(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】少なくとも2つの無線ユニットの間のクロックオフセットを決定するための方法及び構成
(51)【国際特許分類】
H04L 7/04 20060101AFI20240405BHJP
H04L 7/06 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
H04L7/04
H04L7/06 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562197
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 FI2022050254
(87)【国際公開番号】W WO2022219249
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】323011556
【氏名又は名称】コホエレント オーユー
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】レッパネン カリ
(72)【発明者】
【氏名】サルミ ユッシ
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047AA03
5K047BB01
5K047GG57
5K047MM33
5K047MM44
5K047MM45
5K047MM49
5K047MM60
(57)【要約】
少なくとも一対の無線ユニットのローカルクロック間のクロックオフセットを決定する方法であって、選択した周波数を含む信号を使用して前記少なくとも一対の無線ユニット間で双方向伝送を実行することと、前記無線ユニットで受信した信号に関する位相情報を決定することと、前記位相情報に基づいて位相差を決定することと、少なくとも1つのクロックオフセット変数を決定することと、前記決定したクロックオフセット変数がクロックオフセット値を明確に決定することを可能とするかを判定するために、前記位相差の最大誤差に基づいて、前記決定したクロックオフセット変数の推定最大誤差を決定することを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の無線ユニットと第2の無線ユニットを含む無線ユニットペアの少なくとも1つについて、ローカルクロック間のクロックオフセットを決定する方法であって、
a)選択した1番目の周波数を含む1番目の信号を使用して、少なくとも一つの無線ユニットペアの間で1番目の双方向伝送を実行するステップであって、前記伝送はブロードキャストとして送信され、前記少なくとも一つの無線ユニットペアを得るために少なくとも1つの非伝送無線ユニットで受信される、前記実行するステップと、
b)前記無線ユニットで受信した前記1番目の信号に関する1番目の位相情報を決定するステップと、
c)無線ユニットペアの各々について、ペア内の無線ユニットの各々について決定した前記1番目の位相情報の差として、1番目の位相差を決定するステップと、
d)選択した2番目以降の周波数を含む2番目以降の信号を使用して、前記少なくとも一つの無線ユニットペアの間で2番目以降の双方向伝送を実行するステップと、
e)前記無線ユニットで受信された、前記2番目以降の信号に関する2番目以降の位相情報を決定するステップと、
f)無線ユニットペアの各々について、ペア内の無線ユニットの各々について決定した前記2番目以降の位相情報の差として、2番目以降の位相差を決定するステップと、
g)前記1番目の位相差と、前記2番目以降の位相差との差、又は、最も高い信号周波数若しくは最も低い信号周波数において決定した位相差と後続の位相差との差を決定するステップと、
h)無線ユニットペアの各々について、ステップgで決定された差に基づいて、無線ユニットペア内の無線ユニット間のクロックオフセット見積値を示す、少なくとも1つのクロックオフセット変数を決定するステップと、
i)前記決定したクロックオフセット変数の推定最大誤差を、前記1番目の位相差の最大誤差と、前記2番目以降の位相差の最大誤差とに少なくとも基づいて決定するステップと、
j)前記1番目の周波数又は前記後続の周波数における整数個の半サイクル周期の変動に対応するクロックオフセットの変動によって得られるクロックオフセット値の候補のセットを決定することによって、前記クロックオフセット変数の最大誤差が、クロックオフセットを一義的に決定することを可能にするかどうかを判断するステップであって、前記クロックオフセット値のセットは、前記決定したクロックオフセット変数の前記推定最大誤差によって制限される、前記判断するステップと、
k)前記クロックオフセットを一義的に決定できないと判断した場合、前記1番目の周波数と前記2番目の周波数又は以前に使用した周波数との差より大きい値だけ前記1番目の周波数と異なる、選択した次の周波数を使用して、ステップd-jを繰り返すステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
異なる無線ユニットの少なくとも一部による信号は、所定の順序で連続して送信され、連続して送信を行う各無線ユニットは、それ自身の所定のタイムスロットでそれぞれの信号を送信する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
クロックオフセット値の候補のセットが、最高使用周波数における半周期の整数個の変動に対応する前記クロックオフセットの変動に基づく、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記クロックオフセットが、前記決定された位相差の少なくとも1つに基づいて決定され、場合によっては、前記決定された位相差の複数個、又は該位相差の全てに基づいて決定される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記クロックオフセット変数の最大誤差に基づいて前記クロックオフセット変数の可能な範囲を決定し、前記クロックオフセット変数の最小値及び最大値に対応する前記2番目以降の位相差の予想最小値及び予想最大値が2πの閾値を超えて異ならないように前記2番目以降の周波数を選択することによって、前記2番目以降の信号の周波数を選択することを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
複数の無線ユニット間で双方向伝送を実行することと、無線ユニットのペアの間で複数のクロックオフセットを決定することとを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記無線ユニットの1つが基準ユニットとして選択され、好ましくは、基準ユニットのローカル発振器の位相がゼロとして設定される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
整数アンビギュイティモードでクロックオフセットを少なくとも1回曖昧さなく決定し、その後、追跡モードにおいて、選択された時間間隔且つオプションで選択された周波数範囲で後続の信号を繰り返し送信して後続の位相差を決定し、前記選択された時間間隔における前記第1の無線ユニットと第2の無線ユニットとの間のクロックオフセットの変化を示すクロックオフセット情報を繰り返し決定することを含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記クロックオフセットの可能な最大値を決定するために、好ましくは前記1番目の双方向送信を実行する前に、前記クロックオフセットの第1の近似値として暫定クロックオフセット変数を取得又は決定することを含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の方法であって、前記方法は少なくとも、前記クロックオフセット値のセットを決定するために少なくとも2つの周波数範囲で双方向送信を実行することと、前記クロックオフセットを決定することとによって、整数アンビギュイティを解決することを含み、前記クロックオフセットを決定することは、
1番目の周波数範囲の周波数を有する一次信号を送信し、前記1つ又は複数のクロックオフセット値の候補のセットの少なくとも1つを、
・ 第1の一次周波数と第2の一次周波数とを少なくとも利用した双方向通信を行うことと、
・ 少なくとも第1の一次位相情報及び第2の一次位相情報を決定することと、
・ 少なくとも第1の一次位相差及び第2の一次位相差を決定することと、
・ 前記第1の一次位相差及び前記第2の一次位相差並びにこれらの最大誤差に任意に基づき、第1のクロックオフセット変数とその推定最大誤差を決定することと、
・ 前記第1のクロックオフセット変数及びその推定最大誤差に基づいて、前記クロックオフセット値の候補のセットを決定することと、
を通じて決定することと;
少なくとも1つの2番目の周波数範囲の周波数を含む1つ又は複数の補助信号を送信し、前記クロックオフセットを、
・ 少なくとも第1の補助周波数を利用して双方向通信を行うことと、
・ 少なくとも第1の補助位相情報を決定することと、
・ 少なくとも第1の補助位相差を決定することと、
・ 前記第1の一次位相差及び前記第1の補助位相差並びにこれらの最大誤差に基づいて、第2のクロックオフセット変数及びその推定最大誤差を決定することと、
・ 前記クロックオフセット値の候補のセットから選択されたクロックオフセット値であって、前記第2のクロックオフセット変数における誤差マージンに適合するように選択された最も適切そうなクロックオフセット値に基づいて、前記クロックオフセットを決定することと、
を通じて決定することと;
を含み、
前記方法は更に、前記選択された最も適切そうなクロックオフセット値が、前記クロックオフセット値の候補のセットから一義的に選択され得るかどうかを決定することと、一義的には選択されない場合には、3番目以降の周波数範囲の周波数を含む1つ又は複数の2番目以降の補助信号を送信することとをさらに含む、方法。
【請求項11】
複数の一次信号を送信することを含み、好ましくは、更に複数の補助信号を送信することを含み、更に好ましくは、少なくとも連続する一次信号の周波数及び/又は連続する補助信号の周波数が、20MHz未満、より好ましくは10MHz未満だけ互いに離れている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1番目の周波数範囲と、前記2番目の周波数範囲若しくは前記3番目以降の周波数範囲との差が、少なくとも150MHz、好ましくは少なくとも200MHz、最も好ましくは少なくとも500MHzである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記1番目の周波数範囲及び/又は前記2番目の周波数範囲は、該範囲において1つの信号のみが送信される場合には100Hz-100kHz、好ましくは10-100kHzの最大帯域幅を包含し、又は前記範囲において複数の信号が送信される場合には5-100MHz、好ましくは10-50MHzの最大帯域幅を包含する、請求項10から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
1つの無線ユニットによって少なくとも2つの信号を少なくとも部分的に同時に送信することを含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の方法であって、
前記第1の無線ユニットがマスターユニットであり、少なくとも前記第2の無線ユニットを含む残りの無線ユニットがスレーブユニットであり、前記マスターユニットは前記1番目の信号を送信するように構成され、 前記マスターユニットは、各測定サイクルにおいて、前記1番目の信号の送信の前に、無線チャネルが送信のために空いているか否かをチェックするように構成され、前記無線チャネルが空いている場合は前記1番目の信号が少なくとも送信され、前記無線チャネルが空いていない場合は前記送信は実行されず、さらに、好ましくは、前記スレーブユニットは、ある測定サイクルにおける信号の送信の前に、複数の無線ユニットの所定の順序における前の無線ユニットが前記測定サイクルにおいて信号を送信したかどうかを判定し、送信したと判定した場合、信号を送信するように構成される、方法。
【請求項16】
少なくとも前記第1の無線ユニットと前記第2の無線ユニットとの間のクロックレート差を決定することと、クロックオフセットを決定する際に前記クロックレート差を考慮することとを含む、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
少なくとも前記第1の無線ユニットと前記第2の無線ユニットとの間の相対運動から生じるドップラー周波数を決定し、クロックオフセットの決定において前記ドップラー周波数を考慮に入れることをさらに含む、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
測定フレーム内の1つ又は複数のタイムスロットにおける信号の送信と、通信フレーム内の1つ又は複数のタイムスロットにおけるデータの送信とを含む、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記信号が正弦波を含み、実施形態によってはスクランブルコード付きの正弦波を含む、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
少なくとも第1の無線ユニットと第2の無線ユニットとの間のクロックオフセットを決定するための構成であって、少なくとも第1無線ユニットと、第2無線ユニットと、少なくとも1つのプロセッサとを備え、更に前記構成は、
a)選択した1番目の周波数を含む1番目の信号を使用して、少なくとも一つの無線ユニットペアの間で1番目の双方向伝送を実行することであって、前記伝送はブロードキャストとして送信され、前記少なくとも一つの無線ユニットペアを得るために少なくとも1つの非伝送無線ユニットで受信される、前記実行することと、
b)前記無線ユニットで受信した前記1番目の信号に関する1番目の位相情報を決定することと、
c)無線ユニットペアの各々について、ペア内の無線ユニットの各々について決定した前記1番目の位相情報の差として、1番目の位相差を決定することと、
d)選択した2番目以降の周波数を含む2番目以降の信号を使用して、前記少なくとも一つの無線ユニットペアの間で2番目以降の双方向伝送を実行することと、
e)前記無線ユニットで受信された、前記2番目以降の信号に関する2番目以降の位相情報を決定することと、
f)無線ユニットペアの各々について、ペア内の無線ユニットの各々について決定した前記2番目以降の位相情報の差として、2番目以降の位相差を決定することと、
g)前記1番目の位相差と、前記2番目以降の位相差との差、又は、最も高い信号周波数若しくは最も低い信号周波数において決定した位相差と後続の位相差との差を決定することと、
h)無線ユニットペアの各々について、ステップgで決定された差に基づいて、無線ユニットペア内の無線ユニット間のクロックオフセット見積値を示す、少なくとも1つのクロックオフセット変数を決定することと、
