(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】試料を分析するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
G01N29/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561879
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 FI2022050243
(87)【国際公開番号】W WO2022219243
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518073457
【氏名又は名称】ヘルシンギン ユリオピスト
【氏名又は名称原語表記】HELSINGIN YLIOPISTO
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイニオ、マルック
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA01
2G047BA04
2G047BC04
2G047BC15
2G047CA04
2G047GD02
2G047GF11
2G047GG32
(57)【要約】
試料を分析するための装置(100)であって、試料に向かって非熱広帯域電磁放射線を放出するように構成された、少なくとも1つの光源(102)と、試料及び電磁放射線を受け取り、試料による該電磁の吸収を検出するように構成された、カンチレバー強化光音響(CEPAS)検出器(104)と、を備える、装置(100)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を分析するための装置(100)であって、前記装置は、
-試料に向かって非熱広帯域の電磁放射線を放出するように構成された、少なくとも1つの光源(102)と、
-前記試料及び前記電磁放射線を受け取り、前記試料による前記電磁放射線の吸収を検出するように構成された、カンチレバー強化光音響(CEPAS)検出器(104)と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記CEPAS検出器が、
-前記試料を受容するように適合された試料チャンバ(106)であって、前記電磁放射線が前記試料チャンバに入ることを可能にするための少なくとも1つの開口部(108)を含む、試料チャンバ(106)と、
-マイクロフォン装置であって、
前記試料チャンバ内に配置された、少なくとも1つの開口であって、前記開口は、それに結合されたカンチレバー(110)を有し、前記カンチレバーは、好ましくはケイ素を含み、前記電磁放射線が前記試料によって吸収されることに起因して、前記試料チャンバ内で発生する圧力変動に応答して移動可能であるように構成されている、少なくとも1つの開口と、
前記カンチレバーの移動を測定するための測定装置と、を含む、マイクロフォン装置と、を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光源によって放出された電磁放射線のスペクトルが、少なくとも1THzの帯域幅を含む、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの光源が、発光ダイオード(LED)、超発光ダイオード(SLD)、超広帯域光源、又は光周波数コムである、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記装置が、任意選択的に10Hz~5kHzの範囲内の少なくとも1つの周波数で前記電磁放射線を変調するための手段(120)を追加的に含む、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
変調するための前記手段が、少なくとも1つの光学チョッパ(002)を含むか、又は前記変調することが、前記少なくとも1つの光源に渡されている電流を変調することを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が、複数の異なるチャネルに分離可能な電磁放射線の複数の離散スペクトル又は少なくとも部分的に重なる別個のスペクトルを提供するように構成されている、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記別個のスペクトルが、任意選択的に1つ以上の光学フィルタを使用して専用手段(120)によって提供されるか、又は前記別