(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】周辺視野撮像用広角レンズおよびカメラシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 13/06 20060101AFI20240405BHJP
G02B 13/04 20060101ALI20240405BHJP
G02B 5/00 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
G02B13/06
G02B13/04
G02B5/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564384
(86)(22)【出願日】2022-04-18
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 US2022025200
(87)【国際公開番号】W WO2022225841
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519424515
【氏名又は名称】アウル ラブス、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】マケーエフ、マクシム
(72)【発明者】
【氏名】シュニットマン、マーク、エス.
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュマン、トーマス、ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ナーゲルベルク、サラ
(72)【発明者】
【氏名】リコ、スーザン
【テーマコード(参考)】
2H042
2H087
【Fターム(参考)】
2H042AA06
2H042AA09
2H042AA22
2H087KA01
2H087LA07
2H087NA18
2H087PA08
2H087PA09
2H087PA17
2H087PB08
2H087PB09
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA26
2H087QA32
2H087QA41
2H087QA46
2H087RA32
2H087RA44
2H087UA01
(57)【要約】
【要約】
【解決手段】 光軸から離れて周辺視野に向かって配置された物体を撮像する広角レンズ。前記広角レンズは、物体から像空間に向かって順に配置される、第1のレンズ素子群と、開口絞りと、第2のレンズ素子群とを有する。前記第1のレンズ素子群は第1のレンズを有し、当該第1のレンズは、光の透過を低減するための遮光領域を有する表面を有する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視野の関心領域に配置された物体を撮像する広角レンズであって、
物体から像空間に向かって光軸に沿って順に、第1のレンズ素子群と、開口絞りと、第2のレンズ素子群とを有し、
前記第1のレンズ素子群は第1のレンズを含み、当該第1のレンズは遮光領域を有する表面を含むものであり、前記遮光領域は前記表面上に配置されて光の透過を低減するものであり、
前記遮光領域は、前記広角レンズを通って延びる光軸の周りに配置されるものである、
広角レンズ。
【請求項2】
請求項1記載の広角レンズにおいて、前記遮光領域は、当該領域を通る光の透過を実質的に阻止するものである、広角レンズ。
【請求項3】
請求項1記載の広角レンズにおいて、前記遮光領域は、当該領域を通る光の透過を部分的に阻止するものである、広角レンズ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記遮光領域は光吸収性である、広角レンズ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記遮光領域は光反射性である、広角レンズ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1のレンズの前記表面は所定の直径を有し、前記遮光領域は、前記第1のレンズの前記表面の直径の35%~90%、好ましくは38%~86%である直径を有するものである、広角レンズ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1のレンズの前記表面は所定の直径を有し、前記遮光領域は、前記第1のレンズの前記表面の直径の25%~60%、好ましくは29%~55%である直径を有するものである、広角レンズ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1のレンズの前記表面は、他のレンズ素子のいずれよりも物体空間に近接しているものである、広角レンズ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記関心領域は、前記光軸から少なくとも30°の第1の角度と、前記光軸から少なくとも75°の第2の角度との間に延長する環状円錐領域であり、前記第1および第2のレンズ素子群は、前記関心領域内に配置された物体を撮像するように構成されているものである、広角レンズ。
