(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】糖尿病網膜症および関連する状態を治療するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20240404BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240404BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240404BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240404BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240404BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240404BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240404BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P27/02
A61P3/10
A61K45/00
A61P29/00
A61P43/00 111
A61P13/12
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566803
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 US2022027062
(87)【国際公開番号】W WO2022232597
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518363679
【氏名又は名称】オキュフィア・ファーマ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ocuphire Pharma, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100221523
【氏名又は名称】佐藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】スーチ,ミナ
(72)【発明者】
【氏名】チャリザニス,コンスタンティノス
(72)【発明者】
【氏名】ケリー,マーク アール
(72)【発明者】
【氏名】メスマン,リチャード アダム
(72)【発明者】
【氏名】ブリゲル,ミッチェル ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】パテル,ロニール アジャイクマール
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA01
4C084ZA812
4C084ZB112
4C084ZC202
4C084ZC412
4C206AA01
4C206AA02
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA12
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA33
4C206ZA81
4C206ZC35
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫および/または他の糖尿病網膜障害および/または他の障害に罹患する患者を治療するための、式Iの置換2,3-ジメトキシキノンまたはその薬学的に許容される塩である第1の治療剤を含む方法、組成物、およびキットを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者の糖尿病網膜疾患を治療する方法であって、1日当たり約480mg~約600mgの量で第1の治療剤を、それを必要とするヒト患者に経口投与し、それにより前記糖尿病網膜疾患を治療することを含み、前記第1の治療剤が、式I:
【化1】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、前記方法。
【請求項2】
前記第1の治療剤が、式Iの化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の治療剤の第1の用量および前記第1の治療剤の第2の用量が、同一の日に前記患者に経口投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の治療剤が、1日当たり約600mgの量で前記患者に経口投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
約360mgの前記第1の治療剤が、朝に前記患者に経口投与され、かつ約240mgの前記第1の治療剤が、夕方に前記患者に経口投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
約360mgの前記第1の治療剤が、前記患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約240mgの前記第1の治療剤が、前記患者に経口投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
約240mgの前記第1の治療剤が、朝に前記患者に経口投与され、かつ約360mgの前記第1の治療剤が、夕方に前記患者に経口投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
約240mgの前記第1の治療剤が、前記患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約360mgの前記第1の治療剤が、前記患者に経口投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
約300mgの前記第1の治療剤が、朝に前記患者に経口投与され、かつ約300mgの前記第1の治療剤が、夕方に前記患者に経口投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
約300mgの前記第1の治療剤が、前記患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約300mgの前記第1の治療剤が、前記患者に経口投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記患者が前記第1の治療剤による有害事象を経験した場合、その後少なくとも2日間、前記第1の治療剤が、1日当たり約480mgに減量された1日量で前記患者に経口投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の治療剤が、1日当たり約480mgの量で患者に経口投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
約240mgの前記第1の治療剤が、朝に前記患者に経口投与され、かつ約240mgの前記第1の治療剤が、夕方に前記患者に経口投与される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
約240mgの前記第1の治療剤が、前記患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約240mgの前記第1の治療剤が、前記患者に経口投与される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が、前記第1の治療剤による有害事象を経験した場合、その後少なくとも2日間、前記第1の治療剤が、1日当たり約300mgに減量された1日量で前記患者に経口投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の治療剤が、朝に前記患者に経口投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の治療剤が、前記患者に1日1回のみ経口投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
ヒト患者の糖尿病網膜疾患を治療する方法であって、1日当たり約120mg~約600mgの量で第1の治療剤を、それを必要とするヒト患者に経口投与し、それにより前記糖尿病網膜疾患を治療することを含み、前記第1の治療剤が、式I:
【化2】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、前記方法。
【請求項19】
前記第1の治療剤が式Iの化合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の治療剤が、1日当たり約300mgの量で前記患者に経口投与される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の治療剤が、1日当たり約240mgの量で前記患者に経口投与される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の治療剤が、1日当たり約120mgの量で前記患者に経口投与される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の治療剤の第1の用量および前記第1の治療剤の第2の用量が、同一の日に前記患者に経口投与される、請求項18~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の治療剤が、朝に前記患者に経口投与される、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の治療剤が、夕方に前記患者に経口投与される、請求項18~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の治療剤が、前記患者に1日1回のみ経口投与される、請求項18~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の治療剤の量が、少なくとも4週間にわたって毎日前記患者に経口投与される、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の治療剤の量が、少なくとも12週間にわたって毎日前記患者に経口投与される、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の治療剤の量が、少なくとも24週間にわたって毎日前記患者に経口投与される、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の治療剤が、徐放性医薬組成物の形態で前記患者に経口投与される、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記患者に、抗炎症剤、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、アンジオポエチン2阻害剤、および/または血管内皮増殖因子阻害剤である第2の治療剤を投与することをさらに含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記患者に血管内皮増殖因子阻害剤である第2の治療剤を投与することをさらに含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記糖尿病網膜疾患が、糖尿病網膜症である、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記糖尿病網膜症が、軽症糖尿病網膜症である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記糖尿病網膜症が、中等症糖尿病網膜症である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記糖尿病網膜症が、準重症~重症糖尿病網膜症である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記糖尿病網膜症が、非増殖性糖尿病網膜症である、請求項33~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記糖尿病網膜症が、増殖性糖尿病網膜症である、請求項33~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記糖尿病網膜疾患が、糖尿病黄斑浮腫である、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記ヒト患者が、成人患者である、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
糖尿病の症状を低減する、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
滲出型加齢黄斑変性、萎縮型加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症、地図状萎縮、網膜新生血管形成、脈絡膜新生血管形成、または角膜移植片拒絶反応から選択される疾患または状態を治療する方法であって、1日当たり約120mg~約600mgの量で第1の治療剤を、それを必要とするヒト患者に経口投与し、それにより前記疾患または状態を治療することを含み、前記第1の治療剤が、式I:
【化3】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、前記方法。
【請求項43】
前記第1の治療剤が、式Iの化合物である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の治療剤が、1日当たり約600mgの量で前記患者に経口投与される、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記第1の治療剤が、1日当たり約480mgの量で前記患者に経口投与される、請求項42または43に記載の方法。
