(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】ジョセフソン接合の製造方法、及び生産ライン設備
(51)【国際特許分類】
H10N 60/01 20230101AFI20240405BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
H10N60/01 J ZAA
G03F7/20 504
G03F7/20 521
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552351
(86)(22)【出願日】2023-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 CN2023077677
(87)【国際公開番号】W WO2023185330
(87)【国際公開日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】202210324371.X
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517392436
【氏名又は名称】▲騰▼▲訊▼科技(深▲セン▼)有限公司
【氏名又は名称原語表記】TENCENT TECHNOLOGY (SHENZHEN) COMPANY LIMITED
【住所又は居所原語表記】35/F,Tencent Building,Kejizhongyi Road,Midwest District of Hi-tech Park,Nanshan District, Shenzhen,Guangdong 518057,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100150197
【氏名又は名称】松尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】卜 坤▲亮▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 文▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】李 登峰
【テーマコード(参考)】
2H197
4M113
【Fターム(参考)】
2H197CA09
2H197HA03
2H197JA12
2H197JA15
4M113AA02
4M113AA12
4M113AA25
4M113AC45
4M113BA11
4M113BB02
4M113BB03
4M113BB08
4M113BC02
4M113BC12
(57)【要約】
ジョセフソン接合の製造方法、及び生産ライン設備であって、マイクロ・ナノ加工の技術分野に関する。該方法は、基板上にアンダーカット構造を含むフォトレジストフィルム層を製造するステップ(201)であって、アンダーカット構造は、第1長尺状の開孔と、第2長尺状の開孔と、を含む、ステップ(201)と、第1角度でフォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行うことで、第1長尺状の開孔を通過してアンダーカット構造の基板上に第1長尺状の超伝導層を製造するステップ(202)と、第2角度でフォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行うことで、第2長尺状の開孔を通過してアンダーカット構造の基板上に第2長尺状の超伝導層を製造するステップ(203)であって、第1長尺状の超伝導層と第2長尺状の超伝導層とは、相互に交差しており、第1長尺状の超伝導層と第2長尺状の超伝導層との交わる箇所を酸化層で互いに分離することで、ジョセフソン接合を構成する、ステップ(203)と、を含む。本解決手段は、他の寄生接合をもたらすことはなく、これにより、量子ビットアセンブリのコヒーレンス性を向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産ライン設備により実行される、ジョセフソン接合の製造方法であって、前記方法は、
基板上にアンダーカット構造を含むフォトレジストフィルム層を製造するステップであって、前記アンダーカット構造は、第1長尺状の開孔と、第2長尺状の開孔と、を含み、前記第1長尺状の開孔と前記第2長尺状の開孔とは、平行ではない、ステップと、
第1角度で前記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行うことで、前記第1長尺状の開孔を通過して前記アンダーカット構造の基板上に第1長尺状の超伝導層を製造するステップと、
第2角度で前記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行うことで、前記第2長尺状の開孔を通過して前記アンダーカット構造の基板上に第2長尺状の超伝導層を製造するステップであって、前記第1長尺状の超伝導層と前記第2長尺状の超伝導層とは、相互に交差しており、前記第1長尺状の超伝導層と前記第2長尺状の超伝導層との交わる箇所を酸化層で互いに分離することで、ジョセフソン接合を構成する、ステップと、を含む、ことを特徴とするジョセフソン接合の製造方法。
【請求項2】
第1角度で前記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行う過程において、さらに前記第2長尺状の開孔を通過して前記アンダーカット構造の基板上に第3長尺状の超伝導層を製造し、
前記第3長尺状の超伝導層は、前記第1長尺状の超伝導層、及び前記第2長尺状の超伝導層と交わらない、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2角度で前記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行う過程において、さらに前記第1長尺状の開孔を通過して前記アンダーカット構造の基板上に第4長尺状の超伝導層を製造し、
前記第4長尺状の超伝導層は、前記第1長尺状の超伝導層、及び前記第2長尺状の超伝導層と交わらない、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第2角度で前記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行う前記ステップの前に、
前記第1長尺状の超伝導層に対して酸化処理を行うことで、前記第1長尺状の超伝導層の表面に酸化層を製造するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1長尺状の超伝導層と前記第1長尺状の開孔の前記基板上での投影とは、交わらず、前記第2長尺状の超伝導層と前記第2長尺状の開孔の前記基板上での投影とは、交わらず、前記アンダーカット構造は、第1接続部開孔と、第2接続部開孔と、をさらに含み、前記方法は、
前記フォトレジストフィルム層に対して基板と垂直な蒸着を行うことで、前記第1接続部開孔、及び前記第2接続部開孔を通過して、前記アンダーカット構造の基板上に第1接続部超伝導層、及び第2接続部超伝導層を製造するステップであって、前記第1接続部超伝導層と前記第1長尺状の超伝導層とは、超伝導接続を形成し、前記第2接続部超伝導層と前記第2長尺状の超伝導層とは、超伝導接続を形成する、ステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フォトレジストフィルム層に対して基板と垂直な蒸着を行う前記ステップの前に、
前記第1長尺状の超伝導層と前記第1接続部開孔の前記基板上での投影との重なり領域、及び前記第2長尺状の超伝導層と前記第2接続部開孔の前記基板上での投影との重なり領域に対して、イオンミリング洗浄を行うステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第1角度で前記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行うステップから、前記フォトレジストフィルム層に対して基板と垂直な蒸着を行うステップまでの間のステップの実行環境は、インサイチュ(in situ)環境である、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1長尺状の開孔の延伸方向と前記第2長尺状の開孔の延伸方向とは、垂直である、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記第1接続部開孔は、前記第1長尺状の開孔に連結されず、前記第2接続部開孔は、前記第2長尺状の開孔に連結されず、
前記第1角度の蒸着の方向の前記基板上での投影は、前記第1長尺状の開孔の延伸方向と垂直であり、
前記第2角度の蒸着の方向の前記基板上での投影は、前記第2長尺状の開孔の延伸方向と垂直である、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記第1接続部開孔は、前記第1長尺状の開孔の一端に連結され、前記第2接続部開孔は、前記第2長尺状の開孔の一端に連結され、
