(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】避妊薬の化合物及び方法
(51)【国際特許分類】
C07D 405/04 20060101AFI20240404BHJP
A61P 15/16 20060101ALI20240404BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240404BHJP
A61K 31/4025 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C07D405/04 CSP
A61P15/16
A61P43/00 111
A61K31/4025
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567167
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 US2022027506
(87)【国際公開番号】W WO2022235693
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】305023366
【氏名又は名称】リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルグ, イングリッド グンダ
(72)【発明者】
【氏名】チェリヤラ, ナルシームル
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC79
4C063DD04
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC05
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA21
4C086MA23
4C086MA24
4C086MA28
4C086MA32
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZC42
(57)【要約】
本発明は、式(I):
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物、もしくはプロドラッグであって、式中、R
1~R
6が本明細書に記載のいずれかの値を有する、化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物、もしくはプロドラッグ、ならびに式(I)の化合物を含む組成物を提供する。これらの化合物は避妊薬として有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化50】
またはその薬学的に許容される塩であって、式中、
R
1は、H、C
1-C
3アルキル、またはハロC
1-C
3アルキルであり、
R
2は、H、C
1-C
3アルキル、またはハロC
1-C
3アルキルであり、
R
3は、C
6-C
10アリール、5~10員ヘテロアリール、C
6-C
10アリールC
1-C
3アルキル、または5~10員ヘテロアリールC
1-C
3アルキルであり、ここで、任意のC
6-C
10アリール、5~10員ヘテロアリール、C
6-C
10アリールC
1-C
3アルキル、及び5~10員ヘテロアリールC
1-C
3アルキルは、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、C
1-C
6アルコキシカルボニル、-NR
aR
b、及び-C(=O)NR
cR
dから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、ここで、任意のC
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、及びC
1-C
6アルコキシカルボニルは、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、
R
4は、C
6-C
10アリール、5~10員ヘテロアリール、C
6-C
10アリールC
1-C
3アルキル、または5~10員ヘテロアリールC
1-C
3アルキルであり、ここで、任意のC
6-C
10アリール、5~10員ヘテロアリール、C
6-C
10アリールC
1-C
3アルキル、及び5~10員ヘテロアリールC
1-C
3アルキルは、カルボキシで置換され、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、C
1-C
6アルコキシカルボニル、-NR
eR
f、及び-C(=O)NR
gR
hから独立して選択される1つ以上の基でさらに任意に置換され、ここで、任意のC
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、及びC
1-C
6アルコキシカルボニルは、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、
R
5は、H、C
1-C
3アルキル、ヒドロキシ、C
1-C
3アルコキシ、ハロまたはハロC
1-C
3アルキルであり、
R
6は、H、C
1-C
3アルキル、ヒドロキシ、C
1-C
3アルコキシ、ハロまたはハロC
1-C
3アルキルであり、
各R
a及びR
bは、H、(C
1-C
6)アルキル、(C
3-C
6)シクロアルキル、(C
1-C
6)アルカノイル、及び(C
3-C
6)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキルからなる群より独立して選択されるか、またはR
a及びR
bは、それらが結合している窒素と一緒になって、アジリジノ、アゼチジノ、モルホリノ、ピペラジノ、ピロリジノまたはピペリジノ環を形成し、この環は、C
1-C
6アルキル及びハロC
1-C
6アルキルから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、
各R
c及びR
dは、H、(C
1-C
6)アルキル、(C
3-C
6)シクロアルキル、(C
1-C
6)アルカノイル、及び(C
3-C
6)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキルからなる群より独立して選択されるか、またはR
c及びR
dは、それらが結合している窒素と一緒になって、アジリジノ、アゼチジノ、モルホリノ、ピペラジノ、ピロリジノまたはピペリジノ環を形成し、この環は、C
1-C
6アルキル及びハロC
1-C
6アルキルから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、
各R
e及びR
fは、H、(C
1-C
6)アルキル、(C
3-C
6)シクロアルキル、(C
1-C
6)アルカノイル、及び(C
3-C
6)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキルからなる群より独立して選択されるか、またはR
e及びR
fは、それらが結合している窒素と一緒になって、アジリジノ、アゼチジノ、モルホリノ、ピペラジノ、ピロリジノまたはピペリジノ環を形成し、この環は、C
1-C
6アルキル及びハロC
1-C
6アルキルから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、
各R
g及びR
hは、H、(C
1-C
6)アルキル、(C
3-C
6)シクロアルキル、(C
1-C
6)アルカノイル、及び(C
3-C
6)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキルからなる群より独立して選択されるか、またはR
g及びR
hは、それらが結合している窒素と一緒になって、アジリジノ、アゼチジノ、モルホリノ、ピペラジノ、ピロリジノまたはピペリジノ環を形成し、この環は、C
1-C
6アルキル及びハロC
1-C
6アルキルから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換される、前記化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R
1がC
1-C
3アルキルである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
R
1がメチルである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
R
2がC
1-C
3アルキルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
R
2がメチルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
R
3は、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、C
1-C
6アルコキシカルボニル、-NR
aR
b、及び-C(=O)NR
cR
dから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換されるC
6-C
10アリールであり、ここで、任意のC
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、及びC
1-C
6アルコキシカルボニルは、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換される、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
R
3は、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、C
1-C
6アルコキシカルボニル、-NR
aR
b、及び-C(=O)NR
cR
dから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換されるフェニルであり、ここで、任意のC
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、及びC
1-C
6アルコキシカルボニルは、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換される、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
R
3は、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換されるC
1-C
6アルキルから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換されるC
6-C
10アリールである、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
R
3は、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換されるC
1-C
6アルキルから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換されるフェニルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
R
3がC
1-C
6アルキルで置換されたC
6-C
10アリールである、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
R
3がC
1-C
6アルキルで置換されたフェニルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
R
3が4-メチルフェニルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
R
4は、カルボキシで置換され、さらにハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、C
1-C
6アルコキシカルボニル、-NR
aR
b、及び-C(=O)NR
cR
dから独立して選択される1つ以上の基でさらに任意に置換されるC
6-C
10アリールであり、ここで、任意のC
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、及びC
1-C
6アルコキシカルボニルは、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換される、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
R
4は、カルボキシで置換され、さらにハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、C
1-C
6アルコキシカルボニル、-NR
aR
b、及び-C(=O)NR
cR
dから独立して選択される1つ以上の基でさらに任意に置換されるフェニルであり、ここで、任意のC
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、及びC
1-C
6アルコキシカルボニルは、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換される、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
R
4は、カルボキシで置換され、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換されるC
1-C
6アルキルから独立して選択される1つ以上の基でさらに任意に置換されるC
6-C
10アリールである、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
R
4は、カルボキシで置換され、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換されるC
1-C
6アルキルから独立して選択される1つ以上の基でさらに任意に置換されるフェニルである、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
R
4は、カルボキシで置換されたC
6-C
10アリールである、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
R
4は、カルボキシで置換されたフェニルである、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項19】
R
4が4-カルボキシフェニルである、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項20】
R
5がHである、請求項1~19のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項21】
R
6がHである、請求項1~20のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項22】
【化51】
またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグである、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容される塩。
【請求項23】
式(Ia):
【化52】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1及び5~19のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容される塩。
【請求項24】
式(Ib):
【化53】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1~5及び13~19のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容される塩。
【請求項25】
式(Ic):
【化54】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容される塩。
【請求項26】
式(Id):
【化55】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1及び6~12のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容される塩。
【請求項27】
【化56】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容される塩。
【請求項28】
【化57】
【化58】
【化59】
及びその薬学的に許容される塩からなる群より選択される、化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項30】
男性対象の精子数を減少させる方法であって、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記男性対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項31】
男性対象に可逆的な不妊を生じさせる方法であって、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記男性対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項32】
男性対象と女性対象との性交後の受胎可能性を低下させる方法であって、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を、前記性交前に前記男性対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項33】
RARαの拮抗作用が示される対象において、RARα活性に関連する疾患または状態を治療するための方法であって、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項34】
対象においてRARαをRARβ及びRARγよりも選択的に拮抗させる方法であって、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項35】
RARαをRARβ及びRARγよりも選択的に拮抗させる方法であって、インビトロでRARα、RARβ及びRARγを請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物またはその塩と接触させることを含む、前記方法。
【請求項36】
医療治療に使用するための、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項37】
男性対象において精子数を減少させるための、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項38】
男性対象において可逆的な不妊を生じさせるための、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項39】
男性対象と女性対象との間の性交後の受胎可能性を低下させるための、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項40】
RARα活性に関連する疾患または状態を治療するための、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項41】
in vitroにおいてRARαをRARβ及びRARγよりも選択的に拮抗させるための、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容される塩。
【請求項42】
男性対象の精子数を減少させる医薬の調製における、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項43】
男性対象において可逆的な不妊を生じさせる医薬の調製における、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容される塩の使用。
【請求項44】
男性対象と女性対象との間の性交後の受胎可能性を低下させるための医薬の調製における、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項45】
対象において、RARαに関連する疾患または状態を治療するための医薬の調製における、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項46】
対象においてRARαをRARβ及びRARγよりも選択的に拮抗させる医薬の調製における、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物または薬学的に許容される塩の使用。
【請求項47】
請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む包装材料と、前記化合物または薬学的に許容される塩の避妊薬としての使用説明書とを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年05月04日に出願された米国仮出願第63/184,014号、2022年02月08日に出願された米国仮出願第63/307,943号、及び2022年04月01日に出願された米国仮出願第63/326,524号の優先権を主張する。これらの米国仮出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援の研究に関する声明文
