(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】脱ブタン塔からの側流由来のシクロペンタジエンの二量化
(51)【国際特許分類】
C07C 2/50 20060101AFI20240404BHJP
C07C 13/61 20060101ALI20240404BHJP
C07C 4/04 20060101ALN20240404BHJP
C07C 11/04 20060101ALN20240404BHJP
【FI】
C07C2/50
C07C13/61
C07C4/04
C07C11/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566706
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022026537
(87)【国際公開番号】W WO2022232273
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508364749
【氏名又は名称】ケロッグ ブラウン アンド ルート エルエルシー
【住所又は居所原語表記】601 Jefferson Street Houston TX 77002(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】セリンジャー デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】イェー クオ-チェン
(72)【発明者】
【氏名】スリヴァスタヴァ アロック
(72)【発明者】
【氏名】ハミルトン クリスティン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ラジツキ マイケル エー.
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006AB46
4H006AB99
4H006AC28
4H006BA91
4H006BC10
4H006BC11
4H006BD84
(57)【要約】
シクロペンタジエン(CPD)を二量化するためのシステム及びプロセスであって、脱ブタン塔からC6+C7リッチ塔底流と、C5リッチ側留とを生成することを備え、C5リッチ側留とC6+C7リッチ塔底流の少なくとも一部とが二量化器に導かれ、CPDがジシクロペンタジエン(DCPD)に熱二量化される。DCPDはCPDよりも安定しているので、扱うのにより安全である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロペンタジエン(CPD)を二量化するためのシステムであって、
前記システムは、
脱ブタン塔であって、
C
4-C
7炭化水素の供給原料と、
C
4塔頂流と、
C
6+C
7リッチ塔底流と、
C
5リッチ側留と、
を備える脱ブタン塔と、
二量化器であって、
前記C
5リッチ側留からの供給原料と、
前記C
6+C
7リッチ塔底流の少なくとも一部からの供給原料と、
熱分解ガソリン底部生成物流と、
を備える二量化器と、
を備える、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記二量化器は、熱二量化器である、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、
C
6-C
7リッチタール溶媒補填流を前記C
6+C
7リッチ塔底流から引き込んで、その平衡状態が前記二量化器に導かれる、システム。
【請求項4】
シクロペンタジエン(CPD)を二量化するためのプロセスであって、
C
4-C
7炭化水素流を脱ブタン塔に導入することと、
前記C
4-C
7炭化水素を脱ブタン化することにより、
C
4塔頂流と、
C
6+C
7リッチ塔底流と、
C
5リッチ側留と、
を生成する、前記C
4-C
7炭化水素を脱ブタン化することと、
前記C
5リッチ側留と前記C
6+C
7リッチ塔底流の少なくとも一部とを二量化器に導入することと、
前記CPDを前記二量化器内で二量化することと、
底部生成物流を生成することと、
を備える、プロセス。
【請求項5】
請求項4に記載のプロセスであって、
前記二量化することは、熱二量化することである、プロセス。
【請求項6】
請求項5に記載のプロセスであって、
前記二量化器は、
約200°F(93°C)から約250°F(121°C)までの間の温度、かつ、
約35psia(241kPa)から約60psia(414kPa)までの間の圧力
にて運転される、プロセス。
【請求項7】
請求項5に記載のプロセスであって、
前記二量化器は、
約210°F(99°C)から約220°F(104°C)までの間の温度、かつ、
約40psia(276kPa)から約50psia(345kPa)までの間の圧力
にて運転される、プロセス。