【請求項10】
請求項9記載の広角レンズにおいて、前記第2の角度は、前記第1の角度の少なくとも2倍である、広角レンズ。
【請求項11】
請求項9または10記載の広角レンズにおいて、前記第2の角度と前記第1の角度の比Rは、R=1.67:1~2.5:1の範囲である、広角レンズ。
【請求項12】
請求項11記載の広角レンズにおいて、前記レンズは、物体空間における前記第2の角度の光線が前記光軸から距離Hでレンズ像面と交差し、物体空間における第1の角度の光線が距離hでレンズ像面と交差し、H/h>R、または好ましくはH/h≧1.1xR、またはより好ましくはH/h≧1.5xRとなるように構成および構築されるものである、広角レンズ。
【請求項13】
請求項11または12記載の広角レンズにおいて、R=2である、広角レンズ。
【請求項14】
請求項9~13のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1の角度は45°である、広角レンズ。
【請求項15】
請求項9~13のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1の角度は50°である、広角レンズ。
【請求項16】
請求項9~13のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1の角度は55°であり、前記第2の角度は105°である、広角レンズ。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1および第2のレンズ素子群は、軸上の縦球面収差が前記関心領域全体における縦球面収差よりも大きくなる態様で、前記関心領域内に配置された物体を撮像するように構成されているものである、広角レンズ。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1および第2のレンズ素子群は、前記関心領域全体における縦球面収差が軸上の縦球面収差の半分未満になる態様で、前記関心領域内に配置された物体を撮像するように構成されているものである、広角レンズ。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1および第2のレンズ素子群は、軸上の接線光線の像面湾曲が前記関心領域全体における接線光線の像面湾曲よりも大きくなる態様で、前記関心領域内に配置された物体を撮像するように構成されているものである、広角レンズ。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1および第2のレンズ素子群は、前記関心領域全体における接線光線の像面湾曲が軸上の接線光線の像面湾曲の4分の1未満になる態様で、前記関心領域内に配置された物体を撮像するように構成されているものである、広角レンズ。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1および第2のレンズ素子群は、前記関心領域内のサジタル光線に対して187 lp/mmで少なくとも55%の変調伝達関数を有する態様で、前記関心領域内に配置された物体を撮像するように構成されているものである、広角レンズ。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1および第2のレンズ素子群は、前記関心領域内のサジタル光線に対して93 lp/mmで少なくとも76%の変調伝達関数を有する態様で、前記関心領域内に配置された物体を撮像するように構成されているものである、広角レンズ。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1および第2のレンズ素子群は、前記関心領域内のサジタル光線に対して187 lp/mmで少なくとも36%の変調伝達関数を有する態様で、前記関心領域内に配置された物体を撮像するように構成されているものである、広角レンズ。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1および第2のレンズ素子群は、前記関心領域内のサジタル光線に対して93 lp/mmで少なくとも65%の変調伝達関数を有する態様で、前記関心領域内に配置された物体を撮像するように構成されているものである、広角レンズ。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1および第2のレンズ素子群はすべて球面を有するものである、広角レンズ。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1のレンズ素子群は、4つまたは5つのレンズからなるものである、広角レンズ。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第2のレンズ素子群は、4つのレンズからなるものである、広角レンズ。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、有効焦点距離は1mmまたは1mm未満である、広角レンズ。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、F値は、2.4または2.4未満である、広角レンズ。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、Fシータ歪曲収差は、全視野において34%または34%未満である、広角レンズ。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、当該広角レンズの像面における主光線角度は、当該像面の表面の法線に対して4.5°未満である、広角レンズ。