本発明は、米国国立衛生研究所から授与されたHD093540及びHHSN275201300017Cの政府支援を受けて行われた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
避妊の選択肢を家庭に提供することが世界的に進展しているにもかかわらず、避妊薬を使用しなかったり、避妊薬の使用が正しくない/一貫していなかったりすることによる望まない妊娠とタイミングを逸した妊娠の両方と定義される、意図しない妊娠の割合は依然として高い(Bearak J.,et al.,2018,Lancet Glob Health,6,e380-e389)。偶発的な妊娠の割合は減少しているが、先進国の意図しない妊娠率は45%であり、発展途上国では65%程度のままである(Bearak J.,et al.,2018,Lancet Glob Health,6,e380-e389)。2010年から2014年の間に、意図しない妊娠の約56%が中絶に至り、発展途上国では55%、先進国では59%であった(Bearak J.,et al.,2018,Lancet Glob Health,6,e380-e389)。したがって、可逆的な避妊法のための付加的なアプローチ及びリソースを増やすことが急務である。女性にはホルモン避妊、緊急避妊、膣リング、子宮頸管キャップ、殺精子剤など多くの可逆的避妊法があるが、男性の可逆的避妊法はコンドームと体外射精に限られている。男性避妊薬に関する詳細なレビューや議論については、Long JE.,et al.,2019,Clin Chem,65,53-160、及びBlithe DL.,et al.,2016,Fertil Steril,106,1295-1302を参照のこと。テストステロンや様々なテストステロンエステルを避妊薬として使用する可能性が注目されているが(Armory JK.,et al.,2006,Nat Clin Pract Endocrinol Metab,2,32-41、及びPage ST.,et al,2008,Endocr Rev,29,465-493)、テストステロン単独では精子生産を完全に抑制せず、その有効性には民族差がある(Armory JK.,et al.,2006,Nat Clin Pract Endocrinol Metab,2,32-41、及びLiu PY.,et al.,2008,J Clin Endocrinol Metab,93,1774-1783)。テストステロン投与にプロゲストゲンを補充することで、より低用量のテストステロンでの精子産生の抑制が促進される。しかしながら、長期の外因性テストステロン投与の効果は依然として不明である。テストステロンを用いた治療は、心臓毒性(Xu L.,et al.,2013,BMC Medicine,11,108)や肝障害(Westaby D.,et al.,1977,Lancet,310,261-263)を含む、いくつかの悪い副作用と関連している。最も一般的な悪い副作用は、脳血管疾患に関連する赤血球増多症であった(Coviello AD.,et al.,2008,J Clin Endocrinol,93,914-919)。さらに、外因性テストステロンは、HDLコレステロールを低下させ、心血管疾患と関連するヘマトクリット、ヘモグロビン、トロンボキサンすべてを増加させることが示されている(Xu L.,et al.,2013,BMC Medicine,11,108)。より重篤な副作用に加えて、患者は、体重増加、にきび、注射部位疼痛、攻撃性や性欲減退といった気分の変化も経験した(World Health Organization Task Force on Methods for the Regulation of Male Fertility,1990,Lancet,336,955-959)。上述の研究では、患者の2.2%が精子減少症の閾値に達しなかったことから、特定の男性はテストステロン治療に対する「非応答者」であることがわかる(World Health Organization Task Force on Methods for Regulation of Male Fertility,1990,Lancet,336,955-959)。
したがって、副作用や健康リスク、さらなる合併症があったとしてもほとんどない、効果的な非ステロイドホルモン系の可逆的男性避妊薬が必要とされている。ホルモン療法は精子形成プロセスを中断させることに依存しているが、非ホルモン系の療法で追求できるターゲットははるかに多い(Blithe D.,2008,Contraception,78,S23-S27)。非ホルモン性男性避妊法は、精子生産または精子機能のいずれかに影響を及ぼすタンパク質を標的とするもので、標的タンパク質に対する阻害剤の特異性と効力によっては、副作用が最小限に抑えられると予想される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Bearak J.,et al.,2018,Lancet Glob Health,6,e380-e389
【非特許文献2】Long JE.,et al.,2019,Clin Chem,65,53-160
【非特許文献3】Blithe DL.,et al.,2016,Fertil Steril,106,1295-1302
【非特許文献4】Armory JK.,et al.,2006,Nat Clin Pract Endocrinol Metab,2,32-41
【非特許文献5】Page ST.,et al,2008,Endocr Rev,29,465-493
【非特許文献6】Liu PY.,et al.,2008,J Clin Endocrinol Metab,93,1774-1783
【非特許文献7】Xu L.,et al.,2013,BMC Medicine,11,108
【非特許文献8】Westaby D.,et al.,1977,Lancet,310,261-263
【非特許文献9】Coviello AD.,et al.,2008,J Clin Endocrinol,93,914-919
【非特許文献10】World Health Organization Task Force on Methods for the Regulation of Male Fertility,1990,Lancet,336,955-959
【非特許文献11】Blithe D.,2008,Contraception,78,S23-S27
【発明の概要】
【0005】
副作用や健康リスク、さらなる合併症があったとしてもほとんどない、効果的な非ステロイドホルモン系の可逆的男性避妊薬が同定された。したがって、一態様では、本発明は、式(I):
【化1】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグであって、式中、
R
1は、H、C
1-C
3アルキル、またはハロC
1-C
3アルキルであり、
R
2は、H、C
1-C
3アルキル、またはハロC
1-C
3アルキルであり、
R
3は、C
6-C
10アリール、5~10員ヘテロアリール、C
6-C
10アリールC
1-C
3アルキル、または5~10員ヘテロアリールC
1-C
3アルキルであり、ここで、任意のC
6-C
10アリール、5~10員ヘテロアリール、C
6-C
10アリールC
1-C
3アルキル、及び5~10員ヘテロアリールC
1-C
3アルキルは、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、C
1-C
6アルコキシカルボニル、-NR
aR
b、または-C(=O)NR
cR
dから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、ここで、任意のC
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、及びC
1-C
6アルコキシカルボニルは、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、
R
4は、C
6-C
10アリール、5~10員ヘテロアリール、C
6-C
10アリールC
1-C
3アルキル、または5~10員ヘテロアリールC
1-C
3アルキルであり、ここで、任意のC
6-C
10アリール、5~10員ヘテロアリール、C
6-C
10アリールC
1-C
3アルキル、及び5~10員ヘテロアリールC
1-C
3アルキルは、カルボキシで置換され、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、C
1-C
6アルコキシカルボニル、-NR
eR
f、または-C(=O)NR
gR
hから独立して選択される1つ以上の基でさらに任意に置換され、ここで、任意のC
1-C
6アルキル、C
1-C
6アルコキシ、C
1-C
6アルカノイル、C
1-C
6アルカノイルオキシ、及びC
1-C
6アルコキシカルボニルは、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、
R
5は、H、C
1-C
3アルキル、ヒドロキシ、C
1-C
3アルコキシ、ハロまたはハロC
1-C
3アルキルであり、
R
6は、H、C
1-C
3アルキル、ヒドロキシ、C
1-C
3アルコキシ、ハロまたはハロC
1-C
3アルキルであり、
各R
a及びR
bは、H、(C
1-C
6)アルキル、(C
3-C
6)シクロアルキル、(C
1-C
6)アルカノイル、及び(C
3-C
6)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキルからなる群より独立して選択されるか、またはR
a及びR
bは、それらが結合している窒素と一緒になって、アジリジノ、アゼチジノ、モルホリノ、ピペラジノ、ピロリジノまたはピペリジノ環を形成し、この環は、C
1-C
6アルキル及びハロC
1-C
6アルキルから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、
各R
c及びR
dは、H、(C
1-C
6)アルキル、(C
3-C
6)シクロアルキル、(C
1-C
6)アルカノイル、及び(C
3-C
6)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキルからなる群より独立して選択されるか、またはR
c及びR
dは、それらが結合している窒素と一緒になって、アジリジノ、アゼチジノ、モルホリノ、ピペラジノ、ピロリジノまたはピペリジノ環を形成し、この環は、C
1-C
6アルキル及びハロC
1-C
6アルキルから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、
各R
e及びR
fは、H、(C
1-C
6)アルキル、(C
3-C
6)シクロアルキル、(C
1-C
6)アルカノイル、及び(C
3-C
6)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキルからなる群より独立して選択されるか、またはR
e及びR
fは、それらが結合している窒素と一緒になって、アジリジノ、アゼチジノ、モルホリノ、ピペラジノ、ピロリジノまたはピペリジノ環を形成し、この環は、C
1-C
6アルキル及びハロC
1-C
6アルキルから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、
各R
g及びR
hは、H、(C
1-C
6)アルキル、(C
3-C
6)シクロアルキル、(C
1-C
6)アルカノイル、及び(C
3-C
6)シクロアルキル(C
1-C
6)アルキルからなる群より独立して選択されるか、またはR
g及びR
hは、それらが結合している窒素と一緒になって、アジリジノ、アゼチジノ、モルホリノ、ピペラジノ、ピロリジノまたはピペリジノ環を形成し、この環は、C
1-C
6アルキル及びハロC
1-C
6アルキルから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換される、
化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグである、本発明のレチノイン酸受容体-αアンタゴニスト化合物を提供する。
【0006】
本発明はまた、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、男性対象の精子数を減少させる方法であって、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を男性対象(例えば、ヒト)に投与することを含む当該方法を提供する。
【0008】
別の実施態様において、本発明は、男性対象において可逆的な不妊症を生じさせる方法であって、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を雄性哺乳動物(例えば、ヒト)に投与することを含む当該方法を提供する。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、男性対象と女性対象との性交後の受胎の可能性を低下させる方法であって、性交前に式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を男性対象(例えば、ヒト)に投与することを含む当該方法を提供する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、RARαの拮抗作用が示される対象において、RARα活性に関連する疾患または状態を治療するための方法であって、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を哺乳動物に投与することを含む当該方法を提供する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、対象においてRARβ及びRARγよりもRARαを選択的に拮抗させる方法であって、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む当該方法を提供する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、RARβ及びRARγよりもRARαを選択的に拮抗させる方法であって、RARα、RARβ及びRARγをインビトロで式(I)の化合物またはその塩と接触させることを含む当該方法を提供する。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、医学的療法において使用するための式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0014】
別の実施態様では、本発明は、男性対象の精子数を減少させるための式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0015】
別の実施態様では、本発明は、男性対象に可逆的な不妊症を生じさせるための式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0016】
別の実施態様では、本発明は、男性対象と女性対象との性交後の受胎の可能性を減少させるための式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、RARα活性に関連する疾患または状態を治療するための式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、RARβ及びRARγよりもRARαをインビトロで選択的に拮抗させるための式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、男性対象の精子数を減少させるための医薬品の調製における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0020】
別の実施態様では、本発明は、男性対象に可逆的な不妊症を生じさせるための医薬品の調製における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、男性対象と女性対象との性交後の受胎の可能性を減少させるための医薬品の調製における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるRARα活性に関連する疾患または状態を治療するための医薬品の調製における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、対象においてRARβ及びRARγよりもRARαを選択的に拮抗させるための医薬品の調製における、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む包装材料、及び式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の避妊薬として(例えば、男性対象の精子数を減少させるため、男性対象において可逆的な不妊症を生じさせるため、及び/または受胎の可能性を減少させるため、または受胎の可能性をなくすため)の使用説明書を含むキットを提供する。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、男性対象の精子数を減少させる方法であって、RARαの選択的アンタゴニストである化合物またはその薬学的に許容される塩を男性対象(例えば、ヒト)に経口投与することを含む当該方法を提供する。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、男性対象において可逆的な不妊症を生じさせる方法であって、RARαの選択的アンタゴニストである化合物またはその薬学的に許容される塩を男性対象(例えば、ヒト)に投与することを含む当該方法を提供する。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、男性対象と女性対象との性交後の受胎の可能性を減少させる方法であって、性交前にRARαの選択的アンタゴニストである化合物またはその薬学的に許容される塩を男性対象(例えば、ヒト)に投与することを含む当該方法を提供する。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、RARαの拮抗作用が示される対象において、RARα活性に関連する疾患または状態を治療するための方法であって、RARαの選択的アンタゴニストである化合物またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む当該方法を提供する。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、男性対象の精子数を減少させるための、経口活性でRARαの選択的アンタゴニストである化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0030】
別の実施態様では、本発明は、男性対象に可逆的な不妊症を生じさせるための、経口活性でRARαの選択的アンタゴニストである化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0031】
別の実施態様では、本発明は、男性対象と女性対象との性交後の受胎の可能性を減少させるための、経口活性でRARαの選択的アンタゴニストである化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0032】
別の実施形態では、本発明は、RARα活性に関連する疾患または状態を治療するための、経口活性でRARαの選択的アンタゴニストである化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0033】
別の実施形態では、本発明は、男性対象の精子数を減少させるための医薬品の調製における、経口活性でRARαの選択的アンタゴニストである化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0034】
別の実施態様では、本発明は、男性対象に可逆的な不妊症を生じさせるための医薬品の調製における、経口活性でRARαの選択的アンタゴニストである化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0035】
別の実施態様では、本発明は、男性対象と女性対象との間の性交後の受胎の可能性を減少させるための医薬品の調製における、経口活性でRARαの選択的アンタゴニストである化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、対象におけるRARα活性に関連する疾患または状態を治療するための医薬品の調製における、経口活性でRARαの選択的アンタゴニストである化合物またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0037】
本発明はまた、式(I)の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物、またはプロドラッグを調製するために有用な、本明細書に開示される方法及び中間体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】実施例14における実施例1の化合物の分布データを示す。
【
