IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グリーンライザー ユーエス,インコーポレイティドの特許一覧

特表2024-515943アニオン交換膜を利用する水電解装置
<>
  • 特表-アニオン交換膜を利用する水電解装置 図1A
  • 特表-アニオン交換膜を利用する水電解装置 図1B
  • 特表-アニオン交換膜を利用する水電解装置 図2
  • 特表-アニオン交換膜を利用する水電解装置 図3
  • 特表-アニオン交換膜を利用する水電解装置 図4
  • 特表-アニオン交換膜を利用する水電解装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】アニオン交換膜を利用する水電解装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 13/08 20060101AFI20240404BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240404BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240404BHJP
   C25B 11/073 20210101ALI20240404BHJP
   C25B 11/055 20210101ALI20240404BHJP
【FI】
C25B13/08 301
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B11/073
C25B11/055
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561764
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 US2022023513
(87)【国際公開番号】W WO2022216728
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】17/222,553
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380184
【氏名又は名称】グリーンライザー ユーエス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】リチャード アイ.マーゼル
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA29
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB36
(57)【要約】
水電解装置には、少なくとも2つの電気化学セルを含む電解装置スタックが含まれる。各セルは、アニオン交換膜、卑金属アノード電解触媒、卑金属カソード電解触媒および、分流がスタックに供給される総電流の1%未満になるような隣接セル間の充分に長いイオン伝導経路、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解装置スタックを含む、水素ガスを製造するための水電解装置において、前記電解装置スタックが少なくとも2つの電気化学セルを含み、前記電気化学セルの各々が:
(a)アノードガス拡散層(GDL)および一定量のアノード電解触媒を含むアノードと;
(b)カソードGDLおよび一定量のカソード電解触媒を含むカソードと;
(c)前記アノードおよび前記カソードのうちの少なくとも1つに対して導かれる水を含む溶液の供給源と;
(d)前記アノードと前記カソードの間に間置されたアニオン交換膜と、
を含み、
前記アニオン交換膜の各々が平均厚み(t)を有し、
前記電解装置スタック内の前記電気化学セルのいずれか2つの前記アノードGDL間の最短イオン伝導経路(LGDLA)が;
GDLA>10σsol/σmem
であり、式中、σsolは60℃における前記溶液の伝導率(S/cm)であり、σmemは60℃における1MのKOH中で測定した前記アニオン交換膜の各々の伝導率であり、
GDLA>1.5cmである、
水電解装置。
【請求項2】
GDLA>50σsol/σmem
である、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項3】
GDLA>3cm
である、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項4】
前記電解装置スタック内の前記電気化学セルのうちのいずれか2つの前記カソードGDLの間の最短イオン伝導経路(LGDLC)が:
GDLC>10σsol/σmem
である、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項5】
前記溶液が25℃で8超のpHを有する、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項6】
前記溶液が25℃で12超のpHを有する、請求項5に記載の水電解装置。
【請求項7】
前記溶液が25℃で0.05S/cm超の伝導率を有する、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項8】
