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特表2024-5161341,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-オンおよび/またはその誘導体の合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-オンおよび/またはその誘導体の合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20240405BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240405BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
C07D471/04 107A
A61K31/437
A61P35/00
A61P15/10
A61P3/10
A61P25/06
A61P7/02
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562758
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2022059248
(87)【国際公開番号】W WO2022218811
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】21168106.9
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520220696
【氏名又は名称】ジークフリート アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEGFRIED AG
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー、ベアト テオドール
(72)【発明者】
【氏名】ファン、フーピン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、モウヌオ
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ、チュンリー
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
4H039
【Fターム(参考)】
4C065AA04
4C065BB06
4C065CC01
4C065DD03
4C065EE02
4C065HH01
4C065JJ01
4C065KK09
4C065LL04
4C065PP13
4C065QQ02
4C086AA01
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZA54
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC35
4H039CA42
4H039CH20
(57)【要約】
本発明は、新規な環化プロセスによって式(II)の化合物から式(I)の化合物を生成する新規な方法、ならびに式(I)の化合物の酸付加物を生成する方法に関し、

式中、Lは脱離基を表し、Rは水素、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルまたはヘテロ芳香族アルキル基、あるいは直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換または非置換のアルキルアリールまたはアルキルヘテロ芳香族基を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)の化合物から式(I)の化合物を生成する方法であって、前記方法は:
式(II)の化合物を、溶媒または溶媒混合物中で、
Cu触媒と、
ジアミン添加剤と、
場合により、塩基、特に無機塩基と、
の存在下で反応させて、式(I)の化合物を形成すること
【化1】

(式中、Lは脱離基を表し、Rは水素、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルまたはヘテロ芳香族アルキル基、あるいは直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換または非置換のアルキルアリールまたはアルキルヘテロ芳香族基を表す)
を含む方法。
【請求項2】
前記脱離基Lがハロゲンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱離基Lが塩化物である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記Cu触媒が銅(I)塩または銅(II)塩である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記Cu触媒が、CuI、CuCl、CuBr、Cu(OAc)、および/またはCuSOである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記銅触媒の量が、式(II)の化合物に対して0.1当量~0.6当量である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒が、0重量%~50重量%の水を含有する有機溶媒または有機溶媒の混合物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ジアミン添加剤が二座配位子である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ジアミン添加剤が、N,N’-ジメチル-エチレンジアミン(DMEDA)、エチレンジアミン(EDA)、プロピレンジアミン(PDA)、もしくはトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH)、またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ジアミン添加剤が、EDAおよびPDAから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記無機塩基が存在し、炭酸塩または重炭酸塩である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記無機塩基が、式(II)の化合物に対して5.0当量未満の量で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
式(II)の化合物から式(I)の化合物の酸付加物を生成する方法であって、前記方法は:
式(II)の化合物を、溶媒または溶媒混合物中で、
Cu触媒と、
ジアミン添加剤と、
場合により、塩基、特に無機塩基と、
の存在下で反応させて、式(I)の化合物を形成することと
【化2】

(式中、Lは脱離基を表し、Rは水素、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換もしくは非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、置換もしくは非置換の芳香族もしくはヘテロ芳香族基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換もしくは非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルもしくはヘテロ芳香族アルキル基、あるいは直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換もしくは非置換のアルキルアリールもしくはアルキルヘテロ芳香族基を表す)、
式(I)の化合物を酸と反応させることと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の化合物、特に1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-オン誘導体を生成する方法に関する。特に、本発明は、3-(ピペリジン-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オンの誘導体、特に新規な環化プロセスによって、式(IIa)の化合物から式(Ia)の化合物を生成する新規な方法、ならびに式(I)の化合物の酸付加物を生成する方法に関し:
【0002】
【化1】
【0003】