図2】実施例14の雄の生殖能力(GPHR-00354529と同定)に対する実施例1の化合物の効果を試験するための実験スキームを示す。
【
図3】雄マウスに実施例1の化合物(GPHR-00354529と同定)を10mg/kgで4週間投与すると、実施例16から投与後2週間で不妊症となることを示す。
【
図4】雄マウスに実施例1の化合物(GPHR-00354529と同定)を20mg/kgで2週間投与すると、実施例16から投与後4週間で不妊症となることを示す。
【
図5】雄マウスに実施例1の化合物(GPHR-00354529と同定)を10mg/kgで4週間投与すると不妊となり、実施例16から投与後4~6週間で生殖能力が回復することを示す。
【
図6】雄マウスに実施例1の化合物(GPHR-00354529と同定)を20mg/kgで2週間投与すると不妊となり、実施例16から投与後6週間で生殖能力が回復することを示す。
【
図7】実施例1の化合物10mg/kgがマウスの精子数を可逆的に減少させることを示す。25匹の雄性CD-1マウスに10mg/kg/日(灰色の棒グラフ)を4週間投与した。精巣上体精子数を3週目の時点で週に1回評価し、対照群(白い棒グラフ)と比較した。各時点における5匹のマウスの絶対精子数の平均値±SDを示す。***p<0.001、****p<0.0001。実施例19を参照のこと。
【
図8】実施例1の化合物7.5mg/kgがマウスの精子数を可逆的に減少させることを示す。40匹の雄性CD-1マウスに7.5mg/kg/日(灰色の棒グラフ)を4週間投与した。精巣上体精子数を3週目の時点で週に1回評価し、対照群(白い棒グラフ)と比較した。各時点における10匹のマウスの絶対精子数の平均値±SDを示す。***p<0.001、****p<0.0001。実施例19を参照のこと。
【
図9】実施例1の化合物がマウスにおいて遊離血清テストステロン濃度を変化させないことを示す。40匹の雄性CD-1マウスに7.5mg/kg/日(灰色の棒グラフ)を4週間投与した。遊離血清テストステロン濃度を、3週目の時点で週に1回ELISA法で評価し、対照群(白い棒グラフ)と比較した。各時点における10匹のマウスの平均値±SDを示す。実施例19を参照のこと。
【
図10】3匹の雄性カニクイザルに、実施例1の化合物を5mg/kg/日で30日間、続いて7.5mg/kg/日で1週間投与した。38日目の時点で、動物は回復中である(進行中)。指示の時点で電気射精により収集した新しい精液サンプルから精子数を評価した。各動物の精子数(三角形、丸及び菱形の記号を有する濃い灰色の線)と平均±SD(四角の記号を有する黒い線)を示す。水平の破線は、繁殖されていないものの報告された精子数を示す。実施例19を参照のこと。
【
図11】実施例1の化合物がイヌ及びラットの精巣の生殖上皮を障害することを示す。2匹の雄性ビーグル犬及び5匹の雄性SDラットに25mg/kg/日で14日間投与した。15日目に動物を安楽死させ、病理組織検査用の臓器を採取した。代表的な画像を示す。実施例19を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0039】
別段の記載がない限り、以下の定義を使用する。すなわち、ハロまたはハロゲンは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。アルキル、アルコキシなどは、直鎖及び分岐鎖の基の両方を示すが、プロピルのような個々のラジカルに言及している場合には、直鎖ラジカルのみを含み、イソプロピルのような分岐鎖異性体は、具体的に言及されている。
【0040】
「アルキル」という用語は、別段の記載のない限り、単独で、または別の置換基の一部として、示されている数の炭素原子を有する(すなわち、C1-8は、1~8個の炭素を意味する)直鎖または分岐鎖の炭化水素ラジカルを意味する。例としては、(C1-C6)アルキル、(C1-C3)アルキル、(C2-C6)アルキル及び(C3-C6)アルキルが挙げられる。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、ならびに高級同族体及び異性体が挙げられる。
【0041】
「アルコキシ」という用語は、酸素原子(「オキシ」)を介して分子の残部に結合したアルキル基を指す。
【0042】
「アルカノイル」という用語は、カルボニルC(=O)-基を介して分子の残部に結合したアルキル基を指す。
【0043】
「シクロアルキル」という用語は、3~8個の炭素原子を有する飽和または部分不飽和(非芳香族)のあらゆる炭素環(すなわち、(C3-C8)炭素環)を指す。この用語には、すべて炭素である飽和複数縮合環系(例えば、炭素環を2個、3個または4個含む環系)も含まれる。したがって、炭素環には、二環式の炭素環(例えば、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン及びビシクロ[2.1.1]ヘキサンなど、約3~15個の炭素原子、約6~15個の炭素原子または6~12個の炭素原子を有する二環式の炭素環)、ならびに多環式の炭素環(例えば、最大で約20個の炭素原子を有する三環式及び四環式の炭素環)のような多環式の炭素環が含まれる。複数縮合環系の環は、価数の要件が許す場合、縮合結合、スピロ結合及び架橋結合を介して、互いに連結できる。例えば、多環式の炭素環は、単一の炭素原子を介して互いに連結して、スピロ結合を形成するか(例えば、スピロペンタン、スピロ[4,5]デカンなど)、隣接する2個の炭素原子を介して互いに連結して、縮合結合を形成するか(例えば、デカヒドロナフタレン、ノルサビナン、ノルカランのような炭素環)、または2個の非隣接炭素原子を介して互いに連結して、架橋結合を形成する(例えば、ノルボルナン、ビシクロ[2.2.2]オクタンなど)ことができる。シクロアルキルの非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ピナン及びアダマンタンが挙げられる。
【0044】
「アリール」という用語は、本明細書で使用する場合、すべて炭素である芳香族単環系、またはすべて炭素である複数縮合環系であって、少なくとも1つの環が芳香族である環系を指す。例えば、特定の実施形態では、アリール基は、6~20個の炭素原子、6~14個の炭素原子、6~12個の炭素原子または6~10個の炭素原子を有する。アリールには、フェニルラジカルが含まれる。アリールには、約9~20個の炭素原子を有する複数縮合炭素環系(例えば、環を2個、3個または4個含む環系)であって、少なくとも1つの環が、芳香族であり、その他の環が、芳香族であっても、芳香族でなくてもよい(すなわち、シクロアルキルでもよい)環系も含まれる。複数縮合環系の環は、価数の要件が許す場合、縮合結合、スピロ結合及び架橋結合を介して、互いに連結できる。複数縮合環系の結合点は、上で定義したように、その環の芳香族部分または炭素環部分を含め、その環系のいずれの位置であることもできることを理解されたい。アリール基の非限定的な例としては、フェニル、インデニル、インダニル、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、アントラセニルなどが挙げられるが、これらに限らない。
【0045】
「複素環」という用語は、その環に、炭素以外の原子を少なくとも1つ有する飽和単環または部分不飽和単環であって、その原子が、酸素、窒素及び硫黄からなる群から選択されている環を指し、その用語には、そのような飽和環または部分不飽和環を少なくとも1つ有する複数縮合環系も含まれ、その複数縮合環系については、下でさらに説明されている。したがって、本用語は、環に、約1~6個の炭素原子、ならびに酸素、窒素及び硫黄からなる群から選択される約1~3個のヘテロ原子の単一飽和または部分不飽和環(例えば、3、4、5、6、または7員環)を含む。その硫黄原子及び窒素原子は、その酸化形態で存在してもよい。例示的な複素環としては、アゼチジニル、テトラヒドロフラニル及びピペリジニルが挙げられるが、これらに限らない。「複素環」という用語には、複数縮合環系(例えば、環を2個、3個または4個含む環系)も含まれ、この場合、複素環単環(上で定義したとおりである)が、シクロアルキル、アリール及び複素環から選択した1つ以上の基と縮合して、複数縮合環系を形成できる。複数縮合環系の環は、価数の要件が許す場合、縮合結合、スピロ結合及び架橋結合を介して、互いに連結できる。複数縮合環系の個々の環は、互いに対して、いずれの順序でも連結し得ることを理解されたい。複数縮合環系(複素環において、上で定義したとおりである)の結合点は、その環の複素環部分、アリール部分及び炭素環部分を含め、その複数縮合環系のいずれの位置であってもよいことも理解されたい。一実施形態では、複素環という用語には、3~15員の複素環が含まれる。一実施形態では、複素環という用語には、3~10員の複素環が含まれる。一実施形態では、複素環という用語には、3~8員の複素環が含まれる。一実施形態では、複素環という用語には、3~7員の複素環が含まれる。一実施形態では、複素環という用語には、3~6員の複素環が含まれる。一実施形態では、複素環という用語には、4~6員の複素環が含まれる。一実施形態では、複素環という用語には、ヘテロ原子を1~4個含む3~10員の単環式または二環式の複素環が含まれる。一実施形態では、複素環という用語には、ヘテロ原子を1~3個含む3~8員の単環式または二環式の複素環が含まれる。一実施形態では、複素環という用語には、ヘテロ原子を1~2個含む3~6員の単環式複素環が含まれる。一実施形態では、複素環という用語には、ヘテロ原子を1~2個含む4~6員の単環式複素環が含まれる。例示的な複素環としては、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ホモピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロオキサゾリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、1,2,3,4-テトラヒドロキノリル、ベンズオキサジニル、ジヒドロオキサゾリル、クロマニル、1,2-ジヒドロピリジニル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、1,3-ベンゾジオキソリル、1,4-ベンゾジオキサニル、スピロ[シクロプロパン-1,1’-イソインドリニル]-3’-オン、イソインドリニル-1-オン、2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタニル、イミダゾリジン-2-オンイミダゾリジン、ピラゾリジン、ブチロラクタム、バレロラクタム、イミダゾリジノン、ヒダントイン、ジオキソラン、フタルイミド及び1,4-ジオキサンが挙げられるが、これらに限らない。
【0046】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書で使用する場合、その環に、炭素以外の原子を少なくとも1つ有する芳香族単環であって、その原子が、酸素、窒素及び硫黄からなる群から選択されている環を指し、「ヘテロアリール」には、そのような芳香族環を少なくとも1つ有する複数縮合環系も含まれ、この環系については、下でさらに説明されている。したがって、「ヘテロアリール」には、約1~6個の炭素原子、ならびに酸素、窒素及び硫黄からなる群から選択した約1~4個のヘテロ原子の芳香族単環が含まれる。その硫黄原子及び窒素原子は、酸化形態で存在してもよい。ただし、その環が芳香族であることを条件とする。例示的なヘテロアリール環系としては、ピリジル、ピリミジニル、オキサゾリルまたはフリルが挙げられるが、これらに限らない。「ヘテロアリール」には、複数縮合環系(例えば、環を2個、3個または4個含む環系)も含まれ、この場合、上で定義したようなヘテロアリール基が、シクロアルキル、アリール、複素環及びヘテロアリールから選択した1つ以上の環と縮合している。ヘテロアリールまたはヘテロアリール複数縮合環系の結合点は、そのヘテロアリールまたはヘテロアリール複数縮合環系のいずれかの適切な原子(炭素原子及びヘテロ原子(例えば窒素)を含む)であることができることを理解されたい。例示的なヘテロアリールとしては、ピリジル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラゾリル、チエニル、インドリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、フリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、キノリル、イソキノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、インダゾリル、キノキサリル及びキナゾリルが挙げられるが、これらに限らない。
【0047】
「アルコキシカルボニル」という用語は、本明細書で使用する場合、(アルキル)-O-C(=O)-という基を指し、式中、アルキルという用語は、本明細書で定義されている意味を有する。
【0048】
「アルカノイルオキシ」という用語は、本明細書で使用する場合、(アルキル)-C(=O)-O-という基を指し、式中、アルキルという用語は、本明細書で定義されている意味を有する。
【0049】
本明細書で使用する場合、「ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)及びケイ素(Si)を含むように意図されている。
【0050】
本明細書で使用されるとき、「保護基」という用語は、化合物上の特定の官能基を遮断または保護するために一般的に用いられる置換基を指す。例えば、「アミノ保護基」は、化合物中のアミノ官能基を遮断または保護する、アミノ基に付加された置換基である。好適なアミノ保護基には、アセチル、トリフルオロアセチル、t-ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)及び9-フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)が含まれる。同様に、「ヒドロキシ保護基」は、ヒドロキシ官能基を遮断または保護する、ヒドロキシ基の置換基を指す。好適な保護基には、アセチル及びシリルが含まれる。「カルボキシ保護基」は、カルボキシ官能基を遮断または保護する、カルボキシ基の置換基を指す。一般的なカルボキシ保護基には、フェニルスルホニルエチル、シアノエチル、2-(トリメチルシリル)エチル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチル、2-(p-トルエンスルホニル)エチル、2-(p-ニトロフェニルスルフェニル)エチル、2-(ジフェニルホスフィノ)-エチル、ニトロエチルなどが含まれる。保護基及びその使用の一般的な説明については、P.G.M.Wuts and T.W.Greene,Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis 4th edition,Wiley-Interscience,New York,2006を参照されたい。
【0051】
本明細書で使用されるとき、化学構造において結合と交わる波線
【化2】
は、波線結合が化学構造において交わる結合の、分子の残部への結合点を示す。
【0052】
用語「治療する」、「治療」または「治療すること」は、それが疾患または状態に関連する限りにおいて、疾患または状態を阻害すること、疾患または状態を排除すること、及び/または疾患または状態の1つ以上の症状を軽減することを含む。用語「治療する」、「治療」または「治療すること」はまた、治療的処置及び/または予防的処置または予防的手段の両方を指し、目的は、望ましくない生理学的変化または障害を予防または減速(軽減)することである。例えば、有益または所望の臨床結果としては、検出可能であるか検出不可であるかにかかわらず、症状の軽減、疾患または障害の程度の減弱、疾患または障害の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患進行の遅延または減速、疾患状態または障害の緩和または一時的緩和、及び寛解(部分的もしくは完全なもの)が挙げられるがこれらに限定されない。「治療する」、「治療」または「治療すること」は、治療を受けなかった場合の予測生存期間と比べて、生存期間を延長することも意味できる。治療を必要とする者としては、疾患もしくは障害を既に有する者、ならびに疾患もしくは障害を有する傾向にある者、または疾患もしくは障害を予防する必要がある者が挙げられる。一実施形態では、「治療する」、「治療」または「治療すること」には、予防することも予防も含まれない。
【0053】
「治療有効量」または「有効量」という語句は、(i)特定の疾患、状態もしくは障害を治療もしくは予防する、(ii)特定の疾患、状態もしくは障害のうちの1つ以上の症状を減弱させる、改善する、もしくは排除する、または(iii)本明細書に記載の特定の疾患、状態もしくは障害のうちの1つ以上の症状の発症を予防もしくは遅延させる、化合物の量を含むが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書で使用される用語「対象」は、主題の方法が実施される任意の個体または患者を指す。一般には、対象は、動物であり得ることが当業者に理解されるものの、対象は、哺乳動物、とくにヒトである。したがって、齧歯類(マウス、ラット、ハムスター、及びモルモットを含む)、ネコ、イヌ、ウサギ、家畜動物(ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ等を含む)、ならびに霊長類(サル、チンパンジー、オラウータン、及びゴリラ)などの脊椎動物を含む他の動物が、対象の定義に含まれる。一実施形態では、対象は哺乳動物である。一実施形態では、対象はヒト対象である。
【0055】
「哺乳動物」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒト、高等非ヒト霊長類、齧歯類、家畜、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌ及びネコを指す。一実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
【0056】
「RARαの選択的アンタゴニスト」という用語は、RARβまたはRARγのいずれかにおける活性と比較して、RARαにおいて少なくとも2倍、5倍または10倍のアンタゴニスト活性を有する化合物を指す。一実施形態では、「RARαの選択的アゴニスト」という用語は、RARβ及びRARγの両方における活性と比較して、RARαにおいて少なくとも2倍、5倍、または10倍のアンタゴニスト活性を有する化合物を指す。
【0057】
本明細書に開示される化合物は、特定の場合には互変異性異性体として存在することもできる。非局在化共鳴構造を1つだけ図示しているが、そのような形態はすべて本発明の範囲内において企図されると考えられる。
【0058】
本発明はまた、限定されないが、重水素(2HまたはD)等の1つ以上の同位体で天然に存在する同位体比を超えて任意のまたはすべての原子において濃縮され得る、特許請求される任意の化合物を含むことが当業者によって理解される。非限定的な例として、-CH3基は-CD3で置換されてもよい。
【0059】
本明細書で使用されている立体化学的な定義及び慣例は概して、S.P.Parker,Ed.,McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(1984)McGraw-Hill Book Company,New York及びEliel,E.and Wilen,S.,“Stereochemistry of Organic Compounds”,John Wiley & Sons,Inc.,New York,1994に沿ったものである。本発明の化合物は、不斉中心またはキラル中心を含むことができるので、様々な立体異性体で存在する。本発明の化合物のあらゆる立体異性体(ジアステレオマー、エナンチオマー及びアトロプ異性体が挙げられるが、これらに限らない)、ならびにそれらの混合物(ラセミ混合物など)が、本発明の一部を形成することが意図されている。多くの有機化合物は、光学活性体で存在し、すなわち、それらの化合物には、平面偏光面を回転させる能力がある。光学活性化合物を説明する際には、D及びL、またはR及びSという接頭文字を使用して、そのキラル中心(複数可)の周りの分子の絶対配置を示す。d及びl、または(+)及び(-)という接頭文字を用いて、その化合物によって平面偏光が回転する兆候を示し、(-)またはlは、その化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdという接頭文字が付された化合物は、右旋性である。所定の化学構造において、これらの立体異性体は、互いの鏡像である場合以外は、同一である。特殊な立体異性体は、エナンチオマーと称することもでき、このような異性体の混合物は、エナンチオマー混合物という場合が多い。エナンチオマーの50:50混合物は、ラセミ混合物またはラセミ化合物といい、化学反応または化学プロセスにおいて、立体選択性または立体特異性を有さない場合に見ることができる。「ラセミ混合物」及び「ラセミ化合物」という用語は、2つのエナンチオマー種の等モル混合物であって、光学活性を持たない混合物を指す。
【0060】
