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特表2024-515965運動量分流を用いる金属ストリップ連続鋳造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】運動量分流を用いる金属ストリップ連続鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/06 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
B22D11/06 330B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565615
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 CN2022107129
(87)【国際公開番号】W WO2023109125
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】202111554142.9
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516265780
【氏名又は名称】北京科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】周 成
(72)【発明者】
【氏名】玄 東坡
(72)【発明者】
【氏名】周 游
(72)【発明者】
【氏名】姜 天亮
(72)【発明者】
【氏名】朱 必記
(72)【発明者】
【氏名】範 文浩
(72)【発明者】
【氏名】張 志豪
(72)【発明者】
【氏名】謝 建新
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004DB03
4E004SA01
(57)【要約】
運動量分流を用いる金属ストリップ連続鋳造方法であって、分流装置(2)の位置を調整して、ダブルロールストリップ連続鋳造設備を起動するステップと、溶融金属(3)が分流装置を流れてから初期運動量を有する均一なシート状溶融金属流(4)を形成するステップと、シート状溶融金属流が50~100℃の過熱度及び0.5~2m/sの初期速度で溶融池(5)内に入り、分流装置と溶融池とが間隔を置いて設置されるステップと、溶融金属の初期速度の作用によって、溶融池内で2つの冷却ロール面に隣接し且つ運動量撹拌作用を有する渦流を形成するステップと、2つの冷却ロールの回転につれて、渦流の運動量撹拌作用によって溶融金属の凝固を完了するステップと、を含む。該方法は、溶融金属の運動エネルギーを利用して、溶融池内で冷却ロールのロール面に隣接し且つ運動量撹拌作用を有する渦流を形成し、過熱度が高くとも50~100℃に達する際に等軸晶を製造することができ、且つ更に等軸晶の比率を100%まで向上させることができ、これにより、結晶粒を微細化して偏析を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動量分流を用いる金属ストリップ連続鋳造方法であって、
分流装置の位置を調整して、ダブルロールストリップ連続鋳造設備を起動するステップ(1)と、
溶融金属が分流装置に入って、分流装置を流れてから軸線方向において均一で初期運動量を有するシート状溶融金属流を形成するステップ(2)と、
シート状溶融金属流が50~100℃の過熱度及び0.5~2m/sの初期速度で溶融池内に入り、分流装置と溶融池とが間隔を置いて設置され、分流装置を溶融池に接触させないステップ(3)と、
溶融金属の初期速度の作用によって、溶融池内で2つの冷却ロール面に隣接し且つ運動量撹拌作用を有する渦流を形成するステップ(4)と、
2つの冷却ロールの回転につれて、渦流の運動量撹拌作用によって溶融金属の凝固を完了して、金属ストリップが製造され、金属ストリップの凝固組織が均一で微細な等軸晶組織であるステップ(5)と、を含むことを特徴とする運動量分流を用いる金属ストリップ連続鋳造方法。
【請求項2】
前記ダブルロールストリップ連続鋳造設備は傾斜式ダブルロールストリップ連続鋳造設備であり、上部冷却ロール及び下部冷却ロールを備え、前記上部冷却ロールと前記下部冷却ロールは傾斜して配置され且つそれらの間にロールギャップが形成され、前記下部冷却ロールの上方に前記分流装置が設けられることを特徴とする請求項1に記載の金属ストリップ連続鋳造方法。
