(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】リン酸マンガン鉄リチウムの製造方法、正極材料及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
C01B 25/45 20060101AFI20240405BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240405BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240405BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240405BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240405BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240405BHJP
【FI】
C01B25/45 Z
H01M4/58
H01M4/36 E
H01M4/505
H01M10/052
H01M10/0566
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524514
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 CN2022128489
(87)【国際公開番号】W WO2023184960
(87)【国際公開日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】202210339154.8
(32)【優先日】2022-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523141208
【氏名又は名称】星恒電源股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PHYLION BATTERY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 181, Jinshajiang Road, Suzhou New District, Suzhou 215153 Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 正偉
(72)【発明者】
【氏名】王 永▲ちぇん▼
(72)【発明者】
【氏名】李 娜
(72)【発明者】
【氏名】朱 華君
(72)【発明者】
【氏名】劉 付召
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK18
5H029HJ02
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA09
5H050CA29
5H050FA19
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA02
5H050HA14
(57)【要約】
本発明では、マンガン源及び/又は鉄源を固相混合して第1混合物を得るステップS1と、前記第1混合物を300~1200℃で固相焼結してマンガン鉄酸化物(MnxFe1-x-y)mOnを得るステップS2と、前記マンガン鉄酸化物(MnxFe1-x-y)mOnと、リチウム源、リン源、必要に応じてマンガン源及び/又は鉄源とを固相混合して第2混合物を得るステップS3と、前記第2混合物を350~900℃で固相焼結してリン酸マンガン鉄リチウムLiMnxFe1-x-yPO4を得るステップS4とを含み、ここで、0≦x≦1、0≦y≦1であるリン酸マンガン鉄リチウムの製造方法が開示される。本発明の方法によれば、タップ密度が高く、サイクル寿命が長く、安価で、コストパフォーマンスが高いリン酸マンガン鉄リチウム材料を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンガン源及び/又は鉄源を固相混合して第1混合物を得るステップS1と、
前記第1混合物を300~1200℃で固相焼結してマンガン鉄酸化物(Mn
xFe
1-x-y)
mO
nを得るステップS2と、
前記マンガン鉄酸化物(Mn
xFe
1-x-y)
mO
nと、リチウム源、リン源、必要に応じてマンガン源及び/又は鉄源とを固相混合して第2混合物を得るステップS3と、
前記第2混合物を350~900℃で固相焼結してリン酸マンガン鉄リチウムLiMn
xFe
1-x-yPO
4を得るステップS4と、
を含み、ここで、0≦x≦1、0≦y≦1であることを特徴とする、リン酸マンガン鉄リチウムの製造方法。
【請求項2】
前記マンガン源は、結晶水を含む又は含まない硫酸マンガン、炭酸マンガン、酢酸マンガン、リン酸マンガン、硝酸マンガン、シュウ酸マンガン、クエン酸マンガンのうちの1種又は複数種であることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸マンガン鉄リチウムの製造方法。
