IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オメガ セラピューティックス, インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-516152混合カチオン性脂質粒子による組織特異的核酸送達
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】混合カチオン性脂質粒子による組織特異的核酸送達
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20240405BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240405BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240405BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/32
A61K47/28
A61K47/24
A61K47/34
A61K48/00
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/7115
A61K31/712
A61K31/7125
A61P1/16
A61P35/00
A61P31/20
A61P31/14
A61P7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564430
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 US2022025674
(87)【国際公開番号】W WO2022226139
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/178,050
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523231060
【氏名又は名称】オメガ セラピューティックス, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OMEGA THERAPEUTICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】パティル, ヴィシュウェシュ, アショク
(72)【発明者】
【氏名】サリソーゼン, ジャン
(72)【発明者】
【氏名】フェレイラ ゴメス コスタ, ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB13
4C076CC16
4C076DD49
4C076DD60
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE03
4C076EE23
4C076FF70
4C084AA13
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZB261
4C084ZB262
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA43
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA51
4C086ZA75
4C086ZB33
(57)【要約】
本開示は、イオン化可能脂質及びカチオン性脂質を混合する核酸-脂質粒子に関し、それらは、非経口投与された場合、関連するカーゴを優先的に局在させ、肝臓に送達し、任意選択で、関連するカーゴを、そのような粒子が直接注射される組織に送達するために使用され得る。本開示は、任意選択で、治療剤(例えば、治療用mRNA及び/又は核酸コントローラー系)と関連して、そのような脂質粒子を含む組成物、並びに本明細書に提供される脂質粒子組成物を使用して、対象において、脂質粒子関連治療剤を送達するため、及び/又は疾患又は障害、例えば、肝臓の疾患又は障害を治療するための方法及びキットを提供する。
【選択図】図7C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、前記核酸-脂質粒子が、
前記核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約10mol%~約50mol%を構成する1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約5mol%~約50mol%を構成するイオン化可能な脂質と、を含む、核酸-脂質粒子。
【請求項2】
前記イオン化可能な脂質が、1,1’-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)、N4-コレステリル-スペルミンHCl(GL67)、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノプロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5)、及びポリマー分岐ポリエチレンイミン(bPEI)からなる群から選択される、請求項1に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項3】
脂質-核酸粒子中に存在する前記総脂質の約25mol%~約85mol%を構成する1つ以上の非カチオン性脂質を含み、任意選択で、前記1つ以上の非カチオン性脂質が、コレステロール、β-シトステロール、及びそれらの誘導体からなる群から選択される構造的脂質を含む、請求項1又は2に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項4】
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約10mol%~約75mol%のコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体を含み、任意選択で、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約20mol%~約65mol%のコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体を含み、任意選択で、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約24mol%~約64mol%のコレステロール、又はその誘導体を含み、任意選択で、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約24mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約34mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約38mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約44mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約54mol%、及び前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約64mol%からなる群から選択されるレベルでコレステロール、β-シトステロール、又はその誘導体を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項5】
コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質を含み、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、前記脂質-核酸粒子中に存在する前記総脂質の約5mol%~約50mol%を構成し、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、前記脂質-核酸粒子中に存在する前記総脂質の約5mol%~約30mol%を構成し、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、前記脂質-核酸粒子中に存在する前記総脂質の約5mol%~約10mol%を構成する、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項6】
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約6mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約7mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約7.5mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約8mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約9mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約10mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約16mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約26mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約36mol%、及び前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約46mol%からなる群から選択されるレベルで、コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項7】
前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、及び1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)からなる群から選択される非カチオン性脂質を含み、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)である、請求項5又は6に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項8】
前記核酸-脂質粒子が、PEG-脂質コンジュゲートを含まず、任意選択で、前記核酸-脂質粒子が、PEGを含まない、請求項1に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項9】
前記核酸-脂質粒子が、複数回用量療法の構成要素である、請求項8に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項10】
存在する前記総脂質の0.01~3%を構成する、粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質を含み、任意選択で、前記コンジュゲート脂質が、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートを含み、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートの前記PEGが、550ダルトン~3000ダルトンの平均分子量を有し、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、PEG2000-脂質コンジュゲートであり、任意選択で、前記PEG2000-脂質コンジュゲートが、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)及び1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DSG-PEG2k)のうちの1つ以上を含み、任意選択で、前記PEG2000-脂質コンジュゲートが、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)であり、任意選択で、前記核酸-脂質粒子が、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約0.5mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約1.0mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約1.5mol%、及び前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約2.0mol%からなる群から選択されるレベルで、PEG-脂質コンジュゲートを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項11】
前記核酸カーゴが、合成若しくは天然に生じるRNA若しくはDNA、又はそれらの誘導体を含み、任意選択で、前記核酸カーゴが、修飾RNAであり、任意選択で、前記修飾RNAが、修飾mRNA、修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド、及び修飾siRNAからなる群から選択され、任意選択で、前記修飾mRNAが、核酸調節コントローラーをコードする、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項12】
前記核酸カーゴが、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、5’-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、コレステリル誘導体に連結した末端ヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、5’-メトキシ修飾ヌクレオチド(例えば、5’-メトキシウリジン)、2’-デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、2’-アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミデート、ヌクレオチドを含む非天然塩基;ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネートを含むメチル及び他のアルキルホスホネート、及びキラルホスホネートを含む、ヌクレオシド間連結又は主鎖、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミデート及びアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、及び正常な3’-5’連結を有するボラノホスフェート、これらの2’-5’連結類似体、並びに隣接するヌクレオシド単位の対が3’-5’から5’-3’又は2’-5’から5’-2’に連結している反転極性を有するものからなる群から選択される1つ以上の修飾を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項13】
前記肝臓組織が、肝細胞、血管細胞(すなわち、肝類洞)、肝星細胞、内皮細胞、線維芽細胞、間葉細胞、免疫細胞、がん細胞、クッパー細胞、星細胞、楕円形血管内皮細胞、肝臓由来幹細胞/前駆細胞、及び非肝臓組織由来の幹細胞/前駆細胞又はがん細胞からなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項14】
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約10mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約20mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約30mol%、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約40mol%、及び前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約50mol%からなる群から選択されるレベルでDOTAPを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項15】
核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、前記核酸-脂質粒子が、
前記核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約50mol%を構成する1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約18mol%を構成するイオン化可能な脂質と、を含む、核酸-脂質粒子。
【請求項16】
前記イオン化可能な脂質が、1,1’-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)である、請求項15に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項17】
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約24molでコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体を含み、任意選択で、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約6mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質を更に含み、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)であり、任意選択で、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートを更に含み、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約2.0mol%を構成し、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)である、請求項15又は16に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項18】
核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、前記核酸-脂質粒子が、
前記核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約40mol%を構成する1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約18mol%を構成するイオン化可能な脂質と、を含む、核酸-脂質粒子。
【請求項19】
前記イオン化可能な脂質が、1,1‘-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)である、請求項18に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項20】
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約24mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体を含み、任意選択で、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約16mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質を更に含み、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)であり、任意選択で、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートを更に含み、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約2.0mol%を構成し、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)である、請求項18又は19に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項21】
核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、前記核酸-脂質粒子が、
前記核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約30mol%を構成する1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約18mol%を構成するイオン化可能な脂質と、を含む、核酸-脂質粒子。
【請求項22】
前記イオン化可能な脂質が、1,1‘-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)である、請求項21に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項23】
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約24mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体を含み、任意選択で、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約26mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質を更に含み、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)であり、任意選択で、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートを更に含み、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約2.0mol%を構成し、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)である、請求項21又は22に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項24】
核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、前記核酸-脂質粒子が、
前記核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約20mol%を構成する1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約18mol%を構成するイオン化可能な脂質と、を含む、核酸-脂質粒子。
【請求項25】
前記イオン化可能な脂質が、1,1‘-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)である、請求項24に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項26】
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約24mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体を含み、任意選択で、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約36mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質を更に含み、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)であり、任意選択で、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートを更に含み、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約2.0mol%を構成し、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)である、請求項24又は25に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項27】
核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、前記核酸-脂質粒子が、
前記核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約10mol%を構成する1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約18mol%を構成するイオン化可能な脂質と、を含む、核酸-脂質粒子。
【請求項28】
前記イオン化可能な脂質が、1,1‘-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)である、請求項27に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項29】
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約24mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体を含み、任意選択で、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約46mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質を更に含み、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)であり、任意選択で、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートを更に含み、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約2.0mol%を構成し、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)である、請求項27又は28に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項30】
核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、前記核酸-脂質粒子が、
前記核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約50mol%を構成する1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約18mol%を構成するイオン化可能な脂質と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約7.0mol%で存在するコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質と、を含む、核酸-脂質粒子。
【請求項31】
前記イオン化可能な脂質が、1,1‘-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)である、請求項30に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項32】
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約24mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体を含み、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)であり、任意選択で、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートを更に含み、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約1.0mol%を構成し、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)である、請求項30又は31に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項33】