【請求項46】
前記第1の治療剤が、1日当たり約300mgの量で前記患者に経口投与される、請求項42または43に記載の方法。
【請求項47】
前記第1の治療剤が、1日当たり約240mgの量で前記患者に経口投与される、請求項42または43に記載の方法。
【請求項48】
前記第1の治療剤が、1日当たり約120mgの量で前記患者に経口投与される、請求項42または43に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の治療剤の第1の用量および前記第1の治療剤の第2の用量が、同一の日に前記患者に経口投与される、請求項42~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の治療剤が、朝に前記患者に経口投与される、請求項42~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記第1の治療剤が、夕方に前記患者に経口投与される、請求項42~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記第1の治療剤が、前記患者に1日1回のみ経口投与される、請求項42~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記患者に、抗炎症剤、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、アンジオポエチン2阻害剤、および/または血管内皮増殖因子阻害剤である第2の治療剤を投与することをさらに含む、請求項42~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記患者が、経験する任意の腎障害を低減する、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
神経保護作用を達成する、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記第1の治療剤によるアラニンアミノトランスフェラーゼの血漿中濃度の上昇が、5%以下である、請求項1~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記第1の治療剤によるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの血漿中濃度の上昇が、5%以下である、請求項1~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記患者における糸球体濾過量の低下が、15%以下である、請求項1~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記第1の治療剤による任意の眼障害の発生が、同一の治療を受けた10人の患者当たり1人以下の患者の頻度で起こる、請求項1~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記第1の治療剤による任意の眼障害の発生が、同一の治療を受けた20人の患者当たり1人以下の患者の頻度で起こる、請求項1~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記第1の治療剤による任意の胃腸障害の発生が、同一の治療を受けた10人の患者当たり1人以下の患者の頻度で起こる、請求項1~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記第1の治療剤による任意の神経系障害の発生が、同一の治療を受けた20人の患者当たり1人以下の患者の頻度で起こる、請求項1~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記第1の治療剤によるアラニンアミノトランスフェラーゼの血漿中濃度の低下を達成することをさらに特徴とする、請求項1~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記第1の治療剤によるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの血漿中濃度の低下を達成することをさらに特徴とする、請求項1~63のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月30日に出願された米国仮特許出願番号第63/182,037号の利益および優先権を主張するものであり、その内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫および/または他の糖尿病網膜障害および/または他の障害に罹患する患者を治療するための、式Iの置換2,3-ジメトキシキノンまたはその薬学的に許容される塩である第1の治療剤を含む方法、組成物、およびキットを提供する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病網膜症は、治療せずに放置すると失明に至る可能性がある眼の疾患である。糖尿病罹患者のかなりの割合が、ある程度の関連する網膜損傷を経験する。糖尿病網膜症に対する既存の治療法は、全ての患者に効果があるわけではなく、および/または望ましくない副作用がある。例えば、レーザー光凝固は、眼の組織に火傷を生じさせることによってその効果をもたらすが、これは痛みを伴う、および/または何らかの視覚上の問題(例えば、周辺視力、色覚、および/または夜間視力の低下)を引き起こす可能性がある。硝子体切除術は一般に、眼の表面に切開を入れることによって進め(眼内感染の可能性が生じる)、多くの場合、数週間の回復期間を要し、その間は眼を覆わなければならず、使用することができない。トリアムシノロンまたは抗VEGF薬の硝子体内注射もまた、特に長期にわたって追加の注射が必要になる場合、眼内感染のリスクを伴う。
【0004】
以下の化学式:
【化1】
を有する化合物(E)-2-((4,5-ジメトキシ-2-メチル-3,6-ジオキソシクロヘキサ-1,4-ジエン-1-イル)メチレン)ウンデカン酸は、WO2009/042542に記載されている。前述の化合物を使用して糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫および/または他の糖尿病網膜障害および/または他の障害を治療するための改善された投与手順は、患者に有益であろう。
【0005】
本発明は、この必要性に対処し、他の関連する利点を提供するものである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫および/または他の糖尿病網膜障害および/または他の障害に罹患する患者を治療するための、式Iの置換2,3-ジメトキシキノンまたはその薬学的に許容される塩である第1の治療剤を含む方法、組成物、およびキットを提供する。本方法は一般に、1日当たり約120mg~約600mgの量の式I:
【化2】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とするヒト患者に経口投与することを含む。例示的なより好ましい実施形態は、1日当たり約480mg~約600mgの量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とするヒト患者に経口投与することを含む。患者の糖尿病網膜障害の改善は、患者の糖尿病網膜症重症度スコア(DRSS)の改善、患者の視力の改善、および文献に記載されている他の手順に従って評価することができる。本発明の追加の例示的な態様および実施形態を以下に説明する。
【0007】
本発明の一態様は、ヒト患者における糖尿病網膜疾患を治療する方法を提供する。本方法は、1日当たり約480mg~約600mgの量で第1の治療剤を、それを必要とするヒト患者に経口投与し、それにより糖尿病網膜疾患を治療することを含み、該第1の治療剤は、式I:
【化3】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。特定の実施形態では、第1の治療剤の第1の用量および第1の治療剤の第2の用量は、同一の日に患者に経口投与される。特定の実施形態では、本方法は、血管内皮増殖因子阻害剤である第2の治療剤を患者に投与することをさらに含む。特定の実施形態では、糖尿病網膜疾患は糖尿病網膜症である。特定の実施形態では、糖尿病網膜疾患は糖尿病黄斑浮腫である。本方法の追加の特徴については、発明を実施するための形態で説明する。
【0008】
本発明の別の態様は、ヒト患者における糖尿病網膜疾患を治療する方法を提供する。本方法は、1日当たり約120mg~約600mgの量で第1の治療剤を、それを必要とするヒト患者に経口投与し、それにより糖尿病網膜疾患を治療することを含み、該第1の治療剤は、式I:
【化4】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。特定の実施形態では、第1の治療剤の第1の用量および第1の治療剤の第2の用量は、同一の日に患者に経口投与される。特定の実施形態では、本方法は、血管内皮増殖因子阻害剤である第2の治療剤を患者に投与することをさらに含む。特定の実施形態では、糖尿病網膜疾患は糖尿病網膜症である。特定の実施形態では、糖尿病網膜疾患は糖尿病黄斑浮腫である。本方法の追加の特徴については、発明を実施するための形態で説明する。
【0009】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の方法に従ってヒト患者の糖尿病網膜疾患を治療する際に使用するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。好ましくは、医薬組成物は経口投与用に製剤化される。
【0010】
本発明の別の態様は、滲出型加齢黄斑変性、萎縮型加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症、地図状萎縮、網膜新生血管形成、脈絡膜新生血管形成、または角膜移植片拒絶反応から選択される疾患または状態を治療する方法を提供する。本方法は、1日当たり約120mg~約600mgの量で第1の治療剤を、それを必要とするヒト患者に経口投与し、それにより疾患または状態を治療することを含み、該第1の治療剤は、式I:
【化5】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】例示的な糖尿病網膜症重症度スコア(DRSS)と、対応する説明および網膜画像とを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫および/または他の糖尿病網膜障害および/または他の障害に罹患する患者を治療するための、式Iの置換2,3-ジメトキシキノンまたはその薬学的に許容される塩である第1の治療剤を含む方法、組成物、およびキットを提供する。本方法は一般に、1日当たり約120mg~約600mgの量の式I:
【化6】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とするヒト患者に経口投与することを含む。
【0013】
例示的なより好ましい実施形態は、1日当たり約480mg~約600mgの量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とするヒト患者に経口投与することを含む。患者の糖尿病網膜障害の改善は、患者の糖尿病網膜症重症度スコア(DRSS)の改善、患者の視力の改善、および文献に記載されている他の手順に従って評価することができる。本発明の様々な態様は、以下のセクションに記載されるが、1つの特定のセクションに記載される本発明の態様は、任意の特定のセクションに限定されるべきではない。
【0014】
定義
本発明の理解を促進するために、いくつかの用語および語句を以下に定義する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、および「the」という用語は、「1つ以上」を意味し、文脈が不適切でない限り複数形を含む。
【0016】
「約」という用語は、記載された値の10%以内を意味する。特定の実施形態では、その値は、記載された値の8%、6%、5%、4%、2%、または1%以内であり得る。
【0017】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、本発明の方法によって治療される生物を指す。このような生物は、好ましくは、哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)を含み、最も好ましくは、ヒトを含むが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な化合物の量を指す。別段の定めのない限り、有効量は、1つ以上の投与、適用、または投与量で投与することができ、特定の製剤または投与経路に限定されることを意図しない。本明細書で使用される場合、「治療すること」という用語は、状態、疾患、障害などの改善、またはそれらの症状の緩和をもたらす、任意の効果、例えば、軽減、低減、調節、緩和、または除去を含む。
【0019】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、活性薬剤と、該組成物をin vivoまたはex vivoでの治療的使用に特に適したものにする不活性または活性な担体との組み合わせを指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルション(例えば、油/水または水/油エマルションなど)、および種々のタイプの湿潤剤などの、標準的な薬学的担体のいずれかを指す。組成物はまた、安定剤および防腐剤を含んでもよい。担体、安定剤、およびアジュバントの例については、Martin in Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ.Co.,Easton,PA[1975]を参照のこと。
