴形成のための全てのユニットに並行して供給するマニホールドがあり、マニホールドは油圧抵抗が液滴形成のためのユニットの供給チャネルの少なくとも10分の1である。これによって、液滴の均一性が更に高まる。別の利点は、特にチップ内の液滴形成のためのユニットの数が多い場合、マイクロ流体チップ内でプロセスを開始する際に、気泡による液体の流れの妨害が少なく、チャネルの不活性が少ないことである。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴形成のための少なくとも2つのユニット(2)を備えたマイクロ流体チップ(1)であって、各ユニット(2)が、
- 第1の相を供給するための、前記第1の相の入口のための第1の入口(3a)を備えた第1の供給チャネル(3)と、
- 第2の相を供給するための、前記第2の相の入口のための第2の入口(4a)を備えた第2の供給チャネル(4)と、
- 生成物相を排出するための、前記生成物相の出口のための出口(5a)を備えた排出チャネル(5)と
を備え、
- 前記第1及び第2の供給チャネル(3、4)が、前記排出チャネル(5)との接合部(6)に集束し、
- 前記第1の供給チャネル(3)が、特定の流体の流れに対する油圧抵抗R
s1及び前記供給チャネル(3)の少なくとも一部に沿った最小断面積MSA
s1を有し、
- 前記第2の供給チャネル(4)が、前記特定の流体の流れに対する油圧抵抗R
s2及び前記供給チャネル(4)の少なくとも一部に沿った最小断面積MSA
s2を有し、
- 前記排出チャネル(5)が、前記特定の流体の流れに対する油圧抵抗R
d及び前記排出チャネル(5)の少なくとも一部に沿った最小断面積MSA
dを有し、
前記マイクロ流体チップ(1)が、
- 前記第1の相を前記ユニット(2)の前記第1の供給チャネル(3)に同時に供給するための第1のマニホールド(11)と、
- 前記第2の相を前記ユニット(2)の前記第2の供給チャネル(4)に同時に供給するための第2のマニホールド(12)と、を備え、
R
s1≧2×R
d及び/又はR
s2≧2×R
dであるマイクロ流体チップ(1)。
【請求項2】
MSA
d≧2×MSA
s1及び/又はMSA
d≧2×MSA
s2、具体的にはMSA
d≧10×MSA
s1及び/又はMSA
d≧10×MSA
s2である
、請求項1に記載のマイクロ流体チップ(1)。
【請求項3】
R
s1≧5×R
d及び/又はR
s2≧5×R
d、具体的にはR
s1≧10×R
d及び/又はR
s2≧10×R
d、より具体的にはR
s1≧50×R
d及び/又はR
s2≧50×R
dである、請求項1又は2に記載のマイクロ流体チップ(1)。
【請求項4】
- MSA
d≧2×MSA
s1及びMSA
d≧2×MSA
s2及びR
s1≧10×R
d、
具体的には
- MSA
d≧5×MSA
s1及びMSA
d≧5×MSA
s2及びR
s1≧20×R
d、
より具体的には、
- MSA
d≧10×MSA
s1及びMSA
d≧10×MSA
s2及びR
s1≧40×R
dである、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップ(1)。
【請求項5】
-
・前記第1のマニホールド(11)が、前記第1の相の前記入口のための第1のマニホールド入口(11a)を備え、
・前記第1の供給チャネル(3)の前記第1の入口(3a)が、前記第1のマニホールドに沿って存在する流体接続部によって前記第1のマニホールド(11)に接続され、
・前記特定の流体の流れに対する油圧抵抗R
m1が、前記第1のマニホールド入口(11a)から、前記第1のマニホールド(11)に沿って測定して前記第1のマニホールド入口(11a)から最も離れている最も離れた流体接続部まで延在する、前記第1のマニホールド(11)の第1のセクションについて定められ、
-
・前記第2のマニホールド(12)が、前記第2の相の前記入口のための第2のマニホールド入口(12a)を備え、
・前記第2の供給チャネル(4)の前記第2の入口(4a)が、前記第2のマニホールドに沿って存在する流体接続部によって前記第2のマニホールド(12)に接続され、
・前記特定の流体の流れに対する油圧抵抗R
m2が、前記第2のマニホールド入口(12a)から、前記第2のマニホールド(12)に沿って測定して前記第2のマニホールド入口(12a)から最も離れている最も離れた流体接続部まで延在する、前記第2のマニホールド(12)の第2のセクションについて定められ、
- R
s1≧10×R
m1及びR
s2≧10×R
m2、具体的にはR
s1≧20×R
m1及びR
s2≧20×R
m2である、請求項1から4のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップ(1)。
【請求項6】
- MSA
d≧2×MSA
s1、及び
- MSA
d≧2×MSA
s2、及び
- R
s1≧10×R
d、及び
- R
s2≧10×R
d、及び
- R
s1≧10×R
m1、及び
- R
s2≧10×R
m2であり、
具体的には、
- MSA
d≧5×MSA
s1、及び
- MSA
d≧5×MSA
s2、及び
- R
s1≧20×R
d、及び
- R
s2≧20×R
d、及び
- R
s1≧20×R
m1、及び
- R
s2≧20×R
m2であり、
より具体的には、
- MSA
d≧10×MSA
s1、及び
- MSA
d≧10×MSA
s2、及び
- R
s1≧40×R
d、及び
- R
s2≧40×R
d、及び
- R
s1≧40×R
m1、及び
- R
s2≧40×R
m2である、
請求項5に記載のマイクロ流体チップ(1)。
【請求項7】
- 前記第1のマニホールド(11)が断面積SA
m1を有し、
- 前記第2のマニホールド(12)が断面積SA
m2を有し、
SA
m1及びSA
m2が、互いに独立に2,500~50,000,000μm
2の範囲内にある、及び/又はMSA
s1及びMSA
s2が、互いに独立に10~10,000μm
2の範囲内にある、請求項5又は6に記載のマイクロ流体チップ(1)。
【請求項8】
MSA
s1及びMSA
s2が10~10,000μm
2の範囲内にある、及び/又はMSA
dが25~250,000μm
2の範囲内にある、請求項1から7のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップ(1)。
【請求項9】
前記少なくとも2つのユニット(2)が、前記第1の相を供給するための、前記第2の相を供給するための又は第3の相を供給するための第3の供給チャネル(7)を更に備え、
- 前記第3の供給チャネル(7)が前記排出チャネル(5)との接合部に集束し、
- 前記第3の供給チャネル(7)が、油圧抵抗R
s3及び前記供給チャネル(7)の少なくとも一部に沿った最小断面積MSA
s3を有し、
R
s1、R
s2及びR
s3の群から選択される1つ以上の油圧抵抗が、前記油圧抵抗R
dの少なくとも2倍である、請求項1から8のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップ(1)。
【請求項10】
前記供給チャネル(3、4)の1つが前記接合部(6)から前記排出チャネル(5)内に突き出ている、請求項1から9のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップ(1)。
【請求項11】
前記マイクロ流体チップ(1)が、液滴形成のための前記ユニット(2)を少なくとも10個、好ましくは少なくとも50個備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップ(1)。
【請求項12】
前記ユニット(2)が、同一平面内にあるか又は曲面を画定するように、特に前記排出チャネル(5)が同一平面内にあるか又は曲面を画定するように配列されている、請求項1から11のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップ(1)。
【請求項13】
- 前記ユニット(2)が、ともに同心の内円及び外円によって画定される環状部の形態で並んで配列され、
- 前記排出チャネル(5)の前記出口が、前記環状部の前記内円を画定し、その結果、前記排出チャネル(5)の前記出口が、生成物相の出口のためのマニホールド出口(13a)と流体接続している中央の共用空間に結合し、
- 前記チップが、前記生成物相を希釈し、それを前記マニホールド出口(13a)に輸送することができるキャリア流体を前記中央の共用空間に供給するためのチャネルを任意選択的に備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップ(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップ(1)を備えたカートリッジ(15)であって、前記カートリッジ(15)が、
- 前記マイクロ流体チップ(1)の前記第1のマニホールド(11)に前記第1の相を供給するための第1のマニホールド入口(11a)と一致する第1の開口部と、
- 前記マイクロ流体チップ(1)の前記第2のマニホールド(12)に前記第2の相を供給するための第2のマニホールド入口(12a)と一致する第2の開口部と、
- 前記マイクロ流体チップ(1)から前記生成物相を収集するためのマニホールド出口(13a)と一致する第3の開口部とを備え、
- 前記ユニット(2)が、同一平面内にあるか又は曲面を画定するように、特に前記排出チャネル(5)が同一平面内にあるか又は曲面を画定するように配列され、
- 前記マニホールド入口(11a、12a)の全てと前記マニホールド出口(13a)の全てが前記平面又は前記曲面の同じ側にあるカートリッジ(15)。
