(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】充電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/90 20160101AFI20240405BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20240405BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240405BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240405BHJP
A61N 1/36 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/40
H02J50/10
H02J7/00 301D
A61N1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546492
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2022052313
(87)【国際公開番号】W WO2022162238
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】102021102244.4
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021109685.5
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512101165
【氏名又は名称】メナート、ヴァルター
(71)【出願人】
【識別番号】512101176
【氏名又は名称】タイル、トーマス
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】メーナート, ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】タイル, トーマス
【テーマコード(参考)】
4C053
5G503
【Fターム(参考)】
4C053JJ23
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA05
5G503CC07
5G503DA04
5G503DA19
5G503GB08
5G503GD04
(57)【要約】
本発明は、生物の身体に植え込まれたインプラント(I)のエネルギー貯蔵部を非接触充電するための充電装置(100、200、300)に関し、充電装置は、
コイル軸に沿って延び、交番磁界を生成するように構成された少なくとも1つの自立式コイル(110、210)、を備え、
充電装置(100、200、300)の意図される使用の間、身体は、コイル(110、210)に対して配置され、それにより、コイル軸に沿ってコイルの内部のエリアに延びる交番磁界が、エネルギー貯蔵部を充電するために身体を貫通する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の身体に植え込まれたインプラント(I)のエネルギー貯蔵部を非接触充電するための充電装置(100、200、300)であって、
コイル軸に沿って延び、交番磁界を生成するように構成された少なくとも1つの自立式コイル(110、210)、を備え、
前記充電装置(100、200、300)の意図される使用の間、前記身体は、前記コイル(110、210)に対して配置され、それにより、前記コイル軸に沿って前記コイルの内部のエリア内に延びる前記交番磁界が、前記エネルギー貯蔵部を充電するために前記身体を貫通する、充電装置(100、200、300)。
【請求項2】
前記充電装置が、充電のための前記交番磁界のベクトルを少なくとも2次元で回転させるように構成される、請求項1に記載の充電装置(100、200、300)。
【請求項3】
前記充電装置が、対応する振幅を変化させることなく、充電のための前記交番磁界のベクトルを回転させるように構成される、請求項1又は2に記載の充電装置(100、200、300)。
【請求項4】
前記充電装置(100、200、300)の意図される使用の間、前記身体は、前記身体の長手方向軸が前記コイル軸の方向に延び且つ前記コイル内に位置するように、前記自立式コイルに対して配置され、前記交番磁界は、前記インプラントの場所に到達する、請求項1、2、又は3に記載の充電装置(100、200、300)。
【請求項5】
前記自立式コイルを支持する架台であって、少なくとも1つ、好ましくは2つの、軸を中心として、前記コイルを前記身体に対して枢動させて前記ベクトルを回転させるように構成された架台、をさらに備え、
前記充電装置は、前記エネルギー貯蔵部の前記充電を最適化すべく、前記コイルを前記身体に対して特定の向きに枢動させるために前記架台を制御するように構成される、請求項2、3又は4に記載の充電装置(100、200、300)。
【請求項6】
前記コイルを支持する前記架台が前記身体に対して変位可能である、及び/又は、前記身体を支持するための身体支持体が前記コイルに対して変位可能であり、
前記充電装置は、前記エネルギー貯蔵部の前記充電を最適化するために、前記架台及び/又は前記身体支持体を変位させて、前記コイルを前記身体に対して特定の位置にするように適合される、請求項5に記載の充電装置(100、200、300)。
【請求項7】
前記充電装置が、前記充電の効率を反映して前記インプラント内で生成された品質信号を受信又は要求するように構成された受信ユニットを備え、
前記充電装置が、前記品質信号に応じて前記コイルを特定の向き及び/又は位置に枢動及び/又は移動させて充電を最適化するように構成される、請求項5又は6に記載の充電装置(100、200、300)。
【請求項8】
前記コイル軸に沿った前記交番磁界の磁束密度が値Bを有し、
1.0mT<=B<=20.0mTであり、
好ましくは、
2.0mT<=B<=20.0mT、
2.5mT<=B<=8.0mT、
3.5mT<=B<=7.0mT、
4.5mT<=B<=6.0mT、
4.8mT<=B<=5.2mT、又は
5.0mT=Bである、
請求項1から7のいずれか一項に記載の充電装置(100、200、300)。
【請求項9】
前記コイルは、同じ軸上で互いから距離R1に配置された2つの分割されたサブコイルから形成され、前記2つのサブコイルは、前記交番磁界が、前記コイル軸に沿って各前記サブコイル及び前記サブコイル同士の間に位置するエリアを通って進むように協働し、好ましくは、R1がD/2に等しく(ヘルムホルツコイル)、
前記充電装置の意図される使用の間、前記身体は、好ましくは概して均一である、前記サブコイル間に位置する前記交番磁界が、前記エネルギー貯蔵部を充電するために前記身体を貫通するように、前記サブコイルに対して配置される、請求項1、2、又は3のいずれか一項に記載の充電装置(100、200、300)。
【請求項10】
第1のコイルの前記2つのサブコイルを支持する架台であって、少なくとも1つ、好ましくは2つの、軸を中心として、前記第1のコイル前記身体に対して枢動させて前記ベクトルを回転させるように構成された架台、をさらに備え、
前記充電装置が、前記エネルギー貯蔵部の前記充電を最適化すべく前記第1のコイルの前記2つのサブコイルを前記身体に対して特定の向きに枢動させるために、前記架台を制御するように構成される、請求項9に記載の充電装置(100、200、300)。
【請求項11】
前記充電装置が、前記充電の効率を反映して前記インプラントによって発信される品質信号に応答して、前記エネルギー貯蔵部の充電を最適化するために、前記第1のコイルの前記2つのサブコイルを前記身体に対して特定の向きに枢動させるように適合される、請求項9に記載の充電装置(100、200、300)。
【請求項12】
コイル軸に沿って延び、2つのサブコイルから形成される第2のコイルをさらに備え、前記2つのサブコイルは、前記第2のコイルの前記サブコイル間にエリアが位置するように互いから距離R2に配置され、
前記第1及び第2のコイルの前記コイル軸は、互いに対して横断し、好ましくは垂直であり、それにより、前記第1のコイルの前記サブコイルと前記第2のコイルの前記サブコイルとの間の磁界が共通エリア内で重畳し、
