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特表2024-516068光ファイバアダプタ付き口腔内光干渉断層撮影スキャナ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】光ファイバアダプタ付き口腔内光干渉断層撮影スキャナ
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20240405BHJP
   A61B 1/24 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61B1/00 526
A61B1/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555367
(86)(22)【出願日】2022-04-16
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 US2022025145
(87)【国際公開番号】W WO2022231877
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/180,706
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513097067
【氏名又は名称】デンタル・イメージング・テクノロジーズ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】タオ, シャオドン
(72)【発明者】
【氏名】マ, シユ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, ヴィクター, シー.
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA08
4C161BB08
4C161CC07
4C161FF40
4C161FF46
4C161MM10
4C161NN01
4C161QQ09
4C161RR01
4C161RR17
(57)【要約】
サンプルを画像化するための光干渉断層撮影スキャナは、一定の範囲の波長を有する走査光を生成するように構成された波長調節可能光源、走査ヘッド、及び走査ヘッドの間で光を伝送する1つ以上の光チャネルとを有する走査プローブを有する。各チャネルには、走査光をサンプルに伝送し、散乱及び後方反射光をサンプルから検出器に伝送するための光ファイバを含むサンプルアームと、波長調節可能光源からの基準光を伝送するための光ファイバを含む基準アームと、サンプルアームまたは基準アームの光路の距離を定める光ファイバまたはファイバシステムと、サンプルアームからの光と伝送された基準光との組み合わされた光に応じて出力信号を生成する検出器と、検出器出力信号に従ってデジタルデータを生成し、生成されたデジタルデータをコンピュータに通信するためのデジタイザとを有する。
【選択図】図11D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを画像化するための光干渉断層撮影スキャナであって、
a)一定の範囲の波長を有する走査光を生成するように構成された波長調節可能光源、
b)走査ヘッド、及び前記走査ヘッドの間で光を伝送する1つ以上の光チャネルを有する走査プローブであって、各チャネルが、
(i)前記走査光を前記サンプルに伝送し、散乱及び後方反射光を前記サンプルから検出器に伝送するための光ファイバを含むサンプルアームと、
(ii)前記波長調節可能光源からの基準光を伝送するための光ファイバを含む基準アームと、
(iii)前記サンプルアームまたは前記基準アームの光路の距離を定める光ファイバまたはファイバシステムと、
(iv)前記サンプルアームからの光と前記伝送された基準光との組み合わされた光に応じて出力信号を生成する検出器と、
を備える、走査プローブと、
c)前記検出器出力信号に従ってデジタルデータを生成し、前記生成されたデジタルデータを格納または表示のためにコンピュータに通信するために通電可能なデジタイザと、
を備える、光干渉断層撮影スキャナ。
【請求項2】
前記走査ヘッドが口腔内走査用に構成されている、請求項1に記載の光干渉断層撮影スキャナ。
【請求項3】
前記サンプルアーム、前記基準アーム、及び前記光ファイバまたはファイバシステムが、前記走査プローブ内部に収容される、請求項1に記載の光干渉断層撮影スキャナ。
【請求項4】
前記検出器がまた、前記走査プローブ内部に収容される、請求項3に記載の光干渉断層撮影スキャナ。
【請求項5】
前記波長調節可能光源が前記走査プローブ内部に収容される、請求項3に記載の光干渉断層撮影スキャナ。
【請求項6】
前記走査プローブは手持ち式プローブである、請求項1に記載の光干渉断層撮影スキャナ。
【請求項7】
光干渉断層撮影信号を取得する方法であって、
波長調節可能光源からの光を、
(i)前記光をサンプルに伝送し、前記サンプルから戻る散乱光及び後方反射光を検出器に伝送するように構成される光ファイバを含むサンプルアームと、
(ii)前記波長調節可能光源からの基準光を伝送するための光ファイバを含む基準アームと、
(iii)前記サンプルアームまたは前記基準アームの光路の距離を定めるファイバシステムと、
に方向付けるステップと、
前記サンプルアームからの戻り光と前記基準アームからの戻り光との間の干渉に従って信号を生成するステップと、
前記検出器出力信号に従ってデジタルデータを生成し、前記生成されたデジタルデータをコンピュータに通信するステップと、
前記生成されたデジタルデータに従って形成された光干渉断層撮影画像を格納または表示するステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記ファイバシステムが、前記基準アームの前記光路の距離を前記サンプルアームに対して一致させるために使用される1つ以上の予め製造されたファイバアダプタまたは調整可能なファイバアダプタを備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ファイバアダプタは、特定の光路の長さを有する光ファイバである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ファイバアダプタは、光ファイバセグメントが埋め込まれたフェルールを備える、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ファイバアダプタは、2つ以上のフェルールと、接続されたチューブまたはスリーブとを備える、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ファイバアダプタがファイバストレッチャを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
