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特表2024-516101膜間圧力差を用いた正浸透膜の完全性の評価
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  • 特表-膜間圧力差を用いた正浸透膜の完全性の評価 図1
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  • 特表-膜間圧力差を用いた正浸透膜の完全性の評価 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】膜間圧力差を用いた正浸透膜の完全性の評価
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/10 20060101AFI20240405BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20240405BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
B01D65/10
A61M1/16 179
B01D61/00 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561889
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2022058924
(87)【国際公開番号】W WO2022214448
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/172,853
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2150993-0
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501473877
【氏名又は名称】ガンブロ・ルンディア・エービー
【氏名又は名称原語表記】GAMBRO LUNDIA AB
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルティア, クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4C077
4D006
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD14
4C077GG09
4C077GG17
4C077HH10
4C077HH13
4D006GA14
4D006HA91
4D006JA53Z
4D006KA16
4D006KE02Q
4D006KE03Q
4D006KE06P
4D006KE07P
4D006KE16P
4D006KE19P
4D006LA06
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA21
4D006MB02
4D006PA01
4D006PB06
4D006PB20
4D006PC44
(57)【要約】
透析液生成装置(1)における正浸透(FO)デバイス(2)のFO膜(2c)の完全性を評価するための制御装置(10)および方法であって、FO膜(2c)は、FOデバイス(2)のフィード側(2a、2b)とドロー側(2a、2b)とを分離し、FOデバイス(2)は、フィード側(2a、2b)と流体連通するフィード入口ポート(Ein)およびフィード出口ポート(Eout)と、ドロー側(2a、2b)と流体連通するドロー入口ポート(Lin)およびドロー出口ポート(Lout)と、を備える。方法は、フィード入口ポート(Ein)を介してフィード側(2a、2b)にフィード溶液の流れを提供すること(S1)と、フィード側(2a、2b)における浸透圧よりも高いドロー側(2a、2b)の浸透圧で、ドロー入口ポート(Lin)を介してドロー側(2a、2b)にドロー溶液の流れを提供すること(S2)と、を含み、それによって、水がフィード側(2a、2b)からドロー側(2a、2b)に抽出され、ドロー溶液が希釈される。方法は、ドロー入口ポート(Lin)、フィード入口ポート(Ein)、および、フィード出口ポート(Eout)を介した流れを停止すること(S3)をさらに含み、それによって、ドロー側(2a、2b)とフィード側(2a、2b)との間の膜間圧力差(TMP)が最大値に達するまで、フィード側(2a、2b)からドロー側(2a、2b)に水は抽出され続ける。方法は、TMPを示す1つ以上の圧力をモニタすること(S4)と、TMPを示す1つ以上の圧力を含むモニタされた1つ以上のパラメータに基づいて、FO膜の完全性を評価すること(S8)と、をさらに含む。本開示はまた、透析液を生成するための溶液生成装置(1)に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液生成装置(1)における正浸透(FO)デバイス(2)のFO膜(2c)の完全性を評価するための方法であって、前記FO膜(2c)は、前記FOデバイス(2)のフィード側(2a)とドロー側(2b)とを分離し、前記FOデバイス(2)は、前記フィード側(2a)と流体連通するフィード入口ポート(Ein)およびフィード出口ポート(Eout)と、前記ドロー側(2b)と流体連通するドロー入口ポート(Lin)およびドロー出口ポート(Lout)と、を備え、前記方法は、
前記フィード入口ポート(Ein)を介して前記フィード側(2a)にフィード溶液の流れを提供すること(S1)と、
前記フィード側(2a)における浸透圧よりも高い前記ドロー側(2b)の浸透圧で、前記ドロー入口ポート(Lin)を介して前記ドロー側(2b)にドロー溶液の流れを提供すること(S2)であって、それによって、水が前記フィード側(2a)から前記ドロー側(2b)に抽出され、前記ドロー溶液が希釈されることと、
前記ドロー入口ポート(Lin)を介した流れ、前記フィード入口ポート(Ein)を介した流れ、および、前記フィード出口ポート(Eout)を介した流れを停止すること(S3)と、
それによって、前記ドロー側(2b)と前記フィード側(2a)との間の膜間圧力差(TMP)が最大値に達するまで、前記フィード側2aから前記ドロー側2bに水が抽出され続け、
前記TMPを示す1つ以上の圧力をモニタすること(S4)と、
前記TMPを示す前記1つ以上の圧力を含むモニタされた1つ以上のパラメータに基づいて、前記FO膜の前記完全性を評価すること(S8)と、を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記完全性を評価すること(S8)は、
大きさ、最大値に達するまでの時間および/または緩和のうちの1つ以上を含む、前記TMPまたは前記TMPを示す1つ以上の圧力の特性を評価することを含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記TMPを示す前記モニタされた1つ以上の圧力に基づいて決定された前記TMPの緩和速度の大きさに基づいて、前記FO膜(2c)の前記完全性を評価すること(S8)を含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記TMPの前記緩和速度の前記大きさについての1つ以上の完全性基準の達成に基づいて前記完全性を評価すること(S8)を含む、方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法であって、前記FO膜の前記完全性を評価すること(S8)は、前記停止すること(S3)が行われた後の期間中に前記TMPを示す前記1つ以上の圧力を含むモニタされた1つ以上のパラメータに基づいて、前記完全性を評価することを含む、方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法であって、前記TMPの前記最大値は、ゼロの大きさを有する前記TMPの緩和速度によって特徴付けられる、方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法であって、前記方法は、
前記TMPを示す前記モニタされた1つ以上の圧力に基づいて、前記TMPの前記最大値を決定すること(S5)と、
前記TMPを示す前記モニタされた1つ以上の圧力およびTMPの前記決定された最大値に基づいて、前記TMPがTMPの前記決定された最大値に対応するように、前記フィード入口ポート(Ein)または前記フィード出口ポート(Eout)を介した溶液の流れを制御すること(S6)と、
溶液の結果として得られる流れの流量を示す1つ以上のパラメータをモニタすること(S7)と、を含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記制御すること(S6)は、フィードポンプ(3)の前記速度を制御することを含み、
前記モニタすること(S7)は、前記フィードポンプ(3)の前記速度をモニタすることを含み、