【請求項15】
請求項14のカートリッジ(15)と、前記カートリッジ(15)内の前記マイクロ流体チップ(1)の、前記マニホールド入口及び前記マニホールド出口を備えた面とは反対の面を記録するように配置されたカメラ(20)とを備えたアセンブリ(16)であって、前記マイクロ流体チップ(1)内の前記チャネルを、透明板を通して前記カメラが見る及び/又は記録することができるアセンブリ(16)。
【請求項16】
請求項14のカートリッジ(15)と、前記カートリッジ(15)内の前記マイクロ流体チップ(1)の、前記マニホールド入口及び前記マニホールド出口を備えた面とは反対の面を照明するための電磁放射源とを備えたアセンブリ(21)であって、前記放射が、照明に使用される電磁放射を通す板(19)を通って少なくとも前記排出チャネル(5)の内部容積に到達することができるアセンブリ(21)。
【請求項17】
液滴を形成するためのシステムであって、
- 請求項1から13のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップ(1)の前記第1のマニホールドに前記第1の相を供給するための第1の流体供給システムと、
- 請求項1から13のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップ(1)の前記第2のマニホールドに前記第2の相を供給するための第2の流体供給システムと、
- 1つ以上のマイクロ流体コンポーネントとを備え、前記1つ以上のマイクロ流体コンポーネントが、
・請求項1から13のいずれか一項に記載の1つ以上のマイクロ流体チップ(1)、又は
・請求項14に記載の1つ以上のカートリッジ(15)、又は
・請求項15又は16に記載の1つ以上のアセンブリ(16、21)であり、
前記第1の流体供給システム及び前記第2の流体供給システムが、前記1つ以上のマイクロ流体コンポーネントに流体接続されているシステム。
【請求項18】
- 前記マイクロ流体チップ(1)の数、又は
- 前記カートリッジ(15)の数、又は
- 前記アセンブリ(16、21)の数
が2~100の範囲内又は5~20の範囲内又は3~10の範囲内にある、請求項17に記載の液滴を形成するためのシステム。
【請求項19】
請求項1から13のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップ(1)、請求項14に記載のカートリッジ(15)又は請求項15若しくは16のアセンブリ(16、21)の使用を含む、液滴、小胞、微粒子又はナノ粒子の製造方法であって、
- 分散相が前記第1のチャネル(3)を介して供給され、
- 連続相が前記第2のチャネル(4)を介して供給され、
その結果、液滴、小胞、微粒子又はナノ粒子を含む生成物相が、前記排出チャネル(5)で生成され、前記排出チャネル(5)を介して排出された後に収集される方法。
【請求項20】
- 請求項12に記載のアセンブリ(16)が使用され、
- 前記マイクロ流体チップ(1)の前記ユニット(2)が、カメラ(20)を使用して記録され、特に前記生成物相の形成及び/又は移動がカメラ(20)を使用して記録される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
- 請求項16に記載のアセンブリ(21)が使用され、
- 前記生成物相に電磁放射を照明して、前記生成物相内で化学反応を誘発するか又は前記生成物相の滅菌を行う、請求項19又は20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体チップ、そのようなマイクロ流体チップを含むカートリッジ、そのカートリッジを含むアセンブリ、及びそのようなマイクロ流体チップの使用を含む液滴、小胞、微粒子又はナノ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体デバイスは、従来の方法では不可能なサイズ、形状、及び組成をある程度制御しながら、様々な(微)液滴、小胞、微粒子及びナノ粒子を生成するために使用されている。これらのマイクロ流体デバイスは、マイクロ流体チャネルによる流体力学を利用して、連続媒体に囲まれた個々の液滴を生成する流動形状を利用する。最も単純な液滴生成器の形状は、1つのチャネルが第2のチャネルと直交するT接合部で構成される。第1の液体は、2種類の非混和性溶媒が使用される場合に、1つのチャネルを流れ第2のチャネル内の第2の液体の液滴を剪断する、又は2種類の混和性溶媒が使用される場合に、非常に制御された勾配を作成する。2つの液体の流量を制御することで、液滴サイズを正確に制御することができる。
【0003】
液滴生成器のより複雑な形状は、第3のチャネルに直交する2つのチャネルを有するX接合部で構成される。2種類の非混和性溶媒がX接合部で出会うと、第2の非混和性溶媒に囲まれた一方の溶媒の液滴が作成される。2種類の混和性溶媒を使用すると、どんどん薄くなっていく一方の溶媒の流れが作成される。これによって濃度勾配が生じ、最終的には流れ中に存在する成分のナノ沈殿が生じ、ナノメートル範囲の粒子が生成される。
【0004】
液滴と小胞の生成は、多くの産業、医療、及び研究用途で用いられている。多くの場合、機能性微粒子は、例えば薬物又は化粧品の送達担体として機能する液滴から調製され、徐放機能を有するという利点がある。
【0005】
しかしながら、その小さなフィーチャサイズによって、マイクロ流体液滴の生成は低い体積スループット(通常は1mL/hr未満)に制限されており、これが高スループットの商業的応用を追求する者にとっての課題を提供する。
【0006】
複数の液滴生成器を単一のチップに統合する(いわゆるマルチチャネルチップ)試みがなされてきたが、均一な液滴形成と組み合わせてスループットが十分に高いプロセスをまだもたらしていない。これは、部分的には、マイクロ流体チップ内の液体の流量の制御が不十分であることが原因である。特に、チップ内の異なる液滴生成器で流量が均一ではない。
【0007】
マルチチャネルチップで遭遇するもう1つの問題は、生産工程の開始が面倒な場合が多いことである。理由は不明であるが、全ての液滴生成器で液体の流れが始まらず、一部の液滴生成器が非アクティブ(休止状態)のままになるか、(一時的な)性能不足につながる。これによって、チップ全体の製品歩留まり及び/又は製品品質が低下する。また、最初に気泡が存在すると、異なる液滴生成器に異なる流れが供給されるという問題が発生し、その結果、チップ全体から収集された粒子の分散度が大きくなり(均一性が低下し)、特に粒子寸法の不均一が生じる。そのような起動時の問題を解決する解決策が、生産工程を中止し最初からやり直すことを含む場合があるが、これには時間がかかり、材料の無駄につながる。障害のある工程を続行し、休止状態の液滴生成器の起動を試みることも可能である。ただし、そうする際に得られる成功は、比率よりも運に対処することの方が多い。休止中の液滴生成器の問題に事前に取り組む、すなわち液滴生成器が最初からアクティブになることを拒否することを防ぐ生成方法やマルチチャネルチップは設計されていない。また、製品の品質に対する気泡の影響を最小限に抑える努力も成功していない。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、上記の問題の1つ以上を解決する方法及び装置を提供することである。
【0009】
したがって、本発明は、液滴形成のための少なくとも2つのユニット(2)を備えたマイクロ流体チップ(1)であって、各ユニット(2)が、
- 第1の相を供給するための、第1の相の入口のための入口開口部(3a)を備えた第1の供給チャネル(3)と、
- 第2の相を供給するための、第2の相の入口のための入口開口部(4a)を備えた第2の供給チャネル(4)と、
- 生成物相を排出するための、生成物相の出口のための出口開口部(5a)を備えた排出チャネル(5)とを備え、
- 第1及び第2の供給チャネル(3、4)が、排出チャネル(5)との接合部(6)に集束し、
- 第1の供給チャネル(3)が、油圧抵抗Rs1及び供給チャネル(3)の少なくとも一部に沿って最小断面積MSAs1を有し、
- 第2の供給チャネル(4)が、油圧抵抗Rs2及び供給チャネル(4)の少なくとも一部に沿って最小断面積MSAs2を有し、
- 排出チャネル(5)が、油圧抵抗Rd及び排出チャネル(5)の少なくとも一部に沿って最小断面積MSAdを有し、
マイクロ流体チップ(1)が、
- 第1の相をユニット(2)の第1の供給チャネル(3)に同時に供給するための第1のマニホールド(11)と、
- 第2の相をユニット(2)の第2の供給チャネル(4)に同時に供給するための第2のマニホールド(12)とを備え、
Rs1≧2×Rd及び/又はRs2≧2×Rdであるマイクロ流体チップ(1)に関する。
【0010】
以下、簡略化のため、「入口開口部」及び「出口開口部」という用語は、それぞれ「入口」及び「出口」に短縮する。
【0011】
本発明は更に、上記のマイクロ流体チップ(1)を含むカートリッジ(15)であって、カートリッジ(15)が、
- マイクロ流体チップ(1)の第1のマニホールド(11)に第1の相を供給するための第1のマニホールド入口(11a)と一致する第1の開口部と、
- マイクロ流体チップ(1)の第2のマニホールド(12)に第2の相を供給するための第2のマニホールド入口(12a)と一致する第2の開口部と、
- マイクロ流体チップ(1)から生成物相を収集するためのマニホールド出口(13a)と一致する第3の開口部とを備え、
- ユニット(2)が、それらが同一平面内にあるか又は曲面を画定するように、特に排出チャネル(5)が同一平面内にあるか又は曲面を画定するように配列され、
