(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】電気モータ用固定子の製造方法および各電気モータ用固定子
(51)【国際特許分類】
H02K 15/085 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
H02K15/085
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567896
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 IB2022052530
(87)【国際公開番号】W WO2022234354
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】102021000011528
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523109563
【氏名又は名称】マルシッリ エッセ.ピ.ア.
【氏名又は名称原語表記】MARSILLI S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via per Ripalta Arpina,14,26012 Castelleone(CR)(IT)
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【氏名又は名称】中尾 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】パラティ,ジャン バッティスタ
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP12
5H615QQ03
5H615QQ07
5H615QQ12
5H615QQ20
5H615SS04
5H615SS10
5H615SS16
(57)【要約】
共通の中心軸(Y)の半径方向に配置された複数の固定子ティースと、前記ティースの間に画定され、導電ワイヤ(14)からなる一つ以上の巻線(4)が少なくとも部分的に挿入される複数のセクタ(3)とを有する固定子本体(10)を備えた電気モータ用固定子の製造方法であって、
前記方法は、
二つの治具(2、2’)であって、それぞれが治具(2、2’)内に、円形開口部(20’、20”)を画定する内周と、共通の中心軸(Y)に向かって前記円形開口部(20’、20”)内へ突出する一連のティース(21、21’)とを有し、前記一連のティースがそれぞれの間に一連のスロット(22’、22”)を画定する、二つの治具(2、2’)を提供することと、
前記二つの治具(2、2’)を同一の共通の中心軸(Y)を中心に同軸上に配置し、前記中心軸(Y)に沿って間隔を空けることと、
前記導電ワイヤ(14)の複数の前記巻線(4)であって、前記治具(2、2’)の間に延在する直線ワイヤ部分(4a、4b)を備える前記導電ワイヤ(14)の前記巻線(4)を、前記治具(2、2’)の前記ティース(21、21’)の間に巻取りまたは挿入し複数の巻線(4)を形成し、前記治具(2、2’)の両方の複数の前記スロット(22’、22”)を占有させることと、
前記直線ワイヤ部分(4a、4b)の間に、複数の第一の固定子部分(6)を内側から挿入することと、
前記第一の固定子部分(6)の補足的な第二の固定子部分(7)を、直線ワイヤ部分(4a、4b)の間に外側から挿入して、前記第一の固定子部分(6)と前記第二の固定子部分(7)とを接合することで、前記第一の固定子部分(6)と前記第二の固定子部分(7)との間に画定される別々のセクタ(3)に前記直線ワイヤ部分(4a、4b)を含む固定子本体(10)を形成することと、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の中心軸(Y)の半径方向に配置された複数の固定子ティースと、前記ティースの間に画定され、導電ワイヤ(14)からなる一つ以上の巻線(4)が少なくとも部分的に挿入されるセクタ(3)とを有する固定子本体(10)を備えた電気モータ用固定子の製造方法であって、
前記方法は、
二つの治具(2、2’)であって、それぞれが治具(2、2’)内に、円形開口部(20’、20”)を画定する内周と、内周に沿って配置され、共通の中心軸(Y)に向かって前記円形開口部(20’、20”)内へ突出する一連のティース(21、21’)とを有し、前記一連のティース(21、21’)がそれぞれの間に一連のスロット(22’、22”)を画定する、二つの治具(2、2’)を提供することと、
前記二つの治具(2、2’)を前記共通の中心軸(Y)を中心に同軸上に配置し、前記中心軸(Y)に沿って間隔を空けることと、
前記導電ワイヤ(14)の複数の前記巻線(4)であって、前記治具(2、2’)の間に延在する直線ワイヤ部分(4a、4b)を備える前記導電ワイヤ(14)の前記巻線(4)を、前記治具(2、2’)の前記ティース(21、21’)の間に配置して、前記治具(2、2’)の両方の複数の前記スロット(22’、22”)を占有させることと、
前記直線ワイヤ部分(4a、4b)の間に、複数の第一の固定子部分(6)を内側から挿入することと、
前記第一の固定子部分(6)の補足的な第二の固定子部分(7)を、直線ワイヤ部分(4a、4b)の間に外側から挿入して、前記第一の固定子部分(6)と前記第二の固定子部分(7)とを接合することで、前記第一の固定子部分(6)と前記第二の固定子部分(7)との間に画定される別々のセクタ(3)に前記直線ワイヤ部分(4a、4b)を含む固定子本体(10)を形成することと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記第一の固定子部分(6)は、挿入後に前記固定子本体(10)内側の前記直線ワイヤ部分(4a、4b)と前記中心軸(Y)との間にとどまる拡大端(61)と、前記直線ワイヤ部分(4a、4b)の間に挿入される半径方向範囲部分(62)とを有する、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記第一の固定子部分(6)の前記拡大端(61)は、共に前記固定子(10)の円筒形状の内面を画定する、ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法であって、前記第二の固定子部分(7)は、略くさび形状であり、挿入後も前記直線ワイヤ部分(4a、4b)の外側に残る拡大基部(71)を備え、前記固定子本体(10)の円筒形状の外面形成に寄与する、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
先行する請求項の一つ以上に記載の方法であって、前記治具(2、2’)は、平面視で略円形の王冠形状である、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
先行する請求項の一つ以上に記載の方法であって、
前記固定子部分(6、7)を、好ましくはレーザによる溶接工程によって、互いに固定する、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
先行する請求項の一つ以上に記載の方法であって、
外側リングを用いて、前記固定子部分(6、7)を機械的にロックする、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
先行する請求項の一つ以上に記載の方法であって、前記巻線(4)の前記直線ワイヤ部分(4a、4b)を前記治具(2、2’)に配置する前、または固定子部分(6、7)に挿入する前に、これらをプレスおよび/または浸炭するステップを行う、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、直線ワイヤ部分(4a、4b)の前記プレスと前記浸炭は、所望の順序で、または同時に行われる、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
