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特表2024-516087転がり軸受に解除可能で内部すきまのない配置を生成する装置およびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】転がり軸受に解除可能で内部すきまのない配置を生成する装置およびその方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 25/08 20060101AFI20240405BHJP
   F16C 35/078 20060101ALI20240405BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20240405BHJP
   F16C 19/52 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
F16C25/08 Z
F16C35/078
F16C19/26
F16C19/52
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023559750
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 DE2022100152
(87)【国際公開番号】W WO2022199742
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021107749.4
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008317
【氏名又は名称】マシューズ インターナショナル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランク ボーゲンシュタール
(72)【発明者】
【氏名】カーステン クライングリース
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ランシング
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハックフォート
【テーマコード(参考)】
3J012
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J012AB03
3J012AB06
3J012BB01
3J012CB05
3J012FB07
3J012HB02
3J117AA05
3J117CA06
3J117DA02
3J117DB10
3J701AA13
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA77
3J701FA46
3J701FA60
3J701GA03
3J701GA60
(57)【要約】
転がり軸受に解除可能で内部すきまのない配置を生成する装置であって、外リングと、シャフトに取付けられた内リングと、前記外リングと前記内リングの間に配置された複数の転がり要素と、を備える転がり軸受と、前記転がり軸受の外リングの周囲に取り付けられた締め付け装置であって、前記転がり軸受の外リングと前記締め付け装置との間において、前記転がり軸受の外リングの外周にわたって均一な径方向の予圧を生成するための締め付け装置と、を備え、前記締め付け装置には軸方向に調節可能な締め付け要素が設けられ、前記締め付け要素は、転がり軸受に内部すきまが存在する第1配置にすることができ、且つ前記締め付け要素は転がり軸受に内部すきまが存在しない第2配置にすることができる、ことを特徴とする装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受(2)に解除可能で内部すきまのない配置を生成する装置(1)であって、
外リング(3)と、シャフト(6)に取付けられた内リング(5)と、前記外リング(3)と前記内リング(5)の間に配置された複数の転がり要素(4)と、を備える転がり軸受(2)と、
前記転がり軸受の外リング(3)の周囲に取り付けられた締め付け装置(7)であって、前記転がり軸受の外リング(3)と前記締め付け装置(7)との間において、前記転がり軸受の外リング(3)の外周にわたって均一な径方向の予圧を生成するための締め付け装置(7)と、
を備え、
前記締め付け装置(7)には軸方向に調節可能な締め付け要素(8)が設けられ、前記締め付け要素(8)は、前記転がり軸受(2)に内部すきまが存在する第1配置(9)にすることができ、且つ前記締め付け要素(8)は転がり軸受(2)に内部すきまが存在しない第2配置(10)にすることができる、ことを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記締め付け要素(7)が前記第2配置(10)内で調節可能となることにより、規定された軸受予圧が調節可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記締め付け装置(7)に空洞(11)が設けられ、前記空洞(11)は、前記締め付け装置(7)の全周のうち、少なくとも一部或いは好ましくは全周にわたって環状に、かつ軸方向に延在しており、
前記空洞(11)の中に前記締め付け要素(8)が、スリーブの形状で軸方向に移動可能に受け入れられており、前記空洞(11)が軸方向に先細りになっていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記スリーブ(8)に、軸方向に少なくとも部分的に円錐状に延びるスリーブ外面(12)が設けられ、
前記空洞(11)には空洞外面(13)が設けられ、前記空洞外面(13)は、軸方向に少なくとも部分的に円錐状に延びて且つ径方向内向きを向き、前記スリーブ外面(12)と協働し、
前記スリーブ外面(12)の円錐部分と前記空洞外面(13)の円錐部分が、互いに平行に位置合わせされていることを特徴とする請求項3に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記スリーブ(8)にスリーブ内面(14)が設けられ、前記空洞(11)に空洞内面(15)が設けられ、前記空洞内面(15)は前記スリーブ内面(14)に当接して径方向外側を向いており、前記スリーブ内面(14)と前記空洞内面(15)が、前記転がり軸受(2)の軸方向に対して平行に位置合わせされていることを特徴とする請求項4に記載の装置(1)。
【請求項6】
アクチュエータ(16)が前記締め付け装置(7)に接続され、前記締め付け要素(8)の軸方向の調節を連続的に行うように構成されていることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記転がり軸受(2)の軸受すきまを継続的に監視するための手段(17)をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の装置(1)。
【請求項8】