核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、前記核酸-脂質粒子が、
前記核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約50mol%を構成する1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約18mol%を構成するイオン化可能な脂質と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約7.5mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質と、を含む、核酸-脂質粒子。
【請求項34】
前記イオン化可能な脂質が、1,1‘-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)である、請求項33に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項35】
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約24mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体を更に含み、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)であり、任意選択で、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートを更に含み、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約0.5mol%を構成し、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)である、請求項33又は34に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項36】
核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、前記核酸-脂質粒子が、
前記核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約50mol%を構成する1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約18mol%を構成する、イオン化可能な脂質と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約8.0mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質と、を含む、核酸-脂質粒子。
【請求項37】
前記イオン化可能な脂質が、1,1‘-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)である、請求項36に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項38】
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約24mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体を更に含み、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)であり、任意選択で、前記核酸-脂質粒子が、PEG-脂質コンジュゲートを含まず、任意選択で、前記核酸-脂質粒子が、PEGを含まない、請求項36又は37に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項39】
核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、前記核酸-脂質粒子が、
前記核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約40mol%を構成する1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約18mol%を構成するイオン化可能な脂質と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約34mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体と、を含む、核酸-脂質粒子。
【請求項40】
前記イオン化可能な脂質が、1,1‘-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)である、請求項39に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項41】
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約6.0mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外1つ以上の非カチオン性脂質を更に含み、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)であり、任意選択で、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートを更に含み、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約2.0mol%を構成し、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)である、請求項39又は40に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項42】
核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、前記核酸-脂質粒子が、
前記核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約30mol%を構成する1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約18mol%を構成するイオン化可能な脂質と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約44mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体と、を含む、核酸-脂質粒子。
【請求項43】
前記イオン化可能な脂質が、1,1‘-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)である、請求項42に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項44】
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約6.0mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外1つ以上の非カチオン性脂質を更に含み、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)であり、任意選択で、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートを更に含み、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約2.0mol%を構成し、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)である、請求項42又は43に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項45】
核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、前記核酸-脂質粒子が、
前記核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約20mol%を構成する1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約18mol%を構成するイオン化可能な脂質と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約54mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体と、を含む、核酸-脂質粒子。
【請求項46】
前記イオン化可能な脂質が、1,1‘-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)である、請求項45に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項47】
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約6.0mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外1つ以上の非カチオン性脂質を更に含み、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)であり、任意選択で、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートを更に含み、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約2.0mol%を構成し、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)である、請求項45又は46に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項48】
核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、前記核酸-脂質粒子が、
前記核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約10mol%を構成する1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約18mol%を構成するイオン化可能な脂質と、
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約64mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体と、を含む、核酸-脂質粒子。
【請求項49】
前記イオン化可能な脂質が、1,1‘-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)である、請求項48に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項50】
前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約6.0mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外1つ以上の非カチオン性脂質を更に含み、任意選択で、前記コレステロール、β-シトステロール、又はそれの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)であり、任意選択で、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートを更に含み、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、前記核酸-脂質粒子中に存在する前記総脂質の約2.0mol%を構成し、任意選択で、前記PEG-脂質コンジュゲートが、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)である、請求項48又は49に記載の核酸-脂質粒子。
【請求項51】
先行請求項のいずれか一項に記載の核酸-脂質粒子と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項52】
前記医薬組成物が、非経口投与のために、任意選択で、静脈内注射のために製剤化される、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記医薬組成物が、前記肝臓組織への直接注射のために製剤化される、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記核酸-脂質粒子又は医薬組成物が、肝臓の疾患又は障害を治療するために投与され、任意選択で、前記疾患又は障害が、胆道閉鎖症、アラジール症候群、アルファ1アンチトリプシン欠乏症、チロシン血症、新生児肝炎、C型肝炎ウイルス感染症、B型肝炎ウイルス感染症、A型肝炎ウイルス感染症、肝細胞がん腫、及びウィルソン病からなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸-脂質粒子又は医薬組成物。
【請求項55】
先行請求項のいずれか一項に記載の核酸-脂質粒子、医薬組成物、又はPEGを含まない脂質-核酸粒子を含む、注射物。
【請求項56】
核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための方法であって、先行請求項のいずれか一項に記載の核酸-脂質粒子、医薬組成物、又は注射物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項57】
対象において疾患又は障害を治療又は予防するための方法であって、前記方法が、請求項1~55のいずれか一項に記載の核酸-脂質粒子、医薬組成物、又は注射物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項58】
前記核酸-脂質粒子、医薬組成物、又は注射物が、静脈内投与され、前記対象の前記肝臓組織の細胞における前記核酸カーゴの発現が、前記対象の肺、心臓、及び脾臓の細胞における前記核酸カーゴの発現よりも少なくとも2倍高いレベルで生じ、任意選択で、前記対象の前記肝臓組織の細胞における前記核酸カーゴの発現が、前記対象の肺、心臓、及び脾臓の細胞における前記核酸カーゴの発現よりも少なくとも3倍高く、任意選択で、少なくとも4倍高く、任意選択で、少なくとも5倍高く、任意選択で、少なくとも6倍高く、任意選択で、少なくとも7倍高く、任意選択で、少なくとも8倍高く、任意選択で、少なくとも9倍高く、任意選択で、少なくとも10倍高く、任意選択で、少なくとも11倍高く、任意選択で、少なくとも12倍高く、任意選択で、少なくとも13倍高く、任意選択で、少なくとも14倍高く、任意選択で、少なくとも15倍高く、任意選択で、少なくとも20倍高い、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
前記核酸-脂質粒子、医薬組成物、又は注射物が、静脈内投与され、前記核酸-脂質粒子が、肺、心臓、脾臓、卵巣、及び膵臓からなる群から選択される前記対象の1つ以上の他の組織における前記核酸-脂質粒子の濃度よりも少なくとも2倍高い濃度で、前記対象の前記肝臓組織に局在し、任意選択で、肺、心臓、脾臓、卵巣、及び膵臓からなる群から選択される前記対象の1つ以上の他の組織と比較して、少なくとも3倍、任意選択で、少なくとも4倍、任意選択で、少なくとも5倍、任意選択で、少なくとも6倍高い濃度の前記核酸-脂質粒子が、肝臓において存在する、請求項56~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記疾患又は障害が、
肝臓の疾患又は障害であって、任意選択で、前記肝臓の疾患又は障害が、胆道閉鎖症、アラジール症候群、アルファ1アンチトリプシン欠乏症、チロシン血症、新生児肝炎、C型肝炎ウイルス感染症、B型肝炎ウイルス感染症、A型肝炎ウイルス感染症、肝細胞がん腫、及びウィルソン病からなる群から選択される、肝臓の疾患又は障害、
関節の疾患又は障害であって、任意選択で、前記関節の疾患又は障害が、関節リウマチ、乾癬性関節炎、痛風、腱炎、滑液包炎、手根管症候群、及び変形性関節症からなる群から選択される、関節の疾患又は障害、
炎症性の疾患又は障害であって、任意選択で、前記炎症性の疾患又は障害が、炎症性腸疾患、腹膜炎、骨髄炎、悪液質、膵炎、外傷誘導性ショック、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、嚢胞性線維症、急性気管支炎、急性極気管支炎(acute intense bronchitis)、変形性関節症、関節リウマチ、感染性関節炎、感染後関節炎、生殖腺内腔(gonocoele)関節炎、結核性関節炎、関節炎、変形性関節症、痛風、脊椎関節症、強直性脊椎炎、血管炎症候群に関連する関節炎、神経性結節性多発性動脈炎、過敏性血管炎、ルゲニック(rugenic)肉芽腫症、リウマチ性ポリープ症筋肉痛、関節炎細胞性動脈炎、カルシウム多発性嚢胞性関節症、苛性痛風(caustic gout)、非関節性リウマチ、滑液包炎、花粉症、化膿性炎症(例えば、テニス肘)、神経障害性関節疾患、出血性関節症(hemarthrosic)、Henoch-Schlein紫斑、肥大性変形性関節症、多サイズ痔核、脊柱側弯症、ヘモクロマトーシス、高リポタンパク血症、低ガンマグロブリン血症、COPD、急性呼吸窮迫症候群、急性肺損傷、気管支肺異形成、及び全身性エリテマトーデス(SLE)からなる群から選択される、炎症性の疾患又は障害、並びに
表皮の疾患又は障害であって、任意選択で、前記表皮の疾患又は障害が、乾癬、アトピー性皮膚炎、強皮症、湿疹、酒さ、脂漏性皮膚炎、黒色腫、日光性角化症、魚鱗癬、グローバー病、尋常性疣贅、角化棘細胞腫、及び脂漏性角化症からなる群から選択される、表皮の疾患又は障害からなる群から選択される、請求項57~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記核酸-脂質粒子、医薬組成物、又は注射物が、非経口投与され、任意選択で、前記核酸-脂質粒子、医薬組成物、又は注射物が、吸入、局所適用、及び注射からなる群から選択される経路を介して投与され、任意選択で、前記注射が、静脈内注射、気管内注射、関節内注射、皮下注射、皮内注射、及び筋肉内注射からなる群から選択される、請求項56~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記核酸カーゴが、合成若しくは天然に生じるRNA若しくはDNA、又はそれらの誘導体を含み、任意選択で、前記核酸カーゴが、修飾RNAであり、任意選択で、前記修飾RNAが、修飾mRNA、修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド、及び修飾siRNAからなる群から選択され、任意選択で、前記修飾mRNAが、核酸調節コントローラーをコードする、請求項56~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記核酸カーゴが、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、5’-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、コレステリル誘導体に連結した末端ヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、5’-メトキシ修飾ヌクレオチド(例えば、5’-メトキシウリジン)、2’-デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、2’-アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミデート、ヌクレオチドを含む非天然塩基;ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネートを含むメチル及び他のアルキルホスホネート、及びキラルホスホネートを含む、ヌクレオシド間連結又は主鎖、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミデート及びアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、及び正常な3’-5’連結を有するボラノホスフェート、これらの2’-5’連結類似体、並びに隣接するヌクレオシド単位の対が3’-5’から5’-3’又は2’-5’から5’-2’に連結している反転極性を有するものからなる群から選択される1つ以上の修飾を含む、請求項56~62のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月22日に出願された「Tissue-Specific Nucleic Acid Delivery by Mixed Cationic Lipid Particles」と題された米国仮特許出願第63/178,050号に関連し、米国特許法第119条(e)の下で優先権を主張する。前述の特許出願の全内容は、この参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、核酸ベースの療法を施すのに有用な脂質ベースの組成物及び方法に関する。具体的に、本開示は、対象の肝臓組織の疾患若しくは障害を含む又は対象の肝臓組織に関与する、対象の疾患及び障害の治療又は予防を含む、対象への核酸の送達のための混合カチオン性/イオン化可能な脂質粒子に関する。
【背景技術】
【0003】
肝臓の疾患は、世界中で年間およそ200万人の死亡の原因であり、それには、肝硬変、ウイルス性肝炎及び肝細胞がん腫(HCC)の合併症による約100万人以上の死亡が含まれる。肝硬変及び肝がんは、世界中の全ての死亡のほぼ3.5%を占める。肝移植は、2番目に普及している固形臓器移植であり、多くの肝臓状態に対処するための最後の頼りの治療的選択として使用されるが、残念ながら、現在、満たされているのは、世界の移植ニーズの10%未満である。肝移植ニーズを遅らせるか、又は予防することにさえ役立つことができる肝臓の疾患及び障害のためのいくつかの治療が存在するが、そのような既知の治療は、決して完全に回復するものではなく、この分野での主要な課題は、依然として、治療された対象に過度に害を及ぼすことなく肝臓の疾患を効果的に治療する治療薬を開発することである。
【0004】
核酸療法は、個々の標的化された遺伝子のレベルで疾患の治療に多大な可能性を提供する。しかしながら、核酸治療薬の期待を最大限に実現するためには、安全かつ効果的な送達系が不可欠である。全ての臓器及び組織への核酸治療薬の非特異的送達は、多くの場合、オフサイト(非標的化された、及び/又はオフターゲット)効果及び毒性をもたらす可能性がある。特定の作用が望ましい目的の臓器又は組織への核酸治療薬の優先的な送達は、具体的には、薬物送達及び核酸ベースの薬剤の送達の継続的な目標である。身体の他の部分に害を与えることなく、病気の原因のみを標的にするという概念は、120年前にEhrlichによって説明された。しかしながら、リガンドベースの標的化戦略を導入することなく特定の組織を標的とすることができるナノ粒子送達系の選択肢は依然として実質的に存在しない(後者は「活性標的化」とも称される)。したがって、当該技術分野では、(リガンドベースの活性標的化戦略によってではなく)そのような製剤の構造的な構成要素のみに基づいて核酸カーゴの臓器特異的送達を達成することができるビヒクルに対する、これまでに満たされていないニーズがある。具体的には、肝臓は遺伝子療法のための主要な標的臓器であるため、当該技術分野では、核酸カーゴを肝臓に選択的に送達することができるそのようなビヒクルに対する特定のニーズも存在する。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、少なくとも部分的に、リガンドベースの標的化戦略を必要とすることなく、対象の肝臓及び肝臓組織へカーゴ部分(例えば、核酸カーゴ)を特異的に標的化することができる脂質ベースのナノ粒子組成物及び製剤の特定に基づいている。具体的には、本開示は、カチオン性脂質DOTAP(1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン)を含有する核酸-脂質粒子製剤への第2のイオン化可能な、又はカチオン性脂質の導入が、そのような粒子製剤を、核酸カーゴの送達において肝臓特異的であるように効果的にシフトさせ、粒子処置された対象の肝臓細胞の核への大きな核酸調節コントローラーカーゴの送達さえも堅牢に達成することができるという驚くべき発見に関する。DOTAP含有粒子内のイオン化可能な脂質C12-200(1,1’-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール))の包含(それによって混合カチオン性脂質粒子を形成する)が、LNPにおける更なる活性標的化構成要素を必要とすることなく、ベクターの指向性を肝臓組織に特異的にシフトさせることが本明細書で具体的に見出され、MC3含有脂質粒子(核酸カーゴの肝臓への選択的送達を達成するために当技術分野で以前に記載されている)とさえ比較しても改善が見られる。したがって、本開示は、とりわけ、例えば、核酸調節コントローラー、治療用mRNA、並びにRNA干渉(RNAi)及びアンチセンス剤(siRNA、miRNAなど)を含むそのような核酸カーゴを用いて、全身投与時(例えば、静脈内(IV)注射を介して)に選択的に肝臓に核酸カーゴを効果的に送達することができる脂質粒子を提供する。
【0006】
一態様では、本開示は、核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、核酸-脂質粒子が、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約10mol%~約50mol%で1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)と、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約5mol%~約50mol%でイオン化可能な脂質と、を含む、核酸-脂質粒子を提供する。
【0007】
一実施形態では、イオン化可能な脂質は、1,1’-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)、N4-コレステリル-スペルミンHCl(GL67)、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノプロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5)、及び/又はポリマー分岐ポリエチレンイミン(bPEI)である。
【0008】
ある特定の実施形態では、粒子は、脂質-核酸粒子中に存在する総脂質の約25mol%~約85mol%で存在する1つ以上の非カチオン性脂質を含む。任意選択で、1つ以上の非カチオン性脂質は、構造的脂質、例えば、コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの1つ以上の誘導体を含む。
【0009】
