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特表2024-516185質問機モードとリスナモードとの間で切り替え可能なRFIDタグリーダー
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  • 特表-質問機モードとリスナモードとの間で切り替え可能なRFIDタグリーダー 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-12
(54)【発明の名称】質問機モードとリスナモードとの間で切り替え可能なRFIDタグリーダー
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/74 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
G01S13/74
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565232
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 US2022026198
(87)【国際公開番号】W WO2022226410
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/178,832
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519348060
【氏名又は名称】オートマトン, インク.
【氏名又は名称原語表記】AUTOMATON, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン サード トム エー.
(72)【発明者】
【氏名】ミュエラー ジョー
(72)【発明者】
【氏名】ブレア アダム
(72)【発明者】
【氏名】ヒューエット スペンサー
(72)【発明者】
【氏名】パナジオト プロコピオス
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AF01
5J070BC05
(57)【要約】
無線周波数識別(RFID)システムは、リーダーを使用して、店舗、倉庫、および他の環境内の受動的RFIDタグに質問し、位置特定する。リーダーからの信号は、タグをパワーアップし、タグは、リーダーに向かって信号を変調および後方散乱する。残念ながら、最大許容RF信号電力、リーダーでの自己干渉、タグ感度、およびチャネル損失は、リーダーがタグを検出および位置特定できる範囲を制限する。複数のリーダーを同時に使用することで、これらの制限を回避することができる。一緒に使用されるとき、各リーダーは順番に、信号をタグに送信し、すべてのリーダーは、タグの応答の各々を聞く。送信しないリーダーは、自己干渉を経験せず、そのため、より低い電力レベル(より長い範囲)で応答を検出することができる。リーダーは異なる位置にあるため、各応答に対して異なる到来角(AOA)を測定する。これらの同時測定を使用して、各タグをより速く、より高い忠実度で位置特定することができる。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数識別(RFID)タグを位置特定するためのシステムであって、
複数のセンサであって、
質問機モードで第一のコマンドを発し、前記第一のコマンドに応答して前記RFIDタグによって発せられる第一の応答を検出するように構成された第一のセンサと、
リスナモードで、前記第一のコマンドおよび前記第一の応答を検出するように構成された第二のセンサとを備える、複数のセンサと、
前記複数のセンサの各センサに動作可能に接続され、前記第一のセンサを前記質問機モードに切り替え、前記第一のセンサによって検出され、前記第二のセンサによって検出された前記第一の応答に基づいて、前記第一のセンサおよび前記第二のセンサに対する前記RFIDタグの位置を推定するように構成される、コントローラと
を備える、システム。
【請求項2】
前記複数のセンサの各センサが、前記第一の応答を検出するように構成され、前記コントローラが、前記RFIDタグから前記複数のセンサの各センサへの前記第一の応答の対応する到来角を計算し、前記対応する到来角に基づいて前記RFIDタグの位置を推定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数のセンサの各センサが、前記第一の応答を検出するように構成され、前記コントローラが、前記RFIDタグから前記複数のセンサの各センサへの対応する範囲を計算し、前記対応する範囲に基づいて前記RFIDタグの位置を推定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第一のセンサおよび前記第二のセンサが天井に取り付けられ、前記第一のセンサが前記第一のコマンドを下向きに送信するように構成され、前記第二のセンサが前記第一のセンサの下の物体によって散乱または反射された前記第一のコマンドを検出するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第一のセンサが、複数のチャネル内の第一のチャネル内に前記第一のコマンドを発するように構成され、前記第二のセンサが、前記複数のチャネル内の各チャネルを監視し、前記第一のチャネル上の前記第一のコマンドを検出することに応答して、前記第一のチャネル上の前記第一の応答を検出するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第一のセンサが、
前記第一のコマンドを生成するための送信機と、
受信機であって、
前記第一の応答を受信し、前記複数のセンサ内の他のセンサからクエリを受信するための受信機フロントエンドと、
前記受信機フロントエンドに動作可能に接続され、前記第一の応答に復調する第一の復調器と、
前記受信機フロントエンドに動作可能に接続され、前記複数のセンサ内の前記他のセンサからのコマンドを復調する、第二の復調器と
を備える受信機と
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記送信機が、前記第一のセンサが前記リスナモードにあるときに、非アクティブモードに切り替えるように構成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記受信機フロントエンドが、前記他のセンサが前記コマンドを送信するチャネルを監視するためのチャネルモニタを備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記チャネルモニタが、40MHzの帯域に及び、それぞれ500kHzの帯域幅を有する50個のチャネルを監視するように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第一の復調器が、前記第一の応答を復号するためビタビデコーダを備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記第一のセンサが手持ち式RFIDタグリーダーであり、前記第二のセンサが天井に取り付けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記第二のセンサが、第二のコマンドを発し、前記第二のコマンドに応答して前記RFIDタグによって発せられた第二の応答を検出するように構成され、前記第一のセンサが前記第二のコマンドおよび前記第二の応答を検出するように構成され、前記コントローラが、前記第一のセンサによって検出され、前記第二のセンサによって検出される前記第二の応答に基づいて、前記RFIDタグの前記位置を推定するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記第二のセンサが、前記第一のセンサと前記第二のセンサとの間の非見通し線(NLOS)パスを介して前記第一のコマンドを検出するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラが、有線通信ネットワークの有線接続を介して前記複数のセンサの各センサに接続される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記有線通信ネットワークが、前記第一のセンサによる前記第一のコマンドの送信と前記第一のセンサによる前記第一の応答の検出との間の時間よりも大きな遅延を有する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラが、前記第一のセンサに命令して前記第一のコマンドを送信し、前記第二のセンサに命令してスケジュールに従って第二のコマンドを送信するように構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記第一のセンサおよび前記第二のセンサが各々、前記第一の応答の持続時間、周波数、または受信電力のうちの少なくとも一つを決定および前記コントローラへ送信するように構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記第一のセンサおよび前記第二のセンサがそれぞれ、到来角または前記第一の応答の署名のうちの少なくとも一つを前記コントローラに送信するように構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記第一のセンサおよび前記第二のセンサが、約5メートル~約10メートル離れている、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記複数のセンサの各センサが、前記質問機モードと前記リスナモードとの間で切り替え可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記コントローラが、前記複数のセンサ内の前記センサを、前記質問機モードと前記リスナモードとの間でラウンドロビン様式で切り替えるように構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記第一のセンサが、前記質問機モードで位相推定を実行し、前記リスナモードで位相推定および周波数推定を実行するように構成される、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