予め設定可能な目標とする軸受予圧を設定するための制御ループをさらに備え、前記制御ループ内において、前記目標とする軸受予圧が、前記転がり軸受(2)の軸受すきまを継続的に監視するための手段(17)により測定された実際の軸受予圧、と連続的に或いは所定の時間間隔で比較され、これに応じて前記アクチュエータ(16)が、対応する操作量で動作することを特徴とする請求項7に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記転がり軸受(2)が円筒ころ軸受または針状ころ軸受であることを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
シャフト(6)に取付けられた転がり軸受(2)の予圧を調節する方法であって、
動作中に軸受配置の予圧を検知するステップと、
検知された実際の予圧を目標とする予圧と比較して差分値を計算するステップと、
前記差分値を利用し、操作量値をアクチュエータ(16)に出力して、軸受の予圧を調節するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記予圧を検知するステップに、軸受の熱動作環境の測定、および/または、機械的な負荷の測定、および/または、電気接触抵抗の測定が含まれることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アクチュエータ(16)が、締め付け装置(7)内に配置されて軸方向に調節可能な締め付け要素(8)を制御し、軸方向の調節位置に応じて、前記締め付け装置(7)が所定の軸受予圧を生成することを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記アクチュエータ(16)により前記締め付け要素(8)が、軸方向に空気圧で或いは液圧で調節されることを特徴とする請求項10~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
軸方向の調節のために前記締め付け要素(8)が両端面で異なる圧力下に置かれ、
予圧を高めるために前記締め付け要素(8)の第1面に加わる第1圧力(P)を前記第1面とは反対側にある前記締め付け要素(8)の第2面に加わる第2圧力(P)よりも高くし、
予圧を減少させるために前記第2圧力(P)を前記第1圧力(P)よりも高くする、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記締め付け要素(8)が、軸方向で先細りとなる空洞(11)内において軸方向で調節可能に配置され、前記締め付け要素(8)が先細りとなる空洞の先端方向に調節させることによって予圧が高まることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転がり軸受に解除可能で内部すきまのない配置を生成する装置であって、外リングと、シャフトに取付けられた内リングと、前記外リングと前記内リングの間に配置された複数の転がり要素と、を備える転がり軸受と、
前記転がり軸受の外リングの周囲に取り付けられた締め付け装置であって、前記締め付け装置と前記転がり軸受の外リングとの間において、前記転がり軸受の外リングの外周にわたって均一な径方向の予圧を生成するための締め付け装置と、
を備え、
前記締め付け装置には軸方向に調節可能な締め付け要素が設けられ、前記締め付け要素は、転がり軸受に内部すきまが存在する第1配置にすることができ、且つ前記締め付け要素は、転がり軸受に内部すきまが存在しない第2配置にすることができる、ことを特徴とする装置に関する。本発明はさらに、シャフトに取り付けられた転がり軸受の予圧を調節する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液圧式の締め付け軸受筒が独国出願公開第102018123980号明細書で公知となっている。しかしこれは転がり軸受について開示するものではなく、ハブを利用しており、内側シャフトと外側ハブとの間の摩擦接続を生成するためのものである。別の締め付け軸受筒が独国出願公開第2639320号明細書で公知となっている。これは、スプロケット、Vベルトプーリ、歯付きピニオンなど、引張される部品とシャフトの摩擦接続に使用される。締め付け軸受筒と転がり軸受との間の接続については開示がなく、特に所定の軸受予圧を生成することについては開示されていない。
【0003】
従来から公知のテーパー型転がり軸受、特に自動車の車輪軸受等で使用されるテーパー型のロールベアリングの問題点としては、テーパー型または円錐型の走り面が軸受内の機能ユニットとして共に設置するしかない点がある。これにより全体的な公差を計算するときに、常に余計な加数が生じる。本発明を利用することによって、一方で転がり軸受の同心性を、他方で転がり軸受の内部すきまの調節を、別々に実現することができる。スピンドル、シャフト、ローラー等において本発明を利用することによって、全ての回転部品の最終的な円筒機械加工またはキャリブレーションを、軸受の内部リングと共に行うことができる。
【発明の概要】
【0004】
したがって本発明は、高い振れ精度を可能にすると同時に高い負荷を吸収するという利点がある。これは特に軸受の予圧が2次元の予圧平面で発生するだけでなく、軸受外リングの周りを完全に取り囲むように発生するという事実によって達成される。これにより全平面においてがたつきのない回転機能を有する回転配置が可能となる。軸受外リングの外径を調節することによって、予圧されるべき転がり軸受に、所定の予圧が生成される。これにより転がり要素を介した静止している組立体から回転している組立体への部分的なあるいは完全な接触が実現される。
【0005】
さらに本発明により非常にコンパクトな設計が可能となる。互いに固定されている複数の軸受を有する複数軸受の配置は、非常に大きなスペースの制約があり、また負荷吸収が小さくなるといった結果を常に生じるが、これはこのように固定されている配置では、転がり軸受が回転体との接触方向にしか負荷を発散させることができないからである。
【0006】
本発明はまた、軸受けが作動している際の動作環境の監視を可能することで、軸受けの損傷やその他摩耗に関する不具合の兆候を、早い段階で検知することができる。さらには動作中に軸受けの予圧を調節することができ、熱変化等によって軸受け予圧に変化が生じた場合に、予圧を最適な値に連続的に再調整することができる一方で、他方において、これにより最適な動作環境を、非常に正確な同心性の形態等で実現し、軸受けの摩耗を最小限に抑えることができる。
【0007】
本発明の課題はしたがって、内部すきまのない配置を生成し、および/またはシャフトに取付けられた転がり軸受に所定の予圧を生成するための装置を提供することであって、前記装置は特に取り扱いが容易な上に、動作環境を変更させる上で有利に使用することが可能である一方で、転がり軸受に高度な運転精度を付与する機能を果たす。
【0008】
この課題は独立請求項に記載された特徴によって解決することができる。
【0009】