実施形態では、粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約10mol%~約75mol%で存在するコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの1つ以上の誘導体を含む。任意選択で、粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約20mol%~約65mol%で存在するコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの1つ以上の誘導体を含む。任意選択で、粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約24mol%~約64mol%で存在するコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの1つ以上の誘導体を含む。任意選択で、粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約24mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約34mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約38mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約44mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約54mol%、又は核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約64mol%で、コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの1つ以上の誘導体を含む。
【0010】
一実施形態では、粒子は、コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質を含む。任意選択で、コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質は、脂質-核酸粒子中に存在する総脂質の約5mol%~約50mol%で存在する。任意選択で、コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質は、脂質-核酸粒子中に存在する総脂質の約5mol%~約30mol%で存在する。任意選択で、コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質は、脂質-核酸粒子中に存在する総脂質の約5mol%~約10mol%で存在する。
【0011】
ある特定の実施形態では、粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約6mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約7mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約7.5mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約8mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約9mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約10mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約16mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約26mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約36mol%、又は核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約46mol%のレベルで、コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質を含む。
【0012】
実施形態では、コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、及び/又は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である。任意選択で、コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質は、DOPEである。
【0013】
一実施形態では、核酸-脂質粒子は、PEG-脂質コンジュゲートを含まない。任意選択で、核酸-脂質粒子は、PEGを含まない。
【0014】
ある特定の実施形態では、核酸-脂質粒子は、複数回用量療法の構成要素である。
【0015】
実施形態では、粒子は、存在する総脂質の0.01~3%で存在する、粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質を含む。任意選択で、コンジュゲート脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)脂質コンジュゲートであるか、又はそれを含む。任意選択で、PEG-脂質コンジュゲートのPEGは、550ダルトン~3000ダルトンの平均分子量を有する。任意選択で、PEG-脂質コンジュゲートは、PEG2000-脂質コンジュゲートである。任意選択で、PEG2000-脂質コンジュゲートは、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)及び1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DSG-PEG2k)のうちの1つ以上であるか、又はそれらを含む。任意選択で、PEG2000-脂質コンジュゲートは、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)である。任意選択で、核酸-脂質粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約0.5mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約1.0mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約1.5mol%、又は核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約2.0mol%のレベルでPEG-脂質コンジュゲートを含む。
【0016】
一実施形態では、核酸カーゴは、合成若しくは天然に生じるRNA若しくはDNA、又はそれらの誘導体であるか、又はそれらを含む。任意選択で、核酸カーゴは、修飾RNAである。任意選択で、修飾RNAは、修飾mRNA、修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド、及び/又は修飾siRNAである。任意選択で、修飾mRNAは、核酸調節コントローラーをコードする。
【0017】
実施形態では、核酸カーゴは、以下の修飾のうちの1つ以上を含む:2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、5’-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、コレステリル誘導体に連結した末端ヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、5’-メトキシ修飾ヌクレオチド(例えば、5’-メトキシウリジン)、2’-デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、2’-アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミデート、ヌクレオチドを含む非天然塩基;ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネートを含むメチル及び他のアルキルホスホネート、及びキラルホスホネートを含む、ヌクレオシド間連結又は主鎖、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミデート及びアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、及び正常な3’-5’連結を有するボラノホスフェート、これらの2’-5’連結類似体、並びに隣接するヌクレオシド単位の対が3’-5’から5’-3’又は2’-5’から5’-2’に連結している反転極性を有するもの。
【0018】
ある特定の実施形態では、肝臓組織は、肝細胞、血管細胞(すなわち、肝類洞)、肝星細胞、内皮細胞、線維芽細胞、間葉細胞、免疫細胞、がん細胞、クッパー細胞、星細胞、楕円形血管内皮細胞、肝臓由来幹細胞/前駆細胞、及び/又は非肝臓組織由来の幹細胞/前駆細胞若しくはがん細胞であるか、又はそれらを含む。
【0019】
一実施形態では、粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約10mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約20mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約30mol%、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約40mol%、又は核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約50mol%のレベルでDOTAPを含む。
【0020】
本開示の別の態様は、核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、核酸-脂質粒子が、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約50mol%でDOTAPと、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約18mol%で存在するイオン化可能な脂質と、を含む、核酸-脂質粒子を提供する。
【0021】
一実施形態では、イオン化可能な脂質は、1,1‘-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200)である。
【0022】
ある特定の実施形態では、粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約24mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体を更に含む。任意選択で、粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約6mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質を更に含む。任意選択で、コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質は、DOPEである。任意選択で、粒子は、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲートを更に含む。任意選択で、PEG-脂質コンジュゲートは、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約2.0mol%を含む。任意選択で、PEG-脂質コンジュゲートは、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)である。
【0023】
本開示の追加の態様は、核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、核酸-脂質粒子が、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約40mol%でDOTAPと、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約18mol%で存在するイオン化可能な脂質と、を含む、核酸-脂質粒子を提供する。
【0024】
ある特定の実施形態では、粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約16mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質を更に含む。
【0025】
本開示の一態様は、核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、核酸-脂質粒子が、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約30mol%でDOTAPと、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約18mol%で存在するイオン化可能な脂質と、を含む、核酸-脂質粒子を提供する。
【0026】
一実施形態では、粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約26mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質を更に含む。
【0027】
本開示の別の態様は、核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、核酸-脂質粒子が、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約20mol%でDOTAPと、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約18mol%で存在するイオン化可能な脂質と、を含む、核酸-脂質粒子を提供する。
【0028】
一実施形態では、粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約36mol%でコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質を更に含む。
【0029】
本開示の更なる態様は、核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、核酸-脂質粒子が、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約10mol%でDOTAPと、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約18mol%で存在するイオン化可能な脂質と、を含む、核酸-脂質粒子を提供する。
【0030】
一実施形態では、粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約46mol%で存在するコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質を更に含む。
【0031】
本開示の追加の態様は、核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、核酸-脂質粒子が、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約50mol%でDOTAPと、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約18mol%で存在するイオン化可能な脂質と、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約7.0mol%で存在するコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質と、を含む、核酸-脂質粒子を提供する。
【0032】
一実施形態では、粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約1.0mol%でPEG-脂質コンジュゲートを更に含む。
【0033】
本開示の別の態様は、核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、核酸-脂質粒子が、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約50mol%でDOTAPと、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約18mol%で存在するイオン化可能な脂質と、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約7.5mol%で存在するコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質と、を含む、核酸-脂質粒子を提供する。
【0034】
一実施形態では、粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約0.5mol%でPEG-脂質コンジュゲートを更に含む。
【0035】
本開示の更なる態様は、核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、核酸-脂質粒子が、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約50mol%でDOTAPと、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約18mol%で存在するイオン化可能な脂質と、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約8.0mol%で存在するコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質と、を含む、核酸-脂質粒子を提供する。
【0036】
一実施形態では、粒子は、PEG-脂質コンジュゲートを含まない。任意選択で、核酸-脂質粒子は、PEGを含まない。
【0037】
本開示の追加の態様は、核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、核酸-脂質粒子が、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約40mol%でDOTAPと、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約18mol%で存在するイオン化可能な脂質と、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約34mol%で存在するコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体と、を含む、核酸-脂質粒子を提供する。
【0038】
ある特定の実施形態では、核酸-脂質粒子は、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約6.0mol%で存在するコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体以外の1つ以上の非カチオン性脂質を更に含む。
【0039】
本開示の別の態様は、核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、核酸-脂質粒子が、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約30mol%でDOTAPと、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約18mol%で存在するイオン化可能な脂質と、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約44mol%で存在するコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体と、を含む、核酸-脂質粒子を提供する。
【0040】
本開示の更なる態様は、核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、核酸-脂質粒子が、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約20mol%でDOTAPと、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約18mol%で存在するイオン化可能な脂質と、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約54mol%で存在するコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体と、を含む、核酸-脂質粒子を提供する。
【0041】
本開示の追加の態様は、核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための核酸-脂質粒子であって、核酸-脂質粒子が、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約10mol%でDOTAPと、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約18mol%で存在するイオン化可能な脂質と、核酸-脂質粒子中に存在する総脂質の約64mol%で存在するコレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体と、を含む、核酸-脂質粒子を提供する。
【0042】
別の態様では、本開示は、本開示の核酸-脂質粒子を含む、医薬組成物を提供する。
【0043】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、非経口投与のために製剤化される。任意選択で、医薬組成物は、静脈内注射のために製剤化される。
【0044】
実施形態では、医薬組成物は、肝臓組織への直接注入のために製剤化される。
【0045】
一実施形態では、肝臓の疾患又は障害の治療を必要とする対象においてそれを行うために、本開示の核酸-脂質粒子又は医薬組成物を投与する。任意選択で、肝臓の疾患又は障害は、胆道閉鎖症、アラジール症候群、アルファ1アンチトリプシン欠乏症、チロシン血症、新生児肝炎、C型肝炎ウイルス感染症、B型肝炎ウイルス感染症、A型肝炎ウイルス感染症、肝細胞がん腫、及び/又はウィルソン病である。
【0046】
本開示の別の態様は、本開示の核酸-脂質粒子又は医薬組成物を含む、注射物を提供する。
【0047】
本開示の追加の態様は、核酸カーゴを対象の肝臓組織に送達するための方法であって、本開示の核酸-脂質粒子、医薬組成物、又は注射物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0048】
本開示の更なる態様は、対象における疾患又は障害を治療又は予防するための方法であって、本開示の核酸-脂質粒子、医薬組成物、又は注射物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0049】
実施形態では、核酸-脂質粒子、医薬組成物、又は注射物は、静脈内投与され、対象の肝臓組織の細胞における核酸カーゴの発現が、対象の肺、心臓、脾臓、卵巣、膵臓、腎臓、及び/又は他の臓器若しくは組織の細胞における核酸カーゴの発現よりも少なくとも2倍高いレベルで生じる。任意選択で、対象の肝臓組織の細胞における核酸カーゴの発現が、対象の肺、心臓、脾臓、卵巣、膵臓、及び/又は腎臓の細胞における核酸カーゴの発現よりも少なくとも3倍高く、任意選択で、少なくとも4倍高く、任意選択で、少なくとも5倍高く、任意選択で、少なくとも6倍高く、任意選択で、少なくとも7倍高く、任意選択で、少なくとも8倍高く、任意選択で、少なくとも9倍高く、任意選択で、少なくとも10倍高く、任意選択で、少なくとも11倍高く、任意選択で、少なくとも12倍高く、任意選択で、少なくとも13倍高く、任意選択で、少なくとも14倍高く、任意選択で、少なくとも15倍高く、任意選択で、少なくとも20倍高い。
【0050】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸-脂質粒子、医薬組成物、又は注射物は、静脈内投与され、核酸-脂質粒子は、対象の以下の他の組織、肺、心臓、脾臓、卵巣、及び膵臓のうちの1つ以上における核酸-脂質粒子の濃度よりも少なくとも2倍高い濃度で対象の肝臓組織に局在する。任意選択で、対象の以下の他の組織、肺、心臓、脾臓、卵巣、及び/又は膵臓のうちの1つ以上における核酸-脂質粒子の濃度と比較して、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、又は少なくとも6倍高い濃度の核酸-脂質粒子が、肝臓において存在する。
【0051】
ある特定の実施形態では、核酸-脂質粒子、医薬組成物、又は注射物の投与は、以下のうちの1つ以上を治療又は予防するために実施される:肝臓の疾患又は障害(例えば、胆道閉鎖症、アラジール症候群、アルファ1アンチトリプシン欠乏症、チロシン血症、新生児肝炎、C型肝炎ウイルス感染症、B型肝炎ウイルス感染症、A型肝炎ウイルス感染症、肝細胞がん腫、及び/又はウィルソン病)、関節の疾患又は障害(例えば、関節リウマチ、乾癬性関節炎、痛風、腱炎、滑液包炎、手根管症候群、及び/又は変形性関節症)、炎症性の疾患又は障害(例えば、炎症性腸疾患、腹膜炎、骨髄炎、悪液質、膵炎、外傷誘導性ショック、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、嚢胞性線維症、急性気管支炎、急性極気管支炎(acute intense bronchitis)、変形性関節症、関節リウマチ、感染性関節炎、感染後関節炎、生殖腺内腔(gonocoele)関節炎、結核性関節炎、関節炎、変形性関節症、痛風、脊椎関節症、強直性脊椎炎、血管炎症候群に関連する関節炎、神経性結節性多発性動脈炎、過敏性血管炎、ルゲニック(rugenic)肉芽腫症、リウマチ性ポリープ症筋肉痛、関節炎細胞性動脈炎、カルシウム多発性嚢胞性関節症、苛性痛風(caustic gout)、非関節性リウマチ、滑液包炎、花粉症、化膿性炎症(例えば、テニス肘)、神経障害性関節疾患、出血性関節症(hemarthrosic)、Henoch-Schlein紫斑、肥大性変形性関節症、多サイズ痔核、脊柱側弯症、ヘモクロマトーシス、高リポタンパク血症、低ガンマグロブリン血症、COPD、急性呼吸窮迫症候群、急性肺損傷、気管支肺異形成、及び/又は全身性エリテマトーデス(SLE))、及び表皮の疾患又は障害(例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、強皮症、湿疹、酒さ、脂漏性皮膚炎、黒色腫、日光性角化症、魚鱗癬、グローバー病、尋常性疣贅、角化棘細胞腫、及び/又は脂漏性角化症)。
【0052】
実施形態では、核酸-脂質粒子、医薬組成物、又は注射物は、非経口投与される。任意選択で、核酸-脂質粒子、医薬組成物、又は注射物は、吸入、局所適用、又は注射を介して投与される。任意選択で、核酸-脂質粒子、医薬組成物、又は注射物は、静脈内注射、気管内注射、関節内注射、皮下注射、皮内注射、及び/又は筋肉内注射によって投与される。
【0053】
ある特定の実施形態では、核酸カーゴは、合成若しくは天然に生じるRNA若しくはDNA、又はそれらの誘導体であるか、又はそれらを含む。任意選択で、核酸カーゴは、修飾RNAである。任意選択で、修飾RNAは、修飾mRNA、修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド、又は修飾siRNAである。任意選択で、修飾mRNAは、核酸調節コントローラーをコードする。
【0054】
定義
特に明記しない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当該技術分野での通常の許容範囲内、例えば、平均の2標準偏差内であると理解される。「約」は、明記された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内として理解され得る。
【0055】
ある特定の実施形態では、「およそ」又は「約」という用語は、別段明記されない限り、又は別段文脈から明らかでない限り、明記された参照値のいずれかの方向(より大きいか、又はより小さい)で25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又はそれ未満以内に収まる値の範囲を指す(そのような数が可能な値の100%を超える場合を除く)。
【0056】
別段文脈から明らかでない限り、本明細書で提供される全ての数値は、「約」という用語によって修飾される。
【0057】
「脂質」という用語は、脂肪酸のエステルを含むがこれに限定されない有機化合物の群を指し、水に不溶性であるが、多くの有機溶媒に可溶性であることによって特徴付けられる。通常、少なくとも3つのクラスに分類される:(1)脂肪及び油並びにワックスを含む「単純脂質」、(2)リン脂質及び糖脂質を含む「複合脂質」、(3)ステロイドなどの「誘導脂質」。
【0058】