式中、Lは脱離基を表し、Rは水素、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルまたはヘテロ芳香族アルキル基、あるいは直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換または非置換のアルキルアリールまたはアルキルヘテロ芳香族基を表し、かつ、R’は水素、置換基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルまたはヘテロ芳香族アルキル基、あるいは直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換または非置換のアルキルアリールまたはアルキルヘテロ芳香族基を表す。
【背景技術】
【0004】
1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-オンおよびその誘導体は、既に市販されているか、あるいは現在開発中の多くの活性医薬成分の前駆物質である。対象となるこれらの物質の治療領域は、癌、勃起不全、糖尿病、片頭痛の治療、抗血栓薬としての使用、鎮痛薬としての使用などと多岐にわたる。すなわち、テルカゲパント、リメゲパント、イミグリプチン((R)-2-((7-(3-アミノピペリジン-1-イル)-3,5-ジメチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)メチル)ベンゾニトリル)、FR-238831(1-(3-クロロ-4-メトキシベンジル)-3-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-6-カルボニトリル)、CJS-3678(1-(4-クロロフェニル)-3-(3-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)尿素)、CJS-3255(7-(4-(1-(4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニルアミノ)ビニルアミノ)フェノキシ)-3-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン)、またはAA-012(1-(3-tert-ブチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-(4-(1-メチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イルオキシ)ナフタレン-1-イル)尿素)、および主にCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)受容体アンタゴニストの群のうちの種々の他の活性医薬成分は、1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-オンまたはその誘導体の1つを部分構造として有する活性医薬成分の例である。
【0005】
リメゲパントおよびイミグリプチンは、それらの合成において1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-オンまたはその誘導体が重要な前駆物質である物質の例である。リメゲパントは成人の偏頭痛を治療するために使用される活性医薬化合物であるのに対し、イミグリプチンは糖尿病を治療するために使用される。
【0006】
生態学的および経済的に利用可能な前駆物質および適切な製造方法へのアクセスがますます求められている。
技術水準
1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-オンの工業的に利用可能な製造方法はほとんどない。
【0007】
カルボイルジイミダゾール(carboyldiimidazol)(CDI)を用いた製造方法は、製薬産業において広く使用されており、様々な特許および特許出願に開示されている。例えば、特許文献1~4では、2,3-ジアミノ-ピリジン誘導体が出発物質として使用されている。特許文献5は、COClがCDIの代わりに使用される合成を開示している。
【0008】
非特許文献1は、tert-ブチル4-(2-アミノピリジン-3-イルアミノ)ピペリジン-1-カルボキシレートから出発するtert-ブチル4-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボキシレートへの合成経路を開示している。その著者らは、その中で鍵となる試薬としてカルボイルジイミダゾール(CDI)を使用している。特許文献6は、高温を必要とし、10.3%の収率をもたらす異なる分子の環化プロセスを記載している。同様に、芳香族遊離体が使用される類似の分子を用いる方法が特許文献7に開示されているが、その収率は低く、現在のもの(現実的ではない)と比較して遊離体を調製するための定量的工程を仮定しても、化合物5aから5bについては33.2%、化合物1fから3aを介して化合物3bまでは44.5%、化合物2aから2-1までは50.2%の範囲である。同様の化合物を用いる別の同様の方法が、非特許文献2に開示されているが、この方法は、高価で毒性の塩基であるDBUを大量に使用する。さらに、非特許文献2(Zhaoguangら)の方法は、TEAおよびCu(II)が、その中の遊離物中の芳香族側鎖に起因し得ることにより不利であると考えられたので(第3264頁、右欄、第3265頁、左欄)、十分に異なっている。
【0009】
しかしながら、穏やかな反応条件下で作用し、毒性がより低く、より環境に優しい試薬を使用し、容易に入手および利用可能であり、従来技術よりも十分に高いまたはさらに高い収率を達成する持続可能な合成経路を確立することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】豪国特許出願公開第2009/278442号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第2605008号明細書
【特許文献3】国際公開第2013/130890号
【特許文献4】国際公開第2015/065336号
【特許文献5】スイス国特許発明第635586号明細書
【特許文献6】米国特許第4144341号明細書
【特許文献7】国際公開第2005/063749A1号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Leahy K.D.ら、Organic Process Research&Development,2012,Vol.16,Issue 2,pp244~249
【非特許文献2】Li Zhaoguangら、Organic Letters,2008,Vol.10,Issue 14,pp.3263-3266
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、様々な医薬化合物の前駆物質としての式(I)の化合物、例えば1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-オンまたはその誘導体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、式(I)(式中、Rは水素、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルまたはヘテロ芳香族アルキル基、あるいは直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換または非置換のアルキルアリールまたはアルキルヘテロ芳香族基を表す)の化合物の合成の新規な方法を提供する。
【0014】
【化2】
【0015】
本願の発明者らは、現在使用されている製造プロセスに対して生態学的利点および経済的利点を有する、容易に入手可能な試薬を使用するこのような新規合成の方法を見出した。革新的な方法は、穏やかな反応条件下で高い収率を提供する。特に、特定の実施形態によれば、本発明において好適であることが見出された溶媒の沸点が低いことは、溶媒に対して容易なリサイクルおよび環境に優しい閉回路を可能にする。開示された発明は、錯体(complex)または触媒を取り扱う錯体、特にパラジウムをベースとする高価な金属触媒を回避する。この新規な方法はまた、最終生成物中の使用された試薬によって引き起こされ、除去することが困難な副生成物および不純物の量を減少させる。
【0016】
第1の態様において、本発明は、式(II)の化合物から式(I)の化合物を生成する方法であって、同方法は:
式(II)の化合物を溶媒または溶媒混合物中で
Cu触媒と
ジアミン添加剤と
場合により、塩基、特に無機塩基と