したがって、転がり軸受に解除可能で内部すきまのない配置を生成する装置であって、外リングと、シャフトに取付けられた内リングと、前記外リングと前記内リングの間に配置された複数の転がり要素と、を備える転がり軸受と、前記転がり軸受の外リングの周囲に取り付けられた締め付け装置であって、前記転がり軸受の外リングと前記締め付け装置との間において、前記転がり軸受の外リングの外周にわたって均一な径方向の予圧を生成するための締め付け装置と、を備え、前記締め付け装置には軸方向に調節可能な締め付け要素が設けられ、前記締め付け要素は、転がり軸受に内部すきまが存在する第1配置にすることができ、且つ前記締め付け要素は転がり軸受に内部すきまが存在しない第2配置にすることができる、ことを特徴とする装置、を提案する。本装置は転がり軸受の分野で利用することができ、例えば圧延機やロール成形ラインのようなロール配置の分野、印刷機、回転加工機の分野、あるいは折り目付け、エンボス加工、打ち抜き加工の分野に利用できる。
【0010】
本発明の他の利用分野としては、例えば機械加工システム、ロール焼入れまたはローレット加工における、工具スピンドルとワークスピンドルの両方に対する機械加工工具のスピンドル軸受配置、も考えられる。また、本発明が、例えばターボ機械分野における回転子のスピンドル軸受配置に使用されることも考えられる。また、車輪軸受に使用することも考えられる。
【0011】
印刷技術の分野においては、彫刻ロールの同心性を確保するために、転がり軸受の内リングは、レースのある転がり要素とは別に、ロールに取付けられる。この結果、ロールの表面には、転がり軸受の内リングと共に、動作中における1つの締め付け動作で最大限の同心性が生じる。特に材料ウェブの作製に平滑なロール表面が必要とされる場合、転がり軸受の軸受レースとロール表面との間の公差について、できる限り「逃げがない」ことが必要とされる。本発明で提案する円錐状の締め付けセットを用いて軸受外リングが円錐状に「収縮」することにより、円周方向の非常に正確な送り込みが実現される。これは個々の部品が直接接触し、また個々の部品を、所定の公差範囲内で、環状に旋盤加工または研削加工によって、非常に正確に作製することができる、という理由によって達成される。これはテーパー状の軸受けを用いた場合には実現することができないが、これはこれらが別々に製造された転がり要素から構成されるためであって、これらの転がり要素の製造により、公差に大きな変動が生じるためである。
【0012】
締め付け装置は、転がり軸受の外リングに向かって軸の方向に押し付けることができるように設計することができる。締め付け装置は転がり軸受の外リングを環状に取り囲むことができる。締め付け装置は転がり軸受の軸幅よりも大きな、軸方向の幅を有することができる。第1配置において、締め付け要素と締め付け装置との間にすき間があり、または少なくとも変形状態を生じさせないことができる。第2配置において、締め付け要素が締め付け装置よりも大きな寸法を有し、および/またはこれら2つの部材間に変形状態を生じさせることができる。
【0013】
締め付け要素を第2配置の範囲内で調節可能とすることで、所定の軸受け予圧を設定することができる。締め付け要素は、転がり軸受の軸幅よりも大きな軸幅を有することができる。これにより締め付け要素が転がり軸受を覆うことなく、締め付け要素を締め付け装置内において軸方向に調節することができる。
【0014】
前記締め付け装置に空洞が設けられ、前記空洞は、前記締め付け装置の全周のうち、少なくとも一部或いは好ましくは全周にわたって環状に、かつ軸方向に延在しており、
前記空洞の中に前記締め付け要素が、スリーブの形状で軸方向に移動可能に受け入れられており、前記空洞が軸方向に先細りになっていることは有利である。特に空洞は直線的に先細りにすることができる。空洞は、締め付け要素の軸幅よりも大きな軸幅を有することができ、これにより締め付け要素を空洞内で軸方向に調節可能とすることができる。空洞部の最も低い高さを、締め付け要素の最も低い高さよりも小さくすることができる。さらに空洞部の最も大きな高さを、締め付け要素の最も大きな高さ以上の高さとすることができる。スリーブに2つの対向する端面を設けることができる。スリーブは、対応する端面とこれに対向する空洞壁との間に、それぞれ圧力室が保持されるようにしてのみ調節可能または設計することができる。
【0015】
さらに、スリーブに、軸方向に少なくとも部分的な円錐形状を有するスリーブ外面を設け、空洞に空洞外面を設け、空洞外面は、軸方向に少なくとも部分的な円錐状を有しており且つ径方向内向きを向き、スリーブ外面と協働し、スリーブ外面の円錐部分と空洞外面の円錐部分を、互いに平行に位置合わせさせる、ことができる。したがって、スリーブは断面でくさび型をしたスリーブ外面を有することができ、空洞はこれに合わせた形状をした空洞外面を有することができる。空洞内でスリーブを調節することにより、転がり軸受に内部すきまのない配置を達成することができる一方で、軸方向の調節具合に応じた所定の予圧を実現することができる。
【0016】
加えて、スリーブにスリーブ内面を設け、空洞に空洞内面を設け、空洞内面は、スリーブ内面に当接して径方向外側を向き、スリーブ内面と前記空洞内面を、転がり軸受の軸方向に対して平行に位置合わせすることができる。スリーブ内面と空洞内面は互いにフラットに配置させることができる。転がり軸受の軸方向に対して平行に整列させることは、大きく均一な応力分布が生成させるといった利点がある。
【0017】
締め付け要素を連続的に軸方向に調節するためのアクチュエータを、締め付け装置に接続させることを考えることができる。このために上記空洞を液圧チャンバーとして設計し、また締め付け要素は、内部で軸方向に調節可能なピストンまたは液圧アクチュエータとして設計することができる。圧縮のレベルと位置に応じて、転がり軸受の軸受レースに所望とする圧縮を加えることができる。締め付け装置は、液圧、電気、空気圧、機械的に駆動することができ、または少なくとも1つのスピンドルを用いて駆動することができる。位置決めねじ等を用いて始動前に一度だけ予圧が設定される公知の解決策と比較して、本発明は、予圧を連続的に調節することができ、また例えば動作環境の変更を考慮に入れることができるといった利点がある。
【0018】
転がり軸受の軸受すきまを継続的に監視するための装置の提供を考えることができる。これは例えば予圧を検知しおよび/または電気接触抵抗値による接触許容範囲を用いて行うことができる。代替的に或いは追加で、軸受け内部すきまの監視は、駆動装置内のノイズ特性、振幅変化、振動および/またはトルクの変化の検知によって実行することができる。
【0019】
特に本装置は、予め設定可能な目標とする軸受予圧を設定するための制御ループをさらに備えることができ、制御ループ内において、目標とする軸受予圧が、軸受すきまを継続的に監視するための装置により測定された実際の軸受予圧、と連続的に或いは所定の時間間隔で比較され、これに応じてアクチュエータ装置が、対応する操作量で制御される。この目的のため、本装置は、監視装置から測定データを受信して対応する動作信号を送信する制御装置を備えることができる。この目的のため、本装置はさらに電気的な制御が可能なバルブをさらに備えることができ、これを用いて生成されるべき圧力の方向、ひいては締め付け要素が動く方向を制御することができる。本装置はさらにポンプを備えることができ、ポンプを用いて発生する圧力を調節することができる。バルブの位置をプリセットするために、制御装置をバルブに接続することができる。設定されるポンプ圧力をプリセットするために、制御装置をポンプに接続することができる。