【請求項3】
前記鉄源は、結晶水を含む又は含まない硫酸鉄(II)、炭酸鉄(II)、酢酸鉄(II)、リン酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、炭酸鉄(III)、酢酸鉄(III)、リン酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、シュウ酸鉄(III)、クエン酸鉄(III)のうちの1種又は複数種であることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸マンガン鉄リチウムの製造方法。
【請求項4】
前記リチウム源は、炭酸リチウム、水酸化リチウム、リン酸リチウム、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウムのうちの1種又は複数種であることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸マンガン鉄リチウムの製造方法。
【請求項5】
前記リン源は、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カルシウム、リン酸エステル、リン酸二水素リチウム、リン酸鉄(III)、リン酸リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸マンガンのうちの1種又は複数種であることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸マンガン鉄リチウムの製造方法。
【請求項6】
ステップS1及びステップS3において、固相混合する際に炭素源、M源、N源のうちの1種又は複数種をさらに添加し、
ステップS2及びステップS4の固相焼結を経た後、それぞれマンガン鉄酸化物(Mn
xFe
1-x-yM
y)
mO
nN
z/C及びリン酸マンガン鉄リチウムLiMn
xFe
1-x-yM
yPO
4-zN
z/Cを得ることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸マンガン鉄リチウムの製造方法。
ここで、前記M源はドーピング陽イオン源であり、前記N源はドーピング陰イオン源であり、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦0.1,1:3.5≦m:(n+z)≦1:1である。
【請求項7】
前記炭素源は、ショ糖、ブドウ糖、果糖、クエン酸、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、デンプン、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、導電性カーボンチューブのうちの1種又は複数種であることを特徴とする、請求項6に記載のリン酸マンガン鉄リチウムの製造方法。
【請求項8】
前記陽イオン源は、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、チタン、銅、カルシウム、ニオブ、クロム、亜鉛、ランタン、アンチモン、テルル、トロンチウム、タングステン、インジウム、イットリウムのうちの1種又は複数種を含み、前記陰イオン源は、フッ素及び/又は硫黄を含むことを特徴とする、請求項6に記載のリン酸マンガン鉄リチウムの製造方法。
【請求項9】
正極材料であって、
前記正極材料は、オリビン構造のリン酸マンガン鉄リチウム材料、層状多塩基酸リチウム、スピネル型マンガン酸リチウム、層状マンガンリッチリチウムベースのうちの1種又は複数種を混合して得られるものであり、
前記オリビン構造のリン酸マンガン鉄リチウム材料、層状多塩基酸リチウム、スピネル型マンガン酸リチウム、層状マンガンリッチリチウムベース材料は、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法によって製造されることを特徴とする、正極材料。
【請求項10】
正極シート、負極シート、電解液及びセパレータを含むリチウムイオン電池であって、
前記正極シートは、請求項9に記載の正極材料で製造されることを特徴とする、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の製造技術分野に関し、具体的には、リン酸マンガン鉄リチウムの製造方法、それにより製造された正極材料及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池で一般的に使用される正極材料を下記表1に示す。
<表1>
【0003】