本明細書で使用される場合、「カチオン性脂質」という用語は、生理学的pHなどの選択されたpHで正味の正電荷を担持する多数の脂質種のうちのいずれかを指す。カチオン性脂質には、1、2、3個、又はそれ以上の脂肪酸又は脂肪アルキル鎖、並びにpH滴定可能なアミノ頭部基(例えば、アルキルアミノ又はジアルキルアミノ頭部基)を有する脂質及びその塩が含まれる。カチオン性脂質は、典型的には、カチオン性脂質のpKaよりも低いpHでプロトン化され(すなわち、正に荷電され)、pKaよりも高いpHで実質的に中性である。本明細書の記載のカチオン性脂質はまた、滴定可能なカチオン性脂質と称され得る。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、プロトン化可能な三級アミン(例えば、pH滴定可能な)頭部基と、C18アルキル鎖であって、各アルキル鎖が、独立して、0~3個(例えば、0、1、2、又は3個)の二重結合を有する、C18アルキル鎖と、頭部基とアルキル鎖との間のエーテル、エステル、又はケタール連結と、を含む。そのようなカチオン性脂質には、DOTAP、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DSDMA)、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジ-γ-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(γ-DLenDMA、1,2-ジリノレイルオキシ-ケト-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLinK-DMA)、1,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLinKC2-DMA)(DLin-C2K-DMA、XTC2、及びC2Kとしても知られる)、2,2-ジリノレイル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C3-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(4-ジメチルアミノブチル)[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C4-DMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(γ-DLen-C2K-DMA)、1,2-ジ-γ-リノレニルオキシ-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(γ-DLen-C2K-DMA)、ジリノレイルメチル-3-ジメチルアミノプロピオネート(DLin-M-C2-DMA)(MC2としても知られる)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-M-C3-DMA)(MC3としても知られる)、及び3-(ジリノレイルメトキシ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン(DLin-MP-DMA)(1-B11としても知られる)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「DOTAP」は、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン、又は18:1TAP、二鎖、若しくはジェミニ、カチオン性脂質を指す。
【0059】
DOTAPは、その四級構造により、pHとは独立してカチオン性に荷電された脂質である。それは、DNA、RNA、及び他の負に荷電された分子のリポソームトランスフェクションのために市販されている。本開示のいくつかの態様では、C12-200脂質又はその変形と組み合わせたDOTAP脂質又はその変形を、肝臓に特異的に核酸を送達するために脂質ナノ粒子で使用する。DOTAP(C4280NO )の構造を以下に示す:
【化1】
【0060】
本明細書で使用される場合、「イオン化可能な脂質」という用語は、pHが脂質のイオン化可能な基のpK未満に低下する場合、カチオン性になる(プロトン化される)が、より高いpH値では徐々により中性になる脂質を指す。脂質-核酸粒子の構成要素がpK未満のpH値である場合、したがって、脂質は、負に荷電されたポリ核酸と会合することができる。例示的なイオン化可能な脂質としては、C12-200、N4-コレステリル-スペルミン塩酸HCl塩(GL67)、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DSDMA)、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジ-γ-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(γ-DLenDMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-ケト-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLinK-DMA)、1,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLinKC2-DMA)(DLin-C2K-DMA、XTC2、及びC2Kとしても知られる)、2,2-ジリノレイル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C3-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(4-ジメチルアミノブチル)[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C4-DMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(γ-DLen-C2K-DMA)、1,2-ジ-γ-リノレニルオキシ-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(γ-DLen-C2K-DMA)、ジリノレイルメチル-3-ジメチルアミノプロピオネート(DLin-M-C2-DMA)(MC2としても知られる)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-M-C3-DMA)(MC3としても知られる)、3-(ジリノレイルメトキシ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン(DLin-MP-DMA)(1-B11としても知られる)、2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA)、(2R)2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(R-オクチル-CLinDMA)、(2S)2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(S-オクチル-CLinDMA)、(2S)-1-{7-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]ヘプチルオキシ}-3-[(4Z)-デカ-4-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、(2R)-1-{4-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]ブトキシ}-3-[(4Z)-デカ-4-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、1-[(2R)-1-{4-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]ブトキシ}-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-イル]グアニジン、1-[(2R)-1-{7-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]ヘプチルオキシ}-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、1-[(2R)-1-{4-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]ブトキシ}-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(2S)-1-({6-[(3β))-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]ヘキシル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z)-オクタデカ-9-エン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(3β)-3-[6-{[(2S)-3-[(9Z)-オクタデカ-9-エン-1-イルオキシル]-2-(ピロリジン-1-イル)プロピル]オキシ}ヘキシル)オキシ]コレスト-5-エン、(2R)-1-{4-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]ブトキシ}-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2R)-1-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-(ペンチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2R)-1-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-3-(ヘプチルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、(2R)-1-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(2Z)-ペント-2-エン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(2S)-1-ブトキシ-3-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、(2S-1-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-3-[2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロノニル)オキシ]-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、2-アミノ-2-{[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]メチル}プロパン-1,3-ジオール、2-アミノ-3-({9-[(3β,8ξ,9ξ,14ξ,17ξ,20ξ)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]ノニル}オキシ)-2-{[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]メチル}プロパン-1-オール、2-アンモ-3-({6-[(3β,8ξ,9ξ,14ξ,17ξ,20ξ)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]ヘキシル}オキシ)-2-{[(9Z)-オクタデカ-9-エン-1-イルオキシ]メチル}プロパン-1-オール、(20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン、(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17,20-ジエン-9-アミン、(16Z,19Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-8-アミン、(13Z,16Z)-N,N-ジメチルドコサ-13,16-ジエン-5-アミン、(12Z,15Z)-N,N-ジメチルヘニコサ-12,15-ジエン-4-アミン、(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-6-アミン、(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-7-アミン、
(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-10-アミン、(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-5-アミン、(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-4-アミン、(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-9-アミン、(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-8-アミン、(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17,20-ジエン-7-アミン、(16Z,19Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-6-アミン、(22Z,25Z)-N,N-ジメチルヘントリアコンタ-22,25-ジエン-10-アミン、(21Z,24Z)-N,N-ジメチルトリアコンタ-21,24-ジエン-9-アミン、(18Z)-N,N-ジメチルヘプタコス-18-エン-10-アミン、(17Z)-N,N-ジメチルヘキサコス-17-エン-9-アミン、(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-7-アミン、N,N-ジメチルヘプタコサン-10-アミン、(20Z,23Z)-N-エチル-N-メチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン、1-[(11Z,14Z)-1-ノニルコサ-11,14-ジエン-1-イル]ピロリジン、(20Z)-N,N-ジメチルヘプタコス-20-エン-10-アミン、(15Z)-N,N-ジメチルヘプタコス-15-エン-10-アミン、(14Z)-N,N-ジメチルノナコス-14-エン-10-アミン、(17Z)-N,N-ジメチルノナコス-17-エン-10-アミン、(24Z)-N,N-ジメチルトリトリアコント-24-エン-10-アミン、(20Z)-N,N-ジメチルノナコス-20-エン-10-アミン、(22Z)-N,N-ジメチルヘントリアコント-22-エン-10-アミン、(16Z)-N,N-ジメチルペンタコス-16-エン-8-アミン、(12Z,15Z)-N,N-ジメチル-2-ノニルヘニコサ-12,15-ジエン-1-アミン、(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘプタデカン-8-アミン、1-[(1S,2R)-2-ヘキシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-21-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘニコサン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2S)-2-{[(1R,2R)-2-ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]ノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘキサデカン-8-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1R,2S)-2-ウンデシルシクロプロピル]テトラデカン-5-アミン、N,N-ジメチル-3-{7-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘプチル}ドデカン-1-アミン、1-[(1R,2S)-2-ヘプチルシクロプロピル]-N,N-ジメチルオクタデカン-9-アミン、1-[(1S,2R)-2-デシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルペンタデカン-6-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ペンタデカン-8-アミン、及び
(11E,20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-11,20,23-トリエン-10-アミン、並びにそれらの薬学的に許容される塩及び前述のうちのいずれかの立体異性体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
C12-200カチオン性脂質(1,1’-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール))は、分岐したポリマー様構造に分布する5つの三級アミン構造を有するイオン化可能な脂質である。C12-200の高い正の正味電荷は、ナノ粒子コアへのより大きなRNA分子のカプセル化を増強し得る。それは、DNA、RNA、及び他の負に荷電された分子のリポソームトランスフェクションのために市販されている。本開示のいくつかの態様では、C12-200脂質又はその変形と組み合わせたDOTAP脂質又はそのバリエーションを、肝臓に特異的に核酸を送達するために脂質ナノ粒子で使用する。C12-200の構造を以下に示す。
【化2】
【0062】
本明細書で使用される場合、「非カチオン性脂質」という用語は、任意の中性脂質、及び任意のアニオン性脂質を指す。「中性脂質」は、選択されたpHで非荷電又は中性の双性イオン形態のいずれかで存在する多数の脂質種のうちのいずれかを指す。生理学的pHでは、そのような脂質には、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、セレブロシド、及びジアシルグリセロールが挙げられる。「アニオン性脂質」は、生理学的pHで負に荷電する任意の脂質を指す。これらの脂質には、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リジルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレイオルホスファチジルグリセロール(POPG)、及び中性脂質と結合した他のアニオン性修飾基が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本開示で使用される非カチオン性脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、及び/又は1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)である。実施形態では、非カチオン性脂質は、コレステロール(CHE)及び/又はβ-シトステロールである。
【0063】
本明細書で使用される「脂質ナノ粒子」という用語は、ナノスケール粒子の種々の種類の組成物を指し、脂質を含む粒子は、細胞膜及び生物学的障壁を横断する担体として機能し、ヒト及び他の生物の標的化された細胞及び組織に化合物を送達する。本明細書で使用される場合、本開示の「脂質ナノ粒子」は、追加の脂質及び他の構成要素を更に含み得る。他の脂質は、脂質酸化を防止するため、又は脂質ナノ粒子表面にリガンド結合するためなど、様々な目的のために含まれ得る。両親媒性、中性、カチオン性、及びアニオン性脂質を含む、多数の脂質のうちのいずれかが、本開示の脂質ナノ粒子内中に存在し得る。そのような脂質は、単独で又は組み合わせて使用され得、また、ポリアミドオリゴマー(例えば、米国特許第6,320,017号を参照されたい)、ペプチド、タンパク質、洗剤、ホスファチジルエタノールアミンにカップリングされたPEG及びセラミドにコンジュゲートされたPEGなどの脂質誘導体(例えば、米国特許第5,885,613号を参照されたい)などの二重層安定化構成要素を含み得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、粒子の凝集を阻害する「PEG」コンジュゲート脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲート、ポリアミド(ATTA)-脂質コンジュゲート、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を指す。一態様では、PEG-脂質コンジュゲートは、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド、及びそれらの混合物のうちの1つ以上である。一態様では、PEG-DAGコンジュゲートは、PEG-ジラウロイルグリセロール(C12)、PEG-ジミリストイルグリセロール(C14)、PEG-ジパルミトイルグリセロール(C16)、及びPEG-ジステアロイルグリセロール(C18)のうちの1つ以上である。一態様では、PEG-DAAコンジュゲートは、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)、及びPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、PEGは、2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(PEG-DMG)及び/又は1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(PEG-DSG)である。
【0065】
本明細書で使用される「N/P比」という用語は、カチオン性アミノ脂質と核酸の負に荷電されたホスフェート基との間の(N)窒素対(P)ホスフェートの比を指す。
【0066】
本明細書で使用される「多分散性指数」又は「PDI」は、サイズに基づく試料の不均質性の尺度である。多分散性は、試料中のサイズ分布、又は単離若しくは分析中の試料の凝集(agglomeration)若しくは凝集(aggregation)により生じ得る。
【0067】
本明細書で使用される「ゼータ電位」又は「表面電荷」は、分散液中の隣接する、同様に荷電された粒子間の静電反発の程度を指す。十分に小さい分子及び粒子の場合、高いゼータ電位は、安定性を与え、すなわち、溶液又は分散体は、凝集に抵抗する。
【0068】
本明細書で使用される場合、核酸「カーゴ」という用語は、細胞又は組織への送達のための意図された核酸(実施形態では、細胞又は組織への送達のための治療用核酸)を指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、「核酸-脂質ナノ粒子」という用語は、1つ以上の核酸と会合するか、又はカプセル化して、1つ以上の核酸カーゴを組織に送達する、上記の脂質ナノ粒子を指す。
【0070】
本明細書で使用する場合、「カプセル化された」は、完全カプセル化、部分カプセル化、イオン若しくはファンデルワールス力による会合、又は前述の全てを有する核酸を提供する核酸-脂質ナノ粒子製剤を指し得る。一実施形態では、核酸は、核酸-脂質ナノ粒子中に完全にカプセル化されている。
【0071】
本明細書で使用される場合、「核酸」は、合成若しくは天然に生じるRNA若しくはDNA、又はそれらの誘導体を指す。一実施形態では、本開示のカーゴ及び/又は薬剤は、二本鎖RNA(dsRNA)などの核酸である。一実施形態では、核酸又は核酸カーゴは、一本鎖DNA若しくはRNA、又は二本鎖DNA若しくはRNA、又はDNA-RNAハイブリッドである。例えば、二本鎖DNAは、構造的遺伝子、制御及び終結領域を含む遺伝子、又はウイルス若しくはプラスミドDNAなどの自己複製系であり得る。二本鎖RNAは、例えば、dsRNA又は別のRNA干渉試薬であり得る。一本鎖核酸は、例えば、mRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、マイクロRNA、又は三本鎖形成オリゴヌクレオチドであり得る。ある特定の実施形態では、核酸又は核酸カーゴは、修飾RNAを含み得、修飾RNAは、修飾mRNA、修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド、及び修飾siRNAのうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、本開示の核酸カーゴは、核酸調節コントローラーをコードする修飾mRNAを含むか、又はそれである。
【0072】
本明細書で使用される場合、「修飾核酸」という用語は、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、5’-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、コレステリル誘導体に連結した末端ヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、5’-メトキシ修飾ヌクレオチド(例えば、5’-メトキシウリジン)、2’-デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、2’-アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミデート、ヌクレオチドを含む非天然塩基;ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含むメチル及び他のアルキルホスホネートを含む、ヌクレオシド間連結又は主鎖、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミデート及びアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、及び正常な3’-5’連結を有するボラノホスフェート、これらの2’-5’連結類似体、並びに隣接するヌクレオシド単位の対が3’-5’から5’-3’又は2’-5’から5’-2’に連結している反転極性を有するものを含む群から選択されるものを含むが、これらに限定されない任意の非天然核酸を指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、「核酸調節コントローラー」という用語は、タンパク質コントローラー構成要素をコードするmRNAを指すが、「核酸調節コントローラー」への言及は、mRNA発現タンパク質コントローラー構成要素自体も指し得る。ある特定の実施形態では、mRNAコードされたタンパク質コントローラー構成要素は、1つ以上のエピジェネティックレギュレーター又はヌクレアーゼ(エピジェネティックレギュレーター又はヌクレアーゼは、概して、エフェクター、エフェクタードメイン、又はエフェクター部分と称される)に関連付けられる(及び任意選択でつながれる)ジンクフィンガータンパク質(ZFP)又は他の形態のDNA若しくはRNA結合ドメイン(DBD又はRBD)を含む。理論に拘束されることを望まないが、本明細書に記載の核酸調節コントローラーの利点は、(1)核酸調節コントローラーをコードするmRNAが発現される場合、(2)ZFP又は他の核酸結合ドメインの核酸結合が生じる場合、及び(3)関連するエフェクタードメインが活性を発揮することができる場合(すなわち、エフェクタードメインがエピゲノム状態を変化させることができる場合(例えば、エピゲノムコントローラーの場合))の同時発生でのみ、永続的な遺伝子プログラミングを提供することである。
【0074】
本明細書で使用する場合、「エフェクター部分」又は「エフェクタードメイン」という用語は、細胞における適切な部位、例えば、細胞の核内に局在する場合、標的遺伝子の発現を変化させることができるドメインを指す。いくつかの実施形態では、エフェクター部分は、転写機構の構成要素を動員する。いくつかの実施形態では、エフェクター部分は、転写因子又は発現抑制因子の構成要素の動員を阻害する。いくつかの実施形態では、エフェクター部分は、エピジェネティック修飾部分を含む(例えば、エピジェネティックに標的DNA配列を修飾する)。エフェクター部分の具体的な例には、とりわけ、Krueppel関連ボックス(KRAB)ドメイン(KRABは、真核生物Krueppel型C2H2亜鉛フィンガータンパク質(ZFP)の約3分の1のN末端部分に見られる約75アミノ酸のドメインである)及び操作された原核生物DNAメチルトランスフェラーゼMQ1に結合することができるエフェクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