前記完全性を評価すること(S8)は、前記フィードポンプ(3)の前記モニタされた速度に基づいて、前記FO膜(2c)の前記完全性を評価することを含む、方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の方法であって、フィード溶液の結果として得られる流れの流量を示す前記1つ以上のパラメータの1つ以上の完全性基準の達成に基づいて、前記完全性を評価すること(S8)を含む、方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法であって、前記ドロー出口ポート(Lout)は、希釈濃縮液容器(32)に接続される、方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法であって、前記モニタすること(S4)は、前記フィード側(2a)の前記圧力を示す圧力を含む1つ以上の圧力をモニタすることを含み、および/または、前記ドロー側(2b)の前記圧力を示す圧力を含む1つ以上の圧力をモニタすることを含む、方法。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の方法であって、前記フィード側(2a)における前記静水圧を、前記ドロー側(2b)における前記静水圧よりも大きくなるように増加させること(S9)と、前記フィード入口ポート(Ein)を介した流れを停止することと、前記TMPを示す1つ以上の圧力をモニタすること(S4)と、前記TMPを示す前記1つ以上の圧力を含むモニタされた1つ以上のパラメータに基づいて、前記FO膜の前記完全性を評価すること(S8)と、を含む、方法。
【請求項13】
透析液生成装置(1)における正浸透(FO)デバイス(2)のFO膜(2c)の完全性を評価するための制御装置(10)であって、前記FO膜(2c)は、前記FOデバイス(2)のフィード側(2a)とドロー側(2b)とを分離し、前記FOデバイス(2)は、前記フィード側(2a)と流体連通するフィード入口ポート(Ein)およびフィード出口ポート(Eout)と、前記ドロー側(2b)と流体連通するドロー入口ポート(Lin)およびドロー出口ポート(Lout)と、を備え、前記制御装置(10)は、
前記フィード入口ポート(Ein)を介して前記フィード側(2a)にフィード溶液の流れを提供するように構成されたフィードポンプ(3)と、
前記フィード側(2a)における浸透圧よりも高い前記ドロー側(2b)の浸透圧で、前記ドロー入口ポート(Lin)を介して前記ドロー側(2b)にドロー溶液の流れを提供し、それによって、前記フィード側(2a)から前記ドロー側(2b)への水の抽出が可能になり、前記ドロー溶液が希釈される、ドローポンプ(5)と、
前記ドロー側(2b)と前記フィード側(2a)との間のTMPを示す1つ以上の圧力を測定するように構成された1つ以上の圧力センサ(8)と、
前記ドロー入口ポート、前記フィード入口ポートまたは前記フィード出口ポートのうち少なくとも1つを介して1つ以上の流れを制御するように構成されたバルブ装置20と、を備え
前記制御装置(10)は、
前記フィードポンプ(5)、前記ドローポンプ(5)、および、前記バルブ装置(10)を使用して、前記ドロー入口ポート(Ein)を介した前記流れ、前記フィード入口ポート(Lin)を介した前記流れ、および、前記フィード出口ポート(Eout)を介した前記流れを停止し、それによって、前記ドロー側(2a)と前記フィード側(2b)との間の膜間圧力差(TMP)が最大値に達するまで、前記フィード側(2a)から前記ドロー側(2b)へ水が抽出され続けることを可能にし、
前記1つ以上の圧力センサ(8)を使用して前記TMPを示す1つ以上の圧力をモニタし、
前記TMPを示す前記1つ以上の圧力を含むモニタされた1つ以上のパラメータに基づいて、前記FO膜の完全性を評価する、ように構成される、制御装置。
【請求項14】
請求項13に記載の制御装置(10)であって、請求項1乃至12の何れか1項に記載の方法を実行するように構成される、制御装置。
【請求項15】
透析液を生成するための溶液生成装置(1)であって、前記装置(1)は、正浸透(FO)デバイス(2)であって、前記FOデバイス(2)のフィード側(2a)とドロー側(2b)とを分離するFO膜(2c)を含むFOデバイス(2)を備え、前記装置は、請求項13または14に記載の制御装置(10)をさらに備える、溶液生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、透析の分野および正浸透膜の完全性テストに関し、特に、透析液生成装置に配された正浸透膜の完全性を評価することに関する。
【背景技術】
【0002】
透析は、腎不全を患う患者を知徴するために一般に使用される。血液透析(HD)、腹膜透析(PD)および持続的腎代替療法(CRRT)などの複数タイプの透析治療が存在する。典型的には、透析液が、治療に使用され、透析液は、バッグ内の既成としてデリバリされるか、または、濃縮液と水とを混合することによって使用時に生成される。
【0003】
正浸透(FO)は、水消費を低減するポテンシャルを有するため、透析液を生成するための選択肢として持ち上がってきた。FO膜は、典型的には水分子に対して多かれ少なかれ選択的であるように設計され、これによって、FO膜は、他のすべての汚染物質から水を分離することを可能にする。しかしながら、検出されない完全性の問題は、FO膜を横切る水以外の成分の輸送を可能にしうる。
【0004】
したがって、生成された透析液が損なわれないように、このような完全性の問題を検出する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示のFO膜は、透析液を調製するために使用される。FO膜は、1つの実施形態において、水分子に対して多かれ少なかれ選択的であり、これによって、FO膜は、他のすべての汚染物質から水を分離することを可能にする。FO膜によって分離された、フィード溶液(例えば、透析治療からの水または排出液)と、ドロー溶液(透析濃縮液)と、の間の浸透圧差が、フィード溶液から透析濃縮液へ純水を抽出するために使用され、それによって透析濃縮液が希釈される。希釈された透析濃縮液は、その後、透析液を生成するために使用される。本開示のシステムおよび方法は、FO膜との完全性の問題を検出し、FO膜を横切る水以外の成分の輸送によって生成された透析液の組成の変化を抑制することを可能にする。
【0006】
したがって、本開示の目的は、正浸透膜の完全性を評価するためのシンプルかつ信頼性がある方法を提供することである。さらなる目的は、オンラインまたは透析液の調製中に、正浸透膜の完全性を評価するための方法を提供することである。
【0007】
これらの目的および他の目的は、独立請求項による方法、制御装置および透析液生成装置によって、および、従属請求項による実施形態によって、少なくとも部分的に達成される。
【0008】
任意の他の態様およびその実施形態と組み合わせることができる1つの態様によると、本開示は、透析液生成装置における正浸透(FO)デバイスのFO膜の完全性を評価するための方法に関する。FO膜は、FOデバイスのフィード側をドロー側から分離する。FOデバイスは、フィード側と流体連通するフィード入口ポートおよびフィード出口ポートと、ドロー側と流体連通するドロー入口ポートおよびドロー出口ポートと、を備える。方法は、フィード入口ポートを介してフィード側にフィード溶液の流れを提供することと、フィード側における浸透圧よりも高いドロー側の浸透圧で、ドロー入口ポートを介してドロー側にドロー溶液の流れを提供することと、を含み、それによって、水がフィード側からドロー側に抽出され、ドロー溶液が希釈される。方法は、ドロー入口ポート、フィード入口ポート、および、フィード出口ポートを介した流れを停止することをさらに含み、それによって、ドロー側とフィード側との間の膜間圧力差(TMP)が最大値に達するまで、フィード側からドロー側に水は抽出され続ける。方法は、TMPを示す1つ以上の圧力をモニタすることと、TMPを示す1つ以上の圧力を含むモニタされた1つ以上のパラメータに基づいて、FO膜の完全性を評価することと、をさらに含む。
【0009】
方法は、FO膜の完全性を評価するための簡単で信頼できる方法を提供する。TMPを示す1つ以上の圧力に基づいて、完全性エラーが検出されうる。完全性を有するFO膜の場合、最大TMPは多かれ少なかれ一定に保たれ、非常にゆっくりと減少すると予想される。完全性エラーを有するFO膜の場合、エラーの原因に応じて、ドロー側からフィード側への対流液体輸送、または、ドロー側からフィード側への拡散溶質輸送(ドロー側からフィード側への拡散水輸送を伴う)が起こりうる。いずれの場合も、フィード側の静水圧は増加し、最大TMPに達した後に、最大TMPの減少および/またはTMPの比較的速い減少をもたらす。この挙動は、FO膜の完全性を評価するために使用される。方法は、透析溶液生成装置内に既に存在する特徴を使用するため実施が容易であり、人間の介入なしに自動的に実行されうる。
【0010】
いくつかの実施形態によると、完全性の評価は、大きさ、最大値に達するまでの時間および/または緩和のうちの1つ以上を含む、TMPまたはTMPを示す1つ以上の圧力の特性を評価することを含む。それによって、FO膜の完全性に関する情報が得られうる。
【0011】
