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特表2024-516035埋込型抵抗ヒータを有する金属ヒータアセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】埋込型抵抗ヒータを有する金属ヒータアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/12 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
H05B3/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567902
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 US2022027576
(87)【国際公開番号】W WO2022235728
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/183,932
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501162454
【氏名又は名称】ワットロー・エレクトリック・マニュファクチャリング・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バトナガー、アシシュ
(72)【発明者】
【氏名】エリオット・ブレント
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP20
3K092QA03
3K092QA05
3K092QB02
3K092QB36
3K092QB80
3K092SS50
3K092TT03
3K092VV22
(57)【要約】
金属ヒータは、溝を有する金属基板と、溝内に配置された抵抗ヒータと、抵抗ヒータの上に配置され、溝を実質的に充填する充填金属とを含み、充填金属は、金属基板よりも低い融解温度を有する。充填金属はインジウムであってよく、インジウムを覆って金属基板にカバープレートが接合され得る。金属ヒータを製造する方法および金属ヒータを動作させる方法も提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝が形成された金属基板と、
前記溝内に配置された抵抗ヒータと、
前記抵抗ヒータの上に配置され、前記溝を実質的に充填する充填金属であって、前記金属基板よりも低い融解温度を有する充填金属と
を備える金属ヒータ。
【請求項2】
前記抵抗ヒータは、層状ヒータ、ケーブルヒータ、管状ヒータ、カートリッジヒータ、およびホイルヒータから成るグループから選択される、請求項1に記載の金属ヒータ。
【請求項3】
前記抵抗ヒータはカートリッジヒータである、請求項1に記載の金属ヒータ。
【請求項4】
前記抵抗ヒータはケーブルヒータである、請求項1に記載の金属ヒータ。
【請求項5】
前記金属基板は、金属または金属合金で形成される、請求項1に記載の金属ヒータ。
【請求項6】
前記充填金属はインジウムである、請求項1に記載の金属ヒータ。
【請求項7】
前記金属基板に固定され、前記充填金属の上に配置されたカバープレートをさらに備える、請求項6に記載の金属ヒータ。
【請求項8】
複数の溝と、前記複数の溝内に配置された対応する複数の抵抗ヒータとをさらに備える、請求項1に記載の金属ヒータ。
【請求項9】
前記溝は、円弧形状の内部輪郭を画定する、請求項1に記載の金属ヒータ。
【請求項10】
単一の溝内に配置された複数の抵抗ヒータをさらに備える、請求項1に記載の金属ヒータ。
【請求項11】
前記複数の抵抗ヒータの隣接する抵抗ヒータの間に配置された少なくとも1つのスペーサをさらに備える、請求項10に記載の金属ヒータ。
【請求項12】
前記充填金属の量は、前記充填金属の温度による体積変化、前記抵抗ヒータのサイズ、および前記溝のサイズに基づいて計算される、請求項1に記載の金属ヒータ。
【請求項13】
前記充填金属によって実質的に充填された少なくとも1つの追加の溝をさらに備え、前記少なくとも1つの追加の溝は抵抗ヒータを含まない、請求項1に記載の金属ヒータ。
【請求項14】
対応する複数の溝内に配置された複数の抵抗ヒータの層をさらに備え、前記充填金属は、前記複数の抵抗ヒータの上に配置され、前記複数の溝を実質的に充填する、請求項1に記載の金属ヒータ。
【請求項15】
加熱素子を形成するための方法であって、
