(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】車両のブレーキシステムの制御装置および車両のブレーキシステムの液体リザーバを少なくとも部分的に空にするための方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/17 20060101AFI20240404BHJP
B60T 13/66 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B60T8/17 C
B60T13/66 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567009
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2022061526
(87)【国際公開番号】W WO2022233732
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】102021204553.7
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】長倉 安孝
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB52
3D048CC05
3D048HH15
3D048HH16
3D048HH18
3D048HH26
3D048HH50
3D048HH53
3D048HH59
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA14
3D246GB39
3D246HA03A
3D246HA42A
3D246JB11
3D246JB43
3D246LA02Z
3D246LA04Z
3D246LA33Z
3D246LA57A
(57)【要約】
【課題】 本発明は、液体リザーバ(16a,16b)を備えた少なくとも1つのブレーキ回路(12a,12b)を有する車両のブレーキシステムのための制御装置(10)であって、電子回路装置(26)を有しており、該電子回路装置(26)は、前記ブレーキ回路(12a,12b)の高圧切換弁(18a,18b)を予め設定されたまたは規定された開放時間だけ、少なくとも部分的に開放された状態へ切換えるように設計および/またはプログラミングされており、それによって、前記開放時間中にブレーキ液が前記液体リザーバ(16a,16b)から少なくとも部分的に開放された前記高圧切換弁(18a,18b)を介して、前記ブレーキシステムの、前記ブレーキ回路(12a,12b)が接続されているマスタブレーキシリンダ(14)内に移動可能である形式のものに関する。
【解決手段】 この場合、前記電子回路装置(26)が追加的に、前記ブレーキ回路(12a,12b)の切換弁(20a,20b)、前記ブレーキ回路の唯一のホイールアウトレットバルブおよび/または前記ブレーキ回路(12a,12b)のすべてのホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)を、全開放時間中に、前記液体リザーバ(16a,16b)からのブレーキ液移動がそれぞれの前記弁(20a,20b,22a,22b,24a,24b)によって遮断されている状態に制御および/または維持するように、設計および/またはプログラミングされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体リザーバ(16a,16b)を備えた少なくとも1つのブレーキ回路(12a,12b)を有する車両のブレーキシステムのための制御装置(10)であって、
電子回路装置(26)を有しており、該電子回路装置(26)は、前記ブレーキ回路(12a,12b)の高圧切換弁(18a,18b)を予め設定されたまたは規定された開放時間だけ、少なくとも部分的に開放された状態へ切換えるように設計および/またはプログラミングされており、それによって、前記開放時間中にブレーキ液が前記液体リザーバ(16a,16b)から少なくとも部分的に開放された前記高圧切換弁(18a,18b)を介して、前記ブレーキシステムの、前記ブレーキ回路(12a,12b)が接続されているマスタブレーキシリンダ(14)内へ移動可能である形式のものにおいて、
前記電子回路装置(26)が追加的に、前記ブレーキ回路(12a,12b)の切換弁(20a,20b)、前記ブレーキ回路の唯一のホイールアウトレットバルブおよび/または前記ブレーキ回路(12a,12b)のすべてのホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)を、全開放時間中に、前記液体リザーバ(16a,16b)からのブレーキ液移動がそれぞれの前記弁(20a,20b,22a,22b,24a,24b)によって遮断されている状態に制御および/または維持するように、設計および/またはプログラミングされていることを特徴とする、車両のブレーキシステムのための制御装置(10)。
【請求項2】
前記電子回路装置(26)が、前記ブレーキ回路(12a,12b)の前記切換弁(20a,20b)を、前記全開放時間中にその閉じられた状態に制御または維持するように設計および/またはプログラミングされている、請求項1記載の制御装置(10)。
【請求項3】
前記電子回路装置(26)が、少なくとも部分的に開放された状態でブレーキ液を前記液体リザーバ(16a,16b)から通過させるように設計および配向された、前記ブレーキ回路の前記唯一のホイールアウトレットバルブまたは前記ブレーキ回路(12a,12b)の前記複数のホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)のうちの少なくとも1つを、前記全開放時間中にその閉じられた状態に制御および/または維持するように設計および/またはプログラミングされている、請求項1または2記載の制御装置(10)。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の制御装置(10)を備えた車両のためのブレーキシステムにおいて、
前記ブレーキシステムの前記マスタブレーキシリンダ(14)に接続された少なくとも前記ブレーキ回路(12a,12b)を有しており、該ブレーキ回路(12a,12b)が、液体リザーバ(16a,16b)と前記制御装置(10)の前記電子回路装置(26)によって制御可能な前記高圧切換弁(18a,18b)とを備えており、前記ブレーキ回路(12a,12b)が、追加的に前記切換弁(20a,20b)と前記唯一のホイールアウトレットバルブおよび/または前記複数のホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)とを有しており、前記切換弁(20a,20b)、前記唯一のホイールアウトレットバルブおよび/または前記複数のホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)が前記電子回路装置(26)によって制御可能である、車両のためのブレーキシステム。
【請求項5】