いくつかの実施形態によると、完全性の評価は、TMPを示すモニタされた1つ以上の圧力に基づいてTMPの緩和を評価することを含む。緩和の評価は、小さな完全性エラーを検出することを可能にする。
【0012】
いくつかの実施形態によると、方法は、TMPを示すモニタされた1つ以上の圧力に基づいて決定されたTMPの緩和速度の大きさに基づいて、FO膜の完全性を評価することを含む。大きさの評価はまた、小さな完全性エラーを検出することを可能にする。
【0013】
いくつかの実施形態によると、方法は、TMPの緩和速度の大きさについての1つ以上の完全性基準の達成に基づいて完全性を評価することを含む。完全性基準の評価は、完全性エラーの重大度を決定することを可能にする。
【0014】
いくつかの実施形態によると、FO膜の完全性の評価は、停止が行われた後の期間中にTMPを示す1つ以上の圧力を含むモニタされた1つ以上のパラメータに基づいて、完全性を評価することを含む。ここで、1つ以上の圧力は、そのような期間中の任意の完全性エラーを反映するはずである。
【0015】
いくつかの実施形態によると、TMPの最大値は、ゼロの大きさでのTMPの緩和速度によって特徴付けられる。ここで、TMPの最大値は、流れが停止された後の最大点におけるTMPとして定義されてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態によると、方法は、TMPを示すモニタされた1つ以上の圧力に基づいて、TMPの最大値を決定することと、TMPを示すモニタされた1つ以上の圧力およびTMPの決定された最大値に基づいて、TMPがTMPの決定された最大値に対応するように、フィード入口ポートまたはフィード出口ポートを介した溶液の流れを制御することと、溶液の結果として得られる流れの流量を示す1つ以上のパラメータをモニタすることと、を含む。ここで、完全性を評価する代替的な方法が達成される。
【0017】
いくつかの実施形態によると、制御は、フィードポンプの速度を制御することを含み、モニタは、フィードポンプの速度をモニタすることを含み、完全性の評価は、フィードポンプのモニタされた速度に基づいてFO膜の完全性を評価することを含む。したがって、フィードポンプの速度は制御装置において容易に得られるため、容易に達成される方法が提供される。
【0018】
いくつかの実施形態によると、方法は、フィード溶液の結果として得られる流れの流量を示す1つ以上のパラメータの1つ以上の完全性基準の達成に基づいて、完全性を評価することを含む。完全性基準は、完全性エラーの重大度を決定することを可能にする。
【0019】
いくつかの実施形態によると、ドロー出口ポートは、希釈濃縮液容器に接続される。したがって、ドロー側は、大気圧または大気圧に近い圧力に接続され、この圧力は典型的には、方法の実施中、一定に保たれる。
【0020】
いくつかの実施形態によると、モニタは、フィード側の圧力を示す圧力を含む1つ以上の圧力をモニタすることを含み、および/または、ドロー側の圧力を示す圧力を含む1つ以上の圧力をモニタすることを含む。したがって、TMPは、複数の方法で導出されうる。
【0021】
いくつかの実施形態によると、方法は、フィード側での静水圧を、ドロー側における静水圧よりも大きくなるように増加させることを含む。その後、方法は、TMPを示す1つ以上の圧力をモニタすることと、TMPを示す1つ以上の圧力を含むモニタされた1つ以上のパラメータに基づいて、FO膜の完全性を評価することと、を含む。したがって、フィード側でバルク圧力を確立することによって、フィード側からドロー側にのみ存在するリークを区別することができる。
【0022】
任意の他の態様およびその実施形態と組み合わせることができる第2態様によると、本開示は、透析液生成装置における正浸透(FO)デバイスのFO膜の完全性を評価するための制御装置に関する。FO膜は、FOデバイスのフィード側とドロー側とを分離する。FOデバイスは、フィード側と流体連通するフィード入口ポートおよびフィード出口ポートと、ドロー側と流体連通するドロー入口ポートおよびドロー出口ポートと、を備える。制御装置は、フィード入口ポートを介してフィード側にフィード溶液の流れを提供するように構成されたフィードポンプと、フィード側における浸透圧よりも高いドロー側の浸透圧で、ドロー入口ポートを介してドロー側にドロー溶液の流れを提供するように構成されたドローポンプと、を備え、それによって、フィード側からドロー側への水の抽出が可能になり、ドロー溶液が希釈される。制御装置はまた、ドロー側とフィード側との間のTMPを示す1つ以上の圧力を測定するように構成された1つ以上の圧力センサと、ドロー入口ポート、フィード入口ポートまたはフィード出口ポートを介して1つ以上の流れを制御するように構成されたバルブ装置と、を備える。制御装置はさらに、フィードポンプ、ドローポンプ、および、バルブ装置を使用して、ドロー入口ポート、フィード入口ポート、および、フィード出口ポートを介した流れを停止し、それによって、ドロー側とフィード側との間の膜間圧力差(TMP)が最大値に達するまで、フィード側からドロー側へ水が抽出され続けることを可能にするように構成される。制御装置はさらに、1つ以上の圧力センサを使用してTMPを示す1つ以上の圧力をモニタし、TMPを示す1つ以上の圧力を含むモニタされた1つ以上のパラメータに基づいて、FO膜の完全性を評価するように構成される。
【0023】
いくつかの実施形態によると、第2態様による制御装置は、第1態様による実施形態の何れか1つを実行するように構成される。
【0024】
任意の他の態様およびその実施形態と組み合わせることができる第3の態様によると、本開示は、透析液を生成するための溶液生成装置に関する。装置は、FOデバイスのフィード側とドロー側とを分離するFO膜を備える正浸透デバイスを備える。装置は、第2態様による制御装置をさらに備える。
【0025】
第4態様によると、本開示は、第1態様による方法を第2態様による制御装置に実行させる命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0026】
第5態様によると、本開示は、第4態様のコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ可読媒体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本開示のいくつかの実施形態によるFOデバイスの概略図である。
図2図2は、本開示のいくつかの実施形態による透析液生成装置の例を示す。
図3図3は、本開示のいくつかの実施形態によるFOデバイスのFO膜の完全性を評価するための方法を示す。
図4図4は、図3に示される方法の実施から取得されるテスト結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の説明では、正浸透(FO)膜の完全性を評価するための方法が説明される。FO膜は、透析液を生成するための透析液生成装置のFOデバイスに用いられ、その後、透析液を生成するために用いられる。透析液は、PD、HD、CRRTまたは透析液を治療液または置換液として使用する他の任意の透析治療(例えば、濾過後の血液を希釈するため)に使用されうる。
【0029】
詳細には、FO膜は、透析液を生成するために、患者排出液、水道水、または、他の給水源から透析濃縮液中に水を抽出するために使用される。膜の完全性は、完全なコンディションにおける完全な膜の品質または状態として定義されうる。したがって、完全性を有するFO膜は、無傷であり、いかなる形でも損傷または障害はない。FO膜は、例えば、製造エラーまたは摩耗に起因して、損なわれた完全性を経験する。損なわれた完全性は、リーク(溶質移動)または選択性の低下などの完全性の問題の原因になりえ、これは、FO膜を通る拡散溶質輸送(溶質流束)の速度の上昇の原因になる。検出されなかった完全性の問題は、FO膜を横切る水以外の成分の輸送を可能にすることによって、生成された透析液の組成を変化させる可能性がある。例えば、リークは、フィード側(排出液または水道水)からドロー側(混合側)への微生物の輸送を可能にし、例えばPDの場合に腹膜炎のリスクを増加させうる。さらに、リークはフィード側(流出液または水道水)からドロー側(混合側)への溶質(電解質、グルコース、尿素など)の輸送を可能にし、それによって生成される透析液の組成を変化させうる。また、拡散電解質輸送の速度の上昇は、溶質(電解質、グルコース、尿素など)が生成された透析液の組成を著しく変更させる速度で、一方向または両方向にFO膜を横切って拡散するリスクを示しうる。排出液は、ここではPD中の患者排出液、および/または、HDまたはCRRT中の使用済みの透析液を含みうる。
【0030】
本開示に記載されるように、FO膜が透析流体生成装置に設置された後に、FOデバイスへのおよびFOデバイスからの流れを停止し、結果として生じるTMPまたは結果として生じるTMPを示す1つ以上の圧力をモニタすることによって、そのような完全性の問題を検出することが可能であることが見出された。例えば、大きさ、最大値に達するまでの時間、および/または、緩和などの特性が調査されうる。緩和速度の大きさに応じて、完全性の評価が行われうる。他の実施形態において、TMPは、流れが停止された後に決定される最大TMPに制御され、それによって、完全性の評価は、TMPを最大TMPに維持するように制御されるポンプから得られる流量、ポンプの速度またはポンプへの電力に基づいて行われうる。
