(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-11
(54)【発明の名称】ポリアミド及びガラス繊維に基づく組成物並びに医療分野におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240404BHJP
C08L 77/02 20060101ALI20240404BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L77/02
C08K7/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567944
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 FR2022050828
(87)【国際公開番号】W WO2022234223
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ノエル, アメリ
(72)【発明者】
【氏名】ルアス, フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】サバード, マチュー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL011
4J002CL01W
4J002CL01X
4J002CL031
4J002CL03W
4J002CL03X
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD017
4J002FD027
4J002FD037
4J002FD077
4J002FD097
4J002FD137
4J002FD167
4J002FD177
4J002GB00
4J002GB01
(57)【要約】
本発明は、成形組成物であって、重量で、
a)20%~60%、特に20%~50%、25%~39.9%の、窒素原子あたりの炭素原子数が9以上、特に10以上である少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
前記少なくとも1つのポリアミドが、20°Cの温度でISO規格307:2007に従って決定される、1.3以下、特に1.25以下の溶液中の固有粘度を有している、ポリアミドと、
b)40%~75%のガラス繊維、特に50%~75%、特に60%~70%のガラス繊維と、
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の、少なくとも1つの添加剤と、を含み、
前記組成物の各成分の割合の合計が100%に等しい、成形組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形組成物であって、重量で、
a)20%~60%、特に20%~50%、特に25%~39.9%の、窒素原子あたりの炭素原子数が9以上、特に10以上である少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
前記少なくとも1つのポリアミドが、20°Cの温度でISO規格307:2007に従って決定される、1.3以下、特に1.25以下の溶液中の固有粘度を有している、長鎖脂肪族ポリアミドと、
b)40%~75%のガラス繊維、特に50%~75%、特に60%~70%のガラス繊維であって、
前記ガラス繊維が、円形断面の短ガラス繊維であり、120~350μmの繊維長を有している、ガラス繊維と、
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の、少なくとも1つの添加剤と、を含み、
前記組成物の各成分の割合の合計が100%に等しい、成形組成物。
【請求項2】
少なくとも2つの長鎖脂肪族ポリアミドが組成物中に存在することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
長鎖脂肪族ポリアミドが、以下:
少なくとも1つのC
9~C
18、優先的にはC
10~C
18、特にC
10~C
12アミノ酸、又は
少なくとも1つのC
9~C
18、優先的にはC
10~C
18、特にC
10~C
12ラクタム、又は
少なくとも1つのC
4~C
36、優先的にはC
6~C
18、優先的にはC
6~C
12、より優先的にはC
10~C
12ジアミンCaの少なくとも1つの脂肪族ジアミンCaと、少なくとも1つのC
4~C
36、優先的にはC
6~C
18、優先的にはC
6~C
12、より優先的にはC
10~C
12ジカルボン酸Cb、又はそれらの混合物の、
