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特表2024-516008トラックホイールのための固定要素を有する摩擦リング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】トラックホイールのための固定要素を有する摩擦リング
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/092 20060101AFI20240404BHJP
   B61H 5/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
F16D65/092 D
F16D65/092 B
B61H5/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566932
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2022080682
(87)【国際公開番号】W WO2023083689
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】202021106132.4
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523408798
【氏名又は名称】フェイフェレイ トランスポート ボーフム ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン モンツァ
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト ラドケ
(72)【発明者】
【氏名】ラッセ シュルテ-ファーウィグ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフガング ベックマン
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA53
3J058AA58
3J058BA37
3J058CA45
3J058CA47
3J058DD02
3J058DE02
3J058DE05
3J058FA21
(57)【要約】
トラックホイールのブレーキ装置の効果的な冷却を可能とするトラックホイール、特にトラックホイールのための摩擦リングを提供するために、摩擦表面を有する摩擦面及びその摩擦面とは逆を向くリア面(10)を備える軌道車両のトラックホイールのための摩擦リング(100)が提案され、リア面(10)から突出した固定要素(11)がリア面(10)上に配置され、固定要素(11)が上方から見た場合に実質的に三角形状を有し、固定要素(11)の各々が径方向長さRを有することが規定され、摩擦リング(100)が内径R及び外径Rを有し、R=0.30-0.90(R-R)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道車両のトラックホイールのための摩擦リング(100)であって、摩擦表面を有する摩擦面及び該摩擦面とは逆を向くリア面(10)を備え、該リア面(10)から突出した固定要素(11)は前記リア面(10)上に配置され、前記固定要素(11)は上方から見た場合に実質的に三角形状を有し、前記固定要素(11)の各々は径方向長さRを有し、前記摩擦リング(100)は内径R及び外径Rを有し、R=0.30-0.90(R-R)である、摩擦リング(100)。
【請求項2】
前記固定要素(11)が、前記摩擦リング(100)の周方向に沿って、特に等間隔に、配置された、請求項1に記載の摩擦リング(100)。
【請求項3】
前記固定要素(11)の各々が、3つのフランク面(13a、13b、13c)を備える、請求項1又は2に記載の摩擦リング(100)。
【請求項4】
前記3つのフランク面(13a、13b、13c)は3つのコーナー部分(14a、14b、14c)によって相互に接続され、前記コーナー部分(14a、14b、14c)の少なくとも1つ、好ましくは前記コーナー部分(14a、14b、14c)の2つ、非常に特に好ましくは前記コーナー部分(14a、14b、14c)の全てが、丸みを帯びて形成された、請求項3に記載の摩擦リング(100)。