【0020】
本装置は転がり軸受として円筒ころ軸受または針状ころ軸受を備えることができる。原理的には、軸受中心軸に対して垂直な予圧を加えることのできるあらゆるタイプの軸受を使用することができる。
【0021】
円筒形の転がり要素を有する転がり軸受は、振れ公差が小さいという利点がある。さらに、一度の締め付けで、ロールの内リングをロール表面と共に、一度の締め付け操作で較正できるため、公差の累積を避けることができる。これに対して、回転子を内リングと共に一度の締め付け操作で較正するといったこの考え方は、テーパー状の転がり軸受には存在しない。テーパー形状の転がり軸受の運転精度は、機械加工工具スピンドル等における個々の公差を取り除くことによりのみ達成することができる。テーパー状の転がり軸受はX配置とO配置にある複数の列で取り付けられる。これは長期間の安定性のために設計することができるが、適切なサイズが必要とされる。
【0022】
さらに、シャフトに取付けられた転がり軸受の予圧を調節する方法であって、
動作中に軸受配置の予圧を検知するステップと、
検知された実際の予圧を目標とする予圧と比較して差分値を計算するステップと、
前記差分値を利用し、操作量値をアクチュエータに出力して、軸受の予圧を設定するステップと、
を含む方法、が提案される。
【0023】
さらには前記予圧を検知するステップに、軸受の熱動作環境の測定、および/または、機械的な負荷の測定、および/または、電気接触抵抗の測定、が含まれる場合がある。代替的に或いは追加で、予圧の検知には、駆動装置内のノイズ特性、振幅変化、振動および/またはトルクの変化に関する検知が含まれる場合がある。
【0024】
アクチュエータが、締め付け装置内に配置されて軸方向に調節可能な締め付け要素を制御し、軸方向の調節位置に応じて前記締め付け装置が、所定の軸受予圧を生成する場合がある。
【0025】
アクチュエータにより前記締め付け要素が、軸方向に空気圧で或いは液圧で調節される場合がある。場合によっては、締め付け要素はスピンドルを用いて機械的に或いは電気的に調節される。
【0026】
本方法では、軸方向の調節のために前記締め付け要素が両端面で異なる圧力下に置かれ、予圧を高めるために前記締め付け要素の第1面に加わる第1圧力を、前記第1面とは反対側にある前記締め付け要素の第2面に加わる第2圧力よりも高くし、予圧を減少させるために前記第2圧力を前記第1圧力よりも高くすることができる。
【0027】
特に、締め付け要素を、軸方向で先細りとなる空洞内において軸方向で調節可能に配置することができ、締め付け要素が先細りとなる空洞の先端方向に調節させることによって予圧を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以下、各図面を参照して本発明の詳細を説明する。即ち:
【0029】
図1図1は予圧のない第1配置にある本発明に係る装置の一実施形態の断面図である。
図2図2は予圧が生成されている第2配置にある本発明に係る装置の一実施形態の断面図である。
【0030】
解除可能ですきまのない配置を転がり軸受に生成する図1に図示される装置1には、シャフト6に取り付けられて針状軸受の形態にある転がり軸受2が備えられ、転がり軸受2には軸受内リング5と、複数の転がり要素4と、軸受外リング3とが設けられている。径方向の円周応力を発生させる締め付け装置7が、軸受外リング3に向かって軸の方向に押し付けられており、締め付け装置7には環状の空洞部11が設けられており、この中に締め付け要素8が軸方向に調節可能に設けられている。空洞部11には径方向外側に向いている空洞内面15が設けられ、空洞内面15は軸受中心軸に対して平行に位置合わせされている。空洞部11にはさらに内側を向いている空洞外面13が設けられているが、この空洞外面13は空洞内面15とは平行になっておらず傾いて延在しており、空洞部11は右側から左側にかけて先細りになっており、図面中、左側の高さが右側の高さよりも低くなっている。締め付け要素8には空洞の形状に合わせた接触面が備えられており、径方向で内側を向く締め付け要素内側面14と、外側を向く締め付け要素外側面12と、が設けられている。締め付け要素内側面14は空洞内面15と同様に軸受中心軸に対し平行に位置合わせされているが、締め付け要素外側面12は空洞外面13と同様にして、これに対し傾斜して延在している。ここにおいて締め付け要素外側面12に関する円錐の傾斜の角度は、軸受中心軸に対する空洞外面13の角度に対応している。締め付け要素8は、空洞部11の軸幅よりも小さな軸幅を有しているため、締め付け要素8が空洞部11の中を軸方向に調節可能になっている。予圧を生成するためには、空洞部11の最も低い高さが、締め付け要素8の最も低い高さよりも、小さいことが重要である。締め付け要素8の左右には、軸受中心軸に対して略垂直に位置合わせされた端面がそれぞれ設けられており、何れも自身と対向する空洞部11の壁との間で、流体密封室を定めている。したがって締め付け要素8は軸方向に液圧で調節可能なアクチュエータを形成し、これにより軸方向の位置に応じて軸受の外径が一定量収縮する。この目的のために第1流体ライン21は第1流体密封室23に開放しており、また第2流体ライン22は反対側の第2流体密封室24に開放しており、これらを介して各圧密室を所定の液圧p,pで圧縮することができる。これら2つの流体ライン21、22は、電気的な制御が可能な4/2方バルブを介して制御することができ、バルブ位置に応じて第1流体ライン21または第2流体ライン22の何れか一方が圧縮される。所望とする圧力を発生させるためバルブ19にポンプ20が接続される。バルブ19とポンプ20は制御ユニット(PLC:プログラマブルロジックコントローラ)18により制御され、制御ユニット18は、軸受のすきまを検知する監視デバイスから、またはシャフト6と締め付け装置7の間で測定される電気接触抵抗を測定する抵抗測定デバイス17から、測定データを連続的にまたは一定間隔で受信する。図面中、抵抗測定デバイス17の正極が締め付け装置7に接続され、陰極がシャフトに接続されている。ポンプ20、バルブ19、制御ユニット18および抵抗測定デバイスは、アクチュエータ16の一部であって、これらにより所定の目標予圧を設定するための制御ループが実現される。
【0031】