重縮合によって得られることを特徴とする、請求項1及び2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
長鎖脂肪族ポリアミドが、以下:
少なくとも1つのC
9~C
18、優先的にはC
10~C
18、特にC
10~C
12アミノ酸、又は
少なくとも1つのC
9~C
18、優先的にはC
10~C
18、特にC
10~C
12ラクタムの、
重縮合によって得られることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記長鎖ポリアミドが、PA1010、PA1012、PA1212、PA11及びPA 12、特にPA11及びPA12から選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記長鎖ポリアミドがPA11及びPA12から選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの添加剤が、充填剤、染料、安定剤、可塑剤、界面活性剤、核形成剤、顔料、光沢剤、抗酸化剤、潤滑剤、難燃剤、天然ワックス、レーザマーキング用添加剤、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
医療分野のための物品の製造のための、特に単回又は複数回使用のための、請求項1~7のいずれか一項で定義される組成物の使用。
【請求項9】
医療分野のための物品が外科用器具であることを特徴とする、請求項8に記載の組成物の使用。
【請求項10】
蒸気滅菌後の物品が、タイプ1A試験標本で決定される、滅菌前の断面と比較して3%未満の断面の変動を示すことを特徴とする、請求項9に記載の組成物の使用。
【請求項11】
物品がガンマ線滅菌に対して非常に良好な耐性を示すことを特徴とする、請求項9に記載の組成物の使用。
【請求項12】
蒸気滅菌後の物品が、タイプ1A試験標本に対してISO規格527:2012に従って決定される、滅菌前の破断応力と比較して20%未満の応力の変動を示すことを特徴とする、請求項10に記載の組成物の使用。
【請求項13】
物品が射出成形によって製造されることを特徴とする、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか一項で定義される組成物を用いて射出成形することによって得られる物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド及びガラス繊維に基づく成形組成物、並びに医療分野におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
医療器具及び外科用器具は、従来、金属製であり、特に器具(縫合部)に付着して乾燥する外科残留物、又は使用後の器具上の血液、膿、並びに組織及び骨の残留物の存在に関して、腐食を避けるために慎重に維持されなければならない。
【0003】
それらはまた、再使用できるようにするために完全に滅菌されなければならない。
【0004】
プラスチック材料(又は成形組成物)で作られた使い捨て又は再使用可能な医療器具及び外科用器具が、現在ますます市場に出てきている。
【0005】
しかしながら、プラスチック材料で作られたこれらの器具の剛性は、前記プラスチック材料が金属の代わりであるため、高くなければならない。したがって、プラスチック材料は、高い弾性率及び高い応力を示さなければならない。
【0006】
このプラスチック材料はまた、これらの器具を製造するために、射出成形プロセスによって、特に、低い成形温度(例えば、<100°C)で容易に加工可能でなければならない。
【0007】
射出成形部品(又は器具)は、特に薄い部品に対して、良好な光沢及び低い反りを示さなければならず、また、滅菌処理、特に蒸気滅菌、ガンマ滅菌、エチレンオキシド滅菌及び電子ビーム(ebeam)滅菌にも耐えなければならず、一方で低い吸湿性を有しなければならない。
【0008】
さらに、射出成形部品は、病院で使用される洗浄製品に対して良好な耐薬品性を有さなければならない。
【発明の概要】
【0009】
したがって、射出成形後にこの特性の妥協を示す組成物又は製剤を見出すことが必要である。したがって、本発明は、成形組成物であって、重量で、
a)20%~60%、特に20%~50%、特に25%~39.9%の、窒素原子あたりの炭素原子数が9以上、特に10以上である少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
前記少なくとも1つのポリアミドが、20°Cの温度でISO規格307:2007に従って決定される、1.3以下、特に1.25以下の溶液中の固有粘度を有している、ポリアミドと、
b)40%~75%のガラス繊維、特に50%~75%、特に60%~70%のガラス繊維と、
