IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベースポーズの特許一覧

特表2024-516184飼いネコ、イヌ、及びその他の哺乳動物の歯科疾患状態の検出のための口腔スワブ基盤検査
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】飼いネコ、イヌ、及びその他の哺乳動物の歯科疾患状態の検出のための口腔スワブ基盤検査
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20240405BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20240405BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240405BHJP
【FI】
C12N15/10 110Z
C12Q1/6888 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565228
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 US2022071852
(87)【国際公開番号】W WO2022226526
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/178,395
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/221,554
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523399555
【氏名又は名称】ベースポーズ
【氏名又は名称原語表記】BASEPAWS
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】カオ、ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】ミハイロバ、ユリアナ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ05
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR62
4B063QS12
4B063QX01
(57)【要約】
飼いネコ、イヌ、及び他の哺乳動物の口腔疾患の状態をスクリーニング及び同定するためのシステム及び方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ヒト哺乳動物の口腔疾患をスクリーニング、検出、及び/又は予防する方法であって、
非ヒト哺乳動物の口腔微生物プロファイルを取得するステップであって、前記口腔微生物プロファイルは、前記非ヒト哺乳動物の口腔サンプルに存在する1つ以上の微生物種及び前記口腔サンプルの前記1つ以上の微生物種の量又は存在量を含むステップと、
前記口腔微生物プロファイルを、
(i)前記非ヒト哺乳動物の分類の動物における1つ以上の口腔疾患の発生率及び/又は有病率、及び
(ii)非ヒト哺乳動物の前記分類の動物における前記口腔マイクロバイオームに様々な微生物種の存在及び/又は存在量であって、前記様々な微生物種は前記口腔サンプルの前記1つ以上の微生物種を含む存在量、の間の重み付けされた相関関係を特定するデータベースの情報と比較するステップと、
前記口腔微生物プロファイルと前記データベースの前記情報との間の1つ以上の一致に基づいて、前記非ヒト哺乳動物が前記1つ以上の口腔疾患を患っている可能性を示すリスク点数を生成するステップと、
前記リスク点数が所定の閾値を満たす又は超過する場合に、前記非ヒト哺乳動物が前記1つ以上の口腔疾患を発症したものとしてカテゴリー分類するステップ、及び任意に前記リスク点数が所定の閾値を満たす又は超過する場合に、前記1つ以上の口腔疾患の発症、進行、又は再発を治療、緩和又は予防するのに適した治療プロトコルを処方するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記治療プロトコルを前記非ヒト哺乳動物に実施すること、又は前記治療プロトコルが前記非ヒト哺乳動物に実施されたことを確認するステップをさらに含み、前記治療プロトコルは、前記非ヒト哺乳動物の前記口腔微生物プロファイルを変更するのに十分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非ヒト哺乳動物に対する前記口腔微生物プロファイルを取得するステップは、
前記口腔サンプルから取得された微生物核酸に対応する核酸配列データを取得するステップと、
前記核酸配列データを分析して前記口腔サンプルに存在する前記1つ以上の微生物種を同定し、前記1つ以上の微生物種を定量化するステップと、
前記同定されて任意に定量化された1つ以上の微生物種に基づいて、前記非ヒト哺乳動物に対する前記口腔微生物プロファイルを生成するステップと、
を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記微生物の核酸配列データを取得するステップは、
前記口腔サンプルから微生物核酸を配列決定するステップと、任意に
前記口腔サンプルから前記微生物核酸を分離するステップと、
を含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記口腔サンプルから前記微生物核酸を分離するステップは、
前記口腔サンプルに熱処理を行うステップと、
前記口腔サンプルから前記微生物核酸を抽出するために、タンパク質消化試薬及び界面活性剤を添加の有無にかかわらず、前記熱処理された口腔サンプルに対して磁性SPRIビーズ基盤の核酸抽出を行うステップと、
を含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記微生物の核酸配列データを分析するステップは、
前記核酸配列データを逆多重化するステップと、
前記核酸配列データをトリミングするステップと、
1つ以上のマッピングされていないリード前記非ヒト哺乳動物の参照ゲノム配列及び/又は既存の微生物参照ゲノム配列にマッピングするステップと、
マッピング後の前記核酸配列データから1つ以上のリードを哺乳動物として分類するステップと、
マッピング後の前記核酸配列データから1つ以上のリードを微生物として分類するステップと、
前記1つ以上の微生物のリードを定量化するステップと、
ペアごとの対数比変換のような方法を使用して、配列カバレッジバイアスを説明するために前記定量化された1つ以上の微生物のリードを変換するステップと、
特定の歯科疾患(dental disease)に苦しんでいる非ヒト哺乳動物からのサンプルだけでなく、歯科疾患に患っていない非ヒト哺乳動物からのサンプルを含む参照データベースの前記変換されたデータの構成の存在量パターンに対する前記変換された1つ以上の微生物のリードの構成の存在量パターンを比較するステップと、
のうちの1つ以上を含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記口腔微生物プロファイルを前記データベースの情報と比較するステップは、
前記口腔サンプルの前記1つ以上の微生物種の前記存在量を算出するステップと、
前記口腔サンプルの前記1つ以上の微生物種を同定するステップと、
前記データベースに含まれる前記非ヒト哺乳動物の前記分類の前記口腔サンプルの前記同定された1つ以上の微生物種の前記存在量を動物の口腔マイクロバイオームの様々な微生物種の存在及び/又は存在量と比較するステップと、
のうちの1つ以上を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記リスク点数を生成するステップは、
前記データベースに含まれる前記非ヒト哺乳動物の前記分類の前記口腔サンプルの1つ以上の微生物種の構成の存在量と動物の前記口腔マイクロバイオームの様々な微生物種の構成の存在量との間の1つ以上の類似性を同定するステップと、
前記データベースに含まれる前記非ヒト哺乳動物の前記分類の前記口腔サンプルの前記1つ以上の微生物種の同一性と動物の前記口腔マイクロバイオームの様々な微生物種の前記存在との間の1つ以上の一致を同定するステップと、
前記口腔サンプルの前記1つ以上の微生物種の前記構成の存在量と前記データベースに含まれる前記非ヒト哺乳動物の前記分類の動物における前記口腔マイクロバイオームの前記1つ以上の微生物種の前記構成の存在量との間の前記同定された1つ以上の類似性を定量化するステップと、
前記口腔サンプルの1つ以上の予測微生物種の存在を同定するステップと、
のうちの1つ以上を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の口腔疾患は、歯周疾患、歯牙吸収、歯肉口内炎、及び口臭で構成されたグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(i)前記リスク点数、(ii)前記リスク点数が前記所定の閾値を満たす又は超過する場合に、前記1つ以上の口腔疾患の発症の表示、(iii)タイミング推薦、(iv)任意に歯の健康を改善するための1つ以上の在宅診察、(v)任意に前記リスク点数が前記所定の閾値を満たす又は超過する場合に、前記1つ以上の口腔疾患を診断するための1つ以上の診断ステップ、(vi)任意に前記治療プロトコルに対する処方を示すレポートを生成するステップ、及び
任意に前記生成されたレポートを前記非ヒト哺乳動物の飼い主及び/又はそれらの獣医師に電子的に伝達するステップ、
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記治療プロトコルは、前記非ヒト哺乳動物の前記口腔微生物プロファイルを変更するのに十分である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
哺乳動物の口腔疾患を示す又は予測するように構成されたコンピュータシステムであって、
1つ以上のプロセッサ、及び
1つ以上のコンピュータ可読ハードウェア記憶装置を含み、
前記1つ以上のコンピュータ可読ハードウェア記憶装置は、
前記コンピュータシステムが、
哺乳動物から採取された口腔サンプルから取得された微生物核酸に対応する微生物の核酸配列データを受信し、
前記口腔サンプルに存在する1つ以上の微生物種を同定して前記1つ以上の微生物種を定量化するために前記微生物の核酸配列データを分析し、
前記同定された1つ以上の微生物種及びそれらのそれぞれの存在量に基づいて前記哺乳動物の口腔微生物プロファイルを生成し、
前記口腔微生物プロファイルを
(i)前記哺乳動物の分類の動物における1つ以上の口腔疾患の発生率及び/又は有病率と、
(ii)前記哺乳動物の前記分類の動物における前記口腔マイクロバイオームの様々な微生物種の存在及び/又は存在量であって、前記様々な微生物種は前記口腔サンプルの前記1つ以上の微生物種を含む存在及び/又は存在量と、の間の重み付けされた相関関係を特定するデータベースの情報と比較し、
前記口腔微生物プロファイルと前記データベースの前記情報との間の1つ以上の一致を同定し、
前記口腔微生物プロファイルと前記データベースの前記情報との間の前記1つ以上の一致に基づいて、前記哺乳動物が前記1つ以上の口腔疾患を患っている可能性を示すリスク点数を生成し、及び任意に
前記リスク点数が所定の閾値を満たす又は超過する場合に、前記哺乳動物が前記1つ以上の口腔疾患が「発症」したものと診断し、
前記リスク点数が前記所定の閾値を満たす又は超過する場合に、前記1つ以上の口腔疾患を治療又は予防するのに適した治療プロトコルを処方し、
(i)前記リスク点数、(ii)前記リスク点数が前記所定の閾値を満たす又は超過する場合に、前記1つ以上の口腔疾患の発症の表示、(iii)タイミング推薦、(iv)任意に歯の健康を改善するための1つ以上の在宅診察、(v)任意に前記リスク点数が前記所定の閾値を満たす又は超過する場合に、前記1つ以上の口腔疾患を診断するための1つ以上の診断ステップ、及び(vi)任意に前記治療プロトコルに対する処方を示すレポートを生成し、
前記生成されたレポートを前記哺乳動物の飼い主及び/又はそれらの獣医師に電子的に伝達するように構成するための前記1つ以上のプロセッサによって実行可能な命令が格納されている、
コンピュータシステム。
【請求項13】
前記命令は、1つ以上のマッピングされていないリードを哺乳動物参照ゲノム配列にマッピング及び/又は1つ以上のリードを参照ゲノム配列にマッピングし、任意に前記リードを微生物又は哺乳動物に分類するように前記コンピュータシステムをさらに構成する、請求項12に記載のコンピュータシステム。
【請求項14】
前記命令は、メタゲノム配列データの少なくとも1つのマッピングされていない配列リードを同定し、任意に前記少なくとも1つのマッピングされていないリードを分類するように前記コンピュータシステムをさらに構成する、請求項13に記載のコンピュータシステム。
【請求項15】
10,000未満の分類された微生物のリード又は500,000を超過する分類された微生物のリードを有する前記哺乳動物の口腔マイクロバイオームサンプルは、定義された微生物プロファイルのデータベースに対する前記哺乳動物の前記口腔微生物プロファイルの比較から除外される、請求項13に記載のコンピュータシステム。
【請求項16】
前記命令は、前記口腔サンプルに存在する前記1つ以上の微生物種の存在量を算出するように前記コンピュータシステムをさらに構成する、請求項12に記載のコンピュータシステム。
【請求項17】
前記口腔サンプルに存在する特定の前記1つ以上の微生物種の前記存在量は、前記特定の1つ以上の微生物種が特定の口腔疾患に対する予測微生物種であるかどうかに相関する、請求項16に記載のコンピュータシステム。
【請求項18】
前記命令は、前記哺乳動物の口腔サンプルの前記微生物存在量を前記データベースの前記情報に対するペアごとの対数比の比較を行うように前記コンピュータシステムをさらに構成する、請求項16に記載のコンピュータシステム。
【請求項19】
前記特定の1つ以上の微生物種は、疾患と対照集団との間で比較した場合に、この微生物に関連する最大可能なペアごとの対数比の比較の50%以上が有意に異なる場合に予測微生物種である、請求項18に記載のコンピュータシステム。
【請求項20】
哺乳動物の口腔疾患の発症を予測する方法において、
哺乳動物から1つ以上の微生物種を含む口腔サンプルを取得するステップと、
前記口腔サンプルから、前記1つ以上の微生物種の微生物核酸を分離するステップと、
前記微生物核酸に対応する微生物の核酸配列データを取得するステップと、
前記口腔サンプルに存在する1つ以上の微生物種を同定するために前記微生物の核酸配列データを分析し、任意に前記1つ以上の微生物種を定量化するステップと、
前記同定されて任意に定量化された1つ以上の微生物種に基づいて前記哺乳動物の口腔微生物プロファイルを生成するステップであって、前記口腔微生物プロファイルは、前記1つ以上の微生物種及び前記口腔サンプルの前記1つ以上の微生物種の両又は相対存在量を含むステップと、
前記口腔微生物プロファイルを、
(i)前記哺乳動物の分類の動物における1つ以上の口腔疾患の発生率及び/又は有病率と、