図1には第1の配置9にある締め付け要素8が図示されており、ここにおいて空洞部11に予圧が発生しないように締め付け要素8が配置されている。締め付け要素8上の矢印は右向きの移動方向を表し、すなわち空洞の広がっている部分の方向を表している。したがって転がり軸受2には軸受けすきまがある。図1に認められる通り、各転がり要素4と外軸受リング3との間にはすきまが存在する。この目的のため、バルブ19は第1流体ライン21から流体密封室23に、予圧を低くするような信号圧力pを加える。図2には第2の配置10にある締め付け要素8が図示されており、空洞部11に予圧が発生するように締め付け要素8が配置されており、これにより軸受2はあそびのない状態にセッティングされる。締め付け要素8上に矢印で表された移動方向は、締め付け要素が左側に移動していることを表し、即ち空洞の先細る部分の方向に移動していることが表されている。その際、第1流体密封室23の室内体積が減少し、第2流体密封室24の室内体積が増大する。この目的のため制御ユニット18でバルブ19を調節することにより、今度は第2流体ライン22が圧力pで圧縮され、第2流体密封室24内の予圧がポンプ20で高まるように、調節される。その結果、締め付け装置7が軸受外リング3を収縮させることで、各転がり要素4と完全に接触した状態になる。すきまがないことに加えて、今度は軸受2内に、特定の用途のために必要とされる所定の予圧を生成することができる。電気接触抵抗を継続的に監視し、且つ測定データを制御ユニット18で継続的に処理することによって、予圧を連続的に且つ作業中に再調整することができ、例えば熱変動が発生した際予圧に変更が生じた場合に、再調整することができる。
【0032】
上記明細書、図面、および特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、個別に、または任意の組み合わせで、本発明の具現化に本質的である場合がある。
【符号の説明】
【0033】
1 本装置
2 転がり軸受
3 転がり軸受の外リング
4 転がり要素
5 転がり軸受の内リング
6 シャフト
7 締め付け装置
8 締め付け要素
9 第1配置
10 第2配置
11 空洞
12 スリーブ外面
13 空洞外面
14 スリーブ内面
15 空洞内面
16 アクチュエータ
17 軸受のすきまを検知する監視デバイス、抵抗測定デバイス
18 制御ユニット
19 4/2方制御バルブ
20 ポンプ
21 第1流体ライン
22 第2流体ライン
23 第1流体密封室
24 第2流体密封室
予圧を減少させる信号圧力
予圧を増加させる信号圧力
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受(2)に解除可能で内部すきまのない配置を生成する装置(1)であって、
外リング(3)と、シャフト(6)に取付けられた内リング(5)と、前記外リング(3)と前記内リング(5)の間に配置された複数の転がり要素(4)と、を備える転がり軸受(2)と、
前記転がり軸受の外リング(3)の周囲に取り付けられた締め付け装置(7)であって、前記転がり軸受の外リング(3)と前記締め付け装置(7)との間において、前記転がり軸受の外リング(3)の外周にわたって均一な径方向の予圧を生成するための締め付け装置(7)と、
を備え、
前記締め付け装置(7)には軸方向に調節可能な締め付け要素(8)が設けられ、前記締め付け要素(8)は、前記転がり軸受(2)に内部すきまが存在する第1配置(9)にすることができ、且つ前記締め付け要素(8)は転がり軸受(2)に内部すきまが存在しない第2配置(10)にすることができる、ことを特徴とする装置(1)において、
前記締め付け装置(7)に空洞(11)が設けられ、前記空洞(11)は、前記締め付け装置(7)の全周のうち、少なくとも一部或いは好ましくは全周にわたって環状に、かつ軸方向に延在しており、かつ前記空洞(11)は軸方向に先細りになっており、
前記空洞(11)の中に前記締め付け要素(8)が、スリーブの形状で軸方向に移動可能に受け入れられていることを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記締め付け要素(7)が前記第2配置(10)内で調節可能となることにより、規定された軸受予圧が調節可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記スリーブ(8)に、軸方向に少なくとも部分的に円錐状に延びるスリーブ外面(12)が設けられ、
前記空洞(11)には空洞外面(13)が設けられ、前記空洞外面(13)は、軸方向に少なくとも部分的に円錐状に延びて且つ径方向内向きを向き、前記スリーブ外面(12)と協働し、
前記スリーブ外面(12)の円錐部分と前記空洞外面(13)の円錐部分が、互いに平行に位置合わせされていることを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記スリーブ(8)にスリーブ内面(14)が設けられ、前記空洞(11)に空洞内面(15)が設けられ、前記空洞内面(15)は前記スリーブ内面(14)に当接して径方向外側を向いており、前記スリーブ内面(14)と前記空洞内面(15)が、前記転がり軸受(2)の軸方向に対して平行に位置合わせされていることを特徴とする請求項に記載の装置(1)。
【請求項5】
アクチュエータ(16)が前記締め付け装置(7)に接続され、前記締め付け要素(8)の軸方向の調節を連続的に行うように構成されていることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記転がり軸受(2)の軸受すきまを継続的に監視するための手段(17)をさらに備えることを特徴とする請求項に記載の装置(1)。
【請求項7】
予め設定可能な目標とする軸受予圧を設定するための制御ループをさらに備え、前記制御ループ内において、前記目標とする軸受予圧が、前記転がり軸受(2)の軸受すきまを継続的に監視するための手段(17)により測定された実際の軸受予圧、と連続的に或いは所定の時間間隔で比較され、これに応じて前記アクチュエータ(16)が、対応する操作量で動作することを特徴とする請求項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記転がり軸受(2)が円筒ころ軸受または針状ころ軸受であることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の装置(1)を用いてシャフト(6)に取付けられた転がり軸受(2)の予圧を調節する方法であって、
動作中に軸受配置の予圧を検知するステップと、
検知された実際の予圧を目標とする予圧と比較して差分値を計算するステップと、
前記差分値を利用し、操作量値をアクチュエータ(16)に出力して、軸受の予圧を調節するステップと、
を含む方法において、
前記アクチュエータ(16)が、前記締め付け装置(7)内に配置されて軸方向に調節可能な前記締め付け要素(8)を制御し、軸方向の調節位置に応じて、前記締め付け装置(7)が所定の軸受予圧を生成することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記予圧を検知するステップに、軸受の熱動作環境の測定、および/または、機械的な負荷の測定、および/または、電気接触抵抗の測定が含まれることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記アクチュエータ(16)により前記締め付け要素(8)が、軸方向に空気圧で或いは液圧で調節されることを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