個のスペクトルが、複数の光源(102a、102b、102n)を使用することによって提供される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が、前記別個のスペクトルのうちの少なくとも2つ、好ましくは提供されたものの全てを、異なる周波数で変調するように構成されている、請求項7又は請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記装置が、前記別個のスペクトルを組み合わせるための手段(124)を追加的に含み、前記CEPAS検出器が、前記組み合わせられたスペクトルを受信するように構成されている、請求項7から請求項9までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記装置が、少なくとも1つの第1の化合物、好ましくは少なくとも1種の粒子状物質、任意選択的に黒色炭素、及び少なくとも1つの第2の化合物、好ましくは少なくとも1つのガス状化合物、任意選択的に窒素酸化物を、前記スペクトルのうちの少なくとも1つが、前記第1の化合物によって本質的に吸収される波長を含み、前記スペクトルのうちの少なくとも1つの他のスペクトルが、前記第1の化合物によって本質的に吸収されない波長を含むように、前記別個のスペクトルを選択することによって、同時に検出するように構成されている、請求項7から請求項10までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
試料を分析する方法であって、前記方法は、
-非熱広帯域の電磁放射線を放出するように構成された少なくとも1つの光源を提供すること(502)と、
-カンチレバー強化光音響(CEPAS)検出器を提供すること(504)と、
-前記CEPAS検出器に、分析される試料ガスを提供すること(506)と、
-前記試料ガスに前記電磁放射線を照射すること(508)と、
-前記CEPAS検出器を用いて、前記試料による前記電磁放射線の吸収を検出すること(510)と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、試料の分析に関する。より具体的には、本発明は、少なくとも1つの非熱広帯域光源、及びカンチレバー強化光音響検出器を利用して試料を分析するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス状試料の分析は、大気質の監視などの様々な分野で重要である。この目的のために、多くの異なるタイプの方法及びデバイスもまた利用可能である。検出器と組み合わせたレーザの使用は、(濃度測定などの)高感度で試料中の化合物の分析を提供することで知られている。特定のレーザ波長を使用して、使用された波長で光を吸収する特定の化合物を検出することができる。レーザは、取得された信号の強度が、使用された光の強度に依存するため、一般的に光音響検出器とともに使用され、レーザは、十分な信号強度に必要な光パワーを提供し得る。
【0003】
レーザベースの方法は、実装コストが高く、加えて、1つのレーザ光源は一度に1つの化合物の検出のみを可能し得るため、使用は制限され得る。したがって、2つ以上の化合物が検出対象の場合、複数の異なる検出デバイス(又は、少なくとも複数の異なるレーザ光源)を使用する必要がある。
【0004】
レーザよりも経済的な光源を使用してガス状化合物中の成分を検出するためのデバイスを提供すると、中程度の感度しか呈さない。
【0005】
特に、大気質測定の分野を考慮すると、低コストデバイスにより提供された感度が不十分である可能性がある。更に、空気中に含まれる複数の異なる化合物の濃度を検出することがしばしば望まれる。大気質の十分な評価は、全てレーザを採用する多くの異なるデバイスの使用を必要とする場合があり、費用のかかる複雑な組み立てが生じる。
【0006】
実装する上で費用効率が高く、更に高い測定感度を提供する、試料を分析するための装置を提供することは有益と考えられる。加えて、試料中の複数の化合物の検出に使用できる装置を提供することは有益と考えられる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、従来技術における問題の少なくとも一部を軽減することである。本発明の一態様によれば、試料を分析するための装置であって、試料に向かって非熱広帯域電磁放射線を放出するように構成された、少なくとも1つの光源と、試料による該電磁の吸収を検出するように構成された、カンチレバー強化光音響(cantilever-enhanced photoacoustic、CEPAS)検出器と、を備える、装置が提供される。
