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特表2024-516131アスファルトエマルション及びそれを形成する方法
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  • 特表-アスファルトエマルション及びそれを形成する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】アスファルトエマルション及びそれを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 95/00 20060101AFI20240405BHJP
   E01C 7/24 20060101ALI20240405BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C08L95/00
E01C7/24
C08L23/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562603
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 US2022071723
(87)【国際公開番号】W WO2022221860
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】63/175,745
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/658,826
(32)【優先日】2022-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ウェイ
【テーマコード(参考)】
2D051
4J002
【Fターム(参考)】
2D051AE01
2D051AG01
2D051AG11
4J002AG001
4J002BB032
4J002DE027
4J002EP006
4J002FD316
4J002FD332
4J002GL00
4J002HA07
(57)【要約】
アスファルトエマルション、及びアスファルトエマルションを形成する方法を提供する。一例では、アスファルトエマルションは、アスファルトエマルションの約40~約60重量%の量で存在するベースアスファルト成分を含む。水は、アスファルトエマルションの約40~約60重量%の量で存在する。酸化された高密度ポリエチレンワックスは、アスファルトエマルションの約0.5~約5.0重量%の量で存在する。遅硬化性カチオン性乳化剤は、アスファルトエマルションの約1.0~約2.0重量%の量で存在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトエマルションであって、
前記アスファルトエマルションの約40~約60重量%の量で存在するベースアスファルト成分と、
前記アスファルトエマルションの約40~約60重量%の量で存在する水と、
前記アスファルトエマルションの約0.5~約5.0重量%の量で存在する酸化された高密度ポリエチレンワックスと、
前記アスファルトエマルションの約1.0~約2.0重量%の量で存在する遅硬化性カチオン性乳化剤と、を含む、アスファルトエマルション。
【請求項2】
前記酸化された高密度ポリエチレンワックスが、約5~約50mg KOH/gの酸価を有する、請求項1に記載のアスファルトエマルション。
【請求項3】
前記遅硬化性カチオン性乳化剤が、一級及び二級酸性化アミド塩の群から選択される、請求項1に記載のアスファルトエマルション。
【請求項4】
前記酸化された高密度ポリエチレンワックスが、約1.0~約4.0重量%の量で存在する、請求項1に記載のアスファルトエマルション。
【請求項5】
前記酸化された高密度ポリエチレンワックスが、約0.97~約1.01g/cmの密度を有する、請求項1に記載のアスファルトエマルション。
【請求項6】
前記水が、約45重量%~約55重量%の量で存在する、請求項1に記載のアスファルトエマルション。
【請求項7】
前記アスファルトエマルションが、下にある骨材含有アスファルト層に適用されたときに、少なくとも約4cmの平均浸透深さを有する、請求項1に記載のアスファルトエマルション。
【請求項8】
前記酸化された高密度ポリエチレンワックスが、約20~約30mg KOH/gの酸価を有する、請求項1に記載のアスファルトエマルション。
【請求項9】
前記アスファルトエマルションが、氷酢酸、2つのエチレンオキシ基で置換された獣脂アミン、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び塩酸の群から選択される1つ以上の追加成分を更に含む、請求項1に記載のアスファルトエマルション。