【請求項5】
前記フランク面(13b、13c)の少なくとも1つ、好ましくは2つ、特に2つの内側フランク面(13b、13c)が、凸状に形成された、請求項3又は4に記載の摩擦リング(100)。
【請求項6】
第1の外側のフランク面(13a)が、前記摩擦リング(100)の周囲に沿って配向され、径方向に対して垂直である、請求項3から5のいずれか一項に記載の摩擦リング(100)。
【請求項7】
前記第1の外側のフランク面(13a)が、平坦に形成された、請求項5に記載の摩擦リング(100)。
【請求項8】
R=0.50-0.70(R-R)、好ましくはR=0.55-0.65(R-R)である、請求項1から7のいずれか一項に記載の摩擦リング(100)。
【請求項9】
前記固定要素(11)の各々が径方向長さRを有し、第1の前記フランク面(13)は、前記摩擦リング(100)の周方向から見ると長さlを有し、l=0.40-0.60・R、好ましくはl=0.45-0.55・R、より好ましくはl=0.40-0.50・Rである、請求項7に記載の摩擦リング(100)。
【請求項10】
前記固定要素(11)の各々が径方向長さRを有し、一方の第1の外側のフランク面(13a)と、他方の第2の内側のフランク面(13b)及び第3の内側のフランク面(13c)との間の、それぞれ第1及び第2のコーナー部分(14a、14b)の曲率半径rについて、r=0.15-0.29・R、好ましくはr=0.17-0.27・R、より好ましくはr=0.20-0.24・R、が適用される、請求項4に記載の摩擦リング(100)。
【請求項11】
前記固定要素(11)の各々が径方向長さRを有し、第2の内側のフランク面(13b)と第3の内側のフランク面(13c)との間の第3のコーナー部分(14c)の曲率半径rについて、r=0.10-0.28・R、好ましくはr=0.14-0.24・R、最も好ましくはr=0.18-0.20・R、が適用される、請求項4に記載の摩擦リング(100)。
【請求項12】
前記固定要素(11)の各々が径方向長さRを有し、前記凸状のフランク面(13b、13c)の各々の曲率半径rについて、r=0.5-1.00・R、好ましくはr=0.7-0.8・R、最も好ましくはr=0.72-0.75・Rが適用される、請求項5に記載の摩擦リング(100)。
【請求項13】
少なくとも1つの、好ましくは2つの、非常に特に好ましくは3つの放射状のセンタリング溝が、前記リア面(10)に配置された、請求項1から12のいずれか一項に記載の摩擦リング(100)。
【請求項14】
少なくとも1つの冷却要素(16)が、特に、好ましくは径方向外側に延在する、冷却フィンが、前記リア面(10)上に配置された、請求項1から13のいずれか一項に記載の摩擦リング(100)。
【請求項15】
特に丸みを帯びて形成された、少なくとも1つの循環要素(17)が、前記リア面(10)上に配置された、請求項1から14のいずれか一項に記載の摩擦リング(100)。
【請求項16】
少なくとも1つの冷却要素(16)及び/又は少なくとも1つの循環要素(17)が、各固定要素(11)と関連付けられた、請求項14又は15に記載の摩擦リング(100)。
【請求項17】
前記摩擦リング(100)は、複数の摩擦リングセグメント(20a、20b、20c、20d)を備える請求項1から16のいずれか一項に記載の摩擦リング(100)。
【請求項18】
前記摩擦リングセグメント(20a、20b、20c、20d)は、接続要素によって、特に接続ボルト(21)によって、相互に接続される、請求項17に記載の摩擦リング(100)。
【請求項19】
前記固定要素(11)の少なくとも1つは、前記摩擦リング(100)を通る貫通孔(18)又は止まり穴(19)を備える、請求項1から18のいずれか一項に記載の摩擦リング(100)。
【請求項20】
前記固定要素(11)の各々は前記摩擦リング(100)を通る貫通孔(18)又は止まり穴(19)を備え、前記摩擦リング(100)の周方向から見ると、前記貫通孔(18)を有する前記固定要素(11)と止まり穴(19)を有する前記固定要素(11)とは交互となる、請求項18に記載の摩擦リング(100)。
【請求項21】
軌道車両のトラックホイールであって、少なくとも1つの、好ましくは2つの、請求項1から20のいずれか一項に記載の摩擦リング(100)を有する軌道車両のトラックホイール。