先行する請求項の一つ以上に記載の方法であって、前記巻線(4)は、前記治具(2、2’)に順次取り外しおよび配置が行えるように巻取り工具(20X、20X’)上に、または直接治具(2、2’)上に作成される、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
先行する請求項1~10のいずれか1項による方法で直接得られた、電気モータ用の固定子(10)。
【請求項12】
電気モータ用の固定子(10)であって、中心軸(Y)を中心に延在する本体と、導電ワイヤ(14)からなり、少なくとも一つの直線ワイヤ部分(4a、4b)を有する複数の巻線(4)とを備え、前記直線ワイヤ部分(4a、4b)は、前記中心軸(Y)と平行に配置され、前記中心軸(Y)の周方向に一定のピッチで分布しており、前記本体は、前記直線ワイヤ部分(4a、4b)の間に挿入され、前記中心軸(Y)とは反対の半径方向に突出する複数の第一の固定子部分(6)と、前記第一の固定子部分(6)に補足的な複数の第二の固定子部分(7)であって、前記直線ワイヤ部分(4a、4b)の間と、前記第一の固定子部分(6)の間に挿入され、前記中心軸(Y)に向かって半径方向に突出する、第二の固定子部分(7)とを備え、前記直線ワイヤ部分(4a、4b)が、前記第一の固定子部分(6)と前記第二の固定子部分(7)との間に封入される、ことを特徴とする電気モータ用固定子(10)。
【請求項13】
請求項12に記載の固定子(10)であって、前記第一の固定子部分(6)は、前記固定子本体(10)の内周に配置される拡大端(61)と、前記直線ワイヤ部分(4a、4b)に挿入されるくさび形状の半径方向範囲部分(62)戸を備える、ことを特徴とする固定子(10)。
【請求項14】
請求項12または13に記載の固定子(10)であって、前記第二の固定子部分(7)は、前記固定子本体の外周に配置される拡大基部(71)と、前記直線ワイヤ部分(4a、4b)および前記第一の固定子部分(6)の間に挿入される半径方向範囲のくさび形状部分とを備える、ことを特徴とする固定子(10)。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか1項に記載の固定子(10)であって、前記第一の固定子部分(6)は、前記第二の固定子部分(7)に溶接される、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータ用固定子の製造方法、及び該方法により製造された電気モータ用固定子を目的とする。
【背景技術】
【0002】
既に知られるように、電気モータの固定子は一般に円筒形状であり、当該円筒の内周に沿って配置され、共通の中心軸に向かって突出する固定子ティースによって形成される複数の固定極から構成される。
【0003】
巻線とも称される導電ワイヤからなる一つ以上のコイルは、固定子ティース間、より正確には、同一の固定子ティース間のスペースからなるセクタに配置される。
【0004】
固定子には、個々の固定子ティースに導電ワイヤを巻回した集中巻と、二本以上の固定子ティースに導電ワイヤを巻回した分布巻とがある。本発明は、特に分布巻の固定子の製造に関する。
【0005】
公知技術では、分布巻型固定子の製造において、まずティースを組み立てることによって固定子の円筒形本体が製造され、固定子本体の外側には、導電ワイヤの一つ以上の巻線が、既に形成された円筒形本体のティース間のセクタに挿入される。
【0006】
本出願人名義の特許出願PCT/IB2021/057982によると、形成される固定子の円筒形本体のティース間のセクタに、巻線の直線状ワイヤ部分を挿入する前に、プレスおよび/または浸炭するステップを(所望の順序で)実行することが知られている。
【0007】
このため、隣接する二つのティースのティース端部(本技術分野では「磁極片」と称される)の間に、巻線の挿入に十分な開口部(スロット開口部)を設ける必要がある。
【0008】
磁極片間の距離が増加するにつれて、またはスロット開口部が増加するにつれてノイズ現象が増加し、特にトルクリップル現象(トルクリップルおよびコギングとしても知られる)は、性能の低下、振動およびノイズの増加をもたらし、公知技術における改善可能な側面である。
【0009】
この種の固定子では、セクタの充填率の向上が望まれる。即ち、より多くの導電ワイヤを、または同じ数のワイヤをより大きな直径で同一のセクタに挿入可能にすることが望まれる。これは、こうすることで、電気モータの性能を向上できることからである。充填率は、固定子スロット内で利用可能な総面積(常に断面で考慮される)に対する、固定子スロット内の導電ワイヤによって占有される断面の表面の比率として定義される。
【0010】
また、上述した公知の種類の固定子は、巻線を固定子に挿入後、巻線を構成する各ループのいくつかが常に固定子の中心に向かって配置される一方、その他のループが常に固定子の外側に向かって配置されることから、モータの漏れ電流が増加し、ひいてはモータ自体の効率の低下を伴うため限界がある。
【0011】
現在利用可能な電気モータよりも小型で軽量な電気モータを実現するには、同等の性能で固定子の軸方向体積を最小化できることがさらに望ましい。
【発明の概要】
【0012】
本発明の課題は、前述した一つ以上の態様において、公知技術の欠点を克服し限界を超える電気モータ用固定子の製造方法を提供することである。
【0013】
この課題を達成するために、本発明の目的は、特に効率、および/または、性能、および/または、振動、および/または、騒音の観点からモータの性能を向上させる電気モータ用固定子を実現可能な、固定子の製造方法を実施することにある。
【0014】
本発明のさらなる目的は、固定子内部のセクタの充填率を向上させることができる固定子の製造方法を実施することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、トルクリップル(トルクリップルおよびコギング)現象を低減することが可能な固定子の製造方法を実施することである。
【0016】
本発明のもう一つの目的は、既知の技術に対して容易に作成でき、経済的に好都合な固定子の製造方法を実現することである。
【0017】
上記に述べられた課題、上述した目的および以下でより明確になる他の目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。当該方法は、電気モータ用の固定子を製造するための方法であって、前記固定子は、固定子本体を備え、前記固定子本体は、共通の中心軸を中心に半径方向に配置された複数の固定子ティースを含み、前記ティースの間には、導電ワイヤの一つ以上の巻線が少なくとも部分的に挿入されるセクタが定義されている。
【0018】
特に、本方法では、二つの治具を提供し、それぞれの治具は、治具内に円形の開口部を画定する内周と、内周に沿って配置され、共通の中心軸Yに向かって円形の開口部内に突出する一連のティースを有している。前記ティースは、それらの間に巻線を収容するための一連のスロットを画定する。
【0019】
二つの治具は、共通の中心軸Yを中心に同軸配置され、中心軸Yに沿って高さに間隔を置いて配置される。中心軸Y上の治具の間隔は、巻線の直線部分の長さに対応する意味で、コイルの高さと等しい。
【0020】
導電ワイヤの複数の巻線が、前記治具の前記ティース間に配置され、各巻線の前記導電ワイヤが両方の治具の複数の前記スロットを占有する。前記巻線は、好ましくはプレスされ浸炭された直線部分を含む、二つの治具間に延びる直線ワイヤ部分から成る。
【0021】