【0021】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の任意の薬学的に許容される塩(例えば、酸または塩基)を指し、対象に投与されると本発明の化合物を提供することができる。当業者に知られているように、本発明の化合物の「塩」は、無機または有機酸および塩基に由来し得る。酸の例としては、限定されるものではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。シュウ酸などの他の酸は、それ自体は薬学的に許容されないが、本発明の化合物およびその薬学的に許容される酸付加塩を得る際に中間体として有用な塩の調製において用いてもよい。
【0022】
塩基の例としては、限定されるものではないが、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、水酸化物、アンモニア、および式NW3の化合物(式中、WはC1-4アルキルである)などが挙げられる。
【0023】
塩の例としては、限定されるものではないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタンサン塩(flucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモエート(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩などが挙げられる。塩の他の例は、例えば、Na+、NH4
+、およびNW4
+(式中、WはC1-4アルキル基である)などの好適なカチオンと化合される、本発明の化合物のアニオンを含む。
【0024】
治療的使用のために、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容されるものとして企図される。しかしながら、薬学的に許容されない酸および塩基の塩も、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製において使用されてもよい。
【0025】
「アルキル」という用語は当該技術分野で認識されており、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基を含む。特定の実施形態では、直鎖または分枝鎖アルキルは、その骨格中に炭素原子を約30個以下(例えば、直鎖の場合はC1-C30、分枝鎖の場合はC3-C30)あるいは約20個以下有する。同様に、シクロアルキルは環構造中に約3~約10個の炭素原子、あるいは環構造中に約5、6または7個の炭素を有する。
【0026】
本明細書を通して、組成物およびキットが特定の構成要素を有する、含む、もしくは備えるものとして記載される場合、またはプロセスおよび方法が特定のステップを有する、含む、もしくは備えるものとして記載される場合、それに加えて、列挙された構成要素から本質的になるか、もしくはそれからなる本発明の組成物およびキットが存在すること、ならびに列挙されたプロセスステップから本質的になるか、もしくはそれからなる本発明によるプロセスおよび方法が存在することが企図される。
【0027】
一般的に、パーセンテージが指定される組成物は、特に指定されない限り、重量%である。さらに、変数に定義が伴われない場合は、その変数の以前の定義が優先される。
【0028】
I.治療方法
本発明は、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫および/または他の糖尿病網膜障害に罹患する患者を、式Iの置換2,3-ジメトキシキノンまたはその薬学的に許容される塩をヒト患者に経口投与することによって治療するための方法を提供する。本発明はまた、他の障害に罹患する患者を、式Iの置換2,3-ジメトキシキノンまたはその薬学的に許容される塩をヒト患者に投与することによって治療するための方法を提供する。治療方法の様々な態様および実施形態は、以下のセクションで説明する。これらのセクションは便宜上配置されており、あるセクションの情報はそのセクションに限定されるものではなく、他のセクションの方法に適用される場合がある。
【0029】
A.第1の方法
本発明の一態様は、ヒト患者の糖尿病網膜疾患を治療する方法であって、1日当たり約480mg~約600mgの量で第1の治療剤を、それを必要とするヒト患者に経口投与し、それにより糖尿病網膜疾患を治療することを含み、第1の治療剤が、式I:
【化7】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、方法を提供する。
【0030】
本方法は、第1の治療剤の特質(identity)および投与レジメンなどの追加の特徴によってさらに特徴付けられ得る。本発明は、これらの特徴の全ての順列と組み合わせを包含する。
【0031】
したがって、本方法は、第1の治療剤の特質に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は式Iの化合物である。特定の実施形態では、第1の治療剤は式Iの化合物の薬学的に許容される塩である。
【0032】
本方法は、投与レジメンに従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤の第1の用量および第1の治療剤の第2の用量は、同一の日に患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は患者に1日1回のみ経口投与される。
【0033】
特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約600mgの量で患者に経口投与される。
【0034】
特定の実施形態では、約360mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約240mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0035】
特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約360mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0036】
特定の実施形態では、約300mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約300mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0037】
特定の実施形態では、患者が第1の治療剤による有害事象を経験した場合、その後少なくとも2日間、第1の治療剤は1日当たり約480mgの減量された1日量で患者に経口投与される。
【0038】
特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約480mgの量で患者に経口投与される。
【0039】
特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約240mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0040】
特定の実施形態では、患者が第1の治療剤による有害事象を経験した場合、その後少なくとも2日間、第1の治療剤は1日当たり約300mgの減量された1日量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は朝に患者に経口投与される。
【0041】
B.第2の方法
本発明の別の態様は、ヒト患者の糖尿病網膜疾患を治療する方法であって、1日当たり約120mg~約600mgの量で第1の治療剤を、それを必要とするヒト患者に経口投与し、それにより糖尿病網膜疾患を治療することを含み、第1の治療剤が、式I:
【化8】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、方法を提供する。
【0042】
本方法は、第1の治療剤の特質、投与量、および投与レジメンなどの追加の特徴によってさらに特徴付けられ得る。本発明は、これらの特徴の全ての順列と組み合わせを包含する。
【0043】
したがって、本方法は、第1の治療剤の特質に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は式Iの化合物である。特定の実施形態では、第1の治療剤は式Iの化合物の薬学的に許容される塩である。
【0044】
本方法は、投与量に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約300mgの量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約240mgの量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約120mgの量で患者に経口投与される。
【0045】
本方法は、投与レジメンに従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤の第1の用量および第1の治療剤の第2の用量は、同一の日に患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は患者に1日1回のみ経口投与される。
【0046】
特定の実施形態では、第1の治療剤は朝に患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は夕方に患者に経口投与される。
【0047】
C.第3の方法
本発明の一態様は、糖尿病網膜疾患に罹患しているヒト患者の網膜組織における血管新生を低減する方法であって、1日当たり約480mg~約600mgの量で第1の治療剤を、それを必要とするヒト患者に経口投与して網膜組織における血管新生を低減することを含み、第1の治療剤が、式I:
【化9】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、方法を提供する。
【0048】
本方法は、第1の治療剤の特質および投与レジメンなどの追加の特徴によってさらに特徴付けられ得る。本発明は、これらの特徴の全ての順列と組み合わせを包含する。
【0049】
したがって、本方法は、第1の治療剤の特質に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は式Iの化合物である。特定の実施形態では、第1の治療剤は式Iの化合物の薬学的に許容される塩である。
【0050】
本方法は、投与レジメンに従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤の第1の用量および第1の治療剤の第2の用量は、同一の日に患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は患者に1日1回のみ経口投与される。
【0051】
特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約600mgの量で患者に経口投与される。
【0052】
特定の実施形態では、約360mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約240mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0053】
特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約360mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0054】
特定の実施形態では、約300mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約300mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0055】
特定の実施形態では、患者が第1の治療剤による有害事象を経験した場合、その後少なくとも2日間、第1の治療剤は1日当たり約480mgの減量された1日量で患者に経口投与される。
【0056】
特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約480mgの量で患者に経口投与される。
【0057】
特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約240mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0058】
特定の実施形態では、患者が第1の治療剤による有害事象を経験した場合、その後少なくとも2日間、第1の治療剤は1日当たり約300mgの減量された1日量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は朝に患者に経口投与される。
【0059】
D.第4の方法
本発明の別の態様は、糖尿病網膜疾患に罹患しているヒト患者の網膜組織における血管新生を低減する方法であって、1日当たり約120mg~約600mgの量で第1の治療剤を、それを必要とするヒト患者に経口投与して網膜組織における血管新生を低減することを含み、第1の治療剤が、式I:
【化10】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、方法を提供する。
【0060】
本方法は、第1の治療剤の特質、投与量、および投与レジメンなどの追加の特徴によってさらに特徴付けられ得る。本発明は、これらの特徴の全ての順列と組み合わせを包含する。
【0061】
したがって、本方法は、第1の治療剤の特質に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は式Iの化合物である。特定の実施形態では、第1の治療剤は式Iの化合物の薬学的に許容される塩である。
【0062】
