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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】タンパク質及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240405BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240405BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240405BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240405BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240405BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240405BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240405BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240405BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
A61P19/02
A61P1/04
A61P11/06
A61P3/10
A61P29/00 101
A61P29/00
A61K38/17
A61P37/02
A61P37/08
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C07K14/435
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557729
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 AU2022050234
(87)【国際公開番号】W WO2022192955
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】2021900769
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2022900508
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521246219
【氏名又は名称】ジェームズ・クック・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス,アレクサンダー コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】ジャコミン,ポール ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ライアン,ステファニー マーガレット
(72)【発明者】
【氏名】ラッシャー,ローランド
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA51
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZB151
4C084ZB152
4C084ZC351
4C084ZC352
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防するのに適したタンパク質、それを含む医薬組成物、及びそれを含む使用方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4、8、11、1、6、2、3、5、7、9、10、12、13、14、15、16、17、18、19及び20のいずれか1つ、好ましくは、配列番号4、8、11、1及び6のいずれか1つ、より好ましくは、配列番号4、8及び11のいずれか1つに対して少なくとも約70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離、組換え若しくは合成タンパク質、又は生物学的に活性な断片若しくはそのバリアント。
【請求項2】
前記アミノ酸配列が、配列番号1~20のいずれか1つ、好ましくは、配列番号4、8、11、1及び6のいずれか1つ、より好ましくは、配列番号4、8及び11のいずれか1つに対して少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有する、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
前記アミノ酸配列が、配列番号1~20のいずれか1つ、好ましくは、配列番号4、8、11、1及び6のいずれか1つ、より好ましくは、配列番号4、8及び11のいずれか1つである、請求項1又は2に記載のタンパク質。
【請求項4】
前記アミノ酸配列が、配列番号4、8、1、6、2、3、5及び7のいずれか1つ、好ましくは、配列番号4、8、1及び6のいずれか1つ、より好ましくは、配列番号4及び8のいずれか1つに対して少なくとも約70%の配列同一性を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項5】
前記アミノ酸配列が、配列番号1~8のいずれか1つ、好ましくは、配列番号4、8、1及び6のいずれか1つ、より好ましくは、配列番号4及び8のいずれか1つに対して少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項6】
前記アミノ酸配列が、配列番号1~8のいずれか1つ、好ましくは、配列番号4、8、1及び6のいずれか1つ、より好ましくは、配列番号4及び8のいずれか1つである、請求項1~5のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項7】
配列番号4、8、11、1、6、2、3、5、7、9、10、12、13、14、15、16、17、18、19及び20のいずれか1つ、好ましくは、配列番号4、8、11、1及び6のいずれか1つ、より好ましくは、配列番号4、8及び11のいずれか1つにおいて、合計約250個までのアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されたアミノ酸配列を含む、単離、組換え若しくは合成タンパク質、又は生物学的に活性な断片若しくはそのバリアント。
【請求項8】
配列番号1~20のいずれか1つ、好ましくは、配列番号4、8、11、1及び6のいずれか1つ、より好ましくは、配列番号4、8及び1のいずれか1つにおいて、合計約225個まで、約200個まで、約175個まで、約125個まで、約100個まで、約75個まで、約50個まで、約40個まで、約30個まで、約25個まで、約20個まで、約15個まで、又は約10個までのアミノ酸が、置換、挿入及び/又は欠失されている、請求項7に記載のタンパク質。
【請求項9】
前記アミノ酸配列が、配列番号1~8のいずれか1つにおいて置換、挿入及び/又は欠失された合計約250個までのアミノ酸を有する、請求項7又は8に記載のタンパク質、又は生物学的に活性な断片若しくはそのバリアント。
【請求項10】
前記アミノ酸配列が、配列番号4、8、1、6、2、3、5及び7のいずれか1つ、好ましくは、配列番号4、8、11、1及び6のいずれか1つ、より好ましくは、配列番号4及び8のいずれか1つにおいて置換、挿入及び/又は欠失された合計約225個まで、約200個まで、約175個まで、約125個まで、約100個まで、約75個まで、約50個まで、約40個まで、約30個まで、約25個まで、約20個まで、約15個まで、又は約10個までのアミノ酸を有する、請求項7に記載のタンパク質。
【請求項11】
配列番号24、28、31、21、26、43、46、48、41、45、22、23、25、27、29、30、32、33、34、35、36、37、38、39、40、42、43、44、47、49、50、51、52及び53のいずれか1つ、好ましくは、配列番号24、28、31、21及び26のいずれか1つ、より好ましくは、配列番号24、28及び31のいずれか1つとの少なくとも約70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされた組換えタンパク質、又は生物学的に活性な断片若しくはそのバリアント。
【請求項12】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号21~53のいずれか1つ、好ましくは、配列番号24、28、31、21及び26のいずれか1つ、より好ましくは、配列番号24、28及び31のいずれか1つに対して少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有する、請求項11に記載のタンパク質。
【請求項13】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号21~53のいずれか1つ、好ましくは、配列番号24、28、31、21、26、43、46、48、41及び45のいずれか1つ、より好ましくは、配列番号24、28及び31のいずれか1つである、請求項11又は12に記載のタンパク質。
【請求項14】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号21~28のいずれか1つ、好ましくは、配列番号24及び28のいずれか1つに対して少なくとも約70%の配列同一性を有する、請求項11~13のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項15】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号21~28のいずれか1つ、好ましくは、配列番号24及び28のいずれか1つに対して少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有する、請求項11~14のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項16】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号21~28のいずれか1つ、好ましくは、配列番号24及び28のいずれか1つである、請求項11~15のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項18】
炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防するための方法であって、請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアント、又は請求項17に記載の医薬組成物を、それを必要としている対象に投与することを含み、それにより、前記対象の炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防する方法。
【請求項19】
対象の炎症状態又は自己免疫状態の処置又は予防のための方法であって、
- 炎症状態又は自己免疫状態を有する対象を特定するステップと、
- 治療的に有効な量の請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアント、又は請求項17に記載の医薬組成物を、それを必要としている対象に投与するステップと
を含み、それにより、前記対象の炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防する方法。
【請求項20】
前記炎症状態又は自己免疫状態が、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、2型糖尿病、喘息、関節リウマチ、ループス、アレルギー及びセリアック病から選択される、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防するための薬剤の製造における、請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントの使用。
【請求項22】
前記炎症状態又は自己免疫状態が、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、2型糖尿病、喘息、関節リウマチ、ループス、アレルギー及びセリアック病から選択される、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防するのに使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアント。
【請求項24】
前記炎症状態又は自己免疫状態が、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、2型糖尿病、喘息、関節リウマチ、ループス、アレルギー及びセリアック病から選択される、請求項23に記載のタンパク質。
【請求項25】
請求項1~16のいずれか一項に記載のタンパク質又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸。
【請求項26】
請求項25に記載の核酸を含むベクター又は発現構築物。
【請求項27】
請求項25に記載の核酸又は請求項26に記載のベクター若しくは発現構築物を含む細胞。
【請求項28】
タンパク質又は生物学的に活性な断片若しくはそのバリアントを生成する方法であって、前記タンパク質又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントの発現を可能にする条件下で請求項27に記載の細胞をインキュベートすることを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
[0001] 本発明は、炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防するのに適したタンパク質、それを含む医薬組成物、及びそれを含む使用方法に関する。
【0002】
先願の相互参照
[0002] 本出願は、豪州仮特許出願第2021900769号及び同第2022900508号に対する優先権を主張するものであり、それぞれの全内容は、参照によってその全体が本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
[0003] 炎症は、認知された傷害又は熱に応答する、体の免疫系による非特異的な反応である。また炎症は、体の免疫系が誤って自身の体の細胞を攻撃する自己免疫状態に応答して起こることもある。炎症性腸疾患(IBD)及び喘息は、不適切な免疫応答の結果である炎症状態の例である。
【0004】
[0004] IBDは胃腸管の慢性の特発性炎症であり、2つの免疫学的に異なる状態:クローン病(CD)及び潰瘍性大腸炎(UC)に細分類することができる。CDは、炎症促進性サイトカインであるインターロイキン(IL)-12及びインターフェロンガンマ(IFNγ)の過剰産生と共に、活性化Tヘルパー1及び17細胞(Th1/Th17)によって主に媒介されると思われるが、UCは、IL-13などの標準的なTh2サイトカインに対する重要な役割を有する混合Tヘルパー2及び17細胞(Th2/Th17)に媒介される病態を特徴とする。UC及びCDはいずれも世界中で重大な負担を担うことが予想され、UCの症例は、2016年の1,737,130件から、2026年には1,867,305件まで増大すると予想され、診断されたCDの有病症例は、2019年の1,339,543件から、2029年には1,629,940件まで増大すると予想されることが示されている(GlobalData, 2020)。
【0005】
[0005] 喘息は、気道好酸球増加、IL-4、-5、-9、-10及び-13サイトカインの産生、抗原特異的免疫グロブリンE IgEレベルの上昇、粘液産生の増大、並びに気道閉塞及び反応性亢進につながる構造のリモデリングを特徴とする、異常なTh2免疫応答として広く説明されている。世界中で約3億人が喘息を患っていると推定されており、2025年までにさらに1億人が罹患する可能性がある。世界保健機関(World Health Organisation)(WHO)の推定によると、2016年には、喘息による死亡者数は世界的なレベルで417,918人であり、2480万人の障害調整生存年(DALYS)が喘息に起因した(WHO, 2020)。
【0006】
[0006] 異なる炎症表現型にもかかわらず、IBD及び喘息はいずれも、圧倒的な炎症カスケードをもたらすエフェクターT細胞と調節性T細胞との不均衡から発生すると思われる。さらに、両方の慢性状態は多因子性の病因を有し、遺伝因子、及び腸内細菌叢などの環境因子の全てが病態形成に寄与する。
【0007】
[0007] 腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤はIBDの治療に革命をもたらし、従来の療法に応答しない中程度~重度のIBD患者の第1選択療法であり続けている。しかしながら、一貫して一部の患者(約20%)は処置に応答せず、毎年同様の割合の患者が有効性を失う可能性がある。これらの薬物は一般的に安全であると考えられるが、それでも有害事象は稀ではなく、一部の患者は禁忌を示す。これにより、長期間有効であると共に、免疫応答で誘発される症状の処置又は炎症の阻止を超えた働きをする薬剤に対して、まだ対処されていない大きなニーズが生じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008] したがって、IBD及び喘息などの炎症状態又は自己免疫状態の処置に使用することができる、新規の又は改善された療法が必要とされている。
【0009】
[0009] 本明細書中の任意の従来技術への言及は、この従来技術がいずれかの権限おいて共通の一般知識の一部を形成すること、或いはこの従来技術が当業者によって理解され、関連性があるとみなされ、及び/又は従来技術の他の部分と組み合わせられることが合理的に予想され得ることの承認又は示唆ではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
[0010] 本発明者らは、IBDなどの炎症状態の処置において有用性を呈することが本明細書で示されているタンパク質を特定した。
【0011】
[0011] 本発明は、配列番号1~20のいずれか1つ、例えば、配列番号1~8のいずれか1つ、特に、配列番号1、4、6、8及び11のいずれか1つ、さらに特に、配列番号4、8及び11のいずれか1つ、さらにより特に、配列番号4及び8のいずれか1つに対して少なくとも約70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントを提供する。
【0012】
[0012] アミノ酸配列は、配列番号1~20のいずれか1つ又は複数、すなわち、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19及び配列番号20のいずれか1つ又は複数であり得る。アミノ酸配列は、好ましくは、配列番号1~8のいずれか1つ又は複数、例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8のいずれか1つ又は複数であり得る。アミノ酸配列は、好ましくは、配列番号1、配列番号4、配列番号6、配列番号8及び配列番号11のいずれか1つ又は複数、特に、配列番号4、配列番号8及び配列番号11のいずれか1つ又は複数、さらに特に、配列番号4及び配列番号8のいずれか1つ又は両方であり得る。
【0013】
[0013] 本タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1~20のいずれか1つ、例えば、配列番号1~8のいずれか1つ、特に、配列番号1、4、6、8及び11のいずれか1つ、さらに特に、配列番号4、8及び11のいずれか1つ、さらにより特に、配列番号4及び8のいずれか1つに対して少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性、或いは本明細書に記載される他の同一性%を有し得る。
【0014】
[0014] 特定の実施形態では、タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1~20のいずれか1つ、例えば、配列番号1~8のいずれか1つ、特に、配列番号1、4、6、8及び11のいずれか1つ、さらに特に、配列番号4、8及び11のいずれか1つ、さらにより特に、配列番号4及び8のいずれか1つである。
【0015】
[0015] また本発明は、配列番号1~20のいずれか1つ、例えば、配列番号1~8のいずれか1つ、特に、配列番号1、4、6、8及び11のいずれか1つ、さらに特に、配列番号4、8及び11のいずれか1つ、さらにより特に、配列番号4及び8のいずれか1つにおいて、合計約250個までのアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されたアミノ酸配列を含むタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントも提供する。
【0016】
[0016] タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1~20、例えば配列番号1~8のいずれか1つ、特に、配列番号1、4、6、8及び11のいずれか1つ、さらに特に、配列番号4、8及び11のいずれか1つ、さらにより特に、配列番号4及び8のいずれか1つにおいて置換、挿入及び/又は欠失された合計約225個まで、約200個まで、約175個まで、約125個まで、約100個まで、約75個まで、約50個まで、約40個まで、約30個まで、約25個まで、約20個まで、約15個まで、又は約10個までのアミノ酸、或いは本明細書に記載される他の数のアミノ酸を有し得る。
【0017】
[0017] タンパク質は単離されていても、精製されていても、実質的に精製されていても、濃縮されていても、合成であっても、又は組換えであってもよい。
【0018】
[0018] また本発明は、配列番号21~53のいずれか1つ、例えば、配列番号21~28のいずれか1つ、特に、配列番号21、24、26、28及び31のいずれか1つ、さらに特に、配列番号24、28及び31のいずれか1つ、さらに特に、配列番号24及び28のいずれか1つとの少なくとも約70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされた組換えタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントも提供する。