【請求項3】
前記分流装置は、
溶融金属を受けるための上向きに開口する入口部分と、
シート状溶融金属流を送り出すための連続したストリップ状出口が底部に設けられる前記入口部分に接続される垂直出口部分と、
シート状溶融金属流を流出するように案内するための垂直出口部分の片側に接続される導流板と、を備えることを特徴とする請求項2に記載の金属ストリップ連続鋳造方法。
【請求項4】
前記垂直出口部分の長さが前記垂直出口部分の厚さの3~10倍であり、前記導流板の長さが前記垂直出口部分の厚さの5~10倍であり、前記導流板と前記垂直出口部分との交点から前記垂直出口部分の底部までの距離が前記垂直出口部分の厚さの1.5~3倍であることを特徴とする請求項3に記載の金属ストリップ連続鋳造方法。
【請求項5】
前記垂直出口部分の長さが前記垂直出口部分の厚さの5~7倍であり、前記導流板の長さが前記垂直出口部分の厚さの7~8倍であり、前記導流板と前記垂直出口部分との交点から前記垂直出口部分の底部までの距離が前記垂直出口部分の厚さの2~2.5倍であることを特徴とする請求項4に記載の金属ストリップ連続鋳造方法。
【請求項6】
前記分流装置の出口端点と下部冷却ロールの軸心との接続線と垂直線とがなす角度αは0~70°であり、2つの冷却ロールの軸心の接続線と垂直線とがなす角度βは30~90°であり、角度α<角度βであり、前記導流板の板面と水平線とがなす角度γと角度αとの差分は0~5°であることを特徴とする請求項4又は5に記載の金属ストリップ連続鋳造方法。
【請求項7】
前記分流装置の出口端点と下部冷却ロールの軸心との接続線と垂直線とがなす角度αは20~60°であり、2つの冷却ロールの軸心の接続線と垂直線とがなす角度βは60~80°であり、角度α<角度βであり、前記導流板の板面と水平線とがなす角度γと角度αとの差分は0~5°であることを特徴とする請求項6に記載の金属ストリップ連続鋳造方法。
【請求項8】
前記ダブルロールストリップ連続鋳造設備は垂直式ダブルロールストリップ連続鋳造設備であり、水平に配置される第1冷却ロール及び第2冷却ロールを備え、前記第1冷却ロールと前記第2冷却ロールは中央対称位置の上方に分流装置が設けられ且つそれらの間にロールギャップが形成されることを特徴とする請求項1に記載の金属ストリップ連続鋳造方法。
【請求項9】
前記分流装置は、
溶融金属を受けるための上向きに開口する入口部分と、
シート状溶融金属流を送り出すための連続したストリップ状出口が底部に設けられる前記入口部分に接続される垂直出口部分と、を備えることを特徴とする請求項8に記載の金属ストリップ連続鋳造方法。
【請求項10】
前記垂直出口部分の長さが前記垂直出口部分の厚さの3~10倍であり、好ましくは5~7倍であることを特徴とする請求項9に記載の金属ストリップ連続鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本開示は、2021年12月17日に中国特許庁に提出した中国特許出願第202111554142.9号、発明の名称「運動量分流を用いる金属ストリップ連続鋳造方法」の優先権を主張し、その全ての内容が援用により本開示に取り込まれる。
【0002】
本願は運動量分流を用いる金属ストリップ連続鋳造方法に関し、金属ストリップ連続鋳造の技術分野に適用される。
【背景技術】
【0003】
各方向における寸法の差が比較的小さな結晶粒は等軸晶と呼ばれることに対応して、各方向における寸法の差が比較的大きな結晶粒は柱状結晶と呼ばれる。等軸晶の性能が均一であり、柱状結晶の性能が指向性を有し、金属材料が緻密で均一な等軸晶組織を得れば、金属材料の力学的性質及び工学的性質を向上させることができる。
【0004】