【請求項32】
請求項1~31のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、背面焦点距離は1mmまたは1mm未満である、広角レンズ。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第1のレンズ素子群のうち、開口絞りに最も近接したレンズは、3次像面湾曲の補正に寄与するものである、広角レンズ。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記第2のレンズ素子群のうちの1つのレンズ素子は、3次像面湾曲の補正に寄与するものである、広角レンズ。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか1つに記載の広角レンズにおいて、前記関心領域内の視野の像面上への角度マッピングは実質的に線形である、広角レンズ。
【請求項36】
カメラシステムであって、
請求項1~35のいずれか1つに記載の広角レンズと、
前記広角レンズの背面焦点距離に配置された撮像面を有する画像センサと
を有する、カメラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広角レンズに関し、具体的には、これに限定されるものではないが、周辺視野に位置する物体を優先的に撮像するように構成されたレンズ、および当該レンズを組み込んだカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像光学系は、主対象物がその光軸上に位置することを想定して設計されているため、このような光学系のレンズは、光軸上で高品質の撮像を提供するように設計する必要があるという原理が撮像光学系の公理である。実際、光軸上での性能を向上させるために通常、視野端での光学性能の低下が許容されている。写真撮影、顕微鏡検査、天文学はすべて、観察者が、少なくとも1つの対象物が光軸上における視野の中心に配置されるように光学系の位置決めを試みることが多い分野の例である。
【0003】
これに対し、本出願人は、すべての対象物が光軸から離れて周辺視野に向かって配置される用途を考案した。その結果、本出願人は、光軸上性能を最適化した既存レンズは、その光軸上性能の不要な最適化に一部起因して、周辺視野の撮像には好適でないことを認識した。したがって、光軸上ではなく、周辺視野に配置された物体の撮像に最適化された広角レンズを提供することは、最先端技術の進歩であると考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの観点において、本発明は、周辺視野の関心領域に配置された物体を撮像する広角レンズを提供する。本発明による例示的な広角レンズは、物体から像空間に向かって光軸に沿って順に、第1のレンズ素子群と、開口絞りと、第2のレンズ素子群とを有する。前記関心領域は、前記光軸から少なくとも30°の第1の角度と、前記光軸から少なくとも75°の第2の角度との間に延長する環状円錐領域であり、前記第1および第2のレンズ素子群は、前記関心領域内に配置された物体を撮像するように構成されている。前記広角レンズは、前記第1の角度と前記第2の角度の比が、R=1.67:1~2.5:1の範囲であってよい。具体的には、前記第1の角度は50°であってよく、前記第2の角度は100°であってよい。前記レンズは、物体空間における前記第2の角度の光線が前記光軸から距離Hでレンズ像面と交差し、物体空間における第1の角度の光線が距離hでレンズ像面と交差し、H/h>R、または好ましくはH/h≧1.1xR、またはより好ましくはH/h≧1.5xRとなるように構成および構築することができる。前記関心領域内の視野の像面上への角度マッピングは実質的に線形であってもよい。
【0005】
前記第1および第2のレンズ素子群は、前記関心領域において特定の性能測定基準を有する態様で、前記関心領域内に配置された物体を撮像するように構成することができる。例えば、前記第1および第2のレンズ素子群が協働することで、前記関心領域全体における縦球面収差よりも大きい軸上の縦球面収差、軸上の縦球面収差の半分未満の前記関心領域全体における縦球面収差、前記関心領域全体における接線光線の像面湾曲よりも大きい軸上の接線光線の像面湾曲、および/または軸上の接線光線の像面湾曲の4分の1未満の前記関心領域全体における接線光線の像面湾曲を提供することができる。
【0006】