前記第1角度の蒸着の方向の前記基板上での投影は、前記第1長尺状の開孔において前記第1接続部開孔から前記第1長尺状の開孔の他端へ延伸する方向と平行であり、
前記第2角度の蒸着の方向の前記基板上での投影は、前記第2長尺状の開孔において前記第2接続部開孔から前記第2長尺状の開孔の他端へ延伸する方向と平行である、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項11】
基板上にアンダーカット構造を含むフォトレジストフィルム層を製造する前記ステップは、
前記基板上に第1厚さの第1フォトレジストをスピンコートするステップと、
前記第1フォトレジストに対して硬化処理を行うステップと、
前記第1フォトレジストの上層に第2厚さの第2フォトレジストをスピンコートするステップと、
前記第2フォトレジストに対して硬化処理を行うステップと、
前記第1長尺状の開孔、及び前記第2長尺状の開孔の領域内の前記第2フォトレジストに対して電子ビーム露光を行うステップと、
前記第1接続部開孔、及び前記第2接続部開孔の領域内の前記第1フォトレジスト、及び前記第2フォトレジストに対して電子ビーム露光を行うステップと、
前記アンダーカット構造の領域における前記第1接続部開孔、及び前記第2接続部開孔以外の領域内の前記第1フォトレジストに対して電子ビーム露光を行うステップと、
電子ビーム露光後の前記第1フォトレジスト、及び前記第2フォトレジストに対して現像を行い、前記アンダーカット構造を含む前記フォトレジストフィルム層を取得するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項12】
電子ビーム露光後の前記第1フォトレジスト、及び前記第2フォトレジストに対して現像を行い、前記アンダーカット構造を含む前記フォトレジストフィルム層を取得する前記ステップは、
露光後の前記第1フォトレジスト、及び前記第2フォトレジストを現像液の中に入れて現像を行うステップと、
酸素プラズマによって、前記基板上に残留しているフォトリソグラフィによる現像が行われた後のフォトレジストに対して洗浄を行い、前記アンダーカット構造を含む前記フォトレジストフィルム層を取得するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
生産ライン設備であって、前記生産ライン設備は、スピンコータと、フォトリソグラフィ装置と、蒸着機と、を含み、
前記スピンコータ、及び前記フォトリソグラフィ装置は、基板上にアンダーカット構造を含むフォトレジストフィルム層を製造することに用いられ、前記アンダーカット構造は、第1長尺状の開孔と、第2長尺状の開孔と、を含み、前記第1長尺状の開孔と前記第2長尺状の開孔とは、平行ではなく、
前記蒸着機は、第1角度で前記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行うことで、前記第1長尺状の開孔を通過して前記アンダーカット構造の基板上に第1長尺状の超伝導層を製造することに用いられ、
前記蒸着機は、さらに、第2角度で前記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行うことで、前記第2長尺状の開孔を通過して前記アンダーカット構造の基板上に第2長尺状の超伝導層を製造することに用いられ、前記第1長尺状の超伝導層と前記第2長尺状の超伝導層とは、交わり、かつ、前記第1長尺状の超伝導層と前記第2長尺状の超伝導層との交わる箇所を酸化層で互いに分離することで、ジョセフソン接合を構成する、ことを特徴とする生産ライン設備。
【請求項14】
第1角度で前記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行う過程において、前記蒸着機は、さらに、前記第2長尺状の開孔を通過して前記アンダーカット構造の基板上に第3長尺状の超伝導層を製造することに用いられ、
前記第3長尺状の超伝導層は、前記第1長尺状の超伝導層、及び前記第2長尺状の超伝導層と交わらない、ことを特徴とする請求項13に記載の生産ライン設備。
【請求項15】
第2角度で前記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行う過程において、前記蒸着機は、さらに、前記第1長尺状の開孔を通過して前記アンダーカット構造の基板上に第4長尺状の超伝導層を製造することに用いられ、
前記第4長尺状の超伝導層は、前記第1長尺状の超伝導層、及び前記第2長尺状の超伝導層と交わらない、ことを特徴とする請求項13に記載の生産ライン設備。
【請求項16】
前記蒸着機は、さらに、第2角度で前記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行う前に、前記第1長尺状の超伝導層に対して酸化処理を行うことで、前記第1長尺状の超伝導層の表面に酸化層を製造することに用いられる、ことを特徴とする請求項13に記載の生産ライン設備。
【請求項17】
前記第1長尺状の超伝導層と前記第1長尺状の開孔の前記基板上での投影とは、交わらず、前記第2長尺状の超伝導層と前記第2長尺状の開孔の前記基板上での投影とは、交わらず、前記アンダーカット構造は、第1接続部開孔と、第2接続部開孔と、をさらに含み、
前記蒸着機は、さらに、前記フォトレジストフィルム層に対して基板と垂直な蒸着を行うことで、前記第1接続部開孔、及び前記第2接続部開孔を通過して、前記アンダーカット構造の基板上に第1接続部超伝導層、及び第2接続部超伝導層を製造することに用いられ、前記第1接続部超伝導層と前記第1長尺状の超伝導層とは、超伝導接続を形成し、前記第2接続部超伝導層と前記第2長尺状の超伝導層とは、超伝導接続を形成する、ことを特徴とする請求項13に記載の生産ライン設備。
【請求項18】
前記生産ライン設備は、エッチング機をさらに含み、
前記エッチング機は、前記蒸着機が前記フォトレジストフィルム層に対して基板と垂直な蒸着を行う前に、前記第1長尺状の超伝導層と前記第1接続部開孔の前記基板上での投影との重なり領域、及び前記第2長尺状の超伝導層と前記第2接続部開孔の前記基板上での投影との重なり領域に対して、イオンミリング洗浄を行うことに用いられる、ことを特徴とする請求項17に記載の生産ライン設備。
【請求項19】
前記第1長尺状の開孔の延伸方向と前記第2長尺状の開孔の延伸方向とは、垂直である、ことを特徴とする請求項17に記載の生産ライン設備。
【請求項20】
前記生産ライン設備は、ホットプレートをさらに含み、
前記スピンコータは、前記基板上に第1厚さの第1フォトレジストをスピンコートすることに用いられ、
前記ホットプレートは、前記第1フォトレジストに対して硬化処理を行うことに用いられ、
前記スピンコータは、さらに、前記第1フォトレジストの上層に第2厚さの第2フォトレジストをスピンコートすることに用いられ、
前記ホットプレートは、さらに、前記第2フォトレジストに対して硬化処理を行うことに用いられ、
前記フォトリソグラフィ装置は、
前記第1長尺状の開孔、及び前記第2長尺状の開孔の領域内の前記第2フォトレジストに対して電子ビーム露光を行うことと、
第1接続部開孔、及び第2接続部開孔の領域内の前記第1フォトレジスト、及び前記第2フォトレジストに対して電子ビーム露光を行うことと、
前記アンダーカット構造の領域における前記第1接続部開孔、及び前記第2接続部開孔以外の領域内の前記第1フォトレジストに対して電子ビーム露光を行うことと、に用いられ、
前記アンダーカット構造を含む前記フォトレジストフィルム層は、電子ビーム露光後の前記第1フォトレジスト、及び前記第2フォトレジストを現像することにより取得される、ことを特徴とする請求項13に記載の生産ライン設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、マイクロ・ナノ加工の技術分野に関し、特にジョセフソン接合の製造方法、及び生産ライン設備に関する。
【0002】
本願は、2022年3月29日に提出された、出願番号が第202210324371.X号であり、発明の名称が「ジョセフソン接合の製造方法、及び生産ライン設備」である中国特許出願の優先権を主張し、そのすべての内容は、引用によって本願に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
ジョセフソン接合は、現状でよく使用されている量子ビット構造であり、それは、予め設計されたフォトレジスト構造によって製造を行うことができる。
【0004】
関連技術において、電子ビーム露光の方法を利用して、基板の表面の二層電子ビームフォトレジスト上に、アンダーカットを含有するDolanブリッジ型フォトレジスト構造パターンを作り、その後、超伝導金属膜を斜めに蒸着してから、絶縁層を酸化形成し、さらに、超伝導金属膜を垂直に蒸着するというダブルチルト蒸着方法を採用して、ジョセフソン接合を製造することができる。
【0005】