(ii)前記哺乳動物の前記分類の動物における前記口腔マイクロバイオームの様々な微生物種の存在及び/又は存在量であって、前記様々な微生物種は前記口腔サンプルの前記1つ以上の微生物種を含む様々な微生物種の存在及び/又は存在量と、の間の重み付けされた相関関係を特定するデータベースの情報と比較するステップと、
前記口腔微生物プロファイルと前記データベースの前記情報との間の1つ以上の一致に基づいて、前記哺乳動物が前記1つ以上の口腔疾患が発症する可能性を示すリスク点数を生成するステップと、
前記リスク点数が所定の閾値を満たす又は超過する場合に、前記哺乳動物が前記1つ以上の口腔疾患を発症したものとして表示するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、以下の利益及び優先権を主張する。(1)「ネコの歯科疾患の検出のための口腔スワブ基盤のマイクロバイオーム検査の開発(Development of an Oral Swab Based Microbiome Test for the Detection of Feline Dental Disease)」と題する2021年4月22日に出願された米国仮出願第63/178,395号、及び(2)「飼いネコ、イヌ、及びその他の哺乳動物における歯科疾患状態の検出のための口腔スワブ基盤検査(Oral Swab-Based Test for the Detection of Dental Disease States in Domestic Cats,Dogs,and Other Mammals)」と題する2021年7月14日に出願された米国仮出願第63/221,554号のそれぞれの全文が具体的な参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、飼いネコ、イヌ、及びその他の哺乳動物の口腔疾患状態をスクリーニング、検出、及び同定するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般にネコ、イヌ、哺乳動物の歯の健康は、個々の動物の全体的な健康及びウェルビーイング(wellbeing)に関連していることが知られている。即ち、歯の健康は、より一般なネコ、イヌ、哺乳動物の全体的な健康とウェルビーイングのよいプロキシ(proxy)になり得る。歯科症状(Dental condition)は、より広範で深刻な全身症状(systemic condition)を示している可能性があり、特定の歯科症状を抱えながら生活する個々の動物の快適さのレベルに影響を及ぼし得る。例えば、歯科疾患症状に苦しんでいる動物は、痛み、睡眠不足、食欲不振、活動性低下、うつ病などを経験することがある。
【0004】
哺乳動物の歯科疾患の最も一般的な形態の1つである歯周疾患(periodontal disease)は、一般に4つのステージに分類することができ、第1ステージでは歯肉(歯茎)に炎症ができる。第2~4ステージでは、様々な程度の歯の支持(tooth support)が喪失し、第4ステージでは、歯の支持の50%以上が喪失する。これにより、哺乳動物の歯が失われ、歯を使用するとき(例えば、食事中)に痛みが生じる可能性がある。ネコやイヌなどの多くの哺乳動物は、このようなこの痛みや不快感を飼い主に伝えることができない。さらに、歯科疾患に関連する痛みが現れ始める頃には、予防に重点を置いた治療法では、口腔の健康を大幅に改善するには手遅れであり、一部の治療オプションが利用できない、又は効果がない可能性もあり、その結果、緊急の獣医サービスに対する飼い主の出費が増加することになる。
【0005】
ネコやイヌなどの哺乳動物の多くは、定期的な獣医師の診察を受けていないため、これは、歯科疾患の初期発現が見逃されることがよくあることを意味する。この問題をさらに悪化させるのは、定期的な獣医師の診察の一環として口腔の健康状態を広範囲に評価することがほとんどないことにある。典型的な獣医師の口腔の健康診断は、起きている時の口の目視検査に依存する。歯科疾患の発現は、肉眼では見えない場合が多いため、検診中に歯科疾患の発症の初期発現を見逃さないようにするには、動物に麻酔をかけ、口腔のX線映像を撮影する必要がある。この処理は高額であり、ネコやイヌの麻酔に伴うリスクがあるため、ほとんどの動物病院や診療所で標準的な方法ではない。
【0006】
従って、ネコやイヌなどの哺乳動物の歯科疾患を検出するために繰り返し使用できる、強力で正確でありながら安全で痛みがなく、手頃な価格の手段が必要とされている。このようなツールを使用して獣医師の口腔の健康評価(oral health assessment)を導き補完すると、獣医師の診察だけに頼る場合と比較して、口腔の健康の成果を大幅に改善し、口腔の健康悪化の発現を検出して早期に治療を実施できるようになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態は、ネコ、イヌ、及び/又はその他の哺乳動物の伴侶動物における口腔疾患状態をスクリーニング、検出、及び同定するためのシステム及び方法を含む。開示される主題の実施形態は、哺乳動物の伴侶動物の口腔マイクロバイオーム(oral microbiome)を調査するための方法を説明する。開示された方法は、口腔マイクロバイオームを調査し、ネコ、イヌ、及びその他の哺乳動物の歯科疾患に関連し得る微生物構成の存在量の傾向を検出する。微生物構成の存在量の傾向を検出、特定、及び/又は定量化することにより、診察者(practitioner)は、ネコ、イヌ、及び/又はその他の哺乳動物が特定の口腔及び/又は歯科疾患状態にあるかどうかをスクリーニング及び/又は示すことができる。口腔及び/又は歯科疾患状態を検出して同定することにより、診察者及び/又は哺乳動物の飼い主は、歯科疾患状態を治療し、将来の再発を予防することができる。口腔疾患状態を治療及び/又は予防することにより、より広範な全身症状の治療及び/又は予防でき、有益なことに、哺乳動物にとってより健康でより快適な生活がもたらされる。
【0008】
いくつかの実施形態では、哺乳動物の口腔疾患を検出及び/又は表示する方法が開示される。この方法は、哺乳動物から採取された口腔スワブサンプルを受け取るステップと、口腔サンプルの熱処理(heat treatment)と共にサンプルを操作(manipulate)するステップと、熱処理されたサンプルから微生物のデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acids;DNA)を抽出するステップとを含む。この方法は、口腔サンプルにどの特定の1つ以上の微生物が存在するか(及びどのような相対的割合で存在するか)を同定するために微生物DNAを配列決定するステップをさらに含んでもよく、特定の1つ以上の微生物を同定するステップは、哺乳動物の口腔微生物プロファイルの生成を可能にする。この方法は、哺乳動物の口腔微生物プロファイルを、定義された微生物プロファイルを含む参照データベース(reference database)と比較するステップであって、データベースは、(i)1つ以上の微生物を含むプロファイルと(ii)対応する口腔疾患との間の相関関係を特定し、口腔微生物プロファイルを定義された微生物プロファイルのデータベースと比較した結果に基づいて、哺乳動物が特定の口腔疾患を患っている可能性を示すリスク点数(risk score)を生成するステップをさらに含んでもよい。
【0009】
この方法は、特定の口腔疾患を治療するステップ、及び/又は治療法(therapeutic treatment)を実施するステップをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、治療法は、哺乳動物の口腔マイクロバイオームに存在する特定の1つ以上の微生物の成長を抑制又は促進するように設計された化合物などの治療用化合物を投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、治療用化合物は、プレバイオティクス(pre-biotic)、ポストバイオティクス(post-biotic)、プロバイオティクス(pro-biotic)、薬剤(medicament)、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、治療法は、局所治療(topical treatment)で哺乳動物の歯のブラッシングを含んでもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、哺乳動物における口腔疾患を表示する方法は、哺乳動物から採取された口腔スワブサンプルを受け取るステップと、口腔サンプルに対して熱処理を行うステップとを含む。この方法はまた、口腔スワブサンプルに存在する微生物DNAを抽出するために熱処理された口腔サンプルに対して磁性ビーズ基盤(magnetic beads-based)デオキシリボ核酸(DNA)抽出を行うステップと、口腔サンプルにどの特定の1つ以上の微生物が存在するか(及びどのような構成の存在量)を同定するために微生物DNAを配列決定するステップとを含んでもよく、特定の1つ以上の微生物を同定するステップは、哺乳動物の口腔微生物プロファイルの生成を可能にする。この方法は、定義された微生物プロファイルのデータベースと哺乳動物の口腔微生物プロファイルとを比較するステップであって、データベースは、(i)1つ以上の微生物(及びこれらの構成の存在量)を含むプロファイルと(ii)対応する口腔疾患との間の相関関係を特定し、口腔微生物プロファイルを定義された微生物プロファイルのデータベースと比較した結果に基づいて哺乳動物が特定の口腔疾患を患っている可能性を示すリスク点数を生成するステップをさらに含んでもよい。この方法は、リスク点数の生成及び特定の口腔疾患の特定に応じて、特定の口腔疾患を治療するために設計された治療法を施すステップ、獣医師の診察(veterinary attention)又は経過観察(follow-up examination)を推奨するステップ、及び/又は特定の口腔疾患に対する在宅ケア(at-home care)を推奨するステップを含んでもよい。
【0011】
また、コンピュータシステムが開示される。いくつかの実施形態では、コンピュータシステムは、哺乳動物の口腔疾患を表示するように構成され、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサによって実行可能な命令を記憶する1つ以上のコンピュータ可読ハードウェア記憶装置とを含む。この命令は、コンピュータシステムが、哺乳動物から採取された口腔スワブサンプルから配列決定された微生物DNAデータ(sequenced microbial DNA data)を受信し、口腔サンプルにどの特定の1つ以上の微生物種が存在するかを同定するために配列決定された微生物DNAをマッピングして、特定の1つ以上の微生物種を同定することによって哺乳動物の口腔微生物プロファイルを生成し、哺乳動物の口腔微生物プロファイルをさらに構築するために、異なる微生物種の相対存在量(relative abundance)を算出し、哺乳動物の口腔微生物プロファイルを、定義された微生物プロファイルのデータベースと比較して、データベースは、(i)1つ以上の微生物種及びこれらの相対存在量を含むプロファイルと(ii)対応する口腔疾患との間の相関関係を特定し、及び、口腔微生物プロファイルを定義された微生物プロファイルのデータベースと比較した結果に基づいて、哺乳動物が特定の口腔疾患を患っている可能性を示すリスク点数を生成するように構成してもよい。リスク点数を生成に応答して、命令はリスク点数を要約及び/又は提示し、特定の口腔疾患を解決(例えば、治療及び/又は予防)するのに適した治療法及び/又は在宅治療プロトコルを処方するレポートを生成するようにコンピュータシステムをさらに構成してもよい。治療プロトコルは、リスク点数によって示される、又はリスク点数に関係する口腔疾患状態の重症度によって影響を受ける可能性がある。
【0012】
いくつかの実施形態では、治療法又は在宅ケアプロトコルは、哺乳動物の口腔マイクロバイオームの構成を変更するように設計される。いくつかの実施形態では、哺乳動物の口腔マイクロバイオームの構成を変更することにより、特定の口腔疾患を治療及び/又は解決される。いくつかの実施形態では、治療法は、哺乳動物の口腔マイクロバイオームを修復する。いくつかの実施形態では、治療法又は在宅ケアプロトコルは、哺乳動物の口腔マイクロバイオームの構成を保持するように設計される。いくつかの実施形態では、治療プロトコルは、哺乳動物の口腔マイクロバイオームの代謝出力(metabolic output)を刺激するように設計される。哺乳動物の口腔マイクロバイオームの代謝出力を刺激するには、既知の酵素経路分析ツール(enzymatic pathway analysis tool)を使用して、既存の微生物構成データに追加の次元(additional dimension)を提供して、疾患の特徴(disease signature)をさらに特徴付けて、疾患の予測モデル(predictive disease model)を向上させることを含んでもよい。
【0013】
本開示の例示的な実施形態及び非限定的な例には、以下が含まれる。
例1.非ヒト(non-human)哺乳動物(mammalian animal)の口腔疾患をスクリーニング、検出、及び/又は予防する方法であって、方法は、
非ヒト哺乳動物の口腔微生物プロファイル(oral microbial profile)を取得するステップであって、口腔微生物プロファイルは、非ヒト哺乳動物の口腔サンプルに存在する1つ以上の微生物種及び口腔サンプルの1つ以上の微生物種の量(quantity)又は存在量(abundance)を含むステップと、
口腔微生物プロファイルを、(i)非ヒト哺乳動物の分類の動物における1つ以上の口腔疾患の発生率(occurrence)及び/又は有病率(prevalence)と、(ii)非ヒト哺乳動物の分類の動物における口腔マイクロバイオームに様々な微生物種の存在及び/又は存在量であって、様々な微生物種は口腔サンプルの1つ以上の微生物種を含む様々な微生物種の存在及び/又は存在量との間の重み付けされた相関関係(weighted correlation)を同定するデータベースの情報と比較するステップと、
口腔微生物プロファイルとデータベースの情報との間の1つ以上の一致に基づいて、非ヒト哺乳動物が1つ以上の口腔疾患を患っている可能性を示すリスク点数を生成するステップと、
リスク点数が所定の閾値(predetermined threshold)を満たす又は超過する場合に、非ヒト哺乳動物が1つ以上の口腔疾患を発症したものとしてカテゴリー分類するステップ、及び任意にリスク点数が所定の閾値を満たす又は超過する場合に、1つ以上の口腔疾患の発症(development)、進行(advancement)、又は再発(recurrence)を治療、緩和、又は予防するのに適した治療プロトコルを処方するステップとを含む。
【0014】
例2.治療プロトコルを非ヒト哺乳動物に実施すること、又は治療プロトコルが非ヒト哺乳動物に実施されたことを確認するステップをさらに含み、治療プロトコルは、非ヒト哺乳動物の口腔微生物プロファイルを変更するのに十分である、例1に記載の方法。
【0015】