【請求項10】
アスファルトエマルションを形成する方法であって、前記方法は、
ベースアスファルト成分と、遅硬化性カチオン性乳化剤と、水とを含むベースアスファルトエマルションを形成するステップと、
前記ベースアスファルトエマルションとは別に、酸化された高密度ポリエチレンワックスエマルションであって、酸化された高密度ポリエチレンワックスと水とを含む、酸化された高密度ポリエチレンワックスエマルションを形成するステップと、
前記アスファルトエマルションを形成するように、前記ベースアスファルトエマルションと前記酸化された高密度ポリエチレンワックスエマルションとを混ぜ合わせるステップと、を含み、前記ベースアスファルト成分は、前記アスファルトエマルションの約40~約60重量%の量で、前記アスファルトエマルション中に存在し、水は、前記アスファルトエマルションの約40~約60重量%の量で、前記アスファルトエマルション中に存在し、前記酸化された高密度ポリエチレンワックスは、前記アスファルトエマルションの約0.5~約5.0重量%の量で、前記アスファルトエマルション中に存在し、前記遅硬化性カチオン性乳化剤は、前記アスファルトエマルションの約1.0~約2.0重量%の量で、前記アスファルトエマルション中に存在する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年4月16日に出願された米国特許仮出願第63/175,745号に関連し、その米国特許仮出願の全ての利用可能な利益を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本技術分野は、概して、アスファルトエマルション及びアスファルトエマルションを形成する方法に関し、より詳細には、高い透過性を有するアスファルトエマルション及びそのようなアスファルトエマルションを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アスファルト、又は瀝青は、一般に、舗装、屋根ふき、封止、及び防水用途などの用途で使用するために収集又は合成され、精製される。アスファルトは、しばしば「アスファルトバインダー」又は「アスファルトセメント」と呼ばれ、多くの場合、骨材と混合されて、アスファルト舗装に使用される材料を形成する。アスファルトを骨材材料と効果的に混合するために、アスファルトは、多くの場合、骨材を含まないアスファルトエマルション中に提供される。アスファルトエマルションはまた、骨材と混合する必要がない用途でも用いられ、例えば、アスファルトエマルション自体は、フォグシール、タックコート、又はシールコートなどの複合舗装構造においてプライムコート又は他の骨材を含まないコーティング及び/又は層を形成するなどの最終用途のために用いられ得る。
【0004】
詳細には、複合舗装構造は、概して、アスファルト舗装/コンクリート層(複数可)で覆われている半剛性基層(複数可)を含む。半剛性基層及びアスファルト舗装層は、概して、多孔質であり、各層は、空隙を有する。例えば、雨が降ると、水がこれらの層を透過して、これらの層及び/又はこれらの層が構築されている基礎に損傷を引き起こす可能性がある。プライムコートは、多くの場合、例えば、半剛性基層(複数可)の上に噴霧塗布され、半剛性基層の空隙内に浸透する。これは、半剛性基層とアスファルト舗装層との間の良好な結合を促進し、半剛性基層の防水性能を更に高め、それによって損傷を防止する。
【0005】
残念ながら、現在のプライムコートは、ディーゼル又は灯油などの溶媒にアスファルトを溶解する液体アスファルト組成物を利用している。これらのプライムコートは、コストがかかり、かつ環境にも悪い。更に、現在のプライムコートは、半剛性基層へ2~3mmしか浸透しない。これらのプライムコートは、例えば、ダンプトラックによって容易に破壊され得る。いくつかの試みられた解決策としては、含水量を増加させ、それによって固形分を減少させて、プライムコートの粘度を低下させ、それによってプライムコートの半剛性基層への浸透性を増加させることが挙げられる。しかしながら、これらの希釈プライムコートは、半剛性基層への水分の侵入を防止することができず、したがって、基層を損傷から保護することができない。
【0006】
したがって、前述の問題の1つ以上に対処するアスファルトエマルション、及びそのようなアスファルトエマルションを形成する方法を提供することが望ましい。更に、本明細書に記載の様々な実施形態の他の望ましい特徴及び特性は、後続の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を、添付の図面及び本背景技術と併せ読むことで明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0007】