1つ以上の長さの前記光ファイバのうちの少なくとも1つは、光路の長さを調整するためにテーパ加工されている、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルが口腔内の特徴を含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して手持ち式の口腔内光干渉断層撮影(OCT)画像化に関し、より詳細には、手持ち式の口腔内OCT画像化システムのよりコンパクトな設計のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光干渉断層撮影(OCT)は、干渉原理を利用してサンプルの深さの構造を特徴付ける高解像度の断面断層撮影画像を取得する非侵襲的画像化技術である。OCTは特に人間の組織のインビボ画像化に適しており、眼科、皮膚科、腫瘍学、その他の分野、例えば、耳鼻咽喉科(ENT)、歯科画像化などの幅広い生物医学研究や医療用画像化用途でその有用性が示されている。
【0003】
OCTは、生体組織内からの反射エネルギーを画像化して断面データを取得する「光超音波」の一種として説明されている。OCT画像化システムでは、スーパールミネッセントダイオード(SLD)またはその他の光源などの広帯域光源からの光は、基準アームまたは既知の光路の長さの経路と、サンプルアームまたは研究中の組織または他の対象を照明する経路という2つの異なる光路に沿って方向付けられる。基準アームとサンプルアームからの反射光及び後方散乱光は、次いでOCT装置において再結合され、干渉効果を利用してサンプルの表面及び表面近傍の基礎構造の特性を判定する。干渉データは、サンプル全体でイルミネーションを素早く走査することで取得できる。OCT装置は、サンプルの表面に沿った数千の点のそれぞれで干渉プロファイルを取得する。このプロファイルは、主に光源の干渉の要素である材料の中に至る軸方向の深さに関するAスキャンを再構成するために使用できる。ほとんどの組織画像化の適用で、OCTは広帯域照明源を使用し、最大数ミリメートル(mm)の深さで画像コンテンツを提示できる。
【0004】
口腔内画像化の問題に適用されている様々な技術及びアプローチには重大な制限がある。カメラとスキャナのサイズとフォームファクターの制約、及び口腔内画像化環境の限られたスペース要件により、口腔内表面を正確に特徴付けることが困難になる。個々の表面特徴に正確に焦点を合わせること、適切な解像度と焦点で患者の歯列の広い領域の画像コンテンツを提供すること、及び診断目的に十分な照明を提供することが困難である場合がある。
【0005】
歯及び他の口腔内構造の正確な画像化は、流体の影響により損なわれる可能性がある。歯の上や周囲に溜まり得る水、唾液、血液、その他の液体は、OCTや反射画像化システムに困難を生じる可能性がある。一部の照明装置では、投影光の一部のみが歯の表面、サンプルSに当たる。同様に、歯の表面からの後方散乱光は、流体と空気の界面で再び屈折し、別の角度でカメラにとらえられる。投影ビーム及びとらえられた光ビームの戻り光線追跡は、画像化システム側にシフトする交点を位置特定し、画像の歪みを発生させる。
【0006】
寸法の不正確さに加えて、口内の液体からの反射が、高い反射水準により飽和した、画像における輝く斑点を生じる可能性がある。口腔内画像化で特に顕著であり得るさらにその他の問題は、狭いスペースの制約、曇り、血液/唾液/水による湿り、歯の半透明性、歯肉/頬/舌による高いレベルの光の吸収と散乱、及び患者の咽頭反射などを含む。このような理由で、口腔内画像化は、操作、環境、及び画質に関して、他の大半の生物医学画像化用途で遭遇する問題を越えた、考慮すべき難題を提起する。
【0007】
従来のOCTシステムは、干渉計のアーキテクチャを適応させ、これは通常、サンプリングアームと基準アームへの光及びそれらからの光を方向付けるための、1つ以上のファイバカプラ、ファイバサーキュレータ、レンズ、ミラーなどのファイバベース及びフリースペースの光学系と機械コンポーネントとの両方からなる。信頼性が高く正確な干渉信号を取得するには、サンプリングアームと基準アームの光路を正確に一致させる必要がある。調整可能な機械式基準アームは、最適な光路の長さを達成するためによく使用されている。しかし、この要件は、次のことを含むいくつかの固有の困難を呈する。
(i)走査装置のサイズ、重量、及びコストを増加させる。調整可能な機械式基準アームでは、多くの場合、複数の光学マウント、並進ステージ、キネマティックマウント、及び光学コンポーネントが使用される。ミラーまたはレンズ要素の汚染を防ぐために、光学システムは、特別に設計された筐体を頻繁に必要とし、システムのコスト、重量、体積をさらに追加し、臨床用または歯科用の椅子の設定との不良な適合をもたらす。
(ii)振動や機械的ドリフトに対する感度。基準アームは頻繁に、フリースペースのファイバカプラを含む多数のコンポーネントを含んでいるので、これは環境的な振動への感度が極めて高い場合がある。温度の変化によっても基準アームに機械的ドリフトが発生し、画質が損なわれる可能性がある。
(iii)メンテナンスとダウンタイムのコストが高い。高いファイバ結合効率を維持するには、毎年または毎月などの定期的な再調整が必要になることがよくある。この種の調整は専門家が行う必要があることが多く、メンテナンスのコストとダウンタイムのコストが増加する。
(iv)製造コストの増加。高いファイバ結合効率を実現するには、基準アームを調節するための特別な調節を実行する必要があり、最終的な組み立てと試験に必要な時間を延長させる。
(v)基準アームの挿入損失が高い。従来のフリースペース基準アームは、フリースペースのファイバカプラの結合効率が低いため、多くの場合、挿入損失が高くなる。
【0008】
これらの問題は、複数の走査チャネルを使用するOCT走査デバイスで一層複雑になる。サイズとコストを削減し、機械的ドリフトと感度の原因を排除するよう促す改良は、OCT画像化をより使いやすく、堅牢で、また手頃な価格にするために有益である。
【発明の概要】
【0009】
本開示の目的は、口腔内OCT画像化の技術を進歩させることである。本開示の実施形態は、特に、OCT干渉計コンポーネントの光路の長さを調整するための改善された方法の必要性に対処する。
【0010】
本願の別の目的は、関連する技術における少なくとも前述及び他の欠陥に全体的または部分的に対処することである。
【0011】
少なくとも本明細書に記載の利点を、全体的または部分的に提供することは、本願の関連する目的である。
【0012】
これらの目的は、例示的な例としてのみ示されており、そのような目的は、本願の1つ以上の実施形態の例であり得る。開示された方法によって本質的に達成される他の望ましい目的及び利点が当業者に生じるか、または明らかになり得る。本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0013】
本開示の一態様によれば、サンプルを画像化するための光干渉断層撮影スキャナが提供され、光干渉断層撮影スキャナは、
a)一定の範囲の波長を有する走査光を生成するように構成された波長調節可能光源、
b)走査ヘッド、及び走査ヘッドの間で光を伝送する1つ以上の光チャネルとを有する走査プローブであって、各チャネルが、