さらに、前記第1および第2のレンズ素子群が協働することで、前記関心領域内のサジタル光線に対して187 lp/mmで少なくとも55%の変調伝達関数、前記関心領域内のサジタル光線に対して93 lp/mmで少なくとも76%の変調伝達関数、前記関心領域内のサジタル光線に対して187 lp/mmで少なくとも36%の変調伝達関数、および/または前記関心領域内のサジタル光線に対して93 lp/mmで少なくとも65%の変調伝達関数を提供することができる。また、注目すべきことは、本発明による例示的な広角レンズは、非球面を使用せずに最適化することができる点であり、前記第1および第2のレンズ素子群はすべて球面を有することができる。前記第1および第2のレンズ素子群は4つまたは5つのレンズからなることができるが、前記第2のレンズ素子群は、4つのレンズからなってもよい。有効焦点距離は1mmまたは1mm未満であり、F値は、2.4または2.4未満であってもよい。
【0007】
別の観点において、本発明は、光軸にわたって150°を超える視野(FOV)角と、光軸にわたる中心半視野(FOV1/2)とを有する広角レンズを提供することができる。中心半視野(FOV1/2)と視野(FOV)との角度範囲の比は、FOV/FOV1/2=2とすることができ、前記レンズは、視野のイメージサークルの像面における直径(D1)と、中心半視野のイメージサークルの直径(D1/2)との比が、D1/D1/2>2となるように構成および配置することができる。また、当該比は、D1/D1/2≧2.2、好ましくはD1/D1/2≧2.5、より好ましくはD1/D1/2≧3とすることができる。前記レンズは、FOV1/2とFOVとの間に配置された関心領域を有してもよく、前記関心領域内の視野の像面上への角度マッピングは実質的に線形であってもよい。さらに、本発明は、本発明の広角レンズを有するカメラシステムを提供することができる。
【0008】
さらに別の観点において、本発明は、本発明による広角レンズの1若しくはそれ以上の選択された表面に中央遮光領域を提供することができ、この中央遮光領域は、例えば頭上の光から生じる眩輝を低減するのに有用である。前記中央遮光領域は、当該領域を通る光の透過を部分的または完全に阻止することができ、したがって、中央遮光領域(複数可)が適用されるレンズの表面(複数可)部分を透過する光を部分的または完全に阻止することができる。前記遮光領域は、上記で定義された関心領域を含まない中央領域にわたって延在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
前述した発明の概要および本発明の例示的な実施形態に関する詳細な説明は、添付の図面とともに解釈することでより良く理解される。
【
図1】
図1は、本発明による例示的な8つのレンズ素子を概略的に示す。
【
図2A】
図2A~
図2Cはそれぞれ、
図1のレンズについて計算された縦球面収差、像面湾曲、およびFシータ歪曲収差を示す。
【
図2B】
図2A~
図2Cはそれぞれ、
図1のレンズについて計算された縦球面収差、像面湾曲、およびFシータ歪曲収差を示す。
【
図2C】
図2A~
図2Cはそれぞれ、
図1のレンズについて計算された縦球面収差、像面湾曲、およびFシータ歪曲収差を示す。
【
図3】
図3は、
図1は、本発明による例示的な9つのレンズ素子を概略的に示す。
【
図4A】
図4A~
図4Cはそれぞれ、
図3のレンズについて計算された縦球面収差、像面湾曲、およびFシータ歪曲収差を示す。
【
図4B】
図4A~
図4Cはそれぞれ、
図3のレンズについて計算された縦球面収差、像面湾曲、およびFシータ歪曲収差を示す。
【
図4C】
図4A~
図4Cはそれぞれ、
図3のレンズについて計算された縦球面収差、像面湾曲、およびFシータ歪曲収差を示す。
【
図5】
図5は、
図3のレンズについて計算された変調伝達関数対視野を示す。
【
図6】
図3のレンズについて計算された多色回折変調伝達関数(polychromatic diffraction modulation transfer function)対空間周波数を示す。
【
図7】
図7は、
図3のレンズについて計算されたスポットダイアグラムを示す。
【
図8】
図8は、
図3のレンズについて計算された焦点変調伝達関数を介した多色回折対焦点シフトを示す。
【
図9】
図9は、
図3のレンズについて計算された像面の相対照度対視野を示す。
【
図10】
図10は、
図3のレンズについて計算されたレンズの主光線角度対視野を例示的な画像センサ(検出器)の目標主光線角度とともに示す。
【
図12】
図12~14は、本発明による例示的なレンズを概略的に示し、各レンズはそれぞれ、選択された表面に中央遮光領域を有する。
【
図13】
図12~14は、本発明による例示的なレンズを概略的に示し、各レンズはそれぞれ、選択された表面に中央遮光領域を有する。
【
図14】
図12~14は、本発明による例示的なレンズを概略的に示し、各レンズはそれぞれ、選択された表面に中央遮光領域を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に図を参照すると、全体的に同様の要素には同様の番号が付記されており、
図1および
