(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末
(51)【国際特許分類】
C03C 3/097 20060101AFI20240405BHJP
C03C 4/16 20060101ALI20240405BHJP
C03C 12/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C03C3/097
C03C4/16
C03C12/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553931
(86)(22)【出願日】2022-04-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 CN2022088738
(87)【国際公開番号】W WO2022228340
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】202110446122.3
(32)【優先日】2021-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519375963
【氏名又は名称】中建材玻璃新材料研究院集▲団▼有限公司
【住所又は居所原語表記】No. 1047 Tushan Road Bengbu, Anhui 233010 China
(74)【代理人】
【識別番号】100160299
【氏名又は名称】伊藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】彭 寿
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 冲
(72)【発明者】
【氏名】王 巍巍
(72)【発明者】
【氏名】李 常青
(72)【発明者】
【氏名】李 金威
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 小菲
(72)【発明者】
【氏名】周 ▲剛▼
(72)【発明者】
【氏名】柯 震坤
(72)【発明者】
【氏名】曹 欣
(72)【発明者】
【氏名】▲単▼ ▲傳▼▲麗▼
(72)【発明者】
【氏名】倪 嘉
(72)【発明者】
【氏名】崔 介▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ ▲鳳▼▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】仲 召▲進▼
(72)【発明者】
【氏名】王 萍萍
(72)【発明者】
【氏名】高 ▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ 娜
(72)【発明者】
【氏名】石 ▲麗▼芬
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 勇
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA10
4G062BB01
4G062CC04
4G062CC10
4G062DA07
4G062DB01
4G062DC02
4G062DC04
4G062DD02
4G062DD03
4G062DE01
4G062DF01
4G062EA02
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4G062EB02
4G062EC02
4G062EC03
4G062ED01
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4G062FF01
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4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK02
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
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4G062GE01
4G062HH01
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4G062HH13
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4G062HH17
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ06
4G062JJ07
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM04
4G062NN26
4G062NN32
(57)【要約】
本発明は、SiO
2:70.5~74.0%、B
2O
3:20.5~23.5%、Ga
2O
3:0.5~2.0%、P
2O
5:0.25~2.0%、Li
2O:0.4~6.0%、K
2O:0.1~1.5%、LaB
6:0.05~1.0%、NaCl:0.03~0.3%とするモルパーセントの混合割合で表される原料で製造されることを特徴とする小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末に関する。本発明の利点は次の通りである。即ち、原材料の成分がシンプルで、製造方法が簡単且つ実行しやすい。また、製造されるガラス粉末は誘電率と誘電損失が低く、溶融成形温度が低いため、大規模工業生産にとって都合がよい。また、ガラス粉末の溶融成形温度は1320℃~1360℃である。製造されるガラスは、周波数1MHzの場合の誘電率が3.8~4.1であり、誘電損失が4×10
-4~10×10
-4であり、封着温度が900℃~950℃である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO
2:70.5~74.0%、B
2O
3:20.5~23.5%、Ga
2O
3:0.5~2.0%、P
2O
5:0.25~2.0%、Li
2O:0.4~6.0%、K
2O:0.1~1.5%、LaB
6:0.05~1.0%、NaCl:0.03~0.3%とするモルパーセントの混合割合で表される原料で製造されることを特徴とする小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末。
【請求項2】
SiO
2:71.5~73.0%、B
2O
3:21.5~23%、Ga
2O
3:0.8~1.5%、P
2O
5:0.5~1.5%、Li
2O:0.8~5.5%、K