本明細書で使用される場合、「エピジェネティック修飾部分」は、エピジェネティック修飾部分が(例えば、標的化部分によって)核酸に適切に局在化されるとき、i)クロマチンの構造、例えば、二次元構造、及び/又はii)エピジェネティックマーカー(例えば、DNAメチル化、ヒストンメチル化、ヒストンアセチル化、ヒストンSUMO化、ヒストンリン酸化、及びRNA関連サイレンシングのうちの1つ以上)を変化させるドメインを指す。いくつかの実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、1つ以上のエピジェネティックマーカーに影響を及ぼす(例えば、そのレベルを増加又は減少させる)酵素、又はその機能的断片若しくはバリアントを含む。いくつかの実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、DNAメチルトランスフェラーゼ、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、CREB結合タンパク質(CBP)、又は任意のそれらの機能的断片を含む。
【0076】
本明細書で使用される場合、「発現制御配列」という用語は、遺伝子の転写を増加又は減少させる核酸配列を指し、プロモーター及びエンハンサーを含む(が、これらに限定されない)。「増強配列」は、発現制御配列の亜型を指し、遺伝子転写の可能性を増加させる。「サイレンシング又はリプレッサー配列」は、発現制御配列の亜型を指し、遺伝子転写の可能性を減少させる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「発現リプレッサー」という用語は、細胞における標的遺伝子の発現を減少させ、DNA配列(例えば、標的遺伝子に関連するDNA配列、又は標的遺伝子に作動可能に連結した転写制御要素)に特異的に結合する1つ以上の機能を有する薬剤又は実体を指す。ある特定の実施形態では、発現リプレッサーは、少なくとも1つの標的化部分と、任意選択で1つのエフェクター部分と、を含む。
【0078】
本明細書で使用される場合、「標的化部分」という用語は、ゲノム配列要素(例えば、発現制御配列又はアンカー配列、プロモーター、エンハンサー、又はCTCF部位)を特異的に標的とする、例えば、結合する薬剤又は実体を意味する。いくつかの実施形態では、ゲノム配列要素は、標的遺伝子(例えば、MYC)に近接している、及び/又は作動可能に連結している。
【0079】
本明細書で使用される場合、「肝臓組織」は、限定されないが、肝細胞、血管細胞、内皮細胞、実質細胞、非実質細胞、線維芽細胞、間葉細胞、免疫細胞、がん細胞、クッパー細胞、星細胞、楕円形血管内皮細胞、及び肝臓由来幹細胞/前駆細胞を含むが、これらに限定されない肝臓の臓器内の任意の細胞又は細胞の集団を指し得る。ある特定の実施形態では、核酸-脂質ナノ粒子は、肝臓組織を標的とする。いくつかの他の実施形態では、核酸-脂質ナノ粒子は、脳、神経、皮膚、眼、咽頭、喉頭、心臓、血管、造血(例えば、白血球又は赤血球)、乳房、肺、膵臓、脾臓、食道、胆嚢、胃、腸、結腸、腎臓、膀胱、卵巣、子宮、子宮頸部、前立腺、筋肉、骨、甲状腺、副甲状腺、副腎、及び下垂体細胞又は組織を含むが、これらに限定されない他の細胞又は組織を標的にし得る。
【0080】
本明細書で使用される場合、「局在化」は、生体及び/又は組織内の本開示の脂質粒子の脂質、ペプチド、又は他の構成要素の位置を指す。いくつかの実施形態では、局在化は、個々の細胞において検出可能であり得る。いくつかの実施形態では、標識は、局在化を検出するために使用され得、例えば、蛍光標識、任意選択で、蛍光標識された脂質、任意選択で、Cy7である。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子の標識は、量子ドット、又は刺激ラマン散乱によって検出可能な脂質であり得る。他の実施形態では、標識は、当該技術分野で既知の任意のフルオロフォアであり、すなわち、紫外線、可視光、又は赤外線スペクトルにおける励起及び放出を有する。いくつかの実施形態では、局在化は、免疫組織化学又は免疫蛍光によって検出されるか、又は更に裏付けられる。
【0081】
本明細書で使用される場合、「活性」という用語は、本開示の構成要素又は組成物によって媒介される任意の検出可能な効果を指す。実施形態では、本明細書で使用される「活性」は、例えば、本開示の本脂質粒子のカーゴの測定可能な(直接的又は代理によるかどうかにかかわらず)効果を指し得る。活性の例としては、限定されないが、核酸カーゴ(例えば、mRNA、CRISPR/Cas系、RNAi剤、核酸調節コントローラーなど)の細胞内発現及び結果として生じる効果が挙げられ、これらは、任意選択で、細胞、組織、臓器、及び/又は生物レベルで測定され得る。
【0082】
本明細書で使用される場合、「加速された血液クリアランス」又は「ABC」は、LNPの表面上のPEG分子に対する免疫系活性化によって引き起こされる十分に文書化された現象を指す。ABCは、反復投与時に全身循環からのナノ粒子のクリアランスを担う。いくつかの実施形態では、本開示の脂質粒子は、PEGを含まない製剤を用いることによって、脂質粒子の加速した血液クリアランスを回避又は低減し得、これはまた、そのような脂質粒子の改善された(例えば、毒性が低い及び/又はより効果的な)反復全身投与を提供し得る。本明細書で使用される場合、「複数回投薬」は、対象に対する治療レジメンの一部として与えられる2つ以上の用量の脂質ナノ粒子製剤を指す。
【0083】
本明細書で使用される場合、「肝臓の疾患又は障害」という用語は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、脂肪肝疾患、肝硬変、肝臓がん(例えば、肝細胞がん腫)、ヘモクロマトーシス、及びウィルソン病などの疾患又は障害を含み得るが、これらに限定されない。
【0084】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒト及び哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ネコ、イヌ、及びウマ)を含む。多くの実施形態では、対象は、哺乳動物、特に、霊長類、特に、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、ウシ、ヒツジ、ヤギ、雌ウシ、ブタなどのような家畜、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウなどのような家禽、並びに飼育動物、特にイヌ及びネコのようなペットである。いくつかの実施形態では(例えば、特に研究の文脈では)、対象哺乳動物は、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、又は近交系ブタなどのブタであろう。
【0085】
本明細書で使用される場合、対象への「投与」には、非経口投与、任意選択で、静脈内注射、吸入、静脈内、動脈内、気管内、局所、又は組織への直接注射が含まれ得る。
【0086】
「治療すること」という用語は、疾患(例えば、がん、例えば、腫瘍形成、増殖及び/又は転移を含む)の症状、合併症、又は生化学的兆候の発病を予防又は遅延させるための組成物の投与、症状を緩和すること、又は疾患、状態、又は障害症の更なる発症を停止又は阻害することを含む。治療は、予防的(疾患の発病を予防若しくは遅延させるため、又はその臨床症状若しくは非臨床症状の発現を予防するため)、又は疾患の発現後の症状の治療的抑制若しくは緩和であり得る。
【0087】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」は、薬理学的有効量の脂質粒子、任意選択で、核酸-脂質ナノ粒子(NLNP)、及び薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用される場合、「薬理学的有効量」、「治療有効量」、又は単に「有効量」は、意図された薬理学的、治療的、又は予防的結果をもたらすのに有効な核酸の量を指す。例えば、所与の臨床治療が、疾患又は障害に関連する測定可能なパラメータの少なくとも25%の低減がある場合に有効であるとみなされる場合、その疾患又は障害の治療のための薬物の治療有効量は、そのパラメータの少なくとも25%の低減を誘導するために必要な量である。
【0088】
「薬学的に許容される担体」という用語は、治療薬の投与のための担体を指す。そのような担体には、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
特に明記しない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「又は」という用語は、包括的であると理解される。特に明記しない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という用語は、単数又は複数であると理解される。
【0090】
範囲は、本明細書において、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表され得る。そのような範囲が表される場合、別の態様は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用することによって、値が近似値として表される場合、特定の値が別の態様を形成することが理解される。更に、範囲の各々の端点は、他の端点との関係において、及び他の端点とは独立していることの両方で重要であるいることが理解される。また、本明細書で開示される多数の値が存在し、各値は、値自体に加えて、「約」その特定の値としても本明細書で開示されることが理解される。また、本出願を通して、データ、はいくつかの異なる形式で提供され、このデータは、データ点の任意の組み合わせについての終点及び開始点並びに範囲を表すことが理解される。例えば、特定のデータ点「10」及び特定のデータ点「15」が開示される場合、10及び15より大きい、以上、未満、以下、及び等しいは、10~15と同様に開示されているとみなされることが理解される。2つの特定の単位間の各単位もまた開示されることが理解される。例えば、10及び15が開示されている場合、したがって、11、12、13、及び14も開示されている。
【0091】
本明細書に提供される範囲は、範囲内の全ての値の略記であることが理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50、並びに、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、及び1.9などの前述の整数の間に介在する全ての小数値からなる群からの任意の数字、数字の組み合わせ、又は下位範囲が含まれると理解される。下位範囲に関して、範囲のいずれかの端点から延びる「入れ子になった下位範囲」が具体的に企図されている。例えば、1~50の例示的な範囲の入れ子になった下位範囲は、一方向に1~10、1~20、1~30、及び1~40、又は他方向に50~40、50~30、50~20、及び50~10を含み得る。
【0092】
「含む(including)」、「含有する(containing)」、又は「によって特徴付けられる」と同義である「含む(comprising)」という移行用語は、包括的又は無制限であり、追加の列挙されていない要素又は方法ステップを除外しない。対照的に、移行句「からなる」は、特許請求の範囲で特定されていない任意の要素、ステップ、又は成分を除外する。移行句「から本質的になる」は、特許請求の範囲を、特許請求された発明の特定された材料又はステップ「及び基本的かつ新規の特性に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。
【0093】
以下に記載され、特許請求の範囲に引用される実施形態は、上記の定義を考慮して理解され得る。
【0094】
本開示の他の特徴及び利点は、本開示の好ましい実施形態の以下の説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等の方法及び材料が、本開示の実施又は試験において使用され得るが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書に引用される全ての公開された外国特許及び特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に引用される全ての他の公開された参考文献、文書、原稿、及び科学文献は、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。加えて、材料、方法、及び例は、単なる例示にすぎず、限定することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0095】
以下の詳細な説明は、例として与えられるが、説明される特定の実施形態のみに本開示を限定することを意図するものではなく、添付の図面と併せて理解するのが最良であり得る:
【0096】
図1A-1C】検証されたイオン化可能な脂質及び別個の多価カチオン性ポリマーで調製された初期混合脂質粒子の配合及び特性を示す。図1Aは、DOPC、MC3、bPEI、CHE、及びPEG2k-DMGを含む、この初期混合粒子を構成する構成要素の表、並びに粒径、ゼータ電位、及び多分散性指数を含む、混合脂質粒子のけ特性評価の結果を示す。図1Bは、48時間の期間の初期混合脂質粒子で連続的に処理された後のHepa1-6細胞のトランスフェクション後画像を示す。図1Cは、種々の添加された混合脂質粒子体積(10μl、5μl、及び2.5μl)にわたってHepa1-6細胞について観察された細胞生存率(%)の用量反応を示すグラフを表す。
図2A-2C】混合脂質粒子が、伝統的にトランスフェクションが困難な細胞集団に核酸カーゴをトランスフェクションしたことを示す。図2Aは、示されたレベルでのDOPC、MC3、bPEI、CHE、及びPEG2k-DMGを含む「MbP-2」混合脂質粒子の構成要素、並びにDOPC、MC3、CHE、及びPEG2k-DMGを含むMC3のみの脂質粒子の構成要素を列挙する表を表す。図2Bは、対照製剤、混合脂質(MbP-2)ナノ粒子の製剤、及びMC3のみの脂質ナノ粒子の製剤でそれぞれ処理されたHepa1-6細胞の集団にわたって観察されたGFP及びCy5シグナル発現レベルのプロットを示す。特に、MC3のみの脂質ナノ粒子で処理された細胞の16%のGFP mRNAトランスフェクション率と比較して、混合脂質(MbP-2)ナノ粒子で処理された細胞の50%超で有効なGFPmRNAトランスフェクションが観察された。図2Cは、そのようなトランスフェクションされた細胞集団のGFPシグナル発現分布を示す。特に、混合脂質ナノ粒子は、MC3のみの脂質ナノ粒子と比較して、トランスフェクションされた細胞において平均して1.5倍増加したGFPシグナルを産生したが、混合脂質ナノ粒子処理された細胞におけるそのような観察されたGFPレベルは、対照処理された細胞におけるGFPシグナルレベルよりも平均して20倍高かった。
図3A-3D】LNP処理されたA549ヒト肺がん細胞における細胞生存率に対するDOTAP/C12-200(DC)混合脂質ナノ粒子(LNP)の効果を示す。図3Aは、混合脂質粒子の異なる製剤(混合C~混合N)の構成要素及び評価された特性の表を示す。混合脂質粒子C~Nには、C12-200、DOTAP、DOPE、コレステロール(CHE)、及び(混合Jは唯一の例外である)PEG2k-DMGが含まれる。図3Bは、混合C、混合D、混合E、混合F、混合G、及び対照製剤を含む種々の混合脂質核酸-脂質粒子での処理後のA549ヒト肺がん細胞の観察された細胞生存率を示すヒストグラムを示し、混合脂質粒子製剤中のC12-200のモル濃度のパーセンテージを18%に維持し、これらの混合脂質製剤中のDOTAP及びDOPEのパーセンテージを変更した。図3Cは、混合C、混合H、混合I、及び対照製剤を含む種々の混合脂質核酸-脂質粒子での処理後のA549ヒト肺がん細胞の観察された細胞生存率を示すヒストグラムを示し、混合脂質粒子製剤中のC12-200のモル濃度のパーセンテージを18%に維持し、これらの混合脂質製剤中のPEG-脂質のパーセンテージを変更した。図3Dは、混合K、混合L、混合M、混合N、及び対照製剤を含む種々の混合脂質核酸-脂質粒子での処理後のA549ヒト肺がん細胞の観察された細胞生存率を示すヒストグラムを示し、混合脂質粒子製剤中のC12-200のモル濃度のパーセンテージを18%に維持し、これらの混合脂質製剤中のDOTAPに対するコレステロールのパーセンテージを変更した。
図4A-4C】LNP処理されたA549ヒト肺がん細胞におけるDOTAP/C12-200(DC)混合脂質ナノ粒子(LNP)のトランスフェクション有効性を示す。図4Aは、上記の図3Aに列挙されるように、混合C、混合D、混合E、混合F、混合G、及び対照製剤を含む種々の混合脂質核酸-脂質粒子で処理されたA549ヒト肺がん細胞において観察されたトランスフェクションレポーターmCherryシグナルを示すヒストグラムを示す。図4Bは、上記の図3Aに列挙されるように、混合C、混合H、混合I、及び対照製剤を含む種々の混合脂質核酸-脂質粒子で処理されたA549ヒト肺がん細胞において観察されたトランスフェクションレポーターmCherryシグナルを示すヒストグラムを示す。図4Cは、上記の図3Aに列挙されるように、混合K、混合L、混合M、混合N、及び対照製剤を含む種々の混合脂質核酸-脂質粒子で処理されたA549ヒト肺がん細胞において観察されたトランスフェクションレポーターmCherryシグナルを示すヒストグラムを示す。
図5】0.16μg/mlの混合Cで処理されたA549ヒト肺がん細胞の顕微鏡画像を示し、青色のシグナルは、核を示し、赤色のシグナルは、トランスフェクションされたmCherryレポーター発現を示す。特に、画像の全ての細胞は、低トランスフェクションされた0.16μg/mlのmRNA濃度であっても、mCherryレポーターを明確に発現した。
図6A-6B】混合脂質粒子が異なる保存条件下で安定していたことを示す。図6Aは、それぞれ、水のみ、10%スクロースを含む水、HEPES緩衝液のみ、及び10%スクロースを含むHEPES緩衝液を含有する溶液中に保存された、4℃又は-80℃での35日間の保存前後の混合脂質粒子特性の表を示す。図6Bは、4℃(列1及び2)又は-80℃(列4及び5)で水中に保存された、RNAカーゴをする混合脂質粒子に対して実施されたゲル電気泳動の画像を示す。列2及び5を2%TritonX-100で処理し、これにより粒子が破壊され、遊離RNAがゲルを横断することが可能になる。注目すべきことに、全ての製剤は、4℃で安定したままであったが、凍結保護剤(10%スクロース)を有する混合脂質粒子のみが、その特性を-80℃で維持した。
図7A-7D】核内Cre活性化tdTomato(tdTom)レポーターを担持するマウスへのmCre mRNAを保有する混合脂質粒子の投与が、肝臓における選択的送達及びtdTom産生をもたらしたことを示す。図7Aは、インビボでmCre mRNAを送達するために用いられる2つの異なる混合脂質粒子の構成要素及び特性の表を示し、構成要素「C」は、C12-200を表す。図7Bは、対照としてのMC3のみのmCre mRNA粒子(3mg/kgで投与される)と比較して、両方の混合脂質mCre mRNA粒子(1mg/kgで投与される)について、種々の臓器(肝臓、肺、及び脾臓)で観察される発現されたtdTomシグナルのプロットを示す。図7Cは、種々の臓器におけるtdTomシグナルの代表的な画像を示す。特に、試験された両方の混合脂質粒子について、非常に特異的な肝臓活性が観察された。図7Dは、面積に対して正規化された肝臓、肺、及び脾臓におけるtdTomシグナル強度のプロットを示し、これは、混合脂質mCre mRNA粒子が、MC3のみのmCre mRNA粒子対照よりも80~100%高い割合で、インビボで肝臓細胞をトランスフェクションしたことを明らかにした。
図8】(上記の図7Aに記載されるように)試験された混合脂質粒子の肝臓における細胞会合を示す。肝臓試料の免疫組織化学画像を表し、両方の試験された粒子(両方とも茶色に染色されている)のtdTomato産生及びCy7標識粒子の蓄積を確認した。
図9A-9F】マウスにおける混合脂質及びDOTAP粒子の肝機能安全性評価試験を示すプロットを示す。実施された肝機能試験には、アルカリホスファターゼ(ALP)レベル(図9A)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)レベル(図9B)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)レベル(図9C)、直接ビリルビン(DBILI)レベル(図9D)、総ビリルビン(TBILI)レベル(図9E)、及び乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベル(図9F)の測定が含まれる。特に、本開示の混合脂質粒子は、1mg/kgのmRNA用量で安全であると特定された。
図10A-10B】(VEGFa発現を誘導することが知られている)核酸調節コントローラーを担持する混合脂質粒子が、マウスに投与された場合、血清VEGFaレベルを堅牢に増加させたことを示す。図10Aは、PBS処置された対照マウスと比較して、示された投薬された濃度にわたって、VEGFa調節コントローラーを担持する混合脂質粒子DC20182及びDC50182の投与後の観察された血清VEGFaレベルのヒストグラムを示す。図10Bは、上記の図10Aの核酸-脂質粒子にわたる、PBS対照レベルに対するVEGFaレベルの観察された変化パーセンテージを表すヒストグラムを示す。特に、3つの別個の用量レベルでの混合脂質粒子中のVEGFa調節核酸コントローラーのマウスへの静脈内投与は、対照処置されたマウスと比較して、特に1mg/kgの用量レベルで、血清VEGFaレベルの有意な増加を誘発した。
【発明を実施するための形態】
【0097】
本開示は、少なくとも一部、対象の細胞への脂質粒子関連分子カーゴの送達のための混合カチオン性脂質粒子組成物、製剤、及び関連する方法を提供する。ある特定の態様では、関連する核酸カーゴを対象の肝臓へ優先的に局在し、送達する核酸-脂質ナノ粒子が提供され、送達は対象の肝臓内の様々な種類の組織に生じる。具体的には、本開示の粒子は、イオン化可能な脂質と、1つ以上の別個のカチオン性脂質との混合物を含むが、ある特定の実施形態ではまた、非カチオン性「ヘルパー」脂質、構造的脂質(例えば、コレステロール、β-シトステロール、又はそれらの誘導体)、及び/又は安定化剤/抗凝集脂質(例えば、PEG-脂質)も含む。
【0098】
核酸療法は、遺伝子レベルで疾患を治療するための周知の大きな可能性を有する。しかしながら、安全かつ有効な送達系が、核酸治療薬にとって不可欠である。非特異的な臓器及び組織への送達は、多くの場合、オフサイト効果及び毒性をもたらす。目的の特定の臓器への治療薬の送達は、脂質ナノ粒子の開発、及び一般的な薬物開発においてよく認識されているニーズである。身体の他の部分に害を与えることなく、病気の原因のみを標的にするという概念は、120年前にEhrlichによって説明された。しかしながら、既存の方法は、追加のリガンドベースの標的化戦略を導入することなく、特定の組織を標的とするナノ粒子を開発するための定義された又は周知の方法論を提供しない。したがって、本明細書に開示されるように、組織に対する脂質の構造的親和性に基づいた脂質ナノ粒子の臓器特異的標的化は、オフサイト効果及び毒性を低減するという点で十分に確立されたニーズを満たす。
【0099】
従来のLNPは、4つの主要構成要素で構成される。mRNAカプセル化のためのイオン化可能な又はカチオン性脂質、有効性を増加させるための両親媒性ヘルパーリン脂質、構造安定性のためのコレステロール、及び立体安定性のためのPEG脂質。この第1の世代のLNPは、「1つのイオン化可能な脂質のみのLNP」又は「単一のLNP」とみなすことができる。従来、有効な細胞内送達材料は、RNAに結合し、放出するためのイオン化可能なアミン(6.0~6.5のpKa)及びナノ粒子安定化疎水性の最適なバランスに依存してきた。したがって、肝臓及び肝細胞に対して非常に有効な送達プラットフォームであることが証明されているイオン化可能な脂質の開発に徹底的に焦点が当てられてきた。しかしながら、イオン化可能な/カチオン性脂質の化学構造を変化させて異なるpKa値を達成し、ライブラリを生成することは、検証されているが、時間がかかり、投資が多く、労働集約的な作業である。
【0100】
2つ以上のカチオン性脂質を使用することは、細胞内送達の有効性を増加させるために全体の系のpKaを微調整することによって、核酸送達に有用な特性を有する独自のLNPを生成し得、また、追加の脂質の構造的親和性によって単一のLNP指向性を変化させ得ることが、本明細書では当初、企図されていた。本開示の初期研究では、混合イオン化可能な/カチオン性ポリマー製剤を調製し、核酸-脂質ナノ粒子送達様式のそのような粒子の使用に適したサイズ及び他の特性(インビトロでの低細胞毒性を含む)を有することを特定した。次いで、イオン化可能な脂質を多価カチオン性ポリマー(分岐状ポリエチレンイミン、bPEI)と組み合わせた混合脂質粒子が、同様の特性を示すことが発見され、伝統的にトランスフェクションが困難な細胞集団(例えば、初代T細胞)に、更に大きな核酸調節コントローラー(例えば、タンパク質コントローラー構成要素をコードするmRNA)の効果的なトランスフェクションができることも特定された。
【0101】
DOTAP、周知の四級アミノ脂質は、ある特定の核酸-脂質ナノ粒子(LNP)の構造的構成要素であり、そのようなLNPにおいて更なる活性標的化構成要素を必要とすることなく、肺特異的核酸送達を示すことが最近記載された。次いで、イオン化可能な脂質及びDOTAPの両方を混合カチオン性脂質として含む脂質粒子を調製し、核酸カーゴ送達の有効性について、及び組織特異的送達が観察されるかどうかについて評価した(組織特異性が特定され得るかどうか、及び/又はどの組織特異性が同定され得るかについての事前知識なしで)。C12-200は、そのような例示的なDOTAP含有混合脂質製剤のイオン化可能な脂質として選択されたが、他のイオン化可能な脂質が、依然として有効な粒子をもたらしながら、C12-200を置き換え得ることが明示的に企図されている。例示的な実施形態では、用いられた非カチオン性「ヘルパー脂質」は、DOPE(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)であり、これは、逆六方相を形成する能力に起因して、エンドソーム膜と融合することによってエンドソーム脱出を改善する記載された能力のために選択された。LNP中の不飽和脂質構造に飽和を加えることにより、そのようなLNPの細胞内活性が改善することが以前に特定されている。一方、コレステロール及びPEG2k-DMGレベルは、現在例示されている粒子において、前述の粒子におけるレベルと同様のレベルで維持されている。
【0102】
本明細書に示されるデータは、DOTAPベースのLNPへのC12-200の添加が、そのような製剤の指向性を肺から肝臓に変えるが、それによってまた、全身投与時にそのような混合LNPの臓器選択的活性を実証することを具体的に特定した。簡潔に述べると、粒子サイズ、表面電荷、及びPEG化とは独立して、50mol%のDOTAPを有するLNPが、肺組織に対するDOTAPの構造的親和性に起因する堅牢な肺標的化をもたらすことが以前に報告された。本開示は、肝臓におけるC12-200/DOTAP混合脂質粒子の特異的活性を発見しており、本明細書では、レポーターベースの生体内分布及びまた有効性試験によって確認されている。更に、(C12-200の毒性の可能性を軽減するために)低レベルのC12-200を用いる混合脂質粒子製剤のライブラリが、本明細書に記載されている。混合脂質粒子中に18%で存在する場合、C12-200は、活性標的化リガンドを必要とせずに、肝臓標的化効果を提供することができた。
【0103】