i)前記決定したクロックオフセット変数の推定最大誤差を、前記1番目の位相差の最大誤差と、前記2番目以降の位相差の最大誤差とに少なくとも基づいて決定することと、
j)前記1番目の周波数又は前記後続の周波数における整数個の半サイクル周期の変動に対応するクロックオフセットの変動によって得られるクロックオフセット値の候補のセットを決定することによって、前記クロックオフセット変数の最大誤差が、クロックオフセットを一義的に決定することを可能にするかどうかを判断することであって、前記クロックオフセット値のセットは、前記決定したクロックオフセット変数の前記推定最大誤差によって制限される、前記判断することと、
k)前記クロックオフセットを一義的に決定できないと判断した場合、前記1番目の周波数と前記2番目の周波数又は以前に使用した周波数との差より大きい値だけ前記1番目の周波数と異なる、選択した次の周波数を使用して、ステップd-jを繰り返すことと、
を遂行するように構成される、構成。
【請求項21】
請求項20に記載の構成のプロセッサ上で実行されるとき、請求項1から19のいずれかに記載の方法を実行するように構成されたプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、無線通信及びローカリゼーションに関する。より具体的には、本発明は、無線ユニットのローカル発振器に対する受信信号の位相の測定値を少なくとも利用することにより、少なくとも第1の無線ユニットと第2の無線ユニットのローカルクロック間のクロックオフセットを決定することに関する。
【発明の背景】
【0002】
地上無線ノードの正確な時間及び位相同期は、測位や、高度な無線通信アプリケーションなど、多くのアプリケーションにとって重要である。
【0003】
無線ユニットなどの複数の無線ノードのそれぞれのローカル発振器の間の位相差と時間差に関する情報は、測位アルゴリズムで直接使用されたり、システムに固定された時間/位相関係を維持させるために使用されたりする(RTK GNSSを参照)。
【0004】
複数の無線ノードのそれぞれのローカル発振器の間の位相差と時間差に関する情報は、協調マルチポイント通信(co-operative multi-point communication)でも使用できる。
【0005】
無線システムは、無線ユニットのローカル発振器の同期にシステムのバックホールを利用することがある。このようなシステムでは、固定された別の基準が同期のために常に必要となる。しかし、バックホールは通常、光ファイバー技術に基づいており、時間同期精度はせいぜい1ナノ秒程度である。
【0006】
例えばセルラー通信システムでは、要求される精度がピコ秒レベルである。ナノ秒の時間スケールの時間同期精度では、要求される精度がピコ秒レベルである位相コヒーレント伝送には適さない。さらに、先行技術の方法の多くは、適切に機能するために無線ユニット間に見通し線(Line-of-Sight, LoS)を必要とする。気象条件などの要因も、無線ユニットのローカル発振器間の位相差を決定する既知の方法を利用したシステムの精度に影響を与える可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、従来技術における問題の少なくとも一部を軽減することである。本発明の第1の捉え方によれば、少なくとも第1の無線ユニットと第2の無線ユニットを含む無線ユニットペアの少なくとも1つについて、ローカルクロック間のクロックオフセットを決定する方法が提供される。この方法は、
a)選択した1番目の周波数を含む1番目の信号を使用して、少なくとも一つの無線ユニットペアの間で1番目の双方向伝送を実行するステップであって、前記伝送はブロードキャストとして送信され、前記少なくとも一つの無線ユニットペアを得るために少なくとも1つの非伝送無線ユニットで受信される、前記実行するステップと、
b)前記無線ユニットで受信した前記1番目の信号に関する1番目の位相情報を決定するステップと、
c)無線ユニットペアの各々について、ペア内の無線ユニットの各々について決定した前記1番目の位相情報の差として、1番目の位相差を決定するステップと、
d)選択した2番目以降の周波数を含む2番目以降の信号を使用して、前記少なくとも一つの無線ユニットペアの間で2番目以降の双方向伝送を実行するステップと、
e)前記無線ユニットで受信された、前記2番目以降の信号に関する2番目以降の位相情報を決定するステップと、
f)無線ユニットペアの各々について、ペア内の無線ユニットの各々について決定した前記2番目以降の位相情報の差として、2番目以降の位相差を決定するステップと、
g)前記1番目の位相差と、前記2番目以降の位相差との差、又は、最も高い信号周波数若しくは最も低い信号周波数において決定した位相差と後続の位相差との差を決定するステップと、
h)無線ユニットペアの各々について、ステップgで決定された差に基づいて、無線ユニットペア内の無線ユニット間のクロックオフセット見積値を示す、少なくとも1つのクロックオフセット変数を決定するステップと、
i)前記決定したクロックオフセット変数の推定最大誤差を、前記1番目の位相差の最大誤差と、前記2番目以降の位相差の最大誤差とに少なくとも基づいて決定するステップと、
j)前記1番目の周波数又は前記後続の周波数における整数個の半サイクル周期の変動に対応するクロックオフセットの変動によって得られるクロックオフセット値の候補のセットを決定するステップによって、前記クロックオフセット変数の最大誤差が、クロックオフセットを一義的に決定することを可能にするかどうかを判断するステップであって、前記クロックオフセット値のセットは、前記決定したクロックオフセット変数の前記推定最大誤差によって制限される、前記判断するステップと、
k)前記クロックオフセットを一義的に決定できないと判断した場合、前記1番目の周波数と前記2番目の周波数又は以前に使用した周波数との差より大きい値だけ前記1番目の周波数と異なる、選択した次の周波数を使用して、ステップd-jを繰り返すステップと、
を含む。
【0008】
本発明はまた、請求項21に従うコンピュータプログラム製品及び請求項20に従う構成に関する。
【0009】
本発明は、バックホール技術に依存することなく、サブピコ秒レベルの精度で相互の時刻同期及び時刻ドリフト(進み又は遅れ)を連続的に測定できるシステム又は構成を表現する。
【0010】
本発明により、2つ以上の無線ノードの間で無線ユニットのローカル発振器のクロックオフセットと位相差が、バックホールなしで決定されうる。
【0011】
決定されるクロックオフセットの誤差が小さいため、クロックオフセットの決定は、ノードのゆっくりとした動き、例えば電灯の柱の揺れのようなゆっくりとした動きの影響を、本質的に受けないままでありうる。実施形態によっては、1つ又は複数の無線ユニットの動きが考慮されてもよく、クロックオフセット決定測定の参照フレームを正規化又は均等化するべく、モデル及び/又は測定を通じて当該動きが補償されてもよい。
【0012】
複数の無線ユニットが使用される本発明の実施形態によるクロックオフセットの決定は、ノード間に見通し線があるかどうかに影響されない場合がある。
【0013】
実施形態によっては、上述のクロックオフセットの決定は、全てのノード/無線ユニットの間に無線リンクが全く存在しない場合(例えば、互いに最も遠いノード同士が離れすぎている場合)にも適用しうる。
【0014】
従って、本発明は、2つ以上のトランシーバ間(無線ユニット)のクロックオフセットの決定において、追加の送信機又は受信機を必要とすることなく、これらのトランシーバ(無線ユニット)間のクロックオフセットを決定する方法を提供しうる。
【0015】
本発明は、地上システムでも宇宙システムでも使用することができ、屋内通信システム又は測位システムなどの屋内でも使用することができる。
【0016】
正確なクロックオフセットを知ることで、位相ベースの測位技術や例えば協調マルチポイント通信システムなどに必要な、分散した複数の無線ユニットを跨ぐ無線信号のコヒーレント処理が可能になる。協調マルチポイント(CoMP)通信とは、複数の通信ノードが移動ノードに対して(移動ノードから)位相コヒーレンスで送信(又は受信)する無線通信システムを指す。この構成を用いることで、無線通信システムの容量、通信距離、信頼性を向上させることができる。これはマルチポイントMIMOとも呼ばれる。CoMPは本発明と統合されてもよく、本明細書で提示されるクロックオフセットの決定に使用されるものと同じ無線部品及びアンテナが、通信サービスにも使用されてもよい。この通信サービスには、クロックオフセットの決定に使用される周波数とは多少異なる周波数又は近隣の周波数帯域が利用されてもよい。それによって干渉を回避しうる。しかしこれらの周波数は、本発明を介して得られるケーブル位相長及びクロックオフセット情報がコヒーレントCoMP送受信に十分な精度を有するくらいに、互いに十分に近接していてもよい。
【0017】
本発明は、送信信号の使用周波数の瞬間的な帯域幅が狭い(例えば、帯域幅が40MHz、あるいは10kHzと低い)無線ユニット間のクロックオフセットの決定又は評価を可能にしうる。本発明は、安価に実施できる方法と構成を提供し、これにより安価な狭帯域受信機が利用されうる。
【0018】
本発明の動作帯域幅が狭いため、システムは高い送信電力が許容される周波数帯域/範囲で動作してもよい。このため、非常に低い送信電力で動作する必要があるUWBベースの時間同期システムなどよりも、優れた範囲と精度が可能になる。本発明と共に使用可能な帯域は、例えば5GHz RLAN(100mW又は1Wの送信電力が可能)であってもよく、WIA帯域(400mWの送信電力が可能)であってもよい。従って、1つ又は複数の信号(例えば、一次信号及び/又は補助信号)の伝送に使用される電力は、数十mW以上であってもよく、例えば20mW以上、又は50mW以上、又は80mW以上などであってもよい。
【0019】
本発明により、例えばWi-Fiネットワークチャネルの間に、利用される狭帯域を適合させることも容易になりうる。
【0020】
実施形態によっては、信号は、無線ユニットの少なくとも一部によって、所定の順序で連続して送信され、連続して送信を行う各無線ユニットは、それ自身の所定のタイムスロットでそれぞれの信号を送信する。
【0021】
実施形態によっては、クロックオフセット値の候補のセットが、最高使用周波数における半周期の整数個の変動に対応するクロックオフセットの変動に基づいてもよい。
【0022】
クロックオフセットは、決定された位相差の少なくとも1つに基づいて決定されてもよく、場合によっては、決定された位相差の複数個、又は該位相差の全てに基づいて決定されてもよい。
【0023】
実施形態によっては、2番目の(又は後続の任意の)周波数範囲は、決定されたクロックオフセット変数の推定最大誤差に基づいて選択されてもよい。その際、1番目の周波数範囲と2番目の周波数範囲との間の差が、計上されていない位相回転が確実に回避されるように、選択される。実施形態によっては、クロックオフセット変数の可能な範囲を当該クロックオフセット変数の最大誤差に基づいて決定し、第1のクロックオフセット変数の最小値及び最大値に対応する第1の補助位相差の予想最小値及び予想最大値が、2πなどの閾値を超えて異ならないように、2番目の周波数範囲を決定する。閾値に2π又はそれよい小さな値を使用することで、クロックオフセット値の候補のセットを更に限定するべく第1の補助位相差(又は後続の任意の位相差)が使用されるときの、位相のあいまいさを防止する。
【0024】
無線ユニットの1つ、例えば第1の無線ユニットが基準ユニットとして選択されてもよい。この場合、基準ユニットのローカル発振器の位相はゼロとして設定されてもよい。
【0025】
実施形態によっては、前記方法は、整数アンビギュイティモードでクロックオフセットを少なくとも1回曖昧さなく決定してもよい。またその後、追跡モード(トラッキングモード)において、選択された時間間隔且つオプションで選択された周波数範囲で後続の信号を繰り返し送信して後続の位相差を決定し、前記選択された時間間隔における前記第1の無線ユニットと第2の無線ユニットとの間のクロックオフセットの変化を示すクロックオフセット情報を繰り返し決定することを含んでもよい。
【0026】
従って、本発明の実施形態は、連続的なクロックオフセットの追跡又は位置情報の提供のための構成及び方法を提供することができ、この場合、整数アンビギュイティ(Integer Ambiguity (IA), 整数値バイアスとも呼ばれる)は、例えば、1回又は所定の間隔で解決/決定されることがあり、一方、それ以外の場合は、追跡モードで動作し、本明細書で説明されるように、1つの狭い周波数帯域のみで構成される信号、例えば、1番目の周波数帯域及び一次信号のみが利用されることがある。無線ユニット間のクロックオフセットは、整数アンビギュイティを再決定することなく追跡することができる。
【0027】
連続クロックオフセット・トラッキング又は追跡モードでは、後続の信号は、整数アンビギュイティの問題が再発しないと仮定できるような、予め定められた十分に短い時間間隔で送信され得る。すなわち、後続の信号を送信する時間間隔における無線ユニット間のクロックオフセットの不確実性が、把握できないサイクル・スリップをもたらす量よりも小さくしか増加しないと仮定できるような、短い時間間隔で送信され得る。
【0028】
実施形態によっては、クロックオフセットの追跡/推定に推定器が使用されてもよい。クロックオフセットは、例えば単純な補間器、カルマンフィルタ、拡張カルマンフィルタ、又は粒子フィルタを使用して追跡することができる。このような推定器を使用することは、位相差におけるカウントされない2π位相スリップのリスクを伴わずに、(決定された一次位相差などの)位相差を、より低い繰り返し率で(すなわち、より少ない及び/又はより頻繁ではない一次信号などを使用して)測定することを可能にしうる。
【0029】
この構成は、クロックオフセット・トラッキングに使用することができ、ほとんどの場合、送信信号は1つの狭い周波数帯域(例えば1番目の周波数帯域)だけでよい。
【0030】
前記方法のある実施形態は、クロックオフセットの可能な最大値を決定するために、好ましくは1番目の双方向送信を実行する前に、クロックオフセットの第1の近似値として暫定クロックオフセット変数を取得又は決定することを含んでもよい。
【0031】
前記方法のある実施形態は、少なくとも、クロックオフセット値のセットを決定するために少なくとも2つの周波数範囲で双方向送信を実行することと、クロックオフセットを決定することとによって、整数アンビギュイティを解決することを含んでもよく、前記クロックオフセットを決定することは、
1番目の周波数範囲の周波数を有する一次信号を送信し、前記1つ又は複数のクロックオフセット値の候補のセットの少なくとも1つを、
・ 第1の一次周波数と第2の一次周波数とを少なくとも利用した双方向通信を行うことと、
・ 少なくとも第1の一次位相情報及び第2の一次位相情報を決定することと、