金属基板に溝を形成することと、
前記溝内に抵抗ヒータを配置することと、
前記溝を、前記金属基板よりも低い融解温度を有する溶融充填金属で充填することと、
前記溝が凝固した充填金属で充填され、前記抵抗ヒータが前記凝固した充填金属内に埋め込まれるように、前記金属基板および前記溶融充填金属を冷却することと、
前記凝固した充填金属を覆って前記金属基板にカバープレートを固定することと
を備える方法。
【請求項16】
前記溝を溶融充填金属で充填する前に、前記金属基板を加熱することをさらに備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記金属基板および溶融充填金属は、前記凝固した充填金属を覆って前記金属基板に前記カバープレートを接合する前に、室温まで冷却される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記金属基板に前記カバープレートを接合することは、前記金属基板に前記カバープレートをろう付けまたは溶接することを備える、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記溶融充填金属はインジウムである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
ヒータを動作させる方法であって、
金属ヒータに電力を供給することであって、前記金属ヒータは、
溝が形成された金属基板と、
前記溝内に配置された抵抗ヒータと、
前記抵抗ヒータの上に配置され、前記溝を実質的に充填する充填金属であって、前記金属基板よりも低い融解温度を有する充填金属と
を備えることと、
前記抵抗ヒータが前記充填金属を融解するために十分な熱を供給するように電力を増加させ、前記充填金属は、前記金属基板が固体に保たれたまま、前記ヒータの動作中に固体状態から液体状態に変化することと
を備える方法。
【請求項21】
前記充填金属はインジウムである、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年5月4日に出願された米国仮特許出願第63/183,932号の優先権および利益を主張するものである。上記出願の開示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
(分野)
本開示は、加熱素子が埋め込まれた金属ヒータに関する。
【背景技術】
【0003】
本項の記載は、単に本開示に関連する背景情報を提供するものであり、先行技術を構成するものではない。
【0004】
金属ヒータは、抵抗加熱によって標的および/または環境に熱を提供するために様々な用途で使用される。そのような抵抗ヒータの1つはカートリッジヒータであり、一般に、セラミックコアの周囲に巻かれた抵抗線加熱素子を含む。従来の適用例では、セラミックコアは、電源ピンおよび端子ピンが配置された2つの長手方向ボアを画定する。抵抗線の第1の端部は一方の電源ピンに電気接続され、抵抗線の他方の端部は他方の電源ピンに電気接続される。セラミックコアアセンブリは、開放端および閉鎖端、またはいくつかのアセンブリでは2つの開放端を有する管状金属シース内に配置され、シースと抵抗線/コアアセンブリとの間に環状空間を形成する。たとえば酸化マグネシウム(MgO)などの絶縁材料がシースの開放端に流し込まれ、抵抗線とシースの内側表面との間の環状空間を充填する。
【0005】
シースの開放端(複数も可)は、たとえばポッティング化合物および/または個別のシール部材で封止される。その後、シースアセンブリは、シースの直径を小さくし、MgOを収縮および圧縮してセラミックコアを少なくとも部分的に押し潰すために、たとえば加締めまたは他の適切なプロセスなどによって収縮または圧縮されてよく、それによってピンに対してコアが潰れて良好な電気接触および熱伝達が確実になる。圧縮されたMgOは、抵抗線加熱素子とシースとの間に比較的十分な熱伝達経路を提供し、また、抵抗線加熱素子からシースを電気的に絶縁する。このようにして、抵抗線加熱素子を介して発生した熱は、金属ヒータの本体に伝達され、金属ヒータの本体全体が所望の温度で動作することを可能にする。
【0006】
金属ヒータの用途は、半導体デバイス製造における薄膜処理を含む。たとえば化学蒸着(CVD)、物理蒸着(PVD)、および原子層堆積(ALD)などの薄膜処理は、処理中の基板を加熱するために金属ヒータを使用し得る。非常に小さな温度変化が、摂氏数分の1でさえも、そのような膜処理の結果に影響を及ぼし得る。したがって、金属ヒータのこれらの用途において、金属ヒータの本体全体で温度が正確に繰り返し制御されることが重要である。