(i)走査光をサンプルに伝送し、散乱及び後方反射光をサンプルから検出器に伝送するための光ファイバを含むサンプルアームと、
(ii)波長調節可能光源からの基準光を伝送するための光ファイバを含む基準アームと、
(iii)サンプルアームまたは基準アームの光路の距離を定める光ファイバまたはファイバシステムと、
(iv)サンプルアームからの光と伝送された基準光との組み合わされた光に応じて出力信号を生成する検出器と、
を備える走査プローブ、及び
c)検出器出力信号に従ってデジタルデータを生成し、生成されたデジタルデータを格納または表示のためにコンピュータに通信するために通電可能なデジタイザ、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
上述したこと及び本発明の他の目的、特徴、及び利点は、付属の図面において図示されるように、以下の本開示の実施形態のより具体的な説明から明白となろう。
【0015】
図面の要素は、互いに関連して必ずしも原寸に比例していない。
【0016】
図1】本開示の実施形態による例示的な掃引源OCT(SS-OCT)装置を示す概略図である。
【0017】
図2A】Bスキャンを取得するための走査の動作の概略図を示す。
【0018】
図2B】Cスキャンを取得するためのOCT走査パターンを示す。
【0019】
図3A】複数のチャネルを有する本開示の高速口腔内OCTシステムを示す概略図である。
【0020】
図3B】各チャネルからの光をコリメートし、集束し、走査するコンポーネントを示す概略図である。
【0021】
図3C】画像化されたサンプルを見るための追加のカメラを備えたチャネルを示す概略図である。
【0022】
図4A】複数のチャネルから出力ビームを発するために一次元アレイを使用する装置の概略図を示す。
【0023】
図4B】複数のチャネルから出力ビームを発するために二次元アレイを使用する装置の概略図を示す。
【0024】
図5】異なる深さで複数のチャネルを走査するための装置を示す概略図である。
【0025】
図6】各サンプルアームに対して異なる光学的な長さを有する複数のチャネルを走査するための装置を示す概略図である。
【0026】
図7】関心領域を走査するためのファイバアレイ及び光スイッチングの使用を示す概略図である。
【0027】
図8A】ファイバ基準アームを有するOCTスキャナを示す概略図である。
【0028】
図8B】代替実施形態におけるファイバ基準アームを有するOCTスキャナを示す概略図である。
【0029】
図9】マルチチャネルシステムにおけるファイバアダプタの使用を示す概略図である。
【0030】
図10A】OCT画像化の基準アームを設けている光ファイバを示す。
【0031】
図10B】基準アームOPDを定めるためにファイバフェルールを使用する実施形態を示す。
【0032】
図10C】2つのフェルールを備えたスリーブ付き構成の使用を示している。
【0033】
図10D】OPDを調整するためのファイバのテーパ加工の方法を示す。
【0034】
図10E】コネクタまたはフェルールを使用しない実施形態のテーパ加工を示す。
【0035】
図10F】OPDを調整するためにファイバストレッチャを使用する実施形態を示す。
【0036】
図11A】プローブ及び外部レーザ、検出器、及びデジタイザを備えたOCTシステムを示す概略図である。
【0037】
図11B】検出器を収容するプローブ、及び外部レーザとデジタイザを備えたOCTシステムを示す概略図である。
【0038】
図11C】検出器及びデジタイザを収容し、外部レーザを有するプローブを備えたOCTシステムを示す概略図である。
【0039】
図11D】レーザ、検出器、及びデジタイザを収容するプローブを備えたOCTシステムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下は、例示的実施形態の詳細な説明であり、図面について参照がなされ、同一の参照符号はいくつかの図のそれぞれにおける構造の同一の要素を特定する。
【0041】
本開示の文脈で使用される場合、他に指定がなければ、「第1の」「第2の」などの用語は、いずれかの順序、連続性、または優先関係を意味する必要があるわけではなく、単純に、1つのステップ、要素、または要素の組を、別のものとより明確に区別するために使用される。
【0042】
一般的な用語「スキャナ」は、光学システムに関し、それは、通電可能で、表面のOCT画像化に使用される基準アームからの光との干渉を測定するために、サンプルアームを通して歯の表面に方向付けられ、サンプルアームにおいて戻される反射光及び散乱光として取得される広帯域近赤外(BNIR)光などの光の走査された光ビームを投影する。「スキャナ」という用語はまた、作動可能なMEMSミラーまたはミラーアレイなどの、作動可能なMEMS(微小電気機械システム)スキャナなどの走査光学素子を指すことができる。「ラスタースキャナ」という用語は、後でより詳細に説明するように、サンプルに沿って均一に間隔をあけた位置に向かって光を順次走査するハードウェアコンポーネントの組み合わせに関する。
【0043】
本開示の文脈において、「画像化範囲」という語句は、有効な距離(一般に、z軸またはAスキャン方向で考えられる)に関係し、それに対して、OCT測定が可能である。OCTビームは、画像化範囲全体にわたって焦点の内部にあると見なされる。画像の深度は画像化範囲に関係するが、サンプルの歯やその他の組織を通る信号の透過に関連する追加の要素もある。
【0044】
例として、図1の簡略化した概略図は、あるタイプのOCT装置、ここでは従来式の掃引源OCT(SS-OCT)装置100の構成要素を示し、レーザ、スーパールミネッセント発光ダイオード(LED)、スーパーコンティニューム光源、またはその他のタイプの広帯域光源であってよい、調節されたレーザ源50の一部である波長フィルタ10によって備えられる波長調節可能光源を備えたマッハツェンダ干渉計(MZI)システムを使用している。例えば、口腔内OCTの場合、レーザ50は、約400~1600nmの波長に対応する周波数の範囲(波数kで表される)にわたって調節可能であり得る。本開示の実施形態によれば、約1300nmを中心とする約60nmの帯域幅の調節可能な範囲が、口腔内OCTに使用される。
【0045】
図1のデバイスにおいて、可変調節レーザ50の出力は、カプラ38を通ってサンプルアーム40及び基準アーム42に進む。サンプルアーム40の信号はサーキュレータ44を通過し、ハンドピースまたはプローブ46からのサンプルSの画像化のために方向付けられる。サンプリングされた信号は、サーキュレータ44を介して戻され、カプラ58を介して検出器60に方向付けられる。基準アーム42の信号は、ミラーまたは光ガイドであり得る基準34によって、カプラ58を介して検出器60に方向付けられる。検出器60は、コモンモードノイズをキャンセルするように構成されたバランス型光検出器のペアを使用してもよい。
【0046】