アスファルトエマルション及びアスファルトエマルションを形成する方法を、本明細書において提供する。例示的な実施形態によれば、アスファルトエマルションは、アスファルトエマルションの約40~約60重量%の量で存在するベースアスファルト成分を含む。水は、アスファルトエマルションの約40~約60重量%の量で存在する。酸化された高密度ポリエチレンワックスは、アスファルトエマルションの約0.5~約5.0重量%の量で存在する。遅硬化性カチオン性乳化剤は、アスファルトエマルションの約1.0~約2.0重量%の量で存在する。
【0008】
例示的な実施形態によれば、アスファルトエマルションを形成する方法は、ベースアスファルト成分と、遅硬化性カチオン性乳化剤と、水と、を含むベースアスファルトエマルションを形成することを含む。酸化された高密度ポリエチレンワックスエマルションは、ベースアスファルトエマルションとは別に形成される。酸化された高密度ポリエチレンワックスエマルションは、酸化された高密度ポリエチレンワックス及び水を含む。酸化された高密度ポリエチレンワックスは、約5~約50mgKOH/gの酸価を有する。ベースアスファルトエマルション及び酸化された高密度ポリエチレンワックスエマルションを混ぜ合わせて、アスファルトエマルションを形成する。ベースアスファルト成分は、アスファルトエマルションの約40~約60重量%の量でアスファルトエマルション中に存在する。水は、アスファルトエマルションの約40~約60重量%の量で、アスファルトエマルション中に存在する。酸化された高密度ポリエチレンワックスは、アスファルトエマルションの約0.5~約5.0重量%の量で、アスファルトエマルション中に存在する。遅硬化性カチオン性乳化剤は、アスファルトエマルションの約1.0~約2.0重量%の量で、アスファルトエマルション中に存在する。
【0009】
例示的な実施形態によれば、アスファルトエマルションは、アスファルトエマルションの約40~約60重量%の量で存在するベースアスファルト成分を含む。水は、アスファルトエマルションの約40~約60重量%の量で存在する。酸化された高密度ポリエチレンワックスは、アスファルトエマルションの約0.5~約5.0重量%の量で存在する。遅硬化性カチオン性乳化剤は、アスファルトエマルションの約1.0~約2.0重量%の量で存在する。氷酢酸は、アスファルトエマルションの約0.05~約0.40重量%の量で存在する。安定剤は、アスファルトエマルションの約0.01~約0.05重量%の量で存在する。乳化剤は、アスファルトエマルションの約0.25~約2.0重量%の量で存在する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
様々な実施形態が、次の描画図形とともに以下に説明され、同様の番号は、同様の要素を示す。
図1】例示的な実施形態による複合舗装構造の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の「発明を実施するための形態」は、本質的に単なる例示であり、様々な実施形態又はこれらの用途及び使用を限定することを意図するものではない。更に、前述の背景技術又は以下の詳細な説明で提示される、いずれの理論によっても制約されることは意図していない。
【0012】
本明細書で企図される様々な実施形態は、アスファルトエマルションと、アスファルトエマルションを形成する方法と、に関する。本明細書で教示される例示的な実施形態は、アスファルトエマルションの約40~約50重量パーセント(重量%)の量で、アスファルトエマルション中に存在するベースアスファルト成分を含むアスファルトエマルションを提供する。水は、アスファルトエマルションの約40~約60重量%の量で、アスファルトエマルション中に存在する。酸化された高密度ポリエチレンワックス(oxidized high-density polyethylene wax、OxHDPEワックス)は、アスファルトエマルションの約0.5~約5.0重量%の量で、アスファルトエマルション中に存在する。例示的な実施形態では、OxHDPEワックスは、アスファルトエマルションに優れた物理的特性を、例えば、無軌道接着性(trackless adhesion)、引張接着性、及び高軟化点を提供する。これらの物理的特性は、例えば、プライムコートの性能を改善する。遅硬化性カチオン性乳化剤は、アスファルトエマルションの約1.0~約2.0重量%の量で、アスファルトエマルション中に存在する。例示的な実施形態では、遅硬化性カチオン性乳化剤は、アスファルトエマルションから水が非常に急速に蒸発するのを防止する。アスファルトエマルションが骨材含有層の上に適用されると、それにより、骨材含有層の上で静止し硬化して、ほとんど又は全く浸透しないオーバーレイ層を形成する代わりに、骨材含有層に更に浸透するための十分な時間がアスファルトエマルションに提供される。