・ 少なくとも第1の一次位相差及び第2の一次位相差を決定することと、
・ 前記第1の一次位相差及び前記第2の一次位相差並びにこれらの最大誤差に任意に基づき、第1のクロックオフセット変数とその推定最大誤差を決定することと、
・ 前記第1のクロックオフセット変数及びその推定最大誤差に基づいて、前記クロックオフセット値の候補のセットを決定することと、
を通じて決定することと;
少なくとも1つの2番目の周波数範囲の周波数を含む1つ又は複数の補助信号を送信し、前記クロックオフセットを、
・ 少なくとも第1の補助周波数を利用して双方向通信を行うことと、
・ 少なくとも第1の補助位相情報を決定することと、
・ 少なくとも第1の補助位相差を決定することと、
・ 前記第1の一次位相差及び前記第1の補助位相差並びにこれらの最大誤差に基づいて、第2のクロックオフセット変数及びその推定最大誤差を決定することと、
・ 前記クロックオフセット値の候補のセットから選択されたクロックオフセット値であって、前記第2のクロックオフセット変数における誤差マージンに適合するように選択された最も適切そうなクロックオフセット値に基づいて、前記クロックオフセットを決定することと、
を通じて決定することと;
を含み、
前記方法は更に、前記選択された最も適切そうなクロックオフセット値が、前記クロックオフセット値の候補のセットから一義的に選択され得るかどうかを決定することと、一義的には選択されない場合には、3番目以降の周波数範囲の周波数を含む1つ又は複数の2番目以降の補助信号を送信することとをさらに含む。
【0032】
実施形態によっては、前記方法は、複数の一次信号を送信することを含んでもよい。更に前記方法は、複数の補助信号を送信することを含んでもよい。
【0033】
複数の一次信号又は補助信号を送信する場合、少なくとも連続する一次信号の周波数及び/又は連続する補助信号を隔てる周波数の差は、実施形態によっては、好ましくは20MHz未満であり、より好ましくは10MHz未満、例えば5MHz未満である。
【0034】
有利なことに、1番目の周波数範囲と2番目以降の周波数範囲との差は、少なくとも150MHz、好ましくは少なくとも200MHz、最も好ましくは少なくとも500MHzである。これらの周波数範囲は、全く異なる無線帯域でありうる。例えば、高い方の周波数帯域は、5GHz RLANバンド又は新しい6GHzアンライセンスバンドであり、低い方の周波数帯域は2.4GHz ISMバンドであってもよい。すなわち、3GHzを超える周波数差が可能である。このように、1番目の周波数範囲と2番目の周波数範囲を隔てる周波数の差は、例えば500MHz~5GHzでありうる。
【0035】
1番目の周波数範囲及び/又は2番目の周波数範囲は、該範囲において1つの信号のみが送信される場合には100Hz-100kHz、好ましくは10-100kHzの最大帯域幅を包含し、又は前記範囲において複数の信号が送信される場合には5-100MHz、好ましくは50MHzの最大帯域幅を包含してもよい。
【0036】
第1の一次信号が1つだけ使用される実施形態では、例えば、1番目の周波数範囲の帯域幅は、実質的に1つの周波数だけで構成されると考えてもよく、安価な設計が可能であり、コイン電池で動作させることさえ可能である。同じことが、1つの第1の補助信号のみが使用される場合の2番目の周波数範囲にも当てはまる。
【0037】
同時送信に関して、1つの無線ユニットによって送信されるべき2つ以上の信号が同時に送信されるが、異なる無線ユニットがそれぞれ自身のタイムスロットで送信することもある。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態では、1番目及び/又は2番目の周波数範囲は設定された帯域幅を有しうるが、これらの周波数範囲内の1つ又は複数の信号は、必ずしもその帯域幅全体に広がる必要はなく、その周波数範囲内の特定の周波数に提示されうる。
【0039】
無線ユニットによって送信されるべき一次信号及び/又は補助信号の全ては、同時に送信されてもよいが、本発明のある実施形態では、無線ユニットの少なくとも1つ又は全てによって、全ての信号が連続して送信されてもよい。この実施形態では、所与の時間に1つの周波数のみで送信可能な、例えばコイン電池で動作可能な、より単純かつ/又はより安価な無線ユニットをシステムに利用することができる。
【0040】
また、互いに異なる様々な周波数範囲(3番目の周波数範囲、4番目の周波数範囲など)で、任意の数の補助信号を使用することも可能である。簡単のため、以下の詳細説明では、補助信号用に1つの周波数範囲(2番目の周波数範囲)のみを使用する場合を主に取り上げる。
【0041】
本発明のある実施形態では、少なくとも第2の一次信号は、それぞれの位相情報(第2の一次位相情報)及び第2の一次位相差を決定するために送信されてもよい。クロックオフセット変数は、少なくとも第1の一次位相差と第2の一次位相差とを比較することによって、決定されてもよい。実施形態によっては、第1の一次位相差と第2の一次位相差との差に基づいて決定されてもよい。1番目及び後続の一次信号は、複数の位相差を得るべくそれぞれの位相情報を決定するために送信されてもよく、一方、位相差の差(1番目の位相差と各後続の位相差の差など)は、第1の無線ユニットと第2の無線ユニットとの間のおおよそのクロックオフセットを示すクロックオフセット変数を決定するために使用されてもよい。
【0042】
実施形態によっては、クロックオフセット変数の最大誤差は他の情報に基づいて決定されてもよい。例えば、以前に決定されたパラメータとして取得されてもよい。
【0043】
実施形態によっては、クロックオフセット値の候補のセットは、少なくとも第1の一次位相差か、使用された周波数のいずれかで測定された位相差と、使用された周波数の少なくとも1つにおける半周期の整数個に対応するクロックオフセットの変動とに基づいて、決定されてもよい。
【0044】
ただし、クロックオフセット変数の最大誤差が既知の場合は、クロックオフセット値の候補をクロックオフセット変数の最大誤差値以内のものに制限してもよい。次に、これを使用してクロックオフセット値の候補のセットを決定することができる。それによって、互いに半サイクル周期×整数アンビギュイティ(IA)だけ異なるクロックオフセットという観点から、無線ユニット間のクロックオフセットの候補が得られる。
【0045】
第2のクロックオフセット変数は、第1の無線ユニットと第2の無線ユニットとの間の2番目のおおよそのクロックオフセット測定に対応してもよい。第2のクロックオフセット変数の決定は、少なくとも第1の一次 位相差と第1の補助位相差を比較することに基づき、実施形態によっては、第1の一次位相差と第1の補助位相差の差を、第1の一次信号と第1の補助信号の周波数差で割ったものに基づく。
【0046】
第2のクロックオフセット変数の最大誤差は、クロックオフセット値の候補を制限してもよい。第1の一次位相差及び第1の補助位相差に基づいて第2のクロックオフセット変数を決定する場合、有利なことに、第2のクロックオフセット変数の最大誤差は、クロックオフセット値の候補を1つだけ残す。クロックオフセット値の候補のセットから、第2のクロックオフセット変数の誤差マージンに適合する最も適切そうなクロックオフセット値が、クロックオフセット値として選択されてもよい。この誤差マージンは、第1の一次位相差の推定最大誤差及び/又は第1の補助位相差の推定最大誤差によって決定される。
【0047】
最も適切そうなクロックオフセット値、又は明確に決定されたクロックオフセット値は、第1の無線ユニットと第2の無線ユニットとの間の実際のクロックオフセットに対応するか、本質的に対応するか、又は当該オフセットを示してもよい。
【0048】
前記方法は、複数の無線ユニット間で双方向伝送を実行することと、無線ユニットのペアの間で複数のクロックオフセットを決定することとを含んでもよい。
【0049】
少なくとも3つの無線ユニットを採用し、少なくとも2つのクロックオフセットを決定する場合、位相測定によって直接決定することができるクロックオフセットを使用して、互いに信号を送受信していない無線ノード間のクロックオフセットも決定することができる。これにより、互いに通信していない、又は通信できない無線ユニット間のクロックオフセットを決定することができる。
【0050】
更に、本発明の実施形態によって複数のクロックオフセットを決定するために複数の無線ユニットが使用される場合、時間及び/又はリソースが節約されてもよい。複数の無線ノードを有する従来のシステムでは、測定は、各無線リンクに関連して実施される、すなわち、無線ユニットの各組は、残りの無線ユニットの各々に個別に信号を送信する。例えば、10個の無線ユニットを持つシステム又は構成では、45個の双方向信号が利用されるべきであり、それによって少なくとも合計90回の送信が行われるべきである。しかし、本発明では、各無線ユニット間のクロックオフセットは、わずか10回の送信で決定することができ、測定及び/又は送信に必要なリソースと時間を大幅に削減することができる。
【0051】
実施形態によっては、送信を行う無線ユニットの少なくとも一部は、所定のタイムスロットで、所定の順序で、少なくとも1つの信号を送信してもよい。これらの送信は、送信と送信の間に空のタイムスロットが残らないように、連続するタイムスロットで送信が行われるようにされてもよい。また、送信とタイムスロットは、送信の終了と、後続の無線ユニットが送信を開始する後続のタイムスロットの開始との間に、選択された「空の」時間間隔よりも小さな時間間隔が存在するような割合としてもよい。送信の終了と後続の送信の開始との間の時間間隔は、16μs未満であってもよい。
【0052】
送信を行う複数の無線ユニットがそれぞれ所定のタイムスロット内で所定の順序で少なくとも1つの信号を送信する本発明の実施形態では、後に続くコンパクトな送信信号の提供が、例えばWi-Fiネットワークと組み合わせて使用されてもよく、便利である。本発明では、送信用の無線チャネルは、測定サイクルごとに1回だけ予約すればよい。この特徴は、上述のWi-Fiのようなネットワークとの互換性を可能としてもよい。
【0053】
所定のタイムスロット及び所定の順序で送信が行われなければ、測定サイクルが完了するまでに、より長い時間及び未知の時間がかかる可能性がある。これは、例えばETSI EN 301 893(5GHzのWi-Fi伝送を規制する標準仕様)で定義されているように、チャネルを1回だけ競合させる必要がある無線チャネルでは、1つの測定サイクルを1回の伝送として効果的に実行できないためである。送信中は、各送信アンテナユニットが別々にチャネルを競合させる必要があるため、送信の間にチャネルが他のユーザーによって占有されると、測定シーケンスがかなり長くなる可能性がある。
【0054】
送信が1回の送信として効果的に行われないことによる測定シーケンスの遅延は、シーケンスとシーケンスの間でチャネルが波長以上変化する(位相差にN*πの曖昧さが生じる)状況に容易につながり、測定が無駄になる可能性も生じる。遅延は、シーケンス間で無線ユニット間の距離が変化し不明となる可能性をもたらす。これはまた、距離の変化が遅いとしても、長く不確定な測定間隔の間、異なる無線ユニット同士の間の位相コヒーレンスを維持するためには、無線ユニットのローカル発振器の品質が非常に高くなければならないことを意味する。しかし、本発明の解決手段では、この点で低品質の発振器を利用することができ、低コストで実装することができる。
【0055】
実施形態によっては、第1の無線ユニットはマスターユニットであり、残りの無線ユニットがスレーブユニットであってもよい。マスターユニットは、測定サイクルにおいて1番目の信号を送信するように構成される。マスターユニットは、各測定サイクルにおいて、1番目の信号の送信の前に、無線チャネルが送信のために空いているか否かをチェックするように構成されてもよい。無線チャネルが空いている場合は、測定サイクルにおける1番目の信号(例えば第1の一次信号)が少なくとも送信される。無線チャネルが空いていない場合は送信は実行されない。
【0056】
構成は、有利には、リッスンビフォアトーク(Listen before talk, LBT)機能を必要とする無線帯域/チャネルを利用することができ、マスターユニットは、1番目の信号の送信前に無線チャネルが空いているかどうかをチェックしてもよく、「はい」の場合は測定サイクルを継続してもよく、当該無線チャネルは、少なくとも1つの測定サイクルのために前記構成によって予約されてもよい。無線チャネルが空いていないと判定された場合は1番目の信号は送信されず、測定サイクルは、信号が送信されることなく中止又はキャンセルされてもよい。その後マスターユニット又は第1の無線ユニットは、測定サイクル間の所定時間待機してもよく、次の測定サイクルで、無線帯域が空いているかどうかをもう一度確認し、無線帯域が空いている場合、測定サイクルを開始するために1番目の信号の送信を続行してもよい。
【0057】
マスター無線ユニットと1つ以上のスレーブ無線ユニットとを有する実施形態によっては、スレーブユニットは、ある測定サイクルにおける信号の送信の前に、複数の無線ユニットの所定の順序における前の無線ユニットが前記測定サイクルにおいて信号を送信したかどうかを判定し、送信したと判定した場合、信号を送信するように構成されてもよい。一方、前の無線ユニットが信号を送信していないと判定した場合、すなわち有効な測定信号が受信されなかった場合、信号は送信されない。(完全な測定サイクルを待つ。)前の無線ユニットが信号を送信したか否かの判断は、例えば、正確な信号特性の知識を持ち、周知の相関技術に基づいて前の送信を検出できる他の無線ユニットに基づくことができる。
【0058】
実施形態によっては、基準無線ユニットのローカル発振器に対する受信信号の少なくとも1つの位相を基準位相として設定することにより、無線ユニットの1つを基準無線ユニットとして設定してもよい。
【0059】
実施形態によっては、少なくとも第1の無線ユニットと第2の無線ユニットとの間のクロックレート差が決定されてもよく、クロックオフセットの決定においてこのクロックレート差が考慮されてもよい。クロックレート差は、少なくとも(一次)信号を繰り返して送信し、少なくとも(一次)位相差を繰り返して決定すること、すなわち、同じ周波数を利用して少なくとも2回双方向送信を実行することによって決定されてもよい。繰り返して送信される例えば一次信号の送信間隔は、例えば100μsから1msであってもよい。しかしこれらの一次信号の送信には同じ周波数を使用する。
【0060】
実施形態によっては、少なくとも第1の無線ユニットと第2の無線ユニットとの間の相対運動の結果として、これらの無線ユニットの間のドップラー周波数が決定されてもよい。このドップラー周波数は、クロックオフセットの決定において考慮されてもよく、無線ユニット間の相対運動が補償されてもよい。ドップラー周波数は、少なくとも(一次)信号を繰り返して送信し、少なくとも(一次)位相差を繰り返して決定すること、すなわち、同じ周波数を利用して少なくとも2回双方向送信を実行することによって決定されてもよい。これは、前述のクロックレートの差とは無関係に推定され、考慮されてもよい。クロックレート差とドップラー周波数の両方を決定するために、同じ測定セットを使用することができる。