制御ロジックプロセッサ(制御処理ユニットCPU)70は、調節されたレーザ50及びそのプログラマブルフィルタ10、ならびに検出器60と信号で通信する。プロセッサ70は、プローブ46の走査機能を制御し、走査信号に対する線形応答を得るためにいずれかの必要な較正データを格納することができる。プロセッサ70は、検出器60からの出力を取得して処理する。CPU70はまた、コマンド入力及びOCTの結果の表示のためにディスプレイ72と信号で通信する。
【0047】
図1の掃引ソースアーキテクチャは、構成の一例にすぎず、干渉計のコンポーネントが掃引光源OCTの画像化をもたらすために配置できる方法は数多くあることに留意されたい。
【0048】
OCTシステムにおいてより高い画像取得速度を得るために提案された戦略の中には、単に高掃引速度の波長可変光源を使用することがある。ただし、背景のセクションですでに注目したように、問題はさらに複雑であり、より高速な掃引速度で動作させようとするとコストが増加し、診断上の利点とOCTの画像コンテンツの全体的な質に関して失望させる結果が生じる可能性がある。
【0049】
さらなる背景として、図2A及び2Bは、プローブ46によって実行されるOCT走査パターンの概要を示す。走査シーケンスの各ポイントで、OCTデバイスはAスキャンを実行する。その後、Aスキャンが線形に連続すると、Bスキャンを形成し、それは、図示するように、x軸方向に対応する。次いで、行で並んで連続するBスキャンが、Cスキャンを形成し、サンプルSの3DのOCT画像コンテンツを提供する。
【0050】
図2Aは、各Aスキャンの間に取得された情報を概略的に示す。図示している例では、各Bスキャン画像を取得するための走査信号には2つの直線のセクションがあり、走査ミラーがサンプリングビームを開始位置から終了位置まで方向付けるように駆動される走査部分92と、走査ミラーがその開始位置に戻る逆走査93がある。DC信号のコンテンツが除去されて示されている干渉信号88は、各点82の時間間隔にわたって取得され、信号は掃引に必要な時間間隔の関数であり、取得される信号は、干渉計(図1)の基準アームとフィードバックサンプルアームからの光を結合することによって生成されるスペクトル干渉縞を示す。フーリエ変換FFTは、Aスキャンのたびに変換Tを生成する。Aスキャンに対応する1つの変換信号が図2Aに例として示されている。
【0051】
上記の説明から、かなりの量のデータが1回のBスキャンシーケンスで収集されることが理解できる。このデータを効率的に処理するために、高速フーリエ変換(FFT)が使用され、時間ベースの信号データを、画像コンテンツをより容易に生成できる対応する周波数ベースのデータに変換する。
【0052】
フーリエドメインOCTでは、Aスキャンは深さ(z軸)分解のOCT信号のラインを生成するスペクトルの取得の1本のラインに対応する。Bスキャンデータは、対応する走査線に沿って2DのOCT画像を生成する。
【0053】
ラスター走査は、ラスタースキャナ90の取得をCスキャン(y軸)方向に増分することによって複数のBスキャンデータを取得するために使用される。このことは図2Bに概略的に示されており、これは、3Dのボリュームの情報がA、B、及びCスキャンのデータを使用してどのように生成されるかを示している。
【0054】
各Aスキャン点82で使用される波長または周波数掃引シーケンスは、通常使用される昇順または降順の波長シーケンスから修正することができる。任意の波長シーケンスを交互に使用できる。OCTのいくつかの特定の実施態様で有用であり得る任意の波長シーケンスの場合、利用可能な波長の一部のみが各掃引の結果として与えられる。任意の波長シーケンスでは、各波長を任意の連続する順序でランダムに選択して、単一の掃引の間にOCTシステムで使用することができる。Aスキャン点82は、x軸に関して互いに均一な間隔を置くことができ、任意のBスキャン画像に沿った隣接点82間のx軸の距離を実質的に等しいものにする。同様に、各Bスキャンの走査点82のライン間の距離は、y軸に関して均一であり得る。x軸の間隔はy軸の間隔と異なる場合がある。あるいは、走査面のこれらの直交軸に沿った間隔は等しくてもよい。
【0055】
従来のOCTアプローチの場合、画像取得速度は、掃引速度とデジタイザの能力の要素に関連する。掃引速度が速くなると、順次、Aスキャン周波数が向上し得るが、その代償としてノイズが高くなる。より高い取得速度では高速デジタル化コンポーネントも必要となり、必要なパフォーマンスを得るためのコンポーネントのコストが大幅に増加する。したがって、走査速度と全体的なOCTパフォーマンスには何らかの実際的な制限があり、チェアサイドでの診断と治療でのOCTの使用が制限される可能性がある。
【0056】
図3Aに概略的に示されている本開示の実施形態は、歯科用OCT走査及びデータ取得に対するマルチチャネルアプローチを使用することにより、画像取得速度の問題及び画像化範囲の拡大の必要性に対処する。図3Aの概略図を参照すると、共通の走査ヘッドを共有する複数を有する本開示の高速口腔内OCTシステム150の例が示されている。走査速度の量を増加させるために、チャネル数Nは、2、3、または4とすることができ、例えば図3Aに示す走査ヘッド120に至る4つのチャネル20a、20b、20c、及び20dがある。さらに、本明細書で4つのチャネルについて説明した全体のパターンに従って、5つ以上のチャネルを使用することもできる。プローブ46の内部のスキャナ90は、複数のチャネルにおける波長掃引レーザ源50から発生する光を、歯または他のサンプルSに方向付ける。
【0057】
図3Aに示されるように、ファイバカプラ27は、レーザ光のごく一部をマッハツェンダ干渉計MZI28に分割する。MZIからの干渉光は、光検出器及び追加の回路30によって収集され、Kクロック(Kトリガー)信号を発し、それは時間的に定義された等しい波数間隔を有するタイミング制御トリガーである。これらの信号の間隔が等しいとすると、KクロックタイミングでサンプリングされたOCT信号は波数空間で線形になる。あるいは、MZI28からの干渉信号を使用して、OCT信号を線形波数空間にリサンプリングすることもできる。(クロスなしのマッハツェンダ干渉(MZI)信号を使用してKトリガー信号を生成し、SS-OCT信号の取得を促すことができる。)掃引光源レーザ50の光出力の大部分はPLC(平面光波回路)スプリッタなどのスプリッタ32を介したOCT画像化のためのマルチチャネルシステムに供給される。各チャネルで、光はサーキュレータ44と、基準アーム42及びサンプルアーム40(図1)に光を分割する90/10ファイバカプラ38とを有する光ファイバ干渉計を照射する。システムには、偏光感応型光干渉断層撮影を提供するために、追加の検出器と光学コンポーネントを任意選択で含めることができる。各チャネルは、光をプローブ46を通して走査ヘッド120に方向付ける。
【0058】