前記唯一のホイールアウトレットバルブまたは前記複数のホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)が、それぞれの前記弁(22a,22b,24a,24b)に対応配設されたホイールブレーキシリンダ(28a,28b,30a,30b)から前記液体リザーバ(16a,16b)へのブレーキ液移動のためのそれぞれ1つだけのフィルタ(23a,23b,25a,25b)を有している、請求項4記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記唯一のホイールアウトレットバルブまたは前記複数のホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)がそれぞれ、ブレーキ液を前記液体リザーバからそれぞれの前記弁を通して移動させるためにフィルタなしである、請求項4または5記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記ブレーキ回路(12a,12b)がそのホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)として、第1のホイールアウトレットバルブ(22a,22b)と第2のホイールアウトレットバルブ(24a,24b)とを有しており、前記マスタブレーキシリンダ(14)に開口する前記ブレーキ回路(12a,12b)の第1の管路区分(32a,32b)が、前記切換弁(20a,20b)と前記高圧切換弁(18a,18b)とに分岐しており、前記切換弁(20a,20b)に開口する、前記ブレーキ回路(12a,12b)の第2の管路区分(34a,34b)が、第1のホイールインレットバルブ(36a,36b)と第2のホイールインレットバルブ(38a,38b)とに分岐しており、第1のホイールブレーキシリンダ(28a,28b)が、前記第1のホイールインレットバルブ(36a,36b)と前記第1のホイールアウトレットバルブ(22a,22b)とに分岐する、前記ブレーキ回路(12a,12b)の第3の管路区分(40a,40b)に接続されているかまたは接続可能であり、第2のホイールブレーキシリンダ(30a,30b)が、前記第2のホイールインレットバルブ(38a,38b)と前記第2のホイールアウトレットバルブ(24a,24b)とに分岐する、前記ブレーキ回路(12a,12b)の第4の管路区分(42a,42b)に接続されているかまたは接続可能であり、前記ブレーキ回路(12a,12b)のポンプ装置(44a,44b)の吸入側に開口する、前記ブレーキ回路(12a,12b)の第5の管路区分(46a,46b)が、前記第1のホイールアウトレットバルブ(22a,22b)と前記第2のホイールアウトレットバルブ(24a,24b)とに分岐しており、前記液体リザーバ(16a,16b)が前記第5の管路区分(46a,46b)に接続されていて、前記ポンプ装置(44a、44b)の吐出側に開口する、前記ブレーキ回路(12a,12b)の第6の管路区分(48a,48b)が、前記第2の管路区分(34a,34b)に開口していて、前記高圧切換弁(18a,18b)に開口する、前記ブレーキ回路(12a,12b)の第7の管路区分(50a,50b)が前記第5の管路区分(46a,46b)に開口している、請求項4から6までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項8】
車両のブレーキシステムの液体リザーバ(16a,16b)を少なくとも部分的に空にするための方法であって、
前記液体リザーバ(16a,16b)を備えた、前記ブレーキシステムのブレーキ回路(12a,12b)の高圧切換弁(18a,18b)を、予め設定されたまたは規定された開放時間だけ少なくとも部分的に開放された状態に制御し、それによって前記開放時間中にブレーキ液を前記液体リザーバ(16a,16b)から少なくとも部分的に開放された前記高圧切換弁(18a,18b)を介して前記ブレーキシステムの、前記ブレーキ回路(12a,12b)に接続されたマスタブレーキシリンダ(14)内へ流入させる(S4)複数のステップを有している方法において、
前記ブレーキ回路(12a,12b)の切換弁(20a,20b)、前記ブレーキ回路の唯一のホイールアウトレットバルブおよび/または前記ブレーキ回路(12a,12b)のすべてのホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)を、全開放時間中に、前記液体リザーバ(16a,16b)からのブレーキ液移動がそれぞれの前記弁(20a,20b,22a,22b,24a,24b)によって遮断される状態に制御または維持する(S5)ことを特徴とする、車両のブレーキシステムの液体リザーバ(16a,16b)を少なくとも部分的に空にするための方法。
【請求項9】
前記ブレーキ回路(12a,12b)の前記切換弁(20a,20b)を前記全開放時間中にその閉じられた状態に制御または維持する(S5b)、請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも部分的に開放された状態でブレーキ液を前記液体リザーバ(16a,16b)から通過させるように設計および配向された、前記ブレーキ回路の前記唯一のホイールアウトレットバルブおよび/または前記ブレーキ回路(12a,12b)の前記複数のホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)のうちの少なくとも1つを、前記全開放時間中にその閉じられた状態に制御または維持する(S5a)、請求項8または9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体リザーバを備えた少なくとも1つのブレーキ回路を有する車両のブレーキシステムのための制御装置に関する。また本発明は、車両のためのブレーキシステムに関する。さらに本発明は、車両のブレーキシステムのブレーキ液リザーバを少なくとも部分的に空にするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術、例えば特許文献1によれば、様々なブレーキシステム型式が公知であって、この場合、このような形式のブレーキシステムは、液体リザーバを備えた少なくとも1つのブレーキ回路を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開第102019211236号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1の特徴を有する、液体リザーバを備えた少なくとも1つのブレーキ回路を有する車両のブレーキシステムのための制御装置、請求項4の特徴を有する、車両のためのブレーキシステム、請求項8の特徴を有する、車両のブレーキシステムの液体リザーバを少なくとも部分的に空にするための方法を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、車両のブレーキシステムの液体リザーバを少なくとも部分的に空にし、それと同時に、少なくとも空にされた液体リザーバを備えて構成された、ブレーキシステムのブレーキ回路の唯一のホイールアウトレットバルブまたはすべてのホイールアウトレットバルブを通るブレーキ液流を制限または阻止するための好適な可能性を提供する。したがって、空にしようとする液体リザーバを備えて構成されたブレーキ回路の少なくとも1つのホイールアウトレットバルブに、ブレーキ液を液体リザーバからそれぞれの弁を通して移動させるための固有のフィルタ、例えばネットフィルタまたはメッシュフィルタ(Mesh Filter)を備えるという従来の必要性は省かれる。これによって、空にしようとする液体リザーバを備えて構成されたブレーキ回路の少なくとも1つのホイールアウトレットバルブの、より安価な製造可能性が得られる。したがって、本発明を使用することにより、液体リザーバを備えて構成されたブレーキ回路の少なくとも1つのホイールアウトレットバルブのための設計の自由度が高められる。このことはさらに、本発明を使用したブレーキシステムの製造時に、装備されるアウトレットバルブ型式を少なくするために役立ち得る。