無線周波数識別(RFID)タグを第一の位置にある第一のセンサおよび前記第一の位置とは異なる第二の位置にある第二のセンサで位置特定する方法であって、
第一のセンサによって、第一のコマンドを前記RFIDタグに送信することと、
前記第一のセンサによって、前記第一のコマンドに応答して前記RFIDタグによって発せられる第一の応答を受信することと、
前記第二のセンサによって、前記第一のコマンドおよび前記第一の応答を受信することと、
前記第一のセンサによって検出された前記第一の応答に基づいて、前記第一のセンサから前記RFIDタグまでの到来角および/または範囲を決定することと、
前記第二のセンサによって検出された前記第一の応答に基づいて、前記第二のセンサから前記RFIDタグまでの到来角および/または範囲を決定することと、
前記第一のセンサから前記RFIDタグまでの前記到来角および/または前記範囲、ならびに前記第二のセンサから前記RFIDタグまでの前記到来角および/または前記範囲に基づいて、前記RFIDタグの位置を推定することと
を含む、方法。
【請求項24】
前記第一のセンサが前記RFIDタグに前記第一のコマンドを送信する前に、
前記第一のセンサを質問機モードに切り替えることと、
前記第二のセンサをリスナモードに切り替えることと、をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第一のセンサを前記質問機モードに切り替え、前記第二のセンサを前記リスナモードに切り替えることが、スケジュールに従って起こる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第一のセンサが、送信機と、前記第一の応答に復調するための第一の復調器と、他のセンサからのコマンドを復調するための第二の復調器と、を備え、前記第一のセンサを前記質問機モードに切り替えることが、前記第二の復調器を無効化することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記第二のセンサが送信機を備え、前記第二のセンサを前記リスナモードに切り替えることが、前記送信機を無効化することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記第一のセンサによって、前記第一のセンサによって受信された前記第一の応答の位相を推定することと、
前記第二のセンサによって、前記第二のセンサによって受信された前記第一の応答の周波数および位相を推定することと、をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記第二のセンサが前記第一のコマンドおよび前記第一の応答を受信した後、
前記第一のセンサを前記リスナモードに切り替えることと、
前記第二のセンサを前記質問機モードに切り替えることと、
前記第二のセンサによって、第二のコマンドを前記RFIDタグに送信することと、
前記第二のセンサによって、前記第二のコマンドに応答して前記RFIDタグによって発せられる第二の応答を受信することと、
前記第一のセンサによって、前記第二のコマンドおよび前記第二の応答を受信することと、をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記第一のセンサおよび前記第二のセンサが天井に取り付けられ、前記第一のコマンドを送信することが、前記第一のコマンドを前記第一のセンサから下向きに送信することを含み、前記第二のセンサによって前記第一のコマンドを受信することが、前記第一のセンサの下の物体によって散乱または反射された前記第一のコマンドを検出することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記第二のセンサによって前記第一のコマンドを受信することが、前記第一のセンサから前記第二のセンサへの非見通し線パスを介して前記第一のコマンドを受信することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記第一のコマンドを送信することが、前記第一のセンサによって、複数のチャネル内の第一のチャネル内に前記第一のコマンドを発することを含み、
前記第二のセンサによって、前記複数のチャネルの各チャネルを監視することと、をさらに含み、
前記第一の応答を受信することが、前記第二のセンサによって、前記第一のチャネル上の前記第一のコマンドを検出することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記複数のチャネルを監視することが、40MHzの帯域に及び、それぞれ500kHzの帯域幅を有する50個のチャネルを監視することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第一のセンサまたは前記第二のセンサのうちの少なくとも一つによって、ビタビデコーダで前記第一の応答を復号することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
前記第一のセンサからコントローラへ、前記第一のセンサから前記RFIDタグまでの前記到来角および/または前記範囲の表示を送信することと、
前記第二のセンサから前記コントローラへ、前記第二のセンサから前記RFIDタグまでの前記到来角および/または前記範囲の表示を送信することと、をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
前記第一のセンサが、前記第一のセンサによる前記第一のコマンドの送信と前記第一のセンサによる前記第一の応答の検出との間の時間よりも大きな遅延で、前記第一のセンサから前記RFIDタグまでの前記到来角および/または前記範囲の前記表示を前記コントローラに送信する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第一のセンサからコントローラに、前記第一のセンサによって受信された前記第一の応答の持続時間、周波数、または受信電力のうちの少なくとも一つの表示をコントローラに送信することと、
前記第二のセンサから前記コントローラに、前記第二のセンサによって受信された前記第一の応答の持続時間、周波数、または受信電力のうちの少なくとも一つの表示を前記コントローラに送信することと、をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項38】
無線周波数識別(RFID)タグを位置特定するためのシステムであって、
天井上に取り付けられ、前記センサが前記RFIDタグにコマンドを送信し、前記RFIDタグから前記コマンドへの応答を受信する質問機モードと、前記センサが他のセンサからの前記コマンドおよび前記RFIDタグからの前記応答を受信および復号するリスナモードとの間で切り替えられ、前記RFIDタグからの前記応答のそれぞれの到来角および/または前記RFIDタグへのそれぞれの範囲を推定するように構成されたセンサと、
前記センサに動作可能に接続され、前記センサを前記質問機モードと前記リスナモードとの間で切り替え、前記それぞれの到来角および/または前記それぞれの範囲から前記RFIDタグの位置を推定するように構成されたコントローラと
を備える、システム。
【請求項39】