- マニホールド入口(11a、12a)の全てとマニホールド出口(13a)の全てが平面又は曲面の同じ側にあるカートリッジ(15)に関する。
【0012】
本発明は更に、上記のカートリッジ(15)と、カートリッジ(15)内のマイクロ流体チップ(1)の、マニホールド入口及びマニホールド出口を備えた側とは反対の側を記録するように配置されたカメラ(20)とを含むアセンブリ(16)であって、マイクロ流体チップ(1)内のチャネルが、透明板を通してカメラが見る及び/又は記録することができるアセンブリ(16)に関する。
【0013】
本発明は更に、上記のカートリッジ(15)と、カートリッジ(15)内のマイクロ流体チップ(1)の、マニホールド入口及びマニホールド出口を備えた側とは反対の側を照明するための電磁放射源とを含むアセンブリ(21)であって、放射が、照明に使用される電磁放射を通す板(19)を通って少なくとも排出チャネル(5)の内部容積に到達することができるアセンブリ(21)に関する。
【0014】
本発明は更に、液滴を形成するためのシステムであって、
- 上記のマイクロ流体チップ(1)の第1のマニホールドに第1の相を供給するための第1の流体供給システムと、
- 上記のマイクロ流体チップ(1)の第2のマニホールドに第2の相を供給するための第2の流体供給システムと、
- 1つ以上のマイクロ流体コンポーネントとを備え、1つ以上のマイクロ流体コンポーネントが、
・上記の1つ以上のマイクロ流体チップ(1)、又は
・上記の1つ以上のカートリッジ(15)、又は
・上記の1つ以上のアセンブリ(16、21)であり、
第1の流体供給システム及び第2の流体供給システムが、1つ以上のマイクロ流体コンポーネントに流体接続されているシステムに関する。
【0015】
本発明は更に、上記のマイクロ流体チップ(1)、上記のカートリッジ(15)又は上記のアセンブリ(16、21)の使用を含む、液滴、小胞、微粒子又はナノ粒子の製造方法であって、
- 分散相が第1のチャネル(3)を介して供給され、
- 連続相が第2のチャネル(4)を介して供給され、
その結果、液滴、小胞、微粒子又はナノ粒子を含む生成物相が、排出チャネル(5)で生成され、排出チャネル(5)を介して排出された後に収集される方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る第1のマイクロ流体チップの上面図を示す。
【
図2】本発明に係るマイクロ流体チップにおける液滴形成のための第1、第2、第3及び第4のユニットを示す。
【
図3】本発明に係る第2のマイクロ流体チップの上面図を示す。
【
図4】本発明に係るマイクロ流体チップにおける液滴形成のための第5のユニットを示す。
【
図5】本発明に係る第3のマイクロ流体チップの上面図を示す。
【
図6】本発明に係る第4のマイクロ流体チップの上面図を示す。
【
図7】本発明に係る第5のマイクロ流体チップの側面図を示す。
【
図10】動作中の従来のマイクロ流体チップの5つの排出チャネルの5つの顕微鏡写真を示す。
【
図11】動作中の本発明に係るマイクロ流体チップの顕微鏡写真を示す。
【
図12】本発明のマイクロ流体チップを用いて得られる液滴の粒径分布を示す。
【
図13】本発明のマイクロ流体チップを用いて得られる液滴の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図中の要素は、簡略化及び明確化のために示されており、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。例えば、図中のいくつかの要素の寸法は、本発明の様々な例示的な実施形態の理解の向上に役立つために、他の要素と比べて誇張されていることがある。特に、様々なチャネルの相対的な長さ及び直径は図から導き出すことができず、様々なチャネルの相対的な油圧抵抗も同様に導き出すことができない。更に、本明細書における「第1」、「第2」などの用語は、もしあれば、一般に類似の要素を区別するために使用され、必ずしも連続的又は時系列的な順序を説明するために使用されるわけではない。
【0018】
本発明の文脈において、「分散相」という用語は、本発明のマイクロ流体チップ内の液滴形成のためのユニットを通過して、分散相を連続相中に分散させた分散液を生成することを意図した化合物又は化合物の組成物を含む相を意味する。分散相自体は通常、接合部を通過する前には分散されていないため、通常は分散液ではない。それは通常均一であり、例えば溶液、液体、又は液体の混合物である。しかしながら、特定の場合には、分散相は分散液又は懸濁液を含む相である可能性がある。
【0019】
本発明の文脈において、「連続相」という用語は、本発明のマイクロ流体チップ内の液滴形成のためのユニットを通過して、連続相が分散相の分散媒を形成する分散液を生成することを意図した化合物又は化合物の組成物を含む相を意味する。連続相は通常均一であり、例えば溶液、液体、又は液体の混合物である。
【0020】
本発明の文脈において、「液滴形成のためのユニット」という用語は、ナノ液滴及び微液滴を含む液滴を形成するのに適したユニットを意味する。このようなユニットは、他のタイプの実体、例えば小胞、微粒子又はナノ粒子を形成するのにも適している。しかしながら、明確にするために、ナノ液滴や微液滴などの他の実体の形成も含まれると常に述べられてはいない。当業者は、所望のタイプの実体を生成するために、様々な相及びその流動条件を選択する方法を知っている。「液滴形成のためのユニット」という用語は、「液滴生成器」という用語と同等であり、以下の本文全体にわたって同様に使用される。
【0021】
一般に、マイクロ流体チップにおける液滴形成は、第1の相を供給するチャネルが最終的に第2の相を供給する別のチャネルになる場所で行われる。通常、この場所は2つのチャネルの接合部にあるが、一方のチャネルが特定の長さにわたって他方のチャネルの下流に延びる場合には接合部の下流にある場合もある。通常、一方の相は連続相によって形成され、もう一方の相は分散相によって形成される。液滴形成の後、液滴を含む生成物相が、接合部の一部でもある排出チャネルを通って移動する。生成物相において、連続相は、分散相から形成される液滴を取り囲む相である。
【0022】
本発明のマイクロ流体チップでは、第1の供給チャネル、第2の供給チャネル及び排出チャネルの3つ全てが接合部によって互いに流体接続され、液滴形成のためのユニットの一部を形成する。接合部では、供給チャネルが結合及び融合して排出チャネルを形成する。各供給チャネルには入口があり、排出チャネルには出口がある。動作中、第1の供給チャネルは第1の相(例えば、分散相)を供給し、第2の供給チャネルは第2の相(例えば、連続相)を供給し、排出チャネルは生成物相(通常、液滴を含む両相のエマルション)を排出する。供給チャネルの流れ方向は入口から接合部に向かう方向であり、排出チャネルの流れ方向は接合部から離れて出口に向かう方向である。このように、実際の液滴を含むエマルションが、2つの供給フィードからユニット内で連続的に調製されることがある。
【0023】
チャネルは特定の角度で接合部に集束する。供給チャネルと排出チャネルの間の角度は、原理的に任意の角度である場合がある。ただし、角度は90°と180°の間(90°と180°の値を含む)であることが好ましく、この角度は、各供給チャネルと排出チャネルの流れ方向(2つのチャネル間の角度が90°の場合、チャネルは垂直であり、2つのチャネル間の角度が180°の場合、両チャネル(及びその中の流れ)は同じ方向を有し、流れは方向を変えずに継続する)。角度はまた、125°~145°の範囲、140°~170°の範囲又は100°~130°の範囲である場合がある。
【0024】
ユニット内を液体が移動する経路は、第1の供給チャネルに続いて排出チャネル又は第2の供給チャネルに続いて排出チャネルのいずれかに関係する。本発明によれば、これらの経路の少なくとも1つにおいて、供給チャネルは、排出チャネルの油圧抵抗Rdの少なくとも2倍である油圧抵抗Rs(すなわち、Rs≧2×Rd)を有する。換言すれば、液体材料の輸送のための少なくとも1つの経路において、油圧抵抗比Rs/Rdは2以上である。
【0025】
より具体的には、第1の供給チャネルの油圧抵抗(Rs1)は、排出チャネルの油圧抵抗(Rd)の少なくとも2倍である(すなわちRs1≧2×Rd)及び/又は第2の供給チャネルの油圧抵抗(Rs2)は、排出チャネルの油圧抵抗(Rd)の少なくとも2倍である(すなわちRs2≧2×Rd)。
【0026】
図1は、液滴形成のための2つのユニット(2)を備えた本発明のマイクロ流体チップ(1)を示している。各ユニット(2)は、第1の供給チャネル(3)、第2の供給チャネル(4)及び排出チャネル(5)を備える。これらのチャネル(4、5、6)は全て接合部(6)で互いに接続されており、その全てが接合部を共有する1つの端部を有している。第1の供給チャネル(3)の他端部は入口(3a)を備え、第2の供給チャネル(4)の他端部は入口(4a)を備え、排出チャネル(5)の他端部は出口(5a)を備える。2つのユニット(2)の2つの第1の入口(3a)は両方とも、第1の相を供給する第1のマニホールド(11)に接続されている。2つのユニット(2)の2つの第2の入口(4a)は両方とも、第2の相を供給する別の第2のマニホールド(12)に接続されている。第1のマニホールド(11)は、第1の相を第1のマニホールド(11)に、そして最終的にはチップ(1)の全てのユニット(2)に供給するための第1のマニホールド入口(11a)を備える。第2のマニホールド(12)は、第2の相を第2のマニホールド(12)に、そして最終的にはチップ(1)の全てのユニット(2)に供給するための第2のマニホールド入口(12a)を備える。したがって、各マニホールド入口(11a、12a)は、特定の相の供給をチップ(1)全体、すなわち液滴形成のための全てのユニット(2)に行う。排出チャネル(5)の2つの出口(5a)は、チップ(1)から生成物相を収集するためのマニホールド出口(13a)を備えたマニホールド(13)に接続されている。