の存在下で反応させて、式(I)の化合物を形成することを含み、
【0017】
【化3】
【0018】
式中、Lは脱離基を表し、Rは水素、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルまたはヘテロ芳香族アルキル基、あるいは直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換または非置換のアルキルアリールまたはアルキルヘテロ芳香族基を表す。
【0019】
さらに、式(II)の化合物から式(I)の化合物の酸付加物を生成する方法が開示されており、同方法は:
-式(II)の化合物を、溶媒または溶媒混合物中で
Cu触媒と
ジアミン添加剤と
場合により、塩基、特に無機塩基と
の存在下で反応させて、式(I)の化合物を形成することと、
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、Lは脱離基を表し、Rは水素、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換もしくは非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、置換もしくは非置換の芳香族もしくはヘテロ芳香族基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換もしくは非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルもしくはヘテロ芳香族アルキル基、または直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換もしくは非置換のアルキルアリールもしくはアルキルヘテロ芳香族基を表す)、
-式(I)の化合物を酸と反応させるステップと、
を含む。
【0022】
本発明のさらなる態様および実施形態は、従属請求項に開示されており、以下の説明、図面および実施例から理解することができるが、これらに限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
特に定義されていない限り、本明細書で使用されている技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の通常の技術者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0024】
本発明の範囲内の量は、特に明記しない限り、または文脈から明らかでない限り、重量%で与えられる。
本開示の範囲内では、銅触媒/Cu触媒は特に限定されず、Cu自体ならびにその化合物、例えばCu塩およびCu錯体を包含するが、好ましくはCu塩、特にCu(I)および/またはCu(II)塩を指す。
【0025】
構造式中、Bnはベンジル基であり、BOCはtert-ブチルオキシカルボニル基である。
本発明を例示的に詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載される方法のプロセスのステップの特定の構成要素部分に限定されず、そのような方法は変更できることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に他を指示しない限り、単数および/または複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。例えば、本明細書で使用される「a」という用語は、1つの単一の実体として、または「1つ以上の」実体の意味で理解され得る。複数形は、文脈が明確に他のことを指示しない限り、単数および/または複数の指示対象を含むことも理解されるべきである。さらに、数値によって区切られるパラメータ範囲が与えられる場合、当該範囲はこれらの限界値を含むとみなされることが理解されるべきである。
【0026】
第1の態様において、本発明は、式(II)の化合物から式(I)の化合物を生成する方法であって、同方法は:
式(II)の化合物を溶媒または溶媒混合物中で
Cu触媒と
ジアミン添加剤と
場合により、塩基、特に無機塩基と
の存在下で反応させて、式(I)の化合物を形成することを含み、
【0027】
【化5】
【0028】
式中、Lは脱離基を表し、Rは水素、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルまたはヘテロ芳香族アルキル基、あるいは直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換または非置換のアルキルアリールまたはアルキルヘテロ芳香族基を表す。
【0029】
本発明の方法において、式(II)の化合物の式(I)の化合物への環化、例えば、特定の1-(ピリジン-3-イル)尿素化合物の特定の1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)化合物への環化は、一般に、以下の反応スキーム1で記載することができる:
スキーム1:
【0030】
【化6】
【0031】
式中:
Lは脱離基を表し、かつ、
Rは、水素、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルまたはヘテロ芳香族アルキル基、あるいは直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換または非置換のアルキルアリールまたはアルキルヘテロ芳香族基を表す。
【0032】
したがって、本発明は特に、1-(ピリジン-3-イル)尿素化合物、すなわち1-(ピリジン-3-イル)尿素またはその誘導体、好ましくは1-(2-ハロピリジン-3-イル)尿素またはその誘導体から出発して、触媒としての銅触媒、特に銅(I)または銅(II)化合物、特に銅(I)または銅(II)塩の存在下で、さらにジアミン添加剤の存在下で、場合により塩基、特に無機塩基の存在下で、1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-オンまたはその誘導体を生成する方法に関する。
【0033】
式(II)の化合物において、脱離基Lは特に限定されず、脱離基として作用することができる任意の化学基であってよい。任意の適切な脱離基、例えばニトロ基、メシル、トシルのようなアルキルおよび/またはアリールスルホン酸のエステル基、アルキルおよび/またはアリールカルボン酸のエステル基、ハロゲン、-CN、-N、-OCN、-NCO、-CNO、-SCN、-NCS、-SeCNなどから選択される擬ハロゲン基を使用することができる。特定の実施形態によれば、脱離基Lは、ハロゲン、特にF、Cl、BrまたはI、例えばClまたはBrである。特定の実施形態によれば、脱離基Lは塩化物である。
【0034】
式(II)の化合物において、したがって式(I)の化合物においても、基Rは水素、
好ましくは1~40個のC原子、特に1~20個のC原子を有する、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、
好ましくは6~40個のC原子、特に6~20個のC原子を有する置換または非置換の芳香族基、
好ましくは2~40個のC原子、特に3~20個のC原子を有する置換または非置換のヘテロ芳香族基であって、ヘテロ芳香族基のヘテロ原子が特にNである、置換または非置換のヘテロ芳香族基、
好ましくは7~40個のC原子、特に7~20個のC原子を有する、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキル基(アリール基が直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖に結合している)、
好ましくは3~40個のC原子、特に4~20個のC原子を有し、ヘテロ芳香族基のヘテロ原子が特にNである、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状ヘテロ芳香族アルキル基(直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖へのヘテロ芳香族基を有する)
好ましくは7~40個のC原子を有し、特に7~20個のC原子を有する、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換もしくは非置換のアルキルアリール基、または
好ましくは7~40個のC原子、特に7~20個のC原子を有し、ヘテロ芳香族基のヘテロ原子が特にNである、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換または非置換のアルキルヘテロアリール基、