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の、少なくとも1つの添加剤と、を含み、
前記組成物の各成分の割合の合計が100%に等しい、成形組成物に関する。
【0010】
したがって、本発明者らは、特定の範囲のガラス繊維を含む溶液中で特定の固有粘度を有する少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドの選択により、射出成形後に上記で定義された特性の妥協を示す組成物を構成することが可能になることを見出した。
【0011】
溶液中の固有粘度は、溶媒が硫酸ではなくm-クレゾールであり、濃度が重量で0.5%であり、温度が20°Cであるという点で修正されたISO規格307:2007に従って決定される。
【0012】
本発明による成形組成物は、例えば、射出成形、射出ブロー成形、膨張成形及び回転成形によって変換された組成物である。
【0013】
脂肪族ポリアミドについて
成形組成物は、20%~60%、特に20%~50%、特に25%~39.9%の、窒素原子あたりの炭素原子数が9以上、特に10以上の少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドを含む。
【0014】
ポリアミドを定義するために使用される命名法は、ISO規格1874-1:2011「プラスチック-ポリアミド(PA)成形及び押出材料-パート1:名称」、特に3ページ(表1及び表2)に記載されており、当業者に周知である。
【0015】
ポリアミドは、ホモポリアミド若しくはコポリアミド又はそれらの混合物であり得る。
【0016】
前記ポリアミドは、有利には、半結晶性ポリアミド又はコポリアミドである。
【0017】
本発明の目的のために、「半結晶性」という用語は、ISO規格11357-3:2013によるDSCにおける融点(Tm)を有し、2013のISO規格11357-3に従って測定したDSCにおける20K/分の速度での冷却工程中の結晶化エンタルピーが20J/gより大きく、好ましくは30J/gより大きいポリアミド又はコポリアミドを示す。
【0018】
前記ポリアミドは、以下:
少なくとも1つのC9~C18、優先的にはC10~C18、より優先的にはC10~C12アミノ酸、又は
少なくとも1つのC9~C18、優先的にはC10~C18、より優先的にはC10~C12ラクタム、又は
少なくとも1つのC4~C36、優先的にはC6~C18、優先的にはC6~C12、より優先的にはC10~C12ジアミンCaと、少なくとも1つのC4~C36、優先的にはC6~C18、優先的にはC6~C12、より優先的にはC10~C12ジカルボン酸Cb、又はそれらの混合物の、重縮合によって得られる反復単位に由来し、
ただし、反復単位中の窒素原子あたりの炭素原子の数は9以上、特に10以上であることを条件とする。
【0019】
遊離には、長鎖脂肪族ポリアミドは、以下:
少なくとも1つのC9~C18、優先的にはC10~C18、特にC10~C12アミノ酸、又は
少なくとも1つのC9~C18、優先的にはC10~C18、特にC10~C12ラクタムの、重縮合によって得られる。
【0020】
C9~C12アミノ酸は、特に9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、10-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸及び11-アミノウンデカン酸並びにそれらの誘導体、特にN-ヘプチル-11-アミノウンデカン酸である。
【0021】
C9~C12ラクタムは、特にラウリルラクタムである。
【0022】
前記少なくとも1つのC4~C36ジアミンCaは、特に、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,11-ウンデカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、1,13-トリデカメチレンジアミン、1,14-テトラデカメチレンジアミン、1,16-ヘキサデカメチレンジアミン及び1,18-オクタデカメチレンジアミン、オクタデセンジアミン、エイコサンジアミン、ドコサンジアミン、及び脂肪酸から得られるジアミンから選択され得る。
【0023】
有利には、前記少なくとも1つのジアミンCaはC6~C18であり、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,11-ウンデカメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、1,13-トリデカメチレンジアミン、1,14-テトラデカメチレンジアミン、1,16-ヘキサデカメチレンジアミン及び1,18-オクタデカメチレンジアミンから選択される。
