(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】計時器コンポーネントの振動を維持または制限するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
G04B 43/00 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G04B43/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567019
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2022061716
(87)【国際公開番号】W WO2022233790
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】バックマン,ステファン
(57)【要約】
本発明の一態様は、計時器コンポーネント(30)の、少なくとも1つの方向における振動を維持または制限するためのデバイス(100)であって、前記デバイスが前記コンポーネント(30)の少なくとも1つの表面を当接して受領するように配置された静止構造(20)と、前記静止構造(20)と協同する回転ボルト(10)と、を備え、前記回転ボルト(10)が、ロック解除位置と称され、前記コンポーネント(30)の移動の自由度を許容する第1の角度位置と、ロック位置と称され、前記少なくとも1つの方向における前記静止構造(20)に対する前記コンポーネント(30)の移動を制限する第2の角度位置と、の間で軸方向(A)周りに回転可能であり、前記回転ボルト(10)の、前記ロック位置と称される前記第2の角度位置が弾性リターン手段(3)によって固定されていることを特徴とする、前記デバイス(100)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器コンポーネント(30)の、少なくとも1つの方向における振動を維持または制限するためのデバイス(100)であって、前記デバイスが前記コンポーネント(30)の少なくとも1つの表面を当接して受領するように配置された静止構造(20)と、前記静止構造(20)と協同する回転ボルト(10)と、を備え、前記回転ボルト(10)が、ロック解除位置と称され、前記コンポーネント(30)の移動の自由度を許容する第1の角度位置と、ロック位置と称され、前記少なくとも1つの方向における前記静止構造(20)に対する前記コンポーネント(30)の移動を制限する第2の角度位置と、の間で軸方向(A)周りに回転可能であり、前記回転ボルト(10)の、前記ロック位置と称される前記第2の角度位置が弾性リターン手段(3)によって固定されていることを特徴とする、前記デバイス(100)。
【請求項2】
前記回転ボルト(10)の、前記ロック位置と称される前記第2の角度位置が単一の位置であるとともに、前記構造(20)が備える上昇部分(25)によって規定および指定され、前記上昇部分(25)が、前記回転ボルト(10)が備えるボス(4)と協同するように配置され、前記ボス(4)と前記上昇部分(25)との間の協同が、前記回転ボルト(10)へのユーザからのあらゆる動作なしで、回転ボルト(10)の安定したしっかりとした位置の規定を可能にすることを特徴とする、請求項1に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項3】
前記構造(20)が、前記回転ボルト(10)の角度の移動を少なくとも1つの方向に制限するように、少なくとも1つの角度バンキング(24)を備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項4】
前記構造(20)が、前記回転ボルト(10)の前記軸方向(A)における軸方向の移動を少なくとも1つの方向に制限するように、少なくとも1つの軸方向バンキング(21)を備えていることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項5】
振動を維持または制限するための前記デバイス(100)が、前記軸方向(A)における振動を維持または制限するためのデバイスであることと、前記回転ボルト(10)が前記ロック位置と称される前記第2の角度位置にある場合に、前記静止構造(20)に対する、前記軸方向(A)における前記コンポーネント(30)の前記軸方向の移動を制限するように前記回転ボルト(10)が配置されることと、を特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項6】
前記回転ボルト(10)が、前記軸方向(A)において前記コンポーネント(30)の軸方向の振動を制限するための、前記構造(20)と前記回転ボルト(10)との間に捕らえられて保持されている前記コンポーネント(30)に関して、前記回転ボルト(10)が前記第2の角度ロック位置にある場合に、いずれかの軸方向バンキングを形成するように配置された少なくとも1つのパッド(1)、または、第1のジョーであって、前記軸方向(A)において前記コンポーネント(30)を軸方向にブロックするために、前記第1のジョーとは反対側の第2のジョーを形成する前記構造(20)と協同して、1つの前記コンポーネント(30)をクランプによって保持するための第1のジョー、を備えていることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項7】
振動を維持または制限するための前記デバイス(100)が、前記軸方向(A)に垂直な第2の径方向における径方向の振動を維持または制限するためのデバイスであることと、前記回転ボルト(10)が前記ロック位置と称される前記第2の角度位置にある場合に、前記第2の径方向における前記静止構造(20)に対する、前記コンポーネント(30)の移動を制限するように前記回転ボルト(10)が配置されることと、を特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項8】
前記回転ボルト(10)が、前記回転ボルト(10)が前記第2の角度ロック位置にある場合に、前記静止構造(20)または、振動を維持または制限するための第2の径方向に反対側のデバイス(100)と協同して、前記コンポーネント(30)の径方向の振動を制限するため、または、前記第1の軸方向(A)に垂直な第2の径方向において前記コンポーネント(30)を径方向にブロックするための、径方向バンキングを形成するように配置された少なくとも1つのパッド(1)を備えていることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項9】
前記ボス(4)が、前記弾性リターン手段(3)が備えるか、前記弾性リターン手段(3)を形成する少なくとも1つのスプリングアームによって保持されていることを特徴とする、請求項2から請求項8のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項10】