前記電気化学セルの各々の中の前記カソード電解触媒が、非担持粒子または導電性担体上に担持された粒子の形をしており、前記粒子が0.6nm~100nmの平均サイズを有する、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項9】
前記電気化学セルの各々の中の前記アノード電解触媒が卑金属触媒を含む、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項10】
前記電気化学セルの各々の中の前記カソード電解触媒が卑金属触媒を含む、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項11】
前記電気化学セルの各々の中の前記アノード電解触媒が本質的に1つ以上の卑金属触媒からなる、請求項9に記載の水電解装置。
【請求項12】
前記電気化学セルの各々の中の前記カソード電解触媒が本質的に1つ以上の卑金属触媒からなる、請求項10に記載の水電解装置。
【請求項13】
前記電気化学セルのうちの少なくとも1つの中の前記アニオン交換膜が正荷電アミンを含む、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項14】
前記電気化学セルのうちの少なくとも1つの中の前記アニオン交換膜が正荷電環状アミンを含む、請求項13に記載の水電解装置。
【請求項15】
前記正荷電アミンがイミダゾリウム、ピペリジニウムまたはピリジニウムである、請求項14に記載の水電解装置。
【請求項16】
前記アニオン交換膜が、
(i)スチレンとクロロメチルスチレンのコポリマ;
(ii)ベンゼン環を含有するポリマ;
(iii)フェニレン基を含有するポリマ;
(iv)本質的に炭素と水素で構成されたポリマ鎖;および
(v)本質的に炭素、水素およびフッ素で構成されたポリマ鎖、
のうちの少なくとも1つを含んでいる、請求項13に記載の水電解装置。
【請求項17】
前記アニオン交換膜がスチレンおよび/またはフェニレンを含む、請求項15に記載の水電解装置。
【請求項18】
前記アニオン交換膜が本質的に炭素、水素、窒素、酸素およびフッ素からなる、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項19】
前記電気化学セルの各々の中の前記カソードがイオノマーを含む、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項20】
水電解装置。
【請求項21】
水電解装置を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「アニオン交換膜を利用する水電解装置」という名称の2021年4月5日出願の米国特許出願第17/222,553号に関連し、それに対する優先権の利益を主張するものである。’553出願は、その全体が参照により本明細書に組込まれている。
本発明の分野は電気化学である。本明細書中で説明されているデバイス、システムおよび組成物には、水の電気分解が関与する。
【背景技術】
【0002】
水の電気分解は現在、例えば水素スタンドおよび化学プラントにおける水素供給源として、および「パワーツーガス」と呼ばれる技術を用いる余剰の再生可能エネルギの貯蔵方法として使用されている。
【0003】
低温電解装置には、プロトン交換膜(PEM)電解装置とアルカリ水電解装置という2つの主要なタイプが存在する。PEM電解装置は、2V未満のセル電圧で1A/cm前後の電流密度で動作でき、迅速なオンオフ切換えが可能である。残念なことに、PEM電解装置は典型的に、白金またはイリジウムなどの貴金属触媒の使用を必要とする。これは、経済的に大きな制約となる。
【0004】
対照的に、アルカリ水電解装置の現世代は、貴金属の使用を必要とせず、代って卑金属触媒を使用することができる。残念ながら、アルカリ水電解装置の現世代は典型的に、PEM電解装置よりも低い電流密度で動作する。これにより、資本設備コストが上昇する。
【0005】
例えば、特許文献1は、アルカリ水電解装置が、1.8~2Vのセル電位で200~300mA/cm(0.2~0.3A/cm)で動作すると指摘している。特許文献1は同様に、セル温度を110℃まで上昇させることにより1A/cmの電流を得ることができると標示しているが、特許文献2中で指摘されているように、80~90℃を超えると過度の腐食がこれらの高pHシステム(典型的には1MのKOH電解質)において観察されることから、実用的アルカリ水電解装置の温度上限は、80~90℃である。最近になって、特許文献3が、80℃、1.9Vで40A/dm(0.4A/cm)を得ることのできる改良型電解装置設計を開示している。これは大幅な改善であるが、それでもなおPEM電解装置の性能を下回っている。
【0006】
従来のアルカリ水電解装置の代用品としてのアニオン交換膜(AEM)水電解装置をめぐる文献中の議論も同様に始まっている。VincentおよびBessarabovによる最近の書評(非特許文献1)では、「AEM水電解」について公表されている研究論文はわずかである(20件未満)」と記されている。
【0007】
2018年以降多くの追加論文が公開されてきたが、ほとんどが単一のセル性能しか検討していない。多数のセルを組合せた電解装置スタックが求められており、スタックの設計は広範に検討されていない。
【0008】