その後、ジョセフソン接合を製造する上記解決手段において、製造済みの量子ビットアセンブリに余分なジョセフソン接合(寄生接合とも呼ばれる)を導入することができることにより、量子ビットアセンブリのコヒーレンス性に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の実施例は、ジョセフソン接合の製造方法、及び生産ライン設備を提供しており、量子ビットアセンブリのコヒーレンス性を向上させることができる。該技術的解決手段は、以下のおとりである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、ジョセフソン接合の製造方法を提供しており、前記方法は、生産ライン設備により実行され、前記方法は、
基板上にアンダーカット構造を含むフォトレジストフィルム層を製造するステップであって、前記アンダーカット構造は、第1長尺状の開孔と、第2長尺状の開孔と、を含み、前記第1長尺状の開孔と前記第2長尺状の開孔とは、平行ではない、ステップと、
第1角度で前記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行うことで、前記第1長尺状の開孔を通過して前記アンダーカット構造の基板上に第1長尺状の超伝導層を製造するステップと、
第2角度で前記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行うことで、前記第2長尺状の開孔を通過して前記アンダーカット構造の基板上に第2長尺状の超伝導層を製造するステップであって、前記第1長尺状の超伝導層と前記第2長尺状の超伝導層とは、相互に交差しており、前記第1長尺状の超伝導層と前記第2長尺状の超伝導層との交わる箇所を酸化層で互いに分離することで、ジョセフソン接合を構成する、ステップと、を含む。
【0008】
更なる態様では、生産ライン設備を提供しており、前記生産ライン設備は、スピンコータと、フォトリソグラフィ装置と、蒸着機と、を含み、
前記スピンコータ、及び前記フォトリソグラフィ装置は、基板上にアンダーカット構造を含むフォトレジストフィルム層を製造することに用いられ、前記アンダーカット構造は、第1長尺状の開孔と、第2長尺状の開孔と、を含み、前記第1長尺状の開孔と前記第2長尺状の開孔とは、平行ではなく、
前記蒸着機は、第1角度で前記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行うことで、前記第1長尺状の開孔を通過して前記アンダーカット構造の基板上に第1長尺状の超伝導層を製造することに用いられ、
前記蒸着機は、さらに、第2角度で前記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行うことで、前記第2長尺状の開孔を通過して前記アンダーカット構造の基板上に第2長尺状の超伝導層を製造することに用いられ、前記第1長尺状の超伝導層と前記第2長尺状の超伝導層とは、交わり、かつ、前記第1長尺状の超伝導層と前記第2長尺状の超伝導層との交わる箇所を酸化層で互いに分離することで、ジョセフソン接合を構成する。
【発明の効果】
【0009】
本願の実施例で提供される技術的解決手段による有益な効果は、少なくとも以下を含む。
【0010】
基板上にアンダーカット構造のフォトレジストフィルム層を製造し、かつ、該アンダーカット構造が平行ではない2つの長尺状の開孔を有し、2つの異なる角度の傾斜蒸着によって、アンダーカット構造内の基板上に、相互に交差しており、酸化層で互いに分離されている2つの長尺状の超伝導層を製造することによって、上記解決手段において、2つの長尺状の超伝導層の交差箇所にのみ1つのジョセフソン接合を形成し、他の寄生接合をもたらすことはなく、これにより、量子ビットアセンブリのコヒーレンス性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本願に係るジョセフソン接合の製造の効果図である。
【
図2】本願の例示的な一実施例に示されるジョセフソン接合の製造方法の方法フローチャートである。
【
図3】
図2で示される実施例に係るアンダーカット構造の模式図である。
【
図4】本願の例示的な一実施例に示されるジョセフソン接合の製造フローチャートである。
【
図5】本願の例示的な一実施例に示されるジョセフソン接合の製造方法の方法フローチャートである。
【
図6】
図5で示される実施例に係るジョセフソン接合の製造のプロセスフローチャートである。
【
図7】
図5で示される実施例に係る電子ビーム露光に用いられるパターンである。
【
図8】
図5で示される実施例に係るアンダーカット構造の断面図である。
【
図9】
図5で示される実施例に係る蒸着模式図である。
【
図10】
図5で示される実施例に係る3回のコーティング過程の模式図である。
【
図11】
図5で示される実施例に係るフォトレジストリフトオフ後の効果図である。
【
図12】
図5で示される実施例に係るアンダーカットパターン、及び3回のコーティング過程の模式図である。
【
図13】
図5で示される実施例に係るフォトレジストリフトオフ後の効果図である。
【
図14】本願の一実施例で提供される解決手段の応用シーンの模式図である。
【
図15】本願の例示的な一実施例に示される生産ライン設備の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本願に係るいくつかの名詞の意味を述べる。
【0013】
量子ビット(Qubit):量子情報学において量子情報の計測単位である。
【0014】
古典的なビットが0、又は1のうちの1つの状態であるしかないことと異なり、量子ビットは、同時に0状態、及び1状態、すなわち、0と1との量子重ね合わせ状態となることが可能である。
【0015】
ジョセフソン接合(Josephson Junction):超伝導層、絶縁層、及び超伝導層により積層してなるサンドイッチ状の構造であり、超伝導トンネル接合とも呼ばれる。
【0016】
ジョセフソン接合は、一般的に、2枚の超伝導体によりある極めて薄い障壁層(厚さ≦クーパー(Cooper)電子対のコヒーレンス長さ)を挟んで構成した構造、例えばS(Superconductor、超伝導体)-I(半導体、又は絶縁体(Insulator))-S(超伝導体)構造であり、SIS構造と略称される。ジョセフソン接合において、超伝導電子は、トンネル効果によって一方側の超伝導層から半導体、又は絶縁体薄膜を通り抜けて他方側の超伝導層に到達することができる。
【0017】
寄生接合(parasitic junction):ジョセフソン接合を製造する過程においてもたらされる他のジョセフソン接合。
【0018】
シャドー蒸発コーティング(shadow evaporation):蒸発コーティングのときに、蒸発材料を所定の角度で基板(ベースと呼ばれてもよい)の表面に入射させ、同時に入射経路においてフォトレジストパターンを定義することによって所定の形状の遮蔽物を設置し、これにより、基板表面のある場所にはフィルム層が選択的に蒸着されるが、他の場所にはフィルム層がメッキされることはない。
【0019】
ジョセフソン接合パッチ(patch):超伝導量子チップにおいてジョセフソン接合と外部回路とを接続する部分。
【0020】
ジョセフソン接合バンデージ(bandage):超伝導量子チップにおいてジョセフソン接合パッチと外部回路とを接続する部分。
【0021】
イオンミリング(ion milling):所定の方向のイオンビームを用いて材料表面に衝撃を与えることで、材料表面の酸化層を除去する。
【0022】
斜め蒸着(oblique evaporation):蒸発材料が基板の法線と平行ではない方向で薄膜を蒸着する。
【0023】
法線蒸着(straight evaporation):蒸発材料が基板の法線と平行である方向で薄膜を蒸着する。
【0024】
リフトオフ(lift off):フォトレジストをリムーバにおいて溶解し、同時にフォトレジストにおける金属層もともに基板から引き離す過程。
【0025】
デコヒーレンス性(coherence time):量子ビットが異なる量子状態を維持することに関連する能力。
【0026】
アンダーカット構造(undercut):フォトレジストを現像した後に形成されたパターン構造である。その上開口のサイズが下開口のサイズ未満である。
【0027】
インサイチュ(in situ):単一の真空チャンバ内、又は相互に接続された複数の真空チャンバ内で複数のプロセスを行う。この過程において、サンプル/製品が大気環境の下に移動されることはない。
【0028】
量子コンピュータは、ある特定の問題を処理する速度が古典的なコンピュータよりも顕著に優れているため、広く注目されている。現状では、量子コンピュータを実現する1つの可能な経路は、超伝導量子コンピュータである。超伝導量子コンピュータは、超伝導量子チップに依存して論理ゲート演算を実現する。超伝導量子チップは、単純に外部回路とジョセフソン接合とからなるものであると見なすことができ、ここで、ジョセフソン接合は、超伝導量子チップのコア素子である。
【0029】
ジョセフソン接合を製造する方法は、シャドー蒸着法であり、イオンミリング、斜め入射蒸着、酸化、及び法線入射蒸着をインサイチュで行うことによって、ジョセフソン接合を形成する。
図1に参照されるように、本願に係るジョセフソン接合の製造効果図を示す。ここで、