図3は、本発明に従って視野の外側半分に向かって性能を最適化した例示的な広角レンズ100、200の構成の概略図を示す。レンズ100、200は、210°(光軸の両側に±105°)の広視野を有し、視野の関心領域内の光学性能のために最適化可能である。具体的には、関心領域は、周辺視野に配置された物体を撮像することを目的として、光軸から50°の位置で始まり、100°の位置まで延長する環状円錐領域で構成されてもよい。関心領域外(例えば、視野角0°~50°の間の円錐)の光学性能については緩和され、関心領域内における光学性能よりも劣る可能性がある。例えば、レンズ100、200の球面収差は、50°以下と比べると50°以上で良好に補正される。さらに、関心領域外の光学性能要件を緩和することにより、本出願人は、すべての光学面が球面である設計を実現し、それによって非球面に伴う製造上の複雑さおよびコストを回避することが可能となった。
【0011】
図1のレンズ100の構成をより具体的に説明すると、レンズ100は、開口絞りS11に対して物体側に配置された4つの光学素子L1~L4からなる第1の群と、開口絞りS11に対して像側に配置された4つの光学素子L6~L9からなる第2の群とを含み、表1に示す1次設計特性を有することができる。最初の2つのレンズL1、L2は、物体側に凸の表面を有するメニスカス型レンズであり、光線の入射角を小さくして光軸に対してより平行にするために、負の屈折力(negative power)を導入する。任意選択的に、表2および
図3に示すように、他のレンズL1~L3およびL6~L9は同一のまま、
図1のレンズ100のレンズL4を2つのレンズ素子L4a、L5に置き換えることができる。表1、2に示す光学ガラスは、米国ニューヨーク州エルムズフォードのショット ノース アメリカ社(Schott North America,Inc,Elmsford,NY,USA)のガラスを指し、Ndは波長587.6nmを指す。表1、2中の環状オレフィンコポリマー「COC」は、APEL(登録商標)環状オレフィンコポリマーAPL5014CL(三井化学株式会社、日本、東京)であってもよい。
【0012】
【0013】
【0014】
本発明による設計は、光学性能に関しては視野端まで延長される環状円錐領域から構成される関心領域における性能を重視しているため、光軸近傍の性能は低下する可能性がある。例えば、
図2A、
図4Aに示すように、従来の収差の定義の観点から言うと、縦球面収差は50°~100°の間の関心領域で良好に補正され、40μmの比較的大きな軸上球面収差は許容され得る。特に、縦球面収差は、関心領域内で好適に補正されるため、関心領域内の値は、軸上に存在する値の1/4未満にすることができる。同様に、特に接線光線(tangential rays)の像面湾曲は、
図2B、
図4Bに示すように、軸上では比較的大きくなるが、関心領域では最小限にすることができる。球面収差と同様に、関心領域における接線光線の像面湾曲は、軸上に存在する値の1/4未満にすることができる。特定の理論によって拘束されることを意図するものではないが、レンズ200のレンズ素子L5およびレンズ素子L7、L8を通して高次像面湾曲に補償を導入することにより、3次像面湾曲を補正することができると考えられる。Fシータ歪曲収差は、縦球面収差および像面湾曲とは異なり、補正しない場合、視野高さとともに増加する可能性があるが、全視野で34%未満になるように制限することができる。
【0015】
3次収差ではなく変調伝達関数(MTF)の観点から特定された、関心領域におけるMTFの例示的な目標値が表3に示されており、これらの値は、像面で使用する検出器に基づいて選択することができる。具体的には、検出器上の画素のサイズと間隔によって、変調伝達関数(MTF)の設計目標のためのナイキスト周波数を確立することができる。例えば、1.34μm x 1.34μmの画素サイズを有する例示的な検出器(OV16825 16メガピクセル、CameraChip(登録商標)センサ、OmniVision Technologies社、米国、カリフォルニア州、サンタクララ)の場合、ナイキスト周波数の1/4は93 lp/mmに対応し、ナイキスト周波数の1/2は187 lp/mmに対応する。
図3のレンズ200の設計について、変調伝達関数(MTF)の観点から計算した性能を
図5、
図6、
図8、および表4に示す。
図3のレンズ200の設計における性能をスポットダイアグラムの観点から
図7に示す。さらに、像面において検出器を適切に照射する能力は、相対照度の観点から
図9に示されており、80%の相対照度が105°まで維持されていることが示されている。この結果は、
図10に示す主光線角度の適切な制御と一致しており、この図では、レンズの主光線角度が視野の60%にわたって検出器の目標主光線角度に対して±2°に維持されることを示している。
【0016】
さらに、レンズ200の設計を含む本発明による設計は、関心領域(例えば、光軸から50°の位置で始まり、100°の位置まで延長する環状円錐領域)において線形であり、かつ、視野の関心領域がマッピングされる画像センサS20上の画素の数を最大化する態様で、検出器上への視野角のマッピングを最適化することを目標とする。特に、