本方法は、投与量に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約300mgの量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約240mgの量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約120mgの量で患者に経口投与される。
【0063】
本方法は、投与レジメンに従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤の第1の用量および第1の治療剤の第2の用量は、同一の日に患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は患者に1日1回のみ経口投与される。
【0064】
特定の実施形態では、第1の治療剤は朝に患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は夕方に患者に経口投与される。
【0065】
E.第5の方法
本発明の一態様は、糖尿病網膜疾患に罹患しているヒト患者のHIF-1αおよび/またはNF-κBの活性を低減する方法であって、1日当たり約480mg~約600mgの量で第1の治療剤を、それを必要とするヒト患者に経口投与してHIF-1αおよび/またはNF-κBの活性を低減することを含み、第1の治療剤が、式I:
【化11】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、方法を提供する。
【0066】
本方法は、第1の治療剤の特質および投与レジメンなどの追加の特徴によってさらに特徴付けられ得る。本発明は、これらの特徴の全ての順列と組み合わせを包含する。
【0067】
したがって、本方法は、第1の治療剤の特質に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は式Iの化合物である。特定の実施形態では、第1の治療剤は式Iの化合物の薬学的に許容される塩である。
【0068】
本方法は、投与レジメンに従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤の第1の用量および第1の治療剤の第2の用量は、同一の日に患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は患者に1日1回のみ経口投与される。
【0069】
特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約600mgの量で患者に経口投与される。
【0070】
特定の実施形態では、約360mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約240mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0071】
特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約360mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0072】
特定の実施形態では、約300mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約300mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0073】
特定の実施形態では、患者が第1の治療剤による有害事象を経験した場合、その後少なくとも2日間、第1の治療剤は1日当たり約480mgの減量された1日量で患者に経口投与される。
【0074】
特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約480mgの量で患者に経口投与される。
【0075】
特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約240mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0076】
特定の実施形態では、患者が第1の治療剤による有害事象を経験した場合、その後少なくとも2日間、第1の治療剤は1日当たり約300mgの減量された1日量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は朝に患者に経口投与される。
【0077】
F.第6の方法
本発明の一態様は、糖尿病網膜疾患に罹患しているヒト患者のHIF-1αおよび/またはNF-κBの活性を低減する方法であって、1日当たり約120mg~約600mgの量で第1の治療剤を、それを必要とするヒト患者に経口投与してHIF-1αおよび/またはNF-κBの活性を低減することを含み、第1の治療剤が、式I:
【化12】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、方法を提供する。
【0078】
本方法は、第1の治療剤の特質、投与量、および投与レジメンなどの追加の特徴によってさらに特徴付けられ得る。本発明は、これらの特徴の全ての順列と組み合わせを包含する。
【0079】
したがって、本方法は、第1の治療剤の特質に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は式Iの化合物である。特定の実施形態では、第1の治療剤は式Iの化合物の薬学的に許容される塩である。
【0080】
本方法は、投与量に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約300mgの量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約240mgの量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約120mgの量で患者に経口投与される。
【0081】
本方法は、投与レジメンに従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤の第1の用量および第1の治療剤の第2の用量は、同一の日に患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は患者に1日1回のみ経口投与される。
【0082】
特定の実施形態では、第1の治療剤は朝に患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は夕方に患者に経口投与される。
【0083】
G.第7の方法
本発明の一態様は、ヒト患者の疾患または状態を治療する方法であって、第1の治療剤を、それを必要とするヒト患者に投与し、それにより疾患または状態を治療することを含み、第1の治療剤が、式I:
【化13】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、方法を提供する。
【0084】
本方法は、疾患または状態の特質、第1の治療剤の特質、投与量、および投与レジメンなどの追加の特徴によってさらに特徴付けられ得る。本発明は、これらの特徴の全ての順列と組み合わせを包含する。
【0085】
したがって、本方法は、疾患または状態の特質に従ってさらに特徴付けられ得る。特定の実施形態では、疾患または状態は、滲出型加齢黄斑変性、萎縮型加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症、地図状萎縮、網膜新生血管形成、脈絡膜新生血管形成、または角膜移植片拒絶反応から選択される。特定の実施形態では、疾患または状態は滲出型加齢黄斑変性である。特定の実施形態では、疾患または状態は萎縮型加齢黄斑変性である。特定の実施形態では、疾患または状態は網膜静脈閉塞症である。特定の実施形態では、疾患または状態は地図状萎縮である。特定の実施形態では、疾患または状態は網膜新生血管形成である。特定の実施形態では、疾患または状態は脈絡膜新生血管形成である。特定の実施形態では、疾患または状態は角膜移植片拒絶反応である。
【0086】
特定の実施形態では、疾患または状態は眼腫瘍である。特定の実施形態では、疾患または状態は固形腫瘍である。特定の実施形態では、疾患または状態は、ヒト骨髄性白血病単球細胞株(THP-1)に起因するがんである。特定の実施形態では、疾患または状態はバレット食道(BE)である。特定の実施形態では、疾患または状態は化生バレット食道(BE)である。特定の実施形態では、疾患または状態は食道腺癌である。
【0087】
特定の実施形態では、疾患または状態は、ドライアイ疾患、ブドウ膜炎、肝臓疾患(例えば、肝炎、NASH、またはアルコール性脂肪症)、甲状腺眼症、鎌状赤血球網膜症、化学療法誘発性末梢神経障害、過敏性腸症候群、脳卒中、胃腸機能障害、または慢性胃食道逆流症(GERD)である。特定の実施形態では、疾患または状態は炎症性皮膚障害である。特定の実施形態では、疾患または状態は、乾癬、アトピー性皮膚炎、または酒さである。特定の実施形態では、疾患または状態はドライアイ疾患である。特定の実施形態では、疾患または状態はブドウ膜炎である。特定の実施形態では、疾患または状態は肝臓疾患(例えば、肝炎、NASH、またはアルコール性脂肪症)である。特定の実施形態では、疾患または状態は甲状腺眼症である。特定の実施形態では、疾患または状態は、遺伝性網膜疾患(例えば、網膜色素変性症、脈絡膜血症、スタルガルト病、錐体杆体ジストロフィー、またはレーベル先天黒内障)である。特定の実施形態では、疾患または状態は鎌状赤血球網膜症である。特定の実施形態では、疾患または状態は、化学療法誘発性末梢神経障害である。特定の実施形態では、疾患または状態は過敏性腸症候群である。特定の実施形態では、疾患または状態は脳卒中である。特定の実施形態では、疾患または状態は胃腸機能障害である。特定の実施形態では、疾患または状態は慢性胃食道逆流症(GERD)である。
【0088】
特定の実施形態では、疾患または状態は糖尿病網膜疾患である。
【0089】
上述のように、本方法は、第1の治療剤の特質に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は式Iの化合物である。特定の実施形態では、第1の治療剤は式Iの化合物の薬学的に許容される塩である。
【0090】
本方法は、投与量に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約120mg~約600mgの量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約480mg~約600mgの量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約600mgの量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約480mgの量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約300mgの量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約240mgの量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は1日当たり約120mgの量で患者に経口投与される。
【0091】
本方法は、投与レジメンに従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤の第1の用量および第1の治療剤の第2の用量は、同一の日に患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は患者に1日1回のみ経口投与される。
【0092】
特定の実施形態では、第1の治療剤は朝に患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は夕方に患者に経口投与される。
【0093】
特定の実施形態では、約360mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約240mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0094】
特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約360mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約360mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0095】
特定の実施形態では、約300mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約300mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約300mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0096】
特定の実施形態では、患者が第1の治療剤による有害事象を経験した場合、その後少なくとも2日間、第1の治療剤は1日当たり約480mgの減量された1日量で患者に経口投与される。
【0097】
特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が朝に患者に経口投与され、かつ約240mgの第1の治療剤が夕方に患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約8時間~約16時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。特定の実施形態では、約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与され、次いで約10時間~約14時間後の時点で約240mgの第1の治療剤が患者に経口投与される。
【0098】