例3.非ヒト哺乳動物の口腔微生物プロファイルを取得するステップは、口腔サンプルから取得された微生物核酸(microbial nucleic acid)に対応する核酸配列データ(nucleic acid sequence data)を取得するステップと、 核酸配列データを分析して口腔サンプルに存在する1つ以上の微生物種を同定し、1つ以上の微生物種を定量化するステップと、同定されて任意に定量化された1つ以上の微生物種に基づいて非ヒト哺乳動物の口腔微生物プロファイルを生成するステップとを含む、例1に記載の方法。
【0016】
例4.微生物の核酸配列データを取得するステップは、口腔サンプルから微生物核酸を配列決定するステップと、任意に口腔サンプルから微生物核酸を分離するステップとを含む、例3に記載の方法。
【0017】
例5.口腔サンプルから微生物核酸を分離するステップは、口腔サンプルに熱処理を行うステップと、口腔サンプルから微生物核酸を抽出するために、タンパク質消化試薬(protein digesting reagent)及び界面活性剤(detergent)を添加の有無にかかわらず、熱処理された口腔サンプルに対して磁性SPRIビーズ基盤の核酸抽出(magnetic SPRI beads-based nucleic acid extraction)を行うステップとを含む、例4に記載の方法。
【0018】
例6.微生物の核酸配列データを分析するステップは、核酸配列データを逆多重化(demultiplexing)するステップと、核酸配列データをトリミング(trimming)するステップと、1つ以上のマッピングされていないリードを非ヒト哺乳動物の参照ゲノム配列(reference genome)及び/又は既存の微生物参照ゲノム配列(existing microbial reference genome)にマッピングするステップと、マッピング後の核酸配列データから1つ以上のリードを哺乳動物として分類するステップと、マッピング後の核酸配列データから1つ以上のリードを微生物として分類するステップと、1つ以上の微生物のリードを定量化するステップと、ペアごとの対数比変換(pairwise log ratio transformation)のような方法を使用して、配列カバレッジバイアス(sequence coverage bias)を説明するために定量化された1つ以上の微生物のリードを変換するステップと、特定の歯科疾患(dental disease)に苦しんでいる非ヒト哺乳動物からのサンプルだけでなく、歯科疾患に患っていない非ヒト哺乳動物からのサンプルを含む参照データベースの変換されたデータの構成の存在量パターン(compositional abundance pattern)に対する変換された1つ以上の微生物のリードの構成の存在量パターンを比較するステップとのうちの1つ以上を含む、例3に記載の方法。
【0019】
例7.口腔微生物プロファイルをデータベースの情報と比較するステップは、口腔サンプルの1つ以上の微生物種の存在量を算出するステップと、口腔サンプルの1つ以上の微生物種を同定するステップと、データベースに含まれる非ヒト哺乳動物の分類の口腔サンプルの同定された1つ以上の微生物種の存在量を動物の口腔マイクロバイオームの様々な微生物種の存在及び/又は存在量と比較するステップと、のうちの1つ以上を含む、例1に記載の方法。
【0020】
例8.リスク点数を生成するステップは、データベースに含まれる非ヒト哺乳動物の分類の口腔サンプルの1つ以上の微生物種の構成の存在量と動物の口腔マイクロバイオームの様々な微生物種の構成の存在量との間の1つ以上の類似性を同定するステップと、データベースに含まれる非ヒト哺乳動物の分類の口腔サンプルの1つ以上の微生物種の同一性(identity)と動物の口腔マイクロバイオームの様々な微生物種の存在との間の1つ以上の一致を同定するステップと、口腔サンプルの1つ以上の微生物種の構成の存在量とデータベースに含まれる非ヒト哺乳動物の分類の動物における口腔マイクロバイオームの1つ以上の微生物種の構成の存在量との間の同定された1つ以上の類似性を定量化するステップと、口腔サンプルの1つ以上の予測微生物種(predictive microbial species)の存在を同定するステップと、のうちの1つ以上を含む、例1に記載の方法。
【0021】
例9.1つ以上の口腔疾患、歯周疾患、歯牙吸収(tooth resorption)、歯肉口内炎(gingivostomatitis)、及び口臭(halitosis)で構成されたグループ(group)から選択される、例1に記載の方法。
【0022】
例10.(i)リスク点数、(ii)リスク点数が所定の閾値を満たす又は超過する場合に、1つ以上の口腔疾患の発症の表示(indication)、(iii)タイミング推薦(timing recommendation)、(iv)任意に歯の健康を改善するための1つ以上の在宅診察(at home practice)、(v)任意にリスク点数が所定の閾値を満たす又は超過する場合に、1つ以上の口腔疾患を診断するための1つ以上の診断ステップ(diagnostic step)、(vi)任意に治療プロトコルに対する処方を示すレポートを生成するステップ、及び任意に生成されたレポートを非ヒト哺乳動物の飼い主及び/又はそれらの獣医師に電子的に伝達するステップ、を含む例1に記載の方法。
【0023】
例11.治療プロトコルは、非ヒト哺乳動物の口腔微生物プロファイルを変更するのに十分である、例1に記載の方法。
例12.哺乳動物の口腔疾患を示す又は予測するように構成されたコンピュータシステムであって、1つ以上のプロセッサ、及び1つ以上のコンピュータ可読ハードウェア記憶装置を含み、1つ以上のコンピュータ可読ハードウェア記憶装置は、コンピュータシステムが、哺乳動物から採取された口腔サンプルから取得された微生物核酸に対応する微生物の核酸配列データを受信し、口腔サンプルに存在する1つ以上の微生物種を同定して1つ以上の微生物種を定量化するために微生物の核酸配列データを分析し、同定された1つ以上の微生物種及びそれらのそれぞれの存在量に基づいて哺乳動物の口腔微生物プロファイルを生成し、口腔微生物プロファイルを(i)哺乳動物の分類の動物における1つ以上の口腔疾患の発生率及び/又は有病率と、(ii)哺乳動物の分類の動物における口腔マイクロバイオームの様々な微生物種の存在及び/又は存在量であって、様々な微生物種は口腔サンプルの1つ以上の微生物種を含む様々な微生物種の存在及び/又は存在量との間の重み付けされた相関関係を特定するデータベースの情報と比較し、口腔微生物プロファイルとデータベースの情報との間の1つ以上の一致を同定し、口腔微生物プロファイルとデータベースの情報との間の1つ以上の一致に基づいて、哺乳動物が1つ以上の口腔疾患を患っている可能性を示すリスク点数を生成し、及び任意にリスク点数が所定の閾値を満たす又は超過する場合に、哺乳動物が1つ以上の口腔疾患が「発症」したものと診断し、リスク点数が所定の閾値を満たす又は超過する場合に、1つ以上の口腔疾患を治療又は予防するのに適した治療プロトコルを処方し、(i)リスク点数、(ii)リスク点数が所定の閾値を満たす又は超過する場合に、1つ以上の口腔疾患の発症の表示、(iii)タイミング推薦、(iv)任意に歯の健康を改善するための1つ以上の在宅診察、(v)任意にリスク点数が所定の閾値を満たす又は超過する場合に、1つ以上の口腔疾患を診断するための1つ以上の診断ステップ、及び(vi)任意に治療プロトコルに対する処方を示すレポートを生成し、生成されたレポートを哺乳動物の飼い主及び/又はそれらの獣医師に電子的に伝達するように構成するための1つ以上のプロセッサによって実行可能な命令が格納されている、コンピュータシステム。
【0024】
例13.命令は、1つ以上のマッピングされていないリードを哺乳動物参照ゲノム配列にマッピング及び/又は1つ以上のリードを参照ゲノム配列にマッピングし、任意にリードを微生物又は哺乳動物に分類するようにコンピュータシステムをさらに構成する、例12に記載のコンピュータシステム。
【0025】
例14.命令は、メタゲノム配列データ(metagenomic sequence data)の少なくとも1つのマッピングされていない配列リードを同定し、任意に少なくとも1つのマッピングされていないリードを分類するようにコンピュータシステムをさらに構成する、例13に記載のコンピュータシステム。
【0026】
例15.10,000未満の分類された微生物のリード又は500,000を超過する分類された微生物のリードを有する哺乳動物の口腔マイクロバイオームサンプルは、定義された微生物プロファイルのデータベースに対する哺乳動物の口腔微生物プロファイルの比較から除外される、例13に記載のコンピュータシステム。
【0027】
例16.命令は、口腔サンプルに存在する1つ以上の微生物種の存在量を算出するようにコンピュータシステムをさらに構成する、例12に記載のコンピュータシステム。
例17.口腔サンプルに存在する特定の1つ以上の微生物種の存在量は、特定の1つ以上の微生物種が特定の口腔疾患に対する予測微生物種であるかどうかに相関する、例16に記載のコンピュータシステム。
【0028】
例18.命令は、哺乳動物の口腔サンプルの微生物存在量をデータベースの情報に対するペアごとの対数比の比較(pairwise log ratio comparison)を行うようにコンピュータシステムをさらに構成する、例16に記載のコンピュータシステム。
【0029】
例19.特定の1つ以上の微生物種は、疾患と対照集団(control cohort)との間で比較した場合に、この微生物に関連する最大可能なペアごとの対数比の比較の50%以上が有意に異なる場合に予測微生物種である、例18に記載のコンピュータシステム。
【0030】
例20.哺乳動物の口腔疾患の発症を予測する方法において、哺乳動物から1つ以上の微生物種を含む口腔サンプルを取得するステップと、口腔サンプルから、1つ以上の微生物種の微生物核酸を分離するステップと、微生物核酸に対応する微生物の核酸配列データを取得するステップと、口腔サンプルに存在する1つ以上の微生物種を同定するために微生物の核酸配列データを分析し、任意に1つ以上の微生物種を定量化するステップと、同定されて任意に定量化された1つ以上の微生物種に基づいて哺乳動物の口腔微生物プロファイルを生成するステップであって、口腔微生物プロファイルは、1つ以上の微生物種及び口腔サンプルの1つ以上の微生物種の両又は相対存在量を含むステップと、口腔微生物プロファイルを、(i)哺乳動物の分類の動物における1つ以上の口腔疾患の発生率及び/又は有病率と、(ii)哺乳動物の分類の動物における口腔マイクロバイオームに様々な微生物種の存在及び/又は存在量であって、様々な微生物種は口腔サンプルの1つ以上の微生物種を含む様々な微生物種の存在及び/又は存在量との間の重み付けされた相関関係を特定するデータベースの情報と比較するステップと、口腔微生物プロファイルとデータベースの情報との間の1つ以上の一致に基づいて、哺乳動物が1つ以上の口腔疾患が発症する可能性を示すリスク点数を生成するステップと、リスク点数が所定の閾値を満たす又は超過する場合に、哺乳動物が1つ以上の口腔疾患を発症したものとして表示するステップと、を含む、方法。
【0031】
この概要は、以下の詳細な説明でさらに説明される、簡略化された形式で概念の選択を紹介するために提供される。この概要は、請求された主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、請求された主題の範囲を示すものとして使用されることも意図していない。
【0032】
本発明の様々な目的、特徴、特性、及び利点は、全て本明細書の一部を構成する添付図面及び添付の特許請求の範囲と併せて、以下の実施形態に対する説明から明白になり、より容易に認識されよう。各図において、同様の参照番号は、様々な図における対応又は同様の部分を示すために使用されてもよく、図示される様々な要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A】歯科健康検査のワークフロー及び口腔マイクロバイオーム参照データベースの構築を示す。
図1B】歯科健康検査のワークフロー及び口腔マイクロバイオーム参照データベースの構築を示す。
図2A】歯周疾患(PD)及び健康な集団(healthy cohort)と関連するペアごとの微生物相互作用の間の平均対数比率差点数(average log ratio difference score)の分布を示す。
図2B】歯牙吸収(TR)及び健康な集団に関連するペアごとの微生物相互作用の間の平均対数比率差点数の分布を示す。
図2C】口臭(BB)及び典型的な呼吸(TB)集団に関連するペアごとの微生物相互作用の間の平均対数比率差点数の分布を示す。
図3A】2成分ガウス混合モデル(2-component Gaussian mixture model)に基づくネコ(又はネコ科)の歯科健康検査(feline dental health test)の敏感度(sensitivity)と特異性を示す。
図3B】2成分ガウス混合モデルに基づくネコ(又はネコ科)の歯科健康検査の敏感度と特異性を示す。
図3C】2成分ガウス混合モデルに基づくネコ(又はネコ科)の歯科健康検査の敏感度と特異性を示す。
図3D】2成分ガウス混合モデルに基づくネコ(又はネコ科)の歯科健康検査の敏感度と特異性を示す。
図4】ネコの歯周疾患、歯牙吸収、及び口臭の特徴である口腔マイクロバイオーム予測微生物(predictive microbe)の重複を示す。
図5A】ネコの歯科健康検査結果のサンプリング場所の影響及び再現性示す。
図5B】ネコの歯科健康検査結果のサンプリング場所の影響及び再現性示す。
図6】2つの異なるタイプのメタゲノム全ゲノム配列(WGS)ライブラリ調製-ライゲーション(ligation)基盤のアプローチとタグメンテーション(tagmentation)基盤のアプローチ(Illumina Nextera DNA Flexライブラリ調製キットなど)からのデータを比較して配列リード(sequencing read)数にともなう微生物種の豊富さ(richness)を示す。
図7】歯肉炎(歯槽骨喪失なし)、歯周疾患及び歯槽骨喪失に苦しんでいるネコで構成された臨床的に募集された集団と市民科学(citizen science)で募集した健康な対照群の口腔マイクロバイオーム基盤の歯周疾患リスク評価を示す。
図8】歯肉炎(歯槽骨喪失なし)、歯周疾患及び歯槽骨喪失に苦しんでいるネコで構成された臨床的に募集された集団と市民科学で募集された健康な対照群の口腔マイクロバイオーム基盤の臭い息(口臭)リスク評価を示す。
図9A】歯牙吸収に苦しんでいるネコで構成された臨床的に募集された集団と市民科学で募集された健康な対照群の口腔マイクロバイオーム基盤の歯牙吸収リスク評価を示す。
図9B】歯牙吸収に苦しんでいるネコで構成された臨床的に募集された集団における歯牙吸収のステージ情報を統合して市民科学で募集された健康な対照群の口腔マイクロバイオーム基盤の歯牙吸収リスク評価を示す。
図10A】歯肉口内炎集団と健康な集団との間の関連するペアごとの微生物相互作用の平均対数比率差点数の分布を示す。