【0019】
[0019] ヌクレオチド配列は、配列番号21~53のいずれか1つ又は複数、すなわち、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52及び配列番号53のいずれか1つ又は複数であり得る。ヌクレオチド配列は、好ましくは、配列番号21~28のいずれか1つ又は複数、例えば、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27及び配列番号28のいずれか1つ又は複数であり得る。ヌクレオチド配列は、好ましくは、配列番号21、配列番号24、配列番号26、配列番号28及び配列番号31のいずれか1つ又は複数、特に、配列番号24、配列番号28及び配列番号31のいずれか1つ又は複数、さらに特に、配列番号24及び配列番号28のいずれか1つ又は複数であり得る。
【0020】
[0020] いくつかの実施形態では、組換えタンパク質のヌクレオチド配列は、配列番号21~53、例えば配列番号21~28のいずれか1つ、特に、配列番号21、24、26、28及び31のいずれか1つ、さらに特に、配列番号24、28及び31のいずれか1つ、さらにより特に、配列番号24及び28のいずれか1つに対して少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を有する。
【0021】
[0021] 特定の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号21~53、特に配列番号21~28のいずれか1つ、特に、配列番号21、24、26、28及び31のいずれか1つ、さらに特に、配列番号24、28及び31のいずれか1つ、さらにより特に、配列番号24及び28のいずれか1つである。
【0022】
[0022] いくつかの実施形態では、タンパク質は、抗炎症活性を有するタンパク質ファミリー、特に、SCP/TAPS、リゾチーム及びアネキシンタンパク質ファミリーから選択される。
【0023】
[0023] また本発明は、本明細書に記載される本発明のタンパク質又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる医薬組成物も提供する。
【0024】
[0024] また本発明は、炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防するための方法であって、本明細書に記載される本発明のタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアント、又は本明細書に記載される医薬組成物を、それを必要としている対象に投与することを含み、それにより、対象の炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防する方法も提供する。
【0025】
[0025] また本発明は、対象の炎症状態又は自己免疫状態の処置又は予防のための方法であって、
- 炎症状態又は自己免疫状態を有する対象を特定するステップと、
- 治療的に有効な量の本明細書に記載される本発明のタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアント、又は本明細書に記載される医薬組成物を、それを必要としている対象に投与するステップと
を含み、それにより、対象の炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防する方法も提供する。
【0026】
[0026] 本明細書に記載されるタンパク質又は医薬組成物は、本明細書に記載される任意の経路によって、好ましくは非経口的に投与されてもよいし、又は投与のために配合されてもよい。
【0027】
[0027] また本発明は、炎症状態又は自己免疫状態の進行を阻害するための方法であって、本明細書に記載される本発明のタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアント、又は本明細書に記載される医薬組成物を、それを必要としている対象に投与することを含み、それにより、炎症状態又は自己免疫状態の進行を阻害する方法も提供する。本明細書に記載されるタンパク質又は医薬組成物は、本明細書に記載される任意の経路によって、好ましくは非経口的に投与されてもよいし、又は投与のために配合されてもよい。
【0028】
[0028] また本発明は、炎症状態又は自己免疫状態の症状を最小化、軽減又は改善するための方法であって、本明細書に記載される本発明のタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアント、又は本明細書に記載される医薬組成物を、それを必要としている対象に投与することを含み、それにより、炎症状態又は自己免疫状態の症状を最小化、軽減又は改善する方法も提供する。本明細書に記載されるタンパク質又は医薬組成物は、本明細書に記載される任意の経路によって、好ましくは非経口的に投与されてもよいし、又は投与のために配合されてもよい。
【0029】
[0029] また本発明は、炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防するための薬剤の製造における、本明細書に記載される本発明のタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントの使用も提供する。本明細書に記載されるタンパク質は、本明細書に記載される任意の経路によって、好ましくは非経口的に投与されてもよいし、又は投与のために配合されてもよい。
【0030】
[0030] また本発明は、炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防するのに使用するための、本明細書に記載される本発明のタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントも提供する。本明細書に記載されるタンパク質は、本明細書に記載される任意の経路によって、好ましくは非経口的に投与されてもよいし、又は投与のために配合されてもよい。
【0031】
[0031] 炎症状態又は自己免疫状態は、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、2型糖尿病、喘息、関節リウマチ、ループス、アレルギー及びセリアック病から選択され得る。特定の実施形態では、炎症状態又は自己免疫状態は炎症性腸疾患であり、特に、潰瘍性大腸炎又はクローン病である。
【0032】
[0032] また本発明は、本発明のタンパク質、又は本明細書に記載される任意の他のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸も提供する。
【0033】
[0033] また本発明は、本明細書に記載される本発明の核酸を含むベクター又は発現構築物も提供する。
【0034】
[0034] また本発明は、本明細書に記載される本発明のベクター、発現構築物又は核酸を含む細胞も提供する。本発明の細胞は、本明細書に記載される任意の細胞、好ましくは哺乳類細胞であり得る。
【0035】
[0035] また本発明は、タンパク質又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントを生成する方法であって、タンパク質又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントの発現を可能にする条件下で本明細書に記載される細胞をインキュベートすることを含む方法も提供する。
【0036】
[0036] 本発明のさらなる態様及び先行する段落に記載される態様のさらなる実施形態は、添付図面を参照して、例として与えられる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図面の簡単な説明
図1】[0037]図1は、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)大腸炎モデルにおいて、本発明の異なる組換えタンパク質を含有するインビトロ転写/翻訳ライセートの効果を示す結果である。図1Aは、体重パーセンテージを示すグラフである;データ点は平均±SEM及びサンプルサイズ(n=5匹のマウス/群)を表し、有意性は、2標本t検定を用いて3日目の体重を対照群の体重に対して比較することによって決定され、多重検定に対して調整され、p≦0.05、及び**p≦0.01で示された。
図1A】[0037]図1は、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)大腸炎モデルにおいて、本発明の異なる組換えタンパク質を含有するインビトロ転写/翻訳ライセートの効果を示す結果である。図1Aは、体重パーセンテージを示すグラフである;データ点は平均±SEM及びサンプルサイズ(n=5匹のマウス/群)を表し、有意性は、2標本t検定を用いて3日目の体重を対照群の体重に対して比較することによって決定され、多重検定に対して調整され、p≦0.05、及び**p≦0.01で示された。
図1B】[0037]図1Bは、ナイーブ群(A)、陰性対照群(B)及び鉤虫ライセート13(組換えタンパク質配列番号1を含有する)群(C)の結腸の長さの写真を示す。
図1C】[0037]図1Cは、結腸の長さを示すグラフである;個々のデータ点は全て、平均±SEM及びサンプルサイズ(n=5匹のマウス/群)で表され、有意性は、対照群に対して2標本t検定を用いる統計比較によって決定され、多重検定に対して調整され、p≦0.05、**p≦0.01、及び***p≦0.001で示された。
図1D】[0037]図1Dは、巨視的スコアを示すグラフである;個々のデータ点は全て、平均±SEM及びサンプルサイズ(n=5匹のマウス/群)で表され、有意性は、マン・ホイットニーのU検定を用いて各試験群を陰性対照群と比較する統計比較によって決定され、多重検定に対して調整され、p≦0.05、及び**p≦0.01で示された。
図1E】[0037]図1Eは、複合臨床スコアを示すグラフである;個々のデータ点は全て、平均±SEM及びサンプルサイズ(n=5匹のマウス/群)で表され、有意性は、対照群に対してマン・ホイットニーのU検定を用いて評価される統計比較によって決定され、多重検定に対して調整され、p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001で示された。
図2A】[0038]図2は、抗CD3/CD28ビーズで刺激されたヒト結腸生検の炎症性サイトカインの分泌に対する、本発明の組換えタンパク質の活性を示すグラフである。組換えタンパク質は、哺乳類細胞で発現させ、生検培養物に添加する前に精製した。測定したサイトカインは、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、インターフェロンガンマ(IFNγ)及びインターロイキン-17A(IL-17A)であった。陰性対照:抗CD3/CD28ビーズによる刺激なし、1番目のバー。他のサンプルは全て、抗CD3/CD28ビーズで刺激した。陽性対照:シクロスポリン-A(CSA)、3番目のバー。値は正規化され、PBS+ビーズ条件のパーセンテージとして提示される。バーは、6~7人の潰瘍性大腸炎患者からの平均を表す。エラーバー:SEM。統計的有意性は1標本t検定により決定され、P≦0.05、**P≦0.01、***P≦0.001、****P≦0.0001で示される。
図2B】[0038]図2は、抗CD3/CD28ビーズで刺激されたヒト結腸生検の炎症性サイトカインの分泌に対する、本発明の組換えタンパク質の活性を示すグラフである。組換えタンパク質は、哺乳類細胞で発現させ、生検培養物に添加する前に精製した。測定したサイトカインは、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、インターフェロンガンマ(IFNγ)及びインターロイキン-17A(IL-17A)であった。陰性対照:抗CD3/CD28ビーズによる刺激なし、1番目のバー。他のサンプルは全て、抗CD3/CD28ビーズで刺激した。陽性対照:シクロスポリン-A(CSA)、3番目のバー。値は正規化され、PBS+ビーズ条件のパーセンテージとして提示される。バーは、6~7人の潰瘍性大腸炎患者からの平均を表す。エラーバー:SEM。統計的有意性は1標本t検定により決定され、P≦0.05、**P≦0.01、***P≦0.001、****P≦0.0001で示される。
図2C】[0038]図2は、抗CD3/CD28ビーズで刺激されたヒト結腸生検の炎症性サイトカインの分泌に対する、本発明の組換えタンパク質の活性を示すグラフである。組換えタンパク質は、哺乳類細胞で発現させ、生検培養物に添加する前に精製した。測定したサイトカインは、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、インターフェロンガンマ(IFNγ)及びインターロイキン-17A(IL-17A)であった。陰性対照:抗CD3/CD28ビーズによる刺激なし、1番目のバー。他のサンプルは全て、抗CD3/CD28ビーズで刺激した。陽性対照:シクロスポリン-A(CSA)、3番目のバー。値は正規化され、PBS+ビーズ条件のパーセンテージとして提示される。バーは、6~7人の潰瘍性大腸炎患者からの平均を表す。エラーバー:SEM。統計的有意性は1標本t検定により決定され、P≦0.05、**P≦0.01、***P≦0.001、****P≦0.0001で示される。
図3A】[0039]図3は、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)大腸炎モデルにおいて、eGFPに融合された本発明の異なる組換えタンパク質を含有する無細胞ライセートの効果を示すグラフである。トリニトロ安息香酸(TNBS)の直腸内投与の前日に、BALB/cマウスに200μlのタンパク質含有上清(タンパク質濃度:100mg/ml)を腹腔内注射し、安楽死までの3日間、毎日モニターした。図3Aは、eGFPのみのライセート対照、及びナイーブマウスと比較した、12個のライセートの初期体重の平均パーセント変化(n=5/群)を示すグラフである。
図3B】[0039]図3Bは、3日目の糞便の粘稠度、運動性、立毛及び体重変化を組み合わせた12個のライセートの臨床スコア(平均及び個々のデータ点)を示すグラフである。
図3C】[0039]図3Cは、3日目の剖検における12個のライセートの巨視的な結腸病態スコア(平均及び個々のデータ点)を示すグラフである。p≦0.05、**p≦0.01、eGFP対照と比較したマン・ホイットニーのU検定。
図3D】[0039]図3Dは、それぞれのeGFP対照と比較した、78個全ての発現タンパク質の有効性の複合統計分析を示すグラフである。x軸は、処置と対照(eGFPライセートベクター)との間の臨床アウトカム(体重減少、結腸の長さ、臨床スコア及び巨視的スコア)の複合zスコアの平均の差を示し、y軸はp値を示し、p<0.01又は-log10>2が有意であるとみなされた。両方のカテゴリーで有意な保護を達成したタンパク質は赤色で示され(右上の象限)、両方のカテゴリーで有意な保護を示さなかったタンパク質は青色で示される。
図4A】[0040]図4は、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)大腸炎モデルにおいて、本発明の組換えタンパク質の効果を示すグラフである。トリニトロ安息香酸(TNBS)の直腸内投与の前日に、BALB/cマウスに、Expi293Fヒト胎児腎臓細胞で生成された20μgの組換え鉤虫タンパク質を腹腔内注射し、その後、終了するまで毎日行った。対照マウスには、同じ生成方法を用いて発現された組換えウシ血清アルブミン(BSA)、又はPBSビヒクルのいずれかを与えた。図4Aは、初期体重の平均パーセント変化を示すグラフである。
図4B】[0040]図4Bは、臨床スコア(平均及び個々のデータ点)を示すグラフである。
図4C】[0040]図4Cは、結腸病態の巨視的スコア(平均及び個々のデータ点)を示すグラフである。データは、3つの個々の実験から組み合わせたものであり、各処置群に対してn=10~20である。p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001、PBS対照と比較したマン・ホイットニーのU検定。
図5A】[0041]図5は、抗CD3/CD28ビーズで刺激されたヒト結腸生検の炎症性サイトカインの分泌に対する、本発明の組換えタンパク質の活性を示すグラフである。潰瘍性大腸炎患者から採取された新鮮な結腸生検から上皮内リンパ球及び粘膜固有層細胞を単離し、合わせた。細胞をPBS対照、精製組換え鉤虫タンパク質又はウシ血清アルブミンのいずれかで処置し、Expi293F細胞において生成させ、次にaCD3/CD28 Dynabeadsで刺激した(TCR刺激)。全てのデータをPBS(ビヒクル)処置サンプル(100%、点線で示される)に対して正規化することにより、患者間のばらつきを説明した。Ac-FAR-2は10mg/mlで使用し、他の全てのタンパク質は50mg/mlで使用した。陽性対照細胞は、シクロスポリンA(CSA)で処置するか、或いは、刺激せずに放置した(PBS)。図5Aでは、無細胞上清を採取し、培養の3日後にTNFの分泌について分析した。値は、それぞれの患者についてのPBS処置及び刺激条件(点線)に対して正規化した。データは、独立した2回のサンプル採取日から結合され、各色の記号は、個々の患者サンプル(n=5~12/処置群)を表し、各処置の平均値は水平線で示される。
図5B】[0041]図5Bでは、無細胞上清を採取し、培養の3日後にIFNγの分泌について分析した。値は、それぞれの患者についてのPBS処置及び刺激条件(点線)に対して正規化した。データは、独立した2回のサンプル採取日から結合され、各色の記号は、個々の患者サンプル(n=5~12/処置群)を表し、各処置の平均値は水平線で示される。
図5C】[0041]図5Cでは、無細胞上清を採取し、培養の3日後にIL-17Aの分泌について分析した。値は、それぞれの患者についてのPBS処置及び刺激条件(点線)に対して正規化した。データは、独立した2回のサンプル採取日から結合され、各色の記号は、個々の患者サンプル(n=5~12/処置群)を表し、各処置の平均値は水平線で示される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
実施形態の詳細な説明
[0042] 本明細書において開示及び定義される本発明が、言及された又は本文若しくは図面から明らかである個々の特徴の2つ以上の全ての代替の組合せに及ぶことは理解されるであろう。これらの異なる組合せの全ては、本発明の種々の代替の態様を構成する。
【0039】
[0043] 次に、本発明の特定の実施形態について詳細に言及される。本発明は実施形態に関連して説明され得るが、本発明をそれらの実施形態に限定する意図はないことが理解されるであろう。逆に、本発明は、特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内に含まれ得る全ての代替物、修正物、及び等価物を包含することが意図される。
【0040】
[0044] 当業者は、本発明の実施において使用され得る、本明細書に記載されるものと同様又は同等の多数の方法及び材料を認識するであろう。本発明は、記載される方法及び材料に決して限定されない。本明細書において開示及び定義される本発明が、言及された又は本文若しくは図面から明らかである個々の特徴の2つ以上の全ての代替の組合せに及ぶことは理解されるであろう。これらの異なる組合せの全ては、本発明の種々の代替の態様を構成する。
【0041】
[0045] 本明細書で参照される特許及び刊行物の全ては、参照によってその全体が援用される。
【0042】
[0046] 本明細書を解釈する目的で、単数形で使用される用語は複数形も含み、逆も同様である。
【0043】
[0047] 本発明者らは、本明細書において、炎症状態又は自己免疫状態の抑制、予防又は処置に有用であるタンパク質を特定した。本発明のタンパク質は、鉤虫寄生虫によって分泌される。鉤虫は、不適切な免疫応答を防止するために免疫系を操作することが知られており、これにより、その長期生存が促進され、主に様々な鉤虫排泄/分泌(ES)タンパク質の分泌のために慢性感染が引き起こされる。本発明のタンパク質は鉤虫から誘導可能又は入手可能であり、炎症状態又は自己免疫状態の処置において有用性を有し得るタンパク質として、本明細書に記載されるように本発明者らによって明確に特定され、選択された。
【0044】
[0048] 実施例に示されるように、大腸炎を含む炎症反応の活性化に関連する十分に特徴付けられたいくつかのモデルにおいて、本発明のタンパク質は有用性のあることが示されている。これらのモデルは、急性炎症及び/又は慢性炎症のエピソードを含むことが、当該技術分野において十分に特徴付けられている。したがって、本発明者らは、本発明のペプチドが、自己免疫疾患を含む炎症を伴う広範な状態、障害又は疾患に適用されることを認識しており、本明細書に開示されるものはそのほんの一部の例である。
【0045】
[0049] 実施例にも示されるように、本発明のペプチドは、ヒト免疫細胞からの炎症促進性サイトカインの分泌を低減することができる。非限定的な例としては、IFN-γ、TNF-α及びIL-17Aが挙げられる。
【0046】
定義
[0050] 他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験において使用され得るが、好ましい方法及び材料が記載される。本発明の目的のために、次の用語は以下に定義される。
【0047】
[0051] 冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書において、冠詞の文法的対象の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0048】
[0052] 本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語、例えば、「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解されるべきであり、両方の意味又はいずれかの意味への明確な支持を提供すると解釈されるものとする。
【0049】
[0053] 本明細書で使用される場合、「約」という用語は、基準の数量、値、寸法、サイズ、又は量に対して30%、25%、20%、15%又は10%ほど異なる数量、値、寸法、サイズ、又は量を指す。
【0050】