【0013】
例示的な実施形態では、有利には、上記で指定した量で、アスファルトエマルション中にOxHDPEワックス及び遅硬化性乳化剤を含むことによって、強力な防水性能を有する高透過性アスファルトエマルションが得られる。更に、例示的な実施形態では、アスファルトエマルションは、半剛性基層とアスファルト舗装層との間のプライムコートとして使用されて、これらの層間の良好な結合を有利に促進する。
【0014】
上述のように、アスファルトエマルションは、ベースアスファルト成分と、水と、OxHDPEワックスと、遅硬化性カチオン性乳化剤と、を含む。例示的な実施形態では、アスファルトエマルションは、骨材及び他の鉱物材料を含まない。本明細書で使用される場合、「骨材」という用語は、例えば、砂、砂利、又は砕石などの鉱物材料に対する総称である。更に、アスファルトエマルションは、約21℃の周囲温度において、液体、すなわち、流動可能である。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、例えば、+/-10%、例えば、+/-5%の許容可能な製造精度公差(manufacturing precision tolerance)内の量を指す。
【0015】
ベースアスファルト成分は、本明細書で言及するとき、ポリマーを含まないニートアスファルト(neat asphalt)である。ニートアスファルトは、多くの場合、石油精製操作又は精製後操作の副産物であり、エアブローンアスファルト(air-blown asphalt)、混合アスファルト(blended asphalt)、亀裂の入った又は残存アスファルト、石油アスファルト、プロパンアスファルト(propane asphalt)、ストレートアスファルト、又は熱アスファルトなどを含む。例示的な実施形態では、ベースアスファルト成分は、アスファルトエマルションの総重量に基づいて、約40~約60重量%、例えば、約40~約50重量%、例えば、約42.5~約47.5重量%の量で、アスファルトエマルション中に存在する。
【0016】
水は、アスファルトエマルションの総重量に基づいて、約40~約60重量%、例えば、約45~約55重量%、例えば、約49~約51重量%の量で、アスファルトエマルション中に存在する。そのような水の量は、約21℃の周囲温度でアスファルトエマルションを液体又は流動性にしてその浸透性を高めるのに十分に高く、かつアスファルトエマルション中の固形分を高く維持してその防水性能を高めるのに十分に低い。
【0017】
アスファルトエマルション中に含まれるOxHDPEワックスは、1つ以上の異なるタイプの酸化された高密度ポリエチレンワックスを含むことができる。本明細書で使用する場合、「高密度」という用語は、0.95g/cmを超える密度、例えば、約0.97~約1.01g/cmの密度、例えば、約0.99g/cmの密度を有する酸化ポリエチレンワックスを含む。
【0018】
本明細書で企図されるように、OxHDPEワックスは、約5~約50mg KOH/g、例えば、約20~約30mg KOH/g、例えば、約25mg KOH/gの酸価を有する。酸価は、OxHDPEワックスの酸化度、例えば、カルボキシル基含有量を示す。酸価は、従来技術に従って、フェノールフタレインを指示薬として使用して、「ピンク色」の終点を呈するまでOxHDPEワックスの溶液を0.1Nのアルコール性水酸化カリウム(KOH)溶液で滴定することによって、測定され得る。
【0019】
例示的な実施形態では、OxHDPEは、約1000~約30,000ダルトン、例えば、約1000~約10,000ダルトンの数平均分子量(M)を有する。例示的な実施形態では、OxHDPEワックスは、ASTM D4402に従って測定すると、150℃で、約100~約20000cPの粘度を有する。好適なOxHDPEワックスの一例としては、Morristown,New Jerseyに本部があるHoneywell International Inc.によって製造されたHoneywell Titan(登録商標)7686酸化された高密度ポリエチレンホモポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
実施形態では、OxHDPEワックスは、アスファルトエマルションの総重量に基づいて、約0.5~約5.0重量%、例えば、約1.0~約4.0重量%、例えば、約1.2~約3.7重量%の量で存在する。
