(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】電極のその場洗浄を伴う廃水処理のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20240405BHJP
【FI】
C02F1/461 101A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563958
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 US2022025318
(87)【国際公開番号】W WO2022225908
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513305179
【氏名又は名称】アクシン ウォーター テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Axine Water Technologies Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】レオン,ヴィクター カ ルン
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA08
4D061DB18
4D061DC19
4D061EA14
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB14
4D061EB37
4D061EB39
4D061ED12
4D061FA13
4D061GA08
4D061GA22
4D061GC06
4D061GC12
4D061GC20
(57)【要約】
電極のその場洗浄を伴う廃水処理システムが、塩化物濃度が500mg/L~5,000mg/Lの間の塩化物塩(ナトリウム、カリウム、カルシウム等)を含む廃水を処理するための少なくとも1つの反応器と、廃水処理中に生成される含水遊離塩素の総量が、500mg/L~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成ために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、処理済み廃水のpHが4以下になるように、電極活性領域および/または電流密度を制御することによって反応器に供給される電流を制御するためのコントローラとを備える。処理済み廃水に亜硫酸水素ナトリウムを添加した後、廃水は反応器に再循環される。これにより、追加の装置を必要とせずに、電気化学反応器内の電極を確実にその場洗浄できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化物濃度が500mg/L~5,000mg/Lの塩化物塩を含む廃水を処理するための廃水処理システムであって、
a.反応タンクと、
b.廃水を処理するための少なくとも1つの電極を備える少なくとも1つの反応器と、
c.前記反応タンクから前記反応器に廃水を供給するためのポンプと、
d.電源により前記反応器に供給される電流を制御するためのコントローラと、
e.前記反応タンク内で一定量の塩酸を生成するために、前記反応器が廃水の処理を停止するときに廃水処理の終了時に前記反応タンクに添加される亜硫酸水素ナトリウムを貯蔵するタンクと、
を備え、
前記コントローラは、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500mg/L~5,000mg/Lの間の濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記電極のその場洗浄のために前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、前記反応器に供給される電流を制御することを特徴とする廃水処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記コントローラが、電極活性領域のサイズおよび/または前記反応器に供給される電流密度を制御することによって、前記反応器に供給される電流を制御することを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記電極活性領域のサイズは、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、実験的に決定されることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記電極活性領域のサイズは、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定される量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、前記システムの動作中に前記反応タンク内で検出される含水遊離塩素の量に基づいて制御されることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記電流密度は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、実験的に決定されることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記電流密度は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、前記反応タンク内で前記システムの作動中に検出される含水遊離塩素の量に基づいて制御されることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記電極活性領域のサイズと前記電流密度の双方は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済みのpHが4以下になるように、実験的に決定されることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記電極活性領域のサイズと前記電流密度の双方は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、検出される含水遊離塩素の量に基づいて制御されることを特徴とするシステム。