二つの治具が前記巻線を支持して、前記中心軸Yに平行に延在する直線部分が前記治具の前記スロット間に配置された状態で、前記固定子の骨格が一旦作成されると、前記固定子の仕上げは、以下に記載されるように前記巻線の前記直線部分を封入することで進行する。
【0022】
したがって、前記直線ワイヤ部分の間に、複数の第一の固定子部分を内側から挿入する。
【0023】
前記第一の固定子部分に補足的な第二の固定子部分が直線ワイヤ部分の間に外側から挿入され、前記第一と第二の固定子部分が接合されることによって、前記第一と第二の固定子部分の間に画定される別々のセクタに、前記直線ワイヤ部分を含む固定子本体が形成される。
【0024】
治具間に延在する巻線の直線部分間に最初に挿入する固定子部分が第一の固定子部分か第二の固定子部分であるかは、本発明の目的においては無関係である。本方法は、最初に内部から外部に向かって第一の固定子部分を挿入し、続けて外部から内部に向かって第二の固定子部分を挿入する、若しくはその逆の順序で行うことにより実施することができる。
【0025】
これにより、以下に記載されるように、巻線の直線部分が第一の固定子部分と第二の固定子部分の間に封入され、例えば溶接される。
【0026】
本発明の第二の態様は、前記方法によって直接形成された固定子に関するものである。
【0027】
本出願人よるシミュレーションによると、ここに記載される方法によって得られる固定子は、従来のセクタ間のティースの充填方法で得られる同じ特性を持つ固定子と比較して、生産コストが低く、効率が高く、トルクリップル現象が低減されることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
さらなる特徴および利点は、以下の添付図面を参照し、非限定的に例示される固定子の製造方法の好ましい非限定的な実施の形態の記載からさらに明らかとなるであろう。
【
図1a】
図1aは、本発明による方法の主要ステップを示すフロー図である。
【
図1】
図1は、本発明による方法で使用される二つの治具の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明による方法の可能な実施の形態において、
図1に示す巻線製造用治具に導線を巻き回す段階のステップを示す図である。
【
図3】
図3は、本発明による方法の可能な実施の形態において、
図1に示す巻線製造用治具に導線を巻き回す段階のステップを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明による方法の可能な実施の形態において、
図1に示す巻線製造用治具に導線を巻き回す段階のステップを示す図である。
【
図5】
図5は、治具の一つに平行な平面に沿った
図4の断面図である。
【
図6】
図6は、第一の固定子部分を挿入する段階の完結を示す図である。
【
図7】
図7は、治具の一つに平行な平面に沿った
図6の断面図である。
【
図8】
図8は、第二の固定子部分を挿入する段階が完結し固定子本体が形成される様子を示す図である。
【
図9】
図9は、治具の一つに平行な平面に沿った
図8の断面図である。
【
図10】
図10は、巻線機の可能な実施の形態の側面図である。
【
図15】
図15は、本発明による巻取り工具の第一の実施の形態の分解図である。
【
図16】
図16は、本発明による巻取り工具の第一の実施の形態の分解図である。
【
図17】
図17は、連続するステップにおける巻取り工具の斜視図である。
【
図18】
図18は、連続するステップにおける巻取り工具の斜視図である。
【
図23】
図23は、本方法の巻線作成ステップで製造された巻線の斜視図である。
【
図24】
図24は、巻線作成ステップで製造された複数の巻線の斜視図である。
【
図25】
図25は、本方法のプレス、および/または、浸炭ステップを行うプレス/浸炭装置の斜視図である。
【
図26】
図26は、プレス、および/または、浸炭ステップの連続する時間における
図25の装置の垂直図である。
【
図27】
図27は、プレス、および/または、浸炭ステップの連続する時間における
図25の装置の垂直図である。
【
図28】
図28は、本発明による巻取り工具の第二の可能な実施の形態の一部を示す斜視図である。
【
図29】
図29は、本発明による巻取り工具の第二の可能な実施の形態の一部を示す斜視図である。
【
図30a】
図30aは、可能な異なる種類のコイルのループの断面図である。
【
図30b】
図30bは、可能な異なる種類のコイルのループの断面図である。
【
図30c】
図30cは、可能な異なる種類のコイルのループの断面図である。
【
図31a】
図31aは、任意の解決策による異なる種類のコイルのループの断面図。
【
図31b】
図31bは、任意の解決策による異なる種類のコイルのループの断面図。
【
図31c】
図31cは、任意の解決策による異なる種類のコイルのループの断面図。
【
図32】
図32は、巻取り工具の第二の可能な実施の形態の詳細を示す斜視図である。
【
図36】
図36は、
図32の巻取り工具に収容された巻線に対して実行される熱処理工程の二つの連続するステップを示す斜視図である。
【
図37】
図37は、
図32の巻取り工具に収容された巻線に対して実行される熱処理工程の二つの連続するステップを示す斜視図である。
【
図38】
図38は、
図32の巻取り工具に収容された巻線に対して実行されるプレス工程の二つの連続するステップを示す斜視図である。
【
図39】
図39は、
図32の巻取り工具に収容された巻線に対して実行されるプレス工程の二つの連続するステップを示す斜視図である。
【
図41】
図41は、ピッチ補正装置によるピッチ補正ステップの作成シーケンスを示す斜視図である。
【
図42】
図42は、ピッチ補正装置によるピッチ補正ステップの作成シーケンスを示す斜視図である。
【
図43】
図43は、固定子のコンポーネントの製造に合わせた可能なブランキングのレイアウトを示す平面図である。
【
図44】
図44は、本発明による固定子を備えたモータの回転速度(回転数で表示)に対する効率を、従来のコイル挿入技術で得られた固定子を備えた同じモータと比較した比較図である。
【
図45】
図45は、本発明による固定子を備えたモータの回転速度(回転数で表示)に対するトルクリップルを、従来のコイル挿入技術で得られた固定子を備えた同じモータと比較した比較図である。
【発明の詳細な説明】
【0029】
本方法はその必須の態様において、
図1aのフロー図に示すように、巻線作成ステップA、任意でのプレスおよび/または浸炭処理ステップB、治具に巻線を収容するステップC、組立ステップDから構成されている。
【0030】
前述の図を参照すると、本方法は電気モータ用の固定子の製造を目的としており、特に、共通の中心軸Yの半径方向に配置され、中心軸Yに向かって突出した複数の固定子ティースを有する固定子本体10を備える分布巻線型固定子の製造を目的とする。このようなティースは、それぞれの間に、
図7~
図9に示されるように、導電ワイヤ14の巻線4が一つ以上の少なくとも部分的に挿入される複数のセクタ3(即ち、巻線4の直線部分4a、4bを区切る空間)を画定する。
【0031】
より詳細には、既知のように、巻線4の長手方向の略直線部分4a、4b、即ち、以降「直線部分」4a、4bと呼ぶ導電(電気的に導電性の)線14が、セクタ3内に収容される。
【0032】
本方法は、以降に詳述する以下のステップを備えている。内側ティース21、21’を備えた二つの治具2、2’を、同軸上に配置し、高さ方向に互いに間隔をあけて配置する(
図1)ことと(ステップA)、複数の導電ワイヤ14を治具2、2’のティース21、21’の間に、複数の巻線4を形成するように巻き付ける(
図2~