図1は、並列接続された2つのジョセフソン接合101を示しており、この2つのジョセフソン接合101は、ジョセフソン接合パッチ102によって外部回路に連結されている。
図1に示すように、イオンミリング、斜め入射蒸着、酸化、及び法線入射蒸着をインサイチュで行った後に、量子ビットアセンブリにおいて寄生接合103を形成することができ、該寄生接合は、
図1における破線ボックスの部分で示される通りである。
【0030】
図1に示すように、上記解決手段に従ってジョセフソン接合を製造するときに、該ジョセフソン接合を含む量子ビットアセンブリに大面積の寄生接合を導入することができ、これにより、量子ビットアセンブリのデコヒーレンス性に影響を与え、さらに量子コンピューティングデバイスの性能に影響を与える。
【0031】
構造がジョセフソン接合である量子ビットアセンブリの性能を向上させるために、本願の以降の実施例は、新しいジョセフソン接合の製造解決手段を提供する。本願の以降の実施例で提供される解決手段は、平面、フリップチップボンディング、及び多層積層などの超伝導量子チップの製造に適用される。
【0032】
図2に参照されるように、本願の例示的な一実施例に示されるジョセフソン接合の製造方法の方法フローチャートを示す。該方法は、生産ライン設備により実行されてもよく、
図2に示すように、該方法は、下記のステップ201~ステップ203を含んでもよい。
【0033】
ステップ201:基板上にアンダーカット構造を含むフォトレジストフィルム層を製造し、アンダーカット構造は、第1長尺状の開孔と、第2長尺状の開孔と、を含み、第1長尺状の開孔と第2長尺状の開孔とは、平行ではない。
【0034】
ここで、アンダーカット構造とは、基板上の2層又は多層のフォトレジストにおいて設計されたパターンに対して異なる程度の露光を行うことによって、上層のフォトレジストの下にキャビティを形成し、また、上層のフォトレジストの中にキャビティよりも小さい1つ又は複数の開口を形成するフォトレジスト構造を指してもよい。
【0035】
例えば、
図3に参照されるように、それは、本願の実施例に係るアンダーカット構造の模式図を示す。
図3に示すように、基板31の上層に2層のフォトレジスト32があり、この2層のフォトレジスト32の異なる領域に対してそれぞれフォトリソグラフィによる現像を行った後に、アンダーカット構造33を形成し、該アンダーカット構造33の下半部分の面積は、上半部分の面積よりも大きい。
【0036】
本願の実施例において、基板上に製造されたアンダーカット構造のフォトレジストフィルム層では、該アンダーカット構造は、2つの長尺状の開孔を含み、ここで、この2つの長尺状の開孔は、平行ではなく、言い換えれば、この2つの長尺状の開孔は、各々の一端が互いに近接し、各々の他端が互いに離れている。
【0037】
ステップ202:第1角度でフォトレジストフィルム層に対して、基板に傾斜して蒸着を行うことで、第1長尺状の開孔を通過してアンダーカット構造の基板上に第1長尺状の超伝導層を製造する。
【0038】
本願の実施例において、第1角度で蒸着を行う上記方向とは、基板の法線方向に対して傾斜しており、かつ、基板に向いた方向を指す。上記
図3に示されるアンダーカット構造と併せて分かるように、第1角度が適切である状況において、基板の法線方向に傾斜して蒸着される超伝導材料は、一部がアンダーカット構造の上部の開孔を通って、アンダーカット構造内の基板上に入射して超伝導層を形成することができる(開孔に傾斜して入射される別の部分の超伝導材料は、開孔の側壁により遮蔽され得る)。
【0039】
本願の実施例において、第1長尺状の開孔が長尺状であるため、相応には、第1角度で第1長尺状の開孔に入射された蒸着材料において、アンダーカット構造の上層のフォトレジストにより遮蔽されていない部分は、基板上に第1長尺状の超伝導層を形成し得る。
【0040】
ステップ203:第2角度でフォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行うことで、第2長尺状の開孔を通過してアンダーカット構造の基板上に第2長尺状の超伝導層を製造する。第1長尺状の超伝導層と第2長尺状の超伝導層とは、相互に交差しており、第1長尺状の超伝導層と第2長尺状の超伝導層との交わる箇所を酸化層で互いに分離することで、ジョセフソン接合を構成する。
【0041】
第1角度と同様に、第2角度で蒸着を行う上記方向とは、基板の法線方向に対して傾斜しており、かつ、基板に向いた別の方向を指す。第2角度で第2長尺状の開孔に入射された蒸着材料において、アンダーカット構造の上層のフォトレジストにより遮蔽されていない部分は、基板上に第2長尺状の超伝導層を形成し得る。
【0042】
ここで、上記第1長尺状の超伝導層、及び第2長尺状の超伝導層の基板上での位置は、アンダーカット構造の開孔の位置、上層のフォトレジストの高さ、上層のフォトレジストの厚さ、及び蒸着角度(すなわち、上記第1角度、及び第2角度)により決定される。上記アンダーカット構造の開孔の位置、上層のフォトレジストの高さ、上層のフォトレジストの厚さ、及び蒸着角度を設計することによって、第1長尺状の超伝導層と第2長尺状の超伝導層とを基板上で相互に交差させることができ、一方、2つの長尺状の超伝導層が互いに交差する領域を酸化層によって互いに分離すれば、1つのジョセフソン接合を構成することができる。
【0043】
上記解決手段において、ジョセフソン接合が2つの長尺状の超伝導層を相互に交差させることによって得られるため、他の寄生接合が導入されることはない。
【0044】
上記のように、本願の実施例に示される解決手段において、基板上にアンダーカット構造を有するフォトレジストフィルム層を製造し、かつ、該アンダーカット構造が平行ではない2つの長尺状の開孔を有し、2つの異なる角度の傾斜蒸着によって、アンダーカット構造内の基板上に相互に交差している、酸化層で互いに分離されている2つの長尺状の超伝導層を製造することによって、上記解決手段において、2つの長尺状の超伝導層の交差箇所にのみ1つのジョセフソン接合を形成し、他の寄生接合をもたらすことはない。これにより、量子ビットアセンブリのコヒーレンス性を向上させる。
【0045】
図4に参照されるように、本願の例示的な一実施例に示されるジョセフソン接合の製造フローチャートを示す。
図4に示すように、該ジョセフソン接合の製造フローは、以下の通りであってもよい。
【0046】
S1:基板上にフォトレジストフィルム層を製造し、該フォトレジストフィルム層は、アンダーカット構造を含み、該アンダーカット構造は、2つの長尺状の開孔を含む。
【0047】
図4に示すように、基板上のアンダーカット構造が位置する領域は、領域41であり、該アンダーカット構造は、下部がキャビティであり、上部における長尺状の開孔42、及び長尺状の開孔43の以外の部分がフォトレジストであり、領域41の以外の部分は、フォトレジストで充填される。
【0048】
S2:2つの異なる角度によって、フォトレジストフィルム層に対して傾斜蒸着を順に行い、蒸着材料は、2つの長尺状の開孔を通過して、基板上に、相互に交差しており、酸化層によって分離されている2つの長尺状の超伝導層を形成することで、ジョセフソン接合を構成する。
【0049】
傾斜蒸着のため、異なる角度で蒸着される超伝導材料がそれぞれ長尺状の開孔42、及び長尺状の開孔43を通過した後に、基板上に形成された長尺状の超伝導層の位置は、長尺状の開孔42、及び長尺状の開孔43の基板上での投影の位置からずれるようになる。これにより、交わらない長尺状の開孔42と長尺状の開孔43とによって蒸着して得られた2つの超伝導層は、交わってジョセフソン接合を形成することができる。
【0050】
図4に示すように、長尺状の開孔42と長尺状の開孔43とが相互に垂直であり、かつ、交わらないことを例にすると、第1角度は、長尺状の開孔42の右側から左側へ基板に傾斜して入射する角度であり、第1角度によって蒸着するときに、蒸着材料は、長尺状の開孔42を通過して、長尺状の開孔42の左側の基板上に長尺状の超伝導層44を形成する。第2角度は、長尺状の開孔の下方から上方へ基板に傾斜して入射する角度であり、第2角度によって蒸着するときに、蒸着材料は、長尺状の開孔43を通過して、長尺状の開孔43の上方の基板上に長尺状の超伝導層45を形成する。ここで、上記第1角度/第2角度は、
図3に示される通りであってもよく、長尺状の開孔42と長尺状の開孔43とが十分に近いときに、長尺状の超伝導層44と長尺状の超伝導層45とは、相互に交差することができ、2回の傾斜蒸着の間に蒸着済みの超伝導層を酸化すると、2回目の傾斜蒸着の後にジョセフソン接合46を得ることができる。
【0051】
上記
図2に示される解決手段によれば、本願の実施例において、寄生接合を備えないジョセフソン接合を製造できる以外に、寄生接合を導入しない状況においてジョセフソン接合パッチを製造することもできる。
【0052】
図5に参照されるように、本願の例示的な一実施例に示されるジョセフソン接合の製造方法の方法フローチャートを示す。該方法は、生産ライン設備により実行されてもよく、
図5に示すように、該方法は、下記のステップ501~ステップ506を含んでもよい。
【0053】