ダブルロールストリップ連続鋳造はニアネットシェイプ連続鋳造技術であり、該技術を用いれば、完成品の厚さに近いストリップ素材を製造して金属ストリップの短工程生産を実現することができ、該プロセスは生産工程を大幅に簡素化し、生産ラインの長さを短縮し、これにより、設備への投資を削減し、コストを著しく低減することができるだけでなく、エネルギーを節約して環境を保護することもでき、市場の見込みが極めて良い。ダブルロールストリップ連続鋳造は2つの水冷ロールを運動型晶析装置として用い、鋳造機の配置形式は鋳造ストリップの運動方向によって、冷却ロールが垂直に配置される水平式ダブルロールストリップ連続鋳造設備、冷却ロールが水平に配置される垂直式ダブルロールストリップ連続鋳造設備、及び冷却ロールが傾斜して配置される傾斜式ダブルロールストリップ連続鋳造設備に分けられてもよい。従来技術において、水平式ダブルロールストリップ連続鋳造過程では、ローヘッドの溶融金属が供給ノズルを通っていずれも層流形式で溶融池に入り、垂直式ダブルロールストリップ連続鋳造過程では、溶融金属が浸漬式分流器を通って溶融池に入って、様々な措置を取って溶融金属の運動エネルギーを低減して溶融池における乱流を抑制し、傾斜式ダブルロールストリップ連続鋳造過程では、溶融金属も層流形式で溶融池に入る。
【0005】
中国特許CN103464702Aには金属薄板ニアネットシェイプ成形装置及びその成形方法が開示されており、該金属薄板ニアネットシェイプ成形装置は傾斜して配置されて内部が水冷されて逆方向に回転される1対の鋳造圧延ロールを有し、下部鋳造圧延ロールの片側に溶融金属分流装置が設置され、分流装置により溶融金属を下部鋳造圧延ロールのロール面に均一且つ平らに敷設し、その後、溶融金属が上下部鋳造圧延ロールの間に溶融池を形成し、更に溶融金属の凝固及び圧延を完了し、金属薄板のニアネットシェイプ成形を実現する。該特許において、溶融金属が下部鋳造圧延ロールのロール面に均一且つ平らに敷設されるため、運動量撹拌作用を有する渦流を形成することができない。
【0006】
米国特許US7604039B2には分流装置が開示されており、取鍋内の溶鋼が水口を通って中間容器に入り、次に耐火設備を通って分流器に入り、分流器の底部側面に複数の分流出口があり、該分流装置の分流器ノズルを溶鋼内に浸漬し、且つ分流器出口での溶鋼の流速をできる限り低減して、溶融池の液面及びメニスカスの波動を緩和して、溶融池の安定化を制御する。分流器に複数の分流出口があるため、溶鋼の軸方向における分流が不均一になってしまい、これにより、溶融池内の温度場分布を不均一にし、ストリップにクラックが発生してしまう。それと同時に、溶鋼がゆっくりと比較的大きな溶融池に入るため、運動量撹拌作用を有する渦流を形成することができない。溶鋼の温度更新速度が比較的遅く、溶融池内の温度勾配が比較的大きく、一方向成長条件が十分で、柱状結晶を主とする凝固組織を形成しやすく、固体相転移組織中の結晶粒も比較的粗大であるため、微細な等軸晶組織を得てストリップ製品の力学的性質に対する要件を満足するように、圧延変形などの後続の工程により改善する必要がある。鋳造ストリップ凝固組織中の等軸晶の比率を増加できれば、結晶粒を微細化して、偏析を改善して、後続の工程の負荷を軽減することとなる。
【0007】
中国特許CN100493745Cにはダブルロールストリップ連続鋳造により等軸晶率を向上させる方法が開示されており、鋳込みプロセスにおいて、溶鋼内にアルゴンガスと水素ガスとの混合ガスを導入することにより酸素分圧を低減し、これにより、溶鋼の過冷度を降下して、溶鋼の凝固条件を変えて、溶鋼とキャスティングロールとの液体における接触時間を延長させ、従って、キャスティングロールと凝固素材殻との間の熱伝導を向上させる。該方法は薄板の表面品質を向上させることができ、且つ、混合ガスの比率を制御することにより、更に薄板の凝固組織を制御して薄板の等軸晶の比率を向上させて結晶粒を微細化することができる。該方法の欠陥は、設備がより複雑で、操作しにくく、且つ該方法における混合ガスと溶鋼及び回転するキャスティングロールのロール面との部分接触状態を制御しにくく、溶鋼とキャスティングロールとの間の熱伝導が不安定になり、それによりストリップ素材の組織を不均一にすることにある。該方法は等軸晶領域を拡大することができるが、100%等軸晶組織の薄板を得ることができない。
【0008】