【0008】
独立請求項12による、試料を分析するための方法もまた提供される。
【0009】
試料を分析するための方法及び装置は、従来技術で知られているものよりも汎用性が高くてもよく、装置は、試料中に含まれる複数の化合物を検出する能力により、複数の別個の検出デバイスの代わりに使用し得る。
【0010】
本発明を利用して、従来技術の装置よりも安価な装置を提供することもでき、装置を容易に小型化することができる。
【0011】
特にLED及び/又はSLDで利用可能な可能な限り低コストの光源と、CEPAS検出器によって提供された高感度検出との組み合わせは、従来技術では利用されていない。非干渉性又は広帯域電磁放射線を生成する非熱光源と、CEPAS検出器と、を含む装置を提供することにより、試料中の異なる化合物の強化された検出を提供することができる。試料ガス中の化合物の検出は、この組み合わせを通してより費用対効果が高く、より単純にすることができることが、発明者によって認識された。CEPAS検出器の感度は、例えば、LED(又は、従来のレーザの単色及び分光的に高度に集中したパワーを提供することなく使用され得る他の光源)を光源として使用することを可能にし、一方、検出の感度は十分なレベルで保持される。
【0012】
1つ以上の光源が、例えば、超広帯域又は周波数コムでレーザなどのLEDよりも高価である実施形態でさえ、装置はそれでもなお、複数の従来の単色レーザが別様に使用される解決策に、費用対効果の高い代替手段を提供することができる。
【0013】
装置は非熱広帯域光源、例えば、LED、SLD、超広帯域(レーザ)光源又は光周波数コムを通して提供され得る電磁放射線の広帯域(例えば、1THz帯域幅にわたって)により、異なる周波数で電磁放射線を吸収する化合物を検出するために使用され得る。
【0014】
CEPAS検出器はまた、広範な線形ダイナミックレンジを提供し、したがって、濃度又は吸光度が更に大きく異なる試料の化合物を正確に検出するために利用され得る。例えば、10-9~10-3の範囲の相対濃度を、同じ装置でも同時に検出することができる。
【0015】
特に、環境ガスに関連する測定は、特性及び/又は濃度が異なり得る複数の異なる化合物の測定を伴い得る。本発明の実施形態は、これら複数の異なる化合物を異なる濃度で検出する可能性を提供し得る。
【0016】
一実施形態では、CEPAS検出器は、試料を受容するように適合された試料チャンバであって、電磁放射線が試料チャンバに入ることを可能にするための少なくとも1つの開口部(例えば、窓)を含む、試料チャンバを含む。加えて、CEPAS検出器は、試料チャンバ内に配置された少なくとも1つの開口を含むマイクロフォン装置を備え得、該開口は、それに結合されたカンチレバーであって、電磁放射線が試料によって吸収されることに起因して、試料チャンバ内で発生する圧力変動に応答して移動可能であるように構成されている、カンチレバーを有する。加えて、マイクロフォン装置は、カンチレバーの移動を測定するための測定装置を含み得る。カンチレバーは、有利には、ケイ素を含む。
【0017】
加えて、装置は、10Hz~5kHzの範囲内であり得る少なくとも1つの周波数で電磁放射線を変調するための手段を含み得る。
【0018】
装置は、電磁放射線を変調するための異なる手段を含み得る。変調するための手段は、少なくとも1つの光学チョッパを含み得、及び/又は変調することは、装置で利用される少なくとも1つの光源に渡されている電流を変調することを含み得る。
【0019】
一実施形態では、装置は、複数の異なるチャネルに分離可能な電磁放射線の複数の離散スペクトル又は少なくとも部分的に重なる別個のスペクトルを提供するように構成され得る。
【0020】
一実施形態では、装置は、複数の化合物を同時に検出するように構成され得、複数の別個のスペクトルが提供され得、異なるスペクトルの波長は、それぞれが1つ以上の特定の化合物を検出するのに適しているように選択され得る。例えば、少なくとも第1の化合物を検出するために、少なくとも1つの別個のスペクトルは、第1の化合物によって本質的に吸収される波長を含み得、一方、少なくとも1つの他の別個のスペクトルは、第1の化合物によって本質的に吸収されない波長を含み得る。
【0021】
別個のスペクトルは、1つ以上の光学フィルタを使用することを通してなどの、例えば、1つの光源からのスペクトルを提供するための専用手段を含む装置によって提供され得、あるいは別個のスペクトルは、複数の光源を使用することによって提供され得る。
【0022】