【0006】
制御装置の好適な実施例によれば、電子回路装置が、ブレーキ回路の切換弁を、全開放時間中にその閉じられた状態に制御または維持するように設計および/またはプログラミングされている。切換弁の閉鎖制御または閉鎖維持は、好適には開放時間中に液体リザーバからブレーキ回路の少なくとも1つのホイールアウトレットバルブを通っての不都合なブレーキ液移動を阻止するために役立つ。
【0007】
選択的にまたは補足的に、電子回路装置は、少なくとも部分的に開放された状態でブレーキ液を液体リザーバから通過させるように設計および配向された、ブレーキ回路の唯一のホイールアウトレットバルブまたはブレーキ回路の複数のホイールアウトレットバルブのうちの少なくとも1つを、全開放時間中にその閉じられた状態に制御および/または維持するように設計および/またはプログラミングされている。制御装置/電子回路装置のこのような形式の設計/プログラミングによっても、液体リザーバから少なくとも1つのホイールアウトレットバルブを通っての不都合なブレーキ液移動が全開放時間中に遮断され得る。
【0008】
前記利点は、相応の制御装置と、ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダに接続された、液体リザーバを備えた少なくとも1つのブレーキ回路と、制御装置の電子回路装置によって制御可能な高圧切換弁とを備えて構成された、車両のためのブレーキシステムにおいても保証されており、この場合、ブレーキ回路は追加的にさらに、切換弁、唯一のホイールアウトレットバルブおよび/または複数のホイールアウトレットバルブを有しており、また切換弁、唯一のホイールアウトレットバルブおよび/または複数のホイールアウトレットバルブは、電子回路装置によって制御可能である。
【0009】
好適な形式で、唯一のホイールアウトレットバルブおよび/または複数のホイールアウトレットバルブは、それぞれの弁に対応配設されたホイールブレーキシリンダから液体リザーバへのブレーキ液移動のためのそれぞれ1つのだけのフィルタを有している。したがって、好適な形式で、唯一のホイールアウトレットバルブまたは複数のホイールアウトレットバルブはそれぞれ、液体リザーバからそれぞれの弁を通してブレーキ液を移動させるためにフィルタなしである。これによって、空にしようとする液体リザーバを備えて構成されたブレーキ回路の少なくとも1つのホイールアウトレットバルブの製造コストの低減のために役立ち、ひいてはブレーキシステムがより安価になる。
【0010】
例えば、ブレーキ回路がそのホイールアウトレットバルブとして、第1のホイールアウトレットバルブと第2のホイールアウトレットバルブとを有しており、マスタブレーキシリンダに開口する、ブレーキ回路の第1の管路区分が、切換弁と高圧切換弁とに分岐しており、切換弁に開口する、ブレーキ回路の第2の管路区分が、第1のホイールインレットバルブと第2のホイールインレットバルブとに分岐しており、第1のホイールブレーキシリンダが、第1のホイールインレットバルブと第1のホイールアウトレットバルブとに分岐する、ブレーキ回路の第3の管路区分に接続されているかまたは接続可能であり、第2のホイールブレーキシリンダが、第2のホイールインレットバルブと第2のホイールアウトレットバルブとに分岐する、ブレーキ回路の第4の管路区分に接続されているかまたは接続可能であり、ブレーキ回路のポンプ装置の吸入側に開口する、ブレーキ回路の第5の管路区分が、第1のホイールアウトレットバルブと第2のホイールアウトレットバルブとに分岐しており、液体リザーバが第5の管路区分に接続されていて、ポンプ装置の吐出側に開口する、ブレーキ回路の第6の管路区分が、第2の管路区分に開口していて、高圧切換弁に開口する、ブレーキ回路の第7の管路区分が第5の管路区分に開口している。したがって本発明は、様々な車両型式/自動車型式に従来形式で頻繁に搭載されている多くのブレーキシステム型式に使用可能である。しかしながら、ここに記載された液体リザーバを装備したブレーキ回路の液圧式構成は一例として説明されているだけである、ということを指摘しておく。
【0011】
以上説明した利点は、車両のブレーキシステムの液体リザーバを少なくとも部分的に空にするための、対応する方法を実行することによっても得られる。制御装置および/またはブレーキシステムの以上説明した実施例に従って車両のブレーキシステムの液体リザーバを少なくとも部分的に空にするための方法は、さらに改良され得るということを明確に指摘しておく。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】制御装置若しくはこの制御装置と連動するブレーキシステムの1実施例の概略図である。
【
図2a】車両のブレーキシステムの液体リザーバを少なくとも部分的に空にするための方法の第1実施例を説明するためのフローチャートである。
【
図2b】車両のブレーキシステムの液体リザーバを少なくとも部分的に空にするための方法の第1実施例を説明するための時間グラフである。
【
図2c】車両のブレーキシステムの液体リザーバを少なくとも部分的に空にするための方法の第1実施例を説明するためのブレーキシステムの概略的な部分図である。
【
図2d】車両のブレーキシステムの液体リザーバを少なくとも部分的に空にするための方法の第1実施例を説明するためのブレーキシステムの概略的な部分図である。
【
図3a】車両のブレーキシステムの液体リザーバを少なくとも部分的に空にするための方法の第2実施例を説明するためのフローチャートである。
【
図3b】車両のブレーキシステムの液体リザーバを少なくとも部分的に空にするための方法の第2実施例を説明するための時間グラフである。
【
図3c】車両のブレーキシステムの液体リザーバを少なくとも部分的に空にするための方法の第2実施例を説明するためのブレーキシステムの概略的な部分図である。
【
図3d】車両のブレーキシステムの液体リザーバを少なくとも部分的に空にするための方法の第2実施例を説明するためのブレーキシステムの概略的な部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のその他の特徴および利点を、以下に図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、制御装置若しくはこの制御装置と連動するブレーキシステムの1実施例の概略図を示す。