しかしながら、小規模電解装置スタックを格納する小型の業務用のAEM電解装置がEnapter社から入手可能である。Enapter社のセル設計は、特許文献4に記載されている。Enapter社のAEM電解装置が設計された時点では、利用可能なAEMは、1%超のKOH濃度において安定していなかった。その結果、Enapter社は、1重量%のKOH(0.17M)溶液をセル内に補給することによって動作するように、自社の電解装置を設計した。
【0009】
しかしながら、より最近では、Maselの特許文献5および特許文献6が、室温で9MのKOHにおいて安定しているAEMを実証した。これにより、Maselおよびその共同研究者達は、特許文献7に記載されているようなより高いKOH濃度で動作するAEM電解装置を開発することができた。これらのAEM電解装置の利点は、以下の通りである:
(a)セル電流ははるかに高く、したがって、セルははるかに多くの水素を生成することができる、
(b)卑金属はより高いpHで安定していることから、貴金属触媒の使用を回避できる。
【0010】
より高いKOH濃度の使用は、主要な課題を提示する。すなわち、特許文献8および特許文献9に記載されているように、KOH濃度が増大するにつれて、分流が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,445,994号明細書
【特許文献2】米国特許出願第15/029,952号明細書(米国特許出願公開第2016/0237578号明細書)
【特許文献3】米国特許出願第15/103,924号明細書(米国特許出願公開第2016/0312371号明細書)
【特許文献4】米国特許第9,340,882号明細書
【特許文献5】米国特許第9,370,773号明細書
【特許文献6】米国特許第9,580,824号明細書
【特許文献7】米国特許第10,647,652号明細書
【特許文献8】米国特許第4,371,433号明細書
【特許文献9】蘭国登録特許第1013630号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Vincent and Bessarabov著(Renewable and Sustainable Energy Reviews、第81巻p1690~1704(2018年))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
当該AEM電解装置設計は、分流を最小限に抑えるかまたは少なくとも軽減し、1A/cm以上の電流で動作する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
水素ガスを製造するための水電解装置は、少なくとも2つの電気化学セルを含む電解装置スタックを含むことができる。前記セルのうちの各々のセルは、
(a)アノードガス拡散層(GDL)および一定量のアノード電解触媒を含むアノードと;
(b)カソードGDLおよび一定量のカソード電解触媒を含むカソードと;
(c)前記アノードおよび前記カソードのうちの少なくとも1つに対して導かれる水を含む溶液の供給源と;
(d)前記アノードと前記カソードの間に間置されたアニオン交換膜と、
を含むことができ、ここで、
(i)前記溶液は、60℃で少なくとも0.05S/cmの伝導率(σsol)を有し、
(ii)前記アニオン交換膜の各々は、平均厚み(t)および1MのKOH中60℃での伝導率(σmem)を有し、
(iii)ここで、セルのうちのいずれか2つのアノードGDLとスタック内の任意の異なるセルのアノードGDLの間の最短イオン伝導経路(LGDLA)は:
GDLA>10σsol/σmem
である。
【0015】
いくつかの好ましい実施形態において、LGDLAは、
GDLA>50σsol/σmem
である。
【0016】
いくつかのより好ましい実施形態において、LGDLAは、少なくとも1.5cm、好ましくは少なくとも2cm、3cm、4cm、5cm、6cm、7cm、8cm、9cmまたは10cmである。
【0017】
いくつかの実施形態において、スタック内のセルのうちのいずれか2つのセルのカソードGDLの間の最短イオン伝導経路(LGDLC)は:
GDLC>10σsol/σmem
である。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態において、溶液は25℃で8超のpHを有する。いくつかのより好ましい実施形態において、溶液は25℃で10超のpHを有する。いくつかのより一層好ましい実施形態において、溶液は、25℃で12以上のpHを有する。
【0019】
いくつかの好ましい実施形態において、σsol>0.05S/cmである。いくつかのより好ましい実施形態において、σsol>0.1S/cmである。
【0020】
いくつかの好ましい実施形態において、電解装置は、スタック内の1つのセルのアノードをスタック内の異なるセルのアノードに対し流体連結する導管を含み、水を含む溶液の供給源はこの導管へと導かれている。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態において、電解装置は、スタック内の1つのセルのアノードとスタック内の異なるセルのカソードの間に電気接続を含んでいる。
【0022】
いくつかの好ましい実施形態において、電解装置は、スタック内の1つのセルのカソードとスタック内の異なるセルのアノードの間に、電位供給源を含んでいる。