別個のスペクトルが提供される実施形態では、装置は、別個のスペクトルのうちの少なくとも2つを異なる周波数で変調するように更に構成され得る。有利には、提供されている別個のスペクトルの全ては、異なる周波数で変調され得る。
【0023】
装置は、加えて、別個のスペクトルを組み合わせるための手段を含み得、CEPAS検出器は、次いで、組み合わされたスペクトルを受信するように構成され得る。
【0024】
従来技術では、光音響検出器を採用するいくつかの装置は、音響共振器を利用して、測定感度を高める。従来の光音響検出器と組み合わせて、非レーザ光源(具体的には、従来のレーザよりも低いパワー又は強度を有する光源)を使用しようとすると、実際の用途で使用可能な検出閾値を達成するために、そのような音響共振器を採用しなければならない。この場合、変調周波数を音響共振の周波数に正確に調整する必要があるため、光源によって提供された光を変調するために、1つの変調周波数のみを使用することができる。したがって、これらのタイプの光音響検出器及び装置は、別個のスペクトルを有する別個のチャネルに光が提供され、それぞれが異なる周波数で変調される用途には適していない。
【0025】
大気質の監視では、監視されるべき関心化合物は、粒子状物質及びガス状化合物を含むことができる。関心粒子又は化合物には、例えば、道路粉塵、微粒子状物質、及び/又は窒素酸化物(NOx)などのガス状汚染物質が含まれ得る。特に、黒色炭素は大きな影響を与える汚染物質である粒子状物質であり、健康に悪影響を及ぼし、大気中に存在すると温室効果を高める。具体的には、NO2は、亜酸化窒素のグループの中で顕著な汚染物質である。
【0026】
本発明では、1つ以上の化合物を同時に、例えば、1種の粒子状物質及び1種以上のガス状化合物などの、少なくとも第1の化合物及び第2の化合物を同時に検出することが可能であり得る。例えば、装置は、少なくとも黒色炭素及び1つ以上の窒素酸化物を同時に検出するように構成され得る。
【0027】
本発明の実施形態による装置は、化合物の同時連続検出をリアルタイムで提供し得る。
【0028】
考察される試料、及び関心粒子又は化合物は、ガス状試料として提供され得る。ガス状試料は、例えば、空気又は他のガスに浮遊する粒子状物質を含み得る。
【0029】
このテキストに提示される例示的な実施形態は、出願中の特許請求の範囲の適用可能性に制限を与えると解釈されるべきではない。「備える」という動詞は、このテキストでは、未列挙の特徴の存在を排除しない公開限定として使用される。特許請求の範囲に応じて列挙される特徴は、特に明示的に記載されない限り、相互に自由に組み合わせ可能である。
【0030】
本発明の特徴と見なされる新規の特徴は、特に添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、本発明自体は、その構造及びその動作方法の両方に関して、その追加の目的及び利点とともに、添付の図面と関連して読まれるときに、特定の例示的な実施形態の以下の記載から最もよく理解されるであろう。
【0031】
当業者によって理解されるように、装置の様々な実施形態に関する提示された考慮事項は、変更すべきところは変更して、本方法の実施形態に柔軟に適用され得、逆も同様である。
【0032】
次に、本発明を、添付の図面による例示的な実施形態を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態による装置の少なくとも一部を概略的に示す。
【
図2】本発明の実施形態における、変調するための手段として使用され得る光学チョッパの1つの代替物を示す。
【
図3】本発明の一実施形態による、1つ以上の装置を概略的に示す。
【
図4A】本発明の実施形態による更なる装置を例示的に表す。
【
図4B】本発明の実施形態による更なる装置を例示的に表す。
【
図5】本発明の一実施形態による方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明の一実施形態による装置100の少なくとも一部分を概略的に示す。装置100は、試料に向かって非熱広帯域電磁放射線を放出するように構成された、少なくとも1つの光源102を備える。光源102は、発光ダイオード(light emitting diode、LED)、超発光ダイオード(superluminescent diode、SLD)、超広帯域(レーザ)光源、又は光周波数コムであってもよい。有利には、「広帯域」は、少なくとも1THzの帯域幅を含む電磁放射線のスペクトルを指し得る。
【0035】