特定の実施形態では、患者が第1の治療剤による有害事象を経験した場合、その後少なくとも2日間、第1の治療剤は1日当たり約300mgの減量された1日量で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は朝に患者に経口投与される。
【0099】
上記の本明細書に記載された実施形態の組み合わせは、本発明の一部である。例えば、特定の実施形態では、本発明は、滲出型加齢黄斑変性、萎縮型加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症、地図状萎縮、網膜新生血管形成、脈絡膜新生血管形成、または角膜移植片拒絶反応から選択される疾患または状態を治療する方法であって、1日当たり約120mg~約600mgの量で第1の治療剤を、それを必要とするヒト患者に経口投与し、それにより疾患または状態を治療することを含み、該第1の治療剤が、式I:
【化14】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、方法を提供する。
【0100】
H.治療方法に関する一般的な考慮事項
本明細書に記載される治療方法(例えば、上記のパートAおよびパートGに記載の方法)に適用され得る一般的な考慮事項は以下に提供され、例えば、第1の治療剤の毎日の経口投与の期間、治療される疾患または状態の特性(例えば、糖尿病網膜疾患の特性)、およびヒト患者の特質が挙げられる。そのような特徴のより詳細な説明を以下に提供する。本発明は、これらの特徴の全ての順列と組み合わせを包含する。
【0101】
第1の治療剤の毎日の投与の期間
本方法は、第1の治療剤の毎日の経口投与の期間に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤の量は少なくとも1週間、患者に毎日経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤の量は少なくとも2週間、患者に毎日経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤の量は少なくとも4週間、患者に毎日経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤の量は少なくとも6週間、患者に毎日経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤の量は少なくとも8週間、患者に毎日経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤の量は少なくとも10週間、患者に毎日経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤の量は少なくとも12週間、患者に毎日経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤の量は少なくとも24週間、患者に毎日経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤の量は少なくとも30、32、34、36、38 40、42、44、46、48、50、または52週間、患者に毎日経口投与される。
【0102】
糖尿病網膜疾患の特性
本方法は、糖尿病網膜疾患の特性に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、糖尿病網膜疾患は糖尿病網膜症である。特定の実施形態では、糖尿病網膜症は軽症糖尿病網膜症である。特定の実施形態では、糖尿病網膜症は中等症糖尿病網膜症である。特定の実施形態では、糖尿病網膜症は準重症~重症糖尿病網膜症である。特定の実施形態では、糖尿病網膜症は非増殖性糖尿病網膜症である。特定の実施形態では、糖尿病網膜症は増殖性糖尿病網膜症である。
【0103】
特定の実施形態では、糖尿病網膜疾患は糖尿病黄斑浮腫である。
【0104】
追加の考慮事項
本方法は、第1の治療剤が投与される形態、ヒト患者の特質、および本方法によって達成される糖尿病網膜疾患の改善などの追加の考慮事項に従ってさらに特徴付けられ得る。
【0105】
例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は、徐放性医薬組成物の形態で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12時間の期間にわたって第1の治療剤の放出を提供する徐放性医薬組成物の形態で患者に経口投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は即放性医薬組成物の形態で患者に経口投与される。医薬組成物については、以下のセクションIIIでさらに詳細に説明する。
【0106】
特定の実施形態では、ヒト患者は成人ヒト患者である。
【0107】
特定の実施形態では、本方法は、糖尿病網膜症重症度スコアの改善に従ってさらに特徴付けられる。例えば、特定の実施形態では、患者は、本方法により糖尿病網膜症重症度スコアの5、10、15、20、25、30、35、または40点の減少を経験する。特定の実施形態では、患者は、本方法により糖尿病網膜症重症度スコアの少なくとも2段階の減少を経験する。特定の実施形態では、患者は、本方法により糖尿病網膜症重症度スコアの少なくとも3段階の減少を経験する。特定の実施形態では、患者は、本方法により糖尿病網膜症重症度スコアの少なくとも4段階の減少を経験する。
【0108】
特定の実施形態では、本方法は、最高矯正視力の改善に従ってさらに特徴付けられる。例えば、特定の実施形態では、患者は、本方法により最高矯正視力で少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の改善を経験する。特定の実施形態では、患者は、本方法により最高矯正視力で少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、または18文字の改善を経験する。最高矯正視力は、当該技術分野で知られている方法に従って、例えば標準ETDRS照明チャート(壁掛けまたはスタンド)を4mで使用して測定することができる。あるいは、最高矯正視力は、スネレンチャートを使用して測定することができる。
【0109】
特定の実施形態では、本方法は、糖尿病の症状に対する影響に従ってさらに特徴付けられる。特定の実施形態では、本方法は、糖尿病の症状を低減する。特定の実施形態では、本方法は、患者が経験する任意の腎障害を低減する。特定の実施形態では、本方法は、患者が経験する任意の腎障害を、少なくとも5、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、50、60、70、80、または90%低減する。腎障害の低減は、第1の治療剤を用いた本方法による治療を受けていない同等の患者が経験するものと比較したものである。
【0110】
特定の実施形態では、本方法は神経保護作用を達成する。
【0111】
特定の実施形態では、本方法は、第1の治療剤によるアラニンアミノトランスフェラーゼの血漿中濃度の上昇が5%以下であるという特徴によってさらに特徴付けられる。特定の実施形態では、本方法は、第1の治療剤によるアラニンアミノトランスフェラーゼの血漿中濃度の上昇が2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または15パーセント以下であるという特徴によってさらに特徴付けられる。
【0112】
特定の実施形態では、本方法は、第1の治療剤によるアラニンアミノトランスフェラーゼの血漿中濃度の低下をもたらすという特徴によってさらに特徴付けられる。特定の実施形態では、低下は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または15パーセントである。
【0113】
特定の実施形態では、本方法は、第1の治療剤によるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの血漿中濃度の上昇が5%以下であるという特徴によってさらに特徴付けられる。特定の実施形態では、本方法は、第1の治療剤によるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの血漿中濃度の上昇が2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または15パーセント以下であるという特徴によってさらに特徴付けられる。
【0114】
特定の実施形態では、本方法は、第1の治療剤によるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの血漿中濃度の低下をもたらすという特徴によってさらに特徴付けられる。特定の実施形態では、低下は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または15パーセントである。
【0115】
特定の実施形態では、本方法は、患者における糸球体濾過量の低下が15%以下であるという特徴によってさらに特徴付けられる。特定の実施形態では、本方法は、患者における糸球体濾過量の低下が2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または15パーセント以下であるという特徴によってさらに特徴付けられる。
【0116】
特定の実施形態では、本方法は、第1の治療剤による任意の眼障害の発生が、同一の治療を受けた10人の患者当たり1人以下の患者の頻度で起こるという特徴によってさらに特徴付けられる。特定の実施形態では、本方法は、第1の治療剤による任意の眼障害の発生が、同一の治療を受けた10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、または40人の患者当たり1人以下の患者の頻度で起こるという特徴によってさらに特徴付けられる。
【0117】
特定の実施形態では、本方法は、第1の治療剤による任意の眼障害の発生が、同一の治療を受けた20人の患者当たり1人以下の患者の頻度で起こるという特徴によってさらに特徴付けられる。特定の実施形態では、本方法は、第1の治療剤による任意の眼障害の発生が、同一の治療を受けた10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、または40人の患者当たり1人以下の患者の頻度で起こるという特徴によってさらに特徴付けられる。
【0118】
特定の実施形態では、本方法は、第1の治療剤による任意の胃腸障害の発生が、同一の治療を受けた10人の患者当たり1人以下の患者の頻度で起こるという特徴によってさらに特徴付けられる。特定の実施形態では、本方法は、第1の治療剤による任意の胃腸障害の発生が、同一の治療を受けた10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、または40人の患者当たり1人以下の患者の頻度で起こるという特徴によってさらに特徴付けられる。
【0119】
特定の実施形態では、本方法は、第1の治療剤による任意の神経系障害の発生が、同一の治療を受けた20人の患者当たり1人以下の患者の頻度で起こるという特徴によってさらに特徴付けられる。特定の実施形態では、本方法は、第1の治療剤による任意の神経系障害の発生が、同一の治療を受けた10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、または40人の患者当たり1人以下の患者の頻度で起こるという特徴によってさらに特徴付けられる。
【0120】
本発明の別の態様は、医薬の製造における本明細書に記載される第1の治療剤の使用を提供する。特定の実施形態では、医薬は、本明細書に記載される障害を治療するためのもの、例えば、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、および/または他の糖尿病網膜障害を治療するためのものである。
【0121】
本発明の別の態様は、医学的障害、例えば本明細書に記載される医学的障害を治療するための、例えば、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、および/または他の糖尿病網膜障害を治療するための、本明細書に記載される第1の治療剤の使用を提供する。
【0122】
II.併用療法
本発明の別の態様は、併用療法を提供する。上記の本明細書に記載された第1、第2、第3、第4、第5、第6、および第7の治療方法は、任意選択で、1つ以上の第2の治療剤を患者に投与することをさらに含み得る。例えば、特定の実施形態では、本方法は、糖尿病網膜疾患を治療するための第2の治療剤を患者に投与することをさらに含む。
【0123】
特定の実施形態では、第2の治療剤は、抗炎症剤、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、アンジオポエチン2阻害剤、および/または血管内皮増殖因子阻害剤である。特定の実施形態では、第2の治療剤は血管内皮増殖因子阻害剤である。特定の実施形態では、血管内皮増殖因子阻害剤は、ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ニロチニブ、またはダサチニブである。特定の実施形態では、血管内皮増殖因子阻害剤は二重特異性抗体である。特定の実施形態では、抗炎症剤はコルチコステロイドである。特定の実施形態では、第2の治療剤は、VEGF阻害剤、mTor阻害剤、VEGFR2リン酸化剤、チロシンキナーゼ阻害剤、IGF-1R阻害剤、ニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニスト、選択的糖化阻害剤、コルチコステロイド、NSAID、フラボノイド、TNFα阻害剤、PKC阻害剤、アルドース還元酵素、PARP阻害剤、活性酸素種阻害剤、AT-I受容体モジュレーター、AT-II受容体モジュラー、rho関連プロテインキナーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、一酸化窒素合成酵素阻害剤、AGE阻害剤、またはPPARガンマアップレギュレーターである。
【0124】