【請求項8】
請求項4に記載のプロセスであって、さらに、
前記C
6+C
7リッチ塔底流からC
6-C
7リッチタール溶媒補填流を引き込むことと、
その平衡状態を前記二量化器に導くことと、
を備える、プロセス。
【請求項9】
請求項4に記載のプロセスであって、
前記熱分解ガソリン底部生成物流は、ジシクロペンタジエン(DCPD)を備える、プロセス。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスであって、さらに、
接着用製品、樹脂、インク、塗料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された前記DCPDから製品を製造することを備える、プロセス。
【請求項11】
請求項4に記載のプロセスによって生成されたジシクロペンタジエン(DCPD)。
【請求項12】
請求項11に記載のDCPDから製造された製品であって、
前記製品は、接着用製品、樹脂、インク、塗料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、製品。
【請求項13】
エチレンプラントであって、
シクロペンタジエン(CPD)を二量化するためのシステムを備え、
前記システムは、
脱ブタン塔であって、
C
4-C
7炭化水素の供給原料と、
C
4塔頂流と、
C
6+C
7リッチ塔底流と、
C
5リッチ側留と、
を備える脱ブタン塔と、
二量化器であって、
C
5リッチ側留からの供給原料と、
C
6+C
7リッチ塔底流の少なくとも一部からの供給原料と、
熱分解ガソリン底部生成物流と、
を備える二量化器と、
を備える、エチレンプラント。
【請求項14】
請求項13に記載のエチレンプラントであって、
前記二量化器は、熱二量化器である、エチレンプラント。
【請求項15】
請求項13に記載のエチレンプラントであって、
C
6-C
7リッチタール溶媒補填流が前記C
6+C
7リッチ塔底流から引き込まれて、その平衡状態が前記二量化器に導かれる、エチレンプラント。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、シクロペンタジエン(CPD)を特有の方法で二量化するためのシステム及びプロセスに関し、より具体的には、エチレンプラント内でCPDを二量化してジシクロペンタジエン(DCPD)をもたらすことに関する。
[背景]
【0002】
スチームクラッキングは、熱分解とも称され、ナフサ、液化石油ガス(LPG)、エタン、プロパン、及び/またはブタン供給原料から、オレフィンとして一般的に知られたより軽質なアルケン(例えばエチレン)を生成するのに使用される主要なプロセスである。
【0003】
従来のスチームクラッキングプロセスでは、ナフサ、LPG、またはエタンのような気体または液体の炭化水素供給原料が、水蒸気で希釈されて、無酸素状態の炉内で短時間加熱される。この反応で生成された、クラッキングされたガス生成物は、原料の組成、炭化水素と水蒸気との比率、及び、クラッキング温度及び炉の滞留時間に依存する。例えばエタン、LPG、または軽質ナフサ等の軽質炭化水素原料は、エチレン、プロピレン、及びブタジエンを含む軽質アルケンリッチのクラッキングされたガス流をもたらす。より重質な炭化水素(全域及び重質ナフサ、及び、他の精製生成物)はさらに、芳香族炭化水素リッチ生成物や、例えばC5+熱分解ガソリン流等のガソリンまたは燃料油への含有に適している炭化水素リッチ生成物を生成し、C5+熱分解ガソリン流は、C4炭化水素から、クラッキングされたガス流内にあるより重質な炭化水素を分離するために、オレフィンプラント内で用いられる脱ブタン塔の塔底に残存している。この熱分解ガソリン流は、通常、C5ジオレフィンを含有し、主として、その後に二量化されてより安定したジシクロペンタジエンになり得るシクロペンタジエンを含有する。
【0004】
通常、スチームクラッキングプロセスでは、必要であれば、脱ブタン塔の塔底流に対して二量化器が設置されており、主としてシクロペンタジエンであるC5ジオレフィンが二量化されて、より安定したジシクロペンタジエンを生成する。このような製造工程が行われ得るのは、ジシクロペンタジエンから接着剤や他の製品を製造する場合、あるいは単にC5を含有する熱分解ガソリン生成物を安全に輸送及び保管する場合である。
【0005】