図10B】2成分ガウス混合モデルに基づくネコの歯肉口内炎検査の敏感度と特異性を示す。歯肉口内炎のネコ及び健康な集団のネコが、2成分ガウス混合モデルによって歯肉口内炎であるか健康であるかに分類される確率の分布である。この疾患に特徴的な口腔マイクロバイオームの特徴を検出する能力に基づくネコの歯肉口内炎検査の敏感度と特異性も表示される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
口の微生物構成(口腔マイクロバイオーム)の変化は、特定の歯科疾患や全身疾患と関連し得る。この研究分野はまだ歴史が浅く、これらの関連性を包括的に立証するヒトを対象とした研究は、ここ10年以内に発表されたばかりである。ネコやイヌなどの伴侶動物を対象としたこの主題に関する研究は限られている。栄養及び環境要因、ならびに現在の疾患状態は、哺乳動物の口の動的な微生物構成(それらの口腔マイクロバイオーム)に重要な役割をしている可能性がある。口は外来微生物に対する持続的な露出から第一の防御線であるため、口腔マイクロバイオームは競争的で領域を有するように進化した。これは、自身の領域を防御するのに優れた微生物で構成され、一般に病原菌(pathogens)を含む外来侵入者(foreign invader)によって置換えられるのを防止することができる。しかし、不適切な食事や劣悪な歯の衛生状態などの腸内菌共生バランス失調を引き起こす事件は、病原性微生物が口腔の大部分に不均衡に定着し(従って、口腔マイクロバイオームが変更)、病理に関連する可能性がある。口腔マイクロバイオームの構成を理解すると、口腔組織の健康に関する情報が得られ、潜在的な歯科疾患及び歯周病の可能性を指摘できる。この情報は、ペットの健康とウェルビーイングを管理するためにも使用され得る。
【0035】
歯科疾患は、単一微生物ではなく複数の微生物が関連する複雑な相互作用に関連し得る。伴侶動物の口腔マイクロバイオーム研究の分野は、ほとんど注目されておらず、まだ初期段階にある。既存の研究は、マイクロバイオームを調べるための小さなサンプルサイズと時代遅れの培養基盤の技術に基づいて結論を導き出している。既存の細菌のうちの約2%のみが試験室で培養され得るものと推定され、これは、微生物分類のためにこの方法に依存する研究では、多くの重要な微生物有機体(microbial organism)が見逃される可能性があることを意味し、一方で、特定の種を培養して測定できるために誤って強調される可能性がある。この問題は、試験室における培養では、マイクロバイオームが非常に細菌中心の視点で表示され、多くの場合、真菌(fungi)、原生動物(protozoa)、古細菌(archaea)、及びウイルスなどの他の微生物が無視されることが多いという事実によってさらに複雑になる。
【0036】
哺乳動物の口腔マイクロバイオームの調査は、口腔(唾液)サンプルを使用して実行され得る。近年、唾液採取キットは、血統及び微生物感染症の検査が普及するにつれて、人気が高まっている。消費者に直接提供されるマイクロバイオーム検査は、一般に次世代配列決定(NGS)を活用する「16S rRNA遺伝子配列決定」という技術に依存している。この技術は、初期細菌培養の取り組みよりも実質的に多くの情報を提供するが、マイクロバイオームに存在する細菌種(及び一部の古細菌)を同定する場合にのみ使用し得る。多くの場合、これらの検査では、分類学的分類の属レベルを越えて細菌を確実かつ一貫して同定するのに十分な分解能が提供されない。従って、多くの場合、検査結果は、マイクロバイオームを構成する細菌の正確な種又は株を提供せず、データに基づく結論が曖昧になり、近似値に依存することになる。さらに、身体の異なる部位のマイクロバイオームは、細菌と古細菌の他にもウイルス、原生動物、真菌種で構成され得ることはよく知られている。これは、16S rRNA遺伝子配列決定のアプローチがマイクロバイオームの一部のみに焦点を当て、残りの部分を無視することを意味する。
【0037】
本発明の様々な実施形態を具体的に説明する前に、本開示は、一実施形態とは異なり得る、特に例示されたシステム、方法、及び/又は製品の特定のパラメータ、表現、及び説明だけに限定されるものではないことを理解されたい。従って、本開示の特定の実施形態は、特定の特徴(例えば、構成、パラメータ、特性、ステップ、構成要素、成分、部材、要素、部品、及び/又は部分など)を参照して詳細に説明されるが、説明は例示的なものであって、本開示及び/又は特許請求される発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、本明細書で使用される用語は、実施形態を説明することを目的としており、必ずしも本開示及び/又は特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0038】
現在開示されていることは、ネコ、イヌ、及び/又はその他の哺乳動物の伴侶動物の口腔疾患状態を特定、スクリーニング、表示、及び/又は治療するためのコンピュータシステム、システム、及び方法である。口腔疾患状態は、歯科疾患状態を含むものと理解されるが、歯科疾患状態に限定されない。開示される主題の実施形態は、ネコ、イヌ、及びその他の哺乳動物の歯科疾患と関連する微生物構成の存在量の傾向を検出する目的で、哺乳動物の伴侶動物の口腔マイクロバイオームを調査する方法を説明する。微生物構成の存在量の傾向を検出、特定、及び/又は定量化することにより、診察者は、ネコ、イヌ、及び/又はその他の哺乳動物が特定の口腔疾患状態にあるかどうかをスクリーニング及び/又は示すことができる。口腔及び/又は歯科疾患状態を検出及び特定することにより、診察者又はペットの飼い主は、歯科疾患状態を治療し、将来の再発を予防することができる。口腔及び/又は歯科疾患状態を治療及び/又は予防することにより、より広範な全身症状の治療及び予防が可能になり、ペットにとってより健康で快適な生活がもたらされる。
【0039】
開示されたシステム及び方法が歯周疾患のような疾患状態の検出、特定、及び表示を可能にする程度は、特に歯牙吸収、ネコの歯肉口内炎及び口臭などの他の疾患状態の検出、特定、及び表示を可能にする。同様に、開示されたシステム及び方法がネコ科の動物における疾患状態の検出、特定、及び表示を可能にする程度は、イヌ(及び他のイヌ科)、ウマ(及び他のウマ科)、ヒツジ(及び他のヒツジ科)、ウシ(及び他のウシ科及び/又は反芻動物)、ブタ(及び他のブタ科の動物)、モルモット、ハムスターなどのような他の哺乳動物の疾患状態を検出、特定、及び表示を可能にする。
【0040】
開示された方法は、例えば、ネコの口腔マイクロバイオームを、飼い主及び/又は獣医師によって歯牙吸収、歯周疾患、ネコの歯肉口内炎と診断された、又は「死臭と腐敗臭」を特徴とする口臭のあると報告されたネコの口腔マイクロバイオームと比較してもよい。比較は、定義された微生物プロファイルを含む参照データベースを使用して実行され、1つ以上の微生物種とそれぞれの構成の存在量を1つ以上の口腔歯科症状と関連させる。
【0041】
開示されたシステム及び方法は、痛みがない口腔スワブサンプル採取を含むことができる。従って、口腔マイクロバイオームは、頬側(buccal)、歯肉縁上(supragingival)、又は歯肉縁下(subgingival)のサンプリングによって調査することができる。このようなサンプリングは、動物に麻酔をかける必要がなく、家にいるペットの飼い主や診療所の獣医師が行うこともできる。開示されたシステム及び方法は、肉眼ではまだ見えないか、又は広範な歯科訓練を受けていない平均的な獣医師の一般的開業医には容易に認識できない歯科疾患に関連するプロセスの早期指標として機能することができる。定期的に利用することで、初期ステージの歯科疾患の特定が可能になり、より多くのペットが早期に動物病院に運ばれ、長期的には緊急の歯科獣医師の訪問の数を減少させることができる。口腔疾患状態を早期に特定することで、緊急訪問の費用を節約し、さらに哺乳動物の伴侶動物の命を救うことができる。
【0042】
胃腸管(口から肛門まで)などの臓器及び器官係に生息する微生物(及び相対存在量)の定着動態(colonization dynamics)と影響は、イヌ(イヌ科動物)、ネコ(ネコ科動物)、及びヒトの間に多くの類似点を示していることはすでに知られている。歯周疾患は、口腔内の微生物のバランスの崩れに関連する病気であり、ネコ、イヌ、ヒトの間に広く蔓延しており、いくつかの注目すべき共通点がある。例えば、ポルフィロモナス属とタンネレラ属の細菌は、ネコ、イヌ、及びヒトの歯周疾患の発症に重要な役割をする。これは、疾患状態と微生物原因(microbial culprit)の両方でネコ、イヌ、及びヒトの間で重複していることを示しており、ネコ、イヌ、及びヒトのさらなる疾患状態/微生物原因に重複があることを示唆している。
【0043】
開示されたシステム及び方法は、ネコ又はイヌの口腔スワブサンプルからゲノム物質を抽出するために以前に良好に使用されてきた口腔スワブ採取装置(oral swab collection device)を使用する。また、口腔スワブ採取装置の製造業者によれば、使用される同一のスワブ採取装置は、研究者、飼育者など、試験室及び消費者が家畜(ウシ科、ヒツジ科、ヤギ科)、伴侶動物(イヌ科、ネコ科、ウマ科)及びその他の種に使用するのに最適である。口腔スワブ採取装置は、さまざまな哺乳動物種における使用をサポートする。このようなサンプル採取装置から宿主(host)と微生物DNAを全て抽出することが可能であることが確立されている(以下の実施例を参照)。論理的には、ネコ科のサンプルに対するこの抽出の能力は、イヌ科とその他の哺乳動物サンプルにも拡張されることになる。
【0044】
開示されたシステム及び方法は、ネコの歯科疾患のスクリーニングを目的とした、ネコの口腔マイクロバイオームサンプルにおける微生物種の同一性及び存在量の分析を立証する。イヌ及びその他の哺乳動物には口腔と口腔マイクロバイオームがあり、多くの場合、同じ歯科疾患病態(例えば、歯周疾患)にかかりやすいという点を考慮すると、我々の方法はイヌ及びその他の哺乳動物にも容易に適用できるはずである。これは、それぞれの種に対するモデルがそれぞれの種に対するそれぞれの状態の微生物の同一性及び存在量の正確な傾向を導き出すために、疾患と健康な動物集団との間の比較に基づいているためである。
【0045】
[参照データベースに含まれる定義された微生物プロファイル]
口は外来微生物に対する持続的な露出から第一の防御線であるため、口腔マイクロバイオームは競争的で領域を有するように進化した。これは、自身の領域を防御するのに優れた微生物で構成され、一般に病原菌を含む外来侵入者などによって置換えられるのを防止することができる。これらの微生物は、一般に哺乳動物(例えば、ネコ又はイヌ)が健康で、口腔マイクロバイオームの健康な微生物プロファイルを示すときに存在する。哺乳動物が歯科症状に苦しんでいる場合、外来微生物又は病原性微生物種の存在及び/又は異なる微生物間の存在比の変化により、口腔マイクロバイオームの構成が変化する可能性がある。口腔マイクロバイオームの構成におけるこのような変化は、病原性プロファイルによって表される可能性がある。場合によっては、特定の外来微生物及び/又は病原性微生物種の存在、及び口腔内の他の微生物に対するそれらの存在量は、特定の歯科症状に苦しんでいる哺乳動物と相関関係がある。
【0046】
特定の口腔疾患状態と相関関係がある特定の(1つ以上の)微生物種(及びそれらのそれぞれの相対存在量)の同定は、同定された(1つ以上の)微生物種の存在を示す哺乳動物の口腔疾患状態に対する診断前のスクリーニングを可能にする。即ち、口腔疾患状態の特定及び/又は表示は、特定の病原性プロファイルを示す哺乳動物と相関する可能性がある。
【0047】
マイクロバイオームに対する包括的な研究のための至適基準(gold standard)は、細菌及び古細菌だけでなく、生命の全ての領域にわたる生物の完全又はほぼ完全なゲノムを捕捉できるショットガンメタゲノム配列(shotgun metagenomic sequencing)である。開示された方法はまた、16S遺伝子配列とは異なり、微生物の同定及び種、又は場合によっては、菌株レベルまでの分類を可能にする。
【0048】
獣医の現場では、歯科疾患は、口臭、歯牙吸収及び歯周疾患がそれぞれ異なる根本的な病理及び/又は微生物原因を有する可能性があるにもかかわらず、それぞれが別々に現れることはほとんどない症候群と見なされる。以下でさらに詳細に説明するように、この見解は、症状間で微生物種の一部の重複が観察される取得データにある程度反映される。観察された最も大きい重複は、口臭と歯周疾患との間にあり、これは口臭が歯周疾患の前兆であることが多いというクリニックの観察と一致している。しかし、特に口臭、歯牙吸収、ネコの歯肉口内炎、又は歯周疾患を予測できる口腔マイクロバイオーム構成における豊富な微生物も同定された。これは、一般に歯科疾患と関連する微生物のコアセット(core set)の存在に加えて、特定の歯の病理に関連する微生物プロファイルが存在することを示唆している。
【0049】
38,000匹の飼いネコに対するショットガンメタゲノム口腔マイクロバイオーム配列と構成上のデータ分析技術を用いて、ネコの口腔マイクロバイオームに対する包括的な調査が実施され、ネコの口腔マイクロバイオームに存在する8,344種の微生物を同定した。ショットガンメタゲノム配列に含まれる飼いネコが特定の歯科症状に苦しんでいるか否かは、2種類の方法で同定された。ネコは、獣医師によって特定の歯科症状(例えば、歯周疾患、歯牙吸収、歯肉口内炎など)に苦しんでいると正式に診断を受けたり、(口臭の場合と同様に)飼い主によって非公式に診断を受けたことを飼い主が報告した。
【0050】
参照データベースは、重み付けされた相関関係データベースであり、ネコの口腔マイクロバイオームに存在する同定された少なくとも8,344種の微生物種が含まれる。平均して、ネコ1匹あたり606種の微生物種が同定され、そのうちの97%が細菌と古細菌、0.27%がDNAウイルス(RNAウイルスはショットガンメタゲノム配列では検出できない)、0.02%がファージ、2%未満が真菌に分類された。特定の歯科疾患に関与し、その一因になるものとして同定された様々な微生物種は「定義された微生物プロファイル」に整理される。定義された微生物プロファイルは、特定の歯科疾患状態に寄与する、及び/又は関連することが知られている、同定された1つ以上の微生物種及びそれぞれの相対存在量のリスト又は収集である。
【0051】
例えば、定義された微生物プロファイルは、3種類の歯科症状(口臭、歯牙吸収、及び歯周疾患)を予測する27個の微生物のセットだけでなく、4種類の歯科症状(口臭、ネコの歯肉口内炎、歯牙吸収、及び歯周疾患)のうち1つを具体的に予測する微生物を含んでもよい。「予測微生物」については、以下にてさらに詳細に説明する。定義された微生物プロファイルは、参照データベースを参照することによって推定されるように、特定の歯科疾患状態に苦しんでいる動物において特定の微生物がどのくらいの頻度及びどのような割合で観察されるかによって、含まれる各微生物種をランク付け及び/又は重み付けしてもよい。健康な対照群サンプルと比較した場合、これらの微生物種が異なる口腔微生物からどの程度一貫して非常に異なる相対存在量を示すかを立証するだけでなく、1つの微生物種が特定の歯科疾患状態に寄与する程度は、動物が特定の歯科疾患状態に苦しんでいる間に微生物種が口腔マイクロバイオームにどれくらいの頻度で現れるのか(又は存在するか)に相関している。