中国特許CN102069167Aにはダブルロールストリップ連続鋳造技術により方向性ケイ素鋼板の等軸晶ストリップ素材を製造する方法が開示されており、該方法は、ストリップ連続鋳造過程における溶鋼過熱度、溶融池内の溶鋼とキャスティングロールのロール面との接触弧長及び接触時間などの重要なプロセスパラメータを制御することにより、等軸結晶粒を得ることを含む。該方法の欠陥は、溶鋼過熱度を15~30℃に制御する必要があり、温度制御範囲がより狭く、制御難度を増加させ、且つ得られた等軸晶組織が依然として粗大であることにある。ある程度まで鋳込むとき、取鍋内の溶鋼温度の降下につれて、溶鋼が中間容器及び水口に凝固しやすく、又は凝固部分が長すぎて圧延停止事故が起こってしまう一方、過熱度が上記温度範囲よりも高い場合、該特許における溶融池内の撹拌効果が明らかではないため、等軸晶の成長に不利である。該特許において15~30℃の条件下で等軸晶ストリップが製造される理由は、初期の過熱度が比較的低く、過冷度が比較的高いので、核生成率が増加し、更に、核生成率の増加幅が大きくないので、より粗大な等軸晶組織が形成されるためである。当業者であれば分かるように、過熱度が50℃よりも高い場合、製造された金属ストリップの組織が等軸晶組織ではなく柱状結晶組織であると見なされる。
【0009】
以上から分かるように、従来技術には、溶融金属の運動エネルギーを十分に利用して溶融池内に冷却ロールのロール面に隣接する渦流を形成することにより等軸晶組織を製造する技術的示唆は存在しない。それとは逆に、従来技術において、分流器に入った溶融金属液体が波動することを回避するために、一般的に分流ノズルを金属液体中に浸漬し又は微弱な横流で分流ノズルに入り、等軸晶組織を製造できても、過熱度を30℃以下に制御する必要もあり、且つ製造された等軸晶組織も比較的粗大である。従って、従来技術において、より高い過熱度で100%等軸晶組織を製造できる金属ストリップ連続鋳造方法及び設備を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願の目的は運動量分流を用いる金属ストリップ連続鋳造方法を提供することであり、溶融金属の運動エネルギーを十分に利用して、溶融池内で冷却ロールのロール面に隣接し且つ運動量撹拌作用を有する渦流を形成し、過熱度が高くとも50~100℃に達する際に等軸晶ストリップを製造することができ、且つ更に鋳造ストリップ凝固組織中の等軸晶の比率を100%まで向上させることができ、これにより、結晶粒を微細化して偏析を改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願は運動量分流を用いる金属ストリップ連続鋳造方法に関し、
分流装置の位置を調整して、ダブルロールストリップ連続鋳造設備を起動するステップ(1)と、
溶融金属が分流装置に入って、分流装置を流れてから軸線方向において均一で初期運動量を有するシート状溶融金属流を形成するステップ(2)と、
シート状溶融金属流が50~100℃の過熱度及び0.5~2m/sの初期速度で溶融池内に入り、分流装置と溶融池とが間隔を置いて設置され、分流装置を溶融池に接触させないステップ(3)と、
溶融金属の初期速度の作用によって、溶融池内で2つの冷却ロール面に隣接し且つ運動量撹拌作用を有する渦流を形成するステップ(4)と、
2つの冷却ロールの回転につれて、渦流の運動量撹拌作用によって溶融金属の凝固を完了して、金属ストリップが製造され、金属ストリップの凝固組織が均一で微細な等軸晶組織であるステップ(5)と、を含む。
【0012】
前記ダブルロールストリップ連続鋳造設備は傾斜式ダブルロールストリップ連続鋳造設備であってもよく、上部冷却ロール及び下部冷却ロールを備え、前記上部冷却ロールと前記下部冷却ロールは傾斜して配置され且つそれらの間にロールギャップが形成され、前記下部冷却ロールの上方に前記分流装置が設けられる。前記分流装置は、溶融金属を受けるための上向きに開口する入口部分と、シート状溶融金属流を送り出すための連続したストリップ状出口が底部に設けられる入口部分に接続される垂直出口部分と、シート状溶融金属流を流出するように案内するための垂直出口部分の片側に接続される導流板と、を備えてもよい。前記垂直出口部分の長さは前記垂直出口部分の厚さの3~10倍であってもよく、前記導流板の長さは前記垂直出口部分の厚さの5~10倍であってもよく、前記導流板と前記垂直出口部分との交点から前記垂直出口部分の底部までの距離は前記垂直出口部分の厚さの1.5~3倍であってもよい。前記分流装置の出口端点と下部冷却ロールの軸心との接続線と垂直線とがなす角度αは0~70°であってもよく、2つの冷却ロールの軸心の接続線と垂直線とがなす角度βは30~90°であってもよく、角度α<角度βであり、前記導流板の板面と水平線とがなす角度γと角度αとの差分は0~5°であってもよい。