[0054] 本明細書で使用される場合、文脈が他に要求しない限り、「含む(comprise)」という用語、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変化形は、規定される整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群の包含を意味するが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群の排除を意味しないと理解されるであろう。
【0051】
[0055] 本明細書で使用される場合、「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」という用語は、アミノ基及びカルボン酸基を有する化合物を指す。アミノ酸は、L-若しくはD-異性体又はこれらの混合物であり得る。アミノ酸は、天然に存在する側鎖(表1を参照)、又はタンパク質を構成しない側鎖を有し得る。またアミノ酸は、-C1~6アルキル、-(CHCOR、-(CH及び-POHから選択される基によって、α位置でさらに置換され得る。ここで、nは、1~8から選択される整数であり、Rは、-OH、-NH、-NHC1~3アルキル、-OC1~3アルキル又は-C1~3アルキルであり、そしてRは、-OH、-SH、-SC1~3アルキル、-OC1~3アルキル、-NH、-NHC1~3アルキル又は-NHC(C=NH)NHであり、そして各アルキル基は、-OH、-NH、-NHC1~3アルキル、-OC1~3アルキル、-SH、-SC1~3アルキル、-COH、-CO1~3アルキル、-CONH及び-CONHC1~3アルキルから選択される1つ又は複数の基によって置換され得る。
【0052】
[0056] 本明細書を通して使用されるアミノ酸構造並びに1文字及び3文字略語は、タンパク質中にL-異性体として存在する、タンパク質を構成する20個の天然に存在するアミノ酸が記載される表1に定義されている。
【0053】
【表1】
【0054】
[0057] 本明細書で使用される場合、「タンパク質を構成しないアミノ酸」という用語は、表1に記載される天然に存在するL-α-アミノ酸には存在しない側鎖を有するアミノ酸を指す。タンパク質を構成しないアミノ酸及び誘導体の例としては、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノへキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、シトルリン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニン及び/又は天然アミノ酸のD-異性体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
[0058] 本明細書で使用される場合、「α-アミノ酸」という用語は、カルボキシル末端(C末端)とアミノ末端(N末端)とを分離する単一の炭素原子(α-炭素原子)を有するアミノ酸を指す。α-アミノ酸には、天然に存在する及び天然に存在しないL-アミノ酸及びそのD-異性体、並びにそれらの誘導体、例えば、塩又は適切な保護基によって官能基が保護された誘導体が含まれる。他に明言されない限り、本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、α-アミノ酸を指す。
【0056】
[0059] 当業者は、ペプチドが、1つのアミノ酸のカルボキシル基と、別のアミノ酸のアミノ基との間に形成される共有結合(すなわち、いわゆるペプチド結合)によって連結された一連の2つ以上のアミノ酸を表すことを認識するであろう。
【0057】
[0060] 本明細書で使用される場合、「タンパク質」又は「ポリペプチド」という用語は、単一のポリペプチド鎖、すなわち、ペプチド結合によって連結された一連の連続アミノ酸、例えばポリマー、又は互いに共有結合若しくは非共有結合された一連のポリペプチド鎖(すなわち、タンパク質又はポリペプチド複合体)を包含すると理解されるであろう。例えば、一連のポリペプチド鎖は、適切な化学結合又はジスルフィド結合によって共有結合され得る。非共有結合の例としては、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力及び疎水性相互作用が挙げられる。タンパク質又はポリペプチドは、アミノ酸残基及びバリアント並びにその合成類似体を含み得る。したがって、これらの用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基が、タンパク質を構成しない合成アミノ酸、例えば、対応する天然に存在するアミノ酸の化学類似体であるアミノ酸ポリマーと、天然に存在するアミノ酸のみを含有するポリマーとを包含する。これらの用語は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などを排除するものではない。例えば、この定義には、例えば、非天然アミノ酸又は置換連鎖を有するポリペプチドを含む、アミノ酸の1つ又は複数の類似体を含有するタンパク質又はポリペプチドが含まれる。
【0058】
[0061] 本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、それが天然に見出される形態又は環境から特定及び分離された分子を指すことが意図される。したがって、「単離タンパク質」は、そのタンパク質が天然に見出される形態又は環境以外のものであり、「単離核酸」は、その核酸が天然に見出される形態又は環境以外のものである。
【0059】
[0062] 本明細書で使用される場合、本発明のタンパク質との関連での「精製された」という用語は、細胞などの複雑な混合物から分離又は単離されたことを意味すると理解されるであろう。
【0060】
[0063] 本明細書で使用される場合、本発明のタンパク質との関連での「実質的に精製された」という用語は、タンパク質が汚染剤を実質的に含まない、例えば、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約65%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%汚染剤を含まないことを意味する。
【0061】
[0064] 本明細書で使用される場合、本発明のタンパク質との関連での「合成」という用語は、非天然の合成手段によって、例えば、化学合成又は人工的な生物学的合成によって生成されたタンパク質を指すと理解されるであろう。
【0062】
[0065] 本明細書で使用される場合、「組換え」という用語は、人工的な遺伝子組換えの産物を意味すると理解されるであろう。したがって、「組換えタンパク質」という用語は、例えば、それが発現される発現系又は細胞内にあるときに人工的な組換え手段によって発現されたタンパク質を包含することが意図される。
【0063】
[0066] 本明細書で使用される場合、「から誘導される」という用語は、特定の整数が、特定の供給源から(必ずしもその供給源から直接とは限らないが)取得され得ることを示すと理解されるであろう。
【0064】
[0067] 付加的な定義も本明細書中に提供される。
【0065】
タンパク質
[0068] 本発明は、アンシロストーマ・カニナム(Ancylostoma caninum)を含むがこれらに限定されない、炎症状態を処置又は予防するために有用であり得る鉤虫から誘導可能又は入手可能であるタンパク質に関する。
【0066】
[0069] したがって、一態様では、本発明は、配列番号1~20のいずれか1つに対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントを提供する。配列番号1~20は、表2に記載される。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
【表7】
【0073】
[0070] 本発明者らは、本発明のタンパク質が属する線虫タンパク質ファミリーを特定した。線虫タンパク質ファミリーは、表2の「ファミリー」列に記載され、関連の遺伝子名は、「遺伝子名」列に記載されている。本発明者らは、本発明のタンパク質の一部が、抗炎症特性を有する哺乳類タンパク質を含む哺乳類タンパク質に対する相同性も示すことを特定した。これらには、鉤虫SCP/TAPS、脂肪酸及びレチノール結合タンパク質、TTR-52タンパク質、リゾチーム、並びにアネキシンタンパク質ファミリーに属する本発明のタンパク質が含まれる。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、タンパク質は、抗炎症活性を有するタンパク質ファミリー、特に、SCP/TAPS、脂肪酸レチノール結合タンパク質、TTR-52タンパク質、リゾチーム、並びにアネキシンタンパク質ファミリーから選択される。
【0074】
[0071] SCP/TAPSは、全ての真核生物で見出されるシステイン豊富なタンパク質である。SCP/TAPSタンパク質は、胃腸管線虫のゲノム内で大きく広がっており、鉤虫寄生虫における全ての排泄/分泌(ES)産物の約30%を構成する(Logan J et. al., Comprehensive analysis of the secreted proteome of adult Necator americanus hookworms, PLoS NTD, 2020 14(5): e0008237)。全配列は異なることが多いが、Cysの間隔及びいくつかの重要な残基(resides)は通常保存される。
【0075】
[0072] 鉤虫Na-ASP-2はグループ1のSCPタンパク質であり、多数の鉤虫SCP中に存在する4分子Glu99、His88、His148及びGlu125を含有する。Na-ASP-2は、推定上の脂肪酸結合間隙を有することが特定されており、プロスタグランジン及びロイコトリエンなどの脂肪酸と結合し得る。
【0076】
[0073] 鉤虫好中球阻害因子(NIF)は、グループ3のSCPタンパク質である。NIFはインテグリンのアンタゴニストであることが示されており、CD11b/CD18に結合して、活性化好中球の血管内皮への接着を遮断する。NIFは、ラットにおいて局所虚血後に神経を保護することが示されている。
【0077】
[0074] 脂肪酸及びレチノール結合タンパク質ファミリー(FAR)は、線虫に特異的なα-ヘリックス豊富なタンパク質である。FARは植物寄生線虫の発生、繁殖及び感染に関与し、植物組織内に分泌されて、植物の防御反応を破壊する。
【0078】
[0075] TTR-52タンパク質は、C.エレガンス(C. elegans)内胚葉で発現され、そこから分泌されるトランスサイレチン様タンパク質である。このタンパク質はアポトーシス細胞の周囲でクラスター化し、CED-1食細胞受容体によるアポトーシス細胞の認識を媒介する。
【0079】
[0076] 線虫リゾチームに関する文献は限られているが、ヒトリゾチームは、盲腸及び上行結腸においてパネート細胞によって産生される。リゾチームは抗菌活性を示し、細菌細胞壁内のペプチドグリカンを処理する。健常対象では、リゾチームは通常、涙、唾液及び粘液を含む分泌物に豊富に含まれ、マクロファージ及び多形核好中球(PMN)の細胞質顆粒にも存在するが、炎症性腸疾患を有する対象では、リゾチームは遠位結腸に豊富に含まれる可能性があり、そこで炎症性抗菌反応を推進する。卵白中でも大量のリゾチームを見出すことができ、鶏卵リゾチームは、ブタにおいてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)大腸炎を軽減することが示されている。
【0080】
[0077] アネキシンA1はグルココルチコイド誘導性分子であり、記載されるグルココルチコイドの抗炎症効果の多くを再現する。アネキシンA1はヒトPMN白血球に豊富に含まれ、炎症の重要な制御因子であるタンパク質複合体NF-κBを阻害する。アネキシンA1欠損マウスは、より重度のDSS大腸炎を示すことが示されており(de Paula-Silva M et. al., Role of the protein annexin A1 on the efficacy of anti-TNF treatment in a murine model of acute colitis, Biochem Pharmacol, 2016, 115, 104-113)、アネキシンA1のレベルは、健常対照群と比較して、RA患者では低下していることが示されている。これまでの研究により、アネキシンMC12トリペプチドは環化されると、マウスにおいてTNBS大腸炎を防ぐことが示されている(Cobos Caceres C et al., An engineered cyclic peptide alleviates symptoms of inflammation in a murine model of inflammatory bowel disease, JBC, 2017, 292, 10288-10294)。N-ホルミルペプチド受容体2(FPR2)を標的とするアネキシンA1模倣ペプチド及びアゴニストは、RAの治療薬として関心を持たれている(Yang YH et. al., Annexin A1: potential for glucocorticoid sparing in RA, Nature Reviews Rheumatology, 2013, 9, 595-603)。
【0081】
[0078] いくつかの実施形態では、タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1~20のいずれか1つに対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。例えば、アミノ酸配列は、配列番号1~20のいずれか1つ、特に、配列番号1、4、6、8及び11のいずれか1つ、さらに特に、配列番号4、8及び11のいずれか1つに対して少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%、少なくとも90%の配列同一性を有し得る。
【0082】
[0079] いくつかの実施形態では、タンパク質のアミノ酸配列は配列番号1~20のいずれか1つであり、すなわち、アミノ酸配列は、配列番号1~20のいずれか1つ、特に、配列番号1、4、6、8及び11のいずれか1つ、さらに特に、配列番号4、8及び11のいずれか1つに対して100%の配列同一性を有する。
【0083】
[0080] いくつかの実施形態では、タンパク質は、配列番号1~8のいずれか1つに対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。これらの実施形態では、タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1~8のいずれか1つに対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し得る。例えば、アミノ酸配列は、配列番号1~8のいずれか1つ、特に、配列番号1、4、6及び8のいずれか1つ、さらに特に、配列番号4及び8のいずれか1つに対して少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%、少なくとも90%の配列同一性を有し得る。
【0084】
[0081] いくつかの実施形態では、タンパク質のアミノ酸配列は配列番号1~8のいずれか1つであり、すなわち、アミノ酸配列は、配列番号1~8のいずれか1つ、特に、配列番号1、4、6及び8のいずれか1つ、さらに特に、配列番号4及び8のいずれか1つに対して100%の配列同一性を有する。
【0085】
[0082] 別の態様では、本発明は、配列番号1~20のいずれか1つ、特に、配列番号1、4、6、8及び11のいずれか1つ、さらに特に、配列番号4、8及び11のいずれか1つにおいて、合計約250個までのアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失されたアミノ酸配列を含むタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントを提供する。
【0086】
[0083] いくつかの実施形態では、タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1~20のいずれか1つ、特に、配列番号1、4、6、8及び11のいずれか1つ、さらに特に、配列番号4、8及び11のいずれか1つにおいて置換、挿入及び/又は欠失された合計約250個まで、約225個まで、約200個まで、約175個まで、約125個まで、約100個まで、約75個まで、約50個まで、約40個まで、約30個まで、約25個まで、約20個まで、約15個まで、又は約10個までのアミノ酸を有する。例えば、アミノ酸配列は、配列番号1~20のいずれか1つ、特に、配列番号1、4、6、8及び11のいずれか1つ、さらに特に、配列番号4、8及び11のいずれか1つにおいて置換、挿入及び/又は欠失された合計約250個まで、約245個まで、約240個まで、約235個まで、約230個まで、約225個まで、約220個まで、約215個まで、約210個まで、約205個まで、約200個まで、約195個まで、約190個まで、約185個まで、約180個まで、約175個まで、約170個まで、約165個まで、約160個まで、約155個まで、約150個まで、約145個まで、約140個まで、約135個まで、約130個まで、約125個まで、約120個まで、約115個まで、約110個まで、約105個まで、約100個まで、約95個まで、約90個まで、約86個まで、約80個まで、約75個まで、約70個まで、約65個まで、約60個まで、約55個まで、約50個まで、約45個まで、約40個まで、約35個まで、約30個まで、約25個まで、約20個まで、約15個まで、約10個まで、約5個まで、又は約3個までのアミノ酸を有し得る。
【0087】
[0084] いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、配列番号1~8のいずれか1つ、特に、配列番号1、4、6及び8のいずれか1つ、さらに特に、配列番号4及び8のいずれか1つにおいて置換、挿入及び/又は欠失された合計約250個までのアミノ酸、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントを有する。これらの実施形態では、アミノ酸配列は、配列番号1~8のいずれか1つ、特に、配列番号1、4、6及び8のいずれか1つ、さらに特に、配列番号4及び8のいずれか1つにおいて置換、挿入及び/又は欠失された合計約225個まで、約200個まで、約175個まで、約125個まで、約100個まで、約75個まで、約50個まで、約40個まで、約30個まで、約25個まで、約20個まで、約15個まで、又は約10個までのアミノ酸を有し得る。例えば、アミノ酸配列は、配列番号1~8のいずれか1つ、特に、配列番号1、4、6及び8のいずれか1つ、さらに特に、配列番号4及び8のいずれか1つにおいて置換、挿入及び/又は欠失された合計約250個まで、約245個まで、約240個まで、約235個まで、約230個まで、約225個まで、約220個まで、約215個まで、約210個まで、約205個まで、約200個まで、約195個まで、約190個まで、約185個まで、約180個まで、約175個まで、約170個まで、約165個まで、約160個まで、約155個まで、約150個まで、約145個まで、約140個まで、約135個まで、約130個まで、約125個まで、約120個まで、約115個まで、約110個まで、約105個まで、約100個まで、約95個まで、約90個まで、約86個まで、約80個まで、約75個まで、約70個まで、約65個まで、約60個まで、約55個まで、約50個まで、約45個まで、約40個まで、約35個まで、約30個まで、約25個まで、約20個まで、約15個まで、約10個まで、約5個まで、又は約3個までのアミノ酸を有し得る。
【0088】
[0085] 適切には、本発明のタンパク質又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントは単離されていても、精製されていても、実質的に精製されていても、濃縮されていても、合成であっても、又は組換えであってもよい。
【0089】
[0086] 一態様では、本発明は、配列番号21~53のいずれか1つ、特に、配列番号21、24、26、28及び31のいずれか1つ、さらに特に、配列番号24、28及び31のいずれか1つ、さらにより特に、配列番号24及び28のいずれか1つとの少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされた組換えタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントを提供する。
【0090】
[0087] 配列番号21~40はそれぞれ配列番号1~20のタンパク質をコードし、表3に記載される。配列番号21~40は、天然のワームゲノムヌクレオチド配列に対応する。
【0091】
【表8】
【0092】
【表9】
【0093】
【表10】
【0094】
【表11】
【0095】
【表12】
【0096】
【表13】
【0097】
【表14】
【0098】
【表15】
【0099】
【表16】
【0100】
[0088] 配列番号41~53はそれぞれ配列番号1、3~6、8、9、11~13、17、18及び20のタンパク質をコードし、表4に記載される。配列番号41~53は、哺乳類発現構築物に対して最適化されたコドン配列を組み込み、シグナルペプチドMLVLVPLLALLAVSVHG(配列番号69)、すなわちATGCTGGTGCTGGTGCCACTGCTGGCCCTGCTGGCCGTGTCCGTGCACGGC(配列番号70)を組み込む。配列番号41~53は、このシグナルペプチドを含んでいても又は含まなくてもよいことが理解されるであろう。したがって、いくつかの実施形態では、配列番号41~53は、ヌクレオチド配列中にシグナルペプチドMLVLVPLLALLAVSVHG、すなわちATGCTGGTGCTGGTGCCACTGCTGGCCCTGCTGGCCGTGTCCGTGCACGGCを含まない。
【0101】
【表17】
【0102】
【表18】
【0103】
【表19】
【0104】
【表20】
【0105】
【表21】
【0106】
【表22】
【0107】
【表23】
【0108】