前記充電装置は、前記エネルギー貯蔵部の前記充電を最適化するために、前記重畳エリア内における前記交番磁界のベクトルの方向が2次元で(一つの平面内で)回転するように前記第1のコイル及び前記第2のコイルを制御するように構成される、請求項8又は9に記載の充電装置(100、200、300)。
【請求項13】
コイル軸に沿って延び、2つのサブコイルから形成される第3のコイルをさらに備え、前記2つのサブコイルは、前記第3のコイルの前記サブコイル間にエリアが位置するように、互いから距離R3に配置され、
前記第1、第2、及び第3のコイルの前記コイル軸は、好ましくは空間座標X、Y、及びZに沿って、互いに対して横断方向に延び、それにより、前記第1、第2、及び第3のコイルの前記サブコイル間の磁界が前記共通エリア内で重畳し、
前記充電装置は、前記エネルギー貯蔵部の前記充電を最適化するために、前記重畳エリア内における前記交番磁界の前記ベクトルの方向が3次元で回転するように、前記第1のコイル、前記第2のコイル、及び前記第3のコイルを制御するように構成される、請求項12に記載の充電装置(100、200、300)。
【請求項14】
前記充電装置が、前記充電の効率を反映して前記インプラント内で生成された品質信号を受信又は要求するように構成され、
前記充電装置が、前記エネルギー貯蔵部の前記充電を最適化するために、前記重畳エリア内の前記交番磁界の前記ベクトルを定められた位置にするように構成される、請求項11又は12に記載の充電装置(100、200、300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラントのエネルギー貯蔵部の非接触充電のための充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物の身体に完全に植え込まれる電子ペースメーカが、特許文献DE102018205940A1から知られている。このペースメーカは、ペースメーカの電子機器アセンブリに電気エネルギーを供給すると共に、放電後、非接触式に充電することができるエネルギー貯蔵部を備えている。
【0003】
エネルギー貯蔵部の非接触再充電は、一定の磁界強度に達すると反転領域(ワイス(Weiss)領域)の波がその中に発生するように交番磁界に反応する磁化部分を利用する、「間接」誘導を介して行われる。この波の発生は、交番磁界の周波数に依存せず、周波数は、単位時間当たりに波がどれほどの頻度で発生するかについての情報だけを提供する。
【0004】
磁束の急速な変化のために、この波は、空間近傍に配置されたコイルから電圧インパルスを放たせ、エネルギー貯蔵部の充電をもたらす。
【0005】
上記特許文献に示される充電装置は交番磁界を生成し、この充電装置は、充電プロセスの間、生物の身体の表面上又は表面の近くに配置され、交番磁界は、ペースメーカの磁化部分を説明されているようにトリガする。
【0006】
同充電装置は、交番磁界を生成するための複数のコイルを備えている。身体の表面を貫通して磁化部分に到達する交番磁界のエリアは、コイルの弱い漂遊磁界の一部である。
【0007】
このコイルの漂遊磁界は、同時に極めて不均一であり、コイルからの距離が増すにつれて強く低下する。
【0008】
この理由から、エネルギー貯蔵部の再充電は、磁化部分における反転領域の波が確実に且つ周期的に生成されるように、ペースメーカの植え込みの深さに応じて、磁界ベクトルの対応する方向と共に前記コイルの電気動作パラメータ及び強い漂遊磁界の入念な調節を必要とする。
【0009】
磁化部分のエリアにおける磁界が、磁界が弱過ぎる又は不均一過ぎるかのいずれかのために、磁界強度又は磁束密度の一定の最適値から過度に外れると、充電のために必要とされる波はトリガされない。
【0010】
漂遊磁界における必要な磁界強度又は磁束密度を実現するために、上記の知られている充電装置は、非常に高い電流/電圧耐性のある設計を有さなければならない。
【0011】
変圧器の原理に従って普通の(周波数に依存する)誘導によってエネルギー貯蔵部を充電しようと試みると、説明した問題に加えて、特に磁界強度/磁束密度に関して、さらに大きな負の影響に直面する。
【0012】
この種の充電では、同時に、許容できる磁界強度/磁束密度をもって十分なエネルギー伝送を実現するために、可能な限り高い周波数が望ましい。しかし、周波数が増大すると、同時に、身体の導電性のヒト組織内の負の表皮効果が増大して、交番磁界が身体中にわずかしか貫通せず、インプラントへの到達が不可能となる。
【0013】
代替として、同時に低い周波数におけるインプラントの場所での漂遊磁界の磁界強度/磁束密度を増大することも、ほとんど可能でない。何故ならば、充電装置内に位置するコイルの誘導交流抵抗を大きく選択しなければならず、それにより、電流及び/又は電圧値がもはや実現可能でない範囲の内側に入るためである。
【発明の概要】
【0014】
上記の背景に照らして、本発明の目的は、充電のために必要な交番磁界をより容易且つ確実に生成することを可能にする、インプラントのエネルギー貯蔵部の非接触充電のための充電装置を提供することである。
【0015】
さらに、本発明の目的は、従来技術に対して、特に電流値及び電圧値に関する限り、単純な充電装置を提供することである。
【0016】
この/これらの目的は、請求項1に記載の充電装置によって達成される。本発明による充電装置の好ましい実施形態は、従属特許請求項の主題である。
【0017】
本発明の1つの態様によれば、生物の身体に植え込まれたインプラントのエネルギー貯蔵部を非接触充電するための充電装置は、以下の特徴、すなわち、
コイル軸に沿って延び、交番磁界を生成するように構成された少なくとも1つの自立式コイル、を含み、
充電装置の意図される使用の間、身体は、コイルに対して配置され、それにより、コイル軸に沿ってコイルの内部のエリア内に延びる交番磁界が、エネルギー貯蔵部を充電するために身体を貫通する。
【0018】
厳密に言えば、充電装置のコイルは、交番電磁界を生成する。とは言え、本発明に関係するのは、交番電磁界の磁気部分だけである。したがって、本説明は、交番磁界のみについて言及する。
【0019】
意図される使用法に従って本発明による充電装置によってエネルギー貯蔵部が充電されるインプラントは、例えば心臓ペースメーカ、脳ペースメーカ、臓器ペースメーカ、又は分析ユニットである。最後の分析ユニットは、例えば、血圧及び/又は血中濃度などのパラメータを継続的に又は特定の時間間隔で測定するように形成される。インプラントが、人間の心臓の中又はその表面に設置された/植え込まれた心臓ペースメーカ又は心臓ペースメーカネットワークであることが特に好ましい。
【0020】
交番磁界の周波数の値に非依存になるために、インプラントの基礎要素は、配向された磁区を有する磁化部分であり、磁化部分のエリア内における充電装置によって生成された交番磁界の振幅(B-field)が一定の値に達すると、磁化部分を横切って、連続した反転磁区の形態の再磁化波が進む。磁化部分は、例えば、インパルスワイヤ又はウィーガントワイヤである。
【0021】
空間的に磁化部分の近くに位置するコイルは、再磁化波に起因する電圧インパルス及び対応する磁束の急速な変化を生じさせ、それが、例えば充電電子機器にエネルギーを供給し、充電インパルスをもたらす。エネルギー貯蔵部は、充電インパルスで充電されることが可能である。充電装置によって生成される交番磁界は、整流ごとに再磁化波を開始させ、充電インパルスは、同じ数だけ発生して、エネルギー貯蔵部を充電する。
【0022】
代替として、インプラントは、周波数に依存する普通の誘導を使用してそのエネルギー貯蔵部が充電されるという点で、異なるように設計されてよい。この目的のために、インプラントは、好ましくは特殊形状の芯を有する受信コイルを有し、受信コイルは、生成される交番磁界の周波数及び大きさに依存する充電インパルスを発信する。受信コイルは、長手方向の延びの方向に芯の周りに巻回される。
【0023】
したがって、本発明による充電装置は、「普通の」周波数依存の誘導及び/又は「間接的な」周波数非依存の誘導を利用した充電のために意図される。
【0024】