【0007】
半導体デバイス製造に使用するための金属ヒータに関するこれらの問題は、本開示によって対処される。
【発明の概要】
【0008】
本項は、本開示の一般的な概要を提供するものであり、その全範囲またはその特徴の全ての包括的な開示ではない。
【0009】
本開示の一形態において、金属ヒータは、溝が形成された金属基板と、溝内に配置された抵抗ヒータと、抵抗ヒータの上に配置され、溝を実質的に充填する充填金属とを備え、充填金属は、金属基板よりも低い融解温度を有する。
【0010】
個々に、または任意の組み合わせで実装され得る、この金属ヒータの変形例において、抵抗ヒータは、層状ヒータ、ケーブルヒータ、管状ヒータ、カートリッジヒータ、およびホイルヒータから成るグループから選択され、抵抗ヒータはカートリッジヒータであり、抵抗ヒータはケーブルヒータであり、基板は金属または金属合金で形成され、充填金属はインジウムであり、カバープレートは金属基板に固定され、充填金属の上に配置され、基板には複数の溝があり、対応する複数の抵抗ヒータが複数の溝内に配置され、溝は、円弧形状の内部輪郭を画定し、複数の抵抗ヒータが単一の溝内に配置され、複数の抵抗ヒータの隣接する抵抗ヒータの間に少なくとも1つのスペーサが配置され、充填金属の量は、充填金属の温度による体積変化、抵抗ヒータのサイズ、および溝のサイズに基づいて計算され、少なくとも1つの追加の溝が充填金属によって実質的に充填され、少なくとも1つの追加の溝は抵抗ヒータを含まず、複数の抵抗ヒータの層が対応する複数の溝内に配置され、充填金属は、複数の抵抗ヒータの上に配置され、複数の溝を実質的に充填する。
【0011】
本開示の別の形態によると、加熱素子を形成するための方法は、金属基板に溝を形成することと、溝内に抵抗ヒータを配置することと、金属基板よりも低い融解温度を有する溶融充填金属で溝を充填することと、溝が凝固した充填金属で充填され、抵抗ヒータが凝固した充填金属内に埋め込まれるように、金属基板および溶融充填金属を冷却することと、凝固した充填金属を覆って金属基板にカバープレートを固定することとを含む。
【0012】
個々に、または任意の組み合わせで実施され得る、この方法の変形例において、金属基板は、溝を溶融充填金属で充填する前に加熱され、金属基板および溶融充填金属は、凝固した充填金属を覆って金属基板にカバープレートを接合する前に室温まで冷却され、金属基板にカバープレートを接合することは、金属基板にカバープレートをろう付けまたは溶接することを備え、溶融充填金属はインジウムである。
【0013】
本開示のまた別の形態において、ヒータを動作させる方法は、金属ヒータに電力を供給することを備え、金属ヒータは、溝が形成された金属基板と、溝内に配置された抵抗ヒータと、抵抗ヒータの上に配置され、溝を実質的に充填する充填金属とを備え、充填金属は、金属基板よりも低い融解温度を有する充填金属とを備える。金属ヒータへの給電は、抵抗ヒータが充填金属を融解するために十分な熱を供給するように増加され、充填金属は、金属基板が固体に保たれたまま、ヒータの動作中に固体状態から液体状態に変化する。この方法の1つの変形例において、充填金属はインジウムである。
【0014】
さらなる適用領域は、本明細書に提供される説明から明らかになる。この説明および具体例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することは意図されないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示が適切に理解され得るように、以下、添付図面を参照しながら、例として与えられた本開示の様々な形態が説明される。
【0016】
図1図1は、本開示の教示に従って構成されたヒータアセンブリの上面図である。
【0017】
図2図2は、図1のセクション2-2の断面図である。
【0018】
図3A図3Aは、図1のヒータアセンブリを形成するステップを示す。
【0019】
図3B図3Bは、図1のヒータアセンブリを形成する別のステップを示す。
【0020】
図3C図3Cは、図1のヒータアセンブリを形成するさらに別のステップを示す。
【0021】
図3D図3Dは、図1のヒータアセンブリを形成するさらに別のステップを示す。
【0022】
図4A図4Aは、本開示の教示に係る長方形状の溝の一形態に配置された抵抗ヒータの断面図である。
【0023】