図4)、または巻線4を巻取り工具上に配置し、治具2、2’上に順次位置決めすることと(ステップC)、直線部分4a、4bを封入するとともに、完成した固定子本体10(
図5~
図9)を形成するように、所望の順序で、複数の第一の固定子部分6を内側から挿入し、第一の固定子部分6と相補的に複数の第二の固定子部分7を外側から挿入することと(ステップD)を備える。
【0033】
より詳細には、本方法を実施するために、例えば
図1に示すような二つの治具2、2’(即ち、基準として機能し導電ワイヤ14を所定の位置に保持するように適切に成形された要素)を準備する必要がある。これら治具2、2’は、平面視で略円形の王冠形状であるが、外形の形状は必要に応じては変化し得る。
【0034】
治具2、2’のそれぞれは、治具2、2’自体の内部に円形の開口部20、20”を画定する内周を画定しており、当該内周に沿って、一連のティース21、21’が中心軸Yに向かって半径方向に突出するように配置されている。
【0035】
換言すると、これらティース21、21’は、中心軸Yに向かって、円形開口部20、20”の内側へ突出しており、各ティース間において一連のスロット、凹部、または、溝22’、22”を画定する。
【0036】
これらスロット22’、22”は、実際には形状および位置が、製造される固定子の固定子本体10の三つのセクタ3(即ち、導電ワイヤを収容する固定子ティース間の空間)に実質的に対応するように構成される。
【0037】
本方法では、二つの治具2、2’を同軸上に、同一の共通の中心軸Yに沿って中心を定め、その中心軸Yに沿って高さ方向に間隔をあけて、実際には理想的な円筒の二つの底面のように配置する。
【0038】
このようにして、治具2、2’のティース21、21’の間に、複数の巻線4(即ち、導電ワイヤ14のコイル)を形成するように複数の導電ワイヤ14を巻きつけるステップAを行う。これら導電ワイヤ14は、治具2、2’両方の複数のスロット22’、22”を各巻線4の導電ワイヤ14が占めるように巻きつける。このようにして形成された巻線4は、二つの治具2、2’の間に、中心軸Yと平行に延在し、頂部および底部の非直線部42に繋がる導電ワイヤの直線部分4a、4bを有する。従って、導電ワイヤの直線部分4a、4bは、中心軸Yを中心として周方向に、軸Yと平行に、スロット22’、22”のピッチに対応する規則的なピッチで配置された状態となる。
【0039】
このステップでは、各巻線4は、互いに平行であり非直線部分42によって接続される第一および第二の直線部分4a、4bを有し、第一および第二の直線部分4a、4bはそれぞれ、各治具2、2’の異なる溝22’、22”に挿入されることが好ましい。
【0040】
各巻線4は、複数の導電ワイヤ14によって形成されることが好ましい。
【0041】
一般的に、各コイルは1本、2本、またはそれ以上の平行なワイヤ14からなり、巻線4が例えば単一のワイヤ14のみからなる100のループを有する場合、2本の平行なワイヤからなる50のループを有する場合、10本の平行なワイヤ14からなる10のループを有する場合などがある。
【0042】
プロジェクトの要求に応じて、各ループに平行に巻かれるワイヤ14の数、レベルの数、および、レベルごとのワイヤ14の数は変化し、選択することができることは明らかである。
【0043】
より詳細には、一般的に、
各ループは1層、2層、n層で形成され、
各層は1、2、n本のワイヤ14で形成される。
【0044】
ある層の配線数は、連続する層のワイヤ数と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0045】
図12~
図22に示されるように、巻線4を作成するステップAにおいて、治具2、2’に直接導電ワイヤ14を巻きつける代わりに、少なくとも一つの直線部分4a、4bを有する少なくとも一つの巻線4を形成するように一つ以上の導電ワイヤ14を巻取り工具20Xに巻きつけてもよく、各直線部分4a、4bは、ワイヤの複数の個別の直線部分からなり、上述したようにスロット22’、22”の一つに挿入される。
【0046】
この場合、ステップAの後に、
図1aにおいて概略的に示されるように巻線4を収容するステップCが行われる。同ステップにおいて、巻線4の直線部分4a、4bは、当該巻線4を巻取り工具20Xから取り外した後に、スロット22’、22”に挿入される。
【0047】
図12~
図22は、巻線4を作成するために構成された巻取り工具20Xを詳細に示している。
【0048】
プロジェクトの要求に応じて、各ループに平行に巻かれる導電ワイヤ14の(およびワイヤ張力装置203の)数、レベルの(およびワイヤ誘導管204内のダクト251の)数、および、レベルごとの導電ワイヤ14の数は変化し、選択することができることは明らかである。
【0049】
実施する上での選択によって、巻取り工具20Xに巻きつける巻線4の数が(
図23のように)一つの場合もあり、巻線4の数が(
図24のように)複数の場合もある。
【0050】
巻取りは1本、2本、またはそれ以上の平行なワイヤからなり、巻線4が例えば単一のワイヤ14のみからなる100のループを有する場合、2本の平行なワイヤからなる50のループを有する場合、10本の平行なワイヤ14からなる10のループを有する場合などがある。
【0051】
巻取り工具20Xは、固定壁23と取り外し可能な分解壁24との間に設けられた複数の可動壁22を備えていることが好ましい。
【0052】
固定壁23は、可動壁22の回転を駆動するように巻取りスピンドル244に動作可能に結合するように構成され、この目的のために、スピンドル25に引っ掛けるためのスリーブを必要に応じて備えている。
【0053】
取り外し可能な分解壁24は、固定壁23から取り外すことにより可動壁22を解放し、巻き取られた巻線4の変位可能にすることができる。
【0054】
可動壁22は一つ以上の巻取りチャンバを形成し、この中で導電ワイヤ14が巻き取られて巻線4が形成される。
【0055】
より詳細には、図示される好ましい実施の形態において、固定壁23は、巻線に取り込まれる(既に適切な構成に配置された)ワイヤ14をクランプするように構成されたワイヤクランプ26をさらに備えている。
【0056】
固定壁23はさらに、可動壁22をセンタリングするためのセンタリングピン27を備えており、センタリングピンは、取外し可能な壁24に向かって突出し、各可動壁22の中心に位置する中心孔28によって形成されるトンネルと係合するので有用である。
【0057】
センタリングピン27の端部には、引っ掛け壁24を取り外し可能な壁24に引っ掛けるための引っ掛け端271が設けられている。
【0058】
好適には、引っ掛け壁23には、取り外し可能な壁24に向かって突出する複数の(図示される例では四つ)の軸方向位置決めピン231が設けられており、これらピンが、可動壁22に設けられた位置決め孔29を占有ことによって巻取りの最中に可動壁22を正しく軸方向の位置決めをし、巻取りチャンバの正しい寸法を確保する。
【0059】
図から分かるように、軸方向位置決めピン231は、直径が異なり取り外し可能な壁24に向かって減少する複数の長手方向部分によって形成され、位置決め孔29は、各可動壁22によって異なる直径を有し、取り外し可能な壁24に向かって減少しているため、各可動壁22が軸方向位置決めピン231のそれぞれの長手方向部分にロックされるようになっている。
【0060】
したがって、可動壁22は、(巻線4を作成する)巻取りステップの間、(壁22の厚みと壁22間の距離によって決定される)軸方向の寸法を確保する一方、後述するようにプレスステップにおけるスラストによって互いに近接する方向に移動可能である。このような軸方向の寸法は、処理の再現性とプレス巻線(即ち、コイル4)の最終寸法の一貫性を確実にする機械的基準要素291によって便利に確保される。実際には、巻取り工具20Xは、可動壁22が、圧力の作用下で、限界当接部として機能する機械的基準要素291によって定義される距離まで互いに接近する方向に移動可能に構成される。