【請求項9】
廃水処理方法であって、
a.500mg/L~5,000mg/Lの間の塩化物濃度を有する塩化物塩を含有する処理すべき廃水の流れを反応タンクに供給し、前記反応タンクから廃水を処理するための少なくとも1つの反応器に廃水を供給して、廃水に含まれる塩化物及びその他の汚染物質を除去するステップと、
b.廃水を処理するために前記反応器に供給される電流を制御するステップと、
c.処理の終了時、前記反応器が廃水の処理を停止した後で廃水が前記システムから廃棄される前に、前記反応タンク内の処理済み廃水にある量の亜硫酸水素ナトリウムを供給して、廃水の廃棄が可能となる所定のレベル未満に含水遊離塩素のレベルを下げるステップと、
d.実験的に決定された期間、処理済み廃水を前記反応タンクから前記反応器を通して前記反応タンクに再循環させて、前記反応器の電極の洗浄を行うステップと、
を備え、
廃水を処理するために前記反応器に供給される電流は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500mg/L~5,000mg/Lの間の濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、電極のその場洗浄のために前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、制御されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記反応器に供給される電流が、前記反応器の電極活性領域のサイズおよび/または電流密度を制御することによって制御されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記電極活性領域のサイズは、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成ために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、実験的に決定される値に制御されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法において、
前記電極活性領域のサイズは、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定される量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、前記システムの動作中に前記反応タンク内で検出される含水遊離塩素の量に基づいて制御されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法において、
前記電流密度は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、実験的に決定される値に制御されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法において、
前記電流密度は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、前記反応タンク内で前記システムの運転中に検出される含水遊離塩素の量に基づいて制御されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法において、
前記電極活性領域のサイズと前記電流密度の双方は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、実験的に決定されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法において、
前記電極活性領域のサイズと前記電流密度の双方は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の検出量に基づいて制御されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項9に記載の方法において、前記塩化物塩が塩化ナトリウムであることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極のその場(in-situ)洗浄を伴う廃水処理、より具体的には、塩化物を含む廃水を処理するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
廃水処理システムは、廃水処理規制が厳しくなり、産業施設は排出前に難治性の水質汚染物質を除去する必要があることと、現在の世界的なきれいな水の不足により、需要が高まっている。したがって、化学物質の添加を最小限に抑え、二次汚染を発生させず、運用とメンテナンスの要件を最小限に抑えた、費用対効果が高く持続可能な廃水処理システムに対する需要が高まっている。
【0003】
難分解性廃水を処理するための好ましいアプローチは、電気化学的酸化によるものであり、これは、残留性有機汚染物質、ダイオキシン、窒素種(アンモニアなど)、医薬品、病原体、微生物その他の多種多様な汚染物質を除去するための持続可能で安全かつ高効率な処理方法となっている。廃水を処理するための1つのアプローチは、有機および/または無機汚染物質の電気化学的酸化によるもので、これにより、そのような汚染物質はアノード表面で酸化される。
【0004】
電気化学的酸化を利用する廃水処理システムでは、アノード触媒は、白金、酸化スズ、酸化アンチモンスズ、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、ニオブドープ酸化アンチモンスズ、グラファイト、酸化マンガン、ダイヤモンドまたはホウ素ドープダイヤモンドを含む群から選択される。廃水処理に使用される電極は、特に大量の有機物質を除去する必要がある用途の場合、システム全体のコストを増加させる可能性がある。
【0005】
さらに、電極は汚れが付着しやすく、その後劣化が起こり、電極の表面に汚染物質が堆積するため、廃水の処理効果が低下する。このような堆積物は、電極を洗浄するために除去する必要がある。これまでは、一般に、鉱物堆積物による損傷に応じてシステムを停止し、手動で電極を清掃または交換する必要があった。
【0006】