三元系正極材料(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム又はニッケルコバルトアルミン酸リチウム)は、一般的にコバルト酸リチウムの代わりに動力電池の分野で使用されている。三元系正極材料は、低温放電能力、常温サイクル、高温サイクルを有するとともに、エネルギー密度が最も高い。表から分かるように、ニッケル含有量の増加につれて、材料のグラム容量は徐々に高くなるが、材料の熱分解温度が低下することで、三元系正極材料系のリチウムイオン電池の安全性が低下する。一方、111三元系などの低ニッケル三元系はコバルト含有量が高いため、材料の価格が高く、ニッケル含有量(ニッケル、コバルト、マンガン又はアルミニウムの合計におけるニッケル含有量)が70%を超える場合、例えば、高ニッケルの811三元系材料の場合、焼結過程で酸素雰囲気が必要とされるため、材料の価格も高い。さらに、コバルトとニッケルは地球上に少ないため、高価である。そのため、三元系材料は、航続距離が長い中型及び高級車に適している。
【0004】
正極三元系材料の合成には酸素の関与が必要である。一般的に、中低ニッケルの条件では、メーカーは空気条件下で焼結するが、高ニッケルの条件(ニッケル>0.7)では、酸素雰囲気下で焼結する必要がある。また、高ニッケルは空気の湿度に比較的敏感であり、湿気を吸って材料の表面に炭酸リチウムが生成しやすい。そのため、包装及び電池材料のコーティングは、湿度に対する要求が高い。その結果、高ニッケルに要する人件費は中ニッケルより高い。近年、高ニッケル三元系を搭載した長距離電気自動車の安全事故が多発しており、高ニッケル三元系に対する業界の熱意は低下している。現在、高ニッケルの追求は徐々に中ニッケル三元系の使用にシフトしている。研究開発の進展とコスト削減を求める市場駆動に伴い、低コバルト/コバルトフリー三元系の適用が加速している。現在、コバルト含有量は0.05、さらに0.03に徐々に減少してきた。しかし、天然鉱物にはコバルトとニッケルが混在しており、純ニッケルにも3~5%のコバルトが含まれるため、高ニッケル三元系のコバルトを除去するためにコストを費やす必要はない。
【0005】
マンガン酸リチウム材料の安全性能は、明らかに三元系正極材料よりも高く、低温及びレート性能に優れ、安価であるが、グラム容量は低く(~110mAh/g)、サイクル寿命、特に高温サイクルは劣っている。したがって、マンガン酸リチウムを単独で正極材料として使用することは困難である。
【0006】
リチウムリッチマンガン系材料は、新しい正極材料の代表であり、4.8Vにまで充電すると、比容量は250mAh/g以上に達するが、サイクルは不安定である。現在、成熟した商品化された電解液は、主に4.2V系であり、単結晶三元系に4.3~4.4V系を配合した電解液である。5V高電圧系の電解液はまだ成熟していないため、リチウムリッチマンガン系材料は、広く使用されておらず、マンガン酸リチウムのサイクルの初期減衰が速いという問題を遅らせるために、マンガン酸リチウムのドーピングには少量しか使用されていない。
【0007】
リン酸鉄リチウムは、一般的に使用されているリチウムイオン電池正極材料である。そのサイクル寿命は長く、安全性に優れているが、導電性が低いため、商業用途では、小さな粒径によってレート性能を補っている。それでも、リン酸鉄リチウムは、低温下で放電しにくく、また、その放電容量はプラットフォーム領域に集中しているため、充電状態と電圧の調整が難しく、ユーザーエクスペリエンスが悪い。リン酸鉄リチウムの圧縮密度は低く、わずか2.4~2.5g/cm3であるのに対し、マンガン酸リチウムは3.1g/cm3に達し、三元系正極は3.4/cm3に達し、リチウム鉄電圧はわずか3.2Vである。したがって、リン酸鉄リチウムの体積エネルギー密度は非常に低い。そのため、LiMnPO4、LiCoPO4、LiNiPO4、LiMnSiO4、LiFeSiO4、LiCoSiO4、LiNiPSiO4は、リン酸鉄リチウムを置き換えることが期待される材料である。ケイ酸塩系と比較して、リン酸系の商業化はより成熟している。マンガン、コバルト、ニッケル、鉄の4元素のうち、コバルトとニッケルは最も高価で、マンガンと鉄は最も安価である。しかし、リン酸マンガンリチウムは、導電性が極めて低く、リン酸鉄リチウムよりも低い。折衷的に、マンガンドーピングリン酸鉄リチウム及び鉄ドーピングリン酸マンガンリチウムは、どちらもマンガンの高電位プラットフォームと鉄の構造安定性を利用してリン酸マンガン鉄リチウムを合成するために、リン酸マンガン鉄リチウムは、マンガン又は鉄のドーピングによりリン酸マンガンリチウム及びリン酸鉄リチウムの特性を兼ね備える。この3種類の物質を1つの材料にして1つの化学式LiMnxFe1-xPO4で表してもよい。リン酸マンガン鉄リチウムは、既に商業的に成熟しているが、その導電性がリン酸鉄リチウムよりも低く、低温放電能力も弱いため、現在、単独で正極材料として使用されるには至っていない。リン酸マンガン鉄リチウムのプラットフォーム電圧は4.1Vと高く、中圧は3.9Vに達し、グラム容量及びサイクル寿命はリン酸鉄リチウムと一致し、4.2~4.3V系では安全性能が極めて高く、三元系材料に配合して過充電及び針穿刺の安全性能を向上させる。