装置は、試料による電磁放射線の吸収を検出するように構成された、カンチレバー強化光音響(CEPAS)検出器104を追加的に備える。1つの有利なタイプのCEPAS検出器が、例えば、特許出願第WO2004/29594号に記載されている。
【0036】
装置100は、装置100を用いた分析対象であるガス状試料を受容又は保持するように構成され得る。通常、試料セル106は、CEPAS104に関連して提供される。
【0037】
試料セルは、光源102によって放出された光が試料セル106に入ることができる、開口部108を含み得る。試料は、試料セル106に入ることを許された、光源102によって放出された電磁放射線の、少なくとも特定の波長を吸収する構成物質又は化合物を含み得る。
【0038】
CEPAS検出器は、マイクロフォン装置によって電磁放射線の吸収を検出するように構成され得る。マイクロフォン装置は、試料チャンバ106内に少なくとも開口を含み得、開口は、それに結合されたカンチレバー110を有する。1つの有利な実施形態では、カンチレバーは、ケイ素を含むか、又はケイ素で作製されている。カンチレバーは、電磁放射線が試料によって吸収されることに起因して、試料チャンバ106内で発生する圧力変動に応答して移動可能であるように構成されている。
【0039】
CEPAS検出器によって提供された測定感度は非常に高くてもよく、検出器を介して信号を取得するために必要な検出閾値又は濃度は、うまく採用され得る従来のレーザのものよりも低い強度を有する光源を使用しても十分に低くてもよい。例えば、約1ppbの検出閾値は、大気中のNO2を検出するために必要である。
【0040】
例えば、開口及び/又はカンチレバーの寸法は、例えば、カンチレバーが、最大でも開口の表面積に等しい表面積を有するように選択され得る。カンチレバーはまた、好ましくは、カンチレバーを取り囲むケイ素も含むフレーム構造上に取り付けられ得る。
【0041】
試料チャンバ106内の圧力変動は、光源102によって提供された電磁放射線を変調することによって達成され得る。例えば、変調が、周波数fで周期的に放射線を切断することによって実行される場合、試料チャンバ106内の圧力変動もまた、チャンバ内の試料が、提供された波長で該放射線を吸収する構成物質を含む場合、周波数fで発生する。マイクロフォン装置は、周期的な圧力(すなわち、音響)信号を検出することができる。変調周波数は、例えば、10Hz~5kHzであり得る。
【0042】
装置は、機械的に操作され得る1つ以上の光学チョッパなどの、光源102によって提供された光を変調するための手段を含み得る。
図2は、本発明の実施形態で使用され得る光学チョッパ002を示す。光学チョッパ002は、回転されるように構成されている金属プレートを含み得、プレートは、プレートが光源102によって提供された光の経路で回転されるにつれて、選択周波数によって光が変調されるように、金属プレート上に周期的に位置決めされた穴118を有し、選択周波数は、穴118の位置及び光学チョッパ002/金属プレートの回転速度に依存し得る。
【0043】
カンチレバーの移動の振幅Axは、カンチレバー110の共振角周波数ω0、表面積A、及び厚さdを最適化することによって、最適化又は最大化され得る。
【0044】
マイクロフォン装置は、カンチレバーと物理的に接触することなく、カンチレバー110の移動を測定するための測定装置を追加的に含み得る。測定装置は、例えば、光学測定装置又は容量測定装置を含み得る。
【0045】
一実施形態では、測定装置は、レーザ及び光学センサ114などの少なくとも測定光源112を含む光学測定装置を含み得る。測定装置は、光学センサ114を介して、測定光源112によって生成され、カンチレバーに向けられ、カンチレバー110から反射された光を観察することによって、カンチレバー110の移動を測定することができる。
【0046】
光学測定装置はまた、1つ以上のレンズ、少なくとも1つ以上の更なる光学センサ、1つ以上のミラー、及び/又は1つ以上のビームスプリッタも含み得る。干渉計を利用する好適な光学測定装置の例は、WO2003/78946に示されている。
【0047】
CEPAS検出器104のマイクロフォン装置、具体的には、検出器内のカンチレバー110の使用は、検出器の高感度を可能にする。CEPAS検出器のダイナミックレンジは、少なくとも4桁、好ましくは4~10桁、例えば、約5~6桁を含み得る。
【0048】
装置100は、追加的に、データ分析用の少なくとも1つのプロセッサを含み得るか、又はそれに関連付けられ得る。
【0049】