【0052】
参照データベースに含まれる定義された微生物プロファイルには、歯科症状に患っていない健康な哺乳動物の定義された微生物プロファイルも含まれる。例えば、健康なネコの定義された微生物プロファイルは、口腔マイクロバイオームに存在する微生物種と歯科症状がないときの相対存在量をリスト化して特定される。健全に定義された微生物プロファイルは、存在する微生物種とその相対存在量に対する基準線又は対照群を確立してもよい。このプロファイルから抜け出すと、診察者は、例えばネコが歯科症状に苦しんでいる可能性を予測及び/又は示唆できる可能性がある。同様に、定義された健康な微生物プロファイルから抜け出すことにより、診察者は、歯科症状に対する発現が現れる前に、ネコが歯科疾患に苦しんでいると診断できる可能性がある。
【0053】
それぞれの歯科疾患状態に対して定義された微生物プロファイルを健康な哺乳動物の定義された微生物プロファイルと比較して歯科疾患状態と健康な状態との間の差を判定する。いくつかの実施形態では、比較は、ペアごとの対数比の比較である。例えば、健康なネコと歯周疾患に苦しんでいるネコの口腔マイクロバイオームには、一部の重複があり得る。健康として定義された微生物プロパイルと歯周疾患として定義された微生物プロファイルとを比較すると、両者の間には同様の存在量で見られる共通の微生物種が同定される。2つの微生物プロファイルの間に共通しない微生物種、又は2つのプロファイル間で著しく異なる割合で見られる微生物種は、その微生物種が歯周疾患の発症に関与することを確認し得る。ネコの口腔マイクロバイオームにおいて、このような微生物種が同定されると、ネコが歯周疾患を有することを示す。
【0054】
図1A図1Bは、ネコの被験者を利用した歯科健康検査のワークフロー及び口腔マイクロバイオーム参照データベースの構築を示す。図1Aでは、ネコの歯科健康検査のワークフローには、DNA保存液(DNA preservation solution)のネコからの口腔スワブの採取、ショットガンメタゲノム次世代配列決定(NGS)用のDNAの抽出及び製造、配列決定、データ分析、及び口腔微生物の状態に基づいて異なる歯科疾患に対するリスク評価を提示し、その結果に合わせた治療を推奨するレポートの生成を含む。図1Bでは、ネコ38,000匹の初期データベースにシーケンシャルフィルタ(sequential filter)を適用することによってネコの口腔マイクロバイオーム参照データベースを構築した。まず、タグメンテーション基盤のNGSライブラリ調製サンプルから全てのデータは除外された。これは、微生物種の豊富さに対するライブラリ調製方法の観察された効果により実行された(図6)。サンプルあたりの配列リード(又はリード値)の数が検出された微生物種の数に最小限の影響を及ぼすため、ライゲーション基盤の方法が好まれた。また、Tn5トランスポザーゼを利用したタグメンテーションは、特にメタゲノムコミュニティにおいてGC配列バイアス(GC sequencing bias)を導入することが知られている。しかし、いくつかの実施形態では、タグメンテーション基盤のNGSライブラリ調製が含まれてもよい。
【0055】
次に、ネコの表現型(phenotype)/健康履歴記録(health history record)がないサンプルは除外された。KRAKEN2とBrackenを使用して各サンプルの微生物のリードを分類した後、分類された微生物のリードが10,000未満及び500,000を超えるサンプルは除外された。残りのネコ/サンプルは集団に配置された。これにより、570匹のネコで構成された歯周疾患(PD)集団、111匹のネコで構成された歯牙吸収(TR)集団、115匹のネコで構成されたネコの歯肉口内炎(FG)集団、173匹のネコで構成された口臭(BB)集団、1,147匹のネコで構成された健康な集団、4,109匹のネコで構成された典型的な呼吸(TB)集団が生成される。
【0056】
[予測微生物の同定]
それぞれの歯科症状と有意に相関する微生物を同定するための最初のステップとして、ペアごとの対数比率(Pairwise Log-Ratio;PLR)変換がBracken出力種レベルのリードカウント(Bracken output species level read count)に対して実行された。次に、z検定を実行することにより、対照群と状態の間の有意のPLR比較(p値<0.01)が特定された。健康な集団がPD、TR、及びFG集団と比較され、典型的な呼吸(TB)集団がBB集団と比較された。
【0057】
全ての有意なPLRにおける各微生物種の頻度が評価された。他の種との最大可能比較の50%以上が有意な微生物種のみが保持された。この測定は、4種類の歯科症状における他の微生物種の重要性に対するプロキシとして利用された。このような微生物種は、それぞれの歯科症状に対する「予測微生物種」である。
【0058】
歯周疾患、歯牙吸収、ネコの歯肉口内炎、又は口臭に特徴的な母集団全体の(population-wide)微生物構成の存在量パターンを特定するために、それぞれの症状に対して、差の方向と大きさを考慮して、サンプルの予測ペアごとの対数比率(pPLR)を対照群の平均pPLRと比較して各サンプルの点数が決められた。図2A図2Cは、歯周疾患集団と健康な集団、歯牙吸収(TR)集団と健康な集団、口臭(BB)集団と典型的な呼吸(TB)集団に関連するペアごとの微生物相互作用の間の平均対数比率差点数の分布を示す。図10Aは、ネコの歯肉口内炎(FG)集団及び健康な集団に関連するペアごとの微生物相互作用の間の平均対数比率差点数の分布を示す。
【0059】
次に、ペアごとの微生物相互作用の間の平均対数比率差点数の分布に健康な集団(又はTB集団)及び歯科症状の各々2つの構成要素を含む4つのガウス混合モデル(それぞれの歯科症状に対して1つずつ)を適用した。このモデリング手法では、各サンプルに対して0から1の点数を生成し、これは、サンプルが対照集団又はそれぞれの歯科症状の集団に属する確率を示す。図3A図3Cは、歯科疾患集団のうちの3つ(歯周疾患、歯牙吸収、及び口臭)に属するサンプルと対照群サンプルが各サンプルの予測微生物の構成の存在量に基づいてそれらのそれぞれの集団に属するものとして分類される確率を示す。図10Bは、ネコの歯肉口内炎と対照群サンプルが各サンプルの予測微生物の構成の存在量に基づいてネコの歯肉口内炎カテゴリー又は対照群カテゴリーに属するものとして分類される確率を示す。全ての場合において、歯科症状と対照群との間でサンプルの同一性と一致する二峰性の確率分布が観察された。最も明確な二峰性パターンは歯周疾患と口臭に対するものであり、歯牙吸収とネコの歯肉口内炎については、弱い二峰性パターンが観察された。4つの例の全てにおいて、少数の疾患サンプルが0に近い小さなピーク(small peak)を形成し、少数の対照群サンプルのセットが1に近いわずかなピーク(slight peak)を形成した。
【0060】
それぞれの歯科疾患状態(歯周疾患、歯牙吸収、ネコの歯肉口内炎及び口臭)に対して定義された微生物プロファイルは、健康な哺乳動物の定義された微生物プロファイルと比較し、微生物種の差と共通点、そして歯科疾患状態と健康な状態との間の存在量を決定して定量化する。また、それぞれの歯科疾患状態に対して定義された微生物プロファイルを互いに比較して、それぞれの歯科疾患状態に共通して現れる重複する微生物種を同定する。
【0061】
それぞれの歯科疾患状態と健康な対照群の状態に対して定義された微生物プロファイルは、ペアごとの対数比率(PLR)変換を経る。PLR変換は、一定のスケーリング係数(scaling factor)ではなく、各微生物に対する微生物存在量をスケーリングすることにより、サンプル間の潜在的な配列決定適用範囲差(coverage difference)を修正する。次に、それぞれの疾患状態と対照群の状態のPLR間のz検定が実行される。約<0.01のp値は、有意なPLR比較のための閾値として機能する。歯科疾患状態について定義された微生物プロファイルで同定された微生物種に対して、微生物種が現れる有意なPLR比較(p値で定義される)の数がカウントされる。有意なPLR比較の数が、その微生物の全ての可能なPLR比較の少なくとも50%である場合、微生物種は「予測微生物」と見なされる。このプロセスは、関心のある歯科疾患の状態ごとに繰り返してもよい。即ち、有意なPLR比較のz検定による同定を通じて、歯周疾患、口臭、ネコの歯肉口内炎及び/又は歯牙吸収に対する予測微生物を同定することができる。表2は、歯周疾患、口臭、及び歯牙吸収に対して同定された予測微生物の例を示す。
【0062】
表2に概要を示すように、歯周疾患に対する予測微生物108種、歯牙吸収に対する予測微生物74種、口臭に対する予測微生物182種が同定された。それぞれの歯科症状に対する予測微生物は、健康/対照群として定義された微生物プロファイルと、3種類の歯科症状のうち1つに苦しんでいるネコとして定義された微生物プロファイルとの間のPLR微生物存在量の比較に基づいて同定された(図4参照)。27の微生物が3種類の歯科症状(歯周疾患、歯牙吸収、及び口臭)を予測するものとして特定されたが、それぞれの状態には、独自の特定の予測微生物のセットがあり、他の状態とは区別される。歯科症状と対照群サンプルの有意なペアごとの微生物相互作用との間の平均対数比率差をプロットすることにより、歯科疾患状態に基づいてサンプル母集団の分離が可能である。(図2A図2C参照)。しかし、母集団の間には一部の重複が観察されたが、これは、特定のサンプルのセットの場合、予測微生物の構成の存在量が対照群母集団又はそれぞれの歯科疾患母集団と一致すると解釈される可能性があることを意味する。
【0063】
「予測(predictive)」という言葉の使用は、「原因(causative)」として解釈されることを意図したものではなく、特定の歯科症状において対照群と比較して微生物の構成の存在量が著しく異なるという事実を単に反映していることに注意することが重要である。これは、微生物が疾患の病理において積極的な役割を果たしているか、又は微生物の構成の存在量の変化が病理の副産物であることを意味している可能性がある。どちらのシナリオでも、他の微生物と比較して特定の存在量の微生物が存在することは、口腔及び/又は歯科疾患状態と直接的な相関関係がある。
【0064】
歯周疾患に苦しんでいるネコのマイクロバイオームでは、(他の微生物の中でも特に)P.gingivalis、T.forsythia、B.Zoogleoformans、D.orale、D.fairfieldensis、及びT.denticolaの構成上の存在量が大幅に増加していることが観察された。さらに、モラクセラ(Moraxella)及びキャプノサイトファーガ(Capnocytophaga)、ならびに細菌種のパスツレラ・マルトシダ(P.multocida)の構成の存在量の大幅な減少も観察された(表1)。これらの観察は、歯周疾患に苦しんでいるネコ、ヒト、イヌの口腔マイクロバイオームに焦点を当てた研究で得られた以前の結果と全て一致する。
【0065】
[配列決定及び抽出プロトコル]
試験用のサンプルを提供するために、哺乳動物の少なくとも1つの口腔スワブが採取され得る。口腔スワブは、動物の歯肉線(上部及び下部)を標的とすることができ、及び/又は動物の口全体を標的としてもよい。哺乳動物の口腔マイクロバイオームにどの微生物種が、どの程度の相対存在量を有するかを特定するために、口腔スワブサンプルから微生物DNAが抽出され得る。
【0066】
メタゲノムDNAは、ビーズビーティング(bead-beating)又はプロテイナーゼK(proteinase K)などのタンパク質消化試薬及び界面活性剤を添加の有無にかかわらず、シェーカーで約1時間の熱処理を介して口腔サンプルから抽出され得る。いくつかの実施形態では、口腔サンプルは、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃などの約45℃~75℃、又は前述値のいずれか2つによって定義される範囲内で熱処理される。
【0067】
口腔サンプルの熱処理後、精製(purification)のために80%エタノールを使用してSPRI磁性ビーズ基盤DNA抽出(magnetic beads-based DNA extraction;MCLAB、MBC-200)によってメタゲノムDNAが抽出され得る。DNAは、GloMaxプレートリーダー(GloMax Plate Reader)(プロメガ(Promega))を使用して定量化され得る。メタゲノムDNA抽出及び定量化後、製造業者の指示に従って、LOTUS DNAライブラリ調製キット(IDT)、Next Ultra II FS DNAライブラリ調製キット(NEB)、又は他のライゲーション又はタグメンテーション基盤のDNAライブラリ調製キットを使用してNGS用の口腔サンプルを調製できる。口腔サンプルには、iTRUインデックスを使用してデュアルバーコードを付けることができる。調製された配列決定ライブラリは、GloMaxプレートリーダー(プロメガ)を使用して定量化され、96個のサンプルプールに等量プールされる。次に、プールを視覚化し(フラグメントサイズ分布を評価するために)2100バイオアナライザ装置(2100 Bioanalyzer instrument)(Agilent)を使用して定量化され得る。標準的なQCステップに従って、96個のサンプルプールがIllumina HiSeq X、又はNovaSeq 6000次世代配列決定機械(NovaSeq 6000 Next Generation Sequencing machine)にロードされ得る。
【0068】
生の配列データ(raw sequencing data)は、例えば、プログラムTrimmomatic 0.32を使用してデマルチプレクス及びトリミングされ、低品質データが除去された。次に、データは、例えば、ネコ科ゲノムFelis_catus_9.0の最新版又は関心哺乳動物種の参照ゲノム配列にマッピングされてもよい。全ての口腔サンプルに対して、関心哺乳動物ゲノムにマッピングされない配列リードが約5~7%存在する可能性がある。マッピングされていないリードは、各サンプルに存在する微生物有機体を同定するためにKRAKEN2メタゲノム配列分類器(又は適切な代案)を使用して分類されてもよい。Brackenは、メタゲノムサンプルからのDNA配列データにおける種の存在量を算出するための統計的方法であり、KRAKEN2分析と組み合わせて配列データに使用された。Brackenは、種レベルのリードカウントを出力してもよい。KRAKEN2メタゲノム配列分類器及びBracken算出の結果に基づいて、哺乳動物の口腔微生物プロファイルが生成されてもよい。生成された口腔微生物プロファイルには、存在する微生物種の同一性だけでなく相対存在量に関するデータが含まれてもよい。
【0069】
約0.1の信頼スコア(confidence score)は、KRAKEN2分類アルゴリズムのカットオフ(又は閾値)として使用され得る。分類された微生物のリードが10,000未満、又は分類された微生物のリードが500,000を超過する全てのサンプルは、フィルターで除外され得る。0でない平均が10未満の微生物種に対するリードもフィルターで除外され得る。
【0070】