[0089] いくつかの実施形態では、組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、配列番号21~53のいずれか1つ、特に、配列番号21、24、26、28及び31のいずれか1つ、さらに特に、配列番号24、28及び31のいずれか1つ、さらにより特に、配列番号24及び28のいずれか1つに対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し得る。例えば、ヌクレオチド配列は、配列番号21~53のいずれか1つ、特に、配列番号21、24、26、28及び31のいずれか1つ、さらに特に、配列番号24、28及び31のいずれか1つ、さらにより特に、配列番号24及び28のいずれか1つに対して少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%、少なくとも90%の配列同一性を有し得る。
【0109】
[0090] いくつかの実施形態では、組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列は配列番号21~53のいずれか1つであり、すなわち、ヌクレオチド配列は、配列番号21~53のいずれか1つ、特に、配列番号21、24、26、28及び31のいずれか1つ、さらに特に、配列番号24、28及び31のいずれか1つ、さらにより特に、配列番号24及び28のいずれか1つに対して100%の配列同一性を有する。
【0110】
[0091] いくつかの実施形態では、組換えタンパク質は、配列番号21~28のいずれか1つ、特に、配列番号21、24、26及び28のいずれか1つ、さらに特に、配列番号24及び28のいずれか1つに対して少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。これらの実施形態では、組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、配列番号21~28のいずれか1つ、特に、配列番号21、24、26及び28のいずれか1つ、さらに特に、配列番号24及び28のいずれか1つに対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し得る。例えば、ヌクレオチド配列は、配列番号21~28のいずれか1つ、特に、配列番号21、24、26及び28のいずれか1つ、特に、配列番号24及び28のいずれか1つに対して少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%、少なくとも90%の配列同一性を有し得る。
【0111】
[0092] いくつかの実施形態では、組換えタンパク質をコードするヌクレオチド配列は配列番号21~28のいずれか1つであり、すなわち、ヌクレオチド配列は、配列番号21~28のいずれか1つ、特に、配列番号21、24、26及び28のいずれか1つ、さらに特に、配列番号24及び28のいずれか1つに対して100%の配列同一性を有する。
【0112】
[0093] 本明細書に記載される本発明のタンパク質の生物学的に活性な断片及びバリアントも提供される。
【0113】
[0094] 本明細書で使用される場合、「生物学的に活性な断片」又は「断片」は、本明細書に開示されるアッセイで示されるように、ポリペプチドと実質的に同様の機能活性又は実質的に同一の生物学的機能若しくは活性を保持するそのドメインを含む、本発明のタンパク質の一部を指すことが意図される。本明細書で使用される場合、「ドメイン」という用語は、共通の構造的、生理化学的及び/又は機能的な特徴、例えば、疎水性、極性、球状、らせん状、若しくはネトリン様(NTR)ドメイン、又は他の特性を共有するタンパク質の一部、例えば、タンパク質結合ドメイン、受容体結合ドメイン、補助因子結合ドメインなどを指すことが意図される。
【0114】
[0095] 本明細書で使用される場合、「生物学的に活性なバリアント」又は「バリアント」は、本発明のタンパク質のアミノ酸配列と十分に類似したアミノ酸配列を有するタンパク質又はポリペプチドを包含することが意図される。これに関連して「十分に類似した」という用語は、第1及び第2のアミノ酸配列が共通の構造ドメイン及び/又は共通の機能活性を有するように、第2のアミノ酸配列に対して十分な数又は最小限の数の同一又は同等のアミノ酸残基を含有する第1のアミノ酸配列を意味する。例えば、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約100%同一である共通の構造ドメインを含むアミノ酸配列は、本明細書において、十分に類似していると定義される。好ましくは、このようなバリアントは、本発明の好ましいタンパク質のアミノ酸配列と十分に類似し得る。このようなバリアントは、一般に、本発明のタンパク質の機能活性を保持する。バリアントには、変異誘発によりアミノ酸配列が異なるタンパク質又はポリペプチドが含まれる。
【0115】
[0096] 「バリアント」という用語は、本明細書に記載される本発明のタンパク質のペプチド模倣物を包含することも意図される。天然には合成されない少なくとも1つの残基を含有するタンパク質又はポリペプチドは、「ペプチド模倣物」と呼ばれることもある。本明細書で使用されるペプチド模倣物は、本明細書に記載される本発明のタンパク質と実質的に同じ構造及び/又は機能特徴を有する合成化合物である。ペプチド模倣化合物の非天然成分は、以下のうちの1つ又は複数に従い得る:a)天然アミド結合(「ペプチド結合」)連鎖以外の残基連鎖群;b)天然に存在するアミノ酸残基の代わりの非天然残基;又はc)二次構造模倣、すなわち、二次構造、例えば、ベータターン、ガンマターン、ベータシート、アルファヘリックス立体構造などを誘導又は安定化する残基。ペプチド模倣物は、科学文献及び特許文献、例えば、Organic Syntheses Collective Volumes, Gilman et al. (Eds) John Wiley & Sons, Inc., NY, al-Obeidi (1998) Mol. Biotechnol. 9:205-223;Hruby (1997) Curr. Opin. Chem. Biol. 1:114-119;Ostergaard (1997) Mol. Divers. 3:17-27;Ostresh (1996) Methods Enzymol. 267:220-234に記載される様々な手順及び方法を用いて合成することができる。
【0116】
[0097] 「バリアント」という用語はさらに、本明細書に記載される本発明のタンパク質のオルソログを包含することが意図される。本明細書で使用される場合、「オルソログ」という用語は、ネカトール・アメリカヌス(Necator americanus)、アンシロストーマ・デュオデナーレ(Ancylostoma duodenale)及びアンシロストーマ・ケイラニクム(Ancylostoma ceylanicum)などのヒト鉤虫、並びにトリクリス・スイス(Trichuris suis)及びトリクリス・トリキウラ(Trichuris trichiura)などのブタ鞭虫を含むがこれらに限定されない、別の腸管蠕虫(すなわち、鉤虫、鞭虫及び回虫)由来の、本明細書に記載される本発明のタンパク質のオルソログを指すことが意図される。
【0117】
[0098] 本明細書で使用される場合、「実質的に同様の機能活性」及び「実質的に同一の生物学的機能又は活性」という用語はそれぞれ、各タンパク質の生物活性が同じ手順又はアッセイによって決定されるときに、生物活性の程度が、比較されているタンパク質で実証される生物活性の約50%~約100%以上の範囲内、約80%~約100%以上の範囲内、又は約90%~約100%以上の範囲内であることを意味する。生物活性は、このような活性を特定するために一般的に有用であると当業者が認識できる標準的な試験方法及びバイオアッセイを用いて評価され得る。
【0118】
[0099] 2つのタンパク質間の「類似性」は、第1のタンパク質のアミノ酸配列を第2のタンパク質の配列と比較することによって決定される。1つのタンパク質のアミノ酸は、それが同一であるか又は保存的アミノ酸置換であれば、第2のタンパク質の対応するアミノ酸と類似している。
【0119】
[0100] 「保存的アミノ酸置換」には、Dayhoff, M.O., ed., The Atlas of Protein Sequence and Structure 5, National Biomedical Research Foundation, Washington, D.C. (1978)、及びArgos, P. (1989) EMBO J. 8:779-785に記載されるものが含まれる。例えば、以下の群の1つに属するアミノ酸は、保存的変化又は置換を表す:
- Ala、Pro、Gly、Gln、Asn、Ser、Thr:
- Cys、Ser、Tyr、Thr;
- VaI、Ile、Leu、Met、Ala、Phe;
- Lys、Arg、His;
- Phe、Tyr、Trp、His;及び
- Asp、Glu。
【0120】
[0101] また他の保存的アミノ酸置換は、同じ種類の別のものによって行われることもあり、その種類は次のとおりである:
非極性:Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trp
非荷電極性:Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Gln
酸性:Asp、Glu
塩基性:Lys、Arg、His
【0121】
[0102] また他の保存的アミノ酸置換は、以下のように行われることもある:
芳香族:Phe、Tyr、His
プロトン供与体:Asn、Gln、Lys、Arg、His、Trp
プロトン受容体:Glu、Asp、Thr、Ser、Tyr、Asn、Gln
【0122】
[0103] いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質の生物学的に活性な断片は、本明細書に記載される本発明のタンパク質のアミノ酸配列の約225個未満、約200個未満、約175個未満、約150個未満、約125個未満、約100個未満、約75個未満、約50個未満、又は約25個未満の連続したアミノ酸を構成する。本発明のタンパク質の複数の断片も企図される。
【0123】
[0104] いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質の生物学的に活性なバリアントは、基準アミノ酸配列、例えば、配列番号1~20のいずれか1つと、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の配列同一性を共有し得る。
【0124】
[0105] 配列同一性パーセントを決定するために、アミノ酸配列及び/又はヌクレオチド配列の最適アライメントは、アルゴリズム(例えば、IntelligeneticsによるGeneworksプログラム;並びにGenetic Computer Group, WI, USAのWisconsin Genetics Software Package Release 7.0におけるGAP、BESTFIT、FASTA及びTFAFASTA)のコンピュータ化された実装によって、又は検査によって実行され、選択された方法のいずれかによって最良アライメント(すなわち、比較ウィンドウにわたって最高の相同性パーセンテージをもたらす)が生成され得る。例えば、Altschul et al(Nucl, Acids Res. 25:3389-402, 1997)に開示されるように、プログラムのBLASTファミリーも参照され得る。配列分析の詳細な議論は、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY Eds. Ausubel et al(John Wiley & Sons Inc NY, 1995-1999)のユニット19.3において見出すことができる。
【0125】
[0106] 本発明のタンパク質(及びその断片及びバリアント)は、当業者に知られている任意の適切な方法によって生成され得る。適切な方法の例としては、化学合成(例えば、固相ペプチド合成)、組換え発現系の使用(例えば、組換えDNA技術)、並びに天然に存在する供給源又は組換え供給源からの単離、精製及び/又は濃縮が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
[0107] いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質(その断片及びバリアントを含む)は、化学合成によって生成される。化学合成法は当該技術分野において知られている。適切な化学合成法の例としては、CURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE Eds Coligan et al(John Wiley & Sons NY, 1995-2001)のチャプター18に記載されるものが挙げられる。
【0127】
[0108] 好ましい実施形態では、本発明のタンパク質(その断片及びバリアントを含む)は、細胞ベースの技術及び無細胞技術を含む組換えDNA技術の使用によって生成される。組換え技術は、当該技術分野において知られている。適切な組換え技術の例としては、Sambrook et al(MOLECULAR CLONING. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, 1989)のセクション16及び17、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY Eds. Ausubel et al(John Wiley & Sons Inc NY, 1995-1999)のチャプター10及び16、及びCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY Eds. Coligan et al(John Wiley & Sons Inc NY, 1995-1999)のチャプター1、5及び6に記載されるものが挙げられる。
【0128】
[0109] いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質又はその断片若しくはバリアントは、投与に対する適合性を高めるために、すなわち、共有結合が組成物の活性を妨げないように任意の種類の分子を組成物に共有結合させることによって修飾され得る。例えば、限定としてではないが、誘導体には、特に、グリコシル化、脂質化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への連鎖などによって修飾された組成物が含まれる。多数の化学修飾はいずれも、特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含むがこれらに限定されない既知の技術によって行うことができる。さらに、誘導体は、タンパク質を構成しない1つ又は複数のアミノ酸を含有することができる。
【0129】
[0110] いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質又はその変数の断片(fragments of variables)は、化学リンカーなどのエフェクター部分、例えば、蛍光色素、酵素、基質、生物発光物質、放射性物質、及び化学発光部分などの検出可能な部分、又は例えば、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチン、細胞毒、細胞傷害性薬剤、及び放射性物質などの機能性部分を付加するように修飾され得る。
【0130】
[0111] 本発明のタンパク質(その断片又はバリアントを含む)が組換えDNA技術によって調製される実施形態では、タンパク質は、タンパク質をコードする核酸配列から調製され得る。
【0131】
核酸
[0112] したがって、本発明は、本明細書に記載される本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。適切には、核酸は、単離された、精製された、又は実質的に精製された形態で提供され得る。
【0132】
[0113] 本発明の核酸は、本発明のタンパク質をコードし、適切な条件下で本発明のタンパク質の1つとして発現されることが可能である、オープンリーディングフレームを有するものを含むDNA又はRNAの配列を含む。また「核酸」という用語は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、スプライスバリアント、アンチセンスRNA、RNAi、1つ又は複数の一塩基多型(SNP)を含むDNA、及び対象核酸配列を含むベクターも包含する。またこの用語には、本発明のタンパク質をコードする核酸と相同であるか、又は実質的に同様であるか、又は同一である核酸も包含される。したがって、対象発明は、対象タンパク質をコードする遺伝子、及びそのホモログを提供する。
【0133】
[0114] 本発明の核酸又はポリヌクレオチドは、任意の長さのヌクレオチドの高分子形態を指す。核酸又はポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、及び/又はそれらの類似体若しくは誘導体を含有することができる。例えば、核酸は、当該技術分野において知られているように、天然に存在するDNA又はRNAでああってもよいし、或いは合成類似体であってもよい。また本発明のポリヌクレオチドは、ゲノムDNA、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、調節配列、又はプロモーター、エンハンサー、開始及び終結領域、他の制御領域、発現調節因子、並びに発現制御などの調節要素;1つ又は複数の一塩基多型(SNP)、対立遺伝子バリアント、任意の配列の単離DNA、及びcDNAを含むDNA;mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、スプライスバリアント、アンチセンスRNA、アンチセンスコンジュゲート、RNAi、及び任意の配列の単離RNA;組換えポリヌクレオチド、異種ポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、標識ポリヌクレオチド、ハイブリッドDNA/RNA、ポリヌクレオチド構築物、対象核酸を含むベクター、核酸プローブ、プライマー、及びプライマー対も包含する。
【0134】
[0115] 本発明の核酸は、メチル化核酸分子、ペプチド核酸、及び核酸分子類似体などの、骨格、糖、又は複素環塩基の改変を伴う修飾された核酸分子を包含し、これは、アッセイ条件下で優れた安定性及び/又は結合親和性を示す場合に、例えばプローブとして適切であり得る。またこれらは、DNA、RNA、又はハイブリッドDNA/RNAのいずれかであり、全長遺伝子又はその生物学的に活性な断片をコードし得る、一本鎖、二本鎖、及び三重らせん分子も包含する。
【0135】
[0116] 本発明の核酸には、一塩基多型が含まれる。一塩基多型(SNP)は、真核生物のゲノムにおいて頻繁に発生する。種の1つの個体から決定されるヌクレオチド配列は、集団内に存在する他の対立遺伝子形態とは異なり得る。本発明は、このようなSNPを包含する。対象ポリヌクレオチドには、本明細書に記載されるポリペプチドのバリアントをコードするものが含まれる。したがって、いくつかの実施形態では、対象核酸は、本明細書に記載されるポリペプチドと比較して、挿入、欠失、又は置換を含むバリアントタンパク質をコードする。保存的アミノ酸置換には、本明細書に記載されるように、セリン/スレオニン、バリン/ロイシン/イソロイシン、アスパラギン/ヒスチジン/グルタミン、グルタミン酸/アスパラギン酸などが含まれる。
【0136】
[0117] 変異体タンパク質を生成するための、挿入、欠失及び/又は置換などによる天然のアミノ酸配列の改変は、当業者に知られている様々な手段によって行うことができる。例えば、部位特異的な変異は、修飾部位を含む合成オリゴヌクレオチドを発現ベクターに連結することによって導入することができる。Walder et al., Gene 42: 133 (1986);Bauer et al., Gene 37: 73 (1985);Craik, Biotechniques, 12-19 (January 1995);並びに米国特許第4,518,584号及び同第4,737,462号に開示されるような、オリゴヌクレオチド指向性の部位特異的変異誘発手順も使用することができる。
【0137】
[0118] また本発明は、本明細書に記載される本発明の核酸を含むベクター又は発現構築物も提供する。
【0138】
[0119] また本発明は、本明細書に記載される本発明の核酸又は本発明のベクター若しくは発現構築物を含む細胞も提供する。適切には、細胞は、単離された細胞であり得る。
【0139】
生成方法
[0120] また本発明は、細胞が組換えタンパク質を発現できるようにする条件下で、本明細書に記載される本発明の細胞をインキュベートすることを含む、本発明の組換えタンパク質の調製方法も提供する。
【0140】
[0121] 核酸は、例えば、ベクター又は発現構築物を原核生物又は真核生物の宿主細胞に挿入することによる組換えタンパク質の生成のために、適切なベクター又は発現構築物に挿入され得る。組換えタンパク質の発現の成功には、発現ベクターが、発現のために使用される特定の宿主細胞系と適合性であり、それによって認識される、転写及び翻訳に必要な調節要素を含有することが必要とされる。バクテリオファージベクター、プラスミドベクター、又はコスミドDNAで形質転換された細菌;酵母ベクターを含有する酵母;真菌ベクターを含有する真菌;ウィルス(例えば、バキュロウィルス)に感染した昆虫細胞株;及びプラスミド又はウィルス発現ベクターでトランスフェクトされるか、或いは組換えウィルス(例えば、ワクシニアウィルス、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、レトロウィルスなど)に感染した哺乳類細胞株を含むがこれらに限定されない、様々な宿主細胞系が組換えタンパク質を発現させるために利用され得る。
【0141】
[0122] 分子生物学の技術分野で知られている方法を用いて、種々のプロモーター及びエンハンサーを発現ベクターに組み込み、組換えタンパク質の発現を増大させることができるが、ただし、アミノ酸配列の発現の増大は、使用される特定の宿主細胞系に適合する(例えば、無毒である)ことを条件とする。
【0142】
[0123] プロモーターの選択は、使用される発現系に依存する。プロモーターは、強度、すなわち転写を促進する能力が異なる。一般に、高レベルのコードヌクレオチド配列の転写、及び組換えタンパク質への発現を得るために、強力なプロモーターを使用することが望ましい。例えば、大腸菌(E. coli)を含む宿主細胞系において高レベルの転写が観察されている、当該技術分野において知られている細菌、ファージ、又はプラスミドプロモーターは、lacプロモーター、trpプロモーター、recAプロモーター、リボソームRNAプロモーター、P及びPプロモーター、lacUV5、ompF、bla、lppなどを含み、アミノ酸配列をコードする挿入されたヌクレオチド配列の転写を提供するために使用され得る。