【0027】
図1の全てのチャネルは、その全長に沿って一定の直径を有する(又は、より一般的には、各チャネルは、その長さにわたって変化しない断面形状を有する)。ただし、図面は、特に異なるチャネルの直径間の比較ができないという意味で、一定の縮尺で描かれていない。したがって、異なるチャネルの相対的な油圧抵抗を図面から導き出すことはできない。結果として、
図1からは要件R
s≧2×R
dが一方の供給チャネルに適用されるのか、両方の供給チャネルに適用されるのかを導き出すことはできない。一般に、これは、マイクロ流体チップ及び/又は微液滴形成のためのユニットを示す図の全てを説明する。
【0028】
図2は、液滴形成のためのユニット(2)の4つのバリエーションを示している。これらは、明確にするためにチップ上に配置されておらず、マニホールド、マニホールド入口及びマニホールド出口などの要素を欠いた別個の構造として描かれている。
【0029】
第1のバリエーション(I)は、2つの供給チャネル(3、4)を有するユニット(2)であり、一方の供給チャネル(3)は狭窄部を有し、他方の供給チャネル(4)は有していない。両供給チャネル(3、4)は排出チャネル(5)に合流する。
【0030】
第2のバリエーション(II)は、2つの供給チャネル(3、4)を備えたユニット(2)であり、両供給チャネル(3、4)が狭窄部を有する。両供給チャネル(3、4) は排出チャネル(5)に合流する。
【0031】
第3のバリエーション(III)は、2つの供給チャネル(3、4)に加えて第3の供給チャネル(7)があり、3つ全てが狭窄部を有するユニット(2)である。このバリエーションによって、3つの供給チャネル(3、4、7)で3つの異なる相の供給が可能になる。両供給チャネル(3、4)は排出チャネル(5)に合流し、第3の供給チャネル(7)は排出チャネル(5)の別の場所で結合するため、このユニット(2)は2つの接合部を備える。
【0032】
第4のバリエーション(IV)も、3つの供給チャネル(3、4、7)を備えたユニット(2)であり、3つ全てが狭窄部を有している。3つの供給チャネル(3、4、7)は全て排出チャネル(5)に合流する。ただし、このバリエーションでは、3つの供給チャネルで2つの異なる相の供給しか行われない。これは、供給入口が2つしかないことから導かれ、1つの入口のチャネルは2つのチャネル(4、7)に分かれており、フォークを連想させる構造になっている。2つのチャネル(4、7)は下流の接合部に再び集束する。
【0033】
図3は、液滴形成のためのユニット(2)が
図2のバリエーション(IV)のタイプであるという点で、
図1のマイクロ流体チップ(1)のバリエーションである。
【0034】
同様に
図5及び
図6に示されるマイクロ流体チップ(1)は、
図2のバリエーション(IV)のタイプのユニット(2)を備える。
【0035】
油圧抵抗は、チャネル(又はパイプ、チューブ、バルブなどの他の油圧コンポーネント)を通る液体の流れが受ける流れ抵抗である。それは、液体の粘度やチャネルの寸法(特にその断面及びその長さ)などの変数に依存する。例えば、断面が長方形のチャネルの場合、油圧抵抗Rhの式は
Rh≒12μL/wh3(1-0.63h/w)
であり、
ここで、μはチャネルを流れる特定の流体、特に液体の流体粘度であり、L、w及びhはそれぞれチャネルの長さ、幅及び高さである(式はh<wの場合に有効である)。
【0036】
本発明の文脈において、特定の供給チャネルについて油圧抵抗が定められる場合、これは、油圧抵抗が供給チャネルの全長にわたって、すなわちその入口から接合部まで定められることを意味する。
【0037】
本発明の文脈において、特定の排出チャネルについて油圧抵抗が定められる場合、これは、油圧抵抗が排出チャネルの全長にわたって、すなわち接合部からその出口まで定められることを意味する。
【0038】
本発明の文脈において、特定のマニホールドについて油圧抵抗が定められる場合、これは原則として、液滴形成のための1つ以上のユニットの供給のために液体の流れが通過するマニホールドの一部に関する。好ましくは、これは、マニホールド入口から(マニホールド上で測定して)マニホールド入口から最も遠い液滴形成のためのユニットとマニホールドとの接続部まで延在する部分である。
【0039】
方程式中の液体の粘度(μ)を用いれば、チャネルの油圧抵抗は、チャネルを流れる特定の流体に対するそのチャネルの特性となる。これは、チャネルにはその油圧抵抗に普遍的な値ではなく、チャネル内を流れ得る流体ごとに特定の値があることを意味する。ただし、いくつかのチャネルの油圧抵抗を比較すると、流体の粘度は方程式から外れる。これは、本発明のマイクロ流体チップでは、異なるチャネルの油圧抵抗が全てチャネルを流れる全く同一の流体に基づいているためである。本発明では、Rs1≧2×Rd及び/又はRs2≧2×Rdである必要がある。これは、異なるチャネルを通る全く同一の流体の流れに対する相対抵抗を表す(そして、同じ流体に関するものである限り、どの流体であるかは問題ではない)。
【0040】
通常、油圧抵抗比Rs/Rdが2以上のユニットでは、各供給チャネルは排出チャネルよりも狭い。より具体的には、そのような場合、各供給チャネルは、チャネルの少なくとも一部に沿って、排出チャネル沿いのどの場所の最小断面積MSAdよりも小さい最小断面積MSAsを有する。より具体的には、そのような場合、MSAd≧MSAs1であり、ここでMSAs1は第1の供給チャネルの少なくとも一部に沿った最小断面積であり、MSAdは排出チャネルの少なくとも一部に沿った最小断面積である。同様に、そのような場合、通常はMSAd≧MSAs2であり、ここでMSAs2は、第2の供給チャネルの少なくとも一部に沿った最小断面積MSAs2である。例えば、MSAd≧1.5×MSAs1及び/又はMSAd≧1.5×MSAs2である。具体的には、MSAd≧2×MSAs1及び/又はMSAd≧2×MSAs2、より具体的には、MSAd≧10×MSAs1及び/又はMSAd≧10×MSAs2、更に具体的には、MSAd≧20×MSAs1及び/又はMSAd≧20×MSAs2。よって、断面積比MSAd/MSAs1は、1を超える、1.5以上、2以上、10以上又は20以上と定めることができ、断面積比MSAd/MSAs2は、1を超える、1.5以上、2以上、10以上又は20以上と定めることができる。これは、供給チャネル内の油圧抵抗が排出チャネル内の油圧抵抗よりも高いという本発明の特徴に寄与する。また、断面積比が大きければ大きいほど寄与度が高くなる。
【0041】
しかしながら、必ずしも供給チャネルが排出チャネルよりも狭いわけではなく、供給チャネルは排出チャネルと同じ断面積、又は更に大きな断面積を有することもある。そのような場合、供給チャネル内のより高い油圧抵抗は通常、供給チャネルの長さを長くすることによって達成される。例えば、全てのチャネルが同じ断面積を有する液滴形成のためのユニット(2)を備えたマイクロ流体チップを
図1に示す。
【0042】
MSAs<MSAdの場合の好適な設計は、次のような設計である。
- 第1の供給チャネルは、特定の長さの狭窄部を備え、狭窄部の断面積はMSAs1に対応し、
- 排出チャネルは、MSAdに対応する一定の断面積を有する。
【0043】
その結果、そのような設計における第1の供給チャネルの狭められていない部分が、排出チャネルの断面積に(すなわち、MSA
dに)対応する断面積を有することがある。例えば、1つ以上の狭窄部を含む設計による液滴形成のためのユニットを
図2に示す。
【0044】
そこで、本発明に係る構造を有する液滴形成のためのユニットに供給される液体材料が、まずは油圧抵抗の高いチャネル(供給チャネル)を、更に下流で油圧抵抗が2分の1以下のチャネル(排出チャネル)を通過する。両チャネルの境界で、液体材料は接合部を通過する。液滴の形成は原則として接合部で、又はわずかに下流の排出チャネル内で行われる。
【0045】
供給チャネル及び排出チャネルの油圧抵抗は、複数の流量での供給チャネル及び排出チャネルにおける測定される圧力降下から導き出すことができる。通常、これらの圧力降下の測定には、供給チャネルの入口と排出チャネルの出口に配置される圧力センサーが使用される。
【0046】
供給チャネルの入口における圧力を互いに独立に変化させることによって、各供給チャネル及び排出チャネルの全圧降下に対する個別の貢献度を決定することができる。通常、これを達成するには、第1の入口及び第2の入口における圧力の3つの異なる組み合わせが適用される。
【0047】
上記のように、本発明は、2以上の油圧抵抗比Rs/Rd(すなわち、Rs1≧2×Rd及びRs2≧2×Rd)の存在に依存する。油圧抵抗比Rs/Rdは、4以上(すなわちRs1≧4×Rd及び/又はRs2≧4×Rd)、7以上(すなわちRs1≧7×Rd及び/又はRs2≧7×Rd)、10以上(すなわちRs1≧10×Rd及び/又はRs2≧10×Rd)、15以上(すなわちRs1≧15×Rd及び/又はRs2≧15×Rd)、20以上(すなわちRs1≧20×Rd及び/又はRs2≧20×Rd)、30以上(すなわちRs1≧30×Rd及び/又はRs2≧30×Rd)、40以上(すなわちRs1≧40×Rd及び/又はRs2≧40×Rd)、50以上(すなわちRs1≧50×Rd及び/又はRs2≧50×Rd)、75以上(すなわちRs1≧75×Rd及び/又はRs2≧75×Rd)、100以上(すなわちRs1≧100×Rd及び/又はRs2≧100×Rd)、250以上(すなわちRs1≧250×Rd及び/又はRs2≧250×Rd)、500以上(すなわちRs1≧500×Rd及び/又はRs2≧500×Rd)又は1,000以上(すなわちRs1≧1,000×Rd及び/又はRs2≧1,000×Rd)である場合もある。