図3は、装置100の1つの代替的な実施形態の簡易図を示し、装置は、試料中に存在する複数の化合物を同時に検出するように構成されている。非熱広帯域光源102によって放出される電磁放射線のスペクトルは、複数の別個のスペクトルに分割され得、そのうちの少なくとも1つは、光源102によって提供されたスペクトル全体の一部のみを含む。別個のスペクトルに含まれる光の波長は、複数の異なるチャネルCH1、CH2、…、CHNに分離可能である、電磁放射線の離散スペクトル又は少なくとも部分的に重なる別個のスペクトルであり得る。
【0050】
したがって、装置100は、別個のスペクトルを提供するための手段120を含み得、手段120は、例えば、1つ以上の光学フィルタを含み得る。フィルタは、例えば、ダイクロイックミラーを含み得る。光源102によって提供された光のスペクトルは、少なくとも2つのチャネル、任意選択的に3つ以上のチャネルに分割され得る。
【0051】
各別個のスペクトル又はチャネルに含まれる光の波長は、例えば、試料中の1つ以上の関心化合物が該光を吸収し得るように、用途に基づいて選択され得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、装置100は、少なくとも亜酸化窒素及び粒子状物質を検出するように構成され得る。本発明の有利な実施形態では、装置100は、少なくともNO2及び黒色炭素を検出するように構成され得る。この場合、第1のチャネルCH1は、NO2が光を強く吸収する波長範囲にある、例えば、約400~500nmの範囲の波長を含み得る。第2のチャネルCH2は、有利には、本質的にNO2に吸収されない波長を含む、例えば、約500~700nmの範囲の波長を含み得る。黒色炭素は、本質的に全ての波長で光を吸収し、それによって、CH2は、光源102によって生成されたが、本質的にNO2によって吸収されない光の波長のいずれかを含み得る。当然ながら、例えば、第3のチャネルはまた、適切に選択された波長スペクトルを有する第3の、好ましくはオゾンなどのガス状化合物を検出するために提供され得る。
【0053】
別個のチャネルCH1、CH2、…、CHNは、各チャネルの電磁放射線を別々に変調するための手段122に向けられ得る。各チャネルの各スペクトルは、有利には、異なる周波数によって変調され得る。したがって、例えば、第1のチャネルCH1のスペクトルは、第1の周波数Mod1に従って変調され得、第2のチャネルCH2は、第2の周波数Mod2に従って変調され得る。変調するための手段122は、例えば、各チャネルに関連付けられた光学チョッパ002を含み得る。
【0054】
変調周波数は、CEPAS検出器の信号対ノイズ比が可能な限り大きくなるように、有利に選択される。このことは、通常は1kHz未満である、CEPAS検出器のカンチレバーの共振周波数未満である変調周波数を使用することを意味し得る。しかしながら、10Hz未満などの低周波数では、ノイズレベルは高くてもよく、それによって、10Hz~1kHzは適切であり得る。変調周波数は、本質的に任意に選択され得、検出される化合物に依存する必要はないが、変調周波数は、チャネルによって異なることが好ましい。典型的には、周波数を変調するためのチャネル間の差1~10Hzは、装置100による化合物の分離性を可能にするのに十分である。場合によっては、利用された主電流の周波数及びその倍数に対応する変調周波数を回避することが有利であり得る。
【0055】
変調後、チャネルCH1、CH2、…、CHNを結合又は組み合わせることができ、例えば、別個のチャネルを提供するための手段120で使用されるが、ここではプロセスを逆行させるのと同様の成分を利用することができる。装置は、例えば、ダイクロイックミラー又は他の光学フィルタなどのチャネルCH1、CH2、…、CHNを組み合わせるための手段124を含み得る。
【0056】
次いで、組み合わされた光信号/スペクトルは、CEPAS検出器に向けられ得、試料セル106内に提供された試料と相互作用することを可能にし得る。第1の周波数Mod1でCEPAS検出器に提供された信号は、次いで、第1のチャネルCH1に提供された波長の光を吸収する試料の構成物質によって引き起こされた信号に本質的に対応し、一方、第2の周波数Mod2で提供された信号は、第2のチャネルCH2に提供された波長の光を吸収する試料の構成物質によって引き起こされた信号に本質的に対応する。
【0057】
第1のチャネルCH1を介したNO2と、第2のチャネルCH2を介した黒色炭素とを同時に検出する場合、第1の周波数Mod1の信号は、提供された光の波長を吸収するNO2と黒色炭素の両方によって提供された信号に本質的に対応し、第2の周波数Mod2の信号は、NO2が第2のチャネルCH2の光の波長を本質的に吸収しないため、黒色炭素のみによって提供された信号に本質的に対応する。