手作業による電極の洗浄または交換は、これまでスタック内の電解槽に印加される電荷の極性を反転することで扱われてきたが、このような方法では、セルを逆極性で動作させるために、スタック内のアノードとカソードの両方を触媒でコーティングする必要がある。これは非常に高価になる可能性がある。
【0007】
電極の洗浄に使用される別の方法は、処理プロセス中に廃水に乳酸/グルコン酸またはクエン酸などの有機酸を低濃度で含む溶液を添加することである。このような方法では、洗浄液をシステムに安全に供給し、システムから排出する必要があるため、システムがさらに複雑になる。さらに、廃水処理に必要のない化学物質の導入に対する制限が厳しい一部の現場では、有機酸溶液の添加が許可されない場合がある。
【0008】
このような方法は、例えば、米国特許第7,722,746号に提示されており、この特許明細書には、システムが動作していないときに、所定量の塩酸などのpH低下剤を電解室に導入して、所定の周期スケジュールに従って鉱物堆積物を溶解する自浄式塩素発生装置が記載されている。
【0009】
米国特許第7,922,890号には、ブライン溶液の処理に使用される電解セルとは別の酸発生セルで生成される酸を使用する同様の方法が記載されており、酸は、電解セルが停止している洗浄サイクル中に電解セルに供給される。このシステムは、炭酸塩検出器がシステムはきれいであるという信号を送信し、電解セルの洗浄に使用された酸が別の廃液管に捨てられるまで、この酸洗浄モードで動作する。その後、洗浄された電解槽を使用したブライン溶液の処理を再開できる。
【0010】
従来技術文献では、廃水の処理や処理済み廃水の安全な排出を保証するためには必要のない追加の化学溶液を、電極を洗浄するために廃水処理システムに加えなければならない。このような薬液は、供給タンクから添加されるか、廃水処理電気化学反応器とは別のセルで生成され、廃水処理に使用される電気化学反応器に供給される。これにより、廃水処理システム全体がより複雑になり、コストが増加する。
【0011】
当該技術分野における実質的な発展にも関わらず、廃水処理中または処理水排出プロセス中にまだ使用されていない化学溶液を添加することなく、電極のその場洗浄を実行し、廃水処理に使用される電気化学反応器の電極を洗浄するために使用される化学溶液を供給または生成するための追加の設備を持たない簡素化されたシステムを有する必要性が依然として存在している。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、塩化物濃度が500mg/L~5,000mg/Lの塩化物塩を含む廃水を処理するための廃水処理システムであって、
-反応タンクと、
-廃水を処理するための少なくとも1つの電極を備える少なくとも1つの反応器と、
-前記反応タンクから前記反応器に廃水を供給するためのポンプと、
-電源により前記反応器に供給される電流を制御するためのコントローラと、
-前記反応タンク内で一定量の塩酸を生成するために、前記反応器が廃水の処理を停止するときに廃水処理の終了時に前記反応タンクに添加される亜硫酸水素ナトリウムを貯蔵するタンクと、を備え、
前記コントローラは、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500mg/L~5,000mg/Lの間の濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記電極のその場洗浄のために前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、前記反応器に供給される電流を制御する、廃水処理システムである。
【0013】
コントローラが、電極活性領域のサイズおよび/または前記反応器に供給される電流密度を制御することによって、前記反応器に供給される電流を制御する。
【0014】
いくつかの実施形態では、電極活性領域のサイズは、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、実験的に決定される。
【0015】
他の実施形態では、電極活性領域のサイズは、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定される量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、前記システムの動作中に前記反応タンク内で検出される含水遊離塩素の量に基づいて制御される。
【0016】
いくつかの実施形態では、反応器に供給される電流が電流密度を制御することによって制御される場合、電流密度は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、実験的に決定される。
【0017】
代替的に、電流密度は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、前記反応タンク内で前記システムの作動中に検出される含水遊離塩素の量に基づいて制御され得る。
【0018】
さらに、他のいくつかの実施形態では、電極活性領域のサイズと電流密度の双方は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済みのpHが4以下になるように、実験的に決定される。
【0019】
さらに、他の実施形態では、電極活性領域と電流密度の双方は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、検出される含水遊離塩素の量に基づいて制御される。
【0020】
廃水処理方法がさらに開示されており、この方法は、
a.500mg/L~5,000mg/Lの間の塩化物濃度を有する塩化物塩を含有する処理すべき廃水の流れを反応タンクに供給し、前記反応タンクから廃水を処理するための少なくとも1つの反応器に廃水を供給して、廃水に含まれる塩化物及びその他の汚染物質を除去するステップと、
b.廃水を処理するために前記反応器に供給される電流を制御するステップと、
c.処理の終了時、前記反応器が廃水の処理を停止した後で廃水が前記システムから廃棄される前に、前記反応タンク内の処理済み廃水にある量の亜硫酸水素ナトリウムを供給して、廃水の廃棄が可能となる所定のレベル未満に含水遊離塩素のレベルを下げるステップと、
d.実験的に決定された期間、処理済み廃水を前記反応タンクから前記反応器を通して前記反応タンクに再循環させて、前記反応器の電極の洗浄を行うステップと、