【0048】
実際には、設計の可能性によって制限されるが、断面積比はできるだけ高いことが好ましい。例えば、低い油圧抵抗Rdは、非常に短い排出チャネル又は非常に幅が広い排出チャネルのいずれか(又は両方の組み合わせ)によって得られる可能性がある。ただし、安定した液滴形成を可能にするためには、一定のチャネル長が必要であり、チャネルが短すぎると、液滴形成に悪影響が生じることになる。また、排出チャネルの幅を広げると、不安定な液滴がもたらされることになる。
【0049】
更に、最小断面積比MSAd/MSAsが1を超え、例えば1.5以上、又は2以上であることは任意選択的であると考えられる。断面積はセクションの長さにわたって変化し得るため、供給チャネルの最小断面積を定めることは、供給チャネル沿いのどこかに存在する最小の断面積に基づいており、排出チャネルの最小断面積を定めることは、排出チャネル沿いのどこかに存在する最小の断面積に基づいている。
【0050】
両表面積が異なる場合、断面積比MSAd/MSAsは1.5以上(すなわちMSAd≧1.5×MSAs)、2以上(すなわちMSAd≧2×MSAs)、4以上(すなわちMSAd≧4×MSAs)、10以上(すなわちMSAd≧10×MSAs)、20以上(すなわちMSAd≧20×MSAs)、50以上(すなわちMSAd≧50×MSAs)又は100以上(すなわちMSAd≧100×MSAs)である場合がある。
【0051】
ある実施形態では、MSAs1及びMSAs2は、互いに独立して10~10,000μm2の範囲内にある、及び/又はMSAdは25~250,000μm2の範囲内にある。別の実施形態では、MSAs1及びMSAs2は50~5,000μm2の範囲内にある、及び/又はMSAdは500~100,000μm2の範囲内にある。更に別の実施形態では、MSAs1及びMSAs2は100~1,000μm2の範囲内にある、及び/又はMSAdは250~2,500μm2の範囲内にある。
【0052】
本発明に係るマイクロ流体チップでは、MSAd≧2×MSAs1及びMSAd≧2×MSAs2及びRs1≧10×Rdである場合がある。具体的には、MSAd≧5×MSAs1及びMSAd≧5×MSAs2及びRs1≧20×Rdである場合がある。より具体的には、MSAd≧10×MSAs1及びMSAd≧10×MSAs2及びRs1≧40×Rdである場合がある。
【0053】
一般に、マイクロ流体チップのチャネル内の流量が、生成される液滴の特性に影響を与える。流量の乱れや不均一性は、製品品質の低下、特に液滴の均一性、例えば液滴のサイズの均一性の低下をもたらすことがある。
【0054】
液体が接合部に到達する前に通過する高い油圧抵抗を有するチャネルの効果は、接合部、すなわち液滴が形成される場所での液体材料の流量がより適切に制御されることである。結果として、接合部における状態はチップ全体にわたって均一となり、チップが非常に均一なサイズを有する液滴を生成することが可能になる。これは、従来のマルチチャネルチップで達成されなかった、本発明のマイクロ流体チップの利点である。
【0055】
本発明のマイクロ流体チップには、液体輸送のための少なくとも2つの供給チャネルが存在する。チップ内のあらゆる供給チャネルが、チップを通る液体輸送のための異なる経路の一部であるため、本発明のチップは、そのような経路のうちの少なくとも2つを備える。これらの経路の少なくとも1つでは、R
s≧2×R
d(例えば、R
s1≧2×R
d又はR
s2≧2×R
d)である。ただし、両経路が式R
s≧2×R
d(すなわち、R
s1≧2×R
d及びR
s2≧2×R
d)に従うことが好ましい。
図1は、2つの経路を有するユニットを備えたマイクロ流体チップを示しており、一方又は両方の経路は式R
s≧2×R
dに従う。
【0056】
更に、ユニットがその全てが排出チャネルと流体連通している3つの供給チャネル、ひいては液体輸送のための3つの経路を有する場合、3つの経路全てが式R
s≧2×R
d(すなわちR
s1≧2×R
d及びR
s2≧2×R
d及びR
s3≧2×R
d)に従うことが好ましい。
図3は、3つの経路を有し、その少なくとも1つが式R
s≧2×R
dに従うユニットを備えたマイクロ流体チップを示している。
【0057】
同様に、供給チャネルが4つ又は5つある場合、4つ又は5つの経路全てが式Rs≧2×Rdに従う。
【0058】
上記のように、本発明に係るマイクロ流体チップにおける液滴形成のためのユニットが、3つ以上の供給チャネルを備えることがある。そのような更なる供給チャネルは、第3、第4、第5又はそれ以上の供給チャネルに関係することがある。更なる供給チャネルが、接合部又は排出チャネルの別の位置で合流する(集束する)ことがある。そのような更なるチャネルは、別の相の冗長供給部である場合がある。例えば、第3の供給チャネルが第1の相又は第2の相を供給することがあるため、実質的に異なる相を供給するチャネルは2つしかない。通常、ユニット内で同じ相を供給する2つの異なるチャネルは、接合部の反対側で結合している。これは、液滴生成において特別な利点を提供する。一方、第3のチャネルも第3の相を供給し、例えばダブルエマルションの調製のために、より下流の第2の接合部に集束することがある。
【0059】
よって、本発明のマイクロ流体チップ内のユニットは、第1の相を冗長的に供給するための、第2の相を冗長的に供給するための又は第3の相を供給するための第3の供給チャネルを備えることがあり、
- 第3の供給チャネルは排出チャネル(5)との接合部に集束し、
- 第3の供給チャネルは、油圧抵抗Rs3及び供給チャネルの少なくとも一部に沿って最小断面積MSAs3を有し、
Rs1、Rs2及びRs3の群から選択される1つ以上の油圧抵抗は、油圧抵抗Rdの少なくとも2倍である。
【0060】
図3は、3つの供給チャネル(3、4、7)を有するユニットを備えた、本発明に係るマイクロ流体チップ(1)を示している。
【0061】
本発明に係るマイクロ流体チップは、供給チャネルの1つが接合部から排出チャネル内に突出チャネル部を有して突き出ている、液滴形成のためのユニットを有することがある。これは、他の供給チャネル及び排出チャネルと合流するのは供給チャネルの端部ではなく、チャネルの端部に近いチャネルの中間部であることを意味する。結果として、チャネル内にチャネル(すなわち、排出チャネル内に供給チャネル)が入り、並行して流れる2つの流れで液滴又は粒子形成が可能になる。本発明の文脈において、排出チャネル内に突き出ているチャネルの部分は、突出チャネル部である。突出チャネル部の長さは、その幅と同じ長さである場合がある。また、その幅の1~10倍、その幅の2~8倍又はその幅の3~5倍である場合がある。
【0062】
図4は、そのようなユニット(2)を備えた本発明に係るマイクロ流体チップ(1)を示している。これは、突出チャネル部(8)を備える。
【0063】
本発明に係るマイクロ流体チップは、液滴形成のためのユニットを少なくとも2つ備える。しかしながら、チップは2つより多くのユニット、例えば少なくとも5つのユニット、少なくとも10個のユニット、少なくとも25個のユニット、少なくとも50個のユニット、少なくとも75個のユニット、少なくとも100個のユニット又は少なくとも150個のユニットを備えることが好ましい。少数のユニット(2~10など)でも、多数のユニット(150以上など)でも、本発明のチップの各ユニットで優れた流動特性を達成でき、均一な微液滴が得られる。更に、チップに適切な相を初期充填する間にも、特定のタイプの全てのチャネルが同じ挙動を示し、最終的に休止状態になるユニットやチャネルはない。
【0064】
異なるユニットは通常、それらが同一平面内にあるように、特に少なくとも特定のタイプのチャネルが同一平面内にあるか又は曲面を画定するように、例えば排出チャネルを同一平面内又は同じ曲面に有するように設計及び配列される。本発明のマイクロ流体チップの製造プロセスを考慮すると、全てのユニットが同一平面内にあることが好ましい。なぜなら、これによって平坦な基板にチャネルをエッチングし、続いて基板をガラス板などの平板で覆うことができるためである。
【0065】
液滴形成のためのユニットは、通常はチップに統合される2つのマニホールドに流体接続されている。マニホールドは、液滴形成のために接続された全てのユニットに特定の相を供給するように、又は液滴形成のために接続された全てのユニットから生成物相を排出するように設計されている。第1のマニホールドは通常、流体接続部によって液滴形成のためのユニットの第1の供給チャネルの第1の入口に接続される。これは、複数のそのような接続部が第1のマニホールドに沿って存在することを意味する。同様に、第2のマニホールドは通常、流体接続部によって液滴形成のためユニットの第2の供給チャネルの第2の入口に接続される。これは、複数のそのような接続部が第2のマニホールドに沿って存在することを意味する。特定のマニホールドに接続される供給チャネルの入口の数は通常、マイクロ流体チップ内に存在する液滴形成のためのユニットの数に等しい。供給チャネルの入口とマニホールドとの流体接続は通常、入口自体と本質的に一致する。
【0066】
マニホールドは、供給された液体がマニホールド入口のいずれかの側を流れることができる直線又は円形のチャネルである場合がある。また、マニホールド入口がマニホールドの端部に存在する可能性があるため、液体が一方向にのみ流れることができる。