前記ボス(4)が、前記上昇部分(25)に追従するように配置されたピンを有していることを特徴とする、請求項9に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項11】
前記ボス(4)が、時計制作者によって、または自動化された製造手段によって扱うためのグリップ部材(2)を形成する穴(204)を備えていることを特徴とする、請求項9に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項12】
前記上昇部分(25)が、前記回転ボルト(10)の前記回転軸に向けられた少なくとも1つの突起部(252)と、前記突起部(252)よりも前記回転ボルト(10)の前記回転軸からさらに離れている少なくとも1つのキャビティ(251、253)と、を備え、前記キャビティ(251、253)が、前記回転ボルト(10)を安定化させるためのノッチを形成するように前記ボス(4)と協同する、ことを特徴とする、請求項2から請求項11のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項13】
前記回転ボルト(10)が前記弾性リターン手段(3)を有していることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項14】
前記回転ボルト(10)が、前記ロック解除位置と称される前記第1の角度位置と、前記ロック位置と称される前記第2の角度位置との間で前記回転ボルト(10)の回転を制御するように、また、前記構造(20)と前記回転ボルト(10)との間に配置される前記コンポーネント(30)をロックおよび/またはロック解除するように、時計制作者によって、または自動化された計時器製造手段によって扱われるように配置された少なくとも1つのグリップ部材(2)を備えていることを特徴とする、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項15】
前記グリップ部材(2)が、前記回転ボルト(10)が備えるボス(4)から離れており、前記グリップ部材(2)が、前記弾性リターン手段(3)よりも剛性であるアームによって保持されていることを特徴とする、請求項13または14に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項16】
前記グリップ部材(2)が、前記回転ボルト(10)が備えるボス(4)にしっかりと接続されており、前記グリップ部材(2)が、前記弾性リターン手段(3)によって保持されていることを特徴とする、請求項13または14に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項17】
前記弾性リターン手段(3)が、端部同士が接続され、ループによって対になるように接続された円弧の形態の、複数のストリップスプリングセグメント(31、32)を備えていることを特徴とする、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項18】
前記回転ボルト(10)が、実質的に平坦であり、その回転軸に対して垂直であることを特徴とする、請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項19】
前記ボス(4)と前記上昇部分(25)との間の協同が、前記回転ボルト(10)の前記回転軸に対して垂直な平面において本質的に平面的であることと、前記弾性リターン手段(3)が、本質的に平面的方式で変形可能であることと、を特徴とする、請求項2から請求項18のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項20】
前記ボス(4)と前記上昇部分(25)との間の協同が、本質的に非平面的であり、前記上昇部分(25)が、前記回転ボルト(10)の前記回転軸に対して垂直な平面に対して様々な高さの連続したゾーン(26、27、28)を備え、前記ボス(4)の前面(47)を保持することによって前記回転ボルト(10)を安定化させる少なくとも1つのノッチを形成することと、前記弾性リターン手段(3)が、三次元空間において変形可能であることと、を特徴とする、請求項2から請求項18のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項21】
前記回転ボルト(10)が、一片で形成されることと、前記弾性リターン手段(3)が前記回転ボルト(10)に組み込まれていることと、を特徴とする、請求項1から請求項20のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項22】
同心計時器コンポーネント(30、60)を保持するためのシステム(500)であって、前記保持システム(500)が、請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の、振動を維持または制限するための少なくとも1つのデバイス(100)を備え、第1のコンポーネント(30)の振動を維持または制限するための第1の手段、および、前記第1のコンポーネント(30)と同心の第2のコンポーネント(60)の振動を維持または制限するための第2の手段(50)と、を形成することを特徴とする、前記システム(500)。
【請求項23】
振動を維持または制限するための前記第2の手段(50)が、前記第2のコンポーネント(60)の振動または、軸方向および/もしくは径方向の遊びをブロックまたは制限するように構成されていることを特徴とする、請求項22に記載の同心計時器コンポーネント(30、60)を保持するためのシステム(500)。
【請求項24】
振動を維持または制限するための前記第2の手段(50)が、前記第2のコンポーネント(60)の軸方向および/または径方向の遊びを制限することを可能にするか、前記第2のコンポーネント(60)を軸方向および/または径方向に保持することを可能にするバンキングまたは偏心ボルトであることを特徴とする、請求項22または23に記載の同心計時器コンポーネント(30、60)を保持するためのシステム(500)。
【請求項25】
請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するための少なくとも1つのデバイス(100)を備えるか、請求項22または23に記載の同心計時器コンポーネント(30、60)を保持するためのシステム(500)を備えた測時器ムーブメント(1000)。
【請求項26】
請求項1から請求項21のいずれか一項に記載の振動を維持または制限するための少なくとも1つのデバイス(100)を備えるか、請求項22または23に記載の同心計時器コンポーネント(30、60)を保持するためのシステム(500)を備えた計時器(2000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器コンポーネントの振動を維持または制限するためのデバイスに関する。
【0002】
本発明はさらに、振動を維持または制限するための少なくとも1つのそのようなデバイスを備えた測時器ムーブメントに関する。
【0003】
本発明はさらに、振動を維持または制限するための少なくとも1つのそのようなデバイスを備えた計時器、特に時計に関する。