キラル中心を有する本発明の化合物が、光学活性体及びラセミ体で存在することができ、光学活性体及びラセミ体で単離できることは、当業者には明らかであろう。一部の化合物は、多形性を示すことがある。本発明には、本発明の化合物のラセミ体、光学活性体、多形体もしくは立体異性体、またはこれらの混合物のうち、本明細書に記載されている有用な特性を有するあらゆるものが含まれることを理解すべきであり、(例えば、再結晶化技法による、ラセミ体の分割によって、光学活性のある出発物質からの合成によって、キラル合成によって、またはキラル固定相を用いたクロマトグラフ分離によって)光学活性形態を調製する方法は、当技術分野において周知である。
【0061】
本明細書における化合物の式において、結合手が、立体化学的ではない形式(例えば平面)で描かれている場合には、その結合手が結合している原子には、あらゆる立体化学的な可能性が含まれる。本明細書における化合物の式において、結合手が、定義された立体化学的形式(例えば、太線、太線のくさび、破線または破線のくさび)で描かれている場合には、立体化学的な結合手が結合している原子は、特に断りのない限り、示されている絶対立体異性体を多く含むと理解されたい。一実施形態では、その化合物は、少なくとも51%が、示されている絶対立体異性体であってよい。別の実施形態では、その化合物は、少なくとも60%が、示されている絶対立体異性体であってよい。別の実施形態では、その化合物は、少なくとも80%が、示されている絶対立体異性体であってよい。別の実施形態では、その化合物は、少なくとも90%が、示されている絶対立体異性体であってよい。別の実施形態では、その化合物は、少なくとも95が、示されている絶対立体異性体であってよい。別の実施形態では、その化合物は、少なくとも99%が、示されている絶対立体異性体であってよい。
【0062】
ラジカル、置換基及び範囲について以下に列挙される具体的な値は、例示のためのものにすぎず、それらは、ラジカル及び置換基について定義された範囲内の他の定義された値または他の値を排除しない。2つ以上の値を組み合わせることができることを理解されたい。また、以下に列挙する値(またはそのサブセット)は除外できることも理解されたい。
【0063】
具体的には、(C1-C6)アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、3-ペンチル、またはヘキシルであり得、(C1-C6)アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペントキシ、3-ペントキシ、またはヘキシルオキシであり得、(C1-C6)アルカノイルは、アセチル、プロパノイル、またはブタノイルであり得、アリールは、フェニル、インデニル、またはナフチルであり得、ヘテロアリールは、フリル、イミダゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、オキサゾイル、イソオキサゾイル、チアゾリル、イソチアゾイル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、テトラゾリル、ピリジル、(もしくはそのN-オキシド)、チエニル、ピリミジニル(もしくはそのN-オキシド)、インドリル、イソキノリル(もしくはそのN-オキシド)、またはキノリル(もしくはそのN-オキシド)であり得る。
【0064】
R1の具体的な値は、C1-C3アルキルである。
【0065】
R1の具体的な値はメチルである。
【0066】
R2の具体的な値は、C1-C3アルキルである。
【0067】
R2の具体的な値はメチルである。
【0068】
R3の具体的な値は、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルカノイル、C1-C6アルカノイルオキシ、C1-C6アルコキシカルボニル、-NRaRb、及び-C(=O)NRcRdから独立して選択される1つ以上(例えば、1、2、3、または4個)の基で任意に置換されるC6-C10アリールであり、ここで、任意のC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルカノイル、C1-C6アルカノイルオキシ、及びC1-C6アルコキシカルボニルは、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換される。
【0069】
R3の具体的な値は、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルカノイル、C1-C6アルカノイルオキシ、C1-C6アルコキシカルボニル、-NRaRb、及び-C(=O)NRcRdから独立して選択される1つ以上(例えば、1、2、3、または4個)の基で任意に置換されるフェニルであり、ここで、任意のC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルカノイル、C1-C6アルカノイルオキシ、及びC1-C6アルコキシカルボニルは、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換される。
【0070】
R3の具体的な値は、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換されるC1-C6アルキルから独立して選択される1つ以上(例えば、1、2、3、または4個)の基で任意に置換されるC6-C10アリールである。
【0071】
R3の具体的な値は、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換されるC1-C6アルキルから独立して選択される1つ以上(例えば、1、2、3、または4個)の基で任意に置換されるフェニルである。
【0072】
R3の具体的な値は、C1-C6アルキルで置換されるC6-C10アリールである。
【0073】
R3の具体的な値は、C1-C6アルキルで置換されるフェニルである。
【0074】
R3の具体的な値は、4-メチルフェニルである。
【0075】
R4の具体的な値は、C6-C10アリール、5~10員ヘテロアリール、C6-C10アリールC1-C3アルキル、または5~10員ヘテロアリールC1-C3アルキルであり、ここで、任意のC6-C10アリール、5~10員ヘテロアリール、C6-C10アリールC1-C3アルキル、及び5~10員ヘテロアリールC1-C3アルキルは、カルボキシで置換され、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルカノイル、C1-C6アルカノイルオキシ、C1-C6アルコキシカルボニル、-NReRf、または-C(=O)NRgRhから独立して選択される1つ以上の基でさらに任意に置換され、ここで、任意のC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルカノイル、C1-C6アルカノイルオキシ、及びC1-C6アルコキシカルボニルは、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、
【0076】
R4の具体的な値は、カルボキシで置換され、さらにハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルカノイル、C1-C6アルカノイルオキシ、C1-C6アルコキシカルボニル、-NRaRb、及び-C(=O)NRcRdから独立して選択される1つ以上(例えば、1、2、3、または4個)の基でさらに任意に置換されるC6-C10アリールであり、ここで、任意のC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルカノイル、C1-C6アルカノイルオキシ、及びC1-C6アルコキシカルボニルは、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換される。
【0077】
R4の具体的な値は、カルボキシで置換され、ハロ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルカノイル、C1-C6アルカノイルオキシ、C1-C6アルコキシカルボニル、-NRaRb、及び-C(=O)NRcRdから独立して選択される1つ以上(例えば、1、2、3、または4個)の基でさらに任意に置換されるフェニルであり、ここで、任意のC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルカノイル、C1-C6アルカノイルオキシ、及びC1-C6アルコキシカルボニルは、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換される。
【0078】
R4の具体的な値は、カルボキシで置換され、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換されるC1-C6アルキルから独立して選択される1つ以上(例えば、1、2、3、または4個)の基でさらに任意に置換されるC6-C10アリールである。
【0079】
R4の具体的な値は、カルボキシで置換され、ハロから独立して選択される1つ以上の基で任意に置換されるC1-C6アルキルから独立して選択される1つ以上(例えば、1、2、3、または4個)の基でさらに任意に置換されるフェニルである。
【0080】
R4の具体的な値は、カルボキシで置換されたC6-C10アリールである。
【0081】
R4の具体的な値は、カルボキシで置換されたフェニルである。
【0082】
R4の具体的な値は4-カルボキシフェニルである。
【0083】
R5の具体的な値はHである。
【0084】
R6の具体的な値はHである。
【0085】
特定の化合物または塩は、式(Ia):
【化3】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物、もしくはプロドラッグである。
【0086】
特定の化合物または塩は、式(Ib):
【化4】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物、もしくはプロドラッグである。
【0087】
特定の化合物または塩は、式(Ic):
【化5】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物、もしくはプロドラッグである。
【0088】
特定の化合物または塩は、式(Id):
【化6】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物、もしくはプロドラッグである。
【0089】
特定の化合物または塩は、
【化7】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0090】
特定の化合物または塩は、
【化8】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0091】
特定の化合物、薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物、またはプロドラッグは、
【化9】
【化10】
【化11】
ならびにその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物及びプロドラッグからなる群より選択される。
【0092】
式Iの化合物を調製するためのプロセスは、本発明のさらなる実施形態として提供され、かつ以下の手順によって例示されており、これらの手順において、特に限定されない限り、一般的なラジカルの意味は上記のとおりである。
【0093】
化合物が十分に塩基性または酸性である場合、式Iの化合物の塩は、式Iの化合物を単離または精製するための中間体として有用であり得る。さらに、薬学的に許容される酸または塩基塩としての式Iの化合物の投与が適切であり得る。薬学的に許容される塩の例は、生理学的に許容されるアニオンを形成する酸と形成される有機酸付加塩、例えば、トシレート、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸塩、及びα-グリセロリン酸塩が挙げられる。また、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩及び炭酸塩を含む適切な無機塩を形成することもできる。
【0094】
塩は、当該技術分野で周知の標準的な手順を使用して、例えば、アミンなどの十分に塩基性の化合物を適切な酸と反応させて、生理学的に許容されるアニオンを得ることによって得ることができる。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムもしくはリチウム)塩またはアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)塩を製造することもできる。
【0095】
式(I)の化合物は、医薬組成物として製剤化され、選択された投与経路、すなわち、静脈内、筋肉内、局所もしくは皮下経路による経口または非経口投与に適合した種々の形態で、ヒト対象のような哺乳動物宿主に投与され得る。本発明の医薬組成物は、1つ以上の賦形剤を含んでもよい。本発明の医薬組成物と組み合わせて使用される場合、「賦形剤」という用語は、一般的に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩と組み合わされて、対応する組成物を提供する追加の成分を指す。例えば、本発明の医薬組成物と組み合わせて使用する場合、「賦形剤」という用語には、担体、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香料、コーティング、防腐剤及び色素が含まれるがこれらに限定されない。
【0096】
本明細書において「医薬組成物」とは、有効成分、及び任意に薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む製剤を指す。「有効成分」という用語は、「効果的成分」と置き換えることができ、投与すると所望される効果を引き起こすことができる任意の薬剤を指すことを意味する。有効成分の例としては、化合物、薬物、治療剤、小分子などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
本発明の医薬組成物は、1つ以上の賦形剤を含んでもよい。本発明の医薬組成物と組み合わせて使用される場合、「賦形剤」という用語は、一般的に、式(I)の化合物またはその薬学的に許容され得る塩と組み合わされて、対応する組成物を提供する追加の成分を指す。例えば、本発明の医薬組成物と組み合わせて使用する場合、「賦形剤」という用語には、担体、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香料、コーティング、防腐剤及び色素が含まれるがこれらに限定されない。
【0098】
「薬学的に許容される」は、担体、希釈剤、または賦形剤が製剤の他の成分と適合し、しかもそのレシピエントにとっても、製剤の有効成分の活性にとっても有害ではないことを意味する。薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤は、当該技術分野において周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.Ed.(1980)。薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤は、レシピエントに対し、利用される用量及び濃度で非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/またはTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。担体の例としては、リポソーム、ナノ粒子、軟膏剤、ミセル、ミクロスフェア、微粒子、クリーム、乳剤及びゲルが挙げられるが、これらに限定されない。賦形剤の例としては、ステアリン酸マグネシウムなどの付着防止剤、糖類及びその誘導体(スクロース、ラクトース、デンプン、セルロース、糖アルコールなど)のような結合剤、ゼラチン及び合成ポリマーなどのタンパク質、タルク及びシリカなどの滑沢剤、ならびに酸化防止剤、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、パルミチン酸レチニル、セレン、システイン、メチオニン、クエン酸、硫酸ナトリウム及びパラベンなどの防腐剤が挙げられるが、これらに限定されない。希釈剤の例としては、水、アルコール、生理食塩水、グリコール、鉱油及びジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
したがって、本発明の化合物は、不活性希釈剤または同化可能な食用担体のような薬学的に許容されるビヒクルまたは賦形剤と組み合わせて、全身投与、例えば経口投与することができる。それらは、硬質または軟質シェルゼラチンカプセルに封入され得るか、錠剤に圧縮され得るか、または対象の食事に直接混ぜてもよい。経口治療投与の場合、その活性化合物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせてよいとともに、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハーなどの形態で使用してよい。このような組成物及び調製物は、活性化合物を少なくとも0.1%含まなければならない。その組成物及び調製物のパーセンテージは、当然ながら変動することがあり、利便的には、所定の単位剤形の重量の約2~約60%であってよい。このような治療的に有用な組成物中の活性化合物の量は、有効な投与量レベルを得られるような量である。
【0100】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などは、トラガカントガム、アカシア、コーンスターチもしくはゼラチンのような結合剤、リン酸二カルシウムのような賦形剤、コーンスターチ、バレイショデンプン、アルギン酸などのような崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、及びスクロース、フルクトース、ラクトースもしくはアスパルテームのような甘味剤も含んでよく、またはペパーミント、ウィンターグリーン油もしくはチェリー香料のような香味剤を加えてもよい。その単位剤形がカプセル剤であるときには、上記の種類の物質に加えて、植物油またはポリエチレングリコールのような液体担体を含んでもよい。コーティングとして、または別段に、その固体単位剤形の物理的形態を改変するために、様々な他の物質が存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤またはカプセル剤は、ゼラチン、ワックス、セラックまたは糖などでコーティングされていてもよい。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのスクロースまたはフルクトース、保存剤としてのメチルパラベン及びプロピルパラベン、色素、ならびにチェリーフレーバーまたはオレンジフレーバーのような香料を含んでもよい。当然ながら、いずれの単位剤形を調製するのに使用するいずれの物質も、薬学的に許容されるとともに、用いる量において、実質的に無毒である必要がある。加えて、活性化合物は、徐放性の調製物及び徐放器具に組み込んでもよい。
【0101】
その活性化合物は、注入または注射により静脈内または腹腔内に投与してもよい。その活性化合物またはその塩の溶液を水で調製でき、任意に、無毒の界面活性剤と混合できる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン及びこれらの混合物中、ならびに油中で、分散液を調製することもできる。これらの調製物は、通常の保存条件及び使用条件下で、微生物の成長を防ぐための保存剤を含む。
【0102】
注射または注入に適する医薬品剤形としては、活性成分を含む滅菌水溶液もしくは滅菌分散液、または活性成分を含む滅菌粉末であって、注射もしくは注入用の滅菌溶液または滅菌分散液を即時に調製するように適合されている滅菌粉末を挙げることができ、これらは任意に、リポソームに封入する。いずれの場合にも、最終的な剤形は、滅菌されており、流体であり、製造条件及び保存条件下で安定していなければならない。液体担体または液体ビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、無毒のグリセリルエステル及びこれらの適切な混合物を含む溶媒または液体分散媒であることができる。適切な流動性は、例えば、リポソームを形成することによって、分散液の場合には、所要の粒径を維持することによって、または界面活性剤を使用することによって維持することができる。微生物の作用は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって抑制できる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖、緩衝剤または塩化ナトリウムを含むのが好ましいであろう。注射用組成物の吸収は、その組成物で、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを使用することによって延長できる。
【0103】
滅菌注射液は、活性化合物を所要量で、必要に応じて、上で列挙した様々な他の成分と共に、適切な溶媒に組み込んでから、ろ過滅菌することによって調製する。滅菌注射液を調製するための滅菌粉末の場合には、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥の技法であり、この技法により、事前に滅菌ろ過した溶液に存在する有効成分及びいずれかの所望の追加成分の粉末が得られる。
【0104】