【0061】
実施形態によっては、例えば、少なくとも第1の一次信号と、第1の補助信号(又は1番目、2番目、及び/又は後続の信号のいずれか1つ)とを連続して送信してもよい。(これらは同じ1つの無線ユニットによって送信される。)
【0062】
実施形態によっては、少なくとも例えば第1の一次信号及び第1の補助信号(又は、同一の無線ユニットによって送信される信号のいずれか)は、少なくとも部分的に同時に送信されてもよい。また、複数の例えば一次信号及び/又は複数の補助信号が同時に送信されてもよい。
【0063】
本発明の特徴と考えられる新規な特徴は、特に添付の特許請求の範囲に記載されている。しかし、本発明に関する構成や動作方法、付加的な目的及び利点は、以下の特定の例示的実施形態の説明を添付の図面と共に読むことにより、最もよく理解できるであろう。
【0064】
当業者には理解できるように、方法の様々な実施形態に関して先に提示した考察は、装置の実施形態に柔軟に準用することができ、その逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
次に、本発明を、添付図面に従う例示的な実施形態を参照してより詳細に説明する。
【
図1】本発明の実施形態に従う1つの例示的な構成を示す。
【
図2】本発明の実施形態に従う、更に例示的な構成を示す。
【
図3】ある構成で使用され得る例示的な第1及び第2のアンテナユニット並びに第1及び第2の無線ユニットを示す。
【
図4】ある構成において使用され得る他の例示的な第1及び第2のアンテナユニット並びに第1及び第2の無線ユニットを示す。
【
図5】送信信号周波数の関数として決定された位相差のグラフ上に、本発明のある実施形態に従う1つのユースケースシナリオにおいて決定される可能性のある一次位相差、補助位相差、及び決定されたクロックオフセット値のセットに対応する線を示したものである。
【
図6】ある構成で使用される可能性のある無線ユニットを示す。
【
図7】測定サイクルにおけるタイムスロットの割り当てを示す。
【
図8】本発明のある実施形態に従う方法のフローチャートを描いたものである。
【
図9】本発明のある実施形態で利用する、周波数範囲を選択する方法のフローチャートを示す。
【
図10】本発明のある代替的な実施形態に従う方法のフローチャートを示す。
【
図11】本発明の実施形態において信号がどのように伝送されるかを、時間と周波数に関して示している。
【詳細説明】
【0066】
図1は、本発明のある実施形態に従う構成100を示す。この構成は、少なくとも第1のアンテナユニット(AU)104と第2のアンテナユニット106とを有し、これらはそれぞれ第1の無線ユニット108と第2の無線ユニット110に関連付けられる。アンテナユニット104、106は、無線ユニット108、110内に配置されてもよいし、例えばケーブルを介して無線ユニットに結合されてもよい。構成100は、第3の無線ユニットや第4の無線ユニットなど、他の数のアンテナユニット又は無線ユニットを有してもよい。そして任意の2つの無線ユニット(又はアンテナユニット)が、基線又は距離Dだけ離れており、それらの間で1つ以上の信号を送受信すると考えることができる。
【0067】
無線ユニット108、110は、少なくとも1つの処理装置102に結合されている。処理装置102は、無線ユニット108ya110の外部にあるコントローラユニットであってもよく、マイクロプロセッサユニットとして実装されてもよいし、パーソナルコンピュータなどのより大きな計算装置の一部として提供されてもよい。しかし実施形態によっては、処理装置102は、無線ユニット108、110の中に配置されてもよいし、無線ユニット108、110の一部とみなされてもよい。
【0068】
処理装置102は、構成100が有する無線ユニット及び/又はアンテナユニットを制御するように構成されてもよい。処理装置102は更に、アンテナユニット104、106又は無線ユニット108、110からデータを受信してもよい。
【0069】
追加的又は代替的に、処理装置102は、有線(例えばイーサネット)又は無線(例えばWLAN)方式で、構成100が有するアンテナユニット及び/又は無線ユニットからデータを受信するように構成されてもよい。
図2は、処理装置102が無線ユニット108、110に無線で結合される構成100の実施形態を示す。処理装置102は、プロセッサアンテナユニット112に関連付けられてもよい。
【0070】
処理装置102及び無線ユニット108、110は、例えばPoE(Power-over-Ethernet)、直接主電源、バッテリー、ソーラーパネル、又は機械式発電機(風力タービンブレードなど)を使用して電力の供給を受けることができる。
【0071】
実施形態によっては、構成100において、例えばローカルに具備される処理装置であり得る処理装置102に加えて、離れた場所に配置される処理装置が利用されてもよい。または処理装置102は、ローカルな処理装置を必要としない遠隔処理装置として実装されてもよい。遠隔処理装置は、得られたデータのいずれかを受信し、例えば、構成100によって実施されるデータの決定の少なくとも一部を実施し得る。遠隔処理装置は、クラウドコンピューティングを介してアクセスされ得る処理装置を指してもよい。または遠隔処理装置は、例えば、複数の場所に構成される仮想プロセッサであって、並列処理手段を通じて本明細書で提示される処理を実行するように構成され得る仮想プロセッサを指してもよい。
【0072】
以下の例では、第1の無線ユニット108及び第2の無線ユニット110に関連して、構成100及びその機能を説明する。ここでは、少なくとも第1の一次信号及び第1の補助信号が両方の無線ユニットによって送信される。当業者には理解されるように、同様の考察が、本方法において送信され得るあらゆる送信に適用されうる。
【0073】
第1の無線ユニット108は、第1のアンテナユニット104を通じて、少なくとも第1の一次信号を送信するように構成される。この一次信号は、無線周波数(RF)信号であってもよく、第1の一次周波数を有する。この一次信号は好ましくは正弦波であるが、既知の変調を受けた任意の信号であってもよい。送信信号はまた、スクランブルコードを含む正弦波であってもよい。第1の無線ユニット108はまた、後述する後続の一次信号を送信してもよい。
【0074】
第1の一次周波数(及び場合によっては後続の一次信号)は、1番目の周波数範囲に含まれてもよい。1番目の周波数範囲は、該範囲において1つの信号のみが送信される場合には、例えば100Hz-100kHz、好ましくは10-100kHzの最大帯域幅を包含し、又は前記範囲において複数の信号が送信される場合には5-100MHz、好ましくは10-50MHz、例えば40MHzの最大帯域幅を包含してもよい。
【0075】
第1の一次信号(及び構成100の無線ユニット又はアンテナユニットのいずれかによって送信される後続の信号)の持続時間(duration)は、例えば、アンテナユニット又は無線ユニット間の距離、測定サイクルの時間間隔、及び/又は無線ユニット108、110が備えるローカル発振器の品質などに応じて、10-10000μsの間であってもよい。信号の持続時間は、例えば約100μsであってもよい。
【0076】
そして、第1の一次信号は、第2のアンテナユニット106を通じて第2の無線ユニット110で受信される。受信した第1の一次信号に基づいて、第1の一次信号に関連する少なくとも第1の一次位相情報が決定される。この第1の一次位相情報は、第2の無線ユニット110のローカル発振器との関連において、受信した第1の一次信号の位相を示す。
【0077】
通常、正確には、信号周波数はローカル発振器の周波数よりも高く、位相測定は、高速フーリエ変換などを用いてデジタルベースバンドで行われることが多い。これは本質的に、簡単のために信号周波数で動作すると理解したローカル発振器に対して位相を測定することと等価である。
【0078】
構成100が、例えば第3の無線ユニットのような更なる無線ユニットを有する場合、(1番目の)一次信号は、第3の無線ユニットでも受信され得る。そして(1番目の)一次位相情報は、第3の(及びその他の)無線ユニットでも決定され得る。一般に、信号は、構成100における、送信を行っていない残りの無線ユニットの少なくとも一部でも受信されうるように、ブロードキャストとして送信され得る。無線ユニットのペアとしては、構成100に含まれる無線ユニットに基づいて考えられ得る無線ユニットの全ての可能なペアを含んでもよい。または、一部のペアのみを含んでもよい。例えば、無線ユニットの可能なペアの間のリンクの障害により、ブロードキャスト信号が他方の無線ユニットに到達しない場合がある。
【0079】
第2の無線ユニット110は、第2のアンテナユニット106を通じて少なくとも第1の一次信号を送信するように構成される。第1の一次信号は、第1の無線ユニットによって送信される第1の一次信号と同等であってもよく、少なくとも周波数において第1の一次信号に本質的に対応する。第2の無線ユニット106は、後続の一次信号を送信するように構成されてもよい。第2のアンテナユニットによって送信される後続の一次信号は、第1の無線ユニットなどによって送信される後続の一次信号に本質的に対応してもよい。
【0080】
第2の無線ユニット110によって送信された第1の一次信号は、第1のアンテナユニット104を介して第1の無線ユニット108で受信される。このように、一対の無線ユニットにおける無線ユニット間の伝送は、双方向伝送である。つまり、ペアとなった無線ユニットが互いに同様の信号を送信し合う。
【0081】
受信した第1の一次信号に基づいて、少なくとも第1の一次位相情報が決定される。この第1の一次位相情報は、第1の無線ユニット108のローカル発振器との関連において、受信した第1の一次信号の位相を示す。
【0082】
構成100が複数の無線ユニット108、110を有する場合、構成100の無線ユニットの各々は、例えば第1の一次信号を送信するように構成されてもよい。この信号は、シーケンスにおいて先行する無線ユニット又は少なくとも第1の無線ユニット108が第1の一次信号を送信した後のブロードキャストとして、送信されてもよい。またこの信号は、構成100の他の無線ユニットの少なくとも一部で受信されてもよい。受信した信号のそれぞれについて、対応する位相情報が決定されてもよい。従って、双方向位相情報は、無線ユニットの各ペア及び各双方向送信について、決定されてもよい。
【0083】
第1の一次位相情報は、少なくとも第1の一次位相差を決定するために(処理装置102によって)使用される。この第1の一次位相差は、第2の無線ユニット110で受信された第1の一次信号と、第1の無線ユニット108で受信された第1の一次信号とに関する、第1の一次位相情報の差を示す。
【0084】
第1の無線ユニット108及び第2の無線ユニット100は、後続の一次信号、例えば、第1の一次信号とは周波数が異なる少なくとも第2の一次信号を送信するように構成されてもよい。しかし好ましくは、第1の一次信号及び後続の一次信号は、1番目の周波数範囲内にあり、同時に送信されてもよいし、順次送信されてもよい。
【0085】
後続の一次信号は、構成100に含まれる無線ユニットであって送信を行わない無線帯域によって受信されてもよく、後続の一次位相情報(例えば、少なくとも第2の一次位相情報)が決定されてもよい。
【0086】
後続の一次位相情報から、後続の一次位相差、例えば少なくとも第2の一次位相差を決定しうる。
【0087】
構成100が2つ以上の無線ユニット108、110を有する場合、それらのうちの任意の1つは、上述の信号を送受信してもよく、各々が予め割り当てられたスロットで1つずつ送信し、互いに少なくとも1つの信号を送受信した任意の2つの無線ユニット間のクロックオフセットが評価されてもよい。双方向送信を行った無線ユニットのペアが得られれば、双方向位相情報を決定しうる。互いに信号を送信していない無線ユニットのペアであっても、これら2つの無線ユニットが、両方に共通する1つ又は複数の第3の無線ユニットに双方向信号を送信した場合、位相測定に基づいて決定されたクロックオフセットから、上記互いに信号を送信していない無線ユニットのペアの間のクロックオフセットを決定することも可能でありうる。その場合、クロックオフセットは、そのような2つの無線ユニットを接続するリンク上の個々のクロックオフセットの合計として決定することができる。
【0088】
次に、第1の一次位相差と、アンテナユニット間の第1のクロックオフセット見積値を示す決定された第1のクロックオフセット変数と、決定された第1のクロックオフセット変数の推定最大誤差とに少なくとも基づいて、クロックオフセット値の候補のセットが決定される。実施形態によっては、クロックオフセット変数は、アンテナユニット間のクロックオフセットの近似推定値に基づくことができる。クロックオフセット値の候補のセットを決定する可能な方法については、後に詳細に説明する。クロックオフセット値の候補のセットは、無線ユニットのペアの各々について決定されてもよい。
【0089】
第1の無線ユニット108はまた、補助周波数を有する少なくとも第1の補助信号を送信するように構成される。第1の補助信号は、周波数を除いて、本質的に第1の一次信号に一致してもよい。第1の補助周波数は、2番目の周波数範囲に含まれる周波数を示してよい。2番目の周波数範囲は、該範囲において1つの信号のみが送信される場合には、100Hz-100kHz、好ましくは10-100kHzの最大帯域幅を包含し、又は前記範囲において複数の信号が送信される場合には5-100MHz、好ましくは10-50MHz、例えば40MHzの最大帯域幅を包含してもよい。
【0090】
1番目の周波数範囲(第1の一次信号及び場合によっては後続の一次信号の周波数範囲)と2番目の周波数範囲との差は、少なくとも150MHz、好ましくは少なくとも200MHz、最も好ましくは少なくとも500MHzであってもよい。例えば、2つの周波数帯域が、2.4GHz ISM、5GHz RLAN/ISM、6GHz免許不要帯域など、全く異なる無線帯域にある場合、1番目の周波数範囲と2番目の周波数範囲との差は3GHz以上になることさえある。
【0091】
1番目の周波数範囲、2番目の周波数範囲、及び/又は任意の後続の周波数範囲の周波数値は、本質的に任意の周波数値を含んでもよい。周波数範囲に含まれる周波数値よりも重要なのは、互いに離れている2つの周波数範囲の間の、又は少なくとも第1の一次信号の周波数と第1の補助信号の周波数との間の、周波数の分離度若しくは距離又は差でありうる。
【0092】
第2のアンテナユニット106は第1の補助信号を受信し、第1の補助位相情報が、第2の無線ユニット110に関して決定されてもよい。ここで第1の補助位相情報は、第2の無線ユニット110のローカル発振器に対する、受信した第1の補助信号の位相を示す。
【0093】