【0015】
以下に説明する制御装置10は、少なくとも1つのブレーキ回路12aおよび12bを有する(ほぼ)すべてのブレーキシステムと連動することができる。このブレーキ回路12aおよび12bは、ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ14に接続されていて、液体リザーバ16aまたは16bおよび高圧切換弁18aまたは18bを備えて構成されており、追加的にさらに1つの切換弁20a若しくは20bならびに/または少なくとも1つのホイールアウトレットバルブ22a,22b,24aおよび24bを有している。同様に、この制御装置10の使用可能性は、それぞれのブレーキシステムを装備した車両/自動車の独特な車両型式/自動車型式に限定されることはない。
【0016】
制御装置10は電子回路装置26を有しており、この電子回路装置26は、空にしようとする液体リザーバ16aまたは16bを装備したブレーキ回路12aまたは12bの高圧切換弁18aまたは18bを、予め設定されたまたは規定された開放時間だけ、少なくとも1つの制御信号18sによって少なくとも部分的に開放された状態に切換えるように設計および/またはプログラミングされている。このような形式で、制御装置10/その電子回路装置26は、開放時間中にブレーキ液が液体リザーバ16aまたは16bから同じブレーキ回路12aまたは12bの少なくとも部分的に開放された高圧切換弁18aまたは18bを介してマスタブレーキシリンダ14内へ移動可能/流入するように配慮する。したがって、このブレーキシステムの体積収支は、液体リザーバ16aまたは16bを少なくとも部分的に空にすることによって補正され得る。
【0017】
しかも、この電子回路装置26は追加的に、空にしようとする液体リザーバ16a若しくは16bを装備したブレーキ回路12a若しくは12bの切換弁20a若しくは20b、それぞれのブレーキ回路12a若しくは12bの唯一のホイールアウトレットバルブならびに/またはそれぞれのブレーキ回路12a若しくは12bのすべてのホイールアウトレットバルブ22a,22b,24aおよび24bを、全開放時間中に少なくとも1つの制御信号20sおよび22sを用いて、それぞれの液体リザーバ16aまたは16bからのブレーキ液移動がそれぞれの弁20a,20b,22a,22b,24aおよび24bによって遮断されている状態に制御および/または維持するように、設計されかつ/またはプログラミングされている。したがって、制御装置10/その電子回路装置26は、液体リザーバ16aまたは16bからの少なくとも不都合なブレーキ液流をそれぞれのブレーキ回路12aまたは12bの少なくとも1つのホイールアウトレットバルブ22a,22b,24aおよび24bによって制限する。電子回路装置26が、それぞれのブレーキ回路12a若しくは12bの唯一のホイールアウトレットバルブまたはそれぞれのブレーキ回路12a若しくは12bのすべてのホイールアウトレットバルブ22a,22b,24aおよび24bを、全開放時間中にそれぞれの液体リザーバ16aまたは16bからのブレーキ液移動がそれぞれの弁22a,22b,24aおよび24bによって遮断されている状態に制御および/または維持するように、設計および/またはプログラミングされている限り、液体リザーバ16aまたは16bからの不都合なブレーキ液流が少なくとも1つのホイールアウトレットバルブ22a,22b,24aおよび24bによって(ほぼ)完全に阻止され得る。
【0018】
液体リザーバ16aまたは16bからの不都合なブレーキ液流が少なくとも1つのホイールアウトレットバルブ22a,22b,24aまたは24bによって制限されている場合でも、また(ほぼ)完全に阻止されている場合でも、少なくとも1つのホイールアウトレットバルブ22a,22b,24aおよび24bに、液体リザーバ16aまたは16bからそれぞれの弁22a,22b,24aおよび24bを通してブレーキ液を移動させるための、例えば相応のネットフィルタまたはメッシュフィルタ(Mesh Filter)等の固有のフィルタを形成/装備する従来の必要性は省かれる。したがって、好適には唯一のホイールアウトレットバルブまたはホイールアウトレットバルブ22a,22b,24aおよび24bは、それぞれの弁22a,22b,24aおよび24bに対応配設されたホイールブレーキシリンダ28a,28b,30aおよび30bから液体リザーバ16aまたは16bへのブレーキ液移動のためのそれぞれ1つのフィルタ23a,23b,25aおよび25bだけを有している。これは、唯一のホイールアウトレットバルブまたはホイールアウトレットバルブ22a,22b,24aおよび24bがそれぞれ、フィルタなしで液体リザーバ16aまたは16bから各弁22a,22b,24aおよび24bを通してブレーキ液を移動させる、と言い換えることもできる。これによって、制御装置10と連動するブレーキシステムの少なくとも1つのホイールアウトレットバルブ22a,22b,24aまたは24bのための製造コストを削減し、その製造可能性を広げる。
【0019】
液体リザーバ16aまたは16bからそれぞれのホイールアウトレットバルブ22a,22b,24aまたは24bを通してブレーキ液を移動させるための固有のフィルタを省くことによって、液体リザーバ16aまたは16bを備えて構成されたブレーキ回路12aまたは12bのそれぞれのホイールアウトレットバルブ22a,22b,24aまたは24bの設計の高い自由度を可能にする。このことは、それぞれのブレーキシステムの製造時に使用されるアウトレットバルブ型式を少なくするために利用され得る。
【0020】
前記利点を得るために、電子回路装置26が、ブレーキ回路12aまたは12bの切換弁20aまたは20bを同じブレーキ回路12aまたは12bの高圧切換弁18aまたは18bの全開放時間中にその閉じられた状態に制御または維持するように設計および/またはプログラミングされていれば十分である。(その閉じられた状態に制御または維持された切換弁20aまたは20bとは、その設計および配向に基づいて少なくとも部分的に開放された状態でブレーキ液を液体リザーバ16aまたは16bからブレーキ回路12aまたは12bの少なくとも1つのホイールアウトレットバルブ22a,22b,24aおよび24bを通して通過させる弁20aまたは20bであると解釈されてよい。)電子回路装置26が、少なくとも部分的に開放された状態でブレーキ液を液体リザーバ16aまたは16bから通過させるように設計および配向された、ブレーキ回路12a若しくは12bの唯一のホイールアウトレットバルブまたはブレーキ回路12a若しくは12bのホイールアウトレットバルブ22a,22b,24aおよび24bの少なくとも1つを、同じブレーキ回路12aまたは12bの高圧切換弁18aまたは18bの全開放時間中に、その閉じられた状態に制御および/または維持するように、設計および/またはプログラミングされていれば、前記利点は同様に保証されている。