[表示及び比較の方法]
ネコが歯科疾患に苦しんでいるか否かは、ネコの現在の口腔マイクロバイオームの状態と、獣医師によって歯周疾患、歯肉口内炎、又は歯牙吸収があると診断された、又は臭い息(口臭)に悩まされていると飼い主によって報告されたネコの口腔マイクロバイオームの状態との比較に基づいて判断される。この比較は、3種類の歯科症状のそれぞれを予測できる分析によって決定された微生物の構成の存在量に基づいている。
【0071】
口腔マイクロバイオームに存在する様々な微生物の構成の存在量に対するコンピュータ分析には、異なる歯科症状に苦しんでいることが分かった同じ種の哺乳動物だけでなく、既知の歯科症状に患っていない同じ種の哺乳動物のサンプルのデータベースに対するサンプルの比較を含む。即ち、コンピュータ分析は、口腔スワブサンプルから特定された口腔マイクロバイオームを参照データベースに含まれる定義された微生物プロファイルと比較する(上記にて詳細に説明された)。
【0072】
いくつかの実施形態では、哺乳動物における口腔疾患を表示する方法は、哺乳動物から採取された口腔スワブサンプルを受け取るステップと、口腔サンプルに対して熱処理を行うステップと、口腔スワブサンプルに存在する微生物DNAを抽出するために熱処理された口腔サンプルに対して磁性ビーズ基盤デオキシリボ核酸(DNA)抽出を行うステップとを含む。この方法はまた、口腔サンプルにどの特定の1つ以上の微生物がどのような割合で存在するかを同定するために微生物DNAを配列決定するステップであって、特定の1つ以上の微生物及びこれらの存在量を特定するステップが哺乳動物の口腔微生物プロファイルを生成するステップと、定義された微生物プロファイルのデータベースと哺乳動物の口腔微生物プロファイルを比較するステップとを含み、データベースは、(i)1つ以上の微生物を含むプロファイルと(ii)対応する口腔疾患との間の相関関係を特定する。
【0073】
口腔微生物プロファイルを既定の微生物プロファイルのデータベースと比較した結果に基づいて、この方法は、哺乳動物が特定の口腔疾患を患っている可能性を示すリスク点数を生成するステップをさらに含み得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、哺乳動物における口腔疾患を表示する方法は、哺乳動物から採取された口腔スワブサンプルを受け取るステップと、口腔サンプルに対して熱処理を行うステップと、口腔スワブサンプルに存在する微生物DNAを抽出するために熱処理された口腔サンプルに対して磁性ビーズ基盤デオキシリボ核酸(DNA)抽出を行うステップとを含む。この方法はまた、口腔サンプルにどの特定の1つ以上の微生物が存在するかを同定するために微生物DNAを配列決定するステップを含んでもよく、特定の1つ以上の微生物及びそれらの存在量を特定するステップは、哺乳動物の口腔微生物プロファイルの生成が可能になる。
【0075】
この方法は、定義された微生物プロファイルのデータベースと哺乳動物の口腔微生物プロファイルを比較するステップであって、データベースは、(i)1つ以上の微生物(及びこれらの構成の存在量)を含むプロファイルと(ii)対応する口腔疾患との間の相関関係を特定するステップと、口腔微生物プロファイルを定義された微生物プロファイルのデータベースと比較した結果に基づいて哺乳動物が特定の口腔疾患を患っている可能性を示すリスク点数を生成するステップと、リスク点数の生成及び特定の口腔疾患の特定に応じて、特定の口腔疾患を治療するために設計された治療法を施すステップと、をさらに含んでもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、治療法は、哺乳動物の口腔マイクロバイオームに存在する特定の1つ以上の微生物種の成長を抑制又は促進するように設計された化合物などの治療用化合物を投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、治療用化合物は、プレバイオティクス、ポストバイオティクス、プロバイオティクス、薬剤、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、治療法は、局所治療による哺乳動物の歯のブラッシングを含んでもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、治療プロトコルは、哺乳動物の口腔マイクロバイオームの構成を変更するように設計される。いくつかの実施形態では、哺乳動物の口腔マイクロバイオームの構成を変更することにより、特定の口腔疾患を治療及び/又は解決される。いくつかの実施形態では、治療法は、哺乳動物の口腔マイクロバイオームを修復する。いくつかの実施形態では、哺乳動物の口腔マイクロバイオームを修復することにより、存在する特定の1つ以上の微生物種及びそれらの相対存在量の両方の面で、哺乳動物の口腔マイクロバイオームを健康な哺乳動物の口腔マイクロバイオーム(又は定義された口腔微生物プロファイル)とさらに一致するようにする。いくつかの実施形態では、治療プロトコルは、哺乳動物の口腔マイクロバイオームの構成を保持するように設計される。いくつかの実施形態では、治療プロトコルは、哺乳動物の口腔マイクロバイオームの代謝出力を刺激するように設計される。哺乳動物の口腔マイクロバイオームの代謝出力を刺激するには、既知の酵素経路分析ツールを使用して既存の微生物構成データに追加の次元を提供して、疾患の特徴をさらに特徴付けて、疾患の予測モデルを向上させることを含んでもよい。
【実施例
【0078】
以下の例は、ネコ/ネコ科動物のデータを使用して実行されたが、概要を説明した方法は、他の哺乳動物のデータ(例えば、イヌ又は他の哺乳動物)に関連しても正確かつ適切であることが予想される点を理解しなければならない。
【0079】
[データベースの検証的試験]
歯周疾患で特定の微生物種の過剰又は過少を評価するために、Brackenの出力データに有心対数比(Centered Log-Ratio;CLR)変換を施した。これは、マイクロバイオームデータ分析において確立された問題である潜在的な構成上の偏向を説明するために実行された。次に、CLR変換されたデータに対してz検定を実行し、対照群と比較して歯周疾患の構成の存在量が統計的に大幅に増加及び減少している微生物種を同定した。表1は、対照群と比較して歯周疾患集団における上方制御及び下方制御された微生物の存在量を示す。この結果は、ヒト、イヌ、ネコの歯周疾患に対する口腔マイクロバイオーム研究で得られた以前の発見を拡張し、これと一致している。これらの結果は、サンプル採取、DNA抽出、メタゲノム配列及び構成の存在量に基づく分析方法を検証する。このような結果は、口臭、歯肉口内炎、及び歯牙吸収などの他の疾患状態において、上方制御及び下方制御された存在量を有する微生物の同様の同定も可能にする。
【0080】
計算による口腔疾患分類アルゴリズムの構築を開始するために、Bracken出力の種レベルのリードカウントに対して、ペアごとの対数比率(PLR)変換を行った。次に、z検定を実行することにより、対照群と病状との間の有意なPLR比較(閾値p値<0.01)が特定された。健康な集団をPD、TR、及びFG集団と比較した。典型的な呼吸(TB)集団をBB集団と比較した。
【0081】
全ての有意なPLRにおける各微生物種の頻度が評価された。他の種との最大可能比較の50%以上が有意である微生物種のみが保持された。この測定値は、3種類の関心歯科症状における様々な微生物種の重要性に対するプロキシとして使用された。これらの微生物種は、それぞれの歯科症状に対する「予測微生物種」である。
【0082】
歯周疾患、歯牙吸収、ネコの歯肉口内炎又は口臭の特徴である母集団全体の(population-wide)微生物構成の存在量パターンを特定するために、それぞれの状態に対して、差の方向と大きさを考慮して、サンプルの予測ペアごとの対数比率(pPLR)を対照群の平均pPLRと比較して各サンプルの点数が決められた。図2A図2Cは、歯周疾患集団と健康な集団、歯牙吸収(TR)集団と健康な集団、口臭(BB)集団と典型的な呼吸(TB)集団に関連するペアごとの微生物相互作用の間の平均対数比率差点数の分布を示す。図10Aは、ネコの歯肉口内炎(FG)集団と健康な集団との間の関連するペアごとの微生物相互作用の平均対数比率差点数の分布を示す。
【0083】
次に、ペアごとの微生物相互作用の間の平均対数比率差点数の分布に健康な集団(又はTB集団)及び歯科症状の各々2つの構成要素を含む4つのガウス混合モデル(それぞれの歯科症状に対して1つずつ)を適用した。このモデリング手法では、各サンプルに対して0から1の点数を生成し、これは、サンプルが対照集団又はそれぞれの歯科症状の集団に属する確率を示す。図3A図3Cは、歯科疾患集団のうちの3つ(歯周疾患、歯牙吸収、及び口臭)に属するサンプルと対照群サンプルが各サンプルの予測微生物の構成の存在量に基づいてそれらのそれぞれの集団に属するものとして分類される確率を示す。図10Bは、ネコの歯肉口内炎と対照群サンプルが各サンプルの予測微生物の構成の存在量に基づいてネコの歯肉口内炎カテゴリー又は対照群カテゴリーに属するものとして分類される確率を示す。全ての場合において、歯科症状と対照群との間でサンプルの同一性と一致する二峰性の確率分布が観察され、歯周疾患及び口臭に対する最も明確な二峰性パターンと歯牙吸収及びネコの歯肉口内炎に対する弱い二峰性パターンが見られた。4つの例の全てにおいて、少数の疾患サンプルが0に近い小さなピークを形成し、少数の対照群サンプルのセットが1に近いわずかなピークを形成した。
【0084】
歯科疾患集団の少数のネコが(ペットの飼い主が提供した古い、誤った、又は不完全な健康情報のために)実際に健康であったり、寛解している可能性があり、対照集団のネコの中には、まだ診断もされていない歯の病気に苦しんでいるネコがいる可能性があることを示唆している。それぞれの歯の病気に対するリスク分類方法の敏感度(歯科症状に苦しんでいることが分かっているネコを検出する能力)、及び特異性(対照集団で歯科症状に患っていないネコを検出する能力)が試験された(図3D及び図10B参照)。この方法の敏感度は、口臭と歯肉口内炎に対して最も高く、歯牙吸収に対して最も低くなり、特異性は、歯牙吸収に対して最も高く、口臭に対して最も低くなる。
【0085】
歯牙吸収に対する敏感度が比較的低いのは、この症状の背後にある病理の特性によるものと考えられる。これは、歯の内部で発生する傾向があり、さらに進行したステージに入ると、歯の表面に到達する。歯牙吸収に関連する微生物は、吸収プロセスが歯の表面に到達したときに最も確実に検出され得る。
【0086】
歯周疾患と口臭の特異性は、歯牙吸収に関連するマイクロバイオームの変化の検出の特異性(78%)に比べて低くなる(それぞれ70%及び62%)。この観察は、健康な集団とTB集団には、それぞれまだ獣医師が診断しないか、ペットの飼い主が発見できていない歯周疾患や口臭に苦しんでいる一部のネコが含まれる可能性として説明することができる。しかし、これらの注意点を念頭に置いたとしても、4種類の症状の全てに対して開示された方法の特異性と敏感度は、以前に報告されたヒトマイクロバイオーム基盤の疾患リスク評価アルゴリズムと同等(又はそれ以上)である。
【0087】
参照データベースを開発するために有意な数の飼いネコ集団(n=6,110)が使用されたが、これらのネコの健康履歴データは、ペットの飼い主によって提供された。ペットの飼い主は、自分のネコが獣医師によって歯周疾患、歯肉口内炎、又は歯牙吸収と診断されているかどうかを尋ねられたものの、ペットの飼い主から伝えられたため、疑う余地もなく診断精度の一部が損なわれた可能性がある。この問題を軽減し、ペットの飼い主によって健康であると報告された(即ち、既知の全身疾患又は歯科症状に苦しんでいない)ネコが、実際にはまだ診断されていない歯科疾患を発症し始めている事例を制限するために、1~3歳の対照群の健康なネコに対して年齢制限が設定された。この制限は、年齢と歯科疾患との間の関連性が確立されているために設定された。1歳未満のネコは、潜在的な子ネコ特有の口腔マイクロバイオームの偏りを避ける目的で意図的にこの群から除外された。
【0088】
健康な対照集団は、潜在的に幼いネコの口腔マイクロバイオームに偏よっている可能性があり、歯科又は全身性疾患のない高齢のネコを代表していない可能性がある。BB集団及びTB集団のネコに口臭があるか否かの評価は、ペットの飼い主の主観的な評価に基づいているため、潜在的に他の偏向の原因がさらに加わった可能性がある。
【0089】
[研究1]
この研究は、観察的な性質のものであり、いかなる侵襲的処置も用いなかった。この研究で使用された全てのネコ口腔スワブサンプルとそれに付随する健康履歴情報は、研究の目的で集計された匿名化された形式で使用されるネコのデータに電子形式で同意したペットの飼い主によって自発的に提供されたものである。ネコの歯科健康に焦点を当てた研究への参加を募る電子メールを通じて募集された。
【0090】
研究1には12匹のネコが参加した。ネコの参加者のペットの飼い主は、DNAGenotekのPERFORMAgene(PG-100)口腔スワブ採取装置2台を受け取り、それぞれのスワブを使用してネコを1回ずつスワブで拭くように指示を受けた。最初のスワブは、口全体からサンプルを採取するために利用され、2番目のスワブは、歯肉線を具体的に標的とした。参加者はまた、一度に2つのサンプルを採取するように要求された。
【0091】
ネコ口腔スワブサンプルの大部分は、ペットの飼い主によってそれぞれの自宅で採取され、サンプル採取の一部は、獣医師によって実行された。ペットの飼い主と獣医師は、ネコが何かを食べたり飲んだ後、少なくとも30分から1時間後にサンプルを採取するように指示を受けた。また、口腔スワブサンプル採取装置を少なくとも5の間ネコの口の中に入れておくように指示された。
【0092】
メタゲノムDNA(Metagenomic DNA)は、シェーカーで1時間の熱処理(55℃)によってネコの口腔サンプルから抽出され、その後80%エタノールを使用してSPRI磁性ビーズ基盤DNA抽出(MCLAB、MBC-200)によって精製された。GloMaxプレートリーダー(プロメガ)を使用してDNAを定量化した。メタゲノムDNA抽出及び定量化後、製造業者の指示に従って、LOTUS DNAライブラリ調製キット(IDT)を使用してNGS用の各サンプルが調製された。各サンプルは、iTRUインデックスを使用してデュアルバーコードが付けられた。調製された配列決定ライブラリは、GloMaxプレートリーダー(プロメガ)を使用して定量化され、等量プールした。次に、プールを視覚化し(フラグメントサイズ分布を評価するために)2100バイオアナライザ装置(Agilent)を使用して定量化された。
【0093】
標準的なQCステップに従って、サンプルプールをIllumina HiSeq X、又はNovaSeq 6000次世代配列決定機械にロードした。生の配列データは、プログラムTrimmomatic 0.32を使用してデマルチプレクス及びトリミングされ、低品質データが除去された。次に、データは、最新版のネコ科ゲノムFelis_catus_9.0にマッピングされた。全てのサンプルに対して、ネコ科ゲノムにマッピングされていない配列リードが5~7%あった。マッピングされていないリードは、KRAKEN2メタゲノム配列分類器を使用して分類され、各サンプルに存在する微生物有機体を同定した。0.1の信頼スコアがKRAKEN2分類アルゴリズムのカットオフとして利用された。サンプル採取時に抗生物質治療(antibiotic treatment)を受けていたネコからのあるサンプルでは、分類された微生物のリードが10,000未満であったため、分析から除外された。Brackenは、メタゲノムサンプルからのDNA配列データにおける種の存在量を算出するための統計的方法であり、配列データに使用された。