【0061】
巻取り工具20Xの可動壁22の数は、直列に作成される巻線4の数(電極当たりおよびセクタ3当たりの巻線の数と同等)+1、つまり、Np=nm+1の式によって決定される。ここで、式中、Npは可動壁22の数であり、nmは巻線の数である。実際には、nm個の巻線は個々の電極の一部となる巻線である。
【0062】
可動壁22は、垂直断面、水平断面のいずれにおいても、平面視で略長方形である。可動壁22は、巻取り工具20Xの外側に突出する側面に、操作用座部249を備えることが好ましい。
【0063】
好ましい実施の形態では、各可動壁22は、中央支持体221と、中央支持体221の二つの側に固定された二つの巻取り側部222とによって形成される。この場合、操作用座部249は巻取り側部222に設けられる。実際には、これらの実施の形態では、巻取りチャンバは巻取り側部222の間に画定される。
【0064】
以下に説明する熱浸炭処理中の熱損失を制限するために、中央支持体221と巻取り側部222との間に、断熱材が挟持される。
【0065】
取り外し可能な分解壁24は、固定壁から分離させて可動壁22を引き出すことができるという意味で取り外し可能である。
【0066】
好ましい実施の形態では、取り外し可能な壁24は、コイルから出てくるワイヤ14をそれぞれクランプするように構成されたワイヤクランプ261も備えており、これによりワイヤ14が適切な配置に維持される。
【0067】
そして、取り外し可能な壁24は、例えば、固定壁23のセンタリングピン27の引っ掛け端271を引っ掛けて、固定壁23に直接または間接的に結合するための結合装置241を備えている。
【0068】
取り外し可能な壁24は、その移動を可能にするために把持されまたは引っ掛けられるように構成された把持要素242をさらに備えることが好ましい。
【0069】
好ましい実施の形態では、巻取り工具20Xは、取り外し可能な壁24に結合され、それぞれの適切に傾斜したガイド246上を摺動可能な複数の角要素245を備える。このようなガイド246は、取り外し可能な壁から固定壁23に向かって延在し、好ましくは固定壁23まで延在する。角要素は、巻取り時にワイヤ14の当接部として機能する。
【0070】
角要素245は少なくとも四つ設けられ、各角に一つずつ配置されることが好ましい。
【0071】
ガイド246に沿ったこの細部によって、角要素245は、巻線4を形成する電線14を緩めるように引っ掛け壁から取り外し可能な壁24を引き出す際に、巻取り工具20Xの中心に向かって(
図9および
図10に示すように)摺動し、これによりワイヤ14が擦られて損傷きたすことのないように巻線4を取り外すことができる。
【0072】
可能な方法では、巻線作成ステップAの際に、主導電ワイヤの断面に対して小さい断面を有する補足的な導電ワイヤが、主導電ワイヤとして定義可能な導電ワイヤ14に追加され、補足的な導電ワイヤは、隣り合う主導電ワイヤ14の間の自由空間を占有する。
【0073】
本方法は、導電ワイヤ14を絶縁するステップをさらに含むことが好ましい。電気絶縁層は、
設けられる場合は常に(後述)、プレスおよび/または浸炭処理ステップBが行われた後に、巻線4の少なくとも直線部分4a、4bに設けられる、
または
巻線4の直線部分4a、4bの間に第一の固定子部分6と第二の固定子部分7を挿入してこれら部分を封入する前に、第一の固定子部分6と第二の固定子部分7との間に設けられる。
【0074】
巻線4を作成するステップAの実施においては、巻線4の直線部分4a、4bが連続する巻線4の直線部分4a、4bから所定のピッチ距離に従って間隔を保つようにすることによって、巻取り工具20X上で一連の巻線4が作成されることが好ましい。
【0075】
本方法は、この状況において、治具2、2’のスロット22’、22”の間に巻線4を収容する前に、
例えばアクチュエータによって移動可能なプライヤを備え、異なる巻線の直線部分4a、4b間のピッチ距離を補正するように構成されたピッチ補正装置(
図41、
図42参照)と一連の巻線4とを、必要に応じて機械的に相互作用させることにより治具2、2’のスロット22’、22”間のピッチに対応させ、
直線部分4a、4b間のピッチ距離を一定に保つように、プライヤによって巻線4を変位させ、
プライヤを用いて直線部分4a、4bを治具2、2’のスロット22’、22”の間に挿入する。
【0076】
巻線4が巻取り工具20Xに形成されるときは常に、ステップAの後、巻線の直線部分4a、4bを治具2、2’のスロット22’、22”に収容するステップCが行われる。このステップは、巻取り工具から巻線4を取り出すプライヤとアクチュエータを用いて実施され、直線部分4a、4b間のピッチを変更することなく、直線部分4a、4bを治具2、2’のスロット22’、22”に挿入する。
【0077】
図10には、導電ワイヤ14が
図12~
図22に示す巻取り工具20Xに巻取られる巻線機200の可能な実施の形態が示されている。巻線機200は、支持構造201を備えており、
巻き取られる導電ワイヤ14に張力をかけるための複数のワイヤ張力装置203(既知のタイプ)と、
ワイヤ誘導管204を備え、ワイヤを誘導するガイド205(好ましくはバーからなる)に沿って移動可能なワイヤ誘導装置206と、
モータ214によって回転され、前述の巻取り工具20Xを回転させるように構成され、実際にはスピンドル25に引っ掛けるためにスリーブに結合されている巻取りスピンドル244と、を支持する。
【0078】
このような巻線機200は、操作可能な巻線構造に構成することができ、巻き取られる導電ワイヤ14は、張力を保った状態でワイヤ張力装置203からワイヤ誘導装置206に向かって送り出され、導電ワイヤ14はワイヤ誘導装置206によって回転中の巻取り工具20Xに誘導される。
【0079】
必要に応じて、巻線機200は、主軸244と同軸に配置され、巻取り工具20Xの取り外し可能な壁24に結合されるように構成された心押台215をさらに備える。
【0080】
図11には、ワイヤ誘導装置206が詳細に示されており、当該装置は、ワイヤ方向づけ要素216(好ましくは、一対の回転部材)が固定されたベース217を備え、導電ワイヤ14を、巻取り工具20Xに面するベース217の端部に配置されたワイヤ誘導管204内に誘導する。
【0081】
図12および
図13には、巻線機200に設けられ、スピンドル244と同軸上に配置されることが好ましいリール部材218であって、ワイヤ誘導管204から送り出されるワイヤ14を、巻取り工具20Xに巻き取る前にループ状に揃えるリール部材218の詳細が示されている。
【0082】
図14には、ワイヤ誘導管204の断面が示されており、ワイヤ誘導管204は、導電ワイヤ14用の複数のダクト251を別々に画定する複数のセクタで構成されており、ループのレベル形成を意図された導電ワイヤ14は、各ダクト251内の所定位置に保持されるようになっている。示される例では、三つのダクト251があり、ワイヤは三つのレベルに配置され、5-4-5のシーケンス(第一のレベルに5本のワイヤ、第二のレベルに4本のワイヤ、第三のレベルに5本のワイヤ)があり、各ループごとに合計14本のワイヤが平行に配置され、各導電ワイヤ14は、
図10に示される14個のワイヤ張力装置203のうちの一つから送り出されて管理される。
【0083】
ステップAの巻線4の作成後であってステップCの前に、必要に応じて