【0023】
いくつかの好ましい実施形態において、電解装置は、スタック内の1つのセルのカソードをスタック内の異なるセルのカソードに流体連結する導管を含む。
【0024】
いくつかの好ましい実施形態において、前記セルの各々の中のカソード電解触媒が、非担持粒子または導電性担体上に担持された粒子の形をしており、粒子は0.6nm~100nmの平均サイズを有する。
【0025】
いくつかの好ましい実施形態において、前記セルの各々の中の前記アノード電解触媒は卑金属触媒を含む。より好ましくは、アノード電解触媒は本質的に1つ以上の卑金属触媒からなる。
【0026】
いくつかの好ましい実施形態において、前記セルの各々の中のカソード電解触媒は卑金属触媒を含む。いくつかのより好ましい実施形態において、カソード電解触媒は本質的に1つ以上の卑金属触媒からなる。
【0027】
いくつかの好ましい実施形態において、前記セルのうちの少なくとも1つの中の膜は、正荷電アミンを含む。いくつかの好ましい実施形態において、前記セルのうちの少なくとも1つの中の膜は、正荷電環状アミンを含む。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態において、正荷電アミンはイミダゾリウム、ピペリジニウムまたはピリジニウムである。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態において、膜は、
(i)スチレンとクロロメチルスチレンのコポリマ;
(ii)ベンゼン環を含有するポリマ;
(iii)フェニレン基を含有するポリマ;
(iv)本質的に炭素と水素で構成されたポリマ鎖;および
(v)本質的に炭素、水素およびフッ素で構成されたポリマ鎖、
のうちの少なくとも1つを含んでいる。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態において、膜はスチレンおよび/またはフェニレンを含む。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態において、膜は本質的に炭素、水素、窒素、酸素およびフッ素からなる。
【0032】
いくつかの好ましい実施形態において、少なくとも1つのカソードは、イオノマーを含む。いくつかの好ましい実施形態において、前記セルの各々の中のカソードは、イオノマーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A図1Aは、3つの電解装置セル101、102および103を含む電解装置スタックの斜視図である。
【0034】
図1B図1Bは、3つの電解装置セル101、102および103を含む電解装置スタックの別の斜視図である。
【0035】
図2図2は、電極に対面する板の主要な表面内に形成された反応物質流路を有する2つの流動場板の間に間置された膜電極アセンブリを含む電解装置セルアセンブリの分解組立図である。
【0036】
図3図3は、経路200として標示されているアノード101aとアノード102bの間の最小イオン伝導経路を伴う、図1Aの電解装置スタックの断面の、部分的に透視の斜視図である。
【0037】
図4図4は、具体例1における説明にしたがって構築された水電解装置の斜視図である。
【0038】
図5図5は、内部流体連結を伴う5セル電解装置スタックの分解斜視図である。スタックの頂部セルは、内部構成要素を顕示するために、さらに拡大されている。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書中に記載の特定の方法、プロトコルおよび試薬は、ここで関与している技術の当業者であれば認識する通り変動し得ることから、該プロセスはこれらの方法、プロトコルおよび試薬に限定されるものではないということが理解される。同様に、本明細書中で使用されている専門用語は特定の実施形態を説明する目的でのみ使用されており、当該プロセスの範囲を限定するように意図されていない、ということも理解すべきである。同様に、本明細書中および添付クレーム中に使用されている単数形態「a」、「an」および「the」には、文脈上明らかに別段の指示がなされているのでないかぎり、複数の言及も含まれるということも指摘しておくべきである。したがって、例えば、「リンカ(a linker)」に対する言及は、当業者にとって公知の1つ以上のリンカおよびその等価物に対する言及である。同様にして、「および/または」なる言い回しは、記載されている一方または両方の事例が発生し得ることを標示するために使用され、Aおよび/またはBには(AおよびB)および(AまたはB)が含まれる。
【0040】
別段の定義が無いかぎり、本明細書中で使用されている技術的および科学的用語は、該プロセスが関係する技術の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。該プロセスおよびそのさまざまな特徴および有利な詳細の実施形態は、非限定的な実施形態に関連してより完全に説明され、かつ/または添付図面中で例示され、以下の明細書の中で詳述される。図面中に例示されている特徴は、必ずしも原寸に比例して描かれておらず、たとえ本明細書中に明示的に記載されていなくても、1つの実施形態の特徴は、当業者であれば認識すると考えられるように、他の実施形態でも利用可能である。
【0041】