【0008】
現在、リン酸鉄リチウムの合成方法は、固相法、液相法に分類される。液相法は、主に硫酸鉄(II)七水和物、リン酸、水酸化リチウムを用いて水熱反応してリン酸鉄リチウム、硫酸リチウム及び水を生成する。しかし、設備は高価であり、一般的に3倍量の水酸化リチウムを沈殿剤として使用し、つまり、200%の水酸化リチウムを消費する必要があるため、コストが増加する。固相法は、シュウ酸鉄(II)、酸化鉄(赤色)、オルトリン酸鉄(III)法に分類される。シュウ酸鉄(II)法は、反応過程において大量の二酸化炭素ガスが発生するため、炭素損失が大きく、炭素含有量が変動しやすく、製品の一貫性が悪く、製品のタップ密度が低く、アンモニアガスが放出されて環境を汚染する。酸化鉄(赤色)法は、コストが比較的低く、合成したリン酸鉄リチウムの密度が比較的大きいが、容量が低く、アンモニアガスが放出されて環境を汚染する。オルトリン酸鉄(III)法は、アンモニアガスが発生することなく、生産過程が環境に優しく、生産量も多いため、主流の生産プロセスとなっている。オルトリン酸鉄(III)の合成方法には、硫酸鉄(II)法及び鉄粉-リン酸法の2つある。この2つの方法は、いずれもリン酸及び過酸化水素を使用する必要があるため、設備に腐食防止を要求することでコストが高くかつ環境保護の負担が大きい。
現在、リン酸マンガン鉄リチウムの合成方法は、主に固相法及び共沈法に分類される。固相法は、マンガン源、鉄源、リン源、リチウム源の焼結を採用し、プロセスが最も簡単であるが、合成した材料の性能が最も悪いため、共沈法が主流である。共沈法は、マンガン源、鉄源及び錯化剤を共沈させて前駆体を生成させ、前駆体とリン源、リチウム源とが固相又は液相で反応してリン酸マンガン鉄リチウムを生成する(例えば、中国発明特許CN105047922A)。
【0009】
LiMnxFe1-xPO4は、x=0場合のリン酸鉄リチウム又はx≠0場合のリン酸マンガン鉄リチウムであるにもかかわらず、材料合成はいずれも固相法及び液相法に分類されることは明らかである。固相法は、プロセスが簡単であるが、合成した材料の性能が最も悪い。液相法は、合成した材料の性能が良好であるが、設備の腐食防止要件により、コストが高くかつ環境保護の負担が大きい。そのため、材料の性能を向上させながらコストが低い特性を有するLiMnxFe1-xPO4材料を合成するための新しい設計プロセスが必要である。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、リン酸マンガン鉄リチウムの製造方法を提供する。この方法により、タップ密度が高く、サイクル寿命が長く、安価で、コストパフォーマンスが高いリン酸マンガン鉄リチウム材料を製造することができる。本発明は、前記材料で製造した正極材料及びリチウムイオン電池をさらに提供する。
【0011】
本発明で提供されるリン酸マンガン鉄リチウムの製造方法は、
マンガン源及び/又は鉄源を固相で混合して第1混合物を得るステップS1と、
前記第1混合物を300~1200℃で固相焼結してマンガン鉄酸化物(MnxFe1-x-y)mOnを得るステップS2と、
前記マンガン鉄酸化物(MnxFe1-x-y)mOnと、リチウム源、リン源、必要に応じてマンガン源及び/又は鉄源とを固相混合して第2混合物を得るステップS3と、
前記第2混合物を350~900℃で固相焼結してリン酸マンガン鉄リチウムLiMnxFe1-x-yPO4を得るステップS4と、
を含み、ここで、0≦x≦1、0≦y≦1である。
【0012】
従来技術では、リン酸マンガン鉄リチウムの固相法は、マンガン源、鉄源、リン源及びリチウム源を混合した後に焼結しており、プロセスが簡単であるが、合成した材料の性能が最も悪い。本発明では、それに基づいて、新しい製造方法を提供する。まず、マンガン源と鉄源とを混合して固相焼結することによりマンガン源、鉄源を熱分解してマンガン鉄酸化物(MnxFe1-x-y)mOnを得る。次に、マンガン鉄酸化物(MnxFe1-x-y)mOnをリチウム源、リン源と混合した後、2回目の固相焼結を行い、リン酸マンガン鉄リチウムLiMnxFe1-x-yPO4-zを得る。この製造方法は、同様に簡単であり、得られたリン酸マンガン鉄リチウムは安価であり、タップ密度及び圧縮密度が高く、エネルギー密度が高く、比表面積が小さく、自己放電が小さく、サイクル寿命が長いという特徴を有し、従来の固相法及び液相法によるリン酸マンガン鉄リチウムよりも明らかに優れている。本発明の方法において最初に合成したのはリン酸マンガン鉄リチウムの前駆体であるマンガン鉄酸化物であり、マンガン鉄酸化物の真密度は鉄酸化物よりも高く、マンガン酸化物よりも低く、鉄酸化物の真密度は鉄塩、例えば、硫酸鉄(II)よりも高く、さらに、リン酸マンガン鉄リチウムを合成する際に、従来の固相法が鉄源、マンガン源、リチウム源、リン源を用いてリン酸マンガン鉄リチウムを合成し、低密度の鉄源が存在するため、合成したリン酸マンガン鉄リチウム材料のタップ密度が低く、比表面積が大きく、作製した電極シートの圧縮密度が低く、エネルギー密度が低く、自己放電が大きく、サイクルがやや悪い。