【0024】
前記少なくとも1つのC4~C36ジカルボン酸Cbは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、オクタデセンジアミン、エイコサンジアミン、ドコサンジアミン、及び脂肪酸から得られるジアミンから選択され得る。
【0025】
有利には、前記少なくとも1つのジカルボン酸CbはC6~C18であり、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸及びオクタデカン二酸から選択される。
【0026】
特に、長鎖脂肪族ポリアミドは、
ポリアミド1010(PA1010)、ポリアミド1012(PA1012)、ポリアミド1212(PA1012)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、又はそれらの混合物、又はそれらのコポリアミドから選択される。
【0027】
有利には、ポリアミドは、特にPA11及びPA12である。
【0028】
一実施形態では、前記長鎖脂肪族ポリアミドは、5/95~95/5の重量比範囲の2つのポリアミドの混合物である。
【0029】
有利には、前記混合物は、窒素原子あたりの炭素原子の数が同じである2つの同一のポリアミドの混合物であるが、2つのポリアミドのうちの一方の溶液中の固有粘度は1.3を超えるが、混合物の溶液中の固有粘度は1.3以下、特に1.25以下であるという条件を満たす。
【0030】
ガラス繊維について
ガラス繊維は、組成物の総重量に対して重量で40%~75%、特に50%~75%、特に60%~70%で存在する。
【0031】
ガラス繊維は、中実及び/又は中空であってもよく;有利には、それらは中実である。
【0032】
ガラス繊維は、有利には短い。
【0033】
短ガラス繊維は、組成物の使用前に、好ましくは2~13mm、好ましくは3~8mmの長さを有する。
【0034】
有利には、短ガラス繊維は、120~350μmの繊維長を有する。
【0035】
この120~350μmの繊維長は、化合物について測定される。
【0036】
短ガラス繊維は、円形又は非円形断面であってもよい。
【0037】
円形断面の繊維は、その円周上の任意の点において繊維の中心まで等しい距離を有する繊維として定義され、したがって完全又はほぼ完全な円を表す。
【0038】
したがって、この完全又はほぼ完全な円を有さない任意のガラス繊維は、非円形断面の繊維として定義される。
【0039】
非円形断面の繊維の例は、限定されないが、例えば楕円形、卵形又は繭形を有する非円形繊維、星形繊維、フレーク状繊維、平坦繊維、十字形、多角形及び輪である。
【0040】
ガラス繊維は、
-直径4μm~25μm、好ましくは4μm~15μmの円形断面のいずれか;
-又は、2~8、特に2~4のL/D比(Lは繊維の断面の最大寸法を表し、Dは前記繊維の断面の最小寸法を表す)を有する非円形断面であり得る。L及びDは、走査電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。
【0041】
有利には、ガラス繊維は円形である。
【0042】
添加剤について
少なくとも1つの添加剤は、場合により、組成物の総重量に対して重量で0%~5%、特に0.1%~5%で存在していてもよい。
【0043】
添加剤は、充填剤、染料、安定剤、可塑剤、界面活性剤、核形成剤、顔料、光沢剤、抗酸化剤、潤滑剤、難燃剤、天然ワックス、レーザマーキング用添加剤、及びそれらの混合物から選択される。
【0044】
例として、安定剤は、UV安定剤、有機安定剤、又はより一般的には有機安定剤の組み合わせ、例えばフェノールタイプの抗酸化剤(例えば、Ciba-BASF製のIrganox(登録商標)1010のタイプのもの)であってもよい。
【0045】
この安定剤はまた、銅に基づく安定剤などの無機安定剤であってもよい。そのような無機安定剤の例として、酢酸銅及びハロゲン化物を挙げることができる。なお、銀などの他の金属を場合により考慮することができるが、前記金属はあまり効果的ではないことが知られている。これらの銅に基づく化合物は、典型的には、アルカリ金属、特にカリウムのハロゲン化物と組み合わされる。
【0046】
可塑剤の混合物を使用することは、本発明の範囲から逸脱するものではない。
【0047】
例として、充填剤は、カーボンブラック、タルク、顔料及び金属酸化物(酸化チタン)から選択され得る。
【0048】
成形組成物について
本明細書を通して、組成物の全てのパーセンテージは重量で与えられる。
【0049】
成形組成物は、重量で、