【0021】
例示的な実施形態では、遅硬化性カチオン性乳化剤は、アスファルトエマルション中に、アスファルトエマルションの総重量に基づいて、約1.0~約2.0重量%、例えば約1.0~約1.5重量%、例えば約1.2~約1.5重量%の量で存在する。例示的な実施形態では、遅硬化性カチオン性乳化剤は、酸性化アミド塩である。例えば、遅硬化性カチオン性乳化剤は、一級及び二級酸性化アミド塩の群から選択される。これは、アミド官能基中の窒素原子が、少なくとも1つのN-H結合を有し、窒素原子が正に帯電していることを意味する。そのような量及びタイプの遅硬化性カチオン性乳化剤は、例えば、アスファルトエマルションからの水の蒸発を遅らせることによって、空隙へのアスファルトエマルションの浸透性を高め、それによって、硬化前に空隙に浸透するより多くの時間をアスファルトエマルションに提供する。更に、そのような量及びタイプの遅硬化性カチオン性乳化剤は、高い透過性を有するより低い含水量を有するアスファルトエマルションを提供し、したがって、アスファルトエマルションの固形分を増加させ、それに対応してアスファルトエマルションの防水性能を向上させる。
【0022】
以下で更に詳細に考察するように、例示的な実施形態では、アスファルトエマルションは、下にある骨材含有アスファルト層に適用されたときに、少なくとも約4cm、例えば、少なくとも約4.5cmの平均浸透深さを有する。下にある骨材含有アスファルト層は、例えば、路盤(base road)、半剛性基層などである。
【0023】
アスファルトエマルションの残部は、アスファルトエマルションの物理的特性を向上させるために含まれる1つ以上の追加成分を含んでもよい。例えば、例示的な実施形態では、アスファルトエマルションは、氷酢酸、乳化剤(複数可)、安定剤(複数可)、及びpH調整剤(複数可)の群から選択される1つ以上の追加成分を更に含む。
【0024】
例示的な実施形態では、氷酢酸は、アスファルトエマルションの総重量に基づいて、約0.05~約0.40重量%、例えば、約0.10~約0.40重量%の量で、アスファルトエマルション中に存在する。
【0025】
例示的な実施形態では、乳化剤(複数可)は、2つのエチレンオキシ基で置換された獣脂アミン(複数可)であり、アスファルトエマルションの総重量に基づいて、約0.25~約2.0重量%、例えば、約0.40~約1.50重量%の量で、アスファルトエマルション中に存在する。
【0026】
例示的な実施形態では、安定剤(複数可)は、メタ重亜硫酸ナトリウムであり、アスファルトエマルションの総重量に基づいて、約0.01~約0.05重量%の量で、アスファルトエマルション中に存在する。
【0027】
例示的な実施形態では、pH調整剤(複数可)は、塩酸であり、アスファルトエマルションの総重量に基づいて、約0.01~約0.15重量%の量で、アスファルトエマルション中に存在する。
【0028】
ここで、本明細書で企図されるような、アスファルトエマルションを形成する例示の方法について説明する。例示的な実施形態によれば、ベースアスファルトエマルション及びOxHDPEワックスは、それぞれのエマルションを混ぜ合わせてアスファルトエマルションを形成する前に、別々に調製される。特に、ベースアスファルトエマルションは、ベースアスファルト成分、遅硬化性カチオン性乳化剤、及び水を含めて形成される。例示的な実施形態では、ベースアスファルトエマルションは、ベースアスファルトエマルションの総重量に基づいて約45~約55重量%の量のベースアスファルト成分と、ベースアスファルトエマルションの総重量に基づいて約1.0~約2.0重量%の量の遅硬化性カチオン性乳化剤と、ベースアスファルトエマルションの総重量に基づいて約45~約50重量%の量の水と、を含む。例示的な実施形態では、ベースアスファルトエマルションは、ベースアスファルトエマルションの総重量に基づいて、約0.5~約1.5重量%の量で、塩酸などのpH調整剤を更に含む。透明にするために、ベースアスファルトエマルションは、OxHDPEワックスを含まない。例示的な実施形態では、ベースアスファルトエマルションは、水、塩酸、及び遅硬化性カチオン性乳化剤を混合して石鹸を形成し、続いて、石鹸及びベースアスファルト成分をコロイドミルに通してベースアスファルトエマルションを形成することによって、形成される。
【0029】