前記コントローラが、前記センサをラウンドロビン様式で前記質問機モードに切り替えるように構成される、請求項38に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月23日出願の米国特許出願第63/178,832号の米国特許法119条(e)の下での優先権の利益を主張し、参照によりその全体がすべての目的のため本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグ質問機または単にリーダーとも呼ばれる無線周波数識別(RFID)タグリーダーは、RFIDタグと通信するデバイスである。典型的なリーダーは、無線周波数(RF)信号をRFIDタグに送信し、RFIDタグからRF応答を受信するための一つ以上のアンテナを含む。一部のリーダーは、送信用の一つのアンテナと、応答を受信するための別のアンテナまたはアンテナのセットとを含む。受信アンテナをリーダーに接続するケーブルの信号減衰は、コントローラと受信アンテナとの間の距離を約二メートル(六フィート)以下に制限することができる。
【0003】
アンテナとRFIDタグとの間の最大距離または範囲は、リーダーによって送信されるRF信号の最大電力、タグの応答の最大電力、リーダーとRFIDタグとの間の通信チャネルの損失、リーダーの感度、およびRFIDタグの感度に依存する。リーダーからのRF信号の最大電力は、通常、他の無線デバイスとの干渉を防止するために、政府規制当局によって制限される。米国では、連邦通信委員会(FCC)は、RFIDタグリーダーによって送信されるRF信号の最大伝導電力を約30dBm(1W)に制限する。(アンテナは、放射電力が36dBiであるように、最大6dBiゲインを有し得る。)受動的RFIDタグは典型的に、その応答としてリーダーからのRF信号内の入射電力の約10%を反射または後方散乱する。この効率は、約10dBの損失につながる。一方向チャネル損失が散乱、反射、および/または減衰によって40dBである場合、RFIDタグに到達する信号電力は、-20dBmの典型的なRFIDタグのターンオン閾値よりも10dB高い、合計-10dBm(6dBiアンテナゲインを含む場合、-4dBm)の経路損失によって、約30dBm(プラス6dBiアンテナゲイン)40dB未満となる。RFIDタグが入射電力の約10%を再放射する場合(10dBの損失)、リーダーに到達するRFIDタグの応答の電力レベルは、アンテナゲインを無視して約-60dBm(1nW)である。リーダーの感度が-70dBmであり、所望の信号対雑音比(SNR)が10dBである場合、リーダーはRFIDタグの応答を検出および復号することができるはずである。
【0004】
ラウンドトリップチャネル損失は、範囲と共に一般的に増加するため、より大きな範囲を達成することは、一般的に、送信された信号電力を増加させること、タグ後方散乱効率および感度を増加させること、アンテナゲインを増加させること(および場合によってはリーダーからビームをステアリングすること)、およびリーダー感度を改善することの何らかの組み合わせを伴う。残念ながら、FCCはタグに送信される最大信号電力(したがって、タグの応答に利用可能な電力の量)を制限し、熱ノイズは基本的にリーダー感度を制限する。さらに、リーダーからの送信は、タグの応答と時間的に重複し、タグの応答を検出するためにリーダーからの送信の自己干渉キャンセルを必要とする。(自己干渉キャンセルは、典型的には、漏洩(送信機からリーダー内の受信機に直接移動する信号)および局所反射をキャンセルし、アンプ、ミキサ、および他の送信機構成要素の非線形性によって生成される高調波およびノイズを補償することを伴う。)一部の従来的なシステムでは、最大送信電力および経路損失に関するFCC規制は、リーダーから受動的RFIDタグまでの最大達成可能な範囲を約15メートルに制限する。
【発明の概要】
【0005】
RFIDタグを位置特定するためのより高速でより効率的なシステムは、複数のセンサと、複数のセンサ内の各センサに動作可能に接続されたコントローラとを含む。複数のセンサは、互いに約5メートル~約10メートル離れていてもよい、少なくとも第一および第二のセンサを含む。第一および第二のセンサは、質問機モードとセンサモードとの間で独立して切り替えることができる。第一のセンサは、質問機モードに切り替えられ、キャリア波(CW)の伝送を開始する。範囲内でRFIDタグをパワーアップするのに十分な期間後、第一のセンサは、一つ以上のコマンドをRFIDタグのうちの一つ以上に送信し、第一のコマンドに応答してRFIDタグのうちの一つによって発せられる第一の応答を検出する。第二のセンサは、リスナモードで動作し、第一のコマンドを検出および復号する。復号されたコマンドから、第二のセンサは、RFIDタグからの第一のコマンドへの第一の応答、ならびに第一の応答を復号するためのパラメータを予期すべきであると判定する。次に、第二のセンサは、第一の応答を検出および復号する。一般に、第二のセンサは、質問機のCWを検出してロックするために、ホップの開始からリスナモードにある。リスナとして、第二のセンサは、質問機コマンドを聞くおよび復号し、その結果、質問機のコマンドによって求められたこれらのコマンドのタグの応答を聞くことができる。また、コントローラは、第一のセンサを質問機モードに切り替え、第一および第二のセンサによって別個に検出された第一の応答に基づいて、第一のセンサおよび第二のセンサに対するRFIDタグの位置を推定する。
【0006】
複数のセンサの各センサは、第一の応答を検出し、第一の応答の対応する到来角(AOA)を計算するように構成されてもよく、その場合、コントローラは対応するAOAに基づいてRFIDタグの位置を三角測量することができる。各センサはまた、第一の応答に基づいて(例えば、第一の応答の振幅または受信信号強度インジケータ(RSSI)に基づいて)RFIDタグまでの距離または範囲を測定することができる。三辺測量を使用して、コントローラは、距離からRFIDタグの位置を推定することができ、異なるセンサからの範囲を使用することができ、三辺測量を使用することができる。
【0007】
第一および第二のセンサは、天井上に取り付けられてもよく、第一のセンサは、第一のコマンドを下向きに送信するように構成され、第二のセンサは、第一のセンサの下の物体によって散乱または反射された第一のコマンドを検出するように構成される。別の方法として、第一のセンサは手持ち式RFIDタグリーダーであってもよく、第二のセンサは天井上に取り付けられてもよい。第一のセンサは、複数のチャネル内の第一の(スペクトル)チャネル内に第一のコマンドを発することができ、その場合、第二のセンサは、複数のチャネル内の各チャネルを監視し、第一のチャネル上の第一のコマンドを検出することに応答して、第一のチャネル上の第一の応答を検出することができる。
【0008】
第一のセンサは、第一のコマンドを生成するための送信機と、第一の応答および他のセンサからのコマンドを検出するための受信機と、を含み得る。受信機は、受信機フロントエンド、第一の復調器、および第二の復調器を含む。動作中、受信機フロントエンドは、第一の応答を受信し、複数のセンサ内の他のセンサからクエリを受信する。受信機フロントエンドに動作可能に接続される第一の復調器は、任意選択的にビタビデコーダを用いて、第一の応答に復調する。また、受信機フロントエンドに動作可能に接続された第二の復調器は、複数のセンサ内の他のセンサからのクエリを復調する。送信機は、第一のセンサがリスナモードにあるときに、非アクティブモードに切り替えることができる。受信機フロントエンドは、他のセンサがクエリを送信するチャネルを監視するためのチャネルモニタを含み得る。このチャネルモニタは、40MHzの帯域に及び、各々500kHzの帯域幅を有する、50個のチャネルを監視することができる。
【0009】
第二のセンサは、コントローラまたは別のデバイスからのコマンドに応答して、リスナモードに入ることができる。第二のセンサはまた、第二のコマンドを発し、第二のコマンドに応答してRFIDタグによって発せられる第二の応答を検出することができ、この場合、第一のセンサは第二のコマンドおよび第二の応答を検出することができ、コントローラは第一のセンサによって検出され、第二のセンサによって検出される第二の応答に基づいてRFIDタグの位置を推定することができる。第二のセンサは、第一のセンサと第二のセンサとの間の非光線(NLOS)経路を介して第一のコマンドを検出することができる。
【0010】
コントローラは、有線通信ネットワークの有線接続を介して、複数のセンサ内の各センサに接続され得る。この有線通信ネットワークは、第一のセンサによる第一のコマンドの送信とRFIDタグによる第一の応答の送信との間の時間よりも大きな遅延を有し得る。コントローラは、第一のコマンドを送信するように第一のセンサに命令し、スケジュールに従って第二のコマンドを送信するように第二のセンサに命令することができる。第一および第二のセンサはそれぞれ、持続時間、周波数、受信電力(受信信号強度インジケータ)、到来角、および/または第一の応答の別の署名を決定およびコントローラへ送信し得る。
【0011】
一部の事例では、複数のセンサ内の各センサは、質問機モードとリスナモードとの間で切り替え可能である。これらの事例では、コントローラは、複数のセンサ内のセンサを、ラウンドロビン様式で、質問機モードとリスナモードとの間で切り替えてもよい。第一のセンサは、質問機モードでタグ応答の位相推定を実行し、リスナモードでタグ応答の位相推定および周波数推定の両方を実行し得る。
【0012】