上記のように、C12-200は、(分子当たり1アミンのみ存在するDOTAP及びMC3などの他のカチオン性脂質と比較して)ナノ粒子のコアへのより大きなRNA分子のカプセル化を増強することができる、高い正の正味電荷を担持する。したがって、強いRNA/C12-200パッキングは、C12-200含有粒子の残りの脂質構成要素及び表面電荷の微調整を可能にし得るが、そのような粒子の全直径に顕著に影響を与えない。理論に拘束されることを望まないが、エンドソーム酸性pHでのC12-200含有粒子の高い正の正味電荷はまた、プロトンスポンジ効果に起因する、標的化された細胞の細胞質へのカーゴ送達を改善し得る。したがって、そのような粒子は、より低い処置投薬で効率的なmRNAトランスフェクションを提供し得る。本開示の粒子はまた、混合脂質粒子のより大きなライブラリを開発するための基礎を提供し、このような混合脂質粒子の構成要素を微調整することによって、活性標的化リガンドの使用を必要とせずに、現在記載されているもの(最も顕著には、非経口投与され得るそれぞれの肺特異的及び肝特異的粒子)とは更に異なる臓器/組織標的化を可能にすることが予想され得る。
【0104】
したがって、本開示は、限定されないが、以下の特徴及び利点を提供する:(1)イオン化可能な脂質(本明細書に具体的に例示されるC12-200)の導入を介した肺から肝臓へのDOTAPベースの粒子の主要標的臓器の変更、(2)そのようなDOTAPベースの粒子の使用を介した核酸カーゴ/治療薬の肝臓特異的送達、(3)オフターゲット毒性の予防(C12-200関連細胞傷害の影響が生じると予想される可能性があるレベルである、例示されるC12-200レベルを約20%未満に維持することによる毒性の低減/予防を含む)、(4)全身投与時(例示されるIVによる)の有効性の増加、それによる、DLin-MC3-DMAを用いる広範に使用される肝臓標的化LNPに対する改善された代替物を提供すること、及び(5)粒子形成のためのプロセスは、拡張可能及び一貫性の両方であり、直接投与のためのヒト治療製剤での使用が可能である。
【0105】
本開示のDOTAP/イオン化可能な脂質粒子は、カーゴを肝臓組織に選択的に送達することが特定されているが、いくつかの態様では、本開示のDOTAP/イオン化可能な脂質粒子又はその変形を用いた、関節及び/又は炎症部位、及び/又は脾臓などの漏出性又は有窓毛細血管を有する他の領域への送達もまた、企図される。加えて、吸入、局所適用、又は非静脈内注射を介した本開示の粒子の投与もまた、明示的に企図される。限定されないが、本開示の核酸-脂質粒子、医薬組成物、又は注射物は、非静脈内経路を介して、例えば、気管内注射、関節内注射、皮下注射、皮内注射、及び/又は筋肉内注射によって投与され得る。
【0106】
本開示の特定の組成物及び方法の様々な明示的に企図される構成要素を以下で更に詳細に検討する。
【0107】
DOTAP/C12-200ベースの脂質ナノ粒子(「DC LNP」)組成物
1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン、DOTAP、又は18:1TAPは、カチオン性脂質である。DOTAPは、その四級構造により、pHとは独立してカチオン性に荷電されている。DOTAP(C4280NO )の構造を上に示す。
【0108】
C12-200(1,1’-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール))は、分岐したポリマー様構造に分布する5つの三級アミン構造を有するイオン化可能な脂質である。C12-200の構造も上に示されている。
【0109】
本開示の脂質粒子のある特定の実施形態、及び本開示の関連する方法では、本開示の脂質ナノ粒子中に存在する総脂質の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、又は約10%~50%(モル基準)は、DOTAPである。本開示の脂質粒子のある特定の実施形態、及び本開示の関連する方法では、本開示の脂質ナノ粒子中に存在する総脂質の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、約5%~約20%、約20%未満、又は約12%~45%又は約18%(モル基準)は、イオン化可能な脂質(例えば、C12-200)である。本開示の脂質粒子のある特定の実施形態、及び本開示の関連する方法では、総脂質の少なくとも約0.1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、約24%~約64%、約24%、約34%、約44%、約54%、約64%(モル基準)は、コレステロール、β-シトステロール、及び/又はそれらの誘導体である。ある特定の実施形態では、総脂質の少なくとも約0.1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約40%、約6%~約46%、約6%、約7%、約7.5%、約8%、約16%、約26%、約36%、又は約46%(モル基準)は、他の非カチオン性脂質、例えば、DOPE、DOPC、及び/又はDSPCである。本開示の脂質粒子のある特定の実施形態、及び本開示の関連する方法では、粒子は、存在する総脂質の0.01モル%~約3モル%、約0.5モル%、約1.0モル%、約1.5モル%、又は約2.0モル%で存在する、粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質を含む。そのようなコンジュゲート脂質の例としては、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲート、例えば、PEG2000-脂質コンジュゲート、例えば、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2k)及び1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DSG-PEG2k)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
任意のサイズの脂質ナノ粒子が、本開示に従って使用され得る。本開示のある特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、直径が約0.02ミクロン~約0.4ミクロン、約0.05~約0.2ミクロン、又は0.07~0.12ミクロンの範囲のサイズを有する。
【0111】
いくつかの実施形態では、LNPはまた、プロトン化可能な三級アミン(例えば、pH滴定可能な)頭部基と、C18アルキル鎖であって、各アルキル鎖が、独立して、0~3個(例えば、0、1、2、又は3個)の二重結合を有する、C18アルキル鎖と、頭部基とアルキル鎖との間のエーテル、エステル、又はケタール連結と、を含むものを含むが、これに限定されない他のカチオン性脂質を含み得る。そのようなカチオン性脂質には、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DSDMA)、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジ-γ-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(γ-DLenDMA、1,2-ジリノレイルオキシ-ケト-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLinK-DMA)、1,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLinKC2-DMA)(DLin-C2K-DMA、XTC2、及びC2Kとしても知られる)、2,2-ジリノレイル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C3-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(4-ジメチルアミノブチル)[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C4-DMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(γ-DLen-C2K-DMA)、1,2-ジ-γ-リノレニルオキシ-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(γ-DLen-C2K-DMA)、ジリノレイルメチル-3-ジメチルアミノプロピオネート(DLin-M-C2-DMA)(MC2としても知られる)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-M-C3-DMA)(MC3としても知られる)、及び3-(ジリノレイルメトキシ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン(DLin-MP-DMA)(1-B11としても知られる)が含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
いくつかの実施形態では、本開示の粒子は、中性脂質、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、コレステロール、セレブロシド、及びジアシルグリセロールを含み得る。他の実施形態では、LNPは、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リジルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレイオルホスファチジルグリセロール(POPG)、及び中性脂質と結合した他のアニオン性修飾基を含むが、これらに限定されないアニオン性脂質を含み得る。いくつかの態様では、本開示で使用される非カチオン性脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、及び/又は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である。いくつかの態様では、本発明の粒子の1つ以上の非カチオン性脂質は、コレステロール(CHE)、β-シトステロール、及び/又はそれらの誘導体である。
【0113】
PEGコンジュゲート脂質を用いるいくつかの実施形態では、PEGコンジュゲート脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質コンジュゲート、ポリアミド(ATTA)-脂質コンジュゲート、及びそれらの混合物のうちの1つ以上である。一態様では、PEG-脂質コンジュゲートは、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド、及びそれらの混合物のうちの1つ以上である。一態様では、PEG-DAGコンジュゲートは、PEG-ジラウロイルグリセロール(C12)、PEG-ジミリストイルグリセロール(C14)、PEG-ジパルミトイルグリセロール(C16)、及びPEG-ジステアロイルグリセロール(C18)のうちの1つ以上である。一態様では、PEG-DAAコンジュゲートは、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)、及びPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、PEGは、2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(PEG-DMG)及び/又は1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(PEG-DSG)である。
【0114】
いくつかの実施形態では、両親媒性脂質は、本開示の粒子に含まれる。両親媒性脂質は、脂質材料の疎水性部分が疎水性相に配向し、一方、親水性部分が水相に向かって配向する、任意の好適な材料を指し得る。そのような化合物には、リン脂質、アミノ脂質、及びスフィンゴ脂質が含まれるが、これらに限定されない。代表的なリン脂質には、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、又はジリノレオイルホスファチジルコリンが含まれる。スフィンゴ脂質、糖スフィンゴ脂質ファミリー、ジアシルグリセロール、及びβ-アシルオキシ酸などの他のリン欠損化合物も使用され得る。追加的に、そのような両親媒性脂質は、トリグリセリド及びステロールなどの他の脂質と容易に混合され得る。
【0115】
本開示の脂質粒子に含めるのに好適なものはまた、プログラム可能な融合脂質製剤である。そのような製剤は、所与のシグナル事象が生じるまで、細胞膜と融合し、それらのカーゴを送達する傾向がほとんどない。これにより、脂質製剤は、細胞との融合を開始する前に、生物又は疾患部位への注射後により均一に分布することができる。シグナル事象は、例えば、pH、温度、イオン環境、又は時間の変化であり得る。後者の場合、ATTA-脂質コンジュゲート又はPEG-脂質コンジュゲートなどの融合遅延又は「クローキング」構成要素は、経時的に脂質ナノ粒子膜から単純に交換し得る。製剤が体内に好適に分布するまでに、それは、融合性となるために、十分なクローキング剤を失っている。他のシグナル事象では、炎症の部位での温度の上昇など、疾患部位又は標的細胞と関連するシグナルを選択することが望ましい。
【0116】
ある特定の実施形態では、細胞型又は組織に特異的な標的化部分を使用して、本開示の脂質粒子を更に標的化することが望ましい場合がある。リガンド、細胞表面受容体、糖タンパク質、ビタミン(例えば、リボフラビン)、及びモノクローナル抗体などの様々な標的化部分を使用した脂質ナノ粒子の標的化は、以前に記載されている(例えば、米国特許第4,957,773号及び同第4,603,044号を参照されたい)。標的化部分は、タンパク質全体又はその断片を含み得る。
【0117】
標的化機序は、概して、標的部分が標的、例えば、細胞表面受容体と相互作用するために利用可能であるような方法で、標的化剤が、脂質ナノ粒子の表面上に配置されることを必要とする。例えば、Sapra,P.and Allen,T M,Prog.Lipid Res.42(5):439-62(2003)、及びAbra,R M et al.,J.Lipid nanoparticle Res.12:1-3,(2002)に記載さ入れているものを含む、様々な異なる標的化剤及び方法が、当技術分野で既知であり、利用可能である。
【0118】
標的剤をカップリングするための標準的な方法を使用することができる。例えば、標的剤の結合のために活性化され得るホスファチジルエタノールアミン、又は脂質誘導体化ブレオマイシンなどの誘導体化親油性化合物が使用され得る。抗体標的脂質ナノ粒子は、例えば、タンパク質Aを組み込む脂質ナノ粒子を使用して構築され得る(Renneisen,et al.,J.Bio.Chem.,265:16337-16342(1990)及びLeonetti,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),87:2448-2451(1990)を参照されたい。抗体コンジュゲーションの他の例は、米国特許第6,027,726号に開示されており、その教示は参照により本明細書に組み込まれる。標的化部分の例としてはまた、腫瘍又は腫瘍に関連する抗原を含む、細胞構成要素に特異的な他のタンパク質を挙げることができる。標的化部分として使用されるタンパク質は、共有結合を介して脂質ナノ粒子に結合され得る(Heath,Covalent Attachment of Proteins to Lipid nanoparticles,149 Methods in Enzymology 111-119(Academic Press,Inc.1987)を参照されたい)。他の標的化方法としては、ビオチン-アビジン系が挙げられる。
【0119】
例えば、以下に記載されているものを含む、脂質ナノ粒子を調製するための様々な方法が当該技術分野で既知である。Szoka,et al.,Ann. Rev.Biophys.Bioeng.,9:467(1980)、米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、同第4,946,787、PCT公開第91/17424号、Deamer and Bangham,Biochim.Biophys. Acta,443:629-634(1976)、Fraley,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76:3348-3352(1979)、Hope,et al.,Biochim.Biophys.Acta,812:55-65(1985)、Mayer,et al.,Biochim.Biophys.Acta,858:161-168(1986)、Williams,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,85:242-246(1988)、Lipid nanoparticles,MarcJ.Ostro,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1983,Chapter 1、Hope,et al.,Chem.Phys.Lip.,40:89(1986)、及びLipid nanoparticles: A Practical Approach,Torchilin,V.P.et al.,ed.,Oxford University Press(2003)、並びにそれの中で引用されている参考文献。好適な方法としては、超音波処理、押出、高圧/均質化、微小流体化、洗剤透析、小脂質ナノ粒子小胞のカルシウム誘導融合、及びエーテル注入方法が挙げられるが、これらに限定されず、これらは全て当技術分野で周知である。
【0120】
本開示のいくつかの実施形態では、DOTAP/C12-200ベースのLNPを、微小流体混合プロセスを使用して調製した。簡潔に述べると、DOTAP、C12-200、DOPE、CHE及びPEG-DMGの脂質ストックを、エタノール中で20mg/mlの濃度で調製した(20mg/ml~80mg/mlの脂質ストックは、例えば、動物研究のために容易に使用され得ることに留意されたい)。種々のPEG化レベル(0~2%)及び脂質組成物(互いに脂質間のモル比)を調製し、評価した。全ての製剤において、DOTAPmolパーセントは、10~50の間で変化し、DOTAPレベルの変化は、DOPE及び/又はコレステロールレベルの変化によって相殺され、一方、C12~200molパーセントは、18で維持された。脂質を、インビトロ研究用に6.5~8.5mg/mLの最終脂質濃度、又は動物試験用に15~120mg/mLの最終脂質濃度を有するエタノール中で所与の組成物について一緒に混合した。mCherryタンパク質コードmRNA(mCherry)を、0.25~2mg/mlの濃度で水相中のmRNAとして使用した。二相及びLNP調製物の混合は、2:1又は3:1の水性体積対有機体積比を使用し、千鳥状ヘリンボーン構造を有する微小流体チップ中で8又は12ml/分の流量で実施された。得られたLNPを、分子生物学グレードの水に対するタンジェンシャルフロー濾過(TFF)による精製及び緩衝液交換に供した。代替的に、得られたLNPを、8~300kDaの範囲のMWCOを有する膜を使用して、分子生物学グレードの水に対して透析に供した。製剤の特性評価パラメータを以下及び図3Aに要約する。特性評価パラメータの正確な制御により、70~100nmのサイズ範囲、3~16mVの表面電荷(Zeta値)、及び0.22未満のPDIのDOTAP/C12-200ベースのLNPの調製が可能であった。
【0121】
本明細書に開示され、当該技術分野で既知の方法に従って調製された脂質粒子は、ある特定の実施形態では、薬物の担持及び患者への投与の前に、実質的な期間保存され得る。例えば、脂質ナノ粒子は、投与前に、脱水され、保存され、続いて再水和され、1つ以上の活性剤を担持され得る。脂質ナノ粒子はまた、1つ以上の活性剤が担持された後に脱水されてもよい。脱水は、例えば、米国特許第4,880,635号、同第5,578,320号、同第5,837,279号、同第5,922,350号、同第4,857,319号、同第5,376,380号、同第5,817,334号、同第6,355,267号、及び同第6,475,517号に記載されている脱水及び凍結乾燥手順を含む、当該技術分野で利用可能な多様な方法によって達成され得る。一実施形態では、脂質ナノ粒子は、標準的な凍結乾燥装置を使用して脱水される、すなわち、それらは、低圧条件下で脱水される。また、脂質ナノ粒子は、脱水の前に、例えば、液体窒素中で凍結され得る。糖は、脱水前にLNP環境、例えば、脂質ナノ粒子を含有する緩衝液に添加され得、それによって脱水中の脂質ナノ粒子の完全性を促進する。例えば、米国特許第5,077,056号又は同第5,736,155号を参照されたい。
【0122】
脂質ナノ粒子は、例えば、分粒後又はpH勾配を生成した後を含む、それらの調製中の任意の時点で従来の方法によって滅菌され得る。
【0123】
カーゴが担持された脂質粒子組成物
様々な実施形態では、本開示の脂質粒子は、細胞、組織、臓器、又は対象への活性剤の送達を含む、多くの種々の用途に使用され得る。例えば、本開示の脂質ナノ粒子は、血流を介して治療剤を全身に送達するために、又は皮膚に美容剤を送達するために使用され得る。したがって、本開示の脂質ナノ粒子及びカーゴとしての1つ以上の活性剤が、本開示に含まれる。
【0124】
脂質粒子カーゴ
本開示は、カーゴとしての活性剤と組み合わせた、混合カチオン性脂質ナノ粒子(すなわち、イオン化可能な脂質(例えば、C12-200)及び別のカチオン性脂質(例えば、DOTAP)を含む脂質ナノ粒子)を記載する。本明細書で使用される場合、活性剤は、細胞、組織、臓器、又は対象に所望の効果を及ぼすことができる任意の分子又は化合物を含む。例えば、そのような効果は、生物学的、生理学的、又は美容上のものであり得る。活性剤は、例えば、一本鎖又は二本鎖ポリヌクレオチドなどの核酸、プラスミド、アンチセンスRNA、RNA干渉剤(例えば、DNA-DNAハイブリッド、DNA-RNAハイブリッド、RNA-DNAハイブリッド、RNA-RNAハイブリッド、短干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(mRNA)及び短ヘアピンRNA(shRNA)を含む);例えば、抗体(例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体断片など)を含む、ペプチド及びポリペプチド;ヒト化抗体、組換え抗体、組換えヒト抗体、及びPrimatized(商標)抗体、サイトカイン、成長因子、アポトーシス因子、分化誘導因子、細胞表面受容体、及びそれらのリガンド;ホルモン;並びに小有機分子又は化合物を含む小分子を含む、任意の種類の分子又は化合物であり得る。
【0125】
LNPと会合しているか、又はそれによってカプセル化された核酸は、以下の群から選択されるものを含むがこれらに限定されない修飾を含有し得る:2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、5’-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、コレステリル誘導体に連結した末端ヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、5’-メトキシ修飾ヌクレオチド(例えば、5’-メトキシウリジン)、2’-デオキシ修飾ヌクレオチド、ロックドヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、2’-アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミデート、ヌクレオチドを含む非天然塩基;ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネートを含むメチル及び他のアルキルホスホネート、及びキラルホスホネートを含む、ヌクレオシド間連結又は主鎖、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミデート及びアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、及び正常な3’-5’連結を有するボラノホスフェート、これらの2’-5’連結類似体、並びに隣接するヌクレオシド単位の対が3’-5’から5’-3’又は2’-5’から5’-2’に連結している反転極性を有するもの。
【0126】
ある特定の実施形態では、活性剤は、細胞においてmRNAを発現することができるmRNA又はベクターである。
【0127】
実施形態では、活性剤は、CRISPR/Cas系である。任意選択で、本開示のLNPは、例えば、カーゴとしてのガイド鎖(gRNA)及びCas酵素の両方を含むように製剤化され得、それによって、標的細胞における遺伝子のCRISPR媒介標的化を達成及び制御することができる自己含有送達ビヒクルを提供する。
【0128】
ある特定の特徴付けられる実施形態では、活性剤は、核酸調節コントローラー(例えば、上記のタンパク質コントローラー構成要素をコードするmRNA)である。
【0129】
いくつかの実施形態では、活性剤は、治療剤、又はその塩若しくは誘導体である。治療剤誘導体は、それ自体が治療活性であり得るか、又は更なる修飾時に活性になるプロドラッグであり得る。したがって、一実施形態では、治療剤誘導体は、非修飾剤と比較して、治療活性の一部又は全てを保持するが、別の実施形態では、治療剤誘導体は、治療活性を欠く。
【0130】
様々な実施形態では、治療剤としては、抗炎症化合物、麻薬、抑制剤、抗うつ剤、刺激剤、幻覚剤、鎮痛剤、抗生物質、避妊薬、解熱剤、血管拡張剤、抗血管新生剤、細胞血管剤(cytovascular agent)、シグナル伝達阻害剤、血管収縮剤、ホルモン、及びステロイドなどの薬剤及び薬物が挙げられる。
【0131】
ある特定の実施形態では、活性薬剤は、腫瘍学薬であり、それは、抗腫瘍薬(anti-tumor drug)、抗がん薬、腫瘍薬、抗腫瘍剤(antineoplastic agent)などとも称され得る。本開示に従って使用され得る腫瘍学薬の例としては、アドリアマイシン、アルケラン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、araC、三酸化ヒ素、アザチオプリン、ベキサロテン、biCNU、ブレオマイシン、ブスルファン静脈内、ブスルファン経口、カペシタビン(ゼロダ)、カルボプラチン、カルムスチン、CCNU、セレコキシブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロスポリンA、シタラビン、シトシンアラビノシド、ダウノルビシン、サイトキサン、ダウノルビシン、デキサメタゾン、デクスラゾキサン、ドデタキセル、ドキソルビシン、ドキソルビシン、DTIC、エピルビシン、エストラムスチン、リン酸エトポシド、エトポシド及びVP-16、エキセメスタン、FK506、フルダラビン、フルオロウラシル、5-FU、ゲムシタビン(ジェムザール)、ゲムツズマブ-オゾガマイシン、酢酸ゴセレリン、ヒドレア、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イフォスファミド、メシル酸イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン(カンプトスター、CPT-111)、レトロゾール、ロイコボリン、ロイスタチン、ロイプロリド、レバミゾール、リトレチノイン、メガストロール、メルファラン、L-PAM、メスナ、メトトレキサート、メトキシサレン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、窒素マスタード、パクリタキセル、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペントスタチン、ポルフィマーナトリウム、プレドニゾン、リツキサン、ストレプトゾシン、STI-571、タモキシフェン、タキソテール、テモゾラミド、テニポシド、VM-26、トポテカン(ハイカムチン)、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ベルバン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、VP16、及びビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されない。本開示に従って使用され得る腫瘍学薬の他の例は、エリプティシン及びエリプティシン類似体又は誘導体、エポチロン、細胞内キナーゼ阻害剤、並びにカンプトテシンである。
【0132】
本開示のLNP組成物は、概して、単一の活性剤を含むが、ある特定の実施形態では、1つ超の活性剤を含み得る。
【0133】
本開示の他の実施形態では、本開示の脂質ナノ粒子は、少なくとも0.5、0.8、1.2、1.5、2.0、4.0、6.0、8.0、又は12時間の血漿循環半減期を有する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、少なくとも0.5、0.8、1.2、1.5、2.0、4.0、6.0、8.0、又は12時間の血漿薬物半減期を有する。循環及び血液又は血漿クリアランス半減期は、例えば、米国特許公開第2004/0071768(A1)号に記載されているように決定され得る。