米国特許第6,258,989B1号は、C5オレフィン、C5ジオレフィン、CPD、DCPD、及びベンゼン‐トルエン‐キシレンからなる芳香族混合物(BTX)を備えている流れを二量化した後、各分子のグレードを高めるためにC5、C6-C9、及びC10+を分離することを開示している。この二量化は、スチームクラッカからの脱ブタン化された熱分解ガソリン流で行われる。より具体的には、米国特許第6,258,989号は、C5オレフィン、C5ジオレフィン、CPD、DCPD、及び芳香族を含有する炭化水素供給原料が、CPD、DCPD、C5ジオレフィン、ベンゼン、トルエン、及びキシレンを含有する炭化水素供給原料を加熱域内で加熱して、CPDをDCPDに二量化することによって第1放出流を生成する工程と、第1放出流をC6+流とC5ジオレフィン流とに分離する工程と、C6+流をC6-C9流とC10+流とに分離する工程と、C10+流を燃料油流とDCPD流とに分離する工程と、C6-C9流を水素処理することによってBTX流を生成する工程と、によって処理されることを開示している。別の実施形態では、炭化水素供給原料を加熱域内で加熱して、CPDをDCPDに二量化することによって第1放出流を生成する工程と、第1放出流をC5-C9流とC10+流とに分離する工程と、C10+流を燃料油流とDCPD流とに分離する工程と、第1反応域内で水素が存在している状態でC5-C9流を選択的水素添加触媒に接触させて、C5-C9流内に含有されるジオレフィン、アルキン、及びスチレンの少なくとも一部を水素添加することによって第2放出流を生成する工程と、第2放出流をC6-C9流とC5オレフィン流とに分離する工程と、第2反応域内で水素が存在している状態でC6-C9流を水素添加脱硫触媒に接触させて、C6-C9流内に含有される硫黄含有化合物の少なくとも一部を脱硫することによってBTX流を生成する工程と、によって炭化水素供給原料が処理される。
【0006】
関連プロセス及びシステムにおいて、脱ブタン塔及び二量化器は、タール溶解和クエンチ系のための溶媒を補填するのに用いられる、C6-C7に富んでいて、かつC5が存在しない流れを生成する。この流れが、CPDを処理するための唯一の機会をもたらす。
[概要]
【0007】
1つの非限定的な実施形態では、シクロペンタジエン(CPD)を二量化するためのシステムが提供され、本システムは、C4-C7炭化水素の供給原料と、C4塔頂流と、C6+C7リッチ塔底流と、C5リッチ側留と、を順番に備える脱ブタン塔を備え、本システムはまた、C5リッチ側留からの供給原料と、C6+C7リッチ塔底流の少なくとも一部からの供給原料と、熱分解ガソリン底部生成物流と、を順番に備える二量化器を備える。
【0008】
また、異なる非限定的な変形例において、シクロペンタジエン(CPD)を二量化するためのプロセスが提供され、本プロセスは、C3-C7炭化水素流を脱ブタン塔に導入することと、C3-C7炭化水素を脱ブタン化することによって、C3+C4塔頂流と、C6+C7リッチ塔底流と、C5リッチ側留と、を生成することとを備え、本プロセスはさらに、C5リッチ側留とC6+C7リッチ塔底流の少なくとも一部とを二量化器に導入することと、二量化器内でCPDを二量化することと、底部生成物流を生成することとを備えている。
【0009】
別の非限定的な実施形態では、上述のようなシクロペンタジエン(CPD)を二量化するためのシステムを備えるエチレンプラントが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】シクロペンタジエン(CPD)を二量化するためのプロセスの概略図であり、より具体的には、エチレンプラント内においてCPDを二量化してジシクロペンタジエン(DCPD)をもたらすことに関している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[詳細な説明]
脱ブタン塔カラム48への炭化水素供給原料58は、C3またはC4からC7までの炭化水素を含有してもよい。C6-C7リッチ塔底流46、C5リッチ側留50、及び塔頂流62は、包括的にはC3-C7炭化水素を含有するので、炭化水素供給原料58はC4-C7炭化水素を含有するはずであり、かつC3も含有し得る。
【0012】
図1に示されたシクロペンタジエン(CPD)二量化システム60及びプロセスの非限定的な実施形態を再度参照すると、脱ブタン塔カラム48は、C
5リッチ側留50を生成するように構成される。脱ブタン塔カラム48の運転条件は、濃縮用媒体(つまり冷媒、冷却水)に応じて独立して約29psia(200kPa)から約130psia(896kPa)までの塔頂圧力、独立して約1°F(-17°C)から約113°F(45°C)の範囲の塔頂運転温度、及び独立して約180°F(82°C)から約280°F(138°C)までの塔底温度を含んでいる。
【0013】
脱ブタン塔カラム48のC6-C7リッチ塔底流46内におけるC5領域の炭化水素濃度値を最小化するために、C5リッチ側留50の位置は、C5リッチ側留50がC5領域の炭化水素の濃度が確実に最も高くなるような脱ブタン塔カラム48のシミュレーションによって慎重に評価されるべきであることが理解されるであろう。この非限定的な実施形態に従って、脱ブタン塔カラム48のC6-C7リッチ塔底流46は、主に、C6+C7領域の炭化水素からなる。
【0014】