従来の液相法では、鉄マンガン炭酸塩又は鉄マンガン水酸化物を共沈させ、形態が多孔質で、密度が低く、後で共沈した鉄マンガン源、リチウム源、リン源で合成したリン酸マンガン鉄リチウム材料は、同様にタップ密度が低く、比表面積が大きく、作製した電極シートの圧縮密度が低く、エネルギー密度が低く、自己放電が大きく、サイクルがやや悪いという特徴を有する。また、本発明の方法で合成したリン酸マンガン鉄リチウムの前駆体であるマンガン鉄酸化物は、粒子が大きい一次単結晶の形態であり、真密度が高いため、最終的に合成されたリン酸マンガン鉄リチウム材料のタップ密度が高く、電極シートの圧縮密度が高く、電池のエネルギー密度が高く、材料の比表面積が小さく、自己放電が小さく、サイクル寿命が長い。
【0013】
前記マンガン源は、当該技術分野で一般的に使用されている様々なマンガン化合物を使用することができ、本発明ではそれを限定しない。前記マンガン源は、結晶水を含んでもよく、含まなくてもよい。好ましくは、前記マンガン源は、硫酸マンガン、炭酸マンガン、酢酸マンガン、リン酸マンガン、硝酸マンガン、シュウ酸マンガン、クエン酸マンガンのうちの1種又は複数種である。
【0014】
前記鉄源は、当該技術分野で一般的に使用されている様々な鉄化合物を使用することができ、本発明ではそれを限定しない。前記鉄源は、結晶水を含んでもよく、含まなくてもよい。好ましくは、前記鉄源は、硫酸鉄(II)、炭酸鉄(II)、酢酸鉄(II)、リン酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、炭酸鉄(III)、酢酸鉄(III)、リン酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、シュウ酸鉄(III)、クエン酸鉄(III)のうちの1種又は複数種である。
【0015】
前記リチウム源は、当該技術分野で一般的に使用されている様々なリチウム化合物を使用することができ、本発明ではそれを限定しない。好ましくは、前記リチウム源は、炭酸リチウム、水酸化リチウム、リン酸リチウム、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウムのうちの1種又は複数種である。
【0016】
前記リン源は、当該技術分野で一般的に使用されている様々なリン含有化合物を使用することができ、本発明ではそれを限定しない。好ましくは、前記リン源は、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カルシウム、リン酸エステル、リン酸二水素リチウム、リン酸鉄(III)、リン酸リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸マンガンのうちの1種又は複数種である。
【0017】
本発明のステップS1において、マンガン源又は鉄源を単独で使用してもよい。マンガン源を単独で使用する場合、リン酸マンガンリチウムを製造することができ、リン酸マンガン鉄リチウム(ステップS3において鉄源を補充する)を製造することもできる。同様に、鉄源を単独で使用する場合、リン酸鉄リチウムを製造することができ、リン酸マンガン鉄リチウム(ステップS3においてマンガン源を補充する)を製造することもできる。ここで、ステップS3において補充する鉄源及び/又はマンガン源は、好ましくは鉄酸化物及び/又はマンガン酸化物である。
【0018】
本発明では、マンガン源、鉄源、リチウム源、リン源の添加量は、主にマンガン鉄酸化物(MnxFe1-x-y)mOn及びリン酸マンガン鉄リチウムLiMnxFe1-x-yPO4の合成反応式の化学量論比に応じて決定される。
【0019】
さらに、ステップS1及びS3において、固相混合する際に炭素源、M源、N源のうちの1種又は複数種をさらに添加する。ステップS2及びS4の固相焼結を経た後、それぞれマンガン鉄酸化物(MnxFe1-x-yMy)mOnNz/C及びリン酸マンガン鉄リチウムLiMnxFe1-x-yMyPO4-zNz/Cを得る。ここで、前記M源はドーピング陽イオン源であり、前記N源はドーピング陰イオン源であり、0≦x≦1、0≦y≦1,0≦z≦0.1、1:3.5≦m:(n+z)≦1:1であり、例えば、FeO、Fe2O3、Fe3O4である。
【0020】
本発明では、炭素源を添加すると、炭素で被覆されたリン酸マンガン鉄リチウム材料を形成することができる。前記炭素源は、有機炭素源、無機炭素源のうちの1種又は複数種であってもよい。好ましくは、前記炭素源は、ショ糖、ブドウ糖、果糖、クエン酸、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、デンプン、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、導電性カーボンチューブのうちの1種又は複数種である。