図3Bは、4つのチャネル20a、20b、20c、及び20dのそれぞれから光をコリメートし、焦点を合わせ、走査するプローブ46のコンポーネントを示す。図3Bの概略図に示されるように、マルチチャネルサンプリングアームはスキャナハンドピース、プローブ46の内部のファイバアレイ54に接続されており、それは口腔内または口腔外の画像化に使用することができる。可変の波長の光の接続は、リボンファイバ(図示せず)を介して行うことができる。ファイバアレイ54は、光ファイバコアを所望のピッチで正確に整列させる。ファイバアレイからの光は、コリメーションレンズL1を通過し、MEMS(微小電気機械システム)スキャナ52に至る。次に、走査された光は、図3Bに示すように集束レンズL2を通過する。この集束された光は、第1のフォールディングミラー(folding mirror)面56及び第2のフォールディングミラー面86から反射し、サンプルSに方向付けられる。複数のスポットがサンプルSの表面に所望の間隔で集束される。各スポットは、複数のチャネル20a、20b、20c、及び20dのうちの1つからのものである。
【0059】
図3Cの概略図に示されるように、プローブ46は、例えば、色の情報を取得するため、またはプローブの移動を支援するためのカメラ62などの他の構成要素を任意に含むことができる。カメラ62が使用される場合、表面56は、OCT走査に使用されるIR光を反射し、可視光をカメラ62に透過させるように処理された二色性表面であってもよい。あるいは、カメラを光軸OAに対して斜めの角度で設けることもできる。例として、第2のカメラまたは唯一のカメラであり得るカメラ62‘の代替的な位置が図4に示されている。
【0060】
プローブ46内部のファイバアレイ54は、多数の異なる構成を有することができる。図4Aは、各チャネル20a、20b、20c、及び20dから出力ビームを同時に発する一次元(1D)アレイとして一列に配置されたファイバアレイ54を示す。1Dアレイ構成を使用して、走査されたビームをターゲットサンプルSに整列された複数のスポットに方向付けることができる。この方法でのN個の照明ビームの走査を使用して、図4Aの4チャネルの例におけるサブ画像76a、76b、76c、及び76dとして示されるN個の隣接するサブ画像を生成することができる。次に、処理ソフトウェアを使用して、走査線に沿って存在するN個の隣接する画像をつなぎ合わせることができる。
【0061】
図4Aの構成を使用して一次元光学アレイで走査する場合、視野(FOV)がいくつかのストリップに分割される。チャネルからの各集束スポットは、FOVの小さなサブ領域のみを走査する。サンプルにおけるそれぞれの集束スポットからの反射光が、プローブ46の光学系によって収集され、各チャネルのサンプリングアームに導かれる。サンプルアーム40及び基準アーム42(図1)からの光ビームは、50/50カプラ58を介して検出アームで再結合される。形成された干渉縞は、バランス型光検出器または検出器60の他の機構によって検出される。バランス型光検出器60からのアナログ信号は、データ獲得カードによってデジタル化することができる。各チャネルからの画像のボリュームは、OCT再構成アルゴリズムを使用して生成できる。最後に、完全な走査画像ボリュームの再構成は、異なるサブ画像ボリュームをつなぎ合わせることによって形成できる。
【0062】
図4Bは、FOVを走査するために2×2のファイバアレイ54を使用する代替的な構成を示す。この構成により、つなぎ合わせ用の画像のアレイとしてサブ画像コンテンツが生成される。
【0063】
各チャネルが視野の一部のみを走査するため、マルチチャネルシステムは、単一チャネルシステムと比較してはるかに速い速度を達成することができる。N個の複数のチャネルを使用して同時に走査すると、従来の単一チャネル構成に必要な時間の1/Nの割合の時間で完全なFOVを走査できる。
【0064】
光源レーザ出力はNチャネル間で分割されるため、マルチチャネルOCT画像化機能を提供するには、レーザ出力のある程度の増加が必要である。本開示の実施形態によれば、40mWのレーザが4つのチャネルを駆動するために使用され、出力パワーは細分されて各チャネルに10mWを供給する。
【0065】
一般に、同じ走査速度を達成するために、Nチャネルシステムの掃引レーザ源は、単一チャネルのシステムで使用される掃引速度の1/Nしか必要としない。適宜掃引速度を下げると、データ取得カードのデジタル化速度の要件が低下し、システムのコストを大幅に削減できる。
【0066】
同じ画像化範囲を達成するには、OCT信号の周波数fOCTは、単一チャネルシステムで使用される周波数よりもマルチチャネルシステムにおいてはるかに低くなり得る。fOCTは次のように表現できる。
式中、Δλはレーザスペクトルの帯域幅であり、
λは中心波長であり、
Zは画像化範囲であり、
αはレーザのデューティサイクルであり、
は掃引レーザ源の周波数である。
【0067】
Nチャネルシステムでは、OCT信号の周波数は単一チャネルシステムで使用される周波数のわずか1/Nであるため、デジタイザはより低いサンプリングレートで動作することができる。したがって、Nチャネル設計により、コストとシステムのノイズの両方を削減できる。あるいは、単一のスキャナOCTプローブに使用されているものと同じ高速デジタイザをNチャネルシステムで使用すると、画像化範囲の最大N倍、パフォーマンスを向上させることができる。
【0068】
可変の範囲の走査
マルチチャネルシステムはまた、サンプリングレートに影響を与えることなくスキャナの有効画像化範囲を拡張する能力も有する。基準アームまたはサンプリングアームに追加の光路差(OPD)を導入することで、図5に概略的に示すように、各チャネルからのビームはターゲットの異なる範囲を走査することができる。Nチャネルシステムを使用すると、範囲をN倍拡張できる。ただし、各チャネルが視野全体を走査する必要があるため、この構成では他の構成よりも走査速度が低下する場合がある。
【0069】
Nチャネルを同時に走査し、画像処理を使用して個々のチャネルの画像コンテンツをつなぎ合わせることにより、本開示の実施形態は、対応する画像コンテンツを並行して処理し、所与のサンプル領域及び所望の走査範囲にわたるOCT画像化に必要な全体の走査時間を大幅に短縮することができる。
【0070】
各チャネルが異なる範囲で走査する、同時のマルチチャネル走査は、OCTスキャナから利用できる画像範囲全体を効果的に拡張する。図5の走査構成は、本開示の実施形態に従って、チャネル内部の可変の範囲がチャネル用の干渉法サブシステムの内部でどのように達成され得るかを概略的に示す。各チャネルの基準アームまたは経路42及びサンプルアームまたは経路40(図1)の相対的な光路の長さをそれぞれ変えることによって、個々のチャネルごとにz方向の走査範囲を変更することができる。
【0071】
各チャネルの干渉法システムの内部では、基準アーム42は通常、ある種のミラーまたは他の反射面を含む。光が反射面に向かう及びそれから戻る距離、つまり基準アームの光路の遅延は、サンプリングされた材料内部の特定の範囲に直接関係する。したがって、反射または後方散乱材料と干渉法結合コンポーネントの間の光学距離を調整することで、サンプル内の可変の深さからの戻り光が検出信号に寄与する。
【0072】
図5には示されていない異なる範囲で走査するための代替アプローチは、各チャネルのサンプリングアームの光路の遅延を変更する。
【0073】