【0143】
[0124] 効率的な転写又は翻訳のための他の制御要素には、エンハンサー、及び調節シグナルが含まれる。エンハンサー配列は、近くのコードヌクレオチド配列に関するその位置及び方向性とは比較的無関係な形で転写効率を増大させると思われるDNA要素である。したがって、使用される宿主細胞発現ベクター系に応じて、エンハンサーは、転写効率を増大するために挿入されたコード配列から上流側又は下流側のいずれかに配置され得る。転写又は翻訳開始シグナルなどの他の調節部位は、コード配列の発現を調節するために使用することができる。
【0144】
[0125] 組換えタンパク質の場合、それをコードする核酸は、発現構築物又はベクターにクローニングすることができ、これは次に、大腸菌(E. coli)細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は哺乳類細胞などの宿主細胞、例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞、又は他ではタンパク質を産生しない骨髄腫細胞にトランスフェクトされる。タンパク質を発現させるために使用される例示的な細胞は、CHO細胞、骨髄腫細胞又はHEK細胞である。好ましい実施形態では、細胞は、哺乳類細胞、特にHEK293F細胞などのHEK細胞、又はCHO細胞である。これらの目的を達成するための分子クローニング技術は当該技術分野で知られており、例えば、Ausubel et al., (editors), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience(1988年、現在までの全ての更新を含む)又はSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載されている。様々な種類のクローニング及びインビトロ増幅方法が、組換えの核酸の構築に適している。
【0145】
[0126] 本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語はその最も広い文脈で解釈されるべきであり、例えば、発生刺激及び/又は外部刺激に応答して、或いは組織特異的に核酸の発現を変化させる付加的な調節要素(例えば、上流活性化配列、転写因子結合部位、エンハンサー及びサイレンサー)の有無に関わらず、正確な転写開始に必要とされるTATAボックス又は開始剤要素を含むゲノム遺伝子の転写調節配列が含まれる。この文脈において、「プロモーター」という用語は、それが動作可能に連結された核酸の発現を付与、活性化又は増強する、組換え核酸、合成核酸若しくは融合核酸、又は誘導体を説明するためにも使用される。例示的なプロモーターは、前記核酸の発現をさらに増強するため、及び/又は空間的発現及び/又は時間的発現を変化させるために、1つ又は複数の特定の調節要素の付加的なコピーを含有することができる。
【0146】
[0127] 本明細書で使用される場合、「動作可能に連結された」という用語は、核酸の発現がプロモーターにより制御されるように核酸に対してプロモーターを配置することを意味する。
【0147】
[0128] 細胞内での発現のための多数のベクターが利用可能である。ベクター成分には一般に、以下のうちの1つ又は複数:シグナル配列、タンパク質をコードする配列(例えば、本明細書に提供される情報から得られる)、エンハンサー要素、プロモーター、及び転写終結配列が含まれるが、これらに限定されない。当業者は、タンパク質の発現に適した配列を認識するであろう。例示的なシグナル配列としては、原核生物分泌シグナル(例えば、pelB、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、又は熱安定性エンテロトキシンII)、酵母分泌シグナル(例えば、インベルターゼリーダー、α因子リーダー、又は酸性ホスファターゼリーダー)、又は哺乳類分泌シグナル(例えば、単純ヘルペスgDシグナル、又はヒト免疫グロブリンG(IgG)シグナル)が挙げられる。適切なシグナル配列の付加的な例としては、以下の表5に記載されるものが挙げられる。
【0148】
【表24】
【0149】
[0129] いくつかの実施形態では、配列番号54~69のいずれか1つのシグナル配列は、本発明のタンパク質(その断片及びバリアントを含む)のいずれか1つの発現のために適切に使用される。例えば、配列番号54~69のいずれか1つのシグナル配列は、配列番号1~20のいずれか1つのアミノ酸配列、又は配列番号21~53のいずれか1つのヌクレオチド配列によってコードされた組換えタンパク質を含む、単離、組換え又は合成タンパク質の発現のために適切に使用され得る。
【0150】
[0130] 特定の実施形態では、以下のうちの1つ又は複数が適用される:
- 配列番号54のシグナル配列は、配列番号11のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される;
- 配列番号55のシグナル配列は、配列番号10のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される;
- 配列番号56のシグナル配列は、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される;
- 配列番号57のシグナル配列は、配列番号9のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される;
- 配列番号58のシグナル配列は、配列番号13のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される;
- 配列番号59のシグナル配列は、配列番号20のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される;
- 配列番号60のシグナル配列は、配列番号2のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される;
- 配列番号61のシグナル配列は、配列番号6のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される;
- 配列番号62のシグナル配列は、配列番号8のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される;
- 配列番号63のシグナル配列は、配列番号7のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される;
- 配列番号64のシグナル配列は、配列番号14のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される;
- 配列番号65のシグナル配列は、配列番号19のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される;
- 配列番号66のシグナル配列は、配列番号15のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される;
- 配列番号67のシグナル配列は、配列番号16のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される;
- 配列番号68のシグナル配列は、配列番号17のアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される;
- 配列番号69のシグナル配列は、配列番号1~20のいずれか1つのアミノ酸配列を含むタンパク質の発現のために使用される。
【0151】
[0131] 哺乳類細胞において活性な例示的なプロモーターとしては、サイトメガロウィルス最初期プロモーター(CMV-IE)、ヒト伸長因子1-αプロモーター(EF1)、核内低分子RNAプロモーター(U1a及びU1b)、α-ミオシン重鎖プロモーター、サルウィルス40プロモーター(SV40)、ラウス肉腫ウィルスプロモーター(RSV)、アデノウィルス主要後期プロモーター、β-アクチンプロモーター;CMVエンハンサー/β-アクチンプロモーター若しくは免疫グロブリンプロモーター又はそれらの活性断片を含むハイブリッド調節要素が挙げられる。有用な哺乳類宿主細胞株の例としては、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎臓株(浮遊培養における成長のためにサブクローニングされた293又は293細胞;ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);又はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)が挙げられる。
【0152】
[0132] 酵母細胞、例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びS.ポンベ(S. pombe)を含む群から選択される酵母細胞などにおける発現に適した典型的なプロモーターには、ADH1プロモーター、GAL1プロモーター、GAL4プロモーター、CUP1プロモーター、PHO5プロモーター、nmtプロモーター、RPR1プロモーター、又はTEF1プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0153】
[0133] 単離核酸又はそれを含む発現構築物を発現のために細胞に導入するための手段は、当業者に知られている。所与の細胞のために使用される技術は、既知の成功した技術に依存する。組換えDNAを細胞に導入するための手段には、特に、マイクロインジェクション、DEAE-デキストランにより媒介されるトランスフェクション、リポフェクタミン(Gibco, MD, USA)及び/又はセルフェクチン(Gibco, MD, USA)の使用などによるリポソームにより媒介されるトランスフェクション、PEGに媒介されるDNA取込み、エレクトロポレーション、並びにDNA被覆タングステン又は金粒子(Agracetus Inc., WI, USA)の使用などによる微粒子照射が含まれる。
【0154】
[0134] タンパク質を生成するために使用される宿主細胞は、使用される細胞の種類に応じて様々な培地中で培養され得る。Ham’s Fl0(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMl-1640(Sigma)、及びダルベッコ変法イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地が、哺乳類細胞を培養するのに適している。本明細書で議論される他の細胞の種類を培養するための培地は、当該技術分野において知られている。
【0155】
[0135] また本発明は、本発明のタンパク質を単離する(又は精製する若しくは実質的に精製する)ための方法も提供する。タンパク質を単離する方法は、当該技術分野において知られている。
【0156】
[0136] 本発明のタンパク質が培地中に分泌される場合、このような発現系からの上清はまず、市販のタンパク質濃縮フィルタ、例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外ろ過装置を用いて濃縮され得る。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤は、タンパク質分解を阻害するために上記ステップのいずれかに含めることができ、外来性の汚染物質の増殖を阻害するために抗生物質が包含され得る。或いは、又はさらに、上清は、例えば連続遠心分離を用いて、タンパク質を発現する細胞からろ過及び/又は分離することができる。
【0157】
[0137] 本発明の細胞から調製されたタンパク質は、例えば、イオン交換、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、アフィニティクロマトグラフィ(例えば、プロテインAアフィニティクロマトグラフィ又はプロテインGクロマトグラフィ)、又は上記のものの任意の組合せを用いて精製することができる。これらの方法は当該技術分野において知られており、例えば、国際公開第99/57134号、又はEd Harlow and David Lane (editors) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)に記載されている。
【0158】
[0138] 当業者は、タンパク質が、精製又は検出を容易にするためのタグ、例えば、ポリペプチドタグ、例えば、ヘキサヒスチジンタグなどのポリヒスチジンタグ、又はmycタグ、又はインフルエンザウィルス血球凝集素(HA)タグ、又はサルウィルス5(V5)タグ、又はFLAGタグ、又はグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグを含むように修飾され得ることも認識するであろう。得られたタンパク質は次に、アフィニティ精製などの当該技術分野で知られている方法を用いて精製される。例えば、hexa-hisタグを含むタンパク質は、タンパク質を含むサンプルを、固体又は半固体支持体に固定化されたhexa-hisタグに特異的に結合するニッケル-ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)と接触させ、結合していないタンパク質を除去するためにサンプルを洗浄し、続いて結合したタンパク質を溶出させることによって精製される。或いは、又は加えて、タグに結合するリガンド又は抗体は、アフィニティ精製法で使用される。
【0159】
[0139] 当業者は、「SPYCATCHER」及び/又はSPYTAG配列モチーフの使用、並びにブテラーゼ、アスパラギニルペプチダーゼ又はソルターゼの使用を含むがこれらに限定されない、酵素的ライゲーションを可能にする適切なタグに使用にも詳しいであろう。
【0160】
医薬組成物
[0140] また本発明は、本明細書に記載される本発明のタンパク質と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる医薬組成物も提供する。
【0161】
[0141] 本明細書で使用される場合、本発明の医薬組成物との関連での「から本質的になる」及び「からなる」という用語は、組成物が組成物中で規定されるもの以外の任意の付加的な活性剤を含まないことを意味すると理解されるであろう。
【0162】
[0142] 適切には、医薬組成物は、適切な薬学的に許容される担体を含む。好ましくは、薬学的に許容される担体は、哺乳類、特にヒトへの投与に適している。
【0163】
[0143] 本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、局所投与又は全身投与において安全に使用され得る、固体若しくは液体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、又はカプセル化物質を指す。担体は、組成物の他の成分と適合性であり、そのレシピエントにとって有害でないという意味で「許容され」なければならない。
【0164】
[0144] 医薬組成物は、特定の経路による投与のために適切に配合され得る。適切な投与経路には、経口、直腸、経粘膜、経皮、及び非経口投与が含まれる。いくつかの実施形態では、組成物は、経口投与、頬側若しくは舌下投与などの局所投与、経鼻投与、直腸内投与、経皮投与、又は皮下、筋肉内、腹腔内若しくは静脈内投与などの非経口投与のために配合される。好ましい実施形態では、組成物は、非経口投与、特に、皮下又は腹腔内投与のために配合される。
【0165】
[0145] 医薬製剤には、経口、直腸、経鼻、局所(頬側及び舌下を含む)若しくは非経口(筋肉内、皮下及び静脈内を含む)投与に適したもの、又は吸入若しくはガス注入による投与に適した形態のものが含まれる。したがって、本発明のタンパク質は、従来のアジュバント、担体、賦形剤、又は希釈剤と一緒に、医薬組成物及びその単位剤形の形態に入れることができ、このような形態において、全て経口使用のために、錠剤若しくは充填カプセルなどの固体、又は溶液、懸濁液、エマルション、エリキシル剤などの液体、又はそれが充填されたカプセルとして使用されてもよいし、直腸投与のための坐薬の形態において使用されてもよいし、或いは非経口(皮下を含む)使用のための無菌注射用溶液の形態において使用されてもよい。このような医薬組成物及びその単位剤形は、付加的な活性化合物又は成分の有無にかかわらず、従来の割合の従来の成分を含んでいてもよく、このような単位剤形は、使用される所期の1日投与量範囲に釣り合った、任意の適切な有効量の活性成分を含有し得る。本発明のタンパク質は、様々な種類の非経口剤形で投与することができる。以下の剤形が、活性成分として本発明のタンパク質(その断片又はバリアントを含む)又はタンパク質の薬学的に許容される誘導体のいずれかを含み得ることは、当業者には明らかであろう。
【0166】
[0146] 本発明のタンパク質から医薬組成物を調製するために、薬学的に許容される担体は、固体又は液体のいずれかであり得る。固体調製物には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、カシェ剤、坐薬、及び分散性顆粒が含まれる。固体担体は、希釈剤、香味料、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料としても作用し得る1つ又は複数の物質であり得る。
【0167】
[0147] 粉末では、担体は、微粉化した活性成分との混合物である微粉化固体である。
【0168】
[0148] 錠剤では、活性成分は、必要な結合能力を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。
【0169】
[0149] 粉末及び錠剤は、好ましくは、5又は10~約70パーセントの活性化合物を含有する。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどである。「調製物」という用語は、カプセルを提供する担体としてのカプセル化材料を伴った活性化合物の製剤を含むことが意図され、ここで、活性成分は、担体の有無に関係なく担体によって取り囲まれており、したがって担体と関連される。同様に、カシェ剤及びロゼンジが含まれる。錠剤、粉末、カプセル、丸薬、カシェ剤、及びロゼンジは、経口投与に適した個体形態として使用することができる。
【0170】
[0150] 坐薬を調製するために、脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物などの低融点ワックスがまず溶解され、活性成分が攪拌などによってその中に均一に分散される。次に、溶融した均質な混合物を都合のよい大きさの型に注ぎ、冷却させ、それにより凝固させる。
【0171】
[0151] 液体形態調製物には、溶液、懸濁液、及びエマルション、例えば、水又は水-プロピレングリコール溶液が含まれる。例えば、非経口注射液体調製物は、ポリエチレングリコール水溶液中の溶液として配合され得る。
【0172】
[0152] したがって、本発明に従うタンパク質は、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射又は持続注入による)のために配合することができ、アンプル、予め充填されたシリンジ、少量輸液中の単位用量形態で、又は保存剤が添加された複数用量容器で提示され得る。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルションのような形態をとることができ、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの配合剤を含有し得る。或いは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば無菌のパイロジェンフリー水により構成するために、無菌固体の無菌単離によって、又は溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末形態であってもよい。
【0173】
[0153] 経口使用に適した水溶液は、活性成分を水中に溶解させ、必要に応じて適切な着色剤、香味剤、安定剤及び増粘剤を添加することによって調製することができる。
【0174】
[0154] 経口使用に適した水性懸濁液は、天然若しくは合成ガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又は他の周知の懸濁剤などの粘性材料と共に微粉化した活性成分を水中に分散させることによって作ることができる。
【0175】
[0155] 使用直前に経口投与のための液体形態調製物に変化されることが意図される固体形態調製物も含まれる。このような液体形態には、溶液、懸濁液、及びエマルションが含まれる。これらの調製物は、活性成分に加えて、着色剤、香味剤、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有し得る。
【0176】
[0156] 表皮への局所投与のために、本発明に従うタンパク質は、軟膏、クリーム若しくはローションとして、又は経皮パッチとして配合され得る。軟膏及びクリームは、例えば、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤の添加により、水性又は油性基剤と共に配合され得る。ローションは、水性又は油性基剤と共に配合することができ、一般に、1つ又は複数の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、又は着色剤も含有し得る。
【0177】
[0157] 口内での局所投与に適した製剤には、風味付けした基剤中、通常、スクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性剤を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアなどの不活性基剤中に活性成分を含む香錠;並びに適切な液体担体中に活性成分を含むマウスウォッシュが含まれる。
【0178】
[0158] 溶液又は懸濁液は、従来の手段によって、例えばスポイト、ピペット又はスプレーを用いて、鼻腔に直接適用される。製剤は、単一又は複数用量形態で提供され得る。スポイト又はピペットの後者の場合、これは、適切な所定容量の溶液又は懸濁液を患者が投与することによって達成され得る。スプレーの場合、これは、例えば、計量噴霧スプレーポンプによって達成され得る。経鼻送達及び保持を改善するために、本発明に従うタンパク質は、シクロデキストリンによってカプセル化されてもよいし、或いは鼻粘膜における送達及び保持を増強することが予想されるそれらの薬剤と共に配合されてもよい。