図11は、関心領域上の視野が、画像センサS20の視野上に実質的に線形にマッピングされていることを示し、50°の視野がh=0.4の相対視野高さにマッピングされ、100°の視野がH=0.95の相対的な視野高さにマッピングされており、画像検出器上では、H/h=2.375の比率となる。また、画像センサー上に含まれる画素数もこの領域で最適化することができ、上述した例示的なセンサモデルOV16825の場合、50°~100°の間の視野内に配置される画素数は、おおよそ970画素であり、この画素数は、画像センサの画素によって構成される、1.34μm×1.34μmの格子構造の2つの直交方向のうちの1つ沿って計数される。この画素サイズの場合、970画素は1.3mm(970×1.34μm)に相当する。したがって、50°~100°の間の環状視野は、センサの格子構造の2つの直交軸のうちの1つ沿った約1.3mmの直線距離にマッピングされる。
【0017】
より一般的に特定すると、関心領域は、物体空間内の光軸から第1の角度と第2の角度との間に延在し、第2の角度と第1の角度との比はRであり、R=1.67:1~2.5:1の範囲内であってよい。レンズは、物体空間における第2の角度の光線が光軸から距離Hでレンズ像面と交差し、物体空間における第1の角度の光線が距離hでレンズ像面と交差し、H/h>R、または好ましくはH/h≧1.1xR、またはより好ましくはH/h≧1.5xRとなるように構成および構築することができる。
【0018】
関心領域の像面上への角度マッピングを特定する別の測定基準は、全視野(full field-of-view:FOV)、および半視野(half field-of-view:FOV1/2)、すなわちFOV/FOV1/2=2に関して提供することができる。レンズは、全視野のイメージサークルの像面における直径(D1)と、中心半視野(central half field-of-view)のイメージサークルの直径(D1/2)との比が、D1/D1/2>2となるように構成および配置することができる。また、D1/D1/2≧2.2、好ましくはD1/D1/2≧2.5、より好ましくはD1/D1/2≧3とすることができる。例えば、画像センサの画素センサ素子の75%以上を、50°~100°の間の環状視野に対応する画像領域に配置することができる。この場合もまた、関心領域内の視野の像面上への角度マッピングは、実質的に線形であってよい。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
図12~
図14に示すように、さらに別の観点において、本発明は、本発明による広角レンズ300、400それぞれの1若しくはそれ以上の選択された表面S1、S2、S3上に中央遮光領域(central obscuration)O1、O2、O3を提供することができる。中央遮光領域O1、O2、O3を通した光の透過は部分的にまたは完全に阻止されるため、遮光領域O1、O2、O3(複数可)が適用されるレンズ表面S1、S2、S3(複数可)の部分を通る光の透過を部分的にまたは完全に阻止することができる。例えば、遮光領域O1、O2、O3は、50%~100%、好ましくは80%~100%であってもよい。遮光領域O1、O2、O3は、光に対して光学的に吸収性および/または反射性であってもよい。また、遮光領域O1、O2、O3は、使用者が単に遮光領域を取外し、必要に応じて再度配置するなど、着脱自在および交換自在であってもよい。遮光領域O1、O2、O3は、段落[0004]~[0007]等において上記で定義した関心領域を含まない中央領域にわたって延長してもよい。例えば、中央遮光領域は、円形であり、像面から最も遠いレンズ素子L1の表面S1における光軸から最大30°の角度の光を遮断するように、光軸を中心として対称的に延長する。遮光領域O1、O2、O3は、像面から最も遠い(例えば、物体空間に最も近い)レンズ素子L1上および/またはレンズ素子L2上に提供することが望ましい。
【0025】
遮光領域の範囲は、遮光領域O1、O2、O3が提供されている表面S1、S2、S3における開口部の割合として表すこともできる。例えば、遮光領域O2がレンズ素子L1の表面S2に配置される場合、遮光領域O2の直径は、表面S2の直径の38%~86%の間であってもよい(
図12)。遮光領域O1がレンズ素子L1の表面S1に配置される場合、遮光領域O1の直径は、表面S1の直径の29%~55%の間であってもよい(
図13)。
【0026】
当業者であれば、本発明の上記の利点およびその他の利点は、前述の明細書から明らかであると考えられる。したがって、当業者であれば、本発明の広範な発明概念から逸脱することなく、上述の実施形態に変更または修正を行うことができることを認識すると考えられる。したがって、本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲および要旨の範囲内にあるすべての変更および修正を含むことを意図するものであることを理解されたい。さらに、添付の特許請求の範囲において使用される進行形の用語「有する(comprising)」および「からなる(consisting of)」は、記載されていない追加の請求項の要素または工程がある場合、そのような要素または工程が特許請求項の範囲から除外されるかどうかという観点から特許請求の範囲を定義する。「有する(comprising)」という用語は、包括的または無制限であることを意図しており、これによって記載されていない任意の追加的要素または材料は除外されない。「からなる(consisting of)」という用語は、特許請求の範囲に関連して使用および特定された要素または材料以外の任意の要素または材料を除外する。
【国際調査報告】