ステップ501:基板上にアンダーカット構造を含むフォトレジストフィルム層を製造し、アンダーカット構造は、第1長尺状の開孔と、第2長尺状の開孔と、を含み、第1長尺状の開孔と第2長尺状の開孔とは、平行ではなく、アンダーカット構造は、第1接続部開孔と、第2接続部開孔と、をさらに含む。
【0054】
一種の可能な実現形態において、第1長尺状の開孔の延伸方向と第2長尺状の開孔の延伸方向とは、垂直である。
【0055】
ここで、長尺状の開孔の延伸方向とは、長尺状の開孔の両端間の直線分が一端/両端へ引き続き延伸する方向を指してもよい。
【0056】
ここで、量子ビットアセンブリの回路設計を容易にするために、第1長尺状の開孔の延伸方向と第2長尺状の開孔の延伸方向とを垂直に設定してもよく、それによって、その後に製造された、交差してジョセフソン接合を形成する2つの長尺状の超伝導層も、相互に垂直である。
【0057】
別の可能な実現形態において、第1長尺状の開孔の延伸方向と第2長尺状の開孔の延伸方向とは、90°以外の他の角度、例えば45°、60°、及び80°などをなしてもよい。
【0058】
2つの長尺状の開孔の以外、上記アンダーカット構造において第1接続部開孔、及び第2接続部開孔も存在しており、ここで、第1接続部開孔、及び第2接続部開孔は、ジョセフソン接合を構成する2つの長尺状の超伝導層にそれぞれ連結されるジョセフソン接合パッチをその後で製造することに用いられる。
【0059】
一種の可能な実現形態において、基板上にアンダーカット構造を含むフォトレジストフィルム層を製造するステップは、以下のS501a~S501hを含む。
【0060】
S501a:基板上に第1厚さの第1フォトレジストをスピンコートする。
【0061】
S501b:第1フォトレジストに対して硬化処理を行う。
【0062】
S501c:第1フォトレジストの上層に第2厚さの第2フォトレジストをスピンコートする。
【0063】
S501d:第2フォトレジストに対して硬化処理を行う。
【0064】
本願の実施例において、まず、基板上に1層の第1フォトレジストをスピンコートし、硬化処理、例えばベーク処理によって第1フォトレジストを硬化させ、その後、さらに第1フォトレジストの上層に1層の第2フォトレジストをスピンコートし、さらに硬化処理して第2フォトレジストを硬化させるようにしてもよい。このようにして、基板上に2層のフォトレジストを製造することができる。
【0065】
ここで、上記第1フォトレジストと第2フォトレジストとは、材質が異なるフォトレジストである。
【0066】
本願の実施例において、第1フォトレジストが第2フォトレジストの下層に位置し、かつ、アンダーカット構造を製造する必要があるため、その後に第2フォトレジストを保留する状況において第1フォトレジストに対して露光を行う必要がある。したがって、本願の実施例において、第1フォトレジストは、第2フォトレジストと比べて露光条件をより容易に満たすことができる。
【0067】
S501e:第1長尺状の開孔、及び第2長尺状の開孔の領域内の第2フォトレジストに対して電子ビーム露光を行う。
【0068】
S501f:第1接続部開孔、及び第2接続部開孔の領域内の第1フォトレジスト、及び第2フォトレジストに対して電子ビーム露光を行う。
【0069】
S501g:アンダーカット構造の領域における第1接続部開孔、及び第2接続部開孔以外の領域内の第1フォトレジストに対して電子ビーム露光を行う。
【0070】
本願の実施例において、製造しようとする長尺状の開孔と接続部開孔とを含むアンダーカット構造に対しては、フォトリソグラフィ装置は、それぞれ、長尺状の開孔、接続部開孔、及びアンダーカット構造の他の部分(すなわち、上方が遮蔽されたキャビティ部分)に対して、それぞれ異なる程度の露光処理を使用してもよく、それによって、上記三種の異なる位置は、異なる露光効果を有する。
【0071】
例えば、一種の可能な実現形態において、フォトリソグラフィ装置は、まず、第1フォトレジストに対して露光を行ってもよい。露光領域は、アンダーカット構造における接続部開孔以外の他の領域を含み、その後、フォトリソグラフィ装置は、さらに第2フォトレジストに対して露光を行う。露光領域は、長尺状の開孔に対応する領域を含み、上記2回の露光を経た後に、接続部開孔の領域は、露光されておらず、このときに、フォトリソグラフィ装置は、接続部開孔の領域の第1フォトレジスト、及び第2フォトレジストに対して同時露光を行うことができる。
【0072】
さらに例えば、上記複数回の露光ステップは、フォトリソグラフィ装置により同時に行われてもよく、言い換えれば、フォトリソグラフィ装置は、同時に、アンダーカット構造における接続部開孔以外の他の領域の第1フォトレジスト、長尺状の開孔に対応する領域の第2フォトレジスト、並びに接続部開孔の領域の第1フォトレジスト、及び第2フォトレジストに対して、同時露光を行ってもよい。
【0073】
S501h:電子ビーム露光後の第1フォトレジスト、及び第2フォトレジストに対して現像を行い、アンダーカット構造を含むフォトレジストフィルム層を取得する。
【0074】
上記S501gの露光ステップを経た後に、操作者、又は操作設備(例えば上記生産ライン設備)は、ベース上のフォトレジストに対して現像処理を行うことで、露光されたフォトレジストを除去し、アンダーカット構造を含むフォトレジストフィルム層を残すことができる。
【0075】
一種の可能な実現形態において、電子ビーム露光後の第1フォトレジスト、及び第2フォトレジストに対して現像を行い、アンダーカット構造を含むフォトレジストフィルム層を取得するステップは、
露光後の第1フォトレジスト、及び第2フォトレジストを現像液の中に入れて現像を行うステップと、
酸素プラズマによって、基板上に残留しているフォトリソグラフィによる現像が行われた後のフォトレジストに対して洗浄を行い、アンダーカット構造を含むフォトレジストフィルム層を取得するステップと、を含む。
【0076】
本願の実施例において、露光後のフォトレジストに対して現像処理を行うときに、まず、露光後の第1フォトレジスト、及び第2フォトレジストを現像液の中に入れて一定の時間現像し、大部分の露光されたフォトレジストを除去するようにしてもよく、一方、残留している、現像された一部のフォトレジストに対しては、さらに酸素プラズマ(plasma)によって洗浄を行うことができる。
【0077】
ステップ502:第1角度でフォトレジストフィルム層に対して基板に対して傾斜して蒸着を行うことで、第1長尺状の開孔を通過してアンダーカット構造の基板上に第1長尺状の超伝導層を製造する。
【0078】
本願の実施例において、アンダーカット構造において第2長尺状の開孔がさらに含まれるため、第1角度でフォトレジストフィルム層に対して基板に対して傾斜して蒸着を行う過程において、さらに第2長尺状の開孔を通過してアンダーカット構造の基板上に第3長尺状の超伝導層を製造する。
【0079】
第1長尺状の開孔と第2長尺状の開孔とが交わらないため、同一角度の傾斜蒸着に対しては、2つの長尺状の開孔を通過してアンダーカット構造の基板上に製造された2つの長尺状の超伝導層も、交わることはない。
【0080】
ステップ503:第1長尺状の超伝導層に対して酸化処理を行うことで、第1長尺状の超伝導層の表面に酸化層を製造する。
【0081】
本願の実施例において、製造しようとするジョセフソン接合は、2つの部分の超伝導材料と、2つの部分の超伝導材料の間の絶縁層とから構成されるため、第2長尺状の超伝導層を製造する前に、まず、第1長尺状の超伝導層の表面に酸化層を製造して、ジョセフソン接合における絶縁層とするようにしてもよい。
【0082】
ステップ504:第2角度でフォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行うことで、第2長尺状の開孔を通過してアンダーカット構造の基板上に第2長尺状の超伝導層を製造する。
【0083】
ここで、第1長尺状の超伝導層と第2長尺状の超伝導層とは、相互に交差しており、第1長尺状の超伝導層と第2長尺状の超伝導層との交わる箇所を酸化層で互いに分離することで、ジョセフソン接合を構成する。
【0084】
同様に、第2角度でフォトレジストフィルム層に対して基板に対して傾斜して蒸着を行う過程において、さらに第1長尺状の開孔を通過してアンダーカット構造の基板上に第4長尺状の超伝導層を製造する。
【0085】
本願の実施例において、第3長尺状の超伝導層は、第1長尺状の超伝導層、及び第2長尺状の超伝導層と交わらず、相応には、第4長尺状の超伝導層は、第1長尺状の超伝導層、及び第2長尺状の超伝導層とも交わらない。
【0086】
言い換えれば、本願の実施例では、アンダーカット構造における2つの長尺状の開孔に対して、それぞれ、2つの角度の傾斜蒸着をすることによって、基板上に4つの長尺状の超伝導層を形成し得る。これには、互いに交差している第1長尺状の超伝導層と第2長尺状の超伝導層、独立した第3長尺状の超伝導層、及び独立した第4長尺状の超伝導層が含まれ、ここで、互いに交差している第1長尺状の超伝導層と第2長尺状の超伝導層とは、ジョセフソン接合を構成することに用いられ、一方、第3長尺状の超伝導層、及び第4長尺状の超伝導層は、製造しようとする量子ビットアセンブリに連結することはない。