本明細書中で列挙されているいずれかの数値範囲は、いずれかの低位値といずれかの高位値の間に少なくとも2単位の分離が存在することを条件として、1単位の増分で下位値から上位値までの全ての値を含む。一例として、構成成分の濃度または例えばサイズ、角度サイズ、圧力、時間などのプロセス変数の値が例えば1~98、具体的には20~80、より具体的には30~70であると記されている場合、本明細書には、15~85、22~68、43~51、30~32などの値が明示的に列挙されるように意図されている。1より小さい値については、1単位は適宜0.0001、0.001、0.01、または0.1であるものとみなされる。これらは単に、具体的に意図されているものの一例にすぎず、最小値と最大値の間の数値の考えられる全ての組合せが、同じように扱かわれるものとする。
【0042】
さらに、以下に提供するのは「定義」の項であり、ここでは該プロセスに関連するいくつかの用語が具体的に定義される。特定の方法、デバイスおよび材料が説明されているが、本明細書に記載されているものに類似したまたはそれと等価のあらゆる方法および材料をプロセスの実践または試験において使用することが可能である。
【0043】
定義
本明細書中で使用される「ポリマ電解質膜」とは、概して多数の共有結合した負荷電基を有するポリマを含むカチオン交換膜と、概して多数の共有結合した正荷電基を有するポリマを含むアニオン交換膜の両方を意味する。典型的なカチオン交換膜には、プロトン伝導性膜、例えばE.I.du Pont de Nemour and Company、Wilmington、DE.からNAFIONの商品名で入手可能なペルフルオロスルホン酸ポリマなどのプロトン伝導性膜が含まれる。
【0044】
本明細書中で使用される「アニオン交換膜電解装置」なる用語は、カソードからアノードを分離するアニオン伝導性ポリマ電解質膜を伴う電解装置を意味する。
【0045】
本明細書中で使用される「水素発生反応」、略して「HER」なる用語は、電気化学反応2H+2e→Hを意味する。
【0046】
本明細書中で使用される「MEA」なる用語は、膜電極アセンブリを意味する。
【0047】
本明細書中で使用される「UEA」なる用語は、ユニット化電極アセンブリを意味する。
【0048】
本明細書中で使用される「ミリポア水」なる用語は、少なくとも18.2メガオーム-cmの抵抗率を有するミリポアろ過システムにより製造される水を意味する。
【0049】
本明細書中で使用される「イミダゾリウム」なる用語は、イミダゾール基を含有する正荷電リガンドを意味する。これには、素のイミダゾールまたは置換イミダゾールが含まれる。
【化1】
という形態のリガンドが具体的に含まれ、ここで、R~Rは各々独立して、水素、ハロゲン化物、直鎖アルキル、分岐アルキル、環状アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、ヘテロアルキルアリールおよびそれらのポリマ、例えば本明細書中に記載のビニルベンジルコポリマの中から選択される。
【0050】
本明細書中で使用される「ピリジニウム」なる用語は、ピリジン基を含有する正荷電リガンドを意味する。これには、素のピリジンまたは置換ピリジンが含まれる。
【化2】
という形態のリガンドが具体的に含まれ、ここで、R~R11は各々独立して、水素、ハロゲン化物、直鎖アルキル、分岐アルキル、環状アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、ヘテロアルキルアリールおよびそれらのポリマ、例えば本明細書中に記載のビニルベンジルコポリマの中から選択される。
【0051】
本明細書中で使用される「ホスホニウム」なる用語は、リンを含有する正荷電リガンドを意味する。これには、置換リンが含まれる。
(R12131415
という形態のリガンドが具体的に含まれ、ここで、R12~R15は各々独立して、水素、ハロゲン化物、直鎖アルキル、分岐アルキル、環状アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、ヘテロアルキルアリールおよびそれらのポリマ、例えば本明細書中に記載のビニルベンジルコポリマの中から選択される。
【0052】
本明細書中で使用される「ピペリジニウム」なる用語は、
【化3】
という形態の正荷電リガンドを意味し、ここで、R19~R25は各々独立して、水素、ハロゲン化物、直鎖アルキル、分岐アルキル、環状アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、ヘテロアルキルアリールおよびそれらのポリマ、例えば本明細書中に記載のビニルベンジルコポリマの中から選択される。
【0053】
本明細書中で使用される「正荷電環状アミン」なる用語は、環状アミンを含有する正荷電リガンドを意味する。これには具体的に、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、ピロリジニウム、ピロリウム、ピリミジウム、ピペリジニウム、インドリウム、トリアジニウム、およびそれらのポリマ、例えば本明細書中に記載のビニルベンジルコポリマが含まれる。
【0054】
本明細書中で使用される「単純なアミン」なる用語は:
N(R161718
という形態の種を意味し、ここで、R16~R18は各々独立して、水素、直鎖アルキル、分岐アルキル、環状アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、ヘテロアルキルアリールの中から選択されるが、ポリマは選択されない。