【0021】
開放時間中に、空にしようとする液体リザーバ16aまたは16bを有するブレーキ回路12aまたは12bの高圧切換弁18aまたは18bが少なくとも部分的に開放された状態に制御されている/制御されるようになっており、この開放時間は、電子回路装置26に(固定的に)予め設定されていてよい。好適な実施態様として、電子回路装置26は、空にしようとする液体リザーバ16aまたは16b内に存在するリザーバ圧力を考慮して、開放時間を(自動的に)確定するように設計および/またはプログラミングされていてよい。電子回路装置26による開放時間の確定とは、開放時間を終了する予め設定された事象までの待機と解釈されてもよい。特に、電子回路装置26は、運転者がブレーキペダルを再び強く踏み込むまで、および/またはブレーキ液が液体リザーバ16aまたは16bから同じブレーキ回路12aまたは12bの少なくとも部分的に開放された高圧切換弁18aまたは18bを介してマスタブレーキシリンダ14へ流れることによって、液体リザーバ16aまたは16b内のリザーバ圧力がそれぞれの液体リザーバ16aまたは16bの応答圧力より小さいかまたは同じ圧力に低下されるまで、「待機する」ように設計および/またはプログラミングされていてよい。
【0022】
図1に図面で示されているように、空にしようとする液体リザーバ16aまたは16bは、それぞれのブレーキシステムの液圧装置内に組み込まれたリザーブチャンバ16aおよび16b、特に低圧リザーブチャンバ16aおよび16bであってよい。しかしながら制御装置10の使用可能性は、特殊な液体リザーバ型式に限定されるものではない。
図1に同様に図面で示されているように、制御装置10/その電子回路装置26は、同じブレーキシステムの複数のブレーキ回路12aおよび12bの複数の液体リザーバ16aおよび16bを同時に空にするために設計されていてもよい。
【0023】
単に一例として、
図1のブレーキシステムは、それぞれ1つの第1のホイールブレーキシリンダ28aまたは28bおよびそれぞれ1つの第2のホイールブレーキシリンダ30aまたは30bを備えた2つのブレーキ回路12aおよび12bを有している。追加的に、ブレーキ回路12aおよび12bは、そのホイールアウトレットバルブ22a,22b,24aおよび24bとして、それぞれ第1のホイールアウトレットバルブ22aまたは22bおよび第2のホイールアウトレットバルブ24aまたは24bを備えている。それぞれのブレーキ回路12aおよび12bは、マスタブレーキシリンダ14に開口する第1の管路区分32aまたは32bを有しており、これらの第1の管路区分32aまたは32bは、その切換弁20aまたは20bおよび高圧切換弁18aまたは18bに分岐する。切換弁20aまたは20bに開口する、それぞれのブレーキ回路12aまたは12bの第2の管路区分34aまたは34bは、第1のホイールインレットバルブ36aまたは36bおよびその第2のホイールインレットバルブ38aまたは38bに分岐する。第1のホイールブレーキシリンダ28aまたは28bは、それぞれのブレーキ回路12aまたは12bの第3の管路区分40aまたは40bに接続され/接続可能であって、この第3の管路区分40aまたは40bは、第1のホイールインレットバルブ36aまたは36bおよび第1のホイールアウトレットバルブ22aまたは22bに分岐している。相応に、第2のホイールブレーキシリンダ30aまたは30bは、同じブレーキ回路12aまたは12bの第4の管路区分42aまたは42bに接続され/接続可能であり、この第4の管路区分42aまたは42bは、第2のホイールインレットバルブ38aまたは38bおよび第2のホイールアウトレットバルブ24aまたは24bに分岐している。
【0024】
それぞれのブレーキ回路12aまたは12bのポンプ装置44aまたは44bの吸入側に開口する第5の管路区分46aまたは46bは、第1のホイールアウトレットバルブ22aまたは22bおよび第2のホイールアウトレットバルブ24aまたは24bに分岐しており、この場合、それぞれのブレーキ回路12aまたは12bの液体リザーバ16aまたは16bは、第5の管路区分46aまたは46bに接続されている。ポンプ装置44aまたは44bの吐出側に開口する、それぞれのブレーキ回路12aまたは12bの第6の管路区分48aまたは48bは、追加的に第2の管路区分34aまたは34bに開口する。さらに、それぞれのブレーキ回路12aまたは12bの第7の管路区分50aまたは50bは、高圧切換弁18aまたは18bおよび第5の管路区分46aまたは46bに開口している。
【0025】
追加的な実施態様として、さらに少なくとも1つの逃し弁52aまたは52bが、液体リザーバ16aまたは16bとポンプ装置44aまたは44bとの間の第5の管路区分46aまたは46b内に組み込まれていてよい。同様に、フィルタ54a若しくは54b、絞り56a若しくは56bおよび/または逆止弁58a若しくは58bが、第6の管路区分48aまたは48b内に配置されていてよい。好適な形式で、さらにブレーキ液リザーバタンク60がマスタブレーキシリンダ14に接続されている。選択的な形式で、ブレーキ倍力装置62がマスタブレーキシリンダ14に前置されていてもよい。さらに、少なくとも1つのフィード圧力センサ64および/または圧力センサが少なくとも1つのブレーキ回路12aおよび12bに接続されていてよい。
【0026】
図2a乃至
図2dは、車両のブレーキシステムの液体リザーバを少なくとも部分的に空にするための方法の第1実施例を説明するためのフローチャート、時間グラフ、およびブレーキシステムの概略的な部分図を示す。
【0027】
以下に記載した方法は、ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ14に接続されていて、液体リザーバ16aおよび高圧切換弁18aを備えて構成されていて、追加的にさらに1つの切換弁20aならびに/または少なくとも1つのホイールアウトレットバルブ22aおよび24aを備えた少なくとも1つのブレーキ回路12aを有する(ほとんど)すべてのブレーキシステムで実行され得る。同様に、この方法の実施可能性は、それぞれのブレーキシステムを装備した車両/自動車型式の特殊な車両型式/自動車型式に限定されるものではない。
図1のブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ14および少なくとも第1のブレーキ回路12aを用いた、この方法の「図面による再現」は、より良い理解し易さのためだけに用いられる。
【0028】
ここに記載された実施例では、液体リザーバを空にする前にオプション的な方法ステップS1が存在するが、その実行は省略されてもよい。この方法ステップS1で、運転者制動力Fによって生ぜしめられる、マスタブレーキシリンダ14に接続されたブレーキペダル66の操作されていない初期位置からの調整ストロークxがゼロではないかどうか、この調整ストロークxの時間微分がゼロより大きいか同じであるかどうか、調整ストロークxに相当する発電機ブレーキトルクMgenとしての目標ブレーキトルクM0が回生式に駆動される車両の少なくとも1つの電動機によって実行可能であるかどうかについて、検査される。調整ストロークxは、例えばロッドストロークセンサ68を用いて測定され得る。