特定の実施形態では、第2の治療剤は、免疫腫瘍学療法、Car-t療法、Crispr療法、BTKモジュレーター、bcl-2モジュレーター、stat-3モジュレーター、KRASモジュレーター、PD1モジュレーター、および/またはDNA修復剤である。特定の実施形態では、第2の治療剤は骨髄移植または関連移植である。特定の実施形態では、モジュレーターは阻害剤である。
【0125】
特定の実施形態では、本方法は、抗炎症剤、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、アンジオポエチン2阻害剤、および/または血管内皮増殖因子阻害剤である第2の治療剤を患者に投与することをさらに含む。特定の実施形態では、本方法は、血管内皮増殖因子阻害剤である第2の治療剤を患者に投与することをさらに含む。特定の実施形態では、血管内皮増殖因子阻害剤は、ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、ニロチニブ、またはダサチニブである。特定の実施形態では、血管内皮増殖因子阻害剤は二重特異性抗体である。特定の実施形態では、抗炎症剤はコルチコステロイドである。
【0126】
特定の実施形態では、
【0127】
特定の実施形態では、第1の治療剤は、糖尿病網膜疾患を治療するためのヒト患者に投与される唯一の治療剤である。
【0128】
特定の実施形態、例えば炎症性皮膚疾患を治療する場合では、第2の治療剤は、免疫抑制剤、抗炎症剤、光線療法(例えば、太陽光、UVA、UVB、ソラレンUVA、またはエキシマレーザー)、レチノイド、コルチコステロイド、ビタミンD類似体、カルシニューリン阻害剤、サリチル酸、アントラリン、コールタール、またはゲッカーマン療法(例えば、光線およびコールタール)である。
【0129】
第2の治療剤および任意選択の追加の治療剤は、複数回投与レジメンの一部として、本発明の化合物または組成物とは別個に投与されてもよい。あるいは、第2の治療剤および任意選択の追加の治療剤は、単一の組成物中で本発明の化合物と共に混合された単一剤形の一部であってもよい。複数回投与レジメンとして投与される場合、第2の治療剤および任意選択の追加の治療剤と本発明の化合物または組成物は、同時に、逐次的に、または一定期間内の投与間で、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、18、20、21、22、23、または24時間以内の投与間で投与されてもよい。いくつかの実施形態では、第2の治療剤および任意選択の追加の治療剤と本発明の化合物または組成物は、24時間を超えた間隔をあけて複数回投与レジメンとして投与される。
【0130】
III.医薬組成物
上述のように、本発明は、1つ以上の薬学的に許容される担体(添加剤)および/または希釈剤と共に製剤化された、治療有効量の1つ以上の上記化合物を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、経口投与に適合したもの、例えば、飲薬(水性または非水性の溶液または懸濁液)、錠剤、例えば、バッカル、舌下、および全身吸収を対象としたもの、ボーラス、粉末、顆粒、舌に塗布するためのペーストを含む、固体または液体形態での投与のために特別に製剤化され得る。
【0131】
湿潤剤、乳化剤および滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、防腐剤および酸化防止剤が組成物中に存在することもできる。
【0132】
薬剤的に許容される酸化防止剤の例としては、(1)水溶性酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど、(2)脂溶性酸化防止剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど、および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0133】
本製剤は、好都合には単位剤形で提供することができ、薬学の分野において周知である任意の方法によって調製することができる。単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される宿主、特定の投与様式に応じて変動する。単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、概して治療作用をもたらす化合物の量となる。概して、100パーセントのうち、この量は、活性成分が約0.1パーセント~約99パーセント、好ましくは約5パーセント~約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント~約30パーセントの範囲である。
【0134】
特定の実施形態では、本発明の製剤は、シクロデキストリン、セルロース、リポソーム、ミセル形成剤、例えば胆汁酸、およびポリマー担体、例えばポリエステルおよびポリ無水物からなる群から選択される賦形剤と、本発明の化合物とを含む。特定の実施形態では、前述の製剤は、本発明の化合物を経口で生物学的に利用可能にする。
【0135】
これらの製剤または組成物を調製する方法は、本発明の化合物を担体および任意選択で1つ以上の補助成分と会合させるステップを含む。一般に、製剤は、本発明の化合物を液体担体または微粉化固体担体またはその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで、必要に応じて、生成物を成形することによって調製される。
【0136】
経口投与に好適な本発明の製剤は、所定の量の本発明の化合物を活性成分として各々含有する、カプセル剤、カシェー、丸剤、錠剤、甘味入り錠剤(風味付けされた基剤、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントを使用する)、粉末剤、顆粒剤、または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液、または水中油型もしくは油中水型液体エマルション、またはエリキシル剤もしくはシロップ、またはパスティル(ゼラチンおよびグリセリン、もしくはスクロースおよびアカシアなどの不活性ベースを使用する)、および/または洗口液などの形態であり得る。本発明の化合物はまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとして投与されてもよい。
【0137】
経口投与のための本発明の固形剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末剤、顆粒剤、トローチ剤など)において、活性成分は、1種以上の薬学的に許容される担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムおよび/または以下のいずれかと混合される:(1)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸、(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシア、(3)保湿剤、例えば、グリセロール、(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム、(5)溶解遅延剤(solution retarding agents)、例えば、パラフィン、(6)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物、ならびに界面活性剤、例えば、ポロキサマーおよびラウリル硫酸ナトリウム、(7)湿潤剤、例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、および非イオン性界面活性剤、(8)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土、(9)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、およびそれらの混合物、(10)着色剤、ならびに(11)制御放出剤、例えば、クロスポピドンまたはエチルセルロース。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、本医薬組成物はまた、緩衝剤も含み得る。同様のタイプの固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、軟質および硬質シェルゼラチンカプセル中の充填剤として用いることもできる。
【0138】
錠剤は、圧縮または成形によって、任意選択で1つ以上の補助成分と共に、作製され得る。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤、または分散剤を使用して調製され得る。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状の化合物の混合物を好適な機械で成形することによって作製され得る。
【0139】
錠剤、ならびに本発明の医薬組成物の他の固体剤形、例えば糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤は、任意選択で刻み目を入れられてもよく、または腸溶性コーティングおよび医薬製剤分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルで調製されてもよい。これらはまた、その中の活性成分を徐放または制御放出するように、例えば、所望の放出プロファイルを提供するために様々な割合でヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソーム、および/またはミクロスフェアを使用して、製剤化されてもよい。これらは迅速な放出のために製剤化されてもよい、例えば凍結乾燥されてもよい。これらは、例えば、細菌捕捉フィルターに通して濾過することにより、または使用直前に減菌水もしくは他の減菌注射用媒体に溶解することができる減菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。これらの組成物は、任意選択で不透明化剤を含有してもよく、活性成分(複数可)を、胃腸管の特定の部分のみにまたは当該部分に優先的に、任意選択で遅延された様式で、放出する組成であってもよい。使用され得る埋封組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。活性成分はまた、適切な場合、上述の賦形剤のうちの1つ以上と共にマイクロカプセル化された形態であり得る。
【0140】
本発明の化合物の経口投与のための液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、当該技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(具体的には、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物などを含むことができる。
【0141】
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤、および懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤、および防腐剤などのアジュバントを含むこともできる。
【0142】
懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびスルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、ならびにそれらの混合物を含有してもよい。
【0143】
本発明の医薬組成物において用いられ得る好適な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0144】
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントも含有し得る。対象化合物に対する微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって確保することができる。糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含むこともまた望ましい場合がある。
【0145】
特定の実施形態では、医薬組成物は、クリーム、コロイド、懸濁液、スプレー、ゲル、ローション、軟膏、フォーム、または溶液の形態であり得る。特定の実施形態では、医薬組成物は注射用の溶液の形態であり得る。特定の実施形態では、医薬組成物は皮下注射用の溶液の形態であり得る。
【0146】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に対して毒性であることなく、特定の患者、組成物、および投与様式に関して所望の治療的応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るように変動し得る。
【0147】
選択される投与量レベルは、用いられる特定の本発明の化合物またはそのエステル、塩、もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、用いられる特定の化合物の排出または代謝の速度、吸収の速度および程度、治療期間、用いられる特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物、および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康状態、および過去の既往歴、ならびに医療分野において周知である同様の要因を含む、多様な要因に依存する。
【0148】
一般に、本発明の化合物の適切な1日用量は、治療効果をもたらすのに有効な最低用量である化合物の量である。そのような有効用量は、一般に上記の要因に依存する。本明細書に記載される化合物が別の薬剤と併用される場合(例えば、感作剤として)、有効量は、その薬剤を単独で使用する場合よりも少なくなり得る。
【0149】