を表す。
【0035】
本出願の範囲において特定の対象のR基は、問題の活性医薬成分の全構造、特にテルカゲパント、リメゲパント、イミグリプチン((R)-2-((7-(3-アミノピペリジン-1-イル)-3,5-ジメチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)メチル)ベンゾニトリル)、FR-238831(1-(3-クロロ-4-メトキシベンジル)-3-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-6-カルボニトリル)、CJS-3678(1-(4-クロロフェニル)-3-(3-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)尿素)、CJS-3255(7-(4-(1-(4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニルアミノ)ビニルアミノ)フェノキシ)-3-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン)、またはAA-012(1-(3-tert-ブチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-(4-(1-メチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イルオキシ)ナフタレン-1-イル)尿素)、または前記生成物の構築を可能にする前駆物質のいずれかを表す部分である。例は、置換または非置換の直鎖および/または分岐鎖アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基またはこれらの要素(elements)の混合物を有する基である。基は、N、P、O、S、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、および/またはI)の群からの1つまたはいくつかのヘテロ原子を含んでいてもよい。R基は、特に、本発明の方法における変換中に変化しないままであるという事実によって特徴付けられる。
【0036】
直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を有する残基Rにおいて、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中のヘテロ原子は特に限定されず、好ましくはN、O、S、Seおよび/またはPのうちの少なくとも1つであり、特にNである。
【0037】
残基Rにおいて、ならびに本明細書で論じられる残基R’において、置換基は、存在する場合、特に限定されない。特に、特定の実施形態によれば、置換基は、以下から選択される:
-アルコキシカルボニル基、アルケノキシカルボニル基、およびアラルキルオキシカルボニル基-(CO)-O-R、特に1~10個、特に1~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルコキシカルボニル基(すなわち、Rは、1~10個、特に1~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基である)、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基など;2~10個、特に2~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルケノキシカルボニル基(すなわち、Rは、2~10個、特に2~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルケニル残基である)、例えば、アリルオキシカルボニル基など;6~40個、特に6~20個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アリールオキシカルボニル基(すなわち、Rは、6~40個、特に6~20個のC原子を有する芳香族残基である)、あるいは、7~40個、特に7~20個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルオキシカルボニル基(すなわち、Rは、7~40個、特に7~20個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキル残基である);例えば、ベンジルオキシカルボニル基、フルオレンメチルオキシカルボニル基など;さらに特に1~10個、特に1~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルコキシカルボニル基;
-アルキルカルボニルオキシ基-O(CO)-R、特に、1~10個、特に1~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルキルカルボニルオキシ基(すなわち、Rは、1~10個、特に1~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基である)、6~40個、特に6~20個のC原子を有するアリールカルボニルオキシ基(すなわち、Rは、6~40個、特に6~20個のC原子を有する芳香族残基である)、または7~40個、特に7~20個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルカルボニルオキシ基(すなわち、Rは、7~40個、特に7~20個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキル残基である);
-アルコキシ基-OR、特に、1~10個、特に1~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルコキシ基(すなわち、Rは、1~10個、特に1~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基である)、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、6~40個、特に6~20個のC原子を有するアリールオキシ基(すなわち、Rは、6~40個、特に6~20個のC原子を有する芳香族残基である)、または7~40個、特に7~20個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルオキシ基(すなわち、Rは、7~40個、特に7~20個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキル残基である);
-アルキルアミド基-(CO)NR、特に1~10個、特に1~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルキルアミド基(式中、RおよびRは同じであっても異なっていてもよいが、ただし、RおよびRの少なくとも1つはHではない);
-スルホン基-(SO)-R、特に(式中、Rは、H、1~10個、特に1~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基、6~40個、特に6~20個のC原子を有するアリール基、または7~40個、特に7~20個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキル基から選択される);
-スルホキシド基-(SO)-R、特に(式中、Rは、H、1~10個、特に1~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基、6~40個、特に6~20個のC原子を有するアリール基、または7~40個、特に7~20個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキル基から選択される);
-チオエーテル基-SR、特に(式中、Rは、H、1~10個、特に1~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基、6~40個、特に6~20個のC原子を有するアリール基、または7~40個、特に7~20個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキル基から選択される);