2O:0.3~1.2%、LaB
6:0.1~0.8%、NaCl:0.1~0.25%とするモルパーセントの混合割合で表される原料で製造されることを特徴とする請求項1に記載の小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末。
【請求項3】
SiO
2:71.5~72.5%、B
2O
3:22~23%、Ga
2O
3:1~1.2%、P
2O
5:0.8~1.2%、Li
2O:1.5~2.5%、K
2O:0.5~1.0%、LaB
6:0.2~0.7%、NaCl:0.15~0.2%とするモルパーセントの混合割合で表される原料で製造されることを特徴とする請求項1に記載の小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末。
【請求項4】
Li
2O/K
2Oの比率は1~6の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末。
【請求項5】
Li
2O/K
2Oの比率は1~3の範囲内であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末。
【請求項6】
ガラス粉末の溶融成形温度は1320℃~1360℃であり、製造されるガラスは、周波数1MHzの場合の誘電率が3.8~4.1であり、誘電損失が4×10
-4~10×10
-4であり、封着温度が900℃~950℃であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子用ガラスの分野に関し、具体的には、小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
情報伝送や高周波通信技術の急速な発展に伴って、電子部品における封着用ガラス粉末の誘電特性に対する要求はますます高まっている。材料の誘電率が低いほど信号の伝送速度は速くなり、材料の誘電損失が小さいほど、一定の伝送周波数における伝送損失は小さくなる。そのため、封着用ガラス粉末は低い誘電率及び誘電損失を備えている必要がある。
【0003】
近年は、RFコネクタ、マイクロ波デバイス等の動作周波数の範囲が大幅に上昇している。これに伴うインピーダンス遅延及び電力損失を低下させるためには、電気抵抗率の低い金属を用いるほか、誘電体層の寄生容量を低下させることも重要である。静電容量Cは誘電率イプシロンに正比例するため、低誘電率材料を用いて相互接続誘電体を作製し、インピーダンス遅延を減少させることで、集積回路の発展におけるニーズを満たすことが可能となる。これを達成するにあたり、低誘電率ガラス粉末は大変理想的な材料候補である。低誘電率ガラス粉末は低い誘電率及び誘電損失を有している。これらはテスト温度及び周波数に伴う変化がほぼないため、電子パッケージングにおいて、例えば、回路の保護、隔離・絶縁及び信号歪みの防止等の役割を発揮する。高周波・マイクロ波条件で使用される低誘電率封着用ガラス粉末は、主として、モジュールや部材のマイクロ波信号及び制御信号の入出力に用いられ、信号の緩和や相互干渉を減少させるとともに、高周波や高電気抵抗率での過剰な熱消費を減少させる。
【0004】
しかし、現在のところ、低誘電率封着用ガラス粉末を供給可能なメーカーは少ない。これは、現主に次のような問題が存在しているからである。
(1)ガラス粉末は溶融温度が過度に高く、高温粘度が高いため、封着温度が高くなる。
(2)ガラス粉末は誘電率又は誘電損失が非常に大きいことから、低誘電率封着用ガラス粉末の実際の応用に支障をきたす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の欠点を解消及び改善するために、小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末を提供することである。当該ガラスは、低い誘電率及び誘電損失と、低い溶融成形温度等の特性を有しているため、小型RFガラス絶縁体の封着における使用要求を満たすことが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を実現するために、本発明が採用する技術方法は以下の通りである。
【0007】
小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末は、SiO2:70.5~74.0%、B2O3:20.5~23.5%、Ga2O3:0.5~2.0%、P2O5:0.25~2.0%、Li2O:0.4~6.0%、K2O:0.1~1.5%、LaB6:0.05~1.0%、NaCl:0.03~0.3%とするモルパーセントの混合割合で表される原料で製造されることを特徴とする。
【0008】
更に、前記小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末は、SiO2:71.5~73.0%、B2O3:21.5~23%、Ga2O3:0.8~1.5%、P2O5:0.5~1.5%、Li2O:0.8~5.5%、K2O:0.3~1.2%、LaB6:0.1~0.8%、NaCl:0.1~0.25%とするモルパーセントの混合割合で表される原料で製造されることを特徴とする。
【0009】
更に、前記小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末は、SiO2:71.5~72.5%、B2O3:22~23%、Ga2O3:1~1.2%、P2O5:0.8~1.2%、Li2O:1.5~2.5%、K2O:0.5~1.0%、LaB6:0.2~0.7%、NaCl:0.15~0.2%とするモルパーセントの混合割合で表される原料で製造されることを特徴とする。
【0010】
更に、前記小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末は、Li2O/K2Oの比率が1~6の範囲内であることを特徴とする。
【0011】
更に、前記小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末は、Li2O/K2Oの比率が1~3の範囲内であることを特徴とする。
【0012】
配合における各成分の役割及び含有量の選択理由について、本発明が根拠とした技術原理は次の通りである。
【0013】
誘電特性はイオン分極率に関係しており、イオン分極率は主としてガラスのネットワーク構造(網目構造)の影響を受ける。ネットワーク構造の集合度が大きいほど、電荷の移動が受ける空間抵抗が大きくなり、これにより分極が減少して誘電特性が向上する。また、ネットワークの集合度が低いほど、電荷の移動が増加して分極が増大し、誘電特性が悪化する。
【0014】