図4B図4Bは、長方形状の別の形態に配置された抵抗ヒータの断面図である。
【0024】
図5A図5Aは、本開示の教示に係る角度付きの溝の一形態に配置された抵抗ヒータの断面図である。
【0025】
図5B図5Bは、角度付きの溝の別の形態に配置された抵抗ヒータの断面図である。
【0026】
図6図6は、本開示の教示に係る台形状の溝に配置された抵抗ヒータの断面図である。
【0027】
図7A図7Aは、本開示の教示に係る長円形状の溝の一形態に配置された抵抗ヒータの断面図である。
【0028】
図7B図7Bは、長円形状の溝の別の形態に配置された抵抗ヒータのペアの断面図である。
【0029】
図7C図7Cは、抵抗ヒータのペアの間に充填材インサートを有する長円形上の溝の別の形態に配置された抵抗ヒータのペアの断面図である。
【0030】
図8図8は、本開示に係るヒータを製造する方法を示すフローチャートである。
【0031】
図9図9は、本開示の教示に従って構成されたヒータアセンブリの別の形態の断面図である。
【0032】
本明細書で説明される図面は、例示のみを目的としており、いかなるようにも本開示の範囲を限定することは意図されていない。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の説明は、本質的に単なる例示であり、本開示、適用例、または使用を限定することを意図したものではない。図面を通して、対応する参照番号は、同様または対応する部分および特徴を示すことを理解すべきである。
【0034】
ここで図1および図2を参照すると、本開示の教示に係るヒータアセンブリ10(たとえば台座ヒータアセンブリ)が示される。ヒータアセンブリ10は、少なくとも1つの溝110を有する基板100と、基板100に固定され溝110の上に配置されたカバープレート160(明確性のために図1では省略)とを含む。一形態において、図1に示すように、溝110は図示のように螺旋形状を画定する。他の形態では、溝110は、例として直線状、蛇行状、および同心円状の複数の溝などの異なる形状を有する。
【0035】
特に図2を参照すると、溝110は、基板100の上(+z方向)面102から下(-z方向)面104に延び、抵抗ヒータ150は、溝110内に配置される。たとえば、一形態において、抵抗ヒータ150は、溝110の底部(-z方向)またはその付近に配置される。ただし、抵抗ヒータ150は、本開示の範囲内に収まりながら、溝110内の任意の場所に配置され、場合によっては溝110の上に突出してもよい。低融解温度の金属または合金112(本明細書において単に「充填金属112」と称される)も溝110内に配置され、抵抗ヒータ150は、充填金属112内に配置され、または埋め込まれる。カバープレート160は、図示のように、上面102および溝110にわたって延びる。いくつかの変形例において、カバープレート160は、基板100に固定(たとえば溶接またはろう付け)される。ただし、カバープレート160は任意選択であることを理解すべきである。
【0036】
充填金属112に関して、金属および金属合金は通常、温度範囲にわたり融解する。したがって、本明細書で使用される「融解温度」という表現は、充填金属112が固体から液体に変化し始める温度から金属が完全に液体化/溶融する温度までの温度範囲を指す。したがって、融解温度は、充填金属112に関する温度範囲であってよく、必ずしも特定の単一の温度に限定されない。
【0037】
基板100および/またはカバープレート160が作られる材料の非限定的な例は、鋼、ステンレス鋼、およびアルミニウム合金などを含む。また、抵抗ヒータ150の非限定的な例は、ケーブルヒータ、カートリッジヒータ、裸線加熱素子、コイルヒータ、管状ヒータ、層状ヒータ、およびホイルヒータなどを含む。さらに、本開示の教示は、単一の抵抗ヒータ150だけでなく、ゾーン内に配置され独立して制御され得る複数の抵抗ヒータ150も含むことを理解すべきである。また、本開示の範囲内に収まりながら、複数の種類の抵抗ヒータ150がヒータアセンブリ10において用いられてよい。
【0038】
ここで図3A~3Dを参照すると、ヒータアセンブリ10を形成する方法20が示される。方法20は、図3Aに示すように、溝110内に抵抗ヒータ150を配置することを含む。溝110は、たとえば溝切ナイフによる切削、穿孔、研削、フライス加工、旋盤加工など、当技術分野で知られている方法に従って形成され得る。図に示すように、溝110のサイズ(たとえば直径)は、抵抗ヒータ150の直径または外寸よりも大きい(超える)。本開示の一形態において、溝110のサイズは、抵抗ヒータ150の直径よりも少なくとも100%大きい。また少なくとも1つの形態において、溝110のサイズは、抵抗ヒータ150の直径よりも少なくとも200%大きく、たとえば抵抗ヒータ150の直径よりも約300%、約400%、約500%、約600%、約700%、または約1000%大きい。