上記で説明した磁化部分を備え、そのエネルギー貯蔵部が再磁化波を生成することによって充電される、「間接的な」誘導を充電のために使用する心臓ペースメーカ又は心臓ペースメーカネットワークは、特許文献DE102019124435及びEP3756726A2から知られている。
【0025】
それぞれの充電インパルス生成部分に関して、特に、周りに巻回されたコイルを含み、それぞれの電圧インパルスを生成する磁化部分に関して、及びそれぞれの充電電子機器に関して、これらの特許文献に含まれている説明は、参照により組み込まれる。
【0026】
本発明による充電装置によって生成される交番磁界の周波数fは、特に0.1kHz≦f≦10kHzの間、特にf=2kHz、3kHz、4kHz、又は5kHzである。周波数fは、好ましくは、磁化部分の空間寸法及び材質データ、並びに磁化部分を横切って進む再磁化波の関係するランタイムに合わせて適合される。
【0027】
周波数はまた、その代替実施において、受信コイルが特殊形状の芯を備えている限り、普通の誘導に基づいてインプラントを充電するのにも適する。
【0028】
本発明による充電装置の自立式コイルの形状は、異なるように設計され得る。例えば、コイルは、円形、長方形、又は正方形であり得る。
【0029】
コイルは、身体に関係なく、寸法に安定し、自立式となるように設計される。これは、身体が、寸法的に安定して支持されたコイルに対して移動できることを意味する。加えて、コイルは、生物の身体がコイル又はフレームや絶縁体などのその要素に接触することなく、コイルに対して移動されることが可能な空間寸法を有し、それにより、身体は最終的に、コイルに全く接触することなく位置付けられ、インプラントは、それぞれ、コイルの内部であって、且つコイル軸に沿ってコイル内を延びる交番磁界の中のエリアに位置付けられる。
【0030】
本発明による充電装置のコイルは、コイル軸に沿ってコイルの内側に延びるエリア内にほぼ均一な交番磁界を生成し、コイル軸に対してコイルの径方向内側エリア全体の中の対応する磁束密度の振幅は、
i.磁界(Bベクトルの方向)と再磁化波の意図される進行方向との間に同じ向きを仮定したとき、再磁化波は、交番磁界の整流ごとに開始され、よって充電インパルスが生成される、又は
ii.磁界(Bベクトルの方向)と、受信コイルの芯(この芯は普通の誘導のために機能する)の意図される向きとの間に同じ向きを仮定したとき、充電インパルスは交番磁界の整流ごとに生成される、
ような値を有する。
【0031】
この磁界分布のため、コイル内側のエリアにおけるインプラントの正確な位置付けは重要でなく、このことにより、インプラントの深さなどの充電の条件に合わせた交番磁界の入念な調節が不要になる。
【0032】
好ましくは、充電装置は、充電のための交番磁界のベクトルを、少なくとも空間的に2次元又は空間的に3次元で回転させるように構成される。これに関して、充電装置は、好ましくは、ベクトルの対応する振幅を変化させることなく、充電のための交番磁界のベクトルを回転させるように構成される。回転は、例えば、以下でサスペンションを参照して説明されるように機械的に、又は、例えば以下で説明されるサブコイル間に位置する、重畳した個々の交番磁界を変化させることにより、行われる。
【0033】
充電装置の意図される使用の間、身体は、身体の長手方向軸がコイル軸の方向に延び、且つコイルの中に位置するように、自立式コイルに対して(非接触で)配置されることが好ましく、交番磁界は、インプラントの場所に到達する。
【0034】
充電装置のこの好ましい実施形態では、生物、特に人間、の長手方向の身体軸は、その結果、コイル軸の方向に延び、この実施形態は、特に、磁化部分を横切って進む再磁化波の意図される進行方向の向き、又は普通の誘導のために機能する芯の向きが、長手方向の身体軸の方向と一致する場合に、有利である。この状態は好ましくは、インプラントの形状又は固定部がこの向きに至るようにインプラントを構築することによって実現され得る。
【0035】
好ましくは、本発明による充電装置は、コイルを支持する架台であって、ベクトルを回転させるために、少なくとも1つ、好ましくは2つの、軸を中心として、コイルを身体に対して枢動させるように構成された架台、をさらに備え、充電装置は好ましくは、例えば制御ユニットにより架台を駆動して、コイルを身体に対して特定の向きに枢動させることにより、エネルギー貯蔵部の充電を最適化するように構成される。
【0036】
代替として、充電装置は、好ましくは、エネルギー貯蔵部の充電を最適化するために、どの方向に作業者がコイルを身体に対して手動で枢動させるべきかを作業者に表示するために表示装置を作動させるように構成され得る。
【0037】
再磁化波の意図される進行方向又は普通の誘導のために機能する芯の向きが、交番磁界のベクトルの方向と一致しない場合、磁化部分の軸又は芯の方向における磁界の成分があまりにも小さくなるためにずれが大きくなり過ぎると、充電インパルスは途絶える可能性がある。
【0038】
磁界の向きに合わせた再磁化波又は芯の進行方向の、或いはその逆の調節又は適合を可能にするために、架台が設けられる。架台は、例えば、充電装置の制御ユニットが充電装置のコイルを、2つの軸を中心に生物の身体に対して枢動させることを可能にして、コイルによって生成される交番磁界の向き(B-fieldのベクトル)と、再磁化波又は芯の意図される進行方向との一致を実現する、ジンバル付き架台である。
【0039】
有利な点として、コイルの枢動は、磁束密度の振幅の変化は全く伴わず、交番磁界の向きを変化させるだけである。
【0040】
さらに、自立式コイルを支持する架台が身体に対して変位可能である、及び/又は、身体を支持するための身体支持体がコイルに対して変位可能であることが好ましく、
充電装置は、エネルギー貯蔵部の充電を最適化するために、架台及び/又は身体支持体を変位させて、自立式コイルを身体に対して特定の位置にするように適合される。
【0041】
例えば、充電装置は、好ましくは身体の長手方向軸の方向に、コイルの架台全体がその上を変位可能であるリニアガイドを備える。リニアガイドに沿った架台の移動は、ユーザにより、手動で、又は制御ユニットのユーザインターフェースで適切な命令を与えることにより自動的に、行われ得る。自立式コイルの変位(及び/又は上で述べた枢動)は、生物、特に人間、の身体が、身体支持体を除いては、例えばコイルやその要素などの充電装置の他の要素と接触しないように行われる。
【0042】
充電装置は、好ましくは、再磁化波の進行方向又は普通の誘導のために機能する芯の向きが磁界の向きと一致するかどうか、又はどの程度一致するかを確認するように構成される。例えば、充電装置は、特定の時間間隔でエネルギー貯蔵部の充電の状態をワイヤレスに要求し、エネルギー貯蔵部の充電の状態の変化に基づいて、整流周波数及び既知の充電インパルスの最大レベルに基づいて、充電の効率に関する結論を導き出すことができる。
【0043】
しかし、充電装置は、インプラントによって送信される、充電の効率を反映する品質信号を受信するように構成された受信ユニットを備え、充電装置は、品質信号に応じて、コイルを特定の向きに枢動させる且つ/又は位置付けて、充電を最適化するように構成されることが好ましい。
【0044】
前記品質信号は、例えば、生物の身体、及び、それぞれのアンテナが設けられない場合に心臓ペースメーカのスリーブ又はケースを貫通する、低周波数信号であってよい。充電インパルスの品質は、好ましくは、積分(∫idt)の値に比例する。良好な充電インパルス、すなわち非常に高い品質をもつものでは、値は、例えば1000nCにもなる。品質を示す信号は、例えば、時間に伴う充電インパルスの電流の積分の値(∫idt)、すなわちその電荷量を示してよい。代替として、品質信号は、以下の比を示すことができる:
(送達された充電インパルスの電荷量/最大の可能な電荷量)。
【0045】
さらに代替として、品質信号は、充電インパルスが一定の閾値を超えるときにOK状態を取る2値信号であってよい。
【0046】
品質信号を観察しながら、制御ユニットは、架台、例えばジンバル付き架台を制御し、コイルの様々な位置及び対応する品質信号からコイルの最適な位置を決定し、その位置へ、制御ユニットが最終的にコイルを枢動させる。説明した代替形態では、充電装置は、作業者がコイルを枢動すべき方向を表示装置に表示することができる。
【0047】