軸方向の調節のために前記締め付け要素(8)が両端面で異なる圧力下に置かれ、
予圧を高めるために前記締め付け要素(8)の第1面に加わる第1圧力(P)を前記第1面とは反対側にある前記締め付け要素(8)の第2面に加わる第2圧力(P)よりも高くし、
予圧を減少させるために前記第2圧力(P)を前記第1圧力(P)よりも高くする、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記締め付け要素(8)が、軸方向で先細りとなる空洞(11)内において軸方向で調節可能に配置され、前記締め付け要素(8)が先細りとなる空洞の先端方向に調節させることによって予圧が高まることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転がり軸受に解除可能で内部すきまのない配置を生成する装置であって、外リングと、シャフトに取付けられた内リングと、前記外リングと前記内リングの間に配置された複数の転がり要素と、を備える転がり軸受と、
前記転がり軸受の外リングの周囲に取り付けられた締め付け装置であって、前記締め付け装置と前記転がり軸受の外リングとの間において、前記転がり軸受の外リングの外周にわたって均一な径方向の予圧を生成するための締め付け装置と、
を備え、
前記締め付け装置には軸方向に調節可能な締め付け要素が設けられ、前記締め付け要素は、転がり軸受に内部すきまが存在する第1配置にすることができ、且つ前記締め付け要素は、転がり軸受に内部すきまが存在しない第2配置にすることができる、ことを特徴とする装置に関する。このような予圧については独国出願公開第102014213880号明細書から公知となっている。本発明はさらに、シャフトに取り付けられた転がり軸受の予圧を調節する方法に基づくものである。
【背景技術】
【0002】
液圧式の締め付け軸受筒が独国出願公開第102018123980号明細書で公知となっている。しかしこれは転がり軸受について開示するものではなく、ハブを利用しており、内側シャフトと外側ハブとの間の摩擦接続を生成するためのものである。別の締め付け軸受筒が独国出願公開第2639320号明細書で公知となっている。これは、スプロケット、Vベルトプーリ、歯付きピニオンなど、引張される部品とシャフトの摩擦接続に使用される。締め付け軸受筒と転がり軸受との間の接続については開示がなく、特に所定の軸受予圧を生成することについては開示されていない。軸受予圧を生成するさらなる装置は独国出願公開第102018117639号明細書からも公知となっている。
【0003】
従来から公知のテーパー型転がり軸受、特に自動車の車輪軸受等で使用されるテーパー型のロールベアリングの問題点としては、テーパー型または円錐型の走り面が軸受内の機能ユニットとして共に設置するしかない点がある。これにより全体的な公差を計算するときに、常に余計な加数が生じる。本発明を利用することによって、一方で転がり軸受の同心性を、他方で転がり軸受の内部すきまの調節を、別々に実現することができる。スピンドル、シャフト、ローラー等において本発明を利用することによって、全ての回転部品の最終的な円筒機械加工またはキャリブレーションを、軸受の内部リングと共に行うことができる。
【発明の概要】
【0004】
したがって本発明は、高い振れ精度を可能にすると同時に高い負荷を吸収するという利点がある。これは特に軸受の予圧が2次元の予圧平面で発生するだけでなく、軸受外リングの周りを完全に取り囲むように発生するという事実によって達成される。これにより全平面においてがたつきのない回転機能を有する回転配置が可能となる。軸受外リングの外径を調節することによって、予圧されるべき転がり軸受に、所定の予圧が生成される。これにより転がり要素を介した静止している組立体から回転している組立体への部分的なあるいは完全な接触が実現される。
【0005】
さらに本発明により非常にコンパクトな設計が可能となる。互いに固定されている複数の軸受を有する複数軸受の配置は、非常に大きなスペースの制約があり、また負荷吸収が小さくなるといった結果を常に生じるが、これはこのように固定されている配置では、転がり軸受が回転体との接触方向にしか負荷を発散させることができないからである。
【0006】
本発明はまた、軸受けが作動している際の動作環境の監視を可能することで、軸受けの損傷やその他摩耗に関する不具合の兆候を、早い段階で検知することができる。さらには動作中に軸受けの予圧を調節することができ、熱変化等によって軸受け予圧に変化が生じた場合に、予圧を最適な値に連続的に再調整することができる一方で、他方において、これにより最適な動作環境を、非常に正確な同心性の形態等で実現し、軸受けの摩耗を最小限に抑えることができる。
【0007】
本発明の課題はしたがって、内部すきまのない配置を生成し、および/またはシャフトに取付けられた転がり軸受に所定の予圧を生成するための装置を提供することであって、前記装置は特に取り扱いが容易な上に、動作環境を変更させる上で有利に使用することが可能である一方で、転がり軸受に高度な運転精度を付与する機能を果たす。
【0008】
この課題は独立請求項に記載された特徴によって解決することができる。
【0009】
したがって、締め付け装置に空洞を設け、前記空洞は、前記締め付け装置の全周のうち、少なくとも一部或いは好ましくは全周にわたって環状に、かつ軸方向に延在し、前記空洞の中に前記締め付け要素が、スリーブの形状で軸方向に移動可能に受け入れられており、前記空洞が軸方向に先細りになっていることを考えることができる。本装置は転がり軸受の分野で利用することができ、例えば圧延機やロール成形ラインのようなロール配置の分野、印刷機、回転加工機の分野、あるいは折り目付け、エンボス加工、打ち抜き加工の分野に利用できる。
【0010】
本発明の他の利用分野としては、例えば機械加工システム、ロール焼入れまたはローレット加工における、工具スピンドルとワークスピンドルの両方に対する機械加工工具のスピンドル軸受配置、も考えられる。また、本発明が、例えばターボ機械分野における回転子のスピンドル軸受配置に使用されることも考えられる。また、車輪軸受に使用することも考えられる。
【0011】
印刷技術の分野においては、彫刻ロールの同心性を確保するために、転がり軸受の内リングは、レースのある転がり要素とは別に、ロールに取付けられる。この結果、ロールの表面には、転がり軸受の内リングと共に、動作中における1つの締め付け動作で最大限の同心性が生じる。特に材料ウェブの作製に平滑なロール表面が必要とされる場合、転がり軸受の軸受レースとロール表面との間の公差について、できる限り「逃げがない」ことが必要とされる。本発明で提案する円錐状の締め付けセットを用いて軸受外リングが円錐状に「収縮」することにより、円周方向の非常に正確な送り込みが実現される。これは個々の部品が直接接触し、また個々の部品を、所定の公差範囲内で、環状に旋盤加工または研削加工によって、非常に正確に作製することができる、という理由によって達成される。これはテーパー状の軸受けを用いた場合には実現することができないが、これはこれらが別々に製造された転がり要素から構成されるためであって、これらの転がり要素の製造により、公差に大きな変動が生じるためである。