【0013】
前記ダブルロールストリップ連続鋳造設備は更に垂直式ダブルロールストリップ連続鋳造設備であってもよく、水平に配置される第1冷却ロール及び第2冷却ロールを備え、前記第1冷却ロールと前記第2冷却ロールは中央対称位置の上方に分流装置が設けられ且つそれらの間にロールギャップが形成される。前記分流装置は、溶融金属を受けるための上向きに開口する入口部分と、シート状溶融金属流を送り出すための連続したストリップ状出口が底部に設けられる前記入口部分に接続される垂直出口部分と、を備えてもよい。前記垂直出口部分の長さは前記垂直出口部分の厚さの3~10倍であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本願に係る運動量分流を用いる金属ストリップ連続鋳造方法は、運動量分流の方式を用い、即ち分流装置が軸線方向において均一で初期運動量を有するシート状溶融金属流を供給し、溶融金属流が溶融池に入る際の運動量が比較的大きいように確保し、溶融池内の運動量撹拌効果が明らかである。溶融池内の渦流の比較的高い運動量撹拌効果によって等軸晶組織の形成を促進し、50~100℃の過熱度で等軸晶ストリップを製造することができ、且つ100%の等軸晶状組織を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1の金属ストリップ連続鋳造設備の模式図である。
図2】実施例1の分流装置の斜視図である。
図3】実施例1の分流装置の断面図である。
図4図3のA-A断面図である。
図5】実施例1の運動量分流及び溶融池における渦流を示す模式図である。
図6】実施例2の金属ストリップ連続鋳造設備の模式図である。
図7】実施例2の分流装置の斜視図である。
図8】実施例2の分流装置の断面図である。
図9図8のB-B断面図である。
図10】実施例2の運動量分流及び溶融池における渦流を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下に図面を参照しながら本願の実施例を詳しく説明する。なお、衝突しない限り、本願の実施例及び実施例の特徴は互いに任意に組み合わせられることができる。
【0017】
本願は運動量分流を用いる金属ストリップ連続鋳造方法に関し、
分流装置の位置を調整して、ダブルロールストリップ連続鋳造設備を起動するステップ(1)と、
溶融金属が分流装置に入って、分流装置を流れてから軸線方向において均一で初期運動量を有するシート状溶融金属流を形成し、ここの軸線方向がダブルロールの軸線方向を指すステップ(2)と、
シート状溶融金属流が50~100℃の過熱度及び0.5~2m/sの初期速度で溶融池内に入り、分流装置と溶融池とが間隔を置いて設置され、分流装置を溶融池に接触させないステップ(3)と、
溶融金属の初期速度の作用によって、溶融池内で2つの冷却ロール面に隣接し且つ運動量撹拌作用を有する渦流を形成するステップ(4)と、
2つの冷却ロールの回転につれて、渦流の運動量撹拌作用によって溶融金属の凝固を完了して、金属ストリップが製造され、金属ストリップの凝固組織が均一で微細な等軸晶組織であるステップ(5)と、を含む。
【0018】
本願の運動量分流方式は溶融金属が比較的大きな初期速度を有する必要があり、更に溶融池に入る運動量が比較的大きいように確保し、溶融池内の運動量撹拌効果が明らかであり、溶融池内の渦流の比較的高い運動量撹拌効果によって等軸晶組織の形成を促進する。渦流の運動量撹拌効果は、溶融金属と冷却ロールとの熱交換を強化することに寄与し、溶融池の各部分の温度の均一化、温度勾配の低減、過冷度及び核生成率の向上に寄与し、渦流の運動量撹拌は樹枝状結晶を壊して柱状結晶の形成及び成長を抑制することにより結晶粒を微細化することができ、渦流の運動量撹拌は更に成分をより均一にすることにより偏析を改善することができる。渦流の成長が十分に行われれば行われるほど、凝固組織の微細化、等軸晶の比率の向上及び偏析の改善効果が良くなる。このような運動量撹拌効果は50~100℃の過熱度で等軸晶を形成することが実現され、中間容器及び水口が詰まることを効果的に防止することができる。それと同時に、溶融池に入るシート状溶融金属流が均一で連続するため、溶融池内に形成した渦流を冷却ロールの軸線方向に沿って均一に維持させ、これにより、均一な凝固を実現して表面品質を改善する。