必須ではないC6-C7リッチタール溶媒補填流44にとって必要ないくらかの補填量を抜き取った後、最終的な脱ブタン塔塔底流52は、熱二量化器54への供給原料として、C5リッチ側留50と混合されてもよい。熱二量化器54は、C5リッチ側留50内に存在するシクロペンタジエンを二量化し、かつ、CPDをジシクロペンタジエンに二量化するためにC6-C7リッチ塔底流46のうちの最終的な脱ブタン塔塔底流52に導かれた部分に存在する任意のものを二量化するのに利用されてもよい。この構成は、混合された二量化熱分解ガソリン56が確実に安定化されていることで、輸送や貯蔵における安全上の問題を防止するのに役立ち得る。芳香族リッチ塔底流46からの使用されなかったC6+C7分子、または、あらゆる余剰な分子は、二量化熱分解ガソリン56と混合される。
【0015】
1つの非限定的な実施形態において、二量化器54は熱二量化器である。熱二量化器54の運転条件は、独立して約35psia(241kPa)から約60psia(414kPa)まで、あるいは、独立して約40psia(276kPa)から約50psia(345kPa)までの圧力、及び、独立して約200°F(93°C)から約250°F(121°C)までの範囲、あるいは、独立して約210°F(99°C)から約220°F(104°C)までの範囲の運転温度、を含んでいる。
【0016】
二量化熱分解ガソリン56は、接着用製品、樹脂、インク、塗料等を製造するためにさらに処理されてもよい。必要に応じて、C8-C10のスチームクラッキングされたナフサ(SCN)流40は、二量化熱分解ガソリン56と混合されてもよい。
【0017】
上述の明細書では、本発明は、その特定の実施形態を参照して説明されてきた。しかしながら、本明細書は、限定的な意味ではなく、むしろ例示的な意味とみなされるべきである。例えば、特許請求された、または、開示されたパラメータの範囲内にあるものの、特定の例において具体的に特定も試行もされていない、脱ブタン塔の条件及び構成、二量化器の条件及び構成、及び、種々の炭化水素流の組成及び量は、本発明の範囲内であることが見込まれる。
【0018】
本発明は、開示されていない要素がない状態で実施されてもよい。加えて、本発明は、開示された要素を適切に備えるか、開示された要素からなるか、または開示された要素から本質的になっていてもよい。例えば、1つの非限定的な実施形態において設けられていてもよい。
【0019】
また、別の非限定的な変形例では、シクロペンタジエン(CPD)を二量化するためのプロセスが提供されてもよく、本プロセスは、C4-C7炭化水素流を脱ブタン塔に導入することと、C4-C7炭化水素を脱ブタン化することによって、C4塔頂流と、C6+C7リッチ塔底流と、C5リッチ側留とを生成することとを備えるか、または本質的にこれらからなるか、またはこれらからなり、本プロセスはさらに、C5リッチ側留と、C6+C7リッチ塔底流の少なくとも一部とを二量化器に導入することと、CPDを二量化器内で二量化することと、底部生成物流を生成することとを備えるか、または本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。
【0020】
また、シクロペンタジエン(CPD)を二量化するためのシステムを備えるエチレンプラントが提供されてもよく、本システムは、脱ブタン塔を備えるか、または本質的に脱ブタン塔からなるか、または脱ブタン塔からなり、この脱ブタン塔は、順番に、C4-C7炭化水素の供給原料と、C4塔頂流と、C6+C7リッチ塔底流と、C5リッチ側留とを備えるか、または本質的にこれらからなるか、またはこれらからなり、本システムはさらに、二量化器を備えるか、または本質的に二量化器からなるか、または二量化器からなり、この二量化器は、順番に、C5リッチ側留からの供給原料と、C6+C7リッチ塔底流の少なくとも一部からの供給原料と、熱分解ガソリン底部生成物流とを備えるか、または本質的にこれらからなるか、またはこれらからなる。
【0021】
特許請求の範囲全体を通して使用されている「備えている」または「備える」という語句はそれぞれ、「含んでいるがそれに限定されない」及び「含むがそれに限定されない」ことを意味するものと解釈される。
【0022】
本明細書にて使用されている範囲では、「実質的に」という語句は「指定されたものの大部分であるが、全てではない」ことを意味するものとする。
【0023】
本明細書にて使用されているように、「1つ」及び「その」といった単数形は、文脈が複数形を含まないことを明確に示している場合を除き、複数形も含むことが意図されている。
【0024】
本明細書にて使用されている範囲では、所与のパラメータに関する「約」という語は、記載された値を含み、その文脈が規定する意味を有する(例えば、所与のパラメータの測定に関連する誤差の程度を含む)。
【0025】
本明細書にて使用されているように、「及び/または」という語は、1つ以上の列挙された関連する項目のあらゆる及び全ての組合せを含む。
【国際調査報告】