光路の遅延を変更する方法には、光路に沿った2点間に光ファイバの長さを追加すること、光ストレッチャを追加すること、またはファイバコリメータと可動反射器またはファイバストレッチャを使用して可変ファイバ遅延線を追加すること、またはライトガイドもしくは、より高いまたはより低い屈折率の他の透過特徴を光路に追加することが含まれ得る。
【0074】
光スイッチングの追加
図6は、各チャネルに光スイッチを追加することにより、画像化の範囲を拡張し、様々な走査パターンを取得する柔軟な方法を示しており、光スイッチは、異なる光路の長さの交互の光路を選択する。例として、2つのチャネル20a及び20bに対する2つの光スイッチ66a及び66bが示されている。Nチャネル構成の追加チャネルも、同じパターンに従って切り替えることができる。また、異なる切り替えパターンを使用して、本開示の実施形態による掃引走査レーザ信号を使用して異なるエリア及び異なる範囲を同時に走査できることにも留意できる。したがって、図6に概略的に示される4チャネル構成では、各チャネルは、そのターゲットサンプル領域上の第1の範囲を走査するように切り替えることができる。次に、切り替え構成を変更して、サンプルの対応する領域上の第2の範囲を走査することができる。各チャネルに複数のスイッチの位置が設けられるため、任意の1つ以上のチャネル、また結果として複数の走査範囲に対する複数の光路の遅延が可能になる。このシーケンスにより、モーションのアーティファクトを最小限に抑えながら、広く適応性のある画像化の範囲を実現できる。
【0075】
図6に示されるように、複数の走査チャネルを備えたスイッチング遅延構成を使用することにより、OCT走査装置が、走査速度を犠牲にすることなく画像化範囲を拡張し適応させることができることが容易に分かる。可変の範囲の走査の実施態様をまた使用して、歯やその他の口腔内特徴の形状や輪郭特性の突然の変化など、表面輪郭の変化する物に対応することもできる。高速スイッチャは、2つ以上の走査ボリューム間の範囲の設定を簡単に変更でき、リアルタイムの範囲の適応機能を提供する。
【0076】
ROI走査
マルチチャネルOCTシステムはまた、適応的関心領域(ROI)走査のオプションを提供することもできる。図7は、そのようなROI走査のための構成を示しており、マトリックス光スイッチ68及び2Dファイバアレイ54がスキャナシステムと一体化されている。マトリックススイッチ68の機能を使用して、複数のチャネルからの入射光がFOVの複数のサブ領域に再分配される。結合されたサブ領域は、視野内部の関心領域(ROI)を定める。この構成により、光を効果的に利用して、関心のある特定の特徴を高速で画像化することができる。走査された領域を選択的に成形する機能により、復元と保管のため取得されるデータの量を大幅に削減できる。
【0077】
さらに、図5及び図6に関して前述したように、ROIの選択性を調整可能な範囲の走査と組み合わせることによって、本開示の実施形態は、多大な計算リソース及び時間を必要とせずに、口腔内表面が走査されるときに高精度のOCT画像化結果を得るのを補助することができる。
【0078】
背景のセクションで前述したように、コスト、設置面積、複雑さ、基準アームの調整及び調節の信頼性、基準アームの高い挿入損失の問題に対処するために、本開示の実施形態は、代替の全ファイバ構成を設ける。全ファイバ構成では、光ファイバの内部で伝送される光のみによって基準光路の距離が定められる。従来の干渉法設計とは対照的に、ミラーまたはその他の基準反射面は必要なく、光ファイバによって定められる光路の距離は、基準信号を設けるよう機能する。サイズ、重量、コスト、及び複雑さに関する利点に加えて、出願人のアプローチは、安定性の向上、チャネルドリフトの低減、及び単一チャネルの実施形態だけでなくマルチチャネルでのOCTスキャナ画像取得での画質の向上にも役立ち得る。
【0079】
出願人のアプローチは、必要な光路の距離に合わせて構成された光ファイバを使用することにより、基準アームの調節プロセスを簡素化し、使用されてきた従来の機械的調整デバイスの代わりに光ファイバを代用する。適切に結合された光ファイバを使用することは、光路の長さに応じて選択及び最適化された、既製のファイバアダプタのセットの1つを使用することで可能になる。
【0080】
図8Aは、実施形態による単一チャネルのOCTスキャナ20の構成要素を示す。光ファイバの長さの明細は、既知の距離dに及び、平面ミラーまたは他の高反射性の平面基準面であるサンプル106へと方向付けられたプローブ46による、同じチャネルに亘る較正構成を使用して設けることができる。図8Aの概略図を参照すると、OCTチャネル20は、レーザ源50からの光をサンプリングアーム40及び基準アーム42に向けるスプリッタ101を有する。サーキュレータ44は光をハンドピース、プローブ46に向け、それはサンプルからの散乱光を収集し、示しているように、基準アーム42からの光と干渉し、バランス型検出器117で感知するために、スプリッタ102を通して集めた光を方向付ける。基準アーム42は、ゼロの光路の長さの差(OPD)を達成するために、基準アーム42とサンプルアーム40との間の光路の距離が一致するように構成されたファイバアダプタ160を含む。ファイバアダプタ160は、正確なOPDを設けるために選択された光ファイバの長さを有する。実際には、既製のファイバアダプタ160の標準的なセットを設けることができ、試験担当者が1つまたは複数のファイバの長さのそれぞれを測定及び試験できるようにして、特定の走査デバイスに取り付けるための最良の候補を識別できるようにする。あるいは、特定の長さのファイバを切断することもできる。図8Aに示される実施形態では、基準アーム42及びサンプルアーム40からなるファイバ干渉計は、ハンドピース46の外部にある。焦点深度の開始、またはゼロ(0)の面は、図示するようにハンドピースの出力にある。
【0081】
本開示の実施形態によれば、完全な基準アーム42及びサンプルアーム40をハンドピース46の内部にパッケージングすることができるか、あるいは、後でより詳細に説明するように、OCTチャネル20の重要な部分をハンドピース46の内部に収容することもできる。
【0082】
光ファイバを特定の長さに切断すると、光路の距離の一種の「大まかな」調整を行うことができる。次に、本開示の実施形態は、ファイバアダプタ160の一部としてOPDに対する追加の微調節の調整を行うことができる。
【0083】
さらに図8Aに示されるように、ファイバアダプタ160は、嵌合基準アームコネクタ105との接続を保護するためのスリーブ103を備えた1つまたは複数の光コネクタ104を有する。
【0084】
各チャネルのファイバアダプタ160を指定し、製造/最終組立体の一部として試験することができる。実施形態によれば、既知の屈折率の既製のファイバアダプタ160がチャネルの基準アーム42に取り付けられる。その時、平面ミラーなどのテストターゲットを、ハンドピースから指定された距離で走査できる。OCT信号でのミラー応答の位置を測定することにより、適切に較正されたシステムを使用して光路の長さの情報を取得できる。光ファイバの屈折率の情報があれば、必要な調整量を計算できる。次いで、取得された光路の長さの情報を使用して、必要な調整量を計算できる。光路の長さを一致させるための増分の調整は、ファイバアダプタ160の調整ネジまたはその他の特徴を使用して行うことができる。計算されたOPDに基づいて調整することで、所望のOPDを実現できる。あるいは、調整は、OCT信号をリアルタイムで監視しながら、手動または自動で実行することができる。