次に第2の無線ユニット110は、第1の無線ユニット108が送信した第1の補助信号に実質的に一致する第1の補助信号を送信する。
【0094】
第2のアンテナユニット110によって送信された第1の補助信号は、第1の無線ユニット108で受信され、対応する第1の補助位相情報が決定される。ここで第1の補助位相情報は、第1の無線ユニット108のローカル発振器に対する、受信した第1の補助信号の位相を示す。
【0095】
この第1の補助位相情報は、少なくとも、第2の無線ユニット110で受信された第1の補助信号に関する第1の補助位相情報と、第1の無線ユニット108で受信された第1の補助信号に関する第1の補助位相情報との差を示す、第1の補助位相差を決定するために使用される。
【0096】
構成100が複数の無線ユニット108、110を有する場合、各無線ユニットは、第1の補助信号に一致する信号を、好ましくは連続して、それぞれのタイムスロットで送信するように構成されてもよい。各信号は、構成100の残りの無線ユニットのうち送信を行っていない無線ユニット(の少なくとも一部)によって受信されてもよく、対応する第1の補助位相情報が決定されてもよい。第1の補助位相差は、第1の補助信号に対応する双方向信号を送信した無線ユニットの各ペアについて決定されてもよい。
【0097】
情報の処理は、ここで提案されているものとは異なる順序で行われてもよい。例えば、前述のクロックオフセット値の候補のセットの決定は、補助信号を送信(及び受信)した後などに行うこともできる。また、補助信号を一次信号と同時に送信してもよい。
【0098】
後続の補助位相情報及び後続の補助位相差を決定するために、後続の補助信号が送信されてもよい。
【0099】
後続の補助信号は、2番目の周波数範囲内の周波数を含んでもよい。
【0100】
複数の補助信号を送信する場合、同時に送信してもよいし、順次送信してもよい。
【0101】
決定された第1の一次位相差及び第1の補助位相差に少なくとも基づいて、クロックオフセット値の候補のセットから、最も適切そうなクロックオフセット値が決定又は選択される。(ただし、1番目の周波数範囲と2番目の周波数範囲との差が、曖昧さなく選択を行うために十分であると仮定する)。最も適切そうなクロックオフセット値の選択については、後に更に詳しく説明する。
【0102】
図3は、構成において使用され得る例示的な第1のアンテナユニット104及び第2のアンテナユニット106並びに無線ユニット108及び無線ユニット110を示す。
図3の例では、アンテナユニット104、106は、無線ユニット108、110とは別個に設けられている。
図3は、互いに少なくとも1つの信号を送受信するアンテナユニットのペアにおいて、2つのアンテナユニット104、106の間で送受信される信号に関連する位相情報が、それらの間のクロックオフセットを評価するためにどのように使用され得るかを概略的に示している。対応する考察は、構成の様々な実施形態において得られ得る無線ユニットの他のペアにも適用される。
【0103】
送信側の第1の無線ユニット108が、そのローカルクロック/発振器(LO)に対してゼロ位相で少なくとも1つの第1の一次信号を送信すると仮定すると、第2の無線ユニット110で受信された一次信号の測定/決定された位相φ
12(又は第1の一次位相情報)は、(
図3からも分かるように)、次の式により決定され得る。
【0104】
φ12(t1) = θC,1(t1) - θT,1 - θA,1 - Φ12(t1) - θA,2 - θR,2 - θC,2(t1) (1)
【0105】
ここでθC,1(t1)及びθC,2(t1)は、それぞれ第1及び第2の無線ユニット108,110のローカル発振器の位相である。(ただし第1の無線ユニット108の送信時の時刻をt1とする。)これは基本的に、関心のある量、すなわちクロックオフセットの表示(indication)を表すことに変換される。Φ12(t1)は、第1アンテナユニット104と第2アンテナユニット106との間の距離又は基線(baseline)又は接続幾何学線(connecting geometric line)、Dに対応する幾何学的位相である。θT,1は第1アンテナユニット104に対応する送信ブランチ(送信部)の位相長であり、θR,2 は第2アンテナユニット106に対応する受信ブランチ(受信部)の位相長である。(ここで位相長とは、ある距離を横断する信号に生じる位相シフトを指す。)θA,1及びθA,2は、それぞれ、第1アンテナユニット104又は第2アンテナユニット106のアンテナ給電ケーブルの位相長である。ブランチとケーブルの位相長は一定と仮定できるので、時間依存性はない。
【0106】
送信ブランチ及び受信ブランチの位相長、例えばθT,1 、θR,2は、関連する無線ユニットの送信ブランチ及び受信ブランチの物理的な長さに起因する位相長を構成し、例えば無線ユニット内の増幅器、また可能なケーブルで構成される。例えば、位相長θT,1 は、デジタルアナログ変換器(DAC)から第1の無線ユニット108のアンテナポートまでの送信ブランチの長さに対応する。
【0107】
続いて第2の無線ユニット110も、少なくとも1つの一次信号を送信してもよい。これは、第1の無線ユニット108からの対応する信号が送信されたと判断した後に、予め割り当てられたタイムスロットで行われてもよい。送信された第1の一次信号は、少なくとも第1の無線ユニット108で受信される。
【0108】
ここで第2の無線ユニット110が、そのローカルクロック/発振器(LO)に対してゼロ位相で第1の一次信号を送信すると仮定すると、第1の無線ユニット108で受信された一次信号の測定/決定された位相φ21(又は第1の一次位相情報) は、次の式によって決定されうる。
【0109】
φ21(t2) = θC,2(t2) - θT,2 - θA,1 - Φ21(t2) - θA,2 - θR,1 - θC,1(t2) (2)
【0110】
ここでθC,2(t2)及びθC,1(t2)は、それぞれ第2及び第1の無線ユニット110,108のローカル発振器の位相である(ただし第2の無線ユニット110の送信時刻をt2とする)。Φ21(t2)は、第2アンテナユニット106と第1アンテナユニット104との間の距離又は基線又は接続幾何学線に対応する幾何学的位相である。θT,2及びθR,1はそれぞれ、第2アンテナユニット106及び第1アンテナユニット104に対応する送信ブランチ位相長及び受信ブランチ位相長である。
【0111】
無線ユニットは、決定された位相情報(及び場合によっては振幅情報などの他の情報)を処理装置102に送信してもよい。(ただし処理装置102は無線ユニットのいずれかに組み込まれていてもよい。)処理装置102は、その後、少なくとも第1の一次位相差を決定してもよい。
【0112】
位相差は、1つの無線ユニットによって送信され、1つの他の無線ユニットで受信された信号と、当該他の無線ユニット(例えば第2の無線ユニット110)によって送信され、前記1つの無線ユニット(例えば第1の無線ユニット108)で受信された対応する信号とに関連する位相情報の差として決定されてもよい。第1の無線ユニット108及び第2の無線ユニット110を有する
図3の例では、位相差(例えば第1の一次位相差)Φ
d は、以下のように決定されてもよい。
【0113】
Φd = φ12 - φ21
= θC,1(t1) - θT,1 - θA,1 - Φ12(t1) - θA,2 - θR,2 - θC,2(t1) -
[θC,2(t2) - θT,2 - θA,1 - Φ21(t2) - θA,2 - θR,1 - θC,1(t2)]
= [θC,1(t1)- θC,2(t1)]+ [θC,1(t2)- θC,2(t2)] + [Φ21(t2)- Φ12(t1)] +
(θT,2 + θA,1 + θA,2 + θR,1) -(θT,1 + θA,1 + θA,2 + θR,2) (3)
ただし、簡単のためにφの時間依存性は省略されている。(θT,2 + θA,1 + θA,2 + θR,1)-(θT,1 + θA,1 + θA,2 + θR,2 )の項は、(無線ノードとアンテナが互いに等しい場合は)相殺されるか、よく知られた送信/受信RFチェーン校正法によって考慮できると考えることができる。
【0114】
この仮定では
ここで、
は、t
1 と t
2の間のローカル発振器の平均位相差である。
【0115】
高品質の発振器では ドリフト率 dθC/ dtすなわち、第1無線ユニット108のローカル発振器と第2無線ユニット110のローカル発振器と間の周波数オフセットは実質的に一定であり、次のように書くことができる、
【0116】
Φd = 2ΔθC(t1) +(dθC)/dt (t2-t1) (5)
【0117】
ここで ΔθC(t1 )≡θ(C,1)(t1 )-θ(C,2)(t1)とし、Φ12(t) = Φ21(t) = Φ(t)とする。無線チャネルが一定である場合(すなわち、第1の無線ユニットと第2の無線ユニットとの間の距離が変化せず、反射に寄与する物体が無線ユニットに対して移動しない場合)、ドップラー周波数 dΦ/dt はゼロである。これは、ほとんどの場合、固定無線基地局や測位ノードなどでは妥当な仮定である。しかし、この仮定ができない場合は、後述するようにdΦ/dtを決定することができる。
【0118】
式(5)から、時刻t1 におけるLO位相差は次のように求められる。
【0119】
ΔθC(t1) = 1/2 [Φd -(dθC)/dt (t2-t1)] (6)
【0120】
周波数オフセット dθC/ dtがわからない場合でも、t1 と t2のちょうど中間の時刻におけるLO位相差は、次のように求めることができる。
【0121】
ΔθC(t1+ (t2-t1)/2) = 1/2 Φd (7)
【0122】
無線ユニット108と110のローカル発振器間の周波数オフセットの候補は後述するように決定することができるが、この候補は、クロックオフセット・エポックを、線形位相ドリフトが保持されるt1の近傍の任意の時間に変換することを可能にする。θC,ref= 0とすることにより、複数の無線ノードのうちの1つ(例えば第1の無線ユニット)を、基準クロック(又は基準局又は基準ユニット)として選択することができる。そして、残りの未知のローカル発振器の位相オフセット θcを差Δθから求めるべく、系の方程式を構築することができる。
【0123】
LO位相オフセットθC とクロックオフセットτとは、次の簡単な関係に従わなければならない。
【0124】
θC = 2π・τ・f + θinst(f) (8)
【0125】
この関係により、計器項(instrumental term)θinst(f)が既知であれば、クロックオフセットτからLO位相オフセットを計算することができる。以下の分析では θinst(f)は、方程式を単純化するためにゼロと仮定する。実際には、この値は与えられた周波数 f において一定であると合理的に仮定することができ、適切な測定器で測定することができる。(7)と(8)から、及び、測定される位相差 Φdは、[π, π]の範囲内の値しか得られないことを考慮すると、次の式が得られる。
【0126】
【0127】
図4は、構成100において使用され得る例示的な第1のアンテナユニット104及び第2のアンテナユニット106並びに無線ユニット108及び無線ユニット110を示す。この実施形態では、アンテナユニット104、106は、無線ユニット108、110内に搭載されるか、又は一本のアンテナケーブルのみで接続される。紹介する例では、アンテナユニットが無線ユニット本体の一部として実装されているか否かに関係なく、無線ユニットはアンテナユニットを含むものと考えて欲しい。
【0128】
図5は、送信信号周波数の関数として決定された位相差のグラフ上に、本発明のある実施形態に従う1つのユースケースシナリオにおいて決定される可能性のある一次位相差、補助位相差、及びクロックオフセット値の候補のセットに対応する線を示したものである。
図5の数字、線、及び計算値などは、単に例示的なものであり、本発明を説明する際の視覚的な助けになるように意図されたものである。正確な描写値は、例えばクロック差が約200ピコ秒しかない場合に可能かもしれない。しかし、どのようなクロック差であっても原理は同じである。
【0129】
描かれた点302と点304は、それぞれ第1の一次位相差と第2の一次位相差に対応してもよい。この例では、1番目及び第2の一次信号(それぞれ周波数f1、f2を有する)が送信されている。一次信号は、1番目の周波数範囲 fa にある。例示的な1番目の周波数範囲 fa は、約 40MHzの周波数範囲に及ぶ。送信される信号の数や、1番目の周波数範囲 fa に含まれる周波数、1番目の帯域(周波数範囲)の幅などは、もちろん、ユースケースによって異なってもよい
【0130】
一次信号は、1回の送信(1つの無線ユニットがそれぞれのタイムスロットで送信すること)で送信されてもよく、複数の例えば正弦波が同時に送信されてもよい。連続する信号と信号の間の周波数の差は、例えば1~40MHz、5~20MHz、例えば約10MHzとすることができる。
【0131】
点308と点310は、それぞれ第1の補助位相差と第2の補助位相差に対応してもよい。この例では、第1及び第2の補助信号(周波数はそれぞれf3、f4 )が送信されている。補助信号は2番目の周波数範囲fb にある。例示的な2番目の周波数範囲 fb は、約 40MHzの周波数範囲に及ぶ。この場合も、送信される信号の数や、2番目の周波数範囲 fb に含まれる周波数(例えば1つの周波数のみである可能性もある)、2番目の帯域の幅も、同様に異なってもよい。
【0132】
1番目及び2番目の周波数範囲fa、fbは、帯域幅が同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。しかし、1番目及び2番目の周波数帯域は、有利なことに、いずれも狭帯域受信機(Wi-Fi受信機を参照)、あるいはコイン電池で動作するモノのインターネット(IoT)受信機の使用を可能にするのに十分な狭帯域である。
【0133】
1番目の周波数範囲f
aと2番目の周波数範囲f
bとの差Δfは、
図5の例では約550MHzである。一次信号の周波数は、補助信号の周波数より大きくても小さくてもよいが、適切であると考えられるクロックオフセット値を決定するために十分な大きさの周波数の差又は周波数範囲の差Δfが存在することが望ましい。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態では、信号は、1番目の帯域又は1番目の周波数範囲fa及び2番目の帯域又は2番目の周波数範囲fbに加えて、3番目及び場合によっては4番目以降の狭帯域でも送信されることがある。
【0135】
決定されたクロックオフセット値候補のセットから、最も適切と思われるクロックオフセット値を決定又は選択できるようにするために使うことが望ましい周波数範囲の数は、環境、ユースケース、又は実施形態によって異なるであろう。
【0136】
少なくとも2つの信号、例えば搬送波周波数f1、f2を有する第1の一次信号及び第2の一次信号が利用される場合、第1の無線ユニットと第2の無線ユニットとの間のクロックオフセットを示すクロックオフセット変数は、それぞれの位相差の差(1番目の(一次)位相差と2番目の(一次)位相差との差)として表すことができる。