【0087】
ステップ505:第1長尺状の超伝導層、及び第2長尺状の超伝導層に対してイオンミリング洗浄を行う。
【0088】
本願の実施例において、生産ライン設備は、第1長尺状の超伝導層と第1接続部開孔の基板上での投影との重なり領域、及び第2長尺状の超伝導層と第2接続部開孔の基板上での投影との重なり領域に対して、イオンミリング洗浄を行ってもよい。
【0089】
本願の実施例において、その後に製造しようとするジョセフソン接合パッチがジョセフソン接合と超伝導接続を形成する必要がある。一方、ジョセフソン接合を製造する過程において、酸化ステップが存在する、言い換えれば、第1長尺状の超伝導層の表面に酸化層が存在し得るため、本願の実施例においては、ジョセフソン接合パッチを製造する前に、まず、製造済みの第1長尺状の超伝導層、及び第2長尺状の超伝導層に対してイオンミリング洗浄を行うことで、第1長尺状の超伝導層の表面の酸化層を除去する。
【0090】
なお、上記超伝導層の製造過程において付加的に得られた第3長尺状の超伝導層、及び第4長尺状の超伝導層に対して、ステップ503で酸化処理を行うときに、第3長尺状の超伝導層、及び第4長尺状の超伝導層の表面にも酸化層を製造することができる。
【0091】
本ステップにおいて、イオンミリング洗浄の方向は、基板に垂直な方向であってもよく、相応には、洗浄される領域は、垂直方向においてフォトレジストにより遮蔽されていない領域、つまり、第1長尺状の超伝導層と第1接続部開孔の基板上での垂直投影とが重なる領域(つまり、第1接続部開孔の基板上での垂直投影と、基板上での第1長尺状の超伝導層とが相互に重なる領域)、第2長尺状の超伝導層と第2接続部開孔の基板上での垂直投影とが重なる領域(つまり、第2接続部開孔の基板上での垂直投影と、基板上での第2長尺状の超伝導層とが相互に重なる領域)、第3長尺状の超伝導層の基板上での垂直投影の領域、及び第4長尺状の超伝導層の基板上での垂直投影の領域を含む。
【0092】
ステップ506:フォトレジストフィルム層に対して基板と垂直な蒸着を行うことで、第1接続部開孔、及び第2接続部開孔を通過して、アンダーカット構造の基板上に第1接続部超伝導層、及び第2接続部超伝導層を製造し、第1接続部超伝導層と第1長尺状の超伝導層とは、超伝導接続を形成し、第2接続部超伝導層と第2長尺状の超伝導層とは、超伝導接続を形成する。
【0093】
本願の実施例において、第1接続部開孔の基板上での垂直投影の位置は、第1長尺状の超伝導層と交わり、且つ、第2接続部開孔の基板上での垂直投影の位置は、第2長尺状の超伝導層とも交わり、これは、第1角度、及び第2角度に対する設計によって実現することができる。このような設計の下で、フォトレジストフィルム層に対して基板と垂直な蒸着を行うときに、蒸着する超伝導材料は、アンダーカット構造の基板上に、第1長尺状の超伝導層と超伝導接続を形成する第1接続部超伝導層、及び第2長尺状の超伝導層と超伝導接続を形成する第2接続部超伝導層を製造することができる。
【0094】
本願の実施例において、垂直蒸着の前に、基板上の超伝導層に対して既にイオンミリング洗浄を行ったため、垂直蒸着の後に、基板上に新しいジョセフソン接合を形成することはなく、つまり、寄生接合を導入することはない。
【0095】
一種の可能な実現形態において、第1角度でフォトレジストフィルム層に対して基板に対して傾斜して蒸着を行うステップ(斜め蒸着とも呼ばれる)から、フォトレジストフィルム層に対して基板と垂直な蒸着(法線蒸着とも呼ばれる)を行うステップまでの間の上記ステップ(すなわち、上記ステップ502~ステップ506)の実行環境は、インサイチュ環境である。
【0096】
図6に参照されるように、本願の実施例に係るジョセフソン接合の製造のプロセスフローチャートを示す。
図6に示すように、本願の実施例に示される解決手段は、シャドー蒸発コーティングの方式を設計することによって、ジョセフソン接合を製造する。
図6に示すように、2つの長尺状の開孔が相互に垂直であることを例にし、その具体的なフローは、以下の通りであってもよい。
【0097】
S61:ケイ素、又はサファイア基板上に厚さがt_Mである1層の電子ビームフォトレジストMAAをスピンコートする。
【0098】
S62:180℃、7minのソフトベークで、フォトレジストを硬化させる。
【0099】
S63:これに基づき、厚さがt_Pである1層の電子ビームフォトレジストPMMAをさらにスピンコートする。
【0100】
S64:180℃、2minのソフトベークで、フォトレジストを硬化させ、このように、2層のレジスト構造を形成する。
【0101】
S65:電子ビーム露光を行う。
【0102】
ここで、電子ビーム露光量は、下記の通りであってもよい。
【0103】
長尺状の開孔の領域のPMMAフォトレジストの露光量は、450μC/cm^2であり、接続部開孔以外のアンダーカット構造の領域のMAAフォトレジストの露光量は、150μC/cm^2であり、接続部開孔の領域のPMMA+MAAフォトレジストの露光量は、800μC/cm^2である。
【0104】
上記電子ビーム露光処理によって、長尺状の開孔と接続部開孔との領域のPMMA+MAAフォトレジスト、及びアンダーカット構造における他の領域のMAAに対して露光を行うことができる。
【0105】
S66:MIBK:IPA=1:3の現像液を用いて1min現像し、さらにIPAを用いて0.5min定着し、このように、アンダーカット構造を形成する。
【0106】
S67:現像後に、パワー200Wの酸素plasmaを使用して2min洗浄することで、現像後のパターン領域の少量の残留レジストを除去する。
【0107】
その後、パターン構造を備えた試料を、イオンミリング、酸化、及び多角度コーティングの機能を一体に統合した真空チャンバ内に入れて、真空引きする。
【0108】
S68:回転角が0°であり、傾斜角がθである条件下で、60nmの超伝導金属を蒸着する。
【0109】
S69:傾斜角を0°に回復した後に、所望の接合抵抗の大きさに応じて、酸化時間を調整する。
【0110】
S610:酸化終了後に、回転角が90°であり、傾斜角がθである条件下で、60nmの超伝導金属を蒸着し、このように、金属/酸化層/金属のサンドイッチ状の構造、つまり、ジョセフソン接合を形成する。
【0111】
S611:接合エリアを形成した後に、イオンミリング洗浄を3minする。
【0112】
例えば、イオンミリング過程は、イオン入射方向と基板法線方向との夾角を30°に設定し、基板の回転速度を10rpmに設定するようにしてもよい。イオンミリングの目的は、外部回路の表面の酸化層を除去することである。
【0113】
S612:最後に傾斜角が0°であり、回転角が任意の角である条件下で、100nmの超伝導金属を法線蒸着し、ジョセフソン接合バンデージ/パッチを形成し、ジョセフソン接合と外部回路とを接続する。
【0114】
S613:フォトレジストをリフトオフして、ジョセフソン接合、及びジョセフソン接合パッチを得る。
【0115】
上記
図6に示される解決手段によれば、一種の可能な実現形態において、第1接続部開孔は、第1長尺状の開孔に連結されず、第2接続部開孔は、第2長尺状の開孔に連結されず、
第1角度の蒸着の方向の基板上での投影は、第1長尺状の開孔の延伸方向と垂直であり、
第2角度の蒸着の方向の基板上での投影は、第2長尺状の開孔の延伸方向と垂直である。
【0116】
ここで、第1長尺状の超伝導層と第1長尺状の開孔の基板上での投影とは、交わらない。
【0117】
且つ、第2長尺状の超伝導層と第2長尺状の開孔の基板上での投影とは、交わらない。
【0118】
図7に参照されるように、本願の実施例に係る電子ビーム露光に用いられるパターンを示す。
図7に示すように、領域71は、MAA層の電子ビームフォトレジストが現像後に消える領域を表し、領域72は、PMMA層の電子ビームフォトレジストが現像後に消える領域を表し、領域73は、PMMA+MAA層の電子ビームフォトレジストが現像後にいずれも消えるようになる領域を表す。残りの空白領域は、現像後にPMMAとMAAとがいずれも残っている領域を表す。
【0119】
上記
図7に基づいて、
図8に参照されるように、本願の実施例に係るアンダーカット構造の断面図を示す。
図8に示すように、該断面は、
図7における切断線74の箇所での断面である。
【0120】
ここで、領域81は、現像後に保留されているMAA層の電子ビームフォトレジストを表し、領域82は、現像後に保留されているPMMA層の電子ビームフォトレジストを表し、領域83は、基板を表す。電子ビーム露光、及び現像後に、PMMA層、及びMAA層のパターンによってアンダーカット構造が得られ、すなわち、
図8において、基板とフォトレジストとにより囲まれた領域である。
【0121】
本願の実施例において、酸素plasmaによって、ベース83の表面の露光領域に残存している少量の電子ビームフォトレジストを洗浄し、また、該構造を、イオンミリング、酸化、及び多角度コーティングの機能を一体に統合した設備内に入れて、真空引きした後に、第1ステップで、回転角を0°、傾斜角をθに設定してコーティングしてもよい。ここで、上記回転角が0°であることとは、蒸着角度がある長尺状の開孔の延伸方向と垂直である回転角であることを指してもよく、相応には、2つの長尺状の開孔が垂直である状況において、回転角が90°であるときに、蒸着角度は、他方の長尺状の開孔の延伸方向と垂直である。