【0004】
本発明は、計時器メカニズムの分野に関し、特に、振動を制限するための手段に関し、また、クランプ位置に保持するための手段に関し、初期の工場でのセッティング作業または販売後のサービスの一部として実施されるセッティング作業のために設計されている。
【背景技術】
【0005】
計時器コンポーネントの振動(またはクリアランス)のセッティングは常に困難である。この理由は、非常に低い振動の値(または機能遊び)が、寸法上の製造公差と同じ大きさであるか、または形状の公差と同じでさえあるためである。この問題は、たとえば-15℃から+40℃の間で動作しなければいけない時計のケースにおいて、熱応力を考慮する場合にはさらに複雑である。このことは、計時器が最初に生産される際の初期の工場でのセッティング作業の間と、その耐用年数を通して販売後のメンテナンス作業の間との、両方で対処しなければならない。特に、いくつかのセッティングは可逆的であることも好ましい。
【0006】
カバープレート、偏心穴を有するプレート、偏心器、特にコンポーネントの周囲の偏心ボルトのグループ、キー、スナップリング、ステップネジ、または他の制限要素など、コンポーネントの軸方向の振動を制限するために、様々な手段が時計制作者によって使用されている。
【0007】
これら解決策は、それらの大きい全体の寸法、これらがユーザに視認できるままでなければならないコンポーネントを視覚的に妨げるという事実に起因して、または、振動の蓄積のために、概して不完全である。衝撃に対する抵抗は、依然として、しばしば多くが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、コンポーネントの軸方向および/または径方向の振動を制限するための、シンプルで、信頼性があり、スペースを節約し、かつ可逆的なメカニズムを時計制作者に提供することを目的にしている。
【0009】
1つの特定の実施形態では、このメカニズムは、コンポーネントが定位置に保持され、コンポーネントの軸方向および/または径方向の移動をブロックすることを確実にすることが依然として可能である。
【0010】
「軸方向」および「径方向」は、当然、移動が制限されることになる所与のコンポーネントに対して、具体的には、測時器ムーブメントの主軸に対して規定される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、より具体的には、請求項1に記載の、計時器コンポーネントの軸方向および/または径方向の振動を維持または制限するためのデバイスに関する。
【0012】
前述のパラグラフに述べた特徴に加え、本発明に係るデバイスは、個別のベースで、または、技術的に可能である任意の組合せに従って考慮される、以下の中からの1つまたは複数の相補的な特徴を有することができる。
-回転ボルトの、ロック位置と称される前述の第2の角度位置が単一の位置であるとともに、前述の構造が備える上昇部分によって規定および指定され、上昇部分が、前述の回転ボルトが備えるボスと協同するように配置され、ボスと上昇部分との間の協同が、前述の回転ボルトへのユーザからのあらゆる動作なしで、回転ボルトの安定したしっかりとした位置の規定を可能にすること。
-構造が、前述の回転ボルトの角度の移動を少なくとも1つの方向に制限するように、少なくとも1つの角度バンキングを備えていること。
-構造が、前述の回転ボルトの軸方向Aにおける軸方向の移動を少なくとも1つの方向に制限するように配置された、少なくとも1つの軸方向バンキングを備えていること。
-振動を維持または制限するための前述のデバイスが、軸方向Aにおける振動を維持または制限するためのデバイスであり、回転ボルトがロック位置と称される前述の第2の角度位置にある場合に、前述の静止構造に対する、前述の軸方向Aにおける前述のコンポーネントの軸方向の移動を制限するように前述の回転ボルトが配置される。
-回転ボルトが、前述の軸方向Aにおいて前述のコンポーネントの軸方向の振動を制限するための、前述の構造と前述の回転ボルトとの間に捕らえられて保持されている前述のコンポーネントに関して、前述の回転ボルトが前述の第2の角度ロック位置にある場合に、前述の軸方向Aにおいていずれかの軸方向バンキングを形成するように配置された少なくとも1つのパッド、または、第1のジョーであって、前述の軸方向Aにおいてコンポーネントを軸方向にブロックするために、前述の第1のジョーとは反対側の第2のジョーを形成する前述の構造と協同して、1つの前述のコンポーネントをクランプによって保持するための第1のジョー、を備えていること。
-振動を維持または制限するためのデバイスが、軸方向Aに垂直な第2の径方向における径方向の振動を維持または制限するためのデバイスであることと、回転ボルトがロック位置と称される前述の第2の角度位置にある場合に、第2の径方向における前述の静止構造に対する、前述のコンポーネントの移動を制限するように配置されること。
-回転ボルトが、前述の回転ボルトが前述の第2の角度ロック位置にある場合に、前述の静止構造または、振動を維持または制限するための第2の径方向に反対側のデバイスと協同して、前述のコンポーネントの径方向の振動を制限するため、または、第1の軸方向Aに垂直な第2の径方向においてコンポーネントを径方向にブロックするための、径方向バンキングを形成するように配置された少なくとも1つのパッドを備えていること。
-ボスが、前述の弾性リターン手段が備えるか、前述の弾性リターン手段を形成する少なくとも1つのスプリングアームによって保持されていること。
-ボスが、前述の上昇部分に追従するように配置されたピンを有していること。
-ボスが、時計制作者によって、または自動化された製造手段によって扱うためのグリップ部材を形成する穴を備えていること。
-上昇部分が、前述の回転ボルトの回転軸に向けられた少なくとも1つの突起部と、前述の突起部よりも前述の回転ボルトの回転軸からさらに離れている少なくとも1つのキャビティと、を備え、前述のキャビティが、前述の回転ボルトを安定化させるためのノッチを形成するように前述のボスと協同すること。
-回転ボルトが前述の弾性リターン手段を有していること。
-回転ボルトが、ロック解除位置と称される第1の角度位置と、ロック位置と称される第2の角度位置との間で前述の回転ボルトの回転を制御するように、また、前述の構造と前述の回転ボルトとの間に配置される前述のコンポーネントをロックおよび/またはロック解除するように、時計制作者によって、または自動化された計時器製造手段によって扱われるように配置された少なくとも1つのグリップ部材を備えていること。
-グリップ部材が、前述の回転ボルトが備えるボスから離れており、前述のグリップ部材が、前述の弾性リターン手段よりも剛性であるアームによって保持されていること。
-グリップ部材が、前述の回転ボルトが備えるボスにしっかりと接続されており、前述のグリップ部材が、前述の弾性リターン手段によって保持されていること。
-弾性リターン手段が、端部同士が接続され、ループによって対になるように接続された円弧の形態の、複数のストリップスプリングセグメントを備えていること。
-前述の回転ボルトが、実質的に平坦であり、その回転軸に対して垂直であること。