a)20%~60%、特に20%~50%、特に25%~39.9%の、窒素原子あたりの炭素原子数が9以上、特に10以上である少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
前記少なくとも1つのポリアミドが、20°Cの温度でISO規格307:2007に従って決定される、1.3以下、特に1.25以下の溶液中の固有粘度を有している、ポリアミドと、
b)40%~75%のガラス繊維、特に50%~75%、特に60%~70%のガラス繊維と、
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の、少なくとも1つの添加剤と、を含み、
前記組成物の各成分の割合の合計は100%に等しい。
【0050】
有利には、脂肪族以外のポリアミド、特に半結晶性ポリアミドは、組成物から除外される。
【0051】
1つの実施形態では、成形組成物は、(重量で)、
a)20%~60%、特に20%~50%、特に25%~39.9%の、窒素原子あたりの炭素原子数が9以上、特に10以上である少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
前記少なくとも1つのポリアミドが、20°Cの温度でISO規格307:2007に従って決定される、1.3以下、特に1.25以下の溶液中の固有粘度を有している、ポリアミドと、
b)40%~75%のガラス繊維、特に50%~75%、特に60%~70%のガラス繊維と、
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の、少なくとも1つの添加剤と、からなり、
前記組成物の各成分の割合の合計は100%に等しい。
【0052】
第1のバリアントでは、成形組成物は、重量で、
a)20%~50%、特に25%~39.9%の、窒素原子あたりの炭素原子数が9以上、特に10以上である少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
前記少なくとも1つのポリアミドが、20°Cの温度でISO規格307:2007に従って決定される、1.3以下、特に1.25以下の溶液中の固有粘度を有している、ポリアミドと、
b)50%~75%、特に60%~70%のガラス繊維と、
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の、少なくとも1つの添加剤と、を含み、
前記組成物の各成分の割合の合計は100%に等しい。
【0053】
この第1のバリアントの1つの実施形態では、成形組成物は、重量で、
a)20%~49.9%、特に25%~39.9%の、窒素原子あたりの炭素原子数が9以上、特に10以上である少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
前記少なくとも1つのポリアミドが、20°Cの温度でISO規格307:2007に従って決定される、1.3以下、特に1.25以下の溶液中の固有粘度を有している、長鎖脂肪族ポリアミドと、
b)50%~75%、特に60%~70%のガラス繊維と、
c)0.1重量%~5重量%の、少なくとも1つの添加剤と、を含み、
前記組成物の各成分の割合の合計は100%に等しい。
【0054】
この第1のバリアントの別の実施形態では、組成物は、
a)20%~50%、特に25%~39.9%の、窒素原子あたりの炭素原子数が9以上、特に10以上である少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
前記少なくとも1つのポリアミドが、20°Cの温度でISO規格307:2007に従って決定される、1.3以下、特に1.25以下の溶液中の固有粘度を有している、ポリアミドと、
b)50%~75%、特に60%~70%のガラス繊維と、
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の、少なくとも1つの添加剤と、からなり、
前記組成物の各成分の割合の合計は100%に等しい。
【0055】
この第1のバリアントのさらに別の実施形態では、組成物は、
a)20%~49.9%、特に25%~39.9%の、窒素原子あたりの炭素原子数が9以上、特に10以上である少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
前記少なくとも1つのポリアミドが、20°Cの温度でISO規格307:2007に従って決定される、1.3以下、特に1.25以下の溶液中の固有粘度を有している、ポリアミドと、
b)50%~75%、特に60%~70%のガラス繊維と、
c)0.1重量%~5重量%の、少なくとも1つの添加剤と、からなり、