【0085】
OCT信号または他の干渉法信号を分析して、サンプルアームと基準アームとの間のOPDを決定し、最適な基準距離を計算できるようにすることができる。次に、適切な光路の長さを設けるために、取り付けられたファイバアダプタ160を、必要に応じて調整することができる。あるいは、わずかに長いまたは短い長さの調整されたアダプタ160を、基準アームに必要な光路の長さを設けるために、製造、設置、試験、及び調整することができる。結果が許容範囲になるまで、試験と調整を繰り返すことができる。
【0086】
基準アームに加えて、複数のファイバアダプタを採用した図8Bの例に示すように、ファイバアダプタ160をOCTシステムの他の部分で使用することができる。例えば、ファイバアダプタ160はサンプルアーム40でも使用することができる。実際には、ファイバアダプタ160は、図示された場所の少なくとも1つまたは組み合わせに存在することができる。
【0087】
図9の概略図は、マルチチャネルOCTスキャナ52と共に各チャネル20a、20b、20c、20dに1つずつファイバアダプタ160を使用することを示している。このマルチチャネルの実施形態では、各チャネルの干渉計コンポーネントはプローブ46の外部にあるように示されている。好ましくは、光ファイバコンポーネントはプローブ46の内部に収容される。
【0088】
図10A~10Fは、基準アーム42またはサンプルアーム40に正しい光路の長さを設けるのを補助できるファイバアダプタ160を設ける複数のファイバアダプタ構成及びテクニックを示す。図10Aは、基準アーム42及びサンプルアーム40の光路の長さと一致する適切な長さの光ファイバ202のセグメントを備えた光ファイバ組立体200を示す。コネクタ210は、このファイバセグメントをシステムの残りの部分に組み込むために、組立体200の各端部で使用される。実際には、ファイバセグメント202の長さを正確にサイジングすることは困難である。ただし、スキャナの製造の際に、同様の長さの多数の光ファイバセグメント202を構成し、特定のスキャナに「最もよく適合する」1つの一致を見つけることが可能である。
【0089】
図10Bは、より短い光路の長さの寸法により適している、図10Aに示される実施形態よりも正確であり得る実施形態を示す。ファイバフェルール220は、ファイバ-フェルール組立体の端部を研磨することで得られる、数ミクロン以内精度の光路の長さを設ける埋め込み光ファイバセグメント222を有する。ハイブリッドファイバアダプタ160は、図10Aの光ファイバセグメント202と図10Bのフェルール220の組み合わせを使用して形成することができる。
【0090】
図10Cは、それぞれ光ファイバセグメント234が埋め込まれた2つのより小さいフェルール232を有する光ファイバ組立体230を示す。2つのフェルール232は、チューブまたはスリーブ236の内部に接続されている。製造中、フェルール232はまず、両方のフェルールに挿入された光ファイバセグメント234が光路の長さと一致できるように、適切な間隔でスリーブ236に固定される。必要に応じて、組立体230の全長は、フェルール232間の距離と光ファイバ234の長さを変更することによって、または必要な光路の長さを達成するために組立体230の端部を研磨することによって、調整することができる。
【0091】
図10Dは、光路の長さを少しずつ長くするためにテーパをどのように使用できるかを示している。テーパ加工のプロセスでは、ファイバセグメント202の端部がクランプされ、ファイバはピンと張った状態に保たれる。次に、中央部分が加熱されている間に、クランプされた端部をゆっくりと引き離して、ファイバの長さを延長することができる。ファイバのテーパ加工は、ファイバアダプタ160の有無にかかわらず、サンプリングアーム40または基準アーム42の任意のファイバセグメントで実行可能である。OCT信号は、OPDを変更するストレッチプロセスの微調節を補助するために、テーパ加工プロセス中、リアルタイムで監視できる。
【0092】
図10Eは、フェルールまたはコネクタなしで、ファイバセグメント202自体を伸ばすためにテーパ加工をするためのツールの使用を示す。あるいは、図10Fに示すように、任意のファイバセグメントを機械的ファイバストレッチャによって伸長することもできる。
【0093】
図11A、11B、11C、及び11Dは、ファイバ干渉法システム400を含むプローブ46の異なる構成を示す。図示の各実施形態では、従来の応用よりも少ない光学コンポーネント及び短いファイバの長さを有する、コンパクトなファイバ干渉法システム400は、ハンドピース、プローブ46の内部に完全に収納できる。コンパクトなファイバ干渉法システム400は、単一チャネルOCTスキャナ用の単一の干渉計、または、図9に示すようにマルチチャネルOCTスキャナ用の複数の干渉計からなることができる。プローブの内側または外側に設置された補助のマッハツェンダ干渉計(MZI)(図示せず)を使用して、kクロック信号を発生できるか、または数値的なk空間リサンプリングの基準信号として使用し得る。MZIまたはファイバ干渉法システム400は、平面光波回路(PLC)に統合することができ、それによってサイズをさらに縮小することができる。
【0094】
図11Aにて、掃引源レーザ50の入力は、ハンドピースプローブ46の外部で生成され、光ケーブル404を介してプローブ46に伝達される。サンプリングアームの出力は、ファイバコリメータ406に伝送される。コリメートされた出力光は、次いでスキャナ410に送られ、集束レンズ412を通って、走査ビームを歯または他のサンプルSに方向転換するフォールディングミラー414に送られる。サンプルSから戻った散乱光は、サンプリング光として干渉法システム400に伝えられる。出力信号は、ケーブル418を介してバランス型検出器420に導かれる。その後、検出器420の結果が、デジタイザ830と、再構成及び表示のためにコンピュータPCに送られる。
【0095】
図11Bは、よりコンパクトなOCTシステムを示しており、プローブ46はバランス型検出器420も収容している。マルチチャネルOCTスキャナシステムの場合、バランス型検出器420はバランス型検出器のアレイからなり、各々は各干渉計からの出力信号を受信する。検出器420と外部デジタイザ430の間の通信は、有線、図示のケーブル418経由、または無線であり得る。画質は、ファイバの曲がり、振動、伸び、その他の取り扱いによって影響を受けない。したがって、図11Bの設計を使用して、バランス型検出器420及びファイバシステム400がプローブ46内部にパッケージされているため、ハンドピースに接続されるケーブルの数が光学エンジンのサイズと共に減少する。
【0096】
図11Cは、プローブ46内部に収容されたデジタイザ430を備えた実施形態を示す。プローブ46と外部PCとの間の通信は、有線でも無線でもよい。
【0097】