【0029】
図2bの時間グラフには、目標ブレーキトルクM
0、発電機ブレーキトルクM
gen、第1のブレーキ回路12aの液体リザーバ16a内の体積V、第1のブレーキ回路12aの第1のホイールアウトレットバルブ22aの開放状態、および第1のブレーキ回路12aの高圧切換弁18aの開放状態が、時間軸tに沿って示されている。
【0030】
時点t0から、運転者がブレーキペダル66を操作する。調整ストロークxがゼロではなく、調整ストロークxの時間微分がゼロより大きいかまたはゼロと同じであり、調整ストロークxに相当する目標ブレーキトルクM
0が発電機ブレーキトルクM
genとして実行可能である限り、
図2cに概略的に示された方法ステップS2が実行される。方法ステップS2で、第1のブレーキ回路12aの切換弁20a、第1のブレーキ回路12aの第1のホイールブレーキシリンダ28aに対応配設された第1のホイールインレットバルブ36a、第1のホイールブレーキシリンダ28aに対応配設された第1のホイールアウトレットバルブ22aが、矢印70によって図面に示されているように、運転者制動力Fによってマスタブレーキシリンダ14から押し出されたブレーキ液が、切換弁20a、第1のホイールインレットバルブ36a、第1のホイールアウトレットバルブ22aを介して液体リザーバ16aに移動せしめられるように、少なくとも部分的に開放された状態Φoに制御および/または維持される。好適な形式で、第1のブレーキ回路12aの第2のホイールブレーキシリンダ30aに対応配設された第2のホイールインレットバルブ38aと、第1のブレーキ回路12aの第2のホイールブレーキシリンダ30aに対応配設された第2のホイールアウトレットバルブ24aとが、同時に閉じられた状態に制御および/または維持され、それによって、第2のホイールブレーキシリンダ30a内へのブレーキ液移動が阻止される。したがって、第1のホイールブレーキシリンダ28a内に、液体リザーバ16aの応答圧力と同じ第1のブレーキ圧が存在し、これに対して第2のホイールブレーキシリンダ30a内に存在する第2のブレーキ圧は(ほぼ)大気圧と同じ圧力に維持され得る。高圧切換弁18aも、その閉じられた状態Φcに制御/維持される。この方法ステップS2は、時点t1で調整ストロークxの時間微分がゼロになった後でも継続される。
【0031】
時点t2で、ブレーキペダル66の調整ストロークxの時間微分がゼロより小さくなることが(調整ストロークxに相当する目標ブレーキトルクM0がさらに発電機ブレーキトルクMgenとして実行可能であるにもかかわらず)確認されると直ちに、別のオプション的な方法ステップS3で、液体リザーバ16aを少なくとも部分的に空にすることが望ましいかどうかが検査される。例えばこれは、第1のホイールブレーキシリンダ28a内の第1のブレーキ圧が液体リザーバ16a内のリザーバ圧力を下回るかどうかが算出されることによって、行われ得る。第1のホイールブレーキシリンダ28a内の第1のブレーキ圧が液体リザーバ16a内のリザーバ圧力を下回っていなければ、方法ステップS2が続けられる。そうでなければ、液体リザーバ16aは少なくとも部分的に空にされる。
【0032】
ここに記載した実施例では、時点t2から液体リザーバ16aを少なくとも部分的に空にする作業が開始される。このために、方法ステップS4で、高圧切換弁18aが予め設定されたまたは規定された開放時間だけ、
図2dの矢印72によって図示されているように少なくとも部分的に開放された状態Φoへ制御され、開放時間中にブレーキ液が液体リザーバ16aから少なくとも部分的に開放された高圧切換弁18aを介してマスタブレーキシリンダ14内へ流入する。
【0033】
方法ステップS4と同時に方法ステップS5も実行され、この方法ステップS5で、第1のブレーキ回路12aの切換弁20a、第1のブレーキ回路12aの唯一のホイールアウトレットバルブならびに/または第1のブレーキ回路12aのすべてのホイールアウトレットバルブ22aおよび22bは、全開放時間中に液体リザーバ16aからのブレーキ液移動がそれぞれの弁20a,22aおよび24aによって遮断される状態へ制御または維持される。このために、例えばここに記載された実施例では、この方法の方法ステップS5aとして、その設計および配向に基づいて少なくとも部分的に開放された状態Φoで液体リザーバ16aからブレーキ液を通過させる、第1のブレーキ回路12aの第1のホイールアウトレットバルブ22aが、全開放時間中にその閉じられた状態Φcに制御される。さらに、第1のブレーキ回路12aの第2のホイールアウトレットバルブ24aは、全開放時間中にその閉じられた状態Φcに維持される。
図2dから分かるように、方法ステップS5aの実行によって、液体リザーバ16aからのブレーキ液移動はブレーキ回路12aのアウトレットバルブ22aおよび24aによって完全に遮断されている。したがって、ここに記載された方法を実行することによって、上述した利点はこのために使用されたブレーキシステムのためにも役立ち得る。
【0034】
開放時間とは、不変に予め設定された開放時間であると解釈されてよい。同様に、開放時間は自己規定されてよい。このために、例えば開放時間は、液体リザーバ16a内のリザーバ圧力から第1のホイールブレーキシリンダ28a内の第1のブレーキ圧を差し引いた圧力差を考慮して規定され得る。同様に、開放時間は、少なくとも1つの予め設定された事象が発生するまで、「待機」される。開放時間は特に、ブレーキペダル66の調整ストロークxの時間微分がゼロより大きいか若しくは同じになるまでおよび/または液体リザーバ16a内のリザーバ圧力が応答圧力より小さいか若しくは同じになるまで、「待機」される。
【0035】
図2bの時間グラフで分かるように、ブレーキペダル66の調整ストロークxが後で時点t3から増大すると、第1のホイールアウトレットバルブ22aが再び開放され、これに対して、高圧切換弁18aはその少なくとも部分的に開放された状態Φoに留まっていてよい。ブレーキペダルの調整ストロークxが時点t4で再び低下すると、直ちに、第1のホイールアウトレットバルブ22aをその閉じられた状態Φcに新たに制御することによって、液体リザーバ16a内の体積Vが、その少なくとも部分的に開放された状態Φoにある高圧切換弁18aを介して再び液体リザーバ16aからマスタブレーキシリンダ14へ移動せしめられる。
【0036】
図3a乃至
図3dは、車両のブレーキシステムの液体リザーバを少なくとも部分的に空にするための方法の第2実施例を説明するためのフローチャート、時間グラフ、およびブレーキシステムの概略的な部分図を示す。
【0037】
以下に記載した方法の実施可能性に関しては、前記実施例の説明が参照される。
【0038】
図3aのフローチャートにより分かるように、ここに記載された方法は、既に上記されている方法ステップS1乃至S5を有している。
図3bの時間グラフに、目標ブレーキトルクM
0、発電機ブレーキトルクM