【0055】
本明細書中で使用される「貴金属」なる用語は、Ru、Rh、Pd、Ag、Re、Os、Ir、PtおよびAuのうちの1つ以上を意味する。
【0056】
本明細書中で使用される「卑金属触媒」なる用語は、実質的に貴金属を含まない触媒を意味する。
【0057】
本明細書中で使用される「分流」なる用語は、膜を通してではなくむしろ隣接するセル間の流体連結を通る経路をたどるスタックに印加された電流の一部分を意味する。電流は、連結部内の流体を通ってかまたは導管および接続金具(fitting)を通って伝達され得る。
【0058】
本明細書中で使用される「双極板」なる用語は、1つのセルのためのカソードまたはカソード流動場およびスタック内の隣接するセルのためのアノードまたはアノード流動場として役立つ単一の導電性板である。
【0059】
本明細書中で使用される「隣接するセルのアノード間の最短イオン伝導経路」なる用語は、所与のセルのアノードからそして隣接するセルのアノードまでの最短イオン伝導経路を意味する。
【0060】
「水電解装置」なる用語は、電気を使用して水を分解し水素を製造するためのデバイスである。
【0061】
アルカリ水電解装置またはアニオン交換膜(AEM)水電解装置の全てではないにせよ大部分の実施形態において、水素は以下の反応を通して生成される:
2HO+2e→H+2OH
【0062】
プロトン交換膜(PEM)電解装置の全てではないにせよ大部分の実施形態において、水素は以下の反応を通して生成される:
2H+2e→H
【実施例
【0063】
具体例1
この実施例の目的は、0.1S/cm超の伝導率を有する溶液が補給されるときに低い分流を有する電解装置設計を提供することにある。
【0064】
図1Aは、3セル電解装置スタックの略図を示す。スタックは、以下のものからなる:
(a)アノード101aおよびカソード101cを含む電解装置セル101、
(b)アノード102aおよびカソード102cを含む電解装置セル102、
(c)アノード103aおよびカソード103cを含む電解装置セル103、
(d)アノード入口マニホルド110、
(e)それぞれのアノード101a、102aおよび103aに対してアノード入口マニホルド110を連結するパイプ111、112および113、
(f)カソード入口マニホルド120、
(g)カソード101cにカソード入口マニホルド120を連結するパイプ121。カソード入口マニホルド120をそれぞれのカソード102cおよび103cに連結する、122および123と番号付けされたパイプ(図1Aでは隠れている)も存在する。
(h)アノード出口マニホルド130、
(i)アノード出口マニホルド130をそれぞれのアノード101a、102aおよび103aに連結するパイプ131、132および133、
(j)カソード出口マニホルド140および、
(k)カソード出口マニホルド140をそれぞれのカソード101c、102cおよび103cに連結するパイプ141、142、および143。
【0065】
カソード101cは、アノード102aと電気的接触状態にある。カソード102cはアノード103aと電気的接触状態にある。図1Aは、隣接するアノードおよびカソード(例えばカソード101cおよびアノード102a)を別個の構成要素として示しているが、隣接する構成要素を単一の双極板に組合せることができる。
【0066】
図2は、図1A中に例示されたスタック内のセルのうちの1つのセルを分解したものを例示する。セル30は、剛性流動場板34および36の間に間置された膜電極アセンブリ32を含む。膜電極アセンブリ32は、2つのガス拡散層(GDL)、すなわちアノードGDL44およびカソードGDL46の間に間置されたアニオン交換膜42を含む。アノードGDL44およびカソードGDL46は典型的に、炭素繊維紙またはニッケル繊維紙などの多孔質導電性シート材料で形成され、平面状の主要表面を有する。アノードGDL44およびカソードGDL46は、膜42との界面でそれらの主要表面上に配置された触媒材料の薄層を有し、これらの表面を電気化学的に活性なものにしている。アノード流動場板34は、膜電極アセンブリ32に対面するその主要表面の中に形成された少なくとも1つの開放面チャネル34aを有する。同様にして、カソード流動場板36は、膜電極アセンブリ32に対面するその主要表面の中に形成された少なくとも1つの開放面チャネル36aを有する。アノードGDL44とカソードGDL46の協働する表面に接して組立てられた場合、チャネル34aおよび36aは、それぞれアノード反応物質(燃料)流およびカソード反応物質(酸化剤)流のための反応物質の流動場通路を形成する。
【0067】
セルは同様に、GDLと流動板の間に、金属メッシュ、有孔金属シートまたは金属発泡体を格納し得る。最適な開口部は1~20mmである。流動板は、その本体内に機械加工された流路を有することができ、あるいは、平坦な板を使用することができ、金属メッシュまたは金属板は流路として役立つ。
【0068】
代替的には、膜の上に直接的に触媒材料を被着させることができる。
【0069】
AEM水電解装置の場合、アニオン交換膜42(図2参照)は、正荷電アミンおよび炭化水素骨格、例えば非限定的に:
i)スチレンとクロロメチルスチレンのコポリマ;
ii)ベンゼン環を含有するポリマ;