以下は、本発明による充電装置及び/又はそのコイルの好ましいパラメータである。
【0048】
コイル軸に沿った交番磁界の磁束密度は、好ましくは、mTの範囲の、好ましくは1mTより大きい/1mTに等しい、特に、
1.0mT<=B<=20.0mT、特に2.0mT<=B<=20.0mT、2.5mT<=B<=8.0mT、3.5mT<=B<=7.0mT、4.5mT<=B<=6.0mT、4.8mT<=B<=5.2mT、又は5.0mT=B、の範囲の値Bを有する。
【0049】
コイルの直径は値Dを有し、これは、生物、特に人間、の身体が、コイル又はその要素と接触することなく、交番磁界(この磁界はコイル軸に沿ってコイル内の領域に延びる)の中に入れられることができ、コイルに対して非接触式に、充電のために意図されるようにそこに配置されるような大きさにされる。直径は、好ましくは、次の範囲、0.6m<=D<=0.9m、0.65m<=D<=0.85m、0.68m<=D<=0.8m、又は0.72m=Dである、及び/又は、
コイルの長さは、好ましくは、値lを有し、好ましくは、0.15m<=l<=0.5m、0.2m<=l<=0.45m、0.25m<=l<=0.4m、又は0.33m=lである。
【0050】
充電装置のコイルは、特に人体の長手方向の身体軸がコイル軸と一致することが意図される場合、連続的に巻回されたコイルであってよい。
【0051】
代替として、コイルは、分割されて、2つのサブコイルから構築され得る。サブコイルの寸法及び互いからの間隔は、好ましくは、分割されたコイルが、少なくともコイル軸の周りの径方向エリアにおいて、連続して巻回されたコイルのように働くように選択される。分割されたコイルの一例はヘルムホルツコイルである。意図される使用に従うと、人体は、サブコイルと磁界及び交番磁界との間にそれぞれ位置付けられ、身体の長手方向軸がコイル軸に対して垂直に延びる。
【0052】
分割されたコイルは、調節可能な架台によって支持されることも可能である。
【0053】
代替として、充電装置は、2つ又は3つの分割されたコイルを含んでよく、コイル軸は好ましくは、2つの又は3つの空間座標に配置される。人体及びインプラントは、充電装置が意図されるように使用されるとき、それぞれのサブコイルの間に位置付けられ、それぞれのコイル内のエリアに各々がある、分割されたコイルによって生成される交番磁界は、サブコイル間で重畳され、身体に植え込まれたインプラントに到達する。
【0054】
重畳した交番磁界から生じる、交番磁界の狙いを付けた配向は、充電を最適化するために、それぞれのコイルの対の位相及び/又は振幅をそれぞれ異なるように制御することによって実現され得る。
【0055】
その結果生じる交番磁界の制御は、例えば品質信号に基づくことができる。
【0056】
以下に説明される充電装置の第2の好ましい実施形態及び第3の好ましい実施形態から分かるように、上述の分割されたコイルは自立式である、すなわち、互いからある距離に配置されたそれぞれのサブコイルは、寸法的に安定していて自立式であり、それにより、生物(人間)の身体を、それぞれコイル及びその要素と非接触に、交番磁界の中に移動させることができ、身体は充電のためにそこに留まる。
【0057】
以下で、本発明による充電装置の好ましい実施形態が、添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1A】本発明による充電装置の第1の好ましい実施形態を、第1に斜視図で、第2に図中に示されるZ軸に沿った視点で示す図であり、充電装置は、ジンバル付き架台によって支持されるコイルを備えている。
【
図1B】本発明による充電装置の第1の好ましい実施形態を、第1に斜視図で、第2に図中に示されるZ軸に沿った視点で示す図であり、充電装置は、ジンバル付き架台によって支持されるコイルを備えている。
【
図1C】本発明の第1の好ましい実施形態の充電装置のコイルによって生成された交番磁界のシミュレーション結果を示す図である。
【
図1D】コイル軸に対して径方向のコイルの中心における交番磁界(mT単位のB-field)の振幅を示す図である。
【
図2A】本発明による充電装置の第2の好ましい実施形態を示す図であり、充電装置は、2つのサブコイルから形成されるコイルの対を備え、架台が、両方のサブコイルを支持し、それらサブコイルを一緒に枢動及び/又は変位させるように構成されている。
【
図2B】本発明による充電装置の第2の好ましい実施形態を示す図であり、充電装置は、2つのサブコイルから形成されるコイルの対を備え、架台が、両方のサブコイルを支持し、それらサブコイルを一緒に枢動及び/又は変位させるように構成されている。
【
図3】本発明による充電装置の第3の好ましい実施形態を示す図であり、充電装置は3つのコイルを備え、各コイルは2つのサブコイルから構成され、それぞれのコイル軸は互いに対して空間的に垂直であり、それぞれのコイルの間に位置する重畳エリアにおいて、交番磁界の振幅及びベクトルは、コイルを制御することによって調整可能である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下に説明される本発明による充電装置の実施形態は、人間又は動物の身体に完全に植え込まれるインプラントのエネルギー貯蔵部を充電するものである。
【0060】
インプラントは、一般に、植え込まれた状態で特定の機能を引き受ける存在物を構成し、この目的のために、少なくとも電子機器アセンブリ及びその電子機器アセンブリに供給する前記エネルギー貯蔵部を備えている。
【0061】
好ましくは、インプラントは、身体データ(身体情報)を取り込む、及び/又は身体にインパルスを送達するための電極、並びに外界とのインターフェースの役割を果たす通信ユニットを依然として備えることができる。
【0062】
インプラントは、例えば、心臓ペースメーカ、脳ペースメーカ、膀胱ペースメーカ、及び/又は、血圧及び/又は血中濃度などの身体データを取り込む分析ユニットである。
【0063】
エネルギー貯蔵部の非接触再充電のために、インプラントは以下を備える。
i.充電電子機器を有する充電インパルス生成部分(特許文献DE102019124435に記載されるものなど)、及び/又は、
ii.好ましくは特殊形状であるコイルの周りに巻回された受信コイルであって、普通の誘導に基づくエネルギー貯蔵部の充電を可能にする芯を有する受信コイル。
【0064】
充電インパルス生成部分の基礎要素は、磁化部分、例えばウィーガントワイヤであり、これは、本発明による充電装置の実施形態によって生成される交番電磁界のその軸方向における磁界成分によって影響され得る配向された磁区を有し、ドミノ状の反転領域(ワイス領域)の形態の再磁化波が磁化部分を横切って進むようになっている。
【0065】
再磁化波は、時間と共に、磁化部分の空間近傍に配置されたコイルがエネルギー貯蔵部の充電インパルスをもたらす電圧インパルスを生成するような、磁束の大きい変化をもたらす。
【0066】
このエネルギー貯蔵部の再充電方法は、表皮効果などの負の影響によって交番磁界が身体を貫通して磁化部分に到達するのが妨げられない程度まで交番磁界の周波数を低くすることができる、という点で特に有利である。
【0067】
例えば、磁化部分は、コイルが周りに巻回されているウィーガントワイヤであってよい。
【0068】
ウィーガントワイヤを横切って進む再磁化波の速度は、アイドル動作時に800m/sの範囲であり、ペースメーカに含まれているウィーガントワイヤの長さは0.7~1.2cmの範囲である。この結果、ここでも、アイドル動作時に10~20μsの範囲の再磁化波(反転領域の波)の実行時間となる。
【0069】
これらの値を考慮すると、以下に説明される本発明による充電装置は、0.1から10kHzの範囲の周波数をもつ交番磁界を生成する。この周波数範囲では、交番磁界は、生物の身体の非常に深いところにあるエリアを貫通し、よって、非接触充電のためにインプラントの磁化部分に容易に達することができる。
【0070】
前記周波数範囲はまた、少なくとも前記芯がコイルを貫通して延びていれば、普通の誘導による充電のためにも好適である。
【0071】
本発明による充電装置の実施形態は、以下で、インプラントが人間の心臓の中/表面に完全に植え込まれる心臓ペースメーカであると想定して説明される。それでも、本発明はそれに限定されない。
