(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】マイクロRNAの定量的検出
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20240405BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240405BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALN20240405BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240405BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
G01N33/50 P
C12Q1/6876 Z
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564580
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2022060686
(87)【国際公開番号】W WO2022223781
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506236163
【氏名又は名称】ジェンフィット
【氏名又は名称原語表記】GENFIT
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゾウハー・マジド
(72)【発明者】
【氏名】ロマン・ビュトゥーロ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045CA26
2G045DA14
2G045FB02
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR42
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
(57)【要約】
本発明は、マイクロRNAの定量的検出のために有用な新規の組成物及び方法を対象とする。より詳細には、本発明は、miR-34の検出のための逆転写酵素定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)反応に有用なプレミックスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のマイクロRNA(miRNA)の定量的検出のための方法であって:
(a)RNAを含有する試験試料中のRNAが相補的DNA(cDNA)に逆転写され、逆転写(RT)プレミックスが逆転写酵素、RNAse阻害剤、及びRNAを含有する試験試料と混合されるRT反応であって;
RTプレミックスが:
dATP、dTTP、dCTP、及びdGTPを含有するデオキシリボヌクレオチド3リン酸(dNTP)ミックス;
試験試料中で定量的に検出される目的のmiRNAの逆転写を特異的にプライミングするのに適切な配列特異的プライマー;
目的のmiRNAの量を正規化するのに有用な、対照miRNAの逆転写を特異的にプライミングするのに適切な配列特異的プライマー;
逆転写緩衝液;
Tris-EDTA緩衝液;及び
ヌクレアーゼを含まない水;
を含む、RT反応、
並びに
(b)定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)プレミックスがPCRマスターミックス、ヌクレアーゼを含まない水、及び工程(a)で得られたcDNAと混合される、工程(a)で得られたcDNAを増幅するためのqPCR反応であって;
qPCRプレミックスが:
目的のmiRNAをqPCRすることによって増幅するのに適切なプライマー対;
目的のmiRNAの量を正規化するのに有用な、対照miRNAをqPCRすることによって増幅するのに適切なプライマー対;及び
ヌクレアーゼを含まない水、
を含む、qPCR反応
を含む方法。
【請求項2】
試験試料がヒト対象からの血液由来試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試験試料がヒト対象からの血清試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
試験試料がヒト対象からの血清試料からの全RNA抽出物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