【0031】
一般に、水および溶質の拡散輸送は、溶質の濃度差、例えば、フィード側とドロー側との間の濃度差によって駆動される。溶質移動(リークによって引き起こされる)は、膜間圧力差(TMP)、例えば、フィード側とドロー側との間の圧力差によって駆動される。
【0032】
いくつかの実施形態において、評価は、透析液の生成に使用される既存の技術および濃縮液に依拠する。例えば、フィード側の圧力をセンシングするための圧力センサが既に存在している。使用する溶液は、既に透析液を生成するために使用されている溶液、例えば、水道水、透析治療からの排出液、または、透析濃縮液である。
【0033】
以下、本開示の実施形態が、図1から図4を参照して説明される。図1は、いくつかの実施形態による、単独のFOデバイス2の概略図である。FOデバイス2は、第1側2aと、FO膜2cによって分離された第2側部2bと、を備える。図示および説明を容易にするために、左側の第1側2aをフィード側と呼び、右側の第2側2bをドロー側と呼ぶ。しかしながら、両側2a、2bで流れる液体の浸透圧差の方向に応じて、第1側部2aをドロー側と呼び、第2側部2bをフィード側と呼ぶこともできる。側面は、本明細書ではコンパートメントまたはチャンバとも呼ばれうる。使用中、FO膜2cは、フィード側の溶液(フィード溶液と呼ばれる)と、ドロー側の溶液(ドロー溶液と呼ばれる)と、を分離する。流体間の浸透圧差に起因して、ドロー側のドロー溶液は、フィード側のフィード溶液から純水を「ドローする(くみ出す)」。したがって、フィード側2aのフィード溶液からドロー側2bのドロー溶液へと水が抽出される。その結果、FO処理において、FO装置2で、フィード溶液が脱水され、ドロー溶液が希釈される。FO膜2cは、浸透水分子に対して多かれ少なかれ選択的であるように設計され、これによって、FO膜2cは、他のすべての汚染物質から水を分離することを可能にする。したがって、FO膜2cは、透水性膜である。FO膜2cは、典型的には、ブロックされることが意図される溶質に応じて、ナノメートル(nm)の範囲、例えば、0.5から5nm以下の孔径を有する。FOデバイス2は、典型的に、フィード側2a、ドロー側2b、および、FO膜2cを囲むカートリッジを含む。FO膜2cの形状は、フラットシートまたは管状または中空繊維でありうる。フィード側2aは、フィード溶液がフィード側2aに入る入口ポートEinと、フィード溶液がフィード側2aから出る出口ポートEoutと、を有する。ドロー側2bは、ドロー溶液がドロー側2bに入る入口ポートLinと、ドロー溶液がドロー側2bから出る出口ポートLoutと、を有する。したがって、これら両側の液体は、典型的には、向流で流れるが、代わりに、並流で流れてもよい。流れは、連続的な流れである。FOデバイス2に適したFOデバイスは、例えば、AquaporinTM、AsahiKASEITM、BerghofTM、CSMTM、FTSHTM、Koch Membrane SystemsTM、PoriferaTM、ToyoboTMおよびTorayTMによって提供されてもよい。
【0034】
フィード溶液は、例えば、現在または以前の透析処理または水からの排出液である。いくつかの実施形態において、排出液は、約8bar(116psig)の浸透圧を有する。水は、典型的には、1bar(14.5psig)をはるかに下回る浸透圧を有する。ドロー溶液は、例えば、透析濃縮液であり、抽出された水は、透析濃縮液を、「希釈された透析濃縮液」、「中間透析液」または単に「透析液」とも呼ばれうる透析液に希釈する。透析濃縮液は、例えば、複数のNaCl、KCl、CaCl2、MgCl2、HAc、グルコース、乳酸塩および重炭酸塩のうちの少なくとも1つを含む濃縮液である。例えば、透析濃縮液は、NaCl、CaCl2、MgCl2およびNa-乳酸塩を含みうる。そのような透析濃縮液は、約130bar(1885psig)の浸透圧を有しうる。50パーセントのグルコース濃縮液は、約70bar(1015psig)の圧力を有しうる。HDのための他の透析濃縮液は、260bar(3770psig)の浸透圧を有しうる。したがって、透析液濃縮液の浸透圧は、典型的には、50bar(725psig)よりも高く、例えば、70から260bar(1015から3770psig)、1つの実施形態において、130から260bar(1885から3770psig)である。
【0035】
図2は、本開示のいくつかの実施形態による、透析液生成装置1(以下、「装置1」)を示す。装置1は、図1を参照して説明したFOデバイス2を備える。装置1はまた、以下で「ライン」と呼ばれる複数の液体ライン20a~20nを備える流路20を備える。装置1は、制御装置30をさらに備える。制御装置30は、フィードポンプ3、ドローポンプ5、および、希釈透析濃縮液ポンプ6を備える。本明細書のポンプのいずれかは、例えば、流量センサ(図示せず)からの流量フィードバックを有する容積ポンプ(ピストンポンプなど)または非容積ポンプ(例えば、ギアポンプ)であってもよい。フィードポンプ3は、入口コネクタPに接続された患者からの排出液を排出液容器35に送り込むように構成される。フィードポンプ3は、バルブの状態に応じて、排出液容器35または入口コネクタPから第1側2aへ、および、第1側2aからドレーン(図示せず)への排出液の流れを提供するように構成される。ドローポンプ5は、バルブの状態に応じて、透析濃縮液容器31から第2側2bへの透析濃縮液の流れを提供し、さらに、第2側2bで生成された溶液を希釈濃縮液容器32に送り込むように構成される。純水容器33は、純水を含む。液体容器34は、浸透圧剤または緩衝溶液、例えば、グルコースまたは重炭酸塩を含む。装置1はまた、第2側2bから生成される溶液の導電率をセンシングするように構成された導電率センサ7を備える。導電率センサ7は、0.1から40mS/cmの範囲の導電率をセンシングするように構成される。導電率センサはまた、センシングされた導電率の値を補償するための温度センサ(図示せず)を含んでいてもよい。装置1は、FOデバイス2の膜間圧力差(TMP)を示す圧力をセンシングするように構成された1つ以上の圧力センサをさらに備える。例えば、装置1は、フィード側2aの圧力をセンシングするように配された圧力センサ8を備える。装置1は、追加の圧力センサ、例えば、ドロー側2bの圧力をセンシングするように配された圧力センサを備えていてもよい。希釈透析濃縮液ポンプ6は、メインライン20fに液体の流れを提供するように構成される。制御装置30はまた、複数のバルブ10a~10mを備えるバルブ装置10を備える。一般に、ラインに接続されたバルブは、ライン内の液体の流れが許容される開と、ライン内の液体の流れが停止される閉と、に構成することができる。バルブは、例えば、オン/オフバルブであってもよく、オン状態は、ライン内の液体の流れが許容されるときの状態であり、オフ状態は、ライン内の液体の流れが停止される状態である。制御装置30は、少なくとも1つのメモリおよび少なくとも1つのプロセッサを備える制御ユニット50をさらに備える。制御装置30は、制御ユニット50によって、透析濃縮液を透析溶液に希釈し、透析液を供給し、洗浄プロセスまたはプライミングプロセスを実行するなど、複数の異なるプロセスを実行するために、ポンプおよびバルブ装置10のバルブ、および、混合ユニット9の機能を制御するように構成される。制御装置30はまた、導電率センサ7から導電率の測定値を受け取るように構成される。制御装置30は、圧力センサ8を含む1つ以上の圧力センサから圧力の測定値を受け取るようにさらに構成される。具体的には、制御装置30は、図3に示される方法によって定義される、装置1におけるFO膜2cの完全性を評価するように構成される。そのために、少なくとも1つのメモリは、FO膜2cの完全性を評価するための命令を含む。命令が少なくとも1つのプロセッサによって実行されるとき、制御装置30は、以下で説明されるFO膜2cの完全性を評価するための方法を実行する。方法は、制御装置30によって実行され、少なくとも1つのメモリ上のコンピュータ命令を含むコンピュータプログラムとして記憶されてもよい。
【0036】