【0122】
図8と併せて、
図9に参照されるように、本願の実施例に係る蒸着模式図を示す。
図9に示すように、
図8を基に、角度が回転可能な蒸発源91を増設する。MAAパターン定義層81の幅がd_Mであり、PMMAパターン定義層82の幅がd_Pであると仮定する場合、条件を満たすジョセフソン接合を製造するために、d_M>(t_P+t_M)tanθ>d_P>t_P・tanθを同時に満たさなければならない。
【0123】
これにより定義されたジョセフソン接合92の幅は、d_P-t_P・tanθであり、ここで、ジョセフソン接合の幅は、上記関係を満たすことを基に、θ角を調整することによって調整制御することができる。
【0124】
酸化の後に、基板を90°回転させ、同様に、θ角を調整してジョセフソン接合の長さの調整制御を実現することができる。同時に、ジョセフソン接合バンデージ/パッチが上記過程において形成されないことを確保するために、(t_P+t_M)tanθ>d_(P+M)という条件を満たさなければならず、ここで、d_(P+M)は、PMMA+MAAパターン定義層73の幅である。
【0125】
図7と併せて、ジョセフソン接合の接合エリアを形成した後に、イオンミリングを利用して外部回路の73領域に露出した酸化層を除去し、その後、傾斜角を0°、回転角を任意の角に設定して、超伝導材料を蒸着し、ジョセフソン接合バンデージ/パッチを形成する。
【0126】
図7と併せて、
図10に参照されるように、本願の実施例に係る3回のコーティング過程の模式図を示す。
図10における(a)部分に示すように、ここで、垂直蒸着符号1001は、紙面と垂直な方向に沿って超伝導フィルム層を蒸着することを表す。
【0127】
図10の3回のコーティング過程に対応して、得られた効果は、
図10における(b)部分に示される通りである。ここで、領域1002は、1回目のコーティング後に形成された回路を表し、領域1003は、2回目のコーティングで形成された回路を表し、領域1004は、形成されたジョセフソン接合を表し、領域1005は、3回目のコーティングで形成されたジョセフソン接合バンデージ/パッチを表す。
【0128】
図10と併せて、
図11に参照されるように、本願の実施例に係るフォトレジストリフトオフ後の効果図を示す。ここで、破線ボックス1101の部分は、製造されたジョセフソン接合である。
【0129】
一種の可能な実現形態において、第1接続部開孔は、第1長尺状の開孔の一端に連結され、第2接続部開孔は、第2長尺状の開孔の一端に連結され、
第1角度の蒸着の方向の基板上での投影は、第1長尺状の開孔において第1接続部開孔から第1長尺状の開孔の他端へ延伸する方向と平行であり、
第2角度の蒸着の方向の基板上での投影は、第2長尺状の開孔において第2接続部開孔から第2長尺状の開孔の他端へ延伸する方向と平行である。
【0130】
ここで、上記第1角度の蒸着の方向の基板上での投影が、第1長尺状の開孔において第1接続部開孔から第1長尺状の開孔の他端へ延伸する方向と平行であること、とは、第1角度の蒸着の方向の基板上での投影から得られた方向が、第1長尺状の開孔において第1接続部開孔から第1長尺状の開孔の他端へ延伸する方向と平行であることを指すことに加えて、第1角度の蒸着の方向の基板上での投影から得られた方向が、第1長尺状の開孔において第1接続部開孔から第1長尺状の開孔の他端へ延伸する方向と同じであることを指す。
【0131】
同様に、上記第2角度の蒸着の方向の基板上での投影が、第2長尺状の開孔において第2接続部開孔から第2長尺状の開孔の他端へ延伸する方向と平行であること、とは、第2角度の蒸着の方向の基板上での投影から得られた方向が、第2長尺状の開孔において第2接続部開孔から第2長尺状の開孔の他端へ延伸する方向と平行であることを指すことに加えて、第2角度の蒸着の方向の基板上での投影から得られた方向が、第2長尺状の開孔において第2接続部開孔から第2長尺状の開孔の他端へ延伸する方向と同じであることを指す。
【0132】
本願の実施例に示される解決手段は、シャドー蒸着法を利用してジョセフソン接合の接合エリア位置を、中空のフォトレジスト構造の下に定義するものであり、イオン衝撃によるジョセフソン接合に対する損傷を回避することができる。したがって、上記
図7~
図10に示される実現解決手段以外に、類似する他の解決手段によって実現されてもよく、傾斜蒸着の方式によって、ジョセフソン接合をアンダーカット構造における上層のフォトレジストの下に製造すればよい。以下、一種の可能な替代解決手段を提供する。
【0133】
図12に参照されるように、本願の実施例に係るアンダーカットパターン、及び3回のコーティング過程の模式図を示す。
図12に示すように、依然として、
図8に示される断面を例にすると、その蒸着角度、及び開口サイズの要件は、t_P・tanθ>d_P、かつ、(t_P+t_M)tanθ>d_(P+M)である。
【0134】
図12に示すように、1回目の蒸着は、回転角を90°に設定し、傾斜角θは、上記要件を満たす任意の値であり、2回目の蒸着は、回転角を0°に設定し、傾斜角θは、上記要件を満たす任意の値であり、最初の2回の蒸着でジョセフソン接合を形成する。次いで、イオンミリングを行って、外部回路の接触部分の酸化層を除去し、3回目の蒸着は、回転角を任意の角、傾斜角を0°に設定し、ジョセフソン接合パッチ/バンデージを形成する。
【0135】
図12と併せて、
図13に参照されるように、本願の実施例に係るフォトレジストリフトオフ後の効果図を示す。
【0136】
本願の上記実施例に示される解決手段によって、以下の効果を達成することができる。
【0137】
1)ジョセフソン接合の製造過程にもたらされた寄生接合をなくす。
【0138】
2)イオンミリングによる基板表面に対する損傷をなくし、超伝導フィルム層と基板界面との接触を改善する。
【0139】
3)ジョセフソン接合バンデージとジョセフソン接合パッチとの作用を合わせて、インサイチュでジョセフソン接合、及びジョセフソン接合バンデージ/パッチの製造を完了し、プロセスフローを簡素化する。
【0140】
4)ジョセフソン接合を保護し、イオンからの衝撃を回避し、ジョセフソン接合が破壊されるリスクを低減させる。
【0141】
5)コーティング角度を選択することによって、ジョセフソン接合の大きさを調整することができる。
【0142】
6)本解決手段は、紫外線露光、又はレーザ直接描画などの最小解像度が1um程度の紫外フォトレジスト構造で、ナノスケールのジョセフソン接合を製造することにも適用される。
【0143】
上記のように、本願の実施例に示される解決手段において、基板上に、平行ではない2つの長尺状の開孔を有するアンダーカット構造のフォトレジストフィルム層を製造し、2つの異なる角度の傾斜蒸着によって、アンダーカット構造内の基板上に、相互に交差しており、酸化層で互いに分離されている2つの長尺状の超伝導層を製造することによって、上記解決手段において、2つの長尺状の超伝導層の交差箇所にのみ1つのジョセフソン接合を形成し、他の寄生接合をもたらすことはない。これにより、量子ビットアセンブリのコヒーレンス性を向上させる。
【0144】
図14に参照されるように、本願の一実施例で提供される解決手段の応用シーンの模式図を示す。
図14に示すように、該応用シーンは、超伝導量子コンピューティングプラットフォームであってもよく、該応用シーンは、量子コンピューティングデバイス141、希釈冷凍機142、制御設備143、及びコンピュータ144を含んでもよい。
【0145】
量子コンピューティングデバイス141は、物理量子ビットにおいて作用する回路であり、量子コンピューティングデバイス141は、量子チップ、例えば絶対零度付近にある超伝導量子チップとして実現できる。希釈冷凍機142は、超伝導量子チップに絶対零度の環境を提供することに用いられる。ここで、上記物理量子ビットは、本願の上記実施例に示される方法によって製造されるジョセフソン接合であってもよい。
【0146】
制御設備143は、量子コンピューティングデバイス141を制御することに用いられ、コンピュータ144は、制御設備143を制御することに用いられる。例えば、プログラミングされた量子プログラムをコンピュータ144におけるソフトウェアで命令としてコンパイルして、制御設備143(例えば電子/マイクロ波制御システム)に送信し、制御設備143は、上記命令を電子/マイクロ波制御信号に変換して、希釈冷凍機142に入力し、10mKよりも低い温度にある超伝導量子ビットを制御する。読み取りの過程は、それと反対であり、読み取り波形は、量子コンピューティングデバイス141に伝送される。
【0147】
図15は、本願の例示的な一実施例に示される生産ライン設備の模式図を示しており、
図15に示すように、該生産ライン設備は、スピンコータ1501、フォトリソグラフィ装置1502、及び蒸着機1503を含み、