-前述のボスと前述の上昇部分との間の協同が、前述の回転ボルトの前述の回転軸に対して垂直な平面において本質的に平面的であることと、前述の弾性リターン手段が、本質的に平面的方式で変形可能であること。
-前述のボスと前述の上昇部分との間の協同が、本質的に非平面的であり、前述の上昇部分が、前述の回転ボルトの回転軸に対して垂直な平面に対して様々な高さの連続したゾーンを備え、前述のボスの前面を保持することによって前述の回転ボルトを安定化させる少なくとも1つのノッチを形成することと、前述の弾性リターン手段が、三次元空間において変形可能であること。
-回転ボルトが、一片で形成されることと、前述の弾性リターン手段が前述の回転ボルトに組み込まれていること。
【0013】
本発明は、測時器ムーブメントの相互に同心のコンポーネントを保持するためのシステムにさらに関連し、振動を維持または制限するためのそのようなデバイスを少なくとも1つ備え、第1のコンポーネントの振動を維持または制限するための第1の手段を形成し、第1のコンポーネントと同心の第2のコンポーネントの振動を維持または制限するための第2の手段を備えている。
【0014】
有利には、振動を維持または制限するための第2の手段は、軸方向Aの、および/または、軸方向Aに垂直な平面内の径方向の、第2のコンポーネントの振動または軸方向の遊びをブロックまたは制限するように構成されている。
【0015】
有利には、振動を維持または制限するための第2の手段は、第2のコンポーネントの軸方向の遊びを、軸方向A、および/または、軸方向Aに垂直な平面内の径方向に制限することを可能にするか、第2のコンポーネントを、軸方向A、および/または、軸方向Aに垂直な平面内の径方向において軸方向に保持することを可能にする、バンキングまたは偏心回転ボルトである。
【0016】
本発明はさらに、振動を維持または制限するための少なくとも1つのそのようなデバイス、または、同心コンポーネントを保持するための1つのそのようなシステムを備えた測時器ムーブメントに関する。
【0017】
本発明はさらに、振動を維持または制限するための少なくとも1つのそのようなデバイス、または、同心コンポーネントを保持するための1つのそのようなシステムを備えた測時器、具体的には時計に関する。
【0018】
目的、利点、および特徴は、添付図面を参照して与えられる以下の詳細な説明を読むことでよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】下側構造と回転ボルトのパッド形成部との間で軸方向および径方向に包含されたコンポーネントを保持するように構成された保持位置にある、本発明に係る振動を維持または制限するためのデバイスの例示的実施形態の平面図を図形で示す図である。
【
図2】本発明に係る振動を維持または制限するためのデバイスの同じ例示的実施形態を示す、
図1に類似の図であり、回転ボルトが、角度クランプ位置において回転ボルトを固定するために、スプリングアームの先端に、静止構造が備えた上昇部分と協同するボスを備えているように見ることができ、スプリングアームとは別の剛性アームを、回転ボルトを操作するために使用できる。
【
図3】本発明に係る振動を維持または制限するためのデバイスの代替的実施形態を示す図であり、回転ボルトがロック解除位置にあり、そのようなロック解除位置が、コンポーネントを挿入または引出することを可能にし、回転ボルトが回転自在である。
【
図4】
図3に示す振動を維持または制限するためのデバイスの回転ボルトのロック位置を示す図であり、そのようなロック位置が、コンポーネントが挿入または引出されることを防止し、このロック位置において、回転ボルトがバンキングによって反時計回りの方向に応力がかけられている。
【
図5】本発明に係る振動を維持または制限するための複数のデバイスを包含する時計ムーブメントの平面図を図形で示す図であり、このデバイスが、ムーブメントの主軸上に中心付けられたコンポーネント、このケースにおいては、中心ディスクを固定するように構成されており、直径がより大である中間ディスクが、振動を維持または制限するための第2の手段を形成する偏心器によって保持されている。
【
図6】本発明に係る振動を維持または制限するためのデバイスの代替的実施形態を図形で示す図であり、静止構造の上昇部分が、クランプノッチを規定する凹部を囲む2つのボスを備えている。
【
図7】左のプロファイルと協同する、平らではない、変形可能なスプリングを有する回転サポートの例示的実施形態の、側方から見た場合のシンプルな図である。
【
図8】左のプロファイルと協同する、平らではない、変形可能なスプリングを有する回転サポートの例示的実施形態の、側方から見た場合のシンプルな図である。
【
図9】
図3と類似である、ロック解除位置にある、本発明に係る振動を維持または制限するためのデバイスの第2の例示的実施形態を示す図であり、回転ボルトが、遠位端がボスを有するS形状のスプリングアームを備え、また、回転ボルトを操作するために使用される穴を備え、バネの遠位端においてくちばし部を形成する別の追加のボスが、衝撃またはハンドリングの間のあらゆる軸方向の変位を制限するための軸方向セーフティデバイスである。
【
図10】
図4と類似である、ロック位置にある、本発明に係る振動を維持または制限するためのデバイスの第2の例示的実施形態を示す図であり、回転ボルトが、遠位端がボスを有するS形状のスプリングアームを備え、また、回転ボルトを操作するために使用される穴を備え、バネの遠位端においてくちばし部を形成する別の追加のボスが、衝撃またはハンドリングの間のあらゆる軸方向の変位を制限するための軸方向セーフティデバイスである。
【
図11】本発明に係る振動を維持または制限するためのデバイスを備えた計時器を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、計時器コンポーネント30の軸方向および/または径方向の振動を維持または制限するためのデバイス100に関する。
【0021】
この振動を維持または制限するためのデバイス100は、コンポーネント30の少なくとも1つの表面を当接して受領するように配置された静止構造20を備えている。静止構造20は、軸方向A周りに回転可能である回転ボルト10と協同する。この回転ボルト10は、回転ボルト10がロック解除位置と称される第1の角度位置にある場合にコンポーネント30の移動の自由度を許容するように構成されており、回転ボルト10がロック位置と称される第2の角度位置にある場合にコンポーネント30の少なくとも1つの方向における振動を維持または制限する。
【0022】
そのような振動を維持または制限するためのデバイス100は、1つまたは複数の方向、たとえば軸方向および/または径方向におけるコンポーネント30の振動を制限するために使用することができる。
【0023】
特に
図1から
図4を参照して説明される一例示的実施形態では、回転ボルト10は、回転ボルト10がロック位置と称される第2の角度位置にある場合に、軸方向Aにおける静止構造20に対するコンポーネント30の軸方向の移動を制限するように特に配置されている。
【0024】