図11Dは、信号の取得及び処理のための他の構成要素と共に、デジタイザ430及びレーザ50の両方がプローブ46内に収容された実施形態を示す。プローブ46と外部PCとの間の通信は、有線でも無線でもよい。
【0098】
図11A~11Dに示される一連の設計は、ハンドピースに必要なケーブルの数を減らすのを補助でき、光学エンジンの全体のサイズをさらに縮小してシステムの安定性を向上させることができることが観察できる。
【0099】
現在理解されている例示的な実施形態を特に参照して本発明を詳細に説明したが、変形及び変更が、本開示の精神及び範囲で作用され得ることが理解されるであろう。
【0100】
例えば、制御論理プロセッサ70は、コンピュータまたはコンピュータワークステーション、専用ホストプロセッサ、マイクロプロセッサ、論理アレイ、または格納されたプログラム論理命令を実行する他のデバイスを含む、多くの種類の論理処理デバイスのいずれかであってもよい。マッハツェンダ干渉計の一種として上に挙げた例示的な構成に記載されている1つまたは複数のチャネルに使用される干渉計は、代わりに、コンポーネントを適切に再配置することで、例えばマイケルソン干渉計などの別の適切なタイプとすることもできる。
【0101】
したがって、本開示の例示的実施形態は、あらゆる点で説明するものであり、限定するものと見なされるものではない。開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、その均等物の意味及び範囲にあるすべての変更は、特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【0102】
少なくとも1つの例示的実施形態と一貫して、例示的な方法/装置は、電子メモリからアクセスされた画像データで実施する格納された命令でコンピュータプログラムを使用できる。画像処理技術の当業者が分かるように、本明細書の例示的な実施形態のコンピュータプログラムは、パーソナルコンピュータまたはワークステーションなどの適切な汎用コンピュータシステムによって利用することができる。しかしながら、1つまたは複数のネットワークプロセッサなどの構成を含む、多くの他の種類のコンピュータシステムを、例示的実施形態に記載されたコンピュータプログラムを実行するために用いることができる。
【0103】
本明細書に記載される特定の例示的な実施形態の方法を実行するためのコンピュータプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体に記憶され得る。この媒体は、例えば、ハードドライブやリムーバブルデバイスなどの磁気ディスク、あるいは磁気テープなどの磁気記憶媒体、光ディスク、光テープ、または機械読み取り可能な光エンコーディングなどの光記憶メディア、ランダムアクセスメモリ(RAM)や読み取り専用メモリ(ROM)などのソリッドステート電子記憶装置、またはコンピュータプログラムを保存するために使用される他のいずれかの物理デバイスまたは媒体を含み得る。説明される実施形態の例示的な方法を実行するためのコンピュータプログラムはまた、インターネットまたはその他のネットワークまたは通信媒体により画像プロセッサに接続されるコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよい。当業者はさらに、かかるコンピュータプログラム製品の同等物がまたハードウェアに構成され得ることを容易に認識するであろう。
【0104】
用語「メモリ」は、本願の文脈では「コンピュータアクセス可能メモリ」と同等であり、画像データの保存と操作に使用され、データベースなどを含むコンピュータシステムにアクセスできる任意のタイプの一時的またはより持続的なデータストレージワークスペースを指すことができることに留意されたい。メモリは、例えば、磁気または光学式ストレージなどの長期記憶媒体を用いた不揮発性であることができる。代替的に、メモリは、マイクロプロセッサまたは他の制御論理プロセッサデバイスによって一時的なバッファまたは作業空間として用いられるランダムアクセスメモリ(RAM)などの電子回路を用いて、より揮発性の性質であることができる。表示データは、例えば、表示デバイスに直接関連付けられ得る一時的記憶バッファに典型的に格納され、表示されたデータを提供するために必要に応じて定期的に再読み込みされる。この一時的な記憶バッファもまた、この用語が本願において使用される際、メモリと考えられることができる。メモリはまた、計算及び他の処理の中間及び最終結果を実行するまたは格納するためのデータ作業空間として用いることもできる。コンピュータアクセス可能メモリは、揮発性、不揮発性、または揮発性と不揮発性のハイブリッドな組み合わせであることができる。
【0105】
例えば、本明細書の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品は、周知の様々な画像操作アルゴリズム及び/またはプロセスを利用してもよいことが理解されよう。さらに、本明細書の例示的なコンピュータプログラム製品の実施形態は、実装に有用な、本明細書に具体的に図示または説明されていないアルゴリズム及び/またはプロセスを具体化し得ることが理解されるであろう。このようなアルゴリズムとプロセスには、画像処理技術の通常の技術の範囲にある従来のユーティリティが含まれ得る。かかるアルゴリズム及びシステム、及び画像の製作及び別様の処理のための、または本願のコンピュータプログラム製品と協調するためのハードウェア及び/またはソフトウェアの追加的な態様は、本願において具体的に示されたり説明されたりしておらず、当技術分野で周知のアルゴリズム、システム、ハードウェア、コンポーネント、及び要素から選択され得る。
【0106】
本願による例示的な実施形態は、本明細書に記載される様々な特徴を(個別に、または組み合わせて)含むことができる。
【0107】
本願は、1つ以上の実施態様に関して説明してきたが、添付の特許請求の範囲及び趣旨から逸脱することなく、変更及び/または修正を示された実施例に加えることができる。さらに、本発明の特定の特徴は、いくつかの実施態様/例示的な実施形態のうちのただ1つに関して開示され得るが、任意のまたは特定の機能について望ましいまたは有利な特徴は、他の実施態様/例示的な実施形態のうちの1つ以上の他の特徴と組み合わせられ得る。
【0108】
「1つの(「a」)」または「少なくとも1つの」という用語は、選択され得る記載される項目のうちの1つ以上を意味するように用いられる。「約」という用語は、変更が示されている例示的実施形態のプロセスまたは構造の不適合をもたらさない限り、記載されている値は、多少変更することができることを示す。
【0109】
本発明の他の実施形態は、本明細書の考慮及び本明細書に開示される実践から、当業者に明らかとなろう。本明細書及び実施例は、例示的なものにすぎないと見なされることが意図され、本発明の真の範囲及び精神は、次の特許請求の範囲によって示される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11A
図11B
図11C
図11D
【国際調査報告】