しかしながら、まず、図2の装置1が、より詳細に説明される。図2において、入口コネクタPとフィード入口ポートEinとを接続するために、第1排出液入口ライン20aが、入口コネクタPと第1側2aのフィード入口ポートEinとの間に配される。入口コネクタPは、例えば、PD患者の排出液ラインまたはカテーテル、または、HD装置またはCRRT装置の使用済みの透析液ラインに接続可能である。第1排出液入口バルブ10aが、第1排出液入口ライン20aに接続される。第1排出液入口ライン20aと排出液容器35とを接続するために、第2排出液入口ライン20bが、第1排出液入口ライン20aと排出液容器35との間に配される。フィードポンプ3は、第2排出液入口ライン20bにおける排出液の流れを提供するように配される。第2排出液入口バルブ10bが、第2排出液入口ライン20bに接続される。第1排出液入口ライン20aと第2排出液入口ライン20bとを接続するために、第3排出液入口ライン20cが、第1排出液入口ライン20aと第2排出液入口ライン20bとの間に配される。第3排出液入口バルブ10cが、第3排出液入口ライン20cに接続される。第4排出液入口バルブ10dが、第2排出液入口ライン20bと第3排出液入口ライン20cとの接続部から第1排出液入口ライン20aの間の第1排出液入口ライン20aに接続される。排出液は、第1排出液入口バルブ10aおよび第2排出液入口バルブ10bを開き、第3排出液入口バルブ10cおよび第4排出液入口バルブ10dを閉じ、フィードポンプ3を用いて容器35に排出液を送り込むことによって、排出液容器35に収集されうる。その後、排出液は、第2排出液入口バルブ10bおよび第4排出液入口バルブ10dを開き、第1排出液入口バルブ10aおよび第3排出液入口バルブ10cを閉じることによって、排出液容器35からフィード側2aへのフィードポンプ3で送り込むことができる。代わりに、排出液は、第1排出液入口バルブ10aおよび第3排出液入口バルブ10cを開き、第2排出液入口バルブ10bおよび第4排出液入口バルブ10dを閉じ、第1排出液入口ライン20a、第2排出液入口ライン20bおよび第3排出液入口ライン20cを通り、入口コネクタPからフィードポンプ3で排出液を送り込むことによって、直接、第1側2aに送り込まれてもよい。
【0037】
排出液出口ライン20dは、第1側2aのフィード出口ポートEoutとドレーン(図示せず)との間に配され、第1側2aのフィード出口ポートEoutをドレーンに接続する。排出液出口バルブ10eが、排出液出口ライン20dに接続される。したがって、FO装置2は、フィード側2aと流体連通するフィード入口ポートEinおよびフィード出口ポートEoutを備える。
【0038】
さらに、透析濃縮液容器31とドロー側2bのドロー入口ポートLinとを接続するために、透析濃縮液ライン20eが、透析濃縮液容器31とドロー側2bのドロー入口ポートLinとの間に配される。ドローポンプ5が、透析濃縮液ライン20eに流れを提供するように配される。メインライン20fが、透析濃縮液ライン20eと混合ユニット9との間に配され、透析濃縮液ライン20eと混合ユニット9とを接続する。混合ユニット9は、混合ユニット9下流のライン20mにおいて得られる流量を制御するメインポンプ、液体容器34からの例えばグルコース溶液の流れを提供する液体ポンプ、導電率センサ、ヒータおよび混合チャンバ(これらの特徴は明示的に示されていない)などの液体混合機能を含む。メインライン20fは、透析濃縮液容器31とドローポンプ5との間の透析濃縮液ライン20eに接続されている。希釈濃縮液容器32とメインライン20fとを接続するために、希釈濃縮液容器ライン20gが、希釈濃縮液容器32とメインライン20fとの間に配される。希釈濃縮液容器ライン20g内の希釈透析濃縮液の導電率をセンシングするために、希釈濃縮液容器ライン20gに、導電率センサ7が接続されている。希釈濃縮液容器バルブ10gが、希釈濃縮液容器ライン20gに接続されている。ドロー側2bのドロー出口ポートLoutと希釈濃縮液容器ライン20gとを接続するために、第1接続ライン20hが、ドロー側2bのドロー出口ポートLoutと希釈濃縮液容器ライン20gとの間に配される。したがって、FO装置2は、ドロー側2bと流体連通するドロー入口ポートLinおよびドロー出口ポートLoutを備える。メインライン20fと透析濃縮液ライン20eとの接続点と、希釈濃縮液容器ライン20gとメインライン20fとの接続点と、の間のメインライン20fに、第1メインバルブ10hが接続されている。透析濃縮家器は、ドローポンプ5を用いて送り込み、希釈濃縮液容器バルブ10gおよび第1メインバルブ10hを閉じることによって、透析濃縮液容器31からドロー側2bを介して希釈濃縮液容器32に送り込まれうる。同時に、排出液は、フィード側2aに送り込まれてもよい。次いで、純水が、浸透圧を介して、フィード側2aの排出液からドロー側2bの透析濃縮液へと抽出される。したがって、透析濃縮液は、希釈されて中間透析液を形成し、希釈濃縮液容器32に収集される。この手順は、FOセッションと呼ばれうる。したがって、FOデバイス2は、透析液を生成するプロセスにおいて、透析濃縮液を希釈するためのFOセッションにおいて使用されるように構成される。
【0039】
液体容器34と混合ユニット9とを接続するために、液体ライン20iが、液体容器34と混合ユニット9との間に配される。第2メインバルブ10kが、希釈透析濃縮液ポンプ6と混合ユニット9との間でメインライン20fに接続されている。純水容器33と混合ユニット9とを接続するために、水ライン20nが、純水容器33と混合ユニット9との間に配される。混合ユニット9と出口コネクタPとを接続するために、出口ライン20mが、混合ユニット9と出口コネクタPとの間に配される。出口コネクタPは、例えば、PD患者のカテーテル、または、HD装置またはCRRT装置の透析液ラインに接続されうる。出口バルブ10mが、出口ライン20mと共に動作するように配される。
【0040】
透析液を混合するために、希釈濃縮液容器バルブ10g、第2メインバルブ10kおよび出口バルブ10mを開き、希釈透析濃縮液ポンプ6を用いて送り込むことによって、希釈濃縮液容器32内の希釈透析濃縮液が、混合ユニット9に送り込まれる。同時に、グルコースなどの浸透圧剤または緩衝溶液が、混合ユニット9に送られ、液体溶液ポンプ(図示せず)で送り込まれる。純水は、水ライン20nを介して混合ユニット9に流れる。メインポンプ(図示せず)は、混合ユニット9下流のライン20mにおいて得られる透析液の所望の流量を提供する。混合ユニット9の導電率センサ(図示せず)は、混合ユニット9から得られる透析液体の導電率を測定する。希釈透析濃縮液ポンプ6および液体ポンプは、生成された液体の導電率、希釈透析濃縮液の導電率、および、生成された液体の流量に基づく、得られた透析液の所望の所定の濃度を達成するために、特定の速度を達成するように制御される。混合ユニット9において、希釈透析濃縮液、浸透圧剤/緩衝溶液および純水は、透析液を形成するために混合チャンバ(図示せず)内で混合され、任意で加熱される。その後、透析液は、出口ライン20mを介して、出口コネクタPにおいて、所望の送り先(例えば、貯蔵容器または透析装置)にデリバリされる。
【0041】
純水は、典型的には注射用水(WFI)または透析用水(WFD)としての品質を有する。WFIは、最大500ppgの全有機体炭素(TOC)、25℃において1.3μS/cm未満の導電率、および、0.25EU/ml未満の細菌内毒素を有する。WFDは、100CFU/ml未満のコロニー形成単位(CFU)、および、0.25EU/mL未満のエンドトキシン単位を有する。例えば、ISO 26722:2009、ISO 22519:2019を参照されたい。
【0042】
次いで、FO膜の完全性を評価するための方法が、図3のフローチャートを参照して説明される。この方法は、例えば、図2の制御ユニット50によって実施される。FO膜は、例えば、図2の装置1におけるFOデバイス2のFO膜2cである。しかしながら、方法は、その完全性を評価するためのFO膜を備える他の装置において使用されてもよい。この方法は、治療が開始される前、または、治療が停止した後に実施されうる。方法はまた、治療が進行中に開始されてもよい。次いで、方法が実施されている間、透析液の生成は中断される。1つの実施形態において方法は、フィード入口ポートEinを介してフィード側2aにフィード溶液の流れを提供することS1を含む。換言すると、方法は、フィード側2aにフィード溶液を通すことを含む。したがって、フィード溶液は、フィード入口ポートEinに提供され、フィード入口ポートEinから、浸透圧交換のための第1側2aを通り、FO膜2cを通って出口ポートEoutに流れ、そこで溶液はFOデバイス2を出る。フィード溶液は、例えば、排出液または水である。フィード溶液が排出液である場合、通過することS1は、フィードポンプ3を使用し、および、適切なバルブを開閉し、排出液容器35、患者または入口コネクタPに流体接続された他の供給源から、さらに、第1側2aの入口ポートEinに、排出液を送り込むことを含む。フィード溶液が水である場合、方法は、水源を、第1排出液入口ライン20a、例えば、入口コネクタPに接続し、フィードポンプ3で水をフィード側2aに送り込むことを含みうる。提供することS1は、第1側2aの出口ポートEoutからドレーン(図示せず)に、フィード溶液を送り込むことをさらに含む。装置1の動作点は、典型的には、フィード溶液の流れを提供S1しながら十分に画定される。例えば、動作点は、フィード側2aに提供されるフィード溶液の一定の比較的高い流量でフィード溶液の流れを提供することS1を含む。PDの場合、フィードポンプ3が提供する流量は、例えば50から200ml/分である。HDの場合、フィードポンプ3が提供する流量は、例えば200から600ml/分である。流量は、フィードポンプ3で直接制御されるか、または、流量センサ(図示せず)で測定され、フィードポンプ3での流量制御のためのフィードバックとして使用される。動作点はまた、フィード側2aに静水圧を提供することS1を含みうる。静水圧は、単に、上述したように、ある流量を提供することの結果でありうる。代わりに、提供することS1が、フィード側2aの静水圧を、ある圧力、例えば、大気圧に近い圧力または大気圧に制御することを含む。圧力は、例えば、フィードポンプ3および/またはバルブ10eを使用して制御される。フィード側の圧力は、圧力センサ8を用いて測定され、フィードポンプ3および/または排出液出口バルブ10eによる圧力制御のためのフィードバックとして使用されうる。