前記組成物の各成分の割合の合計は100%に等しい。
【0056】
第2のバリアントでは、成形組成物は、重量で、
a)25%~40%、特に25%~39.9%の、窒素原子あたりの炭素原子数が9以上、特に10以上である少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
前記少なくとも1つのポリアミドが、20°Cの温度でISO規格307:2007に従って決定される、1.3以下、特に1.25以下の溶液中の固有粘度を有している、ポリアミドと、
b)60%~70%のガラス繊維と、
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の、少なくとも1つの添加剤と、を含み、
前記組成物の各成分の割合の合計は100%に等しい。
【0057】
この第2のバリアントの1つの実施形態では、成形組成物は、重量で、
a)25%~39.9%の、窒素原子あたりの炭素原子数が9以上、特に10以上である少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
前記少なくとも1つのポリアミドが、20°Cの温度でISO規格307:2007に従って決定される、1.3以下、特に1.25以下の溶液中の固有粘度を有している、ポリアミドと、
b)60%~70%のガラス繊維と、
c)0.1重量%~5重量%の、少なくとも1つの添加剤と、を含み、
前記組成物の各成分の割合の合計は100%に等しい。
【0058】
この第2のバリアントの別の実施形態では、成形組成物は、
a)25%~40%、特に25%~39.9%の、窒素原子あたりの炭素原子数が9以上、特に10以上である少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
前記少なくとも1つのポリアミドが、20°Cの温度でISO規格307:2007に従って決定される、1.3以下、特に1.25以下の溶液中の固有粘度を有している、ポリアミドと、
b)60%~70%のガラス繊維と、
c)0重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%の、少なくとも1つの添加剤と、からなり、
前記組成物の各成分の割合の合計は100%に等しい。
【0059】
この第2のバリアントのさらに別の実施形態では、成形組成物は、
a)25%~39.9%の、窒素原子あたりの炭素原子数が9以上、特に10以上である少なくとも1つの長鎖脂肪族ポリアミドであって、
前記少なくとも1つのポリアミドが、20°Cの温度でISO規格307:2007に従って決定される、1.3以下、特に1.25以下の溶液中の固有粘度を有している、ポリアミドと、
b)60%~70%のガラス繊維と、
c)0.1重量%~5重量%の、少なくとも1つの添加剤と、からなり、
前記組成物の各成分の割合の合計は100%に等しい。
【0060】
別の態様によれば、本発明は、医療分野のための物品の製造のための、特に単回又は複数回使用のための、上で定義した組成物の使用に関する。
【0061】
この「使用」の段落については、上述した全ての実施形態が有効である。
【0062】
「医療分野のための物品」という表現は、例えば、リトラクタ、はさみ、トング、外科用プライヤ、ピンセット鉗子、フック、ニードルホルダ、スタイレット、鉗子、カニューレ、トロカール、シリンジ、バイストリー、抽出器、スプーン、キュレット、アンプル、カテーテル、外科用ステープラー、婦人科器具(検鏡など)、クランプ、外科用器具のハンドル、吸引管、拡張器、滅菌トレイ、キャップ、及び従来金属製の任意の他の医療物品を示す。
【0063】
「医療分野のための単回使用物品」という表現は、リトラクタ、はさみ、トング、外科用プライヤ、ピンセット鉗子、フック、ニードルホルダ、スタイレット、鉗子、カニューレ、トロカール、シリンジ、バイストリー、抽出器、スプーン、キュレット、アンプル、カテーテル、婦人科器具(検鏡など)、クランプ、外科用器具のハンドル、吸引管、拡張器、キャップ、及び従来金属製の任意の他の単回使用の医療物品など、1回のみ使用され、使用後に廃棄される物品を示す。
【0064】
「医療分野のための複数回使用物品」という表現は、使用後に再使用され、再使用できるようにするために洗浄及び/又は滅菌を必要とする物品を示す。
【0065】
滅菌は、蒸気又はガンマ線によって行うことができる。
【0066】
一実施形態では、前記物品は外科用器具である。
【0067】
有利には、蒸気滅菌後の物品は、4×10mm2の断面のタイプ1A試験標本で決定される、滅菌前の断面と比較して3%未満の断面の変動を示す。
【0068】
1つの実施形態では、物品は、ガンマ線滅菌に対して非常に良好な耐性を示す。
【0069】