目的のmiRNAがhsa-miR-34a-5pである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
対照miRNAがcel-miR-40-3pである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
対照miRNAが、工程(a)の前に、試験試料に規定の濃度でスパイクインされたcel-miR-40-3pである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロRNAの定量的検出のために有用な新規の組成物及び方法を対象とする。より詳細には、本発明は、miR-34の検出のための逆転写酵素定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)反応に有用なプレミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロRNA(miRNA)は、標的mRNAの3'-UTRに結合することによってタンパク質の翻訳を阻害する、内因性の小さな非コード機能性RNAのファミリーである。マイクロRNAはまた、有用な循環バイオマーカーであることが発見された。例えば、hsa-miR-34a-5pのレベルは、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と関連している。したがって、miRNAの定量的検出のための正確な手段が必要である。逆転写酵素定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)は、miRNAを定量的に検出するために最も広く使用されている方法である。これは、試験試料中に潜在的に存在するmiRNAからcDNAを生成する逆転写(RT)工程、及び前の工程で生成されたcDNAを増幅する定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)工程を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】PCT出願国際公開2017167934号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在の標準的なRT及びqPCRアッセイ手順では、試薬の調製及び分配のためにピペッティング及び混合という多くの工程が必要である。典型的には、RT反応には10工程が必要であり、qPCR反応には4工程が必要である。これらの多くのピペッティング工程及び必要な試料処理によって、増幅過程中の偽陽性の生成、又はこれらの方法に含まれる複数の工程のうちの1つでRNAseが反応混合物に誤って導入された場合に発生する可能性のある検出の欠如等の、エラーの危険性が増加する。特にマーカーの正確な定量が必要とされる診断の場合、こうしたエラーの発生を防ぐことが重要である。更に、ピペッティングの工程を減らすと、操作者の実務時間も短縮されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、これらの問題を解決するための組成物及び方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】試験した様々なRTプレミックスの概略図である。
【
図2】試験した様々なqPCRプレミックスの概略図である。
【
図3】4つのRTプレミックスを、-20℃で1ヶ月後にmiR34a陽性対照(C1高)を使用して試験し、古典的な調製物と比較した図である。
【
図4】4つのRTプレミックスを、-20℃で1ヶ月後にmiR34a陽性対照(C2中)を使用して試験し、古典的な調製物と比較した図である。
【
図5】4つのRTプレミックスを、-20℃で1ヶ月後にmiR34a陽性対照(C3低)を使用して試験し、古典的な調製物と比較した図である。
【
図6】4つのRTプレミックスを、-20℃で6ヶ月後にmiR34a陽性対照(C1高)を使用して試験し、古典的な調製物と比較した図である。
【
図7】4つのRTプレミックスを、-20℃で6ヶ月後にmiR34a陽性対照(C2中)を使用して試験し、古典的な調製物と比較した図である。
【
図8】4つのRTプレミックスを、-20℃で6ヶ月後にmiR34a陽性対照(C3低)を使用して試験し、古典的な調製物と比較した図である。
【
図9】4つのqPCRプレミックスを、-20℃で1ヶ月後に陽性miR34a対照(C1高)を使用して試験し、古典的な調製物と比較した図である。
【
図10】4つのqPCRプレミックスを、-20℃で1ヶ月後に陽性miR34a対照(C2中)を使用して試験し、古典的な調製物と比較した図である。