【0072】
心臓ペースメーカは、エネルギー貯蔵部及び対応する電子機器アセンブリを封入するケースを備えている。心臓ペースメーカのケースは、1cm3の範囲の容積を有する。
【0073】
心臓ペースメーカの必要な電極は、ケースの表面に露出しており、人間の心臓のいくつかの部分と接触する、及び/又は、人間の心臓内に固定されて心臓ペースメーカを適所に保持する固定用電極として形成される。
【0074】
心臓ペースメーカは、電極を介して身体データ、すなわち心臓の活動についての情報、を受信する、及び/又はこれを介して心臓に刺激インパルスを発信することができる。
【0075】
心臓ペースメーカのエネルギー貯蔵部は、例えば、電気化学エネルギー貯蔵部、特に蓄電池、例えばリチウムイオン蓄電池であり、例えば0.75から1.25年の期間にわたって、心臓ペースメーカのすべての電子構成要素に電気エネルギーを供給できるような容量を有する。例えば0.5年ごとに再充電される場合、これは、すべての電子構成要素にエネルギーが供給されることを保証する。
【0076】
充電は、下記でより詳細に説明される充電装置を通じた普通の又は間接誘導に基づく非接触式である。
【0077】
(第1の実施形態)
図1A~
図1Eを参照して、本発明による充電装置の第1の好ましい実施形態が以下に説明される。
【0078】
第1の好ましい実施形態による充電装置100は、充電のために必要な交番磁界を生成する自立式の(寸法的に安定した)コイル110を備える。コイル110は、患者Pのための充電装置100の身体支持体120が、自立式コイル110又はその要素、例えば絶縁体、フレーム、巻線等、に接触することなく、コイル110内の区画に収納できるような空間的寸法を備える。
【0079】
充電装置100のこの好ましい実施形態では、身体支持体120は、充電装置100が意図されるように使用される時に、患者Pがその上に横たわる又は配置されるストレッチャーである。
【0080】
患者Pは、模式的に示される心臓ペースメーカIを有し、それは患者Pの心臓に完全に植え込まれている。
【0081】
身体支持体120は、コイル110を通って、
図1A及び
図1Bに示されるZ軸の方向に延びる。Z軸は、コイル110のコイル軸に対応する。患者Pが身体支持体120に横たわっている時、下記でさらに説明されるように、患者の身体軸はコイル110のコイル軸の方向にあり、コイル110内部のエリアに位置する交番磁界は、患者Pの身体を貫通して、エネルギー貯蔵部を充電するために心臓ペースメーカIに到達する。
【0082】
好ましい実施形態では、コイル110は、直径Dを有する円形コイルであり、対応するコイル面が、コイル軸(Z軸)に対して垂直な
図1A及び
図1Bに示されるX-Y面にある。
【0083】
代替として、コイル110は、正方形又は長方形のフレームコイルであってもよい。直径Dは、第1の好ましい実施形態では0.72mであるが、患者がコイルと接触することなくコイルの内部に場所を見つけられる限り、様々に異なってもよい。
【0084】
例えば、コイル110は、電線、例えば銅線、から形成された複数の巻線wを備えた、単層の巻線を有する。第1の好ましい実施形態では、巻き数はw=10であるが、この値は、好ましいものに過ぎず、様々に異なってもよい。
【0085】
巻線を形成する電線は、好ましくは、320mm2の矩形断面を有し、これは、Z軸の方向を向く32mmの辺長さと、これに対して垂直に延びる10mmの辺長さとから生じる。加えて、電線の表面を覆う、0.5mmの厚みの電気絶縁体がある。
【0086】
この結果、絶縁体を考慮に入れないと、コイル軸(Z軸)の方向におけるコイル110の長さlは0.32mになり、絶縁体を考慮に入れると、0.33mになり、よって、第1の好ましい実施形態にはD>lの条件が該当する。
【0087】
このコイル110の構成では、コイル110のインダクタンスLは、87μHの値を有する。本発明は、説明した構成及び前記パラメータによって制限されない。一般に、コイル110の構成は、インダクタンスが範囲0.02mH<=L<=0.3mHになるようなものであることが好ましい。
【0088】
本発明による充電装置100のコイル110は好ましくは、1mTより大きい/1mTと等しい範囲、好ましくは2.5mT<=B<=8.0mTの範囲、特に5mTの範囲、の振幅(磁束密度B)の交番磁界をその内部に生成するように、心臓ペースメーカIのエネルギー貯蔵部の充電時に作動される。
【0089】
これらの値の磁束密度Bを有する交番磁界は、コイル110内部のエリアに位置し、コイル110のコイル軸に沿って延びる。
【0090】
好ましくはすでに述べたようにウィーガントワイヤである、心臓ペースメーカIに含まれている磁化部分は、上記の磁束密度Bの値、及び0.1から10kHzの範囲、特に2kHzのすでに述べた交番磁界の周波数f(整流周波数)において、交番磁界の各整流が非常に高い確率で再磁化波を開始させ、よってエネルギー貯蔵部の充電インパルスをもたらすという点で確実な挙動を示す。
【0091】
また、エネルギー貯蔵部は、心臓ペースメーカの受信コイルが適切な芯を有すれば、この周波数範囲で、特に2kHzよりも上の周波数において、普通の誘導によって充電することができる。
【0092】
説明した、第1の好ましい実施形態に従う本発明による充電装置100の構成は、電気動作パラメータが、通常の医師の慣行の中で充電装置100の動作を支障なく可能にする大きさの範囲にあるため、特に有利である。
【0093】
コイル110により生成される交番磁界の磁束密度Bは、次の関係によって与えられる。
B=(μ0*I*w)/D (1)
【0094】
本発明による充電装置100は、好ましくは、I=300Aの強度の交流をコイル110の巻線に生成する。前記巻き数w=10の場合、上記関係(1)は結果として5.25mTの磁束密度Bを生じ、これは、ウィーガントワイヤ/磁化部分の確実なトリガ又は充分な普通の誘導のために、上記の範囲内である。
【0095】
ω=2πfのときにω*Lから生じるコイル110のAC抵抗を考慮に入れると、AC電流Iの生成のために必要なAC電圧は、U=I*ω*Lから得られ、よって、交番磁界の2kHzの周波数fでは327Vとなる。
【0096】
巻線に生成される交流電流Iの値及び対応する電圧値Uは両方とも、通常の建物/医師の慣行で提供可能な大きさの範囲内である。したがって、本発明による充電装置100は、必ずしもMRTの動作の場合のように別個の施設に設置される必要はない。
【0097】
有利な点として、これは、共振回路、例えば並列共振回路、の一部である、本発明による充電装置100のコイル110によって実現される。このようにすると、有効電力(銅損)だけが電力網から取られればよい。
【0098】
図1Bは、充電装置100の制御ユニット150に一緒に含められる、増幅器151及びキャパシタ152を模式的に示す。コイル110と共に、キャパシタ152は、前記並列共振回路を形成する。
【0099】
並列共振回路は、充電装置100が意図されるように動作している時に共振するような大きさである。コイル110のL=87μHのインダクタンスを考慮に入れると、共振の場合に有効な関係1/(ω*C)=ω*Lは、結果として、C=72.8μFのキャパシタのキャパシタンスになる。
【0100】
コイル110のオーム抵抗Rは、基本的に、巻線を形成する電線の材質及び寸法に起因するものである。本発明による充電装置100のこの第1の好ましい実施形態では、コイル110の電線のオーム抵抗Rは、約1.24mΩである。
【0101】
この結果、この例で、コイル110を流れる交流電流の対応する実効値I
effと共に、56Wのコイル110の有効消費電力が得られる。並列共振回路のこの有効消費電力は、建物内の標準的な電源(例えば、230V;50Hz)によって容易に供給することができる。すなわち、本発明による充電装置100は、制御ユニット150を介して標準的なソケットに接続することができる。
図1A及び
図1Bは、そのような接続ケーブルを模式的に示している。
【0102】
心臓ペースメーカIのエネルギー貯蔵部が植え込まれた状態で再充電を必要とするとき、患者Pは、
図1A及び
図1Bに示されるようにストレッチャー120に横たわる。
【0103】