【0043】
方法は、ドロー入口ポートLinを介してドロー側2bにドロー溶液の流れを提供することS2をさらに含む。ドロー側2bにドロー溶液の流れを提供することS2は、フィード側2aにフィード溶液の流れを提供S1しながら実施されてもよい。換言すると、方法は、第2側2bにドロー溶液を通すことを含む。したがって、ドロー入口ポートLinに提供されるドロー溶液は、ドロー入口ポートLinから、浸透圧交換のための第2側2bを通り、FO膜2cを通ってドロー出口ポートLoutに流れ、そこで溶液はFOデバイス2を出る。ドロー溶液は、例えば、透析濃縮液などの透析濃縮液である。透析濃縮液の場合、提供することS2は、ここで、ドローポンプ5を使用し、第1メインバルブ10hおよび希釈濃縮液容器バルブ10gを閉じ、透析濃縮液容器31から第2側2bのドロー入口ポートLinに、透析濃縮液を送り込むことを含む。ドロー溶液は、フィード溶液よりも高い浸透圧を有する。したがって、ドロー溶液の流れを提供することS2は、フィード側2aにおける浸透圧よりも高い、フィード側2bにおける浸透圧を有する、ドロー溶液の流れを提供することを含む。これによって、フィード側2aからドロー側2bに水が抽出され、ドロー溶液が希釈される。したがって、方法は、ドロー溶液を希釈し、フィード溶液を脱水することを含む。溶液の浸透圧は、溶液中の溶質粒子のモル濃度に比例する。問題の溶質粒子は電解質であってもよい。電解質は、水に溶解すると電気を伝導する物質である。いくつかの実施形態において、ドロー溶液は、70から260bar(1015から3770psig)の間の浸透圧を有する。したがって、フィード溶液は、フィード側2aとドロー側2bとの間に浸透圧差を提供するように、70bar(1015psig)未満、例えば、10bar(145psig)未満の浸透圧を有するものとする。排出液は、約8bar(116psig)の浸透圧を有しうる。水は非常に低い浸透圧を有し、典型的には、1bar(14.5psig)よりはるかに低い。したがって、いくつかの実施形態において、ドロー側2bにおける浸透圧は、フィード側2aにおける浸透圧よりも少なくとも60bar(870psig)高い。ドロー側2bの静水圧は、大気圧に近くてもよい。したがって、フィード側2aおよびドロー側2bにおける静水圧は等しい、または等しい大きさに近いものとすることができる。装置1の動作点は、典型的には、ドロー溶液の流れを提供S2しながら十分に画定される。例えば、動作点は、ドロー側2bに提供されるドロー溶液の一定の流量でドロー溶液の流れを提供することS2を含む。ドローポンプ5で提供される流量は、典型的には、ドロー溶液の希釈係数、例えば、1:20を介して減少される。したがって、ドローポンプ5で提供される流れは、フィードポンプ3で提供される流れよりも20倍低くてもよい。流量は、ドローポンプ5で直接制御されるか、または、流量センサ(図示せず)で測定され、ドローポンプ5での流量制御のためのフィードバックとして使用される。
【0044】
流れが両側2a、2bに提供されるとき、方法は、ドロー入口ポートLinを介した流れ、フィード入口ポートEinを介した流れ、および、フィード出口ポートEoutを介した流れを停止することS3を含む。図2に示される装置1において、このステップは、ドロー入口ポートLinを介した流れを停止するためにドローポンプ5を停止することと、フィードポンプ3を停止することと、フィード入口ポートEinを介した流れを停止するために第4排出液入口バルブ10dおよび第3排出液入口バルブ10c(または、第2排出液入口バルブ10b)を閉じることと、フィード出口ポートEoutを介した流れを停止するために排出液出口バルブ10eを閉じることと、を含む。ドロー出口ポートLoutは、依然として、希釈濃縮液容器32に流体接続されている。したがって、ドロー出口ポートLoutを介した液体は許容される。ステップS3において流れが停止されると、希釈濃縮液容器32内の静水圧は、大気圧、例えば、1013hPa(約1bar、14.5psig)に近いと仮定される。ドロー側2bと希釈濃縮物容器32とは流体接続されているため、それらはまた、静水圧差を除いて、ほぼ同じ圧力にある。しかしながら、いくつかの実施形態において、方法は、ドロー側2bの圧力を測定し、ドロー側2bの圧力を取得することを含む。流れが停止された後、ドロー側2bとフィード側2aとの間の膜間圧力差(TMP)が最大値に達するまで、フィード側2aからドロー側2bに水が抽出され続ける。このとき、フィード側2aとドロー側2bとTMPとの間の浸透圧差は平衡状態にある。したがって、流れが停止されると、フィード側2aへの新しいフィード溶液の流入はなくなり、ドロー側2bへの新しいドロー溶液の流入もなくなる。しかしながら、浸透プロセスは継続する。このプロセスにおいて、純水は、フィード側2aからドロー側2bへFO膜2cを通って移動し、これは、ステップS3において処理を停止するときの圧力と比較して、フィード側2aにおける静水圧を減少させる。ドロー側2bにおける静水圧は、希釈濃縮液容器32に接続されるとき、多かれ少なかれ一定のままである。これは、フィード側2aからドロー側2bに移動しうる水量が、希釈濃縮液容器32のボリュームと比較して小さいためである。したがって、TMPは、ステップS3において流れを停止するときのTMPと比較して増加する。膜にリークが存在する場合、ドロー側2bからフィード側への溶質移動が存在する可能性があるが、この流れは、水分子を用いた主な浸透プロセスと比較して小さいと予想される。浸透プロセスは、TMPが浸透圧差のバランスをとるまで継続する。したがって、TMPは、正の浸透圧差に等しい(TMPが、Pdraw-Pfeedとして定義される場合)。この時点で、TMPは、ステップS3において流れが停止されたときから最大値に達しており、したがって、TMPはピークに達している。ここで、TMPは、負のTMPまたはゼロのTMP(流れが停止されたとき)から正のTMPに変化する。したがって、TMPのピークは、正のTMPのピークである。TMPピークを有するTMP曲線の例は図4に示されており、これは、以下により説明される。TMPの最大値において、TMPのレートはゼロである。したがって、TMPの最大値は、ゼロの大きさを有するTMPの緩和速度によっても特徴付けられる。完全性を有する理想的なFO膜2では、TMPはかなり一定に保たれる。しかしながら、全てではないにしても、ほとんどのFO膜は、許容される非常に小さな完全性エラーを有し、これは、いくらかの溶質をドロー側2bからフィード側2aに拡散させ、TMPを非常にゆっくりと減少させる。したがって、TMPは緩和し始める。FOユニット2内の液体は、浸透圧差とTMPとの間の平衡状態を維持するように努める。完全性エラーを有するFO膜では、TMPがピークに達した後に、TMPがかなり急速に減少することが予想される。急速な減少は、より大きな完全性エラーが溶質のより大きな拡散またはドロー側2bからフィード側2aへのリークの流れを引き起こすためである。したがって、TMPがピークに達した後の期間中のTMPの進行は、FO膜2の完全性を評価するための基礎として使用することができる。TMPがどのように進行するかを理解するために、TMPはモニタされる必要がある。したがって、方法は、TMPを示す1つ以上の圧力をモニタすることS4を含む。例えば、モニタすることS4は、圧力センサ8を使用して、フィード側2aの圧力をモニタすることを含む。モニタすることS4は、フィード側2aの圧力を繰り返し測定することを含む。モニタすることS4は、ドロー側2bにおける圧力が一定であり、大気圧に近い、例えば、1bar(14.5psig)未満であると仮定して、フィード側2aにおいて測定された圧力からTMPを決定することを含んでもよい。TMPは、フィード側2aで測定される圧力、例えば、圧力センサ8で測定される圧力によってよく表される。しかしながら、フィード側2aにおける静水圧がTMPピークに達するまで減少することにつれて、TMPピーク、したがってTMPの最大値は、フィード側2aにおける静水圧が最小値に達したときに対応する。代わりに、方法は、ドロー側2bで静水圧を測定することも含む。次いで、モニタすることS4は、ドロー側2bの圧力を繰り返し測定することを含む。方法は、(ドロー側2bでの静水圧Pdraw)-(フィード側2aでの静水圧Pfeed)として、TMPを決定することを含んでいてもよい。換言すると、モニタすることS4は、フィード側2aの圧力を示す圧力を含む1つ以上の圧力をモニタすることを含み、および/または、ドロー側2bの圧力を示す圧力を含む1つ以上の圧力をモニタすることを含む。
【0045】