【0179】
[0159] 呼吸器への投与は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、若しくはジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガスなどの適切な噴射剤を含む加圧パック中で活性成分が提供されるエアロゾル製剤によって達成されてもよい。エアロゾルは、都合よく、レシチンなどの界面活性剤を含有していてもよい。薬物の用量は、定量バルブを備えることによって制御され得る。
【0180】
[0160] 或いは、活性成分は、乾燥粉末の形態、例えば、適切な粉末基剤、例えば、ラクトース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドン(PVP)などのデンプン誘導体中の活性化合物の粉末混合物の形態で提供され得る。
【0181】
[0161] 好都合なことに、粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成し得る。粉末組成物は、単位用量形態、例えば、カプセル若しくはカートリッジ(例えば、ゼラチン製)、又はブリスターパックで提示されてもよく、粉末は、そこから吸入器によって投与され得る。
【0182】
[0162] 鼻腔内製剤を含む、呼吸器への投与を意図した製剤では、活性化合物は一般に、例えば1~10ミクロン以下の程度の小さい粒径を有する。このような粒径は、当該技術分野において知られている手段、例えば微粉化によって得ることができる。
【0183】
[0163] 所望される場合、活性成分の持続放出を与えるように適合された製剤も使用され得る。
【0184】
[0164] 医薬品は、単位剤形であり得る。このような形態では、調製物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に細分される。単位剤形はパッケージ化された調製物であってもよく、パッケージは、個別の量の調製物を含有し、例えば、パケット錠剤、カプセル、及びバイアル又はアンプル中の粉末である。また、単位剤形は、カプセル、錠剤、カシェ剤、又はロゼンジ自体であってもよいし、或いはこれらのいずれかを適切な数でパッケージ化した形態であってもよい。
【0185】
[0165] 医薬組成物はさらに、本発明のタンパク質以外の付加的な活性剤を含み得る。適切な付加的な活性剤の例としては、炎症状態の処置において有用な薬剤(抗炎症薬)、及び自己免疫状態の処置において有用な薬剤(免疫抑制剤)が挙げられる。
【0186】
[0166] また本発明は、本明細書に記載される本発明のタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアント、又は本明細書に記載される医薬組成物と、付加的な活性剤とを含むキットも提供する。いくつかの実施形態では、付加的な活性剤は、炎症状態の処置において有用な薬剤、及び自己免疫状態の処置において有用な薬剤から選択される。
【0187】
使用方法
[0167] 本明細書に記載される本発明のタンパク質は、炎症状態又は自己免疫状態の処置において有用であり得る。
【0188】
[0168] したがって、本発明は、炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防するための方法であって、本明細書に記載される本発明のタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアント、又は本明細書に記載される医薬組成物を、それを必要としている対象に投与することを含み、それにより、対象の炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防する方法を提供する。
【0189】
[0169] また本発明は、対象の炎症状態又は自己免疫状態の処置又は予防のための方法であって、
- 炎症状態又は自己免疫状態を有する対象を特定するステップと、
- 治療的に有効な量の本明細書に記載される本発明のタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアント、又は本明細書に記載される医薬組成物を、それを必要としている対象に投与するステップと
を含み、それにより、対象の炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防する方法も提供する。
【0190】
[0170] また本発明は、炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防するための薬剤の製造における、本明細書に記載されるタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントの使用も提供する。
【0191】
[0171] また本発明は、炎症状態又は自己免疫状態を処置又は予防するのに使用するための、本明細書に記載されるタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントも提供する。
【0192】
[0172] 本発明の方法及び使用はさらに、本発明のタンパク質以外の付加的な活性剤を投与することを含み得る。適切な活性剤の例としては、炎症状態の処置において有用な薬剤(抗炎症薬)、及び自己免疫状態の処置において有用な薬剤(免疫抑制剤)が挙げられる。
【0193】
[0173] 付加的な活性剤及び本発明のタンパク質(その断片又はバリアントを含む)は、単一の組成物中又は別々の組成物中で一緒に投与され得る。したがって、いくつかの実施形態では、付加的な活性剤及び本発明のタンパク質は、本明細書に記載される医薬組成物などの単一の組成物中で投与される。他の実施形態では、付加的な活性剤及び本発明のタンパク質は、別々の組成物中で同時又は連続的に投与される。付加的な活性剤及び本発明のタンパク質は、異なる時間及び異なる頻度で投与され得るが、組み合わせにおいて、これらは同時に又は重複した時間で生物学的効果を発揮する。
【0194】
[0174] 本明細書で使用される場合、「炎症状態」という用語は、炎症を特徴とする状態、障害又は疾患を指す。炎症の症状は、発赤、腫脹、熱、痛み及び機能喪失を含み得る。炎症状態の例としては、潰瘍性大腸炎及びクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、2型糖尿病、並びに喘息が挙げられる。
【0195】
[0175] 本明細書で使用される場合、「自己免疫状態」という用語は、体の免疫系が誤って自身の体の細胞を攻撃し、結果として異常免疫応答が引き起こされる状態、障害又は疾患を指す。自己免疫状態は遺伝的なこともあり、及び/又は環境因子、例えば感染及び薬物を含む化学物質によって起こることもある。自己免疫状態の例としては、関節リウマチ、ループス、食物アレルギーを含むアレルギー、及びセリアック病を含む胃腸系の自己免疫疾患が挙げられる。自己免疫状態が炎症状態でもあり得ることは認識されるであろう。
【0196】
[0176] 本明細書で使用される場合、対象を「処置する」又は対象の「処置」という用語は、疾患若しくは状態に関連する炎症、又は疾患若しくは状態の症状を遅延させる、遅くする、安定化させる、治す、治癒させる、軽減する、緩和する、変化させる、治療する、悪化を少なくする、改善する、改良する、又は影響を与えることを目的として、本発明のタンパク質(又はその断片若しくはバリアント)又は本明細書に記載される組成物を対象に投与することを含む。「処置する」という用語は、傷害、病態又は状態の処置又は改善における成功の任意の徴候を指し、軽減;寛解;悪化速度の減少;疾患の重症度の低下;安定化、症状又は創傷の減少などの任意の客観的又は主観的なパラメータが含まれる。
【0197】
[0177] 本明細書で使用される場合、「予防する」又は「予防」という用語は、少なくとも、状態、障害又は疾患を獲得するリスクの可能性(又は感受性)を低減すること、すなわち、疾患に曝されるか又は疾患の素因のある可能性があるが、まだ疾患の症状を経験又は表示していない患者において、疾患の臨床症状の少なくとも1つを発生させないようにすることを指すことが意図される。
【0198】
[0178] 炎症状態の処置を必要としている対象は、炎症が関連する状態、障害又は疾患の種類に応じて、いくつかの症状を提示し得る。いくつかの実施形態では、処置を必要としている対象は、痛み、発赤、腫脹、疲労、発熱、発疹、胸痛、及び腹痛を含む症状を示し得る。
【0199】
[0179] 炎症の存在、炎症の改善、又は炎症の処置若しくは予防は、本明細書に記載されるか又は当該技術分野で知られている臨床的又は生化学的に関連する任意の方法によって決定され得る。関連する方法は、痛み、発赤、腫脹、疲労、発熱、発疹、胸痛、及び腹痛を含む症状の測定であり得る。改善、処置又は予防は、対象又は対象からのサンプル若しくは生検から直接決定され得る。サンプル又は生検は、炎症を起こした組織又は罹患組織のものであり得る。この場合、処置の成功の指標として、処置の前及び後に炎症促進性サイトカイン及び/又は抗炎症性サイトカインのレベルが測定され得る。炎症性白血球の存在は、さらに別の指標であり得る。いくつかの実施形態では、未処置の組織と比較したIFN-γ、TNF-α、IL-17Aのうちの1つ又は複数のレベルの低下は、炎症の減少又は抗炎症反応の指標であり得ることが理解されるであろう。
【0200】
[0180] 自己免疫状態の処置を必要としている対象は、炎症が関連する状態、障害又は疾患の種類に応じて、いくつかの症状を提示し得る。症状は、罹患部位、疾患の原因物質及び個人によって異なる。初期の自己免疫疾患の症状には、疲労、発熱、倦怠感、関節痛及び発疹が含まれる。自己免疫疾患は通常、病歴、血液検査(自己抗体、炎症、臓器機能を評価するため)、並びに罹患組織のx線及び生検などの他の検査の組合せを用いて診断される。
【0201】
[0181] 自己免疫性の存在、自己免疫性の改善、又は自己免疫性の処置若しくは予防は、本明細書に記載されるか又は当該技術分野で知られている臨床的又は生化学的に関連する任意の方法によって決定され得る。関連する方法は、炎症、疲労、発熱、発疹及び痛みを含む症状の測定であり得る。改善、処置又は予防は、対象又は対象からのサンプル若しくは生検から直接決定され得る。サンプル又は生検は、罹患組織のものであり得る。この場合、処置の成功の指標として、処置の前及び後に免疫細胞及び分子(例えば、抗原)のレベルが測定され得る。炎症促進性サイトカイン、抗炎症性サイトカイン及び/又は炎症性白血球の存在は、さらに別の指標であり得る。いくつかの実施形態では、未処置の組織と比較した自己抗体のレベルの低下は、免疫応答の低下の指標であり得ることが理解されるであろう。
【0202】
[0182] いくつかの実施形態では、本発明の方法は、治療的又は予防的に有効な量の本明細書に記載される本発明のタンパク質又は本明細書に記載される医薬組成物を投与することを含む。
【0203】
[0183] 本明細書で使用される場合、「治療的に有効な量」という用語は一般に、(i)特定の状態、障害又は疾患を処置する、(ii)特定の状態、障害又は疾患の1つ又は複数の症状を軽減、改善、又は除去する、或いは(iii)本明細書に記載されるように、特定の状態、障害又は疾患の1つ又は複数の症状の発症を遅延させる、本発明のタンパク質(又はその断片若しくはバリアント)などの活性剤の量を指すことが意図される。正確な用量は処置の目的に依存し、既知の技術を用いて当業者により確認できるであろう。当該技術分野で知られており、上で記載されるように、全身送達対局所送達、年齢、体重、一般的な健康、性別、食事、投与の時間、薬物相互作用、及び状態の重症度についての調整が必要なこともあり、当業者により日常的な実験を用いて確認できるであろう。
【0204】
[0184] 本明細書で使用される場合、「予防的に有効な量」という用語は、臨床状態の1つ又は複数の検出可能な症状の発症を予防する又は阻害する又は遅延させるのに十分な本発明のタンパク質(又はその断片若しくはバリアント)の量を指すことが意図される。当業者は、このような量が、例えば、特定の対象、及び/又は状態の種類若しくは重症度若しくはレベル、及び/又は状態に対する素因(遺伝的又はその他)に依存し得ることを認識するであろう。したがって、この用語は、本発明を特定の量、例えばペプチドの重量に限定すると解釈されるべきではなく、むしろ本発明は、対象において記載される結果を達成するのに十分な本発明のタンパク質の任意の量を包含する。
【0205】
[0185] 本発明のタンパク質の適切な投与量は、処置される特定の状態及び/又は処置される対象に応じて異なるであろう。適切な投与量を決定することは、例えば最適以下の投与量から開始し、最適又は有用な投与量を決定するために投与量を増加的に変更することにより、熟練した医師の能力の範囲内である。或いは、処置/予防に適した適切な投与量を決定するために、細胞培養アッセイ又は動物研究からのデータを使用することができ、ここで、適切な用量は、ほとんど又は全く毒性のない活性化合物のED50を含む循環濃度の範囲内である。投与量は、使用される剤形及び利用される投与経路に応じてこの範囲内で異なり得る。治療的/予防的に有効な用量は、最初に細胞培養アッセイから推定することができる。細胞培養で決定されるIC50(すなわち、症状の最大半量の阻害を達成する化合物の濃度又は量)を含む循環血漿濃度範囲を達成するような用量が、動物モデルにおいて配合され得る。このような情報を使用して、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィによって測定され得る。
【0206】
[0186] 通常、治療的に有効な投与量は、少なくとも約0.1%~約50%以上までの本発明のタンパク質の濃度(重量による)、並びにその範囲の全ての組合せ及び部分的組合せを含有するように配合される。本明細書に記載される医薬組成物は、本発明のタンパク質、又はその生物学的に活性な断片若しくはバリアントを、約0.1%超、例えば、約0.2、0.3、0.4又は0.5%から約40%未満、例えば、約39、38、37、36、35、34、33、32、31又は30%までの濃度を伴う、約0.1~約50%未満、例えば、約49、48、47、46、45、44、43、42、41又は40%までの濃度で含有するように配合することができる。例示的な組成物は、約0.5%超、例えば、約0.6、0.7、0.8、0.9又は1%から、約20%未満、例えば、約19、18、17、16、15、14、13、12、11又は10%までの濃度を伴う、約0.5%~約30%未満、例えば、約29、28、27、26、25、25、24、23、22、21又は20%までを含有することができる。組成物は、約2%超、例えば約3又は4%~約8%未満、例えば約7又は6%までの濃度を含む、約1%超、例えば約2%~約10%未満、例えば約9又は8%までを含有することができる。活性剤は、例えば、約5%の濃度で存在することができる。全ての場合において、量は、対象において処置される細胞又は組織に実際に送達される活性成分の量の違いを補償するように調整され得る。
【0207】
[0187] 本明細書に記載される本発明のタンパク質又は本明細書に記載される医薬組成物は、本明細書に記載される任意の経路によって投与されるか、又は投与のために配合され得る。本明細書で使用される場合、「投与される」という用語は、治療的に有効な用量の本発明のタンパク質の対象への投与を意味する。本明細書で使用される場合、「投与のために配合される」という用語は、治療的に有効な用量の本発明のタンパク質が、投与経路に適するような方法で配合されることを意味する。好ましい実施形態では、本発明のタンパク質(又は医薬組成物)は、非経口的に投与される。他の好ましい実施形態では、本発明のタンパク質(又は医薬組成物)は、非経口投与のために配合される。
【0208】
[0188] 本明細書に記載される本発明のタンパク質又は医薬組成物の投与の頻度は、1日1回、1日2回又は1日3回であり得る。処置期間は、検出可能な疾患の持続期間であり得る。
【0209】
[0189] いくつかの実施形態では、炎症状態又は自己免疫状態は、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、2型糖尿病、喘息、関節リウマチ、ループス、アレルギー、及びセリアック病から選択され、特に、炎症性腸疾患である。炎症状態が炎症性腸疾患である実施形態において、炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎又はクローン病であり得る。
【0210】
[0190] 炎症性腸疾患(IBD)は、消化管の慢性炎症性障害群である。大腸及び直腸の内層において長期にわたり炎症及び潰瘍を引き起こす潰瘍性大腸炎として発生することもあるし、或いは、口、食道、胃及び肛門などの罹患組織中に分散する消化管の内層の炎症を特徴とするクローン病として発生することもある。
【0211】
[0191] クローン病は、消化器系の内層における慢性炎症を特徴とする状態である。炎症の斑点は小さいこともあるし、或いは腸に沿ってかなり遠くまで広がっていることもあるし、或いは異なる場所にいくつかの斑点が存在することもある。典型的な症状には、トイレに行く緊急性を感じることが多く、そしてトイレに行きたいと感じるが通過するもののないことが多い再発性の下痢、通常食後に悪化する腹痛及び筋痙攣、極度の疲れ(疲労)及び/又は体重減少が含まれる。結腸鏡検査は、顕微鏡下での検査のための小さい組織サンプルの採取(生検)による診断に使用される。
【0212】
[0192] 潰瘍性大腸炎は、通常、直腸(肛門のすぐ内側にある大腸の部分)及び結腸の下方部分で起こる慢性炎症状態であるが、大腸(結腸)全体に影響を与え得る。結腸は炎症を起こし、この炎症が重度になると結腸の内層が破れ、潰瘍が形成され得る。潰瘍性大腸炎の診断は、炎症、貧血及びタンパク質レベルをチェックするための血液検査、感染をチェックする便サンプル、状態の程度を評価するのに役立つX線、直腸及び結腸の下方部分の炎症の程度を調べるためのS状結腸鏡検査、及び/又は結腸全体の内側を調べるための結腸鏡検査によって実施され得る。
【0213】
[0193] 過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛並びに交互の下痢及び便秘を含む、一緒に経験される症状群を特徴とする胃腸障害である。IBSの診断は、血液検査(セリアック病の血液検査を含む)、便検査、及び腸の検査(例えば、S状結腸鏡検査又は結腸鏡検査)によって診断され得る。
【0214】
[0194] 2型糖尿病は、体がインスリンの正常な効果に対して耐性になり、及び/又は膵臓で十分なインスリンを産生する能力が徐々に失われる、進行性の状態である。2型糖尿病は通常、インスリン抵抗性及びインスリン産生の低下との関連で、高血糖を特徴とする。2型糖尿病の症状は、過度の口渇、空腹感の増大、頻尿、倦怠感、及び創傷治癒の遅延を含み得る。2型糖尿病の診断は、血糖検査(空腹時又はランダム)によって実施され得る。
【0215】
[0195] 喘息は、気道が炎症を起こし、狭くなり、腫脹し、余分な粘液が生成される状態である。これにより、呼吸困難になり、胸痛、咳嗽及び喘鳴が起こり得る。診断は、症状のパターン及び治療への応答を経時的にモニターすること、そして完全吸気の後の最初の1秒で強制的に吐き出すことができる空気量(FEV1)を決定するための肺活量測定によって実施され得る。
【0216】
[0196] 関節リウマチ(RA)は、主に関節に影響を与える慢性自己免疫及び炎症状態であり、通常、関節の痛み及び腫脹を引き起こす。RAでは、免疫系は関節の内層を標的とし、炎症及び関節損傷を引き起こす。診断は、症状をモニターすることにより、そして炎症及び抗体、例えば抗環状シトルリン化ペプチド(抗CCP)の検出のための血液検査、並びにx線を含む種々の検査から実施され得る。
【0217】
[0197] ループスは、体の多数の様々な部分において炎症を引き起こし得る慢性自己免疫状態である。全身性エリテマトーデス(SLE)は、体のほとんど全ての臓器又は組織に影響を与え得るループスの1種である。一般的な症状は、関節及び筋肉の痛み、皮膚の発疹、発熱、及び疲労を含み得る。診断は、通常、抗核抗体(ANA)検査を含む血液検査によって実施され得る。
【0218】
[0198] アレルギーは、トリガー又はアレルゲンに対する免疫系の過敏症によって引き起こされる状態である。アレルギー状態の例としては、枯草熱、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹及びアレルギー性喘息が挙げられる。症状又はアレルギー反応は、そう痒、くしゃみ、呼吸困難、及びアナフィラキシーを含み得る。診断は、皮膚プリックテスト、パッチテスト、負荷試験、及び血液検査を含むアレルギー検査によって実施され得る。
【0219】
[0199] セリアック病は、主に小腸に影響を与える慢性自己免疫状態であり、グルテンへの反応によって引き起こされる。セリアック病は通常、遺伝的素因のある人々において発生する。症状には、通常、慢性下痢、腹部膨満、吸収不良、食欲不振、及び小児において正常に成長できないことを含む、胃腸の問題が含まれる。診断は、抗体検出のための血液検査、腸生検及び遺伝子検査を含む、検査の組合せによって実施され得る。
【0220】
[0200] 本発明のペプチドはヒトにおける用途を見出すが、本発明は獣医学の目的にも有用であることが理解されるであろう。したがって、全ての態様において、本発明は、ウシ、ヒツジ、ウマ及び家禽などの家畜;ネコ及びイヌなどのコンパニオンアニマル;及び動物園の動物に有用である。したがって、「対象」又は「処置される/処置されている対象」という一般的な用語は、炎症状態を有し得る全ての動物(ヒト、類人猿、イヌ、ネコ、ウマ、及び雌ウシなど)を含むと理解されるであろう。
【0221】
[0201] 本明細書において開示及び定義される本発明が、言及された又は本文若しくは図面から明らかである個々の特徴の2つ以上の全ての代替の組合せに及ぶことは理解されるであろう。これらの異なる組合せの全ては、本発明の種々の代替の態様を構成する。
【実施例
【0222】
実施例
実施例1.タンパク質コード遺伝子の選択