【請求項22】
請求項21に記載のトラックホイールを少なくとも1つ有する軌道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道車両のトラックホイールのための摩擦リング、その摩擦リングを備えるトラックホイール、及びそのトラックホイールを備える軌道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
軌道車両のブレーキ装置は通常、摩擦表面を有する少なくとも1つの摩擦リングを有するブレーキディスクを備える。摩擦リングは、トラックホイールの一方の側に、特に、トラックホイールのウェブに取り付けられる。ブレーキシリンダを作動させることによって、ブレーキパッドが摩擦リングの摩擦表面に適用され、それによって制動力を生成する。
【0003】
制動過程で生じた熱を放散してブレーキ装置のオーバーヒートを防止しなければならないということが多くの場合で問題となる。この目的のために、従来技術から種々の冷却コンセプトが知られており、それらは冷却要素を備え、例えば、それにより制動過程で生じた熱が環境に放散可能となる。
【0004】
従来技術から知られている冷却コンセプトでも一定の冷却効果が達成され得るが、これは不十分な場合が多く、発熱をより効果的に放散させる最適化された冷却コンセプトが必要となる。
【0005】
したがって、本発明は、トラックホイールのブレーキ装置の効果的な冷却を可能とするトラックホイール、特にトラックホイールのための摩擦リングを提供する課題に基づいている。
【発明の概要】
【0006】
本発明に係る課題は、軌道車両のトラックホイールのための摩擦リングであって、摩擦表面を有する摩擦面及びその摩擦面とは逆を向くリア面を備え、リア面から突出した固定要素はリア面上に配置され、固定要素は上方から見た場合に本質的に三角形状を有する摩擦リングによって解決される。ここで固定要素を上方から見るとは、摩擦リングのリア面又はホイールウェブに対する摩擦リングの当接のための固定要素の当接面の上面視のことをいう。
【0007】
固定要素によって、摩擦リングは、トラックホイールのホイールウェブに取付け可能となる。固定状態において、摩擦リングのリア面は、ホイールウェブに面する。リア面上に配置された固定要素に起因して摩擦リングのリア面とホイールウェブの間にギャップが形成された結果として、冷却空気、特に、周囲空気がこのギャップにおいて有利に循環可能となる。結果として、熱は、リア面を介して摩擦リングから、特に摩擦表面から有利に放散可能となる。
【0008】
放熱の改善に関して、摩擦リングのリア面間の冷却空気の流れを最適化するために、固定要素は、リア面と平行な断面から見た場合に本質的に三角形状を有する。固定要素のこの形状により、摩擦リングのリア面とホイールウェブの間の冷却空気の特に効果的な循環が達成可能となることが示されている。
【0009】
用語「本質的に三角形状」は、固定要素が数学的幾何学的な意味での厳密な三角形状を有する必要がないようなものと理解されるべきである。例えば、固定要素のコーナーは必ずしも尖っている必要はなく、鋭い縁を有する必要もなく、固定要素の側面は必ずしも平坦又は直線状である必要はない。
【0010】
好ましくは、固定要素が摩擦リングの周方向に沿って、特に等間隔に配置される。特に、固定要素は、周囲に沿って同じ角度の間隔を有する。
【0011】
好ましくは、偶数、例えば、4、6又は8個の固定要素が設けられる。代替的に、奇数個の固定要素、例えば、3、5又は7個の固定要素が設けられてもよい。
【0012】
好ましくは、固定要素の各々は、3つのフランク面を備える。フランク面は、摩擦リングのリア面から突出する。フランク面は、実質的にリア面に対して垂直に配置されてもよいし、リア面の面法線との所定角度を含んでいてもよい。この角度は、例えば、製造によって設けられ、6°~10°、好ましくは7°~9°、最も好ましくは8°であり得る。
【0013】
好ましくは、3つのフランク面と摩擦リングのリア面の表面との間の移行領域は、丸みを帯びて又は凹状に形成され、好ましくは完全に固定要素を囲む。これにより、冷却空気流の循環が有利に向上する。
【0014】