【0134】
本開示はまた、脂質ナノ粒子及びその変形をキット形態で提供する。本キットは、既製の製剤又は投与前に混合を必要とする製剤を含み得る。キットは、典型的には、キットの様々な要素を保持するために区画化された容器を含むであろう。キットは、本開示の脂質ナノ粒子組成物又はその構成要素を、水和又は脱水形態で含有し、それらの再水和及び投与のための説明書を含むであろう。特定の実施形態では、キットは、活性剤が担持された本開示の脂質ナノ粒子を含有する少なくとも1つの区画を含む。別の実施形態では、キットは、少なくとも2つの区画を含み、一方は、本開示の脂質ナノ粒子を含有し、他方は、活性剤を含有する。もちろん、これらのキットのうちのいずれも、追加の区画、例えば、米国特許公開第2004/0228909(A1)号に記載されているものなどの緩衝剤を含む区画を含み得ることを理解されたい。混合カチオン性脂質(例えば、C12-200などのイオン化可能な脂質、及びDOTAPなどの他のカチオン性脂質)を含む脂質ナノ粒子を含む本開示のキットはまた、米国特許公開第2004/0228909(A1)号に記載されているキットの他の特徴を含み得る。更に、キットは、1つの区画内に薬物が担持された脂質ナノ粒子を含み、第2の区画内に空の脂質ナノ粒子を含み得る。代替的には、キットは、本開示の脂質ナノ粒子と、第2の区画内に本開示の脂質ナノ粒子に担持される活性薬剤と、第3の区画内に空の脂質ナノ粒子と、を含有し得る。
【0135】
特定の実施形態では、本開示のキットは、C12-200及びDOTAPの両方を含む混合脂質ナノ粒子にカプセル化された治療用化合物を含み、C12-200は、脂質ナノ粒子中に存在する総脂質の5~20%(モル基準)を構成し、DOTAPは、脂質ナノ粒子及び空の脂質ナノ粒子中に存在する総脂質の10~50%(モル基準)を構成する。一実施形態では、治療用化合物を含有する脂質ナノ粒子及び空の脂質ナノ粒子は、キットの異なる区画内に存在する。
【0136】
脂質粒子媒介カーゴ送達の有効性
ある特定の実施形態では、本開示は、18%のC12-200脂質粒子と混合した10~50%(mol/重量)のDOTAPを含有する粒子が、他の組織に対して、肝臓の細胞に活性核酸カーゴ(更に大きな核酸調節コントローラーを含む)を送達するのに非常に効果的であるという驚くべき結果に少なくとも部分的に基づいている。更に、カプセル化された活性剤(カーゴ)、例えばmRNAのレポーター活性は、他の組織と比較して、ほぼ排他的に肝臓組織において生じ、そのようなカーゴの核局在化及び有効性も実証された。脂質粒子の局在化の有効性は、対象の1つ以上の他の組織の局在化に対する、対象の特定の組織への核酸-脂質粒子の局在化の倍率差(増加又は減少)として説明され得る。送達を評価する際の更なる構成要素としての活性の有効性は、対象の1つ以上の他の組織の細胞において観察されるものに対する、対象の特定の組織の細胞内の活性剤、例えば、核酸カーゴ又は他の化合物の活性の倍率差(増加又は減少)として説明され得る。したがって、いくつかの実施形態では、倍率差は、細胞レベルで検出され得るか、又は細胞レベルで生じる事象について適切な代理によって検出され得る。いくつかの実施形態では、影響を受ける肝臓組織の細胞は、肝細胞、血管細胞(すなわち、肝類洞)、肝星細胞、内皮細胞、線維芽細胞、間葉細胞、免疫細胞、がん細胞、クッパー細胞、星細胞、楕円形血管内皮細胞、肝臓由来幹細胞/前駆細胞、及び非肝臓組織由来の幹細胞/前駆細胞又はがん細胞のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、効果/活性の倍率差は、亜細胞内レベルで検出され得、すなわち、活性が標的細胞の核内で検出可能である。
【0137】
LNPの局在化の有効性を決定するために、アッセイは、目的の標識された、又は検出された分子の特性に従って実施され得る。本開示の例示的な実施形態では、蛍光標識脂質を使用してLNP局在化を決定している。他の実施形態では、標識されたペプチド、又は脂質粒子の他の構成要素が使用され得る。いくつかの実施形態では、局在化は、個々の細胞で検出可能である。いくつかの実施形態では、標識は、蛍光標識、すなわち、Cy7などの蛍光標識脂質である。他の実施形態では、脂質ナノ粒子の標識は、量子ドット、又は刺激ラマン散乱によって検出可能な脂質であり得る。他の実施形態では、標識は、当該技術分野で既知の任意のフルオロフォアであり、すなわち、紫外線、可視光、又は赤外線スペクトルにおける励起及び放出を有する。いくつかの実施形態では、局在化は、免疫組織化学又は免疫蛍光法によって検出されるか、又は更に裏付けられる。
【0138】
局在化の有効性は、対象の1つ以上の他の組織に対する、対象の組織、すなわち肝臓組織への核酸-脂質粒子の局在化の倍率差(増加又は減少)として説明され得る。本開示の例示的な実施形態では、Cy7標識脂質をインビボで画像化し、蛍光輝度は、Cy7-LNP濃度の指標として機能した(以下の実施例6を参照されたい)。Cy7-DOPE標識DOTAP/C12-200核酸LNPは、他の組織に対して、具体的には肺、心臓、及び脾臓に対して、肝臓への局在の有効性の増加を示した。本開示のいくつかの実施形態では、Cy7標識核酸LNPは、肺、心臓、又は脾臓に対して少なくとも2倍の肝臓への局在を示した。肺、心臓、又は脾臓に対して、いくつかの実施形態では、Cy7標識核酸LNPは、少なくとも3倍の肝臓への局在を示し、いくつかの実施形態では、Cy7標識核酸LNPは、少なくとも4倍の肝臓への局在を示し、
いくつかの実施形態では、Cy7標識核酸LNPは、少なくとも5倍の肝臓への局在を示し、いくつかの実施形態では、Cy7標識核酸LNPは、少なくとも6倍の肝臓への局在を示し、いくつかの実施形態では、Cy7標識核酸LNPは、少なくとも10倍の肝臓への局在を示し、いくつかの実施形態では、Cy7標識核酸LNPは、少なくとも15倍の肝臓への局在を示し、いくつかの実施形態では、Cy7標識核酸LNPは、少なくとも20倍の肝臓への局在を示した。
【0139】
脂質粒子によってカプセル化された活性剤の活性の有効性を決定するために、アッセイは、活性剤の特性に従って実施され得る。ある特定の実施形態では、混合脂質粒子中の活性剤は、核酸である。他の実施形態では、混合脂質粒子中の活性剤は、小分子又は他の化合物である。
【0140】
いくつかの実施形態では、混合脂質粒子中の活性剤は、mRNAである。例示的な実施形態では、レポーターmRNA、すなわちmCherryの局所発現は、活性剤/カーゴとしてのmRNAについての細胞内送達有効性の指標として機能した。他の実施形態では、mRNAは、Cre酵素(本明細書の実施例6のtdTomatoレポーター系を介したカーゴmRNAの核送達及び活性の確認に使用される)、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、又は青色蛍光タンパク質をコードし得る。あるいは、治療的実施形態では、mRNAは、対象のLNP標的化された細胞における治療的細胞内発現(核酸調節コントローラーの送達及び発現を含む)のためのタンパク質をコードし得、任意選択で、送達されるmRNA又はコードされたタンパク質の細胞内レベルは、送達される治療用mRNAに適切な、当該技術分野で既知の方法によって検出され得る。他の実施形態では、レポーターmRNAは、Lyt2細胞表面マーカーなどの細胞表面マーカーをコードする。更に他の実施形態では、レポーターは、β-ガラクトシダーゼ、α-ラクタマーゼ、アルカリホスファターゼ、又はラディッシュペルオキシダーゼであり得る。他の実施形態では、レポーターmRNAは、チミジンキナーゼ(tk)、HRPT、又はAPRTなどの陰性選択マーカーをコードする。いくつかの実施形態では、レポーターmRNAの活性を検出又は裏付けるために、免疫組織化学又は免疫蛍光を使用する。
【0141】
ある特定の実施形態では、カーゴの送達における本開示の脂質粒子の有効性は、脂質粒子で標的化された組織内の細胞内でカーゴ(活性剤)について観測される活性のレベルに基づいて評価される。そのような効果は、適切な対照製剤及び/又は組織と比較した、活性の倍率差として特定され得、例えば、核酸カーゴを有するLNPの送達有効性は、対象の1つ以上の他の組織に対する、対象の標的組織、すなわち肝臓組織の細胞における核酸カーゴの活性の倍率差(増加又は減少)として説明され得る。したがって、ある特定の核酸カーゴについて、LNP製剤の送達有効性は、非標的組織細胞よりも、又は核酸カーゴを含まないLNP製剤に対して、標的化された組織細胞において、例えば、2倍高い核酸ペイロードの細胞内活性を達成するLNPとして特定され得る。任意選択で、核酸カーゴの送達についての有効なLNP製剤は、非標的組織細胞よりも、又は核酸カーゴを含まないLNP製剤に対して、標的化された組織細胞において、少なくとも約3倍高い、任意選択で、約4倍高い、任意選択で、約5倍高い、任意選択で、約6倍高い、任意選択で、約7倍高い、任意選択で、約8倍高い、任意選択で、約9倍高い、任意選択で、約10倍高い、任意選択で、約20倍高い、任意選択で、約50倍高い、任意選択で、約100倍高いなどの核酸ペイロードの細胞内活性を達成するものとして説明され得る。本開示の例示的な実施形態では、混合脂質粒子は、mCremRNAを送達し、それは、対象の肺、心臓、及び脾臓の細胞のそれよりも有意に高いレベルで、対象の肝臓組織の細胞において発現した(以下の実施例6を参照されたい)。mCreを発現する細胞を、Cre発現応答性tdTomatoレポーターの画像化を介して検出した。いくつかの実施形態では、Cre mRNAは、対象の肺、心臓、及び脾臓の細胞におけるmRNAの発現よりも少なくとも2倍高いレベルで対象の肝臓組織の細胞において発現した。いくつかの実施形態では、カーゴmRNAは、対象の肺、心臓、及び脾臓の細胞におけるmRNAの発現よりも少なくとも3倍高いレベルで対象の肝臓組織の細胞において発現した。いくつかの実施形態では、対象の肺、心臓、及び脾臓の細胞におけるカーゴmRNAの発現よりも、ルシフェラーゼmRNAは、肝臓において少なくとも4倍高く発現し、いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼmRNAは、肝臓において少なくとも5倍高く発現し、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも6倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも7倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも8倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも9倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも10倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも11倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも12倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも13倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも14倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも15倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも20倍高かった。
【0142】
他の実施形態では、混合脂質粒子を用いて、RNAi剤(例えば、siRNA)を組織、すなわち、肝臓組織に送達し得る。siRNA又は他のRNAi剤について、送達及び活性有効性の測定は、例えば、転写レベルを検出するための標的特異的PCR、標的タンパク質レベルを検出するための免疫吸着剤又は他の免疫学的方法、及び/又はフローサイトメトリー(FACS)を用いることができる(Testoni et al.,Blood 1996,87:3822.)。いくつかの実施形態では、siRNAは、対象の肺、心臓、脾臓、卵巣、膵臓、腎臓、及び/又は他の非肝臓臓器若しくは組織の細胞においてよりも少なくとも2倍高いレベルで、対象の肝臓組織の細胞において活性であり得る。いくつかの実施形態では、siRNAは、対象の肺、心臓、脾臓、卵巣、膵臓、腎臓、及び/又は他の非肝臓臓器若しくは組織の細胞においてよりも少なくとも3倍高いレベルで、対象の肝臓組織の細胞において活性であり得る。いくつかの実施形態では、対象の肺、心臓、脾臓、卵巣、膵臓、腎臓、及び/又は他の非肝臓臓器若しくは組織の細胞におけるsiRNAの活性よりも、siRNAは、肝臓において少なくとも4倍高いレベルで活性であり得、いくつかの実施形態では、siRNAは、肝臓において少なくとも5倍高いレベルで活性であり得、いくつかの実施形態では、siRNAは、肝臓において少なくとも6倍高いレベルで活性であり得、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも7倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも8倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも9倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも10倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも11倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも12倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも13倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも14倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも15倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも20倍高い。関連する実施形態では、RNAiカーゴを肝臓に優先的に送達する混合脂質粒子は、例えば、非標的組織の細胞と比較して、又はいくつかの他の適切な対照(例えば、未処置の肝臓組織細胞中の標的転写産物のレベル)と比較して、標的化された肝臓組織の細胞における標的転写産物及び/又はタンパク質レベルの20%超の低減を示し得る。任意選択で、RNAiカーゴを肝臓に優先的に送達する混合脂質粒子は、非標的組織の細胞と比較して、又はいくつかの他の適切な対照(例えば、未処置の肝臓組織細胞中の標的転写産物のレベル)と比較して、標的化された肝臓組織の細胞における標的転写産物及び/又はタンパク質レベルの30%超の低減、40%超の低減、50%超の低減、60%超の低減、70%超の低減、80%超の低減、90%超の低減、95%超の低減、97%超の低減、97%超の低減、98%超の低減、又は99%超の低減を示し得る。
【0143】
いくつかの実施形態では、本開示の混合脂質粒子は、CRISPR-Cas9系を組織、すなわち肝臓組織に送達するために使用され得る。CRISPR-Cas9の送達及び活性の有効性の測定は、例えば、Cas9、標的化された領域のゲノム構造及び/若しくは標的転写レベルを検出するためのPCR、Cas9、又は標的タンパク質のノックイン、ノックアウト若しくは他の修飾を検出するための免疫吸着剤若しくは他の免疫学的方法、並びに/又はフローサイトメトリー(FACS)を必要とし得る(Testoni et al.,Blood 1996,87:3822.)。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas9媒介効果は、対象の肺、心臓、脾臓、卵巣、膵臓、腎臓、及び/又は他の非肝臓臓器若しくは組織の細胞においてよりも少なくとも2倍高いレベルで、対象の肝臓組織の細胞において特定される。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas9媒介効果は、対象の肺、心臓、脾臓、卵巣、膵臓、腎臓、及び/又は他の非肝臓臓器若しくは組織の細胞においてよりも少なくとも3倍高いレベルで、対象の肝臓組織の細胞において特定される。いくつかの実施形態では、対象の肺、心臓、脾臓、卵巣、膵臓、腎臓、及び/又は他の非肝臓臓器若しくは組織の細胞におけるCRISPR-Cas9媒介効果よりも、CRISPR-Cas9媒介効果は、肝臓において少なくとも4倍高いレベルで細胞において特定され得、いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas9媒介効果は、肝臓において少なくとも5倍高いレベルで細胞において特定され得、いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas9媒介効果は、少なくとも6倍高いレベルで細胞において特定され得、いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas9媒介効果は、少なくとも7倍高いレベルで細胞において特定され得、いくつかの実施形態では、少なくとも8倍高く、いくつかの実施形態では、少なくとも9倍高く、いくつかの実施形態では、少なくとも10倍高く、いくつかの実施形態では、少なくとも11倍高く、いくつかの実施形態では、少なくとも12倍高く、いくつかの実施形態では、少なくとも13倍高く、いくつかの実施形態では、少なくとも14倍高く、いくつかの実施形態では、少なくとも15倍高く、いくつかの実施形態では、肝臓において少なくとも20倍高い。
【0144】
他の実施形態では、混合された脂質粒子は、mRNA又は他の核酸カーゴを組織、すなわち肝臓組織に送達し得、発現及び場合によっては活性が核内で生じる。本開示では、いくつかの実施形態は、活性剤の核活性のレポーターとしてCreリコンビナーゼ酵素を利用している(以下の実施例6を参照されたい)。Creリコンビナーゼ酵素は、コードされたタンパク質の核への移行を必要とし、したがって、核移行のレポーターとして機能し得る。Creリコンビナーゼは、loxP部位間のDNAの部位特異的組換えを触媒する。Creリコンビナーゼ活性発現時に、loxP組換えに起因して、レポーター蛍光タンパク質が発現される。一実施形態では、Ai14マウス系統は、Gt(Rosa)26Sor遺伝子座に挿入されたCAGプロモーター駆動型赤色蛍光タンパク質バリアント(tdTomato)の転写を防止するCreレポーターloxP隣接STOPカセットを使用した。Ai14マウスにmCre担持DOTAP-LNPを静脈内注射し、Cre酵素の送達及び発現、Cre酵素の核移行、及びその後のtdTomatoプロモーターのCre媒介組換えの後に、肝臓細胞の核における堅牢なtdTomato蛍光を発現し始めた。例示的な実施形態では、活性の有効性、すなわち、核における検出可能なmRNAの発現は、肺、心臓、及び脾臓における細胞のそれよりも少なくとも2倍高いレベルで肝臓細胞の核において観察可能であった。いくつかの実施形態では、核における検出可能なmRNAの発現は、肺、心臓、及び脾臓における細胞のそれよりも少なくとも3倍高いレベルで肝臓細胞の核において観察可能であった。いくつかの実施形態では、肺、心臓、及び脾臓における細胞における検出可能なmRNAの活性よりも、核における検出可能なmRNAの発現は、少なくとも4倍高いレベルで肝臓細胞の核において観察可能であり、いくつかの実施形態では、レベルは、5倍高く、いくつかの実施形態では、6倍高く、いくつかの実施形態では、7倍高く、いくつかの実施形態では、8倍高く、いくつかの実施形態では、9倍高く、いくつかの実施形態では、10倍高く、いくつかの実施形態では、11倍高く、いくつかの実施形態では、12倍高く、
いくつかの実施形態では、13倍高く、いくつかの実施形態では、14倍高く、いくつかの実施形態では、15倍高く、いくつかの実施形態では、20倍高かった。
【0145】
他の実施形態では、混合脂質粒子は、低分子又は他の化合物を組織、すなわち肝臓組織に送達し得る。低分子の局在化又は活性の有効性は、いくつかのインビボ画像化方法(例えば、PET/CT)、質量分析、並びに標的効果の免疫組織化学及び免疫蛍光によって決定され得る。いくつかの実施形態では、肝臓における小分子の混合脂質粒子媒介性の局在及び/又は活性は、他の組織のものよりも、例えば、肺、心臓、腎臓、卵巣、膵臓、又は他の組織のものよりも、任意選択で、脾臓のものよりも、2倍高くてもよい。いくつかの実施形態では、肝臓における小分子の混合脂質粒子媒介性の局在化及び/又は活性は、他の組織のものよりも、3倍高く、他の組織のものよりも、例えば、肺、心臓、腎臓、卵巣、膵臓、又は他の組織のものよりも、任意選択で、脾臓のものよりも、4倍高く、5倍高く、6倍高く、7倍高く、8倍高く、9倍高く、10倍高く、11倍高く、12倍高く、13倍高く、14倍高く、15倍高く、又は20倍高くてもよい。
【0146】
ある特定の実施形態では、肝臓送達のために製剤化される脂質粒子とは、対象の1つ以上の他の組織の細胞と比較して、肝臓細胞へのカーゴの優先的な局在化及び細胞内送達(直接的又は代理のいずれかによる細胞内活性の評価に基づく)を示す脂質粒子を指す。例えば、肝臓送達のための脂質粒子は、対象の他の組織よりも、対象の肝臓細胞において少なくとも2倍高いカーゴ(例えば、核酸カーゴ、例えば、mRNA、CRISPR/Cas系、核酸調節コントローラーなど)の活性を誘導することができるものである。対象の肝臓細胞におけるそのような効果は、本明細書の他の場所に記載されるように、肝臓の1つ以上の細胞型内で評価され得る。ある特定の実施形態では、肝臓送達のための脂質粒子は、対象の他の組織よりも、対象の肝臓細胞において、少なくとも3倍高い、少なくとも4倍高い、少なくとも5倍高い、少なくとも6倍高い、少なくとも7倍高い、少なくとも8倍高い、少なくとも9倍高い、少なくとも10倍高い、少なくとも15倍高い、少なくとも20倍高い、少なくとも30倍高い、少なくとも40倍高い、少なくとも50倍高い、少なくとも60倍高い、少なくとも70倍高い、少なくとも80倍高い、少なくとも90倍高い、少なくとも100倍高い、少なくとも1000倍高いなどのカーゴ(例えば、核酸カーゴ、例えば、mRNA、CRISPR/Cas系、核酸調節コントローラーなど)活性を誘導することができるものである。
【0147】
更に他の実施形態では、PEG修飾脂質を含まずに製剤化された混合脂質粒子は、免疫系がPEGを除去の標的とする加速血液クリアランス効果(ABC)を減少又は回避し得る。
【0148】
LNP媒介カーゴ送達
本明細書に開示される脂質粒子組成物は、活性剤又は治療剤又は化合物を、それを必要とする対象又は患者に送達することを含む、様々な目的のために使用され得る。対象は、ヒト及び非ヒト動物の両方を含む。ある特定の実施形態では、対象は、哺乳動物である。他の実施形態では、対象は、例えば、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、又はトリを含む1つ以上の特定の種又は品種である。
【0149】
したがって、本開示は、様々な疾患及び障害の治療方法、並びに美容上の利益を提供することを意図した方法も提供する。
【0150】
治療方法
本開示のLNP組成物は、炎症性疾患、心血管疾患、神経系疾患、腫瘍、脱髄疾患、消化器系疾患、内分泌系疾患、生殖系疾患、血液及びリンパ系疾患、免疫疾患、精神疾患、筋骨格疾患、神経疾患、神経筋疾患、代謝疾患、性感染症、皮膚及び結合組織疾患、泌尿器疾患、並びに感染症を含むが、これらに限定されない、多種多様な疾患又は障害のいずれかを治療するために使用され得る。
【0151】
ある特定の実施形態では、LNP組成物は、以下から選択される疾患又は障害を含むが、これらに限定されない肝臓の疾患又は障害を治療又は予防するために用いられ得る:胆道閉鎖症、アラジール症候群、アルファ1アンチトリプシン欠乏症、チロシン血症、新生児肝炎、C型肝炎ウイルス感染症、B型肝炎ウイルス感染症、A型肝炎ウイルス感染症、肝細胞がん腫、及びウィルソン病。
【0152】
他の実施形態では、本開示のLNP組成物は、以下から選択される疾患又は障害を含むが、これらに限定されない関節の疾患又は障害を治療又は予防するために使用され得る:関節リウマチ、乾癬性関節炎、痛風、腱炎、滑液包炎、手根管症候群、及び変形性関節症。
【0153】
他の実施形態では、本開示のLNP組成物は、以下から選択される疾患又は障害を含むが、これらに限定されない炎症性の疾患又は障害を治療又は予防するために使用され得る:炎症性腸疾患、腹膜炎、骨髄炎、悪液質、膵炎、外傷誘導性ショック、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、嚢胞性線維症、急性気管支炎、急性極気管支炎(acute intense bronchitis)、変形性関節症、関節リウマチ、感染性関節炎、感染後関節炎、生殖腺内腔関節炎、結核性関節炎、関節炎、変形性関節症、痛風、脊椎関節症、強直性脊椎炎、血管炎症候群に関連する関節炎、神経性結節性多発性動脈炎、過敏性血管炎、ルゲニック肉芽腫症、リウマチ性ポリープ症筋肉痛、関節炎細胞性動脈炎、カルシウム多発性嚢胞性関節症、苛性痛風(caustic gout)、非関節性リウマチ、滑液包炎、花粉症、化膿性炎症(例えば、テニス肘)、神経障害性関節疾患、出血性関節症、Henoch-Schlein紫斑、肥大性変形性関節症、多サイズ痔核、脊柱側弯症、ヘモクロマトーシス、高リポタンパク血症、低ガンマグロブリン血症、COPD、急性呼吸窮迫症候群、急性肺損傷、気管支肺異形成、及び全身性エリテマトーデス(SLE)からなる群から選択される、炎症性の疾患又は障害。
【0154】
他の実施形態では、本開示のLNP組成物は、乾癬、アトピー性皮膚炎、強皮症、湿疹、酒さ、脂漏性皮膚炎、黒色腫、日光性角化症、魚鱗癬、グローバー病、尋常性疣贅、角化棘細胞腫、及び脂漏性角化症を含むが、これらに限定されない表皮疾患又は障害を治療又は予防するために使用され得る。
【0155】
一実施形態では、本開示のLNP組成物を使用して、ある種のがんを治療又は予防し得る。具体的には、これらの方法は、リンパ腫、白血病、及び骨髄腫を含む血液及びリンパ系のがんに適用され得る。本開示に従って治療され得る特定のがんの例としては、作業用製剤、Rappaport分類、及び好ましくはREAL分類などの様々な分類系のいずれかに従って定義される任意の種類のNHLが含まれる、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫(NHL)が挙げられるが、これらに限定されない。このようなリンパ腫には、低悪性度、中悪性度、及び高悪性度のリンパ腫、並びにB細胞及びT細胞リンパ腫の両方が含まれるが、これらに限定されない。これらのカテゴリーには、様々な種類の小細胞、大細胞、切断細胞、リンパ球性、濾胞性、びまん性、バーキット、マントル細胞、NK細胞、CNS、エイズ関連、リンパ芽球性、成人リンパ芽球性、無症候性、侵襲性、形質転換、及び他の種類のリンパ腫が含まれる。本開示の方法は、任意のステージ、例えば、ステージI、II、III、又はIVでの成人型又は小児型のリンパ腫に対して使用され得る。様々な種類のリンパ腫は、当業者に周知であり、例えば、American Cancer Societyによって記載されている(例えば、www3.cancer.orgを参照されたい)。
【0156】
本明細書に記載の組成物及び方法はまた、成人型又は小児型の疾患を含む任意の形態の白血病に適用され得る。例えば、任意の急性、慢性、骨髄性、及びリンパ球性形態の疾患は、本開示の方法を使用して治療され得る。好ましい実施形態では、本方法は、急性リンパ性白血病(ALL)を治療するために使用される。様々な種類の白血病についてのより多くの情報は、とりわけ、Leukemia Society of America(例えば、www.leukemia.orgを参照されたい)から見出すことができる。
【0157】
神経芽腫、骨髄腫、前立腺がん、小細胞肺がん、結腸がん、卵巣がん、非小細胞肺がん、脳腫瘍、乳がん、及び他のものなどの追加の種類の腫瘍もまた、本明細書に記載の方法を使用して治療され得る。
【0158】
本開示のLNP組成物は、第一選択治療として、又は二次治療として投与され得る。加えて、それらは、一次化学療法治療として、又はアジュバント若しくはネオアジュバント化学療法として投与され得る。例えば、再発型、無症候型、形質転換型、及び侵襲型の非ホジキンリンパ腫の治療は、化学療法及び/又は放射線療法などの一次抗がん治療の少なくとも1つの経過後に施され得る。