RFIDタグを位置特定するためのシステムは、天井上または天井から取り付けられ得るセンサと、センサに動作可能に接続されるコントローラとを含むことができる。各センサは、コマンドをRFIDタグに送信し、RFIDタグからコマンドへの応答を受信する質問機モードと、他のセンサからのコマンドおよびRFIDタグからの応答を受信および復号するリスナモードとの間で切り替えることができる。センサは、RFIDタグからの応答のそれぞれの到来角および/またはRFIDタグへのそれぞれの範囲を推定することができる。コントローラは、センサを質問機モードとリスナモードとの間で切り替えることができる。コントローラはまた、(例えば、三角測量を使用して)それぞれの到来角および/または(例えば、三辺測量を使用して)それぞれの範囲からRFIDタグの位置を推定することができる。例えば、コントローラは、一つのセンサが質問機モードにあり、他のセンサの全てが同時にリスナモードにあるように、センサをラウンドロビン様式で質問機モードに切り替えることができる。
【0013】
前述の概念、および以下でより詳細に論じる追加的概念のすべての組み合わせは(このような概念が相互に矛盾していないという前提で)、本明細書に開示する本発明の主題の一部であると考えられる。特に、本開示の最後に現れる、特許請求の範囲に記載する主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示する発明主題の一部であると考えられる。参照により本明細書に組み込まれる、あらゆる開示においても明示的に用いられる用語は、本明細書に開示される特定の概念と最も一致する意味を与える必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
当業者であれば、図面が主として例示的な目的であり、本明細書に記載の本発明の主題の範囲を制限することを意図していないことを理解するであろう。図面は必ずしも一定の比率ではなく、いくつかの例では、本明細書に開示する本発明の主題のさまざまな態様は、異なる特徴の理解を容易にするために、図面内で誇張または拡大されて示される場合がある。図面では、同様の参照文字は概して、同様の特徴(例えば、機能的に類似したおよび/または構造的に類似した要素)を意味する。
【0015】
図1A図1Aは、RFIDタグセンサのセットに接続された中央コントローラを有するRFIDタグ位置特定システムを示し、その各々は、イーサネットローカルエリアネットワーク(LAN)を介して、質問機モードとリスナモードとの間で切り替えることができる。
【0016】
図1B図1Bは、質問機モードおよびリスナモードにおいてセンサが受動的RFIDタグからの応答をトリガおよび検出できる方法を示す。
【0017】
図1C図1Cは、質問機モードの一つのセンサおよびリスナモードの他のセンサを用いて行われた到来角(AOA)測定を示す。
【0018】
図2図2は、質問機モードとリスナモードとの間で切り替えることができるRFIDタグセンサを示す。
【0019】
図3図3は、RFIDタグセンサのデジタルフロントエンドを示す。
【0020】
図4A図4Aは、他のRFIDタグセンサからの信号(例えば、クエリまたはコマンド)の異なるチャネルを監視するための、デジタルフロントエンドのチャネルセレクタ/スペクトルアナライザの選択された構成要素を示す。
【0021】
図4B図4Bは、図4Aのチャネルセレクタを使用してRFIDタグチャネルを監視および選択するためのプロセスを示す。
【0022】
図5A図5Aは、質問機モードおよびリスナモードでRFIDタグセンサの位相推定およびリスナモードでRFIDタグセンサの周波数推定を実行する周波数および位相推定器を示す。
【0023】
図5B図5Bは、リスナモードでのRFIDタグセンサの周波数推定を示す。
【0024】
図6図6は、RFIDタグセンサのコマンド復調器を示す。
【0025】
図7図7は、RFIDタグセンサのタグ復調器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1A~1Cは、質問機モードとリスナモードまたは受信専用モードとの間で切り替えることができるいくつかのRFIDタグリーダー120a~120d(集合的に、リーダー120)を有する一つ以上のRFIDタグ130を位置特定するRFIDタグ位置特定システム100を示す。典型的には、他方のリーダー120のうちの一つ以上がリスナモードにある間、一つのリーダー120のみが同時に質問機モードにある。質問機モードにあるリーダー120は、タグ130に問い合わせ、そのリーダー120および範囲内のリスナモードにあるリーダー120のすべては、タグの応答を受信する。N個のリーダー120について、これは、一個のリーダー120のみが同時に質問メッセージを送信し得るにもかかわらず、タグの応答のN個の測定を同時にこなすことを意味する。同時測定の数のこのN倍の増加は、システム100によって実行されるRFIDタグ位置特定の速度(例えば、N倍)、忠実度(例えば、非干渉性平均化による√N倍)、または速度および忠実度を増加させるために使用され得る。
【0027】
異なる位置のリーダーによって、各応答の多くの同時測定を行うことは、同時にただ一つのリーダーのみからのAOAまたは範囲を測定することを含む、従来の技術を使用することよりもいくつかの利点を提供する。まず、システムは、これらの異なる測定を使用して、従来のRFIDタグ位置特定システムによって必要とされる異なるリーダーからの複数の応答および連続測定の代わりに、単一の応答から二次元または三次元におけるタグの位置を推定することができる。高タグ密度および多くのセンサ(リーダー)を有する環境の場合、これにより、位置測定時間を数十秒~数分だけ短縮することができ、これは、タグを読み取るのに第二または第三のセンサがどの程度時間がかかり得るかである。
【0028】
一部の用途では、この位置のリフレッシュレートが不十分である場合がある。例えば、移動タグの位置を推定することを考慮する。タグが同時に一つのリーダーに行われた連続的なAOAまたは範囲測定の間で移動する場合、これらの測定に基づく三角測量または三辺測量により、誤った結果が生じる。対照的に、異なる位置でセンサを使用して複数のAOAおよび/または範囲測定を同時に行うことで、タグ移動によって引き起こされるこれらのエラーが排除される。
【0029】
異なる位置から同時測定を行うことはまた、連続測定を同時に一つのセンサで行うことよりも効率的である。従来的なシステムでは、第一のリーダーまたはセンサは、タグを読み取る(例えば、タグが不明な場合はランダムスロット付きアロハ法を使用することによって、または特定の既知のタグを読み取るために選択RFIDプロトコル手順によって)。第一のセンサがタグを読み取った後、第一のセンサに近い第二のセンサは、選択コマンドを使用して、同じタグを再読み取り、第二のAOAまたは距離測定値を取得する。第二のリーダーがタグを正常に読み取らないか、または範囲もしくはAOA推定値が不良である場合、第三のセンサは測定を繰り返し得る。これは、タグが複数回読み取られるため非効率である。タグが動作している場合、これは、読み取り間の時間中の移動により位置推定の品質に影響を与え得る。逆に、複数の同時測定は、タグの単一の読み取りを伴い、読み取りと余分なコマンド(ここでは、第二および後続のリーダーによって送信される選択コマンド)との間の遅延を排除する。
【0030】
リーダー120は、ラウンドロビン様式でより同時測定を行ってもよく、各リーダー120は次に、質問機として機能し、一方で他のリーダー120は、リスナとして機能し、測定速度および/または忠実度をさらに増加させる。リスナはタグに給電していないため、自己干渉などに悩まされないため、はるかに大きな範囲でタグ応答を検出することができ、従来のシステムでは単に不可能である距離/位置から測定を行うことができる。
【0031】
リーダー120は、図1Aに示すように、それぞれのイーサネット接続112を介するか、または他の適切な(通常は有線)接続を介してシステムコントローラ110に接続される。イーサネット接続112は、リーダー120も互いに接続してもよい。システムコントローラ110は、ネットワーク時間に対して同期されたクロックを有し、そのクロックを使用して、イーサネット接続112を介してリーダー120を同期させる。リーダー120が、異なるリーダー120が同時に送信された同じタグ130から受信した応答をタイムスタンプする時、システムコントローラ110は、検出された応答をグループ化および処理できるように十分に同期されるべきである。同期はまた、ホップ間の過剰な時間(例えば、1ミリ秒以上の最小ホップ間間隔を可能にする)を防止するのに十分良好であるべきである。
【0032】