【0067】
マニホールドは、本発明のチップ内に形成された生成物を排出するために任意選択的に使用される。その結果、そのようなマニホールドはチップの排出チャネルに流体接続される。
【0068】
本発明のマイクロ流体チップでは、2つの供給相のそれぞれに対して1つのマニホールドが存在する。よって、そのようなチップは少なくとも2つのマニホールドを備える。そのようなチップが、第3の相又は第4の相などの追加相を供給するように設計されている場合、対応する追加マニホールドがそれぞれ特定の追加相を供給することが好ましい。任意選択的に、接続されている全てのユニットから生成物相を収集するためのマニホールドが存在する。
【0069】
本発明のチップが動作しているとき、2つのマニホールド自体に、外部流体供給システムによって流体が供給される。外部流体供給システムは通常、チップを介して供給される特定の液相のリザーバと、マニホールド入口を介して液相をマイクロ流体チップに注入するためのポンピング手段とを備える。これは、マニホールドへの最小限の数の入口を介して行われるため、流体供給システムとチップとの間に作られる接続部はできる限り少なくて済む。したがって、流体供給用の各マニホールドは、マニホールド入口を1つだけ有することが好ましい。本発明の文脈では、そのような入口は「チップ入口」に相当する。これは、そのようなマニホールドの機能、すなわち、チップ内の全てのユニットに向けられる外部液体供給を受け取り、その後この供給をユニットに分割することを反映している。よって、第1のマニホールドは通常、第1の相を第1のマニホールドに、最終的にはチップの全てのユニットに供給するための第1のマニホールド入口を備え、また第2のマニホールドは通常、第2の相を第2のマニホールドに、最終的にはマイクロ流体チップの全てのユニットに供給するための第2のマニホールド入口を備える。
【0070】
同様に、本発明のチップが(すなわち生成物相の)流体排出のためのマニホールドを備える場合、それはマニホールド出口を有する(好ましくは、そのようなマニホールドは1つのマニホールド出口を備える)。本発明の文脈では、そのような出口は「チップ出口」に相当する。これは、そのようなマニホールドの機能、すなわち、液滴形成のために接続されたユニットの排出チャネルから生成物相を受け取り、それらを結合し、その後マイクロ流体チップから放出することを反映している。
【0071】
そのような3つのマニホールドを有するチップは、例えば
図1に示されており、2つのマニホールド(11、12)はそれぞれが2つのユニット(2)に異なる相を供給し、1つのマニホールド(13)が2つのユニット(2)から生成物を収集する。2つの供給マニホールド(11、12)のそれぞれはマニホールド入口(11a、12a)を備え、生成物収集マニホールド(13a)はマニホールド出口(13a)を備える。
【0072】
図5では、2つのマニホールド(11、12)それぞれが異なる相を62個のユニット(2)に供給する。
図5のチップ(1)の円形の性質によって、以下で更に詳しく説明するように、生成物収集に対応するマニホールドはない。
【0073】
ユニットが同一平面内に配列されるチップ設計では、マニホールドは通常、平面に平行に延びることで複数の供給チャネルと交差するチャネルである。その結果、マニホールドとチャネルとの接続は、典型的にはユニットにより形成される平面から延在する短いチャネルによって、好ましくは平面に垂直なチャネルによって形成される。
【0074】
ユニットが放射状に配列されている場合、ユニットの入口を接続するマニホールドは通常、円形である。排出チャネルがその出口を放射中心に向けて配列されている場合、全ての排出チャネルの生成物相は、放射中心にある穴(マニホールド内ではない)であって、全ての排出チャネルの出口が集束する穴に集めることができる。この構成を
図5及び
図6に示す。
【0075】
好ましい実施形態では、本発明のチップは、
・第1のマニホールド(11)が、第1の相の入口のための第1のマニホールド入口(11a)を備え、
・第1の供給チャネル(3)の第1の入口(3a)が、第1のマニホールドに沿って存在する流体接続部によって第1のマニホールド(11)に接続され、
・特定の流体の流れに対する油圧抵抗Rm1が、第1のマニホールド入口(11a)から、第1のマニホールド(11)に沿って測定して第1のマニホールド入口(11a)から最も離れている最も離れた流体接続部まで延在する、第1のマニホールド(11)の第1のセクションについて定められ、
-
・第2のマニホールド(12)が、第2の相の入口のための第2のマニホールド入口(12a)を備え、
・第2の供給チャネル(4)の第2の入口(4a)が、第2のマニホールドに沿って存在する流体接続部によって第2のマニホールド(12)に接続され、
・特定の流体の流れに対する油圧抵抗Rm2が、第2のマニホールド入口(12a)から、第2のマニホールド(12)に沿って測定して第2のマニホールド入口(12a)から最も離れている最も離れた流体接続部まで延在する、第2のマニホールド(12)の第2のセクションについて定められ、
- Rs1≧10×Rm1及びRs2≧10×Rm2であるチップである。
【0076】
そのような第1又は第2のマニホールドが液体を特定の供給チャネルに送達するとき、特定の供給チャネルへの接続部の下流の液体の圧力はわずかに低下する。そのような低下は、供給チャネルと接続するたびに発生する。最後の供給チャネル(すなわち、マニホールド入口から最も遠いチャネル)内の液体の流れが減圧の影響を受けないことが重要である。これは、入口から最後の供給チャネルまでのマニホールド内の油圧抵抗が、供給チャネル自体の油圧抵抗の少なくとも10分の1になるようにマニホールドを設計することによって実現される。これは、Rs1≧10×Rm1及びRs2≧10×Rm2であることを意味し、ここで、Rm1及びRm2は、各マニホールドのあるセクションにおける特定の流体の流れに対する油圧抵抗である。このセクションは、マニホールド入口から、マニホールドに沿って測定して、マニホールド入口から最も離れている供給チャネルまで延在するマニホールドの一部と定義される。
【0077】
このように、マニホールドの油圧抵抗は原則としてチップの動作に関与せず、チップ内の流動挙動に影響を与えない。通常、これはマニホールドの断面積を増加させることによって行われ、SAm1は第1のマニホールドの断面積であり、SAm2は第2のマニホールドの断面積である。当業者は、発明的努力をすることなく日常的な実験を行うことによって、Rs1≧10×Rm1及びRs2≧10×Rm2であるマニホールドに想到する方法を知っている。
【0078】
マニホールドが(例えば
図5のように)供給された液体がマニホールド入口のどちらかの側を流れ得る円形チャネルである場合、マニホールドは、マニホールド入口から測定して、円形チャネルの途中で結合する同じ長さの2つのマニホールドと考えることができる。その結果、円形マニホールドは2つの半部に分割されているとみなすことができる。2つの半部のそれぞれは、マニホールド入口から最も遠い1つの供給チャネルを有するか、又は両半部はマニホールド入口から最も遠い1つの供給チャネルを共有することがある。
【0079】
上記の実施形態(すなわち、Rs1≧10×Rm1及びRs2≧10×Rm2)において、低い油圧抵抗はマニホールド内であり、マニホールドに接続される液滴形成のためのユニットの供給チャネル内ではない。これは、1つの低油圧抵抗の共有領域(直列、すなわちマニホールド内)が存在し、複数の低油圧抵抗の領域(並列、すなわち液滴形成のためのユニットの全ての供給チャネル内)が存在しないことを意味する。
【0080】
本発明に係るマイクロ流体チップでは、マニホールド及び供給チャネルの油圧抵抗は、他の比率で発生することもある。例えば、Rs1≧15×Rm1及びRs2≧15×Rm2、又はRs1≧20×Rm1及びRs2≧20×Rm2、又はRs1≧30×Rm1及びRs2≧30×Rm2、又はRs1≧40×Rm1及びRs2≧40×Rm2、又はRs1≧50×Rm1及びRs2≧50×Rm2。
【0081】
本発明に係るマイクロ流体チップでは、同様に
- Rs1≧10×Rd、及び
- Rs2≧10×Rd、及び
- Rs1≧10×Rm1、及び
- Rs2≧10×Rm2
である場合があり、
具体的には、
- Rs1≧20×Rd、及び
- Rs2≧20×Rd、及び
- Rs1≧20×Rm2、及び
- Rs2≧20×Rm2
である場合があり、
より具体的には、
- Rs1≧40×Rd、及び
- Rs2≧40×Rd、及び
- Rs1≧40×Rm1、及び
- Rs2≧40×Rm2
である場合がある。
【0082】
本発明のチップにおいて、SAm1及びSAm2は、互いに独立に、典型的には2,500~50,000,000μm2の範囲内にある、及び/又はMSAs1及びMSAs2は、互いに独立に、典型的には10~10,000μm2の範囲内にある。SAm1及びSAm2はまた、互いに独立に10,000~10,000,000μm2の範囲内、具体的には20,000~5,000,000μm2の範囲内、より具体的には50,000~2,000,000μm2の範囲内、更により具体的には100,000~1,000,000μm2の範囲内にある場合がある。
【0083】
したがって、Rs1≧10×Rm1及びRs2≧10×Rm2の場合、マニホールド入口とマニホールドに流体接続されている複数の供給チャネルとの間のマニホールド内の圧力降下は本質的にない。これは、次に液滴形成のための異なるユニットの全てにおける均一な流量、最終的には非常に均一な液滴形成をもたらす。したがって、