【0094】
それぞれのネコの歯牙吸収、歯周疾患、又は口臭発生のリスクは、口腔マイクロバイオームで観察された予測微生物PLRのパターンに基づいて算出された。簡単に説明すると、各サンプルのBracken出力微生物存在量データをPLRに変換し、予測微生物に関連するPLRを健康な基準集団の平均予測微生物PLRと比較した。この比較により、関心サンプルのそれぞれの予測微生物PLRの健康な集団平均からの偏差点数のリストが得られた。この偏差のリストは、サンプルが基準疾患集団と同様に健康な集団からの類似の偏差プロファイルを示すか否かを評価する目的で健康な対照集団の関心疾患集団(例えば、歯牙吸収、歯周疾患、又は口臭)に対する予測微生物PLRの平均偏差のリストと比較された。
【0095】
このような類似性の評価では、それぞれの予測微生物PLRの偏差の方向性が考慮され、即ち健康な集団と比較して疾患集団におけるそれぞれのPLR偏差の反対方向にある「極度の(punishing)」偏差が考慮される。言い換えれば、PLR偏差が反対方向にある場合、これはサンプルを健康なプロファイルにさらに近づけるものと仮定される。全てのサンプルPLR偏差点数を合計した後、最終偏差点数は、関心疾患と健康に対する2成分ガウスモデルの確率空間に適合するように変換された。従って、各サンプルは、それぞれの歯科症状に対して0から1の間の確率点数を有する。各サンプルに対して生成された確率点数に基づいて次の3種類のリスク評価カテゴリーが適用された。0.0~0.33のブラケット(bracket)は、歯科症状を有する「低リスク」として分類される。>0.33~0.66は、歯科症状を有する「中程度のリスク」として分類される。>0.66~1.0は、歯科症状を有する「高リスク」として分類される。
【0096】
図5Aは、特に口全体又は歯肉線を標的としたサンプル採取方法に基づいて11匹のネコの口腔マイクロバイオームプロファイルを比較した研究1の結果を示す。デンドログラム(dendrogram)は、口腔マイクロバイオームプロファイルのスピアマン(Spearman)の順位相関関係に基づくサンプルのクラスタリング(sample clustering)を示す。表は、スワブの症状に基づいた歯周疾患、歯牙吸収、及び口臭に対するそれぞれの参加したネコのリスク評価を示す。緑色は低リスク、明るいオレンジ色は中程度のリスク、濃いオレンジ色は高リスクを示す。分類された微生物のリード数が10,000未満であったため、Cat#7の「口全体」サンプルを分析から除外した。
【0097】
[研究2]
この研究は、観察的な性質のものであり、いかなる侵襲的処置も用いなかった。この研究で使用された全てのネコ口腔スワブサンプルとそれに付随する健康履歴情報は、研究の目的で集計された匿名化された形式で使用されるネコのデータに電子形式で同意したペットの飼い主によって自発的に提供されたものである。ネコの歯科健康に焦点を当てた研究への参加を募る電子メールを通じて募集された。
【0098】
11匹のネコがこの研究に参加した。参加者は、3つのDNAGenotekのPERFORMAgene(PG-100)口腔スワブ採取装置を受け取り、全体口腔を対象として3回の口腔スワブ採取を行うように指示を受け、3回のスワブ採取は全て1度に実行された。
【0099】
ネコ口腔スワブサンプルの大部分は、ペットの飼い主によってそれぞれの自宅で採取され、サンプル採取の一部は、獣医師によって実行された。ペットの飼い主と獣医師は、ネコが何かを食べたり飲んだ後、少なくとも30分から1時間後にサンプルを採取するように指示を受けた。また、口腔スワブサンプル採取装置を少なくとも5の間ネコの口の中に入れておくように指示された。
【0100】
ネコ口腔スワブサンプルは、上記の研究1で概説したものと同一の抽出、配列決定、及び分析プロトコルが適用された。
図5Bは、歯肉線にだけ焦点を当てるのではなく、口全体を対象とした3つの別々のサンプル採取に基づいて11匹のネコ口腔マイクロバイオームプロファイルを比較した研究2の結果を示す。デンドログラムは、口腔マイクロバイオームプロファイルのスピアマンの順位相関関係に基づくサンプルのクラスタリングを示す。表は、それぞれの繰り返し(replicate)に基づいて歯周疾患、歯牙吸収、及び口臭に対するそれぞれの参加したネコのリスク評価を示す。一部の飼い主は、要求された3つのサンプルではなく2つのサンプルのみ提供した。分類された微生物のリード数が10,000未満であったため、一部のサンプルは除外された。
【0101】
[研究3]
ペットの飼い主から書面による同意を得た後、様々な程度の歯周疾患及び歯牙吸収に苦しんでいるネコ科動物(ネコ)からの36個のネコ口腔スワブサンプルは、ネコ専用動物病院で資格を備える獣医師によって、DNAGenotek PERFORMAGENE P-100採取装置を使用して歯肉線(歯肉)を対象としたサンプル採取方法で採取された。この試験に参加したそれぞれのネコには、サンプル採取から1週間以内に実行された獣医記録(veterinary record)と歯科用X線写真(dental radiograph)を添付した。
【0102】
獣医歯科医師(boarded veterinary dentist)が診断を確認するために、各サンプルに対する歯科X線写真を盲目的に(blindly)評価した。ネコは、軽度/中等度の歯肉炎があって歯槽骨喪失(alveolar bone loss)の証拠となるX線像がないネコ(n=10)、歯周疾患があって骨喪失の証拠となるX線像があるネコ(n=11)、及び歯牙吸収の証拠となるX線像があり、ステージ2~4、一つ以上の歯に影響を及ぼすネコ(n=15)の3つのグループにカテゴリー分類された。このサンプルからDNAが抽出され、その後、ショットガンメタゲノム配列決定が実行され、前述のコンピュータによる歯科疾患リスク評価方法及び/又はコンピュータシステムを利用してデータが分析された。これらの臨床的に募集されたネコの集団に対するアルゴリズム生成歯科疾患リスク評価は、獣医師によって歯科疾患があると診断されておらず、新規又はネコの息(健康な市民科学基盤の集団)が典型的な歯科疾患を患っていると飼い主から報告された無作為に選択されたネコの集団のリスク評価と比較された。すべての集団の基本的なデモグラフィック統計(basic demographic statistics)を表3に示す。
【0103】
生成された歯周疾患リスク評価は、健康な対照集団と比較して、歯肉炎(骨喪失の証拠なし)及び骨喪失の証拠がある歯周疾患集団の方が有意に高かった(各々p<0.01及びp<0.0001)。図7は、歯肉炎(骨喪失なし)、歯周疾患及び骨喪失に苦しんでいるネコで構成された臨床的に募集された集団と市民科学で募集された健康な対照群の口腔マイクロバイオーム基盤の歯周疾患リスク評価を示す。水平線は、それぞれの集団の平均リスク点数を示し(リスク点数範囲は0~1で、値が高いほど疾患のリスクが高いことを示す)、エラーバー(error bar)は、平均値の標準誤差(SEM)を示す。それぞれの比較に対して不等分散(unequal variance)を仮定する両側(2-tailed)t検定が使用された。*p<0.01、***<0.0001。
【0104】
アルゴリズムによって生成された臭い息(口臭)リスク評価は、骨喪失の証拠がある歯周疾患集団と比較して歯肉炎(骨喪失の証拠なし)集団で有意に高かった(p<0.05)。口臭リスク評価も、健康な対照集団と比較して骨喪失の証拠がある歯周疾患集団で有意に高かった(p<0.01)。口臭は、歯肉炎と歯周疾患の後期ステージの特徴(hallmark)として知られている。図8は、歯肉炎(骨喪失なし)、歯周疾患及び骨喪失に苦しんでいるネコの臨床的に募集された集団と市民科学で募集された健康な対照群の口腔マイクロバイオーム基盤の臭い息(口臭)リスク評価を示す。水平線は、それぞれの集団の平均リスク点数を示し(リスク点数範囲は0~1で、値が高いほど疾患のリスクが高いことを示す)、エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を示す。それぞれの比較に対して不等分散を仮定する両側t検定が使用された。*p<0.05。
【0105】
図9Aは、歯牙吸収に苦しんでいるネコで構成された臨床的に募集された集団と市民科学で募集された健康な対照群の口腔マイクロバイオーム基盤の歯牙吸収リスク評価を示す。図9Bは、歯牙吸収に苦しんでいるネコで構成された臨床的に募集された集団における歯牙吸収のステージ情報を統合して市民科学で募集された健康な対照群の口腔マイクロバイオーム基盤の歯牙吸収リスク評価を示す。健康な対照集団とステージ4の歯牙吸収集団に対して生成された平均リスク点数の間には、有意な差があった。
【0106】
[議論]
開示された方法及びシステムの特異性と敏感度は、潜在的にサンプル採取方法によって影響を受ける。現在のリスク予測モデルは、ペットの飼い主が提供した口腔スワブサンプルに基づいており、特定の関心領域には焦点を当てず、口全体がサンプル採取の対象となっている。反復研究が示しているように、「口全体」スワブサンプルに基づくリスク評価は、時に変動性(variability)を示す場合がある(具体的な例は、研究2のCatV及びCatIXのサンプルである)。これはおそらく、ペットの飼い主が「口全体」スワブサンプルを採取するように指示された場合、毎回異なる口の領域で優先的にスワブを採取するという事実によるものである。スワブを採取する最も容易な領域は舌であるため、一部の「口全体」サンプル採取の試みでは、歯肉線に比べて歯科疾患に関連する微生物の存在がより変化しやすい舌領域に焦点を当てている可能性がある。興味深いことに、研究1で「口全体」と「歯肉線」を対象とした口腔スワブ採取の間に不一致があった場合、「歯肉線」のリスク点数は常に「口全体」のリスク点数よりも高かった(Cat#4、Cat#5、Cat#8、Cat#10)。これは、歯肉線を標的としたサンプル採取が歯科疾患に関連するマイクロバイオームの状態をより正確に示す可能性が高いという仮設を裏付けている。
【0107】
このため、研究3では、歯周疾患及び歯牙吸収に苦しんでいるネコから歯肉線を標的としてサンプルを採取するように獣医師に指示された。開示された方法は、歯周疾患の初期ステージ(即ち、歯槽骨喪失の証拠がない歯肉炎)のネコと、より進行した歯周疾患(歯槽骨喪失の証拠がある)のネコを市民科学募集された健康な集団のネコよりも歯周疾患のリスクが著しく高いことを特定することができた。さらに、開示された方法は、歯周疾患及び歯槽骨喪失の証拠があるネコが、健康な対照群と比較して口臭のリスクが著しく高いことを特定した。同様に、歯周疾患の初期ステージ(即ち、歯槽骨喪失の証拠がない歯肉炎)のネコは、対照群と比較して口臭のリスクが著しく高いことが分かった。口臭は、歯周疾患の前兆であることが一般的に知られている。これらの結果は、歯周疾患の初期及び後期の両方のステージにおけるネコのスクリーニングツールとして、開示された方法及びシステムの有用性及び精度を立証している。
【0108】
研究3では、歯牙吸収のステージが考慮されていない限り、歯牙吸収の証拠となるX線像があるネコと健康な市民科学で募集された集団との間の歯牙吸収リスクに有意な差があることを立証できなかった。開示された方法は、ステージ4の歯牙吸収を有するネコが、健康な対照群と比較して疾患のリスクが著しく高いことを特定した。以前に仮定したように、開示された方法は、吸水性病変(resorptive lesion)が歯の表面に到達し、歯の完全性(integrity)がすでに損なわれている場合(ステップ4)に最も高い敏感度を示した。歯牙吸収のステージ1とステージ2は、歯髄腔にまで及ばない軽度又は中等度の歯の硬組織の損失を特徴とする。ステージ3で、象牙質の損失(dentin loss)は歯髄腔にまで及ぶが、歯の大部分は依然として完全性を保っている。一方、ステージ5は、歯の硬組織の残物(remnant)と、患部上を歯肉の被覆の再構築(re-establishing)が特徴とされる。研究3の結果は、口腔マイクロバイオームが、疾患のステージ4(及びステージ5につながる)における歯牙吸収の結果として最も大きく変化することを示す。
【0109】
胃腸管(口から肛門まで)などの臓器及び器官係に生息する微生物(及び相対存在量)の定着動態と影響は、イヌ(イヌ科動物)、ネコ(ネコ科動物)、及びヒトの間に多くの類似点を示していることはすでに知られている。歯周疾患は、口腔内の微生物のバランスの崩れに関連する病気であり、ネコ、イヌ、ヒトの間に広く蔓延しており、いくつかの注目すべき共通点がある。例えば、ポルフィロモナス属とトレポネーマ属の細菌は、ネコ、イヌ、及びヒトの歯周疾患の発症に重要な役割をする。
【0110】
開示されたシステム及び方法は、ネコ又はイヌの口腔スワブサンプルからゲノム物質を抽出するために以前に良好に使用されてきた口腔スワブ採取装置を使用する。また、口腔スワブ採取装置の製造業者によれば、使用される同一のスワブ採取装置は、研究者、飼育者など、試験室及び消費者が家畜(ウシ科、ヒツジ科、ヤギ科)、伴侶動物(イヌ科、ネコ科、ウマ科)及びその他の種に使用するのに最適である。口腔スワブ採取装置は、さまざまな哺乳動物種における使用をサポートする。このようなサンプル採取装置で宿主と微生物DNAを全て抽出することが可能であることが確立されている。論理的には、ネコ科のサンプルに対するこの抽出の能力は、イヌ科とその他の哺乳動物サンプルにも拡張されることになる。
【0111】
開示されたシステム及び方法は、ネコの歯科疾患のスクリーニングを目的とした、ネコの口腔マイクロバイオームサンプルにおける微生物種の同一性及び存在量の分析を立証する。イヌ及びその他の哺乳動物には口腔と口腔マイクロバイオームがあり、多くの場合、同じ歯科疾患病態(例えば、歯周疾患)にかかりやすいという点を考慮すると、我々の方法はイヌ及びその他の哺乳動物にも容易に適用できるはずである。これは、それぞれの種に対するモデルがそれぞれの種に対するそれぞれの状態の微生物の同一性及び存在量の正確な傾向を導き出すために、疾患と健康な動物集団との間の比較に基づいているためである。
【0112】
開示されたシステム及び方法が歯周疾患のような疾患状態の検出、特定、及び表示を可能にする程度は、特に歯牙吸収、ネコの歯肉口内炎及び口臭などの他の疾患状態の検出、特定、及び表示を可能にする。同様に、開示されたシステム及び方法がネコ科の動物における疾患状態の検出、特定、及び表示を可能にする程度は、イヌ(及び他のイヌ科)、ウマ(及び他のウマ科)、ヒツジ(及び他のヒツジ科)、ウシ(及び他のウシ科及び/又は反芻動物)、ブタ(及び他のブタ科の動物)、モルモット、ハムスターなどのような他の哺乳動物の疾患状態を検出、特定、及び表示を可能にする。
【0113】