【
図11】4つのqPCRプレミックスを、-20℃で1ヶ月後に陽性miR34a対照(C3低)を使用して試験し、古典的な調製物と比較した図である。
【
図12】4つのqPCRプレミックスを、-20℃で6ヶ月後に陽性miR34a対照(C1高)を使用して試験し、古典的な調製物と比較した図である。
【
図13】4つのqPCRプレミックスを、-20℃で6ヶ月後に陽性miR34a対照(C2中)を使用して試験し、古典的な調製物と比較した図である。
【
図14】4つのqPCRプレミックスを、-20℃で6ヶ月後に陽性miR34a対照(C3低)を使用して試験し、古典的な調製物と比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、miRNA、好ましくはhsa-miR-34a-5pを検出するためのRT-qPCR法の実行に有用な組成物に関する。
【0008】
逆転写酵素プレミックス
本発明の第1の態様は、以後「RTプレミックス」と称する第1の組成物に関する。本発明のRTプレミックスは:
- dATP、dTTP、dCTP、及びdGTPを含有するデオキシリボヌクレオチド3リン酸(dNTP)ミックス;
- 試験試料中で定量的に検出される目的のmiRNAの逆転写を特異的にプライミングするのに適切な配列特異的プライマー;
- 目的のmiRNAの量を正規化するのに有用な、対照miRNAの逆転写を特異的にプライミングするのに適切な配列特異的プライマー;
- 逆転写緩衝液;
- Tris-EDTA緩衝液;及び
- ヌクレアーゼを含まない水を含むか、又はそれらからなる。
【0009】
特定の実施形態では、dNTPミックスの各dNTPの濃度は、プレミックスに添加する前は25mMである。更に別の実施形態では、RTプレミックス中の各dNTPの最終濃度は、500μMと1000μMとの間に含まれる。特定の実施形態では、RTプレミックス中の各dNTPの最終濃度は850μMである。
【0010】
特定の実施形態では、目的のmiRNAはmiR-34、特にhsa-miR-34a-5pであり、その核酸配列は5'-UGGCAGUGUCUUAGCUGGUUGU-3'(配列番号1)(miRBaseにおける受入番号: MIMAT0000255)からなる。hsa-miR-34a-5pに特異的なRT反応での使用に有用なプライマーは、当技術分野では公知である。例えば、当業者は、TaqMan MicroRNAアッセイ、キット番号4440888(Applied Biosystems社)のプライマーを使用することができる。
【0011】
特定の実施形態では、対照miRNAは、内因性ハウスキーピングmiRNA(すなわち、安定的に発現されるmiRNA)、又はスパイクインされた合成miRNA(すなわち、RT反応前に規定量で試験試料に添加されるmiRNA)である。特定の実施形態では、スパイクインされた合成miRNAは非ヒトmiRNAであり、対象試料中に存在しない外因性miRNAである。例えば、非ヒト合成又は外因性miRNAは、カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)(cel)又はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)(ath)から得ることができる。特定の実施形態では、スパイクインされたmiRNAはcel-miR40(特に、cel-miR-40-3p)又はcel-miR-39(特に、cel-miR-39-3p)である。本発明の場合、合成miRNAとして使用するための他の非ヒトmiRNAには、ath-miR-159a及びcel-miR-40-3pが含まれるが、これらだけに限定されない。特定の実施形態では、スパイクインされたmiRNAはcel-miR-40-3pであり、その核酸配列は5'-UCACCGGGUGUACAUCAGCUAA-3'(配列番号2)(miRBaseにおける受入番号:MI0000011)からなる。規定量のcel-miR-40-3pは試験試料に導入され、その後、hsa-miR-34a-5pの検出量を正規化するため等、目的のmiRNAの検出量を正規化するのに有用な対照miRNAとして役立つことができることが理解されよう。cel-miR-40-3pに特異的なRT反応での使用に有用なプライマーは、当技術分野で公知である。例えば、当業者は、TaqMan MicroRNAアッセイ、キット番号CCU001Lのプライマーを使用することができる。
【0012】
逆転写反応に適切な逆転写緩衝液は当技術分野で公知である。例示的な緩衝液には、キット番号4366597に含まれる、ThermoFischer社によって販売されていて使用することができる10×逆転写緩衝液が含まれるが、これに限定されない。