好ましくは、3つのフランク部分は3つのコーナー部分によって相互に接続され、コーナー部分のうち少なくとも1つ、好ましくはコーナー部分のうち2つ、非常に好ましくはコーナー部分の全てが丸みを帯びている。コーナー部分の丸みを帯びたデザインは、冷却空気の循環をさらに最適化して有利となる。
【0015】
好ましくは、フランク面のうち少なくとも1つ、好ましくは2つ、特に2つの内側フランク面が、凸状に形成される。内側フランク面は、好ましくは、摩擦リングの周囲に沿って整列されず、摩擦リングの外側領域に面していないフランク面である。凸状の形状は、好ましくは専ら、それぞれのフランク面の延長の実質的に径方向又は斜方径方向のことをいう。好ましくは、2つのフランク面が、同じ凸形状を有する。フランク面の凸形状はまた、最適化された冷却空気循環を保証する。
【0016】
好ましくは、第1の外側フランク面は、摩擦リングの周囲に沿って配向され、摩擦リングの径方向に対して垂直である。好ましくは、第1の外側フランク面は、平坦であり又は湾曲していない。好ましくは、固定要素は、固定要素が1つの外側フランク面のみを有し、他の2つのフランク面が実質的に内側に向くように、摩擦リングのリア面に配置及び配向される。この構成では、三角形状の固定要素のコーナーの1つが共通の交点の方向を向き、それは摩擦リングの中心に位置する必要はない。
【0017】
好ましくは、固定要素の各々は、径方向長さRを有する。径方向長さRは、好ましくは、固定要素の上面又は当接面で測定された、特にその中心での外側フランク面と、2つの内側フランク面間のコーナー領域との間の最短距離である。
【0018】
好ましくは、固定要素は、その上面に、トラックホイールのホイールウェブと当接するための平坦な当接面を有する。この当接面も、好ましくは本質的に三角形状である。
【0019】
好ましくは、摩擦リングは内径R及び外径Rを有し、R=0.30-0.90(R-R)、好ましくはR=0.50-0.70(R-R)、特に好ましくはR=0.55-0.65(R-R)である。これらの値は、一方では、ホイールウェブと各固定要素の間の十分に大きな当接面によって確実な固定が与えられ、同時に、冷却空気の循環のために十分な空間が与えられるように、摩擦リングとの関係で固定要素の最適なサイズとなる。
【0020】
さらに、径方向長さRには、上記の下限値及び上限値の任意の組合せが適用され得る。
【0021】
特に、R=0.50-0.90(R-R)、R=0.55-0.90(R-R)、R=0.65-0.90(R-R)又はR=0.70-0.90(R-R)が適用され得る。同様に、R=0.55-0.70(R-R)、R=0.65-0.70(R-R)又はR=0.50-0.65(R-R)が適用され得る。
【0022】
好ましくは、Rは70mm~110mm、より好ましくは80mm~100mm、最も好ましくは85mm~95mmである。例えば、Rは90mmであり得る。
【0023】
好ましくは、第1のフランク面は、摩擦リングの周方向から見ると長さlを有し、l=0.40-0.60・R、好ましくはl=0.45-0.55・R、特に好ましくはl=0.40-0.50・Rである。第1のフランク面の長さlは、好ましくは第1のフランク面の直線状の又は平坦な線分の最大長である。
【0024】
好ましくは、lは30mm~60mm、より好ましくは35mm~55mm、最も好ましくは40mm~50mmである。例えば、lは45mmであり得る。
【0025】
好ましくは、一方の第1の外側のフランク面と、他方の第2の内側のフランク面及び第3の内側のフランク面との間の、第1及び第2のコーナー部分の曲率半径rは、r=0.15-0.29・R、好ましくはr=0.17-0.27・R、全体として特に好ましくはr=0.20-0.24・Rである。
【0026】
好ましくは、rは10mm~35mm、より好ましくは12mm~30mm、最も好ましくは15mm~25mmである。例えば、rは20mmであり得る。
【0027】
好ましくは、第2の内側のフランク面と第3の内側のフランク面との間の第3のコーナー部分の曲率半径rは、r=0.10-0.28・R、好ましくはr=0.14-0.24・R、最も好ましくはr=0.18-0.20・Rである。
【0028】
好ましくは、rは10mm~30mm、より好ましくは12mm~25mm、最も好ましくは15mm~20mmである。例えば、rは17mmであり得る。