SiO2はガラスネットワークの生成体であり、含有量の上昇は誘電率の低下にとって有利である。しかし、含有量が多すぎるとガラス液の粘度が急速に増大し、融解が困難になる。そこで、本発明では、SiO2の適切な範囲を70.5%~74.0%とする。
【0015】
B2O3は、ネットワーク中間体の役割を発揮するとともに、それ自体が低いイオン分極率を有している。B2O3の含有量を適切に上昇させることで、ガラスの誘電特性を改良する目的を達成可能となる。また、B2O3は良好な溶融助剤でもあり、ガラスの高温粘度を有効に低下させることができる。ただし、B2O3の含有量が多すぎると、ガラス粉末の力学特性の低下や、耐水性の悪化等の問題が直接的に生じる。そこで、本発明では、B2O3の適切な範囲を20.5%~23.5%とする。
【0016】
Ga2O3の役割は、低誘電率ガラスのネットワーク構造における中間体酸化物である。含有量が適切な場合には、ガラスのネットワーク構造における断裂した化学結合を結合し直し、ネットワーク体を修復する役割を発揮させることで、低誘電率ガラスの機械的強度及びガラスの安定性を向上させる。また、Ga2O3は、より大きなイオン半径を有しており、ガラスのネットワーク構造を緻密とすることでアルカリ金属イオンの移動を抑制するため、誘電率を低下させるために有利である。ただし、含有量が多すぎるとGa3+がネットワーク構造の外部に遊離して、誘電特性を悪化させてしまう。そこで、本発明では、Ga2O3の適切な範囲を0.5%~2.0%とする。
【0017】
P2O5は、ガラスの溶融温度を低下させるために有用である。なぜなら、P2O5溶融体の粘度活性化エネルギーは小さく、B2O3の粘度活性化エネルギーと近いためである。また、P2O5は、ガラス構造に進入して[PO4]を形成する。[PO4]は二重結合を持つ1つの酸素を有し、二重結合を持つリン-酸素四面体は非中心対称をなす。これにより、ガラスの粘度を小さくできるため、ガラスの高温特性粘度点が低下し、フロート法成型プロセスの制御に有利となる。ただし、P2O5が多すぎるとガラスの化学的安定性が悪化するため、本発明では、P2O5の適切な範囲を0.25%~2.0%とする。
【0018】
本発明では、ホウ化ランタン(LaB6)を導入する。LaB6は、配合材料の反応過程で高温酸化し、ホウ酸ランタンを形成することでネットワーク中間体の役割を発揮する。したがって、適切に添加することで、非架橋酸素を連結してネットワークを補う作用を有する。構造内の[BO4]及び[SiO4]及び[BO4]が緊密な空間ネットワークを形成することで、ガラスの誘電特性を向上させる。
また、Laイオンの大きな半径がガラスのネットワーク構造をより緻密とすることで、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の移動を抑制する。したがって、少量のLaB6を添加することでガラスの誘電特性を改良可能となるが、過剰に導入した場合にはガラスのネットワーク構造を破壊し、ガラスの誘電特性を悪化させる。そこで、本発明では、LaB6の適切な範囲を0.05%~1.0%とする。
【0019】
Li2OとK2Oは、ガラスの溶融及びガラス状態の形成に有用である。Li2Oイオンの半径とK2Oアルカリ金属イオンの半径は大きく相違しているため、適量のLi2OがK2Oとともに混合アルカリ効果を形成して、ガラスの誘電特性を著しく向上させうる。本発明では、Li2Oの適切な範囲を0.4%~6.0%とし、K2Oの適切な範囲を0.1%~1.5%とする。
【0020】
NaClを本発明における低誘電率ガラス粉末の清澄剤として選択することで、良好にガラスを清澄化するとの目的を達成可能となる。本発明では、NaClの適切な範囲を0.03%~0.3%とする。
【発明の効果】
【0021】
従来技術と比較して、本発明は以下の利点を有する。
1.原材料の成分がシンプルで、製造方法が簡単且つ実行しやすい。
2.製造されるガラス粉末は誘電率と誘電損失が低く、溶融成形温度が低いため、大規模工業生産にとって都合がよい。
3.ガラス粉末の溶融成形温度は1320℃~1360℃である。また、製造されるガラスは、周波数1MHzの場合の誘電率が3.8~4.1であり、誘電損失が4×10-4~10×10-4であり、封着温度が900℃~950℃である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施例のサンプルガラス粉末におけるテスト周波数に伴う誘電率の変化図である。
【
図2】
図2は、実施例のサンプルガラス粉末におけるテスト周波数に伴う誘電損失の変化図である。
【
図3】
図3は、実施例のサンプルガラス粉末の高温粘度-温度のグラフである。
【
図4】
図4は、実施例のサンプルガラス粉末の焼結画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、具体的実施例を組み合わせて、本発明につき詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を説明するためのものにすぎず、本発明の実施範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0024】
(1)混合材料の調合:上記の配合原料を質量部に従って計量し、各原料を混合機で充分均一に混合した。2時間混合することで、混合材料を調合した。
【0025】
(2)溶融:電気炉にるつぼを設置し、予め設定した溶融温度である1550℃まで段階的温度制御に従って上昇させ、材料を加えた。そして、180分間保温し、清澄なガラス液を取得した。
【0026】
(3)溶融したガラス液のうち少量を銅板金型に注入して成形し、サンプルを作製して関連する性能試験に用いた。残りについては、脱イオン冷水で水焼入れしたあと取り出し、乾燥させた。
【0027】
(4)乾燥させたガラスをボールミルに投入し、12時間ボールミリングした後、300メッシュのふるいにかけて、本発明における小型RFガラス絶縁体のための低誘電率封着用ガラス粉末を製造した。
【0028】
(5)精密インピーダンス・アナライザ、高温ガラス粘度計及び焼結イメージャをそれぞれ用いて、誘電率、誘電損失、溶融成形温度及び封着温度を明らかにした。封着温度は、焼結イメージャにおける円柱形のガラス粉末サンプルの半球温度で示した。
なお、角鈍化温度は、円柱形サンプルが熱を受けたあと、角部分になだらかな円弧形状が現れ始めたときに対応する温度であり、封着用ガラス粉末の使用下限温度である。半球温度とは、円柱形のガラスサンプルの高さが低下し、底部が拡大した場合に、サンプルが徐々に半球状となって安定的に存在するときの温度であり、封着用ガラス粉末の使用上限温度である。
【0029】
【国際調査報告】