iii)フェニレン基を含有するポリマ;
iv)本質的に炭素および水素で構成されているポリマ鎖;および
v)本質的に炭素、水素およびフッ素で構成されたポリマ鎖;
を含む。典型的には、イミダゾリウム、ピペリジニウムおよび/またはピリジニウムなどの正荷電環状アミンが利用される。
【0070】
特許文献4は、カソード上の触媒層はいかなるイオノマーも含有すべきでないことを教示しているが、イオノマーが使用された場合、本発明の電解装置内ではより優れた性能が見られた。膜42およびアノードGDL44およびカソードGDL46が共に結合されてユニット化電極アセンブリ(UEA)を形成する場合にも同様に、より優れた性能が見られた。
【0071】
動作中、水と塩基を含む混合物がアノードおよび/またはカソード入口マニホルド内に補給される。溶液は、セルを通って流動し、出口マニホルドを通って外に出る。溶液は典型的に、8超のpHを有し、海水、塩分および他の構成成分を含有し得る。
【0072】
1A/cm以上の高電流が望まれる場合、溶液は少なくとも12のpHを有していなければならない。
【0073】
経験的に、溶液の伝導率が0.05S/cm超である場合に好適な性能が得られ、溶液の伝導率が0.1~0.4S/cmである場合に最高の性能が得られる、ということが発見された。
【0074】
ひとたび溶液が流動するようになると、セルのうちの1つのセルのアノード(例えばアノード101a)と異なるセルのカソード(例えばカソード103c)の間に電圧が印加され、所望の電気化学的反応が促進される。AEM水電解装置内では、カソードにおいて以下の反応が発生する:
2HO+2e→H+2OH(1)
このとき、水酸基は膜内を通過し、ここでこれらはアノードにおいて反応して酸素を生成する:
2OH→1/2O+HO+2e(2)
正味の反応は、以下のようになる:
O→1/2O+H(3)
【0075】
セルに供給された電流の全てが水素および酸素の製造に使われることが極めて望ましいと思われるが、実際には、「分流」と呼ばれる電流の一部分がMEAを迂回する。例えば、図1Aにおいてアノード入口マニホルド110内に流入する溶液が良導体である場合には、電流はパイプ111から出てアノード101aからアノード入口マニホルド110内へ流動し、パイプ112内に戻り、その後、セル101内のMEAを迂回してアノード102aへと流動することができる。MEAを迂回する電流は、いかなる反応生成物も生成しないことから無駄になり、したがって、分流を除去または軽減することが望ましい。
【0076】
先行特許文献には、電解装置内で分流を回避するためのいくつかの方法が記載されている。概して、このアプローチは、隣接するセル間の流動経路内にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または他の疎水性材料を含み入れることであった。流動経路内で電気化学プロセス中に生成された気泡が増大し、それによって分流が遮断される。このようなアプローチは、セルの入口および出口近くで充分なガスが発達する場合には機能するが、商業規模のAEM水電解装置については、セルのカソードおよびアノードへの入口近くにはほとんどまたは全く気泡が存在せず、溶液の流速が高く気泡が蓄積しないことから、このアプローチは機能しない。したがって、分流を削減するための異なるアプローチが求められる。
【0077】
図1AのAEM電解装置設計は、分流を削減するために以下の2つの異なるアプローチを利用する:
(a)連結用管(パイプ)111、112、113、121、122、123、131、132、133、141、142および143は全て非導電材料で形成され、こうして金属を介した電子伝導による分流の経路を除去する。
(b)マニホルドを通って戻るイオン経路は長く、こうしてアノード101aからアノード102aまで流動するイオンは極めて少ないものとなる。
【0078】
図3は、セル101および102のアノード間の最短イオン伝導経路を例示している。この場合、最短伝導経路200は、接続金具近くのアノード上の点からパイプ111を通って下へ、アノード入口マニホルド110を通り、パイプ112を通って上へ戻るように延在する。
【0079】
スタック内の各セルについて、スタック内の異なるセルのアノード間の最短イオン伝導経路(Lano)の長さが、
ano>10σsol/σmem(4)
である場合、セル電流の5%未満まで分流を低下させることができる、ということが発見された。なお式中、tは膜厚みであり、σsolはS/cm単位で表わしたアノード内に補給中の溶液の伝導率であり、σmemは、動作温度で溶液中において測定された膜のイオン伝導率である。典型的に、σmemは60℃で1MのKOH中において測定される。
【0080】
anoは、以下の方法によって計算される:
(a)セルを付番する:1、2、3、・・・;
(b)全てのセル対のリストを作成する;
(c)セルiのアノードとセルjのアノードの間の最短イオン伝導経路(Lano(i,j)、)を、スタック内の全てのセル対について計算する;
(d)Lanoは、計算された全てのLano(i,j)値の最小値に等しい。
【0081】
例えば、スタックが1、2、3および4と付番された4つのセルを有する場合、6つのセル対(1,2)、(1,3)、(1,4)、(2,3)、(2,4)、(3,4)が存在する。このとき、Lano(1,2)、Lano(1,3)、Lano(1,4)、Lano(2,3)、Lano(2,4)、Lano(3,4)が計算または測定されるであろう。Lano=最小値(Lano(1,2)、Lano(1,3)、Lano(1,4)、Lano(2,3)、Lano(2,4)、Lano(3,4))。