本発明によれば、回転ボルト10がロック位置と称されるこの第2の角度位置にある場合に、回転ボルト10が静止構造20に対する特定の角度位置を占め、コンポーネント30の軸方向の振動をブロックまたは制限する。回転ボルト10のこの第2の角度位置は、弾性リターン手段3の動作によって固定される。有利な代替的実施形態では、これら弾性リターン手段3が回転ボルト10に組み込まれている。
【0025】
より具体的には、しかし排他的な手段にはよらず、コンポーネント30の軸方向の振動をブロックまたは制限するための回転ボルト10の第2の角度位置は、単一の位置であるか、または所与の角度セクターにわたる回転ボルト10の複数の角度位置のセットによって形成される。
【0026】
有利には、コンポーネント30の軸方向の振動をブロックまたは制限するための回転ボルト10の第2の角度位置は、単一の位置であり、構造20が備える上昇部分25によって規定および指示される。この上昇部分25は、回転ボルト10が備えるボス4と協同するように配置されており、ボス4と上昇部分25との間の協同は、回転ボルト10の安定して固定された位置が、回転ボルト10上でのユーザからのあらゆる動作なしで規定されることを可能にする。
【0027】
弾性リターン手段3は、ブロッキングトルクを規定し、その特定の値は、たとえば時計が落ちた場合など、このデバイス100を組み込んでいる計時器2000に不注意な動きが与えられるイベントにおいてさえも、回転ボルト10をある位置に保持し、こうしてコンポーネント30を固定するように構成されている。
【0028】
初期のセッティング作業の間、もしくは販売後の作業の間に、時計制作者によって、または、トルクに関して調整されたロボットマニピュレータなどの製造手段によってさえ、任意に与えられるトルクのみが、回転ボルト10をロック解除位置に配置し、こうしてコンポーネント30を完全に解放して取り外すことを可能にするために、弾性リターン手段3によって生成されるブロッキングトルクを超え、回転ボルト10をそのロック位置から係合解除させることができる。
【0029】
より具体的には、構造20は、回転ボルト10の角度の移動を少なくとも1つの方向に制限するように配置された少なくとも1つの角度バンキング24を備えている。
【0030】
より具体的には、構造20は、たとえば衝撃のイベントにおいて、回転ボルト10の過度な角度の変位を防止するために、回転ボルト10の軸方向Aにおける軸方向の移動を、少なくとも1つの方向に制限するように配置された少なくとも1つの軸方向バンキング21を備えている。
【0031】
回転ボルト10は、少なくとも1つのパッド1を備えている。このパッド1は、コンポーネント30の軸方向の振動を制限するように構造20と回転ボルト10との間に捕らえられた状態に保持されたコンポーネント30に関して、ロック位置と称される第2の角度位置に回転ボルト10がある場合に、軸方向Aにおける軸方向バンキングを形成するように配置されている。
【0032】
パッド1は、クランプによってコンポーネント30を保持するための第1のジョーを形成するように配置することもでき、構造20と協同して、コンポーネント30を軸方向にブロックするために、第1のジョーとは反対側の第2のジョーを形成する。
【0033】
より具体的には、ボス4は、弾性リターン手段3が備えるか、弾性リターン手段3を形成する少なくとも1つのスプリングアームが有している。さらにより具体的には、このスプリングアームは、ボス4をその端部に有する単一の弾性ストリップによって形成されている。
【0034】
より具体的には、回転ボルト10は、ロック解除位置と称される第1の角度位置と、ロック位置と称される第2の角度位置との間で回転ボルト10の回転を制御するように、また、構造20と回転ボルト10との間、より具体的には構造20の上かつ回転ボルト10の下に配置されるコンポーネント30をロックおよび/またはロック解除するように、時計制作者によって、または自動化された計時器製造手段によって扱われるように配置された少なくとも1つのグリップ部材2を備えている。
【0035】
図1から
図4に示す代替的実施形態では、グリップ部材2は、ボス4から分離されており、アームによって保持される。このアームは、回転ボルト10が備える弾性リターン手段3よりも剛性である。
【0036】
図9および
図10に示す別の代替的実施形態では、グリップ部材2は、ボス4にしっかりと接続されているとともに、弾性リターン手段3によって保持されている。
【0037】
より具体的には、
図9および
図10に示す代替的実施形態に示すように、ボス4は、時計制作者によるか、または自動化された製造手段によるその操作のために、そのようなグリップ部材2を形成する穴204を有している。
【0038】
より具体的には、ボス4は、上昇部分25に追従するように配置された、図示されていないピンを有することもできる。
【0039】
より具体的には、ボス4は、実質的に半筒状の外周パーツ2530を備えている。
【0040】
より具体的には、上昇部分25は、回転ボルト10の回転軸に向けられた少なくとも1つの突起部252と、突起部252よりも回転ボルト10の回転軸からさらに離れた少なくとも1つのキャビティ251、253と、を備え、これにより、このキャビティ251、253が、回転ボルト10を安定化させるためのノッチを形成し、キャビティ253は、有利には、ボス4の外周パーツ2530と相補的な形状である。
【0041】
図9および
図10に示す代替的実施形態では、構造20は、ボス4の外周パーツ2530がキャビティ253と接触している場合にボス4の一部を(突起部252およびキャビティ251によって特に規定された少なくとも1つのフランクによって)軸方向にカバーするキャップを形成する。キャビティ251を除去することにより、ボス4がそのような穴を備えている場合に、グリップ部材2を扱うために穴204へのアクセスを確実にする。
【0042】
図9および
図10に示すように、弾性リターン手段3は、端部同士が接続され、ループによって対になるように接続された円弧の形態の、複数のストリップスプリングセグメント31、32を備えることができる。より具体的には、これら円弧は同軸であり、すべてが回転ボルト10の回転軸上に中心付けられている。
【0043】
より具体的には、回転ボルト10は、実質的に平坦であり、その回転軸に対して垂直である。
【0044】
より具体的には、たとえば
図1から
図4に示す代替的実施形態に見ることができるように、ボス4と上昇部分25との間の協同は、回転ボルト10の回転軸に対して垂直な平面において本質的に平面的であり、弾性リターン手段3は、本質的に平面的方式で変形可能である。
【0045】
別の代替的実施形態では、たとえば
図7または
図8に示す実施形態では、ボス4と上昇部分25との間の協同は本質的に非平面的であり、上昇部分25は、回転ボルト10の回転軸に対して垂直な平面に対して様々な高さの連続したゾーン26、27、28を備え、ボス4の前面47を保持することによって回転ボルト10を安定化させる少なくとも1つのノッチを形成し、また、弾性リターン手段3は、三次元空間において変形可能である。
【0046】
有利な実施形態では、回転ボルト10は、一片に形成される。
【0047】