本明細書に開示されたリスク点数生成方法は、口腔マイクロバイオームの構成上の分析に基づく。開示された方法の他の実施形態はまた、歯科症状のリスクを予測する目的で、口腔マイクロバイオームの構成の存在量分析と組み合わせて口腔マイクロバイオーム(酵素経路分析ツール又はメタボロミクス(metabolomics)によって生成される)の代謝出力の予測を統合することを含み得る。
【0114】
[追加の用語と定義]
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が関係する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0115】
システム、方法及び/又は製品を含む本開示の様々な「態様」は、本質的に例示的な1つ以上の「実施形態」を参照して説明され得る。本明細書で使用される場合、「態様」及び「実施形態」という用語は、互換的に使用され得る。「実施形態」という用語は、「例、実例、又は例証として提供される」ことを意味することができ、必ずしも本明細書に開示される他の態様よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。さらに、本開示又は発明の「実施形態」への言及は、添付の特許請求の範囲によって示される本発明の範囲を制限することなく、例示的な例を提供することを意図している。
【0116】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つ(a,an)」及び「前記(the)」は、文脈上明らかに別の指示がない限り、単数及び複数の指示対象の両方を意図し、含み、具体的に開示する。例えば、「タンパク質」への言及は、1つ及び複数(例えば、2つ以上、3つ以上など)のタンパク質を意図し、具体的に開示する。同様に、複数の指示対象の使用は、必ずしも複数のそのような指示対象を必要とするわけではないが、文脈により明確に別の指示がない限り、単一の指示対象だけでなく複数のそのような支持対象を意図し、含み、具体的に開示及び/又は提供するものである。
【0117】
本開示を通じて使用される「できる(canN)」及び「し得る(may)」という言葉は、必須的な意味(即ち、しなければならないという意味)ではなく、許容的な意味(即ち、可能性があるという意味)で使用される。さらに、「含む(including)」、「有する(having)」、「関連する(involving)」、「含有する(containing)」、「特徴を有する(characterized by)」、その変形(例えば、「含む(includes)」、「有する(has)」及び「含む(involves)」、「含む(contains)」など)、及び特許請求の範囲を含む本明細書で使用される類似の用語は、包括的及び/又は制限のないものとし、「含む(comprising)」という単語及びその変形(例えば、「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」)と同じ意味を有するものとし、例示として、追加の言及されていない要素又は方法のステップを排除するものではない。
【0118】
「症状(condition)」という用語は、当業者によって理解されるように、患者に現れる、又は予想される任意の障害、疾患、傷害、又は疾患を意味する。このような症状の発現は、当技術分野で知られているように、以前の症状の症候、発現、又は指標を含む、初期、中間、又は後期のステージの発現であり得る。そのような状態に対する予想は、科学的又は医学的証拠、リスク評価、又は単なる不安や恐怖に基づいて、予測、予想、想像、推定、想定、及び/又は推測された発生率を含み得る。
【0119】
本明細書で使用される「患者」という用語は、「被験者(subject)」という用語と同義語であり、一般に、本明細書で定義されるように、医療専門家のケア下にある任意の動物を指し、特に(i)(医師、看護師、医療補助者、又はボランティアのケアを受ける)ヒト、及び(ii)(獣医師又はその他の獣医専門家、補助者、又はボランティアのケアを受ける)非ヒト哺乳動物などの非ヒト動物の全ての動物を意味する。
【0120】
「哺乳動物」には、ヒトと、試験動物及び家庭用ペット(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ)などの家畜及び野生動物などの非家畜動物の両方が含まれる。
【0121】
本明細書で使用される「処置」又は「治療」は、関心疾患又は症状を有する哺乳動物、好ましくはネコ又はイヌにおける関心疾患又は症状の治療を包括し、(i)特に哺乳動物が実際に疾患を発症し始めているが、まだ疾患があると診断されていない場合に哺乳動物の疾患又は症状が発生するのを予防すること、(ii)疾患又は症状を抑制すること、つまり発症を阻止すること、(iii)疾患又は症状の軽減、つまり疾患又は症状を退行させる、又は(iv)疾患又は症状に起因する症状を軽減、つまり根本的な疾患又は症状に対処することなく痛みを軽減することを含む。本明細書で使用される「疾患」及び「症状」という用語は、特定の疾患又は症状が既知の原因物質をもたない可能性があるという点で異なる場合もあり(そのため、病因はまだ解明されていない)、従って、まだ疾患と認識されておらず、好ましくない症状又は症候群としてのみ認識されており、多かれ少なかれ特定の一連の症状が臨床医によって特定されている。
【0122】
簡潔にするために、本開示では数値のリスト又は範囲を列挙する場合がある。しかしながら、そのような数値のリスト又は範囲(例えば、超過、未満、最大、少なくとも、及び/又は概略、及び/又は列挙された2つの値の間)が開示される場合には、開示された値又は値のリスト又は範囲内に含まれる任意の特定の値又は値の範囲も同様に、本明細書に具体的に開示され、企図される。
【0123】
理解を容易にするために、可能な場合には、本開示の他の実施形態に共通する同様の要素を示すために、同様の参照(即ち、構成要素及び/又は要素の同様の命名)が使用された。同様に、同様の構成要素又は同様の機能を有する構成要素には、可能な場合には、同様の参照符号が設けられる。本明細書では、例示的な実施形態を説明するために特定の用語が使用される。しかしながら、それによって本開示の範囲を制限することは意図されないことは理解されよう。むしろ、例示的な実施形態を説明するために使用される用語は、例示のみを目的としており、(そのような用語が本明細書で必須であると明示的に記載されている場合を除き)本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0124】
詳細な説明は、複数のセクションに分かれているが、各セクション内のセクションヘッダ及び内容は、構成のみを目的としており、自己完結型の説明及び実施形態であること、又は説明又は特許請求の範囲を制限することを意図したものではない。むしろ、詳細な説明内の各セクションの内容は、あるセクションの要素が他のセクションに関連するり情報を提供できる集合的な全体として読み理解されるように意図された。従って、あるセクション内に具体的に開示された実施形態は、同じ及び/又は類似の製品、方法、及び/又は用語を有する他のセクションの追加及び/又は代替の実施形態に関連し、及び/又はその役割を果たすこともできる。
【0125】
本開示の特定の実施形態を、特定の構成、パラメータ、構成要素、要素などを参照して詳細に説明したが、このような説明は例示的なものであり、請求される発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0126】
さらに、記載された実施形態の構成要素の任意の所与の要素に対し、その要素又は構成要素に対して列挙された任意の可能な代案は、一般に、特に暗黙的に又は明示的に言及されない限り、個別的に又は互いに組み合わせて使用され得ることを理解されたい。
【0127】
また、特に明示しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される数量、成分、距離、又はその他の測定値を表す数値は、用語「約」又はその同義語によって任意に修飾されたものとして理解されるべきである。「約」、「概略」、「実質的に」などの用語が、記載された量、値、又は症状と組み合わせて使用される場合、それは、明示すように、値又は症状の20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満又は0.01%未満だけ逸脱する量、値、又は症状を意味すると解釈され得る。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定するものではなく、それぞれの数値パラメータは、報告された有効桁数を考慮し、一般的な四捨五入の技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0128】
本明細書で使用される全ての見出し及び小見出しは、構成のみを目的としており、説明又は特許請求の範囲を制限するために使用されることを意図したものではない。
また、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用さる場合、単数形「1つ(a,an)」及び「前記(the)」は、文脈上明らかに別の指示がない限り、複数の指示対象を排除するものではないことにも留意されたい。従って、例えば、単一指示対象(例えば、「ウィジェット」)を参照する実施形態は、2つ以上のそのような指示対象を含むこともできる。
【0129】
また、本明細書で説明された実施形態は、1つ以上の個々の実施形態に記載される特性及び/又は特徴(例えば、成分、構成要素、部材、要素、部品、及び/又は部分)を含んでもよく、その特定の実施形態に対して明示的に説明された特徴に必ずしも厳密に限定されないことも理解されよう。従って、所与の実施形態の様々な特徴は、本開示の他の実施形態と結合及び/又は組み合わせてもよい。従って、本開示の特定の実施形態に関する特定の特徴の開示は、特徴の適用又は包含を特定の実施形態に限定する者として解釈されるべきではない。むしろ、他の実施形態もそのような特徴を含むことができることが理解されるであろう。
【0130】
[表]
表1.対照群と比較して歯周疾患の構成の存在量が有意な増加又は減少を示す、選択された微生物種(p<0.05)。健康な対照群と比較したときの各微生物種の存在量の増加又は減少の平均パーセンテージ(中心対数比変換を使用して算出)が表示される。科学文献に歯周疾患において誤って調節されたと記載された微生物種は太字で示されている。
【0131】
【表1-1】
【0132】
【表1-2】
【0133】
【表1-3】
【0134】
【表1-4】
【0135】
【表1-5】
【0136】
表2.健康/対照腔マイクロバイオームと3種類の歯科症状のうち1つに苦しんでいるネコの微生物存在量の間のペアごとの対数比率微生物の存在量の比較に基づいて、歯周疾患、歯牙吸収、及び口臭に対する予測微生物。予測微生物の同定は動的であり、参照データベースと集団が発展するにつれて発展し得る。「1」はその微生物が特定の歯科症状を予測すると考えられることを示し、「0」はそうでないことを示す。
【0137】
【表2-1】
【0138】
【表2-2】
【0139】
【表2-3】
【0140】
【表2-4】
【0141】
【表2-5】
【0142】
【表2-6】
【0143】
【表2-7】
【0144】
【表2-8】
【0145】
【表2-9】
【0146】
【表2-10】
【0147】
【表2-11】
【0148】
【表2-12】
【0149】
【表2-13】
【0150】
【表2-14】
【0151】
【表2-15】
【0152】
【表2-16】
【0153】
【表2-17】
【0154】
【表2-18】
【0155】
【表2-19】
【0156】
表3.研究3のネコ科動物の集団に対するデモグラフィック統計(Demographic statistics)。
【0157】
【表3】
【0158】
[結論]
上記の詳細な説明は、特定の例示的な実施形態を参照しているが、本開示は、その精神や本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態で実現し得る。従って、記載された実施形態は、あらゆる点において例示としてのみ考慮されるべきであり、限定的なものではない。例えば、本明細書に記載及び/又は例示された本発明の特徴の様々な置換、変更、及び/又は修正、そして本明細書に記載及び/又は例示された原理の追加の適用は、関連技術分野の当業者及び知識を有する者であれば思いつくことができ、本開示は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、説明及び/又は例示された実施形態に対して実施することができる。このような置換、変更、及び/又は修正は、本開示の範囲内にあるとみなされる。
【0159】
従って、本発明の範囲は、前述した説明より、添付した特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲に引用された限定は、特許請求の範囲で使用される文言に基づいて広く解釈されるべきであり、前述の詳細な説明に記載された特定の例に限定されず、その例は非排他的かつ非完全的なものと解釈されるべきである。従って、請求の範囲の均等の意味及び範囲内にある全ての変更は、その範囲内に含まれることが意図される。
【0160】
特定の実施形態の様々な特徴は、本開示の他の実施形態と互換性があり、結合、包含、及び/又は組み込まれ得ることも理解されよう。例えば、本開示の特定の実施形態によるシステム、方法、及び/又は製品は、本明細書に開示及び/又は説明される他の実施形態に記載される特徴を含む、組み込む、又はその他の方法を備えることができる。従って、本開示の特定の実施形態に関する特定の特徴の開示は、特徴の特定の実施形態に対する適用又は包含を限定するものと解釈されるべきではない。
【0161】
また、特定の実施形態で要求される特徴でない限り、様々な実施形態で説明される特徴は、選択的であってもよく、本開示の他の実施形態には含まれない場合もある。さらに、ある特徴が他の特徴と組み合わせて要求されることが説明されていない限り、本明細書の任意の特徴は、本明細書に開示される同じ又は異なる実施形態の他の特徴と組み合わせることもできる。特定の実施形態では、特徴は選択的であってもよいが、そのような実施形態に特徴が含まれる場合、本開示で説明されるような特定の構成を有することが要求される可能性があることが理解されよう。
【0162】
同様に、本明細書に記載され、及び/又は特許請求の範囲に記載される任意の方法又は過程で引用された任意のステップは、任意の適切な順序で実行されることができ、(明示的又は黙示的に)特に明示されていない限り、必ずしも記載及び/又は引用された順序に限定されない。しかしながら、そのようなステップは、本開示の特定の実施形態では、特定の順序又は任意の適切な順序で実行することも要求とされる可能性がある。
【0163】
また、例示的なシステム、方法、製品などの様々な周知の態様は、例示的な実施形態の態様を曖昧にすることを避けるために、本明細書では具体的に説明されない。しかしながら、そのような態様も本明細書では考慮される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
【国際調査報告】