【0013】
Tris-EDTA緩衝液1×は、10mM Tris-HCl、EDTA二ナトリウム塩1mM、pH8.0(Interchim社が販売しているTris-EDTA緩衝液1×、カタログ番号58752A等)である。RTプレミックスに添加する前に、この緩衝液を0.1倍に希釈する。特定の実施形態では、TE緩衝液は、RTプレミックス中で1268/1882の比(体積/RTプレミックスの総体積)である。
【0014】
RTプレミックスは、前記RTプレミックスの様々な試薬を混合することにより調製することができる。特定の実施形態では、RTプレミックスは、以下の組成物を混合することによって調製される:
- 各dNTP 100mMを含むdNTPミックス;
- 10×逆転写緩衝液;
- ヌクレアーゼを含まない水;
- 0.1倍に希釈したTris-EDTA;
- Tris-EDTA 0.1×で5倍に希釈した、目的のmiRNAに特異的なプライマー;及び
- Tris-EDTA 0.1×で5倍に希釈した、対照miRNAに特異的なプライマー。
【0015】
特定の実施形態では、RTプレミックスの調製に使用される様々な組成物は、以下の比(体積/RTプレミックスの総体積)に従って混合される:
- 16/1882の各dNTP 100mM;
- 158/1882の10×逆転写緩衝液;
- 440/1882のヌクレアーゼを含まない水;
- 0.1倍に希釈した、634/1882のTris-EDTA;
- Tris-EDTA 0.1×で5倍に希釈した、317/1882のhsa-miR-34a-5pに特異的なプライマー;及び
- Tris-EDTA 0.1×で5倍に希釈した、317/1882のcel-miR-40-3pに特異的なプライマー。
【0016】
更に別の実施形態では、RTプレミックスの調製に使用される様々な組成物は、以下の比(体積/RTプレミックスの総体積)に従って混合される:
- 16/1882の各dNTP 100mM;
- 158/1882の10×逆転写緩衝液;
- 440/1882のヌクレアーゼを含まない水;
- 0.1倍に希釈した、634/1882のTris-EDTA;
- Tris-EDTA 0.1×で5倍に希釈した、317/1882のTaqMan MicroRNAアッセイ、キット番号4440888(Thermofischer社)のhsa-miR-34a-5pに特異的なプライマー;及び
- Tris-EDTA 0.1×で5倍に希釈した、317/1882のTaqMan MicroRNAアッセイ、キット番号CCU001L(Thermofischer社)のcel-miR-40-3pに特異的なプライマー。
【0017】
以下に、様々なプレート形式で、本発明に従ってRTプレミックスを調製するための非限定的なガイドラインとして使用できる表を提供する。
【表1】
【0018】
もちろん、より多くの一定量を調製するために、より大きな体積を調製することができる。
【0019】
本発明のRTプレミックスは、RT反応の実行に有用である。RTプレミックスは、調製して-20℃以下で保存することができる。有利なことに、本発明者等は、このRTプレミックスがこれらの条件で少なくとも6ヶ月間保存できることを示した。
【0020】
定量的ポリメラーゼ連鎖反応プレミックス
本発明の第2の態様は、以後「qPCRプレミックス」と称する第2の組成物に関する。本発明のqPCRプレミックスは:
- 目的のmiRNAをqPCRすることによって増幅するのに適切なプライマー対、
- 目的のmiRNAの量を正規化するのに有用な、対照miRNAをqPCRすることによって増幅するのに適切なプライマー対;及び
- ヌクレアーゼを含まない水を含むか、又はそれらからなる。
【0021】
特定の実施形態では、目的のmiRNAはmiR-34、特にhsa-miR-34a-5pであり、その核酸配列は配列番号1で示した配列からなる。hsa-miR-34a-5pに特異的なqPCRでの使用に有用なプライマー対は、当技術分野では公知である。例えば、当業者は、TaqMan MicroRNAアッセイ、キット番号4440888のプライマー対を使用することができる。
【0022】
特定の実施形態では、対照miRNAは、特にcel-miR-40-3pにおいて、RT反応の前にスパイクインされたmiRNAである。cel-miR-40-3pに特異的なqPCRでの使用に有用なプライマー対は、当技術分野では公知である。例えば、当業者は、TaqMan MicroRNAアッセイ、キット番号4440888のプライマー対を使用することができる。