【0058】
使用された電磁放射線が共通光源102によって提供され、各チャネルの効果が同時に測定/検出されるため、信号に干渉し得るいくつかの共通の外乱が補償され、相殺され得る。例えば、光源102によって提供された光パワー/強度の増減、又は試料セル106の開口部及び/又は壁によって吸収される光は、測定値を妨害するバックグラウンドの原因となる可能性がある。
【0059】
一実施形態では、複数のチャネルは、試料に含まれる1つの化合物のみを検出するように構成されている装置100によって提供され得る。ここで、装置は、増減する可能性のあるバックグラウンドが、外乱の上記補償により減少又は除去された信号を提供し得る。例えば、NO2を検出するために、1つのチャネルのみが使用される場合、平均化時間の関数としての検出閾値は、ppbを超え得る。しかしながら、2つのチャネル(例えば、400~500nmの波長を含む第1のチャネル、及び他の波長を含む第2のチャネル)を使用する際、バックグラウンド外乱の増減が本質的に除去され得るため、検出閾値は、より長い平均化時間でppb未満に下げられ得る。
【0060】
図4Aは、本発明による装置100の更なる1つの実施形態の少なくとも一部分を概略的に示す。ここで、装置100は、複数の光源102a、102b、…、102nを含み得る。光源102a、102b、…、102nは、例えば、LED、SLD、超連続体、及び/又は周波数コムを含み得る。各光源102a、102b、…、102nは、各スペクトルが異なり得る電磁放射線のスペクトルを提供するように構成され得る。スペクトルは、重なっていても離散していてもよい。ここで、専用手段120を用いたスペクトルの分離は、必要ではない。
【0061】
光源102a、102b、…、102nによって提供された別個のチャネル又はスペクトルは、好ましくは異なる周波数で、各スペクトルを変調するための手段122に向けられ得る。変調手段122は、例えば、前に論じられた光学チョッパ002を含んでもよい。例えば、Mod1は第1の光学チョッパに関連付けられ得、Mod2は第2の光学チョッパに…、というように関連付けられ得る。
【0062】
装置100は、次いで、スペクトルを一緒に結合するように構成され得、例えば、装置は、例えば、光チャネルを組み合わせるためのダイクロイックミラーを含む手段124を含み得、得られた光をCEPAS検出器104に向け得る。
【0063】
図4Bは、複数の非熱広帯域光源102a、102b、…、102nを備える装置100の代替的な実施形態の簡易図を示す。各光源によって提供されたスペクトルが本質的に離散的であるか、又はスペクトルが著しく重ならない場合、各光源102a、102b、…、102nによって提供された光は、CEPAS検出器104に渡される前に、組み合わせ手段124によって組み合わせられ得る変調光チャネル/スペクトルを提供するために、異なる変調周波数で、各光源に提供される電流を周期的に変化又は一時停止させることによって変調され得る。
【0064】
本実施形態によって提供された、試料を分析するための装置100及び方法は、光を変調するための専用手段122を提供する必要がない場合があるため、非常に簡単で費用対効果が高い場合がある。
【0065】
図3、
図4A、及び
図4Bの実施形態におけるCEPAS検出器104は、
図1の実施形態で使用され得るものに本質的に対応し得る。
【0066】
図5は、本発明の一実施形態による、試料を分析するための方法のフローチャートを示す。少なくとも1つの光源が提供され(502)、光源は、非熱広帯域電磁放射線を放出するように構成されている。次いで、カンチレバー強化光音響(CEPAS)検出器が提供される(504)。
【0067】
分析される試料ガスをCEPAS検出器に提供し(506)、その後、試料ガスは、光源によって提供された電磁放射線で照射される。最後に、CEPAS検出器を用いて、試料による該電磁放射線の吸収が検出される(510)。
【0068】
本発明は、前述の実施形態を参照して上で説明されており、本発明のいくつかの利点が実証されている。本発明は、これらの実施形態に限定されるだけでなく、本発明の思考及び以下の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内の全ての可能な実施形態を含むことが明らかである。
【0069】
従属請求項の範囲に列挙されている特徴は、特に明示的に記載されない限り、相互に自由に組み合わせることができる。
【国際調査報告】