Z方向(Z軸の正又は負の方向)を基準としたコイル110に対する患者P又はストレッチャー120の空間位置は、充電装置100の制御ユニット150が、下記で説明されるコイル110の架台140をストレッチャー120/患者Pに対して変位させることによって実現される。架台は、寸法的に安定したコイル110を、コイルが自立するように支持する。この目的のために、充電装置100は、ストレッチャー120の下に配置され、コイル110の架台140をZ方向に変位可能に保持する、リニアガイド130を有する。
【0104】
コントローラ150は、架台140をZ方向の特定の位置まで移動するためにリニアガイド130を制御するように構成される。代替/追加として、身体支持体/ストレッチャー120は、変位可能に支持されてよく、それにより、充電装置100の制御ユニット150は、変位機構を制御することにより身体支持体/ストレッチャー120を変位させて、患者Pをコイル110に対して非接触に配置してよい。
【0105】
患者Pとコイル110は、意図された通りに充電されるとき、心臓ペースメーカIがコイル110の中でコイル軸に沿ったエリアに位置するような互いに対する空間関係を有する。
【0106】
この状態は、心臓ペースメーカIが、(D/2)2*π*lによって与えられるコイル110によって定められる円筒形容積Vの中に位置しているという意味で、
図1A及び
図1Bに示されている。このエリア内でコイル軸に沿って延びる交番磁界は、患者Pの身体を貫通して、心臓ペースメーカIに到達する。
【0107】
磁束密度Bは、円筒形容積全体の中で充電するのに十分な値を有し、これは、磁化部分又は普通の誘導のために機能する芯の向きが正しい限り、円筒形容積Vの中の心臓ペースメーカIの具体的な位置は副次的な役割を果たすことの理由である。これは、以下の
図1C~
図1Eの説明から理解することができる。
【0108】
図1C及び
図1Dは、I=300Aの交流電流がコイル110の巻線を流れる時にコイル110によって生成される交番磁界の磁束密度Bの大きさ及び向きを示す。
図1Cはコイル110の断面図に相当し、断面は、
図1A及び
図1Bに示されるZ-X面に対応し、コイル110の中心を含む。コイル110の中心は、
図1A及び
図1Bに示される座標系の原点でもある。
【0109】
この文脈において、
図1Dは、磁束密度Bの振幅を示し、
図1Cは、対応するベクトル表現を示し、これらの図は、それに応じて空間中に生じる値に関係している。
【0110】
図1Dは、コイル110の中、特に中央面エリア(X-Y面、Z=0)内、の磁束密度Bの振幅が、直径D全体にわたって4.5mTよりも大きい振幅を有する(
図1Dのエリアを参照)ことを明白に示している。加えて、
図1Cが示すように、中央面エリアにおける磁束密度Bの向き(ベクトル)は、実質的に均一であり、すなわち、磁束密度Bの向きを示すベクトルはコイル軸に平行である。
【0111】
図1Dは、コイル110の中心面(Z=0)におけるその結果生じる磁束密度Bの振幅が、コイル軸すなわち座標系の中心から始まってどのように径方向(X及び/又はY方向)に変化するかを詳細に示している。磁束密度Bは、(X,Y,Z)=(0,0,0)において、結果的に4.5mTの磁束密度を有し、径方向に約8mTまで増大する。
【0112】
その意図される使用法に従うと、第1の好ましい実施形態の充電装置100は、対応するエネルギー貯蔵部が充電される時に、心臓ペースメーカIがコイル110によって定められる円筒形容積Vの中に位置するように、動作させる。しかし、本発明の充電装置100が意図されるように動作している時に、心臓ペースメーカIがコイル110の中央(X/Y)面上の一点に位置するように、患者Pがコイル110に対して位置付けられることが特に好ましい。
【0113】
心臓ペースメーカIの磁化部分、特にウィーガントワイヤ、又は芯は、充電装置100の意図される動作中に、再磁化波の意図される進行方向又は芯の長手方向の延びが、コイル軸/Z軸の方向と、したがって結果生じる磁束密度Bの主成分(Z成分)と、一致するように配向される。意図される進行方向は、最適な電圧インパルス又は充電インパルスを実現するために再磁化波が磁化部分を横切って進むべき方向に対応する。前記ウィーガントワイヤの場合、この進行方向は、通常、その長手方向軸に対応する。
【0114】
再磁化波の磁化部分/進行方向又は普通の誘導のために機能する芯の長手方向の延びと、コイル軸の方向との位置合わせは、心臓ペースメーカI又はその中に含まれる磁化部分を植え込む際に向きに注意を払うことによって実現される。例えば、心臓ペースメーカIは、身体軸(したがってZ軸/コイル軸)の方向への、磁化部分/普通の誘導のために機能する芯の長手方向の延びの配向が、植え込み時に必ず生じるように形成された電極及び/又は固定部を有する。
【0115】
Z軸/コイル軸の方向への、磁化部分の配向、特にウィーガントワイヤの長手方向の延び又は普通の誘導のために機能する芯の長手方向の延びの配向は、交番電磁界のどの整流も再磁化波/普通の誘導を確実に開始させ、所望の電圧インパルスが発生し、それがひいてはエネルギー貯蔵部のための充電インパルスをもたらすことを意味する。
【0116】
コイル110によって生成される交番磁界の説明は、再磁化波の確実な開始又は確実な誘導が、心臓ペースメーカ又は磁化部分がコイル110によって定められる円筒形容積V内のどこに位置するかに依存しないことを示している。この理由は、コイル110内に磁束密度Bの充分に均一な振幅があり、同時にコイル軸の方を向くBベクトルの向き(場所に依存しない)があるからである。
【0117】
これは、心臓ペースメーカの位置及び場所に合わせた交番磁界の強度及び向きの入念な調節及び適合の必要をなくす。
【0118】
心臓ペースメーカIが、再磁化波の移動方向又は芯の長手方向の延びが患者の身体軸の方向を向くように、患者Pの身体に植え込まれている場合でも、意図される通りの充電装置100の動作中に、芯の長手方向の延び又は磁化部分の向き、したがって一方における進行方向と、他方におけるコイル軸との間にずれが生じることがある。
【0119】
これは、患者の身体内における心臓ペースメーカIの位置ずれにつながる、患者の個人の生理学的条件に帰することができる。他方で、充電プロセス中の患者の単純な身体の動きがずれにつながり得る。
【0120】
エネルギー貯蔵部の充電を最適な条件にする及び/又は最適な条件に維持するために、架台140は調節可能に構成される。
【0121】
一態様では、コイル110は、リニアガイド130により、Z軸又はコイル軸の方向に変位させることができる。
【0122】
他方で、架台140は、ジンバル付き架台として構成される。これにより、コイル110が、
図1A及び
図1Bに示されるそれぞれのX軸及びY軸を中心として枢動することが可能になる。
【0123】
制御ユニット150は、エネルギー貯蔵部の充電を最適化するために前記の調節オプションを使用するように構成される。
【0124】
充電の最適化には、交番磁界の整流が、求められる充分に高い充電インパルスを生じさせる度合いについての結論が必要となる。再磁化波の意図される進行方向又は芯の長手方向の延びの向きがコイル軸から過度に外れると、生成される電圧インパルスの振幅が、エネルギー貯蔵部のための充分な充電パルスがもはや実現できないような程度まで低減する。
【0125】
心臓ペースメーカIは好ましくは、フィードバックとして品質信号Qを生成し、これは充電の効率を反映する。この品質信号は、能動的に送信されても、受動的に要求されてもよい。
【0126】
送信される品質信号Qは、例えば、患者Pの身体、及び外部アンテナが設けられない場合に心臓ペースメーカのスリーブ又はケースを貫通する、低周波数信号であり得る。
【0127】
品質信号は、例えば、心臓ペースメーカが定められた周波数を減衰させることによって要求され得る。
【0128】
充電インパルスの品質は、積分(∫idt)の値に比例する。良好な充電インパルス、すなわち非常に高い品質をもつものでは、値は、例えば1000nCにもなる。品質を示す信号Qは、例えば、時間に伴う充電インパルスの電流の積分の値(∫idt)、すなわちその電荷量を示すことができる。
【0129】