好ましくは、凸状フランク面の各々の曲率半径rはr=0.5-1.00・R、好ましくはr=0.7-0.8・R、最も好ましくはr=0.72-0.75・Rである。
【0029】
好ましくは、rは55mm~80mm、より好ましくは60mm~75mm、最も好ましくは65mm~70mmである。例えば、rは67mmであり得る。
【0030】
上述したパラメータにより、冷却空気の特に効果的な循環を可能とする固定要素の幾何形状が得られる。これにより、放熱が有利に向上する。
【0031】
有利なことに、固定要素自体も、固定要素を介して熱を放出することにより、その形状に起因して摩擦リングの冷却に寄与し得る。
【0032】
好ましくは、少なくとも1つ、好ましくは2つ、最も好ましくは3つの、好ましくは放射状のセンタリング溝が、リア面に配置される。好ましくは、摺動ブロックがセンタリング溝に挿入されてもよく、センタリング溝は摺動ブロックをガイドするように作用する。摺動ブロックは、熱膨張の間に摩擦リングをセンタリングするように作用する。好ましくは、センタリング溝は、摩擦リングの周囲に沿って等間隔とされる。
【0033】
好ましくは、少なくとも1つの冷却要素、特に好ましくは径方向外側に延在する冷却フィンが、リア面上に配置される。好ましくは、それぞれ1つの冷却要素が、2つの固定要素の間に配置される。好ましくは、少なくとも1つの冷却要素の高さは、摩擦リングのリア面の表面に対する固定要素の高さ以下である。
好ましくは、少なくとも1つの冷却要素は、特に実施形態では、冷却フィンとして、上面視で直線状又は曲線状の形状を有し得る。
【0034】
好ましくは、少なくとも1つの循環要素、特に丸みを帯びたデザインのものが、リア面上に配置される。循環要素は、摩擦リングのリア面とホイールウェブの間の冷却空気流の経路を最適化することで冷却性能をさらに向上させるように作用する。好ましくは、複数の循環要素が、摩擦リング上に対称配置される。好ましくは、循環要素の第1の列はリア面の外縁部分に沿って配置され、循環要素の第2の列はリア面の内縁部分に沿って配置される。好ましくは、循環要素は、固定要素の間にそれぞれ配置される。好ましくは、循環要素は、それぞれ、1つの冷却要素に隣接して、特に隣接して両側に配置される。少なくとも1つの循環要素は、例えば、摩擦リングのリア面の表面から突出する丸ピンとすることができる。好ましくは、少なくとも1つの循環要素の高さは、摩擦リングのリア面の表面に対する固定要素の高さ以下である。
【0035】
好ましくは、各固定要素は、少なくとも1つの冷却要素及び/又は少なくとも1つの循環要素と関連付けられる。好ましくは、固定要素、少なくとも1つの冷却要素及び/又は少なくとも1つの循環要素は、結果として要素のグループを形成し、このようなグループは摩擦リングの周囲にわたって反復して配置される。
【0036】
好ましくは、摩擦リングは、複数の摩擦リングセグメントを備える。好ましくは、摩擦リングセグメントは、同じサイズを有する。好ましくは、固定要素は、摩擦リングセグメントにわたって均等に分散される。好ましくは、摩擦リングセグメントは、接続要素によって、特に接続ボルトによって相互に接続される。
【0037】
好ましくは、固定要素の少なくとも1つは、摩擦リングを通る貫通孔又は止まり穴を備える。貫通孔又は止まり穴は、摩擦リングをホイールウェブに固定するため、特に螺合するために使用される。
【0038】
好ましくは、固定要素の各々は摩擦リングを通る貫通孔又は止まり穴を備え、それにより、摩擦リングの周方向から見ると、貫通孔を有する固定要素と止まり穴を有する固定要素とは交互となる。好ましくは、2つの摩擦リングが、トラックホイールの反対側に、好ましくは、止まり穴を有する固定要素が貫通孔を有する固定要素と対向するように配置され得る。これにより、固定要素、例えば、ねじが、有利には、第1の摩擦ディスクの貫通孔を通って第2の摩擦リングの止まり穴にガイドされ、そこで固定又は螺合可能となる。
【0039】
本発明に係る課題は、さらに、上記の特徴を有する少なくとも1つ、好ましくは2つの摩擦リングを有するトラックホイールによって解決される。
【0040】
またさらに、本発明に係る課題は、上記のトラックホイールを有する軌道車両によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】固定要素を有する摩擦リングの上面図を示す。