所望される場合、活性化合物の有効な1日用量は、別個に投与される2、3、4、5、6、またはそれ以上の分割用量として、1日を通して適切な間隔で、任意選択で単位剤形で投与され得る。
【0150】
本発明はさらに、本明細書に記載される医学的障害を治療するための治療有効量で本明細書に記載される化合物を含む単位剤形(例えば、錠剤またはカプセル)を提供する。
【0151】
IV.医療キット
本発明の別の態様は、例えば、(i)本明細書に記載される治療剤と、(ii)本明細書に記載の方法に従って糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、および/または他の糖尿病網膜障害を治療するための説明書と、を含む医療キットを提供する。
【実施例】
【0152】
ここに概して説明されている本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解され、これらの実施例は、単に本発明の特定の態様および実施形態を例示する目的で含まれ、本発明を限定することを意図するものではない。
【0153】
実施例1-非増殖性糖尿病網膜症および軽症増殖性糖尿病網膜症の治療
非増殖性糖尿病網膜症(NPDR)および軽症増殖性糖尿病網膜症(PDR)を治療する化合物1の能力は、非増殖性糖尿病網膜症または軽症増殖性糖尿病網膜症に罹患する患者に化合物1を経口投与する臨床試験に従って評価することができる。化合物1は、化学名(E)-2-((4,5-ジメトキシ-2-メチル-3,6-ジオキソシクロヘキサ-1,4-ジエン-1-イル)メチレン)ウンデカン酸を有し、以下の化学式:
【化15】
で表される。
【0154】
本試験は、プラセボ対照、二重盲検、無作為化、第2相試験として構成され、準重症~重症NPDR(糖尿病網膜症重症度スコア[DRSS]レベル47または53、
図1参照)または軽症PDR(DRSSレベル61)を有する約100名の対象において、化合物1を1日2回、24週間投与した後の安全性および有効性を評価する。本試験では1:1の無作為化(プラセボ:化合物1)が行われる。無作為化は、疾患の重症度のレベル(NPDRまたはPDR)により層別化される。軽症PDRを有する対象は各群で20%を上限とする。12週目および/または24週目での有効性評価には、DRSS、中心窩を含む糖尿病黄斑浮腫(DME)、中等症PDR、またはPDR関連有害事象(AE)、最高矯正視力(BCVA)、および中心領域網膜厚(CST)が含まれる。さらなる実験手順および結果を以下に説明する。
【0155】
パートI-実験手順
対象の参加期間は合計約26週間で、5回のクリニック来院、4回の電話による安全確認、および1回の電話によるフォローアップ来院が予定され、以下に要約する。
・スクリーニング来院1(ベースライン来院の7日前まで)
・適格性評価/ベースライン来院2(1日)
・治療-試験期間(24週間)
o治療来院4(第4週)、来院6(第12週)、および来院9(第24週)
o電話による安全確認来院3(第1週)、来院5(第8週)、来院7(第16週)、および来院8(第20週)
・電話によるフォローアップ来院10(2日)
【0156】
ヒト対象は、登録の可能性についてスクリーニングされ、適格であれば試験に登録される。本試験の選択基準および除外基準を以下に示す。ヒト対象はいずれの眼でも適格であり得る。DRSSがより高い適格な眼が、主要エンドポイントの有効性解析のための試験眼として指定される。PDRの上限に達した場合、もう一方の眼が軽症PDRであれば、試験眼はDRSSが低い方の眼としてもよい。両眼のDRSSが同じ場合、BCVAがより悪い眼が試験眼として選択される。DRSSとBCVAが両眼で等しい場合、試験眼は右眼とする。
選択基準
・18歳以上の男性または妊娠していない女性。
・少なくとも一方の眼が少なくとも準重症~重症NPDRまたは軽症PDR(DRSS47、53、または61に相当し、中央読影機関で確認された)に分類された糖尿病網膜症を有し、汎網膜レーザー光凝固術(PRP)および抗VEGF剤の硝子体内注射を治験責任医師の見解において6ヶ月以上安全に延期できる者。
・早期治療糖尿病網膜症試験(ETDRS)プロトコルの文字スコアで評価したBCVAが試験眼で60文字以上(スネルレン換算で20/63以上)である者。
・眼媒質が十分に透明で、瞳孔散大が適切であり、固視が十分で、両眼で質の高い眼底撮影が可能である者。
・眼科視機能検査および解剖学的評価に十分に協力できる者。
・体格指数(BMI)が18~40kg/m2以内である者。
・署名されたインフォームドコンセントを提出し、試験の指示に従うことができ、その意思がある者。
・試験期間を通じて試験薬を自分で経口投与するか、または介護者による試験薬投与が可能である者。
除外基準-眼関連
・糖尿病以外の原因による網膜症。
・SD-OCTでの中心領域網膜厚(CST)≧300μmとして定義される中心窩を含む糖尿病黄斑浮腫(DME)がある者、または中心領域(central subfield)内に網膜内滲出液もしくは網膜下滲出液がある者。僚眼での中心窩を含むDMEは許可される。僚眼での抗VEGF剤の硝子体内注射は対象を除外しない。
・試験眼での前治療と、除外される併用薬/治療:
o過去1年以内に局所もしくは格子状レーザー光凝固術を受けた、またはこれまでにPRPを受けたことがある者。
o過去6ヶ月以内に抗VEGF剤の全身投与または硝子体内投与を受けている、または治験責任医師の見解において試験期間中に治療が必要となる可能性がある者。
o過去6ヶ月以内にトリアムシノロンおよびデキサメタゾンなどのステロイドを眼内に埋植している者。
o過去3年以内にフルオシノロンを埋植している者。
・いずれかの眼に、試験手順および視力測定を妨げる可能性が高いと治験責任医師が判断した、臨床的に重大な眼疾患がある者(例えば、白内障、後嚢混濁の所見を伴わない偽水晶体、緑内障、角膜浮腫、ブドウ膜炎、重度の乾性角結膜炎)。
・試験眼に加齢黄斑変性、パターンジストロフィー、何らかの原因による脈絡膜新生血管形成、網膜静脈閉塞症、網膜動脈閉塞症などの他の黄斑または網膜血管疾患がある者。
・いずれかの眼に十分な臨床撮影を妨げ得る活動性硝子体出血がある者。
・試験眼に網膜剥離または全層黄斑円孔の既往歴がある者。
・局所降圧点眼薬の有無にかかわらず、いずれかの眼にコントロールされていない緑内障(陥凹乳頭径比>0.7および眼内圧(IOP)>25mmHgと定義される)がある者;高眼圧症またはコントロールされた緑内障の治療は除外基準ではない。
・1日目の前3ヶ月以内に試験眼において白内障手術などの眼切開手術を受けた者。
・過去30日以内に試験眼においてイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)後嚢切開術を受けた者。
・試験眼が無水晶体である者。
・試験眼に経毛様体扁平部硝子体切除術の既往がある者。
・試験眼において、治験責任医師によって重大であると判断された、網膜前膜、後部硝子体牽引、および/または硝子体黄斑牽引がある者。
・いずれかの眼に活動性ブドウ膜炎および/または硝子体炎がある者。
・いずれかの眼に特発性または自己免疫関連ブドウ膜炎の既往歴がある者。
・いずれかの眼に、感染性結膜炎、角膜炎、強膜炎、または眼内炎などの活動性感染症がある者。
除外基準-全身
・ヘモグロビンA1c(HbA1c)が12.0%以上と定義されるコントロール不良の糖尿病である、またはHbA1cが12.0%未満であり、かつコントロールされていない真性糖尿病である、または利用可能なHbA1cがない者。
・免疫不全状態にある、または免疫抑制療法を受けていることが判明している者。
・任意の疾患または医学的状態があり、対象が本試験に正常に参加できない、または本試験の結果を混乱させる可能性があると治験責任医師が判断した者。
・臨床的に重大な全身疾患(例えば、コントロールされていない糖尿病、重症筋無力症、がん、肝障害、腎障害、内分泌障害、または心血管系障害)があり、試験を妨げる可能性があると治験責任医師が判断した者。
・腎疾患の食事改善(MDRD)による推定糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分未満、またはクレアチニンが4mg/dL超である者。
・治験薬またはその成分のいずれかに対するアレルギー反応の既往歴がある者。
・スクリーニング来院時の安静時心拍数(HR)が規定範囲50~110拍/分の範囲外である者。HRは、規定範囲外の場合、座位で少なくとも5分間の休息後、1回のみ繰り返すことができる。
・スクリーニング来院時の安静時拡張期血圧(BP)が110mmHg超、または収縮期血圧(BP)が180mmHg超の高血圧である者。BPは、規定範囲外の場合、座位で少なくとも5分間の休息後、1回のみ繰り返すことができる。
・慢性肝臓疾患の既往歴がある者、またはそのような診断と一致するアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇がある者(すなわち、ASTまたはALT>2×正常値上限)。
・スクリーニング前30日以内に治験薬臨床試験に参加した、または試験終了から30日以内に任意の他の治験薬または機器の臨床試験に参加予定である者。
・妊娠の可能性のある女性で、妊娠中、授乳中、妊娠を計画している、または医学的に許容される形式の避妊を使用していない者。妊娠の可能性のある全ての女性は、来院1/スクリーニング検査で尿妊娠検査結果が陰性でなければならず、試験期間中に妊娠しない意思がなければならない。
【0157】
僚眼にDMEを有する患者は試験に登録される資格があるが、試験眼に中心窩を含むDMEは除外される。
【0158】
対象は来院1でスクリーニングされ、適格性要件を正常に満たした対象は、適格性評価/ベースライン来院(来院2/1日目)のために施設に再来院し、そこで一連の安全性および臨床検査評価を受け、試験薬が交付される。次いで、対象は、安全性および有効性評価のために、来院4(第4週)、来院6(第12週)、および来院9(第24週)に施設に再来院する。これらの施設来院の間に、対象は、来院3(第1週)、来院5(第8週)、来院7(第16週)、および来院8(第20週)に電話を受け、AE、併用薬、および薬剤管理を含む安全性評価をされる。
【0159】
試験薬は、最初に来院2(1日目)に交付され、次に来院4(第4週)および来院6(第12週)に施設で交付される。対象は、薬剤管理のため、未使用の試験薬を全て各施設来院時に持参する。試験薬は、来院9(第24週)に施設で回収される。AEおよび併用薬評価のために、来院9(第24週)の1週間後にフォローアップ電話が実施される。
【0160】
スクリーニング時(来院1、-7日目~-1日目):
・試験センターのスタッフのメンバーが試験への参加資格について本人に面接し、対象が継続を希望する場合はインフォームドコンセントフォームに署名する。
・スクリーニングの開始には、対象識別番号の割り当て、試験の説明、病歴および眼科の既往歴、人口統計学的背景、および前治療薬/併用薬の確認が含まれる。
・その後、身体検査、HR/BPの測定、および妊娠の可能性のある女性に対して尿妊娠検査が行われる。
・続いて、BCVAを測定し、SD-OCT(CSTの場合)およびカラー眼底撮影(DRSSの場合)が行われる。DRSSの適格性は中央読影機関が7視野または4広視野の眼底写真で判定する。中央読影機関は、SD-OCTを使用してCST適格性も判定する。BCVA(距離)は、標準ETDRS照明チャート(壁掛けまたはスタンド)を4mで使用して測定することができる。
・その後、血液化学検査および血液学検査の評価、生体顕微鏡検査および直接または間接検眼鏡検査を含む眼科検査、IOP評価、eGFR、およびAEの評価が実施される。
【0161】
対象が全ての適格基準(DRSSおよびSD-OCTを含む)を満たしている場合、スクリーニング時に実施されるBCVA、DRSS、CST、および他の安全性評価がベースライン値となり、対象は適格性来院のために再来院することが求められる。
【0162】
適格性評価/ベースライン時(来院2、1日目):
・対象を試験に無作為に割り付ける。
・試験薬は対象の無作為に割り付けられた治療群に従って交付される。
・投与前に血液試料を採取してベースラインレベルを得、来院9(第24週)に探索的バイオマーカー処理(すなわち、サイトカインおよびRef-1レベル)を実施し、薬力学的特性を評価する。
・対象には、毎日、毎朝3錠および毎夕2錠の試験薬(APX3330またはプラセボ)を投与するよう指示する。試験薬は毎日ほぼ同じ時間に服用する必要があり、食事の有無は問わない。
【0163】
電話による安全確認は、来院3(第1週±2日)、来院5(第8週±2日)、来院7(第16週±2日)、および来院8(第20週±2日)に実施する。安全性評価には、服薬コンプライアンス、併用薬、AE、および自宅での尿妊娠検査(妊娠の可能性のある女性のみ)の確認が含まれる。
【0164】
最初の治療来院(来院4、第4週±2日)時に、対象は以下の一連の安全性および有効性評価のために施設に再来院する:薬剤管理、併用薬、尿妊娠検査(妊娠の可能性のある女性のみ)、HR/BP/バイタルサイン、BCVA(ETDRS)、生体顕微鏡検査、検眼鏡検査、IOP、およびAE。評価の完了後、管理のために使用済みの薬剤キットを回収し(未使用の錠剤数を数える)、新しい試験薬キットを交付する。
【0165】
2回目の治療来院(来院6、第12週±2日)時に、対象は以下の一連の安全性および有効性評価のために施設に再来院する:薬剤管理、併用薬、尿妊娠検査(妊娠の可能性のある女性のみ)、HR/BP/バイタルサイン、BCVA(ETDRS)、DRSS、CST(SD-OCT)、PK用採血、血液化学検査、血液学検査、生体顕微鏡検査、検眼鏡検査、IOP、eGFR、およびAE。評価の完了後、管理のために使用済みの薬剤キットを回収し(未使用の錠剤数を数える)、新しい試験薬キットを交付する。
【0166】
3回目の治療来院(来院9、第24週±2日)時に、対象は以下の一連の安全性および有効性評価のために施設に再来院する:薬剤管理、併用薬、尿妊娠検査(妊娠の可能性のある女性のみ)、身体検査、HR/BP/バイタルサイン、BCVA(ETDRS)、DRSS、CST(SD-OCT)、血液化学検査、血液学検査、生体顕微鏡検査、検眼鏡検査、IOP、eGFR、AE、および探索的バイオマーカー(ELISA、サイトカインパネル、包括的代謝パネル)用の採血。来院9(第24週)が治療期間の終わりである。試験薬は治験管理のために返却され(未使用の錠剤数を数える)、さらなる試験薬は交付されない。