【0023】
qPCRプレミックスは、前記RTプレミックスの様々な試薬を混合することによって調製することができる。特定の実施形態では、qPCRプレミックスは、以下の組成物を混合することによって調製される:
- Tris-EDTA 0.1×で20倍に希釈された、目的のmiRNAに特異的なプライマー対;
- Tris-EDTA 0.1×で20倍に希釈された、対照miRNAに特異的なプライマー対;及び
- ヌクレアーゼを含まない水。
【0024】
更に別の実施形態では、qPCRプレミックスは、以下の組成物を混合することによって調製される:
- Tris-EDTA 0.1×で20倍に希釈された、hsa-miR-34a-5pに特異的なプライマー対;
- Tris-EDTA 0.1×で20倍に希釈された、cel-miR-40-3pに特異的なプライマー対;及び
- ヌクレアーゼを含まない水。
【0025】
更なる実施形態では、qPCRプレミックスは、以下の組成物を混合することによって調製される:
- Tris-EDTA 0.1×で20倍に希釈された、TaqMan MicroRNAアッセイ、キット番号4440888(Thermofischer社)のhsa-miR-34a-5pに特異的なプライマー対;
- Tris-EDTA 0.1×で20倍に希釈された、TaqMan MicroRNAアッセイ、キット番号4440888(Thermofischer社)のcel-miR-40-3pに特異的なプライマー対;及び
- ヌクレアーゼを含まない水。
【0026】
特定の実施形態では、qPCRプレミックスの調製に使用される様々な組成物は、以下の比(体積/qPCRプレミックスの総体積)に従って混合される:
- Tris-EDTA 0.1×で20倍に希釈された、158/527のhsa-miR-34a-5pに特異的なプライマー対;
- Tris-EDTA 0.1×で20倍に希釈された、26/527のcel-miR-40-3pに特異的なプライマー対;及び
- 343/527のヌクレアーゼを含まない水。
【0027】
特定の実施形態では、qPCRプレミックスの調製に使用される様々な組成物は、以下の比(体積/qPCRプレミックスの総体積)に従って混合される:
- Tris-EDTA 0.1×で20倍に希釈された、158/527のTaqMan MicroRNAアッセイ、キット番号4440888(Thermofischer社)のhsa-miR-34a-5pに特異的なプライマー対;
- Tris-EDTA 0.1×で20倍に希釈された、26/527のTaqMan MicroRNAアッセイ、キット番号4440888(Thermofischer社)のcel-miR-40-3pに特異的なプライマー対;及び
- 343/527のヌクレアーゼを含まない水。
【0028】
以下に、様々なプレート形式で、本発明に従ってqPCRプレミックスを調製するための非限定的なガイドラインとして使用できる表を提供する:
【表2】
【0029】
もちろん、より多くの一定量を調製するために、より大きな体積を調製することができる。
【0030】
本発明のqPCRプレミックスは、qPCR反応の実行に有用である。qPCRプレミックスは、調製して-20℃以下で保存することができる。有利なことに、本発明者等は、このqPCRプレミックスがこれらの条件で少なくとも6ヶ月間保存できることを示した。
【0031】
miRNAの定量的検出の方法
RTプレミックス及びqPCRプレミックスは、RT-qPCR反応の実行に有用である。
【0032】
したがって、本発明はまた、RNAを含有する試験試料中の目的のmiRNAの定量的検出のための方法であって、
(a)RNAを含有する試験試料中のRNAが相補的DNA(cDNA)に逆転写され、本発明のRTプレミックスが逆転写酵素、RNAse阻害剤、及びRNAを含有する試験試料と混合される逆転写反応;
(b)本発明のqPCRプレミックスが、PCRマスターミックス、ヌクレアーゼを含まない水、及び工程(a)で得られたcDNAと混合される、工程(a)で得られたcDNAを増幅するためのqPCR反応を含む方法に関する。
【0033】
RNAを含有する試験試料は、哺乳動物対象、特にヒト対象からの試料である。特定の実施形態では、RNAを含有する試験試料は、対象の生体液、特に血液、血清、又は血漿等の血液由来試料である。更に別の実施形態では、RNAを含有する試料は、そのような生体液の全RNAである。更に別の実施形態では、RNAを含有する試料は、生体液の低分子RNAである。
【0034】