この同期は、イーサネット接続112のうちの一つ以上の遅延、および/またはイーサネット接続112間の遅延の変動が、RFIDタグ130がリーダー120からの質問信号またはコマンド121に応答するための割り当てられたウィンドウまたはホップ間の間隔を超えることを明らかにすることができ、リーダー120が有線接続112を介したスケジューリングについて互いに通信すること実行不可能にする。これらの遅延が、割り当てられたタグ応答ウィンドウ/ホップ間の間隔よりも大きい場合、リーダー120は、有線接続112を介してコマンド121に関する別個の信号を互いに感知する代わりに、単にブロードキャストコマンド121を検出し得る。リーダー120はまた、イーサネット接続112によって提供されるローカルエリアネットワークを介してではなく、リーダー固有のコマンドを使用して、(例えば、タグ130と通信するために使用されるのと同じRFチャネルを介して)互いに無線で通信することができる。
【0033】
システムコントローラ110はまた、RFIDタグ130に質問するためのスケジュール113を生成するプロセッサを含む。スケジュール113は、各リーダー120が質問機モードおよびリスナモードにあると考えられる時間を列挙する。すなわち、スケジュール113は、各リーダー120が、クエリおよび他の質問機コマンドを含む質問信号121を発すると考えられるときを列挙する。スケジュール113はまた、各リーダー120が、他のリーダー120から質問信号121およびそれらの質問信号121によって促されるタグ応答を受信することを予期すべきである場合ウィンドウを列挙してもよい。システムコントローラ110は、このスケジュール113をイーサネット接続112を介してRFIDタグリーダー120に送信する。システムコントローラ110は、スケジュール113をプロセッサに接続されたローカルメモリに格納する。システムコントローラ110は、RFIDタグリーダー120から時間、周波数、電力、およびタグ位置特定情報を受信することを含むタグ応答データ123を受信し、このデータ123も後の処理のためにメモリに格納する。
【0034】
リーダー120は、各リーダー120が、質問機モードまたはリスナモードのいずれかにある状態で、スケジュール113に従って質問信号121をブロードキャストする。典型的には、一つのリーダー120は、他のリーダー120がリスナモードにある状態で、同時に質問機モードにある。質問機モードのリーダー120が質問信号121をブロードキャストするとき、タグ130は、システム100が展開される店舗、倉庫、工場、または他の環境を通して、無線、マルチパスチャネル122を介して質問信号121を受信する。タグ130のうちの少なくとも一つは、質問信号121の後の所定の時間枠内で、質問モードでリーダー120に到達するタグ応答131を有する質問信号121に応答する。リスナモードのリーダー120は、質問信号121および同じ無線マルチパスチャネル122を介してタグ応答131を検出する。異なるリーダー120によって検出されるタグ応答131は、従来のRFIDタグ位置特定システムで可能なよりも速く、および/またはより正確にタグ130を位置特定するために使用され得る。
【0035】
質問/応答配列全体はホップと呼ばれ、以下でより詳細に説明される。各ホップは、単一の周波数での連続キャリア波(CW)送信の期間で始まる。このCW送信はRFIDタグ130に電力供給する。センサまたはリーダー120がコマンドを送信するたびに、コマンドでこのCWを変調し、その後、連続CWの送信に戻る。ホップの非変調部分および変調部分の持続時間は、RFIDプロトコルおよび/または国に依存し、米国では、ホップは、典型的には、400ミリ秒であり、コマンドは、選択されたタイプA基準間隔(TARI、例えば、6.25μsec~25μsec)およびコマンド内のペイロードビットの数に応じて、約100μsec~約1ミリ秒以上の持続時間の範囲である。
【0036】
図1Bおよび1Cは、RFIDタグ位置特定システム100を使用して、より速いおよび/またはより正確なタグ位置測定のために、単一のタグ応答131の複数の到来角(AOA)測定を同時に行う方法を例示する。この場合、リーダー120は、小売店または倉庫内の部屋などの部屋の天井上に配列される。環境には数十~数百のリーダー120があってもよい。各リーダー120は、その最も近い隣接体から最大120メートル(例えば、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、110、または120メートル)分離され、イーサネットまたは他の有線もしくは無線接続を介してコントローラ(図示せず)に接続される。リーダー120の各対を分離する距離は、タグ130に電力供給するための最大範囲に基づいてもよく、例えば、タグ130に電力供給するための最大範囲が10メートルである場合、リーダー120は、各タグが少なくとも一つのリーダーによって電力供給され得るように、互いに最大20メートル離れていてもよい。各リーダー120は、そのアンテナが、RFエネルギーが横向きに伝搬するのを少なくして、主に下向きに床に向かって質問信号121を発するように配向される。
【0037】
この例では、リーダー120aは質問機モードにあり、リーダー120b~120cはリスナモードにある。リーダー120aは、一つ以上の反射を含み得る自由空間チャネル122を介して質問信号121をRFIDタグ130に送信する。リーダー120aは、質問信号121が検出可能な応答131を生成するのに十分にタグ130に給電または充電するために、受動的であるタグ130に十分に近接しているべきである。最大電力、チャネル損失、およびタグ後方散乱効率に対する制約を考慮すると、RFIDタグ130とリーダー120aとの間の距離は、約20メートル以下(例えば、15メートル、10メートル、または5メートル)であるべきである。他のリーダー120b~120dは、タグ130に給電または充電しておらず、したがって自己干渉に悩まされないため、タグ130から遠く離れていてもよい(例えば、最大25、50、75、100、125、250、またはさらには500メートル離れている)。最大電力、チャネル損失、およびタグ後方散乱効率ならびに自己干渉キャンセルに対する制約を考慮すると、RFIDタグ130とリーダー120aとの間の距離は、約20メートル以下(例えば、15、10、または5メートル)であってもよい。
【0038】
他のリーダー120b~120dは、タグ130に給電または充電していないため、応答131を検出するために自己干渉キャンセルを行う必要がないため、タグ130からさらに離れていてもよい(例えば、最大25、50、75、またはさらには100メートル離れている)。他のリーダー120b~120dとタグ130との間の最大距離は、応答131の振幅、チャネル損失、およびリーダー120の感度に依存し、正しい受信機、アンテナ、および経路損失条件で最大500メートルとすることができる。(タグ応答の振幅は、一般に、その電源をオンにする電力より10dB低く、これは典型的には、-17dBm(およびタグ性能が向上するにつれて経時的に減少する)である。チャネル損失は、1メートルで約32dBであり、距離の2倍ごとに約6dB増加する。合理的なRFID受信機の感度は-80dBmである。)リーダー120は、すべてのリーダー120がすべてのタグ130からの応答を検出できるはずであるように、またはすべてのリーダー120が部屋の形状およびサイズに部分的に応じて、すべてのタグ130からの応答を検出できるわけではないように、部屋内に配列され得る。
【0039】
タグ130は、応答131をドーナツ形状のパターンで発するダイポールアンテナを有してもよい。リーダー120はタグ130に対して異なる位置にあるため、このRFフィールドは、図1Cの上部および底部にそれぞれ示されるように、異なる方位角および/または仰角から各リーダー120に入射する。リーダー120aとタグ130との間のチャネルが逆リンク制限されている場合などの特定の状況では、リーダー120aがエラー付きで応答131を受信した場合でも、リスナ120b~120dは、エラーなしのタグの応答131を受信することができる。各リーダー120は、対応する方位角および仰角AOAを計算し、各タグ130について計算されたAOAをコントローラ110に送信することができる。各リーダー120はまた、応答131の振幅またはRSSIに基づいてタグ130への範囲または距離を推定することができる。コントローラ110は、異なるリーダー120からのAOAおよび/または範囲を集約し、それらを使用して、例えば、三辺測量または三角測量によってタグの位置を推定することができる。単一の質問信号131は、システム100内のリーダー120の全てによって異なる位置から複数の同時AOA測定値をもたらすため、コントローラ110は、二次元または三次元でタグ130を位置特定するのに多くのホップを必要とし得る従来のRFIDシステムとは異なり、ただ一ホップ後にRFIDタグ130の位置を導出または推定することができる。より多くのAOA測定により、コントローラは、リーダー120に対するタグの位置をより正確に推定することができる。リーダーの絶対位置が既知である場合、コントローラ110は、それらを使用してタグの絶対位置も推定することができる。
【0040】