1)マニホールド内の低い油圧抵抗(したがって、低い油圧抵抗は供給チャネル内ではなくマニホールド内である)、
2)一方又は両方の供給チャネル内の高い油圧抵抗、
3)排出チャネル内の低い油圧抵抗
の並びは、マイクロ流体チップ内の液体の流量を高度に制御する。これは、液滴生成のためのユニット内で均一な液滴を調製するための前提条件である。
【0084】
これは、統合されている異なる液滴生成器の流量制御が不十分なことに悩まされることが知られている従来のマルチチャネルチップによって実行することができない。より具体的には、これらのチップでは、液滴形成のためのユニット内の流量はユニットによって異なり、その結果、液滴全体の均一性が低下し、特に液滴サイズの均一性が低下する。これは、液滴サイズの均一性が、個々のユニットのレベルでしか達成できないためである(各ユニット内の流量が一定である限り)。ただし、液滴サイズ自体はユニットごとに異なることが多い。その結果、全てのユニットを組み合わせた生成物(すなわち、マルチチャネルチップ全体から得られる生成物)では、液滴のサイズは均一ではない。
【0085】
本発明は、上述の「低油圧抵抗-高油圧抵抗-低抵抗」の並びを実装することによってこの問題を克服している。
【0086】
これは、微液滴が形成され、様々な排出チャネルを通って輸送される動作中のマイクロ流体チップの顕微鏡写真を示す
図10及び
図11に示されている。
図10は、液滴形成のための複数の並列ユニットを備える従来のマイクロ流体チップの5つの排出チャネルの5つの拡大図を示し、流れは各顕微鏡写真の左側の矢印の方向に生じる。
図11は、本発明に係るチップを示しており、排出チャネル内の流れ方向が同様に矢印で示されている。これらの図から、従来のチップの排出チャネル内の流れが、排出チャネルに沿った様々なサイズ及び様々な相互間隔の液滴を含むことが明らかである。一方、本発明のチップの排出チャネルは、均一なサイズ及び均一な相互間隔の液滴を含む。
【0087】
更に、
図12及び
図13は、液滴に対する本発明のチップの有益な効果を示している。
図12は、本発明のマイクロ流体チップを用いて得られる液滴の粒径分布を示す(P
25=36.39μm、P
50=37.07μm、及びP
75=37.74μm)。
図13はこれらの液滴の顕微鏡写真であり、液滴の均一性を示している。
【0088】
図10から
図13に示す結果を得るために、従来のマイクロ流体チップと本発明のマイクロ流体チップを以下のように動作させた。5重量%のPLGAジクロロメタン溶液を分散相として使用し、0.1重量%のPVA水溶液を連続相として使用した。従来のチップを、並列9チャネル並びに連続相及び分散相のそれぞれについて合計76mL/h及び7mL/hの流速で使用した。本発明のチップには、525mL/hの連続相及び50mL/hの分散相を供給した。
【0089】
ユニット内の堅牢な定常状態(特に接合部における一定で適切に制御された流量)を維持することに加えて、ユニットの構造は、液滴を形成する開始プロセス中に重要な利点、すなわち実際に定常状態に達するための利点も提供する。液滴形成のための複数のユニットを有する従来のマイクロ流体チップ(マルチチャネルチップ)では、全てのユニットが同じ挙動を示す液滴形成プロセスを開始するのは簡単ではない。理由は不明であるが、ほぼ必ず、チャネルを通る十分な分散相の流れを許可しないチャネル(休止チャネル)がいくつか存在する。これによって、チップの生産性が低下し、生成組成物が意図したものから逸脱することになる。驚くべきことに、この問題は本発明のマイクロ流体チップによって解決される。本発明のマイクロ流体チップでプロセスが開始されると、液体の流れが通常、全てのチャネルで同時に開始されることが判明した。これは、チップの創意に富んだ設計によるものである。これは、マニホールドとそれに接続された供給チャネルとの間の必要な油圧抵抗比(Rs1≧10×Rm1及びRs2≧10×Rm2)に関係すると考えられる。これは、チップの全てのチャネルを適切な相で初期充填する際に、各相が全てのユニットの実際のチャネルに入る前にまずマニホールド全体を充填することがわかるためである。
【0090】
本発明のマイクロ流体チップの動作開始時の関連する問題は、気泡の存在とその除去である。単一のマニホールドではなく、内部流体供給のための分岐構造を有する従来のマイクロ流体チップでは、そのような気泡は通常、特定の分岐の流れを乱し、乱れた流れの影響を受ける複数の液滴生成器に直ちにつながる。したがって、かなりの数の液滴生成器が、残りの液滴生成器によって生成される液滴から逸脱する液滴を生成することになり、これは、全体としてマイクロ流体チップから収集される生成物の均一性の低下につながる。本発明のマイクロ流体チップはこの問題に悩まされない。なぜなら、マニホールドは本質的に、気泡が速く伝播するのに十分な大きさの断面積を有し、気泡が2つ以上の液滴生成器の流れを阻害する可能性を本質的に排除するためである。気泡を液滴形成のためのユニットの供給チャネルに強制的に通過させるとき、全てのユニットに並行して供給するマニホールドの油圧抵抗は少なくとも10分の1であるため、液滴形成のための隣接するユニットの供給チャネルの流れにも影響がない。
【0091】
ユニットは、車輪のスポークを連想させる放射状に配列されることが好ましい。例えば、排出チャネルが放射状に配列される場合及び/又は一方又は両方の供給チャネルが放射状に配列される場合、ユニットは放射状に配列される。好適な放射状配列では、放出チャネルは、その出口を放射中心に向けて配列される。換言すれば、ユニットは、ともに同心の内円及び外円によって画定される環状部の形態で並んで配列される。その結果、排出チャネルの出口は環状部の内円を画定する。
【0092】
そのような放射状配列では、ユニットが同一平面内にあることが好ましい。そのようなマイクロ流体チップは、例えば
図5に示されている。この図は、第1及び第2の相の供給のための2つの円形マニホールド(11、12)の上に配置される液滴形成のための複数のユニット(2)を示す、マイクロ流体チップ(1)の上面図である。円形マニホールド(11)は第1のマニホールド入口(11a)を備え、円形マニホールド(12)は第2のマニホールド入口(12a)を備える。これらのマニホールド入口(11a、12a)は、流体供給システム又は装置から各マニホールドに液体を供給する役割を果たす。
図1に示されたチップ(1)とは対照的に、
図5のチップ(1)は、排出チャネルの全ての出口が同じ空間、すなわち、実際にマニホールド出口(13a)を直接形成するチップ内の穴に到達するため、実際には生成物相の収集のためのマニホールドを備えていない。
図1のマニホールド(13)及びマニホールド出口(13a)は、
図5の単一チップ出口(13a)に結合されているとみなすことができる。
【0093】
図5から
図9に示したチップ(1)は、チップ(1)の同じ面にマニホールド入口(11a、12a)及びマニホールド出口(13a)を有する。マニホールド入口又は出口がそれぞれチップ入口又は出口に相当するという上記の指摘を考慮すると、ここではチップ入口とチップ出口がチップの同じ面にあると言うのと同じ意味である。これにはいくつかの利点があり、これについては以下のカートリッジの説明で強調する。
【0094】
放射状配列では、通常、接合部の位置は円を画定する。これは原則として、入口や出口などのユニットの他の対応する要素にも当てはまる。
【0095】
原則として、放射状配列のユニットは、平面上ではなく曲面上に配列されることもある。しかしながら、そのような配列を有するチップの製造はより複雑である。
【0096】
通常、本発明のチップ内のチャネルはリソグラフィ法によって得られる。その結果、例えばガラス、シリコン又はプラスチックの支持板の表面の一部をエッチングして、特定の形状の断面を有する溝(カバーのないチャネル)を生成する。例えば、溝の断面は長方形、特定の場合には正方形である。溝は通常、実際のチャネルを生成するために、支持板の上部のカバー板によって閉じられる。このように、チャネルは通常、支持板の表面にわたって2次元に延在し、その結果、チップの全てのチャネルは同一平面内に延在する。
【0097】
図7は、本発明のマイクロ流体チップ(1)の側面図であり、チップの層構造を明らかにしている。それは、2枚のガラス板(17、19)の間に挟まれたシリコン支持板(18)を備える。支持板(18)の厚さは0.4mmであり、2枚のガラス板(17、19)それぞれの厚さは1.1mmである。この図は、全ての入口及び出口がチップの同じ面(底面)にあることを示している。
【0098】
本発明は更に、上記のようなマイクロ流体チップを備えたカートリッジ(15)であって、
- マイクロ流体チップ(1)の第1のマニホールド(11)に第1の相を供給するための第1のマニホールド入口(11a)と一致する第1の開口部と、
- マイクロ流体チップ(1)の第2のマニホールド(12)に第2の相を供給するための第2のマニホールド入口(12a)と一致する第2の開口部と、
- マイクロ流体チップ(1)から生成物相を収集するためのマニホールド出口(13a)と一致する第3の開口部と
を備え、
- ユニット(2)が、同一平面内にあるか又は曲面を画定するように、特に排出チャネル(5)が同一平面内にあるか又は曲面を画定するように配列され、
- 全てのマニホールド入口及び全てのマニホールド出口が、平面又は曲面の同じ側にある
カートリッジ(15)に関する。
【0099】
カートリッジは、チップを保護し、チップの簡単な操作、例えばチップを介して供給される様々な液相のリザーバ及び制御された方法(圧力、流量)でこれらの相をチップに供給するポンプ機構(すなわち、ポンピング手段)を含む流体供給システムへの簡単な取り付けを可能にするチップの周囲のケーシングと見ることができる。装置へのカートリッジの取り付けは、典型的には、所定の圧力での単純な所定の動きによるカートリッジの固定を含み、その結果、装置とチップとの即時の液密結合が得られる。