図1aに概略的に示されるようにプレスおよび/または浸炭処理ステップBを行ってもよく、巻線4の直線ワイヤ部分4a、4bに対して、プレスおよび/または熱浸炭処理が行われ、個々の直線ワイヤ部分4a、4bがコンパクト化される。これは、巻線4の直線部分4a、4bの少なくとも一方に対して、所望の順序でまたは同時に、プレスステップを行うか、熱浸炭処理を行うか、またはプレスステップと熱浸炭処理の両方を行うステップであり、これにより巻線4を作成するステップAにおいて規律正しく配置された個々の直線ワイヤ部分をその配置に応じてコンパクト化する。
【0084】
有利なことに、プレスおよび浸炭処理が施された巻線4の導電ワイヤ14の直線部分は纏められた状態のままであり、分離することもなく互いにずれることもない。この詳細により、充填されるスロット22’、22”の各寸法に対して、充填率を最大にし、巻線4の移動中にほつれが生じないように、コイルを可能な限り最適な幾何学的構成にし、維持することができる。
【0085】
ステップBは15秒から2分間継続することが好ましい。
【0086】
可能な方法では、プレスおよび/または浸炭処理ステップBにおいて、巻線4の直線部分の間に一つ以上の加熱要素を挿入することによって熱浸炭処理が行われ、これらを所定の浸炭温度(一般的には170°C~210°Cの範囲)まで加熱する。
【0087】
可能な方法では、浸炭処理および/またはプレスステップBにおいて、直線部分4a、4bは、加熱要素を除去した後、巻線4を巻取り工具に収容した状態で、巻線4の直線部分4a、4bの間に挿入されるプレス装置によって押圧される。
【0088】
図25~
図27には、上述の特徴を有する巻線4を実現するために使用できるプレスおよび/または浸炭装置300の一例が示されている。
【0089】
図示される例では、装置300は、プレスと浸炭の両方を行い、巻取り工具20Xを収容可能に構成された収容座部301と、巻取り工具20Xに巻き取られた巻線4の少なくとも一つの直線部分4a、4bに圧力を加えるように構成された一つ以上のプレス要素30とを備える。
【0090】
収容座部の対向する側に同軸に配置された二つのプレス要素30が設けられていることが好ましく、各巻線の二つの対向する直線部分4a、4bのそれぞれを押圧するように、互いに他方へ向けて、好ましくは水平方向に圧力を加える。
【0091】
プレス要素30は、巻線4が巻取り工具20X上に巻かれている間に熱浸炭処理を行うように、プレスの前後または最中に直線部分4a、4bを加熱するように構成された少なくとも一つの加熱装置31(好ましくは、一つ以上のインダクタからなる)を備える。
【0092】
プレス要素30は、圧力運動システム304によって作動され、圧力運動システム304は、図示される実施の形態では、ピストンおよびピストンと同軸のバネからなる。
【0093】
いくつかの実施の形態では、加熱装置31はプレス要素30に含まれるか、または接続されている。より具体的にはプレス要素30自体の端部を構成し、プレス時に直線部分4a、4bと接触するヘッド32に配置される。
【0094】
加熱装置31の数は可動壁2の数に等しいのが好都合である。
【0095】
必要に応じて、プレスおよび/または浸炭処理装置300は、好ましくはプレス要素30に結合された熱プローブ34および/または高温計35を備えており、これにより加熱要素31を制御する制御システムによる浸炭処理のフィードバック制御が可能となる。
【0096】
より詳細には、プレスおよび/または浸炭処理装置300は、収容座部301に、巻取り工具20Xが寄りかかる固定当接部311を備える。このような固定当接部311には、断熱素材からなる傾斜面があり、巻取り工具20Xが寄りかかることで熱損失を制限する。
【0097】
プレスおよび/または浸炭処理装置300は、プレス要素30に対して鉛直方向に移動するプレスヘッド302(図示される例では垂直302)を備え、プレス要素30に対して鉛直方向に巻取り工具(および巻線4)を圧縮することにより、可動壁22を接近させ、巻線4の直線部分4a、4bをさらにコンパクト化し、限界当接部として機能する機械的基準要素291を基準としてその厚さを決定することが好ましい。実際には、プレスヘッド320は、固定当接部311に対して巻取り工具20X(および巻線4)を圧縮する。
【0098】
したがって、好ましい実施の形態では、各巻線4の直線部分4a、4bは、
図27に示すように、互いに直交する方向に二つの圧力を受ける。巻線4の直線部分4a、4bのみがプレスされて熱処理を受ける一方で、非直線部分(即ち、直線部分4a、4bをつなぐ巻線4の主に湾曲部分で、巻線4の先端を形成する部分)は、後続の工程で容易に整形可能とするように処理されないので、好都合である。
【0099】
使用されるワイヤ14の特性に依存する所定の浸炭温度に達すると、プレス要素30、場合によっては垂直プレス320は、直線部分4a、4bを最終寸法で安定させるような冷却装置(図示せず)の補助を受けつつ、冷却に必要な時間圧力を維持する。
【0100】
図示される例では、かかる圧力は140~300バールの範囲であり、加熱要素31が到達する温度は170°~210℃の範囲である。ステップBの時間は15秒から2分の間である。
【0101】
必要に応じて、プレスおよび/または浸炭処理装置300は、巻線4を有する巻取り工具20Xを収容座部301に移動させ、固定当接部311に載置するように構成されたローディング摺動部330を備える。
図25に示されるように、ローディング摺動部は、水平トラック331に沿って摺動可能であり、垂直方向に移動可能に構成され巻取り工具20Xを上昇させるように構成されたプラットフォームを備える。
【0102】
有利なことに、プレスおよび/または浸炭処理ステップBは、巻線4の直線部分4a、4bの寸法を再現可能にし、充填率を最大化することにより巻線をコンパクト化する。さらに、このように処理された直線部分4a、4bは、それらの間で固められ、ワイヤ14の配置が全工程にいて変化することがない。ワイヤは、規律正しく、再現可能に、マトリックス状に配置・保持され、初期巻取り時の順序を維持するため、無作為な順序でグループ化されることはない。
【0103】
記載された例では、巻線4の直線部分4a、4bは、まずプレス加工が施され、続いて浸炭処理が施されるが、一般的には、プレス加工または浸炭処理のいずれか一方、または両方を記載された順序で、または逆の順序で、若しくはプレス加工と浸炭処理を同時に行うことで、本方法を行うことができる。
【0104】
プレスおよび/または浸炭処理ステップBの後、巻線4が冷却され、直線部分4a、4bが固められると、巻線自体は、巻取り工具20Xから取り外される。スピンドル25および/または把持要素242に引っ掛けるためのスリーブによって巻取り工具20Xを支持することにより、結合装置241は(空気圧で)ロック解除される。
【0105】
こうしてワイヤクランプ26、261は、例えば二つの外部制御装置によって開かれ、コイルに出入りするワイヤ14を解放する。この時点で、巻取り工具の取り外し可能な壁24をガイドするマニピュレータ(図示せず)が、固定壁23から軸方向に離れるように移動を開始する。この移動の最初のステップにおいて、それぞれのガイド246上で摺動する角要素245は、ワイヤを緩め、巻線の取り外しを可能にするように、巻取り工具20Xの中心に向かって移動を開始する。
【0106】
したがって、取り外し可能な壁24をガイドするマニピュレータは、固定壁23から軸方向に離れる方向に移動を続け、第二のマニピュレータが、操作用座部249によって可動壁22が、固定壁24から引き出される(ピン27、231から引き出される)まで移動させる。
【0107】
この時点で、巻線4または複数の巻線4は、例えば移動システムによって巻取り工具20Xから取り外される。
【0108】
巻取り工具20X’のさらなる実施の形態を含む、
図28および
図29に示される巻線機200の代替的な実施の形態では、