-カルボキサミド基-(CO)-NR10、特に(式中、RおよびR10は、H、1~10個、特に1~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基、6~40個、特に6~20個のC原子を有するアリール基、ならびに/または7~40個、特に7~20個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキル基から選択され、RおよびR10は同じであっても異なっていてもよい);
-カルボン酸基-COOR11、特に(式中、R11は、H、1~10個、特に1~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基、6~40個、特に6~20個のC原子を有するアリール基、または7~40個、特に7~20個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキル基から選択される);
-ハロゲン、例えば、F、Cl、Br、I、特にClおよび/またはBr、さらに特には、Cl;
-NH;または
-OH。
【0038】
特定の実施形態によれば、置換基はtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)基である。
特定の実施形態によれば、式(II)の化合物中の、したがって同様に式(I)の化合物中の基Rは、水素を表す。
【0039】
特定の実施形態によれば、式(II)の化合物中、したがって同様に式(I)の化合物中の基Rは、好ましくは1~40個のC原子、特に1~20個のC原子を有する、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、例えば、置換または非置換のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、シクロブチル、シクロヘキシル、ピペリジン-4-イル、1-(tert-ブトキシカルボニル)ピペリジン-4-イル(1-Boc-ピペリジン-4-イル)などの基を表す。特定の実施形態によれば、式(II)の化合物中の、したがって同様に式(I)の化合物中の基Rは、1-置換または非置換のピペリジン-4-イル基、特に1-(tert-ブトキシカルボニル)ピペリジン-4-イル基を表す。
【0040】
特定の実施形態によれば、式(II)の化合物中、したがって同様に式(I)の化合物中の基Rは、好ましくは6~40個のC原子、特に6~20個のC原子を有する置換または非置換の芳香族基、例えば置換または非置換のフェニルまたはナフチル基を表す。
【0041】
特定の実施形態によれば、式(II)の化合物中、したがって同様に式(I)の化合物中の基Rは、好ましくは7~40個のC原子、特に7~20個のC原子を有する、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキル基、例えば、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、ナフチルメチル、1-ベンジルピペリジン-4-イル基などを表す。特定の実施形態によれば、式(II)の化合物中の、したがって同様に式(I)の化合物中の基Rは、置換または非置換の1-ベンジルピペリジン-4-イル基、特に非置換の1-ベンジルピペリジン-4-イル基を表す。
【0042】
特定の実施形態によれば、式(II)の化合物中、したがって同様に式(I)の化合物中の基Rは、好ましくは7~40個のC原子、特に7~20個のC原子を有する、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換のアルキルアリール基、例えば、置換または非置換のメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、イソプロピルフェニルなどの基を表す。
【0043】
特定の実施形態によれば、Rは、水素、または置換もしくは非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状のアルキル基もしくはアラルキル基であって、1~12個の炭素を有し、ヘテロ原子を含まなくてもよく、1個以上のヘテロ原子を含んでもよい基を表す。好ましくは、Rはピペリジン基-特にピペリジン-4-イル基、N-置換ピペリジン誘導体-特にN-置換ピペリジン-4-イル基、1-ベンジルピペリジン-4-イル基、またはベンジルである。好ましくは、Rはピペリジン、特にtert-ブチルオキシカルボニルによりN-置換(1-置換)されたピペリジン-4-イル基であるか、または1-ベンジルピペリジン-4-イル基である。
【0044】
好ましい方法における式(IIa)の化合物の式(Ia)の化合物への好ましい反応の概略図を以下のスキーム2に示す。
スキーム2
【0045】
【化7】
【0046】
式中、Lは脱離基を表し、かつ、
R’は、水素、上記で定義された置換基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルまたはヘテロ芳香族アルキル基、あるいは直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換または非置換のアルキルアリールまたはアルキルヘテロ芳香族基を表し、
特に式中、R’は、
水素、
上で定義した置換基、
1~35個のC原子、好ましくは1~15個のC原子、特に1~4個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、
6~35個のC原子、好ましくは6~20個のC原子、特に6~12個のC原子を有する置換または非置換の芳香族基、
2~35個のC原子、好ましくは3~15個のC原子、特に3~12個のC原子を有する置換または非置換のヘテロ芳香族基であって、ヘテロ芳香族基のヘテロ原子が特にNであるヘテロ芳香族基、
7~35個のC原子、好ましくは7~15個のC原子、特に7~12個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキル基、
好ましくは3~35個のC原子、特に4~15個のC原子を有する、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状ヘテロ芳香族アルキル基であって、ヘテロ芳香族基のヘテロ原子が特にNである、ヘテロ芳香族アルキル基、
7~35個のC原子、好ましくは7~15個のC原子、特に7~12個のC原子を有するアルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換もしくは非置換のアルキルアリール基、または
7~35個のC原子、好ましくは7~15個のC原子、特に7~20個のC原子を有する直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換または非置換のアルキルヘテロアリール基であって、ヘテロ芳香族基のヘテロ原子が特に上記した置換基を備えるNである、アルキルヘテロアリール基、を表し、特にベンジル基またはtert-ブチルオキシカルボニル基のいずれかを表す。
【0047】
本発明の方法において、Cu触媒は特に限定されない。特に、銅触媒の由来は特に限定されない。
特定の実施形態によれば、銅触媒として、銅(I)または銅(II)の任意の塩を使用することができる。好ましくは、触媒は、式CuX、CuY、CuXまたはCuYを有する銅(I)および/または銅(II)塩であり、式中、Xはハロゲンまたは任意の他の一価アニオン、好ましくはハロゲンまたはOAc(Acはアセチル基(CO)CHである)であり、Yは二価アニオンであり、両方とも特に限定されない。好ましくは、Xはハロゲン、特にCl、BrまたはI、例えばClまたはI;またはOAcであり;Yはスルフェートである。特定の実施形態によれば、Cu触媒は、CuI、CuCl、CuBr、Cu(OAc)、および/またはCuSO、特にCuCl、CuBr、CuI、および/またはCuSOである。特定の実施形態によれば、Cu触媒は、CuCl、CuBr、CuI、Cu(OAc)、またはCuSO、特にCuCl、CuBr、CuI、またはCuSO、例えばCuCl、CuI、またはCuSOである。
【0048】
銅触媒の量は特に限定されない。特定の実施形態によれば、銅触媒は、式(II)の化合物-それぞれ式(IIa)の化合物に対して0.1当量および0.7当量を含む0.1当量~0.7当量の量で、好ましくは0.1当量および0.5当量を含む0.1当量~0.5当量の量で添加される。
【0049】