上記スピンコータ1501、及びフォトリソグラフィ装置1502は、基板上にアンダーカット構造を含むフォトレジストフィルム層を製造することに用いられ、上記アンダーカット構造は、第1長尺状の開孔と、第2長尺状の開孔と、を含み、上記第1長尺状の開孔と上記第2長尺状の開孔とは、平行ではなく、
上記蒸着機1503は、第1角度で上記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行うことで、上記第1長尺状の開孔を通過して上記アンダーカット構造の基板上に第1長尺状の超伝導層を製造することに用いられ、
上記蒸着機1503は、さらに、第2角度で上記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行うことで、上記第2長尺状の開孔を通過して上記アンダーカット構造の基板上に第2長尺状の超伝導層を製造することに用いられ、上記第1長尺状の超伝導層と上記第2長尺状の超伝導層とは、交わり、かつ、上記第1長尺状の超伝導層と上記第2長尺状の超伝導層との交わる箇所を酸化層で互いに分離することで、ジョセフソン接合を構成する。
【0148】
一種の可能な実現形態において、第1角度で上記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行う上記過程において、上記蒸着機1503は、さらに、上記第2長尺状の開孔を通過して上記アンダーカット構造の基板上に第3長尺状の超伝導層を製造することに用いられ、
上記第3長尺状の超伝導層は、上記第1長尺状の超伝導層、及び上記第2長尺状の超伝導層と交わらない。
【0149】
一種の可能な実現形態において、第2角度で上記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行う上記過程において、上記蒸着機1503は、さらに、上記第1長尺状の開孔を通過して上記アンダーカット構造の基板上に第4長尺状の超伝導層を製造することに用いられ、
上記第4長尺状の超伝導層は、上記第1長尺状の超伝導層、及び上記第2長尺状の超伝導層と交わらない。
【0150】
一種の可能な実現形態において、上記蒸着機1503は、さらに、第2角度で上記フォトレジストフィルム層に対して基板に傾斜して蒸着を行う前に、上記第1長尺状の超伝導層に対して酸化処理を行うことで、上記第1長尺状の超伝導層の表面に酸化層を製造することに用いられる。
【0151】
一種の可能な実現形態において、上記第1長尺状の超伝導層と上記第1長尺状の開孔の上記基板上での投影とは、交わらず、上記第2長尺状の超伝導層と上記第2長尺状の開孔の上記基板上での投影とは、交わらず、上記アンダーカット構造は、第1接続部開孔と、第2接続部開孔と、をさらに含み、
上記蒸着機1503は、さらに、上記フォトレジストフィルム層に対して基板と垂直な蒸着を行うことで、上記第1接続部開孔、及び上記第2接続部開孔を通過して、上記アンダーカット構造の基板上に第1接続部超伝導層、及び第2接続部超伝導層を製造することに用いられ、上記第1接続部超伝導層と上記第1長尺状の超伝導層とは、超伝導接続を形成し、上記第2接続部超伝導層と上記第2長尺状の超伝導層とは、超伝導接続を形成する。
【0152】
一種の可能な実現形態において、上記第1長尺状の開孔の延伸方向と上記第2長尺状の開孔の延伸方向とは、垂直である。
【0153】
一種の可能な実現形態において、上記第1接続部開孔は、上記第1長尺状の開孔に連結されず、上記第2接続部開孔は、上記第2長尺状の開孔に連結されず、
上記第1角度の蒸着の方向の上記基板上での投影は、上記第1長尺状の開孔の延伸方向と垂直であり、
上記第2角度の蒸着の方向の上記基板上での投影は、上記第2長尺状の開孔の延伸方向と垂直である。
【0154】
一種の可能な実現形態において、上記第1接続部開孔は、上記第1長尺状の開孔の一端に連結され、上記第2接続部開孔は、上記第2長尺状の開孔の一端に連結され、
上記第1角度の蒸着の方向の上記基板上での投影は、上記第1長尺状の開孔において上記第1接続部開孔から上記第1長尺状の開孔の他端へ延伸する方向と平行であり、
上記第2角度の蒸着の方向の上記基板上での投影は、上記第2長尺状の開孔において上記第2接続部開孔から上記第2長尺状の開孔の他端へ延伸する方向と平行である。
【0155】
図15に示すように、一種の可能な実現形態において、上記生産ライン設備は、エッチング機1504をさらに含み、
上記エッチング機1504は、上記蒸着機が上記フォトレジストフィルム層に対して基板と垂直な蒸着を行う前に、上記第1長尺状の超伝導層と上記第1接続部開孔の上記基板上での投影との重なり領域、及び上記第2長尺状の超伝導層と上記第2接続部開孔の上記基板上での投影との重なり領域に対して、イオンミリング洗浄を行うことに用いられる。
【0156】
一種の可能な実現形態において、上記生産ライン設備は、ホットプレート1505をさらに含み、
上記スピンコータ1501は、上記基板上に第1厚さの第1フォトレジストをスピンコートすることに用いられ、
上記ホットプレート1505は、上記第1フォトレジストに対して硬化処理を行うことに用いられ、
上記スピンコータ1501は、上記第1フォトレジストの上層に第2厚さの第2フォトレジストをスピンコートすることに用いられ、
上記ホットプレート1505は、上記第2フォトレジストに対して硬化処理を行うことに用いられ、
上記フォトリソグラフィ装置1502は、上記第1長尺状の開孔、及び上記第2長尺状の開孔の領域内の上記第2フォトレジストに対して電子ビーム露光を行うことと、上記第1接続部開孔、及び上記第2接続部開孔の領域内の上記第1フォトレジスト、及び上記第2フォトレジストに対して電子ビーム露光を行うことと、上記アンダーカット構造の領域における上記第1接続部開孔、及び上記第2接続部開孔以外の領域内の上記第1フォトレジストに対して電子ビーム露光を行うことと、に用いられ、上記アンダーカット構造を含む上記フォトレジストフィルム層は、電子ビーム露光後の上記第1フォトレジスト、及び上記第2フォトレジストを現像することにより取得される。
【0157】
一種の可能な実現形態において、上記アンダーカット構造を含む上記フォトレジストフィルム層は、露光後の上記第1フォトレジスト、及び上記第2フォトレジストを現像液の中に入れて現像を行い、且つ、酸素プラズマによって、上記基板上に残留しているフォトリソグラフィによる現像が行われた後のフォトレジストに対して洗浄を行って取得される。
【0158】
選択可能に、該生産ライン設備は、プロセッサをさらに含み、該プロセッサは、スピンコータ1501、フォトリソグラフィ装置1502、蒸着機1503、エッチング機1504、及びホットプレート1505にそれぞれ電気的に連結されて、スピンコータ1501、フォトリソグラフィ装置1502、蒸着機1503、エッチング機1504、及びホットプレート1505などを制御することに用いられてもよい。
【0159】
選択可能に、該生産ライン設備は、電源をさらに含み、プロセッサ、スピンコータ1501、フォトリソグラフィ装置1502、蒸着機1503、エッチング機1504、及びホットプレート1505などの電気設備に電力を供給することに用いられる。
【0160】
選択可能に、各マシンの間は、コンベアによって空間的に接続され、又はロボットアームに基づいて製造物の各マシン間での移動を完了する。
【0161】
選択可能に、該生産ライン設備は、メモリをさらに含み、該メモリは、少なくとも1つのコンピュータ命令を記憶することに用いられてもよく、プロセッサは、上記少なくとも1つのコンピュータ命令を実行することで、生産ライン設備に上記ジョセフソン接合の製造方法を実行させる。
【0162】
1つの例示的な実施例において、コンピュータ可読記憶媒体をさらに提供しており、該コンピュータ可読記憶媒体において少なくとも1つのコンピュータ命令が記憶されており、該少なくとも1つのコンピュータ命令は、生産ライン設備におけるプロセッサにより実行されると、生産ライン設備に上記ジョセフソン接合の製造方法を実行させる。
【0163】
例示的な実施例において、コンピュータプログラム製品、又はコンピュータプログラムをさらに提供しており、該コンピュータプログラム製品、又はコンピュータプログラムは、コンピュータ命令を含み、該コンピュータ命令は、コンピュータ可読記憶媒体に記憶されている。生産ライン設備のプロセッサは、コンピュータ可読記憶媒体から該コンピュータ命令を読み取り、プロセッサは、該コンピュータ命令を実行して、生産ライン設備に上記ジョセフソン接合の製造方法を実行させる。
【符号の説明】
【0164】
42 開孔
43 開孔
44 超伝導層
45 超伝導層
46 ジョセフソン接合
73 MAAパターン定義層
74 切断線
81 MAAパターン定義層
82 PMMAパターン定義層
83 ベース
91 蒸発源
92 ジョセフソン接合
101 ジョセフソン接合
102 ジョセフソン接合パッチ
103 寄生接合
141 量子コンピューティングデバイス
142 希釈冷凍機
144 コンピュータ
1501 スピンコータ
1502 フォトリソグラフィ装置
1503 蒸着機
1504 エッチング機
1505 ホットプレート
【国際調査報告】