心臓ペースメーカIの電子機器アセンブリは、充電インパルスごとに、又は代替として、互いに対して一定間隔で発生する充電インパルスのみについて、品質を示す信号Qを送信するように構成され得る。間隔は、例えば、25、50、100、200、500、750、又は1000充電インパルスである。また、ある間隔中に発生したすべての充電インパルスの平均値に対応する値を送信することも可能である。このようにして、データの能動的な伝送に必要とされるエネルギーを低減することができる。
【0130】
制御ユニット150は、受信ユニットを備え、心臓ペースメーカIからの品質信号Qを評価するように構成される。品質信号Qに基づいて、制御ユニット150は、品質信号が最適な向きを示すまで、それに応じてコイル110をX軸/Y軸を中心に枢動させる、及び/又はそれをZ方向に変位させることにより、充電を最適化するための適切な工程を行う。
【0131】
好ましくは、品質信号Qは、充電の効率に比例する。
【0132】
代替として、充電インパルスの品質を示す信号Sは、2値信号であってよく、例えば、充電インパルス又はその電荷量が閾値を超えるときにOK状態を取り、充電インパルスが閾値を超えないときにNG状態を取る。例えば、閾値は、磁化部分によって配送可能な電荷量の50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%であってよい。
【0133】
品質信号Qが2値信号の場合、信号のOK状態の閾値は、好ましくはより高い範囲にある。何故ならば、閾値は全体として、それぞれの軸を中心としたコイル110の枢動を終了するための、及び実現されたコイルの位置を最適として評価するための基準の役割を果たすからである。例えば、極端な位置(良から不良への変化又はその逆)がここで評価される。
【0134】
一般に、本発明による充電装置100は、品質信号Qを発信せず、制御ユニット150がエネルギー貯蔵部の充電の状態を要求することができる機能のみを持つインプラントに使用することもできる。例えばここに示される応用例には、心臓ペースメーカIの対応する電子機器アセンブリは、対応するエネルギー貯蔵部の充電状態を、心臓ペースメーカIの送受信機能を介して問い合わせることができるように構成され得る。
【0135】
よって、品質を示す信号Qの代替として、制御ユニット150は、充電中に、エネルギー貯蔵部の充電の状態の繰り返される問合せから、充電の効率についての結論を得ることができる。詳細には、制御ユニット150は、充電状態の変化、問合せの時間間隔、充電インパルスの既知の最大レベル、及び整流周波数に関する情報により、個々の充電インパルスの品質/効率に関する結論を導き出すことができる。制御ユニット150がエネルギー貯蔵部の充電の状態を要求する時間間隔は、好ましくは0.5分、1.0分、1.5分、2.0分、2.5分、3.0分、3.5分、4.0分、4.5分、5.0分である。
【0136】
制御ユニット150が充電インパルスそれぞれの品質の知識を得ると、制御ユニット150は、ジンバル付き架台140を制御して、コイル110をそれぞれの軸(X軸及び/又はY軸)を中心に枢動させる、及び/又はそれをZ軸に沿って変位させることにより、充電を最適化する。枢動及び/又は変位は、患者が自立式の(寸法的に安定した)コイル又はその要素と接触しないように行われる(非接触)。
【0137】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の好ましい実施形態が
図2A及び
図2Bを参照して説明される。
【0138】
図2Aは、Z軸の方向に見た、本発明の第2の好ましい実施形態による充電装置200の構成を示し、
図2Bは斜視図を示す。
【0139】
充電装置200は、第1の実施形態を参照して説明した構成と同一の構成を有する心臓ペースメーカIのエネルギー貯蔵部を充電するために使用される。これに関して、心臓ペースメーカIの構成及び機能に関して、第1の実施形態についての説明が参照される。
【0140】
充電装置200は、エネルギー貯蔵部の間接的充電のために必要とされる交番磁界を生成するように構成された自立式コイル210を備える。
図2Aで、コイル210のコイル軸Aは、そこに示されている座標系のY軸の方向に走っている。
【0141】
第1の好ましい実施形態と異なり、コイル210の巻線は、連続しておらず、好ましくは、同時に座標系の原点に相当するコイル210の中心で分割されて、コイル210がサブコイルから形成されるようになっている。
【0142】
コイルは、2つの円形のサブコイル211及び212を備え、これらは互いに対して軸方向に配置され、同じ直径Dを有する。サブコイル211及び212は、互いから距離R1に配置され、同じ巻き方向を有する。
【0143】
コイル210の巻線は、サブコイル211及び212を形成する巻線の部分同士を接続する接続アーム213上を延びている。この実施形態では、接続アーム213は、好ましくは円形の、閉じた環である。
【0144】
巻線は、第1の好ましい実施形態と同様に単層であり、サブコイルを形成する巻線の部分は必ず同じ巻き方向を有している。
【0145】
本実施形態では、サブコイル211、212を形成する電線は、好ましくは、第1の好ましい実施形態のものと同じ断面寸法を有し、コイル軸の方向において32mmの辺長さ、及びコイル軸に対して径方向において10mmの辺長さの長方形である。接続アーム213を横切って延びる電線の一部分は、上記の断面寸法を有しても、又は異なるサイズであってもよい。
【0146】
例えば、サブコイル211及び212の各々は、160cmの直径及び5つの巻線(w=5)を有する。サブコイル211とサブコイル212の間の距離R1は好ましくは、サブコイルの半径、すなわち本実施形態では80cm、に等しく、又は好ましくは半径よりも小さい。サブコイル211及び212の直径Dは、サブコイル間により大きい距離R1が必要とされる場合は、より大きくされ得る。
【0147】
架台240が、接続アーム213を形成するリング213を調節可能に支持することにより、寸法的に安定したコイル210を、それが自立するように支持し、架台240は、この目的のための調節機構を有する。
【0148】
調節機構は、接続アーム213、よってコイル210が、
図2A及び
図2Bに示す座標系のX軸を中心に枢動又は回転することを可能にするピボット軸受241を備える。加えて、調節機構は、ピボット軸受241を介して軸受リング243に接続されている接続アーム/リング213が
図2A及び
図2Bに示すZ軸全体を中心に枢動又は回転することを可能にする玉軸受242を有する。このことから理解されるように、接続アーム/リング213は、軸受リング243を支持している玉軸受242により、回転軸受241が
図2A及び
図2Bに示されるX軸ではなく、示されるY軸に対応する程度(90度)まで回転させることができる。
【0149】
調節機構(ピボット軸受241、玉軸受242)は、コイル210が、植え込まれた心臓ペースメーカIに対して所望の向きに位置合わせされることを可能にする。
【0150】
加えて、本発明の第2の好ましい実施形態の充電装置200は、第1の好ましい実施形態を参照してすでに解説されたリニアガイド130を備えてよい。第1の好ましい実施形態の文脈における対応する説明が参照される。第1の好ましい実施形態と同様に、ストレッチャー220は、好ましくは、Z方向に変位可能であってよい。これが該当する場合、リニアガイド130は好ましくは存在しない。
【0151】
第1の好ましい実施形態を参照して説明した機能を行うように構成された制御ユニット250が、架台240及びコイル210の両方に電気的に接続される。第1の好ましい実施形態と同様、コイル210は、
図2Aには図示していない並列共振回路の一部であり、前記増幅器及びキャパシタなどの共振回路の対応する他の要素は、制御ユニット250に含まれている。
【0152】
第1の好ましい実施形態と同様にストレッチャーである、身体支持体220が、
図2Aの紙面に対して垂直に、Z軸の方向に、サブコイル211と212の間に延びている。
【0153】
患者Pの心臓ペースメーカIのエネルギー貯蔵部が充電される必要がある場合、患者Pはストレッチャー220に横たわり、サブコイル211と212の間に位置付けられる。ストレッチャー220と同様、患者Pの身体軸又は長手方向軸は、示されるZ軸の方向に延びる。患者Pは、