コンポーネント30の振動を制限するため、または、コンポーネント30が定位置に保持されることを確実にするために、回転ボルト10の動作を使用することであるが、パッド1によって形成される振動制限部品、および、作動部品を形成するグリップ部材2を回転ボルト10の回転中心から離れるように移動させることによることが原理であることを理解されたい。
【0048】
この方法で、回転ボルト10がムーブメントのアクセス可能なエリアにおいて扱われ、一方、必要であれば、アクセス不可能であるコンポーネントが、ボルトが後退された際に所望のようにカバーされることを確実にする。
【0049】
こうして、回転ボルト10がグリップ部材2によって、その回転軸周りに旋回される場合、パッド1によって形成されるボルトの他の部分が、保持されることになるコンポーネント30をカバーし、それにより、その軸方向の変位(振動、衝撃)を制限するか、その変位をブロックする。
【0050】
有利には、保持されることになるコンポーネント30をカバーする回転ボルト10のパッド1は、たとえば衝撃のイベントにおいて回転ボルト10の過度な角度の移動を防止するために、静止構造20、特にブランクにしっかりと接続された軸方向バンキング21によってそれ自体がカバーされる。
【0051】
回転ボルト10の弾性リターン手段3は、回転ボルト10がその角度ロック位置に保持されることを確実にする。
【0052】
1つの代替的実施形態では、回転ボルト10の弾性リターン手段3は、回転ボルト10がその角度ロック解除位置に保持されることを確実にすることを助けることもできる。
【0053】
回転ボルト10の位置決め、および定位置での回転ボルトの保持は、旋回する上での摩擦(このことは、ボルトまたは偏心器に関する慣習的なケースである)によっては維持されないが、回転ボルト10を少なくとも1つの好ましい位置へと押す弾性リターン手段3の効果によって維持される。このケースでは、弾性リターン手段3は、弾性リターン手段3のスプリング効果によって静止構造20の剛性のバンキング24に対してグリップ部材2を押しつける。この構成は、
図1から
図4に示す代替的実施形態に特に図示されている。
【0054】
ロック解除位置に戻すために、上昇部分25、特に突起部252などの上をボス4が移動する間の弾性リターン手段3の圧縮にリンクする力が、図に示されるように、
最初に超えられなければならない。少なくとも1つの突起部252の存在により、特に、ムーブメントの耐用年数の間に発生する場合があるあらゆる衝撃のイベントにおいて、回転ボルト10のロック位置を確実にすることが可能である。
【0055】
静止構造20のそのような上昇部分は、ボルトがその角度ロック解除位置にある場合に弾性リターン手段3のボス4と協同するように、特に、それらの2つの角度ロック位置および角度ロック解除位置を指示および固定するように、形成することもできる。これにより、回転ボルト10が正確に位置決めされることを確実にする。
【0056】
上昇部分25の突起部252上での、弾性リターン手段3の端部におけるボス4の上昇および変位の対処は、ノッチ効果を追加することを可能にし、この効果は、各ハンドリング操作(ロック/ロック解除、ロック解除/ロック)の間に時計制作者によって認識され、こうして、回転ボルト10の開いた位置(ロック解除位置)または閉じた位置(ロック位置)を保証している。
【0057】
回転ボルト10がロック位置にある場合に、弾性リターン手段3にテンションをかける必要はないことを述べることは重要である。
【0058】
より具体的には、遊びがあり、これに関わらず回転ボルト10が、平面において、コンポーネント30、たとえば中心ディスクを軸方向に制限するその機能を実施する場合、システムがちょうど同じように作動することになり、ロック位置とロック解除位置との間に配置された上昇部分25が、位置と、その端部位置のいずれかでの回転ボルトの保持と、これら2つの端部位置から別の位置に通過する際のノッチの効果を常に保証する。
【0059】
回転ボルト10の弾性リターン手段3は、いくつかの代替的実施形態の形態を取ることができる。
-
図7および
図8に示すような、平面において作用する代わりに高さ方向に作用するストリップスプリング。
-2つの突起部252によって境界が形成されたキャビティ253によって形成されるネガティブラグと協同するストリップスプリングであり、幾何学的効果によってボス4の位置をロックする。
図6に示すように、実際のブロックが形成される。
【0060】
回転ボルト10をそのロック位置から解放するために、時計制作者は、スプリングを手作業で後退させることが必要になり、このことは、スプリングへのアクセスを必要とする。このことは、非常に顕著な外力を伴ってさえも、スプリングの閉じた位置が保証される点で有利である。
【0061】
本発明に係る、軸方向の振動を維持または制限するためのデバイス100は、主としてコンポーネント30の軸方向の振動を維持または制限するために記載されてきた。しかし、本発明に係るデバイス100は、軸方向の振動を維持または制限することに加えて、またはその代わりに、コンポーネント30の径方向の振動を維持または制限するようにも構成される。
【0062】
図1、
図2、および
図7を参照してより詳細に示されるように、回転ボルト10のパッド1のある部分12は、回転ボルト10がロック位置にある場合に、コンポーネント30の外周部分33(
図1、
図2、および
図7に示す)に間接的に対向するとともに近接するか、接触さえするようになり、それにより、軸方向Aに垂直な平面におけるコンポーネント30の径方向の移動をブロックまたは制限するように構成されている。
【0063】
好ましくは、コンポーネント30の2つの方向での径方向の移動をブロックするため、または、コンポーネント30の径方向の振動を制限するために、少なくとも2つのデバイス100が、測時器ムーブメント1000の中心軸に関して反対側の方式で配置される。
【0064】
しかし、パッド1は、軸方向Aに垂直は平面におけるコンポーネント30の径方向の移動をブロックまたは制限するように、静止構造20の一部分と協同することができる。
【0065】
こうして、パッド1は、軸方向Aに垂直な平面におけるコンポーネント30の径方向の振動をブロックまたは制限することが可能な径方向バンキングをも形成する。
【0066】
こうして、本発明に係るデバイス100は、計時器コンポーネント30が、軸方向および/もしくは径方向に保持されること、ならびに/または、その軸方向および/もしくは径方向の振動を測時器ムーブメント1000内で制限することを可能にする。
【0067】
有利には、本発明に係る複数のデバイス100が、コンポーネント30の周りに配置されており、好ましくは、コンポーネント30の周りの外周に配置されている。
【0068】
本発明は、測時器ムーブメント1000の同心の計時器コンポーネント30、60を保持するためのシステム500にさらに関連し、振動を維持または制限するためのそのようなデバイス100を少なくとも1つ備え、第1のコンポーネント30の振動を維持または制限するための第1の手段を形成し、第1のコンポーネントと同心の第2のコンポーネント60の振動を維持または制限するための第2の手段50を備えている。