を備える。
【0021】
廃水を処理するために前記反応器に供給される電流は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500mg/L~5,000mg/Lの間の濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、電極のその場洗浄のために前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、制御される。
【0022】
反応器に供給される電流が、前記反応器の電極活性領域のサイズおよび/または電流密度を制御することによって制御され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、電極活性領域のサイズは、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成ために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように実験的に決定される値に制御される。
【0024】
他の実施形態では、電極活性領域のサイズは、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定される量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、前記システムの動作中に前記反応タンク内で検出される含水遊離塩素の量に基づいて制御される。
【0025】
いくつかの実施形態では、電流密度は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、実験的に決定される値に制御される。
【0026】
さらに、他の実施形態では、電流密度は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、前記反応タンク内で前記システムの作動中に検出される含水遊離塩素の量に基づいて制御される。
【0027】
いくつかの実施形態では、電極活性領域のサイズと電流密度の双方は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、実験的に決定される。
【0028】
さらに、他の実施形態では、電極活性領域のサイズと電流密度の双方は、廃水処理の際に生成される含水遊離塩素の総量が、前記反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するために実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、前記反応タンク内の処理済み廃水のpHが4以下になるように、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の検出量に基づいて制御される。
【0029】
本発明は、塩化物塩(ナトリウム、カリウム、カルシウムなど)を含む廃水を処理するためのシステムおよび方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図面は本発明の特定の好ましい実施形態を示しているが、いかなる意味においても本発明の精神または範囲を制限するものと見なされるべきではない。
【0031】
【
図1】
図1は、本発明による電極のその場洗浄で廃水を処理するためのシステムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本説明では特定の用語が使用されており、以下に提供される定義に従って解釈されることが意図されている。さらに、「a」(1つの)や「comprises」(備える)などの用語は制限のない(open-ended)ものとして解釈される。
【0033】
【0034】
電気化学的廃水処理システム100は、均一化タンク102、反応タンク110、および電解セルのスタックを含む少なくとも1つの反応器112を備える。処理される廃水の流れ101は、フィルタ103を通って均一化タンク102に供給され、均一化タンクを出る廃水の流れ105は、ポンプ106によって反応タンク110に供給される。処理される廃水の流れ107が、反応タンク110からポンプ108によってフィルタ109を通って反応器112に供給される。反応器から出た処理済み廃水の流れ114が反応タンクに再循環され、処理される廃水が反応器112を通って反応タンク110に戻るという再循環サイクルは、廃水から必要なレベルで汚染物質を除去するのに必要な限り繰り返される。廃水から汚染物質を除去するのに必要な時間は、システムの実験的テストを通じて、または反応タンク内の汚染物質レベルを継続的に監視することによって決定できる。反応タンク内で到達した汚染物質のレベルが環境に水を廃棄できるレベル以下であると判断された場合、レベルを下げるために亜硫酸水素ナトリウム(SBS)の溶液がタンク118から反応タンク110に供給されて、処理済み廃水中の含水遊離塩素のレベルを下げ、以下でさらに説明するように、廃棄される廃水のpHを下げ、タンク内の含水遊離塩素のレベルおよび廃水のpHが必要な限界に達したと判断されると、バルブ122が開き、処理済み廃水の流れ120がシステムから廃棄される。
【0035】
本システムには、処理される廃水の導電率を調整するための手段も設けられている。水酸化ナトリウムの溶液がタンク116からポンプを介して処理済み廃水の流れ114に供給され、反応タンク110に再循環される。好ましい実施形態では、反応タンク110からの廃水の少なくとも一部をラジエータ113を通して循環させることによって、反応タンク内の廃水の温度が所定の限界内に維持される。
【0036】
このシステムはさらに、動作データ収集装置132から情報を受け取り、反応器112に電流を供給する電源134を制御するコントローラ130を備える。動作データ収集装置132は、他のパラメータの中でも特に、反応タンク内の汚染物質濃度および反応タンク内の含水遊離塩素の量に関する情報を収集する。反応タンク内の含水遊離塩素の量は、廃水の酸化還元電位を監視するセンサによってデータ収集装置に提供される。
【0037】