【0021】
本発明では、M源を添加すると、陽イオンがドーピングされたリン酸マンガン鉄リチウム材料を得ることができる。ここで、M源は、1種の陽イオン源又は複数種の陽イオン源であってもよい。好ましくは、前記陽イオン源は、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、チタン、銅、カルシウム、ニオブ、クロム、亜鉛、ランタン、アンチモン、テルル、ストロンチウム、タングステン、インジウム、イットリウム等の元素のうちの1種又は複数種を含む。
【0022】
本発明では、N源を添加すると、陰イオンがドーピングされたリン酸マンガン鉄リチウム材料を得ることができる。ここで、N源は、1種の陰イオン源又は複数種の陰イオン源であってもよい。好ましくは、前記陰イオン源は、フッ素、硫黄などの元素のうちの1種又は複数種を含む。
【0023】
本発明の製造方法により、オリビン構造のリン酸マンガン鉄リチウム材料、層状多塩基酸リチウム、スピネル型マンガン酸リチウム、層状マンガンリッチリチウムベースなどの材料を得ることができる。
【0024】
本発明で提供される正極材料は、上記のオリビン構造のリン酸マンガン鉄リチウム材料、層状多塩基酸リチウム、スピネル型マンガン酸リチウム、層状マンガンリッチリチウムベースのうちの1種又は複数種を混合して得られる。
【0025】
本発明で提供されるリチウムイオン電池は、正極シートと、負極シートと、電解液と、セパレータとを含み、前記正極シートは、上記の正極材料で製造したものである。
【0026】
従来技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する。
1、本発明は、合成プロセス方法を改良することにより、リン酸マンガン鉄リチウムの新しい固相合成方法を提供する。この方法で合成したリン酸マンガン鉄リチウム材料は、タップ密度が高く、圧縮密度が高く、比表面積が小さく、それによって製造されたリチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、自己放電が小さく、サイクル寿命が長いという特徴を有する。
2、本発明で合成したリン酸マンガン鉄リチウム材料は、安価で、コストパフォーマンスが高いという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施例1における(Mn
0.9Fe
0.1)
2O
3のXRDパターンである。
【
図2】本発明の実施例1における(Mn
0.9Fe
0.1)
2O
3のSEM像である。
【
図3】本発明の実施例1におけるLiMn
0.9Fe
0.1PO
4のSEM像である。
【
図4】本発明の実施例2におけるLiMn
0.9Fe
0.1PO
4のSEM像である。
【
図5】本発明の実施例3及び比較例1で製造した円筒形全電池のサイクル性能の試験図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の説明において本明細書で使用される用語は、特定の実施例を説明するためだけのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される「及び/又は」という用語は、関連する項目の1つ又は複数の任意及び全ての組み合わせを含む。
【0029】
以下、当業者が本発明をより良く理解して実施できるために、図面及び具体的な実施例により本発明をさらに説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【0030】
別段の説明がない限り、以下の実施例で使用される実験方法は、全て通常の方法であり、使用される材料、試薬などは、全て市販品である。
【0031】
実施例1
MnSO4・H2Oをマンガン源、FeSO4・7H2Oを鉄源とし、MnSO4・H2OとFeSO4・7H2Oとのモル比を9:1にし、材料を固相混合した。均一に混合した材料を600℃に加熱して高温固相焼結し、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体(Mn0.9Fe0.1)2O3を得た。反応式は以下のとおりである。
18MnSO4・H2O+2FeSO4・7H2O→10(Mn0.9Fe0.1)2O3+20SO2↑+32H2O↑+5O2↑
【0032】
(Mn0.9Fe0.1)2O3、炭酸リチウム、リン酸二水素アンモニウムを固相混合してサンドミルで粉砕し、500℃で高温固相焼結し、リン酸マンガン鉄リチウムLiMn0.9Fe0.1PO4を得た。反応式は以下のとおりである。
2(Mn0.9Fe0.1)2O3+2Li2CO3+4NH4H2PO4→4LiMn0.9Fe0.1PO4+2CO2↑+4NH3↑+6H2O↑+O2↑
【0033】
図1において、黒色の太線はLiMn
0.9Fe
0.1PO
4前駆体(Mn
0.9Fe