局所投与では、本発明の化合物は、純粋な形態、すなわち、その化合物が液体である形態で適用してよい。しかしながら、それらを皮膚に、皮膚科学的に許容される担体(固体であっても液体であってもよい)と組みわせた組成物または製剤として投与するのが概ね望ましいであろう。
【0105】
有用な固体担体としては、タルク、クレー、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微細分割固体が挙げられる。有用な液体担体としては、水、アルコールもしくはグリコール、または水-アルコール/グリコールブレンドが挙げられ、この液体担体には、本発明の化合物を有効なレベルで、任意に無毒性の界面活性剤の助けを借りて、溶解または分散できる。香料及び追加の抗菌剤のようなアジュバントを加えて、所定の利用法に合わせて、特性を最適化できる。得られた液体組成物を吸収パッドから適用したり、その液体組成物を用いて、絆創膏剤及びその他の包帯に含侵したり、またはポンプ型スプレーもしくはエアゾルスプレーを用いて、罹患区域上にスプレーしたりできる。
【0106】
また、合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩及び脂肪酸エステル、脂肪アルコール、変性セルロースまたは変性ミネラル物質のような増粘剤を液体担体と共に用いて、使用者の皮膚に直接塗布するための延展性ペースト剤、ゲル剤、軟膏剤、石鹸などを形成できる。
【0107】
式(I)の化合物を皮膚に送達するのに使用できる有用な皮膚科的組成物の例は、当該技術分野で知られており、例えば、Jacquetらの特許(米国特許第4,608,392号)、Geriaの特許(米国特許第4,992,478号)、Smithらの特許(米国特許第4,559,157号)及びWortzmanの特許(米国特許第4,820,508号)を参照されたい。
【0108】
式(I)の化合物の有用な投与量は、そのin vitro活性と、動物モデルでのin vivo活性を比較することによって決定することができる。マウス及びその他の動物における有効な投与量をヒトに外挿する方法は、当該技術分野で知られており、例えば、米国特許第4,938,949号を参照されたい。
【0109】
本発明の化合物、またはその活性な塩もしくは誘導体の量であって、治療で使用する際に必要となる量は、選択した特定の塩のみならず、投与経路、治療する状態の性質、ならびに対象または患者の年齢及び状態によっても変動することになり、最終的には、主治医または臨床医の裁量に委ねられることになる。
【0110】
対象に投与される式(I)の化合物の用量は、任意に、対象の体重の約0.0001mg/kg~約100mg/kg、約0.01mg/kg~約5mg/kg、約0.15mg/kg~約3mg/kg、約0.5mg/kg~約2mg/kg、及び約1mg/kg~約2mg/kgの範囲であり得る。他の態様では、用量は、対象の体重の約100mg/kg~約5g/kg、約500mg/kg~約2mg/kg、約750mg/kg~約1.5g/kgの範囲であり得る。例えば、疾患の種類と重症度に応じて、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1~20mg/kg)の化合物は、例えば、1回以上の分割投与によるか、または連続注入によるかにかかわらず、対象に投与する候補量である。典型的な1日の投与量は、上記の要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kgまたはそれ以上の範囲である。数日間以上にわたる反復投与の場合、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が生じるまで治療が継続される。しかしながら、他の投薬レジメンが有用な場合がある。単位用量は、例えば、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mgなど、約5mg~500mgの範囲であり得る。具体的な投与量としては、0.1mg、0.5mg、1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7.0mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、7mg、18mg、19mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg及び50mgが挙げられる。この治療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって監視される。
【0111】
いくつかの態様では、式(I)の化合物は、約1μg/kg未満、例えば約0.35~約0.75μg/kg、または約0.40~約0.60μg/kgの有効量(もしくは用量)でヒト対象に投与され得る。いくつかの態様では、化合物の用量は、約0.35μg/kg、または約0.40μg/kg、または約0.45μg/kg、または約0.50μg/kg、または約0.55μg/kg、または約0.60μg/kg、または約0.65μg/kg、または約0.70μg/kg、または約0.75μg/kg、または約0.80μg/kg、または約0.85μg/kg、または約0.90μg/kg、または約0.95μg/kg、または約1μg/kgである。様々な態様では、化合物の絶対用量は、約2μg/対象~約45μg/対象、または約5~約40μg/対象、または約10~約30μg/対象、または約15~約25μg/対象である。いくつかの態様では、化合物の絶対用量は約20μg、または約30μg、または約40μgである。
【0112】
様々な態様では、式(I)の化合物の用量は、ヒト対象の体重によって決定することができる。例えば、化合物の絶対用量としては、約0~約5kg(例えば、約0kg、もしくは約1kg、もしくは約2kg、もしくは約3kg、もしくは約4kg、もしくは約5kg)の小児ヒト対象の場合は約2μg、または約6~約8kg(例えば、約6kg、もしくは約7kg、もしくは約8kg)の小児ヒト対象の場合は約3μg、または約9~約13kg(例えば、約9kg、もしくは約10kg、もしくは約11kg、もしくは約12kg、もしくは約13kg)の小児ヒト対象の場合は約5μg、または約14kg~約20kg(例えば、約14kg、もしくは約16kg、もしくは約18kg、もしくは約20kg)の小児ヒト対象の場合は約8μg、または約21kg~約30kg(例えば、約21kg、もしくは約23kg、もしくは約25kg、もしくは約27kg、もしくは約30kg)の小児ヒト対象の場合は約12μg、または約31kg~約33kg(例えば、約31kg、もしくは約32kg、もしくは約33kg)の小児ヒト対象の場合は約13μg、または約34kg~約50kg(例えば、約34kg、もしくは約36kg、もしくは約38kg、もしくは約40kg、もしくは約42kg、もしくは約44kg、もしくは約46kg、もしくは約48kg、もしくは約50kg)の成人ヒト対象の場合は約20μg、または約51kg~約75kg(例えば、約51kg、もしくは約55kg、もしくは約60kg、もしくは約65kg、もしくは約70kg、もしくは約75kg)の成人ヒト対象の場合は約30μg、または約114kg(例えば、約114kg、もしくは約120kg、もしくは約130kg、もしくは約140kg、もしくは約150kg)超の成人ヒト対象の場合は約45μgである。
【0113】
一態様では、化合物式(I)は、哺乳動物(例えば、ヒト)に約7.5mg/kgの用量で投与され得る。
【0114】
所望の用量は、利便的なことに、1回用量で、または適切な間隔で投与する複数回用量として、例えば、1日に2回、3回、4回または5回以上の分割用量として供給してもよい。この分割用量は、例えば、吸入器からの複数回の吸入や、眼への複数回の滴下など、緩い間隔の離散的な投与回数にさらに分割することができる。
【0115】
本明細書で使用される場合、「生殖能力」または「受胎可能」という用語は、子孫を残す能力を指す。
【0116】
本明細書で使用される場合、「不妊症」または「不妊」という用語は、子孫を残す能力の低下または能力の欠如を意味する。本明細書で使用される「可逆的な不妊症」という用語は、対象に不妊症を誘発し、その後、対象が生殖可能となるように不妊を逆転させることに関する。本明細書に開示される化合物は、男性対象において可逆的な不妊症を生じさせる。化合物が投与されている間、対象は不妊になり、子孫を残すことができなくなる。開示された化合物の投与を中止した後、対象はもはや不妊ではなくなり、子孫を残す能力を有する。いくつかの実施形態では、不妊症は、1ミリリットル当たり2000万個未満の精子、1ミリリットル当たり1900万個未満の精子、1ミリリットル当たり1800万個未満の精子、1ミリリットル当たり1700万個未満の精子、1ミリリットル当たり1600万個未満の精子、1ミリリットル当たり1500万個未満の精子、1ミリリットル当たり1400万個未満の精子、1ミリリットル当たり1300万個未満の精子、1ミリリットル当たり1200万個未満の精子、1ミリリットル当たり1100万個未満の精子、1ミリリットル当たり1000万個未満の精子、1ミリリットル当たり900万個未満の精子、1ミリリットル当たり800万個未満の精子、1ミリリットル当たり700万個未満の精子、1ミリリットル当たり600万個未満の精子、1ミリリットル当たり500万個未満の精子、1ミリリットル当たり400万個未満の精子、1ミリリットル当たり300万個未満の精子、1ミリリットル当たり200万個未満の精子、1ミリリットル当たり100万個未満の精子として測定される。いくつかの実施形態では、不妊症は、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満0%の運動率として測定される。いくつかの実施形態では、不妊症は、正常形態精子12%未満、正常形態精子11%未満、正常形態精子10%未満、正常形態精子9%未満、正常形態精子8%未満、正常形態精子7%未満、正常形態精子6%未満、正常形態精子5%未満、正常形態精子4%未満、正常形態精子3%未満、正常形態精子2%未満、または正常形態精子1%未満として測定される。
【0117】
一実施形態では、不妊症は、治療後の145日未満、140日未満、135日未満、130日未満、125日未満、120日未満、115日未満、110日未満、105日未満、100日未満、95日未満、90日未満、85日未満、80日未満、75日未満、70日未満、65日未満、60日未満、55日未満、50日未満、45日未満、40日未満、35日未満、30日未満、29日未満、28日未満、27日未満、26日未満、25日未満、24日未満、23日未満、22日未満、21日未満、20日未満、19日未満、18日未満、17日未満、16日未満、15日未満、14日未満、13日未満、12日未満、11日未満、10日未満、9日未満、8日未満、7日未満、6日未満、5日未満、4日未満、3日未満、2日未満、または1日未満で達成される。一実施形態では、不妊症は、20週未満、19週未満、18週未満、17週未満、16週未満、15週未満、14週未満、13週未満、12週未満、11週未満、10週未満、9週未満、8週未満、7週未満、6週未満、5週未満、4週未満、3週未満、2週未満、または1週未満で達成される。
【0118】
本明細書で使用される「避妊薬」という用語は、妊娠を予防するために使用される方法、薬剤、化合物または装置を指す。
【0119】
「RARα活性に関連する疾患または状態」という用語は、RARα特異的アンタゴニストを投与することによって改善され得る任意の状態を指す。そのような疾患及び状態の例としては、がん、代謝性疾患、眼疾患、にきび、神経変性疾患及び腎疾患が挙げられる。
【0120】
「RARα活性に関連する疾患または状態」という用語には、加齢、うつ病、高脂血症、血管外傷(血清トリグリセリド低下など)、虚血性傷害(真皮組織など)及び関節リウマチも含まれる。さらに、本発明の化合物はまた、ムチン分泌の抑制、化学療法や放射線療法の副作用の軽減、レチノイド中毒の解毒剤、ウイルス(HIV、ヒトサイトメガロウイルスなど)の複製阻害、ATRAの阻害作用の拮抗、BMP2誘発性骨芽細胞形成の救済にも有用である。
【0121】
「がん」という用語は、ある部位(原発部位)から始まり、他の部位(二次部位、転移)に浸潤、転移する可能性のある(がん(悪性腫瘍)を良性腫瘍と区別する)、異常で制御不能な細胞増殖を特徴とする疾患群を指す。事実上、すべての臓器が影響を受ける可能性があり、ヒトに影響を及ぼす可能性のある100種類超のがんにつながる。がんは、遺伝的素因、ウイルス感染、電離放射線への曝露、環境汚染物質への曝露、タバコ及び/またはアルコールの使用、肥満、食生活の乱れ、運動不足、またはそれらの組み合わせなど、多くの原因によって生じる可能性がある。本明細書で使用される「新生物」または「腫瘍」は、その文法上の変形を含み、良性またはがん性の可能性のある、組織の新しく異常な増殖を意味する。関連する態様において、新生物は、様々ながんを含むがこれらに限定されない腫瘍性疾患または障害を示す。例えば、そのようながんは、前立腺癌、膵臓癌、胆汁癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、腎臓癌、肺癌、精巣癌、乳房癌、卵巣癌、膵臓癌、脳癌、及び頭頸部癌、黒色腫、肉腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫などを含み得る。
【0122】
代謝性疾患は、タンパク質、脂肪、炭水化物などの大栄養素の体内での処理と分配に悪影響を及ぼす疾患である。代謝性疾患には、肥満及び糖尿病が含まれる。
【0123】
神経変性疾患は、中枢神経系または末梢神経系の構造及び機能の進行性変性を特徴とする、異種の疾患群である。神経変性疾患の例としては、アルツハイマー病及びパーキンソン病が挙げられる。
【0124】
腎疾患は、腎臓に損傷を与える疾患である。腎疾患の例としては、糸球体硬化症及び多嚢胞性腎疾患が挙げられる。
【0125】
以下では、下記の非限定的な実施例によって、本発明を例示していく。
【実施例】
【0126】
式(I)の化合物を調製するための一般的なスキーム
【化12】
【0127】
実施例1.4-(5-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)安息香酸ナトリウムの合成
【化13】
【0128】
a. 6-ブロモ-2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメンの調製
【化14】
【0129】
THF(20mL)中のケトン(8.00g、31.4mmol、1当量)溶液に、p-トリルマグネシウムブロミド(100mL、THF中1M、3.2当量)を0℃で15分かけてゆっくりと加えた。反応混合物をゆっくりと室温に加温し、36時間撹拌した。次いで、反応物を0℃で飽和NH4Cl溶液でクエンチし、EtOAc(40×3mL)で抽出した。有機層を集め、ブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、蒸発させて半固体の粗生成物を得た。その後、無水MeOH(60mL)に溶解し、PPTS(1.60g、6.37mmol、0.2当量)を反応混合物に加え、4時間還流させた。その後、溶媒を減圧下で蒸発させ、反応混合物をEtOAc:水(30mL:30mL)に溶解し、EtOAc(30×3mL)で抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、蒸発乾固した。乾燥した残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、100%ヘキサンから5%ヘキサン中EtOAc)で精製し、標題化合物(6.89g、67%)を得た。1H NMR(400 MHz,CD3OD)δ 7.31-7.27(m,5H),7.19(d,J=2.3 Hz,1H),6.82(d,J=8.5 Hz,1H),5.67(s,1H),2.45(s,3H),1.53(s,6H)。
【0130】
b. 2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-カルバルデヒドの調製
【化15】
【0131】
6-ブロモクロメン(2.43g、7.38mmol)を無水THF(13mL)に溶解し、反応混合物を-78℃に冷却した。これにn-BuLi(4.20mL、6.64mmol)を加え、反応混合物を-78℃で30分間撹拌した。その後、DMF(0.92mL、11.80mmol)を-78℃で反応混合物に加え、反応物を同一温度でさらに45分間撹拌した。TLCによって監視された反応の完了後、この反応混合物を0℃に温め、飽和NH4Cl溶液でクエンチした。水層を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層をNa2SO4上で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。粗反応混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し、標題化合物を白色固体(1.1g、54%)として得た。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 9.79(s,1H),7.73(dd,J=8.3,1.9 Hz,1H),7.58(d,J=2.1 Hz,1H),7.31-7.23(m,4H),7.00(d,J=8.3 Hz,1H),5.68(s,1H),2.44(s,3H),1.55(s,6H)。13C NMR(100 MHz,CDCl3)δ 190.9,159.3,138.1,134.7,133.9,131.5,129.9,129.5,129.4,128.6,127.9,122.6,117.6,77.7,28.3,21.4。
【0132】
c. 1-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)プロパ-2-エン-1-オールの調製
【化16】
【0133】
アルデヒド(1g、3.59mmol)を無水THF(36mL)に溶解し、反応混合物を-78℃に冷却した。これに臭化ビニルマグネシウム(4mL、3.59mmol)を加え、反応混合物を1時間かけて-10℃までゆっくり温めた。TLCで監視しながら出発物質を完全に変換させた後、塩化アンモニウムの飽和溶液を用いて反応をクエンチした。水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層をNa2SO4上で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。粗反応混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し、アリルアルコール生成物を黄色の粘性油として得た(743mg、67%)。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 7.27(dd,J=12.7,4.5 Hz,4H),7.19(dd,J=8.3,2.2 Hz,1H),7.07(d,J=2.1 Hz,1H),6.90(d,J=8.3 Hz,1H),6.03(ddd,J=16.6,10.3,5.8 Hz,1H),5.63(s,1H),5.30(dt,J=17.2,1.5 Hz,1H),5.17(dt,J=10.5,1.4 Hz,1H),5.08(dd,J=5.7,3.2 Hz,1H),2.44(s,3H),1.85(d,J=3.5 Hz,1H),1.51(d,J=2.2 Hz,6H).13C NMR(100 MHz,CDCl3)δ 153.2,140.4,137.6,135.4,134.9,134.7,136.9,133.4,130.1,128.0,127.3,124.1,122.5,117.9,114.9,76.0,75.2,27.8,27.7,21.4.
【0134】
d. 1-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)プロパ-2-エン-1-オンの調製
【化17】
【0135】
無水ジクロロメタン(2mL)中のクロメン-アリルアルコール(70mg、0.23mmol)の撹拌溶液に、8当量の二酸化マンガン(160mg、1.8mmol、オーブンで1~2時間加熱して活性化)を加えた。反応物を室温で3時間撹拌した。これに別のバッチの二酸化マンガン(160mg、1.8mmol)を加え、得られた反応混合物をさらに2時間撹拌した後、TLCは出発物質の完全な消費を示した。この反応混合物をCelite(登録商標)でろ過し、溶媒を蒸発させた。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し、ビニルケトンを無色粘性液体として得た(51mg、73%)。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 7.89(dd,J=8.5,2.1 Hz,1H),7.80 -7.76(m,1H),7.33-7.25(m,4H),7.10(dd,J=17.0,10.5 Hz,1H),6.99(d,J=8.4 Hz,1H),6.43(dd,J=17.0,1.9 Hz,1H),5.86(dd,J=10.5,1.8 Hz,1H),5.71(s,1H),2.47(s,3H),1.58(s,6H).13C NMR(100 MHz,CDCl3)δ 189.1,158.0,137.8,134.6,134.0,132.0,130.5,130.1,129.3,129.1,129.0,128.4,126.7,122.1,77.2,27.9,21.2.