本方法は、ジアミン添加剤の存在下で行われる。ジアミン添加剤の性質は特に限定されない。それは、例えば、N,N’-ジメチル-エチレンジアミン(DMEDA)、エチレンジアミン(EDA)、プロピレンジアミン(PDA)、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン、1,2-ジアミノシクロペンタン、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH)、フェニレンジアミン、例えばo-フェニレンジアミンまたはジアミノトルエン、例えば2,3-ジアミノトルエン、3,4-ジアミノトルエン、またはジアミノナフタレン、例えば1,8-ジアミノナフタレン、または1,10-フェナントロリンあるいはそれらの混合物であり得る。特定の実施形態によれば、ジアミン添加剤は、特に両方の窒素原子が触媒の銅への結合を可能にする二座配位子である。いかなる理論にも束縛されるものではないが、二座配位子は、効果的な環形成を助けることにより環化反応を可能にすると考えられる。
【0050】
特定の実施形態によれば、ジアミン添加剤は、N,N’-ジメチル-エチレンジアミン(DMEDA)、エチレンジアミン(EDA)、プロピレンジアミン(PDA)、もしくはトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH)、またはそれらの混合物からなる群から選択される。好ましい実施形態によれば、ジアミン添加剤は、EDA、PDAおよびDACHから選択され、さらに好ましくはEDAおよびPDAであり、特にエチレンジアミン(EDA)である。
【0051】
ジアミン添加剤の量は、式(II)の化合物(それぞれ式(IIa)の化合物)に対して、0.1当量および9.0当量を含む0.1当量~9.0当量、好ましくは0.2当量および9.0当量を含む0.2当量~9.0当量、さらに好ましくは0.25当量および7.5当量を含む0.25当量~7.5当量である。特定の実施形態によれば、ジアミン添加剤の当量は、銅触媒の当量以上である。ジアミン添加剤は、好ましくは、式(II)の化合物、それぞれ(respectively)式(IIa)の化合物に対して9.0当量未満で添加される。
【0052】
本発明の方法において塩基を添加する場合、塩基は特に限定されない。特定の実施形態によれば、塩基、特に無機塩基が添加される。特定の実施形態によれば、プロセスは無機塩基の存在下で行われ、その性質は特に限定されない。特定の実施形態によれば、塩基は、アルカリ土類金属および/またはアルカリ金属の塩、例えば、アルカリ土類金属の塩またはアルカリ金属の塩である。
【0053】
特定の実施形態によれば、塩基は、炭酸塩または重炭酸塩の群から、好ましくは炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムの群から、さらに好ましくは炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムから選択されるが、これらに限定されない塩である。
【0054】
反応における塩基の量は、特に限定されない。無機塩基の好適な量は、特定の実施形態によれば、式(II)の化合物-それぞれ式(IIa)の化合物に対して0当量および5.0当量を含む0当量~5.0当量、例えば2.0当量および5.0当量を含む2.0当量~5.0当量、好ましくは3.5当量以下、例えば3.0当量以下、より好ましくは2.0当量以上3.0当量以下である。
【0055】
本発明の方法において、溶媒または溶媒混合物は特に限定されない。溶媒は、有機溶媒、例えば少なくともアルコール、ケトン、エーテル、アミド、スルホン、スルホキシド、および/または炭化水素、例えば芳香族炭化水素;例えばエーテル、アミド、スルホン、スルホキシド、および/または炭化水素、例えば芳香族炭化水素を、単独溶媒として、またはそれらの混合物として含むことができる。溶媒混合物は、任意の有機溶媒、例えば少なくともアルコール、ケトン、エーテル、アミド、スルホン、スルホキシド、炭化水素、例えば芳香族炭化水素など;例えばエーテル、アミド、スルホン、スルホキシド、炭化水素、例えば芳香族炭化水素、またはこれらのうちの複数と水との混合物を含有し得る。
【0056】
特定の実施形態によれば、溶媒または溶媒混合物は、少なくとも極性溶媒、特に水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール;ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルアセトアミドなどのアミド;スルホランなどのスルホン;ジメチルスルホキシド(dimtehylsulfoxide)などのスルホキシドなどを含有する。溶媒混合物が本発明の方法において使用される場合、少なくとも1種の有機溶媒、特に例えば上に開示されたような1種の有機溶媒と水との混合物を使用することが好ましい。好ましくは、溶媒混合物は水を含有する。このような溶媒混合物において、水の量は特に制限されない。
【0057】
エーテルは特に限定されず、任意のエーテル、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン(特に1,4-ジオキサン)など、またはそれらの混合物、特に90℃を超える沸点を有するエーテル、好ましくはジオキサン、特に1,4-ジオキサンであり得る。アミドは特に限定されず、任意のアミド、例えばホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミドなどであってよく、例えばジメチルホルムアミドであってよい。また、炭化水素は特に限定されず、例えば直鎖、分岐鎖および/または環状アルカン、および/または芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン(異性体の混合物として、または純粋な異性体(o-、m-および/またはp-キシレン)として)、好ましくは芳香族炭化水素、特にトルエンであってもよい。また、スルホンは特に限定されないが、スルホランであることが好ましい。また、スルホキシドは特に限定されないが、好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)であり得る。
【0058】
特定の実施形態によれば、環化反応は、本発明の方法において使用される全ての試薬の少なくとも部分的な溶解、例えば完全な溶解を可能にする溶媒または溶媒混合物中で行われる。特定の実施形態によれば、溶媒または溶媒混合物は、少なくとも部分的な溶解、例えば、無機塩基の総量に対して少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%の溶解、または添加された無機塩基の量の完全な溶解さえも可能にする。このため、水のような強極性溶媒を添加するか、または少なくとも、塩を溶解することができるエーテル、例えばジオキサン(特に1,4-ジオキサン);アミド、例えばDMF;スルホン、例えばスルホラン;スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド;ケトンなどの溶媒を使用することが好ましい。1種以上の有機溶媒を含む溶媒混合物において、水の量は特に限定されないが、溶媒混合物に対して50体積%以下および/または10体積%以上であることが好ましい。
【0059】
特定の実施形態によれば、溶媒は、50体積%までの水を含有する有機溶媒、または50体積%までの水を含有する有機溶媒の混合物である。特定の実施形態によれば、ジオキサン(特に1,4-ジオキサン)が唯一の溶媒として使用される。特定の実施形態によれば、炭化水素と水、特に芳香族炭化水素と水、特にトルエンと水の混合物、またはエーテルと水、特にジオキサン(特に1,4-ジオキサン)と水の混合物が溶媒混合物として使用される。
【0060】
本発明の方法において、反応条件は特に限定されない。例えば、本発明の方法において、反応温度は特に制限されない。特定の実施形態によれば、それは、少なくとも50℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、またはさらに少なくとも90℃である。特定の実施形態によれば、反応は還流下で行われる。
【0061】
本発明のさらなる第2の態様は、式(II)の化合物から式(I)の化合物の酸付加物を生成する方法に関し、同方法は:
-式(II)の化合物を、溶媒または溶媒混合物中で、
Cu触媒と、
ジアミン添加剤と、
場合により、塩基、特に無機塩基と、
の存在下で反応させて、式(I)の化合物を形成することと、
【0062】
【化8】
【0063】