【0012】
締め付け装置は、転がり軸受の外リングに向かって軸の方向に押し付けることができるように設計することができる。締め付け装置は転がり軸受の外リングを環状に取り囲むことができる。締め付け装置は転がり軸受の軸幅よりも大きな、軸方向の幅を有することができる。第1配置において、締め付け要素と締め付け装置との間にすき間があり、または少なくとも変形状態を生じさせないことができる。第2配置において、締め付け要素が締め付け装置よりも大きな寸法を有し、および/またはこれら2つの部材間に変形状態を生じさせることができる。
【0013】
締め付け要素を第2配置の範囲内で調節可能とすることで、所定の軸受け予圧を設定することができる。締め付け要素は、転がり軸受の軸幅よりも大きな軸幅を有することができる。これにより締め付け要素が転がり軸受を覆うことなく、締め付け要素を締め付け装置内において軸方向に調節することができる。
【0014】
に空洞は直線的に先細りにすることができる。空洞は、締め付け要素の軸幅よりも大きな軸幅を有することができ、これにより締め付け要素を空洞内で軸方向に調節可能とすることができる。空洞部の最も低い高さを、締め付け要素の最も低い高さよりも小さくすることができる。さらに空洞部の最も大きな高さを、締め付け要素の最も大きな高さ以上の高さとすることができる。スリーブに2つの対向する端面を設けることができる。スリーブは、対応する端面とこれに対向する空洞壁との間に、それぞれ圧力室が保持されるようにしてのみ調節可能または設計することができる。
【0015】
さらに、スリーブに、軸方向に少なくとも部分的な円錐形状を有するスリーブ外面を設け、空洞に空洞外面を設け、空洞外面は、軸方向に少なくとも部分的な円錐状を有しており且つ径方向内向きを向き、スリーブ外面と協働し、スリーブ外面の円錐部分と空洞外面の円錐部分を、互いに平行に位置合わせさせる、ことができる。したがって、スリーブは断面でくさび型をしたスリーブ外面を有することができ、空洞はこれに合わせた形状をした空洞外面を有することができる。空洞内でスリーブを調節することにより、転がり軸受に内部すきまのない配置を達成することができる一方で、軸方向の調節具合に応じた所定の予圧を実現することができる。
【0016】
加えて、スリーブにスリーブ内面を設け、空洞に空洞内面を設け、空洞内面は、スリーブ内面に当接して径方向外側を向き、スリーブ内面と前記空洞内面を、転がり軸受の軸方向に対して平行に位置合わせすることができる。スリーブ内面と空洞内面は互いにフラットに配置させることができる。転がり軸受の軸方向に対して平行に整列させることは、大きく均一な応力分布が生成させるといった利点がある。
【0017】
締め付け要素を連続的に軸方向に調節するためのアクチュエータを、締め付け装置に接続させることを考えることができる。このために上記空洞を液圧チャンバーとして設計し、また締め付け要素は、内部で軸方向に調節可能なピストンまたは液圧アクチュエータとして設計することができる。圧縮のレベルと位置に応じて、転がり軸受の軸受レースに所望とする圧縮を加えることができる。締め付け装置は、液圧、電気、空気圧、機械的に駆動することができ、または少なくとも1つのスピンドルを用いて駆動することができる。位置決めねじ等を用いて始動前に一度だけ予圧が設定される公知の解決策と比較して、本発明は、予圧を連続的に調節することができ、また例えば動作環境の変更を考慮に入れることができるといった利点がある。
【0018】
転がり軸受の軸受すきまを継続的に監視するための装置の提供を考えることができる。これは例えば予圧を検知しおよび/または電気接触抵抗値による接触許容範囲を用いて行うことができる。代替的に或いは追加で、軸受け内部すきまの監視は、駆動装置内のノイズ特性、振幅変化、振動および/またはトルクの変化の検知によって実行することができる。
【0019】
特に本装置は、予め設定可能な目標とする軸受予圧を設定するための制御ループをさらに備えることができ、制御ループ内において、目標とする軸受予圧が、軸受すきまを継続的に監視するための装置により測定された実際の軸受予圧、と連続的に或いは所定の時間間隔で比較され、これに応じてアクチュエータ装置が、対応する操作量で制御される。この目的のため、本装置は、監視装置から測定データを受信して対応する動作信号を送信する制御装置を備えることができる。この目的のため、本装置はさらに電気的な制御が可能なバルブをさらに備えることができ、これを用いて生成されるべき圧力の方向、ひいては締め付け要素が動く方向を制御することができる。本装置はさらにポンプを備えることができ、ポンプを用いて発生する圧力を調節することができる。バルブの位置をプリセットするために、制御装置をバルブに接続することができる。設定されるポンプ圧力をプリセットするために、制御装置をポンプに接続することができる。
【0020】
本装置は転がり軸受として円筒ころ軸受または針状ころ軸受を備えることができる。原理的には、軸受中心軸に対して垂直な予圧を加えることのできるあらゆるタイプの軸受を使用することができる。
【0021】
円筒形の転がり要素を有する転がり軸受は、振れ公差が小さいという利点がある。さらに、一度の締め付けで、ロールの内リングをロール表面と共に、一度の締め付け操作で較正できるため、公差の累積を避けることができる。これに対して、回転子を内リングと共に一度の締め付け操作で較正するといったこの考え方は、テーパー状の転がり軸受には存在しない。テーパー形状の転がり軸受の運転精度は、機械加工工具スピンドル等における個々の公差を取り除くことによりのみ達成することができる。テーパー状の転がり軸受はX配置とO配置にある複数の列で取り付けられる。これは長期間の安定性のために設計することができるが、適切なサイズが必要とされる。
【0022】
さらに、先行する何れかの請求項に記載の装置を用いてシャフトに取付けられた転がり軸受の予圧を調節する方法であって、
動作中に軸受配置の予圧を検知するステップと、
検知された実際の予圧を目標とする予圧と比較して差分値を計算するステップと、
前記差分値を利用し、操作量値をアクチュエータに出力して、軸受の予圧を設定するステップと、
を含む方法であって前記アクチュエータが、前記締め付け装置内に配置されて軸方向に調節可能な前記締め付け要素を制御し、軸方向の調節位置に応じて、前記締め付け装置が所定の軸受予圧を生成することを特徴とする方法が提案される。
【0023】
さらには前記予圧を検知するステップに、軸受の熱動作環境の測定、および/または、機械的な負荷の測定、および/または、電気接触抵抗の測定、が含まれる場合がある。代替的に或いは追加で、予圧の検知には、駆動装置内のノイズ特性、振幅変化、振動および/またはトルクの変化に関する検知が含まれる場合がある。