【0100】
カートリッジは通常、マイクロ流体チップを少なくとも部分的に取り囲む。カートリッジは、それぞれチップの少なくとも2つの入口と一致する少なくとも2つの開口部を備える(すなわち、開口部は入口と整列する)ため、流体供給システムの出口をチップの入口に直接接続することができる。これらの入口は、本質的には1つ以上のマニホールドの入口である。カートリッジはまた、マニホールド出口(すなわち、チップ出口)と一致する開口部を備え、マイクロ流体チップからの生成物相の収集を可能にする。
【0101】
本発明のカートリッジでは、マイクロ流体チップのユニットは、平面又は曲面を形成するように配列されている。換言すれば、ユニットの積層は主に2次元(平面)で行われる。それらは3次元(曲面)に、ただし、好ましくはチップの少なくとも1つの突起が存在し、ユニットが互いに重なり合っていない範囲内で配列されることもある。これは、カートリッジを使用しないマイクロ流体チップ内のユニットの配列について以上で説明した曲面にも当てはまる。
【0102】
全てのマニホールド入口及び全てのマニホールド出口が平面又は曲面の同じ側にある場合、マニホールド入口又はマニホールド出口と一致するカートリッジの全ての開口部もカートリッジの同じ面に配置される。例えば、全ての開口部が、上面及び底面を有するカートリッジの底面に存在することがある。本発明のカートリッジの利点は、反対面(例えば、上面)が、この面に又はその近くに開口部も他の付属装置(ポンプなど)の要素もないため、他の目的でアクセス可能であることである。
【0103】
例えば、チップのユニットがチャネル上の透過層を備える場合、チップの動作中に液体の供給及び排出を監視することができる。透過層は、電磁放射、例えば、光学ドメイン、UVドメイン、IRドメイン又はそれらの結合ドメインにおける電磁放射を通す。このように、例えば液滴の形成を監視することができる。また、休止中のユニットを容易に特定できるため、全てのユニットが動作しているかどうかを確認することも可能である。特に、カメラを用いてモニタリングを実行することが可能であるため、チップ(及びチップ上で実行される生成プロセス)の写真及び/又はフィルムを作成することができる。よって、本発明は更に、上記のカートリッジと、カートリッジ内のマイクロ流体チップのマニホールド入口及びマニホールド出口を備える面とは反対側の面を記録するように配置されたカメラとのアセンブリ(15)であって、チップ内のチャネルが透明板を通して見ることができるアセンブリ(15)に関する。
【0104】
図11は、動作中の本発明のマイクロ流体チップの一部の顕微鏡写真を示している。液滴形成のためのユニットは光透過層で覆われている。これによって、液体の供給及び排出のための全てのチャネルをはっきりとリアルタイムで見ることが可能になる。これによって、生成物相の均一性を直接グラフにより照明することも可能になる。
【0105】
別の利点は、チップのユニットが、照明に使用される放射を通すチャネル上の層を備える場合に、チップを放射で照明できることである。これは、調製された液滴における放射線誘起反応、例えば、液滴中に存在するモノマー(例えば、UVランプと組み合わせたアクリレートモノマー)の重合を行うのに使用することができ、液滴を固体粒子に変換するのに使用することができる。これによって、マイクロ流体チップ内で形成される液滴のインライン後処理への道が開かれる。よって、本発明は更に、上記のカートリッジと、カートリッジ内のマイクロ流体チップのマニホールド入口及びマニホールド出口を備える面とは反対側の面を照明するための放射源とのアセンブリ(21)であって、放射が、照明に使用される放射を通す、チャネルを覆う板を通ってチャネル、特に排出チャネルの内部容積に到達することができるアセンブリ(21)に関する。
【0106】
使用中の本発明のカートリッジの配向は、典型的には、開口部を下方に(すなわち、地表に)向けた配向である。このように、重力を利用して生成物相を収集することができ、その結果、カートリッジの下で生成されるという利点を有することがある。
【0107】
生成物相の収集は通常、キャリア流体を生成物相マニホールド(13)に流し、それによって生成物相を取り上げてマニホールド出口(13a)に輸送することを可能にすることによって促進される。チップ内のユニットが放射状に配列されている場合、キャリア流体は通常、カートリッジの上面(入口開口部及び出口開口部がない)から供給され、重力に助けられて中央のマニホールド出口(13a)を通って下方に流れる。ただし、上部からのキャリア流体の供給はカートリッジの上部に入口を必要としないが、これは以上で説明したように望ましくない。
図6及び
図7に示すように、キャリア流体の入口をチップの底面に配置することが可能である。これは、キャリア流体を底部からチップ(1)の側面に沿って、そしてチップ(1)の上部に沿って放射中心に向かって誘導することによって供給するチャネル(14)を作成することによって行われる。そこから、キャリア流体は、中央マニホールド出口(13a)から降下する間に、ユニット(2)の排出チャネル(5)を通過する際に生成物相を取り込むことになる。チャネル(14)はチップの上面でユニット上を通過するため、カートリッジの上面からチップ上の視界のごく一部を遮断する。また、チップの排出チャネルを照明する目的で放射源から放射が放出されると、チャネル(14)はこの放射の一部を遮断する。しかしながら、これは、チャネル(14)内の液体及びチャネル(14)自体が、チャネルが曝露される放射を通すことができるため、あまり問題ではない。あるいは、排出チャネルの一部を交換することによって、チャネル(14)を排出チャネルと同じ平面に組み込むこともできる。
【0108】
本発明に係る複数のマイクロ流体チップを1つの外部流体供給システムから同時に動作させることが有利であることが判明した。これは、それらが流体供給システムに並列に接続されていることを意味する。接続された様々なマイクロ流体チップで得られる液滴の粒径分布は、実質的に同一であるように見えた。これによって、マイクロ流体技術による高品質液滴の生成の大幅なアップスケーリングへの道が開かれる。一方、従来のマイクロ流体チップの並列化は、チップごとに激しく異なる粒径分布をもたらす。
【0109】
よって、本発明は更に、液滴を形成するためのシステムであって、システムが、
- 上記のマイクロ流体チップ(1)の第1のマニホールドに第1の相を供給するための第1の流体供給システムと、
- 上記のマイクロ流体チップ(1)の第2のマニホールドに第2の相を供給するための第2の流体供給システムと、
- 1つ以上のマイクロ流体コンポーネントとを備え、1つ以上のマイクロ流体コンポーネントが、
・上記の1つ以上のマイクロ流体チップ(1)、又は
・上記の1つ以上のカートリッジ(15)、又は
・上記の1つ以上のアセンブリ(16、21)であり、
第1の流体供給システム及び第2の流体供給システムが、1つ以上のマイクロ流体コンポーネントに流体接続されているシステムに関する。
【0110】
このようなシステムでは、
- マイクロ流体チップ(1)の数、又は
- カートリッジ(15)の数、又は
- アセンブリ(16、21)の数
は通常は2~100の範囲内にある。また、5~25の範囲内、3~15の範囲内又は4~20の範囲内にある場合がある。
【0111】
本発明のマイクロ流体チップは、流体供給システムの出口が本発明のマイクロ流体チップのマニホールド入口のそれぞれに接続される場合に動作することができる(マニホールド入口は実際にはチップ入口でもある)。動作中、各相は通常、流体供給システムによって一定の圧力で供給され、その結果、接合部での流量が一定になる。
【0112】
よって、本発明は更に、上記のマイクロ流体チップ(1)、カートリッジ(15)、アセンブリ(16)又はアセンブリ(21)の使用を含む、液滴、小胞、微粒子又はナノ粒子の製造方法であって、
- 分散相が第1のチャネル(3)を介して供給され、
- 連続相が第2のチャネル(4)を介して供給され、
その結果、液滴、小胞、微粒子又はナノ粒子を含む生成物相が、排出チャネル(5)で生成され、排出チャネル(5)から排出された後に収集される方法に関する。
【0113】
好適な方法では、液滴、小胞、微粒子又はナノ粒子の形成及び/又は移動がカメラを使用して記録される。そのような方法では、
- 上記のアセンブリ(16)が使用され、
- マイクロ流体チップ(1)のユニット(2)がカメラ(20)を使用して記録され、特に生成物相の形成及び/又は移動がカメラ(20)を使用して記録される。
【0114】
別の好適な方法では、液滴、小胞、微粒子又はナノ粒子に放射を照明して、生成物相内で化学反応を誘発するか又は生成物相の滅菌を行う。そのような方法では、
- 上記のアセンブリ(21)が使用され、
- 生成物相に放射を照明して、生成物相内で化学反応を誘発するか又は生成物相の滅菌を行う。
【0115】
特に好適な方法では、カートリッジは本発明のマイクロ流体チップを含み、
- ユニット(2)は、ともに同心の内円及び外円によって画定される環状部の形態で並んで配列され、
- 排出チャネル(5)の出口は、環状部の内円を画定し、その結果、排出チャネル(5)の出口は、生成物相の出口のためのマニホールド出口(13a)と流体接続している中央の共用空間に結合し、
- チップは、生成物相を取り込み、それをマニホールド出口(13a)に輸送することができるキャリア流体を中央の共用空間に供給するためのチャネルを任意選択的に備える。
【国際調査報告】