(式中、Lは脱離基を表し、Rは水素、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換もしくは非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、置換もしくは非置換の芳香族もしくはヘテロ芳香族基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換もしくは非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルもしくはヘテロ芳香族アルキル基、あるいは直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換もしくは非置換のアルキルアリールもしくはアルキルヘテロ芳香族基を表す)、
-式(I)の化合物を酸と反応させることと、
を含む。
【0064】
第2の態様のこの方法において、式(II)の化合物を溶媒または溶媒混合物中で、Cu触媒、ジアミン添加剤、および任意選択で塩基、特に無機塩基の存在下で反応させて式(I)の化合物を形成する第1のステップは、第1の態様の方法に対応し、したがって、第1の態様に関するすべての実施形態および説明は、第2の態様の方法におけるこのステップにも適用することができる。
【0065】
第2の態様の方法において、式(I)の化合物を酸と反応させるステップは、特に限定されない。特に、酸は限定されず、有機酸または無機酸であり得る。特定の実施形態によれば、酸は無機酸、特にHClである。
【0066】
上記実施形態は、適宜、任意に組み合わせることができる。本発明のさらなる可能な実施形態および実装形態は、本発明の実施例に関して前述または後述において明示的に言及されていない特徴の組合せも含む。特に、当業者はまた、本発明のそれぞれの基本形態に対する改良または追加として個々の態様を追加するであろう。
【実施例
【0067】
以下、本発明をそのいくつかの実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
一般的方法
スキーム3に従って、式(IV)の化合物から式(III)の1,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-オン化合物を製造するための一般的方法(ここで、特定の例におけるR’は、ベンジル基またはtert-ブチルオキシカルボニル基のいずれかを表す)。
【0068】
式(IV)の1-(2-クロロピリジン-3-イル)尿素化合物(1.0当量)をフラスコに入れる。ジアミン添加剤、場合により塩基、および銅触媒を適切な量で添加する。反応混合物を、例えば還流またはシールされた圧力で所望の温度まで加熱し、この温度で適切な時間保持する。反応終了後、反応混合物をサンプリングして分析する。
【0069】
スキーム3
【0070】
【化9】
【0071】
参考例:出発物質、すなわち、R’がベンジルまたはBocである式(IV)の化合物の調製。
一般に、式(IV)の化合物は、以下のスキーム4および5(本発明の方法の最終反応を含む)に示されるように、4-ピペリドンのそれぞれのN-誘導体との還元的アミン化、続いてクロロスルホニルイソシアネート(CSI)との反応を使用して、3-アミノ-2-クロロピリジンから調製することができる。
【0072】
スキーム4
【0073】
【化10】
【0074】
スキーム5
【0075】
【化11】
【0076】
tert-ブチル4-(1-(2-クロロピリジン-3-イル)ウレイド)ピペリジン-1-カルボキシレートの合成
2-クロロピリジン-3-アミン(502g、3.92mol)、tert-ブチル-4-オキソピペリジン-1-カルボキシレート(930g、4,67mol)を酢酸エチル(7.5L)中、05℃以下で撹拌し、トリフルオロ酢酸(887g、7.78mol)で処理し、次いでトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1240g、5.85mol)を10℃以下で添加する。反応混合物を室温まで加温し、2時間撹拌し、水(1.5L)でクエンチした。水酸化ナトリウム溶液(20%)でpHを10~11に調整し、相を分離した。有機層を水(3×5L)で洗浄し、真空下で約1.5Lの体積に濃縮した。n-ヘプタン(5L)を40℃で添加し、得られたスラリーを5℃以下に冷却し、1時間熟成させた。スラリーを濾過し、ケーキをn-ヘプタン(1.5L)で洗浄し、真空下50℃で12時間乾燥させた。tert-ブチル4-(2-クロロピリジン-3-イルアミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート(1170g、3.75mol)をオフホワイトの固体として得た。
【0077】
クロロスルホニルイソシアネート(60.2g、0.425mol)を室温でテトラヒドロフラン(THF、300mL)に添加した。混合物を-10℃に冷却した。THFと酢酸エチルの1:1混合物(200mL)中のtert-ブチル4-(2-クロロピリジン-3-イルアミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート(102.0g、0.327mol)の溶液を20分かけて添加する。-10℃で10分後、水(50mL)を10分間かけて滴下した。混合物を室温に温め、30分間熟成させた。水酸化ナトリウム溶液(10%)でpHを8~9に調整し、懸濁液を減圧下で蒸留してTHFを除去し、同量の酢酸エチルを入れ、残渣を濾過し、酢酸エチルで洗浄し、真空乾燥させて表題化合物を得た(120g、0.338mol、収率:96.7%)。
【0078】
構造の証明は、NMRを、非特許文献1(Leahy K.D.ら、Organic Process Research&Development、2012,Vol.16,Issue2,pp244~249)に示されている文献データと比較することによって行われる。
【0079】
1-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-1-(2-クロロピリジン-3-イル)尿素の合成
2-クロロピリジン-3-アミン(12.8g、0.1mol)、1-ベンジル-4-ピペリドン(25.6g、0.12mol)、PTSA(p-トルエンスルホン酸、0.12g、1重量%)、およびトルエン(46mL)をフラスコに加える。混合物を加熱還流し、生成した水をディーン・スターク(Dean-Stark)トラップで直ちに分離した。水が回収されなくなったら、反応混合物を冷却した。得られたイミン溶液を次のステップで使用する。
【0080】
MeOH(100mL)を含むフラスコに、NaBH(38g、1mol)を5~20℃で少しずつ添加した。イミン溶液を20℃未満で滴下した。添加が完了した後、反応混合物を室温で一晩撹拌した。50gの水を添加して反応混合物をクエンチした。メタノールを蒸留し、相分離が生じた。有機相を濃縮した。残留固体をn-ヘプタン(95g)で再結晶させた。濾過後、湿った生成物を50℃で一晩乾燥させた。N-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-2-クロロピリジン-3-アミン(27.4g、0.091mol)を91%の収率で得る。HPLC純度は93.2%であった。
【0081】
tert-ブチル4-(2-クロロピリジン-3-イルアミノ)ピペリジン-1-カルボキシレート tert-ブチル4-(1-(2-クロロピリジン-3-イル)ウレイド)ピペリジン-1-カルボキシレートの変換について記載した手順に従って、N-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-2-クロロピリジン-3-アミンをさらに1-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-1-(2-クロロピリジン-3-イル)尿素に変換した。
【0082】
具体的な実施例A-01~A-12
tert-ブチル 4-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)ピペリジン-1-カルボキシレート(R’=Boc)の合成および単離
フラスコに、15.25gのtert-ブチル4-(1-(2-クロロピリジン-3-イル)ウレイド)ピペリジン-1-カルボキシレート(0.048mol)、18.5gのジアミノエタン(EDA、0.308mol)、13.1gの炭酸カリウム(0.095mol)、1.1gのヨウ化銅(I)(0.0058mol)、87mLのジオキサンおよび37mLの水を入れた。混合物を加熱還流(96℃)し、この温度で72時間撹拌する。水層を90℃で分離する。有機相を室温(22℃)に冷却する。懸濁液を濾過して無機固体を除去する。母液を濃縮乾固する。残渣のpHを希HClで約6に調整する。懸濁液を濾別し、水で洗浄する。湿った生成物を50℃で乾燥させ、11.8gの表題化合物(0.037mol、理論収量の77%に相当する)を得る。
【0083】