【0024】
アクチュエータにより前記締め付け要素が、軸方向に空気圧で或いは液圧で調節される場合がある。場合によっては、締め付け要素はスピンドルを用いて機械的に或いは電気的に調節される。
【0025】
本方法では、軸方向の調節のために前記締め付け要素が両端面で異なる圧力下に置かれ、予圧を高めるために前記締め付け要素の第1面に加わる第1圧力を、前記第1面とは反対側にある前記締め付け要素の第2面に加わる第2圧力よりも高くし、予圧を減少させるために前記第2圧力を前記第1圧力よりも高くすることができる。
【0026】
特に、締め付け要素を、軸方向で先細りとなる空洞内において軸方向で調節可能に配置することができ、締め付け要素が先細りとなる空洞の先端方向に調節させることによって予圧を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下、各図面を参照して本発明の詳細を説明する。即ち:
【0028】
図1図1は予圧のない第1配置にある本発明に係る装置の一実施形態の断面図である。
図2図2は予圧が生成されている第2配置にある本発明に係る装置の一実施形態の断面図である。
【0029】
解除可能ですきまのない配置を転がり軸受に生成する図1に図示される装置1には、シャフト6に取り付けられて針状軸受の形態にある転がり軸受2が備えられ、転がり軸受2には軸受内リング5と、複数の転がり要素4と、軸受外リング3とが設けられている。径方向の円周応力を発生させる締め付け装置7が、軸受外リング3に向かって軸の方向に押し付けられており、締め付け装置7には環状の空洞部11が設けられており、この中に締め付け要素8が軸方向に調節可能に設けられている。空洞部11には径方向外側に向いている空洞内面15が設けられ、空洞内面15は軸受中心軸に対して平行に位置合わせされている。空洞部11にはさらに内側を向いている空洞外面13が設けられているが、この空洞外面13は空洞内面15とは平行になっておらず傾いて延在しており、空洞部11は右側から左側にかけて先細りになっており、図面中、左側の高さが右側の高さよりも低くなっている。締め付け要素8には空洞の形状に合わせた接触面が備えられており、径方向で内側を向く締め付け要素内側面14と、外側を向く締め付け要素外側面12と、が設けられている。締め付け要素内側面14は空洞内面15と同様に軸受中心軸に対し平行に位置合わせされているが、締め付け要素外側面12は空洞外面13と同様にして、これに対し傾斜して延在している。ここにおいて締め付け要素外側面12に関する円錐の傾斜の角度は、軸受中心軸に対する空洞外面13の角度に対応している。締め付け要素8は、空洞部11の軸幅よりも小さな軸幅を有しているため、締め付け要素8が空洞部11の中を軸方向に調節可能になっている。予圧を生成するためには、空洞部11の最も低い高さが、締め付け要素8の最も低い高さよりも、小さいことが重要である。締め付け要素8の左右には、軸受中心軸に対して略垂直に位置合わせされた端面がそれぞれ設けられており、何れも自身と対向する空洞部11の壁との間で、流体密封室を定めている。したがって締め付け要素8は軸方向に液圧で調節可能なアクチュエータを形成し、これにより軸方向の位置に応じて軸受の外径が一定量収縮する。この目的のために第1流体ライン21は第1流体密封室23に開放しており、また第2流体ライン22は反対側の第2流体密封室24に開放しており、これらを介して各圧密室を所定の液圧p,pで圧縮することができる。これら2つの流体ライン21、22は、電気的な制御が可能な4/2方バルブを介して制御することができ、バルブ位置に応じて第1流体ライン21または第2流体ライン22の何れか一方が圧縮される。所望とする圧力を発生させるためバルブ19にポンプ20が接続される。バルブ19とポンプ20は制御ユニット(PLC:プログラマブルロジックコントローラ)18により制御され、制御ユニット18は、軸受のすきまを検知する監視デバイスから、またはシャフト6と締め付け装置7の間で測定される電気接触抵抗を測定する抵抗測定デバイス17から、測定データを連続的にまたは一定間隔で受信する。図面中、抵抗測定デバイス17の正極が締め付け装置7に接続され、陰極がシャフトに接続されている。ポンプ20、バルブ19、制御ユニット18および抵抗測定デバイスは、アクチュエータ16の一部であって、これらにより所定の目標予圧を設定するための制御ループが実現される。
【0030】
図1には第1の配置9にある締め付け要素8が図示されており、ここにおいて空洞部11に予圧が発生しないように締め付け要素8が配置されている。締め付け要素8上の矢印は右向きの移動方向を表し、すなわち空洞の広がっている部分の方向を表している。したがって転がり軸受2には軸受けすきまがある。図1に認められる通り、各転がり要素4と外軸受リング3との間にはすきまが存在する。この目的のため、バルブ19は第1流体ライン21から流体密封室23に、予圧を低くするような信号圧力pを加える。図2には第2の配置10にある締め付け要素8が図示されており、空洞部11に予圧が発生するように締め付け要素8が配置されており、これにより軸受2はあそびのない状態にセッティングされる。締め付け要素8上に矢印で表された移動方向は、締め付け要素が左側に移動していることを表し、即ち空洞の先細る部分の方向に移動していることが表されている。その際、第1流体密封室23の室内体積が減少し、第2流体密封室24の室内体積が増大する。この目的のため制御ユニット18でバルブ19を調節することにより、今度は第2流体ライン22が圧力pで圧縮され、第2流体密封室24内の予圧がポンプ20で高まるように、調節される。その結果、締め付け装置7が軸受外リング3を収縮させることで、各転がり要素4と完全に接触した状態になる。すきまがないことに加えて、今度は軸受2内に、特定の用途のために必要とされる所定の予圧を生成することができる。電気接触抵抗を継続的に監視し、且つ測定データを制御ユニット18で継続的に処理することによって、予圧を連続的に且つ作業中に再調整することができ、例えば熱変動が発生した際予圧に変更が生じた場合に、再調整することができる。
【0031】
上記明細書、図面、および特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、個別に、または任意の組み合わせで、本発明の具現化に本質的である場合がある。
【符号の説明】
【0032】
1 本装置
2 転がり軸受
3 転がり軸受の外リング
4 転がり要素
5 転がり軸受の内リング
6 シャフト
7 締め付け装置
8 締め付け要素
9 第1配置
10 第2配置
11 空洞
12 スリーブ外面
13 空洞外面
14 スリーブ内面
15 空洞内面
16 アクチュエータ
17 軸受のすきまを検知する監視デバイス、抵抗測定デバイス
18 制御ユニット
19 4/2方制御バルブ
20 ポンプ
21 第1流体ライン
22 第2流体ライン
23 第1流体密封室
24 第2流体密封室
予圧を減少させる信号圧力
予圧を増加させる信号圧力
【国際調査報告】