TMPは、FO膜の完全性を評価するための基礎を提供する。第1実施形態において、方法は、TMPを示す1つ以上の圧力に基づいてFO膜の完全性を評価することS8を含む。したがって、モニタされる1つ以上のパラメータは、TMPを示す1つ以上の圧力を含む。TMPの特性は、FO膜2cの完全性を評価するための基礎を提供する。したがって、いくつかの実施形態によると、完全性を評価することS8は、大きさ、最大値に達するまでの時間および/または緩和のうちの1つ以上を含む、TMPまたはTMPを示す1つ以上の圧力の特性を評価することを含む。評価することS8は、例えば、大きさ、最大値に達するまでの時間および/または緩和のうちの1つ以上について、TMPの特性について定義された1つ以上の完全性基準の達成に基づきうる。その最大値におけるTMPの大きさは、FO膜が完全性エラーを有するか否かの指標を与える。また、流れが停止された後、最大TMPに達するのにかかる時間は、FO膜が完全性エラーを有するか否かを示す。最大TMPが構築されている間、完全性エラーは、ドロー側2aからフィード側2bへの液体の輸送を引き起こし、完全性エラーがない場合よりも速く、および/または、より低いレベルで最大TMPに到達することの原因になる。したがって、完全性を評価することS8は、その最大値におけるTMPの大きさを、(同等の液体について)完全性を有するFO膜について定義されたその最大値におけるTMPの所定の大きさと決定し、比較することを含みうる。また、完全性を評価することS8は、完全性を有するFO膜について定義された最大TMPを確立するために要する時間と決定し、最大TMPを確立するのに要する時間を比較することを含みうる。差がそれぞれ所定の閾値以下である場合、評価することS8は、FO膜が十分な完全性を有すると決定すること、さもなければ、FO膜が十分な完全性を欠いていると判定することを含みうる。閾値は、実験または計算によって予め決定されうる。最大TMPに達した後、TMPは緩和するように目指し、したがって、FOフィルタが完全性エラーを有する場合、液体はより高い静水圧を有するドロー側2bから、より低い静水圧を有するフィード側2aに移動することができる。次いで、フィード側2aの静水圧とドロー側2bの静水圧との間の差が減少する。これは、TMPが減少し、したがって、TMPが緩和を受けることを意味する。換言すると、完全性を評価することS8は、TMPを示すモニタされた1つ以上の圧力に基づいてTMPの緩和を評価することを含む。したがって、方法は、緩和について1つ以上の圧力をモニタすることを含む。圧力が制御されないため、緩和は、自由または制御されないフィード側2aとドロー側2bとの圧力差緩和と称されうる。緩和は、ドロー側2bからフィード側2aへの対流液体輸送、したがってリーク、または、ドロー側2bからフィード側2aへの拡散溶質輸送(ドロー側2bからフィード側2aへの拡散水輸送)のいずれかによって引き起こされうる。TMP緩和速度および/またはTMPの特性が、モニタされうる。リークおよび/または拡散輸送が大きいほど、TMPの緩和速度の大きさは大きくなる。したがって、緩和速度は、TMPの時間微分または時間勾配である。緩和速度はTMPがどのペースで緩和されているかを示し、したがって、どのペースでフィード側2aの静水圧およびドロー側2bの静水圧が等しくされているかを示す。したがって、いくつかの実施形態によると、方法は、TMPを示すモニタされた1つ以上の圧力に基づいて決定されたTMPの緩和速度の大きさに基づいて、FO膜2cの完全性を評価することS8を含む。Fo膜2cの完全性を評価するために、特定の完全性基準が、緩和速度の大きさに適用されうる。完全性基準は、1つ以上の所定の大きさ閾値を含みうる。緩和速度の大きさを1つ以上の所定の大きさ閾値と比較することによって、FO膜の完全性が確立されうる。1つ以上の閾値は、例えば、実験または計算によって予め決定される。いくつかの実施形態において、第1所定の大きさの閾値が、完全性を有するFO膜2cの大きさの第1上限を定義し、これは許容可能な大きさの限界を設定する。大きさが第1上限を下回るかまたは第1上限上である場合、評価は、FO膜2cが完全性を有すると決定することを含む。したがって、緩和速度は非常に遅く、通常のFO膜特性(リークが存在せず、溶質拡散の予想/許容速度)を示す。大きさが第1上限を上回る場合、評価は、FO膜2cが完全性エラーを有すると決定することを含む。いくつかの実施形態において、第2所定の大きさの閾値が、完全性を有するFO膜2cの大きさの第2上限を定義する。第2上限は、第1上限よりも大きい。大きさが第1上限を上回るが、第2上限を下回るかまたは第2上限上である場合、評価は、FO膜2cがわずかな完全性エラーを有すると決定することを含む。緩和速度はゆっくりから中程度の範囲にあり、電解質拡散速度の上昇および/または膜リークの少なさを示す。大きさが第2上限を上回る場合、評価は、FO膜2cが大きな完全性エラーを有すると決定することを含む。緩和速度は、次いで、高いと見なされ、ドロー側2bからフィード側2aへの液体の著しい溶質移動および/または膜を横切る溶質拡散のより高い上昇した速度を可能にする膜リークを示す。したがって、方法は、TMPの緩和速度の大きさについての1つ以上の完全性基準の達成に基づいて完全性を評価することS8を含む。緩和速度は、TMPピークの後のある期間、例えば、TMPピークの後の最初の2から5分間に決定されてもよい。換言すると、いくつかの実施形態によると、FO膜の完全性を評価することは、最大TMPが達成された後の期間中のTMPを示す1つ以上の圧力を含むモニタされた1つ以上のパラメータに基づいて完全性を評価することを含む。結果は、制御装置10のユーザインターフェース(図示せず)を介してユーザに連絡されてもよく、および/または、完全性エラーが検出された場合に、アラームが起動されてもよい。次いで、ユーザは、完全性エラーがあった場合に、FOデバイスを交換するなどの適切なアクションをとることができる。
【0046】
上記の方法を用いて、完全性を有するFO膜(健全なFO膜)および1本の繊維が破断した同じFO膜(2本の繊維の断面積のサイズのリークを意味する)を用いてテストを行った。テストは、同じFO膜を用いて2回(N、M)行われた。使用されたFO膜は、アクアポリンTM製のモデルHFFO2(Hollow Fiber Forward Osmosis 2)である。結果が、縦軸にTMP(mmHg)、横軸に時間(s)として図4に示される。図は、4つのTMP曲線を示しており、2つは無傷のFO膜を有し、2つは破断した1本の繊維を有する。FOセッションが、NaCl、CaCl2、MgCl2およびNa-乳酸塩を含む濃縮液をドロー側(2.5ml/分)(方法のステップS1に対応)で、同じ濃縮液を1:20に希釈してフィード側(50ml/分)のPD排出液を模倣する(方法のステップS2に対応)濃縮液を用いて行われた。FOセッションは、(方法のステップS3に対応)時間t=0においてポンプを停止し、排出液出口バルブ10eを閉じることによって、急停止された。フィード側およびドロー側で圧力が測定され、TMPが、TMP=Pdraw-Pfeedとして計算された(方法のステップS4およびS8に対応する)。得られたTMPが図4に示されるが、ここで、M1およびN1は完全性を有するFO膜のTMPピークを示し、M2およびN2は1つ1本の繊維が破断した状態である。Pdrawは、ドロー側が液体コレクタバッグに開放されているため、ほとんど一定であった。Pfeedは、残りの浸透圧差によってフィード側からドロー側に水が輸送されるにつれて急速に落下し、それによってTMPを上昇させた。無傷のFO膜テストでは、TMPは約300mmHg(M1およびN1)に上昇し、その後、35分間の記録中にゆっくりと低下した。1本の繊維をマニュアルで破断させた場合、TMPは、2つの異なる試験において、初期上昇約300mmHg(M2)および約280mmHg(N2)後に急速に低下した。結果は、小さな漏れがTMP緩和速度を著しく変化させ、したがって、方法が自動化された完全性評価のために十分に敏感であることを強く支持する。
【0047】