工程(a)は逆転写反応である。逆転写酵素反応試薬は、当業者が容易に入手することができる。例えば、Thermofischer社/Applied Biosystems社のMultiscribe RT酵素(50U/μL)及びRNAse阻害剤(20U/μL)(カタログ番号4366597)を使用することができる。
【0035】
RT反応の成分は、前記反応が実行される前に完全に混合される。次に、反応チューブ又はプレートをサーマルサイクラーに入れ、標準的サイクルを使用してインキュベートする。例えば、以下の設定を使用することができる:
【表3】
【0036】
工程(a)の後に得られたRT反応生成物、すなわちcDNAは、qPCRですぐに使用してもよく、又は-25~-15℃で最長1週間保存することもできる。
【0037】
次いで、工程(b)は、工程(a)で得られたcDNAから実行される。qPCR反応ミックスは、最初に本発明のqPCRプレミックスをPCRマスターミックス及び工程(a)で得られたcDNAと混合することによって調製される。
【0038】
PCRマスターミックスは、DNAポリメラーゼ及びPCR反応の遂行に適切な試薬を含有している。当業者は、Thermofischer社によって市販されているもの等の、qPCR反応の実行に適切な多くの様々な材料及び方法を知っている。
【0039】
qPCR反応はまた、増幅生成物のリアルタイム検出等、増幅生成物の形成を検出するための手段の使用を必要とする。二本鎖DNAに介在するSYBRグリーン色素の使用、又はqPCR反応中に使用される2つのプライマー間のDNA配列のみに結合する蛍光発生性一本鎖オリゴヌクレオチドプローブであるTaqManプローブの使用が挙げられる。特定の実施形態では、qPCRはTaqManプローブの使用に基づいている。更なる特定の実施形態では、qPCR反応はhsa-miR-34a-5pに特異的なプローブの使用を含む。更に別の実施形態では、qPCR反応はhsa-miR-34a-5pに特異的なプローブ及びcel-miR-40-3pに特異的なプローブの使用を含む。
【0040】
qPCR反応の成分は、前記反応が実行される前に完全に混合される。次に、反応チューブ又はプレートをサーマルサイクラーに入れ、適切な熱サイクルを使用してインキュベートする。例えば、以下の設定を使用することができる:
【表4】
【0041】
診断方法及び治療方法
前述の方法は、対象の試料中の目的のmiRNAを定量的に検出するために使用することができる。
【0042】
特定の実施形態では、前記定量的検出は、疾患の診断のための方法の一部であり得る。本発明の文脈において、「診断のための方法」という表現は、疾患の診断、予後、又はモニタリングのための方法を意味するが、疾患に対する治療の有効性を評価するための方法も意味する。
【0043】
したがって、本発明は、hsa-miR-34a-5p等の目的のmiRNAが上記の方法に従って定量的に検出される、疾患の診断、予後、又はモニタリングのための方法に関する。この定量的検出は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の診断において、又はPCT出願国際公開2017167934号パンフレットに記載されているように、NASHの治療を受ける可能性がある対象として対象を分類するために有利に使用することができる。
【0044】
本発明は更に、対象の生物学的試料中の目的のmiRNAのレベルを決定する工程を含む、疾患の診断のための方法であって、前記miRNAのレベルを、標準又は陽性対照中の同じmiRNAのレベルと比較する方法に関する。
【0045】
特定の実施形態では、本発明の使用及び方法は、生体試料から決定されたmiRNAのレベルと、標準又は陽性対照として使用される合成miRNAのレベルとの比較を含む。
【実施例】
【0046】
(実施例1: RNA抽出)
RNA抽出では、80μlのプロテイナーゼK及び230μlの溶解緩衝液Cを血漿又は血清試料に添加した、すなわち、試料上に分注し、次いで5秒間ボルテックスして混合した後、37℃で15分間インキュベートした。
【0047】
この間、Maxwell(登録商標)RSCカートリッジ(refAS1680、Promega社、USA)を以下に記載したように準備した。カートリッジは、溶解物を添加する直前に準備した:
- 使用するカートリッジを、ウェル番号1(カートリッジ内の最大のウェル)が溶出チューブから最も遠い位置になるようにデッキトレイに置く。カートリッジを押し下げて所定の位置にはめ込む。カートリッジの上部からプラスチックが全て外れるように、シールを慎重に剥がす。次に、1つのプランジャーを各カートリッジのウェル番号8に配置し、空の溶出チューブをデッキトレイの各カートリッジの溶出チューブの位置に配置する。