図206の単一のワイヤ誘導管204を備えたワイヤ誘導装置206に代えて、ワイヤ方向づけ装置150が使用され、ワイヤ方向づけ装置150は、制御された軸によって送られてくるワイヤ14の様々なレベル間の距離を自動的に管理することを可能にする。
【0109】
ワイヤ方向づけ装置150は、複数のワイヤ誘導管152が制御され互いに独立して摺動する軸ガイド151を備えている。
【0110】
軸ガイド151は、ワイヤ誘導管152が少なくとも二つの軸に沿って移動可能となるように、ガイド153に沿って摺動する。
【0111】
各ワイヤ誘導管152は、ワイヤ14の層と交差し、実際にはワイヤ14を方向づける。
【0112】
様々な巻取りステップの間、ワイヤ誘導管152は、様々なレベルのワイヤが接触するまで互いに近接移動することができ、または各層が独立して、他層と異なるタイミングでコイルに入るように互いに離れる方向に移動可能である。
【0113】
これにより、各層は他層と干渉することなく巻取り工具20X’に独立して積層可能となる。
【0114】
必要に応じて、ワイヤ誘導管152は、ワイヤ14がすべて互いに近接していることを条件とする操作を容易にするために、互いに近接して移動する。
【0115】
必要に応じて、本実施の形態では、トラック159(ガイド、レール等)に沿って移動可能なキャリッジ158に固定されたモータ組立体157に統合された巻取りスピンドル244’によって、巻取り工具20X’を回転させる。
【0116】
図30a、
図30b、
図30cは、ここに記載される巻取り工具の第一および第二の実施の形態の両方によって得られる異なるループを例示しており、
図30aには、5本のワイヤからなる第一の層と4本のワイヤからなる第二の層の二層から形成されるループS1、S2が示されており、
図30bには、いずれも5本のワイヤから二層から形成されるループS1’、S2’が示されており、
図30Cには、5本のワイヤからなる第一の層と、4本のワイヤからなる第二の層と、5本のワイヤからなる第三の層との三層から形成されるループS1”、S2”が示されている。
【0117】
前述の図からも分かるように、丸いワイヤは自由空間を残す傾向があり、この問題を克服するために、
図31a、31b、31cに示される任意の解決策を採用してもよい。
【0118】
この任意のかつ有利な解決策によれば、巻線作成ステップAにおいて、より正確には巻取りを行う際に、より大きな断面を有するワイヤ14の接触がない自由空間(即ち、より大きな断面を有するワイヤ14間の自由空間)を、より小さな断面を有する補足的な導電ワイヤ141が占有し、各ループS1、S2に配置される。このようにして、巻き取りステップにおいて、各ループS1、S2は、互いに異なる断面のワイヤを交互に配置して形成した層からなり、巻き取られるとより大きな充填率を達成することができる。
【0119】
図32~
図40には、巻取り工具20X’の第二の実施の形態において、一つ以上の巻線4が形成された工具20X’が示されている。
【0120】
具体的には、巻取り工具20X’は、四つの一連の角度要素23xを支持する支持フレーム21x、22xを備える。一連の角度要素23xのそれぞれは、実質的に理想的な平行六面体の縁に沿って配置される。一連の角度要素23xのそれぞれは、互いに離間されて、巻線14を形成する導電ワイヤを収容する一連の巻取りチャンバ24’(
図34および
図35)を画定する。それぞれのガイド231に所望の数の角度要素23xを所望のピッチで取り付けることができる巻取り工具20X’のこの構成により、所望の数の直線部分4a、4bを有し、直線部分4a、4bが所望するピッチ距離だけ離間する巻線4を製造することができる。
【0121】
加熱装置30は、
図36および
図37に示されるように、一つ以上の好ましくは誘導加熱を行う加熱要素31を備える。これらの加熱要素31は、巻線4の直線部分4a、4bの間に挿入され、接触するか、または隣接するように形成され配置されている。直線部分4a、4b間が空いているため、巻線4が巻取り工具20X’に収容された状態で、この操作を行うことができる。
【0122】
したがって、これらの加熱要素31は、長手方向の範囲が加熱される直線部分4a、4bと実質的に同等である。
【0123】
なお、図示される実施の形態において、加熱要素31は、互いに平行な要素で略櫛形状を形成する。
【0124】
実際には、加熱要素31は、巻線の直線部分4a、4bの間に挿入され、浸炭温度まで加熱される。
【0125】
こうして、加熱要素31を取り外し、その場所に材料の熱慣性を利用してコイルをプレスするプレス装置300を挿入する時間が設けられる。
【0126】
図38および
図39に図示される実施の形態では、プレス装置300は、プレスされる直線部分4a、4bと接触するように形成された一連の傾斜面303が組み合わされたプレート301を備える。
【0127】
有利なことに、プレート301は、直線部分4a、4bの反対側に配置された補足的なカウンタプレート302に挿入されるか、または何らかの方法で機械的に結合される。この補足的なカウンタプレート302は、実際には当接部要素として機能する。
【0128】
プレート301は、スラスト装置(図示せず)によってカウンタプレート302に押し付けられる。傾斜面303は、プレート301がカウンタプレート302に向かって移動することにより、直接的な機械的相互作用により、巻線の直線部分4a、4bをコンパクト化するように構成される。
【0129】
したがって、コイルの直線部分4a、4bは、スラスト装置および適切に形成された傾斜面303の力を利用して、所望の寸法にコンパクト化される。
【0130】
これらの浸炭処理およびプレス処理は、工場での製造において必要されるサイクル時間に応じて、巻取り工具20X’の両側で交互にまたは同時に行うことができる。
【0131】
巻線4の直線部分4a、4bのみがプレスされ、および/または、熱処理を受ける一方で、非直線部分(即ち、直線部分4a、4bをつなぐ巻線4の主に湾曲部分で、巻線4の先端を形成する部分)は、後続の工程で容易に整形可能とするように処理されないので、好都合である。
【0132】
必要に応じて行われるプレスおよび/または浸炭処理ステップBの後、巻線4が冷却され、直線部分4a、4bが固められると、巻線4は巻取り工具20X、20X’から取り外すことができる。
【0133】
必要に応じて、
図41および
図42に示されるように、巻線作成ステップにおいて、一連の複数の巻線4の直線部分4a、4bが隣り合う巻線4の直線部分から所定のピッチ距離だけ間隔を空けるように、一連の複数の巻線4を同一の巻取り工具20X、20X’上で作成する場合、収容ステップに先立ち、治具2、2’上で巻線間のピッチを補正するステップが行われる。この工程では、
一連の巻線4を異なる巻線4の直線部分4a、4b間のピッチ距離を補正するように構成されたピッチ補正装置50と機械的に相互作用させる目的で、巻線を取り出し、ピッチ補正装置50に取り込み、
プライヤ51によって巻線4の直線部分4a、4b間のピッチ距離が維持されるように巻線4を変位させる。
【0134】
より詳細には、ピッチ補正装置50は、互いに平行な一連の長手方向座部55からなり、その内側に、互いに平行な長手方向ブロック56の内側により画定された巻線の直線部分4a、4bが挿入される。
【0135】
直線部分4a、4bが長手方向座部55に挿入されると、それらの間の距離、つまり直線部分4a、4b間のピッチ距離は、調整要素58(例えばネジなど)によって長手方向ブロック56の間隔を変更することで調整することができる。
【0136】
調整を行う際に、スリットを締め付け、直線部分4a、4bを固定するために、追加の調整要素57 (例えば、ネジ)も設けられる。
【0137】
必要に応じて、ピッチ補正処理中に、同じ巻線4が固定子1内、巻線4内(好ましくは直線部分4a、4bの周り)での損傷から保護する絶縁紙59を導入してもよい。
【0138】