構造の証明は、NMRデータを、非特許文献1(Leahy K.D.ら、Organic Process Research&Development、2012,Vol.16,Issue2,pp244~249)に示されている文献データと比較することによって行われる。
【0084】
実施例A-02~A-12は、表1に示した試薬、量および反応条件を用いて、生成物の最終後処理を行わず、HPLCおよびNMRを用いた粗生成物の分析のみを実施例A-01と同様に行った。その結果を表1に併せて示す。
【0085】
具体的な実施例B-01~B-07
1-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン(R’=Bn)の合成および単離
フラスコに、10.0gの1-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-1-(2-クロロピリジン-3-イル)尿素(0.0291mol)、15.2gのジアミノエタン(EDA、0.253mol)、8.0gの炭酸カリウム(0.058mol)、1.4gのヨウ化銅(I)(0.00735mol)、45mLのジオキサンおよび5mLの水を入れた。得られた混合物を加熱還流した(96℃)。混合物をこの温度で72時間撹拌した。水層を90℃で分離した。有機相を室温に冷却し、HPLCによって分析した。懸濁液を濾別した。母液を濃縮乾固した。残留物のpHを希HClで約6に調整した。懸濁液を濾別し、水で洗浄した。湿った生成物を50℃で乾燥した。8.5gの表題化合物が得られた(0.0278mol、理論収量の88%に相当)。
【0086】
分析
1-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オンの1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オンへの水素化。構造を証明するために、NMRデータを非特許文献1(Leahy K.D.ら、Organic Process Research&Development、2012,Vol.16,Issue2,pp244~249)からのデータと比較する。
【0087】
オートクレーブに、実施例2からの0.45gの1-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン(1.460mmol)、60mLのメタノールおよび0.4gのパラジウム炭素(palladium on charcoal)を装填する。反応混合物を35バール(3.5MPa)の水素圧下、40℃で一晩撹拌する。得られた溶液を濃縮して油状固体を得る。油状固体をエタノール10mLに溶解する。32%塩酸の1mLを沈殿物に添加する。懸濁液を濾過し、湿ったケーキを乾燥させ、0.25gの1-(ピペリジン-4-イル)-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン二塩酸塩(0.865mmol)を得る。構造の証明は、上記のように、NMRデータを文献からのデータと比較することによって行われる。
【0088】
実施例B-02~B-07は、表2に示した試薬、量および反応条件を用いて、生成物の最終後処理を行わず、HPLCおよびNMRを用いた粗生成物の分析のみを実施例B-01と同様に行った。その結果を表2に併せて示す。
【0089】
比較例C-01
アミノ添加剤を添加せずに一般的な方法に従った比較例は、表3の反応条件、試薬およびそれらの量で与えられるように、収率0%をもたらした。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
表1~3において、以下が適用される。
RF:還流温度にて
DMEDA:N,N’-ジメチル-エチレンジアミン
EDA:エチレンジアミン
PDA:プロピレンジアミン
DACH:トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン
【手続補正書】
【提出日】2024-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)の化合物から式(I)の化合物を生成する方法であって、前記方法は:
式(II)の化合物を、溶媒または溶媒混合物中で、
Cu触媒と、
ジアミン添加剤と、
場合により、塩基、特に無機塩基と、
の存在下で反応させて、式(I)の化合物を形成すること
【化1】

(式中、Lは脱離基を表し、Rは水素、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換または非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルまたはヘテロ芳香族アルキル基、あるいは直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換または非置換のアルキルアリールまたはアルキルヘテロ芳香族基を表す)
を含む方法。
【請求項2】
前記脱離基Lがハロゲンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱離基Lが塩化物である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記Cu触媒が銅(I)塩または銅(II)塩である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記Cu触媒が、CuI、CuCl、CuBr、Cu(OAc)、および/またはCuSOである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記銅触媒の量が、式(II)の化合物に対して0.1当量~0.6当量である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒が、0重量%~50重量%の水を含有する有機溶媒または有機溶媒の混合物である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記ジアミン添加剤が二座配位子である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ジアミン添加剤が、N,N’-ジメチル-エチレンジアミン(DMEDA)、エチレンジアミン(EDA)、プロピレンジアミン(PDA)、もしくはトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH)、またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ジアミン添加剤が、EDAおよびPDAから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記無機塩基が存在し、炭酸塩または重炭酸塩である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記無機塩基が、式(II)の化合物に対して5.0当量未満の量で存在する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項13】
式(II)の化合物から式(I)の化合物の酸付加物を生成する方法であって、前記方法は:
式(II)の化合物を、溶媒または溶媒混合物中で、
Cu触媒と、
ジアミン添加剤と、
場合により、塩基、特に無機塩基と、
の存在下で反応させて、式(I)の化合物を形成することと
【化2】

(式中、Lは脱離基を表し、Rは水素、直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換もしくは非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル基、置換もしくは非置換の芳香族もしくはヘテロ芳香族基、直鎖、分岐鎖および/または環状アルカンジイル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい置換もしくは非置換の直鎖、分岐鎖および/または環状アラルキルもしくはヘテロ芳香族アルキル基、あるいは直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル鎖中に1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも1つの直鎖、分岐鎖および/または環状アルキル残基を有する置換もしくは非置換のアルキルアリールもしくはアルキルヘテロ芳香族基を表す)、
式(I)の化合物を酸と反応させることと、
を含む、方法。
【国際調査報告】