図2】摩擦リングの斜視図を示す。
図3】固定要素の上面断面図を示す。
図4】2つの固定要素並びに冷却フィン及び循環要素の上面断面図を示す。
図5】循環要素を通る断面図を示す。
図6】冷却フィンを通る断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、本発明を、実施形態の実施例を参照してより詳細に説明する。
【0043】
図1は、摩擦リング100を平面図で示す。摩擦リング100は、ここでは不図示の摩擦面及びその摩擦面とは逆を向くリア面10を有する。またさらに、摩擦リングは、内径R及び外径Rを有する。8個の固定要素11はリア面10上に配置され、固定要素は摩擦リング100の周囲に沿って等間隔に配置される。固定要素11は、三角形の基本形状を有する。特に、プラトーとして形成される当接面は、三角形の基本形状を有する。
【0044】
固定要素11は、各々同一のデザインで形成される。各固定要素11は、固定要素11の周囲に沿って延在するフランク表面12を有する。またさらに、固定要素11は、第1のフランク面13a、第2のフランク面13b及び第3のフランク面13cを有する。第1のフランク面13aは、実質的に平面状の形状であり、摩擦リング100の外周に沿って配向される。したがって、第1のフランク面13aの面法線は、摩擦リング100の半径範囲に沿って延在する。
【0045】
2つの他のフランク面13b及び13cは、凸状に形成される。フランク面13b及び13cは、実質的に、摩擦リング100の外周から内周に延在するよう配置される。固定要素11は、第1のコーナー部分14a、第2のコーナー部分14b及び第3のコーナー部分14cをさらに有する。コーナー部分14a、14b、14cは、丸みを帯びて形成される。第1のコーナー部分14a及び第2のコーナー部分14bは、同一の曲率半径rを有し、摩擦リング100の外周面に面して配置される。第3のコーナー部分14cは、第1のコーナー部分及び第2のコーナー部分のそれぞれの曲率半径rとは異なり、特に、より小さな曲率半径rを有する。第3のコーナー部分14cは、摩擦リング100の内周面に面して配置され、摩擦リング100の中心に向けて配向される。
【0046】
またさらに、摩擦リング100は、より詳細に以下に説明する循環要素17だけでなく冷却フィンの形態で冷却要素16も有する。
【0047】
固定要素11の各々は、貫通孔18又は止まり穴19のいずれかを有する。図1及び図2に示すように、止まり穴19を有する固定要素11と貫通孔18を有する固定要素11とは交互となる。結果として、トラックホイール上の2つの摩擦リング100は、有利には、ホイールウェブの2つの面上に相互に対向して配置され、かつ貫通孔18を通じて固定要素を止まり穴19にガイドするために、第1の摩擦リング100の貫通孔18を有する固定要素11が第2の摩擦リング100の止まり穴19を有する固定要素11と対向するように交互に締結され得る。
【0048】
図2は、摩擦リング100を斜視図で示す。特に、フランク面13a、13b、13cが確認できる。一方のフランク表面、すなわち、フランク面13a、13b、13c及びコーナー部分14a、14b、14cと、他方の摩擦リング100のリア面10との間の移行部15は、固定要素11の周囲に沿って丸みを帯びて又は凹状に形成されていることもわかる。
【0049】
図2において、摩擦リング100は、摩擦リングセグメントからなることもわかる。ここに示す実施形態において、摩擦リング100は、4個の摩擦リングセグメント20a、20b、20c、20dからなる。摩擦リングセグメント20a、20b、20c、20dは、ここでは不図示の接続ボルトによって相互に接続される。摩擦リングセグメント20a、20b、20c、20dは、実質的に同じ態様で形成される。摩擦リングセグメント20a、20b、20c、20dの各々は、2つの固定要素11を有する。
【0050】
図3は、固定要素11の詳細図を示す。3つのフランク面13a、13b、13c及びフランク面13a、13b、13cを相互に接続する3つのコーナー部分14a、14b、14cが確認できる。フランク面13a、13b、13cは平坦な又は凸状の形状を有し、その各々はコーナー部分14a、14b、14cの丸みを帯びた形状で一体となる。