リーダー120b~120dはまた、タグ応答131を検出する前に、リーダー120aからの質問信号121を検出する。以下でより詳細に説明するように、リーダー120がリスナモードにある時、リーダ120は、その帯域内の多くのチャネル(例えば、50チャネル)のうちの一つでブロードキャストされ得る質問信号121に対して、関連するRFID通信帯域(例えば、米国では902~928MHz、または欧州では865~868MHz)をスキャンする。リスナモードのリーダー120が特定のチャネル上の質問信号121を検出すると、質問信号121の終了の所定のまたは事前設定された時間枠内で、同じチャネル上の応答131を聞く。リーダー120はまた、質問信号121を復調または復号し、復号された質問信号121を使用して、タグ130から応答131を解釈してもよい。
【0041】
質問信号121は、タグ130に応答する方法(すなわち、応答123の変調、プリアンブルタイプ、およびビットレート)を伝える。リスナモードのリーダー120は、コマンド121を聞いて、タグ130がコマンド121にどのように応答すべきかを知る。リスナモードのリーダー120はまた、コマンド121の終了時間を決定して、タグの応答123に配置されたタイミング制約に基づいて、タグ応答123をいつ予期するかを知る。
【0042】
リーダー120は天井に取り付けられ、質問信号131を下向きに(タグ130に向かって)ブロードキャストするため、それらは概して、非見通し線(NLOS)パスを介して他のリーダー120から質問信号131を検出する。図1Bおよび1Cでは、例えば、リーダー120aは、質問信号131を下向きに発し、信号131の少なくとも一部分を床、棚、および/または他の物体に反射または散乱させる。他のリーダー120b~120dは、別の表面を散乱または反射することなく、場合によってはリーダー120aから直接伝搬する検出されたエネルギーの代わりに、またはそれに加えて、この反射エネルギーまたは散乱エネルギーを検出した。NLOSパスに沿った減衰を考慮するとしても、検出された質問信号131は、リスナモードでリーダー120b~120dによって高い忠実度(例えば、SNR>10dB)で検出されるのに十分な振幅を有する。
【0043】
RFIDタグ位置特定システム100はまた、手持ち式リーダー、車両もしくはカートに取り付けられたリーダー、または有線接続を介してシステムコントローラ110に接続されていない他のリーダーを含むか、またはそれらと相互作用することができる。これらのリーダーは、質問機モードとリスナモードとの間で切り替え可能であってもよく、または他のリーダーから質問信号を検出または処理することなく、質問信号を送信し、タグ応答を受信することによって、質問機としてのみ動作する従来のリーダーであってもよい。いずれの場合も、手持ち式リーダーが質問信号を送信するとき、リスナモードおよび範囲内の両方にあるリーダーは、その質問信号および任意のタグ応答の両方を検出する。これらのリーダーは、タグ応答の推定されたAOAおよびタグ応答からの応答するタグの位置を計算し、さらなる処理のために位置、AOA、および/またはタグ応答パラメータ(例えば、大きさ、位相、到着時間)をシステムコントローラに報告し得る。
【0044】
必要に応じて、手持ち式リーダーは、質問信号を送信する前に、他のリーダーをリスナモードに切り替えるコマンドを他の(固定)リーダーにブロードキャストしてもよい。代替で、他のリーダーは、送信していないとき、または質問機モードにあるときに、手持ち式リーダーのRFIDチャネルをスキャンすることができる。あるいは、リーダー(手持ち式リーダーを含む)は、自己同期PNシーケンスを使用して周波数ホッピングを駆動することができ、その結果、すべてのリーダー(固定および/または手持ち式)はホッピングパターンに同期することができる。固定リーダーはまた、手持ち式またはモバイルリーダー(質問機)のみで動作するために、常にリスナモード(および場合によっては送信機および関連するハードウェアを欠く)であってもよい。
【0045】
図2は、リーダー120が質問機モードにある場合有効化される、またはリーダー120がリスナモードにある場合、無効化され得る構成要素を含む、リーダー120をより詳細に示す。リーダー120は、RFアンテナおよびフロントエンド210、プロセッサ212、RF較正および同調ブロック214、ホップ発生器220、ならびにホップ受信機230を含む。RFアンテナおよびフロントエンド210は、RFID質問信号121を送信し、タグ応答131およびRFID質問信号121を他のリーダーから受信するための一つ以上のアンテナ素子、増幅器、フィルタ、および/または他のアナログRF構成要素を含み得る。プロセッサ212は、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)またはその他の適切な装置に実装されてもよく、リーダー120の動作を制御する。プロセッサ212は、メモリ(図示せず)に情報を格納し、メモリから情報を取得し、イーサネット接続などのネットワーク接続(図示せず)を介してシステムコントローラと通信する。また、プロセッサ212は、質問機モードとリスナモードとの間でリーダ120を切り替え、ホップ発生器220は、質問機モードで無効化またはオフにされ、質問機モードで有効化またはオンにされ、ホップ受信機230は、両方のモードで有効化またはオンにされる。RF較正および同調ブロック214は、RF較正および同調機能を実施する。
【0046】
ホップ発生器220は、リーダー120がRFIDタグ130および他のリーダー120に送信する質問信号121を生成する(図1A~1C)。ホップ発生器220はまた、例えば、専用リーダー通信チャネル上、または特定のプリアンブルもしくはペイロードで、他のリーダー120を意図したコマンドまたは通信信号を生成してもよい。ホップ発生器220は、質問信号121によって伝達されるデジタルクエリ、コマンド、および/または他の情報を生成するデジタルコマンド発生器222と、コマンド発生器222からのデジタル信号をアンテナ210による送信に好適なアナログ信号に変換するためのRF電子機器224とを含む。RF電子機器224は、デジタル信号をベースバンドアナログ信号に変換するデジタルアナログ変換器(DAC)と、ベースバンドアナログ信号を最大中間周波数まで混合するためのミキサおよびローカル発振器と、サイドバンドおよび/またはスパーを除去するためのフィルタおよび/またはパルスシェーパと、を含み得る。
【0047】
ホップ受信機230は、コマンド復調器234及びタグ応答復調器236に接続された受信機フロントエンド232を含む。概して、受信機フロントエンド232は、アンテナによって検出されたRF信号の位相をデジタル化、ダウンコンバート、および推定する。リーダー120がリスナモードにある時、受信機フロントエンド232はまた、他のリーダー120が質問信号121を送信するチャネルを検出し、それらの他の質問信号121のキャリア周波数を推定する。受信機フロントエンド232を構成する様々な方法があり、この例では、受信機フロントエンド232は、以下により詳細に説明されるように、40MHzでアナログ同相および直交(I/Q)信号を受信し、それらをベースバンド(5MHz)でデジタルI/Qサンプルに変換する。他の例では、受信機フロントエンドは、低中間周波数ヘテロダイン受信機または他の好適な受信機を含み得る。コマンド復調器234は、リーダー120がリスナモードにあり、ベースバンドコマンドI/Qサンプルを復調して、コマンドビットレート(例えば、40kbp~160kbp)で質問機信号231を生成するときに有効化される。コマンド復調器234は、コマンドペイロードを使用して、質問機モードのリーダー120がタグ130について尋ねているもの(例えば、変調、プリアンブルタイプ、予想される応答タイプなど)を判定する。例えば、質問機モードのリーダー120は、標準プリアンブルを用いて320kHzの後方散乱リンク周波数(BLF)でのMiller-2変調を使用して、タグ130に、その電子製品コード(EPC)の最初の64ビットを送信するように要求してもよい。リスナモードのリーダー120は、その情報を使用してタグ応答131を復号する。コマンド復調器234は、リーダー120が質問機モードにあるときに無効化される。タグ応答復調器236は、質問機モードおよびリスナモードの両方で有効化され、ベースバンドタグ応答I/Qサンプルを復調して、タグ応答ビットレートでタグ応答信号233を生成する。
【0048】
図3は、受信機フロントエンド232の多くの可能な実装形態のうちの一つを示す。この実装形態は、クロック発生器312によってクロックされ、一つ以上のチャネル上の40MHzでアナログI/Q信号を40MHzでデジタルI/Qサンプルに変換する、アナログデジタル変換器(ADC)310を含む。ADC310はまた、各ホップの終了を示すエンドオブホップ(EOH)信号を生成する。EOH信号は、リスナモードのリーダー120が現在のホップの処理を停止し、ホップ統計(例えば、電力レベル、様々なイベントのタイムスタンプなど)を集約することができることを示す。EOHは、受信機が次のホップまたはアイドル状態またはスリープ状態などの他の次のアクションのために準備すべきことを示す信号を送信する。
【0049】