【0019】
<実施例1>
図1~5に示すように、本願に係る運動量分流を用いる金属ストリップ連続鋳造方法は傾斜式ダブルロールストリップ連続鋳造設備により実現されてもよく、該方法は、
分流装置の位置を調整して、ダブルロールストリップ連続鋳造設備を起動するステップ(1)と、
溶融金属が分流装置に入って、分流装置を流れてから軸線方向において均一で初期運動量を有するシート状溶融金属流を形成するステップ(2)と、
溶融金属が50~100℃の過熱度及び0.5~2m/sの初期速度で下部ロールのロール面に沿って2つの冷却ロールと2つのサイドシールとで構成される溶融池に入り、分流装置と溶融池とが間隔を置いて設置され、分流装置を溶融池に接触させないステップ(3)と、
溶融金属の初期速度の作用によって、溶融池内で2つの冷却ロール面に隣接し且つ運動量撹拌作用を有する渦流を形成するステップ(4)と、
2つの冷却ロールの回転につれて、渦流の運動量撹拌作用によって溶融金属の凝固を完了して、金属ストリップが製造され、金属ストリップの凝固組織が均一で微細な等軸晶組織であるステップ(5)と、を含む。
【0020】
図1~4に示すように、傾斜式ダブルロールストリップ連続鋳造設備は下方に位置する第1冷却ロール1と、上方に位置する第2冷却ロール6とを備え、第1冷却ロール1と第2冷却ロール6は傾斜して配置され且つそれらの間にロールギャップが形成され、第1冷却ロール1の上方に分流装置2が設けられ、溶融金属3が分流装置2から流出して軸線方向において均一で初期運動量を有するシート状溶融金属流4を形成する。分流装置2の出口端点と下部ロールの軸心との接続線と垂直線とがなす角度αは0~70°であり、好ましくは20~60°であり、例えば40°であってもよく、2つの冷却ロールの軸心の接続線と垂直線とがなす角度βは30~90°であり、好ましくは60~80°であり、例えば70°であってもよく、且つ角度α<角度βである。初期運動量は中間容器又はシュートの液位高さ及び分流装置間の高さによって調整可能であり、渦流の十分な成長を確保するために、分流装置を溶融池に接触しない。シート状溶融金属流は0.5~2m/sの初期速度で第1冷却ロールのロール面に沿って第1冷却ロール1と第2冷却ロール6との間のロールギャップに入って溶融池5を形成し、その後で入ったシート状溶融金属流は溶融池5において渦流運動量を形成する。第1冷却ロール1と第2冷却ロール6は逆方向で同期回転し、ロール速度が0.1~3m/sであってもよい。渦流の運動量撹拌作用によって溶融金属の凝固を完了し、製造された金属ストリップ7を第1冷却ロール1と第2冷却ロール6との間のロールギャップから引き出し、金属ストリップ7の凝固組織が均一で微細な等軸晶組織である。
【0021】
分流装置2は、中間容器からの溶融金属を受けるための上向きに開口する入口部分8と、シート状溶融金属流を送り出すための連続したストリップ状出口が底部に設けられる入口部分8に接続される垂直出口部分9と、シート状溶融金属流の流出方向を案内するための垂直出口部分9の片側に接続される導流板10と、を備える。垂直出口部分9の長さlは垂直出口部分9の厚さtの3~10倍であり、好ましくは5~7倍であり、導流板10長さlは垂直出口部分9の厚さtの5~10倍であり、好ましくは7~8倍であり、導流板10と垂直出口部分9との交点から垂直出口部分9の底部までの距離bは垂直出口部分9の厚さtの1.5~3倍であり、好ましくは2~2.5倍であり、導流板10の板面と水平線とがなす角度γ=α+δであり、δがαとγとの角度偏差量であり、0~5°であってもよい。上記寸法関係及び角度関係の組合せ設定によって、導流板に沿ってロール面に流れ込んだシート状溶融金属流が溶融池内で良好な運動量撹拌効果を形成できるようにすることができ、100%等軸晶の製造に必要な渦流撹拌を実現する。
【0022】
比較実例では、溶融金属は70℃の過熱度及び1m/sの初期速度で下部ロールのロール面に沿って溶融池空間に入って、溶融池内で2つの冷却ロール面に隣接し且つ運動量撹拌作用を有する渦流を形成し、渦流の運動量撹拌作用によって溶融金属の凝固を完了して、金属ストリップが製造され、その凝固組織が均一で微細な100%等軸晶組織であり、結晶粒の寸法が80μmである。