別の実施形態では、蒸気滅菌後の物品は、タイプ1A試験標本に対してISO規格527:2012に従って決定される、滅菌前の破断応力と比較して20%未満の応力の変動を示す。
【0070】
有利には、物品は射出成形によって製造される。
【0071】
さらに別の態様によれば、本発明は、上で定義した組成物を用いて射出成形することによって得られる物品に関する。
【実施例】
【0072】
本発明の組成物の調製及び機械的特性:
表1の組成物は、ポリアミドペレットをガラス繊維及び場合により添加剤と溶融混合することによって調製した。
【0073】
PA11及びPA12に基づく組成物を、250°Cで平坦な温度プロファイル(T°)を有する直径40mmの共回転二軸スクリュー押出機で混練することによって処理した。スクリュー速度は300rpmであり、スループットは100kg/hである。PA66に基づく組成物については、300°Cで平坦な温度プロファイルで処理した。他のパラメータは不変のままである。
【0074】
ガラス繊維は、側方供給を介して導入される。
【0075】
半結晶性脂肪族ポリアミド及び場合により添加剤は、メインホッパーを介して添加される。
【0076】
次いで、組成物を、以下の基準に従って組成物の特性を研究するために、(Engelブランド)射出成形機を用いて、設定温度260°C(PA11及びPA12に基づく組成物の場合)及び成形温度70°Cで、ダンベル又はバーの形態で成形した。PA66に基づく組成物を300°Cの温度及び110°Cの成形温度で注入した。
【0077】
引張弾性率は、滅菌前(すなわち、t0において、乾燥試料に対して)、蒸気滅菌後、又はガンマ滅菌後に、タイプ1AダンベルでISO規格527-1:2012に従って23°Cで測定した。
【0078】
滅菌前、蒸気滅菌後又はガンマ滅菌後に、この同じISO規格527-1:2012に従って23°Cで伸び及び破断時応力も測定した。
【0079】
クロスヘッド速度は、弾性率の測定では1mm/分、伸び及び応力の測定では5mm/分に固定した。Instron 5966型機を用いる。
【0080】
試験条件は、乾燥試料(滅菌工程の前、すなわちt0において)及びコンディショニングされた試料(すなわち、滅菌工程の後)では23°C+/-2°Cである。
【0081】
試験標本の蒸気滅菌は、以下のように実行される:1Aダンベルは、134°C、2バールで12分間、25回の滅菌サイクルを受けた。各サイクルの間、試料を50°Cで5分間維持する。
【0082】
25回の蒸気滅菌サイクルの終了時に、ISO規格527-1:2012に従って、各組成物について引張試験を実施した。
【0083】
光沢を視覚的に決定した。2つの外観レベル:光沢性又はつや消しの外観を割り当てた。
【0084】
衝撃強度は、ISO 179-1:2010/1eA(シャルピー衝撃)に従って、80mm×10mm×4mmの寸法のバー、V字型ノッチ、乾燥、温度23°C+/-2°C、相対湿度50%+/-10%で決定した。
【0085】
「ガンマ」滅菌は、(各組成物について)1Aダンベルに((コバルト60からの)ガンマ照射を使用して)50 000グレーのイオン化線量を適用することからなる。この滅菌の終了時に、ISO規格527-1:2012に従って、各組成物について引張試験を実施した。様々な組成物を射出成形することによって、100*100*1mm3のプレートも調製した:
-射出温度(フィード/ノズル):270/290°C
-成形温度:表1参照
-維持時間:10秒
-冷却時間:20秒
7日後に下記の方法で反りを評価した:
厚さ1mmの寸法100mm×100mmのプレートを平坦な支持体上に置き;作業者はプレートの3つの角を押して4つ目を浮き上がらせる。次いで、テーブルの表面と試料との間の距離が測定される。次いで、下記の式によって反りを計算する:反り(%)=(支持体とプレートとの間の距離(mm)/100mm×100)。
【0086】
【0087】
(直径10μmの円形断面の)FoodContact(商標)295-10ガラス繊維は、Owens Corning社によって販売されている。
【0088】
CSG3PA820ガラス繊維(7×28μm断面の非円形断面)は、Nitto Boseki社から販売されている。
【0089】
PA11及びPA12は、本出願人の会社によって製造される。
【0090】
ステアリン酸カルシウムはGreven社によって販売されている。
【0091】
Licowax Eは、Clariant社によって販売されている。
【0092】
Irganox 1010は、BASFによって販売されている。
【0093】
PA66(参照Stabamid 25AE1)は、Domo Chemicalsによって販売されている。
【0094】
【国際調査報告】