ADC310の出力に接続されたダウンコンバータ320は、デジタルI/Qサンプルをベースバンド(例えば、5MSa/s)まで混合する。リーダー120がリスナモードにある時、チャネル検出器およびセレクタ322は、以下に説明するように、検出された質問信号121のチャネルを検出および選択する。デシメータ330は、コマンド復調器234およびタグ応答復調器236による処理のためにデジタルサンプルをダウンサンプリングする。言い換えれば、受信機が受信した応答123の500kHzチャネルを決定すると、そのチャネルをベースバンドに変換し、ベースバンドフィルタを適用する。また、受信機は、40MHzのサンプルを5MHzにダウンサンプリングして、デジタル信号処理負荷を低減する。
【0050】
リスナモードでは、コマンド復調器234によって有効化される周波数推定器332は、検出されたホップの位相および周波数を推定し、これらの推定値をダウンコンバータ320に提供し、ダウンコンバータ320は、周波数および位相を補償し、信号からの両方を効果的に除去する。周波数推定器332はまた、検出されたタグ応答131の振幅を推定し、例えば、検出されたタグ応答131を送信したRFIDタグを位置特定するために、振幅推定をタグ復調器236に提供する。これはリスナ専用機能である。実際には、リーダー120のローカルクロック参照は異なってもよく、ドリフトしてもよい。周波数推定器332は、ホップのCW部分を追跡および除去すること、または非常に狭いノッチフィルタが任意の残留周波数オフセットを除去することができるように、少なくともホップのCW部分を十分に除去することを可能にする。リスナモードのリーダー120は、質問機モードでリーダー120から直接タグ応答131よりもはるかに大きいホップのCW部分を感知し得る。リスナモードのリーダー120は、タグ復調器のダイナミック範囲内に留まるように、それらのCW部分を追跡および除去する。
【0051】
図4Aおよび4Bは、チャネル検出および選択を示す。チャネル検出器およびセレクタ322は、リーダー120が質問信号121および受動的RFIDタグ130の後方散乱応答131を送信する帯域をスキャンするスペクトル分析器として実装され得る。この例では、チャネル検出器およびセレクタ322は、相関器410、電力計412、チャネル検出器414、およびチャネルセレクタ416を含む。相関器410は、ADC310からの40MHzのデジタルサンプルを、異なるチャネル(例えば、50チャネル)と相関させ、その各々は、500kHzの総帯域幅を有し、ビットレートに応じて約40~160kHzの信号帯域幅をサポートし、40~640kHzのタグ応答信号帯域幅に至り、サイドローブを無視する。これは、それぞれ異なる周波数におけるバンドパスフィルタのバンクでサンプルをフィルタリングすることによって、または走査スーパーヘテロダインスペクトル分析器のように、帯域全体にわたって単一のバンドパスフィルタまたはローカル発振器を走査することによって達成され得る。電力計412は、所定の期間(例えば、走査フィルタの滞留時間)にわたる各チャネルの平均電力を測定する。チャネル検出器414は、どのチャネルが最も高い平均電力を有するかを検出し、チャネルセレクタ416は、タグ応答を監視するためのチャネルとして最も高い平均電力を有するそのチャネルを選択する。
【0052】
図4Bは、リスナモードでのリーダー120におけるチャネル検出器およびセレクタ322によるチャネル監視、検出、および選択のためのプロセス450を示す。ホップが開始すると(452)、相関器410および電力計412は、閾値電力レベルを超える受信電力を有するチャネルについてRFIDバンドをスキャンする(454)。チャネル検出器およびセレクタ322が、「スキャンフォーマックス(scan-for-max)」モードの最大電力でチャネルを走査する時、チャネル検出器およびセレクタ322は、すべてのチャネル(例えば、50チャネルすべて)を試験する。チャネル検出器およびセレクタ322が、最高または最大電力を有するチャネルを見つけると、これは活性(ARMED)状態(456)に移行し、その後、他のチャネルを再走査して、現在のチャネルが真に最大電力を有するチャネルであることを確実にする。より高い電力を見つけることなく他のチャネルを走査した後、チャネル検出器およびセレクタ322は、最大電力を有するチャネルを選択し、選択(SELECTED)状態に入る(458)。(複数のチャネルが最大電力を有する場合、チャネル検出器およびセレクタ322は、第一または最低周波数チャネルを選択することができる。)チャネル検出器およびセレクタ322はまた、所定の閾値電力を超える第一のチャネルを、最大電力を有するチャネルとして(すなわち、選択されたチャネルとして)単に選択することができる。この閾値は、他のセンサからのコマンドの過去の測定値に基づいてもよい。例えば、リーダーがリーダー120aからコマンドを受信し、以前のホップ中にリーダー120aから1000(任意の単位)の電力レベルを測定する場合、閾値は800に設定され得る。また、リーダー120が、閾値として周囲騒音床(例えば、10dBのバイアスを有する可能性がある)を送信していない、および使用していない時に、各リーダー120が周囲騒音を測定するランタイム較正を実施することも可能である。
【0053】
図5Aおよび5Bは、周波数および位相推定器332の動作をより詳細に例示する。図5Aに示すように、積分器502は、Mストリームの各々にわたってN個のデジタルサンプルを積分し、積分/平均サンプルから各ストリームの大きさおよび位相誤差を決定する、積分/平均サンプルを座標回転デジタルコンピュータ(CORDIC)チップ504に提供する。リスナモードでは、周波数および位相推定器332は、Mストリームの大きさおよび位相誤差から、受信した質問機信号121およびタグ応答131の周波数、位相、および大きさを推定する。これらのストリームは、同じ発振器(例えば、電圧制御結晶発振器(VXCO))から駆動されてもよく、そのため同じ周波数であるべきであるが、異なる相を有してもよい。
【0054】
図5Bに示すように、周波数および位相推定器332は、入力の大きさから大きさ推定を生成する大きさ平均器510を含む。周波数推定器520は、対応する位相誤差から各ストリームの周波数を推定し、結果を周波数平均器522に供給し、周波数平均器522は、改善された周波数推定を生成するためにストリーム周波数を平均化する。同様に、位相推定器530は、対応する位相誤差から各ストリームの位相を推定し、結果を位相平均器532に供給し、位相平均器532は、周波数推定を生成するためにストリーム周波数を平均化する。補正ブロック540は、補正係数を計算して、実装遅延(例えば、サンプルnに対する周波数オフセットの測定と適用との間の遅延)を補償する。
【0055】
図6は、リーダー120におけるコマンド復調器234の実装形態を示す。コマンド復調器234は、リーダー120がリスナモードにあり、他の方法で無効化されているときに有効化される。コマンド復調器234は、ストリームコンバイナ602、シンボル検出器604、コマンドパーサ606、およびパラメータ推定器608を含む。動作中、ストリームコンバイナ602は、受信機フロントエンド232からのMストリームを組み合わせ、別のリーダー120からの質問信号121を表す、組み合わされたストリームのエンベロープを検出および閾値化する。シンボル検出器604は、質問信号121の各シンボルの長さおよび立ち上がりエッジ、ならびにホップの終了(EOH)を検出する。コマンドパーサ606は、質問信号121のシンボルからコマンドビットを分析する。コマンドビットは、例えば、タグが送信すべき応答の種類、およびタグがどの変調およびプリアンブルを使用するべきかを含む、質問機モードのリーダー120がタグ130に何をすべきかをリスナモードのリーダー120に伝える。また、パラメータ推定器608は、リスナモードで動作して、質問機モードのリーダーがコマンドで使用したシンボルの持続時間の関数である、後方散乱リンク周波数(BLF)を推定する。
【0056】
図7は、リーダー120におけるタグ応答復調器236の実装形態を示す。タグ応答復調器236は、質問機モードおよびリスナモードの両方で有効化される。質問機モードでは、タグ応答復調器236は、リーダー120による質問信号の送信に応答して、プロセッサ212またはホップ発生器220によって作動(トリガ)され得る。質問機モードでは、別のリーダーからの質問信号121の検出に応答して、コマンド復調器234によって作動(トリガ)される。
【0057】
図7のタグ応答復調器236は、直流(DC)ノッチフィルタ702、取得モジュール704、任意選択のチャネル補正器706、基本相関器708、ビタビデコーダ710、および周期的冗長性チェック(CRC)モジュール712を含む。DCノッチフィルタ702は、DC電力を拒否または減衰し、サンプルレート(例えば、5MSa/s)で受信機フロントエンド232からのタグ応答のサンプルに電力を渡す。取得モジュール704は、入ってくるサンプルを予想されるタグプリアンブルと相関させて、タグプリアンブルが存在するかどうか、どのデジタルゲインレベルを適用するか、正確なBLF、および第一のペイロードサンプルがいつ開始するかを検出する。
【0058】