【0136】
e. 4-(4-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)-4-オキソブタノイル)安息香酸メチルの調製
【化18】
【0137】
DMF(4mL)中の1-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)クロマン-6-イル)プロパ-2-エン-1-オン(392mg、1.28mmol)の撹拌溶液に、3-ベンジル-5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾール-3-イウムクロリド(69.1mg、0.26mmol)を加え、続いて4-ホルミル安息香酸メチル(210mg、1.28mmol)及びトリエチルアミン(0.2ml、1.54mmol)を加えた。反応混合物を5~10分間脱気し、80℃まで加熱した。TLCにより監視して完了したら、反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル及び水で希釈した。この水層を酢酸エチルで2回抽出し、合わせた有機層を(Na2SO4で)乾燥させ、蒸発させた。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.16(d,J=8.1 Hz,2H),8.09(d,J=8.1 Hz,2H),7.95-7.87(m,1H),7.78(d,J=2.2 Hz,1H),7.31-7.22(m,4H),6.96(d,J=8.4 Hz,1H),5.68(s,1H),3.98(s,3H),3.44-3.38(m,2H),3.38-3.33(m,2H),2.42(s,3H),1.55(s,6H).13C NMR(101 MHz,CDCl3)δ 198.5,196.8,166.2,158.1,140.1,137.8,134.6,134.1,133.8,129.9,129.8,129.6,129.3,129.0,128.4,128.0,126.1,122.0,116.8,77.1,52.4,32.8,32.1,27.9,21.2.
【0138】
f. 4-(5-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)安息香酸メチルの調製
【化19】
【0139】
4-(4-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)-4-オキソブタノイル)安息香酸メチル(440mg、0.939mmol)を氷冷AcOH(16mL)に溶解し、これに酢酸アンモニウム(362mg、4.70mmol)を加えた。反応混合物を110℃で18時間還流させた。TLCの監視下で完了後、溶媒を除去し、粗生成物をEtOAc(50mL)に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。合わせた有機層を(Na2SO4で)乾燥させ、蒸発させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.55(s,1H),8.00(d,J=8.1 Hz,2H),7.50(d,J=7.7 Hz,2H),7.36(d,J=7.6 Hz,1H),7.29(d,J=7.8 Hz,3H),7.23(d,J=7.6 Hz,3H),6.93(d,J=8.3 Hz,1H),6.65(s,1H),6.38(s,1H),5.66(s,1H),3.90(s,3H),2.42(s,3H),1.51(s,6H).13C NMR(101 MHz,CDCl3)δ 130.3,129.5,129.2,128.5,127.0,125.2,125.0,122.8,121.6,117.4,109.7,107.5,76.1,52.0,27.6,21.2.
【0140】
g. 4-(5-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)安息香酸の調製
【化20】
【0141】
エタノール(26ml)中のピロールエステル(309mg、0.687mmol)の撹拌溶液にNaOH溶液(20% wt/wt、3.44mmol)を加え、反応混合物をTLCで監視しながら出発物質が完全に消失するまで室温で48時間撹拌した。次いで、溶媒を蒸発させ、6N HClで反応物をpH6~7まで酸性化した。水層を酢酸エチル(2×50ml)で抽出し、次いでジクロロメタン(2×50ml)で抽出した。合わせた有機層を(Na2SO4で)乾燥させ、溶媒を蒸発させた。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を黄色固体として得た(230mg、76%)。1H NMR(400 MHz,CD3OD)δ 7.96(d,J=8.2 Hz,2H),7.68(d,J=8.2 Hz,2H),7.51(dd,J=8.3,2.2 Hz,1H),7.35-7.16(m,5H),6.88(d,J=8.4 Hz,1H),6.63(d,J=3.6 Hz,1H),6.25(d,J=3.7 Hz,1H),5.68(s,1H),2.40(s,3H),1.48(s,6H).13C NMR(100 MHz,CD3OD)δ 169.9,153.7,138.9,138.8,136.8,136.6,136.1,132.9,131.3,130.3,130.2,129.7,128.0,127.2,126.6,124.1,123.9,123.1,118.1,110.5,108.0,76.9,27.7,21.3.
【0142】
h. 4-(5-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)安息香酸ナトリウムの調製
【化21】
【0143】
メタノールに溶解した酸の撹拌溶液に、1MのNaOH水溶液を滴下し、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。溶媒を蒸発させ、粗反応混合物をトルエンと共に(3回)蒸発させて、微量の水を除去した。この固体をさらに5%アセトン水溶液で洗浄して無機不純物を除去し、その後蒸発乾固してナトリウム塩を黄色固体として得た(定量収率)。1H NMR(400 MHz,CD3OD)δ 7.91(d,J=8.1 Hz,2H),7.59(d,J=8.2 Hz,2H),7.51(dd,J=8.4,2.2 Hz,1H),7.29(d,J=7.6 Hz,5H),6.87(d,J=8.4 Hz,1H),6.53(d,J=3.6 Hz,1H),6.22(d,J=3.6 Hz,1H),5.69(s,1H),2.42(s,3H),1.49(s,6H).13C NMR(100 MHz,CD3OD)δ 175.6,153.4,138.8,136.8,136.3,136.2,135.8,135.6,133.8,130.8(2C),130.2,130.1(2C),129.7(2C),127.5,126.4,123.9,123.9,123.0,118.1,109.0,108.9,107.6,76.9,27.7(2C),21.3.
【0144】
実施例2.式(I)の代表的な化合物の代替的合成
【化22】
【0145】
a. tert-ブチル 2-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)-1H-ピロール-1-カルボキシレートの調製
【化23】
【0146】
ハロゲン化アリール(17.00g、79.05mmol、1当量)と1-boc-ピロール-5-ボロン酸(20.00g、94.78mmol、1.2当量)を丸底フラスコに入れ、次いでTHF(190mL)とK3PO4水溶液(0.5M、380mL、2.4当量)を加えた。反応混合物に窒素ガスを15分間吹き込み、続いてXPhos Pd G2(1.50g、1.91mmol、0.024当量)を加えた。次いで、フラスコを45℃に予熱した油浴に入れ、5時間撹拌した。反応終了後、ブラインを加え、混合物をEtOAc(50mL×3)で抽出し、MgSO4で乾燥した。溶媒を蒸発乾固させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、100%ヘキサンからヘキサン中20%EtOAc)で精製し、結合生成物を白色固体として得た(22.142g、93%)。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.06-7.98(m,2H),7.45-7.35(m,3H),6.29-6.21(m,2H),3.93(s,3H),1.37(s,9H).13C NMR(100 MHz,CDCl3)δ 167.1,149.3,139.1,134.1,129.1,128.7,123.6,115.6,111.0,84.2,52.2,27.8.この化合物は市販もされている。
【0147】
b. 4-(1H-ピロール-2-イル)安息香酸メチルの調製
【化24】
【0148】
ステップaからの生成物(18.13g、60.16mmol、1当量)をTHF(60mL)に溶解し、NaOMe(80mL、MeOH中25wt.%、6当量)を加えた。混合物を5分間撹拌し、飽和NH4Cl溶液でクエンチした。得られた混合物をジクロロメタン(50mL×3)で抽出し、有機相をMgSO4で乾燥し、蒸発乾固して脱保護生成物を白色固体として得た(11.615g、96%)。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.62(s,1H),8.09-8.01(m,2H),7.59-7.51(m,2H),6.95(td,J=2.7,1.4 Hz,1H),6.69(ddd,J=3.8,2.7,1.4 Hz,1H),6.36(dt,J=3.7,2.6 Hz,1H),3.94(s,3H).13C NMR(100 MHz,CDCl3)δ 166.9,136.8,131.0,130.4,127.3,123.1,120.3,110.7,108.0,52.1.
【0149】
c. 4-(5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピロール-2-イル)安息香酸メチルの調製
【化25】
【0150】
ステップbからの生成物(12.00g、59.63mmol、1当量)、B2Pin2(8.304g、32.7mmol、0.55当量)、[Ir(COD)OMe](0.60g、0.91mmol、0.015当量)、及び4,4’-dtbpy(0.484g、1.80mmol、0.03当量)を丸底フラスコ中で合わせ、真空下で排気し、窒素でパージした。このプロセスを3回繰り返した後、ヘキサン(120mL)と混合した。懸濁液を窒素下で6時間還流させた。6時間後、反応混合物をDCMに可溶化し、シリカゲルスラリーをフラッシュクロマトグラフィー(SiO、100%ヘキサンからヘキサン中20%EtOAc)用に調製し、ピロールボロン酸生成物をオフホワイト固体として得た(16.71g、86%)。%)。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.99(s,1H),8.07-8.00(m,2H),7.63-7.56(m,2H),6.89(dd,J=3.7,2.4 Hz,1H),6.69(dd,J=3.7,2.5 Hz,1H),3.92(s,3H),1.34(s,12H).13C NMR(101 MHz,CDCl3)δ 167.0,136.4,135.6,130.5,128.2,124.0,122.1,109.3,84.1,52.2,24.9.
【0151】
d. 6-ブロモ-2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメンの調製
【化26】
【0152】
THF(20mL)中のブロモクロモン(8.00g、31.4mmol、1当量)溶液に、p-トリルマグネシウムブロミド(100mL、THF中1M、3.2当量)を0℃で15分かけてゆっくりと加えた。反応混合物をゆっくりと室温に加温し、36時間撹拌した。反応物を0℃で飽和NH4Cl溶液でクエンチし、EtOAc(40×3mL)で抽出した。有機層を集め、ブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、蒸発させて半固体の粗生成物を得た。半固形の粗生成物を無水MeOH(60mL)に溶解し、PPTS(1.60g、6.37mmol、0.2当量)を加えた。得られた混合物を4時間還流させた。溶媒を減圧下で蒸発させ、得られた物質をEtOAc:水(30mL:30mL)に溶解し、EtOAc(30×3mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、蒸発乾固した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、100%ヘキサンからヘキサン中5%EtOAc)で精製し、無色液体で凍結すると固体になるブロモクロメン生成物(6.89g、67%)を得た。1H NMR(400 MHz,CD3OD)δ7.31-7.27(m,5H),7.19(d,J=2.3 Hz,1H),6.82(d,J=8.5 Hz,1H),5.67(s,1H),2.45(s,3H),1.53(s,6H).13C NMR(100 MHz,CD3OD)152.5,137.8,134.8,133.9,131.8,129.8,129.3,128.5,128.2,124.5,118.7,112.8,76.2,27.6,21.3.
【0153】
e. 4-(5-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)安息香酸メチルの調製
【化27】
【0154】
ステップdからのブロモクロメン(580mg、1.76mmol、1当量)とステップcからのピロールボロネート(630mg、1.93mmol、1.1当量)をバイアルに合わせ、THF(3.5mL)に溶解し、K3PO4(0.5M、7mL、2.0当量)の水溶液を加えた。反応混合物に窒素ガスを15分間吹き込み、続いてXPhos Pd G2(0.035g、0.04mmol、0.025当量)を加えた。混合物を45℃に予熱した油浴に入れ、3時間撹拌した。反応終了後、ブラインを加え、得られた混合物をEtOAc(50mL×3)で抽出した。合わせた有機物をMgSO4上で乾燥させ、蒸発乾固した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、100%ヘキサンからヘキサン中20%EtOAc)で精製し、クロメンエステル生成物を明るい黄色の固体として得た(681g、86%)。
【0155】
f. 4-(5-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)安息香酸の調製
【化28】
【0156】
THF(10mL)及びMeOH(10mL)中のクロメンエステル生成物(600mg、1.33mmol、1当量)の溶液に、水(10mL)に溶解したLiOH(280mg、6.67mmol、5当量)を加え、得られた混合物を室温で20時間撹拌した。有機層を減圧下で蒸発させ、水性懸濁液を2NのHClでpH1.0に酸性化した。その後、混合物をEtOAc(10mL×3)で抽出し、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥した。抽出物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、100%ヘキサンからヘキサン中50%EtOAc、2%HCOOH)で精製し、酸(526mg、91%)を黄色固体として得た。
【0157】
実施例3 4-(5-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)-2-フルオロ安息香酸ナトリウム
【化29】
【0158】
a. 2-フルオロ-4-(1H-ピロール-2-イル)安息香酸メチルの調製
【化30】
【0159】
N,N-ジメチルアセトアミド(3mL、0.3モル)中の1H-ピロール(230mg、238μL、4当量、3.43mmol)の撹拌溶液に、酢酸パラジウム(II)(9.63mg、0.05当量、42.9μmol)、酢酸カリウム(168mg、2当量、1.72mmol)、及び4-ブロモ-2-フルオロ安息香酸メチル(200mg、1当量、858μmol)を加えた。この溶液を、窒素を使用して15分間脱気した。得られた溶液を、密閉管内で150℃で36時間加熱した。反応混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで直接精製し、標題化合物(150mg、80%)を得た。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.59(s,1H),7.93(t,J=8.0 Hz,1H),7.28(dd,J=8.3,1.7 Hz,1H),7.20(dd,J=12.2,1.8 Hz,1H),6.94(td,J=2.7,1.3 Hz,1H),6.67(dq,J=3.8,1.6 Hz,1H),6.34(q,J=2.8 Hz,1H),3.93(s,3H).
【0160】
b. 2-フルオロ-4-(5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピロール-2-イル)安息香酸メチルの調製
【化31】
【0161】
無水n-ヘキサン(5.88mL、0.170モル)中の2-フルオロ-4-(1H-ピロール-2-イル)安息香酸メチル(141mg、1当量、0.643mmol)溶液に、4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジン(5.18mg、0.030当量、19.3μmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(163mg、1当量、643μmol)、及び(1,5-シクロオクタジエン)(メトキシ)イリジウム(I)二量体(6.39mg、0.015当量、9.64μmol)を加えた。得られた混合物(均質ではない)を還流まで加熱し、1時間半撹拌した(加熱後1時間以内に反応色は暗褐色に変化し、反応混合物は均質になる)。次いで、粗混合物を蒸発させ、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより直接精製し、標題化合物(142mg、64%)を得た。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 9.13(s,1H),7.96(t,J=7.9 Hz,1H),7.37(dd,J=8.3,1.7 Hz,1H),7.30(dd,J=12.3,1.6 Hz,1H),6.90(dd,J=3.7,2.3 Hz,1H),6.71(dd,J=3.7,2.5 Hz,1H),3.95(s,3H),1.36(s,12H).
【0162】
c. 6-ヨード-2,2-ジメチルクロマン-4-オンの調製
【化32】
【0163】
メタノール(40.0mL、0.19モル、1.0当量、7.6mmol)中の1-(2-ヒドロキシ-5-ヨードフェニル)エタン-1-オン(2.00g、1当量、7.63mmol)の溶液に、ピロリジン(847mg、0.98mL、1.56当量、11.9mmol)及びアセトン(678mg、0.86mL、1.53当量、11.7mmol)を加えた。反応混合物を一晩撹拌した。TLCは出発物質の完全な消費を示した。MeOHを蒸発させ、粗混合物を1NのHCl(水性)で洗浄し、EtOAcで抽出した。粗反応混合物をNa2SO4上で乾燥させ、蒸発させた。得られた残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル、100:00から70:30)で精製し、標題化合物(1.86g、81%、褐色の油状物)を得た。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.12(d,J=2.3 Hz,1H),7.68(dd,J=8.7,2.3 Hz,1H),6.69(d,J=8.7 Hz,1H),2.69(s,2H),1.43(s,6H).13C NMR(100 MHz,CDCl3)δ 191.1,159.6,144.4,135.2,122.1,120.9,82.9,79.7,48.5,26.6.