gen、第1のブレーキ回路12aの液体リザーバ16a内の体積V、第1のブレーキ回路12aの第1のホイールアウトレットバルブ22aの開放状態、第1のブレーキ回路12aの高圧切換弁18aの開放状態、第1のブレーキ回路12aの切換弁20aの開放状態、および切換弁20aに対して平行に配置された逆止弁21aの開放状態が、時間軸tに沿って示されている。時点t1乃至t4は、前記実施例の説明に対応する。
【0039】
前記実施例とは異なり、ここに記載された方法では、時点t2からの方法ステップS5として方法ステップS5bが実行され、この方法ステップS5bで、第1のブレーキ回路12aの切換弁20aが、全開放時間中にその閉じられた状態Φcに制御または維持される。(その閉じられた状態に制御または維持される切換弁20aとは、その設計および配向に基づいて少なくとも部分的に開放された状態Φoでブレーキ液を液体リザーバ16aから少なくとも1つのホイールアウトレットバルブ22aおよび24aを通して通過させる弁20aであると解釈されてよい。)それと同時に、第1のホイールアウトレットバルブ22aはその全開放時間中にその少なくとも部分的に開放された状態Φoに維持される。
図3cから分かるように、第1のホイールアウトレットバルブ22aがその少なくとも部分的に開放された状態Φoにあるにもかかわらず、第1のブレーキ回路12aの切換弁20aが閉じられていることによって、液体リザーバ16aから少なくとも1つのホイールアウトレットバルブ22aおよび24aを通って流れる不都合なブレーキ液流が、第1のホイールアウトレットバルブ22aを通って短時間だけ発生する無視できる程度に弱い流れ運動に制限されるように保証されている。したがって、前記利点は、ここに記載した方法を実行することによって、このために使用されたブレーキシステムのためにも役立ち得る。
図3cの矢印72によって示されているように液体リザーバ16aを少なくとも部分的に空にする間、切換弁20aに対して平行に配置された逆止弁21aはその閉じられた状態Φcに留まる。
【0040】
図3dに矢印74によって図示されているように、運転者はその運転者制動力Fを用いて、ブレーキペダル66の調整ストロークxを時点t3で後から増大させて、切換弁20aがその閉じられた状態Φcにあるにもかかわらず、マスタブレーキシリンダ14から押し出されたブレーキ液を、切換弁20aに対して平行に配置され/構成された逆止弁21a、少なくとも部分的に開放された第1のホイールインレットバルブ36aおよび少なくとも部分的に開放されたホイールアウトレットバルブ22aを介して液体リザーバ16a内へ移動させることができる。したがって、切換弁20aをその少なくとも部分的に開放された状態Φoへ時点t3で新たに切換える必要はない。したがって、切換弁20aはその閉鎖後に時点t2で、
図3bのフローチャートで示された全制動中にその閉じられた状態Φcに留まっていてよい。相応に、第1のホイールアウトレットバルブ22aもその開放後に時点t0で全制動中にその少なくとも部分的に開放された状態Φoに留まっていてよい。
【0041】
したがって、ここに記載した実施例の実行時に、弁切換え騒音は全く/ほとんど発生することはない。しかも、ここに記載した実施例を実行するために、
図3bに示された制動のフローチャートによってブレーキペダル66の調整ストロークxが突然増大したときに第1のホイールアウトレットバルブ22aを迅速に開放する必要はない。したがって、遅れて開放された第1のホイールアウトレットバルブ22aにおける不都合なせき止め圧力を懸念する必要もない。
【0042】
図3a乃至
図3dの方法のその他のステップに関しては、前に記載した
図2a乃至
図2dの実施例が参照される。
【符号の説明】
【0043】
10 制御装置
12a,12b ブレーキ回路
14 マスタブレーキシリンダ
16a,16b 液体リザーバ、リザーブチャンバ、低圧リザーブチャンバ
18a,18b 高圧切換弁
18s,20s,22s 制御信号
20a,20b 切換弁
22a,22b 第1のホイールアウトレットバルブ
24a,24b 第2のホイールアウトレットバルブ
26 電子回路装置
28a,28b 第1のホイールブレーキシリンダ
30a,30b 第2のホイールブレーキシリンダ
32a,32b 第1の管路区分
34a,34b 第2の管路区分
36a,36b 第1のホイールインレットバルブ
38a,38b 第2のホイールインレットバルブ
40a,40b 第3の管路区分
42a,42b 第4の管路区分
44a,44b ポンプ装置
46a,46b 第5の管路区分
48a,48b 第6の管路区分
50a,50b 第7の管路区分
52a,52b 逃し弁
54a、54b フィルタ
56a,56b 絞り
58a,58b 逆止弁
60 ブレーキ液リザーバタンク
62 ブレーキ倍力装置
64 フィード圧力センサ
66 ブレーキペダル
68 ロッドストロークセンサ
70 矢印
72 矢印
74 矢印
F 運転者制動力
Mgen 発電機ブレーキトルク
M0 目標ブレーキトルク
S1 オプション的な方法ステップ
S2,S3,S4,S5,S5a,S5b 方法ステップ
t 時間軸
t0 時点
x 調整ストローク
Φc 閉じられた状態
Φo 少なくとも部分的に開放された状態
t1,t2,t3,t4 時点
V 体積
【手続補正書】
【提出日】2023-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体リザーバ(16a,16b)を備えた少なくとも1つのブレーキ回路(12a,12b)を有する車両のブレーキシステムのための制御装置(10)であって、
電子回路装置(26)を有しており、該電子回路装置(26)は、前記ブレーキ回路(12a,12b)の高圧切換弁(18a,18b)を予め設定されたまたは規定された開放時間だけ、少なくとも部分的に開放された状態へ切換えるように設計および/またはプログラミングされており、それによって、前記開放時間中にブレーキ液が前記液体リザーバ(16a,16b)から少なくとも部分的に開放された前記高圧切換弁(18a,18b)を介して、前記ブレーキシステムの、前記ブレーキ回路(12a,12b)が接続されているマスタブレーキシリンダ(14)内へ移動可能である形式のものにおいて、
前記電子回路装置(26)が追加的に、前記ブレーキ回路(12a,12b)の切換弁(20a,20b)、前記ブレーキ回路の唯一のホイールアウトレットバルブおよび/または前記ブレーキ回路(12a,12b)のすべてのホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)を、全開放時間中に、前記液体リザーバ(16a,16b)からのブレーキ液移動がそれぞれの前記弁(20a,20b,22a,22b,24a,24b)によって遮断されている状態に制御および/または維持するように、設計および/またはプログラミングされていることを特徴とする、車両のブレーキシステムのための制御装置(10)。
【請求項2】
前記電子回路装置(26)が、前記ブレーキ回路(12a,12b)の前記切換弁(20a,20b)を、前記全開放時間中にその閉じられた状態に制御または維持するように設計および/またはプログラミングされている、請求項1記載の制御装置(10)。
【請求項3】