基本相関器708は、各ストリーム内のフィルタリングされたタグ応答サンプルを、タグ応答内のペイロードビットの可能な状態を表す異なる基本状態(例えば、四つの可能な基本状態、データビット-0の場合は二つ、データビット-1の場合は二つ)と相関させる。言い換えれば、基本相関器708は、畳み込みまたはトレリスコードを使用してフィルタリングされたビットストリームを符号化する。ビタビデコーダ710または類似のデコーダは、ビタビアルゴリズムまたはファノアルゴリズムなどの別の類似のアルゴリズムを使用して、符号化されたビットストリームを復号する。CRCモジュール712は、ビタビデコーダ710によって生成された符号化されたビットストリームのエラーを検出および補正する。
【0059】
ほとんどの従来のリーダーは、強力なタグ応答を検出するのに十分なタグに近いため、ビタビデコーダを有しない。ビタビデコーダを使用することにより、複雑さおよび遅延の増加を犠牲にして、リスナモードでの範囲が増加する。タグ応答後、次のコマンドを送信する時間が限られている。ビタビデコーダによって使用されるルックバックメモリは、その限られた時間の一部分を消費するため、送信機の遅延が低減されて補償する。
【0060】
結論
発明に関するさまざまな実施形態を本明細書に記述し、かつ例示してきたが、当業者は、本明細書に記載の機能を実施するための、ならびに/または結果および/もしくは利点の一つ以上を得るための、さまざまな他の手段および/または構造を容易に想定し、またこうした変形および/または修正のそれぞれは、本明細書に記載の発明に関する実施形態の範囲内であるものと見なされる。より一般的に、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示であることを意味することと、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成が、本発明の教示が使用される一つ以上の特定の用途に依存することとを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載の特定の発明に関する実施形態の多くの同等物を、単に通常の実験を用いて認識し、または確認することができるであろう。従って、前述の実施形態は、例としてのみ提示されていて、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、発明に関する実施形態は、具体的に記述および特許請求される以外の形で実践され得ることが理解される。本開示の発明に関する実施形態は、本明細書に記載の各個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象とする。加えて、二つ以上のこうした特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、こうした特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しない場合、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0061】
また、さまざまな発明に関する概念が、一つ以上の方法として具現化されてもよく、その例を提供してきた。方法の一部として行われる行為は、任意の好適なやり方で順序付けられてもよい。その結果、行為が例示するものとは異なる順序で実施される実施形態を構築してもよく、それは、例示的な実施形態に連続する行為として示されている場合であってさえも、一部の行為を同時に実施することを含んでもよい。
【0062】
本明細書で定義および使用されるすべての定義は、辞書による定義、参照により組み込まれる文書中の定義、および/または定義された用語の通常の意味を統制するものと理解されるべきである。
【0063】
本明細書および特許請求の範囲で使用する不定冠詞「a」および「an」は、明確にそうでないと示されない限り、「少なくとも一つ」を意味すると理解されるべきである。
【0064】
本明細書および特許請求の範囲で使用する「および/または」という語句は、結合された要素の「いずれかまたは両方」を意味し、すなわち一部の場合において接続的に存在し、他の場合において離接的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」で挙げられる複数の要素は、同じ様式、すなわち等位接続される要素のうちの「一つ以上」と解釈されるべきである。具体的に識別される要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、「および/または」節によって具体的に識別される要素以外に、他の要素が随意に存在し得る。それゆえに、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などの制限のない語法と連動して使われる時に、一実施形態においてAのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態においてBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態においてAとBの両方(任意選択的に他の要素を含む)などを指すことができる。
【0065】
本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、「または」は、上で定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離する時、「または」または「および/または」は包括的なもの、すなわち多数の要素または要素のリスト、および任意選択的にリストに無い追加の項目のうちの少なくとも一つを含むが、二つ以上も含むと解釈されるものとする。それとは反対であると明確に指示される用語、例えば「のうちの一つのみ」もしくは「のうちのまさに一つ」、または特許請求の範囲において使用する時の「から成る」などの用語のみ、多数のまたは列挙された要素のうちのまさに一つの要素を包含することを指す。概して、本明細書で使用する「または」という用語は、「いずれか」、「のうちの一つ」、「のうちの一つのみ」、または「のうちのまさに一つ」など、排他的な用語が先行する時に、排他的な選択肢(すなわち「両方ではなく一方または他方」)を示すとのみ解釈されるものとする。「から基本的に成る」は、特許請求の範囲で使用する場合、特許法の分野において使用される通常の意味を有するものとする。
【0066】
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、一つ以上の要素のリストに関連する「少なくとも一つ」という語句は、要素のリストの中の要素のいずれか一つ以上から選択される、少なくとも一つの要素を意味するが、要素のリスト内で具体的に列挙したありとあらゆる要素のうちの、少なくとも一つを必ずしも含むわけではなく、要素のリストのいかなる要素の組み合せも除外するものではないと理解されるべきである。またこの定義によって、「少なくとも一つ」という語句が指す、要素のリスト内で具体的に識別される要素以外が、具体的に識別される要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、任意に存在し得ることも許容される。それゆえに、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも一つ」(または等価的に「AまたはBのうちの少なくとも一つ」、もしくは等価的に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも一つ」)は、一実施形態において、Bは存在せず、任意選択的に二つ以上のAを含む、少なくとも一つのA(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態において、Aは存在せず、任意選択的に二つ以上のBを含む、少なくとも一つのB(任意選択的にA以外の要素を含む)、また別の実施形態において、任意選択的に二つ以上のAを含む、少なくとも一つのA、および任意選択的に二つ以上のBを含む、少なくとも一つのB(任意選択的に他の要素を含む)を指すことなどができる。
【0067】
特許請求の範囲、ならびに上記の明細書で、すべての移行句、例えば、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「持つ(carrying)」、「有する(having)」、「収容する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」、「から構成される(composed of)」、および類似のものは制約がないと理解され、すなわち、含むがそれに限定はされないということを意味する。「から成る(consisting of)」および「から本質的に成る(consisting essentially of)」という移行句のみが、米国特許局の特許審査手続便覧、セクション2111.03に規定の通り、それぞれ閉鎖的または半閉鎖的な移行句であるものとする。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
【国際調査報告】