図2Aに模式的に示されている。
【0154】
コイル210は、巻線が連続しておらず、サブコイル211及び212の形態に分割されているにも関わらず、均一な交番電磁界を生成する。言い換えると、前述で説明した構成、寸法、及び互いとの空間的関係のため、両方のサブコイル211、212が、連続した巻線を持つ単一のコイルとして機能する。この第2の実施形態では、コイル210は好ましくは、いわゆるヘルムホルツコイルの構成を有する。
【0155】
サブコイル211及び212は両方とも、生成される全交番磁界の一部を各々生成し、磁界は、コイル210の中で、サブコイル211、212の内部空間及びサブコイル211、212間のエリアにわたって延びるコイル軸Aに沿って延びる。
【0156】
サブコイル間のエリアは、各サブコイルによって生成された交番磁界の部分が、結果として生じる交番磁界がコイル軸Aに沿って延びるように重畳される重畳エリアである。
【0157】
サブコイル211、212の内部及びサブコイル間に位置する重畳エリアを通る交番磁界の向きを示すベクトルは、平行な経路を示す。さらに、第1の実施形態に示したものと同じ想定/動作パラメータの下では、重畳エリアにおける磁束密度Bは、長い距離にわたって4mTを超える値を有する。
【0158】
これらの値は、心臓ペースメーカIの磁化部分又はウィーガントワイヤを進んでエネルギー貯蔵部の充電パルスをもたらす説明されている再磁化波を開始させる、又は充電インパルスをもたらす普通の誘導を開始するのに、十分である。
【0159】
第1の好ましい実施形態と異なり、コイル軸Aに沿ってコイル内に位置する交番磁界は、Z方向に延びる身体軸に平行に患者Pの身体を貫通するのではなく、それに対して垂直に貫通する。
【0160】
したがって、充電装置200は特に、磁化部分の再磁化波の意図される進行方向又は芯の長手方向の延びが身体軸(Z方向)の方向を向くのではなく、それから大幅に外れて、実質的にY及び/又はX方向に延びるように、心臓ペースメーカIが患者Pの身体内に配向される場合を目的とする。
【0161】
患者の身体Pに対するコイル210の最適な位置及び位置合わせの調節は、制御ユニット250が調節機構及び/又はリニアガイド130を制御し、最適な充電が発生するまで、コイル210を患者/心臓ペースメーカIに対して且つそれに非接触で調節及び配向するという点で、本発明による充電装置の第1の好ましい実施形態と同様に進められる。
【0162】
(第3の実施形態)
図3は、本発明による充電装置300の第3の好ましい実施形態を示す。充電装置300も、先に解説された心臓ペースメーカIなどのインプラントIのエネルギー貯蔵部を充電するために使用される。
【0163】
心臓ペースメーカIの構造及び機能に関しては、第1及び第2の実施形態の説明が参照される。
【0164】
充電装置300は、第2の好ましい実施形態による充電装置200のコイル210と同様の方式でエネルギー貯蔵部を充電するのに必要な交番磁界を生成するが、交番磁界の空間的向きを変えるための架台の必要をなくす。
【0165】
この目的のために、充電装置300は、第1のコイル、第2のコイル、及び第3のコイルを有し、これらは自立式で寸法的に安定した形で配置される。
【0166】
第1のコイルは、第1のサブコイル311及び第2のサブコイル312から形成される第1のコイル対を備え、対応するコイル軸Aは、
図3に示される対応する座標系のY軸の方向又はY軸に対応する方向にある。
【0167】
第2のコイルは、同様に第1のサブコイル221及び第2のサブコイル222から形成される第2のコイル対を備える。第2のコイルのコイル軸Bは、
図3に示される対応する座標系のX軸に対応する。
【0168】
最後に、充電装置300は第3のコイルを備え、これは第1のサブコイル331及び第2のサブコイル332から形成される。第3のコイルのコイル軸Cは、
図3に示される対応する座標系のZ軸に対応する。
【0169】
すべてのコイル軸は、好ましくは、互いに対して空間的に垂直である。
【0170】
先行する実施形態と異なり、コイル又はサブコイルは円形ではなく、長方形のコイル面を有するフレームコイルとして構成される。
【0171】
コイルのコイル対をそれぞれ形成するすべてのサブコイルは、好ましくは、導電及び対応する巻線を形成する巻線の数wに関して同じ構造を有し、それぞれ同じ巻き方向を有する。電線の寸法及び巻線の数wは、好ましくは、第1及び第2の好ましい実施形態と同一である。第1、第2及び第3のコイルは、好ましくは、互いを相互に支持し、寸法的に安定しており、空間内で自立するように、互いと接続される。
【0172】
X方向におけるサブコイル221、222間の距離は、コイル軸A、すなわち
図3に示されるY-Z面に平行な面、に対して垂直な各自の寸法に関して決定され、サブコイル221、222が単一のコイル(ヘルムホルツコイル)として働くようにする。この条件は、好ましくは、
図3に示されるすべてのサブコイルに該当する。
【0173】
第3の好ましい実施形態の充電装置300は、各コイルを別々に駆動し、それぞれの巻線中に交流電流を生成するように構成された制御ユニット350を備える。それにより、各コイル及び対応するサブコイルはそれぞれ、個別の交番磁界を生成する。
【0174】
この目的のために、先行する実施形態と同様に、各コイルは、その要素が制御ユニット350に含まれている別々の発振回路の一部である。各コイルで生成される交流電流の強度及び発振回路の構造に関しては、先行する実施形態についての説明が参照される。
【0175】
制御ユニット350が、コイル/サブコイル311及び312の対に交流電流を生成するとき、コイル軸Aに沿ってコイル内に位置する個々の交番磁界は、サブコイル311、312を通り、サブコイル間に位置する重畳エリアを越えて進む。
【0176】
それ故に、サブコイル311及び312は、第2の好ましい実施形態のコイル210と同様にして交番磁界を生成する。これらの説明は、
図3に示される対応するコイルのすべてのサブコイルに該当する。
【0177】
すべてのコイルの個々の交番磁界は、共通エリアで重畳して、インプラントIに到達する交番磁界を形成する。
【0178】
心臓ペースメーカIに到達する交番磁界は、心臓ペースメーカIの磁化部分(ウィーガントワイヤ)をトリガして充電インパルスを生成する、又は普通の誘導のために機能する芯を通って流れて充電インパルスを生成するのに充分に高く均一な値を、共通エリア内の座標の原点を中心とした広い空間にわたって有する。
【0179】
結果として生じる交番磁界の向きは、それぞれのコイルを異なるように駆動し、対応する巻線に流れる交流電流を変動させることにより、制御ユニット350によって変えることができる。結果として生じる交番磁界の向きが空間内にある必要がなく、1つの面だけにあるべき場合は、3つのコイルのうち1つが不要となる。
【0180】
充電装置300が意図されるように使用される場合、患者Pは好ましくは、患者Pの上半身及び心臓ペースメーカIが共通エリアに位置する程度まで、部分コイル331、332を通じてZ軸の方向に押される。この実施形態でも、患者の移動は、それぞれすべてのコイル及びその要素と接触することなく行われる。
【0181】
ここで、他の実施形態と同様に、患者Pは、例えば身体支持体又はストレッチャーの上に配置されてよい。
【0182】
上記で説明した本発明による充電装置のすべての実施形態に共通なのは、対応するコイル軸に沿ってコイル内に位置する交番磁界を使用してエネルギー貯蔵部を充電することである。交番磁界又はその磁束密度Bは、コイルのこれらのエリアにおいて長い距離にわたって非常に強く高度に均一であるため、磁化部分の軸又は芯の長手方向の延びの方向が磁界ベクトルの軸と第一次近似で一致していれば、インプラント(ペースメーカ)の位置についての正確な知識は副次的な重要度となる。
【0183】
加えて、すべての実施形態は、交番磁界のベクトルが、磁束密度Bの振幅を変化させることなく枢動/回転することを可能にする。これは、患者に接触することなく、コイルを機械的に枢動/回転させることにより、及び/又は重畳している交番磁界を変化させることにより行われる。これにより、芯の長手方向軸、又は磁化部分の軸の方向、したがって再磁化波の移動方向への、磁界ベクトルの極めて確実な配向が可能になる。
【国際調査報告】