【0082】
同様にして、隣接するアノード間の分流は典型的に:
ano>50σsol/σmem(5)
である場合、セル電流の1%未満となる。
【0083】
カソード間の分流も同様に考慮しなければならない。隣接するカソード間の分流は:
cat>10σsol/σmem(6)
である場合、セル電流の5%未満となる。なお式中、Lcatは、以下の方法によって計算されるスタック内の2つの異なるセルのカソード間の最短イオン伝導経路の長さである:
(a)セルを付番する:1、2、3・・・;
(b)全てのセル対のリストを作成する;
(c)セルiのカソードとセルjのカソードの間の最短イオン伝導経路(Lcat(i,j))を、スタック内の全てのセル対について計算する;
(d)Lcatは、計算された全てのLcat(i,j)値の最小値に等しい。
【0084】
同様にして、隣接するカソード間の分流は:
cat>50σsol/σmem(7)
である場合、セル電流の1%未満となる。
【0085】
図4は、実際のAEM水電解装置の例示である。電解装置は、セル201、202および203をカソードヘッダ220に連結するための長い管221、222および223を有することに留意されたい。長い管は、分流を最小限に抑えるかまたは少なくとも軽減する。
【0086】
具体例2
図1Aのアノード入口マニホルド110は、スタックの外部にある。具体例2は、入口マニホルドがスタックの内部にあり金属板から絶縁されているAEM水電解装置の代替的設計を記述している。
【0087】
図5は、内部入口マニホルドを伴うこのような設計を例示している。図示されているスタックは、セル301、302、303、304および305を含む。セル305は、以下のものを含む:
(a)所与のセルのアノードおよび隣接するセルのカソードとして役立つ双極板355;
(b)プラスチックフレーム365;
(c)アノードヘッダ310として役立つプラスチックフレームを通る開口部;
(d)アノードヘッダ310とアノードGDL375の間の連結部として役立つノッチ315;
(e)アノードヘッダ310およびノッチ315から双極板355を隔離する絶縁用ガスケット385;および
(f)カソードヘッダとして役立つ第2の孔320。
【0088】
このような場合、最短イオン伝導経路は隣接するアノード/双極板の間にない可能性がある。その代りに、最短イオン伝導経路は、1つのセル内のアノードGDLと第2のセル内のアノードGDLの間にあり得る。その場合、等式4、5、6および7を以下の等式で置き換える必要がある:
GDLA>10*t*σsol/σmem (8)
GDLA>50*t*σsol/σmem (9)
GDLC>10*t*σsol/σmem (10)
GDLC>50*t*σsol/σmem (11)
なお式中、LGDLAは、スタック内の1つのセルのアノードGDLとスタック内の別のセル中のアノードGDLの間の最短イオン伝導経路の長さである。LGDLCは、スタック内の1つのセルのカソードGDLとスタック内の別のセル内のカソードGDLの間の最短イオン伝導経路の長さである。
【0089】
GDLAは、以下の方法によって計算される:
(a)セルを付番する:1、2、3、・・・;
(b)全てのセル対のリストを作成する;
(c)セルiのアノードGDLとセルjのアノードGDLの間の最短イオン伝導経路(LGDLA(i,j))を、スタック内の全てのセル対について計算する;
(d)LGDLAは、計算された全てのLGDLA(i,j)値の最小値に等しい。
【0090】
GDLCは、以下の方法によって計算される:
(a)セルを付番する:1、2、3、・・・;
(b)全てのセル対のリストを作成する;
(c)セルiのカソードGDLとセルjのカソードGDLの間の最短イオン伝導経路(LGDLC(i,j))を、スタック内の全てのセル対について計算する;
(d)LGDLCは、計算された全てのLGDLC(i,j)値の最小値に等しい。
【0091】
等式9および11が満たされた場合、分流は総セル電流の1%未満となる。
【0092】
本発明の特定の要素、実施形態および利用分野が図示され説明されてきたが、本発明はそれに限定されず、当業者であれば特に以上の教示に照らして本開示の範囲から逸脱することなく修正を行なうことができることが理解される。
【0093】
以上に示された実施例は、単なる例示であり、当該電気化学デバイスの考えられる全ての実施形態、利用分野または修正の網羅的リストであるように意図されたものではない。したがって、当業者には、本発明の範囲または精神から逸脱することなく本発明の記述された方法およびシステムのさまざまな修正および変形形態が明らかとなるものである。本発明は、具体的実施形態に関連して説明されてきたものの、請求されている通りの本発明はこのような具体的実施形態に不当に限定されるべきではないということを理解すべきである。実際、本発明の実施を目的とする、記載されている態様のさまざまな修正が化学技術または関連分野の当業者にとって明白であり、添付クレームの範囲内に入るように意図されている。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】