【0164】
d. 6-ヨード-2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメンの調製
【化33】
【0165】
標題化合物は、ブロモ類似体について述べた手順に従って調製した化合物(55%オフホワイト固体)である。1H NMR(400 MHz,CDCl3)7.47(dd,J=8.5,2.2 Hz,1H),7.34(d,J=2.2 Hz,1H),7.26(s,4H),6.70(d,J=8.5 Hz,1H),5.64(s,1H),2.45(s,3H),1.52(s,6H).
【0166】
e. 4-(5-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)-2-フルオロ安息香酸メチルの調製
【化34】
【0167】
1,4-ジオキサン(12.36mL、0.033モル)及び水(1.24mL、0.33モル)中の6-ヨード-2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン(154mg、1当量、0.408mmol)と2-フルオロ-4-(5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピロール-2-イル)安息香酸メチル(141mg、1.00当量、0.408mmol)の混合物に、炭酸ナトリウム(303mg、7当量、2.86mmol)、ジアセトキシパラジウム(14.7mg、0.160当量、0.0653mmol)及びジシクロヘキシル(2’,4’,6’-トリイソプロピル-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)ホスファン(97.3mg、0.500当量、0.204mmol)を加えた。得られた溶液をN2ガスで15分間脱気した。次いで、反応混合物を100℃で16時間還流させた。粗反応混合物を蒸発乾固し、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(149mg、78%)を得た。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.75(s,1H),7.81(t,J=8.0 Hz,1H),7.30(dd,J= 8.4,2.2 Hz,1H),7.23-7.10(m,7H),6.84(d,J=8.3 Hz,1H),6.57(t,J=3.2 Hz,1H),6.33-6.25(m,1H),5.57(s,1H),3.83(s,3H),2.33(s,3H),1.43(s,6H).
【0168】
f. 4-(5-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)-2-フルオロ安息香酸ナトリウムの調製
【化35】
【0169】
エタノール(2.0mL)中のピロールエステル(97mg、0.21mmol)の撹拌溶液に、水酸化ナトリウム水溶液(5M、1mmol)を加え、反応混合物をTLCで監視しながら出発物質が完全に消失するまで室温で48時間撹拌した。次いで、溶媒を蒸発させ、6N HClで反応物をpH6~7まで酸性化した。水層を酢酸エチル(2×10ml)で抽出し、次いでジクロロメタン(2×10mL)で抽出した。)合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を蒸発させて酸(47mg、50%)を得た。無水MeOH(0.44mL)に溶解した酸(20mg、44mmol)の撹拌溶液に、水酸化ナトリウム(1M、40mL)を加え、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。溶媒を蒸発させ、粗反応混合物をトルエンと共に(3回)蒸発させて、微量の水を除去した。粗固体を逆相カラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物を得た(定量的収率)。1H NMR(400 MHz,MeOD)δ 7.64(t,J=8.0 Hz,1H),7.49(dd,J=8.3,2.2 Hz,1H),7.38-7.32(m,1H),7.28(d,J=12.4 Hz,5H),6.86(d,J=8.4 Hz,1H),6.53(d,J=3.6 Hz,1H),6.21(d,J=3.6 Hz,1H),5.68(s,1H),2.40(s,3H),1.48(s,6H).
【0170】
実施例4 4-(5-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)-2,6-ジフルオロ安息香酸ナトリウム
【化36】
【0171】
a. 2,6-ジフルオロ-4-(1H-ピロール-2-イル)安息香酸メチルの調製
【化37】
【0172】
1,4-ジオキサン(36.2mL、0.033モル)及び水(3.62mL、0.330モル)中の4-ブロモ-2,6-ジフルオロ安息香酸メチル(300.00mg、1当量、1.1951mmol)及び2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピロール(576.77mg、2.5当量、2.9877mmol)の混合物に、炭酸ナトリウム(886.66mg、7当量、8.37mmol)、ジアセトキシパラジウム(42.93mg、0.16当量、191.21μmol)、Xphos(ジシクロヘキシル(2’,4’,6’-トリイソプロピル-[1,1’-ビフェニル]-2-イル)ホスファン)(284.9mg、0.5当量、597.5μmol)を加えた。得られた溶液をN2ガスで15分間脱気した。次いで、反応混合物を100℃で16時間還流させた。粗反応混合物を蒸発乾固し、フラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物(181mg、64%)を白色固体として得た。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 9.93(s,1H),7.10-7.01(m,2H),6.89(td,J=2.8,1.4 Hz,1H),6.61(ddd,J=3.9,2.6,1.4 Hz,1H),6.26(dt,J=3.7,2.5 Hz,1H),3.90(s,3H).
【0173】
b. 2,6-ジフルオロ-4-(5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピロール-2-イル)安息香酸メチルの調製
【化38】
【0174】
標題化合物(234mg、60%)は、そのモノフルオロ類似体について述べた手順に従って調製した。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 9.06(s,1H),7.12-7.05(m,2H),6.86(dd,J=3.7,2.3 Hz,1H),6.66(dd,J=3.7,2.5 Hz,1H),3.94(s,3H),1.33(s,12H).
【0175】
c. 4-(5-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)-2,6-ジフルオロ安息香酸メチルの調製
【化39】
【0176】
実施例3のサブパートeに記載の手順と同様の手順で標題化合物を調製した(33mg、80%)。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.59(s,1H),7.41-7.34(m,1H),7.27(dt,J=13.4,6.8 Hz,5H),7.01(d,J=10.1 Hz,2H),6.95(d,J=8.3 Hz,1H),6.65(t,J=3.2 Hz,1H),6.40(d,J=3.2 Hz,1H),5.68(s,1H),3.94(s,3H),2.44(s,3H),1.53(s,6H).
【0177】
d. 4-(5-(2,2-ジメチル-4-(p-トリル)-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)-2,6-ジフルオロ安息香酸ナトリウムの調製
【化40】
【0178】
実施例3のサブパートfに記載の手順と同様の手順で標題化合物を調製した(68mg、69%)。1H NMR(400 MHz,MeOD)δ 7.49(dd,J=8.4,2.2 Hz,1H),7.32-7.23(m,5H),7.17(d,J=8.6 Hz,2H),6.87(d,J=8.3 Hz,1H),6.53(d,J=3.7 Hz,1H),6.21(d,J=3.7 Hz,1H),5.68(s,1H),2.40(s,3H),1.48(s,6H).
【0179】
実施例5.代謝安定性アッセイ
実施例1の化合物の代謝安定性を、標準的なアッセイプロトコルを用いて評価した。結果を以下の表に示す。
【表5】
【0180】
実施例6.マウス及びヒト肝細胞における安定性
実施例1の化合物の代謝安定性を、標準的なアッセイプロトコルを用いてマウス及びヒト肝細胞で評価した。結果を以下の表に示す。
【表6】
【0181】
実施例7.LogDの計算
実施例1の化合物及びプロゲステロンのLogDを、標準的なアッセイプロトコルを用いて測定した。結果を以下の表に示す。
【表7】
【0182】
実施例8.溶解度測定
pH7.4のPBS中における実施例1の化合物とプロゲステロンの安定性を、標準的なアッセイプロトコルを用いて測定した。結果を以下の表に示す。
【表8】
【0183】
実施例9.hERGアッセイ
ヒトEther-a-go-go関連遺伝子(hERG)チャネルに対する潜在的な阻害効果を、手動パッチクランプシステムを用いて評価した。hERG遺伝子で安定にトランスフェクトされたHEK293細胞株を使用した。ドフェチリドを陽性対照として使用した。結果を以下の表に示す。このデータから、実施例1の化合物は、hERGチャネル上の弱阻害剤としてランク付けされている。
【表9】
【0184】
実施例10.Mini Amesアッセイ
実施例1の化合物をMini Amesアッセイで評価した。結果は陰性であった。
【0185】
実施例11.HepG2及びヒト肝線維芽細胞アッセイ
実施例1の化合物を、HepG2細胞毒性アッセイで評価した。結果は陰性であった。
【0186】
実施例12.ヒト肝線維芽細胞アッセイ
実施例1の化合物を、ヒト肝線維芽細胞アッセイで評価した。結果は陰性であった。
【0187】
実施例5-12のデータを以下にまとめる。
【0188】
インビトロアッセイの概要
・ 代謝安定性(マウス):1時間後86%
・ 代謝安定性(ヒト):1時間後100%、t1/2-570分
・ Log D=3.5
・ 溶解度:2mg/ml(生理食塩水)
・ hERG(陰性、30μm超)
・ Mini Ames(陰性)
・ HepG2細胞毒性アッセイ(陰性)
・ ヒト肺線維芽細胞検査(陰性)
【0189】
実施例13.トランス活性化アッセイ
各384ウェルプレート上に、RARαについてはアゴニスト、9-シス-レチノイン酸(9-シス-RA)、RARβ及びγについては全トランス-レチノイン酸(ATRA)、及び参照アンタゴニストBMS-189453またはBMS-189532の用量反応を含めた。追加されたアゴニストを含まない細胞を含有する対照ウェルは、バックグラウンド信号値を定義した。エコー音響ナノリターディスペンサー(Labcyte,San Jose,CA)を用いて、DMSO中のEC80濃度のアゴニスト(RARαについては180nM 9-cis-RA、RARβ及びγについては8nM ATRA)を対照ウェル及び化合物ウェルに添加した。実施例1の化合物及びDMSO中の参照化合物(最終0.4%)を、エコーを使用して、8点の用量反応で3連でプレートに添加した。細胞懸濁液(30μL)を各ウェルに添加し、アッセイプレートを5%CO2インキュベーター内で37℃で一晩インキュベートした。次に、ルシフェラーゼ検出試薬(15μL)を添加し、プレートを室温で30分間インキュベートした。ルミネセンスは、EnSpireプレートリーダー(PerkinElmer,Waltham,MA)を使用して定量化した。IC50値は、GraphPad Prism 7.0の4パラメータロジスティック式を用いて用量反応データをフィッティングすることにより決定した。得られたデータを以下に示す。
IC50 RARα=6.8nM
IC50 RARβ=>3700nM
IC50 RARγ=>3700nM
【0190】
実施例14.分布アッセイ
CD-1マウス30匹に実施例1の化合物10mg/kgを経口投与した。指定された時点(5、15、30分及び1、2、4、8、16、24、48時間)で、3匹一組の動物を出血させ、安楽死させた。その後、精巣と脳を採取した。得られた血漿及び組織を、LC/MS/MSによる分析まで<-20℃で凍結させた。血漿中のピークレベルは投与後15分で約2.1μM、30分から8時間の間に約1.5μMで停滞し、48時間後も検出可能である(12.9nM)。得られたデータを
図1に示す。
【0191】
実施例15.雄性不妊症への影響
雄性不妊症に対する実施例1の化合物の影響を調べるために、雄マウスについて研究を行った。マウスを、1日10mg/kgで4週間、または1日20mg/kgで2週間にわたって投与し、不妊症にした(
図2)。化合物の投与中止後、生殖能力は回復した。
【0192】
実施例16.胚数を用いた交配研究
胚数を用いた交配研究は、Chung,S.S.;Wang,X.;Roberts,S.S.;Griffey,S.M.;Reczek,P.R.;Wolgemuth,D.J.の記載に従って実施した。レチノイン酸受容体アンタゴニストの経口投与は、マウスにおける精子形成を可逆的に阻害する。Endocrinology 2011,152,2492-2502。データは、実施例1の化合物を雄マウスに対して1日10mg/kgの用量で4週間または1日20mg/kgの用量で2週間にわたって投与することにより、不妊症が誘発されたことを示す(
図3及び4)。これらの実験では、不妊症の誘発は可逆的であることも示された。
図5は、実施例1の化合物を10mg/kg/日で4週間投与した雄マウスに誘発された不妊症が、化合物の投与中止後4~6週間で逆転したことを示している。
図6は、実施例1の化合物を20mg/kg/日で2週間投与した雄マウスに誘発された不妊症が、化合物の投与中止後6週間で逆転したことを示している。
【0193】
実施例17.代表的な医薬剤形
ヒトにおける治療用途または予防用途のための、式(I)の化合物(「化合物X」)を含む代表的な医薬剤形を以下に例示する。
【表10-1】
【表10-2】
【0194】
上記の製剤は、薬学分野で周知の従来の手順を使用して調製され得る。
【0195】
実施例18.安全性プロファイル
諸言及び目的:男性は、自身のニーズ及び生活様式を満たす避妊選択肢に欠けている。実施例1の化合物はレチノイン酸受容体(RAR)-αアンタゴニストとして作用するため、精子発生と精子形成の両方を阻害する。実施例1の化合物は、マウスにおいて10mg/kgで99%の避妊効果及び完全な可逆性を示し、かつ7.5mg/kgで精子数の十分な減少を示した。
【0196】
方法:実施例1の化合物の安全性プロファイルを、標的選択性(細胞ベースのルシフェラーゼアッセイ)、オフターゲットスクリーニング(例えば、パッチクランプ及びcAMPアッセイ)及び遺伝毒性(Ames試験)試験によりインビトロで評価した。動物における急性毒性を、マウス、ラット及びイヌを用いた単回投与実験で調べた。14日間の投与期間にわたり、亜慢性毒性を評価するために、ラット及びイヌを用いた用量範囲探索(DRF)試験を行った。
【0197】
結果:実施例1の化合物は、RAR-αに対して高い選択性を有し(実施例1の化合物のそれぞれのIC50は、RAR-αに対して6.7nM、RAR-β及びRAR-γに対して3,700nM超であった)、hERG阻害剤とはみなされず(IC50は30μM超であった)、遺伝毒性の可能性はない(Ames試験陰性)。単回投与試験により、マウス、ラット及びイヌにおけるそれぞれの最大耐用量は、1000mg/kg超、750mg/kg超及び500mg/kg超であることが示された。14日間の反復投与により、ラット及びイヌはそれぞれ50~75mg/kg及び25mg/kgに耐えたことが実証された。単純な用量変換を使用した場合、これらの値は、マウスの有効性(7.5mg/kg)に対して13~20倍及び22倍の倍数を表す。
【0198】
結論:実施例1の化合物は、マウスで強力かつ可逆的な有効性を示し、ラット及びイヌで少なくとも10倍の安全マージンを有する初期安全性プロファイルを示した。
【0199】
実施例19.不妊症の回復に関するインビボ試験
精子数を読み取り結果としたマウス試験:最初の試験では、25匹の性成熟雄性CD-1マウスに10mg/kg/日で4週間投与し、最終投与から24時間後に評価した精巣上体精子数が0.51±0.27×10
7に90%減少した。投薬を29日目に停止した。精子数は残りの2週間で増加し始め、効果の可逆性を裏付けている(
図7)。試験2:実施例1の化合物7.5mg/kgを用いたその後の有効性試験を行い、マウスにおける最小有効量を決定した。40匹の性成熟した雄性CD-1マウスに7.5mg/kg/日で4週間投与した結果、最後投与から24時間後に評価した精巣上体精子数は86%減少し、0.82±0.45×10
7となった。投薬を29日目に停止した。精子数は残りの2週間で増加し始め、効果の可逆性を裏付けている(
図8)。遊離の血清テストステロン濃度も、7.5mg/kg/日で投与した動物において測定した。遊離テストステロン値は、投与された動物では投与期間中も回復期間中も、対照動物と比較して有意な変化は見られなかった(
図9)。
【0200】