ベースアスファルトエマルションとは別に、OxHDPEワックスエマルションが形成される。OxHPDEワックスエマルションは、OxHDPEワックス及び水分を含み、OxHDPEワックスは、OxHDPEワックスエマルションの総重量に基づいて、約20~約30重量%の量で存在し、水は、OxHDPEワックスエマルションの総重量に基づいて、約60~約65重量%の量で存在する。透明であるために、OxHDPEワックスエマルションは、ベースアスファルト成分を含まない。例示的な実施形態では、OxHDPEワックスは、氷酢酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び2つのエチレンオキシ基で置換された獣脂アミンの群から選択される1つ以上の追加成分を含む。OxHDPEワックスエマルションは、例えば、上記の成分を圧力容器内で混ぜ合わせ、圧力容器を密閉し、その混合物を、少なくとも約130℃、例えば、約145℃の温度に加熱し、その温度を、連続的に混合しながら約20分間その範囲に維持することによって、高温で形成され得る。OxHDPEワックスエマルションを形成した後、OxHDPEワックスエマルションを、ベースアスファルトエマルションとOxHDPEワックスエマルションとを混ぜ合わせる前に、約30℃以下の温度に、例えば、約25℃以下の温度に、冷却する。
【0030】
OxHDPEワックスエマルションを冷却した後、ベースアスファルトエマルションとOxHDPEワックスエマルションとを、例えば、ブレンドすることによって混ぜ合わせて、アスファルトエマルションを形成する。例示的な実施形態では、アスファルトエマルションは、アスファルトエマルションの総重量に基づいて約85~約95重量%の量のベースアスファルトエマルションと、アスファルトエマルションの総重量に基づいて約5~約15重量%の量のOxHDPEワックスエマルションと、を含む。ベースアスファルトエマルション及びOxHDPEワックスエマルションは、比較的低温で、例えば、約15~約30℃の組成物温度で、混ぜ合わされる。本明細書で使用される場合、「組成物温度」という用語は、独立して、ベースアスファルトエマルション及びOxHDPEワックスエマルションの平均温度を指す。例えば、「約15~約30℃の組成物温度」とは、ベースアスファルトエマルションの平均温度が約15~約30℃であり、OxHDPEワックスエマルションの平均温度が約15~約30℃であることを意味する。アスファルトエマルションは骨材及び他の鉱物材料を含まず、またアスファルトエマルションは、貯蔵されても、複合舗装構造体内に適切な層を形成するために直ちに使用されてもよい。
【0031】
図1を参照すると、例示的な複合舗装構造10が示されている。複合舗装構造10は、半剛性基層14と、アスファルト舗装層16と、任意にトラックコート層12と、を含む。半剛性基層14及びアスファルト舗装層は、各々、空隙18及び20をそれぞれ含む。半剛性基層14は、例えば、骨材及びアスファルトを含む、下にある骨材含有アスファルト層、例えば、従来のベースコース(base course)を含む。半剛性基層14が配設された後、アスファルトエマルションは、例えば、半剛性基層14の上にアスファルトエマルションを噴霧することによって、適用される。アスファルトエマルションは、半剛性基層14の空隙18に浸透して、平均浸透深さ22を画定する。例示的な実施形態では、平均浸透深さは、少なくとも約4.0cm、例えば、少なくとも約4.5cmである。例示的な実施形態では、アスファルトエマルションは、硬化してプライムコート24を形成する。プライムコート24が硬化した後、トラックコート層12などの追加の層を適用することができる。次いで、アスファルト舗装層16が積層される。図示したように、アスファルト舗装層16は、骨材含有アスファルト層であり、トラックコート層12に向かい合わせて配置される。しかしながら、アスファルト舗装層16は、骨材を含まなくてもよく、又は従来の複合舗装構造に従って超薄型のコースであってもよいことを理解されたい。更に、複合舗装構造10は、3つの層を有するものとして図示されているが、様々な代替の実施形態は、3つ未満の層を有するが、プライムコート24とアスファルト舗装層16とを含む少なくとも半剛性基層14を有する複合舗装構造、又は3つを超える層を有する複合舗装構造を含む。
【実施例
【0032】
以下の実施例は、説明の目的でのみ提供され、本開示の様々な実施形態を限定することを何ら意味するものではない。
【0033】
ベースアスファルトエマルションの調製
全ての量がベースアスファルトエマルションの総重量に基づいた重量%で示されている、以下の表Iに示した、ベースアスファルト成分と、水と、塩酸と、遅硬化性カチオン性乳化剤成分と、を含むベースアスファルトエマルションを調製する。ベースアスファルトエマルションは、最初に、水、塩酸、及び遅硬化性カチオン性乳化剤を混合することによって石鹸を調製し、次いで、石鹸及びベースアスファルト成分をコロイドミルに通すことによって、調製する。