【0137】
Δτ1= (Φd,f1-Φd,f2 +N・4π)/ [4π(f1-f2)] (10)
【0138】
これは、式(9)で与えられる、クロックオフセットと測定された位相差の関係から理解できる。クロックオフセット変数の最大誤差は次の通りである。
【0139】
Δτmax= 2ΔΦd,max / [4π(f1-f2)] (11)
【0140】
ここでΔΦd,maxは、1回の位相差測定における最大誤差である。また、Nは既知であると仮定している。言い換えればf1-f2は、位相の曖昧さを避けるために適切に小さくなるように選択される。このような曖昧さは、式(10)において、 |Φd,f1-Φd,f2 |<2πであれば避けることができる。つまり次の通りである。
【0141】
Δf_(max )=|f1- f2|max < 1/(2Δτmax) (12)
【0142】
ただし、式(11)によって決定されるクロックオフセットの不正確さは、位相差Φd,f1及びΦd,f2の測定における測定誤差又は推定誤差のために、比較的高くなる可能性がある。一般的、位相の測定誤差は無線受信機の熱雑音又は位相雑音に起因する。高品質の発振器では熱雑音が主な原因となる。熱雑音はよく知られた統計的特性を持つため、位相差の典型的な最大誤差は、既知のシステム雑音と信号レベルから容易に推定できる。
【0143】
推定される最大誤差値ΔΦd,maxから、決定された位相情報を使用して決定される誤差の値の限界を決めることができる。最大誤差ΔΦd,maxの推定値は、本明細書で説明する手順が実行可能であるために十分でありうる。以下ではΔΦd,maxは、位相測定誤差が取り得る最大値として理解されたい。
【0144】
最大測定誤差ΔΦd,maxは、個々のユースケース又は個々の構成100に対して決定されてもよい。最大測定誤差は、事前に知られていてもよいし、構成100によって受信されてもよい。例えば、最大測定誤差ΔΦd,maxは、構成100の既知の位相測定/決定精度に基づいて決定されてもよい。
【0145】
ΔΦd,maxは、位相測定における真の誤差が常にこの値未満になる可能性が高いことが分かっているように選択される値であってもよい。
【0146】
ただし、ΔΦd,maxとして大き過ぎる値を使用しても、以下の手順が無効になることはない。しかし、値が小さすぎる場合は、周波数範囲間の位相回転が考慮されなくなり、クロックオフセットの決定が正しくなくなる可能性がある。従ってΔΦd,maxは保守的に選択することが望ましい。
【0147】
例えば、f1とf2との間に40MHzの差があり、10度の測定誤差ΔΦd,maxを考慮すると、決定されるクロックオフセット変数Δτmaxの最大誤差は約700ピコ秒となる。これは式(11)からわかるであろう。
【0148】
実施形態によっては、少なくとも第1の無線ユニット及び第2の無線ユニットを含む少なくとも一対の無線ユニットの間で決定されるクロックオフセット見積値は、別の手法で(つまり上述のような位相測定とは異なる手法で)得られてもよい。例えば、以前の知識から得られてもよいし、測定されたおおよそのクロックオフセット(例えば、電気的方法又は光学的方法を使用して測定された値)から得られてもよい。このクロックオフセット見積値は、クロックオフセット値の候補の暫定セットを決定するために使用することができる、暫定クロックオフセット変数として使用することができる。その後、例えば、測定された暫定クロックオフセット(変数)の最大誤差が決定又は取得されてもよい。
【0149】
暫定的なクロックオフセット変数は、クロックオフセットの第1近似値として使用してもよく、クロックオフセット候補の最大値を決定するために、いずれかの送信を実行する前に決定してもよい。
【0150】
暫定的なクロックオフセット変数が得られた場合、クロックオフセット値を明確に決定するためには、1番目の信号及び2番目の信号(又は第1の一次信号及び第1の補助信号)で十分でありうる。
【0151】
測定誤差ΔΦd,maxに起因する誤差に加えて、決定されるΔΦd,f1には2πの曖昧さがある可能性もある。これは、(式(10)から、)上記の例示的シナリオを考慮すると、約13ナノ秒の曖昧さを意味するであろう。この場合、13ナノ秒よりも正確なクロックオフセットに関する事前情報があれば、2πの不正確さを排除することができる。
【0152】
この2πの不確実性の問題は、周波数が閾値未満だけ異なる連続した一次信号を送信することによっても低減しうる。連続する一次信号(例えばf1とf2)の周波数の差は、例えば20MHz未満、例えば15MHz未満、例えば10MHz未満、例えば5MHz未満であってもよい。信号周波数の差(例えばf1とf2の周波数の差)が5MHzの場合、式(10)から決定されるクロックオフセットの2πの曖昧さは、約100ナノ秒になるであろう。この特定のケースでは、100ナノ秒よりも優れた精度を有するクロックオフセットについてのアプリオリな知識があれば、2πの不確実性を排除することができる。このような精度は、例えば、完全な40MHz瞬時帯域幅を利用する同期シーケンスで達成可能である。しかし、クロックオフセット変数判定の不正確さを制限するためには、送信される一次信号が、全体の広がりが例えば少なくとも40MHzである周波数範囲をカバーすることが有利である。
【0153】
クロックオフセットτが、一次周波数におけるN+IA(整数アンビギュイティ)半周期T1と、(大きさが常に1/4周期より小さい)分数成分との差に違いないことを考慮すると、式(10)は、次の関係を通じて整数アンビギュイティを決定するために使うことができるだろう。
【0154】
τ = (N + IA) *(T1/2) + τfrac = (Φd,f1-Φd,f2) / [4π(f1- f2)] (13)
ここで、T1は第1の一次信号の周期であり、Φdはラジアン単位で与えられる。
【0155】
(Φd,f1-Φd,f2)の測定における最大誤差(これは2ΔΦd,maxである)を考慮すると、N+IAの値の候補は式(13)を満たす値に相当する。従って、ΔΦd,maxは、整数アンビギュイティ値IA又はN+IAが取り得る範囲を定義し、整数アンビギュイティ値の候補の集合を与える。τfracを決定することができれば、整数アンビギュイティ値の候補の集合は、クロックオフセット値τの候補の集合に一致するか、又はこれを定義する。
【0156】
クロック間の半周期数の最良推定値であるNは、IA=0とすることで、式(13)に最も適合するものとして導き出すことができる。
【0157】
IAの可能な範囲(-ΔIA<IA<ΔIA)は、次のように、(また前の式から導き出されるように、)この最大位相推定誤差ΔΦd,maxによって制限される。
【0158】
ΔIA = ΔΦd,max/(π(1- f2/f1)) (14)
【0159】
式(13)のf2(及びそれに対応するΦd,f2)をゼロに設定し、Φd,f1はτfracの分数成分に一致しなければならないことに注意すると、位相差は次式を満たす。
【0160】
Φd,f1 = 4π・f1・τ+(N+IA)・2π (15)
【0161】
ただし、基本測定で打ち消すことができない計器位相誤差、すなわち式(3)における(θT,2+θA,1+θA,2+θR,1)-(θT,1+θA,1+θA,2+θR,2)、及び式(8)のθinstがゼロであることを仮定している。(または、別に決定されて計算から除外されることを仮定している。)このことから、クロックオフセットは以下のように決定される。
【0162】
【0163】
この式から、τは、式10から求めるよりも高精度で決定されうる。なぜなら、f1はf1-f2よりもはるかに大きいからである。
【0164】
式(16)の問題は、整数アンビギュイティである。(N+IAの値が分からない。または、Nが式13から決定される場合、IAの値が分からない。)例えば信号周波数f1が6GHzの場合、τにおけるアンビギュイティは、IA*83ピコ秒である。しかし、式(16)を使用してクロックオフセット値の候補のセットを決定し、得られた位相情報、おおよそのクロックオフセット、及び推定最大誤差に基づいて、最も適切そうなクロックオフセット値を決定してもよい。
【0165】
先に示したように、f1とf2が40MHz離れており、位相差の最大測定誤差ΔΦd,maxが10度である場合、位相差Φd,f1-Φ,d,f2を決定することにより、クロックオフセットをおおよそ±700ピコ秒の精度で知ることができうる。f1=5.8GHz、半周期86ピコ秒の場合、整数アンビギュイティは約16個の候補値に制限される。(これを「整数アンビギュイティ値の候補のセット」と記載することがある。)
【0166】
位相差を送信周波数の関数として考える場合、整数アンビギュイティ値の候補のセットは、グラフ上で整数アンビギュイティ直線に対応すると理解することができる。ここで整数アンビギュイティ直線は、式(16)で与えられるクロックオフセット(及び4πのスケーリングファクター)によって定まる傾きを有する。これを
図5に示す。IA値の候補の集合又はクロックオフセット値の候補の集合は、第1の一次位相差302に交わる整数アンビギュイティ直線として示されている。式(13)でIA=0(最良の暫定一致)として決定される傾き(これはNの値も決定する)に対応する直線は、316として示されている。隣接する候補はIA = +1 (318)とIA = -1 (314)であり、それぞれ半サイクル周期大きい場合のクロックオフセット差及び半サイクル周期小さい場合のクロックオフセット差に対応する。これらはすべて、エラーバーで示された一次位相差測定値の周りの誤差限度2ΔΦ
d,maxに適合し、従って、IA値又はクロックオフセット値の候補の集合の一部である。
【0167】
1番目及び第2の一次信号を考慮するとき、決定された第1のクロックオフセット変数に関して、クロックオフセット値の候補のセットを決定するときに考慮される誤差限度は、式(10)から理解され得るように、1番目と第2の一次信号の間の位相差及び周波数差の最大誤差によって制限され得る。従って、第1のクロックオフセット変数の最大誤差は2ΔΦd,max /[4π(f1-f2)]によって与えられうる。これは、クロックオフセット値の候補のセットを制限する第1のクロックオフセット変数の誤差限度を与えるために使用されることがある。
【0168】
後続の一次位相差又は補助位相差が決定される実施形態では、整数アンビギュイティ直線IA=0は、決定された一次位相差のうちの2つを通る直線、又は複数の一次位相差点に対して最良の最小二乗フィットを有する直線として決定され得る。
【0169】
3つ以上の一次信号を利用する場合、第1のクロックオフセット変数は最小二乗フィットとして決定されてもよく、第1のクロックオフセット変数の最大誤差を決定するために、例えば、統計的推定法を使用して、所与の確率値に対する第1のクロックオフセット変数の境界を導出してもよい。3つ以上の一次信号が利用される場合、議論される第1の一次信号及び第2の一次信号とは、周波数が互いに最も離れている2つの一次信号を指すと理解されるべきであり、第3の一次信号及び(もし存在すれば)後続の一次信号は、第1の一次信号と第2の一次信号との間の周波数を有する。
【0170】
少なくとも1つの補助信号の送信時、好ましくは補助信号周波数f3がf1又はf2から少なくとも例えば400MHzだけ異なる場合、少なくとも第1の補助位相差Φd,f3を決定してもよい。決定された第2の位相差Φd,f1-Φd,f3、f1-f3、式(10)を利用して、クロックオフセット変数の第2のより良い見積値Δτ2が決定されてもよい。この場合の精度は、Φd,f1-Φd,f2及びf1-f2を使用する式(10)から得られる第1の見積値の±700ピコ秒ではなく、例えば±70ピコ秒になる可能性がある。この値は、考慮された周波数に対して推定されたものであり、ユースケースによって異なる可能性があることに留意されたい。ここでは、決定されたクロックオフセット変数の見積値の誤差の大きさの違いを説明するために、数値が示されている。
【0171】
式(10)を使用するが、第2の位相差Φd,f1-Φd,f3を求めるために第1の一次位相差と第1の補助位相差を利用し、第2のクロックオフセット見積値を示す第2のクロックオフセット変数Δτ2を、次のように決定することができる。
【0172】
Δτ2 = (Φd,f1 - Φd,f2) / [4π(f1-f2)] (17)
【0173】
第1の一次位相差の推定最大誤差ΔΦd,max及び/又は第1の補助位相差における推定最大誤差(これもまた例えばΔΦd,max,でありうる)を使用して、Φd,f1-Φd,f3の推定最大誤差を得ることができる。(これは合計で2ΔΦd,maxになりうる。)これは、第2のクロックオフセット変数の最大誤差をも与えてもよい。
【0174】
第2のクロックオフセット変数Δτ2は、第1の一次周波数などの使用周波数の1つにおける半周期の整数個のクロックオフセット変動に対応するクロックオフセットのクロックオフセット値の候補を決定するために使用することができる。第2のクロックオフセット変数の最大誤差は、最も適切そうなクロックオフセット値が収まるべき誤差限界を与えてもよい。
【0175】
以上により、クロックオフセット値の候補は1つだけとなり、言い換えればIA値の候補は1つだけとなり、最も適切でありそうなIA値又はクロックオフセット値が求まり、整数アンビギュイティが解消される。
【0176】
決定された、最も適切そうな整数アンビギュイティ値IAを用いて、クロックオフセットτが式(16)を用いて計算/決定され、第1の無線ユニット108と第2の無線ユニット110との間のクロックオフセットは、例えば数ピコ秒以下の精度で決定され得る。
【0177】
クロックオフセット値の候補が1つに限定されないと見込まれる場合、選択された周波数差だけ2番目の周波数範囲と異なる3番目の周波数範囲が選択されてもよく、クロックオフセット値の候補のセットを更に限定するべく、3番目の周波数範囲で補助信号が送信されてもよい。
【0178】
図5では、最も適切そうな整数アンビギュイティ値は、測定誤差ΔΦ
d,maxに適合する整数アンビギュイティ直線に対応する値であることがわかる。この例では、直線316に対応するIA=0となる。
【0179】
複数の一次位相差及び/又は補助位相差が決定される場合、例えば最小二乗フィッティング又は他のフィッティング技法を使用して、整数アンビギュイティ直線を決定してもよい。整数アンビギュイティ直線は、測定された位相差の好ましくは全てを考慮してフィッティングされる。また、整数アンビギュイティ直線の傾きから、クロックオフセット値の候補を決定してもよい。
【0180】