前記電子回路装置(26)が、少なくとも部分的に開放された状態でブレーキ液を前記液体リザーバ(16a,16b)から通過させるように設計および配向された、前記ブレーキ回路の前記唯一のホイールアウトレットバルブまたは前記ブレーキ回路(12a,12b)の前記複数のホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)のうちの少なくとも1つを、前記全開放時間中にその閉じられた状態に制御および/または維持するように設計および/またはプログラミングされている、請求項1または2記載の制御装置(10)。
【請求項4】
請求項1
または2記載の制御装置(10)を備えた車両のためのブレーキシステムにおいて、
前記ブレーキシステムの前記マスタブレーキシリンダ(14)に接続された少なくとも前記ブレーキ回路(12a,12b)を有しており、該ブレーキ回路(12a,12b)が、液体リザーバ(16a,16b)と前記制御装置(10)の前記電子回路装置(26)によって制御可能な前記高圧切換弁(18a,18b)とを備えており、前記ブレーキ回路(12a,12b)が、追加的に前記切換弁(20a,20b)と前記唯一のホイールアウトレットバルブおよび/または前記複数のホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)とを有しており、前記切換弁(20a,20b)、前記唯一のホイールアウトレットバルブおよび/または前記複数のホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)が前記電子回路装置(26)によって制御可能である、車両のためのブレーキシステム。
【請求項5】
前記唯一のホイールアウトレットバルブまたは前記複数のホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)が、それぞれの前記弁(22a,22b,24a,24b)に対応配設されたホイールブレーキシリンダ(28a,28b,30a,30b)から前記液体リザーバ(16a,16b)へのブレーキ液移動のためのそれぞれ1つだけのフィルタ(23a,23b,25a,25b)を有している、請求項4記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記唯一のホイールアウトレットバルブまたは前記複数のホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)がそれぞれ、ブレーキ液を前記液体リザーバからそれぞれの前記弁を通して移動させるためにフィルタなしである、請求項
4記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記ブレーキ回路(12a,12b)がそのホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)として、第1のホイールアウトレットバルブ(22a,22b)と第2のホイールアウトレットバルブ(24a,24b)とを有しており、前記マスタブレーキシリンダ(14)に開口する前記ブレーキ回路(12a,12b)の第1の管路区分(32a,32b)が、前記切換弁(20a,20b)と前記高圧切換弁(18a,18b)とに分岐しており、前記切換弁(20a,20b)に開口する、前記ブレーキ回路(12a,12b)の第2の管路区分(34a,34b)が、第1のホイールインレットバルブ(36a,36b)と第2のホイールインレットバルブ(38a,38b)とに分岐しており、第1のホイールブレーキシリンダ(28a,28b)が、前記第1のホイールインレットバルブ(36a,36b)と前記第1のホイールアウトレットバルブ(22a,22b)とに分岐する、前記ブレーキ回路(12a,12b)の第3の管路区分(40a,40b)に接続されているかまたは接続可能であり、第2のホイールブレーキシリンダ(30a,30b)が、前記第2のホイールインレットバルブ(38a,38b)と前記第2のホイールアウトレットバルブ(24a,24b)とに分岐する、前記ブレーキ回路(12a,12b)の第4の管路区分(42a,42b)に接続されているかまたは接続可能であり、前記ブレーキ回路(12a,12b)のポンプ装置(44a,44b)の吸入側に開口する、前記ブレーキ回路(12a,12b)の第5の管路区分(46a,46b)が、前記第1のホイールアウトレットバルブ(22a,22b)と前記第2のホイールアウトレットバルブ(24a,24b)とに分岐しており、前記液体リザーバ(16a,16b)が前記第5の管路区分(46a,46b)に接続されていて、前記ポンプ装置(44a、44b)の吐出側に開口する、前記ブレーキ回路(12a,12b)の第6の管路区分(48a,48b)が、前記第2の管路区分(34a,34b)に開口していて、前記高圧切換弁(18a,18b)に開口する、前記ブレーキ回路(12a,12b)の第7の管路区分(50a,50b)が前記第5の管路区分(46a,46b)に開口している、請求項
4記載のブレーキシステム。
【請求項8】
車両のブレーキシステムの液体リザーバ(16a,16b)を少なくとも部分的に空にするための方法であって、
前記液体リザーバ(16a,16b)を備えた、前記ブレーキシステムのブレーキ回路(12a,12b)の高圧切換弁(18a,18b)を、予め設定されたまたは規定された開放時間だけ少なくとも部分的に開放された状態に制御し、それによって前記開放時間中にブレーキ液を前記液体リザーバ(16a,16b)から少なくとも部分的に開放された前記高圧切換弁(18a,18b)を介して前記ブレーキシステムの、前記ブレーキ回路(12a,12b)に接続されたマスタブレーキシリンダ(14)内へ流入させる(S4)複数のステップを有している方法において、
前記ブレーキ回路(12a,12b)の切換弁(20a,20b)、前記ブレーキ回路の唯一のホイールアウトレットバルブおよび/または前記ブレーキ回路(12a,12b)のすべてのホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)を、全開放時間中に、前記液体リザーバ(16a,16b)からのブレーキ液移動がそれぞれの前記弁(20a,20b,22a,22b,24a,24b)によって遮断される状態に制御または維持する(S5)ことを特徴とする、車両のブレーキシステムの液体リザーバ(16a,16b)を少なくとも部分的に空にするための方法。
【請求項9】
前記ブレーキ回路(12a,12b)の前記切換弁(20a,20b)を前記全開放時間中にその閉じられた状態に制御または維持する(S5b)、請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも部分的に開放された状態でブレーキ液を前記液体リザーバ(16a,16b)から通過させるように設計および配向された、前記ブレーキ回路の前記唯一のホイールアウトレットバルブおよび/または前記ブレーキ回路(12a,12b)の前記複数のホイールアウトレットバルブ(22a,22b,24a,24b)のうちの少なくとも1つを、前記全開放時間中にその閉じられた状態に制御または維持する(S5a)、請求項8または9記載の方法。
【国際調査報告】