このとき、巻線4は、前述のように、また
図2~
図5に示されるように、前述のプライヤ51と、さらに要件に従って選択された既知の装置(例えば、アーム、運動チェーンなど)とを備える移動装置(図示せず)によって、治具2、2’に配置できる状態となっている。
【0139】
図6~
図9に示されるように、本発明による方法によれば、直線ワイヤ部分4a、4bの間に複数の第一の固定子部分6を内側から(即ち、中心軸Yから外側に向かって)挿入する組み立てステップDが提供される。
【0140】
好ましい実施の形態では、第一の固定子部分6は、挿入された後、直線ワイヤ部分4a、4bと中心軸Yとの間の固定子本体10内に留まる拡大端61を含む。拡大端61の接合は、固定子10の円筒形状の内面を画定する。
【0141】
実際には、
図9に示されるように、これらの拡大端は、固定子の「磁極片」を形成する。
【0142】
第一の固定子部分6は、直線ワイヤ部分4a、4bの間に挿入される半径方向範囲部分62を有する。
【0143】
第一の固定子部分6を挿入した後(または大体的に挿入前)に、第一の固定子部分6に補足的な複数の第二の固定子部分7が、外側から(つまり中心軸Yの方向に)直線ワイヤ部分4a、4bの間に挿入される。
【0144】
好ましくは、第二の固定子部分7は、略くさび形状であり、より詳細には、挿入された後も直線ワイヤ部分4a、4bの外側に残る拡大基部71から構成され、固定子本体10の円筒形状の外面形成に寄与する。
【0145】
第一の部分6および第二の部分7は交互に挿入され、各第二の部分7は、少なくとも部分的に隣り合う第一の部分6と合致し、第一の固定子部分6と第二の固定子部分7とを接合することで、単一の固定子本体10が形成され、直線ワイヤ部分4a、4bが(
図8および
図9に示されるように)前述の第一の固定子部分6と第二の固定子部分7との間に画定される別々のセクタ3内に含まれる。実際には、第一の固定子部分6及び第二の固定子部分7は、完成した固定子本体10内の固定子ティースを形成する。
【0146】
まず全ての第一の部分6を挿入したあとで、全ての第二の部分7を挿入することが好ましいが、固定子部分6、7は設計の決定に基づいていかなる順序で挿入されてもよい。一つずつ挿入してもよく、まず全ての第一のセクタ6を同時に、その後全ての第二のセクタを(またはこの逆の順で)挿入してもよく、交互に挿入してもよい。
【0147】
固定子部分6、7の挿入は、適切な工業用マニピュレータを用いて行われる。
【0148】
固定子部分6、7の形状は制限されておらず、図に示されている形状は、実際のところ、一例に過ぎない。一般的に、形状はくさび形状であるが、角部およびアスペクト比は、要件に応じて異なる実施の形態間で変化してもよい。
【0149】
この時点で、固定子本体10は連続する既知の後続ステップに送ることができる。この既知の後続ステップには、固定子本体10のプレスおよび溶接すること、固定子ケースに固定子本体10を直接挿入すること、巻線ヘッド(セクタ3から出ているワイヤ14の非直線部分41、42)を拘束すること、これらを成形および/またはプレスすること、固定子本体を含浸すること、などが含まれる。
【0150】
固定子本体10の外径には、要求に応じて特定のテンプレートを作成することができる。例えば、アンダーカットのあるキャビティや略半円形のニッチなどが挙げられる。
【0151】
治具2、2’は、後続のステップが行われる前に取り除かれていることが好ましい。
【0152】
第一の特定の実施の形態では、固定子部分6、7を挿入後、好ましくはレーザによる溶接工程によって、これらを互いに固定する。
【0153】
別の実施の形態では、固定子部分6、7は、外側リングを挿入し、これを接合することによって、所定の位置に機械的にロックされる。
【0154】
尚、第一の固定子部分6から構成されるティース61内側の拡大端(「磁極片」)は、騒音現象、特にトルクリップルおよび効率損失を最小限に抑えるように、最小限の所望距離まで互いに近接するように移動できる。
【0155】
したがって、組み立てられるセクタ3の総数を削減可能であるので有利である。
【0156】
図43は、固定子部分6、7の製造に関する可能なブランキング構造を示している。各固定子部分6、7は、事実、所望の固定子高さに達するまで、適切な数の積層6’、7’を積層することによって作られる。
【0157】
図43に示されるブランキング構造は、処理廃棄物を最小限に抑えることを可能にする。これは、
図43を円形形状の固定子全体の可能な金型と比較することで容易に理解できる。この場合、外縁に沿った余分な材料(多くの場合、中央の材料も)は廃棄される。
【0158】
さらに、円形固定子全体をブランキングするために構成された機械は、「一度に」操作を実行するためにかなりの大きさでなければならない。一方、
図43のブランキングレイアウトのシンプルさは、使用されるブランキングマシンのサイズが小さいことを暗示する。
【0159】
両方の要因、即ち、廃棄物の最小化とブランキングマシンの小型化は、総製造コストの最適化につながる。
【0160】
したがって、本発明による方法の第一の利点は、既知の技術に対して容易に作成でき、経済的に競争力があることにある。
【0161】
本発明による方法のさらなる利点は、固定子内部のセクタの充填率を向上させることにある。
【0162】
本出願人は、他の要因がすべて等しい場合、本発明の方法によって、充填率が15%から30%の間のパーセンテージ値増加させることが可能であると計算した。
【0163】
結果として、本明細書に記載された方法で直接得られた固定子を使用して製造された電気モータは、従来の固定子を使用して製造されたモータと比較して、他のすべての条件が等しい場合、特に効率、振動、騒音の点で優れた性能を達成することができる。
【0164】
以下の表1は、本出願人が実施したシミュレーションの結果であり、同等の特性を有する二つのモータの効率の計算であり、一方はDHDと称する本明細書に記載の方法で直接得られた固定子を組み込んだものであり、他方は従来の導電ワイヤの巻線を挿入する方法で得られた固定子を組み込んだものであり、モータの回転数が1分あたり0~10000回転の範囲内である。
【0165】
【0166】
表1は、モータの1分当たりの回転数(RPM)を代表する三つの値、即ち、3250RPM、7000RPM、10000RPMにおいて、-0.7%から+0.7%の間の不確実性も考慮して、DHDモータが著しく高い効率を提供することを示している。
【0167】
事実、3250RPMではDHDモータの効率は0.91%を超え、7000RPMでは1.48%を超え、1000RPMでは2.11%を超えている。表1に含まれる情報を
図44のグラフに示す。
【0168】
本発明による方法のさらなる利点は、固定子内のトルクリップル(トルクリップルおよびコギング)現象を低減することにある。以下の表2は、本出願人が実施したシミュレーションの結果であり、同等の特性を有する二つのモータのトルクリップルの計算であり、一方はDHDと称する本明細書に記載の方法で直接得られた固定子を組み込んだものであり、他方は従来の導電ワイヤの巻線を挿入する方法で得られた固定子を組み込んだものであり、モータの回転数が1分あたり0~10000回転の範囲内である。
【0169】
【0170】
表2は、モータの1分当たりの回転数(RPM)を代表する二つの値、即ち、3250RPM、10000RPMにおいて、-6%から+6%の間の不確実性も考慮して、DHDモータのトルクリップルが著しく小さなることを示している。
【0171】
事実、3250RPMでは、Nmで測定されたDHDモータのトルクリップルは8.36%に等しいパーセンテージ値未満であり、1000RPMではDHDモータのトルクリップルは18.49%に等しいパーセンテージ値未満である。
【0172】
【国際調査報告】