実施形態によっては、構成100は、上述の整数アンビギュイティ決定プロトコルを少なくとも1回実行し、その後、追跡モードで動作するように構成されてもよい。追跡モードにおいて、構成100は、後続の一次信号を繰り返し送信し、後続の一次位相を決定し、一次位相差を決定して、第1の無線ユニットと第2の無線ユニットとの間のクロックオフセットの変化を示すクロックオフセット情報を繰り返し決定することによって、第1の無線ユニット108と第2の無線ユニット110との間のクロックオフセットを追跡するように構成されてもよい。後続の一次信号は、例えば、狭い周波数帯域faをカバーする1番目の周波数範囲内で送信されてもよい。このようなクロックオフセットの変化を合計することにより、このモードでは真のクロックオフセットを連続的に追跡することができる。
【0181】
整数アンビギュイティが少なくとも1回決定された後、整数アンビギュイティは、追跡モードにおける後続の測定の間で変化しないと仮定してもよい。これは例えば、第1の無線ユニット108と第2の無線ユニット110との間のクロックオフセットの既知の変化又は見積もられた変化に基づいて、そのような仮定を行ってもよい。整数アンビギュイティは、以前に決定された整数アンビギュイティの値が依然として有効であること、すなわち位相スリップが発生していないことを確認するために、例えば所定の時間間隔で決定してもよい。
【0182】
通常動作中の信号の送信には1つの狭い周波数帯域(例えば一次信号を含む第1の周波数帯域fa)のみが必要でありうるため、追跡モードは、クロックオフセットの追跡に使用することが便利である。別の(狭い)周波数帯域(例えば第2の周波数帯域fb)での送信は、追跡モードに移行する前にただ一度だけ必要とされてもよい。又は、追跡モードで送信される信号と比較してずっと少ない頻度でしか送信される必要がなくてもよい。例えば、(1番目の狭帯域における(一次)信号の送信を通じた)位相追跡は、例えば0.1~50ms又は1~20msの範囲の時間間隔、例えば10msごとに繰り返すことができる。第2の狭帯域における(少なくとも1つの(補助)信号の追加送信を通じた)新たなIA判定は、例えば0.1秒から10秒、又は0.5秒から5秒の範囲の時間間隔の間、例えば1秒に1回のみ行うことができる。
【0183】
本発明の実施形態において従うべき手順は、上に提示されたような周波数範囲を示さずに説明されてもよい。送信信号は、少なくとも、1番目の周波数を有する1番目の信号と、2番目の周波数を有する2番目の信号と、それに続く後続の周波数を有する後続の信号、例えば3番目の周波数を有する3番目の信号であると考えられてもよい。
【0184】
双方向伝送と決定された位相情報に基づいて、1番目の位相差と2番目の位相差を決定してもよく、併せて、1番目の位相差と2番目以降の位相差を決定してもよい。
【0185】
その後、1番目の位相差と2番目(又はそれより後の)の位相差との差に基づいて、少なくとも1つのクロックオフセット変数が決定されてもよい。決定されたクロックオフセット変数の最大誤差は、少なくとも1番目の位相差の最大誤差と、2番目以降の位相差の最大誤差とに基づいて決定されてもよい。
【0186】
クロックオフセット値の候補の集合の少なくとも1つは、第1の一次周波数など、使用した周波数の少なくとも1つにおける半周期の整数個の変動に対応するクロックオフセットの変動を通じて決定されてもよい。前記クロックオフセット値の候補の集合は、決定されたクロックオフセット変数の推定最大誤差によって制限される。
【0187】
クロックオフセットの変動は、例えば、最も高い使用周波数における半周期の整数個の変動を利用して遂行されてもよい。この場合、クロックオフセットが最も高い周波数で一義的に決定できる場 合、クロックオフセットは、低い周波数を利用しても一義的に決定できることが知られている。
【0188】
後続の選択された周波数での双方向送信は、クロックオフセット変数と関連する最大誤差、及びクロックオフセット値の候補の集合を決定するために繰り返されてもよく、クロックオフセット値の候補が1つだけになり、クロックオフセットを明確に決定することができるまで、繰り返されてもよい。
【0189】
後続の周波数は、後続の周波数と1番目の周波数との差が、1番目の周波数と2番目の周波数又は以前に使用された周波数との差以上に異なるように選択されてもよい。
【0190】
最終的な、曖昧さのないクロックオフセット値は、決定された位相差のいずれかを使用して、式(16)を通じて決定されてもよい。実施形態によっては、最終的なクロックオフセット値は、1つ以上の位相差又は全ての位相差を使用して決定されてもよい。最終的なクロックオフセット値を決定する他の可能な方法の1つは、決定された位相差の複数又はそれぞれについてクロックオフセット値を(式16を使用して)個別に決定し、それらの(実施形態によっては重み付けされた)平均として、最終的なクロックオフセット値を決定することであってもよい。もう1つのオプションは、複数の異なる周波数を使用して決定した位相差に最良の最小二乗フィットをもたらすクロックオフセットの値を見つけることである。このような最小二乗フィットの計算は、実位相値を使用する代わりに複素数領域でも実行できる。
【0191】
もちろん、上記の手順は、少なくとも1番目及び2番目の周波数範囲で選択された周波数を有すると考えることもできる。本明細書で説明する本発明の実施形態では、周波数範囲は必ずしも事前に選択される必要はない。というのも、1番目及び2番目の周波数範囲、又は少なくとも考慮される一次周波数及び補助周波数を包含する全周波数範囲を最終的にカバーするように2番目及び後続の周波数を選択することによって、クロックオフセット値を決定してもよいためである。
【0192】
実行された2番目以降の(又は更なる一次又は補助)送信のいずれかに関連して(又は少なくとも任意に暫定的なクロックオフセット変数を取得した後に)決定されるクロックオフセット変数は、式(10)を使用して求めることができる。周波数f2は、各ステップ又はサイクルで使用される送信周波数に置き換えてもよく、f1は、最高又は最低の使用信号周波数に置き換えてもよい。
【0193】
本発明の更に別の実施形態では、クロックオフセットの決定において、ローカル発振器間の周波数オフセット及び/又はアンテナユニット間の可能なドップラー周波数を決定し、補償することができる。少なくとも第1の一次信号を送信し、第1の一次位相情報を決定した後、第1の一次周波数を含む繰り返された一次信号を少なくとも送信し、第2の無線ユニットで受信された信号に関する反復的な一次位相情報を決定する。
【0194】
φ12(t3) = θC,1(t3) - θT,1 - θA,1 - Φ12(t3) - θA,2 - θR,2 - θC,2(t3) (18)
【0195】
また、第1の無線ユニットで受信された信号に関する反復的な一次位相情報を決定する。
【0196】
φ21(t4) = θC,2(t4) - θT,2 - θA,1 - Φ21(t4) - θA,2 - θR,1 - θC,1(t4) (19)
【0197】
第1無線ノードを基準局とすると、θC,1(t)=0と書くことができる。第1無線ユニットと第2無線ユニットが送信する信号の間の時間は一定に保たれていると仮定しよう。すなわち、t3-t1=t4-t2=Δtである。また、計器項(instrumental term)も一定と仮定できる。これらの仮定と、Φ12(t)=Φ21(t)=Φ(t)に注目すると、第2の無線ユニットで受信された信号に関する反復的一次位相差は次のように与えられる。
【0198】
φ12(t3) - φ12(t1) = -dΦ/dt・Δt - (dθC,2)/dt・Δt (20)
【0199】
そして第1の無線ユニットで受信された信号に関する反復的一次位相差は次の通りである。
【0200】
φ21(t4) - φ21(t2) = -dΦ/dt・Δt + (dθC,2)/dt・Δt (21)
【0201】
ドップラーdΦ/dtとLO周波数オフセットdθC,2/dtは、この2つの式から解き、式(5)において補正することができる。なお、この解法は、信号の間隔が変化しても、間隔が既知であれば使うことができる。
【0202】
リピートされる一次信号による追加の位相測定は、完全な測定サイクルごとに、又は間欠的に行うことができる。周波数オフセット及び/又はドップラー周波数の決定のために利用される信号は、リピートされる補助信号などの、他の信号であってもよい。また、利用される信号は、例えば、
図5を参照して上記で説明したような、クロックオフセット値の候補のセットの決定において使用される信号と同じ信号であってもよい。
【0203】
実施形態によっては、説明された位相差測定値は、例えば、ドップラー及びLO周波数オフセットを追跡するためのカルマン推定器への入力として使用されてもよく、これらが一定であるという要件を取り除くことができる。
【0204】
ドップラー及びLO周波数オフセットに関する考察は、1番目及び2番目の周波数範囲を明示的に選択することなく送信される1番目、2番目及び後続の信号(及び一次信号や補助信号と呼ばれてきた関連する信号)にも適用される。
【0205】
図6は、構成100に使用され得る無線ユニット108、110の可能な一実施形態を示す。アンテナユニット104、106は、無線ユニット108、110内に具備されている。
図6の無線ユニット108、110は、それぞれ2つの受信機と送信機を備え、それらの周波数は別々に設定することができる。
【0206】
複数の受信機を備える無線ユニット108、110を利用することにより、一次周波数を含む1番目の帯域と補助周波数を含む少なくとも2番目の帯域などの、複数の帯域の同時測定が可能となりうる。送信されるべき一次信号の少なくとも一部と、送信されるべき補助信号の少なくとも一部とを、少なくとも部分的に同時に送信することができる。
【0207】
実施形態によっては、無線ユニット108、110は2つ以上の受信機を備え、2つ以上の一次信号又は補助信号が同時に送信(及び受信)され得る。一次周波数を含む1番目の帯域に加えて、補助周波数を含む2番目の帯域、例えば、更なる補助周波数を含む第3の帯域が、少なくとも部分的に同時に送受信され得る。
【0208】
更に別の実施形態では、複数の周波数帯域の一次信号と補助信号を連続して送信することができる(一度には1つの信号のみ)。このようなシステムは、極めて狭い帯域幅(例えば100Hz~100kHz)で動作し、極めて低コストのハードウェアと小型バッテリーを使用することができる。
【0209】
図7A及び
図7Bは、構成100における信号の送受信及び場合によってはデータの通信のための測定サイクルにおいて、タイムスロットがどのように割り当てられうるかを示している。測定サイクルは、送信される信号のセットを表す場合もあり、また、送信と送信の間の間隔が閾値未満の時間となるように信号が次々に送信される期間(time duration)を表す場合もある。例えば第1の測定サイクルは、一次信号及び補助信号の送信(及び受信)を含んでもよい。実施形態によっては、第2の測定サイクルを実施することができる。第2の測定サイクルは、例えば、第1の測定サイクルと同等であるか、又は第2の測定サイクルは、例えば、追跡モードが利用される実施形態において、一次信号の送信(及び受信)のみを含んでもよい。
【0210】
1つの測定サイクルは、(N個の測定スロットを有する)少なくとも1つの測定フレームを含んでもよい。測定フレーム中、少なくとも第1の無線ユニット108及び第2の無線ユニット110は、それぞれに割り当てられたタイムスロットにおいて、それぞれの信号を別々に送信することができる。1つの測定フレームは、1つの周波数を有する信号の送信を含んでもよい。例えば、一次信号は第1の測定フレームで送信され、補助信号は第2の測定フレームで送信されてもよい。
図7Aの測定サイクルは、N個の無線ユニットを有する構成100に適用可能であり、各無線ユニット間についてクロックオフセットが評価されてもよい。各無線ユニットは、それぞれのタイムスロットでそれぞれの信号を送信してもよい。
【0211】
少なくとも一次信号が繰り返して送信される実施形態では、測定サイクルは、少なくとも3つの測定フレームから構成されてもよく、第1の測定フレームでは一次信号が送信され、第2の測定フレームでは一次信号が繰り返して送信され、加えて第1及び第2の測定フレームにおいて一次信号と同時に補助信号が送信される。ここで、1つ又は複数のLO周波数差及び/又は1つ又は複数のドップラー周波数の決定も行うことができる。また、ハードウェアの能力によっては(すなわち一次信号と補助信号の同時送信を行うことができない場合)、補助信号を送信するために第3の測定フレームを使用することもできる。
【0212】
送信は、送信の間に空のタイムスロットが残らないように、後続のタイムスロットで送信が発生するように実施されてもよい。 送信とタイムスロットは、送信の終了と後続のアンテナユニットが送信を開始する後続のタイムスロットの開始との間の時間間隔が、選択された最大時間間隔以下となるようにバランスさせられてもよい。送信の終了と後続の送信開始との間の時間間隔は、50μs未満、好ましくは20μs未満、例えば16μs未満としてもよい。
【0213】
コンパクトな送信信号の供給は、例えばWi-Fiネットワークと組み合わせて使用することができ、有利で或る。本発明では、送信用の無線チャネルは、測定サイクルごとに1回だけ予約すればよい。この特徴により、Wi-Fiのようなネットワークとの互換性が可能になってもよい。
【0214】
後続のタイムスロットで送信が行われないと、測定サイクルが完了するまでに、より長い、未知の時間を要する可能性がある。これは、例えばETSI EN 301 893(5GHzのWi-Fi伝送を規制する標準仕様)で定義されているように、チャネルを1回だけ競合させる必要がある無線チャネルでは、1つの測定サイクルを1回の伝送として効果的に実行できないためである。送信中は、各送信無線ユニットが別々にチャネルを競合させる必要があるため、送信の間にチャネルが他のユーザーによって占有されると、測定シーケンスがかなり長くなる可能性がある。
【0215】
図7Bは、(1つ以上の通信スロットを有する)少なくとも1つの通信フレームも採用される測定サイクルにおいて、タイムスロットがどのように割り当てられるかを示している。通信フレーム中に、信号、測定/決定データ、又はその他のデータが処理装置102に送信されてもよい。少なくとも1つのデータ通信が送信され、無線ユニットによって送信される測定信号と、時間領域又は周波数領域で多重化されてもよい。少なくとも1つのデータ通信は、決定された位相情報を少なくとも含んでもよい。追加的又は代替的に、データ通信は任意の他の情報を含んでもよい。このように、構成100は、測定システム及び通信ネットワークとして同時に機能することができる。
【0216】
必要な時間同期精度は、送信の重複を防ぐために、後続信号の間の可能なガードタイムの持続時間の4分の1よりも優れていることが望ましい。この要件は、クロックオフセット推定精度よりもはるかに緩やかであり、このような粗い同期を達成することは、同期シーケンスなどで容易に達成できる。
【0217】
図8は、本発明のある実施形態に従う方法のフローチャートを描いたものである。1番目の周波数範囲f
aの周波数を有する少なくとも1つの一次信号が、第1の無線ユニット108を通じて送信され(802)、第2の無線ユニット110で受信され(804)、受信した一次信号を通じて一次位相情報が決定される。