【0034】
【表1】

乳化剤は、上記した遅硬化性カチオン性乳化剤である。
【0035】
酸化された高密度ポリエチレンワックスエマルションの調製
全ての量がOxHDPEワックスエマルションの総重量に基づいた重量%で示されている以下の表IIに示したOxHDPEワックス及び他の成分を含むOxHDPEワックスエマルションを別に調製する。OxHDPEワックスエマルションは、圧力容器中で全ての配合成分を順次に混ぜ合わせ、続いて、圧力容器を密封し、混合しながら145℃の温度まで20分間加熱することによって、調製する。次いで、そのOxHDPEワックスエマルションを、持続的に撹拌しながら約25℃の室温に冷却する。
【0036】
【表2】

OxHDPEワックスは、0.99g/cmの密度及び25mgKOH/gの酸価を有するHoneywell Titan(登録商標)7686である。
乳化剤は、2つのエチレンオキシ基で置換された獣脂アミンである。
酸は、氷酢酸である。
安定剤は、メタ重亜硫酸ナトリウムである。
【0037】
アスファルトエマルションの調製
調製したベースアスファルトエマルション及びOxHDPEワックスエマルションを使用して、アスファルトエマルションの様々な実施例及び比較実施例を調製する。アスファルトエマルションは、ベースアスファルトエマルション及びOxHDPEワックスエマルションを均質になるまでブレンドすることによって、調製される。表IIIは、アスファルトエマルションに含まれる成分のリストを提供しており、全ての量が、アスファルトエマルションの総重量に基づいた重量%で示されている。表IIIは、アスファルトエマルションの平均浸透深さのデータを更に提供している。
【0038】
【表3】
【0039】
平均浸透深さは、最初に、0.3~0.6mmの平均粒径を有する乾燥した清浄な標準砂200gを秤量し、それを内径60mmの開放プラスチックボトルに入れ、開放プラスチックボトル内で標準砂を平らにすることによって、測定した。次いで、5gのアスファルトエマルションを、ガラス漏斗を用いて開放プラスチックボトル中に噴霧した。約24時間後、定規をプラスチックボトルまで持ち上げ、アスファルトエマルションが標準砂に浸透する深さを4つの異なる位置で測定して4つのデータポイントを生成することによって、浸透深さを測定した。次に、これらの4つのデータ点を測定し、平均して平均浸透深さを得た。
【0040】
表IIIに示されているように、実施例1~3は各々、少なくとも4.5cmの所望の平均浸透深さを示すが、比較実施例1~3は、そのような平均浸透深さを達成しなかった。したがって、本明細書に記載されるOxHDPEワックスエマルションの使用は、パラフィンワックスエマルション、又はホモポリエチレンワックスエマルションなどを使用するアスファルトエマルションと比較して、アスファルトエマルションの透過性を向上させる。
【0041】
上記の本開示の詳細な説明において、少なくとも1つの例示的な実施形態を提示してきたが、膨大な数の変形例が存在することを理解されたい。例示的な実施形態(複数可)が、単に実施例であり、いかなる意味でも本開示の範囲、適用可能性、又は構成の限定を意図としていないこともまた理解されるはずである。むしろ、上記の詳細な説明は、当業者らに本開示の例示的な実施形態を実装するための簡便なロードマップを提供するであろう。添付の特許請求の範囲に記載されている本開示の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態において説明した要素の機能及び構成に様々な変更を加えることができるものと理解される。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトエマルションであって、
前記アスファルトエマルションの約40~約60重量%の量で存在するベースアスファルト成分と、
前記アスファルトエマルションの約40~約60重量%の量で存在する水と、
前記アスファルトエマルションの約0.5~約5.0重量%の量で存在する酸化された高密度ポリエチレンワックスと、
前記アスファルトエマルションの約1.0~約2.0重量%の量で存在する遅硬化性カチオン性乳化剤と、を含む、アスファルトエマルション。
【請求項2】
前記酸化された高密度ポリエチレンワックスが、約5~約mg KOH/gの酸価を有し、前記酸化された高密度ポリエチレンワックスが、約0.97~約1.01g/cm3の密度を有する、請求項1に記載のアスファルトエマルション。
【請求項3】
前記遅硬化性カチオン性乳化剤が、一級及び二級酸性化アミド塩の群から選択される、請求項1に記載のアスファルトエマルション。
【国際調査報告】