本発明は、塩化物塩(ナトリウム、カリウム、カルシウムなど)を含む廃水を処理するシステムおよび方法に関する。本明細書に記載される例では、処理される廃水は塩化ナトリウムを含むが、当業者であれば、塩化カリウム、塩化カルシウムなどを含む廃水の電気化学的処理中に同様の化学反応が起こること、および記載されるシステムおよび方法を理解するであろう。本発明において、「廃水」とは、あらゆる種類の塩化物を含む廃水を指す。処理される廃水の電気化学的酸化処理プロセス中に、廃水からの塩化物イオンが酸化されて含水遊離塩素になる。廃水処理中に発生する含水遊離塩素が塩素ガスに発生しないようにする必要があるため、処理中の廃水のpHは約9より高く制御され、これにより、処理プロセス中に生成されるすべての含水遊離塩素が、次の反応のように次亜塩素酸塩として水相に残る。
NaCl+H2O→NaClO+H2
【0038】
廃水処理システムから排出できる塩素レベルには制限があるため、処理停止後、環境に排出される前に、処理済み廃水に亜硫酸水素ナトリウム(SBS)を添加して、次の反応に示すように、次亜塩素酸塩を塩酸と硫酸に中和する。
NaClO+NaHO3S→HCl+H2SO4
【0039】
亜硫酸水素ナトリウムを添加すると、含水遊離塩素の含有量に応じて処理水のpHが低下する。塩化ナトリウムを含む廃水を処理するために過去に使用されたシステムでは、含水遊離塩素を中和するために亜硫酸水素ナトリウムを添加した後の廃水のpHは約6~8に低下することが分かった。
【0040】
次亜塩素酸塩の生成が増加すると、含水遊離塩素を中和するためにより多くの重亜硫酸ナトリウムが必要となり、その結果、処理済み廃水のpHがさらに約4以下に低下することも判明したが、これは、処理済み廃水が反応器を通して再循環される場合、電極表面に堆積した硬度スケール(hardnessscales)を溶解するのに有益である。判明したように、硬度スケール内の塩化物イオンと炭酸イオンの間の交換により、硬度堆積物の溶解が促進され、その結果、電極表面に堆積した硬度スケールが処理水に溶解する。
【0041】
本システム及び方法は、塩化物濃度が500mg/L~5,000mg/Lの間の塩化物塩を含む廃水を処理し、廃水処理反応器内で生成される化学溶液の量を増加させることによる電極のその場洗浄のために、排出される処理済み廃水のpHを約4以下に低下させるというこの問題に対処するために設計されているが、これは、外部の電解槽から電極を洗浄するための化学溶液を提供することによってではなく、廃水処理プロセスにまだ関与していない追加の化学物質を使用することもない。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によれば、反応器に供給される電流は、処理中に生成される含水遊離塩素の総量が、ある量の亜硫酸水素ナトリウムの添加を必要とし、500mg/L~5,000mg/Lの範囲の量の塩酸を生成し、処理済み廃水のpHが4以下になるように、コントローラ130によって制御される。これらの要件を満たすために反応器に供給される電流は、実験室で処理される水に対して実行されるテストを通じて実験的に決定することも、処理中に生成される含水遊離塩素の量を監視することによって作動中に能動的に制御することもできる。上述のように、廃水処理中に生成される含水遊離塩素の量は、廃水の酸化還元電位を監視するセンサによって監視される。
【0043】
反応器112に供給される電流は、反応器112の電極活性領域のサイズを制御することによって、または電流密度を制御することによって制御することができる。電極活性領域は、活性であって、電源134から電流が供給され、廃水を処理している反応器112内の電極の総面積として定義される。当業者であれば、システムには反応器112を1つだけ設けることができ、この場合、電極活性領域は、電源から電流が供給され廃水を処理するために動作する反応器内の電極の面積によって規定されることを理解するであろう。コントローラ130は、反応器112に供給される電流密度および/または電源に接続された電極または反応器の数を制御して、上述の条件に従って反応器に供給される所望の電流を達成する。
【0044】
上述し且つ
図1に示す本システムを動作させる方法は、次のように要約できる。処理される廃水の流れ101は均圧化タンク102に供給され、さらにポンプ106を通って反応タンク110に供給される。処理すべき廃水107は均圧化タンク110から電源に接続された反応器112に供給され、反応器内で廃水処理が行われる。処理済み廃水114は反応タンク110に再循環され、このサイクルが実験的に決定された期間繰り返されて、廃水中の汚染物質濃度が、処理済み廃水の廃棄が許容される限界まで低下する。反応タンク内の廃水中の汚染物質濃度は、作動データ収集装置132によって監視され、制御装置に伝達され、汚染物質濃度が所望のレベルに達すると、反応器112への電力供給が停止される。
【0045】
処理プロセス中に、作動データ収集装置132は、処理プロセス中に生成される含水遊離塩素の量など、反応タンク110内の廃水に関する情報も収集する。
【0046】
廃水が処理された後、廃水がシステムから廃棄される前に、反応器112は電源から切り離され、亜硫酸水素ナトリウム溶液がタンク118から反応タンク110に供給され、反応器タンク内の廃水のpHがデータ収集装置132によって監視され、タンク内の廃水のpHが4以下に達すると、廃水は反応器112を通って再循環され、実験的に決定された時間だけタンクに戻されて、電極のその場での洗浄を実現する。その後、処理済み廃水の流れ120がシステムから排出される。
【0047】
廃水処理中に反応器に供給される電流は、廃水処理中に生成される次亜塩素酸ナトリウムが、亜硫酸水素ナトリウムの添加後に反応器タンク内で500~5,000mg/Lの塩酸を生成し、処理済み廃水のpHが4以下になるように制御される。反応器に供給される電流の量は、処理される廃水の特定の特性について実験室で行われる試験を通じて実験的に決定されるか、または、廃水処理中に反応器タンク110内の含水遊離塩素の量をデータ収集装置132を通して継続的に監視することによって決定される。
【0048】
反応器に供給される電流は、廃水処理に使用される反応器の電極活性領域のサイズを制御することによって、または反応器に供給される電流の密度を制御することによって、上記の要件を達成するように制御される。いくつかの実施形態では、電極活性領域のサイズと電流密度の双方が、上記の要件に基づいて制御される。