【0218】
次に、第2の無線ユニット110によって少なくとも1つの一次信号が送信され(806)、第1の無線ユニット108で受信され(808)、受信した一次信号を通じてそれぞれの一次位相情報が決定される。
【0219】
決定された位相情報に基づいて、少なくとも1つの一次位相差が決定される(810)。第1の無線ユニットと第2の無線ユニットと間のおおよそのクロックオフセットと、おおよそのクロックオフセットにおける最大誤差とが得られてもよく(812)、また、無線ユニット間のクロックオフセットを示すクロックオフセット値の候補のセットが決定され(814)。クロックオフセット値の候補のセットは、好ましくは、おおよそのクロックオフセット及びその誤差と、第1の一次位相差とに少なくとも基づいて決定される。
【0220】
次に、2番目の周波数範囲fbの周波数を持つ少なくとも一つの補助信号が第1の無線ユニット108を通じて送信され(816)、これは第2の無線ユニット110で受信され(818)、受信した補助信号を通じて補助位相情報が決定される。
【0221】
次に、第2の無線ユニット110によって少なくとも1つの補助信号が送信され(820)、これは第1の無線ユニット108で受信され(822)、受信した補助信号を通じて補助位相情報が決定される。
【0222】
決定した補助位相情報に基づいて、少なくとも第1の補助位相差とその最大誤差が決定される(824)。
【0223】
ステップ826では、クロックオフセット値の候補のセットから、最も適切と考えられるクロックオフセット値が選択される。好ましくは、第1の一次位相差、第1の補助位相差、及び第1の一次位相差及び/又は補助位相差の最大誤差に少なくとも基づいて、最も適切と考えられるクロックオフセット値が選択される。
【0224】
図9は、本発明のある実施形態で利用する、周波数範囲を選択する方法のフローチャートを示す。1番目の帯域幅で1番目の周波数範囲f
aが選択される(902)。続いて少なくとも第1の一次周波数が設定される。第2の一次周波数又は第3,第4,...の一次周波数も設定されてもよい。
【0225】
決定された位相情報の最大誤差が、ステップ904で推定又は取得されてもよい。
【0226】
ステップ906では、第1の無線ユニットと第2の無線ユニットとの間の決定された又は取得されたクロックオフセット見積値の最大誤差が決定される。クロックオフセット見積値の最大誤差は位相差の最大誤差に基づいてもよい(少なくとも2つの主要周波数が使用される場合)。ここで位相差の最大誤差は、ステップ904で決定された位相情報の最大誤差に基づいてもよい。あるいは、クロックオフセット見積値の最大誤差を決定するための他の任意の手段が使用されてもよい。例えば、クロックオフセット見積値を決定するために使用され得る別の測定方法の最大誤差が使用されてもよい。
【0227】
ステップ908において、1番目の周波数範囲faと2番目の周波数範囲fbとの間の最大周波数差Δfmaxを、不知の位相回転を避けることができるように、決定してもよい。周波数差Δfをできるだけ大きく、すなわち最大値Δfmaxに設定することが有利であろう。それによって、クロックオフセット値の候補の集合を最も効率的に減らし、好ましくは、クロックオフセット値の候補の集合から最も適切そうなクロックオフセット値を明確に選択することができる。
【0228】
1番目の周波数範囲faは、2番目の周波数範囲fbに含まれる周波数よりも大きな周波数を含むこともあれば、その逆もありうる。
【0229】
最大周波数差Δfmaxを決定する際に、不知の位相回転、すなわち2πの位相スリップが発生しないように、実施形態によっては、少なくとも第1のクロックオフセット変数(又はクロックオフセット見積値)の可能な最小値と最大値を使用して、少なくとも第1のクロックオフセット変数の可能な範囲を決定する。第1のクロックオフセット変数について得られた範囲Δτ1が[Δτ1,min,Δτ1,max]の間にあり(Δτ1の最小値と最大値の間の範囲にあり)、且つ、第1の一次周波数f1における決定された一次位相差がΦ1である場合、第1の補助周波数f3は、第1の補助位相差の予想される最小値と最大値によって制限される範囲、すなわち、
[Φ3min,Φ3max] = Φ1+(f1-f3)*位相傾き範囲 = Φ1+(f1-f3)*4π*[Δτ1,min,Δτ1,max]
によって決定される範囲にあるべきことが知られている。ここでΦ3は第1の補助位相差である。位相傾き範囲は整数アンビギュイティ直線の可能な傾きの範囲を指し、クロックオフセット値の誤差で表すこともできる。少なくとも第1の補助位相差の予想最小値と予想最大値との差|Φ3max-Φ3min|が2πより大きい場合、第1の一次周波数f31は、第1の一次周波数f1から離れすぎている。言い換えれば、周波数差が最大周波数差Δfmax(これは条件を満たす最大値である)を超えている。少なくとも第1の補助位相差Φ3の予想最小値と予想最大値との差は、2πなどの閾値未満になるように選択され得る。これは、少なくとも1つの第1の補助周波数f3についての可能な範囲を与えてもよく、また2番目の周波数範囲fbの候補を与えてもよい。fbは、1番目の周波数範囲faとは最大でΔfmax異なる。
【0230】
続いて2番目の周波数範囲fbが決定されてもよく、少なくとも第1の補助周波数も設定されてもよい(910)。少なくとも第1の補助位相差とその誤差を決定した後、クロックオフセット値の候補のセットのサイズを決定してもよい(912)。セットにクロックオフセット値の候補が1つしか残っていない場合は、この値を最も適切なクロックオフセット値として決定することができる。しかし、ステップ914において、クロックオフセット値に曖昧さがあると判定された場合、すなわち、クロックオフセット値の候補のセットのサイズが1よりも大きい場合、処理はステップ908に進み、2番目の周波数範囲fb又は1番目の周波数範囲faと、新しい3番目の周波数帯域との間の最大周波数差Δfmax,2が決定されてもよい。3番目の周波数範囲の信号が設定され、後続の位相情報が決定されて、クロックオフセット値の候補の新しい第3のセットが決定されてもよい。
【0231】
新たな補助周波数範囲の選択は、クロックオフセット値に曖昧さがあると判断された場合、すなわち、適切なクロックオフセット値を一意に選択することができない場合、何回でも実施してもよい。クロックオフセット値の候補が1つしか残っていない場合、処理は916で終了し、これが最も適切なクロックオフセット値となる。この値から、第1の無線ユニットと第2の無線ユニットとの間のクロックオフセットを、クロックオフセット見積値変数よりも高い精度で決定することができる。
【0232】
図9の手順は、周波数範囲を明示的に選択することなく、選択された周波数を有する連続する信号を考慮するという観点から辿ってもよい。この場合、ステップ902における1番目の周波数の選択に続いて、2番目以降の信号の周波数を決定し、設定するステップ(908、910)が行われてもよい。ステップ906でクロックオフセット変数が決定されてもよく、ステップ904で最大誤差が決定されてもよく、続いてクロックオフセット値の候補のセットの大きさが決定されてもよい(912)。曖昧さが残っているかどうかを判断した(914)後、そのような曖昧さが残っている場合、後続の信号の周波数を決定してもよい(908、910)。
【0233】
図10は、本発明の実施形態による方法のもう1つのフローチャートを示す。この実施形態では、複数の無線ユニットと、少なくとも第1の一次信号と、繰り返される一次信号とが採用される。(1番目の周波数範囲内の)第1の一次信号は、第1の無線ユニット104を通じて送信されてもよい(002)。第1の無線ユニット104は、信号を送信する前にチャネルが送信のために空いているかどうかをチェックするように構成されるマスターユニットであってもよい。
【0234】
第1の無線ユニット104(又は、送信に参加する構成の他の無線ユニット)は、基準ユニットとして選択されてもよい。
【0235】
ステップ004において、002で送信された第1の一次信号は、構成の残りの非送信無線ユニット(002で送信を行っていない無線ユニット)の少なくとも一部で受信されてもよい。その後、受信信号に関連する位相情報であって、各受信無線ユニットのローカル発振器に対する信号の位相に関連する情報がそれぞれ決定されてもよい。位相情報は、先に開示した2つの無線ユニットの場合に説明したように、対応して決定されてもよい。
【0236】
その後006において、002で第1の一次信号を送信していない無線ユニットの少なくとも一部から、第1の一次信号が送信されてもよい。006において、第1の一次信号は、各無線ユニットによって所定のタイムスロットで送信されてもよく、一度に1つずつ送信されてもよく、順次送信されてもよく、所定の順序で送信されてもよい。
【0237】
008において、006で送信を行っていない無線ユニットによって第1の一次信号を受信し、それぞれ位相情報を決定してもよい。従って、複数の無線ユニットの各々が少なくとも1つの同様の信号(ここでは第1の一次信号)を送信し、それぞれが他の1つの無線ユニットによって送信される複数の信号を受信する(双方向伝送)ような測定が実施されてもよい。互いに少なくとも1つの信号を送受信した複数の無線ユニットのペアが得られてもよい。
【0238】
010において第1の一次位相差が決定されてもよい。ここで位相差は基本的に先に開示したように決定されてもよいが、無線ユニットのペアのそれぞれについて少なくとも第1の一次位相差が決定されてもよい。
【0239】
012において、第1の無線ユニット104から少なくとも一次信号が繰り返して送信されることが有利でありうる。繰り返して送信された一次信号は、送信を行わなかった複数の無線ユニットで受信され(014)、それぞれにおいて位相情報が決定されてもよい。016において、012で送信を行わなかった残りの無線ユニットによって、順次、少なくとも複数の一次信号が繰り返して送信されてもよい。好ましくは所定の順序及びタイムスロットで送信されてもよい。繰り返し送信された一次信号は、016で送信を行わなかった無線ユニットで受信され(018)、それぞれの位相情報が決定されてもよい。これにより、繰り返される一次信号に対応する信号を互いに送受信する無線ユニット対が複数得られてもよい。
【0240】
020において、繰り返される一次信号に対応する反復的な一次位相差が決定されてもよい。
【0241】
実施形態によっては、022において、少なくとも1つの無線ユニット対におけるローカル発振器間の周波数オフセットに一致するLO周波数オフセットが決定されてもよい。LO周波数オフセットは、無線ユニット対の一部について決定されてもよいし、それら全てについて決定されてもよい。
【0242】
実施形態によっては、024において、少なくとも1つの(若しくは一部の又は全ての)無線ユニット対についてのドップラー周波数が決定されてもよい。
【0243】
026では、無線ユニットの各ペアに関するおおよそのクロックオフセットが取得又は決定されてもよい。無線ユニットの各ペアについてクロックオフセット値の候補のセットが決定されるように、おおよそのクロックオフセットの最大誤差が取得又は推定されてもよい。それによって、クロックオフセット値の候補のセットが複数決定される(028)。おおよそのクロックオフセットの最大誤差は、決定された位相差の最大誤差に基づいて決定されてもよい。ここで、決定された位相差の最大誤差は、位相情報の最大誤差又は1回又は複数回の位相測定の最大誤差に基づいて決定されてもよい。
【0244】
030では、(2番目の周波数範囲内にある)少なくとも第1の補助信号が、第1の無線ユニット104によって送信されてもよい。032において、送信された第1の補助信号は、030で補助信号を送信しなかった複数の無線ユニットによって受信されてもよく、それぞれの無線ユニットで位相情報が決定されてもよい。
【0245】
034において、残りの複数の無線ユニットから少なくとも第1の補助信号が順次そうしんされてもよい。好ましくは所定の順序及びタイムスロットで送信されてもよい。036において、034で送信しなかった複数の無線ユニットによって第1の補助信号が受信され、それぞれ位相情報が決定されてもよい。それによって、第1の補助(応答)信号に対応する信号を少なくとも互いに送受信した無線ユニットの組が得られてもよい。
【0246】
038では、少なくとも第1の補助位相差が決定されてもよい。
【0247】
030-038のステップは、2番目、3番目、またそれ以降の補助信号に対して繰り返されてもよい。従って、002-010及び/又は012-020のステップに対応するステップも、さらなる(3番目のような)一次信号に対して繰り返されてもよい。
【0248】
次に、最も適切そうなクロックオフセット値が、クロックオフセット候補値のセットから選択される(040)。好ましくは、無線ユニットの各組について最も適切そうなクロックオフセット値が決定される。最も適切そうなクロックオフセット値の選択は、2つの無線ユニットに関して前述した手順に従って、無線ユニットの組に関して遂行することができる。
【0249】
最も適切そうなクロックオフセット値を一義的に決定できない場合、本明細書で前述したように、3番目の周波数範囲で補助信号を更に送信するために3番目の周波数範囲を選択してもよい。
【0250】
おおよそのクロックオフセット値と、おおよそのクロックオフセット値の最大誤差と、位相差の最大誤差とを取得することと、クロックオフセット値のセットを決定することと、最も適切そうなクロックオフセット値を選択することとは、当業者には理解されるように、2つの無線ユニットの場合について本明細書で開示したのと同様の方法で、複数の無線ユニットを利用する本発明の実施形態について実施することができる。
【0251】
図11は、本発明の実施形態における信号の伝送方法を示している。横軸は時間を表し、縦軸は周波数を表す。ここで、1つ又は複数の一次信号と1つ又は複数の補助信号とは、実質的に同時に送信されてもよい(すなわち1つの無線ユニットによって一緒に送信されてもよい)。ここで、1つ又は複数の一次信号は1番目の周波数範囲f
aに含まれ、補助信号は2番目の周波数範囲f
bに含まれ、f
aとf
bはΔfだけ離れていてもよい。
【0252】
繰り返される一次信号(が利用される場合)及び実施形態によっては繰り返される(1つ又は複数の)補助信号は、1つ又は複数の一次信号及び1つ又は複数の補助信号が送信される時間とは異なる時間に送信されてもよく、好ましくは、この時間差は、ある無線ユニットによる信号の送信と別の無線ユニットによる対応する信号の送信との間の時間差よりも長い。
【0253】
以上、本発明を前述の実施形態を参照して説明し、本発明のいくつかの利点を示した。本発明がこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明思想の精神及び範囲、並びに以下の特許請求の範囲の範囲内で可能な全ての実施形態を含むものである。
【0254】
特に明示しない限り、従属請求項に記載された特徴は、相互に自由に組み合わせることができる。
【国際調査報告】