【0039】
図3Bを参照すると、方法20は、図3Cに示すように、液体充填金属112aの上面113が所望の高さ(z方向)にあるように溝110に液体充填金属112aを流し込むことを含む。方法20は、図3Dに示すように、カバープレート160を基板100に固定することも含む。一形態において、溝110に抵抗ヒータ150が配置された基板100は、液体充填金属112aを溝110に流し込む前に加熱される。少なくとも1つの変形例において、溝110に抵抗ヒータ150が配置された基板100は、液体充填金属112aの融解温度と概ね等しい、またはそれより高い温度まで加熱される。たとえば1つの変形例では、液体充填金属112aは、液体インジウム(T(melt)≒157℃)であり、溝110に抵抗ヒータ150が配置された基板100は、液体インジウムが溝110に流し込まれる前に157℃以上(すなわち超過)まで加熱される。基板100を加熱した結果、基板100の体積が膨張し、溝110の容積(およびサイズ)が拡大する。したがって、液体充填金属112aで充填された溝110が冷却すると、液体充填金属112aの凝固収縮は、基板100の体積収縮によって少なくとも部分的に受け入れられる。
【0040】
一形態において、溝110は、液体充填金属112aの上面113が基板100の上面102と概ね同じ高さ(z方向)または同一平面(x-y平面)上にあるように、液体充填金属112aで充填される。また、液体充填金属112aは、抵抗ヒータ150が充填金属112内に埋め込まれるように凝固する。抵抗ヒータ150は、充填金属112に完全に包囲され、または埋め込まれ、あるいは充填金属112に部分的に包囲され、または埋め込まれてよい。
【0041】
充填金属112は、抵抗ヒータ150と基板100との物理的接触に比べて向上した熱伝達媒体として機能することを理解すべきである。たとえば、概ね同じサイズの溝に配置された加熱素子を有するヒータアセンブリは、加熱素子の長さに沿って加熱素子と基板との間に隙間/空隙(たとえばエアギャップ)をもたらし得る。また、そのような隙間は、加熱素子と基板との間の熱伝達を低下させ、基板の望ましくない不均一な加熱を生じさせる。対照的に、溝110内および抵抗ヒータ150の上に液体充填金属112aを流し込むことにより、抵抗ヒータ150と充填金属112との間、また充填金属112と基板100との間に直接的かつ密な接触がもたらされる。すなわち、充填金属112は、抵抗ヒータ150と基板100との間に隙間を存在させずに金属同士の接触を向上させる。したがって、以下でさらに詳しく説明される本開示の教示に係るヒータアセンブリ10により、向上した熱伝達および向上した熱伝達均一性が提供される。
【0042】
充填金属112の非限定的な例は、インジウム(T(melt)≒157℃)、スズ(T(melt)≒232℃)、亜鉛(T(melt)≒420℃)、およびそれらの合金などを含む。液体充填金属112aは通常、凝固中に体積の減少(収縮)を示すことを理解すべきである。例えば、インジウムは、約4体積%の凝固収縮を示す。また、そのような凝固収縮は、充填金属112の上面113が基板100の上面102に対して所望の高さ(z方向)になるように液体充填金属112aを溝に流し込む際に考慮されることも理解すべきである。いくつかの変形例では、液体充填金属112aの凝固収縮は、上面113が基板100の上面102と略平面状になるように考慮される。他の変形例では、液体充填金属112aの凝固収縮は、充填金属112の上面113が基板100の上面102より所定の距離だけ下(-z方向)にあるように考慮される。また少なくとも1つの変形例において、液体充填金属112aの凝固収縮は、充填金属112の上面113が基板100の上面102より所定の距離だけ上(+z方向)にあるように考慮される。そのような変形例において、上面113は、基板の上面102および充填金属112にわたる平面がもたらされるように研削によって低く(-z方向)され得る。
【0043】