- 50μlのヌクレアーゼを含まない水を各溶出チューブの底に添加する。
- 溶解物全て(710μl)をMaxwell(登録商標)RSCカートリッジのウェル番号1(カートリッジ内の最大のウェル)に移し、10μlの青色のDNase I溶液をMaxwell(登録商標)RSCカートリッジのウェル番号4(ウェル番号4は黄色の試薬を含有する)に添加する。
- miRNA血漿及び血清方法は、Maxwell(登録商標)RSC機器でMaxwell(登録商標)ソフトウェアを使用して読み取られる。「開始」に触れて、「方法」画面にアクセスする。
- 試料溶出液をすぐに処理しない場合は、溶出したRNAを-20℃又は-80℃で長期間保存する。
【0048】
(実施例2: RT反応)
記載したMicroRNA逆転写キット(ref4366597、Applied Biosystems社)は、
- 10×RT緩衝液
- dNTPミックスw/dTTP(全部で100mM)
- RNAse阻害剤(20U/μl)
- Multiscribe(商標)RT酵素(50U/μl)
を含む。
【0049】
TaqMan(登録商標)RNAアッセイの最適な性能のために、投入するRNAはPCR適合緩衝液中にRT阻害剤を含まず、RNAseを含まず、非変性である。
【0050】
RTプレミックスの全試薬は、調製中氷上に維持された。RNAse阻害剤及びMultiScribe(商標)逆転写酵素は、使用直前に冷凍庫から取り出し、-20℃のコールドブロック上で維持した。
【0051】
【0052】
RTミックスを使用前に穏やかにボルテックスし、短く回転させた。19μLのRTミックスを、氷上に置いたRTマイクロプレートウェルに加えた。
【0053】
陽性対照として、5μLをRTマイクロプレートに加えた。プレートをMicroseal「B」シールで密封し、ボルテックスすることによって均質化し、マイクロプレートを室温、500gで10秒間遠心分離した。RTプレートを氷上で5分間維持した。
【0054】
サーマルサイクラーのRTプログラムは以下の通りであった:
【表6】
【0055】
反応プレートをサーマルサイクラーに装填し、RT操作を開始した。
【0056】
(実施例3: qPCR反応)
TaqMan(商標)マスターミックス試薬は、瓶を旋回させることによって均質化した。
【0057】
qPCRプライマー及びプローブを室温で解凍し、光から保護し、その後500gで30秒間で短く遠心分離した。
【0058】
RT反応後に凍結保存したcDNAを含むRTプレートは、使用前に氷上で解凍し、ボルテックスして回転させた。
【0059】
qPCRは、内在性のプロセス対照cel-miR-40を含むデュプレックスでも実施した。
【表7】
【0060】
15μlのqPCR反応ミックスを各qPCRプレートウェルに移した。
【0061】
5μLのcDNAをqPCRプレートに添加した。
【0062】
プレートをMicroseal「B」で密封し、ボルテックス(3秒、速度4)し、短く遠心分離した。
【0063】
サーマルサイクラーはqPCR装置領域にあり、18~25℃に制御されていた。
【0064】
Bio-RAD CFX96 IVDサーマルサイクラーは以下の通りにプログラムされた:
【表8】
【0065】
プレートをサイクラーに装填し、操作を開始した。
【0066】
(実施例4:プレミックス選択及びRTプライマーの最適化)
必要な試薬は全て氷上で解凍した。TE(Tris-EDTA、ref58752A、Interchim社)0.1×は、TE 1×及びRNAse(リボヌクレアーゼ)を含まない水で即時に調製した。
【0067】
RTプライマーはThermoキット4440888(Thermofischer社)に収容されており、TE0.1×で使用する前に標準溶液で5倍に希釈し、氷上で維持した。
【0068】
一緒に混合する7つの溶液を含む古典的な調製法でいくつかの種類のRTプレミックスを試験した。
図1を参照のこと。
【0069】
陽性対照C1、C2、C3は、それぞれ高(倍率変化表現では5~8に対応する28.05Cq)、中(倍率変化表現では約1に対応する30.92Cq)、及び低(倍率変化表現では0.2~0.35に対応する33.71Cq)レベル(qPCRによって用いられた)のmiR-34aを使用して調製された試料である。
【0070】
陽性対照は、Cq値が28と29Cqとの間になるように15,625pMの内在性対照miR-40でスパイクした。
【0071】