【0167】
併用薬およびAEを評価するために、来院10(第25週±2日)に電話によるフォローアップコールが行われる。
【0168】
試験対象は、対象が割り当てられた治療群に従って、表1に記載の試験薬を投与される。対象には、試験薬を毎日ほぼ同じ時間に服用し、薬は食事と一緒に服用してもしなくてもよいことを指示する。試験薬は表2に記載されている。
【表1】
【表2】
【0169】
いかなる対象も、不利益を被ることなく、いつでも自発的に試験から離脱することが許される。未完了対象とは、プロトコルで要求される全ての試験手順を完了する前に、自らの意志で、または治験責任医師および/または医療モニターの裁量により試験から離脱した対象と定義される。
【0170】
対象がAEにより試験の中止を検討する場合、治験責任医師は代替策として1日当たり600mgから480mgへの用量減量(毎朝2錠および毎夕2錠)を提案することができる。
【0171】
有効性および安全性の評価-エンドポイントと測定手順
主要な有効性エンドポイントは、第24週に試験眼においてDRSSが2段階以上改善した対象の割合とする。副次的有効性エンドポイントには以下が含まれる:
・第12週および第24週でDRSS(
図1参照)が1段階以上、2段階以上、3段階以上、および4段階以上改善または悪化した対象の割合、
・第24週におけるDRSSのベースラインからの変化の平均値、
・第12週および第24週における試験中に中心窩を含むDMEまたは中等症PDRまたはPDR関連AEを発症しなかった対象の割合、
・第24週におけるBCVAのベースラインからの変化の平均値、ならびに
・CSTのベースラインからの変化の平均値。
【0172】
主要エンドポイントおよび副次的エンドポイントは、試験眼、僚眼、全ての適格な眼(全ての試験眼の適格基準を満たす試験眼および僚眼)、およびいずれかの眼(すなわち最良奏効)で評価される。全ての有効性エンドポイントは、修正intention-to-treat(mITT)およびper protocol(PP)集団によっても解析される。他の部分集団を特定して解析してもよい。
【0173】
探索的有効性エンドポイントには以下が含まれる:
・第12週に測定された血漿中の化合物1と、第12週および第24週の試験眼におけるDRSSのベースラインからの変化との関係、
・第24週における血漿Ref-1レベルのベースラインからの変化の平均値、
・第24週におけるサイトカインレベルのベースラインからの変化の平均値、
・第24週における血漿中のRef-1レベルと、試験眼におけるDRSSのベースラインからの変化との関係、
・第24週における血漿中のサイトカインレベルと、試験眼におけるDRSSのベースラインからの変化との関係。
【0174】
測定値は以下のように決定され、全ての時点および全ての来院時に同じ人が測定を実施するようあらゆる努力が払われる。
・DRSSは7視野または4広視野のカラー眼底写真で測定する、
・CSTはSD-OCTを使用して測定する、
・BCVAは、標準ETDRSチャートにより4m(文字)で測定する。
【0175】
薬物動態解析のため、来院6(第12週±2日)の朝の投与前および朝の投与の3時間後に血液試料を採取し、臨床施設のサブセットにおいて約25~30人の対象から化合物1の薬物レベルを確立する。これらの対象には、施設で試験薬を服用できるように、この来院当日の朝の試験薬の投薬を遅らせるように指示する。定常状態の薬物レベルを確立するため、投与直前に5mLの血液を採取する。3時間後に2回目の5mL試料を採取し、Cmax薬物レベルを確立する。化合物1の濃度測定のための血漿試料の分析は、検証済みの液体クロマトグラフィー質量分析法および液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)を使用して、中央PK検査機関によって行う。
【0176】
安全性エンドポイントには以下が含まれる:
・全身性AEおよび眼AEの発生率および重症度、
・身体システム評価におけるベースラインからの変化、
・バイタルサイン測定値におけるベースラインからの変化、
・臨床検査の検査結果(血液化学検査、血液学検査)におけるベースラインからの変化、
・眼内圧(IOP)のベースラインからの変化、
・細隙灯検査パラメータにおけるベースラインからの変化、
・散大眼底検査パラメータにおけるベースラインからの変化、
・第12週および第24週においてベースラインと比較してBCVAが10文字以上減少した対象の割合、
・中心窩を含むDMEに進行した対象(第12週および第24週にレスキュー治療の適格性を有する)の割合、
・第12週および第24週に試験眼においてDRSSが2段階以上悪化した対象の割合、
・第12週および第24週に前眼部新生血管形成を発症した対象の割合、
・第12週および第24週に治験責任医師の裁量によりレスキューされた(硝子体内抗VEGF注射、レーザーPRP、局所/格子状レーザー治療、または手術[硝子体切除術])対象の割合、ならびに
・第12週および第24週における推定糸球体濾過量(eGFR)のベースラインからの変化。
【0177】
有効性および安全性の評価-一般的な解析手順
解析集団には以下が含まれる:
・修正Intention-to-Treat(mITT):mITTには、少なくとも1回の試験治療および少なくとも1回の投与後有効性測定を受けた全ての無作為化対象が含まれる。mITTは有効性エンドポイントを解析するために使用される。
・Per Protocol集団(PP):PP集団には、予定された投与量の20%未満を投与されず、治療結果に重大な影響を及ぼすと考えられる主要なプロトコル逸脱がない、mITT内の全ての対象が含まれる。PP集団は、主要エンドポイント解析に使用され、有効性エンドポイントが解析される。
・全無作為化集団(ARP):ARPには全ての無作為化対象が含まれる。この集団は、Intent-to-Treat(ITT)集団としても知られる。ARPは有効性の確認解析に使用される。
・安全性集団(SP):SPには、少なくとも1回の試験治療を受けた全ての無作為化対象が含まれる。SPは安全性の項目を要約するために使用される。
【0178】
パートII-結果
本明細書に記載の試験プロトコルに従って患者に経口投与された化合物1の安全性に関するデータを以下に提供する。データは、試験に登録された100人の患者からのものである。上記の試験プロトコルに従って、試験に登録された患者を、プラセボと化合物1の投与に関して1:1で無作為に割り付けた。以下の安全性データは、プラセボを投与された患者と化合物1を投与された患者の結果を組み合わせたものである。この結果は、試験プロトコルに従って投与された化合物1が、この試験に登録された患者集団において良好な安全性プロファイルを有していたことを示している。
【0179】
以下の表3は、対象の血液中のアラニンアミノトランスフェラーゼ濃度の解析結果を提供する。
【表3】
【0180】
50人の対象の第12週に得られたデータを比較すると、対象の血液中のアラニンアミノトランスフェラーゼの平均濃度は、ベースライン時の対象の血液中のアラニンアミノトランスフェラーゼの平均濃度と比較して-0.8IU/Lの変化を示した。これは、第12週の対象の血液中のアラニンアミノトランスフェラーゼの平均濃度が、ベースライン時の対象の血液中のアラニンアミノトランスフェラーゼの平均濃度と比較して3.6%低下したことに相当する。
【0181】
22人の対象の第24週に得られたデータを比較すると、対象の血液中のアラニンアミノトランスフェラーゼの平均濃度は、ベースライン時の対象の血液中のアラニンアミノトランスフェラーゼの平均濃度と比較して-2.1IU/Lの変化を示した。これは、第24週の対象の血液中のアラニンアミノトランスフェラーゼの平均濃度が、ベースライン時の対象の血液中のアラニンアミノトランスフェラーゼの平均濃度と比較して9.4%低下したことに相当する。
【0182】
以下の表4は、対象の血液中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ濃度の解析結果を提供する。
【表4】
【0183】
50人の対象の第12週に得られたデータを比較すると、対象の血液中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの平均濃度は、ベースライン時の対象の血液中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの平均濃度と比較して-0.5IU/Lの変化を示した。これは、第12週の対象の血液中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの平均濃度が、ベースライン時の対象の血液中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの平均濃度と比較して3%低下したことに相当する。
【0184】
22人の対象の第24週に得られたデータを比較すると、対象の血液中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの平均濃度は、ベースライン時の対象の血液中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの平均濃度と比較して-1.8IU/Lの変化を示した。これは、第24週の対象の血液中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの平均濃度が、ベースライン時の対象の血液中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの平均濃度と比較して9%低下したことに相当する。
【0185】
以下の表5は、対象の糸球体濾過量の解析結果を提供する。
【表5】
【0186】
47人の対象の第12週に得られたデータを比較すると、対象の平均糸球体濾過量は、ベースライン時の対象の平均糸球体濾過量と比較して-2.24mL/分/1.73m2の変化を示した。これは、第12週の対象の平均糸球体濾過量が、ベースライン時の対象の平均糸球体濾過量と比較して2%低下したことに相当する。
【0187】
21人の対象の第24週に得られたデータを比較すると、対象の平均糸球体濾過量は、ベースライン時の対象の平均糸球体濾過量と比較して-9.84mL/分/1.73m2の変化を示した。これは、第24週の対象の平均糸球体濾過量が、ベースライン時の対象の平均糸球体濾過量と比較して11%低下したことに相当する。
【0188】
以下の表6は、対象の心拍数の解析結果を提供する。
【表6】
【0189】
62人の対象の第12週に得られたデータを比較すると、対象の平均心拍数は、ベースライン時の対象の平均心拍数と比較して+0.9拍/分の変化を示した。これは、第12週の対象の平均心拍数が、ベースライン時の対象の平均心拍数と比較して1%増加したことに相当する。
【0190】
27人の対象の第24週に得られたデータを比較すると、対象の平均心拍数は、ベースライン時の対象の平均心拍数と比較して+4.3拍/分の変化を示した。これは、第24週の対象の平均心拍数が、ベースライン時の対象の平均心拍数と比較して6%増加したことに相当する。
【0191】
以下の表7は、対象の収縮期血圧の解析結果を提供する。
【表7】
【0192】
62人の対象の第12週に得られたデータを比較すると、対象の平均収縮期血圧は、ベースライン時の対象の平均収縮期血圧と比較して-4.7mmHgの変化を示した。これは、第12週の対象の平均収縮期血圧が、ベースライン時の対象の平均収縮期血圧と比較して3%低下したことに相当する。
【0193】
27人の対象の第24週に得られたデータを比較すると、対象の平均収縮期血圧は、ベースライン時の対象の平均収縮期血圧と比較して-0.7mmHgの変化を示した。これは、第24週の対象の平均収縮期血圧が、ベースライン時の対象の平均収縮期血圧と比較して1%低下したことに相当する。
【0194】
以下の表8は、対象の拡張期血圧の解析結果を提供する。
【表8】
【0195】
62人の対象の第12週に得られたデータを比較すると、対象の平均拡張期血圧は、ベースライン時の対象の平均拡張期血圧と比較して-2.8mmHgの変化を示した。これは、第12週の対象の平均拡張期血圧が、ベースライン時の対象の平均拡張期血圧と比較して3%低下したことに相当する。
【0196】
27人の対象の第24週に得られたデータを比較すると、対象の平均拡張期血圧は、ベースライン時の対象の平均拡張期血圧と比較して+1mmHgの変化を示した。これは、第24週の対象の平均拡張期血圧が、ベースライン時の対象の平均拡張期血圧と比較して1%増加したことに相当する。
【0197】
以下の表9は、本試験に登録された100人の対象にわたる有害事象の発生の概要であり、プラセボを投与した患者および化合物1を投与した患者の結果を合わせたものである。これら100人の対象のうち、41人の対象が少なくとも1つの治療下発現有害事象を報告した。本試験に登録された100人の対象から合計83件の治療下発現有害事象が観察された。複数の治療下有害事象を報告した対象は、表9の器官別大分類内では1回のみカウントされる。
【表9】
【0198】
参照による組み込み
本明細書で言及される特許文献および科学論文の各々の開示全体は、あらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0199】
均等物
本発明は、その趣旨または本質的特性から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載される本発明を限定するのではなく、あらゆる点で例示的であるとみなされるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および均等の範囲内に入る全ての変更は、その中に包含されることが意図される。
【国際調査報告】