図2および図3A~3Dは、円弧形状の内部輪郭(たとえば円形または半円形状の内部輪郭)を有する溝110を示すが、他の形状の内部輪郭を有する溝を有するヒータアセンブリが本開示の教示に含まれる。たとえば、図4A~4Bは、底部に抵抗ヒータ150が位置し、内部に充填金属112が配置された長方形状の溝110の例を示す。
【0044】
図5A~5Bを参照すると、底部に抵抗ヒータ150が位置し、内部に充填金属112が配置された角度付きの溝110が示される。
【0045】
図6を参照すると、底部に抵抗ヒータ150が位置し、内部に充填金属112が配置された台形状の溝110が示される。
【0046】
図7A~7Cを参照すると、長円形状の溝110が示される。図7Aにおいて、抵抗ヒータ150は長円形状の溝110の底部に位置し、充填金属112は長円形状の溝110内に配置される。図7Bおよび図7Cにおいて、抵抗ヒータ150のペアが長円形状の溝110の底部に位置し、液体充填金属112aは、長円形上の溝に流し込まれ、充填金属112を形成する。図7Cに示す変形例では、長円形状の溝110内で抵抗ヒータ150のペアの間にスペーサまたはインサート115が配置され、液体充填金属112aは、インサート115と溝110の内側表面との間の2つの個別の空洞に流し込まれる。したがって、本開示の教示に従って、複数の抵抗ヒータ150がスペーサの有無にかかわらず単一の溝110内に配置され得る。また、抵抗ヒータ150は本明細書に示すように溝110の底部に位置する必要はなく、液体充填金属112aが溝(複数も可)110に流し込まれる間、溝110内の任意の位置で定位置に保持され得る。
【0047】
図8を参照すると、ヒータ(たとえばヒータアセンブリ10など)を形成するための方法40は、410において金属基板(たとえば基板100など)に溝(たとえば溝110など)を形成することと、420において溝内に抵抗ヒータ(たとえば抵抗ヒータ150など)を配置することとを含む。430において、金属基板は、たとえば充填金属がインジウムである場合は約157℃以上まで加熱され、440において、溶融充填金属で溝が充填される。450において、溶融充填金属を凝固させるために、金属基板および溶融充填金属は室温まで冷却される。その後、金属基板にカバープレートが固定され得る(不図示)。あるいは、カバープレートなしで既存の溝を埋めるために充填金属が使用され得る。この場合、溝は金属基板内に配置され、または埋め込まれ、溝の端部(複数も可)は、溝を埋めた後に封止される。これらの変形例および他の変形例は、本開示の範囲内に収まるものと解釈すべきである。
【0048】
本開示の別の形態によると、ヒータアセンブリ10(本明細書において「金属ヒータ」とも称される)を動作させる方法は、金属ヒータ10に電力を供給することと、抵抗ヒータ150が充填金属112を融解するために十分な熱を供給するように電力を増加させることとを含み、充填金属112は、金属基板100が固体に保たれたまま、ヒータ10の動作中に固体状態から液体状態に変化する。したがって、ヒータアセンブリ10の動作中、充填金属112は融解することによって任意の空隙を満たし、体積が膨張して、抵抗ヒータ150から金属基板100への熱伝達を高める。
【0049】
充填金属112は、本開示の範囲内に収まりながら、溝110を完全に充填する必要はないことを理解すべきである。充填金属112の材料特性に基づいて、温度による体積変化は、動作中の体積が抵抗ヒータ150を完全に包囲するか、または熱伝達の改善に十分な程度包囲するのに足りるように計算され得る。このアプローチでは、動作中に抵抗ヒータ150を十分に包囲するために必要な充填金属112の量を計算するために、充填材料112の温度による体積変化、抵抗ヒータ150のサイズ、および溝110のサイズが考慮される。あるいは、充填金属112の体積が固定される場合、抵抗ヒータ150を十分に包囲するための溝110のサイズが計算され得る。
【0050】
ここで図9を参照すると、金属ヒータの別の形態が示され、一般に参照番号200で示される。この形態では、複数の「層状」の埋込型抵抗ヒータ210が金属基板230(または図示されない互いに接合された複数の個別の基板)の溝220内に配置される。金属ヒータ200は、上述したように充填金属240も含み、これは、金属基板230よりも低い融解温度を有する。この形態において、抵抗ヒータ210の層は、改善された温度均一性を提供するために、図示するようにX軸に沿って互い違いの構成で配置され、Z軸に沿って層状である。抵抗ヒータ210および溝220のこの配置は、単に例示であり、本開示の範囲内に収まりながら、任意の数の層および位置の抵抗ヒータ210および溝220が実装され得ることを理解すべきである。さらに、金属ヒータ200は一般に、本開示の範囲内に収まりながら、上述したような特徴のいずれかを個々に、または任意の組み合わせで含んでよい。たとえば、この形態では、金属ヒータ200の上下の両方にカバープレート250が設けられる。