【0051】
固定要素は、例えば、90mmであり得る径方向長さRを有する。外側の第1及び第2の部分14a、14bの曲率半径rは、例えば、20mmであり得る。内側の第3のコーナー部分14cの曲率半径rは、例えば、17mmであり得る。
【0052】
第1のフランク面13aは平坦に形成され、例えば、45mmであり得る長さlを有する。長さlは、それぞれ直線状の又は平坦な第1のコーナー部分14aと第2のコーナー部分14bの間の第1のフランク面13aの線分である。2つの残余のフランク面13b、13cの各々は同一の曲率半径rを有する凸状に形成され、例えば、rは67mmであり得る。フランク面13a、13b、13cは斜方に延び、摩擦リング100のリア面10の面法線との所定角度を含む。この角度は、例えば、8°であり得る。
【0053】
図4に、摩擦リング100の2つの固定要素11の断面上面図を示す。冷却要素16は、2つの固定要素11の間に配置される。冷却要素16は、径方向に延在する冷却フィンとして構成される。冷却フィンは、固定要素11の高さを超えない高さを有する。冷却フィンは、実質的に台形の形状を有する。循環要素17は、冷却要素16と隣接して側方に配置される。いずれの場合でも、2つの循環要素17は、冷却要素16と固定要素11のうちの1つとの間に配置される。いずれの場合でも、循環要素17は、摩擦リング100の外周22の一部分及び内周23の一部分に配置される。
【0054】
図5は、循環要素17を通る断面を示す。循環要素17は丸ピンの形状を有し、その上面は丸みを帯びた周縁、すなわち、クレストを有する。図6は、冷却要素16を通る断面を示す。冷却要素16は、斜方に延在するフランク及び丸みを帯びた径方向に延在する縁を有する上面も有する。循環要素17及び冷却要素16は双方とも、それぞれの要素のフランク表面と摩擦リング100のリア面10との間に、丸みを帯び又は凹状の移行領域を有する。
【符号の説明】
【0055】
100 摩擦リング
10 摩擦リングのリア面
11 固定要素
12 フランク表面
13a 第1のフランク面
13b 第2のフランク面
13c 第3のフランク面
14a 第1のコーナー部分
14b 第2のコーナー部分
14c 第3のコーナー部分
第1のフランク部分の長さ
第1及び第2のコーナー部分の曲率半径
第1及び/又は第2のフランク部分の曲率半径
第3のコーナー部分の曲率半径
R 固定要素の径方向長さ
摩擦リングの内径
摩擦リングの外径
15 移行部
16 冷却要素
17 循環要素
18 貫通孔
19 止まり穴
20a、20b、20c、20d 摩擦リングセグメント
21 接続ボルト
22 外周
23 内周
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道車両のトラックホイールのための摩擦リング(100)であって、摩擦表面を有する摩擦面及び該摩擦面とは逆を向くリア面(10)を備え、該リア面(10)から突出した固定要素(11)は前記リア面(10)上に配置され、前記固定要素(11)は上方から見た場合に実質的に三角形状を有し、前記固定要素(11)の各々は径方向長さRを有し、前記摩擦リング(100)は内径R及び外径Rを有し、R=0.30-0.90(R-R)である、摩擦リング(100)。
【請求項2】
前記固定要素(11)が、前記摩擦リング(100)の周方向に沿って、特に等間隔に、配置された、請求項1に記載の摩擦リング(100)。
【請求項3】
前記固定要素(11)の各々が、3つのフランク面(13a、13b、13c)を備える、請求項1に記載の摩擦リング(100)。
【請求項4】
前記3つのフランク面(13a、13b、13c)は3つのコーナー部分(14a、14b、14c)によって相互に接続され、前記コーナー部分(14a、14b、14c)の少なくとも1つ、好ましくは前記コーナー部分(14a、14b、14c)の2つ、非常に特に好ましくは前記コーナー部分(14a、14b、14c)の全てが、丸みを帯びて形成された、請求項3に記載の摩擦リング(100)。
【請求項5】
前記フランク面(13b、13c)の少なくとも1つ、好ましくは2つ、特に2つの内側フランク面(13b、13c)が、凸状に形成された、請求項3に記載の摩擦リング(100)。
【請求項6】