0.1)
2O
3のX線回折XRDパターンである。
図1から分かるように、本発明の実施例で合成した物質は、カラーカードPDF#24-0507の(Mn
0.983Fe
0.017)
2O
3ピークとよく対応した。
【0034】
図2は、(Mn
0.9Fe
0.1)
2O
3のSEM像である。
図2から分かるように、この物質は、均一な物質であり、形態が良好である。試験材料の粒径及びタップ密度について、D50は6μm、タップ密度は2.4g/cm
3に達した。したがって、本実施例で合成したのは、酸化マンガンと酸化鉄の単純な混合物ではなく、マンガン鉄酸化物である。
【0035】
図3は、リン酸マンガン鉄リチウムLiMn
0.9Fe
0.1PO
4の走査型電子顕微鏡SEM像であり、材料の形態が良好である。材料の粒径及びタップ密度を測定した結果、D50は2μmであり、タップ密度は1.5g/cm
3に達した。
【0036】
実施例2
MnSO4・H2Oをマンガン源、FeSO4・7H2Oを鉄源とし、MnSO4・H2OとFeSO4・7H2Oとのモル比を6:4にし、材料を固相混合し、均一に混合した材料を500℃に加熱して高温固相焼結し、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体(Mn0.6Fe0.4)2O3を得た。反応式は以下のとおりである。
12MnSO4・H2O+8FeSO4・7H2O→10(Mn0.6Fe0.4)2O3+20SO2↑+68H2O↑+5O2↑
【0037】
(Mn0.6Fe0.4)2O3、炭酸リチウム、リン酸二水素アンモニウムを固相混合してサンドミルで粉砕し、500℃で高温固相焼結し、リン酸マンガン鉄リチウムLiMn0.6Fe0.4PO4を得た。反応式は以下のとおりである。
2(Mn0.6Fe0.4)2O3+2Li2CO3+4NH4H2PO4→4LiMn0.6Fe0.4PO4+2CO2↑+4NH3↑+6H2O↑+O2↑
【0038】
図4は、リン酸マンガン鉄リチウムLiMn
0.6Fe
0.4PO
4の走査型電子顕微鏡SEM像である。
図4から分かるように、製造したリン酸マンガン鉄リチウム材料の形態は良好であった。
【0039】
材料の粒径、比表面積、タップ密度を測定した結果、材料のD50は1.5μm、比表面積は15m2/g、タップ密度は1.3g/cm3であり、材料の圧縮密度は2.8g/cm3に達し、一般的な市販品の0.8~1.0g/cm3のタップ密度及び2.3g/cm3の圧縮密度よりも遥かに高く、一般的な市販品の20m2/gの比表面積よりも遥かに低かった。圧縮密度が高ければ高いほど、得られる電極シートのロール圧縮密度が高くなり、電極シートが薄ければ薄いほど、所定の電池ケース内により多い電極シートを収容することができ、最終的に電池はより高いエネルギー密度を有する。また、小さい比表面積であることにより、バインダーの含有量が減少し、活物質が占める比率が高くなり、電池のエネルギー密度がさらに高くなる。さらに、小さい比表面積であることにより、材料と電解液との副反応がより少なく、電池の放置性能及びサイクル寿命が改善される。
【0040】
実施例3
スピネル型マンガン酸リチウムLiMn2O4と実施例2で製造したリン酸マンガン鉄リチウムLiMn0.6Fe0.4PO4との混合物をリチウムイオン電池正極シートの活性材料として使用した。ここで、スピネル型マンガン酸リチウム材料は正極活性材料の80%を占め、リン酸マンガン鉄リチウム材料は20%を占めた。
【0041】
上記の正極活性材料と、導電剤及びバインダーとを混合して正極スラリーを調製した。スラリー中の固形物の割合は、活性材料が97.2%、導電剤(導電性カーボンブラック、導電性グラファイト、導電性カーボンナノチューブ、グラフェン)が1.7%、バインダー(ポリフッ化ビニリデン)が1.1%であった。溶媒N-メチルピロリドンの含有量を、スラリー固形分含有量が約75%となるように調整した。均一に撹拌したスラリーをそれぞれ集電体アルミ箔の表面に塗布し、乾燥後、ロールプレス、スライスして正極電極シートを得た。
【0042】
上記の正極電極シートを組み立てた円筒形全電池に対して0.5C充電、1C放電のサイクル性能を試験した。円筒形電池は、型番R34235、直径34mm、高さ235mmであった。
【0043】
比較例1
スピネル型マンガン酸リチウムLiMn2O4と、従来の液相法で製造したリン酸マンガン鉄リチウムLiMn0.6Fe0.4PO4との混合物をリチウムイオン電池正極シートの活性材料として使用した。比較試料として、スピネル型マンガン酸リチウム材料は正極活性材料の80%を占め、リン酸マンガン鉄リチウム材料は20%を占めた。
【0044】
実施例3と同様の方法により上記の正極活性材料を円筒形全電池に製造した。
【0045】