【0051】
本明細書で特に明示されない限り、機械/熱特性、組成割合、寸法および/または公差、または他の特徴を示す全ての数値は、本開示の範囲を説明する上で「約」または「おおよそ」という言葉で修飾されるものとして理解すべきである。この修飾は、工業的実施、材料、製造、および組立ての公差、および試験性能を含む様々な理由により所望される。
【0052】
第1、第2、第3などの用語は、様々な要素、構成要素、領域、層、および/または部分を説明するために使用され得るが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/または部分は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、および/または部分を別の要素、構成要素、領域、層、および/または部分と区別するためだけに使用され得る。たとえば「第1」、「第2」、および他の数的用語などの用語は、本明細書で使用される場合、文脈によって明示されない限り、順序や序列を示唆するものではない。したがって、第1の要素、構成要素、領域、層、または部分は、例示的な形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、または部分と称されてもよい。さらに、要素、構成要素、領域、層、または部分は、「第1の」要素、構成要素、領域、層、または部分と称される要素、構成要素、領域、層、または部分を必要とすることなく、「第2の」要素、構成要素、領域、層、または部分と称されてよい。
【0053】
たとえば「内側」、「外側」、「下」、「下方」、「下側」、「上方」、「上側」などの空間相対的用語は、本明細書において、図に示すような1つの要素または特徴と別の要素(複数も可)または特徴(複数も可)との関係を表す説明を容易にするために使用され得る。空間相対的用語は、図に示す向きに加えて、使用中または動作中のデバイスの異なる向きを包含することが意図され得る。たとえば、図内のデバイスが反転された場合、他の要素または特徴の「下」または「下側」と説明された要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、例示的な「下」という用語は、上下の向きの両方を包含し得る。デバイスは、他の向き(90度回転した向きまたは他の向き)であってよく、本明細書で使用される空間相対的な記述語はそれに応じて解釈される。
【0054】
本明細書で使用される場合、A、B、およびCの少なくとも1つという表現は、非排他的論理和を用いる論理的(AまたはBまたはC)を意味するものとして解釈すべきであり、「Aの少なくとも1つ、Bの少なくとも1つ、およびCの少なくとも1つ」を意味すると解釈すべきではない。
【0055】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な形態を説明することのみが目的であり、限定的であることは意図されていない。単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈によって例外が明示されない限り、複数形も同様に含むことが意図され得る。「含む」および「有する」という用語は包括的であり、したがって、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を明示するが、1または複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。本明細書で説明される方法のステップ、プロセス、および動作は、実行の順序として具体的に識別されない限り、必ずしも説明または図示された特定の順序での実行を必要とすると解釈されるものではない。また、追加または代替のステップが用いられ得ることも理解すべきである。
【0056】
本開示の説明は、本質的に単なる例示であるため、本開示の本質から逸脱しない変形例は、本開示の範囲内であることが意図されている。そのような変形例は、本開示の主旨および範囲からの逸脱とみなされるものではない。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
【国際調査報告】