第1の外側のフランク面(13a)が、前記摩擦リング(100)の周囲に沿って配向され、径方向に対して垂直である、請求項3に記載の摩擦リング(100)。
【請求項7】
前記第1の外側のフランク面(13a)が、平坦に形成された、請求項に記載の摩擦リング(100)。
【請求項8】
R=0.50-0.70(R-R)、好ましくはR=0.55-0.65(R-R)である、請求項1に記載の摩擦リング(100)。
【請求項9】
前記固定要素(11)の各々が径方向長さRを有し、第1の前記フランク面(13)は、前記摩擦リング(100)の周方向から見ると長さlを有し、l=0.40-0.60・R、好ましくはl=0.45-0.55・R、より好ましくはl=0.40-0.50・Rである、請求項7に記載の摩擦リング(100)。
【請求項10】
前記固定要素(11)の各々が径方向長さRを有し、一方の第1の外側のフランク面(13a)と、他方の第2の内側のフランク面(13b)及び第3の内側のフランク面(13c)との間の、それぞれ第1及び第2のコーナー部分(14a、14b)の曲率半径rについて、r=0.15-0.29・R、好ましくはr=0.17-0.27・R、より好ましくはr=0.20-0.24・R、が適用される、請求項4に記載の摩擦リング(100)。
【請求項11】
前記固定要素(11)の各々が径方向長さRを有し、第2の内側のフランク面(13b)と第3の内側のフランク面(13c)との間の第3のコーナー部分(14c)の曲率半径rについて、r=0.10-0.28・R、好ましくはr=0.14-0.24・R、最も好ましくはr=0.18-0.20・R、が適用される、請求項4に記載の摩擦リング(100)。
【請求項12】
前記固定要素(11)の各々が径方向長さRを有し、前記凸状のフランク面(13b、13c)の各々の曲率半径rについて、r=0.5-1.00・R、好ましくはr=0.7-0.8・R、最も好ましくはr=0.72-0.75・Rが適用される、請求項5に記載の摩擦リング(100)。
【請求項13】
少なくとも1つの、好ましくは2つの、非常に特に好ましくは3つの放射状のセンタリング溝が、前記リア面(10)に配置された、請求項1から12のいずれか一項に記載の摩擦リング(100)。
【請求項14】
少なくとも1つの冷却要素(16)が、特に、好ましくは径方向外側に延在する、冷却フィンが、前記リア面(10)上に配置された、請求項1から12のいずれか一項に記載の摩擦リング(100)。
【請求項15】
特に丸みを帯びて形成された、少なくとも1つの循環要素(17)が、前記リア面(10)上に配置された、請求項1から12のいずれか一項に記載の摩擦リング(100)。
【請求項16】
少なくとも1つの冷却要素(16)及び/又は少なくとも1つの循環要素(17)が、各固定要素(11)と関連付けられた、請求項14に記載の摩擦リング(100)。
【請求項17】
前記摩擦リング(100)は、複数の摩擦リングセグメント(20a、20b、20c、20d)を備える請求項1から12のいずれか一項に記載の摩擦リング(100)。
【請求項18】
前記摩擦リングセグメント(20a、20b、20c、20d)は、接続要素によって、特に接続ボルト(21)によって、相互に接続される、請求項17に記載の摩擦リング(100)。
【請求項19】
前記固定要素(11)の少なくとも1つは、前記摩擦リング(100)を通る貫通孔(18)又は止まり穴(19)を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の摩擦リング(100)。
【請求項20】
前記固定要素(11)の各々は前記摩擦リング(100)を通る貫通孔(18)又は止まり穴(19)を備え、前記摩擦リング(100)の周方向から見ると、前記貫通孔(18)を有する前記固定要素(11)と止まり穴(19)を有する前記固定要素(11)とは交互となる、請求項18に記載の摩擦リング(100)。
【請求項21】
軌道車両のトラックホイールであって、少なくとも1つの、好ましくは2つの、請求項1から12のいずれか一項に記載の摩擦リング(100)を有する軌道車両のトラックホイール。
【請求項22】
請求項21に記載のトラックホイールを少なくとも1つ有する軌道車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【国際調査報告】