[0202] 配列番号1~20のタンパク質は、以下のバイオインフォマティクスワークフローを用いて、2つのデータセット入力、すなわちAdult ES Proteomeデータセット入力Mulvenna et al(Proteomic analysis of the excretory/secretory component of the blood-feeding stage of the hookworm, Ancylostoma caninum. Mol Cell Proteomics. 2009;8:109-21)と、Activated L3 SSH Transcriptomeデータベース入力Datu et al(Transcriptional Changes in the Hookworm, Ancylostoma caninum, during the Transition from a Free-Living to a Parasitic Larva. PLoS Negl Trop Dis. 2008:2(1):e130)とから特定されるタンパク質コード遺伝子から選択された。
【0223】
[0203] ステップ1-入力データセットからの遺伝子リストのコンパイリング:データセット1(Adult ES Proteome-Mulvenna et al)で特定されたタンパク質コード遺伝子は、NCBIデータベース(2007)から予測されるその遺伝子オントロジー(GO)に基づいた。
【0224】
[0204] データセット2(Activated L3 SSH Transcriptome-Datu et al)では、タンパク質コード遺伝子は、血清活性化L3におけるmRNAレベルでの上方制御に基づいて、mRNAレベルで特定された(Datu et al, Transcriptional Changes in the Hookworm, Ancylostoma caninum, during the Transition from a Free-Living to a Parasitic Larva. PLoS Negl Trop Dis. 2008:2(1):e130)。SSHにより検出されたLog2シグナル強度に従って、最も高発現のmRNAを優先させた。選択基準では、血清刺激で下方制御された全てのmRNAを除外した。Mulvenna et al及びDatu et alの研究が行われて以来、NCBI基準データベースは、ディープシーケンシング技術及びバイオインフォマティクス分析の進歩により、大幅に改善及び拡張されている。これらの研究では、各リードを他の寄生線虫及び自由生活線虫、例えばそれぞれ、ブルギア・マライイ(Brugia malayi)及びカエノルハブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)からの遺伝子モデルと比較したバイオインフォマティクスソフトウェアを用いて、タンパク質コード遺伝子を予測した(https://parasite.wormbase.org/Brugia_malayi_prjna10729/Info/Index/)、(https://www.pacb.com/auto_tags/c-elegans/)。
【0225】
[0205] 上記の初期研究が行われた後、続いて150万を超える発現配列タグ(EST;ランダムに選択されたcDNAクローンに由来する配列)がA.カニナム(A. caninum)の異なる発生段階から生成された(Wang Z et al, Characterizing Ancylostoma caninum transcriptome and exploring nematode parasitic adaptation. BMC Genomics. 2010 May 14;11:307)。したがって、続いて選択されたESTのblast比較を最新のデータベースに対して行い、より正確な予測遺伝子オントロジーを得た。174個のタンパク質コード遺伝子がステップ1で選択された。
【0226】
[0206] ステップ2-選択されたESTが全長配列かどうかの立証:ヌクレオチド配列データベース(nr/nt)のデフォルトパラメータを用いたNCBI BLASTxツールを使用して、選択された174個のESTが実際に全長であるかどうかを立証した(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE_TYPE=BlastSearch)。個々の翻訳配列クエリーを最新のタンパク質データベースに対して検索して、トップBLASTヒットと比較することにより配列が全長であるかどうかを確かめた。構築されたヌクレオチド配列の一部は5’末端で切断されていると思われ、或いはリーディングフレームシフトが観察されており、したがって、全長タンパク質コード遺伝子は存在しないことが明らかであった;結果として、これらのタンパク質の一部は、部分長EST配列としてフラグが付けられた。
【0227】
[0207] ステップ3-EST配列が定義されたシグナルペプチドを有するかどうかの立証:各EST配列は、NCBI(2016)の相同配列と比較することにより、定義されたN末端シグナルペプチド(SP)の存在についてクエリーが行われた。SPは、分泌経路を通って細胞外にタンパク質が輸送されるように誘導する。しかしながら、無細胞組換えタンパク質工学では、分泌経路を通って配列を誘導する能力が存在しないので、SPは冗長である。さらに、SPは、種々の細胞小器官及び細胞自体の膜を通って移行しやすくするために疎水性であり、これは、可溶性タンパク質が必要とされる組換えタンパク質発現では望ましくない特性である。N末端SPの存在、位置及び切断部位は、デフォルトパラメータによりSignalP 4.1 Serverを用いて、各クエリーESTに対して予測された(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)。SPを含有する近いホモログを含むクエリーEST配列はステップ9に進んだ。明らかなSPを含まないクエリーEST配列はどれもステップ4に進んだ。
【0228】
[0208] ステップ4-部分長転写物のマッピング:部分長転写物(定義された開始又は終止コドンを含まないか又は不明瞭なSP状態を有する)は、PacBio IsoseqシーケンシングのReads of Insert(RoI)にマッピングされた。このデータは、Washington University School of Medicine(St. Louis, U.S.A)のDr Makedonka Mitrevaとの共同研究によって獲得された。PacBio IsoSeqシーケンシング技術は、系統的バイアスが低く、コンセンサス精度が高い、最大10kbまでの長いシーケンシングリードを生成する(https://www.pacb.com/products-and-services/)。Pacific Biosciencesロングイード(long ead)シーケンシング技術(PacBio)の、部分長A.カニナム(A. caninum)ESTにマッピングされたリードが抽出された。クエリーESTは、HISAT2(https://bio.tools/HISAT2)を用いて、A.カニナム(A. caninum)基準アセンブリ及び遺伝子モデルに対してマッピングされた。転写物コンセンサス配列は、http://nematode.netで入手可能である。高品質PacBioリードは、A.カニナム(A. caninum)転写物データから抽出され、同じ基準に対してマッピングされた。ESTにより特定された遺伝子に対してマッピングされたA.カニナム(A. caninum)PacBio RoIのリストが作成され、FASTQデータが抽出された。
【0229】
[0209] ステップ5及び6-リードの取得:対象の18個のタンパク質コード遺伝子のうちの11個についてPacBioリードが得られた。A.カニナム(A. caninum)基準ゲノムアセンブリは、WormBase ParaSite(バージョン:WBPS11 - WS265- A_caninum_9.3.2.ec.cg.pg)から取得され、25,339個のコンティグを含有していた(バイオインフォマティクスワークフローのステップ6)。
【0230】
[0210] ステップ7及び8-基準ゲノムへのリードのアライメント、及び全長タンパク質コード配列の取得:PacBioリードは、デフォルトパラメータによりSTARトランスクリプトームアライナー(STAR_2.5.2b)を用いて基準ゲノムにアライメントされた(https://github.com/alexdobin/STAR)。予測される遺伝子モデルは、WormBase ParaSite(バージョン:WBPS11 - WS265)から得られ、30,198個の予測転写物を含有していた(https://parasite.wormbase.org/Ancylostoma_caninum_prjna72585/Info/Index/)。Integrative Genomic Viewer(IGV)ソフトウェア(バージョン2.3.72)を使用して、アライメントを調べ、さらにPacBioリードを6つのリーディングフレーム全てに翻訳し、次にこれを予測WormBase ParaSite遺伝子モデルアライメントと比較した(https://software.broadinstitute.org/software/igv/RelNotes2.3.x)。
【0231】
[0211] 50%を超えるケースで、PacBioリード転写物配列は、遺伝子モデルと一致しなかった。WormBase ParaSite予測遺伝子モデルと、実際のPacBioリード転写物との間で検出された相違には、転写物よりも短い切断タンパク質、エクソン境界の小さい変化、スキップされたエクソン及び新しいエクソンの検出が含まれた。
【0232】
[0212] 開始コドンの位置を検証した後、SignalPオンラインソフトウェアを用いて、開始コドンの後にSPが続いているかどうかを特定した。開始コドンの後にSPが続いていなければ、6つのフレーム全てを調べて、SPを位置付けるためにORFに変化があるかどうかを推定した。終止コドンの位置を決定し、非翻訳領域(UTR)も除外した。最終の全長タンパク質コード配列をステップ9に進めた。
【0233】
[0213] ステップ9-クローニングのためのオープンリーディングフレームの生成:特定された任意のSP及び終止コドンを対応するヌクレオチド配列から除去して、無細胞タンパク質発現用のプラスミドベクターへのクローニングのためのORFを生成した。
【0234】
実施例2.リーシュマニア・タレントラエ(Leishmania tarentolae)抽出物(LTE)系における無細胞ライセートタンパク質の産生
[0214] 選択されたタンパク質をコードするORFは、Protein CT Biotechnologiesによって合成され、pLTEベクターに連結された。James Cook University(JCU)において、pLTE DNAを増殖させ、無細胞ライセートタンパク質発現を最適化した。eGFP融合ライセートタンパク質の発現は、POLARstar(登録商標)Omega Plate Reader Spectrophotometerにおいて相対蛍光単位(RFU)で経時的にモニターした。101のLTE融合タンパク質の選択からのeGFP発現の検出。発現は、485nm励起及び520nm発光の波長範囲で、分単位の反応時間にわたる相対蛍光単位(RFU)で測定した。タンパク質の発現は、非変性無細胞ライセートのSDS-PAGE電気泳動によってさらに検証した。蛍光化タンパク質は、BIO-RAD(商標)VersaDoc Imaging Systemにおいて485nm励起~520nm発光フィルタを用いて可視化した。
【0235】
実施例3.非組換え無細胞ライセートのマウスへの投与
[0215] 鉤虫組換えタンパク質の精製を必要することなく、組換え無細胞ライセートがインビボで使用され得るかどうかを調べるために、トリニトロ安息香酸(TNBS)誘導性大腸炎を有するマウスに、腹腔内(i.p.)注射により陽性又は陰性のいずれかの非組換えライセートを投与した。マウスのTNBS誘導性大腸炎の測定パラメータに対して、陽性又は陰性の非組換えライセートのi.p.投与の明らかな効果はなかった。この結果は、鉤虫組換えタンパク質を含有する無細胞ライセートをインビボで試験するために、TNBS誘導性大腸炎モデルを使用する理論的根拠を強化した。
【0236】
実施例4.TNBS誘導性大腸炎モデルにおける組換えタンパク質ライセートの効果
[0216] TNBS誘導性大腸炎のマウスモデルにおいて、ライセートのインビトロ生物活性を事前に評価することなく、組換えタンパク質ライセートを直接評価した。ナイーブマウスはDPBSのみを投与され、対照マウスは非組換え無細胞ライセートの後にTNBSを投与され、残りの実験群は鉤虫組換えタンパク質ライセートの後にTNBSを投与された。TNBSによる大腸炎の誘導後に、マウスは、一貫性のない便形成、血性下痢及び劇的な体重減少などの急性大腸炎の種々の兆候を呈した。
【0237】
手順
リーシュマニア・タレントラエ(Leishmania tarentolae)発現(LTE)プロトコル
[0217] 鉤虫cDNAオープンリーディングフレーム(ORF)をプラスミドベクターpLTE eGFPにクローニングした。タンパク質をコードするORF配列をProtein CT Biotechnologiesに送り、遺伝子を合成した。5匹のマウスのそれぞれに100μLのLTEライセートを腹腔内(IP)注射できるようにするため、各組換えタンパク質の十分なライセート(600μL)を調製した。ライセート反応は、RNase/DNaseを含まない96ウェル培養プレートで実施した。420μLのライセートを1μgのDNA(50μg/mL)、1.5μLのRNAse OUTリボヌクレアーゼ阻害剤(最終濃度0.25%)に添加し、最終容積600μLになるまでMilliQ水を補給した。485nm励起及び520nm発光の波長範囲で、POLARstar Omega Plate Reader Spectrophotometer(BMG LABTECH)において、eGFP融合タンパク質の翻訳により生成される相対蛍光単位(RFU)を連続的に2時間モニターした。ライセート反応物を300gで1分間遠心分離し、ペレットを廃棄した。10μLの上清を、XCell SureLockae Mini-Cell Electrophoresis System(ThermoFisher Scientific)の12%SDS-PAGEゲルにロードし、PowerPac Basic Power Supply(BIO-RAD)を用いて、140ボルトに30分間さらした。485nm励起及び520nm発光の波長範囲でBIO-RAD VersaDoc Imaging Systemを用いて、eGFPタグ付き組換えタンパク質バンドにより放出される蛍光シグナルを可視化した。
【0238】
[0218] 以下のライセートを評価した:
ライセート2、本明細書に記載される配列番号6を含有する。
ライセート9、本明細書に記載される配列番号15を含有する。
ライセート11、本明細書に記載される配列番号17を含有する。
ライセート13、本明細書に記載される配列番号1を含有する。
ライセート15、本明細書に記載される配列番号13を含有する。
ライセート16、本明細書に記載される配列番号2を含有する。
ライセート17、本明細書に記載される配列番号19を含有する。
ライセート19、本明細書に記載される配列番号9を含有する。
【0239】
[0219] 以下のライセートも比較のために評価した:
ライセート10、表6に示される配列番号70を含有する。
ライセート12、表6に示される配列番号71を含有する。
ライセート14、表6に示される配列番号72を含有する。
ライセート20、表6に示される配列番号73を含有する。
【0240】
【表25】
【0241】
動物手順
[0220] 動物実験は全て、JCU Animal Ethics Committeeで承認されたプロジェクト#A2180に規定されるパラメータ下で実行した。5~6週齢のオスBALB/cマウスは、Animal Resource Centre(ARC)(Perth, Western Australia)から購入した。Cairnsに出荷する前に、マウスの体重を互いに1g以内に合わせた。JCUの動物の権利及び規制に従って、特定の病原体を含まない条件下でマウスを収容した(Cairns Campus)。全ての手順は、関連の取扱い手順で適切な訓練を受けた後に実施され、手順の記録は、施設の管理者によって保持された。施設に到着したら、健康状態及び体重についてマウスを評価した。その体重に基づいて、マウスを群に均等に分配し(n=5匹のマウス/群)、食物及び水に無制限にアクセスできるプラスチックケージに収容した。実験開始の前にマウスを7日間休ませた。各実験において、5匹のマウスの各群に、別個の鉤虫組換えタンパク質を含有する無細胞ライセートの注射を受けさせた。各実験は、100μLのDPBS(Gibco 14190144)が腹腔内(i.p.)経路で投与されたナイーブ群、GFPのみを発現する空のpLTEベクターを含有する無細胞ライセートを受けた陰性対照群、及びそれぞれ異なる鉤虫組換えライセートを受けた5~10の群を有した。TNBSの直腸内(IR)投与の20時間前に、実験群内の各動物に100μLのライセートをIP注射により投与した。
【0242】
[0221] 群の処置:
1. ナイーブ(DPBSのみ)n=5
2. TNBS+非組換え陰性対照(空のpLTEベクター)n=5
3+. TNBS+実験群(鉤虫組換えタンパク質を含むライセート)n=5。
【0243】
麻酔薬の調製
[0222] 麻酔薬は、無菌リン酸緩衝食塩水(DPBS)(Gibco)溶液中、6.25%のケタミン(塩酸塩として)(Ketamil;Provet)(50mg/kg)及び6.25%のキシラジン(2-2,6キシリジン-5,6ジヒドロ-4H-1,3-チアジン塩酸塩)(Xylazil;Provet)(5mg/kg)の濃度に無菌で調製し、マウス1匹につき200μLの用量でマウスに投与した。麻酔薬はその場で調製し、Queensland GovernmentからのDS4-DS8承認下で使用するまで4℃で貯蔵した。承認書のコピーは、JCU Australian Institute of Tropical Health and Medicineにより保管される。麻酔薬は安全な場所に保管され、全ての使用は薬物使用記録に記録された。
【0244】
TNBSのマウスへの投与
[0223] 層流キャビネット内で、腹膜の右下四半部において29ゲージ針により、マウスに200μLの麻酔薬溶液のi.p.注射を行った。この手順の間、襟首パッドを使用して動物を軽く拘束した。鎮静後、各マウスが刺激に反応しなくなったときに、そのベースライン体重を記録した。TNBS溶液の投与のために、マウスを逆さにし、潤滑剤(Durex K-Y Jelly)を直腸に置き、SRPLO I.V.ソフトカテーテル(放射線不透過性/ETFE、ゲージ20Gx11/4インチ、内径0.80x32mm)を結腸内に4mm挿入した。Milli-Q精製水中50%のエタノール(滅菌ろ過したもの)中、1.5mg、5%(w/v)の2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸溶液(TNBS)(Sigma-Aldrich)を100μLの容積で結腸内にゆっくり投与し、肛門の漏出を防止するためにマウスを1分間逆さまに保持した。マウスを適切なケージに戻し、30分間又は意識を取り戻すまでモニターした。
【0245】
測定及びモニタリング
[0224] TNBSの投与後3日間、健康及び身体的幸福の変化について各動物を毎日モニターした。体重変化、運動活動の低下、立毛、便の粘稠度及び直腸の出血を含む、各マウスの臨床スコアを毎日記録した。
【0246】
[0225]
【表26】
【0247】
[0226] 治療的介入の非存在下でTNBS処置にさらされた動物は、実験の3日目までに体重減少を停止することが予想された。過度の苦痛を受けているか、又は24時間の間にその初期体重の3分の1を超えて体重が減少したマウスはいずれも、承認されたプロトコルの倫理的義務に基づいて屠殺した。この出来事又は予期しない任意の死が生じた場合には、「有害事象フォーム」をJCU Animal Ethics Committeeに提出した。TNBS大腸炎で使用するための信頼できる陽性対照薬は存在せず、標準的な免疫抑制剤及び生物製剤は全て、この急性疾患モデルにおいて、比較的不十分で一貫性なく機能することが広く受け入れられている。したがって、陽性対照処置はこれらの研究には含まれず、代わりに、TNBSを受けなかった健康なマウス群と、空のベクターライセートを受け、TNBSを投与された陰性対照マウスとに基づいた。
【0248】
屠殺及び組織採取
[0227] 実験の3日目に、二酸化炭素窒息によりマウスを安楽死させて剖検した。剖検の後、マウスの残遺物をオートクレーブ処理し、JCUに承認された経路で処分した。結腸を除去し、測定し、写真を撮影した。結腸を縦方向に切開し、直腸内の内容物を無菌DPBS(Gibco)で洗い流すことにより、巨視的病態スコアを評価し、光学顕微鏡(Olympus SX61, 0.67-45x)下で組織の完全性を観察した。巨視的病態スコアを使用して、以下のように、腸壁肥厚、内部臓器及び組織への癒着、潰瘍、並びに粘膜浮腫の重症度を評価した。
【0249】
[0228]
【表27】
【0250】
結腸の切開
[0229] 直腸に近い0.5cmの組織切片を廃棄した。次に最も近い0.5cmの組織切片をダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)で洗い流し、4%ホルムアルデヒド(Sigma-Aldrich)で最大24時間固定し、その後組織を70%エタノールに移し、室温で貯蔵した。
【0251】
実験内の統計分析
[0230] 実験内で鉤虫タンパク質ライセートの性能の全体的な有意性を決定するための様々なアウトカムの統計分析は、Rバージョン3.5.1を用いて、各実験において各鉤虫組換えタンパク質ライセートと、非組換えの空ベクターライセート対照との間の統計比較を行うことによって実行された。3日目の体重変化率及び結腸の長さは、2標本t検定を用いて評価した。マン・ホイットニーのU検定は順序データに最も適しているので、巨視的及び臨床的スコアリングは、マン・ホイットニーのU検定を用いて評価した。P値は、Benjamini及びHochbergのFalse Discovery Rate(FDR)を用いて、多重比較に対して調整した。これらの4つのアウトカムの有意性の幾何平均を使用して、タンパク質ライセートの保護能力をランク付けした。
【0252】
統計分析