簡単に説明すると、ミックス1、及び最終的にはミックス2が調製された。次に、ミックスをキットの他の成分と混合してRTプレミックス1、2、3、又は4を得て、供給業者の推奨通りに、使用直前に混合した成分(古典的な調製法)と比較した。成分は全て、供給業者による割合で混合した。
【0072】
RTプレミックス1~4は、-20℃で6ヶ月間、冷凍/解凍を5サイクル行って安定性を試験した。
【0073】
4つのRTプレミックスは、miR34a陽性対照(高、中、及び低)を使用して試験し、古典的調製法と比較した(
図3~
図5:-20℃で1ヶ月保存後、
図6~
図8:-20℃で6ヶ月保存後)。
【0074】
データはmiR34aの発現倍率で示されており、RT-プレミックス3が、3つの対照について、この実験で使用した古典的調製法と同じデータを与えたことを示した。RT-プレミックス3はまた、試験した他のRTプレミックスと比較して、RTにおいて使用するチューブを最小限にすることが可能であった。
【0075】
(実施例5:qPCRプレミックス選択)
4つのqPCRプレミックスを、miR34a陽性対照(高、中、及び低)を使用して試験し、キットの古典的調製法と比較した。
【0076】
供給業者に従って一緒に混合する5つの溶液を含む古典的な調製法に対して、いくつかの種類のqPCRプレミックスを試験した。
図2を参照のこと。
【0077】
陽性対照C1、C2、C3は、それぞれ高(28.05Cq=5と8との間の倍率変化)、中(30.92Cq=約1の倍率変化)、及び低(33.71Cq=0.2と0.35との間の倍率変化)レベル(qPCRによって用いられた)のmiR-34aを使用して調製された試料である。
【0078】
陽性対照は、Cq値が28と29Cqとの間になるように15,625pMの内在性対照miR-40でスパイクした。
【0079】
簡単に説明すると、水及びマスターミックス(プレミックス1)、又はmiR-34a及びmiR-40(プレミックス2)、又は水、miR-34a及びmiR-40(プレミックス3)。次に、プレミックスの1、2、又は3ミックスのそれぞれを、
図2に示したqPCR調製法の他の成分と混合した。プレミックス1、2、又は3は、供給業者の推奨通りに、使用直前に混合した成分(古典的な調製法)と比較した。成分は全て、供給業者による割合で混合した。
【0080】
qPCRプレミックス1~3は、-20℃で6ヶ月間、冷凍/解凍を5サイクルして安定性を試験した。
【0081】
3つのqPCRプレミックスは、miR34a陽性対照(高、中、及び低)を使用して試験し、古典的調製法と比較した(
図9~
図11:-20℃で1ヶ月保存後、
図12~
図14:-20℃で6ヶ月保存後)。
【0082】
データはmiR34aの発現倍率で示されており、qPCR-プレミックス3が、この実験で使用した3つの対照について、古典的調製法と同じデータを与えたことを示した。qPCR-プレミックス3はまた、試験した他のRTプレミックスと比較して、qPCRにおいて使用するチューブを最小限にすることが可能であった。
【0083】
(実施例6:最終RTプレミックス)
成分は全て、使用前に氷上で解凍し、短時間ボルテックスして回転させた。
【0084】
Thermoキット4440888に収容されているプライマーは、使用する前に5倍の標準溶液に希釈した。
【0085】
RTプライマープレミックスは、以下の表に挙げた試薬を氷上で混合することによって調製した。
【0086】
ポリプロピレンの低結合チューブを使用して混合物を調製した。
【0087】
混合物は穏やかなボルテックスによって均質化し、使用前の長期保存のために氷上で小分けした。
【0088】
【0089】
プレミックスは、使用するまで-20℃で保存した。安定性は少なくとも6ヶ月間はあることが証明された。凍結した一定量は、最大5回まで解凍及び凍結することができる。
【0090】
(実施例7: 最終qPCRプレミックス)
Taqman(商標)アッセイは氷上で解凍し、穏やかにボルテックスして、短く回転させた。
【0091】
qPCRプライマー及びプローブは、光から保護した。Thermoキット4440888に収容されているプライマー及びプローブは、使用する前に20倍の標準溶液に希釈した。
【0092】
プレミックスは、以下の表に挙げた試薬を氷上で混合することによって調製した。ポリプロピレンの低結合チューブを使用して混合物を調製した。
【0093】
混合物はボルテックスによって均質化し、その後、使用前の長期保存のために小分けした。
【0094】
【0095】
プレミックスは、使用するまで-20℃で保存した。
【0096】
安定性は少なくとも6ヶ月間はあることが実証された。凍結した一定量は、最大5回まで解凍及び凍結することができる。
【配列表】
【国際調査報告】