図5に示すように、70%に減衰したときにサイクルを終了させた場合、実施例2で合成したリン酸マンガン鉄リチウムで組み立てられた電池は、1100回サイクルすることができ、エネルギー密度が140Wh/kgであるのに対し、比較例1の従来の液相法で製造したリン酸マンガン鉄リチウムで組み立てられた電池は、800回サイクルし、エネルギー密度が130Wh/kgであった。サイクル性能及びエネルギー密度の向上は、主に材料の高圧縮密度のためである。
【0046】
電池をフル充電状態で常温で28日間放置し、放置前の容量を100%とした。放置後の残容量比及び充放電回復容量比は、電池の自己放電及び材料と電解液の副反応の状況を反映することができる。実施例3及び比較例1で得られた電池の「フル充電常温28日間放置性能」を測定した。結果を下記表2に示す。
【0047】
【0048】
表2から分かるように、比較例1の電池は、放置後の残容量比が92.44%、回復容量比が96.35%であるのに対し、実施例3の電池は、放置後の残容量比が94.79%、回復容量比が98.05%であり、いずれも比較例1の電池よりも優れ、本発明で合成した材料と電解液の副反応が少ないことを示している。これは、主に実施例の材料の比表面積が小さいためである。
【0049】
実施例4
工業用グレードのMnSO4・H2Oをマンガン源とし、サンドミルでミクロンサイズに粉砕した後、150℃に加熱して硫酸マンガンが結晶水を失った後、900℃に加熱して熱分解し、リン酸マンガンリチウム前駆体Mn3O4を生成させた。全反応式は以下のとおりである。
3MnSO4・H2O→Mn3O4+3SO2↑+3H2O↑
【0050】
Mn3O4、炭酸リチウム、リン酸二水素アンモニウムを固相混合し、サンドミルで粉砕し、600℃で高温固相焼結してリン酸マンガンリチウムLiMnPO4を得た。反応式は以下のとおりである。
4Mn3O4+6Li2CO3+12NH4H2PO4→12LiMnPO4+6CO2↑+12NH3↑+12H2O↑+5O2↑
【0051】
実施例5
工業用グレードのFeSO4・7H2Oを鉄源とし、サンドミルでミクロンサイズに粉砕した後、70~98℃に加熱すると、硫酸鉄(III)は結晶水を失い始めてFeSO4・4H2Oとなり、引き続き加熱すると、86~159℃で引き続き水を失ってFeSO4・H2Oとなり、最終的に227~283℃で結晶水を完全に失ってFeSO4となり、300℃を超えるとFeSO4は熱分解のために溶融し始め、さらに653~716℃に加熱すると、熱分解してリン酸鉄リチウム前駆体Fe2O3を生成した。全反応式は以下のとおりである。
4FeSO4・7H2O→2Fe2O3+4SO2↑+28H2O↑+O2↑
【0052】
Fe2O3、炭酸リチウム、リン酸二水素アンモニウムを固相混合してサンドミルで粉砕し、700℃で高温固相焼結してリン酸鉄リチウムLiFePO4を得た。反応式は以下のとおりである。
Fe2O3+Li2CO3+2NH4H2PO4→2LiFePO4+CO2↑+2NH3↑+2H2O↑+O2↑
【0053】
実施例6
工業用グレードFeSO4・7H2Oを鉄源とし、サンドミルでミクロンサイズに粉砕した後、200℃に加熱すると硫酸鉄(III)は結晶水を失い、1000℃に加熱すると熱分解し、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体Fe2O3を生成した。全反応式は以下のとおりである。
4FeSO4・7H2O→2Fe2O3+4SO2↑+28H2O↑+O2↑
【0054】
Fe2O3、炭酸リチウム、リン酸二水素マンガン、Mn2O3を固相混合してサンドミルで粉砕し、700℃で高温固相焼結してリン酸マンガン鉄リチウムLiFeMnPO4を得た。反応式は以下のとおりである。
2Mn2O3+8Fe2O3+20Li2CO3+20Mn(H2PO4)2・2H2O→40LiMn0.6Fe0.4PO4+20CO2↑+80H2O↑+5O2↑
【0055】
実施例7
工業用グレードMnSO4・H2Oをマンガン源とし、サンドミルでミクロンサイズに粉砕した後、150℃に加熱すると、硫酸マンガンは結晶水を失い、さらに900℃に加熱すると熱分解し、リン酸マンガン鉄リチウム前駆体Mn3O4を生成した。全反応式は以下のとおりである。
3MnSO4・H2O→Mn3O4+3SO2↑+3H2O↑
【0056】
Mn3O4、炭酸リチウム、リン酸鉄(III)、リン酸二水素アンモニウムを固相混合してサンドミルで粉砕し、600℃で高温固相焼結してリン酸マンガン鉄リチウムLiMn0.6Fe0.4PO4を得た。反応式は以下のとおりである。
6NH4H2PO4+2Mn3O4+5Li2CO3+4FePO4・2H2O→10LiMn0.6Fe0.4PO4+5CO2↑+17H2O↑+2O2↑+6NH3↑
【0057】
以上の実施例は、本発明を十分に説明するために挙げられた好ましい実施例にすぎず、本発明の保護範囲はこれらの実施例に限定されない。当業者が本発明に基づいてなされた同等置換又は変換は、全て本発明の保護範囲内に含まれる。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に準ずるものとする。
【国際調査報告】