【0069】
より具体的には、振動を維持または制限するための第2の手段50は、軸方向A、および/または、軸方向Aに垂直な平面内の径方向の、振動または軸方向の遊びをブロックまたは制限するように構成されている。振動を維持または制限するための第2の手段50は、たとえば、第2のコンポーネント60の軸方向および/または径方向の遊びを制限することを可能にするか、第2のコンポーネント60を軸方向および/または径方向に保持することを可能にするバンキングまたは偏心ボルトである。
【0070】
図5は、このため、本発明に係る複数の回転ボルト10による、ムーブメントの主軸に中心づけられた第1のコンポーネント、このケースでは中心ディスク30の保持を示しており、グリップ部材2、具体的には制御アームへのアクセスが、径方向の周囲ウィンドウを通して容易にされることを示している。より大である外径DEの中間ディスク60である第2のコンポーネントは、偏心器50によって保持されている。中心ディスク30および中間ディスク60の保持、ならびに、制限アームの角度変位はすべて、ブランク20の最大直径に比べて小さく、3分の2の大きさである最大アクセス直径DMの円形ゾーン内において発生し、これにより、他のメカニズムを外周周りに設置することが可能になる。本発明は、こうして、非常にコンパクトなアーキテクチャを与えつつ、確実な保持を提供する。
【0071】
本発明はさらに、振動を維持または制限するための少なくとも1つのそのようなデバイス100を備えた測時器ムーブメント1000に関する。
【0072】
本発明はさらに、振動を維持または制限するための少なくとも1つのそのようなデバイス100を備えた計時器2000、特に時計に関する。
【0073】
まとめると、本発明は以下を可能にする。
-ムーブメントにおいて、コンポーネントに対するアクセスがないか、アクセスが制限されているにも関わらず、コンポーネントを軸方向にロックすること。
-同心および同軸のホイールセット、ディスクなどを、軸方向の独立したものとすること。
-振動がよりよく維持され、衝撃に対する抵抗が予想されること。
-特に中心ディスクのケースにおいて、ホイールセットの組立、分解、および再組立が簡略化されること(さらなる分解を必要とせずに、ダイアル側からの全体のアクセス)。
-ラグ上のスプリングの上昇する力によって生じるボルトの位置(閉じているか開いている)においてボルトがブロックされること。
-ボルトが回転される際に、ラグ上のスプリングの上昇によって発生するノッチ効果のおかげで、ボルトの開いた位置または閉じた位置が(あらゆる中間の位置を避けつつ)保証されること。
【0074】
非常にシンプルな実施形態が、回転ボルト10の回転をガイドする単一のピン29によって達成できる。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器コンポーネント(30)の、少なくとも1つの方向における振動を維持または制限するためのデバイス(100)であって、前記デバイスが前記コンポーネント(30)の少なくとも1つの表面を当接して受領するように配置された静止構造(20)と、前記静止構造(20)と協同する回転ボルト(10)と、を備え、前記回転ボルト(10)が、ロック解除位置と称され、前記コンポーネント(30)の移動の自由度を許容する第1の角度位置と、ロック位置と称され、前記少なくとも1つの方向における前記静止構造(20)に対する前記コンポーネント(30)の移動を制限する第2の角度位置と、の間で軸方向(A)周りに回転可能であり、前記回転ボルト(10)の、前記ロック位置と称される前記第2の角度位置が弾性リターン手段(3)によって固定されている、前記デバイス(100)。
【請求項2】
前記回転ボルト(10)の、前記ロック位置と称される前記第2の角度位置が単一の位置であるとともに、前記構造(20)が備える上昇部分(25)によって規定および指定され、前記上昇部分(25)が、前記回転ボルト(10)が備えるボス(4)と協同するように配置され、前記ボス(4)と前記上昇部分(25)との間の協同が、前記回転ボルト(10)へのユーザからのあらゆる動作なしで、回転ボルト(10)の安定したしっかりとした位置の規定を可能にすることを特徴とする、請求項1に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項3】
前記構造(20)が、前記回転ボルト(10)の角度の移動を少なくとも1つの方向に制限するように、少なくとも1つの角度バンキング(24)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項4】
前記構造(20)が、前記回転ボルト(10)の前記軸方向(A)における軸方向の移動を少なくとも1つの方向に制限するように、少なくとも1つの軸方向バンキング(21)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項5】
振動を維持または制限するための前記デバイス(100)が、前記軸方向(A)における振動を維持または制限するためのデバイスであることと、前記回転ボルト(10)が前記ロック位置と称される前記第2の角度位置にある場合に、前記静止構造(20)に対する、前記軸方向(A)における前記コンポーネント(30)の前記軸方向の移動を制限するように前記回転ボルト(10)が配置されることと、を特徴とする、請求項1に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項6】
前記回転ボルト(10)が、前記軸方向(A)において前記コンポーネント(30)の軸方向の振動を制限するための、前記構造(20)と前記回転ボルト(10)との間に捕らえられて保持されている前記コンポーネント(30)に関して、前記回転ボルト(10)が前記第2の角度ロック位置にある場合に、いずれかの軸方向バンキングを形成するように配置された少なくとも1つのパッド(1)、または、第1のジョーであって、前記軸方向(A)において前記コンポーネント(30)を軸方向にブロックするために、前記第1のジョーとは反対側の第2のジョーを形成する前記構造(20)と協同して、1つの前記コンポーネント(30)をクランプによって保持するための第1のジョー、を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項7】
振動を維持または制限するための前記デバイス(100)が、前記軸方向(A)に垂直な第2の径方向における径方向の振動を維持または制限するためのデバイスであることと、前記回転ボルト(10)が前記ロック位置と称される前記第2の角度位置にある場合に、前記第2の径方向における前記静止構造(20)に対する、前記コンポーネント(30)の移動を制限するように前記回転ボルト(10)が配置されることと、を特徴とする、請求項1に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項8】