第2実施形態において、方法は、ステップS4の後に、以下の追加のステップS5~S7を含む。この実施形態において、第2実施形態は、TMPを示すモニタされた1つ以上の圧力に基づいて、TMPの最大値を決定することS5を含む。TMPの最大値は、ステップS3において流れが停止された後に、ゼロの大きさの緩和速度を有するときのTMPに対応する。説明したように、TMPがその最大値にあるとき、フィード側2aにおける静水圧はその最小値にある。したがって、方法は、フィード側2aの静水圧がその最小値に達するときと同時に発生する、大きさがゼロの緩和速度を有するTMP値を、TMPの最大値と決定することを含みうる。方法は、TMPを示すモニタされた1つ以上の圧力およびTMPの決定された最大値に基づいて、TMPがTMPの決定された最大値に対応するように、フィード入口ポートEinまたはフィード出口ポートEoutを介した溶液の流れを制御することS6をさらに含む。換言すると、流れは、例えば、どのポンプが制御のために使用されるかに応じて、フィード入口ポートEinまたはフィード出口ポートEoutのいずれかを通って許容される。方法は、最大TMPが達成された後のTMPを、決定されたTMPの最大値と比較することと、フィード溶液の流量を制御することによって、それらの間の差を除去することと、を含む。したがって、方法は、決定された最大TMPに等しくなるようにTMPを制御することを含む。制御することS6は、典型的には、ポンプの速度を制御することによって実行される。図2の実施形態において、制御することS6は、フィードポンプ3の速度を制御することを含む。完全性の問題がある場合、前述のように、液体がドロー側2bからフィード側2bに輸送され、次いでTMPが減少することが予想される。TMPを決定された最大TMPに維持するために、方法は、フィードポンプ3を制御して、フィード側2aから排出液容器35へのフィード入口ポートEinを介して液体を送り込むことを含む。排出液出口バルブ10eは、閉じたままである。代わりに、液体をフィード側2aからフィード出口ポートEoutを介してドレーンするために、別のポンプ(図示せず)が配されうる。次いで、排出液出口バルブ10eが開き、フィードポンプ3は停止したままである。結果として生じる流量、結果として生じるポンプの速度、または、結果として生じるポンプへの電力であるパラメータなど、ステップS6における制御の結果をモニタすることによって、完全性の評価を行うことができる。したがって、方法は、溶液の結果として得られる流れの流量を示す1つ以上のパラメータをモニタすることS7を含む。いくつかの実施形態において、モニタすることS7は、フィードポンプ3の速度をモニタすることを含む。ポンプの速度は、各ポンプの制御パラメータであるため、制御装置10において既に利用可能である。結果として生じる流量は、流量センサ(図示せず)を用いて測定されてもよく、または、制御装置10内の制御パラメータとして提供されてもよい。ポンプへの電力、したがってポンプによって使用される電力、電流または電圧も、制御装置10に利用可能な制御パラメータである。
【0048】
第2実施形態による方法は、溶液の結果として得られる流れの流量を示すモニタされた1つ以上のパラメータに基づいて、FO膜2cの完全性を評価することS8をさらに含む。ここで、評価は、結果として得られるフィード溶液の流れの特性、例えば、結果として得られるフィード側からの溶液の流量、ポンプの速度、または、ポンプによって使用される電力などのパラメータに基づく。FO膜2cの完全性を評価するために、特定の完全性基準が、モニタされる1つ以上のパラメータに適用されうる。したがって、モニタされた1つ以上のパラメータからFO膜2cの完全性を決定するために、特定の完全性基準が、使用されうる。完全性基準は、1つ以上の所定のパラメータ閾値を含みうる。パラメータを1つ以上の所定のパラメータ閾値と比較することによって、FO膜の完全性が確立されうる。1つ以上の閾値は、例えば、実験または計算によって予め決定される。いくつかの実施形態において、第1所定の大きさの閾値が、完全性を有するFO膜2cのパラメータ値の第1上限を定義する。パラメータ値が第1上限以下である場合、評価は、FO膜2cが完全性を有すると決定することを含む。例えば、TMPを所望のTMPに制御するためにフィード側2aから液体を除去する必要がない場合、FO膜2cは完全性を有する。ここで、結果として得られる流量、速度または電力は、ゼロであるか、またはゼロに近い。パラメータ値が第1上限を上回る場合、評価は、FO膜2cが完全性エラーを有すると決定することを含む。したがって、結果として得られる流量、速度または電力のうちの1つが、それぞれ、その第1上限を超える場合、方法はFO膜2cが完全性エラーを有すると決定することを含む。理解されるように、特定のタイプのパラメータは、同じタイプの閾値または限界と比較される。いくつかの実施形態において、第2所定の大きさの閾値が、完全性を有するFO膜2cのパラメータ値の第2上限を定義する。第2上限は、第1上限よりも大きい。パラメータ値が第2上限を上回る場合、評価は、FO膜2cが重大な完全性エラーを有すると決定することを含む。1つ以上のパラメータは、TMPピークの後のある期間、例えば、TMPピークの後の最初の2から5分間にモニタされてもよい。したがって、方法は、フィード溶液の結果として得られる流れの流量を示す1つ以上のパラメータの1つ以上の完全性基準の達成に基づいて、完全性を評価することS8を含む。
【0049】
上述の代替形態における溶質移動(リーク)のテストされた方向は、ドロー側2bからフィード側2aであり、これは、反対方向よりもリスクの観点からは関心が低い。それでも、評価は、溶質選択性および両方向への漏れを可能にするリークに対して適切である。しかしながら、フィード側2aからドロー側2bへの溶質移動は、例えば、患者の排出液を液体生成側に運び、それによって生成された流体の組成を変えるリスクをもたらすため、重要である。リークが逆流バルブとして作用し、一方向への漏れのみを可能にする可能性に起因して、上述の代替は、フィード側2aからドロー側2bへの溶質移動をテストするための方法ステップで補完されうる。フィード側2aからドロー側2bへの溶質移動をテストするために、フィード側2aからドロー側2bへのバルク圧力差(Pfeed>Pdraw)が、フィード側ポンプ、例えば、フィードポンプ3を制御し、一方、フィード側圧力を圧力センサ8でモニタし、緩和圧力をモニタすることによって確立される。したがって、方法は、フィード側2aの静水圧を一時的に増加させることS9を含む。増加させることは、ドロー側2bおよびフィード側2aからのテストされた方向が実行された後に実行され、したがって、ステップS8に到達した後に実行される。時間的増加は、フィード側2aにおける静水圧がドロー側2bにおける静水圧と比較して増加することを必要とする。次いで、TMPは最初にゼロになり、次いで、先に説明した最大TMPにおけるTMPの方向と比較して反対の方向に増加する。フィード側圧力が一定レベル、例えば300mmHgまで上昇した場合、フィードポンプ3を停止する(これにより、フィード入口ポートEinを介した流れが停止される)ことを含むステップS10が実行される。ドロー入口ポートLinを介した流れおよびフィード出口ポートEoutを介した流れも、同様に停止される。ここで、同じステップS4およびS8、場合によってはS4からS8が繰り返され、したがって、TMP勾配が評価されるか、または、勾配の大きさがゼロであるTMPがフィードポンプ3を用いて送り込まれることによって維持され、唯一の相違点は、評価がフィード側2aからドロー側2bへのリークによって引き起こされる完全性エラーを評価することである。したがって、いくつかの実施形態において、方法は、(i)ステップS8を実行した後に、フィード側2aにおける静水圧を、ドロー側2bにおける静水圧よりも大きくなるように増加させること、(ii)フィード入口ポートEinを介した流れを停止することS10、および、(ii)方法ステップS4およびS8、または、S4からS8を繰り返すことを含む。
【0050】
本開示はまた、透析液生成装置1における正浸透(FO)デバイス2のFO膜2cの完全性を評価するための制御装置10に関する。FO膜2cは、FOデバイス2のフィード側2aとドロー側2bとを分離する。制御装置10は、フィード入口ポートEinを介してフィード側2aにフィード溶液の流れを提供するように構成されたフィードポンプ3と、フィード側2aにおける浸透圧よりも高いドロー側2bの浸透圧で、ドロー入口ポートLinを介してドロー側2bにドロー溶液の流れを提供するように構成されたドローポンプ5と、を備え、それによって、フィード側2aからドロー側2bへの水の抽出が可能になり、ドロー溶液が希釈される。制御装置10はまた、ドロー側2bとフィード側2aとの間のTMPを示す1つ以上の圧力を測定するように構成された1つ以上の圧力センサ8と、ドロー入口ポート、フィード入口ポートまたはフィード出口ポートを介して1つ以上の流れを制御するように構成されたバルブ装置20と、を備える。制御装置10は、フィードポンプ3、ドローポンプ5、および、バルブ装置10を使用して、ドロー入口ポートEin介した流れ、フィード入口ポートLinを介した流れ、および、フィード出口ポートEoutを介した流れを停止し、それによって、ドロー側2aとフィード側2bとの間の膜間圧力差(TMP)が最大値に達するまで、フィード側2aからドロー側2bへ水が抽出され続けることを可能にするように構成される。制御装置10はさらに、1つ以上の圧力センサ8を使用してTMPを示す1つ以上の圧力をモニタし、モニタされた1つ以上の圧力を含むモニタされた1つ以上のパラメータに基づいて、FO膜の完全性を評価するように構成される。
【0051】
いくつかの実施形態によると、制御装置10は、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つによる方法を実行するように構成される。
【0052】
本発明は、現在最も実用的かつ好ましい実施形態であると考えられるものに関連して説明されてきたが、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、逆に、添付の特許請求の範囲内に含まれる種々の変形および等価な構成を包含することが意図されることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】