【0049】
したがって、いくつかの実施形態では、電極活性領域のサイズは、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸が生成されるように実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加が必要となり、亜硫酸水素ナトリウム溶液の投与後に、処理済み廃水のpHが4以下になるように、制御される。電極活性領域の必要なサイズは、処理される廃水の特定の特性について実験室で実施される試験を通じて実験的に決定することもできるし、廃水処理中に反応器タンク110内の含水遊離塩素のレベルをデータ収集装置132を通して継続的に監視することによって決定することもできる。一般に、必要とする電極活性領域のサイズの決定が実験室のテストを通して行われる場合、電極活性領域は廃水処理中に同じに維持される一方、電極活性領域のサイズの決定が含水遊離塩素のレベルの監視に基づいている場合、電極活性領域のサイズは、作動中の反応器の数を増減することによって、または、電気化学反応器が1つだけ使用される場合は、電源に接続されている動作中の電極の数を増減することによって、検出された含水遊離塩素レベルに応じて廃水処理の動作中に変更することができる。
【0050】
他の実施形態では、電源134によって反応器112に供給される電流密度は、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、反応器タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸が生成されるように実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加が必要となり、亜硫酸水素ナトリウム溶液の投与後に、処理済み廃水のpHが4以下になるように、制御される。電流密度は、処理済み廃水の特定の特性について実験室で実施される試験を通して実験的に決定することもできるし、廃水処理中にデータ収集装置132を通して反応器タンク110内の含水遊離塩素のレベルを継続的に監視することによって決定することもできる。電極活性領域と同様に、電流密度が実験的に決定される場合、廃水処理の作動中は電流密度が通常一定に維持される一方、電流密度が廃水処理中に反応タンク内の含水遊離塩素のレベルを継続的に監視することに基づいて決定される場合、それは、検出された含水遊離塩素レベルに応じて、廃水処理の作動中に変化する。
【0051】
代替的実施形態では、電極活性領域のサイズと反応器に供給される電力の電流密度の両方が、廃水処理の終了までに生成される含水遊離塩素の総量が、反応器タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸が生成されるように実験的に決定された量の亜硫酸水素ナトリウムの添加が必要となり、亜硫酸水素ナトリウムの投与後に、処理済み廃水のpHが4以下になるように、同時に制御される。電極活性領域および電流密度の値は、処理される廃水の特定の特性について実験室で実施される試験を通じて実験的に決定することも、データ収集装置132による廃水処理中に反応器タンク110内の含水遊離塩素のレベルを継続的に監視することによって決定することもできる。上記の実施形態と同様に、電極活性領域のサイズおよび電流密度の値は、実験的に決定される場合には一定であってもよく、または、それらが、処理中に生成される含水遊離塩素の監視レベルに基づいている場合には、廃水処理操作中に変化してもよい。
【0052】
すべての実施形態において、本発明による亜硫酸水素ナトリウムの投与後に、反応タンク内で500~5,000mg/Lの濃度の塩酸を生成するのに必要な、および/または処理済み廃水のpHを4以下にするのに必要な、電極活性領域および/または反応器に供給される電力の電流密度は、廃水の排出要件が満たされるように汚染物質の濃度を低減させるよう廃水を処理するためだけに反応器に供給される電極活性領域および/または電流密度よりも高い。
【0053】
従来技術と比較した本システムおよび本方法の利点は、廃水の処理または処理済み廃水の安全な排出を保証するために必要とされない追加の化学溶液が、電極を洗浄するために廃水処理システムに加えられないことである。廃水システムでは、次亜塩素酸塩を塩酸と硫酸に中和して廃水の排出要件を満たすために、ここで記載されている量とは異なる量で、処理済み廃水に亜硫酸水素ナトリウムが添加されることが知られている。
【0054】
本発明の特定の要素、実施形態および応用例を図示し説明してきたが、当業者であれば本開示の精神および範囲から逸脱することなく、特に上述の示唆に照らして、修正を加えることができるため、本発明はこれらに限定されないことが理解されるであろう。このような修正は、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲内にあるとみなされる。
【0055】
上述の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。米国仮特許出願第63/177,274号(2021年4月20日に出願)を含む、本明細書で参照されている、および/または出願データシートに記載されている米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許公報のすべては、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。必要に応じて、実施形態の態様を変更して、さまざまな特許、出願および出版物の概念を使用して、さらなる実施形態を提供することができる。上記の詳細な説明を考慮して、実施形態に対してこれらおよび他の変更を加えることができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、明細書および特許請求の範囲に開示されている特定の実施形態に特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、このような特許請求の範囲が権利を有する同等物の全範囲とともに、すべての可能な実施形態を含むものと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されるものではない。
【国際調査報告】