[0231] 4つの臨床アウトカムを1つの値に結合するために、各動物について各アウトカムのZスコアを決定した。データセットの平均、標準偏差及びサンプルサイズを決定し、各動物について各アウトカムのZスコアを計算するために使用した。Zスコア変換は、各アウトカムからの平均を差し引くことによって群に適用し、結果を標準偏差で割った。巨視的スコア(アウトカム3)及び臨床スコア(アウトカム4)は健康なマウスではより低く、罹患マウスでは高くなるが、健康なマウスはより高い体重(アウトカム1)及びより長い結腸(アウトカム2)を有するので、アウトカム3及び4の符号は逆になった。複合スコアは、各アウトカムの4つのZスコアを合計することによって作成された。各タンパク質ライセートの複合Zスコアの有意性は、陰性対照の複合Zスコアと比較して、実験群内の各動物の複合Zスコアのマン・ホイットニー片側スチューデントt検定を用いて決定し、多重検定を補償するためにデータを調整した。
【0253】
結果
[0232] 図1Aは、TNBS投与の前に鉤虫ライセートを受けたマウスの毎日の体重変化を示す。陰性対照群はTNBS投与後1日目までに急速に体重が減少し、実験の終了までそれが続いた。TNBSの投与前に、鉤虫タンパク質を含有する無細胞ライセートで処置したマウスは、体重減少に対して様々な程度の保護を示した。ライセート2、13、16及び17で処置したマウスは健康なままであり、陰性対照マウスよりも3日目までの体重減少が有意に少なかった。
【0254】
[0233] 剖検において、測定及びさらなる分析のために、結腸をマウスから取り出した。このモデルでは、炎症は横方向に広がり、最終的に結腸の短縮を伴う貫壁性大腸炎になるので、結腸の長さは、TNBS誘導性大腸炎の程度の良好な指標である(Wirtz S et al, Chemically induced mouse models of acute and chronic intestinal inflammation. Nat Protoc. 2017 Jul;12(7):1295-1309)。図1Bは、ナイーブ(A)、陰性対照(B)及び鉤虫組換えタンパク質13含有ライセート群(C)の結腸間の視覚的な差異を示す。ナイーブ群のマウスから取り出した代表的な結腸は健康であると思われるが、陰性対照群のマウスから取り出した結腸は炎症が激しく、短縮されていた。TNBSの前に鉤虫組換えタンパク質13含有ライセートを投与された群のマウスから取り出した結腸は、TNBSにより誘導される結腸の短縮から保護された。
【0255】
[0234] 図1Cは、TNBSの投与前に鉤虫タンパク質含有ライセートを受けたマウスの結腸の長さを示す。ライセート2、10、13及び16で処置されたマウスは、空のベクターライセート対照群のマウスよりも有意に長い結腸を有した。
【0256】
[0235] 図1Dは、TNBSの投与前に鉤虫タンパク質含有ライセートを受けたマウスの巨視的病態スコアを示す。陰性対照群の結腸は、広範な大腸炎の炎症のために高いスコアが付けられたが、鉤虫組換えタンパク質ライセート(特に、ライセート2、9、11、13、14、15、16、17及び19)を受けた群は結腸の完全性を維持し、そのスコアは有意に低かった。ライセート2、13及び16で処置されたマウスは、TNBS誘導性体重減少及び巨視的な病態から保護された。
【0257】
[0236] 3日間の実験を通して、動物の身体的外観におけるTNBS大腸炎の程度をモニターし、各実験群について臨床スコアを決定した。臨床スコアには、実験全体を通して、身体的外観(立毛)、糞便の粘稠度、体重変化及び挙動(運動及び可動性の減少)を含む、動物の健康及び幸福の全体的な悪化を指し示す非特異的な生理学的兆候が組み込まれる。低い臨床スコアは、TNBS誘導性大腸炎に対する鉤虫組換えタンパク質ライセートの保護特性を示す。
【0258】
[0237] 図1Eは、実験中の各実験群内のマウスの複合臨床スコアを示す。陰性対照群は、ナイーブ群と比較して臨床スコアが有意に増大した。一方、無細胞ライセート2、13及び6を受けたマウスはナイーブ群と同等の臨床スコアを有し、これは、体重減少の知見と一致した。ライセート9、11、12、14、15、17、19及び20で処置されたマウスも、有意に低い臨床スコアを有した。
【0259】
実施例4.ヒト免疫細胞における組換えタンパク質の生物活性
[0238] ヒト免疫細胞における組換えタンパク質の活性を調べるために、潰瘍性大腸炎患者から得られたパンチ生検からヒトT細胞を単離し、組換えタンパク質配列番号11、1、4、6、8及び9(それぞれ、AcFar2、Ac22177、Ac07727、Ac07322、Ac08034及びAc07062とも呼ばれる;AcFar2については10μg/mL、他のタンパク質については50μg/mL)の存在下でaCD3/CD28被覆ビーズで刺激した。組換えタンパク質をHEK細胞から発現させ、精製した。陰性対照としてはビーズ刺激を使用せず、陽性対照として10μg/mlのシクロスポリン-A(CSA;確立されたT細胞阻害剤)を使用した。抗炎症活性を有する鉤虫タンパク質Na-AIP-1も比較として使用した。Na-AIP-1を酵母で発現させ、Buitrago, G. et al(A netrin domain-containing protein secreted by the human hookworm Necator americanus protects against CD4 T cell transfer coli. Transl Res. 2021 Mar 3;S1931-5244(21)00049-9)に従って精製した。72時間後に、培養上清を集め、Legendplex(BioLegend)アッセイによりサイトカインレベルを評価した。
【0260】
[0293] 図2は、炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子アルファ(TNFα;図2A)、インターフェロンガンマ(IFNγ;図2B)及びインターロイキン-17A(IL-17A;図2C)の分泌に対する組換えタンパク質の効果を示す。TNFαの分泌は、全てのタンパク質によって有意に低下された。配列番号13(Ac2 2177)を除く全てのタンパク質は、IFNγのレベルを有意に低下させた。組換えタンパク質配列番号6(Ac07322)、8(Ac08034)及び9(Ac07062)は、IL-17Aのレベルを有意に低下させた。まとめると、これらのデータは、組換えタンパク質がヒトT細胞における炎症性サイトカインの分泌を低下させるのに有効であることを示す。
【0261】
実施例5.TNBS誘導性大腸炎モデルにおける組換えタンパク質ライセートの効果
[0240] 粗組換えタンパク質含有ライセートを、ライセートのインビトロ生物活性の事前評価を行わずに、TNBS誘導性大腸炎のマウスモデルで直接評価した。実施例1及び2に記載されるように、タンパク質を選択し、発現させた。粗鉤虫タンパク質含有ライセートの単回投与を試験することにより、3日以内に78のタンパク質のハイスループットのインビボスクリーニングが可能になった。TNBS投与の前日に腹腔内注射により対象のタンパク質を含有するライセート、又は対照としてeGFPのみでマウスを処置するか、或いは未処置のまま放置した(ナイーブ)。
【0262】
[0241] 以下のライセートの結果は、図3A~Cに提示される:
ライセート21、本明細書に記載される配列番号18を含有する。
ライセート22、本明細書に記載される配列番号7を含有する。
ライセート23、本明細書に記載される配列番号3を含有する。
ライセート28、本明細書に記載される配列番号20を含有する。
【0263】
[0242] 比較のために以下のライセートも比較した:
ライセート24、表7に示される配列番号74を含有する。
ライセート25、表7に示される配列番号75を含有する。
ライセート26、表7に示される配列番号76を含有する。
ライセート27、表7に示される配列番号77を含有する。
ライセート29、表7に示される配列番号78を含有する。
ライセート30、表7に示される配列番号79を含有する。
ライセート31、表7に示される配列番号80を含有する。
ライセート32、表7に示される配列番号81を含有する。
ライセート33、表7に示される配列番号82を含有する。
【0264】
【表28】
【0265】
[0243] 次に、4つの疾患アウトカム(体重変化、臨床スコア、巨視的な病態及び結腸の長さ)に基づいて、複合臨床Zスコアを生成して、全てのスクリーニング実験にわたって78個の鉤虫タンパク質含有ライセートのそれぞれの効果をランク付けし、比較した。結果は図3Dに示される。
【0266】
マウス
[0244] 特定の病原体を含まない(SPF)オス及びメスのBALB/cArcマウスは、Animal Resources Centre(Perth, Australia)から購入し、5~10週齢で使用した。動物は、SPF条件下で保持し、当施設に到着してから実験までの間に最低7日間休ませた。全ての実験は、James Cook University Animal Ethics Committeeによって承認され、National Health and Medical Research Council(NHMRC)のAustralian Code for the Care of Animals for Scientific purposes、及びQueensland Animal Care and Protection Actを遵守した。
【0267】
TNBS誘導性大腸炎モデルにおけるタンパク質の試験
[0245] 200mlのPBS中の6.25%のケタミン(Ketamil、Provet)及び6.25%のキシラジン(Xylazil、Provet)による麻酔の後、50%EtOH中1.5mg(5%w/v)の2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)溶液100μlをマウスに直腸内投与した。試験タンパク質は、TNBS大腸炎プロトコルの1日目に、PBS中100mg/mlのタンパク質200mlを腹腔内投与した。体重減少及び臨床スコア(それぞれ0~2でスコア付けされた体重減少、立毛、糞便の粘稠度及び可動性からの複合)についてマウスを毎日モニターした。安楽死当日の巨視的スコアには、それぞれ0~3のスコアである結腸組織の癒着、潰瘍、腸壁肥厚及び粘膜浮腫が含まれた。
【0268】
統計分析
[0246] データは、GraphPad Prism 9.0を用いて分析した。対照集団に対するデータの比較は、マン・ホイットニーのU検定によって実施した。正規化データは1標本t検定により100%に対して比較した。技術的エラーは、分析前のデータから除去した。サンプルサイズ及び統計分析法は、図の凡例に示される。
【0269】
[0247] TNBS大腸炎モデルにおけるライセートの性能を評価するために、複合臨床Zスコアを生成した。4つのアウトカムの生データを使用して、複合Zスコアを計算した。Zスコア変換は、同じライセートで処置した5匹のマウスの群内でマウスごとにTNBS大腸炎の4つの主要アウトカム(3日目の開始体重の%(体重変化)、巨視的な病態、臨床スコア及び結腸の長さ)を組み合わせた。Zスコアは、生データを標準偏差の単位に変換し、生スコアの値が集団平均よりも低いか高いかを示した。この場合、変換は、スクリーン内の集団全体の平均から、マウスの試験群の所与の大腸炎パラメータの生スコアの標準偏差の数を反映した。試験(鉤虫タンパク質含有ライセート)群及び陰性対照(eGFPのみのライセート)群の両方の集団平均スコアが同じ値である場合、Zスコアはゼロであった。正のZスコアは、試験群平均が陰性対照群平均よりも高い場合であり、負のZスコアは、試験群スコアが陰性対照集団平均よりも低い場合であった。評価された4つのパラメータを合計して複合Zスコア値を生成し、これを、2標本不等分散(不均一分散)による両側スチューデントt検定を用いて各実験の陰性対照群と比較した。次に、決定されたp値により、各試験群をスクリーン全体にわたって他の群と比較できるようになった。
【0270】
[0248] -Log10p値を評価するために、試験群(鉤虫タンパク質ライセート)からの3日目の結腸の長さ及び体重減少の生スコアを、対照(eGFPライセート)群と比較し、2標本t検定によって有意性を決定した。試験群からの巨視的スコア及び臨床スコアの生データスコアを対照群と比較し、マン・ホイットニーのU検定により有意性を決定した。結果として得られたp値を多重検定に対して調整し、4つのアウトカムを変換して、各実験のp値の幾何平均を生成した。幾何平均は外れ値による影響を受ける可能性が低く、したがって全体的な有効性のランキングを歪めないことになるので、幾何平均を選択した。対照群と比較した試験群の幾何平均の有意性を決定した。
【0271】
結果
[0249] 予想どおりに、TNBS投与の前にeGFPのみを含有するライセートで処置したマウスは、ナイーブマウスと比較して、急速な体重減少(図3A)、臨床スコア(図3B)及び巨視的病態スコア(図3C)の上昇を示した。図3A~Cに示されるように、1つのタンパク質含有ライセート(配列番号3を含有するライセート23)は、3つの疾患パラメータ全てを低下させることが見出されたが、6つの他のライセート(ライセート21、22、25、26、28及び30)は、臨床スコア又は巨視的な結腸病態のいずれかを低下させることが見出された。
【0272】
[0250] 78個の鉤虫タンパク質含有ライセートに対して生成された複合Zスコアは、eGFP対照と比較した各タンパク質の平均スコアの全体的な差及びp値をもたらした。これを使用して、タンパク質をランク付けし(図3D)、これにより、TNBS大腸炎モデルにおいて有意な保護を示す20個のタンパク質、すなわち配列番号1~20を特定することができた。これらの20個のタンパク質は、その後の研究で試験及び評価された。その後、哺乳類細胞で発現させたタンパク質には、図3Dにおいて、そのタンパク質名及びPfamステータスの注釈が付けられる。
【0273】
実施例6.TNBS誘導性大腸炎モデル及びヒト免疫細胞における組換えタンパク質の効果
[0251] 実施例5において十分に機能したライセートに含有されるタンパク質を精製組換えタンパク質として調製し、TNBS大腸炎モデルにおける有効性と、ヒト大腸炎患者からの腸免疫細胞に対する生物活性とについて評価した。実施例5において十分に機能したタンパク質ライセートをExpi293Fヒト胎児腎臓細胞で発現させ、精製して組換えタンパク質を提供した。タンパク質のうちの5つ(それぞれAcFar2、Ac22177、Ac07727、Ac07322及びAc08034とも呼ばれる、配列番号11、1、4、6及び8)を十分な量で生成及び精製して、TNBS大腸炎モデルで試験すると共に、精製タンパク質を潰瘍性大腸炎患者からの結腸生検とエキソビボで共培養することの影響を調べた。タンパク質配列番号9(Ac07062)を結腸生検によるエキソビボ試験に十分な量で生成した。
【0274】
ヒト胎児腎臓細胞における組換えタンパク質の発現
[0252] 無細胞ライセートタンパク質をExpi293Fヒト胎児腎臓細胞(Thermo Fisher)で発現させた。ORFは、A.カニナム(A. caninum)からのシグナルペプチドAc-ASP-2(配列番号69)、それに続くそれぞれのORF(内在性シグナルペプチドを差し引く)、及びC末端6-Hisタグから構成された。cDNAは、Genscriptにより哺乳類コドンバイアスを用いて合成され、制限クローニングによってpcDNA3.1プラスミド(Thermo Fisher)にクローニングされた。プラスミドを精製し、製造業者の説明書に従ってExpiFectamine 293トランスフェクションキット(Thermo Fisher)を用いて、リポフェクションによりExpi293F細胞に導入した。組換えタンパク質は、His-trap excelニッケルカラムを用いる固定化金属アフィニティクロマトグラフィによってAKTA FPLCで精製し、Amicon ultra-15遠心濃縮器を用いて組織培養グレードのDPBSに緩衝液交換し、ビシンコニン酸キット(Thermo Fisher)を用いて定量した。組換えタンパク質は、Limulus Amoebocyte Assay(Thermo Fisher)を用いて内毒素について評価し、内毒素レベルが0.5内毒素単位/mgタンパク質よりも低い場合にだけ使用した。可能な限り、内毒素を含まないプラスチックウェアを使用した。
【0275】
マウス
[0253] 特定の病原体を含まない(SPF)オス及びメスのBALB/cArcマウスは、Animal Resources Centre(Perth, Australia)から購入し、5~10週齢で使用した。動物は、SPF条件下で保持し、当施設に到着してから実験までの間に最低7日間休ませた。全ての実験は、James Cook University Animal Ethics Committeeによって承認され、National Health and Medical Research Council(NHMRC)のAustralian Code for the Care of Animals for Scientific purposes、及びQueensland Animal Care and Protection Actを遵守した。
【0276】
TNBS誘導性大腸炎モデルにおけるタンパク質の試験
[0254] 200mlのPBS中の6.25%のケタミン(Ketamil、Provet)及び6.25%のキシラジン(Xylazil、Provet)による麻酔の後、50%EtOH中1.5mg(5%w/v)の2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)溶液100μlをマウスに直腸内投与した。試験タンパク質は、TNBS大腸炎プロトコルの-1、+1及び+2日目に、PBS中100mg/mlのタンパク質200mlを腹腔内投与した。体重減少及び臨床スコア(それぞれ0~2でスコア付けされた体重減少、立毛、糞便の粘稠度及び可動性からの複合)についてマウスを毎日モニターした。安楽死当日の巨視的スコアには、それぞれ0~3のスコアである結腸組織の癒着、潰瘍、腸壁肥厚及び粘膜浮腫が含まれた。
【0277】
ヒト結腸生検からの細胞の単離
[0255] サンプルは、Prince Charles Hospital(Chermside, QLD)の胃腸科ユニットで得た。研究は、Prince Charles HospitalのHuman Research Ethics Committeeによって承認された。ヒトサンプルによる研究は、James Cook University Human Research Ethics Committeeによって承認された。他の生物学的療法を現在受けていない、臨床的に潰瘍性大腸炎と診断された12人の患者を研究に採用した。腸組織の非炎症領域から採取した新鮮な結腸生検を集め、上皮内及び粘膜固有層リンパ球の単一細胞懸濁液を単離した。結腸から最大10個のパンチ生検を採取し、さらに処理するまで、氷上のPBS中5%のウシ胎児血清(FBS)中で貯蔵した。免疫細胞を単離するために、各患者からの全ての生検をプールし、5mMのEDTA、1mMのジチオスレイトール(DTT)、5%のFBSを補充した、Mg++及びCa++を含まないハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中に入れ、250rpmの振とうインキュベータにおいて37℃で30分間インキュベートした。70mmのろ過器を通して上清を集め、10%のFBSを含むRPMI中に再懸濁させ、さらに処理するまで氷上に保持した。残りの組織を、0.2mg/mlのDNAse-I(Merck)及び400U/mlのI型コラゲナーゼ(Gibco)を含むRPMI中に入れ、250rpmの振とうインキュベータにおいて37℃で30分間インキュベートした。次に、サンプルをろ過し、70mmの細胞ろ過器を通し、10%のFBSを含むRPMI中に再懸濁させ、DTTとのインキュベーション後に、取り分けた画分と合わせた。
【0278】
ヒトサイトカイン放出アッセイ
[0256] 96ウェル丸底プレート(Falcon)において1ウェル当たり合計50,000個の細胞をプレーティングした。以前の最適化に基づいて10mg/mlで添加されたAc-FAR-2を除いて、50mg/mlの組換えタンパク質又はCSAを培養物に追加した。Human T-Activator CD3/CD28 Dynabeads(ThermoFisher)を製造業者の推奨に従って添加した。細胞を37℃、5%COで一晩インキュベートし、上清を集め、さらに処理するまで-80℃で凍結保存した。サイトカイン放出分析のために、上清を氷上で解凍し、製造業者の推奨に従ってLegendplex Human Inflammation Panel Iキット(Biolegend)を用いて分析した。
【0279】
統計分析
[0257] データは、GraphPad Prism 9.0を用いて分析した。対照集団に対するデータの比較は、マン・ホイットニーのU検定によって実施した。正規化データは1標本t検定により100%に対して比較した。サンプルサイズ及び統計分析法は、図の凡例に示される。
【0280】
結果
[0258] 組換えタンパク質配列番号11、1、4、6及び8(それぞれ、AcFar2、Ac22177、Ac07727、Ac07322及びAc08034)の有効性は、PBSビヒクル対照、並びに同じ方法で発現及び精製された無関係の対照タンパク質(ウシ血清アルブミン、BSA)と比較して、TNBS大腸炎モデルで評価した。予想どおりに、PBSビヒクル処置マウスは体重減少(図4A)、臨床スコア(図4B)及び巨視的病態スコア(図4C)の上昇を示し、これは、陰性対照組換えBSAによる同時処置による影響を受けなかった。図4A~Cに示されるように、Ac08034及びAc07727は、体重減少、臨床スコア及び巨視的スコアを有意に制限することができたが、Ac-FAR-2及びAc22177は、対照マウスと比較して少なくとも1つの疾患パラメータを有意に抑制した。
【0281】
[0259] 組換えタンパク質配列番号11、1、4、6、8及び9(それぞれ、AcFar2、Ac22177、Ac07727、Ac07322、Ac08034及びAc07062)は、ヒト大腸炎患者からの腸の免疫細胞に対する生物活性についても評価した。ヒト炎症性サイトカインを検出するためにビーズベースの多重アッセイを用いる培養上清の分析により、PBSのみの存在下でのTCR刺激は、IBD関連サイトカインのTNF、IFN-γ及びIL-17Aの分泌をもたらし、この応答は、BSA対照による同時処置の影響を受けず、CSAによって有意に抑制されることが示された(図5A~C)。図5A~Cに示されるように、Ac07727は、3つのサイトカイン全ての分泌を有意に低下させることが見出されたが、Ac07322(Expi293F細胞で発現されたときには、TNBS大腸炎において保護を示さないにもかかわらず)、Ac-FAR-2及びAc08034は、炎症性サイトカインのうちの少なくとも2つの分泌を抑制することができた。
図1
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
【配列表】
2024516079000001.app
【国際調査報告】