【0023】
<実施例2>
図6~10に示すように、本願に係る運動量分流を用いる金属ストリップ連続鋳造方法は更に垂直式ダブルロールストリップ連続鋳造設備により実現されてもよい。該方法は、
分流装置の位置を調整して、ダブルロールストリップ連続鋳造設備を起動するステップ(1)と、
溶融金属が中間容器又はシュートを通って分流装置に入って、分流装置を流れてから軸線方向において均一で初期運動量を有するシート状溶融金属流を形成するステップ(2)と、
溶融金属が50~100℃の過熱度及び0.5~2m/sの初期速度で2つの冷却ロールの隣接するロール面の対称面に沿って2つの冷却ロールと2つのサイドシールとで構成される溶融池に入り、分流装置と溶融池とが間隔を置いて設置されるステップ(3)と、
溶融金属の初期速度の作用によって、溶融池内で2つの冷却ロール面に隣接し且つ運動量撹拌作用を有する渦流を形成するステップ(4)と、
2つの冷却ロールの回転につれて、渦流の運動量撹拌作用によって溶融金属の凝固を完了して、金属ストリップが製造され、金属ストリップの凝固組織が均一で微細な等軸晶組織であるステップ(5)と、を含む。
【0024】
図7~9に示すように、垂直式ダブルロールストリップ連続鋳造設備は水平に配置される第1冷却ロール11及び第2冷却ロール16を備え、それらの間にロールギャップが形成され、第1冷却ロール11と第2冷却ロール16の対称位置の上方に分流装置12が設けられ、溶融金属13が分流装置12から流出して軸線方向において均一で初期運動量を有するシート状溶融金属流14を形成する。分流装置12は、中間容器又はシュートからの溶融金属を受けるための上向きに開口する入口部分18と、シート状溶融金属流14を送り出すための連続したストリップ状出口が底部に設けられる入口部分18に接続される垂直出口部分19と、を備える。垂直出口部分19の長さlは垂直出口部分19の厚さtの3~10倍であり、好ましくは5~7倍である。シート状溶融金属流14は0.5~2m/sの初期速度で第1冷却ロール11と第2冷却ロール16との間のロールギャップに入って溶融池15を形成し、その後で入ったシート状溶融金属流14は溶融池15において渦流運動量を形成する。第1冷却ロール11と第2冷却ロール16は逆方向で同期回転し、ロール速度が0.1~3m/sであってもよく、渦流の運動量撹拌作用によって溶融金属の凝固を完了し、製造された金属ストリップ17を第1冷却ロール11と第2冷却ロール16との間のロールギャップから引き出し、金属ストリップ17の凝固組織が均一で微細な等軸晶組織である。
【0025】
比較実例では、溶融金属は60℃の過熱度及び0.8m/sの初期速度で2つの冷却ロールの上方中央位置から溶融池空間に入って、溶融池内で2つの冷却ロール面に隣接し且つ運動量撹拌作用を有する渦流を形成し、渦流の運動量撹拌作用によって溶融金属の凝固を完了して、金属ストリップが製造され、その凝固組織が均一で微細な100%等軸晶組織であり、結晶粒の寸法が100μmである。
【0026】
本願に係る金属ストリップ連続鋳造方法を用いると、操作しやすく、元の材料成分を変化せずに過熱度を低下しない前提で、金属ストリップ凝固組織の等軸晶の比率を向上させることができ、等軸晶の比率が大きくとも100%に達し、これにより、結晶粒を微細化して偏析を改善することができる。本願は鉄鋼及び非鉄金属などの様々な金属ストリップのニアネットシェイプ連続鋳造に使用されてもよい。
【0027】
以上は本願に開示される実施形態であるが、前記内容は本願を理解しやすくするために用いる実施形態に過ぎず、本願を限定するためのものではない。当業者であれば、本願に開示される主旨及び範囲を逸脱せずに、実施形式及び詳細を任意に修正及び変更することができるが、本願の特許保護範囲は依然として添付の特許請求の範囲により限定される範囲に準じるべきである。
図1
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図7
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図9
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【国際調査報告】