前記回転ボルト(10)が、前記回転ボルト(10)が前記第2の角度ロック位置にある場合に、前記静止構造(20)または、振動を維持または制限するための第2の径方向に反対側のデバイス(100)と協同して、前記コンポーネント(30)の径方向の振動を制限するため、または、前記第1の軸方向(A)に垂直な第2の径方向において前記コンポーネント(30)を径方向にブロックするための、径方向バンキングを形成するように配置された少なくとも1つのパッド(1)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項9】
前記ボス(4)が、前記弾性リターン手段(3)が備えるか、前記弾性リターン手段(3)を形成する少なくとも1つのスプリングアームによって保持されていることを特徴とする、請求項1に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項10】
前記ボス(4)が、前記上昇部分(25)に追従するように配置されたピンを有していることを特徴とする、請求項9に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項11】
前記ボス(4)が、時計制作者によって、または自動化された製造手段によって扱うためのグリップ部材(2)を形成する穴(204)を備えていることを特徴とする、請求項9に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項12】
前記上昇部分(25)が、前記回転ボルト(10)の前記回転軸に向けられた少なくとも1つの突起部(252)と、前記突起部(252)よりも前記回転ボルト(10)の前記回転軸からさらに離れている少なくとも1つのキャビティ(251、253)と、を備え、前記キャビティ(251、253)が、前記回転ボルト(10)を安定化させるためのノッチを形成するように前記ボス(4)と協同する、ことを特徴とする、請求項2に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項13】
前記回転ボルト(10)が前記弾性リターン手段(3)を有していることを特徴とする、請求項1に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項14】
前記回転ボルト(10)が、前記ロック解除位置と称される前記第1の角度位置と、前記ロック位置と称される前記第2の角度位置との間で前記回転ボルト(10)の回転を制御するように、また、前記構造(20)と前記回転ボルト(10)との間に配置される前記コンポーネント(30)をロックおよび/またはロック解除するように、時計制作者によって、または自動化された計時器製造手段によって扱われるように配置された少なくとも1つのグリップ部材(2)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項15】
前記グリップ部材(2)が、前記回転ボルト(10)が備えるボス(4)から離れており、前記グリップ部材(2)が、前記弾性リターン手段(3)よりも剛性であるアームによって保持されていることを特徴とする、請求項13に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項16】
前記グリップ部材(2)が、前記回転ボルト(10)が備えるボス(4)にしっかりと接続されており、前記グリップ部材(2)が、前記弾性リターン手段(3)によって保持されていることを特徴とする、請求項13に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項17】
前記弾性リターン手段(3)が、端部同士が接続され、ループによって対になるように接続された円弧の形態の、複数のストリップスプリングセグメント(31、32)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項18】
前記回転ボルト(10)が、実質的に平坦であり、その回転軸に対して垂直であることを特徴とする、請求項1に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項19】
前記ボス(4)と前記上昇部分(25)との間の協同が、前記回転ボルト(10)の前記回転軸に対して垂直な平面において本質的に平面的であることと、前記弾性リターン手段(3)が、本質的に平面的方式で変形可能であることと、を特徴とする、請求項2に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項20】
前記ボス(4)と前記上昇部分(25)との間の協同が、本質的に非平面的であり、前記上昇部分(25)が、前記回転ボルト(10)の前記回転軸に対して垂直な平面に対して様々な高さの連続したゾーン(26、27、28)を備え、前記ボス(4)の前面(47)を保持することによって前記回転ボルト(10)を安定化させる少なくとも1つのノッチを形成することと、前記弾性リターン手段(3)が、三次元空間において変形可能であることと、を特徴とする、請求項2に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項21】
前記回転ボルト(10)が、一片で形成されることと、前記弾性リターン手段(3)が前記回転ボルト(10)に組み込まれていることと、を特徴とする、請求項1に記載の振動を維持または制限するためのデバイス(100)。
【請求項22】
同心計時器コンポーネント(30、60)を保持するためのシステム(500)であって、前記保持システム(500)が、請求項1に記載の、振動を維持または制限するための少なくとも1つのデバイス(100)を備え、第1のコンポーネント(30)の振動を維持または制限するための第1の手段、および、前記第1のコンポーネント(30)と同心の第2のコンポーネント(60)の振動を維持または制限するための第2の手段(50)と、を形成することを特徴とする、前記システム(500)。
【請求項23】
振動を維持または制限するための前記第2の手段(50)が、前記第2のコンポーネント(60)の振動または、軸方向および/もしくは径方向の遊びをブロックまたは制限するように構成されていることを特徴とする、請求項22に記載の同心計時器コンポーネント(30、60)を保持するためのシステム(500)。
【請求項24】
振動を維持または制限するための前記第2の手段(50)が、前記第2のコンポーネント(60)の軸方向および/または径方向の遊びを制限することを可能にするか、前記第2のコンポーネント(60)を軸方向および/または径方向に保持することを可能にするバンキングまたは偏心ボルトであることを特徴とする、請求項22に記載の同心計時器コンポーネント(30、60)を保持するためのシステム(500)。
【請求項25】
請求項1に記載の振動を維持または制限するための少なくとも1つのデバイス(100)を備えるか、請求項22に記載の同心計時器コンポーネント(30、60)を保持するためのシステム(500)を備えた測時器ムーブメント(1000)。
【請求項26】
請求項1に記載の振動を維持または制限するための少なくとも1つのデバイス(100)を備えるか、請求項22に記載の同心計時器コンポーネント(30、60)を保持するためのシステム(500)を備えた計時器(2000)。
【国際調査報告】