精子濃度を読み取り結果とするカニクイザルの試験:試験の設計は、性成熟した雄カニクイザルに、射精1回当たりの精子数が2億精子細胞未満に低下するまで、実施例1の化合物を毎日投与することを意図している。1回の射精で1億3,000万±7,000万個の精子を持つカニクイザルは、繁殖に成功した個体から報告された1回の射精で7億3,400万±1億3,600万個の精子を持つ個体と比較して、繁殖プログラムの候補としては不十分であると考えられる。電気射精を用いて得られた新鮮な精液サンプルについて、精子数を毎週または隔週で評価した。3匹のマカクに2.5mg/kgを経口投与し、これは、体表面積に基づくと、マウスの10mg/kgに相当する用量である。54日間の投与期間にわたって、個々の精子数は27、175及び31×10
6に減少した。動物は現在、可逆性を評価するために回復中である(データは図示せず)。3匹の雄性カニクイザルの第2のコホートに、実施例1の化合物5mg/kg/日を30日間投与し、次いで7.5mg/kg/日を1週間投与した。最初の個体精子数598、203及び277×10
6は、14日後には377、62及び134×10
6に減少し、5mg/kg/日の投与30日後には262、28及び70×10
6に減少し、動物#1と動物#3で有効性を示した(
図10)。7.5mg/kg/日でさらに1週間投与した後、個々の精子数は132、38及び12×10
6となり、3匹の動物すべてにおいて有効性を示した。38日目以来、動物は可逆性を評価するために回復中である。最後の投与から4週間後、個々の精子数は297、71及び300×10
6であり、動物#1では50%の可逆性、動物#2では65%の可逆性、動物#3では100%の可逆性を示した。
【0201】
ラット及びイヌの試験:雄性Sprague-Dawleyラット及び雄性Beagleイヌにおいて、反復投与毒性試験(実施例22を参照)において、実施例1の化合物の様々な日用量を14日間投与したところ、病理組織学的に精巣の生殖上皮の変性が認められた。その効果は、イヌ精巣スライドの全ての評価された精細管、及びラット精巣スライドの評価された精細管のサブセットにおいて見られた(
図11)。
【0202】
実施例20.薬物動態(PK)試験
【0203】
治療用量レベルでの単回投与薬物動態(PK)試験:種間の曝露レベルをより良好に比較するための曲線下面積(AUC)値を示す。
【0204】
マウス試験:15匹の性成熟した雄性CD-1マウスに実施例1の化合物10mg/kgを単回投与し、初期試験で避妊効果を示した。血漿中の時点0から無限時間(AUC0-inf)まで外挿されたAUCは6,681h*(ng/mL)であった。この値は、種全体の有効性にわたる倍数を計算するための基礎として機能する。
【0205】
NHP試験:3匹の若い成体雄マーモセットに実施例1の化合物5mg/kgを単回投与し、3匹の性成熟した雄カニクイザルに0.5、1、5及び10mg/kgを単回投与した。表1は、それぞれの血漿中AUC
0-lastレベル及びマウス曝露量に対する倍数を示す。
【表1】
【0206】
超治療用量レベルでの反復投与PK試験:
【0207】
ラット試験:雄性Sprague-Dawleyラット(7~9週齢)に、実施例1の化合物0、25、50及び125mg/kg/日(各群3匹)を14日間投与した。125mg/kg/日の忍容性が不十分であったため、7日目に75mg/kgに減量した。
【0208】
本試験では、時点0から最終濃度測定時点(48時間)までのAUCを測定した(AUC
0-48)。表2は、14日目の血漿AUC
0-48レベル及びマウス曝露量に対する倍数を示す。
【表2】
【0209】
イヌの実験:2匹の雄性ビーグル犬(8~12ヶ月齢)に、実施例1の化合物を0、25及び100mg/kg/日で14日間投与した。本実験では、AUC
0-infを測定した。表3は、14日目の血漿AUC
0-lastレベル及びマウス曝露量に対する倍数を示す。
【表3】
【0210】
実施例21.インビトロ試験
以下の表4は、実施例1の化合物に関するインビトロ試験の結果をまとめる。
【表4-1】
【表4-2】
【0211】
実施例22.毒性試験
単回投与毒性:
雄性CD-1マウス、Sprague-Dawleyラット及びビーグルイヌにおける実施例1の化合物のそれぞれの最大耐容量(MTD)は、≧1,000mg/kg、≧750mg/kg及び≧500mg/kgであった。これらは、試験したそれぞれの最高用量レベルであった。
【0212】
治療レベルでの反復投与毒性:
【0213】
マウス:40匹の性成熟した雄性CD-1マウスに、それぞれ7.5及び10mg/kg/日の実施例1の化合物を4週間投与した。投与された動物はすべて正常に行動し、対照動物と比較して体重、CBCパラメータ、または臨床化学パラメータに変化はなかった。
【0214】
非ヒト霊長類:有効性試験の雄性カニクイザル6匹はすべて正常に行動し、体重、CBCパラメータ、臨床化学パラメータに大きな変化はなかった。
【0215】
治療レベル以上の反復投与毒性
ラットを用いた14日間用量範囲探索(DRF)試験:雄性Sprague-Dawleyラット(7~9週齢)に実施例1の化合物0、25、50、125及び250mg/kg/日(各群5匹)を経口ガベージにより投与した。25及び50mg/kgは良好な忍容性を示した。125mg/kgの初期投与は忍容性に問題があったため、残りの8日間は75mg/kgに減量された。その期間中、動物の全体的な健康と活動性は改善し、体重は増加し、CBCと臨床化学は正常であった。250mg/kg/日は忍容性がなかった。これらの結果は、2週間の投与期間における最大耐容量は50mg/kgであったことを示している。
【0216】
イヌを用いた14日間のDRF試験:雄性ビーグル犬(8~12ヶ月齢)に、経口ガベージにより実施例1の化合物0、25、50及び100mg/kg/日(各群2匹)を投与した。25mg/kgは良好な忍容性を示し、両動物とも正常に行動し、毒性の兆候を示さなかった。50mg/kgは耐えられなかった。100mg/kg群では、1匹のイヌに毒性の兆候は見られなかった。もう1匹のイヌは12日目から終了まで体重が減少していた。これらの結果に基づいて、2週間の投与期間にわたる最大耐用量は、25mg/kgであった。
【0217】
実施例23.4-(5-(4-(4-フルオロフェニル)-2,2-ジメチル-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)安息香酸の合成。
【化41】
【0218】
a. tert-ブチル 2-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピロール-1-カルボキシレートの調製。
【化42】
【0219】
窒素雰囲気下、(Boc)2O(20.0mL、DCM中1M、2.1当量)を、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピロール-2-イル)安息香酸メチル(3.20g、9.72mmol、1.0当量)及びDMAP(60mg、0.49mmol、0.05当量)の乾燥MeCN(5mL)の溶液に、室温で添加した。出発物質が完全になくなるまで混合物を撹拌した。水を加えた後、得られた混合物をDCM(20mL×3)で抽出した。有機相をブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン100%からヘキサン中10% EtOAc)で精製し、生成物(2.34g、56%)を無色の油として得た。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.04-7.97(m,2H),7.40-7.34(m,2H),6.64(d,J=3.3 Hz,1H),6.25(d,J=3.3 Hz,1H),3.92(s,3H),1.35(s,12H),1.32(s,9H).
【0220】
b. tert-ブチル 2-(2,2-ジメチル-4-オキソクロマン-6-イル)-5-(4-(メトキシ-カルボニル)フェニル)-1H-ピロール-1-カルボキシレートの調製。
【化43】
【0221】
6-ブロモ-2,2-ジメチルクロマン-4-オン(550g、2.16mmol、1.1当量)、tert-ブチル2-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピロール-1-カルボキシレート(822mg、1.92mmol、1.0当量)、K2CO3(830mg、6.01mmol、3.1当量)を丸底フラスコに取り込み、続いてDME(15mL)及びH2O(2mL)を加えた。次いで、N2を、反応混合物に10分間バブリングし、続いてPd(dppf)Cl2.CH2Cl2(160mg、0.196mmol、0.1当量)を添加した。次いでバイアルを密封し、90℃に予熱した油浴に入れ、6時間還流させた。反応終了後、反応混合物にブラインを加え、EtOAc(20mL×3)で抽出し、MgSO4上で乾燥させた。溶媒を蒸発乾固させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン100%からヘキサン中20% EtOAc)で精製し、生成物を白色固体として得た(600mg、66%)。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.08-8.01(m,2H),7.88(d,J=2.3 Hz,1H),7.53(dd,J=8.5,2.3 Hz,1H),7.48-7.41(m,2H),7.03-6.92(m,1H),6.30(d,J=3.4 Hz,1H),6.23(d,J=3.4 Hz,1H),3.93(s,3H),2.74(s,2H),1.48(s,6H),1.19(s,9H).
【0222】
c. tert-ブチル 2-(2,2-ジメチル-4-(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-2H-クロメン-6-イル)-5-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)-1H-ピロール-1-カルボキシレートの調製。
【化44】
【0223】
無水DCM(10mL)中のtert-ブチル 2-(2,2-ジメチル-4-オキソクロマン-6-イル)-5-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)-1H-ピロール-1-カルボキシレート(583mg、1.23mmol、1.0当量)、2,6-ルチジン(925mg、8.63mmol、7.0当量)及びDMAP(41mg、0.34mmol、0.3当量)の撹拌溶液に、0℃で無水トリフリック(1.00g,3.54mmol、2.9当量)を滴下し、反応混合物を撹拌しながらゆっくりと室温まで温めた。室温で一晩撹拌した後、反応物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液でクエンチし、DCM(20mL×3)で抽出した。次に、合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して、粗褐色油状物を得た。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン100%からヘキサン中10% EtOAc)で精製し、生成物(550mg、77%)を無色液体として得た。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.09-8.02(m,2H),7.50-7.42(m,2H),7.32-7.23(m,2H),6.86(d,J=8.9 Hz,1H),6.31(d,J=3.4 Hz,1H),6.21(d,J=3.4 Hz,1H),5.66(s,1H),3.93(s,3H),1.55(s,6H),1.19(s,9H).
【0224】
d. tert-ブチル 2-(4-フルオロフェニル)-2,2-ジメチル-2H-クロメン-6-イル)-5-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)-1H-ピロール-1-カルボキシレートの調製。
【化45】
【0225】
tert-ブチル2-(2,2-ジメチル-4-(((トリフルオロメチル)スルホニル)オキシ)-2H-クロメン-6-イル)-5-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)-1H-ピロール-1-カルボキシレート(200g、0.329mmol、1当量)、(4-フルオロフェニル)ボロン酸(68mg、0.49mmol、1.5当量)、K3PO4(H2O中4.0mL、0.5M、2.0mmol、6.1当量)を丸底フラスコに入れ、次いでTHF(2mL)を添加した。次いで、この反応混合物にN2を10分間吹き込み、続いてXPhos Pd G2(60mg、0.076mmol、0.2当量)を添加した。次いで、バイアルを密閉し、45℃に予熱したブロックに入れ、3時間撹拌した。反応終了後、反応混合物にブラインを加え、EtOAc(5mL×3)で抽出し、MgSO4上で乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、100%ヘキサンからヘキサン中20%EtOAc)で精製して、白色の固体(132mg、72%)残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン100%からヘキサン中20% EtOAc)で精製し、生成物を白色固体として得た(132mg、72%)。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.09-7.99(m,2H),7.45-7.38(m,2H),7.37-7.28(m,2H),7.21(dd,J=8.3,2.2 Hz,1H),7.13-7.02(m,2H),7.01(d,J=2.1 Hz,1H),6.91(d,J=8.3 Hz,1H),6.27(d,J=3.4 Hz,1H),6.14(d,J=3.4 Hz,1H),5.62(s,1H),3.93(s,3H),1.52(s,6H),1.16(s,9H).
【0226】
e. 4-(5-(4-(4-フルオロフェニル)-2,2-ジメチル-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)安息香酸メチルの調製。
【化46】
【0227】
tert-ブチル 2-(4-(4-フルオロフェニル)-2,2-ジメチル-2H-クロメン-6-イル)-5-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)-1H-ピロール-1-カルボキシレート(100mg、0.181mmol、1当量)をN2ガス下で180℃に30分間加熱した。暗色の残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、生成物(62mg、76%)を白色粉末として得た。1H NMR(400 MHz,CDCl3)δ 8.52(s,1H),8.03(d,J=8.0 Hz,2H),7.52(d,J=8.1 Hz,2H),7.38(td,J=5.4,2.3 Hz,3H),7.18-7.10(m,3H),6.96(d,J=8.3 Hz,1H),6.67(t,J=3.2 Hz,1H),6.39(t,J=3.2 Hz,1H),5.67(s,1H),3.93(s,3H),1.54(s,6H).
【0228】
f. 4-(5-(4-(4-フルオロフェニル)-2,2-ジメチル-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)安息香酸の調製。
【化47】
【0229】
THF(1mL)及びMeOH(1mL)中の4-(5-(4-(4-フルオロフェニル)-2,2-ジメチル-2H-クロメン-6-イル)-1H-ピロール-2-イル)安息香酸メチル(50mg、0.11mmol、1.0当量)の溶液に、水(1mL)に溶解したLiOH(50mg、1.2mmol、11当量)を加え、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。次いで、有機層を減圧下で蒸発させ、水性懸濁液を2NのHClでpH1.0に酸性化した。その後、反応混合物をEtOAc(2mL×3)で抽出し、ブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。抽出物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(SiO2、100%ヘキサンからヘキサン中50%EtOAc、2%HCOOH)で精製し、生成物(36mg、74%)を黄色固体として得た。1H NMR(400 MHz,THF-d8)δ 10.40(s,1H),7.96-7.89(m,2H),7.64-7.57(m,2H),7.50-7.36(m,3H),7.27(d,J=2.2 Hz,1H),7.21-7.12(m,2H),6.86(d,J=8.4 Hz,1H),6.60(dd,J=3.7,2.5 Hz,1H),6.27(dd,J=3.7,2.4 Hz,1H),5.72(s,1H),1.46(s,6H).
【0230】
実施例24.代表的化合物の合成
上記の記載と同様の手順で、以下の化合物を調製した。
【化48】
【化49】
【0231】
実施例25. 生物学的活性
本発明の代表的化合物を実施例13に記載のアッセイで評価し、以下のデータを得た。
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【表11-4】
【表11-5】
【0232】
いずれの刊行物、特許及び特許出願も、参照により個々に援用されるかのように、参照により、本明細書に援用される。様々な具体的及び好ましい実施形態及び技法を参照しながら、本発明について説明してきた。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲内に留まる限りは、多くの変形及び修正を行ってよいことを理解されたい。
【国際調査報告】