【0159】
LNP組成物の投与
本開示のLNP組成物は、非経口、静脈内、全身、局所、経口、腫瘍内、筋肉内、皮下、腹腔内、吸入、又は任意のそのような送達方法を含む、多数の方法のうちのいずれかで投与される。一実施形態では、組成物は、非経口、すなわち、関節内、静脈内、腹腔内、皮下、又は筋肉内投与される。特定の実施形態では、LNP組成物は、静脈内注入によって、又はボーラス注射による腹腔内に投与される。例えば、一実施形態では、患者は、例えば、5~10分、15~20分、30分、60分、90分、又はそれ以上にわたって連続した静脈内ラインを介して、脂質ナノ粒子でカプセル化された活性剤の静脈内注入を受ける。一実施形態では、60分間の注入が使用される。他の実施形態では、6~10又は15~20分の範囲の注入が使用される。そのような注入は、定期的に、例えば、1、3、5、7、10、14、21、又は28日又はそれ以上ごとに1回、好ましくは7~21日ごとに1回、好ましくは7又は14日ごとに1回、受けることができる。
【0160】
本開示のLNP組成物は、対象への送達に好適な医薬組成物として製剤化され得る。本開示の医薬組成物は、多くの場合、1つ以上の緩衝剤(例えば、中性緩衝生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロース、デキストロース、又はデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチド若しくはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、静菌剤、EDTA若しくはグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、製剤をレシピエントの血液と等張、低張、若しくは弱高張にする溶質、懸濁剤、増粘剤、及び/又は防腐剤を更に含むであろう。代替的に、本開示の組成物は、凍結乾燥物として製剤化され得る。
【0161】
医薬製剤中の薬物及び脂質ナノ粒子の濃度は、広範に変化することができ、すなわち、約0.05重量%未満から、通常は約2~5重量%又は少なくとも約2~5重量%、10~30重量%までであり、使用される特定の薬物、治療される疾患状態、及び臨床医の判断に応じて選択されるであろう。更に、薬物及び脂質ナノ粒子の濃度は、投与される流体量、投与される溶液の浸透圧、並びに薬物及び脂質ナノ粒子の忍容性も考慮に入れる。いくつかの場合では、注入関連の副作用の発生率又は重症度を低減するために、より低い薬物又は脂質ナノ粒子濃度を使用することが好ましい場合がある。
【0162】
本開示における使用に好適な製剤は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th Ed.(1985)に見出され得る。多くの場合、静脈内組成物は、水性担体などの、許容される担体中に懸濁された脂質ナノ粒子の溶液を含む。様々な水性担体、例えば、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.9%等張生理食塩水、0.3%グリシン、5%デキストロースなどのうちのいずれかを使用することができ、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどの安定性の増強のための糖タンパク質を含み得る。多くの場合、通常の緩衝生理食塩水(135~150mMのNaCl)又は5%デキストロースが使用されるであろう。これらの組成物は、濾過などの従来の滅菌技術によって滅菌され得る。得られた水溶液は、使用のために包装されるか、又は無菌条件下で濾過され、凍結乾燥され得、凍結乾燥された製剤は、投与前に無菌水溶液と組み合わされる。組成物はまた、pH調整剤及び緩衝剤、張力調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどの生理学的条件に近づけるために必要な薬学的に許容される補助物質を含有し得る。追加的に、組成物は、保存時のフリーラジカル及び脂質過酸化損傷から脂質を保護する脂質保護剤を含み得る。アルファ-トコフェロールなどの親油性フリーラジカル消光剤、及びフェリオキサミンなどの水溶性鉄特異的キレート剤が好適である。
【0163】
用量当たりに投与される活性剤の量は、最小治療用量を上回るが、毒性用量を下回るように選択される。用量当たりの量の選択は、患者の病歴、他の療法の使用、及び疾患の性質などの多数の因子に依存するであろう。加えて、投与される活性剤の量は、治療に対する患者の応答及び任意の治療関連副作用の存在又は重症度に応じて、治療にわたって調整され得る。ある特定の実施形態では、LNP組成物の投薬量又は投与頻度は、対応する遊離活性剤での治療の投薬量及びスケジュールとほぼ同じである。しかしながら、投薬量は、遊離薬物治療と比較して、特に、LNP組成物が毒性の低減を示す場合に、より高く、又はより頻繁に投与され得ることを理解されたい。投与量は、遊離薬物治療と比較して、特に、LNP組成物が遊離薬物と比較して増加した有効性を示す場合、低く、又はそれほど頻繁でなく投与され得ることも理解されている。様々な化学療法化合物(遊離薬物)の例示的な投薬量及び治療は、当業者に既知であり、利用可能であり、例えば、Physician’s Cancer Chemotherapy Drug Manual,E.Chu and V.Devita(Jones and Bartlett,2002)に記載されている。
【0164】
患者は、典型的には、治療に対する患者の応答に応じて、少なくとも2つの経過のそのような治療、及び潜在的により多くを受けるであろう。単剤レジメンでは、観察された応答及び毒性に基づいて、治療の全経過を患者及び医師によって決定する。
【0165】
併用療法
ある特定の実施形態では、本開示のLNP組成物は、手術、放射線治療、化学療法、又は上記のいずれかを含む他の活性剤などの1つ以上の追加の化合物又は療法と組み合わせて投与され得る。LNP組成物は、有効性の増加又は望ましくない副作用の低減を含む様々な理由で、第2の活性剤と組み合わせて投与され得る。LNP組成物は、追加の治療の前、後、又は追加の処置と同時に投与され得る。更に、本開示のLNP組成物(第1の活性剤を含む)が第2の活性剤と組み合わせて投与される場合、第2の活性剤は、遊離薬物として、独立したLNP製剤として、又は第1の薬物を含むLNP組成物の構成要素として投与され得る。ある特定の実施形態では、複数の活性剤が、同じ脂質ナノ粒子に担持される。他の実施形態では、活性剤を含む脂質ナノ粒子は、1つ以上の遊離薬物と組み合わせて使用される。特定の実施形態では、活性剤を含むLNP組成物を個別に形成し、その後、単一の共投与のために他の化合物と組み合わせる。代替的には、ある特定の療法は、所定の順序で連続的に投与される。したがって、本開示のLNP組成物は、1つ以上の活性剤を含み得る。
【0166】
当業者に既知の他の併用療法は、本開示の方法と併せて使用され得る。
【0167】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等の方法及び材料が、本開示の実施又は試験において使用され得るが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参照文献は、参照によってそれらの全体が組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。加えて、材料、方法、及び例は、単なる例示にすぎず、限定することを意図しない。
【0168】
ここで、本開示の例示的な実施形態を詳細に言及する。本開示は例示的な実施形態と組み合わせて説明されるが、本開示をそれらの実施形態に限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。逆に、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨及び範囲内に含まれ得るような代替物、改変物、及び同等物を包含することが意図される。当該技術分野で周知の標準的な技術又は以下に具体的に記載される技術を利用した。
【実施例
【0169】
実施例1:微小流体アプローチを使用した混合脂質ナノ粒子(LNP)製剤の調製
LNPの製剤は、カーゴとしてオリゴヌクレオチドをカプセル化するために、イオン化可能な脂質、カチオン性脂質、非カチオン性脂質(例えば、ヘルパー脂質として)、コレステロール(例えば、構造的脂質として)、及び任意選択で、コンジュゲート脂質(例えば、PEG脂質)を使用して調製された。パイロット相の製剤では、検証され、広く受け入れられたイオン化可能な脂質であるヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(MC3)を第1の構成要素として使用し、第2の構成要素としてカチオン性分岐ポリエチレンイミン(bPEI)と組み合わせた。第2の構成要素であるbPEIは、MC3分子当たり1つの正荷電窒素と比較して、分子当たり2つ以上の正荷電窒素原子を有する分岐構造を有する。これらの2つの構成要素を、ある範囲のモル比にわたって他の種類の脂質と混合し(図1Aを参照)、エチルアルコール(EtOH)中の製剤化されたLNPの有機相を形成した。有機相にCy5-脂質コンジュゲートを含めることによって、LNPをまた蛍光標識もした。オリゴヌクレオチドカーゴについては、核酸調節コントローラー及びGFPタンパク質をコードする8870bpの大きな円形プラスミドを、pH4.5のクエン酸緩衝液(50mM)中で0.27mg/mlの濃度で混合した。2相及びLNP調製物の混合を、微小流体混合デバイスを使用して2:1の体積比(水性:有機)を用いて実施した。LNPを、更なる精製及び濃縮なしで使用した。粒径、ゼータ電位、及び多分散性指数(PDI)をDLS-PALSで測定し、特性評価の結果を表にした(図1A)。所与の製剤及び脂質を使用して、100nmの粒径の混合LNPを成功裏に調製することができた。Hepa1-6マウス肝細胞がん腫細胞を、20,000細胞/ウェル/100μlで96ウェル黒壁マイクロプレートに播種した。細胞を、5%CO下、37℃でインキュベーションし、一晩インキュベーションして付着させた。次いで、細胞を、翌日、合計100μlの細胞培養培地/ウェル中で、500~125ngのプラスミド/ウェルに対応する3つの異なる体積のLNPを使用して、MbPとして標識された混合LNPの製剤で処理した。細胞を、製剤で48時間連続的に処理した。次いで、ウェルを、フェノールレッドを含まない完全細胞培養培地で洗浄し、細胞核をHoechstで染色した。生細胞中のCy5(赤色)、Hoechst(青色)、及びGFP(緑色)を検出するために画像化を実施した。48時間処理後のHepa1.6細胞のトランスフェクションの成功が観察された(図1B)。処理された細胞の100%が、Cy5陽性であり(図1B)、これは、これらの細胞がLNP陽性であることを示した。本開示の混合LNPはまた、並行してアッセイされたMC3ベースのLNPとは異なり、大きなプラスミドカーゴで細胞をトランスフェクションすることができた。本実施例の混合LNPはまた、試験された濃度で細胞に有意な細胞毒性を及ぼさず、これは、bPEIの添加がMbP混合LNPの安全性に悪影響を及ぼさなかったことを示した(図1C)。
【0170】
実施例2:混合カチオン性脂質粒子は、歴史的にトランスフェクションが困難な細胞株のトランスフェクションに有効であることが特定された
初代T細胞は、歴史的に、非ウイルスベクターでトランスフェクションすることが困難であり、ポリプレックスのエンドサイトーシスが非常に低いことを示す。更に、T細胞の細胞内pHは、他の細胞型よりも高く、MC3などのほとんどのイオン化可能な脂質のpKa(pKa:6.4)近くである。理論に拘束されることを望まないが、これは、LNPの内部化時にエンドソーム区画における正電荷変換の減少を引き起こすと考えられており、したがって、プロトンスポンジ効果及びエンドソーム脱出を防止するようである。トランスフェクションのための高カチオン性脂質及びポリマーの使用はまた、細胞毒性及びオートファゴソームの形成を誘導し得る。上記の課題に対する混合粒子及びそれらの性能を評価するための最初の試みでは、MC3、bPEI、DOPC、コレステロール、及びPEG2k-DMGからなる「MbP-2」と標識された混合LNPの製剤を開発した(図2Aに示される比率)。他の脂質構成要素の対応する比率でのMC3のみの製剤も調製し、比較のためのベースライン製剤として使用した。代表的なオリゴヌクレオチドカーゴとして、GFP mRNAを両方の形態のLNP中にカプセル化し、それぞれのLNP製剤の特性/能力を評価した。MbP-2及びMC3製剤の両方が100%のCy5陽性細胞を引き起こし、両方のLNPが成功裏に内在化されたことを示すが、MbP-2混合LNP製剤は、細胞の50%超にGFP mRNAをトランスフェクションしたことが観察された(図2B)。対照的に、MC3製剤は同じ条件下で細胞の16%のみをトランスフェクションしたことが観察された。その結果、MbP-2混合LNP製剤は、MC3単独LNPと比較して、トランスフェクションされた細胞において1.5倍増加したGFPシグナル、並びに対照処理された細胞と比較して、トランスフェクションされた細胞において20倍増加したGFPシグナルを生成した(図2C)。これらの結果により、MC3単独のLNPと比較して、mRNAのカプセル化及び細胞への送達についての混合LNPの有効性が実証された。
【0171】
実施例3:種々の製剤パラメータを有する混合C12-200/DOTAP粒子の調製
C12-200及びDOTAP脂質を様々な相対濃度で混合した一連のDOTAP/C12-200混合脂質ナノ粒子(「DC LNP」)を調製し、それによって、不飽和及び飽和脂質鎖の両方を個々のLNP製剤に導入した。DC LNPを、微小流体混合プロセスを使用して産生した。DOTAP、C12-200、DOPE、CHE、及びPEG2k-DMGの脂質ストックを、20~80mg/mLの濃度で、エタノール中で調製した。C12-200のモル濃度パーセント(mol%)及び総脂質対mRNA質量比を一定に保ちながら、DOPE、DOTAP及びPEGのモル濃度パーセント(mol%)の変化を調査した。C12-200の濃度を20mol%未満に保ち、より高いC12-200レベルで予測される毒性に対して軽減した。mCherry mRNA(長さ996ヌクレオチド)を0.25mg/mL濃度で水相中の核酸カーゴとして使用した。有機相及び水相の混合を、8mL/分の流速で3:1(水性対有機)の体積比を使用して実施した。製剤の特性評価パラメータを図3Aに要約する。
【0172】
C12-200の高い正の正味電荷は、試験された12個の製剤のうちの11個にわたって72~97nmの変動で、粒子サイズの正確な制御を可能にした。表面電荷は4~15mVの間で維持され、PDIは0.2未満であった。製剤の安定性を増加させるために、及び全身投与時に予測されるステルス特性を有するそのような粒子を提供するために、PEG2k-DMGを含めた。
【0173】
実施例4:混合C12-200/DOTAP粒子は肺がん細胞株A549にトランスフェクションした
A549ヒト肺がん細胞を、選択された混合C12-200/DOTAP粒子で、インビトロで処理した(図3A)。mCherry mRNAトランスフェクションを、37℃、5%COで、24時間、混合C12-200/DOTAP粒子で処理されたウェル当たり20,000個の細胞において誘導した。mRNAの投薬は、完全培地中で5~0.16μg/mLの範囲で変化した。選択された製剤の細胞毒性を最初に評価した。細胞を、以下の3つの異なる実験条件下で、混合C12-200/DOTAP粒子で特異的に処理した:(i)DOTAPのモル濃度パーセントの影響を調査するために、DOTAP及びDOPEのモル濃度パーセンテージを変化させながら、C12-200のモル濃度パーセンテージを18%に維持する(図3B)、(ii)C12-200のモル濃度パーセンテージを18%に維持し、PEG-脂質比を変化させる(図3C)、並びに(iii)特定の粒子中のDOPE及びコレステロールのそれぞれの役割を調査するために、C12-200のモル濃度パーセンテージを18%に維持し、DOTAP及びコレステロールのモル濃度パーセンテージを変化させる(図3D)。24時間の処理は、アッセイされた粒子における最大許容mRNA用量が0.63μg/mlであることを明らかにした。様々な粒子について観察されたトランスフェクション細胞のパーセンテージもまた評価した(図4A~4C)。全ての混合C12-200/DOTAP粒子は、許容用量レベル(細胞の少なくとも80%が生存可能であった)で細胞の100%をトランスフェクションした。結果は更に、C12-200のモル濃度パーセンテージが一定に保たれ、DOTAP%のレベルの低減が、コレステロール濃度の増加によって相殺された場合、そのような低いDOTAP粒子のトランスフェクション有効性が低い処理濃度で低下したことを示した。また、製剤にPEG脂質を含めることは、おそらく粒子安定性を増強することによって、トランスフェクション効率を増加させたと特定した。最も低い試験された濃度で処理された細胞の詳細な顕微鏡解析も実施され、非常に低いmRNA濃度でさえも、全ての細胞がmCherryレポータータンパク質を明確に発現したことが明らかになった(図5)。
【0174】
実施例5:-80℃での保存後、混合C12-200/DOTAP粒子は安定であった
混合C12-200/DOTAP粒子は、上記の微小流体混合プロセスを使用して産生された。混合C12-200/DOTAP粒子を調製するために、DOTAP、C12-200、DOPE、CHE、及びPEG-DMGの脂質ストックを、20~80mg/mLの濃度で、エタノール中で調製した。粒子中の最終脂質濃度を、DOTAP、C12-200、DOPE、コレステロール(CHE)、及びPEG-DMGについて、それぞれ50、18、6、24、及び2mol%に維持した。核酸調節コントローラーをコードする(すなわち、タンパク質コントローラー構成要素をコードする)、長さが4598ヌクレオチドのmRNAを、0.20mg/mLの濃度で水相中の核酸カーゴとして使用した。有機相及び水相の混合は、従来の千鳥状ヘリンボーンモデルと比較して、作業体積を増加させることを可能にする微小流体流路設計において、8mL/分の流量で3:1(水性対有機)体積比を使用して実施した。得られた粒子を、水又はpH6.5の4mMのHEPES緩衝液中でのタンジェンシャルフロー濾過によって精製及び緩衝液交換に供した。粒子をそのまま、又は最終10%のスクロースに添加して35日間、4℃及び-80℃で保存した。スクロースは、凍結プロセス中に粒子の構造を保存することができる凍結保護剤として作用する。保存前及び保存後の粒子製剤の特性評価パラメータを決定した(図6A)。スクロースを添加の有無にかかわらず、全ての製剤は4℃で安定したままであった。凍結した場合、凍結保護剤を含むLNP(ここでは10%のスクロース)のみがその特性を保持していた。凍結保存は、解凍時に早期のmRNA放出又は不安定性の証拠を示さなかった(図6B)。したがって、本開示の粒子は、凍結保存に適している可能性が高く、カーゴ核酸(長いmRNA又は核酸調節コントローラーカーゴを含む)を保護することができる強力な内部構造を有する。
【0175】
実施例6:混合C12-200/DOTAP粒子は、DOTAPのみの粒子に対して指向性を変化させ、肝臓標的化を可能にした
肝組織標的化に対する本開示の粒子の有効性を決定するために、シグナルを産生するのに核内のカーゴ核酸活性を必要とするAil4マウスを利用し、混合C12-200/DOTAP粒子の生体内分布をAi14マウスにおいて評価した(B6.Cg-Gt(ROSA)26Sortm14(CAG-tdTomato)Hze/J;Ail4は、CAGプロモーター駆動型赤色蛍光タンパク質バリアント(tdTomato)の転写を防止するloxP隣接STOPカセットを有するように設計されたCreレポーターツール株であり、これは全てGt(ROSA)26Sor遺伝子座に挿入され、Ai14マウスは、Cre媒介組換え後に強力なtdTomato蛍光を発現する(Creリコンビナーゼ酵素(mCreによってコードされる)は、loxP部位間のDNAの部位特異的組換えを触媒することによってその活性を示す))。高及び低モル%のDOTAP(50及び10%)を試験して、粒子の臓器分布へのその寄与を調査した。50mol%のDOTAPを有するDOTAPのみの粒子が、肺において強力かつ高度に臓器制限された活性をもたらすことが以前に確認された。本生体内分布研究では、DOTAPmol%を50%に維持しながら、本粒子の臓器指向性に対する飽和脂質鎖C12-200の包含の影響を評価した。本開示の粒子をCy7-DOPE(0.25mol%)で蛍光標識し、mCre mRNAを担持させた。粒子製剤を静脈内経路を介して1mg/kg用量で投与した。本発明の粒子を、3mg/kg用量で調製及び投与した別個の肝臓標的化製剤(mCreを担持したMC3含有製剤)と比較した。投与の48時間後に、tdTomatoについてのエクスビボ臓器画像化を実施した。全ての製剤で非常に特異的な肝臓活性が観察された(図7A~7C)。本開示の混合C12-200/DOTAP粒子は、DOTAPのみのLNPの特異的活性を肺から肝臓に変換することができた。混合C12-200/DOTAP粒子について観察されたタンパク質発現の程度は、3×の高い用量で対照として使用されたMC3含有粒子について観察された効果を80~100%上回った(図7D)。肝臓試料の免疫組織化学画像により、tdTomato産生及びCy7標識粒子蓄積が確認された(両方とも褐色で染色された、図8)。更に、肝臓機能試験は、1mg/kgのmRNA用量でアッセイされた混合脂質粒子の安全性を確認した(図9A~9F)。
【0176】
実施例7:混合C12-200/DOTAP粒子は、核酸調節コントローラーを肝臓組織に効果的に送達する
混合C12-200/DOTAP粒子の生体内分布を評価した後、核酸調節コントローラーを担持するそのような粒子を、肝臓組織におけるインビボ有効性について評価した。具体的には、野生型C57Bl6/Jマウスを、各々VEGFa mRNAを担持する2つの異なる混合C12-200/DOTAP粒子製剤で処置した。3つの別個の用量レベルでのこれらの製剤のマウスへの静脈内投与は、両方の試験された形態の混合C12-200/DOTAP粒子が、適切な対照と比較して、特に1mg/kgの用量レベルで、血清VEGFaレベルを有意に増加させたことを示した(図10A~10B)。これらのデータにより、核酸調節コントローラーを含む大きな核酸をカプセル化、並びにそれらを高い選択性、特異性、及び有効性で肝臓に送達し、それによって更に低用量レベルで生理学的応答を生成することにおいて、本開示の混合C12-200/DOTAP粒子の有効性が更に確認された。
【0177】
本明細書に記載されている全ての特許及び刊行物は、本開示が関連する当業者の技術レベルを示す。本開示で引用される全ての参考文献は、各参考文献その全体が参照により個別に組み込まれたのと同じ範囲で、参照により組み込まれる。
【0178】
当業者であれば、本開示が、目的を実行し、言及された目的及び利点、並びにそれらに固有のものを得るようによく適合されていることを容易に理解するであろう。好ましい実施形態の現在の代表として本明細書に記載される方法及び組成物は、例示的なものであり、本開示の範囲を制限するものとして意図されるものではない。本開示の趣旨の範囲内に包含され、特許請求の範囲によって定義される、本明細書での変更及び他の使用は、当業者に想起されるであろう。
【0179】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群又は代替の他の群化によって説明されている場合、それにより、本開示はまた、マーカッシュ群又は他の群の任意の個々のメンバー又はメンバーの亜群に関しても説明されることを当業者は認識するであろう。
【0180】
本開示を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)「a」、「an」、及び「the」という用語、並びに同様の指示対象の使用は、本明細書で別段示されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含するように解釈される必要がある。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、別段明記されない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むがこれらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書に別段明記されない限り、単に、範囲内に含まれる各個別の値を個々に参照する簡略方法として機能することを意図しており、各個別の値は、本明細書に個別に記載されているかのように、本明細書に組み入れられる。
【0181】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で別段示されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供されるありとあらゆる例、又は例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、単に本開示をより良好に示すことを意図しており、別段請求されない限り、本開示の範囲の制限を課すものではない。本明細書におけるいかなる文言も、任意の請求されていない要素が本開示の実施に不可欠であることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0182】
開示された発明を実施するために発明者が知る最良のモードを含む本開示の実施形態が、本明細書に記載される。これらの実施形態の変形は、前述の説明を読めば当業者には明らかとなり得る。
【0183】
本明細書に例示的に記載される本開示を、本明細書に具体的に開示されない任意の要素、限定の非存在下で、好適に実施することができる。したがって、例えば、本明細書の各例において、「含む」、「から本質的になる」、及び「からなる」という用語のうちのいずれかは、他の2つの用語のうちのいずれかで置き換えられ得る。用いられている用語及び表現は、説明の用語として使用され、限定するものではなく、そのような用語及び表現の使用において、示され、記載された特徴又はその一部の任意の同等物を除外することは意図されていないが、請求された本発明の範囲内で様々な改変が可能であることが認識される。したがって、本開示は好ましい実施形態を提供するが、本明細書に開示される概念の任意選択の特徴、改変、及び変形は、当業者が頼りにし得ること、並びにそのような改変及び変形は、説明及び添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲内であるとみなされることを理解されたい。
【0184】
当業者には、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本明細書に開示される本発明に対して様々な置換及び改変を行うことができることが容易に明らかであろう。したがって、そのような追加の実施形態は、本開示及び以下の特許請求の範囲の範囲内にある。本開示は、改善された対比、診断、及び/又は画像化活性を有するコンジュゲートの生成に向けて、本明細書に記載の化学修飾の様々な組み合わせ及び/又は置換を試験することを当業者に教示する。したがって、本明細書に記載される特定の実施形態は限定的ではなく、当業者は、本明細書に記載される改変の特定の組み合わせが、改善された対比、診断、及び/又は画像化活性を有するコンジュゲートを特定するための過度の実験なしに試験され得ることを容易に理解することができる。
【0185】
本発明者は、当業者がそのような変形を適切に用いることを期待しており、本発明者は、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で本開示を実施することを意図している。したがって、本開示は、適用される法によって許可される、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載されている主題の全ての改変及び同等物を含む。更に、本明細書で別段示されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、それらの全ての可能な変形形態における上記の要素の任意の組み合わせは、本開示に包含される。当業者であれば、日常的な実験のみを使用して、本明細書に記載される本開示の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか、又はそれを確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
【国際調査報告】